1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月十三日(木曜日)
午前十時五分開議
出席委員
委員長 木村武千代君
理事 大西 正男君 理事 高村 坂彦君
理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君
理事 小川 省吾君 理事 佐藤 敬治君
理事 小川新一郎君 理事 山本悌二郎君
相沢 英之君 井上 裕君
石川 要三君 谷 洋一君
地崎宇三郎君 渡海元三郎君
中村喜四郎君 中村 直君
新村 勝雄君 細谷 治嘉君
水田 稔君 和田 一郎君
中井 洽君 三谷 秀治君
委員外の出席者
参 考 人
(横浜国立大学
教授) 宇田川璋仁君
参 考 人
(関西学院大学
講師) 高寄 昇三君
参 考 人
(関西学院大学
教授) 橋本 徹君
参 考 人
(盛岡市長) 工藤 巖君
参 考 人
(長野県下高井
郡木島平村長) 湯本 安正君
地方行政委員会
調査室長 日原 正雄君
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委員の異動
四月十二日
辞任 補欠選任
相沢 英之君 椎名悦三郎君
井上 裕君 倉石 忠雄君
石川 要三君 長谷川四郎君
同日
辞任 補欠選任
倉石 忠雄君 井上 裕君
椎名悦三郎君 相沢 英之君
長谷川四郎君 石川 要三君
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四月十二日
退職地方公務員の共済年金・恩給改善等に関す
る請願(荒木宏君紹介)(第三〇〇一号)
同外一件(鈴切康雄君紹介)(第三〇〇二号)
同(柴田睦夫君紹介)(第三〇九七号)
東京都財政確立に関する請願(有島重武君紹
介)(第三〇八八号)
同(近江巳記夫君紹介)(第三〇八九号)
同(工藤晃君(共)紹介)(第三〇九〇号)
同(小林政子君紹介)(第三〇九一号)
同(坂井弘一君紹介)(第三〇九二号)
同(春田重昭君紹介)(第三〇九三号)
同(不破哲三君紹介)(第三〇九四号)
同(古川雅司君紹介)(第三〇九五号)
同(松本善明君紹介)(第三〇九六号)
同(長谷川正三君紹介)(第三一三六号)
産休補助教員の年金に関する請願(三谷秀治君
紹介)(第三〇九八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣
提出第三六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/0
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001・木村武千代
○木村委員長 これより会議を開きます。
内閣提出に係る地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしておりますが、まず午前中は、横浜国立大学教授宇田川璋仁君、関西学院大学講師高寄昇三君及び関西学院大学教授橋本徹君の御出席を願っております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに参考人の方から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑に対して御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず宇田川参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/1
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002・宇田川璋仁
○宇田川参考人 宇田川でございます。
それでは、私の意見を述べさせていただきます。
国家財政、地方財政の問題を議論するに当たりましては、今日の財政の任務がどういうところにあるか、今日の経済政策の中でどう位置づけるかというところをきちんとわきまえるべき必要があると思うわけであります。それで、私の話は、以下大体次のように進めたいと思います。
現在のわが国の経済政策の基本問題の中で、国家財政、地方財政あるいは公経済というものはどう処すべきか、それからその公経済の中で地方財政のあり方というものはどうすべきか。そういう中で、現在問題になっております交付税の仕組みとかあるいは地方金融公庫ですか、そういうものをどう位置づけて考えるべきか、そういうふうに話を進めてみたいと思うわけであります。
言うまでもなく、今日の不況は、遠くさかのぼれば、いわゆる石油危機から派生して、その後の対応が適切を欠いていたということでありますが、その間景気はじわじわ回復しつつあった、そこへ円高不況という問題で、一気に今日のいわば構造的あるいはロングランの不況状態に陥っているということであります。
こういう問題に処するとき、為替問題というのはいわば世界的にエスタブリッシュされた一種の価格機構でありますから、それに調整できなければ世界経済に存在し得ないということだろうと思うわけです。つまり円問題というのは、百人いて、本来五十人がバーを跳び越えるべきなのが八十人も九十人もバーを跳び越えている、それであるからバーはどんどん上がるということでありまして、その百人が生存するためには、五十人はバーを越えていい、五十人はバーのこちら側で活動すべきだ、そういうことがわが国の経済に世界の目から要求されているという状況であるわけです。そういう中で、大きな経済政策の大綱というものは、そういうように産業の仕組みを変える、輸入規制を撤廃する、五〇対五〇というような形で世界の経済機構の中にわが国の方が調整していくということにあるだろうと思うわけであります。公経済、国と地方の今日の財政の任務は、そういう方向へ持っていくための——それがドラスティックに行われてはならない。できるだけソフトに、失業問題を回避しながら、しかもできるだけ速やかに調整を行うということにあるわけでありまして、そのために国と地方を挙げて公共事業その他のいわば過渡的対策を取り上げているということであります。ですから、そういう意味の地方公共事業を中心とする財政政策が実行されていく今日のような状況がいわば恒久的には存在し得ない。そうであるならば、日本の資本主義というものはそれ自体ワークし得ないということでありますから、ワークするためには、現状のような仕組みはいわば過渡的なものであるということである。方向づけがそうであるということになりますと、あとタイムホライゾンを近いところに置いて、できるだけ早い機会にそういう方向に向かうべきであるということだろうと思うわけであります。それが公経済の課題。
では、公経済の中で地方財政をどう見るかということでありますが、私はこれはフィロソフィーの問題として二つあるだろうと思うのです。
一つは、いわば地方公共団体というものを完全な、純粋な地方自治というもので考える。つまり、地方財政あるいは地方公共団体を私経済と同じように考える。それは全く国と離れて活動できる。したがって、その自主的な活動を賄う財源も、自主財源といいますか、各地方団体が住民の選択に基づいて税目も税率も勝手に決める。したがって、繁栄する地方団体もあれば破産する地方団体もある。そして住民の方がそういう地方団体にいたくないということであれば、住民の方が動き回ってわが日本国土の中のしかるべき地方団体に所属する。これは全く頭の中で考えたやピュアーな地方財政の姿であるわけです。わが国の場合はそういうような仕組みは現実的でないということも確かであります。また、わが国の国民もそのような地方財政構造をどうも選択していないように思われます。
これは一つの例であると思われますが、たとえばその昔シャウプが、わが国の地方税構造で住民税について幾つかのオプションをとれるようにしたわけでありますが、どうもそれがうまくワークしない。たしか三十六年でありますか、結局、各地方地域で税負担に差があるというのは望ましくないということで、三十六年だと記憶しておりますが、そういう方式は一本化するというようなことになりまして、結局わが国のいわばユニタリーステート、連邦政府と異なって狭い国土でユニタリーな国家であるというようなことから、どうやら住民も、全く地方がインディペンデントにそれぞれの地域経済を構成するということは選択していないように思うわけであります。
結局、わが国の地方財政の基本的な仕組みというもの、あるいは基本的な哲学というものは、地方自治の基本的な方向は確保する、しかし、同時に地方税の税目とか負担率というものはほぼどこへ行っても同一構造あるいは同一負担率であることが望ましい、それからどこの地域に行っても、ナショナルミニマムスタンダードというようなものがあって、身の回りの公共サービスはそのミニマムスタンダードは確保できる、そういう形をすべての住民が選好しているように私は思うわけであります。そういたしますと、その選好、望み、住民の立場から見て、地方の独立税をもちろん中心としながらも、一般財源としての交付税方式とか国庫支出金というような組み合わせで地方財政というものが運用されるというのが、口では地方自治云々あるいは三割というようなことを言いますけれども、私はよく考えてみますと、今日のようなデモクラシーの中で、それが不満であれば必ずその方向が修正されるはずであるけれども余り修正されないということは、パブリックチョイスといいますか、住民選好も大体こういうところをそれでいいと思っているのだというふうに解釈せざるを得ないわけであります。
そういう意味で、それはある立場から見れば日本型である、非一般的であるというようなことも言えると思いますが、しかし、いずれにしても選択だということで、そういう中で三十年以後の高度成長の間はそれなりにワークしてきた。そういうような国と地方の財政連関が一たびでき上がってくれば、今日のような不況でその連関が全部破綻するということは、これはあたりまえであるわけです。特にその破綻というものに対して、歳出を抑えて財政収支のバランスを保つというのが主なターゲットであるならば、またそれなりに対処できるわけでありますが、財政収支のバランスというものはサブターゲットだというのが今日の経済政策の常識であるわけです。主なターゲットというものは雇用の確保であり、不況からの脱却であるということになりますと、その主なターゲットの中でサブターゲットというものをある程度犠牲にするということは当然起こるというふうに感じるわけであります。
少しイントロが長くなりましたが、そういうふうに考えまして、五十年度以後国も地方財政も不況、そういう意味ではサブターゲットとしてのアンバランスをあえて甘受しながら、メーンのターゲットを追求しているというのが状況である、そしてそのストラテジー、戦略手段が減税というよりは公共事業であるということになっているわけであります。公共事業という戦略要因による財政収支のアンバランスということになるだろうと思うわけであります。そこで、地方財政の収支じりは公共事業というようなことで大きくなってきたわけでありますが、可能性としては、その収支じりを救うといいますか、ファイナンシングするには、三つ考えられるわけであります。これはいわば同時決定になるわけであります。一つは、そのようにして要請されている公共事業、そのうちの地方財政の受け持つ分を、従来のような経常収入でできなければどれだけ起債で賄うべきか、つまり起債の充当率をどれほどにすべきか。それが決まりますと、あと残り物としての交付税の不足額というものはおのずから出てきてしまうわけであります。不足があるということも事実、つまり交付税機能を充足するためには、現行制度で期待される交付税収を下回るということだけは確実です。そうすると、それは二つしかない。一つは、交付税率を引き上げる。あるいは交付税特別会計で借金するか。こういう三つの方途が全部、方程式ならば同時決定ということになるだろうと思われるわけであります。
そこで、最初の公共事業の起債充当率をどのように考えるか、交付税率の引き上げにすべきか、あるいは特別会計の借金ですべきか、この三つについて私の考えを申し述べておきたいと思うわけであります。
第一の、地方の公共事業は従来のように経常収入で賄うべきかあるいは起債で充当していいのかということでありますが、私は原則としては、経常的で毎年毎年起こるような公共事業については経常収入で賄うべきだろうと思うわけであります。よくそういう事業は地方債によって世代間の公平を図るべきだというような議論がありますが、公債でやっても、そういうような毎年毎年行われるような事業は、経常収入でやっても同じことであります。つまり、われわれが税金を負担するのは、われわれと同時に次の世代、孫あるいは曾孫のためにやっている。われわれも、われわれのおやじ、おじいさんの税金によってやっている。要するに、毎年毎年そういう形で次から次へ仕事は後世代に働くということですから、公債でやろうが経常収入でやろうが、これはもう計算上は全く同じです。そういうものを公債でやったにしたって、毎年公債ができるし、したがって毎年その公債の元利償還が出てくるし、だから、経常収入でやることと何ら変わりはない。起債でやっていいのは、それが臨時的にある時代にぼこっと突起するような大事業が行われるような場合には、後世代の方に負担を流すという意味で起債に走ってもいいだろうと思うわけであります。したがいまして、原則的には恒常的公共事業は経常収入で賄っていいと思うわけであります。
しかし同時に、それはやはり国家財政との関連も考えなければならないわけで、地方公共事業を経常収入で上げる——経常収入というものは、地方収入で不足であれば交付税というような形で、結局地方交付税の財源も国税収入の落ち込みで不足だということになれば、その間、いま私が言いました基本原則は、そういう限りにおいては、今日のような公共事業で特別に事業をやるという場合にあっては、ある程度地方の起債の方に振りかえるということもやむを得ないと思います。今日の状況は、いろいろ聞いてみますと九五%の充当率ということでありますが、九五%がいいのか八五%がいいのか、そこら辺は微妙でありますが、ある程度まで従来経常収入でやっていた公共事業を起債でやるというのもやむを得なかろうと思うわけであります。
そういう形で、最初の公共事業の起債充当率は何とかいく。それが八五であるか九五であるか、私はそれほど的確な判断はできませんが、いずれにしても、国家財政との対応で地方の起債充当率を上げなければならないということだけはどうやら言えそうだというのが私の結論であります。
そういうふうにして、それが九五であれ八五であれ数値が出ますと、その残りは結局交付税率の引き上げか交付税特別会計の借金かということになりますが、私は、経済的な効果はどこが違うのかということを考えてみたいと思うわけであります。交付税率の引き上げでやるということは、今日のような状況であれば、それは結局そのしりぬぐいは国家財政の国債増発ということになって、われわれは将来国債という形でそのような負担を背負うということになります。それから逆に全部交付税特別会計であれば、これは特定の地方団体の借金でありませんけれども、マクロとしての地方財政、地方団体の借金ということになるわけでありますから、したがって、将来景気回復とともに予想される地方税でそれをカバーする。もちろん、恐らくそういう借金の元利償還財源はまた次の景気回復をした後の公付税でしりぬぐいされるということになるわけでありましょうが、さしあたりは地方財源で負担される。極端な場合はその二つがある。
私はこれに対して基本的には、今日のような不況対策というものはやはり国家の仕事だと見るべきだと思います。したがって、その主要な負担はやはり国家財政が担う方が穏当である。また、そういう形で事業が執行される方が、マクロ的な経済政策のエフィシェンシーという点から見ても望ましいというふうに考えます。しかし、同時に国家財政においても三〇%という公債依存度を、さらに交付税を全部国債の方で負担するという形で引き上げるというのもまことに機械的な話でありまして、恐らくその間に妥協がある。つまり、国家財政が交付税の穴埋めを十分するという形であるけれども、しかし、それを機械的に国家財政に持ち込むのはやはり余りにも機械的な話だ。その間には、先ほど八五%とか九五%とか申しましたが、ほどよき割り振りがあっていいのだろう。現実には何かそれが二分の一は国が元利負担するということになっておるようであります。これは二分の一がいいのか四分の三がいいのか、それほど私に確固として答えの出るべき問題ではないけれども、基本的には全般として国が負担するという立場をとりながら地方もそれ相応に負担する。つまり、先ほど言いましたようにわが国の財政というのは全くインディペンデントなものとしてワークしていないので、いわば国の公部門として車の両輪だというのが子、のたてまえでありますので、そのたてまえが最も有効に働くというのを見出す方向において解決されるということになって、したがって現状の二分の一がいいのかあるいは四分の三、そういう見当になるわけであります。
もう時間がありませんので最後に……。
そういうことになりますと、結局地方の起債もふえてくる、そうなりますと、これも先ほどの車の両輪方式でやるならば、国家はその国債の償還においてきわめてスムーズに行われる、地方債についてはそれがきわめてむずかしいとか、借りかえが不可能なために起債負担率というものが非常に重くなっているというようなことがあってはならないということで、やはり何らかの国での起債の財源引き受け機関というものをある程度めんどうを見るというような形で、いま問題になっております地方団体中央金庫方式というものの、その細かな内容についてはいろいろ議論はあると思いますが、そういう方式を打ち出すということは、先ほど私が見ましたようなわが国における地方財政の位置づけから見て、これは当然なことだろうと思うわけであります。
大変時間が超過いたしまして失礼いたしました。これで私の陳述を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/2
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003・木村武千代
○木村委員長 次に、高寄参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/3
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004・高寄昇三
○高寄参考人 関西学院大学の高寄でございます。
今日の地方財政の危機というのは、基本的にはいわゆる三十年代からの高度成長が低成長に転換したということで、現在の地方財政の仕組みというものがそういう高度成長型から低成長になったときに基本的に対応できなかったということで、この危機は昭和五十年から始まったわけですけれども、ことしまでその財政制度の欠陥というのを大体地方債で穴埋めする、その欠損部分を国と地方で折半するということで、これはきわめて常識的な見解でありますけれども、地方としましては、いわゆる住民サービスとか、そういうのはなかなか景気に応じて圧縮できないということで、そういう地方財政の財源不足が公共サービスの低下という形であらわれているのじゃないかと思うわけであります。
どういう形でこの地方財政の財源不足とか、制度の欠陥を埋めるかということですけれども、これは常識的には国と地方の税源の再配分とか、交付税率の引き上げとかということが考えられるわけですけれども、そういう財源の分捕り合いということより、むしろその基本として国と地方の関係が一応信頼関係に立ってルール化をされるということが私は非常に重要だと思うのです。
あと一つは、地方自治体が余り交付税とか、起債とか、補助金とかで拘束されますと、むしろ自分の財政として、自分とか市民の費用負担で財政を効率的に運用するという気持ちというのはほとんどなくなって、全部財源不足を中央財政に依存する。現在そういう指向性ですけれども、そういうことは国家財政とか公経済全般から見て非常に不経済の面が多いということで、やはり基本的には交付税とか税とかというもので地方団体が自分の責任でもって運用できる、そういうことが原則論でないかと思うわけです。
そういう点から考えまして、まず交付税からいきますと、現在の交付税は国と地方が折半するということで、その地方の折半しました財源について交付税で与えずに地方債で負担するということで、これはこういう時代ですから、ある程度地方財政も負担すべきだという意見があるわけですけれども、交付税の中には不算入の部分がすでにかなりありまして、その分は地方財政がかぶっているわけですね。たとえば、現在救急医療の問題がありますけれども、患者を救急車に乗せて病院まで運ぶということは、交付税の中にも十分算定をされているわけです。ところが、それを病院の医者に診てもらうという経費は余り算入されてない。こういうことは医師会の協力を得てかなりの地方自治体で外郭団体とかテレフォンサービスとか、委託契約とかというような形で、現実的には救急に対して搬送だけでなしに医療も行っているということですね。こういう経費は入ってないということですから、交付税を全額見ていただいても、地方はそれ相応の負担をしているということです。
この折半についての法律化についてどう考えるかといいますと、これは全部交付税率を引き上げるを明記するというのが最高でありますけれども、一応半分でもルール化していただいたということは、地方財政の方にとってみれば、ある程度、財源不足の半分は補てんしていただけるという点で一つの目安がついたのではないかと思うわけです。しかし、これはあくまで、法律の精神からいいますと暫定的であるべきなんですね。それで将来の一般売上税とか消費税の創設の段階できちっとけじめをつけてほしい。いつまでもこういう折半という形で地方が不足分を地方債でかぶるというのはいかにもしんどいということです。
それから交付税そのものにつきましては、交付税というのは大体地方財政にとっては税と同じように拘束のない財源であるべきなんですけれども、現在の交付税のシステムを見ておりますと、基礎的需要よりかかなり政策的な需要の方が非常に多く入ってきている。しかもその補助金とか地方債との関係のドッキングといいますか、そういう形が非常に多い。そういうことで、補助金として認められますと交付税にも算入される、それから起債もつくというような三重の補てん措置がありますけれども、補助金で認められなければ全部地方がかぶらなければいかぬということです。こういうことはどういうことかと言いますと、国の方が仮に政策を誤りますと、全部それが地方にそのままはね返って、国と地方がお互いに政策の補てんをし合う、大きな誤りをしないというような保障措置というのが非常に欠けるということで、やはり交付税はシャウプ勧告の原則どおり、できるだけそういう地方債とか補助金の連動化を断ち切る。こういうことは公共団体自身も一半の責任があると思うわけですね。交付税を補助金と同じように算入措置についてかなりいろいろと注文をつけておりますけれども、本来は交付税はそういうものでないということを国と地方が両方が知ってもらうということが必要だと思うのです。
交付税の問題の次に地方税の関係に入りますと、これはもう完全に高度成長型が破綻しまして低成長型に変わるとなりますと、一切応能主義よりか応益主義にいくということが基本でございまして、府県税にありましては、もちろん事業税の外形課税の方が非常に政策の安定性がある。それで府県の方は市町村より学校とか警察官の人件費を持っておりますので、むしろ事業税というものに依存しているというのが今日の非常に大きな財政破綻の原因になっているわけで、そういう意味から外形標準課税というものはぜひとも必要である。
それから市町村の場合は、一応財源的には住民税、しかも法人分も含めまして高度成長期にはその恩恵にあずかってきたわけですけれども、基本的には固定資産税というのが非常にいいのではないかと思います。固定資産税はかつては市民税に対して六、四の比率でありましたが、現在ではその比率がひっくり返っている。最近固定資産税の方が有利になってきておりますけれども、しかし固定資産税の意味というのは財源をとるということだけではなしに、過密と過疎を解消する上において非常に重要な意味を持っている。幾ら政策で民間企業の立地を規制しましても、この過疎地とかそこらへ行かない。これは固定資産税の比率が非常に低いからではないか。そういう意味で、固定資産税は税の問題とともに医療負担とか地域開発の政策のためにもう少し再評価されていいのではないかと思います。
それからあと一つ、地方税でも同じことが言えるのですけれども、財源をどう奪い合うかということよりか、もっと重要なことは、住民の視点から見ますと、税における社会的費用の公平化ということがあると思うのです。
ことに住民税の場合は、そういう意味で費用負担が非常に重いという印象を受けておりますけれども、負担というものがそれほど公平になっていない。それはどういうことかといいますと、固定資産税の中に非課税措置が非常に多いということです。現在、高速道路に対して市町村側は課税を主張しておる。こういうものも、住民の手前これが非課税であるというのは、保育料の引き上げとか高校授業料の引き上げの場合に一つのブレーキがかかっているということです。それから市町村の同じ道路をつくって、どうして府県道に比べて市町村道の特定財源が低いのかというような問題もあります。
それから、現在市町村で一番困っておるのはスプロール化とか新団地の開発でございますけれども、これを一般の普通税でカバーするということは現実的に不可能でございますので、現在の宅地開発税というものをもっと市町村が採用しやすいような形で改正していただかぬことには、スプロール化とミニ開発というのはこれからもますます進行するのではないかと思います。
補助金につきましては、これはもちろん零細補助の打ち切りとか生活関連施設の補助率の引き上げとか超過負担の解消ということで、これは常識的なことでございますけれども、あと一つは、英国で行われているように補助金の交付税化ということをやはり進めるべきだと思うのです。この補助金がある以上、地方団体にしましても、補助金を申請するなと言いましても現実的にはそれは非常に不可能なんで、もちろん交付税化してしまうことによって、一般的な交付税補助と、それから特定的な補助の比率を順番に圧縮して、交付税の率が多くなるようにすることが非常に重要ではないかと思います。
それから地方債の問題につきましては、地方債が認可制であるということはある程度必要だと私は思うのです。それは、政府資金についてはやはり国家財政の立場から効率的に運用する。そして、私らの感じとしましては、一般の市町村が学校をつくったり下水道をつくったりするのを政府資金ではなしに縁故債に求めなければいけないというのは、どうしても市民から見ましても納得がいかないシステムであると思うのです。そういう政府債に関する限りは認可であるべきだと思うのです。しかし、事縁故債に関しては、そういう縁故債というのは、普通のこういう生活関連施設に全部政府資金が充てられますと、それはほとんどコンビナートの建設とか高速道路とか限定されたものに限られると思うので、そういうものは地方団体がフリーでやる、そして市場メカニズムの洗礼をある程度受けるという方が非常にいいと私は思うのです。ことに、この市場公募債というのは少なくとも認可から外していただくべきではないかと思うのです。
一般に市民参加が言われますけれども、財政における市民参加というのは非常にむずかしいわけで、こういう市場公募債の購入によって市民が財政上の監視者として立ち上がるということしかないのではないかと思うので、そういう意味で、あらゆる問題を一件審査のような形で認可制で持つということは、地方自治体が市場メカニズムの観念を持ってある程度効率的に財政を運用するというような形が非常に生まれにくいと思うので、中央のコントロールが非常に微に入り細に入るということは、安定した地方財政が生まれますけれども、公経済全体としては非常に非効率な財政運用になっていることで、これはそのまま国民経済としても非常な損失であると思うわけです。
そういうために、私は、地方財務会計制度の改正が非常に必要であるわけで、税源の奪い合いよりか財務会計制度というものをもう一度、現在の情勢に合わせて改正できるようにしていただきたい。
そういうことで、時間が来ましたので終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/4
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005・木村武千代
○木村委員長 次に、橋本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/5
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006・橋本徹
○橋本参考人 橋本でございます。
今般の内閣提出の地方交付税法等の一部を改正する法律案について意見を申し述べさせていただきます。
今般の改正案につきまして第一に注目いたしましたことは、何よりも、提案理由の中にございますところの「地方交付税の総額の確保に資するため、当分の間、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金に係る借入純増加額の二分の一に相当する額を、後年度、臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることを法定する」のくだりでございます。
これによりまして、地方交付税法第六条の三の第二項の普通交付税の総額が引き続き地方団体の財源不足額と異なる場合、地方財政もしくは地方行政に係る制度の改正または交付税率の変更を行うとする条文との関連が、五十一年度や五十二年度におきましてやや不明確でありましたのが、新たに附則第八条の三として加えられたものでございます。
これは、昨年十二月十六日の地方制度調査会の地方行財政に関する当面の措置についての答申の中で、地方交付税に関する項におきまして「地方交付税については、暫定的な措置として、相当程度の交付税率の引上げを行うべきものと考える。この場合、交付税率の引上げのみで地方財源の不足を解消できないときには、交付税特別会計における借入れにより、地方交付税の所要総額を確保することも暫定的にはやむを得ないが、この借入金及びその償還財源については、後年度の地方財政の運営に支障が生ずることのないようにするため、一定のルールを設定することとし、その旨法律に明定すべきである。なお、この借入金の償還期限については、大幅に延長すべきである。」と述べられている趣旨のうちの、とりわけ「法律に明定すべきである。」という考え方が取り入れられたものとして、地方財政の長期的な運営に配慮された措置として評価したいものであります。
かように考えますのは、後で触れたいと思いますが、五十年度以降の巨額の国、地方を通ずる財源不足の中であっても、個々の地方団体、そしてその総和であります地方財政にとりましては、一定水準の財源保障は、地方財政を健全に、かつ長期的に、また安定的に運営していくためには必須なものであると考えられるからであります。
地方交付税に関連して絶えず思い出します言葉は、シャウプ勧告の中での文言でありますが、すなわち、地方団体が必要とするところについて毎年中央政府の慈悲にすがることがないという保証、そして続いて当時の配付税に触れまして、配付税が事実まさしくこういった方法で決められている、その結果、地方財政の長期の計画またはまことに短期の計画であっても、ほとんどこれを立てることができない、と述べている財政上の地方自治に関する含意、考え方でございます。
確かに、五十年度の補正後から五十二年度まで、国の財政も地方財政も激動期でありましたので、やむを得ず単年度限りの対策をとってきたものでありましょうが、それが数年にもわたりますと、まさに地方団体みずからが地方財政のことを考えるという意味での地方自治の根幹に響くと思うのであります。今般の法定措置によりまして、とりあえず財源措置に地方制度調査会の言う一定のルールができたものと考えられるのであります。
もっとも、これに関連いたしまして、あくまでも地方交付税率を引き上げるべきであるという主張もあろうかと存じます。しかし、周知のように、五十年度以降の不況によりまして、法人税を中心に税収の停滞が続いております。数字を見てみますと、四十九年度五兆八千億円の法人税収が、五十年度には四兆一千億円と約三分の二に減収しております。五十一年度四兆八千億円、五十二年度の補正で五兆五千億円と、ようやく四十九年度のレベルに回復したにすぎません。五十三年度予算では、確かに七兆二千六百億円と二〇%増といった見込みでありますが、これとて円高による不況によりまして不況の影響が生じないという保証はないわけであります。そういう意味で、果たして今日機械的に地方交付税率を引き上げることが可能であるかどうかということになりますと、その法定措置にやむを得ず頼らざるを得ないという意味でございます。
第二番目に注目いたしましたのは、五十三年度の財源不足見込み額三兆五百億円のうち、地方交付税で一兆七千億円、建設地方債増発で一兆三千五百億円を手当てして、交付税一兆七千億円のうち一兆五千五百億円の資金運用部資金からの特別会計の借り入れ、千五百億円の臨時地方特例交付金に関してでございます。ちなみに前年度当初予算では二兆七百億円の財源不足額をいわゆる半々方式といいますか、一兆三百五十億円の地方交付税、うち九千四百億円が借り入れ措置でございました。一兆三百五十億円の地方債の増発でございましたが、今般は前年度に比べまして地方交付税の増額措置が地方債の増額措置を上回っております。
このように財源不足に関しまして地方交付税にウエートをかけたということは、現在の各地方団体の財政状況にかんがみまして——と申しますのは、五十一年度の決算状況が先般地方財政白書で発表されましたが、それを拝見いたしますと、表面的には実質赤字団体が減少し、また実質赤字額が減少しております。かと言って、地方財政が好転したかと申しますと、健全性の指標にとられます経常収支比率を見ますと、都道府県では八六・七%でございます。前年度八九・三%でありますから、ややよくなったとしましても八六・七%の高さ。そして市町村では前年度八三・四%に対して八〇・四%。これも三ポイントほどは好転しておりますけれども、いずれにせよ八〇%というのはかなりの高さでございます。
そういった財政体質、構造的な体質を持っている地方団体が今後地方債残高が累増いたしますと、将来の財政需要への圧迫要因となることは明らかでございますので、少しでも地方交付税増額によりまして地方債増額を上回る措置をとられたことについて、着目したわけであります。
しかし、関連して申し上げますと、本年度は国の予算におきましても景気対策として公共事業費は前年度当初比で二七・三%、一兆千七百億円程度の増加であったかと思いますが、地方団体の公共事業費につきましては、失業対策等を除きまして公共事業費では前年度五兆一千四百五十六億円が六兆五千二百二十五億円と、二六・七%増しであります。うち地方負担額は六千三百億円の増加となっております。
そこで、その公共事業費の裏負担と申しますか、起債充当率を先ほど宇田川教授もお触れになりましたが、建設公債では九五%といった措置、あるいはまた地方債の消化難を考慮いたしまして、臨時地方道路整備事業、臨時河川等整備事業、臨時高等学校整備事業等の地方債に公営企業金融公庫の資金の融資の枠と申しますか、融通ができる措置が講ぜられております。
こういう形で、懸案の公営企業金融公庫の機能の拡充が図られたこと、また関連いたしまして、この点は恐らく地方団体間で意見が食い違うのではないかと思いますが、公営競技を行う地方団体の納付金が地方道路整備事業等の地方債の利子の軽減に充てられております。こういった点、さらに財源対策債を原則として政府資金を充当し、さらに地方債計画の中ではその六〇%を実質的には政府資金で賄えるような利差補給を行うことが評価されると思います。
第三番目の問題でございますが、前年度に引き続きまして地方税減収補てん債及び財源対策債並びに五十二年度国の補正予算に伴って発行されました地方債の元利償還金を基準財政需要額に算定していることであります。これも先ほど引用いたしました地方制度調査会の議論の中で、本来一般財源で措置されていたものが地方債に振りかえられたものであるから、元利償還については地方公共団体に対して地方交付税により財源措置をすべきであるという趣旨の提言がございます。また五十二年度の借入額につきましては、五十九年度から六十八年度と、実に十年間に分割償還ということに償還期限が大幅に延長されております。
以上、私は今般の地方交付税法の改正に関連した注目すべき点を三つ取り上げまして、評価したいと申し上げたのでありますが、先ほど触れましたように、地方交付税率の引き上げがなかったことについて私自身の考え方といたしましては、実は私は昨年にも当委員会に出席いたしまして意見を述べさせていただきましたが、その際、昨年度の対策につきましてベストではないがベターである、いわば次善策であると申し上げたのであります。その考えは今日でも私自身変わっておりません。と申しますのは、背景とする経済、財政の状況は昨年度からそれほど大きく様相が変わったわけでもありませんし、徐々に変わらなければならないかと思いますが、また変わりつつあるかもしれませんが、一年前と比べてそれほど明るくなったという感じもしないのであります。
それからまた地方行財政の制度に関しても、たとえば都市計画税の〇・一%の増率といったようなものもございますけれども、大きな変化はございません。一方、国の財政収支試算や地方財政収支試算が公表されておりますが、そのいずれの場合にも、多額の特例公債から脱却する仕組みの場合には、五十七年度の段階で非常に多額の国債残高あるいは地方債の残高が試算されておりますし、一方ではまた、一面気の遠くなるようなといいますか、国の場合には十兆円に及ぶ、地方の場合には四兆円に及ぶ増税案も出ておるのであります。そのような段階の中で、今年度の国税三税が合計して十六兆七千七百五十億の三二%を掛けますと、五兆三千六百八十億と計算されております。これと借り入れによりまして一兆五千五百億円でありますが、こうして計算されました七兆三百九十九億円は、十六兆七千七百五十億円から単純な計算をいたしますと、四一・九七%になります。法定税率が地方交付税率で三二%でございますから、ざっとそういった単純計算をしますと一〇%の上積みということになります。もちろん、その借り入れの半分を一般会計で後年度において持つということを考慮しますと、おおむね三七・三四%ということになります。といたしますと、五%ないし五・三%ぐらい、きわめて単純な議論ですが、増額したということになるわけであります。このようなことを考えますと、交付税率の引き上げにかえたその措置が現在の財政、経済の状況の中からやむを得ないものだというふうに考えるわけであります。
ところで、私は常々考えておりますけれども、一体低経済成長下における地方団体の財源として、地方交付税の仕組みが問題なのか、それとも第一義には地方税の配分なり地方税率の高さが問題なのかということになりますと、地方税の税率の高さが問題であろうかと思います。もちろん、いますぐ地方税の税負担の増加が納税者に受け入れられるような環境ではないと思いますが、いま少し基本的にあるいは根本的に地方税でもってどの程度地方の財政需要を賄うべきかという点に着目した改革案が進められて、二番目に交付税の機能、すなわち地方財政の財源保障なりあるいは財源均衡化なりをねらった交付税の改革案が進められるべきではないかと思います。
これで、交付税法改正案そのものに対する私の意見の陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/6
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007・木村武千代
○木村委員長 これにて参考人からの意見聴取は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/7
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008・木村武千代
○木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川省吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/8
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009・小川省吾
○小川(省)委員 三人の先生方ありがとうございました。
三人のそれぞれにお伺いをいたしたいと思います。
政府は、この二、三年来そうなんでありますけれども、本年においても地方財政対策の確立におきまして、「昭和五十三年度以降、地方財政が好転し、あるいは地方税財政制度の基本的改正が行われるまでの間、各年度の地方財源の不足に対処するための交付税特別会計における借入金については、当該年度の借入金から前年度以前の借入金に係る当該年度の償還額のうち地方の負担とされている額を控除した額の二分の一に相当する額を、臨時地方特別交付金として、当該年度の借入金の償還時に償還額に応じて、国の一般会計から同特別会計へ繰り入れるものとし、この旨を法律に」明定する、としているわけであります。地方交付税法第六条の三の二項によりますれば、交付税の総額が引き続き算定額と異なった場合には、地方行財政に係る制度の改正または率の変更を行うというふうにされておるわけであります。いま参考人は評価をされたわけでありますが、政府は以上のような点から法の中に明定することを制度の改正だと強弁をしているわけでありますが、私どもは法に明定をするだけでは六条の三の二項に言う制度の改正には当たらないのではないかというふうに思っておるわけであります。先生方はどのようにお考えになっておられますか。三人の方々からそれぞれお答えをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/9
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010・宇田川璋仁
○宇田川参考人 私は主として経済学の方を自分の専攻としておりますので、そういう意味で法的な解釈ということについて必ずしも私は自信があるわけではありませんが、私は少しそれを経済学的に考えてみたいと思うわけです。
要するに、現在交付税の引き上げという形で所要財源を全部国から地方へ回すということは何を意味するかというと、それは先ほど申しましたように国の国債負担という形でそこに最終的な負担がいく。それは何を意味するかといいますと、要するにわれわれが国民という立場で将来返済するのであるということを意味するわけであります。それからもう一つの場合、そうでなくそれが二分の一だということは、二分の一の限りにおいて国税の負担、それから住民という立場で負担するのだということになりまして、その違いはどういうところにあるかと申しますと、私は余り違いはないのであろうと思うわけです。つまり、将来の地方交付団体というものは現状から少しはよくなるかもしれませんけれども、わが国の制度ではほとんど大部分の府県、大部分の市町村が交付を受けているということは、同じ国民という資格においても、同じ住民という資格においても、いずれにしてもそれはわれわれが将来において負担しなければならない。国税という形で負担するとすれば国税という仕組みの中で将来の負担が残り、地方団体の起債という形で負担するということになれば地方税という仕組み。そうすると、一体将来の国税システムと地方税システムとはどれだけ違うのだ。納税者は同じということで、ただ、恐らく国税の中心は所得税、法人税、あるいはそのころ入るかどうか知りませんが一般消費税というタイプ、片や地方税としての住民税、固定資産税、事業税、そういう形のいわばそれに応ずる分配状況が少し異なっているということで、これは制度的な解釈としてはお答えにならないということはよく知っておりますが、経済的なエフェクトから見ますとそれほど違わないというふうに考える次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/10
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011・高寄昇三
○高寄参考人 法律を非常に簡明に解釈しますと、やはり制度の改正というのに当たらないと思うわけです。しかし、これは解釈を民法とか刑法のように厳密に解釈する法律であるかどうかといいますと、こういう地方財政というのはかなり政策とか経済状況がある。欧米と比べまして日本の場合は地方税制度でもきわめて画一的で固定化している。そういう意味で交付税制度というのが二つ三つあってもいいのじゃないかと思うわけですね。現在は交付税制度が一本で、その中で普通交付税と特別交付税とあるわけですけれども、そのほかに私は二つ、三つ、先ほど言いました補助金の交付税化とか、そういう交付税の内容が、分配基準を非常にきめ細かくしておりますけれども、そういうものから分離して、ある程度譲与税化した色彩を持ってもいいんじゃないかと思います。そういう方が地方自治体としては結局硬直化せずに済んで、たとえば公営企業の赤字補てんというのを特別交付税から外して、別枠の交付税をつくる、そういうように経済上とか現在の財政環境から考えますと、ある程度制度の改正ということも可能ではないかと私は思います。しかし、基本的にはこれはあくまで暫定的なものであって、地方自治体の方からすれば、恐らくやはり税率の改正ということを望んでいると思うわけです。そういう意味で、非常に回答にはならなかったですけれども、そういう制度的な解釈を踏まえると、交付税もある程度多様化してしかるべきだという点からは、結論として制度改正と認めてもやむを得ないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/11
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012・橋本徹
○橋本参考人 私、先ほどの御意見の中で申し上げたつもりでございますが、今般の措置の中で、昨年までは単年度限りの措置であったものが地方団体にとってはきわめて不安であったわけでありますが、それを地方制度調査会の提言等も受け入れまして、一定のルールを附則第八条の三の中に「当分の間」云々という形で借り入れをするということについての措置をしているということに関して、それが第六条の三に申します制度改正かどうかということに関しては、地方交付税の附則に「当分の間」こうこうの措置をするといったことで、それはルールを明記したという意味で、少なくとも地方団体にとっては不安はなくなると思います。ただ、先ほども触れましたが、なるほど地方交付税率を引き上げようという議論があるわけですけれども、しからば地方交付税率を引き上げる余地が現実論としてあるか。仮に地方交付税率を引き上げれば、先ほどの措置をただ国の所得税、法人税、酒税を対象税目といたしますと、その十六兆何がしに対して仮に三六%とかあるいは三七%、五%程度引き上げたといたしますと、これは先ほど宇田川教授もお触れになりましたが、その分が国債の増発か、あるいは同じく資金運用部から借り入れるか。資金運用部から借り入れれば結局同じことでありますけれども、資金運用部が国債をどれくらい買い入れるかということは、また資金運用部の規定の問題ともひっかかると思いますけれども、いずれにせよ貯蓄から引き揚げることであります。広い意味で公債でございます。ですから実質論をとるか、名を捨てて実をとるか、実を捨てて名をとるかという話もありますけれども、現実にできない条件にあるわけです。
それともう一つは、現在税制そのものが変動期にあるわけであります。地方税制につきましても変動期にあります。ですから、地方団体にとって、交付税率を引き上げて所要財源を確保するのがいいのか、それとも、この数年間は府県におきましては、事業税の税収とそれから法人税割の税収は、今年度の予算におきましても、前年度比ほとんど増加していないわけであります。それがかつて不交付団体でありました大阪府、愛知県等をいずれも交付団体にしてしまうといった事態でございますので、地方税制の改正そしてまた国税の改正といったものが同時並行で行われなければ、交付税率のみを事実上形式的に引き上げても、実際問題として片がつかないというふうに考えました。
答えといたしましては、附則八条の三という形でルールを明記している。これは六条の三の条文どおりなのかどうかという点については、逃げるわけでありません、私も法律学を専攻しておりませんので、厳密な解釈はよくわかりませんが、その附則八条の三の措置で明記している点を評価したい、こう申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/12
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013・小川省吾
○小川(省)委員 地方財政の抜本的な改正をどう図るかなどということについて質問をしたかったわけでありますが、時間がないようでありますから、以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/13
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014・木村武千代
○木村委員長 和田一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/14
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015・和田一郎
○和田(一)委員 それではお三人の先生方に質問をさせていただきます。
まず橋本先生に、ただいまお答えになった続きでございますが、ちょっとお尋ねしたいのですけれども、先生は、国と地方のいわゆる税制、それから行政の現在の立場でこうなってしまったから現実的にはできないという御意見のようでございます。前もって見ますと、昭和四十三年、四十四年、四十五年それから四十九年度は逆に交付税特別会計の方から国の方に貸しているような形があるわけです。そういうことになってまいりますと、交付税というのは国の財源なのか、地方のいわゆる独自の財源なのかという議論にもなってくると思うのです。それから、たとえば交付税率を上げたとすれば、それだけ国債が余分に出てしまうという御意見のようでございますけれども、たとえば昨年は実質三五・六%ぐらいの計算になるのです。ただいま先生の御計算では三七・三四ですか、ですから、交付税の税率がふえても、結局金額的には同じだと思うのです。ですから、先生は現実的に実をとった方がいいんじゃないかという御意見でございますが、地方の固有の財源という立場から考えれば、私はそうじゃないんじゃないかという意見を持っているのですが、その点についていかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/15
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016・橋本徹
○橋本参考人 四十年代の前半におきまして交付税会計から国の方へむしろ返還したといいますか、貸したといいますか、収支が逆になったという御指摘でございますが、そのとおりでございます。御案内のように、当時から交付税会計に三税の三二%が豊富に回ったために、議論といたしましては交付税会計自体の中に一種の調節機能といいますか調整機能といいますか、そういう変動を緩和するような機能を持たせるべきではないかという議論が各方面からあったこと、御案内のとおりでございます。
その際に、じゃ一体地方交付税というのは固有財源か、それともどちらの財源かという議論がございました。おまえの意見はと、こう言われますが、私は書いたりしゃべっている場合には、私はそれは固有財源だ、そういうふうに考えております。そういうふうに書いてきているつもりであります。それの根拠は、交付税法の目的にも掲げられておりますように、地方団体が自主的にあるいは計画的に財政運営をするために、今日の経済の仕組みあるいはわが国の経済の仕組みからすれば、税源の地域間の格差があるわけでございますので、地方税という財源のみでは地方財政運営はできませんから、その意味で交付税財源があるわけでございます。そういう意味ではこれは地方団体の財源である。ただ、地方団体の財源だから地方交付税率を引き上げるということとすぐ結びつくのかどうかの点が問題であります。
たとえば、民主主義国の先輩とかあるいは自治の先輩と言われているイギリスのレイト・サポート・グランツを、私たまたま六七年オーダーといいますか、を一週間ほど前にちょうど勉強しておりました。そうすると、イギリスの場合でも、国がずいぶん地方団体の意見を聞きながらレイト・サポート・グランツの総額を決めているわけでございます。わが国でいいますと五十一年度、二年度の不況、イギリスも同じことでございますが、その際もやはり前の年度から、最近の、向こうでいいますと六六年度から六七年度に対しましましては、レイトすなわち地方税と、それからレイト・サポート・グランツ、すなわち交付金、そのバランスが落ちているわけです。前の年度は一〇〇のうちたしか六七か六六がレイト・サポート・グランツで、残りが税なんでございます。ところが、それが国が苦しくなってきますと逆に落ちてきまして、六一%ぐらいで、すなわち基準財政需要をとりまして、そのうちの六一%を交付税でやる、残りをレイトでやりなさいということで、地方団体はみなそのレイトの増率をやるわけです。国民経済全体というか、国と地方を含めた財政全体の中での財源のかげんから、イギリスの場合は交付税をずっと棒上げに上げてきたのではなくて、やはり景気を反映して一〇〇のうち六一に落ちているわけですね。次の年度はどうなるか知りませんが、少なくとも一番最近年次は前の年より落ちております。
ですから、固有財源であるという解釈をすることと地方交付税の税率を引き上げてということとは直接に結びつかない。何度も申し上げますが、まずその前に、第一の固有財源は何といっても地方税でございますから、住民のコントロールできる地方税についてしかるべき抜本的な改正が要るのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/16
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017・和田一郎
○和田(一)委員 それでは宇田川先生にお願いしたいと思います。
いま橋本先生の方から、何といっても地方税が固有の財源であるというお話でございます。自治省が出しました財済収支試算、この中では交付税の引き上げを全然念頭に入れないで、増税という形で、ケースIIだったでしょうか、出ております。国の方の財政収支試算の方も増税キャンペーンであるというような話もございましたけれども、その点についての先生の御意見、それから今後のあり方についてひとつお願いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/17
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018・宇田川璋仁
○宇田川参考人 今後地方あるいは国を問わず、この収支アンバランスをどうすべきかというようなことで、言うまでもなく歳出のカット、増税という、財政問題というのは話は簡単でありますから、そういう形でそのどちらか。しからば、税であればどういう税かというような話になるわけでありますが、これは全く個人的な考えでありますが、増税よりも歳出の削減を徹底的にやるべきである、まずそういう意見を私は個人的に持っております。ともすればデモクラシーあるいは官僚機構、あるいは政党のビヘービアというものが、いい悪いの仕組みを問わず、いわばその内在的なビヘービアとして歳出構造をふくらませるというのはデモクラシーのやむを得ざるコストだというふうに思っておりますので、そのコストを一般国民として見れば、社会的に見れば、それはまことに空費でありますから、そういうものを落とすという意味で、納税というものについて歳出の方面を十分厳しく見きわめれば、住民のチョイスは恐らく歳出カットだろうと思うわけであります。そういう意味で、今後一般国民は財政というものを、税の行く手を十分見なければならない。そういう意味で、税の構成は、そういうような形のデモクラシーの社会的空費をできるだけ減らすような税が好ましいと私は思うわけであります。よく言われておりますように、一般消費税タイプは、いま言ったようなそういうロジックから見ると、全く百八十度反対でありまして、税の意識を減らすことにおいて望ましいというだけであります。ですから、私は税の痛みが十分満たされるような税が望ましい。私が一〇〇税金を払っておるにもかかわらず、私の頭の中に五〇しか意識がないということになりますと、私は五〇の意識でしか歳出について批判も関心も持たない。私が一〇〇払っている以上、一〇〇というものを痛烈に感じさせるような税が好ましい。そういう意味で、住民税型、そして国税においてもそういう個人課税の方が望ましい。非常に書生っぽ的発想で申しわけございませんが、そういうことを試みるのがデモクラシーにおいては必要なことであろうと私は思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/18
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019・和田一郎
○和田(一)委員 最後に、高寄先生にお尋ねいたします。
現在の地方財政はとにかく大変な危機でございますけれども、そこにまた今年度の国の大型予算に呼応してのいわゆる公共事業の問題ですね。先生いろいろな論文をお書きになっていらっしゃって、私も拝読しておりますけれども、公共事業と地方団体の財政事情、今年度に限りましても、ひとつ御所見をお願いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/19
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020・高寄昇三
○高寄参考人 ことしは非常に公共事業の大幅増額がありまして、一つは、地方自治体でこれが消化できるかどうかということが非常に問題になっております。これは、現実的には一・三倍とかそこらでございますので、かなり地方団体がそこへ重点的に人員を配置していけば、ある程度消化できる可能性があるということですけれども、問題は、用地取得とかそういう問題で、公共事業の場合にはすぐに人員の補てんだけでスムーズに展開しない場合があるということですね。そういうところへ集中的に人員を動員するということは、一般サービスとしてある程度の低下を免れない。これは地方財政プロパーの問題としては本年度限りというのが非常に望ましいのではないかということ。
あと一つは、これは地方財政プロパーの問題ではないですけれども、公共投資で景気刺激効果があるかどうかということが非常に問題があると思うのです。と申しますのは、公共投資そのものが大体用地取得で半分以上消えてしまうというのが常識で、しかも、国の補助事業というので地方自治体が勝手に選択できないというような拘束性がある。そこで非常に多額の公共投資をしまして、後に財政の負担が残る。しかも景気が浮上しなかった。大半が用地取得で消えてしまうということですから、地方財政全般から見れば、この苦しい状態の中で公共事業債が来たというのは非常に恩恵があったと思いますけれども、経済効果とか地方財政の長期的な展望から見ると、かなり後遺症を残すのではないかと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/20
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021・和田一郎
○和田(一)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/21
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022・木村武千代
○木村委員長 山本悌二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/22
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023・山本悌二郎
○山本(悌)委員 最初に高寄先生に、きょうの発言の中ではなくて、時間がなかったので恐らく述べられなかったのだろうと思うのですけれども、二月十四日の朝日にあなたが「地方財政の再生に向けて」という論文を寄せられていますね。お目にかかったらぜひお伺いしたいと思った点が二つあるのです。
その中で、イギリス型のいわゆる地方財政協議委員会の設置というのを提唱しているのです。それとその次の行政責任明確化問題です。二つありますけれども、時間がありませんからちょっと簡単にここのところを教えていただきたいのです。私はこれを読んでなかなか感激しているところもあるのですよ。後段の方はかなりわかるのですが、これはどういうことなのか、ちょっと理解に苦しむところもありますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/23
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024・高寄昇三
○高寄参考人 日本とイギリスの地方財政ですけれども、それはその国の風土がありまして、税源の多い少ないがありますけれども、日本の場合の非常な特徴は、補助金の金額とか交付税の率を決めるというのに、実際地方団体が当事者としてタッチしていないということです。そういうことですから、現実に自分たちとしてその税源が、全く増税することが不可能であるとか交付税の引き上げが不可能であるということが、現実的にそうであっても、自分らは当事者でないということで、非常に被害者意識というものがある。しかももう一つ、当事者でないものですから、やはり自分らの行政として責任を持って財政運営するというわけにはいかない、全部国、中央政府の大蔵省と自治省の交渉を、言ってみれば外野席で待っておる。
そこに挙げましたのは、英国が一九七五年に地方財政協議委員会、コンサルタティブ・カウンシル・オブ・ローカル・ガバメント・ファイナンス、これは、いわゆる日本の交付税に匹敵する向こうの制度のその率を決める場合に、中央政府の委員とそれから地方六団体の委員、この両方によって合議の上で一応その率を出す。その下部機関において、かなり膨大な国と地方から成る官僚の調査機関がありまして、結局国と地方、ことに地方の六団体とか地方の公務員が入って交付税率を決めている。こういうことで、国と地方の信頼関係とか、地方自治体が自分らの問題として財政運営をしていく、財源不足は財源不足としてしんぼうしてやるというのは、少なくとも当事者としてある程度参加する必要があると思います。そういう意味で、英国の制度というのは、交付税率が上がるにしろ下がるにしろ、自分らが当事者として参加しているということは、日本の将来の財政秩序化の上においてきわめて重要な問題で、現在では地方六団体を中心として、非当事者として運動や陳情を繰り返すだけというのは、いわゆる地方自治の精神から見て、やはり英国の例は非常に参考になるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/24
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025・山本悌二郎
○山本(悌)委員 宇田川先生と橋本先生にお尋ねします。
もう一点だけでありますが、先生方の御意見をお聞きしておりますと、私どもがこの委員会で議論をしていることでいつも問題になるわけですけれども、特に橋本先生のいまの御意見の中で、交付税率を上げるのは余り芳しくない、むしろ地方税を上げるべきだという極端な意見、解釈するとそういうことでございますね、ごもっともだと思うのですけれども、昨年でしたか、私は自治大臣と論議をしたのは、地方税を上げるということになる、あるいはまた地方の財源を満たすということになるとしますと、どうしても増税をしなければならぬ、ところが地方税そのものを上げて増税するというわけにいまのところいかぬ、そうなると、何か一般消費税というようなものが、国で増税の設定ができて、その中で外形標準課税のようなものが設置できれば一番いいのだ、こういう議論を展開しておったのですけれども、私は必ずしもそうではない、いわゆる地方団体もそういうことを申しておりましたけれども、一般消費税を設定しなくても外形標準課税の設置はできるのじゃないかというふうに考えているのですが、この点はいかがでございますか。
それからもう一つは、いまの交付税制度のようなこういう制度がある以上は、これはちょっと、交付税を上げないというようなことになってまいりますと、だんだんと落ち込んでいってしまって、なかなか地方の財源が十分満たされていかないのじゃないだろうか。だから、確かに先生の言われるように、この特例がありまして、国が半分持つようなかっこうになってはいるけれども、そういうことをルール化していくことが、私は地方団体がそれで不安がなくなったとは言い切れない、むしろそのツケがどこかに回ってくるわけですから、そのツケの回ってきたときはどうするつもりなのかということですね。それならいっそのこと、この交付税をアップした方がはっきりしていていいのじゃないか。
この二点について、お二人の先生にお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/25
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026・橋本徹
○橋本参考人 順次お答えいたします。
まず、地方税を仮に上げるとしたらどういう上げ方があるかという点について考え方を申します。
現在、シャウプ税制以来、そして大きく二十九年に変化がありますけれども、大体シャウプ税制でございます。御承知のように府県の場合には事業税、それも法人事業税を中心でございます。それから市町村の場合には住民税と固定資産税が中心でございます。私、幾つかの地方税などの雑誌にも書き続けておりますが、やはりいま御指摘のように、事業税については、知事会がお考えになっている外形標準化が可能であろうと思います。それは、第一段階としては、私の考えは、そこで増税をするという前の段階に、まず事業税の性格から見て課税標準が所得課税である方がいいのか、それとも外形標準である方がいいのか、もちろん全部外形標準にしてしまうか、それとも混合型と申しますか、所得二分の一、外形二分の一といったような課税標準でするのがいいかということは、技術的な問題もあろうかと思いますが、考え方としては、現在の法人会計の会計で所得を算定してまいりますけれども、単年度ベースでフローでやってまいりますと、政府が考えるようなぐあいにはなかなかいかないのじゃないだろうか、国会で出ました事業税の改正案の提案理由にもありますように、事業税というのはその企業に対する公共のサービスに対する対価というふうに観念しております。法人税と違うわけでございまして、別に法人税も持っておるわけでございますから、別に法人税を持った上で事業税を持つ以上は、そこには外形標準の導入が可能ではないだろうかと思います。ですから、地方税だけを取り上げるならば、私は府県税に関しては事業税の外形標準化が考えられるべきであろうと思います。
問題は、御指摘のように、あるいは昨年十月の税制調査会の中期税制答申や、あるいは先ほど宇田川教授も触れられたり高寄教授も触れられた一般消費税との関連で、これは海のものとも山のものともわかりませんですから、どのような課税標準をとるかわかりませんが、納税者からしまして、課税標準が、こちらの税金は、仮にAからDまでの課税標準を使っていて、こちらの税金は今度はBからEまでの課税標準という形でオーバーラップした形でかけていきますと、かなり混乱が生じるような気がするわけです。ですから、その点税調も事業税の外形標準化につきましてやや慎重なということがあると思いますが、先ほど申しましたように、独立して考えたら、私は事業税は外形標準であるべきだというふうに考えますが、国税にどういう税体系を持ち込むかということを全く無視して、独立に税金というのは考えられないと思います。
それから市町村でございますが、私も全く住民税というのをもっと重視すべきであろうと思いますし、同時に、二大税目である固定資産税を重視すべきである。
固定資産税については、少し細かい話で恐縮ですけれども、家屋の固定資産税が新築家屋と在来家屋とでは、税法を読んでみますと、在来家屋というのは、それは修理したり何かしたら話は別でしょうが、後に建てたものほど新築とほぼ同じような値打ちがあって、最近のように時価がどんどん上がってまいりますと新築とそんなに変わらない。それでも在来家屋はずっと低いわけですから、家屋に関しての固定資産税の増率の余地があるのではないだろうか。それは公平という意味で新築家屋と公平に扱うべきではないだろうか。もちろん減価償却ということはあるわけですけれども、それとやはり土地に対する——今度都市計画税の税率が上がりまして、われわれのところにも納税通知が来ておりますけれども、固定資産税の方に関しましてやはりこの際、大都市及び大都市圏、周辺都市、地方都市、農山村、それぞれ地域の特性があろうかと思いますけれども、これも地域間の負担の公平という点からも、もう一度細かく検討する必要があるのじゃないだろうか。まあアメリカでもイギリスでもといいますか、税源を配分する場合に、どうしても地方団体に固定資産税がいくというのは税の配分の論理だろう、こういうふうに思うわけであります。
そういう意味で、現在の税法からいいますと、三つの税目についてまず手を入れてみて、そして納税者が財政需要を望むならばそこに税負担の増加があるということが基本的には自治である、しかしながら、住民税はかなり所得税制ですから、所得税を中心にすれば当然地域間の税源の偏在が出てまいります。ですから、地域間の納税者の税負担を公平にしようと思うならば、当然税源の偏在は生ずるわけですから、地方財政の中で私は地方交付税の意義がないなどと言おうと思っているわけではございません。地方税をまず当たってみてと言っただけでございます。
地方交付税をいま増率すべきかどうかという点については、御指摘のように、将来、もうそれも五十九年から六十八年ですから、いまから七、八年先のまた十年先ということは一体どんな日本になるのだろうかということを考えまして、ある意味では大変不安でございますが、私がいま手をつけられないと言いましたのは、繰り返しますが、税制が揺れておるということ、景気が変動している、地方税の減収補てん債まで出している時期で、全く緊急避難的な議論でございます。本当に早くトンネルを抜けなければならないわけでございますが、とにかく国税と地方税と財政の仕組みと、御指摘のように、財政収支試算をもう一度かっちり踏まえた上で税制をしていかなければ、対象税目さえまだ揺れるかもしれないときに、いま交付税率を上げて、それでは対象税目が変わったら交付税率をすぐさま下げるのかという話にもなってまいりますし、交付税が重要でないから上げるなと言っているわけではなくて、現在の背景の中では無理ではないだろうかという意味でございまして、重要性は認めるについてやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/26
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027・宇田川璋仁
○宇田川参考人 外形標準の地方課税が可能かどうかという点だけ申し上げます。
私はまず結論を申しますと、要するに地方税法で決めるような形の外形標準課税は国税と競合するだろうと思いますので、これはむずかしいだろうと思います。と申しますのは、通常よく、これは私は誤解だと思うのでありますが、国で考えているのは一般消費税だ、あるいは消費税だ、ところが地方の外形標準は企業課税だ、だから違うんだ、こう言います。これはよく私は自治省の税務局の方々と話すことなんですが、それは絶対間違いである。外形標準でかけて企業課税ということは、名前は企業課税といっても構いませんが、これは必ずその税の性質から見て、転化して経済効果は消費税になる。そうすると、いわゆる外形標準というデフィニションのいかんによりますけれども、通常よく付加価値というようなものが一番望ましいと言われておりますとそれは似たりよったり、焼いて食うか煮て食うかの違いで、そういう意味では国も地方も同じ地方税法一本としてやるんだったらば、やはりオーバーラップは必ず生じる。だから、むしろ生かすとすれば、私のこれは抽象論になりますが、地方団体の自主的な判断に任せればよろしい。要するに、そういう税を持つ地方団体もあればそうでないものもある。いわばこれは全くそういう意味の地方団体の自己経営の一つのあり方としてそういう税を持ってもいいだろうと思うわけでありますが、統一的な税はオーバーラップは避けられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/27
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028・山本悌二郎
○山本(悌)委員 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/28
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029・木村武千代
○木村委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
参考人の方々には、御多忙のところ御出席をいただき、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。
委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
本会議終了後再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
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午後三時二十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/29
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030・木村武千代
○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出に係る地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き参考人から意見を聴取いたします。
ただいま御出席の参考人は、岩手県盛岡市長工藤巌君、長野県下高井郡木島平村長湯本安正君でございます。
この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
両参考人には、御多用中のところ当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに両参考人から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、まず工藤参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/30
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031・工藤巖
○工藤参考人 ただいま御指名をいただきました盛岡市長工藤巌でございます。
先生方には日ごろ地方行財政の諸問題につきまして特段の御配慮をいただいておりますことを厚く御礼申し上げます。
このたび、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして意見を述べるようにとの御依頼を承りまして、都市行財政に直接携わっている者の立場から所見を申し述べたいと存じます。
まず、国、地方を通じ財政状況がきわめて窮迫している中で三十四兆三千四百億という地方財政計画を策定し、そのための財源不足額三兆五百億円を起債一兆三千五百億、地方交付税の増額一兆七千億円をもって補てんする措置をとられたということに対しまして、基本的に賛意を表するものでございます。特に交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金に対しまして、後年度その償還額の二分の一を臨時地方特例交付金として一般会計から交付する旨を、そして同じ措置を昭和五十年度、五十一年度の借入金についても講ずる旨をこのたびの法改正で明文化することは、当面の対応策としてはきわめて適切妥当な措置であると存じ、賛意を表する次第でございます。
しかし、今後の問題として地方自治の確立進展のため御配慮をいただきたい点が少なくございませんので、その主なものについて申し上げたいと存じます。
第一は、都市税源の拡充強化でございます。本来、地方自治体はその行政運営の経費を住民自身の負担する税によって賄うべきが本旨であると存じます。しかるに現状は、ほとんど大部分の自治体が租税によって行政費を賄い切れないで交付税に依存しているのでありまして、都市が六百四十五の中で交付団体が六百三団体、大部分のものが交付団体になっており、大阪府まで交付団体になってしまっているということは、不況による税収減の結果もあるとはいいますものの、交付税が本来税源の乏しい弱小自治体の行政水準確保の制度であるということを考えてみますと、ほとんど全自治体の一般的な財源になってしまっているという観がありますのは、やはり地方税制度にも問題があろうと存ずるわけでございまして、したがいまして、今後地方の独立税源の拡充強化につきまして特に御配慮を賜りたいと存ずる次第でございます。
次に、前述の税源拡充と関連を持つものではございますが、地方交付税の総額確保についてのお願いでございます。
すなわち、地方税につきましてその税源を拡充強化いたしましても、税源はおおむね大都市に偏在をしておる実情でございます。したがって、税源の乏しい自治体の行政水準を保障するためにきわめて重要な役割りを果たしている地方交付税の充実を図っていただく必要がございます。
地方交付税法の六条の三第二項によりますると、申し上げるまでもなく、引き続き財源不足が生じた場合には、地方行財政制度の改正または交付税率の変更を行うものとするという趣旨が規定をされているわけでございまして、地方の財源不足は昭和五十年度から引き続き二兆円を超える不足が毎年ございまして、昭和五十三年はついに三兆五百億という財源不足になっているわけであります。これは約二分の一を起債で賄い、二分の一は交付税特会の借り入れで賄うというような実情がございますことは、まさに法六条の三第二項に該当する事態である、こう言ってしかるべきだと思います。したがいまして、当然に交付税率の大幅な引き上げ、または制度改正が必要と思われます。
このたび交付税の特会で借入金の二分の一を一般会計で補てんする、こういう制度化は現時点の措置としては評価するものでございますが、抜本的な制度改正とはやはり言いがたいものであると存じます。もちろんわが国の経済、財政の現状が、国自体が約十一兆円に近い公債を発行し、そのうち特例公債約五兆円というような状況にありまして、きわめて困難な事態にあるということは重々承知をいたしております。したがいまして、今回の措置は適正であると考えますけれども、前に申し上げました地方税源の確保とあわせまして、早急に交付税制度につきましても税率の引き上げ、あるいは国税三税のほかに対象税目を拡充するというような措置を含めました抜本的な改正をお願いしたいのでございます。
次に、地方債について申し上げたいと思うのでございますが、地方債の累増する中で、将来の地方財政の硬直化に対する不安が地方議会においても問題にされておるわけでございます。昭和五十年度以降地方財源の不足に対しまして、およそ半分が地方債で補てんされておりまして、今日までの合計は約四兆七千億に相なっております。これらの元利償還につきましては、今回の交付税法の改正でも五十二年度発行の地方税の減収補てん債、財源対策債あるいは国の補正予算に伴い発行された地方債、そういったものの元利償還金を基準財政需要額に算入するという、こういう配慮をいただいておるのでありましで、これはまことに適切妥当で賛意を表するものでございますが、そのことはまた同時に、地方交付税の特別会計においては、今後、後年度においてそれを負担していかなければならないということを意味するものでございます。そういう意味におきましても、今後交付税の総額の拡充の措置が必須になってくるものと存じております。
なお、起債について申し上げますと、縁故債というものがございますが、これにつきましては、岩手県の場合で言いますと、利率をいかにするかということで金融機関との折衝がいろいろございます。いままでの例でございますと、市は県よりも大体〇・一%高い金利、町村は市よりも約〇・一%高い金利でもって大体話し合いがついているのが実態でございます。弱小の市町村としては縁故債資金を容易に引き受けてもらうという体制が欲しいのでございます。
本法の改正に関連いたしまして、公営企業金融公庫が融資対象事業を拡大をいたしております。臨時地方道あるいは河川、高校など三つの事業に拡大をされることになっておりますが、これは昨年の公営住宅に対する融資とあわせまして、一般会計債を公庫の融資事業に取り入れたという意味においては画期的なものであろうと存ずる次第でありますが、さらに公庫の資金の充実を図りまして融資対象事業を拡大し、長期低利の資金を安定的に供給していただくことを御期待申し上げておる次第でございます。
以上、基本的な地方財政問題につきまして申し上げたのでございますが、いささか細かいという表現は適切ではございませんが、そのほかに、地方行財政上私どもが問題としております点について触れてまいりたいと思います。
その第一は超過負担の問題でございます。
超過負担というたてまえと実態が異なるような補助の仕方、これによりまして地方自治体はいろいろ困っておりまして、かねてより地方六団体がその解消を強くお願いを申し上げておるところであります。毎年若干の改善が見られているわけでありますが、必ずしも十分とは言いがたいのでございまして、今後それを十分に見直して、実態に即するように国の補助、負担を改めていただきたいと思うものでございます。
市町村の段階で最もその超過負担の大きいものの一つの例としては保育所の運営費がございます。当市の場合を例にとって申し上げますと、十一の保育所がございますが、その超過負担は一口に言いますと約一億一千五百万円でございます。その大部分のものは人件費七三%は人件費に係る超過負担でございます。これは、たとえば当市の場合の園長は平均年齢が五十・九歳でございます。そして給与は、これはやや高くなっておりますが、これを国の基準に合わせまして引き下げて計算をいたしまして二十一万三百十一円が平均になっております。ところが、国の補助基準は十三万一千三百円でございまして、約七万九千円の開きがあるわけでございます。主任保母も同様にして平均年齢四十一・六歳、月額十七万三千三百十五円に対して国の基準額は十一万六千三百円でございまして、約五万七千円の開きがございます。こういったようなことが大きな理由になりまして超過負担というものができているわけでございますが、今後この解消につきましてよろしく御配慮をお願い申し上げたいと思います。
それからもう一点、交付税の基準財政需要額と決算との乖離の問題でございます。
これにつきましては、このたびの法改正でも、あるいは福祉や教育の充実、道路、公園、下水道など環境施設の整備、過密過疎対策などの配慮が加えられておりまして、この点については賛意を表するものでございますが、その決算と基準財政需要額の乖離の状態をちょっと盛岡で申し上げますと、盛岡の基準財政需要額は八十八億六千四百万でございます。ところが、これは五十一年度でありますが、決算は百九十八億九千三百万でございます。もちろん、この中には特定財源が入っております。特定財源を除きまして一般財源を見ますと、百二十六億六千三百万でございます。つまり、八十八億という基準財政需要額に対しまして百二十六億という一般財源を使っております。その差額の三十八億は、基準財政収入額に見られない一般税収の二五%、これが約二十億、その他の収入をもってつじつまを合わせているという状況でございます。これは、その分盛岡にそれだけのゆとりがあると言えばゆとりがあることにも相なります。また、それだけ自治体の主体性があると言えば主体性があるということにも相なるわけでございますが、弱小の市町村におきましていろいろとこれらについての問題、基準財政需要額と決算における一般財源との大きな乖離というものは、やはり一つの問題点として検討していただいてよかろうかと思っております。
それで、当市の場合は、たとえば土木事業に重点を置いております。したがいまして、当然土木につきましては需要額と決算とは大きな開きが出ております。ただ、最も大きいのは何かといいますと、その他の諸費という項目でございます。このその他の諸費というのは、たとえば議会とか文書企画のような内部管理の経費、交通安全、統計、公害対策などの経費が全部一括いたしましてその他の諸費ということに相なっております。その他の諸費の基準財政需要額は、当市の場合は十三億四千六百万でございますが、それに持ち出した一般財源は二十七億一千万、二倍以上になっております。これはかなり乖離が激しい、少し大き過ぎるのではないかという気がするわけであります。もちろん今回の改正でも、人口一人当たりにつきまして五千六百円を六千四百三十円に、面積一平方キロ当たり二十九万九千円を三十七万四千円と、こうして拡大に努めていただいておりまして、これは大変ありがたいことでございますが、今後さらにこうした乖離の大きいものについては御検討をいただきまして、都市的な財政需要の実態に即した基準財政需要額の算定の強化を図っていただきたいと存ずる次第でございます。
最後に、地方交付税法等の改正法案は、冒頭に申し上げましたように、現時点におきましては地方財政対策として妥当適切であると賛意を表するものでございまして、速やかにこの法案の成立するようお願いを申し上げたいのでございます。
これは自治体の資金繰りとの関係が深うございまして、四月は五十二年度の支出と五十三年度の支出が重なっております。当市の場合、四月における五十二年度の収入が約二十億、支出すべきものが三十億で約十億の不足がございます。これはいわゆる縁故債のレートなどの話し合いで、これが決まるのが大体五月になりますので、五月のその縁故債でもってカバーできるわけでありますが、その資金繰りに苦労をするわけでございます。
先ほど、予算が成立すると同時に約六億の交付税はいただきました。しかし、この交付税法が通らないうちは、改正法に基づくところの交付税特別会計の借入金、臨時地方特例交付金の四分の一額、つまり四千百七十二億という額になります。これが交付されないで保留されているわけでございまして、交付税法が早く通っていただきますと、その分、盛岡市にも一億以上のものが恐らく追加交付になると思うわけであります。この不足の資金は一時借り入れで賄わねばならぬ市町村も多いと思うのでございますが、そうした利子負担等も勘案ちょうだいいたしまして、一日も早く法案を通していただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
以上所見を申し上げた次第でございます。よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/31
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032・木村武千代
○木村委員長 次に、湯本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/32
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033・湯本安正
○湯本参考人 長野県木島平村長の湯本でございます。
衆議院地方行政委員会の諸先生方には日ごろ地方自治進展のために一方ならぬ御高配を賜っておりまして、この席をおかりいたしまして心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
本日、当委員会において地方交付税法等の改正法案について意見を申し上げる機会を得ましたことはまことに感謝にたえない次第でございまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
昭和五十三年度の地方財政は、引き続く深刻な経済不況下にあって大きな影響を受け、歳入面においては、税収入及び地方交付税の伸び悩みが見られる一方、歳出面においては、社会福祉施策の充実、生活環境及び義務教育施設の整備等に加えて、景気浮揚のための公共事業費の増加等財政需要は増高の一途をたどり、地方財政計画ベースで三兆五百億円の財源不足が見込まれるに至っておりますことは、いまも盛岡の市長さんからお話しのとおりでございます。
この財源不足額につきましては、千五百億円の臨時地方特例交付金及び一兆五千五百億円の交付税特別会計における借り入れによる地方交付税一兆七千億円の増額と建設地方債一兆三千五百億円の増発により補てんすることとされました。この結果、本年度の地方交付税総額は七兆四百億円、前年度に比較いたしまして二三・四%の伸びを確保することができ、今年度の地方財政運営は、一応これを乗り切ってまいれるものと愁眉を開いているところでございます。
特に、昭和五十三年度以降、交付税特別会計において借り入れた借入金の償還について、その償還額の二分の一に相当する臨時地方特例交付金を交付することとし、これを法定することとされたこと、臨時地方道整備事業、臨時河川等整備事業及び臨時高等学校整備事業の三事業が新たに公営企業金融公庫の融資対象事業に加えられたこと、及び一般市町村に係る財源対策債は政府資金をもって充当することとされたことにつきましては、私どものかねてから要望をいたしておったところでありまして、これがお取り上げいただいたことはまことに感謝にたえないところであります。
しかしながら、今後における実際の地方財政運営はきわめて容易ならざるものがあると存じますが、われわれは一層節度ある行財政運営に努め、地方自治の進展、住民福祉の充実に努力を傾注してまいる所存でありますので、諸先生方におかれましては、現下の厳しい社会経済環境に即応して地方財政の安定確立になお一層の御高配を賜りますようお願いを申し上げます。
本委員会において審議されております地方交付税法等の一部改正案につきまして、町村の立場から二、三意見を申し上げたいと存じます。
先生方にはすでに御承知のとおり、町村は自主財源がきわめて貧弱であり、地方交付税所要額の確保いかんは町村財政の死活にかかわる大きな問題であります。われわれは、本年度の地方財政対策につきましては、地方交付税率の引き上げを含め、その所要額の確保を最重点事項として要望してまいりましたが、先ほど申し述べました地方財政対策により、地方交付税総額につきましては所要の増額措置が講じられたものとして、これを高く評価しているところであります。
改正法案は、地方交付税について所要の増額措置を含む総額の確保、社会福祉施策の充実、教育の振興、市町村道、公園、清掃施設等生活環境施設の整備、過疎過密対策及び消防救急対策等に要する経費の充実及び公営企業金融公庫の融資対象の拡大などが主な内容となっております。
これらの改正措置は、当面する町村の財政需要に即応するものであり、改正法案の内容について基本的に賛意を表するものであります。
さて、地方交付税の概算交付につきましては、本年度予算案成立を機に、去る四月五日、国税三税収入見込み額を基礎にいたしまして交付されておりますが、地方交付税法等改正案が成立した場合の交付額との間に四千百七十二億円という大きな差がございます。この点についても、ただいま市長さんから御指摘のあったとおりでございまして、税収の少ない四、五月においては町村の資金繰りはきわめて苦しく、一時借入金の利子増高を招きますことは火を見るよりも明らかであります。また、当面の急務である公共事業等の実施に当たる地方公共団体では、財政運営に大変苦労をいたしておりますので、改正案が一日も早く先生方のお力添えによりまして成立し、四月中に交付されますことをお願い申し上げる次第でございます。
次に、地方交付税の傾斜配分について申し上げたいと存じます。
御承知のとおり、町村の大部分は農山漁村でありまして、経済基盤はまことに脆弱であります。税源に恵まれておりません。他面、学校、保育所、道路等の生活関連施設の整備、農林漁業等地域産業の振興、各種福祉施設の充実等の財政需要は増高の一途にありまして、町村の乏しい財源をもってしてはこれに対応できず、行政水準は依然として立ちおくれておりますことは御承知のとおりであります。
また、過疎町村数は千五十四町村の多きを数えております。町村、なかんずく過疎地域、辺地、山村、豪雪、離島、低開発地域、さらには準過疎地域を含めまして、これら町村に対する一般財源を増強するため、地方交付税の傾斜配分を一層強化されますよう格段の御配慮をお願いいたす次第でございます。
なお、この際、過疎対策について一言お願い申し上げたいと存じます。
過疎対策につきましては、去る昭和四十五年過疎地域対策緊急措置法が施行されて以来八年を経過し、おかげさまで施策が充実されてまいり、感謝を申し上げる次第でございます。
しかしながら、いまなお過疎町村における行財政上の苦悩は尽きるところなく、引き続く厳しい財政事情の中にあって関係町村長は交通対策、医療対策等を初めとして、民生安定に懸命の努力を傾けているところであります。目下、産業振興を重点とした後期五カ年計画が進められておりますが、過疎地域の産業は農林漁業を中心とせざるを得ず、その振興施策は過疎地域住民の最大の関心事であります。自然条件、交通条件に恵まれず、働く機会の乏しいところに人々を定着させることの困難性について御理解を賜り、地場産業の振興など経済基盤強化のための施策の充実についてさらに御配慮くださるようお願いを申し上げる次第であります。
なお、過疎地域対策緊急措置法は明昭和五十四年度をもって期限が到来することになっておりますが、過疎地域に山積する諸問題に対処して過疎地域の振興発展を図るため、同法の強化と期間の延長について強く要望申し上げます。
千五十四を数える過疎町村は、先刻も申し上げましたように、特に税源が乏しく、地方交付税への依存度が高い関係にあり、地方交付税法等改正案の成立の一日も速やかならんことを重ねて切望をいたす次第でございます。
以上、地方交付税法等改正案と過疎問題について意見を申し述べましたが、地方財政は、昭和五十年度以降引き続く財源難の中で交付税特別会計の借入金は巨額に及んでおり、財源対策債を含む地方債の借入残高も膨大な額に達するものと見込まれます。今年度の地方財政対策において、交付税特別会計の借り入れについては、その償還額の二分の一相当額は国が負担するとの措置がとられることとされたとは申しながら、将来における地方財政にとって大きな負担となることは明らかであります。
経済の安定成長時代に即応し、将来の地方財政の安定的運営を期するためにも、国、地方を通ずる行政事務と財源の再配分を実施すべき時期に直面していると考える次第でございまして、明年度を目途に交付税率の引き上げを初め、地方行財政制度の抜本的な改善について御検討をぜひお願いいたしたいということを申し上げまして、意見の開陳にいたしたいというふうに思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/33
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034・木村武千代
○木村委員長 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
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035・木村武千代
○木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/35
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036・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 佐藤でございます。
午前中に学者の先生方からいろいろお話がありました。大体において今度の二分の一方式というものは、まあやむを得ない適切な措置であろう、こういうふうな話でありまして、いま皆さんのお話を聞いても、やむを得ないだろう、こういうようなお話であります。ただ、いまも御意見がありましたように、ことしではやむを得ないだろうという評価ですけれども、やはり臨特を交付税特会に入れたと言っても、全体の不足額というものが三兆五百億という膨大なものです。そのうちの半分が建設地方債になって、残った半分を国が持ち、残りの半分を地方が持つというのですから、四分の一しか国が持たぬ、あとは、実際問題として不足額の四分の三は全部地方が負担するということであります。それが、金額が少なければいいけれども、膨大な金額です。五十一年から始まりました。それで五十二年も同じようになりました。五十三年もだんだん大きくなりました。それで五十四年がどうなるかということを見ますと、ほとんど変わらない、あるいはもっと多くなるかもしれない、こういうような状況です。五十五年はどうなるかと言いますと、これも恐らくほとんど変わらないだろう。去年自治省が出しました再建計画、あの五十五年に終わるだろうという計画が、たちまち二年延長して五十七年になった。いまの状態では、五十七年でも恐らく何ともならない。六十年ぐらいまで続くのじゃないかと思います。
ことし、四兆数千億の地方債の借り入れをしました。ところが財政計画で見ますと、五四・八%ぐらいが公債費です。まあ一万円借りて、六千円は借金に返して四千円しか使われない、こういう状態ですね。これが、五十一年度の公債費が入っただけで膨大にふくれてきた。今度は五十二年度がこれに入りますと、恐らく、五四・八じゃなくて六〇ぐらいになるのじゃないか。さらにことしの五十三年度が入りますと、七〇近くになるのじゃないかという感じがします。そうすると、借金を払うために借金をするというような、いまの国鉄財政みたいな状態になってしまうのですね。そうしますと、とてもこれはことしはこれで結構ですというふうにいかない。私どもは去年、二分の一方式というのはこれはごまかしの措置だ、こういうのを続けていったら大変なことになると言って責めました。特に単年度措置というのは制度の改正ではないと言って責めたので、ことしは制度の改正だという形をとるために「当分の間」ということを入れました。ところが、いま申し上げましたように、「当分の間」というのは大変問題になると思います。ことしでまずこういう状態でしょう。来年になるともっとひどくなる。再来年になるともっとひどくなる。しかも、それがよくなる見通しがまだほとんど立っていないということになれば、まず「当分の間」が、たとえば政府が言うように五年ということを限ってみましても、この五年の間にとても地方財政が持ち切れないような大きな借金返済が出てくると思うのです。しかも、一遍広げたところのふろしきというものはなかなかすぼめられない。しかも低成長経済では、どんどん税金が入ってくるということも余り期待できない。そして借金がどんどんふえて、その返済もどんどんふえてくるということになると、やはり五十五年か六年、七年ぐらいになると、税金は入ってこない、支出は多い、借金は物すごく返さなければいけないというので、立っていかなくなるんじゃないか。そういう非常に背筋の寒くなるような、寒心にたえないという感じがしますけれども、皆さんはどういうようにお感じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/36
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037・工藤巖
○工藤参考人 お答え申し上げます。
ただいまお話がございましたように、私どもも今年度につきましては、現在の国の財政あるいは経済情勢からいってまずは妥当な措置をとっていただいたと考えております。しかし、今後どうなるかということについては、ただいまお話をいただきましたような点でひどく憂慮をいたしておる、こう申し上げてよかろうかと思います。地方につきましては、たとえば交付税の借り入れで賄う、そしてその借入分は、半分は追って国で負担するが半分は返さなければならぬ、こういうものが積もっていくわけでありまして、交付税特会そのものが非常に財政が硬直化してくる。こういう状態になった場合に、交付税の総額を確保するために、税率の引き上げあるいは対象税目の拡大ということは必須になってくるであろう。しかし、それが国全体の財政の中でバランスがとれていくかということを考えますと、非常に憂慮にたえないのでありまして、今後抜本的な検討をしなければならないだろう、またお願いしなければならないだろう、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/37
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038・湯本安正
○湯本参考人 ただいま御指摘ございましたことにつきまして盛岡の市長さんからお答えがございました。われわれもほとんど同じような考えを持っております。
そこで、われわれ心配をいたしておったわけでありますが、今年度のところ借入金の返済につきまして一応五年の据え置き、十年の償還というような形にしてもらいまして、幾分償還の度合いというものを緩めていただいた。これらは非常にありがたい措置だと思いますけれども、基本的にはこれがどんどん積み重なっていくということを考えてみますると、非常に心配になるわけであります。
そこで、先ほども申し上げたわけでありますが、行財政の問題につきまして再配分を考えるというようなことを取り上げていただくことと、もう一つには交付税の税率というものを基本的に考え直していただくといいますか、そういうことをしていただかないと行く先というものは安心をしておられないというような気がいたすわけでございまして、ぜひそれについても深い御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/38
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039・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 それについてもう一点お伺いしますが、交付税率を引き上げるということをいまお二人ともお話しであります。私どももそうだと思います。
二分の一方式というものをとってもらったからことしはいい、そういう御意見ですが、そうすると、これは非常にぶしつけというか露骨な質問になりますが、来年もこの方法でいき再来年もこの方法でいくと、いま私が申し上げたような状態になると思います。そう考えますと、やはり少しでも負担を軽くするために、最小限度ことしか来年あたり、ことしできなければ来年でも、ぜひ交付税率を引き上げるということを希望なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/39
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040・工藤巖
○工藤参考人 交付税率の引き上げにつきましては、かねて全国市長会ももちろんでございますが、関係団体から御要望を続けてまいっておるところでございまして、今日の実態から見て、税率の引き上げあるいはさらに私どもは対象税目の拡大といったようなものをぜひ考えていただきたいと存じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/40
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041・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 私は、皆さんと同じように地方自治体で十六年ばかりやってきてえらい苦しんできたのですけれども、私どもの経験から言いますと、いま地方は非常に苦しんでおります。国の言い分は、国も借金しているから地方も借金するのはあたりまえじゃないか、がまんしろ、こういうのが地方に対する国の言い分なんです。ところが、何年かたって今度これを整理する段階になってきますね。そうなってくると、国と地方の力の関係というのが非常に大きな作用をしてくる。たとえば税の再配分だとか、いろんな問題が午前中もいまも出されました。税の再配分の問題でも、恐らくいいところ、取りやすいところは全部国がとって、地方には取りがたいむずかしいのばかり預けて、そして地方財政の状態が悪い、けしからぬと言って物すごく強い締めつけがくるだろう、私は過去の経験から考えてこういうふうに思います。
一つの例を申し上げますと、こういうことが言える。知事会で非常に強く取り上げております外形課税、この問題を私どもはずっと前から取り上げて、ああいう県税である事業税を五千円や千円しか納めないというような状態はひどいから、外形課税として取るべきだということをずいぶんやってきました。そして最近ようやくその機が熟してきたと思ったら、今度大蔵省が、一般消費税と絡んでいるからこれはけしからぬと言って、ストップをかけられてしまった。午前中に宇田川先生からも、恐らくこれは県税としてとれないだろう、国にとられてしまうだろうという予測を言っておられましたけれども、私もそうだと思うのです。こうなってきますと、税目の再配分だとかと言うけれども、地方は一体何をとるかということなんです。どういう税目があるというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/41
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042・工藤巖
○工藤参考人 地方の税目が何がとれるかという御質問で、大変どうもお答えしにくいというか、そういう感じを持っているわけでございます。私どもはかねてから、法人の負担あるいは住民の負担に係る住民税なども、ときには住民税が高いという声もありますけれども、地方の行政は国と違って住民がそれぞれの負担をし合って支えていく、いわば負担分任のたてまえからいって、住民税については所得税とは違った物の考え方をしていかなければならない、こういう趣旨を申し上げているわけでございます。それのみならず、いろいろな新しい税目がいろいろな場で検討されているわけでございますが、その中で地方として適切な税目を、特に市町村税源の拡充を考えるために十分に検討していただきたい、地方独立税源を拡大をしていただきたいという観点からのお願いをしているわけであります。具体的にどの税目、どの税目とは申し上げられませんけれども、何か新しい税目が話題に出ますと、これは都市の税源として適当であるかどうか、もしとれるならば都市でもらいたい、あるいはそれを譲与の形で地方に配分を願いたい、こういう形で努力をしてまいりたいと存じておるところでございます。
大変不十分なお答えでございますが、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/42
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043・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 全く私もわからないのでいまお聞きしたのですが、国と地方の全体のバランスを見ますと、私たち税のあれを討論するときいつも思うのですが、国は地方に余り税源を、自主財源を与えたがらない傾向があります。たとえば去年の東京都の制限税率の問題などでも、制限税率というものを緩くすれば、幅を広げればでたらめに取ってしまうから、なるべく制限税率を低くしよう、低くしよう、いわば重箱にびしっと当てはめて動きがとれないようにする。そういうような、自主財源なんか余り与えないという傾向があるように私には思われるのです。
それで、午前中にもありましたが、地方の独立財源として何があるかということはわかりませんが、現在の税目を見ますと、外国の例を見ても日本の現状を見ましても、上げるということになりますと、住民税は国の税金の関係があってそれほど上げられないと思うけれども、財産税みたいな、固定資産税に非常に比重がかかってくるのではないかという気がするのですね。ところが、固定資産税について考えますと、これは所得のない財産ですから、税金を払うとなるとこれは大変なことであります。大都市ならばまだ所得がありますが、皆さんや私どもの都市みたいに、所得はないけれども財産があるということになりますと、結局財産を切り売りしなければ税金を納められないということになって、そしていわば村なり町なりの構造自体が変わってくるような状態にさえなりかねないと思うのです。余りこれをやりますと。そういう意味では、私は、こういう財産税的な方向にどこまでも行けば小さい町はつぶれてしまうのではないかという感じがします。これをもっと推し進めていきますと、結局財源を与えるという問題は、大都市と小都市ないしは町村と分けて考えなければいけない、税源のあるところではどんどん取らせて、そこで自主的に賄わせて、交付税はそこにやらない、そして弱小な財政力のところに交付税をやってナショナルミニマムを確保する、こういうような方向に行かなければいけないような気がしますけれども、御意見はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/43
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044・工藤巖
○工藤参考人 都市あるいは市町村の税源の拡充につきましていろいろなことが、いま御指摘ありましたことを含めまして考えられると思うわけでございます。私どもは、先ほど住民税については単純に所得税とは違った負担分任という考え方をとっていただきたいという点を一つ申し上げております。
それからもう一つは、法人に対する課税の問題でございますが、現在法人の税配分がどのようになっているかというと、市町村はきわめて低いわけでございます。法人税の取り分は、国が六六・八%、都道府県が二五・一%、市町村はわずかに八・一%でございます。この法人に対する税の配分をもう少し市町村にウエートをかけていいのではないかというようなことを私は考えるわけであります。
それからもう一つ申し上げたいのは、電気税についてでございます。
電気税は年々軽減をされてきているわけでございますが、市町村にとりましては比較的徴収もしやすい税金でございます。それからもう一つ言えますことは、免税点がございまして、その免税点の制度によりまして一般の零細な消費者の場合には税がかからないようになっております。しかし、かなりぜいたくに電気を使うという場合には当然に税負担をしていいのではなかろうか、かように考えます。こうした消費的な税目の中で、しかもある程度所得税を補完するような性格を持った税目につきましては、市町村税として充実をしていっていいのではないかということをお願いしたい、こんなことを考えておるわけでございます。
そのほかにもいろいろございますけれども、一応考えております問題につきまして、消費税等について市町村としてふさわしい税目があればそれは独立税源として市町村に付与していただきたい、かような考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/44
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045・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 時間ですので実質的な質問は終わりますが、これは私の感想ですけれども、いまこの委員会は逆転委員会なんです。それで私どもは年来の宿願である交付税率を何とかして引き上げたいと思って一生懸命がんばって、自民党さんに怒られながら抵抗してやっているわけです。というのは、逆転委員会になったということは非常にいいチャンスだと思って、私どもは皆さんの念願を何とかして実現したいと思ってやっているのです。交付税を上げろという陳情、請願はいっぱい来ている。この地方行政委員会に来る請願というのは交付税アップのやつが大部分なんですね。一生懸命がんばっているのです。ところが、これをいよいよ通す段階になってきますと、皆さんが六団体そろって、おまえら何をまごまごしているんだ、一日やれば六千万も損するんだから早くやれと言って私どもを怒りに来るのですね。去年もおしかりをこうむっている。ことしは二分の一方式が確定したというので余りないのですが、去年まではいつも来ている。そうすると、私ども非常にむなしい感じがするのですね。十何年来の大問題をようやくいま解決しようと思って一生懸命がんばっているところへ、おまえら何をぼやぼやしているんだと言って怒られますと、何かピエロになったような気がしまして、同じ陳情していただくなら、われわれも年来の宿願を達成するためには歯を食いしばってがんばるからおまえらもがんばれ、そういうけつのたたき方をしてくれますとうんとがんばりやすいと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/45
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046・工藤巖
○工藤参考人 お話の趣旨については同感でございますけれども、実際私どもは現実の問題として見ますると、もしも仮に、国の方の財政がある程度豊かであってこのような状態であったとしたならば、絶対に交付税を即刻上げてもらいたいという主張を私はしたいと思うわけです。しかし、地方の財政も確立しなければならないが、国もまた財政の確立ということを考えなければならないというような立場から見ますと、国があって地方あり、地方あっての国であるという考え方もございます。国がいま十一兆の公債、約五兆の特割公債を持っているという現段階を考えてみますると、本年のような措置でもやむなし、今後しっかり考えてもらいたい、こういう考え方を持っておりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/46
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047・佐藤敬治
○佐藤(敬)委員 もう一言、たった一言でいいのですが、いま、国も困っているから地方もがまんしなければいけない、自治省や大蔵省が言うことと同じことを言われましたが、実はこういうふうにならないときでも、高度経済成長のときでも、国が金持ちのときでも状態は同じなんですよ。毎年毎年けつから早く通せ早く通せといって電報はこんなに来るし、六団体はわんわん陳情に来ますし、貧乏だからじゃないのです。国が貧乏だからやめようというのじゃなくて、金持ちのときでもやはりそうだ。であるから、私は皆さんと一緒になって気合いを合わしてがんばらなければなかなか交付税のアップはむずかしいんじゃないかという感想を申し述べました。どうかあしからず。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/47
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048・木村武千代
○木村委員長 和田一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/48
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049・和田一郎
○和田(一)委員 お二方に御質問させていただきます。
いまの佐藤先生と同じような質問になりますけれども、確かに市長会それから町村会さんの方からも毎回のように交付税率のアップという陳情が参ります。先日、私、全国の町村会に党の代表で出ましたけれども、そのときも大きなたれ幕で交付税率のアップ、こう出ているわけですよ。ですから意気込みが実にすばらしいのはよくわかるのですね。ここへ来て、いま御開陳されました御意見を聞いておりますと、確かに工藤市長さんも湯本村長さんも、市長会また町村会の代表じゃないと思います。そういうお立場ではないと思いますけれども、自治省の人がそこで全部速記をしているわけです。皆さん方のおっしゃったことがみなあっちへいってしまうということで、ことしはこれでいいのじゃないかとおっしゃったのじゃないかと私は思うのです。本音はどうかわかりませんが。
ただいまも佐藤先生おっしゃいましたけれども、高度成長のときに、逆に交付税から国の方にお金を貸したことがあるのです。だから、いま国がああだからこうだからとおっしゃるよりも、本当に地方財政の確立のために交付税率をアップするのだ、その基本はやはりここで貫かれて、そしてことしはもうしょうがないけれどもというなら話はわかるけれども、真っ先に早く通していただきたい、このことを妥当とされて、そして佐藤先生から再質問されて、いや本当はそうなんですよというようなおっしゃり方だったら、いつまでたっても交付税は上がらないと私は思うのです。その点どういうふうに御感想をお持ちですか、二人の御意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/49
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050・湯本安正
○湯本参考人 ただいまの御指摘につきましては、われわれは全国町村会でもいろいろ検討いたしております。ただ今年のような場合に、先ほども御指摘ございましたように、とにかく総額というものをわれわれは確保しなければ自治体の行政はどうしてもうまく進まない。そこで率の問題を真剣に討議をしていることで時間をとってしまって、一体現場をどうするかという議論が大分出まして、とにかく税率引き上げを含む総額確保ということに重点を注ぐべきであるという考え方に一応立ちまして、お願いを申し上げておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/50
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051・工藤巖
○工藤参考人 先ほどの意見陳述でも申し上げましたように、本年度の対策としては、現実の問題としてこれでやむを得ない、また適切なものだと考えるから速やかに通していただきたいが、問題点として考えられるのは、現在はもうすでに地方交付税法六条の三第二項に定める継続的に財源不足が生じた場合に明らかに該当すると考えられる。したがって、速やかにこの交付税率の引き上げあるいは地方行財政制度の改正をぜひお願いしたい、こういう気持ちでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/51
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052・和田一郎
○和田(一)委員 お気持ちはよくわかるのです。とにかくこういうやり方ではけしからぬ、地方はもうこれからも本当に心配でしょうがない、できれば速やかに国会は与野党ともに力を合わせて、そして交付税率のアップに力を尽くすぐらいの、そうしなさいというぐらいの御意見をお吐きになるとこれはもっとよかったと私は思うのです。真っ先に賛成されてしまったから、自治省大喜びですよ。そういう姿勢が昭和四十四年あたりからずっと続いておるのです。ですから、御承知のとおり、今回の自治省が出しました財政収支試算ケースI、II、IIIとございますけれども、三つとも交付税率のアップなんかここから先も出てこないのです。そういうことを考えますと、もっと市長会それから全国町村会の皆さん方、この辺で、それはいろいろやり方、方法はあると思います。陳情書をお出しになるばかりじゃなくて、もっと端的に、実力行使と言ってはおかしいかもわからないけれども、そのぐらい強い姿勢は示していただかないと。早く通せ、早く通せと、いまも佐藤さんおっしゃいましたが、おしりをはたかれている、本当にそういう感じをわれわれも受けます。だから、国会なんかなんだというような感じを受けるのです。早く通してもらいたい、それでは、地方財政の確立ということで、なぜ市長会で陳情書に交付税率のアップを書いてくるのかということを私は申し上げたいと思うのです。いまおっしゃいましたからお気持ちはわかりますけれども、どうかひとつもっと強力に、本当に心の底から税率アップを願うのだったら、そのような形で二つの会とも対処してもらいたいと思います。ひとつその点はよろしくお願いしたいと思うのです。
今度は話は変わります。公共事業がことしはごっそりと皆さん方のところにいっております。その点について午前中の学者の皆さん方の中でもずいぶん御意見が出まして、本当に危惧している御意見が出ましたけれども、御両所はその点についてどういう御意見でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/52
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053・工藤巖
○工藤参考人 公共事業の拡大につきまして、国の方の施策として不況克服のために公共投資を拡大するという方向が出てまいり、これに対応いたしまして、地方でも、一地方都市の立場からではございますけれども、できるだけその事業を拡大し、この際、大変立ちおくれている都市環境の整備を図ろう、こういう考え方でこれに対応をしてまいっているわけでございます。一応基本的な対応の仕方としては以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/53
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054・湯本安正
○湯本参考人 われわれ弱小な町村にとりましては、先ほども申し上げましたように、社会資本の整備が大変おくれております。こういう機会にできるだけ整備を進めたいということで、鋭意道路であるとか学校であるとか、そういうものと取り組みを実はいたしておるわけでありまして、ぜひおくれを取り戻す機会にいたしたい。
もう一つには、ただ心配になりますことは、先ほどもちょっと御指摘がありましたように、年々そういう仕事を進めてまいりますと、公債費率が高まるとか、あるいは経常収支率がどんどん上がっていくというような心配がございまして、これとの対応をどうすべきかという課題は残るわけでありますけれども、現実の問題として、住民からの要請というものは非常に強いわけでありまして、われわれの小さな村にいたしましても、今年度土木事業関係で陳情に参りました経費が、私の村では土木費が大体一億九千万、全体の予算が十三億五千七百七十万円でございます。その中で一億九千万円の土木費の予算を組みましたが、要望の出ておりますのは二億六千万ございます。ですから、まだまだ要望というものは、おくれております社会資本の整備に対する期待というものは強いわけでありまして、こういう機会に何とか進めたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/54
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055・和田一郎
○和田(一)委員 盛岡の市長さんにお伺いいたしますけれども、ただいまの問題で、財源的な問題が一つと、それから物理的、人の問題、技術の問題ですね、そういうことでの御意見がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/55
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056・工藤巖
○工藤参考人 盛岡市の場合について申し上げますれば、公共事業はこの際できるだけもらっていきたい、その裏財源等につきましては、ともかく盛岡市の場合はこれに対応できる実態でございます。それから体制につきましても、そういう体制を整えて、できるだけこの際おくれている事業を推進しよう、こういう形に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/56
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057・和田一郎
○和田(一)委員 あと一つは零細補助金のことでございますけれども、これもやはり知事会から市長会から全国町村会と、全部、零細補助金の整理統合、合理化と、もう矢のごとく来ておりますよ。ですから、そういう零細補助金があることによって財政的または行政的にどのような障害があるか、例を引いていただけるとありがたいと思うのですが、お二人からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/57
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058・工藤巖
○工藤参考人 補助金についてでございますが、これにつきましては、地方ができるだけ自主財源を持って主体的な行財政の運営をしていくというのがたてまえであろうと私どもは考えております。したがいまして、できるだけ地方独立税源並びに交付税の増額等、一般財源の拡大によって財政を進めたいものだと考えております。しかるに、現在は国からの補助による事業が大変大きな比率を占めておるわけでありまして、もちろんその領域もたくさんございますけれども、中には補助制度がかえって事業推進の制約になる場合もなしとしないわけでございます。たとえて申しますと、私どものところで、保育に欠ける児童の問題をなるべく早く解消したいというふうな考え方で、ことしは保育園を四つぐらい建てたいという計画をして、土地なども用意いたします。ところが、枠が大変少なくてまず一町村一つだ、まあ盛岡は大きいから二つはやろうということになりますと、残りの分はやりたいけれども来年回しになるわけであります。そしてまた、補助金があれば、補助もつき起債もつき裏財源もついてくるのに、補助をもらわないで単独でやるということになりますと、これはどうも財政運営上適切とは言えない。結局そういうものは後年度に残されていくという形になります。したがいまして、こうしたたぐいの補助金につきましては、補助として奨励するというならば、必要なものは地域の自主性によってやりたいものをやらせてもらえるだけの補助の枠を計上すべきだというような考え方がございます。
基本的な面としては、自主財源でやるべきだという点が一点。そして補助制度がある限り、その枠は十分に与えてもらわなければいけない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/58
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059・湯本安正
○湯本参考人 補助事業につきましての私の基本的な考え方は、国の制度というのは一つのメニューである、それをわれわれ自治体の運営の上でどういうふうに生かすかというのはわれわれの選択であるという受けとめ方を実はしております。ですから、われわれ行政運営をいたしまする際には、十分に検討を加えた上で進めるわけでありますが、国の委託事務的なものに対する補助金というものは相当ございますけれども、これが超過負担の原因になったりする場合が非常に多い。それから、ちょっとここで例は思い当たりませんけれども、われわれが事務を処理するものを持ってまいりますのを見ますると、非常に額が少なくて、しかもそれがいろんな調査やいろんな手間がかかって、自主的な町村の行政運営にプラスにはならないというのも一部含んでいるように記憶をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/59
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060・和田一郎
○和田(一)委員 あと一点お聞きしたいと思います。
行政改革のことなんですけれども、最近は国と地方との行政改革を比べますと、国は全然進んでないけれども、地方では自主的に相当行政改革は進んでいるという記事も出ておりますし、話も聞きます。お二方のところで、もしそういうことがございましたら、また知っておられることがございましたら、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/60
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061・工藤巖
○工藤参考人 行政改革の問題につきましての考え方としては、経費の節減等から、なるべく縮小した機構でというような観点からの行政改革の意見があると思いますが、現在私どもの方では、むしろ増大する都市的な行政需要に、乏しい財源の中からどのように体制を整備して対応するかという方が課題になっております。したがいまして、率直に申しますと、ことしなども建設関係の部門を充実せざるを得ない、財源等の点は十分に配慮をしながら、また、むだな経費は使わないようにして住民サービスを上げるということは考えながらも、体制を整備しなければならぬというのが都市の実態でございます。これは私どもの場合のことを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/61
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062・湯本安正
○湯本参考人 私の村での行政改革というのは、結局合理化を進めております。たとえば、いままで私の村には七つの保育所がございました。山間地でございますので、七つの保育所の運営というのは大変でございまして、これを五つにいたしました。あるいはスクールバスを利用することによって分校の統廃合を行うというような合理化をいたしました。保育所の場合等は、三歳未満児の保育を取り上げるようになりましたために、サービスがふえたかわりに人員の合理化はかえってできないというかっこうになりましたが、小学校の統廃合等によりましては、その職員を他に転用いたしましてできるだけ合理化をするとか、支所、出張所というものは合併当初から廃止いたしましたので、いまのところ建設的な事業やその他に振り向けまして、行政の円滑な推進に資するような形で合理化を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/62
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063・和田一郎
○和田(一)委員 ありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/63
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064・木村武千代
○木村委員長 三谷秀治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/64
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065・三谷秀治
○三谷委員 先ほどから承っておりますと、地方財政対策は、本年度においては妥当な処置がとられた、こういう御意見を述べていらっしゃいました。私どもは、本年度の処置はきわめてよくないものである、つまり、交付税の本質、内容といいますか、これを変質させる要素を持っているというところを非常に重視しておるわけであります。これは御承知のように、交付税というのは基準財政需要額と基準財政収入額の差額を補てんする、そして地方財政の円滑な運営を図るというたてまえのものでありますから、本来申しますと、基準財政需要額と基準財政収入額の差額は、国が全面的な責任を持って補てんをすべきものだというように考えておりますが、本年度の処置を見ますと、交付税特会の借入金の償還金の半分だけ国が持つ、半分は地方が持て、こういう内容になっておりますから、従来の交付税の内容というものがはなはだしく改悪されておるというふうに考えておりまして、しかも、それはことしだけの処置でなしに、今後当分の間というわけでありますから、地方団体としては大変な問題だと私どもは考えておるわけでありますが、地方団体は、この点は妥当な処置として賛同されておるわけなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/65
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066・工藤巖
○工藤参考人 本年度の地方財政の対策、その措置としてこれが妥当なものと考えているかという御質問でございますが、今後の問題としては非常に大きな課題が残る。先ほど申し上げましたように、個々の地方団体に対して仮に財源が補てんされたとしても、交付税特別会計は借入金が累積をしていく、今後の硬直化がきわめて憂慮されるということを申し上げております。したがいまして、今後その対策には万全を期していただかなければならないであろう、かように存じておりまして、本年度の対策としては、二分の一ではありますけれども、国で見るというルール化をしていただいたことにつきましては、その限りにおいて評価をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/66
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067・湯本安正
○湯本参考人 全く同じ意見でございますけれども、今年度のところは一体どうなるかという心配をしながらいろいろ会議を重ねておったわけでありますが、半分——先ほど四分の一というお話がございましたけれども、全体から言うとそういうことになりますけれども、とにかくルール化してもらって、今年度の場合がはっきりしてきたということを、実はさっきも申し上げましたように、われわれとしては愁眉を開いたという言葉を使ったわけでありますが、将来の問題としましてはやはり心配が残るということは当然でございます。これらの問題を何とか解消して、安心をして地方財源が確保できるような形を一日も早く確立をしていただきたいというふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/67
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068・三谷秀治
○三谷委員 本年度の処置でもう一つの問題は、御承知のように、一兆三千五百億の地方債振りかえという問題があります。
地方債に振りかえをしますと、本来申しますと、交付税で処置されますと一般財源として自由に地方自治体において予算化できるわけでありますが、これでいきますと、地方債ですから受けざらになってしまうわけです。そういう点からしますと、ここでもまた二重の交付税の改悪がなされておるというふうに思いますが、この点はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/68
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069・工藤巖
○工藤参考人 地方債に充てられるということは、いわば建設地方債でございますから、その使い道は建設事業の財源という形にしぼられてまいります。この点につきましては、現在地方の方でいろいろ環境整備等の事業に迫られておりますので、その使途については消化ができるわけであります。その限りにおいては妥当であろうと考えております。もっとも、本来交付税であるべきものが地方債に振りかえられたという点は問題点ではございますけれども、現在の地方の建設事業の実態から言えば、地方債で充てていただいても財源の確保としては同様でございます。
それからまた、その補てんについてでございますが、地方税の減収補てん債あるいは財源対策債その他が基準財政需要額の中に今後取り入れられていくということでございますから、その限りにおいては、結果的には交付税の増額と同様な効果、結果が出てくるわけであります。もっとも形式的には起債がふえ、公債費がふえていくということになってくるわけでありますが、結果的にはその償還が交付税で見られるという形に相なってまいるわけでありますから、結論的には先ほど来申し上げておりますように、交付税総額の問題であり、特会の硬直化を来さないようにしなければならないという大きな問題が今後に残されていくというように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/69
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070・湯本安正
○湯本参考人 われわれの受けとめ方は、政府が景気浮揚という大きな計画をこなしていくというその裏負担分というようなものをやはり財源の不足額に見込まれて計算をされている、その分については起債で、建設公債で見られるというふうに受けとめておりまして、いま市長さんからお話のありましたように、将来的には公債費率等が高まりますけれども、交付税で年々の処理が考えられるということになると、まあ今年度のところはありがたいというような考え方でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/70
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071・三谷秀治
○三谷委員 まあ全国の自治体がそういうお考えですと、われわれはこれを交付税の改悪問題としてここで政府を追及することがおかしくなってしまうのですよね。まことにどうも妙な感じで辟易するわけですけれども。
一つは、元来国が持つべき財政不足額は全額国が持つべきものであるというたてまえにかかわらず、半額は地方が負担をしろ、こう言ってきている。もう一つは、交付税というものが一般財源であるにかかわらず、起債に振りかえて特定財源にしてしまっている。これは二つ目のよくない点。もう一つは、いまこの起債振りかえした分につきましては公債費は国が将来持つとおっしゃっておりますが、全額持つわけじゃありません。これは留保財源率だけ持つわけでありまして、全部持つわけではない。使途を特定して特定財源化しながら、一般財源と同じように——つまり留保財源は一般財源ですから、留保財源と同じように二五%ないし二〇%というものは知らぬ、こう政府は言うのですよね。これもおかしい処置であって、私どもなお今後議論していきたいと思っておりますが、この点についてはどうお考えなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/71
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072・工藤巖
○工藤参考人 まず、地方の財源不足額は全部国で見るべきだ、こういう考え方についてでございますが、それはそのようにしていただけば地方としては一番ありがたいわけでありまして、毎年交付税率のアップをお願いし、財源対策をお願いしているのはそういうことによるものでございます。しかし、また一方、地方の行財政というものは地方が主体性を持って考えていかなければならないという、全く国の丸抱えで国にやってもらうという考え方よりは、地方自治体は地方自治体でその運営をしていこうという強い意欲も持っているわけでございます。したがって、私どもは、現在の状況から、そしてまた交付税率が長年三二%にとどまっているという実態から、これははなはだ不都合であるということを国の方に対してお願いをしていくと同時に、当面のこの窮迫する財政、税収減というものをどのように補てんするかということで苦労をするわけでございます。こうしたものの結果としていろいろ出てまいりましたのが今年度の措置であるというように考えておりますので、この財源不足の対策について、今年度の場合はこれでやむなしと了承したのであり、今後については、国の財政運営の中で地方財政の確立のために最大の努力をしていかなければならないし、諸先生方にもぜひお願いをしていかなければならないと存じておるところでございます。
特定財源でもってこの不足額を振りかえた、あるいは公債費の償還といっても、ものによりましてはその八割分だけしか償還しない部分もございます。それもそのとおりでございまして、これらにつきましても、できるだけ今後地方財政確立のためにあらゆる観点から御措置を賜るようにお願いを申し上げたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/72
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073・湯本安正
○湯本参考人 一般財源である交付税を特定財源によってすりかえるというような御指摘がございましたけれども、先ほどもちょっと触れましたように、われわれの考え方としては今年度のところやむなしという考え方であって、できるならば税率改定についてぜひ御検討をいただいて、安定した財源を自治体が受けられるような形というものを期待を実はいたしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/73
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074・三谷秀治
○三谷委員 国が定めました計算の仕方で財政需要を割り出して、そして国が定めました算入の仕方で財政収入を割り出しましてそれが足りなくなってくる、あと一体どういうふうにするか、地方でどうにかせいといったって、できるものではありません。結局、税制の改正をやるか、あるいは交付税でそれを補てんをするか、二つしかないわけでありますから、それにつきましては当然国が措置すべきものであって、させなくちゃいけないと思っておるわけですが、本年度の措置がなお二、三年残ってくるという内容になっておりますから、本年度も余り電報で早急に上げろ上げろと言われずに、基本問題ですからよく論議して、できるだけ改善をさしていくということが必要であると思っておりますので、そういう点など含めてお尋ねしたわけです。
これはこれまでにしまして、ひとつお尋ねしたいのは、私は市町村に行きましてよく聞きますのは、交付税交付金の計算が非常にややこしくてどうも実態がつかみにくいという意見を聞きますけれども、皆さんの団体におきましては、大体財政担当者が交付税計算をぴしっと握れるという状態でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/74
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075・工藤巖
○工藤参考人 一応財政の担当の方で交付税の目算をはじきまして、かつまた、地方財政計画等に盛られております交付税の伸び率などを考え、おおむね見通しの誤りのないように私どもの方では一応は処理いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/75
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076・湯本安正
○湯本参考人 うちの村におきましても、大体いままで交付税の算定を見通しをいたしまして大きく狂ったこともございませんし、別にそれについて大変どうこうということはお聞きをいたしておりません。ただ考えられることは、一つ一つの補正係数等に将来的な問題といたしまして、たとえば私のところは豪雪地帯でございますけれども、これの均衡の問題であるとか、あるいは級地の均衡の問題であるとかいうような問題については深く実は関心を寄せているわけでありまして、これらの是正は今後の課題としてぜひ検討いただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/76
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077・三谷秀治
○三谷委員 先ほど申し上げましたように、交付税を事業費の受けざらにする、地方債に振りかえるという措置をとりましたために経常経費が非常に抑えられてきておるのが特徴でありますが、ほとんどが事業費として執行するというたてまえになっておりますけれども、その場合、経常経費を抑える、つまり人件費を抑えていく、そして仕事はうんとふえてくるという結果になってきますが、その場合、事業の消化がどういう状態であろうか、各自治体で政府が期待するような事業の消化の可能性があるだろうかという疑問を持っておりますが、その点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/77
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078・工藤巖
○工藤参考人 このたびの事業費の増加というものはきわめて著しいものでございまして、当市の場合についても、普通建設事業は前年度当初の七八%増という大型のものを組んでおります。これにつきましては私どもも相当決意をいたしまして、十分な体制を整え、この事業を執行するようにということで努力をしてまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/78
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079・湯本安正
○湯本参考人 先ほどもちょっと触れましたように、ぜひこういう機会を通じておくれを取り戻したいという考え方で取り組んでいるわけでありますが、ただ、設計その他なかなか間に合わない面がございますが、これらは外注等をいたしまして十分にこなせるという考え方で取り組んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/79
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080・三谷秀治
○三谷委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/80
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081・木村武千代
○木村委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
両参考人には、御多忙のところ御出席をいただき、貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございました。
委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、明十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108404720X01219780413/81
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