1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年四月十五日(火曜日)
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議事日程 第十四号
昭和五十年四月十五日
午後二時開議
第一 石油開発公団法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第二 在外公館の名称及び位置並びに在外公館
に勤務する外務公務員の給与に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出、参議院回付)
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、参議院回付)
日程第一 石油開発公団法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第二 在外公館の名称及び位置並びに在外
公館に勤務する外務公務員の給与に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸
棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及
び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する
大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協
定の締結について承認を求めるの件及び日本
国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚
(だな)の南部の共同開発に関する協定の実
施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発
に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説
明及び質疑
午後二時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/0
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001・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
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002・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) お諮りいたします。
参議院から、内閣提出、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び国立学校設置法の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して、右両回付案を一括して議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/2
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003・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出、参議院回付)
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出、参議院回付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/3
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004・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案の参議院回付案、国立学校設置法の一部を改正する法律案の参議院回付案、右両案を一括して議題といたします。
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畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正 する法律案の参議院回付案
国立学校設置法の一部を改正する法律案の参議 院回付案
〔本号末尾に掲載〕
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005・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 両案を一括して採決いたします。
両案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/5
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006・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも参議院の修正に同意するに決しました。
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日程第一 石油開発公団法の一部を改正する
法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/6
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007・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、石油開発公団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。商工委員長山村新次郎君。
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石油開発公団法の一部を改正する法律案及び同 報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔山村新治郎君登壇)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/7
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008・山村新治郎
○山村新治郎君 ただいま議題となりました石油開発公団法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における国際石油情勢の推移と、石油資源開発の一層の重要性にかんがみ、石油開発公団の業務範囲を拡充強化するため提案されたものでありまして、その主な内容は、
第一に、オイルサンド及びオイルシェールを業務の対象に加えること、
第二に、これまで、目的達成業務の対象としてきた本邦大陸だな及び業務の対象外であった領海における石油等の探鉱開発事業に対する投融資業務を明定すること、
第三に、外国の政府機関等が自国内で行う石油等の探鉱及び採取の事業に対し、資金の融資を行うことができるようにすること、
第四に、石油開発公団が、一定期間後に、民間企業に譲渡することを目的として、海外における石油等の探鉱をする権利等を取得することができるようにすること、
第五に、臨時の業務として、わが国の石油備蓄の増強を図るため、二つ以上の石油精製会社等の出資に係る法人が行う備蓄施設の設置に必要な資金を投融資することができるようにすること等であります。
本案は、去る三月十四日本委員会に付託され、同月十八日、河本通商産業大臣より提案理由の説明を聴取し、以来、参考人を招致するなど、慎重な審査を重ね、三月二十八日質疑を終了し、採決いたしました結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、石油開発公団の安定財源の確保並びに機能の強化、産油国の直接販売原油の引き取り体制の整備、国際紛争のおそれがある地域の石油探鉱事業に対する公団投融資のあり方、直接利権取得の際の産油国の資源主権への配慮等に関する附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/8
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009・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/9
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010・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/10
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011・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員会理事奥田敬和君。
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在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務 する外務公務員の給与に関する法律の一部を 改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔奥田敬和君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/11
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012・奥田敬和
○奥田敬和君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の主な内容は、
第一に、グレナダ、バハマ及びギニア・ビサオに日本国大使館を、上海、アガナ及びマルセイユに日本国総領事館を、ブラッセルに欧州共同体日本政府代表部をそれぞれ設置すること、
第二に、在勤基本手当の基準額及び研修員手当の額を改定することであります。
本案は、二月五日本委員会に付託され、同月十三日、政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行い、四月三日質疑を終了いたしましたところ、木野委員より、施行期日に関する修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって、修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/12
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013・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/13
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014・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/14
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015・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件及び内閣提出、日本国と大韓民間との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案について、趣旨の説明を順次求めます。外務大臣宮澤喜一君。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/15
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016・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和四十九年一月三十日にソウルにおいて署名いたしました日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明をいたします。
政府は、日韓両国に隣接する大陸だな問題について、これを話し合いにより解決するとの方針に従って、大韓民国政府との間で、かねてより交渉を重ねてまいりました。その結果、両国に隣接する大陸だなの北部の境界を画定すること及びこの大陸だなの南部における石油資源を共同で開発することについて合意が成立し、昭和四十九年一月三十日にソウルにおいて、わが方後宮駐韓国大使と韓国側金外務部長官との間で、両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定及び両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の署名が行われるに至った次第であります。いま、これらの協定についてその主な点を御説明申し上げれば、次のとおりであります。
両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定においては、両国に隣接する大陸だなの北部における日本国に属する大陸だなと大韓民国に属する大陸だなとの境界線を、両国から等距離の中間線を基準として、三十五個の座標により定めております。
また、両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定は、両国に隣接する大陸だなの南部に当たる部分について、同区域に対する主権的権利の問題を決定し、または大陸だなの境界画定に関する両国の立場を害することなく、その一定区域を二十個の座標により共同開発区域として定め、石油資源の開発を共同で行うことを可能とするものであります。共同開発区域は幾つかの小区域に分割され、共同開発は両国がおのおの小区域ごとにそれぞれ認可する開発権者によって共同して行われ、採取された石油資源及び共同開発に要する費用は、両国の開発権者の間で折半することとなっております。さらに、同協定中には漁業上の利益との調整の問題、課税問題、開発活動より生ずる海洋における衝突の防止、海洋の汚染の防止のためにとるべき措置につき両国が合意すべきこと、開発によって万が一損害が発生した場合の賠償の問題等についても規定が置かれております。
なお、本協定により定められた共同開発区域は、わが国と中国との間の中間線のわが国側であって日韓両国間の大陸だな部分に限定して設定したものであり、大陸だなに対する中国の国際法上の権利を損なうことのないよう慎重な配慮が加えられております。
大陸だなの石油資源の早期開発は、わが国のエネルギー資源政策上きわめて重要な課題であり、また、エネルギー資源事情が深刻な今日、大陸だなの帰属をめぐり世界各地で問題を生じている次第でありますが、これら両協定の締結によりまして、日韓両国に隣接する大陸だなにつきまして、日韓両国間で紛争を生ぜしめることなく、現実に開発を行い得る基盤が整備されることが期待されます。
以上が、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/16
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017・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 通商産業大臣河本敏夫君。
〔国務大臣河本敏夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/17
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018・河本敏夫
○国務大臣(河本敏夫君) 日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定を実施するために、共同開発区域に属する大陸だなの区域において、日本国と大韓民国の権利者による石油及び可燃性天然ガスの共同開発事業が円滑に行われるよう、鉱業法にかわる特別の制度を設けようとするものであります。
以下、この法律案の概要を御説明申し上げます。
第一に、大韓民国の開発権者と共同して石油及び可燃性天然ガスを探査し、採掘し及び取得する権利を特定鉱業権とし、特定鉱業権によるのでなければ、共同開発区域において石油及び可燃性天然ガスを探査し、または採掘してはならないものとしております。
この共同開発の基礎となる特定鉱業権は、協定の規定に従い、探査権及び採掘権とし、通商産業大臣が経理的基礎及び技術的能力等を勘案して設定の許可をすることといたしております。
第二に、特定鉱業権の設定の許可を受けた者は、大韓民国の開発権者との間で、共同開発事業を実施するための共同開発事業契約を締結して、通商産業大臣の認可を受けることといたしております。
この共同開発事業契約は、日本国と大韓民国の権利者による共同開発事業の基本となるものであり、その内容として、石油及び可燃性天然ガス資源の分配並びに費用の分担に関する事項、漁業との調整に関する事項等を定めることとなっております。
第三に、協定に従い、一定の期間内の鉱区の放棄義務及び探査のための坑井の掘削義務等、探鉱促進のための新たな措置を講ずることといたしております。
第四に、共同開発区域の上部の海域における漁業の利益が、共同開発によって害されることのないよう十分な配慮をすることとし、そのために必要な規定を設けております。
すなわち、協定の規定に従い、共同開発事業契約の中に漁業との調整に関する事項を必ず記載させて、十分な調整を行わせるとともに、大陸だなの掘削等により損害を与えたときは、特定鉱業権者及び大韓民国の開発権者が連帯して賠償する責任を負うものとし、その場合の裁判管轄についても特例を設けております。
また、漁業生産上重要な魚礁が存在する区域については、探査または採掘のための工作物の設置等を許可制とする等、漁業の利益が害されることのないよう最大限の考慮を払っているわけであります。
第五に、海洋における非常に広い鉱区が設定されることに伴い、鉱区税の特例を定めるほか、鉱業法の規定に準じて所要の規定を設けることといたしております。
以上が、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案の趣旨でございます。(拍手)
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日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/18
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019・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。水野清君。
〔水野清君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/19
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020・水野清
○水野清君 ただいま御提案となりました協定につき、私は、自由民主党を代表して、質問いたしたいと存じます。
世界的にエネルギー資源の不足が叫ばれている今日、日本は、米ソに次ぐ最大のエネルギー消費国でありながら、先進工業国の中で、国内でのエネルギー資源生産量は最も少なく、石油の九九・七%を海外からの供給に依存している国であります。これらの必要資源を長期にわたり、安定かつ正当な価格でいかにして確保するかは重要な問題であると同時に、石油供給源が制約されている今日の世界において、もし機会があれば、わが国も有望な海底油田を開発することは、日本の国益にとって最も緊急の課題であることは当然のことであります。
今回提出された二つの協定により、日本が単独で開発し得ることとなる区域及び日韓双方で共同開発することとなる区域は、ともに豊富な石油資源の埋蔵が予想される有望な地域であり、ここにおいて石油並びに天然ガス資源の開発を試みることは、時宜を得たというより、むしろ遅きに失したとも思うのであります。
しかし、この協定締結の是非を判断するに当たって、果たして今回のような処理が国益、法理に照らして妥当であるのか、また、より大きな将来の資源開発にとって障害とはならないのか、そうした深く広い判断が必要であると思うのであります。それらの点につき、総理及び関係閣僚に質問をいたしたいと存じます。
今回の二協定のうち、対馬周辺の北部区域を取り決めたものは、境界線を日本の主張どおり中間線に定めているのに対し、南部区域に関する協定は、日本の主張の等距離中間線理論と、韓国の自然延長理論とで論議がかみ合わず、そうした法理論を一切たな上げにして、海底油田の開発促進の観点より、政治的妥協の産物として、共同開発方式という現実的な解決策を図ったものであると思います。
しかし、その解決策について、韓国側が一方的に鉱区を設定した、その既成事実に押されて、日本側が必要以上の妥協をしたのではないかという疑問を差しはさむ論議があります。たとえば、協定に添付されております地図を見ても、この地域はわが国に近接しております。韓国の主張する自然の延長論との関連でこのようになったのだと説明がなされておりますが、それでもなお、なぜこのような位置に共同開発区域が設定されなければならなかったのか、疑問を述べる向きも多いのであります。
さらに、新しい法理による共同開発構想は、国際法上の立場をたな上げして留保しておるとはいえ、従来からの日本側の大陸だな境界線の論拠である等距離中間線論を、新構想で事実上放棄したことにならないか、将来、このことが、他国との大陸だな境界画定交渉や、資源開発の話し合いの際に支障を来すことになるのではないかと、危惧の念を抱く論議もあります。これらの点につき、外務大臣より明確な御答弁をいただきたいと存じます。
次に、海洋法との関係であります。
ワルトハイム国連事務総長が、今世紀後半の最も重要な国際会議と言われた第三次国連海洋法会議の第三会期が、去る三月十七日から八週間ジュネーブで開かれております。十七世紀以来世界を支配してきた公海自由の原則が、広い領海、狭い公海に変わり、自由の公海の分割を目指し、すでに領海十二海里、経済水域二百海里については、参加諸国の間で、ほぼ全面的コンセンサスが成立されていると報道されております。
海洋法会議終了後、経済水域二百海里が設定され、日韓双方がその新しい制度を受諾したと仮定しますと、今回の共同開発区域は、日韓双方の経済水域の重複する部分の中間線よりもわが方の側に入ることになります。もちろん、経済水域の令割が、そのまま海底の大陸だなの分割になるという単純な論旨を展開するのではありませんが、このように海洋の秩序が未確定な現在、韓国との共同開発という道を、いま選択するのが正しいかどうかという疑問を述べる向きもあります。
さらに、この協定の有効期間は五十年の長期にわたるものであり、世界の海洋制度が革命的変化を遂げようとしているときに、二十一世紀までに及ぶ日本の海洋開発に、みずから制約を加えるおそれはないと言い切れるかどうかという問題もあります。明確な御答弁を外務大臣に求めるものであります。
さらに、中国との関係であります。
昨年二月四日、中国は、その外交部スポークースマンの声明で、これは中国に対する主権侵害であり、中国政府は断じて同意するわけにはいかないとの抗議声明を発表しております。隣接国に近い海底油田の開発は、とかく国際紛争の種として長い間くすぶりがちなものであることは、北海油田の開発においてもその例を見ることができます。
そもそも、大陸棚条約によれば、向かい合っている二つ以上の国に同一の大陸だなが隣接している場合には、その境界は、第一次的に当事者間の合意で決定されるべきであるとされております。今回の共同開発区域の存在する東シナ海大陸だなは、大きな大陸だなであり、中国にも隣接しております。政府は、今次協定の締結に当たっては、当然中国とも協議すべきであったと考えますが、かかる協議は行ったのか、行わなかったとすれば、なぜ行わなかったのか、その理由をお伺いしたいのであります。
このような質問をするのは、単に法的な面から問題をとらえようとしてのことではないのであります。韓国や中国の主張する自然延長論が正しいかどうかの判断は別として、いずれ東シナ海大陸だなの広大な石油資源を開発する上で、韓国とのみならず、中国とも緊密な協議と相互理解が不可欠な条件であると思うからであります。
三木内閣が成立以来、早期締結をうたってきた日中平和友好条約の締結がおくれ、日中間に冷たいすき間風が吹き込んできたのではないかとささやかれている昨今、目先の石油開発を急ぐ余り、日中間の将来にしこりを残すようなことをあえて冒すことは、賢明でないと思うからであります。
これを要するに、政府は、日韓間のみで大陸棚開発協定を結ぶに際しては、当然中国の立場にも考慮を払っていかなければならないはずでありますが、この点はどうなのか、また、中国のかかる立場表明に対してどう考えているのか、明確な御説明を得たいのであります。特に総理の御答弁をお願い申し上げます。
さて、翻って日韓両国の間の現状を見ますと、一昨年夏の金大中事件以来暗い出来事が重なり、日韓両国民とも、最も近い隣国である相手国との間に存在するみぞの深さを改めて認識したわけでありますが、私は、この両国の相互信頼関係は、まだ十分に回復するに至っていないと考える者の一人であります。
もとより、わが国国民は、日韓友好関係の維持発展を心から願っているものと信じ、日韓両国の間には、十年前の日韓基本関係条約を初め、幾多の条約、協定が結ばれております。今回の共同開発協定も、これらの条約、協定と同様に、日韓協力の精神に基づいて、その友好親善関係の維持発展に寄与すべきものと認められます。
しかし、国と国との関係、特に日韓のような隣国同士の関係においては、一片の条約や協定にも増して重要なものは、相互信頼関係であります。特に今回審議の対象とされている協定は、二十一世紀のわれわれの子孫にまで影響の及ぶものであり、それだけに日韓相互信頼関係の回復がきわめて重要なことと思いますが、いかがでありましょうか、外務大臣より明確な御答弁をいただきたいのであります。
終わりに伺いたいのは、漁業問題と海洋汚染問題についてであります。
今回の共同開発の対象となる区域は、黒潮、対馬海流の分岐点で、わが国の重要な漁場の一つであります。この地域における開発活動の結果、海洋の汚染などが生じた場合、沿岸漁民にとって大きな打撃を受けるばかりでなく、海洋法のあり方によっては、遠洋漁業が締め出され、一般国民も動物性たん白質の供給に重大な影響を受けるおそれがあると思われます。
かかる観点から、開発活動により海洋が汚染され、漁業に対する不当な影響が生じないよう措置すべきは当然でありますが、万一問題が生ずれば、十分な救済措置がとられるべきであると思いますが、政府として、開発するに当たり、これらの問題にどのような対策を講じておられるのか、沿岸漁民の不安解消の上から、明確な御答弁を外務大臣にお願いしたいのであります。(拍手)
〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/20
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021・三木武夫
○内閣総理大臣(三木武夫君) 水野君の御質問にお答えをいたします。
水野君から中国との関係について御質問がございましたが、この御質問は、従来から国会においても政府が明らかにしてまいりましたが、この協定によって定められた共同開発区域は、わが国として、中国の権利主張が国際法上及ばないと認識している区域に限っており、中国の国際法上の権利を損なわないよう十分配慮しております。
政府としては、長き将来にわたって日中の友好関係を維持発展さすことに対して、強い決意を持っており、これまで中国側に対し、本協定の内容について、すでに署名の前後を通じ説明しております。今後も、必要に応じて、さらにわが方の考え方をよく説明していく考えであります。
また、日中間の大陸だなの境界問題についても、中国側が希望する場合には、いつでも話し合いたい考えでいることは言うまでもありません。この点についても、中国側に対しても伝えている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/21
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022・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 水野議員の御質問の第一点は、この条約の本質につきまして、しばしば議論になる点でございますので、お尋ねがございましたので、多少詳しく申し上げさせていただきたいと思います。
御指摘のように、この条約、いわゆる南部の開発地域に関する部分は、いわゆる大陸だなに関する中間線論と自然延長論との、二つの異なりました両国の法理が対立をした結果ではないか、これは御指摘のとおりでございます。
御指摘のように、わが国は中間線論というものを一般にとることが国益に合うというふうに、わが国の地勢から考えているわけでございますけれども、韓国の主張しております自然延長論、すなわち、大陸だなは大陸から出て、自然の地勢のまま海に入りまして、それが水深二百メートル、あるいは開発可能の最低のところまで、それが大陸だなであるという、そのような主張は国際司法裁判所の支持を得ておる主張でございますので、そういう立場に立ちますと、御指摘のように、韓国からの自然延長の地域は相当長いことになるわけでございます。
と申しますのは、わが国の西側にすぐ深い海溝がございます。五島列島の西から鹿児島湾の入り口、さらに屋久島を通りまして沖繩に至ります海溝、これが深い海溝の東側でございます。したがいまして、韓国から申しますと、韓国の大陸だなは、中間線を越えまして、はるかに東へ延びまして、ただいまの海溝の一番深いところまで延びるということになります。それに反しまして、わが国の大陸だなは、海溝の深いところで終わるわけでありまして、それから西の方、中間線あるいは中間線を越えて韓国の方へ延びるという法理論は、どう考えましても、自然延長論からは立ちにくいということになるわけでございます。
したがいまして、このたび設定いたしました共同開発地域は、自然延長論の立場に立ちますと、これは実は韓国の大陸だなに全部設けられるということになってしまうわけでございまして、そういう意味で、平面図で見ますと、この地域は確かにわが国にかなり寄っておるというふうに見られるわけでございますけれども、これは、そのような海溝がわが国の九州の西側から沖繩に向かって走っておるという、そういう海の地形のゆえにそういう状況になる。自然延長論から見ますと、したがいまして、共同開発地域は、いわば韓国の大陸だなに全部属するというような議論になってまいるわけであります。
したがいまして、これは第二の御質問に関係いたしますが、わが国といたしましては、そのような大陸だなの境界に関するわが国の法的な立場を損なうものでない、そういう立場を放棄するものでないという立場において共同開発地域を設けたということは、この条約の二十八条に書いてございますとおりで、そのような法的立場を、今後とも国際的に害することはないというふうに考えております。
それから、海洋法との関係で、経済水域二百海里が設定された場合の問題でありますが、海洋法会議の結論が、どの段階でどのように出ますかは、いまだ未知数でございますが、仮にどのような帰趨になりましても、この地域の大部分、ほとんど四分の三ぐらいが韓国の経済水域二百海里の中に入ります。もとより、わが国の経済水域二百海里の中に全部包含されることは当然でございますが、その程度の競合が起こりますので、その場合、両者をいかにして調整するかという問題は、やはり両国間の話し合いに残されることになるであろうというふうに考えるわけでございます。しかもその際、いわゆる国際大陸棚条約に基づく大陸だなの理論というものは、海洋法でも当然に取り入れられて、両者が併存することになり、その場合、韓国側の自然延長論が残る、こういうふうに考えまして、どのような状況になりましても、この際、両国の間で共同開発地域を設定しておきますことが、わが国の国益にかなう、かように考えた次第であります。
それから、存続期間の五十年でございますが、これは多少技術的なことになりますが、この種類の投資が比較的長い期間を安定期間として求めておりますことは御承知のとおりと存じますが、わが国の場合、鉱業法では探査期間が八年、採掘権の有効期間は無期限でございます。韓国の場合には、探査期間が十年、採掘権の有効期間が四十年でございますので、まず五十年というのが、安定した投資を必要といたしますと、妥当な期間ではないかと考えたわけでございます。
中国との関連につきましては、総理から御答弁がございました。
日韓関係一般との関係でございますが、確かに今日の日韓関係は満足すべき状態にはない。私どもといたしましては、できるだけわが国としても最善の努力をいたしまして、日韓関係を円滑な状態にいたしたいと考えております。
本来、大陸だな資源の開発につきましては、関係国の間でしばしば国際紛争が起こりやすく、そのために、本条約のための交渉も七年に及んだわけでございますが、私どもとしては、ここでようやく合意ができましたので、この条約をお認めいただくことが、わが国の国益に資すると考えておりますことはもとよりでございますが、両国の友好にも資するものである、さように考えております。
最後に、沿岸漁民の点でございますが、この協定実施のための特別措置法案を提出いたしておりますことは御承知のとおりでありますし、海洋汚染につきましても、両国の間に交換公文を交換いたしております。また、万一の場合の救済措置についても定めてございます。法的には十分準備をいたしておるつもりでございますが、政府といたしましても、御指摘のような危惧が現実になりませんように、万全の配慮をいたす所存でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/22
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023・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 河上民雄君。
〔河上民雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/23
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024・河上民雄
○河上民雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました日韓大陸棚協定について、総理並びに関係閣僚に御質問いたします。
その質問に先立ちまして、この協定の提出の方法について異議を申し述べておきたいと思います。
本来、性格の全く異なる二つの協定を一本にして提出して国会の審議を求めることは、きわめて不当であります。この点について、まず外相の見解をお伺いいたしたいと思います。
さて、エネルギー資源の不足が叫ばれております今日、石油の九九%まで海外に依存しているわが国が、日本近海の大陸だな石油開発を推進することは、時代の要請でもございます。しかし、日本周辺の大陸だな開発については、わが国の国益を守るとともに、アジア周辺諸国との協調を保たなければなりません。今回御提案になりました協定は、その意味において、今後の日本のアジア外交あるいは海洋政策一般の根幹に触れる問題を多くはらんでおりますので、それらの点について私は御質問いたしたいと存じます。
まず第一に、日本の大陸だな境界に関する考え方は、従来、大陸棚条約第六条に言う等距離中間線理論であったはずであります。かつ、今回の協定の交渉過程におきましても、政府は中間線理論を主張したと聞いております。当然、中間線理論をとれば、今回の共同開発区域の全部はすっぽり中間線よりわが国側に入り、わが国の主権的権利の及ぶ地域であるはずであります。しかるに、今回の協定では、そこが共同開発区域として、韓国の主権的権利が同時に及ぶことになっております。これは自然延長理論にわが国が屈服し、その結果、従来からの日本側の主張する中間線理論を放棄してしまったことにほかならないと私は思うのでございます。(拍手)このことは、海洋法会議その他の外交交渉におけるわが国の立場を著しく傷つけるものと言わなければなりませんが、三木総理は、この点についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
次に、中国との関係について御質問いたします。
中国の大陸だなに対する考え方は自然延長論であり、東シナ海の大部分は中国の大陸だなであると主張しております。地質学的に言えば、本協定に言う共同開発区域は、むしろ韓国の大陸だなというより、中国の大陸だなに属すると言われております。中国は、すでに昨年二月、外交部スポークスマン声明で、本協定に対し、これは中国に対する主権侵害であり、中国政府は絶対に容認できないとの抗議をしてきました。朝鮮民主主義人民共和国においても、ほぼ同趣旨の抗議を発しているのであります。
大陸棚条約によれば、「大陸棚が隣接している場合」その境界は第一次的に当事者同士の合意で決定され、合意がない場合、中間線をとるとされております。今回の共同開発区域は、まさしく日中韓に隣接している区域であり、当然第一次的に中国との合意を求めなければならない区域であると思うが、なぜ中国と話し合いをしてからこの協定を結ばなかったのか、お尋ねいたしたいと思います。(拍手)
中国側が共同開発区域は中国の大陸だなであると言う論拠に対し、日本側の等距離中間線理論を放棄して韓国の自然延長論を暗黙に認めてしまった今日、中国側の論拠に対抗することはできないと思いますが、いかがでございましょうか。
このように、中国を無視して既成事実をつくり上げてしまうことは、将来の東シナ海における大陸だな問題を非常に困難なものにしてしまうおそれがあります。この協定が、また日中平和友好条約締結に支障を来すのではないかと恐れるものでありますが、三木総理のお考えはどうでございましようか。
次に、本協定を論ずる場合、どうしても抜かすことのできない問題は、日韓両国の関係であります。
日韓両国の関係は、先ほど来論ぜられておりますように、金大中事件一つとりましても、事の真相は何ら解明されないままに、韓国政府の一方的な断定と高圧的な態度のもとで処理され、それに対する日本政府の自主性も、長期的な展望も欠いた、こそくな妥協策で決着をつけようとしております。また、韓国内における激しい民主化改革に対し、朴政権の弾圧は日増しに強化されております。かかるときに、このような日本にとって不利益な協定をあえて結ぶことは、政治的、経済的に窮地に立った朴政権にてこ入れするものと見られても、弁解の余地はないのであります。
朴政権は、大陸棚協定に基づく海底開発の権利を、すでに米国系メジャーにそれぞれ売り渡したと伝えられております。この協定には、まさに日米韓三国の資本がかんでいると言わなければなりません。自民党の内部においてさえ、この協定が日韓癒着の産物であり、日韓両国民にとって有害なものという立場から異論が唱えられていることは、皆様御承知のとおりであります。これに対して、総理はどうお考えになっておられるか。従来の三木さんならば、当然このような協定は取り下げるべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。
さらに、次の点を指摘しなければなりません。
現在、ジュネーブにおいて第三次国連海洋法会議が開催され、会議の重要な議題であります経済水域二百海里については、コンセンサスができたとされております。利害が絡む経済水域二百海軍が設定されますと、今回の共同開発区域は、全部わが国の経済水域に入ってしまうのであります。政府は、あらゆる機会に、たとえば国際海峡の自由航行については、新しい海洋法の創設であり、海洋法会議の帰趨を待って、その時点で判断するとの答弁を繰り返してまいりました。海洋法会議においては、いまだ経済水域と大陸だなとの関係の法的地位はまだ結論が出ておりません。当然、政府の考え方からすれば、海洋法会議の結果を待たなければ、この協定は提出できないはずであります。しかるに、今回この協定を締結することは、従来の政府答弁からして、矛盾もはなはだしいと言わなければなりません。この点につきまして、外務大臣はどういうお考えを持っておられるか、お伺いいたしたいと思います。(拍手)
この協定は、一つの区域に二国の国家の管轄権を及ぼして開発するという、これまでの国際法概念では律し得ない新しい法理による国際法だと思うのでありますけれども、いかがございましょうか。だとするならば、それを日韓両国において、ある種の妥協で、安易に新しい国際法理をつくり出し、それに基づいて海底を開発することは、はなはだ危険であり、日本の将来の海洋開発にみずから制約を加えるおそれがあると思いますが、いかがでございましょうか。
さらに、共同開発区域における石油については、エカフェの調査では有望視された報告が提出されておりますが、政府としては、石油の埋蔵量について、どのような科学的裏づけをもってこの協定を結ぼうとされるのか、明らかにされたいと思います。
わが国の石油等の開発については、鉱業法に基づき先願主義がとられており、日韓大陸棚協定によって開発区域とされている地域には、すでに現行法に基づき、三社、つまり帝石、日本石油開発、西日本石油開発が鉱業権の出願をしております。ところが、日韓大陸棚協定に伴う特別措置法では能力主義をとり、経理的、基礎技術的能力によって鉱業権を設定することとしておりますけれども、この特別措置法では、すでに出願されている三社の鉱業権をどう取り扱うのか、お伺いいたしたいと思います。
また、日本の近海の海底資源調査につきましては、うわさによれば、占領当時米軍によりすでに行われており、その後宇宙衛星の写真撮影等により、資料はアメリカの手に集約されているとのうわさがありますけれども、このようなうわさが真実であるといたしますならば、政府としてはどのように対処せられるつもりか、伺いたいと思います。
他方、最も懸念されることは、今日石油公害も起こさず有効に海底資源を探査する技術的な方法がないと言われている段階で、ただがむしゃらに膨大な資金をつぎ込み開発した結果、海洋汚染、漁場の荒廃が起こる可能性がきわめて大きいことであります。特にその区域は、わが国にとって以西底びき網、沿岸漁業、沖合い漁業が盛んな場所であります。協定によれば、「漁業の正当な活動が不当に影響されない」よう調整すると、抽象的に規定されているのみで、大陸だな開発と漁場の保存、保護との調整を、本質的に、また具体的に解決することなくして協定を結ぶことは、後世に憂いを残すものではないかと思います。その点、いかがお考えでいらっしゃいますか。
最後に、この協定の有効期間が五十年に及ぶことは重大であります。いま外務大臣から、その点について技術的な御説明がございましたが、近々二十年にわたる宇宙開発の目覚ましい発展を思うときに、向こう五十年の海洋開発の発展は、われわれの予想をはるかに超えたものになるであろうということは想像にかたくないのであります。
海底資源開発をめぐる論議が、国連でマルタの代表によって初めてなされて以来まだ数年しかならないのに、これだけ劇的な変化が今日世界で起こっていることを思うときに、向こう五十年の長きにわたってこの協定を締結することは、現在の日本国民のみならず、将来の日本国民に対する悔いを残すことになるのではなかろうかと私は憂えるものであります。
いずれにせよ、大陸だな問題については、現在海洋法会議において合理的な解決を目指して各国で努力がなされているとき、それに逆行するような内容の協定を拙速をもって結ぶことは、厳しく慎むべきであると私は考える次第でございます。(拍手)
総理並びに議員諸公におかれましては、この問題を真剣に考えていただきたいと思います。私は、このことを強くお訴えいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/24
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025・三木武夫
○内閣総理大臣(三木武夫君) 河上君の御質問にお答えをいたします。
中国との関係については、先ほど水野君にお答えしたとおりに考えております。
また、この協定は国益に反するものではないかという御質問でございます。
数年にわたって長い間交渉して、日韓大陸だなの境界線については、両国の主張が平行線をたどって、いつまでたってもその地域の石油開発はできないと判断いたしました。他方、日本のエネルギー事情にかんがみて、この際、法的な立場は立場として、これを損なわない形で、問題を現実的に解決することがよいと判断して、本協定に署名をいたしたわけであります。したがって、本協定を締結しましても、日本の従来主張してきた中間線理論の立場は、何ら損なうことはないと考えております。
また、これを考え直したらどうかという御質問でございましたが、本協定はお互いの立場を損なわない形で資源の有効利用を図ろうとするもので、わが国のエネルギー事情から見まして、国益にかなうものと考えます。
本協定は、すなわち、大陸だなの北部については、両国の法的な立場が合致しているので、ここでは中間線の原則で境界を画定いたしました。大陸だなの南部については、両国の主張が、日本は中間線論をとり、韓国は自然延長論をとりまして、これが対立して平行線をたどったので、境界を画定することなく、共同開発することにいたしたのであります。本協定は、わが国の利益にも合致すると考えておるので、これを根本的に考え直す考え方は持っておりません。
お答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/25
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026・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の持っております中間線理論というものを放棄したものではないということは、ただいま総理がお述べになりましたとおりでございますが、この協定の第二十八条に、「この協定のいかなる規定も、大陸棚(だな)の境界画定に関する各締約国の立場を害するものとみなしてはならない。」と書いてございますのも、同様な趣旨でございます。
河上議員は、この問題につきまして、わが国の中間線理論から言えば、これは屈服ではないかというふうに御指摘になったわけでございます。
私どもは、屈服とは考えておりませんで、ここが両者の話し合いによって妥結をした点だというふうに考えておりますが、韓国の方の自然延長論の立場から申しますと、このたびの共同開発区域は全部韓国の大陸だなに属することになりますので、そういうふうに申しますと、自然延長論から言えば全面屈服ということに、そういう論理になってしまいますので、やはりその点は、両者がその点で話し合ったというふうに御理解を願いたいと考えるわけでございます。
それから、二つのものを一括して出したのはどういうことかというお尋ねでございました。
結局、この交渉は、七年間における両国の紛議を、何とか大陸だなの境界についてまとめようとしたわけでございます。北部については合意を見ましたけれども、南部については両方の理論が一致をしない。そこで、自然延長論の示します部分と、中間線論が示します部分との重複部分をとりまして共同開発をすることにした、こういう経緯でございますので、両方の問題とも、南北とも、つまり大陸だなの問題という一つの問題について発生した帰着でございましたので、政府としては一括して御審議を得たい、こう考えておるわけでございます。
なお、共同開発ということは、例がないではないかというふうに御質疑なされたかというふうに承りました。
これは北海の大陸だなの論争がございましたときに、国際司法裁判所が判決の中で、こういう場合、当事国が共同して管轄、使用あるいは開発することが一つの方法ではないかと示唆をいたしておりまして、それをこの場合、具体的に日韓間でいたそうと考えたわけでございます。
最後に、海洋法会議における経済水域との関連について、国際海峡を例に引いてお尋ねがございました。
海洋法会議が、いつ、どのような帰趨をたどって結論に達するかは、必ずしもただいま明確でございませんが、どのような帰趨になりましたといたしましても、重複をいたすような経済水域については、両国間の、あるいは関係国間の利害をどのように調整するかというところまで、海洋法会議が条約の形で結論を出し得ないことは、ほぼ明らかでございます。
したがいまして、この地域のように、もとよりわが国の経済水域二百海里に全部包含されますけれども、韓国の経済水域にも四分の三近いものが包含されるということになりますと、何かの形で両国の間で話し合いをしなければならないという問題は残るわけでございまして、その場合にもなお、いわゆる大陸だなの理論というものは、自然延長論というものはなくならずに併存をするわけでございますから、結論といたしましては、このような形で協定を結びますことが、わが国の国益に沿うものである、かように考えておるわけでございます。(拍手)
〔国務大臣河本敏夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/26
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027・河本敏夫
○国務大臣(河本敏夫君) まず、埋蔵量の問題でございます。
御案内のように、一九六八年、 エカフェがスパーカーによる調査をしたわけでございますが、その結果、石油埋蔵の可能性が一番大きいと言われております新第三紀層に属する地域である、堆積物も非常に厚い、こういうことが判明をいたしておりまして、同区域の海底が将来一つの世界的な産油地域になるであろう、こういうふうな調査報告がされておりますが、それは御案内のとおりでございます。その後、ややおくれまして民間企業による調査が行われましたが、堆積盆地の厚さは最大六千メートルにも及ぶ、こういう地質の条件が判明をいたしまして、エカフェの報告どおり、新第三紀層に属することが確認されたと承知いたしております。ただ、しかし、具体的な埋蔵量が幾らであるかということは、現在のところは不明でございます。
それから、出願の問題であります。
現在、帝石その他から出願がございますが、この特別措置法によりまして改めて出願をし直す、こういうことになっております。そして、本法に基づきまして、経理的な基礎、それから技術的な能力、そういう点を十分勘案をいたしましてその審査をする、こういうたてまえになっております。
なお、漁業と海洋汚染の問題であります。
この問題につきましては、汚染防止のために各種の義務を課しておりますし、なお、韓国との間に海洋の汚染防止のために交換公文等をつくりまして、汚染防止のための万全の措置を講じておるところでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/27
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028・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/28
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029・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時七分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 三木 武夫君
外 務 大 臣 宮澤 喜一君
文 部 大 臣 永井 道雄君
農 林 大 臣 安倍晋太郎君
通商産業大臣 河本 敏夫君
出席政府委員
内閣法制局第三
部長 茂串 俊君
外務省条約局長 松永 信雄君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107505254X01619750415/29
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