1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十二年十一月十五日(火曜日)
午後二時三十三分開会
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委員の異動
十月二十八日
辞任 補欠選任
目黒今朝次郎君 吉田忠三郎君
十月三十一日
辞任 補欠選任
中野 明君 宮崎 正義君
十一月二日
辞任 補欠選任
宮崎 正義君 中野 明君
十一月十五日
辞任 補欠選任
宮本 顕治君 神谷信之助君
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出席者は左のとおり。
委員長 中尾 辰義君
理 事
大石 武一君
八木 一郎君
寺田 熊雄君
中野 明君
委 員
河本嘉久蔵君
山本 富雄君
安永 英雄君
吉田忠三郎君
橋本 敦君
神谷信之助君
円山 雅也君
国務大臣
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
政府委員
法務政務次官 青木 正久君
法務大臣官房長 前田 宏君
法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総長 牧 圭次君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
説明員
内閣官房内閣審
議官 田中 和夫君
外務大臣官房領
事移住部長 賀陽 治憲君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○航空機強取等防止対策を強化するための関係法
律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/0
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001・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る十月三十一日、中野明君が委員を辞任され、その補欠として宮崎正義君が選任されました。
また、去る二日、宮崎正義君が委員を辞任され、その補欠として中野明君が選任をされました。
また、本日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任をされました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/1
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002・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/2
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003・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に中野明君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/3
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004・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/4
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005・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
近時、航空機乗っ取り事件等一部過激派分子による各種不法事犯は、国際的に見ましても、その手段、態様等において、一段と悪質化する傾向を示しており、特に先般の日航機乗っ取り事件においては、多数の乗客、乗員の生命が重大な危険にさらされただけでなく、一般刑事犯を含む被拘禁者の奪取等およそ法秩序を確立して民主主義体制を堅持する上から、とうてい看過し得ない容易ならざる結果を招来するに至ったことはまことに憂慮にたえないところであります。
もとより、政府といたしましては、かねて、この種犯罪に対する適切な各種取り締まり対策の推進を図ってきたのでありますが、かかる事態を前にして、さらに強力にして実効ある対応策を樹立する必要が痛感されるところでありまして、ここにおいて、政府としては関係機関を中心とし国民各階層の協力のもとに、厳然たる決意を持って各般にわたる行政諸施策の一層の徹底を図るとともに、法制面の問題点につき緊急の改善措置を講ずることにより、これら行政諸施策と相まって、この種犯罪の未然防止に万全を期し、あわせて犯人に対する実効ある科刑の実現に資することとする趣旨で、この法律案を提出することとした次第であります。
この法律案の骨子は、次のとおりであります。
その一は、航空機の強取等の処罰に関する法律の一部を改正し、航空機を強取した者等が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し不法な要求をする行為について特別の処罰規定を設け、「無期又は十年以上の懲役」をもって処罰することとするものであります。
すなわち、最近の航空機乗っ取り事件においては、航行中の航空機を強取した上、乗客等を人質として、第三者に対して不法な要求をする例が多く、しかも、その内容は、身代金の要求にとどまらず、拘禁中の被告人や受刑者の釈放を求めるなど法治国家として容認しがたい事項にまで拡大してきているのでありまして、かかる不法な要求をする行為に対して、その実態に応じた処罰規定を設けて一般の強取犯よりも重い法定刑をもって臨むものとすることは、国家刑政上から見ても、きわめて緊要と考えた次第であります。
その二は、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の一部を改正し、不法に業務中の航空機内に爆発物、銃砲、刀剣類または火炎びんその他航空の危険を生じさせるおそれのある物件を持ち込む行為について特別の処罰規定を設け、爆発物に関しては「三年以上の有期懲役」、銃砲、刀剣類等に関しては「二年以上の有期懲役」をもって処罰することとするものであります。
すなわち、航空機乗っ取り事件の防止対策の一つといたしまして、航空機内への爆発物、銃砲、刀剣類等の持ち込みを防止することが肝要と考えられるので、このため、空港における安全検査等の強化徹底と相まって、これらの物件を不法に航空機内に持ち込む行為に対して一般の不法所持罪よりも重い法定刑をもって臨み、もってこの種事犯の未然防止に資することとしたものであります。
その三は、旅券法の一部を改正し、現在刑事訴追を受けている者等に対する旅券発給制限の対象となる罪の法定刑が長期五年以上となっているのを二年以上に改め、新たに旅券の返納命令の通知内容を公告して通知にかえる制度を設けるとともに、旅券法違反の罰則の法定刑を引き上げ、一年以下の懲役を三年以下の懲役に改めること等とするものであります。
すなわち、過激派関係者により犯される犯罪の中には、法定刑の長期が五年未満のものも含まれており、これらの者については旅券発給の面からも適切な規制を行うことがぜひとも必要と考えます。かかる旅券発給の規制によりこれら過激派関係者が外国に渡航してわが国の刑罰権から逃れることを防止するとともに、航空機のハイジャック等国際社会一般の法秩序に対する重大な侵害を未然に防止するよう努めることがわが国にとって緊急の必要事であると考えられます。
また、公告による旅券返納命令の制度を新設して返納事由に該当するに至った者については、その所在が判明しない場合でも、有効に旅券返納命令を発し得るものとすることにより、その所持する旅券を失効させるとともに、関係諸外国にもこのことを通知して過激派関係者の外国での滞在ないしは国際間の移動に歯どめをかけ、外国官憲の協力のもとに本人を帰国させることも図ろうとするものであります。
さらに、虚偽申請による旅券の取得、旅券の不正行使等は、過激派関係者の不正な海外渡航に利用されるところであることにもかんがみ、この罰則を強化して旅券犯罪の防止を図る必要があります。
その他、関連規定の整理を行うこととしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/5
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006・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 以上で説明の聴取は終わります。
これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/6
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007・八木一郎
○八木一郎君 私の質問は簡単に御質問申し上げますが、説明は一般国民によくわかるように御答弁を要求します。
まず一問ですが、本月の八日に政府はハイジャック等非人道的暴力防止対策本部として、日本赤軍対策、国際協力推進、また安全検査等の徹底、さらに出入国規制等、また国民に対する理解と協力の要請、さらには在外公館等の警備の強化と、また法律改正という七項目に分けて対策を決定し、今後とも常設的なものとして対策の実施状況を日常、常時的に点検をすることにしたと、こういうことを公に発表されております。その具体的な内容についてここで詳しく説明をしていただきたいのであります。さっきも申しましたように、この文章わかりにくいところが多いので、わかりやすいアクセントのある説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/7
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008・田中和夫
○説明員(田中和夫君) お答えいたします。
去る十月四日に政府といたしましてハイジャック等非人道的暴力防止対策本部を設置いたしまして、十月十三日にはそのまだハイジャックの余韻が残る時期に、十月十三日にいわゆる第一次緊急対策と申しますか、そういうものを発表し、続いて十月二十日には緊急を要する法律事案、ただいま審議をお願いしておりますこの法律案につきまして決定し、さらに十一月八日にこの一次とあるいは法律案を含めまして対策を決定したわけでございます。
この対策の内容でございますけれども、先ほど先生おっしゃられましたとおりに七項目ございます。詳細に分けますと二十四細目にわたっておりまして、これを簡単に御説明申し上げたいと思います。
第一に、何よりも大切なことはやはりこの事件を引き起こしました日本赤軍の根源を絶つ、こういうことでございます。そのために私どもといたしましては日本赤軍対策というものを第一番に挙げております。これは国外、国内あるいは海外を問わず、日本の赤軍を撲滅すると、こういうことでございますので、一つには警察、これに関連する諸官庁を充実いたしまして赤軍の取り締まり、情報活動を強化するとともに、海外の赤軍対策に当たりましてはICPO、それから国際連携を強めまして、海外での日本赤軍あるいは過激派の情報を収集する、こういう活動をする予定でございます。
第二に国際協力の推進でございます。これはハイジャク防止関連三条約と申しまして東京条約であるとか、あるいはヘーグ条約、モントリオール条約、こういうのがございますけれども、これには世界の各国がまだまだ加盟していないところが多うございます。したがいまして、これらの未加盟国に対しましてわが国といたしまして積極的に働きかけ、そして加盟していただく、こういう方針でございます。そのほかたとえば現在わが国の飛行機が、日航でございますけれども、これが寄港しております外国の空港で私どもの要求しておりますような安全検査というものが行われないところもございますので、そういうところにつきましては、場合によっては寄港中止であるとか、あるいは相手国企業の乗り入れ再検討の措置も考えておるということでございます。これが国際協力の点でございます。
第三は、安全検査の徹底でございますけれども、これは御承知のように国内ではかなりボディチェックであるとか、あるいは荷物検査、こういうのをやっておりますけれども、さらにこれに加えましてダブルチェックと申しまして、一度いままでのように安全検査をしてその後さらにシップサイド、飛行機に乗る直前にもう一度検査するというダブルチェックでございます。こういうものも実行していこう、こういうことでございます。それに伴いまして検査用の機器であるとか、あるいは地上監視員、地上作業員というものがございまして、こういう人たちの作業を監視する機器の開発と、こういうこともひとつ考えておるわけでございます。
それから第四でございますけれども、出入国規制でございます。これは先ほど法務大臣の説明にもございましたように、いろいろなわが国の公安を害するような人たちが入ってきたり、あるいは過激の連中が出ていく、こういうものをさらに強くチェックしよう、こういう対策でございます。
第五に、これは大きな問題でございますけれども、ハイジャック防止に関しまして国民の理解と協力、こういうものを求めるよう強力に働きかけたい、こういうことでございます。
それから第六でございますけれども、在外公館等の警備の強化でございます。これは従来から在外公館等についてはやっておるのでございますけれども、なおこれからの過激派、その中でも日本赤軍の活動状況なりあるいは情報なりとってみますと、これからの襲撃の目標というのは在外公館を含めまして、日航であるとかあるいは海外進出企業の襲撃ということも考えられますので、こういうところに対する警備もこれから厳重にしていきたい、かように考えておるわけでございます。
第七といたしましては、ただいま御審議いただいている法律改正とともに、これから法律事項として検討していかなきゃならない問題といたしましては、刑事訴訟の促進を図るための刑事訴訟法の一部改正であるとか、あるいは航空機強取者の人質強要行為に対し死刑をもって臨む場合を設けること、あるいは航空機以外の場における人質強要罪の新設、かようなことをただいま考えておる次第でございます。
なお、これ以外につきましては、たとえば仮称でございますけれども、航空保安官制度というものがございますけれども、これは実際の運用上非常に危険を伴う可能性があります。しかし考えてみますと、反面その予防効果というものは見逃しがたいものもございますので、これも検討する。また先ほど私が申し上げました安全検査の徹底でございますけれども、この徹底が十分に行われない場合には、場合によっては法的措置を講じましてこの対策を強力に進めると、こういうことも考えておる次第でございます。
なお、以上申し上げました対策につきましては先ほど先生も御指摘なされましたように、対策本部を常設的なものとし、以後この対策につきましては国際情勢であるとか、あるいは過激派等の状況の変化によりまして、この対策を補足したり、あるいは促進したり、あるいは補充したりと、こういうようなことを対策本部として考えて運用していきたいと、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/8
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009・八木一郎
○八木一郎君 いま御説明をいただいたこのビラは、委員にお配りしてありますか。なければ資料として配ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/9
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010・田中和夫
○説明員(田中和夫君) 後ほど資料として御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/10
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011・八木一郎
○八木一郎君 二問は、今回のハイジャック事件に政府のとった措置は万やむを得なかったと考えます。しかしながら、大臣も先般あいさつで言っておられますように、重大な犯罪人で身柄拘束中の者を一度ならず二度までも犯人の要求で釈放するという事態に立ち至ったということはいかにも残念至極です。凶悪犯人を世界じゅうにばらまいておるような結果になってしまったことは断じて許せません。三たびもこのような事件が発生しないように特段の措置は、これは書いたり言ったりすることは簡単で言うはやすいのですが、行いはなかなかかたいと思います。俗な言葉で言えば、日本的かあるいはドイツ的か、人命尊重か法秩序か、一体大臣はどのような基本的な態度で対処しようとしておられるか。政府、大臣は周到かつ峻厳な態度をもって対処するとおっしゃるでしょう。しかし、ただいま伺ったこの七つの対策では、まだより悪質なこの種の事件がこれで断ち切られる、安心だと、三たび目はもう絶対ないというふうには思えない不安を持たざるを得ません。私は、みせしめの意味も含めまして死刑にする、極刑も辞さないという厳粛な態度で対処する、これが本気で——大臣御就任前に、血を流すこともやむを得ないのだと、毅然とした非常に強い姿勢を伺うことができましたが、その問題をもう一度ここで、たてまえではなく大臣の本音はこれだということが国民によく理解、納得できるような御答弁をお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/11
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012・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) いま八木委員からも仰せになりましたが、この前の日航ハイジャック事件におきましては御承知のような事態の中で、政府といたしましては百数十名に上る乗客及び乗務員の生命を何とか守りたい、保護したい、こういう基本的な態度で臨んだわけでございます。御承知のような状態でありますから、政府といたしましては憲法を施行し、憲法のもとにおいてその諸原則を、法律、規則を定めてそれを実現する、いわゆる法治国家をわが国はとっておるわけでございますが、これはとりもなおさず国民全体の生命、財産を平和で安全かつ自由に活動できるような国をつくり上げたい、こういうことで法治国家ができておると思います。でありますから、政府がかような場合に判断します場合は、やはり大前提として人命を何とか保護する、いわゆる人命を尊重する、こういう立場で臨まざるを得ない。
その際に、いまおっしゃったとおりに、法治国家としての関係はどうなるかということが深刻に考えられるわけでございますが、この前の措置は、事態が御承知のとおり海外であるし、なかなか国内にあるように簡単にいかない非常な深刻な事態でありました。でありますから、憲法の求める法の理論からいって、人命を尊重するためには、一部いわゆる実定法を損なうこともやむを得ない。いわゆる超実定法的措置をとったことは御承知のとおりであります。私どもはそのことはあの事態に対してはやむを得なかった。きわめて残念であるし、それこそ断腸の思いということが言われておりますが、やむを得ないことであったとしても、そういうことで容認せざるを得ない、こういう態度をとっておるわけでございますが、しかしいまも申し上げましたように、法治国家の最終の最大の目標は国民全体の平和と安全、自由を守っていくということでありますから、もしこういう事態がたびたび起こるということになりますと、この前の措置でも、すでに犯罪によって裁判の結果収監されておる者も一部放さなければならない、犯罪によってこれから起訴されて裁判にかけなきゃならぬ者も一部放さなければならない、こういうことになりますと法治国家としての存在がだんだん危うくなってくるおそれがある。これは憲法や法律の、また国民全体が求めるところでないと思います。でありますから、基本的態度ということになりますと、人命を尊重しながら法治国家はあくまでも守っていくという重大な決意をしなければならない。あらゆる努力をいたします。予防措置も講ずる。起こりましたときにあらゆる努力をいたしますが、どうしてもその努力の結果、時と場合によっては人命に残念ながら損傷を来す場合があり得るかもしれないけれども、しかし法治国家としての大目標を、基本原則を曲げると、そういう事態にはやむを得ない断固たる措置をとらなければならない、まあかようなことが私どもの立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/12
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013・八木一郎
○八木一郎君 政治は国民のもの、国民一人一人は国に、また家に国家に社会に、その構成員としての責任と義務を感じながら、こういう問題に対応する時期だと思います。
そこで、私はこういう時期をとらえて、日ごろ思っていることですが、常日ごろ戦後のわれわれの国民生活に寄せてきた心構えについてひとつ問題を提言、提起してみたいと思うのであります。
まあこれは、ここに人殺し問題について一つの話が出ておりますので、非常に感銘した私は、このことを御披露して大臣の御感想を伺いたい。
話は、非行少年や犯罪者に接する仕事を長いことしてこられた加賀乙彦さんのお話です。
ある殺人犯がいた。彼は大学を卒業して証券会社に入社し、相応の収入もある頭のよい男だったが、ふとしたことで人を殺し、死刑の判決を受けた。そして獄中で、なぜ人を殺したかということを真剣に考え始め、この考えを続けた結果、ついにカトリックに入信した。ある日、彼は私に——この私は加賀乙彦さんですが——つくづくとため息をついて言うことに、どうして、あんな事件を起こしたかと反省すると、結局自分は、人を殺すことが悪いことだと知らなかったんですね。彼は、殺人が刑法に触れる犯罪であることはよく知っている。またつまり、世間で人を殺すことが禁止されていることは心得ていた。しかし、人を殺すことが悪であることを心にしみ込むような強さでは知らなかったという。彼の反省は、言葉としては平凡だが、実は非常に大切な省察を含んでいる。なぜ、私たちは人を殺してはいけないのかという道徳の根本問題を彼は言い当てているというのであります。事実、キリスト教にしても仏教にしても、すぐれた宗教は第一に殺人を禁じている。そして愛とか慈悲とかは、殺すなかれから出発しております。人の守るべき道徳として殺すなかれ、これが第一にくるのであります。それなのに真の道徳、だれもがそれを教えなかった。子は親のするとおりにする。親の言うことは聞かないけれども、親のするとおりにするという、こういう親の立場に立ってわれわれも政治は国民のものだ、やっぱり反省をしてみますが、どうも戦後ここに欠くるところがあったのではないか。主権在民は教えるけれども、この殺すなかれ、道徳、人間がいかに生くべきかということを学校でも家庭でも社会でも本気になって教えてこられたかどうか、こういうことを私は感じたのであります。いま必要なのは、戦争にも匹敵する道徳の戦いであるということを言われたあの哲学者のジェームスのようなこういう心境に立ちますと、こういう問題についてこれだけの世界を騒がした問題の中で、日本の政府部内にもこのような感慨に触れた何か検討があったかどうか、またお考えはどうか、この機会に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/13
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014・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) きわめて高度な宗教的といいますか、哲学的といいますか、お尋ねでありますが、私ごときがさような高度なものにお答えできるかどうかきわめてじくじたるものがあります。しかし私は、諸外国のことは別にいたしまして、近来の日本の現状を見ておりますと、なるほど経済、国民生活は日本の歴史始まって以来の高度な状態になっております。世界の歴史にもかような奇跡的なことは初めてだろうと言う。しかし、その半面何となく心の乱れがある。私の実感であります。その心の乱れは、せっかくあらゆる歴史的躍進を遂げて築き上げてきた、先ほど簡単に申し上げましたいわゆる法治国家、仕組みによって国民の平和と安全と自由を守って豊かな暮らしをしていこうという仕組みだと思いまするが、心の乱れが、こういういわゆる法治国家の意義について残念ながら日本国民は、歴史の経験が浅いといいますか、それに対する真剣な努力が足らなかったといいますか、私の見たところではやや希薄である。これが今日の各種の凶悪犯その他が簡単に他人の人命を損傷すると、こういうことが行われておる根本であると思います。私は現在の学校の教育の内容をつまびらかにしておりませんが、社会をつくり国をつくり人間生活をこうやって営んでいくのは、これはやっぱり人間が生命を保存し幸せに暮らしていくためのものであると思いますが、この大自然から生命というものを授かっておる、しかも、特に人類だけに限りますと、人類がなぜいろんな苦労をしながら営々として子孫をつくり努力をするのかという、人類の目的といいますか、意義といいますか、生命の意義というものについて、そこの根本のところを教育の場あるいは一般の場で指導といいますか、教えるといいますか、そういうことに欠けておるような気がしてなりません。あらゆる問題がやっぱり生命を基本にして社会をつくり人類の発展を図っていくものだと私は観察、感じておるわけでございますが、そういう深い、いまおっしゃったような宗教的といいますか、哲学的といいますか、そういう根本問題を真剣に考えるという風潮に欠けておるように思います。これは一、二の努力によってはできるものと思いませんが、ただ法律をつくっただけでは、いまおっしゃったようにこの法律を知らないでおる人がたくさんおるわけでございますから、法律をつくりあらゆる行政その他の個人の努力をするのもやっぱり生命を安全に円満に保存し、生き続けていくというためにあるものだと私は見ておりますが、やはり教育界その他総合的にそういう考え方といいますか、態度といいますか、それをつくり上げていくことがあらゆる問題の前提になるのじゃないかと、かように考えております。お答えになるかどうかわかりませんが、今度のハイジャック事件では、日航ハイジャック事件が起こり、後を追っかけるようにしてルフトハンザのハイジャックが起こる。事もあろうにその途中で御承知のように長崎でバスを利用した凶悪犯の行動があった。まあ、バスジャックと簡単に言われておりますが、この三つのものが重なって、それぞれ処置の違いはありましたけれども、非常な不幸な事件でありましたが、私は、やや薄れておった法治国というものの意義を今度の重なった事件によって国民の皆さんが、深い浅いはいろいろあると思いますけれども、やはり真剣に法治国家の意義というものを考えられる絶好の機会であったような感じがしております。私が記者会見等でいろいろ申し上げておりますのは、法治国家の意義とか人命の尊重とかいうものはこれは政府だけの問題でない、あるいは法務省や法務大臣だけの問題でなくて、国民全体、一億一千万それぞれその人の問題である、国民一億一千万のわが事であるという考えをしてもらいたい、こういうことを申し上げるために、時と場合によっては血を見ても法治国家を維持するという決意をしなければならないと、かようなことをやや法務大臣としては激越なように聞こえる言葉を使っておりますのは、こういう忌まわしい残念な事件を契機にして国民全体がそういう気になってもらいたい。それを呼びかけるというと失礼でありますけれども、私の気持ちの裏にはそれがあるわけであります。いまおっしゃったことに対する御答弁になるかどうか、私自身じくじたるものありますが、私はいまおっしゃった八木委員のお気持ちは十分わかるような気がしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/14
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015・八木一郎
○八木一郎君 いまテレビは十二チャンネルもあって、テレビで日常茶飯事のように殺人事件や戦争を見ている子供たちに、殺人は悪だと心に響くような形で教えることというのはなかなかむずかしいと思うのです。いまお触れになったような一億一千万の一人一人の人間が人間らしい豊かな心、物で栄えて心で滅びるという人がおりますが、そういうことにならないようにと心がけておっても、日常のテレビを見ますると、私はこれはやっぱり心を痛めるのです。しかし、むずかしいからといってこれを投げておいてはどうにもならない課題だと思います。私がお尋ねしたいのは、この七つの項目を挙げてこれからも日常監視的にこの対策を進めていこうという対策本部の中に、これをまとめるまでの間に、この人の心を寄せてこの問題にどう取り組めばいいのだろうかという問題を、これは哲学的や宗教的にでなく、行政的な立場にお立ちになって考えても、いま私はテレビを例に出しておるのですが、そういう問題がきっとあったに違いない。こういうことについては対策の中には入っておりませんが、どこかに入っておるのか、考えはあるのかどうか、もう一遍伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/15
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016・田中和夫
○説明員(田中和夫君) 私は事務局として対策本部に始終出席しておりましたけれども、確かに表面的にはかような考えは出ておらないのでございますけれども、その裏には、議論した過程には、ただいま先生おっしゃられましたように、非常に社会的風潮と申しますか、あるいは容易に人を殺しても構わないというようなマスコミ等の場面があるわけでございますけれども、こういうものも含めまして議論したと私に判断されるわけでございます。したがいまして、私どもつくりました裏には先生御指摘されましたようなことが十分考えられると、このように考えていただきたいとかように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/16
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017・八木一郎
○八木一郎君 その対策委員の、構成しておる閣僚人事、人間、どういう方々がその構成をしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/17
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018・田中和夫
○説明員(田中和夫君) 対策本部長は、内閣官房長官でございます。そのほかに本部員といたしましては、法務大臣、外務大臣、運輸大臣、大蔵大臣、国家公安委員長、そのほか警察庁長官あるいはオブザーバーといたしまして日航の職員、そして全日空の職員、このような方々が含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/18
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019・八木一郎
○八木一郎君 これは要望しておきますが、常設的にこの対策を進めるような配慮をしていこうという対策本部ならば、私にはいま提言しておるような問題に、総理大臣ですか、ともかく当然中心になってやっていかないと、世界にこういうことをばらまいておいて、日本の精神風土に対して、荒れておる日本の姿を見せびらかしたままになってしまうと思うのです。これはどうしても内閣として、総理大臣として、日本として、国民として、そういう問題を取り上げて対策本部で検討をし、そして名誉と信用の挽回に努めてもらいたい、これを要望しておきます。
以下は、二、三条文を読んでみてもわかりにくい点がございますので、簡単に御質問を申し上げます。局長から御説明いただけば結構です。
対策本部発表第七の二にすなわち次のようなことが三つ挙げてあります。今後検討する、とあります。私は、今後検討する、が気に食わない。通常国会で立法するというところまで腹をくくって進めておられるのならばまだよし。これは大事なところだと思いますけれども、どのように考えておられるか。
読んでみますと、一は、「刑事訴訟の迅速化を図るための刑事訴訟法の一部改正」をすること。あの浅間山事件以来、まだシロだかクロだかわからずににそのままになっておるということは、国民は非常に不思議に思っておる。何しているのだ、なぜだろう、こう思っています。
二番目は、「航空機強取者の人質強要行為に関し死刑をもって臨む場合を設けること。」これは、死刑を設けるということは決めて、手続的な検討に入っておる、こうも読めるし、この場を逃れるためにこう書いて、ずるずる先に行ってしまうのじゃないかとも思えるが、これはどうか。
三、「航空機以外の場における人質強要罪の新設」をすること。これは長崎のあの事件があったし、いろいろ出ましたから間に合わなかったのかどうなのか。この三つについて解説をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/19
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020・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘の三点について御説明申し上げます。
まず第一の刑事訴訟法の改正の問題につきましては、先にこの作業の進みぐあいを申し上げますと、今月二十八日に法制審議会に諮問いたしまして、当日の総会から御審議をいただくことになっております。
この内容について若干申し上げますと、ただいま御指摘がございましたように過激派の刑事事件を中心いたしまして訴訟が極端に遅延する傾向が顕著でございます。訴訟が遅延します一般的な理由といたしましては、裁判所、検察官、弁護人、被告人、それぞれにそれぞれの理由があるわけでございますが、過激派の事件を通じて顕著でございますことは、弁護人が被告人と意思を通じまして訴訟の遅延をはかる傾向が顕著であるということでございます。すなわち、きわめてしばしば公判期日において退廷戦術をとる、あるいは不出頭戦術をとる、さらには極端な場合には弁護人が辞任戦術をとる、こういうことによりまして、公判期日における審理の進行をさせないというような動きが顕著でございます。たとえば、裁判所が機械的に計算いたしますと、一月に二回ずつ、二日ずつ公判をやっておったのでは数十年を審理に要するというふうに認められるような事件につきまして、せめて一週間に一回公判期日を入れようといたしますと、弁護人の退廷戦術、不出頭戦術、辞任戦術が出てくるわけでございます。このような過激派の犯します中で世間の注目を浴びておりますような事件は、そのほとんどが必要的弁護事件でございます。弁護人がなければ刑事訴訟法上公判を開けないこととされている事件でございます。これが悪用されまして、訴訟の遅延に利用されておるという傾向が、これは全体の裁判から言えばごくわずかな数でございますが、極端な過激派の事件を中心に見られるわけでございます。そこで、これの対策といたしまして現在考えておりますのは、弁護人がただいま申しましたような戦術をとりました場合に、当面の予定されております公判期日でありますとか、あるいは被告人が新たに私選弁護人を選任するか、あるいは国選弁護人をつけてくれと裁判所に請求いたしますまでの間、暫定的に弁護人なしで公判を進行できるようにしてはどうかと、こういう構想で事務的に検討をいたしまして一応の成案を得ておりますので、法制審議会総会にお諮りしたいと、こう考えておるわけでございます。
次に、お尋ねの第二点、第三点でございます。便宜上、第三点の人質強要行為の処罰の方から先に申し上げますと、確かに今度の日航機ハイジャック事件の対策といたしまして、とにもかくにもただいま御審議いただいております法律案を早急に取りまとめて御審議を願うこととしたわけでございますが、申し上げるまでもなく、この次こういった連中が起こしますテロ行為、これは必ずしもハイジャックと限られるわけではございません。過去のクアラルンプール事件のように在外公館占拠事件も想定されますし、また先ほど対策本部の方からお話がありましたようないろいろなテロ行為が考えられるわけでございます。そういったものに対処するためには、大変卑俗な言葉で、妙な言い方で恐れ入りますが、ハイジャックに対してそれらのものをその他ジャックとでも申しますと、その他ジャックの対策を早急に考えなければならぬと思うわけでございまして、そのために航空機以外の場において人質をとって破廉恥な要求をする行為、これについても現在的確な処罰規定が欠けておる面もございますので、立法化いたしたいと思っております。
それからさらに、このハイジャックの場合、あるいはただいま申しました妙な言い方でございましたがその他ジャックの場合を通じまして、その態様の極端なものにつきましては、たとえばその結果人の生命が左右されることがありませんでも、これに匹敵する刑罰的評価をすべき場合があるのではないか、こういう観点から先ほどお話のとおりに死刑を設けるということが相当な場合もあるのではなかろうかと、こう考えましてその人質による強要罪、それからそれらのものあるいはこのハイジャックによる人質強要罪の両方を通じまして、特定の極端に凶悪なるケースを想定いたしまして死刑を盛り込むということで鋭意現在作業いたしております。
率直に申しまして、今月二十八日の法制審議会総会に間に合うかどうか際どいところであるというのが現在の作業の進行状況でございます。したがいまして、私ども事務当局といたしましては、三点いずれも鋭意作業を急ぎまして、次期通常国会を目途に勉強さしていただいておる最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/20
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021・八木一郎
○八木一郎君 これはぜひ通常国会に問に合うようなスピードで処理できまするように要請を申し上げます。
次は、航空機強取等の処罰に関する法律の一部改正関係でございますが、ちょっと説明を求めておきたいのです。列挙的に申しますと、一条二項に二項を新設しておりますが、この新設の理由がちょっとわからない、なぜこういうふうにしたか。
それから二番目は、長崎事件、航空機に限らず、こういう船舶とか汽車だとか何だとかいうようなものを対象とする考えはこの過程ではなかったかあったのか、包括されておるかどうかという意味が聞きたいです。
三番目は、死刑は規定し得なかったという理由はただいま伺いましたが、もう一度、これをなぜ規定し得なかったかという理由を簡単に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/21
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022・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 順次お答えを申し上げます。
まず、航空機の強取等の処罰に関する法律の中に、第一条の一項と二項の間に新たに二項を設けるわけでございますが、ハイジャックと一口に言いましても、最近のハイジャックは、もう十分御承知のように、単にハイジャックをするだけでなく、ハイジャックをしてから乗客、乗員を人質にして、そして不法な要求を第三者に対して仕向けてくるという形態が非常に多くなってまいったわけでございます。その典型的なものは今度の日航のハイジャック事件であり、ルフトハンザ事件であったわけでございます。これの予防策あるいはこれに対する対策といたしましては、先ほど内閣審議室から詳細御説明がありましたように、万般の努力をいたさなきゃなりませんが、刑罰的な評価の面におきましても、やはり単純なハイジャックとこのたびのような人質を取って強要するということまでプラスされた行為とは評価を異にしなければならない、刑を重くしなければならないという要請があるわけでございまして、そういう意味から今回一条の二項の改正をお願いいたしたわけでございます。
その際、確かに考えられましたことは、飛行機の場合、すなわちハイジャックの場合だけでなく、在外公館の場合あるいは船舶、汽車、そういったものの乗っ取り、こういうものにも対処しなければならないのではないか。さらには、ハイジャックをいたしました上人質を取って無法な要求をするような行為の中には死刑をもって臨まなければならぬ場合もあるのではないか、こういうことがやはり種々御議論もありましたし、私どもも私どもなりに考えたわけでございますが、当面のこの日航ハイジャック事件に対して対応するという観点から、とりあえず今回の法案のような形をとらしていただいたわけでございまして、新たに人質強要罪というものをつくるとか、あるいは、何と申しましても死刑と申しますのはいわゆる最高の極刑でございます。これを新たに刑罰体系の中に織り込むというようなことにつきましては、私どもやはり長年の伝統を持っております法制審議会に諮問をいたしまして、権威のある皆さん方のコンセンサスを得て実行に移した方が、単に法務省としていいというばかりでなく、やはり学界から何から全部総合した考えがそこにあらわれることによってより新しい規定の権威が増すものであろう、こういうふうに考えまして、先ほど手順の御説明を申し上げましたように、法制審議会の審議を経て早急に実現に移す、こういう態度でお尋ねのさような二点は若干時期をずらしたと、こういう事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/22
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023・八木一郎
○八木一郎君 最後に一問お伺いいたしたいのは、旅券法一部改正関係で、十三条一項二号について、「長期五年以上」とあるのを「二年以上」と改正されておりますね。これちょっとわかりにくいのだが、こんなに二年にしてしまうと、この改正の結果規制の対象が広くなって経済犯や選挙違反やこういったような軽犯罪のようなものまでが入ってしまうように思いますが、何かこれをしぼるという内規的な考えがおありになるのかどうか、そこだけ聞かしてください。
それからもう一つ。十九条の、これは新設したのですが、つまり返納命令で取っちゃうという意向のようですけれども、ここももう少し一般国民的にわかりやすいように解説をちょっと加えていただきたい。
それから、二十三条一項の改正で法定刑を「三年以下」と、現行は一年のようですけれどもこれを三年にしておる、懲役は。それから現行三万円を十万円にしておる。二号で「十万円以下の罰金」に変えてますが、この刑量、罰金をこういうふうに変えた裏づけのような説明を簡単にお願いいたします。
それで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/23
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024・賀陽治憲
○説明員(賀陽治憲君) 第一の御質問でございますけれども、旅券法のたてまえは、先生御高承のように、発給制限事由に該当いたしますれば必らず旅券の発給を拒否するということではございませんで、外務大臣の大幅な裁量を認めておるわけでございます。したがいまして、従来から、外務省といたしましては、たとえ旅券申請者が「長期五年」なら——従来は「長期五年」でございますが——、拒否事案に該当している場合でございましても、本人の渡航目的とかあるいは渡航期間とか渡航の必要性あるいは訴追の実体的内容、そういったものをつぶさに審査いたしまして、要すれば関係省庁の意見を聞いて、発給をするかしないかということを拒否該当事案についても検討して実施しておるのが実情でございます。従来、五年の制度のもとにおきまして該当者の九割に旅券が実際に発給されておるということは、これを物語るものであろうかと存ずるわけでございます。同時に、御指摘のように、今般の改正が日本赤軍の過激派の活動、そういったものを対象といたしまして実施されていることもこれは厳然たる事実でございますので、その辺を十分に勘案いたしまして、われわれ外務省の、いま御指摘の内規と申しますか、あるいは都道府県に対する通達というような形におきまして、主として過激派に関連する主要罪名でございますところの公務執行妨害、住居侵入、威力業務妨害、凶器準備集合並びに特別法でございます暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条、航空機の強取等の処罰に関する法律第三条、銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条の三、火炎びんの使用等の処罰に関する法律第三条及び火薬類取締法第五十八条に該当する者などを発給拒否の対象とする運用方針で臨んでまいりたいというように処理をいたす方針でございます。
第二の御質問でございますが、旅券の返納命令の問題であろうと存じますけれども、現在、有効な旅券を失効せしめる方法と申しますのは、書面で本人に通知する必要があるわけでございます。ただ、現代のわれわれが当面しておりますような事態におきまして、航空機強取等の過激活動に従事する者についてはもちろんその所在を知ることが困難でございまして、したがいましてかかる書面による返納制度が実際に作動しないことが予想されるわけでございます。今回の十九条の第二号の新設でございますが、かかる場合におきまして、外務大臣は官報に公告を行うかあるいは関係の領事館に官報に公告した趣旨を掲示いたしまして、その行為のみによって返還命令が到達したと、かようにみなし得る考えでございます。このようにいたしますことによりまして、旅券の実際の返納がございませんでも返納期限が到来いたしますると旅券を失効せしめることができますので、直ちにこのことを関係諸外国に通知いたしまして、その者の日本旅券による外国での滞在、国際的な移動に歯どめをかけて、最終的には外国官憲の協力を得て帰国を実現するということを図ろうとする趣旨でございます。
第三の御質問については、問題の性質上法務省から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/24
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025・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 提案理由の御説明にもありましたように、例を挙げて申し上げますと、たとえば今回残念にも釈放して引き渡さざるを得なかった奥平純三というのがおりますが、これが当初わが国を出ましたときに、これに他人名義の旅券を取得してやりこれを送り出したグループがございます。そういうグループのうち二名が検挙されまして裁判をすでに受けておりますが、それらの科刑はやはり現行法でまいりますと一年以下の懲役または罰金で処理せざるを得ないわけでございます。同じような問題が、海外における旅券の不正使用等にもあるわけでございます。かような状況にかんがみますと、現在の「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」ということでは結局、俗な言葉で申しますと、旅券の発給規制を幾らいたしましてもしり抜けになってしまうというようなことから、相当する刑に引き上げる必要があるということで三年という懲役刑の上限を考えました。さらに、最近の経済情勢等をも勘案いたしまして、罰金の上限を十万円ということにいたしたわけでございます。かようにいたしました反射的効果といたしまして、この旅券法違反の罪が刑事訴訟法によります緊急逮捕の可能な罪に入ってまいります。そのために、この種旅券法違反を犯しました者が発見されました場合にとりあえず緊急逮捕をして措置をするという可能性が生ずるわけでございまして、そういうような観点から旅券法違反の罪の刑を改めさせていただこうとしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/25
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026・八木一郎
○八木一郎君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/26
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027・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
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028・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) この際、牧最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。牧最高裁判所事務総長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/28
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029・牧圭次
○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一言ごあいさつさせていただきたいと存じます。
名古屋高等裁判所長官に転出されました寺田前事務総長の後を受けまして、十一月七日最高裁判所の事務総長を命ぜられました牧でございます。よろしくお願い申し上げます。
いまさら申し上げるまでもなく、裁判所は基本的人権を擁護し法秩序の維持に当たるという重い責務を国民から負託されております。この裁判所の使命を達成し、国民からますます信頼される裁判所となりますよう、司法行政の面におきまして微力を尽くしてまいりたい所存でございます。
幸いにいたしまして、今日に至るまで、当委員会の皆様の深い御理解と力強い御支援によりまして、裁判所は人的にも物的にも逐次充実が図られてまいりました。今後ともなお一層の御支援を賜りますように切にお願い申し上げまして、簡単でございますが私のごあいさつとさせていただきたいと存じます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/29
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030・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00319771115/30
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