1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十三年三月二十八日(火曜日)
午前十時三十分開会
—————————————
委員の異動
三月二十四日
辞任 補欠選任
上田 哲君 小谷 守君
三月二十七日
辞任 補欠選任
円山 雅也君 柿沢 弘治君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 中尾 辰義君
理 事
八木 一郎君
山本 富雄君
寺田 熊雄君
宮崎 正義君
委 員
大石 武一君
上條 勝久君
初村滝一郎君
藤川 一秋君
丸茂 重貞君
阿具根 登君
秋山 長造君
小谷 守君
橋本 敦君
柿沢 弘治君
江田 五月君
国務大臣
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
政府委員
法務大臣官房長 前田 宏君
法務大臣官房司
法法制調査部長 枇杷田泰助君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局総務局長 大西 勝也君
最高裁判所事務
総局人事局長 勝見 嘉美君
最高裁判所事務
総局刑事局長 岡垣 勲君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
—————————————
本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/0
-
001・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る二十四日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として小谷守君が選任されました。
また、昨二十七日、円山雅也君が委員を辞任され、その補欠として柿沢弘治君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/1
-
002・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/2
-
003・寺田熊雄
○寺田熊雄君 法務大臣にお尋ねをしますが、成田空港の開港を控えて反対派の実力行動が起きまして、その開港が延期を見たようであります。今回の事件にいってはもう国民のあらゆる部門、報道機関すべてそうした過激な実力行動に対しては非難の声を挙げておるようでありますけれども、同時に一致して指摘せられておりますのは、やはり警備当局の不手際というのですか、警備上の失敗であったようであります。これは主として警察当局が責任を負うべき問題でありますけれども、法務当局も治安の維持を全般として担うというお立場がありますから、そういう立場からの責任もおありであると思いますが、法務大臣としましては今回の事件についてどのような所感をお持ちなのか、またこうした事態に対処するためにはどういう施策を講ずべきであるとお考えになっておられるのか、この二点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/3
-
004・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) いま御指摘のように、成田空港開港を目前に控えて、いわゆる過激集団によって御承知の事態になりましたことは、法務当局はもとよりでございますが、政府としてもきわめて遺憾なことであると受け取っております。そこで、本日の閣議でこの事態に対して遺憾の意を表し、なお、かような民主主義に反する暴力行為に対しては断固として取り締まり措置を講ずる。内外にわたって空港、航空の信頼を失ったという受け取り方をしておりますから、そういう今後の航空輸送の心配を除くための万全の対策をとる、こういう趣旨の声明をきょう内外にわたってすることにいたしてきたわけでございます。おっしゃるように、あの状態を見ておりますと、警察当局も全力を挙げてああいう暴力集団の行動に対して防遏措置を講じておったわけでありますが、率直に言って警備のあり方にミスがあったということは私どもも認めざるを得ない。昨日のこの問題に対する閣僚会議でも、この問題を指摘しながら検討したわけでございます。これに対しては、ああいう事態は、まさに国民はもとより対外的にも大変な事態でありますから、反省すべきところは反省し、検討すべきところは検討を加えて、いま申し上げましたような断固たる態度をもって進もう、かように考えておるわけでございまして、現在の憲法その他の法律、制度によってああいうものを防げないのかどうか、そういう点があれば改めて法制的な手段も講じなければならない、こういうことも検討することにしておりますが、これには、仮にそういう事態がありましてもやや時間がかかりますから、現在の法制、制度のもとでもう少し周到な警備対策をとらなければならない、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/4
-
005・寺田熊雄
○寺田熊雄君 ただいま法務大臣が御自身で対外的な信用の問題をおっしゃったわけですが、確かに内外の信用を失った、これは政府がですよ、そういう面も否定できないと思うんですが、これは法務大臣、国務大臣として政府の政治責任につきましてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/5
-
006・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 政治責任がない、かようなことは申し上げないわけでございますが、政治責任のとり方でございましょうけれども、それよりも、こういう際には冷静に事態を見詰めて、いま申し上げましたように、内外にわたって安心ができるように対策を講ずる、これが政府の最高の政治責任であると、かような考え方をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/6
-
007・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今回の事件が内外の政府の信用の失墜につながりましたと同様に、私どもは、もとに返りまして、果たしてかの地に空港を建設したこと、つまり空港の用地をあの場所に選択したことが適切であったかどうかという問題にもさかのぼらざるを得ないと思います。ことにやはり大衆の抵抗といいますか、現地の農民などの抵抗運動、その強さなどを余りにも軽く見られたのではないかという印象を持たざるを得ないわけでありますが、つまり、すべての公共事業に当たりまして住民と徹底的に話し合い、その同意を得ながら公共事業を推進するという態度を持ちませんと、政府は権力を持っているので公共事業のためには私の利害はもう捨てて顧みないという態度を貫きますと、それが大きな災いとなって政府の側にはね返ってまいります。そういう点については法務大臣、これは国務大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/7
-
008・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) おっしゃるとおりに、仮に空港をつくる、あるいはある種の公共事業をやる、こういう場合でも、国内でやるわけでありますから、直接国民に重要な関係があるわけでございます。でありますから、ただ権力があるから、必要だからやると、やるのだと、こういう簡単な考えではやっておらないつもりでございます。またそうあってはならない。必要性の理解を求め、なおそれによって生活上の損害その他受ける方にはそれ相当の措置をしてやるべきである、こういうことで現在やっておるつもりでございます。
なお、成田空港の場所の問題に触れられましたが、これはもう十数年前に決定したわけでございますけれども、これも空港というのは、私専門家じゃありませんが、場所さえあれば、土地さえあればどこでもというわけにはいかないらしいです。気象条件、各種の他の交通機関との関係、空域の問題あるいは気象状況あるいは交通問題、そういうものを総合して、どこにすべきかということを選定するわけでございます、成田の場合にもいろいろ御意見がありますけれども、まあこの狭い日本であの辺が適地じゃないかと、またそれにふさわしい土地もあったと、こういう状況で選定したわけでございます。そこであの選定の場合には、もちろん農地が大部分でありますから、生活に大きく影響がある。でありますから、十分というのはどこまでが十分かわかりませんが、わが国の国際空港を設置することはきわめて今日の時代大事でございますから、他の公共事業とはやや趣を異にしている。地元の農民その他の皆さんには特別な措置を講じてお話し合いを進めてきたわけでございます。でありますから、大部分の方は理解をしていただいて、それに応じてもらっておったわけでございますが、一部の、数を私はここで明確には記憶しておりませんが、一部の皆さんがなかなか御賛成がなかったと。これが今日に至っておる。しかしそれに対しても政府としては、運輸省が直接の関係省庁でありますけれども、やはり御理解を得るためにそういう生活状況等についてもいろいろお話し合いをして、できるだけのことはしたいと、こういうことで今日に至っておるわけでございます。今日のこのいわゆる反対闘争の実情を見ますると、これは見方がいろいろあると思いますが、いまやそういう問題とは、かけ離れておって、もう主体が別になってしまっておる、ねらいが別になってしまっておる。いわゆる反権力闘争といいますか、率直に言って革命闘争の拠点にしてきておると、これが現在の状況であると私どもは認識をいたしております。いわゆる空港設置に関する農民の反対運動とは質を異にしてきておる、これを利用しておる。こういう状況が今日ああいう過激な状態になってきておる。これはわが国の民主主義国家としての、法治国家としてあるまじきことである。こういう考え方に立って、これに対応しなければならない、こういう立場にあると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/8
-
009・寺田熊雄
○寺田熊雄君 最後に法務大臣に一つお伺いしたいのは、破防法の適用について、新聞紙上に、公安調査庁に大臣が検討を命ぜられたという報道がございました。これは予算委員会で警察庁の警備局長が、考えていないという答弁をしたようでありますけれども、本来の領域はこれは法務省の領域だと思いますが、これについてはどうお考えになっていらっしゃるか、この点と、もう一つは、何かそれでなく別に他の特別的な立法を考慮していらっしゃるのかどうか、この二点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/9
-
010・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 破防法云々ということが一部新聞に何か私が指示をしたような記事があるのを私も見ました。結論的に申し上げると、そういう事実はございません。御承知のように、破防法を適用すべきかどうかということは、そのためにある公安調査庁は常に検討をしておるわけでございます。この事件について特別に破防法によって対応しなければならないという結論はまだ聞いておりません。私の方から適用云々の指示をしたことはございません。
これは少しお尋ねには触れないことになるかもしれませんが、いまの成田空港等におけるいわゆる暴力集団と私は思いますが、そういうグループというものは破防法に直接当たるかどうか非常に疑問のある集団でございます。仮に破防法で解散その他をやりましても、率直に申し上げて実効はなかなか期待できない、いわゆるゲリラでございますからグループも特定されておらない。常に隠密の姿でああいうことをしておるというグループでございますから、仮にこれを解散させても、常に散らばってやっておる性質のものでございますので、直ちにこれは破防法を大上段に振りかぶっても、そう大して意味のないものだと私は認識しておりますから、最初申し上げましたようにさようなことを現在考えたことはございません。それから他の新しい立法ということでございますが、これはどういう立法云々ということをいま考えておるわけじゃございません。先ほど申し上げましたように、いずれにいたしましても、あれほどの警備態勢をとっておりながら御承知のような事態が現に起こり、しかも長年かかって膨大な経費を使い、いまや開運前の空港が機能喪失の状態になったわけで、結果になったわけで、これを現在のさっき申し上げましたように法制の中で措置ができないのかどうか、どこに欠陥があるのか、あるいは警備態勢そのもののミスによるものか、法律上これ以上はできないのか、こういう点はよく分析をして詰めなさいということを指示しておるわけでございまして、それによってどうしても法制上何か措置をとらなければいかぬという結論が出れば、これはさらに検討しなければなりませんけれども、そういう新しい特定のことを構想をして法制を検討しようと言っておるわけではございません。いま申し上げましたように、現在の制度であのくらいしかできないのか、どうしてもできないのかどうか。もしできなければああいう事態を放任するわけにいきませんから、あるいは新たな措置を講ずるということを国会にお願いをしなければならないかとも思いますけれども、まだその段階には至っておらない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/10
-
011・寺田熊雄
○寺田熊雄君 なお法務、検察の問題に関連していま一つ御質問を申し上げたいのですが、最近環境庁で水俣病患者の方々が環境庁長官に面接を求めて座り込みましたですね。それが警察力で排除されている。それはそれなりの理由もあると思いますけれども、ただあの問題は元来国家にも責任があると一般的には考えられている。それが法律的責任であるかあるいは行政上の責任であるか、政治上の責任であるかは別といたしまして、責任のあることは間違いないと思うのですが、その発生についての責任と同時に患者の救済面に対する責任については、これは熊本地裁で一応県についての判断が示されておるわけですけれども、しかし県に対する監督責任というのはまた国にもありますので、そういう意味の国の責任も免れがたいと私どもは考えております。それはそういう根本的な事情が基礎にありまして、患者が速やかな救済を求めて座り込む、排除されると。今度は正規のルートを通じて環境庁長官に面接を求める、これは国民対政府あるいは国民対官庁の関係で当然健全な常識、社会通念の上で許されるべき行為だと私は見ておりますけれども、それが犯罪として逮捕されるということになりますと、私どもとしましては大いに了解しがたいというふうに考えておるわけであります。これは法秩序全体の目的ということがよく最高裁判所の判例に出てまいりますけれども、法秩序全体の見地からも当然是認されてしかるべきものと考えるのですが、法務大臣、この点については御所感をお伺いできますか、できればお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/11
-
012・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) これは環境庁の問題でありまして、水俣病の私も詳細は正直のところ知りませんが、水俣病という、ああいう化学物質によって損害を受けておる——損害といいますか、体に障害がきておる。これに対してはもちろん対策を立てるべき問題だと思っております。これは現に国、県協力してやっておるわけでございます。その限度がどうであるかということはいろいろ問題があるようでございます。ただ、それが環境庁その他の問題でございますが、私直接ではありませんけれども、あの排除の問題、これは環境庁長官の閣議における報告等聞いておりますと、もちろん平穏な請願といいますか、陳情、これは当然でありますが、遺憾ながら最近、全部じゃありませんけれども、何といいますか、座り込みといいますか、役所の執務を妨げるような状態でやっておられる。相当長期にわたってやっておる。特にあの合同庁舎は環境庁だけでございませんで、ほかの省庁も出入りに困難をしておる。役所の人が地下道から入らなきゃならないと、こういう状況というものは私は正常な姿ではない。そういう意味で、やむを得ずああいう排除措置をとらざるを得なかったと、こういう報告でございます。いろいろ御意見があると思いまするが、やはりこれも一つの法秩序に関係があるものだと思います。程度の問題でございますけれども、平穏な話し合いはいつでもするという構えでございますが、そういう状態ではないということのようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/12
-
013・寺田熊雄
○寺田熊雄君 法務大臣のどうもちょっといまの何か……。三人の平穏な面接を求める行為、それがあの逮捕という処分を受けたということなんですね。たくさんの人が排除されたというのじゃなくて、川本さんという方外二、三名の方が平穏に面接を求める行為に出たのが逮捕されたということが報道されておるわけですが、それについて伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/13
-
014・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 私もそれは別は環境庁長官からも聞いておりませんし、それこそ新聞報道だけでございますが、新聞報道によりますと、前にああいうことがありましたから、あそこは衛視か警察かよく知りませんけれども、いわゆる役所、公務所でございますから、入り口をふさいでおった。ところが、そのへいを乗り越えて侵入をした。これは言いかえると住居侵入というのでしょうか、何か侵入ということになるのでしょうが、そういう事態で逮捕した、こういうふうに理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/14
-
015・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それはもう、法務大臣にはそれだけにいたします。
最高裁の方にお伺いしますが、いままでもしばしば速記官の充足についてお尋ねをしたわけです。最高裁におかれてはその充足のためにいま最善の努力をしているということでありましたけれども、依然として欠員が多うございますし、その欠員の充足も今後数年を要するということなんですが、その困難についていろいろといままで人事局長が弁明していらっしゃる。余りたくさん採ると質の悪い者が入るというようなこともありました。それから、非常に技術の習得に適正もあるし、努力もあるし、一挙にはいかないのだということがありましたけれども、これはどうなんでしょう、国会の速記官と比べますと、国会の速記官はほぼ充足されておるということで、そしてその待遇面でもかなりな配慮がなされているということを聞いております。この待遇面の配慮という問題を、私どもこういう特別給料表というようなものでうかがうことができるのですが、裁判所速記官の場合はそういう待遇面で特に他に比して有利な地位を与えるというような、そういう御努力はなさっておられないのでしょうか。もしどうしてもその充足が思うようにいかないということであれば、やっぱりそれを考慮するほかないのじゃないか。ことにその技能の習得に大変な努力が要るのだ、また適正も必要なのだということになりますと、やはりそれだけの待遇に値するのじゃないかと私どもは考えるのですが、この点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/15
-
016・勝見嘉美
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 速記官の欠員及び充足に関しましては、寺田委員から再度詳細にわたりましてお尋ねがございました。大変欠員の充足について非常に遅々たる速度でございまして、はなはだ申しわけなく思っている次第でございます。
ただいまのお尋ねは待遇との絡みでのお尋ねでございますので、まず待遇面について申し上げますと、特に速記官についての特別の給与体系はつくっておりませんけれども、裁判所職員の書記官を含めまして一般職員と比べますと、ただいま御指摘のような高度の技術を要するという趣旨から、相当一般の職員と比べまして優遇しているつもりでございます。どうも採用の隘路は、待遇面ももちろん関係ないというわけではございませんが、単純に待遇面との関係だけではないようでございまして、委員特に御承知のとおり、裁判所で採用しておりますいわゆるソクタイプ方式というものについての技術習得が非常な時間といわば手間がかかるということでございまして、どうもある一定数を採りましても脱落者が多い、あるいは広く門戸を外部に求めてもなかなか適格者が集まらないというところが実情でございまして、しかしその中からできるだけのことをやっているつもりでございます。前回も御指摘がございましたが、昨年の十二月一日で百九十六の欠員がございます。今度書記官研修所の速記養成部から三十名近く出ますので、結局四月一日現在を推定いたしますと、わずかでございますが、百六十七の欠員ということになる見込みでございます。今後ともできるだけの努力はいたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/16
-
017・寺田熊雄
○寺田熊雄君 従前と比べてやや積極的な御姿勢をうかがうことができまして、私としては大変満足しますが、いま局長、待遇面でかなりの考慮をしているというお答えでしたね、これは結構ですが、国会の方は速記官について特別な給料表を設けておるようです。そういう面も権衡上やはり御考慮になりまして、待遇面で一段と考慮をなさるように要望しておきますが、この点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/17
-
018・勝見嘉美
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 裁判所の速記官につきましては、国会の速記者の方々との関係で前から御質問ございましたし、私どもといたしましても、同種のいわば職種でございますので、十分その点は検討し、かつ努力いたしているつもりでございますが、将来ともいまの欠員の解消とも絡みまして、十分待遇面では前向きで処していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/18
-
019・寺田熊雄
○寺田熊雄君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/19
-
020・宮崎正義
○宮崎正義君 法務大臣にお伺いいたします。
まことに残念な事件が起きてまいりまして、新東京国際空港開港直前にして過激派による管制装置の破壊、これはこの事件についてはまことに政府に重大な責任がある。この点について大臣の、法務大臣として、また国務大臣としてのお考えを伺っておきます。時間が制限されている中でございますので、問題を五点ばかり申し上げて、それぞれの御答弁を願いたいと思います。
本日の閣僚会議でいつごろまでこの延期をしていくようになったのか、その点予定される期日がわかっておれば、それを御答弁願いたいと思います。また、大臣が二十七日の閣僚会議で、新聞にはこのように報道されておりますが、従来の警備のやり方では限界に来ているというふうな大臣のお話があったというふうに報道されておりますが、ただいま寺田委員から種々お話がありまして、大臣としては、現行法で許される限りの警察権の行使だとか、過激派取り締まりのための法改正、あるいは新規立法の可能性を含めて、今後は取り締まりをするというようなただいま御答弁があったようでありますが、重ねて新規立法ということに対するお考えを伺っておきたいと思います。
それから、第二番目といたしましては、国際的に与えたこの今回の事件、国際的な信用をなくしていった、各国際間に与えた損失問題等、国務大臣としてどのように考えておられるのか。これをまたどのように信用の回復、あるいは損害を与えたことに対しての補償、そういうふうなことをお考えになっておるのか。報道によりますと、アメリカの有力紙の新聞もトップ記事でこの問題を取り扱っているというふうにも報道されております。この点についての責任ある法務大臣としてのお考えを伺っておきたい。
さらには、この開港がおくれたことによりまして、従来もそうでありましたけれども、この開港を目指してとうとい財産まで全部つぎ込んで、新空港に一助の役としてでも、何とかしてでも商売をして、そして生計もそこから得ようとして農地を売った方々も、その事業に携わろうとしたその方々が、今回またさらに開港がおくれるということに対するその住民の方々及び農民の方々に対する、また関係業者に対する損失、それらの補償というようなことも国務大臣としてどのようにお考えをしておられるのか。
最後には、農家の方々あるいは住民の方々と今後もっと話し合いを進め、そして談合していく考え方、どのようなお考えを持っておるか、国務大臣の立場として私は伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/20
-
021・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 数点に対してのお尋ねでございますが、第一点の次の開港時期、これは実は先ほど寺田委員にお答えした中で申し上げましたが、今日の段階では、破壊された器機は月半ばごろまでには修復可能であると、これは専門家の意見だそうでございます。しかし、運輸省当局としては、先ほど申し上げましたように、航空機でございますから、国内的にも国際的にも何となく不安を与えた状況でございますので、ただ破壊された器機が修復されたというだけではすぐ開港ということは適当でなかろう、こういう観点から本日は開港延期ということだけを決定いたしたわけでございます。
そこで、さらに航空機の運航の安全、それから警備体制の安全、それから施設上の防護措置、こういうことも必要であろう。こういうことをして内外にわたって安全運航に信頼を得るようにしなきゃならない。こういう観点から今日の段階で、きのうのきょうでございますから、開港を延ばしていつやるというようなそういうことでなしに、もう少し慎重にあわてないでやるべきである。私もそういう発言をしておきましたが、閣議ではそういう方針が決まりまして、そこで次の開港日をどのくらいにするかということは、できれば次回の閣議で決定をいたしたいと、こういうことにいたしたわけでございます。とにかく安全が第一でございます。安全に対する信頼が第一でございますから、そういう落ちついた態度で次の段階を決めなきやならない、かようにしておるわけでございます。
それから、警備の限界云々という私の発言でございますが、これは先ほど寺田委員にもお答えしたとおりでございまして、事実関係としては、御承知のとおりに、あれほどの膨大な警察を動員して警備しておりながら、現に暴力によって破壊されてしまったわけでございますから、そこでいまのやり方では限界ではないか、どこに一体ミスがあったのか、私は率直に指摘したわけでありますが、空港の中枢部門をやられたということはまさにこれはミスである。あそこに警戒不足でありました。こういう点を含めて、もう少し方法はないのかどうか、現行法では限度なのかどうか、こういう点を法務、検察十分に検討をして、もしこれで足らないというならば、どういう法制をつくればそれじゃちゃんとできるのか、そういうことが必要なのかどうか、それをあわせて検討する必要があるというのが——いまのやり方で限界じゃないかと、現に起こったわけでございますから。そういう意味でございます。
それから、第三の国際信用云々、これは先ほども申し上げたとおりでございますが、きょうの閣議でも、運輸大臣からも特別な発言がありまして、世界全体の成田を使用しようという各関係の航空会社、そういう点にも直ちに連絡をとって事態を説明し、今後の措置等も説明をして了解を得ると、こういうふうな方法をとることにいたしておるわけでございます。
海外の損害補償というお話がありましたが、それはどの程度あるのかそいつはわかりませんが、それまでは羽田空港を使うということになりますから、その点までは私考えておりませんけれども、いずれにいたしましても、この事態に対する理解と今後安心して使用してもらうように全力を挙げて各関係国に理解を求める、こういう措置をとるということにいたしております。
それから、遅延によりまして今日までも十数年——十一、二年、あそこに設置すると決めてから十一、二年でありますけれども、もう数年前から御承知のとおりいろいろ施設をしたりなんかして大変困っておられた状態の中で、間もなく開港ということで非常にいろいろまた準備を進めておられた、こういう関係がたくさんあるわけでございます。そういう問題についても、けさの協議の中で特に私は、こういう問題もこれはまさに政府、行政の欠陥によってそうなったのだから、どういう損害があるのかわかりませんけれども、これに対しては政府としては資金の援助その他必要があるものはやはり理解を得るために万全の措置を講ずべきである、こういうことで反省もし閣僚協議会では了承されておる、こういうことでございます。
それから、これは運輸大臣もよく発言されておりますが、いずれにいたしても一部農民等においてはまだまだ不満足な点があって反対運動に参加しておられる方があるわけでございますから、これも精力的に今後も話し合いをし、できるだけ理解を得るように努力をしたい。これは当然のことでありますが、そういうことを進めよう、こういうふうにしておることを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/21
-
022・宮崎正義
○宮崎正義君 国際的にもこれは大きな問題で、開港をするということであり、わが国もそうでありますが、世界各国、関係各国はこの準備のためにいろいろな費用を使っていると思います。そういったような費用等も含めて、私は、信用と同時に、与えた損失ということに対することも見直されていくような対策を講ずべきであるということを要請しておきます。
そして、いま御答弁がありました、開港の遅延によって与えたその関係の方々には、大臣みずからの行政の欠陥によってこうなったんだからというお話がありますので、この問題につきましても十二分に納得のいけるような問題点、それから、今後はこういうふうな事態が起きない警備体制というものに対する考え方、それらが何よりだと思います。
細かいことをいろいろ申し上げたいわけでありますが、時間が来ておりますのでこれでやめますけれども、非常に後手後手へと回った警備体制というふうにも報道等で私は感じられるわけであります。あくまでも、攻める側の立場になって警備するということが万全の策になってくるのじゃなかろうかと思います。非常に考え方が、また陽動されてから初めて今回の事件の中身が、彼らたちがやってた作戦がわかったようにも思えるわけでありますが、こういう点もよく閣僚会議等で諮られて、二度とこういう不祥な事件が起きないように私は要請をして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/22
-
023・橋本敦
○橋本敦君 私も、初めに成田問題について大臣の若干の所見を伺いたいと思います。
まず第一に、国民も私どもも、あのような暴力的な無法な破壊活動が激化をして、開港直前に重大な事態が起こりはせぬかという重大な不安と心配をしていたわけです。たとえば、成田への航空燃料の輸送、この列車に対して火炎びんを積んだトラックを暴走させるとか、あるいは木を切り倒して脱線転覆をはかるとか、もし仮にこれが成功しておれば大変な惨事が起こるわけですね。こういう彼らの過激な闘争ということがいよいよ開港に向けて一層激化して、付近住民やあるいは開港それ自体に重大な支障が起こりはせぬかという不安を持っていたことは事実です。言ってみれば、その不安が一つは現実のものになった。だから、この事態が起こってあわてて政府が政府声明を出すというのは遅過ぎるのではないか。もっと事前から彼らのこういった破壊暴力活動に対して厳しい警告と体制をとって、もっと万全の処置をとるべきではなかったか。国民は私は政府にそのことを一つの批判として強く求めていると思いますが、政府は、政府声明を出すという立場で、そういった政府の責任ということを痛感しておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/23
-
024・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 橋本委員のおっしゃるとおりだと私は思います。私どもも、一連の最近のこの種いわゆる暴力集団といいますか、過激派の行動については、率直に申し上げて神経をとがらしておるわけでございます。先ほども触れましたけれども、彼らの目的達成のためにいまの民主主義体制に挑戦する、こういうことを言明しておるわけでございますから、ゲリラ的でありますのでいかなる手段を講ずるかこれは予測しがたいわけであります。そういう観点に立って対応しなければならない。成田空港を最高の目標としておる、こういうことはおおよそ見当がつくわけでございますが、そういうことも閣議等においてはたびたび指摘をして警戒をするようにということを言っておったわけでございますが、結果的には、先ほどもたびたび申し上げましたけれども、やはり相当ミスがあった、これは認めざるを得ないわけでございます。そういう意味で、われわれは責任を免れるというような考え方は全然ございません。国民の皆さん、あるいは国際的にも安心してもらえるような体制を速やかにとらなければならない、こういうことを声明にも出し、そういう覚悟でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/24
-
025・橋本敦
○橋本敦君 大臣は、ああいった私どもの言葉によれば全くのにせ左翼、過激暴力集団、これが民主主義の敵であるということまではっきりおっしゃった。私どもはかねてからこのことを強く主張してきたわけです。たとえば、国立大学の中で過激暴力集団が国の施設である大学を占拠して、そこを武器庫にし出撃基地にしておる。こういうことを放置しておいていいのか。学園から暴力を一掃せよということも声高く言ってまいりましたし、また市民運動の中でも彼らの盲動する過激暴力活動というのは許されぬということも言ってまいりました。とりわけ私がここで指摘をしたいのは、あの成田空港それ自体が、なるほど計器その他は半月かそこらで修繕できるかもしれませんが、無数の彼らのゲリラの拠点なりあるいは彼らの盲動する成田空港襲撃の基地を周辺にそのままにしておいて、一体開港して今後安全が保持されるだろうか。私は、国際パイロット協会がきのう、安全という観点から開港を急ぐことは反対だという趣旨の申し入れをしたのもこれも無理ないと思うし、付近住民やあるいはあの空港に勤める人たち、利用する人たちが開港以後も重大な不安を持っているわけですね。政府はここのところに目を向けて一体どう対策を講じようとされているか、私はここが聞きたいのです。閣僚会議あるいは政府としてその点についてどういう方針をお持ちなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/25
-
026・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 細かい点にどういう措置をとるか、こういうことについてはこれは警察と協議しなきゃなりませんが、おっしゃるとおり、開港にこぎつければいいという問題ではございません。むしろ、新聞等で報じられておりますように、開港すれば自由に出入りができるのだから、ますます活動ができるのだという彼らの仲間では声明をしておる状況でございます。そういうことでは、これはもう不安たらざるを得ない、そういうことでありますから、率直に申し上げて、根絶するような気持ちで対策を講じたい。
それから、学生、学校の話もしばしば橋本さんも指摘をされ、私自身も橋本さんの資料等を御協力をいただいておるわけでございますが、こういうものと私は一連のつながりがあると、かように見ております。そういう観点で、閣議においてもそういう状況を報告し、これは一法務省とか一警察の問題じゃなくて、政府全体としてそういう根本の認識のもとに対策を講じなけりゃならない、こういう考えでございます。
学校とは、御承知のとおり、これまた学問の自由であるとか、学園の自治の問題もありますから、この規制は簡単にいきませんけれども、しかし、これは何と言っても暴力によって云々ということは、これは断じて許すべからざるものでありますから、これは東大の問題等もありますけれども、全力を挙げて解決に進みたいと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/26
-
027・橋本敦
○橋本敦君 私は、大臣のおっしゃるように、こういった暴力集団の根絶、そういったことがまさに根本問題として急がれねばならぬと思います。そのための国民世論の喚起ということもきわめて大事であります。それに関連をして、私は警備の問題での重大なミスというよりも、ゲリラに翻弄されたという、このことの警備上の問題と責任というものは重大だと思うのです。たとえばああいう広大な、人間が悠々と入れる地下道があって、どこから入ったらどこに抜けられるかといった問題実に彼らはよく研究をしていたわけですね。ある報道によりますと、三カ月前から彼らは管制塔襲撃の作戦を立てていた、こういうことが報道せられているありさまであります。しかも、きのうは鉄塔の撤去がありましたが、長時間かけてコンクリートブロックを打ち抜いて機動隊員が中に入ってみると、機動隊員は知らなかったけれども、抜け穴が掘られていて、そして彼らはもう逃亡していない。文字どおり一万数千の警官隊が、言ってみれば政府自体が翻弄されているような彼らのゲリラ活動です。こういったことを考えますと、あの警備について地下道の存在に対する配慮が足らないし、彼らがつくり上げ、構築をしている、彼らの拠点となっている、彼らのまさにとりでですね、この状況についても警備状況としての把握が十分でない。こういう状況を見ますと、国民としてはこんな少数のゲリラに翻弄されるような警備体制で果たして安心しておれるだろうかという不安があるわけですね。なぜこういうことがわからないのだろうか。これは大臣の直接の警察の所管じゃございませんから、大臣直接の答弁はむずかしいと思いますけれども、しかし国務大臣として、また法務大臣として、こういったことは、これは警備上のミスというよりも、まさにゲリラに翻弄される幼稚な警備体制それ自体の重大な欠陥ではないか。そういう点をもっと徹底的に究明をするということが必要ではないかと思いますが、大臣はあの状況をごらんになってどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/27
-
028・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 感想は橋本さんと全く同じでございます。私は、これは法務省あるいは検察庁、警察庁だけの問題ではないと考えておるわけでございます。といいますのは、まあ団結小屋というものは、前からこれは構築されている。第一に、私はこれでいいのかと考えておりますのは、たとえばついせんだって、これは航空法違反である、航空に支障があるということで取り除いた鉄塔が、さらにそれを構築するための鉄材が運ばれ、そして警察の目の前でこれを構築する、こういう事態が起こっておるわけでございます。そればかりでなくて、あらゆる材料が刻々運ばれている。こういう状態が一体どこの法治国家にあるだろうかと、私は非常に率直に言って不思議に思っております。こういう点はどこに問題があるのか。これは現行法制をつぶさにいま検討をするように指示してありますが、こういう点について、率直に申し上げて、日本の戦後の国民感情というものを、私は根本からこういうあらゆる問題について真剣に考える段階に来ておるのではないかと思います。
これはどういう点かというと、人権の問題と行政の接点がどこにあるのかと。率直に申し上げて、警察は人権、人権ということが盛んに言われるので、非常に手控えて考えておるのじゃないかと。また法制上そうであるならば、これは改めなくちゃならぬのじゃないかと。こういうことは、政府だけでなしに、失礼でありますけれども、国会でも国民全体が、目の前でまさに成田空港を破壊するといいますか、使用を阻止するためのいろいろな準備が着々と進んでおる、それはわかっておるわけでございます。それが手に負えないというのは、私は世界じゅう探しても法治国家にはないのじゃないかとこう思いますが、そういう点にどこか欠陥があるのじゃないか。もし法制上欠陥があるのなら、これは国民全体の同意を得て改めなければならない。
団結小屋の中が初めてわかったわけでございます。数年前からあるわけでございます。数年前は土だけでつくってあったようでありますが、堅固なコンクリートの構築物になっておる。中を見ると、まるでハチの巣かあるいはモグラの巣みたいになっておる。これを今度初めて発見したのであります。ああいうものを構築しておるのは、やはりこういう一つの目標を持ってやっておったということはおおよそわかっておるわけでございますが、そういうことを事前に調査することもできないような法制であっては、私はいわゆる治安の維持であるとか国民の安全を図るわけにはいかない、こういう問題も突き詰めて検討しなければならないと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/28
-
029・橋本敦
○橋本敦君 法制上の問題ということになりますと、私もまた別の意見があります。たとえば大臣は破防法の適用検討を指示してはいらっしゃらないということもはっきりされましたし、具体的な法制上の検討がいま具体的にあるわけじゃないということもそれ自体わかるのです。西洋のことわざに、あしき事例は悪法を生むというのがありますが、こういう彼らの過激暴力活動によって治安立法が強化されるという、こういうことは、これ自体が私は彼らの行動が民主主義破壊、民主主義の敵だと思いますから、その点は私は軽々に治安立法体制強化に向かうようなことは許されない、こう思っているわけです。私は、いま大臣がおっしゃったことについて重大な問題は政府の姿勢、これに一つはあると思うのですね。
たとえば一つの事実を申し上げますと、彼らは何と公団所有の土地の八十六・九ヘクタールに及ぶ広大な面積を不法耕作をして、ここで野菜をつくり米をつくりそこで食糧をとり、そしてその不法占拠して建てた構築物の中、彼らのいわゆるとりでの中には、今度は電電公社から電話まで引いて設置しておる、こういう状況があるわけですね。たとえばこういう場合は新しい法制ではなくて、公団自体がもっとしっかりすれば彼らに撤去を命ずることもできたのじゃないでしょうか。われわれは不法に所有土地が侵害されれば、それこそ裁判所に訴え出て彼らの不法占拠を解くという法的手続をとってでもやる方法があるわけですね。公団がこういうように彼らのあの周辺におけるゲリラ基地を長年構築するということを、自分の土地が不法占拠されながら漫然と許してきたという、こういうことに私は政府の彼らに対する甘い姿勢の一環が象徴的にあらわれている、こういうことを本気になって政府が徹底的にやっておれば、事態はもっと違った方向に行った可能性がある。私はひとつ大臣に言いたいのは、こういう事実から見ても、現にある法律、あるいは政府の行政的施策、これを断固として過激暴力活動を許さぬという姿勢で貫いてきておれば、今日の事態はもっと変わった局面になった可能性があるはずだと、私はこう思っておるのですが、こういう事実について大臣の御所見はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/29
-
030・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 私は、あらゆる場合そうでございますが、特にこういう問題については法律をつくればそれでいいというものじゃないと思っておるのです。ですから、別によけい法律をつくろうと考えておりません。いまおっしゃったような事態は私は詳細は認識しておりませんが、いま御指摘のありましたように、空港をつくるのに必要な場所の中に、すでに国で確保しておきながらこれを使っておったと、耕作その他に。まあこれは事情は私つまびらかにしておりませんが、すぐ使うわけじゃないから耕作をしてもしようがないだろうぐらいのところじゃなかったかと思います。そういうのが高じてだんだん後の措置が非常に困ってきたということはこれは事実であります。でありますから、そういうところに怠慢といいますか、手おくれといいますか、やはりちゃんとすべきところをちゃんとしなかったということは、これはまさに反省をしなきゃならない、こういう点はあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/30
-
031・橋本敦
○橋本敦君 先ほど私も指摘をしたのですが、今後の問題で私が一番心配するのは、彼らのある幹部が、新聞によりますと、幾ら何でも一万数千の警官を毎日これから何年にもわたってあそこに配備することは不可能だ。しかも、現地の土地の地勢、現地の状況はわれわれの方がはるかによく知っている。あらゆる状況に備えてわれわれの方が有利な条件にある、長い目で見て成田を廃港にまで追い込んでしまうような、そういうゲリラ破壊活動というのは幾らでもやれるのだと、あの事態が起こった中でまだ彼らのある幹部が豪語しているということが新聞で報道せられる。これはまさに大臣がおっしゃった、こういった暴力集団の根絶自体が大事だとおっしゃることはそのとおりですが、具体的な問題として彼らがこんな豪語をしている。こういう状況の中で、あの成田を安全な国際空港としてどうやって保持するかということについて、私は、政府としては警察、警備当局だけに任せないで、そして開港を急ぐための閣僚会議ではなくて、文字どおり、こういった彼らの長期的展望を持った成田廃港に追い込む破壊活動にどう対処するかということについて、政府の責任ある方針を出す閣僚会議、これを早急にやるべきではないかと私は思いますが、大臣のお考えはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/31
-
032・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) いま橋本委員が言われるような宣言といいますか、公言といいますか、やっていることわれわれも承知いたしております。そういうものを含めて先ほど申し上げましたように、開港すればそれで済むわけじゃありません。将来にわたって安全性を保つということが最も大事でございますから、対策を考えなきゃならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/32
-
033・橋本敦
○橋本敦君 じゃ私はきょうは法案の審議ですから、成田問題はこの程度にいたしまして、法案に関連をした質問を若干さしていただきたいと思います。
まず裁判所に伺いたいと思うのですが、今回は裁判所職員並びに判事補の増員ということで法案が出されました。これ自体私も結構だとは思っておるのですが、いただきました資料の十六ページの表を拝見いたしますと、欠員の関係で判事の欠員が六十五という数字が出ております。で、今回の判事補の増員によって現在の状況がどう変わるのか、そしてこの判事の欠員の充足という問題については、裁判所はこの法案と関連をして今後の対策としてどうお考えなのか。この点もしおわかりでしたらお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/33
-
034・勝見嘉美
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 判事の欠員につきましてはただいま御指摘のとおり、昨年の十二月一日現在で六十五名でございます。法案審議の関係で十二月一日をお示し申し上げたわけでありますが、ちょうどこの時期がいわば年度内の欠員としてはピークに近い数字であるわけでございます。実はこの数年間、戦前に任官された方々の定年退官等がかなり多くございました関係上、相当数の欠員が続いたわけであります。それも昭和五十一年に一応峠を越えまして、定年退官者の方々の数が非常に少なくなっておりますとともに、判事補その他から判事に任官する見込みの方がかなり出てまいったわけであります。本年の場合は二十期でございまして、七十五名ほど判事に任命の予定でございます。これが来年になりますと、二十一期でございますが、現在のところ来年も七十五名ということに予定しております。そんなことでございまして、ここ一、二年の間に判事は急速に充員されるというふうに考えております。ことしの二十期の判事補等が判事に任官しますれば、四月十五日の現在の推計といたしましては、判事の欠員は二十二名ということになります。
なお、先ほど申し上げました二十一期七十五名、これがそのまま判事に任官するといたしますと、来年の四月十五日の推計では判事の欠員は一けたかあるいは一けたに近い数字になるのではないかというふうに推測しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/34
-
035・橋本敦
○橋本敦君 欠員関係がかなり充足される展望のあるお話がございました。そういう推移はまたよく見て進んでいただきたいと思うわけです。
それに関連をして一言聞いておきたいのですが、簡易裁判所が事物管轄の拡張ということによりましてかなり忙しくなって事件数もふえているのですが、依然として簡裁の裁判官不在庁の解消という問題がなかなか進まないと、こういう実情を聞いておりますが、ここらあたりの手当てについて何か御方針でもありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/35
-
036・大西勝也
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 橋本委員御指摘のとおり、簡易裁判所にはかなりの数の裁判官がいない庁があること、そのとおりでございます。昭和四十五年に事物管轄の拡張がございまして、民事事件がその時点で簡易裁判所かなりふえたわけでございますが、経済情勢がだんだん変化しておりまして、昨年あたりになりますと、もうほとんど昭和四十五年、事物管轄改正の直前に近いような事件の地裁と簡裁との配分比率という状況になってきておるわけでございます。したがいまして、簡易裁判所がたくさんあります中には、現時点におきましても非常にその事務量が少ない、およそ裁判官一人分の十分の一以下にしか当たらないというふうな裁判所が現在まだかなりあるわけでございます。したがいまして、現時点における展望といたしましては、そういうところに簡易裁判所判事を配置いたしますと、勢いその事件数のたくさんございます大都市の簡易裁判所等にそれだけのしわ寄せがいくということにもなってくるわけでございまして、現状といたしましてはそういう事件数の著しく少ない簡易裁判所に簡易裁判所判事をどんどんこれから配置するということはちょっとなかなかむずかしいのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/36
-
037・橋本敦
○橋本敦君 簡易裁判所の国民の側から見た充実ということが言われてかねて久しいし、そのことは最高裁もよくおわかりだと思いますが、私は全体として今度の増員によって十分だとは思っておりませんので、なお今後国会としても努力をし、裁判所としても要員の十分な確保で国民の権利を守る司法機能を十分果たしていただくというようにお願いしておきたいと思うのです。
その裁判ということに関連をして言いますと、特に刑事事件については弁護人ということの果たす役割りが大きいわけですが、そこで私はきょうは国選弁護の問題について裁判所のお考えを承っておきたいと思うのです。ことしの五十三年度裁判所所管予定経費要求額説明、これを拝見いたしますと、国選弁護人報酬を増額する経費として一億八千五十三万三千円の計上ということで資料をお出しいただいております。そこで昨年は幾らこういう経費の計上で要求されて、予算額幾らに昨年度は決まったか、まず昨年の問題から数字を明らかにしていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/37
-
038・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 五十二年度の予算はこれは国選弁護人の報酬でございますけれども、十一億三千八百一万三千円ということでございます。その前にさかのぼって申し上げますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/38
-
039・橋本敦
○橋本敦君 それで予算額は十一億、わかりましたが、私がお聞きしたいのは、裁判所として五十二年度は十一億で十分だということでそう決まったのか、もっと大きな要求をしていたのだけれどもこうだということなのか、その関係なんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/39
-
040・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) これは裁判所としましては十一億三千八百一万円、これは五十三年度は十四億五百十五万二千円ということになっておりますけれども、こういう額が要求として裁判所としてはこれだけ国会の方へお願いいたしますということで、これで相当であるというふうに考えていることは間違いないわけでございます。ただ、その相当であるということの意味でございますが、国選弁護人の報酬は多々ますます弁ずることも事実でございまして、できるだけ多くお願いしたいという気持ちはあるわけであります。したがいまして、これでもう腹満ち足りて十分であるかというと、そうではない。しかし、じゃあ、これで絶対不足でぐあいが悪いのを我慢しているかというとそうでもないわけでございます。そういうふうにお答えいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/40
-
041・橋本敦
○橋本敦君 そこがわかったようなわからぬようなやっかいな話なんですね。
私は国選弁護というのをどうとらえているかという考え方が裁判所としてはっきりしてないのじゃないかという不安を実は持っているのです。言うまでもありませんが、国選弁護制度というのは戦後わが国にできた、言ってみれば世界に誇るいい司法制度の一環ということでりっぱなものだと思うのですが、問題はこの国選弁護というのが貧しい人たちに対する社会奉仕ということの範囲を出でないという考え方に裁判所はとどまっておられるのか。それとも、この国選弁護を通じてわが国の民主的な司法機能を十分に充足していくという意味で、まさに憲法上の要請としての重要な制度である。単なる貧しい人たちに対する救済という範囲にとどまらない、日本の司法機構全体を、これはやっぱり憲法上の要請にこたえていく重大な制度だというように認識なさっているのか。弁護士が社会奉仕をすればいいという制度に認識なさっているのか。その点が私ははっきりしていないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/41
-
042・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) これはただいま的確に指摘されました二つの面があるわけでございまして、一つは、これは現在の当事者主義の訴訟のもとにおいて、法律のプロフェッショナルと申しますか、要するに専門家としてその技術と知能を大いに働かされる、それが日本の刑事裁判がりっぱな結果を生むということのためにも一つの大きな柱であるということ、これはもう疑いのないところでございまして、そういう意味ではそれにふさわしい報酬ということで考えていかなきゃならぬ、これはもう御説のとおりでございます。ただ、このもう一つの半面がございますのは、国選弁護人の費用というものは結局これは被告人の負担になるものでございます。貧困であって、みずから支弁することができないことが明らかである者以外は全部、有罪の判決を受けて、これから場合によっては懲役にいかなければならぬ人が払わなければならない金であります。それを、じゃ今度は必ずそのまま取り立てられるかというと、たとえば裁判所に一定の期間内に申請して認められれば、今度は免除という制度もございます、全然支払い能力のない人には。しかし、その免除した場合には結局どうなるかといえば、それは税金によって賄われるという面がございます。先ほどおっしゃいましたそういった面では、弁護士さんのある意味での公共的な役割りというものに期待せざるを得ない面がございますし、他面では先ほど最初に申し上げたように、法律のプロとしての活躍、非常に高い意味を持つところの活躍という面もございます。この両方の間のバランスをとっていくということになりますので、そこがある意味では何を考えているかわからぬのじゃないかというふうに言われるゆえんであろうかと思いますけれども、そういうふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/42
-
043・橋本敦
○橋本敦君 国選弁護人の報酬がどの程度であるべきかというのは、いま言ったような原則と、それからあなたが御指摘になったような面と、多面的に考慮される必要があることは私もわかるのです。そうだけれども、いまの制度はどうなっているかというと、法律の定めによって裁判所が相当と認める額ということになっている。裁判所が一定の基準をおつくりになっている、こういうことですね。これについて、長年の間、日本弁護士連合会からも国選弁護報酬の引き上げということがずいぶん要望として出されてまいりました。大体どの程度の基準がいいのかということについて、弁護士は弁護士会で報酬規程というのをつくっているわけですが、この妥当な額が幾らかということについては参議院の法務委員会でも衆議院でも議論をされて、いままでの資料を見ますと、最高裁の方もできる限り弁護士会の報酬規程、そういうものに近づけた報酬を支給するようにするのが、これがいいと思うということは繰り返し答弁されていると思うのですね。違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/43
-
044・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 弁護士会で決めておられる報酬基準にできるだけ近寄せるということで努力しておった時期があるわけでございます。その時期、これは大体四十八年ころまで、つまり日弁連の報酬基準が大体一件二万円ぐらいの基準として考えられていたころまでは、それに近づけるようにというわけで、裁判所も一万六千四百円にしたり一万九千四百円にしたりというわけで、近づけることを努力しておったわけでございます。そのときの答弁としては近づけることがこれが望ましいし、それが目標であるというふうにずっとまいっておりました。しかし、その後、これは二万円から日弁連の方の報酬基準が六万円に三倍になりまして、それからさらに、いまでは単独の事件では十五万円でございますか、合議では二十万円というふうに三、三と上がってしまったものでございますので、私どもとしましては現在の基準については、それに近づけることが現想であるというふうには考えておりません。また、そうも申し上げておらないはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/44
-
045・橋本敦
○橋本敦君 日弁連も現在の時点に立って、国選弁護人報酬額等要望書というのを五十二年に出しておりますけれども、これをごらんになってもわかりますように、日弁連の一件十五万という規程そのとおりにせよとは言っておりませんね。その半分、七万五千円程度にはせめていまの状況の中ではすべきだと、こう言っているわけです。だから報酬規程そのとおりという、そこのところがいま焦点ではなくて、せめてこの半分にできないかという要望がきているわけです。これにせめて近づけるということ、このぐらいの努力はなさる必要が私はありはせぬかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/45
-
046・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 半分がいいのかどうかという、その御指摘の線につきましては、実ははっきりとそれがいいのだというふうには現在まだ申し上げるところまで至っていないわけでございます。この国選弁護人報酬というものの現在のじゃ決め方はどうしているかというふうに言われますと、本来はあるいは演繹的とでも申しましょうか、一定のプリンシプルでもって、これはかくあるべきであると、したがって、こうであるというふうに決めるのが一番わかりやすいかもしれませんが、現在ではむしろ逆に帰納的とでも申しましょうか、従来こういうふうに上がってきてこの程度になってきておると、そうすると、それを現在の情勢ではもう少しこれくらいまでしなくてはいかぬではなかろうかというふうな形で決まっておりまして、理論的にはちっともすっきりしてないことは御指摘のとおりでございます。じゃ、それを半分まで持っていったらどうだと、こういうお話でございますけれども、私どもとしましては、現在の基準というものが弁護士会の方で言っておられる半額の七万円というのにはほど遠いものであるといたしましても、先ほど申し上げましたようないろいろな事情を考えると、この程度でがまんしてもらっていいのじゃないかというふうに考えておりますので、その半分までいますぐに持ち上げるべきだというふうにはちょっと申し上げられないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/46
-
047・橋本敦
○橋本敦君 そこらあたりの検討をもっとしっかりしてもらいたいのですが、いま裁判所での基準で言えば、地裁関係で大体三開廷を基準として二万九千円程度ですね。私も弁護士ですからしばしば国選弁護をやってまいりましたけれども、まず弁護士会へ行って事件を受任する。そこでは罪名しかわかりませんから、だから担当部へ——裁判所へ行って、検察官のところへ行って記録の閲覧をし、それで裁判所へも連絡をし、それで大体概要を見た上で、今度は刑務所まで車を飛ばしていって面会をして本人の意見を聞き、それから関係者を事務所に呼んで事情を聞き、それから記録を全部閲覧をして弁護方針を立て、また被告人のところへ面会に行って、弁護方針に基づいて打ち合わせをする。かなりやっぱり大変なんです。これで地裁事件がいま二万九千円、つまり三万円程度と、とうなりますと、実際にいまの弁護士の事務所維持という現状からいきますと、これは低いですよ、何といっても。だから日弁連十五万と言っていますが、せめて半分の七万五千円には限度を引き上げるように努力してもらいたいというのは、これはぎりぎりの要望だと思うのですね。それを裁判所は十分に検討をするという姿勢にいま立っていないという答弁ですから、私はこれは今後とも十分に研究してもらわねばならぬと思うのです。御存じのように、弁護士に対して非常に安い報酬で社会奉仕という制度で、このままでいいだろうか。ある学者が言っていますけれども、不当に低い報酬によって国選弁護をやらせるというそのこと自体は、弁護士に社会的犠牲を強いるというだけじゃなくて、国選弁護の制度を通じて本当に民主的な被告人の権利を守る裁判を十分やっていくという憲法要請にも反することになりはせぬかという議論がありますね。そういう結果になることを私は実は心配するわけです。だから日弁連としては、この報酬の決め方について裁判所が裁判所の認定ということで基準をおつくりになっているわけですが、弁護士会としては、これに対してはそういう制度では十分でないから、国選弁護人の報酬等に関する法律案をつくりまして、公平な第三者も含めて報酬審議会を構成をして、そこで基準をつくるということにしたらどうかという案を前々から出しているわけです。私もいまの御答弁を聞いていますと、これは裁判所に任しておいたらなかなか弁護士の実情なり意見が反映せぬなと痛感をしたわけで、なおさらこういう第三者の入った報酬審議会の制度が要るのじゃないかという気がするわけです。
今後この国選弁護の充実ということについて御検討願いたい第二の理由として、実際にいまの刑事事件の中で国選弁護がついている事件は、パーセンテージどのくらいありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/47
-
048・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 国選弁護人がついているパーセンテージは各裁判所によっていろいろでございますが、大体平均しまして半々であろうというふうに考えております。——ちょっと待ってください。いま具体的な数字を出しますので……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/48
-
049・橋本敦
○橋本敦君 司法統計年報で数字が出ているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/49
-
050・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) はい、出ているはずです。ちょっとこれに書いてきたものですから……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/50
-
051・橋本敦
○橋本敦君 それじゃ、大体でいいですが、六割ぐらいになっているのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/51
-
052・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 裁判所によって、簡裁、地裁、高裁によってそれぞれ違うのでございますが、大体半々ちょっとオーバーするぐらいと考えておりますけれども、いま具体的な数字を——後でちょっと ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/52
-
053・橋本敦
○橋本敦君 それじゃまた数字は……。
つまり刑事事件の半数より上回る数が国選弁護人という制度によって運用されているという実情ですね。これは大変な数なんですよ。全体の刑事事件の一割とか二割ならわかりますが、半数以上なんです。こうなりますと、裁判所はこの国選弁護の充実ということについて、弁護士会自体も自主的に努力はしておりますが、裁判所としてもこれの充実という面を考えれば、報酬という問題についても弁護士会の要望を十分入れるという姿勢にもっと立ってもらいたいと私は思うのです。そういう点について司法事務協議会等でもいろいろ議論されておりますが、法曹三者協議会、こういったところでも十分に議論をして、報酬のアップという問題についてさらに検討するということについては、お考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/53
-
054・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 最初に先ほどちょっとすぐ出なかったので申し上げませんでした。ここで申し上げますと、昭和五十一年度で申しますと、高等裁判所では国選弁護人がついた被告人の割合は、これは二四%でございます。それから地方裁判所では四五・九%でございます。それから簡易裁判所では六八・六%でございます。それで事件数は地方裁判所が圧倒的に多いわけでございまして、ですから、全部をならしたところでは大体地方裁判所の線に近くなるのじゃないかと存じますが、地方裁判所の四五%、四六%で、簡裁が六八%となりますと、ならしますと先ほど申すとおりに大体半分ちょっと超すか半分ぐらいという数字になります。
それから先ほどお話のございました審議会のようなものを考えるのはどうかと、裁判所だけで考えていてもどうにもならぬのじゃないかというふうなお話でございますが、現在、国選弁護人の報酬基準が安いというふうにいま批判を受けておって、裁判所に任しておってはどうもならぬというふうなお話と受けとめておりますが、これは私ども反省しなければならぬと思いますけれども、しかし、現在の法律制度の上から申しますと、もうこんなことを申し上げるまでもございませんが、国選弁護人報酬というものは、個々の事件によっていろいろ性格が違いまして、それで結局その受訴裁判所と申しますか、その事件を審理しておられる裁判官は、いろいろな事情を考えて妥当な額を決められるのが一番いいというふうに私どもは考えております。したがいまして、現在の国選弁護の費用の定め方として、刑事訴訟費用等に関する法律の八条二項で、「裁判所が相当と認める」額でいいというふうに言っているのはそれでいいと。たとえばこれは大分なんかの例の、家族と一緒に海へ落ちてということで起訴されている事件がございますけれども、これは昭和五十年の八月から五十二年の暮れまでの間の国選弁護人の報酬としましては、純報酬が一人当たり五十五万円で、三人ついておられますから、百六十五万円の報酬、それからそれに謄写される費用がありますから七十二万円、合計しますと二百三十七万円支払っておるわけであります。まだこれから事件は審理が続いていきますから、報酬もあるいは記録の謄写料もまだこれから出ていくと思います。それで、これは先ほどからお話しになっています地方裁判所の事件でございますけれども、三万円という基準で、かつこれだけお支払いしているわけでありまして、個々の事件について具体的な妥当な、これは一例でございますが、費用というものは、私は各裁判所が支払っておられるというふうに考えております。
基準がじゃ低過ぎるんじゃないかということになると思いますけれども、その基準というのは大体こういうふうに考えておりまして、つまり現在の刑事事件のうち、地方裁判所に例をとって申し上げますと、九〇%はこれは自白事件でございます。それから、その全事件のうちまた九〇%ちょっと超える九一・数%まではこれが単独事件でございます。そうしますと、単独事件で自白事件というものは、九〇%掛ける九〇%で、ごく大まかに見まして八〇%でございます。こういう事件は大体どういう程度の審理が行われるかと申しますと、東京地裁なんかの例ですと、もう三開廷、まあ第一回に起訴状を読んで調書を調べる、第二回目にそのときの証人を二、三調べたりあるいは被告に質問する、第三回目に情状証人を調べて論告、弁論をする、その次に判決と。これは大体各一回の時間は一時間でございます。そういうような審理がやられるわけですね。もちろんそこまで出てくるまでには、先ほど御指摘がありましたような弁護士さんの底の、底辺をなすところの、拘置所へ行かれたり家族と会われたり、いろいろな努力があると思います。ですからそれを無視してはいけませんが、一応そういう事件を考えて、そういう事件であれば、まあ大体実質三開廷とすれば三万円ぐらいでもよくはないかという感じを持つわけでございまして、しかも、それは必ずしも拘束するものではない、それを頭に置きながらそれぞれの事件について適当な額を決めると。私どもとしましては、その額そのものについて、確かに弁護士会の方で御満足でないということはよく存じておりますし、そういう意味では大いにこれから努力を続けていかなければならぬと思いますが、さらにそういう審議会のようなものをつくっていろいろ検討しなければならぬということまでいま決心しているわけではございません。ただ、そういう問題があるということはよく存じておりますし、なお検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/54
-
055・橋本敦
○橋本敦君 それじゃ、まああと二、三問にしますけれども、弁護士が刑事事件の弁護として重要な役割りを果たしながら、その国選弁護ということでの制度で、報酬を——裁判官が事件の判決するならいいですが、報酬にまで判決するというのは、どうも制度として私は問題があるという気がするのですよ。だからそういう意味では、審議会というものがあれば、これは公正な判断があると、こう思うのです。いずれにしても、いまおっしゃったような状況だというように簡単にごらんになると、弁護士の業務の実際の苦労なり何なりを見逃すこともありますから、日弁連の要望はもっとしっかりと受けとめてもらいたい。
それから、二点だけ要望しておきたいのですが、第一点は、弁護士会はかねてから記録の謄写費交通通信費等いわゆるいまおっしゃった弁護士活動の底辺をなす諸活動、これについては別途に支弁し得るような予算の組み方をやって、その都度支払いという制度にしてもらいたい、こう言っているのですね。こういうことが実現してもらいたいという要望についてどうお考えか、これが第一点。
それから第二点は、弁護士会へ国選受任に参りますと、事件名だけしか書いてないのです、窃盗とか業務上過失とか。起訴状が添付されてないのです。だから、どういう公訴事実で起訴されたかをまず知らなければ話にならぬわけですよ。それを検察庁へ行って記録を閲覧する、あるいは裁判所へ行って閲覧する以外にないのです。いやしくも裁判所から弁護士会に、この事件についての国選弁護人を弁護士会で選任してもらいたいというそういう手続をするときに、起訴状謄本の写しを弁護士会に送っておいて、そこで弁護士が罪名だけでなく公訴事実もすぐつかんで対応できるようにするというぐらいの手続の親切さはあっていいのじゃないか、私はこう思うのですが、この二点についてお伺いして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/55
-
056・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 第一点の問題でございますが、これは刑事訴訟法で国選弁護人に対しては、旅費、日当、宿泊料それから報酬を支払うことができるようになっておりますけれども、そういう謄写料だとか、あるいはいわゆる実費でございますね、そういうものを特別の名目でもって支払うということになっておりませんので、現行法のたてまえとしては、これは報酬の中に含めてお支払いするという現在のやり方以外にはないのであろうというふうに考えております。それでは実際運用をしている裁判所として困るから、大いに法律改正なり何なり法務省にでも働きかけたらどうかということになるかと思いますが、しかし現実の問題としましては、たとえば謄写の問題にしましても、すぐにそういうふうに別に払えるようにした方がいいというふうにもまた現在のところ考えておりません。というのはメモをとりながら記録をごらんになると非常によくわかるという問題もありまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/56
-
057・橋本敦
○橋本敦君 難事件ならそうはいかないです、絶対にいかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/57
-
058・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) そういうことをされる方もあるわけでございますが、そういうののメモというものと、それから普通にぱっと出される謄写との関係をどういうふうに考えていくかという問題もございましょうし、それから一般の事件で、事件記録をさっと全部謄写しなけりゃならぬ、あるいはこの部分は謄写しなけりゃならぬというふうなものは、先ほど申し上げましたとおりに、事件全般から見ますと数は必ずしも多くはないという認識を持っております。そのようなことで、しかも現在実際必要であるもの、おやりになったものについては、もう普通の純報酬と考えられるものの上に上積みしてお支払いしておりますし、それから税法上の手当てもしてあるわけでございまして、特にここで強く立法府の方にお願いしなきゃならぬというふうには考えていないわけでございます。
それから第2問目の、お願いする以上は起訴状の謄本ぐらいつける親切心があってはどうかという点でございますが、この点ちょっと私きょううっかりしておりまして、それぞれの弁護士会、それぞれの裁判所で扱いは違うと思います。そういう問題が第一審強化方策地方協議会の中で出ておるのを見た記憶がございますので、裁判所によっていろいろなやり方をやっているのではないかとも思いますが、現在現実どうやっているかという把握を私ちょっとしておりませんので……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/58
-
059・橋本敦
○橋本敦君 大阪なんかないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/59
-
060・岡垣勲
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) そうでございますか。研究さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/60
-
061・橋本敦
○橋本敦君 時間がありませんので、きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/61
-
062・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ほかに御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/62
-
063・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/63
-
064・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/64
-
065・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私はただいま可決されました裁判成職員定員法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、新自由クラブ及び社会民主連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
まず案文を朗読いたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
最近における社会、経済事情の変化に伴い、複雑かつ困難な裁判事件が増加する傾向にかんがみ、政府並びに最高裁判所は、裁判官及び書記官、速記官など裁判所職員の増員及び充足に努めるとともに、その資質向上など諸般の施策を講じ、もつて、裁判の遅延の解消を図り、国民の要請にこたえるべきである。
右決議する。
御賛成のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/65
-
066・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/66
-
067・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。
ただいまの決議に対し、瀬戸山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/67
-
068・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきましては、慎重に御審議をいただき、なお、その間種々の御注意等いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。
なお、ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、御決議の趣旨を十分尊重いたしまして、全力を挙げて努力をいたしたいと思います。
本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/68
-
069・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/69
-
070・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00519780328/70
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。