1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年三月二十二日(金曜日)
午前十時十八分開議
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○議事日程 第十三号
昭和四十九年三月二十二日
午前十時開議
第一 常任委員長の選挙
第二 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、国家公務員等の任命に関する件
一、国務大臣の報告に関する件(昭和四十九年
度地方財政計画について)
一、地方税法の一部を改正する法律案及び地方
交付税法の一部を改正する法律案(趣旨説
明)
一、日程第二
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/0
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001・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
日程第一 常任委員長の選挙
これより欠員中の社会労働委員長の選挙を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/1
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002・森勝治
○森勝治君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/2
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003・柴立芳文
○柴立芳文君 私は、ただいまの森君の動議に替成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/3
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004・河野謙三
○議長(河野謙三君) 森君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/4
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005・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、社会労働委員長に山崎昇君を指名いたします。
〔拍手〕
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/5
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006・河野謙三
○議長(河野謙三君) この際、国家公務員等の任命に関する件についておはかりいたします。
内閣から、人事官に加藤六美君を、
中央更生保護審査会委員に川嶋眞一君を、
日本銀行政策委員会委員に橋井眞君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
まず、人事官、日本銀行政策委員会委員の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/6
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007・河野謙三
○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、いずれも同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/7
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008・河野謙三
○議長(河野謙三君) 次に、中央更生保護審査会委員の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/8
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009・河野謙三
○議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもってこれに同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/9
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010・河野謙三
○議長(河野謙三君) この際、日程に追加して、
昭和四十九年度地方財政計画についての国務大臣の報告並びに地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案についての趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/10
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011・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。町村自治大臣。
〔国務大臣町村金五君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/11
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012・町村金五
○国務大臣(町村金五君) 昭和四十九年度の地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
昭和四十九年度の地方財政につきましては、最近における物価上昇、石油問題等内外の経済情勢の推移と地方財政の現状にかんがみ、地方財源の確保に配慮を加えつつ、国と同一の基調により、総需要の抑制に資するため、公共投資をはじめとする歳出を極力圧縮するとともに、財源の重点的配分と経費支出の効率化につとめ、地域住民の生活の安定と福祉の充実をはかるための施策を推進することを基本とし、あわせて経済情勢の推移に応じて地方財政の機動的、弾力的な運用をはかり得るよう措置する必要があります。
昭和四十九年度の地方財政計画は、このような考え方を基本とし、次の方針に基づいて策定することといたしました。
第一は、地方税負担の現状にかんがみ、個人の住民税及び事業税、小規模住宅用地の固定資産税等についてその軽減合理化をはかることであります。
また、市町村民税法人税割りの税率の引き上げ等により地方税源を拡充強化するとともに、自動車取得税の税率の引き上げ並びに地方道路譲与税及び自動車重量譲与税の増強により地方道路財源の確保をはかることとしております。
第二は、地方財政の状況等を考慮し、地方交付税について、昭和四十九年度の特例として交付税及び譲与税配付金特別会計の借り入れ金残高に相当する千六百八十億円の減額調整を行なうとともに、引き続き沖繩県及び同県市町村に対して交付すべき地方交付税の財源に資するため、臨時沖繩特別交付金三百二十一億円を国の一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることとしております。
第三は、総需要抑制の見地から地方債の発行額を極力圧縮するとともに、地方債資金における政府資金の構成比率を高める等地方債の質的改善をはかることとしております。
第四は、総需要抑制の要請を踏まえつつ、住民生活の安定と住民福祉の充実のための施策を重点的に推進することとし、地方交付税、地方債、国庫補助負担金等の重点的配分をはかることであります。
このため、各種社会福祉施策、教育振興対策、消防救急・公害・交通安全対策、消費者行政等の充実をはかるとともに、上下水道、廃棄物処理施設、教育施設、社会福祉施設、住宅等生活関連公共施設の整備のための事業を重点的に進めることとし、また、人口急増地域及び過疎地域に対する財政措置の拡充をはかることとするほか、土地開発基金の計上等により公共用地の先行取得及び公有地の拡大に資することとしております。
第五は、地方公営企業について、病院事業の不良債務解消のための新たな助成措置、交通事業の経営の再建等その経営の健全化を積極的に推進する措置を講じ、経営基盤の強化をはかることであります。
第六は、超過負担の解消措置等により地方財政の健全化及び財政秩序の確立をはかるとともに、新たに財政調整資金を計上する等地方財政の弾力的な運用をはかり得るようにするための措置を講ずることとしております。
以上の方針のもとに昭和四十九年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は、十七兆三千七百五十三億円となり、前年度に対し二兆八千二百四十三億円、一九・四%の増加となっております。
次に、地方税法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
明年度の地方税制の改正にあたりましては、地方税負担と地方財政の現状にかんがみまして、第一に、個人の住民税及び事業税、小規模住宅用地に係る固定資産税等について負担の軽減合理化をはかること、第二に、市町村民税の法人税割り及び自動車取得税の税率を引き上げ地方税源を充実強化することをその重点といたしております。
以下、その概要について御説明申し上げます。
まず、個人の住民税につきましては、住民負担の軽減をはかるため、課税最低限を引き上げることとし、、基礎控除の額を二万円、配偶者控除の額を三万円及び扶養控除の額を二万円引き上げることといたしました。
次に、事業税につきましては、個人事業者の負担の軽減をはかるため、事業主控除額を百五十万円に引き上げるとともに、中小法人に対する負担の軽減をはかるため、軽減税率の適用所得の範囲を拡大することといたしました。
また、固定資産税につきましては、二百平方メートル以下の小規模な住宅用地に係る課税標準をその価格の四分の一の額とし、その額が昭和四十八年度の課税標準となるべき額をこえるときば、昭和四十九年度及び五十年度は、昭和四十八年度の課税標準額に据え置くこととするとともに、個人の所有する非住宅用地に係る昭和四十九年度及び五十年度の固定資産税額は、原則として前年度の課税標準となるべき額の一・五倍の額を限度として算定した税額とすることといたしました。
さらに、法人の住民税につきましては、市町村税源の充実に資するため、市町村民税法人税割りの税率を一二・一%に引き上げるとともに、道府県民税法人税割りの税率を五・二%に改めることとし、また、自動車取得税につきましては、地方道路財源の拡充をはかるため、自家用自動車に係る税率を五%に引き上げることといたしております。
このほか、ガス税の税率の引き下げ、自動車取得税、電気税及びガス税の免税点の引き上げ、料理飲食等消費税の基礎控除の額の引き上げ、発電所に係る固定資産税の課税標準の特例措置の廃止等各税を通じて負担の適正合理化をはかるとともに、地方税制の合理化をはかるための規定の整備等所要の改正を行なうことといたしております。
以上の改正により、昭和四十九年度におきましては、個人の住民税における千七百七十三億円をはじめ合計三千六百六十三億円の減税を行なうこととなりますが、一方、市町村民税法人税割りの引き上げ等により千九百三十一億円の増収が見込まれますので、差し引き千七百三十二億円の減収となります。
次に、地方交付税法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
昭和四十九年度分の地方交付税の総額について一は、さきに昭和四十九年度の地方財政計画の概要で御説明申し上げましたとおり、現行の法定額から千六百八十億円を減額調整する特例規定を設けることといたしました結果、総額三兆四千百四十四億円で、前年度に対し五千七十億円、一七・四%の増加となっております。
また、昭和四十九年度の普通交付税の算定にあたっては、地方財政計画の策定方針に即応して、社会福祉水準及び教育水準の向上に要する経費の増額をはかるとともに、住民生活に直結する公共施設の計画的な整備を進めるほか、過密・過疎対策、交通安全対策、消防救急対策、消費者行政等に要する経費を充実することとしております。さらに、公有地の拡大等に資するため、土地開発基金費を設けるとともに、社会経済情勢の変動に対処して弾力的な財政運営を行なうことができるよう新たに財政調整資金費を設けることとしております。
以上が昭和四十九年度の地方財政計画の概要並びに地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/12
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013・河野謙三
○議長(河野謙三君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。和田静夫君。
〔和田静夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/13
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014・和田静夫
○和田静夫君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十九年度の地方財政計画並びに地方交付税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案に関連をして、政府の所信をただしたいと思います。
言うまでもなく、地方財政計画は、地方公共団体の当該年度の歳入歳出の総見込み額を算出して、自治体行政の円滑な運営に必要な財源措置の確保をはかるとともに、自治体における財政運営の指針とするため、地方交付税法に基づいて策定するものであります。しかるに、地方財政計画は、この制度の発足の当初から、地方自治の本旨に基づく自治体行政の自主性を理解しない官僚性を有して、社会情勢の変化に伴って多様化する行政内容を十分くみ上げることができない。そのため、地方財政計画と地方財政の実態というものは著しく乖離する結果になるに至っております。ちなみに、昭和四十六年度の地方公共団体の普通会計純計決算額と地方財政計画額とは、歳入歳出とも実に二兆円をこえる乖離であります。私はこの問題についてはすでに何度も政府に指摘をしてその是正を求めてきたところでありますが、一向に改善のきざしが見えません。政府がこのような状態をなお放置するならば、地方財政計画の存在そのものが地方自治体によって無視される事態が遠からず来る、私はそう明言をしてよいと思います。
毎年度の地方財政計画は、その策定方針の冒頭に、常に判で押したように、いま自治大臣が述べた、国と同一基調により策定した云々、こう書かれているのであります。しかし、私は、昭和四十八年度及び四十九年度にわたる政府の経済見通し、財政運営の基本的態度を顧みるとき、一体、地方財政計画が国と同一基調をたてまえとすることにどれだけの意味があるのか、あらためて大きな疑問を持たざるを得ません。この一、二年における政府の経済見通しや財政政策の混乱は、いまさら指摘するまでもありません。その結果として、昭和四十八年度において、地方自治体は、建設資材の不足と高騰に見舞われ、予定事業の削減など、異常な事態に追い込まれました。さらに一四十九年度に至っては、国の経済見通しそのものが、その作成に携わった官庁エコノミストみずからが述懐していますように、前日作成した見通しを翌日修正するのが日課になっているという状態であります。このような中で、国と同一基調に立って策定された地方財政計画が、一体、地方財政運営の指針としてどれほどの説得力を持つと言われるのでありましょうか。もともと、経済の予測については、それが政策立案当局によってつくられる限り、客観性を失いがちでありまして、精度の高い予測というのはニュートラルな機関で行なわれるべきであるといわれております。いわんや地方財政計画のような、自治体の行財政の指針として地域住民の日常性に即しているという意味での客観性が重視される計画というのは、政府がその政策目標に従って一方的に策定し、押しつけるべきものであってはならないと考えます。私は、地方財政計画は、地方公共団体の参加する公正な機関で策定されるべきものであると考えます。自治大臣、この辺をひとつお考え直しになるおつもりはまずありませんか。現在、一部の地方自治体においては、国とは別個の経済見通しのもとに、御存じのとおり、インフレによる生活の危機に直面している市民生活を防衛するため、独自の財政運営を実施しております。地方自治の発展を期待する立場から、その意義は高く評価されなくてはなりません。
私は、以上のような観点に立って、総理大臣並びに関係大臣にこれから具体的に若干の質問をいたしたいと思います。
第一点は、物価上昇が地方行政の計画的遂行を著しく阻害している点であります。たとえば東京都は、昭和四十七年度の都営住宅建設予定戸数一万九千戸のうち一万五千戸の建設を放棄して補助金を建設省に返しましたのに続いて、四十八年度分も九千戸の建設を断念いたしました。こうした傾向は全国的なものであり、昭和四十八年度における公共住宅建設は、計画の六割から七割しか達成されておりません。言うまでもなく、建設費の高騰による建設戸数の圧縮であります。建設省が補助金の基礎となる標準工事費を年度内に三度も引き上げるといったような状態でどうして公害住宅建設の計画的推進が可能でありましょうか。総理、これは建設省が地方公共団体のしりをたたくといった形での行政指導で片づく問題ではありません。一方において地方行政の計画的遂行を指導する国の立場として、総理は今日の事態をどうとらえられ、どう措置するおつもりなのか。
私は、今日の物価問題が、自治体の行政の場にあっては、保育所の建設のおくれという形で、あるいは学校や老人ホームの給食内容の低下という形で、すなわち即福祉水準の低下としてあらわれるがゆえに、それをすぐ解決のできない物価問題一般に解消すべきでなく、地方財政の強化という観点からこの問題に対処すべきであると考えますが、総理の率直な御答弁をいただきたいと思います。
第二点は、いわゆる総需要抑制策と地方行政投資との関係であります。
言うまでもなく、地方公共団体の行政投資、特に市町村のそれは、住民の生活に密着した内容を持っております。ちなみに昭和四十六年度の実績を見ますと、国が事業主体の中心になる事業というのは、空港が八割、住宅が五割、道路が四割であるのに対しまして、市町村が中心になる事業というのは、環境衛生が九割、都市計画が八割、文教施設が七割、厚生福祉が六割という状態であります。昭和四十九年度予算において、総需要抑制ということで、国は、官庁営繕系統経費についての大幅削減、新幹線鉄道等巨額の経費を要する事業の繰り延べを行ないました。そのことは当然として、こうした総需要抑制策を、先に見た国と地方自治体の事業内容の違いを何ら顧慮せずに、画一的に自治体に押しつけることの問題であります。私は、今日の物価問題が、自治体の行政の場においては福祉水準の低下としてあらわれていることをここでも強調したいのであります。すなわち、今日、物価問題があるからこそ、市町村が主体となる事業についてはむしろ積極的に推進すべきである。そういう側面は否定できないと思います。建設省が発表した数字によりますと、昨年十二月における自治体の公共事業着工額は前年同月比三〇%減であるのに対して、民間土木工事のそれは前年同月比一七・八%の増であります。この数字こそ逆転さるべきではないでしょうか。銀行、商社、ホテル等の巨大なビル建設は長期にわたって徹底して抑制されるべきであり、住民のための公共施設、福祉施設の建設はむしろ推進されるべきであります。総需要抑制の対象となる事業の選別について、政府の施策は不十分であると思われますが、大蔵大臣、自治大臣の御所見を承ります。
第三点は、昭和四十九年度地方財政計画が、地方自治体の現実の必要経費をきわめて不十分にしか算入していないという問題であります。
物価上昇が法人の利益や個人の名目所得の増に反映し、税収の伸びを招来するであろうことは、容易に予測されるところであります。昭和四十九年度の地方財政計画において、地方自治体の普通税は前年度に比べ三〇・五%も増収になることが見込まれ、また、国税の減税にもかかわらず、地方交付税の伸びも二三%が見込まれております。これに対して、政府・自治省が自治体の必要とする経費を意図的に押えて算入しているために、歳出の伸び率は低く、計画上、財源に余裕があるかのような観を呈しているのであります。そのことは、地方交付税千六百七十億円の削減、土地開発基金費の年度当初からの設定、財政調整資金制度の創設に明らかであります。
私は、この今回の地方財政計画ほど、官僚的計画策定作業が現実の地方財政の実態からいかに遊離したところで行なわれているかを示すよい見本はないと考えているのであります。いわゆる都市化、あるいは過疎化による行政需要の急増を前に、自治体が財源不足に悩んでいることは、ほかならぬ自治省が認めてきたところではありませんか。ましてや、この一、二年、地価や建設資材の暴騰でその傾向はさらに拍車をかけられたはずであります。にもかかわらず、今回、交付税の削減や、土地開発基金費の設定に加えて、財政調整資金制度などというわけのわからない制度を創設して、歳入、歳出の開きを埋めるつじつま合わせを行なっている。一体、自治大臣は、地方財政の現状をどのように把握しておられるのか。私は、長い自治体首長としての経験をお持ちの自治大臣のことですから、あなたと私との間に、地方財政の現状認識の上でそう大きな開きはないと思う。とすれば、現在の地方財政計画の策定方法について、冒頭、基本的なところで質問申しましたように、根本的に考え直さなければならないと思いますが、いかがなんですか。自治大臣の所見を求めます。
第四点は、地方自治体の公共用地の取得にかかわる問題であります。
今日、地方自治体が公共用地を取得するための資金確保のために非常に苦労していることについて、いまさら申すまでもありません。自治大臣は、かねてから、学校の用地であるとか、住宅用地あるいは福祉施設用地等について、総需要抑制策にもかかわらず、例外的な措置を講ずるということを言明してこられました。このことについて、自治、大蔵両省間で何らかの話し合いが行なわれ、何らかの結論が得られたのかどうか、その事実関係と、大蔵大臣、自治大臣の考え方を明確にしていただきたいと考えます。
第五点は、インフレに伴う年金生活者の生活保障の問題であります。
インフレの最大の問題は、インフレによって社会的不公正が拡大することであります。インフレによる年金額の著しい減価がその重大な一つであることは、いまさら言うまでもありません。政府はこの問題を一体どうされるのか。
年金額の改定は、常に約一年半、現実に改定分を手にするまでにはそれ以上おくれるため、年金生活者のインフレによる被害は看過し得ないところまで来ております。私ども日本社会党は、その緊急対策として三カ月ごとの年金額改定を主張しておりますし、一月二十五日、私はこの席上から同じ趣旨の質問を行ないましたが、この点について厚生大臣のより具体的な見解を求めたいと思います。
第六点は、地方事務官制度の廃止問題であります。
地方事務官制については、過去の政府関係諮問機関の答申、総理はじめ各大臣の答弁、これらを歴史的経過としてまず踏まえます。そして、すみやかに廃止し、その扱う事務を地方移譲しなければならないことは、この歴史的経過の中で明らかです。去る一月二十五日のこの本会議において、総理は、私の質問に答えられ、地方事務官制は暫定的な制度であるから、できるだけ早い機会に結論を出し、廃止したいと述べられました。しかるに、先般国会に提出された地方自治法の一部改正案を見ますと、地方事務官制の廃止問題には何ら触れられておりません。一体、やる気があるのかないのか。四十九年度決着、五十年実施という第七十一特別国会の関係大臣からの答弁はそのまま実行されるのかどうか、総理の明確な答弁を要求するものであります。
第七点として、電気税の非課税品目の整理について質問いたします。
電気税については、鉄鋼、硫安、エチレン、合成ゴム、塩化ビニール等の生産に使用する電気について非課税の取り扱いとなっております。品目にして百三十品目、非課税額において約五百億円であります。一般家庭の必需品である電気に課税し、環境破壊の面でとかく問題を起こしやすい企業の産業用電気を非課税にすることについて、課税の公平上問題はありはしないか。この制度の存在理由について自治省は、これらの産業用電気に課税すれば、生産コストが上昇し、物価にはね返るという言い方をしてきたのでありますが、電気税が製品コストに占める割合は非常に微々たるものであり、今日その存在理由がなくなっていることは、多額の利益をあげ高率の配当を行なっている企業がこの非課税の適用を受けていることでも明らかであります。また、非課税品目の追加、整理は、業界の要望を受けて通産省が自治省に要求し、両者の協議によって決定されるもののようでありますが、業界と通産省との癒着関係が世論のきびしい指弾を受けているおり、重要基幹産業及び新規重要基幹産業にかかわる電気税の非課税規定を廃止すべきものであると私は考えますが、自治大臣の所信を承ります。
最後に、住民税に関連してお尋ねいたします。
住民税については、昭和四十九年度税制改正において、控除対象配偶者控除、扶養控除、基礎控除等所得控除を若干引き上げ、これらの措置による減税総額は、住民税所得割りにおいて約一千七百七十億円と述べられました。しかしながら、政府の試算によっても、このうち消費者物価上昇に伴う物価調整減額所要額は千百六十三億円でありますから、純減税額はきわめてわずかというほかありません。しかも、この物価上昇率四十七年対比一一・七%は、昨年十月以降の異常な物価上昇状況を十分反映しておりません。昨年十二月の対前年同月比の上昇率は、政府統計でも一九・一%でありますから、これによりますと、住民税の純減税額はマイナスとなり、今後住民の税負担は急速に強まるものと考えなくてはなりません。所得税についても追加減税の必要性が指摘されているおり、四十九年度の住民税についてはその必要性を一そう痛感するものでありますが、いかがですか。
関係各大臣の誠意ある答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/14
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015・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 和田静夫君にお答えいたします。
まず第一は、地方行政の計画的運営についての御発言に対してでございますが、物価の高騰によりまして地方公共団体において各種施策の実施にあたり影響を受けておることは承知をいたしております。このような事態に対処いたしまして、国におきましても、国庫補助負担金の運用上、一般公共事業にありましては実勢価格によることとなし、公立文教施設等にありましては補助単価を再三にわたって是正をいたしておるわけでございます。なお、地方債、地方交付税におきましても所要の措置を講じておるわけでございます。
また、現在、総需要抑制の見地から、地方公共団体におきましても財政の執行繰り延べについて協力を得なければならない状態にございますが、住民の生活に直接影響を持つような緊急度の高い事業につきましては、計画的に実施できるように特に配慮をしてまいりたいと考えます。
次は、地方事務官制度についての御発言でございますが、この制度は暫定的な制度でもございまして、各省庁間で廃止についての具体的問題点について検討を続けてきたところでございますが、しかし、いまだ関係各省庁間の合意に達しておりませんので、今回の地方自治法改正案には織り込まれておらないわけでございます。詳細は自治大臣よりお答えをいたしたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣町村金五君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/15
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016・町村金五
○国務大臣(町村金五君) お答えを申し上げます。
まず第一に、地方財政計画の策定にあたりまして国と同一の基調によってこれを作成したということは、いろいろな事情を異にしておる地方公共団体に対して画一的な押しつけをするものだと、こういう御指摘でございます。確かに、一つの計画でございますので、それぞれ事情の違うという地方団体にとりましてこの計画が必ずしも全部ことごとく実情に適するということにならない一面もございますけれども、申し上げるまでもなく、地方財政計画というのは、標準的な水準における地方財政の歳入歳出の状況を明らかにするというために策定をされておる次第でございまして、そういった点は、私どもは、やはり一つの目安をつくっておるということでございますので、これをもって画一的に押しつけるんだというふうに私どもは理解をいたしていないわけでございます。
で、御承知のとおり、明年の地方財政は、ただいまも国と同一の基調でやることは問題があるという御指摘ではございますけれども、何と申しましても明年度の地方財政計画につきましては、物価の鎮静をはかるといういわゆる総需要抑制の見地から、歳出は極力圧縮するということは、地方公共団体にも御協力を願わなきゃならぬという立場に立ってつくり上げられたものであることは、あらためて申し上げるまでもございません。ただ、今日の場合、地域住民の生活の安定なりあるいは福祉の充実をはかるための施策ということにつきましては、福祉優先の見地からこれを重点的に推進をするということにいたしておることは、申し上げるまでもございません。このために、特に住民生活に関連の深い教育なり社会福祉なり生活環境整備等の施策につきましては、これをできるだけ拡充するという方針をとった次第でございます。
次に、現在の地方財政計画は、地方財政の実情を一向反映していないという御指摘でございます。このことは、ただいまもお答えを申し上げましたように、標準的な水準における地方財政の歳入歳出の状況を明らかにするという趣旨をもって策定をされておるものでございまして、われわれとしては、やはりその積算内容を通じまして地方財政運営の指標となり得るものだと、かように考えておるのであります。もとよりこの策定にあたりましては、地方財政の実情を十分反映するようにできるだけ私どもとしては配慮をいたしたつもりでございます。
なお、御指摘のございました財政調整資金というものは、今日の経済情勢にかんがみまして、今後予測される財政事情の変化等に応ずることができるように地方財政の弾力的な運用に資するために設けたものでございまして、私どもとしては、時宜に適しておるものだと、かように考えておるのであります。
いずれにいたしましても、地方財政計画の策定方法につきましていろいろ貴重な御指摘がございましたが、私どもといたしましては、今後とも地方における実情が十分に反映をされるよう、必要な検討は今後ともひとつ十分加えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
次に、地方自治体の公共施設用地の取得の資金確保の問題について、最近各地にいろいろ問題があるということに関連をしての御指摘でございました。先ほど申し上げましたように、政府としては、地方公共団体に対しましても総需要抑制に協力をしていただくことを求めておるところでございますけれども、申し上げるまでもなく、小中学校の用地をはじめといたしまして福祉施設等の整備で緊急度の高い公共用地の取得につきましては、もちろん起債の許可を行なっておるところでございます。なおまた、その資金の入手に困難をしておるということについても、私どもは地方公共団体と関係金融機関等との協議によりましてこれが必要なものは確保されるようにいたしておるのでございまして、事実私は、この点は確保されておるものと、かように考えておるところでございます。
また、地方公共団体の設立にかかりまする土地開発公社につきましても、地方公共団体の場合と同様に、教育、住宅、福祉施設等の用地につきましては必要な資金が確保できまするように関係省とも協議をいたし、大体私はその目的は達成せられつつあるものと、かように見ておる次第でございます。
次に、電気税を重要基礎資材について非課税としておるという問題についての御指摘であり、これはむしろ廃止すべきではないかという御指摘であったのでございます。私どもとしては、こういったものに対する原料課税というものが価格に転嫁をせられて国民経済に影響を及ぼすということはやはり避けるべきであるという配慮のもとにこの非課税措置が講ぜられておることは申し上げるまでもございません。しかし、社会事情の変化もございますし、租税負担の公平という見地から、これらの租税特別措置につきましては今後合理化あるいは縮減をはからなければならないものもあるように考えまするので、今後その整理につきましては努力をいたしてまいりたいと考えます。
なお次に、住民税に関連をいたしまして、昭和四十九年度の税制改正におきましては、先ほども御説明を申し上げましたとおり、個人住民税については千七百七十三億円の減税を行なうということにいたしておるのであります。この程度の減税では消費者物価上昇に全部埋没してしまうという御指摘のように伺ったのでございますけれども、われわれといたしましては、消費者物価の上昇がございますけれども、これらの減税措置によりまして相当程度減税の効果のあがるものであろうと、かように私は考えておる次第でございまして、住民税の課税の仕組みから考えましても、年度内にさらに追加減税をするということは考えていない次第でございます。
なお、地方事務官制度につきましては、すでに総理からお答えを申し上げたわけでございますが、申し上げるまでもなく、これは暫定的な制度であり、したがって、各省庁間におきましてその廃止等について具体的問題について検討を続けてまいってきておるところではございますけれども、いまだ関係省庁の間の合意に達していないというので、成案を得るに至っていないわけでございます。したがって、今日の地方自治法改正案にはこれを盛り込むことができなかったわけでございますが、今後とも鋭意各省庁間の協議を進めまして、できるだけ早い機会に結論を出していきたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/16
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017・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まず、総需要抑制政策は画一的にやっちゃいかぬ、選別的にやれというお話でございますが、そのとおりに考えており、またそのとおりに実行しております。一般会計の予算で言いますれば、公共事業費は前の年以下に押える。しかし、その中でも住宅でありますとか、下水でありますとか、福祉施設でありますとか、そういうものは特別扱いをしておる。それにも一かかわらず一般会計の予算は一九・七%ふえたわけであります。なぜふえたかといいますれば、社会福祉関係、社会保障、そういうものが実に三七%もふえる、そういうことであります。非常に大胆な選別方針を貫いておると、かように考えます。
それから公共施設用地取得資金の問題は、いま自治大臣からもお答えいたしたわけでございますが、これはいま物価が非常に重大な段階で、二月から大体鎮静の傾向が出てきております。私は三月の数字はまだわかりませんが、まあおそらく横ばい、そういう傾向になるのじゃないか。そういう情勢の中でこの土地の問題というのが非常に重大であります。何といっても地価がまあ物価問題の柱になる。そこで、土地につきましては金融でも押えておりますが、いま実際、土地の売り手というものが続出をする、買い手がない。私は地価というものはだんだん下がってくる、こういうふうに見ます。そこで、地方自治団体が土地の買い入れをするということにつきましては神経質にならざるを得ないのでありまするけれども、しかし、学校用地等の緊切なものにつきましては、これは特別扱い。そこで、金融機関にもそういう指導をいたしておるんです。私は、問題のあるところは大かた解決しておると、こういうふうに考えております。なおこの上とも十分配意してまいりたいと、かように思います。(拍手)
〔国務大臣齋藤邦吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/17
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018・齋藤邦吉
○国務大臣(齋藤邦吉君) 年金生活者につきましては、その生活の安定をはかるため、昨年の法律改正によりまして拠出制の厚生年金、国民年金につきまして、年金額の大幅な引き上げを行ないますとともに、消費者物価の変動に応じ年金額を自動的に改定するという物価スライド制の導入をはかったところであり、昭和四十九年度において初めてこの物価スライド制の規定が実行されることに相なっておるわけでございます。
そこで、これを実施いたしまするためには、まず昭和四十八年度における消費者物価指数が前年度に対比いたしましてどの程度上がっておるかということを調べなければなりません。そこで、どの程度消費者物価指数が昭和四十八年度、前年度に比較して上がっておるかということがはっきりわかりますのは、本年の五月でございます。それがはっきりいたしますると、それに基づいて上がっただけ年金額をスライドして上げていくというわけでございまして、三百数十万に及ぶ多数の受給者に対し一人一人具体的に額をきめていくと、これはなかなかたいへんな膨大な量でございます。私どもも、このタイムラグをどうすれば短縮することができるか、いろいろ考えたのでございますが、いまの段階におきましては、こうした膨大な業務量でございますので、お述べになりましたように、三、四カ月ごとに改定するということはできないと、かような結論を得ておる次第でございますので、御了承を願いたいと思う次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/18
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019・河野謙三
○議長(河野謙三君) 藤原房雄君。
〔藤原房雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/19
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020・藤原房雄
○藤原房雄君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました昭和四十九年度地方財政計画、地方税法の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係各大臣に質問を行なうものであります。
最近の石油をめぐる国際情勢の急激な変化により、地方公共団体にも大きな影響を及ぼしております。これに対応するためには、地方行財政の全般にわたる新たなる視点に立った施策の展開が必要であります。すでに両院予算委員会等で明らかにされたとおり、つくられた物不足により生活必需品はとどまるところを知らず、国民生活に不安を与えていることは、長年の自民党政府、なかんずく田中内閣の失政による以外の何ものでもないと思うのであります。
このような状況下で作成された昭和四十九年度の地方財政計画は、国の施策に合わせ、総需要抑制の見地から歳出を極力圧縮するとの方針のもとに緊縮型の計画となっております。申すまでもなく、地方財政は、地域住民の日常生活に密着したサービスの提供や福祉の向上をはかるための事業を行なうことがその目的であります。しかるに、地方財政をこのように国の総需要抑制の方針に沿った国政ベースの見地から運営することは、全く納得できないのであります。
私の最も憂うることは、緊縮型の地方財政計画のもとで、はたしてどの程度住民福祉の向上がはかられるかということであります。政府は、財源の重点的な配分と支出の効率化によって、地域住民の生活の安定と福祉水準の充実をはかることを基本方針としています。しかし、社会福祉事業関係費が伸びたとはいうものの、大幅な物価高騰が続けば、その実質的価値が下がり、福祉水準が実現せず、逆に低下することが懸念されるのであります。政府の方針どおり実際に貫かれ、福祉水準がそこなわれることなく向上させる確信があるのかどうか、総理並びに自治大臣の所見をまず伺いたいのであります。
次に、地方交付税の削減措置についてであります。
昨年十二月二十一日、四十九年度予算内示前に、大蔵大臣、自治大臣の間で、地方交付税交付金のうち千六百八十億円を国に貸与することを決定したのであります。御承知のとおり、四十八年度補正予算に伴う措置として、地方交付税の増加額を繰り上げ償還する措置を講じたところであり、また、四十四年度に当時の福田大蔵大臣と野田自治大臣の間で交付税の財源調整は行なわないとの覚え書きがかわされたにもかかわらず、その精神に反し、再び千六百八十億円を国に貸し出すことは納得しかねるのであります。地方交付税は、地方財政にとって有力な自主財源であります。たとえ国の総需要抑制という緊急措置であっても、地方自治を確立するために法律で定められた地方の固有財源を、国の一般会計の当然増経費として財政硬直化の一因と考え削減したことは、国の一方的な都合であり、交付税の総額に調整を加えることは、地方財政を制約し、地方自治を侵害するものであります。
現在、地方自治にとって緊急を要することは、財政規模の縮小ではなく、インフレの激化によってもたらされた深刻な財政負担に対応するための十分なる財源保障をすることであります。
今回の交付税削減措置は、福祉行政のにない手である地方自治体の財政の実態を無視するものであり、福祉型財政への転換に逆行するものであって、断じて容認できないところであります。
さらに、地方交付税が地方の固有財源であることを明らかにするため、国税収納金整理資金から交付税特別会計への直接繰り入れを実現すべきであります。
以上の点について、大蔵、自治大臣より納得のできる説明を求めるものであります。
第三は、公共料金の据え置きについてであります。
石油不足の混乱にまぎれてこのまま生活関連物資が高騰し続けるならば、住民無視の公共料金引き上げをさらに加速化することは明白であります。公営企業法では独立採算制をたてまえとしておりますが、都市における公営交通、水道料金等々は市民の日常生活に欠かせないものである以上、企業的収支を基準にして料金やサービスをきめるべきではありません。慢性化しているインフレのもとでは、物価政策の上から公共料金を押えることは当然の措置であり、国鉄運賃値上げを半年間据え置く措置などは必ずしも十分な対応策とはいえず、むしろ明年度一ぱい抑制することが国民世論でもあると思うのであります。したがって今後、地方公共料金については、当分の間料金を凍結すべきであり、そのために生ずる不足額については、国及び地方団体の一般会計から補てんすることを認める時期に来ていると考えるのでありますが、大蔵、自治大臣より率直な御見解を伺いたいのであります。
第四は、都市税源の強化についてであります。
地方財政の健全化が強く叫ばれている中で、特に要望されることは自主財源の強化であることは言うまでもありません。大都市が、人口や産業の集中に伴って、都市整備あるいは都市再開発という多大な財政需要に苦しんでいることは、御承知のとおりであります。豊富な自治体と見られた横浜、名古屋、大阪等々の大都市が軒並み地方交付税の交付団体である事実は、このことを如実に物語っております。政府は、その対策と称して、今回、市町村民税の法人税割りの税率の引き上げをしたものの、都市税源強化の基本的な解決策とはなり得ないのであります。大都市財源充実のために、事務所・事業所税及び公害対策のための重油消費税の創設が強く要望されている今日、政府は早急に実現すべきであると思うが、総理及び自治大臣の明確なる答弁を求めるものであります。
最後に、超過負担について伺います。
昨年、大阪府摂津市が保育所設置に伴う建設費について行政訴訟が提起され、これを契機に自治体の中で、公営住宅や小中学校などを含めた超過負担解消の声が一段とわき上がってきたのであります。このような深刻なる事態を招く結果となったのも、政府が真剣に取り組む姿勢がなかったがためであります。地方財政法第十八条の規定には、「国の負担金、補助金等の地方公共団体に対する支出金の額は、地方公共団体が当該国の支出金に係る事業を行うために必要で且つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない。」と定められております。これは、地方公共団体のいわゆる超過負担を排除し、国と地方公共団体の合理的な経費負担関係を実質的に保障し、地方行政の国民的最低基準の維持をはかろうとする趣旨にほかなりません。今日、地方自治体があげて超過負担に苦しんでいるという実態を顧みるとき、現在の補助基準額の設定並びに補助金交付制度の運営方法等は、まさに地方財政法第十八条の趣旨に違反をしていると言われてものがれるすべはないと思うのであります。総理の明確なる答弁をお願いいたします。
また、超過負担が発生する根本原因は、国の補助基準が現実より低く見積もられ、さらに物価狂乱に追いつけない単価差、土地取得費や机、いすなどの備品、門やへいなどの付帯設備を除外し、入れものともいうべき建物だけに限定した対象差、実情に合わない一人当たりの面積などの数量差等に対し、政府が社会経済情勢に即応し先行的に行政を行なわないところにあります。四十九年度の義務教育施設の国庫補助単価が一平方メートル当たり六万一千七百円でありますが、実際にはこの倍の十二万円でも落札しないのが実態であります。
このような政府のあと追い的な姿勢が続く限り、自治体が非常事態を乗り切ろうと必死に講じようとしている超過負担問題は、永久に解消されない問題であり、まさにゆゆしき一大事であると言わざるを得ません。政府は、超過負担を解消し、真の住民福祉推進のためどのような抜本策を講ずる考えなのか、大蔵、自治大臣の具体的な見解を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/20
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021・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 藤原房雄君にお答えいたします。
まず第一は、地方財政計画についてでございますが、物価の安定が当面する政治の最重要課題であることは、間々申し上げておるとおりでございます。このため、総需要抑制の見地から国の財政規模の極力圧縮することといたしておりますが、地方団体におきましても歳出を極力抑制するよう、協力を要請しておるところでございます。しかし、住民の生活安定や福祉充実をはかるための施策は重点的に推進することといたしておりまして、住民福祉の向上に遺憾なきを期しておる次第でございます。特に、生活保護、児童福祉、老人福祉等、社会福祉施策の充実をはかるための施策を拡充しておるところでございます。
第二は、事務所・事業所税についての御発言でございますが、事務所・事業所税の創設につきましては、今回の税制改正にあたって種々検討を重ねたところでございますが、昭和四十九年度は、法人税率、法人住民税率の引き上げによりまして法人の税負担の適正化をはかったこと、昨年の秋以来経済情勢に急激な変動があったことなど、諸般の情勢から実現に至らなかったものであります。この問題は、今後、引き続き検討してまいりたいと考えております。
次は、重油消費税の新設についての御発言についてでございますが、重油消費税については、石油価格の上昇という当面する事態の中でさらにエネルギー・コストを増大させることが適当かどうか、慎重に考える必要があると存ずるわけであります。
次に、超過負担の解消についての御発言でございますが、地方財政法第十八条についてのお尋ねのわけでございます。この規定は、補助金等の額はその事業を行なうために必要にして十分な金額を基礎として算出すべきことを定めております。政府は、従来からこの趣旨に沿って、各地方公共団体が事業の目的に即応した合理的な規模、規格において効率的に事業を執行した場合の標準的な経費を補助基本額とし、その対象についても、事業の目的に即して事業が執行されるために必要な部分を補助対象としてきているのであります。今後とも、補助単価、規模、規格等が社会経済情勢の変化に対応したものとなるよう、十分配慮してまいることは申すまでもありません。
なお、地方公共団体の超過負担の解消につきましては、従来から努力をしておるところでございます。昭和四十七年度において公立文教施設整備等六事業について実態調査を行ない、その結果に基づいて、四十八年度、四十九年度におきまして所要の是正措置を講ずることといたしておるわけであります。
また、最近の建設資材の価格の急騰に対処するため、四十九年度予算では、公立文教施設整備費等の予算単価を引き上げる等の措置を講じたことは御存じのとおりでございます。
残余の質問については、関係閣僚から答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣町村金五君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/21
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022・町村金五
○国務大臣(町村金五君) お答えを申し上げます。
地方財政を国政ベースで運営することは納得できないという御所見でございます。御承知のように、今日、物価の鎮静をはかるということは最大の課題でございまして、地方財政も国家財政に匹敵する規模を持っておるのでございまして、やはり国と同一歩調で物価の抑制に当たる必要があるというふうに考えておるのでございます。しかし、先ほどもお答えを申し上げましたが、地域住民の生活安定なり福祉の充実をはかるための施策につきましては、そういった中にはございますけれども、財源を重点的に配分いたしまして、福祉の水準がそこなわれることなく向上させるということに十分配慮をいたしておるつもりでございます。
次に、明年度の地方交付税の減額措置についてのお尋ねでございます。これはすでに申し上げておるとおりに、物価抑制のために行ないましたいわば緊急的な措置というふうに私どもは考えておるのでございまして、この金額も現在交付税特別会計が借り入れておりまする借り入れ金の未償還残金に相当する額でございまして、これによって実質的な債務を解消したということにとどまっておるのでありまして、私どもは、この措置をもちまして御指摘のように地方自治を侵害をしたということにはならない、かように考えておるのであります。
それから次に、交付税特別会計に対する直接繰り入れの問題でございます。御承知のように、地方交付税は、国税収納金整理資金から直接特別会計に繰り入れるべきではないかという御意見があることは、私ども承知をいたしております。地方制度調査会の答申におきましてもこういった御指摘が行なわれておることも私どもは承知をいたしております。ただ、この問題は、国、地方を通ずる財政の基本にかかわる問題でございますので、今後とも慎重に検討をいたしてまいりたいと考えておる次第であります。
それから次に、公営企業の料金の据え置きを行なって、その不足額は国あるいは地方公共団体の一般会計から補てんすべきであるという御意見でございます。私どもといたしましても、今日の場合、公営企業の料金等は、物価抑制の見地から極力その引き上げを避けなければならぬということを考えておるところであります。ただ、御承知のように、現在の公営企業の料金というものが引き上げられるのは、人件費の増高やあるいは原材料費の高騰によってやむなく引き上げられておるというのが実情でございます。これらをいわば一般会計から補てんをしたらどうかということでございますけれども、御承知のように、公営企業の性格から考えてみまして、これを一般経費から補てんをするということは、公営企業のたてまえから申しましてもきわめて困難なことでございまして、やはりある程度適正な利用者の負担に求めるということはどうもやむを得ないのではないかと私は考えます。もちろんこの場合といえども、個々の公営企業における具体的な取り扱いにつきましては、今日の物価対策全体の中で十分に慎重にしていかなければならないということは、もとより当然のことでございます。
次に、都市財源充実のための事務所・事業所税のことにつきましては、ただいま総理からもお答えがあったわけでございますが、今回は少なくともいろいろ検討をいたしたのでありますけれども、諸般の情勢からその実現を見送ることに相なったような次第であります。今後とも引き続いて検討をいたしてまいりたいと考えます。
なお、重油消費税につきましては、公害対策のための財政需要がふえておるというようなことから、私どももこれは一つの重要な考えであると存じておりまするが、なお今後とも税制調査会等の御審議をいただいて、慎重に審議、検討をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
次に、地方公共団体に対する国庫支出金について、従来から補助単価あるいは補助基準というものにつきましては政府もかなり改善につとめておるところでございまして、今後とも地方財政法の趣旨に沿いまするように、物価の動向なり施設水準の推移に応じましてその改善をはかるようにつとめてまいりたいと思います。
次に、いわゆる超過負担解消の問題でございます。総理からもお答えがございましたが、自治省としては、このことには非常な力を注いでおるわけでございます。昭和四十九年度におきましては、超過負担の実態調査をさらに予定をいたしまして、その結果に基づきましてさらに適切な措置を検討してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/22
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023・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まず、昭和四十九年度における地方交付税削減問題でありますが、ただいま自治大臣からお答えを申し上げたとおりであります。ただ、御指摘のように、私はこの問題につきましてはかつて野田自治大臣との間に覚え書きを交換いたしまして、かようなことは自今いたさないと、こういうことを申し合わせたわけでございますが、今回やむを得ずこういう措置をとったのであります。これは物価抑制、総需要抑制ということが国の当面する最大の課題である、異常な緊急事態である、さようなことで異例な措置といたしまして採用せざるを得なかったのでありまするが、まげて御理解のほどをお願い申し上げたいと存じます。
次に、交付税三税収入を交付税特別会計に繰り入れるべきじゃないか、こういうお話でございますが、これは国が地方に対して財政調整を行なうんだと、そういう趣旨で地方交付税というものができておる。そういう趣旨から申しましても、これを国に直接収納しない、こういうことは妥当でない、かように考えております。
なお、所得税や法人税、これは国の財政の主軸をなすものでありますが、これが一方のほうは国のほうへ入りました、一方のほうは地方のほうに入りました、これじゃ財政運営上非常に支障がある。また、財政を国民に御理解を願うという上におきましても支障がある、さようなふうに考えておるのであります。
次に、地方公営企業の公共料金据え置きに関連いたしまして、収入不足を国庫が補てんしたらどうだ、こういうお話でありますが、地方公営企業は、これは地方公共団体の行なうところの重要な事業であります。そのために地方財政というものが厳存をいたしておるわけでありまして、この公共企業につきまして問題がありますれば、それは経営、企業の合理化もしなければならぬだろうし、利用者の負担という問題も考えなければならぬでしょうし、また地方の一般会計からの繰り入れということも考えらるべき筋合いのものであろうと思います。これに対して国の一般会計が補給をするということは考えられません。ただ、地方公営企業は地方住民のために重要な役割りを演じておりますので、国は、低利資金を融資するとか、そういう方面での援助はこれは適正にやってまいりたいと、かように考えております。
次に、超過負担問題でありまするが、これはお話しのように、地方財政法にも、必要にして十分な金額を基礎として補助金を算定すべしと、こういうふうに書いてあります。ただ、地方の必要額というもの、そういうものに対しまして、これを地方が使いましたその額の何分の一を補助いたしますということにいたしますると、地方で幾ら使うかこれはわかりません。国からこれだけ来るんだから少しよけい使っておけというようなことになるかもしれない。そこで事業目的に即応いたしました合理的規模、規格というものを考える、そうしてそれに対する標準的な経費、これをもって補助金の算定の基準とするという考え方をとっておるわけでありますが、私は、この方式は妥当な方式であると、こういうふうに考えます。ただ、いま物価が激動しておる、そういう際でありますので、この物価面からのいろいろな配慮というものが必要であろうというので、昭和四十八年度におきましてもたびたび単価改正をするというようなことで対処しておりますが、四十九年度におきましても、万一物価問題が非常にむずかしい事態に立ち至ったという際におきましては、自治大臣ともよく相談いたしましてこれは善処いたしたいと、かように考えております。
また、昭和四十九年度の予算におきましては、これは四十八年度と比べまして物価が非常に上がった。そこで単価の問題がありまするが、特に文教・福祉施設、そういうものには配意をいたしまして、大かた四五%ぐらいな引き上げを行なっておるわけであります。そういう次第でありますので、まずまずこれで対処し得るかと思いまするけれども、今後の問題は、自治大臣とも協議いたしまして、実態をよく調査いたしまして妥当な措置を講じたいと、かように考えます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/23
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024・河野謙三
○議長(河野謙三君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/24
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025・河野謙三
○議長(河野謙三君) 日程第二 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長初村滝一郎君。
〔初村滝一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/25
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026・初村滝一郎
○初村滝一郎君 ただいま議題となりました肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
本法律案は、最近における肥料の価格及び需給の動向にかんがみ、肥料価格安定等臨時措置法に基づく価格の安定、輸出の調整等の措置を、なお継続する必要があるため、本法の廃止期限を昭和五十四年六月三十日まで、おおむね五年間延長しようとするものであります。
委員会におきましては、最近における農業生産資材の値上がり傾向と農業経営の実情をはじめとして、肥料の輸出及び国内価格の動向、国内需要量の確保と海外援助、法による価格取りきめの対象となる特定肥料の範囲、取りきめ価格の妥当性と政府による生産コストの把握、肥料の銘柄集約化、生産体制の整備、化学肥料の多投化等による悪影響と地力の維持向上対策などにわたって質疑が行なわれ、この間参考人の意見も聴取して審査を行ないました。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、塚田委員より日本共産党を代表して本案に反対の意見が述べられました。続いて採決の結果、本法律案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本案に対し、現下のきびしい農業情勢にかんがみ、政府において、農業生産資材の安定供給に関する諸対策の促進を求めるとともに、肥料対策についての六項目の附帯決議案が、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同提案として足鹿理事から提出され、これまた多数をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/26
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027・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/27
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028・河野謙三
○議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X01319740322/28
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