1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十五年三月二十八日(金曜日)
午前十一時三分開議
出席委員
委員長代理理事 奥田 敬和君
理事 稲垣 実男君 理事 佐野 嘉吉君
理事 志賀 節君 理事 高沢 寅男君
理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君
理事 野間 友一君 理事 渡辺 朗君
佐藤 一郎君 東家 嘉幸君
中川 一郎君 中山 正暉君
玉城 栄一君 林 保夫君
田島 衞君
出席政府委員
外務政務次官 松本 十郎君
外務省アジア局
長 木内 昭胤君
外務省欧亜局長 武藤 利昭君
外務省条約局外
務参事官 山田 中正君
委員外の出席者
外務委員会調査
室長 高杉 幹二君
—————————————
委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
山口 敏夫君 田島 衞君
同日
辞任 補欠選任
田島 衞君 山口 敏夫君
—————————————
三月二十六日
ILO未批准条約等の批准促進に関する請願外
一件(伊賀定盛君紹介)(第三〇〇六号)
同(井岡大治君紹介)(第三〇〇七号)
同外二件(大原亨君紹介)(第三〇〇八号)
同外一件(河上民雄君紹介)(第三〇〇九号)
同(川口大助君紹介)(第三〇一〇号)
同外一件(川俣健二郎君紹介)(第三〇一一
号)
同外二件(木間章君紹介)(第三〇一二号)
同(後藤茂君紹介)(第三〇一三号)
同外一件(土井たか子君紹介)(第三〇一四
号)
同(野口幸一君紹介)(第三〇一五号)
同(馬場昇君紹介)(第三〇一六号)
同外一件(日野市朗君紹介)(第三〇一七号)
同(細谷昭雄君紹介)(第三〇一八号)
同外一件(堀昌雄君紹介)(第三〇一九号)
同(森井忠良君紹介)(第三〇二〇号)
同(松浦利尚君紹介)(第三〇二一号)
同(森中守義君紹介)(第三〇二二号)
同外二件(安田修三君紹介)(第三〇二三号)
同外一件(山田芳治君紹介)(第三〇二四号)
同(吉原米治君紹介)(第三〇二五号)
同(米田東吾君紹介)(第三〇二六号)
同外六件(伊藤茂君紹介)(第三〇五三号)
同外一件(井上泉君紹介)(第三〇五四号)
同(川口大助君紹介)(第三〇五五号)
同外三件(佐藤観樹君紹介)(第三〇五六号)
同(藤田高敏君紹介)(第三〇五七号)
同(堀昌雄君紹介)(第三〇五八号)
同外一件(八木昇君紹介)(第三〇五九号)
同(安田修三君紹介)(第三〇六〇号)
同(山本幸一君紹介)(第三〇六一号)
同(渡部行雄君紹介)(第三〇六二号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
日本国とポーランド人民共和国との間の通商及
び航海に関する条約の締結について承認を求め
るの件(条約第一六号)(参議院送付)
日本国政府とフィンランド共和国政府との間の
文化協定の締結について承認を求めるの件(条
約第一七号)(参議院送付)
所得に対する租税及びある種の他の租税に関す
る二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦
共和国との間の協定を修正補足する議定書の締
結について承認を求めるの件(条約第一八号)
(参議院送付)
千九百七十四年の海上における人命の安全のた
めの国際条約の締結について承認を求めるの件
(条約第一九号)(参議院送付)
千九百七十四年の海上における人命の安全のた
めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書
の締結について承認を求めるの件(条約第二〇
号)(参議院送付)
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に
関する条約の締結について承認を求めるの件
(条約第二一号)(参議院送付)
南極のあざらしの保存に関する条約の締結につ
いて承認を求めるの件(条約第二二号)(参議
院送付)
日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航
海条約の締結について承認を求めるの件(条約
第二三号)
日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間
の文化協定の締結について承認を求めるの件
(条約第二四号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
めの日本国とイタリア共和国との間の条約を改
正する議定書の締結について承認を求めるの件
(条約第二五号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテ
ン及び北部アイルランド連合王国との間の条約
を改正する議定書の締結について承認を求める
の件(条約第二六号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
めの日本国とハンガリー人民共和国との間の条
約の締結について承認を求めるの件(条約第二
七号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
めの日本国とポーランド人民共和国との間の条
約の締結について承認を求めるの件(条約第二
八号)
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国
との間の条約の締結について承認を求めるの件
(条約第二九号)
航空業務に関する日本国とニュー・ジーランド
との間の協定の締結について承認を求めるの件
(条約第三〇号)
航空業務に関する日本国とバングラデシュ人民
共和国との間の協定の締結について承認を求め
るの件(条約第三一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109103968X01119800328/0
-
001・奥田敬和
○奥田委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のため、委員長の指名で私が委員長の職務を行います。
この際、日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件、日本国政府とフィンランド共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約の締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件、南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件、日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とハンガリー人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とポーランド人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国とニュー・ジーランドとの間の協定の締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国とバングラデシュ人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。
政府より順次提案理由の説明を聴取いたします。外務政務次官松本十郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109103968X01119800328/1
-
002・松本十郎
○松本(十)政府委員 ただいま議題となりました日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とポーランド人民共和国との間には、昭和三十四年に締結された通商に関する条約がありますが、昭和五十三年二月にポーランド側より、ポーランドのガット加盟、両国間の貿易の飛躍的な発展等に伴い、現行条約に比してより広範な事項について規定する新しい通商航海条約を締結したい旨の申し入れがありました。政府としては、このような新条約の締結が両国間の経済交流等の一層の発展に資するところ大であることを考慮してこの申し入れに応ずることとし、昭和五十三年九月及び十月に両国政府間で交渉を行いました結果、条約案文につき最終的合意を見るに至り、昭和五十三年十一月十六日に東京において、わが方園田外務大臣と先方ヴジャシュチック閣僚会議副議長との間で、この条約の署名調印が行われた次第であります。
この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この条約は、本文二十カ条及び議定書から成っております。この条約は、まず、両国間の貿易の発展及び経済関係の強化のために協力することを規定しております。次に、関税、租税、事業活動等に関する事項についての最恵国待遇、輸出入制限についての無差別待遇、身体及び財産の保護、出訴権についての内国民待遇及び相互主義に基づく最恵国待遇、商船の出入港等についての内国民待遇及び最恵国待遇等を相互に保障しております。また、この条約は、相手国国民を拘禁した場合の領事官への通報義務、その場合の領事官との面会及び通信、入港船舶に対する領事官の援助、両国間の輸送及び通信の促進、仲裁判断の承認及び執行、自由交換可能通貨による支払い、合同委員会の設置等についても定めております。この条約の締結により、わが国とポーランドとの間の経済交流がさらに安定的な基盤の上に一層促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、日本国政府とフィンランド共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とフィンランド共和国との間の文化交流を促進するためにフィンランド共和国との間に文化協定を締結することは、両国間の相互理解と友好関係の一層の強化に資するところ大であると考えられましたので、昭和五十二年二月のコルホネン.フィンランド共和国外務大臣の訪日の機会に、鳩山外務大臣とコルホネン外務大臣との間でこの協定の締結交渉を開始することに意見の一致を見ました。その後交渉を行いました結果、昭和五十三年十二月二十七日に東京において、園田外務大臣とブロムステッド駐日フィンランド共和国大使との間でこの協定の署名を行った次第であります。
この協定は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この協定の内容は、戦後わが国が締結した各国との文化協定と同様、文化及び教育の各分野における両国間の交流を奨励することを規定しております。
この協定の締結は、両国間の文化交流の一層の促進に資するところ大であると期待されます。
よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とドイツ連邦共和国との間には、昭和四十一年四月二十二日に署名された所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための協定が締結されていますが、ドイツ連邦共和国が昭和四十九年に行った財産税法の改正及び昭和五十二年に行った法人税法等の改正に伴い、この協定を修正補足する必要が生じました。このため、政府は、昭和五十二年十二月以来数次にわたって交渉を行いました結果、昭和五十四年四月十七日に東京において、わが方園田外務大臣とドイツ連邦共和国側ディール駐日大使との間でこの議定書の署名を行った次第であります。
この議定書は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この議定書は、本文八カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、協定の一般対象税目として新たにドイツ連邦共和国の財産税を加えるとともに、不動産、恒久的施設の事業用資産の一部をなす動産等を除き、日本の居住者がドイツ連邦共和国内に所有する財産については、ドイツ連邦共和国の財産税を免除すること、ドイツ連邦共和国の居住者である法人が日本の居住者に支払う配当について、親子関係のある法人の間で支払われる配当の場合には、二五%であった従来の協定上の制限税率を一五%に引き下げること等であります。
この議定書の締結によりまして、わが国とドイツ連邦共和国との間の二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済関係の緊密化に資することが期待されます。
よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
海上における人命の安全のための国際条約は、海事関係の基本的条約として長い歴史を有するものであります。この条約は、この種の条約として五番目のものであり、現行条約が昭和三十五年に作成されて以来の技術進歩を考慮し、規制の強化を主たる目的として昭和四十九年十一月にロンドンにおいて作成されたものであります。この条約は、昭和五十四年十二月十日現在米国、英国等三十カ国が締約国となっており、本年五月二十五日に発効することとなっております。
この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この条約は、航海の安全、特に海上における人命の安全を確保することを目的としており、船舶の構造、設備、積荷等に関し、各国政府が自国の船舶に対してとらせるべき安全措置について詳細な技術規則を定めるとともに、これらの安全措置の実施を確保するために行う検査及び証書の発給並びに証書の互認について規定しております。
わが国がこの条約を締結することは、航海の安全確保のための国際協力を推進するため、また、検査基準の統一及び証書の互認により船舶の運航上の不便を除去するために有意義であるとともに、海運及び造船の分野においてわが国が国際的に重要な地位を占めていることを考慮すればきわめて望ましいと考えられます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
海上における人命の安全のための国際条約は、航海の安全確保のため長年大きな役割りを果たしてきました。近年の技術進歩等を織り込んだ千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約は、昭和四十九年に作成されましたが、その後、海洋汚染の防止及びタンカーの安全性向上の必要性が強く認識されるに至ったことを背景として、政府間海事協議機関がロンドンにおいてタンカーの安全及び汚染の防止に関する国際会議を開催した結果、昭和五十三年二月にこの議定書が作成されました。この議定書は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この議定書は、船舶、特にタンカーの安全を増進することを目的として千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約を修正する規定及びこれに追加する規定を定めたものであり、検査の強化並びにタンカーの操舵装置及び消火装置についての安全要件の強化を内容としております。
この議定書は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約の目的とする航海の安全の確保を、特にタンカーについて、一層増進するものであり、この議定書を締結することは、この分野における国際協力を推進するため、また、この議定書で新たに定められた証書の互認による船舶の運航の自由を確保するために、きわめて望ましいと考えられます。
よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
次に、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
この条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物の保全を促進することを目的として、昭和四十六年二月にイランのラムサールで開催されました湿地及び水鳥の保全に関する国際会議において採択されたものであります。沼沢地、湿原、干がたを初めとする湿地は、経済上、文化上、科学上及びレクリエーション上大きな価値を有しており、また、そこに生息する水鳥等を保護するとの観点からも湿地の環境保全の必要性が関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。
この条約は、昭和五十年十二月二十一日に効力を生じ、イラン、ソ連、西ドイツ等の二十三カ国が締約国となっております。
この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この条約は、各締約国が、その領域内にある湿地を指定するとともに、その保全及び適正利用を図り、湿地に生息する動植物、特に水鳥の保護を促進することを主たる内容としております。
わが国は、自然環境の保全を促進する政策を推進してきておりますが、わが国がこの条約を締結することは、自然環境全般の保全に資することとなるだけでなく、環境保全の分野における国際協力を推進する見地からも望ましいものと考えられます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
この条約は、南極のアザラシを保護するとともに、これについて科学的な研究を行い、合理的な利用を図ることを目的として、昭和四十七年二月にロンドンで開催されました南極のアザラシの保存に関する会議において採択されたものであります。南極大陸周辺の浮氷水域に生息するアザラシはいまだ大規模な商業的猟獲の対象となったことはありませんが、商業的猟獲が開始される前に何らかの措置をとることの必要性が関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。
この条約は、昭和五十三年三月十一日に効力を生じ、米国、英国等の八カ国が締約国となっております。
この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。
この条約は、締約国の国民または船舶がこの条約の規定及び附属書に規定される規制措置に従う場合を除くほか、南極のアザラシを殺さずまたは捕獲しないことを主たる内容としております。
わが国は、この条約の適用される区域でアザラシの商業的猟獲を行っておらず、また、近い将来これを行うことも予想されておりませんが、わが国がこの条約を締結することは、南極のアザラシの保存のための国際協力を推進する見地から望ましいものと考えられます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とフィリピンとの間には、昭和三十五年に署名された友好通商航海条約がありますが、昭和五十一年六月にフィリピン側より、南北問題を初めとする国際経済の新しい動きを両国間の条約に反映させたいとして、新しい条約の締結のための交渉を行いたい旨の申し入れがありました。政府としては、このような新条約の締結がわが国とフィリピンとの間の経済関係の一層の発展に資するものであり、また、両国間の友好協力関係を一層助長するための基礎になるとの考慮からこの申入れに応ずることとし、昭和五十二年三月以来両国政府間で交渉を行いました。その結果、昭和五十四年五月十日にマニラにおいて、わが方大平総理大臣及び園田外務大臣と先方マルコス大統領及びロムロ外務大臣との間で、この条約の署名調印が行われた次第であります。
この条約は、本文十七カ条及び議定書から成っております。この条約は、通商及び航海の分野における広範な事項に関して最恵国待遇を保障すること等について規定しているほか、身体及び財産の保護、輸出入数量制限の事前通報、貿易の拡大のための協力、科学及び技術に関する知識の交換及び利用の促進のための協力、海運の発展のための協力、海洋汚染の規制のための協力等についても定めております。また、この条約は、為替管理、輸出入制限、関税その他の事項についての最恵国待遇に関して、ASEAN域内特恵等を適用除外とすることに関する規定を有しております。この条約の締結により、両国間の経済交流、人的交流等がさらに安定的な基盤の上に促進されるとともに、両国間の友好協力関係を一層助長するための基礎が築かれるものと期待されます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とアルゼンティン共和国との間の文化交流を促進するためにアルゼンティン共和国との間に文化協定を締結することは、両国間の相互理解と友好関係の一層の強化に資するところ大であると考えられましたので、政府は、アルゼンティン共和国政府との間でこの協定の締結交渉を行いました結果、ヴィデラ・アルゼンティン共和国大統領の訪日の際、昭和五十四年十月十一日に東京において、わが方園田外務大臣と先方パストール外務宗務大臣との間でこの協定の署名を行った次第であります。
この協定の内容は、戦後わが国が締結した各国との文化協定と同様、文化及び教育の各分野における両国間の交流を奨励することを規定しております。
この協定の締結は、両国間の文化交流の一層の促進に資するところ大であると期待されます。
よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とイタリア共和国との間には、昭和四十四年三月二十日に署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約が締結されていますが、イタリア共和国が昭和四十九年一月一日から所得税制度の大幅な改正を実施したため、この条約を改正する必要が生じました。このため、政府は、この条約を改正する議定書の締結についてイタリア政府と交渉を行いました結果、昭和五十五年二月十四日にローマにおいて、わが方影井駐イタリア大使と先方バスリー二外務次官との間でこの議定書の署名を行った次第であります。
この議定書は、本文三カ条から成り、これによる主な改正は、次のとおりであります。すなわち、条約のイタリア側一般対象税目をイタリアの新税制に合わせて個人所得税、法人所得税及び地方所得税とすること、旧税制下の税目別に定めていたイタリアにおける二重課税の排除方法に関する規定を新税制に合わせて一本化するとともに税額控除の控除限度額を拡大すること等であります。
この議定書の締結によりまして、わが国とイタリアとの間の二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済関係の緊密化に資することが期待されます。
よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国と連合王国との間には、昭和四十四年二月十日に署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約が締結されていますが、連合王国が昭和四十八年四月から配当に対する課税方法を大幅に変更したこと等のため、この条約を改正する必要が生じました。このため、政府は、この条約を改正する議定書の締結について連合王国政府と交渉を行いました結果、昭和五十五年二月十四日に東京において、わが方大来外務大臣と先方ウィルフォード駐日大使との間でこの議定書の署名を行った次第であります。
この議定書は、本文八カ条から成り、これによる主な改正は、次のとおりであります。すなわち、条約の一般対象税目として新たに連合王国の開発用地税及び石油収入税を加えること わが国の一般投資家が連合国の法人から受領する配当に関して連合王国の投資家と同様のタックスクレジットが認められるようにすること、証券投資信託等の受託者がその受益者にかわって配当または利子に関する租税の軽減またはタックスクレジットの請求を行うことができるようにすること等であります。
この議定書の締結によりまして、わが国と連合王国との間の投資環境は一層整備され、両国間の経済関係の緊密化に資することが期待されます。
よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とハンガリー人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、ハンガリーとの間に所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和五十四年二月に交渉を行いました結果、昭和五十五年二月十三日にブダペストにおいて、わが方杉原駐ハンガリー大使と先方ヴィンツェ大蔵次官との間でこの条約に署名を行った次第であります。
この条約は、わが国が社会主義国家との間で署名した租税条約といたしましては、ルーマニア及びチェコスロバキアとの条約に次く三番目のものでありますが、できる限りOECDモデル条約案に沿ったものであり、従来わが国が諸外国との間で締結した租税条約とほぼ同様の内容となっております。
この条約の主な内容は、次のとおりであります。事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する所得に対してのみ相手国で課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる所得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での税率につきましては、配当、利子及び工業的使用料に関しては、それぞれ一〇%を超えないものとし、また、文化的使用料に関しては、源泉地国において免税することとしております。
この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一層促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のため日本国とポーランド人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、ポーランドとの間に所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和五十四年六月及び九月に交渉を行いました結果、昭和五十五年二月二十日に東京において、わが方大来外務大臣と先方ペルコヴィッチ駐日大使との間でこの条約に署名を行った次第であります。
この条約は、わが国が社会主義国との間で署名した租税条約といたしましては、本年この条約の署名に先立って署名したハンガリーとの租税条約に次ぐ四番目のものでありますが、できる限りOECDモデル条約案に沿ったものであり、従来わが国が諸外国との間で締結した租税条約とほぼ同様の内容となっております。
この条約の主な内容は、次のとおりであります。事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する所得に対してのみ相手国で課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる所得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での税率につきましては、配当、利子及び工業的使用料に関しては、それぞれ一〇%を超えないものとし、また、文化的使用料に関しては、源泉地国において免税することとしております。
この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一層促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
政府は、フィリピンとの間に所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約を締結するため、これまで数次にわたって交渉を行いました結果、昭和五十五年二月十三日に東京において、わが方大来外務大臣と先方ヴィラタ大蔵大臣との間でこの条約に署名を行った次第であります。
この条約は、できる限りOECDモデル条約案に沿ったものであり、従来わが国が諸外国との間で締結した租税条約とほぼ同様の内容となっております。
この条約の主な内容は、次のとおりであります。事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する所得に対してのみ相手国で課税できるものとしております。船舶または航空機を国際運輸に運用することによって相手国において取得する所得につきましては、相手国においても課税することができますが、その租税の額は、この条約の署名の日に有効な相手国の法令によって課される租税の額の六〇%とすることとなっております。投資所得に対する源泉地国での税率につきましては、利子及び使用料に関してそれぞれ、原則として、二五%、一五%及び二五%を超えないものとしております。
これまで、両国間ではきわめて緊密な経済交流及び人的交流が行われてきておりますが、この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一層促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、航空業務に関する日本国とニュージーランドとの間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とニュージーランドとの間の直通の航空業務の開設に関しましては、昭和四十九年にニュージーランドより協定締結の希望が表明されて以来種々の機会に話し合いが行われてまいりました。政府といたしましては、近年における同国との経済関係の順調な発展及び同国が大洋州地域における航空路の要衝の一であることにかんがみ、協定締結のための交渉に応ずることとし、昨年十一月本件交渉を行いました。この交渉におきまして協定案文について最終的に合意を見ましたので、本年一月、大平総理大臣がニュージーランドを公式訪問いたしました際に、この協定の署名が行われました。
この協定は、わが国とニュージーランドとの間の定期航空業務を開設することを目的としておりまして、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めております。また、この協定は、わが国が署名した航空協定としては三十二番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。
この協定は、両国の友好協力関係の強化に資するとともに、両国間を直結する航空路を開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。
よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
最後に、航空業務に関する日本国とバングラデシュ人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
わが国とバングラデシュ人民共和国との間の直通の航空業務の開設に関しましては、昭和五十一年七月にバングラデシュ人民共和国より申し入れがあって以来話し合いが行われてまいりました。政府といたしましては、昭和五十二年九月のダッカにおける日航機ハイジャック事件に際し、わが国は事件解決のため、バングラデシュ人民共和国政府より多大の協力を得たこともあり、また、同国との関係強化の必要性にかんがみ、協定締結のための交渉に応ずることとし、昨年七月から十二月にかけて協定締結のための交渉を行いました。この交渉におきまして協定案文について最終的に合意に達しましたので、本年二月、本件協定の署名がダッカにおいて行われました。
この協定は、わが国とバングラデシュ人民共和国との間の定期航空業務を開設することを目的としておりまして、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国が署名した航空協定としては三十三番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。
この協定は、両国の友好協力関係の強化に資するとともに、両国間を直結する航空路を開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。
よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
以上十六件につき何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109103968X01119800328/2
-
003・奥田敬和
○奥田委員長代理 以上で提案理由の説明は終わりました。
各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
次回は、来る四月二日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109103968X01119800328/3
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。