1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十四年二月十五日(木曜日)
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議事日程 第七号
昭和五十四年二月十五日
午後一時開議
第一 関税暫定措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第二 航空機燃料税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 関税暫定措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第二 航空機燃料税法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法
律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/0
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001・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
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日程第一 関税暫定措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
日程第二 航空機燃料税法の一部を改正する
法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/1
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002・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、関税暫定措置法の一部を改正する法律案、日程第二、航空機燃料税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。大蔵委員長加藤六月君。
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関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
航空機燃料税法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔加藤六月君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/2
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003・加藤六月
○加藤六月君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
初めに、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、関税率等について、次の改正を行おうとするものであります。
第一に、関税率の改正といたしましては、まず、フルフラール等の十一品目について、関税率の引き下げを行うとともに、アルミニウムの塊について、関税割り当て制度を一年間存続し、その一次税率を引き下げることといたしております。
このほか、タマネギについて、関税無税点を引き上げることとし、また、除虫菊について、関税割り当て制度を廃止することといたしております。
第二は、暫定税率等の適用期限の延長等であります。
昭和五十四年三月三十一日に適用期限の到来する原重油、バナナ、自動車等九百五十一品目の暫定税率の適用期限を一年間延長するとともに、同じく昭和五十四年三月三十一日に適用期限の到来する原油関連の減税還付制度について、石油化学製品製造用原油の減税制度等二制度を廃止するほか、他の五制度の適用期限をさらに一年間延長する等、所要の措置を講じようとするものであります。
本案につきましては、審査の結果、一昨十三日質疑を終了し、昨十四日採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、航空機燃料税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、航空機燃料に係る税負担の現状及び空港整備財源の充実等の要請にかんがみ、航空機燃料税の一キロリットル当たりの税率を現行の一万三千円から二万六千円に引き上げることとし、その引き上げを昭和五十四年四月一日から実施しようとするものであります。
本案につきましては、審査の結果、昨十四日質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対しましては、全会一致をもって附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/3
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004・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) これより採決に入ります。
まず、日程第一につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/4
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005・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第二につき採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/5
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006・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/6
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007・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 内閣提出、昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣金子一平君。
〔国務大臣金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/7
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008・金子一平
○国務大臣(金子一平君) 昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
昭和五十四年度の経済運営の基本は、物価の動向に留意しつつ、景気の回復基調を一層確実なものとすることにより国民生活の安定を図り、わが国経済を均衡のとれた安定成長路線へ円滑に移行させることにあると考えます。
他方、財政収支の赤字は、わが国経済の着実な発展を図るためにも、すでに放置できない異常な水準に達しており、財政の健全化は早急に取り組まなければならない緊要な課題となっております。
このような状況にかんがみ、昭和五十四年度予算は、厳しい財政事情のもとで経済情勢に適切に対応するとともに、できる限り財政健全化に努めることを基本として編成いたしました。
まず、歳出面では、投資的経費について、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を促進するとともに、景気の着実な回復に資するよう、財源事情の許す範囲内でできる限りの規模を確保することとする一方、経常的な経費については、その節減合理化に努め、緊要な施策に重点的に配意しつつも、全体として極力規模を抑制することといたしました。
歳入面では、揮発油税等の税率の引き上げを行うとともに、租税特別措置の整理合理化等を一層強力に進めることといたしましたが、昭和五十三年度において五月分税収の年度所属区分を変更したこととの関連もありまして、租税及び印紙収入が前年度当初予算額と同額程度しか見込まれず、歳出の増加額のほぼ全額を公債の増発によらざるを得ない状況にあります。
このような財政事情にかんがみ、昭和五十四年度においても、前年度に引き続き、財政法の規定により発行する公債のほかに、特例公債の発行によらざるを得ないと考えます。
このため、昭和五十四年度の特例措置として、国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債を発行できることとする法律案を提案するものであります。
しかし、このような措置はあくまで特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することが財政運営の要諦であることは申すまでもありません。政府としては、引き続き財政の健全化を図るため全力を尽くす決意であります。
以上、昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法
律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/8
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009・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。池端清一君。
〔池端清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/9
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010・池端清一
○池端清一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案について、総理並びに大蔵大臣に対して質問をいたします。(拍手)
大平総理、あなたは、特例公債を導入した昭和五十年秋の第七十六臨時国会における財政演説で、次のように述べているのであります。「もし、やすきについて財源の調達を公債の多額な増発に依存するようなことになれば、著しい公債の累増を招き、財政の健全性は失われることになります。申すまでもなく、財政の健全性を堅持することは国民生活の向上と経済の安定的成長の基盤でありまするから、特例公債に依存しない堅実な財政にできるだけ早く復帰するよう、あらゆる努力を傾注する所存であります。」と強調されたのであります。
自来三年有余を経た今日、わが国の財政は健全化どころか、ますます悪化の一途をたどり、五十四年度予算案においては、国債発行額は五十年度の三倍にも及ぶ十五兆二千七百億円、国債依存度三九・六%という史上最高の巨額に達し、しかも、年度末の国債発行残高は五十八兆七千億円にも及び、数年を経ずしてやがて百兆円にも達しようとしているのであります。
かくのごとく、わが国財政の現状は、国際的に見ても、あるいはまたわが国財政史上から見ても、まさに異常、異例、きわめて憂慮すべき事態に直面をしているのであります。いまや、わが国財政は、果てしなきどろ沼に足を踏み入れ、昭和四十年代当初は国債を抱いた財政であったものが、やがて国債に抱かれた財政となり、いまや国債にのみ込まれた財政へと変貌し、破局的状況を迎えるに至ったのであります。財政危機は、同時に、国民に対して重税と高負担、福祉や教育の切り捨てとなってあらわれ、国民生活の危機を一層激しくすることは、現実が雄弁に物語っているのであります。
総理、このきわめて深刻な事態に直面して、いまあなたはどのようにしてわが国財政の再建を図り、破壊されつつある勤労国民の暮らしを守ろうとお考えになっているのか、その基本的態度をまず最初に承りたいと思うのであります。(拍手)
第二の点は、このような膨大な国債発行に伴う国債消化の問題と財政インフレの危険性についてであります。
五十四年度国債並びに地方債等、公共債の発行額は二十六兆円が予定されているのでありますが、こういう状況の中で、国債の消化が果たして可能でありましょうか、疑問なしとしないのであります。国債の売れ残りや、流通価格が発行価格を下回るなどという現象が生じたため、政府は昨年二回にわたって国債の新規発行を見合わせるという状況に追い込まれたことは、いまなお記憶に新しいところであります。このように、すでに前年度の国債消化に問題が起きているさなかに、これだけ巨額の国債をさらに増発することは、きわめて重大な結果をもたらす危険性があることを私はあえて指摘せざるを得ないのであります。
国債の消化難、そしてその後に待ち受けているのが国債の日銀引き受け、それの増加であり、通貨供給量の膨張、そしてインフレというコースをたどることは火を見るよりも明らかであります。(拍手)すでに通貨供給量は増加の傾向をたどり、公共料金の値上げ、地価の上昇、原油価格の引き上げ、卸売物価の上昇などといったインフレ傾向が進んでいるときに、このような大量の国債発行は、まさに火に油を注ぐ結果になると言わざるを得ないのであります。
このことはすでに多くの識者が指摘しているところであり、大蔵省みずからも、当初、インフレを招かない国債発行の限度は十三兆円ないし十四兆円と言っていたのでありますが、その壁はすでに破られているのであります。それでも政府は、財政インフレの懸念はないと言うのでありましょうか。
政府は、財政インフレを防ぐための具体策をどのように考えておられるのか、また、財政インフレから国民生活を防衛するためにどう対処しようとしているのか、具体的にしていただきたいと思うのであります。(拍手)
第三に、国債償還の問題についてお尋ねをいたします。
来年度の国債発行では、特例国債がいわゆる建設国債を上回る新たな局面を迎えることになります。すなわち、五十年度補正予算から発行された特例国債が償還期に入る時期は六年後に到来し、それ以後の償還額は毎年数兆円に上り、特例国債は償還面でも財政硬直化の最大の要因になるおそれがあるのであります。国債償還のための基金も八年後には枯渇をするという試算もあり、予算に占める国債費はより重くなるのであります。
償還財源対策をどのように考えておられるのか、国債発行の多様化も行われようとしていますが、償還財源確保は従来同様の方策をとり続けるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思うのであります。
第四に、財政民主主義の問題に関連して若干お尋ねをいたします。
言うまでもなく、財政の健全化には財政民主主義の原点に立った財政論議が重要であり、そのためには何よりも財政関係資料の公開が絶対必要不可欠であります。国債に関しても、償還財源の運用実態、あるいは国債償還の実績と見通しを予算参考表に添付するなどは、最小限の政府の任務であります。また、税制関係で見ても、不公平税制の最たる各種特別措置による減免税額の試算根拠も明確でありませんし、その政策効果も明らかではありません。
これら財政資料を国民に提供しなければ、国民的合意の得られる財政危機打開の方策も確立できないと考えるものでありますが、いかがなものでございましょうか、政府の所信を承りたいと思うのであります。
さらに、国民の参加を求めるとの方針に立つならば、税制調査会あるいは財政制度審議会を初めとした各種審議会委員の構成及びその運営の民主化を積極的に進めるべきだと存じますが、この点についてもお答えをいただきたいと思うのであります。
最後に、財政再建のための財政改革についてお尋ねをいたします。
今日の異常なるわが国財政の再建を図り、赤字財政を打開する道は、かねてよりわが党が強く主張してまいりましたように、税制と財政支出の両面にわたって大胆な財政改革を実現する以外にその方途を見出すことはできないと思うのであります。
すなわち、その第一は、財政支出の思い切った洗い直しが必要だということであります。わが国の財政は、前年度実績にプラスアルファを積み増すといういわゆる増分主義が定着しているのが実情でございますが、この際、このような風潮を大胆に打ち破り、支出面での全面的な洗い直しが急務であります。この財政支出の洗い直しという意味では、いま問題になっている、そして疑惑のますます深まっているE2Cの予算化などは、全く論外と言わなければなりません。(拍手)これでは、財政再建などは絵にかいたもちとしか国民の目には映らないでありましょう。
第二は、多くのいわゆる開店休業中の冬眠公団や特殊法人の整理を中心とする不要不急部門の整理であり、第三には、すでに再三指摘しておりますように、不公平税制の是正と、富裕税や土地増価税などを初めとする各種資産課税強化のための新税創設を決断すべきだということであります。
そして、いやしくも、政府が財政再建の目玉としてその導入を急いでいる一般消費税の新設などという、国民大衆の犠牲によって赤字財政からの脱却を図るがごときは、絶対に認めることはできないということを強く申し上げておく次第であります。(拍手)
私は、以上のような財政改革が今日きわめて急がれていると思うのでありますが、総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/10
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011・大平正芳
○内閣総理大臣(大平正芳君) 池端さんの最初の御質問は、今日、財政が大量の特例公債に依存する状況になっておる、こういう危機的な状況をどのようにして再建に持っていくか、国民生活を守るためにどうするのかという御質問でございました。
仰せのように、今日の財政が危機的な状況になっておりますことは、御指摘のとおりでございます。これは、高度成長を支えておりました国内外の諸条件が構造的な変化を見つつある上に、五年前の石油危機がさらにそれに拍車をかけまして、歳入の欠陥が空前の状況になってまいりましたこと、池端さんも御承知のとおりであります。
その段階におきまして、財政本位に物事を考えるならば、早速再建にかからなければならぬのでございますけれども、経済界は構造的な不況に苦しんでおるときでございまして、逆に、弱り切った財政からさらにその財政の発動を求めておるような状況であったのでございます。したがって、大量の歳入欠陥を補いながら、しかも景気を支えるための財政支出にたえなければならぬという状況で、今日のような、国債に大きく依存する財政にならざるを得なかったわけでございます。
この点につきましては御理解がいただけるのではないかと思いますが、しかし、そういう内外の構造変化も、一部を除きましてようやく落ちついてまいりましたし、景気もようやく回復の軌道に乗ってまいりましたので、仰せの財政再建に本格的に取り組む条件がようやく整ってきたと考えておるわけでございます。
したがって、政府は本格的に、ここ数年の展望を持ちまして、まず特例債を脱却する道を考えなければならぬと存じまして、中期的な財政の展望をつくって、国会でも御審議をいただいておるところでございまして、われわれといたしましては、仰せのように、国民生活を守る上におきまして財政インフレを起こしてはいけないわけでございまするし、また、財政自体が国民に対する責任を、十分その力量において果たす体質を取り戻さなければなりませんので、財政再建に真剣に取り組みまして、御要望のような状況を招来すべく努力してまいるつもりでございます。
第二の御質問は、財政インフレをどうして防ぐかということについての所見を求められたわけでございます。
第一の再建の目標は、何と申しましても、御指摘のように国債依存から漸次脱却してまいらなければなりませんので、国債発行額を漸次逓減していくことを考えなければならぬと思います。
第二に、それでも発行しなければならぬ場合におきまして、国債の完全な市中消化の道を考えなければならぬわけでございまして、国債管理政策はいよいよ重要になってきたと存ずるのであります。国債の発行方法、その多様化を図りますとか、あるいはこの消化につきまして金融界の全幅の協力を確保する等をいたしまして、この完全消化に努めて、財政インフレは何としても避けなければならぬと覚悟をいたしまして、万全の対処を考えておる次第でございます。
それから第三の御質問は、財政の民主化についての、御所見を交えた御質問でございました。
仰せのように、まず第一に、歳出の厳格な洗い直しと抑制を必要とすることは御指摘のとおりでございます。政府といたしましても、五十四年度の予算におきましてそういう方向で精いっぱい努力をいたしました。まだ十分の評価はいただいておりませんけれども、しかし、私どもは、その方向にかなりの前進を示すことができたと考えておりますが、今後一層努力してまいるつもりでございます。
第二に、各種の資産課税等を通じて歳入の確保を図るべきじゃないかということでございます。これにつきましては、大蔵委員会を中心にいたしまして、社会党を初め野党の皆さんとずいぶん論戦を交わしてきたところでございますが、資産課税につきましては、われわれがにわかに賛同いたしかねるいろいろ技術的な問題もあるようでございまして、この点につきましては大蔵大臣から後ほど説明があろうかと思います。
第三の問題は、一般消費税の導入には賛成いたしかねるという御意見でございました。われわれも、いきなりこういう一般消費税のような大口の歳入確保をお願いする税制をすぐ御審議をいただこうとは思っていないのであります。歳出歳入を通じまして御理解をいただく十分の前提条件をつくり上げた上で、この問題についての御理解を得たいと考えておるわけでございまして、明年度までにそういう状況をつくり上げるべく、論議を深めていただきたいとお願いをいたしておる次第でございます。
いずれにいたしましても、御指摘のような資産課税等、若干の新たな歳入の方法を考えましても、とうてい今日の財政再建には間に合わぬわけでございまして、相当大きな歳入政策を考えなければならぬ。その場合に、われわれといたしましては一般消費税という方向が考えられるのではないかと考えておるわけでございますけれども、この点につきましては、財政全般の御論議を通じまして御理解をいただきたいと存じておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/11
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012・金子一平
○国務大臣(金子一平君) 池端さんにお答えいたします。
まず第一に、国債の償還計画をどうするか、その財源対策を明らかにしろということでございますが、現在、国債の償還については総合減債制度をとっております。すなわち、百分の一・六の定率繰り入れと剰余金の繰り入れと、いま一つ、必要に応じて行う予算繰り入れの三つの柱を基本にいたしまして総合的減債制度ができておりますが、この制度によって対処してまいりたいと考えております。特に、特例公債につきましては、まず特例公債に依存しない財政に復帰いたしまして、その後、予算繰り入れについて負担の平準化を考慮しながら検討を行って、実施に移せるように努力していくことが一番大切なことであると考えております。
それから第二に、財政関係の資料を公表したらどうだという御提言、これは全くそのとおりだと思います。従来もできるだけの努力は払ってまいりましたが、おっしゃるような財政白書まで一遍に行けるかどうかは別として、今後、大いにこの問題について御論議をいただく資料として、いろいろなものをできるだけ提供してまいるようにいたしたいと考えております。一それから、資産課税を特に強化したらどうかという御意見がございました。富裕税とか土地増価税をお取り上げになりましたけれども、従来からもこれらの税金については政府税制調査会でいろいろ御論議いただいているのです。しかし、富裕税については非常に厄介な行政執行上の手続があるとか、土地増価税についても同様の問題がございます。
それで、われわれとして一番望ましい姿は、毎年度毎年度、恒常的に継続的な財源が欲しいわけでございまして、こういった税によっていまの赤字財政を賄うに足りるだけの財源はとても生み出せないということが一つ、それから経常的な財源にならないであろうという問題が一つ、そういった点についていま論議を重ねていただいておるのでございまするけれども、簡単にはまいりませんけれども、しかし、とにかく一般消費税を導入しなければならぬというような際でございまするから、あらゆる税源についてこれからも検討してまいりたいと考えます。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/12
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013・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 安田純治君。
〔安田純治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/13
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014・安田純治
○安田純治君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となっておりますいわゆる財政特例法案について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。昭和五十四年度予算案は、一般会計の実に三九・六%、十五兆二千七百億円を公債金収入に依存する大型借金予算となっております。今年度予算も、臨時異例の名のもとに、補正後で公債発行十一兆円、依存度三七・六%という大膨張予算でありました。しかし、この予算によっても、円高や不況はもとより、中小企業の倒産や失業の問題は何ら改善されていないのであります。アメリカや財界が要求し、一部の論者が主張していた、三〇%の線にこだわらず国債を発行して七%成長を目指せという主張が、いかに誤った、危険なものであったかは、いまや明らかであります。経済危機はますます深まり、財政は国債依存をいよいよ強めて、まさにどろ沼の、サラ金財政ともいうべき破局的な事態を迎えているのであります。事態はまさに重大であります。
五十年度予算において、当時の大蔵大臣として赤字国債の大量発行に先鞭をつけ、そして今日、破局的ともいうべき予算を編成された総理、あなたはこの責任をいかに考えておられるのか、まずこの点をお伺いいたします。(拍手)
また、この事態は、私どもが再三にわたって指摘し、警告を発してきた大企業本位の財政、税制の仕組みと運営の結果にほかなりません。長年にわたる産業基盤重点の公共投資や、諸外国にも例のない大企業への幾多の減免税措置は、紛れもない事実であります。これらが従来型景気対策のもとで異常な財政膨張と税収減をもたらす大きな要因となっているのではありませんか。
総理は、今日の経済危機、財政破綻を招いた原因を何とお考えなのか。石油危機など海外要因をあげつらうことなく、明確にお答え願います。
さて、かくも巨額となった国債の発行が、わが国経済、財政にきわめて重大な悪影響をもたらすことは明らかであります。
国債の消化の問題でありますが、今年度は、市場利回りの上昇による新規発行国債の消化停滞のほか、事業債の発行枠の縮減、資金運用部資金による買い取りの再開など、かつてない困難な事態に直面してまいりました。これは、政府の国債増発政策、国債依存の財政政策の行き詰まりを端的に示したものにほかなりません。来年度の国債発行予定額は今年度をはるかに上回り、実に十五兆円、地方債などを含めた公共債合計では二十六兆円もの消化が必要となるのであります。大蔵大臣は、何としてもこの過大な国債の消化を進めるおつもりか、それとも、経済動向いかんによっては全額消化を断念することもあり得るのか、また、金融独占など引き受けシンジケート団の強い要求となっている国債金利の引き上げや、引き受け手数料の引き上げ、資金運用部による引き受けなどの新規措置をとることも考えておられるのか、御答弁を願います。
さらに、日銀による国債引き受けは、通貨供給の増大となり、インフレに直結するものであります。物価値上げやインフレを阻止するため、いかなる措置を講ずるのか、総理の所見を伺います。
また、日銀の買いオペについてどのような基準で規制をするのか、通貨の総量規制を実施する考えはないのか、大蔵大臣の答弁を求めるものであります。
次に、国債費の問題であります。
国債元利償還に充てる国債費は、五十四年度においては四兆七百八十四億円、予算の一割以上が先取りされております。この国債費が財政の硬直化と破綻を強めるとともに、予算二分割方式のもとで経常費部門経費として激増し、福祉予算など国民向け経常支出を圧迫することは明らかであります。現に、新経済社会七カ年計画の基本構想に基づく五十四年度ベース財政収支試算によっても、社会保障移転支出の伸びは予算の伸びを下回るまでに抑え込む一方で、国債費は予算の伸びを大幅に上回る一八・三%の伸びとされているのであります。また、六十年度には十一兆円と、実に予算の一五%を借金返済に充てることとなっております。六十年度以降は、五十年度以来の大増発国債の償還期となり、財政負担は一層強まるのであります。この財政収支試算は、最悪の大衆課税である一般消費税の導入を織り込み、五十五年度から五カ年間で二十八兆円以上の増税を国民に押しつけようとするものであります。これはまさに高負担低福祉実行計画にほかなりません。みずから引き起こした財政危機、財源難を口実に国民への大増税を主張するなどということは、無責任きわまる、もってのほかの行為であります。
総理は、一般消費税の導入を初め、国民への負担強化を厳に慎むべきであります。所見を求めます。(拍手)
総理は、いまではほごとなった五十一年度ベースの財政収支試算を提出した、いわばこの種の試算方式の創始者であります。大蔵省から出された財政収支試算を、真に財政運営の手がかりとして尊重するに足るものと考えておられるのか。
また、大蔵大臣においては、この財政収支試算のどの点に財政運営上の手がかりとしてのポイントを置いておられるのか、歳入歳出の両面について御説明いただきたいのであります。
また、今後十年間の実態に見合った国債元利償還見込み額を、各年度ごとに明らかにされたいのであります。
公債大増発政策をやめるために、いま真剣に取り組むべきは、歳出の徹底的洗い直しと不公平税制の抜本的な改革であります。特に、今回の税制改正案は、所得税減税の見送り、揮発油税の大幅引き上げなど、国民に一兆円以上の税負担を強いる一方、不公平税制の是正なるものはその約六分の一相当の千七百八十億円にすぎないのであります。
政府は、今回従来になく不公平の是正に努力したとしております。しかし、改正された有価証券譲渡益課税も一銘柄二十万株の規制を加えただけで、原則非課税の基本は何ら変えておりません。財界の調査機関である日本経済調査協議会でさえ、公平上問題があり、原則課税にすべきだと指摘しているではありませんか。いつまでに原則課税にするのか、明確な答弁を求めます。
貸し倒れ引当金は、今回、金融機関以外の業種で繰入率を二〇%引き下げるばかりの全く不徹底なものであります。五十二年度の政府の調査でも、実際の損失に対し製造業は六倍、卸・小売業は二・七倍、その他事業三・二倍、金融保険業で五倍と、実際と、はなはだしくかけ離れた、しかも大企業ほどこのかけ離れは著しいものとなっております。諸外国で実施しているように、実態に見合って個別債権につき厳密に判定して引き当てるようにすべきではありませんか。
さらに、今回、宅地供給促進策と称し、土地税制の緩和が予定されております。これは、すでに動き始めている地価の値上がりを一層促進するばかりか、値上げを待つ土地保有者やマンション業者を初め大手不動産業者に新たな利益を与えるだけのものであります。そうならない保証がどこにあるのか、納得できる説明を願います。
日本共産党・革新共同は、これまで、大企業、大資産家優遇税制の是正を一貫して主張し、適正な課税の実施を要求してまいりました。今回の改正でもほとんど触れられていない所得税法、法人税法の本法に組み込まれている特権的減免税に抜本的にメスを加えるべきであると思うが、これをやるかどうか、明らかに願います。
最後に、経済、財政の運営の基本についてであります。
先進諸外国にも例のない異常な借金政策をとり続けながらも、歳出においては、E2Cの購入を含めて二兆円を超える軍事費や大型プロジェクトなど不要不急の経費を増大させ、歳入においては、大企業、大資産家優遇の、裏の補助金ともいうべき特権的減免税措置を続けておる。一方、財政危機はますます深まり、借金はたまるばかり。唯一の打開策は、国民への将来長きにわたっての大増税しかない。財政再建はもとより、経済危機打開の方向さえも明確に定められない。これで果たして一億国民の意に沿った政治を進めていると公言できるのでありましょうか。
総理は、施政方針演説において、「文化の重視、人間性の回復をあらゆる施策の基本に据え、家庭基盤の充実、田園都市構想の推進等を通じて、公正で品格のある日本型福祉社会の建設に力をいたす」との決意を語られました。しかし、今日の経済、財政の現実を見る限り、これは余りにもそらぞらしく響くのであります。低賃金と合理化を押しつけられ、失業を余儀なくされている労働者、倒産の危機に直面している商工業者、減反や離農を強いられている農民などなど、断じてきれいごとを並べている事態ではないのであります。いま・こそ、国民の生活防衛と経済再建への展望を明らかにし、財政立て直しの第一歩を踏み出すべきであります。
総理は、果たして、現下の経済、財政、国民生活の実態を真剣に改善する心構えをお持ちなのか。だとすれば、特に財政においてはいかなる役割りを持たせるつもりであるのか。さらに、国債発行について今後厳しく縮減するつもりがあるのか。これありとすれば、何をもってその条件をつくるつもりであるのか、明確にされたいのであります。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/14
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015・大平正芳
○内閣総理大臣(大平正芳君) 最初の御質問は、今日の危機財政を招いた責任についての御質問でございます。
今日、財政が大変困窮し、危機的な状況にありますことは御指摘のとおりでございます。しかし、こういう状態を招来いたしましたゆえんのものは、先ほど池端さんにも申し上げたのでございますけれども、戦後、経済を支えてまいりました内外の諸条件の構造的な大きな変化に対応いたしまして、財政がどうしても引き受けなければならぬ役割りを果たしたために生じたものでございまして、このことは、国の内外におきまして相当の評価を受けておるのではないかと思います。もっとも、この評価はまだ道半ばでございまして、財政再建を遂げて初めて固まっていくものと私どもは考えております。
第二の問題は、財政破綻の原因は何かというお尋ねでございました。
これは申すまでもなく、構造的な不況に伴う歳入の空前の欠陥が一つの原因でございましたし、経済を支えるために、民生を支えるために、大変歳出を減らすべきところを減らさないで、むしろこれをふやさなければならないような状況でございましたゆえんから生じた財政破綻でございます。しかしながら、この二つの状況は大きく変化いたしまして、ようやく財政再建に取りかかれる条件が整ってまいりましたことでございますので、財政再建の素地はできたと考えておりまして、これから鋭意再建に取り組んでまいるつもりでございます。
第三は、インフレ抑制の策についての御質問でございました。
今日まで、幸いに、そういう中にありながら、物価は、卸売にいたしましても、消費者物価にいたしましても、一応安定基調を維持できておりますことは幸いだと思いますけれども、しかし、原油の値上がりが予想されておりまするし、御指摘の国債の消化は必ずしも楽観ができない状況でもございまして、これから物価政策におきまして、われわれが細心周到な配慮をしなければならぬことは御指摘をまつまでもございません。したがって、われわれといたしましては、通貨の供給の状況、諸物価の動向に十分注意をしながら、また、生活必需物資を初めとする生活物資の安定供給を確保しながら、また、公共料金の策定に当たりましても、できるだけこれを自重する等いたしまして、インフレを招来しないように最大限の努力を重ねるつもりでございます。
第四番目には、一般消費税の導入についてのお尋ねでございました。
申すまでもなく、私どもは、いきなりこれを導入しようとしていないのでございまして、歳出歳入両面にわたりまして、いままでわれわれがやってまいっておりますることに徹底的な斧鉞を加えて、そしてしかもなお歳入が不足するという段階におきまして、それでは何を選択すべきかという場合に、政府の見通しといたしましては、また政府の判断では、一般消費税が最も適切ではないかと考えておるわけでございますが、しかし、これは財政全体に対する論議を十分深めていただいた上で、御理解をいただいた上で導入を考えようといたしておるわけでございます。
第五番目の御質問は、財政収支試算についてのお尋ねでございました。
これは、最近御審議をいただいておりまするものは昭和六十年までの展望を概観いたしたものでございまして、別途、政府がいま構想いたしておりまする新経済社会七カ年計画構想との整合性を考えながら財政の展望を編み出したものでございまして、これからの財政運営に一つの手がかりとして活用しなければならぬものと考えております。
最後に、財政経済運営の基本についてのお尋ねでございました。これから財政の役割りをどう考えるかということ、国債政策についてどう考えるかという点等についてのお尋ねでございました。
先ほど申しましたように、財政再建に取りかかる大きな条件はだんだん整ってきたように思う。これから、財政がいままでのように無理に経済に介入するということは戒めなければならぬと思うのでございまして、財政はあるべきみずからの役割りに返ってこなければならぬものと考えております。そういう中におきまして、いまの国債発行の状況というものは余りにも過大であることは御指摘をまつまでもございません。したがって、国債発行を漸次逓減してまいらなければならぬわけでございます。そうすることによって国債市場に対する圧力も減殺していかなければならぬと考えておるわけでございます。財政が不当に経済に介入することもなく、財政みずからの役割りを正当に果たすという状況をつくり上げることを、財政運営の基調にいたしたいと私は考えております。(拍手)
〔国務大臣金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/15
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016・金子一平
○国務大臣(金子一平君) 安田さんにお答えいたします。
十五兆二千七百億円の国債、是が非でもこれを年度内に消化するのかということでございますが、国債が全額消化できませんと財政の基礎が揺らぐことになるわけでございます。私どもといたしましては、いろんな経済金融情勢、資金需給等に配慮しながら全額消化するように持っていきたいと考えておる次第でございます。したがいまして、たとえば国債金利の引き上げ、引受手数料の引き上げ、資金運用部の引き受け等の新規措置を考えておるかということでございますが、引受手数料はことしのままと考えておりますし、新たに資金運用部資金の引き受けは相当額やってもらうつもりでございます。また、国債の種類、条件等につきましては、そのときどきの市場の実勢に応じたものを考えていかなければならぬと考えておる次第でございます。
それから次に、日銀の買いオペはどんな基準でやっておるのかということでございますが、これは日銀マターでございますから、私の考えを申し上げまするけれども、これは経済成長に伴って必要な通貨の供給を目的として、そのときどきの金融情勢に応じて金融市場全体を適切に調整していくという観点から行われておると考えております。金融の量的指標でございますマネーサプライの動向にも十分注意していかなければなりませんけれども、同時に、マネーサプライだけじゃなくて、あらゆる経済指標をにらみながら適切な金融政策を展開していくことが必要と考えておる次第でございます。
それからなお、財政収支試算、歳入歳出のどの面に重点を置いておるかという御質問でございまするけれども、これは両方ともに重点を置いて考えておると申し上げるほかはございません。
次に、今後十年間の国債償還の元利合計、各年度どれくらいになるかという御質問でございますが、これは簡単な試算をさしてみたわけでございますけれども、元利支払い見込み額は、五十五年には四兆二千億、五十六年が六兆、五十七年が七兆六千、五十八年が六兆七千、五十九年が六兆四千、六十年が八兆八千というようなことになるかと思います。
それからあと、税制の問題について、有価証券の譲渡益課税をいつまでに原則課税にするのかという御質疑でございますが、これは、御提案申し上げた税制改正案で段階的な課税方式に踏み込んだことは御承知のとおりでございますが、有価証券取引を把握する体制がまだ十分整備されておりません。そこへ一遍に全額課税、総合課税というようなことをやりますると、かえって新たな不公平を生むという問題もありまするから、資料の総合的な把握体制とあわせて漸次課税を強めてまいりたいと考えておる次第でございます。
それから、土地税制の緩和が地価の値上がりにつながって、大手不動産業者に不当な利益を与えるのではないかという御指摘でございますけれども、現在の土地の値段が上がっております主な原因は、私どもの見ておるところでは需給のアンバランスということでありまして、仮需要が起こっているとは考えておりません。そういった場合にあらかじめ対処するために、先般金融機関には一応の手を打ったわけでございまするけれども、今度税制改正で取り上げましたのは、優良な宅地の供給に必要な土地、公的な土地の供給に対して、きわめて制限的な条件をつけまして課税の軽減を図ろうということでございまして、これが不動産業者の優遇、不当な利益を与えるようなことになるとは私どもは考えておりません。
それから最後に、所得税や法人税に組み込まれたいろいろな減免税にメスを入れろということでございます。これは私どもとしても常時努力を払っております。貸し倒れ引当金につきまして先ほど御指摘がございましたけれども、今回二〇%切り下げることによりまして、最初の税制改正としては相当なものであると私どもは考えておるのでありまするが、なお常に社会情勢の変化を見詰めながら実情に即したものに努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/16
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017・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 大成正雄君。
〔大成正雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/17
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018・大成正雄
○大成正雄君 私は、新自由クラブを代表して、ただいま上程されました昭和五十四年度の公債発行の特例に関する法律案について、政府の考えをただしたいと存じます。
ここに政府が予定する赤字補てん債の発行規模は八兆五百五十億円とされております。去る昭和五十一年に三兆七千五百億円の特例債を発行して以来、四年続きの特例債の発行でありますが、本年度は、建設公債七兆二千百五十億円を上回り、その立場が逆転しています。
また、政府が予算委員会に提出した財政収支試算によれば、赤字補てん債の発行は昭和五十九年度以降ゼロとなっておりますが、昭和六十年次における公債残高は、実に百三十九兆六千億円の巨額に及んでいます。
これを先進各国の財政収支と比較するとき、わが国の本年度公債発行額十五兆二千五百億円は、ドル換算八百億ドルで、米国の三百九十億ドルをしのぎ、米、英、西独、仏、四カ国の財政赤字の合計額を上回る状態で、公債依存度も対GNP比率も飛び抜けて高い比率であると大蔵省は発表しています。
政府は、本年度予算の重点を景気と財政再建の両にらみで編成したと言っておりますが、かかる破局寸前の赤字財政をもたらした歴代内閣の責任は何ら明らかにされないどころか、昭和六十年までの七年間に、九兆円を上回る増税によって放漫財政のつじつまを合わせようとしております。
オイルショックや円高ショックによる日本経済の体質変化に対して、個人、民間企業はけちけち作戦と、人、物、金の減量作戦で切り抜けようとしていますが、ひとり財政は、高度成長期の後ろ向き所得移転方式を残したまま、大量赤字の財政体質改善を怠ってきたと言っても過言ではありません。ここに上程された特例公債発行のやむなき理由を、この国会を通じて国民に納得してもらう努力を政府は今日までどれだけしてきたのでしょうか。
政府は、明年四月以降を目途に大幅な一般消費税の創設を意図しつつ本年度予算を編成し、財政収支計画を発表してきたことは、本院審議の過程で明らかであります。不況、税収の落ち込み、国債の増発、増税といった財政危機論を展開しながら、歳出の見直しや不公平是正にかける努力を怠り、財政再建の責めを国民大衆の負担に押しつけようとしております。
新自由クラブは、いま財政の再建が最重要課題の一つであると考えます。過去数年間政府が取り来った財政経済政策は常に後追いであり、かつ小出しであったことが、今日の困難な状況を生み出した原因の一つであると考えます。わが党としては、これまで、減税政策が景気回復に役立つ、また景気を回復させることによって財政再建にも役立つという考えに基づいて、大幅所得減税を提案してまいりました。しかし、経済政策としての減税政策は、すでにその時期を失したといま判断しでおります。したがって、わが党は、財政再建に真正面から取り組むという方針を決定したわけであります。
ここに上程された特例債の是非を判断する大前提として、この際、私は、次の諸点について総理並びに大蔵大臣にただしたいと存じます。
第一に、わが党がこれまで主張してきた歳出面の全面見直しとゼロベース予算の編成についてであります。
今日、わが国の財政破綻と硬直化の元凶は、医療及び健康保険、食管制度、国鉄のいわゆる三Kと称されるものであります。
本年度厚生省予算中、医療保険制度の予算は二兆四千二百三十七億であります。国民総医療費は十兆円にも及ぶとされております。その四割は薬代、またその半分近くがむだにされているとの調査結果もあります。高度医療や難病奇病に思い切った金をかけることは私は大賛成ですが、医療のロスを排除することは、財政と国民負担を軽減するため、きわめて重要であります。しかるに、厚生省は、医療監査指導体制整備費として、わずかに千五百万円を本予算に計上しているにすぎません。
また、食管制度においては、あり余る古米の処理に莫大な財政負担が強いられ、なおかつ、本年度、一般会計から調整資金として、六千三百四十億円もの巨費が繰り入れられています。
国鉄も同様、運賃を値上げしても、なおかつ一般会計からの財政措置は六千百八十一億円を、また、財投として一兆二千五百二十三億円を投じ、加えて、赤字の拡大再生産が必須とされる新幹線整備五線の着工までもくろまれています。
大平総理は、財政運用の発想の転換を主張していますが、八兆五百億もの赤字補てん債を発行しなければならない財政の運用ぶりは、果たして発想の転換と言えるのでしょうか。
また、総理は、信頼と合意の政治をスローガンとしておりますが、党内の合意はあっても、国民の合意にはほど遠いのではないでしょうか。
その代表的一例として、社会保険診療報酬課税の特例の是正があります。一般消費税導入の敷石として、政府が重い腰をようやく上げたことを評価するに私はやぶさかではありませんが、税調答申の四段階是正まで政府はなぜ踏み切れなかったのか。
政府が予算委員会に提出した資料では、昭和五十年分所得一千万円以上の医療事業等従事者の経費率の実態は、内科五二%、外科五五%、産婦人科六〇%と報告されています。なおかつ、改正案による所得二千五百万円以下七二%控除の該当数は全体の半数にも及ぶと言われます。このような骨抜き改正で、赤字国債発行、増税のやむなきを納得しろと言っても、国民は理解できないのではないでしょうか。
また、大平総理はチープガバメントへの改革を訴えておりますが、わが党の河野代表が代表質問で機構の簡素合理化や補助金行政の改革を要求したことに対して、総理は、河野さんは性急過ぎると答弁したのみで、具体的な提案は今日まで何一つ行わないのみか、予算委員会の答弁では、行政改革がいかに困難であるかのみを宣伝しています。
五十三年度一般会計における補助金総額は十一兆三千二百十九億円に及び、一般会計予算規模の三分の一を占めていると言われます。行政管理庁が補助金行政を追跡調査した内容と、その事実認定による財政資金のロスが、この予算においてどこまで生かされているのかも承りたいと存じます。
第二に承りたいことは、国債の売れ行き不振についてであります。これが改善策として、発行条件の多様化や弾力化について大蔵大臣は前向きの答弁をしておられますが、具体的対処が欠けでおりますので、重ねてただしたいと存じます。
去る二月七日、六・二%国債の東証上場価格は、発行価格九十九円五十銭に対して最低九十五円二十五銭へ応募利回りの格差〇・七%強でありました。かかる実勢に対する発行債の消化促進は、流通市場の実勢に対応して発行条件を改善し、魅力を高める以外にないのであります。すなわち、市場の論理に整合した発行条件を整備すること、具体的には金利の引き上げ以外にないと思います。しかし、政府は依然として重い腰を上げようとしません。金利負担の増大が心配なのか、あるいはまた、目下予算の審議中で、途中で国債費の修正が気がかりなのかわかりませんけれども、こうした姿勢がいつまでも許されるわけがありません。
五十三年度発行残一兆円の消化に加えて、五十四年度公債金収入十五兆二千七百億円を確保するため、政府は国債の魅力づけにいかに対処しようとしているのか、承りたいのであります。
さらに、発行条件の多様化として、手形市場や現先市場の事業法人や金融法人の余資吸収や、政府の利子負担軽減に益する超短期債の発行や、資金運用部資金による国債消化の増大見込み等についても承りたいと存じます。
第三には、政府は、昭和五十九年度に特例債の発行をゼロにするため企図する増税路線について承りたいと存じます。
その第一点は、わが党の西岡幹事長の予算委員会の質問で、一般消費税の導入は直接税と間接税の比率を五対五に持っていくことも考慮のうちであると大蔵大臣は答弁していますが、五対五に至ったときの一般消費税の税率はしからば何%ぐらいと想定されておるのか。
第二点は、この税と物価との関係で、五%課税とした場合、大蔵省の試算では物価を二・五%押し上げるくらいというが、果たしてその程度におさまる確信があるのかどうか。
第三点は、一般消費税のデフレ効果であります。大蔵省は景気に対しては中立であるというが、中期経済計画の想定する実質六%前後の成長率は維持できるのか。デフレ効果の測定はどうか。
第四点は、一般消費税は果たして財政再建のために創設されるのか。であるとすれば、赤字補てん債の発行ゼロの時点でその使命を果たし終えて廃止することもあり得ると考えてよいのか。または福祉税ともいうべき目的税の性格なのか。
以上四点をただして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/18
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019・大平正芳
○内閣総理大臣(大平正芳君) 第一の私に対する御質問は、政府の財政刷新の努力が不徹底であるという御指摘でございまして、大成さんが御指摘になるように、医療経済、食管制度、国鉄、いわゆる三Kによる財政硬直化でございますとか、今回行われました租税特別措置の改善措置、それから定員、機構等を極力抑制しておる現在の行政改革のやり方、御指摘のように、これは完全なものとは申されません。精いっぱいやっておりまするけれども、さらに歩武を進めなければならぬことは御指摘を待つまでもございません。私どもは、こういった硬直化の一々の要因につきまして丹念にメスを入れまして、大成さんの言われる財政刷新の実を上げてまいるように努力してまいらなければならぬと考えております。御質問を通じて、政府に、欠陥を指摘されながら激励をいただきましたことを感謝いたします。
それから第二の、国債政策でございますとか、一般消費税のデフレ効果その他、若干技術的な点がございますので、大蔵大臣の方からお答えいたします。
〔国務大臣金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/19
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020・金子一平
○国務大臣(金子一平君) 大成さんにお答え申し上げます。
第一点は、社会保険診療報酬の課税が不十分でないかという御指摘でございますが、この席でも申し上げましたとおり、二十五年間にわたって手がつかなかったものの大改正をやったわけでございまして、四千万円以上のものにつきましては政府税調の案と完全に同じものになっております。それ未満のものにつきましては、都市と農村を問わず地域診療に従事されておられるお医者様の公共性を勘案いたしまして、若干の手直しをしておるということでございまして、これは相当の前進とお考えいただいていいと思うのであります。
それから、国債の問題でございますが、国債の多様化、金利の自由化によって魅力ある国債をつくるべきであるという御指摘、全くそのとおりであると思います。十五兆というような大量の公債を発行するわけでございまするから、来年度におきましては、資金運用部資金で一兆五千億引き受けてもらう、二兆七千億を公募入札に付する、あとシンジケート団に引き受けてもらうというようなことで、しかも、公債の種類、条件等につきましては、いろいろの工夫をこらして、できるだけひとつ完全消化に持っていけるように努力をしておることを申し上げておきたいと思うのでございます。
それから、次に第三点として、行政管理庁の補助金行政の追跡調査の内容と事実認定における財政資金のロスがどこまで生かされておるかという御指摘でございまするが、補助金の整理、合理化につきましては、五十四年度におきましても特に注意をいたしましたが、総額千二百億円を上回る廃止、減額を予定しておる次第でございます。行政管理庁の調査につきましても、予算編成の際には十分活用するように努力しておることを申し上げておきたいと思うのであります。
一般消費税につきましては、私が予算委員会で、将来、五対五に直間比率を持っていきたいということを答弁した、その五対五の中の一般消費税の率は何%と考えておるのだという御指摘でございますが、これは御承知のとおり、中成長の時代になって、直接税だけにもう税収を頼るわけにいかないので、だんだんと切りかえていくとすれば、五、五が理想の線と、世界各国でも、特にECの各国、アメリカ等では考えておりますし、わが国でもそういうことを目途にして考えるべきだろうと申し上げた次第でございまして、中身が一般消費税何%と的確に把握して答えておるわけではございません。
それから第二点として、税率五%とした場合に、物価にはね返るのが二・五%と大蔵省は試算をしておるがその程度でおさまるのかという御質問でございますが、いま大蔵省でいろんな専門家に頼んで試算してもらっておるところでは、二・五%程度でおさまっておるということでございます。各方面からいろんな御指摘がございます、御提案がございますので、この点は十分今後も詰めてまいりたいと思っておる次第でございます。
それから、一般消費税のデフレ効果はどのように測定しておるかということでございまするが、一面においてデフレ効果がありますると同時に、これはどの税についても同様でございます、それを歳出として予算に組むわけでございまするから、両面を考えたら、実質六%の経済成長は十分できると考えておる次第でございます。
それから、一般消費税が財政再建のための税金なのか、あるいは福祉目的にしておる税金なのかということでございまするが、当面は両方の目的を持っておるわけでございまするけれども、やはり今後の日本の老齢化社会の形成の見通し等を考えまするならば、もう一般消費税は全額この福祉予算につぎ込まなければ日本の財政がもたないというところまで来ておる、またそういう見込みで今日いろんなことを申し上げていることを申し上げて、私の答弁といたしたいと思います。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/20
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021・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/21
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022・灘尾弘吉
○議長(灘尾弘吉君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時二十三分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 大平 正芳君
大 蔵 大 臣 金子 一平君
出席政府委員
内閣法制局第三
部長 前田 正道君
大蔵省主計局次
長 吉野 良彦君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108705254X00819790215/22
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