1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年三月十日(金曜日)委員長の指名で、
次のとおり小委員及び小委員長を選任した。
税制及び税の執行に関する小委員
池田 行彦君 小渕 恵三君
大石 千八君 後藤田正晴君
坂本三十次君 村上 茂利君
森 美秀君 保岡 興治君
大島 弘君 川口 大助君
只松 祐治君 貝沼 次郎君
宮地 正介君 高橋 高望君
荒木 宏君 永原 稔君
税制及び税の執行に関する小委員長
保岡 興治君
金融及び証券に関する小委員
愛知 和男君 宇野 宗佑君
大石 千八君 後藤田正晴君
坂本三十次君 高鳥 修君
野田 毅君 山崎武三郎君
川口 大助君 佐藤 観樹君
平林 剛君 坂口 力君
宮地 正介君 永末 英一君
荒木 宏君 永原 稔君
金融及び証券に関する小委員長
野田 毅君
財政制度に関する小委員
愛知 和男君 小泉純一郎君
佐野 嘉吉君 高鳥 修君
林 大幹君 本名 武君
山崎武三郎君 山中 貞則君
伊藤 茂君 池端 清一君
塚田 庄平君 坂口 力君
宮地 正介君 永末 英一君
荒木 宏君 永原 稔君
財政制度に関する小委員長 小泉純一郎君
金融機関の週休二日制に関する小委員
池田 行彦君 小渕 恵三君
佐野 嘉吉君 林 大幹君
原田 憲君 村上 茂利君
森 美秀君 綿貫 民輔君
佐藤 観樹君 沢田 広君
山田 耻目君 貝沼 次郎君
坂口 力君 高橋 高望君
荒木 宏君 永原 稔君
金融機関の週休二日制に関する小委員長
綿貫 民輔君
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昭和五十三年三月十五日(水曜日)
午前十時七分開議
出席委員
委員長 大村 襄治君
理事 小泉純一郎君 理事 野田 毅君
理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君
理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君
理事 坂口 力君 理事 永末 英一君
愛知 和男君 池田 行彦君
宇野 宗佑君 小渕 恵三君
大石 千八君 北川 石松君
後藤田正晴君 佐野 嘉吉君
坂本三十次君 林 大幹君
原田 憲君 本名 武君
村上 茂利君 森 美秀君
山崎武三郎君 山中 貞則君
伊藤 茂君 大島 弘君
川口 大助君 只松 祐治君
平林 剛君 山田 耻目君
貝沼 次郎君 宮地 正介君
高橋 高望君 荒木 宏君
永原 稔君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 村山 達雄君
出席政府委員
大蔵政務次官 稲村 利幸君
大蔵大臣官房審
議官 米里 恕君
大蔵省主計局次
長 山口 光秀君
大蔵省主税局長 大倉 眞隆君
大蔵省銀行局長 徳田 博美君
大蔵省国際金融
局長 旦 弘昌君
国税庁長官 磯邊 律男君
国税庁直税部長 水口 昭君
委員外の出席者
議 員 山田 耻目君
内閣総理大臣官
房参事官 赤松 良子君
総理府恩給局次
長 小熊 鐵雄君
法務省民事局第
二課長 乙部 二郎君
外務省アジア局
南東アジア第二
課長 谷野作太郎君
外務省経済局国
際機関第二課長 大和田悳朗君
大蔵大臣官房調
査企画課長 大竹 宏繁君
労働省労働基準
局補償課長 原 敏治君
大蔵委員会調査
室長 葉林 勇樹君
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委員の異動
三月十五日
辞任 補欠選任
高鳥 修君 北川 石松君
同日
辞任 補欠選任
北川 石松君 高鳥 修君
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三月十日
昭和五十三年度における財政処理のための公債
の発行及び専売納付金の納付の特例に関する法
律案(内閣提出第三号)
同月十五日
租税特別措置法の一部を改正する法律案(山田
耻目君外九名提出、衆法第五号)
同月九日
不公平税制の是正等に関する請願(後藤茂君紹
介)(第一八〇一号)
同外一件(田畑政一郎君紹介)(第一八〇二
号)
同(玉城栄一君紹介)(第一八〇三号)
同(上田卓三君紹介)(第一八四八号)
同(玉城栄一君紹介)(第一八六七号)
同(河上民雄君紹介)(第一八九五号)
同外十二件(下平正一君紹介)(第一八九六
号)
石油税新設に関する請願(丹羽久章君紹介)(
第一八〇四号)
同(原健三郎君紹介)(第一八〇五号)
同(井出一太郎君紹介)(第一八四六号)
同(砂田重民君紹介)(第一八四七号)
同(石井一君紹介)(第一八六六号)
同(阿部文男君紹介)(第一八八六号)
同(伊藤宗一郎君紹介)(第一八八七号)
同(川田正則君紹介)(第一八八八号)
同(久保田円次君紹介)(第一八八九号)
同(田中六助君紹介)(第一八九〇号)
同(地崎宇三郎君紹介)(第一八九一号)
同(中山正暉君紹介)(第一八九二号)
同(藤井勝志君紹介)(第一八九三号)
同(本名武君紹介)(第一八九四号)
事業主報酬制度の恒久化及び簡素合理化に関す
る請願(中野四郎君紹介)(第一八八五号)
身体障害者使用自動車の揮発油税免税等に関す
る請願(山本政弘君紹介)(第一九四九号)
同月十四日
不公平税制の是正等に関する請願(浦井洋君紹
介)(第一九六四号)
同(千葉千代世君紹介)(第二〇四六号)
石油税新設に関する請願(増岡博之君紹介)(
第一九六五号)
身体障害者使用自動車の揮発油税免税等に関す
る請願(和田耕作君紹介)(第二〇七六号)
は本委員会に付託された。
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三月十三日
税制改正に関する陳情書
(
第一二六号)
事業主報酬制度の恒久化及び簡素合理化に関す
る陳情書外一件
(第一
二七号)
公共用地買収に係る所得税軽減措置拡充に関す
る陳情書外一件
(第一
二八号)
所得税の非課税限度額引き上げに関する陳情書
(第一二九号)
一般消費税の新設反対に関する陳情書
(第一三〇号)
石油税の新設反対に関する陳情書
(第一三一号)
清酒政策の確立及び清酒の減税に関する陳情書
(第一三二号)
貸金業の規制強化に関する陳情書外二件
(第一三三号)
塩専売制度存続に関する陳情書
(第一三四号)
支那事変賜金国庫債券の償還に関する陳情書
(第一三五号)
米軍基地跡地の利用に関する陳情書外一件
(第一三六号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
租税特別措置法の一部を改正する法律案(山田
耻目君外九名提出、衆法第五号)
租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す
る法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七
号)
石油税法案(内閣提出第一八号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/0
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001・大村襄治
○大村委員長 これより会議を開きます。
本日付託になりました山田耻目君外九名提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者より提案理由の説明を聴取いたします。山田耻目君。
—————————————
租税特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/1
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002・山田耻目
○山田(耻)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、提案理由及びその概要を御説明いたします。
政府が今回実施しようとしている税制改正の内容は、勤労国民の期待を大きく裏切るものと言わねばなりません。
日本経済は三年余にわたる戦後最長の不況に陥り、いまもって回復の展望を見出せない状況にあります。そのため、国民生活は倒産、失業、インフレ物価高の中で深刻な危機を迎えております。
今日の事態は大企業、独占資本中心の経済発展の矛盾の累積によるものであり、富と所得の格差拡大、寡占、独占体制の強大化、二十兆円に及ぶ需給ギャップの存在など構造的要因によってもたらされたものでありますが、その上に、政府・自民党が大企業優先の景気対策を採用し続け、賃上げの抑制、公共料金の引き上げ、所得税減税の圧縮、社会保障支出の抑制等によって個人消費の停滞を引き起こした政策の失敗によって不況が激化したことは明らかであります。一方、国内需要の停迷は輸出の増大となり、経常収支も百億ドルの黒字が見込まれ、海外からの厳しい批判を浴びております。いまやわが国の経済政策は国内外両面にわたる転換が必要であります。
このような状況の中で、日本の財政にとって今日最も重要なことは、高度成長時代の体質と構造を改めて、新しい経済環境に対応した福祉優先型に改めることであり、その内容と目標を計画的に国民に示すことでなければなりません。今日、財政の側からの景気回復と雇用対策は緊急に必要でありますが、財政構造の改革が行われないままに、景気政策の名目で財政膨張を進めることは、今後の財政に重大な問題を残すことになります。
以上のような財政改革とあわせて税制改革が必要となりますが、そのような徹底した財政改革と不公平税制是正こそが、国民の財政への信頼をもたらすものであります。したがって当面の税制改革、租税政策の中では不公平税制の是正と企業課税の適正化の問題が重要な問題となってくるのであります。
しかしながら、政府の来年度税制改正案においては、来るべき低成長の時代に向けての税制の抜本的改革の視点が全く欠落をしております。
土地税制の骨抜きの問題一つを取り上げてみましても、国民生活擁護の観点から、きわめて重大な問題を含んでいると言わなければなりません。土地重課税緩和の理由として宅地供給をふやすためと主張されておりますが、これは全くの詭弁だと言わねばなりません。一体現在の土地重課税が宅地供給を阻害しているという客観的データがどこにあるのでしょうか、どこにもないはずであります。むしろ、現在の土地重課税は投機的な取引を防止する上で効果を上げており、その必要性はなお後退していないと言えます。
土地税制といえば、かつても宅地供給の促進を理由に土地譲渡税の軽減が行われたことがありますが、その結果は、地価はかえって上昇、地主だけが太ったという苦い経験があることを忘れてはなりません。地価は一応落ちついたと言っても、まだその水準は西独の二十倍であり、住宅、都市問題解決の最大の障害となっております。しかもこのところ、地価は反騰の気配を示し始めており、税制の緩和はこれに拍車をかけるおそれがあります。
結局、今回の土地重課税の緩和は、名分は宅地供給の促進を図るということでありますが、本当のねらいは、土地を大量に買い占めて金利負担にあえいでいる企業の露骨な救済にあることは明らかであり、これにより、土地の投機と価格上昇が再現する危険が大きい以上、この改悪は絶対に容認できないということを表明しておきます。
また、政府案においては、企業関係の特別措置の廃止、整理もきわめて不十分であり、主なものとしては公害防止準備金の廃止、価格変動準備金、海外投資等損失準備金の引き下げ等が挙げられている程度であります。
われわれがこれまで一貫して主張してきた、利子配当の総合課税や、交際費課税の是正などは見送られています。このほか、企業優遇税制として批判の強い法人の配当軽課税率や受け取り配当の益金不算入などの廃止問題などは全く取り上げられておりません。また、貸倒引当金、退職給与引当金を初めとする各種引当金の是正も含まれておりません。
特に、過日、三訂された財政収支試算は、特例国債から脱却するための具体的な税制改革案を何ら提示しないままに国民に巨額の増税を求めるものであり、しかも政府の不公平税制の認識は一面的で、日本の税制を根本から問い直すという姿勢は見られません。経済政策の転換を求められている今日、財政政策、その軸をなす税制も同様に再検討すべきであります。そのためには、百項目を超える多数の減免税措置を根本から洗い直すことがまずもって必要であります。
わが党は、インフレと不況の中で、深刻な事態に置かれている財政を立て直し、インフレと不況の結果生じた国民生活の被害を救済し、税の公平を実現し、富の再配分を行うため、まず、インフレによる税負担の不均衡を是正し、低所得層中心に救済措置をとること。さらに、大法人課税の改革、租税特別措置の廃止、資産課税の強化により、大企業、高所得層への課税強化を行って税収を確保することを税制改正の基本方針に据えておりますが、今回の政府の税制改正案では、不公平は拡大しても、その縮小、是正は行われず、勤労国民のための税制改革と言うことはできません。これが、本法案提出の理由であります。
それでは、租税特別措置法の一部を改正する法律案の主な項目について申し上げます。
この法律案は、現在三大不公平税制と称されている利子配当課税の特例、社会保険診療報酬課税の特例及び個人の土地譲渡所得課税の特例のすべてについて徹底的な是正を行うとともに、大企業と中小企業の税負担に大きな差をつけている支払い配当軽課制度を廃止する等の改正を行おうとするものであります。
まず第一に、利子配当課税でありますが、現行の源泉分離選択課税制度、確定申告不要制度等は、資産所得優遇の最たるものであり、所得本来の姿である総合課税の原則に反するものでありますから、これを廃止することといたしております。
第二に、医師の社会保険診療報酬課税の特例につきましては、国民各層からの、この制度の是正を求める強く広範な声に押されて、政府税制調査会ですら、昭和四十九年十二月以来、具体案を示して答申を続けてきたにもかかわらず、またもや政府は改正を見送っております。答申案は不完全なものでありますので、この際、税の不公正を是正するために、社会保険診療報酬の課税の特例については、これを廃止することといたしております。
第三に、個人の土地譲渡所得課税につきましては、長期譲渡所得に対して一段と課税の強化を図ることといたしております。すなわち、短期譲渡所得に対する重課制度はこれを存続し、長期譲渡所得に対しては、譲渡益二千万円以上の部分については全額総合課税とするごとといたしております。
第四に、現在、新築住宅の取得者については、住宅取得控除を初めとする税の軽減措置が講じられておりますが、中古住宅の需要が増加している現状にかんがみ、中古住宅の取得者についても住宅取得時の税負担の均衡を図る意味から、住宅取得控除を適用することといたしております。
なお、あわせて家屋の増築についても、住宅取得控除を適用することといたしております。
第五に、法人の支払い配当軽課制度につきましては、この特例が、当初の目的である法人の自己資本の充実に何ら貢献せず、いたずらに大企業の税負担を軽減する役割りしか果たしていないことにかんがみ、この制度を全廃することといたしております。
第六に、交際費課税につきましては、社用支出の実情にかんがみ一層の強化を図ることとし、損金算入限度額の定額部分を三百万円に引き下げ、限度超過額の全額を損金不算入とすることといたしております。
第七に、現行の各種の準備金制度は、将来に予期される偶発的損失や危険に対応して多額の留保利潤を非課税のまま社内に蓄積しておく手段で、いわば将来の費用の繰り上げ計上でありますが、実際には、現実に発生する損失額を上回って過大計上される傾向が顕著となっております。したがって、実際の費用的支出を上回る計上分は、利潤の免税もしくは国からの補助金的支出と同じ効果を持つことになっており、利益隠しであるとの批判もあり、制度の既得権化の問題が現実化しており、弊害が目立ち始めているのが実情であります。
そのような状態でありますので、とりあえず、特定鉄道工事償却準備金、原子力発電工事償却準備金、公害防止準備金、電子計算機買戻損失準備金、渇水準備金、違約損失補償準備金を廃止することとし、また、資本金一億円を超える法人の価格変動準備金、中小企業海外市場開拓準備金、海外投資等損失準備金、金属鉱業等鉱害防止準備金、特定ガス導管工事償却準備金、プログラム保証準備金、株式売買損失準備金、証券取引責任準備金、商品取引責任準備金、保険会社等の異常危険準備金、原子力損害賠償責任保険又は地震保険に係る異常危険準備金、探鉱準備金、海外探鉱準備金を廃止することといたしております。
第八に、技術等海外所得の特別控除や試験研究費の税額控除につきましても、大企業が独占的に利用している現状にかんがみ、資本金一億円を超える法人の技術等海外所得の特別控除、試験研究費の税額控除については廃止することといたしております。
第九に、公害防止事業者負担金の特別償却や特定設備等の特別償却についても、実質的には一定の政策目的実現のため、減価償却費を過大に計上できることとすることにより利潤を費用化して適用企業へ無利子の融資と同様の資金を調達する機能が顕著になってきている現状にかんがみ、公害防止事業者負担金の特別償却を廃止することとし、また、資本金一億円を超える法人の特定設備等の特別償却を廃止することといたしております。
第十に、長引く不況とインフレの中で、中小零細企業は深刻な状況に追い込まれております。このような状態の中で、中小零細企業の税負担を少しでも緩和するため、中小零細企業に対する不況期における法人税の延納の特例を設けることといたしております。
第十一は、政治の団体に対する政治献金についてであります。現在、政治団体に対する寄付金も一般寄付金として損金扱いとされておりますが、大企業の政治献金が以前から社会的問題となっております状況にかんがみ、この種の寄付金の損金算入措置を廃止することといたしております。
以上が税制による所得再配分と社会的不公正の是正を目的とした本法律案の主な内容であります。
何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/2
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003・大村襄治
○大村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/3
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004・大村襄治
○大村委員長 次に、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋高望君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/4
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005・高橋高望
○高橋委員 租税特別措置法の審議をすべき場でございますけれども、どうしてもここのところ問題になっておりますドル不安の問題について少しお伺いをしてみたいと思います。
アメリカが西ドイツとの間で、SDRで六億、実際は七億四千万ドルかと思いますが、その売却で市場買い入れ資金を調達した、またスワップを従来の倍にした、さらにはIMFから五十億ドルを必要に応じて引き出す準備をする、こういうことで合意ができましたけれども、またそれによって、通貨当局を含め私たちの国では、何か円高が少し食いとまるのではないかということを期待したのですが、現実には、きのうはどうも円が二百三十三円まで高くなってしまった。私は、変動相場であるということから言えばこれはやむを得ない、一言で言えばそういうことでしょうけれども、実際には、もうある一流商社では先物に二百二十五円を採用し始めている。これは実際上の仕事でも、また特に心理上も非常に大きな不安になってまいりましたし、この辺について、当局はどんなふうにお考えになっておられるのか。
特に私が申し上げたいのは、西ドイツとの間でアメリカがやりながら、われわれとの間、いわゆる円に対してはアメリカがこういう形をとってこないというこの辺について、当局はどのようにこの問題をとらえておられるのか、この辺をひとつお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/5
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006・旦弘昌
○旦政府委員 ただいま委員の御指摘になりましたように、アメリカ側が西独との間で取り決めました内容については、御指摘のとおりでございます。
従来と変わっておりますのは、単にスワップの枠をふやしたということだけでございませんで、いま御指摘のありましたように、マルクを購入するために六億SDRを売却するということでございまして、これは従来見られなかったことでございます。したがいまして、この辺に非常に強い決意が秘められているというふうに思うわけでございます。
ただ、いま御指摘のありましたように、発表後、ドル安、日本で言いますと円高になったということは御指摘のとおりでございまして、その点はむしろ、発表前の期待が非常に大きかった、それに比べて内容がそれほどでもなかったということで、その失望感のためにそういう現象があらわれたのだろうと思います。しかし、冷静に考えてみますと、この措置はかなり前向きな措置でありまして、アメリカのドル安対策の決意を披瀝したものであるということで、長期的に見ますと、これは高く評価され得るのではないか。したがいまして、この一時的な混乱を脱した後におきましては、かなり効果のある事象ではないかというふうに考えます。
それから第二点でございますが、西独とアメリカとの間でこういう取り決めが行われたけれども、日本とアメリカとの間にはそういうことがないのはどうかという御指摘でございますけれども、この西独との協議の過程におきまして、日本も十分その協議を受けておったわけでございます。
そこで、西独とアメリカだけということはどういうことかと申しますと、たとえばニューヨーク市場におきまして、外為市場で取引のございます通貨別に見てみますと、ドイツマルクは約三割でございます。それから日本円は約五%程度でございまして、日本円は、上からの順序でしますと、たしか七番目か八番目の通貨でございます。したがいまして、目的はドルを安定させることにございますから、一番よく効く通貨をもって介入すればその効果が一番よくあらわれるわけでございます。その通貨がドイツマルクでございます。したがいまして、そのドイツマルクで主として介入をしましてドル安を防止する、その効果は日本円を含むその他の通貨も均てんするわけでございますので、そういうことでこの取り決めが行われたわけでございまして、決して日本円を軽く見ておるとかそういうことではございません。もちろんその発表に当たりまして、アメリカの財務当局も、日本円の介入のことについても触れておりますししますので、御懸念のようなことはない、かように考えております。
今後ともアメリカあるいは西独等とは緊密な連絡をとってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/6
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007・高橋高望
○高橋委員 ただいまの説明は理解させていただきます。
そこで、このところのずっと一連の円高問題というのは、ごく初期のころと申しましょうか、その時代には、私たちの国の国際収支の大幅な黒字が原因であった。当時でも私は実は、この委員会でも申し上げたかと思いますけれども、ドルは身勝手だということを申したと思いますが、いずれにしても、われわれの国の国際収支の大幅な黒字が原因であったということは言えるかと思います。
しかし、このところの円高というのは、日本のこういった国際収支の黒字のみで考えることはちょっとできない、まさにドル自身の問題だろうと私は思います。ドル安であり、ドル不安だ。したがって、日本の問題であれば関係各方面で、たとえば内需の拡大を図るとか市場を開放するとかいうことでその対策を探ったり実行したりすることができるかと思いますけれども、今度のような事態になるとわれわれにはもうどうにもできない分野がある。一体政府御当局として、アメリカに対して過去こういう問題に対してどのような要請をしてこられたか、今日までどのように行ってこられたかということについてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/7
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008・旦弘昌
○旦政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、円高の問題は去年の秋から特に顕著でございますけれども、その一つは、御指摘のような日本の大幅な黒字の問題、それから、その当時から円高、ドル安のもう一つの大きな原因は、アメリカの大きな赤字の問題であったわけでございます。したがいまして、当初からわれわれといたしましては、日本の黒字を減らす対策はこういうふうにするということを申しますとともに、アメリカの赤字を減らすようにひとつアメリカ側も努力してもらいたいということを、機会あるごとに申してきたわけでございます。ことしの初めにストラウスが参りましたときの日米の共同コミュニケの中にも、その交渉の過程におきましても、そういうもろもろの要求をしておりまして、たしかあのコミュニケの中に、アメリカは三十日以内に石油法案を通すようにあらゆる努力をするということを申しておりますのも、そういうわれわれの要求に対する一つの反応であったわけでございます。
いま御指摘のように、いまやまさに通貨の問題は、円高の問題ではなくてドル安の問題だという御指摘がございましたけれども、先ほど申しましたように、やはりその両方の問題ではないか。日本はもちろん非常に内需拡大の措置をとりましたけれども、しかし、まだその効果があらわれていないわけでございます。五十二年度の百億ドル程度の黒字ということが、なおもう少しふえそうだというような情勢でございますので、事実をもって日本の黒字減らしが進捗することが第一に必要でありますし、同時に、御指摘のようなドル安に対してアメリカの施策をしてもらうということが必要でございますので、今後ともアメリカに対しては強くそれらの対策について要求を続けてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/8
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009・高橋高望
○高橋委員 ドル安になった最大の原因は石油の備蓄にあると私は前にも申し上げたかと思いますけれども、その時点において私は、余り政府が強くアメリカの石油備蓄に対して抗議をした、あるいは申し入れをしたということを、どうも寡聞にして聞かないのですけれども、私は、現実の問題として言えることは、もう一つは、アメリカは別にドル安になっても日本ほど余り困らないということがあると思います。私のアメリカ人の友達などに聞いても、われわれが為替の問題を考えることなんかよりははるかに関心も薄いし、また逆に言えば、それほど敏感に考えない。ですから、アメリカがドル安になって困る状態というものを私たちはつくり上げなければいけないし、また、そういう事情を向こうに知らせなければいけないと思うのですね。
いま御当局の立場で、アメリカがドル安になって困るというような事態を仮定されるとしたら、どういう事態をお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/9
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010・旦弘昌
○旦政府委員 ただいま御質問の点は、いろいろな面があろうかと思います。
一つには、ドル安がさらに続きます場合には、その他の国、たとえば日本、ドイツのような国におきましては、円高、マルク高になるわけでございますから、それはデフレ効果を持って経済の成長を阻む要素になるわけでございます。一方、ドル安になってまいりますと、アメリカの輸入品の価格は上がってくるわけでありますから、アメリカのインフレの懸念は強まってくるわけであります。その二つのグループのギャップがますます大きくなるわけでございますから、現在困っているいろいろな問題がますます大きく広がってくるという状態になろうかと思います。それが第一点ではないかと思います。
それから第二には、ドル安になるということは、ドルに対する信認が薄れることでございますので、アメリカの金融の市場としての地位が落ちてくるということではなかろうか、かように考えております。たとえば、例で申しますと、一昨年は、アメリカの市場での起債が約百六億ドルぐらいでございました。昨年、これは暦年でございますけれども、それが七十二億ドルに落ちておるわけでございます。一方、たとえば日本の市場を見てみますと、これは年度でございますけれども、五十一年度には円建て債はわずか二億ドルぐらいしか出なかったのでございますけれども、五十二年度には、この三月末までのところで恐らく十倍ぐらい、二十億ドルぐらいのマーケットになっておるわけでございまして、こういうことから見ますと、この傾向はドイツマルクでも同じことでございまして、アメリカの金融市場はそれだけ減り、ドイツ、日本が非常に飛躍的にふえたという現象がすでにあらわれております。こういう状態が今後続きますれば、アメリカの金融センターとしての地位が下がってくるというのが第二ではないか、かように考えております。
それから第三は、先ほどちょっと触れました、輸入によるインフレをアメリカが輸入をされるということではないか。
それから第四に、さらにドル安が続いてきますならば、石油の値段の引き上げという非常に大きな問題が起きてくるのではないか。これによる影響といいますのは、アメリカだけではございませんで、日本はもちろんそれの余波を受けるわけでございます。そういうようなもろもろの要素があろうかと思います。
突然の御質問でございますので、ちょっと思いつくだけを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/10
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011・高橋高望
○高橋委員 いま三つないし四つお挙げになられたのですけれども、私、そのいずれもそう急にアメリカで起こるとはちょっと考えられない。逆に言えば、アメリカの方がそれだけの敏感な行動に出てこないというふうに私、思われてならないんですね。そうなると、こういう事態の中で円を防衛しようと思えば、どうしても当面日本の国がどうするかということになるのじゃないか。いまお挙げになったようなことが即座に出てくればいいのですけれども、それが出てこないとなれば、日本の国の中で当面どうするのかということをやはり考えなければいかぬ。この辺については、当局はどのようにお考えになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/11
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012・旦弘昌
○旦政府委員 五十三年度予算を提出しますときに、すでに日本政府としましては、内需拡大によって景気を刺激する、それによって輸入をふやすという方針を決定したわけでございまして、この方向で早急にでき得る限りの施策を講じていくのが第一であろうと思います。これが何と申しましても根本でありまして、そのために具体策を早急に立てる必要がある。しかも、立てるだけではございませんで、早急に実施していく必要がある、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/12
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013・高橋高望
○高橋委員 私は、その内需拡大ばかりではなしに、当局としてもう少しお考えにならなければならないことは、二つあるのじゃないかと思うのです。当面国として、為替管理をやはり強化しなければいけない。少なくとも投機の要素だけは取り除かなければいけない。それが一つ。それからもう一つは、国の内外での金利の差がやはり流入に大きな影響がありますから、金利の問題も考えなければならない。いまおっしゃった内需拡大を一つの条件として、他に考えるとしたら、私は、やはり為替管理の問題を取り上げ、そして金利の引き下げ問題を考えなければならないと思いますけれども、この辺はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/13
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014・旦弘昌
○旦政府委員 金利の点につきましては、私の所管でございませんので別といたしまして、為替管理のことだけ申し述べさせていただきますが、御案内のとおりに、日本の為替管理は、現状におきましても先進諸国に比べると非常に厳しいという批判が海外で非常に強いわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この三月にも一部その緩和をいたしましたが、さらに四月一日にはもう一段の為替管理の緩和をしたいという準備を進めているところでございます。さらに一、二年後には、現在の為替管理体系全般を見直しまして、現在の原則禁止の方針から原則自由の方針に変えようという作業を現在進めつつあるところでございます。したがいまして、これ以上為替管理を強化するということにつきましては、私どもとしましてはなお消極的でございます。
委員のおっしゃいますのは、非常事態であるから為替管理の強化を考えるべきではないかということであろうかと思いますけれども、それにいたしましても、私どもといたしましては消極的に考えざるを得ない。ただ、もしそういう措置をとりますとしますれば、これはあくまで非常事態に対する緊急避難的な措置であるということでありまして、そういう措置をとりましても、将来なるべく早くそれを解除するのが正しいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/14
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015・高橋高望
○高橋委員 私は、やはりいまの緊急避難的な対策では、またその為替政策がいつまでも長期的に効き目があるとは思いません。確かにおっしゃるとおり、あくまでも緊急避難的なんですけれども、現実的には四月一日からまた為替はむしろ自由化の色彩が強まるわけでございましょう、いまの御予定では。そうなると、現実の段階では、何か現状とのずれがあるように思われてならない。だから、緊急避難であることは百も承知の上で、この際、少なくとも投機的な意味を取り除くという立場に立って、そういう意味での為替管理というものを考えなければいけないのではないかと私は思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/15
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016・旦弘昌
○旦政府委員 四月一日から私どもが考えておりますのは、むしろ日本から外に出ていく金の緩和でございまして、いま委員の御指摘なのは、投機資金が外から入ってくる面でございますので、その辺の矛盾はございません。ございませんが、その入ってくる分についての為替管理の強化につきましては、お考えも十分わかるわけでございますけれども、われわれとしては、それを喜んでやるということにはなかなかならないのではないか。いま御指摘のありましたように、根本的な施策ではあくまでないわけでございますから、その根本的な施策を大幅に進めていただくということがまず第一ではないか。もしやるとしましても、これは先ほど申し上げましたように、あくまで緊急避難的な措置にとどまるべきであって、早急に廃止するということにすべきではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/16
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017・高橋高望
○高橋委員 お言葉なんですけれども、私の理解では、日本から持ち出すやつはほとんど自由になっているのじゃないですか。今度の四月から自由化になるのは、むしろ外から入ってくるものに対しての自由にする度合いの方が高いのじゃないですか。私の理解は違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/17
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018・旦弘昌
○旦政府委員 実態的には、たとえば旅行者の海外持ち出しは一応自由化になっております。しかし、その手続面等でなお規制がございますが、それを完全に自由にする。あるいは、これは限度がございますけれども、外貨預金をできるようにする。あるいは、海外に出ますときに円札を持っていきますのは十万円となっておりますが、これを三百万円まで上げるというようなことで、主としてこちらから金を持ち出すところの制限を緩和するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/18
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019・高橋高望
○高橋委員 それでは、御説明をそのまま伺っておきます。
そこで、先ほどちょっと御自分の所管外だとおっしゃったのですけれども、金利の問題で、やはり国の内外の金利差が流入に対して大きな影響をもたらすと思いますので、この辺銀行局長、お考えはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/19
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020・徳田博美
○徳田政府委員 いまの御指摘の金利の問題は、結局公定歩合の問題に関連してくるわけでございます。公定歩合の問題は、日本銀行の所管事項でございますけれども、一般的に申し上げますと、やはり内外金利差が現在の円高にどのように関連してくるかということでございますけれども、現在はかなり投機的な要素も強いわけでございまして、公定歩合政策が円高に対していま直接的に効果を持ち得るかどうかについてはいろいろ問題もあるところでございます。しかしながら他面、公定歩合政策が内需を刺激いたしまして、それが円高対策としての効果を持つことを期待されるということは考えられるわけでございます。
いずれにいたしましても、現在の経済情勢、雇用情勢等を踏まえまして、日本銀行におきましてもどのような金融政策をとり得るかについて検討しているところであると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/20
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021・高橋高望
○高橋委員 私は、やはり金利をこの際可及的速やかに思い切って下げられる——とかくいままで金利の問題というのは、国内の設備投資を含めた刺激に使いたいというふうにお考えでしたけれども、ここまで参りますと、この問題をやはり円の問題に絡めて早期に御展開いただく必要があるのじゃないかと思います。お話しのように、もちろん日銀御当局の決断が最終的なことではございましょうけれども、どうかひとつそういう意味で、何か早く手を打っていただきたいという気がいたしてなりません。お願いを申し上げておきます。
そこで、きょうは日銀の方をお招きしてないのですが、私、日銀当局の介入の仕方というものにどうも何かもう少し思い切ってというか、平ったい言葉で言うと、腰を据えてやらなければいけないんじゃないかなと思うことがあるのです。大体こういうふうに為替が乱高下したときには、たしかランブイエでしたかの先進国会議でアメリカが、介入するということは認めているはずでございます。合意されていると思うのです。そうであれば、もっと腰を据えてしっかりとした手の打ち方をしないと、ふらふらした状態で取り組むと、むしろ相場不安定の要因にさせてしまう。こういう点で、介入というものをどんなふうにひとつこれからお考えになるのか、これは日銀御当局も大変むずかしいことかと思いますけれども、かわって概略の方向だけでもお示しいただけるとありがたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/21
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022・旦弘昌
○旦政府委員 介入の点につきましては、恐らく委員がそういう御印象を受けられましたのは、新聞記事等によるものであろうかと存じますが、もちろんいつどの程度介入したかということは発表いたしておりません。したがいまして、私どもは当然それを知っておりますが、新聞の報道などを見ますと、われわれが介入した日にきょうは介入しなかったというふうに出ておりましたり、あるいはその数字につきまして格段の差があったりするわけでございまして、新聞報道だけで御判断いただくと非常にミスリーディングではないかというふうに考えます。
他方、私どもとしましては、十分腰を据えて介入しておるというふうに思っておりますし、また海外では、日本の通貨当局は介入し過ぎる、円の価値をある点にペッグしようとしておるのではないかという批判も強いぐらいでございます。もちろん私どもは、円の価値をペッグするという意図はございませんで、乱高下に対して対処する、これがランブイエ等の合意でございますから、それに沿った線で介入をいたしておりますけれども、むしろ海外では非常にそういう批判が強かったし、現在でも強いわけでございます。
したがいまして、通貨当局の介入が及び腰であるということはわれわれは全然考えておりませんので、今後とももし介入が必要であるということでありますれば、腰を据えて介入するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/22
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023・高橋高望
○高橋委員 おっしゃるとおり、私たちとしては新聞による報道きり情勢をつかまえることができませんで、逆に言えばこれはお任せになるのじゃないかと思いますけれども、どうかひとつ少なくともそういう印象を与えるということがわれわれにもあるということを御配慮になっておいていただきたいなと思います。
そこで、大臣にお伺いしたいのですが、先ほども申し上げましたとおり、アメリカというのは自分のところの通貨で対外取引をやっておるわけです。大平幹事長がどこかの席でおっしゃったように、輪転機を回してお札をつくってしまうわけですから、そういう金で対外取引をやっておるところと、われわれのように対外取引の八〇%を外国の貨幣でやっておる、こういう違いの中で、政府としてやはりどうしてもここで為替市場の安定ということを考えていただかなければ困るし、特に先ほど来申し上げておるように、外国為替管理法というものを適切に発動させて不安定要素を取り除いていただきたい、こう思うのですが、大臣、この辺の御見解いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/23
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024・村山達雄
○村山国務大臣 やはり長期的に見る場合と非常に短期的に物を考える、二つの問題があると思うわけでございます。
長期的に考えますれば、為替相場というものは恐らく国際収支が決定的な要因でございましょうし、現況を見ますと、いま産油国にどんどん黒字がたまって、そのためにほかの全世界がすべて赤字である、特に先進国はおしなべて赤字でございますが、その中で日本とドイツが黒字で、アメリカが非常に大きな赤字を出している、そこに非常に大きな問題があるわけでございまして、少なくともいまのような産油国に黒字のたまるときには、やはり日本もドイツも応分の貢献をすべきではないか、こういう主張が一方にあるものだと思っておるわけでございます。したがって、経常収支が百億ドルを超えるとかなんとかというところが問題になり、向こうのアメリカの方は非常に赤字になっているわけでございますから、これは単なる両国だけのためでなくて、グローバルに考えましても、やはりある程度均衡を保っていくということは、日本にとってもアメリカにとっても大事である、この点の認識はほとんど一致しているんじゃないかと思っておるわけでございます。そのための方法としてわが国が講じておりますのは、何と申しましても内需の拡大が第一だ、それから第二は、この前発表いたしました緊急の対外政策、何項目かありましたけれども、こういったことを着実に推進していくことであろうと思うわけでございます。
しかし、短期的な面で考えますと、特にいまは為替市場が非常にセンシティブになっておりますから、その意味で季節的な乱高下をある程度介入して抑えるという点につきましては、これまた国際的な合意を見ているわけでございまして、日銀が介入し、またアメリカも、日本ほどじゃありませんけれども、それなりにやっているわけでございます。
評価の違いは、アメリカの方はどっちかというと、さっき言った長期的な視点の方が少し強いんじゃないか、それで、いまの短期的なものを乱高下と見るか見ないかというあたりが少し違っておるのじゃなかろうかと思うわけでございます。この介入の問題に関連いたしまして、日本も、今度アメリカと西独がおとといあのような取り決めをするということにつきましては、アメリカ側から十分連絡をもらっておるところであるわけでございます。
そういうことを考えますと、私たちは、やはり長期的な問題と短期的な問題、これを分けて考えておく必要があろう、こう思っているわけでございます。
先ほど高橋さんがお触れになりました金利の問題、これはどちらかといえば長期的に考えるべき問題であって、内需の拡大であるとかあるいは企業の収支をよくすることによりまして、雇用の維持拡大に努めるという、そっちの方にむしろ重点がある。短期的にはもちろんそれなりのメリットがございまして、やはりこちらの金利が安くなるわけでございますから、資本の流出を促す、それが円高傾向に緩和材料になるということはありましょうけれども、どちらかといったらやはり長期的視点で考えるべきであろうと思うわけでございます。
為替の自由化という方向も長期的観点でございまして、先ほど申しましたいまの短期資金の流入を規制するというのはあくまでも短期的な問題ではないか。これも必要に応じてやらなければならぬかもしれませんけれども、あくまでも緊急避難的な問題である。
要するに問題の基本は、為替相場は変動為替相場のもとでありますから、国際収支によって決まるわけでございまして、そして、国際収支の対外的な均衡という問題はやはりグローバルに、そして長期的に考えなければならぬ。しかし、短期的な問題はまた短期的な問題として処理していかなければならぬ。そこが非常にむずかしいところだと承知しているのでございます。
高橋さん、きょういろいろ御意見述べていただきまして、非常に参考になりました。今後そういう点を十分踏まえて、過ちなきを期してまいりた
い、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/24
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025・高橋高望
○高橋委員 大臣、この問題の締めとして、大変むずかしいお尋ねになろうかと思いますけれども、お差し支えのない程度で御答弁いただきたいのは、この円高の見通し、今後どんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。どうぞひとつお差し支えのない程度でお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/25
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026・村山達雄
○村山国務大臣 通貨当局者が身近な円高な円の相場について云々することはタブーでございまして、これは申し上げられぬわけでございますけれども、一般的に言われておりますのは、やはりいま全面的なドル安じゃないか、だから、ドルの方で何らかの対策を講じてもらわなくてはいかぬのじゃないかというのが、恐らくOECDでは共通であろうと思うわけでございます。それから、ごく最近のことを申し上げますと、おとといの米独が結ばれる前は急にドル高になったわけでございますが、発表したら急にまた逆になった。やはりこれは期待感とそれから実際にとった措置との差が出てくる。それぐらいいま外資というものは非常にセンシティブになっておるなという感じがいたすわけでございます。
したがって、ごく短期の見通しで申しますと、なかなか一概に申し上げられない。つまり、それぞれの通貨当局のそれぞれのとる施策とそれから外資との関係、しかも投機的なものが相当入っているわけでございますので、なかなか一概には言えないわけでございます。しかし、長期的に見ますれば、これは当然のことでございますが、上がったものは将来は下がる、下がったものは将来上がる。それは一体どれぐらいの期間を要するのか。ある人は一年と言い、ある人は一年半と、こういうことを言うわけでございますが、長期的にはもう間違いないわけでございますが、ここ当分というのが一番むずかしいわけでございますし、また、われわれ言うべき立場にないことを御理解いただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/26
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027・高橋高望
○高橋委員 ありがとうございました。
それでは、次の問題に移らしていただきます。
五十三年度の予算案は衆議院を通過いたしましたが、現在の円高問題も起こって、政府の見通しとか、あえて申し上げますが、達成期待数値というのはその実現がますますむずかしくなってきたように私、思われます。
たとえば公共投資を最重点にしぼっておやりになるということですが、私たちの立場からしてこれを全面的に否定するものでももちろんございません。むしろいろいろな意味で立ちおくれている社会資本を充実させるためにも、公共投資を取り上げられたことは、私はそれなりの評価をしていいのじゃないかと思っております。ところが、つい先日、私ある大手鉄鋼メーカーの私と同年輩の連中と話をしておりましたときに、公共投資をやったときに大体どれくらい鉄を使われるかという話をしました。そのときに彼らが言うのに、四十七年ごろの公共投資でございますと、仮に一億円の公共投資が行われると鉄は平均して百七トン使っていた、ところが昨年、五十二年度になりますとこれが四十七トンになってきている、半分以下になっている、これっきり基礎資材である鉄が使われてない。建築資材大体についてこういう傾向が言える。それじゃどこへその金が行っちゃったのだということになると、土地買収費を含めた直接工事費以外のものに使われている。ですから、政府がお考えになる、公共投資をやることによって資材を購入する、在庫調整のきっかけをつかむ、在庫が少しなくなってくる、そして新たな生産活動、そして景気回復、こういうルートは、従来おはじきになっておられるような数値の積み重ねからではどうも出てこないように思われるわけですね。
現実にこの鉄を考えてみても、確かに構造用の鉄材はいささか活況があるようです。しかしながら、薄板などはほとんど伸びていないし、むしろ自動車によってかろうじて支えられている。ですから、自動車産業が冷えたら、そのことを考えただけで慄然とするようだ、こういう情勢なんですね。どうしても先ほどからもおっしゃっておられる内需拡大というようなことにしぼらないわけにいかない。はっきり言えば、私の立場で言わせれば、設備投資あるいはいわゆる消費刺激をしなければいけない。
そこで、予算案は通ったわけではございますけれども、こういう現状を踏まえて、公共投資に対してお考えを進めてこられたことに対して、何かお考えになる要素が出てきているように思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/27
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028・大竹宏繁
○大竹説明員 政府の基本的な政策の方針といたしましては、公共投資を重点的に拡大をいたしまして、経済全体を回復させていくということでございます。そのとおりでございます。
ただいま御指摘のように、公共投資の力が少し前に比べて弱くなっておるのではないかという御指摘でございますけれども、たしか新聞に鉄の原単位が減っておるということは出ておりましたので、私も拝見をいたしております。これはいろいろ技術的な進歩等もございますと思いますが、公共投資は、鉄もその重要な資材の一つではございますが、その他セメントとか骨材とかいろいろ使うわけでもございますし、また、資材のみならず労務費等にもかなり使われるわけでございます。そういう総合的な力から見まして、やはり公共事業の持つ力というものは政府の持っております政策手段の中では相当大きなものが期待できると思います。少し前に比べますと、その力が落ちておるのではないかということは、若干その乗数なども低くなっておるということはございますけれども、やはりその他の政策手段との比較におきましては、公共投資の力が強いということは事実であると思っておりますので、私どもといたしましては、こうした政策を引き続き推進していくということが、現在の局面では最上の選択ではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/28
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029・高橋高望
○高橋委員 私が申し上げますのは、お立場、お立場で、おやりになったことに自信を持っておられなければ困りますから、その点においては結構なことなんですけれども、現実の問題として、構造が違ってきているということ、だから、一事をすべてに押しはめてはいかぬかと思いますけれども、鉄の消費ということだけ考えてみれば、少なくとも倍の金額にしなければ四十七年度並みのことができない、こういう事態が来ているので、それにかわって何かもっと別のことを、あるいはそれに加えて何か別のことをしておかなければいけないのじゃないか、こう思うわけです。
そこで、私たちの党の立場からいたしますと、この五十三年度の予算案というものは早晩見直しをする必要が出てくるのじゃないか。それが補正であれ、あるいは目標の修正であれ、何か見直しが必要になってくるのじゃないか。早ければ六月にでもこういう時期が来るんではないかと思いますので、この辺について、財政御当局としてのお立場をひとつお述べいただきたいし、また、あえてかたい言葉を使わせていただくならば、その政治責任というのはどういうふうにとられようとされるのか、この辺もあわせて大臣からひとつ御答弁いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/29
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030・村山達雄
○村山国務大臣 いま五十三年度の予算は、御案内のように参議院の予算委員会にかかっているわけでございます。そして政府の見通しによりますと、この総合施策、公共投資を中心とし、あるいは住宅投資、設備投資にも若干配意いたしましたこの施策を推進した場合には七%ぐらいの成長はまず大丈夫である、こういう見通しに立っているわけでございます。
若干内容を申し上げますと、先ほど申しましたように、委員が、消費刺激あるいは公共投資の波及効果の問題、大分衰えているんではないかというお話がございましたが、確かにマクロ計算で最近のやつでは少し落ちているようでございます。しかし、減税の方も若干落ちておりまして、初年度はいままでは八割ぐらい違っておったというのが、計算によりますと、三割ないし四割ぐらいだ、こういうことでございます。マクロ計算がどこまで当たるかわかりませんが、一般的な常識として特に初年度においてはかなりの乗数効果が違う、こういうことでございます。今度の措置は、これだけのことをやるのは全く臨時異例でございますので、初年度が実は一番大事だという考えを持っているわけでございます。
そういったことでございまして、いまのところわれわれはこれで七%は大丈夫だという見通しを持っておりますので、いまそれがだめの場合は六月どうするとかなんとかいう考えはいまのところ持ってないわけでございます。
しかし、一般論といたしまして、予算が成立して執行していく場合には、何しろ経済の話でございますし、国際経済等の影響を受けるわけでございますから、果たして政府が見通しているものが達成できるかどうかということは、もう絶えずウオッチしていかなければならぬことは当然だろうと思うのでございます。一ころ一部から言われましたように、手おくれになるとかなにかいうことはもうないように慎重な監視が必要であると思います。達成できるとは思いますけれども、絶えず注意を怠らず、必要に応じて、それぞれ一般会計の方でもあるいは財政投融資の方でも弾力条項はあるわけでございますから、適宜必要な手を打っていくということは、もう委員御指摘のとおりであろう、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/30
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031・高橋高望
○高橋委員 わかりました。
それでは、投資税制について細部について一、二お伺いをしたいと思っております。
まず、投資減税で再三申し上げてまいりましたけれども、その規模とか額あるいは期限等々がまことにお粗末なものだ、こう私は言いたい。特に投資減税に当たって特別償却分とダブらせないというようなことになりますと、実態は額の上ではもう本当に少ないものになってきまして、制度ができたということで価値があるといったそんな程度の感じにしか私には受け取れないのです。当面の設備投資刺激とか、あるいは再三申し上げる国の中、長期的なビジョンの上に立って再考するお考えがないか、これをまずひとつ主税局長にお伺いしたいんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/31
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032・大倉眞隆
○大倉政府委員 高橋委員が御持論として、投資税額控除をもっと積極的に活用すべきであるという御主張をお持ちのことは十分承知をいたしております。
最近の厳しい情勢の中で、所得税減税もがまんしていただきたいという一方で、投資促進のために新しい措置をつくるということが妥当かどうかという点は、税制調査会でもずいぶん時間をかけた白熱した御議論がございました。
税制調査会の中に、お名前を申し上げるわけにまいりませんけれども、高橋委員と全く同じ御主張の方もいらしたわけでございます。しかし一方で、答申からお読み取りいただけますように、非常な消極論も強かったわけで、消極論は、答申にごく簡潔に書かれておりますけれども、やはり設備投資が経済を引っ張る力というものは、これは認めるけれども、税額控除で設備投資が出てくるかということに対して疑問をお持ちの方もかなり多い。それから、全般に租税特別措置をできるだけ縮減しようというときに、新しいものをまたつくるのはいかがであろうかという御反対もある。それらの非常に強い反対と、一部での非常な積極論とをかみ合わせました結果が今回の答申になっておるわけでございまして、やはりできるだけ既存の特別措置との重複を避けるべきであるし、また、政策目的としては非常に臨時なものとして設定をして、逆に臨時であるがゆえの効果、よく言われます歯どめ効果なりあるいは繰り上げ効果なりをねらうということでならば、全体の特別措置の整理合理化という流れの中でもあえてこれを認めることもいいであろう、そのことによって、政府が民間設備投資が出てくれることを期待しているのだという政府の考え方を示すということであるならば、あえて反対しないというところに反対論の方もおりてきてくだすったわけでございまして、やはり非常な紆余曲折を経た末の今回の提案であるという点は、ぜひひとつ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/32
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033・高橋高望
○高橋委員 私は持論として、局長十分御承知のように、租税特別措置がすべて不公平税制だと思ってないのです。むしろこれは政策税制でございまして、肝心なことは、適宜改廃をする、その弾力性のある運用というものが必要なことであって、措置そのものを頭から否定する考えは毛頭ないし、またそうであってはいけないと思うのです。これは私の意見でございますから、いろいろ御異論もございましょうけれども、そういった意味で、やはり必要なものはむしろ強化してでもやらなければいかぬし、また、既得権化して本当に意味が薄れているものをいつまでも残しておくということも、これまた逆におかしいことで、この辺の取捨選択を、いわゆる不公平税制ということに一般に言われている形で処理してはならないんじゃないか、私はかように思っております。これは私の意見でございますので、お聞きになっておいていただきたいと思います。
そこで、さらに細かく事務当局にちょっとこの場をかりてお尋ねしておきたいことがございます。それは、例のこの投資減税で、条文で申しますと、五十三年四月一日から五十四年三月三十一日までに機械設備を取得し、取得後一年以内に事業の用に供する場合には云々とございます。これは、発注をするのが四月一日以後に発注いたしまして、一年以内、極端に言えば来年の三月三十日にこの機械が入ってくる、そして、事業の用に供するのにさらに一年間をその期間として見てよいかどうかということを、ちょっと事務的に御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/33
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034・大倉眞隆
○大倉政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、租税特別措置の縮減合理化につきましての基本的な考え方は、別の機会にも再々申し上げておりますが、私どもとしましては、租税特別措置すべてを全部なくしてしまわなくてはいけないんだというふうには考えておりません。むしろ高橋委員がおっしゃいましたように、これは政策税制であって、政策目的に応じて弾力的に改廃をすべきものであるというのを基本的な考え方として持っておるつもりでございます。
ただ、まさしくまたおっしゃいましたように、その既得権化、慢性化というものを極力排除しなくてはならない。そこで率直に申し上げますと、一度できましたものは、これをやめるのはなかなか大変なエネルギーを要するわけでございまして、ここ三年間かかりましてかなり縮減合理化の実を上げたと私どもは考えておりますけれども、やはりなかなかやめられないという頭があるものですから、新しくつくるときにも、非常に消極的になるというきらいがあるという点は認めざるを得ないかと思います。しかし考え方としましては、やはり政策目的に応じて、税制を使うことが他の手段に比べていいという判断があれば、その時点時点で弾力的に対応することに対しては憶病であってはならないであろうと思います。しかし全体としては、やはり公平というものを非常に強く要請されておりますし、特別措置というものは、政策目的を持ってつくりますれば、当然その特典を受ける方は特典を受けない方に比べて優遇されるという意味で不公平であることは間違いないわけでございまして、政策目的を認める場合でも、そのフェーバーの度合いというのは過去に比べれば縮めていかなければならないということを基本的に考えておるわけでございます。
そこで、ただいまの御質問でございますが、普通は特別償却のようなものを考えますときには、供用ベースで考えるのが普通の例でございます。ただし、やはり機械設備でございますので、供用ベースという従来の原則で五十三年四月から五十四年三月までという期間にしてしまいますと、間に合わないという面をちょっと心配いたしまして、今回の制度としては、その期間に取得してもらえればよろしい、取得した後の供用までにはもう少しゆとりを持たせましょうという意味で、取得の期間を五十三年度末までとする、しかし実際に供用されるのはそれから一年以内でもよろしゅうございますというように、若干緩めた規定にしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/34
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035・高橋高望
○高橋委員 さらにお伺いいたしますが、この事業の用に供するという「事業の用」ということで、普通機械類等は、試運転あるいは試作をするということと生産活動とはおのずから別になります。ある程度の工場になれば、細かいことになりますけれども、生産の伝票等々に記入されているときをもって供用開始とするか、あるいは試運転の時期をもってその用に供したか、この解釈で実は国税庁の方もいろいろとお考えがあるんでございますね。
私はこの際お願いなんですが、これはとにかく試運転であろうと試作であろうと、動き出したときというふうにお考えいただいて、即生産というふうにお考えにならないようにしていただくとありがたいのですけれども、この辺、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/35
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036・大倉眞隆
○大倉政府委員 やや技術的になりますが、取得という言葉の解釈は、所有権が移転したときであるというふうに考えておりまして、私どもの理解では通常、その試運転は実は所有権の移転より前に行われることの方が多いのではなかろうか。つまり、試運転をしてみてパスして、それで検収されて所有権が移るということの方が多いのではないかと思いますけれども、場合によりましては、所有権を移転した後でさらに試運転的な期間があって、実際に生産に入るまでにそういうことが起こるということもあるかもしれません。しかし考え方としましては、やはり取得というのは、所有権移転の時期であり、供用開始というのは、それが実際に事業の用に使われる時期であるというふうに統一して扱うということになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/36
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037・高橋高望
○高橋委員 主税局長、十分御承知の上でそうおっしゃっておられると思うのですが、現実に工場サイドになりますと、試運転というのはいろいろあるのです。たとえば機械メーカーのところで試運転に立ち会って持ってくる場合もありますし、それから、設置された場所で試運転する場合もある。そうでなしに、試作品をつくるということがありまして、その時点で機械自体は一応稼働する、けれども、いわゆる量産というか生産するまでにはまたある時間があくわけです。私はそこを申し上げているので、これが一カ月や二カ月はすぐあるわけです。そういう点でこの際、ここまで柔軟にお考えいただけるものなら、生産開始というふうに割り切らないで、もう試作品でもつくったときに、とにかく工場の中で動き出した、そういう時点をとらえていただきたい。この辺、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/37
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038・大倉眞隆
○大倉政府委員 御質問の御趣旨はよく理解しておるつもりでございますが、これはまた冒頭におっしゃったことと若干関係が出てまいりますけれども、特別償却をするのか税額控除を受けるのかという一種の選択になっておりまして、特別償却ができる状態でございませんとうまくいかないわけでございまして、特別償却をできるというのは、先ほど申し上げたように供用開始という時点で押さえているわけでございます。したがいまして、実態に即して判断してもらうように国税庁には十分御意見の趣旨をお伝えいたしますけれども、やはり物の考え方の統一的な基準としましては、事業の用に供した時点である。だからあえて申し上げますれば、早く間に合うという意味でとにかく使って、使っている問でいろいろテストをやるということであれば、それは使ったことになりましょうけれども、その辺は実情に即するような処理ができるように国税庁にも十分御趣旨は伝えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/38
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039・高橋高望
○高橋委員 より専門的になりますので、この辺で打ち切らしていただきます。
今度廃止される項目の一つ、九十一項目中十一項目廃止されるわけでございますけれども、その中に、人身被害防止装置の特別償却並びに労働災害防止設備の特別償却がございます。これはたしかそれぞれ初年度四分の一だったかと思いますが、これが廃止になっておる。私、これは労働省の方、あわててお呼びして恐縮だったのですけれども、災害がそれほど件数としても減ってないと思いますし、またむしろ、労働災害自体は大型化している傾向にあると思うのですね。こういう中で、この装置の四分の一の特別償却を廃止する。それで伺うところ、こういうものは事業所側が設置してあたりまえだから、あたりまえのものを特別償却する必要はない、そういう割り切り方のようでございますが、それだったらもうずっと前からこんな制度つくらなきゃいいので、ある効果が上がってきたからやめるのなら私わかるのですけれども、そういう点でまず労働省の基準局の方、最近の労働災害の発生状況並びに労災保険の障害一時金、どの程度払っていらっしゃるのか、この辺ひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/39
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040・原敏治
○原説明員 お答えいたします。
労働災害の発生状況は、昭和四十一年以降毎年百七十万人ぐらいの死傷者が出ておりましたが、昭和五十年には順調に減りまして百十万人程度になりました。ところが、この五十一年、一番最近の統計でございますが、これで見ますと、総数において百十三万人ということで、若干減少の傾向にかげりが見えてきたというような形になっておりまして、しかも先生御指摘ございましたように、最近の新工法、新技術の導入等あるいは新原材料の採用などもございまして、災害が一般に大型化するとかあるいは重篤化するという危険性をはらんできているように思っておりまして、楽観を許さないというふうに私どもは思っております。
補償の方の一時金の支払いの状況でございますが、災害の発生状況に応じまして、補償の方の件数等もそれに対応してふえてきているというような状況がございます。特に職業性疾病などが若干ふえてきている傾向にございますので、受給者の数といたしましては、五十一年で百十三万二千人が労災保険で支払われている新しい災害者数でございます。一時金の支給金額では、合計いたしまして五十一年に三千四百三十一億の支払い金額を出しております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/40
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041・高橋高望
○高橋委員 そんなに出ていて、またそんなにお金を払っているのにこの制度をやめちゃう。しかも恐らくその意図は、企業側がこういうものは設置してあたりまえだからこの際やめるというような、そういう割り切り方でよいものかどうか、私、大変疑問があるのですね。むしろそうであれば、こういう制度はよりよけいにして、そしてやらなかった、あるいは事故を起こした事業所等に対して厳しく罰するという方向に行くのならば私わかるのですけれども、制度をやめちゃっていいかということになったら、私はむしろこれは本末転倒じゃないかと思いますが、主税局長、これは御廃止なさったのはどういう事情でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/41
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042・大倉眞隆
○大倉政府委員 率直に申し上げまして、人身被害防止あるいは労働災害防止という政策目的そのものから見まして、こういう名前のついている制度をやめるとは何事か、こういうおしかりを受けるような性質の問題なんでございますが、具体的にどういうものを対象にしているかというと、やや時間をいただいて恐縮でございますが申し上げますと、人身被害防止設備の方は、建物の消火装置のいわゆるスプリンクラーでございますね、それから、石油コンビナートの防災設備で、これは油が流れ出るのを防止するための土手、防止堤でございます。あるいは消火用の屋外給水装置、まあスプリンクラーが外へついているようなものでございますが、それから、あるいは石油等の場合の非常用の冷却散水装置というものを特定して指定しているわけでございます。これらはいずれも、関係法令によりまして設置が義務づけられておりまして、非常にきつい立場で申しますと、法令上設置を義務づけられているものに特別償却を認める必要はないではないかという議論も確かにございますが、あえてこれを特別償却の対象に取り上げましたのは、たとえばスプリンクラーで申しますと、これは既存の建物にもつけなくちゃいかぬ。しかもそれが直ちに収益につながるものではない。また早くつけさせようという意味で特別償却という政策手段を使おう、そういう趣旨でございます。その意味で申せば、法令上設置の期間がございますし、猶予期間もございますが、猶予期間内にとにかく設置をした人に特典を与えるというのが限度であろうというふうに私どもは考えるわけでございまして、今回制度として廃止いたしますけれども、ただいま申し上げました個別の設備につきましては、それぞれの猶予期間まではなお経過的に残しておきます。しかし、猶予期間を過ぎてもまだ設置しなかった、怒られてつくったという人にまで特別償却というものを認める必要はないではないかというふうに私どもは考えるわけでございます。
その意味で申しますと、労働災害防止設備も、あらゆる設備がすべて労働災害防止につながるというわけではございませんで、特定してございますのは、粉じんと有害ガスの局所排出処理装置でございまして、しかもこれをつくりましてからすでに十数年たっております。これを設置しない場合の罰則もあるような問題でございまして、やはり十年たてばその新しくつくるということに対する恩典というものはもう廃止してしかるべきではないかというふうに私どもとしては考えているわけで、ぜひ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/42
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043・高橋高望
○高橋委員 きょうは時間のアレンジを私、少し間違えまして、外務省の方々においでいただいたのにお尋ねする時間がなくなりました。おわびいたします。また別の機会にお願いすることとして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/43
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044・大村襄治
○大村委員長 只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/44
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045・只松祐治
○只松委員 本年は残念ながら、所得税法に関して一銭の減税も、あるいは税法の改正もなされません。きょうは租税特別措置法に対する議題でございますが、私はしたがいまして、主として所得税を中心とした問題について質疑、討論を行ってみたいと思います。
まず最初に、そういう観点から去年私が、男性の社会と言われておりますけれども、その中においてなおかつ男性が差別された税法があるということで、男やもめという問題を取り上げました。本年からできるだけ実施をするというお答えをいただきましたが、そういうことで税法に一つも手をつけない、こういうことで実施がされませんでした。なぜしなかったか、それから、ことししなければ来年は必ず実施するということをお約束になるかどうか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/45
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046・大倉眞隆
○大倉政府委員 本件につきまして、昨年只松委員から御質問、御指摘がございまして、そのときに私どもとしても、前向きの方向で検討するということで税制調査会にもお諮りをし、所得税法改正の機会を得るまでに結論を出したいと考えておりますということをお答えいたしたわけでございます。
税制調査会に対しましては昨年の六月に、いわゆる国会報告というときに御指摘の御趣旨を税調にお伝えいたしました。さらにまた、十一月にもう一度税制改正についての各方面からの要望、御指摘というものをまとめました機会に、再度本件もお示しをいたしたわけでございますが、その時期以後、税制調査会は具体的な御議論としましては、五十三年度の税制改正に議論が移りまして、所得税問題が一番大きな問題として最初に取り上げられたわけでございますが、よく御承知のように、五十三年度は税制調査会としては所得税の減税をがまんしていただこうという結論になり、所得税の改正をしないということになりましたものですから、この問題をさらに突っ込んで議論をいただくという機会がないままに五十三年度改正が具体化されました。
私どもとしては今後、前回お答えをいたしましたのと同じ気持ちで引き続き制税調査会にお諮りをしてまいりまして、適当な結論を次回の所得税法改正の機会までに得たいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/46
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047・只松祐治
○只松委員 ひとつ来年はぜひ実現できるように、大臣、お答えはいただきませんが、ひとつ大臣の方でも記憶にとどめていただきたいと思います。
それから昨年私が指摘いたしました問題、幾つかあるわけですが、タックスヘーブンなんか立法化をしていただきまして、感謝をいたしておりますが、いま一つ私は、所得税法の中で非常な矛盾点として、法人税法にも所得税法にも本法には告示義務というのがあるわけでございますが、所得税法の場合にはこれが大蔵省令にゆだねられて、そして告示されない。こういうことがロッキード問題等の守秘義務というようなことで逃げられて、今日ロッキード問題が明らかにならない。時間があれば本当は私は、ロッキード問題がきょうで期限切れになるわけでございますか、なぜこういうものを追徴の対象としないか、そういうことも論戦したいのですが、きょうは時間がございませんからその問題は避けます。
しかし、そういうものも二百三十三条の問題が関連しておることは事実であろうかと思います。したがいましてこの問題については私は、これこそまた時間があれば別な機会に徹底的に税小等でも論議いたしたいと思いますが、何とか前向きにこの問題は取り組んでいただきたい。大蔵省側はこの問題につきましては、なかなかガードは固いわけでございますが、ひとつぜひ前向きに御検討を、重ねて要望をいたします。当局の御見解を聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/47
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048・大倉眞隆
○大倉政府委員 この問題もかねてから、何度か只松委員から御指摘を受けているわけでございますが、御指摘の御趣旨は、所得税法、法人税法それぞれに申告書を公示すべき人という規定がある、それの手続を大蔵省令にゆだねておる、大蔵省令にゆだねた段階で、法人税法の方は修正申告分も公示されるようになっておるが、所得税の方は翌年の三月末までの修正申告分を公示するようになっておって、それ以後の修正申告分は公示にならない、そこに矛盾があるではないか、こういう御指摘でございます。
そのときにお答えいたしましたように、私どもとしましては、この規定は、一般の公務員に対して、税務当局に対して特に加重された守秘義務を課しておるが、法令上この部分は特に守秘義務を解除するという規定になっておる、その守秘義務を解除した限りにおいて、それをいつの時期にどういう場所に公示するかということの手続を大蔵省令にゆだねておるという規定と解しておると申し上げたわけでございますが、そのときに申し上げましたように、所得税の方は非常に多量に一時に出てまいりますものですから、やはり限られた時期にこれを税務署に一括公示しますためには、どうしてもある時点までの申告なり修正というもので区切りをつけて公示するということで、現在の制度ができておると考えておりまして、実際の大量事務処理の観点からいたしますと、やはりいまのような公示方法にとどめざるを得ないのではないかと依然として考えておりますけれども、せっかくの御指摘でございますので、なお部内でも研究はいたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/48
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049・只松祐治
○只松委員 いま一つの理由として多量だからできないというようなお話がありました。ちなみに、いま一千万円以上が公示されておるわけでございますが、昭和四十四年までは五百万円でございました。そのときが十六万五千件。四十五年になりまして一千万円になって、急速に七万八千件に減りました。順次漸増いたしまして、五十年が十九万件、昨年が十九万五千件、恐らくことしは約二十万件に達するだろう。一千万円がいいか、一千五百万円がいいか、二千万円がいいか、いろいろあります。インフレに反対している私たちとしては軽々に限度額を上げろとは申しませんけれども、たとえばいまのような多量であるということで、かつて十万件が二十万件を超す、こういうことになってまいりましたから、仮にたとえば一千五百万円まで上げる、こういうことにすれば、私はこれはまた十万件ぐらいに減るだろうと思う。そういうお考えがあるのかどうか。これは私たちの党の考えではありません。私見としてこの際一応お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/49
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050・大倉眞隆
○大倉政府委員 実際に公示の対象となります人員がここ数年相当ふえてきておるというのは、御指摘のとおりでございます。現在のところ、申告なさる納税者の方の大体四%ぐらい、人数にしまして二十万人弱、御指摘のとおりでございます。この制度をつくりました当時からの動きを見ておりますと、限度を決めました段階では大体一%そこそこというような数字でございました。それが年を経てだんだんとふえていく、ある時期を置きまして改定が行われておるという過程をたどってきております。
ただこの問題は、いま御質問の中にもございましたように、この金額を軽々に動かすべきでないという御主張もまたございますので、前回一千万円に改定いたしましたのは四十六年改正であったかと思いますが、それから大分時間がたっておりますという点も含めまして、これまた法律事項でございますから、この次に所得税法改正の機会がありますときには、この問題をどう考えるか、いろいろ違った角度からの御意見も踏まえながら私どもとしても検討いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/50
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051・只松祐治
○只松委員 数量の面からそういうことが言えるというのは、実質上たとえばいま私たちが反対している社会保険診療報酬の問題に関連して、各県を見ますと、お医者さんが高額所得者としてたくさん名前が十指の中に出てきます。この法律を知らないからだと思うのです。これを法人税法の場合でも、私が三菱の問題等取り上げたときに、税理士さんでも知っておられる方は少なかったわけです。したがって、この法律があるということを知っている方はなかなか少ない。お医者さんは恐らく全然知らないだろう。そのお医者さんが、この法律が存在するということを私は二、三の人に教えましたけれども、知って、そして三月三十一日までなら公示される。しかし四月一日ならば公示されないわけです。したがって、四月一日、一日だけの分の利子ぐらい大したことはありませんから、善意のものとしてこれを認めざるを得ない。これは一日や二日、悪意というわけにはいきません。そういたしますと、利子だけ払うという形にして四月一日以降ということになると、お医者さんが表面上高額所得者ということは、全国のお医者さんが四月一日以降に出すとするならば、一挙にしてこれは国民の目からお医者さんが高額所得者ということは消せるわけです。悪用しようと思えば。それが、私がちょっと触れましたロッキード問題等にも関連をしてくるというのは、そういうことを言うわけなんですね。ですから、お医者さんはそれほど悪意の人が少ないということで、この法がまだ生かされておるといいますか、あるわけでございますが、仮にそういうことで医師会が指令のもとに四月一日以降一斉に出せ、こういう指示でもしてやった場合には、これは罰則を適用することもできないでしょうし、どうすることもできない、こういうことになってくるわけでございます。したがって私はさっき、金額の量もありますけれども、こういう手段、方法を講ずる。まあ俗世間的に、これが高額所得者として発表されれば、寄付金や何か多数出さなければならぬ、町内の寄付や何か。したがって、そういうことのために四月一日以降修正申告をしている人も私は知っておるわけなんです。そうすると出ませんから、町内の寄付や何か多額に出す必要はない。しかし、これが出てまいりますと、やはり町内の寄付やら一人前に出さなければならない。出さないと、あれはけちんぼうじゃないか、高額所得者であるのにけしからぬじゃないか、これは当然出てまいります。したがって、知恵のある人は四月一日以降に出しておる人もあるわけなんです。
こういうことを考えますと、まじめにちゃんと申告している人は公示をされる、ところが、少し知恵を働かせる、あるいはもっと悪い意味の脱税をしておる、こういう人は、この守秘義務に守られて、またこの省令に守られて公示されない、こんな矛盾した、ある意味ではでたらめな法律はないと思う。もしそういうことがあくまで許されるならば、私はそういう関係団体に行って、扇動まではいたしませんけれども、よくお教えしようかと思っております。そういうことになれば、皆さん方が、国税当局やら主税当局はお困りになるのではないかと思います。みずからの首を絞める。もっと前向きに積極的に考える必要があると私は思いますが、重ねてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/51
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052・大倉眞隆
○大倉政府委員 ただいまの法律、省令の規定の趣旨は、先ほどお答えしたとおりでございます。
制度の趣旨からいたしますと、公示されました高額所得者のリストを一括して印刷して、ほかの用途に使われるということは実は好ましいことではないわけでございまして、この制度自身の持つ一つのデメリットであるのかもしれないとさえ考えますけれども、さらにまたそういうことが、いまの御質問によれば、寄付を求められるとかあるいはいろいろな物品の売り込みやら来てうるさくてしようがないとかということもありましょうけれども、三月三十一日までの修正申告分は公示されるが、四月一日以後の修正申告分は公示されないということによって、意図的に三月三十一日までの申告を低くしておいて、後刻修正申告という形で適正な方へ戻していくということが目に余るようなことになりますならば、やはりそれはこの制度全体をもう一遍根元から考え直してみないといけないのだろうと思います。しかし、常識的に申しますと、一千万円すれすれのところでは場合によってはそういうことがあるかもしれませんが、たとえば五千万円の所得の方がとりあえず九百万円で申告しておいて、四月一日になったら五千万円に直しましたということは、おやりになればすぐわかることでございますから、それは、そういう実態が果たして出てくるかどうかを十分にらみながら、この制度本来の趣旨に戻って検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/52
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053・只松祐治
○只松委員 私は、次の問題に移りますので、これ以上この問題は追及しませんけれども、ぜひひとつそういうふうに——いま悪い者だけがよく眠るのがこの法律でございます。したがって、善意の人がこれを知らないからそういうことですから、これを善意の者がこういうふうに知ってくれば、いろいろ活用をしてくる、こういうことになると思います。ぜひひとつ改めて前向きに御検討をお願いいたしたいと思います。
次に私は、きょうは本問題として女性の税金問題を主として取り上げてみたいと思うのです。
申し上げるまでもなく、憲法上男女は完全な平等が明記されております。そういうことだけじゃなくて、いま女性の高学歴化というものが進んでおります。女子でも高校進学九四%、短大二〇・七%、大学一二・六%、こういう状況でございます。また、就業者数も非常にふえて、結婚後も就業しておる。男子の三千三百万人に対して女子が約二千万人、男子六二%、女子が約三八%、四〇%近くになってきておる。
こういうことになってまいりますと、いろいろな社会的な変化というものが出てきておるわけでございます。近ごろでは、婦人の日もつくろうかと、まあ三月三日がいいか、四月十日がいいかとか、いろいろ論議をされております。こういう中におきまして、民法上もまだいろいろありますけれども、税法上いろいろおくれた面があると私は思うわけでございます。
そういう中におきまして、所得税における配偶者控除というものを見てみますと、ことしは二十九万円ですが、これは基礎控除、扶養控除が全く同じく二十九万円と同額になっております。一体、二十九万円と言えば月に二・四万円でございますが、これは何を基準として——いわゆる家庭の補助的な手伝いなりあるいは何なり、何を基準としてはじき出されたか、この配偶者控除とは一体何か。これは、時間がありませんから、高邁な御学説は結構でございますから、ひとつ簡単明瞭にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/53
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054・大倉眞隆
○大倉政府委員 配偶者控除はいわゆる人的控除の中の一つでございます。人的控除は現在、おっしゃいましたとおり、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、各人当たりそれぞれを同額ということに規定されております。
これは沿革的には、只松委員よく御承知のように、人的控除というものは最低生計費的なものとして考えるという立場からいたしますと、一人世帯に対して二人世帯は二倍かかるわけではない、だんだんと人数がふえれば逓減するという思想が一つございまして、基礎控除に比べて扶養控除の方が額が少ないという時期がございました。それに対しまして、所得を稼得することに対する妻の貢献という別の角度からすれば、少なくとも配偶者に対して認められる扶養控除というものは本人の基礎控除と同額であるべきではないかという御主張が国会でも何度か出されまして、それを受けまして昭和三十六年度の改正で、配偶者控除が基礎控除と同額、扶養控除とは違って基礎控除と同じで高いんだということになりました。さらにその後四十九年度改正で、課税最低限にかなりのゆとりができてきたということで、もはやその純粋の生計費理論にこだわる必要はないではないか、むしろ納税者にとってわかりいい方がいいということで、人的控除を全部同額にそろえるという改正がなされまして今日に至っております。
配偶者控除というものをつくりましたゆえんは、ただいま申し上げましたように、所得の稼得に対する妻の貢献度を考慮し、これを基礎控除と同額とするという思想に発足しておると私どもは理解いたします。その金額の決め方は、これは絶対に二十九万円でなくてはならぬとか、二十八万円ではおかしいとか、あるいは二十九万五千円でなくてはならぬとかいう決め手のある問題ではございませんでしょう。やはり各種の人的控除と、給与所得者の場合には給与所得控除を合わせまして構成されます課税最低限というものが、そのときの経済情勢なりあるいは財政事情なりあるいは全体の負担の高さなりというものから見て妥当であるかどうかということで、決定づけられていくものではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/54
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055・只松祐治
○只松委員 だから、二十九万円にしたって、理論的な根拠がある絶対的なものではない。これをずっとせんじ詰めていきますと、やはり男女同権、二分二乗方式というのが税制理論上最後には一番正しいというふうに私は思うのです。ただ、いままでの日本の税体系その他から見て、社会党はずっと前から主張はしてきておりますが、皆さん方の方は一挙にできないということですが、私は、後で離婚問題その他男女の実態を論議いたしますけれども、やはり日本もやがて二分二乗方式に移行していかなければ矛盾が出てくるのではないか、男女の税法上の問題が解決できないのではないか。特に女子の就業者数が男女全く対々にでもなってくれば、そういうふうになるだろうと思うのですが、二分二乗方式をぜひ前向きで御検討いただきたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/55
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056・大倉眞隆
○大倉政府委員 二分二乗方式を採用してはどうかという御意見が非常に強く出た時期がございまして、税制調査会でもかなり詳細な御検討を願いました。また、そのときに専門の学者の方にお願いしまして、二分二乗方式を採用している国、あるいはフランスのようにN分N乗方式を採用している国に行っていただきまして、詳細お調べを願ったわけでございますが、結論としましては、ちょっと申しわけございませんが、いまのお話とむしろ逆の方向になりまして、二分二乗方式を採用してもなかなかうまくいかないのではないか、やはり独身者の場合の負担の求め方というような問題がどうしても後からついて出てきてなかなかうまくいかない、むしろ方向としてはいまの日本型の方に戻っていこうかという議論すら出てきておるという報告が出ましたので、一応税制調査会としては、現在の日本において二分二乗方式を直ちに採用すべきであるという事情は認められないという感じの結論が出ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/56
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057・只松祐治
○只松委員 そういういきさつは知っておりますが、男女平等という、後で離婚問題や何かのとき論議してまいるとわかりますが、やはりそこに行き着かなければ、こういう問題は解決しないと思います。これはそのくらいにしておきます。
次に、出産費の問題につきましても、申し上げるまでもなく、すでに訴訟が提起されて争われておるわけでございますが、これも主税局、国税庁は守りがかたくてなかなか認めない。ところが、フランスあたりでは、産前手当というものさえ認めておるわけですね。日本じゃなかなか認めないわけですが、訴訟の内容や何かは結構でございますが、これについての基本的なお考え方を、一口で言えばこれも前向きに検討していただきたいと私は思いますが、いかがなっておりますか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/57
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058・水口昭
○水口政府委員 お答え申し上げます。
ただいまの出産費でございますが、先生御承知のように、所得税法におきましては医療費控除があるわけでございます。その医療費の中に出産に要する費用が含まれるということは、政令にもきちんと書いてございます。
そこで、たとえば健康保険とか共済組合といったところから出産に関しまして、出産費あるいは分娩費といったような名目で給付があるわけでございます。その場合に、医療費控除の対象となる医療費の額を一体どういうふうに計算するか。われわれ国税当局といたしましては、医療費というものは、実際に納税者が負担した医療費をもって計算すべきであるという思想のもとに、共済組合等からそういった出産費が出ました場合には、実際に御本人が出産に要した費用からその出産費を差し引きまして、実質的にふところから出た金額をもって控除する、こういうふうな解釈をいたしておるところは御承知のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/58
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059・只松祐治
○只松委員 だから争われておるわけでございますが、まあ一口で言えば、余り細かいことを言わないで、見舞い金なら見舞い金として出た分は控除する。私は前にちょっと言いましたように、フランスあたりは産前手当というようなものも減税の対象にしておるわけです。ところが日本では、そういうふうに見舞い金か給付金かいろいろ論議がありますけれども、それさえも十分認めない。いわば出産手当というものを完全に認めておらない。したがって、完全に認めたらどうですかということを私は言っておるわけです。いま訴訟になっておりますから、皆さん方としてはその訴訟の前提を崩すようなことをなかなかここで答弁はなさらないだろうと思います。しかし、少なくとも私がいま言うように、そういう諸外国の事例等を見れば、前向きに何らかの形で検討するということくらいは答弁をしても一向訴訟関係で差し支えないと思う。ぜひそういうお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/59
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060・水口昭
○水口政府委員 制度の問題としてはいろいろな考え方があろうと思いますが、現行の税制の解釈、運用といたしましては、この点については実は国税当局においては、所得税について「申告書の書きかた」というのをつくっておるわけでございますが、こういうものを見ましても、ずいぶん昔から先ほど申しましたような場合の計算は、出産費等を差し引いて計算するのだという方針を明らかにしておりますので、いま直ちにこの方針を改めることは非常にむずかしいというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/60
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061・只松祐治
○只松委員 訴訟をおやりになっておりますから、一歩でも後退した発言をすると訴訟の内容にわたるからだろうと思いますが、なかなかかたいわけでございます。私はきょう問題提起だけをしておいて、また税小なんかで論議したいと思いますので、それも一応おきます。
これも税金と若干外れるわけでございますが、せっかくの機会でございますから、また後の問題と関連しますから、総理府、関係省にお聞きをいたしますが、現在の恩給あるいは共済年金というものはいわば家中心でありまして、人、個人中心とはなっておらない。これが男女に非常な不平等を起こしてくる一つの原因をなしておるわけです。しかし、国民年金の場合は属人主義をとっておるわけです。それから厚生年金も、離婚なりあるいは主人が亡くなられる前の空期間というものを通算しており、若干属人主義というようなものを見受けるわけでございます。まあ一歩進めておる。ところが、恩給とか共済年金の場合は全く家あるいは企業中心主義でありまして、たとえば離婚をいたしますと、それによって、何十年結婚しておっても一切の権利がなくなってしまって、男性のみにその権利が帰属をしてくる、こういうことになるわけでございます。そうすると、後で言います慰謝料その他過去の夫婦で共かせぎをして蓄財をしたものに関してはいろいろの請求権を生じておりますけれども、いまから蓄財していく未来にわたっての財産権については、何十年生活しておっても離婚と同時に女性の場合はすべて権利が剥奪をされて男性だけにしか残らない、こういうことにいまなっておるわけですね。
そういう現状であるかどうかということと、それに対して、後でいささかなりとも前向きの検討ができるかどうか、総理府にお聞きしたい。それから、婦人調査室かどこかお見えになっていますか。——先ほども申しますように、婦人の日でも設けようかということで、空期間ではございませんけれども、そういう婦人の日なんか設けたって、実際上こういう財産権その他に差別扱いをされておると、まあ婦人の日を設けないより設けた方がいいかもしれませんが、これは空の祝祭日になると思うのです。私は、実質的にこういう財産権の問題その他税法上の問題も解決をしていかなければならないと思う。そういう点に取り組まれておるかどうか、あわせてお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/61
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062・小熊鐵雄
○小熊説明員 お答えいたします。
ただいま先生から恩給は家を中心という話がございましたが、恩給はむしろ、長年の間忠実に公務に勤務した公務員に専属する権利として、その老後の適当な生活を保障するという形のものでございまして、したがいまして、離婚した奥さんに対する恩給というのは非常にむずかしい問題ではないか、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/62
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063・赤松良子
○赤松説明員 婦人問題企画推進本部でございます。
先生の御指摘のような問題につきまして、男女平等という観点から、いろいろな制度につきまして関係諸機関に検討をお願いいたしております。これは、昨年の秋に発表されました重点目標、あるいはその以前春に発表されました国内行動計画におきまして、関係機関からの御意見をちょうだいいたしまして、その中で、男女平等の原則に照らして、諸種、年金、恩給あるいはその他の法制度についてすべて検討するということで発表いたしておりますので、そのように関係機関は取り組んでいただいているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/63
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064・只松祐治
○只松委員 いま婦人調査室の場合は、関係機関に働きかけて努力している、恩給局の方は、むずかしゅうございますと一言のもとに、全然違いますね。
というのは、確かにここにいるのはほとんど公務員の人ですが、公務員で年金がつく、あるいは軍人で恩給がついている。ところが、夫婦の間はいいけれども、離婚してまた再婚する、これはまたおのずから別になってきますが、いろんなことで離婚だけで子供を連れて別生活をするというような場合については、籍を抜いた途端に一切の権利というものはなくなってくるわけですよね。ところが、たとえばいわゆる姓は、日本の場合はいずれか一方を名のっていいわけですが、韓国あるいは中国あるいはフランス、そういう国家においては、婚姻しても姓を変える必要はないわけです。
したがって、姓を変えなければ一つはそういう問題も矛盾点が出てこないという問題もあります。しかしそれより前に、恩給法それ自体が、さっきおっしゃったように一見属人主義になっておりますが、その家を守っていくということが発想になって、子供なんかに引き継がれるけれども、ともに何十年も働いてきても、離婚した妻に対しては一切権限が及ばない、こういうことになっておるのが現行法なんです。したがって簡単に言って、家中心だ、属人ではない、私はこう言っているわけです。
したがって、そういうものは民法から改正を図っていかなければならないわけですが、先ほどから申し上げますように、男女平等あるいは女性の——皆さん方は娘さんを持っておるわけですから、娘さんが嫁に行くときも若干の財産を分けたり何かで今後いろんな問題が出てくる。それから、御婦人方の就業化というのも非常に進んでおる、結婚後も就業しておる、こういうもろもろの事態を考えますと、いわゆる男女の財産権、単に離婚だけではなくて、財産権に関する民法上の問題もあわせて再考をしていく、検討していかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
法務省お見えでございますか。——そういう作業をする意思があるかどうか、そういう実態を少なくとも調査をいたしておるかどうか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/64
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065・乙部二郎
○乙部説明員 御説明申し上げます。
御指摘の夫婦の財産制につきましては、昭和四十六年以来、法制審議会におきまして検討がなされておりまして、昭和五十年七月にそれまでの検討結果といいますものを中間報告といたしまして公表いたしまして、各界の御意見を徴しまして、その意見に基づきましてさらに法制審議会で検討を加えるという段取りになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/65
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066・只松祐治
○只松委員 いま検討を加えるというようなお話がありましたが、どこが主管か。大体労働省の婦人局と言ったって雇用問題あたりが中心のようですし、帰するところ総理府の婦人調査室ですか、そういうところが一番中心になるだろうと思いますが、時間がありませんし、いまもさらに短くしてくれというような理事の要求ですけれども、本当はこの問題についてももう少し論議を進めたいのです。
いままで夫婦で築いてきた財産については、いろいろ請求権その他がありますけれども、長い間築いてきた、夫婦生活をしてきた、そこで二十年、三十年たっていろいろな共済や何かの権利がその御主人に発生をした。ところが、俗な話をして、定年になって何かして、じゃあということで若い愛人ができた、あるいは離婚をした。ところが、妻はそれでほっぽり出された場合に、新しい妻には権利が生じても、二十年、三十年働いてきた糟糠の妻には権利は一切なくなっているというのが、現在のいろいろな恩給や共済の仕組みになっているわけですね。したがって、こういうものは根本的に変えていかなければ、男女平等というのはそこから出てこないわけです。そこを私は、いわゆる属人主義ではなくて家中心の属家主義で、古い家族制度のもとにあるいろいろな法律がそのまま残っておる、こういうことを一点言っておるわけです。
法務省の方でもそういう点を、後で時間があれば個人的にもまたレクチュアもいたしますけれども、お考えをいただいて、そういう夫婦間の財産問題その他、あるいは総理府等におかれましてもそういう問題について、過去に夫婦で家庭を築いてきたからそれが発生をしておるのであって、それから後に、退職した後にそれが発生するだけの問題ではないのです。年金の問題は。そういうことを十分お考えになって、ひとつこういう問題に対処をしていただきたい、関係当局にもそういうことを強く要望いたしておきたいと思います。
そういうものの最も具体的な問題として、夫婦が離婚をする、この場合に慰謝料というものが支給されます。どの程度離婚をしておるかといいますと、日本は一九七一年に十万三千五百九十五人です。昨年で十一万九千百三十五人、約十二万人。しかし、これが資本主義国家の先進的な国であるアメリカで百八万人、ソ連で八十六万人。これを比率に直しますと、日本は新婚の七人に一組は離婚をいたしております。アメリカでは二人に一組は離婚をしておる。ソビエトにおきましては三・五人に一人離婚をしておる。これは確実な統計数字でございますが、こういう数字があらわれてきておるわけでございます。こういうときに離婚の慰謝料はどうかといいますと、各国によってそれぞれ違いますが、日本の場合は大変に微々たるものであるわけです。なぜ微々たるものであるかというと、税法とも大いにこれが関係があるわけです。
日本の場合は、税法の中にはほとんど、贈与や何かそういうものはありますけれども、離婚に伴う税法というものは一条もない。あるのは国税庁通達の六十二条に一項ある。いわば、先ほど恩給の例も私、出しましたが、旧態依然たるままで、憲法でうたわれた男女平等、あるいは高学歴化に伴う社会の変化、あるいは雇用の増大、そういう雇用の増大で夫婦共かせぎをしておって、貯金の場合は別々にしておる。ところが、土地を買おうかということになりますと、いまの場合は依然として御主人の名義にする場合が多い。家を建てる場合も同様で、多少共有名義も出てきておりますけれども、大体御主人になる場合が多い、こういう状態が多いわけです。ところが、いざ離婚になりますと、そういうものはみんな置いていってしまって、ひどいのは三十万か五十万、あるいは三百万か五百万のわずかな金で離婚をしていかれる。離婚をしていく場合でも、離婚のうちの約四割というのは実家に帰っているのですね。ここいらにもまだ家中心の日本の封建的な制度というものが残されておる、こういうものを見ることができるわけでございます。
したがって私は、主税局あるいは国税庁におきましても、こういう問題についてもう少し大所高所から、税法あるいはそういう通達においても検討を加える必要があると思います。具体的なことは後でお聞きいたしますが、まず大局としてそういうものを検討する用意があるかどうかお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/66
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067・磯邊律男
○磯邊政府委員 御承知のように、現在離婚に伴う慰謝料の分与者、それからまたその慰謝料をもらった人に対する規定というのは、法文上には明らかにされておりませんで、通達の解釈等でこれが行われておるわけでございますけれども、今後そういったケースが非常に激増してまいりましていろいろとトラブルが起こるということになりますと、やはりこういった問題についてもはっきりさせておく必要があろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/67
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068・只松祐治
○只松委員 ひとつ主税局の方でも、通達の範囲内だけでなくて、税法上の問題としても——きょうは私は三十分まで持ち時間だけれども、あとの問題があるからできるだけやめてくれということなので具体的な問題は提起しませんけれども、ひとつ前向きに検討するということくらいは、論拠は展開いたしませんが、大臣なり局長なりどちらでも結構ですが、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/68
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069・大倉眞隆
○大倉政府委員 問題の背景として只松委員がいろいろお調べになり御指摘をしておられる事情は、私ども十分承知いたしておりますので、それは法令上の手当てを必要とするかどうかという点を含めまして、引き続き勉強いたしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/69
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070・只松祐治
○只松委員 ぜひひとつ前向きに検討していただきたいと思います。
そこで、国税庁当局に具体的にお答えをいただきたいと思いますが、その六十二条にあります問題の中で、金銭の場合は実際上は課税されておらないわけですね。しかし、そこの中に「過当」などという字句、まあ読み方は全体がむずかしいわけですが、過当とは何ぞやといろいろ聞いてみますと、普通の人間なら五百万や一千万ならば課税にしない。ところが一億円も出すと、それは擬装離婚じゃないか、あるいは過当じゃないかということで問題になる。ところが、松下幸之助さんが一億円払おうが十億円払おうがそれは過当ではない。これは、言えば人間を大変差別をするものであるし、きわめて税務当局の恣意的なもの、したがって言葉としては、こういう過当なんというものは国民を逆に愚弄する不謹慎なものであって、あえて入れるならば違法行為とでも申しますか、そういう虚偽の離婚というようなものは明らかに違法ですから、違法行為等にわたる場合は別といたしまして、実際上現在課税をしておらなければ、そういうふうに素直にいまの文章を、六十二条を直すということをしていただきたい。一言で言うならば差別的な行政、金持ちだから、貧乏人だからというような差別的な行政は取りやめる、この通達を素直な文章に直していただきたいということが一つ。
それからいま一つは、固定資産などでキャピタルゲインが生じない場合は、これも課税の対象になっておらない。ところが、この文章にはそういうことが一つもないわけでございます。特に離婚に関して。それで私はさっきから、もう少し男女間の問題、離婚問題の法案を整備しなさいということを言っておるわけですが、キャピタルゲインを生じない場合には非課税であるということを六十二条のまた次の項にするか何か、ひとつ新たな通達といいますか、解釈でもいいですが、出していただきたい。やはり国民に明示するというのが法律でございますから、国民の知らないことを国税当局が実際上認めておるということだけでは通達の意味をなさない。それを行っているなら当然に通達を国民に明示すべきであります。この二つをまず要求をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/70
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071・磯邊律男
○磯邊政府委員 ただいま只松委員御指摘のように、離婚の際の慰謝料につきましては、分与を受けた人は非課税となっておるわけでありますけれども、ただこの場合に、それが過当であると言われるような場合はその過当とみなされる部分、それからまた、明らかに相続税もしくは贈与税の通脱を意図した擬装的な離婚によって財産を分与したといったような場合には、これを贈与税として課税するというふうな基本通達になっておるわけでございます。
この場合に、先生御指摘のように、では、その過当とは何かということになってまいりますと、これはきわめてむずかしい問題でございまして、やはり夫婦が婚姻期間中にどの程度協力をして財産をつくっていったか、それからまたどういった理由で離婚をしたか、その離婚後の婦人の生活がどうであるか、もろもろのことを総合勘案いたしまして、過当であるかどうかということを判定するというたてまえにはなっているわけでございますけれども、これは実際問題としてなかなかむずかしい。現に私たちも、各国税局、税務署を通じまして、この過当とみなして贈与税を課税した事例があるかどうかということを調査したわけでございますけれども、はっきり申しましてそういった事例があるとは言えない、まあ全くなかったかというと、そうでもないかもしれませんけれども、少なくともそういった事例があるという報告は聞いてないわけでございます。
しからば、なぜこういった条文があるか、規定を置くかと申しますと、これはある意味におきましては、やはり過当という場合は贈与税を課税しますよという、極端な事例が生ずるのを予防する、そういった予防的効果しかないというのがございまして、事実はこれは働いてないというのが実態でございます。しかし今後、こういった規定につきましては、相続税法の改正に際しまして基本通達の見直しをするというときもございますので、そのときに、この表現につきましては、御趣旨の線に沿って書き改めたいというふうなことを考えているわけでございます。
それからまたさらに、そのキャピタルゲインが生じないような財産の分与については非課税であるという問題につきまして、これはいわば当然なことでありますけれども、はっきりさせる意味におきまして、何らかの形でこの趣旨を明示しておきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/71
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072・只松祐治
○只松委員 今度は、キャピタルゲインを生じたときの場合でございますけれども、昔結婚したときに五十万か百万で家を買っていた。これがいま、あるところでは億のあれになっておりますね。じゃ、それをどういうふうに分けるかということがいろいろ出てくる。家庭裁判所やらいろいろな話を聞きますと、実は離婚のときはこれが一番むずかしいのだ、こういう話が多いのです。大体離婚の話はついたけれども、さてじゃ、土地を処分するか、家を処分するか。どうせ別れるあれですから、仲よく別れるのは少ないわけです。このやろう、あれに家やったり土地やったりするのではしゃくにさわる。といって、片一方は金よこせ。金よこすには家を売ってしまわなければ金をよこせない。あるいは新しいマイホームを建ててもローンに追われておる。キャッシュというものがほとんどない。こういういろいろなことが不動産の場合には出てくるわけです。
そういう中でキャピタルゲインが生じたときに課税をする。これを一挙に課税するなと言っても、ほかの問題と関連してなかなかむずかしいだろうと思いますが、離婚に関して長い間生じてきたこういう問題については、それじゃ離婚する前に、贈与のいろいろの便宜がありますから、それをしておけばいいじゃないかということもありますが、離婚するときには、贈与しておいてその後で別れましょうか、話はそうもうまくいかないわけです。これも私は法体系として税法の中で前向きに検討すべき問題の一つだ、こういうふうに思うわけです。これだけ離婚件数が多くなってまいりますと、ぜひひとつ次にはこれをしていただきたい。
それから、離婚の話はついた、それから慰謝料の額もついた、ところが現金がない、こういう場合には月払いというものもいまあるわけです。自動車事故なんかでも月払いがあります。それから、子供さんがあって、片一方に養育費を支給する、こういうふうなこともあります。そうすると、アメリカの場合は、大体原則として男性から女性に養育費等を払いますと、男性の分からそれの課税を免除いたします。そのかわり女性側に所得税がかかってくる、こういう制度になっているわけですね。理論的にはこっちが合理的でしょうね。男性はその分だけ所得がなくなっているわけですからね、それでその女性にその所得が行っているわけですから。男性が所得がないのに男性に所得税がかかってきて、女性側に行かない、こういう問題も検討すべき問題だと私は思うのです。
したがって、キャピタルゲインの発生した場合、それから、そういう慰謝料の分割払い、あるいは養育費の月払い、こういう問題につきましても、税法上全然想定してないというか、いままで私が知っている限りにおいても、論議されたこともないし、税法上整備されておりません。したがって私は、このほかにもありますが、時間がありませんのでこれでぼつぼつやめますが、ぜひひとつ、これだけ男女が平等になり、いろいろ男女間の問題が出てきたならば、それに伴う民法上あるいは税法上、あるいは皆さん方が直接それを扱っている通達、そういうものに関して再検討を加えるべきだと私は思います。
各セクションのお答えをいただくとともに、最終的にひとつ大臣、責任を持ってやることを御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/72
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073・大倉眞隆
○大倉政府委員 ただいま最後に御指摘になりました二つの問題は、率直に申し上げていずれも非常にむずかしい問題を含んでおりますので、いま直ちにおっしゃいましたような方向での法改正を考えるというお答えをいたす用意は実はございません。
と申し上げますのは、キャピタルゲインをいつの時点で課税するかという問題に深くかかわってきておりまして、これの課税を繰り延べて、財産分与を受けた方の方ですべてのキャピタルゲインを発生せしめることが果たして妥当かどうかということは、相当深く詰めて考えてみませんとむずかしいと思います。
それから、分割払いになりました場合にも、確かにアメリカはおっしゃるような制度になっておりますが、しかし、いまの日本の全体の法制の中では、やはり私どもが、先ほど長官が申し上げたような解釈が妥当であろうと考えております基本は、民法上の財産分与請求権の規定によっておるわけでございまして、財産分与請求権に基づく財産ないし金銭の移転が分割的に行われると考える限りは、なかなかアメリカのような法制に乗っていくというわけにはいかないのではないかという気もいたします。
非常にむずかしい問題を含んでいると思いますので、今後の研究課題とさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/73
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074・村山達雄
○村山国務大臣 いま只松委員から離婚に伴ういろいろな問題を伺いました。税法上は非常にむずかしい問題だと思います。この問題に関する限り、夫婦財産制度が民法ではっきりしますと、恐らくその限りにおいて割り切りが出てくるのだろうと思うのでございますが、夫婦財産制度の問題が日本ではまだそれほど確立もしておりませんし、また実際の財産の分与がいまの民法に従っているとも思えない実情でございますので、言ってみますと、しわ寄せが税にやってくる、こういうことだろうと思うのでございます。
確かに御指摘の点で、離婚されるときに払うものは果たして贈与なのか慰謝料なのかという基本的な常識の問題もあると思います。また、キャピタルゲインの問題も、それと相関連して一体どういうことになるか。贈与としない、慰謝料として扱うということになりますと、恐らくそこは、キャピタルゲインはやはり普通の課税をすべきじゃないかという理論になっていくのじゃないか。それからまた、いまの年賦払いの話、これもまた夫婦財産制度と密接な関係があると思うのでございますが、非常にむずかしい問題でございますが、それらの問題を含めまして、今後夫婦財産制度が改正されない場合でも十分検討してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/74
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075・只松祐治
○只松委員 私は、具体的にお答えいただくのは、国税庁長官からいただいた二項目で、そのほかの問題は、こういう問題をここで論議されたこともほとんどない、ほかの法務委員会等でされたということも余り聞かない、特に財産や税制に至っては、大蔵委員会でございますが、この場でもほとんど行われたことはないわけでございますから、改めてそういう意味で、法務省からも来ていただいて、法務省はもちろんですが、特に財産に関係する大蔵省の関係各セクションで、問題提起をいたしますからひとつ検討してください、こういうことを言っておるわけです。したがって、前向きの検討をするということをお答えいただけばいいわけで、きょうそれに対する反論とか——反論を言われれば私も論をいたします。既定時間どおりもう少しやってしまいますが、それをあえて私が時間も少し短くしてやめているゆえんは、後の議事の進行もありますし、したがって、前向きに検討するということをきょうはお答えをいただきたい、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/75
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076・村山達雄
○村山国務大臣 簡潔に申し上げますと、非常にむずかしい問題でございます。前向きというのか後ろ向きというのか、あるいは中道を行くというのか知りませんが、非常にむずかしい問題でございますので、ぜひこの問題を合理的に解決するように検討を進めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/76
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077・只松祐治
○只松委員 後ろ向きとは何だ、後ろ向きとは。人がこれだけ論議して、議事協力までしようというのに、後ろ向きとは何だ。前向きか後ろ向きか何かわからぬというのは何だ、そういう言葉は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/77
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078・村山達雄
○村山国務大臣 言葉が過ぎまして申しわけございません。前向きという意味は、いまおっしゃるように、キャピタルゲインについても、それからまた、その分与があった場合にもすべて慰謝料にしろ、そこは贈与にするなということでございます。だから、そういう意味で積極的に検討してまいることをお約束申し上げます。言葉が過ぎました点はおわび申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/78
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079・大村襄治
○大村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/79
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080・大村襄治
○大村委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許し・ます。大石千八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/80
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081・大石千八
○大石委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、賛成の意を表するものであります。
本法律案は、現行の租税特別措置について整理合理化を行い、住宅建設及び民間設備投資の促進に資するための諸措置及び中小企業対策等のための必要な措置を講ずるほか、国税収納金等の受け入れ期限を一カ月延長することを主な内容とするものであります。
まず、租税特別措置の整理合理化であります。租税特別措置は特定の政策目的の実現という面に着目した場合、そのすべてが不公正なものとして非難さるべきものでないことは言うまでもありませんが、政策目的が達成されたものや政策効果が上がらないものについては、速やかに改廃を行う必要があることも申すまでもありません。今回の整理合理化は、こうした観点に立って見直しを行った結果であり、時宜を得た適切な措置であると考えます。またその内容も、企業関係九十一項目中廃止十一項目、縮減二十六項目に及んでおり、政府が本問題に真剣に取り組んだ態度に敬意を表するものであります。
次に、住宅、土地税制でありますが、住宅建設の促進を図り内需の振興に資するために、住宅取得控除を拡充して住宅ローンの返済に対する優遇策を講ずるとともに、優良宅地の供給を促進するために、土地譲渡益重課制度の適用除外要件である適正利益要件を改め、地価の高騰及び土地の投機的取引の抑制を目的とした国土利用計画法との整合性に配意したことは、きわめて妥当な措置であると考えられます。
さらに、現下の最大の課題は景気浮揚によって雇用の安定と確保を図ることでありますが、本法律案は一年限りの措置として投資促進税制を導入しております。これは、その期間が短く対象範囲がやや狭きに失した感なきにしもあらずとも考えられますが、税制面からする景気刺激策として民間設備投資の繰り上げ及び繰り戻しを誘発するとともに、企業家心理に与える影響力も大きいものがあり、当を得た措置と認められます。
また、中小企業対策としては、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく認定中小企業者に対する欠損金の繰り戻しによる還付の特例措置が講じられ、中小企業倒産防止共済法に基づき納付した共済掛金の損金算入が認められるなどの適切な措置がとられております。
最後に、五十三年度税収の伸び悩みを補う措置として、国税収納金等の受け入れ期限を一カ月延長することは、これにより国、地方を通じて財源の確保が図られるものでありますから、やむを得ざる措置として考えられます。今後における政府の健全なる財政運営を期待するものであります。
以上申し述べた理由により、本法律案に賛成する態度を表明して、私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/81
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082・大村襄治
○大村委員長 伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/82
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083・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の立場を表明し、その理由を述べたいと思います。
いま世界にその例を見ない赤字財政、火の車予算が続いている中で、今後の税制がどうなるのか、国民は強い不安の気持ちを持って注目しているところであります。このような状況のもとで、税の不公平を徹底的に是正して文字どおり公平、民主的な税制とし、さらに、国民の合意と参加を積極的に求めながら財政再建に取り組むことが大切であることは言うまでもありません。
しかし、今回提案されましたこの法案の内容と法案審議を通じて示された政府の姿勢は、このような国民的課題を追求する決意を欠いていると言わなければなりません。
今日私たちが直面している日本の経済、財政の進路は、春の坂道のような平常かつたんたんたる道ではない緊急、非常事態なのであります。そして、こういうときほど大胆に古い惰性を断ち切って新しい中期、長期の展望を立て、国民的合意を求める勇気と指導性が必要であります。日本財政百余年の歴史を振り返ってみても、経済の激動期には決断力のある大蔵相が存在したものでありますが、しかし今日、政府にそういう決意が示されていないことを大変残念に思います。
このような気持ちを持ちながら、この法律案に反対する第一の理由は、不公平是正の努力がきわめて不十分であるという点であります。
いままで積み上げられてきた租税特別措置は、不公平税制の中心問題として各界から指摘されてまいりました。それは中小企業、一般国民も利用するものもありますが、全体として大企業、高額所得者を中心とするものであり、それによって税の公平の原則がゆがめられてきたのであります。
今回の一部改正案は、若干の改善は見せてはいるものの、期限の到来するものを中心にした一部改廃であり、今日の特別措置による不公平さを全面的に洗い直したものではありません。しかも、現状の租税特別措置が今日の経済状況の中でどのような効果を持っているのか、その解明もきわめてあいまいであります。このように効果の測定すらできない不公平な特別措置を積み上げてきたこと、それを今日に至っても抜本的に改革しようとしていないことは、大きな問題であると言わなければなりません。
さらに、政府並びに政府税調が、不公平税制是正の観点を矮小化して、従来と同じように政策的なものとそうでないものとを区分し、各種引当金、準備金によって大企業を優遇し、利子配当所得の総合課税、有価証券譲渡益の課税強化など、先ほどわが党が提案した法律案を初め、かねてから私どもが要求してきました諸改革をおくらせていることは容認できません。特にいま大きな社会問題となっている医師優遇税制の改革を提案できなかったことは、政府の大きな責任であります。これらの点を中心に不公平税制を大胆に是正する決意があらわれていないことを厳しく指摘したいと思います。
第二の理由は、政府が依然として新たな不公平をつくり上げる視点を捨てていないことであります。
今回提案されました中には、住宅取得に当たっての控除の拡大などの若干の消費者対策の面もありますが、土地税制改正を見ても、実際問題として宅地供給促進につながるよりも企業救済のためであることは明らかであります。地価再上昇の懸念が指摘されている今日、土地税制の緩和には慎重を期すべきであり、中小企業者を切り捨てて大企業、金融界を対象とした高度成長の後遺症の後始末をするような内容は大きな問題であります。
また、投資促進減税につきましても、今日の経済構造をどう改革するかの視点もなく、実現不可能な七%成長の目標にあおられて、当初慎重論が強かったにもかかわらず、急遽五十三年度税制に盛り込まれたものであり、これらは新たな不公平税制をつくり出す道を歩んでいるものと言わなければなりません。
このような経過が示しているものは、今回の租税特別措置法の一部改正の内容にも多くの問題があり、今回提案されなかった部面でもより大きな問題があるということであります。
第三に、国税収納金整理資金に関する法律の一部改正についてであります。
政府は、臨時異例の措置という口実のもとに、戦後最高の国債を発行するほか、この法改正によって五十四年度の税収のうち約二兆円を五十三年度歳入に繰り入れることによって、事実は三七%なのに名目三二%の国債発行比率ということにいたしています。
このような措置は、さきの決算調整資金についての提案とともに、財政の憲法とも言うべき財政民主主義、財政単年度主義を規定した財政法の根幹をゆがめる危険性を持つものであり、財政制度を歪曲するものと言わなければなりません。
いま政府に求められているのは、このように制度をゆがめて目の前の局面を糊塗したり一時しのぎの対策をやることではなく、税制、財政の骨組みについて大胆な改革に取り組むことであると思います。
第四に、今日の税財政の危機に当たって、積極的に改革のプログラムを提起しようとする姿勢のないことを強く指摘しなければなりません。
今日多くの国民は、大増税の時代が間近に迫っているという深刻な不安の中にあるのであります。税をめぐる環境が厳しいものとなろうとしている中にあって、政府・大蔵省は、抜本的な不公平税制是正を断行すると同時に、国民的な参加と合意を求めて改革のプログラムをつくり上げることが大きな責任となっているはずであります。
現状のようにそういう決意が見られない対策をとりながら来年から大増税というふうなことでは、だれが納得するでしょうか。
以上指摘しました理由によって、今回の提案を承認することはできないのであります。よって、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案に反対であることを表明して、討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/83
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084・大村襄治
○大村委員長 坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/84
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085・坂口力
○坂口委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の態度を表明し、討論を行うものであります。
昭和五十三年度税制改正については、わが国が直面する経済、財政情勢から勘案して、景気回復に積極的な役割りを果たすことを主目的としながら、一方では財政の健全化にも展望を開くことが課題とされていたのであります。
この意味から、政府が本法案において、いわゆる住宅ローン減税、投資減税、円高で被害を受けた中小企業への繰り戻し還付の特例、法人関係の租税特別措置の整理合理化などについて措置されたことには評価をするものであります。
しかしながら、当面する経済、財政情勢や国民生活の実情から考えるならば、来年度の税制改正がさきのような措置だけで十分とは言えず、多くの問題があります。
その第一は、不公平税制の是正を部分的な処置で事足れりとしていることであります。
不公平税制の是正については、われわれも租税特別措置である利子配当所得の分離課税の廃止、交際費課税の強化、価格変動準備金の縮小などを初め、法人税の各種引当金の縮小、有価証券取引税の強化等を要求してまいりましたが、このうち、来年度の改正で実施されるものは有価証券取引税のみであります。
こうした不公平税制を温存することは、財政の健全化をますますおくらせるとともに、一方では所得減税の見送りによる大衆課税の強化から、さらに不公平を拡大するものであります。
以上のように政府の税制改正に対する取り組み方は、景気回復、財政の健全化のいずれにも明確な対応をせず、中途半端なものであります。国民生活の向上には役立たないものであります。
反対の理由の第二は、今回の改正で新たに措置されたものが、景気対策に偏り、福祉とか公平さに配慮が欠けていることであります。
たとえば、住宅ローン減税を見ましても、五十三年一月以降に取得した新築住宅に限定したり、その控除方法も多額な借金をできる能力のある者にしか利用できないような仕組みになっております。
したがって、こうした制度を設けるからには、すでに住宅ローンを利用している者や、中古住宅の取得者、増築をする人等もその対象に加えるべきであります。
また、住宅を取得できない階層については、家賃控除による減税を行うことが、税の公平や福祉の充実などの面から見ても必要であります。
さらに、福祉の面からは、住宅や機械を取得する階層にのみ減税を行うのではなく、最近の教育費の高騰から考えて、特に公立の施設が少ない高校教育等については、減税を考えるべきであります。
このように、福祉とか公平さを配慮しない税制改正は認めがたいのであります。
反対理由の第三は、国税収納金整理資金に関する改正によって、財政民主主義が形骸化されることであります。
政府は、本来五十四年度の税収になるべき五十四年五月分の税収約二兆円を、五十三年度の歳入として先食いをしようとしております。この措置は、国債依存率が実質三七・八%であるのに、三二%に見せかけるなどきわめて糊塗的な手段であります。
政府は、まず、こうしたこそくな手段を講ずる前に、巨額な歳入不足に陥った財政経済運営の失敗を認め、その責任を明らかにするとともに、財政再建の方途についても具体策を明示すべきであります。
その努力をしないで、年度区分の財政原則を乱すことを初め、変動幅の大きい法人税収を年度当初から年度末に移行することは、国の歳入見込みをより困難にしたり、それに伴い地方財政にも悪影響を及ぼすなど、今後の財政運営に多くの問題を残すものであり、許しがたいものであります。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/85
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086・大村襄治
○大村委員長 永末英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/86
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087・永末英一
○永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま上程されております租税特別措置法及び国税収納金整理資金法改正案に対し、反対をいたします。
臨時異例という口実でつくられました本年度予算は、わが党の反対にもかかわらず成立をいたそうといたしているのでありますが、もともと赤字国債の膨大な量を抱えた財政というのは、中期目標を立てて正常化しなければならないのが当然であります。
しかし、一体その中期目標と申しましても、いつごろをめどに置くかということにつきましてはいろいろな問題がございます。私どもは、この赤字国債解消の目途を昭和六十年代の初めに置くべきではなかろうかと考えます。
その理由は、第一には、現在の経済の動向からいたしますと、財政支出の伸び率を急激に落とすことは不可能だと考えます。
第二に、もし赤字国債解消の目途を早めますと、それを早めれば早めるほど逆に国民に大きな税負担をかぶせねばならぬということになると思います。
第三には、しかし、もし急激な税負担の増加をやりました場合には、われわれの中期計画自体目標達成ができなくなり、ひいては日本経済の崩壊にもつながるということを心配をいたすものであります。
第四に、急激な増税によらない赤字国債の解消を早期にやろうとしますと、残された手はインフレでございますけれども、これは全く国民生活を破壊するものであって、容認できるものではございません。
そのような意味におきまして、昭和六十年代の初めの時期を赤字国債解消の目途にすべきだと考えますが、この時期に赤字国債を解消するためには、相当な税収入の増加を図る努力がなされねばなりませんし、同時にまた、歳出面でのむだの排除を徹底して行う努力をやらなければなりません。
こう考えてまいりますと、この中期目標を立て、中期財政計画を立てる場合には、第一には、不公正税制の是正ということがきわめて重要な目標になります。もちろんこれにあわせて行政改革の徹底、高福祉、適正負担の確立ということを行わねばなりません。
こういう観点から今回の租税特別措置法の改正案を見ますと、この租税特別措置法の改正自体にもまだ中期計画はないわけであります。どうやっていくのかということの目標を掲げつつ、この赤字国債の解消が将来やはり税収入の増加によらなければ解消できないんだということを国民に理解をしていただくためには、租税特別措置法の改正の行方というものをやはり明らかにすべきではなかろうか。
その観点から考えますと、利子配当の総合課税について一体どうしていくのか。給与所得控除の限度額をもっと引き上げねばならぬのではないか。交際費課税の強化を図ること、また、それの損金不算入割合の引き上げをやっていくこと。さらには、有価証券取引税は引き上げられましたけれども、これはもっと引き上げる余地のある問題であったとわれわれは考えております。また、公害防止準備金は廃止してしかるべきでございますし、価格変動準備金、これも時限計画を立てて廃止の方向に持っていくべきものでございましょう。退職給与引当金の積立率の縮小やその運営については、もっと明確な方針が示されるべきでございます。また、法人税そのものにつきましても、これは引き上げの方向で物を考えていかざるを得ない。負担の公平、そして法人と個人との性格の違いということを考えますと、そういう方向で税収の拡大を図らざるを得ないと思います。
こう考えてまいりますと、今回の改正案で土地重課課税を弱めておるというのはいかにも理解しがたいことでございまして、宅地供給ということが名目になっておりますけれども、しかし、それは土地を多く抱えた企業を救済する以外に、宅地供給に役立つという意味は一つもないのではないか、まことに賛成しがたい改正点であろうかと思います。
こういう面におきまして、この租税特別措置法の改正案に対しては反対をいたしたいと思います。
また、国税収納金整理資金法の改正につきましては、一カ月延ばそうというのでありますけれども、ことしはそれでつじつまが合うかもしれませんが、来年度はまた同じ形、もとの形になるのでございまして、大体予算が単年度主義でございますから、大蔵省の物の考え方の中に、その一年のつじつまを合わせればよろしいということが頭に大きくあるならば、これは反省をしなければならぬ重大な改正ではないかと私どもには思われます。先ほど申し上げましたように、中期目標を立てて物を考えていこうとする場合に、まさにそのうらはらのことしだけつじつまを合わせればよろしいという発想を捨てていただきませんことには、わが国の経済の立て直し、財政の正常化はまたきわめて困難である。
こういう観点から、この法案に対しまして、反対の意見を陳述をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/87
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088・大村襄治
○大村委員長 荒木宏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/88
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089・荒木宏
○荒木委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法並びに国税収納金整理資金法の一部改正案について、反対の討論をいたします。
第一に、本改正案は、大企業救済の新たな不公平を拡大し、日本経済の矛盾をさらに激しくするものであります。
その一つは、投資促進税制の新設であります。
現下の情勢におけるその効果につきましては、すでに各方面から疑問が提起されております。今回の制度は、一年限りの期限つきで、対象も選択的で、三分の二が中小企業に回るものとされておりますが、これにより業種問のアンバランスを助長するとともに、内部留保の厚い大法人に結果的に有利に働くことになるばかりか、産業界は一斉にこの制度の拡大、延長を要求しており、戦後の企業優遇税制の生々発展の経過から見ましても、さらに拡充されることのおそれはきわめて大きいものがあります。
内需拡大の中心は、公共投資の生活基盤向け重視とともに、実質賃金の引き上げ、減税、福祉の充実、物価の安定など国民の購買力を押し上げ、個人消費を旺盛にすることであります。
わが党は、大法人が主として利用している各種企業優遇税制によって進められてきました過剰蓄積、過剰投資が現在の構造不況、円高不況の原因であり、日本経済再建のためにはその改廃を主張しなければならぬと主張してまいりました。本改正案はこれに逆行するものであります。
その二は、土地譲渡益重課の緩和であります。
この措置は、列島改造時代に土地買い占めに走った不動産企業や銀行の金利負担を救済するだけで、土地の供給の促進に無縁であることは、本委員会の質疑でも指摘されたところであります。政府が持ち家主義を促進する一方で宅地供給が期待できないとなれば、じり高傾向の地価をさらに再騰させることは必至であります。
いま重要なことは、重課税を緩和することではなく、大企業の土地買い占めを規制してそれを放出させ、国民生活に必要な利用に結びつけていく手段ということであります。
第二に、大企業優遇税制を整理合理化すると言いながら、実際には特定の政策目的に対する優遇措置を拡充していることであります。
機電法にかわり、機械産業と電子産業を一体化した機構法に基づく重要複合機械システムに初年度四分の一の特別償却を新設したこと。海外投資等損失準備金に電力企業の核燃料再処理の海外委託債権を拡大したこと。初年度三分の一特別償却の公害防止用設備に大気汚染防止のNOx対策設備を追加したことを初め、その他増加試験研究費の税額控除制度、技術等海外取引の所得控除制度、海外投資等損失準備金等、主として大企業が利用する優遇制度は若干の手直しで延長されているのであります。
次に、国税収納金整理資金法の一部改正について申します。
これは財政の単年度主義をなし崩し的に破壊するものであり、この措置により、来年度以降の税収は、法人税を中心とする変動の大きい税収の多くを年度末に予定することになり、財政運営の不安定要素がさらに増加する結果となる危険性を持っております。
以上、本改正案にとうてい賛成することはできず、反対の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/89
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090・大村襄治
○大村委員長 永原稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/90
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091・永原稔
○永原委員 私は、新自由クラブを代表して、今回提案されております租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案については、賛成の立場に立ちながら討論をいたしたいと存じます。
そもそも租税特別措置は、それぞれ政策目的を持った特別の増減税であり、財政事情、経済情勢の変化に対応して常時補完し、また整理合理化を図らなければならないことは申すまでもありません。
今回提案に係る内容は、その趣旨に沿いながら経過措置に配慮しつつ合理化を行い、かつ住宅取得控除額の引き上げ、土地譲渡益重課税制度についても見直しを行って住宅投資の促進に資することとし、さらにいわゆる投資促進減税制度を設けて、この非常かつ異例の事態に対応しながら、設備投資の拡大により景気回復への一端を刺激しようとする配慮、また円高に悩む中小企業者対策の前進等々、その姿勢には見るべきものがあります。
もちろんこれらの問題の中には、幾多の意見が内に含まれてはおりますが、私は、今回の措置について、いまの時点においては時宜を得たものと評価いたします。
国税収納金の年度前倒しについては、五十三年度だけのメリットしかありません。むしろ五十三年度の特例債発行を抑制するためのびほう策にすぎないというそしりは免れません。しかし、総計予算主義のもとに歳入の年度区分を向後にわたって修正する考えも、この財政状態の中においては理解できないことはないので、私はあえて反対という態度はとりません。
ただこの際、特に申しておきたいのは、通称医師税制についてであります。
租税特別措置の大宗は政策減税でありますが、納税者の側に立ちますと、卑近な例を取り上げながら負担の不公平の訴えが間々出てまいります。この不公平感を取り除く努力は絶えず必要であります。これを、方法論が確立しないということに籍口してじんぜんと日を過ごせば、いたずらな政治、行政に対する不信感をつのらせるばかりとなります。
いま国民大衆の中で素朴な感情のもとに、たとえ名目的なものにもせよ医師の高額所得に対する羨望と不満の声が上がっておるのを、大蔵大臣はいかにごらんになりますか。この税制については、批判の対象になってすでに二十有余年の経過を見ております。
わが新自由クラブの西岡幹事長の質問に答えて福田総理は、五十三年度限りでこれを廃止し、五十四年から新たな措置をとるように約束されたのは一応了といたします。はっきり時期を確約されたのは大きな前進でありますが、いまだ改正について提案の動きすら見えないのは、まことに遺憾のきわみと申さなければなりません。
現段階においては、政府・自民党という一連の言葉の中で、自民党の議員立法ということが政府の福田総理の口から出ているのです。審議には相当の日数がかかりましょう。少なくとも立法府の立場において至急、与野党を問わずこの問題に取り組み、その合意の上に新しい措置を生み出すべきではありませんか。学校医、各種予防注射、救急患者、休日対策、僻地医療等々身近な問題をとらえながら考えても、これらの診療報酬をめぐって税の軽減で解決しようとするのは、税制度の本質から外れるものであり、むしろ歳出の面で措置すべきでありましょう。各種社会保険制度の問題もあります。複雑な錯綜した事態を抜本的に理想的に一挙に解決しようとするのは困難でしょう。といって、日を送れば解決の糸口すらつかめないでしょう。次善の策にせよまず立法化を進める姿勢が必要であります。
日進月歩の近代医学の習得に追われ、多くの患者に接して心身を消耗し尽くす医師の生活実態を見るとき、あえてこの税制を取り上げるのは心情的に忍びないものを感じますが、政治には任怨が必要であります。個の立場を尊重しながらもなお全体を考える私どもは、あえて論じているのであります。
ぜひ今会期内には体制を整え、十分な審議を尽くして昭和五十四年に備えるべきであるという意見を申し述べて、討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/91
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092・大村襄治
○大村委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/92
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093・大村襄治
○大村委員長 これより採決に入ります。
租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/93
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094・大村襄治
○大村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/94
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095・大村襄治
○大村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して野田毅君外五名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者より趣旨の説明を求めます。塚田庄平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/95
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096・塚田庄平
○塚田(庄)委員 ただいま議題となりました租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して簡単に御説明申し上げます。
この決議案は、不公正税制として指摘されておる各種準備金、利子配当の分離課税制度及び社会保険診療報酬課税の特例制度の合理化等について、政府の検討を要請するとともに、社会経済情勢の推移に応じての中小所得者の所得税負担の軽減、法人課税の基本的あり方の検討及び税務職員の処遇改善等について、同じく政府の十分な努力を要請するものであります。
個々の事項の趣旨につきましては、法案の審議の過程の中で明らかにされておりますし、また、案文はお手元に配付してありますので、御了承願いたいと思います。
何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
以上です。(拍手)
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「租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(案)
政府は、左記事項につき、所要の措置を講ずべきである。
一、各種準備金等の租税特別措置については、政策目的を達成したもの及びその政策効果がみられないものについては、速やかに整理合理化を行うこと。また、退職給与引当金等各種引当金については、その繰入率、取りくずしの方法等が実情に即するよう適宜見直しを行うこと。
一、法人の受取配当益金不算入制度及び支払配当軽課制度等法人課税の基本的あり方を検討するとともに、利子配当課税の総合課税の実現に向けて今後さらに検討を進めること。
一、現行の社会保険診療報酬課税の特例については、社会保険診療報酬のあり方との関連を考慮しつつ、五十四年より適正化すること。
一、交際費の支出が社会に与える影響にかえりみ、課税の強化措置につき、一層検討すること。
一、社会福祉充実の見地から、年金に関する課税の合理化を検討すること。
一、住宅税制については、住宅政策との関連において、中古住宅の取得等についても今後さらに検討すること。
一、土地譲渡益重課制度の適用除外要件の改正に伴い、地価の騰貴を生ぜしめないよう、諸制度の適正な運用により遺憾なきを期すること。
一、所得・物価水準の推移等に即応し、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減合理化(配偶者控除の適用要件である配偶者の所得限度の引上げ、白色申告者の専従者控除の引上げ等を含む。)に努めるとともに、税負担の公平化を推進すること。
一、医療費控除、雑損控除については、実情に即し適切な配慮をすること。
一、深夜労働に伴う割増賃金及び寒冷地手当については、一定の非課税限度を設けることの是否について検討すること。
一、変動する納税環境の下において、複雑、困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、職員構成の特殊性等従来の経緯及び今後の財政確保の緊急かつ重要性にかんがみ、今後ともその処遇の改善、定員の増加等に一層配慮すること。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/96
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097・大村襄治
○大村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
お諮りいたします。
本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/97
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098・大村襄治
○大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/98
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099・村山達雄
○村山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意いたしたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/99
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100・大村襄治
○大村委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/100
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101・大村襄治
○大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/101
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102・大村襄治
○大村委員長 次に、石油税法案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。村山大蔵大臣。
—————————————
石油税法案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/102
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103・村山達雄
○村山国務大臣 ただいま議題となりました石油税法案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改正の一環として、今後予想される石油対策に係る財政需要に配意して、新たに原油等に対して石油税を課することとし、ここにこの法律案を提出した次第でございます。
以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。
まず、石油税は、原油及び輸入石油製品を課税物件とし、国産原油については採取者、輸入原油及び輸入石油製品については保税地域から引き取る者を納税義務者としております。
第二に、課税標準は、国産原油につきましては採取場からの移出価格、輸入原油につきましては保税地域からの引き取り価格でありますが、輸入石油製品につきましては、保税地域からの引き取り価格に所要の調整を加えた金額としております。
第三に、税率は、三・五%としております。
第四に、申告及び納付につきましては、採取者については移出した月の翌月末日までに申告納付することとし、保税地域から引き取る者については引き取りの際に申告納付することとしておりますが、保税地域から引き取る者で国税庁長官の承認を受けた者につきましては特例を設け、保税地域から引き取った月の翌月末日までに申告納付することができるものとしております。
以上のほか、納期限の延長、納税地等所要の規定を設けております。
この法律の施行期日は、公布の日とし、昭和五十三年六月一日以後採取場から移出される原油及び保税地域から引き取られる原油等について適用することとしております。
なお、石油税の収入額に相当する額は、別途その改正について御審議をお願いしております石炭及び石油対策特別会計法に基づき、予算の定めるところにより、一般会計から石炭及び石油対策特別会計の石油勘定に繰り入れることとしております。
以上、石油税法案につきまして、その提案の理由と内容の大要を御説明申し上げました。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/103
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104・大村襄治
○大村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
次回は、来る十七日金曜日午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時四分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404629X01319780315/104
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