1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年十二月十日(水曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 天野 光晴君
理事 内海 英男君 理事 梶山 静六君
理事 唐沢俊二郎君 理事 服部 安司君
理事 村田敬次郎君 理事 井上 普方君
理事 福岡 義登君 理事 浦井 洋君
小沢 一郎君 大村 襄治君
三枝 三郎君 中尾 宏君
野中 英二君 林 義郎君
松野 幸泰君 渡辺 栄一君
佐野 憲治君 清水 徳松君
中村 茂君 柴田 睦夫君
新井 彬之君 北側 義一君
渡辺 武三君
出席国務大臣
建 設 大 臣 仮谷 忠男君
出席政府委員
建設大臣官房長 高橋 弘篤君
建設省住宅局長 山岡 一男君
建設省住宅局参
事官 救仁郷 斉君
委員外の出席者
建設委員会調査
室長 曾田 忠君
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本日の会議に付した案件
建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、
第七十二回国会閣法第七五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/0
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001・天野光晴
○天野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北側義一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/1
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002・北側義一
○北側委員 先日、防災、日影規制関係につきまして参考人の意見をお聞きしたわけです。そこで、現在私自身が疑問としておる点につきまして数点伺ってまいりたい、かように考えております。
〔委員長退席、梶山委員長代理着席〕
まず、この日照問題では、全国で約二百数カ所の自治体が要綱や条例を定めておるわけでありますが、今回の日影規制基準の策定につきまして、その基準で、たとえばこの二百数カ所の地方自治体の要綱、条例で定められておるところの自治体が、この基準で果たして納得するのかどうか、そこらを非常に心配しておるわけです。まず、それを伺ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/2
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003・山岡一男
○山岡政府委員 現在までに相当の調査をいたしました。全部完全に終わったわけではございませんけれども、基準、それから要綱等を相当詳細に調べまして、現行の基準とほぼ匹敵しておる。それから現行の基準の中に、条例による上げ下げという規定がございますが、それらも加味いたしますと、ほとんどが含まれるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/3
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004・北側義一
○北側委員 いまのお話で大体はこれでカバーできるんじゃないかというようなお話でありますが、先日の、やはりこれも参考人の一人の方の意見では、非常に現在複雑な形態を示しておる都市において、境界線の明示や作図上の問題で誤差が出たりして、自治体においては作業が非常にむずかしい、こういう意見が出たわけです。
そこで、法律で定められる以上は、やはり違法建築も摘発しなければならないわけです。そういう点で、地方自治体としてこの法律が定められた場合に、行政上、技術上非常にむずかしい点が出てくるというような意見も出されたわけですが、この点については建設省はどう考えておられるのか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/4
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005・山岡一男
○山岡政府委員 日影規制は、従来の一般的な規制方法と異なりますために、その審査には確かに時間を要することは事実だと思います。複雑な形態の建築物を、しかも制限ぎりぎりに建てるというような特殊な場合については、慎重な審査を要すると思います。しかし、一般の建物につきましては、参考人もお認めになっておったと思いますが、習熟いたしますと十分に対処できるとわれわれは考えております。
なお、一般の建築士の方々等に対しましては、法律制立後手引書の作成、講習会等も大いにやりたいと考えております。
敷地境界線の問題は、きわめて基本的な問題でございますけれども、従来の建築基準法上の建蔽率、容積率あるいは北側制限、北側斜線制限等、現行法上の多くの規定もいずれも敷地境界線を基準にしておるというものもございますので、ごく特殊な場合を除き実務上十分対処し得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/5
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006・北側義一
○北側委員 そこで、先般東京都の日照調査報告によりますと、その調査した場所によって非常に日照に大差がある、このように報道されておるわけです。たとえば日の当たる時間が最高五時間のところ、また最低三十分以下のところ、このようにあるらしいですね。同じ東京都内においてもこれだけの差が出てくるわけです。
そこで、このような日影規制基準一律のものを決めた場合に、果たしてそういう基準の決め方自身が正しいのであろうかというような、そういう疑問も実は私わいてくるわけでありますが、これについてはどのようにお考えになっておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/6
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007・山岡一男
○山岡政府委員 確かに多面的な効果を持ちます日照を明るさ、暖かさ、それから健康上の効果等の各効果ごとに算定をいたしましてどうだということは、なかなかむずかしいと思っております。ただ、現在享受しておる日照の量、先生がおっしゃいますように東京都内でもいろいろ差がございます。それから都市機能の状況、立体化の程度等を考慮いたしまして、現状と将来のあるべき姿を念頭に置きまして、おおむね社会的合意の得られる線というのを模索いたしまして今回の基準を決めていただいたというふうに考えております。現状ではおおむね三分の二くらいの住居系のところの皆さんが享受しておる日照というものを念頭に置いて案を作成されたと聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/7
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008・北側義一
○北側委員 これに関連してくるわけですが、たとえばこれは大都会、大阪あたりでも同じことが言えるわけですが、いわゆる戦前からある農道に向かい合った家がずっと建っておる、こういう場合、たとえば木造なんかやはり耐用年数からいくともう建てかえなければならないわけですね。その場合に、家が建たないというような事態が起きてくるわけですね。そういう場合に、やはりその付近一帯を再開発事業でやるとか、いわゆる転がし方式というのですか、そういうやり方でやらなければできないような実態というものが、そういう既存の住宅街ではできてくるのではないか、こういう考えを私持っておるのですが、その点はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/8
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009・山岡一男
○山岡政府委員 おっしゃいますとおり、人家が櫛比をしておる低層木造住宅の集合地等におきましては、若干過酷な規制になると思います。そういう場合、先生おっしゃいますような方法を大いに奨励してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/9
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010・北側義一
○北側委員 そこらの問題を、やはりよく調査していただきたいと思うのですね。そうしてやはり再開発、いわゆる転がし方式等による再開発をやるとか、ここらを考えなければ、これは非常に問題が残るんじゃないか、そういう心配を私はしておるわけです。
次に、聞くところによりますと、今回の法改正の日影規制基準について、大阪府において用途地域別中高層建築物の日影規制基準による適合数を昭和四十七年から四十九年までの三カ年間の対象として、建築物のいわゆる確認申請、これで調査した報告書がある、このように聞いておるわけです。その実態はどうなっておるか、それをまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/10
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011・山岡一男
○山岡政府委員 先生のお話のとおり、過去三カ年におきます各建築確認申請書を分析いたしまして、大阪府で改正法案による日影規制基準に合うものはどれぐらい、合わないものはどれぐらいというふうな調査を行っております。その数を申し上げてみますと、たとえば第二種住居専用地域におきましては、過去三カ年間に三十五件今回のようなものの対象があるわけでございますが、適合するものはそのうちの五四%、十九件、不適合のものが四六%、十六件ということになっております。ただ、政令により緩和をしたということを想定いたしますと、三十五件のうちの六〇%が適合になりまして二十一件、それから不適合がそれでも十四件残るということに相なります。逆に政令によって強化をいたしますと、適合件数が十一件に減りまして全体の三一%、不適合が二十四件で六九%ということに相なります。
それから住居地域について見ますと、やはり三十五件ございましたけれども、それを法案の線でまいりますと五七%が適合、二十件でございます。それから十五件が不適合、四三%でございます。それを政令案による緩和を入れますと七四%の二十六件が適合になり、不適合が二七%の九件ということになります。政令案によりまして強化をいたしました場合を想定いたしますと、三十五件中四三%の十五件が適合になりまして、二十件、五七%が不適合になります。
その他、準工業地域、近隣商業地域についても実例の調査をいたしておりますが、おおむねこれと似た傾向になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/11
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012・北側義一
○北側委員 この実態調査を見ますと、いまの確認申請で出されたものについては不適合がかなり出ておるということが今度の基準というものについての一つの目安になるのではないか、このように私はこれを見ておるわけです。
そこで、先ほど私お話し申し上げましたが、各地方自治体で二百数カ所が要綱、条例をつくっておる。たとえば、いままで日照紛争で紛争解決のための裁判が行われておるわけです。そこで、裁判による判例、これはいろいろ出ておるわけですが、今回の日影規制基準は社会的合意の得られる水準であるというようなお答えがたびたび返ってきておるわけです。そこでこの判例を見てみた場合、この基準はいわゆる判例よりも低い基準なのか、それとも判例も参考に入れられてこれはつくられた基準なのか、そこらはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/12
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013・山岡一男
○山岡政府委員 現在までの日照関係の判例につきましては、必ずしも日照の問題だけではなくて、同時にその他の相隣権関係も含めた判例が多うございます。そういう点についても十分判例の検討もいたしております。最近特に六本木問題、この間出ておりました問題がございましたが、あの判例の中にも一部今回の改正の考え方等についてちょっと引用されているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/13
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014・北側義一
○北側委員 では、自治省からこの間十月十五日に通達が出されておるわけです。その通達によりますと、「日照阻害を受ける住宅地区の宅地については、日照阻害の原因となる中高層の建築物の高さ及び当該建築物による日影時間等を考慮して定めた二割を限度とする補正率を適用して、その価額を求めるものとする。」これは固定資産税の評価について、いわゆる中高層の建物がある場合、その日影地については固定資産税を二割まで減額してもよろしいというような意味のことが載っておるわけです。そうしますと、この日照問題については、自治省がそういう通達を出すということは、政府の考え方として、日照被害による土地の価格低下という問題、いわゆる財産上の被害というものを認めておる、認知しておる、このように私は思うわけです。
そこで今回の建築基準法の改正による日影規制基準との関係において、住民の同意、これは制度がなくなっておるわけです。ないわけです。この住民が日照阻害で受ける財産上の価格低下というものとこの日影規制基準との関連をどのように考えておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/14
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015・山岡一男
○山岡政府委員 先生のお話のとおり自治省がことしの十月十五日付で各都道府県あてに通達を出しております。その中には、建築物による日照阻害、新幹線、高速道路等による騒音、振動もしくはその他の要因による生活環境の悪化に伴って、これらの影響を受ける宅地の価格が影響を受けない宅地に比べて低下している事例が見受けられるということを前提にいたしまして、中高層建築物による日影のところにつきましては、住宅地区の宅地につきまして二割を限度として補正率を適用しても結構だという通達を出しております。確かにそういうふうな路線価方式で現在評価をいたしておりますけれども、その際の一部の要素として日照が取り入れられるようになったということは事実でございます。今回この日影の規制等の改正を行いますと、いま直ちにその効果があらわれるということではございませんが、今後良好な都市形成のための、一般が認めていただけるような日影の規制基準というものを満たした家が逐次できいくということになりますと、長期的にはそういう問題も解決されていくだろうと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/15
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016・北側義一
○北側委員 いろいろありますが、日照問題はこれでやめておきましょう。
次に防災関係でちょっとお伺いしておきたいのですが、今回の法改正で防災設備について遡及適用を受けるわけでありますが、その遡及適用を受ける避難施設、防火区画、非常口の進入口、非常用の照明装置等の遡及項目のうち、いわゆる代替方法ですね。代替措置によってその効果が得られるというようなものについてどのようなお考えに立っておられるか、それをまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/16
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017・山岡一男
○山岡政府委員 それぞれの項目につきまして代替の方法が考えられると思います。一つの特別避難階段等につきましては、避難橋の設置、それから折り畳み式等の屋外階段の設置、これはきのうもちょっと話が出ておりましたけれども、そういうようなものが非常に有効であろうと思っております。それから階段、エスカレーター等の防火区画、いわゆる竪穴区画でございますが、この場合も既存の防火シャッターを活用して、そのシャッターのガイドレール、まぐさ部分に耐火性のゴムパッキングを添付して改良を行うというふうなこと、それから既存の防火シャッターの近傍に網入りガラス等のガラススクリーンを付加して、それで所要の効果を上げるということ、それから非常用の照明装置につきましては、大体現在の電気配線の耐火措置が欠けているのがございますが、新しく二系統以上の配線幹線を持っているようなものにつきましては、その出ておるところの耐火保護を十分にやっていただければ非常用電源になるのじゃないか、非常用の照明装置になるのじゃないか。それから非常用の進入口につきましては、通常窓があれば窓を壊して入れますので、その裏側の方のいろいろな陳列物等につきましていつでも入れる状況にしてあれば、それは非常用の進入口の代替と認めることができるんじゃないかというふうな点について検討いたしております。さらに地下街等につきましては遮煙性能を持たせるための既存の防火シャッターの改良等もございますけれども、既設の防火シャッターの近傍にガラススクリーンを付加する、それから店舗と地下道の境界及び地下道に防煙たれ壁を設置するというようなことについても、十分有効な代替施設になろうかということで検討いたしております。
〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/17
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018・北側義一
○北側委員 これは私ちょっとわからないのですが、そこでお聞きするわけですが、この資料、局長、これはあなたの方でもらった資料だと思うのです。これは建築基準法の「第九十七条の三の次に次の一条を加える。」とあるのですね。「(資金のあっせん等)第九十七条の四国及び地方公共団体は、建築主が行う建築物の保安上又は衛生上の措置に関し、必要な資金のあっせんその他の援助に努めなければならない。」これではこう書いてあるわけですよ。この本文の方を見ますと九十七条の四がないのですけれども、これはどうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/18
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019・山岡一男
○山岡政府委員 先生お手元のものはまだ本法案になる前の段階のもののようでございます。附則の六項の中に昔はそういう言葉が入っておりましたが、現在は附則の六項で書きかえております。「国及び地方公共団体は、新法第八十六条の二第一項の規定により新法第三条第二項の規定の適用を受けないこととなる建築物について建築主が附則第一項ただし書に規定する期間内に新法第八十六条の二第一項の規定により当該建築物に適用される法令の規定に適合させるために行う建築物に関する工事について、必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」ということで入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/19
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020・北側義一
○北側委員 わかりました。実は資金のあっせんの分だけ抜いたのかと思って一生懸命探しておったのです。
そこで、この間もちょっと私、参考人の方が来られたとき質問したわけですが、これはなるほど防災関係に関連しますので、この法律案とは関係ありませんが、最近建築学会ではいわゆるビルの安全性というものについて非常な論議がなされておるわけです。たとえば東海銀行事務センターの欠陥生コン問題、また超一流ホテルといわれた九重レークサイドの地震による崩壊ですね、さらに八月に起きました杉並区の西荻台マンションの手抜き工事による火災の問題、また先月八王子市で高層マンションのガス爆発、これは私たち素人が納得いかぬような、あちらこちらに飛び火したようないわゆる火災ですね。このようにビルの安全性についていろいろ問題がいま提起されておるわけです。
建築基準法の目的では、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」このようにあるわけです。そういう目的の上から、ただいま述べました各事例についてどのような考えを持っておられるのか、それをまずお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/20
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021・山岡一男
○山岡政府委員 先生御指摘の中のまず小野田レミコンでございますが、これについても実情を調査いたしました。これは特にコンクリートの強度試験体のすりかえという異常な事件でございます。しかしながらコンクリートの重要性にかんがみまして、昭和五十年八月七日付で各事業主といいますか地方建設局長等にあてまして生コンクリートの品質管理に一層の注意を払うような通達をいたしております。それから八月十五日付で建築指導課長名でございますが、各特定行政庁及び建築関係諸団体あてにコンクリート工事の適正化について特段の配慮を講ずるよう指導いたしております。
それからなお、その一番の問題は、そのこわれました東海銀行が今後基準法上安全かどうかということでございますので、これについては東京都を通じまして十分な安全性を確保するように指導いたしました。
それからさらに、同じ時期にそういうような小野田レミコンを使った建物についての調査も行いまして、いずれもコアをとりましたりその他の点で、十分安全に耐え得るという点の確認をいたしております。
それから大分のレークサイドホテルでございますが、これは昭和三十九年に工事に着手されたものでございまして、当時の基準に従い適法に設計施工されたものでございます。その後昭和四十五年に建築基準法の施行令の改正がございまして耐震性を強化いたしておりますけれども、この改正以前に建設されたものにつきまして耐震性の点で現行の基準を下回っているものもあるというのは事実でございます。したがいまして、現在既存建築物耐震改修促進事業というのをやりたいということで、予算の要求をいたし、実行したいと考えております。
それから西荻台のマンションの手抜き工事に対しましては、建設業法第二十八条第一項の規定に基づく指示処分がなされております。さらに工事監理者についても建築士法に基づく行政処分が必要ではないかということで現在検討いたしております。
八王子のマンション爆発事故、最近起こったのでございますが、これにつきましても建設省に設置しております建築技術審査委員会の中に共同住宅ガス爆発事故対策小委員会というのを設けまして、現地の視察も行いまして、直ちにそれに対する対策の検討に入ったというのが現状でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/21
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022・北側義一
○北側委員 たとえば東海銀行の件なんかは検体のすりかえ、こういうことですが、これからの実際の姿として、そういう完成したところから一部を検体としてとってきて調査する、そういうやり方はできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/22
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023・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 でき上がった建物のコンクリートコアを抜き取りまして検査するという試験方法はすでにございます。今回の場合でも、小野田レミコンがその当時納入した建築物等については、まずシュミットハンマーといって表面上をたたいて調べる機械がございますが、それで怪しいとなれば、そういうコアを抜き取って試験するというようなことをいたしております。
ただ、これを全体の建築物についてそうしたらどうかというようなことでございますが、そういったコアを抜き取る機械の普及等まだまだ全建築物について適用するという段階ではございませんが、将来できるだけそういう方向に普及を図ってまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/23
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024・北側義一
○北側委員 また、私ちょっと調べたのですが、ここ十数年の建築物のほとんどが鉄骨ビル、これは非常にふえてきておるわけです。資料によりますと、建築用鋼材の使用量、これを見ますと、昭和三十七年現在で約十万トン、十年後の四十七年には五百五十万トン、こうなっておるのですね。約五十五倍使われておる、十年後は。それほど鉄骨ビルが、いわゆる建築用の鉄骨が非常に使われておる、このように見るわけです。
そこで、建築学会では大地震で鉄骨ビルは九割までが崩壊するのではないかというような脅威的なことを発表しておるわけです。建築業界でこの問題が非常に話題になっておるわけですが、これらに対して建設省としてはどのように対処なさるのか、またどうお考えになっておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/24
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025・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 最近鉄骨の建築というものが非常にふえたことは御指摘のとおりでございます。
なお、九割まで危ないというのは、これはちょっとオーバーでございますが、千代田区で調査いたしましたこれは、区の扱いでございますので主として中小の鉄骨の建物でございますが、これを四十三件調べましたところ、やはり設計書どおりきちっと全体がなってないというものが九割あったという事実がございます。そのことが九割の建物が全部危ないということにすぐつながるわけではございませんが、そういった設計書どおりになかなか工事が施工できていないということは事実でございます。
そういうことを踏まえまして、この対策でございますが、御承知のように鉄骨は最近溶接工事というのが非常に多くなっております。この溶接工事は、どちらかといいますと最終的にでき上がった姿というものが、正確になされておるかなされてないか外見的に非常に判断しにくいという問題もございまして、これにつきましては、そういった溶接の技能者の訓練の問題あるいは良心の問題あるいはそれを監督する技術者の問題、そういった全体をひっくるめて改善を図っていかなければならないんじゃないかということで、建設省といたしましては、建築学会を中心にいろんな各団体が集まりまして、そういった鉄骨の、特に溶接を中心として性能の向上をどう図っていくかというようなことを現在いろいろ打ち合わせ中でございますが、とりあえずそういった現場の溶接の監督をする技術者の教育、訓練というものを早急にやらなければならないということで、すでにもう大阪、東京等で企画を進めておりますが、そういったことを通じて向上を図ってまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/25
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026・北側義一
○北側委員 いま千代田区の例を言われたのですが、これなんか四十三件中四十二件が溶接不完全だというデータが出ておるのですよ。率にしたら九八%。先般の参考人の人がおっしゃっておられたのですが、一応東京都の場合はこれは全部実態調査をする、こういうお答えがあったわけです。ところがこの問題は、千代田区だけ、東京都だけの問題じゃないと思うのです。というのは、造船とかまたタンクとか、こういう溶接と建築用の鉄骨の溶接とは、聞くところによると価格が約半値ぐらいだというのですね。だからどうしてもそういうおろそかな溶接になるのだ。それとあわせて、技術者がおらない、非常に少ない、こういうことによるのだという意見を聞いておるわけですが、しかし実際の問題といたしまして、何かあった場合に、たとえば大分級の地震があったということになりますと、これは非常に大変な問題が持ち上がるのじゃないかという心配を持っておるわけです。そういう点で建設省としてこれらについて、事実、できたいわゆる建物なり——技術者養成にしましても、すぐ養成できるものではないと思うのですね。これらに対してどのような手を打たれるのか、それを聞きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/26
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027・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 御指摘のとおり、千代田区の場合には千代田区役所がそういった調査をいたしまして、悪いところは指摘して直さしたというケースでございますが、建築行政の分野で、千代田区だけでなくて、特定行政庁もそういうことをやっておりますが、これだとて残念ながら全鉄骨の建築物の溶接個所を一々検査するだけの能力はございません。したがいまして、なまぬるいとおっしゃるかもしれませんが、そういったことももちろん強化する必要はございますが、そういった監督技術者の強化、それから訓練、それから御指摘のいわゆる溶接工でございますが、これが建築、特に中小の町の鉄工場あたりには非常に数が少のうございます。したがって正規な溶接工をできるだけそういうところに配置できるような、そういった措置を講じてまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/27
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028・北側義一
○北側委員 これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/28
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029・天野光晴
○天野委員長 井上普方君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/29
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030・井上普方
○井上(普)委員 先日来私どもは御承知のように各地の視察を行ってまいりました。特に防災問題につきまして実験の見学等々を行ってまいりましたのですが、直接この法律が働いた場合に非常に影響のある業者の方々、たとえば百貨店協会の方々ともお目にかかって陳情を承りました。その際に、特に言われるのでございますが、こういうような法改正によって、また遡及適用を受けるがためにかなりの費用をかけなければならないという方々と、建設省、事務当局との間に非常に連絡ができていないように思われるのであります。ここらあたり、建設省とすれば、人命尊重の立場あるいはまた災害防止という立場からこれは純粋に考えるのだ、こういう考え方も一応はうなずけます。しかしながら、多額の費用をかける場合には、これらの業者の方々を納得せしめる努力が不足ではなかったかと私は感じられるのでありますが、建設省はそれらの方々に対してどういうような処置をいままでもとってきたかあるいは今後もとろうとするのか、この点ひとつお伺いしたいと思うのです。これは基本的なことでよろしゅうございますから、大臣の御答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/30
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031・仮谷忠男
○仮谷国務大臣 お説は、この法律が仮に通過をするとして、実績を上げていくため非常に重要な問題だと思うのです。既設のものに遡及して適用するわけでありますから、そのために莫大な費用がかかるということになれば、これはその問題をまず十分に検討した上でないと、ただ法律ができたからそれでいいというものではない。これは私ども十分承知をいたしております。
大体建築基準法は生命、財産を守るというのが目的でありますけれども、むしろその中の財産はひとまずおいてでも、とにかく生命を守ることに全力を挙げようということで、そういった面からまず出発すべきではないかというふうにも私どもは考えておるわけであります。それにしても遡及適用ということになると大変な費用をかけることでありますから、やはりそれぞれの業界や関係者の理解を得て御協力を得ることがこれは前提条件にならなければなりません。その意味においては、それぞれの機関やあるいは業界を通して事務的にはいろいろ相談をし、あるいは事務的な説明もするし、やってきたようでありますけれども、まず不徹底なきらいもあったかと思うのでありますから、そういったものは十分に今後も連絡をとり、理解をしてもらい、協力をしてもらう体制を整えるべきであるということは、基本的におっしゃるとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/31
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032・井上普方
○井上(普)委員 その点が非常に私はこのたびの法改正におきまして抜かっておったのではなかろうかという気がいたすのであります。これ以上私は申しません。
そこで、局長にお伺いしますが、事務的なことですが、一体この法改正によって直接費用というものはどれくらいかかるものですか。この点をお伺いしたいと思うのです。百貨店、地下道、スーパーマーケットあるいは特殊建築物である自治体が持っておる病院あるいは公会堂、こういうようなのもすべて含めるとどれくらいになるのか、試算があればお知らせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/32
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033・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 用途別の私どもの現在のところの試算では、百貨店が約六百億、スーパーが四百億、大規模物販が二百二十億、地下街が五百三十億、旅館八十億、ホテル四百十億、病院二百億、複合用途雑居ビルが二百億、合計二千六百四十億というふうに試算いたしております。自治体関係で、恐らくこの病院が自治体の中では一番大きいのじゃないかと思いますが、自治体関係の分について幾らというような試算はまだいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/33
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034・井上普方
○井上(普)委員 これは間違っておりはしませんか、その数字は。昨日ある自治体の人に会いまして、あなたのところでこの法改正でどのくらいになりますかと申しますと、三十億かかるということを言われておる。これははっきり言いますと横浜市です。三十億かかる。そうか、しかし人命尊重という立場から私どもはこれは守らざるを得ません、やらざるを得ませんが、一体財源は国の方はどういうようにやってくださるのでしょうか、こういう話があったのであります。私どもはあるいはまたこの中におきましても、百貨店あるいは地下道商店街というような方々の御意見を聞きましたけれども、自治体の方は忘れられておるように思われてなりません。横浜市で、人口百万の都市ですが、ここで病院関係等々合わせますと三十億かかるといいますと、百万ですから大体これの百倍と見ますと、これは大体概算にして、あそこで三十億だからこれだけで三千億かかるなという気がいたすのであります。いまあなたがおっしゃった病院関係の、あるいはまた市関係の公会堂とか不特定多数の方々が入られる特殊建築物について、少し試算が少な過ぎるのじゃなかろうかという気がするのですが、どうでございますか。
そしてそれに対する財政措置をどうされるのか、ここらあたりははっきりしていかなければならない。特にいまの試算で全体で二千四百億ないし六百億と言われますけれども、もっともっと要るのではなかろうか。それほど使わなければ、せっかくつくった法律というものが守られない結果を招きはしないかという感じがするのでございます。これに対する財政措置、どういうふうにされるおつもりであるか。それは法律にはいかにも、先ほど北側君が質問されましたように、国及び地方自治体は補助に努めなければならないというような精神規定は書いてはおりますけれども、一体どうされるおつもりなのか。ここらあたり明確にしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/34
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035・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 横浜市の三十億という試算がどういう試算であるか私ども存じませんが、恐らく想像しますところ、現在の政令の内容そのものについて横浜市等で的確に判断されておりませんので、私どもが現在たびたび御説明申し上げておりますような遡及の規定を適用しました場合には、横浜市で市の建物について三十億かかるということは私どもはあり得ないのじゃないかというふうに考えております。
なお、自治体として病院、公会堂等がございますが、そういったものに対する費用は当然ある程度かかりますので、そういったものに関する遡及適用に関しましては、地方債について十分手当てしてまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/35
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036・井上普方
○井上(普)委員 病院関係等と御相談になっておるかということですが、私はどうもそこらあたりもですが、あるいは各自治体とも、こういうような場合にどれぐらい要るかという自治体に対する——自治体にも団体があるのですから、そこらあたりとの協議も十分になされておらなかったのではなかろうかと思うのです。
横浜市、これはこの建築基準法につきましては非常に熱心に勉強されておったことは皆さんも御承知のとおりです。時に他の自治体と比べましてよく勉強されておった横浜市において三十億要るんだ、こう申されておる。あなたはそうは要らぬだろうとおっしゃいますけれども、一番よく勉強されておる横浜市の見解とあなた方との間にも、ここにずれがある。こういうことになると、いかにも準備行為の不足だなあと思わざるを得ない。しかもそれが遡及適用の対象になる、こういうことになりますと、いささか建設省事務当局の準備不足を私は指摘せざるを得ないのであります。
いまの参事官のお話によりますと、自治体に対する財政上の措置は考えるとはおっしゃいますけれども、一体どうするのか。いままでの建設省の予算措置というものは承ってはおりますけれども、自治体の病院等々に関する措置につきましては私は全然伺っておらない。資料もいただいておらないと記憶いたすのであります。ここらあたりはどうされるのか、これを明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/36
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037・山岡一男
○山岡政府委員 自治体の物につきましては公営企業金融公庫の融資がございます。その他、やはり今度法律の附則六項にも入っておりますいろいろな他の記載につきましても大いに努力をしてつけるようにしてまいりたいと思っております。現在もスプリンクラー等の設置をそういうところでやっておるわけでございますが、それは公営企業金融公庫からの融資が大部分だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/37
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038・井上普方
○井上(普)委員 これは業者の方なども同じですけれども、融資をするといってもこれはやはり借金なんですね、起債を許すとしましても。でありますので、ここらあたりはやはり自治体とも十分に連絡をとる、特に病院関係あるいは公会堂を持っておるところ等々と連絡をとるという措置をしてほしかったと私は思うのであります。ここらの連絡がはなはだ不十分であった。これも指摘せざるを得ないと思います。
それから、昨日も現地視察をいたしました。そうしてデパート側等々の説明によりますと、建築基準法の政令改正が再々行われたんだ、したがって一例を挙げると、シャッターに関する基準なんかも十回以上も改定されておる、これの対応に非常に苦慮しておるのだ、このたびの遡及適用が行われましても、あるいはその後々の政令改正でまたまた変えさせられるのではなかろうか、こういうような負担に実は耐えかねているのが現実であるという説明を受けたのであります。これが本当であるかどうか、私はどうもまゆにつばしながらきいたものではありますけれども、実際そういうような指導方法がそのように再三にわたって変わったのかどうか。これは行政当局といたしましては、えりを正してやはり民の声というものは聞かなければならぬと思うのであります。この建築基準法ではこの基準につきましてどのように変わっていったのか、ひとつお伺いしたいのであります。これが第一点。
第二点としましては、百貨店の側の言い分によりますと、スプリンクラーで完全に防災ができるのだ、こう申します。しかし、先般来の参考人の意見等々からいたしますと、私はこれは不十分であるという判断をいたしております。特に竪穴の区画の重要性が参考人の意見からも強調されましたし、この法律の趣旨も竪穴区画の重要性をここに大きく政令で取り上げるのだ、このことがこの改正案の大きな問題点であろうと思うのであります。しかし、この竪穴区画をなぜ重要視するかと言えば、これは煙に対する対策であろうと私は思います。
煙の恐ろしさというものは、私ども実験を見ましてつくづくと感じさせられたものであります。しかしながら、この防火シャッターをなぜ遮煙性のあるものにかえなければならないのか、この点につきましては私ちょっと疑問を持つものであります。すなわち、いままで遮煙シャッターとして、シャッターの中にゴムを使っておるシャッターを実は建設省は推奨し、業者に使うように指導してきた。しかし、このたびの法改正によると、ゴムというのは火に弱いのだから、これをメタルにしたものに直さなければならぬ、こうおっしゃる。私は当然だろうと思います。しかし、ゴムが火に弱いということは初めからわかっておる。これをなぜいままで指導してきたか、そこらあたり私は大いに疑問を持つものであります。
同時に、もう一つ私が疑問に思います点は、煙というものは、遮煙壁があるならば、これは局長、一応壁があるならば、これに沿うて煙というものは動く。ここに多少のすき間はあっても、大体大勢というものはこれに沿うてこう動いておる。したがって、この中にすき間が多少あいておっても、それは出ていくであろう、私は、すき間がない完璧なものであってほしいけれども、そうでなくてもある程度いいんじゃなかろうか。いまの防火シャッターのごときものであるならばある程度の目的を達することができるのじゃなかろうか。そして、このすき間から向こうに出ていく速度というものはかなり速いけれども、ここの煙の濃度と隣の煙の濃度との相関性——もちろんこちらの方の濃度が濃いのですから、こちらの方に移っていくのは当然でありますが、その際四方の壁のうちの一角だけ、四面ある一方だけの場合、同じ面積、同じ容積の隣の部屋に煙が移っていく場合に、恐らく同じ濃度——隣同士の部屋の間では防火シャッターであった場合、同じ濃度になるには大体三十分以上かかるんじゃなかろうかという気がするのであります。この点、どういうような実験データがあるのか、確信があるのか、この点お伺いいたしたいのが第一点。
第二点といたしまして、このたび皆さんが考えられておる遮煙シャッターというものは、耐用年数は一体どのくらいあるものなのか。シャッターというものは、百貨店側の言い分によりますと一日一回は上げおろしするのだ。きのう松屋で聞きますと、二百四、五十あるシャッターを一日一回上げおろしする。そうすると、メタルでつくっておっても、やはりすき間というものができてくる、摩滅が。これの耐用年数はどれくらい考えられておるのか。その耐用年数というものは、使えなくなったと認定するときには、すなわち四、五年すれば、現在使っておるゴムを使ったのと同じような状況になりはせぬか。そのときに、耐用年数が過ぎたと考えられるときに、一体この煙の遮断性というもの、すなわち隣同士の部屋と部屋とに煙を、こちらを充満させて、こちらの方に及んでいく速度、ここらあたりを一体どれくらい見ておられるのか。私はまことに素人域ではございますけれども疑問に思いますので、ここらあたりをどう技術的に考えられておるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
それからもう一つ、シャッターの壁を、いま八メートルないし九メートルあるシャッターを、今度法改正によっては五メートルにしろということを建設省は要求せられておるやに承るのであります。なぜそういうように七メートル、八メートルのを五メートルに区画するのだということを聞きますと、いや、火が来たときには、シャッターというものは七メートルあると非常に曲がってしまうのだ、こういう話であります。しかし、おかしいと思う。火が来るまで押さえるのが遮煙シャッターの意味合いであって、なぜ五メートルにしなければならないか、私は疑問に思うのであります。ここらあたりの解明をひとつお願いいたしたいと思うのであります。
私まことに素人めいたことを申し上げますのも、実は建設省の指導というものが、いままで非常に素人じみた指導をやってきたということを私は聞くがゆえであります。一例を挙げるならば、昨日私は初めて聞いたのでありますが、ダストシュートに遮断壁を入れる、これが非常にためになるのだ、こう言うと、百貨店の側は、それはできません、百貨店の中をやるというと、大理石のあの柱、三越の中にあるあの大きい大理石の柱、あの中にシュートがある、ダストを投げるようになっておる。それならば全部大理石をのけなければこれはできませんと言うと、そうか、それならばひとつその点はこらえてやろうというような話もあったやに承る。実に素人じみた、素人的発想、すなわちわれわれと余り変わらぬ知識でもって、この法改正がなされておるように承るのであります。したがって、こういうようなわれわれの素朴なといいますか率直な質問に、ひとつ素人がわかるようにお答え願いたい、この点お伺いさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/38
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039・山岡一男
○山岡政府委員 建築物防災につきまして、管理体制という人的側面、それから消火、防火、避難に関する物的要件、両方があると思います。その中で、建築基準法では、防火、避難に関する建築物の方面からの安全性を引き受けておるということでございます。
そのためにいろいろな政令を施行しておりますけれども、現在までのところ、きのうは十回以上というお話がございましたけれども、シャッター関係といいますか防火区画に関しまする政令といたしましては、昭和二十五年に建築基準法が制定されましたときに、防火区画に用いる防火戸につきまして、一定の防火性能を有する防火戸の設置が義務づけられております。その後、防火戸に関する基準につきましては、二回の改正が行われております。
一回は昭和四十四年の改正でございます。これは随時閉鎖が可能でかつ熱感知器——当時は、やはり燃えるということのために、煙用がまだ余り実用化されておりませんでしたので、熱に感知をしまして、連動いたしまして、自動的に閉鎖する防火戸にするのだということと、階段等の通路に設けるものにはくぐり戸を設けなさいということが四十四年で決まっております。
それから昭和四十八年の改正がございまして、これは防火戸の使われ方及び設置場所によりまして、一定の常時閉鎖式の防火戸または随時閉鎖が可能で遮煙性能を有し、かつ、この場合は煙感知器が相当進歩いたしておりまして、煙によって感知をして、連動して自動的に閉鎖する防火戸にすることということを決めております。
政令の問題といたしましては、制定当初が一回、その後改正が二回ということが実情でございます。
以下、スプリンクラー、ゴムシャッター、シャッターの遮煙性、耐用年数等々御質問がございましたが、私どもの参事官の方からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/39
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040・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 まず、防火、防煙シャッターにつきまして、ゴムを指導してきて、これからゴムでなくて金属をというようなお話でございますが、これは間違いでございまして、いままで何にもなかったので、現在でも合成ゴムでございますが、これをつけることにいたしております。
その合成ゴムが温度に弱いではないかというような御指摘でございますが、現在一般的に使われております合成ゴムは、耐熱性は二百五十度の中で一時間加熱いたしましても弾性が若干低下する程度というようなことでございます。それから、最終的には恐らく焦げるということがあろうかと思いますが、シャッターとシャッターの間にはさまれておりますので、これが焦げることはございましても、最終的に脱落するということは非常に少ないのではないかと私ども考えております。
それから、在来のシャッターが煙をどの程度通すのか、ある程度在来のシャッターでも防げるのではないかというような御質問でございますが、この点につきましては、確かにこういう部屋と部屋の間を区切りますシャッターにつきましては、向こうとこちらの温度差というもの、温度差といいますか、圧力差というものがある程度少のうございますので、そう大きな煙漏れ——これはもう当然最終的にはおっしゃるとおり漏れますが、大きなものではございません。ただ、階段につきましては、階段そのものが煙突という作用を持っておりますために非常に圧力差が出てまいります。そのために、私どものいろいろな実験によりますと、在来シャッターでございますと、毎分シャッター一平米当たり二立方メートルの煙を通過させるというような結果になっております。したがって、二メーター、五メーターの十平米の在来シャッターでございますと、一分間に二十立米の煙を上の方に引き抜いていくというような結果になっております。新しい基準の防煙シャッターによりますとこれが約十分の一に低下する。実際にはもっと低下いたしますが、現在の基準ではそれを十分の一にしてほしいというような基準でもってやっております。
それから、そういったゴム等を使った場合の耐用年数でございますが、これは一応摩耗試験とか耐候試験とかいろいろな試験をやっております。
〔委員長退席、内海(英)委員長代理着席〕
ただ、これは実際に使われた場合にどれぐらいの耐用年数があるかということは、まだ使用実例も少のうございますのではっきりしたことは言えませんが、少なくとも現在摩耗試験あるいは耐候試験によって確かめた結果で、少なくとも十年以上は大丈夫だというようなことにいたしております。
それからシャッターの幅の問題でございます。これは現在の基準で五メーターというように決められております。この趣旨は、先生から御質問がございましたように、火災にあったときに、シャッターは鉄でございますので非常に弱くなります。そして曲がってしまって役に立たないというために、五メーター以内というような基準が設けられております。ただ、これは新しくつくられる場合はそうしてほしいわけでございますが、今回の遡及につきましては、先生から御指摘ございましたように、初期の煙を上げないということが主要な遡及のテーマになっております。したがって、火が来るまでということが趣旨でございますので、私ども各百貨店協会を中心としますいろいろな業界と技術的な打ち合わせをした段階では、私どもはこの五メーターの基準というものは、そのシャッターそのものの厚さ、鉄板の厚さ等を個々に検討して、そして六メーター、七メーターの場合に鉄板の厚さがある程度以上あればそのままでいいじゃないかというようなことで、この点につきましてはいわゆる代替措置というような考え方で処理してまいりたいと思っております。
それからダクトで、ダストシュートというよりもむしろ配管ダクトのことであろうと思いますが、確かに百貨店等では、ホテル等もそうでございますが、ダクトが表面に出ます場合に、大理石等をつけて表面を仕上げております。したがって、新しくビルを建設する場合には、そのダクトに熱が参りますとぱたんと閉まるようなものをつけさせておりますが、今度の遡及適用につきましては、ダクトそのものは確かに上にツーツーになっておりますが、上の方でも一応のとびらがございます。したがって、そのとびらからある程度漏れることは仕方ないとしても、ダクトは非常に遮煙のあれを入れることが困難でございますために、ダクトにつきましては遡及適用はしないという方針で考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/40
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041・井上普方
○井上(普)委員 どうも、承りますと納得する部分もあり、私も素人的に納得できない点もあります。
〔内海(英)委員長代理退席、委員長着席〕
政令につきまして、改正したのは少ないと言いますが、行政指導ではかなり強くやっておるんではございませんか。たとえて言いますならば、百貨店の防煙シャッターなどは、これは行政指導でかなり竪穴区画をやらしてきておるのが現実じゃございませんか。この点につきましてやってきておると私は思うのです。これらの行政指導というのは、民間につきましてはかなりきついものでございます。でございますので、かなり、業者に言わすと十回以上の改正があったんだとこう言う。法律上は、われわれは政令は二回だ、あるいは基準法の改正というのは三、四回しかなかった。けれども一般受ける側にすると、法改正あるいは行政指導というものは同様にともかく受け取って改造が行われてきたと思うのであります。この点につきまして非常に不信感を持っておるようであります。これはたとえて言いますならば、四十九年の一月に政令の改正があった。そうすると四十八年の十月ぐらいの改造のときには、あなた方はこうしなさい、こうしなさいと言って行政指導をやっている。大体適合に近いものを実はやらしておるという実態を承っておるんです。それはそうでしょう、当然そういうような親切心が私はあってしかるべきだと思う。このように行政指導がかなり行われてきたけれども、受ける方は一つなんです。法律改正であろうが政令改正であろうが行政指導であろうが、これは受ける側とすれば、お役所の言うことだという考え方を持つのは私は当然じゃなかろうかと思うものであります。
したがって、やる場合には明確に指導をする、その改正も長もちのするようなものをやってもらいたいというのは、私は、業者の言うのもこれはまた当然じゃなかろうかと思います。これは私はこの法律を、実は防災部門につきましては推進する立場で質問をいたしておるのでございますけれども、ここらあたりに非常に末端行政官の、と申しますか、そこらあたりの注意が非常に不行き届きであったのではなかろうかと、このような感がするのであります。
しかしながら、先般も参考人の意見聴取をいたしました際に、山岡局長が何かくぐり戸のことを申されましたのでくぐり戸について申し上げます。非常用のくぐり戸というものが非常に幅が狭いじゃないかと星野参考人にこの点をお伺いしました。そうすると、それは大きくしてもらいたいんだと、大きくしてもらいたいんだが今度は間に合わなかったんだと、こうおっしゃるんです。今度の法改正には間に合わなかったんだと、将来はあれをとびらにしてもらいたいんだと。こう言われますと、またまたこれで法改正が行われるのじゃなかろうか、政令改正が行われるのじゃなかろうかと思うのは私一人ではなかろうと思うのです。こういうようなことをやはり根本的にさかのぼった考え方をしていただかなければならぬと私は思います。くぐり戸一つにつきましても、この間も星野さん申されましたので、えらい無責任なことを、あの人は防災何やらの審査会の委員だそうですけれども、無責任なことを言われよるなという感が私はしたのです。どうです、この際くぐり戸なんというものはもう一つ抜本的な考え方はできませんか。この点一つ一ついま御答弁がありましたので具体的に聞いていきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/41
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042・山岡一男
○山岡政府委員 政令改正前に行政指導をしておるではないかというお話が最初ございました。従来は、政令が改正になりましても、公布、施行になりますと、その日以前に着工しておりますものにはさかのぼらない、既存不適格ということで適法であるという取り扱いが基準法の原則でございます。したがいまして、いままでは既存不適格のものにつきまして危ないものがある場合には、やはり行政指導によって本当に危ないものはやっていかなければならない。特に松屋のような吹き抜け部分でありますが、あれにつきましては一番危ないということで、消防と相談をいたしまして、確かに行政指導をしたのは事実だと思います。したがいまして、今回そういうふうな遡及適用についての規定を決めていただけば、さらにうんとしぼりました点で遡及適用についてのもっと徹底した指導ができるというふうに思っておるわけでございます。
それから、くぐり戸の件でございますけれども、シャッターを煙感シャッターにしておりますのは、火が出た直後のところにおりるわけでございます。そのとき、人が逃げてしまって、後で一、二残った者が連絡戸から出るという程度のことを考えておりますので、実際問題として、当初の数分間に別な戸口、非常口など、全部逃げられるわけでございますから、残った者が使うということでございますので、大きいにこしたことはございませんけれども、もうシャッターを全部やめてしまっていまあるものを全部自動開閉のとびらにしろというようなことについては、今後も一般的な改正が非常にむずかしい、できがたいことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/42
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043・井上普方
○井上(普)委員 行政指導をやられてきたのは親切心のあらわれだと言う。まことにそうでしょう。そうあるべきだと私は思う。四十九年の一月の政令改正があるときに、四十八年の十月の完成については、こうしなさい、ああしなさいと言うのは、行政当局として親切心があるならば私はそうするのか当然だと思います。そしてまた、人命尊重の立場から行政指導をやって、松屋のごときは吹き抜けの部分についてかなりなものをやった、私はそれは当然な処置であると思います。思いますが、受け取る側にすれば、これはなかなか大変な事柄なのであります。しかも、そのたびそのたびに方針が変わっては、受ける側とすれば私は大変であろうという感がいたすものであります。それも、火の起こる化学製品がどんどんと新しいものができていくという立場に立ちますと、煙につきましても物すごい煙の出る新しい化学製品ができていく現状にあっては、法改正あるいは政令改正もやむを得ぬことではあります。しかし、小手先じゃなくて、基本的にどうすべきかということを考えるべきじゃなかったか、私はこのように考えるのであります。したがいまして、業者の言い分もある程度本当であるし、また、行政当局の言うのも、私はある程度うなずけるのであります。
しかしながら、ここらあたりに、その接する態度、それが私は問題ではないかと思う。この点、やはり監督官庁としては監督一点張りの立場というのじゃなくて、あるいは建設省あるいはその指導下にある自治体の接触する態度に問題かあったのではなかろうか、このように考えられるのであります。したがって、この姿勢の問題、ここに大きな原因があると思うのですが、大臣いかがでございますか。ここらあたりをひとつお伺いしておきたいと思います。
それからもう一つ、いま御答弁がありましたくぐり戸の問題ですけれども、これは一昨年大阪の地下街を拝見いたしました際に、店の中に入っておって煙感知機をたばこの火で作動さす。作動するとさあっとおりてきて、店の中には煙が充満しておる。とても逃げられない。このくぐり戸では逃げられぬぞというのが、当時視察した者の一致した見解であります。ところが、依然として今度の改正ではこのくぐり戸にはさわっておらない。煙が出ますと、あれだけ店の前にだんとシャッターがおりてくると、おいこれは中の者が蒸し焼きになるぞというのが当時の感じであります。くぐり戸の改正なんかも、改正するならば当然あってしかるべきだと思うのだけれども、今度出てきてない。(「政令だ」と呼ぶ者あり)今度またこれを政令でやられるとすると、受ける側とすれば大変なのであります。遡及適用するというと、今後五十三年に政令改正が行われると、それもいきなりともかく命令権が出ることになっておる。そうするとこれは大変です。であるから、やるならばいまの際に考えられる消防処置というものを十分やっておくということが私は必要なんじゃなかろうかと思う。くぐり戸の改正なんというのも、当然いままでの処置としてやっておかなければならなかったし、またいま政令に入っておらぬとするならば、入れておくべきじゃなかろうか、このように思うのです。ここに不十分さがあると思うのです。いかがでございます。これは大臣でなくて、技術者さんから……。
私、だからこの間星野さんに聞いたのです。それは広い方がよろしいとおっしゃる。いまは適当な時期じゃないとおっしゃるけれども、適当な時期にまた後でこの点だけを変えられて——事故が起こって、店の前のシャッターがさっと下がってしまってそして蒸し焼きになったというような時期が来れば、くぐり戸は大きくしなければならなかったという反省が必ず出てくると思う。これはどうしても出てくると思う。いまから予測せられるものをなぜやっておかぬか、このように思うのですが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/43
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044・仮谷忠男
○仮谷国務大臣 くぐり戸の問題は後でまた局長から御答弁があると思うのですが、基本的には私は井上議員さんの意見に賛成です。監督官庁だから、ただ監督をしたらそれでいい、法律で決めたら右へならえしなさいというだけではいけないと思う。逆に今度業者の場合も、こういうことをやられることは何か被害者意識だけを持ってそれをむき出しにするということ、これも私は無責任だと思うのです。私は率直に言って、たとえばデパートのごとき、何千人、何万人の人を毎日入れる、自分たちの商売さえ満足にできたらいいという問題ではなしに、少なくとも最小限度、その人々にいかなる事態が起こっても生命は保障するだけの責任を持たなければならぬと思います。
これは一体だれがやるかという問題になりますが、これは業者も行政も一体にならなければならぬと思います。そういう意味において、おっしゃるとおり密接な連絡をとりながら、こちらも監督という立場だけでなくして、もっと積極的に取り組んでいって、実態もよく調査をし、実態も聞きながら、両方本当に合意の上で、かくすることによって人命が尊重されるという最善の方法を見出すことは、一体になってやるべきだと思います。その辺にちぐはぐな点があり、不十分な点があれば、十分反省しながら検討する必要があると思います。
いまおっしゃいましたくぐり戸の問題一つとってみましても、おっしゃるような問題があるとすれば何もこだわることはないと思います。十分に業者の意見も聞きながら、こちらもまた検討しながら一つの一致点を見出して、そして施設を進めていくということが私は一番大事な政治だと思っておりますし、行政だと思っておりますから、そういう面においては十分御趣旨に沿って今後も検討させ、努力をさせて、やるくらいなら最善のものを選んで、朝令暮改であってはならない。そのために業者に迷惑をかけるようなことになってもいけませんから、これはそのとおりだと思っております。
それから、一般の地方自治体の問題にいたしましても、さきに言った病院とか学校の問題等がありますが、これも考えてみれば、政府だけの責任というよりも、地方自治体自体にも責任があるわけであって、病院ができれば、その病院にいかなることがあっても人命に損傷を来してはならないということは、お互い共同責任でこの問題も解決をつけなければならぬものでありますから、これ自体も地方自治体と十分連絡をとり、その方の意見も十分聞きながら、一体になってやるべきだと思います。
財政の問題もそのとおり。困っておるとすればこちらも精いっぱいの努力もしていくし、行政の方も、地方自治体の方もそのための受けて立つ努力もしてもらうという形で、こういう重大問題は、そのためにこの法案が二年間もずっと継続になってきておる、いろいろな問題があり、隘路があったことが今日ここまで来たということでありますから、こういう問題をこの機会に、一挙にとはいかないまでも、最善の一致点を見出して、そして出発点に立って、初心に返って出発すべきである、私はこういう考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/44
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045・山岡一男
○山岡政府委員 くぐり戸の件でございますが、私も大阪の地下街のとぎにはお供しました。あの場合のくぐり戸は、ちょうど出口の左側の方にふだんからしょっちゅうあくような鉄のとびらの締め切りでございました。大体最近の新しいものはああいう様式をとっております。下から上まで全部通しでございまして、基準法上は幅が七十五センチメートル、高さが一メートル八十ということになっておりますが、あれよりも相当大きいような主張だったと私は思っております。ただ、これは基準法上の最低基準が七十五センチメートルと一・八メートルということでございまして、実際、最近建築士の行います設計は、それぞれの場所に応じまして最低基準以上上回るものをつくるということに努力をしておるわけでございます。
それから現在の遡及適用の場合は、きょうまで現在すでに施行になっておる政令の遡及ということが骨子でございまして、黙っておれば、将来政令ができた場合にはその政令についてはやはり既存不適格になるということで、たてまえとしてはやらなくてもいいわけでございます。しかし、そういうことの中に、将来のいろいろな問題の中に、やはり新しく政令を決めた場合に、これもいまの竪穴区画と同様に遡及すべきではないかという問題かあった場合には、その政令を検討いたします際に、そういうような経過措置についても検討するということがこの法律に書いてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/45
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046・井上普方
○井上(普)委員 大臣、あなたがおっしゃるような姿勢でやっていただきたいしそれが実はこのたびの法改正——それは利害関係ありますから、いろいろ言われるのは、これはあるだろうと思いますけれども、やはりそういうような姿勢でともかく臨んでいただきたい、このことを強く望んでおきたいと思います。
それから、くぐり戸の件につきましては、これは局長、少し考え違いじゃございませんか。やるべきところは、これも遡及適用の一つに入れておく必要があるんじゃございませんか、くぐり戸が狭い、これは事件を起こしますよ、この点は。まあいずれにしましても、私どもとしましてはかなり煮詰めたものでなければ、これは通すわけにはまいらぬという考え方を実は持っております。この点は、ひとつそのとき詳細申し上げたいと存ずるのであります。
それからゴムの問題でありますが、シャッターの防煙壁が——実は、きのう松屋で消火作業を拝見しました。このシャッターもゴムでやられておるんだが、実は、松屋側の言い分では、これは全部かえなければなりませんと、こう申されておりました。もしあのままでいいのであれば、これは業者と建設省当局との連絡の不一致が私は指摘されるのじゃなかろうかと思います。それでお伺いするのですが、あの松屋のシャッターは——私もたまたまきのう行きましたから、あれでいいのですか、どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/46
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047・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 的確に調べたわけではございませんが、実験いたしましたシャッター、あのシャッターだけは最近になってつけたものでございます。したがって、あれは防煙シャッターになっているはずでございますから、あのシャッターだけにつきましては直す必要はないと私ども思っております。
ただ、松屋全体でなくて、あそこの松屋のごらんいただいたあのシャッターは、最近になってつくったのがあれでございまして、ほかのシャッターは全部防煙的に改造する必要があるんじゃないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/47
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048・井上普方
○井上(普)委員 きのう松屋に私は見に行って、救仁郷さん、あなたも見られたのですね。吹き抜け部分のシャッターも大体私ら見ました。おろすのは見ませんでしたけれども、大体外からは見ました。したがってここらあたり、あれがまだ改造しなくていいのか、改造しなければならないのか、取りかえなければならないのかどうかということぐらいは私ら明確におっしゃっていただきたいのです。あなたのいまの話も、取りかえなければいけないと思いますじゃいかぬのです。われわれは断言してもらわなければいかぬ、ここでは。
そういう点で、私が、松屋のあの百貨店を遡及適用した場合に一体幾ら要るんだということをお伺いするのも実はそこなんです。この点、見ましたから松屋だけ申すのですけれども、幾ら要るのですか。改造するとすると幾ら費用が要るのか。この点ひとつ明確に、どこそこ、どこそこを直すのにこれくらい、これとこれとにこれくらいということをひとつ明確に示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/48
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049・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 先生から御指摘がございまして、昨日早速松屋側と連絡をとりまして試算いたしましたが、私どもの試算では総計約二億二千万かかるというようになっております。
その内訳は、竪穴区画が一億七千万、これが一番大きいわけでございまして、あと特別避難階段が二百万円、それから非常用の照明装置が四千三百五十万円、それから非常用の進入口は、これは必要ございませんで、合計二億一千五百五十万円というように積算しております。ただ、非常用の照明装置につきましては、これは細かい配線系統図等がゆうべのうちにまだ手に入りませんので詳しいことではございませんが、大体非常用照明装置等については、これは概算推定ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/49
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050・井上普方
○井上(普)委員 そうすると、竪穴区画をやるのを全部やりかえなければいかぬという計算ですな。
そこで、私は遮煙シャッターの問題について先ほどもお伺いしたのですけれども、竪穴区画をやるのに、圧がある場合に一分間に一平米当たり二立米の煙が行くのだ、抜けるとおっしゃる。そうして全体として一分間に二十立米の煙が出ていくのだ、こう言われますが、本当にそうなのか、実験したことがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/50
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051・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 これは実際に実験しております。ただ、実際の火事というのはございませんので、実際の火事になりましたときに、たとえば階段室とこの室内でいわゆる圧力差が生じます。この圧力差が生ずるのはいろいろな実験データがございますので、その圧力差を加圧した場合にどれだけ煙が出るかというような実験は、これは当然いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/51
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052・井上普方
○井上(普)委員 しかし竪穴区画が、非常に出てくる部屋と比べますと、一分間——容量だけでいきましょう。竪穴区画というのは非常に容量が大きいですな。発生しておる場所と比べまして非常に容積が大きい。一分間二十立米の煙が出ていくとしましても、それが充満するのに何分間かかるか、あるいは火災発生源の部屋とそれとの間の濃度差が少なくとも三分の一になるのは何分間かかるかというような計算できておりますか。実験はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/52
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053・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 この煙の挙動につきましては、最近非常に研究が進んでおりまして、一応私どもの建築研究所がございますが、ここでそういったことを専門に研究している機関がございます。そういうところで最近では、建物の状態がどういう状態のときに、たとえば何階の窓があいたときに、どこで火災が起こったらどういうような煙の挙動をするか、煙がどういうふうに流れていくか、どれくらいどの階に何分間のうちに出るかというような一応の計算ができるまでの段階にはなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/53
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054・井上普方
○井上(普)委員 私がお伺いしておるのは、現在あるシャッターで一体どれくらい漏れていくのか、あるいは竪穴区画の場合、どれだけいけるのか。といいますのは、私ども法改正によって多額の費用がかかることを実は極力避けなければならぬという立場なんです。きのう松屋のを見ますというと、これを果たして遮煙シャッターに完全にしてしまわなければならぬものだろうかという疑問を私は持つのです。そこまでの必要性があるだろうか、これは、私は法律を推進する立場からでも疑問を持ちましたので申し上げるのです。
私は、煙というものはともかく人が避難する間防げたらいい、中の品物は幾ら焼けたって構わぬのだ、こういう考え方で、人命尊重の立場で物事を考える場合に、煙のシャッターがありますと、恐らくこれが充満してしまうまでには、同じ濃度になるまでは、外へ出ていくのはすき間がありましてもかなりおそいのじゃなかろうか。恐らく煙というものは壁に沿ってすうっと一巡し、一様の濃度になって出ていくのじゃなかろうかという気がするのです。これは素人考えです。そして、この速度というものも、すき間があればかなり速いものではあろうけれども、こちらと同じ濃度になるのは三十分や四十分かかるのじゃなかろうか、あるいは火災発生源の煙の濃度の三分の一に隣の部屋の濃度がなるのにはかなり時間がかかってくるのじゃなかろうか、こういうようなことを考えました場合に、いまのシャッターでいいのじゃなかろうかという気が私はするのです。それはおっしゃるようにこちらに竪穴がありますから、圧力差があるから非常な速度で入っていくということもわかります。わかりますけれども、そこまでの実験はまだないのでしょう。いまのお話ですと私はないと思う。ここらあたり、いまのシャッターでなぜいけないのか、私ら素人にはどうしてもわからない。ある程度いけるのじゃないだろうか、こう思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/54
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055・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 先ほども申し上げましたが、そういった煙がどういうふうに在来シャッターを通っていくか、そういうことは実験を繰り返しておりまして、大体どういう建物の場合にはという計算式までできておりますので、その点に関しましては私どもは相当信頼性の置けるデータを十分持っているというように考えております。
ただ、先生がおっしゃいましたように、階段にたとえば一分間に二十立米の煙が入って、それでもう絶対いけないのかというお話でございます。確かにその点は考えるべきところが私どももあると思います。私どもが階段に煙を入れたくないといいますのは、むしろ上階の方に、たとえば三階が火事の場合に四階、五階、六階というようなところに煙を送って、そこで人命が損なわれるということも一つでございますが、階段に煙を入れるということは、階段は上の階の人にとっては唯一の避難路でございます。その唯一の避難路を煙によって妨げられるというようなことになりますと、上の階の人の避難ができないということになるわけでございますので、そういうケースを恐れて防煙シャッターにしてほしいと私ども言っておるわけでございます。
ただ、ケースといたしますと、たとえば上の階では別に避難階段があるとか、特別避難階段があるとか——煙はもう絶対入りませんから、そういう階段がある、あるいは隣のビルへのいわゆる橋があるとか、そういうケースでございますと、むしろ避難はそちらの方で時間をかけてできますので、その防煙シャッターについては、ある時間をかけないと上の階には——これは建物のケース・バイ・ケースで計算が違いますから、在来のシャッターのままでいいんだというようなケースもこれはあろうかと思います。そういう点につきましては、先ほど申し上げましたようなデータを相当持っておりますので、個々に代替措置というような形で見てまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/55
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056・井上普方
○井上(普)委員 代替措置で見てまいりたいと言いますが、私もそこのところ問題は煙だと思う。それはおっしゃる意味もわかります。わかりますが、濃度差がかなり影響するのじゃないか。煙というのは結局濃度でしょう。煙の走りぐあいは、それはあなたは研究されておると言いますが、隣と同じ濃度になる、あるいは濃度が三分の一になる、四分の一になる。この時間というのを計算した実験というのはないのじゃないかという気がするのですが、あるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/56
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057・救仁郷斉
○救仁郷政府委員 それは当然ございます。先生おわかりのように、きのうも実験をごらんいただきましたように、煙というのは相当——きのうは発煙筒、これくらいのものでございましたが、あれが煙を出しましただけであそこの中の煙の量というものは、あれでは人は死にませんが、恐らくあれが階段室でございますと、前は全然見えません。したがってあの中を避難するということは恐らく不可能だろうと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/57
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058・井上普方
○井上(普)委員 容器はこれくらいでも発煙剤なん、だから煙を出すためにつくってあるのだから、それは理由にならぬですよ。恐らくそれはあの中ではなかなか見にくいということも私らはわかります。しかし結局煙が濃いか薄いか、それによって有害物質が出ておるか出ていないか、視界もどれだけあるかないか、これは私はわかるのじゃないかと思うのです。したがって煙がどのように出ていくよりも、むしろ濃度がどれくらいになって人命に影響を与えるのだということの方が私は大切なんじゃなかろうかと思うのです。この点につきましてこれ以上申してもしようがありませんからこの程度にしておきます。しかし私は、いまのお話を承りましても、いま百貨店から目のかたきにせられておるのですけれども、百貨店の在来のシャッターでもてないということが、本当を言いますと私はどうも感覚的にわからないのです。ここらをわかるようにしていただきたいと思いますが、この点ひとつお願いいたしておきたいと思います。
それからもう一つ、幅の問題です。これは先ほど申しましたように、シャッターというのは初期避難のためにあるのだから、これがゆがんだり何かすることによって困るのだというようなことは私はおかしいと思うので、これは七メートル、八メートルのいままである防煙シャッターはそのまま認めるような方法でひとつ処置していただきたいと思います。この点はよろしゅうございますな。
ともかくこの法律改正につきまして最終的に申し上げたいのは、実際改造しなければならない人との対話が非常に不足であったのではなかろうか、ここに大きい原因があって、業界にあるいは改造しなければならない人たちに大きな混乱をいま生じさせておると思います。建設省としては特にこれらの人々との対話を十分にやられるように強く要求いたしておきたいと思うのであります。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/58
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059・天野光晴
○天野委員長 次回は、来る十二日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107604149X00519751210/59
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