1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年五月二十四日(水曜日)
午前十一時三十三分開議
出席委員
委員長代理 理事 山崎平八郎君
理事 片岡 清一君 理事 羽田 孜君
理事 林 義郎君 理事 竹内 猛君
理事 馬場 昇君 理事 瀬野栄次郎君
理事 稲富 稜人君
江藤 隆美君 加藤 紘一君
久野 忠治君 熊谷 義雄君
倉成 正君 國場 幸昌君
佐藤 隆君 玉沢徳一郎君
平泉 渉君 福島 譲二君
堀之内久男君 森 清君
森田 欽二君 角屋堅次郎君
島田 琢郎君 新盛 辰雄君
野坂 浩賢君 芳賀 貢君
松沢 俊昭君 武田 一夫君
野村 光雄君 吉浦 忠治君
神田 厚君 津川 武一君
菊池福治郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 中川 一郎君
出席政府委員
農林大臣官房長 松本 作衞君
農林省農林経済
局長 今村 宣夫君
農林省構造改善
局長 大場 敏彦君
農林省農蚕園芸
局長 野崎 博之君
林野庁長官 藍原 義郎君
委員外の出席者
農林漁業金融公
庫総裁 武田 誠三君
参 考 人
(元植物新品種
保護制度検討会
会長代理) 加賀山国雄君
参 考 人
(全国農業協同
組合中央会農畜
産部長) 小口 芳昭君
参 考 人
(社団法人日本
種苗協会専務理
事) 榎本 暢夫君
参 考 人
(個人育種者) 倉方 英藏君
農林水産委員会
調査室長 尾崎 毅君
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委員の異動
五月十二日
辞任 補欠選任
日野 市朗君 武藤 山治君
同月二十四日
辞任 補欠選任
前尾繁三郎君 加藤 紘一君
森田 欽二君 中村 直君
同日
辞任 補欠選任
加藤 紘一君 前尾繁三郎君
中村 直君 森田 欽二君
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五月十二日
農林業漁業金融公庫法等の一部を改正する法律
案(内閣提出第七七号)
同月十一日
商社養鶏インテグレーション進出阻止に関する
請願(竹内猛君紹介)(第四七四九号)
同(塚田庄平君紹介)(第四七五〇号)
鶏卵の生産調整強化及び養鶏の経営安定に関す
る請願(近江巳記夫君紹介)(第四七五一号)
同(神田厚君紹介)(第四七五二号)
同(津川武一君紹介)(第四七五三号)
同(羽田孜君紹介)(第四七五四号)
農畜産物輸入自由化等の問題に関する請願外七
件(細田吉藏君紹介)(第四七五五号)
同月十二日
長崎南部地域総合開発計画の即時中止に関する
請願(石橋政嗣君紹介)(第五三一七号)
国民のための国有林経営に関する請願(上坂昇
君紹介)(第五三一八号)
同(馬場猪太郎君紹介)(第五三一九号)
農畜産物輸入自由化等の問題に関する請願(下
平正一君紹介)(第五三二〇号)
鶏卵の生産調整強化及び養鶏の経営安定に関す
る請願外一件(竹内猛君紹介)(第五三二一
号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案
(内閣提出第七七号)
農産種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出
第七四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/0
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001・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のため、その指名により、私が委員長の職務を行います。
この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。
農産種苗法の一部を改正する法律案につきまして、本日午後、元植物新品種保護制度検討会会長代理加賀山国雄君、全国農業協同組合中央会農畜産部長小口芳昭君、社団法人日本種苗協会専務理事榎本暢夫君、個人育種者倉方英藏君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/1
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002・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/2
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003・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。中川農林大臣。
農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/3
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004・中川一郎
○中川国務大臣 農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。
わが国の農林漁業は、国民の食糧を安定的に供給するという使命とともに、健全な地域社会の維持形成と国土及び自然環境の保全という重要な役割を担っており、その体質の改善強化を進めるためには、農林漁業に対し強力な施策を展開することが必要であります。そのための施策の重要な一環として、政府は、従来から農林漁業金融公庫を通じ、または農業近代化資金制度、漁業近代化資金制度等により農林漁業の生産性の向上と体質の改善強化のために必要な長期かつ低利な資金の融通の円滑化に努めているところであります。
ところで、現在、わが国経済は、大きな転換期を迎えており、長期にわたる景気の停滞を乗り越えて安定成長への円滑な移行を達成することが大きな課題となっております。
このような状況の中で、先般、景気対策の一環として、公定歩合の引き下げを初めとし、預貯金金利等の引き下げが行われ、わが国の金利水準は、終戦直後の混乱期を除き戦後最低の水準を呈するに至っているのであります。このような一連の金利引き下げに関連しまして、財政投融資資金の金利の引き下げが行われ、これに対応して政府関係金融機関の貸付金の利率につきましても、その多くはすでに引き下げられております。農林漁業金融公庫の貸付金のうちその利率の引き下げにつき法律の改正を必要としないものの一部につきましても、すでにその貸し付けの利率の引き下げを行ったところでありますが、農林漁業の経営構造の改善のための資金等政策性の特に強い資金でその貸し付けの利率が法律で固定されているもののうち一部のものにつきましても、他の制度金融における貸し付けの利率との均衡に配慮しながら、その貸し付けの利率を弾力的に引き下げる必要があります。
この法律案は、このような事情にかんがみ、農林漁業金融公庫等の貸付金のうちその貸し付けの利率が法律で固定されているものの一部につき、当分の間、その利率を当該法律で定める利率の範囲内で政令で定めることとするものであります。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/4
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005・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 引き続き、補足説明を聴取いたします。今村農林経済局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/5
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006・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
先般の公定歩合の引き下げ、預金金利等の引き下げにより、わが国の金利水準は、終戦直後の混乱期を除き戦後最低の水準となっております。このような状況の中で、本年五月一日から財政投融資資金の金利が引き下げられており、これに対応して、政府関係金融機関の貸付金の利率の引き下げの一環として農林漁業金融公庫の貸付金のうちその利率の引き下げにつき法律の改正を必要としないものの一部につきましても五月一日からその貸し付けの利率の引き下げを行ったところであります。
この法律案は、農林漁業の経営構造の改善のための資金等政策性の特に強い資金でその貸し付けの利率が法律で固定されているもののうち一部のものにつきましても、その貸し付けの利率の引き下げを弾力的に行い得るよう所要の法律の改正を行うものであります。
その具体的内容は、次のとおりであります。
第一に、農林漁業金融公庫法の一部改正でございます。
農林漁業金融公庫の貸付金のうち政策性の特に強い資金につきましては、他の資金と区分して農林漁業金融公庫法別表第二に規定され、その貸し付けの利率はそれぞれ同表に掲げる利率によることとなっておりますが、同表に掲げる資金のうち貸し付けの利率が年五分のもの、年六分五厘のもの及び年七分五厘のものにつきましては、その貸し付けの利率は、当分の間、同表に掲げる利率によらず、それぞれ当該利率の範囲内で政令で定めることとしております。
なお、別表第二に掲げる資金のうち果樹園経営改善資金、畜産経営拡大資金等につきましては、昭和三十九年の農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律により、これらの資金の貸し付けの利率を年六分五厘とした際、政策的要請から同法附則第三項の規定によりその貸し付けの利率は、当分の間、年五分五厘とされておりますが、これらの資金の貸し付けの利率につきましても、当分の間、年五分五厘以内で政令で定めることとしております。
第二に自作農維持資金融通法の一部改正でございます。
自作農維持資金は農業経営の基盤である農地等を所有する農業者が自作地等を維持し、またはその細分化を防止するために必要な資金として農林漁業金融公庫等から貸し付けられる資金であります。この資金は、このように政策性が特に強い資金であることから、その貸し付けの利率は同法第三条の規定により年五分とされておりますが、この資金の貸し付けの利率を年五分以内で政令で定めることとしております。
以上をもちまして、農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/6
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007・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/7
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008・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/8
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009・島田琢郎
○島田委員 質問をいたします。
第一点は、今回、ただいま政府から提案のありました農林漁業金融公庫法の一部改正があったわけでありますが、法改正の意義といいますか、きわめて初歩的な質問でありますが、一般には、農林漁業金融公庫法という法律そのものについて必ずしも農家自身がこの法律の意義等について十分に認識をしているというわけにまいらないところもございます。こうした改正を機に、法律の持っております意義など含めて、今回の法改正の点について大臣からその意義についてお話をいただくということは大変大事なことだ、こういうふうに思っておりますが、第一点、まず法改正の意義についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/9
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010・中川一郎
○中川国務大臣 ただいま提案理由の説明で申し上げましたように、今日農業の持つ意義がきわめて国家的に大きい、そこでいろいろな政策を行っておりますが、中でも金融政策が大きな柱である。従来もやってまいりました。しかるに、御承知のように、最近の経済動向に対応して金利の引き下げということが大きな景気浮揚の政策となってございます。そういう中で、財政投融資資金の金利の引き下げが行われました関係上、政府関係金融機関の貸付金の利率につきましてもそれぞれ引き下げたのでございます。公庫資金においても法律によらざるものについてはできるだけの調整を行った。そこで、農林漁業金融公庫資金の中で、法律によって引き下げができ得ないというものにつきまして、金利の引き下げの必要なものについて、今回法の改正をお願いいたしまして、当分の間、今日のような金融情勢の続く限り引き下げが行えるように、これを弾力的な措置によって金利全体のバランスをとり、農業金融においても今日の金利体系に即した金融が行えるよう、よってもって今日の厳しい農業の発展ということに資したい、こういうことから法案の改正をお願いしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/10
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011・島田琢郎
○島田委員 いまお話にありましたように、公庫の原資は財投資金というのが大半でありますが、財投資金のそのまた原資ということになりますれば、いまお話があったように預貯金、こういうことでございます。公定歩合の引き下げ、引き上げなんというような事態が出てまいりますと、必ず起こってまいりますのがこの是非論でありまして、考えてみますと、最近は郵便貯金が非常にふえている、こういう傾向にございますし、せっかくのなけなしのとらの子を郵便貯金いたしましても、その金利が下がるというようなことになると、これは一般庶民のあるいは国民の皆さんの夢を摘んでしまう、こういうことにもなりかねませんし、また農家にあっても、これら預貯金も次第にふえているという傾向にございますから、その金利が引き下げられて、そしてその原資が財投に回ってくる、こういうことになりますと、金利そのものは片っ方で下がって片っ方で据え置かれるということになりますれば、これは二重苦ということになってしまう。その点を配慮したというお話でありますが、本来これまた手足を食ったような話でありまして、真っ当な、やはり公定歩合の引き上げ、引き下げといったような議論は別なところにあるのでありましょうけれども、今回その一環として公庫の関係の金利を一部引き下げたという点については、そういう点で農林当局のお考えに対して私は賛成をするものでありますが、こうした法の意義というものは一般にはなかなか知られにくいものでありまして、何か片っ方で貯金の金利が下がった方が意識が強くなって、まけられた方については余り知らないというような傾向が強くありますから、それで私は、あえて知り過ぎているほど知っております法改正の意義についてお尋ねをした、こういうことでありますが、大臣はその点はもう少し強調された方がいい、私はこういうふうに思っているのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/11
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012・中川一郎
○中川国務大臣 御承知のように、今日経済が何とか前向きにならないかということでございます。それには、一つは資金活動がよくなるように、低金利の資金が市中に出るようにということで、公定歩合を引き下げる。関連をいたしまして、資金コストの関係で預金金利も下げざるを得ない。そうなってくると、今度は別な意味で、貯金するよりはむしろ消費拡大にというような効果もねらって金利操作というのが行われるわけでございます。したがって、固定的な政府関係金融、財投資金を原資といたしますこういったものについては、これに機敏に対応して金利の引き下げを行うということが必要であろうと存じます。そういう意味で、法律に定着しないものにつきましては、農林省といたしましてもいち早く金利の引き下げを実施いたしたわけでございます。
ただ、法律に関係いたすものまでやるかやらないか、いろいろ議論がありましたが、やはりこの際は、公庫資金の中の法律で定着いたして固定化いたしておりますものも調整を行うべきである、こういう判断のもとに今回改正をお願いした。そのことによってまた農業が発展をする、農家経済がよくなるということを通じて、農業の発展のみならず、また、景気の浮揚ということにも貢献できるであろう、こう考えまして、急遽お願いすることになった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/12
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013・島田琢郎
○島田委員 そのように考えてまいりますと、果たして引き下げのパーセンテージというのが妥当かどうかという議論がもう一つ起こってくるのでありますけれども、きょうはそのことには触れないでおきたいと思います。
ただ、先ほど趣旨説明あるいは補足説明でも強調されております点で、政策性を持った資金、そもそも農林漁業金融公庫法の成り立ちというのは多分に政策性を持って成立しているという経過があるわけでありますが、その中で特に政策性の強い資金というふうに強調されているのはどういうお考えのもとにおっしゃっているのか、その点が一つ聞きたい点でありますし、また、その判断の基準というのはいろいろあると思うのであります。これは政策性の比較的高いものあるいは並みのもの、俗に言う政策的な資金といったふうに、幾つかの段階にこれは分けられるのでありましょうが、この法の志向する中で、特にいま御提案のありました中で、何回にもわたって政策性の特に高い資金、こういうことをうたっているわけであります。この辺についてのお考えをまず聞かしてもらいたいと思います。
私自身は、農業政策の中で欠かすことのできないのは、価格政策と並んで金融政策でありまして、これは時によって互いに補完し合うという性格を持っているわけであります。私ども価格の決定の時期を迎えますと、価格問題に集中して議論をするのでありますが、しかし、経営をやっている立場から言いますと、もう一つの柱である金融政策というのが欠如いたしますと、せっかくの価格政策が生きてこないばかりか、農業経営そのものに非常に不都合を来すという結果になるわけであります。これは農業経営の一つの根本的な理念でもあるわけであります。したがって、金融政策には非常に強い関心を持っているわけであります。
そういう意味で、農業政策全体を考えてまいります中における金融という問題は、依然高い水準の政策性が要求されるということは言うまでもないことだと私は思っているわけです。ですから、いろいろな制度上の金融があるけれども、農業金融あるいは漁業金融、こういった第一次産業部門における金融措置というのは、相当長期でしかも低利で払いやすい条件にしていくということでないとなかなか成り立たない、これは年来の私の農業金融政策上における主張なのです。そういう点を考えますと、特に政策性の高いものだというふうに区分けをするということは、また一つの意味が別にあると思うのでありますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/13
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014・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 先生御指摘のとおり、農林漁業金融公庫は他の金融機関をもって融通しがたい資金を融通するわけでございますから、その意味におきまして、農林漁業金融公庫から融資をいたしております資金はすべて政策金融であります。したがいまして、そういう中において政策性の強いものについて今回金利の引き下げをしなかったというのはなぜか、こういう御質問でございますが、まず第一番目に申し上げられますことは、農林漁業金融公庫のうちで土地取得資金その他構造改善の非補助等におきます三分五厘の資金がございます。それから次は総合資金に例示されますような四分五厘あるいは五分の資金がございますが、これらにつきまして、相当長期低利で融資をいたしております資金につきまして、これを一般の金融と連動して下げるのはいいかどうかということは、これは一つは政策判断の問題でございます。そういう金利につきましてこれを下げるということはいいことでございますが、下げるということは、今度は金利が動きましたときには上げるということを意味いたしますので、特に政策的な色彩の強い金融につきましては、金利と連動して変動されることが適当ではないのではないかという判断の上に立っておるわけでございます。
それから、第二の農政上における金融の重要性及び位置づけにつきましては、かねがね先生からいろいろ御意見を承っておるところでございますが、私たちといたしましても、金融的手法を用いて農業経営の改善を図るということにつきましては、かねてからその重要性について十分認識をいたしておるところでございます。したがいまして、毎年法律改正はいたしませんけれども、公庫の融資条件の改善あるいは貸付限度額の引き上げ等につきましては、逐年その努力を重ねておるところでございます。今回御審議をいただいておりますのも、金利の変動に伴います公庫資金の引き下げということのみならず、これが農業経営に役立つという観点からも考えておる次第でございまして、今後の農業金融の改善につきましては、私たちといたしましてできる限りの努力を重ねてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/14
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015・島田琢郎
○島田委員 そもそも説明の中で、特に政策性の強いといいますか、高いといいますか、そういう農業金融について別表第二に載せているわけでありますが、政策性の強弱というようなことを考えるのならば、むしろ金利体系で考えるべきではないか。これは据え置き期間とか支払いの条件、期間といったものによって各種の資金の差はいろいろありますけれども、別表一に比較してみましても、政策性が高いか低いかというのはこの表だけではなかなか判断しにくい。別表第一で七・一%資金それから五・五%資金、今回それぞれ〇・四五%下げる。下がりました。別表第二を見ても、政策性が高いと言うけれども、七・五%資金から五%資金、金利体系においては一つも差がないから、この別表一、二を比較してみる限りにおいて政策性が強い弱いというふうに判断はなかなかできないのであります。むしろ政策性が高いと言うなら、別表第二はすべて少なくとも〇・四五%以下でありますというぐらいにしないと、なかなか政策性が強い、弱いなんということには相ならぬのではないか、単純に言えばそういう議論が成り立つと私は思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/15
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016・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 御指摘のとおり別表第二の資金にもいろいろございまして、別表二の資金を見てみますと、これが別表二に掲げてあるから政策的に高いと言えないのではないかという御指摘はそのとおりだと思います。これは三十八年にちょうど公庫法に構造改善資金その他をつけ加えました際に、別表二をつけまして、その資金をそのものとして法定したという経緯がございます。そういう経緯で現在の別表第二がございますので、その資金そのものを見まして高いとか低いとかいうことはございませんけれども、しかし、別表二の中の骨子となりますところの土地取得資金でありますとか構造改善の非補助でありますとかいうところは、従来なかった新しい公庫の金利を導入したという意味において、私は別表二を法定したことの意味があったのではないかと思います。
したがいまして、今後の課題といたしまして、御指摘のとおり別表一、二を通じまして今後の金融の金利をどうするかという問題が残されているということにつきましては、私たちも十分その点は認識をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/16
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017・島田琢郎
○島田委員 さて、金利が法定化され、しかも固定化されている、そういう意味についてもなかなか一般には認識が広まっているとは言えないのでありますが、これにもそれなりの政策目的があって法定化し、金利の固定を行う、こういうことになっていると思うのであります。しかし、考えてみますとこれにも功罪があると思うのです。この点についての御検討は政府部内においてはどのようになされているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/17
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018・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 確かに政策的色彩のきわめて強い金利を法定するかそれともそれをある程度金利の動向と連動させるかということにつきましては、これは政策判断の問題でございますが、きわめて慎重な検討を要する問題であるというふうに考えております。したがいまして、仮に、将来公庫法の別表第一及び第二を一緒にしまして金利体系を考えます場合におきましても、たとえば三分五厘資金等につきましてどうするか、これを法定するのがいいのかあるいはある程度連動させる方がいいのかということにつきましても、今後十分慎重なる検討を要する問題であるというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/18
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019・島田琢郎
○島田委員 検討をしているということでありますから私はそれ以上のことを申し上げませんけれども、法定されていることの意味を私なりにこう考えているのであります。運用に当たって公庫なりあるいは貸し付けの窓口なりが一定の裁量権というものを持っているわけでありますが、それに対して諸般の政策的な意味合いを込めて一定の枠をはめる、こういうところに目的があるのだと私は思っておりますし、特に上限設定をするということには、法の持つ意味として大変深いものがあると私は思っている。ただ、その上限設定に当たりましても、固定金利にいたしましても、これは運用の中で一つの裁量権と柔軟性をあわせ持つというような意味合いを持っているとすれば大変民主的だ、こういうことになると思いますが、しかし、運用していく上では、この判断基準というのは一つなければ運用できないし、またその基準をつくるという上でも大変これは難儀の多いことだろうと思う。そこのところが、私どもとしては、農政上の大事な一つの柱として農業金融制度というのは真剣に議論してみなければならない点ではないか。そしてこういう時代でありますから、春の畜産物価格の決定に見られますように、要求価格がそのまま受け入れられるというような状況下にないというような厳しい条件も一つあります。片一方を抑えておきながら、農業金融制度において法定化され、あるいは上限を設定し、固定金利の制度を導入している意味合いというものが現場で生かされてまいりませんことには、せっかくの農業金融制度は農政上生きないということになってしまうわけでありますから、私は、この法定化の意味というものが重要であるだけに、やはりこれはわれわれも真剣に議論し、政府も真剣に検討してもらわなければならない点ではないだろうか。こういう認識についてはいかがですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/19
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020・中川一郎
○中川国務大臣 これはなかなかむずかしい、国鉄の運賃でも法定化した方がいいのか弾力化しておいた方が実際上いいのかというように、こういった金利も固定化した方がいいのか、弾力化してそのときどきに応じてしかるべく措置をしていくのがいいか、議論のあるところではありますが、今回のように、固定化しておきますと、もっと早く金利が引き下げられたものをというようなことにもなりますので、この辺、両方とも一長一短あってむずかしいところではございますが、その辺のところは議論のあるところであり、今後のあり方についてはまた十分検討していかなければいかぬところであろう。議論もあり、一長一短、また今後とも先生方の御意見も承ってみたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/20
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021・島田琢郎
○島田委員 そこで、今度の法律では、そうした一つの法定化の意味というものから考えますときに、裁量権を特定し、また政策性の価値判断というものが必要だ、こういう目的に立って、この別表二というものもつくられ、法律の志向するところで一定の枠もはめられているというふうに考えるわけでありますが、今度の法案は、多分に政令に委任するということで、いま申し上げましたような点についての、よく言えば運用に当たっての柔軟性、あるいは法制定に当たっての一つの裁量権の拡大、こういったものに枠を広げた、こういうふうになるわけです。もう少し平たく言えば、法律で決められるという枠を超えて、すべて政令に委任していくということになりますれば、こうしたわれわれの議論の場所がだんだん狭められてなくなっていくというふうに、私はこの政令委任ということについては若干抵抗を感じるわけであります。
前段くどくどと申し上げてまいりました農政上の位置づけから見る農業金融制度というのは、ともにわれわれが国会において責任を持たなければならない面もたくさんあるわけでありますから、こうした点で、自在に運用のできる政令委任ということに余り幅を広げ、柔軟性を持たせてしまいますと、それこそ法の精神というものに対しても逆行するということにもなりかねない部分が出てくる、そんなふうに私は懸念をしておる一人でありますが、この点についてはいろいろと問題があり、法定の意義と目的を放棄するという極端な意見にもなりかねませんが、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/21
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022・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 御指摘のとおり、農業金融、特に制度金融におきます政策性といいますか政策的意味といいますか、そういう問題が一つあると同時に、制度金融でも、金融でございますから、やはり金融の弾力性という問題も当然に考えておかなければいけない問題ではないかと思います。したがいまして、その政策性と弾力性というものを考えますときに、公庫金融の金利をすべて政令で決めるということになりますと、非常に政策性の強い金融でありましても、場合によっては六分五厘になり、場合によってはそれは四分五厘になるというふうに動きますことは、私は必ずしも適当ではないと思っております。したがいまして、今回の御審議をいただきます法律は、現在の金利を上限といたしましてその中におきまして政令でこれを定めるというふうにいたしておるわけでございます。その意味合いにおきましては、弾力性と政策性というもの両方を加味した改正ということに相なるわけでございまして、今後政令でどういうふうに決めるかということは、今後の金利動向なりあるいはその政策的な意味づけなりを両方加味して、十分検討の上、処置をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/22
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023・島田琢郎
○島田委員 そこで五番目の問題でありますが、いまの局長のお考えによりますと、やや私と考え方を同じくする部面があるわけでありますが、ただ、この金融に当たりまして、先ほどもちょっと触れましたが、金利だけではなくて、貸し付けの条件というのはいろいろあって、それらが複合して一つの金融体系をなしているわけでありまして、この点については軽々しく看過し得ない重要な問題点を含んでいると思うのであります。資本主義形態下における金融のあり方といったようなそういう幅広い意味で私はお尋ねをするのではありませんが、きょう御提案のありました農業金融にかかわる限り、据え置きが一体どれだけで、何年の支払いで、あるいは貸し付けを受けるときの保証人とか担保とか、いろいろな条件というものが重なり合ってこの金融がいいか悪いかの判断も、借りる農家としてはするわけであります。ですから、金利はえらい安いけれども貸し付けの条件が厳しかったら何にもなりませんし、そういう意味で、この金融が生きるか死ぬかという判断の重要さを問われるということにもなるわけであります。もともとこの法を運用いたしております立場から局長のお考えをまずお聞かせ願って、実際の実務を担当していらっしゃる金融公庫の総裁がお見えでございますから、この点についての判断基準というものは貸し付けの窓口ではどのようになされているのか、この点をまずお聞きをしたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/23
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024・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 確かにいまの御指摘は、私は金融にとって最も重要なポイントの御指摘かと存じます。金融を行います場合に、ただ単に金利のみの問題としてこれを議論するのではなくて、据え置き期間、償還期限あるいは貸付限度、あるいは融資の円滑化等の総合的なものとして判断さるべきものであるということは、私も常日ごろからそのように考えておるところでございます。
一例をとってみますと、たとえば私たちが家を建てますときに、仮に三分五厘資金を五百万借りるのと、六分五厘でありますけれども二千万、三千万借りられるのと、どちらが金融として有利であるかということを考えますと、それは後者の方がきわめて有利な話でございまして、ただ単に金利のみをもって金融を論ずることはできないというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、金利は安いにこしたことはございませんけれども、それよりももっと重要なことは融資の円滑化という問題であろうと思います。したがいまして、これらの点につきましては、農家が必要なときに、必要な資金を、必要な額、いかに速やかに融資をするかということに政策金融の重点を置くべき問題ではないかと私は思っておるわけでございます。
そういう観点から、農林漁業金融公庫におきましても日ごろからそういう御努力を願っておるところでございますが、今後ともそういう方向に即しまして、公庫と相携えてその努力をいたしたいというのが私たちの方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/24
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025・武田誠三
○武田説明員 ただいま今村局長からお答えがございましたようなことで、私どもとしても適正な運用に心がけておるつもりでございますが、たとえば総合資金の融資の場合等を例にとって申し上げますと、総合資金と申しましても、稲作に融資をいたします場合、あるいは酪農家に融資をいたします場合、あるいは果樹園芸の農家に融資をいたします場合と、いろいろございます。したがいまして、たとえば果樹でございますれば、どうしても相当程度の据え置き期間がなければ償還をお願いするわけにもまいりませんし、また融資をいたします対象が機械であります場合も、あるいはまた畜舎その他相当長期の建造物である場合もいろいろございます。したがいまして、そういう融資の対象物件の耐用年数でございますとか、あるいはその効果の発現の時期でございますとか、そういったものを勘案いたしまして、できるだけ適正な期間に据え置きを決め、また償還期間も決めるというようなことでやっております。したがいまして、同じ総合資金の貸し付けでございましても、償還期間が十五年のものもございますし、二十年のものもございますし、いろいろ多岐にわたっておるわけでございますが、できるだけ農家の御要望等に沿いつつ、適正な条件を決めてまいっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/25
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026・島田琢郎
○島田委員 局長がおっしゃった融資の円滑化というのはきわめて重要な問題でありまして、農家が、制度資金の借り入れに当たって、小さくなって借りなきゃならぬような資金ならありがたくないのですね。やはり、もらう金ではありませんし、返さなければならぬ金を借りるわけでありますから、本当は堂々と借りていいわけでありますけれども、なかなか窓口はそうならない。こういう点で、私は、質問を申し上げた趣旨とは若干違いますけれども、そこまで踏み込んだお答えがありましたから、ぜひ行政の責任者である局長なりあるいは実際の実務を推進しておられる総裁にお願いをしておきたいのでありますが、この種の資金というのは、農家が喜んでしかも気軽に相談し合いながら借り入れのできるように、そういう末端の窓口もぜひひとつ民主化を図っていただくということは、今日的な課題として大変重要だと思っております。これにはお答えは要りませんが、私の考え方を述べておきますので、ぜひそういう方向で善処を願いたい、このように考えております。
さて、公定歩合がこのように下がってまいりましたが、まだ日本の公定歩合についてはいろいろ異論が出ておるところであります。まだ下がるであろうというふうな一面の推測の意見もございますし、ややここで落ちついた、こういう見方もございます。これは、財政当局でもない農林省が、今後の見通しはいかがかと聞かれてもなかなかお答えしにくい点があるかと思いますが、大臣は財政にも深くかかわってまいりました経験をお持ちでありますから、その点については一つの見識も持っておられると思いますので、この見通しなどはいかがですか。また、率直に言って、下がるかあるいは上がるか、このままでいくのか、この点についても、法律改正を提案した以上、それなりの一定の御見解をお持ちのことと思いますので、この際、御披露願えればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/26
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027・中川一郎
○中川国務大臣 公定歩合につきましては、御承知のようにオイルショックのああいう時代には九%までいっておったわけでございますが、現在は三・五%でございますから、相当の引き下げを行っておる。国際的に見ましても、ドイツが三%というのが例外として一つございますが、それ以外は六とか七とか八とか、場合によっては九とかいうことで、最高のところまで下がったのではないかと思いますし、最近の経済の動きから見ても、将来に向かってはよくなるのではないかという期待も持たれますので、まずまずこれ以上の引き下げはないのではないかなとは思いますけれども、経済は生きたものであり、動いておりますから、今後どういうことになるか、まずまずこれ以上のことはないとは思いますが、絶対動かし得ないものではない、動かないという見通しのものでもないとは思います。ただ、今後仮にそういうことがありました場合、直ちにそれを財投資金への影響まで持っていくのかどうか等々のこともございますので、今後の動きを見ながら、見通しとして言われるならば、まずまずないとは思う、しかし、あった場合にはそれにどう対処するかは、そのときの情勢、やり方等を判断して決定をいたしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/27
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028・島田琢郎
○島田委員 見通しをお述べになったわけでありまして、いま西ドイツを引き合いに出されましたけれども、国際水準の比較をする場合に、私はもろもろのファクターを積み上げてみまして、西ドイツと比較するというのはきわめてオーソドックスだと思っているのです。これは例外ではないと思っているのであります。もちろんこれは福田内閣の一つの課題でありますから、いまここで大臣が総理にかわって率直に答えよなんて言われても、お答えしにくいということはわかりますし、最も危なげないいまの御答弁ということになるわけでありますけれども、私は、後段おっしゃったように、公定歩合の引き下げ等がさらに起こって財投資金等にも影響が出てくる場合には、直ちにこれを改定する、こういうことをお答えになっているということは前進と受けとめて、この項の質問を終わりたいと思うのであります。
次に、別表一、二で比較しますと、すでに五月一日から機動的に、つまりスライドで金利が下がっているものが多いわけでありますが、先ほど法の持っております一つの趣旨とかあるいは運用の中の功罪といったもので議論を申し上げたのでありますけれども、きょう衆議院はこれを本委員会が採決をいたしますが、衆議院から参議院に回りますと、直ちにこれが成立するかどうかというのは、必ずしも見通しとしてまだ定かでありません。政府が考えておりますように順序よく上がっていくかどうかということはなかなか見通せないので、そうすると、この成立の時期というのは、五月一日のスライド金利から見ますとかなりずれ込みますね。この点については、法の提案の中では「この法律は、公布の日から施行する。」こうなっております。しかし、この際、せっかくの親切なんでありますから、五月一日にさかのぼって、つまり遡及して法を発効させていくと、もう一歩踏み込んでせっかくの考え方をお示しになった方がよろしいのではないかと思うのですが、その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/28
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029・中川一郎
○中川国務大臣 御指摘のとおり、法定化されていない、すなわち固定化されていないものにつきましては、五月一日から金利の引き下げが行われております。したがって、この改正による分は、法律が施行されましてから、しかも公庫と借りる人が契約ができたという時点からでございますので、まず第一番目は、この法律を早く通していただくことがありがたいことであるということで、ほかの法案に先駆けて御審議をいただいたということは非常に協力的で、農家にとってもあるいは今日の情勢からいっても適切な御協力でございますということで感謝いたしているところでございます。参議院においてもなるべく早く通過をしていただきまして一日も早くということになります。
そこで、遡及してはどうかという御意見でございますが、これは公庫と借りる人の契約の上で成り立つものであるということと、過去において例がないことと、それからもう一つ、理屈になりますが、今度は引き上げまする場合、法定化したものについてはこれはまた逆のメリットで、そのときには引き上げの部分がかなり遅くなるということで、全体としてはバランスがとれるのではないか。若干理屈めいたことでございますけれども、すでに納得づくで契約できております分について遡及することはいかがかな、そこまで踏み切るのにはちょっと問題があるかなという感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/29
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030・島田琢郎
○島田委員 われわれの方から改正案というようなことにならぬように、政府から修正されてはいかがですか。これからの相談でありますけれども、私どもは、政府がおやりにならぬなら修正案を持ち出そうかなと思っておるのでありまして、きょう法案が通らぬということになっても困るから、私は五月一日に遡及して法の修正を行うべきではないか、こんなふうに思うのですが、再度いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/30
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031・中川一郎
○中川国務大臣 今後引き上げるときには必ず遡及しますという保証でもあればなあということは思いますが、今回のところは今後の課題として御研究いただくこととして、今回はひとつ一日も早く通すことが今日の事態であるということで御協力賜りたい、私はそうお願いしたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/31
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032・島田琢郎
○島田委員 この点は理事会でひとついろいろとまた話題にしてもらいたい、こう思いますから、委員長に申し入れをしておきたいと思います。
さて、いまお話の中にもありましたが、すでに借り入れしているものの金利というものについても、やっぱりちょっとこれ気になります。差が出てまいりますので。まあ金利体系という面から言えば、その点についてはなかなかむずかしい側面を持っているわけでありますけれども、いままで借り入れされている総金額は一体幾らぐらいになるのか、そしてまたその金利の取り扱いについて政府の考え方はどういうふうにお考えなのか、この点をこの際はっきりさせておいていただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/32
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033・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 農林漁業金融公庫資金の貸付金でございますが、五十三年三月末現在で件数で百五十一万五千件、金額で二兆七千三百十五億円でございます。
これらの金利をさかのぼって改定をするということができないのかという御質問でございますが、これは長期金利につきましては、また特に政府関係金融機関につきましては、新規貸し付けから新規の金利を適用するという扱いになっておりまして、これを遡及して改定するという扱いにはいたしておらないわけでございます。
一つは、やはり政策金融であり長期金融であるというそういう観点と、もう一つは、やはり長期のものにつきましてそういう金利改定を行うことが果たして適当であるかどうかという二点からそういう扱いをいたしておるものと理解をいたしておりますが、今回の改正におきましても、今後のものにつきましてその金利を適用するという処理をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/33
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034・島田琢郎
○島田委員 必ずしも満足できるお答えではございませんけれども、時間の関係もございますから、私は最後の質問をして終わりたいと思うのでありますが、これは大臣と総裁に、あるいは局長からも必要であればお答えをいただきたいのでありますが、ミカン農家は大変であります。すでに私のところにもずいぶんたくさんの陳情がございまして、ミカン農家の救済の面について私なりにいろいろと腐心をいたしておるところでございます。たまたまこの制度の中でも別表二で五・五%資金として果樹園経営改善資金というのが実は用意をされておりまして、あるいはそのほかのまた果樹経営に対する金融も各種なされているようでありますが、ミカン農家はいま塗炭の苦しみにあえいでいる、自立する方向を模索しているところでございます。中にはせっかく植えたミカンを切って廃園にする、あるいは新しいものに改植をしていくなど、それぞれミカン農家は個々に大変な努力をいましているところであります。そういう中でありますから、せっかく借りたお金がなかなか返せないという苦しみが一つございます。私は、ぜひこの際、ミカン農家の現状を救済するという立場から、借入金の条件緩和、金利を含めて思い切った措置がとられなければならない、こう思っているわけであります。
先般も話題になっておりますが、生産調整で二割のミカンを先ほど申し上げましたように改廃植をする、こういうふうなことで苦労を続けているわけでございます。行政の立場でそのほかいろんな手は打たれているようでありますけれども、一番ミカン農家の心配の種は、借りた金を返せと言われるとこれは大変である、金利も払えない、こういう状態にございますから、たとえば改植をして新しい樹種に切りかえがなされたとしても、それが生産を上げるのには数年以上を要するわけであります。その間温かい行政の立場での援助措置が必要なのは言うまでもないわけです。具体的にこの点について緊急の措置をお考えになっているかどうか、所管の野崎園芸局長もお見えでありますから、最初に局長からお答えを願って、それからこの資金の貸し出しをしております公庫の総裁からも、窓口としてのお考えをお述べいただく、最後に大臣から、ミカン政策上の問題としてもぜひこの際お聞きをしておきたい、こう思うのでありますが、以上の順序でひとつお考えを御披露いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/34
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035・野崎博之
○野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、ミカン農家に対します既貸付制度資金、この問題につきましては、一律に条件緩和ということはなかなかむずかしい問題でございまして、四十七年度にも行ったわけでございますが、個々の農家がそれぞれの融資機関と協議して融資条件の緩和をやる、そういう道が開かれておるわけでございまして、御承知のように、本年の五十二年産ミカンについて見ますと非常に大幅に生産が上回って、また需要も停滞してきて価格も低迷しているということは先住のおっしゃるとおりでございますので、本年の二月二十二日付で公庫あるいは中金あるいは銀行協会等に対しまして、そういう困った個々の農家の実情を十分ひとつ配慮して、償還条件の緩和、そういうようなことに配慮をいたしてもらいたい、そういうような指導あるいは依頼を行っているわけでございます。
まあミカン農家全体の問題といたしまして、現在改植の推進、あるいは原料用の果実の価格安定対策、あるいはミカンの果汁の調整保管、そういうような対策を講じまして、消費拡大とともにミカン農家の安定を期する、そういう方向で考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/35
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036・武田誠三
○武田説明員 ミカン農家に対します融資条件その他の緩和につきましては、いま野崎局長からお話ございましたように、二月に当局の方から御通知をいただきまして、それに基づいて、直ちに私どもの末端機関でございます支店を通じまして、各県の信連等に趣旨の徹底に努めております。
いままでのところ、まだそれほど大きな反応がないのでありますけれども、できるだけ融資条件の緩和について希望のある農家に対しては適正な取り計らいをしてまいりたい。これは過去におきましてもたびたびこういう例がございますので、措置に誤りなきを一層期してまいりたいというように考えておりますが、大体六月いっぱいまでにはまとまるものというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/36
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037・島田琢郎
○島田委員 ちょっと大臣にお答え願う前に総裁に。具体的にはどういう条件緩和をやろうとお考えになっていますか。
それからもう一つは、窓口まではわかっていても該当の農家にまで徹底しておりませんと、そういう話は窓口から伝わってきません。その点についても、きちっと局長から通達なされたものと同じものが農家に徹底されているのかどうか、その二点、後段の部分、総裁からお答えしにくければ野崎農蚕園芸局長からお答えいただきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/37
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038・武田誠三
○武田説明員 私どもの方には当局の方から、農林中央金庫あるいは信連協会の会長あてに出された通達の写しをいただいておるわけです。関係の金融機関にこういうことを出しておるので、おまえの方もその趣旨に従ってよろしくやれということでございます。したがって、農協の系統機関を通じまして正式の局長からの通達はもちろん末端に参っておると思いますけれども、私の方の支店を通じまして、われわれの受託金融機関でございます県の信用農業協同組合連合会を通じまして、それのまたさらに手足でございます単協を通じまして、各農家に通ずるように、できるだけ趣旨の徹底に努めておるつもりでございます。
それから、融資条件の緩和でございますが、これはすでに融資をいたしておりますものの中身をどうするかということでありますが、お話しのような、去年のああいったミカンの作柄等に基づきまして償還ができなくなったというようなものについては、たとえば中間の据え置き期間を設けまして、ここ二年とか三年の間金利だけを償還してくれればいいとか、あるいは違約金その他が生ずる件が出てまいりますけれども、そういうものを免除するとか、いろいろなその事態に応じた適切な措置を講じてまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/38
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039・島田琢郎
○島田委員 監督官庁は今村さんのところかしら。今村さんから答えてもらった方がいいのかな。農家に徹底していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/39
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040・野崎博之
○野崎政府委員 行政機関といたしましては、われわれ県を通じまして市町村までいろいろそういう話はいたしておりますし、それから生産者団体等の会合でも、そういうような依頼をしておるからよく末端まで周知徹底をしてもらいたい、そういう話をわれわれもいたしております。したがいまして、単協等を通じまして農家にはそういう趣旨は十分徹底していると私どもは思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/40
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041・中川一郎
○中川国務大臣 ミカンの現状については御指摘のとおりでございます。特に、前の米の生産調整で転換を行った結果こういうことになっておりますので、政府といたしましても、ミカンについては十分配慮しなければいかぬというので、いま申し上げましたように、金融についても返済条件の緩和ということをやるほか、ミカンの新規植栽の抑制であるとか、あるいは果汁対策であるとか流通の問題、いろいろいま配慮をいたしております。特に農業団体においては約二割の改植といいますか伐倒したいという意向もございます。来年どうこれに政府として対処するか、こういうようなことも思い切りやって対策を講じたい。また、輸入問題もありますから、輸入問題についてもそういった実態を踏まえて最善を尽くして、油をかけるようなことはしないように配慮をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/41
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042・島田琢郎
○島田委員 以上で質問を終わりますが、本日いろいろ議論を願いました点で、前向きに検討する、こういうふうに約束されました点は、ぜひひとつ鋭意取り組んでいただくようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/42
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043・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/43
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044・瀬野栄次郎
○瀬野委員 農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案について、農林大臣並びに武田農林漁業金融公庫総裁に質問いたします。
本法の一部改正案は三条と附則から成っておりますが、第一条、第二条、第三条、それぞれ「規定の適用については、当分の間、」と規定しておるわけでございます。この「当分の間」の真意をまず農林大臣から述べていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/44
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045・中川一郎
○中川国務大臣 簡単に申しますと、今日のような公定歩合の現状、そしてまた財投金利の現状の続く間を「当分の間」ということで、金融事情、公定歩合等が変わればこれまたそのときに考える、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/45
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046・瀬野栄次郎
○瀬野委員 そうしますと、たとえば今年末公定歩合の事情が変わると、またことしの末改正するというようなことに理解していいですか。そういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/46
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047・中川一郎
○中川国務大臣 そういう事態が来ればわが国経済にとって非常に結構でございますが、どうなりますか。今年末どうなるか、今後公定歩合の動きあるいは財投金利等の動きを見て、その時点で判断をしたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/47
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048・瀬野栄次郎
○瀬野委員 本日は前全国農業協同組合中央会会長の宮脇朝男氏の葬儀が青山斉場で午後二時から執行されますし、また、高知県の第二十九回植樹祭においでになりました天皇陛下の御帰京が羽田着十四時ということで、農林大臣もそれぞれ出席されるということで大変忙しい限られた時間の中に、この重要な農林漁業金融公庫法等の一部改正の法律案の審議をいたしておるわけでございますので、十分な質問が時間の制約でなかなかできませんが、以下はしょって将来にわたり指摘しておきたい問題を若干とらえて申し上げますから、簡潔に明快なお答えをいただきたい、かように思うわけでございます。
次は、農林漁業金融公庫資金の別表二関係で、三・五%資金であるところの、すなわち農地等取得資金、未墾地取得資金、農業構造改善事業推進資金、林業経営改善資金、すなわち林地取得資金と言いますが、それに沿岸漁業構造改善事業推進資金等三・五%資金が今回は金利引き下げの対象になっておりません。まことに残念なわけでございますが、その理由を私は明快にしていただきたいということでございます。
御承知のように、今回は〇・四ないし〇・四五%引き下げが行われておりますけれども、この三・五%資金についても当然このような率で下げるべきではなかったか、かように思うわけであります。政府の見解等をそれとなく伺ってみますと、低金利であるからこの分については金利引き下げの措置をしなかったやに言っておりますけれども、この三・五%にしても、林業が今日置かれておる大変な窮状を思うときに、このような〇・四ないし〇・四五の引き下げを当然行うべきだった、私はかように思うわけですけれども、これに対しては大臣はどのように検討されたのか、全林業家のためにお答えをいただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/48
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049・中川一郎
○中川国務大臣 御指摘の趣旨もよくわかるわけでございますが、御承知のように、金融は他の金利体系とのバランスといいますか調整というものを考えなければなりません。その場合、こういった金融で一番低利なものが例の激甚災害のときの利率でございます。これが三%となっております。今日の情勢からいって、激甚災の三%に合わせるまでおろすことはいかがかなあということで、三・五%なら相当低金利である、この程度でありますからがまんがしていただけるもの、こう判断して三・五%の低金利のものについては今回は調整を行わなかった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/49
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050・瀬野栄次郎
○瀬野委員 私も災害対策特別委員でございますから、激甚災のことをよく承知しておりますけれども、激甚災害が三・〇%であるからとおっしゃるのですが、林業は長期的な事業であると同時に、現在の林業の大変な低迷、こういったことを考えたときに、農林大臣としてもまた農林省当局としても、その辺の説得をやっていただいて、行政上こういったことについて十分意を尽くして、激甚災害との対比でおっしゃるならば三二とか、若干の差をつけて、〇・四くらいは下げてよかったのじゃないか。または〇・三でも下げるべきではなかったか。百歩譲っても三・二とか三とかいうようなことでやるべきではなかったか、そういう温かい配慮が大事ではなかったか、かように思うわけです。
先般、国有林野改善特別措置法でいろいろ論議をしてまいりました。また森林組合法でも論議をしてまいりました。その際も、国有林はただでさえも大傾斜している。しかも、今回は一般財源から特別会計へ四十億円のいわゆる導入をする、赤字対策を講ずる。将来にわたっては数千億円の対策になるでしょう、十年間のいわゆる改善計画期間があるわけですから。さらにそれに、私が提案しましたとおり改善目標達成期間という十年間、合わせて二十年間があるわけですから、そういったことを思うときに、民有林にもこういった面で温かい対策をすべきじゃないかということを数回にわたって私はこの席で皆さん方に訴えてまいりましたが、こういった面にも私は配慮が欲しかったとしみじみ思います。残念でなりません。再度お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/50
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051・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 御指摘のとおり、現在の林業家の経営というのは非常に困難に当面していることは、私たちも十分認識をいたしておるところでございます。したがいまして、そういう観点から言えば、御指摘のように三分五厘の資金も安いとは言えないので、これを引き下げるべきではないかという御指摘でございますが、実は三分五厘という資金を一体どういうふうに農業金融で認識するかという問題が一つ基本的にあるのではないかと思っておるわけでございます。これは今後農林漁業金融公庫の金利体系を見直します場合におきましても、三分五厘の資金を法定しておくのがいいのか、あるいはまたそれをある程度金利の変動と連動させて動かすのがいいかという問題は、これは政策判断の問題でございますが、なお慎重なる検討を要するのではないかというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、三分五厘資金につきましては、これを引き下げることにこしたことはございませんけれども、今後の金利問題としてこれを法定化しておくのがいいのか、あるいは連動させるのがいいのかという問題は、将来の課題として十分検討されるべき必要のある問題ではないかというふうに認識をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/51
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052・瀬野栄次郎
○瀬野委員 農林大臣においても、いまの答弁のとおり、ひとつ今後の検討として十分対策を講じていただきたいということを要求しておきます。
次に、農林漁業金融公庫総裁並びに農林大臣に伺うわけでありますが、時間の関係で全部申し上げることはできませんけれども、今回の本法による金利引き下げが現時点までおくれているということについては、農林省としても十分責任を感じてもらわなければいかぬ。しかも、会期延長の数日前に閣議決定したということで、昨日の理事会で本法優先の審議のために私も陰ながら努力させてもらいましたけれども、こういった政策性の高い金融措置でありますだけに一番早くやるべきだ、かように思うわけです。
その理由としては、政府は、農林漁業金融公庫資金の金利引き下げは、通常その原資である財投資金の金利引き下げを待って実施するというようなことを最大の理由としていたと思うけれども、実際にはもっと前からこういったことは準備をして対策を講ずるべきではなかったかと私は指摘せざるを得ないのでございます。さらに、別表一についても、公庫の業務方法書によってすでに五月一日から改定されておる。別表二については、ただいま審議しておりますようにおくれておるわけでございまして、これら別表一と別表二のいわゆるバランスが崩れておるわけでございます。早く是正すべきではないかということで、われわれも農家または林家を思うがゆえに、こういった審議を急いで、農産種苗法に先立って審議をいたしているわけでございますけれども、こういった別表二についても、何とか遡及してやるべきだし、また従来の貸付金についても金利に対する対策を何とか講じてもらいたい、こういうことをあわせ要望すると同時に、次に私は農林漁業金融公庫総裁にお伺いし、同じ問題を農林大臣からもお答えをいただきたい、かように思うわけでございます。
そういったいま申し上げたような理由によって、今回はあわただしく、しかも会期末に、延長国会の二、三日前に提案なさって、今回このどさくさと言ってはあれですけれども、こういう時期に金利引き下げを行うということで、これは各党とも反対できない問題であるがゆえに、足元を見透して提案したと言えば酷かもしれませんけれども、そういうような感じがしてなりません。私は抜本的な改正をすべきであるというように思うわけですけれども、まず造林資金の場合に、今後のこともあるので私はぜひこの機会に検討願いたいために申し上げておきたいわけでございます。
すなわち、現行は据え置きが二十年で償還期限が三十五年になっております。この造林資金については、御承知のように従来から、間伐材が金になってその中から一部返せるのじゃないかという考え方から、こういった二十年の三十五年償還ということも考えられてきたわけでございますけれども、今日では御承知のように間伐材というものはほとんど金にはならない。しかも、三十年ないし三十数年たっても切り捨て間伐も及ばないというようなことで、被圧木ができているような状態になっております。こういったときに逆に金をかけて間伐をしていわゆる切り捨てるというようなことで、むしろ間伐のためにもうかるどころか金をかけなければ間伐できないという地域も全国的にはたくさんあることは御承知のとおりでございます。
そういったことから、私は、この公庫法の改正に当たっては、ほかの資金もそうですけれども、全部を言う時間がございませんので、造林資金を一つの例に申し上げるわけでございますが、従来から三十年ないし四十年代の間伐が言われておったわけですけれども、現在では四十年から五十年代が主伐の時期、こういうふうに言われておりますし、さらに木材の低迷によって現在は六十年ないし七十年の後伐期にだんだん移動しつつあることは統計の数字から見ても明らかであります。また林野庁もそのように認識しておられる、かように思うのです。
そこで、間伐材は金にならない、しかも後伐期にだんだん移行しつつある、こういったことを思いましたときに、この二十年の据え置きを少なくとも三十年にして十年延ばす、さらに三十五年の償還を十年延ばして四十五年償還にする、こういったことが当然考えられなければならない。また、林野庁の首脳部の中においても陰に陽にこういったことを考えて真剣に悩んでおることも事実であろうと私は思う。こういったこともあわせて改正すべきである。今回は間に合わぬにしても、近い将来こういったことを改正すべきである、季たこういったことを十分考えなければいかぬと思うが、公庫総裁としては、こういった点については本法提案に当たって、今回の改正にはこれは間に合わなかったかもしれないけれども、十分心を砕いて悩み、林家のことを思っておられるのかどうか、総裁としての所見を承りたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/52
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053・武田誠三
○武田説明員 林業を取り巻きます条件の厳しさは先生の御指摘のとおりだと思っております。また間伐材の問題あるいは伐期が長くなってきつつある傾向にあるということも私どもとしても十分承知しておりますが、先生御指摘のように、いまの林業資金につきましては間伐材収入というものを一つ念頭に置くと同時に、やはり継続しての法正林とまではいきませんでも、一つの循環としにふえてまいりまして、いまの林野の状態が、お話のように国有林も民有林も若齢林が多くなってきておりますので、そういった点も考えますと、この林業金融の問題についてはこの際改めてひとつ慎重な検討をしてほしいというように私どもとしても考えております。林野当局あるいは農政当局においてこの点慎重な御検討を願いたいというように私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/53
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054・瀬野栄次郎
○瀬野委員 武田総裁は慎重な御検討を願いたいと言っておりますが、農林大臣、その点についてはどういうふうにあなたは考えておられますか。あなたの考えをひとつこの際明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/54
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055・中川一郎
○中川国務大臣 御指摘のとおり林業を取り巻く情勢は最近とみに問題化しておりますので、あらゆることについて検討いたしておりますが、金融についても考えなければならぬかな、慎重に検討しよう、こう思っております。
ただ、三十五年というと、ほかの金融に比べて相当がんばっておるものである。さらに四十年、五十年ということになれば、親子二代という問題も出てまいりましょうし、また総裁からもお話があったように、林業経営というものはその植えた木だけで生涯を終わるのじゃなくて、循環をしていくということもありましょう。そういった点を考慮しながら、御指摘もありますので十分検討してみたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/55
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056・瀬野栄次郎
○瀬野委員 この点については十分検討していただきたいと思います。
大臣、もう時間がないので反論しませんが、親子二代と言うけれども、林業はもう親子二代、三代の時代になっているのですよ。そういったことを勉強していただきたいと思います。
次に、また公庫総裁と農林大臣に伺いますが、共同利用施設資金は今回七・一%から七・〇五%に引き下げる予定になっております。主務大臣指使う資金であります。主務大臣指定施設資金は、林業者のグループが共同利用施設について五人以上の協業体の場合使う資金でありますが、ともに加工施設、市場、工場、シイタケなどの乾燥機、ただし、事務所等は該当しないということになっておりまして、フレームを入れる施設などは森林組合の場合も林業者の場合も全部同じである、こういうことになっておるのですけれども、政府の考えを伺いますと、森林組合は負担能力が強いからということで、金利が多少高くてもいいのじゃないかということかどうかわかりませんが、七・〇五%と六・〇五%というように一%の金利の差がついております。私は、組合もこの主務大臣指定施設資金を利用できるようにするとともに、金利は七・〇五%を六・〇五%にすべきではなかったかと思うわけでございますけれども、別表一によるこの問題は、法律の改正を必要としないものの一部についての部類に属するわけでありますし、すでに五月一日から公庫は金利引き下げを行っておりますので、いわゆる行政庁の認可を必要とするということから、行政庁の圧力がかかっておると思うのです。
公庫総裁としては、私の言うことについて同感であろうと思うのですが、その点をどうお考えであるか。また、大臣としては、どういう理由でこういうふうに差をつけたのか、将来これを一緒にするという考えがあるのか。その点について、時間がございませんので簡潔にお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/56
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057・武田誠三
○武田説明員 共同利用施設資金につきましては、農林漁業団体を通じてこういう条件に相なっております。主務大臣指定施設資金もそうでありますが、そういうことでこのような金利差が設けられておると思っておるのであります。
森林組合につきましては、御承知のように信用事業を行っておりませんので、この点は今後の問題として当局においても検討を願わしいものだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/57
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058・中川一郎
○中川国務大臣 金利というものは総じて負担力から出てくるわけでございますので、組合でやる場合は負担力があるという判断からそういう差がついておりますが、御指摘もありますし、今後研究はいたしてみたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/58
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059・瀬野栄次郎
○瀬野委員 この点もぜひ研究をしていただきたいと思います。
次に、林地取得資金の貸付条件についてでございますが、昭和四十八年に、農林水産業にかかる総収入または総就業日数が過半を占めること、または林地を取得することによりその見込みのある者を対象にすることにしているが、現在までの貸付件数と融資の実績を明らかにすると同時に、林業者はこの林地取得資金の貸付条件になかなか合わず、資金の借り出しがむずかしいという厳しい批判が各地に出ております。すなわち、木材価格の低迷や兼業所得のウエートが高い今日においては、この貸付条件に合わなくとも、この資金を取得した結果として現在それぞれの条件が過半を占めなくても、近い将来五〇%になる見込みがあるものなどについても弾力的に貸し付けできるように対処していただきたいと思うのですが、この点についてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/59
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060・藍原義郎
○藍原政府委員 御指摘になりました林地取得資金でございますが、まず件数でございますけれども、昭和五十一年度末現在で五万二千八百五十七件でございます。それから貸付残高でございますが、四百四十五億七千二百万というふうになっております。この状況を見ますと、四十八年から五十一年までの四年間を見ましても、貸し付け決定数が四十八年二千、四十九年二千四百、五十年二千二百、五十一年二千六百というふうになっておりまして、各年を通じて見ましても、大体横ばい程度といいますか平均した貸し付けがなされているというふうにわれわれは考えておりますが、ただいま先生が御指摘になりましたように、林業を取り巻く状況というのは非常に厳しい状況でございます。そういう意味からも、こういう取得資金を活用いたしまして林業家がそれぞれの持ち山において活発に活動できるような形というものが必要であろうと考えておりますし、さらにこの有効活用というものについてはわれわれも十分対応してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/60
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061・瀬野栄次郎
○瀬野委員 武田農林漁業金融公庫総裁にお尋ねしておきます。
いままでいろいろ議論してまいりましたが、今回、先ほど申し上げたように、いわゆる財投資金の関係もあって、農業、林業、漁業の皆さん方に一日も早く金利を下げてやるべきだということでこういう提案になっておりますけれども、近い将来、私が若干指摘しましたようなことを踏まえて、農林漁業金融公庫法の捉え置き期間あるいは償還期限その他の問題等についても抜本改正をせねばならぬのではないかと思います。そういう時期が来ているというふうに指摘しておるわけですが、この点についてのお考えを承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/61
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062・武田誠三
○武田説明員 農林漁業金融公庫法の抜本改正というお話でございますけれども、いま私どもが預かっております資金等につきましても、いろいろとそれぞれについて改善を加えたいという点もございます。また、農林漁業を取り巻きます条件も年々大分厳しさを増してきておりますので、この際、農政、林政あるいは水産政策といったものの変化に応じて金融問題についても農林当局においていろいろ御検討中であろうかと思いますが、これらの点について総括しての改善を私どもとしても期待をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/62
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063・瀬野栄次郎
○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わりますが、残余の問題については、通告しておりましたけれども次の機会に譲って、一応質問を打ち切らせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/63
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064・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 神田厚君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/64
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065・神田厚
○神田委員 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。
まず最初に、大臣にお聞きしたいのでありますけれども、この法案の提出の時期について、今日出されてきたということは大変なことであると私は考えているのです。もしも延長国会がなくてこれがこの時期に提出をされなかった場合には、いわゆる引き下げの問題が年末まで持ち越される可能性が非常に強かったわけであります。こういうことを考えますと、この提出時期がなぜこんなにおくれてしまったのか。すでに公定歩合が引き下げられまして、多くのいろいろな金利が下がっていくという方向がもう三月の末の時点ではっきりしていたわけであります。そういう中でどうしてこんなにおくれてこの時期に出してきたのか。しかも、延長国会がなかったらこれは大変なことになっていたと思っておりますが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/65
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066・中川一郎
○中川国務大臣 御承知のように、この法案は五月十二日の閣議で決定いたしましてすぐ提案をいたしたわけでございます。したがいまして、会期がたしか十七日でございますので、この国会に間に合わないというような出し方はしておらなかった。何とかこの国会で通したいということで、政府としましては、いろいろ法案を出すに当たりましては法制局もあればいろいろあるわけです。しかも、最終的に郵政審議会から資金運用審議会の審議で、財投資金の金利を引き下げる審議会が開かれたのが四月二十七日でございますので、ほかのものは五月一日にやったわけでございますが、われわれとしても最善を尽くしたつもりであり、この国会期中にはどんなことがあっても出したいという気持ちで、数日間ございます会期末ではございますが、延長後の国会に出して危ない芸当というつもりはなかった。いずれにしても、こういうものはできるだけ早く出すことがいいことでございますので、今後もその点については十分配慮して、一日も早い実施ができる措置をとりたい、こう思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/66
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067・神田厚
○神田委員 と申しますのは、私は、三月三十日のマル寒、マル南の審議の際に、現在公定歩合が引き下げられた、これに関連して農林漁業金融公庫の貸付金利の引き下げをどういうふうに考えているのかという質問をしていたわけであります。その際、今村局長さんから、非常にこの問題については財投との関係が微妙であるから慎重に取り扱いたい、こういうような話であったのですけれども、情勢としては、大体全部の金利が下がっていくという方向であったわけであります。そういう点で、もう少し早く準備がされてしかるべきであるというふうに私は考えていたわけであります。
この中で問題になりますのは、その中で今村局長は、いろいろと考えられるけれども、財投のコストと連動して動かすべきではない、こういうような答えをしているわけであります。しかし、農林省の方の考え方で、今度は幸いこれを引き下げられました。そうしますと、われわれは今度は引き下げる方の問題はいいのでありますけれども、連動しないという原則を破ってそれを引き下げた。そうすると、今度はこれを高くしていく、上げていくときの場合のことを非常に心配するわけでありますが、その辺のところはどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/67
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068・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 私は、基本的には、政策的色彩のきわめて強い金利については財投のコストと連動することは必ずしも適当ではないと思っております。しかしかながら、今回の法律の提案をいたしておりますのは、金利の上限を切ってございまして、その上限の範囲内で政令で定めるということでございますから、これは上がることはございませんで、下がる一方でございます。連動するということになりますと、上がったり下がったりするわけでございますから、そういう心配を持つわけでございますが、今回の改正は、上限を切ってその中で政令で決める、そういう天井打ちの、頭打ちの保証があるわけでございます。これが実は法律を出します場合におきます財政当局との折衝においてなかなか問題の存したところでございます。
したがいまして、現在の法律におきましてはそういう御心配はないと思いますが、今後、農林漁業金融公庫の金利をどうするかということを考えます場合に、財投コストと連動して動かすのがいいのか、あるいは政策的な色彩のきわめて強いものについてはそれを固定化するのがいいのかということについては、十分検討を要すべき問題であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/68
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069・神田厚
○神田委員 このときには短い時間で突っ込んだ話ができなかったのでありますけれども、私はやはり非常に大事な問題を含んでいると思うのですね。今後の課題になるだろうと思うのでありますけれども、ひとつこれから先議論を深めていきたいというように考えているわけであります。
先ほども話がありましたが、今度の改正につきまして、農地の取得資金、それから非補助の土地改良事業、構造改善事業の非補助の問題、このいわゆる三・五%資金が下げられなかったという問題があるわけであります。それで、この三・五%金利のものがいわゆる融資枠の中で一体どの程度のパーセンテージを持っているのか。大体聞きますと、全体の融資枠の三〇%程度をこの三・五%金利のものが持っているということを私は聞いております。やはりこの三・五%の金利のものを引き下げることが、これによって恩恵を受けている人にさらに利益を与えていくのではないか、ここのところが非常に大事であるというふうに考えるわけでありますが、これがこのまま据え置かれたということについては非常に残念に思うのであります。この点につきましてはどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/69
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070・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 三・五%金利をどうするかという問題は、今後におきます農政における農業金融の位置づけともあわせて十分検討をせらるべき問題ではないかというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、そういう政策的色彩のきわめて強い金利についてこれを財投と連動させるのがいいのかどうかという基本的な問題につきましては、今後十分検討せらるべき重要なる課題であるというふうに認識をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/70
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071・神田厚
○神田委員 私は、現在〇・四五%下げられているものにつきましても、これは非常に下げ方が少ない、こういうような考え方を一つには持つのです。なぜかと申しますならば、いわゆる農業を取り巻いている現在の状況から考えますと、この農業の生産性、成長率というものを考えていきますと、もう少し思い切った金融の措置というものが必要なんです。そういうことから言うと、ただ単に一律に〇・四五%下げたということにつきましては、それだけでは非常に不十分だという考えを持っているわけであります。したがいまして、この三・五%の問題につきましても、この政策的なものをより手をつけていただくことによって本当に今度の改正もより有意義なものになったのではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、その辺のところをひとつよく御検討をいただきたいというふうに考えているわけであります。
時間がありませんので、次に進ましてもらいますけれども、農林漁業金融公庫の資金の融資枠、昨年度の実績あるいは今年度の計画を聞いていきたいと思っているのでありますけれども、昨年度等につきましては一部農家の方から資金枠が足りないというような問題が提起されたようであります。結局、末端需要にこたえる円滑な融資がなされなければならないし、さらに、これは局長も前に答弁の中で言っておりましたけれども、その融資の条件の改善、こういう問題につきましてより前向きな検討が必要であろうと考えるわけでありますけれども、その点につきまして御答弁をいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/71
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072・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 農林漁業金融公庫の五十三年度の融資枠は六千三百二十億円を計画いたしておるわけであります。資金需要につきましては、私たちとしては、農家の需要に応じまして、農家に御不便をかけないように融資枠の確保をいたしておるつもりでございます。もし五十三年度の資金需要がこれで賄えないということであれば、五十四年度においてはさらに飛躍的な枠の拡大を図るつもりでございます。
それから融資条件の改善につきましては、逐年私たちは努力をいたしておるところでございますが、御指摘のように、融資条件の改善につきましては今後ともさらにその改善に努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/72
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073・神田厚
○神田委員 最後に、大臣に御質問申し上げます。
私は、前にも大臣にお話ししたのでありますが、農業環境が非常に変わってきている。そして、この金融公庫法ができてから非常に年月がたっているわけであります。したがいまして、たとえば第十八条にありますこの法律の業務目的等を考えてみましても、現在の農業の実態から見ますと、こういうものも含めまして、やはり抜本的な改正というものをしていかなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。これは、目的だけでありません。一番問題になるのは金利の問題であります。さらには、いろいろな、いま多様にわたっておりますそういう融資の問題とか、こういう農林漁業金融公庫法のすべてにわたりまして抜本改正をしていかなければならない時期に来ている。この前にも大臣に御質問申し上げましたけれども、そういう点を大臣としてはどのようにお考えになっておりますか、お聞かせいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/73
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074・中川一郎
○中川国務大臣 農業を取り巻く情勢は最近とみに厳しいものがございますので、先般も農業団体の皆さんと農業基本法そのものから一回勉強してみようじゃないかという話もいたしておるぐらい、十分検討しなければならない。その中における金融、わけても公庫資金というのは、今日まで相当それなりの政策効果を上げてまいりました。しかし、まだこれで十分であるかどうか、公庫資金のみならず、近代化資金等、金融政策のあり方については十分検討して、今日の事態あるいはこれからの農業に対処するにはいかにあるべきか、十分に検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/74
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075・神田厚
○神田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/75
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076・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 津川武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/76
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077・津川武一
○津川委員 時間がきわめて逼迫しているので、全部一度に質問しますので、またまとめて答えていただきます。
一つは、今回の法改正で利率が引き下げられる別表二関係の資金は、改正案の施行の日から金利が下がり、他方、法改正が不要な別表一関係の資金の金利引き下げは五月一日から実施され、約一カ月のブランクができます。これは、片一方が不利な扱いを受けることになるのではないでしょうか。もっと早く改正案を提案すべきであったと思います。また、今後の問題として、運用を弾力的に運営して、すべての金融が金利引き下げが公平に行われるようにすべきと思うのですが、いかがでございますか。これが一つ。
二つは、公庫資金のほかに農業、漁業の近代化資金など、いわゆる制度資金は金利を引き下げられております。一方、農協の組合勘定などによる生活資金はどうなるのでございましょうか。全般的に金利が下がっているのだから、行政指導でここいらも金利を引き下げるべきだと思いますが、どうされますか。これが二点でございます。
第三点目。自作農維持資金の貸し付けについてですが、現場では、償還期間が二十年以内となっているが、ひどいのは七年、五年で切られてしまう。二十年借りられることはめったにない。これが一つの問題点です。第二番目は、貸付限度額が、最大の場合でこの間百五十万になっておりますが、これも限度を削られる。ひどいのになってくると三十万くらいにされてしまっている例が私どもの地元の農協で農民から聞かされております。三つ目は、一たん借りて、かなり返して、まだ残っているときにまた必要が出たときに、その枠に縛られて必要な分だけ借りられないという、したがって、許されている枠内全部にまで出すべきじゃないか、これが農民の実態でございます。この資金は今度は金利が下げられる。それでなくて、いままでもあれだけ喜ばれておるので、この点がぜひ改正すべき問題だと思います。
四つ目は、天災融資方による資金金利の引き下げでございます。天災資金の金利は、法律上は、被害程度に応じて年六・五%以内、五・五%以内、三・〇%以内となっており、昭和五十年か五十一年の通達で、これが六・二、五・二、三・二以内となっております。しかし、今度の引き下げでこの金利も当然引き下げるべきだと思いますが、どうでございますか。天災融資法の発動が実際必要になったとき、その時点で具体的に考えるとも言っておりますが、この法律改正のときにそのことを明確にしておく必要があると思うのでございます。この点いかがでございますか。
これと関連して、激甚災害援助法の第十五条、中小企業への融資でございますが、被害程度に応じて年六・二%、三・〇%という金利が法文上明確にされております。農林省の所管ではないが、これを今回法改正いたしません。したがって、災害関係融資制度全体の関係から見ても問題があると思いますし、これがこのまま残っておれば天災融資法の引き下げの妨げになることも考えられますので、中川さん、国務大臣としてこの点閣議で発言して、問題を整理した方がよろしいのじゃないかと思います。
以上四点についてお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/77
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078・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 私からお答えをいたしまして、基本的な問題につきましては大臣からお答えいただきたいと思いますが、まず第一点の、五月一日にすでに金利が下がっているのに、今回改正して、法律が施行されなければ金利が改正にならないのは不公平ではないかというお話でございますが、それはそういうことになりますけれども、私たちといたしましては、できる限り早く法律を御審議、通過さしていただきまして、最も早い機会にこれを施行して、できるだけ農家の方々にその期間的な利益を失わないように処理をしたいと思います。また、現に現在申請中のものでございましても、それは申請時点ではございませんで、貸し付け決定時点の金利が適用になるわけでございますから、その辺の扱いにつきましては、公庫とも相談しまして、十分配慮をいたしたいと思います。
それから生活資金の問題でございますが、これにつきましても、私たちかねてから農協に対しまして、農家の資金需要に十分応ずるようにということの指導をいたしておりますが、そういう面につきましてもさらに今後努力をいたしてまいりたいと思います。
それから自作農資金でございますが、私たちは、限度いっぱい借りていただいたらいいと思っておるわけです。ですから、農家の方々も、御遠慮なしに必要な資金は借りていただいたらいいと思うのですが、ただ、農家の方々の心情といたしまして、やはり借金は余りしたくないというお気持ちもございまして、できればこの程度にとどめたいというふうなお考えもあるかとも思うのですが、私たちといたしましては、農家の資金需要に応じて必要なものをお貸しするという、そういう方針で今後とも指導していきたいと思います。
それから天災資金でございますが、これは法律改正を要しませんので、この点につきましては私たちにおいて検討中でございます。なお、中小公庫の方は、これは法律改正を要しますので、この点については通産省の方で現在財政当局と折衝中であると聞き及んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/78
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079・中川一郎
○中川国務大臣 いま局長が答弁したとおりでございます。ただ、一つだけ申し上げますと、法定したものはやはりこういったことでなかなか弾力的にできない。特に、財政当局との折衝もあれば法制局との折衝もあれば、そこでわれわれとしては、やはりこういった金利などは余り法律で固定するよりは、むしろ弾力的にやった方がいいかなということを今回反省したような点も申し上げておく次第でございます。一生懸命やったつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/79
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080・津川武一
○津川委員 自創資金ですが、これは事の性格上農業委員会が扱うわけですね。ところが地元の農業委員会、役場、農協、この協議、いろんなことをされるときに、どうしても、こうやっても農林省にしかられる、県庁にしかられるというので、せっかく六十万申し込んだのが二十五万に減らされている例があるのです。現地ではどうにもならない、農林省の指導方針、これでしかられるからという、こういうことが間々出ているのです。したがって、必要である金額、その農家の実際の実力に応じた分はやはり限度拡大をしていくということを農林省から指針も出してもらわないと、いままで認可したものをしかられるんじゃやりきれないという、実際に現場にいてぶつかってくるとそういうことなんです。この点はやはりそういう指導をしていく必要があると思いますが、いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/80
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081・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 御趣旨のような線に沿って十分指導をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/81
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082・津川武一
○津川委員 もう一つ天災融資法の資金でございますが、使途がきわめて明確で、事務的に明確で、ひどいのはやられた分の証明書を持ってこい、領収証を持ってこいというようなかっこうで天災融資法の借りが思うようにいかない。そこで、実際に災害に遭ったとき農民は、天災融資法にいかないで自創資金にいっているというわけなんです。この点での天災融資法を本当に農民にするために、かなり思い切った運営が必要かと思うのでございますか、この点はいかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/82
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083・今村宣夫
○今村(宣)政府委員 特別被害農林漁業者であることをだれが認定するかという問題がございまして、これはやはり市町村長が認定いただくということが一番適当ではないかという扱いにいたしておるわけでございます。その認定は、私ばそう厳しいことを言っていないんじゃないかと思いますが、もしそういうことであれば、適正なる認定を行うように十分指導いたしたいと思います。
それから天災資金のいろいろの条件の改善その他につきましては、逐年努力をいたしてきておるところでございますが、状況の変化も十分踏まえまして、今後検討いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/83
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084・津川武一
○津川委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/84
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085・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/85
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086・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/86
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087・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)
なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/87
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088・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/88
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089・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時二十二分休憩
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午後二時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/89
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090・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
農産種苗法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
本案について参考人から意見を聴取することといたします。
本日御出席の参考人は、元植物新品種保護制度検討会会長代理加賀山国雄君、全国農業協同組合中央会農畜産部長小口芳昭君、社団法人日本種苗協会専務理事榎本暢夫君、個人育種者倉方英藏君、以上の四名の方々であります。
この際、参考人各位に申し上げます。
参考人各位には、御多忙中にもかかわらず、委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、参考人のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。
なお議事の都合上、まず、御意見をお一人十五分、加賀山参考人、小口参考人、榎本参考人、倉方参考人の順序でお述べをいただき、その後、委員から質疑がございますので、これにお答えをいただくことにいたしたいと存じます。
それでは、加賀山参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/90
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091・加賀山国雄
○加賀山参考人 私は、ただいま御紹介いただきました加賀山でございます。
昭和五十一年度でございましたか、農林省に植物新品種保護制度検討会が開かれまして、農林省の方から委員になれというお話でございましたので、私、みずからは育種事業に従事したこともございませんし、あるいはこういった制度的な問題についての知識と申しますか経験もないわけでございますが、ただ、農林省におきまして、長く作物関係の行政あるいは試験研究の管理面の行政等も担当してまいったということで、皆様から自由な立場で発言をしてくれという、そういうお話でございましたので、委員をお受けいたすことにしたわけでございます。
それで、本検討会は、元農林事務次官をなさっておりました中野和仁さんが会長でございまして、私が会長代理ということで、技術的な問題についていろいろと補佐と申しますか御助言を申し上げることがあればするという、そういう立場でございます。本日は、何か中野会長が御都合が悪いということで、私に出てかわってやってくれ、そういうお話でございましたので参上いたした次第でございます。
検討会は、たしか前後七回ぐらいの開催をいたしたように記憶いたしております。五十一年度で一応検討会を終わりまして——終わったというわけではございません、一応の問題点の検討をいたしまして、その都度農林省御当局からいろいろと要綱的な素案的なものの御提示がございまして、それに関して私と学識経験者あるいは農業団体、種苗関係の団体の方等々がいろいろと活発に御意見をお交わしになったわけでございますが、その後約一年間というのは、政府部内のいろいろな御調整もあったように伺っております。そういうようなことから約一年間検討会そのものが開かれなかったわけでありますけれども、その後だんだんと案が煮詰まってきたようでございまして、五十三年に入りまして、最終的な原案と申しますか、こういうことでいきたいんだというそういうふうなお話が、懇談会という形式で開かれまして、農林省の方から提示がございました。それは大体われわれ検討会のメンバーといたしましては了承し得る原案であったものでございますから、そういうことで法律案になって出てきた、そういうことであろうと考えております。
それで、これがこれまでの大体の経過でございますけれども、私の立場と申しますか、技術的な立場から申しまして、今回の農産種苗法の改正というのがどのように必要であるのか、ぜひやってもらいたいなと思っている一人でございましたので、そういう意味で、私の私見を少し交えましてお話を申し上げてみたい、こう思います。
御承知のように、私自身育種事業に携わった者ではございませんけれども、育種関係の行政面の仕事というのをいろいろ一貫してやってまいりましたし、また、試験研究機関の管理ということでもかなり努力をさしていただいたというような関係もございまして、育種関係の方たちが、非常にじみな仕事でございまして、非常にじみな仕事によく耐えて仕事をなさっているわけでございます。御承知のように、一つの品種をつくるに至りますまでに約十年あるいはそれ以上の年月を必要とするわけでありますが、その間継続的に、精神的に、体力的にも張り詰めて仕事を進めていくというそういう仕事でありますので、こういった育種の人たちに対して、もう少し何か保護と申しますか、そういったような関係の措置がとられなければなということは、私などは常々考えておった一人でございます。
それからもう一つは、最近は種苗関係の方の国際交流と申しますか、いろいろ国際関係の問題が出てまいりまして、やはりそういうことになりますと、われわれの日本においてこういった種苗関係のしっかりした法律なりそういう制度がございませんと、相手国にそういったものがある場合にはなかなか協力がしにくい。そのために、場合によっては、非常にいいものであっても日本には入ってこない、そういうふうな問題もございますし、いろいろそういった国際関係の問題もございまして、ぜひこういった育種に関してはっきりした制度的なものをつくり上げる必要がある、そういった問題があったわけであります。これは御承知のように、国際条約もございまして、これ等に加入するためには、やはりそれ相応の国内体制の整備、そういった問題が必然的にあったわけでございます。
それからもう一つ、育種関係のそういった技術的な面から申しまして、何と申しましても農業生産の増強という立場でとりますと、あるいは品質のいい農産物ということになりますと、やはり品種というのが決定的な要素になってまいるというふうに私どもは経験から感じておりまして、そのために育種に携わる方々、あるいは試験研究その他もそういうことでだんだんと非常に奥の深い研究に入っていっているわけでございますが、特に私が懸念いたしておりますのは、最近は遺伝子と申しますか、それが国際的に散逸をいたしましてなかなかまとまらない。そういうことで、最近は国際的にはジーンバンクというような言葉を使っておりますが、いずれにしろまとめて管理するようなものをつくろうという意見もあるようでございまして、やはりこういった制度を通じて大事な形質を守っていくということは非常に大事だと私も考えておりまして、直接的なあれではございませんけれども、派生的にこのような重要な役割りも果たし得るのではないか、かように考えて、今回の農産種苗法の改正というのには非常に意義があると私は感じておるわけでございます。
少し内容にわたりましていろいろと私見を申し上げてみたいのでございますけれども、現在の農産種苗法でございましても、名称登録ということでは育成者が保護されているというような感じがいたしておりますけれども、何かそこのところが十分に意を尽くせないようなところもございまして、やはり品種登録、そういった形でもって物事が進むべきじゃないか、そういう感じがいたしております。今回の法律改正でそういったふうに動いているようでございますが、非常に結構なことだろう、こう思っております。こういった法律を考える場合に、この法律を非常に権利的な法律というふうに割り切って考えるという考え方もございますけれども、やはり具体的な農業者の生産ということを考え、現行行われておりますいろいろな種苗の流通等を考えますと、必ずしもそういったものに余り偏るということは問題があるのじゃないか、そういうことで、恐らく、植物特許的な考え方ではなくて、農産種苗法の延長線上で物を考えるというのは非常に自然な考え方じゃなかったのかというふうに私は感じておる次第でございます。
それから今回の農産種苗法の改正の中では、要するに、植物の均一性と申しますか安定性と申しますか、均一性というのは同じ世代の均一性ということでありますし、安定性というのは親子の関係で安定している、そういうような関係でございますが、そういったこと、あるいは区別性と申しますかほかと区別ができる、そういったような特徴でございますが、そういったことが法律の上では今回は均一性とか安定性というのは類似性という言葉になっておるように拝見するわけでございますけれども、これが非常に重要なことでございます。
それからもう一つ議論になりましたのは優秀性という問題でございまして、現行の農産種苗法でございますと優秀という言葉が入っておりますけれども、優秀というのは奨励的な意味でございまして、判断基準をどうつくるかということについてはいろいろ問題もございますので、今回のあれからは優秀性ということは外れているかと存じます。
法の内容なり保護の期間なり審査の方法等につきましては、検討会でいろいろと農林省から素案について議論をいたしました線で大体まとめられているように感じております。
先ほどちょっと申し上げましたけれども、要するに、非常に権利法的なものだというふうな考え方が一時あったわけでありますけれども、これは現場の農業生産なり現在の農業面における種子の流通ということを考えますとどうももう一つなじまない。でございますので、今回の法律では、それを品種を登録することによって、その反射的効果として登録者は保護される、そういうふうな考え方で法律がまとめられておるのじゃなかろうか、こういった意味では大体現在の農産種苗法の線上で考え方が展開をしておるというふうに理解していいと思います。
このような一年間の行政庁内の御検討なり関係各省庁とのいろいろ御折衝の中で、こういったふうな考え方にある意味では移ってきたということで申し上げていいと思いますけれども、いろいろ大変な御苦労があったことを私は仄聞いたしております。これによって育成者の保護に欠けることは全くない、このような形で保護されていくことはできる、私はこのように考えておるわけでございます。当然、侵害者と申しますか、侵害者に対する差しとめ請求であるとか損害賠償であるとか等々、そのような育成者の保護を図るようなことは十分に法律に織り込んであるように拝見いたしておるわけであります。
私もこういった問題につきましては法的な専門家でもございませんので、余り詳しい問題に立ち至りましてお話し申し上げる力を持っておりませんのでこのくらいで御勘弁をいただきたいわけでありますが、各種の法制がございますが、そういったものが入り組んだ中で、われわれが考えているような、育成者を保護し、かつわが国の農業生産が伸長する、そのためには、こういったかなり現実的な対応をするのが得策であるという農林省側の御判断は妥当であるというふうに私は考えておるわけであります。
それからもう一つは、よく議論になるわけでございますけれども、育成者をどう保護するかという問題がございます。もちろん、先ほど申し上げましたような侵害者に対する差しとめであるとか損害賠償であるとかそういったふうな法的な処置もございますけれども、もう一つは、よく特許法との関係等でいろいろ議論になります実際に育成した者はどういうふうに扱われるか、あるいは報いられるか、こういうふうな話でございますけれども、これにつきましては、いろいろな現行の農産種苗法の線上なり特許法等で考えております職務発明の線上なり著作権の保護という立場、いろいろそのやり方が違うわけでありますけれども、いろいろ御議論があったことと思います。またわれわれの検討会でもかなり議論のあったところであります。要するに、現在、これからやろうとする方向は職務発明の方式と申しますか特許法に準ずるような方式をとっていったらどうか、そういったようなことに私は理解いたしておりますが、そういうことで、現在の国立なり公立の研究機関等力で行われておりますものにつきましても、こうことだけに関しましてもいろいろと問題があるわけであります。しかし、こういうことによって現在の育種組織なり国あるいは公立の研究機関の育種の仕事がおかしなかっこうになってしまうということは、私は全く変わりはない、育種を現実に担当しております方たちの考え方というのも常日ごろいろいろ伺っておるわけでありますけれども、そういうことでやっていけるのではなかろうか、私はそういうふうに考えておるわけであります。今後いろいろ育種をやっておる者につきましては、自分の費やしました精力と期間、そういったものに対して十分な手当てがされるべきである、そういう意識も若い方の間にだんだんと出てくるかもしれませんが、大きな組織として育種をするという方向に全体が動いておりますので、それは現行と大きな変化が起こるというようなこともそれほど心配することはないだろう、私はこう考えております。
その他出願上の手続であるとか等々いろいろ細かく法定されているわけでございますけれども、私も、先ほど申し上げましたように、細かいことにつきまして、手続上の問題等には余り明るくございません。ただ、今後、当初に申し上げましたように、日本の農業生産を増強する、ただ量だけでなしに質的にも改善をするというためには品種というのが決定的な要素であるということ、それに本当に献身的に努力をしている方々を、これは官公民を問わず、やはり国を挙げてバックアップをしていく、そういうことにつきましては、ぜひこの際に皆様の御協力を得まして、この法律が今国会で通りますように切望をいたしておるものでございます。
大変不十分なお話でございましたけれども、私の検討会における印象と、若干私見も交えたわけでございますが、申し述べた次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/91
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092・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 どうもありがとうございました。
次に、小口参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/92
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093・小口芳昭
○小口参考人 全国農協中央会の小口であります。
委員長を初め先生方には、常日ごろ農政問題につきまして格別の御配慮を賜り、また推進をいただいているわけでありますが、衷心より感謝申し上げるとともに、本日は、農業生産にとって決定的なあるいはきわめて重要な本案件について、私どもの意見をお聞きいただく機会を与えていただきまして、重ねてお礼を申し上げます。
なお、本来この種の意見開陳は、本会役員が参って述べるのが至当だとは存じますが、本日、さきに亡くなりました前の全中会長宮脇朝男氏の全中葬がとり行われておりますので、私より申し上げることにつき御了承をいただきたい、このように考えるわけであります。
それでは、本日の案件について、主として植物新品種の保護にかかわる点を中心に意見を述べさせていただきます。
まず最初に、私ども農協の立場を申し上げたいと存じます。
農業者にとって種の問題は基本的なものでありますし、その生産の基礎をなすものでありますので、優良な種苗が開発育成されること、かつ安心して優良な種が確保できることを何よりも重要な課題としているわけであります。このような観点から、後ほど申し上げるような植物新品種にかかわる問題に組織的に対応してまいったわけであります。そして結論的に本案件についての考え方を述べますと、基本的には本法案がこの国会で成立していただきたいという気持ちを強く持っているわけであります。しかしながら、本案件について、その一部の問題については国会で十分解明をしていただきたい点や、必要な改善について十分御検討いただきたいという点がございますので、以下、このことを取り上げまして意見を述べてまいりたいと考えます。
まず、この問題に当初組織として取り組んだのは、植物新品種の特許法適用について本会が対応したいという経過がありますので、そのことを、後で関連をいたしますので述べてまいりたいと思います。
昭和五十年十一月に、特許庁は、植物新品種に関する審査基準を作成いたしまして、植物特許を積極的に認めていく旨の方針を打ち出して、これを新聞等を通じて報道されたわけであります。このことについて、本会は、系統内部の意向等を受けて十分慎重に検討をいたしたわけでありますが、次のような三つの問題があるという立場に立ちまして、直ちに政府に対しまして、特許法を植物新品種に適用するのは妥当ではないのではないかという立場で要請を行った次第であります。
その問題点と申しますのは、新品種の育成者に独占排他的な特許権を付与するということになりますと、第一に、農家やあるいは農協がかなり広範に行っております自家採種あるいは共同採種といったものに特許権が及ぶということになって、それに対する手続なり料金の納めなりあるいは手続をせずやっておった者に対しての事故が起こるなどの問題について心配をいたしました。
第二の問題は、特許法では発明にかかわる物の生産、販売の行為に及ぶということでありますので、新品種たる種苗はもとより、その生産物の販売にまで及ぶということになりまして、これがやはり広範にあるいは各地に、多数の農家が取り組み、また各流通段階があるということを前提に考えますと、農産物の生産なり流通を混乱させるのではなかろうかという心配が第二にございました。
第三点は、主要食糧なり国民生活にきわめて重要な野菜など公共性の強い農作物に特許権が及ぶというようなことになりますと、なかなかこれがまた社会的にあるいは経済的に大きな影響を与えるのではなかろうかという立場に立って、先ほど申し上げたようなことで妥当ではないとし、政府に適用をすべきではないと要請をいたしたわけであります。
そして一方では、植物の特性なりあるいは農政展開の視点に立って、いい種ができ、かついい種が安全に農家に配られるという立場に立っての制度化について別途検討したらどうだろうかということを要請してきた経過がございます。
その後農協といたしましては、農林省が設置いたしました植物新品種保護制度検討会に参画いたしまして、先ほどの基本的な立場に立って意見を述べてまいったわけであります。
このような経過を踏まえて今日に至っているわけでありますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げたとおり、基本的には本案の成立を願っているという立場であります。
次に、先ほど申したとおり、国会審議において、法案の審議の中で解明をしていただきたい点や必要な改善について御検討いただきたいということを申し上げたわけでありますが、その要点について申し上げてまいりたいと思います。
まず、解明していただきたい事項といたしまして、四つのことを申し上げてまいりたいと考えます。
その一は、近代的な農業発展の基盤として、農業技術の改良発達、特に品種改良の果たした役割りがきわめて大きいということはここで私が申し上げるまでもないわけであります。この場合、国なり県なりの農事試験研究機関が開発してきた成果は高く評価されなければならないというふうに考えます。ところで、本制度が制定される場合に、政府は品種の改良なり普及というものを、この法律に基づいて民間育種に重点を移すとか、あるいは安易に外国品種に依存するといったような姿勢をとることについて恐れているわけであります。言ってみれば、国は以前にも増して、やはり農業なりあるいは農業の改良のために、品種改良、普及に制度的にもあるいは予算的にも相当の努力をしていただきたい、まあ総括的な意見でありますが、本制度の制定にかかわる問題として冒頭申し上げておきたいと考えます。
第二の問題は、新品種の登録及び登録された品種を業として生産し販売する場合に、登録者から許諾を受けて行うということに制度はなっているようでありますが、その場合、登録料が支払われ許諾料が支払われるということになるわけであります。私どもが考えるのは、その登録料なりあるいは許諾料を支払うことにより、種苗価格が不当につり上げられたり、その結果生産物価格へはね返ってくるということがないかどうかということについて、生産者の立場から心配をいたしたわけであります。重要な点でございますので、私どもは、農林省当局にしつこく質問をいたし、まとめてまいったわけであります。
その結果、現在の種苗価格にも技術開発費というのが当然含まれているんだということで、今度の登録あるいは許諾という行為によって、そう大幅にあるいは不当につり上げられることはないのではないかというのが一つ。
それから、生産費の中で種苗費の占める比重というのが、小麦で四・六%とかあるいはキュウリで一%ないし二・三%であるというように、各作目別の生産費の中に占める種苗費の比重というのはいずれもこの水準であるということであります。
第三点は、極端に不当につり上げられた場合には、生産者側といたしまして当然品種の選択が行われるわけでありますし、同じ作物について一つしか品種がないということは、これは全く考えられないわけでありますので、言ってみれば、代替性があるということで大きな影響はあるまいと判断をいたしておりますけれども、農家にとってはやはり強い関心のある点でありますから、本委員会でも十分その点について解明をしていただきたいということでございます。
第三の問題は、国、地方公共団体における公共育種と登録の関係であります。
このことは、主要食糧の品種改良が主として国、県で行われてまいっておりますし、いままでは公開の原則に基づいて、国及び地方公共団体が開発した優良な品種を生産者が利用し、その改良のメリットを農業者は受け取っていたわけであります。私どもは、今後もそうあるべきだと考えるわけであります。
本制度のかかわりで見てみますと、公共の利益のため必要とする場合には、裁定の条項がございます。育種者がこれを登録して、そして余り広めないというような場合や、あるいは公共の利益のためにそれは広める必要があるという場合には裁定の条項がございます。この点については、新品種の普及によって農業政策上のかかわりが非常にあると判断された場合、たとえば病害虫に強い品種だとか、あるいは耐冷性の強い品種であるとか、あるいは増収型の品種であるとか、ともあれ植物界における生命現象でありましょうし、今後とも技術は日進月歩発展していくものと考えます。したがって、そういう条項があり、農業政策上あるいは公共の利益のためにこの品種は普及する必要があるという場合には、積極的に国の施策のよろしきを得て、冒頭申し上げた公開の原則に近い形で農業者がその改良メリットが得られるような措置をぜひ考えていただきたいと希望するわけであります。そのことは条文の中に整理されているように考えますが、ひとつ本委員会でも十分御吟味をいただき、解明していただきたいというふうに願っているわけであります。
第四は、新品種の育種なりあるいは枝変わりの発見など、従来、登録をするような関係について見てみますと、その半分は個人が行っておるということであります。要すれば、品種の育種なりあるいは枝変わりの発見というのは、半分は個人が行われているという実績がございます。熱心な農業者あるいは篤農家といった方々が、新しい品種を発見するとかあるいは選抜をするとかということで、いままで品種の改良普及に役立ってきたものと考えます。したがって、これら執心な農家なりあるいは篤農家と言われる方々が盲に保護されるようにするためには、制度の趣旨の徹底や手続についての便宜の供与について十分配慮する必要があるのではないか、このように考えております。もしそれがおろそかになっておりますと、そういうことに強い関心を持っている人たちが、その改良された品種なり発見されたそういう枝変わりなどの品種について、取られてしまうというようなことがあるのではないかというふうに心配をいたしておりまして、普及所なり農協などの組織的な対応が必要ではなかろうかというふうに考え、親切な趣旨の徹底、手続の便宜供与といったようなことについてお考えおきいただきたい、このように考え、この点についても、制度のかかわりの問題として政府の態度を解明していただきたいと思っているわけであります。
次に、改善について本委員会で十分検討していただきたいと考えております二つの事項を申し述べてまいりたいと思います。
第一の問題は、法律の第五条の関係でありますが、この条項では、優良な種苗の生産、流通確保のための措置が定められております。これは、種苗生産者の生産行程上のミスなどによって品種の特性どおりの結実が得られなかったなどの例に対応するものと解しております。これは、すんなりしたキュウリができるんだ、あるいはいつごろキュウリが結実するんだということであったが、たまたままいてみたらそのような結果が得られなかったという場合の監督の措置であろうというふうに考えます。法律ではこれを、「種苗業者が遵守することが望ましい基準を定め、これを公表する」というふうに案文ではなっております。種苗業者が遵守することが望ましい基準を定め、これを公表することとしております。そして、それ以上ではないということであります。この点について、飼料の安全確保に関する法律などなど多くの法律に見られるように、遵守すべき基準を行政が定めまして、これを守らせる措置をとることによって初めて目的が達せられるものと考え、改善すべき点だと思っているところであります。言ってみれば、指示、公表の制度を導入してはいかがであろうかというのが第一の点であります。
第二は、現行法では種苗の検査についての条項があるのでありますが、今度の改正法案ではその点が削除されております。農林省の説明では、お金を出して検査すべき物品を集取するんだということになっているので、お金を出して検査すべき物品を買ってくるなら法律がなくとも実行上は支障はないというふうに見ているようでありますが、農業生産のもとである種苗について安心して使える種を確保するために、この検査の根拠条項を失うことは、長期的には検査体制の弱体化をもたらす原因になるのではないかというふうに危惧しております。したがって、長期的な視点に立つならば、やはり農産種苗法の一環といたしまして、この検査の条項を復活させてはどうであろうか。言ってみれば、現行法にあって新法にないということになっておるわけですが、それをやはり、現行法どおり新しい法律にも導入してはいかがかという考え方を持つものであります。
以上、改善についての二つの点を申し述べた次第であります。
これによって、私は要点のみ申し上げましたけれども、本法案についての意見を終わらしていただきます。十分御検討いただければ幸いであります。
終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/93
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094・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 どうもありがとうございました。
次に、榎本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/94
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095・榎本暢夫
○榎本参考人 ただいま御紹介いただきました榎本でございます。
まずもって御礼申し上げます。と申しますのは、本日この委員会に私ども種苗業者、この新品種保護制度というものを一日も早く制定していただきたいと待ち望んでいた私どもをお呼びいただきまして、意見を述べさせていただく機会を与えてくださいましたことに厚く御礼申し上げます。
私は、ただいま社団法人日本種苗協会という公益法人の専務理事を仰せつかっております。しかし私はいわゆる事務屋ではございません。私の家は現在の場所で約六十数年、本家時代から見ますと百年以上にわたる種屋でございます。その種屋で生まれ種屋で育った男が、私どもの業者の団体が昭和四十八年の九月に前の任意団体を発展的に解散し、社団法人化しようというときに、皆様方から請われて、そのとき四十歳になるかならないかの私でございましたが、種屋の皆様のお役に立つということであったら、私でよければやりましょうということでやった専務理事でございます。そういうことでございますので、本当の種屋でやってきました関係で、いまのような新品種の育種、そういうようなこと、学問的なことにつきましては、一切存じないと言うと大変変な言い方でございますが、そういうことで、学問的、技術的分野にははなはだ不明な点がございますので、したいと思います。この点をあらかじめ御了承いただきたいと思います。
そういうことで、私どもの団体の設立の経緯と申しますのは、戦争中と申しますか、戦時中から戦後にかけまして種苗が統制の時代がございました。その当時は統制機関、統制組合がございまして、終戦後その統制機関が廃止され、全国の種苗業者が集まりまして、これは生産業者を主体にいたしました日本生産業会という会をこしらえておりました。それが昭和二十七年に全国種苗業連合会という現在の日種協——日種協と申しますのは社団法人日本種苗協会の略称でございますが、その日種協の前身である全国種苗業連合会が発足いたしました。これは、いままでの生産業者を主体にした団体から、さらにいわゆる小売屋さんまで包含した団体でございます。それは任意団体でございまして、昭和二十七年から昭和四十八年九月まで約二十年にわたりましてその団体が存続しておったわけですが、種苗という、いわゆる園芸農作物の生産の根源をなす種を扱う私どもが、これからは農林省の御指導、御監督をいただき、公益に広く役立とうという考えをもちまして公益法人化に踏み切ったわけでございます。
そういうことで、現在は会員数が約二千四百、本年もまだ百から二百の加入を見込んでおりますが、そういう団体でございまして、大は生産、卸を営む者から、小は町の小売屋さんまで含まれておる団体でございます。
その事業の中では、まず優良種苗の安定的供給の確保ということを主眼にし、それにつきましてはいろいろ国公の試験研究機関とタイアップし、いろいろ試験研究を行ったり、生産、流通をスムーズにするための研究討議を行ったり、その成果の普及をしたりということをやっております。
まず、いわゆる種屋でございますが、その種屋というのは非常に苦心しております。その苦労というのは並み大抵なことではございません。私は、ましたが、たとえば種をとるために大変な努力をいたします。その品質を維持するために、大体が十二月、冬至のころでございますが、あの一番目の短いさなかに、何反歩もあるような圃場の株を全部引き抜きまして、一個一個見ながら、その遺伝質、その原種の維持、そういうものに努めているというようなことでございます。というのは、まず採種の苦労、この採種の苦労はそういう最初の母体選抜というところから始まり、それから採種圃場の確保、安全確保。その確保と申しますのは、種が非常に安いです。そういうことですので、その安い種をより安く供給するためにはどうしてもへんぴな土地、と言うとおかしいですが、見つけなければなりません。ところが、このごろだんだん開発が進みまして、そういう圃場を確保するための苦労も並み大抵ではございません。と申しますのは、もしも圃場が接近しておれば、他品種との交雑、そういうことが起こりまして、先ほど小口参考人さんのおっしゃったように、間違った品種ができるおそれもあるということで、まず採種には、原種の確保、圃場の確保というような苦労がございます。それに引き続き、今度は、でき上がった種をその年だけには売れないときがあります。また、春まく種も秋にとるわけです。で、秋にとった種をまた秋にまくことがございます。それは翌秋にまくこともございます。そういうようなときには、種というのは御存じのとおり生き物でございます。その生き物の生命力を維持するために、常に温度の一定、常に湿度の一定、それも低い、そういうような倉庫に安全に確保、納入し、いつまでもいつまでも発芽率を保持していくというような、そういうめんどうな保管もございますし、また、先ほど申し上げたことと重複いたしますが、品質の維持ということについても十二分な注意を払わなければならないわけです。それをまた売らなければならないという苦労もございます。
また、一番大事といいますか、その育種という大事な仕事がございます。この育種は、これはこの際に釈迦に説法と申しますか、先生たちの前で大変おこがましい言い方でございますが、いま、いわゆるしゅんがなくなったと申されていると思います。昔でしたら、何月になったからカボチャが出てきた、これが出てきたから何月なんだなというようなしゅんがございました。いま一年じゅうキュウリ、ナス、トマト、そういうものが食べられる時代、またホウレンソウが一年じゅうある時代でございます。しかしこれは全部、いわゆる昔のキュウリであり、トマトであり、ナスであり、ホウレンソウではないのです。というのは、種が違っております。この種を違えたというのは、確かに農家の皆さんの栽培技術、これは一番大事でございます。それから、ビニールその他の農業資材、暖房に要する石油、そういうようなものも非常に大事でございます。しかし、その中で栽培されている作物のもとの種というのは昔の種と全然違うものなんです。昔の種をいまのような栽培技術であるいはそれ以上の栽培技術で栽培したとしても、絶対にいまのようなキュウリ、トマト、ナスはできないのです。その種は、私ども種苗業者が何十年という苦労を重ねて、ここで開発してきたものです。それがようやく日の目を見、ここで出てきたものなんです。
そこで、何十年もかかると申しますのは、こういうふうにすればこういうものができる、AかけるBはCができるというのは、皆様もう御存じの、メンデルの法則から始まりましてそういうものができるというのは理論的にわかっておるわけです。しかし、そのAなりBなりというます一番もとの素材を純系化するためには五年から十年、学問的には八世代交代、選抜淘汰を繰り返さなければそれが純系化されないと言われております。そこでまず八年かかるわけです。その次に、そこででき上がったAとBをかける仕事が三年から五年かかります。いろいろな組み合わせの方法がございます。それの最短の三年をとってもそこで十一年かかります。その次に、でき上がったCというものが果たして所期の目的のCであるかどうかということを、今度は検定といいますか、それにはまた三年から五年、その後初めて市場に売り出すわけです。そのような長い年月を積み重ね、海のものになるか山のものになるかわからないような品種をつくり上げるために、各種苗業者としましては農場に設備費その他人件費、そういうものを投入し、莫大な投資をし、それでいまのような品種をつくり上げたわけでございます。ただ単に種屋とおっしゃる向きもあるやに聞き及んでおりますが、新しい品種、いま売れている品種をつくり出すためには、このような長年月と莫大な費用がかかってでき上がった。そのために皆様方がいま一年じゅうキュウリが食べられ、トマトが食べられという時代になったということをひとつ御認識いただきたいと思います。
そのようなことは、採種、それから品質の管理、育種、すべて信用が第一でございまして、この信用がなければ種屋というものの商売は全然成り立ちません。私がやっておりました二十年間というときでも、先代、先々代の先から何代もの取引先にもかかわらず、私が顔を見たこともないようなお得意様がございました。毎年春、秋に手紙一本、電話一つで注文をいただき、また代金もいただく。そういうことで、顔も見たことないような、商売の上で不安と言えば不安かもしれませんが、信用ということを第一としておる種屋とすれば、そのような取引で十二分に成り立ったわけでございます。
というのは、私はそういうことで種の中で生まれて育っても、また故老にお聞きになってもおわかりいただけると思いますが、たとえば大根種一つを見ましても、この大根種が丸い大根になるのか長い大根になるのか、あるいは生えるのか生えないのか、そういうことはだれにもわかりません。これは榎本が長い大根だよと言って売りますから、向こう様は長い大根と信用して買うわけです。これは生えますよと言って売るので、向こうは大丈夫、信用してお使いになるわけです。
そのように、種屋というものはもう本当に信用だけの商売でございます。残念なことには、日本では種苗業者いわゆる種屋というのが認識されたのがまだまだ浅うございますが、欧米ではシードマン・イズ・ゼントルマン、種屋は紳士であるという言葉があるそうです。そのように、世界どこでも種屋というものは本当に信用が第一であるのだということを言われておるその業者の集まりが私どもの団体でございます。
そのようなくだらない前置きをいたしましたが、本日の大事な要点でございます新品種保護という制度につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもはこの話が出ましてからもう何年来一日千秋の思いで待ち望んでいた制度でございます。
これは先ほどのお話にもありましたように、まず一番のメリットは国際交流が容易になるということです。
その一点としましては、外国からの品種の導入が簡単になり、またわが国から輸出するときのいろいろなネックがございますが、そういうような困難も解消されるであろうと私どもは考えております。
その品種導入の一番具体的な例を端的に申し上げます。
レタスがございます。皆様は同じようにレタスを召し上がっていると思います。レタスの中で種が一番多く売られているのはグレートレーク三六六という種類でございます。気候、風土の関係でこめ採種は日本ではほとんどできないのです。それを主に供給しているのはアメリカでございます。しかし、そのアメリカではいま申し上げたグレートレーク三六六という種類のレタスは現在市場に流通しておりません。過去の古い品種です。新しい品種が幾らでもあるのです。私、寡聞にしてそれは知りませんが、味がいいのか、収量が多いのか、新品種ですから当然そういうことがあるのだろうと思います。しかし、日本にはその品種——それに近いような品種はいろいろな手づるで入っているやにも聞いておりますが、その主流をなすグレートレーク三六六というのは、日本が買ってくれるからあるいは日本に出せるからということで、アメリカの種苗業者はそれを採種しておるわけです。いい品種が来ないのです。
また、ポインセチアという花がございます。これは花と申しますか、クリスマスに使う先の方が真っ赤になる、このごろクリスマスにはもうなくてはならないようなはち物だと思います。あの種類が数年前タキイ種苗さんによって導入されました。これは例の向こうで言う植物新品種の保護といいますかパテントつきのものでした。当然これを販売するには一本について幾らの権利金を払い、また、それを増殖したりする際には当然権利金を払えというようなことがございました。ところが、日本にはそれを禁止する、守るような法律がございませんでした。そういうことで、先方さんは日本に置いておいたのでは黙ってどんどん増殖されてしまう、また商売にもならぬということで、返せと言われたのか、それまでできないのでタキイさんが自主的にお返しになったのか、その後その品種は日本には入ってこなくなってしまいました。現在、白っぽいポインセチア、ピンクのポインセチア、いろいろございますが、そのポインセチアというものはもっと真っ白であり、もっと真っ赤であり、またピンクもあり、またしまもある、いままでのポインセチアの観念をがらり変えるような新しい画期的な品種でしたが、それがとうとう日本には来ないで終わってしまったわけです。そういうような品種の導入の困難がいまございます。
また、輸出の面におきましては、ごく最近、オランダで、日本のある業者のタマネギが非常にいいのだということで売れているそうです。ところが、ECの基準に何か合致しないのだそうです。これはわが国から政府の保証か何かをつけないと、それがオランダの国内でスムーズに流通しないのだそうです。オランダの国内ばかりでなく、ヨーロッパ諸国ではオランダで生産されたそのタマネギを喜んで消費していたそうです。しかし、その種が行かなくなってしまいそうな気配なんです。こちらの業者に対して、あの種の親をそっくりよこしこちらで増殖させないかという話が来ましたが、これは私どもの業者とすれば当然断るでしょう。そういうことができなければそういう何かお墨つきを持ってこい、こういうことだそうです。それもECの規格外ということですが、UPOVという条約、それに加入すれば、何かあればそういう問題も解消するんではなかろうかという気もいたします。そのECあるいはOECD、UPOVの規定その他はまだ詳しく研究しておりませんのでその辺の関係はわかりませんですが、同じヨーロッパの諸国ですので、そういう点では何かの解決方法があるのではないか、そういう輸出の困難も解消されるのではないかという気がいたします。
次に、同じ国際交流という中で、日本では立地条件の不適格、不適当ということでどうしても海外に種の生産を依存しなければならないものが多々ございます。たとえば、春まきのホウレンソウというのは日本では種がほとんどとれません。これは北欧諸国で生産しております。早まきの花野菜の種なんというのは台湾で生産されております。そういうふうに、海外において採種した方がいいものがあり、また、わかっておりながら、いまこの制度といいますか、守る保護法がございませんので、それを採種したいけれども、両親系統が散逸したりあるいは重要な遺伝子が流出したりする懸念がございましたので、そういうことができませんでした。この制度ができ、占有権が認められればそういうこともなくなってくると思います。
次に、育種の素材の導入が容易になるだろうと思います。いま公害ということがよく言われます。特に農薬の害ということもいろいろ問題になっているときでございます。しかし、耐虫性、虫が食わない、あるいは病気に強い、あるいは寒さに強い、暑さに強いというような品種を育成するための素材、先ほど申し上げましたAかけるBのA、Bに当たる部分のものは現在のところ日本国内ではほとんどあさり尽くして、その組み合わせの素材というものはほとんどないように聞いております。これは当然外国にはまだまだあると思います。あるはずです。そういうときに、その素材を導入したいのですが、日本に素材をそのままやったらまた何かつくられてしまう、増殖されてしまうということで、素材の導入が困難でございます。それが入ってくれば当然優秀な品種がつくり上げられ、それを確保し、供給するということで、農業に貢献することはもう火を見るよりも明らかなんですが、現在のところはそれができない。この制度が発足し、それが守られればできるであろう、こう思っております。
その次、現行農産種苗法にちょっと不備な点があるような気がいたします。現行の農産種苗法の一番欠点というのは、名称登録の制度が単に名称を保護するだけということでとどめられていると思われます。また、そうではないかと思います。そういうことですので、固定種のままであれば、当然、名称を変えて違う名前で売れば、同じ品種が売れるわけです。そういうことで、品目によっては必要以上に一代交配化が進みまして、したがいまして、採種するのにコストをいたずらに高騰させるということもございますし、また優良な固定種、これはよろしいよ、いいものだよという、名称登録の上で登録された品種が、名前を変えて売りたいために、育成者以外による再生産によって当初の優秀性を失い、無用な混乱を起こした例はいままで幾つか見られております。しかし、この制度ができ上がれば、安心して固定種の改良や育種が進められ、品種特性の維持も可能になり、育成者の利益や権利を擁護するばかりでなく、いわゆる利用者の利益にもつながってくるのではないかと思います。
そのように、この保護法、いわゆる新品種保護制度につきましては、私ども種苗業者としては、先ほど申し上げましたように、先生方のお力添え、御理解をいただきまして、一日も早くその窓口を開いて、発足させてほしい、こういう切なる願いでございます。
まだいろいろ申し上げたいこともございますが、時間も来ましたようなので、とりとめもなく申し上げましたが、何か御質問ございまして、私でわかることでしたら何なりとお答えを申し上げますので、そのときにまたお答え申し上げたいと思います。
失礼いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/95
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096・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 どうもありがとうございました。
次に、倉方参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/96
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097・倉方英藏
○倉方参考人 倉方英藏と申します。そしてまた、何かの御参考になると思いますが、私は明治三十九年生まれ、いま七十一歳を過ぎました。
こういうことも、育種者として、育種には大変長い時間がかかる。私が生涯を育種に費やしましてもまあ何種類か、これからまだ出るのもあるかもしれませんけれども、片手の指か、それに一つか二つ加えたくらいです。そんなことを言うと、私はわりあいにうまくいった方かもしれません。このために莫大な財産を蕩尽して非常に犠牲を払われた近代的な第一番の育種者といいますと、ブドウの川上善兵衛さんですか、この方なんか大変な財産を費やしまして、今日残っているのはペリーAぐらいのものです。その他、育種をやって必ず成功するとは限りません。これは一つの冒険でして、財を失い、家庭不和とかいろいろな家庭破綻というような悲劇ももたらされておりまして、非常に年月を要するのみならず、むずかしい仕事です。
そんなわけで、今度の農林省の植物保護法には育成者の権利というものが全く表現されていないのです。一生懸命になってつくって、それが報いられなくてだれがやりますか。もう日本の民間育種というのは全滅だろうと思うのです。それは試験場の育成もあるでしょう。ですけれども、数でしたら恐らく民間育種の方が多いのじゃないかと思います。それは国の試験場なり県の試験場なりでも、優秀な方がおって努力されて、いいものも出ましょう。ですけれども、民間育種が片方になかったら、私は育種の発達は全然ない——全然じゃないけれども半減以上するのじゃないかと思うのです。
そして、いま榎本さんが、今度の法律ができたら外国と対応できて、外国からの種苗の導入が楽だと言われますけれども、今日、保護法のこれによって、外国なんか、何だおまえたち、そんな権利がはっきりしないならだれがやるものかといっていいものをくれやしませんよ。これは火を見るよりも明らかなんです。
私としては、こういう権利がはっきりしないようなことでは、これからは、いま言いましたように、民間育種者が努力してやろうという気持ちはもうなくなって、ばかか気違いでもやらなくなると思います。私も一つのばかか気違いで、昭和八年に、当時黄色い桃のかん詰めなんか日本にはないから、ひとつやろうと思いまして、韓国へ渡りまして、そしてアメリカのタスカンとフィリップというような品種を導入したところか——向こうも日本より雨が少ないというような文献を見たものですから、向こうへ行って荒れ地を買いました。
ところが、向こうの土地は、昔、慶尚南道と言いますか、水成岩の岩盤でして、はなはだしいところは十センチも五センチも表土がない。その下はコンクリートのような岩盤です。それをつるはしで砕きます。そうすると、コンクリートと同じようですから、つるはしの焼きが甘かったら曲がってしまう。今度は、焼きが強過ぎるとぼきんと太いところで折れてしまいます。手は血だらけ。そういうようなことで、わが農地だ、大事な土地だということで一生懸命努力しました。それではやりきれませんから、今度はダイナマイトで爆砕なんかしまして、どんなに犠牲を払っても、愛すべき土地だというので努力して、表土がないからすぐ干ばつするようなところを、深くそうやって下の方まで根が生えるようにしましたから干ばつにも耐えるとかなんとかというようなことで、かん詰め桃をつくったりなんかしましたけれども、いまのように気候が適しませんから生産量も少ないし、片肉のものができたりなんかしまして、それから、これじゃいけないというので東洋系統の桃との交配なんか考えまして、ぼつぼついい品種ができました。
ところが、その間たびたび応召がありまして、うちにいることはほとんどない。たまにでも帰されたことがありまして、その間は夢中になってほとんど睡眠もとらないくらいに働きました。そして、終戦というようなことになりまして、いい品種もみんな置いて帰りまして、そのときにわずかに自分がちょっとの合間に交配した種がありましたから、それを持ってきたのがいまの倉方早生という品種で、二十七年ですか名称登録になりまして、今日も苗がたくさん売れておるらしいです。
ついこの間長野県へ行きまして「須坂地方を中心にちょっと歩きましたけれども、その辺の土地の人が言っています。苗屋へ行ったら桃の苗は倉方だけで、どうしておまえ倉方だけしか売らないんだ、ほかにないのかと言ったら、いやこれが売れますからもうどうしてもこれだけになっちゃっているんですというようなことだそうです。
それから、私は数年前にアルゼンチンへ行きました。私も若いときに、もしかしたらアマゾンへ行こうか、南米へ行こうかなんという野心もありまして、その後、向こうの研究なんかやりました同志がすでに南米のブラジルへ行ったりアルゼンチンへ行ったりしていまして、おまえ近ごろ一遍来ないかという誘いを受けたものですから、それならおれ行こうやというようなことで行きました。ところが、アルゼンチンは後進国ですから、アメリカあるいはヨーロッパから桃の品種なんかたくさん導入しております。行きましたところが、あなたの品種が一番もうかるんだ。そんなことで、もうかって、向こうは広いですからどんどん増殖されています。それで業者に、うんともうかるというから少しリベートをくれないかと言ったら、ノーノー、腹を抱えて笑ったことがあります。
そんなでして、特許権というような権利がちゃんと守られていなかったり、またアルゼンチンは植物保護法もないし、植物の特許制度もありませんからこれはいたし方ないのですけれども、たとえあったとしましても、日本で、堂々と外国へ行って権利を主張するというような場合に、確固たる特許なり何なりなければ、あいまいもことした法律でもって外国の人は対応すると思ったら大間違いだと言っているようです。ですから、いまの御意見のように、前の方がおっしゃったように、これでやすやすといい種が導入できる、交流ができるといったらこれは大間違いなのです。
そして、皆さんの前で私がこんなことを申し上げたらはなはだ申しわけないのですけれども、世界各国で飢えている人がたくさんいます。本当に気の毒な人がいます。アメリカで非常に優秀な小麦が作出されまして、これがためにアメリカでも非常に増産されるようになりましたし、メキシコなんかは輸入国が輸出国になったとか、インドなんかもそれがためにずいぶん食糧の増産に力あずかって大変役立っておるそうです。
それから、私は自分のために言うのじゃないのです。育種というのはこういうものだということをお話ししたいために言うのですけれども、去年ですか、私、山梨県の白根なんかに呼ばれて行きました。そうしたところが、あなたのところの倉方早生は十アール百万円くらい上がるんだと言う。ですけれども、それでもうかって、私のためにありがとうございましたなんて礼状くれる人もなければリベートをくれる人もありません。この倉方早生なんかも農林省の名称登録になって、その期間がたった五年なんです。それで五年のうちは、なかなか農民も疑り深い。それはそうですよ。いま榎本さんが、シードマン・イズ・ゼントルマンとかだそうですけれども、今日もそうです。カタログなんか見ましても——これは横道にそれるかどうか知りませんけれども、家庭向きのブドウを売っているのに、巨峰だとかオリンピア、これはやはり巨峰系統の非常に病気に弱い品種です。それからピオネ、そんなような品種を並べております。これは家庭でできやしませんよ。それから、これは以前あったことですが、タマネギが非常に高騰しまして欠乏しました。そのときに、何か聞くところによりますと、ある大手種苗会社の人がアメリカからタマネギの種をたくさん買って売ったらしいです。ところが、それが日本の風土に適さない品種で、それを買ってつくった人は大変な損害をこうむったらしいです。
そんなようなことで、なかなか今日においても——私はちょっと気がつくところは変ところに気がつくことがあるのです。そして、私も思いついたままに申し上げますけれども、ミカンなんか非常に困っておられます。ですけれども、湯河原か何かで大津四号という、これは民間育種の人が最近つくり上げたポンカンと温州との交配種で非常に甘いおいしいミカンだそうです。こんなのができまして、おいしいのができましたら、やはりおいしければ普通の人は需要が多いですから、ある程度の増産は、それは増産があっても需要が伴えば増産恐るべきじゃないと私は思います。
それから、韓国なんかでこのごろ——私も長いこと韓国にいました。十数年いまして、若いころの元気のときですから、それは猛烈に働きました。ですけれども、結局引き揚げるときはリュックサック一つで、家も土地もかん詰めの施設でも全部失って帰ったわけですけれども、そんな関係で使っておった人間なんかと連絡がいまでもあります。御承知のように、米なしデーとか、米を使って酒をつくることなおまかりならぬというようなことだったのですが、最近は米で酒をつくってもいいし、米なしデーなんかなくなったらしいです。それというのは、北海道でできましたユーカラという耐寒性の品種、それとフィリピンの品種、それからもう一つ何か知りませんけれども三者で、三者三元交配といいますか、それで育成した品種ができまして、非常に増産ができ、日本の単位面積の収量より多いらしいです。日本が世界の非常に増産できるところだなんて誇っておりましたけれども、韓国の方がこれにまさる収量を得ておるそうです。
米一つ考えましても、育種によってもたらされる効果というものは大変なもので、いま有名になっております巨峰というブドウも、大井上さんという人が苦労して片親のセンテニアルを輸入するのに、昔は飛行機なんかありませんから船で輸入する。それを、途中で枯れるものですからようやく三回目か何かに生きたのを入れることができまして、それで交配してつくりましたけれども、巨峰も、これはほかの方にも私申し上げたことがあるのですけれども、農林省に名称登録というのですか、申請しました。私もそれに片棒を担いだのです。この品種はいいと思いましたところが、当時、そんなものはだめだと言ってけられまして、けった後がこういうような今日の巨峰。品種なんか、いい悪い、わかりっこないのです。ですから、いい悪いなんということは絶対に言わないのです。そして、変わっておれば、どんな利用性があるか、どんな応用性ができるかわからないから、そういうものは一応いい悪いは言わないで、いやな人はそれを採用しなければいい、いい人だけが研究をする、そしていろいろな面に、加工も考えよう、生食も考えよう、その他何かにも考えようというような手段があっていいのではないかと私は思います。
ですから、今度ぜひお願いしたいことは、育成者が育成して、それが何かわけのわからないようになって、苗屋とかいろいろな者の食い物になる。私の倉方早生なんかも五年間名称登録になったって、いま申しましたように、ろくに買いやしませんよ。五年たったころ、ようやくあれいいんじゃないかというときは五年が切れちゃいました。ですから、全国の苗屋さんはこぞって生産します。そうしましたら、私ら、商売なんかできやしませんのです。土地もないし、何もない。生産すれば高い苗しか、よその人に頼んでつくってもらうより仕方ありません。ですから、商売なんかできませんで、育成しましたけれども、私には何も報いられるところはなかったのです。
それから、ネクタリンという毛のない桃ですが、私、これの早生をつくりました。これはいいんじゃないかとある程度まで自信があって農林省に名称登録を申請した。そうしたら、価値なしといって却下されました。これは農林省の方なんかにも、私、人によったら二度も三度も行っておるかもしれません。ですけれども、初めての方が多くいらっしゃると思いますから、これは価値なしと言われましたけれども、長野県なんかでは、生産的に非常に有利な品種だということで今日もずいぶん増殖されておられるようです。
そんなこんなで、再三申し上げますけれども、育成者が努力したかいがある、報いられるような制度がなければ、今後民間の人でもうこんなばかばかしい仕事を一か八か長年かかってやるばかはなくなります。
私はまたナシの品種を一つ持っております。これは甘、酸が非常にいいです。八月上旬に熟します。幸水というナシがあります。とってもやわらかくておいしいです。ですけれども、これは甘いだけです。果物というのは、なるべくだったら甘いほかに酸味も欲しいです。香りも欲しいです。私のナシは和ナシでありますけれども、香りもあります。すばらしいいい香りがあります。おいしいことでは日本一おいしいのではないかと思います。二十世紀がおいしいの何がおいしいのと言うけれども、そういうものとは比べ物になりません。
私もナシについては一番長い年月研究しております。いま申しましたように、私は昭和八年から今日まで五十年近く果樹一辺倒で、能がないからそれより仕方ありません。そして、こっちへ来ましてナシを育成しましたけれども、お金もないし、生活に困りますから、ふだんは酸素屋の運転手をやりまして、重い旧式の酸素ボンベを、七十キロあるか、もっとありましょうね、八十キロ、古いやつはそれを超すかもしれません、そんなものを担いで、普通の若い者は担げませんけれども、私は重労働に耐えておりましたから、そういうことをしながら、まだ日が明るければ畑へ行ってそれを見る、朝は朝で、仕事をする前に、暁に起きて畑へ行ってその手入れをするというようなことを長年続けましてでき上がったものですが、それを交配しましたのは昭和三十年ですから、今日まで二十何年たっています。慎重に慎重を重ねて——欠点もあります。ですから、その欠点をいかに克服しようかというようなことを考えまして、最近その欠点——欠点と申しますのは、成熟しますと少しほたりほたり落ちるのです。それでヒヨモンとかナフ酢とかいう、ナフタリン酢酸というのですか、あの薬をかけたらいいかもしれませんけれども、あれは今日製造禁止になっておりまして、除草剤の二・四Dを二十万倍ぐらいにしてかけますと、それがもう落ちません。それで非常に評判がいいですから、試作させた山形県の人、福島県の人、各地の人が、市場に売ることない、うちでは固定の問屋に出して売っておるんだ、だから市場で価格を左右されるとかなんとかということはなくて、非常に評判がいいからとても喜んでおると言っておりますが、私もその程度で、まだ苗を正式に販売しませんで、温存しまして、いつか私の生きているうちにと思っておりますけれども、私も血圧が高いし、ふだんは丈夫ですけれども、そういうようなことがありますからいつまで生きられるか、果たしてこれが日の目を見ることができるかどうかわかりません。
また、カキなんかにしましても、富有というのはおいしいですけれども、ちょっと甘みが足りません。もっとおいしい富有的なものができております。ビワも恐らく私のビワほどおいしいのはないでしょう。実も大きいです。ですけれども、まだ増殖には至っておりません。その他、私が考えておるものはありますけれども、果たしてこういうようなことで、はっきりした法律ができないので、私が生きているうちに役に立つかどうかな、やむを得なければそのまま私とともに消える運命にあるんじゃないかななどと考えております。
そして、残念に思いますことは、民間育種者で今日果樹をやっている人は十指に足りないのです。参議院議員の丸谷先生、この方は北海道のああいう恵まれない気候風土のところで野生ブドウをもとにしてブドウの品種改良をやられて十勝ワインの原料なんかになすっておられる。ですから、あの方は育種については非常によく御存じです。それから、福島の大石俊雄さん、この人はスモモを主に改良しております。それから、伊豆の井川さんという老人ですが、この人は私以上の年寄りで、見たところ体が何か大変弱っていらっしゃるんじゃないかなというあれで、その他、立川で沢登さんという方がまたブドウの育種をやっておられます。こういうようなことで、民間育種者というのは何名もいません。ですから、声としても力はありません。ですから、こういう機会を与えられまして私らの言うことを一応聞いていただくような機会を得たことは私は本当に喜びにたえません。私の申し上げたことがどうなるか、それはわかりません。これは次の問題としまして、いい機会を与えていただいたことを本当にこよなきいいチャンスだと思っております。
育種の問題は、単に日本国ばかりの問題ではないのです。世界人類の問題でもあるのです。ですから今日、日本だけでない、世界というようなことを考える、そういうような場合に、世界の人のために貢献するのも喜びです。もっともっと育種が本当にできるようないい制度が設けられなければ何にもならないのです。私の申し上げることは、育種者としてでなく、国を憂え、国策を憂える人から、私がきょうここに臨むに当たりまして、あなた、育成権というものはちゃんと言ってきなさいとこんこんと言われました。これは私みたいに育成の人間は、自分の利益につながります。ですから、勝手なことを言うように聞こえるかもしれませんけれども、そうでなくて、全然育成に関係しない人までが、おまえ、しっかりやってこいよ、いい制度が設けられるように、なるべくそういうようにお願いしてこいよということを、もう大ぜいの人から言われてきましたのです。自分は果たしてうまく言えるかな、どうかな、そう言いながら、自分としても、こういうりっぱな方々の前でお話するというのは、一介の農民ですから、ありません。したがって、支離滅裂、うんと申し上げたいことはあるのですが、お話も前後しまして、時間も超過したようですね。
どうもいろいろありがとうございました。そういうわけでございまして、こういう会場に出席できましたことを厚くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/97
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098・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 どうもありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/98
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099・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/99
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100・片岡清一
○片岡委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま承りました参考人各位からの御意見に対して、若干の御質問を申し上げたいと存じます。
参考人各位には、大変公私御多忙の折にもかかわりませずおいでいただきまして、非常に貴重な御意見を賜りましたことを衷心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。
まず最初に、加賀山参考人に対してお伺いしたいのでございますが、加賀山参考人は、農林省の新品種保護制度検討会で、会長代理として御活躍になられたのでございますが、非常にいろいろ御苦労をなさいましたのでございます。そういう立場からちょっとお伺い申し上げたいのですが、この法律は、種苗業者の方々にとっては大変結構なものだが、個人の育種者や一般農家の方のためには余り役立たないというようなことを聞くのであります。ことに、いま倉方参考人から、いろいろ御自分の御苦労をなさいましたことに対しまして、この法律は必ずしも報いられるところは多くないというような御意見も賜りましたのでありますが、こういう一般の考え方に対して、検討会でどういうふうな御議論があったか、中立的な立場からひとつ御意見を賜ればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/100
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101・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答えを申し上げます。
ただいまの先生の御質問でございますが、たとえば今度の法律によって益するのは種苗業者ではなかろうか、あるいはまた、実際の農家は余り利益を受けないのじゃないか、そういうお話でございましたが、作物の種類が大変多うございますので、いろいろ米麦等とかあるいは野菜あるいは花、いろいろケースが違うわけでありますけれども、われわれの検討会の中の考え方というのは、現在の農産種苗法というのは、先ほど倉方さんがおっしゃいましたように、名称登録ということで、その期間も五年というようなことでもございますし、今回の法律改正でそれが品種登録ということになり、私は、これによってかなり育成者のあれが保護されるとも思いますし、また、期間が果樹等については十八年と非常に長い期間になっておりますので、その期間というのはある意味では保障されるということであります。種苗業者をただ利するということにはならない。というのは、今度お持ちになる品種登録というものについては、それは有償で種苗業者に売る、あるいは許諾を与えるということも可能でございますので、それによって利益を十分にお受けになるというので、これまでのあれに比べれば、ずっと民間の育種者の方が保護をされる、そういうふうに理解いたしております。
また、農家の方々につきましても、先ほど小口参考人がちょっとおっしゃっておりましたけれども、許諾料なりそういった金が非常にかかるために、末端の種苗価格が上がるのじゃないか、こういうお話と関連いたしますが、先ほど小口参考人がおっしゃいましたように、必ずしも一つの品種に限るわけでございませんので、それには代替性もありますし、競争原理というものが働くのでございまして、また、種苗代というのは、先ほどちょっとおっしゃっておりましたように、全体の生産の中にどう占めるかということで、その種苗を使うことによって上がる経済性と申しますか、それとの相関連において出てくるのでございますから、たとえば、非常にばからしい高い種であれば、これはだれも採択をしないということになると私は思いますので、決してそういったような御心配のことはなかろうというふうにわれわれの検討会では判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/101
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102・片岡清一
○片岡委員 さらに、加賀山参考人にお伺いいたしたいのでございますが、加賀山さんは先ほどの御陳述で、農業生産の推進のためには品種というものが一番大事であるということを述べられたわけでございますが、この品種の改良ということを、私は素人で余りよくわかりませんが、前の農産種苗法では、優秀性というものが非常に高く評価されることになっておったのでございますが、今度の新しい改正のもとでは、この優秀性ということが省かれて、そして新規性というものだけが評価の基準になるわけでございます。こういう点について、何か品種改良の立場から、優秀性というものが除かれても、目的の上からいってさしたる支障がないかどうか。これらの点で、検討会でいろいろ御意見があったと思いますが、こういう点についても何か御意見を賜りたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/102
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103・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
いま先生のおっしゃいました優秀性というのは、これまでの考え方というのはかなり奨励的な意味を持っておったと思うのであります。ですから、品質が非常にいいなあとか、これは非常に味かいいなあとかいうふうなことでございまして、今度の農産種苗法の改正の中で考えておりますのは、要するに、均一性であるとか安定性であるとか、そういうふうな、やはり品種改良の基本的な物の考え方と申しますか、要するにそういう形質を備えているということに着目をいたしているわけでございまして、優秀性という問題は、これは行政上の措置においても可能なわけでございます。要するに、これはいいから、たとえば何々県はその奨励品種として取り上げるとか、そういうふうな措置で対応できるわけでございまして 必ずしも改正法の中で優秀性というのは取り上げる必要はないのではないか。それもやはりもう少ししぼって、品種ということに焦点を合わせて考えた方がいい、その方が法体系としては完成する、そういう考え方でございます。そういう議論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/103
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104・片岡清一
○片岡委員 さらに、この制度ができますと、何か種苗の価格が上がる、ひいては農産物の価格に何か影響してくるのではないかというようなことが素人として考えられるのでございますが、先ほど、そういうことは必ずしもないだろうということのようでございますが、これらの点についても十分検討会でお話し合いがあったことと思いますが、それらの問題についても何か御意見を賜ればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/104
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105・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
ただいま、末端価格、要するに種苗価格の問題に悪影響が出ないかというお話でございますが、それは先ほどの御質問にお答え申し上げましたとおりに、非常に直なことを申し上げますと、実際に農家の方が生産をやる場合に、自分の採算性に合わないような高い種苗であれば、逆に申しますと、これは流通しない。ただ、たとえば一つの作物の中でそれとは代替性のあるものも必ずあるわけでございまして、それにかわるものが全くないということもあり得ないわけでございますし、そういうことから考えまして、決して今回のあれが末端価格を引き上げるというふうなことはなかろうというのが検討会の中での議論でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/105
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106・片岡清一
○片岡委員 いまの点につきまして、農家サイドの代表でおられます小口参考人の御意見はどうでございましょうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/106
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107・小口芳昭
○小口参考人 先ほど述べましたことで、第一点はやはり農家の一番関心のある点でございますので、先生の御心配になるのも当然だというふうに思っております。その点は大変ぼくらも心配をして、いろいろな角度から検討したわけですが、いま加賀山参考人が述べられたような、あるいは先ほど申し上げたとおり、一つはやはり生産費の中に占める種苗費が現実に一%あるいは三%というような水準でありますし、現に流通している種価格の中にも技術開発費が含まれているのだというふうにも考えております。また、繰り返すようでありますが、種については品種の代替性といったようなものも考えられますので、私としては大きな影響はあるまい、こう判断をしているわけでありますけれども、そのほかの要因でどうなるだろうかという点、ぼくらの気がつかない点でもっと問題があるのかなという点をさらに心配をしながら、多角的に御検討いただければ幸いであるということが第一点です。
それからもう一つは、法律でいいますと、やはり裁定の条項といったようなところにかかわる問題だと思うのでありますが、ある種の品種を持っていて余り広めないというような場合、しかも、その品種を広く広めたいという一方の人がいる場合に、広めたいという人が登録者に対して申請をし、話が調わない場合には大臣が裁定するというところがございます。この種の運用を適切にしていただくということも含めて、種の確保あるいは種苗価格の安定ということをぜひやっていただきたいという願いをこの点では持っております。
したがって、委員会でもその点を含めて、両方に問題があるわけですから、御検討いただければ幸いであるというふうに考えております。
結論的に言えば、種苗価格そのものの値段が急に上がるかという点で言えば、そう大きく上がらないのではないかというふうに私どもは判断いたしておりますが、農家の心配は、それはそれとして別にあるということを申し添えておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/107
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108・片岡清一
○片岡委員 なお、小口参考人にお伺いしたいのでございますが、育種者の保護を図りまして新しい品種が大いに育成されるということは、日本農業の発展のために大変いいことは言うまでもないのでありますけれども、育種者を保護する結果、これを使用する農家に不自由な事態が生ずることがないか。まあ値段の問題等も関連するかと思いますが、こういう点で何か農家の方々が不自由に思われるような感じがいたすのであります。そういう心配がこの制度にあるかないか、ちょっと御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/108
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109・小口芳昭
○小口参考人 その点では、何よりもりっぱないい種が開発、育成されるということは農業のためにいいことでありますし、経営にとっても望ましいことで、期待しているわけであります。また、先ほど申されたとおり、安心して種が確保できるということが何よりも重要で、そういった意味では信用のかたまりみたいな種をわれわれは安心して確保していきたいというのが基本だと思います。
そのような視点から考えますと、今度の法の制度の運用の中でそう大きく問題になる点はないのではないかというふうに考えましたが、お答え申し上げるとすれば、先ほどの改善について御検討を煩わしたいという二点がございます。
その第一点は、第五条かかわりのものでありますけれども、今度の改正案では、望ましい基準を公表するというふうに書いてありまして、それ以上ではないということであります。遵守すべき基準を公表し、これを守らせる、言ってみれば、指示、公表の制度といったようなことが一方にあることが、農家の安心を制度的に担保することになるのではないかというのが第一点。
それから、第二の問題は、現行第四条かかわりで検査の条項があるのでございますけれども、改正法案ではそれが抜けている。その抜けている理由は、先ほど申したとおり、農林省からはそのように聞いているわけでありますが、やはり長期的に種の安全、あるいは生産者側から見れば、安心して信用ある種を確保するという視点からいたしますと、検査体制を整備するための根拠となるべき法文が今度の新しい改正で脱落するということは十分理解ができない点もございますし、希望としてはぜひそれを復活なさってはいかがであろうかという強い希望を持っております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/109
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110・片岡清一
○片岡委員 余り時間がありませんので、榎本参考人にちょっとお伺いいたしたいのですが、品種登録制度ができますと、非常に育種体制が整備されておる大手の業者にとってはいいけれども、ほかにまだ中小育種業者がいられる、そういう方たちにとっては大変煩瑣で困るのじゃないか。煩瑣といいますか、影響が悪く作用するのではないかというふうに思われて、大手と中小の方々で差ができるのじゃないかというふうに思うのでありますが 榎本参考人はそれに対してどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/110
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111・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
先ほどもちょっと触れましたように、いままでの制度なりですと、どうしても大手のそういうことがあったかもしれません。また、できやすかったです。しかし、今度は完全に育成者を保護するということですので、逆に、いままで一代交配化していたずらにコストを上げる、そういうことで守っていたという育種育成の機関なり設備の整った大手よりも、固定種を育成し、登録したという人の方が今度は楽になるということは考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/111
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112・片岡清一
○片岡委員 それからさらに、この法律の施行によりまして海外との種苗の流通が円滑化され、日本の種苗業者が海外の種苗業者のために圧迫を受けるという悪影響が出るのではないかという点が考えられますが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/112
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113・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
わが日本の育種技術は世界最高峰だと自負しております。これは御質問からちょっと外れるかもしれませんが、先ほど倉方参考人もいろいろおっしゃったように、種苗といって苗という字があるからとかく誤解、混同を生じやすいと思います。まず種だけについて見ればそういうことはございませんで、わが国の最高の水準を誇る育種技術からしたらそういう事態を生ずるというおそれは、全くとは申し上げませんが、まず考えられない、こう考えております。気候、風土ということもございますし、先ほど申し上げた気候、風土が合わないから逆に海外へ持っていきたいという、その逆ということを考えますと、そういう御懸念は余りないのではないか、こう存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/113
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114・片岡清一
○片岡委員 最後に、倉方参考人にお伺いいたしたいのですが、先ほどの御意見では、どうもいまのような権利を保護するというような法になってない、そういうやり方では本当にまじめに品種改良に当たる人がなくなるのではないかということを大変御懸念になっているようでございます。
それと同時に、今度の規定では、実際従業者がこの品種改良をやられた場合、その御本人からでなしに使用人からも出願をして、それで後から育苗者に、育種者に対価の支払いをする、使用人に請求するというようになっておりますが、こういう点で個人的にどういうふうにお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/114
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115・倉方英藏
○倉方参考人 それは勤務発明とかいうことだと思います。勤務して被使用人がいい仕事をしたらそれに報いる、これは当然なことで、われわれがこれを強く主張いたしました。そして、本当におかげさまでそれが実現しましたのです。これは非常に感謝しております。
それから、いま榎本さんおっしゃったように、海外から——日本の種苗は優秀でしょう。ですけれども、向こうから買わなければいけないものはたくさんあるのです。たとえば、牧草の種子なんか日本でできやしません。向こうで意地悪言って、そんなのだったらやらないと言ったら、くれないものはたくさんありますよ。そんな場合には、牧草の種がなかったら牧場とか畜産をやっている人は困りますよ。そういうことはもう本当にはっきりわかっていることなんです。牧草の種なんか日本で生産するものはありはしませんです。ですから、野菜の種だって向こうから買わなければいけないものがあります。あるはずです。日本だけいいからといって、日本だけでもって孤立してやれるものなんか何だってありはしません。私はそう思います。
それから、外国と対応できると言いますけれども、アメリカのローリンというような植物特許法の人なんか来まして、そのときは農林省も何か非常にアメリカに同調するようなことをおっしゃったのですが、その後でも全然相反するような、そういうあれができましたから、とても外国と対応、これは絶対できやせぬ。たとえアメリカともできません。ヨーロッパ、UPOVの方ともできません。ですから、今後その方面で交流がうまくいくということは望めません。アメリカなんかで、あんなものをこっちへ持ってきて海賊版でどんどん勝手に増殖されて、あれだったらばかばかしいやというようなことで、いい品種入れてくれませんですよ。たとえば、バレイショの品種改良に、とても日本で欲しいと言いましても、外国でもって日本ではっきりしたそれがないのだったらやらないと言って断られた例もあるのです。私は実際その衝に当たっていませんけれども、そういう話であります。恐らくうそではないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/115
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116・片岡清一
○片岡委員 どうもありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/116
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117・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 竹内猛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/117
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118・竹内猛
○竹内(猛)委員 私は、日本社会党を代表して、参考人の皆さんに御質問をいたしたいと思います。
参考人の皆さんには大変御多忙のところを御出席をいただいて貴重な御意見を賜りましたことに対して、まず感謝を申し上げたいと思います。
最初に加賀山参考人にお尋ねをいたしますが、検討会の中で結論が出て、その出た結論を法律にして実施をしていく過程において、当然特許庁との関係が問題になっていると思いますが、その関係についてどのように取り扱われたかということをまずお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/118
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119・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
先ほど私のお話の中でちょっと申し上げたわけでございますけれども、五十一年度に検討会が開催されまして、農林省の方から要綱的なものを素案を示されまして、それについていろいろ検討いたしました。ただいま先生がおっしゃいますように、特許庁との関係というのは非常に微妙な問題がいろいろあったようでございまして、われわれ検討会の中にはそういった問題というのは入ってまいりませんでした。というのは、われわれ検討会というのは学識経験者を中心にいろいろな団体の方とか入っておりますが、行政庁間のそういった問題というのは、われわれの検討会で検討というよりは、むしろ先ほど申し上げましたように、行政庁間の約一年間の検討の結果、両方相納得するような線になったというふうに最終の五十三年度の懇談会の席で農林省の方から報告を受けて、ああそうであったか、それで結構だ、そういうふうなことでありますので、検討会の中では特許庁との関係をそれほど議論はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/119
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120・竹内猛
○竹内(猛)委員 今度の法案は、農家に対して優秀な、あるいは優良な種苗を提供する、そして日本の農業の発展のために寄与する、このためにはまず国内において種苗が保護されるということと、それから国際的な条約に加盟をしていく、こういう二つのことが柱になっていると思いますが、そのとき、先ほどからも倉方参考人からもありましたように、発明者の権利主体というものがはっきりしなければいけないのではないか、こういうように言われておりますが、この発明者の権利を守るためにどういうようなことが考えられておったか、この点について加賀山参考人にさらにお尋ねをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/120
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121・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
昭和五十一年度の検討会の中におきましては、ただいま竹内先生のおっしゃいましたようなことも若干いろいろ検討されました。しかし、外国においてはどうか、私は十分には承知をいたしておりませんけれども、やはりその国々の農業生産あるいは種苗生産に携わる者等々、これは試験研究機関とも関連いたしますけれども、やはりその国々の特色のある形というのがこれまで農産種苗法ということでどうやら進められてきたわけでありまして、それを急激に、ただいま先生の御指摘のありましたような権利というような問題にすぐ直結をいたしますと、余りそこに焦点を合わせてやり過ぎるということはかえって全体の運営その他をむずかしくするのじゃないかというような感じは全体の検討会の中であったわけでございまして、それらの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、約一年間の検討会が休みました間に各行政庁間でいろいろと議論があったようにも伺っておりますが、その点は、結論として今回改正法としてお願い申し上げているようなかっこうになったのが、わが国としては妥当な線ではなかろうか。これによって、育種者の権利、と申しては問題がありますけれども、育種者の努力というのは十分に保護され得るのだということでございまして、余り権利問題というのを前面に出すことは非常に現在の国情に合わないというような感じは検討会の中でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/121
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122・竹内猛
○竹内(猛)委員 それでは、倉方参考人にお尋ねします。
民間の育種者として大変御努力をされていることに対してまず敬意を表すると同時に、きょう御出席をいただいて率直な御意見をいただきましたが、そのお話の中に通じていることは、本法案の中で権利がはっきりしていない、そういうことであれば、国際的にもこれは非常に問題があるじゃないかというように受け取れるようなお話がございましたが、この点はもう一度倉方参考人からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/122
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123・倉方英藏
○倉方参考人 アメリカその他のこういう植物の特許とか保護制度はみな権利が確立しております。日本だけがはっきりしないのです。ですから、外国の人がこの法案を見たときに、どこにはっきりした権利の表現があるかと言われたときに、ここにありますと恐らく言えないと思います。ですから、外国との対応は恐らくできません。これはもうはっきりしておることです。外国人の意見なんか何遍も聞いております。ドイツからも来ております。アメリカからも何回も来ております。そういうような人と私らお話を——私、わかりませんけれども、通訳の人もいるし、語学に堪能な方もおります。また、種苗の方でも非常に詳しい、そしてまた語学も堪能、世界を歩いておるというような方もおいででして、そういうような方なんかの御意見とかそういうようなこともそれに伴って絶えず聞いておりますから、私のような余り頭のない者でもかなり脳裏にしみ込んでおります。
よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/123
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124・竹内猛
○竹内(猛)委員 重ねて倉方参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどのお話の中でも、品種のよいか悪いかということは非常に決めにくい、見分けにくいと言われましたが、この種苗の仕分けの仕方の基準というか、そういうものはどのようにお考えですか。民間の育種者としていままで携わってこられて、これはどういうふうにお考えになられたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/124
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125・倉方英藏
○倉方参考人 先ほど申し上げましたように、農林省の偉い方が、巨峰なんかつくったってだめだ、あんなものは花ぶるいがひどい、あんなものをつくったら農民が大損害をこうむるとおっしゃいました。私のネクタリンがだめだとおっしゃいました。それはもうオーソリティーです。最高の権威者がそう言われて、それがひっくり返っちゃったのです。いい悪いなんということはわかりはしませんです。およそいいか悪いかぐらいなことは、違っておる、何か異色だということはわかります。いいんじゃないか、そのことぐらいわかります。それはやみくもにこれが品種だ、これが何とかということは、もし特許庁に特許に出すにしましても、保護法に出すにしましても、それは変なものを出しっこないのです。ある程度まで確信のあるものを出します。ですけれども、本当にいいか、将来性があるか、農家がつくって農家の利益になるかどうか、それはわかりません。よけいなことをお話していいですか。——山で見つけたクリなんですけれども、これが、厚い皮をむくのは普通ナイフでむかなければいけません。渋皮はむけやすいのですが、特に熱湯の中に三分ぐらい入れまして、ナイロンたわしというのですか、台所で使うぞうきんみたいなのでごそごそしたあれでこすりますと、直ちに皮がむけてしまいます。ですから、クリを包丁でむいてみつづけですか、びん詰めなんかにしております。そんな世話はありません。それから、ゆでグリにしまして食べるときに鬼皮はどうしても包丁でむかなければいけませんけれども、渋皮ば普通ですとくるっとむけてしまいます。ですから非常に食べやすい。そしておいしいです。かん詰め業者にいろいろ聞いてみましても、はっきりしたことは言わないのです。言えないのでしょう、かん詰め業者としても、特異なものですから。いいか悪いかはわかりません。ですけれども、私はこれはいいんじゃないか、利用性があるんじゃないかなんと考えておりまして、私自身もいいか悪いかわかりません。恐らく専門の方としてもわからないと思うのです。
そういうふうにわからないものがぼつぼつあるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/125
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126・竹内猛
○竹内(猛)委員 続いて、榎本参考人にお尋ねしますが、この種苗を取り扱う者として、種苗がいいか悪いかということの基準なり見きわめなりというものは何によって出されてきておりますかということと、もう一つは、種をつくるのに非常に努力します。八年かかるとかあるいはもっと日にちを要するということでありますが、種の価格、原価というものはどのような形で計算をされて種苗の価格を出されるのか、この点をまず二点お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/126
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127・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
先ほど来種苗というお話が出ておりますが、先ほども申し上げましたように、ここにたまたま苗という字が入っているからそういうことですが、種ということだけを取り上げてみますれば、種を見た限りにおいてはその良否はまず判断することは不可能ということは先ほども申し上げました。また、それがいいか悪いかというその基準をどこに設けられているかということ、これは製品といいますか、生産された青果物は、一般消費者、その前の種を消費してくださる一般農家の段階で見きわめられるものであって、種に関しましては、悪貨が決して良貨を駆逐しないということは言えると思います。
それから、二番目の種の原価の計算ですが、これは一昔といいますか、大分以前には、私のおじいさんの時代、こういうことがございました。あてがいぶちで買い上げたことがあったそうです。これは農家の方で現金収入がございませんで、種屋さん、どうか種をつくらしてくれという時代があったそうです。そういうことでやりまして、原価というものは、計算というよりもことしはこのくらいでよかろうと採種農家と話し合いで済まされた時代があったそうです。それが現在はその原価計算は、まずそれを開発するための開発費、いわゆる付加価値と申しますか、そういうものは別途に計算されていると思います。それから、種を買い上げるそのものの価格につきましては、これまた現在も昔のあてがいぶち、そういうようなこととちょっと違いまして、その地方の採種地帯の経済連の単協、そういう方々に第三者的な立場で間に入っていただいていろいろ協議し、本年の対象作物をたとえば小麦にとると、それがどのくらいであるからこのくらいで買い上げてほしい、こういうような形で計算しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/127
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128・竹内猛
○竹内(猛)委員 それでは、加賀山参考人にお伺いしますが、いまお話がありましたように、種苗というものは農産物の一番の基礎になるものであります。それのいい悪いの見分けというものの基準が非常にあいまいだと思うのですね。検討会としては、この種苗の善悪というものを何を基準にして見きわめるかということについての検討はされたかどうかという問題。
それから、倉方参考人からもしばしば御発言がありますように、権利の問題については、先ほど加賀山参考人からもお答えがありましたが、それがきわめて不明確のために国際条約に入るのに困難なのではないかといわれるような御発言がございましたが、これに関連をして、何か気のついたことがあったらお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/128
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129・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
種がいいか悪いかということは大変むずかしいというお話が各参考人からもございましたが、確かにそういう事実もあろうかと思いますし、いま榎本さんのお話では、末端の農家が評価するのだ、そういうことでございましたけれども、こういうようなことで品種の登録をする場合には、先ほども申し上げましたように、少なくとも遺伝的な形質として均一性があるのか、あるいは安定性があるのか、そういった問題は、どうしてもこれまでの試験研究の成果等をバックにいたしましてはっきりといたしてまいりませんとできないことであります。そういうのは種がいいか悪いかということの決め手となる一つの材料でございますが、それ以外にいろいろとございましょう。たとえば、非常に耐久性、貯蔵性があるかとか、あるいは稲であれば倒伏に強いとか、脱粒性がないとか、いろいろな問題がございましょう。それは全部遺伝的な形質ということで見てまいるような試験研究のデータをバックにしたチェックをすることは当然でございまして、そういうふうなことが取り扱われるような審査の体系なりそういったものが行政庁の方で十分に考えられているというふうに私は伺っておるわけであります。
それから、国際条約の問題ですが、ちょっと私十分にわかりませんので、どなたか別の参考人にお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/129
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130・竹内猛
○竹内(猛)委員 小口参考人にお尋ねいたしますが、種の善悪というものがきわめてはっきりしないような状態の中で栽培をする。特に野菜類、キュウリ、ナス、トマト、こういう施設園芸等々で使うものは金額が高いわけですね。これがもし万一の場合に被害があった、キュウリが曲がってしまったり、ナスが二つ三つ長くなり過ぎたり、いろいろな形で変形したということになったときに、その被害というものは大きなものですね。その場合の補償というものが、現在の農業災害補償法では果菜類はまだ対象になっておらない。その災害をどのように考えられるのかということと、これと関連をするわけですが、問題は第四条ですね。前のものにはありましたが、今度の法律の中には第四条が入っておりません。これは種の検査の問題に関連をしますが、ありません。
それから、第五条に関しては、先ほどからも御指摘がありましたが、遵守すべき望ましい云々という形になっていて、これが義務づけになっておらないというところに実は問題がある。同じように飼料安全法については、やはりこれは一定の公示義務というものが明確になっているし、農薬取締法でも明らかになっているわけだから、私はこの問題を取り上げるときには少くとも検査基準というものを明確にして公開、告示を義務づけ、なおその上に被害があった場合にどのような形がとられるのかということについての農協中央会としてのお考えなり御意見があればひとつお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/130
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131・小口芳昭
○小口参考人 第一の種の問題から派生をいたしまして、被害が出た場合どうするかという御質問であるわけですが、これは種だけでなくて、たとえば施設園芸のハウスがこれだけの降雪量に耐えられると初め約束されていたのにそれ以内でもつぶれたとか、あるいは種から当初予定していたような生産物ができなかった場合、もとよりこれがかなり一般的に行われるというようなことになると、それを販売をしている業者そのものの問題になってくると思うのですが、たまたまわれわれが承知している限りでは、偶発的にそういう事例があるというふうに聞いております。その場合は、種苗業者は信用第一という視点に立って、何らかの生産過程かあるいは調整過程か包装過程かでそういうミスが出るのだろうと思うのですが、業者が生産者に補償するという扱いをしているというふうに聞いております。これが相当頻発をするというようなことになりますと、これはもう基本的に検討されなければならないということでありますので、その点については偶発的に出るたまたまのそういう事故は個別に解決する、一般的に出るとなると根本的な問題になるだろうというふうに考えるわけです。
そこで、根本的に問題になるという点では、先生御指摘がございました第五条の問題とかかわりを持つことだろうというふうに思っておりまして、望ましい基準を公表するだけでは不十分であると私は考えておりまして、指示、公表制といったようなものを導入されてはいかがかと考えております。
その場合、行政に特にお願いをいたしたいわけでありますが、望ましい基準ということになりますと、相当完璧な基準が公表される、それは守っても守らなくても後のフォローがないわけですので、相当水準の高い望ましい基準が示される。ただし、遵守すべき基準ということになると、その水準というのは、だれもが守るべき基準という意味では若干レベルが下がるのではないかと思っております。その下がる度合いというのは、少なくとも種子として生産者が安心して購入できる基準というものを努力をして策定をしていただかなければならないのではなかろうかということで、指示、公表制度の導入ということだけを申し上げましたが、実体的には遵守すべき基準の水準をどこに決定するかということを技術的にも相当詰めて策定することを強く希望したいと考えております。
それから、その事故防止あるいは農家に対する安心感を確保するという意味で、第四条を新しい改正法案の中でも復活するということについては、先生の御意見と同じように、ぜひそのようになっていただくとありがたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/131
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132・竹内猛
○竹内(猛)委員 それでは、もう一つ小口参考人にお尋ねします。
本法は昭和二十二年に成立して以来しばらくの間手をつけなくて来たわけです。特に第十二条というのは削除されていたわけですけれども、これが復活してそこに重点が置かれていると思いますが、その十二条の中で申告、裁定の問題があります。このやり方が非常にわかりにくい点で、この点については利用者としてもう少しこれを明らかにした方がいいのではないかということを私も考えるけれども、どうだろうか、こう思うのです。
それから、ただいまの中で社会的公益性、あるものを独占をする、排他性を持つことを許さないために、これに対する取り扱い等々と関連をすることでありますから、ここら辺について法制上の処理についてどうもわかりにくいわけです。これはどういうふうにお考えかということをひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/132
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133・小口芳昭
○小口参考人 第一の裁定の問題については、確かに「公共の利益」というかなり重要な表現をお使いになっているわけであります。具体的にどういう事例が出てまいりますか予想することは非常にむずかしいわけでありますが、たとえば病虫害にきわめて強い品種ができて、消費者が大変心配している強い農薬を使わなくても済むような品種が開発されるとか、あるいは耐冷性の強い品種ができて、相当広範に各地でその作物がつくれるとか、あるいはえさその他を含めて増収型の品種が開発されるというふうなこと、しかも、このことが国民生活なり農業の発展なり、さらには私経済の問題でありますけれども経営にとってきわめて有益であるという場合は、ぜひ現在の国及び地方公共団体が公共育種をして、これを公開の原則に即してだれもが利用して使用してもいいように、その改良メリットが農業者に帰属するようにぜひやっていただきたいというふうに考えるわけです。
その場合、ある特定の育種者がそういうものを開発した、それを公共のために広めるという場合に、たとえば農業協同組合が申請をしてその人の許諾を受けて、そして広く農業者に利用してもらうというような方法を具体的にはとるんであろうというふうに思います。その場合、大変優秀な品種であるからというので、その話し合いの中で決定される許諾料というのが膨大であるというような場合には、公共の利益というふうな意味ではぜひ国の財政援助などの措置をとってもらいたいと思いますし、事柄の問題としては、農業発展の政策を行う農林大臣が申請者になって、それを裁定する農林大臣にこれをぜひ裁定してもらいたいという申請をして、国がそれを許諾を受けてその優秀な品種を普及していくというようなことも十分考えられるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。
そういう意味で、裁定ということと公共の利益というのは、いま想定することはきわめてむずかしゅうございますけれども、運用の中では相当期待され、今後、現在行われている公開の原則に近い形でそのようなものを利用できるようにぜひしてもらいたいという希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/133
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134・竹内猛
○竹内(猛)委員 先ほど自民党の片岡議員からもちょっと指摘がありましたが、この法案は利権法案ではないかと言われている向きもある。
そこで、榎本参考人にお尋ねをいたしますが、現在二千四百の種苗関係の業者といいますか、協会に加盟をしておられる中で、私の承知するところでは、大きな種苗会社というと京都のタキイ、横浜の坂田、この二つは大きな会社だと思います。この会社は単に種の生産、卸、販売だけではなくて、機具、資材、技術、種に関する相当広範な仕事をしております。あるいはまた、一般には卸業者が多いという形でありますが、それにもかかわらず、このタキイあるいは坂田と言われるものは最近の数年、年間にどれくらいの種苗の取引をされておるのかということについて、もしわかっていたらその額まで教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/134
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135・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
私どもではあくまでもその会員の経理内容について報告せよというようなことはやっておりませんですが、聞くところによりますと、タキイ種苗は百五十億、坂田種苗は百億か百十億と聞いておりますが、これは種苗、種とか花の球根、苗、そういうものだけでございませんで、先ほど先生のおっしゃいました農業資材とか農薬とか、そういうものまで含めた金額がこのような金額でございまして、その中にいわゆる種苗というものが占める割合というのはちょっとわかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/135
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136・竹内猛
○竹内(猛)委員 これは加賀山参考人にお尋ねしますが、先ほども言われたように、これは利権の法案ではないか、こう言われているわけですけれども、農業を発展させるためにいい種苗を国際的にも国内的にも確保していく、それから、それの発明者を尊重していく、こういうことに説明がありましたけれども、この点について、世間で言われるようなことがあってはならないと私は思うのですね。そういう意味において、その討議の経過の中でそのようなことはどういうように指摘をされ、問題になってきたかということを、もう一度ここでお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/136
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137・加賀山国雄
○加賀山参考人 ただいまの竹内先生の御質問でございますが、検討会の中ではこれが非常に種苗業者を利するものであるというような議論は余りございませんでした。要するに、検討会の内容というのは、何とかして育種をやっている人たちを保護していきたいということと、やはり農業生産の基本というのはこういったいい品種を育成することに中心があるのだという、どっちかというと技術者の方が多かったということもございますけれども、種苗業者の方も御参加でございましたが、ただいま竹内先生のおっしゃったような議論というのは、それほど議題にはならなかったわけでありますし、また私自身も、先ほどから申し上げているように、この法律というのは決して特定の業者を利するようなものであってはならない、あとは恐らく行政庁においても法の運営上そういうことは十分に御注意になって運営なさるであろうということを期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/137
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138・竹内猛
○竹内(猛)委員 この法案の中に差しとめ請求権とか損害賠償権とかいう、そういう権利を認めているわけですね。そういう権利が認められている以上、やはり権利者というものの主体が明らかでなければまずいと思うのですけれども、その点はどのように検討の中ではされてきたか。小口参考人も検討会のメンバーであったと私は名簿の中で見ているのですが、もしわかれば御両氏からこの点については説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/138
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139・加賀山国雄
○加賀山参考人 ただいまの問題は、私は専門でございませんので十分なお答えができないわけでありますが、私などはこういう侵害者の差しとめ請求であるとか賠償請求であるとかいうことによって、新しい品種を育成された方は守られていくのだ、そういうような理解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/139
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140・小口芳昭
○小口参考人 第七条で登録ということがあり、そして登録した場合にはこういうふうに守られるというようなことが条項にある。その登録者から生産し、販売することを業とする者が譲り受けようとする場合には許諾料を払うという一連のシステムができておりますので、その権利という視点に立って明確であるかどうかというのは、私はちょっとはっきりいたしませんけれども、システム、考え方というか、その整理のされ方としてはそうなっているので、登録をする者に権利があるのではないかというふうに考えておりますけれども、その辺、権利という視点に立ってどうだこうだということになると、明確ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/140
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141・竹内猛
○竹内(猛)委員 またこれは加賀山参考人にお尋ねをすることになりますが、権利がある者は、その種苗を発明した個人、それからその個人の所属する集団、あるいはまたそれを承継する者、こういうふうに理解していいかどうか。それはそのとおりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/141
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142・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
ただいま先生のおっしゃいましたその集団ということの意味はちょっと理解しにくいわけでございますが、たとえばある法人、会社みたいなところがやったというような場合、そういうことでございましょうか。——その場合には、先ほど申し上げましたような現行特許法でやっている職務発明みたいな形でもって対応していこう、そういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/142
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143・竹内猛
○竹内(猛)委員 集団と言うとちょっとおかしいですけれども、たとえばAという個人が、ある種の種苗を発明しようとして努力をする。そのAは、ある研究所または会社に所属をしている雇用人であった。だから、そこには雇用関係がありますね。その会社は種苗を研究するためにある会社なのであって、それには恐らく職務命令というものがあるはずだ。そうすると、その職務命令に従って研究をする。そして、それがある物を発明したときは、その個人と会社が一緒に登録をする。そのときの権利というものはどこへ属するか。職務命令で給料をやっているのだからそれは会社のものなのだ、あるいは、いやそうじゃなくてこれは個人に属するのだ、こういったような問題は非常にむずかしいと思うのですけれども、その辺はどうなのかということをいま尋ねているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/143
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144・加賀山国雄
○加賀山参考人 その点は、その会社なり何なり、官庁でもそういうことがあろうかと思うわけでありますが、その使用者と実際のブリーダーとの間に勤務についての約束事がいろいろできるというふうに考えているわけでございます。それに基づいていまの問題は対応していかれるんじゃなかろうか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/144
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145・竹内猛
○竹内(猛)委員 この問題は恐らく法律の中心になる課題であろうと思いますが、これはいま御意見をいただきましたから、ありがとうございました。
そこで、もう時間もありませんから、倉方参考人に最後のお尋ねをいたしますが、倉方参考人は、この法律を成立させた方が、民間を含めて発明者のためにいいと思うのか、原案がどうなのか、あるいはこれを何カ所か修正をしてどうなのか、こういう点について、この法案に対する民間の発明者としての総括的な御意見をちょうだいしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/145
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146・倉方英藏
○倉方参考人 私は、要するに外国と同じような制度で権利ということをはっきりしなければ、これができても何の役にも立たないと思います。外国との対応もできないし、何のためにこういう法律ができたかわからない。これは権利がはっきりしていれば大変いい法律じゃないかと思いますので、外国とも対応できる、相談もできるようにしたらいいんじゃないかと思います。
それから、なお申し上げたいことは、特許庁と農林省のこの植物保護法の関係をすっきりしていただきたいことも、この際、ちょうどいい機会ですからお願いしたいと思います。
私も、これは非常においしいのですが、黄色い桃で、去年の八月ですか、特許庁に特許申請をいたしました。アメリカにもいたしました。これが若いときに無理にとって追熟一週間とかいうふうに追熟しましても、わりあいにおいしいのです。品質が余り落ちません。私も個人のことを考えて、こっちで、もやもやわからないことより、アメリカに特許を申請しました。アメリカなんかで、もしあれでしたら、あそこで生産してカナダへ送ろうと南米へ送ろうと、あるいは金持ちの産油国へ送ろうと——私はアメリカへ出すの逡巡したのです。ですけれども、個人のことを考えましたら、もしアメリカで採用されてあれだったら、日本でまごまごしているよりよっぽどいいんじゃないか。国策には反します。日本自身、沖繩なんかでは桃なんかめったにありません。輸送のきくものじゃありませんから、多分あの辺の人は余り食べないと思います。いわんや産油国とかカナダへ送るとか、あるいはまた気候の反するような南半球へ送るというようなこともできるんじゃないかと考えましたけれども、そういう国策とかなんかより個人の方が大事だと思いましたから、アメリカにも特許を申請しまして、これはどうなるかわかりませんけれども、私はアメリカの品種もある程度知っております。栽培したこともあります。現にエルバーターというような、私のものに比べたらはるかに劣る品種もカタログにみんな並んでおりますから、多分そんなに競争に負けることはないんじゃないかというような考えでもってアメリカに申請したわけですけれども、本来なら日本に温存して、日本から諸外国へ送ろうとしたら、今日はみんな航空機ですから、そうしたら日本の農村の役に立つんじゃないかと思いますけれども、それより私個人の方を先に考えまして、残念ながらアメリカへ申請したわけです。こういう事情もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/146
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147・竹内猛
○竹内(猛)委員 参考人の皆さんにはそれぞれの立場から大変いろいろな参考の御意見をありがとうございました。個人の問題でいろいろ失礼に当たった部分があったかもしれませんが、それはお許しをいただきたいと思います。
これで私の質問は終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/147
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148・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/148
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149・瀬野栄次郎
○瀬野委員 農産種苗法の一部を改正する法律案についで、本日は忙しい中を四名の参考人に御出席いただき、貴重な御意見を陳述いただきましてまことにありがとうございました。公明党を代表して厚くお礼を申し上げると同時に、重要な法案でございますので、数点について各参考人に御意見をさらにお伺いいたしまして法案審議の参考にさしていただきたい、かように思います。
まず最初に、元植物新品種保護制度検討会会長代理の加賀山国雄参考人にお伺いいたします。このことは倉方英藏参考人にも引き続きお伺いしますので、十分お聞き取りいただいておきたい、かように思います。
昭和四十七年以降、二回にわたり検討会、研究会が設置されまして、慎重な配慮をしてきたことは十分御承知のとおりでございまして、この検討の過程を経て最も大きな問題になったのは、国際条約への加盟条件等々も関連しまして、植物新品種の育成者に対する権利を特許法と同様に独占的権利として付与するかどうかということが問題になったというふうにわれわれは伺っております。この点に対しては、具体的な法案策定の段階において特許庁等との話し合いが行われ、結局特許法の体系をとらず間接的に育成者を保護する、いわゆる取り締まり型の方式によって本法が提案されておりますが、御承知のごとく特許法というものは、物の発明をした者には排他的な権利を付与することになっておるわけでございまして、その者に権利を付与するわけであります。本法によりますと、権利付与はないわけであります。育種した人は登録しますよ、こういうふうになっておりまして、登録を受けない人は黙ってやってはいけませんぞ、こういうような取り締まり型であるというように私は端的に申し上げるわけであります。最初は、われわれの聞くところによりますと、いわゆる植物特許として権利の付与を行わせようという法律にすべく方向づけがされておったわけで、特許法と横並びにしようという方向であったわけですね。それが今回は、先ほど申しましたように、取り締まり型というような法律になっておる。
これはまた審議の場でいろいろ検討するわけでございますけれども、これに対してまず加賀山参考人から、いろいろ検討会において検討された経過を踏まえて、その点を明確にひとつ御意見をさらに承れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/149
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150・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
瀬野先生の御質問に私は明確にお答えできるかどうか、ちょっと自信がございませんが、先ほどから何回か申し上げましたとおりに、五十一年の一年間に七回の検討会を行いました。その間においては、いま先生がちょっと御質問の中にもおっしゃいましたような植物特許というような考え方もあったわけでございますが、しかし、どうも農産物の種に関するそういった権利問題というのをその特許的な問題でもって処理をするというのは非常になじまないという議論がかなりございました。いろいろの国際条約等との関連もあったわけでございますけれども、やはりわれわれがねらっておりました、実際に育種でもって苦労した方をどう保護するかという視点、それから、それを農家の方々に利用いただいて日本の農業生産を上げるという、そういう視点から考えるならば、やはり特許というような思想よりは現在の農産種苗法の線上で持っていった方がいいんじゃないか、そういうふうな感じにだんだんなってきたのも事実でございまして、その間約一年間検討会の開催が行われなかったわけでございます。その間に実質的には、私の伺っているところでは行政庁間、要するに農林省と特許庁なり関係機関との非常に積極的ないろいろな折衝が行われたようにも伺っておりまして、その間で検討会が開かれておりませんので、それがどういうふうなことで進行していたかということについては細かいことは承知していないわけでございますが、全体の空気はそう流れまして、やはり現行のいろいろな法律の中でわが国の農業生産を伸長させ、かつ育種者を保護するという立場からは、やはりこういったような考え方で行くのが一番現実的な処理ではないのかというきわめて大局的な判断があったんじゃなかろうか。それで、五十三年の当初開かれました最終的な懇談会では農林省側からこういうふうなことで持っていきたいというそういう話がございまして、検討会の委員はまあ全員がそういうことかということで大体了承いたして現在に至っているというふうなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/150
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151・瀬野栄次郎
○瀬野委員 倉方参考人は個人育種者代表として本日は本委員会においでいただいて意見の開陳をいただいたわけでございますけれども、ただいま私申し上げました、加賀山参考人にお伺いしました件につきまして、特に倉方参考人は、昭和八年から今日まで約五十年間近く育種者として寝食を忘れ、わが家を捨ててやってこられたということを先ほど聞きまして大変感激いたしたわけでございますが、いまの件について、本法の大きな問題でもございますので、育種者としてどういうふうに本法を理解しておられるか、また見解をお持ちであるか、その点お触れいただければ幸いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/151
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152・倉方英藏
○倉方参考人 いま取り締まりとかおっしゃいましたけれども、私が倉方早生を名称登録申請しました、期間は五年でしたけれども、その間、悪い人間は農家でも苗屋でもどんどん売っておりました。余りしゃくにさわりますから農林省へ行きまして、その当時、加藤要さんという方がその衝に当たっておられまして、その方に、取り締まってください、罰則があるんだから罰則を適用してください。何の罰則も適用してくれません。あなたやりなさい。しようがないから、余り腹が立ちますから、弁護士を使って岡山なんかに行って処理してもらいました。ところが、何百何千あるというもの、征伐できません。結局私も貧乏の極だったんですけれども、一人だけやっつけて、あとの者はどうすることもできません。
いいかげんな取り締まりだなんといったって、日本人の不徳義、これはもうはなはだしいものです。こわくなかったら何でも悪いことをします。電車に乗ったって、車を運転していたって、車からかんを捨てるわ、灰ざらをあれするわ、紙を捨てるわ、おれさえよければいい。これは日本人というのは非常にそういう点、私は一番軽べつすべき人種じゃないか。旅行してもマナーは悪いし、外国へ行っても恥はかくし、そんなことで、いいかげんな取り締まりなんかで取り締まれるものじゃありません。これはもう本当にはっきりしております。ただあいまいな、いいかげんなことでこの運営はもう絶対期し得ないことは私ははっきり知っておるつもりです。
ですから、こういういいかげんな取り締まりとかなんとかということには賛成できないのが私の心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/152
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153・瀬野栄次郎
○瀬野委員 引き続き、倉方参考人にお伺いしますが、本法の十二条の八で、現行法には裁定の規定がないわけでございますけれども、今回提案に及んでいる法案の中では、裁定について次のように規定してあります。二年以上種苗の生産、販売が適当に行われていない場合、または公共の利益のため特に必要な場合、すなわち品種登録者の許諾を得ることができなくても、農林水産大臣の裁定により品種登録の種苗の生産、販売をすることができるという規定でございます。要するに、保護はするが、よい品種はできるだけ世の中に普及させるのが望ましいということで、二年以上種苗の生産、販売が適当に行われていない場合は、公共の利益のため、特に政策上要請があればこれにこたえていく、こういう意味の裁定をするということでございますけれども、先ほどからいろいろ倉方参考人の苦心談を聞いておりまして、この点についてはどういうふうに個人育種者として御意見をお持ちであるか。私たちもこういったことについてもいろいろ本法審議に当たっては政府の考えをただす予定にしておりますものですから、この機会にひとつ御意見を承っておけば大変参考になる、かように思いますので、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/153
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154・倉方英藏
○倉方参考人 おっしゃるとおりです。公共のために私も尽くしたいと思っております。その点で一つ、私こういうことがあるのです。
やはり去年ですか、山梨県の白根へ行ったとき、大きなこんな梅を切っております。これは無残なことですよ。十数年たったものです。品種は何だと言ったら白加賀だ。この白加賀に対して非常に交配上いい品種があるのです。これは私が見つけたものなんです。これは私、損得抜きでやろうかだけれども、一面、公共的なものははっきり公共的に尽くしたいという、そういう気持ちは持っております。今日初めて皆様の前で話したのです。私、女房にも話したことはありません。そういう意欲はあります。公共的のことに尽くしたいという気持ちは私も多分に持っておるつもりであります。今後とも努力する覚悟です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/154
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155・瀬野栄次郎
○瀬野委員 全中の農畜産部長の小口芳昭参考人にお伺いします。
先ほどいろいろ意見の開陳をいただきましたが、念のためにこれは確認の意味でお伺いするわけですけれども、昭和五十年十一月、特許庁は植物新品種に関する審査基準を作成し、植物特許を積極的に認めていく旨の方針を打ち出し、新聞等を通じて報道されました。こういうことについて全中では組織内の意向等を受けて検討した結果、植物新品種に対する特許法の適用反対についてということで、昭和五十年十一月二十五日、要請文を出しておられます。
本法提案に当たって、このことは本法提案で十分理解できるということで確認してよろしいのですか。もちろん、先ほどから四つの解明、二つの改善ということでいろいろお話もございましたので、その点は十分わかりましたけれども、この件については本法とどういうふうにわれわれは結びつけて考えていいのか、その点、この機会に整理をするために明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/155
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156・小口芳昭
○小口参考人 特許法による植物新品種の適用はなじみにくいから、これには適用しないようにという要請をいたしたわけであります。その問題点については先ほど三つ述べたわけであります。
今度の改正法案にそのことがどういうふうに反映しているかということについては、一つは、特許権が及ぶ範囲ということについて、特許法の適用は非常に問題があるということを指摘しました。今度の改正法案では、それは種苗に限られておりますので、種苗によって生産された生産物に及ばないことが明らかになっておりますので、その点ではわれわれなじみやすい、これは結構であるというふうに考えております。それから第二は、いまの問題は種の生産及び販売を業とする者に適用されるわけでありまして、自家採種あるいは組合でかなり広範囲に行われております共同採種というものには及ばないと理解をいたしておりますので、これも結構なことであるというふうに考えております。
以上、ポイントだけ申し上げますと、その二点についてはなじみやすいのではないかと考えております。
なお、裁定によって公共の利益上普及する必要があるという場合には、先ほどから御指摘ございました裁定の条項がございます。これは特許法にもあるようでございますが、ともあれ農業政策とのかかわりを十分配慮して、この運用を図っていただきたいということを希望いたしておりますので、その点でも満足であるというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/156
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157・瀬野栄次郎
○瀬野委員 小口参考人についでにもう一点お伺いしておきますが、先ほど四つの解明と二つの改善の、四つの解明の中の第四点で、新品種の育種なり枝変わり等の発見にかかわる登録について、従来の実績から見るとその過半が個人農業者である、したがって、これらの育成者が真に保護されるようにするためには、制度の趣旨徹底や手続の便宜供与について普及所、農協等の組織的対応が必要と考え、施策の具体化についていろいろ検討、解明していただきたいという意見の開陳があったわけですが、このことについて、施策の具体化についてとはどういうことを考えておられるのか、現時点で御意見をいただければ、具体的に若干補足して御説明いただくと参考になるのでございますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/157
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158・小口芳昭
○小口参考人 四十一年から五十年まで農林省で登録した件数百四のうち、われわれが聞いておるのでは個人が五十六、法人が三十五、公共団体が十三ということで、過半を個人が行っておるというふうに聞いております。したがって、先ほどから論議がございますように、これら育成者が真に保護されるためには、制度の趣旨徹底というような意味で、こういう新品種の保護制度ができたということを関係者に相当手広く宣伝しておく必要があるということであります。
それから、手続の便宜供与という点では、農林大臣に申請することになりますが、普及所なりあるいは県がその手続について十分熟知をしておってもらって、それで育成者が安心して御相談になれる、そして申請ができるように体制を整えておいていただくとありがたいというふうに考えておる点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/158
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159・瀬野栄次郎
○瀬野委員 社団法人の日本種苗協会の専務理事榎本暢夫さんにお尋ねしますけれども、全中と日本種苗協会は五十三年の十月、植物新品種保護制度制定推進協議会で、植物新品種保護制度の早期制定に関する要望を出しておられます。すなわち、最近における世界的な食糧需給事情等にかんがみるとき、良質、多収穫の新品種や耐病害虫性の強い新品種の育成等、育種の一層の振興を図ることが強く要請されておるときでもあるので、わが国においても諸外国と同様、新品種育成者の権利保護を通じて育種の振興を図り、農林水産業の発展を期するため、国際対応性を備えた植物新品種保護制度を制定することが焦眉の急務であるというようなことから、植物新品種保護法を早期に制定していただきたいという二項目にわたる要請が出されておるわけでございますが、先ほどの榎本さんの陳述の中で、よい種子ができる制度化を別途考えたらどうか、右のような傾向を踏まえて今日に至っているというようなことで、中央会の方からもいろいろ発言がありましたが、これについては本法提案によって十分満足し得る、こういうふうに理解されておるのか。または、本法提案は提案として、さらにこういった制度を今後考えていただきたいということで今後も続けられるのか。その点を整理してきちっとお答えをいただいておきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/159
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160・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
この制度、先ほど来先生方、また参考人からのお答えにもございましたように、最初の別個の法案が、農産種苗法の一部改正ということで、種苗法ということで出てくるという形になりましたが、その底に流れているものはわれわれが待ち望んでいた新品種保護法そのものであると私どもは考えております。したがいまして、この制度を一日早く発足させていただきたいというのが切なる要望でございます。また、優秀なものを、これは前の何に比べていいのだよといういままでの名称登録制度、あのような——先ほど私申し落としましたが、均一性、安定性というものをうたった新品種保護制度、それに優秀性がございません。この優秀性というのは育種者、育成者の励みだと思います。これについては、もしも消えてしまうのであれば、別途の制度で新しく設けられ、お考えいただけたらなお一層育種者は励みになるのではないか、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/160
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161・瀬野栄次郎
○瀬野委員 最後にもう一点お伺いして質問を終わりますが、倉方参考人にお伺いいたします。
倉方参考人は、先ほど公共の利益のためには自分も十分対処する用意があるとおっしゃいました。また、前段の陳述の中で、本日このような機会を与えられたことはこよなきチャンスと思っておる、こういうこともおっしゃいまして、私も、五十年間育種に当たり、明治三十九年に生まれられて七十一歳に至るまで本当に若々しく元気でやられておる姿を見て、本当に敬服をいたしましたが、さらに最後のチャンスとして、特にあなたに日本のために次のことをお願いして、もう少し明快なお答えをいただきたい、かように思って申し上げるわけでございます。
育成者が育成したかいがなければならない、報いられる制度がなくちゃいかぬということを再三おっしゃって、私も感銘深く聞きました。種物屋の食い物になってはいかぬということもおっしゃいました。その後であなたはいろいろな新品種のこともおっしゃいましたが、ナシの問題で、自分は一つの品種を持っておる、そしてこれは八月上旬に十分採取できる、これは名前はちょっとおっしゃらなかったけれども、何か温存して、大事に持っておられるような感じがして、ああそういうものかあるとずいぶん——熊本県にも荒尾ナシがあり、四国にも有名なナシがありますし、そんなものがあったのかというので、よだれが出るような思いでさっきちょっと聞いておりました。これはどういう品種で、増殖に至っていないのか。さっきの話では十分増殖に至っておると思っているのですが、その辺も最後のチャンスに、この機会にもう少し国民のために明らかにしていただくと歴史に残る一ページになるのではないかと思っております。温存しておられるわけではないと思うが、ぜひここで明らかにしていただきたい。
それと同時に、カキについても、いろいろ味が違いますので一概には言えませんが、富有ガキが本当に、最高ではないけれども、カキの中では王者だとわれわれは思っておりましたが、もっともっとおいしいのがあるとおっしゃいまして、ああそうかと思いました。
さらに、ビワもおいしいのがあると言われました。九州には茂木ビワがあります。あれが一番いいと思っておったのに、まだそんなものがあるのか、千葉にもありますが、ぜひこれも公開の席で明らかにしてもらいたい。
その他、考えているものも多々あるがというふうにおっしゃったので、まだそんなものがあるのかと、われわれもずいぶん明るい希望と期待を持っております。しかし反面、育成者として温存して、増殖に至っていないので研究過程である、こういうふうにも思ったりしておるわけですが、この機会にそういったことについて、国民の前に発表できる範囲で結構でございますからおっしゃっていただければ大いにありがたい、こう思ってお伺いした次第でございます。
よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/161
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162・倉方英藏
○倉方参考人 私がつくりましたナシは、母が長十郎、父が新興なのです。新興というのは新潟県の田野寛一先生がつくられた二十世紀の偶然の実生らしゅうございます。そして、たくさんの子をつくりましたけれども、それを長年にわたって選抜しまして、その品種か偶然に——私、土地かないものですから、ある学校のところで、先生がここを使って少しやれと言われましたので、やらせてもらっておりました。ちょうどかきねの縁に一番いいのがあったのです。ところが、どろぼうが入りまして毎年毎年とられましたから、そのために何年かおくれてしまいまして、ほかのに注目しておりまして、それはもう一番最後にわかったのです。その点でも大分損をしました。
それで、あっちこっち少しずつ試作などをしてもらいましたけれども、やはりネコに小判ということもあります。一生懸命にやらなければ成果が上がらないのもあります。何でもそうです。どんな利器、どんなあれを与えられても、ネコに小判だったら何にもならない場合もあるということを痛感しました。そして私も、そのうちで芽条変異か何かで特に優秀なものを選抜しまして温存しておりますけれども、これがいままで保護制度とか——特許庁でもつい二、三年前に受理してくださったのですが、それまでは特許でもだめ、農林省の名称登録などはもう話にならないしという考えを持っておりましたから何にもしませんで、結局温存するような形になっておりました。
ビワも、私が育成したものじゃないのですが、兄のところで偶然生えまして、大粒の実で非常においしゅうございます。これ以上おいしいビワはないのじゃないかと思います。ただ、形なんかわかりません。それというのは、大きい木を余り大事にし過ぎて、兄と私とで移植しましたら枯らしまして、小さい木に接ぎ木しましたら、非常に環境も悪いし、日も当たらない、いい土地がありませんのでそんなところで無理につくっておりますからなりませんで、六、七年休んで、ようやくことし初めて一個だけとまりました。ぼつぼつ接ぎ木してふやしてはおりますけれども、苗としてその穂木をとってふやす段階にはまだ至っておりません。
いま申し上げました梅なども、私が発見したものなのです。養老とか白加賀など、一部の大きい木の枝に接ぎ木をしておりますと非常によくなります。うちの白加賀など、庭にたった一本植わっておりますが、周囲に梅の木がありません。ですけれども、それを高接ぎしておきますと、これは累々たる結実を示します。その梅自身も非常にいい実がなりますけれども、ただ肥沃な土地ですとちょっとなりが薄いような気がします。
富有ガキは、これも兄のところで発見したものなのです。兄がどこから持ってきたか知りませんけれども糖度、富有というと最高は一八%ぐらいです。これは環境の悪いところになって、半日しか日が当たらないところでも二〇%を超すのがあります。それで、もっと着色は赤うございます。着色はいいです。ですから、もし店に並んだら、きれいな赤いのと余り色のついてないのと商品価値がずっと違うと思います。これもぼつぼつふやしております。まだ苗を生産するまでに至っておりません。でも、これはぜひ世に出したいと考えております。
その他、クリとか何か考えますとまだあるのです。
それから、これもよけいなことをお話しさしてください。過疎地のことを考えますと、オニグルミなんかたくさんあるのです。大きい木をカシグルミに接ぎかえたらいいのじゃないか。クルミの接ぎ木を十数年やっております。かなり自信がつきまして、荒れた過疎地にあるオニグルミをカシグルミにかえたら直ちにある程度の収益を上げるのじゃないかなと考えております。これも、もし接ぎ木の技術を教えてくれと言われたら、私は喜んで無料で教えて差し上げたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/162
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163・瀬野栄次郎
○瀬野委員 どうかひとつ国家のために健康に注意して、今後ますます研究をしていただきますように心からお願いして、質問を終わります。
長時間どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/163
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164・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 神田厚君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/164
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165・神田厚
○神田委員 参考人の皆さんには大変長時間、また貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。
私は、民社党を代表いたしまして、参考人の皆さんに、十五分という大変限られた時間でありますが、御質問をさせていただきたいと思うのであります。
まず最初に、加賀山参考人に御質問申し上げたいと思いますが、先ほどからいろいろと制度検討会におきまして大変苦心をなされ、検討をなさっておられました御様子をお聞かせいただきました。今回の農産種苗法の一部を改正する法律案につきまして、検討会から出されました問題といたしまして、種苗法が林業と水産分野、こちらにまで範囲を広げて適用されるということになっているわけでありますが、検討の段階におきましては林業、水産の分野についてはどの程度のお話があったのでありますか、お聞かせいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/165
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166・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
先生御承知のように、林業、水産関係というのは、農業に比しますと、育種という視点から申しますとまだまだこれから大いにやらなければならないという段階にある現状でございます。たとえば、林業関係でございますとキノコみたいなものの話がございましたし、水産関係についてはそれほど話が出なかったということでございまして、主として農産物と申しますか、それが中心の審議であったというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/166
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167・神田厚
○神田委員 私どもも、大変少ない種類で小さい範囲でしかこの問題を取り扱わないというふうに聞いているわけでありますけれども、一応林業、水産分野にまで広げられていったということは評価していいのではないかと考えているわけであります。
続きまして、先ほどから問題になっております育種の問題でありますけれども、先ほど全国農業協同組合中央会の小口参考人からも御指摘がありましたが、民間の育種、外国の育種、これに偏ってしまうのではないかというような意見が出されているわけであります。
そこで、国の機関でいろいろいままでもやられてきた分野が非常に大きいわけでありますが、公共機関の今後の活用、そういう問題については特に検討会の段階ではどの程度の話がなされてきたのか、特に水稲を中心としてまだまだ国の公共機関の役割りというのは非常に大きい面があるのだろうと思うのですが、その点につきましてはどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/167
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168・加賀山国雄
○加賀山参考人 お答え申し上げます。
育種体制をどうするかという、それ自体は、今回の検討会の議題からちょっと外れるということにもなるわけでございますが、私の聞いておる範囲におきましては、農林水産技術会議を中心に、育種体制を全般にわたってどう組み上げていくかということは、もう数年来検討を重ねておられるように伺っておりまして、やはりいま先生がおっしゃいましたように、国あるいは地方公共団体の関与する育種の分野というのはきわめて大きい、そういう認識は一つも変わっておりません。特に主要農産物等につきましては国あるいは地方公共団体が中心となって行われておるわけでございます。ただ、その問題は、育種体制をどうするかという問題でございまして、今回の検討会の中で、先生いま御質問の国あるいは地方公共団体の育種をどうするかという議論、そういう議論というのは、それほど重点としては議論されなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/168
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169・神田厚
○神田委員 私は、この問題は大変大事な問題で、これは後で農林省の方にも詰めた質問をしていかなければならないというふうに考えているわけでありますが、やはり民間育種、外国育種に偏重してしまって、国の機関がなおざりにされてしまい、あるいは意欲を失ってしまうような形になっては非常にまずい、こういうふうに考えているわけであります。
そこで、小口参考人にお聞きをしたいのでありますけれども、先ほど来からこの法律案の非常に重要な部分についての御指摘をいただいております。私ども、どれ一つをとりましても、全部非常に大事であるというふうに考えておりまして、そういう面につきましては、これから委員会の審議を通じてこれをきちんと整理をした議論をしていかなければいけないというふうに考えているわけでありますが、特に農業者にとって種の問題は基本である、この基本である種の問題のいわゆる安定した確保のことにつきまして、先ほども一部指摘がございましたけれども、この種苗の法律案が通って、そして動き出したことによって、一般の農民には種が非常に高いものになってしまうおそれがないか、あるいは登録料や許諾料、こういうものを払っていくというような、そういう一つの雰囲気でもって種そのものが値上がりするのではないだろうか、こういう心配が一番あるわけでありますね。この辺のところは、先ほどもちょっと御答弁があったようでありますが、どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/169
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170・小口芳昭
○小口参考人 種子価格がどういう動向を見せるかという点については、農民が心配をし、あるいは関心を持っている点であるという立場に立って先ほど申し上げたわけであります。御質問の点でいきますと、一つはやはり本来種苗価格も需給関係で決まるのであろうと思うのでありますが、不当に高い場合には、品種選択に当たって、余り高いからこれではとっても経営上成り立たないということで次善の品種を選ぶというようなことがありましょうから、そこにはおのずから需給関係のバランスがとれて、それで価格というようなものが形成されてくるのではなかろうかというように思います。また、生産費全体の中で種苗費がそれほどものすごく不当に高いというようなことになりますと、これはこの作物自体を生産することができないわけでありますので、ほかの作物選択に向かうということになるだろうというふうにも思います。
先ほどから申し上げているのは、現在の種苗価格の中にも技術開発費その他のコストが含まれているのであろうから、今度の登録料とそれから許諾料によってそう大きく上がっていくというふうにはいまのところ考えていないわけであります。ただ、全体としての趨勢が、このことによってどう動くかという点、心配していることは事実でありますので、本委員会で縦横御吟味をいただくと幸いであるというふうな態度で先ほど意見を述べたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/170
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171・神田厚
○神田委員 水田再編利用対策が進められていて、一方では、それで減反したところに野菜などをつくれというような話が来ている。そういうことから考えていきますと、これからやはり優秀な種を確保して、それを生産に結びつけていく、こういうことが政策的に非常に大事になってくるわけでありまして、私どもは、この種の価格がこれから上がっていくというような問題につきまして非常に心配をしているわけであります。その辺のところも御意見をいただきまして、十分にこの委員会で検討さしていただきたい、こういうふうに考えております。
さらに、先ほども第五条、第四条の話をいただきましたが、これもまことにごもっともな話で、この問題につきましては、私どもはもう少しこの法律案そのものの内容の改正にまで議論をしていかなければならないというふうに考えているわけであります。
ところで、榎本参考人にお聞きしたいのでありますけれども、榎本参考人の話の中で、いろいろお話がありましたが、育種の素材の導入という問題を申されました。日本におきましてはそういう選択の余地がかなり少なくなってきている。そういうことで育種の素材の導入が必要で、そういう意味では国際交流が必要なんだ、こういうふうな話でありますけれども、この法律とこの問題とどういうふうに関連してそういうふうな御意見が述べられたのか、ちょっとお聞かせいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/171
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172・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
この法律ができまして、UPOVと略称されるあの同盟に加入でき、それに加入している諸外国と交流ができるということになりました場合に、向こうでは、いままで保護されないということで出てこなかった素材、それが導入できる。現状のままでは、このまま出しても、ただ単に増殖し、研究素材に使われて、われわれ何にもならないということで出てこない品種が導入されることが容易になるであろう、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/172
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173・神田厚
○神田委員 そういうふうな意味では、これからいろいろやっていかなければならないというふうに考えているのでありますが、また違った立場でことをずっとお述べになりまして、大変御苦労なさって御貢献されていることに敬意を表するものでありますけれども、外国種苗の導入の問題につきまして、倉方参考人にお聞きしたいのでありますが、風土の問題あるいはいろんな問題で、外国種苗を日本に導入して、そしてそれが問題はないのか、そういうふうなことも、この国際交流を非常に活発にやっていく中でいろいろと問題が起きてくるような感じがするわけなんです。
そこで、育種の御専門家といたしまして、外国種苗の日本に対する導入をした場合の懸念みたいなものをお感じになりましたならばお教えいただきたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/173
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174・倉方英藏
○倉方参考人 現に京成バラ園なんかで、フランス人のメイアンとかその他バラ品種改良家から苗を買いまして、それをよそへ分けるについてやはりある程度のリベートを払うとともに、また売った先からリベートをもらっておるようです。これはかなりはっきりそれをしまして、まじめに、これは法律の方でなく、徳義としてやらなければいま向こうからいいバラの苗なんか来ませんから、そうしておるようです。そうして、たとえば種苗会社に売ったり、また種苗会社としてもちゃんと支払いを励行しておるようです。
そして、先生がお考えのように、それはもちろん外国から入れたからといって、向こうでいいといってもこっちでいいか悪いかわかりません。けれども、試作しまして、それをむやみやたらとふやすとかなんとかということでなしに、一応の向こうの権利のあれを支払って試作するのであって、また日本が向こうと対応できるような法律ができれば、向こうも安心して出します。一本入れて、それをどんどんふやして全国にたちまちふやしてしまう、そんなことをされたら、もう外国としたら、日本に送ったってしようがないからやるんで入れてくれると思います。いまの法律では、外国は安心していい品種をやろうという気持ちは余りないようです。ですから、いいかげんな品種だったらくれますけれども、いい品種はくれない例がたくさんあるようです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/174
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175・神田厚
○神田委員 ただいまお話聞きまして、私は、倉方参考人にちょっとお聞きしたいと思ったのは、風土的な問題で、外国品種が入ってきていろいろ問題がないかどうかというような、そういう問題はいかがなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/175
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176・倉方英藏
○倉方参考人 おっしゃるように、風土的に、大体アメリカのかん詰め用品種なんか、いまもそうでしょう、非常に雨の多いのを好みません。ですから、こちらへ直ちに導入してもだめな場合もあります。いい場合もあります。やはりそれは試してみないとわからない問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/176
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177・神田厚
○神田委員 終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/177
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178・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 津川武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/178
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179・津川武一
○津川委員 きょうは、参考人の皆さん本当に御苦労さまでございました。貴重な御意見を伺わしていただきまして、私たち、国政の場に皆さんの御意見を反映してみたいと思っております。特に小口さんの四つの解明、二つの改善は、何としてもきわめ尽くしてみたいと思います。
そこで、私は青森県出身でございますが、私たちの青森県で、米の耐冷性の品種ができましてから、冷害が、凶作がなくなったのでございます。おととしのあの冷害、あれは大正二年の非常に大きな凶作にも似た天候にもかかわらず事なく終わったのは、たとえば青森県の農事試験場の藤坂支所長の田中稔先生初めたくさんの方が耐冷性のものをつくってくださったためにこうなりました。また、リンゴでございますが、「ふじ」という寒さに長くもてるリンゴができまして、非常においしい、そしてリンゴの小売店に聞いてみますと、いま一番長く商売できるのはリンゴだというのです。それは国、県の試験研究所で「ふじ」というリンゴを、そして早くからできる津軽というリンゴを開発した、このためだと思って、私たち、こういう育種者に心から敬意を表し、国が厚く報いるべきだというふうに考えておるわけであります。
そういう点で、きょうは、どちらかというと加賀山さんは官的な側、小口さんはいつでも接することができますので、民間の育種の二方に中心にお尋ねしてみたいと思うわけであります。
第一にお尋ねしたいことは、ちょうど耐冷性の稲の品種をつくった田中稔先生みたいに、民間の育種者がつくって、日本がこういうものありと誇れるもの、いま倉方さんの桃やナシのお話を伺っていましたが、そういうものがありましたら、ひとつここで御披露をいただければと思うわけであります。
榎本さん最初に、倉方さん次にお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/179
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180・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
お答え申し上げると申し上げましたが、世界に誇れる日本の品種、これはちょっと私の記憶に入り切れないほどございます。と申しますのは、たとえばアメリカのAASという、オールアメリカンセレクションという大きなコンクールがございます。これは多くの場所、あの広大なアメリカだけじゃなく、カナダあるいはメキシコまで広げて栽培し、何カ所でも栽培し、ことによると何年もかかって審査するというような、そういうような大きな権威のあるコンクールでみごと金賞をとった、そういう品種に、花でパンジー、もう一つ何か——個人の商社名を挙げてよろしいでございましょうか。それはタキイ種苗、坂田種苗、そういうところはAASで何度も入賞しておりますし、また、ヨーロッパの品評会におきましても、せんだっても坂田のペチュニアでしたかパンジーでしたかはメダルを取っております。
それから、輸出入の統計の数字をちょっといま持ち合わせはございませんが、野菜種子の輸出輸入量を比較してみますと、数量におきましては輸入量が格段に多いはずでございます。輸出量は、数量は少のうございます。しかし、金額におきましては輸出の金額がかなり大きいです。これはやはり日本の誇れる品種が海外へ高く買ってもらっていることのあらわれだと思います。
そういうことで、品種につきましては、本当に数限りなくと言いたいのですが、そこまではいきませんが、どこへ出しても恥ずかしくないというものもございます。お答えになっておりませんが、お許しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/180
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181・津川武一
○津川委員 いまは種屋さんのを榎本さんからお伺いしたのですが、倉方さん、民間の個人としておやりになった仕事で、また、いま倉方さんのお仕事をたくさんお伺いしましたけれども、そういう仕事をした方で、倉方さんは、何か、育種することは長い期間を要する、冒険だ、いわば賭博みたいなかっこうの、そういう形に受け取れることをおっしゃったわけですが、そういうお仕事をされて報いられずに終わった方などがあるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/181
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182・倉方英藏
○倉方参考人 報いられないで終った方はたくさんおいでです。前にもお話しました川上善兵衛さんというのは、いまの上越市、新潟県の高田、あそこの大地主であったらしいのですけれども、全部の財産を蕩尽してブドウの育種に当たられまして、結局余りいい品種が出なかったわけですけれども、この方なんか非常に気の毒な立場の方です。私なんか初めからないから、それ以上失うことないのです。その点は非常にいいのです。ただ、食うや食わずみたいなこともありました。大井上康さんという人も、巨峰をつくるときに、当時やはり三度の御飯も食べられなかったそうです。いま巨峰は、ブラジルなんかでもずいぶんつくられておるようです。あれなんか、海外での優秀品種として大いに活躍している実例でございましょう。
先生がおっしゃいました「ふじ」とか、ああいうリンゴですね、あれは確かに誇るべき日本の品ら、今回職務発明的なあれを加えていただいたということは、本当にありがたいのです。やはり試験場の方だって、一生懸命にやって、おれがやっていい稲をつくった、耐冷性のすばらしい藤坂五号とか、これをつくったとかいうような場合に、やはり金銭的にも、名誉もそうですか、ともども両方から厚く扱うのが本当じゃないかと思います。ところが、従来それが行われておりませんでした。たとえば、世界的な優秀な小麦なんかつくった方は二人おいでなんですよ。アメリカの優秀品種、ノーベル賞をもらった優秀品種は片親が農林十号でそれをつくった方は二人おいでです。その方なんかだれも知っている方はいないでしょう。ああいう縁の下の力持ちが全く知られないでそのままということは、私、常々とても残念でしょうがないのです。ああいう縁の下の力持ちも何か叙勲とか表彰の機会を与えていただきたいと痛切に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/182
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183・津川武一
○津川委員 今度の法律ができてから、新しく育種された、発明された方に対するのはそれでいいのですが、いままで報いられないで終わった人をどうするかという点で、この委員会の正式な質問で政府にただしてみようと思っています。
そこで、その次に、私は同時に医者ですが、民間のお医者さんががんなどを開発するときには国から補助金が出るのです。民間の医院や病院にも補助金が出るのです。私の病院も研究費をもらっているのです。そこで、種屋さんや倉方さんみたいな個人に、研究なさるとき、開発なさるとき、育種なさるとき、国が奨励金、補助金なんか出しているでしょうか。そこいら、榎本さんと倉方さんにお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/183
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184・榎本暢夫
○榎本参考人 お答え申し上げます。
種屋にはいままでそういうものはございません。
ちょっとこの例と関連するといえばするかもしれませんですが、かつて凶作、そういう不時の災がございます。それについては、恐らく二十年近く前じゃないかと思いますが、何年か補助金か助成金が出たことがあるように聞き及んでおります。しかし、その後は国から補助金、助成金というものは種屋はいただいておりません。
育種については同じことでございます。ただ言えることは、おかげさまで公益法人という法人格をとりましてから国の試験研究機関である野菜試験場は絶大なる御協力をしてくださっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/184
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185・倉方英藏
○倉方参考人 アメリカの有名な育種家のルーサー・バンバーグという方も、アメリカで補助をやろう、ところが手続が繁雑だから、そんなめんどうくさいことだったらお断わりすると断わったそうですか、私もそうです。もし、いただくにしましても、本当に自分がまじめにやる自信があると言えません。ですから、補助をいただいたら困ります。ちゃらんぽらんのところもあります。責任を果たせないときもあるかもしれませんから、やっぱりいただけませんですな。私はそういうふうに考えます。欲しいですけれどもいただけません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/185
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186・津川武一
○津川委員 もう一つは、育種者、国や県の試験場で何かつくられた方に対して、いま倉方さんから、ほとんど報いられていないという実態はどうすればいいのか。これは倉方さんから、これからも相当国や県の機関でつくってくれると思うのですが、そのと夢の育種者をどう待遇したらいいのか、法律に関係なく、いままでの実態を踏まえて教えていただければと思います。
それから、榎本さんには、そういう育種会社で、会社でやったときにその育種者をいままでどうされてきたか、これから皆さんがどうすればいいのかという、この点をお二方から伺わしていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/186
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187・倉方英藏
○倉方参考人 こういうことについて非常にむずかしいことをおっしゃるのです。たとえば、稲のいまの優秀品種、それができた、その祖先をつくった人がある、またその祖先をつくった人、だれが功労者かわからない、だから報賞できないという説もあります。ですけれども、私は、それは過去の功労者、これは考えたら切りがありませんから、まず、いいものをつくられた方を端的に報賞したらいいんじゃないか、そう考えるのです。むずかしく考えたらこれはやれません。ですから、試験場とか県とか、いいものをつくられた、やはりその方の努力なんですから——これは意欲も何にもなくて、単に勤めでマンネリズムでやっている人もあるらしいです。これじゃいいものはできません。やはりいいものをつくるという場合には、努力なさって研究なさったその成果が多分ですから、やはりその御当人に報賞していいんじゃないかと私は考えます。そうしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/187
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188・榎本暢夫
○榎本参考人 お尋ねのことの前に、ちょっとこういうことがございます。
育種者の権利につきまして、一体その登録した品種はどこに帰属するかということで私どもで会員にアンケ−ト調査したことがございます。その節、当然のことのように、いわゆるおやじ、社長といいますか、企業側は当然われわれの費用、そのために給料も払っているんだから会社に帰属するべきものだという回答が一〇〇%近くありました。しかし、育種者の方にしましたところ、これは全員がわれわれのものだという回答はございませんでした。特に種の育種につきましては、いま個人のメンタルといいますか、頭の中で考えていることだけではとてもできなくなっております。いろいろそのもと、こういうことをしようという、それのプランを立てるのは個人かもしれませんですが、それが共同で各分野分担し、グルービングで研究開発をしております。そういうことで、当然それは会社のものだよという者もおりますし、われわれグループのものだという者もおりますし、また、おれのものだという者もあった、こういうことでございます。
それで、いままでどういうふうにそういう場合は報いられていたかといいますと、いままではほとんどの会社が就業規則なりそれに類するような規則の中に、会社に有益な発明、発見もしくは商品の開発をした場合には表彰規程による表彰をする、その表彰の中には昇給あるいは賞与というような事項がございます。賞金というのもございました。そういうことでやられておりますし、これからも当然そのような形で進むと思われます。特にこの制度ではっきりうたわれるということになりますれば、一方的に企業者側がそういうのは全部会社に帰属するということはなく、当然あの規則を改定する際には労働基準監督署の御監督を受けますので、その際は、特に雇われている者も同意した判をつかなければそれは成立しないと思っております。そういうことで当然その一項は盛られると思います。したがいまして、いままでと同じように、当然何らかの形で報われていく、こう考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/188
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189・津川武一
○津川委員 時間が来たからこれで終わりますけれども、個人の民間の人の育種研究、私的な民間の会社の育種研究に国がやはり何らかの形で助成するように、私たち、これまた委員会でもただしてみたいと思っております。
先ほどの私の発言で、ちょっと誤解を受けるかもわからない節があったので一応言いわけしておきますが、私たちの病院が本当に国から研究費をもらったのです。そのときは私が国会議員になる前だということをつけ加えておきます。国会議員になってからそんなことをしたということだとまことに困ることになりますので……。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/189
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190・山崎平八郎
○山崎(平)委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、長い時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
次回は、明二十五日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時四十分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405007X02419780524/190
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