1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十年十一月六日(木曜日)
正午開会
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委員の異動
十月十八日
選任 佐多 宗二君
十一月六日
辞任 補欠選任
白木義一郎君 相沢 武彦君
橋本 敦君 加藤 進君
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出席者は左のとおり
委員長 多田 省吾君
理 事
大島 友治君
高橋 邦雄君
佐々木静子君
白木義一郎君
委 員
岩上 妙子君
梶木 又三君
佐多 宗二君
福井 勇君
町村 金五君
矢田部 理君
相沢 武彦君
加藤 進君
下村 泰君
国務大臣
法 務 大 臣 稻葉 修君
政府委員
法務政務次官 松永 光君
法務大臣官房長 藤島 昭君
法務大臣官房司
法法制調査部長 賀集 唱君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局総務局長 田宮 重男君
最高裁判所事務
総局人事局長 矢口 洪一君
事務局側
常任委員会専門
員 二見 次夫君
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本日の会議に付した案件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/0
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001・多田省吾
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
本日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/1
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002・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/2
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003・稻葉修
○国務大臣(稻葉修君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。
政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩国際海洋博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。
第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、そのうち、内閣総理大臣及び国務大臣等を除く特別職の職員についてその俸給を増額することといたしておりますので、おおむねこれに準じて、高等裁判所長官の報酬並びに次長検事及び検事長の俸給を増額することとしております。
第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。
これらの改正は、一般の政府職員の場合と同様、昭和五十年四月一日にさかのぼって適用することといたしております。
以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/3
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004・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
暫時休憩いたします。
午後零時四分休憩
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午後四時三十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/4
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005・多田省吾
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
白木義一郎君が委員を辞任され、その補欠として相沢武彦君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/5
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006・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 休憩前に引き続き、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/6
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007・矢田部理
○矢田部理君 最初に法務省にお尋ねをしたいと思いますが、本日、裁判官と検察官の報酬、俸給等についての法律の一部改正をする提案がございましたけれども、この内容を見てみますと、それぞれ号俸などが記載をされていて、その号俸の数え方などが違いがあるようでありますし、また、最高裁長官、裁判所の長官などになりますと特別の金額が決まっておるわけでありますが、この大筋、検察官の俸給と裁判官の報酬は比較をしてみますと、金額が同じようになっているように思われるわけですが、これはほぼ同じに考えられているというふうに受け取ってよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/7
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008・賀集唱
○政府委員(賀集唱君) お答えいたします。
お手元に差し上げております関係資料の四十五、四十四ページ、これをごらんいただきますと、これは裁判官と検察官の報酬、俸給の月額の対比でございますが、ただいま御指摘のように、最高裁長官に対応する検察官がブランクになっておる。検察官の最高の地位にある検事総長が最高裁判事と同列、その次は東京高裁長官に対応する検察官のポストがブランクになっております。そのようにごらんいただきますとわかりますように、この二重線より上が認証官でございますが、少しずつずれたりブランクになったりいたしておりますが、それを読み込みますと金額は対応いたしております。
この二重線から下が、行政官では指定職に対応する判事、簡易裁判所判事、検事、副検事でございますが、「判○」というのがございます。これは判事の特号でございまして、認証官以外の検事の一番トップである検事の一号よりも上にランクしております。その次に「簡○」「簡1」「簡2」とございます。「○」というのはやはり先ほど申し上げました特号でございます。これがこの欄の一番下の「副○」、これは副検事の最高の号俸でございますが、「簡○」「簡1」「簡2」、これに対応する副検事の号俸はございません。
それから、もう少し繰っていただきますと、四十九、四十八ページになりますと、若い方でございますが、裁判官の方は「補12」、これは判事補十二号、「簡17」——簡裁判事十七号、これが低い方ではそこでとまっておるわけでございますが、副検事の方は十五号、十六号という号俸がなおございます。
このようにぴったりとは一致しておりませんが、先ほど申し上げました対応関係にないところ、それを除外いたしますと、たとえば四十五ページの表でいきますと、判事の一号と検事の一号というのは改正案におきましても同額の報酬、俸給をもらい、その増額も同じ幅でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/8
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009・矢田部理
○矢田部理君 そこで、裁判官なり検察官になる場合の一般的なコースとしては、司法研修所で修習を終えて任官をするわけですけれども、これによりますと判事補の任官して最初の号俸が十二号で十一万四千二百円、それから検察官の方を見ますと二十号で同じ金額が出ているわけですが、その後の昇給はどのようにして行われていくのか。期間であるとか条件であるとかということについて、最高裁、法務省からそれぞれお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/9
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010・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように、裁判官は判事と判事補に分かれておりまして、十年たちますと判事資格ができるわけでございます。判事補の場合は十二号から一号、十年間で済ませるということになるわけでございます。十年たったところで一号になるというような意味はございませんので、十年の少し前に一号になるわけでございます。そうしますと、九年余りをそれだけの号数で割るわけでございまして、大体六カ月から一年ぐらい、九カ月の場合もございます、そういった割合で昇給をいたしてまいるわけでございます。
それからその後でございますが、御承知のように裁判官は十年の任期がございますので、判事になりましても十年たちますとそこで任命がえが行われるわけでございます。大体その辺のところ、任命がえ直後の俸給というのが、一般的に申しますと大体裁判官では四号ぐらいのところにいくようになっております。したがいまして、判事の八号から八、七、六、五というふうに十年間で上がっていくということで大体おわかりいただけるのじゃないか。その上は、これはかなり人によって必ずしも一律ではございません。少し差が出てまいるかと思いますが、それまでのところは大体いま申し上げたような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/10
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011・藤島昭
○政府委員(藤島昭君) 検事の場合でございますが、検事につきましては昇給準則というのがございまして、それに従って昇給を行っておるわけでございます。昇給準則は、法務大臣と内閣総理大臣の間で協議して取り決めたものでございまして、これは部内でも全く外へ出しておりませんので、何号から何号まで何年ということを申し上げることはちょっと遠慮さしていただきたいと思うのでございますが、大体十年いたしますと、裁判官の場合でございますと判事の資格が出て判事の八号になるわけでございますが、私どもの場合はそれに対応している検事八号というところに十年経過すると参るわけでございまして、その後昇給いたしまして大体二十年ぐらいで検事四号ぐらいのところに行くような運用をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/11
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012・矢田部理
○矢田部理君 そこで、まず最高裁の方からお尋ねをしたいと思いますが、研修所を出て最初十二号の初任給でスタートをして、それから後の昇給は裁判官すべて一律なのでしょうか。それとも、いずれかの時期に違いが出てくるのでしょうか。もし違いが出てくるとすれば、どういう理由でその差、違いというものが出てくるのか、そこら辺のことをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/12
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013・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一般的な扱いといたしまして、判事補の間、それから大体判事になりまして一ラウンド、結局判事補通算しますと二十年ぐらいの間は、原則として差はできておりません。もっとも、全員がそうなるかと申しますと、そうはまいらないわけでございまして、判事補の期間中に病気をする方とか、その他特段の事由がある方は、場合によって同期の方よりおくれるということはあり得るわけでございます。
ただ、裁判所の場合はちょっと特別な事情がございますが、判事補の間で仮に病気のためにおくれたといたしましても、判事に任命されますとまた並んでしまうわけでございます。したがいまして、判事任官時は——任命がおくれれば別でございますが、そうでない限りは同じ号俸にならざるを得ない、こういうことがございます。
判事になりましてからも、最初の第一ラウンドは普通におやりになっておる方である限りについては、差はないというのが実情でございます。しかし、第三ラウンドぐらいになってまいりますと、これはきわめて常識的な範囲でございますが、一般的にはある程度同期の間でもばらつきが出てまいります。矢田部議員もよくおわかりだと思いますが、中には非常に判決をためるような方とか、そういうごく目立つ方が出てまいりますので、そういう方はその後においてある程度の差がついてくるというような運用でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/13
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014・矢田部理
○矢田部理君 そうしますと、第一ラウンドでの差は原則としてない。第二ラウンドも同様である。第三ラウンドになると、それなりの差が出てくる。それはどういうところから出てくるのか。いま、たとえば判決をためるとか、なかなか書かないという裁判官の例を指摘をされましたけれども、その辺をもうちょっと詳しく御説明をいただきたいのと、それから事件処理件数などが参考にされるのか。また、それはどういう基準で判断をされるのか。その辺をもう少し詳しくお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/14
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015・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常に個々の人事の問題と密接な関係がございますので、ちょっと申し上げにくい点もございますが、率直に申し上げまして、最初のころは、それぞれ一つ一つの短期間をとってみますと、仮に非常にまずいなと思うようなことがありましても、成長も期待できますし、平均的な長い期間をとってみれば一般的な事務処理をなさっていただけるということが期待できますので、余り差をつけないのが実情でございます。しかし、判事補になりまして二十年もたってまいりますと、これはもう差がないということの方がおかしいわけでございまして、おのずと、たとえば裁判長に向く方、あるいは高裁の裁判官に向く方——たとえば法律は必ずしも得手ではないように見受けられますけれども、事件の処理、紛争の処理といったような観点からの御処置はきわめて適切におやりいただく方、中には学者的に非常に理論に長じておられる方、そういうような特色が出てまいるわけでございます。しかし、そういうことでは必ずしも差別をするということは考えておりません。ただ、客観的に控訴、上告等の事件を通じまして、この判決はこの結論と理由がそごしておるのが非常に多いのではないかというような方が、やはり出てまいります。そういった方は、おのずと、二十年もたちますと、客観的に同僚の間でもある程度の評価が出てまいりますし、上訴審等でごらんになっても、やはりちょっとまずいんじゃないかといったような評価も出てくるわけでございます。さらに、いま申し上げましたように、同じぐらいの事件数を一般の方が皆処理しておられるのに、ある特定の方だけが非常に事件をおためになる、判決をためられるというようなことも出てまいります。そういった客観的にあらわれましたところをそれなりに評価して、その差というものが俸給にも二十年ぐらいたちますとある程度出てくる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/15
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016・矢田部理
○矢田部理君 二十年過ぎてからのいろんな差が出てくるということなんですが、それはどういう方法でチェックしているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/16
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017・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは、いまも申し上げましたように、事件が控訴され上告されてまいります高等裁判所等では、年間相当な事件を見ておられますし、最高裁におきましても、年間に相当な事件が出てまいります。そういったところで、おのずと各裁判官の評価というものは、それぞれの方の中に出てくるわけでございますが、最終的には裁判官会議の御決定によって、昇給する昇給しないということをお決めいただくわけでございます。裁判官会議を構成しておられます十五人の方々も、やはり事件を通じてそれぞれのお考えをお持ちのようでございます。ただ、私どもとしましては地裁、高裁の御意見を十分伺って、それに基づいて原案を裁判官会議に提出しておるという、こういう段取りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/17
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018・矢田部理
○矢田部理君 そうしますと、高裁長官などから内申をさせるといいますか、そういうものを参考にして最高裁の人事の方で一応の原案をつくる、それを裁判官会議にかけて決める、こういう手順になるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/18
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019・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/19
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020・矢田部理
○矢田部理君 それから、最後にもう一点伺いたいと思いますが、先ほど法務省から御説明がありましたように、若干の違いはありますけれども、基本的に昇給あるいは賃金のベースが裁判官と検察官ではほぼ共通の土台に立っているというお話でしたけれども、最高裁なり裁判官としては、御承知のように憲法で職権の独立とか司法の独立とかという問題があるわけですね。それを経済的に裏づけていくのがこの報酬に関する法律だとも考えられるわけですが、検察官よりもその意味では独立性を強く保たなきゃならぬという趣旨から、もう少しやはり給与を上げるべきだというような考え方はお持ちではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/20
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021・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは非常にむつかしい問題でございまして、戦後の裁判所法が発足いたします当時から、その点についてはずっと議論もし、検討もいたしてきたものでございます。で、御承知の、いまから十数年前でございますが、内閣に臨時司法制度調査会が設けられまして、そこにおきましてもまた、裁判官の報酬というものをどのようにすべきかと、検察官との報酬の対比をどのように考えるべきかということで、真剣な討論がなされたわけですけれども、内閣に設けられました臨時司法制度調査会の意見書にも、それぞれの特殊性はあるけれども、現時点においては裁判官の報酬というものを決め、それに準ずるものとして検察官の報酬を設けるのが、社会の情勢に一番合っておるという御意見が出たわけでございます。私どもの立場といたしましては、それはいろいろのお考えもありますし、部内でもいろいろの意見はございますが、現在におきまして修習生として一緒に教育を受けまして、片や判事補になり、片や検事になるといったような今日の実情を考えてまいりますと、現段階におきましては、このようなシステムというものも十分肯定できるのではないかというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/21
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022・矢田部理
○矢田部理君 次に、法務省に伺いたいと思うのですが、いま最高裁に伺ったと同じような意味で、昇給期間とか基準とか違いが出てくることがあるのかないのか。あるとすればどんな事由の場合に出てくるのかということについて、まずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/22
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023・藤島昭
○政府委員(藤島昭君) 先ほど申し上げました昇給基準によりますと、成績優秀者は昇給を短縮してもよいということにはなっておるわけでございます。ただ、検事になりまして、検事二十号になってスタートするわけでございますけれども、経験年数の浅いうちには、どの人が能力がすぐれているとかいうことを判定することが非常にむずかしいということがございまして、大体同期の検事は同じような形で昇給を行っていっております。
そういうことで、大体二十年ぐらい経過いたしますと、御承知のように、検察庁には検事正その他のいろいろなポストがございまして、そういうポストにふさわしい人を検事の中から選んでつける、こういう形になっておりますので、おのずからそこいらの段階になってまいりますと、大体その人の能力差と申しますか、そういうものがわかってまいりますので、そういうような段階になりまして、若干同期の間でも昇給その他の給与の面において差が出てくる。大体二十年経過後、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/23
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024・矢田部理
○矢田部理君 そうしますと、裁判所の場合とほぼ同じように理解をしていいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/24
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025・藤島昭
○政府委員(藤島昭君) 結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/25
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026・矢田部理
○矢田部理君 最近、法務省といいますか、検察庁と最高裁とのというか、まあ最高裁を中心に裁判所との間に各種の人事交流が行われているようなデータがありますし、とりわけ四十六年以降その傾向が強まっているという指摘もあるわけでありますが、そうしますと、報酬とか俸給とかという面ではその間の矛盾点とか問題というのはほとんどないというふうに伺ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/26
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027・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/27
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028・矢田部理
○矢田部理君 そこで、関連して伺いたいのですが、最高裁と法務省との間に人事交流に関する基本的な合意ができて、幾つかの条項などが取り交わされたとも伝えられているわけですが、そういう事実はあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/28
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029・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判所と法務省との交流は、何も最近に始まったことではございませんで、戦前のことは別といたしましても、戦後常に交流があったわけでございます。しかし、何か法務省との間に条項を設けて、そういった条項を取り決めて、それに基づいて交流を行うといったような、そういったことは当時もございませんでしたし、今日もそういうことはいたしておりません。ただ、おのずと数年たてば戻る人は戻ってくるし、またかわりの人を出すといったようなことは慣例的には行われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/29
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030・矢田部理
○矢田部理君 四十九年三月二十九日付の読売新聞朝刊に、その関係の記事で出ているわけですけれども、「最高裁と法務省は、判事、検事の人事交流を図るための折衝を進めてきたが、二十八日までに基本的な合意」、これは三月二十八日という意味だろうと思いますが、「に達し、四十九年度から実施することになった。」、一つとして、「交流した判・検事は、三年をメドに元の判・検事の身分に戻ることができるようにする」、「とりあえず四月一日に大阪地裁勤務二人、東京地裁勤務一人、計三人の判事補を東京地検検事に転出させる」というような趣旨の合意ができたという報道があるわけですが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/30
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031・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ここの新聞で取り上げておられるように、このとき、こういうような話し合いがいままでなかったものが、改めてできたといったものではございません。これまでも大体法務省と交流をいたします際には、大体三年前後をめどにいたしまして帰ってくる。ただ、そういうふうにいたしておりましても、行きっきりになってしまわれる方も、相当数ございましたし、十年近くあるいは二十年近く法務省におられる方もございました。大体、法務省に出られるときには数年たったらまた戻ってくるということでやっております。そういったことをどういう観点からお取り上げになったのか。交流をさらにやるということにつきましては、私ども結構なことだと思っておったわけでございますので、まあそういうことを特にここでお取り上げになったんじゃないかと思いますが、条件等についてここで改めてどうこうしたというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/31
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032・矢田部理
○矢田部理君 何かこの時期に、検察庁に行っても、三年をめどにもとの裁判官の地位に戻しますよと、あるいは逆の場合もあり得るわけでしょうけれども、そういう趣旨の話し合いはあったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/32
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033・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは、実はこれまでも法務省に相当数の方が行っておられまして、行かれるとなかなか戻ってこられないというようなことが現実にあったわけでございます。で、できるだけ三年のめどを守ってほしいと。何も三年とは言わないけれども、余り長くなるのは困るということは、これは春の交流をやりますときにはその都度申し上げておったわけでございまして、このときも、できるだけそういうことを守るようにしていただきたい、ただ、いろんな事情があって守れないということがあれば、それは是が非でもという趣旨ではないけれども、できるだけ交流を円滑にするためにはそれをお守りいただきたいということはお話ししたことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/33
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034・矢田部理
○矢田部理君 おおむねそういう趣旨の話があったようですが、先ほど指摘をしましたように法務省、裁判所間の人事交流が四十六年以降、従前よりもふえてきたという傾向はお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/34
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035・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 法務省との交流でございますが、確かにここ数年、数の上でかなり大量の交流が行われておりますが、ただ、それは四十六年以降特にふえたということではございませんで、その以前、たとえば三十三年、四十年というようなところをとってみましても、相当数の交流をいたしております。ただ、いまも申し上げましたように、行かれた方がどうも一たん行かれるとなかなか戻ってこられない。これは法務省の方もなれてこられるとなかなか帰しにくいというような事情もおありであったようでございますが、そういうことで、行かれた方が帰ってこられなければ、こちらからまた出さないということでございますので、ある程度数が少ない時期がございましたけれども、交流そのものといたしましては、特にこの数年多くしたという趣旨のものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/35
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036・矢田部理
○矢田部理君 データで数の点ははっきりするわけですが、今後もこの傾向、交流については拡大をしていく方向ですか。それとも、一定のチェックをしていく方向なのか、その点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/36
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037・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 結局、現在の裁判所の理想とする制度は、これは矢田部委員に申し上げるまでもないわけでございますが、法曹一元的な理念を目標といたしておることは、これはもうそのとおりでございます。ただ、現実の運用はキャリアシステム的な運用になっておるということも御承知のとおりでございます。で、キャリアシステムというのは、それ自体きわめて利点もございますけれども、裁判官が一生裁判だけをして、いろいろの分野の見聞を広めるというチャンスが少ないということがございます。キャリアシステム的な運用を急に直すということは、これは社会情勢のいろんな問題がございましてできないことでございますが、何とか裁判官にもいろんな経験を積んでほしい、そういう機会を与えたいということは、かねてから念願いたしておるわけでございます。そういう観点で、法務省と交流ができるということは結構なことだというふうに考えておりますが、ますます拡大したいとまでも考えておりませんけれども、この程度の交流は今後も持続していきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/37
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038・矢田部理
○矢田部理君 おおむね、最高裁の考え方を伺ったわけですが、どうもこの検察官と裁判官の最近の交流の状況、実態を見ておりますと、単に法曹一元化という理論だけでは説明し切れないような状況が幾つかあらわれているように思われますし、もともと裁判官の場合は司法の独立という立場での仕事が基本になるわけですし、ところが、検察官の方は御承知のように検察官一体の原則ということで、上命下服関係が中心に仕事をしていくということなので、それ自体のなじみ方にいろいろ問題が残るわけでありますけれども、最近幾つかの事例で問題になっておりますのが、行政と裁判の癒着じゃないか、そういう実態が幾つかあらわれているじゃないかという指摘が、日本弁護士連合会などからもなされているわけですね。余り具体的な事例をここで挙げることは控えたいと思うんでありますが、たとえば日弁連から指摘されておりますのは、例の年金関係の訴訟で朝日訴訟というのがあります。その裁判では国側の指定代理人になっていた人が、事件は別ですが、同じように老齢福祉年金の裁判では裁判官を務めているというような事例が、この交流の中から一つ出てきているわけですね。こういうことは、裁判の独立という立場から見ても、それから国民に対する信頼という見地に立って考えてみましても、決して好ましい事例ではないんじゃなかろうか。むしろ、こういう事例は司法と行政の癒着を示す重要な事件だというようなとらえ方をする方もおるわけだし、私自身もそう理解をしているわけですけれども、こういうことについてはどんなふうにお考えになっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/38
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039・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 具体的な同じ事件を、法務省に行かれて当事者として扱われた方が、裁判所にお戻りになって扱われるということはあり得ないことは、これはもう御案内のとおり……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/39
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040・矢田部理
○矢田部理君 これはできないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/40
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041・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 結局、この法曹と申しますのは、まあ釈迦に説法でございますけれども、やはりその立場立場というものを十分お守りいただいて、しかも、その立場に立てばその職責を十分お果たしいただけるという、俗に申しますとリーガルマインドというふうに申しますか、そういったものをお持ちいただいておる、そういう方の集まりであると言い得るのではないかと思います。そうでなければ、法曹一元ということは元来成り立たないわけでございまして、当事者をおやりいただいて、当事者でも原告をおやりいただく場合もございますし、被告をおやりいただく場合もございますが、そういう方が裁判官になっていただいて、明くる日から公正な裁判をしていただくということ、そういうことが法曹一元でございますので、元来法曹一元というものの成り立つ基盤にはリーガルマインドというものがあって、それはちゃんと守れるのだということがあるのではなかろうかというふうに思います。そういうことでございますれば、きのうまで訟務検事をおやりになっておった方でございましても、一たん裁判官におなりになればりっぱに法律と良心に従って裁判をしていただける、その点は私どもは確信をいたしておるわけでございまして、むしろ当事者としての経験、社会的な経験を生かして、よりよい裁判をしていたただけることになるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/41
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042・矢田部理
○矢田部理君 いまのお話、私は納得できないわけですけれども、あるときには、まあ同種のケースですよ、国の立場で主張をし、今度は裁判官になったから個人の良心に基いてやるんだというような、心ずしも器用なものじゃないし、国民の目から見ますれば、あのときの社会保障裁判ではこういう立場でいろんな議論を展開してきたじゃないか、その同じ人が今度は裁判官席に立って、果たして公正な裁判を、同種の事件で、同一ではありませんけれども、期待できるだろうかというようなことで、やっぱりむしろ裁判に対する疑惑、不信を強めることになりこそすれ、いま局長がおっしゃったように、それは立場立場で器用にやれるのだというような説明よりも、私の方の考え方の方がむしろ国民は納得するのじゃないか、わかりやすいのじゃないかというふうにも考えるのですが、少なくともやっぱり個別事件にいろいろあれこれ最高裁としては言えない立場ではありますけれども、できるだけそういう疑いを避けるような事件の配置なり、配転なりはやっぱり考えていかないと、人事交流が逆に司法と行政の癒着を示す事例として大きく社会問題にもなりかねないようなことになりはしないかというふうに危惧するわけなんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/42
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043・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) それぞれの立場は異にするが、法曹が協力して真実の発見と基本的人権の擁護といったことを盛り立てていくというのが、法曹の職責ではなかろうかというふうに思います。修習生が弁護士を当初から希望する方、裁判官を希望する方、検察官を希望する方、それぞれございますけれども、一緒に教育を受けておるというような点も、やはりこの法曹一元のそういった基盤があるから成り立つわけではなかろうかというふうに思っておるわけでございまして、矢田部委員の御指摘の点もわからないではございませんが、むしろ、法曹というものはそういう立場というものをそれぞれ守って、しかも法律と良心に従って職務を行っていくものだということについての御理解というものを、さらに深めていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/43
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044・矢田部理
○矢田部理君 ここで、そのことがきょうの法案の主題ではありませんから、深く突っ込んだ議論は別の機会にしたいと思っているわけですが、法曹一元とか人事の交流ということを通して、どうも最近の司法のあり方が問われているような気がするわけですね。とりわけ、法務省筋によれば、最近社会的な問題——公害であるとか、公害を中心とする環境権訴訟であるとか、行政裁判とかという形で争われるケースが常より多くなってきている。量的に拡大しているだけでなくて、質的にもいろいろなむずかしい問題を込められているケースが多くなっているわけですが、それらの裁判に国側でかかわり合っている方々が、国側は被告になるわけですけれども、おおむね裁判官出身の方が多い。そういうことで、国側で対応してきた人が、その後、今度は逆戻り保証か何か知りませんけれども、何年か後には戻っていって、裁判官席でその種の問題を裁いていくというようなことになってきますと、単に三年間ほかの世界も見てきて経験を積んでもらったんだという説明だけでは説得力がない。むしろ、そのことを通してやっぱり危惧の念が出てくる、司法に対するですね。というような感じを強く受けるわけなんで、その点についてはきょういろいろ議論をするつもりはありませんけれども、今度の交流問題をめぐる運用、あり方については、ひとつそういう疑惑なり不信なりを持たれないようなやり方について心すべきではないかということを最後に申し上げて、私の質問は終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/44
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045・加藤進
○加藤進君 二、三質問させていただきます。
初めに、裁判官の報酬についてでありますが、かねてから御存じのとおり、裁判官の不足を補う上からいっても初任給の引き上げをすべきである、及び、第一線で働く若い裁判官の給与の改善を行うべきであるという強い要望がなされておることは事実でございますが、こういう要望にこたえて、今度の改正ではどのようにその点が改善されておるか、まずその点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/45
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046・賀集唱
○政府委員(賀集唱君) 初めに数字を申し上げて恐縮でございますが、お手元に差し上げました関係資料の四十九ページ、四十八ページをごらんいただきたいと思います。そこに「補12」、これは判事補十二号でございます。それから「検20」——検事二十号でございます。これが判事補と検事の初任給でございまして、現行は十万三千二百円になっております。今度改正をお願いしておりますのは、それを十一万四千二百円に増額する。増額は一万一千円で、増額率は一〇・七%ということでございます。この一〇・七%という数字は、非常に今回の増額の中では高い比率でございまして、低いところでは四%にすぎないところもございますので、そういうように若いところに厚くいたしております。ところが、その判事補なり検事なりの初任の方につきましては、ほかに初任給調整手当というのがつくのでございます。その初任給調整手当が二万三千円でございまして、そのほか六大都市その他の大都市その周辺には調整手当というのがつきまして、大きな都市であれば百分の八、ざっと一万円近くなります。以上、合計いたしますと十四万七千円近くなりますが、そのほか判事補なり検事なり、これの初任者の年齢は二十七歳前後でありまして、扶養家族に対する扶養手当がつくわけでございまして、それらを全部合計いたしますと、概算で十五万五千円となります。
そこで、ただいま御指摘の初任の判事補なり検事なりの方の、何といいますか、給与の改善というのは、一方では弁護士収入との比較の点から、いい方を裁判所なり検察庁に来ていただく、こういうメリットといいますか、こういう点からも言われておるので、それでは弁護士さんの収入との比較ということ、これをいつもいたしております。
弁護士さんの収入を、東京のみならず各地の弁護士さんの収入を調査いたしましたところ、いろいろばらつきがございましたが、十一万から二十万。平均をとりますと十五万一千七百円、こういう平均になりました。そうしますと、先ほど申し上げました扶養手当までつけた判事補なり検事なり初任の方は十五万五千円でございます。その結果、今度の改正では弁護士さんが司法修習生を終えられまして、いわゆるイソ弁といいますか、先輩弁護士のところにおつきになったときの収入よりも数字の上では上回る、こういうことで、かなり改善には努力いたしたところでございます。
そのほか、弁護士さんにつきましては住居が一番大きな問題で、裁判官、検察官の場合は官舎を用意いたしておりますけれども、そういう住居費、そういうものを考えますと、弁護士さんの場合は、これも先ほど調査しました平均の数字でございますが、二万八千幾らかということになっております。そういうわけで、毎年初任給調整手当、先ほど申し上げました二万三千円の初任給調整手当をアップするようにという御指摘を受けておるわけでございますが、今回はそれを断念といいますか、その必要がないというわけで、今回の初任給の一〇・七%の上げ率で、初任の方の何といいますか、弁護士との格差は十分カバーできたと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/46
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047・加藤進
○加藤進君 見通しをちょっとお尋ねしたいんですが、裁判官の不足をその程度の改善措置によって解消できるかどうか、その点についての見通しをひとつお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/47
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048・賀集唱
○政府委員(賀集唱君) 裁判官、検察官の不足の解消としまして、新任の方がどうなっているかと申しますと、昭和四十九年では五百六名中百三十二名、それが新任の判事補、検事の数でございます。それから、昭和五十年が五百四十三名中百三十二名。この数字は修習生を終えられた方の約四分の一でございます。以前は約五分の一しか任官者がないと、こう言われておりましたところ、ここ二年でございますが、それが約四分の一までふえてきました。そういうわけで、私どもとしましては裁判官、検察官の仕事を十分修習生に理解していただくなり、そのほか執務環境の改善なり努力いたしまして、ぜひともこの四分の一という数字を維持し、さらにはこれをふやしていくように努力をいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/48
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049・加藤進
○加藤進君 お聞きしても十分満足できるような改善ではないように考えられますし、その状態では裁判官の不足を抜本的に解消するということにはほど遠いというふうに私は判断するわけで、その点につきましては今後ともひとつせっかくの御努力をお願いしたい、このことだけ、まず最初に要望しておきます。
次に、裁判所の書記、速記官並びに廷吏の皆さんについてでございますが、この方々につきましても、全般的な給与の引き上げを強く要望されておりますが、同時に、上に厚く下に薄い、こういう現状をぜひ是正してほしい。管理職と一般職員との間の格差の是正をしてほしいというのが、全司法の労働組合の要求としても要望が出されておることは御存じのとおりだと思いますが、今度の改定でこの点の改善についてはどうなっているのか。また、今後の改善の方向についてどうお考えいただいておるのか、その点をあわせてお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/49
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050・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御案内のように、裁判官以外の書記官でございますとか、事務官、廷吏等につきましては、一般職の俸給表(一)表というものを準用いたしております。今回も、一般職の俸給表の改正に全く同じ改正をお願いいたしておるということになるわけでございます。今回の一般職の俸給表の改正でございますが、行政職(一)表の改正は大体一〇・七%のアップということでございますが、上薄下厚の改正でございまして、下の方に厚い改正が行われたというのは御案内のとおりでございます。ちょうどいま加藤委員が御指摘になりましたような、等級で申しますと五等級の書記官、それから事務官で申しますと六等級の事務官、廷吏も六等級の廷吏、その辺のところが一番問題のところでございますが、そういうところが一番いい改定、アップ率になっておるわけでございます。今回のベースアップそのものによる、一番問題として厚く遇しなければいけないと私ども日ごろ考えておりますところが、そのとおりに厚くなってアップしておるということでございます。それをそのまま準用いたしております。この点は非常に結構なことであったと考えております。
しかし、私どものそういったいわゆる中堅職員の待遇改善という努力は、それだけではございませんで、いわゆる級別定数、等級別定数の獲得ということにつきましては、ここ数年非常な努力を重ねておるわけでございまして、書記官で主任になる前の普通の平の書記官の四等級昇格、それから係長になる前の事務官の五等級昇格問題ということにつきましては、それが人事局の唯一の仕事であると言ってもいいほどな努力をいたしてきて、ある程度の成果を得てきておるのではないか考えておりますが、まだまだ不十分でございますので、今後ともそういった点については、全精力を集中していきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/50
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051・加藤進
○加藤進君 最後の、まだまだ不十分で、今後とも改善の努力をしようという意図だけは私もお聞きしておきまして、次に移りたいと思います。
中年層が集中しておる四、五等級の平均昇給率ですね。これが非常に年々低下している。中だるみの状態が一層深刻になっていると現状は言われています。しかも、この四、五等級の方々は、御承知のとおり、子供の養育、教育という非常に苦労をされる年代でございますので、その点から見て、この昇給率の改善という点を重点的に考慮すべきではないかと私たちも考えておりますが、その点はいかがでしょうか。今度の改定にはこれが触れられていないように私は思いますけれども、今回の状況と今後これをどのように配慮しつつ改善をしていくかと、こういう点の見解をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/51
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052・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のランク前後の方の昇給という問題、これはいわゆる号俸間差の是正といったようなところにも問題が出てくるわけでございますが、これはきわめて技術的な面も含んでおりますし、先ほども申し上げましたように、人事院が行政職(一)表について勧告されるところを、そういうところを私どもも準用させていただくということが、現段階としては最もいい方法ではなかろうかというふうに考えておりまして、今後とも機会あるごとに、人事院がそういう御勧告をなさるという際に際しまして、問題点を指摘させていただくということはいたしていきたいと思いますが、私どもだけで号俸の昇給期間を短縮するとか、そういうようなことまではなかなかいたしかねるという問題ではなかろうかというふうに考えております。ただ、先ほどもちょっと触れましたように、裁判所、戦後採用した職員がこの五等級、六等級のところにかなりたまってきておりまして、五等級あるいは六等級の高位号俸、十何号というところに相当の人間があるわけでございまして、これらの人は、昇給と申しますよりも、むしろ昇格という問題でもって、五等級の人は四等級にする、六等級の人は五等級にするという昇格問題としてとらえていくのが正しい対処の仕方ではなかろうかというふうに思い、先ほども申しましたように、上の等級の定数の獲得ということが問題を解決する最も具体的、妥当な方策であるというふうに思い、努力をいたしておるわけございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/52
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053・加藤進
○加藤進君 ともかく、一番頼りにすべき中堅層でございますね。ここが崩れますと全体の人事配置が崩れていくというほど重要なポイントでございますから、その点につきましてはひとつ重々これからも御配慮いただいて、人事院についても相当強い見解の表明をしていただきたいということを要望しておきます。
最後に、書記官定員の不足ということが非常に今日痛感されておると思いますし、特に速記官をぜひ早く増員してほしい、これは裁判所の職員の内部からの要望だけじゃないですね。御承知のとおり、各地の弁護士会からもこの点については、このままでいったら訴訟自体が遅延してしょうがない。何とか訴訟促進のためにも増員をしてほしいという強い要望が出ておることは、皆さんお耳にも達しておると思います。で、来年度の予算要求に関連して、その点の見通しはどうなのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/53
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054・矢口洪一
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 二点の御指摘がございました。
まず第一点は、裁判所書記官の欠員をできるだけ充足していくべきではないかという御指摘でございますが、その点につきましては私どもも御指摘のとおりと考えております。
現在、書記官の養成には二つの方法がございまして、一つは書記官研修所に入所させて、一年ないし二年の教育をいたしまして書記官に任官させる方法と、それからもう一つは、いわゆる任用試験を行いまして、試験に合格した者を書記官にする方法、この二つの方法があるわけでございますが、可能な限りの最大限の養成及び任用ということをいたしてまいっております。で、形式的な定員から見ますと、ある程度の欠員数が書記官にはございますが、実際の問題といたしましては、実は簡易裁判所の庶務課長等が書記官を兼務いたしております。潜在的な書記官と申しますか、そういう点ではかなりの充足をいたしておるというふうに考えております。しかし、今後とも書記官の充足については努力をいたしていきたいと考えております。
次に、速記官の問題でございますが、この速記官は、ここにも速記をしておられますけれども、私どもの速記官は機械を用いまして、いわゆるステノタイプというのを使いまして、この十本の手の指で符号を打ちまして速記をいたしておるわけでございますが、この機械を操作するためには二年間の養成期間が必要でございます。そこで、このところずっと大体二十名の方を養成してきたわけでございますが、相当数の欠員がある、御指摘のとおりでございますので、昨年から、部内から募集するのみならず、外部からも募集するということに踏み切って、ことしが二年目でございます。それで大体倍数の四十名の養成を行うということでまいっておりますが、この教育をいたします点につきましては、かなり個人指導的な面が強く出てきておりますので、マスプロというわけにはなかなかまいらないわけでございますが、この点、引き続き四十名は確保し、さらにこの四十名の確保が十分になりますれば、さらにふやしていきたいということも考えております。当面の問題といたしましては、この四十名の養成というものを確保していきたい、このように考えておるわけでございまして、本年度も外部から募集をいたし、ある程度の選考を終了しておる。最終選考までは至っておりませんけれども、中間の段階にあると、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/54
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055・加藤進
○加藤進君 速成ではできかねる大事な仕事でございますし、また、その要員の確保についても相当手の込んだ訓練あるいは教育が必要だという状態でございますから、ぜひともその点についても十分今後の見通しを立てて、ひとつ抜本的な不足の充足のために努力をしていただきたい。このことだけ注文をいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/55
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056・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 速記をとめてください。
〔午後五時三十三分速記中止〕
〔午後六時四十分速記開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/56
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057・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 速記を起こしてください。
他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/57
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058・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/58
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059・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/59
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060・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107615206X00219751106/60
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061・多田省吾
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時四十一分散会
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