1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十四年四月十一日(水曜日)
午後一時三分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 坂野 重信君
理 事
梶木 又三君
藤田 正明君
和田 静夫君
中村 利次君
委 員
浅野 拡君
糸山英太郎君
嶋崎 均君
戸塚 進也君
藤井 裕久君
細川 護煕君
勝又 武一君
竹田 四郎君
福間 知之君
多田 省吾君
佐藤 昭夫君
市川 房枝君
野末 陳平君
政府委員
大蔵政務次官 中村 太郎君
大蔵省主計局次
長 吉野 良彦君
事務局側
常任委員会専門
員 伊藤 保君
参考人
全国銀行協会連
合会副会長 赤司 俊雄君
日本証券業協会
会長 山内 隆博君
一橋大学教授 大川 政三君
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本日の会議に付した案件
○昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・坂野重信
○委員長(坂野重信君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、全国銀行協会連合会副会長赤司俊雄君、日本証券業協会会長山内隆博君及び一橋大学教授大川政三君の三名の方々に参考人として御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
参考人の方々には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じております。
これより、参考人の方々に順次御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進行上、お一人十分程度でお述べを願い、参考人の方々の御意見の陳述を全部終わりました後に、委員の質疑にお答えしていただくという方法で進めてまいりたいと存じますので、御協力をお願いいたします。
それでは、まず赤司参考人からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/1
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002・赤司俊雄
○参考人(赤司俊雄君) ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会の赤司でございます。
平素は大変お世話さまになっておりましてありがとうございます。本日は、松沢会長が海外出張のため不在でございますので、副会長の私、失礼申し上げます。
本日は、財政特例法案に関する私どもの意見を申し述べるようにとのことでございますので、特例国債並びに国債問題一般につきまして、私の意見あるいは希望を概括的に申し述べさせていただきたいと存じます。
御高承のとおり、わが国経済は、昨年後半以降、国内需要が底がたい動きを示し、企業収益も次第に改善の方向に向かうなど、緩やかながらも着実な回復過程をたどりつつございます。このように、石油ショック後五年にして民間経済はようやく長い混迷の時期を脱し、自律的な回復力を見せ始めつつあるのではないかと思われます。
しかしながら、一方で財政赤字を初めとして、一部構造不況業種の不振、雇用問題、不透明な石油情勢等々、重要な問題が引き続き存在しております。これらの難問を解決し、わが国経済を均衡のとれた安定成長軌道に移行させることはきわめて重要な課題であると存ずるのでございます。
以上のように、わが国経済の現状を見てまいりますと、財政金融政策に課せられました責務は今後とも非常に大きいものがあると思うのでございます。
このような観点から、先日、当国会において可決成立されました五十四年度予算を拝見いたしますと、非常に厳しい財政事情のもとで、財政に期待される役割りを果たしていくという困難な目的に沿ってかなりの御努力の跡がうかがわれると存じます。
すなわち、財政の再建を目指して一般会計全体の規模の抑制を図る一方、需要創出効果の大きい公共事業費には重点的な資金配分を行って景気対策にも配慮を加えた点など、予算編成上の苦心が察せられるところであります。
このように、五十四年度予算において財政健全化の方向に一歩踏み出されましたことはまことに結構なことと存じますが、行政機構の簡素化や支出の見直しなど、なお一層の財政改革の推進が望まれるところであります。
さて、ただいま当委員会で御審議されております昭和五十四年度における公債の発行の特例に関する法律案は、五十四年度予算を財源的に裏づけるものでございますので、やむを得ない措置と考える次第でございます。
しかしながら、八兆五百五十億円という特例国債の発行予定額は、前年度に比べますと実に六割以上も大幅にふえており、かつ、建設国債の発行予定額を上回るということでありまして、きわめて異例の事態と申さざるを得ないのであります。このような、いわゆる赤字国債は当面の緊急的措置であって、事情が許す限り、可及的速やかに圧縮、解消を図る必要があると存ずるのであります。
私どもといたしましては、いままで申し上げました状況を踏まえて、国債の引き受けにも相応の努力をいたしてまいる所存ではございますが、大量の国債発行に関連いたしまして、国民経済的観点から二つばかり申し述べたいと存じます。
第一は、財政の硬直化の懸念がより一層強まっておる点であります。
五十四年度予算におきまして、国債費は歳出の一〇%以上を占めており、国債発行増加額の実に九五%に達しております。財政がそのときどきの経済情勢に適切に対応し、景気調整機能を有効に発揮していただくためには、何よりも財政の弾力性の維持が必要であります。行財政の合理化、効率化と節度ある財政運営にぜひとも御留意いただきたいのでございます。
第二は、インフレーションの問題でございます。
国債の大量発行そのものが直接インフレーションをもたらすわけのものではありませんし、また、昨年後半以来緩やかな増加傾向にあるマネーサプライにつきましても、現在の水準が直ちにインフレーションに結びつくとは必ずしも言えないと存じます。しかし近い将来、円相場や石油価格、さらには内需の動向いかんによりましては、インフレーションの問題が再燃する可能性は十分考えられるところでございます。
また今後、景気の回復に伴って民間資金需要が出てまいりますと、民間部門と公共部門の資金需要が競合するという事態は当然予想されるところでございます。このような状況のもとにおきましてはマネーサプライのコントロールは非常にむずかしくなってまいりまして、下手をするとインフレーションを表面化させるおそれが多分にあるということでございます。
かかる事態を回避し、物価の安定を確保しつつわが国経済の健全な発展を図るためには、財政体質の一層の改善に努めることがきわめて重要であるということを指摘させていただきたいと存じます。
最後に、私ども国債の最大の引受手である民間金融機関の立場から若干のお願いを申し上げたいと存じます。
第一は、適切な国債管理政策の展開に格段の御努力をお願いいたしたいということであります。
この一年間、公募入札による中期国債の発行、十年債の発行条件の弾力化など、画期的な政策展開がございましたが、この動きをさらに推し進めていただきたいと存ずるのでございます。
そしてこのためには、国債発行条件の弾力化、自由化を一層促進し、市場の実勢を反映した適正な発行条件とすることが何よりも肝要であると思われます。具体的には競争入札の方法など、金利機能を活用した発行制度をさらに拡充することが必要であると考えます。
また、流通市場の整備を図ることが必要であります。これと関連いたしまして、金融機関の保有国債の流動化を一層促進して市場の拡大を図ることが、大量の国債の円滑な消化を促進する上でも非常に重要なことではないかと存じております。
要望の第二点は、国債の最大の引受手であります私ども民間金融機関の資金吸収力の強化に格段の御配慮をいただきたいということであります。
昨年度上期の全国銀行の国債引受額は、預金増加額の実に五五%にも達しております。
今後の国債の大量発行に備えて民間金融機関の資金吸収力を高めることは、国債の円滑な引き受け、消化にとって最も基本的な条件であると思われます。
最後に、すでに申し述べましたとおり、わが国経済は、いまや物価の安定と景気の回復の同時達成という非常にむずかしい政策課題に直面しております。この点、財政政策、金融政策の機動的、弾力的運営に万全を期していただくことを切望する次第でございます。
以上をもちまして私の愚見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/2
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003・坂野重信
○委員長(坂野重信君) どうもありがとうございました。
次に、山内参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/3
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004・山内隆博
○参考人(山内隆博君) ただいま、委員長から御指名をいただきました日本証券業協会の山内でございます。
委員の皆様方におかれましては、平素何かと証券市場の問題につきまして御配慮を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。
本日は、昭和五十四年度の国債の発行の特例に関する法律案につきまして意見を申し述べるようにということでございますので、証券界の立場から所感の一端を申し上げて御参考に供したいと思います。
さて、最近の経済情勢は、公共投資を中心といたします景気刺激策の浸透によりまして、個人消費、住宅投資が堅調に推移するなど、景気に回復のしるしを見せ、企業収益も次第に改善に向かっているように見受けられます。
しかし、雇用情勢がまだ厳しい状況にありますほか、最近に至りまして原油価格の引き上げや円安の問題も加わりまして、経済の先行きは必ずしも楽観を許さないものがあると思います。
このような経済の現状から見まして、さきに成立した昭和五十四年度予算は、厳しい財政事情のもとで民間経済の活力を引き出し、景気回復の基調を定着させることに配慮されるとともに、経常的経費の節減を行うなど、中期的展望のもとに財政の健全化にも努められておりまして、現在の状況のもとにあっては妥当なものと考えている次第でございます。
このような観点から、五十四年度予算に計上されております八兆五百五十億の特例国債を含めまして総額十五兆二千七百億円の国債発行は、私どもといたしましてもやむを得ないものと存ずる次第でございます。
私どもは、この特例法案ができるだけ速やかに成立し、年度を通じて計画的に発行が行われるよう期待しているものでございます。
証券界におきましては、これまで国債の個人消化の拡大に鋭意努力を重ねてまいったところでございますが、五十四年度におきましても引き続き全力を挙げてその消化に取り組み、財政の円滑な運営にいささかでもお役に立ちたいと考えている次第でございます。
本日は、せっかくの機会でございますので、私ども証券界が担っております国債の個人消化の最近の状況につきまして申し述べますとともに、二、三の点についてお願いを申し上げ、委員の皆様方の御理解を賜りたいと考えております。
まず、昭和五十三年度中の国債の個人消化の状況について申し上げますと、御高承のとおり、昨年の後半から金利の底打ち感などによりまして、流通市場での国債の利回り上昇が目立ち始めましたが、さらに今年に入りまして市場価格が一段と低下傾向を示し、本年三月に資金運用部により約三千億円の国債の買い入れが行われ、また、三月債から発行条件の改定が行われましたものの、今日に至るまで国債の市場価格の低落傾向が続いており、募集はきわめて困難な状況にございます。
このようなまことに厳しい消化環境のもとにございまして、昭和五十三年度中の国債の市中公募額十兆四千九百十八億円のうちで、証券会社の取り扱い額は、割引国債、中期国債を含めまして二兆六千七百三十六億円となり、五十二年度を約三千億円上回ることができました。
もっとも、十年物の長期国債についてだけ見ますと、証券会社取り扱い額は一兆七千八百六十億となっておりまして、史上最高でございました昭和五十二年度の二兆六百六十億円を若干下回った結果になっております。しかし、消化環境が著しく厳しさを加えた五十三年度において、このような消化実績を挙げ得ましたことは、御当局初め関係各位の御理解、御協力と、私ども証券界が挙げて国債の個人消化に努力を重ねてきた結果によるものと存じている次第でございます。
本年度につきましても、なお一層厳しい消化状況が続くものと予想されますが、こうした状況のもとで、五十三年度をさらに上回る大量の国債を円滑に消化していくためには、並々ならぬ努力が必要であると存じます。国債の個人消化を担う証券界におきましても一層の工夫と努力を重ね、安定的な投資層の拡大を図ってまいる所存でございますが、個人消化促進のためには、政策当局のきめ細かい配慮が望まれるところでございます。
このような観点から、次の諸点につきまして委員の皆様方の御配慮を特にお願いをしたいと存じます。
そのまず第一でございますが、国債の発行条件を流通市場の実勢に即したものにして、国債を投資対象として常に魅力あるものにする必要があるということでございます。
最近の情勢を見ますと、国債の流通市場での価格が急落を続けており、国債の流通価格と発行価格との間の乖離は一段と拡大しつつございます。このような状況が続きますと、国債の円滑な個人消化の拡大に重大な支障が生じてまいります。三月債から発行条件の改定が行われましたが、今後とも市場の状況に即応して発行条件の弾力的、機動的な改定をお願いをいたしたいと存じます。
第二は、投資家のニーズに合わせて国債の種類の多様化、期間の短期化を図っていただきたいということでございます。
近年、個人の金融資産は急速に増大をしており、これに伴いまして投資家の投資選好も多様化してまいっております。このような状況のもとにあって、期限の多様化が最も要請されるところでございます。こうした投資家のニーズに合うよう配慮していけば国債の個人消化も順調に進んでまいるものと存ずるのでございます。
わが国では、一般的に投資家は短期債への志向が強いということはよく言われているところでございますが、特に最近のように先行きに不透明感が出てきますと、その傾向は一層強くなってまいります。
幸い、五十四年度は三年物利付国債が増額されるほか、新たに二年物及び四年物の利付国債の発行が予定されておりますが、これは投資家のニーズに応じた適切な措置であると存ずる次第でございます。今後、こうした中期債の発行額を情勢の推移に応じて当初予定額よりも増額するということをぜひ御考慮願いたいのであります。
第三は、国債の市況対策についてでございます。
申すまでもありませんが、国債といえども有価証券であります以上、価格が変動することは不可避でございます。特に、最近のように国債の市中残高が累増し、先行き不透明感が出てまいりますと、需給関係や市場心理によりまして市場価格が大幅に変化することも十分考えられるところでございます。
もとより、人為的な国債価格支持政策をとるべきではないということは申すまでもないことでございますが、国債の信用維持のために、国債の市況対策として資金運用部による買い入れ、国債整理基金の活用、さらには、日本銀行の買いオペ等を機動的、弾力的に実施されるようお願いしたいと思います。
最後に、国債の流通市場の整備、改善について申し上げます。
御高承のように、国債の売買高は近年急速に増加しておりますが、五十三年度には六十八兆円と、公社債総売買高二百六兆円の三分の一を占めるに至っております。いまや、国債は名実ともに流通市場の中核になっておりますが、これに伴って国債の流通市場の整備充実を図ることがいよいよ重要性を加えてきております。
私ども証券界におきましては、ここ数年来、国債を中心とする公社債流通市場の整備充実策について業界を挙げて諸般の改善策を講じてまいりました。
最近では、昨年二月に国債の店頭指標気配を証券業協会から発表することとし、さらに八月からは指標気配の内容を売り気配、買い気配に細分して発表するなど、店頭市場における価格動向を的確に投資家に提供するための改善策を講じてまいりました。
また、本年四月から、取引所における売買取引制度に大幅な改善が加えられ、国債の大口取引制度が新しくスタートしております。これによりまして国債の流通価格に対する信頼性がより一層高まることが期待されております。このほか、流通市場の拡大に対応し流通の円滑化を図るため、公社債の保管、管理業務を合理化するための諸施策についても鋭意検討を進めているところであります。この点につきましても委員の皆様方の御支援を賜りたいのであります。
以上、所見の一端を申し述べた次第でございますが、証券界は国債の個人消化、国債の流通市場の担い手としてその使命を十分に自覚し、今後一層努力を傾けてまいる所存であります。委員の皆様方におかれましては、証券市場の実情について一層の御理解を賜り、今後とも証券市場の拡充、発展のため御配慮くださいますようお願いを申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/4
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005・坂野重信
○委員長(坂野重信君) どうもありがとうございました。
次に、大川参考人にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/5
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006・大川政三
○参考人(大川政三君) ただいま御紹介いただきました大川でございます。
私は一橋大学におきまして財政学を勉強している、そういう関係から、本席、国民経済における財政の機能並びに予算編成方式に関係づけながら、特例公債という収入補てん公債の意義を考えてみたいと思っております。
もう少し端的に申しますれば、予算の効率性を促進するという立場から公債収入がどのように意義づけられるか、評価されるのかということを考えてみたいと思っております。
言うまでもなく、国民経済を構成している経済単位は、企業、家計、財政という三つの特徴ある経済単位が挙げられるわけでございますが、この中で財政が国民経済においてどういうような機能を果たすのかということを考えますと、その最も基本的な国民経済的機能は、民間資源を政府の手に移し、それを政府用途に利用することによって国民経済全体としての有限資源の社会的効用度あるいは経済的効率性を高めると、これが財政の最も基本的な機能と考えております。
私のこういうような基本的立場は、財政の非常に重要な機能が景気安定機能にあるというような考え方に若干疑問を持つことを意味するわけであります。そういう景気安定機能を否定する考えはございませんけれども、その優劣の度合いから言うと、私は資源配分の効率性を高めることが、これが財政の最も基本的な機能と考えております。
そういう効率的な資源配分ということを行うための手段として、政府は一方では租税、公債収入、受益者負担などの貨幣収入を獲得し、反面においてその支出によって人的、物的資源を入手し、政府目的に利用する計画を立てることになります。
以上のように、財政の基本的機能を国民経済資源の効率的利用促進にあると考えるとき、租税収入と比較して公債収入がどのように意義づけられ、特徴づけられるかと、そういうふうに考えることになりますが、この問題を考える前にまず明確にしておきたいことは、財政による経済的効率性促進効果の有無とか大小を判断し得るためには便益と費用関係が明らかにされなければならない。すなわち、政府の貨幣支出面から期待される国内治安便益とか道路交通便益とか、あるいは教育便益等々の諸便益に対比して、政府が貨幣収入を得る際の社会的費用が明らかにされなければならないと考えます。このように一方の貨幣支出に伴う社会的便益と、他方の貨幣収入を獲得する際の社会的費用とを比較した上で政府が取り上げるべきプログラムになるのかならないのかの最終的決定を行うところに効率的財政を実現する努力の急所があると思います。
ここでは簡単に便益費用関係と呼ぶことにいたしますが、この便益費用関係を明確にせず、あるいは便益の一面だけを強調することによって政府の支出額を増加させていく、そういう予算編成の手法は経済的効率性を損なう決定に尊きやすい、すなわち政府支出の非効率的な膨張を招きやすい危険を内蔵していると言わなければなりません。
しかしそうは申しましても、政府予算の編成並びに審議においてその便益費用関係は必ずしも重視されてきたとは言えません。企業の場合とは異なり、政府の行ういろんなプログラムについてその測定が非常にむずかしいという理由などから、現実の問題としては、便益費用関係を明らかにすることについて各国ともそれほど大きな努力を払ってきたとは申し得ません。
しかし、その中においてアメリカ連邦政府が各方面から実践的な困難性を指摘されながら、ジョンソン政権のもとでのPPBSから現在のカーター政権のもとでのZBB、ゼロ・ベース・バジェティングヘと現実の予算編成手続に乗せながら効率的予算への努力を重ねてきていることは注目されるべきことだと見ます。
間々、ゼロベース予算というのはゼロから出発することだというふうな解釈がございますけれども、ゼロベース予算の本当のねらいは、先ほどの便益費用関係を明らかにしながら予算決定を行うと、そこにあります。そういう意味で一言申し上げたいと思います。
そこでもし、ついでながら、最近安上がりの政府という言葉の解釈をめぐって政府見解を統一するような、そういう記事が出ておりましたが、これはもともと私は、安上がりの政府ということの真意は効率的な政府を目指すことだというふうに私としては考えておりましたもので、あえてそのように訂正するまでもなかったんではないかと、しかし現実には安上がりの政府は余りに文字どおり解釈する考え方があるので、そういう訂正が行われたと思いますけれども、安上がりの政府の真意はやはり効率的な政府を目指すことにあると、そういうふうに考えております。
もし、そのように安上がりの政府のスローガンが意味するような真に効率的な政府を、政府はもし真剣に目指すのであれば、私はその必須条件として、先ほど述べたような便益費用関係を明らかにする努力を真剣に払っていくべきである。言葉を変えて申しますれば、政策の費用意識を高めなければいけない。そのような費用意識が明らかになるような予算編成の仕組みを考えていくべきである。もし、そういう政策の費用意識の低いあるいは費用意識のないところには効率的な政府はあり得ないと思います。権利意識が先行し過ぎて費用意識が乏しいところに財政費の根本的な原因があると思っております。
次の問題は、それではいかなる政府収入を用いたときに政府費用が明らかになる、そういう意味で租税収入と公債収入を比較することになりますが、言うまでもなく公債収入を得る場合の安易さから比べますと、租税収入に依存する場合の方が費用意識を痛切に感ずると、そういう意味では、一般的には費用意識を高めるために租税収入の方が優先さるべきであると、そういうふうに考えます。
と申しましても、現に行われておりますように、すべての政府支出を租税で賄えばよろしいというわけではございませんで、現に行われておりますような建設公債というようなものが行われ、ある意味で正当化されているわけでございますが、私はこの建設公債についても若干、三つばかりちょっとコメントさしていただきたいと思います。
建設公債で建設投資経費を賄えば、その費用負担は将来の世代に転嫁され公平であると、こういうような議論があった上で建設公債というものがジャスティファイされる。世代問の公平化ということで建設公債が正当化されておると思いますけれども、そのためには、その公債がインフレ的な影響を及ぼさない状況の中で発行されると、こういう条件が整いませんと、建設公債ならば将来世代に転嫁されて公平である、だから建設公債はいいんだという議論にはならないかと思います。もし、インフレを醸成するような状況の中でその公債が発行されるならば、これはその建設公債の負担は将来世代の負担にはならず、むしろ現在世代の負担になるということで、負担公平論は成り立たなくなります。成り立つとすれば、インフレ的影響を及ぼさない範囲内でその公債が発行されるということが必要であります。
それから、もう一つ建設公債についてのコメントとしましては、建設公債というのがいま申しましたように世代間の公平論という立場から正当化されておるのが一般でございますが、効率性という立場からも正当化される余地を持っておると思います。将来長く便益を与えるような投資的な経費を租税で賄おうとしますと、過小的な過小投資支出になりかねない。適正な投資支出を賄い得るためには公債にその財源を求めた方が適正な量の建設投資が行われると、そういう意味での効率性に基づいた正当化の議論もあると思いますが、この点は余り世上議論されないように思っております。
さればといって、建設投資であれば公債に仰いですべてがいいんだということにはなりませんで、やはり建設投資そのものについても先ほど述べたような費用便益の分析を厳密にやる、このことなくして、建設投資としてその支出が当然にジャスティファイされ建設公債がジャスティファイされる、そういう単純な議論ではいくべきではないと、そういうふうに思っております。
そのようなことから、それでは一体、建設公債はそうであるとしても、特例公債、赤字公債にはどんなような論拠があるのか。
いままで私が申し述べてきた議論から言うと、余り赤字公債を認めるような積極的な論拠は求められず、むしろ排除されなければならないということになるわけでございますが、仮にそういう収入補てん公債が認められる余地がもしあるとすれば、それは次に述べるような予算組み立て方式のもとであると思います。
その予算組み立て方式というのは、最初にまず政府支出の大きさが便益面のみを考慮して、あるいは絶対的に評価されながら、政府支出の総額が決定される、これが第一の手続であります。
その政府支出の総額を賄うために、第二の手続として税収入の見積もりが現行税制のもとで行われる、これが第二の手続です。
もし、その政府支出の総額と収入見積もりの間にギャップがあるとすれば、そのギャップを埋めるための措置として考えられるのが増税であり、それから収入補てん公債の発行であり、それから、あるいは支出の一律削減という方法が考えられます。この増税とか支出の一律削減というのはなかなか利害関係者の反対が多くて実行可能性がないというところで、比較的収入補てん公債に依存されやすいということになるわけでございますが、そういうような予算組み立て方式、すなわち、かつて戦前の財政学の教科書で言われたような重出制入方式、出るをはかって入るを制す、こういうような重出制入方式の場合にはそのような収入補てん公債がジャスティファイされる余地もあろうかと思いますが、私はそのようなやり方はこれからは必ずしもそれで継続すべきではなく、やはり支出面と収入面とを質的に結びつけながら効率性を求めていく、そういうようなやり方に真剣に取り組まない限り、なかなかこの公債依存度は低くならないし、また、赤字公債というものが基本的にはなくならないのではなかろうかと、そういうふうに思っております。
大変自由勝手に申しましたが、以上で一応終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/6
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007・坂野重信
○委員長(坂野重信君) ありがとうございました。
以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/7
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008・竹田四郎
○竹田四郎君 どうもいろいろ御意見いただきましてありがとうございました。
赤司参考人にお伺いをしたいと思いますが、先ほどもお話しの中で、これからの限界預証率ですか、に関するお話があって、昨年は預金のうちの五五%を公債の購入に充ててしまっているというお話があったわけでありますけれども、いまちょっと国債の市場価格というものが暴落をしているわけでありますけれども、政府の方が現在の発行条件というものを変えるのか変えないのか。変えそうな空気もあるんですが、どのくらい変えていくのかまだ明らかではないわけでありますけれども。
きのうも理財局長が、現在の条件では五月の発行は非常にむずかしい、できないというようなお話がありたわけでありますが、現在都銀が一体でどのくらい引き受けられるのか。これはもちろん将来変わってくると思いますが、現在条件で一体どのぐらい引き受ける見通しがあるのか。
それから次の問題は、いま都銀が持っている国債というのは相当あると思うんですけれども、国債価格がこのように下がってきますと、恐らく三月決算の都銀の評価損というのはかなり出てくるだろうと思います。一体これがどのくらい出るのかという点ですね。
それから次の三番目の問題は、これは山内参考人にもお伺いしたいんですが、去年は銀行の窓口販売、これがかなり銀行とそれから証券業界といろいろな論争があって、これについても最終的な結論というのはいまもってついていないわけでありますが、これについては一体どう考えられるのか。この点をひとつ、山内参考人には赤司参考人とあわせてこの問題について現在どういうふうに考えておられるのか、こういう点をお聞きしたいと思います。
それから赤司参考人には、もう一つクラウディングアウトの心配ですね、内需——お話もあったと思うんですけれども、これが一体どうなっているのか。先ほどのお話ではそういう心配があるという点だけ仰せられたんですが、もう少し突っ込んで、その辺は一体どうなんだろうか。まあこの問題が、恐らく国債消化についても問題が出てくるでしょうし、そんなことであります。
それからもう一つこの際お聞きしておきたいんですが、国際の市場価格を維持——これは余りどんどん下げていっても困るし、それから政府側として条件を改定するにしても、これは無制限に改定するということになりますと、国債費の問題で将来の財政の硬直化というものをますます強めていくわけでありますけれども、そういう条件の改定に余りかかわらないで、まあ幾らかそれは直してもらわにゃならぬということは現実の問題でありますけれども、そういうことでなしに、もう少し国債の価格というものを維持していく方法ですね、何かないだろうか。これはできたら山内参考人にもその点をお聞きしたいと思いますし、まあ証券会社があえて売り込むためにかえって安くしてしまっているんだという証券業の、何というんですか、ビヘービアについてもいろいろ議論があったところでありますけれども、その辺についてもひとつお話を承りたいと思います。
それから大川参考人のお話、非常に私貴重な御意見だと思います。やはりもう少し綿密に費用便益分析というのはやっていかないと、ただ単に大きな公共事業やればそれで景気がよくなるというだけのものでは私もないと思うんで、非常に貴重な意見だと思いますけれども、具体的に日本でこれからそれを適用していかなくちゃならない時代に入っていると思いますし、私も先生の本ちょっと読ましていただきまして、そういう分析の必要性というのは去年の予算委員会でも私はこの点は申し上げたつもりでありますけれども、日本でこれからやるとすれば具体的にどんな手続で始めていったらいいのか。いまの先生のお話、非常に時間がなかった関係もあろうと思いますけれども、余り具体的に、どうしていくのかというプロセスですか、こういうようなものについてもう少しひとつお話しをいただきたいと思います。
以上一応、後でまた出てくるかもしれませんけれども、以上で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/8
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009・赤司俊雄
○参考人(赤司俊雄君) それではお答えを申し上げます。
ただいまの竹田先生の私への御質問は、第一点が、どのぐらいいま国債引受シェアがあるんだろうと。第二点が、三月期決算でおまえたちは一体どのぐらい評価損が出るのであるかと。それから第三点が、例のクラウディングアウトの問題をもうちょっと突っ込んで話せと、こういうこと。それから第四点が、余り条件改定しないで何とかうまくいく方法何かないのかと、こういうことであったと存じますが、よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/9
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010・竹田四郎
○竹田四郎君 窓販の問題をちょっと、銀行側でどんなふうにお考えになっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/10
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011・赤司俊雄
○参考人(赤司俊雄君) 窓販でございますか。
第一点でございまするが、シェアは、実は全国銀行で基本シェアが大体五十三年度で全体の七〇・九%、約七一%でございます。ただし、昨年度引き受けの実績から見ますと六一・五%になっております。その中で都銀は基本シェアが約七一%のうち三八%になっております。それから、昨年度の実際の引受実績は三三%ということでございます。全体六一・五%のうちの三三%というのが五十三年度の実績でございます。
それから第二点でございますが、評価損発生額でございまするが、まだ三月決算が正確には出ておりませんから大ざっぱなことしか申し上げられませんが、全国銀行で推定大体千四、五百から千七、八百ぐらいまでいく可能性がある。それから都銀だけで申しましても大体七百から千くらいの間いくんじゃないか。私どもの銀行一行だけでも百億近い評価損を計上しなくてはいけないんではなかろうかということも現在考えられます。大ざっぱなお答えでございます。
それからクラウディングアウトの問題でございますが、これ大変むずかしい御質問でございまして、御答弁がむずかしいんでございますが、大体国債の大量発行下にございましては、御承知のように資金が政府部門へ吸い上げられる結果、民間資金が圧迫を受けるというんでございまするが、これはもう御承知のように五十年以降大変懸念されておったところでございます。ところが、全国銀行の貸出動向は非製造業向けがサービス業等を中心に堅調ではございまするが、目下のところまだ製造業向けはそれほど大きく出てまいってないような状況でございます。
総じて見ますと、現在までのところ、私ども民間部門における資金需要というのは鎮静したままで推移しておるのが現状だと思います。このことは、銀行の貸出金利が御承知のように目下大変低いところになっております実情を見ましても、そういうことは言えるかと存じます。
もっとも、今後景気がさらに着実に回復していくのではなかろうかと期待をされておるわけでございますが、実際に景気が回復してきますと、官民のいまおっしゃるような資金競合、つまりクラウディングアウトの問題が出てくる懸念がないということは、これはもう申せませんわけでございまして、それがいつごろどういう形で出てくるかという点が、実は私ども大変わかりにくいところでございますんで、まあ国債が大量発行されてる状況のもとでは、これは銀行貸し出しばかりでなくて、社債発行を含めて、民間への資金供給があれいたしますと、せっかく景気が回復しかけておりますものが芽を摘まれるということになるわけでございましょうから、今後も引き続き国債の発行に当たりまして、当然のことながら市場実勢を尊重することが大変大事だと思いますし、それから景気の回復とタイミングを合わせながら、恐らく税収が増加してまいりましょうから、そういうときに適時適切に国債の発行額の減額を行うということが非常に大事になると思いますんで、そういう点を特に御配慮を願いたいと思うわけでございますが、まあいずれにいたしましても、今後財政政策、金融政策の整合性を持った機動的な弾力的運営というのをうまくやっていただくことが、このクラウディングアウトが起こってきて混乱が起こらないようになるために一番大事なことではなかろうかと、まあ先生の御質問に果たして答えられたかどうかわかりませんが、この問題については実はその程度の理解でございます。
それから第四点は、これはもう大変むずかしい御質問でございまして、要するに根本は、やっぱりこれ、国債というものがかなり魅力のある商品だということ、機関投資家の私どもばかりでなくて、一般の個人の方も安心して持てるというふうな商品になっていただく、そのためには、やっぱりこれは当局におかれまして管理政策、こういうふうにやっていくんだという全体のビジョンというものをここで打ち出していただくことが必要なことではなかろうかと、こういうふうに考えております。
それから窓販の問題でございますが、まあこれはお隣りに山内さんがいらっしゃいますのであれでございますが、私ども銀行協会では、従来、できますならばわれわれが全国にたくさん持っております支店の窓口等を通しましてやはり個人にこれを消化していただくということが大変望ましいと考えておりますので、できますことならばそういう形でやれるようにというのが私どもの意見でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/11
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012・山内隆博
○参考人(山内隆博君) いま、窓販のお話が出ましたので、それから入りたいと思いますが、私のこの問題についての考え方、まあやや個人的な考え方でございますけれども、窓販という言葉が非常にわかりにくい言葉で、本当に窓販ということをお使いになってる方が同じ中身でお使いになっているかどうか、非常に疑問な点がございます。
それはそれとして、いまも赤司さんがおっしゃいましたように、国債の問題については、昭和四十一年に最初に国債が出ましたころはもうごく少額の国債で、国債の問題というのはそれほど大きな問題じゃなかったのが、十兆以上も出すというような大量発行になってきた。当初スタートするときから、やはり的確な管理政策というものが伴った上でスタートすべきであったのが、金額が少なかったためにそれほど構え方がきちっとした構え方でなくて、今日にきてこの大量発行時代を迎えたということでございますので、赤司さんおっしゃいましたように、総合的な、いろいろな政策との整合性を持った総合的な管理政策というようなものがまず必要じゃなかろうかと。その中に一つだけぽつっとほかのことと並んで窓販なんという話があるわけですけれども、そういう総合的な管理政策について系統的に論ずることをやらずに、窓販だけ問題にしてしまったというような感じで、私どもとしても非常にその辺は、まず取り上げ方としてどうも少しおかしいなという感じがいたしております。
で、窓販そのものにつきましては、まあこれ、余りここで生々しいお話をすることも差し控えますけれども、証券界としては反対でございます。まあ、やってもそれほどうまくいかないよという話と、それから、うまくいかないだけならいいけど、後に非常な混乱を公社債市場のあり方なり秩序なり、あるいは金融そのものの秩序なりにいろいろな思わざる混乱が出てきますよと、それから、法律的にも問題がありますよというような、もろもろなことで私どもは主張しております。
しかし、これは証取審その他でも議論しておりますので、まあそういうところの御検討にまつということだと思いますが、もう一度振り返って、ただ窓販だけを議論して解決したらそれでいいということではなくて、それはほんの一つの部分でであるんで、もっと総合的に、国債の管理政策をどうやるかということを総合的に論ずる必要があるんじゃなかろうかというふうに存じております。
それから、国債の価格が乱高下してはいけないというのは、私どももそのとおりだと思いますし、また、先生がおっしゃいましたように、条件改定をするからといって、そう自由に国債のクーポンを上げるというようなこともなかなか財政のたてまえからできないことも十分承知しております。したがってどうしたらいいんだということでございますが、これもいまの話と同じで、最近の新聞紙面でいろいろ拝見しておりましてもやはり断片的に、いろいろな問題点を断片的に議論しておりまして、その間に何といいますか、総合的な議論というものが出てきておりません。したがってお買いになる方、まあ主として機関投資家が中心でございます、大量に買うのは。そのお買いになる方が相場の先行きについて御判断をなさるのにいろいろと不透明な材料があって、そこで判断がつきかねるというのが現状であろうかと思います。
後の問題にも絡みますので、ちょっとここで御説明いたしますけれども、先生おっしゃいました証券会社のビヘービアどうなんだという御質問にもお答えすることになりますけれども、先ほど先生は銀行さんに対して大変温かく、おまえの方は損をしてるんじゃないかとおっしゃいましたが、証券会社もこの値下がりでは大変な損をいたしております。現先市場で、自己現先というのが一兆数千億ございます。これは、証券会社が売れ残ったものをそのまま投げてしまうと市場も壊してしまうし、自分の方でも大きな損が出ますので、現先市場を使って短期につないでいると。つないではおりますけれども、それをもし売りっ放しにしたら大変な実現損が出ます。そういう実現損がもう昨年の十月ぐらいから毎月毎月出てきておりまして、結局、かなり大きなもうすでに売買損が出てきておりますし、それから現状でも評価損がずいぶんございます。これは決して銀行さんだけではなくて、証券会社の方にも同じようにその評価損の問題はあるわけでございます。
ということは、裏返して言いますと、それだけ大きな支配力を私ども持っておりますから、何を好んで自分から相場を下げましょうか、そういうことはあり得ない。相場というものは売り手と買い手、まあ売り手は最近は主として銀行さんが中心でございますが、買い手は農林系とかあるいは地方の信用金庫さんとかあるいは生命保険とか、そういう機関投資家がお買いになるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、売り手の方はもうとにかく損しないうちに早く売りたい早く売りたいという気持ち、それから買い手の方はもう少し待てばまだ下がるんじゃないかというふうな気持ち、そういうことが交錯して、それでずるずる下がってきたということでございまして、証券会社はただそれを中に入ってブローカーとしてお取り次ぎをするということでございまして、証券会社がそれを全部自分で仕切って買って、それで相場を下げないようにするというようなことをもし価格安定機能という中でお考えになるとすれば、それは市場原理を全く無視したもので、とうていできる相談ではございません。したがって私どもは、私ども自身の立場から申しましても、国債の価格を何とかして安定させようという、そういうスタンスで努力をいたしておりますことを申し上げます。
したがって、それじゃどうしたらいいかということはいろいろございます。国債管理政策と一口に申しますけれども、先ほど私が冒頭で陳述いたしましたように、もっとその条件を、そうとっぴに上げるわけにいかないにしても、市場価格に近づけていただく、あるいはそれに同じようなところまで持ってきていただくとか、あるいは長期から短期へという志向が、金利がこういうふうに上がるときは世界じゅうどこでもそうでございます。長期は敬遠されて短期に行っておりますので、短期のものにもう少しシフトをしていただくとか、あるいは、これも昨日もちょっと議論が出たように聞いておりますけれども、非市場性のもので賄う方法はないかどうか、あるいは貯蓄国債はどうなんだろうかとか、そういういろいろな条件といいますか、対策があるわけでございますから、その対策のうちの一つの部分だけをつかまえて議論しますと、何か非常にそれは一つの材料にしかすぎませんで、それがある程度整合性を持った政策としてこういうふうにやるんだというようなことがある時期に明らかにされますと、それによって私は市場が安定してくると思います。
大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/12
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013・大川政三
○参考人(大川政三君) 先ほど便益費用分析の具体的手続はどういうようなのかという御質問でございましたが、私が先ほどのような意見を申しました背景——バックグラウンドとしましては、ある雑誌にも書いたんでございますが、「日本財政の現実」と題したある論文を書いたんですが、その副題として「政治的経済から経済的政治への転換」というような副題をつけておいたんでございますが、その意味は、財政的な決定というのは究極的には政治的な決定であるわけでございます。
そういう意味で、従来どちらかといえば政治的決定といいますか、ポリティカルエコノミーというような言葉の方が妥当していたと思いますが、私が便益費用分析というような経済的分析をもう少し利用しろというふうに申した場合でも、決して政治的な立場からの最終的決定の余地を否定するものではございません。ただ、そういう最終的な政治的な判断というものを下す前の材料として、経済的な分析資料を用意し、それを前にした上で決断すると、そういう意味で経済的な政治へ転換してほしいというような副題をつけたわけでございます。
そのように、私は政治的な判断を決して排除するものではございませんが、その政治的な決定を行った場合の責任と申しますか、あるものを選んだ場合に何かを捨てなければいけないわけでございます。何でもかんでもすべていいところをとり得るのであれば、この世の中に経済という事象は存在しない。これは大変初歩的なことで恐縮でございますけれども、やはりわれわれは先ほど申しましたように、限られた資源をいろいろな用途に配分し、効率的に配分するのが経済でございますから、したがって、あるものをとるためには何かを捨てなければいけないわけなんです。したがって、あるものをとることを仮に決めた場合に、その反面に何を捨てたか、これが一つの費用というか犠牲になるわけでございまして、そういう社会的な費用を十分見比べた上でこれをとるんだというような形に持っていくために、先ほどのような便益費用分析というようなことを申し上げたんです。
ただ、そういうような手法を実際の予算編成に取り入れるためには、まあよく批判されることでございますけれども、限られた時間の中でそんな悠長なことを、政府のたくさんのプログラムについてそんなことをやっていられるかというような時間的制限という点から有力に反対がされるわけであります、これは技術的な反対でございますが。
それから、さらにもう少し本質的な反対論としては、政府がいろいろ金を使って何かをする場合、政府が国民に対して与える便益というのはそんなにはっきりと数字ではあらわし得ないんじゃないか。企業の場合だったら利益が上がったかどうかということで、貨幣的単位でわりあいに客観的にあるプログラムが成功したかどうかということはわりあい測定しやすいのでありますが、ところが、政府のやる仕事は非常に国民一般に利益を与えるような仕事だとすればなかなか貨幣評価しにくいという、まあこれはかなり本質にかかわる問題でありますけれども、そういう便益の測定が実際に困難だということからも、相当便益費用分析を予算編成の実際手続に入れ込むのにはかなり行政部内にも反対があるわけです。
アメリカの連邦政府は、先ほど申しましたように、ジョンソン政権のもとでPPBSなる方式を取り入れましたけれども、数年ならずしてそれが廃棄され、ニクソン政権になりまして、直ちに、せっかくのものが、いままでのことは御破算だよというところで、一片の予算局長官の通達でそれが廃棄される、そういうことがあったのも、なかなか現実には行政部内に取り込んでそういう経済的方式を活用するということは非常にむずかしいのでありますけれども、しかし、そうは言っても現在のように非常に限られた資源をめぐって政府と民間との間で資源の競合が出てくる。先ほどのクラウディングアウトというのはまさにそういう民間の投資と政府の投資、あるいは政府消費との間の資源の取り合いが起きてくるわけです。それが金融的にクラウディングアウトが出てくるわけでありますが、そのような形で政府と民間との間に資源の競合がある、ますます厳しくなっておる。また、政府のやる仕事の間でも非常に資源の取り合い、競合ということが厳しくなっておる。そういう中で資金の配分を考えていくためには、好むと好まざるとにかかわらず経済的な分析、もう少しはっきり言いますれば、先ほど言ったように、あるものをとるためには何かを捨てるようなそういう形で判断するような仕組みに持っていくと。
具体的に申しますれば、あるプログラムをとるかどうかを考える場合に、同じような目的を達成するためにはどういうルートがあるのか、それらの幾つかのルートを考える。英語で申しますとオルタナティブといいますか、そういう選択肢を幾つか考える、その中でこれとこれをとると、まあいろいろ便益効果なんかを見た上でどれかを選択すると、こういうことをもう少し一貫していただけないか。
われわれが政府の予算書なんかを見る場合でも、そういうこれを決定しました、これをやることにしましたということはわかるんでありますが、そこの決定に至るまでに何を捨てたのか、どういうものはがまんしてもらわなければならなかったのか、そういう関係がさっぱりわからないのであります。むしろ政府部内においては、当然いままでの予算編成方式の中でもそういうような、あるものをとるためには何かを捨てるようなことを十分お考えの上でやっていると思いますけれども、そのことがもう少し表に出るような形で議論されないか、それによってある決定をした場合の政治的責任が明らかになると。
逆に言うと、こういうようなことをやると政治的な争いが少し表面に出てきて都合が悪いという反対論もあるんでございますけれども、これからの、やはり先ほどのような非常に資源の競合性が強い場合においては、むしろそういう選択の政治的責任を明らかにすることが国民にとっても非常に参考になるのではないかと、そういうふうに考えます。
そこで、現在カーター政権のもとで行われようとしているZBBI——ゼロ・ベース・バジェッティングのもとでは、私も現在勉強中なのでいま余り詳しく申し上げられませんが、一応政府部内の意思決定をするユニットといいますか、意思決定単位を決めた中で、その中で先ほど申したようにある目的を達成するために幾つかのルートを、オルタナティブを考え出してもらうと、それでその一つ一つの長所短所を比較した上でこれをとる、このルートをとるということを、そういうような選択の根拠を明らかにした上で、また上部の、上部組織といいますか上級官庁に上げていく、また上級官庁は各セクションから集まってきたそういう意思決定のための資料をもとにして、また上級官庁の立場でどれどれをとるか、どういう順位をつけるか、ランキングをつけながら決めていく、こういうようなやり方を現にとっておるようであります。
これがやはりPPBSの場合のように果たして連邦政府の中に本当に根づくのかどうか、まだもう少し事実を見ないとわかりませんけれども、そのために相当努力はしているということはわかるし、PPBSの場合には議会側はむしろ反対、批判的な立場にいた、何か政治的な立場の人々の出る幕がなくなってくるじゃないかというような心配から、PPBSに対してはかなり批判的であったんでございますが、最近のアメリカ連邦議会の立場は、行政府がそのような経済的分析をかなり詰めてくると、言うならば、やはり議会の方もしっかりやりましょうというところで非常に議会の予算局——コングレッショナル・バジェット・オフィスといいますか、非常な力を入れて行政府に対抗するだけのまた材料、インフォメーションをみずからつくり上げると、そういうような方向に進んでおるというのが現在の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/13
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014・竹田四郎
○竹田四郎君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/14
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015・多田省吾
○多田省吾君 私は赤司参考人、山内参考人、両参考人にまずお伺いしたいのは、
〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕
昨日の当大蔵委員会でも明らかになりましたけれども、大蔵省当局は、国債の価格についてはまだ楽観的に見ているような気配がございました。四月の長期債は発行停止になりましたけれども、五月債については若干の金利引き上げで消化できるのではないかと判断されているようでもあります。引受側とされましては、具体的にどの程度まで金利引き上げがあれば消化可能だとお考えになっておられるのか、具体的にお答えできる範囲でお答えいただきたいと思います。
それから、赤司参考人にもう一点お伺いしたいのは、国債の多様化という点から見まして、市場の実勢金利に合わせて利回りのきく、また利回りの動く移動金利性の国債発行というような考えも市場のあれは大分変わってくるのじゃないかと、こういう感じがいたしております。
それから第二点の御指摘でございますが、今後あれがどういうふうになっていくかというのは、やはり先ほどから申し上げておりますように、国債の管理政策全般につきましてきめの細かいやり方をやっていっていただくということ以外には手はないんではないかという感じがいたしておるわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/15
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016・山内隆博
○参考人(山内隆博君) ただいまの先生の御指摘は、私どもも同感でございますが、ただ、十年物はもう当分はむずかしいのか、あるいは六、七年物というような話もございますが、そういうものにもう全部十年物がかわるのか、そうではなくて、十年物というものはやはり残って、そのうちのある部分が中期、短期の方へシフトしていけばいいのか、その辺は何度も申し上げるようでございますけれども、全体の国債の管理政策、たとえばオペレーションはどうするんだと、減債基金を使ってやるのがどういうふうにやるんだとか、いまの公定歩合はどういうふうになるんだとか、いろんな絡みがございますので、傾向としては、アメリカでもドイツでも、長期のものは非常に減ってほとんど短期の方へシフトしていると、アメリカあたりは八割ぐらいが恐らく三年未満だと思います。そういうことを考えますと、先生の御指摘のとおりかと思いますけれども、いまここでもう十年物はちょっとこれからはむずかしいんだというところまで言い切ることができるかどうか、ちょっと自信がございませんので、そういうことでお答えをさせていただきたいと思います。
それからもう一点の、現状の相場をどう見るかということでございますが、六分一厘の国債が本日は八十九円台でございます。先週が八十八円台から八十七円台がございましたのが、買いが幾らか入ってまいりまして、じりじりとわずかではございますが持ち直して、本日は八十九円台ということでございまして、六分一厘で見ますと、これは六分一厘がたくさんに売りに出てくるだろうということで、六分一厘だけがばかに下がっているわけでございますが、すでにこれは八分以上の利回りになっておりますから、当然に採算だけで言えば買ってきていいはずでございますけれども、この後どうなるんだという、要するに不透明な材料があるためにこういう相場が出ているというふうに私は理解をいたしております。それが行き過ぎであるとは申しませんけれども、不透明な材料があるために、八分になれば当然買われるものがまだ買われていないというのは、まだまだ公定歩合の問題その他不透明な問題があるためにこういうところで低迷しているということではなかろうかと。したがって、いろいろな条件が、与件がはっきりしてくればもう少しリーズナブルな相場に落ち着いてくるのではなかろうかというふうに私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/16
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017・梶木又三
○理事(梶木又三君) 参考人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
次回は、四月二十四日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会します。
午後三時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108714629X01319790411/17
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