1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年三月十七日(金曜日)
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昭和五十三年三月十七日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
国有林野事業改善特別措置法案(内閣提出)及
び国有林野事業再建整備特別措置法案(芳賀
貢君外十二名提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/0
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001・保利茂
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
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002・加藤紘一
○加藤紘一君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/2
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003・保利茂
○議長(保利茂君) 加藤紘一君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/3
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004・保利茂
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。
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裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/4
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005・保利茂
○議長(保利茂君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長鴨田宗一君。
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裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔鴨田宗一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/5
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006・鴨田宗一
○鴨田宗一君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、下級裁判所における特殊損害賠償事件等の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を八名、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十名増加しようとするものであります。
当委員会におきましては、二月の九日提案理由の説明を聴取した後、慎重審査を行い、本日質疑を終了、直ちに採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し、附帯決議が付せられましたが、その詳細は会議録に譲ります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/6
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007・保利茂
○議長(保利茂君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/7
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008・保利茂
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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国有林野事業改善特別措置法案(内閣提出)及び国有林野事業再建整備特別措置法案(芳賀貢君外十一一名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/8
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009・保利茂
○議長(保利茂君) 内閣提出、国有林野事業改善特別措置法案及び芳賀貢君外十二名提出、国有林野事業再建整備特別措置法案について、趣旨の説明を順次求めます。農林大臣中川一郎君。
〔国務大臣中川一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/9
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010・中川一郎
○国務大臣(中川一郎君) 国有林野事業改善特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
国有林野事業は、昭和二十二年に特別会計を設置し、企業的に運営することとなって以来、国土の約二割を占める国有林野の管理経営を一体的に行い、今日に至っております。
この間、国有林野事業の運営に当たりましては、それぞれの時代における社会的、経済的要請にこたえて、林産物の計画的、持続的な供給、国土の保全等の公益的機能の発揮、地域振興への寄与等の使命の達成に努めてまいったところであります。
しかしながら、最近における国有林野事業の経営構造は、森林の有する公益的機能の維持や資源賦存状況から伐採量に限界があることに加えて、木材需給構造の変化等による材価の低迷、人件費を初めとする諸経費の増高等もあって、悪化傾向をたどっております。
このような国有林野事業の現状並びに国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性にかんがみまして、長期的観点に立って、事業運営及び財務の改善を図り、国有林野事業の経営の健全性の確立を図ることとし、これに必要な特別措置を定めるため、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
まず第一に、改善計画の策定であります。農林水産大臣は、昭和七十二年度までに国有林野事業の収支の均衡を回復する等その経営の健全性を確立するために必要な基本的条件の整備を昭和六十二年度までに完了することを旨として、昭和五十三年度以降十カ年間を改善期間とし、この間における国有林野事業の改善計画を定め、これに従って国有林野事業を運営するものといたしております。
第二に、政府は、改善期間において、一般会計から、国有林野事業特別会計に所要の繰り入れを行うことができることといたしております。
このほか、改善期間における特別措置として、政府の国有林野事業に対する資金の貸し付けについての配慮、国有林野事業特別会計の利益処分の特例等に関する規定を設けることといたしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/10
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011・保利茂
○議長(保利茂君) 提出者芳賀貢君。
〔芳賀貢君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/11
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012・芳賀貢
○芳賀貢君 国有林野事業再建整備特別措置法案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
わが国の森林面積は国土のおおよそ六八%の二千五百万ヘクタールに及び、国有林野の面積はその三〇%の七百七十五万ヘクタールを占め、また森林資源の蓄積はおおよそ八億立方メートルとなっております。すなわち、国民共有の森林である国有林野の果たす役割りは、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全、形成、国民の保健休養などの公益的機能を確保し、木材その他の林産物を計画的に供給するなど、国民生活の安定と福祉の向上を図る上できわめて重要なものがあります。
国有林野事業については、昭和二十二年に国有林野事業特別会計法が制定され、国営の企業として三十年の歩みを続け、今日に至っております。
国有林野事業は、奥地林の開発、人工造林の拡大、保安林の整備、林道の開設、治山事業の実施など、重要な使命を抱えながら、高度成長経済の流れに乗って木材の生産量を急激に増強させ、森林の年成長量を大幅に上回る増伐、過伐を長期的に強行した結果として、国有林の生産保続体制の崩壊と森林資源の枯渇現象を惹起したのであります。
これに加えて、採算性偏重の大面積皆伐、環境破壊の林道工事、請負による造林作業など、いわゆる安上がりの手抜き事業が実施され、二百万ヘクタールの人工林面積の中で二割以上の不良造林地が生じたと目されるのであります。しかも人工造林地の七割は林齢二十年未満の幼齢林で占められており、今後二十年間は森林資源の回復に主力を注ぐことが、国有林経営の重要な命題であります。
さらにまた、チェーンソー等の振動機械を導入して一斉に使用させたため、すでに三千名を超える林野庁の基幹作業職員が職業病である白ろう病に冒され、病苦の中から政府の行政責任をただし、療養設備の拡充整備が強く訴えられております。
一方、わが国の木材需給状況については、年間一億立方メートルを超える国内需要に対し、国産材の供給率は三五%に低下し、不足の六五%を外材の輸入に依存する、まさに外材主導型の需給構造へと移行し、特に近年の構造不況による木材需要の不振と木材価格の低迷は、林業の採算性の悪化と生産活動の停滞を招き、いまやわが国林業は重大な危機に瀕しており、このまま推移するならば、ついには国土の荒廃という非常事態を迎えることが懸念されるのであります。
翻って、過ぐる昭和四十六年の第六十五国会において、衆議院農林水産委員会は、わが国林業の危機打開のため林業振興に関する決議を全会一致をもって議決し、六項目にわたる決議の実現を政府に対し強く要求したところであります。これに対し何ら積極的な施策を講ずることなく今日の危機を招いた政府の責任は、国民の名において厳しく問われなければなりません。
かかる現状にかんがみ、国有林野事業の再建整備を促進するための特別の措置を講ずることにより、国有林野事業の健全な経営を確立し、もって国民経済及び国民生活におけるその使命を将来にわたり円滑に遂行させるため、この法律案を提案した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
第一は、基本方針に関する規定であります。
農林大臣は、昭和七十二年までに国有林野事業の健全な経営を確立することを旨とし、昭和五十三年度以降二十年間における国有林野事業の再建整備に関する基本方針を作成し、閣議の決定を経てこれを公表することとし、またその作成に当たっては、国有林野事業再建整備審議会の意見を聞かなければならないこととしております。
第二は、再建整備計画に関する規定であります。
農林大臣は、基本方針に即し、五年ごとに五年を一期とする国有林野事業の再建整備計画を定めなければならないこととし、この計画において、国有林野事業の運営の基本に関する事項、造林及び林道の開設、林業生産基盤の整備促進に関する事項、事業の実行方式及び事業形態に関する事項、労働力の確保及び労働安全に関する事項並びに収入の確保に関する事項等について定めるものとしております。
また、農林大臣は、この計画の作成または変更に際しては、国有林野事業再建整備審議会の意見を聴かなければならないこととしております。
第三は、一般会計から国有林野事業特別会計への繰り入れに関する規定であります。
政府は、この法律の目的を達成するため、再建整備期間において、予算の定めるところにより、次の事業等に必要な費用を一般会計から国有林野事業特別会計の事業勘定に繰り入れすることとしております。すなわち、国有林野内の治山事業、保安林における造林事業、国有林野の所在地域の産業振興または地域住民の福祉の向上に寄与することとなる林道の開設、改良の事業及び長期借入金等の支払い利子の一部等についてであります。
第四は、利益処分の特例に関する規定であります。
再建整備期間における特別措置として、国有林野事業特別会計の利益処分の特例等に関する規定を設けることであります。
第五は、国会への報告に関する規定であります。
農林大臣は、毎年一回、国会に対し、再建整備計画の実施の状況を報告することとしております。
第六は、国有林野事業再建整備審議会に関する規定であります。
審議会は、この法律により定められた事項を処理するのほか、農林大臣の諮問に応じ、国有林野事業の再建整備に関する重要事項を調査、審議するとともに、農林大臣に意見を述べることができるものとし、その委員は、国有林に関し学識経験のある者及び国有林野事業に従事する職員のうちから任命することとしております。
以上、国有林野事業再建整備特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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国有林野事業改善特別措置法案(内閣提出)及び国有林野事業再建整備特別措置法案(芳賀貢君外十二名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/12
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013・保利茂
○議長(保利茂君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。島田琢郎君。
〔島田琢郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/13
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014・島田琢郎
○島田琢郎君 ただいま政府より提案されました国有林野事業改善特別措置法案につきまして、私は日本社会党を代表して、内閣総理大臣並びに関係大臣に対して質問をいたします。(拍手)
まず最初に、先ほど農林大臣から提案されました法律案中「農林水産大臣」とあり、大臣もまたこのように発言をされましたが、これは内閣委員会の所管にかかわる設置法でございます。いまだ内閣委員会に提案もされておりませんし、議論されてもいないものであります。この種の提案につきましては、きわめて不当であるということを冒頭指摘しておきたいと思います。(拍手)
古来、国家の盛衰は森林の消長とともにあると言われてきたように、国土総面積の三分の二を占める森林は、衣食住はもちろん、生活環境保全の面できわめて重要な役割りを持っています。しかも、森林は、一たん破壊されますと、この回復には数十年から数百年を要するため、森林・林業経営は国家百年の大計に立って進めなければならないのは、山つくりの常識であります。それゆえに、昭和三十九年に制定された林業基本法に基づいて、政府は、五十年を見通した森林資源に関する基本計画並びに重要な林産物の需要及び供給に関する長期見通しを森林・林業経営の指標として国民に明らかにし、林業の動向について毎年国会に報告することとされているのであります。
しかるに、今日のわが国の森林・林業の現状はどうでありましょうか。林業基本法制定から十四年、政府のGNP至上主義の高度経済成長政策のもとでの安い木材と安い労働力の駆り出し政策、引き続く外材依存、国内森林・林業の切り捨て等の政策によって、民有林の経営意欲は喪失し、四百万ヘクタールに及ぶ未利用里山薪炭林の放置、また国有林の荒廃はその公益的機能発揮を弱体化させ、山村は過疎化の波に洗われて林業労働力は極端に不足し、経営基盤そのものが失われようとするなど、深刻な危機に直面しています。すなわち、国産材の供給量は、昭和三十九年の五千九百八十一万立方メートルから五十一年には三千六百三十六万立方メートルと計画の六〇%まで落ち込み、人工造林面積は三十九万ヘクタールから二十一万ヘクタールとこれまた五三%に落ち込みました。また、林業就業者は七万人も減少し、風水害等による災害の頻発は年とともにふえています。
このように並べてまいりますと、今日の森林・林業の危機をつくり出した政府の責任をいまこそ国民の名において厳しく問わなければなりません。(拍手)福田総理の責任ある答弁を求めるものであります。
さて、国土の二〇%、全森林面積の三分の一を占める国有林は、昭和二十二年四月の林政統一以来、それぞれの時代の社会的、経済的要請に即応し、そのときどきに若干の違いはあったとしても、一貫して、利益追求を主目的とする私有林では十分にできない緑や水、空気、そして保健休養の場の提供を初め、山岳地形のわが国における国土保全の公益的機能の発揮、国内資源の乏しいわが国における再生産可能な木材の安定的供給と木材価格の安定及び地元産業の振興と住民福祉の向上などの使命を課せられてきたのであります。
この重要な役割りは、外材依存の時代を迎え、国有林材の国内需要に占める割合が一〇%程度に低落したとはいえいささかも変わりはなく、むしろ過密化と公害の全国的な広がりの中で、公益機能発揮に対する国民的要求のかつてない高まりとともにより重要性を加えていると考えられますが、総理、あなたの所見はいかがですか。
しかしながら、今日の国有林野事業は、林政統一以来最大の危機に直面していると言っても過言ではないと考えます。それは、政府の言う財政事情の悪化、いわゆる赤字問題にあるのではありません。戦中戦後の乱増伐と造林の立ちおくれの傷口がいえないのに、高度経済成長下の林力増強計画及び木材増産計画を大義名分として、成長量の実に二倍に達する増伐とコストダウンを図るためだと主張する乱伐と、森林生態系破壊の施業によって国有林は荒廃したのであります。
事実、森林資源は林力増強計画とはうらはらに一〇彩以上も減少し、人工造林地の保育の不十分さが、人工造林面積の二〇彩に及ぶと推定される四十万ヘクタールの不良造林地をつくり出しました。そのために国有林の収穫保続の原則が完全に崩壊して、国有林の使命達成ができなくなりつつある。私は、これこそまさに真の危機ではないかと思うのであります。
また、財政事情の悪化を理由に、森林資源の育成段階にある国有林経営の後退、造林や林道等生産基盤の整備のおくれに拍車をかけることもまた憂えなければなりません。この際、総理の明確な所見を明らかにしていただきたいと思います。
国有林野事業における財政悪化の原因は、一つは、伐採量の大幅削減に伴う収入減によるものであり、二つには、公益的機能発揮のための費用の増大、三つには、外材主導の材価形成、そして長期にわたる不況による木材価格の落ち込みによるものであります。
本来、国有林は、その面積の四七%の保安林と共用林野等地元住民の福祉向上に活用されている林野二七%を抱えて、林業生産活動の制約を受けております。しかも、木材価格の決定権を持っていない国有林が、木材売り払い代で公益的機能発揮のための費用を負担した上で、さらに一般会計繰り入れや森林開発公団への出資など財政負担を求めてきたところに、乱増伐と造林の手抜きに直結していると言えるのであります。
かくて、国有林の山づくりと不良造林地の放置に対する地元民の批判は、森林経営に当たって国有林に学ぶものなしとさえ言わしめているのであります。この言葉を福田総理は何と聞きますか。大蔵大臣とともにこの見解を伺うものであります。
民有林に対しては、植栽後の保育を十分に行え、それが山づくりの基本だと指導し、補助金や無利子の資金を出して奨励している国が、みずからが財政悪化のため保育の大幅な手抜きをし、膨大な不良造林地をつくり出し、林木の成長をおくらせている現実は、国民の負託を裏切るばかりでなく、大きな国家的損失であると考えますが、大蔵大臣、いかがですか。(拍手)
国有林野事業の財政事情の苦難期は、木材価格の大幅上昇のない限り、戦後植栽した林分が伐採でき、収穫保続体制が回復するまで二十年はかかると見るのが、ほぼ衆目の一致するところでありますが、この間も造林を中心とする森林資源の育成を十分に行わなければ、昭和九十年代に再び収穫保続体制が崩れることは、火を見るより明らかであります。国有林荒廃と収穫保続を破壊した責任を考えるならば、いまこそ国有林から持ち出した資金を山に返すという視点に立って、今後二十年間くらいは、思い切って一般会計から国有林野事業特別会計に繰り入れし、国有林経営と財政の再建を図ることが緊急の課題ではありませんか。(拍手)
借入金依存の経営及び要員、機構縮小を中心とする経営規模縮小の道は、国有林経営の放棄であり、国有林そのものの荒廃につながるものと考えますが、総理の所存を伺いたく思います。
国有林野事業は、国営事業として国民の負託にこたえ、責任ある経営を進めるためには、直営直用による実行形態が基本となるべきであるとして、政府も、このことについてしばしば国会において表明をしてきたところであります。
しかるに、最近、国有林野財政の悪化を理由に請負化の方向を探ろうとする動きがありますが、これは山荒らしに一層拍車をかけることは言うまでもありません。何となれば、利益追求を目的とする請負事業の実態については、これまで再三国会でも取り上げられてきたところでありますが、伐採事業での林地破壊や造林事業における造林木の損傷など、いろいろな問題が発生しているからであります。いやしくも山村経済の振興と住民福祉の向上を使命とする国有林が、労働基準法や契約条項すら満足に守られない劣悪な条件下で働かされている請負労働者のその犠牲の上に事業を進めようとするものであり、それは、低賃金、不安定雇用の代名詞として山村貧困化の要因であった臨時雇用制度へ逆戻りすることを意味し、請負労働者へのたれ流しそのものと指摘せざるを得ないのであります。
すなわち、請負労働者の実態は、国有林を数の上でも症状の面でもはるかに上回っていることが明白となっている白ろう病患者、働けなくなるぎりぎりまで白ろう病にかかったことを隠して働かなければ生活ができない雇用と収入の不安定さ、死亡災害が国有林の十三倍、労働災害七倍の発生状況に、余すところなく示されていると言えます。労働大臣、あなたの御見解を、この際、明確に伺いたいと思います。
また、病気とけがは自分持ち、人里離れた職場で重労働、そしてその賃金は年収百五十万円そこそこという請負労働者の現状を、労働大臣はどう見ていらっしゃるでしょうか。
このように、請負労働者を踏み台にした国有林経営が行き詰まることは、もう目に見えています。そうでなくとも、今日の直営直用の実態は、木材生産で三〇%、造林事業で四〇%です。これでは、現業部門が泣くというものではありませんか。いまこそ、厳しい反省を加え、山を愛する心情と豊かな経験を持っている直用労働者と、十分な指揮監督のもとでの経営原則をしっかり確立し、請負労働者を直接雇用に切りかえるくらいの温かい思い切った対策を打ち出して、国民の負託にこたえるりっぱな山づくりと、豊かな山村建設の一翼を国有林みずからが担うことが、むしろ今日的命題だと私は考えます。(拍手)
わが国は、世界有数の森林国であり、気候、風土及び森林生態が積極的な育林事業に適していると言われています。その日本が、国内需要の三分の二を輸入材に依存していることは、余りにも異常でさえあります。国民不在の林政と言われても仕方がないではありませんか。無計画、無放任な大量の外材輸入は、国内木材需要構造を国産中心から外材中心へと一変させ、国内林業の不振を招きました。また、年々増大する製材品輸入は、農山村の重要な産業であり、雇用の場であった国内中小製材関連産業の衰退を招き、山村の過疎化を一層深刻にさせています。
したがって、国内林業の振興及び山村振興にとってはもちろん、国有林の再建にとっても、安定的な木材供給を図るための需給計画の樹立と、それに基づく国産材と調整をとった計画的な外材輸入と材価形成について、抜本的な対策を緊急に講じなければならないと考えるものでありますが、農林大臣の所見を伺いたいと思います。
最後に、国有林野事業の今日的危機は、日本林業全体の危機的状況を受けたものであり、国有林の荒廃を一日も早く解消し、収穫保続の原則を確立することこそ緊急かつ重要な国の責任であります。そのためには、人手と資金を思い切ってつぎ込む。そのためには、一般会計から国有林野事業特別会計に繰り入れを行うことが必要であります。
このように述べてまいりましたが、結論として、政府提案の国有林野事業改善特別措置法案では真の国有林野事業の再建は不可能と断ぜざるを得ません。(拍手)この際、政府提案を撤回して、わが党が先ほど提案をした国有林野事業再建整備特別措置法案によって、国を挙げて国有林再建に取り組むべきであることを強く提唱して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/14
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015・福田赳夫
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
今日の林業が大変危機的状態になってきておる、その責任はきわめて重大であるが、どう考えるのか、このようなお話でございます。
確かに戦後国民の住宅需要は増大いたしました。木材需要が急増する反面、国産材の供給だけでは間に合わないというので、外材にその供給を依存するというようなことが多くなってきたわけでありますが、これが一つの問題になってきておる。それからまた、御承知のように、経済が急角度で変転をいたしております。つまり、高度成長時代から低成長時代に入ってきておる。そういうようなことで木材の需給が緩和基調に入ってきておる。この二つが大きな理由となりまして、いま林業が非常に困難な立場にあるという認識でございます。
さて、政府は一体どういう責任をとるのかというと、やはりこの際、林業関係物資の需給の安定を図る、それから同時に、造林、林道などの林業生産基盤を整備する、それから林業担い手の確保に努める、そのような各般の施策を強力に進めまして、国民経済、また国民生活の中で大きな役割りを持つところの林業の安定を図る、これが私は政府の責任である、このように考えておるのであります。
そういう中で、島田さんは、国有林野、これの機能というものの重大性を考えまして特別の対策をとらなければならぬではないかという御指摘でありますが、この点につきましては、認識自体は私は基本的には同じでございます。つまり、国有林は、林産物の計画的な持続的供給、それから地域社会の振興、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、形成というような公益的な機能を発揮する、これが重要な使命となっておるわけであります。その公益的使命というものがだんだんと加重されてきておるという状態だと認識しておりますが、そういう認識に立ちまして、たとえば、公益的性格の特に強い治山事業について一般会計資金の繰り入れを行いますとか、あるいは五十三年度にはさらにそれを拡充するということをいたしますとか、あるいは新たに保安林内の造林につきましても、この法律案によりまして所要の経費を一般会計から補給いたしますとか、いろんな一般会計負担方式を打ち出しておる次第でございます。
しかし、政府は一般会計補給方式、これを強化します。強化しますけれども、それだけで国有林野事業の置かれている今日の困難が解決されるかと思うと、そういきません。やはり国有林野経営、その企業自体の中に改善、合理化を要すべきものが多々ある、このように考えておるわけでありまして、その企業自体の合理化、改善、生産性の向上、それと相まって一般会計補給方式、これが実りある林業再建に貢献することであろう、このように確信して疑いません。(拍手)
〔国務大臣中川一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/15
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016・中川一郎
○国務大臣(中川一郎君) 第一に、国有林野事業のあり方についてお尋ねでございますが、国有林野事業は、まさに長期的観点から、森林資源を保続培養するということと、森林の有する公的機能の充実を図るということが、基本的に重要な課題であると考えます。
このような事態に対処して、今回、国有林野事業の体制整備を図ることが必要であると考えまして、国有林野事業改善特別措置法案をここに提案した次第でありまして、これに基づきまして経営改善を推進いたしまして、将来にわたって林道、造林等の整備をして、もって国有林の使命を果たしてまいりたいと存ずる次第でございます。
次に、不良造林地についての批判でありましたが、国有林の森林造成については、公益的機能と木材生産機能とを総合的かつ高度に発揮し得る健全な森林を造成するという観点に立って、鋭意努力してきたところでありますが、御指摘のとおり、野兎鼠害等の原因もあり、あるいは気象害等の原因もありまして、造林地の一部に成育の不十分なものが生じておりますが、これらにつきましては、現地の実態に即し、改植等適切な措置を講じてまいりたいと存じます。
特に、昭和四十八年度以降におきましては、森林の持つ多角的機能の発揮に一層配意した新たな森林施業を採用しておるところであり、財政資金及び今回の法案制定による一般会計資金の繰り入れ措置によって、造林事業を推進し、これまた国民の負託にこたえてまいりたいと存じます。
次に、国有林に対し財政投入をもっとすべきであるとの御意見でありますが、今回、国有林野の体質改善と林道あるいは造林にも一般会計からの導入を図りましたのは、まさに御指摘にこたえるためでございます。
次に、外材の輸入についての御意見でございますが、国内の林業及び林産業の現状を踏まえまして、需要に見合った秩序ある輸入が行われる必要がありますが、従来からも、木材需給協議会等の場において、年間の木材需給の見通しを策定するなどの施策を通じ、関係業界等に対して指導してきたところでありますが、今後は、さらに材価形成の基本となる需要に見合った安定的供給が図られるよう、より短期的な需給見通しの策定、在庫情報機能の強化等を図りまして安定輸入に努め、木材業界の現在の苦しみ、問題点から打開をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣村山達雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/16
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017・村山達雄
○国務大臣(村山達雄君) 私に対する質疑はほとんど総理大臣と農林大臣が全部述べてくれましたので、ほとんど要らないのでございますが、要点を申し上げますと、今度の特別措置法の精神に従いまして、民有林の治山に対する補助と同水準で国有林の治山の方の繰入率を同率にするということと、それから造林、林道について一般会計から繰り入れる。なお、改善期間中これを継続していけば当然体制の整備もでき、また、その後予想される伐採量の増大をもあわせまして収支が均衡するという計画でございますので、私は、現在の予算繰り入れ措置、それから改善期間、これが適当であると思っている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣藤井勝志君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/17
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018・藤井勝志
○国務大臣(藤井勝志君) 林業請負労働者の労働条件の具体的な状況については、必ずしも明確な資料を持っておりませんけれども、屋外労働者の職種別の賃金調査によりますと、林業労働者と建設労働者の間には就労日数においては差がありますが、賃金の面においては林業労働者の方がよろしい、こういう結果が出ております。
しかしながら、国有林のいわゆる直用、直接使われておる労働者と民間労働者におきましては、賃金の格差あるいはまたいわゆる白ろう病、振動障害、こういった点においていろいろ問題があることも承知いたしております。そのために、政府といたしましては、労働安全衛生法によりまして、安全確保のためのいろいろな規制をいたしておりますと同時に、健診、治療に対しても巡回健診制度を整備いたしますと同時に、特に厚生省、林野庁あたりと密接な連絡をとりまして、いわゆる健診、治療のネットワークの整備に努めておるわけでございます。
不幸にして、いわゆる白ろう病あるいはまた労働災害をこうむられた労働者に対しては、労災保険制度によりまして、特にまたいわゆる一人親方、こういった方々に対しても特別加入の制度を設けまして、これに入っていただく、こういったこと、また労災保険の給付水準も毎年改善をされておることは御案内のとおりでありまして、私は、特に民間の、国有林の中で働いておる労働者の方々、御指摘のようないろいろ事情がございますが、わけても民間労働者の方々の労働条件というのは、いろいろ改善しなければならぬ点も多々ございますから、今後とも関係省庁とよく連絡をいたしまして、労働条件の改善について努力をいたしたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/18
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019・保利茂
○議長(保利茂君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/19
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020・保利茂
○議長(保利茂君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 福田 赳夫君
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
大 蔵 大 臣 村山 達雄君
農 林 大 臣 中川 一郎君
労 働 大 臣 藤井 勝志君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405254X01419780317/20
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