1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十六年三月三日(火曜日)
午後零時五十七分開会
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委員の異動
十二月二十三日
辞任 補欠選任
村田 秀三君 丸谷 金保君
二月二十四日
辞任 補欠選任
関口 恵造君 岩上 二郎君
二月二十五日
辞任 補欠選任
岩上 二郎君 関口 恵造君
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出席者は左のとおり。
委員長 片山 甚市君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
高杉 廸忠君
小平 芳平君
委 員
石本 茂君
斎藤 十朗君
関口 恵造君
田中 正巳君
福島 茂夫君
丸茂 重貞君
森下 泰君
丸谷 金保君
安恒 良一君
渡部 通子君
沓脱タケ子君
柄谷 道一君
前島英三郎君
山田耕三郎君
国務大臣
厚 生 大 臣 園田 直君
労 働 大 臣 藤尾 正行君
政府委員
厚生大臣官房長 吉村 仁君
厚生大臣官房審
議官 吉原 健二君
厚生大臣官房審
議官 金田 伸二君
厚生大臣官房会
計課長 小林 功典君
厚生省公衆衛生
局長 大谷 藤郎君
厚生省環境衛生
局長 榊 孝悌君
厚生省環境衛生
局水道環境部長 山村 勝美君
厚生省医務局長 田中 明夫君
厚生省薬務局長 山崎 圭君
厚生省社会局長 山下 眞臣君
厚生省児童家庭
局長 金田 一郎君
厚生省保険局長 大和田 潔君
厚生省年金局長 松田 正君
厚生省援護局長 持永 和見君
社会保険庁医療
保険部長 吉江 恵昭君
社会保険庁年金
保険部長 新津 博典君
労働政務次官 深谷 隆司君
労働大臣官房長 谷口 隆志君
労働大臣官房会
計課長 高橋 伸治君
労働省労政局長 細野 正君
労働省労働基準
局長 吉本 実君
労働省婦人少年
局長 高橋 久子君
労働省職業安定
局長 関 英夫君
労働省職業訓練
局長 森 英良君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
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本日の会議に付した案件
○社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関
する調査
(厚生行政の基本施策に関する件)
(労働行政の基本施策に関する件)
(昭和五十六年度厚生省関係予算に関する件)
(昭和五十六年度労働省関係予算に関する件)
(派遣委員の報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/0
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001・片山甚市
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査を議題といたします。
まず、厚生行政の基本施策について、園田厚生大臣から所信を聴取いたします。園田厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/1
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002・園田直
○国務大臣(園田直君) 社会労働委員会の御審議に先立ち、厚生行政について所信の一端を申し述べます。
今日、わが国は、激動する国際社会の中でエネルギー問題、安全保障問題、財政問題等々内政外交全般にわたり試練の時期を迎えておりますが、こういう中にあって国政に携わる者として片時も忘れてはならないことは恵まれない人々への温かい配慮であり、社会的公正の確保であると信じます。
社会保障は、こうした人間尊重の精神に裏づけられた国政の基盤であります。
わが国は、諸外国に例を見ないスピードで急速に本格的な高齢化社会を迎えようとしておりますが、それにふさわしい給付の実現と負担の公平を図るため、社会保障の計画的、体系的整備を急ぎ、来るべき高齢化社会において効果的に機能できるようにしていくことが最も緊要な課題となっております。
私は、今日のような困難な時期にこそ、長期的な視点を踏まえつつ国民の切実な願いにこたえて社会保障の充実を図っていくことが国の責務であり、国政に対する国民の信頼を確保するゆえんであると確信しております。
昭和五十六年度政府予算案の編成に当たりましては、障害者、老人、母子家庭等社会的経済的に恵まれない人々の生活の安定と福祉の充実に社会的公正の確保の見地から特に重点的に配慮するとともに、老人保健医療対策などについて長期的総合的な観点に立った施策の展開を図るべく最善の努力をいたしたところであります。
その結果、厚生省予算は八兆七千六百四十二億円、対前年度伸び率七・五%、六千百四十七億円の増を確保し、交付税を除く一般会計の予算額の伸びの約半分を厚生省予算の伸びで占めることとなり、活力ある福祉社会建設の主軸となる厚生省予算を守り得たと思います。
以下、昭和五十六年度における主要な施策について申し述べます。
第一に、障害者等の福祉の充実で、あります。
障害者、老人、母子家庭等社会的経済的に恵まれない人々がひとしく活力ある福祉社会の建設に参加していくことができるよう各般の施策の充実を図ることは、人間尊重の理念に立脚し、社会的公正の確保を目指す厚生行政にとって重要な課題であります。
特に本年は、国際障害者年であり、そのテーマである「完全参加と平等」の実現を目指して関係諸施策の一層の充実が要請されているところであります。
このため、障害者が家庭や地域社会で自立して生活できる条件づくりとして、障害者福祉都市の拡充、障害者社会参加促進事業等の充実など各般の施策について拡充強化を図るとともに、国際障害者年記念全国身体障害者スポーツ大会の開催など各種記念事業を実施するほか、国内長期行動計画の策定については、中央心身障害者対策協議会及び関係審議会の審議を踏まえつつ、関係省庁と協力して策定してまいる所存であります。
次に、老人福祉対策につきましては、老人が住み慣れた家庭や地域で生活できる基盤を整備することが緊要でありますので、家庭奉仕員派遣事業などを拡充するほか、新たに寝たきり老人や重度障害者が居宅のままで入浴、給食などのサービスを受けられる訪問サービス事業を創設することとしております。
また、近年、出生率の低下傾向が続いておりますが、このような中で、わが国が社会の活力を維持し、これまで以上に温かい思いやりのある社会を実現していくためには、長期的視点に立って児童の健全育成と資質の向上を図っていくことがきわめて重要であります。
このため、来年度におきましても、保育対策の充実、児童館の増設、児童扶養手当支給額の増額等の措置を講ずることとしております。
なお、児童手当制度の問題につきましては、昨年暮れの予算編成の際に大きな問題となったことは御承知のとおりでありますが、現行制度の枠組みの中で給付の重点化を図ることとし、所得制限基準額を若干引き下げることとした一方、給付の必要性の特に高い低所得者の方々について手当額の引き上げを図ることといたしました。
この制度の今後のあり方につきましては、昨年九月中央児童福祉審議会から、その基本的方向について、高齢化社会への対応策の柱として拡充を図っていくべきとの意見が出されているところであり、今後、制度の根本的な改革につきましてさらに検討を行ってまいりたいと考えております。
第二に、老人保健医療対策の確立であります。
老人保健医療制度につきましては、本格的な高齢化社会の到来を控えて、国民が健やかな老後を送ることができ、しかも、それに必要な費用は国民皆が公平に負担するという制度を確立することがきわめて重要なことであります。
このような観点から、昨年末の社会保障制度審議会の御意見も踏まえ、予防や健康づくりを含む総合的な老人保健制度を新たに創設することとし、そのための法案を今国会に提出するよう現在検討を進めております。
第三に、医療対策の推進であります。
医療対策につきましては、救急医療対策、僻地医療対策について年次計画に基づき体系的な整備の推進を図るとともに、がん、循環器病、腎不全などの特殊疾病についても専門医療施設の整備充実に努めることとしておりますが、さらに地域の実情に応じた包括的な医療供給体制の計画的な整備を図るため、所要の医療法改正法案を今国会に提出する予定としております。
また、医療従事者につきましても、特に養護婦、理学療法士などの養成確保及び資質の向上について施策を進めてまいります。
このほか、医療に対する信頼が回復され、今後、昨年のような事件が二度と起こらないよう、さらに効果的な対策を講じてまいりたいと考えております。
次に、医療保険制度について申し上げます。
医療保険制度につきましては、昨年、本委員会において、健康保険法等の一部改正法案を中心に御審議を煩わし、同法案の成立を見ることができたところであります。
今後は、御審議の経緯を十分踏まえ、保険外負担の解消を初め、医療保険の運営の一層の適正化を図り、国民医療の確保に努める所存でありますが、特に人口の高齢化、医療の高度化等により、引き続き医療費の増高が予測されることから、その効率化を図っていくことが医療保険制度における現下の最大の課題であると考え、指導、監督の強化、医療費審査の充実等の医療費適正化対策を強力に推進していく所存であります。
第四に、年金制度の改善であります。
本年は、昨年秋、本委員会において御審議いただいた厚生年金保険法等の改正の成果を踏まえ、厚生年金、船員保険及び拠出制国民年金については消費者物価等の動向に適切に対応し、七・〇%の引き上げを、厚生年金、船員保険については六月、拠出制国民年金については七月から行うこととしております。
また、福祉年金につきましては、社会経済情勢の変動に対応し、必要に応じた給付の改善を八月から行うこととしております。
なお、現在、政府において加入を検討中の難民条約との関連において、国民年金等について必要な限度の改正を行う方向で努力してまいりたいと考えております。
さらに、本年は、原子爆弾被爆者対策について、原子爆弾被爆者対策基本問題懇談会の意見に沿って、医療特別手当の創設等所要の改善を行うこととしております。
また、戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましても、年金等の額を引き上げること、義勇隊開拓団員を新たに処遇対象とすること等その充実を図ることとしております。
なお、大都市圏における廃棄物最終処分場の確保を図るいわゆるフェニックス計画につきましては、新たに立法措置を講ずることとし、本年は、とりあえず近畿圏において事業主体の設立を図ることとしております。
このほか、厚生行政は、国民の健康づくり対策の推進、医薬品等の安全性の確保等々いずれも国民生活に直結した問題に対する施策ばかりであり、その積極的な推進を図ってまいる所存であります。
私は、皆様の御鞭撻を得ながら、以上の諸課題に全力を挙げて取り組む覚悟でありますので、何とぞ絶大なる御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/2
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003・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/3
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004・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 速記を起こしてください。
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005・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 次に、労働行政の基本施策について、藤尾労働大臣から所信を聴取いたします。藤尾労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/5
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006・藤尾正行
○国務大臣(藤尾正行君) 社会労働委員会の御審議に先立ち、今後の労働行政について所信を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
わが国をめぐる内外の環境は、依然として厳しいものがあります。全世界が相互に密接に関連しつつ、きわめて複雑かつ多元的な様相を示す環境の中で、内には急速な高齢化社会の到来という大きな社会変化に直面しているいま、わが国は、いわばこれまでの繁栄を今後とも維持発展させていけるかどうかの岐路に立たされていると言うことができます。
最近における平均寿命の伸長、出生率の低下傾向等を背景とするわが国社会の高齢化は、諸外国においてもかつて経験したことのない速さで進むことが予想されており、高齢化社会への対応は、国を挙げて取り組まねばならぬ課題であります。
したがって、労働行政がまず第一に取り組むべき課題は、この高齢化社会に対応する施策の推進であります。
まず、昭和六十年六十歳定年の一般化を目標に、行政指導を一層強めるとともに、高年齢者職場改善資金融資制度を創設するなど定年延長への動きをより確実なものとするために努力いたします。
また、今後、高齢化の波が六十歳台前半層に移っていくことから、これらの層の高齢者の意欲と能力を十分に生かした形での雇用就業が可能となるような環境の形成が重要であります。定年延長や再雇用、勤務延長による継続雇用の促進を図るとともに、シルバー人材センターの育成にさらに努力いたします。
高年齢者の増加、若年層の減少という労働力構成の変化に対応し、働く人々の職業生活の安定と充実を図りつつ、高度の産業技術に支えられた効率の高い産業社会を実現していくことが必要でございます。このため働く人々がその職業生活の全期間にわたり、必要とするときに適切な教育訓練を受けられる生涯訓練体制の整備を進めてまいります。
第二の課題は、心身障害者など特別の配慮を必要とする人々のための対策の充実であります。
本年は国際障害者年であります。国際障害者年のテーマは「完全参加と平等」であり、雇用機会の創出が目的の一つに掲げられております。心身障害者の雇用の促進を図るためには、もとより社会連帯の理念に立った事業全体の理解と障害者自身の職業人としての自立努力が肝要でありますが、労働者としても心身障害者が働く場を得て、その持てる能力を十二分に発揮できる社会を実現するための施策を強力に展開してまいります。このため、身体障害者雇用率達成指導の強化等雇用機会を確保するための対策や心身障害者の能力開発の促進、心身障害者を取り巻く雇用環境整備、労働災害被災者に対する社会復帰施策の充実等を積極的に推進してまいります。
また、本年秋には国際障害者年の記念行事として国際身体障害者技能競技大会、いわゆる国際アビリンピックを世界で初めて開催することとしております。この大会が障害者への励ましとなり、また事業主を初め社会一般の理解と認識を高めさせるものとなるよう努力いたします。
国際障害者年はこれを一年だけのお祭りに終わらせてはなりません。これを契機に障害者の方々の働く場の確保のために長期的な視野に立って新たな第一歩を踏み出していかなければならないと考えております。
第三の課題は、産業構造の変化、経済の変動に即応する雇用対策の推進であります。
最近のわが国経済は、その拡大テンポは緩やかとなっており、雇用失業情勢もこのところ弱含みで推移をしております。
このため、当面する雇用失業情勢に適切に対応した雇用対策を実施するとともに、今後における経済、産業の的確な見通しの上に立って、産業政策と緊密な連携を図りつつ、産業構造の転換や技術革新の進展に即した雇用対策を展開してまいりたいと考えております。
このような見地から、複雑多岐にわたる雇用訓練関係の各種給付金を見直し、経済社会の変化に対応した実効の上がるものとなるよう、各種給付金の整備充実を図ることとしており、今通常国会にそのための法律案を提出いたしておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
なお、失業対策事業については昨年十二月に提出された失業対策制度調査研究報告の趣旨を尊重して、今後、円滑にその具体化を図ってまいる所存であります。
第四の課題は、労働災害の防止と、ゆとりある職業生活の実現であります。
働く人々の生命と健康を守ることは、労働福祉の基本であり、労働災害は本来あってはならないもの、決して起こしてはならないものであります。
労働災害を絶滅することは私の願いであり、本年も労働災害防止対策を行政の最重点の一つとして推進していくこととしております。
また、勤労者の福祉の向上を図る一環として、わが国の労働時間を昭和六十年度までに欧米主要国並みの水準に近づけるという目標に向けて、昨年十二月に週休二日制等労働時間対策推進計画を策定したところであります。今後、本計画に基づき、労働時間の短縮についての行政指導を強力に進めていく所存であります。さらに、商業、サービス業を中心とした八時間労働制の特例を昭和六十年までに段階的に廃止することとしており、その円滑な施行に努めてまいります。
なお、中小企業退職金共済制度につきましては、行政改革の一環として建設業退職金共済組合と清酒製造業退職金共済組合を統合するとともに、統合後の組合において、新たに林業における期間雇用者の退職金共済事業を実施することとしており、そのための法律案を今通常国会に提出させていただいておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
第五の課題は、労使の相互理解と信頼を強化するための環境づくりの推進であります。
社会経済の構造的な変化に適切に対応していくためには、労使が国民経済的な視野に立ち、相互理解と協力の精神を基調として、率直な話し合いにより問題の解決を図っていくことが従来にも増して重要なものとなってくると思われます。
このような見地から、産業労働懇話会等の労使の話し合いの機会を積極的に活用し、労使の不断の相互理解と信頼関係を一層強化し、労使関係の安定と社会的コンセンサスの形成を図っていくよう努めてまいる所存であります。第六の課題は、男女平等の促進と婦人の労働環境の整備であります。
本年は、国連婦人の十年後半期の初年度に当たり、国内行動計画の後期重点目標の検討が進められております。労働省におきましては、雇用における男女の機会と待遇の平等の促進を図るため、行政指導を強化するとともに、法的整備を含む有効な諸対策の検討を進めることとし、あわせて、婦人の能力が有効に発揮されるようその労働環境の整備に努めてまいります。
第七の課題は、労働外交の推進であります。
近年における国際関係の変化、特にわが国の国際的地位の向上に対応して、労働行政の分野での対外施策を積極的に展開することが要請されております。
今後とも国際的視野に立って、ILO、OECD等の諸活動に参加協力するとともに、発展途上国への技術協力の充実等を通じて積極的に労働外交を展開し、国際化時代に機動的に対応していく所存であります。
以上、労働行政の推進について私の所信を申し述べました。委員各位の一層の御指導と御協力をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/6
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007・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 次に、昭和五十六年度厚生省関係予算につきまして、政府から説明を聴取いたします。小林会計課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/7
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008・小林功典
○政府委員(小林功典君) 昭和五十六年度厚生省所管予算の概要につきまして、お手元の資料に従いまして簡単に御説明申し上げます。
昭和五十六年度の厚生省関係の予算額は八兆七千六百四十二億四千七百万円でございまして、前年度に対しまして、額で六千百四十七億七千二百万円の増、率で申しますと七・五%の伸びと相なっております。
次のページは、厚生省予算を経費別に掲げたものでございます。一番下の欄でごらんいただきますと、厚生省予算額の一般会計予算総額に対する割合は一八・七%となっております。
以下主な内容について御説明を申し上げますが、目次のページを三枚飛ばしていただきまして、一ページをごらんいただきたいと思います。一ページは国際障害者年特別対策でございます。御案内のように昭和五十六年が国際障害者年であることを考慮いたしまして、特別の施策を行うことといたしまして、所要の予算を計上しております。
まず一ページでございますが、国際障害者年記念事業でございます。これにつきましては、備考欄に掲げますような各種の国際的なセミナー、シンポジウムあるいは記念スポーツ大会、そして全国身体障害者総合福祉センターの建設等が主な内容でございます。
それから、二ページ、三ページは従来から実施してきております事業でございますが、国際障害者年を契機に、例年以上に特にその充実を図ることとしているものでございます。
主なものを申し上げますと、まず障害者の住みよい町づくりを進めるための障害者福祉都市につきまして、新規四十七市を含む七十二市に大幅にその対象を拡大することとしております。また、関係方面から非常に御要望の強い障害者社会参加促進事業につきまして、一県当たりの事業費を増額しますとともに、メニューの事業の数を三事業ふやしまして二十事業とすることとしております。
また、三ページの中ほどでございますが、心身障害児(者)施設地域療育事業費というのがございます。これはいわゆる施設オーブン化対策と呼んでいるものでございますが、その実施延べ施設数を二百三十二から二百九十二施設に、また下の精神薄弱者通所援護事業費の対象施設を五十七カ所から八十七カ所と、それぞれ大幅な個所数の増を行うこととしております。
四ページへ参りまして、四ページ以降は福祉関係の施策でございます。
まず、在宅老人福祉対策につきましては総額で九十二億七千万円を計上しております。特に家庭奉仕員につきましてその増員と処遇改善を図っておりますほか、五ページの中ほどへ飛びまして、居宅サービス事業の経費を新規に計上しております。これはいわば訪問サービスとも言うべき施策でございまして、寝たきり老人等の御家庭に出かけまして、入浴、給食、洗たく等のサービスを行う事業でございます。
次に、在宅身体障害者対策でございますが、五百二十一億一千万円を計上しております。すでに御説明いたしましたもののほか、ちょっと飛んでいただきまして七ページの中ほどでございます。福祉手当につきまして手当月額を九千二百五十円から一万円に増額するとともに、本人所得制限につきまして本人(二人世帯)で二百十六万四千円から三百万円にと大幅引き上げを行うこととしております。
在宅心身障害児(者)対策でございます。九百四十二億一千五百万円を計上しております。
八ページの下の方へ参りまして、特別児童扶養手当につきまして、ここにありますような手当月額の引き上げとそれから本人所得制限の引き上げを図ることとしております。
九ページはボランティア活動でございます。十五億五千五百万円を計上しておりまして、特に下の方にありますように民生委員活動推進費の中で、心配ごと相談所のケース処理研究協議会費を新規に計上いたしましたほか、福祉活動専門員の増員を行っております。
十ページは家庭保健対策でございます。総額で百二十三億二千万円を計上しております。一番上の心身障害研究費の増額、それからずっと下へおりまして、小児慢性特定疾患治療研究費の対象範囲の拡大がその主な内容となっております。
一枚飛ばしていただきまして十二ページへ参ります。児童の健全育成対策でございます。五十四億八千五百万円を計上しております。児童館、児童センターにつきましてはそれぞれ七十カ所の新設を予定しております。一番下にございます国立総合児童センター(こどもの城)でございますが、この建設経費として十六億円余の予算を計上しております。
十三ページは児童手当制度でございます。これにつきましては、制度内で給付の重点化を図ることといたしまして、所得制限は六人世帯で四百九十七万から四百五十万円に引き下げましたけれども、それとともに児童手当の手当月額を給付の必要性の高い低所得者について、六千五百円から七千円にと増額を行うこととしております。
それから母子・寡婦等福祉対策でございます。これにつきましては、母子福祉貸付金及び寡婦福祉貸付補助金につきましてそれぞれ貸付原資の追加を行うことといたしております。また、児童扶養手当につきましては手当月額の改善を図ることといたしております。
次が低所得者援護の強化でございます。十四ページの一番上にございますように、生活保護の改善につきまして、民間最終消費支出の動向等を勘案いたしまして、生活扶助基準八・七%の引き上げを行うこととしております。また、世帯更生資金貸付制度につきましては、貸付限度額の引き上げ等貸付枠の拡大を行うこととしております。
中ほどにございます社会福祉施設の整備でございます、六百六十七億円と前年同額でございますが、備考欄にありますように、障害者更生保養センターあるいは身体障害者適所ホームを新たに対象に加え、また、特別養護老人ホームの補助基準面積を改善する等の措置がこの中に盛り込まれております。
次が、施設運営の改善すなわち措置費の改善でございます。これにつきましては、職員の増員のほか、十五ページの上の方にございますが、四十四時間勤務体制の実質的確立のための初年度分の経費を新たに計上しております。また、十六ページへ参りまして、乳児保育の充実につきまして、この乳児保育の対象をD2階層からD4階層に拡大する改善も行っております。
十七ページでございます。健康づくり対策で、総額百九十三億九千九百万円を計上しております。
主な内容といたしましては、備考欄の中ほどにございます婦人の健康診査費及び栄養改善地区組織活動費の対象地区数の拡大、それから十八ページ、次のページへ参りまして、職場における健康づくりの中の政府管掌健康保険被保険者教育事業費の新規計上、それから地域における健康づくりの中の市町村栄養改善事業の対象市町村数の増等を行うこととしております。
次に、地域医療の充実でございます。これについては、プライマリーケア対策としまして六十一億五千四百万円を計上しております。臨床研修の充実を図ることとしております。
下へ参りまして、救急医療対策でございますが、百五十三億百万円を計上しております。
また、二十ページへ参りまして、僻地医療対策につきましては四十五億八千五百万円を計上しておりまして、それぞれ計画的な整備を進めることといたしております。
二十一ページの真ん中あたりでございますが、医療情報システム体制でございます。これにつきましては、医療情報システムの開発、それから普及、導入の各部門におきましてその推進を図ることといたしております。
二十二ページ以降は特殊疾病対策としまして列挙しております。
まず、小児医療対策でございますが、国立小児病院その他の施設整備が中心でございます。
循環器対策につきましては、国立循環器病センター二十床分の増床、それから循環器病研究委託費の増額等がこの中に含まれております。
それから、下のがん対策でございますが、国立がんセンターの施設整備の費用、それから次のページの上にありますがん研究助成金の増額等がその内容となっております。
二十四ページへ参りまして、難病対策でございます。特定疾患治療研究費につきまして、その対象疾患を二十三疾患に拡大することとしております。
それから、一番下の脳卒中リハビリ対策でございますが、二十五ページの上にございますように、リハビリテーション施設及び老人慢性疾患専門医療施設の整備を計画的に進めることといたしまして所要の経費を計上しております。
二十六ページは感染症対策でございます。これにつきましては、新たに感染症予防情報網の整備を図ることとしまして、六千五百万円の新規予算を計上しているところでございます。
それから二十七ページの下へ参りまして、保健衛生・医療施設等の整備でございます。
まず、保健衛生施設の整備でございますが、五十九億三千二百万円、前年同額を計上しております。事項といたしましては、二十八ページの中ほどにございますが、原爆被爆者保健福祉施設を新たにその対象に追加いたしております。
次に、医療施設等の整備でございますが、七十三億六千九百万円を計上しております。前年同額でございます。これも事項としまして二十九ページにございますような老人デーケア施設を新たに追加いたしております。
三十ページは年金制度でございます。
まず、厚生年金、船員保険及び拠出制国民年金でございますが、これにつきましては物価スライドによる給付改善を行うことといたしております。すなわち、昭和五十五年度の消費者物価上昇率に応じまして年金額の改定を行うこととしております。実施時期は、厚生年金、船員保険につきましては六月、国民年金につきましては七月を予定しております。
次に、福祉年金でございますが、年金額の引き上げにつきまして、老齢福祉年金の場合で申しますと、月額二万二千五百円から二万四千円へと千五百円の増を図っております。ただし、扶養義務者の収入に比較的余裕のある六人世帯で年収六百万円以上の場合には、五百円を積み増して二万三千円としております、
また、三十一ページにございます所得制限でございますが、本人の場合、老齢の場合で申しますと二人世帯二百十六万四千円から二百二十六万六千円に引き上げる。障害の場合は、二人世帯で二百十六万四千円から三百万円にと大幅な引き上げ、母子の場合は、児童扶養手当と並びまして二人世帯で三百六十一万円据え置きとしております。なお、扶養義務者につきましては、六人世帯で八百七十六万円、据え置きとしております。
なお、年金のオンライン体制でございますが、これにつきましては引き続きその整備を進めることとしまして、所要の予算を計上しているところでございます。
三十二ページは医療保険制度でございます。
まず、政府管掌健康保険でございますが、備考欄に掲げておりますような制度改善をベースにいたしまして、総額で五千二百七十八億円余の国庫負担を計上しております。
三十三ページは船員保険の疾病部門でございますが、これにつきましては国庫負担金を十五億円から二十億円に増額する措置を講じております。
下の方へ参りまして国民健康保険助成費でございますが、総額で二兆三千七十五億円余を計上しております。最も大きいのは1の療養給付費補助金でございますが、そのほかに財政調整交付金、三十四ページにございます臨時財政調整交付金等がこの中に含まれております。なお、助産費補助金につきまして、その補助基準額を現行八万円から十万円に引き上げることとしております。
三十五ページは老人医療費支給制度でございます。懸案の老人保健医療制度につきましては、五十七年度実施をめどに今国会に法案を提出する予定でおりますので、来年度予算は現行制度をベースにいたしまして編成を行っております。なお、所得制限につきましては、本人(夫婦二人)で二百十六万四千円から二百二十六万六千円に引き上げ、扶養義務者は八百七十六万円、据え置きとしております。
三十六ページは医薬品副作用被害救済制度でございます。重症スモン患者介護事業費につきまして単価の引き上げを行っております。
三十七ページは医薬品の安全対策等でございます。三億八千万円を計上しておりますが、この中には、上の方にございますように、医薬品再評価調査費、あるいは医療用具安全性調査費等の新規予算が入っております。
三十九ページをごらんいただきたいと思いますが、看護婦等医療従事者の養成確保でございます。四百八十九億四千百万円を計上しております。
この中には、看護婦等貸費生貸与金の貸与月額の引き上げ、養護研修研究センターにおける課程の増設、それから四十ページにございますような国立病院・国立療養所の看護婦の夜間看護手当の増額等の経費が含まれております。
また、その他の医療従事者の関係で、理学療法士等の養成でございますが、理学療法士の民間養成所に初めて運営費の助成を行うことといたしております。
四十一ページは保母等の養成確保でありますが、二十三億四千六百万円を計上しておりまして、保母修学資金の貸与月額の増額を図ることとしております。
四十二ページは生活環境施設の整備、いわゆる公共事業費でございます。
これにつきましては、引き続いて施設整備を進めることとしておりまして、簡易水道で二百七億八千四百万円、水道水源の確保と水道の広域化ということで七百十七億三千八百万円、そして廃棄物処理対策につきましては六百四十七億三千万円をそれぞれ計上しております。
二枚ほど飛ばしていただきまして四十五ページでございますが、懸案となっておりました廃棄物の広域最終処分場の確保、いわゆるフェニックス計画でございますが、これにつきましては、関係地方公共団体の共同出資による事業主体を設立してこれを推進するということにいたしまして、備考欄にありますような広域廃棄物埋立処分場建設事業費を新規に計上しております。
四十六ページはその他の重点施策でございます。
まず、戦傷病者戦没者遺族等の援護対策でございますが、千四百七十二億一千四百万円を計上しておりまして、遺骨収集、慰霊巡拝、慰霊碑建設のほか、中国孤児の援護対策に特に力を入れまして、受け入れ施設への委託費、あるいは肉親調査のための調査活動費を新たに計上しております。それから、義勇隊開拓団員を新たに援護法の処遇対象としております。さらに、四十七ページの上にございます遺族年金等につきまして、恩給の改善に準じた改善を行うこととしております。
次に、環境衛生関係営業の振興でございます。八十七億四千五百万円を計上しております。都道府県環境衛生営業指導センター、これを本年に引き続きまして十一カ所増設することといたしております。
四十八ページは原爆被爆者対策でございます。原爆被爆者対策基本問題懇談会の御意見を踏まえまして、備考欄にありますような医療特別手当の創設、これは所得制限なしでございます。それから、保健手当の加算制度の創設、そして原爆小頭症患者手当の法制化等の内容改善を図ることとしております。
五十ページでございますが、五十ページの下の方に研究開発の推進というのがございます。ここでは、研究費についてその主なものをまとめて列挙しております。
なお、次の五十一ページ以降に各特別会計の歳入歳出予算の一覧表をつけておりますけれども、説明は省略させていただきたいと存じます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/8
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009・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 次に、昭和五十六年度労働省関係予算につきまして政府から説明を聴取いたします。高橋会計課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/9
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010・高橋伸治
○政府委員(高橋伸治君) お手元の資料に基づきまして、昭和五十六年度労働省関係予算案の概要について御説明申し上げます。
まず予算規模でございますが、一ページの中ほどの昭和五十六年度予算額の欄にございますように、一般会計予算額は四千九百九十億九千八百万円で、前年度に比較して一・四%の伸びとなっております。
次に、労働保険特別会計予算額は三兆四百二十五億円で、対前年度比九・一%の伸びでございます。
また、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計予算額は百九十二億七千五百万円で、対前年度比五・七%の伸びとなっております。
以上、労働省所管予算額の合計は三兆五千六百八億七千三百万円で、対前年度比八・〇%の伸びとなっております。
次に、二ページ以下におきまして主要事項について概要を御説明申し上げます。
主要事項は大きく分けて十本の柱から成っております。
その第一は、高年齢労働者対策でございます。
高齢化社会に対応するため、まず昭和六十年までに六十歳定年が一般化することを目標に、定年延長に関する労使間の合意や社会的機運の醸成を一層促進するため、地域別定年延長研究会の拡充や高年齢者雇用率達成指導の強化等の行政指導を積極的に展開するとともに、高年齢者の作業を容易にするため、必要な作業施設等の改善を促進するための資金を融資する高年齢者職場改善資金融資制度を創設し、また今後高齢化の波が移っていく六十歳代前半層についても、高年齢者雇用確保助成金の新設等により、企業の実情に応じた六十歳以上への定年延長を含めた雇用の延長を促進し、シルバー人材センターを拡充するなどにより就業機会の増大を図ることといたしております。
そのほか、三ページの上の事項5にありますように、高齢化社会の到来に対応するための対策について総合的な調査研究を推進するとともに、中高年齢労働者の健康管理対策としてシルバー・ヘルス・プランを引き続き推進することといたしております。
第二の柱は、三ページの下の方にございます心身障害者対策でございます。
まず、心身障害者の雇用機会を確保するための対策として、身体障害者雇用率達成のための行政指導の強化、心身障害者職業センターの機能の充実による職業能力の評価体制の確立を図るほか、四ページに参りまして、心身障害者重点公共職業安定所を指定して求職情報を集中管理し、また身体障害者職業相談員を新設するなどにより、職業紹介体制の強化を図ることといたしております。
次に、医療から社会復帰までの一貫した総合リハビリテーション施設の設置構想の推進、能体障害者職業訓練校の拡充を行うなど、心身障害者リハビリテーション体制の総合的推進を図るとともに、五ページに入りまして、通勤対策の充実など、心身障害者を取り巻く雇用環境の整備充実に努めることといたしております。
また、国際障害者年の記念行事として、国際アビリンピックを世界で初めて開催するほか、各種の行事を催し、啓発宣伝活動を積極的に展開することとしております。
六ページをお開きいただきたいと存じます。
第三の柱は、産業構造の変化等に即応する総合的な雇用対策の展開でございます。
当面する雇用、失業情勢に的確に対応するとともに、産業構造の転換や技術革新の進展に即した雇用対策を展開するため、まず複雑多岐にわたる雇用関係各種給付金を見直し、高齢化社会への移行等、雇用、失業情勢の変化に対応した実効の上がるものとなるよう、その統合と充実を図ることとしております。
また、七ページにございますように、雇用発展分野としての第三次産業対策の推進を図ることとし、今後の雇用発展職種についての研究開発を進める一方、パートタイマー等の雇用情報の提供、労働条件の明確化指導、労働基準監督機関における相談体制の整備等を行うことといたしております。
次に八ページに参りまして、第四の柱は、職業訓練関係でございます。
まず、民間における能力開発の推進として、認定職業訓練に対する助成の充実、地域職業訓練センターの増設、有給教育訓練休暇制度の充実等を行うことといたしております。
また、九ページに入りまして、公共職業訓練につきましては、離職者に対する職業訓練を機動的、弾力的に実施するとともに、産業技術の高度化に対応して、訓練内容の向上の促進、職業能力評価制度の改善等の措置を講ずることといたしております。
十ページをお開きいただきます。
第五の柱は、ゆとりある職業生活と安全な労働環境の実現のための施策の推進でございます。
まず、労働時間対策を計画的に推進するため、週休二日制等労働時間対策推進計画に基づき、業種別会議の拡充等により行政指導を強力に進めていくことといたしております。
次に、行政の最重点の一つとして推進していくこととしております労働災害防止対策としては、特に建設業について、災害発生件数が多く災害率が高いこと等にかんがみ、重点的な監督指導を実施するとともに、工事計画の安全性に関する事前審査体制の確立、建設業安全教育センターの設置等の安全確保対策を推進することといたしております、
また、作業環境管理対策の推進、特定疾病防止対策の充実を図ってまいります。
また、十一ページから十二ページにございますように、事故及び疾病の原因究明等の基礎的調査研究、労働基準監督機関による監督指導の強化、産業医学の国際化に向けての振興、被災労働者に対する適正迅速な補償等を行うこととしております。
また、十二ページの半ばごろに、事項6の中小企業退職金共済制度につきましては、制度の積極的な普及促進に努めるとともに、その実施体制について整備統合を図り、統合後の退職金共済組合において新たに林業従事者についての退職金共済事業を実施することといたしております。
このほか、最低賃金制度の推進、未払い賃金の立てかえ払い限度額の引き上げ等、労働条件に関する施策を推進するとともに、勤労青少年福祉対策の推進、それから十二ページから十三ページにございますように、勤労者福祉施設の整備充実等を行うことといたしております。
次に、十四ページに参りまして、第六の柱、特別の配慮を必要とする人々についての対策といたしましては、まず家内労働者を保護するための最低工賃の普及と徹底、危険、有害業務に従事する家内労働者の安全衛生対策の強化等について一層の努力を払うとともに、寡婦、内職婦人等に対する就業援助対策の充実を図ることといたしております。
次に、十五ページに参りまして、建設業等の下請労働者につきまして、賃金不払い対策の推進、下請企業に重点を置いた労働災害防止対策の充実、建設雇用改善助成金制度の充実、建設労働者福祉センターの増設等の措置を講ずることとしております、
このほか、十五ページから十七ページに記載してございますように、同和対策対象地域住民、インドシナ難民、季節出かせぎ労働者、沖縄失業者、それから十七ページへ参りまして、駐留軍関係離職者、炭鉱離職者等のための雇用対策についてもそれぞれ充実することといたしております。
また、失業対策事業につきましては、失業対策制度調査研究報告の趣旨に沿って、今後事業の改善運営を進めることとし、このための措置の一環として、十七ページの下の方にございますように、高齢者や病弱者の失業対策事業からの自立、引退を勧奨する特例措置を講ずることといたしております。
十八ページの第七の柱、男女平等の促進と婦人の労働環境の整備といたしましては、まず雇用における男女の機会と待遇の平等促進と婦人の労働環境の整備を図ることを今後の基本方針として、男女の実質的平等についてのガイドラインの策定と法的整備について検討を進める一方、男女別定年制等の解消、その他男女差別的雇用管理の改善のための指導の強化等、雇用における男女平等促進のための対策を積極的に推進していくことといたしております。
また、勤労婦人の母性健康管理対策の推進、育児休業制度の普及促進に努めるとともに、就業を希望する婦人に対する就業援助対策を充実強化することといたしております。
十九ページに入りまして、第八の柱は、労使関係の問題でございます。労使の不断の相互理解と信頼関係を一層強化し、労使関係の安定と社会的コンセンサスの形成を図るため、産業労働懇話会等の場を通じ、政労使間の理解を一層深めることに努めるとともに、八〇年代の労使関係に関する総合的な研究等を行うことといたしております。
第九の柱、十九ページの中ほどにございます労働外交の推進といたしましては、ILO、OECD等の国際機関の諸活動に積極的に参加協力するとともに、アジア地域技能開発計画への協力等、発展途上国労働者の能力開発、その他多角的な技術協力の推進を図ることといたしております。
以上のほか、二十ページにございますように、行政需要の増大変化に対応して行政機能の整備充実を図ることといたしております。
昭和五十六年度労働省所管予算案の概要は以上のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/10
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011・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 以上で説明の聴取は終わりました。
本件に対する質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/11
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012・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 先般、当委員会が行いました社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査のための委員派遣について、派遣委員の報告を聴取いたします。高杉廸忠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/12
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013・高杉廸忠
○高杉廸忠君 去る一月二十日より二十二日までの三日間、片山甚市委員長、佐々木満理事、小平芳平理事、沓脱タケ子委員、柄谷道一委員、山田耕三郎委員と私、高杉廸忠の七名は、地域医療及び最近の雇用情勢等の実情調査のため、沖縄県に出張し、沖縄総合事務局、沖縄県庁及び石垣市当局より説明を聴取するとともに、現地での視察を行ってまいりました。
以下、調査の概要について御報告申し上げます。
まず、雇用情勢について申し上げます。
沖縄振興開発十カ年計画は、四十七年五月沖縄の祖国復帰に伴い、本土との格差是正と自立的発展の基礎条件の整備を目標に策定されたものでありますが、五十六年度で最終年を迎えようといたしております。
復帰後の沖縄経済は、比較的順調な伸びを示してきましたが、これは、特に公共事業の推進、民間住宅建設の伸長等により、建設業及び関連産業が大きく伸びたこと、さらには、最近入域観光客が大幅に増加していることなどによるものであります。
これに伴い県民所得は、五十三年度には国民所得の七〇%に達し、その格差は縮小しております。しかし、県内純生産の産業別構成を見ますと、五十四年度で第一次産業が六・六%、第二次産業が二二・五%、第三次産業が七四・二%と第二次産業比率が全国最低という産業構造は復帰時とほとんど変わっておりません。
このような状況のもとで、沖縄県におきましては、海洋博覧会後の五十二年五月には七・九%という高い失業率を示しましたが、その後若干の改善が見なれたものの、五十五年十一月現在で、なお完全失業者が二万三千人、失業率五・一%と高く、また求職倍率も五・四倍という全国平均の二倍から三倍以上という厳しい雇用失業情勢が依然として続いております。
これは第二次産業、特に製造業の低迷による労働市場の狭隘に加えて、相次ぐ駐留軍からの離職者、本土からのUターン者、県内就職志向の学卒者等の滞留によるほか、労働力人口の急速な増加等が要因となっておりますが、ことに、完全失業者のうち三十歳未満の若年失業者が六〇%を超えている点が注目されるところであります。
このような雇用失業情勢を反映し、中高年齢者の再就職はきわめて困難な状況にあり、また、民間の高年齢者雇用率及び身体障害者雇用率の達成状況も全国平均を大幅に下回っているのが実情であります。
これが雇用確保対策といたしましては、基本的な産業経済の振興による県内の労働需要の増大を図るための諸施策とあわせ、従来の雇用失業対策をより一層強化するとともに、各般の新しい施策を積極的に推進していることであります。
当面の最大の課題となっている若年失業者対策については、県外優良求人開拓などの広域職業紹介の強化及び年間三千人近くに達しているUターン者の防止策を積極的に推進しているところであります、また、駐留軍関係離職者など各種技能無資格者の多い中高年齢者については、職場適応訓練等による就職促進、定年の延長及び中高年齢者雇用開発給付金制度等の活用を図り、さらに心身障害者については、国際障害者年にあわせ雇用率達成指導の強化、雇用キャンペーンの実施等、諸施策を積極的に講じているところであります。
なお、これらの広域職業紹介の対象となりがたい中高年齢者等については、沖縄振興開発特別措置法に基づく失業者吸収率制度等、特別の施策をさらに推進していくことが必要と感じた次第であります、
次に、視察いたしました県立那覇職業訓練校について簡単に触れたいと思います。
沖縄県における県立二校、雇用促進事業団立二校計四校の職業訓練校のうち、最も古い歴史を有する本校では、地域のニーズに即した訓練科目の新設を行っておりますが、延べ定員三百三十五人を応募者が常に上回るという状況にあります。しかし、訓練修了時の就職者は半分以下と厳しく、職業訓練と雇用とをいかに結びつけていくかが基本的な課題となっております。
特に、本校では常勤指導員が八名と少なく、業務負担過重となっていることなどから、その増員が要望されております。
なお本校は、那覇市の臨海道路拡張計画によりまして校用地の一部が収用されるため、目下、四月開校を目標に浦添市への移転整備計画が進められておりますが、敷地、校舎、訓練関係諸設備が飛躍的に拡充されることから、全国でもひときわ充実した訓練校として、その役割りが期待されているところであります、
次に、保健医療行政の現状と対策について申し上げます。
振興開発計画の一方の柱であります公共施設の整備におきましては、五十五年度までに開発事業費一兆五百億円が投入され、道路、港湾、空港及び学校など社会資本の整備は、おおむね本土水準に達するという成果を上げております。しかし、社会福祉施設及び保健医療施設等の整備は依然として立ちおくれているのが実情であります。
本県の医療施設は、県立病院を中心に年々整備されており、四十六年度に対する五十四年末の状況を見ますと、病院は二十四から四十八施設に、一般診療所は三百三十三から四百六施設に、歯科診療所は百三十から百八十五施設とそれぞれ拡充されており、これに伴い病床数も増加しておりますが、人口十万人当たりの総病床数では全国平均の七三%程度であります。
その特徴といたしましては、都市部に公立及び民間の病院、診療所が整備、偏在し、離島、僻地では県立診療所等が大きな役割りを果たしていることであります。
ことに、医師等医療従事者は少なく、全国平均に対し、人口十万人当たりの比率は、医師が五八・六%、歯科医師が四八・九%、看護婦が六七・三%と大きく下回り、理学療法士及び作業療法士においては極端に少ないというのが実態であります。
このため、本土派遣医師の年間約二百六十人の受け入れ、さらには中国、韓国等からの外国人医師約四十人の僻地、離島での診療を受け入れておりますが、なお、医師不足のため十一の県立診療所が休診状態にあり、無医地区は二十七カ所に及んでおります。また、離島の医療に当たっている沖縄独自の医介輔及び歯科介輔の老齢化とその補充が問題となっております。
このような状況での救急医療体制は、他県と異なり公的医療施設が主軸となり年中無休で対処しておりますけれども、離島からの急患搬送体制については、自衛隊や海上保安庁の航空機等に依存しているとのことであります。
したがって、医師等医療従事者の養成確保が緊急の課題となっておりますが、その対策といたしましては、国費沖縄学生制度による医師歯科医師の帰還促進、派遣医師の受け入れ促進と積極的活用等のほか琉球大学医学部卒業医師の県内定着化のための修学資金制度の検討などが行われているところであります。
また、看護婦等については、看護婦等養成施設の整備拡充、県立医療技術短期大学の設置、また、理学療法士等については修学生等の資金貸付事業の強化などが推進されているところであります。
このほか国際障害者年における対策といたしましては、国の施策とともに身体障害者福祉センターなど関係諸施設の整備拡充のほか、沖縄県心身障害者白書の発刊など各種記念事業を積極的に推進しているところであります。
なお、沖縄県における医療保険財政について見ますと、国民健康保険を初め各保険とも健全財政を維持しておりますが、これは医療供給体制が整備されていないため受診率が低く、医療費も低いことなどによるものであります。
しかし、高齢化の進行、医療施設の充実、医療技術の高度化に伴う医療費の増大傾向等から、必ずしも保険財政の将来は楽観を許さないところであり、したがって、老人保健医療制度を早期に実施されたいとの要望がありました。
次に、視察いたしました県立八重山病院について申し上げます。
昨年四月、石垣市を中心とする広大な八重山諸島の中核病院として新たに開設された当病院は、病床数約二百床、一日の外来患者三百人のほか増加する入院患者に対し、わずか常勤医師十三人と、養護要員八十七人で治療に当たっておりますが、このほか附属診療所六カ所への年間百三十回以上の巡回診療や六十件を超える救急患者の医療を行っております。
また皮膚科、眼科、泌尿器科等の新設、リハビリの外来棟の増築等の問題のほか、コンピューター導入による臨床検査情報システムの充実及び僻地診療所をサポートする静止画像、ファクシミリの電送計画等、当病院の課題は山積しております。関係者は過重な勤務に耐え日夜懸命の努力をいたしております。
これらの業務を遂行していくためには、僻地、中核病院を含む医師等の要員確保とその定着化が必要でありますが、その早期実現は容易でないとのことでありました。
最後に、沖縄県は振興開発計画により大きな成果を上げてきましたが、さらに、沖縄の地理的条件を生かした畜産、野菜、近海漁業などの第一次産業及び文化的特性を生かした豊かな個性のある第三次産業の振興明発を推進し、残された多くの問題の解決を図っていく必要があります。すでに、これらの課題について県を中心に基本事項の検討が行われているところでありますが、国に対し沖縄振興開発特別措置法の延長とともに、第二次沖縄振興開発計画の策定のため特段の配慮をされたいとの要望がありました。
以上で報告を終わりますが、今回の調査を通じ、沖縄県における医療制度の整備、充実及び雇用の安定等のため、引き続き国の手厚い施策が必要であることを強く感じた次第であります。
なお、県当局から提出されました要望事項の会議録末尾掲載方を、委員長においてお取り計らいくださるようお願いをいたしまして報告を終わります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/13
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014・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
なお、高杉君の報告中に御要望のありました沖縄県からの要望事項を、本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/14
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015・片山甚市
○委員長(片山甚市君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109414410X00219810303/15
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