1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月二十六日(水曜日)
午後一時三十三分開会
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
中山 太郎君 前田 勲男君
矢田部 理君 大塚 喬君
河田 賢治君 市川 正一君
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出席者は左のとおり。
委員長 楠 正俊君
理 事
大谷藤之助君
福岡日出麿君
対馬 孝且君
安武 洋子君
委 員
岩崎 純三君
下条進一郎君
中村 啓一君
長谷川 信君
増岡 康治君
真鍋 賢二君
小柳 勇君
浜本 万三君
馬場 富君
峯山 昭範君
市川 正一君
藤井 恒男君
柿沢 弘治君
政府委員
通商産業省産業
政策局長 濃野 滋君
事務局側
常任委員会専門
員 町田 正利君
参考人
産業構造審議会
アルミニウム部
会長 内田 忠夫君
日本化学繊維協
会理事長 下山 佳雄君
全国紙パルプ産
業労働組合連合
会書記長 青山 陽一君
ゼンセン同盟常
任執行委員 芦田甚之助君
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本日の会議に付した案件
○特定不況産業安定臨時措置法案(内閣提出、衆
議院送付)
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001・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、矢田部理君及び河田賢治君が委員を辞任され、その補欠として大塚喬君及び市川正一君がそれぞれ委員に選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/1
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002・楠正俊
○委員長(楠正俊君) 特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。
本案審査のため、本日、参考人として産業構造審議会アルミニウム部会長内田忠夫君、日本化学繊維協会理事長下山佳雄君、全国紙パルプ産業労働組合連合会書記長青山陽一君、ゼンセン同盟常任執行委員芦田甚之助君の以上四名の方々の御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、皆様には御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
本案に対する皆様の忌憚のない御意見を承りまして、今後の本委員会における審査の参考にいたしたいと存じておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
なお、参考人の方々には、それぞれ十五分以内で順次御意見をお述べ願い、その後各委員からの質問にお答え願いたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず内田参考人お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/2
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003・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) 御紹介いただきました内田でございます。
私は、六つのことを申し上げてみたいと思うのであります。
まず第一は、この法案に関する私の基本的態度の問題でございます。
御承知のように、特定不況産業安定臨時措置法案、これができます段階におきましては、いろいろと素案の段階で問題があったわけでございまして、たとえば企業の合併あるいは営業の譲渡というような独占禁止政策の基本部分まで独禁法適用除外にする、かつカルテルに対するアウトサイダー規制を強制的に織り込む、こういう形で正面から競争秩序を指定するとともに、官僚統制色がきわめて強い立法が意図されていたわけであります。しかし、こういった行き方につきましては、私の態度は基本的に反対でございまして、したがって、他の機会におきましてそういう意見を表明したことがございますが、以上申しました二つの問題点につきましては、最終案におきまして除外されているわけでございまして、この点、私は基本的には現在の競争秩序に合致する法案だというふうに考えているわけでございます。そして、以下述べます理由からこの法案に関しましては基本的に賛成でございます。
次に、第二番目のポイントといたしまして、現在わが国が直面しております産業構造上の問題点を一般的に申し上げまして、それが特にこの構造不況産業とどのような関連に立つかという点を私の意見として申し上げてみたいわけであります。
御承知のように、わが国の産業構造は、かつての高度成長時代に構成されました性質を強くまだ残しております。ところが、高度成長を支持する要因はほとんど消滅したわけでありまして、この点から産業構造の基本的な転換がいま必要とされているわけであります。その一環と申しますか、あるいは最も問題が多い局面といたしまして特定不況産業の問題が出ているように思うわけであります。ところで、特定不況産業が出ております問題点でありますが、これにつきましては、さしあたって五つぐらいポイントを指摘いたします。
まず第一は、こういった特定不況産業と言われるものは高度成長が終わりました時期におきまして持っていた性質でありまして、これはわれわれの経済学の言葉では初期条件と申します。つまり現在の構造不況産業そのものが持っております状況であります。
第二番目は、こういった産業に対します最終需要のあり方でございまして、この点、御承知のように、最終需要の構成は大きく変わってしまったわけであります。したがいまして、この初期条件と最終需要を突き合わせて見ますと、ここから需給ギャップの問題がはっきりと出てくるわけでありまして、ここに構造不況産業と言われる産業の中には、現在産業が持っております生産能力、これは初期条件でありますが、それと現在の有効需要との間の対応関係がついていないという形でギャップが存在するということになっております。そうして、このギャップが非常にはなはだしい産業がこの構造不況産業と言われているものであります。
それから、三つ目のポイントといたしましては、国内におきます相対価格が大きく変動したということであります。すなわち、一般的に申しまして、企業におきましてはいろいろ生産をする場合に必要なもの、これをわれわれインプット、投入と申しますが、それに関する価格と、それからそのような生産に必要なものを使いまして生産した結果、つまりアウトプットでありますが、それの価格との間の関係といいますものが非常に激変したわけでありまして、特にこれは石油ショック以降大きく変動したわけでございまして、そういう変動の過程において、言うまでもなく、インプットの価格がアウトプットの価格よりも相対的に高くなった産業は当然収益上大きな圧迫を受けるわけであります。このインプットとアウトプットに関しては、言うまでもなく、国内的な条件のみならず、国外の条件、特に為替相場のあり方が問題になるわけでありまして、こういう面から問題が発生するということがあるわけであります。
それから、四番目のポイントといたしましては、技術上の問題でございまして、御承知のように、産業を取り巻く条件が非常に変わる。したがいまして、たとえば環境に対しては環境規制ということを満たすような技術の採用、あるいは労働の賃金の上昇に対しましては資本集約的な技術の採用、さらにはエネルギー価格の上昇に対しましてはエネルギー節約的技術の採用、このように非常に技術的な変化が大きく起こっておりまして、このような技術に対応できるかどうかというのがこの産業のまた大きな問題になっているわけであります。
最後に、第五番目のポイントといたしまして、そういったことを含めましてわが国の産業と外国との産業の競争上の地位が著しく変動しつつあるということでございます。このことを端的にあらわしますのは国際的な比価というものでありますが、一般に国際競争力と言われているものであります。
さて、以上のように見てまいりますと、構造不況産業といいますものは、これら要因のどれかに関連するわけでありますし、また、それら要因に関しまして非常に大きな影響を受けているという産業というふうに規定することができると思われます。そうして一般的に申しますと、構造不況産業におきまして生じました影響は、またわれわれの言葉では大域的な変化、大きな領域における変化をこうむった産業でありまして、小域的な変化、小さな調整で対応できるというようなものではないというところに一つ大きな特徴があるわけであります。
それから、第二番目といたしましては、こういった問題に関する対応策は、もちろん短期的な対応も必要でございますが、長期的、構造的な形で対応がなされない限り問題の基本的な解決は不可能であるということであります。
そういたしますと、そこからおのずから出てまいります結論でありますが、すなわち、もし変化が小域的であり、かつ循環的、一時的なものであるならば、現在自由経済が持っております市場機構を通じまして問題の解決をすることはかなり容易であります。また、もしも単純に有効需要が足りないという形での問題でありますならば、これに対する財政金融政策を用いました有効需要政策によって対応することが可能であります。しかしながら、以上申しました大域における変化並びに長期的、構造的な変化ということを構造不況産業が持っている以上、こういった市場調整によって問題を解決する、あるいは有効需要政策によって問題を解決するというのは原則として不可能であります。
したがいまして、次に、第三番目の大きな問題でありますが、こういう市場ないし短期政策で解決できない問題に対する最終的な対応は、言うまでもなく、企業が自主的にこの問題に当たるということであります。
そして、実際企業といたしましては、短期的な操業におきましては、固定費を除きました変動費と、それから収入との関係を見合いまして、しばらくの間は操業するかどうかということを短期的な利潤の最大に置くことができるわけであります。これを経済学では限界収入と限界費用を等しくする操業というふうに言うことができます。ただし、この操業はあくまでも経常的な短期操業の条件でありまして、これは一般に利潤を最大化するというよりは損害を最小にするということになってくるわけであります。ところが、現在構造不況産業において起こっております問題は、先ほど申しましたように、こういう短期的な、あるいは限界的な調整ではないわけでありまして、そのことがはっきり出てまいります局面は、限界費用に対して平均費用がはるかに高い水準に設定されているということであります。もっと具体的に申しますと、これは固定費その他をカバーできるような企業の収益状況ではないということであります。御承知のように、わが国の企業の固定費は、外国と比べますと、ほとんど借り入れ条件に依存しているわけでありまして、したがって、こういう状況におきます具体的な金利負担というのは非常に大きなものになっているわけであります。したがって、こういう状況がかなりの時期に続きますと、これは結局のところ、企業は規模を縮小させるか、あるいは産業から流出いたしまして、そこにおける企業活動を停止するかのいずれかになってしまうわけであります。ここで問題が生ずるわけでありまして、そのような企業の縮小及び流出に伴うコストが必ず社会的にかかるわけであります。そのコストは、もちろん個人が負担する場合もありますのでしょうし、企業が負担する場合もある。しかし重要なことは、さらにそれに対して公的な負担、公の負担が必要だということでありまして、これが恐らく地域のレベルにおける負担あるいは国のレベルにおける負担の問題になってくると思われるわけであります。
したがいまして、以上申しましたことをより具体的に私が関連いたしましたアルミ産業の製錬の場合に関しまして申し上げてみたいと思うわけであります。
アルミ産業の場合、現状はどうかと申しますと、先ほど指摘いたしましたポイントがほとんど非常に激烈な形で出ているわけでありまして、まず第一に初期条件あるいは生産能力と需要との見合いにおきましては非常に大きな供給超過という形で需給ギャップが存在いたします。第二に投入価格に対して産出価格が著しく低いという形で収益の圧迫が出ているわけであります。第三に現在のままでは国際的な競争力というのが著しく損なわれていくということであります。第四に財務構成といいますものがいわゆる高度成長型になっておりまして、借り入れ資金が非常に大きいということであります。いずれにいたしましても、すべての面から見まして構造不況を考える場合の条件を満たしているわけであります。
それでは、そのような産業の将来はどうであろうかということでありますが、アルミ部会におきましては次の三つの点が検討されたわけであります。
第一は、今後のアルミ産業の環境がどうなるかということでありまして、これを考える場合には、まず第一に世界的なアルミの需給がどのように展開するかということを押さえることが必要であります。それに関連いたしまして、その過程でアルミの価格あるいはコストがどのような方向で変化していくだろうか。さらに三番目といたしまして、わが国のアルミの各企業が自主的な経営努力といたしましてどのような方法をとることができるだろうか。それから第四番目には、言うまでもなく、国内の需給の問題の見通しであります。
そして、こういうことをまとめまして一応アルミ部会として出しました結論は、大体五年たちますと、わが国のアルミはほぼ国際競争力を回復する力があるのではないかということであります。しかしながら、その前提といたしましては、以上申しました幾つかのポイントについて前提が置かれているわけでありますが、しかし、いずれにしましても、時間をもってかすならば、アルミ産業というのは、当然わが国において確固とした存立基盤を持ち得る産業であると。しかしながら、五年間の期間を持ちこたえるということが必要でありまして、この間の措置をどうするかということがまさに問われている問題だと思うわけであります。
それから、さらに関連して考えられました問題は、アルミ産業がわが国経済において全般的な経済的意味をどのような形で持つか、あるいは産業経営上の問題としてどのような意味を持つか、さらに雇用上の問題あるいは中小企業との関係においてどのような意味を持つかということであります。そして、今後の課題といたしましては、先ほど申しましたことをすべて勘案いたしまして、より新しい条件のもとにおきましてアルミ産業がわが国において存続し、かつ発展する地盤が存在するという上で企業の各個の努力が求められるということであります。恐らくこういった実態は多かれ少なかれほかの不況産業にも適用される問題だと思うわけでありまして、こういう状況をいかにして法律の面からより円滑に転換あるいは新しい発展への道を開くことができるかというのが恐らく今回の構造不況法案のねらいであったと思うわけであります。
さて、この構造不況法案におきましては、さしあたって設備の計画的処理ということと、そしてその上に乗っかりました安定基本計画を立てるということが問題になっているようであります。
時間もございませんから、あと二つは簡単に申しますが、その場合重要なことは、私は、一般的な問題と、さしあたって解決しなければならない問題ということを区別することが必要だと思うわけであります。すなわち、産業構造転換の問題は、いまやわが国経済において一般的に出ている問題でありまして、したがって、単に設備だけを調整してもだめであります。それに関連いたしまして、労働、輸出入構造あるいは価格構造、さらには金融の情勢と、そういうものを全部ひっくるめた形で調整しなければなりません。この点につきましては、実は野党がいろいろ中期計画を立てまして、中期的な見通しのもとにそういった総合計画をお出しになるようになったのは、私は大変結構だと思います。したがって、この問題もそういう一環として考えられるべきでありますが、しかしながら、さしあたってどうするかということになりますと、やはりこの設備の問題が非常に大きな緊急事でありまして、これを今回の法案に盛られているような形でぜひ早く処理されることが望ましい。ただし、それは業界ごとに事情が違うわけでありますから、この不況法案に一般的な問題を余りにも盛るということは、かえって時期をおくらせる方向に動くおそれがあると思うわけであります。したがいまして、今回の法案は、やはり設備破棄と、それから安定基本計画をつくる素地を提供する、この二つにしぼりまして早期成立が望まれるわけであります。
最後に、ごく簡単に衆議院におきます修正及び附帯決議について私の意見を申し上げます。
結論は、すべて賛成であります。特にこの衆議院におきます修正におきましては三つの点が強調されていると思われるわけでありまして、第一は雇用安定ということをできるだけいろいろな局面において配慮するということであります。第二は中小企業関係におきますしわ寄せを配慮するということであります。第三は地域的な不況を配慮するということであります。この点はいずれも重要な問題でございます。しかし、これは先ほど申しましたように、より一般的な視野の中で、中期経済計画の中で基本的に処理されるべき問題であって、これとは私は原則として別個に議論されるべき問題だと思うわけであります。
次に、附帯決議でございますが、これに関しましても、いろいろ望ましいとるべき政策が幾つか挙げられておりまして、大体八つあるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、この附帯決議に私は第九番目の附帯決議の条項をここで提案したいわけでありまして、それは何かと申しますと、結局、このように産業構造が激変いたします場合には、労働にいたしましても資本にいたしましても、あるいはその他のいろいろな生産要素がほかに転換する、変わっていくわけであります。その場合には非常にコストがかかってくるわけであります。この場合のコストをどういう形で公正に負担するか、コストをどうシェアするかということがいまや一般的に問われていることでございまして、単にその設備を破棄して企業の経営を楽にするとか、あるいは労働者の困った状況を救済するとか、そういうことではなくて、日本経済全体が非常に大きな転換をするわけでありますが、転換する場合には必ず費用がかかっているわけであります。その費用を個人にしわ寄せしないで一般的に、公的にどうシェアするか、負担するかと、こういうことをこの法案の審議過程におきましてぜひ深めて議論していただきたいと思うわけであります。
どうも大変時間が超過いたしまして失礼いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/3
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004・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ありがとうございました。
次に、下山参考人お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/4
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005・下山佳雄
○参考人(下山佳雄君) 私、下山でございます。
本日はこのような機会をお与えいただきまして、まず御礼を申し上げます。
合繊産業は構造不況業種の代表的なものとされておるわけでございまして、この法律の第二条にも特定不況産業の例示として載っておるようなことでございます。一体、合繊が構造不況業種と言われるゆえんのものは何なんだろうかといろいろ考えてみますと、幾つかの理由がございます。
まず第一に、輸出の依存度がきわめて高い、そしてこれが急激な円高によって非常に大きな打撃を受けている、こういうことでございます。
合繊は糸綿の生産を担当しているわけでございまして、それをさらに織物、二次製品にするわけでございますけれども、この糸綿の合繊が担当しております直接のその糸綿の段階で生産の三五%、さらに織物、二次製品を含めますと五五%が輸出に依存しておるのでございます。一昨年が一ドル二百九十六円、昨年が二百六十八円と、それが今日二百二十円台というわけでございますが、単純計算をいたしますと、円が十円上がるごとに糸綿で百十億、織物で百七十億、さらに二次製品で七十億と、円が十円上がるごとに合計三百五十億の手取り減ということになるのでございます。もちろん、これは全部が合繊企業が負担するわけではございませんけれども、その影響がいかに大きいかはおわかりいただけると思います。
第二の理由といたしましては、わが国の合繊の原料価格が国際的に見ましてきわめて高いということでございます。
これはわが国のナフサの価格が国際価格と比較いたしまして飛び抜けて高いことによるのでございます。合繊の原料費というのは、大体工場コストの五〇%、総コストで計算いたしますとその四〇%を占めておるのでございます。私どもは、一昨年以来、このナフサ価格の是正を叫び続けてまいりましたけれども、ようやく昨年の十−十二月分につきまして通産省の行政指導がございまして、従来のキロリッター当たり二万九千円を二万六千円程度に下げろという行政指導があったのでございますが、最近の円高による換算をいたしますと、ヨーロッパのいわゆる国際価格と言われておるものは、キロリッター当たり二万円を割ることになっておるのでございます。アメリカは、これは天然ガスを原料といたしておりますので、もっと安いのでございます。どうしてまあこういうふうにわが国のナフサ価格が高いのかということでございますけれども、これは一つには、かつての標準価格制度、これの名残りがあるわけでございますけれども、さらに突き詰めれば、石油業法によるところの行政指導というものによりまして輸入が自由にできないようになっておるという点が一つの理由だと思います。つまり円高のメリットがこういうものによって遮断されているということに起因するものでございます。
第三の要因といたしましては、発展途上国の追い上げとアメリカの攻勢、こういう国際競争の問題がございます。
皆様御記憶のかつて四十六年、日米繊維問題というのが非常に喧伝されましたが、このときの極東諸国の合繊の能力というのは日本の十分の一以下でございましたが、それが今日では七二%に達しております。現在、石油化学業界も非常に業績が悪いわけでございますので、物が余っておりますので、これから非常に安い原料がこの極東諸国に出てまいります。いまや東南アジアでの日本の市場というものはすっかりこの極東諸国に荒らされておる。それからまた、さらに日本にもこれが入りつつあるわけでございます。それからまた、アメリカの攻勢ということでございますけれども、デュポンという会社がございます。このデュポンの設備能力は日本の十社を合わせたものに等しい能力を持っておる、そういうような非常に巨大な企業でございます。これが先ほど申しました安い原料を使いまして、わが国の主要な輸出市場でございます中国へ最近攻勢をかけてきておりまして、もうすでにその半分以上その市場がとられたという事態もございますし、さらにまた、直接日本へも輸出してくるということが、着々と進んでおるわけでございます。こういうような国際競争の問題がございまして、さらにこれがまた輸入の問題になるわけでございます。わが国が先進国でただ唯一の市場の開放国でございます。七七年のわが国の輸入品の内需に占める割合はすでに一一・八%に達しておりますが、これは個々の品目になりますと、さらに三〇%以上というようなものもあるようでございます。これは特に極東諸国からの輸入が最近は非常に増加しております。以上申し上げましたような状況の結果から、合繊の主要十社の決算は、四十九年の上期から五十二年の下期まで経常収支の赤字の累積がすでに二千億に達しております。これをその所有しております土地あるいは有価証券を処分することによって今日までしのいできたわけでございますけれども、このような過去の蓄積の食いつぶしはすでに限界に来ておるのでございます。
そこで、この法案との関係でございますけれども、合繊業界は昨年の十月から通産省の勧告操短を受けて減産を開始いたしました。また、本年の四月からは不況カルテルの認可を得て減産をやっております。現在ようやく少しずつその効果があらわれているという段階でございます。しかしながら、いつまでもこういう不況カルテルを続けるわけにはまいらないわけでございまして、特に今後円高基調というものは定着するでありましょうから、輸出の割合というものを、先ほど申しました非常に高い輸出依存度というものを大幅に減らす必要があるわけでございます。これを考えまして五年先の需給を計算いたしますと、まず二、三割は設備過剰であるということは大体のコンセンサスになっておるわけでございます。
先ほど申しました国際競争力を削減しないようにどうやってこの過剰な設備を廃棄するかということでございますけれども、各社一律何%の削減ということになりますと、これは非常に国際競争力を減殺することになるわけでございますので、結局、もし廃棄するならば工場単位あるいは企業単位で設備廃棄をするということが望ましいわけでございまして、そのためには、やはりお互いに金を出し合って、つまり残存者、残る者が金を出し合って、そしてやめる人に廃棄しやすいようにするということが必要だということ、つまり残存者負担の方式というものが大体大筋で合意をされておるのでございます。
この法案を拝見いたしますと、結局、ポイントは私は二点あろうかと思うわけでございます。
まず第一は、この過剰設備の廃棄の話し合いというものがこれはどうも独禁法に触れることになるようでございますので、これは何とか措置していただかないといけないわけでございます。第二に、設備の廃棄資金という後ろ向き資金が出やすいようにするために保証基金制度を設ける。大要この二点を目的としてこの法案が提案されていると思うわけでございます。この法案は、したがいまして、合繊業界の構造不況の原因であるところのたとえば円高の問題、ナフサの価格の割り高の問題あるいは輸入の問題、そういうようなものを何ら解決するものではございませんけれども、設備廃棄によって問題を解決するためには必要不可欠のものだと私どもは考えております。われわれといたしましては、この法案に十分満足しているわけではございませんけれども、この法案が提案されたことは一つの大きな前進だと考えておるわけでございます。
いま私どもがこの法案そのものにつきまして十分満足しているものでないと申し上げた理由は二つございます。
一つは、アウトサイダー規制の問題でございます。これが外されたということによりまして非常に話がまとまりにくくなる、設備廃棄の話がまとまりにくくなるということは事実でございます。アウトサイダー規制というのは、結局、設備の処理あるいは残存者負担についてのアウトサイダー規制の問題と設備の新増設の制限についてのアウトサイダー規制の問題が二つあるわけでございますけれども、その後者が通産省の原案には入っておったけれども、結局削除されたということでございます。ところが四十二年の七月に制定されました特定繊維工業構造改善臨時措置法というのがございますが、これにはその設備の処理に関するアウトサイダー規制が入っておりました。別に大した問題にはならなかったのでございます。今回はなぜこれがこんな大問題になったのかと、私どもとしてはいささか理解に苦しむものでございます。
不満だと申し上げたもう一点は、設備廃棄いたします場合に、低利長期の資金の確保について十分な予算措置がないということでございます。もちろん、そのために、そのかわりとしてこの保証基金制度が設けられているわけでございますけれども、それよりもやはり手が出るようにほしいのは長期低利の資金でございます。これが何ら触れられていないということはきわめて残念でございます。
いずれにいたしましても、この法案が成立いたしました暁におきましては、私どもといたしましても、この法律の助けをかりましてこの構造不況脱出のために全力を尽くす考えでございますけれども、また先生方には何とぞこの円高是正の問題あるいはナフサ価格の割り高是正の問題、あるいは輸入問題等につきましていろいろとお力添えをいただきますれば幸いに存ずる次第でございます。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/5
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006・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ありがとうございました。
次に、青山参考人お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/6
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007・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 不況カルテルを実施中の段ボール原紙及び家庭用薄葉紙を組織に抱えております紙パ労連の書記長の青山でございます。
特定不況産業安定臨時措置法について六点にわたって意見を述べたいと思います。
まず第一点として、冒頭に述べておきたいことでありますけれども、段ボール原紙業界では、現在不況カルテルを実施しておりますが、その実施期間中に構造改善計画が立てられないと特定不況産業に指定されないということを業界が言っております。そして通産省の行政指導による二五%の生産能力削減案を検討中であります。それが人減らしを初めとする合理化提案になってまいりまして、労働者の肩に大変大きくのしかかってきているというのが現状でございます。
具体的な内容としては大変たくさんあるわけですけれども、首切り、希望退職者募集、配置転換、出向、賃下げ、賃金ストップ、期末一時金の切り下げ、さらには諸手当の削減、定年延長の中止、定年年齢の引き下げ、再雇用期間の短縮、そして再雇用制度の廃止、福利厚生費の削減・廃止、パートタイマーの首切り、下請関連企業の整理などが挙げられます。通産省の行政指導が労働者の雇用不安を増幅させ、先取り、便乗的合理化を誘発させているということは、私たちが非常に遺憾に思っているところであります。この法案が制定され、具体的に実施されることになれば、労働者は深刻な不安に駆り立てられることになります。なぜならば、この法案は設備廃棄が主眼になっておって、労働者の雇用安定について保証がないからであります。
第二点の問題でありますが、同じ特定不況産業といっても、設備の処理などの及ぼす影響はさまざまで、すでに長期の格納もしくは休止の状態になっていて、そこに操業要員が配置されていない場合は廃棄によって直接生首が飛ぶというようなことはありません。しかし、紙パルプの場合には、ごく一部を除いて、設備の廃棄は即労働者の雇用、労働条件に結びついてまいります。
段ボール原紙の場合、いま検討されている二五%の設備廃棄といえば月産十五万トンの生産能力削減になります。巷間伝えられているところによりますと、現在、月産一万トンの設備を新設するとなれば、バージンパルプを主原料にいたしておりますクラフトライナーで三百億円、故紙を主原料にしておりますジュートライナーで百億円の資金が必要だというふうに言われております。十五万トンの設備を新設するとなれば一千六百億円から二千億円の資金が必要だということになります。装置産業であり、一社一工場、一つの設備というところもあります。何百台、何千台もある機械の廃棄の場合と違って、段ボール原紙の場合の設備廃棄は即企業閉鎖、全員首切りにもつながってくるという実情にあるということであります。
第三点は、設備の廃棄率はどうして決定されるのかということであります。
この法案の第三条第三項では「設備の処理について定めることができる設備の種類は、特定不況産業ごとに、政令で定める。」となっております。さらに第四項では「設備の生産能力の計算方法は、前項の規定により政令で定める設備の種類ごとに、主務省令で定める。」となっております。一方、安定基本計画を定めるときは、第三条第五項で「事業者の雇用する労働者の雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定について、十分な考慮が払われたものでなければならない。」となっております。さらに第六項ではあらかじめ「事業者団体及び労働組合の意見を聴かなければならない。」、こういうふうになっております。設備廃棄率算定の基礎になる生産能力の計算方法や設備の処理について定めることのできる設備の種類が法の制定とともに政令省令で定められるときに、雇用の安定についての配慮や関係審議会の事情聴取はどんな形で反映されるのか。設備の処理などについて目下通産省産業政策局、法制局、公正取引委員会などで定義が検討されていると聞いております。政令省令が先行し、ここで決められたことが関係審議会にかけられても、そこでは修正の余地はなくなってしまいます。政令省令で重要なことが決められる前に関係審議会に諮るべきではないかというのが私の考え方であります。
第四点は、この設備の廃棄率決定についての私の意見でありますが、段ボール原紙の場合、設備廃棄率算定の基礎になる生産能力は、通産省調査統計部が定める基準に基づいて算定され、月間二十九日稼働、年間三百三十六日稼働がその前提になっております。紙パルプの労働者も年末年始は操業を停止して世間並みの休みをとりたいと考えておるところであります。高温高湿で騒音の激しい職場であります。労働者が一斉に夏休みをとりたいと考えるのは当然のことであります。西欧の紙パルプ労働者は、夏に三週間ないし四週間操業を停止して長期休暇をとっております。現在は操業短縮中であり、年間三百三十六日稼働は実態と大きくかけ離れております。また、二五%の設備廃棄を行い、人減らし合理化を強行した上で、年中無休のフル操業を行うようにでもなれば、そこで働く労働者はたまったものではありません。それがこの法律の真のねらいであるとすれば、私たちはこれに反対せざるを得ません。
さらに重要なことは、廃棄率を決定する一方の指標である消費の見通しの問題です。需給の試算は、実質GNPの伸び率に一定の弾性値を乗じて計算されております。通産省が昨年十二月とことしの一月に行った試算では、実質GNPの伸び率とともに弾性値も修正されております。この四年間をとっても、弾性値はその年によって異なっております。試算はきわめて恣意的に行われておりまして、説得力がないものと思います。たとえば日中平和条約が早期に締結されれば、中国向け輸出が伸びるという事態も生じます。一律的な設備廃棄、設備廃棄一本やりの行政指導には大きな疑問が残るわけであります。週休二日制を目指す労働時間短縮を見込んだ生産能力の算定、十分変化の要因を織り込んだ需給試算でなければ、後に悔いを残すことになりかねないと思います。
したがって、第五点としては、設備の処理については格納、休止を優先し、廃棄は最少限にすべきであるというのが私の結論であります。
段ボール原紙の場合、業界では能力削減に当たってドライヤーの一部を撤去するドライヤーカット、すき物を他品種に変更する転抄、凍結、休止、他の品種をすいているマミンを廃棄し、この分を段ボール原紙のマシンで肩がわりする代替廃棄などを検討しております。しかし、通産省は、いわゆる設備廃棄に該当しないと言って、設備廃棄一本やりの行政指導を行っております。余りにも硬直的であり過ぎると思います。衆議院では「設備の処理に当たっては、業種の実情に応じ、設備の廃棄を必要最小限にとどめるよう努力すること。」という附帯決議がつけられました。政令省令を決める際や安定基本計画を決定する場合、こうした附帯決議の趣旨が十分反映されるようにしてほしいと思います。
最後に第六点として、特定不況産業信用基金については、目的のところに「雇用の安定を配慮しつつ、特定不況産業における計画的な設備の処理を促進するため」と修正してほしいと思います。
計画的な設備の処理に雇用の安定、失業の防止を含め、債務保証がこの面にも活用できる道を開いてもらいたいと思います。債務保証がかえって首切りの促進になったのでは法律の各条項に雇用の安定を図りつつという条文を盛り込んでも全く意味がなくなり、画竜点睛を欠くことになります。このことは第四節の第三十九条「業務」の第一項にある「設備の処理に伴って必要となる資金」の中にも明確に位置づけていただきたいと思います。
なお、基金の評議員会の評議員二十人以内の中に必ず労働者代表を参加させることを明確にしていただきたいと思います。
以上で私の意見陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/7
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008・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ありがとうございました。
次に、芦田参考人お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/8
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009・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) ゼンセン同盟の芦田でございます。
代表的構造不況業種と言われております繊維産業の労働組合の立場から、この法案に対する見解を申し上げます。
結論から申し上げますと、この法案には基本的には賛成であり、早期成立を強く要望しておきたいと思います。
繊維産業は典型的不況産業でありまして、戦後八回に及ぶ不況を経験してきておりますけれども、今回の不況は昭和四十九年から足かけ五年に及ぶものでありまして、その規模の大きさと深刻の度合いにおきましては、かつてないものであります。すでに綿紡績、羊毛紡績は一年以上にわたりまして、不況カルテルを実施しておりますし、合繊も昨年十月から勧告操短が行われ、現在も引き続き不況カルテルを実施しておるわけでございます。また、最近では、有名ブランドのVANでありますとか花咲でありますとか、そういうアパレル部門の倒産が相次いでおりまして、先行きは不透明のままでございます。このような事態に立ち至りましたのは、一つは内需の不振が挙げられます。もう一つは発展途上国繊維産業の急成長と先進工業国の保護貿易的な傾向によりましてわが国の繊維の輸出が停滞し、一方、輸入が急増をしましてわが国繊維産業の市場が非常に狭められてきておるということであります。そして、それに対してわが国の繊維産業が十分対応できていないところに今日の事態があると思います。したがいまして、景気がある程度回復をすれば内需が伸びるかもしれませんが、しかし、過度に肥大してしまったわが国の繊維産業が根本的に立ち直るということは困難であると思います。現在の高率操短が今後も継続されることになっておりますが、しかし、これをさらに長期にわたって継続するということはむずかしいと思います。現に紡績、織布、ニットなど広範にわたりまして設備の廃棄が進められておるわけでありますから、合繊だけが操短によって一時しのぎを続けていくというようなことは不可能だと思います。そういたしますと、合繊におきましても過剰設備の処理は不可避であろうと思います。そうだとすれば、私どもは、雇用不安というものをできるだけ少なくいたしまして、円滑にこの処理が推進できるような方策を考えていかなければならないと思います。そのために法律並びに政策面での総合的な対策というものが必要であろうと思います。そういう意味から私はこの法案に基本的に賛成をしておるわけであります。
ただ、この法案に賛成であるからといって、この法案にそれならば問題はないのかといいますと、私は幾つかの問題点を指摘をせざるを得ないわけであります。
一つは、この法案は当面の過剰設備処理のための債務保証に限定をされております。産業安定のための総合的な施策に欠ける面がございます。しかも、信用保証と言いましても、予定されております信用保証基金の規模が余りにも小さ過ぎるのではないかというふうな危惧を持たざるを得ません。
第二は、アウトサイダー規制が外されておりますけれども、これでは法の目指すところに実効が上がるのかどうか、疑問があるわけであります。繊維産業は、先ほど申し上げましたように、不況性が非常に強く、何回かの操短を今日まで繰り返してまいりました。その都度、労働者は多くの犠牲を強いられてきたわけであります。一方で設備を廃棄し他方で新増設備が簡単に行われるというようなことでは、この法律の実効性を疑わざるを得ないわけであります。
第三番目は、業種指定並びに安定基本計画策定の段階における労働組合の関与のあり方が不十分だと思います。当初原案に比べまして、衆議院段階において修正をされておりますので、かなり改善されておるとは思いますけれども、私どもはまだ不十分であるというふうに言わざるを得ません。
以上のことから、この法案につきまして次の要望を申し上げたいと思います。
その第一は、業界並びに企業が特定不況産業の業種指定を申し出る場合は事前に労使協議を行うことを義務づけるべきであるというふうに思います。
第二番目は、業種指定並びに安定基本計画を策定する段階において関係審議会は労使の意見を聞くことと衆議院段階において修正され、そのことが義務づけられるようになりました。しかし、関係審議会が労働組合あるいは労使の意見を聞くというよりも、関係審議会そのものに労働代表を参加させるべきであるというふうに私どもは考えております。ゼンセン同盟の場合は、繊維工業審議会がございまして、そこにわれわれの代表が参加をして審議に加わることができますけれども、すべての産業に審議会が設置されておるわけではありません。そういたしますと産業構造審議会でやらなければならないわけでありますが、産業構造審議会には、産業別の代表というよりも、総評、同盟等のナショナルセンターの代表が加わっておるにすぎないわけでありますので、当該産業の労働組合の代表が参加できる道を開くべきであるというふうに考えます。
次に第三番目に、安定基本計画には過剰設備処理に伴う雇用安定計画というものを明らかにする必要があると思います。設備処理に伴って雇用問題が生じるわけでありますので、安定基本計画には必ず雇用安定計画というものを明示する必要があると思います。設備処理に伴う最大の課題は、何といいましても雇用問題であるわけでありますから、安定基本計画の中に雇用安定計画というものを明確にすべきであるというふうに考えております。
第四番目は、安定基本計画の実施に当たりまして、各段階での関係労働組合との協議が必要であるということであります。衆議院での修正によりますと、事業所段階の協議が義務づけられておりますけれども、これをやはり業種段階、産業段階においても協議する場が必要であるというふうに考えております。
第五番目は、アウトサイダー規制の条項を設けるべきであるというふうに考えております。
なお、この法案の実施にあわせて次のやはり総合的な対策を進める必要があると思います。
その第一番目は、積極的な財政金融政策を展開をいたしまして内需の大幅な喚起を図るとともに、円高是正のための措置が講じられなければならないと思います。内需の大幅な喚起と円高の是正によりまして繊維産業が当面している不況はかなり緩和をされると思います。さらにまた、深刻な雇用不安というものもかなり解消をされていくと思うからであります。
第二は、秩序ある貿易体制を確立する必要があるということであります。一方で設備の処理が行われ、他方で輸入が野放しであるということでありますと、何のための安定かということになってくるわけであります。結果的には労働者の雇用機会を縮小することになりはしないか。そういう意味で、私どもは秩序ある貿易体制の確立ということを強く要望をいたしたいと思います。そこで短期、中期の繊維品の輸入のガイドラインを設定いたしまして、関係業界の協力と行政当局の指導によりまして輸入の秩序化を図るべきであると思います。四年前に国際繊維取り決めが締結をされまして、国際的な繊維貿易のあり方が示されました。アメリカ、EC等におきましては関係各国との間に二国間協定を結びまして、輸入に対するガードを固めておるわけであります。日本の場合は、この協定に参加しておりますけれども、まだ二国間協定は行われておりません。わが国の繊維産業の状態を考えますときに、わが国も二国間協定を締結する段階に来ておるというふうに考えております。
さらに繊維品の輸入関税というものが欧米に比べて日本の場合は低いわけであります。これをやはり欧米先進工業国並みの輸入関税にそろえる必要があるのではないかと思います。
第三番目は、合繊の素原料でありますナフサの価格の問題であります。これは先ほど化繊協会の下山参考人の方からお話がありましたので省略をいたしますが、これもやはり日本の国際競争力というものを維持する、あるいは強めるという立場からもナフサの価格水準というものを国際水準並みにそろえるべきであるということを申し上げておきたいと思います。
第四番目は、関連中小企業の安定並びに地域経済の振興について積極的な対策が推進されなければならないということでございます。合成繊維は、すそ野に多くの関連中小企業があります。合繊企業の動向というものがこれらの中小企業に対して決定的な影響を及ぼしておるわけであります。また同時に、地域経済に対しましても合繊企業は大きな影響力を持っております。合繊のプラントは大型でありますので、その合繊の設備の処理のいかんというものが中小企業の安定あるいはまた地域経済の問題にも大きな影響を及ぼすわけでありますので、中小企業の安定対策、地域経済の振興対策というものが並行して進められなければならないと考えておるわけでございます。
第五番目は、雇用問題であります。先ほども申し上げましたように、設備処理に伴う最大の課題は、雇用対策であります。失業は、労働者にとりまして直ちに生活不安に結びつくと同時に、今日まで蓄積してきた長年の技能というものもスクラップ化されてしまうわけであります。したがって、昨年十月発足をいたしました雇用安定資金制度などを積極的しかも弾力的に活用をいたしまして、ドラスチックな雇用調整というものは避けるべきだと思います。すなわち、なだらかな調整を行いまして労働者への犠牲というものを最小限に食いとめるべきだと考えております。現在それぞれの企業におきましては減量経営ということで人減らしが行われておりますけれども、せっかく発足をいたしました雇用安定資金というものを活用をいたしまして、ある程度の過剰雇用であってもそれは維持していかなければならないというふうに考えております。さらに、今日のように冷え切った情勢におきましては、企業におけるその雇用の維持、拡大もさることながら、国の責任によって雇用創出の対策なり政策というものを積極的に展開をしていかなければならないのではないかということを申し上げておきたいと思います。
なお最後に、お手元にお届けいたしております私の見解の概要の最後のところでありますが、十ページ並びに十一ページ、この不況によりまして繊維の労働者の雇用がどういうふうに変わっていったかということをこの十ページ、十一ページの表が明らかにしておるわけでありますが、この四年の間にほぼ繊維産業の労働者は二〇%強のものが減少をいたしておるわけであります。もちろん、この二〇%減少しておるというのは、この方たちが首を切られたと、こういう意味ではございません。繊維産業の場合は比較的勤続の短い女子労働者を抱えておりますので、労働力の出入りが比較的激しいわけでありますが、補充をしないというふうなことによってこういう事態も起きておるわけでありますが、いずれにいたしましても二二%強のものが減少をしておる、さらに紡績等におきましては四〇%も減少をしておるというのが実態でございます。こういうふうな経緯から、われわれゼンセン同盟の組織も、昭和四十八年の段階では六十万を数えたわけでありますけれども、現在はすでに五十万に落ち込んでおる状況であります。
さらに、この四年の間にわれわれの組織にどれくらいの合理化問題が発生したかといいますと、ゼンセン同盟の組織には現在千八百の組合がございますけれども、そのうち七百五十六件の合理化問題が発生をしておる、こういう事態でございます。こういう合理化問題によりましてこの四年の間に二万六千人余りの労働者が、倒産による解雇であるとか、あるいは工場閉鎖等による希望退職であるとか、そういうふうなことによりまして減少をしていっておるわけであります。
さらに、その次のページの十二ページにおきましては、中小企業を中心といたします繊維の設備の共同廃棄事業の進捗状況を明らかにしておりますが、これからもかなりこの繊維の設備というものは縮小していかざるを得ないという状況でありますので、当面の最大の課題は雇用問題である、こういうふうな立場から私どもは現在苦しい状況の中で活動を展開しておるということを申し添えまして、意見の開陳を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/9
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010・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、内田参考人におきましては、健康上の理由で約三時半までの出席にとどめてほしいとの要請がございますので、まず、内田参考人に対する質疑を行うことといたします。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/10
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011・対馬孝且
○対馬孝且君 四人の方々から非常に貴重な参考の御意見を賜りましてありがとうございました。私からも感謝を申し上げます。
内田先生がお帰りになられるということでございますので、内田先生だけにしぼってひとつ二、三点お伺いをしたいと思います。
この法律は、言うまでもなく、特定不況産業安定法という法律なのでありますが、私に言わせますと、これは安定じゃなくて不安定ではないかという感じがするわけです。それはなぜかと言いますと、やっぱり結論的には、この法案にしぼってまいりますと、設備を廃棄して中小企業と労働者の犠牲でひとつこの構造不況を乗り切っていこう、ここに結論が成り立っておるわけでございまして、したがいまして、こういった立場から率直に御意見をお聞かせ願いたいのでありますが、私は、やっぱり何といっても、いま内田先生も触れられましたが、これからの構造不況を展望する場合に、中期的な産業政策の基本的な施策がやっぱり示されるべきである、これがやっぱり柱になって当面のこの構造不況の手だてをどういうふうにしていくかということになっていかないと、どうも根本的な構造不況、単なる循環的な不況じゃありませんから、つまり構造的な不況ということになると中、長期の産業基本政策が必要である、こういう立場に立っておるのでありますが、この点先生も触れられましたけれども、ひとつこれからの進め方、あり方等について先生の感想なり御意見がありましたらお聞かせを願いたい。これが一つであります。
それから二つ目は、アルミ産業の審議会の部会長を先生がおやりになっておりまして最高責任者でございますから、アルミ産業と省エネルギーの政策との関係、これをちょっとお尋ねいたします。アルミの製造面では——この産業というのは、言うまでもなく、エネルギーの多消費産業であることは言うまでもありません。したがって、軽金属であるために、でき上がったものは省エネルギーに役立つ、つまり自動車、新幹線、地下鉄などの輸送関係の軽量化によって逆に消費エネルギーが大幅に節約をされる、こういう話もよく聞くわけでありますが、省エネルギー政策の推進が国策上の至上命題とされる今日の段階で、わが国のアルミ産業の将来性について、先ほどちょっとありましたけれども、方向としての考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。これが第二点であります。
それから第三点は、アルミと電力料金の対策との関係についてお伺いしますが、アルミ産業とは電力のかん詰めだというような極論もございますけれども、つまりアルミのトン当たりの原価が、先生も触れられましたが、三十数万円のうち電力料金だけで、日本と欧米を比較いたしましても、諸国間の差は十万近くのコスト差がある。いまのところ、政府も電力コストに対する決め手の方策が、同僚の議員も質問しておりますが、ないようであります。ECではアルミ用の電力は政策料金として適用されていると私は聞いておりますけれども、わが国のアルミ製錬エネルギーコストについて何らかの政策料金を導入されるべきものである、これがやはりこのアルミ産業を救う政策の手だてとして何よりもひとつ重要だと考えるのでありますが、この点の考え方を第三点としてお聞かせ願いたいと思います。
最後に、設備凍結五年間とした理由なんでありますが、先ほどもこのアルミ産業のこれからの回復ということについては五年ということを先生もお訴えがありました。そこでアルミ業界がこの法律によって四十万トン設備が大体凍結される、こういうふうに聞いておるのでありますが、したがって、エネルギーコスト、金利負担、輸入面に手が打たれなければ経営の安定というのは望み得ないのではないか、こういう感じを持つわけであります。したがいまして、アルミ部会等でいま五年間という一応のアルミ産業の回復のめどといいますか、こういうもちろん前提条件はございますけれども、なおさらこの五年間というめどに、先ほどもお訴えがございましたが、中、長期を見て何が当面の決め手になるかという点がございましたらひとつ御意見として賜りたい。
この四点でございます。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/11
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012・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) まず第一点の中小企業及び労働者に対してこういった法案の内容の実施がしわ寄せになるのではないかという御指摘でございますが、私は、まさにそれはそうだというふうに思うわけであります。この点は単にこういった法案でなくて、大体日本経済の現在の体質と申しますのは非常に伸縮性に富んでいるわけでありますが、最も伸縮的な部分は中小企業及び労働者、特に限界労働者の部分でありまして、そういうところに今回の構造不況対策のみならず、すべてのいろいろな困難がしわ寄せされていくということは、これは率直に認めなければならない問題だと思います。したがいまして、そのような経済体質の変革を実は中期的に行っていくことが最も必要であるというのが現在の中期経済計画に要請されている点でございまして、この点の御指摘に対しては私も全く同感であります。
ところが、ここで問題なのは、そういう日本経済が持っております一般的な体質ということを前提にした議論と、それから、さしあたっていま何をやらなければいけないかという議論がこんがらがりますと、実は何もできないということになってくる私はおそれが非常に大きいと思うわけであります。早い話が、たとえばこういう法案は労働者あるいは中小企業に対して設備廃棄という過程を通じてしわ寄せがいくというようなことに対する一つの対応策は、やはりそういう面におきまして設備廃棄をやらない、あるいは設備の縮小をやらないということではなくて、さしあたっては有効需要の拡大であるというのがまさに私は当面の最も重要な施策であるというふうに思うわけであります。
よく構造不況産業というのは有効需要政策だけで救えない、あるいはそういったものの範囲をはずれたものであるという議論があります。私も基本的にはそのようなトーンできょうお話ししたわけでありますが、しかしながら、有効需要の拡大が普通構造不況産業と言われる産業に対してほとんど影響を持たないかというと、私は、これは全く間違った議論であり、たとえばきょう問題になっております繊維産業なんかの場合には、これは明らかに減税によって非常に大きな効果が生ずるわけであります、有効需要の面から。また、この面から、さもなければ解雇あるいはレイオフというのが避けられたであろうような事態が幾つか生ずることは私は明らかであると思いますし、そういう点から申しますと、やはり日本経済が体質的に持っております問題と、それから、そういう体質を前提にして、なおかつ弱者にしわ寄せを寄せないさしあたっての対策は何であるか、こういうことをやはりうまく組み合わせて国政を動かしていっていただきますと大変ありがたいというふうに思うわけであります。
事実、今回の特に各野党がお出しになりました中期経済計画を見せていただきますと、これはどこの政党でも大体資本主義経済の枠組みはさしあたって前提にするということになっているわけであります。そうであるならば、やはり企業採算あるいは企業経営というものは基本的に認めまして、そしてそこから出てくるいろいろな問題点に対してこれの修正を行っていくというのが中期的な少なくとも基本方向だというふうに了解するわけでありまして、そうであるならば、一気にその制度改革によりましてこういった体質を変化させるというのではなくて、漸進的にやっていくということが中期的には最も重要なことであり、かつ私は国会の政党のレベルにおいて実はそういう合意は存在しているのではないかというふうに思うわけであります。
それから、第二番目のアルミ産業の将来性、そしてそれの持つ省エネルギー的な性質であります。この点につきましては、先ほども簡単に申しましたが、実は構造不況産業が直面している問題は非常に複雑でございまして、国内の事情その他によって律し切れるものでは絶対にない、これはまさに日本の経済が国際的に申しまして大国化しているということの一つの反映に私はなっているというふうに思うわけであります。実際このアルミ産業で申しましても、われわれが検討いたしましたこの将来性のポイントというのは実にいろんなポイントがあるわけでございまして、たとえば、もちろんわが国の国内におきましてどれくらいの需要がアルミに発生するかという需要予測がありますが、第二に、やはりそれは世界的な規模における需給予測でなければならない。特にこれはわが国のアルミ産業が世界に占める地位、そして世界的な需給の変化がわが国の経済に及ぼす影響、こういうものを検討しなければ、実はアルミ産業というのは、いまや国内的な事情で決定できない。それから第三番目には、国際的な地金のコストがどのように動きますか、そしてまた、アルミの価格がどうなりますか、これはもちろん需給関係あるいは市場の状況によって変わってくるわけでありまして、こういうものを的確に評価する必要があります。以上のような状況を前提にいたしまして、一体、業界の自主的努力というのがどれくらい可能であるかということが問題になってくるわけであります。
そして、いま申しました大きく言って四つの点でありますが、これに対するいろいろな——将来の問題でありますから、これを確定的には絶対にこれが正しいということは言えないのであって、最もあり得べき姿を考えるわけでございます。それにつきましてはこの第三点との関係で申し上げたいと思うわけでございますが、しかし、以上のことを前提にいたしますと、このアルミ産業というのは、現在のところはわが国におきまして全く国際競争力がなくなりました。そしてまた国内的にも需給ギャップが非常に大きいです。採算はものすごく悪くなっておりますと、こういうすべての不況産業が備える条件を全部備えているというような非常に困難な状況にあるわけでありますが、それにもかかわらず、わが国のアルミ産業が持っております技術的な基礎は国際的に最も優秀でございまして、こういうようなことを中期にわたって生かしていくならば、われわれの結論は、大体早くて五年先ぐらいに国際競争力を復帰するところまで行けるのではないかということであります。もちろん、この試算は、繰り返して申しますように、いろいろな前提に立つわけでありますが、これに関しましては、基本的に申しまして、今度関税員会で関税割り当て制の一応導入が政策的に行われるようになっております。それから、この安定基本計画との関連もございますが、金融面からの措置も存在するわけでございますし、それから、この需給、設備の調整の問題がこの法案によって事実可能になってくるわけであります。そういったいろいろなことを考えますと、いろいろな試算はございますが、大体この国際競争力が回復いたしますのがいまから五年先でございまして、それから先になりますと、むしろ黒字の状況というのを企業のレベルでも考えられる方向に持っていけるのではないか。ただし、その場合に、言うまでもなく、一般的に申しますと、コスト面におきましては業界の努力あるいは政策的な措置によってコストは下がってくるでしょう、これに対しまして、価格の方はだんだん世界的な需給の逼迫によりまして上がっていくでしょうと、こういうような前提があるわけであります。
それから最後に、電気料金との関係におきまして国際比較の問題をお出しになったわけでありますが、まずこの点においてはっきりとわれわれ認識しておかなければいけないことは、現在の各国のエネルギー価格あるいは電力価格を前提にして議論するということは間違いだということであります。すなわち、たとえばアメリカをとってみますと、アメリカのエネルギー価格は、現在議会で問題になっておりますように、これは非常に人為的な価格であります。意図的にエネルギー価格を下げているわけですね、政策的に。この点は日本と比べまして非常に介入が強いわけでありまして、それがために実は現在のアメリカの急激な輸入が発生してるということであります。したがって、現在アメリカ政府がとっております方向は、エネルギー価格をもっと上げるという方向に持っていきまして、実は現在のアメリカに存在するエネルギー価格は正常な価格ではないわけであります。恐らくわれわれの見通しではそういった情勢は調整されるだろうというふうに思っているわけでございまして、そういう意味から申しましても、よく現在アメリカの電力料金に比べると日本の電力料金は三分の一も高いと、こういうふうに言うわけでありますが、そういうものは将来的に維持できないだろうというふうに私はまず考えた方が正しいのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、現状に余りとらわれた考え方をいたしますと、これはどうにもならないという問題が出てまいります。
それから、政策料金を導入したらどうかと言うのですが、これは実は私は基本的には反対でございまして、その点は、よく言われるように、そういった料金を公共的に、特に差別的にやることによりまして実にこれまでいろいろな弊害が出ているわけであります。もしそうやるのだったら、やはり補助金の措置の方が望ましいわけでございまして、そういう問題に関しましては、今回のアルミ部会におきましてもこの方向は排除されたわけであります。
最後に、それではアルミの決め手は何であるかということでございますが、やはり基本的には業界の自主努力、そしてこの再編成というような方向にどう踏み出すかということでございまして、政策はやはりその補助的な手段にすぎない、こういうふうに申し上げたいと思うわけでございます。
どうも長くなりまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/12
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013・楠正俊
○委員長(楠正俊君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/13
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014・楠正俊
○委員長(楠正俊君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/14
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015・峯山昭範
○峯山昭範君 それでは、簡単に四点お伺いします。
まず第一点は、アウトサイダー規制の問題であります。これは先ほど内田先生は、現在まあ法案の中にこれを入れることについては反対であると、こういうふうにおっしゃっておりました。これは本日の陳述の中でも、お二人の方はこの問題に賛成、このアウトサイダー規制を入れなければどうしようもないという御意見もあるわけです。実際問題として、この設備の新設等の制限にかかわるいわゆる共同行為を実施している場合におきましては、この共同行為に加わらないいわゆるアウトサイダーに対しても共同行為の内容に相当する制限を何らかの形で実施しなければ過剰設備の処理は実効が上がらないと、こういうふうな意見が現実にあるわけですね。そこで、この問題について、現在の法案の中で具体的にこの点についてはどういうふうに実施をしていくかということが問題になるわけですが、この点についての御意見をまずひとつお伺いしたい。
それから二番目に、アルミ産業のいわゆる構造不況の原因につきまして、先ほど四点ほど説明がございました。
〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕
これは確かに、その四点の中身はもう申し上げませんが、すべて企業のみの責任でないということは私たちも十分わかっているわけであります。しかし、今回のこの法案の成立によりまして、いわゆる設備の処理が行われるわけでありますが、これで十分であると私は言えないと思うのですけれども、相当の対応ができるのかどうか、この点が第二点であります。
それから第三点としまして、いわゆる国際競争力を回復するまでには五年間持ちこたえる必要があると、こういう御説明がございました。確かに私は中長期的な需給見通しというのがやはりこれから大事になってくると思います。そこで、このアルミ業界の五年先のいわゆる国際的な見通しというのは現在どういうふうになっているのかというのが第三点目であります。
それから第四点目としまして、先ほど衆議院の附帯決議にもう一点追加したいということで御説明がございました。実際問題として、今回のこの法案そのものも賛成、反対いろいろありまして、わが党としましては賛成いたしているわけでございますが、先生がいまお考えになりまして、この現在の法案が成立した場合に将来一番問題となる点ですね、この法案の中で。どういう点が一番問題になると先生はお考えになっていらっしゃるか、この四点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/15
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016・福岡日出麿
○理事(福岡日出麿君) 時間の都合がございますので、できるだけひとつ簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/16
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017・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) まず第一のアウトサイダー規制でございますが、私は、これは法案に入れることは反対でございます。
それから、具体的に申しまして、たとえばアルミの場合でございますと、製錬六社ということでもって、ほとんどアウトサイダー問題は出てまいりません。ところが平電炉の場合ですと六十社とか七十社とか、非常に多くの業界の方がいらっしゃる。これはそれぞれ業界によって同じ構造不況産業といっても違うわけでありますから、したがって、安定基本計画の段階でその問題はお詰めになる必要があろう。これを一般的にアウトサイダー規制といたしますと、一般的に産業組織が持っております秩序あるいは効率性、そういうものに対して私はむしろマイナスの影響を及ぼすのではないかというふうに思います。
それから第二番目の問題でございますか——三番目の方から申し上げた方がいいと思いますが、五年先のアルミの状況がどうなっているかということでございます。
これは実は需要見通し、コスト見通し、価格見通し、こういうものが全部入ってくるわけでございまして、最近いろいろなこういう手法が開発されておりますけれども、これが決して決め手だということにはなりません。ですから、先ほど御参考までに大体五十八年におきまして国際競争力回復ということは、実は収支がとんとんになると。それ以降は利潤が発生するということでありまして、具体的な価格の動向及びコストの動向につきましては、実はアルミ産業におきまして詳しい資料がございますので、ぜひそれを見ていただきたいと思います。
それから、量的な需給関係でありますが、これもいろいろな見通しがございまして、一番早い場合には、世界の需給は、生産能力と需要との関係におきまして一九八三年においてすでにショートする、こういうことでございまして、もう少し長い期間で見ますと、八〇年代の後半と言う方もおられるかもしれませんが、大体われわれの作業は、八〇年代の前半におきまして世界のアルミの需給は需要超過の状況にある、こういうような見通しでございます。
そして、二番目の問題でありますが、そういうような状況に対応する前の問題でございますが、この場合に、やはり現在の債務超過、特に資本金に対しまして、もはや債務の方が多くなっている、こういう決定的に財務状況が悪くなっている姿があるわけでありまして、これを真っ先に直すということが恐らくアルミ産業において最も経営上重要な問題であろうということになるかと思います。
最後に、負担の問題でありますが、この最も重要なポイントは、先ほどから申し上げておりますように、構造不況産業というものは何らかの意味において産業構造の調整、もっと具体的に申しますと、場合によってはその産業からの撤退あるいは流出ということを行わざるを得ない状況にある。この点は実は社会党の今回の中期経済計画においてもはっきりとうたわれている問題であります。したがいまして、そういう場合に一番大きく出てまいります問題は、そこから流出いたします生産要素、特に労働力の問題でありまして、こういう労働力に関するいろいろなコストがございます。それはもうほかの参考人の方からるる御説明があったとおりであります。これを労働者個人にしわ寄せするというのはもってのほかでありまして、これはやはり社会的に負担するメカミズムをきちんと考えるべきである。こういった産業構造の調整問題は構造不況産業だけではなくて、ほかのすべての産業においてこれから発生するわけでありますから、そしてまた、国際的な協調という点から申しますと、当然、日本の国内において変化がなくても、国際的な情勢の変化によりまして産業構造が変化し、かつ労働力の移動が起こるという状態はこれからますますふえるわけでありますから、したがって、そういう労働力移動に伴うコスト、これをいかに社会的かつ地域的に負担するか、こういう原則をできるだけ早く国政のレベルでつくられることが最もこの際この負担問題に関して重要ではなかろうか。これまでのように、個人的なところにしわ寄せするというような姿はこれからは許されないであろうということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/17
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018・小柳勇
○小柳勇君 私も一問内田先生に質問いたしますが、一昨年ごろからこの商工委員会でいわゆる不況産業というものを論議してまいりました。そのころ大体十二、三の業種を不況産業として、その対策をいろいろ論議したわけでございます。結局、今度の法律に四つ明示して、あとは第五項として、今後省令政令で決めていくわけでございますけれども、産業構造の転換というもの、ただ、いまもおっしゃいましたように、四業種ではなくて、産業構造の転換というものを根本的に考えていかなければならぬ。それには、いま政府の中期経済計画、経済見通しというものが非常に不安定でございます。したがって、私はアルミ部会長というより、むしろ産業構造審議会の委員である先生に、産業構造審議会は一体産業構造の転換というものに対して根本的にどういう論議をして、そしてその中でアルミ——各部会の位置づけをしておられるであろうかと、そういうことをお聞きしたいわけです。
それは産構審の答申で、通産省から四十九年から産業構造ビジョンというものが出てまいりました。それで毎年ローリングしてありましたけれども、昨年末に出ました構造のビジョンでは非常に不安定であるということで、確固たる経済見通しのないままに非常に不安定であるから、これを安定させるということが大きな課題になって書かれています。したがって、産業構造の転換というものの中のアルミ、そしていま五年したら大体回復するだろうとおっしゃいました。したがって、アルミについてはそうでございましょうけれども、全体的な日本の産業構造の転換の中においてアルミが五年したら回復していくのであろうかと。であるならば、その産業構造の転換については、一体、具体的にどういうものを腹に入れながら産業構造審議会は論議しておられるのであろうか、それが第一点であります。
それから、いま公明党の委員から質問がありましたから省略してもいいのでありますが、この最後の転換のコストの平等負担、私は、ただ単に労働者と業者と、そういう平等でなくて、産業構造の転換、全体的な転換の中における転換のためのコストの平等であろうかと考えて実は聞いておったわけです。その点につきましても、であるならば、今度のこの法律というものは本当に当座のこの二、三年だけの対策であって、根本的にもう一回産業構造転換基本法なるものを考えていかなければ、結局はもうこの法律では救えぬのではないかという気がするわけでございます。
その二点について、まあ、まとめて一点でございますけれども、お話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/18
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019・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) まず、通産省におきます構造転換の考え方でありますが、これはよく批判されましたように、これまでの産業構造というのは成長第一主義でございまして、国民のニーズというものとの対応関係は必ずしも十分でない。したがって、この対応関係をこれから逆にニーズ優先につけていくという方向が実は昭和五十年あたりから出されたわけであります。まあ考え方といたしましては、したがって、この最終需要と産業構造との対応関係、それからそれに対応する技術状況のあり方、さらに国際関係から考えました国際的な比較優位の状況と、この三つが大体決め手になって産業構造を考えるということになっております。
しかし、この場合最も重要なことは、実は、そういうような転換をしていきます場合のルールであります。とういうような決めてもって——これは必ずしも法令でなくても、社会習慣で決まっていてもよろしいわけでありますが、そういうルールが変わってこなければこれからはなかなかうまくいかないでしょう。早い話が、住民運動一つとってみましても、こういうものとの対応をうまくやっていくというルールのもとでないと、これはもはや転換は不可能であります。したがいまして、こういった転換をいたします社会的あるいは経済的、さらには政治的なルールのあり方をどうするかということが恐らくこれから産業構造転換を考えていきます場合に通産省レベルにおいても非常に重要なものになるかと思うわけでございます。
それから、社会コストの問題でございますが、これはおっしゃるように、一般的な形できちんとはっきりさせることが私は必要だというふうに思うわけであります。ところが、そういうことと、さしあたっていま具体的に何をするかということとは、これまたちょっと区別しないといけないわけでありまして、今回の問題との関係で申しますと構造不況法案が一つあります。それから労働については、御承知のように雇用安定法、これから構造不況に対しては離職者対策法がございます。したがって、こういうものを個々に詰めていくという努力はやはり一方でやりませんと、全体のうまいものが出るまではだめだということになりますと、対応はつかない。しかし、ここで重要なことは、そういう個々の対応関係——資本に対する対応関係、労働に対する対応関係、出ているわけでありますが、その間の橋渡しがないというところに実は問題があると私は思うわけでありまして、この点はぜひひとつ行政レベルにおきまして、労働省、通産省、その他関係各省が十分に関連をとっていただく。そして、その上に、御指摘になりましたいろいろな形でのしっかりした中期経済計画というものがございまして、それが全り個々を縛らない、しかしながら、先ほど申しました一般的なルールを確立していくという形で、分権的な姿をとりながら、かつ中央で統制するところはきちんと統制する、そういうような姿が私は望ましいのではないかと思いますし、実は、各党の中期経済計画を見せていただきますと、大体その線だというふうに了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/19
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020・安武洋子
○安武洋子君 きょうは、どうもお体のお悪い中をおいでくださいまして、貴重な御意見をお聞かせくださいましてありがとうございます。
まず、お伺いいたしとうございますけれども、産構審のアルミ部会の中間答申、これを拝見させていただきました。この中には、約四十万トンもの現在の設備について効率的な凍結処理をとるというふうになっております。これらの処理につきましては、操業短縮とか不況カルテルなど、業界の自主性によって行われるべきものだというふうに考えるわけなんですけれども、内田参考人としましては、部会長さんでございますので、本法案の安定計画のような、法で定める強制力を必要とするというふうに中間答申をお出しになった当時お考えでございましたでしょうか。これが一点でございます。
それから第二点は、アルミ業界とかユーザーでは、円相場の高騰も手伝いまして、国産のアルミ製品や、それから地金に比べまして海外の物の方が安い、こういうことで輸入が拡大されておりまして、これに対しまして関税割り当てなどの措置もとられておりますけれども、さらに現在輸入の一元化とか輸入地金と国産の地金をミックスして販売する、こういうことを目的といたしますアルミ業法の制定、昨日の新聞にも大きく報道されておりますけれども、こういう動きも出ております。今後のアルミ業界の見通しとして、このような事業法というものがなければ業界はうまく立ち行かないというふうにお考えでございましょうか。
さらに、第三点でございますけれども、いまのアルミ業界の状況は、オイルショックの後の電気代の高騰、こういうものと切り離しがたいと思うんです。アルミが国際競争力を失ってきている上で電気料金の上昇が特に影響が大きいというふうに思いますし、日本のアルミ精錬用の電力源の七割が石油と火力発電ということで、水力はわずかに一割ほどという状態なんですね。オイルショックをもろにかぶっているというふうに言わなければならないと思うんです。通産省の調べでは、他の資本主義国では水力が五三・二%とか石炭火力が一二・六%、こういう状態が出ております。中期的な見方として、日本のエネルギー政策をどう転換していくべきかというふうにお考えでございましょうか、この点お伺いいたしとうございます。
それから第四点でございます。設備投資につきましては、アルミ業界では、昭和四十四年、それから四十五年の両年に、当時の生産金額の五〇%以上に当たる大きな設備投資が行われて、四十七年、四十八年には半減いたしましたけれども、四十九年、五十年には昭和四十四、五年当時の金額の水準の投資が行われております。これらの投資が効果をあらわす時期にオイルショック、こういうことでいまの不況という事態を迎えております。設備が遊休化して金融費用も増加していまの経営の悪化という状態に立ち至っていると思うんです。そこで先生にお伺いいたしとうございますけれども、先生も指摘なさいましたように、いまの不況というのは景気循環的なものではなくて長期的な構造的なものが加わった不況だということでございますけれども、こういうことを考えあわせたときに、景気がよければどんどん設備投資を促進するというふうな企業体質とか、あるいは政府の政策、誘導、こういうあり方について今後どうあるべきだというふうにお考えでございましょうか、このあたりをお聞かせいただきとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/20
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021・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) まず第一点でございますが、これは御説明いたしましたように、現在の構造不況、特にアルミ産業が直面しております問題は、最後に御指摘になりましたように、循環性、一時性のものもございますけれど、主として構造的ないし長期的な問題でございまして、それに対する対策は市場経済あるいは有効需要政策では対処できないということが基本的に私は問題だと思うわけでありまして、そういう前提でお話を申しました。つまり、現在の状況は普通一般に景気の自律回復力、自分で回復してくる力がないというふうに言われておりますが、その一面、かつそれが非常にはなはだしく出ている一面だというのがアルミ産業の場合でございます。
それから第二番目の円高の問題でございまして、これは安い物が入ってくるからそれでやったらどうかということでございますが、この点はすでにいろいろ参考人の方もおっしゃいましたように、また私はこれも一般的な国民のコンセンサスがあると思うわけでありますが、確かに国際的な状況に見合わせてわが国の経済構造を変化させていくということは、これはもう大体だれもが認めているわけであります。しかし、その変化させるスピードあるいは度合いでありまして、これをごく漸進的にやるというのがまだどの場合にも行われている合意ではないかと私は思います。ここに五年間という期間が出てくるわけであります。
それから三番目の問題でございますが、オイルショックによりまして電力料金が高くなったと、したがって、先ほども電力料金に対する何らか特別の考慮というお話がございましたが、私は基本的に反対でございます。と申しますのは、本来的にやはり現在は省エネルギー化を進めていかなければいけない。省エネルギー化を進める最も重要な刺激はエネルギーの価格が高いということであります。安いエネルギー価格を使って、しかも省エネルギーをせよということは、むしろこれは非常に困難というか、実は架空のものでございまして、やはりエネルギー価格は高いものですよという前提でいろいろな計算をされる。しかし、その場合に余りにも状況が激烈に変わる場合には、やはりその他の政策措置によって調整していくということが必要でございまして、したがって、この点アルミに関しては関税割り当て制度あるいは金利のたな上げ問題、あるいは今回の設備調整問題という形で出ているわけでありまして、私は、そういう方向で事態を収拾していくべきだというふうに考えるわけであります。
それから、設備投資に関しましては、全く御指摘のように、実は資本主義体制というのは何ら中央の計画原理を持たないわけでありまして、そういう意味ではその自主的な判断によって動く。ところが、ここで非常に重要なことは、先ほど御指摘になりましたオイルショック前後にかけて起こりました急激な設備投資の拡大でありますが、この背景をなしておりますのは当時の実は有効需要政策の間違いであったというふうに私は考えるわけであります。本来ならば、もうそのころ引き締め政策に転じなければならない四十六年、七年あたりの状況におきまして、ますます景気をあおるような有効需要政策がとられた、その上に乗っかって実は設備投資が出てきたわけでありまして、もちろん、この業界の問題もさることながら、国政レベルにおける政策のあり方ということもこの際オイルショック以前の設備投資のあり方についてはお考えいただくことが必要ではなかろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/21
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022・安武洋子
○安武洋子君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/22
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023・柿澤弘治
○柿沢弘治君 時間が迫っておりますので、基本的な点だけ内田先生にお聞きしたいと思います。
構造不況問題についての総括的な分析といいますか、判断は私も大変勉強になりました。大域的な変化であって小域的な対策ではだめだと、循環的な対策ではだめだと、構造的な対策でなければいけない、そこまで非常によくわかるわけでございます。私も内田先生に経済学を習ったものですけれども、ただ、その場合の構造変化のコストを社会的に負担しなければいけないというところへすぐにつなげておっしゃいました。しかし、やはり自由主義経済体制、先ほどおっしゃったアウトサイダー規制に対する否定的な御意見、産業組織論というものを考えてみれば、たとえ大域的な構造変化であっても、そのコストは原則として企業が負担をするというのが原則ではないだろうかというふうに思うわけでございます。これはその構造不況業種に属していようと構造不況業種に属していなかろうと、やはり自由経済体制のもとでは企業の負担、関連の方々の負担が第一義的である。つまり永大産業は全部永大産業にやらせておいて、構造不況業種だけは社会的に負担をしろ、政府が責任を持てというのは、その面でも平等性を欠くのではないだろうか。ただ、その構造不況業種というような大きな、まさに大域的な変化をそのまま企業の負担でやらせるには余りにもフリクションが大き過ぎる。その意味では、企業から見た外部不経済といいますか、転換の外部不経済というものが大き過ぎる。つまり大量の失業が起こる、地域的な衰微が起こる、そうしたものを、外部不経済を国が政策的に応援をしたときに少なくなるその外部不経済を少なくするコストとして国が何らかの負担をするのならば、これは国家的もしくは国民的な合意を得ることが可能であるというような形で国の介入なり助成というものを限界づけておかないと、私は、むしろ自由経済体制にとって危険な状態になるのではないだろうかという気がいたします。多分、内田先生もそういうおつもりだと思いますけれども、直接的に構造変化だから、大域的変化だから社会的コストでやるべき、まあ社会的費用分担をしっかり考えるべきだという形で——何か私とも誤解をしているかもしれませんけれども、だから国の責任である、行政が費用を負担しなければいけないというふうに理解をするような御発言がございましたので、その点はやはり一義的には企業ないし関連の方々の負担ではないだろうか。
いま、実は循環的な問題として、今度の構造不況の問題は四十六、七年の需要政策の間違いから発生しているというお話がありましたけれども、もしも総需要政策の間違いであれば総需要政策で対策をとらざるを得ない。政策が間違っているから、総需要政策が失敗したから構造対策で税金を使ってもいいということには必ずしもならないんじゃないだろうかというふうに思います。むしろ、それは原則は、やはり企業それぞれの分野における生産力の調整というものは、企業の流出入、まあ倒産とかいうものを含めた企業の流出入で調整されるべきものであって、それを何らかの形で国が責任を持つというのは、これが非常に極端な状況で、何らかの対策をとらないと社会的な不効用といいますか、そういうものが過大に発生する場合に限られるというふうに理解をしているわけでございまして、その点はその他の政党の皆さんと若干違うかもしれませんけれども、その点について、むしろ内田参考人の御意見は私どもに近いと理解していただけに、先ほどの御意見が若干奇異に感じられたわけでございます。その点だけをお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/23
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024・内田忠夫
○参考人(内田忠夫君) ここは論争の場所ではございませんので、私の意見だけを申し上げます。
まず第一に、現在の市場経済あるいは自由主義経済、これは普通の場合はうまく働くわけでありますが、働く機能を麻痺するという状況がどういう状況であるかということもはっきりしております。そしてその中には、いま御指摘になりました外部性のほかに不確実性の拡大というような問題であるとか、あるいは一般的な分配の不平等に基づく社会的な不安定性の問題、この点については市場経済は何ら機能しないということは明らかでございまして、そういうことがまさに問われる状況におきましては、市場経済だけに任せることはできないということがむしろ自由主義経済を守る実は私は前提ではないかというふうに思うわけであります。
それから第二番目に、企業の負担でやるという場合、企業とは一体何であるかということでありますが、この場合、経営者であるということだったら非常によくわかります。すなわち、経営者はすべての責任を負うわけでありますから、したがって、どういう場合にもいわゆる全天候型の責任を負うということでありますが、しかしながら、これは労働者は別であります。すなわち、そういった企業にたまたまいるかいないかということが決定的な分配の相違ということになることは、これは一般に許されないことでありまして、この点実は先ほどから問題になっております資本設備の調整の問題と労働力の調整の問題とは違うということがこれは経済理論的にもいつも出てくる問題であります。したがいまして、こういうことから考えますと、企業とおっしゃったときにこれが経営者という意味であれば、私は全面的に賛成でありますが、これが企業に関連するすべての人を含むのであったら、これは賛成しかねます。
それから三番目に、これに関連いたしまして申し上げておきたいことは、実は自由貿易というのが単に自由経済を国内で守るだけではなくて国際的にも守る重要なポイントになります。ところが、自由貿易ができるためには実は国内で産業構造の転換が起こるということが大前提でありまして、この転換を起こすためには実はコストが非常にかかるわけであります。したがって、自由貿易体制を守るということは実は一種の公共財でありますが、公共財であるからにはそのコストをどう負担するかということは明らかでありまして、これは公的に負担する以外にない、この点は私は十分にお考えいただくべき点ではなかろうかというふうに思うわけであります。
最後に、総需要対策でありますが、実は現在の総需要対策のとり方が本当に景気安定的な形で行われているかどうか。実は昭和四十六、七年におきます総需要政策がほとんどあのときにおきましては、衆目の認めるところ、引き締めの方向であるということが一般的な経済判断からはできたと思いますが、それが逆の方向に行ったのはなぜかと、ここに私は問題があると思うわけでありまして、決して一時的な問題ではないということを指摘しておきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/24
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025・福岡日出麿
○理事(福岡日出麿君) 以上で内田参考人に対する質疑を終わります。
内田参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてありがとうございました。また、貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
それでは、引き続き参考人に対する質疑を行います。
質疑のあるお方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/25
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026・対馬孝且
○対馬孝且君 紙パ労連のまず青山さんにお伺いします。
一つは、書面協定という、新しい労働組合との協議の関係で、衆議院修正では協議ということですが、これでは不十分なので、書面協定ということを先ほど参考人の立場でお述べになりましたが、これは私もざっくばらんに申し上げますけれども、石炭産業が、やっぱり結果的に設備廃棄と同じでありまして、閉山をする場合に、当該労働組合の同意書がなければ合理化事業団はこれを買い上げをしないということで、立法では石炭合理化臨時措置法という法律があるのでありますが、この法律の中には、当該組合の同意文書がない限りは買い上げをしない、こういうきちっとしたうたい方をしているのであります。私は例を申し上げるのでありますが、こういった石炭合理化臨時措置法に基づく労使の同意書、こういう意味に理解していいかどうか、書面協定とは。この点ひとつお伺いしたい。これが第一。
第二点目は、これは衆議院の会議録をちょっと読ましていただきましたら、おたくの業界の代表の発言、栖原さんですか、この方のあれを見ますと、業界としては過剰設備は大体一〇%を目標に努力していると、しかし、この一〇%といえども業界の内部では相当問題がある、内部的にはやっぱり四、五%前後だと、こう言っているんです。先ほどのあなたの陳述によりますと、通産省がどうもこれに対しまして二五%ですか、廃棄という方向で指導されていると、これはどうも私は納得いかない。これは社会党も九時間半ここで議論して、同僚議員も質問しているんですが、通産大臣が一貫して言っていることは、あくまでも業界の自主努力でこれはやるべきことである、こういう考え方を出しているんだが、いまあなたの陳述を聞きまして、事実であるとするならば、明らかに業界は一〇%でも大変だと、連合会としては。まして業界が五%前後だと言っているのに、通産省は頭から二五%でないとだめだと、こういう言い方は、むしろ法案の趣旨から言っても、自主努力という通産大臣の言っている言葉の乾かないうちにこんなことやっているというのは、どうもこれは納得できない。この点ひとつ考え方があったらはっきりしてもらいたい。これが二つ目であります。
三つ目は、時間短縮の問題あるいは週休二日制、全く同感です。これでいきますと、私のあれですか、通産当局のあれでいっても、月二十八日、年間三百三十六日操業を前提として二五%というのを出しているようでありますが、これでもし週休二日制を実施したとすれば、かなりの操業短縮度というのは回復できるのじゃないか。もっと言うならば、人的な合理化に犠牲を強いないで回復になるという点につながるのかどうか。基本的にはそうだと思うのでありますが、この点をひとつはっきりしておいていただきたい、こう思うのであります。その三点をひとつお伺いします。
それから次に、繊維業界の関係でちょっとお伺いしたいのでありますが、芦田参考人にまず最初にお伺いしますけれども、先ほど繊維産業の歴史的な離職者状況というのを資料でも見せていただきました。大変な事態だと思っているのでありますが、したがって、不況突入以来現在まで約二十万というような推定があるというふうに一応一方では聞いておりますけれども、そういう中にありまして、こういった傾向が強まるという段階で、組合側としてどういう対策が考えられているかという点、先ほどちょっと聞きましたけれども、特別離職者臨時措置法などのいろんなことが出ましたけれども、それだけではこの事態の対策として、救われないのじゃないかと、こういう感じがいたすものですから、これをひとつお聞かせ願いたい。
それから、合繊メーカーの大手七社の関係で、最近日経新聞等で見る限りでは、つまり業界の再編成、グループ化ということがちまたにマスコミで伝えられておりますが、こういった問題について組合側としてどういうふうに考えておられるのか。この二つだけお伺いしておきたいと、こう思うのであります。
それから、下山参考人にちょっとお伺いしますが、先ほどお聞かせ願った段階で、やっぱりアウトサイダーをひとつ増項すべきだという立場で聞きました。アウトサイダー、この法案の中で欠落しているので、はっきり入れたらどうだということなんですが、これはわが党の同僚議員も質問いたしまして、橋口公取委員長から明快に、独占禁止法二十三条との兼ね合い等も含めて、これはどうしてもやっぱり入れることはできないと。むしろ中小企業団体法の中の設備廃棄、これと生産との兼ね合いなども含めて、独禁法と中小企業団体法との兼ね合いとの考え方はどうだという詰めの議論をきのうやりました。遺憾ながら、それとてもやっぱりこれは独占禁止法上の問題であるということが明らかにされておりますので、この点率直にお伺いするのでありますが、独禁法の問題ではないというお考えで、とにかくアウトサイダーを増項すべきなんだということなのか、その点の兼ね合いをちょっとお聞かせ願いたいということが一つ。
それからもう一つは、この前、参考人であなたの方の会長さんがちょっと言われておる点があるのでありますが、どうもこの宮崎さんの御意見によりますと、この法案は、率直に言ってしまうと羊頭狗肉だと。狗肉を売ってやるような法案ではないかと、ずばり御指摘願っておるのでありますが、それは何といっても、円高の問題あるいは発展途上国の追い上げ等の問題、それからナフサの問題等からいっても、全くこの法案の示すところはそういうところではないかということをはっきり申しているのでありますが、これは間違いであれば——会議録に残っておるのでありますけれども、そういう点からいくと、この法案に消極的賛成と、実際大した役には立たないけれども、一応現状の段階ではこの部分について賛成をすると、こういうことなのかどうか、この点ひとつ会長さんのお考えを含めて、いま一度お聞かせを願いたい、こう思っておる次第であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/26
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027・青山陽一
○参考人(青山陽一君) まず最初に、書面協定の問題でありますけれども、今度の特安法の衆議院段階からの討論をめぐって、私どもとしては、本来、主務大臣が業種指定をする際にも、それから安定基本計画を策定をする段階においても、さらにまた、具体的に業界が自主的につくった計画に基づく設備の処理が行われるという場合であっても、それぞれの段階で、産業別の労働組合なり、それから個別の労働組合が同意をするということを前提にしたいと、こういうふうに申し上げてきたのですが、それぞれの段階で、衆議院では協議すると、こういうことに結果的になりました。
そこで、いま具体的に当該の労働組合の書面で協定をしたいという意思は——労働組合と企業との関係というのは、健全な労使関係というのをつくりたいと、こういうふうに私どもは常々願っておるわけですけれども、今日の使用者と労働組合の関係というのは、必ずしも力の関係というのは、お互い対等ではない側面を持っております。かなり企業側の力が強いという実態があります。ですから、たとえば今度の具体的な設備廃棄にかかわる問題等について、単に協議をするというだけの形ではきわめて不満足だし、少なくとも書面で協定をするというふうなことがないと確実に雇用問題がうまくいかないのではないか、こういうふうな観点から出したわけです。したがいまして、書面協定そのものについては、特に炭労の、かつて石炭産業の場合に行った同意文書というところまで考えずに実は出したわけであります。
それから次に、通産省が頭越しに二五%の設備廃棄をする、これに対して二五%の設備廃棄は業界では対応できない、こういう今日の実態になっているわけですけれども、私どもの方からいたしますというと、少なくとも、過剰設備率と言いますか、いわば適正稼働率を計算をしたりなんかするときに非常に問題だと思うのは、たとえば二五%の設備廃棄をしようということを前提にして数字をいじくれば、たとえば三年後の過剰率というのが幾らになるかというようなことは、最初の設定の仕方によってもう数字がかなり動いてくる。いま通産省が言っているのは、昭和五十六年の需給見通しの関係から、いわゆる稼働率が七二・六%になる、そういう推定が立つと。おおよそそれにのっとって二五%の設備廃棄というものを盛んに言われているというふうに思うわけですけれども、最初のこの数字の取り方でこれはかなり変わってくるということが言えると思います。
先ほども申し上げましたが、また去年の紙パ業界の栖原さんの発言の問題が出ましたが、あのときには、いわゆるGNP弾性値が〇・九というふうに抑えられた。そういう中で一〇%の廃棄というものが主張されたわけです。通産省が十二月から一月にかけて出しているのは、GNP弾性値〇・七と踏んでいる。そこで二五%という形が出てきておりますけれども、そのときに、ある通産の課長の方が私見ということでわれわれの交渉のときに出されたのですけれども、適正稼働率九五%というふうなことが発言されているのです。これはやはり前の栖原発言のときには適正稼働率八五%、こういうふうに出されているわけですが、非常にこの辺の食い違いがあるということは事実です。
そこで、三点目の労働時間の短縮という問題にも触れるわけですけれども、労働時間の短縮の問題では、まず紙パイプ産業の実態というものをひとつ御理解をいただいた方がいいと思われるので申し上げたいと思うのですけれども、一つは、今度の構造不況法案の中で言われる、いわゆる構造不況業種ということが果たして段ボール原紙に当てはまるのかどうかという点があるわけです。確かに過剰設備を抱えて、そして長期の経営困難というふうなことからいたしますというと、これはまあまあ構造不況業種というふうに言えるのだろうというふうな、そういう理解をしておるのですけれども、ただ設備の処理に当たって、みそもくそも一緒にして、その業界の実態を実情に合わない形で設備の処理を行うということについては、かなり実は問題があるというふうに見ているわけです。たとえば輸出入の関係で大変制約を受ける繊維の関係などがあると思いますが、紙パルプの特に段ボール原紙業界の場合には、そういう関係というのはないわけであります。そういう事情はかなり違っているわけです。しかも、GNPの伸びに従って段ボール原紙業界というのは一定の伸びを今後とも期待できる、こういう産業であるというふうに思っているわけです。そうしたことの中で、とにかく頭越しに二五%の設備廃棄をやるという、しかも設備廃棄一本やりの形については、私どもとしては反対せざるを得ない。こういう立場を実は明確にしておるわけですけれども、特に紙パ産業の場合には、一般のいわゆる週休二日制の問題をとらえる問題と違いまして、紙パ産業の場合には、職場の労働条件が、特に高温多湿の職場というのがこの実態であります。そういう中で、長い間、私たちとしてはできる限り夏休みとか、年末年始の休日というようなものを確保したいということを願ってまいりました。紙パ産業は、実際に昭和二十年代から三十年代の前半にかけては、一週間運転をして必ず一週間ごとに休日を設けておったのです。それから昭和三十年代の初めごろになって、二週間運転して必ず休転休日を設けておったわけです。それが一九六〇年を前後して、あの時期からかなりフル生産、三〇操業というふうに言われるような操業体制になってきたわけです。それを見た場合に、今日のこの状況というのは、一年三百六十五日、高成長時代にはそういう運転をして、年末年始、世間一般の人がお正月うちでのんびりしているようなときでさえも操業をさせられるというような実態があったわけです。今日そういうふうな高成長時代のような操業というものを前提にしたいわゆる稼働率計算というのは、はなはだ当を得てないと思うと同時に、少なくともこの段階で労働者の働きざまの方からいま一回操業を考えてみてはどうか。こういう提言をずっと今日まで通産省なり業界に対してやってまいりました。
特に申し上げておきたいのは、紙パルプの中にも機械抄き和紙の工業会というのがあります。皆さん方が使用されておりますティッシュペーパーだとか、あるいはトイレットペーパーあるいはちり紙という、こういう業界があるわけでありますが、この業界というのは二、三十人前後から百名足らずのきわめて零細な企業がたくさんあるわけですけれども、その業界では労働者の福祉という立場からも、週休二日制というのを業界自体が決定をしておるわけです。どういう方法でいくかというと、就業規則等のそういう関係を変えまして、労働組合があるところについては労働協約の中で労働者の福祉という立場からも週休二日制という問題を実現をしていこう、そういうことによって稼働率というものを抑えていくというふうな判断があるわけです。私たちは、できることなら、そうした今日的な日本のこの紙パルプ労働者の労働条件が特に国際的に公正な労働基準に当てはまるような、こういうふうな形をとりつつ、この当面の段ボール原紙業界の対策というものが講じられるということを実は望んでおる次第です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/27
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028・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) お答えいたします。
先ほど私が申しましたように、四年間で二〇%を超える離職であったわけでありますから、離職と言いますか、規模の縮小であったわけでありますから、この経過を見てみますと、繊維産業における雇用調整はかなり進んでしまったというふうに見ていいのではないかというふうに思います。一部の企業では過剰雇用があるというふうに言われておりますが、私は、大方、この四年間で雇用調整というものはかなり進んだというふうに見ております。
それから、五十二年度、五十三年度にわたりまして中小企業関係の設備廃棄が二割ほどこれから進められるわけでありますけれども、しかしこの二割の設備に人間が全部ついておるのかというと、私はそうではないと思うんです。現在の操業状況からいきましても、紡績関係では七〇%台でありますし、その他の業種におきましても七、八〇%の操業状態でありますから、そういたしますと、この二割の廃棄が直ちに同じような割合で雇用調整にはね返ってくるかというと、私は、それほどのはね返りはないというふうに思っております。ただ、問題は合繊の場合であります。合繊の場合は、労働者の構成を見ましても男子中心でありますし、それからこの四年間でかなりの雇用調整が進んでおるといいましても、ある一つのプラントというものを処理しようとすれば、これはやっぱり大がかりな雇用調整というものが出てくるということを想定せざるを得ません。
そこで、私どもは、合繊等の特に男子を中心とする職場の雇用調整については、急激な雇用調整ではなく、なだらかな雇用調整を行いなさい、そのために昨年の十月から雇用安定資金というものが発足をしたんじゃないか。そしてその雇用安定資金というものを十分活用しながら事前にも事後にも職業訓練等を行って、従来の職場から新たな職場への転換が円滑にできるような方策というものを経営側も十分考えていかなければならないと思います。それには、現在の職業訓練制度が十分対応できておるかといいますと、私は、現在の職業訓練制度というものはかなり硬直をした時代おくれのものではないかというふうに考えております。労働省は職業訓練法の改正を出しておるようでありますので、やはり時代に合った職業訓練制度というものを築いていかなければならないと思います。
それから、いま先生がおっしゃいましたように、現在の法律では不十分ではないかと、こういうふうなお話がございました。私どもも昨年の暮れに特定不況産業離職者臨時措置法の制定に努力をいたしましたが、まだまだこの法律でも不十分だと思っております。
一つは、やはり給付期間というものをもっと延長をしていかなきゃいかぬのじゃないか。現在のような労働力の需給関係で、しかも、有効求人倍率が〇・五のところに低迷をしておる。しかも年齢別、地域別にブレークダウンしていきますと、もっと不利な状態が出てくるわけでありますので、給付の条件というものをもっと延長いたしまして、生活の保障を受けながら新たな職業転換ができるような措置を講じていかなければならない。
それからもう一つは、この特定不況産業離職者臨時措置法の中に、特定不況産業の離職者を再雇用した場合の再雇用奨励金というものが設けられましたけれども、しかし、その前に、この雇用保険法の中で高齢者再雇用奨励金とか高齢者雇用延長奨励金制度というものがあるわけでありますけれども、これらがほとんど活用されていない。というのは、これはやはり援助の期間が短いと同時に、援助の助成の金額が非常に低い。こういうことから、せっかくある制度というものが活用されておらぬのではないか。したがって、これらもやはり改善をしていかなければならないというふうに考えております。
さらに、産業転換をしていく場合にどの方向に労働者を誘導していくのかというようなことがやはり国の政策の面でも、あるいはまた地方自治体の政策の面でも出されないと、これは円滑な転換はむずかしいのじゃないか。なかなか現在の情勢の中においてそういう方向を打ち出すということは、口で言うのはやさしいかもしれませんが、むずかしい点があると思いますが、そういう方向を私はやはり出してもらわないと円滑な転換はむずかしいというふうに考えております。
それから、合繊のグループ化の問題についてどう考えておるかということでありますが、合繊のグループ化につきましても、ことしの年初から、いろいろ華々しく打ち上げられてはおりますけれども、まだまだ不透明な部分が多過ぎるのではないか、一体どういうふうな方向に行くのか、実際問題わからない点が多いわけであります。ただ一つ、この行き方といたしまして、たとえば東洋紡と三菱レイヨンの提携に見られますように、販売の提携をしていこうと。すなわち、売り口が多過ぎるから過当競争があって安値競争になってしまう、したがって、売るじゃ口をしぼっていく、あるいは数を少なくしていく、そのことによって安値競争を防止できればいい、そういう発想から販売の窓口を減らしていくんだ、こういう方向での提携であれば私どもは問題はないし、そういう方向であれば私どもは賛成をしていきたいというふうに考えております。ただ、私どもは、このグループ化とか、あるいは合併等の問題についてはどう対処するかということは、やっぱりケース・バイ・ケースだと思うんです。十数年前、東洋紡と呉羽紡が合併をしたときに私どもは賛成をいたしました。しかし、鐘紡と東邦レーヨンが合併をしようとしたときには、これは明らかに一方に対して雇用調整を強いるということがあからさまに出ておりましたので、私どもはこの合併を破棄に持っていく闘争を展開いたしまして破棄させた例もありますので、この合併問題というものはケース・バイ・ケースでやはり取り組んでいきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/28
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029・下山佳雄
○参考人(下山佳雄君) 先ほどのまずアウトサイダー規制の問題からお答え申し上げます。
合繊業界というのは非常に競争の激しい業界でございまして、またぎりぎりなところに現在段階が来ておりますだけに、社数にすれば十社ぐらいのきわめて少ない社数でございますけれども、非常に意見がまとまりにくいというのが難点でございます。したがいまして、今後設備廃棄の話をまとめていくに当たりまして、たとえば残存者負担の問題あるいは新増設制限の問題について、アウトサイダー規制があった方がいいということで申し上げているわけでございますけれども、独禁法との関係の御指摘がございましたが、先ほども申し上げましたように、昭和四十二年に制定されました特定繊維工業構造改善臨時措置法には、持定精紡機の処理命令という非常にきつい形のアウトサイダー規制がすでに法律として成立をいたしております。このときも公正取引委員会は当然御了承になったと思うのでございまして、これがなぜ、つまり今度はこういうふうに設備の新増設制限というきわめて緩いものについて反対を受けなければならなかったのか、ちょっと私どもとしては理解に苦しんでおる、こういうことを申し上げたわけでございます。
それから第二点といたしまして、先ほどの衆議院におきます宮崎会長の発言についてでございます。これは若干誤解を招いたかと私は思うのでございますけれども、宮崎会長の気持ちをそんたくいたしますと、まず第一、先ほども申しましたように、たとえばアウトサイダー規制のような、これはもうすでにかつて法律にもっと強い形で存在したものがあったわけでございますが、それすら今度はなくなってしまっておる、非常に弱くなってしまっておる、最初の通産省の原案から非常に弱くなっておる、これに対する不満、それから安定という、この特定不況産業の安定臨時措置法と名前は言っておりますけれども、先ほど来申し上げましたように、たとえば輸出の問題、輸入の問題あるいはナフサの問題、そのほかいろいろなそういう諸般の要因、ファクターを解決しなければ実際は安定しないわけでございまして、その意味においてちょっと言葉がかち過ぎているんじゃないか、こういう趣旨でございます。そういう点から申したんだと私は推定いたしますが、いずれにいたしましても、この法律のポイントは、過剰設備の廃棄の話し合いをいたします場合に、これが独禁法上一体認められるのか認められないのか。ほうっておけばこれはどうも独禁法にひっかかるおそれがある、したがって、それについて何らかの法的な制度をつくっておこう、こういう趣旨、これが一番私は基本だろうと思うんでございます。それとあと保証基金制度を設けるということでございまして、この二点につきましては、やはり先ほど申しましたように、これで決して十分だとは私どもも考えておりませんけれども、なければこれ、そもそも過剰設備の廃棄の話し合いすらできないということではどうしようもないわけでございますので、その意味におきまして絶対になければならないものだと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/29
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030・小柳勇
○小柳勇君 芦田参考人に一問お伺いしますが、さっきお話しのように、この五年間で十一万人の人が減っています。これはいわゆる老齢の人だけじゃないと思うんです。こういう十一万の人が職業訓練を受けたりなどいたしまして再就職しておられると思うんですけれども、いま職業訓練法についてはいろいろ御不満がありましたが、一体十一万人の人がどういう生活をして、どういうところにいま生活の場を求めておるであろうか。もしそういう追跡されたような資料でもあればお話し願いたいし、あるいは勘でも結構ですけれども、お話を願いたいと思います。
それから、青山参考人には、この貴重な意見をノートいたしておりますから、次に政府にいろいろまたあなたにかわって問題点を質問しながら、もっと実のあるものに修正できれば修正していく、できなければ附帯決議などして、意のあるところをこの審議の中に生かしていきたいと思うんですが、いま芦田さんに質問いたしました点で、青山さんのところにもたくさん下部組織がありましょうから、この五年間ぐらいで、たとえば希望退職した人もありましょうし、あるいは合理化でやめた人もありましょうが、そういう人はいまどういうふうな生活をしておるであろうか、そういう例をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/30
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031・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) 私どもの組織は、構成を見てみますと、五〇%を若干超える人たちが女子の労働者であります。それで、若い女子の労働者の人たちは、一つは、やはり東北でありますとか、九州でありますとか、そういうところから近畿、中部、そういうところの繊維の工場に働きに来ておるわけでありますが、やはり一定年齢になると国元に帰る、こういう人たちもおるわけであります。それから工場閉鎖等によって離職をせざるを得なかった若い人たちは比較的他への就職が簡単である、すなわち、同じ繊維産業の中に転職をしておる人もございますし、さらに第三次産業の方に行っている人たちもあるわけであります。それから、女子の中でも、いっときやはり人手不足の関係から家庭婦人がかなり職場に進出をしてまいりました。これらの方々がまた家庭に戻っておるというような場合もあろうかと思います。もちろん、私どもこれは全体的に調査したわけではありませんので、関係組合からいろいろ聞き取りしたような内容の話でありますけれども、そういう状態であります。
ただ、やはり一部分、男子の労働者につきましては、それぞれの職業安定所の中でかなり滞留をしておるということを聞いておりまして、男子の中高年齢層の再就職のむずかしさを私どもは深刻に受けとめておる状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/31
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032・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 私たちの組織は、現在約三万五千人の産業別の組合ですけれども、この三年間で一千八百名が私たちの産業から去っていきました。余り細かい追跡はしておりませんけれども、やはり非常に紙パルプ労働者というのは、一般に言われるつぶしの効かない労働者です。パルプをつくったり紙をつくったりする労働者というのは、本当にもうつぶしの効かない、いわば労働集約型の産業というのはみんなそういうふうな傾向があると思いますけれども、大変そういう意味では転職困難という状態にあるわけですけれども、やはり何とか自分のいままで身につけたボイラーであるとか電気であるとか、こういうふうな関係の人たちはそれなりに転職先というのはある程度のものがあったんですが、紙すき屋、いわゆるパルプをつくっている労働者の場合には非常に困難な生活の実態にある。しかも、みんな労働組合がないような、いわゆる中小零細企業の方に行っている、こういうのが実態であります。
今度この法案がいま審議されているという過程の中でも、非常に私たちとしては問題だなあと思うのは、この法案が審議される以前から通産省の指導と業界の構造改善委員会なるものがある一定の方向づけをしながら進めている。その中で先取り的な、便乗的な共同行為が行われている。ここが非常に実は私たちにとっては問題でありますし、そのことは独禁法に抵触する疑いさえも感じられます。私たちは、人減らし——現在出されている先取り的な合理化提案に対しましては、少なくともこの法案が発効するまでたな上げにするようにということで企業側に抗議をしておりますけれども、通産省の行政指導が労働者の不安をかき立てることに対しては、何としても私たちはこの問題について遺憾に思っております。そういうふうな点なんかを十分やはり、国の機関が労働者の雇用不安をかき立てるというのはきわめて問題でありますので、こういう点についてはぜひとも考えを改めていただきたいというふうに思っております。
なお、具体的に衆議院の段階でも、いわゆる労働組合の同意というような問題については、ぜひともそういうことが法案の中に入っていることが望ましいと思いますし、先ほども申し上げましたように、いわゆる労働組合が発言しようとするときには、もう政省令で設備の処理内容が決まっているというようなことであってはならないと思いますので、その点も十分今後の商工委員会の審議の中で重要視してやっていただきたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/32
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033・小柳勇
○小柳勇君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/33
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034・馬場富
○馬場富君 参考人の方々、大変お忙しい中を参加いただきまして、感謝しております。
私は、最初の二点は三人の方々に共通な問題でお尋ねしたいと思いますが、この法案が実は立案されたときは、円高が二百四十円のときでございました。そういう点で現在は二百二十円台の状況になっておりますが、今後の進め方の中で、業界ではこの点をどのように考えてみえるか、質問したいと思います。
次に、同じく三人の方々に、過剰設備の稼働率のこういう中で週休二日制の問題が最近考えられてきておるわけでございますが、これを配慮しないでの稼働率を測定したという点は、この法案の中で妥当かどうか、こういう点についてお三方からお願いしたいと思います。
次の一点は、下山参考人と芦田参考人にお願いしたいと思いますが、この不況業種の中で設備の廃棄が実質行われる段階の中で、われわれが強く感ずるのは、外国からの輸入攻勢がなされておるという点ですね。また、それと日本の資本による海外生産の逆輸入が非常に不況の要素になっているという問題点もあるわけでございますが、設備の廃棄が必ずしも産業の雇用の安定につながるかどうか、こういう点について、この輸入の問題とあわせて大変心配な点があるが、この点はいかにお考えであるかという点でございます。
次に、あとの三点は三名の方々に共通でございますが、設備過剰はいわゆる構造的不況につながった、こういう場合に、その原因が究明されなければ結局真の設備廃棄をしても意味がないんじゃないか、こういう点で、このやはり法案の効果がどのように期待できるかという点をお尋ねしたいと思います。
それから、この設備廃棄の問題が単に量の減少ということだけではなくて、たとえば業界の再編成とか、あるいは大企業の支配の強化だとか、あるいは中小企業の淘汰という問題点が出てくると考えられますが、この点についてのお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
それから、次はこの設備廃棄の問題がやはり地域経済に非常に深刻な影響を与えておると、この点についての御意見をいただきたいと思います。
それから最後に、労組の青山さんと芦田さんにお尋ねいたしますが、この法案が雇用対策に果たして一歩前進になるかどうか、こういう点ですね。それから、この法案においての労働組合の参加問題点が実際どの点にあるか。この点について、まず最初に御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/34
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035・下山佳雄
○参考人(下山佳雄君) まず第一点のこの法案は二百四十円の段階で考えられたという点でございますが、確かに情勢がまた一段と厳しくなったと。したがって、どうしてもやはり設備廃棄というものをやり抜かなきゃいかぬ、こういう必要性がいよいよ強まった、こういうことだと思います。
それから第二点でございますが、稼働率の算定と週休二日制の問題でございますが、合繊企業というのは、一度運転を始めますと二十四時間運転になりますものでございますから、ちょっと問題が別ではなかろうか、合繊につきましてはちょっと別だろうと。あとこれは労務者の配置の問題になろうかと思います。
それから第三点の輸入の問題でございますが、これは私どもが一番やはり懸念している点でございます。現に合繊以外の繊維産業、ほかの産業でいろいろもう設備廃棄が進んでおりますが、それと同時に輸入の増勢が始まっておるということがございます。したがいまして、やはりこの輸入の点につきまして政府が何らか態度をはっきりしていただく。特に繊維産業につきましては、多国間協定というのがあるわけでございますので、これの活用等につきまして政府が十分な方針を明らかにされて、業界が安心して設備廃棄ができるというようにしていただきたいというのがお願いでございます。
それから、原因究明、確かに先ほど来申し上げましたように、いろいろな現在構造不況と言われるゆえん、それから設備廃棄をしなければならないゆえん、これはいろいろございます。それはまたそれとして、一つずつやはりつぶしていかなければいけない。企業としても、現在のたとえば円高の問題にいたしましても、当然これに対処して、ただ手をこまねいているわけではございませんので、原料費をできるだけ下げるとか、あるいはまた高い付加価値の製品に移行するとか、国内の製品の値上がりによって何とかカバーするとか、いろいろな手を講じてやっておるわけでございますが、これとこの法案の効果というのはちょっと別の問題だろうと。少なくとも現在の法案は、先ほど来申し上げましたように、これは単に設備廃棄の話し合いを独禁法から排除しようと、こういうだけの私は効果ではなかろうかと思うものでございますので、問題はまた別の問題として円高の問題、輸入の問題、ナフサの問題等解決していかなければならないと考えております。
それから、再編成についてのお尋ねでございますけれども、先ほども申し上げましたように、合繊産業というのは非常に国際競争の激しいものでございます。たとえば、先ほど申しましたように、アメリカのデュポンというのは日本の全産業に匹敵するだけの規模を持っておる、こういうような状況でございますので、やはり単に設備廃棄すればいいというだけの問題でなくて、やはりこういう国際競争に勝っていくだけの形にしない限り、幾ら設備廃棄してもこれは意味がないということでございます。その意味におきまして、再編成ということは特に考えられているわけでございます。それからまた、再編成を行うことによって設備廃棄を促進したい、こういうねらいもあるわけでございますので、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、何とかなし遂げていきたい、こういうふうに考えております。
それから、地域経済への影響の問題でございますが、これは御指摘のとおりの問題がございまして、現に、たしかあれはレーヨン・スフの工場だったと思いますが、ある工場で、その工場を閉鎖したいという希望をある企業が申し出ましたところ、やはりその地域から、それは困るということで結局それはとりやめになったという、たしか過去の例がございます。まあ、ことほどさように、やはり地域経済には大変な影響のある問題でございますので、その辺につきましては十分その地域の方々と御相談しながらやっていく性質の問題だろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/35
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036・青山陽一
○参考人(青山陽一君) まず円高の問題ですけれども、これについて業界はというお話がありましたけれども、私は労働組合の方でありますので、的確にお答えができるかどうかわかりませんが、円高問題については、紙パ産業では大変複雑に反映をしておると思います。一つは、基本的にはかなり円高という問題については、輸入チップがかなり多いわけですので、チップを大量に輸入をしているところについては、その輸入差益というのがあると思います。これはプラスの面だと思います。しかし、輸入チップを使っていないパルプ工場もたくさんあるわけですし、そういうようなところでは、逆に今度は安いパルプが入ってくるわけですから、これはパルプ工場にとっては大きな実は問題を生じております。特に段ボール原紙の関係については、まだ比較的輸入が少ないわけですけれども、それでもやっぱり松下電器が使うものとか、あるいはクラフト紙や、あるいは全農などで使うものなんかについては輸入をしている。今度非常に円高によってクラフト紙なりパルプをつくっている工場の場合には大変実は大きな悪影響が出ております。そこで、やはり私たちが一番心配をしているのは、もともと紙パ産業というのは資源を四〇数%海外から入れて、そうしておおよそ国内の需要を満たしている、こういう産業でありますから、よく言われるところの資源消費型産業、公害多発型産業というようなことで、この産業を淘汰した方がいいというような考え方が一部にあるようですけれども、これはやっぱり私たちとしては承服しかねるわけです。少なくともやはり安定した国内産業を確立をするという、こういう立場からしても輸入の問題については今後やはり慎重を期していただきたい。特に国内産業を安定させる、紙パイプ産業を安定させるという立場で施策を講じてもらいたい、こういうふうに考えておるわけです。
ところで、だんだん今日のこの業界の進み方を見ておりますというと、非常に付加価値の低い品種については海外に依存をする、あるいは海外に資本を投下をして逆輸入をしてくるというような形が最近出てきておりますけれども、これはやはり国内産業を保護し、国内産業を安定させる方向からするというと逆行をしますので、私としては、好ましい方向ではない、こういうふうに実は思っております。
それから、先ほどの意見の中で申し上げました労働者の休日をどう配慮するのかというような問題でありますけれども、私どもが申し上げました休日に関する問題というのは、とにかく設備廃棄一本やりでやるということが業界の実態にも即していないし、それから労働者の働きざまの方からもう一回操業の問題を考えてみてはどうか、こういう提言をしているということを先ほども実は申し上げましたけれども、やはり一つの物を生産をしていくという過程の中では、少なくとも一方の当事者である労働者の労働条件という立場からもこういう問題をながめてみる必要がある。少なくともいま隔週週休二日制の体制で仮にやるとすれば、それだけの休日を設けて、休転休日を設けて段ボール原紙の関係で操業をするということになりますというと、三年後、通産省が言っているように、七二・六%ということではなくて八五%の操業度になるわけですから、二五%の設備廃棄をするというようなところまでやらなくてもいい、こういうことに実はなります。そういう点で実は強調したかったわけであります。
それから、今度の問題で、単に量的な問題だけでなくて産業再編成というようなことの中で中小零細の労働者あるいは中小企業に大きな犠牲がいくんではないかということについては、私はそのとおりであると思います。少なくとも、たとえば国際競争力を強めるために集約型の設備廃棄をするということで、一律の減産の形でなくて、廃棄計画をつくるということになりますというと、結局は老朽マシンを抱えている中堅中小企業が淘汰をされるということになります。こういうふうなやり方というのは、結局そこに働いている労働者へ大きな犠牲が出てくるわけですから、そういうやり方については承服しかねるということになります。
それから、今度の法案の中の雇用対策という面について十分かどうかという問題でありますけれども、少なくとも今度のこの法案が設備廃棄というような問題を中心にしてやや中期的な経営の安定を図るというような形で出ている以上、その中心の課題というのはどうしても雇用対策にならないということはわかっております。もっとやはり雇用対策という関係については抜本的に他の法案でもきちっとしたものをやらなきゃならない。離職者法の関係というのがあるわけですけれども、少なくとも解雇を制限するという、法律が明確にそういう形で規制されない限りは根本的に労働者のいわゆる雇用安定にはつながってこない、こういうふうに考えております。この法案の中で雇用対策というものをどこまで盛り込むかということについては、かなり大きな焦点ではあるけれども、やはりこの法律の趣旨がそういうところにないわけでありますから、少なくともこの法案の中で可能な限りこの雇用対策に関する問題をのせるということは重要でありますけれども、やはりこれだけですべて済むという、こういう考え方は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/36
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037・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) 円高の問題につきましては、二百四十円から二百三十円、さらに二百二十円台に上がっておるわけでありますが、このことによりましてやはり産業調整というものがより促進される、そのことがまた雇用問題にもはね返ってくるというふうなことで、私どもは一つのやはり危機感を持っておるというふうに申し上げておきたいと思います。
それから、稼働率の問題につきましては、先ほどもお話がありましたように、合繊のような装置産業で二十四時間のエンドレスの操業のところは、そこへどうやって労働者の休日を確保していくかということが重要な問題でありまして、稼働率の算定とは直接関係ないといいましょうか、響かないというふうに見ていいのではないかと思います。
それから、設備廃棄と輸入の問題についてでありますが、これも冒頭の意見開陳のときに申し上げましたように、一方で設備廃棄をしながら他方で輸入が野放しだというふうなことでは、われわれ労働者の雇用機会を少なくするだけでありますので、私は、やはり設備の廃棄にあわせて輸入問題については秩序化を図っていかなければならないと思います。そのためには、繊維の国際取り決め、すなわち、MFAの協定を発動いたしまして二国間協定に取り組むべきだというふうに考えております。
〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
同時に、国内の繊維産業が輸出競争力を持ち、あるいはまた輸入品に対応できるような産業に構造改善をしていかなければならないというふうに考えております。
さらに、発展途上国に対する海外進出の問題でありますが、昭和三十年代の後半から四十年代の前半にかけまして多くの繊維企業あるいは商社等が海外進出をいたしました。このことは一面ではやはり開発途上国の経済発展に寄与した、こういうことは認めなければなりませんけれども、余りにもやはり無秩序にラッシュしたことは事実であります。私どもは、この時点でやはり海外進出につきましてももっとやはり秩序ある海外進出をすべきだ、そのために行政当局は調整なり指導をすべきじゃないかということを強く提言をしてきたわけでありますが、結果的にはラッシュをしてしまいまして、そのことが今日逆輸入というふうな形ではね返ってきておることも事実であります。しかし、石油ショック以降、わが国の繊維関係の海外進出はほとんどとまっておるというふうに見ていいのではないかと思います。
それから、この法案の効果のことでありますが、現在やはり過剰設備を抱えてにっちもさっちもいかなくなっておる業界が設備過剰を円滑に処理していこうということについて、ある一定の私は効果を持っておると思います。しかし、これも私は冒頭の意見陳述のときに申し上げたのでありますが、この法律だけではなく、やはり総合的な安定対策というものが必要である。すなわち、積極的な財政金融政策の展開によりまして内需を喚起する、あるいはまた秩序ある貿易体制の確立、さらにナフサ等の原料価格の国際水準並みの設定、そういうものをあわせてやっていかなければこの法案の効果は出てこないのではないかというふうに考えております。
それから、地域経済との関係でありますが、どんな産業でもやはり地域との協力によって成り立っておるわけでありますから、やはり同種の話し合いと同時に地域、すなわち、自治体等と十分やはり撤収等についても話し合いを行うべきであり、さらにまた、転換の方法等についても自治体を含めていろいろ知恵を出し合っていくべきではないかというふうに考えております。
それから、この法案が雇用対策にどういう効果を持つかという御質問でありますが、ただいまもお話がありましたように、この法律は設備の処理に重点が置かれておりますので、この設備の処理に伴って起きてくる雇用問題についてどうするのかということは、やはり現在の雇用問題の法体系をより充実させる必要があるというふうに考えております。現在でも特定不況産業離職者臨時措置法という一応の受けざらはありますけれども、これはまだ不十分でありますので、さらにやはり充実をしていく必要があろうと思います。
さらに、労働組合の参加の問題についてのお尋ねでありますが、この法案による労働組合の参加につきましては、衆議院段階で当初原案よりかなり改善されました。しかし、私が冒頭に指摘しましたように、不十分でありますので、もっと労働組合のこの参加のあり方についてより十全の方法をとっていただきたいということを要望をいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/37
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038・馬場富
○馬場富君 あわせまして、下山参考人の方に、化繊協会の関係では現在設備廃棄による計画の中で、やはり設備については一千億、それから雇用問題については一千億の予算で、計二千億の予算が一つは必要だということが業界紙等の中から考えられておるようなわけでございますが、この点についての見通しの関係と、それから今度の法案の関係とひとつ説明していただきたいと思いますし、あわせまして、いま芦田さんの方から意見も出ましたが、特に化繊関係については逆輸入の点がかなり大きい刺激をしておりますが、韓国等についての二国間の協定を結ぶという点についての考え方をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/38
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039・下山佳雄
○参考人(下山佳雄君) 設備廃棄に一千億の金が要るというお話しの点でございますが、実は昨年の暮れに大体二割ないし三割の設備廃棄をした場合に、その残損簿価を補償することとしたら一体どれだけの金が要るだろうかという試算をしてみたことがございます。その際に出てまいりましたのが大体一千億というような数字でございまして、それがいろいろ新聞に出たかと存じます。その後、やはりこの設備廃棄を進めるに当たりましては、これを有効に進めるためにも再編成を進めるべきである、こういう話が出てまいりました。企業の再編成でございます。それで、先ほどのその千億という話は一応たな上げになって現在まだ来ております。その再編成が進みました段階におきまして、再びこの設備廃棄をじゃ具体的にどうするのかということが問題になろうかと思います。そのときにはまた改めて具体的にどういうことになるのか、企業間において当然相殺される額もあろうかと思いますし、その際にはまたその際でもう一遍改めて計算し直すということに相なろうかと思います。したがいまして、一応その一千億という話は、昨年の暮れ、まだ話が全然具体化しておりません段階における単なる推定、推算の結果でございます。
それから、逆輸入の問題でございますが、逆輸入と日韓の問題でございます。先ほど芦田参考人からもお話が出ましたように、確かに当初におきまして、合繊についてもそうでございますし、各社が資本進出を非常に急いだ、焦ったことがございます。非常に過当競争したという点がございます。この点につきましては、その後だんだんこれに対する弊害が出てまいります。また韓国等におきましても、何と申しますか、やはり日本の支配——支配と申しますか、日本の資本進出をむしろ好まない風潮も出てまいりまして、現在ではむしろ撤退の方向にございます。それで、現在のこの輸入問題というのは確かに日韓の関係の問題が一番の中心でございます。確かに香港、台湾等からの輸入がございますけれども、やはり韓国からの輸入が圧倒的に多いわけでございまして、この日韓関係で二国間協定を結ぶなら一体どういうふうに結ぶのかという点、これはやはり韓国との関係をまず第一に取り上げない限り輸入問題というのは解決の道がないと、こういうふうに考えておりますが、これはまた非常に政治的な問題も絡みまして非常にむずかしい問題で、われわれも頭を悩ましているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/39
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040・馬場富
○馬場富君 青山参考人の方に。
先ほど意見の中に日中貿易の打開というのが挙げられましたけれども、業界での日中間の貿易についての現況と見通しがあればお聞かせ願いたい。
それからもう一つは、紙パルプの廃棄の問題の前進の中で二五%廃棄の問題が出ておりますが、その段階の中で、やはり通産の検討の中に、一つは一〇%変更が論じられたことがあると。これはなぜそのような一〇%から二五%に変更されたか、何かそこらあたりで知ってみえる点がありましたらお聞かせ願いたいという点と、もう一つは、労働者間には、設備廃棄については会社側において一つは人員整理にのせるというような、そういう動きがあるんじゃないかという疑義があるわけですけれども、この点の実態について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/40
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041・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 日中貿易の関係で業界がどういうふうに考え、そしてどういう見通しを持っているかという点については、私は業界の代表でも何でもございませんしいたしますので、いわゆる業界の責任ある考え方を述べるという立場にございません。したがって、この点については意見を差し控えさせていただきたいと思います。
それから、二番目に出されました設備廃棄を一〇%から二五%になぜなったか、あるいはそのことによって具体的な人員削減、合理化というようなことが意図されているのではないのかというような関係でありますが、二五%は、通産省が昭和五十六年の稼働率を計算する基礎に年間三百三十六日を操業し、月にいたしますと二十九日以上の運転ということになりますが、これを一〇〇%として現在の受注の関係から推定をして七二・五%と、こういうふうに計算をしているわけですが、そこからやはり二五%というのが出たんだろうというふうに理解をしております。けれども、先ほど言いましたように、少なくともGNP弾性値をどういうふうにとるかによって相当実は変わってくるんです、いわゆるその操業度というのがですね。ですから、私たちとすれば、そういう数字の使い方なんかについてはもっとやはり、先ほど言いましたように、労働者の働きざまの方からもう一度見直しながら操業率というものを考えてもらう、こういうことによって、おのずとかなり適正ないわゆる設備廃棄率というのが出てくるのではないか、こういうふうに実は思っておるわけです。それを何でもかんでも二五%の設備廃棄というのを頭に置いて逆算した形で稼働率をはじき出すというようなやり方については承服できないし、そういうふうなやり方というのは、ことさら労働者にしわ寄せさせながらやっていこうとする、そういう再編のあり方になってしまうので、そういうことについては私は納得しかねると、こういうふうに実は先ほども申し上げた次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/41
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042・馬場富
○馬場富君 じゃ、最後に芦田参考人の方に。
参考人の意見の中で、原料であるナフサの値下げ問題が出ましたが、この点につきましては、われわれもやはり円高差益の還元の中で非常に石油製品の価格というのは原料に影響するということで強く主張してきましたが、最近の政府の動きの中で値下げの指導に踏み切ってきたような現状にありますが、この点、国際ナフサ価格等もあわせまして現状どの辺が妥当か、そんな点で考えてみえる点がございましたら説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/42
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043・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) 国際価格は動いておりますので、的確に言いあらわせないんですが、およそ二万一、二千円ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/43
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044・馬場富
○馬場富君 終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/44
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045・楠正俊
○委員長(楠正俊君) 委員の異動について御報告いたします。
本日、中山太郎君が委員を辞任され、その補欠として前田勲男君が委員に選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/45
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046・安武洋子
○安武洋子君 長時間御苦労さまでございます。大変お疲れと思いますけれども、申しわけございませんが、もう少し御意見をお伺いいたしとうございます。
まず青山参考人と、それから芦田参考人にお伺いさせていただきとうございます。
御意見の中にも再三出ておりましたように、この法律の目的の中に、衆議院で修正といたしまして「雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定に配意しつつ」と、こういう修正がなされたわけでございます。こういう事項が加わったための措置について、労働組合の代表としての御意見をお伺いいたしたいわけでございますけれども、私は、この措置の内容が失業の予防と雇用の安定に本当に実効あるものであるかというふうなことで、昨日の委員会で質問をいたしました。政府の見解をお伺いいたしましたところ、まだ全体としてはっきりしていないというのが答弁のおおよそのところでございます。そして、まだ質疑は引き続いて行われますけれども、先ほどの御意見の中にございました現行法以外の何か新しい法律によって労働者の雇用の安定をさせる意図はないのかということにつきましては、そういう考えを持っておりませんという答弁でございました。ですから、私は、このままでは雇用の安定などということは、中身は事業主への一般的な指導とか、それから現在の雇用関係の法規内の措置と、こういうことにとどまるのではないか。それだけではなくて、皆様の御意見の中に雇用の安定ということがしきりに言われているわけですけれども、こういうことが形骸化されるのみではなくて、労働者の雇用が促進されていかないのではないかというふうな危惧を持たざるを得ないわけでございます。安定基本計画と申しますのは、御存じのように、各産業ごとに策定されるわけでございますけれども、雇用の安定を図る措置として、では、一体具体的にどういうふうな内容が盛り込まれれば雇用の安定を図る措置として適当であるというふうにお考えでございましょうか。まず最初に、この点御意見をお伺いいたしとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/46
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047・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 衆議院段階で雇用の安定を図るという目的の一つにそれが入ったということについては、当初の原案からすれば一定の満足をしております。しかし、先ほど来申し上げておりますように、この法律の主たる目的が失業の防止とか雇用の安定とか、こういうところにそのねらいがあるんではないということから、どうしてもやっぱり雇用の安定、失業の防止という問題が二の次にされるということがどうしても出てきておるわけですけれども、少なくともこの法律は国あるいは行政が設備廃棄をして、そして大量の失業者をつくるという、こういうふうなものでありますから、少なくとも最大限やはり雇用の安定というものに関してこの法律の中に織り込んでいきたいという意思はずっと一貫して持っております。そこで、この安定基本計画の策定の段階にも、当然やっぱり雇用の安定というものがかなり重視された形で入ってこなきゃならないと思いますし、いわゆる例の信用基金の使い道等につきましても、たとえば紙パルプの場合で言いますと、場合によっては設備廃棄一本やりの形でない、たとえば格納、休止のような形が優先されて、それがたまたまそういうことで出てまいりますというと、そのマシン、その機械に従事をしている人たちはそこで余剰的な形になってまいります。そういうような関係についても当面やはりそういうお金が使用できるような、そういう形というものがどうしてもやっぱりとられる必要があると思いますし、そういう意味からしても、先ほど申し上げましたように、やはり信用基金の関係についても、評議委員会ですか、この中に労働者の代表を入れてほしい、こういうふうなことを実は申し上げておる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/47
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048・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) 今度の法律は、先ほども言いましたように、過剰設備を抱えてにっちもさっちもいかなくなったこの業界、すなわち、このままいったら全体が沈んでしまうんじゃないか、そのためにやはり減量が必要だと、その減量をするのにどうやって円滑にやっていくかというのがこの法律の趣旨だろうと思います。しかし、その減量によってこの犠牲を受けるのはやはり主として労働者でありますから、そうすると、私は、やはり労働者に対して救命ボートを出すべきじゃないかというふうに考えております。それなら救命ボートとは何かと言えば、先ほども言いましたように、一つは関連のやはり総合政策というものを推進していく、一つはやはり内需の喚起であり、もう一つは労働者の転換対策等を充実していくということだろうと思います。それが現在の法律でできるかどうか。私は、ある程度のことはできると思いますが、現在の法律ではまだ不十分でありますので、新たな法律をつくるというよりも、現在の法律をより充実強化していく方向で対処すべきじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/48
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049・安武洋子
○安武洋子君 どうもありがとうございます。
さらに続いて、青山参考人の御意見を承りとうございますけれども、安定基本計画に基づいた設備の処理の促進が業界の再編成を一気に推し進めて、強力な推進力になりまして、結果的には大手企業は生き残れるけれども、業界の中小企業や下請企業の大幅な整理、淘汰が急速に進むというふうになるんではないかと思われるわけなんです。それで、紙パ業界の中小企業とか下請企業、そこに働かれる労働者の状態でございますね。そういう状態をお話し願うとともに、大企業の中小企業分野への進出状況なども把握されておられます範囲内でお話し願えませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/49
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050・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 紙パルプ産業というのは非常に下請関連企業の多い業種だと思います。たとえば一つの工場の中にその工場に付帯をして運輸部門とか原料部門とか、それから機械の修理の下請とか、こういうのが非常にたくさんその事業所の中に一緒に下請として同居をしている、こういう関係があるわけですが、いわば産業再編成の中で本体の紙パルプの方の構造が変化することによって下請の労働者に与える影響というのはきわめて紙パルプの場合に大きいということが言えると思います。特に中小企業の関係で、今度のような法案が出されまして集約廃棄というふうなことになってまいりますというと、勢い、いまおっしゃるように、中堅中小企業の方に相当大きな犠牲が行ってしまう。と申しますのは、何といっても大きな資本力を持って新鋭マシンを持っているところでない、いわば大正時代からのマシンでもってやっているとか、あるいは昭和の初期からのマシンを使ってやっているとか、こういうようなところが必然的に淘汰されるということになりますから、そこで働いている労働者にかかってくる負担というのは甚大であると思います。
それからさらに、大企業の中小企業分野への進出という問題ですが、特に先ほども申し上げましたように、家庭用薄葉紙——ちり紙とか、それからトイレットペーパー、こういうようなところというのは非常に零細企業がたくさんあります。ところが、国民の消費構造の変更ということからいたしますというと、いろいろ問題はあるのですけれども、大企業がティッシュペーパーを生産をする、こういうことになって、ちょうど国民の消費構造がいままでちり紙でもってやっておったものが今度はティッシュペーパーを使うようになったというようなことで、あるいはその消費構造の変化というような問題についても、大企業のやっぱり操作によってそういうふうになったというふうに見られる向きもあるのですが、やっぱり国民がティッシュペーパーの方がいいと。いわゆるちり紙とかティッシュペーパーの分野というのはいままで中小零細が生産をしておったものでありますから、消費構造の変化なり大企業がそういうふうに進出をすることによって中小の分野がどんどん侵食をされていく、こういうような形が顕著に実は紙パルプの場合に出ております。そういうようなことについては、今日まで通産省交渉であるとか中小企業庁に対する交渉であるとか、大企業の中小企業分野への進出については規制を加えてくれという形で、かなりいままでも交渉などをやってまいりましたけれども、なかなか実効が上がらない。たとえば王子製紙がかなり大きなティッシュマシンをつくるというようなことも、これもある一定の年月を切って生産を抑えるというような程度にしか規制が加わってないというふうな現状であります。やはり抜本的に中小企業の事業分野法についてももっと見直しを図っていく、そういう必要があります。そうしないと、特にこの機械すき和紙、いわゆる家庭用薄葉紙の業界というのはじり貧の状態になってしまう。私たちとしては、少なくとも大企業と中小企業が共存できるような政策というものを考えますし、国もそういう形でやっていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/50
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051・安武洋子
○安武洋子君 ありがとうございます。
申しわけないんですけれども、もう少し引き続き御意見をお伺いいたしたいのですが、やっぱり青山参考人でございますが、円相場の急騰によりまして、紙パルプ業界の場合、原料であるチップの差益分が安くなってそれで手に入るという、こういうメリットがあると先ほどのお話の中に出ておりましたけれども、同時に、パルプや各種の用紙の海外製品との価格の競合ということも生じてきているのじゃなかろうかというふうに思うわけです。この点で単純に輸入製品が安いからということで、製品の海外依存とか、それから海外投資による製品の輸入に走っておりますと、現在の一部の構造不況業種のように、将来の国際競争力を喪失してしまうというふうなことで産業構造上の転換対象になるというふうなことになるのではないかと思うわけなんですけれども、現在の動きはまだ非常に端緒でございますけれども、こういうことを許しておくと、この動きは先ほど私が申し上げたようなことになるのではないかというふうに私自身は思っておりますけれども、労働組合の方としては、この点いかがお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/51
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052・青山陽一
○参考人(青山陽一君) おっしゃるとおりだと思います。少なくともどんどん安い輸入パルプが入ったり、特にいま顕著にあらわれているのはパルプとクラフト紙だと思うのですが、これによって少なくともそれを生産をしている国内の紙パルプメーカーは相当やっぱり痛手をこうむるし、そのことによってさらにまた労働者に対してもいろいろな形で犠牲を強いられると、こういう形が出てまいりますから、先ほども言いましたように、国内の産業を安定させるということと同時に、やはり労働者の労働条件なり、労働者が雇用不安におののかないような形をとるためにも、ある一定の輸入関係については制約を加えていただくというような、こういうことがとれないかというふうに実は思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/52
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053・安武洋子
○安武洋子君 では、これで最後にさせていただきますが、これは芦田参考人と青山参考人に御意見をお伺いいたしとうございます。
いま、企業は設備は休止する、その一方では操業中の施設をフル稼働させると、こういうことで、労働者は雇用調整ということで人員削減などがどんどん行われる、もう過酷な労働条件でぎりぎり働かされると、こういうふうな大変矛盾した現象が多くの産業の中で起こっているわけなんです。いまこの法案がもし成立するなら、設備の処理促進、これが進む中でさらにこの矛盾は一層拡大していくのではないかというふうに思うわけですけれども、この法律が過剰設備を解消して需給のバランスを回復するということを目的としているものですから、この目的が需給バランスを回復するということであれば、少なくとも便乗的な労働者の犠牲で生産性を向上する、これを追求するというふうなやり方は厳に戒めるように通産省は私は指導する必要があると思うんですけれども、労働条件の確立とか、あるいは改善の御要望とか、設備の処理の方法とかというふうなことにつきまして労働組合としての御意見をお聞かせ願いとうございますし、また設備過剰に陥った要因の一つに政府の見通しの甘さがあったという点は、これは私どもの質疑の中でも政府も認めております。その結果が労働者への犠牲になってはね返ってくる以上、私は、産業政策の策定のその段階から労働者の意見も当然反映されるべきではないかというふうに考えておるわけなんですけれども、こういう点についてもどうお考えでございましょうか、この二つについてお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/53
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054・青山陽一
○参考人(青山陽一君) 設備廃棄をある一定の率で行った後、さらに残された設備でまたフル稼働をやると、そこではやはり大きな労働強化がまた出てくるのではないか、従来以上に大きな形が出てくると、こういうことが予測されます。それはおっしゃるとおりです。そこで、やはり少なくとも先ほど言いましたような形で、一方ではこの労働者の労働という側面、いわば国際的な公正基準というものを追求しながら、そこでやはり今後の操業状態というものを考えなきゃならないということを再三申し上げておりますけれども、それが今日まで必ずしもそうではない。通産省の指導も、実は紙パルプの場合で言えば、オイルショック以降むしろ新増設というものを通産省が奨励をしたというような形があります。したがって、現在設備廃棄をしなければならないなんということは、まさにこれは通産省の責任であり業界の責任だというふうに思うわけです。ただ、そうは言っても、いまこれだけ過剰設備を抱えているという状況の中で、それは責任は確かに重い、責任をとってもらいたい、こういう気持ちはありますけれども、やはりこの法律の施行によって経営的な軽くする部分については一定の分量をそれはやらなければならないと、こういうふうに実は思っているわけです。
そこで重要なことは、いまも御指摘があったように、少なくともこの産業政策を打ち立てるときには、再三申し上げておりますように、その産業に働く労働者というのは当事者の一方でありますから、その一方の当事者たる労働者の意見を聞きながら、あるいは十分その意見を反映させるという形をつくりながら産業政策というものを策定をしなきゃならないというふうに思っておりますし、そのことは今日まで一貫して通産省なり労働省なり、あるいは業界に対して申し上げてきております。特に紙パ労連の場合も、ことしの一月に——昨年から作業を進めてまいりましたが、紙パルプ産業の現状と課題、現状分析を初め、労働者がみずからの手でつくり上げた産業政策というものを一応持っておりますので、こういうような関係についてぜひとも政府の機関でも、通産省の紙業課を通じて、十分私たちの考えというものをくみ取っていただきたい、こういうふうに実は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/54
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055・芦田甚之助
○参考人(芦田甚之助君) 設備の処理が進められて、需給バランスを回復した時点では、フル操業になって労働強化が行われるんではないかと、こういう御指摘でありますが、私は、需給バランスを回復をした場合に操業率を上げるということは当然であると思うんです。そうしなければ産業も企業も安定しないわけでありますから、操業率を上げることは当然である。しかし、操業率を上げることによって労働強化にはね返るような場合は、私どもはやはり労働強化反対の闘いを進めていかなければならないというふうに思っております。それはどうやって労働強化を排除していくか。一つはやはり要員の確保だと思いますし、もう一つはやはり残業等の規制を強めていく、そういうふうな形で、公正な労働基準を確立していく体制を整備していかなければならないというふうに考えております。
それから、産業政策策定の段階から労働者が参加をすべきではないかと、こういうお話でありますが、私も全く同感であります。繊維産業の場合は繊維工業審議会が設置をされておりまして、われわれの労働組合の代表も参加をしております。しかし、日本の産業政策全体をやっぱり審議する産構審の場でありますとか、その他のやはり経済関係の審議会の場に労働組合の代表の参加というものはきわめて少ないわけでありますので、私どもは、この参加の場をより拡大をしなければならないというふうに考えております。そのことをまたあわせて要望しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/55
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056・楠正俊
○委員長(楠正俊君) 他に御発言もなければ、本日の参考人の方々に対する質疑はこれにて終了いたします。
一言御礼のごあいさつを申し上げます。
参考人の方々には、御多忙中のところ長時間にわたり御出席いただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108414461X01119780426/56
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