1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年二月二十八日(火曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 大村 襄治君
理事 小泉純一郎君 理事 野田 毅君
理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君
理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君
理事 坂口 力君 理事 永末 英一君
愛知 和男君 池田 行彦君
宇野 宗佑君 小渕 恵三君
大石 千八君 後藤田正晴君
佐野 嘉吉君 林 大幹君
原田 憲君 森 美秀君
山崎武三郎君 山中 貞則君
伊藤 茂君 池端 清一君
大島 弘君 川口 大助君
沢田 広君 山田 耻目君
貝沼 次郎君 宮地 正介君
高橋 高望君 荒木 宏君
永原 稔君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 村山 達雄君
出席政府委員
大蔵政務次官 稲村 利幸君
大蔵大臣官房審
議官 米里 恕君
大蔵省理財局長 田中 敬君
大蔵省証券局長 山内 宏君
国税庁次長 谷口 昇君
国税庁直税部長 水口 昭君
委員外の出席者
大蔵省銀行局銀
行課長 吉田 正輝君
大蔵委員会調査
室長 葉林 勇樹君
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委員の異動
二月二十七日
辞任 補欠選任
沢田 広君 井上 普方君
只松 祐治君 川俣健二郎君
貝沼 次郎君 広沢 直樹君
永原 稔君 大原 一三君
同日
辞任 補欠選任
井上 普方君 沢田 広君
川俣健二郎君 只松 祐治君
広沢 直樹君 貝沼 次郎君
大原 一三君 永原 稔君
同月二十八日
辞任 補欠選任
貝沼 次郎君 広沢 直樹君
小平 忠君 高橋 高望君
同日
辞任 補欠選任
高橋 高望君 小平 忠君
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二月二十七日
石油税新設に関する請願(宇野宗佑君紹介)(
第一四七三号)
同(上村千一郎君紹介)(第一四七四号)
同(大西正男君紹介)(第一四七五号)
同(奧野誠亮君紹介)(第一四七六号)
同(斉藤滋与史君紹介)(第一四七七号)
同(中島衛君紹介)(第一四七八号)
同(松野頼三君紹介)(第一四七九号)
同(伊東正義君紹介)(第一五二六号)
同(稲垣実男君紹介)(第一五二七号)
同(大村襄治君紹介)(第一五二八号)
同(片岡清一君紹介)(第一五二九号)
同(櫻内義雄君紹介)(第一五三〇号)
同(玉生孝久君紹介)(第一五三一号)
同(中山利生君紹介)(第一五三二号)
同(葉梨信行君紹介)(第一五三三号)
同(湯川宏君紹介)(第一五三四号)
同(鴨田宗一君紹介)(第一五七〇号)
同(上坂昇君紹介)(第一五七一号)
同(田中龍夫君紹介)(第一五七二号)
同(長谷川峻君紹介)(第一五七三号)
同(住栄作君紹介)(第一六〇二号)
同(高鳥修君紹介)(第一六〇三号)
同(丹羽喬四郎君紹介)(第一六〇四号)
同(羽田野忠文君紹介)(第一六〇五号)
同(長谷川四郎君紹介)(第一六〇六号)
同(渡辺美智雄君紹介)(第一六〇七号)
農林省農業技術研究所の跡地利用に関する請願
(依田実君紹介)(第一四八〇号)
不公平税制の是正等に関する請願(貝沼次郎君
紹介)(第一四八一号)
同(草川昭三君紹介)(第一四八二号)
同(草野威君紹介)(第一四八三号)
同外八件(土井たか子君紹介)(第一四八四
号)
同外一件(伏木和雄君紹介)(第一四八五号)
同(荒木宏君紹介)(第一五三五号)
同(井上一成君紹介)(第一五三六号)
同外二件(北山愛郎君紹介)(第一五三七号)
同(工藤晃君(共)紹介)(第一五三八号)
同(玉城栄一君紹介)(第一五三九号)
同(野口幸一君紹介)(第一五四〇号)
同(平林剛君紹介)(第一五四一号)
同(安井吉典君紹介)(第一五四二号)
同(伊賀定盛君紹介)(第一五六三号)
同(大島弘君紹介)(第一五六四号)
同外一件(川本敏美君紹介)(第一五六五号)
同(久保等君紹介)(第一五六六号)
同(小宮武喜君紹介)(第一五六七号)
同(日野市朗君紹介)(第一五六八号)
同(古川喜一君紹介)(第一五六九号)
同外二件(只松祐治君紹介)(第一六〇八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内
閣提出第四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/0
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001・大村襄治
○大村委員長 これより会議を開きます。
この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。
すなわち、国の会計、税制及び金融に関する件(設備投資の動向)について、来る三月七日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/1
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002・大村襄治
○大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/2
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003・大村襄治
○大村委員長 内閣提出、有価証券取引税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/3
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004・貝沼次郎
○貝沼委員 有価証券取引税法の一部を改正する法律案について質問いたします。
私は、この法律を読んでみまして、二十六条までしかありませんね、あとは附則。非常に短い法律でありましたので、本来なら逐条解釈していくのが本当かもしれませんが、時間がありませんのでそれはやりませんが、つらつら読んでみて思うことは、この法律はちょっと時代おくれのところがあるのじゃないかという感じなんですね。
と申しますのは、第一条「有価証券取引税の課税」というところがありますが、「この法律の施行地において有価証券の譲渡が行われたときは、この法律により、有価証券取引税を課する。」となっております。私の感じでは、「施行地」というのは、日本全体を見てこことこことここにこの法律を施行したいという場合に施行地を指定すると思うのですね。ところが、有価証券取引税は日本全土にわたって実は皆かけられるわけでありますから、なぜことさらここに「施行地」と言っておかなければならないのか。戦後ほんの二年や三年の間であれば、こういう言葉があっても私はおかしくはないような気がしますけれども、いま昭和五十三年になってなおかつ、この「施行地」という言葉を有価証券取引税法に置かなければならないのか、その理由はどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/4
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005・米里恕
○米里政府委員 御指摘の施行地でございますけれども、この法律は御承知のように、昭和二十八年にできました法律でございまして、当時の法律の書き方に従いまして、有価証券取引税の課税が及びます範囲内をここに明記したということでございまして、特に現在、この法律のこういう規定がありますために著しい不便があるというふうにも私ども思っておりませんので、特に改正を要しないということで現在に至っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/5
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006・貝沼次郎
○貝沼委員 いや、不便がないと言いますけれども、それじゃこの「施行地」というのはどこになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/6
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007・米里恕
○米里政府委員 有価証券取引税法の施行令の附則にございまして、当分の間、歯舞、色丹、国後、択捉島を除くということで規定がございます。したがいまして、基本的には本州、北海道、四国、九州、それからその付属の島を施行地といたしますが、その付属の島の中で、いま申し上げた歯舞、色丹、国後、択捉は除くというような規定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/7
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008・貝沼次郎
○貝沼委員 これは実は誤解を招くおそれがあるので私はいまわざわざ言っているわけであります。要するに、この歯舞群島、それから国後島、色丹島、択捉島ですね、これは日本の法律が及ばないということですか。日本の主権を放棄したととられたらどうなるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/8
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009・米里恕
○米里政府委員 特に主権を放棄したとか、そういったことをここに含んでおるのではございません。現状におきまして、日本全体ということで決めておりますけれども、なおこれらの地域につきましては当分の間、施行地外とするという取り扱いになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/9
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010・貝沼次郎
○貝沼委員 扱いになっていることはわかる。私はわかっているからいま聞いておるわけですよ。なぜ有価証券取引税が——できたときのいきさつもあるのかもしれませんが、たとえば憲法だとかあるいは刑法だとか、ほかの法律は一々こんなこと書いてないわけでしょう。要するに、法律ができたら日本全土全部通用するということは、これは当然なことじゃありませんか。なぜこの法律にこの四島は除くのですよとわざわざ書かなければならないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/10
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011・米里恕
○米里政府委員 御指摘の点でございますが、この法律ができました二十八年ごろの法律の規定は、別に有価証券取引税法だけではございませんで、入場税その他につきましても、すべてこういう書き方になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/11
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012・貝沼次郎
○貝沼委員 その当時のことは知っているのです。ですから、私が初め申し上げましたように、戦後のときであればまだしもということなのです。いまもう三十年もたって、そしてなおかつこんなものをくっつけておく。ほかの法律はどんどん直しておるのがずいぶんあるわけですね。
実は二十八年のときからこの四島が入っているわけではありませんよ。大臣よく御存じでしょうけれども、これは二十八年からではなしに、たしか三十一年の十二月から入っているのですよ。それはなぜかというと、日ソ共同宣言を受けて入っているのです。その前はここに書いてないのです、ここの部分は。小笠原であるとかあるいは沖繩であるとか、こういうところは書いてありますけれども、この北方領土については書いてないのです。それでその辺のいきさつもあるだろうと思うので——この法律を読む範囲においては誤解をされるおそれが十分にある。ほかの法律では一々断ってないものを、なぜこの法律とか入場税とか通行税とか、大蔵省関係のものだけがいまごろそんなものが残っておるのか、私は非常に不思議なんですね。むしろ刑法とか憲法の方が断るのがあたりまえじゃありませんか。それが断ってないのに、なぜ大蔵省の法律に断らなければならないのですか。明快な説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/12
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013・米里恕
○米里政府委員 御指摘のように、その後全文改正をいたしました法律につきましては、再検討の上、こういった特別な除外例を設けないというような形になっておりますので、今後もし有取法全体について再検討するという機会があれば、その際に検討するというような事項かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/13
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014・貝沼次郎
○貝沼委員 この法律には一部改正と書いてありますから、一部改正でそっちの方は見なかったのだと言うかもしれませんが、少なくとも一部改正であろうと何であろうと、改正という名前がついてきた場合には、法律全体が議論の対象になるわけであります。審議の対象になるわけであります。したがって、こういう紛らわしいものに対して明快な説明ができなければ私はまずいと思うのですよ。
ですから、この北方四島については「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言」というのが三十一年の十二月十二日に結ばれております。この中では、たとえば九項に「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。」というようなことがありまして、ここはこういう書き方になっておるものですから、わが国の立場としては、この歯舞群島、色丹島、国後、択捉と、こういうふうにわざわざ入れたんだろう。これは私の推測でありますけれども、北方四島というものは日本の古来の領土であるという主張を兼ねて当時は入れたんではないか、これは想像しているわけですよ。ところが、その辺の説明が全然そちらから出てこない。これはどういうことなんでしょうか。大臣、答弁いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/14
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015・村山達雄
○村山国務大臣 恐らくこれは部分改正ですから、いま審議官が言ったようなことにとどまったのではないかと思いますが、もう一つは、これはやはり一種の流通税といいますか、行為税でございます。したがって、事、税に関する問題でございますので、やはり実効性のない、行政権の及ばないというものについてもし貝沼さんのようなことになりますと、非常にアンビギュアスになって、やはり租税秩序という問題からどんなものであろうか。主権がどうであるかという問題と、それから税法でございますから、果たして納税義務があるのかないのか、これは単なる論議の問題を越えまして実効問題があるわけでございますので、恐らくその実効を考えて、これらの審議におきましても法制局は手をつけるべきではないという、これは私の想像でございますけれども、問題は租税という問題であるだけに実際の行政能力、そこを十分考えての配慮ではないか。これは私の想像でございますが、そういうことではないか、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/15
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016・貝沼次郎
○貝沼委員 いや大臣、大臣の理論でいきますと、所得税法にも書かなければならないです。法人税法にも書かなければいけない。その辺はどうですか、書いてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/16
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017・米里恕
○米里政府委員 法人税法、所得税法は全文改正いたしまして、その前には同様の規定があったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/17
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018・貝沼次郎
○貝沼委員 ですから、現在では書いてないわけでしょう。したがって、やはり適当な時期を見てこれは全文改正をする必要があると私は思いますね。ある法律はそういうことは一々断ってない、ある法律は断っておる、こういうことじゃ非常にまずいと思うのですね。したがって、すぐというわけにはいかないでしょうけれども、そういうことについての作業というものは私は進めておく必要があると思います。当時のいきさつを知っておる人はこれは読めるのです。ところが、当時のいきさつを知らない人は、何だ、これは結局歯舞群島、色丹島においてはソ連が行政権を当分やるのか、だから日本の法律は使わないという意味かというようなことで、だんだん主権と絡んだ問題が出てくる、こういうふうになると思うのです。そういう誤解があるといけませんので、私はこの際、本当はそういう点に対する明快な説明が事務局から当然出るものと期待しておったわけでありますけれども、余り十分ではなかったような気がいたします。その点のひとつ検討することを約束していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/18
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019・米里恕
○米里政府委員 今後、有価証券取引税法全文改正というような機会をとらえまして、御趣旨の点を十分含んで検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/19
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020・貝沼次郎
○貝沼委員 それから、有価証券取引税につきましては、先日の委員会でも大体議論が出ておったようでございますけれども、第十条の第一種甲、それから第二種甲ですね、それぞれ五〇%引き上げをやったわけでございますが、昨年の年末には大蔵省は、第一種、第二種、甲、乙ともに一律三倍引き上げるような報道が実は出ておったわけでございます。その当時は大蔵省としてはそう思っていたのかどうか、この点を確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/20
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021・米里恕
○米里政府委員 昨年年末に、ともに引き上げというようなお話でございますが、特にその段階で確定的な考え方が私どもとしてもあったわけではございません。新聞にはいろいろ憶測記事ということで出ておりましたけれども、いろいろ総合的に検討いたしました結果、今回は、提案しておりますような引き上げが最も適当であるという結論に達しましたので、こういう案でお願いしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/21
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022・貝沼次郎
○貝沼委員 要するに、初めの検討の段階で、甲だけではなく乙の方も引き上げを考慮しておったかどうかということが私は聞きたかったわけですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/22
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023・米里恕
○米里政府委員 その時期から考慮しておったということではございませんで、いろいろな幅広い検討を加えました結果、今回につきましては特に甲だけを引き上げさせていただく。と申しますのは、御案内のように現在、公社債市場の育成、ことに個人消化の促進ということが公共債の大量発行その他にも伴いまして非常に必要な時期になっておりますので、そういった点も勘案いたしまして、特に今回は乙は据え置くという結論に達したわけでございまして、その当時確定的にある段階ですべてを引き上げるというような案を持っていたわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/23
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024・貝沼次郎
○貝沼委員 甲の方が五〇%アップになったわけでありますが、いま乙の方を見送った、やらなかった理由について、公社債の発行を勘案してという言葉になっておりますが、これをもう少し具体的に説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/24
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025・米里恕
○米里政府委員 二つ主たる理由があろうかと思います。
第一点は、ただいま申し上げました公社債市場、特に大量の公共債発行という時代に伴いまして、できるだけこれは幅広く消化層の多様化というようなことで、個人の消化を大幅に進めてまいりたい、こういったような公社債市場育成という観点から、この際は特に公社債について引き上げするのは適当でないという理由でございます。
それから第二点は、株式と公社債との性格上の相違というようなものがあろうかと思います。これはもう先生よく御案内のとおりでございますが、株式につきましては、あくまでも会社経営に参加する、その参加によって利潤を分配されるといったような利潤証券的な性格があるわけでございますが、一方公社債の場合には、あくまでも確定利付債券である。そういったような意味合いから、こういった有価証券取引税のような取引に伴ってその背後の担税力というような観点から見まして、株式と公社債とはその性格的にかなり相違があるのではないだろうかというのが第二の理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/25
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026・貝沼次郎
○貝沼委員 二つ理由を述べられましたが、その初めの方の公社債市場の育成の問題が理由になっておりますが、これは端的に申しますと、日本の現在の公社債市場というものはまだ十分育っているという判断ではない、こういうふうなことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/26
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027・米里恕
○米里政府委員 公社債市場が十分育っているかどうかということから離れまして、現状におきましては、さらに一層公社債市場の育成を図るというために総合的な政策、税をも含めまして総合的な政策をとることがなお肝要ではないかという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/27
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028・貝沼次郎
○貝沼委員 その考え方はわかります。それじゃ後で私は公社債市場育成の問題をちょっとやりたいと思っておりますので、この際聞いておきたいと思いますが、政府は、日本の現在の公社債市場は十分育っておるというふうな判断なんでしょうか、それともそうではないという判断なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/28
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029・山内宏
○山内政府委員 非常に概括的に申し上げますならば、発展途上と申しますか、前提条件が非常に激動いたしつつあります。特に国債、公共債を中心といたしまして市場が非常に拡大しつつある途中でございますから、その経過に応じて逐次整備育成がなされつつある途中の段階というふうに心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/29
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030・貝沼次郎
○貝沼委員 それで、この有価証券取引税の問題でありますが、五十二年十月の「今後の税制のあり方についての答申」、税制調査会の答申でありますが、ここでは「有価証券取引税については、有価証券譲渡所得課税との関連、資本市場に与える影響等をも慎重に考慮して、その負担水準を検討する必要があるとの意見があったが、現行の負担水準からみて、なおその引上げを検討する余地があると考える。」こういうふうな書き方になっていますね。この書き方というのは非常に強い書き方であって、積極的な引き上げ論であろうと私は判断いたします。と申しますのは、この答申の中でいろいろなところで引き上げの議論が出ておるわけでありますけれども、たとえば所得税及び個人住民税の場合でもどういう書き方になっているかというと、「所得税等に負担の増加を求める余地は十分あると認められる。」とか、あるいは法人税及び法人住民税の場合は、「今後適当な機会をとらえて法人税に若干の負担の増加を求める余地があると考える。」あるいは法人住民税の均等割りというところでは、「法人住民税の均等割については、税率区分の検討等も含め今後も負担を強化する方向で検討すべきである。」というような書き方で、いろいろニュアンスが違うわけでありますけれども、中でもこの有価証券取引税についての引き上げの言葉というのは非常に強く出ております。
したがって、こういうようなところから考えると、私は、五〇%などというものは恐らく税制調査会でも予想しておったものではないのではないか、むしろ初め観測記事で出ておりましたように、三倍ぐらいのアップが恐らく頭にあったのではないかと想像されるわけであります。こういった書き方の言葉のところからでありますけれども、本当は五〇%で大蔵省は十分だと考えておられるのか、それとも不満だけれどもこれくらいだと考えておられるのか、それともこれでも上げ過ぎだと思っておられるのか、その辺の三つのうちどれに入るでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/30
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031・米里恕
○米里政府委員 先ほど御指摘のございました去年の十月の答申でございますが、これはいわば中期答申という性格でございまして、今後の税制のあり方を検討するに際しまして、財政の中期的な展望をも踏まえまして、現行税制あるいは新税を含めまして全般的に検討しました結果、どの税がたとえば現行税制で負担増加の余地があるかということを検討したわけでございます。そういったような観点で、御指摘のようにかなり軒並みの各税について負担増加の余地がなおあるのではないか、現状でもうぎりぎりいっぱいだということではないんじゃないかというような書き方になっておるわけでございます。
それで、今回五〇%引き上げということを御提案申し上げておるわけでございますが、これにつきましては御承知のように、前回の改正が昭和四十八年度税制改正のときでございまして、そのときと同じ幅の引き上げということをお願いしておるわけでございます。一般の方が譲渡されるというような第二種の甲につきましては、四十八年度改正では万分の十五から万分の三十に引き上げさせていただいた。これを今回は万分の三十から万分の四十五と幅においては同様である。ただ倍率におきましては、前回は二倍、今回は五割アップということになっておりますが、前回と今回でかなり証券市場をめぐる環境も異なっておるということが言えるかと思います。
御案内のように、前回のときは過剰流動性というような、いわばそういう時代でございまして、かなり証券市場が活発に動いておったということであろうかと思いますが、今回は必ずしもそういう状態にない。また、証券会社の決算は非常に好調だというように新聞にも書かれておりますけれども、これは主として四社を中心とする大証券である。中小証券はかなり苦しい。それから、四十八年と今回を比較しまして、もろもろの証券市場をめぐる指標から見ましても、そんなに急速に情勢が変わっておるというようなわけではない。売買高その他を見まして、四十八年度とそう大きな変化はない。あわせまして、この有価証券取引税というのは、御承知のような定率課税でございますから、したがって、本来ならば取引が増大した分だけ自動的にふえてまいる、こういった税収になるわけでございます。そういったことを彼此勘案いたしまして、今回万分の三十というものを万分の四十五にお願いしたいということで、総合的判断の上で決めさせていただいたわけで、私どもとしてはこれが最も妥当なものだというふうに考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/31
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032・貝沼次郎
○貝沼委員 まあそういう答弁になるでしょうけれども、私は妥当ではない、こう考えるのですね。これは少ない。むしろこれは三倍程度に引き上げるべきである。これはわが党も前から、あるいは野党の皆さんも大体これについて主張しておるわけでありますが、やはり現在のような五〇%程度では、これは少ないと思います。これは主張でありますから、主張いたしておきます。
それからもう一点でありますが、この有価証券取引税になったいきさつなんですけれども、これのできた歴史的な経過という問題からこの前の当委員会の質問でもあったのでありますが、要するに譲渡所得課税から、非常に困難性があったので、この有価証券取引税に移行したいきさつがあると思いますが、そのときの理由は、この前もずいぶん出ておりましたから、私はくどく申し上げたいとは思いません。しかし、そういうようないきさつを踏まえておる以上、やはりキャピタルゲインについての何らかのかかわり合いというものは消えておらないのじゃないかと思うのですね。
ところが、この有価証券取引税というのは、取引をするその背後の担税力に着目をして課税するとなっておりますので、その取引をして、いわゆるキャピタルゲインであってもあるいはロスであってもどっちにしたって損得に関係なく、これは課税されるようになっておるわけでございます。こういうような点を考えますと、やはりここについて何らかの考える余地はないのかということなんですね。ただ取引をしただけで課税されるということは、それは余りにも機械的ではないだろうか。まあ流通税でありますから、それが一つの宿命でもありますけれども、そこに何らかの考える余地はないのか、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/32
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033・米里恕
○米里政府委員 御指摘のように、この税、有価証券取引税は流通税でございますから、流通税の性格としてできるだけ機械的に、一定の取引があったという事実のみをとらえまして課税さしていただくということになっておるわけでございます。キャピタルゲイン課税につきましては、キャピタルゲインということでございますから、有価証券取引税とはかなり性格も違っておる。いきさつ上は、御指摘のような二十八年成立のいきさつがあったわけでございますが、税の性格としては、あくまでも譲渡益課税と、それから一定の取引にのみ形式的に着目した流通税というものは異なっておるかと思います。
それで、キャピタルゲイン課税につきましては、政府税制調査会の答申におきましても、できるだけ広く課税対象に取り込んでいくことが望ましいという考え方が示されておるわけでございまして、私どもも、こういった税負担の公平という観点から見まして、現在の継続的大量取引というものにつきましてより広く課税対象に取り込んでいくことが望ましいというように考えております。そういった方向で、与えられた条件のもとでできるだけそういった広い課税対象の取り込みということができますように検討しておるわけでございますけれども、これは技術的な問題もございまして、一挙にキャピタルゲイン課税を実施するというような条件にございませんので、環境整備、執行体制の整備ということにいま鋭意努めておるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/33
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034・貝沼次郎
○貝沼委員 一挙にキャピタルゲインまで行ってしまいましたけれども、要するに、取引をして損をする人あるいは得をする人関係なく有価証券取引税というものはかかるようになっております。ところが、それができたいきさつから考えると、やはり得をした人、損をした人は何らかの考えがあってしかるべきでありませんか、それがなければむしろ不公平論が出てくる可能性だってあるんですよということを申し上げたつもりであったわけです。
それで、いま答弁がありましたけれども、税制調査会の答申にあるように、キャピタルゲインの課税というものを本格的に実現をしなければならない時期に来ておるのではないか。この大蔵委員会は、この前の四十八年のときにもこの議論は相当やられておったようでありまして、私は議事録などを見ましてずいぶんその議論があったことを見ておるわけであります。実際にここに持ってきておりますから、具体的に出せばいいのでしょうけれども、そのときも実は検討いたしますということを言っておるわけですね。ところが、その後五年たっていままた検討なんですね。大蔵省というのは、検討という言葉を使ったら大体何年くらい検討なさるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/34
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035・米里恕
○米里政府委員 キャピタルゲイン課税につきましては、技術的にいろいろむずかしい問題がございます。御承知のように、非常に大量のものが転々流通しておる、そういった有価証券取引の実態をどういうふうに把握していくか。たとえば取引される方の住所氏名の把握、あるいはまた名寄せをどう行うか。さらにはまた、取得原価、キャピタルゲインでございますから取得原価というものをまずつかまえなければならないけれども、そういったようなものをどういうふうにして把握していくか。さらにまた、損失が出た場合に一体どういうふうに考えていくかというようないろいろな問題がございます。こういった問題を十分体制整備ができない間に実施するということになりますと、かえって把握のアンバランスということが生じまして、新しい不公平あるいは混乱を招くというようなことになります。そういった意味合いから、鋭意私どもとしては検討をしております。何とか具体的かつ実施可能な改善策によって、より広く課税対象を取り込みたいというように考えておりますが、残念ながらまだ現在結論を得るには至ってないわけでございます。
なお、あわせまして、今回は有価証券取引税法の改正ということで税率のアップをお願いしておるわけでございまして、キャピタルゲイン課税と取引税とは直接関係はございませんけれども、いずれも証券市場あるいは資本市場に非常に大きな影響を及ぼすという点がございますので、そういった資本市場に対する影響ということも勘案いたしまして、今回はキャピタルゲイン課税というものは見送ったわけでございます。ただ、私どもとしましては御指摘のように、何らかの方法で具体策を講じまして、できるだけ課税の公平を確保するという意味合いからも、できるだけ早期にこの結論を出して執行体制を整備いたしまして、キャピタルゲイン課税の強化を今後図ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/35
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036・貝沼次郎
○貝沼委員 いろいろおっしゃいましたけれども、要するに大蔵省の説明は、有価証券取引税で損得はどうかというと、いや、キャピタルゲインという問題はそちらの方で検討しなければなりません、キャピタルゲインの話になると、有価証券取引税を上げたのだから、こう言う。性格は全然違うのでしょう。ですから、そう余り使い分けをしないで、やはりキャピタルゲインはキャピタルゲインでまじめに取り組んだ方が、私はそう説明された方が聞く方も聞きやすいのじゃないかと思うのです。
そこで、先ほど一体何年くらい検討なさるのかということを私は聞いておるわけですが、現在提案した理由を説明なされて終わりのようですけれども、いつまでこれは検討なさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/36
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037・米里恕
○米里政府委員 いつまでという完全なスケジュールで申し上げることはできませんけれども、できるだけ早期に強化していくという覚悟で私どもも検討させていただいておるということで御勘弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/37
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038・貝沼次郎
○貝沼委員 よくわかりませんけれども、もうそれ以上追ってもそれしか出ないと思いますので私は言いませんが、それではできるだけ早期にお願いいたします。
それから、非課税限度の問題ですね。たとえば事業所得的考え方で、年間売買五十回以上、売買総数二十万株以上というものがありますけれども、これは決めてはあるけれども、果たしてこれがどういう効果を上げておるのかということが非常に疑問なわけでありますが、たとえば昭和五十一年でこれに該当したものはどれくらいあるかおわかりなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/38
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039・水口昭
○水口政府委員 ただいまの年間五十回、二十万株以上の譲渡課税、年間幾らかというお話でございますが、実は国税庁の方ではいろいろ税務統計をとっておりますが、それは所得の種類別に分けまして、事業所得は幾らであるとか雑所得は幾らであるとか、そういうふうな統計はございますが、この株の謙渡の部分だけを取り出して幾らという統計はございません。したがって、正確にお答えいたしかねますが、しかし、われわれ部内の検討会等でいろいろ聞きますと、国税庁からもそういうものを十分把握するようにという指示はいたしておりますし、いろいろ実績はあるようでございますが、額が幾らであるかということをお答えすることはむずかしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/39
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040・貝沼次郎
○貝沼委員 これも四十八年にいまと同じようにわからないと言っておるわけですね。制度をつくって、それが果たして働いているかどうかチェックする機能ができないということは、これは制度をつくる意味はあるのでしょうか、どうなんでしょうか。私は、やはり法律をつくってこういうふうな非課税限度を決めましたというのだったら、それが果たしてどれだけの効き目があったのか、やはりチェックするくらいのことは当然やらなければならぬのじゃないかと思います。したがって、これがいいか悪いかという議論も、悪いと言ってもいいと言っても、それに反論するだけのものは恐らく事務当局には何もないということですね。こういうことではお互いにまずいと思いますので、その辺はきちっと今後何らかの方法でつかまえなければならぬと思います。
そこで、この非課税限度のところ、大蔵省は今後ずっとこれで行こうとなさるのか、それともこれを変えようというお考えがあるのか。私は、これは変えなければならぬと思いますけれども、変えようとするお考えがあるのか、その辺についての見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/40
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041・米里恕
○米里政府委員 御指摘の二十万株、五十回の話でございますが、先ほど申し上げましたように、キャピタルゲイン課税につきまして私どもといたしましても、いろいろ国税庁を含めまして検討しておりますし、また証券業界におきましても、いかにしてそういった執行体制を整備するか、そのためにはどういう方法が一番いいのかということを総合的に検討しておるわけでございます。二十万株、五十回という関係につきましても、こういった問題をどうするかということも含めまして検討しておる段階でございます。
現在の段階で二十万株、五十回がどうなるかということは、最終的には申し上げられませんけれども、こういった二十万株、五十回も含めまして検討しておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/41
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042・貝沼次郎
○貝沼委員 これについては、たとえば日本税理士会連合会とかいろいろなところから意見が出ておるようでありますし、それから私どもといたしましても、大体三分の一程度にこれは縮小すべきであるという考え方を持っておりますので、この点を主張しておきたいと思います。
それから、時間が大分なくなってきましたので、最後に伺っておきたいと思います。公社債市場の育成という問題、詳しくは後で国債の問題のときにやりたいと思いますけれども、そのさわりだけ聞いておきたいと思います。
先ほどの答弁では、公社債市場は必ずしもまだ育ち切っておらない、むしろいま発展途上であるという答弁でありました。今回証券取引審議会基本問題委員会から「望ましい公社債市場の在り方」に関する報告書というのが提出されておるわけでありますが、これにはいろいろな斬新な意見が出ております。たとえば国債発行に公募入札制を導入して市場実勢との乖離をなくする、あるいは事業債発行について、質的、量的に人為的な調整をしてきた起債会を廃止し、発行企業の格づけだけを行う複数の第三者機関を設ける、あるいは償還期間など各種債券の多様化が必要で、その一環として無担保社債を条件つきで認めるなど、こういういろんな提案がなされておるわけでございます。
こういう具体的な提案がなされておりますが、これについて大蔵省はどのように受けとめておられるのか、今後こういうものを具体化するお考えはあるのかどうか、この点について伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/42
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043・山内宏
○山内政府委員 幾つかお尋ねがございましたが、まず、そのうちの起債会の問題についてお答え申し上げます。
起債会につきましては、基本的には、わが国の公社債市場の機能がなお十分弾力的に作動いたし得ないような環境のもとにありまして、ある種の資金の流れに規制を加えるという趣旨から発したいわば自然発生的なシステムでございます。御指摘のように、起債会についてはある程度見直したらどうかという意見が出ております。この際起債会をたとえば廃止をすると仮定をいたしますならば、従来起債会が果たしてまいりました機能をどういうふうな形で今後代替をしていくかという問題を検討しなければならないわけでございます。
大きく分けますと、起債会は従来、一つは起債の量的調整、一つは格づけ基準、それからもう一つは質的調整と申しますか、適債基率、どういう銘柄が公社債市場において発行するのに適当であるかという基準の作成、そういった三つのものの機能を営んでおったと考えるわけでございます。
その中で、まずその量的調整の問題につきましては、現在のような比較的市場が緩んでおります時期におきましては、起債会においてもほとんどその点については関与いたしておりません。ただ今後におきまして、一般的にはこういう大勢が続きましても、ごく一時的な金融市場の調整、量的な調整をする必要がないのかどうか。その場合にあくまでも、オープン・マーケット・オペレーションといったような報告書に記載されておりますような正統的手段だけで十分なのか、あるいは何らかの形での、さらにつけ加えての、起債会とは申しませんが、そういう形での別途の制御装置が必要かどうかという問題が残ります。
それから格づけの問題につきましては、やはり指摘をしてございますように、なるべく早い時期に客観的な権威のあるものができてくれることは非常に望ましいことでありますが、そういう意味でわれわれといたしましても、できるだけそういうふうな環境ができ上がりますことについて助言なり協力なりをいたしたいというふうに考えますけれども、基本的には、こういった格づけ機関というのは民間の機関であるべきでありますし、それに対して政府が強い干渉を加えるというのは、逆に非常にいろいろ弊害が出てくることがございます。そういう意味で、そういった情勢が次第に大きくなってくるのを期待をしなければならぬ。ただ、報告書にも書いてございますように、諸外国におきましても、それが信頼のあるものとして定着をいたしますまでにはかなりの時間を要するという状態にございます。その辺のいわば時間的ブランクをどう考えるかという問題がございます。
それから三番目に、適債基準の問題でございますが、これにつきましても、報告書でも指摘をいたしておりますように、やはり投資家保護の観点から何らかの質的選別を行うための方策を講ずることも必要ではないかというふうに指摘をされております。私どもも、行政の最低必要なる活動といたしまして、非常に不適当な債券が市場に出回って、それによって善意の投資家が損をするというふうなことはできるだけ防止をいたす必要がございます。そういう観点から、やはり何らかの意味での質的調整はぜひ必要か、こういうふうに考えます。
そういうふうな点がございますので、御質問の御趣旨はまことにそのとおりと思いますけれども、いま申しましたような形の代替機能が十分育ちますまでの期間をとりながら、短兵急な改正は十分注意をしてまいらなければならぬというふうに考えます。
それからその次に、無担保債の御質問がございましたが、この点につきましては報告書におきましても、御指摘のとおり、ニーズに応じた債券の多様化を図ることが基本であり、有担保原則を固守すべきではないというふうには述べておりますが、それと同時に、真に財務内容のよい企業を選別すること、及び財務制限条項など担保権の設定にかわる有効な手段について工夫をこらすこと、こういったことによって十分投資家の保護を図りなさいというふうに指摘をしてございます。
後段の条件といいますか、投資家保護のための手当て、これが実は言うはやさしいわけでございますけれども、実質的には非常にむずかしい問題でございます。その辺のところ、行政当局としては、かなり具体的にそういったシステムができるという保障がございませんと、ここでいたずらにあるいは単純に無担保債を学問どおりに導入をいたしました場合に、非常に問題が起こる可能性が強いというふうに考えますので、この辺も、いま申しましたような制御装置ができるかどうかというところに具体的にはかかってこようかと思います。無担保債の問題につきましては、特にそういう意味で、私どもとしては目下のところやや消極的でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/43
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044・田中敬
○田中(敬)政府委員 基本問題委員会の報告にもございますように、国債の発行条件の弾力化の一つの方法として入札制度ということが言われておりますが、確かに発行条件の弾力化のためには入札というのは一つの考え方ではあろうかと思います。現に欧米諸国におきましても、二年、三年あるいは五年というような短期、中期の国債では入札方式が採用されております。
これをいま直ちにわが国に持ってきました場合には、先ほどもお話がございましたように、公社債市場がまだ発展途上でございまして十分な発展を遂げておらない、あるいはまた入札に対する経験が浅いということから、この際、一時に大量の国債を入札に付します場合は公社債市場が混乱をして発行条件が悪くなる、ひいては財政負担が大きくなるというような問題もありますので、その点は慎重に考えなくてはならないと思っております。
ただ御承知のように、本年の一月に資金運用部資金の国債三千億を日銀を通しまして市中に売却をいたしました際に、初めて入札方式を採用いたしました。と同時に、日銀の方でも、オペレーションにつきまして、売りオペ、買いオペ双方とも今後入札方式によるという方針になっております。そういう意味で、これらを契機にして入札への経験、あるいは発行条件というか、金利に適応した取引というものができる環境を私どももだんだんつくってまいりたいと思っております。
そういうふうにいたしまして、公社債市場が整備され、入札に対する経験を積むまでは、やはり国債の引き受けというのはいましばらくの間は現行の手段、方式によらざるを得ない、入札方式については十分検討を進めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/44
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045・貝沼次郎
○貝沼委員 永大産業の事件もありましたし、また、政府は絶体安全という保証はないというような発言もあったようでありますから、そういう立場から先ほどの答弁を私は聞いておりましたが、ひとつ安心してこういう取引に参加できるように施策を講じていただきたい、こう思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/45
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046・大村襄治
○大村委員長 高橋高望君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/46
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047・高橋高望
○高橋委員 私は、ただいま直接の議題は有価証券取引税でございますけれども、すでに他の委員の方からいろいろとお尋ねのありました後でもあり、直接に有価証券取引税の対象としてのお尋ねを少々抑えさしていただいて、証券業のあり方、証券行政のあり方について、一、二お尋ねをしてみたい、そのように考えます。
最初にお尋ねしたいことは、時価発行増資に対する証券行政の姿勢でございます。
まずお尋ねいたしますけれども、ただいま大変な問題になっております永大産業が過去行った三回の時価発行によって得たプレミアム額というのは総計で幾らになっておりますか。ついでに、永大産業が行った日産農林の株の買い占めによる差益はどれぐらいあったか、この二つについてまずお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/47
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048・山内宏
○山内政府委員 細部が必要であれば改めて申し上げますが、約二百億でございます、プレミアムは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/48
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049・高橋高望
○高橋委員 証券会社がこの三回の時価発行で得た引き受け手数料は、証券界としてどれぐらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/49
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050・山内宏
○山内政府委員 約六億弱でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/50
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051・高橋高望
○高橋委員 大変に多額なお金が集められたかと思います。
ここでちょっと横道へそれますけれども、この日産農林の株を買い占めたときにある仕手戦が行われて、途中で当時の永大の責任者であった深尾さんが、自分の考えていたほどまでのお金がかせげないうちにやむを得ず仲介という形で第一勧銀に買い取ってもらって、そして第一勧銀の責任ではめ込んだかと聞いておりますけれども、こういう形をとった場合には、例の有価証券の譲渡所得に対する取り扱いというものはどんなふうに処理なさいましたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/51
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052・米里恕
○米里政府委員 御指摘の点、具体的に十分私は承知いたしておりません。具体的なケースを見ないと何とも申せないわけでございますが、先ほど来お話が出ておりますように、有価証券譲渡益に対します課税、二十万株、五十回以上というものに該当するかどうかということで課税の可否が分かれるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/52
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053・高橋高望
○高橋委員 審議官、私がお尋ねしたいことはそうではなくて、私が申し上げるのは、第一勧銀さんという仲介者があった場合には、例の有価証券の譲渡所得に関する取り決めといいましょうか御指導の方針、それに対して仲介者が一回入ってしまった場合にはどういうふうな取り扱いをなさるのかということを伺いたいのです。仲介者が入った場合です。
あれは特定の株をどんどん買い集めていって、発行法人に対して買い戻させたときには対象外になりますね。こういうふうに仮にも銀行などが一回仲介として入ってしまった場合には、これは免れるのではないですか。逆に言えば、税金上は逃れられるような仕組みになっているのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/53
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054・米里恕
○米里政府委員 法人の場合ですと、当然法人の収益に上がってまいりますから、法人税の課税の対象になります。個人が関係しております場合には、実態を見てみませんと、いまにわかに申し上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/54
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055・高橋高望
○高橋委員 それでは、別の場所で私に教えてください。お願いしておきます。
それで、この時価発行増資に伴って自主ルールというか、お互いの約束事みたいなことを行政指導でなさっておられる。それで、たとえば無償交付をしろとか、その他のいろいろなお話し合いがあろうかと思いますけれども、この永大が先ほど申し上げた百八十億から百九十億——恐らく日産農林の株では十億以上の差益が出ていると私は思いますから、百八十億から百九十億ぐらいのその差益に対して、以後、どれほどの株主還元をなさいましたか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/55
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056・山内宏
○山内政府委員 一六・四%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/56
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057・高橋高望
○高橋委員 一六・四%という率は、本来証券局がまあまあ認めていらっしゃるというか、内々として承認をしていらっしゃる自主ルールと照らし合わせたときに、どのような立場にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/57
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058・山内宏
○山内政府委員 三回の増資をやりました時期は、四十四年から四十七年にまたがっております。それで、その期間におきますところのその当時の自主ルールによりますと、いま御指摘のようなそういう還元の規定はございません。したがいまして、その三回、つまり四十七年末までの間、還元の自主ルールがまだない時期に増資いたしましたものに対しまして、先ほど申し上げましたように一六%余りの還元をいたしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/58
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059・高橋高望
○高橋委員 それでは、これは法律の遡及せずということと同じで、四十七年度までの分についてはこの適用を受けてないから、だからこれは野放しにされている、こういうふうに解釈してよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/59
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060・山内宏
○山内政府委員 すでに発行をいたしましたものにつきまして、自主ルールがさかのぼって及ぶということはないわけでございます。ただ自後、増資をいたしたいというときには、いままでに発行したものに対して新しい自主ルールに照らしてみていいかどうかということを判定いたすわけでございます。ところが、永大産業の場合は、増資は四十七年を最後といたしまして、それ以後やっておりません。もしそれ以後、たとえば今日のああいう状態に至ります前に増資という問題が起こりまするならば、そのときまでに現在のルールでありますところの二割還元が行われているかどうかということを判定いたしまして、今回申し出の増資を認めるかどうか、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/60
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061・高橋高望
○高橋委員 お話はその時点では理解いたします。ところが最近、現在あるこの自主ルールの展開が依然として不十分のように思われることがたくさんあると思うのです。平ったく言えば野放しにされているんじゃないか。その点では、皆様方の先輩でもあり、私も大変尊敬している、現在東証の理事長をやっていらっしゃる谷村さんが、昨年一月にどこかの講演会で、時価発行についての経営者に対する戒めを述べていらっしゃる。私は実は大蔵当局からその小冊子をちょうだいしているのですけれども、あのお考え方がその後の証券行政の時価発行増資に対する中に何にも盛り込まれてない、一つも展開がされてないように思いますけれども、その辺はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/61
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062・山内宏
○山内政府委員 私は、理事長のお書きになったその書物についていま十分存じておりませんが、谷村理事長の持論から申し上げまするならば、恐らく還元ルールの徹底ということでなかろうかと思います。そういう意味から申しますと、先ほど来申しておりますように、還元ルールというのは、何回かの自主ルールの改正の都度明確化をしてまいりまして、現在のところは永大に、次回増資のときまでに必ず二〇%は還元してくださいよということになってございます。その辺のところを、現実の発行に際しての引き受け審査の段階できちっと徹底をしてやるということを、今後も引き続きやっていくべきであろうというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/62
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063・高橋高望
○高橋委員 局長が御存じないのでは仕方ございませんけれども、直接そうおっしゃっているんじゃないんですね。もう十分御承知だと思うのですが、「時価発行で集めたお金のうち、額面の五十円分は資本に組み入れますが、あとのプレミアム部分は資本準備金として資本に組み入れません。そしてこのプレミアム分はコストの安い金であるとか、ひどいのになるとただの金であるとか、ひところはそんな考え方をする向きもありました。内部に留保したものも、ただの金であるというような考え方がとかく一般の風潮のようです。」こういうことをおっしゃっておられるわけです。そして結論としては「五十円だけは株主のものだけれども、あとの残り、これは株主のものじゃないというような考え方では、とうてい自己資本の充実もできなければ、国民の蓄積を株式という形で企業が集めてくるというようなことにはいかないと思います。」こうおっしゃっておられるわけですね。
だから、その立場に立ちますと、現在御展開の自主ルール、中身の一つ一つは省かせていただきますけれども、その徹底方というものが、今度の事態など考えた上で必要のように私は思いますけれども、局長、その辺いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/63
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064・山内宏
○山内政府委員 確かにいま御指摘のとおり、プレミアムというものに対する物の考え方、特に経営者の一部における物の考え方は、自分が勝手にかせいできた金、株主とは直接関係がなくて、何と申しますか、会社自身の一時的な利得というふうに考えがちな傾向があることは事実でございます。谷村理事長の御指摘も、恐らくそういう点についての経営者の物の考え方に対する警告であろうかというふうに考えますし、それの裏側として、先ほど来申しております引き受け証券の側の自己規制があるということでございます。発行者側とそれから引き受け証券側と両々相まって、いま御指摘のような物の考え方に次第に徹底していかなければならぬということは、御指摘のとおりであろうと思いますが、そのためにも、片や証券行政の及びます範囲内では、引き受け証券会社に対する自主ルールの徹底を進めてまいる。片や発行会社に対しましては、これはちょっと証券行政の直接手の届くところではございませんけれども、いまの理事長の発言にもありますような形で次第にその教育を進めていくという形で、両々相まって進歩してまいるべきものかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/64
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065・高橋高望
○高橋委員 大臣もすでにこの問題は十分御承知のことと思いますし、過去当委員会あるいはその他の場所で時価発行増資に対する問題というのは審議がずいぶん重ねられてきたと思います。ところが、現実は同じことの繰り返しで、日本熱学のときに生々しく経験し、そのまま何も改善されないというか、行政として手が打たれないままに今度の永大の問題が引き起こってきた。こういうことに対して大臣、責任のあるお立場から何か御発言ございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/65
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066・山内宏
○山内政府委員 ちょっとその前に事実問題で……。
何も手を加えないというのはちょっと事実と違っておりまして、五十一年の十月から、先ほど申しましたように二〇%環元ルールというのが明確に数字化された。それまでに逐次そういう物の考え方が、三回ほど自主ルールの改正がございますが、充実をしてまいりまして、具体的に数字を示しましたのがその時期ということでございまして、日本熱学以後も着実に改善の努力をしておるという事実上の問題だけは申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/66
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067・村山達雄
○村山国務大臣 私も、この問題は非常にむずかしい問題だと思うわけでございます。
一つは、時価発行というものは、プレミアムを通じまして自己資本の充実に少なくともつながる契機はあるわけでございますし、一方、それが余りありますと、株主の利益を害するわけでございますので、そこで自主ルールのようなものができると思いますが、また別な面が一つあるんじゃないか。と申しますのは、いま高橋さん御指摘のように、経営者の方は、プレミアムはこれは株主のものでなくて自分たちがかせいだものだということで、つい安易に使いたがるという側面が一方あると思うのです。それから他方今度は、時価発行に応じた株主の方で言いますと、利回りはほとんどゼロに近いわけでございます。目的は何かというと、将来値上がりだけが出てくるわけでございます。われわれもいろんな例を知っておりますが、五十円でもって何か三千何百円という時価発行をやったというのを聞いておりまして、投資家は一体何をねらっているんだろうか。それから時価発行をした側は、非常にわれわれは利益を得た、こういう感覚、このうらはらになっているわけでございます。この辺がなかなか非常にむずかしいわけでございまして、やはりいま基本的には、投資家に株式というものに対する知識というものを本当に持ってもらわなければいかぬ。最後は自分の判断でやるよりしようがないわけでございますけれども、やはり全体の投資についての知識、それから、ディスクロージャーはもちろんの話でありますけれども、果たしてそんなに値上がりがするものなのかどうなのか、その辺のことも大事だと思いますし、それからまた、自己資本充実といっても旧株主の利益を阻害するわけでございますから、ここはおのずから限度があるのではなかろうか。
これはもう古くから論争されておりまして、われわれの先輩の池田総理なんかいうのは時価発行大反対論者でございまして、旧株主の利益を阻害するということを終始一貫言われておったのでございます。いろいろ見解の分かれるところと思いますけれども、それぞれのメリット、デメリットがありますので、われわれは、やはり投資家というものができるだけそういうことをよく知っておる、それからまた、経営者側のモラルといいますか、経営に対する社会責任というものをやはりだんだん醸成して——私は経済がこう進んでまいりますと、勢いそうならざるを得ない、またそういう考えを持たない経営というのは、やはり最後は私は失敗すると思うのでございますけれども、そういうふうに企業というものが、単に自己判断でやるとはいうものの、多くの取引先、多くの従業員、多くの株主を抱えておるわけでございますから、そこはやはり企業の一種の公共性と申しますか、そういったものを考えていくように全体的に持っていく、その辺に問題が非常な微妙な問題ではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/67
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068・高橋高望
○高橋委員 大臣おっしゃるとおりだと思うのです。ただ、国の行政というか、やはりわれわれの基本的な姿勢というのは、健全なる投資市場の育成という、そういうことが大きなたてまえになろうと思うのです。ですから、いわゆる投機家、これを対象に考えるよりも、一般投資家を中心に考える、そういう意味合いから、やはりプレミアムに対して何らかの、現在のいろいろの取り決めよりももう一つ足を運んだというか、先へ動いた姿勢をこの際とっていただきたい。いろいろ微妙な問題があることもわかります。ですけれども、基本はあくまでも健全なる投資市場の育成だ、これは金科玉条にしていらっしゃるのですから、これを果たす意味からも、一つ一つこの問題に取り組んでいただきたい、お願いを申し上げておきます。
続いて、きょうは時間の制限がございますので大変はしょるようでございますけれども、私は、具体的な今度の永大産業の会社更生法申請に至るまでの株価動向についてちょっと伺ってみたいと思う。
一口で言って、私、これは売り逃げの感じが非常にある、また、感じばかりでなしに現実がある、この辺について証券局として、いろいろどのようなことをなさったかということを私はちょっと伺ってみたいと思う。
それは、私この間予算委員会の一般質問でもお尋ねをしたのですけれども、この永大の問題というのは、ことしになってから急に起こったことじゃない、ずいぶんと前からこの永大についてはいろいろと再建策、と同時に、事後策が検討されていたと思われます。当然だと思う。私の知り得た範囲内でも、昨年の八月一日に大和銀行が審査第三部という、七人のメンバーで編成してこの永大問題だけを中心にその対策を考えるものを発足させている。この現実は、銀行課長、お認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/68
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069・吉田正輝
○吉田説明員 御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/69
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070・高橋高望
○高橋委員 知っていらっしゃいますと、その発足をしてからしばらくして永大の役員が、大口株主並びに機関投資家に対して、何とか株を売らないようにしてほしいという陳情に歩いたということの現実は、証券局、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/70
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071・山内宏
○山内政府委員 証券局としては承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/71
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072・高橋高望
○高橋委員 これは私が知っていて、証券局知らないはずはないのですがね。まあ知らないと言われたら、知っているはずだと言うこともやぼだから申しませんけれども、八月に現実に永大の役員が、大口の株主並びに機関投資家のところを回って歩いているのです。逆に言えば、永大は危ないよという話をして歩いているわけです。だから、その時点から変わり身の速いというか、動きの速い大口の投資家並びに機関投資家は売りを始めているのでしょう。
逆に伺いますけれども、昨年の六月以降十二月までの間に、大口の株主並びに機関投資家がどのように永大産業の株を手放していたかという資料は、証券局はお持ちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/72
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073・山内宏
○山内政府委員 先生御承知のとおり、有価証券報告書というのが出てまいります。これが十二月末現在のものが三月末に提出をされるということになりますので、その時期になりますと、主要株主名簿の動きというものがわかる仕組みになってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/73
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074・高橋高望
○高橋委員 確かに十二月決算の会社ですから、有価証券報告書は三月末でなければ出ないと思いますよ。出ないと思いますけれども、これだけの問題を起こした会社の、そしてしかも、一部週刊誌や新聞がすでに大口投資家並びに機関投資家は売り逃げをしたということのうわさが出ている段階で、証券局が御存じないということは、これもまた知らないと言われればそれっきりですけれども、私にはなかなか、ああそうですかとは言えませんが、われわれの常識でこれ以上の追及はいたしません。ただ、何かの時期にこれはひとつお示しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/74
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075・大村襄治
○大村委員長 簡潔にお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/75
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076・山内宏
○山内政府委員 株主数を存じておるかという御質問でございましたので、いまのようなお答えをいたしましたが、御質問の本旨でありますところは、恐らくインサイダートレーディングがあるのではないかという点であろうかと思います。その点につきましては、私ども非常に重大なる疑問ということで考えております。
しからば、さしあたって大蔵省としてはどのようなことを行うのかということになりますと、これは直ちに株主数の推移を調べるということではございませんで、もっと別の手だてを考えております。つまり、現在のところまず最初は、東京証券取引所並びに大阪証券取引所、この両取引所におきまして、過去半年にわたります永大株の取引の手法を解明をいたしまして、その中にいま申しましたようなインサイダートレーディングの疑いのある取引がないかどうか。株主数が動いたかどうかということを調べます前に、まずこれをピックアップする作業が真っ先であろうかと考えております。
と申しますのは、株主が動いておるというのは、これはあくまでも表面的な動きしか出ません。株主名簿に登載したものしか出ません。そういったものでは十分でないということで、いま申したような形で目下作業を進めております。作業がどのように進展をいたしますか、これはまだやや時間のかかる問題でございますので、いま申しましたような作業が済みましたのを基礎にいたしまして、大蔵省としての判断を加えたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/76
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077・高橋高望
○高橋委員 私は、実はその資料を持っておるのですよ、どういうふうに株を動かしたかというのを。(「教えてやれ」と呼ぶ者あり)先輩議員がそうおっしゃいますから、一部を申し上げますけれども、極端な例でいきますと、証券会社さんを窓口にして機関投資家の売りはすべて一月いっぱいでほとんど終わっているということです。そのきっかけは御承知のとおり、大和証券が十二月に、十一月に比べてざっと四倍半の売りをしているということから始まっているわけですね。大和がこの売りをしたバックはどこから出ているかといえば、御承知のとおり住友グループですし、住友生命の株です。住友生命が永大に持っていた株を、大和という窓口を通じて売らしたわけです。山一さんが一月にごっそり一千八百万株売りに出している。これらのバックに何があるか、局長知っていらっしゃると思う。一口で言って、機関投資家の株というものは一月いっぱいでまあまあ一片づけ済ませてしまっているのです。
現実の永大の更生会社を決定した役員会はいつ行われたかと言えば、一月に永大の役員会は更生法適用申請を考えておるのです。合っておる。あたりまえの話なんです。そして、一月の役員会ですでに決めておる更生会社の適用申請を、現実には二月二十日までやらないで、残されたのは、言葉は悪いけれども、トランプのばば抜きじゃないけれども、ばばをつかまされたのは一般投資家なんです。これに対して証券局が全く知らないでいたということは、私にはどう考えたって納得できない。
私がお尋ねしたいことは、絶えず健全なる投資市場の育成ということを言っていらっしゃるその口の裏で、こうした情報が正確に、かつたくさん手に入る連中には便宜が与えられて、結果として被害が少なくて、それが与えられられない、単に新聞のみを追っておる方には極端な被害がある、こういうことで、掲げられておる証券行政の基本というものと矛盾するものでないかということを申し上げたいのです。この辺について証券局長、どのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/77
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078・山内宏
○山内政府委員 大変むずかしいところだろうと思います。基本的には、先ほど大臣からもお話がありましたように、一般投資家の保護といいますのは、やはりディスクロージャーをできるだけ完備をしたもの、わが国のディスクロージャー制度というのは諸外国に比べますとかなり完備した制度であると思いますけれども、この制度を趣旨どおりうまく動かすというのが一つだろうと思います。それにさらにつけ加えることが可能でありますならば、法律上のディスクロージャー義務のほかに、経営者の判断においてタイムリーなディスクロージャーを行うことが、本来の意味の有価証券市場、株式市場を健全に育てていく一つの手だてだろうと思うのであります。
ただしからば、そういったタイムリーなディスクロージャーをどの程度法律で義務づけるのが適当かということになろうかと思います。恐らくその会社が解散するとかあるいは更生法に引っかけるとかいうことは、企業の最高機密だろうと思いますし、その最高機密を必ず法律の強制を背景にして世の中に事前に公にしろということは、これまたいろいろな意味で逆のマイナスの効果もあろうかと思います。つまり、何とかうまくいったかもしれないものまで、一々公にすることによって危機説を世の中に広めてしまうというふうな逆の効果もあろうと思いますので、そこら辺のところをいかに調整するかというのが一番むずかしい点であろうかと思います。
御指摘の点につきましては、確かに有価証券市場、株式市場におきます情勢が変化をしておりますことに対応いたしまして、ことしの一月二十五日に大阪証券取引所におきまして、川上社長を呼び出して説明を聴取いたしておりますが、そのときの川上社長の説明は、金融不安説は根拠がないという趣旨の答弁でございました。それ以後さらに、時日を経過いたしまして二月十七日、約一月後でございますけれども、その後に呼び出したときは川上社長は、情勢において変化がないということで断っております。
そういうふうな態度でございますので、先ほど申し上げましたような形でのタイムリーなディスクロージャーが十分うまく動かなかったということは、御指摘のとおりでございますけれども、一方、証券取引所なり行政なりというものは、与えられた範囲内で努力をしておったということもお認めを賜りたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/78
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079・高橋高望
○高橋委員 残念なことに本会議が正午からだそうでございますので、次の機会にこの残りの十分間活用させていただきます。午前中これで私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/79
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080・大村襄治
○大村委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X00819780228/80
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