1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月七日(金曜日)
午前十時二十七分開議
出席委員
委員長 鴨田 宗一君
理事 羽田野忠文君 理事 保岡 興治君
理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君
理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
稻葉 修君 上村千一郎君
北川 石松君 中島 衛君
西宮 弘君 飯田 忠雄君
長谷雄幸久君 安藤 巖君
甘利 正君 鳩山 邦夫君
阿部 昭吾君
出席国務大臣
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
出席政府委員
法務政務次官 青木 正久君
法務大臣官房長 前田 宏君
法務省民事局長 香川 保一君
法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
法務省入国管理
局長 吉田 長雄君
委員外の出席者
警察庁警備局公
安第二課長 渡辺 善門君
警察庁警備局公
安第三課長 福井 与明君
外務大臣官房領
事移住部領事第
一課長 池田 右二君
外務省中近東ア
フリカ局外務参
事官 岡崎 久彦君
外務省国際連合
局政治課長 渡辺 允君
外務省国際連合
局専門機関課長 木島 輝夫君
法務委員会調査
室長 清水 達雄君
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委員の異動
四月五日
辞任 補欠選任
正森 成二君 安藤 巖君
加地 和君 依田 実君
同日
辞任 補欠選任
安藤 巖君 正森 成二君
依田 実君 加地 和君
同月七日
辞任 補欠選任
田中伊三次君 中島 衛君
前尾繁三郎君 北川 石松君
正森 成二君 安藤 巖君
加地 和君 甘利 正君
同日
辞任 補欠選任
北川 石松君 前尾繁三郎君
中島 衛君 田中伊三次君
安藤 巖君 正森 成二君
甘利 正君 加地 和君
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本日の会議に付した案件
人質による強要行為等の処罰に関する法律案(
内閣提出第五二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/0
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001・鴨田宗一
○鴨田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/1
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002・横山利秋
○横山委員 この人質による強要行為等の処罰に関する法律案、これはもうさきの国会においてかなりの討議をしたものでありますが、さらにこの法案を上程をなさるについて、少し大臣に基本的な諸問題について伺いたいと思います。
大臣の提案理由の説明はまれに見る長文でございまして、そしてその中にきわめて基本的な物の考え方を言われておることが特徴だと思います。引用をいたしますと「不幸にして再度事犯の発生を見た場合には、国家みずからが不退転の決意を持ってこれに対処し、人質の生命の安全を図りつつ、種々方策を講じて犯人に反省と悔悟の機会を与え、その要求を断念させた上で人質を解放させることがこの種事犯の再発防止の要諦であることを指摘せざるを得ないのであります。しかしながら、かかる厳然たる対応策を講ずる過程において、人質の生命により重大な危険が及ぶに至ることも十分想定される以上、刑事立法の面において、およそ不法な要求を実現する手段として人質を殺害することは絶対に許されるべきことではなく、あえてその行為に出る犯人に対しては文字どおり極刑をもって臨むこととする強い国の姿勢を打ち出すことにより、刑罰の本来有する犯罪抑止力と相まって、犯人に要求を断念させ、人質を安全に解放させるに至る効果が期待されるものと考え、この罪を設けることとしたものであります。」
〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
ここは非常に文章としては整っておるわけでありますが、しかしながら、いわゆる西独方式と日本方式といいますか、あの際に問題になりましたことについてのどちらに一体焦点が置かれておるのかということについては、依然としてはっきりしないということが私の疑問なのであります。私はこの前新大臣にお伺いをした際に、法務大臣が責任をとって辞職をするという異例なことがあった、今後再発した場合には法務大臣はどうなさるおつもりであるかと聞きました。法務大臣はその際、自分も辞職するにやぶさかでないというお答えがございましたから、そういう考え方は当たりません、これはお考えをお直しになった方がよろしいと申し上げた。その後、次第に政府は毅然たる極刑方式といいますか、西独的な方向へ、人質の生命よりもと言っては過言かもしれませんけれども、断固たる決意、態度の方へ重点に移ってきたような気がするわけでありますが、この法案の提案をされるに当たって、このいま読み上げました文章はどういう考えに基本を置いておるのであるか、改めて伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/2
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003・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 今度提案いたしました中に、いまお話しのとおりに、残念ながら犯人が人質を殺傷する、生命を絶つというようなところまでいけば極刑をもって対応しなければならない、こういう一つの類型をつくっておるわけでございます。これは申し上げるまでもなく、ああいう場合には何とか人命を損傷しないように最大限の努力をしなければなりませんが、さればといって、そのためにこの前のようなことを繰り返しておっては、率直に申し上げて法秩序はそういう段階からだんだん崩れていくことも明らかであります。でありますから、それはやるべきでないという基本的な態度でございます。しかし、簡単にそう割り切れるものではありませんので、可能な限りあらゆる努力をして人質の生命を救う、これに全力を挙げていく、なおかつ至らないときには、前にも申し上げておりますように、国家の基本である、法治国家の基本であるそれをないがしろにするようなことは断じてやってはいけない、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/3
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004・横山利秋
○横山委員 依然としてあなたの答えははっきりしないと思います。つまり、先回のハイジャックの際には閣議で電光石火のごとく人質の安全ということを第一義的に唱えました。福田総理の裁断があったわけであります。もちろん、電光石火といいましても、その間の閣議なりあるいは閣内における議論はかなり強いものがあったとは思いますけれども、それにしても、基本的理念として人質の安全保障ということを最優先にするということが短い時間で裁断されたと私は思います。その日本的な方式と、西独が行いましたこれまた電光石火のような強硬手段とは対蹠的でありました。それぞれ反省すべき点はあると思うのであります。どちらがいいと必ずしも断定するわけではありません。けれども、いま提案されております法案のバックになっております基本的理念はどちらとも言えない、こういう感じがいたすわけでありますが、私の判断に間違いがございましょうか。人質の生命、安全が基本であるというさきの日本政府のとった態度、これに変更があると考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/4
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005・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 私は、憲法以下法律制度をつくって、いわゆる平和国家をつくる、そして国民の安全あるいは自由を守る、これは人間のためにあるわけでありますから、その制度自体が人命を尊重するという立場でできておると思います。しかしああいう事態の場合に、ああいう極限の場合において、その基本の法律制度を破ってまでもやるということは、いま申し上げました本来の法律制度に反しておると私は考えます。でありますから、重ねて申し上げますが、人質の安全を図ろうと思ってもどうしても図れない場合がある、さればといって法律制度を破っていいということにはならない、こういう立場で考えておるわけでございまして、残念ながら、時と場合によっては人質の損傷をある程度来す場合もあるかもしれないが——これを好むものではありません、さっきも申し上げましたようにあらゆる努力をして、人質の安全を図りながら犯罪の防止に努めなければならない。割り切れないようにおっしゃいますけれども、これ以外にないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/5
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006・横山利秋
○横山委員 そういうお考えは、確かに、先般の閣議で福田総理が裁断をいたしました人質の生命、安全が最優先するという考え方と少し違っておると思いますが、それは法務大臣のお考えでございますか、この法案を提出いたしました内閣全体の考えでございますか。どちらでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/6
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007・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 内閣全体の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/7
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008・横山利秋
○横山委員 しからば、ここにございますように「極刑をもって臨むこととする強い国の姿勢を打ち出すことにより、」とありますが、これが極刑だとお考えになりますか、この法案の内容は極刑だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/8
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009・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 極刑というのは、申し上げるまでもなくこの犯罪には死刑をもって対応すべきである、こういう規定を設けようとしておりますから、そのことを申し上げておるわけでございます。犯罪人の心理というものはいろいろ動くと思いますが、やはり人間でありますから、生命を惜しむことは当然でございます。でありますから、刑罰としてそういう刑罰を備えておいて、必ずしも万全ではないかもしれませんが、反省の機会を与える、こういう抑止力、そういう考え方でこの刑を設けておる、こういうことでございます。それまで至らないために全力を挙げるということは当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/9
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010・横山利秋
○横山委員 承れば、この法律案要綱の第一、「二人以上共同して、」云々の場合、この法案は「無期又は五年以上の懲役」になっておりますが、最初の原案は、この第一のことも死刑だという原案があって、自由民主党の内部でか政府内部でか知りませんけれども、人質を殺していないのに死刑にするのはいかがなものかということで、それがいま提出されております「無期又は五年以上の懲役に処する。」とされておるのであります。したがいまして、この文章によります「極刑をもって臨むこととする強い国の姿勢」というものが、この原案が果たして極刑に値するのかどうか、その点について若干の疑問があるわけでありますが、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/10
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011・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 細かい法律の規定については、必要であれば刑事局長からお答えいたしますが、いわゆる死に至らせる、人質を殺した、こういう事象がない間は、極刑といいますか、死刑をもって臨むということが最初から原案にあったわけではございません。そういう議論も政府の中で行われたことは事実でございますが、しかし、人を死に至らしめない場合に死刑をもって臨むということはできるだけ慎まなければならない、こういうことが刑事法の潮流でございますし、重ねて申し上げますけれども、改正刑法草案においてもそういう場合の死刑はだんだん減らしておるという傾向でございます。でありますから、人質を死に至らしめない場合は、さっき申し上げました最高無期、これをもって臨む。しかし、そういう場合でも、ああいう極限的な犯罪に対しては死刑をもって臨むのが適当でないか、こういう議論もありましたが、法務当局としては、やはりそれは適当でない、こういう考え方を持って臨んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/11
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012・横山利秋
○横山委員 この要綱を拝見いたしますと、第二は、すでに現存しておる法律をそのまま持ってきたわけでありますね。ですから、この提出されております法案が、この文章に言うところの極刑をもって臨む強い国の姿勢をいま打ち出したということにはならないのであります。先ほど冒頭に読みました作文がきわめて作文的ではないか、何が文字どおり極刑をもって臨むことに新しい提案があるのか、作文で仕事をしておるのじゃないか、私はこういう感じがするわけでありますから、その点を念を押しておるわけであります。
それから、極刑をもって刑罰の本来有する犯罪抑止力を期待するとあります。少なくとも、いわゆる過激派の諸君が抑止力が働く連中であるかどうかということに私は疑問を持っておるわけであります。かかるハイジャックをし、あるいは人を殺す、そういう連中が果たして刑罰を恐れるの余り、極刑を恐れてもうやめようとか、ここで殺したらおれが死刑になるからもうやめようとか、そういう心理効果をこの連中に与えることができるのであるか、犯罪抑止力となるのであるかどうかという点について私は非常な疑問を持つわけでありますが、その点どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/12
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013・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 すべての刑事罰が全部抑止力につながるかというと、なかなかそうはいかないと思います。いわゆる過激派、現在行われておりますような過激派集団の中には、一つの信念と申しますか、特殊な考え方に立っておる人があると思います。でありますから、常に死刑という極刑をもって臨んだ場合に、それを恐れて反省するかというと、必ずしもそうじゃないと私も思います。しかしそうばかりでもない。先ほども申し上げましたように、人間はやはり何といっても生命がなければ主義主張も何も通りませんから、やや冷静になればそういう反省もなきにしもあらず、全然期待はできないとも思いませんけれども、全部期待される、かようにも思わないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/13
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014・横山利秋
○横山委員 一般の刑法による犯罪抑止力の場合と過激派の諸君に対する犯罪抑止力というものはまるっきり違うのではないか。過激派の諸君が国内及び国外で訓練を受け、そして内ゲバの状況を考えましても、今日までのさまざまな彼らの行動その他を考えましても、死を恐れあるいはまた刑罰を恐れて自分たちの行動を抑止するという傾向は全くないと言っても過言ではないと私は思います。そのことにつきましてもこの提案の趣旨は問題を甘く見過ぎているのではないか。これが一般的に国民に対する教育効果はあるかもしれませんが、過激派の連中に対して、彼らに対する犯罪抑止力をもし期待をするとするならば、甘さも甘し、大甘と言わなければなりません。この極刑をもって臨むこと、したがってこれが彼らに対する犯罪抑止力になり得ると本当に思ってみえるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/14
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015・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 およそ一般に刑罰というものは、行為責任に応じた正しい意味の応報でありますと同時に、犯罪予防の効果すなわち威嚇力を持つとされておるわけでございます。特に死刑におきましてはその効果が強いというのが、古来わが国民の大多数の確信であろうと思います。
過激派の場合どうかということでございますけれども、内ゲバ事件その他をずっと見てまいりますと、過激派といえども命が惜しいということは明らかでございます。よく死刑廃止論などをめぐりまして、死刑というものは、いわゆる激情犯でありますとか絶対に検挙されないという確信を持っておる連中、これには効果がないというふうに言われますが、現に強盗殺人その他で死刑の判決の言い渡しを受けましたような類型を見ますと、必ずしもそういう激情犯あるいは不検挙確信犯、こういうものばかりではないわけでございまして、特に計画的に練りに練って凶悪な犯行を行おうとする犯人にとりましては、やはり生命の危険を覚悟して犯行をあえてするということにつきましては心理的な抵抗、抑制というものが働くことは当然でございまして、そういう意味で私どもとしては、死刑というものに相当な威嚇力、犯罪抑止力がある、こういうふうに考えておるわけでございまして、この点は大多数の国民の確信にも沿うものであろう、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/15
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016・横山利秋
○横山委員 最後の、大多数の国民がこの法案について理解を持つかもしれないという点については同意ができます。しかしながら過激派対策が、もちろんあなた方もこの刑罰を強めることによってのみ対処し得るとは思っていらっしゃらないと思いますが、少なくともこの提案の趣旨というものが少し刑罰オンリー主義、そういう感覚を与え、極刑だとか犯罪抑止力だとか、そういうところに力点を置いておられることについて、この法案を審査する者としては、あるいはこの法案を見る国民としては、政府の考え方が間違っているのではないかということを考えざるを得ないと私は思うのであります。
そこで、法務大臣に少し角度を変えてお伺いしたいと思うのでありますが、毎年毎年、過激派の何らかの行動がある、この過激派の温床というものを一体どう考えたらいいか、刑罰だけでは意味がないという私の論理から発展するわけでありますが、なぜこの過激派が出てくるか。
例を仮にイタリアにとってみましょう。モロ前首相がいまなお行方不明である。イタリアと並んで西ドイツ、そして日本、この三カ国にまず集中的にあらわれておる過激派、もちろん三カ国ばかりでなくて、南米でも世界各国にもあるわけでありますが、一体なぜ過激派が生まれてくるのであろうか。イタリアに至ってはもう映画女優なんかも国外へ逃避する、こういう状況があるようであります。
私どもが、過激派対策を刑法なりそのほかのいろいろな手段をとって予防措置をするのも当然なことではありますけれども、また、きのう本会議において満場一致で決めました成田に対するあの決議にいたしましてもそうでありますけれども、政治家として、過激派が生まれてくる温床というものを一体どう考えたらいいかということを、この際、私は率直な所見を法務大臣に伺いたいと思うのであります。
たとえば違うかもしれません、言い方は問題があるかもしれませんが、イタリアにおいては、過激派の諸君に言わせれば、イタリアには野党がないという言い分が一つあるそうであります。この言い方にはずいぶん誤解があると思いますけれども、少なくとも過激派がとっております手段方法については、いかなる国民といえどもそれに同意することはできますまいが、彼らが持っております要望要求が満たされないところに一つの問題が生じておるのではないか。議会民主主義というものに対する一つの危機がそこに生まれておるのではないか。それは広範な、社会的なバックグラウンドが問題になるでありましょうし、あるいはまた、広く言えば教育のあり方にも波及するかもしれませんが、少なくとも過激派が生まれてくる温床、それを政治の舞台からどう考えたらいいかという点について、法務大臣の閣僚としての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/16
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017・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 イタリーの話等ありましたが、やや国情によっても違うと思いますが、わが国でいわゆる過激派という、日本赤軍であるとかいろいろの爆弾事件等、たとえば今度の成田事件等にも関連があると私は見ておるわけでございます。この根源には、それこそわれわれが察知し得ない根源も——教育問題もあろうし、いろいろあると思いますが、いま彼らが主張しておることは、長い歴史の過程においていろいろな事件があった、率直に申し上げて天皇制が云々、あるいは帝国主義であるとかいろいろな主張をしておりますが、ちょっと私には理解できない主張であります。現在主張しておることはそういう極端な、憲法下におけるいわゆる民主主義の社会においてどうしてそういう気になるのかということ、私率直に言って理解に苦しんでおるのが彼らの理由になっておるわけでございます。でありますから、これは子供からの教育、いろいろなことが影響しておると思いますが、極端に世界が違う。長い歴史の間にはどこの国でも人類はいろいろな経験を積んでおるわけでありますが、彼らの主張を見ておりますと、古い歴史を現在に当てはめて、現在になおかつ古い歴史にいろいろなことがあったようなことがあるかのように錯覚をしておる、私にはそう見えてならない。これは大きな間違いであると思いますが、ああいう心境になっておることはむしろかわいそうである、哀れであると私は思っております。
そこをどうすれば一体解きほぐせるのか、私にはいまそういう確たるお答えをすることができませんが、簡単に申し上げると、余りに人生というものを単純といいましょうか簡単といいましょうか、考え方はきわめて幼稚であるように私は思います。これにはいろいろな関係があると思いますが、私はそういう見方をしておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/17
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018・横山利秋
○横山委員 それは法務大臣としての答えかもしれませんが、政治家であり閣僚である瀬戸山さんのお答えにはならぬのではないか、この過激派の連中をどこか宇宙へでも隔絶をしなければ解決ができないということになってしまうわけであります。われわれが心配をいたしますのは、この法律を通してもまた何かの過激派の行動があり得るということをどう考えたらいいのかということを政治家としてお互いに考えなければならぬのではないか。たとえば成田の問題にしましても、もう政府と過激派を含めた現地住民との間に一切の対話がない、それがいま反省されておるわけであります。そこで、総評から提案があって、少なくとも現地住民との対話が必要であるという申し入れがあって運輸大臣もこれを了承したというのであります。すべての過激派及び取り巻くその諸君に対して、おまえたちとは世界観が違う、話をする必要がない、もしやれば処罰をするだけだということでは、私は、政治の舞台では何ら解決がない、不毛の議論になっていくと思われてなりません。ひょっとしたらわれわれの子弟の中にも過激派が生まれてくる可能性がないとは言えないのであります。現にそういうことがある。社会的に非常にすぐれた人の子弟で過激派が生まれてくる。それが親子であろうと、次元が違う、世界観が違うで済まされない。やはり日本人でありお互いの子弟である。日常ふだんにおいては何ら変わりはない。
問題は、その方法と手段にどうしても納得のできないものをお互いに感じるけれども、その方法と手段とは別に、どうしてそういう過激派が生まれてくるのであるか。それは短期的な解決がないとしても、長期的に、われわれ政治家としてとるべき手段は一体何であるかについて政府、与野党の間に何らかのコンセンサスがなければ、何の解決もあり得ないのではないか、私はそう考えるわけであります。重ねて御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/18
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019・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、いま彼らの考えているあらましを私が察知しておる範囲で申し上げたわけでございますが、そういうふうになるには、さっき申し上げましたように、いろいろの事情があると思う。私は率直に言って、政治家のあり方でも、これは彼らに大きな不満がある点があると思います。あるいは教育の問題、社会事象のあらゆる矛盾、こういうことを、人生に対する深い経験といいますかそういうものが足らないために直ちに激情に走る、思い込んでしまう。そういうところへ私はさっき申し上げましたように、口は適当でないかもしれませんけれども、かわいそうであるとかあるいは哀れであるということを申し上げたわけであります。
もちろんそういう点を、社会の矛盾を可能な限り、できる限り克服していくということは私は非常に大切であると思う。先ほど成田の問題でお話がありましたが、成田の問題でも他の場合でも申し上げておりますが、政府もそうでございますけれども、やはり反省すべき問題点が相当にある。総評から提案がありましたというお話は非常に結構なことでありますが、それ以前からそういう問題を考えて、もう少し、お互い日本人でありますから、ひざを突き合わして真剣に話し合うという態度をとらなければならぬということは、もうあの事件以来十分話し合っておるところでありまして、いまおっしゃるようにいろいろな矛盾、足らざるところ、彼らが仮に経験が少なくても、そういう思い込みをする原因、こういうところを改善といいますか改めるということはお互い努力をしなければならない。そういうところへ根本の問題があると私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/19
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020・横山利秋
○横山委員 大臣は短期的な問題としては成田の問題を例に挙げましたが、短期的な問題としては、成田の現地住民との話し合いに同意の雰囲気であります。しかし長期的な問題としては、私はやはりお答えがなかったと思うのであります。
犯罪は社会の鏡と言われておる。われわれが法務省並びに法務委員として犯罪事件に対処していろいろと立法し、あるいはここで質疑応答をするわけでありますが、われわれは犯罪面から社会がどういうふうに揺れ動いているかということについてお互いに勉強をし、洞察をし、対処をしなければなりません。
いまの犯罪、人質を例にとっておるわけでありますが、多様な犯罪、あるいは少年犯罪あるいはきわめて悪質な強盗殺人、こういう犯罪の流れというものが大分変わってきておる。その中で特筆すべきものが、ここ数年間続いておる人質犯罪だと思うのであります。私は一挙に長期的な問題を取り上げて簡単に結論づけるということは困難ではあると思うけれども、しかしながら、先ほど言ったように過激派がどうして絶えないのか、どうしてそれが生まれてくるのかという点について、お互いに真剣な意見の交換がいま必要なのではないか。それは政府としても、承れば自由民主党の両院議員総会で、新立法をつくれ、団結小屋はぶっ壊せ、あるいはまた防衛庁長官は勇み足に、自衛隊の出動の可能性もいいのだとか、そういう強気、強気の問題ばかりが山積をしておるようであります。それで一体いいのだろうか、それで一体過激派が恐れをなして影をひそめ、今後の行使をやめるのであろうか。
〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
それもまた必要であるかもしれませんけれども、もう一歩退いて、過激派が出てくる要因が、政府のどこに問題があるのだろうか。ここ十年近く続いております高度成長の陰で、社会の繁栄があるように見えて、それは見せかけであって、実は公害や交通事故やあるいは住宅難や青少年犯罪や人質や物価高や、あらゆる問題が生まれてきたところに、親子の隔絶も生まれ、そして議会民主主義に対する信頼感の喪失が生まれ、政党不信が生まれておる。抽象的で、非常に広範な問題ではありますけれども、そういう角度の反省というものが政治に反映をしなければ、われわれはただ法律をつくって、抑止力のない極刑をもって、それで能事足れりとしておるという欠陥にわれわれはみずから身を落としていくのではないか。
法務大臣は、犯罪が社会の鏡であるという立場に立てば、政治の姿勢なりいろんな角度において、この問題と直接間接に関係がなくとも、一つの指標を閣議の中で提供すべき問題があるのではないか。そのことについて政府はもちろん、自由民主党の中にも何らの言及をされることがないとはいかがしたものであるか、そう痛感するのでありますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/20
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021・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 いま横山さんからお話しのようなことは、政治家ならずとも、国民全部が考えることだと私は思います。そういうことをお互いに調整をして、社会の矛盾を可能な限り調節をしていくということは、これはいつの時代でも大切なことだと思っております。政府といえどもそういうことをないがしろにしておるとは私は思いません。
さればといって、一億一千万の国民がおるわが国において、大多数の人は、それはお互いいわゆる民主主義的な方法で改めるべきは改めようという努力をしているときに、いわゆる一握りの過激派がそうやるということは、これは見逃すわけにはいかないわけでございます。そこに私がさっき申し上げたように、余りに短絡的に社会事象、人生というものを考えておる、こういう点に彼らには彼らなりの欠陥があると率直に私はそう思っております。でありますから、一億一千万の国民がおるのに、社会の矛盾はたくさんあります。それはお互いに考え直すところは考え直し、また改めるところは改める、これは当然のことでございますが、それをああいう過激な行動によってやる、ここに間違いがある。その間違いはやはり国民の名において正さなければならない、私どもさように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/21
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022・横山利秋
○横山委員 これは幾つかの社説が出ておるわけでありますけれども、その一つを引用いたしますと、途中省略をいたしますが、結論として「これらの凶悪事件の底に流れる人間精神の荒廃にも目を向ける必要がある。高度成長のもとに豊かな社会が現出したにもかかわらず、過激派学生を生み、フーテンを輩出した世相に、精神文化の貧困と人間性喪失が映し出されているのではないか。精神文化のこの貧しさが凶悪事件を生む素地になっていることは、過去の犯罪史の教えるところである。個々の人質事件は、その場その場で警察の力で解決しているが、それだけではこの風潮の根絶には役立たないことをわれわれは銘記をしなければなるまい。」私は頂門の一針だと思うのであります。私くどく言いますように、お互いにわれわれは、まあ小なりといえども政治生活を長らくやってきておる。だから、この過激派の手段と方法がけしからぬという点については全く一致をするけれども、それがどうしたらなくなっていくかについての何らかの基本的な答えを出しておかなければ、われわれは審議するに値しない。われわれは審議する政治家としての責任を全うできないということを私は痛感するわけであります。もし万一、それらはわれわれと世界観が違う、人種が違う、そんなものはこの世の中から消えてなくなればよろしい、これは何らかの方法で拘禁しなければだめだという観点が先行するとすれば、われわれはわれわれのやっていることに絶望感さえ持たざるを得ないのであります。ですから、いまの大臣の答えに私は納得ができないのであります。
われわれのこの審議の中で、政府として、またお互いとして、基本的にこの過激派の連中が出てくる要因、またその要求、その要求が、いまあなたのおっしゃるように世界革命であるか何であるか問題にならない点もないとはしませんけれども、彼らの出てくる要因というもの、要求の底にある要因というものを整理をして、そしてその整理の中にわれわれが考えるべきこと、この過激派対策とは別に、われわれ政治の中で考える点がどういうものがあるかということを考え、そしてそれに対する一つの方向をわれわれ自身が見出さなければ、私どもはこの法案の審議について、お役人に任せておけばいいのであって、むしろわれわれのなすべきことではないのではないか、そう思いますが、もうお答えになりませんか。もういいですか。もうおっしゃったとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/22
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023・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 いろいろお話がありましたが、経済成長等のお話もありました。私は政治家の一人として、最近のこの青少年といいますか、古いと言えば古いわけでございますけれども、われわれが青少年時代にはちょっと考えられなかったようなこともしばしば起こっておる。こういうことは、先ほども申し上げましたように、政治家ばかりじゃなくて、国民全体がここら辺でそこの原因を考え、改めるものは改める、こういうことに努力をしないと非常におかしなことになるのじゃないか。広範な問題でありますから、一つ一つここで御満足のできるようなお答えができないわけでございますけれども、たとえば経済発展の中で、なるほど豊かになりました、私は常に申し上げておりますようにそれは結構でありますが、精神面といいますか、心の面の乱れが非常に大きくなった。これはどこにあるのだろうか。物質偏重になってしまって、心というものを忘れてきたようなかっこうから、いろいろ社会の中に不安定な状況が出てきておる。これはいいか悪いか別問題として、戦後の発展の中で家庭というものが破壊されておる、家庭における愛情がなくなっておる、こういう点で子供の成長に悪い面が相当出てきておるのじゃないかという気が私はいたしております。たとえば、高度成長によって御婦人もみんな職場に出ていく。まだまだ成長期にある子供を親の愛情によって見るということがほとんど顧みられないようになっている。アパートのすみに一人でちょこんと座っておる子供が相当おる。遊び場も、自然とともに遊ぶという状況もだんだんなくなってきた。考えてみますと、いろいろな点が社会の変化に大きく影響しておる、こういうことも考えるわけであります。
そういうことを含めて、率直に申し上げて私は日本の国——世界のことは言いませんけれども、世界的傾向にありますが、日本の国で、みんながもう少し人間社会というものは一体どうあるべきか、こういう問題を深く考え直している時期に来ておると私は思いますが、しかし、さればといって、さっきから繰り返すようでありますが、一部の人が自分の主義主張で社会に大きな攻撃を加える、これをそのまま見逃すというわけにはいかない。私どもはそういう立場にあるわけでございます。この点は、私は横山さんも同じお気持ちじゃないかと思う。その根底を深くえぐり出して改めるということは、戦後三十年でこうなったわけでありますが、今後やはり三十年、五十年の努力を要するのじゃないかと私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/23
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024・横山利秋
○横山委員 先ほど言及をいたしましたが、政府及び自由民主党の中で、提出されましたこの法案以外に、成田の問題に関連して新しい立法を考えるということが報道をされています。これは恐らくきわめて無理な問題に波及するのではないか。政府の内部には新立法について慎重論があるようでありますが、伝えられる新治安立法になりますか、あるいは建築基準法を含めて各法にわたるかもしれませんが、いわゆる新立法というのはどういうことが検討をされておるのか、また、それについて法務大臣としてはどうお考えになっておるのであるか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/24
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025・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 先ほど来お話しのように、たとえば過激派のお話がありましたが、たとえば成田事件以後、いろいろな意見が各方面で出されております。あるいは自民党でもいろいろの意見が、あるいは強い意見もあるわけでございます。私は、社会というものはそういうものであろうと思います。そういう意見の中で、一体どういうものがいいかということをお互いに意見を闘わし、知恵を出し合って、国民全部がなるほどというものをつくり出すのが民主主義社会だと私は思う。ただ強いばかりが能じゃないと思う。いろいろな意見がありますが、現在の憲法の精神に反しない。これは大きな枠であろうと思っております。そういうことでいま検討を進めつつありますが、まだどういう案であるという結論を出す段階に至っておりません。検討の模様等がもし必要であれば、刑事局長からお答えすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/25
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026・横山利秋
○横山委員 それでは刑事局長にお伺いいたしますが、刑事局の範疇ももちろんそうでありますが、ほかの法律にも波及をすると思うのです。慎重にとおっしゃるけれども、政府部内及び自由民主党部内では、今国会にということなんであります。現行法ぎりぎりいっぱいで処理をすることを検討するけれども、それができない場合には新立法と言われておる。とすれば、問題は、速やかに最終的な結論をつけなければならぬ。もちろん、野党の私どもとしては、それについてどういうことを言われるのか、われわれとしては新立法に原則的に反対ではございますけれども、原則的にという意味は、新立法の範疇がどんなものであるかまだ定かではありませんので、最終的、具体的に判断をすることが困難でありますが、政治的にはいかがなものかという意味で反対をしておるわけであります。その判断の材料とするためにも、いわゆる検討をしておるという新立法の検討対象となるものはどんなものがあるのか、ひとつ説明をしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/26
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027・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 今国会で成立を図りたいと、その気持はそのとおりでございます。これは本会議あるいはその他の場所で私からもお答えしておるわけでございますが、われわれは法律に従って行政を行う立場でございますから、現在の法律で一体ああいう事態に対応できないのかどうか。率直に申して、現在の法律を法律のとおりにフルに適用したと私は思っていないのです。でありますから、現在の法律で適用できる、それをまず詰めて、どうしても適用できない、やはり法律によってやらなければいけませんから、適用できない部面があれば放置するわけにいきません。現在の法律はこの程度でありますからやむを得ませんでは、これはわが国として大変な事態になりますから、そこに足りないところがあるのならば新しい立法をしなければならない、こういう基本原則で政府としては進んでおります。
でありますから、周到に詰めて、やや足りないところがある、それにはどういう法律で対応すべきかということをいま検討しておるわけでございまして、これはきわめて重要な問題でありますから、政府あるいは自民党としては野党の皆さんと十分御相談をしてやりたい、こういう方式でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/27
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028・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 現在、法務大臣の御指示を受けて私自身が関与しておりますことをまず前提として申し上げますが、今回の成田の三月二十六日の事件にかんがみまして、政府といたしましては、現行法の運用でどこまでできるか、現行法の運用でどうしても支障を生ずる場面がどの程度あるかということを、内閣官房以下関係各省庁が集まって早急に詰めるようにという御指示がございまして、運輸省を初めとする関係省庁が集まりまして、何回も会議を重ねまして詰めておるところでございます。法務省といたしましては、私どもの所管の関係の新規立法は必要がない、ただいま御審議いただいております法案、さらには刑事事件の公判開廷についての特例法、これを御可決いただければ、そのほかには特段の措置は要しない、こういうふうに考えておりますが、内閣の方から、おまえは法律専門家だから、そういう観点から相談に乗れということで、いま御相談にあずかっておるわけでございます。
いままでの経緯、もう数日でおよその見当が出るかと思いますが、そういう意味で中間的なお話になるわけでございまして、その点は御了解いただきたいと思います。
現行法の運用でどうしてもできないものが一つだけあると考えられております。それは、たとえば先般不祥事を生じました俗に言う横堀要塞、あるいはA滑走路の南端にございます岩山要塞とその他若干の団結小屋と言われるようなもの、こういうものの存在が航空の安全に物理的、心理的な相当な悪影響があることは空港関係者あるいは航空関係者一致して言っておるところでございますので、そういうものを一定の条件のある場合において撤去を命じたり、あるいは撤去を命じても応じない場合には何らかの代執行的な措置をとるということで、空港の安全のために必要最小限度のそういった措置をとるような立法が必要ではなかろうか、そういう観点で現在鋭意関係省庁で詰めておるところでございます。それ以外の場面につきましては現行法の運用でやれますし、またやるべきであろう、こういうのがただいまの中間的な結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/28
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029・横山利秋
○横山委員 何というか、大山鳴動してネズミ一匹という言葉がございますが、政府や与党が、新立法新立法と打ち上げて、そして一歩退いて、現行法でぎりぎりのところまでやってみるがどうしてもいかないときは新立法というふうに後退をして、そしていまお話を聞けば、事務的な討議の中では、そんなことなら新立法の必要はなさそうだという感じが免れがたいのであります。私が冒頭から言っておりますように、極刑だとか抑止力だとか新立法だとか、あるいは自衛隊の出動だとかなんとか騒ぎ過ぎて、むしろ相手に見透かされる結果を招いているのではないか、もっと着実な現実的な総合的な物の考え方があってしかるべきではないか、そういうことが痛感をされるわけであります。
大臣が御退席になりましたし、もう本会議の時間がありますから、午後の質問にいたしまして、これで終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/29
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030・鴨田宗一
○鴨田委員長 午後一時三十分再開することにし、この際、暫時休憩いたします。
午前十一時二十三分休憩
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午後一時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/30
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031・鴨田宗一
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/31
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032・横山利秋
○横山委員 午前中にいろいろと大臣から基本的なことを伺いました。
次に、過激派なるものの実態について少し質疑と、意見の開陳をしていただきたいと思うのです。
過激派過激派と言うのでありますが、国民はその実態を承知しておらない、また役所の中でもこの過激派というものについての深い認識がない状態ではないかと私は思うのであります。私どもが役所の立場に立ってみましても、その調べた内容を社会に公表することによってむしろ過激派に対策の余地を与えてしまうのではないかということで、過激派の全貌なり組織、資金ルート、方法その他について、ほかの事件と違いましてPRをしない、新聞もまたそれを十分報道していない、こういう状況が続いているのではないかと思うのであります。ただ、今回成田のような事件が起こりますと、改めて過激派とはどうしたらいいのかということが基本的な課題となってまいります。しかのみならず、政府がこの法案を提案するに際しましても、午前中にお話があったように、国民のコンセンサスを得たい、この法案なりあるいは政府、国会の過激派対策について国民の理解と協力が必要だ、こういうことに言及をされるようになりました。しからば国民は過激派対策について一体どういう協力が必要なのか。どういうことを政府や役所は期待をしておるのか。私の承知をするところは、内ゲバがあって人が殺された、犯人をつかまえた、被害者も犯人も黙秘権を使って何も言わないというような状況であり、過激派情報というものは役所の中でもきわめて少なかろう、いわんや国民が過激派の実態を知る由もない、協力のしようもない、またそれでいたし方がないのだ、こういうような傾向が今日までの傾向だと思うのであります。この間山崎委員の質問に答えて、政府側から過激派の状況についてきわめてごく簡単に御報告がされましたが、これでは十分な政府の国民に対する報告とは言えないと私は思うのであります。少なくともいま過激派が、どういう名前のどういう組織がどのくらいあるのか、そしてその行動形態はどんな形態をとっておるのか、その資金ルートは一体どういう状況であるのか、あるいはまた出入国に当たってどういうような出入国のやり方をしておるのであるか、あるいは東大の精神病棟のような問題の中ではしなくも出てきたわけでありますが、そういう温床になっておるところは一体どういうところなんだ等々、いわば過激派白書のようなものを、この際、差し支えのない範囲内で最大限発表をして、この問題について国民なりあるいは一般がどういうふうに協力してほしいか、それは単に私が午前中申し上げた刑事的な意味ばかりでなくて、そうしてまたより高い次元においてもどうあればいいのかということについての示唆を与える必要があるのではないかと考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/32
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033・福井与明
○福井説明員 警察が治安の維持をしまして国民の負託にこたえますためには、平素から各般の警察活動につきまして国民の理解と協力を得る必要があるということは当然であります。そこで警察では毎年警察白書というものを出しております。ことしのものはもうちょっとかかりますが、昨年の白書の中にも実は過激派の実態について述べておるわけでございます。「「テロ」、「ゲリラ」本格化への指向を強める極左暴力集団」こういうタイトルでございます。
まず大勢でございますが、四十四年末の五万三千五百をピークにしまして、漸減してきて、四十九年ごろから三万五千ということで横ばいである、こういうことで書いております。現在もそういう状態が続いているわけでございます。
それから、いわゆるテロ、ゲリラの中でも最たるものであります爆弾事件について触れております。初歩的な理化学の知識があれば、残念なことながら、巷間に出回っております「腹腹時計」とか「薔薇の詩」等の爆弾教本と称するものを活用しまして爆弾をつくることができる状況にあります。組織がだんだん分裂して小さくなっていきまして、街頭行動等ではなかなか自分の主張を思うように表現できないブント系の小グループとか、いわゆる黒ヘルと称するノンセクトラジカルの一部がこういう爆弾闘争にのめり込んでいっておる。爆弾グループのと申しますか、爆弾闘争を指向する連中のすそ野が広がっておる、こういう分析をそこでしております。こういう状態も現在まで依然として続いております。
次に内ゲバでございますが、これは四十四年以来、若干増減はございますけれども、二百数十件というところで大体来ておったわけでございますが、それがここ一、二年、九十一件、四十一件ということで急に減ってきておるわけでございます。これはいろいろ原因はございますけれども、やはり国民がこういうものに対する批判の目を強めたこと、そういうバックアップのもとに取り締まりをやってきておることがあずかって力があるというふうに見ております。
ただ残念なことに、全体の件数は減っておるけれども、いわゆる事件そのものは手口がますます悪質化すると申しますか、したがいまして被害状況も非常に陰惨になってきておる、そういうことを分析しております。押収しましたまさかりとか大型バール等の写真を登載しましてその状況を訴えております。
それから日本赤軍でございますが、これは、去年の白書が出た時点では、九・二八日航機乗っ取り事件が発生する前でございましたけれども、その前の年の奥平純三、日高敏彦がヨルダンにあらわれた等の状況をとらえまして、日本赤軍がクアラルンプール事件以降若干鳴りをひそめておったのが再び危険な姿をあらわした、こういう分析をしております。こういうものに加えまして委員御指摘のように、こういう状況でございますので、さらにきめ細かに小冊子等でそのときそのときの状況をとらえて実態を国民にできるだけ広く知っていただく、こういう努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/33
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034・横山利秋
○横山委員 まず現状における過激派の組織状況、これはどうしても困るということ以外に、この際、国民の協力を受ける体制をつくるためにも、本委員会に過激派に関する諸資料の提出を求めたいと思いますが、提出できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/34
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035・福井与明
○福井説明員 実は極左暴力集団は、去年の十二月十五日付の革労協の機関紙の「解放」で、合法活動と非合法活動、公然活動と非公然活動との結合、非公然革命党の建設ということを言っております。中革派の一月一日付の「前進」で、公然部門を一層強化しつつその裏側に党をもう一つ非合法、非公然的につくるのだ、こういうことを言っております。ますます非合法、非公然化という方向をとっておるわけでございます。そこでこちらの動向、捜査の方向等を微妙に読み取って、危ないと思えばもぐるわけでございます。
そこで現在、内ゲバ殺人について四十八人、爆弾事件についても十八人の指名手配者を持っておりますが、例の加藤三郎の捜査に見られますように、一たん彼らにもぐられてしまいますと大変な労力を要して、しかもなかなか検挙できないという実態があるわけでございます。したがいまして、警察の内部でも、まことに残念なことでございますが、相手の非合法、非公然化に対処しながらこれに対応せざるを得ないという実態があるわけでございまして、明らかにできる部分についてはさっき申し上げました白書等を通じて明らかにしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/35
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036・横山利秋
○横山委員 私もその気持ちはわかるのです。わかるけれども、いまこの過激派の連中に対して一体われわれは何をなすべきか。単に刑事事件ばかりでなくて、午前中、私と法務大臣とのやりとりをお聞になっておると思うのでありますが、何をなすべきかということについて私自身、恐らくここにおられる大多数の皆さんも過激派の諸問題についての十分な知識を持ち合わせていない。いわんや国民にもしその警戒心さえあったならば、すぐに警察に通報するなりあるいは排除を求めるなり、そういう方法があったのではないかと思われる節が数々あると思うのであります。だから口先だけで国民の理解を求めたい、国民の協力を求めたい、こういうことが法案提出の際に、政府から言われましょうとも、何を一体協力をしたらいいのか、その前に相手は一体どういうものなのかという認識がきわめて欠けておる。何かめちゃくちゃなことをするものだ、さわらぬ神にたたりなし、われわれの分野だけを守っておればいいというようなことでは、警察の苦労もわからないではないけれども、何かそこから一歩踏み出る必要がありはしないか。警察側としても法務省としても、国民的協力を求めるということであるならば、いまの苦労はわからないではないけれども、一歩そこから抜け出ることが必要なのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。あなたが自分一人でそれが判断ができないということであるならば、一回警察庁でよく御相談なさって、この次にひとつ御答弁を願いたいと思いますが、どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/36
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037・福井与明
○福井説明員 実は、同じようなことを御説明申し上げますが、極左暴力集団の本格的な爆弾事件で、大変残念なことでございますが、いわゆる捜査の常道と申しますか、地取り捜査だけで犯人までたどりついたケースはございません。したがいまして、非常にめんどうな、いわゆる彼らの行動をこちらの目と足でかせいでいく、そういう捜査を繰り返していくわけでございますが、相手はさっき申し上げましたようにいわゆる非公然化を強めておって、数カ月ごとに住んでおる拠点を変えていくというような対象でございますので、その実態を明らかにすること自体がわれわれとしてもなかなかむずかしい点がございますし、つかめない点がございます。それからわれわれの方でつかんでも、捜査中等の状況でなかなか発表できない部分が残念ながらございます。しかしながら、そういう実態について明らかにできるものは、白書なりあるいはさっき申し上げましたように小冊子等でそのときそのとき、内ゲバなり爆弾事件なりあるいはハイジャック等のテーマをとらえて、役所の文書でございますのでなかなかかた苦しいわけでございますけれども、できるだけ努力をいたしまして、国民の各層に理解をいただけるような努力を、これまでもやってきておりますが、さらに工夫をして努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/37
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038・横山利秋
○横山委員 一回、ひとつ私の希望を警察庁で検討していただきたいと思うのです。
そこで、それに関連をしてお伺いをいたしますが、伝えられるところによりますと、成田の問題を中心にして破防法の三十九条、四十条を法務省として、公安調査庁所管だと思うのでありますが、適用を検討するというお話がございますが、本当でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/38
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039・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 公安調査庁の事柄にも関しますのであるいは大臣からお話があるかと思いますが、その前に申し上げますと、世上言われます破防法適用問題というのは、二つの問題を分けて考える必要があろうと思います。
一つは、破防法の五条なり七条、あのあたりに書いてございます団体規制の問題でございます。これは公安調査庁が所管をしておるわけでございまして、現在、成田のあの事象にかんがみまして、あの暴挙に出ました団体というものについて、ただいま申し上げます破防法による団体規制の対象となり得るかどうか、なり得るとしてそれが公安審査委員会に指定の申し立てをする手続にたえ得るかどうか、そういうことを検討しておられるように伺っております。
それからもう一つの問題は、ただいま御指摘のありました三十九条、四十条あたりの問題でございまして、これは破防法に定められましたいわば特別刑罰類型の適用の問題でございまして、一例を挙げますれば、放火とか殺人あるいは集団かつ凶器による公務執行妨害、こういうようなものを扇動したり教唆したり、こういうような罪を独立罪として処罰することとしておるわけでございます。これにつきましては、ただいまの時点の事件処理といたしましては、もっとそのものずばりの、火炎びんの処罰法でありますとか、放火未遂でありますとか、殺人未遂でありますとか、そういう刑法上あるいは準刑法上の刑罰法規で十分対処できておりますので、現在のところ、その適用の必要に迫られておりませんが、将来、もし情勢がエスカレートする等の事情がありまして、破防法の罰則に当たるようなものが出てくるとすれば、それはそのときにその適用について検討すべきものであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/39
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040・横山利秋
○横山委員 法務大臣に、閣僚の一人としてお答えを願いたいのですが、金丸防衛庁長官が、警察力のバックアップのために自衛隊を出動させるということを言われました。大変ショッキングな話でございまして、後から、何か新聞の話によれば、金丸さんは勇み足だったというようなことき雰囲気になられたようでありますが、そんな話は一体どうお考えになりますか。けさあたりから言っております問題に、大変冷静を欠く物の考え方だと私は思いますが、あなたはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/40
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041・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 過激派のいわゆる革命的暴力行為について、自衛隊が治安のために出動する、こういうようなことを閣議等で話が出たことはありませんが、私は、きのうの委員会でそういうお話が出たということを新聞で見ただけでございます。そういうことでございますから、私はそれを見ての想像の所感しかないわけでございまして、成田でああいう事件が起こりましたが、あれは私どもの見ておるところでは、革命行動だ、こういう考え方でやっておると見ておりますが、ああいうことが、新聞を見ますと全国各地で起こる、武器を持ってやるというようなことになりますと、いわゆる一般論として、時と場合によっては自衛隊が警察の後ろ盾にならなければ対応できないのじゃないか、こういう趣旨の考え方で防衛庁長官は意見を述べられたのじゃないかと思いますが、そういう話が閣僚の間とかあるいは閣議の席とかで一遍も出たことはありませんから、特段の所感は持っていないと言うと恐縮でございますが、ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/41
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042・横山利秋
○横山委員 一犬虚にほえて万犬実を伝うということわざがありますが、今回は、一犬実を伝えて万犬虚を伝うとでも申しましょうか、大変政府、与党の中で冷静さを欠く議論が横行しておる。そのために、言ってしまってから次から次へと取り消しや後退が相続くというようなみっともないことが続いておるような気が私はするわけであります。
本来、成田事件なるものの分析が大体定まってきたようでありますが、間違っておれば警察庁からひとつ言ってほしいのでありますが、もしあのときにマンホールのトンネルをくぐって管制塔に入らなかったら、なるほど衝突も起こり、若干の死傷者も不幸にして起きたかもしれないけれども、しかしながら、マンホールをくぐって管制塔へ入って壊さなかったら、こんなことにはならない、開港もできたかもしれない、そう思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/42
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043・福井与明
○福井説明員 三月二十六日の警備でございますが、マンホールが実は七つあったのに、六つだけしか確認が済んでおらずに、六つだけしか入り口をふさいでおらなかった、実査が不十分であった、そのために管制塔に侵入されてしまった。この点は、やはりそういう実査の不十分のために管制塔へ侵入された。それともう一つ、電子ロックというものを過信し過ぎたということもございます。したがいまして、あの部分には物理的に、内側からあけない限り入れないものという前提で部隊配置をやっておったということがございます。管制塔といいますか管制室の入っておるあの建物を含めて、あの地域を警戒する機動隊がございましたけれども、そういう認識でございますものですから、管制塔だけを専門に警備をしておるのは空港署員四十五名だけだった、こういうことのために、あそこへ入られたことについては、警察としましては反省をしております。
あといろいろございますけれども、九ゲートなり八の二ゲートから入られた部分については、検挙するなり排除をするなりしておりますので、ぎりぎりの警備目的は何とか達成をした、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/43
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044・横山利秋
○横山委員 責めておるわけではありません。事態の冷静な分析を私はお互いにしたいと思うのであります。一万五千の警官があって、万全の手配をしておった。そして、仮に激突が起こっても、それは正攻法であるならば、これを処理することができた、そういう考え方がだんだん定着をしつつあると私は思う。ただしかし、不幸にもマンホールから通って管制塔を抜かれてしまった。これは非常に残念なことではありますが、今後の対策としての示唆というものが、この二つの問題から十分考えられることである、私はそう思っています。もちろん、一たん失敗があったことでありますから、この次、政府が予定される開港は何が何でもやらなければいかぬ、その日にはどんなことがあってもやらなければならぬではなくして、さらにいろいろな配慮、慎重な態度、場合によれば延期、そういうものもなくてはならぬ。それは当然のことではあるけれども、しかしこの間の成田の失敗の原因というものは明白にお互いが理解をしておらなければ、問題の処理を誤るのではないか、そう私は考えるわけであります。このことは警察力、警察の警備の失敗であったと思いますが、しかしそれにも増して、今日まで警察陣が非常な努力をしたことは、私は決して過小評価をしておるものではありませんから、そのつもりで、ひとつこれからどうあるべきかについて、どういう対策をすればいいかについて、この間の失敗はまさにここにあったんだという理解をしなければ、問題の所在、対策の所在を間違うと思うのであります。
もう一つ法務大臣にお伺いしたいのでありますが、今後ともこの種の不祥事件が生ずるということをお互いに覚悟してこの法案の審議をしておるわけでありますが、いろいろな諸般の政府の対策の中で一つ欠けておる点があります。それは、本委員会において各党から要望され、法務省もまた了承し、大蔵省が金の問題でうんと言わない、刑事被害者の補償法案の問題であります。当然のことのように政府の対策の中に浮かび上がってこなければならないのに、これだけが放置をされておる。このことについて法務大臣はどういう責任をお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/44
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045・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 法務大臣から御所見を申し上げられます前に、私から御説明申し上げておきます。
被害者補償の関係につきましては、再々御質問をいただいて、その際お答えいたしておるとおりでございますが、諸外国の現状、それからわが国のいわれなき犯罪による被害者の実情等からいたしますと、この被害者補償制度の早急な実現ということは、やはり私ども何としてもやらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
ただ、いろいろ具体的に立法化の詰めをしてまいりますにつれ、実施機関が一体どういうシステムでやるべきか、またそのことを考えます際に、最近における行政簡素化の要請との調和をどうするか、こういう問題がございます。また補償の範囲、程度等を十分検討いたさなければなりません。またこのことは、御承知のとおりの現在の政府の財政事情というものとの調和において考えなければならない。さらには犯罪被害者以外のいろいろな社会的な不幸な人たち、そういう者に対する救済措置、こういうものとのバランスもにらんでいかなければならない。そういう意味におきまして、ひとり法務省でありますとか警察当局とかだけで論議し尽くし得るテーマではございませんので、今日ただいま政府部内の各関係省庁と鋭意その辺を詰めておるところでございまして、なるべく早く結論を得たいと思っておることは事実でございまして、何とかやらせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/45
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046・横山利秋
○横山委員 事務当局としてのそういうような説明は何回も聞いておることであります。しかし、いまこの法案なり成田事件が生じておって、政府部内で関連の諸問題について討議をする絶好の機会なのであります。このときを外して——平静になったときには、恐らくこの刑事被害者補償法案はさらに冷却をすると私は思わざるを得ません。いろいろな問題はあるけれども、実現をするとすればまさにいまこういうときにこそ法務大臣が閣議の中で力説をしてもらわなければ、説得をするいい条件はそうは生まれてこないと私は思うのであります。法務大臣の御決意のほどをお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/46
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047・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 大体の状況はいま刑事局長からお答えしたとおりでございますが、前々から私自身もこの席等でお答えしておりますように、いまの犯罪の状況等から見るとどうしてもそういう被害者救済の制度をつくらなければならぬという強い考えを持っておるわけでございます。しかし先ほども御説明いたしましたように、いかなる犯罪、いかなる形のものにするか、いろいろ各方面に関係のあるものがたくさんあるものですから、いま詰めを一生懸命やっておるということでございます。問題点がずっと明らかに出ますれば、できるだけ早く閣議で話して促進をしたい、こういう考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/47
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048・横山利秋
○横山委員 いい時期を逃したならば実現できません。私も長年の経験としてそう思いますから、ひとつこの時期を十分考えて、法務大臣の善処をお願いしたい。
昨年の十一月十五日、航空機強取等防止対策を強化するための法律を通しました際の附帯決議が十一項目ございます。この中で、九項目目に「今日までのハイジャック関係犯人については、国民世論にかんがみ、あくまでその追及、逮捕、引渡等について全力を尽くし、必ず成果を期すべきである。」これはもうわれわれ理事間で満場一致、とにかくつかまえてもらいたい、そうしないと、この次続発するものに対しても示しがつかぬし、国民に対しても相済まぬ、こういう気持ちで九項目は入っておるわけであります。
この間の質問に対して、アルジェリアを出国したらしいという情報は承りましたが、これら犯人について、その後の状況、対策について、外務省並びに警察庁から承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/48
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049・池田右二
○池田説明員 ダッカ事件の犯人の動向につきましては、先般警察庁の方から御説明がございましたとおりでありまして、外務省といたしましても、在外公館等を通じましてその動向についてのいろんな情報を、各国とも協力しまして調査中でございます。種々の情報はあるのでございますが、いずれも、事柄の性質上確認できるに至っておりません。この点につきましては、先般も申し上げましたとおり、ICPO、国際刑事警察機構を通じて国際手配をいたしまして、それから在外公館を通じまして犯人の手配書、それから不正旅券の識別の書類等を関係各国当局に送りまして、調査、情報を収集する等いろんなことをやっておるわけでございます。そういうわけでございまして、現段階におきましては犯人の行方につきまして確定的な情報はございませんが、今後とも、ただいま申し上げました方法等を通じて鋭意調査を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/49
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050・福井与明
○福井説明員 犯人らの動向については外務省から御説明がありましたとおりでございます。
その後の国際手配等の状況について御説明いたします。
実行犯五人のうち四人、名前がその後判明いたしました。丸岡修と西川純、坂東国男、佐々木規夫でございますが、十二月二十六日に航空機強取等の処罰に関する法律違反と監禁罪の容疑で逮捕状をとりまして、一月七日に国際手配の要請をして、三月の六日に国際手配になっております。それから釈放犯の六人でございますが、これのうち五人、城崎勉、大道寺あや子、浴田由起子、泉水博、仁平映、これにつきましては一月二十八日に国際手配になっております。それから奥平純三でございますが、これは四十九年九月十三日のハーグ事件で五十年の八月に一度手配になっております。ところが五十一年の十月にヨルダンで身柄を拘束されて日本に送り返されてきて逮捕いたしたものでございますから、一度この手配は解消した形になっておったわけでございますけれども、昨年の九・二八の事件で国外に出ましたので、改めて手配を復活すると申しますか、手配の要請をして、三月の八日にこれも手配になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/50
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051・横山利秋
○横山委員 私はちょっとこの辺が知識が不足ですけれども、いまおっしゃる国際手配というのは、要するに情報をくれる約束をするということであって、向こうでつかまえてくれ、あるいは捕らえておいてくれ、こちらがもらいに行くからと、こういうことではないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/51
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052・福井与明
○福井説明員 手配の性質としましては情報手配でございます。ただ、日本赤軍に対する認識がだんだん高まってきておりまして、スウェーデンとかヨルダンあるいはカナダの事例に見られますように、情報手配でありながら相手国の方でもしこれを見つけますと日本へ送り返してくれるケース、事実上最近はそういう形になっておる、こういう実態はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/52
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053・横山利秋
○横山委員 これはどなたに伺ったらいいかわかりませんが、身柄も身のしろ金も返還要求しないから協力してくれという取り決めをあの際いたしましたね。そういうことにしておいて、今度は身柄を拘束してくれ、あるいは情報をくれということに少し問題が残っているのではないか。今後一体そういう場合に、ダッカなりいろんなところで身のしろ金及び身柄をこちらは引き渡し要求しないからひとつこの事件の処理に協力してくれということをこの前のときでも現地の責任でやって、閣僚の一人がそんなばかな約束をしたと言って怒ったことがございますけれども、こういう点は今後どうなさるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/53
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054・岡崎久彦
○岡崎説明員 前回の経緯は御承知のとおりと存じますが、前回に際しましては、犯人の引き渡し、身のしろ金の返還及び犯人によって惹起された損害の賠償を犯人にかわって負担することをアルジェリア側に要求しないという条件で引き取りを依頼いたしました。これは先方の立場としましてやはり経緯がございまして、その前にアルジェリアのOPECの会議のハイジャック事件がございましたときに、アルジェリア政府がやはり犯人は引き取りました。引き取った後で人質の国から、そのときにアルジェリア政府と犯人との間で行った約束に反するような要求が相次いで出てきたということで、アルジェリア政府が非常に困惑したということがございました。今後そのような要求はしないという条件ならば受け入れるということでございます。その後わが政府といたしましては、これは要求しないという約束でございますけれども、その約束に反しない範囲におきまして希望の表明あるいはその情報の提供を求めております。今後の政策は恐らくそのときの時宜に応じまして、人質の安全の保障及びその他の観点を勘案しましてケース・バイ・ケースということはございますと思いますが、受け入れる国の側といたしましては、従来の経緯によりましてやはりある程度将来問題が起こらない保障が欲しいという要求を出すことは想像されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/54
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055・横山利秋
○横山委員 そこのところが前回の経緯の中から、いわゆる大臣の法案の提案理由の中にもございますが、物の考え方として、身のしろ金は払います。犯人はこちらへお引き渡しをいただこうとは思いません、たびひたすら人質だけ安全を保障してください、お国へ御迷惑をかけたことはいかようなりとも賠償をいたします。こういう姿勢については考え直すべき点があるのではないか。
一体十六億円ですか、あれは一体どうなったか調べましたか。それから伝うるところによりますと、その十六億円が逆流をして日本赤軍の資金源になっているのではないかといううわさがあるわけであります。そういうことであればますます。私が先ほど言った資金ルートの問題も含んで二重三重に、逆説的に言うと過激派を政府の手でもって生かして発展させていくという傾向を考えざるを得ないのでありますが、、今後この前の経験によって譲るべきところと譲るべからざるところをはっきりすべきではないかと思いますが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/55
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056・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 例の事件の当時ハイジャック対策本部及びその後のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の幹事をずっと務めております者といたしまして、当時の経緯に徴し、今後の政府のとられるであろう方針について、若干の予測めいた御説明を申し上げたいと思います。
申すまでもなく、ハイジャック等に対する一番の有効な方策は、他にもあるかもしれませんが、とりあえず一番の方策は、世界じゅうのどこの国もハイジャッカーを受け入れないということがまずもって大事であろうというふうに思われるわけでございまして、その点は当時から全閣僚の共通の御認識であったように見受けております。ところが、ダッカ・ハイジャック事件の場合には、結局内閣の御方針として、人質の人命尊重ということを第一に対処するというふうな御方針になりましたために、おのずから、先ほど申し上げました国際的な姿勢の問題と若干矛盾する方針がとられたわけでございます。すなわち、アルジェリア政府に対し三条件の約束をしてお願いをして、アルジェ空港におりさせてもらうという措置がとられたわけでございます。したがいまして、その措置につきましては、政府の方針が前後矛盾するのではないかという相当な御議論がございまして、将来に向かっての問題としては、結論において矛盾した方針をとらなければならなかったこの苦い教訓を十分踏まえて善処すべきである、こういうような御意見が大勢であったようにお見受けしておるわけでございます。そういう点からいたしますると、不幸にして今後再びさようなケースが起きました場合には、前回とは異なる方針のもとに措置がとられるのではないか、かように思っておる次第でございます。
なお、いまお尋ねの中にございましたお金の行方、これは判明いたしておりません。ましてや、それが日本赤軍に逆流したというふうな点につきましては、警察当局も外務当局も全く把握がなされておらないというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/56
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057・横山利秋
○横山委員 私は委員長を初め理事の諸君にお願いをして、一回本法案に対する参考人をひとつ三組ぐらい呼んでいただきたいと希望しておるのですが、その参考人の中の一人について希望いたしておりますのは、このような人質なり過激派の行動というものは常に常套的な方法ではないということを考えるからであります。いままでこうやったから今度もこうだろうということはとても当たらない。思いもかけない方法、まあマンホールもその一つの方法だと思うのでありますけれども、思いもかけない方法を選んでくるに違いない、そう痛感されるから、常套的な参考人ではなくして、たとえば一例として推理小説作家のような人が自由に物が言えるのじゃないかと言っておるわけですが、その一つの予測すべき問題としてモロ・イタリア前首相の誘拐を取り上げたいと思うのであります。
イタリアの国情と日本の国情とはずいぶん違います。イタリアはまさにある意味ではめちゃめちゃな社会状態にあるのではないかとすら私は思います。しかしながら、イタリアや西ドイツにありましたような要人の誘拐なり、要人を盾にとっての問題というものが今後なしとしないという判断を私個人として持っておるわけであります。
そこで警察庁にお伺いをしたいのでありますが、いま各党の首脳なりあるいは政府の閣僚なり、そういうものにはボデーガードがついておるわけであります。このボデーガードについての訓練は一体どうなっておるかということが一つ。私もボデーガードの人をかなり知っておるわけでありますが、かなり慎重に努力をしておられることを認めますが、こういうような状況の中で、改めてボデーガードの諸君に対する教育というものが必要ではないか。また同時に、要人それ自身が、私ども政治の世界におる者は常に大衆と接触をするわけでありますから、それはもう自分たちがそのために政治生活の姿勢を変えるということもいかがなものかとは思います。思いますけれども、ボデーガードをつけられるような人であるならば、その要人自身に対しても幾ばくかの注意なり警戒心なりそういうものを警察庁としても、教育といっては何でありますが、何らかのことをしておくべきではないか。今後、起こり得べき方法の一つとしての要人対策について意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/57
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058・渡辺善門
○渡辺(善)説明員 お答えいたします。
現在、要人警護につきましては先生のおっしゃいましたとおりで、内閣総理大臣、衆参両院の議長、最高裁判所長官、政党幹部等につきまして行っておるわけでございますけれども、この警護員の教養につきまして、警察庁といたしましては、年一回でございますけれども、中核たる警護専従員を中心に専科教養を実施しております。そのほかに都道府県警察単位に随時教養を実施する、とりわけ身辺警護の衝に当たる警護専従員につきましては、できるだけ回数を多く警護教養をやるように指導をしておるところでございます。
次に、シュライヤー事件あるいはモロ事件のような事件が日本にも起こり得るのではないかというようなことでございますけれども、現在のわが国の情勢では、このような事件の形態が直ちに起こるとは思っておりませんけれども、しかし、警護の衝に当たるわれわれといたしましては、最悪の事態も考慮して当たらなければならないというように考えておりますので、さらに警護を厳重に行いまして、凶悪なテロの未然防止のために装備の充実あるいは警護訓練の内容についても検討しているというところでございます。
さらに警護教養訓練の内容でございますけれども、具体的には申し上げられませんけれども、何といいましてもやはり警護員の任務の自覚、心構え、さらにこの治安情勢を厳しく受けとめる、特にテロに関連した情勢について的確に把握しておくということが非常に大事でありますし、さらに、やはり何といいましても警護技術にすぐれているということが大事でありますので、逮捕術はもとより拳銃操法あるいは柔剣道というような武術についても一層の向上を図るべく教養するということでございます。
そのほかいろいろございますけれども、いずれにいたしましても、すきのない警護を行うべく対処するには、何より警護員のスタートダッシュというものが大事でございますから、先生御指摘のとおり、警護訓練については一層充実して行っていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/58
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059・横山利秋
○横山委員 法案の内容について若干質問いたします。
第一条の「二人以上共同して」という言葉でありますが、一人ならばこの法案に該当しないということのようでありますが、ここに、古いのでありますけれども、ずっと人質事件の統計がございます。これによりますと、二人以上ということで、一体、一人と二人の違いがこうも確たるものであっていいかどうかということに疑問を生ずるわけであります。本法案は、この第一条は必ずしも過激派を対象にしたものではありませんから、二人以上が共同して、人質にして、第三者に義務のない行為または権利を行わないことを要求するというのでありますが、たとえばここにあります統計で見ますと、四十年に和歌山で、県庁職員宅に入った二人組強盗が、幼女を人質にしてバイクで四十五分逃走。同じく七月に神奈川で、警官をライフルで射殺した少年が銃砲店に侵入、店員四人を人質にライフルを乱射して通行人など十五人けが。この一人の方がやったことが罪が重くて、二人の方がきわめて軽微な四十五分間の問題。こう考えますと、二人以上共同してという意味が、一体どういうことで二人ということになるのか。たとえばこの「共同して」という意味は、私がその作戦指揮あるいはまた企画をして、伊藤さんにそれをやらせたという場合は、これは共同ではないというふうに理解されるのでありますが、それらの件についてどう法律解釈をしたらいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/59
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060・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 一般的な議論とそれから今回の立法の趣旨と両面から御説明申し上げますが、従来から、犯罪を犯す主体の問題につきまして、一人の人間が犯す犯罪には一定の限界がある、ところが二人以上のいわゆる犯罪集団の行為として犯罪が犯される場合は、その態様及び危険性においてきわめて重いものが通常であるというのが刑罰法令上の一般的な考え方でございまして、そういう意味で、たとえば暴力行為処罰法でございますとかあるいは盗犯等防止法等におきましても、二人あるいは数人以上共同して行った場合を特に厳重に取り締まるべきものとして特別の類型をつくっておるところでございます。
そういう一般的な考え方の背景があるわけでございますが、それはそれといたしまして、今回特にこの「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」というふうな要件を第一条に設けました趣旨は、改正刑法草案にございますような一般的な人質強要罪をこの際つくるという考えではなくて、いわゆる過激派によって犯されます典型的な事例、こういうものにとりあえず対処していきたいという点に着眼して立案をしたわけでございまして、そういうふうに考えてまいりますと、最近における過激分子による人質強要の実態、これは常に集団によって犯され、かつ凶器を用いて人質を確保する、こういう実態があるわけでございまして、こういう実態の犯罪に対処すべき緊急の必要性があるという考えから、このように構成要件をしぼって御提案申し上げておるわけでございます。
それに関連して法律的な御説明を申し上げますと「二人以上共同して」と申しますのは、ただいま御指摘のように、現場において二人以上が力を合わせて犯罪を実行するという、いわゆる犯罪の実行集団というものの存在を考えておるわけでございます。したがいまして、例が逆になって恐縮でございますが、私が作戦を立てまして横山委員がお一人で実行されるというような場合には、この構成要件には当たらない。ただし、私が作戦を立てまして横山委員ほかお一人、合計二名で実行するということになると、その実行した二名の人はこの構成要件に該当し、私は恐らくそれと共謀共同正犯というふうなものになるこういう解釈になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/60
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061・横山利秋
○横山委員 いまの私が実行してあなたが企画したときには、あなたは刑法の共同企画の犯罪には問われないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/61
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062・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 企画して指令をした人が一人おって、実行した人が一人いる、こういう場合には、この実行した人はこの構成要件ではなくて、一般の逮捕監禁罪ないしは強要罪、そういったものの構成要件に該当いたしまして、そして指令をした方はそれの共謀共同正犯、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/62
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063・横山利秋
○横山委員 お話を承れば、二人以上共同ということもわかるのですけれども、人質の統計を見ますと、一人であろうと二人であろうと同じことではないか、一人でやったやつでどえらいことをやったやつがおるし、二人でやって大したことでないものもおるわけですね。その区別というものは、過激派であるならば理屈がつくような気がするのですけれども、一般の人質に該当する場合には、一人であろうと二人であろうと関係ないではないかということが考えられますが、これがはっきりしますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/63
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064・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 先ほど御指摘になりました事例は、何か犯罪を犯して、たとえば店に立てこもって逮捕を免れようとして抵抗しておる、こういうようなケースであろうと思うのですが、私どもがいま考えていますのは、人質をとってどこかに立てこもって無法な要求をして、その要求が入れられなければ人質を放さない、こういう類型を考えておるわけでございます。そういう長時間立てこもって無法な要求をして、これを入れなければ人質を殺すぞというようなことで、当局と、あるいは関係者と対峙拮抗してがんばるということになりますと、やはり複数の人間が存在するということが犯罪の実行をきわめて容易ならしめる、またその実現性が大きいという意味において非常に危険な行為になる、こういうふうに考えるわけでございます。
逆に今度はお考えいただきたいと思いますが、一人でもこの構成要件に該当するということになりますと、たとえば、俗に新聞等で言われましたトイレジャック、銀行の女子行員をトイレへ連れ込みまして、警察官に対して自分の女房を連れてこいというような類型、あるいは思慮浅薄な者が果物ナイフ等を使って途方もない要求をする、こういうようなケースも入ってくるわけでございますが、そういうようなケースというものは容易に制圧可能でございますし、いわゆるトイレジャックと俗に言われるようなものまでこの構成要件に入ってまいりますことは、量刑の法定刑の点からいいましても適当ではないのではないか、そういうものは既存の一般法規で取り締まれば十分ではないか、かようなふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/64
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065・横山利秋
○横山委員 「義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したとき」とありますが、義務のある行為を行わないことを要求するということがあると思うのですね。義務のある行為を行わないことを要求する、それはどこへ入るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/65
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066・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 確かに字句で読んでいきますと「義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求」するということが要件でございますから、義務のあることをしないことを要求するのはこれから外れるような感じがするわけでございますが、この「義務のない行為をすること」と申しますのは、分析して言いますと、法律上それを行うことについて義務がないことに関する作為、不作為を全部言うわけでございますし、「権利を行わないこと」というのは、法律上認められている権利の行使を思いとどまらせるということになるわけでございますが、義務のある行為を行わないことが、多くの場合権利を行わないことに当たるでありましょうし、また一般的に「義務のない行為をすること又は権利を行わないこと」、これでもっておよそ一切の不法な要求行為を含ましめておる、こういうふうに考えておりますので、ただいま御指摘のようなケースもこの「義務のない行為をすること又は権利を行わないこと」、この中で全部読める、こういうふうな解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/66
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067・横山利秋
○横山委員 あなたの言い分によるならば、義務のない行為をすることだけでも、権利を行わないことを要求したときもそこの中に入るという解釈が成り立ちませんか。義務のない行為をすること、それは金を出さぬでもいいものを出せと言う、釈放せぬでもいいことを釈放しろと言う、そういうことは「義務のない行為をすること」自身にすべて含まれておる、こういう解釈が成り立ちませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/67
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068・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 この罪は刑法にございます強要罪の特別類型でございまして、強要罪というものの性質は、人がやろうと思っていることをやらせない、あるいはやりたくないことを無理にやらせる、こういうことでございますから、それを条文で、構成要件で押さえるとすれば、義務のないことをするあるいは権利を行わない、こういうことでよろしいのではないか。義務のあることを行わないというのは、本来義務があるけれども行わないことにしようと思っておる人にとっては、その意思を制圧されたことにならないわけでございます。そういう観点もあってのことと思いますが、現行法の強要罪の構成要件がまさにこの第一条の構成要件と同じになっておりますので、それですべての不法な要求を含むものと従来から、明治時代から解されておりますので、その言葉をそっくりかりてきた。これと異なった表現を使いますとまた解釈に疑義が生ずる、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/68
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069・横山利秋
○横山委員 私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/69
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070・鴨田宗一
○鴨田委員長 飯田忠雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/70
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071・飯田忠雄
○飯田委員 提出されました人質による強要行為等の処罰に関する法律案につきまして、この提案の理由につきましては後ほど同僚議員から御質問を申し上げる予定でございますので、私は特にこの法案に盛られた内容について御質問を申し上げたいと思います。
まず最初に「理由」と書いてあるところ、これについて疑問点を御質問申し上げたいと思います。
この「理由」のところに「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ」とこうございます。この実情といいますのはどういう実情なのか、大変疑問があるわけでございます。といいますのは、この法律案だけを見ましたのでは、ハイジャック関係のものだということはわかりません。したがいまして、広く理由を考えますと、過激派による人質強要事件だけを言うておるとはとれないのであります。したがいまして、どういう実情なのか疑問なのであります。刑法の強要罪とか身のしろ金拐取罪に該当いたしておりまする人質強要行為と区別される人質強要行為が最近における実情であると、こういうふうに読めるのですが、これはどういうことになるのでございましょうか。過激派事件だけがたくさん起こって、ほかの事件は起こらない、こういう意味なのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/71
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072・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 最近における人質における強要行為の実情というのを端的に申し上げますと、御配付申し上げてございます本法案関係資料の末尾の方についております「最近における過激派等による人質強要事犯事例集」というところに挙げておりますように、従来とは全く態様を異にする、すなわち俗な言葉で申し上げれば、いわゆる武装ゲリラが航空機をハイジャックし、あるいは在外公館その他を占拠し、そうして多数の人質をとって、これを盾にしまして無法な要求を突きつけてくる、こういう行為が頻発をし始めておる、これが最近における人質による強要行為の実情であろうと思うのでございます。
そこで、理由のところにございますように、こういう実情にかんがみて、この種強要行為に対する処罰を強化したいというのがこの法案の立案の基本的な考え方なのでございます。
〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
したがいまして、既存の刑法上の逮捕罪、監禁罪あるいは強要罪、さらには身代金誘拐罪、この刑で処罰することだけでは足らない、そういう犯罪形態が出てきておる、こういう実情にかんがみて処罰を強化したいというのが本法案のねらいでございます。
しかしながら、その実情にかんがみてこういう案をつくりますれば、この法案自体ごらんいただけばおわかりいただけますように、過激派がというようなことは書いてございませんので、およそこの構成要件に該当するような凶悪な人質強要事犯が生ずれば、過激派によらないものでも適用を見ることは刑罰法規の性質上当然であろうかと思います。そういう意味で、先ほど申し上げました資料の事例集の一番最後に、本来この法案を立案する動機になったわけじゃないけれども、この法案が法律として成立いたしますと適用を見るのではないかと思われる事件の一つとして、まだ御記憶かと思いますが、長崎ハイジャック事件、こういうものも対象になってくるであろう、こういう意味で一つ事例を加えさせていただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/72
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073・飯田忠雄
○飯田委員 数人で行ういわゆる過激派事件が危険だから、それに対する措置の法律だ、こういう御意見だと思います。そればわかりましたが、それならば、一人で飛行機を奪うことができないのかどうかという問題がございます。私は一人でもハイジャックできるし、また一人でもハイジャックをして人質にとって強要することもできる、その可能性は多分にあると思われるのでございます。従来船につきまして、船の場合は多く多人数でやるのだ、それが常態だというふうに言われておりました。ことに海賊罪のごときは集団をもって行う犯罪だ、こうされておりましたが、最近の事例によりますと、一人で海賊行為をやった事例が起こっております。また航空機の場合でも、今後取り締まりが厳重になればなるほど恐らく犯人は数を減らしてくるのではないか。単独犯で航空機をハイジャックして、人質をとって、重大な要求を突きつけることが起こってくる可能性が多分にあると私は思うのであります。といいますのは、現在わが国においてはより一層こうしたものに対する取り締まりを厳重にしようとしているわけでございますので、それに対処するためにはやはり特攻隊、単独でやる、こういうことになるのは容易に想像ができます。そこで、そういう場合のことはお考えになっていないのかどうか、お尋ねを
いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/73
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074・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 先ほどの私の御説明がちょっと言葉が足らなかったために誤解を招いたかと反省しているわけですが、飛行機を乗っ取ります場合は、その飛行機というものの性質または操縦室の形状その他からしますと、一人で乗っ取るということがわりあいに考えられますし、またその危険性も大きいものと考えられますので、ただいま御審議いただいております第二条、あるいは航空機強取法第一条第一項をごらんいただきますとおわかりいただけますように、ハイジャックの場合は二人以上という要件をかぶせてございません。二人以上という要件をかぶせておりますのは、俗な言葉で、ハイジャックを除くものをその他ジャックと仮に呼べば、その他ジャック——ただいま最近たった一人で海賊した事例があるという御指摘がございましたが、私寡聞にしてまだ存じませんでしたけれども、そういう船舶でございますとか地上の建物に人質をとって立てこもる、こういうような場合におきましては、航空機の場合と違いまして、やはり行為の典型的なあり方として、犯罪人が集団で危ない物を持ってやるというのが典型的な形であろう、一人の場合まで入れると量刑過酷に過ぎる場合もあるのではないか、こういうような観点からごらんのような法案になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/74
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075・飯田忠雄
○飯田委員 御趣旨はよくわかりましたが、ここで一つ考え方の問題があると思うのです。といいますのは、今日のわが国の憲法は人権保障ということを大変重要視しておりまして、また刑法におきましても、人身侵害につきましては厳重な刑罰を決めております。これが現状でございますが、私は、人身侵害というものは、基本的人権保障という点からいきますと、国が最も注意して保障しなければならぬ、そうしたことのないような態度をとらなければならぬ、施策をしなければならぬ、そういうことであると考えておるわけであります。特に人質にして、しかも何の罪もない、自分に害悪を加えない者の命を奪うということをちらつかせて行うようなそういう人身侵害、これは許すことができないものだ、わが国の憲法の保障する人権保障という点から、国として絶対に許すことができない重大な問題ではないか、私はこう考えるわけですが、そういう重大な問題を含む行為の処罰規定をつくるに当たりまして、加害者が一人であるとか二人であるとかということがそれほど重大なことになるのであろうかということも考えるのでありますが、この点についてはいかがでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/75
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076・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 確かに御指摘のような考え方はあり得ると思うわけでございまして、そういう意味から申しますと、現在の刑法各則に規定しております人身の自由に対する罪、これの法定刑を再検討するということも必要になってくる、そういうお立場のお考えだと思います。そういった点は、私どもといたしましては刑法全面改正の際に改めて見直すことといたしまして、当面、最近の実情にかんがみて必要な最小限度の立法をお願いしたいということで、とりあえずこれだけをお願いしたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/76
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077・飯田忠雄
○飯田委員 この問題はまた後ほどお尋ねいたしますのでこのぐらいにいたしまして、次に、理由の中で「この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」と、それを理由に掲げておいでになります。ところで、この処罰を強化する必要と、こういうわけなんですが、処罰を強化すればそれで事が足りるとお考えになっているとは思いませんけれども、こうした人質強要事件につきまして、ほかの防止対策というものをお考えになっておるかどうか。この問題につきましては後ほど長谷雄委員の方からまたお尋ねすると思いますが、そういうこともお考えになった上でのこのたびの立法であるかどうか、お伺いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/77
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078・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 すでに御承知のとおりこの法案ば、立案の動機と申しますのが昨年のダッカ日航機ハイジャック事件を契機としてそういうことになってまいったわけでございますが、ダッカ事件の後におきまして、政府のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきましては、関係各省庁の知恵を出し合いまして、およそ考えられ得るあらゆる方策というものをきめ細かく決めまして、それの実行をいまやっておるわけでございますが、その対策と申しますのは、ハイジャックという事柄が起きた後の対策でございますから、たとえば各空港におけるボデーチェックの強化とかいうようにハイジャックを主とした対策、こういうものもございますけれども、そのほかに、たとえば在外公館の警備の強化でございますとか、あるいは海外商社の警備の強化、その他ハイジャックに限らずこういう人質強要犯罪に対する対策を相当きめ細かく決めておりまして、それを、私の記憶では対策本部の幹事会を今日までに十一回開きまして、実際に実行段階でスムーズにいくように鋭意検討し、あるいは指示をしておる、こういう状況でございます。そういう諸般の行政的な、あるいは実際的な諸施策の上に立ってこの法案を立案した、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/78
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079・飯田忠雄
○飯田委員 よくわかりましたが、そこでもう一つ立法理由のところに関連して御質問申し上げますが、現行刑法でいきますと逮捕監禁罪と強要罪の併合罪として第一条は考えられるわけでございますが、その逮捕監禁罪と強要罪の併合罪ということになりますと、七年六カ月以下の懲役、こういうことになるわけでございますが、それと比較しまして非常に重い罪になっております。もちろん現在の刑法の逮捕監禁罪におきましても、二人以上共同して凶器を示してやる場合もこれに含まれるわけでございましてこういうことになっておるわけなんですが、逮捕監禁罪というもの及び強要罪の罪、このものを本来はもっと重いものとすべきものだというお考えがあるのでしょうか。そうではなくて、併合罪は特に重いのだ、こういう考えなんでしょうか。お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/79
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080・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 逮捕監禁罪そのもの、あるいは強要罪そのものの刑がもっと重かるべきではないかという御意見も二つの考え方としてあり得ると思いますが、現在私ども法務省としてとっております考え方は、逮捕監禁プラス強要と、二つの複合された構成要件を一つ考えました場合には、その罪の刑は相当重かるべきであるというふうに考えておりまして、その思想は、改正刑法草案第三百七条に人質による強要罪というものを一応提案しておりまして、二年以上の有期懲役というふうに相当重く対処すべきものである、こういう考え方をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/80
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081・飯田忠雄
○飯田委員 そこで、この提条理由でございますが、結局、こういう悪質なものに対してある程度重い罰を科することによって一般予防するんだ、こういうお考え、また現在事実上の予防措置を講ずるとしても大変困難でできないので、せめてこういう方法で一般予防をやろう、心理的予防をやろう、こういう御趣旨なのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/81
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082・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の点も一つの立法動機ではございますが、ここに掲げましたような犯罪形態というものは、先ほど先生も御指摘になりましたような人身あるいは意思の自由に対する重大な侵害でありまして、きわめて卑劣な行為である、そういう卑劣さの度合いというものは国民の立場から刑罰的に相当重く評価されるべきであるという考え方が中心でございまして、あわせて刑罰が常に待つとされております一般予防的な力、威嚇力、こういうものも念頭にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/82
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083・飯田忠雄
○飯田委員 それでは次に、この法案の各条について疑問点を御質問いたしたいと思います。
まず第一は、第一条の規定は航空機の強取による人質以外の方法で人質をとってする第三者に対する強要を処罰する規定だ、このように思われるのですが、そういうふうに解釈していいものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/83
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084・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 典型的な形態として考えておりますのは、複数の者が暴力的な集団を形成して凶器を示しながら人を人を質にとる、そういうあらゆる形態を考えておるわけでございますが、典型的なものといたしましては、しかるべき場所に人質を確保して、そして第三者に対して不法な要求を知らせる、またそれが知らせ得るような形で立てこもらなければなりませんから、最近起こりました事象等からいたしますと、たとえば大使館を占拠して大使などを人質にとるような行為、あるいは最近ヨーロッパで起きております。要人を路上で待ち伏せしまして拉致して、人質として不法な要求をする行為、あるいは海賊的な行為、あるいはオランダ等でありました列車ジャック、あるいは先ほどちょっと御説明しました長崎でのバスジャック、こういったもの、これらが典型的な形として考えられるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/84
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085・飯田忠雄
○飯田委員 そこでお尋ねしますが、この規定を適用いたしまする相手方、具体的に一体どういう相手方だろうかと思うわけでありますが、人質にとった人たち、つまりこれは一体暴力団だとか過激派集団を予想して、そういうものを相手方としておられるのであるか、それともそれ以外のものも広く考えておいでになっておるのであるか、こういう点が、非常にあいまいなのであります。といいますのは、暴力団だとか、あるいは暴力行為を主とする団体だとか、過激派集団だとかということで表現されておりますればはっきりするんですけれども、そういう表現がなくて、「二人以上共同して」というだけのものでございますので、これは非常に一般的な状態に還元されてしまいます。たとえば普通の身のしろ金誘拐のような場合でもどうもこれに入るような気がするのですね。二人の者が相談をして凶器を示して子供をかっさらって、そして身のしろ金を要求する、こういうような場合もここに入ってくるように思われるのです。そうしますと、身代金誘拐罪というものの規定はここに含まれてしまうのか、刑法の方はもうあれで廃止になってしまうのかということが問題になるのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/85
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086・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 この法案の提案の理由のところで述べておりますように、最近におけるこの種事犯の実情にかんがみて立案したわけでございますから、そのかんがみた実情と申しますのは過激派によるものであり、また観念的に考えてみますと暴力団もあるいはやりそうな犯罪だというふうに思っておりますが、ただいま御指摘のようにこれは暴力団とか過激派とか限定してございませんから、御指摘のような身のしろ金誘拐のような形のものもこの条に触れる場合があり得るわけでございます。
それで、私どもは身代金誘拐罪とこの一条の罪との関係は一般特別の関係になる、こういうふうに考えております。身のしろ金誘拐の方は近親者等の憂慮を利用してやるわけでございますから、どうしても赤ん坊とか子供とかそういうものが多くなると思いますが、仮にそういうものを人質にいたしましても、数名の犯罪集団が刃物を用いてやるというようなことになればこの法律の方で処断をいたします。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/86
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087・飯田忠雄
○飯田委員 ただいま身代金誘拐罪についての御見解なんですが、通常は近親者が相手だというのは事実問題であるし、法文にもそう書いてありますが、なお法文には、その他人質の安否を憂慮する者、こうありまして、人質の安否を憂慮する者という解釈は必ずしも近親者には限らぬのじゃないか。もっと広く解釈できるということになりますと、結局身代金誘拐罪とこの第一条というものが非常に混乱をしてしまいまして、第一条を特別規定だ、このようにいたしましてもなお実態が明確でなくなる。ただ罪だけが少し違う、こうなってまいります。
そこで私、結局「二人以上共同して」という表現の仕方に問題があるのではないかと考えるわけですが、特に「二人以上共同して」ということをどうしても入れなければならぬのかどうか、非常に疑問に思うわけです。といいますのは、先ほども申しましたように、単独犯で人を監禁する、そして人質にして第三者に要求する、こういうことはできるのでありまして、飛行機でもできるのだし、飛行機を乗っ取ることもできる、船を乗っ取ることもできる、家を乗っ取ることも一人でできるということになると、それでは一人でできないことは一体何があるだろうかというふうに思うわけです。恐らくどんなことでも単独犯でこの第一条に書いてあるような行為をなし得る。ただ、この場合に「二人以上共同して」という言葉を入れる意味がどうも私にはわからないのですが、どうでございましょう、これはどうしても入れなければならぬ言葉でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/87
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088・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいまの御質問は二段に分かれていると思います。身のしろ金誘拐との混乱の御心配でございますが、身のしろ金誘拐にございます「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」というのは従来判例等でも非常に狭く解釈されておりまして、せいぜい同居の親族ぐらいまでである、こういうことにいまなっておるわけでございます。
それから、それはそれといたしまして、一人で何でもできるではないかという仰せでございますけれども、一人でできることと申しますのはやはり限度がございまして、ごく限られた人数のひ弱な者を制圧するということはできるかと思いますが、そういう程度の犯罪に緊急に対処する必要はいまない、既存の法令でいいのではないか。そういう意味におきまして、たとえば一人が寝ずの番をしており一人が要求をするとか、そういう集団として行われるものこそ多くの場合複数の人質が取られたり非常に重大な結果を生ずる。こういう意味におきまして、特に重く罰すべきものだけを抜き取るために「二人以上」というのを入れたわけでございまして、やはりこれはそれなりの意味があるのじゃないか。これを取ってしまうと非常に軽微なものも入ってきて、場合によっては身のしろ金誘拐と混乱するような状況にあるいはなるのかもしれない、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/88
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089・飯田忠雄
○飯田委員 それならば「二人以上共同して」という言葉をもう少し別の言葉で表現できないか。たとえば、これは余り適切な言葉じゃありませんけれども、破壊活動を行うためにとかいったような言葉とか、何か適当な言葉があると都合がいいと思うのですが、この「二人以上」という表現ならば、むしろ単独犯でもできるような気がしてしようがないのです。単独犯でやったのと二人以上共犯でやったので、一体犯罪の罪質にどれほど差異があるだろうかと思われるわけです。たとえば一人で家に閉じこもってやった、二人で閉じこもってやった、その人数によって罪質に本当に差異があるだろうかということでございます。
それから「人質にして」とあるのですけれども、「人質にして」ということは、人質にするに当たりましては精神的な強制によってでも人質ができるのじゃないか。必ずしも物理的なものだけでなくてもできるように思いますが、この点についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/89
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090・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 従来の刑罰法規におきましては、先ほども横山委員の御質問の際に申し上げたのでございますが、一人の場合と二人以上の場合とでは、その危険の度合いが質的に異なってくるというような考え方が顕著であろうと思うのでございます。たとえば暴力行為処罰法におきます集団暴行、脅迫、毀棄でございますとか、盗犯等防止法の「二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ」というのは特に重く罰するというのは、こういう考え方であろうと思うのでございます。ただ、この関係で他にもっといい表現があるのではないかというお話もございましたけれども、私ども頭がかたいせいでございましょうか、なるべくは既存の法律にある概念で解釈が固まったものを取り入れたい、そうすることが構成要件の解釈について無用な争いを生じせしめないゆえんではなかろうかという考えがございまして、一応のベストのものということでこういう表現をとったわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/90
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091・飯田忠雄
○飯田委員 それではこの問題はこのくらいにしておきまして、次に「凶器を示して」という言葉について疑問点をお伺いいたしたいと思います。
凶器を示したかどうかという問題はこれはむしろ事実問題で、凶器を示さなかったかどうか、これは裁判上事実の認定の場合の問題になってまいりますが、ところで、凶器を示したか示さぬかということは実際の場合にはわからぬです。脅迫された者に、おまえ凶器を示されたかと聞いても、もう混乱していて、凶器を示されたかどうかはっきりわからぬ。何か見せたようではあるというだけの話の場合も起きてくるでしょう。それから、凶器といいましても大変判断がむずかしいので、手ぬぐいを丸めてダイナマイトだといっておどかした場合、これは一体凶器を示したことになるのかどうか非常に疑問だと思うのですね。このように凶器を示して逮捕したということを構成要件に入れますと、これは恐らく裁判のときに大変困る状態が生ずるのではないか。凶器などは示さなくとも、二人以上共同して人を逮捕監禁すればそれでいいのじゃないか、こう思いますが、この点はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/91
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092・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 いま御審議いただいております第一条の罪と申しますのは、人質による強要行為のうち、再々申し上げておりますように、過激分子によって犯されることが想定されるような暴力的要素の強いもの、それだけに人質の生命身体に対する危険度の多い特定の行為を特に重く処罰しようという趣旨で設けようとしておるわけでございますが、仮に手ぬぐいを丸めて爆弾だと言ってみた場合、あるいはおもちゃのピストルを示したような場合、驚く人は驚き方は同じでございましょうが、客観的にそういう物で人質の命が奪われる可能性は本物の凶器に比較してきわめて乏しいわけでございます。したがいまして、客観的に見ても人質の生命に実際に危険性が及ぶ可能性が非常に多いもの、こういう犯罪類型をとらえて特に重く処罰しようとしておるわけでございます。
なお、見せられた人はちらっと見ただけで、本当のピストルであったかおもちゃのピストルであったかわからないという場合もあるかと存じますが、およそ犯人が逮捕されまして裁判の段階になりますまでには、その辺は捜査の結果でほとんど一〇〇%、使ったものが何であるかということは特定できると思いますし、また特定できなければ適正な処罰もできませんので、そういった点は裁判の際には本物の凶器であったかどうかはまず間違いなく明らかにされるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/92
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093・飯田忠雄
○飯田委員 これは非常に重要な問題だと思いますが、捜査の結果、実は凶器でなかったということが明らかになりますと、これは罪を構成しないということになってしまうのですが、実際には凶器でないものを凶器のように見せて逮捕監禁して、そして第三者に対して義務のない行為を行わせた、こういう事実が発生してしまった場合に、捜査してみたら実はそれは凶器でなかった、そういう場合にはこの罪は構成しませんですね。ところが、その犯罪の罪質においては、凶器であろうが凶器でなかろうが同じじゃないかというふうに考えますが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/93
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094・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 確かに犯人の主観というものに重点を置きますと同じことではないかというようなお考えもごもっともだと思いますが、やはり大事なことは、人質の生命身体に現実に危険があったかどうか、そういう犯罪であったかどうかということが重要でございまして、そういう意味で、本物の凶器ということとにせものの凶器ということでは、危険の度合いが客観的に非常に異なるということを考えなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
なお、この条文の立案の動機は何度も申し上げておるようなことでございまして、典型的な場合はやはりライフルであるとか拳銃であるとかそれから手投げ弾とか、そういう間違いもなく凶器、こういうものを示してやる場合を想定しておるわけでございまして、現実のこの法の適用の場合に、ボーダーラインとして御指摘のような場合が観念論として生じ得ると思います。捜査の段階で実はインチキの凶器であったということになりますれば、通常の逮捕監禁、強要等の罪で処断をする、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/94
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095・飯田忠雄
○飯田委員 この規定を私見まして、この法律そのものですが、これが法律として成立いたしました暁には、過激派とかそういう凶器を持った集団の犯罪を取り締まるとかいったようなものだけだというふうにはどうしても第一条は読めないようで、この文字に書いてあるとおりの犯罪としてわれわれは理解をせざるを得ないわけです。
そうしますと問題が起こってまいるわけですが、この第一条で処罰しようとしておる行為というものは、逮捕された人の利益それから義務のない行為を行わせられた人の利益、そういう利益に対する侵害を予防しよう、こういうために第一条はあると思いますが、刑罰を科するということは犯人を処罰するというだけの意味ではなくて、やはりこういう法律をつくるということば、これによって一般の人に対してこういうことはしてはいけないよということを示すためのものであろうと考えるわけですが、そういう観点からいきますと、どうでしょうか、犯人がやった行為自体を客観的にとらえることが必要ではないか。たとえば凶器でないものを凶器だと示した犯人の行為は、実は凶器を示しておる行為なんです。凶器があれば凶器を示した、たまたま凶器がないから凶器だと言って偽っただけの話でありまして、その犯人の行為そのものはもう凶器を示した行為に間違いないわけなんです。ところが実際に客観的には凶器じゃないものだから捜査してみたら凶器じゃないが、しかしそれによってこうむった被害は、凶器である場合と凶器でない場合と同じ被害が生じた、こういう事態でございますが、この刑罰に差等を設けなければならぬという理由が私にはどうしても理解できないわけでございます。どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/95
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096・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘がありましたとおり、一般の場合のこの罪の保護法益と申しますのは、人質とされた者の身体生命その他の自由というものが一方にあり、他方において要求されます第三者の意思決定の自由というものがもう一方の保護法益であろうと思います。ただいま御指摘の、凶器に見せかけたものを示した場合におきます保護法益侵害ということを考えますと、第三者の意思決定の自由が侵害されるという点については同じ場合があろうかと思いますが、人質とされた者の生命身体の安全ということにつきましては、その法益の侵害が一見あるかのごとくでありますが、最終的な結果が生じにくいという意味において法益侵害の程度が質的に異なるのではないか、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/96
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097・飯田忠雄
○飯田委員 この凶器を示すということは、たとえば過激派集団のように武器を持ってやってきたということだけを想定すればそういうことでしょうが、そうでなしに、この凶器を示すということは、過激派集団の状態あるいは暴力団の状態だけを想定してはいないように読めるわけですね。一人あるいは二人の者がたどん玉を示してやるとか、あるいはおもちゃのピストルを示すだとか、こういう場合には逮捕された者が凶器を示されたと思うわけで、そして手足をくくられてしまった。もしこれがうそだということがわかっておれば手足をくくられないで抵抗するのですが、うそか本当かわからないから手足をくくられたわけなんです。そういう形で人質になっておる場合に、一体凶器が実物であるかうそであるかということによって、侵害された法益に違いができるというふうにはどうも考えられないわけなんですが、この点についてはどうでございましょうか。「凶器を示して」という言葉は、そういう意味では、あってもなくてもいいのじゃないでしょうか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/97
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098・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 たとえば逮捕監禁だけの問題にして考えますと、いまおっしゃいますようにたどんを示して爆弾だと言って手足を縛らせるというようなこともあるでしょうから、いまのようなお説もごもっともだと思うのでございますが、「人質にして」と申しますのは、やはり人質にされた者の生命身体の安全を脅かす形、これが一番問題なのでございまして、たどんはいつまでたってもたどんでございまして、たどんで殴り殺すということもあるかもしれませんけれども、一般論としてやはり凶器と凶器らしきものとでは、人質にされた者の身体生命の安全に相当質的差異があるというふうに思うわけでございます。
さて、そういうことを前提といたしまして、この罪はごらんいただきますように相当重い刑をもって臨むことといたしておりますので、なるべく真に悪質なものだけがこの適用があり、そうでないものは一般の刑法その他の条項で処断されるということが当面の問題として望ましいと思いますので、そういう観点から、やはり「凶器を示し」というのは凶器を示しでありまして、凶器らしきものを示しということではしぼりが緩くなるのではないか。したがってこの文言はやはり構成要件をしぼり、重い刑を科するために必要不可欠な要件であろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/98
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099・飯田忠雄
○飯田委員 ただいまの刑事局長の説明は、これは政府の公の法解釈、行政解釈、そういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/99
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100・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 政府委員として責任を持ってお答えしておりますから、政府の見解であることは間違いございません。また、従来の判例によって吟味した上で詰めた結果の見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/100
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101・飯田忠雄
○飯田委員 そこでもう一つお伺いいたしますが、そういう御見解が政府の見解であるということでそれは結構ですが、第一条というのをそのように理解していきますと、どうもざる法になってしまうような気がしてしようがないのです。といいますのは、ひとつ政府要人をおどかしてやろうというわけで、官邸に二人以上で何か凶器らしいものを持って入りまして、おどかして大臣を押し込めて占拠したとしましょう。大臣が動けば打つよとピストルらしいものを見せれば大抵びっくりしますから、そういう状態をつくって、そしていまから犯人を釈放しろとやって、釈放する命令を出されたということが生じたとしましょう、そういうことがあり得るのですから。そういう行為があった場合に、後で調べてみたら実はおもちゃのピストルであったということがわかったとしましょう。その場合にはこの第一条を適用しないということになりますと私は大変不都合なことになると思いますが、せっかくこの法律をおつくりになった趣旨が没却されてしまうのじゃないか。つまり、この「凶器を示し」という言葉によって第一条をざる法化してしまうことになりはしないかと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/101
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102・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 大臣なら大臣を捕らえまして、これに対して何かの要求をするという場合は、直接にその大臣から何かを引き出すということになりますと、場合によっては強盗罪の方で処理するというようなことになるのじゃないかと思います。
それから先ほどちょっと仰せになりました、大臣にだれそれを釈放せよ、こういうふうに迫った場合、当該大臣はそこに縛られておりますから自分では何ともできませんので、必ず第三者に命令をされるのじゃないか。すなわち大臣を介して第三者に対して不法な要求をするということになるわけでございます。ただ、さような場合でも、示したものがおもちゃの凶器であればその第一条に該当しないことは御指摘のとおりでございまして、それは設例が人質が大臣であるという点に着眼いたしますと何だかちょっとおかしいじゃないかという気がされるかもしれませんけれども、大臣でない人も大臣である人も、やはり同じように人質としてその人の身体生命の重要性を考えなければならないのではないかというような観点からいたしますと、ただいまの御設例の場合は強盗で処理できる場合はそれでするし、そうでない場合は一般の原則に従う、こういうことが適当ではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/102
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103・飯田忠雄
○飯田委員 では、くどいですが重ねてお尋ねいたしますが、過激派の人が鉄かぶとをかぶって、実は本物の凶器は持っていなくてやってきたという場合、凶器らしいものを示したわけですね。これを凶器だと思って逮捕されて、そして人質になった、その過激派の者が第三者に対して要求した、こういうふうな場合もあり得ると思いますが、そういう場合に、せっかく過激派の行動に対してこれを予防するためにつくったこの人質強要罪の規定が、実は結果的に凶器でないというだけの理由で——示すときには凶器らしいものであっても、本当は凶器なんですよ。それを、凶器らしいものであって凶器でなかったというだけで第一条を適用しないというのでありますならば、どうもせっかくこの規定をおつくりになった趣旨に反するのではないか、私はそういう点でざる法化するのではないか、こう申し上げているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/103
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104・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 私どもは最近における実情にかんがみておりますので、過激派分子は大概凶器を持ってやってくる、そういう実情を前提に立案しておるわけであります。それから、たまたま過激派が凶器らしきものしか持っていなくて、凶器を持っていなかったために免れるという場合があり得るわけでございます。その意味ではそこに穴があいております。その穴と申しますのは、私どもは刑法全面改正の際に一般の人質強要罪でそれをすくい上げるという方途をとりたい、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/104
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105・飯田忠雄
○飯田委員 それじゃこの問題はそのくらいにしまして、次に、この規定によりますと第三者に対して要求した場合に限られておりますが、これは一体どういう意味かという点が疑問であります。たとえば人質にするという場合に、人質にされた人はもちろん第三者ではないのですが、その人質にされた人に対して要求してこの第一条に書いてあるようなことをやった場合と、そうでなく人質の意思にかかわらず別の第三者に対してやった場合と、罪質が異なるとお考えになっておるのでしょうか、この点はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/105
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106・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 人質になっている人に対して要求をする、単にそれだけにとどまります場合は、要求を受けます第三者がその人質の安危を憂慮するために自分の意思の自由を失ってしまう、そういうところにこの条の意味があるわけでございますので、罪質的に相当異なる点があろうというふうに思います。この逮捕監禁されておる者自体に対して何らかの要求をする場合は、多くの場合、強盗罪の構成要件の方になっていくのではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/106
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107・飯田忠雄
○飯田委員 この第三者に対する場合だけに限られたという点、少し疑問があるわけですが、たとえば、要人を人質にしまして、この人質に強要をいたしまして特定の命令を出させる、たとえば会社の社長を人質にしまして、そしておまえの会社をつぶせ、こういう命令を出したとしましょう。あるいは要人の権限内の行為を行わせるような場合もございましょう。こういう場合、実質的には、第三者に対してある義務のない行為を行わせた場合と比較しまして、被害法益に別に差がないのではないかと思われるのですが、この点はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/107
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108・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の場合は、人質というのにまず当たらないと思いますけれども、逮捕監禁されている人の意思の自由を制圧しておる状態でございますが、人質強要罪、こうなりますと、人質になっている人も制圧されておりますし、それを縁由として第三者の意思の自由も制圧される、こういう点で相当な罪質の差異があると思うのでございます。ただ御指摘のように、会社の社長とか政府の要人というものが逮捕監禁された場合を想定いたしまして、その人が何か一声発すれば重大な結果が生ずるというような場合、なかなか想定しにくいわけでございますけれども、そういう実態が仮に考えられるということでございますれば、将来の立法問題として一つのテーマになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/108
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109・飯田忠雄
○飯田委員 私こういうことをお尋ねしましたのは、「第三者に対し」という言葉、この言葉以外にもっと適切な言葉はないかということをお聞きしたかったわけです。たとえば、人質にとられた者、人質の安否を憂慮する者、こういう者を強要する場合、この人質の安否を憂慮する者はこれは第三者に当たりますか、それとも当事者でしょうか——第三者でございますね。そういう第三者かあるわけですが、そういう表現の仕方の方がもっと正確なように思いますが、「第三者」といいますとどうもわからないのです。たとえば人質にとられたという言葉ですが、人質にとられたというのはだれに対して人質をとられたかといいますと、たとえばハイジャッカーが飛行機におる者を人質にしまして、そして日本政府に対して要求する場合に、人質にとられたのは日本政府であって、人質じゃない。人質は、飛行機の中にある者は人質なんですよ。人質にとられた方は日本政府なんです。人質にとられていますから、賠償金を払う、助けてくれ、こういうわけでしょう。そうしますと「第三者」という言葉がどうもあいまいなんですよ。日本政府に対して、賠償金をくれれば人質を助けてやる、こう言うた場合に、日本政府は第三者ではなくて人質をとられた者じゃないかというふうに思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/109
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110・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 人質になっている人は人質にとられておる状態にあるわけでございますが、人質にとるということは、それをカタにとってだれかに何かを要求することを言うわけでございますから、たとえばハイジャッカーが乗客を逮捕監禁して、そしてその逮捕監禁しておるということを利用してだれかに何らかの不法な要求をいたしますと、その乗客は人質にとられておる人になり、要求を受けた人は人質をとられた人になる、こういうことであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/110
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111・飯田忠雄
○飯田委員 大変回りくどいことでわからなくなりましたが、要は、私がお聞きしましたのは「第三者」という言葉がおかしいということです。たとえば、ある人を監禁しまして、人質にしまして身のしろ金を要求する場合に、身のしろ金を要求された相手の親なり何かは第三者ではありませんね、人質をとられた人でしょう。それから子供、これは明らかに人質でございますね、人質になった人。身のしろ金誘拐の場合はそれではっきりと第三者でないことはわかりますが、それならばもっと一本化して考えた場合に、航空機の場合あるいは家を占領しましてそこにおる者を人質にして金を要求する、こういう場合には要求された人は第三者ではなくて人質をとられた人じゃないか、こういうことをお聞きしたのですが、そうしますと、もしそれを認めてくださるなら、この条文の「第三者に対し」という言葉は少しおかしいではないか、こういうことをお聞きしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/111
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112・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 人を逮捕監禁した者が、その者をカタにとってだれかに何かを要求してやろうと思ってだれかに要求をいたします。すると、要求を受けました人は人質をとられた人になるわけでございますが、その要求を受ける前のそのある人というのは、犯人及び人質になろうとしている人以外の人でありますから、すなわち第三者である。第三者に対して要求が行われた時点において、当該第三者は人質をとられた者になる、こういうことになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/112
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113・飯田忠雄
○飯田委員 これは私は少しおかしいと思うのですが、「人質にして」というその人質にしたときにすでにもう人質にとられた者はあるわけですよね。人質にして相手方に対して要求したというならまあわかりますが、人質にしたという段階でもうすでに人質をとられた人がおる、それを標準にして第三者ということになりますと、これは一体どういう者に当たるかということは、恐らくこの条文の解釈上、将来問題になると思います。裁判のときでも恐らく問題になると思いますし、この解釈を出す場合にでも、書く人によってずいぶん解釈が変わってくる、こういうことにならざるを得ぬのですが、この「第三者」という言葉をもう少し明確に、わかりやすい言葉に変えることはできないでしょうか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/113
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114・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 強いて考えますると、当該犯人及びその共犯者並びに当該逮捕監禁された者以外の者というようなことになると思いますが、それよりも「第三者」の方が字数も少ないし、わかりいいのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/114
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115・飯田忠雄
○飯田委員 せっかく現行刑法にいい言葉があるのです。それは人質の「安否ヲ憂慮スル者」という言葉でございますが、この人質の「安否ヲ憂慮スル者」、これは実に広い意味を持つと私は思うのです。日本政府が人質の安否を憂慮する者であることもあり得ますし、また国民がそうであることもあり得ます。これは人質の安否を憂慮する者に対してその弱みにつけ込んでゆするというわけですから、ゆすられる者は常に人質の安否を憂慮する者に当たるのではないか。私は、現行刑法がずいぶんよく考えた言葉を書いたと思って感心しておるわけですが、そういう言葉でもしこれを書いた場合に、不都合が生ずるでしょうか。第一条の「第三者に対し」というのを、人質の安否を憂慮する者に対し、こう書いた場合に第一条の意味は変わってくるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/115
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116・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 人質の安否を憂慮する者という表現を使いますと、その人質との関係からしまして、当然に心から憂慮する者という範囲に狭まってしまいまして、そこまで狭くなると、たとえばハイジャッカーあるいはその他ジャッカーが要求をだれに対してぶつけるかもしれません、そういう場合を全部本来的に、安否を憂慮する者でないとこの構成要件を充足しないということになりますと、やはり狭きに失するのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/116
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117・飯田忠雄
○飯田委員 こういう問題につきましては事態の事実関係が一番重要になってくると思います。事件そのものの内容ですね。たとえば航空機ハイジャッカーの場合などはこれはもう国家的に政府として非常に心配をするものでございます。ところが子供を捕らえて人質にされてゆすられておるという場合になりますと、政府自体はそんなに心配をいたしません。親とか親戚とかで済むことになります。その事件の性質性質によりまして、憂慮する者の範囲というものは決まってくるのではないか、私はこう考えるわけです。
「第三者」という言葉に私非常にひっかかるのは、何か赤の他人、関係のない者、こういうように思われるのですよ。赤の他人で関係のない者、全然憂慮もしないような者に犯人が幾ら要求したって、そんな要求をのむ必要はないじゃないか、こういうことになるわけです。この問題は、私は決して言葉のあやを言うておるわけではなしに、実態に関連してくるから御質問申し上げているわけです。しかもこれが政府の公的見解をなすということになりますと重要な問題でありますので御質問申し上げるわけですが、重ねて御意見をお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/117
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118・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 「安否ヲ憂慮スル者」と申しますのは、現在の刑法の解釈としては、憂慮するであろうあるいは憂慮すべき立場にある人、こういうような意味で使っておるわけでございます。赤の他人でございましても、たとえばこの前ありましたように、バスを占拠して、その乗客を人質にとって、警備にかけつけた警察官に対して要求をする、警察官もある意味では赤の他人であるわけでございます。いろいろなケースが考えられます。日本の飛行機を乗っ取りまして、日本人乗客を人質にとってよその国の人に対して要求をするという場合ももちろん考えられますし、過去にもあったわけでございまして、同じ例じゃありません、そういうような例があったわけでございます。そういう意味で、彼らの要求はどこに対して向けられるかもしれない。しかしながら、どこに対して向けられてもそれを受け取った人からいたしますと、貴重な多人数の人命というものがカタにとられておるということになりますれば、常識的な意味において人質の安否を憂慮するような立場にあるであろうというふうに思われるわけでございます。さりとて、「第三者」という言葉のかわりに、要求を受ければ人質の安否を憂慮することとなるであろう者というふうに書いてみても同じ趣旨になるわけでございまして、余りどうも実益がないと申しますか、かえって構成要件の解釈が混乱するのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/118
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119・飯田忠雄
○飯田委員 この問題、ゆっくり御研究願うことにいたしましょう。もうこれをやりましてもしようがない。私はどうも政府見解には納得しかねるものを持つのですけれども、宿題にいたしたいと思います。
そこで、問題を少し変えまして、刑法の身代金誘拐罪は、人を逮捕または監禁した者がこれを人質にして、第三者に対し義務のない行為を要求する場合に該当するかどうかということをお聞きしたいわけです。もしそういうことに該当するということであれば、第一条の「第三者」は了承できますがね。刑法に書いてある憂慮すべき者という意味を第三者と理解されておるかどうか、現行法で。この点にはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/119
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120・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 現行刑法二百二十五条ノ二の身代金誘拐罪にございます「其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」これは第三者のうちの一部の者を言う、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/120
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121・飯田忠雄
○飯田委員 それならば、この「第三者」と解してもいいわけですね。解しておられるわけですね、政府当局では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/121
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122・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 第三者のうちごく限られた地位、身分、関係を有する者が「被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」に当たる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/122
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123・飯田忠雄
○飯田委員 それでは、この問題はこのくらいにしまして、次に別の問題に入ります。
人を逮捕監禁をいたしました者がこれを人質にする行為は、基本的人権の保障をその本旨とする日本国憲法を直接的に否定するものでございます。したがって、憲法及び国民に対する敵対行為であると言わねばならぬと思います。人権に関する世界宣言というのがございますが、これを侵犯するものでもある。こういう点からいたしますというと、人類の敵であると言うても過言ではないと思われるわけであります。こうした憲法及び国民の敵であり、人類の敵である犯罪者に対しましては、国法による保護を与える必要はないのではないかと考えられるわけです。国籍を剥奪し、国外追放の刑に処するのが至当ではないか、こういう考え方も出てまいるわけでございます。
といいますのは、海賊の罪というのがございますが、これは国際慣習法上この人類の敵であるとして無国籍者として扱うことができるということになっております。それは集団をなして武器を持って船舶を奪って、人命、財産に危害を与えるからだ、無差別的な危害の与え方をするのであるから、こういうわけであります。この人質による強要行為というものは、まさに無差別的な人命に対する危害行為を内に含んでおるのではないか。つまり、人を捕えまして、言うことを聞かなければこの者の命をとると言うてほかの人から物を取り上げる、あるいは要求してあることを行わせるというわけですから、まさにこれは陸上における海賊行為と変わりない凶悪なるものであると言わねばならぬわけであります。そういう意味において、憲法の反逆者であり、人類の敵であり、国民の敵だ、こういう者は国法の保護を与える必要はないではないか、海賊行為と同じように無国籍者として扱って差し支えないではないかという議論もなし得るように思われるわけですが、こういう見解に対しては政府はどのようにお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/123
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124・瀬戸山三男
○瀬戸山国務大臣 およそ犯罪——犯罪以外にもあると思いますが、犯罪というのは、所有権にしろあるいは生命身体にしろ、およそ殺人は生命の侵害、あるいはどろぼうは所有権の侵害である。このほとんど全部憲法に反する行為だと思います。そういう意味においては人権の侵害、人権の侵害というのは憲法に反するから憲法に対する反逆者である、それは国籍を取り外せというのはどうもいかがでしょうか。そうすると、もう刑務所へ行くか、どこか国籍を外してしまえということになってしまうので、その中でわが国ばかり、日本国民ばかりじゃありませんけれども、他の国も罰する場合があるわけでございますが、そういう理論でいわゆる憲法に反した、憲法に保障する人権を侵害したことになるから国家に対する反逆である、したがって国民としての扱いをしない。考えられないことはないのですけれども、いまのほとんどと言っていいでしょう、多数例があるかもしれませんが、世界のすべての国が、民族はどこかの国の国民となっておるわけでございまして、したがって日本では国籍を剥奪して追放するということはやっておりません。世界のおおよその国もそうだと思います。したがって、その中で法律にひっかかって責任をとり、罰すべきものは罰し、そして更生するべき者には更生させる、これが国の仕事じゃないでしょうか。国法に反したからけしからぬやつだという理論はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/124
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125・飯田忠雄
○飯田委員 私の御質問申し上げましたのは、人質にとって強要する行為だけについてですが、こういう行為につきましてそれほどのことをしなくても、わが国の監獄に入れて矯正すればいいという御意見であるというふうに承りました。
ところで、今日のこの人質強要罪の規定を設けられました根拠は、提案理由によりますというと、最近における凶悪な人質強要行為が起こっておる、これに対する対策である、こういうふうにおっしゃっておるのを提案理由で見ております。それで、そういうことに限って私御意見を伺うわけですが、こういう人質強要行為を最近においてやっておる人々は、果たして日本の憲法に従ったりあるいは日本の憲法体制を守っていこうとしておる人なのかどうか。もしそうでない、憲法体制を破壊して別の憲法体制をつくろうとしておる人々でありますならば、日本国を破壊して別の国をつくろうということなのでありますが、そういう人たちは果たして日本の国民なのかどうかという点に、実質的に、わが国において恩恵的に国籍を与えて日本国民だ、こうしておるのはそれは日本国の態度でございますから、それはそれでいいのですが、実質的に日本国民であろうかという問題がございます。私はこの問題につきまして、日本国民がそうした日本国民でないように変わってしまった、こういう状態をつくり出したのはけしからぬ、これを直せというそういうことは一応度外視して申し上げているのです。そういう問題もあります。ありますが、これは別の問題としてたな上げしておきまして、とにかく現在もうそうなってしまった人たちに対処するに当たりまして、これを普通の国民と同じような処遇をするということ、たとえばその人たちを監獄に入れて果たして本当に監獄に入れた目的を達することができるだろうか、矯正することができるだろうかという点になりますと、疑いを持たざるを得ないわけなんですが、この点について今後どういう御処置をおとりになろうとするのであろうか、お伺いするわけです。この法律をつくって処罰することはいいのだけれども、処罰して果たして本当に処罰の効果があるであろうかどうかという問題です。そういう点を私、実は御質問をしておるわけでございます。
そこで、そういう問題について、これは国際的な協力をする以外に方法がないということも最近はよく言われております。こういう問題について国際条約をつくるなりあるいは国際間の協定、いろいろ御相談をなさるなりするということはお考えになっておるかどうか、お伺いをいたします。外務省の方からちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/125
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126・渡辺允
○渡辺(允)説明員 お答え申し上げます。
国際的にテロリズムそれから人質行為等の問題を扱っておりますのは、これまで国連の場が一番多いかと思います。国連ではテロリズム一般それからハイジャックの問題等につきまして数年前から取り上げておりますけれども、特に現在御審議願っております人質行為につきましては、一昨年の秋の第三十一回国連総会で西ドイツの外務大臣が、国際的な人質行為を防止するための条約をつくろうということを提唱いたしまして、それを受けまして人質行為防止のための国際条約を起草する委員会というものを設けました。昨年の八月それからことしの二月と審議をいたしておるわけでございます。これはいわゆる国際的な人質行為を行った者について、必ずどこかの国で処罰されるか、あるいは引き渡しを要求する国があった場合に引き渡すという義務を課するという条約案でございます。まだ委員会の審議は続いておるところでございますので、現在どのような形で最終的に条約がまとまるか余り明確なことは申し上げられませんけれども、そのような努力が続けられております。日本もこの委員会に参加をいたしまして、ドイツそのほか志を同じくする国と協力して条約の作成に現在努力しているというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/126
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127・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいま外務省からお答えがありましたその作業につきまして私どもも関心を持って見守っておるところでございます。
なお、こういった問題については、先ほど御指摘がありましたように、歴史的に見てみますと、海賊行為の絶滅のためにそれぞれの国が自分の国の国籍まで剥奪して一切の帰港を断るというような措置をとって、海賊行為の絶滅がおおむね効果を上げたというようなことを、私も先生の御著作で拝見しておるわけでございますが、それはそれといたしまして、今日の段階におきましてはやはり国際間の協力によりまして、海賊行為の絶滅とはまたアプローチの角度が違うかと思いますが、国際間の協力によってこういうものを絶滅させていかなければならぬ、そういう面が十分あると思っておるわけでございます。幸い五十三年度予算の成立を見ましたので、本月五日私ども刑事局に国際犯罪対策室というのを設けさせていただいております。早速活動を開始しておりますが、私どもとしてはここを中心として関係省庁と御連絡をとりながら国際協力の推進に努めていきたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/127
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128・飯田忠雄
○飯田委員 それでは次の問題に入りますが、人質強要者に対する刑罰は無期または五年以上の懲役となっておりますが、そういう刑罰にされた理由をお尋ねいたしたいわけでございます。
人質殺害をもって脅迫する行為、これは未確定ながら人質殺害の可能性のあることを表明しておる意思の存在が認められます。つまり、人質をとるということは、言うことを聞かなければこの者を殺すぞと言うておるのですから、そうしますと、未確定ではあるけれども、殺す意思があると思われます。少なくとも未確定ながら殺す可能性はあると思われます。しかもそれを犯人自身がみずから表明しておるわけでありますから、恐らくそういう意思があることを認めることができるのではないか、こう思われます。そうしますと、こういう犯意が認められておりまするならば、人質殺害の未確定の故意が推定されるのではありませんか、こういうことです。もし未確定の故意が推定されまするならば、人質殺害の未遂と同罪ではないでしょうか。法案の第三条の刑罰と区別する理由がないのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/128
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129・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 まず第一条の罪の法定刑を無期または五年以上の懲役といたしました理由を御説明申し上げますと、もう先刻来御質疑いただいておりますような要件をしぼりまして、非常に悪質な事犯に対処するためにこの罪をこさえるわけでございますが、これまた先ほど御説明しましたように、刑法二百二十五条ノ二の身代金誘拐罪とこれとの関係を見ますと、やはり本法第一条の罪が身のしろ金誘拐に対する特別規定というふうにも考えられるわけでございます。ところで身のしろ金誘拐の方の法定刑を見ますと、無期または三年以上の懲役というふうになっております。そこで、そのことを横目ににらみながらこの罪の悪質さを考えまして、刑の上限をまず無期懲役にする、こういうことにいたしております。下限につきましては、この種の犯罪行為というものは強盗罪というものの凶悪性よりなお悪質ではあってもそれ以下ではないという観点から、下限を強盗罪の五年というところで切ったわけでございます。
さてそこで、この種の行為におきましては、確かに御指摘のように、人質を、彼らの言う言葉で申しますと処刑するぞ処刑するぞというようなことでおどかし上げるのが常なのでございますが、そういう意味におきまして、いつ人質を殺してしまうかもしれぬ、あるいは人質に対する身体的攻撃を加えるかもしれないという蓋然性を客観的に秘めておることは間違いないと思うのでございます。しかしながら殺害行為というものは、やはりそこに確定的な故意を生じて、そして実行に着手をするというところで初めて人を殺す罪あるいはその未遂罪として評価されるべきものだと思うわけでございまして、いまだその段階に至らない不確定的な蓋然性の存在だけでそこに死刑を盛り込むということは立法的にやや行き過ぎではなかろうか、こういう観点から、この法律の第三条の二項というものと第一条の罪とは、死刑を置くか置かないかというその点で分別をつけたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/129
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130・飯田忠雄
○飯田委員 そうしますと、この場合、法務当局といたしましては人質殺害の未確定故意は認めない、こういう御見解でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/130
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131・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 中には未確定故意がある事犯もあると思います。しかしながら、実行の着手がないという意味において、未遂の段階と同じに評価するわけにはいかないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/131
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132・飯田忠雄
○飯田委員 次の問題に入ります。
法案第一条の罪は、要求によって既遂となります。要求に対してその内容が実現したかどうかということは既遂要件とはされておりません。したがいまして、要求はしたが、つまりこの罪は既遂となったが、要求内容が実現する前に人質を解放したということが起こることがあります。こういうような場合には、むしろ刑を減軽する必要があるのではないか。つまり犯人の意思によりまして、要求はしたけれども、要求内容が実現する前に人質を解放した、そういう行為をした者は減軽するということが必要ではないだろうかと思うわけであります。そして、こういう規定を設けることによって人質殺害に至るのを防ぐ心理的効果を期待することができると思いますが、この点につきまして御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/132
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133・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 確かに要求の実現前に人質を解放したときには罪一等を減じてやるというのは、一つの立法政策として考え得ないことではないと思います。しかしながら、この種事犯の実態から見ます場合に、多くの場合、犯人は独自な価値観あるいは偏狂な信念に基づいて行動する場合が多うございまして、これまでの事例に照らしても要求の実現前に人質を解放するというような事例はないわけでございまして、仮にそういう事例が将来あるといたしますれば、刑法所定の酌量減軽等の措置で十分賄えるのではないかと思っております。
なお、後議論の立脚点といたしまして、現在の刑法の身代金誘拐罪に解放減軽規定があるということをお考えになっておるのではないかと思うのでございます。この身代金誘拐罪における解放減軽規定というのは、身代金誘拐罪の規定が制定されました当時の特殊な事情から、きわめて刑事政策的な観点から設けられたものでございまして、赤ちゃんがかどわかされましてだれにも赤ちゃんの所在がわからない、そういうような状態で身のしろ金を要求してくる。身のしろ金を払ったのに犯跡隠蔽のために赤ちゃんを殺してしまうというような事案が何回か起きたわけでございます。そういう観点から、身のしろ金は取られてもしようがないから赤ちゃんだけでも生きたまま安全に解放してくれれば刑を減軽してやろうという非常に特殊な立法政策から、身のしろ金誘拐においてはそういう規定が置かれたわけでございますが、その後、この解放減軽規定が適用された例はほとんどございませんし、また、将来刑法全面改正の際には、むしろこの規定を存続化するかどうか再検討の要があるものと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/133
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134・飯田忠雄
○飯田委員 それでは次の問題に入ります。
第一条の罪につきまして未遂罪の規定がございません。未遂罪の規定がないということは未遂形態は考えられないという御見解でございましょうか、あるいは未遂形態は考えられるのだが、未遂処罰の必要もない、こういう御見解なのでしょうか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/134
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135・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 この罪は、立法形式といたしまして講学上申します一種の身分犯のような規定の仕方をとっておりますために、逮捕監禁に着手して強要行為に至らない場合、これを未遂罪として評価する余地がないという形になっておるわけでございます。そこで仮に考え得るとすれば、犯人が要求したけれどもそれが届かないという場合が観念的には考えられるわけでございますが、この種の犯罪の実態に照らしまして、要求すれば必ずだれかにわかる状態で要求しておりますし、だれもいないのに大きい声で叫んでみてもしょうがないわけでございますので、未遂罪というものの適用の余地がないという考え方から未遂を置いていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/135
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136・飯田忠雄
○飯田委員 それでは時間の都合で第二条に移ります。
第二条の条文は、航空機強取の行為をやった者が、飛行機内におる者を人質にして、第三者に対して、義務のない行為を行わせること、こう書いてありますが、この問題は先ほど私が取り上げましたまさに人質にされた者、人質をとられた者が「第三者」なのかという問題で恐らく重要な争いの起こる規定であろうと思います。特に今日まで起こってまいりましたのは、航空機をハイジャックするという目的は、すべて人質をとって第三者に対して義務のない行為を行わせることだ、このことに該当するわけですが、この場合に「第三者」という言葉の解釈が非常に疑問だということは第一条で申し上げたとおりでございます。これにつきましては、いま少しく「第三者」という言葉についての御検討をお願いいたしたいわけであります。人質にとるとか人質にとられるという問題は、これは解釈する人によって変わることはなかろうと私は思うのですが、たとえば航空機ハイジャックによって飛行機内におる者を人質にした犯人が、政府に対して六千万円——金額はどうでもいいのですが、お金を払えとか、あるいは監獄におるわれわれの同志を釈放せいとか、こういうような要求をする場合に、これは第三者に対する要求じゃなくて、まさに人質をとられてその人質の安否を真剣に考えておる政府に対する行為だというふうに言わざるを得ないわけです。それをこの規定のとおりでありますと、政府は当事者であって第三者でないじゃないかというふうに言われた場合に大変困る。人質にされた者と人質をとられた者というのは第三者関係ではない。人質にされた者と人質をとられた者というのは、犯人から見て両方とも第三者ではなくて相手方なんだと考えざるを得ないので、特にこの点についての御研究をお願いをいたしておきたいわけであります。
それから第二条の場合につきましても、やはり減刑規定の問題は不必要だとお考えになるであろうと思いますが、こういう点につきまして重ねて御質問を申し上げます。
飛行機内に抑留した、その後気が変わって釈放した、この場合に、釈放してもしなくても、同じように「無期又は十年以上の懲役に処する。」という規定があることを犯人が知っておる場合に、どのような心理的影響があるだろうかということを私は考えるわけでありますが、この点につきましての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/136
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137・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 一般論としては、先ほど第一条の関係でお答えしたとおりでございますが、特に第二条の関係におきましては、そもそも第二条の罪を犯します者はハイジャックを犯した者でございます。ハイジャックを犯した途端にすでに無期または七年以上の懲役に該当することになっております。その者が今度人質強要行為をしたということで刑の短期を十年に上げておるわけでございます。そこで、今度人質強要をした者が要求の満たされる前にその人質を解放したからといって減軽をいたしますと、前のもともとのハイジャックの罪よりも軽い罪になってしまうという非常な矛盾点があることが一つ指摘できると思います。それからさらに、人質の安全の問題につきましては、三条で、いやしくも人質を彼らの言葉で言う処刑した場合には断じてがまんならぬという刑を設けることによってただいま御指摘のような趣旨を実現したい、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/137
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138・飯田忠雄
○飯田委員 それでは、時間が来ましたので次に参ります。
第三条につきまして二、三疑問点がありますけれども一応抜きまして、この場合についてだけ未遂罪が決められております。第一条、第二条は未遂罪がない、未遂形態がない。第三条の場合は未遂形態があるということが私はどうもわからないのです。ハイジャックをしまして、人質にしておる者を殺せば既遂、殺さなかった場合は、別に未遂ではなくて一条か二条の形態ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/138
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139・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 およそ人を殺すというような事態はきわめて凶悪な事態でございますが、さらに、殺意を持ってその実行に着手した、たまたま何かの事情で殺し損なったという場合も同じ程度の、あるいはこれに準ずる刑罰的評価を受けるべきであろうと思うわけでございまして、そのことは、たとえば刑法二百四十条及び二百四十三条の強盗殺人とその未遂罪というような規定もございますように、およそ人を殺そうということで実行に着手をするということは厳重に処断をされるべきことであろう、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/139
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140・飯田忠雄
○飯田委員 そうしますと、具体的に申しますと、人を逮捕しまして第三者に強要行為をやっておる者、これが人を殺そうとして殺さなかったという場合といいますと、結局傷害を加えたことを客観的には意味するのでしょうか。これは、人を殺すか殺さぬかということは、犯人の意思の問題は実は外からは見えないので、命をとれば殺したことになり、命をとってなければ傷害をしたこととしか外からは認識できないわけなんです。そこで、この未遂というのは傷害行為を殺害行為と同様に罰する、こういう意味になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/140
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141・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 ただいまお尋ねのようなことではなく、殺意を持って実行に着手したけれども殺すに至らなかった場合を処罰しようというわけでございます。ただいまのような、客観的にわかるかわからないかということでございますが、その問題は殺人未遂か傷害かということを論じます場合に常に問題になるわけでございまして、たまたまピストルを人質に向けて発射した、しかし、弾がそれてけがもしなかったという場合におきましても、その凶器の性質、その用法等によりまして殺意を持って実行に着手したというふうに認められる場合も優にあるわけでございまして、その辺は、現在裁判所が常に扱っております殺人未遂と傷害の境というところの判断と全く同じになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/141
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142・飯田忠雄
○飯田委員 それでは、次の第四条に入ります。
この提案理由の中で「広く国際的な協力が必要であることにかんがみ」こういうふうにお述べになりまして、だから「広く処罰し得ることとする」こういうふうになっておりますが、第四条を置かれたのは、そういう意味で外国人が外国において行ったところの人質強要あるいは人質殺害、こういうものをわが国で処罰する、こういう意味でございましょうか。もっと申しますれば、わが国で処罰するということは、ただ日本の国へやってきたときに処罰するという意味にとどまらないで、外国の警察力を派遣して捕らえて、そして日本に引っ張ってきて処罰する、こういう意味になるのでございましょうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/142
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143・伊藤榮樹
○伊藤(榮)政府委員 第四条の規定は、ただいまの御設例によりますと、外国人が外国でこれらの罪を犯しました場合にも日本で処罰しようと思えばできるということを明らかにするわけでございまして、したがいまして、実際の例として考えられますのは、外国人が外国でこの種の犯罪を犯して日本へ逃げ込んできた、そういう場合に、その外国人の属します国あるいは人質の属します国、それらとの国際的な話し合いのもとに、ひとつ日本で裁判をやって処罰してくれということになりますれば日本で処罰する、そういうことができるようにしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/143
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144・飯田忠雄
○飯田委員 時間が参りましたので、これで私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/144
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145・羽田野忠文
○羽田野委員長代理 次回は、来る四月十一日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405206X01419780407/145
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