1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十二年十一月二十二日(火曜日)
午前十時開会
—————————————
委員の異動
十一月十八日
辞任 補欠選任
案納 勝君 安永 英雄君
十一月二十一日
辞任 補欠選任
宮本 顕治君 下田 京子君
十一月二十二日
辞任 補欠選任
鳩山威一郎君 林 寛子君
藤田 正明君 堀江 正夫君
下田 京子君 宮本 顕治君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 中尾 辰義君
理 事
大石 武一君
八木 一郎君
寺田 熊雄君
中野 明君
委 員
河本嘉久蔵君
斎藤 十朗君
高橋 誉冨君
林 寛子君
堀江 正夫君
山本 富雄君
安永 英雄君
橋本 敦君
宮本 顕治君
円山 雅也君
国務大臣
内閣総理大臣 福田 赳夫君
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
政府委員
内閣法制局第一
部長 茂串 俊君
警察庁警備局長 三井 脩君
法務大臣官房長 前田 宏君
法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
—————————————
本日の会議に付した案件
○航空機強取等防止対策を強化するための関係法
律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/0
-
001・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/1
-
002・大石武一
○大石武一君 今日までハイジャック防止のための強化の法律案が提案されまして、いろいろと審議をしまして、最終の段階を迎えております。そのいろいろな議論の中で、やはり国民全体が一致結束してこれに対処するという心構えがきわめて大事であるというお考えが広く出されております。これは当然なことでございます。しかし、国民がそのような一致結束してこのハイジャックを防止しようと懸命な努力をするためにはやはり政府が確固たる方針を持って、国民にその方向を示すことがきわめて大事だと考えます。そういう点から政府のお考えをひとつ国民に明確に示していただきたいと思いまして、あえて二、三の質問を申し上げる次第でございます。あるいはその中ではいまさらそんなことをとか、あるいは少し失礼だと思われる点があるかもしれませんけれども、それはお許しをいただいて、ひとつ明確な御答弁をお願いいたしたいのでございます。
総理は今日提案されておりますこのハイジャック防止強化の法律案や、通常国会に予定されております法案を通してハイジャックを防止される体制を整えられるわけでございますが、それらの法律案だけで十分に対策ができるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/2
-
003・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) ハイジャック再発防止、これは私は政府の今回のハイジャック事件、これに対する処置として、これは最大の責任事項であると、こういうふうに思うのです。私は、かねてから鉄は熱いうちに打たなければならぬと、こういうことを申し上げておるわけでありますが、政府部内においてできること、これは着実にいま進行さしております。しかし、同時に法的な措置を待たなけりゃならぬ問題もありまして、ただいまお願いをいたしておる。それからさらに国際的な協力を求めなきゃならぬ部面が多々あるわけでございます。これらにつきましても、いま諸外国に対して鋭意話し合いを進めておる、こういうことでありまして、法律、これはもとより大事でございまするけれども、これだけで事が終われりという性格のものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/3
-
004・大石武一
○大石武一君 いまの国内の体制並びに国際的ないろいろな協力、こういうことについていままで十分議論し尽くされました。そういうことに対してやはり政府が断固として日本の法律を守り、世界人類の生命を守るという断固たる決意のもとに、この問題に対処されるという御決意と思いますが、いかがでございましょうか。簡潔にひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/4
-
005・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 全く御所見のとおりでございます、今回の事件につきまして、その処理の仕方をめぐりましていろいろ議論もありまするけれども、私どもは政府の最大の責任は、今後再びこういう非人道的な事件が起こらない、これを保障するための万全の対策をとることにある、またそれをとる決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/5
-
006・大石武一
○大石武一君 よくわかりました。
それでは今後このハイジャック防止につきましては、政府は不退転の決意と責任の所在を明確にする必要がきわめて大事だということはよくわかりました。これにつきまして政府に一つ要望いたしたいと思うのであります。と申しますのは、いままで三回ほどわが国はこのようなハイジャック事件に遭遇いたしました。その二回とも幸いに無事に日本国民の生命を全部完全に守ることができたわけでございます。これはまことに結構なことでございます。しかし、その間に総理も所信表明の演説で申されましたように法治国であるわが国において、法秩序を破らなければならなかったのでございます。このことに対しては、政府はすでに超法規的措置であるとか、あるいは超実定法的措置とかいうことで態度、責任のあり方を表明しておられるようでございますけれども、やはり私はこのような心構えだけでは足りないような気がするわけでございます。一ころドイツのやり方と日本のやり方についてはいろいろな批判がございました。これはもちろん比べものにはなりません。国情も違いますし、それらに対する準備その他も違いますから、同じことができるはずはありません。ただ、結果的には両国において全部国民を無事にこれを守ることができました。結構なことでございます。ただし、さらにもう一つ結果としてドイツ国は世界的に全責任を持って政府が赤軍と対決をして、あくまでもこのハイジャック行為を防ぐという方針を明確にされましたし、日本は残念ながら強盗、殺人犯その他の、これらに関係のない者までを釈放して、世界に今後さらにバチルスを広めるような傾向にもなったということは結果だと思います。こういうことに対しまして、私はやはり一番大事なことは政府がどのような御判断というか、それは政府の判断でありますから結構でありますが、これに対処する場合には、日本の法的秩序はりっぱに守るということ、並びにそのためには責任の所在を明確にすることがきわめて大事であると考えます。政府の責任の所在の一番の最後は総辞職であります。そのくらいまでの決意をされて法秩序を守るということ、あるいは場合によっては日本の法秩序を破らなければならないかもしれません。あるいはいわゆる超法規的措置も必要であるかもしれません。しかし、それはそれとして解決を終わった後において、やはりその政治的責任と申しますか、政府の責任を明確にすることが必要だと考えます。どうか今後はこのような方針のもとに、しっかりしたハイジャック対策をお立てになることを心から希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/6
-
007・寺田熊雄
○寺田熊雄君 総理、御苦労さまです。実定法の解釈や運用に関しましては法務大臣もいらっしゃいますし、有能な刑事局長もおられるわけですから、私はやはり今回のような措置の問題についてお尋ねをしたいわけです。
総理はダッカにおける今回の日航機ハイジャック事件につきまして、現在でも総理のおとりになりました措置が間違っていなかった、あれ以外にとるべき方法はなかった。そして法的にも間違っていなかったというお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/7
-
008・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 今回のあの事件の処理といたしましては、幾ら考えましてもあれ以外に解決の正しい道はなかったのだ、このように思います。もちろん超実定法的措置というような挙に出なければならないということにつきましては遺憾とは存じますが、しかし、あの場の処置といたしましてはそれより道はなかった、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/8
-
009・寺田熊雄
○寺田熊雄君 瀬戸山法務大臣と総理との間には、私は世界観的に見てかなり相違があるように思います。瀬戸山さんは法治国家を守ることがすべての国民の生命、財産を守ることであるから、法治国家の立場を守るのが原則だというふうに、いままでこの国会で答弁していらっしゃるのです。全体が個に優先するという超個人主義的な国家観がその根底にあるように私には思われるのです。総理の御説明はこれに反して法の尊厳、法治国家の立場を守るか、それとも個人としての国民の生命を守るか、そのいずれを重しとするかは、その事態に臨んで事件の態様に応じて判断すべきであると、少なくも超個人主義的な国家観ではないわけですね。総理も高等学校時代にデカンショ節を歌われたでしょうけれども、個人主義的な国家観というのはやっぱりカントがその代表だと思います。超個人主義的な世界観、国家観というものはヘーゲルにその代表を求め得られると思うのですね。総理はそういう世界観的な相違についてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/9
-
010・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、一人一人の個人、これは非常に尊厳なものとして尊重せられなければならないと、このように思うのです。
しかし、同時に個人の尊厳が守られると、こういうためにはその集団の秩序がまた守られなければならない、このように考えるわけでありまして、人間は一人で生きるわけにはいかぬということを私は常々強調しているのです。社会をなし国家をなし、そこで初めてその個々の人間というものが成長していくのだと、そういうふうに申し上げておりまするが、これは分けようとしても分けられない問題であると、このように考えるわけです。一体不可分の問題である。
そこで、私はこの種のハイジャック問題、この処置に対しましては個々の人の生命の尊重、これも非常に大事なことである、同時に国家秩序といいますか、集団の規律、これもまた大事なことである、その両々が並立し得るようなそういう形の解決を目指さなきゃならぬ、このように考えるわけでありまして、そのために非常に大事なことは、現実の問題といたしますと、ああいう非人道的事件が再発しないと、これは絶対に起こさないと、このための最大の措置を講ずることである、万全の措置を講ずることである、そういうふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/10
-
011・寺田熊雄
○寺田熊雄君 何かいまの国家観の問題ちょっとはぐらかされたような感じがするのですが、西ドイツがルフトハンザ航空機のハイジャックに対してとった措置は、私は完全に一つの冒険といいますか、かけであったように思います。
かってミュンヘンオリンピックのときは今度のように成功をしなかったわけですね。イスラエルの人質になった九人ですか、選手団は全員が死亡したわけですね。これは明らかに超個人主義的な世界観に立ったものだと私は見ているのですが、そういう世界観国家観に立ちますと、無事の生命というようなものは、やはりこれは全体というようなものの犠牲になるのは当然だという考え方に立たざるを得ないわけです。ですから、西ドイツの場合は全く無事な二人の生命、機長とシュライヤー氏の生命がそういう法治国家の立場というものの犠牲になって顧みられなかったわけです。
ところが、総理はしばしば国会で西ドイツのとった態度は非常な教訓になるというお答えをなさっていらっしゃるわけです。どういう教訓を西ドイツの態度から学び取られたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/11
-
012・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 一つは、西ドイツではいろいろなああいう種類の事件が起こりまして、そしてその事件に対する反省といいますか、そういうことからいろいろ——日本でももちろんやっておりますよ。やっておりまするけれども、ドイツはドイツなりにいろいろな予防措置、またさらに事後措置、そういうものについていろいろ検討したことと思います。そういう検討の結果、そういうことにつきましてはわが国としても大いにこれを学び取っておく必要があると、このように考えまするし、また、とにかく、若干の犠牲者は出しましたけれども、しかし犯人を逮捕する、また同時に乗客、乗員のほとんど大部分を救い出すということに成功したわけです。そういうような点ですね。それの是非は別といたしまして、どういうふうにしてそういうことができたのかというような点につきましては、これはわが国としても前車の車の足跡というような意味においてよく学んでおく必要があろうと。その他いろいろドイツの経験というものはわが日本としても、わが日本が今後この種の問題にどういうふうに対処するかという上から学び取るべき問題が多々あると、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/12
-
013・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私は政治家はやはり哲学を持たなければいけないと思います。いま個人主義的な国家観、それから超個人主義的な国家観を総理にお尋ねしたわけなんですけれども、また、超人格的な国家観というものもあると言われております。これは文化を個人や国家にさらに優先させる立場だと言われておるのですが、そのことに関して、御承知でしょうが、相対主義哲学の大家であるラートブルフですね。これが法律哲学の基本問題の中で非常におもしろい例を引いているのですが、それは一軒の家の中で、これがいま火事になって燃えていると、その中に生けるみどりごと、それからラファエロのかいたマドンナの像と二つあるときに、あなたはどちらを先に救い出すかという質問をしているわけです。それで超人格的な国家観をとる人は、私はちゅうちょなくまずラファエロの描いたマドンナの絵を救い出すであろうという答をしているのです。総理でしたらどうでしょう。いずれを先に救い出すというお立場なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/13
-
014・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ、いろいろその環境条件、そういうものをよく承知しないと判断は下しにくい問題かと思いますが、私はとにかくそういう際には人命を重しとするという考え方をとりたいなというふうに思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/14
-
015・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私はかつてこの委員会で法務大臣にもお尋ねしたのですけれども、先般のような問題が起きましたとき、政府はあらゆる情報を総合して、もしも政府がハイジャック犯人の要求を受け入れなければ犯人が無事の乗客や乗務員を本当に殺すと、そういう判断がなされる場合には、犯人の要求が受け入れられる限りにおいては、たとえ法治国家の立場から見て、実定法の許容する範囲をそれが逸脱しておっても、私は犯人の要求を受け入れて、個々の国民の命、生命というものを守るべきだというふうに信ずるのですが、総理、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/15
-
016・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) あのときは百五十名の乗員がおると、お客を含めましてそれだけの人が乗っておる、それが人質になっておる、私どもの判断ではそれらの全部の人が最終的には犠牲になるおそれがある、そういうふうに感じ取ったわけであります。そういう際にどうするかという判断でございますが、とにかく捜査当局が苦心惨たんして逮捕した人とか、あるいは凶悪犯人というレッテルが押されて服役中の者でありますとか、そういう人を釈放しなきゃならぬ、これはもう忍びがたいところなんです。しかし百五十名の命が失われる。これは失われた命はもう取り返すことはできないのです。しかし釈放された非人道的な人々、こういう人はこれは釈放されてもこれからの努力で取り返すこと、逮捕し直すことができるかもしれない、そういうようなことをいろいろ考えますと、まあ、あの際の判断といたしましては、一応犯人の要求を入れましても百五十名の人の命を救わなければならない、このように考えたわけであります。まあ、いろいろ見方もありましょうが、私としてはあれ以外に選択の道はなかったと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/16
-
017・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私、もうこれで質問を終わりますけれども、総理のあの際の決断は誤っていなかったと思います。ずいぶん、あの犯人たちの要求を入れるということは総理としても非常に苦痛だったと思います。またいろいろ超国家、超個人主義的な世界観を持った人々からは大変な非難を受けることだとは思いますけれども、やはり総理はたとえそうした批判はあっても、個人としての国民の生命を守るという立場を毅然として守っていただきたいと、これを要望して私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/17
-
018・中野明
○中野明君 いま寺田委員から世界観を通して非常に高度な質問があったわけですが、私は現実に戻しまして、今回のハイジャック事件が起こりまして、これはもう政府はもちろんのこと全国民が大変心配をいたしました。その結果、犯人の要求を入れられまして、既決、未決の犯罪者の釈放、これを国外に連れ出す、しかも日本赤軍に全然関係のない凶悪犯も含めて、その上に身のしろ金の六百万ドル、こういうことの要求に応じられたわけですが、この応じられるに至りました経緯といいますか、これは私どもこのように承知しておりますが、これは内閣が意思決定をして、そして法務大臣が直接指揮命令をして処置をされたと、このように理解をしておりますが、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/18
-
019・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) そのような御理解で結構と存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/19
-
020・中野明
○中野明君 そこで総理にお伺いをしておきたいのですが、人質が全員帰国しましたことを見届けて前法務大臣の福田さんは辞任をされました。この辞任の理由を総理はどう受け取っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/20
-
021・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 福田前法務大臣は今回の処置については全くこれは賛成をいたしております。この処置について不満であるとかそういうことは全然ございません。ただ、福田法務大臣は法をあずかる者といたしまして、今回のような措置を取らなければならなかったことはいかにも残念だと、こういうお気持ちでございまして、まあ処置としてはやむを得なかったにいたしましても、いかにしても残念なことをした、こういうお気持ちを表明したい、こういうことで私に対して辞意表明がなされ、私がこれを受理したと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/21
-
022・中野明
○中野明君 法を守るということについては私も総理も同じだろうと思うのですが、その辞表を受理された総理の心境といいますか、改めてお伺いをしておきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/22
-
023・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私は前大臣をかねがね尊敬しておりますが、さすがにやっぱり福田一君だなあと言って、その敬服の念を新たにした、このような感想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/23
-
024・中野明
○中野明君 やはりこれは確かに私どもも今回の事件が一人の犠牲者も出すことなく解決したということについてはそれなりの評価をして、非常に喜んでおります。しかし、ただ、いまの総理の心境をお聞きして、福田前法務大臣はりっぱだなあという程度だったのでしょうか。やはりこれはもう一緒になって悩んで、そして法務大臣がいわば今回の処置の全責任を一人でとっておやめになったというというように私どもも受け取れる節があるわけですが、そのことについて総理が、その辞表を受理されるに当たって、彼はりっぱだったなあというだけ、そんなものでしょうか。その辺もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/24
-
025・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 福田一法務大臣は、この事件処理には何の文句もないのです。これはもうやむを得なかった措置である、こういう認識でありまして、でありまするから、私はああいう措置をとったことについて責任を負うてやめたものだと、こういうふうな理解はしておりません。しかし、ああいう立場にある法務大臣として、あのような措置をとらなけりゃならなかったことはとにかく残念だという、その残念な気持ちを表明するということだったろうと、こういうふうに思うのです。私はそういうふうに福田法務大臣の心中を理解し、その辞表を受理すると、まあ、そういうことですが、この事件処理に当たりまして思い悩んだと、非常に苦悩の一週間を続けたわけでありますが、その苦悩の気持ちにおきましては私も福田前大臣も全くこれは同様であったと、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/25
-
026・中野明
○中野明君 この問題はその辺にしておきますが、次に、先ほどから総理も絶対にこの種の非人道的な事故は起こさせないと非常な決意を持って今後に対処しようとなさっていることは私どもも非常に評価をしておりますが、やはりこの種の犯罪が起こってしまってからあわててはどうしようもありません。そこで、一度ならず二度までもこういう事件が起こったわけですので、やはり今回の事件の分析というものをする必要はもう当然あります。その事件の分析をしながら、今後の対処ということは非常に大切なことですが、まず一番第一に、だれが考えても考えなきゃならぬことは、今回の犯人がどこからどういう方法で飛行機に乗り込んできたか、これが一番だろうと思います。最高責任者として総理はどのようにこれを分析しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/26
-
027・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) これはもうお話のとおりでありまして、これからこのような事件が再発しちゃ相ならぬ。そういうためには今回の事件は生々しいつい最近の事件でありますから、その事件の発端から経過、これをよく調べておくということはもう当然のことであります。それらの点はいま検察、警察両当局において鋭意これを取り調べておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/27
-
028・中野明
○中野明君 総理はどの辺までお聞きになっておりますか、報告を受けておられますか。どこから乗って、どういう方法で入ったのだろうか、全然わからぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/28
-
029・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ、ある程度その発端、そういうことにつきましては検察、警察は情報をつかんでおると、こういうふうに私は見ておりますが、これを公にするということはまた外交上の機微な問題等もありましてなかなかむずかしい問題かと思います。かなり突き進んだ検討、研究をしておるというふうに御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/29
-
030・中野明
○中野明君 客観条件から見てボンベイから乗ったのではないかということは一応マスコミ等で報道されておりますが、やはり最高責任者の総理としてそういうことについては非常に神経を使って状況をお聞きになっていると思うのですが、全然中間報告もございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/30
-
031・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 情報を得られたその都度承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/31
-
032・中野明
○中野明君 警備局長、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/32
-
033・三井脩
○政府委員(三井脩君) 鋭意捜査をしておるところでございまして、一応の方向その他は総理がいまおっしゃいますように出ておりますけれども、確認するといいますか、確定するについてはまだいろいろの手段方法を講じなきゃならぬということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/33
-
034・中野明
○中野明君 非常にこれは大切なことで、時間がたてばだんだん様子がわからなくなるのじゃないかという心配もありますが、ぜひこの原因は究明していただいて、そして二度と再びこういう事故を起こさせないということが、もうたびたび総理もおっしゃっているとおりですし、私どもも同感であります。この点について、ぜひ原因の究明、それを徹底して行っていただきたいと要望をいたしておきます。
それから、今回の処置に当たりましては人命を守るため万やむを得ないという気持ちを総理はたびたび表明をなさっております。私どもも先ほどから申し上げておりますように、一人の犠牲者も出なかったということについては非常に喜んでおりますが、反面、諸外国から日本は連合赤軍を輸出したと、こういう国際的な非難というものもこれは否めません。そういう点で、今回総理がこれを決断された背景には、人命を守ると、こういう基本、大前提があったと、このように私どもも理解をしておりますけれども、こういうことはあっちゃなりませんが、将来こういう事件が起こったとき——今回は恐らく人命を守るとともに、わが国の法秩序が、犯人の要求を入れることによって根底から覆されることはないという判断があったと思います。将来万が一こういうことが起こったときに犯人の要求を入れるか入れないか、その判断の基準というものを総理はどこに置いておられるか。先ほどのお話をちょっと聞いていると何か今回は百数十名の人命という人の数にこだわっておられたような気もしたわけですが、たとえばこれが人質が一人であった場合、果たして犯人の要求を受け入れることをなさるのかどうか。あるいは何かそれに対して基準をお持ちになっておればこの機会に明らかにしおいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/34
-
035・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、しばしば申し上げておることでございますが、人の命もこれはもとより尊重しなけりゃならぬ、同時に法治国家である法の尊厳、これも守り抜かなけりゃならぬ、この両方が両立し得るような対処、これを考えることが正しい考え方であると、このように考えているのです。どっちがどうというふうにあらかじめ予断をしてかかるという考え方は私はよろしくない、両々相立つような施策を講ずると。そのためにはあらゆる努力をいたしまして、こういうような事犯が再発しないと、そういうむずかしい選択に迫られるというようなそういうケースが起こらない、このような体制を打ち立てることがこれが何よりも大事なことである、このように考えまして、その一部といたしましてこの法律案の御審議をお願いしておると、こういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/35
-
036・中野明
○中野明君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/36
-
037・橋本敦
○橋本敦君 ハイジャック防止法の審議が総理にお越しいただきましていよいよ終ろうということになっておりますけれども、この機会に、私は総理並びに政府の基本姿勢について一、二点お尋ねをしておきたいと思います。
まず第一は、このハイジャック防止法が可決されましても、これによってハイジャックのような凶悪な犯罪が絶滅されるということには必ずしもならないということは意見の一致をするところであります。したがって、今後、こういったハイジャックを含む非人道的な暴力の絶滅ということが重要な国民的な政治課題の一つになっておるわけですが、この点について、こういったハイジャックというような非人道的な凶悪なテロと暴力、これを生む温床が一体どこにあるのか。私は、その一つは、国内における内ゲバ事件を初めとして繰り返されてきたいろいろな過激派集団の暴力行為、こういったことにそのルーツなり温床なりがあると、こういう見方をした上で対処しなければならないのではないか、こう思いますが、総理の御見解はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/37
-
038・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 極左暴力集団、これなんかが国内においてかなりのいろいろな行動があったというようなこと、そういうようなことなんかが今回の事件にかなり大きな影響、関連を持っておるのではないか、これは私も全く御説のような感触を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/38
-
039・橋本敦
○橋本敦君 実際に過激暴力学生集団その他の動きを見ましても、たとえばブント赤軍派という集団が六八年に動いております。この一味が七〇年の「よど号」日航ハイジャック事件を引き起こしたその一味に加わっているというような状況もありますし、さらに七二年にテルアビブ事件が発生いたしました際に、京都大学の中のトロツキストグループはこれを支持するという看板を出しております。そしてまた、今度のダッカハイジャック事件に関しても、警備当局が指摘をされておりますように、京都大学の中では一九八〇年行動委員会と称するものが支持の看板を出す、あるいは赤軍はプロ革派なるものが支持の看板を出すと、こういった状況が学園の中でも実際にあるわけですね。こう考えてまいりますと、このハイジャックを根絶するという重要な一つの課題として、私は、大学における暴力集団の策動、彼らの不法な目的をテロと暴力によってほしいままにしようとするこういった動きに対しての取り締まりなり、こういった動きを根絶するための施策、こういったことがいま一つはこの法案の成立と同時に急務ではないか、私はこう思うわけです。で、実際にいままさに大学の暴力問題というものは社会問題にまで私は発展しておると、こう見るのですが、たとえば全学連が調査をいたしまして十一月十七日に発表した資料によりますと、驚くことに、いまなお全国で大学の施設が不法にこういった集団によって占拠されているのが八都道府県の中の十一大学、五十五ヵ所に及んでいるという、こういう発表があります。さらにもっとひどいのは、学内に、施設を占拠をしてそこに鉄パイプ、竹ざおその他、いわゆる用法によって凶器と化する、こういった彼らの武器が文字どおり出撃拠点、武器宙として蓄えられているような大学が十都道府県の十七大学、二十九ヵ所もある、こういった状況が報告されているわけですね。私ども共産党は大学における暴力の根絶を重視して、過去二回実態調査も行い、世論を喚起し、運動を進めてまいりましたが、いまなおこういう現状にある。この問題について、私は政府としては教育行政、大学行政そのものの重要な一環としてこれをなくしていくということに、積極的な施策に力を入れなければならぬ、こう思いますが、総理のお考えはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/39
-
040・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 国内における幾多の暴力事件、事犯の頻発、それから特に、橋本さん御指摘の学内の暴力事犯、事件、こういうものが私は今回のハイジャック事件、ああいうものと、これは直接であるか間接であるか、少なくとも間接といたしましても深いかかわりがあると、こういうように思うのです。法治国家を高らかに叫んでおるところのわが国といたしまして、場所がどこであろうと暴力がまかり通ると、そういうようなことは許されないことであると、このように思いますので、御指摘のような見解に沿って取り締まりを強化してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/40
-
041・橋本敦
○橋本敦君 取り締まりの強化という問題では、大学の自治という原則から警察権力の介入というのは一定の制約と自制と慎重さが要る。しかし、一端発生したテロ行為については断固たる取り締まりが必要でありますし、警察当局もそういう方向で努力をしてもらいたい。しかし、一方、大学自体がこのような暴力テロ集団に対して毅然とした態度で学園から暴力を排除していくということで、大学自体が臨んでいくという姿勢がいまだに私は弱いのではないか。ある大学では、大学の中で教授会さえ開けない、どこかへ逃げるようにしてやらなければならぬ。まさに暴力の横行ほしいままであります。こういう暴力は、それ自体学園の自治を破壊するし、それ自体私は学問と民主主義の敵だと思うのです。したがって、いま総理がおっしゃったような方向で、政府の文教行政の一つとして大学が毅然たる態度でこういうテロ暴力学生集団に対処する、こういう方向を指導もしくは見解として強めてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/41
-
042・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 学問の自由という問題もありますが、それとの調整を考えながら御指摘の点は私はごもっともだと、こういうふうに思いますので、なお鋭意努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/42
-
043・橋本敦
○橋本敦君 次に、いわゆる日航のダブルチェックの問題について総理の見解をお伺いしたいのですが、日航は厳重な警戒体制、ハイジャックの水際作戦、これを徹底させるために総理も御存じのように、それぞれ海外の寄港地でダブルチェックを強化するという方向で鋭意諸外国と話し合い、交渉を進めて、また、日本の政府もその交渉を援助するということで進んでいるようであります。
昨日の連合審査で運輸大臣は、この日航独自のダブルチェック検査体制、これが交渉の結果どうしても行えないようなことがあるならば、日航はその空港への寄港、これを取りやめる。そのかわりに相手の航空会社も日本への寄港はやめてもらうという毅然たる相互主義の立場に立ってでもこの警戒体制強化という点は徹底してやりたいと、こういう所信を表明されました。私はハイジャックを防止し、人命の安全を守るという立場から、いわゆる日航の商業主義をこの際排してでも、そういった強力な施策を遂行することがわが国の国際的な責任の一つでもあろうかと思いますが、この点について運輸大臣の見解がきのうそういったことで示されておりますが、総理の御見解はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/43
-
044・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま運輸大臣の見解を御引用になりましたが、私もそのように考えます。運輸大臣のただいまお話の見解は、私もそれを支持する、このように御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/44
-
045・橋本敦
○橋本敦君 それでは最後に一問、総理に伺いますが、ハイジャックの防止、これの根絶という問題につきましては、これは国民も心から怒りの中で願っておるし、関心を持っております。そしてまた、当面、政府の重大な施策の問題でもあります。同時に、私ども共産党でもハイジャック防止対策委員会を設置をいたしまして要綱を発表し、この根絶のために努力をいたしております。
そこで総理に伺いたいのですが、今後このようなテロもしくはハイジャックの防止という体制をまさに大きな規模で進めていくために、政府が設置をされたハイジャック防止対策本部ですね、これは恒常的に設置をされるそうですが、この対策本部は要綱を発表されましたけれども、それを中心にして、各党のハイジャック防止対策委員会それぞれ設けておりますから、この責任者を対策本部それ自体が近いうちに招請、集まって協議をして、まさにそういう合意と協議の中で根絶を期していくと、こういった会合を早期に開き、必要に応じて継続的に持っていくと、こういうことで、まさに国民的な課題としてこういったテロ、暴力の根絶に向けて進んでいくのがよいのではないか、私はこう思いますが、対策本部長の官房長官がお越しになりませんが、総理の御見解を伺って質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/45
-
046・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) ハイジャックのような非人道的な行為が再発されないような対策ですね、これは本当に全国民の理解と協力がなければやっていけないと思うのです。もちろん、政党間におきましてもこれはもう超党派的に考えなきゃならぬ問題だと、このように考えますので、政府の方にある対策本部ですね、これは各党とも十分連絡をいたし、御協力をいただいて、なおこの対策が効果あるものになるということを期してまいりたいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/46
-
047・円山雅也
○円山雅也君 時間が非常に限られておりますので、単刀直入にお尋ねをいたします。
このたびの改正案の中で、航空機の強取等の処罰に関する法律の第一条第二項に、いわゆる人質強要罪を新設いたしました。これを犯すと無期または十年以上の懲役としております。ここまでは問題ないのでございますけれども、ところが、この法務委員会で質疑の結果からいたしますと、法務大臣初め法務省当局のお考えでは、この今回の改正にとどまらずに、悪質な人質強要罪については死刑を盛り込みたい、しかもこの改正を次の国会までにというような御意向がうかがわれるのでございますけれども、そこで総理に御質問いたしますが、総理も同様なお考えをお持ちなのか、つまり人質強要罪に死刑を加えるというお考えなのかどうか、まずその点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/47
-
048・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) この問題は、まだそこまで私は考えが固まっておらないのです。これは両論がありまして、しかも両論ともそれぞれ十分な理由のある議論なんです。でありますので、政府部内でも十分検討し、また皆さんの御意見も伺い、また法制審議会におきましても広く国民を代表するという立場の御意見もお伺いすると、こういうふうにいたしまして結論を得たいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/48
-
049・円山雅也
○円山雅也君 御承知のとおり、この罪は乗客などを人質にとって何かを強要したと、もうそれだけで成立することになっております。そうしますと、この罪に仮に死刑を加えるといたしますと、まず量刑の比較において大変不当な結果を招来するのではないか、たとえば政府御当局が一生懸命になって改正を進められておる刑法改正草案におきましても、たとえば飛行機を撃墜したり、爆破して乗客全員を死亡さしても死刑は科さないで無期ということになっております。それからまた、改正草案の中では十ぐらいの罪が現行刑法で死刑に当たるものを除いておるという傾向にもございます。それからまた死刑がもし犯罪の抑止力、つまり後の再発を抑制する力があるのだというようなお考えだとすれば、これは大変な間違いじゃないか、つまり、むしろ否定的見解の方が強いのではないか。それからさらに死刑の廃止というのは世界的な動向でございますし、日本の現在の裁判所も死刑をなるたけ少なく言い渡そうとしておるし、先ほど申し上げた刑法改正草案だってなくそうとしておる。そういうときに、そういう世界の動向からも日本の現実からも、そういう死刑を否定的に否定的にという動向のさなかに、なぜあの最も理性的であるはずの法務省の御当局がこれ存何とか盛り込みたい、しかも急いで次回の国会に提出したいというような御意向を漏らされるのか。それからさらに、御意向を漏らされるだけじゃなくて、今度この改正が成立すれば、あと次の国会までたった一ヵ月くらいしかない。その短期間になぜまた二度の改正をしてまでも死刑を加えなきゃならないかと、非常に納得ができないのでございますけれども、これは理性的な判断のほかに、何か別の配慮と申しますか、考慮と申しますか、そんなものがあるのでございましょうか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/49
-
050・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 死刑の問題は、これは世界的にも歴史的にも非常に議論のあるところでございます。死刑を廃止しておる国もあるわけでございますが、これは国民感情あるいは犯罪の態様、与える影響、あらゆる問題を総合して判断すべき問題、人の命を絶つ刑でありますから、慎重の上にも慎重を期して、それが必要であるかどうかを判断するべきもので、さような立場で検討いたしておるわけでございます。特別の何かあるか、そういうことは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/50
-
051・円山雅也
○円山雅也君 ぜひ、ひとつ死刑の盛り込みにつきましては、慎重に御審議の上、御検討いただきたいと思います。
要望いたしまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/51
-
052・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/52
-
053・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/53
-
054・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 委員の異動について御報告いたします。
去る十八日、案納勝君が委員を辞任され、その補欠として安永英雄君が選任されました。
また、本日、鳩山威一郎君及び藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として林寛子君及び堀江正夫君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/54
-
055・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/55
-
056・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/56
-
057・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私はただいま可決されました航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案に対し自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党及び新自由クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
まず、案文を朗読いたします。
航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に伴い、ハイジヤツク等非人道的暴力行為の絶滅のため必要なる諸般の行政措置を強化すべきであるが、特に次の諸事項について格段の努力をすべきである。
一、政府部内のハイジヤツク等非人道的暴力防止対策本部は、予想される非人道的暴力行為のすべてにわたり検討を行い、各省庁を指導して統一的な運営を図り、適切な予防措置を講ずるとともに、緊急事態に応じ敏速に対処し得る体制を整備すべきである。
二、この種暴力行為の絶滅のためには、警察、検察、運輸、外交等諸般の分野にわたる国際的相互協力を強化する必要にかんがみ、国内における国際的協力体制を整備するとともに、各国に対しても積極的に協力体制整備を求めるための努力をなすべきである。
三、ハイジヤツク防止に関する三国際条約に対し、末加盟国の加入を要請するとともに、今後、同条約の整備、改善並びに人質行為防止に関する国際条約の成立をめざして格段の努力をなすべきである。
四、逃亡犯罪人引渡し条約の締結国を拡大することについて、なお一層の努力をなすべきである。
五、国際刑事警察機構や在外公館、民間機関等の協力を得て、情報の収集を強化し、日本赤軍等過激派の捜査に特段の工夫をこらし、国外にあるすべてのハイジヤツク関係犯人の追及、逮捕、引渡し等についての成果を期すべきである。
六、国際的司法共助の強化に努め、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の整備を検討すべきである。
七、機内持ち込み品の制限及び検査等に関する国際運送約款の安全管理条項の実施が国際的に見て、なお不十分な実情にかんがみ、各国に協力を要請して、すべての国際空港における右安全管理条項の完全実施を求め、もつて、安全検査体制を強化すべきである。
この間、日航等わが国の航空会社に対しては、ダブルチエツクをはじめとする自主的防衛措置の整備に遺憾のないよう指導監督の徹底を図るべきである。
八、本法において加重された旅券発給制限については、その通用をハイジヤツク等非人道的暴力行為を行うおそれのある該当者を対象とするものとし、いやしくも一般国民の渡航の自由を侵すことのないよう、その運用につき特段の留意をなすべきである。
九、過激派によるハイジヤツク事件のみならず、内ゲバ事件や暴力団犯罪等国民生活の周辺に頻発する非人道的暴力行為に対する取締りの強化についてもこの際、検討を深めるべきである。
十、以上の各般の措置を実行するに当たつては、一般国民の基本的人権に不当な制限を与えることのないよう特に留意すべきである。
右決議する。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/57
-
058・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/58
-
059・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し瀬戸山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/59
-
060・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 政府といたしましては、附帯決議の趣旨を尊重し、ハイジャック等非人道的暴力行為の絶滅を期するため、万全の措置を講ずることに全力を尽くす所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/60
-
061・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/61
-
062・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108215206X00519771122/62
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。