1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十八年三月二十二日(火曜日)
午前九時四十一分開議
出席委員
委員長 綿貫 民輔君
理事 熊川 次男君 理事 中川 秀直君
理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君
理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
理事 岡田 正勝君
井出一太郎君 今枝 敬雄君
上村千一郎君 大西 正男君
奥田 幹生君 木村武千代君
高村 正彦君 白川 勝彦君
高鳥 修君 津島 雄二君
森 清君 山崎武三郎君
栂野 泰二君 鍛冶 清君
安藤 巖君 林 百郎君
田中伊三次君
出席国務大臣
法 務 大 臣 秦野 章君
出席政府委員
法務大臣官房長 根岸 重治君
法務大臣官房司
法法制調査部長 千種 秀夫君
法務省刑事局長 前田 宏君
法務省人権擁護
局長 鈴木 弘君
委員外の出席者
最高裁判所事務
総局総務局長 山口 繁君
最高裁判所事務
総局人事局長 大西 勝也君
最高裁判所事務
総局経理局長 原田 直郎君
最高裁判所事務
総局民事局長兼
最高裁判所事務
総局行政局長 川嵜 義徳君
最高裁判所事務
総局刑事局長 小野 幹雄君
最高裁判所事務
総局家庭局長 栗原平八郎君
法務委員会調査
室長 藤岡 晋君
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委員の異動
三月五日
辞任 補欠選任
栂野 泰二君 岩垂寿喜男君
鍛冶 清君 坂井 弘一君
同日
辞任 補欠選任
岩垂寿喜男君 栂野 泰二君
坂井 弘一君 鍛冶 清君
同月七日
辞任 補欠選任
栂野 泰二君 佐藤 観樹君
鍛冶 清君 坂井 弘一君
同日
辞任 補欠選任
佐藤 観樹君 栂野 泰二君
坂井 弘一君 鍛冶 清君
同月八日
辞任 補欠選任
今枝 敬雄君 武藤 嘉文君
亀井 静香君 村山 達雄君
同日
辞任 補欠選任
武藤 嘉文君 今枝 敬雄君
村山 達雄君 亀井 静香君
同月十一日
委員横路孝弘君が退職された。
同月二十二日
辞任 補欠選任
今枝 敬雄君 奥田 幹生君
亀井 静香君 津島 雄二君
同日
辞任 補欠選任
奥田 幹生君 今枝 敬雄君
津島 雄二君 亀井 静香君
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三月十日
国籍法の一部改正に関する請願(安井吉典君紹介)(第一三二五号)
同(河上民雄君紹介)(第一四三三号)
同月十六日
国籍法の一部改正に関する請願(土井たか子君紹介)(第一五六一号)
同(佐藤観樹君紹介)(第一五九〇号)
刑事施設法案の廃案に関する請願(林百郎君紹介)(第一五八九号)
同(北山愛郎君紹介)(第一六三六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/0
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001・綿貫民輔
○綿貫委員長 これより会議を開きます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件調査のため、明二十三日、参考人として久里浜少年院長岡村宏一君、保護司坂本新兵君、東京家庭裁判所次席家庭裁判所調査官菊地和典君、神奈川県少年補導員連絡協議会副会長渡辺三郎君に出席を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/1
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002・綿貫民輔
○綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/2
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003・綿貫民輔
○綿貫委員長 お諮りいたします。
本日、最高裁判所山口総務局長、大西人事局長、原田経理局長、川嵜民事局長兼行政局長、小野刑事局長及び栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/3
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004・綿貫民輔
○綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/4
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005・綿貫民輔
○綿貫委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/5
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006・稲葉誠一
○稲葉委員 裁判所職員定員法の改正案について直接関連することからお聞きをいたしたいというふうに思っております。
これは判事の員数を七人増加するとなっているわけですけれども、この場合、判事というふうな形に限定をしないで、判事も判事補も全部含めて裁判官の員数を何人増加するというふうな形にはできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/6
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007・千種秀夫
○千種政府委員 現実の法律の規定を抜きにして考えますとそういう考え方もあり得ると思うのでございますけれども、現在、裁判所の職員定員法というものが判事、判事補あるいは簡裁の判事につきましてそれぞれの定員の枠を定めております関係で、これを改正いたします場合には、それを基本として改正しなければならないことになるわけでございまして、その枠を取り払って裁判官全体の総定員を定めるような法改正ということになりますれば、先生の御指摘のようなそういう改正もできるかと存じますが、そういういきさつから、現在は、直ちにそういう改正ができないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/7
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008・稲葉誠一
○稲葉委員 沖縄県の復帰に伴う場合は判事、判事補というふうに分けないで一緒にして増加という形にしたように聞いているわけですが、その間の経過はどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/8
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009・千種秀夫
○千種政府委員 沖縄は、復帰以前に沖縄だけで裁判官の全体の定員を定める法制ができておりましたものですから、これが復帰のときに特別措置法によりましてそれを引き継ぐという形になったわけでございます。そういういきさつから、沖縄につきましては、ただいま申し上げましたような判事、判事補あるいは簡裁判事といった別の枠がございませんで、総定員法となっておりましたものですから、そのままそれを引き継いでいるということでございます。したがいまして、これも一般論として申し上げますと、これを直すということも考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/9
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010・稲葉誠一
○稲葉委員 ちょっとわからないんですが、いまはどういうふうになっているんですか、沖縄県の場合。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/10
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011・千種秀夫
○千種政府委員 現在でも措置法でそれを使っているといいますか、そのままになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/11
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012・稲葉誠一
○稲葉委員 そうすると、ここで私にはわからないといいますかお聞きをいたしたいのは、この法案が通らないとというか、この法案と修習生の人が判事補になるということと、これは恐らく普通は四月の第一閣議でしょう、五日か六日ごろの閣議で決まることなんでしょうけれども、それとはどういう関係になるわけですか。この法案が通らないと修習生が判事補になれないということとは関係ないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/12
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013・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 修習生から判事補への採用の問題に関連いたしますので私から申し上げたいと思いますが、今回定員法改正案ということで増員をお願いいたしておりますのが判事七名でございますが、御承知のように、四月の初めに判事補から判事へなりまして、その判事補のあいたところに修習生から判事補を採用する、そういうふうな関係になるわけでございますが、その充員の関係をごく大まかに申し上げますと、現在お手元に差し上げてございます法律案関係資料の十八ページのところに「定員・現在員等内訳」という表を出していただいておりますが、それによりますと、昨年の十二月一日現在で判事の欠員が三十三名ある、それに今回お願いしております増員七を加えて四十でございます。そのほかに昨年の十二月からことしの四月までの減耗というものがございまして、まだ確定しておりませんが、大体六十くらいのあきが出てくる予定でございます。そこへ今回判事になりますのが五十三名でございまして、そこへ五十三名が入っていく。そのほかに判事補の減耗もございまして、それを合わせまして六十数名くらいのあきができる。そこへ今度春三十五期の修習生が修了いたしますが、そのあきのところで修習生から判事補へ採用する、そういう関係になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/13
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014・稲葉誠一
○稲葉委員 減耗という言葉を使われるわけですがね。まるで人間が減耗するなんて変な言葉だけれども、員数という言葉も変な言葉で、いわゆる員数合わせということで昔軍隊で使った言葉ですが、これはほかの法律で出ている言葉ですからしようがありませんけれども、減耗というのは変な言葉ですね、それはどういうふうなことですか。六十名ぐらいあきができるとかいうようないろいろな話がありましたけれども、これは判事補から判事になるときに大分おやめになる方があるという意味ですか、あるいは再任が拒否されて、再任されないという人も含んでおる、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/14
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015・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 減耗と言いますのは、一般に呼びなれない言葉かもしれませんが、われわれ便宜そういうふうに呼んでおるわけでございまして、その中身といたしましては、定年退官と願免、いわゆる依願免でございます。その両方合わせて大体減耗というふうに呼んでおります。任期終了で退官というのもございますが、今回も任期終了退官が数名ございます。ちょっといま手元に正確に持っておりませんが、数名ございます。いま申しましたように、定年、願免、任期終了等総称いたしまして減る数ということで減耗というふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/15
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016・稲葉誠一
○稲葉委員 そうすると、この十八ページにある表で、これは十二月一日現在ですね、この法案が通った場合には欠員というところはどういうふうになるんですか。現定員、現在員、欠員、それぞれどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/16
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017・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 この法案が通りました時点の予想といたしましては、判事、判事補はほぼ埋まる予定でございまして、簡易裁判所判事には相当数の欠員が生ずる。それにつきましては、これも稲葉委員御承知と存じますが、夏に簡裁判事をいわゆる特任ということで裁判所法四十五条で採用いたしますが、それを採用いたしましても、簡易裁判所判事について、わずかではございますけれどもなお欠員が残る、そういう予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/17
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018・稲葉誠一
○稲葉委員 この前の事物管轄が変わったときに、簡易裁判所の充実ということが当委員会でも論議になって附帯決議にもなっている、こう思うのですが、人的、物的、この物的という言葉、人的という言葉は余りいい言葉ではありませんが、それはいま言われたような形だと、簡裁判事はなおかつ欠員があるという話ですね。その欠員が出てくるという理由はどういうところにまずあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/18
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019・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 人事行政を行うにつきましては、ある程度将来の見通しというものを立てる必要があるわけでございます。今後のいわゆる一般職員の退職の関係、それから簡易裁判所判事その他ほかの判事、判事補の定年等による退職の関係を少し長期的に見ますと、ことしたとえば簡易裁判所判事を全部埋めるというふうに大量に採りますと明年以後どうなるかというふうなこともございまして、余り年によって採用数を大幅に変えるということもいかがかと考えられますので、できるだけ数を年度によってそうたくさん採ったり採らないというふうなことがないように少し長期的な見通しを持っていきたいということでございます。大体毎年簡易裁判所判事は裁判所法四十五条で三十名から四十名の間採っておりますが、今度もそのぐらいの数を採ろうという予定でございますので、なお欠員が少し生ずるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/19
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020・稲葉誠一
○稲葉委員 私のお聞きをいたしておりますのは、簡易裁判所判事に欠員ができる理由というのは、一つはたとえば仕事に魅力が——魅力がないという言葉が悪いかもわかりませんけれども、そういうようなこととかで希望者が非常に少ないというふうなこともあって、簡裁の判事の欠員が出てくるのではなかろうかということをお聞きいたしておるわけです。これが第一ですね。
それから第二に、裁判所法四十五条、なるほどそうですけれども、この選び方が、どういう基準でどういうプロセスを経て簡裁の判事が選ばれるのか、私どもにはよくわからぬのですね。いろいろな話を聞きますと、最高裁の方からむしろ積極的にある特定の職種の人やなんかに対して、簡裁の判事になってくれということを頼むのだけれども、なかなかなるのを嫌がるとかなんとかというふうな話があるわけですね。だから、具体的に、いま言ったようなどういう理由で欠員ができるのかということと、それから裁判所法四十五条で選ぶ場合にどうやって選んでいるのか、そこがよくわからないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/20
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021・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 まず、裁判所法四十五条のいわゆる選考について希望者はどうかというお尋ねでございますが、希望者については相当たくさんございまして、その中から厳選して採用しておるという状況でございますので、魅力がなくて希望者が少ないというふうなことは全然ございません。最近も大体コンスタントにかなりの数の希望者がございます。
その選考の実際の方法でございますが、これもたびたび申し上げていることでございますが、各地方裁判所に簡易裁判所判事推薦委員会というものがございまして、これは法曹三者で構成されておりますが、その簡易裁判所判事推薦委員会から最高裁判所に推薦してまいります。それから、最高裁判所の方に簡易裁判所判事選考委員会というものがございまして、これも法曹三者で構成しておりますが、そこでいろいろな試験等、面接等も行いまして、それで採用しておる、そういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/21
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022・稲葉誠一
○稲葉委員 この前、事物管轄が三十万から九十万になって拡張されたわけでしょう。あのときの話では、簡裁の判事なりあるいは書記官なり事務官なりをそれに伴ってマッチさせるといいますか増大させる、そういうふうな話があったわけですね。それはもうある程度の統計が出ていると思うのですが、具体的にはどういうふうになっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/22
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023・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 概略を申し上げますと、あの改正をお願いいたしましたときにお示しいたしました数字は、昭和五十五年の数字を基準として出したものでございました。昭和五十五年は地方裁判所と簡易裁判所の分担割合が六二・二対三七・八でございました。その数値を基準にいたしまして、法改正をいたしますと地簡裁の分担割合が地裁五二・四対簡裁四七・六になるであろうという予測でございました。実際に動く件数は二万件であろうということであったわけでございます。ところが、九月一日に改正法が施行されまして、九月から十二月までの四カ月間の実績を見てみますと、予想よりもはるかに簡易裁判所の事件数がふえまして、分担割合は地裁四〇・六対簡裁五九・四というふうになりました。この実績と推定との誤差は約一二%ということになったわけであります。
実情は以上のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/23
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024・稲葉誠一
○稲葉委員 いまのその資料は、法務省から出したこの法律案関係資料の何ページにあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/24
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025・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 お手元の資料の中にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/25
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026・稲葉誠一
○稲葉委員 だって、そこが一番この法案で——これは判事をふやす法案で、ことに、簡裁判事をふやすということにはなっておりませんから直接関連がないと言えばないかもわかりませんけれども、それが前から問題となっているわけですからね。簡裁の事物管轄の拡張に伴うところの書記官、事務官の充実ということがポイントになるわけですから、この法案とは、判事をふやす法案だから、直接関係がないと言えば関係がないから、これはおっしゃるとおりかもわかりません。
そこで問題としては、今後簡裁の充実ということについては、人的、物的に、特に人的の問題はどういうふうにしていこうとお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/26
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027・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
先ほど民事局長が御説明申し上げましたように、昭和五十七年度の簡易裁判所における民事第一審通常訴訟及び手形小切手訴訟事件を見てみますと十二万八千八百三十七件ございまして、昭和五十六年度の九万件に比べますと約三万八千件程度の増加になっております。増加が特に著しいのは大都市あるいはその周辺に所在する一部の簡裁でございます。
具体的に二、三申し上げますと、福岡簡裁は五十六年に三千五百件でありましたのが、五十七年には約六千件増加いたしまして九千四百十八件となっております。それから仙台簡裁でございますが、五十六年は千五百六十九件でございましたのが五十七年には三千五百六十二件、約二千件の増加というふうになっております。そのほか札幌、広島、大阪あたりもかなりの増加を示しておりますけれども、他方、大規模庁で事件増がそれほどない庁もございます。たとえば東京はさほど変動はございません。名古屋も同じでございます。それから逆に神戸の場合は、五十六年は千九百九十二件でございましたのが約四百件減りまして、五十七年には千六百二十二件というようになっております。地域によりまして事件の増加が非常にアンバラでございます。
これはどこら辺に原因があるかちょっと調べてみたのですが、福岡あたりでございますと信販会社が非常にたくさん提訴した、こういう状況があるようでございます。そのほかの簡裁の増加事件を見ましても大半がクレジット関係の事件でございまして、これは稲葉委員よく御承知のとおり比較的内容が簡単でございまして、審理、裁判の上でも負担はさほど多いものではございません。しかしながら、こうした事件でございましても、大量に係属いたしますとそれだけ事務量がふえてまいりますし、特に書記官事務の面ではいろいろ手続事務を伴うことになるわけでございます。さらに、督促事件、調停事件も特に大都市を中心として全般に増加の傾向がございます。
こういう点を考慮いたしまして、簡裁判事につきましては、本年四月から比較的負担が軽い中小規模庁から事件増の著しい大規模庁へ配置がえするなどいたしまして負担の均衡を図りたいというように考えております。それから書記官、事務官等につきましては、先ほど申しました事務量の増加を考慮いたしまして、福岡、仙台等事件の著しい増加を示しているところにつきましてはすでに本年度内に応急的に増員等の措置を講じておりますけれども、これらの庁も含めまして、本年四月からは比較的余裕のある地家裁本庁、支部等から配置がえを行って増員措置を講じる予定にいたしております。
今後の問題につきましては、先ほど申しましたように、五十七年におきましてはかなり事件増を示しておりますけれども、果たしてこれが今後どのように推移してまいりますか、増加の原因が、先ほどちょっと御説明申しましたようにクレジット関係の事件がふえておるとか、あるいは仙台でございますと、国民金融公庫等の融資の期限が参りましてそれで取り立てがふえた、そういう面もございますので、今後の状況はなかなか予断しにくいところがございますが、今後の関係者の動向を慎重に見きわめながら所要の措置を考えてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/27
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028・稲葉誠一
○稲葉委員 いま福岡の話が出ましたけれども、福岡の場合に、信販会社というのか信用販売会社、クレジットの会社ですね、何とかファイナンスというのが一万何千件出そうとしたわけでしょう。裁判所でも困ったわけで、それをやられたらどうにも困るから月割りにしてくれといって十カ月ぐらいに分けてもらったのか、やっておるという実情でしょう。それでどんどんふえてくるわけですね。そうすると、いまのお話だと、それはほとんど督促でしょう。支払い命令を最初に出して、それが届く場合もあるし、届かない場合もある。異議の申し立てがあれば本訴に移るかもわかりませんけれども。だから、そういうふうなところでそういう支払い命令がどんどんふえても事務量は余りふえないような印象の話なんですけれども、お聞きしたいのは、たとえばそういう会社から支払い命令を申し立てたときに、それをそのままの形で支払い命令するのですか。あるいは金利の関係で計算をし直して、そして支払い命令を出しておるのではないのですか。そこら実情はどうでしょうか。金利計算をやり直しているはずですよ。福岡の例と、そこのところ、どうなっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/28
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029・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 簡易裁判所におけるクレジット関係の訴訟事件は、もちろん御指摘のように、支払い命令に対する異議から移行してくるものもございますけれども、多くは初めから訴訟ということになっております。福岡のある特定の信販会社の事件も当初から訴訟ということになっておるわけであります。これは、支払い命令事件では債務者の住所地へ申し立てをしなければならないという関係から信販会社の方の都合のいい土地の裁判所の選択ができないということも一つの原因だろうと思っております。
訴訟の場合でありますれば、そのまま受け付けて弁論の段階でいろいろ釈明をすることになりますが、支払い命令の段階では、これは前にも申し上げたかと思いますけれども、支払い命令で一部却下ということはまずやらないのが例でございます。だから、大体は全部認容する命令を出すというのが普通でございますので、命令申立書自体から利息制限法違反とか割賦販売法違反というような点が明らかな場合には、これを訂正させるという作業は窓口でやることがあるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/29
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030・稲葉誠一
○稲葉委員 場所によるのですね、本訴の方が多いところと支払い命令が多いところと、一度支払い命令をやってみて場合によって本訴へ移るというところと、いろいろあると思うのですが、いまおっしゃったとおりに、本訴の場合は事物管轄ではなくて土地管轄について合意されている場合が多いですし、債権者の住所地だから会社の所在地で訴えを起こせますから便利だということでやっておるのだと思うのですが、私どもが見るのは、計算し直していますよ。ずいぶん計算をし直してやっておって、大変事務量というものがふえているというふうに私は思うのですね。ですから、こういう点は十分しんしゃくして、簡裁のそうした——ことに事務官の人がやっているのじゃないですか。それはふやしていく必要が私はあるのだというふうに思います。
そこで、これは判事を七名ふやすということなんですが、書記官なり事務官なり、これは国公の一般法だと思いますが、それはどういうふうになっているのですか。ふやすのですかふやさないのですか、これは行政改革の方で全然ふやさないという行き方をとっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/30
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031・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 法律案関係資料裁判部門の一七ページ、裁判部門の充実のために、ここに記載してございますように、裁判所書記官五名、それから事務官につきましては三十四名、合計三十九名の増員を考えているわけでございます。ただいま御指摘の簡易裁判所における督促事件の処理の充実強化のためにも、裁判所事務官四名の増員を考えているところでございます。
ただ、そこにも記載してございますように、司法行政事務の簡素化、能率化という観点から減員を考えておりまして、それがちょうど三十九名ございます。差し引きいたしますとプラス・マイナス・ゼロということになりますので、今回の定員法の改正につきましては一般職員の増加はお願いしてございませんけれども、司法行政部門の簡素化、合理化に伴います減員を給源にいたしまして裁判部門の充実強化のための増員措置をとっている、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/31
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032・稲葉誠一
○稲葉委員 結局、書記官なり事務官はゼロということですね。それで判事だけが七ふえるということなんですが、これは提案理由を見ますと、特殊損害賠償事件、これはいいですが、覚せい剤取締法違反がふえている、これはふえていることは間違いありませんけれども、ふえているということが裁判官をふやすということの理由には直接結びつかないのじゃないですか。覚せい剤の事件というのは非常に簡単な事件ですからね。警察の段階、検事の段階で、調べというか捜査は非常にむずかしい場合がなきにしもあらずですけれども、公判でむずかしいということはほとんどないので、鑑定で争うということもないでしょうし、これは理屈として、七名をふやす理屈の例示としてただ入れただけであって、実際はそういうこととは関係なく、一般的にいろいろな事件がふえているから七名ふやそう、こういうことに理解してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/32
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033・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 稲葉委員再三御指摘のございましたように、覚せい剤取締法違反被告事件というのは比較的簡単なケースもございますけれども、中には、共犯関係がございますとか、あるいは否認をいたしますとか、そういうことで困難な事件もあるわけでございます。ただ、いま稲葉委員が御指摘ございましたように、私どもといたしましては、覚せい剤取締法違反被告事件もふえておりますものの、そこに単独係の手がとられてしまう。ほかに、たとえばガス爆発事故でございますとか、そういう関係の非常にむずかしい業務上過失の事件がございます。さらには、租税法事件あるいは経済事犯というような非常に複雑困難な刑事事件もかなりございまして、合議率から考えてまいりますと、かつては一五、六%の合議率でございましたのが、昨今は非常に低下してまいっております。そういう関係から刑事事件の合議率をふやすという観点も含めまして、刑事事件処理の充実強化のために判事三名の増員をお願いしたい、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/33
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034・稲葉誠一
○稲葉委員 この二十一ページの表を見ますと、事務官の人が現定員が六千八百八十七で現在員が七千百六十三で、これは欠員というのの逆ですね、過剰になるわけですか、二百七十六、こういうふうになっていますね。なぜこういうふうな現象になっておるかということですね、これが第一にお聞きをいたしたいわけです。
それから第二は、これは恐らく書記官兼務の人の話だろうと思うのですが、書記官兼務の人が事務官という形でやっている場合が多いからそれを言っているのじゃないかと思うのですが、そうすると、事務官になってきた場合に給与の面のいろいろな待遇がマイナスになってくるのではないか、こう思うのですが、そこら辺は実情はどういうふうになって、それに対してはどういう手当てをしているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/34
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035・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のように、事務官が昨年の十二月一日現在で二百七十六名過員になっておるわけでございますが、これは実質的にはいろいろな理由があるわけでございますけれども、その理由の一つとして、ただいま御指摘のような、たとえば支部、簡易裁判所等の庶務課長で書記官の資格があるけれども事務官を本官とする方々がおられる、それ以外にも理由があるわけでございますが、そういう方も一つの理由になっておるということは御指摘のとおりであろうと思います。
そこで、そういう庶務課長等の待遇の問題でございますけれども、こういう方々については、いわゆる書記官の調整が、本来書記官であります場合には、昔風に言いますといわゆる四号調整ということでついておるわけでございますが、そういう調整が一方において減るということがございますけれども、そのほかにいわゆる別途の手当という管理職手当のような手当がつくという関係がございまして、全体としては書記官本務のままいるときよりも下がることがないような、そういう手当ては講じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/35
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036・稲葉誠一
○稲葉委員 二百七十六名過員になっておる具体的な内訳を明らかにしてもらいたいと思うのですが、明らかにすることはあなたの方としては支障がありますか。何か困ることがありますか。困ることがないのならば明らかにしてもらった方がいいのだけれども。いまでなくてもいいですよ。私の聞きたいのは、庶務課長の場合はわかるんですよ、課長で管理職手当とかいろいろな手当がつくからわかりますけれども、そうでなくて、一般の書記官の資格を持っている事務官の人といいますか、それが事務官になりますね。簡裁へ行く、あるいは支部へ行く。事務官になったときに給与が減るのじゃないかということですよ。それを私が言うのです。それが一つ。
たとえば最高裁のどこかにいる人が、最高裁の政府委員室というのがありますね、正式にはあれは何と言うんですか、政府委員控え室と言うのかな、控え室の職員と言うのもおかしな話ですな、あれは正式には何と言うのかわからぬけれども、政府委員室と言うのはおかしいよね、控え室と書いてあるけれども、あそこに勤めている人がいますね。ああいう人が向こうから来たときに、書記官の人が来たときにですよ、待遇が悪くなるのですか、どうなのですか。それが問題の第二ですね。
それから法務省官房長、今度は、たとえば法務省の人たちは、公安職は何だかいろいろな手当がついていましたな。それが今度は法務省の政府委員室に来たときに給料は下がるのですか。どういうふうになっているのですか。そんなことは官房長が知らなければだめだよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/36
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037・根岸重治
○根岸政府委員 法務省の職員につきましては、いま御指摘のようなことはございません。法務省内部での異動でございます。法務省内部での異動でございますので、検察庁から来れば別でございますが、そうでない者につきましては、給料がダウンするというようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/37
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038・稲葉誠一
○稲葉委員 それじゃもう一つ前の段階で、地検の公安職から法務省へ入ってきたときには給料が下がるの。そうでしょう。そこをあなたは説明しないからね。だから、法務省から来たときには給料は下がらないかもわからぬけれども、地検の公安職なりあるいは検取から来たときには給料は下がっちゃうんでしょう。それはどうなの。それは後からカバーするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/38
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039・根岸重治
○根岸政府委員 検察庁から法務省の職員になった場合には、給与の上がり、下がり等はございます。(稲葉委員「上がりなんかあるの」と呼ぶ)逆の場合を言っておりますので、法務省から検察庁へ行ったような場合も想定しまして、出入りがありましたときには給与の変動が生ずる場合がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/39
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040・稲葉誠一
○稲葉委員 だから、私の言うのは、それは出入りがあれば変動があるのだけれども、普通の場合は下がるんですよ、法務省へ来るのは。だけれども、法務省へ来るのは名誉だからというので、みんながまんしているのかもわからぬけれども、将来出世できるからというのでがまんしているのかもわからない。しかし、それはキャリアの人の話で、そうでない人は必ずしもそうでもないかもわからぬけれども、いずれにしてもそれは下がるんですよ。
それから大臣、これはここで答えなくてもいいですよ、ここで答えると差し支えがあるので答えなくてもいい、研究してください。法務省の職員と裁判所の職員との間の待遇は違うんですよ。最初は同じでも開いてくるんですよ。これは、いま答弁されるといろいろなところに差しさわりがあってまずいから答弁しなくてもいいですけれども、これは研究しておいてください。大分違いますよ。さっきの話、どうなの。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/40
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041・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど、過員が生じます理由につきまして、そういう事務官兼書記官というものがあるというのは一つの理由であるということを申しましたが、この過員は、もっとほかの理由といたしましては、これも稲葉委員御承知の、書記官研修所の入所生があるわけでございます。四月になりますと二百ぐらい書記官になるわけでございます。そういう事務官、いわば潜在的な書記官、もうすぐ書記官になるというような人がこの事務官の中に含まれているというようなこともその事務官過員の一つの理由である。これは先ほどそこまで具体的には申し上げませんでしたけれども、一つの理由というふうに申し上げたのはそこにあるわけでございます。
そこで、事務官になった場合に月給が下がるかどうかということでございますが、そういう兼務者については別でございますが、最高裁判所の事務官、ただいま、たとえば国会係の事務官というようなことで仰せになりました。たまたまそこに書記官の有資格者がなったというような場合には、これは純粋な事務官でございますので、兼務でも何でもないわけでございますので、これは事務官としての待遇になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/41
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042・稲葉誠一
○稲葉委員 それは事務官としての待遇になるということはよくわかるのですが、それは下がるということなんでしょう。それじゃ裁判所の書記官をやっていれば給料が上なのが、そこに来ると事務官という形になっちゃう——両方の資格を持っているんでしょう。そういうふうになっちゃうと下がるんでしょう。下がるのは、後で何か別の機会にカバーするんですか。どういうふうにしているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/42
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043・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 給与そのものとしては、カバーする方法はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/43
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044・稲葉誠一
○稲葉委員 そのとおりですね。カバーする方法はない。だけれども、何らかの形の中で、その点については不利益をこうむっているわけですから、考えてあげなければいけないんだろうと思うのですけれども、これはあなた方の内部の話ですから、これ以上のことは申し上げません。
そこで、別のことをお聞きしたいのですが、実はこの裁判の中で、司法行政の問題でもそうで、いろいろ疑問に思っていることの一つに再審の問題があるわけですね。この前、徳島のラジオ商殺しのあれがあったわけですけれども、この再審という制度の法律のたてまえというか、刑訴の改正のときにその再審法まで手が回らなくて、再審のところまで改正がいかなかったんだという説もあるんですが、必ずしもそうではないようですね。被告人の利益のための再審というものだけに限定したでしょう。被告人に不利益な再審というのは、憲法三十九条との関係で認められなくなりましたね。だから、そういう点から見ると、必ずしもそうでもないようなんですけれども、一部にそういうふうに言われておるものですから、だから再審法の改正まで実際には手が回らなかったんですか、あるいは検討したことはあるんですか、いま法務省としてはどういうふうに考えておられるわけですか。憲法との関係その他について、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/44
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045・前田宏
○前田(宏)政府委員 現行の刑訴ができましたときに、再審の部分が、御案内のとおり条文からいいますと一番最後の方にあるわけですが、当時占領下にあったというようなこともございまして、いろいろと改正作業にむずかしい点があったやにうかがわれるわけでございます。しかし、手が回らないからいいかげんにしたというようなことはあり得ないことでございまして、そういうことはないというふうに考えております。
御指摘のように、再審の理由も、不利益再審というものは削るというようなことにもいたしておりますし、また当面の問題に関係いたします死亡者についての公訴棄却の決定の規定を適用しないというようなことも一応手当てがされておるわけでございます。ただ細かい点になりますと、なお検討を要する点があるということは事実のように思うわけでございまして、現行法ができますときにいろいろな点まで想定されたかということになりますと、その時点ではそれなりの検討はされたと思いますけれども、その後最近のような状況等も考えますと、改めて検討する必要がある点も一部にはあるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/45
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046・稲葉誠一
○稲葉委員 これは私わかりませんのは、判決を受けた者の不利益なる再審ですね、これは旧法は認められておったというのですね。今度は憲法三十九条との関係で認められなくなったというんでしょう。この憲法三十九条との関係で、どういうふうに認められなくなったんですか。憲法三十九条との関連でひとつ御説明願えればと思います。ちょっとわからないんですよ、見てみても。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/46
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047・前田宏
○前田(宏)政府委員 直接的に当然削らなきゃいかぬということになるかどうかというふうにも思いますけれども、まあ強いて申し上げれば、一事不再理とかそういう思想が強くなったといいますか、そういうことが影響しているんじゃないかというふうに思われるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/47
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048・稲葉誠一
○稲葉委員 一事不再理というのは、何も直接関係あることではないな。あらゆる場合に一事不再理というのは適用があるわけで、私はこのコンメンタールを読んでみましてちょっとその点疑問に思ったんですよ。それだから聞いているわけなんですが、これはまあ後の話でいいのですが、そこで問題になりますのは、実はドイツのこれは刑法ですか刑訴ですか、再審の規定の中で六回ほど改正になっているわけです。非常に細かい改正ですからいいですが、その中で調べてみたんですが、そうしたら再審の開始決定があった、検察官が即時抗告をする、それに対してまた特別抗告ができますね、いまの制度では。その即時抗告ができるという制度について、これはドイツの場合には、政府としての提出の中では即時抗告できるようになっておったわけですね。それを議会で修正をして、それで即時抗告ができないようにされてしまったわけですね。現在のドイツの刑訴ですか、これはそういうふうになっているはずだというふうに思いますが、その点はどうですか。
大臣、ちょっとその点を聞いておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/48
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049・前田宏
○前田(宏)政府委員 御指摘のとおり、ドイツの刑事訴訟法は何回かに分けて改正がされておるわけでございますが、いまの点に即して申しますと、改正の政府案には即時抗告できないというような規定は設けられていなかったということでございますが、積極的にできるというふうにしていたわけじゃなくて、もともとそういう規定があったわけでございますね。それを削るというようなことは考えられていなかったというのが正しいのじゃないかと思いますが、それに対していま御指摘のように、国会の修正でこの即時抗告権を排除するというふうにされたというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/49
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050・稲葉誠一
○稲葉委員 書物を見てみましても、率直に言ってその間の経過がよくわからないのですね、日本でも余り文献がないわけでもないでしょうけれども。そうすると、国会でその点について再審開始決定に対する検察官の即時抗告の規定を排除したというか、できないようにしたという理由ですね、それはどういうところにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/50
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051・前田宏
○前田(宏)政府委員 稲葉委員も仰せのように、その改正の際に検察官の抗告権を認めないことにした経過といいますか理由でございますが、国会修正ということも影響しているのかと思いますけれども、いわば公的にといいますか、はっきりどういう理由でどうしたかということは実は定かでないわけでございます。
ただ、ドイツの文献なりあるいはまたそれの孫引きと言うと失礼かもしれませんけれども、いろいろわが国の学者の方の研究もあるわけでございますが、その一つによりますと、やはり誤判を是正することの必要性の方が相当高まったのだということがドイツで権威のあるとされているいわゆるコンメンタール等で述べられているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/51
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052・稲葉誠一
○稲葉委員 そこで大臣にお聞きをするわけですけれども、再審というのはよほどのことですわね。異例中の異例で、偽証その他の確定判決があって覆すわけですからね。再審決定があった場合に、ドイツにおいては、いまお話がありましたように、検察官の即時抗告権というものについて政府提案の中ではそれは排除してないわけですよ。国会で修正しまして即時抗告できないようにした。その趣旨は文献を見ても必ずしもよくわからないのですが、要するに、それは迅速な裁判を受ける権利というものが被告人にあるということから見て、そして争うべきは再審の中で十分立証して争えばいいのであって、即時抗告するなりあるいは特別抗告なり何なりして——ドイツには特別抗告という制度はないのかな。ちょっと忘れましたが、そうして裁判を延ばすのではなくて、その再審の中で十分争う機会を与えればいいのじゃないか、それが国民の迅速な裁判を受ける権利ということになってくるのだ、こういうのがドイツの国会での考え方ですが、そういう点を考えてみますと、私は日本でもそういうふうな考え方を入れていいのではないかと思うのですが、その点については大臣としてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/52
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053・秦野章
○秦野国務大臣 いろいろいま承っておって、ひとつ勉強させてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/53
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054・稲葉誠一
○稲葉委員 私はこう思うのです。それは当事者訴訟ですから、当事者訴訟の中で片方だけが抗告権があって片方だけに抗告権がないという行き方については、これは訴訟法全体の構造の問題ですから、仮に再審という特別なものであっても、私は率直に言って、それはなかなか政府としては出しにくいんだと思うんです。それはやはり国会の中でわれわれが決めるべきことであると私は考えるんですがね。ただ、いま言ったんですけれども、検討されるのはいいんですが、いたずらに、無理に再審開始決定に対して抗告をして引き延ばしておるような印象を与えたり、そういうふうなことのないようにフェアにやっていくということが検察官としては必要だと私は思うんですが、その点についてはいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/54
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055・秦野章
○秦野国務大臣 その事案事案によると思いますけれども、もちろんフェアな態度だというふうに国民から見られるような態度は必要だと思うんです。しかし、基本的に制度としてどういうふうに持っていくかという問題についてはやはり研究さしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/55
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056・稲葉誠一
○稲葉委員 刑事局長から何かあれば……。
再審を行う中で具体的にどういう点が問題となるか、結論は別ですよ。結論は、いまあなたの方ですぐ出ているわけじゃないとしても、再審の法制全体の中でどういう点が問題となっていくか、こういう点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/56
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057・前田宏
○前田(宏)政府委員 再審に関しましてはいろいろと問題があるわけですが、先ほどの抗告の問題について言いますと、確かにドイツでは国会の修正でそういうことになりましたけれども、先ほど引用しましたコンメンタールの中で、その終わりの方では、この規定は不適当であるということも意見としてつけ加えられているような点もございます。したがいまして、その当否については、ドイツの経過なり、またその後の状況なりも含めまして検討の要があると思いますし、前にも申し上げたことがあるかと思いますけれども、ドイツと日本とは法制的に似た点が多いと言われておりますが、事上訴に関しましてはかなり違っているわけでございます。
一つ例を申しますと、日本では上訴が三審制度でございますし、実際上は最高裁まで事実認定も争えるという形になっております。しかしながら、ドイツにおいては事実認定に関しては一審限りであるということでございまして、むしろ再審が日本で言う控訴なりあるいは特別の場合における上告なり、その代用をしているというような面も指摘されておるわけでございます。それからドイツでは、先ほど冒頭に御指摘になりましたいわゆる不利益再審も逆に認められているとか、いろいろと違います。
また、抗告の問題に関して言いましても、いまの関係から、日本では三審制度で事実問題についても最高裁判所まで通常の場合は上がっていきまして、十分な検討が一応なされておるわけでございますけれども、そういうことで必ずしも同一ではない。日本の場合にはそういう過程を経た確定判決について、また一審で再審開始の当否が争われて、最高裁で一応上告棄却になっているものについて、一審の方でこの最高裁判決の確定判決は間違っているんじゃないかというようなことから再審開始決定が行われるというような、上下逆転するような形もなされているわけでございますが、ドイツではそういうようなことが、先ほど申し上げたようなことがないといういろいろな面がございまして、もちろん無実の方につきまして誤った判決がなされてはならないし、それが維持されてはならないことは当然でございますけれども、ドイツの一つの改正部分だけを取り上げてそれにすぐ右へならえというわけにもまいらない点が多々あるんじゃないかというふうに思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/57
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058・稲葉誠一
○稲葉委員 だから、私が言うのは、政府としては率直に言うと出しにくいと思うのですよ。当事者訴訟の原則もあるし、一方に抗告権を認めておいて、一方に抗告権を認めないのはなかなかむずかしいかと思いますから、これは国会でやるべきことだと思います。だから、私どもは、再審に関連する法案を前から発表してずっとやっているわけです。これは神近市子さんが非常に熱心にやられておったわけですが……。ただ、いまあなたがコンメンタール、コンメンタールと言うけれども、それは何のコンメンタールなんですか。だれが書いたコンメンタールなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/58
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059・前田宏
○前田(宏)政府委員 レーベ・ローゼンベルクの刑訴法のコンメンタールがよく引用されるわけでございますが、その中で、先ほども申し上げましたように、御指摘の改正で抗告権が排除されたことについて、誤判を是正することの必要性の方が確定判決の不変性よりも高くなったと考えられるからであるというふうに理由について述べておりますが、その後で「ところで、この新たな法律上の規定は不適当であることが証明された。これらの規定によれば、大変問題のある再審命令に確定力を与えることになる」というようなことがつけ加えられているということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/59
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060・稲葉誠一
○稲葉委員 不適当であるという理由が、再審命令に確定力を与えることになるということなの。それは再審裁判の中で当否を争うことはできるのですからいいんじゃないですか。それで確定して再審裁判ができなくなるということなら話は別だけれども、そういう余地が十分あるわけです。十分な立証ができるわけですから、再審決定と違った判決だってできるわけですから、別にどうということないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/60
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061・前田宏
○前田(宏)政府委員 私の意見として申し上げているわけではございませんで、そのコンメンタールの中で不適当であるということが言われ、それによれば、どういう場合を想定して言っておられるのかよくわかりませんけれども、「再審開始決定が疑いのあるあるいは不可解な場合」というような表現が使われておるようでございますが、そういう極端な場合が一応想定されるかもしれませんが、そういう「再審開始について確定力を与えるのは不適当である」こういうような表現になっているという御紹介でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/61
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062・稲葉誠一
○稲葉委員 そこで、今度の場合でも、再審というのは原判決の当否を決するものではない、だから、原判決を取り消すというような、また維持するという言い渡しをすべきものではないということが言われているわけです。これはどういうことからなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/62
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063・前田宏
○前田(宏)政府委員 再審というものの本質といいますか、基本的な物の考え方についてはいろいろ考え方があろうと思うわけでございますが、従来の考え方では、再審に関する規定の文理から言いましても、やり直しというようなことになっているわけでございまして、そういう意味では原判決の当否を論ずるのではなくて、いわゆるやり直しをするんだというように理解されているようでございますけれども、その点についても問題がないわけではないと思うわけでございます。
再審というものは、基本的に確定判決があるわけでございまして、それに対して、それがそのまま維持されていいかどうかということにあるわけであろうと思いますので、別に考え方が十分固まっておるわけではございませんけれども、むしろ原判決の当否を見ていく、やり直しというよりも見直しとでもいいますか、そういうような考え方で整理することも可能であろうと思いますし、むしろそういうことによっていろいろな問題が解決していく面もあるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/63
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064・稲葉誠一
○稲葉委員 徳島の場合でも、私どもがよくわかりませんのは、これから再審の裁判があるわけですから、それに影響を与えるようなことは私どもとしても言うべきではありませんから、その点は考慮しておるわけですけれども、亡くなった場合のことです。第四百五十一条の第二項以下ですね。これは新刑訴法の制定に伴って新しくつけ加えられたものなんですか、前からあったものなんですか。ここはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/64
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065・前田宏
○前田(宏)政府委員 先ほどもちょっと触れたところでございますけれども、亡くなった方に関する再審につきましては、いわゆる旧刑訴法におきましては、現行の四百五十一条のような規定になっておりませんで、公判を開かないで検事と弁護人の意見で裁判をするというふうになっていたわけでございます。したがって、上訴も認めないというふうなつながりになっていくわけでございますけれども、現行法の場合、この現行法ができます場合にそれは改正されまして、通常の場合と同様に公判を開いて審理をするというふうに改められた。その詳しい理由はどうも定かでないわけでございますが、ある解説によれば、余りにも簡略な手続に過ぎるのでというような説明がございますが、それだけ十分な説明ができるかどうかということは残っているかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/65
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066・稲葉誠一
○稲葉委員 そうすると、具体的に亡くなっておられますね。普通の場合ですと公訴棄却ですね。本件の再審の場合にはそうでないわけですから、そうすると、もちろん被告人の出頭ということはあり得ないし、あれなんですが、審理の進め方というのは、たとえば認否の問題だとか反対尋問権だとか、いろいろな問題はどういうふうにやることになるわけですか。その規定はないわけですか。あるいは、ないけれども常識的に進める以外ないということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/66
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067・前田宏
○前田(宏)政府委員 確かに細かい点の規定が欠けているといいますか、ないことは事実でございますが、基本的には通常の手続に従って改めて裁判をする、再び裁判をするということでございますから、被告人がいる場合の手続に準じてといいますか、それにならって進められることになるわけでございまして、その場合の、強いて言えば法律的な根拠は裁判所の訴訟指揮権ということに戻っていくのではないかと思いますが、そういうことを考えましても、先ほど基本的な御指摘がございましたが、果たしていわゆるやり直しであるのか、見直しであるのかという問題にもそのことがつながってくるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/67
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068・稲葉誠一
○稲葉委員 あなたの方でも、日弁連から出ている再審の改正法、それから私どもの方から出している改正法、これについては検討をしているんですか、してないんですか。今後一体どういうふうにしていくつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/68
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069・前田宏
○前田(宏)政府委員 日弁連の方から改正案が示されておりますし、社会党の方からも改正法案が現に国会に提案されておることは十分承知しておりますし、その間に若干の差異もあるわけでございます。この再審の問題につきましては、私どもといたしましても最近いろいろな事件ももちろんございますし、それだけでなくていろいろな面から検討すべき点が多いだろうと思っております。
大きく分けまして、再審理由を広げることの当否という問題と、手続的な面での整備という問題、二つに分かれると思いますけれども、従来そういう現象面、という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、そういう形で検討がされ議論がされてきたように思いますけれども、最近いろいろ考えてみますと、たまたまきょう御指摘がございましたように、再審というものを一体どういうふうに基本的に考えていくかというところからさかのぼって考えませんと、その理由の拡大の問題なりあるいは手続の整備の問題なりも実は決められないんじゃないかというような感じも強く持っているようなところでございます。したがいまして、先ほどの外国の改正の経過等も含め、またわが国におきます運用の状況等を含め、いろいろな面から基本的なところに立ち返りまして真剣に取り組んでいきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/69
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070・稲葉誠一
○稲葉委員 大臣もおられるのでお聞きをいたしたいのですが、この前、津の地裁で裁判がございましたね、隣の人にお子さんを預けたとかいうことに関連をいたしまして。これで感じますことは、法律家の考えることと一般の国民の考えることとの間に非常にずれがあるように私は考えられるのですね。あの事件を見てみると、ああいう経過で確定しましたけれども、相手の方を一種の行為者のようなかっこうで訴えたというのは、法律家としては普通の考え方としてやっているのだろうと思うのです。そう深く考えないで、普通の事件はああいうふうにやりますから。だけれども、御本人、依頼をされた方はそこまでは考えなくて、国や県や市の方に対して反省を求めるというか管理上の瑕疵を主張しているわけです。それが法律家の面から言うと、その相手の人個人を被告とすることについては大した抵抗を感じないわけですけれども、一般の方から見ると大変なことなんですね。そこら辺の問題があるのです。
そこで、これに関連をして裁判を受ける権利というもので、とにかく私どものところへも質問をするといろいろな手紙が来ます。わけのわからぬのが来ますし、電話もかかってきますし、いろいろなのが来るのですが、これに対して、一つは人権擁護局の方から具体的に何か態度を宣明されたようにも伝えられているのですが、それはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/70
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071・鈴木弘
○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。
人権擁護局として態度を表明したという段階ではございません。私どもといたしましては、原告夫婦が隣人である被告夫婦を相手として本件訴訟を提起したことの是非等につきましては、これはいろいろと議論の余地があるといたしましても、少なくとも市民が法律上認められている権利がありとして民事訴訟の提起という最もあたりまえの正常の方法をとったことに対して、報道されておりますように多くの人たちが投書、電話等によって寄ってたかって脅迫まがいの嫌がらせまでして訴えを取り下げるに至らしめた、こういう事実があるとすると、これは基本的な人権である裁判を受ける権利の侵害に当たる疑いがあって、少なくともこのような行為が人権擁護上きわめて問題のあるものであると考えまして、調査を管轄法務局長等に対して指示したものでございます。
私どもといたしましては、行っておる調査はこのような嫌がらせをした者を追及することが目的ではございません。このような行為に対するこれらの者の反省を求める一般的な啓発を行うための前提となる事実関係、これを確認するとともに、法務局はこのような観点から調査に着手したという事実自体が広く報道されることによって、嫌がらせの電話等をした人たちの反省を求めるということにその目的があるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/71
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072・稲葉誠一
○稲葉委員 これは裁判の内容、ことに訴訟指揮の問題に関連することですからお聞きするわけにもいかないと思いますし、お答えはいいのですけれども、この事件を見たときに、これは何か最初個人と市を訴えて、二回目に国と県を後から訴えているようですね、それで併合したらしいですね。そういう点なんかもどういう根拠でそういうふうにやったのかちょっとわかりませんけれども、これは裁判所としては当然和解を勧めるべき事案で、何回かやって和解で解決する事案ではなかったか、こう思うのですけれども、何か途中で裁判官もかわられたようですね。そういうふうな関係もあるようですけれども、和解に親しむ事件というものはやはり和解で進めるべきだし、そうでない事件についてはどんどん判決してもいいと思うのですけれども、そこら辺のところをいろいろ私は私なりに考えたんです。
ということは、法律家の考えている感覚と一般国民の考えている感覚と非常にずれがあるのです。そのずれがあることがいいか悪いかこれはまた問題なんですけれども、日本の場合は裁判所へ訴えられるということは非常に大きな問題なんですね。アメリカではいま夫が妻を訴えることは別にどうということないし、すべてを法律的に解釈しようという考え方が非常に強いですね、アメリカの場合は。いまちょっと本を見たら、正確ではありませんから間違っていたらいけませんけれども、年間大体八千万件ぐらい何だかんだで裁判があるというのですね。そうすると、アメリカでは大体三人に一人ぐらい裁判を起こしている。それで裁判を起こしても、裁判が終わってしまえば別にどうということはないのでさっぱりしているわけですね。日本の場合は裁判所へ呼ばれた、検察庁へ呼ばれた、参考人に呼ばれたといったらえらい騒ぎですからね。これは法感覚というもののアングロサクソン系統と日本人との考え方の違いではないか、こう私は思っておるのですが、その点をどういうふうに理解したらいいのか、大臣どうでしょうか。
大臣に直接聞いても余り関係ないかもわからぬけれども、違うのですね、法律感覚が。すべてを法律的に解釈というか、裁判所へ持ち出して解決してそこでさっぱりしてしまう。終わってしまえば別にどうということはないわけですよ。日本人は訴えられたというととにかく大変な騒ぎですものね。とにかく法律になじまないということが日本人には非常に強い。これはどういうところに原因があって、どういうふうにしたらいいのかという点について、大臣に聞くのもあれだと思いますが、何か考えがあればいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/72
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073・秦野章
○秦野国務大臣 大変むずかしい問題だと思うのですが、何か日本人の精神風土のようなものに関係することであって、確かにアングロサクソンと日本とは違うし、そういう意味では法治国家という概念なり法治主義というようなものがアメリカあたりと同じようには永遠になじめないような要素があるのかどうか、そのくらいに考えてもいいような国民性にも関係した問題だというふうにも思います。
それで、いまお尋ねの事件の問題については、私も新聞を見て先生と似たような感じを受けましたが、しかし基本的には、日本は日本人の健全な常識というものが裁判をする方にも訴訟する方にも働かなければ、それが日本的なものだろうと私は思うのです。そんな法治主義だけで解決するものでもないだろう、しかし法律がある以上それは守らなければならぬ。非常に矛盾したようなことでありますけれども、法以前の問題が非常に大きく働くという、そういう事実はやはり見失うわけにはいかぬし、そうなったときにわれわれに思わざる反響なんかが呼び起こされるという感じがいたしました。お答えになりませんけれども、私の感想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/73
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074・稲葉誠一
○稲葉委員 どうも裁判の具体的な内容というか、何かそういうことは国会の中では非常に質問しにくいですね。どの限界まで質問していいのかということは率直に言って私自身も迷うものですから、なかなかむずかしい。ことに係属中の事件、片方は終わったにいたしましても、影響があることですから聞きづらいということがあるわけです。
そこで、多少時間があるからお聞きをいたしたいのは、裁判所の所長というものがおりますね、地裁の所長、家裁の所長、これの職務が私はどうもよくわからないのですよ。いつも言っているのですけれども、この所長というのがよくわからない。具体的な例を示しますと司法行政ですね。たとえばいま刑事事件が減って民事事件がふえているから、では刑事の部を減らして民事の部をふやすとか、だれをどの部に入れるとか、こういうふうなことについてはどこで決めるのですか、そして所長はそれに対してどういうふうな権限を持っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/74
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075・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 稲葉委員には釈迦に説法ということになるわけですが、裁判所の司法行政は裁判官会議がこれをやるのだということになっておるわけでございまして、裁判所法にそういうふうに規定しております。ただ、その裁判官会議は所長が総括するということになっておるわけでございます。したがいまして、所長自身が一人で何かをやる、まあ特別の場合に特別の規定があってやる場合もございますが、大まかに申しますと、司法行政をやる裁判官会議を総括する権限があるだけだ、こういうことになるわけでございます。
そこでいま例にお引きになりましたような、たとえば民事事件がふえて刑事事件が減っておる、それをどうするかというようなことはまさにその裁判官会議が決定することでございますが、ただ、その事件数がどうか、裁判官の構成がどうかというようなことをいろいろ勘案いたしまして、事務分配、裁判官の配置等は裁判官会議が決めるわけでございますが、たとえば刑事の裁判官を減らして民事の裁判官をふやすというその裁判官の配置、事務分配等に関する議案を所長が裁判官会議に提出いたしまして裁判官会議でそれを決定する、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/75
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076・稲葉誠一
○稲葉委員 形はそうなんですけれども、裁判官会議が形骸化しているということを盛んに言われているわけですね。それで、東京と大阪ではやり方が非常に違うということがよく言われますね。部の総括などを選ぶ場合でも、大阪の場合はその裁判官会議で全部選ぶのですか、あるいは選挙によって選ぶところがありますね。それはいまはやっていませんか、どうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/76
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077・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 部の数、それから部総括をだれにするかということは、下級裁判所事務処理規則というものがございまして、所長が意見を述べまして、その意見に基づきまして最高裁判所が決めるというふうにその規則で決まっておるわけでございます。ただ実際上のやり方といたしまして、所長が意見を述べる場合のやり方としていろいろのやり方があるわけでございますが、いま例示されましたように、大阪では所長が意見を述べます前提といたしまして裁判官会議での投票というようなことが行われておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/77
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078・稲葉誠一
○稲葉委員 いまでもそういうふうに行われておるのですかね。何か最高裁としてはそれは余り歓迎しないようなことも聞くのですが、そんなことはないのですかね。それが第一です。
それから、たとえば東京高裁などは部の総括、まあ部長というのですか、それになるためには一たん所長に出なければいけませんね、大体。必ずしもそうでない場合もありますけれども、一たん所長に出ないと部の総括になれないというのは一体どういう具体的な理由、合理的な理由から来ているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/78
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079・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、部総括は、高等裁判所の場合でございますと、最高裁判所が高等裁判所長官の意見を聞いてこれを決めるということになるわけでございますが、東京高等裁判所の場合は率直に申しましてそんなにと申しますか、年齢、期その他いろいろございますけれども、ほぼそういう順番になされている場合が多いわけでございまして、たとえば東京高等裁判所の場合でございますと、所長を経てきたような方が部の数と比べまして多い、そういうことがあるだろうと思います。そういう意味で、これは東京だけではございませんで、大阪でもかなりそういうことがございます。大阪では所長になっておられないで部総括になった方も一、二はございますけれども、東京に比べればそういう意味では期が少し低い。その後だんだんなっていきますと、たとえば札幌あたりになりますと非常に期が若いというふうなこともございまして、必ずしも所長を経験しておられない方もなっておられるということがあるわけでございますが、そういう意味で所長にならなければ部総括にしないとかなんとかいうことではございませんで、長官が意見をお述べになり最高裁判所で決める場合に、期その他いろいろ考えますと、所長を経てきた方が自然とその候補者に挙がってくるということで、東京の場合はいままで所長でない方が部総括に余りなってない、そういうことがあるのだろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/79
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080・稲葉誠一
○稲葉委員 いまの問題の中で二つ問題というか、それは、個人的に家庭の事情その他で本来当然所長に出るべき方が所長に出られないでそのまま部の総括になられる方もなきにしもあらずですね。それは家庭の事情とかその他の事情ですが、しかし原則としてというか、東京高裁の場合は所長に出ないと部の総括になれないという合理的な理由が私はよくわからないのです。それが一つです。
それからもう一つの場合は、部の総括をだれにするかということまでなぜ最高裁が認可しなければいけないのですか。これは任しておいたらいいんじゃないですか、高裁なら高裁に。何も最高裁がコントロールしなくてもいいのではないですか。ただ、何か辞令を見ると、部の総括というのは別な形で、それだけで辞令が出ますね。平の場合、平と言うと言葉は悪いが、それと別に辞令が出ているんですよね。部の総括に任ずるという辞令が出るから、それで最高裁のあれを経るのかもしれませんけれどもね。何も部の総括にするかしないまで最高裁がタッチしなければならぬ理由はないんじゃないですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/80
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081・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、部総括は最高裁判所が決めるということを下級裁判所事務処理規則で決めておるわけでございますが、制度のたてまえとしてはそうでございますが、実質がどうかというお尋ねになるのだろうというように思いますけれども、これは、部総括というものがやはり部の事務というものを総括する、そういう職責を有しておるわけでございますので、所長は最高裁判所が決めるということになっておりまして、部総括の場合はそれほど最高裁判所がということにはならないがゆえに、それぞれの下級裁判所の意見を聞きまして、それで最高裁判所が任命するということになっておるわけでございまして、いわばそれぞれの裁判所の意見と最高裁判所の意見とが合致したところで任命行為が行われるというふうな運用がいままでなされておるわけでございまして、そういう意味で、部総括の任命について完全に下級裁判所の自治と申しますか、意見のみに任せるということに必ずしもしなくても、いままでの運用はそれはそれでスムーズに特段の支障なく行われておるのではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/81
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082・稲葉誠一
○稲葉委員 裁判所職員定員法の改正については、今度の場合判事を七名ふやすだけですから、だけですからという言葉は悪いですけれども、そういう法案ですけれども、問題は、裁判官の数と事件との関係なりあるいは法曹人口全体の中での割合の問題であるとか、それから特に書記官、事務官等の人数の問題、それから簡裁の事物管轄の拡張に伴って事件がふえておる。非常にアンバランスがあるようですけれども、ふえておる。それから同時に、ことにまた支払い命令が非常にふえているところがありますから、そういうふうな点で簡易裁判所の人的な、それから物的な設備というものを今後も十分充実してもらいたいし、そのことに関連しては、二重予算制度があるわけですけれども、実際には行使をしていないことですから、法務大臣としても、裁判所関係の予算、それから法務省関係の予算について今後十分お骨折りを当然お願いをいたしたい、こういうことを要望いたしまして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/82
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083・綿貫民輔
○綿貫委員長 沖本泰幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/83
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084・沖本泰幸
○沖本委員 私は、職員定員法に絡みまして二、三の質問をいたしますが、簡裁の事務移転の問題と、一番主力を家庭裁判所の内容について御質問をしたいわけでございます。
そこで、時間がありませんのでもうそのもので伺っていきます。
まず、簡裁の事務移転の問題で資料をもらって少し勉強したわけですけれども、直江津の簡裁事務移転の問題なんですが、八二年、去年じゅうに直江津簡裁の事務を高田簡裁へ全面移転したいということで、その理由として、庁舎の老朽化(昭和二十七年に建築)、これに伴う予算を上申したが、東京高・地・簡裁の庁舎新築中のため予算がとれないこと、直江津と高田は同じ市内にあること、各関係官庁、市町村の了解を得ていること、直江津簡裁の事件数が少ないこと、廷吏、事務官は高田簡裁へ配置がえになり喜ばれること等を挙げ、「当分の間」の措置であり、予算がつき直江津簡裁が必要となった場合は再開するということだったということなんです。
問題は、簡裁側が駆け込み裁判所の能力をだんだん失っていっているという点もあるわけですが、ここで一番言えることは、高田の方は冬になると有数の豪雪地帯なのに、直江津経由で高田へ行くことになるとかなり不便が生じてくる地域もあるという点もあるわけで、むしろこれは二つあった方がいいという意見がここに述べられておるわけでもありますし、こういうことになるわけですが、この点についてはどういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/84
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085・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。
まず、直江津簡裁の事務移転の経緯につきましてごく簡単に御説明申し上げたいと思いますが、この直江津簡裁の庁舎は、昭和二十七年に建てられました木造建物でございまして、水田の埋立地に建てられているものでございまして、三十年を経まして、地盤沈下、それから風雪、塩害等によりまして老朽化が非常に著しくなりまして放置できないような状況になったわけでございます。
いま委員御指摘のとおり、当初、新潟地方裁判所では補修も考えられたようでございますけれども、いろいろ調査いたしてみますと、補修ではとうてい間に合わない、土台から取りかえるほどの抜本的な改築となる。それは新築と同程度の経費を要しまして、新築につきましては、全国的な計画からいたしますと、近い将来新築の見通しが持てなかった、こういう状況になったわけでございます。しかし、現状を放置することはできませんので、新潟地方裁判所では、当面事務移転で対処する方針を決められたようでございます。
件数の点は、委員もおっしゃいましたように、五十二年から五十六年で見ますと、年平均、民事訴訟事件が約十六件、刑事訴訟事件が三件でございます。隣接の高田簡裁までは九キロでございまして、大体二、三十分の距離のようでございます。もちろん、直江津簡裁管内の市町村からいたしますと、高田簡裁へ参りますまでには従前よりはかなり時間を要する場合もございますけれども、大体、全体的に見ますとさほど御不便をおかけしないのではないか。新潟地方裁判所長と高田支部長が昨年の九月下旬に関係機関、それから管内各市町村をお回りになりまして、事務移転の趣旨を御説明申し上げましてその御了承を得ているわけでございます。
そのような過程を経まして、昨年の十月二十一日開かれました新潟地方裁判所の常置委員会におきまして、直江津簡易裁判所の事務の全部を十二月一日から当分の間高田簡裁に移転する旨の決議をなされた、こういう経緯になっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/85
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086・沖本泰幸
○沖本委員 これは問題指摘ということだけで、時間の都合で簡裁の問題はもっとほかの時間にやりたいので、この程度にしておきます。
それで、家庭裁判所の内容について御質問いたします。
これは昨年の十一月の新聞記事ですが、少年事件のキャッチボール事件が起こったということで、記事の内容を読んでみますと、オートバイを盗んだ容疑に問われた少年の取り扱いが、東京地検と東京家裁の間を往復二回もキャッチボールされたということで
問題の事件は、東京都練馬区内の無職の少年が、仲間の少年一人と昨年十一月十三日と十六日に、練馬区内などで三件のひったくりをしたうえ、今年五月二十九日にはオートバイ一台を盗んだというもの。少年は今年六月逮捕された後、東京地検から東京家裁に送られたが、「被害品の一部が被害者のものと一致するか疑わしいので、刑事裁判で真相を明らかにしてほしい」と地検に戻され、さらに地検は「アリバイの裏付け捜査が一部未了だ」などと、事件を家裁に投げ返すなど往復二回のキャッチボールが行われた。結局地検が補充捜査をした結果、起訴したが、この間少年は五十五日間も身柄を拘束された。
本来、少年事件はすべて家裁に送られ、保護処分の必要性が判断されるが、刑事処分相当と認められた時は、地検に逆送することができる。しかし、今回家裁が地検に事件を送り返した理由は、証拠上の疑問を刑事裁判で明らかにしてほしい、というもので、事実上家裁での審理の限界を訴えている。
なぜ、家裁で事実審理ができないのか。「現行の少年審判制度は大きな欠点を抱えている」と指摘するのは、立教大の荒木伸怡助教授だ。「少年審判は非行少年の要保護性を考える余り、事実認定の争いがないことを前提にしている。今回のように証拠に疑問が出てくると、お手上げになってしまう。家裁でも事実審理ができるような改善が必要だ」
法務省が進めている少年法改正問題でも、事実認定の争いは重要項目となっており、五十二年に法制審議会が法相に出した答申では「十八歳以上について刑の重い事件は検察官の審判出席を認める」とし、審判の場でも刑事裁判と同様、検察官と弁護人の間で事実の争いができるようになっている。
これに対し、元東京家裁判事の森田宗一東京家政大教授は「家裁が少年法の精神に立脚して、フルに活用すれば、こんな問題は起こらなかった」と批判する。「個々の事件の事実争いが重点の刑事裁判と違い、少年事件はあくまで少年の要保護性を第一に考えるべきだ。それに少年法第一四条、一五条では証人尋問、検証などについて刑事訴訟法を準用することが定められており、家裁でも十分事実審理ができる」ともいう。
「とはいえ、家裁の裁判官個人を責められない。たとえば判事補は、刑事、民事、家裁と担当を変えられ、腰を据えて事件に取り組めないし、裁判官研修も、少年事件に不可欠な人間を学ぶようになっていない。今回のようなキャッチボールは氷山の一角だと思う。こんなことが続くと、家裁の存立基盤そのものが問われてくるのではないか」。家裁判事のOBとして、森田さんは危機感を強めている。
こういうことなんです。
これと同じもののほかの記事の中で同じ立教大の荒木助教授の話として、事実審理の道を家裁でも開くようにということで
家裁では検察官が同席できないため、事実認定の詰めができず、裁判官は便法として事件を地検に送り返し、正式裁判での審理を期待したと思われる。その点極めてユニークな苦心あふれる方法だ。一方、地検は被疑事実の一部が捜査不十分で起訴できず、残りの事実だけでは刑事処分相当ともいえないため、少年院送致が適当と判断したようだ。いずれにしろ、こうしたケースでは、現行制度は不十分で、家裁でも事実審理ができるような改善が必要だ。
こう出ているわけなんですが、この点で、家裁でこの程度のものの処理ができないという点、矛盾点、あるいは現行制度では不十分だというふうに述べておられますけれども、やはり不十分であるとお考えなんでしょうか。その場合はどういう点を改善していかなければならないのか、あるいは法務省の方、刑事局の方ではこういう問題に対してどういうお考えなり対応をしておられるのか、少年事件は非常に多いわけですから、この点をお伺いしたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/86
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087・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
ただいま委員御指摘のケースは少年事件でございまして、審判非公開という手続をとられておりますとともに、現在事件が地方裁判所で係属中でございまするので、当該決定の当否につきましては意見を差し控えさせていただきたいと思いますが、いま御紹介の新聞等で指摘されております報道等によりますと、この問題点につきまして制度等についての若干の誤解があるのではなかろうかと思われる節もございますので、若干手続の経緯等を紹介しながら現行の法制度について説明を加えさせていただきたいと思うわけでございます。
今回の事件は、いま委員御指摘のとおり、少年が共犯者とともにひったくり等を行ったとして家庭裁判所に事件が送られてきたわけでございます。家庭裁判所は三回にわたりまして審判期日を開きまして証拠調べをいたしました。一応共犯者等の証拠があったのではないかと思いますが、被疑事実は認められる、罪質、情状等に照らし、刑事処分相当だということで検察官に送り返したわけでございます。問題は、その決定の理由中に、いま委員が御指摘のように、このケースについては証拠上若干の疑点がある、そのほか少年は家庭裁判所へ参りましてからそれぞれの事実についてアリバイ等の主張をしたようでございます。そのアリバイ等の成否をきわめるためには、刑事裁判所における訴訟手続においてその罪責を明らかにするのが相当だというくだりがあるわけでございます。その理由が家庭裁判所が刑事責任を明らかにする目的で検察官に送致したものであるのか、それとも刑事処分相当だとして検察官に送り返したその理由の一部にそのような問題点を指摘したものかどうかという点が現在地方裁判所において争われておるわけでございます。そういう経緯をたどっておるわけでございます。
ところで、検察官の方では、それを捜査された結果、一つの事実について捜査未了である、それを除くと他の事実について果たして刑事処分相当として公訴を提起するのが相当かどうか問題だということで、少年法四十五条の五号ただし書きの規定に基づいて家庭裁判所に一件を除くそのような事件について送致してきたわけでございます。そのようなケースについて少年法四十五条五号ただし書きの規定に当たるかどうかということが、これまた地方裁判所の方で現在審理されているわけでございます。それを受けまして家庭裁判所といたしましては刑事処分相当として送ったものが返ってきた、少年の身柄拘束の期間等もありまして、家庭裁判所に戻りましたその時点で少年を釈放いたしまして、その後、他の裁判官がまた慎重に審理いたしました結果、やはりこれは刑事処分相当だということで改めて検察官の方に送致をした、こういう経緯をたどっているわけでございます。
御指摘の、家庭裁判所に事実審理の機能がないのか、新聞等でもそういう指摘があるわけでございますが、決してそうではないわけでございます。つまり、家庭裁判所では、検察官に送るにいたしましてもあるいは保護処分をいたしましても、その前提として、果たして少年が非行事実を行ったかどうかということを見きわめることなくしては判断できないわけでございます。戦後、裁判所である家庭裁判所に少年審判の管轄が認められたということも、つまり人権保障の見地から裁判所がそのような非行事実の存否について事実認定をすべきである、そういう考えのもとに、従前行政機関が扱っておりましたものを裁判所が扱うことになったわけでございまして、事実認定、事実審理の機能そのものはあるわけでございます。
ただ、強いて言うならば、現在家庭裁判所の審理の期間、身柄拘束の期間は最大限四週間、二週間ずつ、一回更新が認められまして四週間しかございません。したがいまして、恐らく本件のケースにつきましても身柄拘束して四週間の期間内にアリバイ等のすべてについて審理を尽くすということは事実上不可能であったのではないかと思うわけでございます。ただ現行の制度のもとにおきましては、検察官に送り返します場合には、家庭裁判所の裁判官の心証として、刑事裁判におけるがような合理的な疑いを差し挟む余地がないような確実な心証までは必要がないというように一般に解釈されておりますので、恐らく、当初決定いたしました裁判官といたしましても、送られてきた証拠は一応肯定できる、事実は肯定できる、それは決定理由中に書いてあるわけでございますが、そのような認定の上で罪質、情状に照らして検察官に送り返したわけでございまして、決して事実認定を検察官にゆだねたという趣旨のものでもありませんし、また検察官自身も、こんなもの扱いたくないというふうなことでその責任を転嫁するために家庭裁判所に送り返されたものではない。
制度それ自体が、少年法四十五条で刑事処分相当であれば検察官に送り返す、検察官も例外的には、特定の事由があれば再度家庭裁判所に送るというような法制度のもとにそのような運用が行われておるにすぎないわけでございますが、現実の問題としてそのように行ったり来たりするということは決して好ましい事案ではないわけでございまして、私どもといたしましては、実務の運用におきましてそういうような事態が生じないためにはどうすればいいかということをなお今後の課題として検討してまいりたい、このように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/87
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088・前田宏
○前田(宏)政府委員 ただいま最高裁判所の方から御説明、御答弁がございましたので、特につけ加えることもないわけでございますけれども、キャッチボールというふうに言われますと、いかにも何か不当な扱いをしたような感じがされるわけでございますけれども、ただいまの御説明にありましたように、この当該少年につきましては合計で五件の事実があったわけでございます。
その中で、一件のいわゆるひったくり事件につきまして証明が十分であるかどうかということについて問題が起こっていたわけでございまして、そういう意味では特殊な事例であるというふうにまず御理解をいただきたいわけでございますし、先ほどもございましたように、当初の家庭裁判所のいわゆる逆送決定では、若干趣旨不明確な点もございますけれども、結論的に刑事処分が相当であるということで検察官に送られてきた、しかし、検察官といたしましては、これを正式に起訴するにつきましては証拠が十分であるかどうかということを見ざるを得ないわけでございまして、その場合に、先ほど来申しております一件につきまして、処理を決めるべき時点においてはまだ証明が十分でないということで、残りの四件について直ちに刑事処分として起訴するのが相当かどうかということになりますと、やはり問題があるというようなことで、その時点時点の判断においてはそれなりの理由があってまた家庭裁判所に送致をしたということでございまして、こういうような問題につきましては検討すべき点ももちろんあるわけでございますけれども、結論的に特に不当な扱いがなされたというふうには考えていないわけでございます。
ただ、先ほども家庭局長の方からお答えございましたように、事実の認定ということは大事なことでございます。少年の扱いにつきましては要保護制度ということが問題になるわけでございますけれども、その前提となる事実の認定ということは少年の権利の保障の面からいきましても大事なことでございまして、その点につきましては家庭裁判所でも十分御配慮をいただいているというふうに理解しております。ただ、その場合にも検察官と家庭裁判所との意見の調整といいますか意見の交換といいますか、そういうことが十分になされることが必要でありまして、その点は運用の面でもある程度カバーができるわけでございますし、それに努めなければならないと思いますけれども、やはり制度的な面からもなお検討をすべき点があるのじゃないかというふうにも思うわけでございます。
御案内の昭和五十二年に法制審議会から答申がなされております少年法改正に関しますいわゆる中間答申におきましても、この事実認定の問題あるいはそれに関連する問題としての検察官の関与の問題、そういうものが議論の対象となっておりますし、それに付随していまの事実の認定の問題、この点も整備すべきであるというような内容になっているわけでございまして、そういうことによりまして、運用上、またさらに制度上もよりよい制度にすべきであるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/88
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089・沖本泰幸
○沖本委員 僕は稲葉先生みたいに専門家ではありませんので、伺っているうちにだんだんわからなくなってくるのです。短く言いますと、この委員会は私のような素人が質問して国民全体にわかりやすくするための窓口でもあるのじゃないかと考えるわけですが、そういう意味合いからも、聞いていてわからない、わからないから質問しているわけです。なぜこんなことになったんだということですから、そういう点、わかりやすいような御説明をしていただいて理解ができるようにしていただきたいわけです。
そういうことにつきまして、これは全司法の労働組合からも「家庭裁判所を考える」というようなパンフレットも出ておりますし、いろいろな資料もいただいたわけですが、ここでまず「法律時報」の中に出ている「家庭裁判所の現状と問題点」というところを拾い読みしてみます。「過渡期の家庭裁判所裁判官群像」という形で出ているわけですが、
現在、家庭裁判所勤務の辞令をもらった裁判官のうちで、何人の人が心から喜んでその職務につこうとするであろうか。また現在家庭裁判所に勤務している裁判官のうちで、地方裁判所や高等裁判所への転勤を内心望んでいない人が何人いるであろうか。家裁勤務は大多数の裁判官にとっては、地高裁勤務への一過程にすぎなくなっている(もっとも、このことは、裁判官が家裁の仕事を軽視しているということを意味するものではないこと、いうまでもない)。このような、家裁勤務を忌避したがる裁判官のタイプは、大別すると次の二つに分けられよう。一つは、家裁事件処理の困難性のゆえに。家事、少年を問わず、審判手続の無方式性、広範な裁量性を特徴とする家裁事件は、一歩誤まると、裁判官を密室における独裁者へと堕落させる可能性を秘めている。そのような立場に自らを置くことへの畏怖ないし嫌悪感からくる家裁忌避。いま一つは、官僚化してきた裁判官社会において、家裁は地高裁に比べて一ランク下に見られるがゆえに。裁判官の裁判官としての能力をどのような尺度ではかることができるか、ということは難問であるが、現在の裁判官の社会の中では、家裁勤務の裁判官は地高裁勤務の裁判官と比べ、官僚的序列からすれば一ランク下に見られる傾向が一般的であることは否定できない。キャリアシステムがほぼ恒久化し、裁判官社会の序列化、階層分化が進んでいる中にあって、家裁裁判官の序列上の評価は確実に低下してきている。そのような客観的状況の変化が裁判官の意識の中に反映し、家裁忌避という状況をもたらしているものといえよう。
昭和二四年初頭に発足した当時の家庭裁判所へ集った裁判官は、少年法や家事審判法、それらを支える新憲法の掲げる新しい理念に共鳴し、新しい革袋に新しい酒を盛り込もうという意気に燃えていたように見える。
飛ばしますけれども
家庭裁判所の運営が、「家裁一筋」型の裁判官から「訴訟裁判所志向型」の裁判官の手に移ってきているいま、家裁のもっている理念の再確認と、家裁運営の明確な方法論の確立が必要になってきているように思われてならない。
また飛ばします。
審判なり調停をうける側からすれば、裁判官の有する権力は絶対的であり、その権力を試行錯誤的に行使されてはたまらない。少年法および家事審判法が掲げる理念に忠実に、そして確固とした方法論をもって臨んでもらいたいと思う。ことに、家庭裁判所においては、訴訟裁判所とは全く異なった実践が要求される場面が多く、家庭裁判所の特質をいやしくも訴訟的感覚と運営によって損うことがないように期待したいものである。
それから、調査官についても述べています。
昨今社会的耳目を聳動するような校内暴力や暴走族、あるいは覚せい剤事犯等のようなものはほとんどなかった。
以前のことですね。
しかし、調査官は、当時でも事件処理に追われ、身柄事件の意見書提出が審判当日の朝になるというようなことも一再ならずあったことを記憶している。そのような中にあって、なお、調査官は試験観察を積極的に行ない、少年と四つに組み、収容処遇より社会内処遇、保護処分より不処分を、という努力を重ねていたように思う。補導委託先の積極的な開拓を図り、少年院送致の前にいま一度少年とともに歩いてみたい、と言った調査官の姿が私の印象に強く残っている。
また飛ばします。
私は、調査官とは少年とともに歩いてくれるものである、と考えていた。少年がいかなる状況にあろうとも、社会防衛的な観点を捨象し、もっぱら少年の立ち直りの方策を考えてくれるものである、と思っていた。いかに多くの事件処理に追われていようとも、いま目の前にいる少年に必要なものをもたらさずんばやまない、この精神こそが「調査官魂」だと信じていた。いわば、家庭裁判所の有している教育的機能の最も多くの部分を調査官が担っている、調査官こそが家庭裁判所の特質を体現しているものと考えていたのである。
こうあるわけですね。
それから、また飛びまして
この一年二カ月ほどの間に附添人としてかかわったいずれの調査官も、少年の心を受けとめ、少年とともに歩もうという姿勢をもっていないではないかと感じた。
また飛ばしまして
そして、誠に些細なことで少年と衝突して激怒し、私の目からみれば社会内処遇が一パーセントどころか一〇パーセント以上も可能であると思われた少年につき少年院送致相当の意見をつけた調査官に出会い、暗然とした想いを禁じえなかった。
それから「調査官集団に対する管理体制の強化」
変化の主たる原因は、最高裁判所家庭局を頂点とする、調査官集団に対する管理体制の強化と、それに基づくと思われる調査官集団の自律作用の崩壊にあると考えている。
地域社会との密接な連携により初めて、その機能を十分に発揮しうるものである。そして、地域社会との連携を現実化しうるのはまさに調査官であることはいうまでもない。私が少年事件を担当しはじめた頃は、主任調査官以上の広域異動はあったが、非管理職調査官の広域異動はほとんど行なわれていなかった。このことは、調査官が地域社会の中に根を下ろし、補導委託先を開拓したり、あるいは関係諸機関との密接な連携のもとにキメ細かな少年の処遇を行なうことを可能にしていた。ところが、ここ数年前から、平調査官の広域異動が頻繁に行なわれるようになり、地域社会との密接な連携をとることのできるキーパースンがいなくなってしまうという結果をもたらした。社会化された裁判所を特徴とする家庭裁判所にとって、右の結果は大きな損失であるといわなければならない。のみならず、広域異動は、人事権ないしは評定権限をもつ者への心理的従属感をもたらすに至ることは想像に難くない。
こうなっているわけです。
それから飛びますが、
最近最高裁は右規則を改正し、主任調査官は一般執務のほか「調査事務についても指導監督することができる」ものとした。さらに、主任調査官の権限の拡大のほか、高裁所在地の首席調査官が当該管内家裁首席調査官が行なう指導監督その他の事務の調整を図ることができるものとされ、また組数の多い大庁において総括主任調査官を設けて首次席調査官と一般の主任調査官との仲継ぎ的な役割を担わせ、かつ、複数の組の調査官の一般執務および調査事務の指導監督ができるものとした。このように、前記規則の改正により、最高裁家庭局—高裁所在地首席調査官—各庁首席調査官—次席調査官—総括主任調査官—主任調査官—平調査官というヒエラルキーが制度化され、しかも、一般執務のみならず具体的な調査事務に対する指導監督も行なうことができるものとされるに至った。このような制度の改編は、既に前項において指摘したように、調査官が自己の専門家としての良心と責任において職務を遂行するものとされてきた従来の体制を崩すものであり、調査官の専門性を自己否定するものといわねばならない。
こういうふうに載っております。
それから今度もう一つは、「この資料は、全司法労働組合司法制度研究中央推進委員会が昭和五七年五月職場討議資料として作成したものから家裁に関する部分を抜すいしたものです。」こうあるわけです。この中にもいろいろあるわけですが、同じことになるかもわかりませんが、
戦後、新憲法の下で家族制度と教育制度が民主的に改革され、自由に人間らしく生きる権利が保障され、男女の平等と子供の人格が尊重されることになりました。これに合わせて家事審判法が制定され、少年法が改正されました。家庭裁判所はこれを受けて、前述の簡易裁判所とともに「家庭に光を、少年に愛を」のスローガンを掲げて発足しました。そして家事審判法と少年法の目的を実現するために特別の場合を除き、訴訟手続によらず、審判と調停の形式で職権主義や秘密主義を原理とする特別の手続により裁量的・合目的的に事件を解決することを建前として家裁の機能は維持されてきました。
このような家裁のあり方を総称して「家裁の理念」といわれています。しかし、家裁発足三〇周年を転機として当局の側から家裁見直し論がいわれ始め、職場では当局によってこれを具体化する動きがすすめられています。
こういうふうに出ているわけです。飛びまして
職場では、裁判官、調査官の広域異動の拡大に続いて、事件処理の基準がいろいろな形で作られるようになり、家事審判・調停の画一的処理や、少年事件の刑事事件的処理が目立ってきています。そして与えられた人員で事件がどんなに増加してもどんどん片付けていきさえすればよいという傾向が強められています。さらに、下級裁事務処理規則にもとづく裁判部の再編成と、調査官の組体制の強化、調査官養成の改編や共同調査の研究が具体化され、事件処理の内容にまでも及ぶ職員の指導監督態勢が整備され、家裁における司法行政の優位と裁判統制の体制づくりがすすめられています。
いろいろあるわけですが、この中に指摘していること、私、少し違うようなところも感じるわけですけれども、具体的なことは後で出ておりますから言いますが、この中で述べているので、
また、非行事実を重くみる事案中心主義の取扱い、少年警察の強化等々の改悪先取りの動きが進められており、非行少年の処遇決定の中心が家裁から捜査機関に移され、国民の私生活が警察等の眼に直接さらされるという基本的人権の保障の上で、きわめて危険な事態が生じようとしています。
こういうふうにあるわけなんですけれども、これは、いま現実にある校内暴力とかいろいろなものに比べてみると、少し意見が挟まれるのじゃないかと思うのですが、さらに一気に読んでしまいます。
そこで、これは座談会として「最近の少年審判の実像を語る」と、こうあるわけなんですが、この中で、また拾い読みをしていきます。これは東京家庭裁判所ということなんでしょう。
矢口所長から大内所長、堀江所長と続いてきた体制は家裁を見直すことを目的としているもので、堀江所長は広報誌に「年頭にあたって」と題して裁判事務処理の効率化をはかることを強調し、それに批判する勢力を「一部には」という表現で攻撃してきています。
こういう記事があるわけです。そこで、いわゆる座談会の記事なんですが、
まず驚いたことは、早く事件を処理する体制です。六ケ月未済は何時も点検されるようになっていることが変った点です。
事件処理そのものも、第一は社会防衛的、刑事政策的な面が色濃くなっていますし、第二は、権威的で機械的段階処遇が強まっているといえます。第三は、処遇均衡論が強く打ち出されていると思います。細かく見ていけば各裁判官の考え方はそれぞれ違ってはいるのでしょうか、大雑把にまとめますと、個別的処遇よりも面一的処遇が強まっていることを感じております。
飛ばします。
少し具体的に言いますと、主任書記官が六ケ月未済の事件を毎月「お知らせ」という形で言ってくるようになっています。私のところですと裁判官からも直接通知してきます。「これこれは○月末日までに提出して下さい」と電話でも言ってきます。
さらに、また飛ばします。
以前は少年の事を十分考えた上での適正手続だったのですが、最近は形式的に保証していけばいいという感じが強いと思います。この事件は検察官送致だからとか、これは少年院送致を考え付添人を付けなければとか、保護者を呼ばなければとか、その内容が非常に形式的な形でなされてきていると感じています。
また飛ばします。
個別性を大事にすることについてひとつ例をあげて説明します。少年は交通短期保護観察の経験がありました。現在は大きな陸送会社に入社しており、七日後には関西の支社へ行くことが決っていました。その会社では免許証の管理は大変きびしく、その会社で大型免許をとってから普通車を運転させるということで再犯の危険は小さいのです。そこで、調査官はその日に調査、即日審判で不処分相当という意見を提出しました。ところが、即日審判の結果は検察官送致でした。
さっきの新聞とよく似たような形ですね。
裁判官の考える個別性と、調査官の考える個別性とは観点が違うように思います。
裁判官は前歴など本人のマイナスの要因を重視します。調査官は本人の将来の見通し、見込みなど、よい条件を優先しようとするので、双方の考え方がくいちがってゴタゴタすることになります。
審判に立ち会っていて感じることを話したいと思います。五十七年一月一日から、事件の配填のやり方などが変りました。一般の職員の意見を充分に聞かず、裁判官の側で変えたやり方ですが、その運用が恣意的になっているように思われます。例えば、ある係の裁判官が、係属した事件について、前にその係で手がけた事件だから前件は既済なのですが、うちでやるというような型の配填替のやり方があります。
それと、処分については、段階処遇の強まりを感じます。しかも、不処分決定の時に多くの場合、誓約書を書かせます。次の処分は重くなっても仕方がありません、と書かせ指印を押させます。保護観察決定の時にも書かせます。そうしておけば次には易々と少年院に送れるわけです。
迅速処理については、六ケ月以上の未済について主任書記官が毎月裁判官に報告し、裁判官は書記官にたえず事情を把握しておくように要求するようになっています。裁判官が長期未済にキリキリと神経を使っているのがわかります。
それから、また飛ばします。
迅速公平な処理と言う場合、迅速よりも公平ということが恐い。家庭裁判所で公平な処理を強調すると少年の個別性が無視されてくることになりかねないと思います。迅速処理だけならば、こちらが無理をすれば、なんとか少年の個別性を生かしていくことができますが、公平な処理といった場合は、公平という内容を厳しい形に揃えてくることになるのではないかと思います。
例えば暴走族少年の事件は扱いが非常に厳しくなっています。他の裁判官から、この地区は扱いが軽いと批判されたりします。先日少年部の所長代行は、この地区は抗告されることが少ないのがおかしい、という。よく聞いてみると、抗告が少ないのは処分が甘すぎるからだと批判して甘すぎることを問題にし、もっと他の係のように厳しく処分しろと言いたいらしいのです。何故、抗告されることが少ないかは問わないでそう言うわけです。各地区の相異や実状、少年の個人的な違いは無視して公平な処理を強調してきているのです。
軽微事件の場合は、以前は受理部で一括して扱っていたところ、逆にバラバラに各地区で処理されるようになっています。各地区でインテーク基準どおりにインテークが実施されず、恣意的にインテーク変更をしているところもあるときいています。事件数が多いところでは調査命令も出さず書面処理しているところも出ているようです。執務体制の変更をしたとき首席調査官は全国に範たる組織ができたと述べましたが、実際は、事件数の多寡で処理の方法を決めている。軽微事件は適当に処理し、一方では公平を強調して処分の厳しい方に事件を均そうとしてきているといえます。
それからCさんの指摘された抗告のことですが、かって少年係の裁判官の多くは抗告される
ことを恥かしいことと受けとめていたと思います。少年院に送致するときでもそれなりに手当てをし条理をつくして少年に話し、納得させて処遇にのせていくことこそ裁判官の仕事だと考えている職人的なところがありました。そういう審判を誇りにしていました。ところが、最近は、私はこう決定します。抗告したかったらどうぞかってにして下さい、という姿勢にかわってきていると思います。
暴走族などの多数共犯事件でいくつかの係にまたがって係属した時、はじめの係の処分内容によって、あとの少年の処分が決ってしまうことが多くなりました。
裁判官が調査官の処遇意見を尊重しなくなってきているともいえると思います。調査官として裁判官にその少年の個別の問題性や能力、展望などから処遇意見を出すと、あなたの言うことはわかる。この少年についてはそのとうりかもしれない。しかしこれだけの重大な事件を起こしているのだからしようがない。他の少年との関係でも軽い処分にするわけにはいかない。と言われ収容されてしまったりすることが多くなりました。
これは調査官の反省についても述べています。
調査官の側にも反省しないといけないことはあります。迅速処理をしようとするあまり、簡単な調査票で落している人もいます。調査のため、前件調査票をとり出してみると、時にひどいものもある。そういう調査票を裁判官がみれば、なんだ調査官はろくな仕事をしていないということで調査票を頼りにしなくなります。そういう人が何人かいると他の人が大変困ってしまう。
そういう風潮を助長するような制度の確立がなされていますね。管理職が階層をもち、それぞれの権限、役割機能がはっきりしてきています。調査官は調査命令という形で裁判官の指揮系列化にある。それと共に調査官の上司からの監督という形で行政系列の管理が強まってきているわけです。
その体制が今回の通達で強まった。そういう傾向に調査官の主任層が先鞭をつけているといえます。
年度末の未済調査のある三月から四月にかけて簡単な調査票で提出される事件がとても多いのも気になります。
四十人ちかい共犯事件を主任調査官と二人で担当したことがあります。私は未済事件が多いのですが、主任はこの事件に着手する前にまず古い事件を一掃してしまえと言いました。
その調査に着手してからは、いついつ少年を呼びましょう。一人あたりの面接は何分位にしましょうとか、意見書や簡易調査票で処理しましょうといってきます。主任としては、自分の責任上、一生懸命に大量の事件を早く落させようとしているわけです。
また飛ばします。
Cさんからは公平な処理という名目での画一化。——個別化の無視という指摘があり、一方では軽微事件のバラつきという問題がありました。
今裁判官は二人で一室なので、相互に影響を与えあいます。ある個性の強い人が、一年間に百数件の少年院送致決定をしました。同室の裁判官が扱った事件の少年が再犯して、その人の担当になると、前件の処分が甘かったからだと徹底的に意見をいうわけです。そういう体験を経て、同室の裁判官もいきおい処分が重くなっているようです。
四月にはおそらく裁判官が何人かかわるでしょう。また同じような傾向の人がくると思われます。そういう時期に調査官の首次席や所長代行判事のペースが押しだされてくるでしょう。たぶん今危惧されている傾向が更に前面に押しだされてくるでしょう。すなわち、事案中心主義、調査官不在の審判、家裁の少年健全育成の理念追求にブレーキがかけられていくと思われます。
こういうふうな内容のものが「子供と家庭と裁判所」という全司法労働組合のパンフレットでも同じように指摘が書かれてあるわけですね。いろいろあるわけですけれども、いま一連のことを読み上げたわけですが、これに対して最高裁の方からの御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/89
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090・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 ただいま委員から数々多くの御指摘を受けまして、はなはだ恐縮に考えておる次第でございます。
そこで、指摘されております問題の幾つかにつきまして、若干御説明申し上げたいと思います。
まず裁判官の問題でございますが、戦後家庭裁判所が新たに発足いたしました当時におきましては、家庭裁判所に勤務いたします裁判官の中でかなりの方が引き続きずっと家庭裁判所に勤務しておられたという実績がございます。ところが、戦後新しい研修制度のもとで育てられました若い層になりまして後に、家庭裁判所の仕事のみをいちずにやるという裁判官の数が少なくなったことは事実でございます。
その理由はいろいろあろうかと思いますが、私も裁判官の中では比較的家裁勤務の長い者の一人でございますが、私自身も必ずしも自分から進んで家庭裁判所の仕事をしているわけのものではございません。私の心境を申し上げますと、やはり裁判官というのは法律の専門家たるべくして勉強し、また裁判官を希望してきておるわけでございます。家庭裁判所の場面は、もちろん法律も大切でございますが、それよりもやはり人間の心を裁くといいますか、少年の保護にしろ、家庭の平和にしろ、法律以外の分野においてその役割りを発揮しなければならない、そういう仕事であるわけでございます。ですから、一部、中には引き続きずっと家庭裁判所をやっておられる裁判官がおられますけれども、多くの方は一生かけてやはり家庭裁判所の勤務ではなくして、地裁の経験もしたい、ある場合には高等裁判所の経験もしたいというような、そういう心境から、従前のように必ずしも家庭裁判所の仕事をいちずにやっていないということに相なっておるのではないかというように思うわけでございます。かといいまして、私どもといたしましても家庭裁判所の充実のためには従来から力を尽くしておるわけでございまして、今後ともそのような家庭裁判所の裁判官の充実の面につきましても努力をいたしてまいりたい、このように思っておるわけでございます。
それから次に、調査官の事件に対する姿勢が変わったという御指摘がございました。これは、その御指摘をしておられる方は元裁判官として調査官に接しておられた。今度は弁護士として外から調査官に接せられた。つまり立場が違うわけでございます。私ども実務をやりまして、昔の調査官といまの調査官と比べてそのように差があるのかなというように私どもは考えておりません。現在の多くの調査官も、調査官でいばれるのは仕事に非常にまじめ過ぎるほどまじめだという点でございます。したがいまして、そういう姿勢においては余り変わりはないのではないかと思います。
それからもう一つは、昨年度私どもの方で、調査官の執務組織といいますか、指導監督体制を整備するために規則の改正あるいはそれに伴いまして運用通達の改正を行いました。これが、先ほど来多くの人が指摘しておりますように管理が強化されたというような意味に受けとめられておるようでございますけれども、従前の規則と現行の規則とを比べた場合に、実質的にはほとんど差はないわけでございます。本質的には何ら差がないわけでございます。むしろ、従前からたとえば規定の不備であるというようなことから改正を求められていた点を整備したにすぎないわけでございます。
たとえば一例で申し上げますと、先ほどの御指摘の中で、高裁所在地の首席家庭裁判所調査官に管内家裁の首席に対しての調整権限を新しく付与したという点の御指摘がございましたけれども、これなども従前高等裁判所が行っておりました司法行政、しかし高等裁判所には家庭裁判所のような同じ種類の調査官というものがないために、従前でも地元の、言うならば管内の調査官の中では最長老といいますか、一番先輩である所在地家裁の首席調査官に管内の首席の調査官の……(沖本委員「短くしてください」と呼ぶ)調整をさしておりましたのを、それを規定の上でそういう調整権限を明文化したというにすぎないわけでございます。それは一例でございますが、そのようなことでございまして、昨年来における規則等の改正が従前の執務組織を根本的に改めたとかあるいは管理を強化しておるというような性質のものでは全くないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/90
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091・沖本泰幸
○沖本委員 最高裁が規則を変えたという話で、それは余りそういうことに影響しないはずだ、こういういまの御説明なんですけれども、現実にはこういうことを指摘してきているわけですね。指摘してきておるような結果になったら困るわけです。裁かれる立場の者とか、子供の立場とか、あるいは両親の立場とか、いまの日本の社会の環境の中であるとか、それから子供の将来とか、いろいろなことを考えると、問題の多くは少年非行に一番かかってきておるわけですし、大きな問題になってきておるわけですから、十分それに合うような形に整えてもらわなければならないわけです。家裁の内容も法律一辺倒ではないんだ、十分意見を聞いていったり状況を見てあげたり、そして適用していかなければならない、そこに家庭裁判所の特質があるんだということも両側から述べておるわけですからね。
〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
そういう点を考えていきますと、いま申し上げたような点は全然違った方向に行っているようになっておるわけですから、そういう点も今後いろいろな点で文教の立場からも言うでしょうし、警察の立場からも問題を把握しているでしょうし、各党もこれに真剣に取り組んでいるわけですからね。
だから、裁判所だけが法の城に閉じこもって実際の条件に合わないようなことになると、子供を傷つけてしまって将来立ち直らせない、そういう事態が起きないとも限らないわけです。そういうことになってくれば、法律は何のためにあるのかということになってくるわけですから、その辺をもう一度お考えいただきたい。つらつらと読んだだけで疑問に思うところを聞いてみただけですけれども、まだ私自身は納得してないわけなんです。もっと時間をかけてやりたいわけですが、もう時間が迫ってきましたので、また後に譲りますけれども、そういう点をひとつ真剣に検討していただいて、裁判所の規則なり制度が変わることは、よりわかりやすくなっていく、それから内容的にいいものが生み出されていくことが望ましいわけなんですから、そういう方向に向かってさらに検討を加えていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/91
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092・熊川次男
○熊川委員長代理 この際、暫時休憩いたします。
午後零時三分休憩
────◇─────
午後三時三十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/92
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093・綿貫民輔
○綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。岡田正勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/93
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094・岡田正勝
○岡田(正)委員 まず最初にお尋ねをいたしたいと思いますことは、最高裁がこれまでに違憲立法審査権を行使したというのは三件ほどあると伺っておるのであります。どういうものがありましたか、まず御報告を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/94
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095・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 違憲立法審査権を行使した事例は非常に多いわけでありますけれども、その中で当該事案で問題になりました法令を違憲とした例が三例ばかりございます。
日時の順番に申し上げますと、いずれも大法廷での判決でありますが、四十八年四月四日、これが、刑法二百条の規定は尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役に限っている点において普通殺人に関する刑法百九十九条の法定刑に比較して著しく不合理な差別取り扱いをするものであって、憲法十四条一項に違反し、無効であるとしたものであります。
次が、昭和五十年四月三十日の判決でありまして、これは薬局の開設等の許可基準の一つとして地域的制限を定めました薬事法六条二項、四項の規定は実質的には職業選択の自由に関する大きな制約的効果を有するものであるところ、不良薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということはできないから、憲法二十二条一項に違反し、無効であるとしたものであります。
三つ目が五十一年四月十四日の判決でありまして、いわゆる定数違憲判決と称するものでありますが、これは昭和四十七年十二月十日の衆議院議員選挙当時の公選法十三条その他別表等における議員定数の定めは全体として憲法十四条一項、十五条一項、三項、四十四条ただし書きに違反しているものであるとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/95
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096・岡田正勝
○岡田(正)委員 一番最後に述べられました五十一年四月十四日の衆議院の定数の問題につきまして違憲判決をお出しになりましたが、その後どういうふうに推移しておるかということは御存じでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/96
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097・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました定数違憲判決は五十一年でございます。この判決で違憲とされました法令が実は四十七年施行の選挙に適用されました公選法でございます。これが昭和五十年の法律六十三号によって改正されておるわけであります。したがいまして、この定数違憲判決はこの改正前の定数の定めを違憲としたものでありまして、その後に改正されてしまっており、ただいま大法廷に係属しております訴訟がこの改正後の定数に関するものでございます。そういう経過になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/97
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098・岡田正勝
○岡田(正)委員 そういう経過をたどりまして、いま大法廷でさらに係属しております問題がなかなか結論が出てこないというのはどういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/98
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099・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま大法廷に係属しておりますいわゆる定数違憲訴訟は五十五年六月二十二日施行の衆議院選挙に関するもの二十六件、それから五十二年七月十日施行に係る参議院選挙地方区に関するものが三件、以上二十九件でございます。いずれも重要な問題でありますので、慎重に審議が行われているものというふうに推測いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/99
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100・岡田正勝
○岡田(正)委員 一応筋は通っておるように見えるのでありますけれども、私の感覚から言うならば、最高裁がお示しになりました著しい定数のアンバランス、このことについて、これは違憲じゃないかといって違憲判決をした。五十年に一部改正がありましたけれども、それに対しても、また五十五年の施行あるいは参議院の地方区の選挙の施行について新たな問題が出てきておる。
私は事の性格というのは全く一緒だと見ておるのです。という点から考えますと、これに対して、国会が最高裁の判定について対応が非常に遅い、非常に鈍いということがありまして、これを見ておる国民の側から言いましたら、最高裁で判決が出てもなかなか実行に及ばないなということで、一票の重みということについて非常にいら立たしい思いをしておると思うのです。ですから、そのことについて国民の側から言うと、立法とか司法あるいは行政、この三権分立をしておりますけれども、行政と立法の件については国民もいろいろと不満を持っておりあれしておりますが、とどのつまり最後の決着をつけようという場合には司法になりますよね。その司法の場において、国民から言うならば最後の最後のよりどころが司法である、簡単に言ったらこういう考え方を持っておるわけですね。
その司法のいわゆる権威というものがなかなか実行されないということになれば、私は踏みにじられておる——言葉が言い過ぎかもわかりませんが、そういうようなことも言えるのではないか。こういうことが堀木訴訟の問題あるいは長沼ナイキの問題、こういうふうな問題等でだんだん積み重なってまいりますと、国民が信頼をしなければならないはずの司法までだんだん頼りなくなってきて信用ができなくなってくる、信頼ができなくなってくるというような風潮が出てくると、私は日本の民主主義というものが崩壊する危険すらあるのではないか、実は内心大変憂慮しておるのであります。
これは最高裁としてはなかなか口に出しにくいことでありましょうけれども、この最高裁の判定が下ったことについてなかなか相手側が対応しない、この問題で言うならば国会がなかなか対応しない、こういう問題について三権分立の立場に立っていらっしゃるわけですから、いま最高裁としては一体どういう御感想をお持ちか、なかなか言いにくいと思いますけれども、毅然としてひとつ言っていただくと大変参考になるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/100
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101・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 先ほど三つの違憲判決を申し上げましたけれども、その中で薬事法の関係につきましては、実は違憲判決がなされましたのは五十年四月三十日であります。この違憲判決を受けまして、薬事法の問題とされました六条二項、四項という規定でございますけれども、これを削除する改正法が同じ年の六月十三日に公布、施行されております。これは最高裁が違憲であるとした判断を受けて直ちに行政、立法の方で対応されたということになるわけであります。
定数違憲の関係につきましては、先ほども申し上げましたとおり、違憲であるとした公選法の規定は実は五十年改正前の規定であります。これにつきましては、実は判決の前になりますけれども、五十年に改正されておるわけでございまして、これが違憲であるという判断は最高裁としてはまだなされていないという状況にあるわけであります。したがいまして、最高裁が違憲判決を下したけれどもそのままになっているという事態にはその限りではなっていないわけであります。
ただ、一般的に申し上げますならば、最高裁が違憲判決をした、これを受けて行政あるいは立法府で何らかの対応をされることになると思われますけれども、そのことについて司法府の方が意見を述べるという立場にはないだろうというふうに思います。それが民主主義の国家における三権分立のありようではないか。裁判所としてはあくまで違憲ならば違憲という判断を具体的な事件で下すということで任務は終わっているというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/101
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102・岡田正勝
○岡田(正)委員 それでは次に移らせていただきます。
先ほども御質問があったようでありますけれども、オートバイなどの窃盗の容疑によりまして、それに問われた少年の取り扱いというものについて東京地検とそれから家裁との間を二回もキャッチボールされたという非常に驚くべき事件があります。しかも、その間五十五日間も拘置されておった。これは大変な問題でありまして、日弁連などでは人権侵害の疑いもあると言って問題を非常に重視しておられるのでありますが、このことにつきまして、一体どうしてそうなったのか、その原因をまず説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/102
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103・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 午前中も沖本委員から御指摘を受けたわけでございますが、その際にもお断り申し上げましたが、扱われております事件は少年事件で審判非公開という原則でございます。それに加えて、現在このケースは東京地方裁判所で審理中でございますので、具体的な決定の当否等につきましては意見を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的にそのようなことがなぜ起こったかという点に限りまして若干制度の仕組み等につきまして御説明申し上げたいと思います。
現行の制度では、少年事件につきましては、犯罪の嫌疑がありますとすべて検察官等から家庭裁判所に送られてくるという仕組みになっておるわけでございます。家庭裁判所で事実審理をいたしまして、事実が認められる、しかも罪質、情状に照らして刑事処分が相当だと判断いたしますと、検察官にその事件を送り返すという仕組みになっておるわけでございます。原則として、検察官はその家庭裁判所の判断に拘束されるというたてまえになっておりますので、起訴をしなければならないということに相なっております。
ただ、少年法四十五条五号ただし書きによりまして、たとえば家庭裁判所が犯罪の嫌疑ありとして送りました事実について検察官の立場から見てこれは公訴を提起するに足りる証拠がないというような場合であるとか、あるいは送り返してから後に示談が成立して情状がよくなったというようなことから訴追が相当でない、そういうごく限られた例外の事由に当たる場合には検察官から改めて家庭裁判所に事件を送致する、こういう仕組みになっておるわけでございます。
こういう例はそうざらにあるわけではございませんけれども、たとえば五十六年度たしか一年間に交通関係事件等を除きまして普通の事件で申し上げますと十四、五件あるわけでございます。
ところが、その送り返されました事件について再度家庭裁判所が刑事処分相当だということで検察官に送り返すということは、これは非常にまれではございます。しかし、法律上は刑事処分相当かどうかという判断は家庭裁判所の専権といいますか家庭裁判所先議にゆだねられておりますので、法律上は可能であるということについては学説上争いのないところでございます。
しかし、そうは申しましても、そのようなことは運用上必ずしも適当でございませんので、これまで三十何年間の家庭裁判所の少年事件の審理を通しましても、私どもが知っております例といたしましては過去に三件ございます。今回で四件目でございます。つまり、そのような事態が生じないように、運用上、裁判所は裁判所の立場から、検察庁は検察庁の立場から配慮してそのようなことに相なっておるのではないかというように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/103
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104・岡田正勝
○岡田(正)委員 ちょっとしつこいようでありますけれども、何で二回もキャッチボールのように行ったり帰ったりしたのでしょうか。いまのように、こういう問題がどうして起きたのでしょうかと言ったら、すらすらと、まことに聞いておっても矛盾のないお答えが出てきますね。そうしたら、本件の取り扱いにおいてもそういうふうにすらすらといっておるはずなんであるが、どういうわけで二回もキャッチボールになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/104
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105・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 具体的な事案の内容を詳細に申し上げますとあるいは御理解いただけるのではないかと思いますけれども、先ほど申しましたように審理中でございますので、こういう経緯でこういう事実認定のもとにこうなったというようなことが申し上げかねますので、あるいは御理解いただけないのではないかと思いますが、つまりこの事件の場合には、検察官の捜査の段階で、つまり家庭裁判所の方から事件を送りましたその段階で、一つの事実について——一つの事実についてというよりか、さかのぼりますと、家庭裁判所に参りましてからその送られてきた事実についてアリバイ等の主張がなされた。しかし、家庭裁判所としてはその審理する期間に制限がございますので、その一つ一つについて審理はできなかった。だけれども、証拠上は一応認められるということで送ったわけでございます。これを受けました検察官の方で捜査したところ、その中の一部の事実につきましてはいま直ちに公訴を提起するに足りない、捜査が未了だということで送り返されてきたわけでございます。
ところが、捜査というのは時の経過とともに進みますので、家庭裁判所に送り返されましたその段階では、その点等も含めまして家庭裁判所がさらに審理いたしまして、すべての事実について刑事処分相当だということで送り返した。検察官もその時点では証拠がそろっておるということで地方裁判所に起訴した。当初から確定した事実について双方の見解が不一致だったというよりは、むしろ捜査の段階でだんだんと事実関係が明らかになったという、そういう経緯もあったというように御理解いただきたいと思います。具体的なことはちょっと申し上げかねますので、その程度で勘弁していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/105
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106・岡田正勝
○岡田(正)委員 審理中だというので大分オブラートに包んでありますから、よくわかりましたとは言えませんけれども、ある程度わかりました。
そこで、いままでにこういうようなことが過去三件くらいあるんだというようなお話もございますが、やっぱり相手が少年でありますだけに、五十五日間も拘置といったら相当なものでして、だから、与える影響というのは非常に大きいのではないか。自後こういうことがないようにするためにも、少年審判のあり方についてどういうふうにお考えになっておるか、いわゆる最高裁側のお立場と、それから検察庁側のお立場で刑事局長さんから、両方からお答えをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/106
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107・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 こういうケースに対してどう対応すべきかという御質問でございますが、その前に一言お断り申し上げておきたいと思います。この事件について五十五日間身柄を拘束した、それはつまり、行ったり来たりしたから不当に身柄を拘束したのではないかというような趣旨での御質問ではなかったかと思うわけでございますが、その点について若干釈明させていただきたいと思います。
このケースでは、最初捜査の段階で二十一日間逮捕、勾留等をされております。家庭裁判所に送られてまいりましてから、事実審理のために二十四日間観護措置ということで身柄が拘束されておるわけでございます。そして、検察官にもう一度送り返された段階で十日間身柄が拘束されておるわけでございます。そして、再度家庭裁判所に送り返されましたその時点で、家庭裁判所としては身柄が不当に長く拘束されないように、そのケースは本当は争っておるケースでございまして、普通ならばむしろ釈放しない方がいいのではないかと思われるようなケースではなかったかと私は推測するわけでございますが、諸般の事情を考えまして、その時点では身柄を釈放しておるわけでございます。
この種の、少年等が事実を争っておるようなケースにつきまして、刑事処分相当として検察官に送り返しましたケースについて五十五日間というのは普通の身柄の拘束期間でございます。家庭裁判所における二十四日間というのも、これは審理のために必要だということで身柄を拘束しておるわけでございます。御案内のとおり、刑事裁判ですと、一年でも二年でも審理中に身柄を拘束しておるわけでございます。その意味からいたしますと、家庭裁判所で二十四日間拘束して、それが不当だというのはちょっといかがかというように私は思うわけでございまして、そういう手続の仕組みというものが、一般には家庭裁判所の手続というのは非公開でございますので、若干皆さんにおわかりにくい面がある。つまり、行ったり来たりしたがために不当に五十五日間拘束されたのではなくして、通常の手続に従った拘束期間少年は身柄を拘束されておる。むしろ家裁に来た段階では、その場で釈放されておる。こういう経緯でございますので、その点だけは御理解いただきたい、このように思うわけでございます。
そこで、本論でございますが、やはり家庭裁判所の事実認定機能というものをさらに強化する必要があろうかと思います。この点は、五十二年法制審議会に少年法改正に関して中間答申がなされておりますその意見の中にも、家庭裁判所の事実認定機能を強化すべきだという問題点の指摘があるわけでございまして、この点は私どもも全く同感でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/107
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108・前田宏
○前田(宏)政府委員 ただいま最高裁の方からお答えございましたので、特につけ加えることもございませんが、先ほど来ありましたように、この事実は五つの事実が被疑事実としてあったわけでございます。そのうちの四つについては特に問題がなかったわけですけれども、うちの一件につきまして、それが果たして証拠があるかどうかということにつきまして家庭裁判所の御判断と検事の判断とが合致しなかったということによるものであるわけでございます。
したがいまして、最初に、少年法の手続によりまして、警察から事件を受けた検察庁で一応の調べをいたしまして、家庭裁判所に送りました。家庭裁判所から刑事処分相当ということで検察庁に送り返されました。これは通常の手続でございますから、特段変わったことはないわけでございます。その中で、いま申しましたように、一つの事実について、家庭裁判所の方では一応事実が認められるということで、五つの事実を一括して刑事処分相当である、こういう御判断であったわけですけれども、検事の方から見ますと、これからいざ起訴するわけでございますから、慎重に調べますと、その一件はどうもまだちょっと証拠が十分じゃないのじゃないかということになりまして、起訴をするに至らなかったわけですね。
したがいまして、そこで思い切って起訴してしまえばむしろ問題はなかったかもしれませんけれども、そうもいかない。それじゃその一件を除いて四件で起訴してやればよかったのじゃないかという考えもあろうかと思いますが、やはりその一つの事実はそれなりの重要な事実でございましたので、そう踏み切るわけにもいかないということで、やはりこのままでは刑事処分相当という家裁の御意見に従って起訴するのはどうかなというちゅうちょを感じたわけでございますから、それもそれなりにもっともな点があったわけでございます。したがいまして、キャッチボールと言われますけれども、そこまでは通常の手続で運んでいたわけでございます。
それから身柄の点も、ただいま御説明がありましたように、その時点で釈放になっているわけでございますから、身柄が行ったり来たりしたというわけではございませんで、通常の期間、相当な期間身柄が拘束されたことは事実でございますけれども、不当な拘束はなかったわけです。
キャッチボールと言われますのは、その後、いまの一つの事実をめぐりまして、家庭裁判所の御意見と検察庁の意見とが必ずしも一致しなかったために、その意見の調整に手間取ったというふうに御理解をいただいた方がいいんじゃないかというふうに思うわけでございまして、そのために記録が行ったり来たりしたということでございまして、何かキャッチボールでお互いに責任転嫁をしたというふうにとられますと、いかにも適当でないわけでございますけれども、そういうことではないというふうに御理解をいただきたい。
したがいまして、この事件をその事実の認定との絡みでどういうふうに処分するのが一番よろしいかということについて、むしろ両者がそれぞれの立場で考えて、その意見の調整に若干手間取ったというふうに御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/108
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109・岡田正勝
○岡田(正)委員 時間がなくなりまして恐縮でありますが、あと一問だけお尋ねをさせていただきます。
昨年来、いろいろとあってはならぬ裁判官の皆さん、一部の方々の不祥事件が続いたものですから、そういうことで、その反省から最高裁の方では裁判官の研修制度というのをスタートさせたと聞いております。一部、新聞社等に派遣をしたというようなことも伺っておりますが、新しく始めた研修制度はどういうものをやっていらっしゃるのか、それがどのぐらい実効が上がりつつあるのか、これはにわかにはわからぬことでしょうが、もしわかっておりましたら、この際、御発表願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/109
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110・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 それでは、裁判官研修の関係についてポイントだけを申し上げたいと思います。
司法研修所というところがございまして、そこでは従前から司法修習生の修習と裁判官の研修と双方やっておったわけでございますが、何分修習生の修習というのに手をとられまして、修習生がおります八カ月間ないし九カ月間というものは裁判官研修というものは実質的にできないというような状況があったわけでございます。秋の三、四カ月だけしか本格的にやれない、そういう状況がございましたために、まず裁判官研修の部という、そういう組織、体制というものを整えたわけでございます。そこに専任の教官を三名ほど昨年の四月から置きまして、裁判官研修専門でやってもらう、そういう組織と申しますか体制と申しますか、そういうものを整備したということがまず第一でございます。
そういう組織のもとにやりました研修でございますが、この研修につきましては、従前は大体におきまして判事補と簡易裁判所判事というものの研修が中心でございまして、判事になりましてからの研修というのはごくわずかしかできなかったわけでございますが、今回は、先ほど申しましたようなそういう制度が整備されましたので、中堅どころの裁判官の研修というものもかなり行えるようになったわけでございます。
研修全体についていろいろ申し上げますと時間がかかりますので、重要なところだけ申しますと、その中堅の裁判官で申しますと、たとえば総括裁判官、部の総括、いわゆる裁判長ということでございますが、そういうクラスの研修も、昨年と申しますか五十七予算年度におきまして二本ほどできたわけでございます。相当、六十名ぐらい研修ができたということでございます。
それ以外の新たなものといたしましては、法律だけではなくて、むしろ法律の関連領域と申しますか、そういうところの勉強、高い識見、広い視野と申しますか、法律以外のそういうところの研究もした方がいいのではないかということで、昨年はたとえば医療問題などというものを取り上げまして、そういうものの共同研究というものをやったわけでございます。
それからもう一つは、いまお話の中にもございましたように、国内特別研究というふうな呼び方をしておりますが、裁判所以外のところへ出しまして少し世間を見てきてもらう、裁判事務をしばらく休みまして見てきてもらうということで、新聞社に対して中堅どころの裁判官を派遣するということを始めたわけでございます。いままで朝日、読売、NHKというところへ二人ずつ参りまして、一昨日の朝刊にも出ておりましたが、明日から毎日新聞へも二人参る、そういう状況でございまして、この研究、研修がどれだけ効果があるかということは、事の性質上、少し長期的に見ませんことには何とも申し上げかねる面がございますけれども、行った人に聞きましても、非常に役に立ったというふうに言っておりますし、受け入れ側におきましても効果があったのじゃないか、むしろ受け入れ側の方にもいろいろ参考になる点はあったというふうに伺っておるわけでございまして、もう少し長期的に見たいというふうには思っておりますけれども、まずまず効果があるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/110
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111・岡田正勝
○岡田(正)委員 よくわかりました。こういう研修制度を実際に具体的に早速始めていただいたということは私ども大変喜んでおるわけでございまして、これから事件数もふえてくる、裁判官の皆さんといえども人間でございますから、ずいぶん大変な仕事だなというふうに私も御同情申し上げておるのであります。そうかといって、一遍に裁判官の数をふやすということもなかなかできませんし、大変なことであろうと思います。研修も十分に積んでいただきまして、りっぱな、良識を持ったよい判断ができるように十分これからも研さんを重ねていただきたいと思います。
それを希望いたしまして、本法案に対しては私は全面的に賛成であります。そのことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/111
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112・綿貫民輔
○綿貫委員長 林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/112
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113・林百郎
○林(百)委員 最初に最高裁の民事局長にお聞きしますが、例のいま長野地方裁判所の所長をやっている西山君ですね、あの君が熊本の所長をやっているころに出した文書で、いわゆる西山文書と言われるものがありますね。新聞で大分いろいろ書かれておりますが、あれを最高裁ではどういうように受けとめているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/113
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114・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のいわゆる西山メモというのは、実は私ども知らなかったのでありますが、昨年の十一月十四日、毎日新聞で大きく報道されまして初めて知ったような次第であります。あの新聞で取り上げられました際、裁判官に対する不当な介入になるのではないかというような観点から扱われていたように思います。私ども、その後そのメモを入手いたしまして中身を見ました。そしてまた、当時、西山所長がどういう経過あるいは背景においてこういうメモをつくったのかといういきさつも若干は聞いたのであります。それらを総合してみますと、私どもといたしましては、このメモは新聞等で取り上げられましたような形で問題にされる筋合いのものではなくて、所長が熊本地裁の民事裁判のありようを、もう少し何とかならないものだろうか、もう少し円滑に進めていく方策はないだろうか、そのことを裁判官、書記官、事務官等を含めて研究、協議したい、そのたたき台としてつくったものであるというふうに理解しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/114
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115・林百郎
○林(百)委員 しかし、問題はいろいろあるのですけれども、西山いま長野地方裁判所所長ですが、経歴を見ますと、最高裁の民事局長、行政局長、現在長野地方裁判所の所長。こういう経歴を持った人が自分の所轄内の裁判官会同、書記官会同にこういう書面を出しておるということは二つの問題があって、一つは憲法の七十六条ですか、裁判の独立に関して一定の指示を与え、干渉しているということと、一つは弁護人の弁護権を非常に制限をして、憲法三十七条の公正な裁判を受ける権利というものを阻害しているのではないか。
たとえばこれを見ますと、「控廷日の活用」とあるのですが、それから「仮定主張、仮定抗弁は出させない」「よけいな証拠は出させない」「事件記録も太らせないこと」「公平らしさの外観が大切」「釈明の結果が百五十字以上になるときは、準備書面を出させなさい」「ふつうの事件なら、証人三人以上を要するものはない」「ふつうの事件なら、反対尋問も含めて尋問に三十分も要するような証人はない」「釈明のための検証は、めったに必要がないと考えてよい」「ふつうの事件の検証なら二十分以内ですむ」今度は和解のあれですが、「一件一期日は三十分以内にとどめる」何々しなさい、こうしなさい、それから、証人を三人以上要するものは普通の事件ではない、反対尋問は三十分以上要するような証人はないとか、こういうことをこういう経歴を持った人が裁判官会同や書記官の会同で言えば、これは司法の行政という範囲を越えて、本人は訴訟促進というようなことを言っていますが、これはやっぱり裁判の独立を侵すことになるんじゃないでしょうかね。各裁判官が独自の判断でそれぞれの証人の許可をしたり、あるいは尋問の時間も、自分は納得するまではさせようとしているときに、こういうことを所長が出すということは、憲法の七十六条に保障されている裁判官の独立を侵すことになるのではないか。最も協力を要する弁護士、これは民事ですから代理人ですね、弁護士の代理権を侵すことになるのではないでしょうかね。
したがって、日弁連の方では「新聞報道によれば、本年九月、西山俊彦熊本地裁前所長が、同地裁民事部の全裁判官、書記官に対し、「民事事件処理上の問題点」と題する文書を配布し、審理促進のための裁判官の心構や訴訟指揮の方法などについて、詳細な指示を行っている。」「このような行為は、司法行政の責任者である地裁所長が上長としての立場から、個々の裁判官の訴訟指揮に具体的な指示を与えて統制を図っている点で、憲法上の裁判官の独立を侵すばかりでなく、その内容においても、訴訟の遅延を訴訟当事者の活動を制限することによって解決しようとするものであり、国民の裁判を受ける権利を軽視するものである。」ということを十一月二十六日にたしか最高裁に申し入れをし、会長の談話を発表しているわけですが、この談話を最高裁ではどういうふうに受けとめているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/115
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116・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたけれども、西山所長がこのメモを作成した背景と経過について若干敷衍して御説明したいと思います。
西山所長は、当時熊本地裁の民事部に長期未済事件がかなりたまっているということ、書記官の調書作成事務、これも非常にたまっていてうちへ帰って浄書をしなければならぬというような状況があったというようなこと、それからこれが一番大事なことだろうと思いますけれども、裁判官室と書記官室のコミュニケーションが十分でないというようなことが背景にあったようであります。
所長として、これを何とか改善する方策はないかということで、このメモを昨年の八月の中ごろにつくって、その後このメモを地裁の事務局長あるいは民事部の総括裁判官等に、こういうふうに考えるのだけれども検討してくれないかということで渡したようであります。その後十月一日に民事部の裁判官を全員集めまして、このメモをたたき台に意見交換をした。それから、十月六日にはさらに民事首席書記官以下主任書記官、立ち会いの係書記官、速記官、事務官等も集めまして、同じようにこのメモに基づいて意見交換をした、こういう経過であります。
何か所長の指示文書のように受け取られておりますけれども、その意見交換は、白紙でお互いに言い合っていたのでは実りがないということで、そのたたき台としてつくったもののようであります。
そのような背景と経過でつくられ、一般の職員の方にまで流れた文書でありますけれども、これはその中身を通読してみますと、最初の方にも書いてありますとおり「事件は裁判官、書記官、事務官、速記官、廷吏という裁判体の協同で処理される—裁判体のチームワークの強化をはかることが根幹」とあります。このことが言いたかったし、みんなに理解してもらいたかったもののようであります。裁判官としては、その裁判体のいわばチームのキャップとして訴訟指揮をどうしていくべきかということをもっと一生懸命考えるべきだ。「訴訟指揮は聖域である。」と書いてありますけれども、ここに言う趣旨は、訴訟指揮は聖域だから、ほかの人が介入しない、書記官、事務官も、あるいは代理人からも介入してこないのだ、だから裁判官としてはその聖域の座に甘んじていてはいけないということが言いたかったもののようであります。
先ほど御指摘のいろいろな点を逐一取り上げてみますと、それはよけいな証拠調べをしない、あるいはだらだらした質問を制限しないでおくとどれだけ書記官の仕事がたまってくるか、むだな仕事がたまってくるじゃないか、そこを省くように訴訟指揮をやるべきだというようなこと、あるいは終わりの方にありますけれども、タイピストのことを考えて、判決原稿はきれいに読みやすいようにするようにというようなこともあります。ともかく、訴訟指揮権を有する裁判官がそのチームメンバーに対してどういう思いやりをすべきかということを説いたものだと思うわけでありまして、これは個々の裁判官の裁判の独立を侵すとか、当事者代理人の権限を侵すというような性質のものではないと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/116
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117・林百郎
○林(百)委員 あなたは非常に好意的に解釈をしているのですが、われわれ弁護士の業務に携わった者の経験からいいますと「ふつうの事件なら、証人三人以上を要するものはない」なんて、どうして裁判所が一方的にそんなことが言えるのですか。第一、普通の事件と普通の事件でない区別もわからないのに「ふつうの事件なら、証人三人以上を要するものはない」。反対尋問も含めて尋問は三十分でやめろ。われわれだって、この委員会で三十分の質問なんといったら十分な質問はできないですよ。それを、法廷で原告と被告の言い分のどちらを真実とするかということを明らかにするために代理人が申請した証人は、普通なら大体三十分でよかろう、検証などは普通は必要ない、やっても二十分でやれ。二十分でどうして検証をやるのですか。
こういうことを裁判所所長が公然と裁判官会同や書記官の会同で言っているということになりますと、これは裁判に対する介入と言わざるを得ないと思うのですよ。それはやはり最高裁の姿勢にあると思うのですよ。これは西山君が熊本の所長として偶然出たことじゃないと思うのです。
最近の裁判官が裁判官会同や裁判官の合議で言っていることを見ますと、黒字は何件だ、黒字は何件になったのだろう、赤字はまだ幾らあるか。あなたに言っている。熊本地裁に赤字がうんとあると言うが、あれは赤字と言うのですね、裁判官は。それから、一件落ちると営業報告ですぐ出すよ。営業報告という言葉を使っているのですね。それから一回結審の原則。これは刑事事件などで弁護人の方が納得すれば一回結審でもいいでしょうけれども、一回で検事の冒頭陳述から弁護士の冒頭陳述から検事の書証の提出から、それの朗読に基づく弁護人側の反証なんてできっこないのですけれども、これを原則としてやれというようなことが言われているのです。それから件数処理主義。幾ら処理したか、それが最高裁の目のつけどころ、その判事を出世させるかどうかは、それが基準だ。人間らしい、当事者に支持される裁判をしたかどうかじゃないのだ。こういう司法行政が非常に横行している。それは最高裁から出ている。キャリアシステムとかなんとかいう言葉もありますけれども、そういうことについて最高裁は反省する余地ないですか。私は非常に心配だと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/117
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118・川嵜義徳
○川嵜最高裁判所長官代理者 確かにこの文書に対する見方はいろいろあると思われますが、ただ、証人は三人で大体賄えるというようなこと、あるいは所要時間は三十分だとか、検証二十分、これはある意味では象徴的な言い方で、非常に準備を整えてそういう証拠調べをやればそれほど短時間でやれるんだ、一時間、二時間かけているのがそれくらい時間が節約できるんだということを象徴的に言ったものにすぎないのではないかというふうに思うわけであります。
証人につき三人ということは、実はこれは統計上の根拠がございまして、証拠調べをした事件だけを取り出してみまして、一体平均何人くらい証人調べをしているかということを見た司法統計がございますが、これによりますと二・六人という数字が出てくるわけであります。また証拠調べをした事件で、三人以下で判決その他和解等で終わらせることができたのは七八%くらいある。こういうような統計の数字を基本にするならば、大方の事件、普通の事件は三人ぐらいでいいというのも大体は当たっておるわけでありますけれども、あと所要時間が三十分でいい、あるいは二十分でいいというのは、これはそういう統計がございませんので何とも言いかねるわけでありますけれども、いわば象徴的な表現であろうというふうに思うわけでありまして、このメモで代理人の訴訟活動を規制することを目的としているものではなくて、書記官の仕事あるいは速記官の仕事が不必要に膨大にならないように訴訟指揮をすべきではないかということを述べているというふうに私どもは理解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/118
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119・林百郎
○林(百)委員 大分御親切な解釈の仕方だと思うのですが、そうじゃないんですよ。「ふつうの事件なら、証人三人以上を要するものはない」と言い切っているんですよ。それから「反対尋問も含めて尋問に三十分も要するような証人はない」。あなたの言うような、そういう弾力性のある、普通こうだぞ、ここらをめどに心がけろというのではないのです。これ以上は必要はない、たとえば「ふつうの事件の検証なら二十分以内ですむ」。
それから最も問題になるのは「公平らしさの外観が大切」これはどういうことですか。外観さえ公平らしさなら、実際は公平でなくてもいいということになるんじゃないですか。少なくとも所長たる者がこんな。国民のための裁判なんだから、裁判所のための裁判じゃないんですよ。これは刑事のあれですけれども、憲法の三十七条だって、あれは国民の民主的な権利の中にあるんですよ。敏速な裁判を受けるというのは、国民の利益のために敏速な裁判をやるので、裁判所の御都合で敏速にやるというのじゃないんですよ。ですから、第一、局長がそういうことではどうもよくないですな。局長がいまここで答弁したような、そういう弾力性のある、一般的にはこうなっている、資料として参考にしろといって出すならいいですよ。もう、しなさい、こうである、こうしなさいと言っているんですものね。
それで、今度は刑事局長に聞きますが、同じことが刑事事件でも起きているんですよ。これは京都の事件なんですけれども、弁護人の方から、月に刑事事件を二つその人は持っているのですが、所得税法違反事件と業務上横領、商法違反被告事件と二つあって、これを月に一回ずつ入れてくれないかというので、月に二回ということになった。そのうちに、月に一件二回でということですから、二件あると月に四回なんですね。それからその一回に要する時間は三時間ずつだ。弁護人としては三時間の公判廷で刑事事件をやるためには九時間の準備が要るわけですね。こういうのを一月に四回ずつ入れられて、そして三時間の刑事事件の裁判をやっているとすれば、弁護人はその任にたえないと言うんですよ。どうかひとつ、ぎりぎりいって、最初は月に一件で二回の開廷にしてくれ、いや、どうしてもだめだ。それじゃ、ぎりぎり私たちの能力としてできるのは三回ですから、二件の被告事件を一月に三開廷にしてくれないか、それもだめだ、四開廷だ、一月に一件に二回ずつで四開廷だ、と。それから、ことしの一月から六月まで一方的に期日の指定をしてきたわけですね。
それで弁護人としては、とてもそれでは弁護の任にたえられない、と。それでこの裁判長、名前を言っていいのですが、公になっていますから。吉田治正君というんですがね。仕方ないから裁判長を忌避した。忌避したけれどもそれは却下されたということで、これは弁護権に対する重大な侵害だということで、京都の弁護士会もこれを取り上げまして、こういうことを言っているんですね。
その京都の弁護士会の司法問題対策委員会の意見によりますと、「憲法三七条一項の保障する迅速な裁判は、被告人のための権利であり、且つ、手続内容共に、国民の納得できる裁判でなければならないのである。こうした観点に立ってみるとき、本件期日指定」ですね、一方的に六月まで月に四回ずつの期日指定をしている。これは「誠に遺憾であるといわなければならない。近時、国民の納得できる公平な裁判という観点をぬきにした「訴訟促進」が裁判所において強調される傾向が日弁連においても指摘されているが、今回の事態はこうした傾向に拍車をかけるものとして、我々は深い憂慮を抱くものである。よって、我々は、裁判所に対して、このようなやり方を改めることを強く要望すると共に、当会においても適切な措置をとるべきであると考えるものである。」
それで、却下されたものですから、それじゃもう私はその任にたえないということで弁護人が、柴田という弁護士ですが、弁護人を辞退しましたら、吉田裁判長は自分の知り合いの者を国選弁護人につけたわけですね。ところが、その国選弁護人は、どうも裁判長と知り合いだ、これでは被告人の権利は十分保護されないということで、新しく私選の弁護人を選んだんですよ。これは、国選弁護人を選ぶというのは、憲法にありますように、これは、貧困で弁護料を払うことができないような被告人のために弁護人を選ぶ場合に国選弁護人というのはあるわけなのですけれども、それを裁判長は一方的に自分の知っている弁護士、これは自分の先輩です、それを弁護人に指名した。それで、一億円もの保釈金を積んでいる被告人ですから、弁護士を弁護人として選任できないことはないわけです。それで弁護人を選任したんですよ。
それで国選弁護人をつけているときに私選弁護人が出れば、国選弁護人は原則として辞任するというのが判例でもあるわけですね。国選弁護人の選任後、私選弁護人がついたとき「裁判所は、原則として国選弁護人を解任すべきである」。これは、昭和三十七年九月十八日の福岡高裁でこういう判例がある。ところが、この京都の吉田裁判官は、私選弁護人がちゃんと選ばれて、私はこの人を弁護人にしたいと言うのに、裁判長が自分の先輩の国選弁護人を解任しないんですね。だから、国選弁護人と私選弁護人の間の意見がちっとも一致しない。被告人の弁護にならないわけですよ。そういうことをやりながら刑事事件の促進を図るんだ、こう言っているんですがね。これは刑事局長、きょういますか、この事件を知っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/119
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120・小野幹雄
○小野最高裁判所長官代理者 ただいま仰せのケースは、私も承知しております。申すまでもなく、先ほど委員も仰せられましたように、憲法三十七条では、迅速な裁判を被告人の権利として保障しているわけでございます。また、刑事訴訟法の一条に「刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と規定されているわけでございまして、私ども刑事の裁判官といたしましては、適正な裁判とともに迅速な裁判の実現はまさに裁判官の使命であるというふうに考えてその実現に努力しているところでございます。
先ほど委員から、憲法三十七条の規定というのはこれは被告人の権利だという仰せもございましたけれども、私、憲法の解釈をここで申し上げる立場にはないのでございますけれども、おくれた裁判は正義がないに等しいという法諺もございますように、刑事裁判の刑罰法令の適用ということを被告人が欲しなければ、いつまでほっといてそのままにしておいてもいいのかということになりますと、私は、これは被告人の権利だからそれは権利を放棄すると言われればほっておいてもいいということにはならないんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、長い間ほっておけば証拠も散逸する、最後には被告人の方で防御するにも支障を来すというようなこともございます。これは憲法の上では被告人の権利として掲げておりますが、これは刑事裁判における根本的な原則であろうかというふうに考えておるわけでございます。
先ほど仰せの京都地方裁判所のケースでございますが、これは現に進行中の具体的事件でございますので、その裁判長の訴訟指揮の当否というようなことに、またあるいはこれにつきましての弁護人のこれまでのこと、内容につきましてここで申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、いま二件御指摘になりました一件の方は、たしか四十四年の三月に起訴された事件でございまして、ちょうどいまもうすでに起訴後十四年たっている事件でございます。もう一件の方は、たしか四十八年の九月でございましたか起訴でございまして、もう九年余を経過して間もなく十年になろうかということでございます。第一審におきまして、十年あるいはそれ以上経過してなお裁判の見通しがつかないというような事態が果たして許されるのであろうかどうかということでございます。
私ども日ごろ訴訟遅延ということにつきましては、会同あるいは研究会等でいろいろ裁判官が一般的に検討しておるところでございますけれども、やはり法廷の中で迅速ということは決して拙速ということではないわけでございまして、充実した適正な刑罰法令の適用のために、そして迅速にそれを行うという両方の要請があるわけでございます。たとえて申しますと、仮に百日この裁判を……(林(百)委員「余分なことはいいですよ。時間がありませんから」と呼ぶ)ですから、ちょっと一言言わせていただきますが、仮に百日要するという事件でありますれば、それは弁護人のお忙しい立場ということはよくわかりますけれども、仮に百日を半日ずつ月に一遍ということになりますと、それは十六年を要するわけでございます。まことに申しわけないことでありますけれども、やはりそういう事件については弁護人の御努力、御協力が得られなければ迅速な裁判の実現ということはできないわけでございます。どうかそういう事案につきましては、弁護人の御協力を仰ぎたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/120
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121・林百郎
○林(百)委員 いや、もう簡単にやってください、さっきも言ったように。三十分でやれなんて、これだから困るんですよ。
いいですか刑事局長、それでは検察官の立証段階では、法廷を月に何回開いているんですか。それを調べたんですか、あなたは。それから、検察官は準備のために何年時間を使っていますか。そんな弁護人がさぼって無理に延ばしているような一方的なことばかり言っていますけれども、それは調べましたか、答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/121
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122・小野幹雄
○小野最高裁判所長官代理者 検察官の時代には月一回のようでありましたが、裁判所がその当時から何とか月二回以上入らないかということは、弁護人に何回も御協力をお願い申し上げているというふうに伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/122
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123・林百郎
○林(百)委員 だから、検察官のときには月一回で、弁護人のときには月四回できなければもう一方的に期日を指定してくる、そういうところに問題がある。
それからもう一つは、準備のために検察は一年公判を開いてないですよ。だから、何も弁護人の責任ばかりじゃないですよ。それは、あなたは事件をやった経験がないからそういうことを言いますが、所得税法違反だとか商法違反事件なんというのは膨大な書類があって、弁護人がそれを十分読んで、それから立証するというのは容易じゃないですよ。それを月四回も開廷されたら、弁護人としてはたえられない重労働になるのですよ。しかも、月三回までならいまできるから月三回にしてくれないかというのを一方的に四回にして、それで半年も期日を指定するということが許されるかどうかということですよね。その検察官が一年準備手続をしていたということ、月に一回しか検察官の公判廷は開かれなかったということは認められるのですか。それで、私選弁護人が選任されているのに、なぜ国選弁護人をまだ置いておくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/123
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124・小野幹雄
○小野最高裁判所長官代理者 検察官の準備時間にかなりの時間を要しておりますが、これは弁護人の方からいろいろな細かい釈明が出ておりまして、これを明らかにしてほしい、これを明らかにしてほしいということで、それで準備手続を経たりして非常に長い間時間を食ったということでございまして、これは検察官の準備だけでなくて、弁護人の方も準備をされて、それでいよいよ審理が始まった、こういうことであろうかと思います。
それからもう一点でございますが、検察官の立証が始まった段階から裁判所は弁護人の方にも、もう少し月二回くらいはふやしてほしいということを申し入れておりましたけれども、それが入れられないで、これじゃまだどれだけかかるかわからないからということで月二回の指定をしたのがたまたま弁護人の反証の段階である、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/124
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125・林百郎
○林(百)委員 時間を要しても、しかしこれは公平な裁判を受ける権利というのは憲法三十七条で国民に与えられた権利です。あなたはさっき国民に与えられた権利だから幾ら延びてもいいかと言っていますけれども、しかし「国民の權利」のところにちゃんと書いてあって、「司法」のところにはないのですよね。敏速な裁判を受けるというのは、要するに本人が納得する、そしてまた三十七条の二項には「刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分與へられ」ると書いてあるのですから、これは「国民の権利」のところにあるのですよ。
あなたがそういうことを言うなら、これは知っていますか。全国裁判官懇話会というのがあって、昨年上智大学でこれが開かれて二百四十七名の多数の裁判官が参加しているのですね。このとき、裁判官の方からもこういう意見が出ているのですよ。これは裁判官としてはいろいろ率直な意見が出ておるのですけれども、
今の刑事裁判に一番欠けているものは何か、について考えてみたいと思います。同期の弁護士と話し合ったとき、その弁護士が言うには、人間味のある、血の通った審理、判決がなされていない、それを一番痛切に感じる、とのことです。かさかさした、まるで、機械に近いような裁判官による裁判がなされている、量刑が結果的に全く同じものになっても、それに至る審理が人間味を感じさせるものであれば、被告人の受け止め方が違う、と言われました。では、何故そうなったか、という点ですが、その弁護士によれば、それは、裁判官の人間そのものに対する理解が不足していること、そして、被告人も自分と同じ人間である、という意識が欠けていることに原因がある、それをもたらしたのは、第一に、裁判官世界の狭さ、第二に、裁判官の持っているある種の特権階級、これは、裁判所の職員に対して現われているような意識が被告人に対しても出てくる、という問題、第三に、多数の事件を抱えている中で、事件処理能力を重視した裁判官評価がなされている、という問題、第四に、研修所教育や判事補研鑽などで、画一化、規格化された裁判官が養成され、個性の強い裁判官が排斥される傾向にあること、以上のようなことで、事件処理能力は優れているが、人間としては魅力がない、人間味を感じさせず、尊敬できない裁判官がふえており、そういった裁判官が、無難な判決を、と考えて、相場に
「相場」という言葉があるのですね。求刑に対してどのくらいの判決をやるかは相場だ、求刑の七割から八割。
相場に寄り掛った安易な量刑をし、それに必要な限度でしか審理をしない、それでこうなったのではないか、と批判されたわけです。
これは、こういう批判をされたと言うのですが、もう一つこう言っているのです。
判事の方で、毎日毎日裁判をやっていると、
まだ刑事裁判の経験は少ないのですが、単独事件を担当した当初のころは、帰宅するとぐったりしましたし、悩みもありました。次から次へと、一時間単位で事件を処理し、法廷に入りっぱなしの疲労もありますが、自分は一体何をしているのだろうか、これが裁判なのだろうか、送られてくる被告人を、すでに存在する一定の基準に従って、
いわゆる相場に従って
刑務所行きとそうでないのとに選別しているだけではないか、と考え意気消沈して悩んでいました。
こういう言葉も裁判官から出ているのですよ。あなたの言うような割り切ったこと、最高裁判所が考えているようなことではない。一線の判事たちはこういう悩みを持っているのです。そこをよく考えてもらいたいと思うのです。
それから、もう時間がありませんので、国選弁護人はどうしてまだ続けさせているのですか。そういうことこそ最高裁の方でアドバイスしてやったらどうなのですか。私選の弁護人がついているのに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/125
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126・小野幹雄
○小野最高裁判所長官代理者 具体的な事件のことでございますので、これはこうしろ、国選弁護人を解任しろということは私どもが言える立場にないことは御了解いただきたいと思います。
ただ、一般的にいろいろ議論されているところでは、たとえば私選弁護人がすぐまたおやめになるとか、いろいろな事情で開廷ができないというような場合が予想される場合には、一遍選任された国選弁護人を訴訟がスムーズに進行するまで併存するんだというような議論があるわけでございますので、その経緯等については具体的にわかりませんが、恐らくまた私選弁護人が辞任されるというようなことによってさらに訴訟遅延が起こっては困るということで国選弁護人を併存しているのではないかと推測するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/126
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127・林百郎
○林(百)委員 一線の判事たちがこういう悩みを持っているということは最高裁はわかっているんですか。この全国裁判官懇話会というのができて二百四十人も全国から集まって、裁判官会同とは違ってみんなで自分の悩みを話し合っている。これを読んでいますか。
それと、私選弁護人と国選弁護人が併存している、それは私選弁護人がまたいつやめるかわからない、そうすれば裁判が遅延する。そんないつやめるかわからないなんということをどうして推測できるのですか。そう言っているんですか。これは具体的な事案ですから深入りはできないけれども、あなたの答弁は全く一方的だと思うのですよ。本当に被告人の権利を守るために、人権を守るために——弁護人だって能力に限界がありますからね。そういう場合に自分が信頼する弁護人を選んでいるのに、裁判長が、しかも知り合いの先輩の判事なんですよ。だから、被告人の方はもうその国選弁護人を信用してないんですよ。それでもなおあなたの言うようなことでつけさしておくということは納得できないのですよ。この点をもう一度答弁を求めて、安藤さんがお見えになっていますから、私、質問をやめようと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/127
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128・小野幹雄
○小野最高裁判所長官代理者 裁判長とよく御存じの方が国選弁護人であるということはただいま初めて伺ったわけでございますが、要するに、期日の二回指定ということではできないということで辞任された、そういう経緯のようでございまして、後、それでは被告人の権利擁護ができないということでおやめになるということがまだ起こり得るのではないか、そういうことがあるのかどうかわかりませんけれども、私が先ほど申し上げましたのは、そういう場合であれば国選弁護人を併存できるというような議論がございますので、そういう場合ではないかと推測で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/128
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129・林百郎
○林(百)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/129
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130・綿貫民輔
○綿貫委員長 安藤巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/130
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131・安藤巖
○安藤委員 私は、残りの時間、簡易裁判所の書記官の問題について最高裁判所の方にお尋ねをしたいと思います。
具体的にお尋ねをしますが、名古屋地方裁判所管内の愛知県の西尾市に西尾簡易裁判所というのがあります。これは、現在、裁判官不在庁になっております。いわゆる四人庁ですね。それを書記官をすぐ近くの安城の簡易裁判所へ転勤をさせるという計画があるというふうに私は聞いているんです。ですから、西尾の簡易裁判所が三人庁になるわけですね。安城へ転勤をさした後、どういうふうにしてやっていくのかということを聞きますと、転勤をさした書記官を安城の方から西尾の簡易裁判所へ填補をさせる、こういう計画だというふうに聞いているんですが、そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/131
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132・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
西尾簡裁でございますけれども、最近の事件の動向を見てみますと、五十二年には民事訴訟が三十件ございましたのが五十七年には十七件というふうに減っております。それから科料事件につきましても六十件ございましたのが九件、調停でございますと六十一件ございましたのが三十三件、もちろん、督促事件につきましては五十一件ございましたけれども、それが五十七年には二百十八件、こういうふうにふえてはおりますが、二百十八件でございますと、一日に直しますと一件に満たない、そういうような量になるわけでございます。それから刑事訴訟について見ますと、五十二年二件ございましたのが五十七年ではゼロ、それから略式交通即決が三千百五十九件ございましたのが二千三百三十五件というようにいずれも減少しているわけでございます。全体といたしまして、昭和五十二年前後から比較いたしますと、現在の事件数の方が少なくなってきておる、こういう状況でございます。安藤委員御承知のように、全国的に事件の漸増傾向が続いている中では、むしろ例外的な傾向を示しているものでございまして、昨年九月事物管轄の改正がございましたけれども、民訴事件の係属状況には特段の変化はございません。
職員の配置につきましては、全国的な視野のもとに負担の公正という観点から適正な配置というものが要請されるわけでございまして、こういうような状況で、西尾簡裁につきましては、事務量から見まして書記官を減ずることはやむを得ない、こういう判断がなされたわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/132
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133・安藤巖
○安藤委員 事件の推移はいまおっしゃったとおりだろうと思うのです。ところが、たとえば法務局の方は、西尾の出張所が今度は支局に昇格したそうです。それから西尾の区検が二人から三人に増員になっているそうですね。となると、法務省、検察庁の方はより充実したものにしよう、あるいはしたということになると、やはり長期の見通しというものも立てて人員の配置というのをお考えになる、バランスということもお考えになるというのもわかるのですが、そういうことから見ると、先ほど私が申し上げましたような書記官の異動というのは、ほかの官庁の体制からすると裁判所だけが特別一段落ち込んだことをやっているのじゃないかという気がするのです。そういうことになりますと、安城の簡裁の方から填補に来るにしても、安城の方が西尾よりもより忙しいから転勤ということになったのだろうと思うのですが、となれば、安城へ転勤をされる書記官が今度は填補で西尾に来るにしても、なかなかそういうわけにはまいらぬということを思います。そうすると、法廷へ立ち会うのは一体だれかというと、これは庶務課長さんにならざるを得ない。庶務課長さんは庶務課長さんとしてのいろいろ窓口の相談だとか、窓口受付だとか、ほかの相談だとか、いろいろあると思うのです。そちらの方へも支障を来すのではないかということを心配するわけなのです。そうしますと、前にもこれは議論したことがあるのですが、簡易裁判所のいわゆる民衆裁判所、駆け込み裁判所、こういうような機能がこの西尾の簡易裁判所で失われていくのじゃないのかということを心配するのです。それから訴訟物のこの前の三十万から九十万になったときに、督促手続がふえていると先ほどもおっしゃったのですが、あのときも附帯決議が国会でなされまして、人的、物的な充実を図るように、これはそちらの方へ事件がふえるからということであれなのですが、督促手続もふえているというようなお話がありました。そういうこととも逆行するのではないかという気がするのですが、どうなのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/133
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134・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 書記官一名を減じますと、西尾簡裁の場合は書記官一名、事務官一名、廷吏一名という配置になるわけでございます。
御指摘のように、民事訴訟事件、刑事訴訟事件に書記官が立ち会います場合に、窓口事務等の問題はあるわけではございますけれども、先ほど申し上げましたように、民刑合わせて年間わずか二十件程度でございます。他はいずれも比較的処理の容易な略式、督促等の事件でございますから、書記官一名、事務官一名、廷吏一名で十分対処できるのではないかというように考えております。もちろん、書記官の病気等の一時的な障害によりまして訴訟事件に立ち会えないような場合、あるいは窓口事務に支障を来すような場合には、どうしても書記官による処理が必要でございますので、その場合には仰せのごとく安城簡裁でございますとかあるいは岡崎支部の書記官でございますとか、そういう書記官の方々の填補体制によりまして十分処理ができ、国民の方々にさほど御迷惑をおかけすることはないのではないか、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/134
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135・安藤巖
○安藤委員 全体の配置ということもお考えのことはわかるのですが、最近名古屋地裁本庁で書記官二名を増員なさったというふうに聞いているのです。しかし、これは書記官としての職務についておられるのではなくて、いわゆる有資格事務官ですか、書記官としての資格を持っておられるけれども事務官としての仕事をしておられるというふうに聞いているのです。いろいろ事情を聞きますと、来るべきと言うとあれですが、来るべき大量退職に備えて人をためておくのだというようなお考えのようでもあるようなんです。しかし、それはまだいま来ているわけじゃないですが、いま安城においでにならぬわけですから、そういう人を安城に配転するというようなことは考えられないのかということと、それからいろいろ書記官が法廷に立ち会う問題について、次席の書記官の方が法廷に立ち会うということは名古屋地裁の場合ほとんどないように聞いておるのです。しかし金沢あるいは岐阜の方では次席の書記官の人も法廷に立ち会うということまでやって、書記官の不足をカバーしていくということですかをやっておられるようですが、名古屋地裁においてはそういうことがないというふうに聞いておるのです。
だから、そういうように次席の書記官の人に法廷に立ち会ってもらうというようなことも考えて、地裁の本庁の方からそういう簡裁の方へ書記官を出すというようなこともお考えになっていただければ、先ほど私が言いましたように、安城の方へ配置できれば西尾でこういうような問題は起こらなくても済むのではないかと思うのですが、その辺どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/135
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136・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 まず最初にお尋ねの名古屋地裁に有資格事務官を配置したという点でございますが、必ずしも私つまびらかにはいたしておりませんけれども、有資格事務官を配置いたします場合には、事務局なりあるいは訟廷なりそういうポストのところへつけているのだろうと思います。それは名古屋地裁におきまして事務局のあるポストにそういう有資格事務官を配置する必要があってそのように配置されているのではないかと考えております。もちろん大量退職に備えての備蓄というようなことも全般的には考えなければならない問題であるかもしれませんが、いま具体的に名古屋地裁でどのような配慮のもとにそのような配置をなされたかは事情をつまびらかに承知しておりませんので、一般論としてお答えするほかはございません。
それから第二の次席書記官の立ち会いの点でございますけれども、もちろん、委員仰せのごとく小さな庁でございますと非常に裁判事務の立ち会い等で忙しい場合には、次席書記官の立ち会いというものが行われております。しかしながら、御承知のような名古屋地裁のように大きな世帯になってまいりますと、次席書記官の事務というものが、非常にいろいろな点でかなり事務量が多うございます。そういう観点から、名古屋地裁においてはなかなか次席書記官の立ち会いというものができない状況であるのではないかというように考えております。
仰せのごとく、次席書記官が立ち会って、そのことによって西尾簡裁の減員をしなくとも済むのではないか、こういうお考え方もあろうかとは思いますけれども、西尾簡裁で書記官一名減をいたしましたのは、先ほど来申し上げておりますような事務量の減少に伴った措置であるので、その辺のところはひとつ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/136
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137・安藤巖
○安藤委員 このことで余り議論しておると時間がなくなりますから、もう一つだけ申し上げておしまいにしようと思うのですが、先ほど言いましたように、ほかの省庁はそういうふうにここは充実しているところなんです。というのは、何らかの目的、見通しというのがあろうかと思うのですね。だから、その辺のところもやはり調べていただく必要があるのではないかということと、それから名古屋地裁の本庁で二名の書記官を最近有資格事務官として事務局へ配置したという点は、私の方が具体的な材料を持っているのです。あなたの方は、そんなことはいま初めて聞いたからというので、一般論をおっしゃるのです。だから、その点は僕の方が優位なんです。ですから、その辺のところもきちっと踏まえてこれは考えていただく必要があるのではないかということです。これは申し上げておきます。
時間がなくなりましたが、やはり家庭裁判所のことをお尋ねしようと思っておったのですが、午前中いろいろ家庭裁判所の理念の問題を中心にして相当詳細な質問がなされましたので、ポイントのところだけお尋ねをするのですが、少年事件だけに限定をしてお尋ねしたいと思うのですが、これは少年法一条にもはっきりしておりますように、少年事件は家庭裁判所が扱うわけですね、ですから、これは当該少年の具体的な健全育成、保護のために家庭裁判所が社会的な役割りを果たすということだと思うのですが、それはいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/137
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138・栗原平八郎
○栗原最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/138
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139・安藤巖
○安藤委員 そうなりますと、家庭裁判所に送致をされた事件で、少年の生い立ちとか性格とか学力、判断力等々いろいろ具体的、個別的にその少年を処遇するということが必要不可欠なことはもうあたりまえだと思うのですけれども、先ほどの迅速裁判じゃないのですけれども、家庭裁判所の中にも迅速的画一的に一件一丁上がりというようなことでやろうという動きがあるというので、いろいろ批判あるいは心配、懸念の声が出てきているのですよ。
これは時間がありませんから私が言うだけにしますが、たとえば少年の健全育成、保護を目的とするということよりも社会防衛的、刑事政策的な面が強くなってきているとか、あるいは少年のことを十分考えた適正な処遇ではなくて、権威的で機械的、段階的な処遇が強まっている。たとえば、最初少年が来て不処分ということにする、そのときに誓約書というのを書かせる。今後悪いことはいたしません、二回目のときはもっと重い処分にしていただいても結構ですというのを書かせる。同じ少年がたまたま今度もまた厄介になった、今度は前にそういう誓約書が出してあるからぱっと保護観察、保護観察にするときに、また、この次にまたありましたらもっと重い処分にしていただいても結構でございますという誓約書を書かせる。また送られてくる、誓約書があるから今度は少年院、こういうような権威的、段階的な処遇が行われているということなんですね。
それから、個別的な処遇が大切だと、先ほど私の意見のとおりだというふうにおっしゃったのですが、個別的ではなくて選別基準みたいな基準があって、大体この程度ならこれというふうに、そういう基準に基づく形だけの均衡処分というのがなされている、こういうような懸念があるのですよ。
それで、結局そういうことをやるのは、先ほど言いましたように、迅速に迅速にというようなことで、東京家庭裁判所では、先ほどもお話がありましたように六カ月未済の事件は報告しろというようなことで、ということになると、六カ月以上その事件を持っておったのでは精神的なプレッシャーがかかって、六カ月以内に事件を済まさせなければならぬという圧力を加えることになる。これはやはり問題です。だから、家裁の調査官の数、人ふやし、これをやらなければいかぬと私は思うのですよ。ところが、最高裁判所はどういうことか昭和五十年以降家庭裁判所の調査官をふやしてないのですよ。これはおかしいと思うのですが、最近なぜふやさなかったのかということと、最近ふやすというような計画があるのかどうかということをお尋ねしたい。
それから法務大臣、これは法務大臣の方から法案を提案されておるわけですから、最高裁がそういうかっこうかということではなくて、これはちょっと遠慮し過ぎておるじゃないかとか、もっとこれをふやさなければいかぬじゃないかというようなことだって言っていただいてもいいと思うのです。だから、そういうことも含めて家庭裁判所のいまの調査官の問題だけですが、ふやすというような点についてどういうふうにお考えになっているか、この二つお尋ねして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/139
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140・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 昭和五十年以降家庭裁判所調査官の増員を図っていないことは委員御指摘のとおりでございます。私ども、もちろん現在の家庭裁判所調査官数で十分であるというように考えているわけではございませんけれども、委員御承知のとおり、家裁調査官と申しますものは家事事件、少年事件につきまして心理学、教育学、社会学というような専門的知識に基づきましてケースワーク的な側面から事件の調査に当たるという職務の性質上、任用基準も非常に高うございますし、おのずから給源も限られてまいります。調査官補から調査官になるにつきましても家庭裁判所調査官研修所の研修を修了しなければならない、その関係で養成人員にも限度がある、そういういろいろな状況からいたしまして、増員をいたしましても充員ができないというおそれがございますので、このところ欠員補充の限度にとどめていたわけでございます。
もっとも先ほど少年事件の増加のお話がございましたけれども、家事事件も漸増しております。昭和五十七年度で両方合わせると百一万件になっているわけでございますけれども、これは昭和四十年前後の約百三十数万件にはまだ立ち至ってない状況でございます。私どもといたしましては、今後事件の係属状況を慎重に見ながら所要の適切な措置を臨機に講じていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/140
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141・秦野章
○秦野国務大臣 裁判所の方針に従ってわれわれの方もできるだけ協力していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/141
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142・安藤巖
○安藤委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/142
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143・綿貫民輔
○綿貫委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/143
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144・綿貫民輔
○綿貫委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/144
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145・綿貫民輔
○綿貫委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/145
-
146・綿貫民輔
○綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/146
-
147・綿貫民輔
○綿貫委員長 次回は、明二十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805206X00419830322/147
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