1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年十月三十日(木曜日)
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議事日程 第九号
昭和五十年十月三十日
午前零時十分開議
第一 昭和五十年度一般会計補正予算(第1
号) (前会の続)
第二 昭和五十年度特別会計補正予算(特第1
号) (前会の続)
第三 昭和五十年度政府関係機関補正予算(機
第1号) (前会の続)
第四 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣
提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 昭和五十年度一般会計補正予算(第
1号) (前会の続)
日程第二 昭和五十年度特別会計補正予算(特
第1号) (前会の続)
日程第三 昭和五十年度政府関係機関補正予算
(機第1号) (前会の続)
日程第四 恩給法等の一部を改正する法律案(
内閣提出)
午前零時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/0
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001・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 昭和五十年度一般会計補正予算(第1号) (前会の続)
日程第二 昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号) (前会の続)
日程第三 昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号) (前会の続)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/1
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002・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)、日程第二、昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)、日程第三、昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、右三件を一括して議題とし、前会の議事を継続いたします。
委員長の報告を求めます。予算委員長荒舩清十郎君。
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昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)及び同報告書
昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)及び同報告書
昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1号)及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔荒舩清十郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/2
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003・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 ただいま議題となりました昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)外二案につき、予算委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
この補正予算三案は、去る十月九日に予算委員会に付託され、二十日に提案理由の説明があり、二十一日より質疑に入り、昨日おそく質疑終了後、討論、採決をいたしたものであります。
まず、補正予算の概要を簡単に申し上げます。
一般会計歳出におきましては、公共事業費、公務員給与の改善費等八千二百三十億円を追加するとともに、他方、既定経費の節減、予備費の減額及び所得税、法人税、酒税の減収見込みに伴う地方交付税交付金の減額等、合わせて一兆二千七百四十六億円の減額を行い、差し引き、当初予算に対し四千五百十六億円の減少となっております。
歳入につきましては、その他収入の増加百六十五億円、四十九年度剰余金受け入れ七百三十七億円及び歳出予算の減少額四千五百十六億円を控除しても、なお三兆四千八百億円の歳入不足が見込まれ、この歳入不足については公債を発行することとし、このうち、一兆一千九百億円については、財政法第四条の規定に基づくいわゆる建設公債、残り二兆二千九百億円については、昭和五十年度の公債発行の特例法に基づく公債の発行を予定いたしております。
以上の結果、昭和五十年度一般会計補正後の予算総額は、当初予算に対し、歳入歳出とも四千五百十六億円減少し、二十兆八千三百七十二億円となっております。
特別会計予算及び政府関係機関予算につきましては、一般会計予算の補正に関連して、道路整備特別会計ほか十七の特別会計、また、日本国有鉄道ほか五つの政府関係機関について所要の補正を行うことといたしております。
次に、質疑について申し上げます。
第一は、不況対策についてであります。
すなわち、「第四次不況対策では公共投資が中心となっており、個人消費を喚起する施策が欠けている。民間投資もふるわず、輸出の増進も困難な状況にあるとき、冷え切った不況から抜け出すには、この際、インフレやデフレのしわ寄せを受けている低所得者に対し、減税等の方法で購買力をつけ、不況の克服と、あわせて社会保障も達成できるような方策を講じてはどうか」との趣旨の質疑が行われ、これに対し、政府より、「個人消費の伸びは一八%程度の当初見込みに対し、一五%程度の伸びを示し、それほど大変な落ち込みではない。景気対策としては、波及効果の多い公共投資が最も効果的である。低所得者に対しては、景気対策としてとらえることは妥当ではなく、社会保障体系の中で対策を講ずべきであり、政府は、本年度予算においても精いっぱいの措置を講じている。この際、所得減税等を行ってまで、ことさらに消費を喚起することは、使い捨ての経済状態に戻る可能性もあり、資源有限の見地から重大な問題であるし、また、国債の消化が完全に行われるためには貯蓄が重要であり、消費刺激策は適当でない」との趣旨の答弁が行われました。
次に、公債の発行に関してでありますが、本問題につきましては、経済の見通しを誤り、歳入不足を生じ、巨額の公債を発行せざるを得なくなったことに対する政府の責任、公債発行とインフレの問題、公債の消化等、多面にわたって詳細に質疑が行われましたが、特に、特例法に基づくいわゆる赤字公債について、詳細な償還計画と償還財源を明示するよう政府に求めたのに対し、政府より、
一、特例公債は、借りかえをしないで、期限内に必ず償還することとしている、
二、特例国債発行中は、剰余金の全額を国債整理基金に繰り入れることとしている、
三、期限前においても、できる限り償還することとしている、
なお、財源の多くを特例公債に依存することは適当でないので、今後、歳入、歳出について厳しい再検討を行い、速やかに財政の再建を確立したい
との趣旨の答弁がありました。
質疑は、以上のほか、外交、防衛の諸問題政治姿勢、国会の運営問題、独占禁止法の改正問題、公共企業体等職員のスト権、地方財政、公共料金の値上げ問題、公害未対策車の駆け込み生産、食糧問題、労働行政等、国政の各般にわたって、きわめて熱心に行われましたが、詳細は会議録により御承知を願いたいと存じます。
なお、去る二十一日、当委員会に、予算審議とその執行に関する調査小委員会が設置されましたことを申し添えておきます。
かくして、昨日、質疑終了後、日本共産党・革新共同より、昭和五十年度補正予算三案につき編成替えを求めるの動議が提出され、趣旨説明が行われた後、補正予算三案及び日本共産党・革新共同の動議を一括して討論に付しましたところ、自由民主党は、政府原案に賛成、編成替えの動議に反対、日本社会党、公明党、民社党は、政府原案及び編成替え動議に反対、日本共産党・革新共同は、政府原案に反対、同党提出の動議に賛成の討論を行い、採決の結果、動議は否決され、補正予算三案は、多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/3
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004・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 三件につき討論の通告があります。順次これを許します。石野久男君。
〔石野久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/4
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005・石野久男
○石野久男君 私は、日本社会党を代表して、政府の昭和五十年度一般会計補正予算、同特別会計補正予算及び同政府関係機関補正予算三案に反対の討論を行います。(拍手)
三木内閣は、田中前内閣が金脈問題で倒壊して、自民党と政府の支持率が低下したこの危機を救うために、知恵者で巧者な椎名工作で誕生したのであります。三木首相がわりあいに汚れが目立たないで、わりかし進歩的なゼスチュアで政治の道を歩んできたことが、国民の目をごまかすのに役立つと椎名さんが期待したからだと推測します。しかし、三木首相は、本質的に保守政治家であり、考え方も歩む道も、他の自民党の派閥の領袖といささかも変わるところはないのであります。そして、度胸のなさと腰の弱いことでは、スポンサーである財界からも見放されようとしているかに見えるのであります。
そのことは、次の一つのことでもよくわかると思います。
田中前首相は、日中国交に踏み切り、日中共同声明を結びました。すばらしい英断であったと思います。三木内閣が、組閣と同時に、日中平和友好条約を批准しても、国民のだれもが不思議に思わなかったろうし、世界の人々も当然のこととしたに違いないのであります。しかし、それは、いまやむなしいものであります。三木首相に、政治家として、千載一遇の歴史的行為を断行する勇気もなければ、決断力もないからであります。この優柔不断な姿勢に、国民が信をつなぐはずはありません。支持率二十数%はうべなるかなと考えるのであります。
時あたかも、資本主義世界は、その体制に危機が襲いかかり、崩壊の寸前にあります。東西の雪解けはあっても、南北に厳しい反撃の胎動があり、古い帝国主義者たちは、キッシンジャー氏を先頭に、頭を痛めて走り回っているのが現状であり、世界経済首脳者会議はその一つのあらわれでありますが、物価高とインフレの混在している破局の資本主義世界は、どのように危機打開を自画自賛しても、それはしょせん大企業、大独占に独占価格を許し、財政、金融の恩恵を与え、勤労市民大衆に苦悩のかせをかぶせて一時逃れをするほかに道はないのであります。補正予算は、そのことをおくめんもなく展開しているのであります。
反対する理由の第一は、補正予算の性格と、その危険性にあります。
この予算の特徴は、支出を削減して借金をふやしていること、そして、その借金の仕方が安易で無責任であるということであります。
大蔵大臣は、「一般会計における公債の依存度は一〇%を下回り、九・四%となっております」と述べて、当初予算構成における健全性を誇り、税収に対する自信を示したのでありますが、しかるに、税収の落ち込みは約三兆八千八百億円に及び、本補正予算案では、三兆四千八百億、本予算と合わせて五兆四千八百億円の国債発行を行うに至りました。その一般会計予算における国債依存率は二六・三%という未曾有の高きに及んでいるのであります。戦争中を除き、かくのごとき公債依存の予算は、わが国の予算に例はないのであります。昭和六年、八・一%、同年九月、満州事変勃発へ、翌七年が三三・八%になりましたが、今日、この平和のときに、そして大企業、大資本が莫大な留保資産を抱え込んでいるとき、かくのごとき収入見積もりの誤り、膨大な公債発行を行う政府は、責めを国民に負い、総辞職すべきであります。(拍手)
まして政府は、この国債の返却計画を持たず、わが党の追及に会って、間に合わせの説明書をお出しになったが、これは財政法四条第一項に要求されている返済計画と見ることはできぬ粗雑なものであります。政府は、六〇年代高度成長期に過剰利得を得てふくれ上がっている銀行資本、産業資本、隠れた財閥から財源を吐き出させる決断をしない限り、わが国財政は破綻をし、国民は背負い切れぬ借金の責め苦にのたうち回る危機を招くことは必定であります。
反対する第二の理由は、不況対策と物価の問題であります。
大蔵大臣は、「景気回復の起動力として有効需要の造出に寄与する」と言い、経企庁長官は、「最終需要の最大のものは個人消費であります。インフレがおさまり経済が安定すれば、個人消費の伸び悩みは徐々に正当化するであろう」と述べました。果たして、この予算でインフレがおさまるだろうか。この赤字公債は、インフレを助長しても、おさめることはできないのであります。
有効需要がこの予算で造出されるでありましょうか。社会的総生産は、生産、分配、交換、消費の各分野に適切な比例的均衡がないとうまくいかないのである。最終需要としての購買力も、具体性を出すことはできないのであります。
今日のように、生産は無政府状態で、独占が覇を争って体制的に均衡をぶちこわし、中小企業を倒し、失業を増大させているときに、さらに政府の本予算のごとく、大企業、独占向けである限り、この収奪は一層最終需要の根源を枯渇させて、とうてい有効需要を造出することはできないのであります。現に政府は、十月の九日付で、個人消費支出を一八・四%から一五・二%に改めているではありませんか。
公共事業費の大盤振る舞いで、大企業は潤っても、中小企業にはその潤いが及びません。公定歩合の引き下げで大企業に若干の投資意欲が出ても、中小企業は、官公需の比率を高めるとか、事業分野を確保する等の法的措置をとらない限り、投資意欲の出るすべもなく、独占価格と独占利潤の維持に狂奔する大企業に締めつけられて、動きもとれないのが実情であります。
預金利子の引き下げは、高物価で目減りしている預金者に追い打ちをかけるしぐさであります。わずかばかりの蓄えに老後の楽しみを残そうとしている老人、毎日の買い物を詰めて、子供たちの養育費や不時に備えて貯金している労働者や、農家の主婦の方々の生活の苦しみを知らなさ過ぎる、血も涙もない自民党、三木政府には、あきれて物も言えぬという感じであります。
酒、たばこ、郵便料金の値上げも、そのとおりであります。物価にはね返りが少ないという政府の感覚こそ、庶民離れのした、資産階級ぴったりの自民党の体質であって、私たちは反対であります。
政府はコストインフレを宣伝するが、その元凶は、この不況のもとで操業短縮をしたり、不況カルテルで価格の下落を押しとめている大企業、独占の企業行動にあるのであります。独占価格、寡占価格形成による硬直性にメスを入れない限り、これは改まりません。独禁法の改正を渋る政府にこそ、責任があるのであります。労働者の賃金は物価の後追いをしているにすぎないのであります。
反対理由の第三は、地方財政についてであります。
地方財政の税収減は目に余るものがあります。政府の指導と税法の誤りが、今日の危機を招いているといっても過言でありません。ところが、この補正では地方交付税交付金を一兆一千億円減額しているのでありますが、政府は、この減額された金額を資金運用部から借り入れ、さらに一兆二千七百億円の地方債を追加するなどの措置をとっておりますが、すべて借金政策ですから、地方自治体の一時しのぎの策にすぎないのであります。これでは、自治体の窮状にこたえることはできないのであります。
最後に、前田中内閣が約束したスト権の解決について、三木首相が予算委員会で答弁するごとに後退した態度は、議会の子と自任する政治家に偽りがあり、議会無視の態度であると断ぜざるを得ません。
よいことずくめのライフサイクルも、世界首脳会議の出席も、あったものではないのであります。また、三木・フォード会談による新韓国条項の新たな対米従属は許しません。政府の反民主的反動的な姿勢を許すことはできないのであります。
労働者の生活を踏みにじる本予算案に対して、私は、以上申し述べて、政府提案の補正予算案に反対の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/5
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006・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 湊徹郎君。
〔湊徹郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/6
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007・湊徹郎
○湊徹郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十年度一般会計補正予算外二案に対し、賛成の討論を行うものであります。(拍手)
今回の補正予算の内容は、これを一言で申しますと、三兆八千七百九十億円に上る歳入不足の大部分を、いわゆる建設国債と特例国債の増発で埋めつつ、当面する景気の回復と雇用の安定を図るため、さきの第四次不況対策で国民にお約束をしてきた公共事業費等を追加しようとするものであります。
これまでの補正予算は、公務員の給与改善、米価改定、災害復旧などの歳出増加分を、いわゆる税の自然増収で賄うのが、例年の基本的パターンであったわけでありますが、それに比べますと、まさに事態急転の感があります。このことからも、今日の日本経済が、いまだかつて経験したことのない、きわめて困難な局面に立たされていることが理解されるのであります。
すでに所信表明演説、経済及び財政演説で明らかにされておりますとおり、年初来徐々に進行しておりましたインフレが、一昨年秋の石油ショックを契機として一挙に火を噴き、わが国経済が予期せざる強烈な打撃を受けるに至ったことは、いまなお記憶に新しいところであります。卸売物価及び消費者物価は文字どおりの狂乱状態を呈し、国際収支もまた、四十八年度わずか一カ年間で、基礎収支約百三十億ドルに上る巨額の赤字を記録したのであります。
かかる異常な事態を克服するために、調整過程の第一年目に当たる四十九年度においては、総需要抑制策が強力に推進され、その結果、次第に物価の鎮静と国際収支の改善を見るに至ったのであります。そして、調整過程の第二年目に当たる五十年度は、物価の鎮静ないし安定への徴候が次第に定着していく中で、いかに不況を克服し、景気を浮揚させていくかが最も重要な課題となっているのであります。
しかし、いわゆる全治三カ年と言われる重傷を負い、簡単に回復しがたい深手を受けた日本経済を、本来の健康な姿に戻すことは容易なことではありません。
本年春、景気が一応底入れした後、マクロで見る限り、生産、出荷の趨勢は増加の傾向をたどっておりますが、ミクロの産業別、企業規模別、地域別に見た経済の実態は、いまなお深刻な不況の底に呻吟し、苦境を脱し切っておりません。特に、景気回復の決め手となる個人消費、民間設備投資、輸出など最終需要は低迷を続け、いま一つ盛り上がりに乏しい状況にあります。これが法人税を初めとする三兆八千億円を超える税収の落ち込みにつながっていることは言うをまちません。
したがって、全治三カ年と言われるわが国経済の療養過程において、一方においては、巨額に上る税収の落ち込みをカバーし、他方においては、財政主導による需要喚起のために、いわば緊急避難的な意味で特例国債を発行し、これによって、この異常な事態の乗り切りを図ることは、真にやむを得ない措置であると判断するものであります。
この局面に遭遇して、なお赤字国債の発行には反対を続け、他方では、不況対策の積極的な推進を唱える意見が一部にありますが、これはまさに、木を見て森を見ずのことわざどおり、総合的な政策運営に責任を感じない人気取り的な議論と言わざるを得ません。(拍手)
私は、そのことよりもむしろ、補正予算成立後の財政、経済の運営こそ重要であると考えるものであります。
予算委員会におきましても、特に大量の国債発行については、その歯どめ措置、国債消化の方法、償還計画の問題などについて、委員各位からいろいろな懸念が表明されました。私は、これらの懸念が、全くの杞憂であるとは思いません。この点については、政府においても十分配意されることを切に望む次第であります。
しかしながら、二十兆円前後とも言われる大幅なデフレギャップが存在する今日、国債の発行に当たって、市中消化の原則を堅持し、これに関連して波動する資金需給の動向を慎重に見守りながら、その円滑な消化を図るならば、鎮静化に向かいつつあるインフレに再び火をつけるような事態には絶対に至らないと信ずるのであります。
スタグフレーションからの脱却のために、景気とインフレの双方をにらんだ経済のかじ取りには、従来にも増して、柔軟性と機動性が要求されます。その意味で、公定歩合の引き下げを含む一連の金利政策を並行させ、財政と並んで金融政策の運用に期待することは、これまた当然のことと考えるのであります。
かかる見地に立って、本補正予算の内容に関し、二、三の論点を述べて、賛意を表明したいと存じます。
まず第一に、今回の補正予算の主なねらいは、一般公共事業、災害復旧事業、社会福祉施設、文教施設等の各種施設の整備のほか、住宅対策、公害対策を含め、事業規模にして一兆六千億円の追加を行い、これに中小企業に対する金融措置を加え、合計二兆一千億円の施策を実施して、景気のてこ入れをしようとするところにあります。
調整過程の道のりは、いまだ半ばに至っておりません。今回の補正予算において、五十一年度以降、インフレなき成長を定着させることを主眼として、一つは各方面のニーズ、二つには景気に対する浮揚効果、三つ目には施策を各分野、各地域に均てんさせることなどを基本方針とし、生活基盤投資に重点を置き、事業規模や事業内容を適正に選択したことについて、何よりもまず第一に敬意を表するものであります。
第二は、地方財政対策として、苦しい借金財政の中で、地方財政計画に計上された歳入の確保等に努力したことであります。
その一つは、国税三税の減額に伴う地方交付税の減収補てんや、地方公務員の給与改定財源等のため、一兆一千二百億円に上る額を資金運用部から融資し、その利子を国の負担とするほか、臨時地方特例交付金二百二十億円を計上したことであります。その二つは、地方税の減収、公共事業の追加に伴う地方負担の増加に対処し、一兆二千七百億円の地方債を追加したことであります。
これらは、いまだかつてない危機に直面した自治体財政の窮状を救うとともに、不況対策実施の大半について責任を持つ自治体行政の円滑な推進を図るための措置であり、その努力は十分評価されるべきものであると考えるのであります。
第三に、人事院勧告の完全実施のための国家公務員の給与改善を初め、苦しい財政の中で、生活、福祉など各般にわたり、きめ細かい個別的対策が十分配慮されている点であります。
最後に、私は、いま国民が政治に求めていることは、特に、タイムリーな政策の樹立と、その効果的な実行であると思います。毎日の生活に不安を感じ、将来の展望を失わしめるほどの最近の深刻な経済情勢のもとでは、適時適切な措置を強力に実施することが特に渇望されております。一刻も早くインフレなき繁栄を実現するため、政府の適切かつ強力な財政運営を切に期待し、本補正予算に賛成の意を表して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/7
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008・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 林百郎君。
〔林百郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/8
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009・林百郎
○林百郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題覆りました政府提出の補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。(拍手)
まず、討論の最初に指摘しなければならないことは、三木内閣は、臨時国会召集後一カ月近くも補正予算案を提出しなかったのみか、逆に、真っ先に郵便料金、酒、たばこの値上げ法案を提出し、その強行成立を図る方針に出たことであります。これは政府・自民党の議会制民主主義を踏みにじる許しがたい暴挙と断ぜざるを得ません。(拍手)
現在、国民生活は、長期にわたる深刻な不況とインフレの二重苦のもとで、失業者の増大と、かつてない就職難、中小企業の深刻な経営難と倒産の増大、農業危機の重大化に直面しております。政府統計にあらわれたところによってさえ、実質賃金は低下し、勤労国民の生活の切り下げ、インフレによる福祉水準の実質的切り下げなどにより、国民生活の深刻な破壊が進行しているのであります。(拍手)いま、国民のこの国会に対する期待は、この歴代自民党政府によってもたらされた国民生活の危機の根源にメスを入れ、物価の安定、国民生活の防衛と国民本位の不況対策を進めるための緊急対策をとることであります。
このような見地から、日本共産党・革新共同は、現実政治に責任を負う政党として、予算委員会において、国民本位の立場に立って、本補正予算案に対する全面的な組み替え動議を提出いたしました。このわが党の組み替え動議の示す道こそ、真に、国民生活と日本経済の危機を打開する唯一の道であると強く確信するものであります。(拍手)
以上の見地に立って、政府の補正予算案に反対する理由を具体的に申し述べたいと思います。
第一に、本補正予算案は、酒、たばこ、郵便など、公共料金の大幅値上げを図っていることであります。
これが国民生活に直接大きな打撃を与えることは明らかであります。しかも、その値上げの根拠に重大な疑問があることは、わが党議員の予算委員会での追及で政府が提出した資料によっても明らかではありませんか。また、この値上げの強行は、引き続く国鉄、私鉄、電報電話、電力、麦などの一連の公共料金引き上げの突破口となるものであり、断じて容認できないものであります。(拍手)
第二に、本補正予算案は、緊急不可欠の国民の生活と経営を守るための施策がほとんどとられていないことであります。
わが党が予算委員会で追及し、組み替え動議においても要求してきたように、いま緊急に必要なことは、失業保険給付の延長、社会的に不当な解雇の規制、中高年層、障害者の雇用促進、新規学卒者の就職機会の増大など、雇用と失業対策の緊急の措置をとることであります。また、中小企業の経営の危機を打開するために、官公需の五割以上を中小企業に振り向け、中小企業固有の分野への大企業の進出を規制し、金融面でも手厚い対策をとることであります。さらに、老齢福祉年金と生活保護基準を緊急に改善することが必要であります。
しかるに、本補正予算案は、失業給付改善の要求を無視し、失対事業拡充の措置を全くとろうとしておりません。また、中小業者に対する政府関係機関の貸付条件は何ら改善を図ろうとせず、一方、官公需の発注は、わが党議員の追及で改善を約束はしたものの、その大部分は依然として大企業向けであります。あまつさえ、老人福祉費、老人就労あっせん事業費、身障者のための点字図書館、精薄者のための厚生施設費など、軒並みに減額し、さらに、インフレで苦しんでいる庶民の預貯金の金利の引き下げを強行しようとしています。このことは、三木内閣の言う福祉重点、中小企業へのきめの細かい配慮などが、いかに欺瞞的なものであるかを改めて暴露したものと言わざるを得ません。(拍手)
反対の第三の理由は、本補正予算案は、不況対策という口実で莫大な資金を大企業本位の大型公共事業に振り向けていることであります。
高速道路、新幹線、本四架橋など、すでに破綻したはずの列島改造の目玉が軒並みに復活され、大企業に大きな利益を約束している点であります。
総理は、その波及効果が中小企業にも及ぶと強弁していますが、大企業がこの不況で下請中小企業を切り捨て、整理していることは、わが党議員が予算委員会で追及したトヨタ自動車の事例を見ても明らかであります。しかも、トヨタ自動車に至っては、世論に挑戦して、公害対策車の生産を故意にサボタージュし、公害をばらまき、国民を犠牲にしているではありませんか。
今日の不況とインフレの同時進行の状態を克服するために急ぐべき施策は、言うまでもなく、公営住宅、学校、保育所、上下水道、公園などの生活基盤の整備であり、また、つり合いのとれた経済発展の土台を築くための農業基盤整備、石炭復興への投資であります。
現在、住宅困窮世帯は実に一千万世帯、小中学校の不足は九千校、保育所に入所できずに待機している幼児は、実に二百万人という状態であり、このことは政府が明らかにしているではありませんか。(拍手)しかるに、本補正予算案では、公営住宅の建設はゼロ、保育所予算はわずか十億円、公害対策費は削減さえされているではありませんか。これらの点を見ても、本補正予算案が、いかに国民の要求を無視したものであるかは明らかであります。(拍手)
第四に、本補正予算案は、地方財政を一層抜き差しならぬ危機に追い込む点であります。
三木内閣は、地方交付税交付金一兆一千億円の減額を借金で賄わさせているではありませんか。そればかりではなく、地方税の減収補てん債の大部分については、政府資金による引き受けをかたくなに拒否して、縁故債によらしているではありませんか。国民生活を守り、住民福祉を高め、地域住民の生活を守るためには、身近なところに仕事を興していくことが必要であり、このためにも、いまや、地方財政の危機打開は、地方自治体はもちろん、地域住民によって強く求められております。
このためには、わが党が予算委員会に提出した組み替え動議で提起したように、交付税減収による借入金返済は国が行うこと、地方税減収分は全額政府資金による減収補てん債を認め、一般会計から利子の補給を行うべきであります。また、高校新増設に対する国庫補助制度の新設にも、いまや当然踏み切るべきであります。また、郵便貯金を原資とする資金運用部資金の運用は、地方財政中心に行わなければなりません。
本補正予算案は、このような今日の地方自治体の切実な要求を全く踏みにじっていると言って過言ではありません。
本補正予算案に反対する第五の理由は、本補正予算案は、今日の財政赤字の犠牲を国民に押しつけながら、大企業のための財源を、国民の負担において捻出しようとしているところであります。
三木内閣は、公共料金の大幅引き上げとともに、二兆二千九百億円に上る巨額の赤字国債を発行しようとしているのであります。本年度の国債発行総額は、実にこの赤字国債を含めて五兆四千八百億円となり、一般会計の国債依存率は二六・三%に達し、実に歳入の四分の一を超える異常な事態となっているのであります。
このような大量の赤字国債の発行が、ますますインフレを促進し、長き将来にわたる国民に対する重税の押しつけとなることは自明のことであり、三木内閣のこれに対する責任は実に重大であります。
わが党が主張するごとく、大企業に対する法人税の還付制度や、法人税の逆累進の結果を生み出す不公正税制の仕組みを是正すれば、それだけでも約二兆円の財源があります。さらに、不要不急の経費である莫大な軍事費や、大企業への補助金を削減することによって、二千数百億円にも達する資金が出てくるのであります。かくすれば、赤字国債の発行をしなくとも、十分に財政を賄うことができるのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/9
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010・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 林君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/10
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011・林百郎
○林百郎君(続) 国民に犠牲を平然と押しつける本補正予算案には、わが党は国民とともに強く反対するものであります。(拍手)
以上、五点の反対理由を明確にし、政府・自民党がこのような反国民的な補正予算案をあくまで押し通すのであれば、国民生活の危機は一層深刻になることは、火を見るよりも明らかであります。この責任は、挙げて自民党三木内閣にあることを厳しく糾弾し、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/11
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012・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 坂口力君。
〔坂口力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/12
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013・坂口力
○坂口力君 ただいま議題となりました昭和五十年度補正予算三案に対し、私は、公明党を代表して、反対の討論を行うものであります。(拍手)
具体的に反対の理由を述べます前に、政府・自民党の国民無視の国会運営について、一言触れたいと思います。
政府は、九月十一日に国会を召集しておきながら、補正予算案を提出したのは今月九日でありました。酒、たばこ、郵便料金の値上げを先行させることを目的として、国会対策の手段に使うために、あえて補正予算案の提出をおくらせたと言わざるを得ません。政府みずから、今国会は、不況克服の施策を織り込んだ補正予算を審議するために開催したと称した以上、当然、補正予算案を今国会の冒頭に提出できるような会期をセットするのが政府の責任であったはずであります。
補正予算案の提出が予定よりおくれたのであれば、その間に、先国会で積み残されました生活関連法案や、経済界のルールを改革するための独占禁止法の一部改正案をまず提出するのが当然であります。(拍手)にもかかわらず、国民の反対する酒、たばこ、郵便料金の値上げ法案を強引に通過させてしまった暴挙は、断じて許すことができません。
私は、政府・自民党に対して強く反省を求めるものであります。この国会運営によって三木政権は延命できたとしましても、中小企業者や国民の延命には断じてつながらないことを強く主張するものであります。
以下、三案に対する反対の理由を申し上げます。
第一は、今回の補正予算案は、過去における政府の政策失敗にほおかむりし、未来に対する国民の不安を増大させていると言わねばなりません。いま国民が望んでいることは、百歩譲って、いままでの政策失敗に目をつむるとしても、せめて、未来に明るい希望を持ちたいとひたすら念願しているのであります。この願いすら断ち切られた国民の不満と怒りが、三木内閣の支持率低下の大きな要因になっていることを知り、三木総理は深く反省しなければなりません。
当面するわが国経済は、戦後最大の深刻な事態に追い込まれ、失業者は百万を超え、企業倒産はなお減少の気配すら見られないのであります。このような事態は、いかに三木総理が強弁したとしても、政府の政策失敗は動かしがたい事実であります。経済成長四・三%を確保し、その上で物価を安定させるという年度当初における政府の公約を、半年を待たず、すでに放棄してしまったことは、物価一点集中主義の誤りであり、内外経済情勢に対する政策運用の失敗であったことは明白であります。しかも、物価が依然として一〇%以上の上昇を続けており、もはや何をか言わんやであり、呼吸、脈搏ともに乱れた末期的症状と言わなければなりません。(拍手)
私は、今回の補正予算は、不況、インフレの被害を最も強く受けている国民生活を救済し、将来の不安をなくするため、いまこそ、低所得者層に対する所得税減税、さらには、老人、生活保護世帯、母子家庭等の社会保障政策の拡充を示し、優先させるべきであると思うのであります。
景気対策のための公共事業は、景気浮揚と同時に、これまでおくれていた公共住宅、上下水道、学校、保育所など、生活関連の公共事業を挽回する絶好の機会でありますが、この点の配慮が全く欠けていることを指摘したいのであります。
第二は、高度経済成長体質を温存したままで、赤字国債を含む三兆四千八百億の国債を発行しようとしていることであります。
この巨額な赤字国債の発行が、高度経済成長期における放漫財政、インフレ、五十年度税収見積もりの重大な誤りに原因していることは当然でありますが、最初にかけ間違ったボタンは最後まで間違うたとえどおり、国債発行の前提となる徹底的な歳入歳出の洗い直し、償還計画、市中消化の歯どめなどが全く講じられていないという二重三重の誤りを重ねているのであります。このことは、予算委員会において、わが党の正木氏が厳しく政府に迫ったところであります。
昭和四十九年度末における国債の保有状況は、総保有額九兆六千五百八十四億であり、市中金融機関の持ち分は一兆九千五十二億円、すなわち一九・七%に過ぎず、四十八年度末に比べても多少の増加があるだけであり、現状では日銀の買いオペに頼らざるを得ず、インフレになるのは必至であります。
また、不公平税制にも手をつけず、ただ金融機関の貸し倒れ引当金の繰入率を引き下げただけであります。しかし、それも最初の意図から大きく後退して、千分の十から千分の五とするものを、補正予算案では、当面、千分の九・五にしております。また、経費の節減としては、七百四十一億円削減した程度なのであります。
一方、償還計画は、全くないに等しく、借りかえをせず、十年間で二兆二千九百億円償還することは、容易なことではないのであります。政府みずから言う低成長下において、飛躍的な税の増収が望めない現在、償還財源対策を明確にすることは当然であり、また、国民の不安を少なくするためにも、きわめて重要であります。
そのため、わが党は、償還のための特定財源として、インフレで異常な増加をした大企業保有の膨大な土地に対し、その再評価益課税を創設し、これを十年間、分割納付させるよう要求したのでありますが、政府はいささかも耳を傾けようとしなかったのであります。これでは、付加価値税等の新税創設によって、国民に新たな負担を課そうとしていると疑われても仕方がないのであります。したがって、償還財源の明記こそ、赤字国債を余儀なくした政府・自民党のせめてもの国民に対するわび状であると言わざるを得ないのであります。
反対理由の第三は、窮地に追い込まれている地方財政の救済が地方自治体の巨額な借金にゆだねられていることであります。
国税減収に伴う地方交付税交付金の減額分については、国が全額補てんの責任を持つことは当然と言わなければなりません。百歩譲っても、地方自治体が資金運用部資金に返済するための財源対策を講じなければならないはずであります。政府は、よもや高度成長期のように自然増収が期待され、それによって、地方自治体が借金を返済できるとは思っていないでありましょう。だとすれば、全く成り行き任せと言わざるを得ません。したがって、この際、地方交付税の交付税率を引き上げる等の具体案を要求するものであります。
また、地方税の減収に対する補てん措置も納得できるものではありません。かねてから課題となっていた税制改革や税源再配分等に何ら手をつけないまま、今日に至って、不況の影響を直接受ける地方税制の改善に努力を払わず、地方税の落ち込みを地方債に任せ、その大部分を地方自治体の民間資金調達に任せてしまっているのであります。租税特別措置や地方税の非課税措置などの洗い直しや、法人事業税の外形課税及び事業所税の範囲の拡大を図るべきであります。
さらに、地方自治体の超過負担の解消に真摯な努力を傾けず、また、地方自治体の一時借入金、すなわち財政調整資金の確保についても、具体的な対応策を持っていない補正予算をとうてい認めることはできないのであります。
第四は、中小企業対策及び雇用対策がきわめて不十分であることであります。
戦後最悪の状態にある中小企業の倒産、失業率の高水準という事態に対し、いかに解決するかという見通しも明らかになっていません。実質経済成長率二・二%、稼働率九〇%といっても、それが、中小企業や失業者に希望を与え得る説得力を持ったものではありません。中小企業を倒産の危機から救済するためには、中小企業が直接潤う国民生活関連の公共事業の遂行を初め、公明党が提唱している生業資金を確保する無担保、無保証、無利子の融資制度の創設、さらには中小企業減税、大企業の不当な中小企業分野への進出規制など、総合的かつきめ細かな対策をとらなければならないのは当然であります。
雇用対策にしましても、新規学卒者の就職対策、中高年者や身体障害者の失業回避、不払い労働債権の保全等についての具体策や、雇用調整給付金の支給延長について、明確な方針と確約を示すべきであります。
反対理由の第五は、補正予算が多くの国民が反対する酒、たばこ、郵便料金の値上げを前提として編成され、また赤字国債を発行するなど、物価を上昇させる要因を数多く抱えていることであります。
物価は依然として一〇%台の上昇を続け、原油の値上げを理由に大企業製品の値上げが予想される今日、公共料金の値上げは絶対に避けなければならないことは言うまでもありません。もし酒、たばこ、郵便料金に続いて、国鉄、私鉄、電話電報料金などの値上げが強行されるならば、不況の回復はおくれ、さらに厳しい物価高という事態に直面しなければなりません。公明党は、物価を押し上げる要因の多い補正予算案には強く反対するものであります。
以上、数点について反対理由を申し述べましたが、国民生活を無視し、しかも、今後さらに国民の犠牲と負担を深めようとする補正予算案の内容を編成替えすることを強く要求して、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/13
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014・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 和田耕作君。
〔和田耕作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/14
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015・和田耕作
○和田耕作君 私は、民社党を代表して、ただいま提案されております昭和五十年度の一般会計、特別会計並びに政府関係機関等の補正予算案に対して、反対の討論を行いたいと思います。(拍手)
まず第一に最も遺憾とするところは、政府の不況対策が余りにもおくれた結果、不況の深刻化と長期化を来したことであります。
すでにわが党は、昨年十月以来、わが国の経済が容易ならぬ困難に直面しつつある現状にかんがみまして、経済の運営については、物価の安定と不況克服の二正面作戦を展開すべきことを強く要求してきたのであります。しかるに政府は、経済見通しについて、本年四月ごろから薄日が差し、春闘で労働者の良識ある態度が期待されるなれば、景気は次第に回復するという、きわめて楽観的な態度をとり続けてきたのであります。しかし、現状は、春闘は政府の予想をはるかに下回る一三%台ということになったにもかかわらず、企業内容は次第に悪化し、雇用不安は激化し、倒産の増大となり、ひいては、戦後最大の歳入欠陥という不測の事態を現出したのであります。これは、明らかにインフレと不況が同居する新しい経済の事態に対して、政府の誤った経済運営の結果だと言わざるを得ません。(拍手)
次に問題となるのは、本臨時国会に対する政府・自民党の思慮を欠いた態度であります。
現在国民が求めているものは、物価の安定を確保しながら景気を回復させ、雇用と国民生活の安定を図ることであります。この観点からするなれば、酒、たばこ、郵便料金の引き上げ法案は、いかに予算関連法案であるとしても、物価と国民生活を守る立場から慎重に再検討することが必要でありました。少なくともこれを最優先さして、がむしゃらな強行採決などをすべきではなかったのであります。その結果、長期にわたる国会のストップとなり、もし前尾議長の冷静な裁断と民社党の思慮ある決断がなければ、国会は国民の信を失う危険をはらんでおりまして、その因をつくった政府・与党の政治的な識見を疑わざるを得ないのであります。(拍手)
第三に問題になる点は、この補正予算並びに関連施策の内容の陳腐さについてであります。
本予算では、このような状態でありますから、最も工夫すべきことは、インフレで大もうけした人々に対する課税、たとえば富裕税、また、弱い立場の人々に対する減税、たとえば中小企業の減税などを策定することによって、社会的な公正感を引き出して、国民の協力を求めることであります。このことは、少なくとも来るべき通常国会では真剣に考慮をすべきものでありましょう。
次に、余りにも型通りの景気刺激策にとらわれて、本四架橋、新幹線、高速道路など、産業基盤投資を重視する一方、わが党が八月二十八日に要求した住宅の大量建設、学校や上下水道、中小企業の緊急対策など、国民生活の向上に直結する施策を軽視していることであります。
さらに問題にすべきことは、公定歩合の引き下げに伴い、庶民の預貯金の金利まで引き下げようとしていることであります。
その理由はいろいろあるとしても、しかし、依然として消費者物価が大幅に上昇し、預金の目減りが続いておる現在、さらに目減りの拡大をもたらす預貯金金利の引き下げは、国民大多数の断じて容認できないところでありましょう。(拍手)政府・自民党の企業優先の姿勢を端的に示したものと言っても過言ではありません。
最後に、本予算案の重要な問題点は、戦後最大の歳入欠陥をもたらした責任の所在が不明確であり、かつ、赤字国債の安易な大量発行を予定している点であります。
いまさら申すまでもなく、今年度の歳入不足は戦後最高の四兆円にも達しており、政府は、この歳入不足をもたらしている不況が、あたかも石油ショック、インフレ対策上やむを得ないものとして、予算委員会における審議においても、何ら反省の弁が聞かれず、責任の所在が不明確な点であります。狂乱物価を一時的に引き下げる代価として深刻な不況を現出したことは、最善を尽くしたとは言えません。この政治責任を謙虚に反省することが、今後にとって重要であることを銘記すべきであります。
また、政府は、歳入不足の大部分を、三兆四千八百億の公債発行によって処理しようとしておりますが、大量の国債発行がもたらす将来の財政インフレの危険に対して、国民が納得できる防止策は何ら示していないのであります。剰余金の全部を繰り入れると言っておりますけれども、この二、三年に剰余金が出る可能性がありますか。さらにまた、来年以降の財政がどのような姿になるのか、今後、大量国債を抱えた財政にいかに対処されようとしているのか、全く不明確でありまして、政府のその場しのぎの経済運営に強く反省を求めたいのであります。(拍手)
以上、いろいろと反対の理由を述べてまいりましたが、わが党の基本的な立場は、自由な社会を守るためには、自由経済を修正することが必要であり、この見地から、経済安定・計画化基本法と、国民参加による民主的な経済計画を提唱しているのであります。政府・与党も、現に直面している怪物、スタグフレーションに対して、使い古しの総需要抑制や景気刺激策にこだわらず、もっと構造的、計画的な施策が必要だと思うのであります。
以上、補正予算案に対して反対の理由を述べて、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/15
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016・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/16
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017・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 三件を一括して採決いたします。
三件の委員長の報告はいずれも可決であります。三件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/17
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018・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
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日程第四 恩給法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/18
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019・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 日程第四、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長藤尾正行君。
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恩給法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
—————————————
〔藤尾正行君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/19
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020・藤尾正行
○藤尾正行君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、昭和四十九年度における国家公務員給与の改善率及び公務員給与と恩給との水準差の補てん分により、恩給年額を三八・一%増額する等、十一項目の改善措置を行おうとするもので、公務員給与と恩給との水準差の補てん分は昭和五十一年一月一日から、その他の措置は五十年八月一日から、それぞれ実施しようとするものであります。
本案は、九月二十日本委員会に付託、十月二十八日、政府より提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、これを終了、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/20
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021・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/21
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022・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/22
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023・前尾繁三郎
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午前一時二十六分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 三木 武夫君
法 務 大 臣 稻葉 修君
外 務 大 臣 宮澤 喜一君
大 蔵 大 臣 大平 正芳君
文 部 大 臣 永井 道雄君
厚 生 大 臣 田中 正巳君
農 林 大 臣 安倍晋太郎君
通商産業大臣 河本 敏夫君
運 輸 大 臣 木村 睦男君
郵 政 大 臣 村上 勇君
労 働 大 臣 長谷川 峻君
建 設 大 臣 仮谷 忠男君
自 治 大 臣 福田 一君
国 務 大 臣 井出一太郎君
国 務 大 臣 植木 光教君
国 務 大 臣 小沢 辰男君
国 務 大 臣 金丸 信君
国 務 大 臣 佐々木義武君
国 務 大 臣 坂田 道太君
国 務 大 臣 福田 赳夫君
国 務 大 臣 松澤 雄藏君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107605254X01119751030/23
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