1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十二年四月十九日(火曜日)
午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 上村千一郎君
理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君
理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
理事 稲葉 誠一君 理事 沖本 泰幸君
木村 武雄君 小坂善太郎君
篠田 弘作君 田中伊三次君
二階堂 進君 島本 虎三君
日野 市朗君 長谷雄幸久君
中野 寛成君 加地 和君
鳩山 邦夫君
出席国務大臣
法 務 大 臣 福田 一君
出席政府委員
法務政務次官 塩崎 潤君
法務大臣官房長 藤島 昭君
法務大臣官房司
法法制調査部長 賀集 唱君
法務省民事局長 香川 保一君
委員外の出席者
大蔵省証券局資
本市場課長 小粥 正巳君
大蔵省証券局企
業財務課長 森 卓也君
法務委員会調査
室長 家弓 吉己君
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委員の異動
四月十二日
辞任 補欠選任
加地 和君 山口 敏夫君
同日
辞任 補欠選任
山口 敏夫君 加地 和君
同月十三日
辞任 補欠選任
日野 市朗君 水田 稔君
同日
辞任 補欠選任
水田 稔君 日野 市朗君
同月十五日
辞任 補欠選任
春日 一幸君 吉田 之久君
同日
辞任 補欠選任
吉田 之久君 春日 一幸君
同月十九日
辞任 補欠選任
春日 一幸君 中野 寛成君
同日
辞任 補欠選任
中野 寛成君 春日 一幸君
同日
理事渡辺紘三君同日理事辞任につき、その補欠
として山崎武三郎君が理事に当選した。
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四月十六日
社債発行限度暫定措置法案(内閣提出第四五
号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資
格等の付与に関する特別措置法の一部を改正す
る法律案起草の件
社債発行限度暫定措置法案(内閣提出第四五
号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/0
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001・上村千一郎
○上村委員長 これより会議を開きます。
この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。
理事渡辺紘三君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/1
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002・上村千一郎
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/2
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003・上村千一郎
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、山崎武三郎君を理事に指名いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/3
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004・上村千一郎
○上村委員長 この際、沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
本件につきましては、先般来各党間において御協議願っていたのでありますが、先ほどの理事会におきまして協議が整い、お手元に配付いたしましたような起草案を作成した次第であります。
本起草案の趣旨及び内容につきまして、便宜委員長から簡単に御説明申し上げます。
この起草案は、沖繩弁護士に関する暫定措置の期間を延長しようとするものであります。
復帰前の沖繩の弁護士資格者等のうち、復帰に際し本土の法曹資格を取得することができなかった者のため、暫定措置として、復帰の日から五年間に限り沖繩県において弁護士の事務を行うことができることとしたことは御承知のとおりであり、これが沖繩弁護士でありますが、沖繩県の復帰後における社会情勢等にかんがみ、この起草案において、右の特別措置法を改正し、暫定措置の期間をさらに五年間延長することといたしております。
なお、この沖繩弁護士は、あくまでも復帰に伴う暫定措置として特に期間を限定して認められたものであります関係上、この趣旨をあらわすため、沖繩弁護士は、今回の延長に係る期間内にそのすべての事務を完了するよう努めるものとし、その期間満了時において完了していない事務があると見込まれるときは、支障なく業務を打ち切ることができるようあらかじめ所要の措置を講じなければならないことといたしております。
以上が本起草案の趣旨及び内容であります。
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沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/4
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005・上村千一郎
○上村委員長 本起草案につきまして、別に御発言もないようでありますので、この際、お諮りいたします。
お手元に配付の起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決定するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/5
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006・上村千一郎
○上村委員長 起立総員。よって、さよう決しました。
なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/6
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007・上村千一郎
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/7
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008・上村千一郎
○上村委員長 次に、内閣提出、参議院送付、社債発行限度暫定措置法案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。福田法務大臣。
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社債発行限度暫定措置法案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/8
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009・福田一
○福田(一)国務大臣 社債発行限度暫定措置法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
現行商法第二百九十七条は、一般の株式会社について、社債は、その資本及び準備金の総額または最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額のいずれか少ない額を超えて募集することができないものとしております。
ところで、最近の経済状況のもとにおきましては、各企業について財務内容の改善とともに景気の浮揚及び雇用の安定を図るために、企業の設備投資の活発化が強く要請されているのでありますが、この目的達成のための長期安定かつ低廉な資金の調達方法として、社債の発行の必要性が非常に増大しております。
ところが、企業の中には、すでに右の商法第二百九十七条の定める限度近くまで社債を発行しているものあるいは近いうちに右限度に達するものがあり、今後の資金調達に困難を来しております。
そこで、この法律案は、商法第二百九十七条の立法趣旨である社債権者の保護を図りつつ、社債の発行限度を拡大する暫定措置を講じようとするものであります。
この法律案の要点を申し上げますと、
まず、社債は、担保付社債、転換社債及び外国で募集する社債に限って、当分の間、商法第二百九十七条による制限を超えて募集することができるものとし、ただ、その場合でも、社債の総額は同条の定める限度額の二倍を超えることはできないこととして、社債権者の保護を図りつつ、発行の制限を緩和することといたしております。なお、この場合、暫定措置といたしました理由は、法制審議会における会社法の全面改正についての今後の審議の結果、商法第二百九十七条の規定の改正が予想されるからであります。
さらに、この商法第二百九十七条の制限を超えて発行される担保付社債を公募するに当たっては、その社債券の募集または売り出しについて、大蔵大臣への届け出を義務づけ、社債発行会社の内容を公示することといたしまして、これによっても、社債権者の保護につきさらに配意しているのであります。
なお、すでに商法の制限を超えて社債を募集することができることとしている他の法律がある場合には、この法律は適用しないものとしておりますほか、この法律によって拡大された発行限度を超えて社債が募集された場合について所要の罰則を設けることといたしております。
以上が社債発行限度暫定措置法案の趣旨及びその内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/9
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010・上村千一郎
○上村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/10
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011・上村千一郎
○上村委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。保岡興治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/11
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012・保岡興治
○保岡委員 本法案の内容やその提案の理由の説明等についてはまた後でお伺いしますが、まず、この法案を提出するに至った経緯、どのようなことでこのような提案の運びになってきたか、それをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/12
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013・香川保一
○香川政府委員 現在法制審議会の商法部会におきまして、商法、特に株式会社法の全面的な見直し作業をやっておるわけでございますが、その審議をやる資料といたしまして、昭和五十年に各関係方面から株式会社法の基本的な問題についての改正意見を求めたのでございます。その際に、経済団体等から、この社債の発行限度枠の拡大につきまして、ぜひとも早急に改正をしてもらいたいという要望が強く提出されておったわけであります。さらに、御案内のとおり、今日の緊急の問題といたしまして、景気浮揚あるいは雇用安定のために企業の設備投資の活発化が強く望まれておるわけでございまして、かような設備投資の資金調達方法といたしまして、長期安定資金である社債によって資金を調達するということが望ましいわけでございまして、さような次第で、法制審議会の商法部会におきましては、株式会社法の全面的な見直し作業と並行いたしまして、暫定的に社債の発行枠を拡大する特別措置を早急に講ずべきだというふうなことで議論されておりまして、昭和五十一年の秋ごろに、商法部会におきまして、ただいま御提案されておりますような内容の暫定措置法を早急に成立せしめるべきだという結論になりました。法制審議会においてもその点了承されまして、今回の法案提出に至ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/13
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014・保岡興治
○保岡委員 実際には社債の発行限度枠というものが、もうある程度満杯に達してきておるというような緊急な事情もあったかと思うのでありますが、社債の発行限度枠を拡大するについては慎重に考えなければならない点もいろいろありますし、また、いろいろな環境の整備ということも非常に重要なことだろうと思います。そういうことから、ある程度、いま局長がお話しになったように緊急性があってこの法律の提案に至っていると思うのでありますけれども、その限度の枠という点からの緊急性について、どのような状況になっておるか、ちょっとお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/14
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015・香川保一
○香川政府委員 各会社、企業によりまして、若干の相違はございますが、たとえば発行枠の九〇%以上現在社債が発行されている会社は、約十六社ぐらいございまして、その内訳は、私鉄関係あるいは製紙業関係あるいは化学工業関係あるいは食品工業関係あるいは海運、金属、電気機器関係等が主でございます。また、七〇%以上消化しておる会社は約八十六社ぐらいございまして、やはり私鉄とかあるいはパルプあるいは化学工業、製鉄会社等がその内訳でございます。さような次第で、今後予想されます設備投資のためには、社債の現行の発行枠では十分な資金調達ができないというふうなことで緊急性がある、かように理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/15
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016・保岡興治
○保岡委員 大体社債を公募している会社というのはどれぐらいの数あるのでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/16
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017・小粥正巳
○小粥説明員 お答え申し上げます。
五十一年九月末現在の公募社債の発行会社数は、電力、ガスを含めまして二百六十五社でございます。
〔委員長退席、濱野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/17
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018・保岡興治
○保岡委員 そういった現在公募している会社の数、その限度枠というものに対して、すでに発行している社債の額の割合というようなのがわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/18
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019・小粥正巳
○小粥説明員 ただいまのお尋ねは、社債発行会社のいわば社債限度の総枠というお尋ねかと思いますので、総計で申し上げます。
たまたま手元の資料が、すでに特例法が成立しております電力、ガスを除いたものでありますので、先ほど申し上げました二百六十五社から少し数を減らした二百三十四社でございますが、九月末、直近決算時の残高で、私どもが調査したところによりますと、総社債残高が三兆四千六百億、これに対しまして現行の法律に基づきます発行限度の総枠が五兆六千九百億、したがいまして、発行余力二兆二千三百億、これから算出いたしました限度の使用率が六一%、その程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/19
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020・保岡興治
○保岡委員 大体大まかな点についてはわかりましたので、この法案の提案理由について、もう少し詳しくお話を聞きたいのでありますが、景気の浮揚、それから雇用の安定を図るために、企業の設備投資の活発化が強く要請されている、そして長期安定、低廉な資金の調達方法として、社債の発行の必要性が非常に増大しておる、この提案理由について、経済状況などを踏まえてもう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/20
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021・香川保一
○香川政府委員 現在の企業の財務内容と申しますか、自己資本の充実が必ずしも十分でないわけでありまして、従来、設備投資等の資金といたしまして、商業銀行からの短期の借入金を転がす方法によりまして調達されてきておるわけであります。これは財務内容といたしまして決して好ましいことではないわけでありまして、何と申しましても長期安定資金によって企業設備がなされるということが、コストの面から申しましても、必要かと思うのであります。
ところが、自己資本の充実と申しましても、御案内のような経済事情でございますので、増資、新殊発行によって資金を調達するということが困難な事情にあるわけでありまして、これを無理に増資いたしますと、結局安定配当を維持する点から考えますと、かえって資産が流出するおそれもあるわけでございます。
さような意味から、できるだけ銀行の借入金によって賄われておる資金調達を長期安定のものとして調達される必要があるわけでありまして、さようなこと等総合的に考えますと、現在の経済事情のもとにおきましては、コストの比較的安い、しかも長期安定的な資金調達としまして、社債発行によって資金を調達するということが何よりも必要だ、かようなわけであります。
さような意味で、景気が浮揚してまいりまして企業の設備投資が活発になってまいりました場合に、商法の二百九十七条の枠のあることによって社債発行ができないというふうな事態になりますれば、まことに困ったことであるわけでございますので、さような意味で、今回暫定的に社債の発行枠を二倍に拡大しておこう、かような趣旨でございます。
〔濱野委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/21
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022・保岡興治
○保岡委員 そうすると、本来の商法二百九十七条の趣旨というのは、社債権者の保護ということに立法趣旨がある、こう言われておりますけれども、今回の改正に伴ってその趣旨が損なわれるのではないかという心配、こういうことについてはどのような検討をなさったか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/22
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023・香川保一
○香川政府委員 現行商法の二百九十七条の規定は、お説のとおり、社債権者保護のためのものだというふうに一般的に言われておるのでございますけれども、必ずしも十分な保護とは考えられないわけでございまして、さような意味で、社債権者保護の制度をそれ自体完結したものとして考えなければならぬわけでございます。これは株式会社法の全面改正の際に、当然社債関係の規定も整備される、その際に根本的に考えられることだと思うのであります。
いずれにいたしましても、今回枠を二倍に拡大する点から、不十分ながらも二百九十七条の社債権者保護の趣旨は一方でやはり十分守らなければならないわけでございますので、さような意味から、拡大された枠でもって発行する社債につきましては、これを担保付社債、転換社債及び外債、この三つのものに限ることにいたしまして社債権者保護を図ると同時に、他方、社債を取得しようとする者が当該発行会社の財務内容、資産状況等を十分把握して不良債を取得することのないようにするために、いわゆるディスクロージャーの制度を発行枠の拡大部分の担保付社債につきまして新たに採用することにいたしまして、さような両面から社債権者の保護が図られるのではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/23
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024・保岡興治
○保岡委員 今度の改正によって、会社の長期債務と短期債務との比率を改善して低成長時代あるいは安定成長時代の企業体質の改善をするというような一つの方向づけがなされる、大体こういうふうに先ほどの説明でも伺ったわけですが、大体これがどんな比率に変わっていくか、その辺のところは経済状況からどのように推移するか、おわかりになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/24
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025・小粥正巳
○小粥説明員 わが国の法人企業部門がどのような形で資金を調達しているかということを私ども調べてみたわけでございます。たとえば最近の五十年度の数字で見ますと、資金調達総額のうちに、外部からの借入金、これは間接金融による借入金でございますが、八六・四%を占めております。その残りがいわば直接金融部門に当たるわけでございますが、そのうち社債によりますものが六・九%でございます。この数字は、五十年度がたまたま事業債の発行が比較的増加した年でございまして、その前の年までの推移を見ますと、昭和三十五年当時から大体四、五%程度社債のウエートが推移してきております。
ただいまの先生のお尋ねでございますが、もし現在御審議をいただいておりますこの法案成立によりまして社債発行限度枠の拡大ができます場合に、今後どのような推移をとるかということでございますが、これは実は私どももなかなか計量的には推計ができておりません。ただ、先ほど御説明がございましたように、かなり多くの企業がこの商法上の社債発行限度枠の上限に近く達しておりますので、五十二年度以降の企業の起債規模の状況を見ましても、この法案が成立することを期待して起債規模を提出している会社がかなりあるようでございます。そのようなところから、計量的にはなかなか申し上げにくいのでございますけれども、今後この法案の成立が法人企業の資金調達状況に直接金融のパイプを太くするという意味では、何と申しますか、非常に強力な法的な手段ということになりまして、もちろん経済状況によることでございますけれども、企業が従来よりはかなり社債による資金調達にウエートを置くようになっていくのではないか、このように期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/25
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026・保岡興治
○保岡委員 その社債を今度は受け入れる側の投資家というか国民ですか、そういった社債の枠がどんどんふえて、社債というものが一般化していくという点から、国民経済というか国民の受け入れ側の今後の変化、推移についてはどのように考えておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/26
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027・小粥正巳
○小粥説明員 これは国民、特に個人の金融資産の運用状況ということにも関連するわけでございますけれども、現在までのわが国の個人の金融資産の状況を見ますと、先ほど申し上げました法人部門の資金調達状況が圧倒的に間接金融に頼っている、すなわち銀行等金融機関の借入金の比重が重いわけでございますが、ちょうどその反映といたしまして、個人の金融資産も金融機関への預け金、郵便貯金もございますけれども、預貯金の形態が非常に大きい。したがいまして、直接金融である社債あるいは株式のウエートは、若干ふえる傾向はございますけれども、まだ全体として比重はかなり低いのが状況でございます。しかし、今後安定経済成長下におきましても所得水準が着実に上昇することを期待いたしますと、所得水準の上昇に伴いまして、預貯金よりも収益性を重んずる資産運用の態度が個人にもあらわれようと思いますが、その場合に、社債の供給がふえることが個人の金融資産の多様化を促進する上にも一つの大きな支えになるのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/27
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028・保岡興治
○保岡委員 そうすると、先ほど、債権者保護の点からは担保つきにしてディスクロージャーの制度を取り入れている、こういうことでございましたけれども、実際に社債を発行する会社というのは限られておるのは先ほどの数からもはっきりしているのですが、会社が社債を公募する場合に現実にいろいろな制限がかかってくると思うのでありますけれども、それをどのようにいまコントロールしているか、それをちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/28
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029・小粥正巳
○小粥説明員 企業が社債を発行いたします場合の制限でございますが、これはあくまで市場で公募をいたします場合に限ってのお話でございますが、法令による制限というようなものは、特にこの商法上の限度以外にはございません。しかし実現には、市場で公募社債を受け入れます場合に、起債の関係者と申しますか、引き受けをいたします証券会社、それから募集及び担保の受託をいたします受託銀行、この両者が起債関係者といたしまして公募社債について受け入れの自主的なルールを定めております。これはあくまで自主ルールでございまして、行政の介入するところでは全くございませんけれども、私どもが聞いております受け入れルールといたしましては、基本的には、社債を発行いたします場合に、起債会社のその発行時における信用度、それから、公募社債でございますから、広く不特定多数の公衆から資金を調達するわけでございますので市場性、まあ信用度と市場性の評価を一定の基準に基づいてチェックしよう、こういうルールでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、ただいまの判定の基準といたしましては、ちょうどこの五十二年四月以降新しく改定をされました関係者の自主ルールによりますと、項目といたしましては、発行企業の純資産額、配当率、そのほかに純資産倍率、これは資本対純資産の比率でございます、それから自己資本比率、さらに使用総資本事業利益率、最後に金融費用と事業収益の比率でございますインタレスト・カバレージ・レシオ、このような財務比率を用いまして、それぞれの比率が一定基準に達するものを市場で公募債として受け入れよう、このようなルールがございます。その結果、先生御指摘のように、比較的限られた規模の大きな企業が公募債を発行できるという結果になっておるわけでございますが、この点は、先ほど申しました公募社債の、広く公衆から資金を調達するという性格、もう一つ、投資家にとりましては、公募債の場合は、社債を取得いたしましてから償還時までの間にいつでも換金できる、換金によって投下資本を回収できるということが社債の要諦でございます。そのような意味で、市場における換金性を確保するためにも発行規模はある程度まとまった大きなものであることが必要でございます。そのような意味で、現行の関係者によります自主ルールは、信用度、市場性の判定基準を設けているわけでございまして、私ども行政の立場からも、このようなルールは現在のところ妥当なものであろうかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/29
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030・保岡興治
○保岡委員 それと、先ほどディスクロージャーの話が出てきましたけれども、今度は、これは従来の枠を超える部分について義務づける、そういう法改正になっておるわけですね。これについては、社債権者保護のためから、全部についてやらなければならないのではないだろうか、必要とするのじゃないだろうかというような意見もあろうかと思うのですけれども、その点については、この改正に当たってどのように考えておられるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/30
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031・香川保一
○香川政府委員 従来、御承知のとおり、担保付社債につきましてはディスクロージャーの制度は採用していなかったわけでありまして、約二十数年にわたりましてさような姿が安定してきておるわけでございます。もともとこのディスクロージャーの制度は、社債を取得しようとするものの保護のための制度でございまして、担保付社債の場合には、先ほどの自主規制も含めまして社債権者の保護に欠けるところがないというふうなことで、従来ディスクロージャーの制度を取り入れていなかったわけでございます。さような長年の安定した取り扱いは、今回の暫定措置をいたします場合にもやはり尊重しなければならないわけでございますが、ただ、その発行枠が拡大されるわけでございますので、拡大される部分については、商法の二百九十七条の社債権者保護の趣旨も踏まえまして、やはり社債としてのディスクロージャーの制度を導入して保護の厚きを期そう、かような趣旨でございます。
問題は、商法の二百九十七条が将来どのように改正されますか、方向としては廃止するような方向がその帰趨だろうと思いますけれども、さような際にはこのディスクロージャーの制度を全面的にあわせて見直して、社債権者保護に遺憾のないような措置を講ずるということに相なろうかと思うのでありますが、今回は暫定的な措置でございますので、従来のさような、すでに安定しておる枠内での担保つきについてのディスクロージャーの制度を採用していないという、そのいわば既成事実を尊重いたしまして、枠の拡大部分だけについて取り入れることにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/31
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032・保岡興治
○保岡委員 それでは、ディスクロージャーの実際のやり方について、簡単に内容を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/32
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033・森卓也
○森説明員 ディスクロージャーの内容でございますが、今回の部分は物的担保が付されておりますし、それから確定利付の債券でもございまして、非常に安全性が高いということでございます。また、金融情勢に応じまして短期間内に継続して発行される場合があるということに着目をいたしまして、届出書あるいは目論見書の記載内容をある程度簡素化する余地があるのではないかと考えられますが、現在まだその内容が固まっておりませんで、部内でいろいろと検討しておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/33
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034・保岡興治
○保岡委員 株式の場合の増資と違って、随時発行していかなければならない社債の場合ですから、企業内容の公開といってもおのずから、ある程度簡素化をして、また迅速に会社が対応できるということも十分考えておかなければならないと思うのですが、そういう点で、具体的にはこれからまだ詰めるのでしょうけれども、方向としてどういう点に重点を置いて、あるいはその詰め方として今後どういうふうに進めて、そのような要請にこたえるおつもりであるか、そこをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/34
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035・森卓也
○森説明員 先生御指摘のとおりいろいろ問題点がございますので、私どもも、方向といたしましては、株式の場合に比較して簡素化する必要があろうかと思いますが、そこには社債権者の保護という枠もございますので、その許される範囲内において実務家の意見を十分聞きながら、社債権者の保護に欠くることのない範囲内において簡素化いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/35
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036・保岡興治
○保岡委員 それから、ちょっと話がまた前後しますけれども、先ほどは、引き受けの証券会社と受託の銀行とで協定をつくって自主的にコントロールしているということでございましたが、いま局長が言われたように、将来枠そのものを撤廃するとかいうことになってきますと、またこれからの経済成長がこのような要請にかなり長期にわたってこたえなければならないということを考えますと、商法の改正までにはそういうことについて根本的な、この制度を廃止するかどうかという点についてまで結論を持って臨む、大体こういうことであれば、それまでに、経済状況というのですか、市場の整備というのですか、そういったものについて条件を整えなければならないと思うのですが、そういう意味での証券市場の条件整備についてどのように考えておられるか、それをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/36
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037・小粥正巳
○小粥説明員 証券市場の条件整備のお話でございますが、わが国の現在の公社債市場は、たとえば発行市場と流通市場との関連が必ずしも十分ではない、発行条件への反映の仕方等についてそのような批判があるわけでございますし、市場全体といたしましてもまだまだ成熟していない、いろいろと問題点が指摘をされている状況であろうかと思います。
それで、ちょうど証券市場問題につきまして、大蔵省の審議機関でございます証券取引審議会の中でただいま基本問題委員会という委員会が設けられておりまして、これは昨年の十一月以来現在に至るまで、この証券市場、公社債市場が今後いかにあるべきかという、文字どおり基本問題を現在検討していただいている状況でございます。今後の審議の見通しといたしましては、とりあえず、この秋ごろを一つのめどといたしまして中間的な御報告がいただけるものと期待をしておるわけでございますけれども、私ども行政の立場から、この基本問題委員会の御報告あるいは御答申をいただきまして、これを今後における公社債市場行政の大きな指針としながら行政を展開してまいりたい、そんなふうに考えております。
ただいまのところ、そのような意味で、具体的に行政の立場から将来の方向を申し上げる段階ではないように思いますけれども、いずれにいたしましても、現在の市場が今後もっと成熟をし、市場自体が発行企業の起債希望を自主的に選定しながらこれを受け入れていく、一方で投資家も十分な投資情報を与えられて、投資家の自主的な選別能力が高まっていく、両々相まちまして、わが国の公社債市場が成熟の方向に向かうことが期待されているわけでございますけれども、先ほど申しましたような証券取引審議会の御検討の結果を待っているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/37
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038・保岡興治
○保岡委員 アメリカなどにはこういう枠の制限がないということなんですけれども、アメリカなどの場合は、発行条件やその他市場のコントロールというのですか、そういったものはどのようになされているのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/38
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039・小粥正巳
○小粥説明員 アメリカの市場についてのお尋ねでございますけれども、アメリカは一般に公社債市場が大変発達をしている例として挙げられるわけでございますが、アメリカにおきましては、私どもが承知している限りでは、ただいまわが国で設けられております商法上の制限、その他法令によります社債発行についての制限はないと聞いております。
そこで、現実に市場でどのような仕組みで起債が行われているか、私どもの聞いているところによりますと、アメリカ市場におきましては、独立の格づけ機関なるものがございまして、この格づけ機関が社債を中心といたします各種の確定利付証券につきまして、長期的な投資の安全性あるいは元利償還の確実性、そういう見地からこれを判定をいたしまして、あらかじめ格づけなるものを発表いたします。これは長い歴史があるようでございまして、現在ではこの格づけ機関、主としては二種類の機関があるように聞いておりますが、実際に市場で公募債を発行いたします企業は、例といたしましてこの格づけ機関に格づけを依頼をする、それによって格づけを得まして、それが市場におけるいわば受け入れのメルクマールになりまして、ただいまお尋ねの、たとえば発行条件、一体どんな条件でどんな金利で出せるかという点もおのずからこの格づけによって決まってくる、そういうふうに聞いているわけでございます。
この格づけ機関は、いま二種類と申し上げましたが、ムーディーズという会社それからスタンダード・アンド・プアーズという会社、この二つが有名な格づけ会社として聞こえておりまして、これは先ほど申し上げましたように、起債の関係者でもございませんし、また行政当局とも全く関係がございません。中立的、独立の、格づけのためのいわば専門的な存在ということになりますが、先ほど申し上げましたように、すでに今世紀初め以来の六、七十年にわたる伝統の中でおのずからこの格づけの権威が確立してきたようでございます。
一方投資家に対しましては、わが国にもございます企業財務内容開示制度がかなり徹底していると聞いておりますので、投資家の方は、中立機関による格づけにより社債発行企業の財務内容あるいは安全性についての一定の基準を与えられ、さらに企業の内容についてはディスクロージャーによりまして豊富な情報を提供せられる。それによりまして、投資家が、自由な市場でみずからの判断で社債を初めとする各種の証券に投資を行う、このような形がアメリカ市場での現在の姿であるように聞いております。
もちろん、アメリカ市場にはそれなりの歴史がございます。またいろいろな点でわが国と仕組みが異なっておりますので、これが直ちにわが国の公社債市場の将来のあるべき姿というべきかどうか、これは検討を要する問題であろうかと思いますけれども、少なくとも、現在先進国におきまして最も進んでいるといわれる市場の一つの姿はこのようなものと聞いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/39
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040・保岡興治
○保岡委員 社債というものがこのところ非常に一般化してきて、しかも、経済状況が社債の発行を要請するというような社会状況になってきて、商法改正までには、この問題についても将来の結論的な方向づけを決めたい、こういうことになりますと、いまおっしゃったようなアメリカにおけるそういった慣行、あるいはわが国でも証券取引審議会の基本問題委員会で研究をするということですけれども、よほど努力しないと、そういう状況が果たしてできるのだろうかなという感じが、率直に言ってするわけなんです。そういう点で、今後いろいろなところで研究をして、あるいは市場の方もそれに沿うようにしていくのだと思いますけれども、何か思い切ったことをしないと、それに対応できないような感じがするのです。その点について、政府として、こういうことを順次やっていってそういった商法改正にあわせてやりたい、こういうような方針でもあればお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/40
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041・香川保一
○香川政府委員 私どもといたしましては、商法二百九十七条の規定による、かような社債発行枠の制限というふうな立法例は、イタリアを除いては他に例がないわけでございます。したがって理論的には、将来の問題でございますけれども、株式会社法の全面的な改正の際にはかような規定は廃止されるというふうな方向にあろうかと思うのであります。
ただ、その場合に、当然重視しなければなりませんのは社債権者の保護でございますが、かような保護は、基本的には経済界の自主的な、先ほど御説明のありましたようなランクづけというようなこと、あるいはディスクロージャーの制度を完備するというふうなことによって、社債権者の保護が十分に図られるように措置すべきだろう、かように考えておるわけでございまして、先ほど申しましたように、経済界から二百九十七条の改正について強い要望があるわけでございますが、私どもといたしましては、経済界に対しまして、基本的にはそういう社債権者の保護を十分考え、図り得る措置を自主的にとられることが何よりも先決だ、さような条件が満たされない限りは全面的な枠の撤廃というふうなことはなかなか容易でない、そのような趣旨を繰り返し申し上げておるわけでありまして、さような点について経済界におきましても十分認識がございまして、できるだけ早くそういう自主的なランクづけ等の措置がとれるように努力してまいりたいというふうな御意向のようでございます。そういうことで、基本的には自主的にそういうランクづけの制度が完備されることが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。特に余り私どもはさような点についていろいろ行政指導的なことをやる立場もございませんけれども、むしろ自主的にそういうことが早急になされることを期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/41
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042・保岡興治
○保岡委員 まさに自主的なものだけに任せておっていいのか、行政サイドから多少行政指導や、その他行政指導というような具体的なものではなくても、何か政府の方でそういった状況を促進したりまとめたりあるいは吸収したりする思い切った措置を考えなくてもいいだろうか、こういう感じがするからお尋ねしたのですけれども、やはり自主性に任せて余り政府がこの問題については関与すべき問題ではないのでしょうか、その点お伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/42
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043・香川保一
○香川政府委員 私ども素人でございますのでしかと申し上げかねますけれども、法制審議会の商法部会におきましてさような点がいろいろ議論されます場合にも、原則的には自主的な措置が最も望まれるわけでございまして、さような自主的な措置がとりやすいようにいろいろのお手伝いをするという関係では商法の面においても考えなければならぬ面があるかと思いますけれども、大蔵省におきましてもいろいろ工夫されておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/43
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044・保岡興治
○保岡委員 大蔵省はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/44
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045・小粥正巳
○小粥説明員 ただいまの先生のお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたように証券取引審議会でちょうど御検討中ではございますが、これまでにも行政といたしまして、公社債市場全体につきましては市場の自治、自主性に任せるという基本方針ではございますけれども、環境の整備という点では行政としてもそれなりに努力をしてきたつもりでございます。
たとえば、公社債市場で実は量的には最近大変大きくなってきております国債についてでございますが、国債についての流通機構の整備、売買手法の改善でありますとかあるいは流通金融の整備、この辺は行政としても力を入れてきたところでございます。
また、公社債市場につきまして一番問題点として指摘されますのは、先ほどもちょっと触れましたように、発行市場と流通市場がとかく有機的に連携をしていないというところでございますが、流通市場の整備は最近かなり進んできておりますし、また流通市場の実勢を反映しながら発行条件を弾力的に改定していく、この点につきましても、事業債を中心に最近の状況は、従来より見ますと、発行条件の弾力的改定という点ではかなり進んできているように思います。また、政府が直接決定いたします国債等公共債の発行条件にいたしましても、事業債におけるこのような弾力的な考え方がかなり浸透いたしまして、国債の発行条件を検討いたします場合にも、流通市場の実勢を見ながら弾力的にあるいは国債金利を市場の中で受け入れ得る金利にしていく、このような考え方が最近特に強調され、またそれなりの成果を上げてきているところであろうかと思います。今後とも、行政でできますことは、環境整備という点で、あるいは今回御審議をいただいておりますような法案によります制度の合理的な改定という点も含めまして、行政サイドでいろいろな手を打つ必要があろうかと思いますけれども、しかし、基本的には先ほど民事局長からお答えもございましたように、あくまで基本的には自由な市場で取引、起債あるいは流通が行われるということが基本であろうかと思いますので、投資家が十分な情報を与えられて自主的に投資判断が行い得るような、そのような市場環境を整備していく、行政の役割りはあくまでそこに徹すべきではないか、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/45
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046・保岡興治
○保岡委員 ちょっと問題が細かくなるのですけれども、具体的な社債のもの、これがこの間証券会社を見に行きましたら非常にばらばらで規格が一定していないのです。これからかなり大量の社債が出回って一般化していくことになると、その取り扱いその他からそういった規格の統一とか何かそういう具体的な処理をするのに便宜も図っていかなければならないと思うのですが、ちょっと細かい問題になりますが、そういう方向についても御検討しておられるのか、ちょっと聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/46
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047・小粥正巳
○小粥説明員 ただいまお尋ねの社債券あるいはそれに付随しております利札の規格、様式が現在必ずしも一定しておりませんので、実際にこれを取り扱っております銀行あるいは証券会社におきまして、事務が必要以上に繁雑になっているという点は御指摘のとおりであろうかと思います。ただ、この点も従来よりはかなりそれなりに改善をされているように聞いております。規格、様式の統一基準につきましては、実はすでに昭和四十四年に、公社債引受協会それから全国銀行協会連合会、この両機関におきまして協議の上取りまとめられておりまして、その後発行者その他関係者に対しまして、これによるようにという要請が継続してかなり熱心に行われているように聞いております。現在、いささか細かくなりますけれども、ただいま申し上げました様式の統一基準によりますと、たとえば利札の規格は縦五十六ミリメートル横七十一ミリメートル、こういう規格を最も標準的なものとして発表しておりますが、現在発行されております公募公社債の残高のうち、約八五%がこの統一基準によります最も一般的な規格になってきているように聞いております。これは国債を含んでおりまして、申し上げましたように大部分はこの規格に統一をされてきた。しかし、これはあくまで発行者の考え方によるところでございまして、行政といたしましてもこのような関係者の努力はできるだけ支援をしていきたいと考えておりますけれども、現在のところまだ完全な統一にまでは至っておりません。しかし、御指摘のように、今後公社債全体の発行残高がいよいよふえる傾向にあると思いますので、この辺も実務的な見地からは関係者にさらに努力をしていただいて、事務処理の合理化、円滑化にさらに成果を上げていただきたい、行政もできるだけの支援はしていきたいと考えているわけでございます。現状はそのように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/47
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048・保岡興治
○保岡委員 それから担保付社債に今度は限ったわけですけれども、あと外債と転換社債が入っていますが、その担保つきでない社債ですね、これも非常に企業の信用力がある場合には一々担保をつけるのはめんどうであるというようなことも出てくるかと思うんですが、無担保社債については今後どのように考えていかれるか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/48
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049・小粥正巳
○小粥説明員 無担保社債についてのお尋ねでございますが、ただいま公募されております社債は、これも起債関係者の申し合わせ、それに市場の慣行といたしまして、実際にはすべて物上担保が付された形で出されているのが現状でございます。これはやはりわが国の起債の歴史の中で、かつては、戦前でございますが、無担保社債がむしろ一般的であった時代もあったようでございますけれども、ある時期から社債権者保護のためには担保つきであることが望ましいという考え方が一般的になりまして、戦後現在のような姿になっていると聞いております。これはそれなりに社債権者保護という考え方に徹したものでございまして、私どもは現在のところは十分意義のあるルール、慣行であろうかと考えておりますけれども、ただお尋ねのように、今後の問題といたしまして、これはあくまで社債権者保護の見地からでございますから、もし財務内容が非常に優良であるという企業が社債を発行いたします場合は、あえて物上担保がなくとも、市場における信用度の評価が非常に高ければ社債権者保護に実際に欠けるところがないではないか、その方が企業にとりましても、社債発行の機動性と申しますか、社債を発行しやすくするという意味で考えてしかるべきではないか、こういう議論があることは私どもは承知しております。
なお、わが国企業が海外で発行いたします外債の場合には、むしろ担保を付していないのが通例でございます。これは、申し上げましたように、市場の歴史的なルールによるところが大きいわけでございますけれども、今後の方向としては、財務内容のすぐれたもの、市場が受け入れるものであれば、無担保社債は考え得る問題であろうかと思います。
ただ、その場合に、繰り返して申し上げますように、従来担保つきということが、何と言いましても、わが国起債市場におきまして社債権者保護の一番大きな柱であったわけでございますから、この見地から、一体それではどのような基準でこの無担保社債を受け入れ、社債権者保護に欠けるところがないという、こういう安心と申しますか、投資家からもそういう信頼を得るようなルールができるかどうか、今後の検討課題ではあろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/49
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050・保岡興治
○保岡委員 では最後に、今度の改正によって自己資本比率がまた悪くなるのではないだろうか、こういうようなことで懸念をする論評もかなりあるのです。確かに次善の策として、長期の資金という意味で短期がこれに転換していくことは、現実の問題としては一歩前進であるということが言えると思うのですが、やはり自己資本比率を増加していくということは今後きわめて重要なことである。そういうことから、実際の政策として、自己資本比率を高めるためのまた政策という特別なものがあるのかどうか。経済全体がよくなる中で自然にそうなっていくことであろうと思うのですが、特に自己資本比率を高める政策という点について、今度の改正では十分でないにしても、それを補う政策としてどういうことを考えておられるか、その点をお伺いして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/50
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051・香川保一
○香川政府委員 株式会社法の全面改正に際しましては、この自己資本の充実を一つの大きな柱にして考えなければならぬというふうに思っておりますが、さしあたりの問題といたしまして、先ほども申し上げましたように、現在の経済事情のもとでは、自己資本の充実、つまり増資がなかなか容易でないわけでございまして、これはむしろ現在の、先ほども申しました借入金の依存度が非常に高いというふうな点にも大きな原因があるわけでございまして、したがって、その借入金の依存度をできるだけ低くいたしまして、長期安定的な資金調達の方法として、社債の発行を活発にいたしまして、それによって各企業の資産内容を改善してまいりますれば、そこにおのずから増資による資金調達ということもしっかりしたものとして出てまいろうかと思うのであります。いま直ちに新株発行を声をかけましても、これは実際問題としてなかなか容易でない。その前提措置的な意味で、社債発行によって長期安定資金の比率を高めていく、さようなことによって会社の資産内容がよくなってまいりますれば、おのずからそこに増資の道も開けてくるというふうな手順を考えておるわけでございまして、決して、社債発行枠を拡大することによって自己資本の充実がなおざりにされるというのではなくて、むしろ、現在はさような方法をとることによって自己資本の充実の道が開けてくるというふうに私ども考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/51
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052・小粥正巳
○小粥説明員 自己資本充実につきましてどのような政策をとるべきかという問題は、実は私どもにも非常にむずかしい問題でございまして、大変率直に申し上げまして、即効性のある政策はなかなかないように考えております。
自己資本の充実を図りますためには、やはり基本的には企業の自己蓄積力を増していくこと、これに尽きるわけでございまして、しかし、この自己蓄積力を増して、自己資本の充実が図られていくためには、たとえば大きく申しますと、わが国の経済全体のあり方、たとえば従来の高度成長期には、外部借入金に依存をして業容を拡大していくことが大方の企業のとるべき道であったかと思いますが、これが現在の極端な自己資本比率の低下を招いた大きな背景であろうかと思います。今後は、経済構造が変わっていく中で、企業が自己蓄積力をじみちに増していくということがこの問題の基本であろうかと思います。
それからまた、政策面から申しましても、たとえば現在の配当税制のあり方がこの問題に大きな影響を与えているというそういう指摘もございますし、金融政策の面からもいろいろ議論はあろうかと思います。しかし、問題を私どもの証券行政の立場からしぼって申し上げますと、やはり証券市場を通ずる直接金融のパイプをできるだけ太くしていくこと、もう少し具体的には、たとえば株式の投資魅力を回復していくこと、増資の形態も、ただいま時価発行が主流になってきておりますけれども、その場合の株主への利益還元ルールを徹底させること、あるいは法制審議会でも御検討されておられますけれども、無額面株式を初め株式の形態の多様化を図ることもこの問題に一つの支援になろうかとも思いますし、あるいは社債と株式の中間的な存在でございます転換社債等、いろいろな形での直接金融による資金調達の多様化を図っていく。そしてまた、証券市場をもっと投資家が広く安心して参加できるように整備をしていくこと、そのようなことが、私ども証券行政を預かる者には政策としてこれからも力を入れていかなければいけない点かと考えておりますが、全体的に申しまして、行政も企業も非常にじみちな努力とかなり長い時間を要する問題であろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/52
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053・保岡興治
○保岡委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/53
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054・上村千一郎
○上村委員長 次回は、明二十日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108005206X00919770419/54
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