1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月十九日(水曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 岡本 富夫君
理事 小沢 一郎君 理事 大石 千八君
理事 佐々木義武君 理事 中村 弘海君
理事 石野 久男君 理事 日野 市朗君
理事 貝沼 次郎君 理事 小宮 武喜君
伊藤宗一郎君 志賀 節君
塩崎 潤君 玉沢徳一郎君
塚原 俊平君 楢橋 進君
原田昇左右君 藤本 孝雄君
与謝野 馨君 渡辺 栄一君
安島 友義君 上坂 昇君
沢田 広君 田畑政一郎君
近江巳記夫君 吉田 之久君
瀬崎 博義君 中馬 弘毅君
出席国務大臣
内閣総理大臣 福田 赳夫君
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 熊谷太三郎君
出席政府委員
科学技術庁長官
官房長 半澤 治雄君
科学技術庁原子
力局長 山野 正登君
科学技術庁原子
力安全局長 牧村 信之君
科学技術庁原子
力安全局次長 佐藤 兼二君
資源エネルギー
庁次長 大永 勇作君
資源エネルギー
庁長官官房審議
官 武田 康君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 井上 五郎君
運輸省船舶局首
席船舶検査官 赤岩 昭滋君
参 考 人
(東京大学名誉
教授) 有澤 廣已君
参 考 人
(東京大学教
授) 小野 周君
参 考 人
(神奈川大学教
授) 川上 幸一君
参 考 人
(大阪大学理学
部講師) 久米三四郎君
参 考 人
(立教大学助教
授) 服部 学君
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委員の異動
四月十九日
辞任 補欠選任
宇野 宗佑君 志賀 節君
小宮山重四郎君 藤本 孝雄君
佐藤 文生君 楢橋 進君
塚原 俊平君 塩崎 潤君
馬場猪太郎君 沢田 広君
小宮 武喜君 吉田 之久君
同日
辞任 補欠選任
志賀 節君 宇野 宗佑君
塩崎 潤君 塚原 俊平君
楢橋 進君 佐藤 文生君
藤本 孝雄君 小宮山重四郎君
沢田 広君 馬場猪太郎君
吉田 之久君 小宮 武喜君
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本日の会議に付した案件
原子力基本法等の一部を改正する法律案(内閣
提出、第八十回国会閣法第二五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/0
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001・岡本富夫
○岡本委員長 これより会議を開きます。
原子力基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案審査のため、本日は、参考人として東京大学名誉教授有澤廣已君、東京大学教授小野周君、神奈川大学教授川上幸一君、大阪大学理学部講師久米三四郎君、立教大学助教授服部学君、以上五名の方々から御意見を承ることにいたしております。
なお、有澤参考人は午後から御出席いただくことになっておりますので、御了承願います。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をくださいまして、ありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
なお、参考人の方々にお願いいたしますが、御意見はお一人十五分程度に要約してお述べいただき、詳しくは後刻各委員からの質疑の中でお答え願いたいと存じます。
それでは、最初に、小野参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/1
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002・小野周
○小野参考人 本日は、原子力基本法の改正につきまして意見を述べさしていただく機会を与えられましたことに対してお礼を申し上げます。
私は、この「原子力基本法等の一部を改正する法律案資料」というのを拝見したわけでございますが、これにつきましては、もともと私の感じでは「むつ」の放射線漏洩事件を契機といたしまして、日本の原子力のあり方あるいは安全審査のあり方につきまして非常に強い世間からの批判なりあるいは改善に対する要望等がありましたので、それを受けられまして、原子力行政懇談会をつくられ、それに基づいて今回の案がつくられたように伺っております。これにつきまして、最初に、ちょっと直接法律の改正された点ではないわけでありますが、私は、大変失礼な言い方ですが、結論としては、今回の改正された点もありますが、やはり基本法につきましてはもっと根本にさかのぼって、現在自主、民主、公開という原則が実際に守られているかどうかということにやはり立ち返って考えられる必要があると思います。ただ、本日、私はそのことにつきましてはこれ以上申しませんが、今回の法律がそういう立場から考えましてどうであるかということについての意見を述べさせていただきたいと思います。
この法律の一番主要な点は、原子力安全委員会の設置と、それから原子炉の安全規制行政の一貫化、設置から運転までの一貫化ということが主眼となっておりますが、私の考えといたしましては、「むつ」の問題で起こりました一貫化の問題あるいは安全審査等に関する問題が、この法律によって実際多くの人たちの要望に果たしてこたえられているかどうかということについては、私自身はかなり疑問に思うことがございます。
まず私は、やはり原子力行政につきましては確かに責任体制の強化ということが必要かと思いますが、この法律を拝見します限りでは、確かに原子力委員会の権限を仕分けられまして、原子力安全委員会と原子力委員会に分けられたわけでございますけれども、しかし、原子力安全委員会そのものは特に大きな権限を持っておるわけでもないし、責任を必ずしも負える体制にはなっていないということを感じるわけです。
と言いますのは、確かにこれはもともと二つに分けられたのは、私が伺っているところでは、原子力を進めるものと安全についての規制をするものとが同じ組織であるのはおかしいということにこたえられまして、こういうふうな二つに分離をされたのだと思いますけれども、実際の責任体制といたしましてはこのように二つに分けるということだけではなしに、やはり責任が負える体制になっておることが必要ではないかと思います。
それで、実際に「むつ」の場合に私たちが痛感をいたしますのは、あるいは「むつ」放射線漏れ問題調査委員会の報告等にもありますが、実際に原子力委員会なり安全専門審査会が責任を負える体制に必ずしもなっていなかった点が非常に大きな批判になっているわけです。たとえば現在私たちが伺っている話でも、「むつ」に対して、「むつ」の責任がどのようにとられたかということについても、実はこれははっきりさしていない。私、この委員会の席でもいろいろ拝聴いたしましたことがありますが、そのときでも、結局原子力委員会そのものはこれについてのはっきりした意見を最後までおっしゃらなかったように私は思うのです。こういう点が実際は問題なので、やはり安全委員会そのものは原子力の安全につきましては責任がとれる形になっておることが必要ではないかと思われるわけです。それで、ちょっとさかのぼりますが、二つの委員会に分けるということよりも、現在の原子力委員会であっても、やはり責任とそれから権限とを明確にして、実際に責任が負える体制にすることがむしろ必要なのではないかということを感じるわけです。ただ、仮に原子力安全委員会を設けるとすればどういうところに問題があるか。二つに分けること自体に私は決して賛成ではございませんけれども、仮に二つに分けるとすればどういうところに問題があるかということを申させていただきたいと思います。
それは一つには、仮に二つに分けて原子力安全委員会を置くということにいたしますと、まず非常に大事なこともございますけれども、私は、この原子力基本法等の一部を改正する法律案というのを拝見しましたときに初め大変びっくりしたことが一つございます。それは実は現行の第十四条の二に原子炉安全専門審査会というのが出ておりますけれども、実はこれが出ていなかったわけです。出ていなかったというのは、私は初め法律を見ましたときにどっかに出ているかと思って改正案を見ましたところ、どこにも見つけることができなかったので、いろいろ伺いましたところ、確かにそれは今度は出ていないということですが、これをどのようにされるかということにつきましてはいろいろお考えがあるのかもしれませんけれども、しかし、前には法的に安全専門審査会というものが位置づけられていたのが、今回は落ちているということ自体がすでに大きな問題ではないか。安全性の軽視につながりはしないかということを危惧するわけでございます。しかし、そのことは非常に大きな問題でございますけれども、実際には、安全委員会そのものは原子炉の安全規制についてかなり責任を持つべきである。そうしますとこれは、現在のでは諮問に応じて意見を言うだけでありますから、やはり最終的に責任を負う体制にはなっていない。むしろ最終的に責任を負う体制にするということであれば、たとえば国家行政組織法の第三条で決められている委員会ということで最終的な責任を負うと同時に、調査とかその他の権限を持たせない限り、恐らく実際上、実態的な責任を負うことは不可能であって、やはり「むつ」の問題と同じようなことが起こり得るというふうに私は考えるわけです。「むつ」の問題につきましても、むしろどこが最終的に責任を持つのであるかという点には問題が残ってくるし、このような二つに分けたというだけではその問題は解決できないのではないかと思います。
いまのように、かなり強い権限を持ちました三条の機関ということにいたしますと同時に、やはりこれは固有の事務局を置くべきではないか。これを見ますと、科学技術庁の原子力安全局になっておりますが、相当、実際にいろいろな調査その他ができますような事務局を置くべきではないか。と同時に、研究調査員などの固有のスタッフがやはり必要ではないか。というのは、軽水炉の場合は、米国におきましていろんなことがやられておるということがありますが、わが国で独自で開発の研究をもしやるということにいたしますと、どうしても安全のためのいろいろな諮問なり意見を言うとすれば、独自の調査や研究等をしない限りはそういうことができない。そうしますと、固有の研究員とか調査員とかいうふうなものが置かれておりませんとそういうことは非常に困難である、恐らく不可能である。そうしますと、これはこのような形に、安全委員会を五人の委員で設置したということでは目的は達せられないのではないかというふうに考えるわけです。
次に、その問題にも関係いたしますが、今回の案では一貫した責任体制、一貫した安全規制行政ということが言われておりまして、それはどういう形で行われているかといいますと、現在までは、たとえば軽水炉、発電用の原子炉について言いますと、設置の許可については総理大臣、それからあと、運転その他につきましては通産大臣というふうに、違った省庁に分割されているということが問題にされているように拝見いたします。ところが、これは確かに、いまの点は、発電用原子炉については通産大臣、それから船舶につきましては運輸大臣というふうにされておりますが、実際にこういうふうに三つに分けたからといって一貫体制になっているかということになりますと、これはむしろ、もちろんこの法律で見ます限りは、体制は確かに形の上では、行政上は一貫化しておりますけれども、それでは各省庁が実際に一貫してそういうものをやっていくことができるであろうかということにつきましては、かなり疑問の点があります。
それから、そういう細かい点は別といたしまして、私が一つ申し上げたいと思いますのは、発電は通産で船舶は運輸ということでありますけれども、現在の段階で、たとえば舶用炉の場合ばかなり研究の段階であるわけで、そういうものを、運輸省で一貫してやっていくことが本当に適当であるかどうかということは、これは私にもよくわかりません、運輸省の実態もよく知りませんのでわかりませんが、かなり問題があるのではないかと思います。
それからもう一つ申し上げたいのは、実は現在の原子力発電というのは、私の考えでは、これはまだ実用の段階のものではなくて研究の段階のものである。研究の段階のものであるということの証拠には、設備の利用率が四〇%近くまで下がっているとか、あるいはそういうものの修理その他について、非常にたくさんの発電所の労働者が被曝しているという問題が現に起こっているわけです。そういう状態でありますから、私は、原子力発電、つまり軽水炉、その他の研究段階にあるものは当然そうなんですが、軽水炉もやはり研究段階にある。そういう段階にあるものをルーチンと同じように、通産省、運輸省という形でもって分割していってよろしいかという大きな問題があるわけで、私は、こういう問題につきましては、現在科学技術庁の原子力局が担当し、あるいは原子力安全局が担当しておられるわけですが、もし実際に原子力の開発研究というものについて、安全その他の問題、それから一貫をしてやるということであれば、この三つに分割するよりはむしろ、これは恐らく科学技術庁の原子力局その他の権限の強化と反対の方向に行くのでしょうが、とにかく科学技術庁というものは、やはり、まず開発段階にあります日本の原子力については全体を見ていくという形で一貫した方が正しいのではないかと考えているわけです。ですから、三分割案というのは、形の上では縦の線で一応責任を持つというように見えているわけですけれども、たとえば「むつ」のような問題が起こったときに、実際にそれに対処していく、あるいは特に船舶のような研究開発段階にあるものにつきまして、そういう体制でやれるということについては、これは非常に問題が多いと思っているわけです。
それで、いろいろ申しましたけれども、私はやはり当面の措置といたしまして、私の考えとして、これは先生たちがいろいろ案を御検討なさっていますが、原子力安全委員会を設置するよりは、原子力委員会そのものの責任体制の強化ということから言いますと、原子力委員会の権限を明らかにして、安全専門審査会を拡充し、それから安全専門審査会の民主化をする。民主化ということはどういうことかといいますと、それはできるだけ多くの人から委員を選ぶ、それから審議の内容も公開していくということをむしろ強化することの方が、現在の原子力問題に対処する方法ではないかと思います。もし安全委員会を設置するとするならば、それはやはり、せっかく新しい組織をつくられるならば三条機関ということにしてその責任を持たせるとか、先ほど申しましたように、固有の事務局と固有の研究調査スタッフを置くということが必要ではないかと考えておるわけです。
以上で大体十五分になりますので、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/2
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003・岡本富夫
○岡本委員長 ありがとうございました。
次に川上参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/3
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004・川上幸一
○川上参考人 先日事務局の方から資料を送っていただきまして、目を通しましたが、私は法律が専門ではございませんので、私の理解が不十分な点があるかと思いますけれども、きょうは私が理解できた範囲で若干の意見を申し上げます。
まず、原子力安全委員会を設置することでありますが、これは世界の趨勢から見ましても、原子力行政に対する国民の信頼を回復するという点からも当然のことでありまして、むしろ遅過ぎたという感じがいたしております。
安全委員会の設置が当然だといいますのは、開発と規制を分離することが必要である、そういう言い方で普通言われておりますけれども、これは少し大ざっぱな言い方でありまして、もう少し正確に言いますと、規制というのはいわゆる自己規制、セルフコントロール、それから第三者規制、その二つがあります。問題は、開発と自己規制と第三者規制、この三つをどういう組み合わせ方でやっていくかという点にあるだろうと思います。外国の状況を見ましても、それぞれにその組み合わせ方というのは違っておりまして、その点にその国の特徴が出ているわけであります。
これまでの原子力委員会の体制というのは、開発と自己規制だけがありまして、第三者規制がなかったわけでありますから、その規制が甘くなったというのは当然のことではないかと思います。
そこで、第三者規制をどういう形で導入するかということですけれども、いろいろやり方があると思います。一つは、いままでの自己規制というものをやめてしまって、開発と第三者規制という非常に割り切った体制をとるという行き方が一つあるだろうと思います。それから、開発と自己規制の上に第三者規制をつけ加えてやっていくというやり方があります。そのどちらがいいかということは、これはいろいろその国の条件がありまして、一概には言えないのではないかと思います。
今回の法案は、いま申し上げた後者の方の考え方に立っているだろうと思います。つまり、それぞれの省庁がまず自己規制をして、その上で安全委員会が第三者規制を加えていく、そういう構想になっているだろうと思いますが、そうだとしますと、この体制の問題というのは、自己規制と第三者規制との力関係といいますか、たとえば自己規制の方が非常に強くなって、第三者規制がそれに引きずられてしまう、あるいは単にアクセサリー的なものになってしまう、そういう心配がないかどうかという、その点が問題だろうと思います。私は、そういう関心でこの法案の内容を見ましたので、二、三、気づいた点を申し上げたいと思います。
一つは、これは改善された点だと思いますけれども、原子力安全委員会の委員長は安全委員の互選で決めるということになっております。これは非常に重要な点だろうと思います。これまでの原子力委員長は、科学技術庁長官と兼任ということで、短期間で委員長が交代してしまう、そういうことでタイムリーな政策がとれない、あるいは間違った政策が行われるということが少なからずあったと私は思いますし、そういう点で安全委員長が委員の中から互選で選ばれるというのは一つの前進ではないかという気がいたします。
それから第二に、これは改善されていないといいますか、問題が残っている点でありますが、それは安全委員会の庶務を原子力安全局が受け持つ、そういう問題であります。これはいろいろ実際上の理由があって、さしあたりこういう体制がとられるのだと思いますけれども、これはやはり原則的な問題が含まれていると思います。つまり、原子力安全局と原子力委員会の庶務を受け持つ原子力局とが、同じ科学技術庁長官のもとに所属しているという問題でありまして、これは開発と規制の分離という点から言いますと、少なくとも庶務の面においてはその分離が不完全であるということでありまして、この点は少なくとも将来解決を要する点ではないかと思います。
それから第三の点は、この法律で原子力安全委員会ができましても、委員会を育てるといいますか、あるいは強化するといいますか、そういうための配慮が今後とも必要でありまして、この法律は恐らく改革の第一歩にすぎないのではないかというふうに考えます。
一つの問題は、先ほどもちょっと出ましたが、安全局のスタッフの問題でありまして、これまでの原子力委員会が機敏な対応ができなかったという批判を受けておりますけれども、その大きな原因が強力なスタッフがいない、あるいはスタッフの絶対数が不足しているということにあったというふうに私は考えます。外部から非常勤の学識経験者を集めて、いろいろな委員会をたくさんつくってみましても、そういうことで安全問題あるいは安全行政というものをうまくやっていくことはできないのでありまして、外国に比べて日本の体制が一番おくれている点というのはその点にあるのではないかと思います。
したがいまして、原子力安全局のスタッフを増員するということが急務だと思いますけれども、これは増員するといいましても、二年とかあるいは三年で異動してしまうような、そういうスタッフが何人いましても役には立たないのでありまして、やはり専門的なスタッフをそこで育てていくという考え方に立たないと、また、そういう方針がぜひとも必要だと思います。そのためには、これは外国では行われておりますけれども、民間の専門家が常勤のスタッフとして行政に参加できる、そういう道を開くことが非常に大事でありまして、そういう点で、いまの官僚制度を変えていくという考え方に立つことが必要だろうと思います。
一つの例として、これはアメリカの制度ですけれども、アメリカでは大学の教員が大学を休職にしまして、二年か三年行政機関に入って働く、期間が終わりますとまた大学に帰っていく、そういうことが広く行われております。これは一例でありますけれども、それによって行政の側も教員の知識とか能力を活用することができるわけですし、それから大学の比較的若い教員にとっても、そういう現実問題の処理に携わったということが研究上のプラスになっているわけでありまして、日本でもそういう官僚制度の一種の門戸開放といいますか、そういうことを進めることが必要ではないかと思います。
それから次に、これもやはり原子力安全局の問題でありますけれども、安全委員会の仕事を専属にやる事務局をその中でぜひ設けてもらいたいということであります。これは先ほど申し上げましたように、開発と規制の分離が不完全だという問題があるわけでありますから、その点を補うためにぜひ必要でありまして、この事務局は安全局の中のどれかの課に属しているというようなものではなくて、独立した事務局にすべきだと考えます。
それから第三の点は、原子力安全委員会が行うであろう安全審査のことでありますけれども、これは恐らく安全審査会のようなものが置かれることになるのだろうと思いますが、この審査会のメンバーが通産省あるいは運輸省の同種の委員会のメンバーとは絶対に重ならないようにすることが必要だと思います。たまたま私が聞いた話では、この安全審査会というのはすでにメンバーが決まっておりまして、通産省の委員会のメンバーとほとんどダブっているということをちょっと聞いたのですけれども、私はこの話は何かの間違いではないかと思っておりますが、万一にもそういうことがあるとしますと、今回の行政改革の趣旨は完全に無意味になってしまいます。安全審査会のメンバーは、これは安全委員会が発足した後で安全委員会の考え方に基づいて選任されるべきものだと思いますし、第三者規制の効果が本当に上がるような、そういうメンバーを選んでいただくことを特にお願いをしたいと思います。
以上は、安全委員会のことを主に申し上げましたけれども、最後に原子力委員会について一言申し上げます。
私が一つ心配している点は、今回の分離をしたことによって、原子力委員会の方が非常に弱体化してしまうというようなことがないかという点であります。原子力委員会には、平和利用を担保していくという非常に重要な役割りもありますし、核燃料サイクルを含めて、現在の技術を完成させていく、あるいは将来の技術を開発するということも、これは原子力委員会の役目であります。安全委員会が安全性についてのチェック機能を果たすということは、もちろん重要なことでありますけれども、そのチェックを受けとめて問題を技術的に解決していくというのは、これは原子力委員会の仕事でありまして、その委員会がもし弱体化するようなことがありますと、安全な原子力技術というものを確立するということはとうてい期待できないことになります。これは誤解されると困りますが、その意味では、開発があっての規制でありまして、原子力委員会と原子力安全委員会とがバランスのとれた機能が発揮できるように、そういう点の御配慮を特にお願いしたいと思います。
以上、申し上げましたように、今回の法律ができたからといっても、これは問題の出発点でありまして、安全委員会体制の強化をする強化策というものを十分今後ともとっていただいて、委員会の基礎が固まったところで先ほどの分離の不完全という問題を解決していただきたい。つまり、原子力安全局を少なくとも科学技術庁の外に出して、独立させるという方向へ持っていくことが最も適当ではないかと私は考えます。
以上で、私の意見を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/4
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005・岡本富夫
○岡本委員長 ありがとうございました。
次に、久米参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/5
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006・久米三四郎
○久米参考人 久米でございます。
四国電力が松山の伊方というところに、原子力発電所を建設して、すでに動いておりますが、それの設置許可を取り消すようにということで、地元の住民の方が裁判を起こしました。行政訴訟でございますが、総理大臣を相手にその許可を取り消すようにという行政訴訟を四年少し前に起こしました。それに対する判決が、あと約一週間後の四月二十五日に松山地方裁判所から出されるということ、これは本委員会に属しておられる先生方は、つとに御存じのことだと思います。
この裁判は、原子力発電所の安全審査、これまでずっと原子力委員会が実質上の責任をもってやってまいりました安全審査そのものに対しまして、住民から初めて異議申し立てが出たという裁判でございます。そして、これまで四年有余にわたりまして、法廷で実質上の公開の安全審査が行われてまいりました。したがいまして、これまで密室審査でありました安全審査の実態に対して、どういう判断を裁判所が下すか、いま国、内外から非常に大きな注目を浴びておるわけでございます。
私は、住民側の弁護補佐人の一人として、法廷の審理にこれまで参加してまいりました。私は、もともとは法律の専門家ではございませんで、放射能の非常に基本的な問題を研究し、教育してきている一教員でございますが、そうした私をこのような席にお招きになったのも、恐らくそうした経験を考慮されてのことだと思います。四年有半にわたりまして、裁判に参加してまいりまして、私も裁判に参加するというのは初めてでございますが、その過程でいろいろ考えてまいりましたことに照らしまして、現在この委員会で議論になっています法律改正について御意見を申し上げたいと思いますが、ただ、私は、実はこの資料といいますのも、委員会の事務局の方からここ数日前に初めてお送りいただいたようなもので、その点では非常に不勉強でございますので、余り個々の条文については御意見は申し上げません。それにつきましては、また午後からの皆様方の御質問に答えて、私でお答えできる範囲で意見を述べさせていただきたいと思いますが、ここでは、今回の改正の基本的な方向、それについて、私が先ほど申し上げましたような経験から、大きな疑問を抱いておるということを申し述べたいと思います。
一番の大きな問題は、住民参加の保証について今回の改正でも全く欠落しておるということであります。今回の改正の趣旨を、これは科学技術庁だったと思いますが、お出しになっておる趣旨を読みますと、「国民の理解と協力を得るため」、そういう文句がうたわれております。しかし、本当にそれにこたえる方策といたしましては、そういう言い方をしては非常に失礼かもわかりませんが、今回の改正は見当違いではないか、そういうふうに思います。
それで、伊方の裁判の法廷で、国の代理人の方々は、原子力発電の安全性の評価、そういうものは行政の裁量に任せておけばいいのであって、一般住民がそれに口を差しはさむ、そういった筋合いの問題ではない、こういうことを強力に主張してこられております。私は、この考え方が根本的に間違っているというふうに考えています。これは諸外国の経験に照らしても明らかでございますけれども、結局、国民あるいは直接関連のあります一般住民の本当の理解と協力を得るためには、これはいろいろな制約もあろうと思いますけれども、可能な限りオープンな形をとって住民の参加を保証していくこと、それが不可欠であります。ところが、今回の改正では、この視点が完全に抜け落ちていると思います。
その例を、現行のいわゆる原子炉等規制法と呼ばれております今回も改正の対象になっておる法律でございますけれども、それを例に挙げまして、私が申しましたような問題点がどういうふうにあらわれているかということを述べたいと思います。
第一は、あの原子炉等規制法の性格でございます。これは、規制というような言葉がございますので、国民あるいは一般住民のための規制かというふうに、法律の表題からだけでは誤って受け取ってしまいますが、実は、これも法廷で国の代理人の方が釈明されて非常に明確になったわけでございますが、この法律は、もともと電力会社その他原子力を事業とするそういった人たちに、それをやっていいという資格を与えるための法律にすぎません。その法律の体系の中では、その事業によって被害を受けると想定される一般の住民というのは単なる第三者であります。したがって異議申し立ての資格がない、原告の適格性がない、こういう主張で国側は対応しておられるわけであります。この点は、私は法律的なことはよくわかりませんが、あの公害に対する非常に強い世論の中で生まれました公害基本法、その他の公害関係の法規の性格とまるっきり違っているというふうに思います。昭和三十年代にできたこの原子炉等規制法の根本的な見直し、現在の国民の運動と実情に相応した根本的な見直しがどうしても必要じゃないかと思います。
第二点、これは住民参加が、現行の規制法で具体的に何一つ保証されていないということであります。この点でよく問題になりますのは、公聴会の開催でございます。これも何度か国会等でも議論なさった問題だと思いますけれども、急なことでちゃんと資料を調べてこれませんでしたけれども、たしか昭和五十四年だったと思いますが、国会の、衆参両院の科学技術特別委員会で附帯決議をなさいまして、それには、大型の発電用原子炉、そういうものを設置するときには公聴会を開く、そして十分に民意を反映するということをするようにと要望されておったと思います。しかしその後の進展では、現実には公聴会というのが、これは欧米その他と違いまして、法律上義務づけられるというようなことは全くございません。それだけではなくて、何と「むつ」の問題で、国民の原子力に対する参加が問題になった時点で、その公聴会の開催のための条件を非常にシビアなものにしていく、実際上は開けないというような形の内規を原子力委員会でおつくりになるというような、全く逆行した形をとっておられるわけであります。
それから、ほかの産業では、現在、特に大型のプロジェクトに関しましては、事前のアセスメントというのが、これは現在、法律としてはまだ国会で御議論になっておりますけれども、方向としては当然の潮流として受けとめられているわけでございまして、そのアセスメント、これはまさに事前評価でございますので、その際には、その事前評価をされたその評価資料を、そのプロジェクトが始まる事前に一般の住民に公開するということ、これは当然のことと考えられております。ところが、この危険な原子力発電所の安全審査においては、何と許可が終わってから後でその安全審査のデータ、しかも、これは伊方の裁判で初めて参考資料が裁判所の命令で公開されるという、それまでは本当に申しわけ程度のデータがあの科学技術庁に並べられておる、それだけであります。そういった、事が終わった後でデータを申しわけ的に出すというような形で、依然としてこの危険な原子力の安全審査が遂行されておるということは非常に驚くべきことだと思います。
三番目の規制法の問題点でございますが、これは原子力をめぐりまして安全の論争というのは、世界的にもあるいはわが国でも非常に激しく行われておりますが、一番大事なのは、安全と判断するときにどういう尺度を用いたかという点でございます。それは法律的には安全基準と呼ばれるものだと思いますが、その安全基準が国民の一般のだれにも明確にわかるようになっているということ、それが特に未知の問題を抱えています原子力、これをあえて利用しようとなさる場合にはそういった条件は不可欠であります。こういう物差しで安全と判断した、それにマッチするからこういう計画を進めるということを国民にデータと同時に明確に示していくということ、当然だと思います。この委員会の諸先生方はもうすでにおわかりだと思いますが、一般の人たちはそういうふうに考えています。何か非常に明確な基準があって、原子力の安全が議論されている、そう思っておりますが、実はそうではなくて、現行の法規ではこのいわゆる原子炉等規制法の二十四条にございます。ここに許可の条件というので一条設けられておりますが、あれをお読みになったらおわかりのように、全くその許可の基準があいまいな表現でございまして、これは、伊方の裁判にかかわりました弁護士の方々、初めて原子力の問題に関係された方々がほとんどでございますが、異口同音に、よくこれで危険な原子力の規制ができてきたなというふうに、法律家の立場として私たちにおっしゃっておることからも非常に明確であります。
そうした非常にあいまいな基準しか設けられておりませんから、結局は個々の安全審査で非常に恣意的な判断を安全審査会がやる、そういう結果を許すことになっていると思います。その内容がいま伊方でまさに裁かれようとしているのであります。
以上、若干の例を挙げて申しましたように、そういった国民の理解と協力を得るための方策について根本的な欠陥があるわけでございまして、それが「むつ」のあの失敗、さらには伊方の法廷の四年間の審理を通じて、全国の一般の住民に非常に明らかになってきているわけであります。そこから住民の不信と不安が高まって、せっかく原子力発電を政府がやろうやろうとしても、非常に大きい抵抗にぶつかっておるわけであります。そうした点を踏まえられまして、今回の改正でそういうのが行われておるかと思いましたが、実は最初に申しましたように、私がいただきました資料では、組織いじりというような言い方をしてはいけませんけれども、そういうようなことが中心でございまして、一番根本的に国民が不信を抱いている点の改革にはなっていない、それが非常に残念だと思っております。
以上でございまして、また法案の内容につきましては、御質問に応じて御意見を申したいと思います。失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/6
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007・岡本富夫
○岡本委員長 ありがとうございました。
次に、服部参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/7
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008・服部学
○服部参考人 服部でございます。
私も法律の専門家ではございませんのですが、この基本法が昭和三十年でしたでしょうかつくられましたときに、この基本法というのは大変大事な法律である、教育基本法、原子力基本法と、この基本法という名前がつく法律というのは、普通の法律よりもはるかに重要な法律である、いわば憲法に次ぐものであるというお話を承ったことがございます。そういう意味では私は、この基本法の改正というものは非常に重要な問題であろうかと思います。まさにこの基本法というのは、日本の原子力がいかにあるべきかというその基本方針、そしてその精神がうたわれている法律であろうと思います。したがいまして、この基本法をもし改正する必要があるということでございますならば、いままでの日本の原子力の開発にどこに問題があったのかということの徹底的な分析、批判、反省、その上において行われるべきものではないかと思います。
この基本法の改正のいきさつというものはいろいろございましょうが、一つには、例の「むつ」の問題を通じまして、日本の原子力というものが国民の信頼を非常に失ってきているということが明確になってきた。その信頼を回復する、回復するほどの信頼があったかどうかは別といたしまして、信頼を得るにはどうするかということから、例の、まだお見えになっておりませんが、有澤先生の行政懇の答申というものが出てきて、その反映というのが今度の基本法の改正になったものであろうというふうに拝見しておりますが、しかしあの行政懇の答申が出されたときには、やはりその意味では、日本の原子力のどこに問題があったのかという点での反省というものがある程度行われたと思います。しかし、これは率直に申し上げまして、今回の基本法の改正の審議の中で、これまでの日本の原子力にどこに問題があって、何がかくも国民の信頼を失わせてしまったのかということに対する深刻な反省があったというふうには私には受け取れないわけでございます。いま久米先生は、機構いじりと言っては悪いけれどもとおっしゃいましたけれども、私はこの基本法の改正を拝見いたしますと、全くの単なる組織いじり、機構いじりにしか見えないわけでございます。
実は、この原子力基本法の生命というものは、まさに公開、民主、自主の三原則にあったわけでありまして、日本の原子力がこの三原則について、一体どういうあり方をしてきたのかということの分析、検討こそが、私はまず必要なことであろうと思います。二十数年の日本の原子力の歴史というものは、ある意味では一生懸命この三原則を守ってきた歴史であったというのと同時に、一方の見方をいたしますと、三原則の内容がまさに形骸化されて踏みにじられてきた歴史であったと言っても過言でないというふうに私は考えております。これは公開の原則一つをとってみましてもまさにそうだと思います。民主の原則についてもそうだと思います。自主の原則についてもまさにそのとおりであると思います。
さらに、この公開、民主、自主の三つの原則の前提となるべき軍事利用の禁止、平和目的に限るのだということについてさえ、最近の国会での政府の発言その他を新聞紙上で拝見しておりますと、この原則、大前提さえも、少なくともこの基本法がつくられた当時の考え方とはかなり変わってきている。つまり、核兵器も防衛の目的であるならば憲法に違反しないというようなことが公然と言われるようになってまいりましたけれども、これは、やはり少なくともこの基本法がつくられたときのあの時代の考え方からははっきりと逸脱しているものだというふうに私は思います。この基本法では、わが国の原子力の研究、開発、利用はあくまでも平和目的に限るものとする、つまり、軍事利用をはっきりとここで禁止しているわけでありますが、軍事利用というのは何も核兵器ということだけではなくて、原子力そのものを軍事目的に使うことを一切禁止するということが根本方針で、基本的な考え方であったわけでありますが、最近の日本の原子力に対する考え方というのは、そういう点さえもぐらついてきていると申しますか、三原則が本当に守られようとしているのかどうか、大変不安に感ずる点が出てきているわけでございます。そういった基本的な問題を抜きにいたしまして組織いじり、機構いじりだけに終始したのでは、国民の信頼を回復することはできないと私は思うわけでございます。
中身につきましては、先ほどから諸先生方のお話にもございましたけれども、たとえば一つには、原子力委員会と安全委員会を分けるという問題がございます。これはいわばある面では、アメリカでそうやったからそれをまねするという面が率直に言ってあると思います。しかし、アメリカの現状というのは、基本法の改正で行われている原子力委員会と安全委員会の分離というものとは大分話が違うものだと思います。アメリカでは原子力の開発を行うのはERDAの一部局ということになっております。それに反しまして、安全規制の方は非常に強力な権限を持った独立の委員会というものが、安全あるいは規制の問題についてつかさどっているということでございます。そのアメリカでさえ、実はそういった機構改革をやって、やってみた結果についての評価というものは、機構いじりだけではやはりだめだという批判が現在出てきているわけでございまして、安全の問題というのは単なる機構の問題ではなくて、むしろ心がけの問題であり、人間の問題であるという点が非常に重要なことだと思います。
もともと開発と安全というのは並行して考えるべき問題ではない、全然次元の違う問題だと私は思います。その次元の違う問題を並べ立てるということで問題が解決すると思うのは少しおかしいのでありまして、本来次元の違う問題ではないかと思います。
その点は、昨年の十一月二十一日に、日本学術会議会長から、科学技術庁長官あてに「原子力基本法等の一部改正案に関する見解」というのが伝達されているわけでございますが、その中にも「そもそも、原子力の研究、開発及び利用において、国民の生命、健康、安全及び福祉を厳重に保障するための安全規制行政と、国民経済の発展を目的とする原子力の開発・利用のための行政とは、その観点が異なることは、いうまでもない。」ということが言われているわけであります。次元の違う問題を、何か開発と安全を並列させるというふうなことで解決しようとすることは、少し問題があるのではないか。極端な言い方で申しますと、開発というのは何も政府が一生懸命におやりにならなくても、開発しようと一生懸命になっておられる企業はたくさんあるわけでして、原子力安全委員会だけがあればいいと言っても決してそれほどの極論ではないと私は思います。いまさら国が一生懸命先頭に立って開発をしなくても、開発をしたい企業はたくさんあるわけで、むしろ、本当にそれが安全に行われるかどうかということに対する責任を国が負っているのだろうと私は思います。
それからもう一つは、行政懇の答申の中に行政の一貫化ということがうたわれていたわけでありますが、この言葉が今度の基本法の改正ではむしろ悪用されまして、先ほどほかの参考人の方からも御指摘がありましたけれども、たとえば原発はもう通産一本だということに結果としてなってしまうわけであります。通産というのは、私法律家でございませんから、通産省の設置法か何かそういうものを見たわけではございませんが、実体から申しますと、やはり日本の企業の振興を図るというのが通産省の目的というか、少なくとも実体であろうと思います。その下に安全審査の組織が置かれるということは、まさに一貫化ということに名をかりて、現実の安全審査というものが開発あるいは振興の中に組み込まれてしまうという結果になるのではないかと思います。
要するに問題は、決してそういった機構ではなくて、心がけであって、これは実は率直に申し上げますと、歴代の原子力委員会にはっきりその責任があった。歴代の原子力委員会の無責任なやり方というものが、まさに行政懇が指摘された今日の原子力の無責任体制というものをつくり上げてきた大きな原因であろうと思います。
それでは、原子力委員会のどういう点が無責任であったかということを具体的な例を申し上げたいと思いますが、時間もなんですので一つ二つかいつまんで申し上げますと、一九六四年八月に原子力委員会は政府に対して、「原子力潜水艦の寄港は、わが国民、特に寄港地周辺の住民の安全上支障はないものと判断する。」こういう報告書を提出されております。判断するというのは、まさに原子力委員会の自分の意思において行われたことであります。判断という言葉を使っておられるわけでありますから。しかし、その安全上支障はないものと判断するという根拠は何もないわけでありまして、ただ、この原子力潜水艦を入れようとする者、つまり原子炉を設置しようとする設置者が安全であると言っている、だから安全であると判断する、こういう論理を使われて原子力潜水艦の安全性を判断されたわけでありますが、このやり方が実はその次に起こるソードフィッシュ号事件というものにも種をまいたわけでありまして、果たせるかな一九六八年五月、原子力潜水艦ソードフィッシュ号が佐世保港内で異常放射能事件というのを起こしました。このときに原子力委員会並びに科学技術庁のおとりになった態度というものが非常に大きな汚点を日本の原子力に残された。詳しいことは省略いたしますけれども、安全の問題を、国民を原子炉から守るということではなくて、原子炉を国民の目から守るという基本的な態度をとられようとした。つまり、ソードフィッシュ号の放射能ではないということを非常に一生懸命になって主張されようとした。しかし、その後の専門家の検討によって放射能以外の原因は考えられないという結論が出るわけでありますけれども。本来安全というものは、原子力に限らず、何か異常なことが起こった場合には、まず最悪の場合を考えておいて、それから一つ一つ問題を消していくというのが正しいやり方であろうかと思います。原子力委員会あるいは科学技術庁のおとりになった態度というのは、まさにその逆の方向のことをおやりになったわけです。それが結局設置者の側を国民の目から守るという基本姿勢、これがその後の原子力発電その他の問題についても、その姿勢というのが依然として引き継がれてきた。これが国民の信頼を失った非常に大きな原因——日本の原子力の平和利用に、原潜の入港という軍事利用の問題にかかわり、しかもその際に設置者の側を優先するという考え方、態度をとられたということ、この基本的な誤りがずっと尾を引いてきているわけでありまして、こういったところの反省の上に、日本の原子力というものを最初からやり直すというぐらいの気持ちでなければならないのでありまして、単なる機構いじりだけでこの日本の原子力に対する国民の信頼が回復されるというふうにお考えになっては間違いではないかと思います。
いろいろ批判的な意見を申し上げましたけれども、若干前向きの方向で建設的な意見を最後に申し上げさせていただきたいと思います。
それは、やはりこの基本法の中で一番大事なことは公開の原則という点だと思います。これがこれまでにもいろいろな大きい問題を残してきております。公開の原則というものをどうやって今後貫いていったらいいかということの一つの方法といたしまして、これもアメリカのまねということになってはあれなんですが、アメリカで情報公開法、情報の自由化に関する法律というのでしょうか、この法律が成立して、これがいろいろな意味で非常に大きな役割りを果たしている。これに似たようなものを日本でも何とか早くつくっていただけないだろうか。そのことによって、この基本法にうたわれている公開の原則あるいは民主の原則といったようなものを、単に精神としてではなくて、法律の面からも確実に基本法の精神が守られるような措置というものがとられないだろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
大変簡単でございましたけれども、私の意見を終わらせていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/8
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009・岡本富夫
○岡本委員長 ありがとうございました。
参考人に対する質疑は午後一時より行います。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/9
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010・岡本富夫
○岡本委員長 速記を始めて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/10
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011・岡本富夫
○岡本委員長 これより福田内閣総理大臣に対する質疑を行います。
石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/11
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012・石野久男
○石野委員 総理大臣に、原子力基本法の改正に当たって一言御意見を聞いておきたいと思うのです。
まず第一の質問は、総理大臣は、原子力基本法に定められた原子力三原則、いわゆる自主、民主、公開の原則、これはもう単なる基本精神の宣言であるというふうに理解しておるのであるか、それとも、それはいわゆる法律規制に対する効果を及ぼすものとして理解しておるのであるか、そこのところを少し最初にひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/12
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013・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 原子力基本法は、これは原子力行政を進めていく上の基本的な指針を示したものでありまして、これから原子力行政はいよいよ重要になる。民主、自主、公開、この方針を踏まえて行政は進められるべきだ、ますますその考えを固めて、その方針を進めてまいりたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/13
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014・石野久男
○石野委員 重ねてお伺いしますが、この自主、民主、公開、特に公開の原則等について、この原子力基本法が具体的な法の規制を規範するという機能を持ち得るものであるというふうな理解をしてよろしいのか、そういうふうに理解されるべきではないのか、そこのところをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/14
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015・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 これは大方針を示したものでありまして、これから行われるところの行政はこれを外れるということがあってはならぬ、こういうことを示しておる、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/15
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016・石野久男
○石野委員 基本法はその制定の当初において、わが国がいわゆる終戦の段階で広島、長崎等に原爆を受けたということがあり、そういうことに対応して原子力の平和利用、そのためには戦争に絶対反対する、平和を守るという担保をこの基本法に設定したと思います。そういう意味で、学術会議等の意見も入れていわゆる原子力平和利用の三原則が出たわけでございます。したがって、基本法改正に当たってこの原則から外れるということがあってはならない、こういうたてまえで私たちは審議をしてまいりました。
そこで、この公開の原則というものについて、ますますその精神が発揚されるということがなければならない、こういうふうに思いますので、私は公開の原則というものは——最近アメリカで情報公開法というのが制定された、そういうもの等について、政府はやはりこの改正を敷衍する形で将来考える意図があるかどうか、そういうような点を総理に一応聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/16
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017・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 ただいま公開の原則をどういうふうに進めるか、その具体的立法を考えておるということはございませんけれども、いずれにいたしましても、原子力行政を進めていくという場合におきましては三原則、その中には公開の原則が含まれておるということは十分承知して対処する、このように御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/17
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018・石野久男
○石野委員 本法改正に当たって、従来基本法がいわゆる炉の設置許可権というものを、総理大臣がこれを一括して握っておった、これを今度は行政の一貫化ということで三省庁に分割する、こういうことがこの法案の改正の要点になっております。それで、私どもの心配しておるのは、従来総理大臣が原子炉の設置許可を一括しておったものを、今度通産、運輸、そして科学と三省庁に分割して権限を与える、このことによって、安全審査のいわゆる統一的なものに乱れが来やしないか、こういう心配を実はしておるわけです。そういう意味から、従来の一括一元的に掌握しておったものを三分割することについてどういうふうに補強しようというふうに政府は考えておるか、その乱れをどういうふうにしっかりとつかむかということについて政府の考え方をひとつ聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/18
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019・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 一貫管理という方針のもとにそれぞれ各省庁、三省庁でございますが、これで安全管理を行いますが、その安全管理が各省に分かれたその状態において一貫性が保たれるように、これは機構等の整備を十分しなければならぬ、これが第一点であります。
それからその中で、省庁に分かれておりまするけれども、その総合調整という横の一貫性、これがまた保たれなければならぬ、こういう問題がありますが、その横の一貫性につきましては私が責任を持ってそれが保たれるようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/19
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020・石野久男
○石野委員 その横の一貫性というものは機構の上では総理大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/20
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021・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 これは安全委員会のダブルチェック、こういうことになりますから、このダブルチェックが着実に的確に行われる、機能を発揮するということで保たれる、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/21
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022・石野久男
○石野委員 原子力安全委員会がダブルチェックの重要な役割りを横の統一性として果たすということになるならば、この安全委員会の持っている法的権限といいますか、そういうものに一つの力量を与えなければいけないだろう、いわゆる三省庁と同格あるいは同格以上の力量を持たせなくちゃいけない、こういうふうに考えます。そういう意味から言いまして、原子力安全委員会を新たに設けるということの意図はわかりますが、それがいわゆる国家行政組織法第三条機関でなく第八条機関として、しかも総理の諮問機関という立場で置かれるということについて、そういう権限を果たすということについて私たちは非常に疑義を持ちます。疑問を持つ。それをどういうふうにして私たちの疑問にこたえることができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/22
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023・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 その点についての石野さんの御意見はかねて承知しておりますが、ダブルチェックという機能を果たす、そういうたてまえから言いますと、同じ政府機関の系統というよりは、三省庁で一貫管理をやる、その後を受けまして、別の立場にある安全委員会という第八条機関ですかがこれを取り扱うという方が、これはダブルチェック、その趣旨に適合するんじゃないか、これが私の所感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/23
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024・石野久男
○石野委員 いわゆる八条機関ということになりますと、総理大臣のいわゆる諮問機関という限界を越えることはできないのですよ。したがって三省庁がその意見を入れるということについての保証は法律的にはほとんどない。どういうふうにしてその保証を与えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/24
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025・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 安全委員会はお話しのように諮問委員会ですね。諮問委員会で意見を政府に申し述べる。その意見に従いまして総理大臣は三省庁の総合調整に当たる、こういうので、制度とするとその方が合理的ではないか、これが私の見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/25
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026・石野久男
○石野委員 安全委員会の委員長は学識経験者、委員は学識経験者をもって充てる。今度の法律では、その長は互選であるということによって、第三者的性格を持つことは確かに従来よりは前進しております。しかしこの安全委員会の委員の選出あるいはまた委員長の権限が三省庁に及ぶということにするのには相当程度の法的な裏づけ、担保がないといけないと思う。そういう点について総理大臣はどういうふうにして保証いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/26
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027・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 諮問委員会としての安全委員会から意見の具申がある、それを内閣総理大臣が受けまして三省庁の管理体制、その間に統制というか総合調整が行われるというような努力をするということで、安全委員会のダブルチェックの機能が実現できる、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/27
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028・石野久男
○石野委員 安全委員会の委員の選出に当たりまして、特に総理大臣として考えている点があれば、ひとつこの際聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/28
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029・熊谷太三郎
○熊谷国務大臣 総理大臣のお答えの前に一言申し上げます。
学識経験、人格、その他あらゆる点から考慮しまして最も適任であると思う方を候補として選びたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/29
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030・石野久男
○石野委員 総理にお尋ねしますが、非常に学識経験に富んだ方を選ぶということにしましても、従来この委員は現業庁の役員とダブった形が常にあったのです。特に原子力委員会の委員と通産省の顧問とがダブっておるとか、こういうようなことがあったんではもう何の意味もない。だから、委員はそういうような重複を避けるということは絶対に確保しなければいけないと思いますが、その点について総理は確固とした信念を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/30
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031・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 安全委員会の委員は、ただいま原子力委員長から申し上げましたように、その選考、非常に大事なものでありますから、安全委員会としての機能が十分に、しかも公正に発揮できるようなそういうことを旨といたしまして、慎重に検討いたしたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/31
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032・石野久男
○石野委員 重複を避けることを特に私は要望しておきたいと思います。
ことにダブルチェックということが今度の法案の重要な視点になっております。ダブルチェックということは、重複した組織あるいは機能というものがなければならないわけですから、当然のこととして、原子力委員会あるいは原子力安全委員会にある体制というものが運輸省、通産省、科学技術庁それぞれに重複してそういう組織を予想しなければいけないと思います。したがって、この問題は、当然のこととして人事の面においても予算の面においても、そのことを内閣としては予想してなくちゃならないことだと私は思うのです。総理大臣は、そういう点で、たとえば行政管理庁とかあるいは大蔵省等に対して、予算編成に当たってそのことを明確にして、従前の行管だとか大蔵の制限とかなんかにかかわりなく、この法律の改正に伴うところの機構並びに人事の増大というものを当然ここでは保証するといいますか、そういうことを議会に対して約束いたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/32
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033・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 今回の法改正が、その法改正の趣旨に従って十分に機能するように、人事あるいは予算、そういう方面の充実、これには責任を持って対処いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/33
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034・石野久男
○石野委員 原子力委員会は、あるいは原子力安全委員会はそれぞれ独自の立場で、三省庁に対して、安全並びにいわゆる軍事利用をしないということの担保をする機能も持たせなくちゃいけませんが、特に安全委員会は、安全の確保という立場からその独立の機能を確保するために、われわれはこれを三条委員会として確立することが望ましいと考えております。しかし、政府がそれをやらないにしましても、八条委員会であったとしても、この安全委員会の固有の独立した権限というものを総理大臣が確保しようとするならば、この持っておる事務局、これはもういつまでも科学技術庁におんぶしておったんじゃいけないんじゃないかと思います。当然のこととして、安全委員会自身の事務局を持つということが大切だろうと思うのです。そのことについて総理はどういう考え方を持っておられるのか、そこのところをこの際はっきりとしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/34
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035・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 将来の問題といたしまして、御意見などを踏まえまして検討してまいる、このようにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/35
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036・石野久男
○石野委員 最後に一つお尋ねしますが、基本法の改正によって、基本法が本来持っておりまする平和の担保という問題がいささかも揺らいではいけない、こういうふうに思うのです。特に三省庁に炉の設置権を分譲するということはきわめて簡単のように見えますけれども、実質的には安全性の確保ということについて非常に大きな危惧を持ちまするし、将来この原子核についての一貫した体制を守り抜くためにも非常に大きな問題が出てくると思います。たとえば炉の活用という問題では、一定の行政的一貫性は持ったとしましても、あるいは再処理とかいわゆる核燃料循環、サイクルに対する一定の機構の上からいいますと、一貫性は確立できるかどうか、われわれは非常に疑問を持つわけです。むしろこういう点で平和に対す担保、戦争に反対する原子力基本法の精神というものはいささかも緩めてはいけないということについて、総理大臣が原子力基本法の基本を見失わないように、ひとつ総括的な行政采配をしてもらわなければならぬ、こういう点について最後にひとつ総理の考え方を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/36
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037・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 今回の法改正は、原子力基本法の精神、これを強化する、そういうものでこそあれ、これを損なうというようなものであっては断じて相ならぬ、こういう認識に立ちまして行政の運営に当たる、このように御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/37
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038・石野久男
○石野委員 総理はそういうように簡単な答弁をしますけれども、率直に申しまして、たとえば「むつ」の事故だとか、美浜の一号炉におけるところの燃料棒折損を隠しておったということなどは、いわゆる企業の側の問題だけじゃなくして監督官庁、特に現業官庁がこういう問題に対して、安全性に対する非常に厳粛な、厳格な物の見方を持っていなかった結果だと思います。緩いんだと思います。私たちからすれば、「むつ」の事故によって、こういうような基本法の改正が起こってきたということを考えますと、むしろ現業庁の監督不行き届きをとがめ、原子力委員会をもっと強化するということの方が素直な物の見方であったと思うのです。しかし、実際には原子力委員会の権限を三省庁に分割するというような非常に逆な方向に行っているということは一つ問題があると思います。それだけに私は、総理大臣が現業庁に対する安全管理の問題について厳しい指示を与えなければいけないだろうと思いますので、簡単な総理の御答弁でございましたけれども、私は、この点は重ねてひとつ総理の重大な決意だけは聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/38
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039・福田赳夫
○福田内閣総理大臣 原子力行政はこれからわが国としては大変重大、重要の問題になってまいります。これを進めていく上におきましては、原子力基本法の精神を踏まえて、そしてこれを拳々服膺する、こういうことでやっていかなければならぬ、そのように格段の努力を今後ともいたしてまいるということをはっきり申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/39
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040・岡本富夫
○岡本委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時八分休憩
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午後一時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/40
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041・岡本富夫
○岡本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
原子力基本法等の一部を改正する法律案の審査を続行いたします。有澤参考人が御出席になりましたので、御意見を承ることといたします。
有澤参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/41
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042・有澤廣已
○有澤参考人 この会議では原子力基本法と原子力委員会設置法の改正が審議されていると承っております。その改正法案の土台になっておりますのが原子力行政懇談会の意見だということでございますので、私その懇談会の座長を務めた関係上、きょうは真っ先にこの行政懇談会の意見、その考え方につきまして概略まずお話を申し上げたいと思います。
原子力行政懇談会は、ちょうど「むつ」の問題が起こりまして、原子力の安全体制に対する国民の信頼が全く地に落ちた状況のもとに発足したのであります。原子力の安全体制を根本的に見直さなければならない、こういう立場からこの懇談会が開かれたわけでございます。
それで、この懇談会におきましては、いろいろ議論がありましたけれども、まずもって、審議を進めていく上におきまして四つの前提といいましょうか、項目を共通の考え方としてとらえたわけでございます。
その四つの項目と申しますのは、意見書の中に出ておりますように、一つは、原子力基本法の精神にのっとって、原子力の開発、利用につきましては平和目的にのみ限ってこれを推進すべきものである、軍事利用は一切してはいけない、こういうことでございます。それから第二点は、国民の福祉と経済の発展を期するために必要なエネルギーの安定確保にとって、原子力は欠くべからざるものであるということ。それから第三番目が、原子力の開発、利用に当たっては、国民の健康と安全が確保されなければならないということ。第四番目は、原子力行政及び政策の実施に当たっては、その責任体制が明確にされなければならないこと。以上四点でございます。「むつ」の問題におきましては、原子力安全体制が非常に疑われたこととともに、大体責任の所在といいますか、責任が明確化されていないということも批判の対象になったわけでございます。それで第四番目に述べますように、この行政責任の明確化を考えなければならない、こういうことでございます。
この四つの前提のもとにわれわれの議論が進行しまして、かなり長い時間かかりまして一つの意見書を取りまとめたわけでございます。
その意見書におきまして骨子になっている点は、一つは、原子力委員会を二つに分かって、一方では原子力委員会、他方においては原子力安全委員会、そして原子力の安全体制の問題につきましてはこの安全委員会がこれを担当するということでございます。従来、原子力委員会におきましては、開発の面と安全の問題が両方一緒に審議検討されてまいったわけでございますが、一方で開発をやりながら他方で安全を守るということは、ややもすると開発の方に重点が移りがちであるから、外から見ますとどうも安全が無視というか軽視されているようなきらいがある、そこに国民の不信も胚胎しているということが言える。したがって、この二つに機能を分けて、それぞれ独立の委員会として機能を果たしていくということが最もよかろう、こういう趣旨からこれを二つに分けたわけでございます。
それで、原子力委員会の方は、安全の問題が原子力安全委員会の方に移っただけで、あとは全部従来の職務を担当するわけですが、安全委員会の方が実は問題でございます。安全委員会におきましては、むろん安全のための政策とか安全の基準とか、そういう安全に関する基本的な問題を取り扱うばかりでなく、後で述べます各省庁が行う原子炉あるいは原子力船、つまり原子炉の設置についての認可につきまして、これをチェックする。そのチェックの立場は、国民の負託に基づいてこれをチェックするという意味でございます。行政庁におきましては、行政の立場、行政責任からこれをチェックして安全を確保するために行うのですけれども、安全委員会の方はそれとは立場が違って、国民サイドと申しましょうか、国民が願っておる安全の負託にこたえるという意味においてのチェックを行う、こういうことでございます。余り長く時間をとりますと御迷惑でしょうから、それが第一点でございます。
それから第二点は、従来の行政責任の明確化を図るということになりますと、たとえば基本設計は科学技術庁がやり、詳細設計以下は通産省がやる、あるいは運輸省がやるというようなことでは、責任がどこに所在するのか明確でない。したがって、原子炉設置についての行政責任の一貫化を図るがためには、それぞれの省庁においてみずから安全審査を行い、そしてその省としての安全審査報告をつくり、そしてあと詳細設計あるいは運転等につきましての監督を行っていくというふうに、各省庁におきましてそれぞれの行政責任を一貫して帯びる、こういう形にすべきであろうというのが行政懇の考え方でございます。
それですから、言うまでもないことですけれども、実用炉になっているものは通産省がその安全についての行政責任を一身に引き受ける、運輸省は原子力船について、研究炉あるいは試験段階にある炉につきましては科学技術庁がその責任に当たる、こういうことでございます。
それで、通産省が実用炉につきまして安全審査をみずから行って安全審査報告書を作成いたしますと、それを原子力安全委員会に提出して、原子力安全委員会の検討、吟味を仰ぐという段取りになります。これがいわゆるダブルチェックでございます。一遍省庁で行った審査をもう一度、先ほど申しましたように国民負託の立場からこれを検討、吟味する、その上でイエスまたはノーを意見として言う、こういうことでございます。
いま申し上げました通産省から出てくる審査報告、これは基本設計についてでございますが、基本設計についてダブルチェックを安全委員会がいたします。その際常に起こりがちのことでございますけれども、基本設計そのものならばいいけれども、これが詳細設計のときにはこういうふうな材料を使わなければいけないとか、こういうふうな細かな技術を使わなければいけないというようなことが問題になります。したがって、基本設計どおりで一応いいけれども、詳細設計においてはなお、基本設計の審査において問題であったというふうな点が、果たして原子力安全委員会が審査において指摘したとおりになっているかどうか、それについての追求をも安全委員会はすることができるわけであります。それがつまりダブルチェックの精神でございます。
以下、運転中に重大な故障が起こったときにはその故障についての報告を求めることもできます。その報告に基づいて安全委員会はさらに安全の見地からこれを再吟味するということも可能であります。ですからダブルチェックという意味は、先ほど申しましたように、国民の負託にこたえて、その責任のもとに安全委員会がこれを行うものでございまして、私はこれは安全委員会の重大な一つの役割りだと考えております。
それで、行政責任を明確にするという意味におきまして、先ほど申しましたように実用炉は通産省、船舶用炉は運輸省、研究炉あるいは試験段階にある炉は科学技術庁というふうに、それぞれ安全の審査を初めその安全のための監督を厳重に行って、その行政責任を一身に引き受けるという体制になっておるわけでございます。
二つの大きな問題はそれで片づきましたが、一つわれわれの懇談会で問題になりましたのは、安全委員会が、いま申し上げました形では八条機関でございまして、審議会組織でございます。無論審議会組織ではありますけれども、この委員会の決定は内閣総理大臣がこれを尊重しなければならないし、また、各行政省庁の長官もこれを尊重しなければならぬわけでございます。それから場合によりましては、委員会は、内閣総理大臣を通じて意見を総理大臣及びその他の省庁にも伝達することができます。無論報告をとろうと思えば報告をとるだけの力も持っております。けれども、その性格は何といいましても八条機関、審議会の性格でございます。それだけに、審議会形式の安全委員会ではどうも弱体ではないかという議論があります。それではどうするかといえば、やはり行政委員会、三条機関にすべきではないかという議論もわれわれの懇談会の席上でかなり強いものがありました。しかし、私どもの根本的な考え方は、この原子力委員会も原子力安全委員会も、言ってみれば国民の負託にこたえているものである。国民の負託に基づいておのれの使命を遂行しようとする機関である。そういう性格のものがたとえば行政委員会になりますと、何といいましてもこれは一つの役所であります。政府の一部であります。そういうものになっていいかどうか、大問題だと思います。
行政委員会になりますれば、なるほど法律上、多分いろいろの権限が与えられることと思います。しかし権限のないところには発言ができません。原子力安全委員会がやる仕事は非常に間口が広い。その間口の広いものについて権限を全部網羅的に書き尽くすことができるかどうか。書き尽くしたと思っていてもなおそこに遺漏がありはしないか、そういうときには、その権限が規定されていないほかの分野には発言できないことになる。つまり権限があるところでは非常に強い力を発揮できますけれども、権限の範囲外におきましては何事もできない、そういう組織が果たして国民の負託にこたえ得るかどうか疑問だというのがわれわれの考え方でございます。
ですから私どもの考えを端的に申しますならば、法律による権限よりも国民の負託を一身に背負っておる方がはるかに強い力を持っておる、こういうふうな考え方でございます。
それでいろいろ議論しましたあげく、結局行政委員会の案を主張した方などもこれを取り下げまして、ここの意見書でまとまったような形のものになりました。
それからもう一つは、原子力委員会と言いあるいは原子力安全委員会と申しましても、それから行政庁に行政責任を一身に負わせると申しましても、それは一つの制度でございまして、どんなりっぱな制度をつくりましてもこの制度を運営する人が問題であるということでございます。ことに、いま申しましたように、原子力委員会並びに原子力安全委員会におきましては、本当に人というものが重要になってくると思います。国民の負託にこたえ得るだけの信念と能力を持っている人、そういう人がこの委員会の委員に座らなければならないと思います。そのことも私ども意見書にはかなり力説してあるところでございます。原子力委員会並びに安全委員会の委員になりますのには国会の承認を必要といたします。つまり国会のチェックを受けるわけでございます。その点において私どもは、皆さん方がもしこの法案でいかれるということになりましたならば、その人の人選は、本当に国民の負託にこたえ得る能力と信念があるかどうかという見地から、十分御吟味をお願い申し上げたいと思う次第でございます。
最後になりましたが、この意見書では、できるだけ早くこれを実施してもらいたいということを書いてあります。五十二年度中にこれを実施するようにしてもらいたいとたしか書いてあったと思いますが、と申しますのは、「むつ」の事件で原子力安全体制への国民の信頼が揺らいできました。その国民の間の動揺を一刻も早く払拭して、原子力の安全に対する国民の信頼を回復するためには、政府がこういう改革をもって断固としてこの問題に臨むのだという姿勢を示していただくことが必要だと考えたからでございます。
ほかにまだ公聴会といいますか、パブリックヒヤリングの問題だとかあるいはモニタリングの制度につきましても幾つかの問題を指摘しておりますけれども、行政懇の意見書の骨子になっている点は以上のような点であったと私は思っております。
これで私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/42
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043・岡本富夫
○岡本委員長 ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/43
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044・岡本富夫
○岡本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出があります。順次これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/44
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045・石野久男
○石野委員 最初に久米先生にお尋ねいたしますが、改正法案に対して住民の参加が十分に受けとめられていないという御意見でございました。今度の改正法案の意図するところが「むつ」の問題に端を発しておることでございますし、特にそういう点を考慮したということで安全委員会等をつくるというようなことが行われております。原子力委員会を二つに割って、安全委員会と原子力委員会と二つにしました。そういうことが住民の参加にこたえ得るようにするのには、それではどういうふうにしたらいいだろうかというようなお考えがありましたら、ちょっとお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/45
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046・久米三四郎
○久米参考人 具体的な問題は幾つかあろうかと思いますけれども、私が先ほど申しました公聴会の問題というのは各地の住民の間で非常に問題になっていることです。それは、先ほど申しましたように、これまでの国のやっておられるやり方は、基本的には行政の方で全部責任をとる、だから一般国民はそれを信じてついてこい、そういう姿勢になっておると思いますから、この公聴会を本当に実のあるものに一回やってみる。ただ、これは欧米その他の経験でもむしろ非常にいろいろ欠陥が出てまいりまして、たとえばアメリカの人たちの意見を聞いても、向こうでは日本とまるっきり違いまして、設置許可の段階と工事の許認可の段階に分けて六カ月を限度とする公聴会が住民に与えられております。それでもこの原子力の問題というのは非常にむずかしい問題がございますから、完全に住民サイドの要求にこたえることはできておりません。そういう報告を聞いております。しかし、日本のように、これまで一、二やられたのでは一日半で終わり、しかも、その内容はぜひ持ってきてほしいという程度の発言で終わられるようではだめですので、公聴会というのも具体的にどういうふうにやっていったらいいかというのは、私たちも本当に考えなければならぬ課題ですけれども、少なくともそういうオープンの場を設定していくということをまずおやりにならないと——私か一番初めに申しました、余り今度の改正に私自身も期待しておりませんのは、私は伊方を初め各地の住民の方々とわりあい深く交わっておりますが、この皆さん方の間でも御審議になっておる改正案なんてほとんど話題にもなっておりません。ですから、こういった形でたとえこの法の改正をおやりになっても、いま原子力の、特に安全性の問題を懸念しておる一般の住民にとっては恐らく余り寄与しないのではないか、そういうふうに思いますので、がっしりとした体系をつくられるのも大事かと思いますけれども、原子力のように未知の分野が非常にあるところではむしろ八方破れ、すきすきの体制で一般の国民、住民あるいはそれの代弁者の意見もできるだけ広く聞いていく、そして政府としての意思決定をやっていく、そういうこれまでと違ったやり方をおやりになることが必要ではないか、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/46
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047・石野久男
○石野委員 重ねて久米先生にお尋ねしますけれども、先生は、規制法の性格の問題について、住民のための規制ではなくて、電力会社、事業家に対し資格を与えるにすぎないということのお話がございましたが、それはどういう意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/47
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048・久米三四郎
○久米参考人 それはむしろ科学技術庁あたりにお聞きになっていただきたいと思いますが、伊方の法廷で国側の意見にそれが出てまいりました。そして、一番国側が最終的に問題にいたしましたのは、住民に異議申し立ての権利がない、これは四国電力に対する許可行為であって、一般住民は第三者にすぎないという形で非常に明確に出してこられまして、さらに住民側の追及に対して、私が先ほど申しました、これは資格を与えるための法律であって、直接住民の安全を対象とした法律ではない、その資格を与えるときに、公共の利益を損なわないという形で一般住民の利益は保護されておる、こういう説明を国の方がなさっておるのでそういうふうに言ったわけです。実はこれは、私自身も国のそういう意見を聞いて、初めて規制法の性格が——私、法律に全然素人であったわけでございますけれども、ほかの公害基本法などとは何か違うというふうに思っておったことが、私自身その国の説明で非常に明確になった、こういうふうに思いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/48
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049・石野久男
○石野委員 もう一点お聞きしますが、安全の尺度の問題で、安全基準が非常にあいまいだというふうなお話がありましたが、それはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/49
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050・久米三四郎
○久米参考人 これもぜひ伊方の裁判の記録を調べていただきたいと思いますが、幾つもの問題がございます。一、二の例を挙げますと、一つは、一番問題な放射線のいわゆる許容量と言われておる問題です。これは年間五百ミリレムというのがあたかも法的基準のようにうたわれておりますが、これは実は科学技術庁告示にすぎないので、しかもその告示の決め方は、私たちの考え方では法律に基づいてちゃんと正当に委任された形ではやられていない。ですから、これは違法な基準になっておる。御存じのように、放射線というのはいまのところは閾値がありません。どんなに少量にしていっても、遺伝的な障害、あるいはがん発生を防ぎ切れないということ、これは国際的なあれになっております。ですから、五百ミリなら五百ミリに決めることはそれだけの犠牲を周辺の住民に強いることになります。そういう重要なことが告示というような形でしか出ていない、これが一つの大きな問題点です。
それからいろいろ安全工学の問題が議論になりましたが、これはぜひお読みになっていただきたいのですが、二十四条の許可条件、あれしか法律にはございません。あとは安全審査をやるときの内規というような形で、これまた非常にずさんで文学的なものであって、全く科学的な検討にたえないようなしろものであります。そういうことでいまの審査がやられておること、これは幾つもの実例を挙げておりますので、ぜひ裁判記録を読んでいただきたい。
さらに、各地で紛糾しております地震の問題であります。これは、日本のような地震国で、地震に一番弱い原子力発電所を建てるということは非常に大きな問題であるにかかわらず、驚くことに、どういうところで原子力発電所を建てていいかというような基準が全くないわけです。アメリカなんかの場合には、あれほど岩盤のかたいところでも、たとえば活断層に対して非常に厳しい規則が法的に決められております。日本のような条件のところでは原子力発電所は非常にやりにくい条件ができています。しかるに、わが国ではそういう基準は全くございませんで、その場その場の適当な判断にゆだねられておる。しかもその判断内容が、一歩踏み込んでみれば非常に恣意的な解釈でつづられておるというようなことが伊方の場合に明らかになったと私たちは考えております。そういった点が私が先ほど申しました二、三の具体例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/50
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051・石野久男
○石野委員 いま一つだけお尋ねしますが、今度の改正法案では原子力安全委員会が分離しまして、それが一つの機能を達成しようとしておるのですが、それらのことを住民に伝えるためには公聴会等で補強するというような意味のお話があったと思うのですけれども、原子力安全委員会なるものについての意義づけを先生はどういうふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/51
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052・久米三四郎
○久米参考人 私は、先ほどの有澤参考人とは大分意見を異にしておりまして、原子力のように未知の問題を非常にたくさん抱えておるものでは、国民から負託とおっしゃいましたが、本当に責任を持って安全を判断できる状態にはないと思います。衆知を集め、批判的な意見もやって、手探りで進めていくしかないわけでございますから、幾ら強力なものをおつくりになっても、それだけで本当に不安を解消するということは原理的に不可能だと思います。もしも安全委員会をおつくりになるのでしたら、むしろそれは国民に対するサービス機関にすべきだと私は思う。日本ほど現場の原子力発電所その他の情報が国民に閉ざされておる国はありません。たとえば、事故一つをとりましても、新聞の二行か三行の報告しか国民には与えられていないわけです。こんなばかなことをやっておったのでは話にならないので、たとえば、あそこでこういう事故があったがそれは一体何かといったときに、それに対して豊富な資料と事実を備えておいて国民に示す、そういう機能をまず持つこと、それが何よりも大事だと思います。自分たちが行政で何か判断をして、それでやっていけるというようなのは非常に思い上がった考え方である。その基本的な考え方を直さないと、どんなに機構をおつくりになっても、国民の信頼を得られないのではないか。先ほどもございましたが、ダブルチェックということは形の上では非常にきれいでございますが、伊方の法廷でも明らかになりましたが、いまの安全審査がいかにそういう点でずさんであって、スタッフの不足、それから予算の不足、資料の不足で満足なことができないかということ、これは「むつ」の調査委員会も非常にはっきりと指摘しておるわけでございまして、果たしてそういうように強化したものをダブってやり得るかどうか、私のような素人には、二つつくっていま以上にそういうことができるというようなことはとても考えられません。むしろ二つをつくったということによって、何か形式的にダブらすということになってしまうのではないか、そういうふうに恐れます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/52
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053・石野久男
○石野委員 小野先生にお尋ねしますが、小野先生は今度の法改正について、三省庁に分けたけれども、行政の一貫化が可能であるかということについての疑問を投げかけられておりますが、それはどういうような意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/53
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054・小野周
○小野参考人 お答えいたします。
私が申しましたのは、一貫と言いましたが、この一貫というのは、発電用炉については通産省、それから船舶用につきましては運輸省、研究用については内閣総理大臣というふうに、主務大臣を決めて、一見その範囲では筋が通っているようでありますけれども、あるいは相互の関係については安全委員会というようなものあるいは原子力委員会が関連してくるとは思いますけれども、三つに分けたそれぞれについて、実際に原子力の安全についての主務大臣のいろいろな処分をするというだけの体制がちゃんとできているかということについては、はなはだ疑問だと思うのと、結局そういうものを分けてしまうことによって実際には非常に無力化されているということがあるのではないかということを申し上げたわけですが、むしろ、一貫ということから言えば、私が先ほど申しましたように、原子力というものは現在研究段階のものであるので、原子力全体の問題をむしろ三つに分割しないで原子力規制行政というものを行う方が正しく行えるのではないかということを申し上げたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/54
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055・石野久男
○石野委員 小野先生に再度お尋ねしますけれども、三省庁に炉の設置許可権というものが分かれます。これをダブルチェックをするという意味で、原子力安全委員会が安全性の問題についてのダブルチェックをやろうとするわけです。この原子力安全委員会が三省庁に対してダブルチェックの権威を保持するということのために、先ほどちょっと有澤参考人からもお話がありましたように、三条委員会にする方がいいのではないかという考え方を実は私どもは持っているわけです。しかし、三条委員会にもいろいろ問題があるということを有澤参考人からもお話がありました。これは服部先生にもひとつそのことについての所見をちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/55
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056・小野周
○小野参考人 私もけさの陳述で、三条委員会にしないと実際の責任がとれないのではないかということを申し上げたのですが、ダブルチェックと言っておりますけれども、そういうことを言うと大変失礼に当たりますけれども、大変不完全なダブルチェックをやるよりは完全な一つのチェックをやった方がいい、これはかなり一般的な常識だと思うのです。安全委員会がやはり権威を持ってやるためには、一つは行政的な権限として三条委員会にするというのが一つの考え方でございますけれども、とにかく意見を言うだけでなくてある程度責任を持ち得る、それからその裏づけといたしまして、ただ五人で責任を持つといってもそれは不可能なことでございますから、やはり独立の事務局を持って、そしてやはり研究スタッフがいて、かなり具体的な意見が出せるようになっていれば私は権威を持ち得るとは思うのです。それは実質的な権威でありまして、今度は形の上の権威は、先ほどの三条委員会にするという問題に関連してくるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/56
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057・服部学
○服部参考人 三条委員会か八条委員会かというお話がございましたけれども、それで私が思い出しますのは、昔、原子力委員会をどういうふうな性格のものにするかということで、亡くなられました藤岡由夫先生がいろいろと苦心をされていたときのお話でございます。これは佐々木さんなどもよく御存じだと思いますが、藤岡先生は、新しい原子力というものに取り組んでいくのに、いままでのようなお役所のやり方だけではうまくいかない、それからまた民間のやり方だけでも困る、やはり国がある程度の権限を持ってそれを発揮していかなくてはいけない、したがって、官のよいところと民のよいところを組み合わせてこういう原子力委員会を考えるのだということを一生懸命言っておられたのですけれども、この二十年間の歴史というのは全くそれが裏目に出まして、官の悪いところと民の悪いところを組み合わせたのがこれまでの歴代の原子力委員会のおやりになってきたことだ、これはもうはっきり申し上げていいことだと思います。午前中に私申し上げましたように、決して機構いじりだけで国民の信頼が回復するものではなくて、それをどうやって運営していくのか、それをどういう心がけで運営していくのか、このことが同時に考えられませんと、どんな組織をつくっても仏つくって魂入れずということになるのではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/57
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058・石野久男
○石野委員 有澤参考人にお尋ねします。
先生は今度の行政懇のまとめ役をなさいました。それでいろいろな答申をなさいましたが、この答申と今度の改正法案として出てきているものとの間に完全に満足なさっていらっしゃるのかどうか、まずその点をひとつ聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/58
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059・有澤廣已
○有澤参考人 私も法案を読みました。法律案というものは大変そっけない案文といいますか文章でございますが、しかし、私の読んだ限りにおきましては、私どもの意見書の骨子になるところはつかまえているというふうに思います。先ほどここでお話し申しましたように、ダブルチェックの場合におきましても、あれでやろうと思えば私はやれると思います。私どもの審議会で議論をしたときには、もっと具体的に、たとえば詳細設計についてもこうやるのだ、施工の段階でもこうだ、運転の段階でもこうだというふうな議論はしておったのですが、そこまでは法案の中には出ておりません。しかし、報告をとるあるいは原子力安全委員会が意見を出すという形でやろうと思えばそれは十分やれると思います。そういう意味において一応法案としては整ったものじゃないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/59
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060・石野久男
○石野委員 有澤先生に再度お尋ねします。
安全委員会がダブルチェックの役割りを果たしていく、そのために国民の負託にこたえるべき機関ということで、三条委員会か八条委員会かというようなことなどもいろいろと論議をなさった。その中で三条委員会でなくともというような結論のようなものを持たれたようでございますけれども、率直に言って、八条委員会というのは結局は総理の諮問機関というところに法的には制約されておりますから、それ以上のものではない。近年来起きております原子力に関する諸般の問題というのは、率直に言いまして、規制法の問題と現業官庁における管理監督との問題の間にいろいろなそごがあり、そしてその監督権限の違いから事故が拡大したりあるいは不祥事が起きたりしている、こう思います。私どもの一番心配するところは、三省庁に権限分譲をなさった場合に、その安全審査の横断的一元化といいますか、そういうようなものが確立するかどうかということに一つの疑問を持つわけです。それから、仮にそれは服部先生の言われるように、運用の心の問題としてお互いに軌を一にするということがありましても、しかしそれをどうしてもダブルチェックということで確保しようとすれば、安全委員会の法的権利権限というものの保証がないと、各官庁間のなわ張りとか何かから言いまして、実質的には法律はつくっても魂が入らないことになってしまうだろう。そういう点について行政懇ではどういうふうにお考えになったか。あるいはまた、この法律の中でそういう点を補備、補強しようとすればどういう点に行政庁として注意しなくちゃいけないか。そういうようなことについて有澤参考人のお考えがありましたら、その点もひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/60
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061・有澤廣已
○有澤参考人 大変いい御質問で、私どもの懇談会でも大変議論になったところでございます。八条機関としまして総理に意見を述べる、決定を伝える、それについては総理はこれを尊重しなければならぬ。しかし、それだけではどうも各省庁間の権限の問題、権限間の問題につきましては介入はなかなかできないじゃないか、こういう御心配でございます。
確かにそういう問題があり得ると私も考えます。しかし、それにつきましてはやはり原子力委員会なり原子力安全委員会なりが常に各省庁の行政上の実施について監視をしていって、そこで起こっている問題につきましては適当な時期に意見書をそれぞれ提出すべきだと私は思っております。ですから、権限はなくても、意見書なり決定をもってこれを強制することができるだろうと思います。その強制にもかかわらず各省庁が実施をしない、あるいは内閣総理大臣に意見書を出し、各省がこれに従うようにと言ってみても各省が従わないとするならば、これは原子力委員会なり安全委員会としましてはその責任を果たせないということだと思います。果せないときには委員会はどうすべきか。それはその場にとどまっていることはできないと思います。原子力委員会なり安全委員会が責任をとれないといって辞職をするということになりましたならば、国民がそれを黙って見ているはずはありません。見ておったならばもう原子力はめちゃくちゃになります。ですから、私どもの議論の中においても、そのときには総辞職をすべきだというような議論さえ行われたわけですが、私もそういうような考え方に立っております。
それからもう一つは、原子力委員会なり安全委員会がその力を発揮するためには、やはりスタッフを十分充実しなければならないということは確かでございます。日本の場合には官吏だけをふやすことでそれができるかどうか、いろいろ問題もございます。ですから、たとえば安全審査委員会であるとか何とか委員会であるというふうな専門部会を自分の下に置いて、それを使ってやる。そればかりではないですが、むろんスタッフとして安全委員会なら安全委員会のもとにおける専任のスタッフも充実してほしいと私は思っております。安全委員会——原子力委員会も同様だと思いますが、特に安全委員会においては専任のスタッフを相当持つということが必要であろうと思います。その点はこれから漸次充実していくというふうなことがどこかに書いてあったと思いますが、一遍につくろうと思ってもできないと思いますけれども、その充実については十分配慮していただきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/61
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062・石野久男
○石野委員 いま一つ有澤先生にお尋ねしますが、スタッフを充実せよというけれども、法案の中では、たとえば安全委員会の中の安全専門審査会は、現行法では法定機関になっておったものを今度は政令機関に下げていくというふうな考え方、この考え方の中に安全に対する心構えの問題が一つ言わず語らずに出ている。こういうところがまたわれわれが法改正に対して不信を持つゆえんなんです。こういう点について有澤参考人はどういうふうにお考えになるかということ。
それから、時間がございませんので川上参考人にひとつお尋ねしますが、川上参考人はこの規制の問題について、開発あっての規制だというお言葉がございました。誤解を受けるといけないがという前言葉があったわけでございますけれども、開発あっての規制ということと、それから研究の中で安全に対する規制の問題をきちっと生かしていくということとの兼ね合いの問題、研究実験の問題と開発と規制、この兼ね合いの問題というのが非常にむずかしいと思うのです。ここのところをもう少し先生の考え方をお聞かせいただければ結構だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/62
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063・有澤廣已
○有澤参考人 安全委員会の下に安全審査専門部会を置くことは、これはもう決まっていることでございますが、それを法律上置けるような形にしておいた方がいいじゃないか、そうでないと何か安全審査専門部会を軽視しているのじゃないかという御発言でございます。私は軽視しているとまでは思いませんけれども、もしその点、つまり安全委員会のスタッフを充実するという趣旨をその意味においてあらわすということでございましたならば結構だと思います。それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/63
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064・川上幸一
○川上参考人 先ほどちょっと誤解を招くのじゃないかなと思ったのですが、私が開発と申し上げた意味は、原子力委員会のことを話題にしておりましたので、やはり研究、開発の面を中心に考えておったわけであります。実用的なことは通産省ということで、私はその方がかえって原子力委員会の性格がすっきりしていいのじゃないかと思っておりますけれども、技術の方から言いますと、安全性だけを切り離すというようなことは本来技術の立場からできないわけでありまして、技術を完成させるというのは、つまり安全な技術を完成させるということなんですから、そういう意味で安全委員会がいろいろチェックをしていくと同時に、そのチェックされた内容をどういうふうに受けとめて、その問題点を解決していくかということは当然原子力委員会の仕事であろう。
〔委員長退席、小沢(一)委員長代理着席〕
その原子力委員会が何かしっかりしてないとだめじゃないかという意味で申し上げたわけでありまして、この安全委員会と分離されることによって、原子力委員会の方が何かがっかりしているというような話をちょっと聞きましたものですから、そんなばかなことはないだろうという意味で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/64
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065・石野久男
○石野委員 時間になりましたから終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/65
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066・小沢一郎
○小沢(一)委員長代理 次に、日野市朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/66
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067・日野市朗
○日野委員 まず小野先生、それから服部先生にお伺いをいたします。
原子力基本法の大きな原則の一つとして公開の原則がございますが、実際われわれもこの公開の原則というのは空文化されていはしないだろうかという非常に強い危惧を持っておりますし、その危惧を裏づけるような事実を幾つかわれわれも経験しているところなんであります。研究者としての両先生に、実際この公開の原則にこれは反するではないかというようなことの経験がありましたら、ひとつ例を挙げてお話しをいただきたいと思います。また、これは多過ぎてとても話にならぬということであれば、その旨お話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/67
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068・服部学
○服部参考人 私自身はもう何でも言いたいことをどこへでも出ていってしゃべる人間でございますので、公開の原則で、公開してはならぬといったようなことで縛られた覚えは私自身はございませんけれども、回りでは幾つかの例を見聞きしております。少し古いことになるかと思いますけれども、たとえば日本原子力研究所の国産一号炉という原子炉の燃料棒に欠陥があった問題がかつてございます。国産一号炉と申しますのは、日本で初めて燃料をつくって、それを原子炉に入れて運転してみるということですから、これは原子力開発の上で大変重要な問題でございます。ですから、そこでもしある製法でやってみたら何らかの欠陥があったということがわかれば、これはそれから後の日本の技術開発にとって非常に大事なデータとなることだと思います。また最初にやることというのはそういう失敗の例を積み重ねていって、その失敗がどういう失敗をしたかということを明らかにしていくということが、開発の段階では最も大事なことだと私たちは考えておるわけです。ところが、国産一号炉の場合にある製法でつくった燃料にはどうも欠陥があるということを、携わっていた研究所の職員が職場の中の新聞にそれを書いたということが理由でもって、処罰されたというような例がございます。そういう例は実は挙げていきますと切りがないわけでございます。
最近の例で申しますと、原子力発電所の燃料棒が破損をしていた、これをまず一生懸命に発電所が隠そうとしたという、これも御存じのことだと思いますが、隠して隠しおおせることではないことが明らかなものなのに、そういう隠そうというようなことをなさる。隠して隠しおおせることではないことですらそういうことなんですから、隠して隠しおおせることであったならば、恐らくもっともっと隠していることがたくさんあるのではないかという気がいたします。
それから、先ほど私、ソードフィッシュ号事件のときのことを申し上げましたけれども、これは科学技術庁の方々には大変お耳の痛い話かもしれませんけれども、あのとき放射能の異常値が検出された場合に、最初にこれを隠そうとなさったという具体的な例がございます。そしてまたそれが西日本新聞のスクープで確かに異常値が出たということがわかった後で、これは国会での答弁の中で、そういうことを発表すると市民に不安を与えるといけないと思って発表しなかったという答弁がなされておりますけれども、そういった個々の例を挙げていったら切りがございませんけれども、率直に申し上げまして公開の原則というものはこの三つの原則の中で一番なし崩しにされてきた原則ではないだろうか。国民にはやはり知る権利があると思います。原子力が特に国民のものであるならばなおさらのこと、それについての情報というものは私たちは知る権利を持っていると思います。しかし、この二十年間の日本の原子力の開発の歴史を振り返ってみますと、やはりその知る権利というのが次第次第に狭められていった歴史であったというふうに言ってもいいのではないか、私はそのような印象を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/68
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069・小野周
○小野参考人 私、幾つか申したいことがあるのですが、原子力基本法に言っている法律に違反したかどうかというのは一応別といたしまして、とにかく学術会議で勧告をいたしました公開の原則に違反しているのではないかと思われることは非常にたくさんあります。
たとえば先ほど久米参考人が言われました伊方の裁判で、実は伊方の裁判があるまではわれわれは非常に知りたいと思っていたことがたくさんありましたけれども、裁判がありましたために国側が不承不承に出されたという資料があります。これは私、非常に大事なことだと思うのです。
それから、私たちが日本の原子力問題について幾つか知りたいと思うときには、いまやはり非常にそのデータはもらえない。それから、これはどこまでが企業秘密かわかりませんけれども、どこの会社のものでどこで見たということはちょっと申し上げられないですけれども、私そういうものを見ましてずいぶんびっくりしたことがたくさんあります。びっくりしたことを言うと恐らく大変なことに——私は大変じゃないのですけれども、大変なことがあります。これは事実として幾つかあります。ですから、かなり重要なことが秘密になっているのがやはり事実ではないか。
私たちがそういうふうなことについて非常に知りたいときはどういうことができるかといいますと、これは幸か不幸か、日本の軽水炉は米国のGEとウエスチングハウスでつくっておりますので、アメリカでは情報公開法、フリーダム・オブ・インフォメーション・アクトという法律がありまして、軍事に関するもの以外には公開を求めることができる。それでもってかなり、アメリカのUCS、ユニオン・オブ・コンサーンド・サイエンティストの人たちのとっているデータがありまして、そういうものを見せていただくことによりまして実は初めて知ったというふうなこともございまして、もちろんアメリカでも公開されているわけではないけれども、アメリカの場合にはいろいろ違いまして、アメリカで起こったものについてはかなり公表しているようです。ただ私、非常におもしろい話を聞きましたのは、スイスで起こったものについては必ずしも公表していない。スイスで何かあったということがわかったときに、それを求めると今度はスイスの事情もわかるというふうな話もありますので、日本でもやはりそういうふうなことがあり得るのじゃないかというふうに考えておりまして、それも国内だけではそういう意味の公開というものが完全に実行されていたい、非常に不完全な形になっているというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/69
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070・日野市朗
○日野委員 次に、有澤先生に伺いたいと思います。
いま小野先生、服部先生からもお話があったのですが、公開の原則の実情というのはその程度のものだろうというふうに実は私たちも感じているわけなんでございます。そこで、幾ら安全委員会をつくったにしても、これがやはり科学技術庁という一つの枠の中に入ってしまっているということ、これは何といいましても諮問機関であるという位置づけになっておりますから、その科学技術庁という枠の中に入ってしまっているということになりますと、そこでやっている業務が正しいかどうかということをチェックしていくのは、やはり公開の原則がきちんと守られていなければこれは民主的なチェックには親しまないのではなかろうかというような感じを私強く持っているわけでございます。先ほど石野委員の方からの御質問にも同趣旨のことがございましたけれども、きちんと安全性のチェックをやっていますと幾ら言っても、これは果たして国民を納得させることができるだろうか、議員であるわれわれを納得させることができるであろうかといいますと、これは私としてはちょっと首をかしげざるを得ないような感じがしますので、先生はもう十分御研究なされ、お考えになったと思うのですが、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/70
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071・有澤廣已
○有澤参考人 公開の原則、これは大変重要な問題でございます。ただ、先ほどどなたかのお話にもありましたように、日本が外国から技術を入れておりまして、いわゆる商業機密の分野がかなりあるということは十分御理解願わなければならぬと思います。しかし、国の関係する問題につきましては、これは公開の原則を貫くべきものだと私も考えております。ただしかし、言葉ではそうは言えますけれども、どういうふうな形で資料をどういうふうに見せるか、見せる場所はどうするかとか、いろいろな問題があると思いますが、原則はそうだと私は思います。そこで、原子力安全委員会ができますと、安全に関する問題につきましては、私は原子力委員会が公開の原則にのっとって行動する、またせざるを得ないじゃないか、こういうふうに考えております。公聴会につきましても、原子力安全委員会が主催になった公聴会も行われることになっております。それからまた安全基準につきましても、それぞれの問題、事項につきまして基準を設定しまして、これこれの基準で行う、またどういう理由によってそういう基準を設定したかというような理由づけも十分公開されると思います。だから、一等むずかしい点は商業機密の問題じゃないかと私は思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/71
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072・日野市朗
○日野委員 有澤先生、日本の役所というのは非常にマル秘が好きなんですね。秘密事項が非常に好きで、どんな書類でもマル秘というスタンプがほんと押してあるというのが実情でございます。きょう私、先生方の御意見が終わってから、一体どの程度のマル秘があるのか、これは科学技術庁あたりに聞いてみたいと思っているのですが、マル秘の壁というのは非常に厚くて、また国家公務員法百十条の規定がございまして、容易なことでは突破できない。裁判所あたりでも、資料の取り寄せなんかかけても、場合によっては拒否されることがある。
こういう実情で、公開の原則というものをきちっと守らせるということは非常に重要なことだと思いますし、その点についても、先生先ほども御指摘でございますが、原子力安全委員会に人を得るということが非常に大事なことだと思います。ただ、日本は現在資源不足、エネルギー不足、これはもう私たちも決して軽視するわけではありませんが、その大合唱の中で開発とチェックの二つをきちんと使い分けて、そして安全性チェックを厳密にやっていくという人を得るということが可能であるというふうに先生はお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/72
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073・有澤廣已
○有澤参考人 人の問題は大変むずかしいということは私も重々承知しております。日本でそういう人物を求め得られるかどうかということですが、それは私は求め得られると思いますよ。日本の科学技術庁を私は尊敬しておりますし、技術水準も相当高くなってきておりますから、それは求め得られると思います。技術、知識の水準が高いというだけではそういう人物に必ずしも適当でない。やはり科学技術の水準が十分高くて、しかも信念を持っている人でなければならぬ、こういうふうに思うのです。そういう人が全然いないと断定することはできない。そういう人は私は十分いると期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/73
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074・日野市朗
○日野委員 ちょっと言葉足らずで済みませんでした。求め得られるかどうかという問題は、そういう人物がいるかどうかという問題と同時に、現在の政府がそういう人がいたらそういう人を任命するであろうかという問題なんですね。そういう人の人選は国会の承認事項だと言いましても、御承知のとおり国会の内部での力関係というのは与党が圧倒的にとまでは言いませんけれども、多いわけですね。こういう状況の中で、そういう人物がいてもそういう人を政府がノミネートするかどうか、そういう危惧を私たち非常に強く持つので、先生方のいろいろ考え抜かれた御苦労はわかるのですが、そこいらのポイントについてどのようにお考えになったのかを伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/74
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075・有澤廣已
○有澤参考人 その委員にそういう人物を任命するかどうかという一つの問題ですが、確かに政府は政府なりの考え方があるかもしれません。しかしそれは、さっき申しましたように国会で承認を得ることですから、多少ともそういう危惧の念のある人物について国会が承認を与えるということ自体がおかしいと私は思うのです。だから、国会から見ましてもまあまあこの人なら適当だろうと思う人に賛成をしていただきたい、こういうふうに考えます。われわれも民間におきましていろいろ意見は述べますけれども、それを本当に採用してくれるかどうか、これは最終的には政府の問題です。しかし政府におきましても、いま申し上げましたような機能を持っておる原子力委員会なり安全委員会だとすれば、やはりいいかげんな人選をできないのじゃないかと私は思うのです。それは実際やってみなければわかりませんが、私はその意味で期待をしているわけでございます。
それからもう一つは、原子力委員会なり安全委員会なりが科技庁に属しているというふうにお考えになっていらっしゃったように思いますけれども、私はそうでないと思います。事務局は確かにいま科技庁にございます。原子力局なり安全局なりありますけれども、それは事務局であって、原子力委員会なり安全委員会は別個独立の機関であると私は思います。
それともう一つは、行政委員会なりあるいは役所になりますと、これは私は、科学技術の知識も高く、人物においても識見においても十分なそういうりっぱな人というのは、なかなか役人にはなってくれない、かえってそういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/75
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076・日野市朗
○日野委員 われわれもできるだけこの安全委員会を科技庁から独立したものにさせたいと思いまして三条委員会にしろということを一生懸命言ってきたのでありますが、とうとう政府の入れるところとはならないのであります。
そこで、われわれが全体を考えてみて、まず政府の態度、それから研究者——と言うと研究者の方々から怒られるかもしれません。それから実用炉を使う人たち、業界、そういったところを見ても、何といっても開発優先に流れてしまっている姿勢があるように思えてならないのであります。そして、開発優先に流れる姿勢というのは勢い公開の原則も押しつぶしていくであろうし、安全に対する配慮というものも押しつぶしていくようになるだろうと思いますし、現実に私はそうだと思うのです。そういう安全性をまず第一に考えるというモラルが現在の日本の中に定着していかない限り、原子力の開発を進めていくということは、開発と規制は車の両輪のようなものでございますから、非常に危険だと思うのです。先生、いままでごらんになって、こういったモラルが日本に定着しつつある、また、これから定着していくという見通しをお持ちになれるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/76
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077・有澤廣已
○有澤参考人 お話のありましたように、開発と安全確保、これは全く両立しなければならない問題である。開発が先走って安全をおろそかにするというようなことは許されないと思います。そういうふうな一つのモラルが定着しているかどうかということになりますと、私はだんだん定着しつつあると思います。これはいわゆる地元の住民パワーというふうな問題に触発されてという面もありますけれども、もうその問題を無視して権力的に抑えつけるというようなことはできないと思います。むしろ結局地元の問題につきましては地元住民と十分対話をする、それも性急に対話をするだけではだめで、十分時間をかけて対話を進めるというふうな態度にだんだんなってきておる、ということはだんだん安全重視というモラルが固まってきつつあるというふうに私は思います。
それで、よけいな話かもしれませんが、私の友人に心理学者がおりまして、日本の核アレルギーというものを解消させるにはどうしたらいいかという質問に対して、その心理学者は、それは力で抑えつけるのはむろんいけない、あるいは論理的に説得するのもいけないんだ、やはり対話を常に行って、漸次ほぐしていくよりほかにアレルギー解消の道はないのだ、こういう説明を聞きました。アレルギーばかりじゃなくて、地元住民の心理、心情を原子力開発の方に動かしていくためにはやはり対話が必要だ、対話を通じてのみだと私は考えております。それが結局いまあなたのおっしゃった、開発を急ぐ余り安全を軽視していくというふうな姿勢はいけないんだ、それと逆に、安全を重視したその上で開発を進めていかなければならないという考え方が漸次固まりつつあるということの一つのあらわれじゃないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/77
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078・日野市朗
○日野委員 どうもこの点については、特に原子力発電所を推進をしようとする者とそれに反対をする者との間の抜き差しならない不信感というのは、いま先生おっしゃった点なんかにもあろうと思うのですが、国なんかの態度を見ておりますと、成田空港と原発反対運動の反対運動を一緒くたにいたしまして、成田空港反対の運動を規制する立法を考える際に、それを原発反対運動にまで範囲を広げたらどうだというような議論まで本当になされるような現状でありますから、私はどうも先生ほど楽観的にはちょっとなれないのでありますが、その点はさておくといたしまして、原子力行政については非常に強力な発言権をお持ちの有澤先生でございますから、ひとつそこらはこれからいろいろ御配慮をいただきたいと思います。
最後に、これは小野先生にちょっと聞いておきたいと思いますが、先生午前中の意見の開陳の中で、まだ原子炉というのは研究段階だということをおっしゃいました。この炉というものは研究段階だという認識を踏まえますと、今度の安全委員会というものを置いたことによってどういう結果になるかということを、ひとつ見通しをも含めてお話をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/78
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079・小野周
○小野参考人 安全委員会を置いたらどうなるかということだけではちょっとお答えができないと思うのですが、今回の法律改正にあるままの安全委員会を置きますと、むしろ非常に形だけの二分割であって、それで一方では何か三つの主務大臣に分割をしているということはありますが、どうもこういうことを見ていますと、むしろルーチン化したものはたとえば通産省それから運輸省ということでありましょうけれども、実際は先ほど私が申しましたように全くルーチン化していない、発電用原子炉につきましても、現在、予測しなかったかなり深刻なトラブルが起こっているという実情、それから船の場合には実際どうなるか、一体そういうものが本当にできるか、あるいはどうであるかということさえわかっていない。そういうときに、そういう形に分割をしましたような形でやっていくということについては、私は非常に疑問を持っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/79
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080・日野市朗
○日野委員 川上先生に最後に伺いたいと思います。
これからの改善を要する事項としてスタッフの点、それから官僚制の門戸開放ということをおっしゃいました。非常に私もこれは興味のあることだとも思うのですが、現在の日本の状況、一般の実務者に対して官僚制の門戸が開かれているのかどうか、その点について御承知のことがありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/80
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081・川上幸一
○川上参考人 余り官僚制度のことを勉強しているわけではありませんけれども、原子力の問題の経験から言いますと、スタッフの中にそういう民間からの人を入れるということは前から問題になっていることですけれども、それがなかなかうまくいかないので、原子力委員会の場合も一応事務局のような形がとられましたけれども、これはやはりいろいろなところからの出向者のような形で入っている。必ずしも本当に必要とする人が出ているかどうかというところに問題が残っておりまして、日本の官僚制度は、やはり一挙にアメリカのような非常に民間と交流するような形の制度にすることは非常にむずかしいとは思いますけれども、原子力のような問題をきっかけにして、そういう必要性が出てきたところでそういうことを始めていくべきではないか。科学技術というものが政治あるいは行政の中で大きなウエートを占めるようになってきておりますから、そういう必要性は、必ずしも原子力に限らず今後いろいろ出てくるだろうと思いますし、そういう意味で、何か民間の者が入れるような形をつくっていくべきではないかという気がいたします。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/81
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082・日野市朗
○日野委員 結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/82
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083・小沢一郎
○小沢(一)委員長代理 次に、貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/83
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084・貝沼次郎
○貝沼委員 貴重な御意見をありがとうございます。
まず有澤参考人と小野参考人にお尋ねしたいと思いますが、私どもこうして委員会が開かれるごとに安全性の問題を議論しているわけであります。議論すればするほど、この安全性というものは何をもって判断すべきかということが非常にむずかしくなってまいりました。そこで端的にお伺いしたいと思いますが、安全であるかないかという判断、これはどういうことを基準にして判断すべきなんでしょうか、この点についてのお考えがありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/84
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085・有澤廣已
○有澤参考人 安全についての判断でございますが、私は自然科学者でないのですから、技術的にこの判断をお話しすることはちょっとできません。ですから、工学的に申しましても事故が起こらないように、それから放射線につきましても環境にも人体にも影響がないようなそういう状態をつくり出すということ、それが安全を確保するということだと私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/85
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086・小野周
○小野参考人 何が基準かということは、ちょっとまともにお答えするのは非常にむずかしい問題でございますけれども、私特に申したいのは、原子炉についての安全性と他の問題の安全性とは非常に違った面がある。それは原子炉は御存じのように非常に多量の放射性物質を蓄積していて、一たん事故が起こると通常の事故とはけたが違う事故が起こることがありますから、それで特に安全の問題が他の産業の場合と非常に違っていることで、その事故の規模が非常に大きい、それが実際人々にどういう災害を与える可能性があるかというのが、まさに私は安全問題の一つの問題だと思う。
それからもう一つは、微量の放射線の人体に対する影響というものについて、これがまだ完全にわかっていない。わかっていない危険の可能性のあるものについては、やはり将来を考えれば安全の側に立たざるを得ないということがあると思います。これがまず一つの問題。
もう一つは、安全問題で非常に大きいのは、これは最終的には現在の核燃料サイクルの一番最初の段階というものが、実際にどうすればそれが解決できるかということが、まだ結論が出ていないと私は思います。実際にその結論が出ていないと思いますのは、先日私たちの学会で廃棄物のシンポジウムをやりましたけれども、最終的に高レベルの廃棄物をどういうふうに処理するかということについては、これは専門の方がお話しになりましたけれども、外国ではこういう研究をしているという話があっても、まだ研究の段階である。その問題は、これは安全性という立場から言いますと、子孫に対する安全性の問題がありますから、これもやはり基準といいますか、考えるべき問題としては非常に重要な問題であるというふうに考えます。
ほかにもございますけれども、三つだけ、いまの貝沼先生の御質問にまともに答えるのが非常にむずかしいわけでございますけれども、私の考えを申させていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/86
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087・貝沼次郎
○貝沼委員 質問の仕方がちょっとまずかったのでございますが、有澤先生に重ねてお伺いいたしますけれども、要するにパブリックアクセプタンスをつくっていくというのが非常に大事なんではないか。ところが、これができなくて実は困っておる。そこで、今回の行政体制の改革とかこういった問題が出てきて、手続上も国民の目から見てあれだけのことをやれば安全ではないかというようなこともあるんではないかというようなことを考えまして、このパブリックアクセプタンスと行政体制の関係、それからパブリックアクセプタンスをこれからつくっていく上にこういうことはどうしても必要なんだという何かあれば、その辺の御意見を伺いたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/87
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088・有澤廣已
○有澤参考人 パブリックアクセプタンスを得るということは、原子力開発にとって大変重要なことだということは言うまでもありません。それを得ていく上においてどういうことをすべきかということでございますが、一つは安全に対する基準をきちんと決めるということ、そしてその基準が実際の事業において守られているということが一つだと思います。それからこの研究開発によりまして、放射線の影響は、先ほどどなたかのお話にありましたように閾値、これ以下は放射線の障害が全然ないということが論証される一つの限界が決められるような、これは一例でございますけれども、そういう方面の研究をどんどん進めていきまして、なるべく早く閾値を決めるということかと思います。そういう場合に、それが決まらぬ前には大きなアローアンスをもってそれに処していく、これは従来のやり方でございます。
〔小沢(一)委員長代理退席、委員長着席〕
それからもう一つは、やはり先ほどちょっと申し上げましたように、住民との対話をすることによって、原子力の安全性というものがどういうものであるか、このことを十分御理解を願えるような場をつくって、その対話を進めていくというようなこと。
そればかりじゃないと思いますが、もう一つは、根本においては、皆さん方の心配するような問題については自分たちがちゃんと責任を持って考えているんだ、そういう原子力安全委員会ができて、それが活動する、全幅的な活動を始めるということが一等最初の前提だと私は思います。その上で、その安全委員会がいま申し上げましたようなことを進めていくということによってアクセプタンスが得られるのじゃないか、こういうふうに考えております。
要するに、国民の信頼を得なければアクセプタンスは得られませんから、信頼を得ることに重点を置く。その信頼を得るためにはどういうふうな措置を講じていくかということについては多々あろうと思いますけれども、いま二、三の例を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/88
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089・貝沼次郎
○貝沼委員 それから、そういう信頼を得るための一つの手続といたしまして、今度のこの基本法の改正により、公開ヒヤリングというものが出てきております。
そこで、この公開ヒヤリングのあり方というものが具体的にはまだわからないわけでありますが、どういうふうにあるべきなのかという御意見がありましたら、有澤参考人と川上参考人と小野参考人からおのおの聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/89
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090・有澤廣已
○有澤参考人 公開ヒヤリングの必要なことにつきましては行政懇におきましても相当議論をしまして、意見書の中にも若干それを記載してございます。いまの行政懇で取り上げました問題につきましては、最初は、電調審に原子力発電所の審議がかかる前に、原子炉設置者を説明者として、通産省か主宰して——ほかの庁、環境庁だとか、そういう庁と一緒に協力して、通産省が主宰して、その説明の任に当たるのは炉の設置者が当たるということでございます。それから第二には、安全委員会が、いよいよ通産省の方から安全審査報告が回ってきましたときには、それをレビューする、チェックする前に、公開ヒヤリングといいますか公聴会を開きまして、そのときには原子力安全委員会が主宰者になりまして、通産省が説明者になってその説明に当たる。そういう形式が公聴会としてはよかろうということでございます。
ただ、それをもっと制度化しなければならぬじゃないかという議論がございましたが、制度化するにつきましてはいろいろのほかの問題をもあわせて考えなければならないから、さしあたっては原子力発電所の設置につきましてはすべてのケースについて以上二つの公聴会を開くことによりまして、漸次公聴会が熟してきたときに制度化すべきである、こういう考え方でございます。私たちはそういう形で漸進的に公聴会制度をつくっていくべきである、こういうふうな考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/90
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091・川上幸一
○川上参考人 公開ヒヤリングというのは当然やるべきものだと考えますけれども、問題はどういう公開ヒヤリングをやるか、あるいは行政上公開ヒヤリングというのはどういう性格のものなのかということが問題だろうと思います。これは発電所とか工場が設置されるときに住民の生活が当然影響を受けるわけでありまして、そういう住民の利害というのは、これは一人一人の住民の問題だろうと思います。一人一人違うと言ってもいいかと思います。多数決によってどちらかに決められるというような問題ではないわけでありまして、もし多数決で決められるのであれば、その地方議会なり何なりがその誘致の決議をするとかあるいは反対をするという決議をすれば問題が済むわけですけれども、しかし、住民の一人一人の利害というものはそういう形で、そういう決議のようなもので決めるわけにはいかない性質のものだろうと思います。そのためにこの公開ヒヤリングが必要なんだということが基本ではないかと思います。
したがいまして、その公開ヒヤリングを開く場合の最低の条件というのが幾つか出てくると思いますけれども、一つは、そういう利害関係のある住民がだれでもそのヒヤリングに出て陳述ができるということが原則だと思います。もちろん、同じ意見の人について事務上の整理をするというようなことはあってもいい、つまりだれかに代表させるというようなことはあってもいいと思いますけれども、原則としてはやはりだれでもそこで陳述ができる。それからそれに対して今度は、許認可を行う側の政府の側が十分な資料なりあるいは場合によってはその安全審査の結果というようなものを提示しまして、それに対して応答するということが当然必要だろうと思います。これは外国ではクロスエグザミネーションというような言葉を使っておりますけれども、そういうやりとりといいますか、討論が公開の場で行われることが必要だろうと思います。まず、そういう公開の場での議論というものがありませんと、問題が少しも前進しないといいますか、つまり日本で行われている論争というのは、新しい議論が次から次へとふえていくような状況ですけれども、古くからの議論というものも依然として残っている。これは片づいた議論だというようなものがどこにもないということで、議論がたまってくるばかりだという感じが非常にするわけです。その一つの原因は、やはり公開の場で討論の蓄積が行われていないということではないかと思います。
それから最後に、公開ヒヤリングをする場合に、何か採決のようなことをするのか、あるいは結論のようなものを出すのか出さないのかという問題が一つあるかと思いますが、これは最終的には、責任を負っているところ、安全審査会なりあるいは許認可の責任を負っているところが判断をすることになると思いますけれども、今回幸いにも、安全委員会というものがもしできるとすれば、先ほど有澤参考人がおっしゃったように、安全委員会がこういう公開ヒヤリングを主宰するという形は非常に適当な形ではないかという気がします。つまり、このヒヤリングというのは、議長的なものがどうしても必要なんですけれども、それは従来のように原子力委員がそういうところに座るということは問題があるわけでありまして、安全委員がそういう立場に立てば、許認可権を持っている省庁側とそれから住民の利害関係者との両方の意見を聞くという形が一応とれるわけであります。安全委員会が何かそれに対して所見を示すとか裁定を下すということも可能なわけでありまして、そういう点で、そういう公開ヒヤリングが開かれる、そういう共通の土俵で議論が行われていく、そういう体制を早くつくっていくことが問題解決の第一歩じゃないかというふうに思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/91
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092・小野周
○小野参考人 ただいまの公開ヒヤリングでございますが、いま川上参考人がおっしゃったように、外国では専門家の間の討論を行うという形のものが行われておりますが、日本ではいままで公聴会といいますと、利害関係者なり、それから意見のある人が意見の述べっ放しになりまして、それについて徳島の公聴会のときに、後で文書で意見が出されたと思いますが、少なくとも議論をしないものですから、問題の決着は一切つかない、お互いに意見を述べ合ったままになっているというので、公聴会というのは全くのセレモニーになってしまって実効を上げていないと私は思います。ですから、やはり日本で行われるときも、これは当然最初に申すべきであったのですが、公開ヒヤリングというのは、もちろん安全委員会ができましたら安全委員会が主宰されるのはされるかもしれませんが、住民の立場に立って公開ヒヤリングを行われるべきだ、こういう原則だと思います。
それから、ここで公開の問題が入ってくるわけでございますが、先ほどのいろいろな議論があるといたしましても、その場合にやはり必要な資料は公開してもらう。必要な資料が、全部じゃございませんが、かなり大事なものが商業機密という名前のもとで明らかにされないまま議論されていると、結局どこかにこれは片づいたという問題を出そうと思っても、壁に行き詰まってしまうということで、やはり実を上げないのではないかと思います。
私は、先ほど久米参考人が言われましたいろいろな外国の例もありますので、日本で行われても初めは相当大変であろうと思うのですが、大変でもやはり一番まともな方法でやっていって、それを定着させていくというのが方法としてはよろしいのではないか。初めから、議論をしていると長くなって半年かかるからやめようというふうな議論はとるべきではないのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/92
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093・貝沼次郎
○貝沼委員 わかりました。
もう一点お尋ねしたいのでありますが、いまも公開の原則とのかかわり合いでお話がございましたが、公開の原則、それから企業機密の問題、それに今度は国益という問題、たとえば、例を出して適当かどうか知りませんが、今度の再処理の問題など、アメリカあたりはかなり関心を持っていたようでありましたので、国益を踏まえた対外的な秘密、こういったことも考え合わせた場合に、この企業秘密ということと公開の原則はどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。これは有澤参考人と川上参考人にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/93
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094・有澤廣已
○有澤参考人 企業秘密でございますが、安全審査の場合には全然企業秘密はない、全部審査されていますが、ただ公開ということになりますと、導入技術につきましては、どうしても導入の親元の方が機密を要求します。ですから、導入した側から言いますと、それを公開できないというおそれがあると思います。それから国益上秘密だということにつきましては、私はむしろそれは時間の問題で、いま議論をしているときに全部公開しろと言われても、国益の上から言って公表するのは不利であるからそれは待ってほしいということはあると思いますが、そうでない限りは、もう国益の問題は機密に属しないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/94
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095・川上幸一
○川上参考人 企業機密の問題というのは、私も技術者ではございませんので、余り具体的なお話はできないのですけれども、公開の原則ということは、公開の原則がつくられたときの状況というのは、公開をしないと軍事利用につながる、そういう心配があった時代でございまして、そういう観点から強く公開の原則ということが言われておりました。
それに比べますと、最近言われている公開の原則の議論というのは、少しその内容が違ってきているだろうと思います。違ってきているから公開の原則とは違うのだということではございませんで、もちろん公開の原則ということでいいのですけれども、内容的には違ってきている。これは午前中に服部参考人がちょっと言われたことですけれども、アメリカで起きている問題と実は同じような問題だろうと思います。つまり、アメリカの場合は、情報の公開法というもので、安全審査資料とかそういうものの公開が進められているわけでありますが、この情報の公開法というのはなぜつくられたかといいますと、これは原子力だけの問題じゃなくて、もっと広範な問題でありまして、つまり政府とか行政機関というものは、どうしても情報を自分の机の中にしまい込んでなかなか外へ出さない、そういう傾向がある。そうしますと、アメリカの場合は、たまたまウォーターゲート事件のような事件が起きる、国民の知らない間にそういうことが行われては困る、政府文書というのは本来国民に公開すべきものだ、そういう立場からこういう法律ができた。その法律の条項を使って、安全性に関する情報の公開が行われているわけです。これは一つの例ですけれども、ちょうどアメリカの安全審査会に当たるものが、従来の議事録といいますか、あるいは会議の資料、そういうものを全部公開しまして、環境団体の弁護士に渡しております。これは全体で四万ページにもわたる資料ですけれども、そのときに言われたことは、国防関係のこととそれから特許権に関することは出さなかったけれども、それは非常にわずかであるということが言われておりまして、そういう例から見ましても、本当の意味の商業機密というものはそれほどあるはずがないだろうという印象を受けるわけです。
日本の場合も、実際にいま安全性をめぐって問題になっているのは、行政関係のそういう資料というものがどうもなかなか公開されないという官庁制度の問題を実は指摘しているのでありまして、そういう点では、もちろんこれはもっと公開をする方向に進まないと、国民の側から言いますと、やはりその安全性についていろいろ問題がある、その真相を知りたいということは当然の要求でありまして、そういうものを出していくべきであるというふうに考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/95
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096・貝沼次郎
○貝沼委員 それから人材の育成について有澤参考人と小野参考人にお尋ねしたいと思いますが、先ほどからいろいろなお話がありまして、安全委員会のスタッフの充実というような問題が非常に大きな問題になってきております。ところが実際問題として、技術の方は現場の方が相当進んでいく可能性もありますし、むしろ官庁におる方が、現場ではありませんのでその点非常に苦しい面があるんじゃないか。ところが実際に、安全委員会としては常に高度な知識なりというものを持っていなければならないというところから、このスタッフの人材の育成について国として何かをしなければならないのか、それとも大学なら大学の方にお任せして、そしてりっぱな方々に来ていただくということがいいのか、この辺のところのお考えはどうしたらいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/96
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097・有澤廣已
○有澤参考人 人材につきましてはだんだんにこれを養成していかなければならぬということでございまして、いま私は、たとえば安全委員会のもとにあるスタッフ、それは最初はとにかく、ある程度のスタッフをまとめるとすれば、研究所にいらっしゃる方とか、あるいは企業にいらっしゃる方でも、そういう特別の方はそこへ来ていただいてその科学的知識を十分に発揮してもらわなければならぬと思いますが、同時にそういう方々も広く世界に、進んだ国に行って十分科学知識なりあるいは技術を勉強されるというふうなことも必要だと思います。ですから要するに、これは初めからでき合いの人ばかり集めてみて、それでうまくいくというふうなものじゃなくて、やはり相当そこで育成をしていかなくちゃならないと思います。そのためにはそこの場所にスタッフとして相当長い、十年とか何年スタッフとして経験なり知識の集積ができるような地位でなければならないというふうにも考えます。地位と人とが密着する形で育成が行われることを希望しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/97
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098・小野周
○小野参考人 私は先ほど、安全委員会ができる場合に、そのスタッフがいないとこれは実際機能しないと申したのですが、やはりスタッフの育成というのは必ずしも一朝一夕にはできない問題もあると私は思います。私の考えでは、原子炉の専門家ということでなくても、現在、たとえばある化学とか物理とか工学の専門家を次第に育成していく、それで研究者の層を厚くしていくということはこれは非常に重要なことではないかと思います。ですから一朝一夕にはいかないわけですが、たとえば安全委員会のようなものを仮につくるとすれば、そういう人たちをある程度集めて、そしてだんだんに育成をしていくという姿勢をいまからとっておきませんと、これはいつまでたってもできないんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/98
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099・貝沼次郎
○貝沼委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/99
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100・岡本富夫
○岡本委員長 次に、瀬崎博義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/100
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101・瀬崎博義
○瀬崎委員 今度の原子力基本法等改正案が政府から出されて、私は非常に戸惑った印象を受けたのですが、それは、そもそも原子力委員会が開発と規制に分離されて、新しく安全委員会がつくられるであろう、こういう法案が出るであろう、これは私の判断だけではなしに、当時の前田科学技術庁長官もそういう趣旨の発言もしておったわけですね。こういう点のいきさつについて、この委員会でもこの一年政府側にそういう結論に達した経緯を尋ねますと、二言目には原子力行政懇談会の結論に従ったまでである、これは議事録を見ていただくとおわかりのとおり、すべてがそこに帰着するわけであります。そうなりますとわれわれとしては、ではその行政懇の性格は一体どういうものだったのか、どういう内容の審議が行われたのか、これがわからなければ国会審議にもならないわけですね。しかしこれは何ですか、申し合わせによって秘密なんだ、先ほどから問題になっておりますが、こういうものも秘密なんだ、こうなっているんですね。ついにその議事録はわれわれの目には触れなかったのであります。
そこで有澤先生にお伺いをしたいのでありますが、この行政懇談会の性格は、原子力行政改革の国民的合意を求める機関として、お呼びになった参考人の方々やあるいは懇談会を構成しているメンバーの方々の共通の意見で結論に到達をされたものなのか、それともそういう意見は聞くことは聞いたけれども、いま出されている結論はあくまで懇談会の、あるいは会長さんの独自の判断で出されたものなのか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/101
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102・有澤廣已
○有澤参考人 行政懇の運営でございますが、むろんこれは各方面の参考人の御意見をまず聞いて、その上で各人がそれぞれ意見を闘わして、だから大変長い、何十回もかかって結局総員が賛成するという形で取りまとめたものでございまして、ですから時には有澤試案なんというものも出ましたけれども、しかしそれも一蹴されまして、やはり大ぜいの議論の中でおのずから共通の意見が取りまとめられた形になったものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/102
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103・瀬崎博義
○瀬崎委員 その場合、私どもは改めてこの原子力行政改革の出発点は何であったかという命題を考えるわけなんですが、これは分析化学研究所のデータ捏造事件があったとか、あるいは原子力発電所や再処理工場で相次いで事故が起こったとかということの頂点に原子力船「むつ」の放射線漏れ事故が起こってまいりまして、そのことから「むつ」の正しい処理、処分はいかにあるべきかという問題と、しかしああいう「むつ」のような事件を引き起こした政府の原子力行政にも問題はなかったかということが問われ、その原子力行政の少なくも原子炉の安全審査体制だけは急いで改革する必要があるということから出発したのではないかと思うのですね。
私どもが考えている大方の共通意見というのは、やはり開発と規制は分離すべきであるということが一つと、いま一つは、その規制、安全審査を受け持つ機関については、これは基本設計だけでなしに原子炉の全般にわたって規制を担当すべきではないか、こういうことではなかったかと思うのですが、この点は有澤先生もお認めになっていらっしゃるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/103
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104・有澤廣已
○有澤参考人 先ほどもお話し申しましたように、基本設計ばかりではなく、詳細設計、工事着工といいますか、工事、それからその運転、それぞれの段階において安全審査委員会はこれを監視するわけですね。そういうようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/104
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105・瀬崎博義
○瀬崎委員 ところが、今度の法改正の結果、通産省あたりが予定している新しい体制のアウトラインが出てまいりましたが、従来原子力委員会と科技庁ラインで受け持ってきた原子炉設置の基本設計の実質審査も通産省が受け持つことになりました、これに対する体制もとった、こういうわけですね。もともと通産省というのは原子力発電所の推進機関といいましょうか、開発機関でありますが、こういうところが実質的な基本設計の安全審査もやるというのですね。しかもそこの大臣に原子炉設置の許認可権も総理大臣から移すというんですね。これは全く、いまの開発と規制の分離という命題から出発しながら、最悪の、開発官庁にその規制権もゆだねて一体にしてしまう、ここが私どもにとっては非常に奇異に写るわけですね。
それからもう一つは、残念ながら行政懇の議事録が出されませんので、どうしてそういう結論に到達したのか、いま先生の試案が一蹴されたようなお話でありますが、その経過がわからない。だれが一蹴したのか、どういう力がそういう結論に——といいますのも、私どもか仄聞いたしておりますのに、たとえば五十年の八月の段階では原子力行政懇談会における審議の状況についてという中間報告みたいなものが出されておって、その段階でも各委員の方々の御発言要旨もまとめられているようでありますし、主な参考人の御意見も出ているようでありますが、この段階では、通産省に実質安全審査をやらせるとか、許認可権を通産や運輸大臣に付与するというふうな話は全然出ていないということを聞いているわけですね。果たしてそうであったのかどうかということと、では、半ばまでそういう論議で来ておるものが、終末で、少なくも許認可権を通産、運輸へ移すような話になった、そこのきっかけがどういうところから出たのか、こういうことをお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/105
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106・有澤廣已
○有澤参考人 いま御指摘のございました、通産省に許認可権を与える、与えないというような問題は、いま議論としましては、安全委員会を八条機関にそのまましておくか、それとも三条機関にすべきかという問題と絡んできていたわけです。ですから、三条機関にしろ、しなければならないという主張者は、かなり根強くそれを主張したことは確かでございます。しかし、どうもほかの委員の方々の方では、それではかえって権限主義者といいますか、権限にのみ依存し過ぎていて、本当に国民の負託にこたえるゆえんにならないではないか。第一、権限を規定するという場合にも、非常にたくさん複雑な問題があることも確かです。そのときに、権限の中へ入らないで、漏れている点があったりしたら、安全の問題として大きな支障を来すおそれがある。そういう議論がありまして、実際、三条機関でやれという人も、三条機関までは言いますけれども、どういう法律体系にするんだということになると、具体的な案はないという形でございます。それですから、三条機関にならないとするならば、行政責任を一体どこでとるかという問題になってきますと、それは各省庁が行政責任をとるべきである。安全委員会は、これは八条機関で、言ってみれば一つの諮問機関ですから、それ自身、権限もないのに行政責任をとるというわけにはいかないわけです。それで、どうしても行政責任の一貫化をするとすれば、各省庁でそれぞれの分野についての責任を一身に引き受けてやるべきである。通産省で原子力発電所あるいは発電の炉について責任をとるためには、その安全審査から始め、運転を至るまでの間における問題は、責任は全部通産省が一貫して背負うべきである、こういう議論になってくるのは当然だと思います。そういう形で、いま時期を御指摘になられましたが、それが五十年の八月ごろでしたか、もっと後でございましたか、ちょっといま記憶にないのですけれども、とにかくその時分には行政懇が開かれて、参考人の意見の陳述のヒヤリングが終わった後、いよいよ審議に入ったときの状況は、そういうふうにかなり混沌とした議論であったということは確かでございます。ただ、速記録として本当にきちんとした速記録はとってないと思いますが、要約はできておると思います。しかし、それがだれがどういう発言をしたかというようなことも載っておりますので、これは懇談会の問題でございますから、そこでは議事摘要といったものは公開をしないということに決めたわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/106
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107・瀬崎博義
○瀬崎委員 先ほども服部先生が強調されましたように、基本法というものは憲法に次ぐ重要な法律であると理解する。したがって、原子力基本法のもとに総理大臣が原子炉の設置の許認可権を握って、この許認可権行使に当たっての実質的な前提になる基本設計の安全審査は、従来でも八条機関の原子力委員会がやってきたわけですね。こういう基本法のもとに行われている許認可体制を変えるということは、私は重大事だと思うのです。こういう点での認識が行政懇の中で貫かれておったのかどうかということが一つ。
それからもう一つは、いま三条委員会、八条委員会の関係から許認可権を通産大臣に移したように言われますけれども、現在、総理大臣のもとに許認可権を置いてある段階で、そして八条委員会の原子力委員会が実質安全審査をやっているわけですから、そういう点では何も許認可権を通産に移さなくったって、原子力委員会の規制と開発の機能を分離し、新しくできる安全委員会にこの基本設計についての安全審査はもちろんのこと、詳細設計以降のものもやれるようにすれば、これこそまさに国民が期待している安全審査と規制の一貫化ということが実現されるんじゃなかったんですか。それではぐあいの悪かった理由があるとすれば、それをお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/107
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108・有澤廣已
○有澤参考人 その点、簡単にお答えいたしますと、要するに八条機関は行政責任を負えない、こういうことでございます。
それで、いままでの許認可につきましては、総理大臣がこれを行っていたということは確かでございますが、そのことで「むつ」の問題が起こります。あるいはほかの原子炉における故障の問題が起こってきます。そういう場合に、その責任を問われたときに総理大臣がそれを負うというわけにはまいりません。それは事実、その場合には通産大臣が所管しているのですから。そこで、行政の責任の不明化が生じてくる。「むつ」の問題でいきますと、総理大臣といっても科学技術庁長官でございますが、科学技術庁長官と運輸省との間に責任のなすり合い、どっちも責任をとろうとしない、そういうふうな責任の不明化が生じてくるわけです。だから、たとえば発電所の原子炉にしましても、基本設計におきましては通産省がやる、科学技術庁がやる、あるいは原子力委員会がやる、しかし、それ以降の点は通産大臣の方の所管でやっていったわけです。そこでもし事故が起こったときには、基本設計の問題であるか、詳細設計以下の段階の問題であるか、その問題がはっきりしない。したがって、責任もどっちに帰属するかはっきりしないというふうな問題が起こり得るわけです。そういう状態に置いておいたならば「むつ」の問題が再発するおそれがあるんじゃないか、こういうことで行政の責任を一貫化するような形の体制を整えるべきである、こういうふうに相なったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/108
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109・瀬崎博義
○瀬崎委員 こう言っては大変失礼なんでありますが、有澤先生から、内閣総理大臣と通産や運輸大臣の権限との間に対立関係が起こるという名論をお聞きしたわけでありますが、少なくも内閣総理大臣が許可したものについて起こった事故等について、これは内閣総理大臣の責任でないと言えるはずがないと思うのです。だから、その点では、むしろ原子炉設置の許認可権が内閣総理大臣に与えられていること自体の方が通産や運輸大臣に移譲されるよりはまだしも無難である、こういうように考えるのが一点と、もともと通産とか運輸大臣というのは開発を担っている省庁であって、決して規制を担当している省庁ではない。こういうところへ規制の権限を与えて、これで現在よりも進んだなんという、これは国民の理解にもなれない問題ではないか、こういう点を私どもは非常に心配をするわけですよ。現に、実際問題としてこういうことが起こってきているんですね。現在、この法改正に伴う新しい体制について通産が答えた点を要約いたしますと、現在、科技庁、原子力委員会ラインで行われております実質安全審査は、科技庁の原子炉規制課と、それから原子力委員会の安全専門審査会及びそれを補佐する専門委員から成り立っているわけです。今度の許認可権の移行、安全審査の移行に伴いまして、科技庁の原子炉規制課は二十人人が減りまして、そのかわり通産の方の新設される原子力発電第一課では十七人ふえるんですね。差し引き三人減員になっておるのです。それから、安全専門審査会は法定三十人でありますが、このうち学識経験者二十八人と科技庁は答えておりますが、これに対応する通産省の機関は技術顧問会であると答えているのです。ここでの増員は十七名でありまして、ここでもまた十人以上の減員になっていますね。それから、補佐する専門委員は、政令で百四十人と決められておりますが、科技庁の答弁では、そのうち三十人ぐらいが原子炉の安全審査にかかわっているという話であります。だから、この制度は、現在のところ通産省に予定がないわけですね。そういう意味でまいりますと、この法改正の途端に、実質的な基本設計の安全審査は簡略化され、合理化されるといいましょうか、手薄になる。それから、詳細設計はもともと通産がやったけれども、原子力発電所がふえていくにかかわらず、詳細設計担当十三人はそのまま。それから建設段階、それから定期検査、それから事故調査等のいわゆる電気工作物検査官、これは現在十二人を十三人にふやす、一人だけなんですね。しかし、従来とも本省役人は一年のうち二百日以上出張で必死の思いだということを言っているので、原子力発電所の増加を思えば心寒い状況だと思うのです。こういうふうな事態は、有澤先生がお骨折りになった原子力行政懇談会の結論から見て、正しいことなんですか、それとも間違っていることなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/109
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110・有澤廣已
○有澤参考人 原子力安全委員会の方からまず申しますが、原子力安全委員会におきましては、私どもは、原子力安全委員会の委員のほかにスタッフを充実してもらうようにという要望を出しております。それからその下にというか、それを補佐する意味におきまして、さらに専門委員会を設ける。それは必要に応じてもっと人をふやすということは当然のことだと私は思っております。
それからもう一つは、通産省におきましては、今度は自分で安全審査報告書を作成して、それで責任を持って安全であるというふうに確かめなければいけません。それをやるのにどれぐらいの人が要るかということは、通産省では十分知っているはずだと思います。今度は自分の責任でやらざるを得ないのですから。それを自分で責任を果たせるだけの人材といいますか、専門家を抱えてそれに当たるべきだと思います。いま何人で、今度は何人に減ったというふうなお話がございましたが、それでやれるかやれぬか、私自身はなかなか判断ができませんが、やれるようにひとつ督促をしていただいた方が私はいいと思います。やれなければ、それは責任問題ですから。そして一たび原子炉について事故が起こりますと、もう国内の原子炉がとまるばかりではなくて、国際的に原子炉がとまるおそれがあります。それだけの責任を通産省は帯びておるのです。その責任を果たすのに十分な人を用意しなくてやっていくというのは、それはおかしな話じゃないかと思いますよ。しかし、そこは通産省の意見がどういう意見であるか私は存じませんが、通産省としては、自分の責任で国内、国際的な責任を全うしていくだけの準備、用意を整えなければならない、私はそういうふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/110
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111・瀬崎博義
○瀬崎委員 いまのお話の中で残念に思うのは、やはりこういう法改正を行ったときに、通産省がどういう体制をとるか、通産省の意見はよくわからないがというお話なんですが、そういうことが聞かれていないまま、やはり懇談会の結論に達しているようにお聞き取りした点は非常に遺憾千万だと思うんですね。
これは服部先生にお伺いしたい。
実は、きわめて手回しのよかった通産省とは対照的なのが運輸省だったわけですね。約一週間ほどの間の話なのですが、最初は、今後の法改正に伴う新しい運輸省の安全審査体制としては、現状のままでやっていくんだ、それ以上のことは考えていない、こういう話だった。それじゃ話にならぬじゃないか、法律だけつくって体制なし、こんな不まじめなことじゃ審議には応じられないということになって、この法律の審議が進行しなくなった。そこで出てきましたのが、仮の名前であるけれども、将来実用船という問題が起こってきたら、安全審査官というものをつくりたい、これはいまの検査官制度とは別につくろうという案なのです。しかし、これも将来の話で、現在は実体がない。つまり、ここ数年、実用原子力船などの可能性はないということを明確に謝敷船舶局長は言っていたわけですね。ところが、そんな実体のないものなら法改正する必要はないじゃないか、こうなってきました。そこで、最後に運輸大臣が委員会に出てきて、そうして原子力船安全対策室ですか、こういうものをつくる、こうなった。ところが、もちろんこれは途中から出てきたものですから、予算要求は何にもしていない。全員兼務であるわけですね。実は問題は、二転、三転した運輸省のプランがどうのこうのじゃなくて、本来、運輸省が最初に言っている当分、これは相当長期にわたって実用原子力船などの可能性はない、このことは、私は、科学的には正しいことではないかと思うのです。その点での服部先生の御意見をひとつ伺っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/111
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112・服部学
○服部参考人 運輸省のおっしゃったことは、大変正直におっしゃったことだと私も思います。ということは、実際にいま実用的な原子力船をつくるという計画というのは、恐らく日本の船会社もメーカーもお持ちになっていないと思いますし、そのことは船だけではなくて、実は原発についても同じことが言えると私は思っております。原発そのものがもうすでに実用段階にあるなどという錯覚がありますと、通産に移すとか移さないとかいうことが問題になってくるわけで、先ほども小野先生からの御指摘もありましたように、現在の原子力技術、原発を含めて、いまだに開発研究の段階にあるという認識を持つべきだと思います。現に三〇%だ、四〇%だなんという稼働率のものが実用炉だなんというふうに考えることがおかしいのでありまして、そうしますと、やはり研究開発ということの段階であるという認識に立つならば、将来実用炉ができた場合、それは別といたしまして、現段階では実用炉などというものは存在しないのですから、いままでどおりの体制でおやりになることが最も法律に正直であり、忠実なゆえんではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/112
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113・瀬崎博義
○瀬崎委員 続いて服部先生にお伺いしたいのですが、いまちょっと原子力発電炉の方のお話が出ました。今度の法改正が行われますと、いやおうなしに陸上炉の方も実用炉と研究炉に区分けせなければいかぬわけですね。研究炉になりますと、科学技術庁長官が設置の許認可をする。それから実用炉になりますと、通産大臣が許可をする。これは政令で決めるというわけなのです。そこで、この間、科技庁の方から一定の基準が示されました。一応世界的に実用化されており、かつ、日本でも経済的に運転しているような原子炉が実用炉だ、こういうわけなのです。それで具体的に尋ねたのです。たとえば、いま電源開発が輸入しようと考えているCANDU型の炉は日本で初めてなんですね。これは一体研究炉として扱うのか、それとも実用炉として扱うのかと聞いたら、これは政府としてもその境目にあるので、今後原子力委員会、安全委員会の意見を聞いて決めたい、こういうわけです。すでに日本にあるアメリカ型の軽水炉はどうも実用炉として通産の権限に入るらしいのです。これを科学者の立場から見られまして、そういうふうな区分けで政令をつくること自身どういうふうにお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/113
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114・服部学
○服部参考人 先ほど申しましたけれども、私は現在の原子力技術というものは決してまだ完成された技術だとは思っておりません。解明しなければならない基本的な問題というのがまだまだたくさん残っているし、特に大型化ということについては非常に大きな問題がある。当然これは安全性を含めましての話になりますけれども、私は、いまある原子炉はすべて研究段階にある原子炉だと理解しております。原子炉をつくっておるところでもそうじゃないのですか。もうこれ以上何の改善もする必要がありませんなどと思い込んでいるところは恐らくないと思います。すでに実用化の段階にあるなどと言うのはこれはただのコマーシャルの文句だけでありまして、実態は研究、開発ということの方に重点が置かれなければ、いまので実用と思ってそれで満足していたら、原子力の発展と申しますか、それには追いついていけないことだと思います。くれぐれもいまのが実用炉などというふうにお間違いにならないようにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/114
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115・瀬崎博義
○瀬崎委員 重ねてお伺いしますが、そうしますと、たとえばCANDU炉が政令でもし研究炉と認定される場合、いまの軽水炉が実用炉だというようなことは全くナンセンスだ、こういうふうに理解しておいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/115
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116・服部学
○服部参考人 私はそう考えております。少なくとも開発の段階で、たとえば一万キロなら一万キロで十分に運転の経験を積んで、そこで問題が全部出尽くしてその次の段階への発展の見通しというのがつく、そこまでやって初めて実用化ということが出てくるのだろうと思います。いままでの原子力の開発というのは、これはどなたでもおっしゃることだと思いますが、余りにも開発のテンポが急激過ぎて、十分な経験を得ないうちに次の段階、次の段階というスケールアップを続けてきているというのが現状でございまして、そうすればそこで予期しなかった新しい問題が次々と起こってくるのは当然のことでありまして、稼働率が悪くなり、いままで予期しなかったトラブルが起こるということは当然のことだと私は思います。ですから、いまの段階というのはあくまでも開発の段階にあるというふうに理解すべきである、私はそう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/116
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117・瀬崎博義
○瀬崎委員 これは自民党の方から修正案の用意もありますのでお伺いしたいのですが、原子力基本法では、当然「平和の目的に限り」とうたっているわけですね。いわゆる原子力の三原則がうたわれている。そもそも従来ともアメリカの原子力潜水艦等の寄港があったりしまして、厳密な意味で基本法が守られているかどうか大変疑念を表明しているわけですね。服部先生、いわゆる三原則との関係ではアメリカの原潜寄港などは許されてよいことかどうか、どうお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/117
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118・服部学
○服部参考人 原潜寄港の議論がございましたときにも国会で参考人として意見を申し述べたことがございますけれども、原子力船であろうと原子力潜水艦であろうと原子炉を積んでいるということには全く変わりがないわけでありまして、原子力潜水艦は軍艦である、しかもこれが安保条約のもとで入港してくるのに、これに対する立ち入りの検査ができない、安全審査はできないということを当時の原子力委員会はおっしゃったわけであります。安全審査ができないならば、安全であるか安全でないかの判断はできないわけでありまして、にもかかわらず、当時の原子力委員会は、先ほど申し上げましたように安全であると判断するという判断をみずからお下しになったわけでありまして、これは明らかに原子力の軍事利用がわが国の領土内で行われるということに対して原子力委員会が介入したということであります。しかも、その介入の仕方というのが、先ほど申しましたように、原子炉を積んでくるつまり原子炉の設置者の側が安全だと言っているから安全であると判断する、これは大変に間違った論理の上にそのことをなされたわけでありまして、はっきり申しましてそれが今日の日本における原子力の問題にかなり大きな尾を引いていると私は考えております。
それから原子力の軍事利用といった場合に、これは午前中にも申し上げましたように、何も核兵器だけが原子力の軍事利用ではございませんで、少なくとも基本法をつくられたときのあの精神ということに立ち返って考えますならば、原子力を軍事目的のために兵器としてであろうと、動力としてであろうと、どのような形であれそれを軍事目的のために使うことが軍事利用というふうに解釈すべきでありますので、原子力潜水艦は核兵器ももちろん積んでおりますが、核兵器を積んでいるだけでなくて、動力として原子力を軍事目的のために使っている。これは明らかに原子力の軍事利用でありまして、その原子力の軍事利用に、すでに原子力潜水艦の寄港を認めるという際に原子力委員会は大変まずい形でコミットしてしまったというのが実際に起こった歴史的な事実であろうと私は考えております。
〔委員長退席、小沢(一)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/118
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119・瀬崎博義
○瀬崎委員 これが最後でありますが、そういう前科があるからというのではないのですが、原子力基本法、原子力三原則がありながらそれに反する原子力行政が行われたという事実があるのですね。今度いろいろと審議された経過で、現状よりは明らかに安全軽視と開発優先型になるような原子力行政改革の実態が生まれてきながら、一方で予定されている自民党の修正案では、「平和の目的に限り」の次に今度は「、安全の確保を旨として」この言葉が入るのですよ。言葉が入ること自身は、法律としては整備されていいと思うけれども、その基本法が守られなかったら何にもならないし、現に矛盾するような実態が生まれているとすれば、ますます基本法の扱いを軽視している証拠じゃないかと私には思えてならないのです。そういう点で、原子力基本法がある限り、政府はどういう姿勢で原子力行政に取り組まなくてはならないのか、この基本点について先生方の御忠告を皆さんからいただきたいと思うのですが、時間もありませんので、有澤先生と服部先生に一言お伺いして終わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/119
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120・有澤廣已
○有澤参考人 基本法というのは私の理解では国民の立場に立って政府を縛る法律だ、こういうふうに考えております。したがって、原子力基本法の最初の平和目的に限って原子力を開発するということは、どうしても守らなければならない問題だと思います。国民もまたそれを全面的に要望している点だと思います。
それから第二は、無論のことですが、原子力自身が本来核分裂に基づいてエネルギーを出すわけでございますから、そこに危険がある。その危険をどうしても防遏しなければいけない。そのような危険というのは単純なものじゃなくて、各方面にわたって危険があることは明らかであります。したがってそれを除去し、そして防遏する、そのことはどうしても達成されなければならないと思います。私は、行政懇におきましても、この二つの問題はどうしても今度の行政改革においてはそれが十分に満たされるような体制でなければならぬという角度から行政改革をとらえたわけでございます。
それから第三番目には、原子力の平和利用を進めるということにつきましては、これは個々ばらばらにそれを勝手にやられては困るから、統一的に計画的にこれが促進できるような形でこれを進めていくべきであろう。以上のことをするに当たって、いわゆる三原則のもとにこれを行うべきである、これが基本法の精神だと思います。
ですから、今度の改革に当たりましても、その点は全然揺らいでいないと私は信じております。それで今度の改革が行われておるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/120
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121・服部学
○服部参考人 先ほど少し言葉が足りなかったかと思うのでございますが、原潜寄港の際に安全審査はできない、したがって、これを安全であるということは判断できないとおっしゃればよかったわけなんですが、その当時原子力委員会が安全であるという判断をなさった。ところが、安全審査をしないで判断をされたわけですから、これは科学的な判断ではないわけでありまして、あくまでもこれは政治的な判断と言わなければならないわけであります。安全性の問題にそういった政治的な判断を下すということは一番好ましくないことだ、少なくとも安全性の問題は科学的、技術的に解明されなければならない問題であると私は思いますが、そこに安全性の政治的判断というものをかつて原子力委員会がすでにおやりになってしまった。その実績の上に立って物事を考えていくときに、今度の「安全の確保を旨として」というものが果たして政治的判断にゆがめられないかどうかということについては、私は危惧の念を依然として抱いております。
先ほど申しましたように、公開の原則につきましては、それを基本法で示されたこの公開の原則というものを実際に効果あるものにするために、ぜひ日本でも情報公開法というようなものを検討していただきたいということを私はお願いいたしました。それから同時に、その前提となる軍事利用の禁止、このことにつきましてもこれを単なるうたい文句ではなくて、それが実際に効果があるようにするためには、公開、民主、自主の平和利用三原則ばかりでなく、核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず、このいわゆる非核三原則を立法化していただきたい。そのことによって基本法の精神というものが法的に保障されることになるのではないだろうか。ところが、これまでにおいてはどうも非核三原則というのは政策であるということだけが言われてまいりまして、法律でそれを保障するということが行われておりません。ぜひともその非核三原則の立法化ということでもって基本法の三原則というものが本当に効果のあるものにしていただきたいということをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/121
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122・小沢一郎
○小沢(一)委員長代理 次に、中馬弘毅君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/122
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123・中馬弘毅
○中馬(弘)委員 長い間御苦労さまでございます。
私が最後でございますので、ひとつまとめ的にお願いしたいと思うのでございますが、先ほど来の議論を通じまして、安全というものがどういうものかというようなことも、また各委員がどういう点に危惧を持っているかということもおわかりかと思います。
そういうことで、安全の問題でございますが、それぞれ委員の方によって若干ニュアンスが違うような気もいたします。かなり技術的な意味での安全をおっしゃっている場合があったり、あるいは人に対する影響といったようなことをおっしゃっている先生もおられますし、またこれは現実の問題としまして核ジャックだとかそういったことでのこともございましょうし、またこれは廃棄物の管理がずさんだといったようなことの危惧もあろうかと思います。
そういうことで、安全ということの一つの定義的なことも含めまして、この法案を進めるに当たってそれぞれ先生方の政府に対する、行政に対する御忠告なり御注文といったものをそれぞれお聞かせ願いたいと思います。
〔小沢(一)委員長代理退席、委員長着席〕
そういうことで、有澤先生にはちょっと別のお立場で聞きたいと思いますので、小野先生、川上先生、久米先生、服部先生、それぞれひとつまとめのお答えをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/123
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124・小野周
○小野参考人 私先ほど貝沼先生の御質問にある観点からお答えをいたしたわけでございますけれども、もちろん原子力の問題というのはいろいろな面があるわけですが、やはり先ほどからいろいろ出ております意見の中で、結局現在の原子力の技術というのはまだ完成をしていない、つまりわからないことが非常にたくさんあるということが私は一番大きな問題だと思います。
それで、現にこれは外国その他で最大の事故としては、たとえば原子炉容器が破裂するというようなことがあるかないかとかいうふうなかなり大きな問題もありますので、実際に非常に大きな損害を及ぼして、これはまず起こらないと考えてもいいということを言っているわけですけれども、実際にそれほど大きな事故でなくても、たとえば一次冷却水管の破断というような事故があるわけです。そういうものが実際に起こるか起こらないか、あるいはどのくらいの確率で起こるかという議論をされておりますが、これは非常に幅があるわけで、そういうものが起こったときには、これはちょっとわれわれ普通の災害とは比べものにならないような問題があるということとか、あるいは技術的な問題では、地震の問題に対してやはりまだ相当甘いのではないかということが言われておりますが、そういうふうな非常に大きな事故が本当に起こり得るか、あるいは起こったときにどういうふうになるかということ、あるいは起こるおそれがあることは、やはりそれを考えてやめるとか、別の方法をとるとかいうことを考えなければならないと思うので、一つ安全性についてはあると思います。
それから、これは繰り返しになりますけれども、放射線の人間に対する影響というのがまだ解明できていない。たとえば、先ほど有澤先生は閾値があることを早く見つければとおっしゃったのですが、実は閾値があるかないかということは、むしろ現在は、閾値はないという方に放射線の専門家の意見は傾いているし、少なくとも安全を見ていらっしゃる方でも、閾値があるということは断言できないということもおっしゃっておりますから、この問題はやはり安全の問題としては非常に大きな問題であると私は思います。
それから廃棄物の処理がずさんだということですが、実は私が申したのは、最終的な高レベルの廃棄物の処理技術というものがまだ確立していないというのは、これは安全の問題としては非常に大きな問題ではないかと思うのですが、いずれにいたしましても、まだ未完成の技術であるということを考えることが非常に必要である。それもやはり先ほどの、いろいろな原子力委員会の許認可の問題が、電力会社に対して免許を与えるというような意味ではなくて、住民に対して災害を起こすかどうかというふうな問題、これは平常時の先ほどの放射線の影響もございますけれども、そういう立場で考えていかれることが必要ではないかと思います。
それから、私つい申し忘れましたけれども、現在大きな問題になっております。原子力発電所で働いている労働者の被曝問題というのがあります。これもよく、二・五レム以下ならば害がないということをおっしゃる方があるのですけれども、実際はそういうことは科学的にはまだ全然認められていないので、放射線については閾値がないということを先ほど触れましたけれども、そういう問題に対する認識というのはやはりここで改めてする必要があると思います。
幾つかありますけれども、気がつきましたことを申させていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/124
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125・川上幸一
○川上参考人 私は技術的な安全性については発言する資格がございませんけれども、安全かどうかという問題は技令的な側面からだけでは決められない問題だと思います。どんな産業技術にしても、それを社会が受け入れて使っている。それはその危険度というものが全くないわけではなくて、中にはかなり危険度のあるようなものを社会が使っているわけです。それは、そのことのよしあしは別として、とにかくそういう、社会が受け入れるということによってその安全性というものは最終的に成立するものであろうというふうに考えております。もちろんその前提としては、技術的な安全性の向上ということが前提になりますけれども、それは危険度を下げていくということでありまして、どの危険度になったら安全だという絶対的な基準というものはない。そこを判断するのは、社会なり国民というものが最終的に判断することではないかと思います。そういう意味で、安全委員会ができた場合の安全委員会の仕事というのは、それらの技術的な向上ということを背景にしながら安全性についての国民的なコンセンサスをつくっていく仕事ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/125
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126・久米三四郎
○久米参考人 私の考えでは、技術的な安全性というのは非常に定義がはっきりしていると思います。これも伊方の裁判で非常に激しく議論になった問題でございますが、ECCSというのがございまして、原子炉の空だきを防止するという装置でございます。これはいまの原子炉では命綱になっておりますが、これが安全かどうかということは、実際にそれが働くかどうかということを繰り返し実験で確かめる、それしか実は科学的、技術的には安全という言葉は出てこないと思うのです。ところが、それは、いまアメリカがやっております実験でも最低十年は先になる。そんなことを待っておったのでは間に合わないということで、働くかどうか実験では実証されていないものを安全装置としてつけて許可をされようとするわけです。だから安全論争というのが起こるわけでございまして、そのときは、先ほど有澤参考人もおっしゃいましたように、やってよろしいという専門家の方は、非常に余裕をとってある、その命綱が切れるかどうかはなるほど実験で確かめていないけれども、何層倍という石をぶら下げても大丈夫と計算をしてある、こういうふうにおっしゃいますし、私たちは、そういうことは、これまでの技術を振り向くと、結局はこの目で繰り返し確めていないと思わないところに伏線があってその命綱が切れる。だから、実験が十年、二十年で終わるんだったら、それを待って原子力発電所はやってはどうか、こういうことでございまして、この安全は、まさに社会的な安全論争になっております。ですから、これは幾ら説得をなさろうとされましても、科学的、技術的に確認できないような問題を、何とかこれを安全と言いくるめようとすることしかできないわけでありまして、この問題は、当分は、そういう技術的な接近法をなさる限りは解決はあり得ない、私はそういうふうに割り切っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/126
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127・服部学
○服部参考人 原子炉の安全性といった場合に、問題は、その原子炉をどうやって安全に保つかということではなくて、安全に保たないといけないのは住民の側、国民の側なんです。原子炉の技術の安全性が保証されるようになるまで開発を待てといったような議論がよくございますけれども、私はその議論には賛成いたしません。というのは、原子炉が完全に安全になるなんということはあり得ないことで、これは絶えず潜在的な危険性を持っております。しかも、その原子炉の持っている潜在的危険性というものは、ほかのいろいろな機械あるいは施設と比べますと、けた違いに大きな影響を及ぼすものであり、また、けた違いに広い範囲に影響を及ぼすものだということになります。そうしますと、そういった潜在的な危険性というものを全くなくすということは本来あり得ないことでして、いかにして潜在的な危険性を表に出さないかという努力を絶えず続けていかなければならない。もちろん、制度もその一つでありましょうし、技術もその一つでありましょう。ですから、非常に強い権限を持った安全委員会がつくられて、安全の問題を特に重視するんだということは、それは結構であります。しかし、そのことだけで、もう安全委員会ができたんだからこれで安全は確保されたんだ、もう国民の信頼は回復されるはずであるというふうにお考えになっては大変な間違いでありまして、制度はその一つでありますし、技術もその一つであります。それからまた、りっぱな人材の養成ということもその一つであろうと思います。何よりも大事なのは、やはり関係する人々の安全というものに対する考え方、これがやはり、その制度、技術といったものに増して重要なファクターではないか、安全性というのは、単に技術だけの問題ではない、制度だけの問題ではない。むしろ、これまでのいろいろな原子力技術でのトラブル、あるいは事故の経験というものを振り返ってみますと、安全というものをどう考えていくかという考え方、これが非常に大きなファクターである。つまり、原子炉は、原子力の技術などというものはもうすでに完成したもので、いまの原子炉は全部実用炉でもう安全なんだという考えに立つことが実は一番危ないことでありまして、原子炉というものは、原子力の技術というものは大きな潜在的な危険性をいつでも持っているんだ、だから、それを少しでも顕在化させないためにはどうするのかということを絶えず忘れないどころでなくて、それを第一義に考えていくということが安全を保つ上での一番大事なことである、いささか精神論議めいたお話になりますけれども、私はやはり安全性の議論の中では、そのことが非常に大事なことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/127
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128・中馬弘毅
○中馬(弘)委員 安全という問題は非常に幅広い問題だということがよくわかったわけでございますが、この改正案の下敷きには、有澤さんが座長を務められました行政懇の意見が大きな地位を占めております。そういうことで、最後に、いまおっしゃったような意味でのいろいろな幅広い安全をすべて管理するのだというこの原子力安全委員会の性格について、もう少し有澤さんの御意見といいますか、御見解を最後にお伺いしておきたいのでございますが、先ほどから問題になっております諮問委員会がいいのか行政委員会がいいのか、行政委員会でなくて諮問委員会で十分やれるのだ、いま言ったような幅広い意味での安全までも確保されるのだということについての御見解を有澤さんからお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/128
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129・有澤廣已
○有澤参考人 安全委員会の性格でございますが、ただいまここで多くの参考人から安全性についての考え方についてお話がありました。私も非常に同感するところが多いのでございます。
安全の問題は、もう単なる技術だけの問題でない、人の問題にもむろんつながっているし、なかんずく安全性については、その安全性に対する考え方を各人が十分認識していなければいけない、それに基づいて行動しなければならぬということだと思います。その意味におきまして、安全性の問題は実際非常に分野が広い。非常に間口の広い大きな問題なんです。国民の立場に立ってそれに対処していくのが安全委員会ということになると思います。それだけに、この安全委員会は、言葉はちょっとおかしいかもしれませんが、非常に機動性に富んでいるということ、そうして幅広く自由に行動ができるということでなければならないと思います。それで、私どもが行政委員会組織よりも、むしろ、いまの原子力委員会と同じような、性格は八条機関だけれども実質のある八条機関としての安全委員会の方がベターであるというふうに考えたゆえんでございます。
ただ、その場合において、皆さん方がいつもちょっと疑惑に感じられるのは、それじゃ力が弱いじゃないかという御指摘がございます。それがために総理大臣あるいはほかの省庁の長官か——原子力委員会も同様ですけれども、安全委員会の決定を尊重しなければならないということが入っておる。これはだてに入っている文句じゃありません。普通の審議会でも、よく、最後に長官が出てまいりまして、皆さんの御審議の結論についてはこれを尊重いたします。こういうふうに申しますけれども、それは慣用句でございます。法律上に言われている尊重というのは、これを実行するということを含んでおると私は思っております。それがために、先ほども申しましたけれども、それが実行されないときには安全委員会は自分の職務を果たしていない、こういう結論になってくると思います。そういう意味において原子力安全委員会を、形式は八条機関ですけれども、原子力委員会と同じレベルにこれを置いて設置をしたということは、この原子力安全委員会がそういう幅広い安全の問題に自由に機動的に対処していくことができるという性格を持たしたいというところからいまのような結論になったわけでございます。したがって、また繰り返すようでございますけれども、この委員会を運営していく人はきわめて重要な役割りを演じてもらわなければならないということです。法律権限があって、それに従って行動するというのだったら、これは簡単な話でございますが、そうではなくて、いまの総理大臣がこれを尊重しなければならぬ、委員会の決定はこれを尊重しなければならぬという文句を土台にひっつかまえて、そして自由濶達に動いて判断をし、かつ意見を述べてその実行を迫るというふうな任務を帯びておるだけに、この委員会の委員というものはきわめて重要な役割りを果たしてもらわなければならないし、またそれにふさわしい人物が委員になることを私どもは期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/129
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130・中馬弘毅
○中馬(弘)委員 おっしゃるとおり、これは幾ら制度をつくりましても運用面がまず大事だと思います。そしてその運用するのはこれこそ人であるわけですが、りっぱな人格の方ということじゃなくてもう少し具体的に、ただ技術面だけの管理をするわけではございませんので、人の名前をそう言うのじゃございませんが、どういうような経歴を持った、あるいはどういうような範囲のあれを持ったという人を、具体的に何かありましたらお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/130
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131・有澤廣已
○有澤参考人 安全の問題はいま考え方の問題だということを申しましたが、それにしましても、やはり科学知識を相当十分に持っている人でなければなりません。私なんかとてもそれになる資格はないのです。そういう知識がないのですから。そういう意味において、科学技術を十分に蓄積して持っていらっしゃる方であって、そして国民の負託にこたえるだけの信念を持っている人でなければならないと私は思います。ですから、イエスもはっきり言える人、ノーもはっきり言える人、そういう信念を持っている人物。だから科学知識、科学者だけではいけませんで、やはりそういう信念の人でなければならない。これは抽象的に申しておりますけれども、それ以上はちょっと申し上げかねますけれども、そういう性格の人物が委員として座ることが必要であろう、そういう人が五人もそろっておればこの委員会は相当強力なものになると私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/131
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132・中馬弘毅
○中馬(弘)委員 時間が参りましたので、長い間本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/132
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133・岡本富夫
○岡本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本案審査に資するところきわめて大なるものがあったと考えます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/133
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134・岡本富夫
○岡本委員長 引き続き、政府当局に対する質疑を行います。日野市朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/134
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135・日野市朗
○日野委員 本日の参考人に対するいろいろの質疑、また参考人の意見は、われわれ非常に傾聴すべき点があったというふうに考えるところであります。
そこで、私は、まず科学技術庁、通産、運輸それぞれに現在の原子炉というものに対する評価を一言ずつ伺いたいと思います。
きょうの参考人の意見の中でも、これは明らかに実験段階、研究段階であるという認識がございました。国の方、またはいろいろ電力会社なども、ある段階では原子炉というものは一〇〇%安全であるというようないわゆる一〇〇%安全論が一時横行したことがあるのでありますが、いまはそういう見解は影をひそめたと思います。かなりの危険を秘めているものである、そういう認識をお持ちであるかどうか、まず各省庁簡単にお答えをいただきたいと思います。科学技術庁はひとつ大臣からお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/135
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136・牧村信之
○牧村政府委員 私から先にお答えさせていただきます。
私どもの方の見解といたしまして、実用炉あるいは研究開発段階の炉というものの考え方でございますが、これは安全委員会の設置をお認めいただきますと、最終的には安全委員会で御決定をいただき、それを政令で定めるわけでございますが、現在原子力事業者が運転、建設を進めております軽水炉につきましては、これは世界各国でも実用炉として認められておるものでございますし、わが国におきましても技術導入の結果、その経験を踏まえて国産化され、あるいは標準型の原子炉がつくられていくというような状況になっておりまして、その間各種のトラブルはあったものの、原子力施設から外へ放射線等が放出されて、一般住民の方に害を及ぼしたことがないという経験から、私どもの方としては、事務局としては実用炉であろうと考えておる次第でございます。
その他の炉につきましては、今後導入等が決まり次第安全委員会の意見を聞いてそれぞれ仕分けをしていくというふうに考えてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/136
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137・熊谷太三郎
○熊谷国務大臣 ただいま局長から申し上げたとおりでございまして、実用炉として現在運転しておりますものは、十分安全に気を使って配慮していけば心配は少ない、こういうふうに思っているわけでございます。重ねて言いますと、絶対安全なんということはとうてい言えませんけれども、いろいろの点を十分配慮していけば心配は少ないものであるというふうに考えております。重ねて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/137
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138・武田康
○武田政府委員 現在軽水炉、きょう現在で十五台の営業運転をいたしております。その十五台に着目して申し上げますと、すでにこれは実用炉の域に達しておりまして、もちろん改善すべき点がございますので、その改善すべき点の改善には今後とも努力しなければいけない、こう考えております。
なお、原子炉の中の放射性分裂生成物、これは野放しにいたせば危険なものでございます。しかし、設計上の管理あるいは政府の規制等々によりまして安全の確保をいままでも十分やってきましたし、外部に対する実際上の問題という観点から十分に安全が確保されてきている、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/138
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139・赤岩昭滋
○赤岩説明員 原子力船につきましては、現在「むつ」が研究段階にあるわけでございまして、原子力につきましては研究開発段階にあるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/139
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140・日野市朗
○日野委員 いま各省庁のそれぞれの認識を伺ったわけでありますが、どちらにしても、これから安全委員会ができるということになりますと、その安全委員会が十分に機能する担保となるものはあくまでも公開の原則であるというふうに私は考えるわけであります。それぞれの各省庁はこれらの原子炉に関する情報の公開ということをこれから十分にやっていかなければならないと思うのですが、まずその覚悟のほどを伺いたいと思います。公開するということをお約束いただけましょうか。これも一言ずつで結構であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/140
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141・牧村信之
○牧村政府委員 基本法の精神にのっとりまして公開の原則を守ってまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/141
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142・武田康
○武田政府委員 私どもも公開の原則を守ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/142
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143・赤岩昭滋
○赤岩説明員 運輸省におきましても、科学技術庁、通産省と同様、基本法の公開の原則にのっとって実施してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/143
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144・日野市朗
○日野委員 本日の参考人の意見の開陳、また質疑に対する回答を聞きましても、公開の原則が守られていないということに対する不信感、これが非常に強いように私は感じ取ったわけであります。でありますから、これは単に公開の原則を守りますということだけでは足りないのであって、それがいかに担保されるかということが必要ではなかろうかというふうに思われるわけであります。この公開の原則につきましてはすでに何度かこの委員会でも質問が重ねられておりまして、科学技術庁の考え方としては「原子力安全委員会月報」というようなものを発行するというような御意見であります。それはそれとしてわれわれも評価するのでありますが、問題はそこで公開されなかった部分に大事な部分があるということ、これが非常に危惧されるところでありますし、現在までも公開の原則というものがありながら、残念ながら公開されない情報というものはかなり数多くあったというふうにわれわれはいま感じているところなんであります。
そこで、その公開を担保する方法にどんなものがあるかというようなことでいろいろ伺いたいわけでありますが、まず、現状を認識したいので伺っておきたいと思います。
科学技術庁としてこの原子力関係の情報でいわゆるマル秘扱いにしたもの、これがどの程度あるかということについて伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/144
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145・牧村信之
○牧村政府委員 安全審査関係のことをまず最初に申し上げさせていただきます。
安全審査関係の資料は、最近におきましてはそのほとんどを公開しておるところでございますが、技術導入にかかわりましてその設置者あるいは建設者等が特に希望したものにつきましては、商業機密につきましては公開しておりません。しかしながら、その公開できない部分をできるだけ少なくさせるあるいはその件数をできるだけ少なくするように指導をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/145
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146・日野市朗
○日野委員 いま設置許可の関係についてのお話がありましたが、それ以降の運転段階におけるものはどうですか。これは通産に聞くべきですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/146
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147・武田康
○武田政府委員 私どもは主として事故の処理等々が一般に問題になっているわけでございますが、こういったものにつきましてはささいなものも電力会社から報告させまして、それを検討評価しまして、その結果をまとめて公表するというようなことを従来からもしてきているところでございます。今後もそれを続けたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/147
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148・日野市朗
○日野委員 武田審議官にもう一点伺いたいと思うのですが、その関係でマル秘扱いにしたもの、これはどうでしょう。数量的にどのくらいということはなかなかすぐにはお答えできないのではないかと思いますが、できるだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/148
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149・武田康
○武田政府委員 ただいま数量とお話ございましたが、その数量につきましては私ちょっとイメージがはっきりいたしません。ただ、理論的には基本設計段階につきましても先ほどの科技庁のお話のような問題がございます。詳細設計等私どもが担当しているものにつきましても、それに関連する事項があるはずでございます。量につきましては私見当がつきませんので、いまちょっとここで申し上げかねるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/149
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150・日野市朗
○日野委員 商業機密ということになりますと、これは確かに工業所有権の関係からいろいろ公表できにくい点が出てこようかとも思いますが、これについてもできるだけ公開をしていくという方向で指導するという科学技術庁の見解の表明が先ほどありましたが、同じような見解を通産省もとっていただけるでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/150
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151・武田康
○武田政府委員 先ほど事故処理の例で申し上げましたけれども、私どもとしても公開の原則を守るということでございまして、そういった企業機密等の問題がございますが、できるだけ公開していくような努力はいたしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/151
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152・日野市朗
○日野委員 公開の原則という原則がありますと、原子力に関する情報というものは最大漏らさず本来であればオープンにされるべきであろうかと思います。この点についてマル秘という扱いになっているものは非常に少ないというような印象を受ける答えをいただいたわけでありますが、今後原子力関係の情報について、国家公務員のいわゆる守秘義務と言われるもの、国家公務員法百条による秘密を守る義務、これは国家公務員法に規定があるわけでありますけれども、これと公開の原則との関係をどのように考えるかについて伺っておきたいと思いますが、まず、公開の原則がある以上、国家公務員法百条の秘密を守る義務の機能する範囲はきわめて狭いものになる、このように理解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/152
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153・牧村信之
○牧村政府委員 原子力基本法の公開の原則は、原子力の研究、関発の成果に関する重要事項をすべて国民が知ることができるようにするという趣旨であろうかと思いますが、これには平和利用を担保するための非常に重要なものがあったわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、安全審査の資料につきましても、可能な限り公開していくという線を貫いておるところでございます。したがいまして、私ども職員といたしましては、審査の過程的なときに、どうしても秘密を守る必要なものがあろうことは当然出てまいりますし、それは私ども公務員としての義務であろうかと思いますが、そのまとめられたもの等につきましては積極的に公開していくというふうなことに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/153
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154・日野市朗
○日野委員 いまの御答弁、どうも私、不満なんですが、まとめられた結果というのは、そのプロセスを抜きにしては考えられないのであって、原子力基本法の定めているところは、成果の公表というふうに規定上の文言はなっておりますが、これは単に成果だけを公表するというのではなくて、そこに至るプロセス、これをも含めて公表すべき責務が担当者にはあるのだというふうに読めると思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/154
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155・牧村信之
○牧村政府委員 先生おっしゃいますように、最近におきましてはできるだけそういう観点から、たとえば安全専門審査会の議事につきましても、その過程においてどういうことが議論されたかというようなことがわかるような議事概要等も含めまして「原子力委員会月報」等に公表するような努力をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/155
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156・日野市朗
○日野委員 その努力は私たちも一応評価をいたしますし、これからもっともっとやはりプロセスをも重要視するという考え方でひとつやっていただきたいと思います。
それから、特に問題になるのは、国会であるとか裁判所であるとか、そういったところに守秘義務を盾にして情報の提供を拒む、資料の提供を拒むということは絶対にあってはならないことである、このように考えるわけでありますが、これは科学技術庁、通産省、運輸省、三省庁に伺います。いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/156
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157・牧村信之
○牧村政府委員 伊方の裁判の過程におきまして、裁判所から商業機密を含めた機密を出すようにという指示があったわけでございますが、その中で数点の商業機密を除いた、それ以外の従来秘密扱いにしたものは出した次第でございます。したがいまして、商業機密でどうしても出し得ないものは、今後当然役所としての責務からも出せないわけでございますが、先ほど私、設置者等を指導してと申しましたが、最近におきまして、たとえば柏崎・刈羽の原子炉の場合にはわずか二カ所の商業機密のみでございます。伊方の二号においては、非公開の分は全くございません。それから最近設置を許可いたしました仙台では、わずかに一カ所というふうなことで、その機密の部分も設置者並びにメーカー等の努力の結果、非常に少なくなっておることも事実でございますので、その点はぜひ御了承を願いたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/157
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158・大永勇作
○大永政府委員 国政調査権等につきましては、最大限に尊重さるべきであることは当然でございまするので、国の重大な利益を害するような場合は別といたしまして、最大限に尊重いたしまして、公開をするというのがたてまえであろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/158
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159・赤岩昭滋
○赤岩説明員 運輸省におきましても、ただいま科学技術庁、通産省からお話がございましたように、公開の原則にのっとって最大限に公開するようにいたしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/159
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160・日野市朗
○日野委員 さっき科学技術庁の方から牧村さんは、裁判所の場合は、伊方の場合もちゃんと出したし、いろいろな裁判所で出したと、こうおっしゃる。しかし裁判所の場合は、これはペナルティーがあるんですね。「当事者カ文書提出ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ文書ニ関スル相手方ノ主張ヲ真実ト認ムルコトヲ得」こう書いてあるわけです。だから、これを出さないと裁判に負ける可能性があるので恐らく出したのじゃないかなというふうに私たちは勘ぐるわけですが、こういうペナルティーがない国会においても、これは厳重に出してもらうようにしなければならないし、国会以外の国家機関または自治体機関、場合によっては私的機関、ここらについても同様に、あとう限り出すという態度を貫かれることをひとつお約束いただきたいと思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/160
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161・牧村信之
○牧村政府委員 御趣旨の線に沿って努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/161
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162・日野市朗
○日野委員 では、私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/162
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163・岡本富夫
○岡本委員長 次に、関連質問で石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/163
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164・石野久男
○石野委員 原子力委員会の委員長代行井上さんにおいでいただいておりますが、この際、基本法の改正に当りまして、いままでの原子力委員会と、新しく改正される委員会のあり方にさま変わりがあります。このことについて、現在まで長い間、原子力委員会の実務を扱ってこられました井上さんからいろいろと所見があろうかと思いまするので、その点について、新しい委員会にはこうあってもらいたいとかいうようなことについてのお考えをひとつ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/164
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165・井上五郎
○井上説明員 私、原子力委員を仰せつかっておりまして、ただいまお話がございましたようにいろいろな場を経験をいたしまして、昭和三十年来決定をいたしました現在の原子力委員会設置法ではいけないとは申しませんけれども、行政需要と申しますか、原子炉が非常に普及をしたという段階において若干ながら不備な点がある。ことに「むつ」の問題を起こしまして以来、どうしても国民の信頼をかち得るためには、ある程度の法改正を含んだ見直しをしなければならないということをわれわれも反省をいたしますと同時に、内閣におきまして、通称有澤委員会、原子力行政懇談会でございますかを設置されまして、一つの成案を得て、それに基づきまして今回の法案の改正が提出されておるわけでございますが、結論を先に申しますならば、われわれは、今回の改正は前進である、そういう意味におきまして、原子力委員会は、この法案が成案を得まして国会に提出をされた前後、昨年の二月、ちょっと日にちは忘れましたが、昨年の二月、原子力委員会は、この法案は賛成であるということを申し上げております。その賛成であるということは、原子力委員会が在来の、二十年前に制定されましたときに比べて、安全問題あるいはまた財政問題、いろいろな接触面と申しますか守備範囲と申しますかが広がった現在におきましては、こうした改正は、将来、日本のエネルギー源として重要な原子力の推進と同時に、安全を守るという意味におきまして、非常に有用な、また有効な改善である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/165
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166・石野久男
○石野委員 安全委員会が別途つくられますが、この安全委員会が本当に安全規制の責務を果たそうとするために、私たちは幾つかの疑問を持っております。その際、八条委員会が三省庁に対して十分に意見を言い、実行させるようにするための方法として、先ほど参考人、特に有澤参考人からは、意見書を出して、もしその意見書が通らないときには総辞職すべきだというような御意見もございました。いま原子力委員会の委員長代行としましての井上さんのその点に対する所見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/166
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167・井上五郎
○井上説明員 原子力の安全の確保という問題につきまして御指摘の点でございまするが、一つは、原子力の安全ということに対して行政上これを一貫して見る機関がないではないか。たとえば設置の許可においては総理大臣、したがいまして、原子力委員会が諮問にあずかりまするけれども、運転の最終段階におきましては、主としてそれぞれの関係省庁が監督するというようなことについて、安全確保の一貫性が一つ問題になった点でございます。
一方におきまして、ただいま石野先生から御指摘がありましたように、やはり国としては安全という問題を一貫して見て、しかもその機関は非常に強力なものでなければならないんではないかという御指摘であるかと思います。しかし、私どもの見解といたしますれば、これだけ原子力が多岐にわたるようになりますると、それぞれの行政機関におきまして、安全を込めましての行政上の監督を強化すると同時に、一方、原子力安全委員会のいう一つの機関をつくりまして安全規制行政の一貫性というものを守っていく。その場合にこれが総理大臣の諮問機関といいますか、いま御指摘の点から私、憶測をいたしまするならば、少し弱体ではないかという御懸念があるかと存じますけれども、この委員会は安全規制行政につきましての一つの基本原則と申しますかガイドライン、そうしたものを決めまして、これによって各省庁がそれぞれの安全行政をやっていくという意味におきまして、私は決して弱体にならないばかりでなく、一つの行政省庁、たとえば通産省におきましては原子力政策の推進というものをつかさどっておるわけでございまするが、そうした機関が同時に安全行政を両方兼ねるということについては、やはり原子力安全委員会においてダブルチェックをするという考え方におきまして、在来より以上に安全政策の完遂が図られるものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/167
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168・石野久男
○石野委員 いま一つお尋ねしますが、ダブルチェックの機能を十分に果たすために、原子力安全委員会が十分にその体制を整えるとすれば、事務局をいまのような状態に置くよりも独立の事務局を専有できるようにした方がよろしい、そういう考え方がありますし、また大方はそういう意見です。政府もまたそういう考え方でやがてはそういうふうにしたいと言っております。
井上さんにお尋ねしますけれども、安全のダブルチェックをするための事務局体制というのは、日本の現状で言いましたら、もちろん質もありますけれども、機構の上で大体どのくらいの人員が必要だとお考えになっておりますか。現状のままでいいとお考えですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/168
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169・井上五郎
○井上説明員 この問題は、もし法案が通りまするならば、将来安全委員会において御決定願うべき問題であると思いますが、ただいま私に対しまして、いままでの経験から言ってどうかという御質問であるかと存じます。さような意味において理想的に申しますれば、総理府に直属する独立機関である以上は、それに伴う事務局も独立である方がいいということはあるいは言い得るかもしれません。しかしながら、現実に事務を扱う上におきましては、やはり在来の経験あるいは実績に徴しまして科学技術庁がその事務局をやるということが現実的であるかと存じます。
それから第二点の、人員がどのくらいであればいいか。現在御承知のように三十人の炉の審査委員会がございますが、これだけでは不十分でありまするから、予算的にも人員の増加を考えてもらうようにいたしておりますけれども、それは監督官庁の人員をふやすだけでいいのか、あるいはドイツその他の国々で実施されておるような、民間において最も信頼できるような機関を造成される方がいいか。と申しますのは、官庁におきましては、それそれの方々はそれぞれ出世——という言葉はおかしいのでありますけれども、だんだん役職が変わっていくわけでありますが、安全審査のごときは一つの定着したエキスパートを養成しなければならないというような意味におきまして、ただ人数だけをふやすだけでいいか、質的なそうしたエキスパートの機関を造成した方がいいか、これらは、将来設置される安全委員会において御決定を願うべき重大な問題の一つであると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/169
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170・石野久男
○石野委員 最後にもう一つだけ。原子力委員会が二つに分かれて、原子力委員会の任務というのは主として平和を担保するという仕事が非常に大きいものになってくる。もちろん安全の基準なども規定しなければいけませんが、そこで近来、昨今の情勢から言いまして、核軍事利用という問題を含むいわゆる平和の担保ということについての原子力委員会の心構えというものがわれわれにとって非常に重要だと思います。その点について原子力委員会の委員長代行としての井上さんの所見を最後に承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/170
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171・井上五郎
○井上説明員 大変重要な御質問であるかと存じますが、これを私が申し上げるのはおこがましいのでありまするけれども、原子力基本法ができました当初、しかもそれが国会におきまして与野党全会一致で可決をされたということは、この原子力基本法におきまして日本が平和利用に徹し得るというかたい御決意と同時に、そういう信頼と申しますか確信があったということ、これが一つだと思いますし、原子力委員会の最大任務は、私どもはこの平和利用というものに徹しなければならないということだと考えております。さような意味におきまして、今度の有澤答申を拝見いたしましても、この委員長は、安全委員会の方は学識経験者の互選による、原子力委員会の方は両論併記と申しますか、有澤答申におきましてはいずれであるかという決定を与えておらないということは、政府を信用しないわけではございませんけれども、基本法において民主的な行政があるいは方針の決定ができなければならないという趣旨が、この方がより徹底する、こういう意味におきまして、私どもは今後の改正が行われましても行われませんでも、ただいま御指摘の問題は、われわれとしては最重要な任務と考えております。と同時に、昨年七月、日本がNPTを批准をいたした次第でございますので、こうした意味からいいましても、原子力委員会の任務はより重要であると同時に、よりやりやすくなった、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/171
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172・岡本富夫
○岡本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/172
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173・岡本富夫
○岡本委員長 この際、小沢一郎君外一名より、修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。小沢一郎君。
—————————————
原子力基本法等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/173
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174・小沢一郎
○小沢(一)委員 原子力基本法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び新自由クラブの提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
修正案文はお手元に配付したとおりでございます。
この修正案の要旨は、
第一に、原子力基本法において、原子力の利用は、「安全の確保を旨として」行うものとすることを規定すること、
第二に、原子力安全委員会に原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会を置くことを法定すること、
第三に、原子力委員会及び原子力安全委員会は、関係行政機関の長に対し、「報告を求めることができる」旨の規定を加えること、
第四に、原子力委員会及び原子力安全委員会の決定または意見の尊重義務の規定中、「尊重」をすべて「十分に尊重」に改めること、
第五に、原子力安全委員会の設置に関する規定の施行期日を「公布の日から三月以内で政令で定める日」に改め、原子炉の規制体制の一貫化に関する規定の施行期日を「公布の日から六月以内で政令で定める日」に改めること、
以上であります。
本修正案は、原子力安全委員会の権威と権限をより高めること等によりまして、原子力の開発利用における一層の安全の確保を図ろうとする趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同を、お願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/174
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175・岡本富夫
○岡本委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/175
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176・岡本富夫
○岡本委員長 これより原案並びにこれに対する修正案を一括して討論に付します。
討論の申し出があります。順次これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/176
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177・石野久男
○石野委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました原子力基本法等の一部を改正する法律案並びに修正案に反対の討論を行うものであります。
改正法案の内容は、口に安全性を訴えながら、実質的にはエネルギー対策に籍口して不況対策と雇用の増大を原子力発電所の建設促進に求めているのであって、その行政上の手続や規制を現業官庁のもとに分散割譲しようとする意図に貫かれていると言って過言でありません。
核の軍事利用に反対し、平和と安全性の確保のために国民が無条件に信頼をかけている原子力基本法を、このような魂胆で改悪することに対し、国民の名において反対するものであります。
そもそも、原子力平和利用に係る安全性の確保なるものは、核戦争反対と同義語の重みを持つものとわれわれは理解しているところであって、基本法はその制定議会において提案者も述べているように、広島、長崎に投下された原子爆弾による被害の悲惨さをはだ身に受けとめている日本人が、その実感の中から論議を重ね、日本学術会議の意見をも受け入れて、軍事利用を絶対に許さず、平和利用に当たっても、民主、自主、公開の三原則を遵守すべきことを基本理念、精神として、そのための規制を規律したのであります。
本院は、以後、この考え方に基づいてすべての立法措置をしてきたのであります。たとえば公害対策基本法がその第八条で、「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法その他の関係法律で定めるところによる。」と規定しているように、放射能に関する一切の行政措置を本法に帰一するものとして立法に携わってきたのであります。このたてまえは、不文律のうちに議会も国民もこれを認めてきたところであり、今後もこのことは、国民の原子力行政に信頼を寄せる根幹となるものと私は確信しているところであります。
しかるに、改正案は、このような基本法の規制の一元的帰一化に対し、真っ向から対決し、現業庁優位、業界指向型に三分割するものであって、原子力委員会の規制のもとでも従来問題であった機密保持の立場からの資料公開の拒否等、こういうような問題は従来よりも一層むずかしくなって、安全確保の観点からきわめて危惧されるところであります。
私は、いま、本法改正の直接の動機となった原子力船「むつ」の事故の実態を、いま一度皆さんと一緒に考えたい。
原子力船「むつ」の教訓は、第一に原子力利用に関するわれわれの学問、技術、知識はいまなお未知に覆われ、舶用炉はまさに研究実験の段階であるということ、第二に原子力行政が開発を焦って安全性を軽視していること、第三に、原子力委員会の基本設計と、運輸省船舶局の詳細設計並びに工事施行の間に一貫した連携が全くとれていなかったこと、及びその責任の所在が不明確であったこと、第四に、あえて言うならば、原子力にふなれな造船屋が原子力舶用炉という高度の科学技術を扱ったということにあります。
したがって、原子力船「むつ」の放射線漏れ事故に対する国民の端的な批判は、わが国原子力行政の開発優先を厳しく非難し、原子力行政の安全性第一の政策を強く要請したことは、すでに御承知のとおりであります。
しかるに、総理大臣の諮問機関である行政懇は、原子力の安全性よりも原子力をわが国エネルギー計画の中に位置づけることを強く要求し、それを怠るならば、後世の国民に対する責任が厳しく問われなくてはならぬ、こういうように強要を含んだ開発推進型の答申を行ったことは、原子力船「むつ」の事故を契機として、直感的にほうはいとして起こった原子力の安全性を重視せよという世論を全く無視したものであって、許すことはできません。
改正案に反対する第一の点を申しまするならば、原子炉の設置許可権者は、現行法では総理大臣に一元的に帰一しているものを、通産、運輸、科学の三省庁に分離したことに対してであります。今回の改正で各省庁の行政的な一貫性を確立したとする政府の考え方は、現業庁と業界の開発優先におもねるものであって、原子力の安全性に対する国民の不安と行政に対する不信に対して、その顔を逆なでするという露骨な挑戦行為であるとさえ思われます。基本法が原子力の安全性に対する横断的、一元的規制を確保しているすぐれた現在の体制に対して、これをぶち壊そうとするものであって、これは許せません。
反対の第二の点は、許可権限を三分割する以上、原子力安全委員会はその機能を果たすためには、国家行政組織法第三条機関とするのが妥当であるにもかかわらず、第八条委員会として総理の諮問機関にとめていることについてであります。ダブルチェックの機能を果たすためには、三省庁の長と同等以上の権限を持つ機関でなかったならば、その実効をあらわすことはできないことはすでに御承知のとおりでありますが、いろいろな理屈をつけてこれは実行されません。むしろこのことに対して、政府・自民党が極端に反対するゆえんのものも、それはいわゆる業界の、あるいはその他経済界の要求に屈したものだと思います。この点について現行法で炉の設置許可権を具体的に掌握した原子力委員会とはその力量、権限が全く違うのであります。安全性に対する政府・自民党の考え方がここにあらわれておるのだと思います。
第三の反対の理由は、原子力委員会に設置されていた原子炉安全専門審査会を法的機関から外して政令機関にすることであります。これは今度の修正で直ったといたしましても、この考え方は、政府並びにこれを推進する自民党の中に、いわゆる安全性を軽視するという観点がここに端的にあらわれているものとして、これは許すことはできないのでありまして、政府・自民党の原発推進行政は、「むつ」の反省としては何一つ生かされていないと思います。「むつ」の事故の反省を行政に生かすと宣伝したこの行政懇談会の答申は、本改正に具現されたとするならば、それは全く国民を愚弄するものであると言わなければなりません。総理大臣の私的機関であるとはいえ、余りにも産業界とのなれ合い審議であって、総評を代表して委員会に出ていた酒井一三氏が、企業寄りで開発推進一方の論議にはがまんができないと言って不満を表明して委員を辞任したのは、まさにむべなるかなと思われるのであります。
反対する第四点は、設置許可権を三分割する三省庁にそれを受けとめる体制整備の用意がないということであります。これはもうすでに皆さんも御承知のように、運輸省のごときは全くと言っていいほどこれに対する体制はありません。それはむしろ、いわゆる原子力舶用炉はいま現実に実験研究用のものであって、実用船はほど遠い将来のことである、こういう理由によってそういう体制を整えていないのでありまして、われわれの指摘によって、びほう的な体制はつくっておりますけれども、この一つの事実をもってしても、業界の要請が余りにもこの法改正の中にあらわれているということを、これは許すことはできないのであります。
このような実態の中で改正法案が提案をされたということに対して、われわれはこれを許すことはできないのであります。本法改正が、将来わが国の原子力の安全性を確保する上において、恐らくは必ず問題を引き起こすであろうということを憂えながら、政府原案並びに修正案に対するわが党の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/177
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178・岡本富夫
○岡本委員長 次に、貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/178
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179・貝沼次郎
○貝沼委員 私は、公明党・国民会議を代表してただいま議題となっております原子力基本法等の一部を改正する法律案並びにそれに対する修正案に対し、原案反対、修正部分に賛成の討論を行うものであります。以下その主な理由を申し述べます。
昭和四十八年の石油危機の到来は、わが国経済の今後の安全保障、なかんずくその根本となるエネルギー資源のあり方に深刻な警鐘を打ち鳴らしたのであります。このようなことから、原子力エネルギーが従来にも増して注目を集めたことは当然であったのであります。しかし、その後原子力船「むつ」の放射線漏れ事故が起こり、安全性確保の立場から、原子力行政体制のあり方が非常に重大な問題として提起されたのであります。こうした中において原子力行政懇談会が設けられ、検討の結果、昭和五十一年七月「原子力行政体制の改革、強化に関する意見」が答申されたのであります。今回の改正法案は、これにこたえて立法化されたものでありますが、しかし一方、多くの問題点が指摘されているのであります。
まず初めに、原子力安全委員会が行政委員会ではなく、諮問委員会であるという点であります。すなわち、原子力安全委員会が法律上は国家行政組織法上の八条機関であり、現在、二百五十近くある政府諮問機関の一つにすぎないということであり、原子力の平和利用の担保、強力な安全審査などが果たして確保され得るのか、はなはだ疑問があるのであります。つまり、強力な行政権限がなければ十分な監視ができないのであります。そこで、原子力安全委員会は、公正取引委員会や国家公安委員会並みに、同法の三条機関である行政委員会にし、スタッフを増強し、独自の事務局のみならず、付属の研究所を持つなど、強力な権限、機能を持つべきであると主張してきたのであります。
次に、百歩譲って諮問委員会の立場で論じてみても、なおかつ次のような問題点が残されているのであります。
すなわちその第一は、原子力委員会と原子力安全委員会の対等性の問題であります。本来両委員会それぞれ開発サイド及び安全規制サイドに立って同等の立場で運営されるべきものでありますが、一方の委員長は科学技術庁長官たる国務大臣をもって当て、他方の委員長は委員の互選によって定めることとなっており、両委員会の対等性に強い疑問を抱くわけであります。
第二は第一次の主務官庁の安全審査における官民癒着の問題であります。たとえば発電用原子炉の安全審査は、従来は原子力委員会が行っていたのでありますが、安全規制の一貫化によって、一次審査を通産省が担当し、安全委員会がダブルチェックをすることになっております。電力会社の所管官庁がまず安全審査をすることになるわけでありますが、仮にも国民に官民癒着の疑念を持たせるようなことがあれば、原子力の開発はさらに困難になってしまうのであります。
第三は、原子力安全委員会のダブルチェックの方法、制度の問題であります。安全委員会がダブルチェックをするという構想は結構でありますが、基本設計段階以降、具体的にどう審査を進めていくのか、書類審査のみではなく、立ち入り検査もできるのかどうかなど、問題が大きいのであります。
第四は、原子力安全委員会の下部組織の専門委員が非常勤であることであります。これは審査が片手間仕事ではないかという批判が出やすいのであります。
第五は、原子力安全委員会のスタッフが少ないという問題であります。
第六は、公開ヒヤリングに参加する範囲及び運営の方法がはっきりしない点であります。
以上の問題点は当委員会において種々論議を続けてきたところでありますが、なお疑問は残されたのであります。
次に、本法案に対する修正案においては、原子炉安全専門審査会、核燃料安全専門審査会の設置のこと、また両委員会が関係行政機関の長に対し、報告、資料の提出、意見の開陳、説明等々を求めることができること、さらに両委員会の決定、意見は十分尊重しなければならないこと等を明文化し、かなり行政委員会的内容になっており、将来のエネルギー政策上、国民の最も関心の高い安全性の確保がより充実したものとして、十分評価できるものであります。
よって、修正部分に賛成し、原案に反対する討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/179
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180・岡本富夫
○岡本委員長 次に、瀬崎博義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/180
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181・瀬崎博義
○瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、原子力基本法等改正案の政府原案並びに自民党提出の修正案に対し、反対の討論を行います。
まず、政府原案についてであります。
わが国の原子力行政始まって以来初めての大改正に当たって、われわれが法案審議の第一の基準としなければならないことは、原子力行政改革の出発点は何であったのかということであります。政府も認めているとおり、分析化学研究所データ捏造事件に始まり、原子力発電所や再処理工場での事故の続発、そして原子力船「むつ」の異常放射線漏れ事故で、原子力行政全般に対する国民の不信は頂点に達しました。
原子力利用に当たって最優先にされるべきは国民の安全であり、その中心的な役割りを負っているのが原子炉施設についての政府の安全審査であります。「むつ」放射線漏れ事故は、とりわけ原子力委員会中心に実施されてきたこの安全審査が、人員、権限、予算のすべての面できわめて弱体であること、責任の所在が不明確であること、審査の範囲が基本設計に限られていることなどの致命的欠陥を明らかにしたのであります。
こうした政治的、社会的背景のもとで、政府の安全審査体制のあり方、原子力行政のあり方をめぐって活発な論議がなされ、学者、識者、関係団体、政党によって多くの提言が発表されたことは周知のとおりであります。その中で、緊急に改革を実行しなければならない課題としてほぼ一致して指摘された点の一つは、開発と規制の機関を分離すること、いま一つは、安全審査及び規制部門を専門に受け持つ機関は、原子炉施設の基本設計だけでなく、詳細設計から建設、運転まで一貫して担当できる行政権限を持った体制でなければならないということでした。
ところが、政府原案は、これらの指摘を受け入れなかったばかりか、逆に研究用原子炉、実用原子炉という科学的には根拠のない区分けをした上、実用発電炉、実用舶用炉についてこれまで内閣総理大臣が持っていた原子炉設置の許認可権を開発担当大臣である通産、運輸両大臣に移管し、許認可の前提となる基本設計の実質的な安全審査を、原子力委員会と科技庁の連合体制から開発官庁である通産、運輸両省に集中させ、文字どおり開発と規制の一体化、一元化のもとに、現在以上に開発優先の原子力行政を推進しようとするものであります。ここに反対の第一の理由かあるのであります。
反対の第二の理由は、通産省に引き継がれる実質安全審査が現状よりさらに弱体化され後退させられるということであります。現在、基本設計の実質的な安全審査を受け持っているのは、科技庁の原子炉規制課と原子力委員会の原子炉安全専門審査会及びそれを補佐する専門委員であります。この基本設計の実質安全審査が通産省に引き継がれることによって、第一に、科技庁原子炉規制課での担当者二十人が、その業務を引き継ぐ通産省原子力発電安全第一課では十七人に減り、第二に、原子炉安全専門審査会の学識経験者二十八人が、これに該当する通産省原子力発電技術顧問会では十八人に減少し、第三に、原子力委員会に政令で設けられている専門委員百四十人のうち、安全審査を補佐する専門委員約三十人については通産省では制度化の予定がないなど、大幅に後退するのであります。
さらに、今後予定されている詳細設計の安全審査の担当者はこれまでと同じ十三人、使用前検査や定期検査を担当する検査官は一名増員予定ですが、原子力発電所の増加を見れば、もともと通産省が受け持っていた詳細設計以後の安全確保の体制もきわめて手薄になるのであります。
第三の反対理由は、運輸省においては、通産省と逆に今回の法改正に当たって何の準備もしなかったということであります。運輸省の新しい安全審査体制づくりの説明は、現状でやること以外何も考えていないとか、実用船が現実的となった時点で安全審査官の新設を考えるとか、全員兼任で予算の裏づけのない安全対策室を新設するなど、二転三転し、もともと運輸省側は、今回の法改正の必要性を感じていなかったことが明らかになってきたのであります。
第四の反対理由は、通産省や運輸省による実質的な安全審査をダブルチェックする原子力安全委員会には行政権限が付与されず、ダブルチェック義務の範囲も法文上は基本設計に限られたものであって、通産省、運輸省の安全審査に対してきわめて従属的な地位しか与えられていないことであります。
このように、政府原案は「むつ」事故の教訓を何ら生かしていないし、安全審査も実質的には開発官庁が実施することによって、実際上簡略化、スピード化することは明らかであり、より一層安全を軽視し、開発を優先するものと言うほかありません。
審議の中できわめて手回しのよい通産省と何らの新しい構想も用意されていなかった運輸省との対照的な食い違いが表面化したことについて、運輸大臣が通産は通産、運輸は運輸と答えるなど一つの法改正に当たって政府に統一した方針のない無責任さがさらけ出された以上、政府みずから本改正案を撤回し、初心に返って検討し直すべきが政府のとるべき正しい態度であることを重ねて強調するものです。
次に、修正案についてであります。
修正案は、原子力安全委員会の若干の体制補充や業務範囲拡大措置をうたってはいますが、安全審査の一切の実権を通産、運輸の開発官庁が奪い取った上でこの程度の修正を加えたところで原案と五十歩百歩、安全審査の実体に何ら具体的な変化を与えるものではなく、反対であります。
なお、参考人を招き、貴重な意見の開陳を求めながら、その意見を法案審議に反映させる時間的余裕もとらず採決に至ったとことに対し、強く抗議の意を表明するものであります。
以上、日本共産党・革新共同を代表しての反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/181
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182・岡本富夫
○岡本委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/182
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183・岡本富夫
○岡本委員長 これより原子力基本法等の一部を改正する法律案及び小沢一郎君外一名提出の修正案の採決に入ります。
まず、小沢一郎君外一名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/183
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184・岡本富夫
○岡本委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除いて、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/184
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185・岡本富夫
○岡本委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/185
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186・岡本富夫
○岡本委員長 この際、日野市朗君外五名から、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/186
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187・日野市朗
○日野委員 原子力基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの提案者を代表し、その趣旨を説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
原子力基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、原子力の開発利用に対する国民の信頼を確保し、その理解と協力を得るため、原子力の開発利用における安全の確保に万全の措置を講ずるとともに、本法施行にあたり、特に次の諸点について遺憾なきを期すべきである。
一、原子力安全委員会の委員は、その任務の重要性にかんがみ、専門的かつ大局的な見地から判断を行いうる権威者をもって、これにあてること。
二、第一次安全審査を行う行政庁の安全審査に係る顧問等の選任にあたっては、原子力安全委員会によるダブルチェックの本旨を損うことのないよう十分配慮して人選すること。
三、原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を十分に尊重しなければならないという規定の趣旨にかんがみ、原子炉の設置許可等に際しては、両委員会の意見を守って行政処分等を行うこと。
四、原子力安全委員会の運営にあたっては、その設置の趣旨並びに報告及び協力要求等の規定の趣旨にかんがみ、関係行政機関が行う原子炉の設置許可以降の規制全般についても必要に応じ原子力安全委員会が調査、審議を行うものとすること。
なお、関係行政機関に求める協力には、実地調査への協力を含むものとすること。
五、原子力安全委員会及び原子炉安全専門審査会等の下部組織については、今後の情勢の推移に応じ、その拡充に努めること。
以上でございます。
本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑並びに案文を通じまして十分御理解願えることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/187
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188・岡本富夫
○岡本委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/188
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189・岡本富夫
○岡本委員長 起立総員。よって、本案については、日野市朗君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/189
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190・岡本富夫
○岡本委員長 なお、お諮りいたします。
ただいま修正議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/190
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191・岡本富夫
○岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/191
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192・岡本富夫
○岡本委員長 この際、熊谷国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。熊谷国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/192
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193・熊谷太三郎
○熊谷国務大臣 ただいま原子力基本法等の一部を改正する法律案につきまして、きわめて慎重に御審議の上、一部修正を含めまして御可決いただきましたことは、まことに感謝にたえない次第でございます。
私といたしましては、ただいま議決をいただきました附帯決議の趣旨を十分に尊重いたしますとともに、本委員会において各委員から御提示のありました貴重な御意見等にも十分配意いたしまして、この上とも原子力行政の遂行に全力を尽くしてまいる所存でございます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/193
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194・岡本富夫
○岡本委員長 次回は、明二十日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108403913X00919780419/194
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