1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十年十一月十一日(火曜日)
午前十時十一分開議
出席委員
委員長 小宮山重四郎君
理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君
理事 田中 覚君 理事 稲葉 誠一君
理事 青柳 盛雄君
小澤 太郎君 小平 久雄君
濱野 清吾君 福永 健司君
早稻田柳右エ門君 日野 吉夫君
八百板 正君 山本 幸一君
諫山 博君 沖本 泰幸君
永末 英一君
出席国務大臣
法 務 大 臣 稻葉 修君
出席政府委員
法務省民事局長 香川 保一君
委員外の出席者
運輸省海運局総
務課長 犬井 圭介君
法務委員会調査
室長 家弓 吉己君
―――――――――――――
委員の異動
十一月十一日
辞任 補欠選任
佐々木良作君 永末 英一君
同日
辞任 補欠選任
永末 英一君 佐々木良作君
―――――――――――――
十一月六日
民法第七百六十七条の改正に関する請願(稲葉
誠一君紹介)(第一六八八号)
人事訴訟手続法第一条の改正に関する請願(稲
葉誠一君紹介)(第一六八九号)
民法第九百条の改正に関する請願(稲葉誠一君
紹介)(第一六九〇号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案
(内閣提出第九号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/0
-
001・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/1
-
002・青柳盛雄
○青柳委員 この法案は、前回、当院では審議を終えて参議院に送られた法案でございますので、繰り返しになる質疑は省略をいたしたいと思います。
前回にも当委員会で少しは質疑があったと思われますが、海難事故あるいは公害を起こす船舶の中で非常に多いのがいわゆる便宜置籍船という、船籍は日本籍ではない外国の籍を持っている船、こういうものが事故を起こしやすいという、統計上それが明らかになっているようでありますが、こういう便宜置籍船が事故を起こした場合に、いま問題になっています法案がどういうような関係を持つのかという点をお尋ねしたいと思っているわけです。
今度の法案の第九条を読みますと、「責任制限事件は、船籍を有する船舶に係る場合にあっては」云々と、それから「船籍を有しない船舶に係る場合にあっては」云々というふうに管轄裁判所の規定がございます。これは専属になっております。いわゆる便宜置籍船と言われるものは、もしわが国の領域内、つまり主権の及ぶ範囲内で事故を起こしたときはどういう扱いになるのか、それをまずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/2
-
003・香川保一
○香川政府委員 ただいまのいわゆる便宜置籍船がわが国の領域内で事故を起こしました場合には、事故発生地のわが国の地方裁判所に申し立てができると、かようなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/3
-
004・青柳盛雄
○青柳委員 前回もそういう趣旨の御答弁があったと思います。つまり、船籍を有しない船舶というのは、日本の船舶であってもトン数が少ないというようなことで必ずしも登録を強制されていないという、そういうものを含むというふうに考えられるけれども、外国の船も日本に船籍を有しない、そういう意味でこの規定が動いてくるということでよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/4
-
005・香川保一
○香川政府委員 お説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/5
-
006・青柳盛雄
○青柳委員 そこで、ついでにお尋ねをいたしますが、日本の領海、領域外でこういう船が事故を起こし、そして日本人が被害をこうむったというような場合にはどういう扱いになってくるのでしょうか。この法律はもう全く関係ないのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/6
-
007・香川保一
○香川政府委員 いわゆる公海で船舶が事故を起こしました場合の損害賠償の関係の裁判籍の問題でございますが、これは国際私法上いろいろの説があるようでございますけれども、いまお尋ねの被害者が日本人であるという場合につきましては、日本の裁判所に申し立てをすれば管轄があるというふうなことについては、多くの学説が一致しておるところだろうと思います。いろいろの説がございますが、少なくとも被害者の普通裁判籍の裁判所が管轄を有するという点については問題はなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/7
-
008・青柳盛雄
○青柳委員 そういう場合はこの条文から言うとどの部分に当たるのか、いわゆる「事故後に当該船舶が最初に到達した地又は制限債権に基づき申立人の財産に対して差押え若しくは仮差押えの執行がされた」場合なのか。いずれにしても、被害者が日本人であるからといって当然にどこの裁判所に申し立てていいのか、被害者の住所地というわけでもないし、条文から言うとよくぴったり理解できない面があるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/8
-
009・香川保一
○香川政府委員 先ほど御答弁申しましたのは、損害賠償訴訟事件についての裁判管轄の点に一般論として申し上げたわけでありまして、この法律による責任制限の申し立てば船舶所有者等から申し立てをするわけでございます。その場合には、その船舶が外国船舶でございますればわが国に船籍を有しないわけでございますから、この九条の後段にありますような、つまり事故発生地は公海ですから、これは日本ではない、事故後に当該船舶が日本の港に入港したというふうなことであれば、日本の裁判所に申し立てるということはあり得る、あるいは日本にある財産につきまして差し押さえ、仮差し押さえがされたということであれば、その裁判所は日本の裁判所が管轄権を持つというふうなことはあり得るわけでございますけれども、通常考えられますのは、外国船舶の場合には本国の裁判所に責任制限の申し立てをする、その国がこの条約に加盟いたしておる場合でございますがそういうことになるわけでございまして、被害者が日本人であるから当然に日本の裁判所に申し立てが常になされるということには相ならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/9
-
010・青柳盛雄
○青柳委員 この法律と外国船との関係について一般的なことは大体わかりましたが、いわゆる便宜置籍船というのは実質的には日本のオーナーというか所有者がいるということが多いようでありますし、また、形式では外国の船でありますけれども、それを傭船しているのは日本の会社というようなことであって、いずれにしても純粋の外国の船舶あるいは純粋の外国の運輸というかそういうものではない、要するに形式だけ外国の名前が出てくるだけであって、実質は国内の会社で運営されているという、そういうもののようであります。これがいろいろの意味において活用されているというか悪用されているようであり、それが税金逃れなどにも大きな役割りを演じているということで問題になっておりますが、そればかりでなしに事故が頻発する、その被害が日本人にも及んでくるということが多いようでありますので、これは日本としては非常に警戒を要する船だというふうに考えるわけです。それが責任制限を受ける恩典にあずかるというか、そういうことがちょっと割り切れない感じを持つわけでありますけれども、しかし、この法律がそういうものを除外するということではない以上やむを得ませんが、いずれにしても、責任が十分に被害者の救済に間に合うということが望ましいと考えるわけであります。
そこで、従来日本の裁判所で外国船、こういう便宜置籍船が責任を問われたという例があるかどうか、その場合に何か委付制度みたいなものが使われたのかどうか、そういう点わかっておったらお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/10
-
011・犬井圭介
○犬井説明員 お答え申し上げます。
外国船が日本の近くで海難を起こして、それについて裁判が提起されたかどうかという一般的な問題については、私、余り詳しくございませんが、便宜置籍船の起こした事故について裁判が提起された例といたしましては、三光汽船が傭船しておりましたフルムーン号、たしかリベリアの船籍だったと思いますが、そういう船の事故につきまして日本の裁判所に訴えが提起された事例がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/11
-
012・青柳盛雄
○青柳委員 私の手元にもそれが一つの資料としてありますが、なるほどいま言われるリベリア船フルムーン号は三光汽船がチャーターしたもののようであります。これは漁船に衝突いたしまして船員が死亡された、あるいはけがをしたという事案であります。判決が出まして一定の損害が認められ、賠償も行われたようでございますけれども、この場合、現行の委付制度が適用されたかどうか、私、存じませんが、恐らくされなかったのじゃないか。それでその裁判所の認めた金額が支払われたのじゃないかと思います。これはもう昨年の六月十七日に判決言い渡しがあって、さらに上訴されているかどうかわかりませんが、いずれにしても、この金額自体は今度の法律が通った場合の最高限度額よりも低いので、それ自体被害者に迷惑をかけるというような結果にはこの法律が適用されてもならないわけでございますが、たまたま小さな漁船であり被害者の数も少ないということで、まあ責任制限があったからといってこの具体的ケースに不合理は出てこないと思います。しかし、もしこれが大きな船であった場合に、果たして十分な補償が行われることになるのかどうかという点に、私ども非常な疑問を持つわけです。いまの委付制度だって同じじゃないかと言えばそれまででありますけれども、制度の方は、前回も議論がありましたけれども、実際に活用されない。つまり、保険などで十分カバーするというようなことがあって、被害者の方にこれがマイナスに作用しているというようなことはなかったわけでありますが、今度金額で決められるということになれば、委付制度と違って実際には損害の方が制限金額の何倍にもなるというようなことも起こり得るという予感がいたします。そういう点で、事故を起こしやすい便宜置籍船のようなものについて、この法律は差別なく行われるわけでありますから、法律の適用そのものについてわれわれはどうしようもないわけでありますけれども、この法律が被害者の救済にやはりマイナスに作用するということだけは変わらないのじゃないか、そのように思います。
私が質問したかったことは外国船のことだけでございますので、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/12
-
013・大竹太郎
○大竹委員長代理 諫山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/13
-
014・諫山博
○諫山委員 この法案は、共産党だけの反対で衆議院で可決されております。改めて審議されるに当たりまして、私たちは、出発点に戻ってこの法案の問題点を検討いたしました。法務省の方からは、今度は共産党も賛成されたらどうですかと冗談のような話もあったのです。しかし、検討を深めると、どうしても賛成しかねるという結論に到達するわけです。
そこで、現行商法の委付制度これ自体が非常に不十分なものであるということは、法務大臣の趣旨説明の中でも述べられております。私も制度的にはそうだと思うのです。しかし、実際の運用を見てみると、被害者の損害賠償請求権を大きく抑えるような作用はしていなかったようだということが言えるわけです。現行の委付制度にどういう問題点があるのか、法務大臣の前回の説明ではこうなっております。「事故船が沈没したような場合には債権者は全く債権の満足を受けることができないこともあって、被害者の保護に十分ではありません。」私は法律の条文を解釈する限りそういう結論になると思うのですね。ところが、実際はこの制度がほとんど利用されなかった。この制度を利用しようと思えば利用できる海難事故が何件あって、利用されたのが何件かという統計は残念ながら得られませんでした。利用された方の統計は出ているようですが、利用しようと思えば利用できる事故がどれだけあったのかというのは、現在に至るまで不明のままです。それでもほとんど利用されていなかったということは事実です。
そこで、なぜこの制度が利用されなかったのか。加害者である船舶所有者から見れば、この制度を利用すれば自分の損害賠償の金額を少なくすることができるはずなのに、なぜ利用されなかったのか、これが非常に問題で、私はこの点について明確な説明を法律改正を提案している法務省側からいただきたかったのですが、残念ながらそれだけの資料は得られなかったと思うのです。ただ、たまたまこの問題をなるほどと思われるような形で説明してくれたのは、ことし六月十日の当委員会で参考人の説明が行われたときに、日本船主協会の田中穣二参考人が次のように言っておられます。「現在のように船型も大型化し、かつ建造船価も高くなってまいりますと、おいそれと委付するわけにはまいりません。」これが船舶所有者を代表しての説明ですね。つまり、船の価格は非常に高くなった、何十億円というような価格がするようになった。そうすると、海難事故による損害賠償のために、おいそれと高い船を投げ出すわけにはいきませんというのが船舶所有者の率直な気持ちのようです。この点は、たとえば海商法学者として著名な小町谷操三先生の「海事条約の研究」の中で、「委付主義のもとにある海上企業者も、船舶の価格が巨大であるために、金銭賠償をなすのが普通である。」というふうに説明しておられます。つまり、現行法では船舶所有者の責任を軽減するはずの委付制度が、実際は船舶の価格が非常に高くなりましたから、委付制度を適用しようにも適用しにくい状況が起こってきている。船舶所有者としては、船舶を委付するよりか、金銭賠償した方が得だというような現実の中から、委付制度が余り運用されなくなった。もう一つは、保険の制度が発達したという点もあると思うのですが、委付制度が実際に余り利用されなかったのは、そういう船舶所有者側からのそろばん勘定によるものではなかろうかと思うのですが、法務大臣なり民事局長、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/14
-
015・香川保一
○香川政府委員 そろばん勘定をいたしました場合に、船舶の事故による損傷がさしてない、したがって十分船舶の価値が大であるというふうな場合に、なおかつ委付するということが行われにくいという事情はそのとおりだと思うのでありますけれども、他方、たとえば船舶が沈没したような事故の場合でも委付がされないというのは、やはりこれは企業者の方の良識だろうと思うのであります。沈没船舶を委付しても被害者の救済には何ら役に立たないというふうなときに、あえて委付するというふうなことは、社会的に相当非難されることになる――法律は法律といたしまして、非難されるようなことを配慮して、良識によって金銭賠償をするというふうなことがやはり相当あるのではないか、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/15
-
016・諫山博
○諫山委員 運輸省にお聞きします。
私も、世間の非難を恐れる、あるいは加害者の良識というような作用があると思うのです。しかし、船舶が沈没したような場合、実際はほとんど保険で処理されるのじゃなかろうかと思うのです。たとえば田中参考人の場合、船舶の衝突事故で相手の船が沈んだ、この場合には保険にも掛けずにいたため、全く賠償がとれなかった経験があるという説明もあるのですが、これはむしろ例外であって、その意味では、沈没の場合でも大体委付制度を適用せずに加害者も損害を受けずに済むような運用になっていたのじゃないかと思うのですが、実際はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/16
-
017・犬井圭介
○犬井説明員 お答えいたします。
先生のおっしゃるとおりでございまして、現在ほとんどの船舶が、いわゆる海上保険会社がやっております船体保険というものに入っております。船体保険の場合には、その船が相手方と衝突した場合には相手方の船体についての損害までカバーするという、いわゆる補償条項というものが通常ございますので、それでカバーする、あるいはPI保険の方で相手方の船体に与えた損害についてカバーするということで、先生のおっしゃるように、ほとんど保険でカバーされているというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/17
-
018・諫山博
○諫山委員 私が再検討した結果、やはり本法案に賛成できないという結論に到達した一番大きな原因はいまの点なんです。法務大臣の説明で、委付主義には欠陥がある、その典型的な事例は、事故船が沈没したような場合に被害者の保護に十分でない、こう言われました。これは現実と切り離して解釈する限りそうなるのです。ところが、事故船が沈没したというような場合には、別の保険という形で被害者が保護されておりますから、現行制度では、制度そのものには欠陥があるけれども運用で何とかカバーされておる。ところが、この法案で加害者の責任は金額的に何万円だ、何千万円だというふうに限定されてくると、その運用というのは恐らく変わってくるだろう。たとえば、船舶所有者は裁判所の命令で幾らしか払わなくてもいいのですよというお墨つきをもらうわけですね。そうすると、船舶所有者は法律的にはこれ以上弁償しなくても済みます。裁判所の判決なり決定に従うわけですから、道義的な非難も恐らく受けないと思います、道義的な非難は裁判所がかぶってやるでしょう。そういうことになると、実質的に被害者の保護という点で欠けてくるんじゃないかという点が私の一番の心配ですが、法務大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/18
-
019・稻葉修
○稻葉国務大臣 いまあなたのお説を伺っていると、なるほど被害者の保護には欠けるかなというような気もいたしますね。これはちょっと民事局長から、その辺の、あなたの御説に対する何か理論的な反駁があるかと思いますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/19
-
020・香川保一
○香川政府委員 現在保険によって相当カバーされておるということはそのとおりでございます赤、この保険の制度を活用する点につい現在責任制限の制度がございませんので、したがって、最大限の予想される事故の場合の損害を十分てん補できる保険というふうなことになりますと、非常に保険料が高くなって、負担にたえなくなる。したがって、今回の法案の一番のメリットは、私どもといたしましてはこの保険制度の活用がうまくいく、つまり、責任制限の限度が法定されておりますから、あらかじめ船舶のトン数によって限度額が算定でき、その額をカバーするにたえる、そういうところで保険制度が活用できる。そういたしますと、結局、国際水準的な損害の賠償ということが保険の制度によって統一的にカバーされるのみならず、海運業そのものが合理的な運営がされ、国際競争にもたえる、かような結果に相なると思うのでありまして、先生のおっしゃるように、現在委付制度を活用しないで保険でカバーされていると申しましても、その保険の、一体幾ら保険を掛けておけばいいかというところのメルクマールが現在ないわけでございます。したがって、まちまちになることもございましょうし、あるいは掛け過ぎの場合もあるし、あるいは掛け足りないというふうなことにもなって、そういう偶然的なことによって保険でカバーされたりされなかったりするというふうな、不統一なと申しますか、さような欠陥もあろうかと思うのでありまして、責任限度額を法定することによってさような不合理が除去されるというふうなところが大きなメリットではないか、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/20
-
021・諫山博
○諫山委員 この問題はすでにさんざん議論しておりますから、繰り返そうとは思いませんが、いまの民事局長の説明でも明らかになったように、保険によって現実に被害者の損害がどの程度カバーされているのか、これは統計がないのですね。私は、この点の統計を提示しないまま、この法案が改良か改悪かというふうに問題を提起すること自体無責任だと思っているのです。実際いままでの法律がどういうふうに運用されておった、新しい法案になればどうなっていくのかということが、保険の問題も含めて数字的に明らかにされた上で賛否が問われるのが当然だと私は思ったのですが、ついにその点は明らかにされなかったという点は、今後の問題として指摘しておきたいと思います。
そこで、次に移ります。法案の第十六条、「この法律に定めるもののほか、責任制限手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。」とありますが、もうこの規則の原案はでき上がっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/21
-
022・香川保一
○香川政府委員 ただいまの段階では、最高裁の方で内部的に規則案を検討されている程度でございまして、法律が成立いたしますれば、諮問委員会を開いて正式に規則を制定する、かような手順になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/22
-
023・諫山博
○諫山委員 これは、法律施行と同時に規則を発動するようにしていなくてもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/23
-
024・香川保一
○香川政府委員 附則に明定しておりますように、六カ月先に施行になることになりますので、それだけの期間があれば規則を準備するのは十分間に合う、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/24
-
025・諫山博
○諫山委員 そうすると、法律施行のときには規則はもうでき上がるということとして、質問を続けます。
これから主として責任制限の手続問題について質問します。
法制審議会の決定というのが、法務省のつくった資料の中に載っているのですが、この中に「責任制限手続開始の申立てをするときは、事故並びに債権発生の原因が船舶所有者等自身の過失から生じたものでないことを疎明しなければならない。」となっています。私は当然のことだと思うのですが、これは法案の中で生かされているのでしょうか。幾ら法案を見ても、法制審議会のこの意見が取り入れられていないように見受けられるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/25
-
026・香川保一
○香川政府委員 この法案の十八条をごらんいただきますと、制限債権のトータルの額が責任限度額を超えることを疎明するということになっておるわけでありまして、したがって、債権が制限できる点もあわせて疎明するということに相なろうかと思うのであります。ここにあらわれておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/26
-
027・諫山博
○諫山委員 法制審議会の意見では、責任制限開始の申し立てをするときには、船舶所有者等の過失から生じた事故ではないということをあらかじめ疎明しなければならない、これは申し立ての要件になっているわけです。しかし、法案の十八条というのは、制限債権の額が責任限度額を超えることを疎明すればいいわけであって、金額の計算だけが申し立ての要件になっているようですが、そうではなくて、過失がなかったのだということも疎明しなければならないという趣旨で十八条は読むべきだということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/27
-
028・香川保一
○香川政府委員 通常の損害賠償債権であるわけでございますが、それがこの法律でいう制限債権になって、そしてそのトータルの額が責任限度額を超えておる、こういふうに読むべきだと思いますので、当然責任制限ができるという点の疎明もこの中に入っておる、かように解釈いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/28
-
029・諫山博
○諫山委員 第十八条を実際に運用する場合には、算術計算で金額を並べるだけではなくて、申し立てに係る事故が船舶所有者等の過失で起こったものではないのだということを疎明しなければ申し立てができない。何でもかんでも、事故が起これは船舶所有者が責任制限の申し立てをすることができるのではなくて、過失がなかったということをあらかじめ疎明すべきだ、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/29
-
030・香川保一
○香川政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/30
-
031・諫山博
○諫山委員 第十八条を素直に読むとそういうふうに読めなかったのですが、民事局長がそういうふうに説明されておりますから、実際の運用では、ぜひそういう指導をしていただきたいと思います。何でもかんでもこの法案で船舶所有者が申し立てをできるのだというのじゃなくて、過失がなかったということをきちんと疎明して、その場合でないと申し立てばできないのだというのが法制審議会の意見ですが、その趣旨が十八条にも盛り込まれているんだということを、いわば立法提案者の公的見解として明らかにしてもらう必要があるのですが、法務大臣いいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/31
-
032・稻葉修
○稻葉国務大臣 結構でございます。そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/32
-
033・諫山博
○諫山委員 もう一つ、法制審議会の意見と法案との関係で質問します。
法制審議会の決定という書類では、制限債権者の氏名、住所を届けさせるべきだということになって、法第十八条でそのことが規定されています。実際の運用で心配されるのは、知れている制限債権者の氏名を届け出るという場合に、知れているのにこのことを届け出なかったというような場合どうなるんだろうか、そういう場合が起こり得ると思うのですが、その場合の救済措置はどうなるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/33
-
034・香川保一
○香川政府委員 この法案の八十一条にその場合の、知れておるのにあえて届けなかったという場合には、損害を賠償する責任があることを明定いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/34
-
035・諫山博
○諫山委員 そうすると、知れている制限債権者を届け出るというのは、刑事罰で強制するというのではなくて、損害賠償義務を課することによって強制していくという仕組みですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/35
-
036・香川保一
○香川政府委員 刑事罰をもって臨むほどのことよりも、むしろそれによって損害を受けた被害者の損害を申し立て人にてん補させる方が被害者の方に厚いわけでございますから、さような意味で損害賠償責任の制度をとっておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/36
-
037・諫山博
○諫山委員 これは被害者の救済という関係で非常に重要な問題だと思うのです。その場合、たとえば海難事故でだれかが死亡したというような場合の知れている制限債権者というのはどういう人たちを指すことになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/37
-
038・香川保一
○香川政府委員 当然その死亡者はわかっておるわけでありますから、それの相続人を調査いたしまして、その相読人を制限債権者として届け出る、かようになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/38
-
039・諫山博
○諫山委員 その場合は、死亡者の相続人を調査する責任は加害者側にある。そうすると、加害者は戸籍謄本でもつけて申し立てることを義務づけられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/39
-
040・香川保一
○香川政府委員 細かい手続のところで、戸籍謄本をつけさせるかどうかは、まあこの法案では何にも言っておりませんけれども、当然相続人の届け出をする。その相続人の債権というものが制限債権であるという関係では、まさに死亡者の相続人であることを明らかにしなければなりませんので、手続的には戸籍謄本をつけるというふうなことに相なろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/40
-
041・諫山博
○諫山委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/41
-
042・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/42
-
043・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/43
-
044・小宮山重四郎
○小宮山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/44
-
045・小宮山重四郎
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
―――――――――――――
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/45
-
046・小宮山重四郎
○小宮山委員長 次回は、明十二日水曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00219751111/46
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。