1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十八年三月三日(木曜日)
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議事日程 第七号
昭和五十八年三月三日
正午開議
第一 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
日程第一 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)
昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時五十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/0
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001・福田一
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
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議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/1
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002・福田一
○議長(福田一君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
小泉純一郎君及び福田赳夫君から、三月四日より十一日まで八日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/2
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003・福田一
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
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中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/3
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004・福田一
○議長(福田一君) 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/4
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005・保利耕輔
○保利耕輔君 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/5
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006・福田一
○議長(福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/6
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007・福田一
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
議長は、中央選挙管理会委員に
近藤 英明君 堀家 嘉郎君
伊達 秋雄君 鬼木 勝利君
及び 中沢伊登子君
を指名いたします。
また、同予備委員に
吉岡 恵一君 萩原 博司君
遠藤 隆次君 松尾 信人君
及び 岡本 丈君
を指名いたします。
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日程第一 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/7
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008・福田一
○議長(福田一君) 日程第一、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する調査特別委員長中野四郎君。
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国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中野四郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/8
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009・中野四郎
○中野四郎君 ただいま議題となりました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における賃金及び物価の変動等にかんがみまして、国会議員の選挙等の執行について国が負担する経費で地方公共団体に交付するものの基準を改定しようとするものであります。
すなわち、投票所経費、開票所経費、選挙公報発行費、ポスター掲示場費等の基準額を改めようとするものであります。
なお、この法律は、公布の日から施行し、施行後その期日が公示されまたは告示される国会議員の選挙等から改正後の基準額を適用することとなるよう所要の措置を講ずるものといたしております。
本案は、去る二月一日本特別委員会に付託され、二月二十三日山本自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/9
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010・福田一
○議長(福田一君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/10
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011・福田一
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/11
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012・福田一
○議長(福田一君) 日程第二、電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案、日程第三、電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。逓信委員長左藤恵君。
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電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案及び同報告書
電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔左藤恵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/12
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013・左藤恵
○左藤恵君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、電話加入権質に関する臨時特例法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、電話加入権に対する質権の設定の状況等にかんがみ、電話加入権に質権を設定することができる制度の存続を図る等所要の改正を行おうとするものであり、改正の第一点は、電話加入権に質権を設定することについて、昭和五十八年四月一日以後も当分の間許容することとし、第二点は、質権の設定の登録をする場合等の手数料の額について、日本電信電話公社が郵政大臣の認可を受けて定めることとしております。
その他、所要の規定の整備を行い、法律の施行期日は、公布の日となっております。
次に、電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を廃止する法律案について申し上げます。
本案は、電信電話等の需要を充足するための態勢が整ったことにかんがみ、加入電話加入申込者等による電信電話債券の引受制度を廃止しようとするものであり、その内容は、電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律を昭和五十八年三月三十一日から廃止することとするものであります。
本委員会におきましては、去る一月二十八日両法律案の付託を受け、二月九日桧垣郵政大臣から両法律案の提案理由の説明を聴取、昨二日質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、両法律案は、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/13
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014・福田一
○議長(福田一君) 両案を一括して採決いたします。
両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/14
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015・福田一
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/15
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016・福田一
○議長(福田一君) この際、内閣提出、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣竹下登君。
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/16
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017・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
御承知のとおり、わが国の財政事情は一段と厳しさを加えております。このような中で、特例公債依存体質からの脱却に努めるなど、財政の対応力の回復を図ることは、今後の財政運営の緊急かつ重要な課題であると考えております。このため、政府は、昭和五十八年度予算において、歳出歳入両面で徹底した見直しを行ったところであります。
まず、歳出につきまして、概算要求段階で画期的なマイナスシーリングを採用するとともに、その後の予算編成に当たり、聖域を設けることなく徹底した削減を行いました。その結果、昭和五十八年度の一般歳出の規模は、昭和三十年以来初めて前年度を下回りました。
他方、歳入につきましても、きわめて厳しい財政事情にかんがみ、極力その見直しを行い、特別会計、特殊法人からの一般会計納付等、税外収入について格段の増収努力を払ったところであります。しかしながら、これらの措置をもってしても、なお財源が不足するため、昭和五十八年度におきましては、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等を停止せざるを得ない状況にあります。
本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債の発行等、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源を確保し、もって国民生活と国民経済の安定に資するために必要な特別措置について定めるものであります。
すなわち、本法律案は、昭和五十八年度における特例公債の発行及び国債費定率繰り入れ等の停止について定めるとともに、同年度における自動車損害賠償責任再保険特別会計、あへん特別会計及び造幣局特別会計からの一般会計への繰り入れ並びに日本電信電話公社及び日本中央競馬会からの国庫納付の特別措置について定めております。
以上、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案の趣旨について御説明申し上げましたが、政府といたしましては、今後とも財政改革という考え方に立って、歳出歳入構造の基本的な見直しを行うこととし、特例公債依存体質からの脱却に努めるなど、財政の対応力の回復を図ってまいる所存であります。(拍手)
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昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/17
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018・福田一
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。野口幸一君。
〔野口幸一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/18
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019・野口幸一
○野口幸一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案について、総理並びに関係大臣に対し、若干の質問を行います。
いまわが国の財政は、いまさら言うまでもなく、未曾有の危機にございます。毎年毎年恒例のごとくこのような法案を提出しなければならないことこそ、すでに異常なことでございます。きわめて遺憾な事態であると言わねばなりません。ことに、財政法の精神を踏みにじり、特例という名の特例をもって赤字国債を乱発し、年々累増の一途をたどり、本年発行予定の特例公債六兆八千八百億円を認めることといたしました場合、五十八年度末における累積総額は百九兆七千億円に達し、国民一人当たりの借財はおよそ百万円という莫大なる金額を背負わされることになるのであります。加えて、地方財政における累積起債額も五十兆円に及んでおり、国民の将来負担を考えますと、まことに慄然たるものがあるのでございます。
鈴木前総理は、昭和五十九年度に赤字国債から脱却、六十年度より完全償還する予定を公約し、それに政治生命をかけると言明されました。しかし、御存じのようにその約束は水泡に帰し、昨年末の臨時国会では、補正を加え実に七兆三千九十億円の特例公債を発行し、公債総額は九十六兆八千億円になり、当初の公約は全くお題目に終わったのであります。今日、五十九年度赤字国債の脱却ということは夢の中の夢であり、全くその可能性はありません。
しかし、後継内閣の中曽根総理は、いまだ五十九年赤字国債脱却を断念したとは言明されず、文字どおり暗中模索のありさまであります。あの口数の少ない鈴木総理でさえ、五十九年度赤字国債脱却と言い切ったのでありますから、あなたがその脱却の期限を明言できないはずはないと思うのであります。総理、一体いつまでこの特例公債発行体制をお続けになるおつもりか、お答えをいただきたいと存じます。
さて、政治の使命は、社会の未来を語り、そこに万象楽土を切り開き、国民福祉、公共福祉のために存在するものであると考えます。総理は、就任以来三カ月の間に韓国を訪問し、またアメリカにも訪れ、日米関係強化といわれる一連の行動を矢継ぎ早に実行されました。事の正否にかかわらず、その対応の早さには一応敬服いたします。
しかしながら、事経済政策に関しましては、全く無為無策、まことに消極的であり、財政再建に対する熱意もうかがい知れないありさまであります。財政の再建の到達目標、予定年度すら、あるときは五、六年先と言い、また十年から十五年以上の長期を要すると言われているとも伝えられ、全く雲をつかむような話が総理の口から流れているのであります。
総理、財政再建の課題は突然浮上したものでもなく、昭和五十年、第一次オイルショック以後の基本的政策であります。各内閣は、それぞれ組閣と同時にその基本政策を明確に示し、みずからの政治姿勢の基礎として、すべての政策展開を行ってきたのであります。中曽根内閣に至っては、特に前内閣の崩壊の直接の原因が経済政策の破綻であった以上、特にその運営の基本理念を明らかにお答えいただきたいのであります。
いまさら言うまでもないことでありますが、総理がアメリカを訪問された際、新聞記者に対して、不沈空母あるいは三海峡封鎖などの発言内容は、日本国民はもとより、アジアのすべての人々がその政治感覚の古さに耳を疑ったのでありますが、それよりも、財政的にはまさに日本列島は沈没寸前にあることをよもやお忘れになっているのではあるまいと思うのであります。
総理にお尋ねいたしますが、今日の財政危機の状況をどのように見ていらっしゃるのか、どのように位置づけておられるのかという点でございます。
この点はきわめて重要な問題でありまして、現在の世界、日本も例外ではありませんが、深刻な不況の最中にあり、しかも長期化しています。したがって、税収は極度に低下していることは御存じのとおりであります。歳入に合わせて歳出をカットすればよいというような単純な財政対策ではできないことは当然であります。財政の構造的赤字の脱却のために行革は必要でありましょう。しかし、同時に、長期化した不況下であるだけに、景気の調節をどうするのか、世界経済と国内経済の活性化をどう実現するのか、これが重要なポイントであります。景気対策に対する方針はどのようにお考えになっているのか、ぜひお聞かせいただきたいと思うのであります。
いま、いかにして財政の健全化を図るかという問題は、一方においてはその根底に税収の収税率をいかに伸長させるかという点にあります。国民が税の不公平、不公正に対して大いなる不満を抱いていることは十分お気づきのことと存じます。
総理、その不公平是正の第一点は、クロヨンと言われる階層間の不公平、大小企業間の負担の不公正の是正、インフレ利得者には応能の原則に従った公正な課税を断行し、勤労諸階層には大幅減税を行うことこそ最も重要なことであります。税の不公平は租税正義に反し、犠牲の平等に反するものでありまして、決して税収増加につながるものではありません。むしろ、税の正しい義務感を反発するものでありましょう。特にサラリーマンにつきまして、六年間もそのままに放置されている課税最低限問題につきましては、この際その是正を明らかにしていただきたいのであります。
減税につきましては、勤労者はもとより、主要企業百社のうち七〇%の代表も賛意を表明され、全く全国民の声であります。この際、総理の口から、いつごろ、いかほど、どのように減税を実行するか、はっきりとお答えいただきたいのでございます。
また、本日提案されております財源確保のための諸案は、余りにも苦し紛れにかき集めた財源であります。一応それぞれに理屈が立つように並べてございますが、しかし、その中で日本電信電話公社臨時国庫納付金の納付の特例に至りましては全く理解に苦しむものであります。
本来、この納付金は、利益剰余金として建設資金に回し国民へ還元しておりましたものを削減してつくり出したものでありまして、公社法に違反するものなのであります。しかも、本年度にありましては、その納付金を前倒しの形で先取りして納入せしめようとするものであります。この根拠となる法律法令の運用をお伺いいたしたいのであります。
また、前倒しを行いますとするならば、当然公社はその負担が増大し、およそ百億円に及ぶ金利損失になるわけでありまするが、これは公社負担になるのでありますか、それとも国が持つのでありますか、この点を明白にしていただきたいのであります。
今日、特に電電公社の収支についてはまことに厳正な御指導、御批判がされている反面、政府が納付金をさせることによって生ずる損失金利についてはいかがお考えになっておるのか、この点も郵政大臣からはっきりとお答えをいただきたいと思うのであります。
次に、増税問題について伺います。
今日、臨時調査会は、再度にわたり、「増税なき財政再建」を重ねて強調されております。また、一方政府は直間比率の改定を考えています。昭和五十八年度はもとより、昭和五十九年度においても、大型消費税と言われる間接税の導入は一切行わないと言明されますか。また、所得税減税をえさにして大幅な間接税の増税を考えておられるのではないかと心配いたします。大蔵大臣の御所信をこの際はっきりと伺いたいのであります。
最後に、この際お尋ねいたしておきたいものがございます。
臨時調査会第四部会におきまして、郵便貯金のあり方につきまして、その改革の基本方針なるものを示されております。すなわち、自由主義を根幹とするわが国の経済においては、国が行う事業は、市場原理だけにゆだねておくのが適当でない分野について民業を補完することを基幹とすべきであるという趣旨の御提言があるわけでございます。
わが国の経済政策の重要な柱でもあります財政投融資資金のうち、常時その三分の一以上の資金を提供してまいりました郵便貯金でありますが、この臨調の趣旨は、民間金融機関が行政改革の名において郵便貯金の持つ占有率を改めさせようとするものであります。言うまでもなく、郵便貯金は長い歴史と伝統の上に国民の協力によって今日に至っておりますが、もし民間金融機関が郵便貯金の占有率に競合するとすれば、民間金融機関も同じ商品を開拓しまして、自由に国民の選択、診断にゆだねるのが正しいと考えるのであります。また、郵便貯金も一層サービスを向上させ、国民のニーズにこたえることのできるよう努力すべきことはもちろんのことであります。
臨調答申を利用してその市場占有率を変えさせようということは全く反対でありますが、この際、郵便貯金は民間金融機関の補完機構とすべきであるという臨調の意見に対し、総理並びに大蔵大臣、郵政大臣、それぞれの意見をお聞かせいただきたいと思うのであります。
総理、政治には実力の政治、理念の政治、のりを越えない政治などが求められております。中曽根政治はそのどれに該当するのか、私は私なりに分析いたしました。残念ながら今日では、すなわち多数を背景にした実力本位の政治を志向されているやにうかがえるのであります。非常に危険な姿勢を見るのであります。
総理、政治の指導者は常にみずからに厳しく、理性を失わず、国会を尊重し、のりを越えない政治を行っていただきたいと望むものであります。
最後に、総理の政治哲学をあわせお伺いして、質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/19
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020・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 野口議員の御質問にお答えをいたします。
まず、赤字公債脱却の時期いかんという御質問でございました。
五十九年度特例公債依存体質からの脱却につきましては、わが国を取り巻く環境が大きく変化いたしまして、その実現は困難になったとすでに申し上げておるところでございます。そして、財政の対応力を至急回復するということが刻下の急務であると考えております。そのために、財政改革を断行いたしまして、歳出歳入を全面的に、構造的に見直す必要があると考えております。これらはいずれも特例公債依存体質からの脱却と、さらには公債依存度の引き下げということを目標として行いたいと思っております。
ただ、いつ脱却できるかという御質問でございますが、的確な数字を明示することはきわめて困難であると思っております。まず、経済につきまして中長期的な展望あるいは指針とも言うべきものをつくり、それにあわせまして財政改革の方向をつくり上げまして、それらとの並びにおきましてこの特例公債からの脱却という問題も検討してまいりたいと考えておるところでございます。
次に、経済運営の基本理念を明らかにせよという御質問でございます。
五十八年度の経済運営に当たりましては、まず物価の安定を基礎としつつ、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図って、これを安定させていくということ、そして雇用の安定を確保する一方、行財政改革を着実に推進をし、また自由貿易体制を堅持いたしまして、調和ある対外経済関係を確立するということがわれわれの基本方針でございます。
このような観点に立ちまして、まず国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現して、雇用の安定を図るべく施策をやっております。物価の安定というものをまた最も重視しており、最近顕著にその効果は上がっております。行財政改革を強力にかつ総合的に推進するということも断行してまいるつもりでございますし、調和ある対外経済関係を形成する、いわゆる貿易摩擦等を解消していくということも基本方針の一つであり、経済社会の中長期的に均衡のとれた発展の基礎づくりを行いたいというのが私たちの考え方でございます。
次に、財政危機の認識について御質問がございました。
わが国財政は、五十年代前半の第一次石油危機の後、深刻な不況に見舞われまして、大量の特例公債等の公債に依存しつつ、その結果ある程度の経済的な成果を得てまいったと思っております。しかし、その結果巨額の公債が累積いたすと同時に、大幅な財政の赤字というものが現出いたしました。
このために、財政の対応力の回復を図るべく、歴代内閣は努力してまいってきているところでございます。五十八年度予算におきましても、歳出の徹底した節減合理化を行いまして、いわゆるマイナスシーリングを断行したところでございます。今後とも歳出歳入構造の徹底した合理化、適正化を進めることによりまして、できるだけ早期に特例公債依存体質からの脱却、公債依存度の引き下げに努力してまいる所存でございます。
最近は、在庫調整も進展をいたし、また物価の安定がきわめて堅実に進行しておりまして、その上、世界経済の回復の徴候等もやや見えてまいり、内需を中心とした自律的な回復の道を歩んでいくものと期待しております。なお、最近石油の価格が下落しつつあるということも良好な条件に付加されておると考えております。
景気対策について御質問がございましたが、ただいまお答えを申し上げましたような方針に基づきまして、機動的な政策運営に努めて、民間の活力が最大限に発揮されるような環境づくりを行いつつ実行してまいりたいと思っています。この間も、各省の事務次官等を呼びまして、できるだけ規制を解除して、それによって民間が自由に活動できるような環境をそろえて景気回復に資するようにと、特に指示してきたところでございます。
このような観点から、金融政策を適切かつ機動的に運営し、中小企業の設備投資促進のための税制上の措置等を推進することによりまして民間投資を喚起し、また、住宅政策を税制上、金融上からも格段に進めまして、さらに、基礎素材産業関係の再活性化や中小企業の経営の安定化を図るため、きめ細かい政策を進めてまいるつもりでございます。
サラリーマン減税について御質問がございました。
財政事情困難な時期ではありますが、政府といたしましては、与野党の合意を尊重し、財政改革の基本的考え方を踏まえつつ、減税実施のため真剣に検討を進めてまいるつもりでございます。
減税の実施につきましては、税制調査会における審議や今後の税収動向等も見守りまして、減税の規模、時期等も検討してまいりたいと思っておるところでございます。
次に、郵便貯金について御質問がございましたが、この点につきましては、いま臨時行政調査会において最終答申をつくるべく努力しておるところでございまして、それを見守りたいと思っております。
最後に、私の政治に対する基準について御質問がございましたが、私は、あくまで、政治には理想がなければならないと思っております。国民的な合意の中に政治の理想を追求して、しかもそれを現実的立場に立って着実に実践していく、こういう立場に立って自由民主主義を基本にした政治を断行いたしたいと思っておるところでございます。
残余の御質問は、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/20
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021・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
「増税なき財政再建」とは、総理からもたびたびこの場所で言明されておりますとおり、まさに行財政改革の理念である、このように心得ております。今後、財政改革を進めるに当たりましては、まず歳出の見直しを行う必要がございますが、その際は、安易に増税を念頭に置くということではなく、あくまでも行財政の守備範囲を見直すという見地から徹底してこれを行ってまいりたい、このように考えております。
重ねて申し上げますが、「増税なき」との基本理念は堅持してまいる所存であります。したがって、大型間接税の導入について具体的に検討していることもなく、また、指示を受けたことも指示をしたこともございません。
五十四年十二月の国会決議を踏まえまして、政府としては、当然のことながら、いわゆる一般消費税(仮称)を導入する考えはございません。ただ、税制調査会の五十五年十一月の中期答申、これを見ましても、五十四年十二月の国会決議をまず踏まえ、今後、新たな観点から、課税ベースの広い間接税等について検討していく必要がある、このようにされておりますので、いわゆる間接税の諸類型等について勉強していかなければならぬことは事実でございます。
いずれにいたしましても、この問題は国民の合意と選択の問題でございますので、今後、財政、経済情勢の動向を見ながら、また各方面、なかんずく国会での御意見等を伺いながら、幅広くかつ慎重に対処してまいる考え方であります。
物品税そのものも、消費態様の変化に即応し得るよう課税範囲や負担水準等について随時見直す必要があるそもそもの税制でございます。しかし、現在のところ、具体的な検討を行っておるわけではございません。
それから、総理からもすでにお答えがございましたが、郵便貯金事業につきましては、まさに現在、臨調の調査会において審議が行われておるところでございますので、部会報告の段階で一閣僚としての見解を申し述べることは差し控えさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣桧垣徳太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/21
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022・桧垣徳太郎
○国務大臣(桧垣徳太郎君) 野口議員の御質問についてお答えをいたします。
最初に、電電公社の臨時国庫納付金についてでございますが、電電公社の収支差額は、基本的にはできるだけ利用者に還元すべきものと考えております。
このような見地から、電話料金につきましては、これまでも昭和五十五年十一月の夜間通話料金の引き下げ、五十六年八月の遠距離通話料金の引き下げ、日曜・祝日料金の割引、さらには今国会に御提案いたしております遠距離通話料金の大幅引き下げ等、利用者への還元に最大の努力をしているところでございます。
電電公社の臨時国庫納付金の前倒しの法的裏づけにつきましては、まさに本日、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案の御審議をお願いしておるところでございまして、これが法的根拠になるわけであります。
なお、この財政的影響につきましては、すでに国会で御承認をいただいております総額四千八百億円の範囲内での措置でございまして、これによって総体としての負担が増加するものではございません。
次に、郵便貯金に関する臨調第四部会の部会報告についての御質問についてお答えいたします。
郵便貯金事業につきましては、総理の御答弁にもございましたとおり、現在臨時行政調査会において審議が行われておるところでありまして、部会報告の段階で閣僚として見解を述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。
なお、野口議員の御見解につきましては、御見解として虚心に承っておきたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/22
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023・福田一
○議長(福田一君) これにて質疑は終了いたしました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/23
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024・福田一
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109805254X00919830303/24
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