1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年十一月十八日(火曜日)
午前十時二十分開議
出席委員
委員長 小宮山重四郎君
理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
理事 田中伊三次君 理事 田中 覚君
理事 保岡 興治君 理事 横山 利秋君
理事 青柳 盛雄君
小澤 太郎君 小平 久雄君
千葉 三郎君 濱野 清吾君
福永 健司君 中澤 茂一君
日野 吉夫君 八百板 正君
諫山 博君 沖本 泰幸君
玉置 一徳君
出席国務大臣
法 務 大 臣 稻葉 修君
出席政府委員
法務大臣官房長 藤島 昭君
法務省刑事局長 安原 美穂君
委員外の出席者
最高裁判所事務
総局刑事局長 岡垣 勲君
法務委員会調査
室長 家弓 吉己君
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委員の異動
十一月十八日
辞任 補欠選任
佐々木良作君 玉置 一徳君
同日
辞任 補欠選任
玉置 一徳君 佐々木良作君
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十一月十四日
民法第七百六十七条の改正に関する請願外四件
(横山利秋君紹介)(第二一二一号)
同外四件(横山利秋君紹介)(第二一五〇号)
同外四件(横山利秋君紹介)(第二一九〇号)
同(稲葉誠一君紹介)(第二二一〇号)
同外一件(横山利秋君紹介)(第二二一一号)
同外一件(横山利秋君紹介)(第二二五一号)
人事訴訟手続法第一条の改正に関する請願外五
件(横山利秋君紹介)(第二一二二号)
同外四件(横山利秋君紹介)(第二一五一号)
同外六件(横山利秋君紹介)(第二一九一号)
同(稲葉誠一君紹介)(第二二一二号)
同外三件(横山利秋君紹介)(第二二一三号)
同外二件(横山利秋君紹介)(第二二五二号)
民法第九百条の改正に関する請願外四件(横山
利秋君紹介)(第二一二三号)
同外四件(横山利秋君紹介)(第二一五二号)
同外四件(横山利秋君紹介)(第二一九二号)
同(稲葉誠一君紹介)(第二二一四号)
同外二件(横山利秋君紹介)(第二二一五号)
同外二件(横山利秋君紹介)(第二二五三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出
第二二号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/0
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001・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これより会議を開きます。
お諮りいたします。
本日、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/1
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002・小宮山重四郎
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/2
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003・小宮山重四郎
○小宮山委員長 内閣提出、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、、順次これを許します。大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/3
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004・大竹太郎
○大竹委員 きょうは時間がないようでありますから、一括して御質問をいたしますので、メモでもしておいていただいて一括お答えをいただきたいと思います。
まず、死刑執行後再審によって無罪になった場合には一千万ということになっておるわけでありますが、御承知のように自賠法強制保険の方も一千万でありましたけれども、本年七月一日から千五百万に増額をされたわけでございまして、たしか前回の国会でその問題を中心としていろいろ問題になったわけでございます。えらい先走るようでありますが、その関係もあって千五百万に修正をするということになると思うのでありますが、それについて、もちろん法務省においてもこれに賛成をされるだろうと思うのであります。
ついては、もちろんこの自賠法との関係もあると思うのでありますけれども、現在の刑法施行以来七十年近くになるわけでありますけれども、その間において、執行後再審によって無罪になった案件がないということも実は伺っているわけでありまして、もちろんいままでもなかったし、今後もないという自信のもとに御賛成になるのだろうと思うわけでありますが、現刑法施行後今日まで、実際に死刑を執行した件数は一体どのくらいあるのか、まあ後でお知らせをいただいてもよろしいわけでありますが、どのくらいあるのか。そしてまた、死刑執行前また死刑執行後、一体再審の申し立てのあったものはあるのか、ないのか。もちろん死刑執行後申し立てによって無罪の判決が確定したものはないというふうに伺っているわけでありますけれども、一体再審の申し立てがあった件数があるのか、ないのかということをお伺いしたいと思います。同時に、死刑執行後無罪になったという案件は一体外国の例にあるのかないのかということを第一にお伺いいたしたいと思います。
第二は、無罪の確定判決を受けた被告人に対して裁判費用を補償する制度を拡充する法改正について法制審議会で審議をされているというふうにお聞きするわけで、新聞その他でも多少この内容については報告をしているようでありますが、その内容、審議の経過、また国会にはいつお出しになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。これが第二の質問であります。
第三番目は、この前の国会でも被疑者補償規程について大いに改正する必要があるのじゃないかということが問題になりましたが、そのときには当局の御説明によりますと、規程の改正ということについては研究はしているけれどもなかなかそこまで手が回らないので、通達によってこの規程の運用というか、規程を大いに生かしていきたいという御説明があったわけでありますが、その通達はいつ出されたか、またその内容、どういう通達を出されたかということをお聞かせいただきたいと思います。また、もう通達を出されてしばらくたっているかと思うのでありますが、出された結果、いわゆる通達の効果というものが上がっているかどうか。また、この前の国会でも御答弁があったわけでありますが、この規程の改正というものはその後進んでいるかどうか、その見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
以上、三点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/4
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005・安原美穂
○安原政府委員 最初に、自賠法の死亡の場合における賠償額の最高が本年七月、千五百万円に引き上げられたことと、今回の刑事補償法の誤って死刑の執行をしたがその後無罪であることがわかった場合の補償額との関係について、現在お願いしておる改正の内容は、五百万円を一千万円に上げることであるが、同じように千五百万円に上げるべきではないか、あるいはそれについてどう考えるかというお尋ねでございますが、これにつきましては、この前の国会でもたしか大竹委員からお尋ねがございましたときお答え申し上げましたように、自賠法の改正と刑事補償の死刑の場合の金額の改正とは直接は関係がないというふうに考えておるわけでございます。その理由は、そのときも申し上げましたように、自賠法の賠償額はいわゆる財産的な損害プラス慰謝料というものを含めた全損害の額を対象として考えておるのに比しまして、刑事補償法のこの五百万円というのは、この第四条の第三項の規定の解釈から明らかになりますように、現実の財産上の損失がございましたら、現行法で言えば五百万円にプラスされた額の範囲内で補償がなされるということになっておるわけでございまして、そういう意味で、この現行法の五百万円、改正をお願いしようとしている一千万円というのは、いわば財産上の損害ではない、慰謝料だけを対象としておるものだ。したがって、自賠法の含むところは精神、物質両損害であるが、補償法のこの五百万円なり一千万円というものは慰謝料のみであるから、自賠法の賠償額が上がったからといって必ずしもそれをフォローしなければならないものではないという理由から直接関係がないということで、もっぱらこの五百万円を一千万円に上げることをお願いしておる趣旨は、もちろん自賠法の賠償額の引き上げということも横目でにらみながらも、やはり現実における裁判所の損害賠償請求事件における慰謝料の高額化の傾向にかんがみて、一千万円ぐらいが妥当ではないかと考えたわけであるというふうに申し上げたわけであります。
その考え方につきましては、私ども現在も変わりはないわけでございますが、いま大竹先生のおっしゃるように、死刑ということは執行してしまえば取り返しのつかない重大なことでもございますので、死刑の執行ということを慎重にせよという警鐘的な意味から、なお丁重に扱う必要があるという意味で千五百万円にすべきだという御議論があるとすれば、これはあながち否定すべきでもないというふうにも考えておる次第でございます。
それから、わが刑法施行以来の死刑の執行数のお尋ねでございますが、調べればわかるわけでございますが、遺憾なが現在手元に持っております資料等で計算いたしますと、実は昭和三十年から昭和四十九年の間に死刑の執行いたしましたのが二百九十八名でございます。
それから第三点は、死刑の執行後に再審の申し立てのあったものがあるかということでございますが、それは幸いにしてございません。
それから、外国で誤判により死刑が執行された事例があるかということでございますが、これににつきましては、わが国においてはその事例がないことは御認識いただいておるとおりでございますが、文献によりますと、外国において次のような事例があったとされております。どちらもイギリスでございまして、二件ございまして、文献によりますと、一つは、ジョン・ブラッドフォード事件というのが、十九世紀のころのことでございますが、ジョン・ブラッドフォードが経営する旅館で殺人事件があって、同人が死刑の判決を受けて処刑されたが、数カ月後に被害者の雇い人が犯人であることが判明したということ。もう一つは、ティモシー・エバンズ事件、これもイギリスでございますが、一九四九年にティモシー・エバンズは妻と子供を殺害したとして死刑の判決を受け、処刑されたが、後日他の事件から同人の無罪が証明されたというものが文献では紹介されております。
以上が死刑の執行関係でございます。
次に、現在法制審議会で審議中の費用補償に関する法案が、いつ、これからどういう作業日程で国会の御審議を仰ぐことになるかというお尋ねでございます。これにつきましては、今年の三月三十一日の会議におきまして、無罪の確定裁判を受けた者に対し裁判確定までに要した費用を補償する制度を採用することの当否と、それが是とするならばその内容について審議するということで、審議会の総会から刑事法部会に調査、検討を行わせてきたところでございますが、法制審議会の刑事法部会では、去る十月二日にこのような制度を採用すべきであるという決定をいたしまして、その内容につきましては、要綱案を添えて法制審議会の会長に報告がなされております。したがいまして、近く法制審議会の総会、本来の法制審議会におきまして、刑事法部会の要綱案をもとに審議が行われることとなりますが、この総会は十二月の初めに予定をされておりまして、法務省といたしましては、審議会から答申が得られますならば、それを尊重いたしまして法案の作成作業に着手して、次の通常国会にはこれを刑事訴訟法の一部を改正する法律案として提出したいと考えております。
それから次に、被疑者補償規程の改正はどうなっておるかということと、その間における運用の実情についてのお尋ねでございます。前国会においてもお答え申し上げましたとおり、われわれといたしましては、刑事補償法の一部を改正する、ただいま御審議をお願いしている法律が成立するのを待ちまして、被疑者補償金の算定基準となる日額をそれに対応して引き上げますとともに、この規程の一層適切な運用を図るための所要の被疑者補償規定の改正を行う予定でございましたが、前国会でこの法律案が廃案となりましたので、目下のところ、その改正を見送って、本国会において改正法律が成立次第、規程の改正を行う所存でございますが、なおその間、じんぜん手をこまねいていてはならないことは申すまでもないわけでございますので、現行の規程の適正な運用を図るという意味から、本年の五月三十一日付で、まだ廃案にならない前でございますが、刑事局総務課長から、そして国会が終わりました後八月二十一日付で、当職から検察庁の長に対しまして通達を発しております。
総務課長の発しました運用通達は、事件本人があらかじめ補償を辞退する旨の意思表示をしていても、補償に関する事件として立件し、裁定するように運用願いたいという趣旨でございます。これは、従来捜査中に被疑者補償による補償は要りませんということをあらかじめ辞退する者がございました場合には、それを受けて立件をいたしておりませんでしたが、そういうことのないように、事件後、補償に関する事件として立件して補償の要否を検討すべきだという通達でございますし、それから私が発しました八月二十一日付の通達は、身柄を拘束した後、嫌疑なし、罪とならずとの裁定主文により不起訴処分に付した場合、その他の裁定主文であっても補償規程の第二条に該当する、罪を犯さなかったと認められる十分な理由があると認められる場合には、必ず立件して補償の要否を裁定されたいという旨の通達で、以上の二つの通達をもって活用を図った次第でございます。
実は結果といたしまして、本年の一月から十月までの規程の運用状況を調査いたしましたところ、補償に関する事件として立件いたしましたものが二十四件で、このうち補償する旨の裁定をしたものが九件、補償しないという旨の決定をしたものが十一件、それからいまだ検討中のものが四件ということでございます。
これは、前国会でも御報告申し上げました、たとえば四十九年は立件一つで補償がゼロであったというようなこと、四十八年は立件が六で補償が二件であったというのに比べまして、増加しておるわけでございまして、その理由はいまだ定かにはいたしませんけれども、推察いたしておりますところによりますと、先ほど来国会におきまして規程の活用を図るべきだという御指摘があり、先ほど申しましたように、いろいろな機会をかりて通達の趣旨の徹底を図ったという結果、立件手続をとっていなかった被疑者において、あらかじめ補償を辞退する旨の意思表示をしていた事件についても立件したというふうな活用を図った結果、さらにこの件数が大幅に増加したものではないかというふうに推察をしておる次第でございます。
なお、規程の改正は、先ほど申しましたように、本改正法案の成立を待って正式に通達する予定でございますが、その骨子は、先ほど私の通達でも申しましたように、嫌疑なし、罪とならずとする裁定主文のものあるいはその他のものでもそういうふうに認められる、たとえば親告罪で告訴なしとして不起訴にしたものでも一応立件してその検討をするというように、必ず立件をするというたてまえにする。いままでは、どちらかというと被疑者側の申し出というような受け身の立場であったのを、必ず立件して、積極的に職権の発動をするように通達を――「することができる。」というのを「するものとする。」というように変えていくとか、あるいは従来なかったところの補償日額の下限を刑事補償法にならって設けるというようなことが主な改正でございまして、そのほかのことは刑事補償法にならいまして規程を整備するということが改正の主な方向でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/5
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006・大竹太郎
○大竹委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/6
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007・小宮山重四郎
○小宮山委員長 横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/7
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008・横山利秋
○横山委員 いま大竹委員にお答えになった続きで質問をするわけですが、この通達並びに補償規程の改正は、本年四月十四日付で本委員会に提出されました案と同じものが通達されていますか。また改正につきましても、提示された内容によって法制審議会に提起をされていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/8
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009・安原美穂
○安原政府委員 御指摘のとおり、前国会で申し上げた内容で通達を改正するつもりであり、かつその精神にのっとりまして、先ほど申し上げましたように、私からあるいは総務課長から清川を図る通達を出しておるわけでございます。
それから、法制審議会への御趣旨がちょっとよくわからなかったのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/9
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010・横山利秋
○横山委員 私の聞きたかった点は、通達がここの委員会に出されたとおりの内容であるかどうか、それから補償規程の改正についても、委員会に出された内容のものでおやりになるつもりであるか、附帯決議の費用補償も、この附帯決議のとおりに法制審議会に提起されるか、こういう三点です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/10
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011・安原美穂
○安原政府委員 最初の被疑者補償の問題につきましては、前国会で出しました内容と、文言は必ずしも一致しておりませんが、趣旨においては全く同じ趣旨の通達に改正をするつもりでおります。
それから費用補償の問題につきましては、前国会における附帯決議の第二項に、「政府は、無難の確定裁判をうけた被告人に対し、その被告人又は弁護人が各審級における公判期日等に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人報酬を補償する制度の採用について早急に検討すべきである。」という御趣旨のとおり、被告人、弁護人の出頭に要した旅費、日当、宿泊料並びに弁護人報酬を補償する趣旨の法制審議会の部会の答申がなされ、近く恐らくはその趣旨に沿った総会の答申がなされるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/11
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012・横山利秋
○横山委員 私は、右の政府の措置に決して満足をしていないものでありますから、今後さらにこういうふうに改善をしてもらわなければ困るという点を含めて二、三質問をいたします。
まず第一に、この被疑者補償規程のお出しになりました通達並びに今後出されるであろう被疑者補償規程の改正については、警察当局へいかにして徹底をされ、この通達、規程改正の趣旨が警察当局で誠実に実行されるかどうか、どういうふうにしてそれを保障されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/12
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013・安原美穂
○安原政府委員 要するに問題は、警察で逮捕状を得て逮捕しながら立件送致をしないという事態がございますと、せっかく検察官が被疑者補償規程によって補償し得る対象である場合があるにかかわらず、埋もれてしまうということがあり得るわけでありまして、それでは被疑者補償規程の精神を生かすことに相なりませんので、われわれ、当然警察当局にもその趣旨を説明をし、徹底を図りますとともに、そういう場合には必ず立件送致させるような処置を各検察庁を通じて努めるべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/13
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014・横山利秋
○横山委員 それは十分その実行方について精査、念査をしてもらいたいと思います。
第二番目の問題として、私はこの被疑者補償規程そのものについて一貫して反対をしてまいりました。つまり、法律的な基礎がない、こういう点であります。被疑者補償規程は法律に準拠して規定さるべきであるということが第一。
第二番目に、今回、通達の骨子を拝見しているんですが、これによって捜査を担当した検察官以外の検察官が立件をすることになっていますからまだしもではありますが、検察一体というような趣旨をも含みますと、「おまえは犯人だ」「おまえは被疑者だ」と言った人間が、間違っておったから補償するという、同じ穴のムジナが自分の間違いを自分で補償するということは、どうにもやはり論理の矛盾があるわけであります。これは時間の関係で省略いたしますが、一言で言いますと、いかなる問題といえども、争いがあれば第三者がこれを決めるべきである、これが第二番目の私の趣旨であります。
法律に規定がないことをやってはいかぬ。被疑者補償規程は、いろいろ御答弁なさりましたけれども、法律に根拠を置かざる規程である、これが第一。第二番目には、争いがあったら、第三者がこれを判断すべきである。この二つの点から、私は被疑軒補償規程について、改正をされる御予定でございますけれども、どうにも納得ができない。改めてこの点について、法務大臣、お考えがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/14
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015・安原美穂
○安原政府委員 まず最初に、すでに昭和三十四年の運用通達におきまして、公訴を提起しない処分をした検察官の所属する検察庁の検察官が、この被疑者補償の要否を裁定するわけでありまするが、裁定の適正を期するために、各検察庁においてこの裁定をする者は、次席検事またはこれにかわるべき者を補償の要否を担当する検察官に指定されたいということを各庁に通達をしておりますので、今回はさらにこの通達を徹底をするということを図りたい。そういうことによって、横山先生のお言葉をかりれば、いわゆる同じ穴のムジナではなくて、できるだけ客観的な判断のできますように、次席検事あるいはそれにかわるべき検察官をして担当させることにしたいということでございます。
なお、法律に根拠がない被疑者補償制度を立法化すべきではないかという御議論につきましては、必ずしも御承服は得なかったのを遺憾と存じまするけれども、被疑者補償というものを請求権にすることは、刑事訴訟法の大きなたてまえの変革に相連なることでありますし、裁判所に犯罪があったかどうかということについて、およそ検察官の不起訴事件を全部その審査の対象にするということは、簡易な手続で補償するという制度本来の趣旨にも反し、裁判所に過重な負担がいき、そして捜査と裁判というものとの区分を混淆することになりやせぬか。なおかつ、被疑者補償請求権ということになれば、請求権の存否ということが争いとなれば、検察官としては、あらゆる事件につきまして徹底して犯罪の存否ということを調べなければならないということは、必ずしも事案すべてについてそういうことまでしなくても、起訴猶予相当の事案については捜査を中断するということが訴訟経済であり、長く被疑者を被疑者としての地位に置かないという意味において人権の保障にも相なるというようないろいろな点から妥当ではない。と同時に、被疑者段階におきましては、拘束日数は二十日程度でございまして、そういう意味において普通の刑事補償の拘束よりも期間が短いわけでもございますので、やはりそういうことによって得る利益と訴訟法のたてまえを崩す不利益とのバランスの問題として、被疑者補償を請求権にすることは妥当でないという考え方はいまも変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/15
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016・横山利秋
○横山委員 これはいまも私の考え方は変わりません。あなたの論理は、一言で言いますと、それはどうもぐあいが悪いと思うけれども、まあまあ、あなたの言うようにするとめんどくさいから、これでひとつ勘弁してくれ、簡単に言うとそういうことなんだ。ですから私は、もう時間がございませんから論駁しませんけれども、あなたの御意見と全く反対であることを申し上げておきます。
大臣、いまの答えがありませんでしたけれども、今度は大臣に伺います。
この附帯決議の第二項、いわゆる裁判費用は今度は補償するということなのですが、私どもが一貫してもう一つ主張しておりますのは、いまの法律は、無罪になった人の拘禁中、刑務所におった日にちについて幾ら補償する、こういうのですが、非拘禁の分も半分補償しろというのが私ども一貫して言っておることなんです、御存じだと思いますが。つまり、おまえは犯人だ、そして刑務所に入れられて、後になっておまえ無罪だった、刑務所におった日にちだけはひとつ弁済する、こういう論理ですね。そんなことを言われても、おまえは犯人だと言われたことによって起こった社会的な信用の失墜、家族の迷惑、それから裁判で闘うための間接的な費用、往復の交通費、商売の不振等は甚大なものがあるということはおわかりだろうと思うのですね。刑務所におった日数だけ幾ら掛けて補償するということでは不合理である、非拘禁の日数も半分だけは補償しろというのが私どもの主張なのです。この非拘禁の半分ということが適当であるか否かはまず議論があるとしても、刑務所におった日数だけは補償するという、拘禁日数に応じて補償するということが、無実であった人の本当に補償になっておるかどうか、その点は法務大臣、どうお考えでしょうか。
私は、今度法制審議会にこの検討を附帯決議の第二項によってお出しになるならば、あわせて、いま私が言った非拘禁の問題、それから、補償規程の法制化の問題、それかろ警察段階においてこの通達及び改正規程が十分に念査され、守られるかどうかという保障の問題等を含めて、国会の論議を法制審議会で十分に検討してもらいたいと思いますが、その非拘禁の問題を含めて、法務大臣の御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/16
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017・稻葉修
○稻葉国務大臣 非拘禁の、疑いをかけられたことによる損害、それも補償すべきじゃないか。私、専門的なことはよくわかりませんけれども、政治的に考えて、社会的に考えて、やはりそういうことは考えなければならぬのじゃないかという感じを持ちますが、そういうことをやるならやはりきちんと、――半分なんというのはどういうことなのか知りません、拘禁の場合の半分というそこの論理はわからないけれども、やはりやるならやる、やらぬなら拘禁に限ると、こういうふうにすべきものではなかろうかという感じを持ちますけれども、いずれにしても、そういうことを全体よく考えて法制審議会に諮問した方がいいような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/17
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018・横山利秋
○横山委員 いまの私の主張も含めて、法制審議会で十分ひとつ御検討願いたい。いまの附帯決議第二項に関する刑事補償法の一部改正が近い国会に出てくると思いますから、そのときに法制審議会の審議の状況を承ることにいたします。
それから、その次には……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/18
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019・小宮山重四郎
○小宮山委員長 大臣の補足があるそうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/19
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020・横山利秋
○横山委員 もういいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/20
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021・安原美穂
○安原政府委員 横山先生、事実を申し上げたいのです。法制審議会の事実だけお聞き取り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/21
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022・横山利秋
○横山委員 大臣が答弁したのに、こっちが要求せぬのに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/22
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023・安原美穂
○安原政府委員 直すつもりはないのです。事実を申し上げます。
実は、先ほど申しました費用補償の答申を法制審議会にお願いした段階におきまして、費用補償も、広い意味では、拘束を受けないが無罪になった者が受けた損害の補償の制度でございますので、いわゆる非拘禁補償の一環をなすものとも思われますので、その法制審議会における審議の過程におきまして、なぜその中で訴訟の費用、直接の存否である費用だけを補償し、横山先生の御指摘のその他の精神的損害、被告人となったことによる精神的損害等を含めた広い意味での非拘禁補償の制度はとらないか、法務省はとろうと考えないかということに対して、私は部会に御説明を申し上げまして、部会におきましても、その点を含めて御議論の上、今回は費用補償の限度で補償すべきだという答申がなされたということは事実でございますので、それを御報告を申し上げたい次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/23
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024・横山利秋
○横山委員 そういう事実をなぜわざわざ言わなければならぬのですか。私は、改めてもう一度検討してもらいたい、こう言っておるのでありますから、はい承知しましたと言っていればいいのです。大臣の言葉は綸言汗のごとしという。綸言汗のごとしとは、一遍汗を流すともうもとへ返らないというわけでありますから、ひとつお含みおきを願います。
死刑に関連いたしまして、ここに法務省刑事局の「刑法改正をどう考えるか」というのがありますが、これは内容を全部議論をすると時間がかかりますから、死刑の問題のところだけ言いますけれども、これは刑事局でお書きになったのですから、刑事局も責任を持っておっしゃると思うのですけれども、この四十六ページに、「最高裁判所は、昭和四八年四月、刑罰が死刑か無期懲役かというのはあまりにも重く、どのように同情すべき事情があっても刑の執行を猶予することができないことなど、普通の殺人と比べて著しく、不合理な差別的取扱いをしている点で、憲法の定める法の下の平等に違反するという判決をしました。」この解説をしておるわけですが、その中でその次の行に、「この判決は、父母などに対する殺人の刑が普通の殺人の刑に比べあまりに重すぎるとして憲法違反の判断をしたもので、父母に対する殺人の刑を普通の殺人の刑よりも重くすること自体が憲法違反であるとしているのではありません。」そんなことを裁判所の判決のどこに書いてありますか。こういう解釈は、最高裁判所の判決を勝手に解釈したものではありませんか。私の言っていることがわかりますか。勝手に「父母に対する殺人の刑を普通の殺人の刑よりも重くすること自体が憲法違反であるとしているのではありません。したがって、普通の殺人罪の刑よりもいくらか重い刑を尊属に対する殺人罪に定めるかどうかは、憲法違反かどうかの問題ではなく、全く立法政策の問題なのです。」こう言っているわけです。自分がこう思うというならともかくとして、最南裁判所の判決を勝手に解釈をするというのは、少し逸脱をしているのではありませんか。しかし、最後の方で、「今の刑法に規定されている」云々「特別の規定を設けないことにしています。」というのは、尊属殺をやめたということを言っておる。だから、ここの解説は首尾一貫しないのだよ。法務官は大体、尊属殺はもうやめたと言っておきながら、自由民主党で揺れ動く状況を見て、この解説には、一部自民党に気がねして解説を書き、そうして最後には、改正刑法草案には特別の規定を設けないことにしたというふうに首尾一貫していないことは、きわめて遺憾な解説だと思いますが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/24
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025・安原美穂
○安原政府委員 実は私ども、最高裁の判決を勝手に解釈はいたしておりませんで、多数意見を横山先生ごらんいただきますと、たとえば「尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない。そこで、被害者が尊属であることを犯情のひとつとして具体的事件の量刑上重視することは許されるものであるのみならず、さらに進んでこのことを類型化し、法律上、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもってただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできず、したがつてまた、憲法一四条一項に違反するということもできないものと解する。」とされて、多数意見は第二段階として、「右のとおり、普通殺のほかに尊属殺という特別の罪を設け、その刑を加重すること自体はただちに違憲であるとはいえないのであるが、しかしながら、刑罰加重の程度いかんによつては、かかる差別の合理性を否定すべき場合がないとはいえない。」と言って、執行猶予も科せられないような重い死刑か無期というようなものは著しく合理性を欠き、憲法十四条に違反すると、こういう論理が多数意見の趣旨でございますので、私どもその解説に書いたことは決してこの多数意見を曲解したものではないように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/25
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026・横山利秋
○横山委員 そこを正しく引用して、この判断自身が「憲法違反であるとしているのではありません。」ということについては、多数意見として書かれておることについて紹介いたしますとか、そういうことを言えばいいのに、少数意見は――あなたの言うようなことであるならば、少数意見はこれから判決に書く必要がなくなる。あたかもこの判決すべてがずらりとして「憲法違反であるとしているのではありません。」という書き方は少し逸脱しておる。わかりますね。そうだろう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/26
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027・安原美穂
○安原政府委員 やはり判例の趣旨は、多数意見によって考えるものでございますので、そう書いたわけでございまして、多数意見はと書いた場合には、少数意見にはこういうものがあったと紹介すべきであろうと思いますが、判例の趣旨といたしましては、多数意見によって紹介するというのが一つの方法である。したがって、へんぱなことをした覚えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/27
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028・横山利秋
○横山委員 それはいかぬ。それはやはり多数意見としてと書く方が正確であり、かつ説得力がある。
それからその次は、同じく死の問題について最近、安楽死の問題があらゆるところで取り上げられています。例のカレンさんに対するアメリカの裁判所の判決は、カレンさんを死に陥らすべきではないという判断が出たわけでありますが、これを機会に一斉に日本におきましても、安楽死の問題について数々の論説、随筆あるいは評論等が出ておるわけであります。この前、私が本委員会におきまして、政府に対しまして所信をただしました。そして、三十七年の名古屋高裁判決で安楽死が認められる最低の要件として提示されました六つ、すなわち、「患者が不治の病におかされ死が直前に迫っている」「苦痛がはなはだしく見るにしのびない」「病人の苦痛緩和が目的」「患者の意識が明瞭な場合には、本人の真剣な嘱託やまたは承諾があること」「医師の手によることを本則とする」「方法が倫理的にも妥当」という六つの名古屋高裁の判決の中に書かれておりますことが、いよいよ具体的に世論の討議の素材として改めて浮び上がってきたような気がいたします。カレンさんの場合においては、この六つに該当しないというふうに私も思うのであります。
法務大臣にお伺いしますが、この安楽死の問題について、最近議論が非常に高まってまいりましたときに、将来法務大臣としては、この安楽死をどうお考えになるのか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/28
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029・稻葉修
○稻葉国務大臣 安楽死の問題が、法学上非常に深刻な問題であり、また、議論が非常に盛んになってきていることをよく承知しておりますが、学説も分かれているだけでなく、安楽死であることを理由にし無罪の言い渡しをした裁判例も皆無であります。したがって、現在の段階で法務大臣としては、安楽死が許されるかどうか、また、そういう方向に日本は進むべきであるかどうかというようなことについて、確定的な見解を述べることは適当ではないと存じますので、お許しをいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/29
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030・横山利秋
○横山委員 適当であるかどうかということと同時に、一体検討をする必要があるかどうかという問題も残っておるわけでありますが、この種の問題について検討をしてみる必要性を考えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/30
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031・稻葉修
○稻葉国務大臣 それは非常に重要なことでありますから、十分研究し検討すべき問題ではあると思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/31
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032・横山利秋
○横山委員 法務大臣は、本委員会においていろいろとお約束をなされておることがございますが、そのお約束なさっていらっしゃることを、あなたの在任中には一歩でも二歩でも前進をさせてもらわなければ困るのであります。あなたが就任早々にお約束をなさったことの中に、この尊属殺の刑法を改正するかどうかということについて、もうずいぶん長いのであります。これは自民党の内部で意見が違うといっても、本委員会において法務大臣として所信を披瀝し、法務省の決意を披瀝されたことでありますから、何はともあれそれを履行さるべきではありませんか。本委員会に提案をして、あと与党がそれに対して議論があるなら議論があるで、本委員会において議論をすればいいのであって、その点があなたは、与党の人間ということと法務大臣ということに混淆があるのではありませんか。私はもう前から、この刑法の問題、尊属殺の問題については、一定の時期において私も開き直りますよ、ですから早く決断をお願いいたしますと言ってあるわけですが、いまもつてその問題はほおかぶりでお逃げになるおつもりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/32
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033・稻葉修
○稻葉国務大臣 私が約束していることは実行せい――その安楽死なんかの問題は、私は、いまは研究の段階である、うんと研究しなければならぬことだ、こういうことでございますが、尊属殺廃止の問題は、そういう方向に行くべきものだ、こういうお約束をいたしておるわけでありますから、なるべく早く成案を得て提出するよう、そうして御承知のような状態にありますから、しょっちゅう説得を重ねておる、非常に努力をしておるということでございますので、早く説得をして成案を提出したい、こういうふうに思っております。責任を感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/33
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034・横山利秋
○横山委員 それはもう何遍もお伺いをして聞き飽きておるわけであります。いまもって、将来も説得をして早く提案をしたいということについて、あなたは可能性を持っておられるのであるかどうか。また、いつまでもそれを説得するまで待っておるというのであるかどうか。一定の期限が来たら、自分の決断としてこの問題を国会に法案として御提出をなさるつもりであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/34
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035・稻葉修
○稻葉国務大臣 尊属殺につきましては、最近また最高裁判所で新しい判決例が出たことでもあり、これは尊属傷害致死の事件でございますけれども、そういうこともございますから、ますます法務省の考えておる、法務大臣として考えておる尊属殺及び尊属傷害致死だとか逮捕監禁だとか、そういうことも含めた全面削除が正しいのじゃないかというふうに思いまして、この新しい判決をもまた根拠として説得力が増してきたと私は思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/35
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036・横山利秋
○横山委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/36
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037・小宮山重四郎
○小宮山委員長 青柳盛雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/37
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038・青柳盛雄
○青柳委員 この法案は七十五国会で衆議院は通過し、参議院でも委員会は通過したのでありますが、本会議で審議に至らず廃案になったわけでありますが、七十五国会の衆議院段階での最終採決の際には、小宮山委員長が附帯決議を提案されまして、それは全会一致で議決されました。今回は附帯決議はされない予定になっておりますので、記録上、一応その決議を朗読いたします。
刑事補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
一 政府は、刑事補償制度の趣旨及び経済事情の変動等を考慮し、抑留、拘禁等による補償の日額及び死刑執行による補償額をより一層増額するよう努力すべきである。
二 政府は、無罪の確定裁判をうけた被告人に対し、その被告人又は弁護人が各審級における公判期日等に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人報酬を補償する制度の採用について早急に検討すべきである。
三 政府は、被疑者補償制度につき、その規程を整備するとともに、その適切な運用を図る所要の方策を講ずべきである。
この趣旨は、前回と同じ法案がいま審議されて採決されようとしておる段階において、その後の状況の変化もありますけれども、基本的には変わっていない。つまり、当委員会の全体の考え方は、附帯決議を新しくやるやらないにかかわりなく変更する必要はない状況だと私は信じます。
そこで、大臣にお尋ねいたしますが、附帯決議がなくともこの趣旨で今後努力されるかどうか、それを一言お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/38
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039・稻葉修
○稻葉国務大臣 御主張のように努力して進める所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/39
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040・青柳盛雄
○青柳委員 そこで、部分的には後から委員長提案で、死刑の執行については増額をされるということが予定されておりますけれども、抑留、拘禁等による補償の日額につきましては、現在のところ修正される可能性はちょっとないようでありますが、ぜひ努力をしていただきたいということを希望いたします。
それは、前回から半年余りしかたっておりませんから、物価情勢などもそんなに変化はないと言えるのかもしれませんけれども、日々物価は上がっており、また賃金も上がらざるを得ないという状況にありますので、本来原案が平均引上率〇・三九四である。これは賃金と物価指数の平均が四三・三、こういうパーセントと比べて余りにもというか、比較しても低いということを考慮すれば、すでに資料として出されているものに比しても低いのでありますから、この資料はまた変わってくるわけであります。したがって、ぜひこれは次の改正を目指して努力を続けていただきたいと思います。
それから、この際ちょっとお尋ねいたしますが、刑の執行を受けた者で補償を受けた例というのは従来どのくらいありますか。この資料によりますと、昭和四十五年度に一人、四十六年度に一人、それ以後はないようでありますが、恐らくいままでに刑の執行を受けてその後無罪になった、つまり再審で無罪になったということだろうと思いますけれども、そういう人が何名かおられると思いますが、統計はお調べになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/40
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041・安原美穂
○安原政府委員 ただいまお尋ねの刑の執行をした者について補償のあった事例は、昭和四十四年から四十八年までの間に三件ございます。件数だけでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/41
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042・青柳盛雄
○青柳委員 三件でも、とにかく刑の執行を受けた人が無罪になったという例があるわけでありますから、この刑事補償法は、その内容において未決の勾留、拘禁などと、刑の執行を受けた場合とを同列に置いております。しかし、裁判所が具体的に決めるときには、いろいろの状況を勘案して額を決定するわけでありますから、そんなに具体的に不公平なことにはなるまいと思いますけれども、上が決まっておりますから、未決の場合で最高限を与えるような状況のときに、既決で執行を受けた者もその最高限でとまってしまわなければならぬというようなのは、いかにも不合理な感じがいたします。既決はもう本当に精神的にも物質的にも未決勾留とは違うわけであります。後から無罪になったんだから青天白日の身になったんだと言われても、もう刑は執行されてしまっているわけでありますから、これを多少区別するような法制的な考え方はないかどうか。裁判所に任せるんだけれども、これを同じにしておくと頭打ちが来てしまったときに困るんじゃないか。この点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/42
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043・安原美穂
○安原政府委員 確かに一般論といたしまして、御指摘のように未決の拘禁と刑の執行のための拘禁とでは、肉体上、精神上受ける苦痛の程度が違うのではないかということは否定できないところであろうかと思いますので、いま御指摘のようなことも含めて、将来の検討の課題にさしていただきたいと思いますが、現行法ではその点を考えながらも一律にそう差別をするというわけにもいかない、結局は裁判所の具体的な事情の判断にお任せして裁量していただくというたてまえでできておることも事実でございます。そこで、現行法におきましてもそういうたてまえを維持するとしても、いま御指摘のように、金額が頭打ちにならないように常に経済事情の変動等考慮しながら改正のための努力を怠らないという心構えが必要かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/43
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044・青柳盛雄
○青柳委員 もう一点だけお尋ねいたします。
先ほどの附帯決議の二番目のところも、先ほどからのお話で次の通常国会には刑事訴訟法の一部改正という問題が上程される状況になっておりますが、この刑事訴訟法の中のいわゆる訴訟費用等の補償といいますか、これは無罪の判決を受けた場合についてだけでございます。ところが、現実には免訴、公訴棄却ということもあるわけでありまして、
〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
この場合はやはり無罪と同じように刑事補償を与えるべきではないか。一つの参考になりますのは、刑事補償法の二十、五条の規定もありまして、まさに刑事補償法の二十五条は前からできておる条項でありますけれども、もし公訴棄却あるいは免訴のようなことになる事情がないならば、無罪になることが諸般の状況上明白な場合には刑事補償を与えるというわけでありますから、刑事補償を与えるような免訴または公訴棄却のない場合の無罪といいますかを、刑事訴訟費用を補償するということにも広げるべきではないかという点が一つ。
それから、再審の場合について、やはりこの刑事訴訟費用の補償を適用すべきではないか。
この二つの点をどうお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/44
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045・安原美穂
○安原政府委員 訴訟費用補職においても、公訴棄却、免訴の場合の補償を少なくとも刑事補償法の二十五条と同じように無罪となるべき事由が明らかな場合にはすべきではないかという御提案でございますが、この点につきましては、法制審議会の部会では刑事補償法と同じような規定を置くかどうかも議論されましたが、訴訟に関する費用の分担の問題であり、かつ簡易、迅速に費用の補償をしようとする制度の趣旨からいって必ずしも適当ではないという考え方が多数を占めて、同じような規定を置かないということになったわけでございますが、これはまだ法制審議会の部会における一応の結論でございまして、近く総会も行われますので、いまこの段階でどうこうということは申し上げる段階ではないというふうに思いますので、御理解をいただきたいと思います。
次に再審の場合の無罪も当然費用補償の対象になる、再審無罪も無罪の中に入るという考えで進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/45
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046・青柳盛雄
○青柳委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/46
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047・保岡興治
○保岡委員長代理 諫山博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/47
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048・諫山博
○諫山委員 四点にわたって質問しますから、簡潔にお答えください。
第一、本年度に死刑執行が何人なされたのか、御説明ください。きのう新聞を見ましたら、従来法務大臣はなかなか死刑執行に判こを押したがらなかった、稻葉法務大臣になって死刑執行にべたべた判こを押すようになったけれども、その実態はなかなかわからないということが書いてあります。私は、いいとか悪いとかいう評価は抜きにして事実を知りたいと思うのですが、ことし町名執行されたのか、お知らせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/48
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049・安原美穂
○安原政府委員 いつの年に幾ら執行したかということは、それから推論すれば何大臣のときに何件死刑の執行の指揮をなさったかということに直ちに結びつく問題でございまして、死刑の執行というのはいわば非常に重要な重大なことでございますために、これにつきましてはいろいろの批判を生む事柄でもございますので、いま御指摘のように何大臣は気楽についた、何大臣はつかなかったというようなことがわかるような事柄に通ずる事柄につきましては、ひとつ御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
ただ、昭和三十年以来昭和四十九年までの間における死刑の執行の人員は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/49
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050・諫山博
○諫山委員 それはさっき聞きました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/50
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051・安原美穂
○安原政府委員 というふうにひとつ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/51
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052・諫山博
○諫山委員 私は、いいとか悪いとかいう評価は加えなかったのですが、これは後でも個人的にでいいから教えてください。私、事実を知りたいと思いますから。
次の質問に入ります。
いま青柳委員から質問された無罪判決があった場合の訴訟費用の補償の問題です。免訴または公訴棄却になっても無罪の裁判を受けるべきものと認められる十分な事由がある場合は、現行の刑事補償法では補償がなされる。ところが、費用補償の場合には、法制審議会の刑事法部会でどうもそれが否決されているということに、私は納得いかないものを感じたわけですが、理論的に考えますと、これを区別する理由は全くないはずです。法務省としてはこの点検討してあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/52
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053・安原美穂
○安原政府委員 当然法務省事務当局といたしましては検討したのでございます。ただし、法制審議会で審議中でございますので、法制審議会の総会の答申を尊重するというたてまえから申しますと、いまこの段階でどうあるべきだということを申し上げることは、諮問した立場からしては非礼にわたりますので、この段階で法務省の見解を申し述べるということだけは御勘弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/53
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054・諫山博
○諫山委員 法務大臣にぜひお考えいただきたいのですが、無罪になって拘束中の刑事補償を受けるその場合の要件と、無罪になってそれに要した訴訟費用の補償を受けるこの要件は、理論的に区別する根拠はないと思います。法制審議会ではどうも区別の方向が出ているようですが、非常に問題だと思いますし、ぜひこの点は積極的に法務省に検討を命じていただきたいと思います。これは答弁は結構ですから。
そこで、三番目の質問に移ります。
被疑者補償規程、この運用がいろいろ問題になっているのですが、私が一つ疑問に思っているのは、被疑者が嫌疑なしあるいは罪とならずというようなことで起訴されなかった。この場合に補償規程で補償がされるわけですが、これは被疑者の権利として認められているのかどうか。具体的に言うと、法務省の方で補償しなければ民事訴訟を起こしてでも補償を要求できる仕組みになっているのか。私は疑問ですから、御説明ください。刑事補償の場合には法律に基づいて当然権利ということで補償されているはずですが、現在の被疑者補償規程ではその点をどのように理解しているのか、御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/54
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055・安原美穂
○安原政府委員 簡単に結論から申しますと、被疑者補償規程における被疑者補償というのは、被疑者であった者ほの権利ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/55
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056・諫山博
○諫山委員 私はこの制度の最大の問題はここにあると思います。
起訴された人が無罪になった、この場合は刑事補償に基づいて無罪になった人の権利として補償がされる。ところが、同じ拘束を受けながら、起訴されなかった、この場合はお上の恩恵として補償を与える、権利としては与えないというのが現在の制度で、ここからさまざまな問題が出てきているわけです。刑事局長通達でなるべくこれをもっと適用するように指導しているようですが、私はこれでは不十分だと思います。どうしてこれを被疑者自身の権利にしないのか。もっと具体的に言えば、どうしてこれを法律で補償しないのかという問題です。法務大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/56
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057・安原美穂
○安原政府委員 この点は数次の国会における論議の問題でございまして、先ほど横山委員のお尋ねに対してもお答えをいたしたところで尽きるわけでございます。要するに、いま御指摘のように権利か恩恵かという分け方、それは確かに法律的にはそういうカテゴリーはございますが、われわれ今後、権利とはしないまでも検察官の積極的な義務のようなものとして運用を図りたいということで、今度の通達でも、「検察官は、補償をすることができる。」というのを、「するものとする。」という意味で、一種の義務づけを行うということによって運用の改善を図りたいと考えておるわけでございます。
これを権利とすることの難点につきましては、先ほども申し上げましたように、権利とするならば権利として、それが罪を犯さなかったことを明らかにする必要があるという意味において、検察官は補償請求権の対象になるかどうかということのために、本来ならば捜査を途中でやめるような起訴猶予の事案になりかねないようなものであっても、――これ以上調べても起訴猶予というようなものについては途中で捜査を打ち切るというようなこともやるわけでありますが、請求権の対象になるかどうかということになりますと、口をかけても捜査を徹底しなければならぬという意味において、被疑者の地位に被疑者を長く置くということが人権からいってかえってマイナスではないかということも考えます。それとともに、先ほど申しましたように、裁判所に請求をするということになろうかと思いますが、裁判所が、およそ検事の不起訴処分にしたもの、いままで道交法を除いても三十数万ある不起訴事件についてどれだけ――請求権となれば、被疑者であった者から請求するわけです。そういう不起訴事件の内容について、犯罪の存否を裁判所が判断するということに相なりますと、裁判所は裁判機関であるとともに捜査機関のようなことをしなければならないということは、現在の刑事訴訟法のたてまえを変革することになるのではないかというマイナスがあり、これは裁判所としても負担に耐え切れない問題になりかねない。と同時に、かつて検察庁が不起訴にした、嫌疑なしとかいうものにしたものが、裁判所で徹底して捜査すればクロであるという判断の出てくる場合もあり得るわけでありまして、これはかえって被疑者のためにはならないということもあり得るということであります。しかも、その裁判は覊絆力はありませんから、その後証拠が出てくれば検察官は起訴できるということになるという意味で、訴訟法のたてまえを大きく変革することになりはせぬかという問題があります。
そこで、そういうマイナスよりも、現在、起訴前の公訴期間は長くても二十数日で比較的短いわけでありますので、そういう制度の得失をバランスをとって考えるならば、これを救済するものとしては、現行の補償規程の適正な運用によるべきではないかというふうに考えておるというのが私どもの考えでございますし、前国会において参考人になられました学者の人々も、被疑者であった者に補償請求を認めることについては強い疑問を出しておるということもございますので、われわれとしては請求権として認めるということには消極的でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/57
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058・諫山博
○諫山委員 私は簡潔に答弁をお願いしているのです。そして法務大臣に見解を聞きたいのです。
いま刑事局長から訴訟技術的なさまざまな説明がなされました。しかし、大切なのは、罪なくして拘束をされる、この人に対して本当に国が誠意をもって補償するのかどうか、拘束された人に請求権を権利として保障するかどうか、まさにこのことに問題があるわけです。そして被疑者にこのことを権利として保障するというのは、罪なき人を不当に勾留するというようなことがなるべく行われないようにという戒めにもなるわけです。技術的ないろいろな難点については指摘されましたが、理論的にはこれを区別する根拠はないと思うのです。法務大臣、もっとそういう人権的な立場から検討させるべきではないかと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/58
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059・稻葉修
○稻葉国務大臣 人権的な立場からいろいろ問題はあるでしょう。先ほど刑事局長が主張したことも、人権を考えて訴訟技術上非常な問題がある、こう申しているのでございますから、人権を無視して何でも平然としている、そして請求の権利として認めないというようなことを言っているのではありませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/59
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060・諫山博
○諫山委員 私、いまの答弁に非常に不満です。国家権力が罪のない人を勾留した、それが三日であろうと四日であろうと、大変な事態だという自覚が法務大臣初め刑事局長に余りないように思いますから、その点はもう答弁要りませんから、ぜひ深刻に検討していただきたいと思います。
最後に質問します。
前回の法務委員会で犯罪被害者補償法案について質問しました。この中で、法務省のある担当官が自分の試案を新聞に発表した。発表したというよりか、新聞記者がその試案をかぎつけて公表したというのが正確だと思います。ところが、それに対して、法務省は始末書を取ったという説明がありました。私はその後いろいろ考えたのですが、これはきわめて重大な問題だと思いました。法務省がいろいろ考える、これを法務省が秘密のうちに作業を進めるのではなくて、マスコミなんかにも資料を提供しながら、広範な国民の批判を受けるということは大変大事なことだと思います。たとえば、少年法改正で植松試案というのがこの間発表されました。そしてごうごうたる非難を浴びたわけです。日弁連なんかも反対いたしました。そしてこの世論の批判によって、植松さん自身も、自分の試案を手直しするということになっております。国民の批判がどれくらい大切かということをこのことは証明しております。法務省のある担当官が、発表したのではないでしょうが、つくっている試案がマスコミに漏れた。そしていろいろな公式の論議も法務委員会でなされた。どうも法務省はこのことをけしからぬというふうに考えているようですが、私は非常にいいことだと思うのです。立法作業というものはこういうふうにして進めるのが正しいと思う。法務省の少数の役人だけが密室の中で作業を進めるのではなくて、もっと広く国民の批判を受ける、そういう立場から見ると、犯罪被害者補償法の一つの試案が新聞に出たというのは、私は歓迎すべきことだと思っておるのです。この人が始末書を取られるというのは全く言語道断だと思うのですが、法務大臣、いかがでしょうか。この問題について法務大臣の見解をちょっと聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/60
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061・稻葉修
○稻葉国務大臣 批判は国民に受くべきである。だから、国民の代表の国会に成案を得て出して、そしてそれを批判を受ける。批判を封ずるなんという考えは全然ありませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/61
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062・諫山博
○諫山委員 でき上がってしまったものを国会に提案する、それをここで論議するということももちろん大切です。同時に、試案をつくる過程でいろいろ国民の批判を受けるということが大切なわけです。たとえば少年法改正の場合でも、法務省がっくり上げてしまったものを提起するというのではなくて、植松試案が公表されたからごうごうたる批判が出て、試案そのものが手直しされるということになるわけです。でき上がってしまったものを出すから、そのとき討議すればいいではないかというのではなくして、法案をつくる過程でいろいろ議論することも大切ではないか。たとえば訴訟費用の問題、これはまさに法案として出される前に私たちが論議する、私たちの論議も取り入れながら正式な法案がつくり上げられる、これが正しいと思うのですが、この試案を発表した人が始末書を取られるということになると、そういう民主的な討議が封殺されます。そのことを言っておるのですが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/62
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063・稻葉修
○稻葉国務大臣 植松試案のような、学者がある法案について学説上自分の試案を発表することは、それはいいかもしれませんけれども、役所として一体となってやるべきことを、役所の中の特定個人が自分の試案を発表することはよくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/63
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064・諫山博
○諫山委員 私は、いまの態度に非常に不満です。法務省の一種の秘密主義、独善主義、そして他の批判を許さないというような非常に封建的な思想があらわれていると思います。私は、この始末書問題だけを問題にするのではなくて、今後、法務省がいろいろな法案をつくろうとする場合に、法案を公式につくる前に、われわれにもっと批判の材料を提供してもらいたいという要望を申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/64
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065・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これにて質疑は終了いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/65
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066・小宮山重四郎
○小宮山委員長 この際、理事会等において十分協議の上、私の手元で足車いたしました本案に対する修正案を提出いたします。
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刑事補償法の一部を改正する法律案に対する修
正案
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/66
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067・小宮山重四郎
○小宮山委員長 修正案はお手元に配付してあるとおりでございます。
その案文の朗読は省略して、修正の趣旨について簡単に申し上げます。
政府提出の改正案は、死刑執行後無罪の裁判を受けた場合の補償金の額を、現行五百万円から一千万円に引き上げようとするものであります。わが国においては、幸い死刑執行後無罪の裁判が行われた事例はないのでありますが、万一、誤った裁判によってかような事態が惹起された場合、国は多額の補償金をもって慰謝を講ずべきであり、改正案による補償額は、誤った死刑執行という特殊かつ重大な損害に対する補償としては不十分であるので、これを一千五百万円に引き上げるよう修正しようとするものであります。
この修正案による補償額も必ずしも十分なものとは思われませんが、他の補償額など諸般の事情を勘案の上、このようにいたした次第であります。
以上が本修正案の趣旨であります。何とぞ御賛同くださいますようお願いいたします。
修正案については、別に発言もないようでありますので、この際、本修正案について内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。稻葉法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/67
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068・稻葉修
○稻葉国務大臣 政府といたしましては、別に異論はございません。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/68
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069・小宮山重四郎
○小宮山委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
刑事補償法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、委員長提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/69
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070・小宮山重四郎
○小宮山委員長 起立総員。よって、委員長提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/70
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071・小宮山重四郎
○小宮山委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきもの決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/71
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072・小宮山重四郎
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/72
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073・小宮山重四郎
○小宮山委員長 次回は、明十九日水曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十三分散会
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605206X00419751118/73
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