1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年四月四日(木曜日)
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議事日程 第二十二号
昭和四十九年四月四日
午後二時開議
第一 民事調停法及び家事審判法の一部を改正
する法律案(内閣提出)
第二 漁業災害補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第三 漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資
保証法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
第四 沿岸漁場整備開発法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 民事調停法及び家事審判法の一部を
改正する法律案(内閣提出)
日程第二 漁業災害補償法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第三 漁業近代化資金助成法及び中小漁業
融資保証法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
日程第四 沿岸漁場整備開発法案(内閣提出)
内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の
趣旨説明及び質疑
国際協力事業団法案(内閣提出)の趣旨説明及
び質疑
午後二時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/0
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001・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 民事調停法及び家事審判法の一部
を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/1
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002・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/2
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003・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。法務委員長小平久雄君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔小平久雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/3
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004・小平久雄
○小平久雄君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、民事調停事件及び家事調停事件が複雑多様化している最近の実情にかんがみ、調停制度の充実強化をはかるため、調停委員の制度及び調停の手続について、緊急に必要とする改正を行なおうとするものであり、その内容は次のとおりであります。
第一は、毎年あらかじめ選任する候補者の中から事件ごとに調停委員を指定する現在の制度を改め、新たに当初から非常勤の裁判所職員である民事調停委員及び家事調停委員の制度を設け、その職務は、現在と同様、調停委員会の構成員として調停に関与するほか、新たに裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べる等の事務を行なうこととし、手当を支給することとする。
第二は、交通及び公害等調停事件の管轄を、従来の管轄裁判所のほか、新たに、交通調停事件については、損害賠償を請求する者の住所等を管轄する簡易裁判所に、また、公害等調停事件については、損害の発生地等を管轄する簡易裁判所に、それぞれ土地管轄を認めることとする。
第三は、遺産分割調停事件について、遠隔地に居住する等の理由により出頭が困難であると認められる当事者が、あらかじめ調停委員会等から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者がその調停条項案を受諾したときは、合意が成立したものとみなすこととする。等であります。
当委員会においては、去る二月十二日提案理由の説明を聴取し、参考人の意見を聴取する等、慎重審査を行ない、かくて、四月三日質疑を終了したところ、青柳盛雄君から、調停委員候補者制度を存置し、その候補者を地方裁判所等が二年ごとに選考委員会の選考を経て委嘱する等を内容とする修正案が提出され、また、委員長から、商事及び鉱害調停事件についての特則である当事者間の合意があったときは、調停委員会の定める調停条項をもって調停が成立したものとみなす制度を民事調停事件全般に適用しようとする改正案の規定を削除し、現行どおりとする内容の修正案が提出されました。
次いで、討論に付し、日本社会党を代表して稲葉誠一君、日本共産党・革新共同を代表して正森成二君及び公明党を代表して沖本泰幸君から、それぞれ両修正案に賛成、原案に反対の意見が述べられ、採決の結果、青柳盛雄君提出の修正案は否決、委員長提出の修正案は全会一致をもって可決、修正部分を除く原案は多数をもって可決、よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
なお、本案に対し、附帯決議が付されましたが、その詳細は会議録をごらんいただきます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/4
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005・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/5
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006・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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日程第二 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 沿岸漁場整備開発法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/6
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007・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、漁業災害補償法の一部を改正する法律案、日程第三、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、日程第四、沿岸漁場整備開発法案、右三案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/7
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008・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長仮谷忠男君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔仮谷忠男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/8
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009・仮谷忠男
○仮谷忠男君 ただいま議題となりました三案につきまして、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、各案の要旨について申し上げます。
漁業災害補償法の一部を改正する法律案は、最近における中小漁業者の漁業事情等の推移に即応して、漁業災害補償制度の改正を行なおうとするもので、
漁獲共済について、いわゆる義務加入の道を開くとともに、てん補水準の引き上げ等てん補内容の充実をはかること。
養殖共済について、共済契約の締結要件及び小損害不てん補要件を緩和するとともに、いわゆる赤潮特約制度を創設すること。
特定の養殖業について、収穫保険方式による特定養殖共済を試験的に実施すること。等がそのおもな内容であります。
次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案は、最近における漁業者等の資金需要の大口化、多様化の傾向に即応して、漁業者等の資本装備の高度化及び経営の近代化を一そう推進し、あわせて、中小漁業の振興をはかるため、漁業近代化資金制度と中小漁業融資保証保険制度について所要の改正を行なおうとするもので、
漁業近代化資金の種類を拡大すること。
漁業信用基金協会の保証対象資金に生活資金を加える等その業務範囲を拡大するとともに、その会員資格の範囲を拡大すること。
保証保険対象資金の範囲を拡大する等政府の行なう保証保険制度を改善すること。
融資保険及び漁業信用基金協会に対する資金の貸し付けの業務を行なう中央漁業信用基金を設立すること。等が改正のおもな内容であります。
次に、沿岸漁場整備開発法案は、沿岸漁業の基盤である沿岸漁場の整備及び開発をはかり、沿岸漁業の安定的な発展と水産物の供給の増大に寄与することを目的として提出されたもので、
農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の実施の目標及び事業量を定める沿岸漁場整備開発計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
漁業協同組合等は、都道府県知事の認可を受けて、育成水面の区域において特定の水産動物を育成する事業を行なうことができるものとすること。等がそのおもな内容であります。
委員会におきましては、三案を一括議題とし、三月六日に農林大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、三月十九日から四月三日までの間に六回にわたって質疑を行ない、この間、参考人から意見を聴取し、また、、静岡県で現地視察をする等、慎重に審査を重ねてまいりました。
かくて、四月三日、三法案に対する質疑を終了し、まず、漁業災害補償法の一部を改正する法律案、及び、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について、それぞれ採決いたしましたところ、両案とも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
次いで、沿岸漁場整備開発法案について、角屋堅次郎君外四名から、農林大臣が沿岸漁場整備開発計画の案を作成するにあたっての配慮事項を加えること等を内容とする修正案が提出され、採決の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、各案に対し、それぞれ附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/9
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010・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 三案を一括して採決いたします。
日程第二及び第三の委員長の報告はいずれも可決、第四の委員長の報告は修正であります。三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/10
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011・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり決しました。
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内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/11
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012・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、内閣法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣二階堂進君。
〔国務大臣二階堂進君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/12
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013・二階堂進
○国務大臣(二階堂進君) 内閣法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
最近における内外情勢の推移に迅速かつ適切に対処するため、国政の機動的運営を強化する必要があります。
特に、経済協力については、開発途上国との間に平和と繁栄を分かち合うという基本方針のもとに、政府開発援助の量、質両面の拡充等その強化にできる限りの努力を傾けていく必要があります。
このような経済協力の当面の重要課題にこたえるため、政府は、開発途上国の経済及び社会の発展に寄与する案件の推進をはかっていく所存であります。それには開発途上国の実情に即した経済協力を進めなければならないとともに、国内的には経済協力が関係各省にまたがる行政であることにかんがみ、開発途上国の実情を的確に把握しつつその推進に専心し得る国務大臣を新たに設ける必要があります。
このため、国務大臣の定数を一人増加し、行政事務を分担管理しないいわゆる無任所大臣を置き、これが内閣総理大臣の命を受けて経済協力の積極的推進に当たることとするものであります。
なお、この国務大臣は、当面経済協力の推進に当たりますが、無任所大臣でありますので、そのときどきの行政の必要に応じ、内閣総理大臣の命を受けて、内閣の重要案件の推進に機動的に当たり得ることは申し上げるまでもありません。
以上が、内閣法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/13
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014・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。和田貞夫君。
〔和田貞夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/14
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015・和田貞夫
○和田貞夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました内閣法の一部を改正する法律案に強く反対する立場から、わが党の考えを明らかにし、総理並びに関係閣僚に対して質疑を行なうものであります。(拍手)
この法案は、提案理由によりますと、開発途上国に対する経済協力の積極的推進をはかるための担当国務大臣を新設するというのでございますが、経済協力という美名に隠れ、国内で行き詰まってきておる大企業本位の政策を、海外市場により大々的に転嫁する経済侵略の危険性を指摘せざるを得ないのでございます。
歴代自民党政府が今日まで推し進めてまいりました高度経済成長政策は、労働者、農民、中小零細商工業者等、広範な勤労国民に耐えがたい生活苦をもたらしただけでなく、独占を中核とする資本主義体制そのものにも深刻な危機の根源となっているのであります。日本列島をおおい尽くした環境破壊は、国民大衆の力強い抵抗闘争と相まって、資本の側にとっても工場立地難という深刻な事態に立たされているのでございます。また、石油をはじめとする危機的な資源問題、洪水のような日本商品に対する諸外国の反発に示された市場問題、低賃金の労働力不足など、資本主義体制の危機はとめどもなく進行しているのでございます。
田中内閣のもくろんでいる経済協力なるものは、石油エネルギーを基幹にした経済制覇の野望をたくましゅうする日本独占と、そのよきパートナーである自民党政府が、資源確保と巨大資本の本格的な海外進出を用意するものといわなければなりません。国の一般会計及び財投資金あるいは民間資金を源泉とする経済協力、つまり、国家資本と私的資本の輸出は年々急速に増大しており、一九七三年には、総額二十七億二千五百四十万ドルにのぼる国家資本と私的資本が経済協力費の口実のもとに輸出されておるのでございます。また、一九七二年末で、私的資本の海外直接投資残高は三十二億一千七百万ドルに達し、アメリカに次ぐ大資本輸出国と化しているのでございます。
ところで、経済協力の増大と並行して、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々に日本に対する警戒心が高まり、田中総理の東南アジア諸国訪問のおりに示されたような激烈な反日本独占のデモが繰り返されるに至ったのは、経済協力の本質が本来は贈与性の高いものであるべきが、現実はもっぱら企業中心の経済侵略の思うままにまかせており、公害の輸出、低賃金労働力と市場の確保、資源の独占化を企図し、経済支配のねらいをひそめたものであることを、彼らははっきりと見抜いているからでございます。この際、対外経済協力の基本姿勢を根本的に転換する必要性を強く訴え、以下、具体的にお尋ねいたしたいと思います。
まず第一に、総理は、先ごろ東南アジアの国々を訪問した際、激しい抗日デモ、すなわち、日本の経済侵略に反対する抗議のデモに直面されたのでありますが、これをどう受けとめておられるかということでございます。
一九七三年にアルジェで開催された第四回非同盟諸国首脳会議が採択した政治、経済の両宣言が示すように、自国の資源をみずからの手中に取り戻し、経済侵略を強行してきた帝国主義諸国家の巨大企業を国有化し、政治、経済の両面にわたって民族独立と国家主権を確保するきびしい決意を固めているのが、東南アジア諸国を含む開発途上国の実態であり、この現実を理解しないで、いたずらに資源確保や企業の海外進出を経済協力と思い込んでおるようでは、これらの国々に敵対する行為だといわれてもいたし方ないでしょう。この際、対外経済協力の姿勢を転換し、経済侵略でなく、真の経済協力を進めるよう、その具体的な考え方をお示し願いたいと思います。
第二点は、経済協力担当大臣新設の構想についてであります。
総理は、施政方針演説の中で、わが国とアジア諸国とは相互補完の関係にある、わが国はアジア諸国の協力を必要とし、アジア諸国もまた、その国づくりのため、わが国の協力に多大の期待を寄せている、この期待にこたえるために、経済協力担当大臣を新設し、援助政策の転換をはかると発言されているのでございますが、これはどのような認識に立っての発言であったのか、理解に苦しむのでございます。アジア諸国を含む開発途上国の経済困難は、先進工業国の経済援助がなかったためではなく、むしろ、経済協力、経済援助に名をかりて、資源の独占と経済支配を企図する経済侵略によってもたらされているのでございます。
通産省発行の「経済協力の現状と問題点一九七三年版」によると、DAC加盟国が行なった経済援助の総額は、一九七二年において百九十六億三千七百万ドルに達し、日本は二十七億二千五百万ドル、一三・九%を占めるに至っておるのでございます。毎年、百億ドルをこえる巨額な経済協力がつくり出した輸入代替産業は、過度の都市集中化現象と農村の破壊、一握りの援助に寄生する特権階層だけが太り、目をおおうばかりの貧困と失業など、深刻な政治、社会危機をもたらしているのでございます。また、流入した資金の累積額は千九百五十億ドルにのぼり、債務残高は実に八百五億ドルに達しております。これがアジア諸国を含む開発途上国の経済危機の実態なのでございます。この危機の根源を断ち切ることこそ、アジアの国々は日本に対しまして大きな期待を持っておるわけでございます。
わが党は、経済侵略政策をより強化するための司令官ともいえる対外経済協力担当大臣の新設を認めるわけにはまいりません。(拍手)その撤回を要求するものでありますが、総理の所見をお伺いしたいのでございます。
第三点は、日韓経済協力、インドシナ復興援助、中東援助の問題と経済協力担当大臣新設との関連についてお尋ねいたしたいのでございます。
韓国では、金大中事件の勃発と、これを契機とする知識人、学生らの民主化運動に対する過酷な弾圧によって、朴政権のファッション的本質が明らかにされたいまなお、朴政権に対する巨額の経済協力を行ない、南朝鮮の重工業化に狂奔し、また、インドシナ復興援助に名をかりて南ベトナムのチュー政権へのてこ入れ、南ベトナム共和臨時革命政府の排除の政策が、ほかならぬ外務省の手で行なわれているのでございます。
さらには、国際石油資本、いわゆるメジャーの支配に抵抗して民族資本の育成をはかるとの口実に隠れて、中東を訪れた三木特使、中曽根特使、小坂特使らが惜しげもなくばらまいた中東援助が着々と実行され、それに続いて、悪名高い大手総合商社が相次いで資本輸出を強行するかまえを示しているのでございます。
経済協力担当大臣の新設は、これらの現実とどのようなかかわり合いを持つものであるのか、外交政策の最高責任者である外務大臣の見解を求めるものでございます。(拍手)
第四点は、大臣の乱造と閣議についてであります。
閣僚の数の多きをもって内閣重からず、これは、佐藤内閣、田中内閣を通じ、大臣の増員計画のたびに一貫して反対してきた山中防衛庁長官の名言であり、閣僚の増員は、臨時行政調査会の答申にも逆行し、ひまな大臣は幾らもいるんだから兼任すればよい、こういう山中長官のもっともな主張が、お家の事情とはいえ、態度の豹変は、まことに残念なことでございました。(拍手)まして、今度の場合は、権限も機能も機構もなく、無用の長物にもなりかねないのでございます。佐藤内閣で三人、田中内閣は二人の大臣乱増計画で、まさに大臣インフレというべきでございます。(拍手)大臣の所管事項を細分化して大臣をふやせばふやすほど、閣議が軽視されがちになり、閣内不統一がさらに露呈されるだけではございませんか。対外経済協力のようにわが国の基本姿勢にかかわるような問題こそ、閣議で徹底した論議を行ない、その方針を外務、通産、農林等関係各省で執行させることのほうが望ましいのではございませんか。重要かつ複雑である問題ほど閣議で論議を重ね、内閣一体の原則を形式論にならないように意思統一をする過程が実質的に伴ってこそ、閣議の権威があるのに、首相を中心に関係閣僚や実力閣僚によって重要な問題がきめられ、処理され、閣議は全く儀式化しているように感ぜられますが、大臣の乱造は閣議軽視により拍車をかけることになることを警告し、総理の所信を伺いたいのであります。
以上、わが党の見解を述べるとともに、基本的な問題点についての質疑を行ないまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/15
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016・田中角榮
○内閣総理大臣(田中角榮君) 和田貞夫君にお答えをいたします。
まず第一に、海外経済協力の件でございますが、申すまでもなく、人類世界の平和を真に確保するため最大の政策は、南北問題の解決にあるわけでございます。先進工業国と開発途上国とが相携えて平和の確保に努力すべきであることは、申すまでもないことでございます。特に、わが国は資源を持たない国でございまして、その大半を海外より輸入し、これを加工し、その製品を輸出することによって国民生活の向上をはからねばならない、これは過去も現在も将来も変わらない現実でございます。その意味で、対外経済援助は、開発途上国の発展に寄与するとともに、あわせてわが国の利益も確保しなければならないという、過去も現在も、またあしたも、変わらない最重要な問題でございます。その意味で、これが円滑に行なわれるように、合理的に執行せられるように、重大な関心を持ち、これら機関の整備をはかってまいる必要性は、私が申すまでもないことでございます。
次は、東南アジア訪問の際の問題についての御言及でございますが、国家間の関係が密接化すればするほど、調整を要する問題が生じてくることもまた当然であります。したがいまして、見直すべき点は、わが国としても十分これを反省して対処しなければなりません。しかし、東南アジアの友邦諸国とわが国とは、基本的に相互補完の友好関係にあり、一部のデモ等の現象にのみとらわれるのではなく、より長期的な視野に立ち互恵の道を求め合う関係にあると考えるのであります。
わが国の資源政策についての批判等に対しての御発言がございましたが、すなおに見まして、わが国は開発途上国の天然資源に関心を持つものでございますが、これを開発する際には、相手国の発展、繁栄を考慮することなく対処できないことは理の当然でございます。経済協力担当大臣の新設をはかったのも、よりきめのこまかい、機動的な、相手国の立場に立つ援助の促進をはかるためなのでございます。
経済協力担当大臣を新設する理由についての御言及がございましたが、最近における内外情勢の推移に迅速かつ適切に対処するためには、国政の機動的な運営を強化する必要がございます。特に経済協力につきましては、開発途上国との間に平和と繁栄を分かち合うという基本方針のもとに、それぞれの国の実情に即した施策を一そう積極的に推進をしていく考えでございます。
現在、経済協力の執行体制は関係各省にまたがっており、その機動的、能率的な運営を確保する上で、その推進に専念できる国務大臣を新たに設ける必要があると考えるのであります。このため、国務大臣の定数を一人増加し、経済協力の積極的な推進に当たることとするものでございます。
経済協力担当大臣新設の経緯と閣議の機能等についての御発言がございましたが、今回の経済協力担当の国務大臣の増員につきましては、関係閣僚の意見も打診した上、予算化及び法制化に当たったものであります。国務大臣の定数は、内外情勢の推移、行政需要の変化その他、内閣の運営をめぐる事情の変化に即応して考えらるべきであることは当然と存じます。複雑専門化する行政の推移に対応して、国務大臣の定数を適正なものとしていく必要がありますが、半面、合議制機関としての内閣の機能を阻害しないよう留意しなければならないこともまた言うをまちません。
今回の内閣法改正案は、上述のような視点を踏まえて慎重に検討した結果、国務大臣の定数を一人増加し、経済協力の積極的推進に当たることといたしたものでございます。
なお、閣議の問題に対して御発言がございましたが、閣議の前には事務次官会議も開いておりますし、その前には各省の連絡も十分やっておりますし、政府与党である自由民主党との調整も慎重、十分に行なっておることは、御承知のとおりでございます。その上に立って、閣議はしごく円満、合理的に運営せられておることを、念のため申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/16
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017・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 経済協力大臣の新設と外交政策とのかね合いにつきましてのお尋ねでございます。
経済協力は、先進国の一員としてのわが国が、諸外国とともに、国際的な責任といたしまして、開発途上国の民生の安定、国民経済の均衡ある発展に寄与するために行なう国際的な責任を持った事業でございますので、その円滑でしかも効率的な推進をはからねばならないことは、当然の道行きであろうと思います。そのために、その促進をはかるために国務大臣を新設するということは、私どもとして歓迎すべきことと考えております。しかしながら、外交の一元的な展開という秩序は乱してはいけないと思います。したがいまして、この大臣の新設によりましても、外務省はじめ各省庁の設置法上の権限には一指も触れていないわけでございまして、御案内のように無任所大臣といたしてあるところから御理解をいただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/17
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018・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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国際協力事業団法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/18
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019・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、国際協力事業団法案について、趣旨の説明を求めます。外務大臣大平正芳君。
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/19
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020・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 国際協力事業団法案の趣旨について御説明を申し上げます。
御承知のとおり、世界の平和と繁栄のためには開発途上地域等の発展と安定が不可欠な要件であり、そのための協力は国際社会全体の負うべき責務であります。わが国といたしましては、かねてよりこのような認識に基づき、これら地域の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とする各般の施策をわが国の重要対外政策の一つとして推進いたしております。
近来、わが国経済を取り巻く諸条件はきびしさを加えてまいりました。わが国の平和と繁栄は世界各国との互恵友好の関係の中においてのみ達成し得るものであることを考えますならば、まさにかかるきびしい状況のもとにおいてこそ、このような国際協力の意義をあらためて強く認識しなければならないと存じます。
政府といたしましては、かかる基本的考え方に基づき、わが国の国際協力の一その拡充強化をはかるべく種々検討してまいりましたが、その方策の一つとして、従来の経済技術協力実施体制においては必ずしも十分に行ない得なかった政府ベース協力と民間ベース協力の連携の強化、あるいは資金協力と技術協力との一体的な結びつきを確保するための体制の強化をはかるべく、国際協力事業団を設立することといたしました。
すなわち、この事業団は、既存の技術協力の機構である海外技術協力事業団と、移住事業を通じて国際協力に貢献しておる海外移住事業団を統合し、これらの事業団からの業務を引き継ぐほか、開発途上地域等の社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発に協力するための新たな業務を行なうことといたしております。このような国際協力体制の整備強化をはかることによって、対外的には相手国側の事情等を十分反映させた国際協力政策の推進が可能となり、また、国内的にも国際協力事業の総合的、効率的運営が確保し得ると考えるものであります。
次に、国際協力事業団法案の概要について御説明申し上げます。
第一は、この事業団の目的でありますが、これは三つの大きな柱から構成されております。一つは、開発途上地域に対する技術協力の実施及び青年の海外協力活動の促進に必要な業務を行なうことであります。二つは、開発途上地域等の社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発に必要な資金の供給及び技術の提供を行なう等の業務を行なうことであります。第三には、中南米地域等への海外移住の円滑な実施に必要な業務を行なうことであります。そしてこれら三種の業務を行なうことによって、開発途上地域等の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とするものであります。
第二は、この事業団の資本金でありますが、当初資本金といたしましては、設立に際して政府から出資される四十億円と、この事業団に承継される海外技術協力事業団及び海外移住事業団に対する政府の出資金等との合計額約二百二十四億円でありますが、政府は、必要があると認めるときは、事業団に追加して出資することができるものとしております。
第三は、この事業団に、役員として、総裁一人、副総裁二人、理事十二人以内及び監事三人以内を置き、また、業務の運営に関する重要事項を審議するため、総裁の諮問機関として、四十人以内の委員で構成される運営審議会を置くことといたしております。
第四は、この事業団の業務でありますが、一としては、従来海外技術協力事業団が行なってまいりました条約その他の国際的約束に基づく技術協力の実施に必要な業務、及び条約その他の国際的約束に基づき海外協力活動を志望する青年等を開発途上地域へ派遣すること等の業務であり、二としては、海外移住事業団が行なってまいりました移住者の援助及び指導その他海外移住の円滑な実施に必要な業務であります。三といたしましては、新しい業務でありますが、開発途上地域等の社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発に必要な資金の供給及び技術の提供を行なう等の業務であります。この新規業務の特徴について申し上げますと、第一の特徴としては、この事業団は、日本輸出入銀行、海外経済協力基金から資金の供給を受けることが困難な事業について円滑な資金の供給を確保しようとするもので、具体的には、各種開発事業に付随して必要となる関連施設であって周辺の地域の開発に資するものの整備、ないし、試験的事業であって技術の改良または開発と一体として行なわれなければその達成が困難であると認められるもの等を対象といたしております。次に、このような資金の供給を受ける事業等に必要な技術の提供をあわせて行なうこととしており、資金と技術の一体的な結びつきをはかろうとするところに第二の特徴がございます。第三の特徴といたしましては、条約その他の国際的約束に基づいて、開発途上地域の政府等からの委託を受けて事業団みずからがこれらの地域の開発に資する施設等の整備事業を行なうこととした点であります。さらに、四といたしましては、ただいま申し上げました技術協力業務や、社会開発、農林業及び鉱工業の開発の業務に従事する技術者の充実をはかるため、これら技術者の養成及び確保を行なうための業務があります。
このほか、事業団の事業年度、事業計画等の認可、財務諸表、区分経理、借入金及び債券、余裕金の運用、罰則等について規定いたしております。
なお、附則におきましては、海外技術協力事業団と海外移住事業団の解散及びこれに伴う権利義務の承継、並びに海外貿易開発協会からの一部権利義務の承継等について規定しております。
以上をもちまして、この法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
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国際協力事業団法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/20
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021・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。河上民雄君。
〔河上民雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/21
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022・河上民雄
○河上民雄君 ただいま議題となりました国際協力事業団法案につき、私は、日本社会党を代表して、基本的な問題点につき、総理大臣並びに関係閣僚にお尋ねいたしたいと思います。(拍手)
まず第一に、田中総理、あなたは、去る一月東南アジアを訪問され、あの強烈な反日デモに見舞われ、いかなる反省を持たれたか、その点をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
わが社会党は、これまで一貫して、政府の対米追従外交、特定政権への肩入れ、エコノミックアニマルといわれる経済進出の危険性について警告いたしてまいりました。総理の東南アジア諸国訪問ではしなくもそれが現実化し、タイ及びインドネシアにおける激しい反日運動が起こりました。これらの事態の底にあるものは、これまで現地民衆を踏みつけにしてきた日本の企業進出と、これを許してきた現地政権とわが国資本との癒着関係に対する民衆の怒りがあったといわなければなりません。(拍手)
総理は、帰国後、当院の本会議におきまして、経済協力は金だけではない、心と心の触れ合いが大切だという趣旨のことを言われ、その事例として、朝鮮植民地支配の時代における日本が行なったことでいまなお感謝されていることが二つある、ノリの栽培と義務教育がそれであると述べ、たちまち韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国より強い反撃と批判を呼んだことば、御承知のとおりであります。(拍手)
日本の首相の発言としては、まことに遺憾、かつ、さびしいことであります。義務教育こそ、まさに、同化政策を推し進め、朝鮮の子弟に日本語を強制し、民族の魂ともいうべき祖国のことばを奪う役割りを果たした、むしろ、のろうべき象徴でありました。
総理は、二階堂官房長官を通じて、他意はなかったと弁明されましたが、弁明ではなく、むしろ率直にこの本会議場において非を認め、誠意を内外の民衆に向かって披瀝すべきであると信ずるものでありますが、いかがでございましょうか。(拍手)
今回、経済協力の強化のために、経済協力担当国務大臣の設置、国際協力事業団の新設がはかられております。また、アラブ諸国の石油戦略にゆすぶられた昭和四十九年度予算では、経済協力費の大幅増額が行なわれております。しかし、国際協力の理念の確立なくして、いたずらなる機構いじりと経済協力費の増大は、無意味であるばかりではなく、ときに有害ですらあることを警告しておかなければなりません。(拍手)
総理の東南アジア歴訪後、開発途上国側から日本に対し多くの非難と忠告が寄せられております。日本の経済協力は、開発途上国の利益よりも日本の利益をはかることを目的としているのではないか、日本から援助を受ければ受けるほど、日本に対する経済依存度が強まり、現に、援助をてこに進出してきた日本商品は町にはんらんする一方、いわゆる日本株式会社の手で、日本が必要とする資源の開発、収奪が行なわれているではないか。政府は、これらの非難と忠告に深く反省するとともに、国際協力の理念の確立を急がなければならないと存ずるものであります。それは、経済協力の推進に理解と協力を与えてきたわが国国民に対する政府の義務であると思います。
近年、開発途上国援助は一つの転機を迎えております。一九七三年九月、東南アジア諸国を含む開発途上国の七十六カ国が、アルジェに集まり、第四回非同盟諸国首脳会議を開催、「真の独立は、外国の独占を除去し、国家資源をみずからの手におさめることによって実現する」との経済宣言を採択、これら開発途上国の民族自決と国民経済確立への決意を表明するとともに、国際経済秩序の改革、対等の主権、公正な分配を実現するため、ワク組みの変更を強く打ち出し、資源収奪と多大の犠牲をしいてきた北側先進諸国に強い警鐘を与えておるのであります。アルジェリアの提唱により、いよいよ四月九日より始まる国連の資源特別総会は、まさに先進国への告発を行なおうとしているのであります。
こうした開発途上国の資源ナショナリズムの高まりの中で、アラブ産油国が引いた石油戦略の引き金は、西側資本主義体制の根幹をゆさぶり、日本のみならず、北側先進諸国一般がいかに南側開発途上国に深く依存しているかを、痛いほど思い知らされたのであります。
戦後、海外に、いな、「南」に安価な資源を求めて、GNP世界第二位という巨大な富をつくり上げてまいりましたわが国は、いまや制約された資源配分の中で、これまでのように無制限な経済成長を続ける時代は終わったことを知らなければならないのであります。そして、流動的な世界経済の中で、資源小国である日本が果たすべき役割りを一日も早く明確に見きわめる必要があります。そのためには、まず、日本が諸国民から常に疑いの目で見られるのではなく、ゆるぎない信頼をかちうるような姿勢を内外に宣言することが肝要であります。
まず第一に、平和憲法順守の宣言を行なうこと。経済の軍事化を阻止し、海外派兵、武器輸出などは絶対に行なわぬこと、核兵器を否認し、政治的な覇権を求めぬことを宣言すること。第二に、開発途上国の経済自立の要求を率直に支持し、その資源に対する恒久主権の尊重、特に国連におけるそのための決議を順守することの宣言。第三に、日本の企業の進出は、あくまで先方の国民経済形成に貢献することを主目的とし、その趣旨に沿った民間投資憲章をつくること。第四に、政府の借款の条件について一定の基準を設けること。あるいは、国際労働基準の実現化につとめるなど、わが国の経済協力の理念を内外に明示することが緊要であると考えますが、政府の所見はいかがでございますか、総理、外相に伺いたいのであります。(拍手)
次に、法案それ自体につき若干の質問を試みたいと思います。
第一に、新設国務大臣と国際協力事業団との関係であります。その関係は法制上明らかにされていません。本事業団が外務大臣の主管で、通産、農林の共管部分を含むとすれば、一体この国際協力事業推進の中で新設大臣の任務をどのように理解すべきでありましょうか。
第二に、今回の国際協力事業団では、国際協力事業の窓口の一本化がうたわれておりますが、その編成はあまりにも便宜主義的であります。今回の新設事業団では、既存の海外技術協力事業団及び海外移住事業団などを吸収することとし、これとの関連で、通産省の海外貿易開発協力公団構想と農林省の農村開発公団構想の一部を取り入れ、事業団にその業務を受け持たせる形をとっておるのであります。伝えられるところによると、新設公団の増加を押えるため、政治的妥協として、新設事業団に通産、農林関係業務を組み入れることによってこの両省の主張を押えたと聞いております。その結果、憲法二十二条による人権の一つとしての海外移住に関する業務を国際協力事業団に組み入れているのであります。本来これはこの事業団になじまない性格のものではないでしょうか。そしてむしろ、西独、フランス、イギリスなど先進諸国が力を注いでいる文化交流は、わが国では、この事業団業務から切り離され、国際交流基金の乏しい資金でお茶を濁しているのが実情であります。
第三に、農林、通産がそれぞれ打ち出していた公団構想は、資源の開発輸入ないしは資源の備蓄を基軸として発想されたもので、悪名高い財界主導型を政府主導型に切りかえたことにより、かえって政府主導の方針のもとに官民協調型の、日本株式会社といった強烈な印象を与える危険性をはらんでおります。特に、進出企業の周辺における社会開発に協力する構想は、へたをすれば、わが国内における産業優先政策がとってきた手法を海外で再現するおそれなしとしません。また、農業協力の大型プロジェクトの構想も、農産物の開発輸入については、協力事業団を通じて、受け入れ国に対し、技術協力、直接投資を行ない、生産性を引き上げて、余剰となる部分を輸入するという発想によるものでありますが、これまた、わが国が開発援助の美名のもとに、飼料穀物などを求めようとする一種の資源収奪にならないという保証はないのであります。そのような危険をチェックする歯どめをどこに見出すことができましょう。関係閣僚の所見を伺いたいのであります。(拍手)
最後に、わが国の経済協力は、一九七二年の実績で二十七億二千五百万ドルを記録し、アメリカに次ぐ援助大国となったのであります。これらの海外協力資金の流れの実態について、われわれは満足な報告や調査研究がなされていないことを指摘しておきたいと思います。いわゆる石油危機にあたりまして、三木特使、中曽根通産大臣、小坂特使が中東、東欧諸国に、また、田中首相が東南アジアをそれぞれ訪問し、多額の経済援助を約束してこられましたが、その負担は今後相当のものとなると思われます。昔から、わが国では、実のない話をしてくることを、油を売るといっておりますけれども、油を買うために油を売ったという非難をこうむらぬようにせねばなりません。(拍手)また、これまで特定政権維持のために貴重な税金が投ぜられるというきらいがなかったということは言えないのであります。これを機会に、海外経済協力資金について詳細な報告書を国会に提出することを義務づけ、国民の理解と支持を求めるべきであると考えますが、政府はいかがでございましょう。(拍手)
以上、簡単でありますけれども、総理大臣並びに関係閣僚の誠意ある答弁を望んで、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/22
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023・田中角榮
○内閣総理大臣(田中角榮君) 河上民雄君にお答えいたします。
まず第一は、東南アジア訪問の際の抗議デモ等についての御発言でございますが、先ほどもお答えしたとおり、東南アジアの友邦諸国とわが国とは、基本的に相互補完の友好関係にございますが、国家間の関係が緊密化すればするほど、調整を要する問題が生じてくることは当然なことであります。したがいまして、正当な理由のある批判についてはすなおに耳を傾け、改めるべきは改めていかねばなりません。しかしながら、対日感情の背景、理由等は現地の事情をも反映し、それぞれ複雑であり、誤解に基づく面もあり得るので、相手国政府とも相協力し、長期的視野に立って、冷静かつ現実的な態度で忍耐強く対処していくことが必要であることは申すまでもありません。(拍手)
一月二十四日の本会議における私の発言の真意は、間々申し上げておりますとおり、経済協力には心と心との触れ合いによる現地との精神的理解が重要であることを強調したものであります。
なお、経済協力の基本理念について申し上げますが、資源に乏しく、狭い国土に一億をこす人口をかかえるわが国は、四方の海を越えて資源を輸入し、それに付加価値を加え、製品として輸出をするという貿易形態をとっておることは、申すまでもない事実であります。
海洋国家である日本は、世界の平和なくして生きていけないし、わが国経済は自由な国際経済環境のもとでのみ発展することが可能なのであります。そのため、わが国は、永続的な世界平和の創造と新しい世界秩序の再建のために、これまでに蓄積をした経済力、技術力などを活用、投入して積極的な国際協力を推進し、開発途上国の経済発展と国民福祉の向上のための自助努力に協力をしていかねばなりません。政府としては、このような基本的認識のもとに、従来の経済協力の一そうの効率化をはかるため、国際協力事業団を設立いたすことにいたしたわけであります。
経済協力担当大臣を新設する理由と事業団との関係等について御発言がございましたが、最近における内外情勢の推移に迅速かつ適切に対処するためには、国政の機動的な運営を強化する必要があります。特に、経済協力につきましては、開発途上国との間に、平和と繁栄を分かち合おうという基本方針のもとに、それぞれの国の実情に即した施策を一そう積極的に推進していく考えであります。
現在、経済協力の執行体制は関係各省にまたがっており、その機動的、能率的な運営を確保する上で、その推進に専念できる国務大臣を新たに設ける必要があると考えておるのでございます。相手国と緊密な連絡をとり、意思の疎通をはかり、真の対外協力の実をあげることには、専念できる国務大臣が必要であるということは、何人も理解し得るところでございます。先般、石油問題でアラブに使いするときに、ときには三木副総理、ときには中曽根通産大臣、ときには小坂特使というような状態でございますが、これは国会の都合もございますし、いろいろな任務を持っておりますから、これらの問題に専念できないという事情もあります。このような一事をもってしても、海外協力担当大臣が必要であるということは理の当然であります。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/23
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024・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 経済協力の理念についての御質疑でございました。
わが国の経済協力は、申すまでもなく、間々申し上げておるように、民生の安定、経済の均衡ある発展をはかるべく、相手国の自助努力に根ざす計画に即しまして、相手国の要請、その理解のもとに行なっておるものでございまして、経済の支配を企図したり、あるいは特定政権の擁護を目的とするようなものでないことは、河上さんも御理解いただいていることと思うのであります。
アルジェにおける非同盟首脳会議における宣言、決議等は、私どももよく承知いたしております。そこでうたわれておりまするように、資源保有国の恒久主権は十分尊重しながら、われわれの持っておる資本、技術との調和ある関係をどうしてつくり上げるかが、われわれの経済協力行政の一つの大きな任務であると考えております。
それから、今度つくろうとする新設の事業団に、農林業及び鉱工業の開発業務を包摂いたした理由でございますが、この特殊法人のもとでこれらの事業を統一的に実施いたしますほうが、政府の国際協力を推進してまいる効率の上から申しましても、その質、量ともに改善をはかる上から申しましても、適切であると考えたからでございます。
移住事業団をこれに吸収するということでございますが、移住者は、御指摘のようにみずからの意思に基づいて海外に移住されるものでございますけれども、同時に、移住者が、現地におきまして、直接または間接に、移住地及びその周辺をも含めた地域全体の経済、社会の発展に寄与することも期待されておるわけでございまして、その意味におきまして、海外移住事業は国際協力の重要な役割りを果たしておるものと私どもは考えておりまして、この事業団に包摂してしかるべきものと考えております。
それから、経済協力関係事業の実施状況が必ずしもつまびらかでないという御指摘でございますが、この実施状況につきましては、これまでも随時国会審議等を通じて明らかにしております。決算の際にも、その支出状況につきまして国会に御報告申し上げておりますことは、御案内のとおりでございます。
それから、中近東諸国その他に対しまして約束をいたしました経済協力案件でございますが、これらの案件は、わが国の経済協力政策全体の立場から、十分検討、吟味したものでございまして、これは現実には一挙にやろうとするわけではなくて、複数の年度におきまして、おのおのの準備状況を十分勘案いたしまして、数年間にわたって実施していくものでございまして、したがって、政府といたしましては、当然実施可能と考えて、誠実にその実行をはかってまいりたいと考えておるものでございます。(拍手)
〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/24
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025・倉石忠雄
○国務大臣(倉石忠雄君) 国際協力事業団による農業開発は、資源の収奪にならないという保証があるかというお尋ねでございますが、海外の農業開発を支援いたしまするにあたりましては、まず国際協力の見地に立って、相手国の農業の振興と現地の農民の福祉の向上に寄与するという立場から、これを進めることが基本的に重要であると存じます。このために、国際協力事業団による農業開発は、長期的に見まして、相手国の農業生産力の増大を促し、まず現地の需要を満たすことを第一義といたしまして、しかる後に輸出余力があれば、これをわが国への安定供給にも資するという、相互援助の考え方のもとに進めてまいることにいたしておりますので、いやしくも、お話しにありましたように、資源の収奪というふうな批判を招くことはないものと確信をいたしております。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/25
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026・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) インフラストラクチュアにまで手を出すことは、経済侵略の手助けをすることにならぬかという御質問でございますが、そのように思いません。第一、インフラストラクチュアをどういうふうにやるかということは、相手国政府または公共団体等の要請に基づいて行なうものでございます。それから、仕事の内容は、そのプロジェクトの周辺における病院とか橋梁とか道路とか、そういうような、大体公共的な仕事ないしは都市計画等の仕事が大部分でございまして、これらはそれらの国々がいままで強く要望してきたところでございます。今度は、その面について大体いままでの関係国の御要請にこたえようとするものでございまして、私はかえって評価されるのではないかと思います。
ただし、これが実施については、いささかもそのような誤解を与えないように、細心の注意をもって行なわなければならないと思っております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/26
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027・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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028・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十一分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 田中 角榮君
法 務 大 臣 中村 梅吉君
外 務 大 臣 大平 正芳君
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
通商産業大臣 中曽根康弘君
国 務 大 臣 二階堂 進君
出席政府委員
内閣法制局長官 吉國 一郎君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107205254X02319740404/28
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