1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年二月十七日(金曜日)
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昭和五十三年二月十七日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す
る法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
及び酒税法及び清酒製造業の安定に関する特
別措置法の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明及び質疑
午後一時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/0
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001・保利茂
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
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租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/1
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002・保利茂
○議長(保利茂君) 内閣提出、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案及び酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣村山達雄君。
〔国務大臣村山達雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/2
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003・村山達雄
○国務大臣(村山達雄君) 租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案並びに酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
初めに、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
まず、租税特別措置法の一部改正について申し上げます。
租税特別措置につきましては、税負担の公平確保の見地から引き続きその整理合理化を推進する一方、最近における社会経済情勢の推移に顧み、住宅建設及び民間設備投資の促進に資するための諸措置及び中小企業対策のため必要な措置を講ずるほか、外国子会社等を通じる租税回避に対処するための税制を導入するなど、所要の改正を行うことといたしております。
すなわち、第一に、既存の租税特別措置の整理合理化につきましては、まず公害防止準備金など十一項目の企業関係特別措置を廃止することといたしております。
次に、技術等海外取引に係る所得の特別控除制度について、工業所有権等の控除率を収入金額の五五%から三五%に引き下げることとし、特別償却制度について、航空機の特別償却割合を五分の一から六分の一に引き下げる等の措置を講ずるほか、準備金制度については、価格変動準備金の積立率を引き下げる等の縮減合理化を図ることといたしております。また、登録免許税の減免措置につきましても、電源開発株式会社等の増資登記に対する軽減税率を引き上げる等の縮減合理化を行うことといたしております。
第二に、住宅・土地税制につきましては、住宅取得控除を拡充し、民間金融機関等から融資等を受けて新築住宅を取得した者に係る控除額を引き上げるとともに、土地譲渡益重課制度について、優良宅地を供給する場合の適用除外要件のうち適正利益要件を適正価格要件に改めるなど、所要の措置を講ずることといたしております。
第三に、民間設備投資の促進に資するため、一年限りの臨時の措置として、省エネルギー・公害防止関連設備等及び中小企業者の取得する機械について、特別償却にかえて、その取得価額の一〇%相当額を、当期の税額の二〇%相当額を限度として、税額控除を認めることといたしております。
第四に、外国子会社等を通じて行われる租税回避に対処するため、租税負担の著しく低い国等に所在する特定の外国子会社等の留保所得を、本邦親会社等の所得に合算して課税する制度を創設することといたしております。
以上に加え、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく認定を受けた中小企業者に対して、欠損金の繰り戻しによる還付について特例措置を講ずるとともに、中小企業倒産防止共済法に基づき納付した共済掛金の損金算入を認めることとするほか、みなし法人課税を選択した場合の課税の特例、中小企業者の貸し倒れ引当金の特例、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率の特例等期限の到来する租税特別措置について、実情に応じ適用期限を延長する等、所要の改正を行うことといたしております。
次いで、国税収納金整理資金に関する法律の一部改正について申し上げます。
昭和五十三年度の税収の伸び悩みを補い、財源の確保を図るとともに、地方財政対策等にも資するため、毎年度の歳入に組み入れるべき国税収納金等の受け入れ期間の末日を、一月間延長して翌年度の五月末日に改めることとし、これにより、同月中に収納される国税収納金等のうち、当該年度内に納税義務が成立しているものを当該年度の歳入として組み入れることといたしております。
次に、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
まず、酒税法の一部改正について申し上げます。
わが国の財政は、大量の公債、特に特例公債への依存から脱却し、財政の健全化を図りつつ、同時に、速やかに景気を回復させるというきわめて困難な問題に直面しております。このため、昭和五十三年度の税制改正においては、当面の経済運営の方向と背馳しない範囲でできる限りの増収措置を講ずることとし、その一環として、酒税について税負担の増加を求めることといたしたものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、酒税の従量税率の引き上げを図ることといたしております。
すなわち、ビール、果実酒類、ウイスキー類、スピリッツ類、リキュール類及び雑酒について二四・三%程度、清酒特級について一七・五%、清酒一級について六・九%、しょうちゅう甲類について九・九%、みりん本直しについて四・九%その税率を引き上げることといたしております。
他方、清酒二級、合成清酒、しょうちゅう乙類及び本みりんについては、消費の態様等を考慮して、税率を据え置くことといたしております。
第二に、こうじの製造または販売業の開廃等に係る申告制度を廃止する等、酒税制度の整備合理化を行うことといたしております。
次いで、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正について申し上げます。
清酒製造業におきましては、現在、昭和五十六年度を目標年度とする第三次近代化計画を実施し、経営基盤の一層の安定に努めているところでありますが、今回、このような清酒製造業の自助努力を実効あらしめるため、日本酒造組合中央会の事業の範囲を拡大することといたしております。
第一に、この法律の施行の日から昭和五十六年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し、給付金を給付するとともに、これに係る納付金を清酒製造業者から徴収することができるよう措置することといたしております。
第二に、経営の改善その他清酒製造業の近代化を図るための事業を行うことができるよう措置することといたしております。
以上、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案並びに酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
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租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/3
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004・保利茂
○議長(保利茂君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。池端清一君。
〔池端清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/4
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005・池端清一
○池端清一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法等改正案並びに酒税法等特別措置法改正案について、五点に問題をしぼって、福田総理並びに関係各大臣に対して質問を行います。
まず、その第一は、不公平税制の是正の問題についてであります。
いまさら申し上げるまでもなく、税制で最も根幹となるべきは公平の原則であります。そして税制が公平であるためには、能力に応じて税金を負担するという応能負担の原則が貫かれていなければなりません。しかるに、今日までのわが国の税制は、資本蓄積に重点を置き、大企業や高額所得者を税制面で優遇するという施策をとり続けてまいりました。その結果、いまや国民の間に、不公平税制を正して公平な税制をという声がますます強く、まさに燎原の火のごとく燃え広がっているのであります。昨年の通常国会における予算修正の際にも、この問題はきわめて大きな問題として取り上げられ、与野党幹事長・書記長会談において、不公平税制の是正については五十三年度予算にできるだけ反映させることが確認をされ、翌三月十日の本院予算委員会においても、政府は同趣旨の答弁を行っているところであります。
しかるに、今回の税制改正案では、企業関係の租税特別措置の廃止は、九十一項目中わずかに十一項目、しかもそのうち四項目は、本年三月三十一日をもって期限切れになるものであります。この九十一項目中には中小企業関係のものも含まれており、私は、そのすべてを改廃せよと主張するものではありませんが、この程度の整理では全く不十分であり、さきの確認合意事項にも背反するものと言わなければなりません。
しかも、わが党がかねてから主張している利子配当の優遇措置や、坊前大蔵大臣の言をかりるならば、不公平税制の親玉と言われているいわゆる医師優遇税制について何らの是正措置も講じておらないことに、私は強い怒りを覚えるものであります。(拍手)
この問題については、政府の税制調査会ですら、これまでたび重なる是正の勧告を行い、昨年暮れの答申でも、「何らの法的措置も講じられないとすれば、国民の政治に対する不信感はぬぐいがたいものとなろう。当調査会は、その是正を強く要請する」ときわめて厳しく指摘しているのであります。また会計検査院も、「実際経費率の総平均は五二%で、所得税の軽減額は一人当たり七百万円を超えている」と報告をいたしているのであります。にもかかわらず、政府が何らの是正策も講じないというのは、一体いかなる理由によるものでありましょうか。
総理は、去る一月二十四日の本会議において、わが党中村重光議員の質問に対して、自由民主党としては現行の制度は五十三年度限りという決定をしているので、議員立法を期待していると、まるで他人事のような答弁をなされているのであります。私は、事柄の重要性から言っても、そのような消極的な姿勢ではなくて、政府みずからが決断して具体的な是正の措置を速やかに講ずべきであると考えますが、福田総理の御所信をお願い申し上げる次第であります。(拍手)
第二に、投資促進税制についてお尋ねをいたします。
今回の税制改正において、景気対策の一環として、民間の設備投資促進の名のもとに、特定のものについて一年限りの臨時措置として減税の特例措置を講じようとしているのでありますが、私は、率直に言って、この改正に多くの疑問を持つのであります。なぜならば、民間の設備投資が伸び悩んでいるその原因が、膨大な過剰設備の存在にあり、むしろその廃棄が大きな問題となっている今日、このような減税を行っても、その効果が期待できるような経済情勢にはないと思うからであります。現に税調内部でも、いわゆる好況業種にボーナスを与えるだけの結果になるのではないかとの議論もありましたように、そしてまた財界からも、投資刺激効果は期待できないとする意見が今日続出している状況からも、私はこのような改正に疑問を抱かざるを得ません。
加えて、緊急避難の名のもとに、新しい不公平税制をまた一つ加えることにはどうしても納得ができないのでありますが、総理のこれに対する見解を承りたいと思うのであります。(拍手)
第三に、土地譲渡益制度の緩和についてお尋ねをいたします。
政府は、今回、適正利益要件を適正価格要件に改め、宅地供給の促進を図るとしておりますが、適正利益率二七%の制限を外して適正価格に改めることは、いわば企業の利益確保を青天井にしたようなもので、地価上昇の歯どめの一つを外す結果となるのであります。政府の言う土地売買における適正価格とは、現状の地価の追認であります。すでに地価は、その公示価格は、五十年の〇・五%、五十一年、一・五%、そして五十二年は五%近くの上昇が見込まれているのであります。一言で言えば、今回の対策は不動産会社の利益保障のための措置であり、宅地の供給問題の解決にはほど遠く、逆に土地価格高騰にその道を開くだけのものと言っても言い過ぎではありません。(拍手)
当初、大蔵省もこの重課制度の緩和に反対していたと聞き及んでおりますが、大蔵大臣並びに国土庁長官から、今回の税制改正の目的とその政策効果についてどのようにお考えになっておられるか、具体的に承りたいと思うのであります。
第四に、酒税の引き上げについてお尋ねをいたします。
今回の改正案によりますと、ビール、ウイスキーの二四・三%の引き上げを初め、大幅な酒税の引き上げが予定をされております。この結果、酒類の租税負担率、すなわち酒税の占める割合が、清酒特級で三七・六%、ビールで四七・四%、ウイスキー特級に至っては実に五〇・九%という勘定になるわけであります。実に各種酒代の約半分が税金としてうたかたのごとく消え去ってしまう勘定になるわけであります。
しかも、酒税は、国民の強い反対を押し切って、去る五十一年の一月、二二・四%引き上げられたばかりであります。その二年後に、またもやこのような大幅引き上げを行うことは、ささやかな解放感を求める大衆の心に暗い影を落とすものであり、しかも所得税の実質増税、国鉄運賃、公団住宅家賃、授業料等、一連の公共料金の引き上げが予定されている中で、国民の暮らしと家計を圧迫する不当な増税と言わなければなりません。(拍手)
さきにも触れたとおり、一連の不公平税制を温存しながら、取りやすいところから取るという安易な姿勢で国民に増税を求めるという政治姿勢こそ問われなければならないと思うのでありますが、これに対する政府の見解を承りたいと思うのであります。(拍手)
最後に、五月分税収の年度所属区分の変更についてお尋ねをいたします。
今回の改正は、経済活動の停滞に伴う税収の伸び悩みを補うとともに、地方財政対策にも資する目的をもって、国税収納金の受け入れ期限である四月末日を一カ月延長して五月末日に変更しようといたすものであります。
この措置によって、確かに五十三年度は、政府が説明しておりますように、約二兆円の増収が見込まれるかもしれません。しかし、五十四年度以降は一体どうなるのでありましょうか。それはそのとき、一般消費税の導入という大型増税で穴埋めをするというのでありましょうか。今後に向けての具体的な展望が示されていないことはまことに遺憾であります。
さきの決算調整資金制度の導入といい、公債依存率実質三七%といい、また今回の措置といい、景気浮揚、緊急避難というにしきの御旗のもとに、なりふり構わぬ、まさに臨時異例の措置であります。もとより、不況の克服、失業や倒産の防止は、今日きわめて緊急にして、かつ最大の政治課題であります。しかしそれは、どんな問題があっても多少のことは目をつぶってよろしいということにはならないのであります。このようなびほう策だけでは今日の深刻な危機は打開できません。
われわれがかねてから強く求めているように、いまこそ、高度成長時代の経済体質を改め、生活関連社会資本の拡充や社会保障の充実等のいわゆる福祉型財政へ軌道修正することが焦眉の急になっていると思いますが、総理のこれに対する所信を求めて、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/5
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006・福田赳夫
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
まず、不公平税制でございますが、この不公平税制と世に言われているもの、そういうような制度につきましては、これを逐次是正していかなければならない。制度ばかりじゃありません。私は、その執行面、そこにおきましても不公平があっては相ならぬ、このように考えておりまするし、また、この問題につきましては、昨年の国会におきまして、五十二年度予算案の論議におきまして、与野党の幹事長・書記長会談が持たれた。その際、五十三年度予算におきましてはこの問題を処理すべきである、こういう決定がなされ、政府におきましてもこれを尊重すると申し上げてきたことは、私はよく記憶いたしております。さればこそ、ただいまも御指摘がありましたけれども、政府は、このいわゆる不公平税綱につきましては、逐年是正に努力をいたしてきておるわけであります。
でありまするけれども、五十三年度におきましても、公害防止準備金制度を廃止するなど、十一のこの特別措置を廃止するということにいたしておるわけであります。しかし、まだいろいろの問題が残っております。これらの問題につきましても、今後鋭意これが処理に取り組んでいきたい、かように考えておる次第でございます。
さらに、特に社会保険診療報酬課税につきましてお尋ねがあったわけであります。
この問題は、私から申し上げるまでもございませんけれども、とにかく二十年余りにわたって論議され、しかも解決されなかったむずかしい問題であります。しかし、むずかしいからといってこれを放置することはできない。私はこれが処理に鋭意取り組んできておったわけでございますけれども、何せ御承知のとおり、非常にむずかしい問題がいろいろ複雑に絡み込んでおる。そこで、私も苦慮しておるその最中に、自由民主党におきまして、現行措置は五十三年度末までその存続を認めるから、その間これに対応する諸般の施策を速やかに講ずることとすることの旨を決定いたしました。そしてこれに伴う議員立法を行う、こういう考え方を打ち出しておるのであります。
私は、この考え方は、この大変むずかしい問題に対処する方途といたしましてまことに現実的な考え方である、そのように考えまして、政府といたしましては、この議員立法の成立に期待を持っておるわけであります。また、その成立に対応いたしまして政府としての処置を取り進めたい、かように考えておる次第でございます。
それから、五十三年度予算におきまして、五十四年五月の収入を五十三年度収入として前取りをする、後が暗たんたるものではないかというお話でございますが、私も、これは大変なことをやるのだということにおきましては、これはもう考え方はちっとも違いません。つまり、五十四年度になりますると、もう五十三年度のような二兆円に及ぶところの臨時の収入というものがなくなっちゃうのです。そういうことでありまするから、五十四年度の財政収支は非常に窮屈になってくる、これはよく承知いたしております。
それから、同時に、池端さんにおかれましては、ことしは、そういう無理をいたしまして、臨時異例の措置ということでいろいろやっておるけれども、今後日本の財政というものは一体どうなるのだ、深憂にたえぬというようなお話でございまするけれども、私も、今後の財政を展望いたしますと、大変深刻だと思うのです。
そこで、五カ年の財政というものを展望いたしまして、これを財政試算といたしまして、皆さんに御検討願いたい、こういうふうに存じておりまするけれども、財政というもの、これは経済あっての財政ではございまするけれども、この財政が破綻いたしますると、これはまた国の秩序、基盤に動揺が来るというような、非常に大事な問題でございます。そういう認識を持ちまして、とにかく一刻も早くという、しかし、それにいたしましても、私は、数年間はかかると思うのですが、経常収支の財源を特例公債に、つまり赤字公債です。これに依存するような状態は一刻も早く脱出しなければならない、さように考えておる次第でございます。
同時に、国の経済全体の運営につきまして、五十三年度において臨時異例の財政措置をとる、とりまするけれども、それによっていままで政府が考えてきたところの安定成長路線、この追求をやめたというわけではございません。
私は施政方針演説でも申し上げたのですが、私どもは、もうトンネルはことし出口が見えるようなところまで行くでしょう、五十三年度は。しかし、その先またわれわれは、もと来た道、つまり高度成長社会へ復元しようということを考えているのではないということを力説したわけでありまするけれども、量よりも質、また成長よりも生活中心、そういう考え方をもって、ねばり強く今後の日本社会の建設に取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
なお、自余の問題につきましては、所管大臣からお答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣村山達雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/6
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007・村山達雄
○国務大臣(村山達雄君) 私からは、総理と重複しない範囲で、投資促進税制、それから土地譲渡益重課制度、酒税について申し上げます。
池端さん、先ほど投資減税は効果がないのじゃないか、それから第二番目には、需給ギャップの関係から言って好況企業だけ利益を受けるのじゃないか、また新しい不公平を生ずるのじゃないか、以上の三点だと思うのでございます。
第一の、効果がないのじゃないかということにつきましては、私はいささか所見を異にするのでございまして、従来は特別償却でございますから、繰り上げ償却でございます。最終的には、いわば法人税の利子分だけがまかるわけでございます。今度は税額控除でございますから、その分だけは完全に免税になるわけでございます。しかも、期限を一年につけておりますから、だからやはり繰り上げ発注——あるいは建設を繰り延べようとする人たち、こういう人は繰り延べない方が得だ、こういうことを意識するに違いありませんから、私は相当の効果はあると思っております。
それから第二番目に、これは好況業種にしか関係ないんじゃないか、こういうことでございますが、これも私は所見を異にいたします。なぜならば、対象にしているのは、好、不況に関係のない設備を対象にしているのでございまして、公害防止設備であるとかあるいは省資源・省エネルギー設備、それから中小企業でございます。私たちは、これは設備としては中小企業が恐らく三分の二くらい占めると思っておるわけでございます。したがって、好況業種だけを問題にしているわけではございません。しかも、これによりまして控除不足ができました場合には三年間の繰越控除を認めるわけでございますから、これは好況企業ではなくて赤字事業の恩典になるわけでございます。
それから第三番目に、不公平を新たに発生するんじゃないか、こういう御心配でございますが、これは案を見ますとおわかりのように、一年限りの措置であり、同時に、現在行っております特別償却と引きかえなのでございます。したがって、そういうおそれはないということでございます。
それから第二番目に、譲渡所得につきまして政策効果はどうだという問題、それから土地成金を新たにつくるのではないかという問題、それからもう一つ、土地価格が上がるのじゃないか、こういう御心配でございます。
政策効果につきましては、いろいろ問題があるところでございますけれども、御案内のように、いまの法人に対する重課ができましたのは、現在の土地利用計画法のできる前でございます。そして、あれは、あの当時は土地の投機取引あるいは仮需要、これを抑制しようといたしたのでございますが、そのための一つの条件といたしまして、しかし優良な民間の宅地供給については免税を図るべきだという議論といたしまして、三つの条件を出したわけでございます。一つは、今度外しました適正利益率という問題、それから、それが優良の宅地造成取引であるということの府県知事の認可の問題とか、公募要件とか、こういうことでございます。その後、いまの国土利用計画法ができまして、そうして公示価格が出てまいったわけでございます。
したがって、従来、いわば二重の問題がございまして、たとえば公示価格以下で売ろうと思うんだが、こちらの方の適正利潤の利益で言うと適正利益率以上になる、そのために売れない、二重に縛りがかかっているということでございますので、今度はそれを外したというだけのことでございます。したがって、これによりまして政策効果がないということは言えないだろうと思うのでございます。
それから、土地成金がまたできるのじゃないかということでございますけれども、その点はただいまお話し申し上げましたように、従来の法人の重課制度の枠組みは依然として堅持しているのでございまして、優良宅地を供給するものについての条件を合理化しただけの話でございますので、その点は御心配要らないと思います。
それから、土地価格が上がるのじゃないかということにつきましても、これはその公示価格、これが今度ずっと働いていくわけですから、その心配は要らないと思うのでございます。
それから最後に、酒の税金、酒税を上げることについて大衆の負担になるのじゃないかという御心配でございます。われわれといたしましては、今度、前からお話ししていますように、財政が非常に苦しいし、健全化を保っていかなければなりません。同時に、景気政策もあわせてやらなければならぬのでございまして、景気政策に背馳しない限りできるだけの健全化を図りたいということで、そして若干の負担をお求めしたい、こういうことで提案いたしているのでございます。
しかし、その場合もずいぶん配慮したつもりでございまして、普通二四・三%でございますけれども、たとえば清酒の二級酒あるいはしょうちゅう、本みりん、こういうものは依然として据え置くとか、あるいは非常にいま経営状況の苦しい製品については、一級にしましても特級にしてもその上げ幅を十分考慮する、こういったことを考えているのでございます。
なお、物価について非常に御心配をなさっているわけでございますが、私たちが計算する限りでは、消費者物価に対して〇・一%程度の影響力ではないかと思うのでございまして、まあ、ひとつごしんぼう願いたい、こういうことで御提案申し上げているわけでございます。(拍手)
〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/7
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008・櫻内義雄
○国務大臣(櫻内義雄君) 私への御質問は土地譲渡益重課制度についてでございます。
この制度は、御承知のように、土地投機の抑制と地価の安定の見地から設けられたのでありまするから、適正利益率を適正価格要件にいたすことは基本的な枠組みを崩すものではないのであります。
国土利用計画法が制定されて適正価格の審査制度が定着いたしましたので、適正価格以内であればその利益に重課をしないことにいたしたのであります。このことによって宅地供給の促進を図ったものでありますから、この制度の改善が御指摘のようなことにはならないと思います。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/8
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009・保利茂
○議長(保利茂君) 池田克也君。
〔池田克也君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/9
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010・池田克也
○池田克也君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま提案されました租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案並びに酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に質問を行うものであります。
まず初めに、昭和五十三年度の税制改正に対する基本的な考え方についてであります。
当面するわが国の経済、財政の運営については、不況の克服、すなわち低迷する国内需要の拡大を図ることが最優先されるべきであります。総理御自身も施政方針演説の中で、いまこそ思い切った景気浮揚策をとるべきであり、本年の政策の目標を景気回復に集中する考えであると述べておられます。この趣旨から言うならば、私は、税制こそそのために積極的な役割りを果たすべきであり、それが五十三年度税制改正に与えられた最大の課題であると申し上げたいのであります。
しかしながら、政府の税制改正案の内容を見るとき、景気回復どころか、逆に消費を萎縮させる方向にあると言わざるを得ません。すなわち、景気回復の効果が認められるものは、住宅ローン減税の四十億円、投資減税の実質四百億円、合わせてわずか四百四十億円にすぎません。一方、景気回復にマイナス要因と考えられるものは、所得減税見送りによる増収分一兆四百九十億円を初め、酒税の税率引き上げ分一千七百七十億円や、その課税形態から見て一般消費税の先取り導入と思われる石油税の創設一千六百二十億円など、合計すると、減税額の三十二倍に当たる一兆三千八百八十億円になるのであります。
特に、所得税の減税をゼロにしたことは実質増税であると言わなければなりません。すなわち、一例を五十二年度の年収が二百三十万円の標準世帯にとると、五十三年に仮に五%のベアであっても、所得税七千六百円、住民税六千六百八十円、昨年の戻し税の削減分一万五千円、物価調整分一万円、合計三万九千二百八十円の実質増税となります。しかも、実質増税の負担が低所得者ほど重くなるのであります。年収二百三十万円では四二・一%、三百万円で二四・五%、四百万円で一九・九%であります。
加えて、御承知のとおり、健康保険料のアップ、ボーナスからの保険料の徴収、住宅公団の家賃の値上げ、さらには国立大学授業料の値上げや、公立高校の授業料も大幅に上がるのであります。そこへお酒の引き上げ、一般庶民の生活はますます苦しく、個人消費がさらに萎縮することは予想にかたくないのであります。
こうしてみると、総理が思い切って景気回復に集中するという施政方針をお述べになりましたこの内容と矛盾する、納得しがたいものであります。これをどう国民に説明されるか、総理の明確な御答弁をお願いするものであります。(拍手)
次に、不公平税制の是正についてであります。
これは昨年の通常国会で、減税問題に関する与野党合意事項として五十三年度税制改正に反映させるとの約束がなされていたのであります。その合意の背景には一少なくともわれわれが要求した利子配当所得課税の強化、有価証券取引税の引き上げ、金融機関の貸し倒れ引当金の縮小、交際費課税の強化、給与所得控除の頭打ちの復活等があったはずであります。しかし、このうち政府が是正したものは、有価証券取引税の引き上げのみで、それも要求の二分の一程度であります。とうてい昨年の与野党合意が反映されたとは言えないのであります。
また、総理の諮問機関である政府税制調査会も、中間答申で、「国民に一般的な税負担の増加を求めるに際しては、制度、執行の両面にわたり税負担の公平を確保することが強く要請される。」と指摘していることもあり、この際、不公平税制の是正に総理がどのように取り組まれるのか、その具体的な方途を明確にしていただきたいのであります。
次に、租税特別措置についてお伺いをいたします。
その第一は、利子配当課税の特例についてであります。
この特例を廃止し、総合課税とすることは、大蔵大臣も予算委員会で、昭和五十六年度から実現するとの発言をされております。その意味が、現行の三五%の分離課税制度をこのまま存続させようとするものであれば、不公平を温存するものであり、また政府税調の「総合課税が現実的に可能となる条件をできる限り早期に整備すべきである」との答申にも反することになります。したがって、この特例について直ちに総合課税を実施するか、またその間に、暫時税率の引き上げを行うなどの措置をとるべきであると考えますが、大蔵大臣の答弁をお願いするものであります。
第二は、社会保険診療報酬課税の特例についてであります。
総理は、予算委員会で、この制度を五十三年度末で廃止するとの見解を示されておりますが、そのお考えに間違いはないかということを改めてお伺いをいたします。
また、その廃止に関連して、診療報酬制度及び健康保険制度の見直しについてはどのように対処されるのか。診療報酬の出来高払い制、技術評価、甲乙二本立ての料金体系、人口、年齢等、地域格差の問題や保険制度の被保険者負担などの問題はどう取り扱おうとされるのか、総理の見解をお伺いいたします。
第三は、自動車関係諸税についてであります。
揮発油税及び地方道路税、並びに自動車重量税は、二年間延長され、その税収が道路整備財源として使われます。その税収は一兆六千九十億円と、一般会計の租税及び印紙収入の七・五%も占める巨額なものとなっております。こうした巨額な歳入が、特定財源として一方的に使われることは、国会の審議権を矮小化し、多様化する社会的需要に対応できなくなるなどの弊害を伴うものであります。今後の方向として、一挙に一般財源とすることには問題があるにせよ、せめてその使途を、輸送効率の合理化、省エネルギー、脱公害等の総合交通体系を整備することに拡大する考えはないか、大蔵大臣に質問をいたします。
第四は、住宅取得控除についてであります。
この制度は、対象がすべて新築住宅に限られております。確かに、新築住宅に限定をいたしました政策目的は、私も一応の理解をいたすものではあります。しかし、昨今の住宅取得者のうち、中古住宅の購入者が全体の一割程度を占めていることや、その購入価格や住宅ローンの利用額が、ほぼ新築住宅と同様であることを考えますと、負担の面で大きな格差を生ぜしめるものであります。中古住宅や既存ローンも対象に加えるべきだと考えますが、この点、大蔵大臣からの御答弁を願うものであります。
次に、国税収納金整理資金についてであります。
これは、昭和五十四年五月分の税収約二兆円を五十三年度の歳入として先食いするものでありますが、この制度が成立いたしますと、四月初めから三月末までとしている国の年度区分を二カ月プラスして十四カ月に変更することになります。変動幅の大きい法人税収を年度当初から年度末に移行させることは、国の歳入見通しをより困難ならしめ、それに伴う地方財政への悪影響を及ぼすなど、問題を残すものであります。したがって、一歩譲って、当面する経済情勢からやむを得ない措置であっても、財政の節度を守ることから考えて、せめて政府が財政再建を完了するとしている五十七年度末までの時限立法とすべき性質のものだと考えます。大蔵大臣の見解を伺いたいと存じます。
最後に、酒税の税率引き上げについてであります。
まず伺いたいのは、大衆嗜好品としては酒税のみをなぜ今日の時点で引き上げるのか、その必然性についてお伺いをしたいのであります。
消費者物価の上昇がようやく小幅になり、しかも円高による為替差益が消費者に還元され、輸入品の値下げが期待をされている状況を勘案するならば、今回の酒税引き上げは、物価全般への値上げ口実にされかねない性質のものであります。私は、五十三年度の税率引き上げは見送るべきだと考えますが、政府にその姿勢はあるか、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
以上、総理、大蔵両大臣の明確な御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/10
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011・福田赳夫
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
まず、池田さんは、ことし五十三年度の財政は景気優先、中心の財政だ、こう政府、総理は言うにかかわらず、所得税減税は一向やらぬ、逆に、酒、石油等の増税をやっておる、首尾一貫しないではあるまいかというようなことについてのお尋ねでございますが、五十三年度、この年は、展望してみますると、世界の輸出環境が非常に悪い、景気を輸出増進にこれを期待するということが困難であります。また、設備過剰のこの状態下において設備投資に多くを期待することが困難だ。そうしますと、わが国の経済を上昇させ、そうして早くデフレギャップを解消するという政策を遂行する、そういうためには、どうしても財政が主たる役割りを演じなければならぬ。しかし、財政もそう楽な状態じゃございません。その楽な状態でない財政の中で、財政がそういう重大な役割りを演じなければならぬといたすならば、さて、限られたその財政の中で、どういう手段が一番有効な景気政策になるのだろうかということにならざるを得ないのであります。
そこで、何といっても公共投資、これだ。しかも、わが国におきましては公共投資が大変立ちおくれておる。経済力はつきましたけれども、われわれのストック、つまり生活環境というもの、これは先進諸国に比べまして大変立ちおくれておる。そのおくれの取り戻しをこの際やると、景気対策と一石二鳥になるんじゃないか。そのようなことで公共事業中心の政策をとっておるわけであります。
減税をしたらいいじゃないかというお話でありまするが、まあ、財源があり余るならば、それはもう減税もしたいところなんです。ことに物価調整減税ぐらいは、という気持ちに本当に私は傾きつつあったわけでございまするけれども、しかし財源というものが限られておる。同じ財源を使うならば、どっちが景気対策に、また将来の日本の国づくりのためにいいか、こういうことになるわけです。そういう限られた財源の中で景気対策、また将来の日本のためにどうやったらなるんだということを考えまするときに、これは公共投資、しかもわれわれの生活を中心とした公共投資、社会投資にこれを求めるということが妥当であるということで、所得税減税政策はとらなかったわけです。
それから、それでは一方、酒、石油などにつきまして増税をするのはどういうわけだ、こういうお話でございますが、これはもう景気政策一本だ、中心だ、こう申し上げましても、しかし、ほかの諸問題を軽視していいというわけのものではない。ことに、われわれが当面しておる問題は、財政を節度を持って運営しなければならぬ。財政の健全性というものは、困難な中ではあるけれども、これを貫き通さなければならぬという問題であります。そういうことを考えると、最小限の国民の負担の増高、酒、石油等につきまして、これをお願いをするということは万やむを得ざるところであったというふうに御承知願いたいのであります。
それから、不公平税制についての基本的な考え方はどうか、また、昨年の幹事長・書記長会談の経過を忘れたのかというようなお話でございまするけれども、あの会談の経過、私は十分承知しております。いわゆる不公平税制、これは、私どもが不公平税制だというふうに考えないものまで、皆さんの方ではこれを不公平税制の中に入れておるという一面はありまするけれども、私どもが考えてこれは不公平だ、こういうものにつきましては、これは大いにその是正を進めたい、かように存じまして、さらばこそ、公害防止準備金制度など十一項目の廃止を五十三年度において実現するというようなことにいたしたわけであります。なお今後とも、私どもの考え方と基本的に皆さんの考え方と違うところがあるのです。ありまするけれども、皆さんのお考えなんかもよく伺いながら、この問題は粘り強く取り進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
さらに、社会保険診療報酬課税についてのお尋ねでございますが、これは先ほど明快にお答え申し上げたとおりであります。
また、この特例是正との関連におきまして、健康保険制度に関連いたしまして被保険者負担をどうするのだというお尋ねでございまするけれども、この健康保険制度につきましては、その根本的な問題につきましてただいま検討中であります。したがって、いまこの成案というものはできておりませんけれども、結論といたしまして、保険料負担、患者負担など被保険者の負担につきましては、保険給付との均衡、これとのにらみ合わせの問題である、このように考えておりまして、この給付が相当充実されるという際には、保険料あるいは患者の一部負担というようなこともあわせてお考え願わなければならぬ、そういう性格のものである、かように考える次第でございます。(拍手)
〔国務大臣村山達雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/11
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012・村山達雄
○国務大臣(村山達雄君) 池田議員にお答え申し上げます。
まず、利子配当の総合課税をすべきではないか、少なくとも税率を引き上げるべきではないか、こういう御質問でございます。
利子配当の総合課税は、われわれ年来の念願としておるところでございます。しかしながら、実際の問題といたしまして、日本は御案内のように間接金融が主でございまして、このように多くの人が民間の金融機関あるいは郵便貯金をしておるというようなことは、これは諸外国にはないのでございまして、それだけに、この総合課税という問題は、その名義の問題をめぐり、あるいは分割をしたときにはどうするのか、こういった非常にむずかしい問題がございます。したがって、それらの実行手段を確保しないで直ちにやりますと、これはひとり減収になるだけでなくて、新たなる不公平を起こすところでございまして、われわれは、税制調査会においてこれが適正な執行が行われるよういま鋭意検討しておるわけでございまして、お説には賛成でございます。
なお、それならば源泉選択の税率を上げたらどうか、こういうお話でございますが、実は、これは去年の税制改正で、まだ期限が、三〇%という税率が五十五年まで続くことになっておりましたところ、五十二年度の改正で、ことしの一月一日からこれは三五%に上げたばかりでございます。これをさらに上げるということになりますと、税制というものに対する信頼感、あるいは個人の金融資産を選択するというときに非常な不安感を与えるわけでございますので、私は、そういう経緯を考えてみますと今度は不適当だ、かように判断いたしたわけでございます。
それから、自動車関係諸税、これを一般財源にしたらどうか、少なくとも総合交通対策の財源にしたらどうか、こういうお話でございます。
一般論として考えてみますと、特定財源というものは、つくりますと歳出が硬直化するという問題が一方にございます。しかし、また同時に、考えてみますと、特定な負担については受益者に持たした方がよろしいという考えがあるわけでございます。現実の問題としてどうかと申しますと、ことしは、先ほど池田さんも御指摘になりましたように、道路関係の歳出予算は一兆六千億でございます。そこで特定財源が、これは全部ガソリン税ぶち込みましても、なお三千数百億一般財源から入れているわけでございますので、議論は議論として今後詰めてまいりますが、私は、現状においては現実的であり、そう弊害はない、かように考えておるわけでございます。
それから、住宅取得控除について、中古住宅に認めたらどうか、それから既往のローンについても考えたらどうか、こういうお話でございます。
今度新築住宅だけに認めました理由は、もう御指摘がありましたように、主として景気対策上の問題でございますし、今後も住宅問題は大きな問題でございますが、ことしは景気対策を考えておるのでございます。税制上もしお説のようにいたしますと、多分家賃控除を、自分の家さえ求められない人の家賃は当然引くべきであるというところに発展してくるだろうと思いまして、これはやはり大変な所得税の基本に触れる問題であろうかと思うのでございます。
それからその次は、国税収納金整理資金の改正を時限立法にしたらどうか、こういうお話でございますが、やはり会計処理上の手続というものは私は安定しておった方がいいと思うのでございまして、これは恒久法として出させていただきたい、かように思っておるのでございます。
酒税について、なぜ酒税だけをねらい撃ちにしたのか。別にねらい撃ちにしたわけではございませんけれども、健全財政という考えで、ある程度負担増を求めるとすると、やはり一番何と申しますか嗜好品でございますので、酒類に対してある程度の負担を有価証券とかあるいは石油税とともに求めるのが、現在の経済政策と最も背馳しない。
なお、物価に対する影響あるいはその内容につきましては、細かい配慮をいたしたという点は、先ほど申し上げたとおりでございます。
どうぞ、さようなわけでございますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/12
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013・保利茂
○議長(保利茂君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/13
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014・保利茂
○議長(保利茂君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時十四分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 福田 赳夫君
大 蔵 大 臣 村山 達雄君
国 務 大 臣 櫻内 義雄君
出席政府委員
大蔵省主計局次
長 山口 光秀君
大蔵省主税局長 大倉 眞隆君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X00819780217/14
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