1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十八年四月二十日(水曜日)
午前十時二分開議
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○議事日程 第十一号
昭和五十八年四月二十日
午前十時開議
第一 千九百八十三年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件
第二 千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定の締結について承認を求めるの件
第三 千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約の有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書の締結について承認を求めるの件
第四 千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件
第五 領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書の締結について承認を求めるの件
第六 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)
第七 所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)
第八 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第九 水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第一〇 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第一一 技術士法案(内閣提出、衆議院送付)
第一二 貸金業の規制等に関する法律案(第九十六回国会衆議院提出)
第一三 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案(第九十六回国会衆議院提出)
第一四 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/0
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001・徳永正利
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/1
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002・徳永正利
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。長谷川運輸大臣。
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/2
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003・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) 日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案について、その趣旨を御説明いたします。
国鉄の経営は、昭和五十六年度において年間一兆円の欠損を生み、また、長期債務は十六兆円にも達するなど、まさに危機的状況にあり、国鉄の事業の再建は、国政上、早急な解決を要するきわめて重大な課題となっております。
このような国鉄経営の現状にかんがみ、去る七月三十日に行われた臨時行政調査会の第三次答申におきましても、国鉄の事業の再建は最も重要な柱とされておりまして、抜本的な改革のための方策が示されるとともに、その推進機関として国鉄再建監理委員会を設置することが提言されております。
政府といたしましても、この臨時行政調査会の第三次答申を最大限尊重することとし、去る九月二十四日には、「国鉄の改革については、臨時行政調査会の第三次答申に沿って、五年以内に事業再建の全体構想を設定しその実現を図る」こと等を閣議決定しているところであります。
本法律案は、このような状況を踏まえて国鉄の経営する事業の再建の推進のために国が講ずべき施策等について定めるとともに、日本国有鉄道再建監理委員会の設置等に関し、所要の事項を定めるものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、国は、臨時行政調査会の第三次答申を尊重して国鉄の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制を整備することにより、当該事業の再建を推進することを基本方針とするとともに、この体制整備のために必要な効率的な経営形態の確立等及びその実施の円滑化のために必要となる国鉄の長期債務の償還等に関する施策を講ずることとしております。
第二に、国鉄の経営する事業の運営の改善のために緊急に措置すべき事項に関し、国及び国鉄は、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づく措置その他の必要な措置を講ずることとしております。
第三に、国の施策の策定及びその計画的かつ円滑な実施に資するため、総理府に日本国有鉄道再建監理委員会を置くこととし、同委員会は、さきに述べた基本方針に従って、効率的な経営形態の確立等及びその実施の円滑化のために必要となる国鉄の長期債務の償還等に関する重要事項について、みずから、企画し、審議し、決定し、内閣総理大臣に意見を述べること及び国鉄の経営する事業の運営の改善のために講ずべき緊急措置の基本的な実施方針について内閣総理大臣に意見を述べることができること並びに同委員会から、これらの意見が出されたときは、内閣総理大臣は、これを尊重しなければならないこととしております。
また、日本国有鉄道再建監理委員会は、五人の委員により組織することとするほか、委員の任免等及び委員会の組織に関し必要な事項を定めるとともに、同委員会は、必要があると認めるときは、国の施策等について内閣総理大臣等に勧告することができること並びに関係行政機関の長及び国鉄総裁に対し、資料の提出その他の必要な協力を求めること等ができることとしております。
第四に、国鉄の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制整備を図るための施策は、その速やかな実施を期するため、昭和六十二年七月三十一日までに講ぜられるものとしております。
第五に、運輸大臣は、国鉄の経営改善計画の変更の承認または指示をしようとするとき及び国鉄
の予算の調整を開始しようとするときは、日本国有鉄道再建監理委員会の意見を聞かなければならないこととしております。
第六に、日本国有鉄道再建監理委員会の設置に伴い必要となる関係法律の規定の整備等を行うこととしております。
以上が、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/3
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004・徳永正利
○議長(徳永正利君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。伊江朝雄君。
〔伊江朝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/4
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005・伊江朝雄
○伊江朝雄君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案について、総理及び運輸大臣に対して質問を行い、所信をお伺いするものであります。
御承知のとおり、国鉄は、昭和三十九年度赤字に転じて以来経営が悪化いたしました。今日では毎年一兆円を超える赤字を生じ、昭和五十七年度末では長期債務は十八兆円にも達するというきわめて深刻な状況であります。まさに破局的な財政状態と言わざるを得ません。これはまことに残念なことであります。
私は、このような状況に立ち至った原因の一つには、昭和二十四年に国有鉄道が運輸省から独立して公共企業体となったときから、企業的に事業を経営し得るような体制ではなく、運輸省時代と同様な法的規制のもとで運営されてきたことがまず挙げられると思いますが、いずれにしても、今日の厳しい国家財政のもとでは、財政的見地からも放置できない状況になっているわけであります。
しかし、国鉄は、国民経済的に、また毎日の国民生活から見ても欠くことのできない交通機関であり、また、唯一の全国ネットワークを形成し、国の動脈となっている公共的使命を持つ交通機関でもあります。国鉄は国民の財産であり、その活性化を図ることは、国民的重要課題であることは何人も否定できないところであり、何よりも国鉄の労使が厳粛にこれを受けとめなければならないところであります。
このような状況の中で、政府の行政改革の一環として、土光会長のもとで臨時行政調査会が国鉄再建策を長期間にわたって真剣に検討され、答申を出されたことは、まことに時宜を得たものと思い、心から敬意を表する次第であります。その実現を図ることは、行政改革を内閣の基本方針にしておられる中曽根総理にとってまことに重大な責任があると思いますが、まずもって、国鉄再建に関する臨調答申についての総理の基本的姿勢とその決意をお伺いしたいと思います。
さて、国鉄再建問題を論ずるに当たっての私の基本認識を申し上げたいと思います。
現下の国鉄経営の未曾有の危機的状況から見て、国鉄はもはや事業として立ち直ることができないのではないか、そういう危惧があることは皆様方御承知のとおりでございますが、私はそうは思いません。私は、鉄道の特性を十分発揮し得る分野について、関係者が懸命な努力と適切な措置及び国による適切な行財政上の措置を講じていけば、わが国の鉄道事業は十分に立ち直れるものと確信をいたしております。
かつて国鉄総裁をしておられた十河信二先生が就任後間もなく、「国鉄には財産が二つある。その一つは国鉄の職員であり、もう一つは国鉄の技術である」と言われたことがありますが、まことに名言であると私は思います。
現在、国鉄は、北は北海道の稚内から南は鹿児島の果てまで二万キロの営業路線で、一日に約二万七千本の列車が走っております。一本の列車が安全、正確に走るためには、これに関与する多くの職員の責任を分担し合った有機的な連係プレーが必要であります。それは、昼も夜も、風の日も雨の日も、冬も夏もであります。零下二十度の厳寒の旭川のヤードで、アノラックを着て懸命に作業している職員の姿を私は見て胸の熱くなる思いをいたしたことがあります。その国鉄の現場は、一歩誤れば死んでしまうという危険な職場です。こういう環境の中で職員が働く限り列車は動くのです。どこどこに何時に列車が到着して、どこどこから何時に列車が発車するかを国民の皆様に公約し得るのです。それが時刻表です。十河氏の言う宝はまだ国鉄を支えていると思います。このことも国民はぜひ注目していただきたい。
しかし、残念ながら、職員同士のイデオロギーによる対立抗争があります。管理者に対する不信、反抗、そういったことに根差した無秩序、無気力によって荒廃した職場のあることも事実であります。宝の一部は確かに失われた時代が続きました。しかし、いまようやくその回復の兆しが見え始めたのであります。
私は、国鉄再建を推進する上で基本的に重要なことは、再建に取り組む国鉄労使の自助努力と徹底した合理化、体質改善であると思います。また、職員は労働組合員である前に国鉄職員であります。この意識を持って国鉄再建に積極的に協力し、みずからもその役割りに応じて最大限の努力を傾注してこそ国有鉄道の再建に展望が開かれるのであります。国鉄の再建は、愛される国鉄として国民の支持がなくては達成が不可能であります。今日の厳しい国鉄財政を考えるとき、労使は新たな認識と決意のもとに相協力し、一丸となって国鉄の再建に取り組んで初めて国鉄再建の確かな展望が開けるものであります。運輸大臣は、国鉄労使の再建に取り組む姿勢をどのように認識し、対処していかれるのでありますか、お伺いしたいと思います。
次に、もう一つの財産である技術の問題についてであります。
十七、八年前に国鉄を訪れたフランス国鉄総裁のルイ・アルマン氏が、「ドーン・オブ・ザ・レイルロード」、すなわち「鉄道の夜明け」と絶賛した新幹線に代表されるように、わが国の鉄道技術は世界の最高水準にあると言われております。これは宝であります。今日も厳然とその宝は生き続けております。この技術を生かして鉄道の将来に明るい展望を持てるようにすることも大事なことではないでしょうか。
私は、その対策の一つとして、鉄道技術の海外技術協力の推進を提案したいと考えております。この世界に冠たる鉄道技術を十分に生かして、国際協力に大いに役立てない法はございません。厳しい環境の中ではありますが、関係者の総力を結集して海外技術協力を唯進すべきであり、このことがわが国の鉄道の明るい展望と職員の希望につながることになるものと考えておりますが、これについて運輸大臣の所見を伺いたいと思っております。
次に、国鉄事業の再建を図るためには、国鉄の自助努力のみでは何ともできない膨大な長期債務の負担等の構造的な欠陥を解決する必要があります。現在の状態であれば、国鉄の長期債務残高は昭和六十年度には約二十四兆円に達することが予想されており、これを何とかしなければ国鉄の再建は絶対に不可能であります。国鉄経営上の長期債務の負担の解決をどうなされるのでありましょうか。
また、先般貫通した世紀の一大事業である青函トンネルや本四連絡鉄道橋は、完成後国鉄が巨額の借料を支払うことになるのでありますが、この上膨大な負担に国鉄はたえ得るものではありません。かといって、これを使用せずに放置することは国家的な損失であります。政府として責任ある対応が望まれる次第であります。
また、このような過去の長期債務等による構造的な欠陥を是正すると同時に、今後健全な経営を維持していくためには、新たに長期債務が累増しないような仕組み、つまり運賃収入のみに依存しない恒久的な新たな財源措置を講ずる必要がある
と思われ、この点の検討を国鉄再建監理委員会に強く要望しておくものであります。これらの問題について総理の所見を承りたいと思います。
なお、この際、国鉄が体質改善を図っていく過程において必然的に発生してくる退職者の年金問題についてお伺いしておきたいと思います。
国鉄の共済年金は、昭和六十年度において成熟度一一六に達し、年金財政は破綻すると言われております。国鉄再建に向かって労使の意欲ある取り組みが期待されている今日、本問題は政府としても積極的に解決する必要があると思われます。幸い今国会に国家公務員共済と公共企業体共済との統合法案が提出されておりますことは、時宜を得たものと高く評価いたしておりますが、この法案の早期成立についての総理の決意をお伺いしたいと思います。
次に、国鉄の事業経営をめぐる環境の整備についてであります。
国鉄再建監理委員会については、臨調答申を尊重して、効率的な経営形態の確立等に関し十分な検討が行われ、適切な結論が得られるものと期待いたしておりますが、その結論を待つまでもなく、現行経営形態のもとにおいても地域の実態に即した適切な業務運営を行い得るような大幅な権限と責任を持った組織体制に改善することができるはずであります。
かつて、総理大臣の諮問機関として設置された公共企業体審議会が、昭和三十二年の答申において、「できる限り経営の自主性を尊重して民営的手法の導入を進めることが極めて重要なことである」と指摘しているように、国鉄に対する法的規制が余りにも多くありますので、これらを緩和することが民営的手法、自主的運営に必要であると思いますが、これに対する運輸大臣の所見をお伺いしたいと思います。
この法案により誕生する国鉄再建監理委員会は、今後の国鉄の事業再建のための具体的な方策について企画立案する重要な任務を有する機関であります。国鉄の事業再建が達成されるか否かは、一にかかってこの委員会の活動によるところきわめて大であり、したがって、この委員会は、さきの臨時行政調査会と同様に、人格、識見ともにすぐれ、しかも国鉄の改革に精力的に取り組む熱意を持った方々を委員にお迎えすることが重要であります。具体的人選に当たっては、この点に十分配慮していただきたいと存じますが、これに対する総理の所見を伺いたいと思います。
国鉄の改革は時間との勝負であるとの指摘があります。まさにそのとおりであり、できる限り速やかに国鉄の改革を軌道に乗せることが何よりも大事なことであります。このためには、一刻も早くこの法律案を成立させ、国鉄再建監理委員会の結論を受けて、国会、政府、国民の一致協力のもとに国鉄の改革をやり遂げなければなりません。これに対する総理の決意をお伺いいたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/5
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006・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 伊江議員の御質問にお答えいたします。
まず、国鉄再建に関する基本姿勢いかんという御質問でございます。
国鉄の事業再建を図るためには、経営形態のあり方を含めまして、経営全般にわたって抜本的な検討を行う必要があると考えまして、今回このような改革の委員会を御審議願っておる次第でございます。すでに臨調答申もございまして、国鉄改革の方向の大綱が明示されておりますが、政府といたしましては、この臨調答申の線に沿いまして、五年以内に事業再建に関する全体構想を設定して、その実現を図ることを閣議決定しておるところでございます。本法案の速やかな御成立をお願いいたしまして、一刻も早く国鉄の事業の再建を軌道に乗せて、所要の施策を強力に推進していく考え方でおります。
次に、長期債務やそのほかのいわゆる構造的な負担をいかにするかという御質問でございます。
これらの問題は、国鉄を長期的に安定させるためにはいずれ解決しなければならない重要な課題であると考えております。国鉄再建監理委員会を設置いたしましていろいろ御審議願うのも、このような重大問題について慎重に、かつ抜本的に御検討願って結論を得たいとしておるところでございまして、その結論を受けまして、政府といたしましては適切に対処いたしたいと考えております。
次に、長期的な財源措置に関する御質問がございました。
国鉄は、非常に重要な公共的使命を果たしておるのでございまして、業務の継続的な安定的な遂行を保障するような仕組みがどうしても必要であると考えます。かかる意味からいたしましても、その会計あるいは財源等についてもしさいに分析を行い、妥当な結論を得て実施する必要があると考えておりまして、再建監理委員会の審議をお待ちしたいと思っておる次第でございます。
次に、国家公務員共済との統合の問題でございますが、今回の国家公務員と公共企業体職員の共済組合の統合につきましては、わが国の公的年金制度の改革を進めていくための第一歩となるべき意味を持っていると思います。また、あわせて、昭和六十年度以降年金の支払いに支障を来すことが予想されている国鉄共済年金財政に対する対策を講ずるという意味もあります。ぜひとも今国会中にこの法案の御成立を願っておる次第でございます。
国鉄監理委員会の委員の人選につきましては、幅広い国民的視野を持ち、かつ国鉄再建につきまして情熱と熱意と実行力を持っておる人材をぜひとも登用いたしたいと考えております。具体的な人選につきましては、法案の成立後速やかにこれを決定いたしたいと考えております。
国鉄の再建は急務中の急務であると考えておりまして、ただいま伊江議員が申されましたように時間との勝負でもあるという御指摘がございましたが、そのように考えており、また今回の行政改革の重要な柱の一つであると心得ております。したがいまして、速やかに再建監理委員会を成立させて審議を願い、そしてその意見を最大限に尊重して速やかにに所要の施策を実行していく決心でございますので、再建監理委員会の設置を心から熱望しておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/6
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007・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
昭和二十四年の公社制度以来今日までの国鉄のことにお詳しい伊江議員でございますが、そうした中から財政的に破局的な今日を迎えたわけであります。
私に対しましては労使関係の御質問がありましたが、三十数万の働く労使が本当に現在の状況を認識されて、自分の企業を守る、自分の生活を守る、公共的使命を果たす、こういうことになることが一番大事な問題じゃないかと思っております。そして、だんだんそういう空気になりましたが、しかし一部にはまだ行儀の悪い諸君もおりまして、時折非難もされております。そうしたことからしまして、これは最後の段階だということで、国鉄の再建法案が通るこの際に、ぜひひとつしっかり私は労使ともどもの発奮をお願い申し上げておるものでございます。
技術陣の問題でございますが、何さま明治四年以来二万二千キロも走るようになったこの国鉄は、世界技術が注目しておるところであります。きょうあたりもアメリカの国会議員が新幹線をそちこち視察しております。イギリスの国鉄総裁もただいま来ております。私も会見することになっております。これほど注目されておる日本の技術陣、これはそちこちの国のいろいろな経済協力、鉄道協力、そういうものに大いに私は今後活用していくべきだ、そういう組織を改めてお願いしなければならぬこともあるだろう、こう思っておりますので、よろしく御指導をお願いします。
ただいまの再建法案が通る前でもやることは幾らでもあるじゃないか、こういうことでございま
すが、だんだんの中に鉄道の運賃の国会での審議を外していただきました。さらにまた、営業関係でも多少自主的なものをやれるようにいたしましたが、やはりここはしっかりと営利性というものも考えられるような形において今度の再建法案の委員会における御審議をお願いしたい、こう思っている次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/7
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008・徳永正利
○議長(徳永正利君) 青木薪次君。
〔青木薪次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/8
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009・青木薪次
○青木薪次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案に対しまして質問いたすものであります。
本論に先立ちまして、さきの北海道知事選挙と福岡県の県知事選挙において革新がみごとに勝利をいたしました。もともとこの選挙は自民党のメンツにおいても負けられないし、絶対に負けることはないと豪語していた中曽根総理の手痛い打撃であると思うのであります。この原因については、中曽根総理の相次ぐ好戦的発言である日本列島の不沈空母発言や、あるいはまた北海道と九州に最も関係のある三海峡の封鎖発言とともに、またまた北海道や九州、四国の国鉄解体論とも言うべき分割民営化を前提としての本法律案の成立によって住民の足が奪われてしまうという危機感を持っておるのであります。この中曽根政治に対する恐怖感がそのまま知事選挙にあらわれたと思うのでありますが、中曽根総理は、この厳しい現実を率直に認めて反省する気持ちがあるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
質問の第一点を申し上げますが、今日の国鉄経営の危機を招いた政治責任についてであります。 御承知のように、国鉄の経営は、昭和三十九年に赤字を計上して以来、悪化の一途をたどり、五十八年度末には累積赤字が十兆円を超え、長期債務も二十兆円に達しまして、破局的な経営危機を迎えたのであります。
このような状況となった原因と責任の所在について、衆議院におけるわが党議員の質問は対しまして、中曽根総理は、「国鉄が企業性を発揮して適切に対応できなかった」として他人ごとのように述べておりまするけれども、国鉄は企業性のみを追求して経営すれば、公共性は薄れてまいります。そして、交通弱者は交通のネットワークのらち外にほうり出されてしまうのであります。国鉄経営は果たして企業性のみを中心として公共性は考慮の外にあると考えてよいのかどうか、答弁をしてください。
国鉄経営は、厳しい法律や予算統制、過度の政治介入によって国鉄当局から経営権を奪い、企業性を発揮しようにも発揮できない状況に追いやってきたのは、ほかでもない歴代自民党内閣ではなかったのか。採算性を無視して政治路線を押しつけながら、その財政的裏づけを怠り、借金ですべて処理してきた自民党内閣に国鉄経営破産の責任があると断ぜざるを得ないのであります。総理も運輸大臣をやりました。したがって他人ごとではないと考えていると思うのでありますが、みずからの政治責任を明確にすべきだと思うのでありまするけれども、いかがですか。御答弁ください。
中曽根総理はまた、「労使間の不正常な関係が続き過ぎた」と述べ、国鉄経営の危機が国鉄の労使関係に起因するかのような印象を国民に与えております。これはみずからの責任を棚上げにして、すべてを国鉄の労使の責任に転嫁しようとするもので、断じて許されるものではございません。再度国鉄経営の危機を招いた原因と責任の所在について、総理にお伺いいたしたいと思います。
質問の第二点は、国鉄再建に取り組む政府の姿勢についてであります。
第一次再建十カ年計画は三年ともたず、自来数次にわたる国鉄の再建計画はことごとく失敗に帰しているのであります。これは国鉄の再建に取り組む政府の見通しや姿勢が甘く、当面を糊塗する見せかけの対策に終始したことが国鉄を今日の泥沼の状況に陥れたと思うのであります。総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
現在、国鉄は、五十五年春に運輸大臣の承認を得た経営改善計画を実施中でありますが、これが最後でまさに後がないと言われた現行経営改善計画も、今日すでに破綻が明白となっているのであります。これは政府の見通しの甘さと無策によるもので、許すことができません。ところで、臨調の答申が出されるや、みずからの責任で実施中の計画の遂行をあきらめ、答申の内容を十分吟味することなく、最大限に尊重するとの方針を決定したのであります。これでは現場の職員は混乱するばかりであります。政府は一貫した姿勢で国鉄再建に取り組むべきであると考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
質問の第三点は、臨調答申の内容であります。
臨調の答申は、国鉄の経営形態を変更して、五年以内に全国を七ブロックに地域分割した特殊会社に運営させ、株式の公開を通じて民営化を図ると言っております。これは国鉄の持つ公共性を全く無視し、企業性のみを追求するもので、断じて認めるわけにはいきません。わが国の基幹的な交通機関として全国的なネットワークを形成している国鉄を、五年以内に地域分割することがいかに無謀なことであるかは、北海道や九州、四国のように巨額の赤字を出しながら地域の公共交通維持のため運営されているのに、これをずたずたに切り裂いて分離独立させるということになるのであります。経営は絶対に成り立ちません。
経営を安定させようとすれば、大半の地方交通線を切り捨てるか、地方自治体が赤字の肩がわりをする以外にありません。そして全国的なダイヤ編成が不可能となり、利用者に不便をかけるだけでなく、運賃の大幅値上げを誘発するのであります。ましてや、赤字の国鉄をいかようにして民間に引き受けさせるのか。その手順と法的根拠について明らかにしてもらいたいと思います。このように、いたずらに混乱を起こし、利用者に不便をかけ、何の解決にもならない臨調の分割民営化には絶対に賛成すべきでないと思いますが、総理の御所見を伺います。
わが党は、国民の足として国鉄に課せられた公共的使命を十分果たせるよう、公的負担のルールを明確にするとともに、国鉄に大幅な経営権を付与し、当事者能力を与え、管理機構の地方分権化を進めていくことを要求しておりますが、総理の御所見を伺います。
質問の第四点は、国鉄の将来について展望が示されていない点でございます。
経営危機に陥っている国鉄を再建するためには、わが国の交通体系の中における国鉄の役割りと位置づけを明確にして、国鉄に長期的展望を与えることでございます。ビジョンなくして事業の再建はあり得ないのであります。国鉄を今日の状況にしたのは、政府が国鉄の将来に対して確固たるビジョンを持たず、モータリゼーションを野放しにし、道路に対する公共投資に偏重し過ぎた結果であります。
わが党は、総合交通政策の重要性についてしばしば指摘してきたにもかかわらず、政府は何ら有効な施策を講ずることなく、交通市場の中で国鉄を放置し、今日に至っています。臨調の答申は交通政策的な配慮を全く行っておらず、公共交通機関としての役割りを全く無視しているのであります。政府は国鉄の将来への展望と国鉄の公共性について明確にすべきであります。総理並びに運輸大臣の御所見を伺いたいと思います。
質問の第五点は、最近の政府の無責任な態度についてであります。
二十兆円に達する長期債務の処理、通学や身体障害者等の公共割引問題や要員構成のひずみからくる特定人件費の問題、青函トンネル等の国家的事業から生ずる負担等については、臨調答申を待つまでもなく、政府の責任において処理すべき問題であり、その方向づけも国会論議で明確化さ
れ、政府も認めてきたところでありますが、この構造的欠損の処理も含めて、すべてを国鉄再建監理委員会にゆだねるということは無責任であります。総理並びに運輸大臣の御意見を伺いたいと思います。
政府は、臨調の答申を受けて、昨年秋に内閣に国鉄再建関係閣僚会議と国鉄再建対策推進本部を発足させましたけれども、両者とも初会合を一回開いただけで休業状態にあります。政府に熱意があるならば、いつ発足するかわからない国鉄再建監理委員会任せの無責任な態度を改め、現行体制のもとで早急に構造的欠損等の再建の基本課題の処理に当たるべきであります。総理及び大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
質問の第六点は、国鉄の再建を進めるに当たっての労使問題であります。
国鉄の労使が理解と信頼の中で一体となって協力していくことが必要であることは申すまでもありません。関係する労働組合も厳しい現実を踏まえて、毎年二万人を超える大幅な要員削減の合理化に協力してきたことは御承知のとおりであります。このことは、一企業で毎年二万人を減らすことは血のにじみ出るような努力と苦難の結集であります。
しかるに、政府・与党は、一部マスコミとともに労働組合悪玉論を唱えまして、臨調答申を盾に国鉄労働者に不当な攻勢をかけて敵視してきたのでございます。この政策をとる限り国鉄再建は不可能だと言わなければなりません。国鉄経営危機の最大の要因は、戦中戦後を通じてその責任は政府にあります。そして赤字の大部分は政治的要因による構造欠損であります。国鉄職員は、昼夜にわたり危険な輸送事業に携わっている一方で、歯を食いしばって経営改善の努力をしているのであります。総理並びに運輸大臣は、国鉄再建のため、国鉄職員の努力についてどのような評価をしているのか、この際、全国鉄職員に対して明確な答弁を要求いたします。
質問の第七点は、国鉄再建監理委員会の業務についてであります。
すなわち、その業務の内容とされている国鉄の経営形態の変更、すなわち国鉄の地域分割の具体案の策定を除いた事項は、国鉄監理委員会を煩わせなくとも、政府自身が政治的決断を下せば直ちに実行可能なものばかりであります。要するに、監理委員会の任務は国鉄再建でなく、国鉄を解体する国鉄解体委員会と言っても差し支えございません。したがって、民間人も含めて国鉄の業務内容を監査し、熟知している国鉄監査委員会を強化すれば足りることであります。行政の簡素化を目指す行革の理念に逆行し、屋上屋を重ねる国鉄監理委員会の設置について、総理並びに行管庁長官の答弁を求めます。
質問の第八点は、衆議院における審議の中で長谷川運輸大臣は、分割民営化以外にいい方法があれば別の選択もあり得るような発言をいたしました。五年以内に分割民営化を目指すこの法案の意義は重大であります。何が何でも分割民営化以外にはないというのでありましょうか。総理と運輸大臣の答弁を求めたいと思います。
最後に、わが党は、国民の足を守り交通弱者を守る立場から、国鉄再建をするために本法案の撤回を求め、質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/9
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010・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 青木議員の御質問にお答えをいたします。
北海道及び福岡の知事選に御言及がございましたが、国鉄再建対策と地方の選挙とは直接関係はないと思います。
国鉄の改革につきまして臨調答申が出ておりますが、この臨調答申の線は、各種の世論調査を見ましても国民が圧倒的に支持していると考えております。
次に、国鉄の経営につきまして企業性のみを追求するということはいかがであるか、国鉄に関する責任いかんという御質問でございます。
国鉄は、他の輸送機関との間に厳しい競争関係にさらされておりまして、今後いままで以上に企業性を発揮して民営的手法を大幅に取り入れるとともに、経営の徹底的な減量化、合理化を図りまして、国鉄の公共的使命を達成しなければならぬと考えております。その線に向って国鉄の改革を図らんとしておるのでございまして、その一つの手段が本監理委員会の設置でございますので、御了承願いたいと思う次第であります。
次に、国鉄の経営につきましては法律規制や予算統制等がひど過ぎるのではないかという御質問でございますが、その点はわれわれも認めておるところでございます。国鉄が企業性を発揮して適切に対応し得るような体制整備をしてあげるということが大事であると思います。そのほかいわゆる構造的問題等につきましても、経営改善の努力を前提として、国家としても助成措置等を講じ、また講ずる必要があると考えております。
次に、労使関係について御言及がございましたが、国鉄の赤字の原因をすべて労使関係のみに帰するわけにはまいらないと思います。しかし、国鉄再建の重要な部分は、労使が相協力して、国民的使命に目覚めて、経営改善に本格的に乗り出していただくということであると考えております。
現在、いわゆる緊急対策の十項目を実施中でございますが、これらを遵守して、まず職場規律を確立して、労使関係を健全化していくということを希望しておる次第でございます。
次に、過去の再建計画について御質問がございました。
モータリゼーションの急激な進展や、あるいは石油危機等によりまする人件費、物件費等の増高等によりまして国鉄の環境が激変をいたしておりますが、それに対して適切な対応力を発揮し得なかった点もわれわれは大きい点であると考えております。このためにも、鉄道の特性を発揮し得るような経営方式に改め、重点化と減量化に努めて、国鉄経営を合理化していく必要があると考えております。
次に、経営改善計画につきまして御質問がございまして、この臨調答申を頭ごなしに採用することはいかがであるかという御質問でございます。
現在、昭和五十五年に制定されました特別措置法の枠組みのもとで、できる限りの経営改善措置を講じておりますが、経営形態の改革を含めまして、経営全般にわたってさらに抜本的な検討を行う必要があると考えた次第でございます。臨調答申は、このような観点から、国鉄の改革に関する抜本的な方策を提言しておるものでありまして、その方向はおおむね妥当であると考えております。
次に、五年以内に分割民営化するということは公共性を無視していることではないかという御質問でございます。
国鉄の経営は現在未曾有の危機的状況にありますので、国民にとりまして真に必要な鉄道輸送サービスを安定的に確保して、その公共的使命を全うし得るように政府が措置することは緊急の必要性があると考え、今回、国鉄のあり方について抜本的な検討、効率的な運営を行うという体制を整備する考えでこのような法案を提起した次第でございます。
国鉄の経営形態につきましては、監理委員会におきまして臨調答申を尊重して検討を行うことになっておりますが、いかにすれば経営が成り立つかということ、それから地域における効率的な交通体系はどうあるべきか等についても十分考慮の上、適切な結論がまとめられるということを期待しております。
総合交通対策について御質問がございました。
総合的な交通体系の基本は、おのおのの輸送機関がその特性を発揮して、効率的な有機的な交通体系を形成することにあると考えております。国鉄におきましては、都市間輸送あるいは大都市圏内旅客輸送あるいは定型的な大量貨物輸送等が国鉄の秀でた分野であると考えておりまして、その
特性を十分発揮できるように、総合的な交通体系の中においてその機能を発揮させるべく努力してまいるつもりでございます。
長期債務あるいはいわゆる構造的な経費について御質問がございました。
これらの問題につきましては、国鉄再建監理委員会におきまして、根本的な検討の中に新しい方途を見出していただけるものと考えまして、政府としては、その委員会の結論を受けて適切に対処していくつもりでございます。
労働組合対策の問題でございますが、現在の国鉄の危機的状況につきましては、労使が共通の認識を持った上で、ともにその主体的責任性を確立して、相協力して経営改善施策に取り組むことが基本であると考えております。労働組合の大部分の諸君はまじめに努力しておられると思いますが、一部に国民の理解と信頼に背く行動が見られることは遺憾であります。今後、国鉄労使が国鉄再建のために一層の努力を傾注して、国民の期待にこたえるようにわれわれは希望しておる次第でございます。
国鉄監理委員会を設置することは屋上屋を重ねることではないかという御質問でございますが、現在国鉄にあります監査委員会は国鉄部内の体制でございます。やはりさらに総合的視野に立った委員会を必要と考えまして、総理府に国鉄再建監理委員会を設置することといたした次第でございます。
次に、国鉄の経営形態について私と運輸大臣の間に答弁の食い違いがないかという御質問でございますが、政府は、閣議決定をもって、臨調答申を最大限に尊重して逐次これを実行することを決めております。国鉄再建監理委員会においても、臨調答申を尊重して、分割民営化を基本線として、その方向でひたすら追求し努力してもらうことをまたわれわれは期待しておるところでございまして、政府として同委員会の結論を待ってこの対策を講ずるという点においては全く一致しております。
最後に、この法案を撤回する意思はございません。(拍手)
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/10
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011・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
総理大臣から詳細な御答弁がありましたので、二、三私に関するところだけ申し上げます。
まず第一番は、青函トンネルとか構造的な欠損、そういうものをどうするかということでございますが、せっかくつくった青函トンネルでございますから、国民の財産でもありますし、これは活用する。しかし、その場合の借料等については監理委員会等々で御審議をお願いする、こう思っております。
一番大事なことは労使関係でございますが、これは総理からも段々お話がありましたとおり、やっぱり数十万の企業体としての国鉄が、経営者も、それからまた働く諸君も一緒になって一生懸命やる。競争相手は幾らでもあるわけですから、そういうふうな企業性と、そこから自然に公共性が生まれてくる、これをどう実行し、御熱心にやっていただけるかというところに大事な再建の問題があると、こう思っております。
そのほかの経営形態等々の問題については、改めて監理委員会が生まれまして、その五人の委員、国民的良心を代表するような方々によってこの問題の方向づけをされることをわれわれ御期待申し、それをまた総理大臣、お互い皆さん方と御協力の中に実施したいと、こう思っています。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/11
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012・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私を御指名になりました部分の質疑に対してお答えをいたします。
長期債務の処理及び青函トンネル開業後の負担増の問題、これにつきましては、国鉄の事業再建を推進する上で解決しなければならない課題であるという認識は持っております。また、いわゆる通学者や身体障害者の方々の公共割引、特定人件費等についても、国鉄経営上の諸負担の一環として事業再建の上で考慮に入れるべき必要があるという考え方でございます。
そこで、国鉄の事業再建を推進するための全体的な方策につきましては、先ほど来いろいろお答えがあっておりますが、国鉄再建監理委員会を設置して、同委員会において抜本的な検討が行われまして、その結論をいただくこととしております。御指摘の諸問題についても、その一環として結論がまとめられることになろうと考えておりますので、政府としては、委員会の結論を受けて適切に対処をしてまいりたいと、このように考えております。(拍手)
〔国務大臣齋藤邦吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/12
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013・齋藤邦吉
○国務大臣(齋藤邦吉君) 青木議員にお答え申し上げます。
国鉄再建監理委員会の設置は屋上屋を重ねるのではないかという御質問でございます。
これに対しまして、私どもは、現在の危機的現状にある国鉄の事業再建に関する施策は、一国鉄にとどまることなく、政府全体が一体的に取り組み、その計画的かつ円滑な推進を図ることが必要であると考えておるのでございます。政府はこのため、国鉄監査委員会のごとく国鉄の内部業務の監査のための機関では十分でないと考えております。幅広い観点から国鉄の事業再建に関する施策を総合的に企画立案する日本国有鉄道再建監理委員会を総理府に設置することが最も適切であると考えておる次第でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/13
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014・徳永正利
○議長(徳永正利君) 黒柳明君。
〔黒柳明君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/14
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015・黒柳明
○黒柳明君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま説明のありました臨時措置法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。
いまや、国鉄の改革は政治的、国民的課題であるとともに、その成否いかんは、国家財政や国民生活に多大な影響を及ぼすだけではなく、行政改革を期待する国民の政治への信頼を左右するものでございます。
御承知のとおり、長期債務残高は約十三兆八百億円に上ると見込まれております。まさに国鉄の経営は破産状態でございます。国鉄を今日このような状態に陥れたのは、歴代政府・自民党の責任であると言わざるを得ません。国鉄経営が赤字決算になったのは昭和三十九年からでございますが、中曽根総理、あなたは昭和四十二年運輸大臣の職にあり、したがって、その当時経営改善のため適切な処置を講じておれば今日の事態は避けられたはずでございます。総理、あなたの責任はまことに重大と言わざるを得ません。総理は、国鉄再建をなし得なかったことをどのように感じ、またその責任をどのように明らかにするか、まずお伺いしたいのであります。
以下、諸点について御質問いたします。
第一に、国鉄の分割民営化を内容とする臨調の答申については、交通政策的な視野に欠け、国鉄の持つ公共的性格を無視して企業性のみを追求したものとの批判が強うございますが、公共輸送機関として国鉄に課せられた公共性については、どう総理はお考えになられているのか、お伺いいたします。
第二に、臨調が国鉄の経営形態について分割民営化という思い切った結論を出すに当たっては、分割民営化を実現すれば、国鉄が運営している鉄道事業の再建が可能であるとの具体的な裏づけがあってのことと思いますが、分割後の経営見通しを明らかにしてください。また、分割後、全体としてどの程度の収支改善が見られるのか、行政管理庁長官は分割の効果を明らかにしてほしいと思います。
第三に、北海道、九州、四国地域については、五十六年度決算でもそれぞれ莫大な赤字を抱えておりますが、これらの地域を分離独立させても、経営が成り立たないばかりでなく、最終的には分割
後の赤字処理を地元公共団体が背負わざるを得なくなろうという疑問や不安が強まっておりますが、運輸大臣はこれにどう対処されるのでございましょうか。
第四に、臨調の答申では、国鉄再建の緊急性にかんがみ、新しい経営形態に移行するまでの間に政府が緊急に対策を講ずべき措置として職場規律の確立等十一項目を掲げておりますが、答申が出されてからすでに九カ月を経過しております。これまでに政府及び国鉄がとった措置について、運輸大臣、各項目ごとに報告していただけませんでしょうか。
第五に、本案では、新しい経営形態への移行のための施策は、六十二年七月末までに講じられるものとすると明記されております。答申後五年以内に新会社に移行することが求められていますが、国鉄再建監理委員会の発足が当初の予定より大幅におくれている現在、なお今後四年数カ月という短期間の間に新会社への移行が実現可能と考えているのか、明らかにしてください。
第六に、臨調の答申で、新しい経営形態に移行するに際して解決すべき問題として掲げられている長期債務の処理、年金負担の増加の処理、青函トンネル等の開業の負担増の処理については、その具体案づくりが国鉄再建監理委員会の業務とされており、政府はすべて委員会任せの態度をとっておりますが、財政当局があらかじめ基本的な処理方針を打ち出さない限り、国債の大量償還時代を迎える六十年以降に巨額の財政負担を伴う解決策を出すことは困難ではないでしょうか。この問題に対する財政当局のお考えを示していただきたいと思います。
第七に、開業後の国鉄の負担が増加することを理由に、その建設が凍結されている整備新幹線の建設問題について、最近、自民党の財源小委員会が、営業中の新幹線利用者から特急料の一〇%を上積み徴収し財源に充てる、また駅舎の建設費は地元負担とする等の試案を発表しておりますが、国鉄離れが進む中で、営業中の新幹線利用者に建設費を負担させようという案には賛成ができません。政府はこの問題をどう考えているのか、お考えをお伺いしたいと思います。
第八に、最近、国鉄貨物の落ち込みが激しく、国鉄の全赤字の七割近くが貨物部門から発生していると言われておりますが、国鉄貨物の再編成は緊急課題です。国鉄当局は非能率な従来のヤード方式を改め、拠点間直行方式への切りかえを急いでおりますが、今後の貨物部門立て直しの見通しを明らかにしてください。
第九に、臨調の答申では、分割後の会社に対する政府の規制を私鉄並みにすることを求めており、今後国鉄が自主的な経営活動を行えるようにすることが肝要でありますが、中曽根総理は都市再開発に国鉄用地を積極的に活用する構想をお持ちと報じられておりますが、国鉄の事業の多角化や国鉄用地の有効利用策について御所見をお伺いします。
第十に、国鉄再建監理委員会の委員については、法案では単に「優れた識見を有する者」から選ぶことになっておりますが、今後の国鉄再建のかぎを握るきわめて重要な人選となり、各方面から注目されております。民間の企業経営経験豊かな人を中心にし、官僚のOB等は排除していくべきと考えておりますが、国鉄再建監理委員の人選に対する総理の御方針を明確にしていただきまして、私の質問を終わります。
また、つけ加えさせていただきますが、本法案の重要性はさることながら、その担当大臣でございます長谷川運輸大臣がお体がすぐれないと仄聞しておりますが、くれぐれも御自愛賜るようこの壇上からお願いする次第でございます。
以上です。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/15
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016・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 黒柳議員の御質問にお答えを申し上げます。
まず、国鉄財政を悪化させた責任について御質問がございました。
国鉄経営が現在のような事情になりました点につきましては、国鉄を取り巻く情勢がきわめて厳しい状況になったにもかかわらず有効な対応力を失っておったという点があると思います。私も運輸大臣在職者といたしまして、これらに対して徹底的な政策を行い得なかったことをはなはだ遺憾に存じておる次第でございます。
なお、国鉄経営者のみでは解決し得ないいわゆる構造的問題につきましては、国鉄自身の経営改善努力を前提といたしまして国等におきましても措置を講じ、また将来措置を講ずるものと考えております。
国鉄の公共性について御質問がございましたが、国鉄の特性とするところは、大都市間輸送あるいは大都市圏内の旅客輸送あるいは大量定型貨物の輸送等が長所の分野であると思っておりまして、これらの基幹的輸送としての部面について公共的使命を十分果たしていただきたいと考えております。しかしながら、国鉄は現在民間輸送機関との間にきわめて厳しい競争にさらされておるのでございまして、これらに十分対抗できるような十分な企業性を発揮し得るように、民営的手法も十分取り入れて改革していく必要があると考えております。
次に、国鉄の事業の多角化あるいは用地の有効利用について御質問がございました。
国鉄の資産あるいは用地の有効利用につきましては、すでに関係法令等を改正いたしまして、投資事業の範囲を拡大し、駅ビルやあるいはホテルあるいはスポーツ施設等の事業についても広範に開発を進め得るようにしておるところでございます。
また、現在の国鉄の財政状況にかんがみまして、国鉄として利用の見込みがすぐ立たない土地につきましても、これらをさらに活用して国鉄のためにも役立たしむる、資産の有効活用ということも十分考慮すべきであると考えておりまして、適切な施策を行いたいと思っております。
国鉄再建監理委員会の人選につきましては、幅広い国民的視野を持った、そして国鉄改革について熱意と実行力を有する人材を検討していかなければならないと思います。具体的な人選につきましては、法案の成立後速やかに決定してまいりたいと思っております。
残余の御質問は関係大臣より御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/16
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017・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
北海道、四国、九州など、分割した場合に経営が成り立たないのじゃないかと、こういうお話がございましたが、分割民営ということにつきましては、それによって経営責任の明確化によるところの企業性の発揮、それからまた各地域の交通需要等の実態に即した運営が可能となろうと存じます。その効果も期待できますので、一概に現実性がないとは断定できないと考えておりまして、いずれにいたしましても、国鉄の経営形態につきましては、その採算性も十分考慮しつつ、国鉄再建監理委員会で適切な結論がまとめられるものと存じております。
なお、政府が国鉄に対して緊急措置としてやったことを詳細に報告せよということでございますが、昨年九月二十四日の十項目の緊急対策につきましては、閣議決定を受けて、運輸省では直ちに国鉄再建緊急対策推進本部を設け、内閣総理大臣を長とする国鉄再建対策推進本部と密接な連絡をとりつつ、各項目について強力に推進しているところです。
特に、そのうち、職場規律の確立を初め、無料乗車証制度、兼職議員の承認等の見直しについては、すでに一応の成果が上がっているものと考えております。また、要員の合理化、設備投資の抑制、資産処分の促進等についても、その趣旨を盛り込んで五十八年度予算を編成しているところであります。さらに、貨物営業の合理化につきまし
ては、昨年十一月のダイヤ改正で、経営改善計画で六十年度までに予定していた合理化計画を前倒しして実施したところでありますが、今後さらにダイヤ改正を行い拠点間直行輸送体制を確立することとしており、地方交通線対策の促進等の問題につきましても具体的施策を逐次実施していく考えであります。
新幹線利用者に整備新幹線の建設費を上乗せするような話があるが、いかがかと、こういう御質問がありました。
整備新幹線の整備は、地元の強い要望もありまして、国土の均衡ある発展のため、そういう見地からは長期的には必要なものと考えておりますが、今日のような国鉄の財政再建との関係、また他の交通機関との厳しい競争関係を考慮しますと、慎重に検討する必要があると考えております。
国鉄貨物部門の立て直しの見通しということでございますが、最近の国鉄貨物経営の現状にかんがみまして、今後とも一層国鉄貨物営業の合理化を進めることが必要であると考えており、このために非効率的なヤード経由輸送を全廃して、拠点間直行輸送体制への輸送システムの全面転換等抜本的な合理化政策を講じまして、昭和六十年度に貨物固有経費においては収支均衡を図るようにしております。
最後に、黒柳議員から私に対する御配慮がありましたことを心から感謝し、こういう法律案にはしっかりとがんばってまいりたいと、こう思っておりますが、御協力をお願いします。(拍手)
〔国務大臣齋藤邦吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/17
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018・齋藤邦吉
○国務大臣(齋藤邦吉君) 黒柳議員にお答えを申し上げます。
民営分割後の効果についてのお尋ねでございます。
臨調においては、未曾有の危機的状況にある国鉄の事業再建のためには従来とられてきた再建方策では十分ではない、この際、公社制度そのものを抜本的に改め、責任ある経営、効率的経営を行い得る仕組みを早急に導入することが必要であるという考え方に立って、分割民営化を提言されたわけであります。
調査会におきましては、こうした民営分割後の効果については次のように述べておるわけでございます。一つは、経営責任を明確化することによって企業性を発揮することができる、経営規模を適正化することによって適切な経営管理を確保することができるではないか、それから次に、関連事業範囲の拡大によりまして採算性を向上することができる、また、各地方地方の交通需要等の実態に即した運営ができるではないか、こうした効果を期待されると述べておるわけでございますが、分割民営化のこうした問題についての具体的な事柄につきましては国鉄再建監理委員会の検討にゆだねたいと、かように考えておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/18
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019・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私を御指名での御質問に対してお答えいたします。
まず、長期債務の処理及び青函トンネル開業後の負担増の問題でありますが、国鉄の事業再建を推進する上で解決しなければならない課題であるという認識は持っておるつもりであります。
また、年金負担につきましては、国鉄経営上の諸負担の一環として、事業再建の上で考慮に入れる必要があると考えております。
国鉄の事業再建を推進するための全体的な方策につきましては、先ほど来申し述べられておりますように、国鉄再建監理委員会を設置いたしまして、その委員会において抜本的な検討を行って結論を得ることといたしておるところであります。御指摘の諸問題につきましても、その一環として結論が取りまとめられることになりますので、政府としては、委員会の結論を受けて適切に対処してまいりたいと考えております。
それから次の、自由民主党内におきまして、営業中の新幹線特別急行料金の二〇%相当額を新幹線特別使用料として徴収して、その二分の一を国鉄経営改善に、そしてまた、その二分の一を整備新幹線の建設財源とすることを中心とする案が検討されておるということは、非公式ではございますが、伺っております。
本件につきましては、御指摘にもございましたさまざまの問題もございます。また、国鉄経営に及ぼす影響も考慮する必要があるなど非常に問題の多いところでございますので、今後慎重な検討を要する課題であると、このように考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/19
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020・徳永正利
○議長(徳永正利君) 立木洋君。
〔立木洋君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/20
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021・立木洋
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案について、総理並びに運輸大臣に質問いたします。
言うまでもなく、深刻な危機に陥っている国鉄の経営を再建し、国鉄を真に国民に奉仕する公共交通機関の根幹として位置づけ、さらに発展させることは、国民のすべてが願い、また関心を寄せているところであります。
ところが、今回政府が提案したこの法案は、このような国民の期待にこたえ得るものにはなっていないのであります。本法案は、長年にわたって自民党政府がつくり出し、拡大させてきた現在の国鉄危機の責任を真剣に反省することなく、したがって危機の根源にまでメスを入れようともいたしていません。ただ、分割民営化だけを最優先して、すべての犠牲を国民と国鉄労働者に押しつけようとするまことに不当なものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
今日の国鉄危機をもたらした最大の原因は、自民党と政府が、国鉄を大企業本位の経済政策に奉仕させてきたためであり、採算を無視して無計画に新幹線や大企業貨物中心の莫大な設備投資を長年にわたり、しかも借金で進めてきた結果にあることは余りにも明白であります。とりわけ十年前に始まる第二次国鉄財政再建計画は、田中角榮元総理の日本列島改造論に沿って、それまでの設備投資計画を一挙に三倍以上に拡大したことが多大な長期債務をさらにふくらませ、国鉄財政の破綻を決定的にしたものであります。
政府・自民党は、これまでも、これが最後のチャンスであるだとか、今度こそ再建は可能であるだとか公約をし、昭和五十二年に国鉄運賃法定緩和・運賃自由化法、五十五年には国鉄経営再建促進特別措置法を強引に成立させてきましたが、その結果は一体どうだったでしょうか。国鉄経営は逆に加速度的に困難を増しているのが実情ではありませんか。
旅客の黒字で貨物の赤字を補う運賃政策の誤り、採算無視の東北・上越新幹線、青函トンネルなどの大規模な投資計画のずさんさ、そして繰り返す運賃値上げと借金の積み重ね、こうしたその場しのぎの無責任さは一体どういうことでしょうか。国鉄をこのような危機に追い込んだ責任を他に転嫁することはなく、政府・自民党の責任について総煙の明確な答弁を求めるものであります。
質問の第二は、本法案の持つ重大性についてであります。
その一つは、監理委員会の広範で強力な権限についてであります。
衆議院の審議でも明らかなように、この監理委員会は、「国鉄再建の方向づけ、枠組みづくりを通常の審議会のように受け身の立場ではなく、能動的に、企画、審議、決定し、総理大臣に意見を述べ」、総理は「これを尊重し」、実行について「報告し」、委員会は「通知」を受けることが法律上義務づけられています。さらに、経営改善計画はもちろん、予算についても意見を述べ、関係省庁を含め資料の提出、協力、調査の権限を持ち、必要な勧告をも行うチェック機能さえ与えられているのであります。
このような広範で強大な権限の行使は、これま
で本院で積み重ねられてきた国鉄再建問題の審議にも対抗しかねないものであります。しかも、監理委員会の審議は、国会と異なって、審議日程や議事録等の公表、公聴会のような国民の意見の聴取などの法的義務を負わされてはいません。これではまさに事実上の密室審議ではございませんか。
二つ目は、巨額な長期債務、年金問題、青函トンネルや本四連絡鉄道の負担区分など、国がはっきりと責任を明示すべきことをすべてあいまいにしている点であります。
政府はすべて監理委員会で検討されるべき課題として何ら明確な答弁をしようとしていませんが、事は国の財政、国民の税金にかかわる問題であります。いわば監理委員会の性格を左右する重大な問題を回避し、何ら説明しようとしないことは無責任きわまりない態度であります。それとも、すべてを白紙委任しろということでしょうか。
これではまさしく国会軽視にもつながりかねない問題であり、以上の二点について総理の見解を求めるものであります。
質問の第三は、国鉄の再建とは縁もゆかりもない臨調の分割民営化がもたらすおそるべき被害についてであります。
衆議院の審議では連合審査や公聴会も行われず、審議時間も重要法案としては異例な短時間と言われるほど強引に通過させられました。これは国鉄の分割民営化が国民の足を奪い、全国的路線網の解体をもたらすものであることが明らかになることを恐れてのことではありませんか。
政府も臨調も、臨調答申に沿って地域分割された民営鉄道の経営が成り立つ根拠を全く示すことができないではないですか。たとえば北海道の場合、資本費や年金、退職金負担の特定人件費を取り除いた幹線系線区五線だけをとってみましても、年間九百億円以上の赤字、営業係数は二一九にもなっているのであります。北海道を初め、東北、四国、九州には黒字の路線は一つもありません。経営が成り立たなければレールは次々とはがされ、鉄道網がずたずたに分断されることは、民営鉄道の不採算路線廃止の歴史が示しているとおりであります。
世界的に見ましても、鉄道網の崩壊を防ぐために、分立していた民営鉄道を国有化、公有化しているのが大勢ではありませんか。まさしく国鉄の分割民営化は歴史の進歩に逆行するものであり、国民の足を奪うこのような鉄道網の解体と切り捨てに地域住民の批判が高まるのはきわめて当然のことであります。だからこそ、いま地方では自民党の国会議員でさえ、「ローカル線は守ります、国と地方は違います」と公言するほど矛盾が広がっているのではありませんか。これでも総理、あなたは、臨調答申を最大限尊重し、あくまで国鉄の分割民営化を強行しようとされるのですか、はっきりとお述べいただきたいのであります。
最後に、私は、真の国鉄再建のための条件と再建の展望をどのように切り開くべきかという点についてお尋ねをいたします。
何よりも国鉄再建のためには、これまでのあしき遺産をきっぱりと捨てて、新しい出発のための改善措置を思い切って実行することであります。具体的には、毎年のように指摘される国鉄の巨額の浪費、むだ遣いの根絶を図ること。そのためには、国鉄の工事発注や資材購入などでの国鉄高級官僚と大企業の癒着を絶つこと。また、国鉄と関連の深い大企業への天下りを規制するなど、国鉄の管理運営の徹底的民主化も必ず実行しなければなりません。また、国が責任を持つ部分と国鉄が責任を持つ部分、費用分担の原則をはっきりさせることも急務であります。以上の点について、総理の明確な答弁を求めます。
わが党は、国民とともに真の国鉄再建のために最後まで奮闘することを述べて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/21
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022・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 立木議員の御質問にお答えをいたします。
まず、国鉄を現状に追い込んだ責任いかんという御質問でございます。
すでに申し上げましたように、国鉄を取り巻く情勢がきわめて厳しい状況になったにもかかわらず、これに対して国鉄が十分な対応力を発揮し得なかったという点が基本的にあると思っております。これらの改革のために、今回監理委員会を設置して、抜本的改革を目指しておるところであります。
また、国鉄の経営努力のみでは解決しがたいいわゆる構造的問題につきましては、国鉄自身の経営改善努力を前提にいたしまして、政府といたしましても大いに協力をしておるところでございます。
また、分割民営を強行するのかと、こういう御質問でございますが、諸外国における状況をそのままわが国に適用することは必ずしも適当でないと考えます。いずれにいたしましても、わが国の国鉄が未曾有の危機的状況に陥りました原因をよく探求いたしまして、わが国にはわが国固有の事情もあるわけでございますから、それらを一つ一つ抜本的に解決する方策を見出す必要があるのでございます。このような意味におきまして、今回、国鉄再建監理委員会を設置して、経営のあり方を含め、経営全般にわたって抜本的な検討を行おうとしておるのでございます。
さらに、国鉄の再建のために国が責任を持つ部分と国鉄が責任を持つ部分の費用負担の原則を明確にすべきではないか、こういう御質問でございます。
確かに、御指摘の点は考えなければならぬ点があるように思います。国鉄自体の経営改善努力を前提にいたしまして、国も、国鉄の経営努力のみでは解決しがたいいわゆる構造的問題等を中心といたしまして、所要の行財政上の措置を講ずる必要があると考えております。
残余の御答弁は関係大臣よりいたします。(拍手)
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/22
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023・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま総理から詳細な御答弁がありましたが、監理委員会が生まれましても、国のやる責任あるいはまた経営者がやる責任、このことをきちっといままでと違って決めていただいて、そして国民の前に了解をし、国鉄を再建したい、こういう考えであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/23
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024・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 答弁の補足がございます。長谷川運輸大臣。
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/24
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025・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) 答弁漏れをして失礼しました。
分割民営会社はどれも経営が不可能なのに強行するのかと、こういうお話でございますが、監理委員会で分割民営を議題として十分精査し、その結果いろいろな能率的な問題等々が出てくる、こういうふうな効果があろうと、こう思っております。最初からこれがだめだという形じゃない、こう思っております。
それから、浪費、むだ遣いがあるのじゃないかというお話がありましたが、これはいつの委員会でもそんな話が出ますので、いまから先こんなことのないように十二分にひとつ注意してまいりたい、こう思っております。
国鉄と関連の深い大企業に天下りする者が多いのじゃないかということですが、技術陣のしっかりしたものは民間でも必要といたしております。ことに海外への鉄道技術輸出の場合には国鉄に長く働いた諸君の中から選ばれる者が多い、こういう関係でございますから、その辺はよく御理解をいただきたい、こう思っております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/25
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026・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 小西博行君。
〔小西博行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/26
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027・小西博行
○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案に関し、総理並びに運輸大臣に対して質問を行うも
のであります。
御承知のとおり、いまや国鉄の経営は危機的状況を通り越して破産状態にあり、一日も早い再建が強く求められております。すなわち、国鉄の赤字は、五十七年度で一兆三千八百五十三億円、五十八年度では一兆六千八百九十億円と見込まれており、五十七年度末における累積赤字は八兆九千七百二十一億円に達するとされているのであります。また、累積赤字を含めた長期債務は、五十七年度末で十八兆四千四十億円に上り、五十八年度の支払い金利総額は一兆四千二百七十四億円に及んでおります。しかもこのうち三千四百五十七億円は、棚上げされた債務に対する金利であり、全額政府が支払っているものであります。
また、退職者の増大や職員数の減少に伴い、いわゆる特定退職金や特定年金の負担が急増していて、国鉄経営を一層圧迫しているのであります。特に、国鉄共済年金は加速度的に収支状況が悪化しており、昭和六十二年には積立金も底をついて破綻を迎えることが確実となっております。
このように、国鉄の経営は文字どおり破産状態に直面しておりますが、かかる事態を招いた第一の責任は政府・自民党にあると言わざるを得ません。
政府は、国鉄経営が破綻に向かっていることを知りながら、これを放置し、総合交通体系の中に適正に位置づけることも怠り、逆に採算のとれないいわゆる政治路線を建設してきたのであります。また、国鉄の職場規律の乱れを知りながら、事なかれ主義的な立場に立ってこれを黙殺してきたことも重大な問題であります。国鉄改革の推進に当たっては、まず政府・自民党がこうした点について厳しく反省することが必要であります。
第二の責任は、国鉄労使の対応であります。
国鉄経営が破産の危機に直面しているにもかかわらず、国鉄労使の状況認識や再建への努力は依然として不十分と言わざるを得ません。昨年来、新規採用の停止、職務総点検と職場協議制の改定、無料乗車証の廃止等の措置が実施され、やみ休暇ややみ超勤、ポカ休みや時間内の組合活動などは減少しているとはいえ、国鉄の現状に対する認識は労使ともに依然として甘いのが現実であります。
このように、いまや国鉄は、経営の面でも職場規律の面でも決定的な行き詰まりを見せており、抜本的な改革が一刻も早く求められているのであります。臨調答申は、国鉄を破産状態にあると規定し、これを改革するには公社制度をやめ、国鉄を分割して特殊会社とし、条件の整ったものから逐次民営化するという思い切った方向を打ち出しました。そして、国鉄改革の具体的方法を決定するかなめの機関として、国鉄再建監理委員会の設置を求めているのであります。
わが党は、こうした臨調答申を基本的に評価し、国鉄改革を強力に推進する立場に立って、以下の諸点について質問をいたします。
まず第一は、政府の国鉄改革に対する基本方針についてであります。
本法律案は、第一条において、「国は」「臨時行政調査会の答申を尊重して日本国有鉄道の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制を整備すること」と規定しております。言うまでもなく、臨調答申の基本方向は、国鉄を分割して特殊会社とし、逐次これを民営化していくというものであります。本法律案の第一条において臨調答申の尊重を規定したことは、国鉄改革についての政府の基本方針は、国鉄のいわゆる分割民営化となるのでありましょうか。委員会がいかなる改革案を示すかではなく、政府としての方針について、総理の明快な御答弁をいただきたいと存じます。
第二は、再建監理委員会の性格についてであります。
法律案は第二条において、「国は、前条に規定する体制整備を図るため」「必要な施策を講ずる」とし、これを受けて第四条において、「第二条の国の施策の策定」「に資するため」「国鉄再建監理委員会を置く。」と定めております。すなわち、監理委員会は臨調答申を尊重し、国鉄の分割民営化を前提としてその具体的方法を検討、決定するための委員会であるのかどうか。あるいはまた、場合によっては国鉄の経営形態に関しこれと異なる結論を出す余地もあり得るのか、この点について総理並びに運輸大臣の御答弁を求めるものであります。
第三は、国鉄再建関係閣僚会議の設置を決定いたしましたが、この閣僚会議と監理委員会との関係及び両者の位置づけはどのようになるのでしょうか。相互の見解や決定が異なる場合には、だれが、どのような方法でその調整を図るのか等について、政府の方針をお伺いいたします。
第四は、監理委員会の委員の選定についてであります。
再建監理委員会が国鉄改革を推進するかなめとして、権威と実力を持って改革の具体的方法を決定するためには、これにふさわしい委員長と委員を選任しなければなりません。本法律案では、「優れた識見を有する者のうちから」「任命する。」と抽象的に規定されておりますが、識見と同時に、実力や社会的影響力を兼ね備えた人材を民間等を中心に広い分野から選出することが必要であります。同時に、臨調答申を尊重し、この線に沿って国鉄改革を進めようとしている人物であることが条件となると考えますが、委員長並びに委員の選定に関し総理はどのような基準を持って臨もうとされているのか、御見解を伺うものであります。
第五は、監理委員会の事務局の構成についてであります。
監理委員会の実務を日常的に担当するのは事務局であり、どのような方針で事務局を構成するかは、委員会の実務を左右する重要な問題であります。私は、特定官庁に偏することなく、関係官庁から均衡をもって事務局を選出するとともに、民鉄等を中心に広く民間からも事務局を募るべきであると考えますが、事務局の選定に関する政府の方針をお示しいただきたいと存じます。
最後に、国鉄改革に対する総理の御決意をお伺いいたします。
法律案は、第六条において、「内閣総理大臣は、委員会から」「意見を受けたときは、これを尊重しなければならない。」としておりますが、いわばこれは精神規定であります。しかし、国鉄の置かれた現状をかんがみれば、総理はさまざまな圧力や抵抗を排除し、委員会の意見、決定を全面的に尊重して、国鉄改革を強力に推進しなければなりません。いまや国鉄改革は国家的な課題であり、政治が勇断をもって進めなければならない重大な問題であります。監理委員会の決定尊重と国鉄改革推進に関する総理の明快な御決意をお伺いいたします。
私は、国鉄改革を推進する立場に立って以上の諸点についてお尋ねいたしましたが、これに対する政府の誠意ある御答弁をお願いし、質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/27
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028・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 小西議員の御質問にお答えをいたします。
まず、政府の国鉄改革に関する基本方針はいかんということでございます。
政府は、臨時行政調査会の答申を最大限に尊重して、逐次これを実行に移すという閣議決定を行っておりますが、国鉄改革につきましても同様の基本的態度をもって実行してまいるつもりでございます。このため、政府といたしましては、臨調答申の線に沿いまして、ここに国鉄再建監理委員会を設置し、抜本的な検討を行い、五年以内に事業再建の全体構想を設定して、その実現を図る方針でございます。
国鉄の経営形態のあり方につきましても、この監理委員会の具体的な検討を待って、その結論を実行してまいるつもりでございます。
次に、国鉄の分割民営化の具体的方法を検討するのかどうかという御質問でございます。
政府は、すでに閣議決定をもちまして、臨調答申を最大限に尊重して、逐次これを実行すると明言しております。国鉄再建監理委員会におきましても、同じく臨調答申を尊重して、分割民営化を基本線としてその方向で努力してもらうことになっておりまして、このように期待しておる次第でございまして、委員会の結論を踏まえて政府としては対処してまいるつもりでおります。
再建監理委員会の構成につきまして御質問がございました。
委員長及び委員の人選につきましては、幅広い国民的視野と見識を持ち、かつ国鉄改革に熱意と実行力を持った人材を選任して御期待におこたえいたしたいと思っております。具体的な人選につきましては、申し上げましたように、法案の成立後速やかに実行いたしたいと思います。
なお、監理委員会の決定尊重と国鉄改革推進に関する私の決意いかんという御質問でございますが、監理委員会の御意見につきましては、これを最大限に尊重して、所要の施策を強力に推進してまいる決意でございます。何とぞ御協力をお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/28
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029・長谷川峻
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
私たちは、いま、五十兆円の予算審議を終わったわけですけれども、百兆円の国債を抱えている。国鉄の場合は毎年二兆円ずつの赤字を出している。これの解消ということがすでにいまや国民的課題となって世論となり、そしてまたこのたび、そのために国鉄再建監理委員会法案を皆さんに御審議を願うわけでありますから、総理が決意されたと同様な気持ちでこの法案の通過をお願いする次第であります。
もう一つは人選の問題ですが、総理からも御答弁がありましたが、やはり土光さんがあれだけ信用があって、その方が行政改革をしっかり唱えたから国民的ムードも起こり、必要性というのが一般に徹底したと私は思っております。そのことからしますというと、このたびのこの委員会の委員長並びにその他の諸君は同じような方々がなられるように私は期待し、そしてまた法案が通過した後、関係者と具体的に御相談申し上げたいと、こう思っております。
事務局の話が出ましたが、やはり各役所からずっと出ることもいいでしょうけれども、おっしゃるように、ただいま国鉄などは民営鉄道の経営方式などというものを考えなければならぬということも考えておる時代でございますから、民間側のそうした方々の御意見なども反映されるような形でやっていくのも一つの方法ではなかろうかと、こう思っております。
以上申し上げまして私の答弁を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/29
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030・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/30
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031・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 日程第一 千九百八十三年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件
日程第二 千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約の有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書の締結について承認を求めるの件
日程第四 千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件
日程第五 領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書の締結について承認を求めるの件
日程第六 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)
日程第七 所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)
以上七件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長増田盛君。
〔増田盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/31
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032・増田盛
○増田盛君 ただいま議題となりました条約七件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
まず、一九八三年の国際コーヒー協定は、現行の国際コーヒー協定にかわるものでありまして、輸出割り当ての実施によって世界のコーヒーの価格の安定と需給の均衡を図ることを目的とするものであります。
次に、一九八二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定は、研究開発等の事業の実施を通じてジュート及びジュート製品輸出国の輸出収入の安定を図ることを目的とするものであります。
次に、一九七一年の国際小麦協定の有効期間の延長に関する議定書は、この協定を構成する二つの規約、すなわち、小麦の市況に関する情報交換等について定める一九七一年の小麦貿易規約と、開発途上国に対する食糧援助について定める一九八〇年の食糧援助規約が本年大月末に失効いたしますので、その有効期間をそれぞれ三年間延長することを定めたものであります。
次に、国際博覧会条約の改正は、フランスが一九八九年に開催を希望している革命二百年記念万国博覧会と、米国及びスペインが一九九二年に希望しているコロンブス新大陸発見五百年記念万国博覧会の双方の開催を可能にするため、国際博覧会の開催間隔を例外的に短縮できることとするものであります。
次に、領事関係に関するウィーン条約は、領事上の特権免除その他領事関係全般に関する国際法の規則の明確化と統一化を図るものであり、また、選択議定書は、この条約の解釈または適用から生ずる紛争の義務的解決について定めたものであります。
次に、スウェーデンとの租税条約は、現行条約を、最近の条約例を踏まえて全面的に改正しようとするものでありまして、事業所得に対する相手国の課税基準、国際運輸所得に対する相互免税、配当、利子及び使用料に対する源泉地国の課税軽減等を定めるとともに、二重課税を排除する方法を規定しております。
最後に、ドイツ連邦共和国との租税協定の修正補足第二議定書は、国際運輸に使用されるコンテナ等のリース料に関する源泉地国課税を相互に免除するため、現行協定に所要の修正補足を行うものであります。
委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知を願います。
昨十九日、質疑を終え、別に討論もなく、採決の結果、一九八三年の国際コーヒー協定、一九八二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定、国際博覧会条約の改正及び領事関係に関するウィーン条約及び選択議定書の四件はいずれも全会一致をもって、また、一九七一年の国際小麦協定の有効期間の延長に関する議定書、スウェーデンとの租税条約及びドイツ連邦共和国との租税協定の修正補足第二議定書の三件はいずれも多数をもって、それぞれ承認すべきものと決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/32
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033・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。
まず、日程第一、第二、第四及び第五の条約を一括して採決いたします。
四件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/33
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034・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 総員起立と認めます。
よって、四件は全会一致をもって承認することに決しました。
次に、日程第三、第六及び第七の条約を一括して採決いたします。
三件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/34
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035・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
よって、三件は承認することに決しました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/35
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036・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 日程第八 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案
日程第九 水産業協同組合法の一部を改正する法律案
日程第一〇 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上三案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長下条進一郎君。
〔下条進一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/36
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037・下条進一郎
○下条進一郎君 ただいま議題となりました三法律案について、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
まず、漁船損害等補償法改正案は、昭和四十八年以降における漁船積荷保険臨時措置法の施行の実績等にかんがみ、漁業経営の安定を図るため、漁船に積載した漁獲物等の不慮の事故による損害をてん補する漁船積荷保険制度を漁船損害等補償制度の一環として確立するとともに、満期保険の保険料の算出方法の改正等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、漁船積荷保険の試験実施期間が十年にも及んだ理由、二百海里漁業規制が本保険制度へ及ぼした影響、本保険の低加入率の原因と今後の加入促進策、掛金国庫補助のあり方、弱小漁船保険組合の合併方策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、別に討論もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、各会派共同提案による漁船損害等補償制度の内容の充実に努めること等四項目にわたる附帯決議を全会一致をもって行いました。
次に、水産業協同組合法改正案は、水産業をめぐる厳しい諸情勢にかんがみ、水産業協同組合の健全な発達を図るため、水産業協同組合の系統組織により共済事業を組織的に推進することができるようにするとともに、内国為替取引に係る員外利用制限の緩和及び内部監査体制の充実等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、わが国における漁業制度の基本的な法律の一つである水産業協同組合法を十年ぶりで本格的に改正する漁業政策上の意義、任意共済事業の拡充方策、漁協等における信用事業の現状と為替取引における員外利用制限緩和の持つ意味、漁協連合会等に対する行政検査体制のあり方、漁協監査士を法制化する意義、漁協の合併促進策や職員の労働条件改善策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、別に討論もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、各会派共合提案による任意共済事業の内容の充実とその加入促進を指導すること等七項目にわたる附帯決議を全会一致をもって行いました。
最後に、森林法及び分収造林特別措置法改正案は、最近における林業活動の停滞等森林及び林業をめぐる諸情勢の変化にかんがみ、間伐、保育等の森林の整備の促進及び林業普及指導事業の運営の効率化を図るため、市町村による森林整備計画の樹立及び市町村の長による施業の勧告制度の導入、助成方式の変更並びに分収育林制度の導入等のため所要の改正を行おうとするものであります。
なお、本法律案は衆議院において施行期日等についての修正が行われております。
委員会におきましては、市町村による森林整備計画の森林法上の位置づけ、全国森林計画等他の森林計画と森林整備計画との関係、森林組合の活性化施策、助成方式の改正が及ぼす林業普及指導事業体制への影響、林業労働衛生管理の現状、緑化運動の目的と今後の推進対策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、本法律案を問題に供しましたと
ころ、日本共産党の下田委員から修正案の提出及び本法律案の反対討論がなされ、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、各会派共同提案による森林整備計画樹立に当たって関係者から意見聴取をすること等七項目にわたる附帯決議を全会一致をもって行いました。
以上御報告いたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/37
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038・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。
まず、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。
両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/38
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039・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 総員起立と認めます。
よって、両案は全会一致をもって可決されました。
次に、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/39
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040・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/40
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041・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 日程第一一 技術士法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員長中野明君。
〔中野明君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/41
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042・中野明
○中野明君 ただいま議題となりました技術士法案につきまして、科学技術振興対策特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、最近における著しい科学技術の発展状況にかんがみ、技術士補の資格の新設等によって技術士制度の改善を図るとともに、技術士試験事務並びに技術士及び技術士補の登録事務を科学技術庁長官の指定する者に行わせること等によって行政の簡素化を図るなどの措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、技術士補制度新設の目的、試験事務等の民間委譲による受験者への影響、技術士試験の公正さを確保する措置、開発途上国への技術移転における技術士の位置づけ等について質疑が行われましたが、詳細は会議録に譲ります。
質疑を終わりましたところ、日本共産党佐藤委員より試験事務及び登録事務の民間委譲に関する規定の削除等を内容とする修正案が提出されました。
原案及び修正案に対する討論はなく、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/42
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043・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/43
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044・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/44
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045・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 日程第一二 貸金業の規制等に関する法律案
日程第一三 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案
(いずれも第九十六回国会衆議院提出)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長戸塚進也君。
〔戸塚進也君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/45
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046・戸塚進也
○戸塚進也君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
両法律案は、いずれも第九十六回国会衆議院提出によるものであり、本院におきまして第九十六回国会以降、継続審査とされてきたものであります。
まず、貸金業の規制等に関する法律案は、貸金業務の運営が社会に重大な影響を及ぼしている現状にかんがみ、貸金業を営む者について、登録制度を実施し、その事業に対し過剰貸し付けの禁止、取り立て行為の規制等を行うとともに、貸金業協会及び全国貸金業協会連合会を設立して、貸金業者の業務の適正な運営を確保せしめ、もって資金需要者等の利益の保護を図ろうとするものであります。
なお、利息制限法に定める超過利息支払い部分について、一定の場合における任意弁済の有効規定を置いております。
次に、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案は、高金利による金銭の貸し付けが弊害を生じている現状にかんがみ、業として金銭の貸し付けを行う者に対する刑罰の対象となる制限利率を、現行の年一〇九・五%から年四〇・〇〇四%に引き下げようとするものであります。
なお、刑事罰対象利率の急激な条件変更を緩和するため、法施行後三年間は、制限利率を年七三%とすることとし、その後、別に法律で定める日までの間は、制限利率を年五四・七五%とすること等の経過規定を設けることとしております。
委員会における両案の質疑につきましては、超過利息のみなし弁済規定に係るサラ金被害救済の問題、出資法の上限金利を四〇・〇〇四%にする実施時期が棚上げにされることへの危惧、貸金業協会に加入しないアウトサイダーに対する行政指導・監督の徹底、業務規制がいわゆる悪徳サラ金業者の追放に果たす効果等の質疑が行われたほ
か、参考人として上田昭三関西大学教授及び樋口俊二日弁連事務総長より意見聴取を行いましたが、その詳細は会議録に譲ります。
両案に対する質疑を終了いたしましたところ、日本社会党を代表して穐山篤委員より、両案に対して、貸金業の登録拒否事由の追加、超過利息のみなし弁済規定の削除及び刑事罰対象利率に係る経過期間の短縮等の修正案が、また、日本共産党を代表して近藤忠孝委員より、両案に対して、個人に対する物上担保なしの金銭の貸し付けを業として行うに当たっての免許制等を定めるとともに、刑事罰対象利率を四〇・一五%に引き下げること等の修正案が、また、自由民主党・自由国民会議を代表して増岡康治委員より、両案中、法律番号等に係る昭和五十七年を昭和五十八年に改める修正案が、それぞれ提出されました。
これら六修正案に対する質疑はなく、両原案及び六修正案について討論に入りましたところ、日本社会党を代表して穐山篤委員より、増岡委員及び近藤委員提出の四修正案並びに両原案に反対、穐山委員提出の両修正案に賛成、また、自由民主党・自由国民会議を代表して大河原太一郎委員より、穐山委員及び近藤委員提出の四修正案に反対、増岡委員提出の両修正案及び両原案に賛成、また、公明党・国民会議を代表して塩出啓典委員より、近藤委員提出の両修正案及び両原案に反対、穐山委員提出の両修正案に賛成、また、民社党・国民連合を代表して柄谷道一委員より、穐山委員及び近藤委員提出の四修正案に反対、増岡委員提出の両修正案及び両原案に賛成、また、日本共産党を代表して近藤忠孝委員より、増岡委員提出の両修正案及び両原案に反対、穐山委員及び近藤委員提出の四修正案に賛成する旨の意見が、それぞれ述べられました。
討論を終わり、六修正案及び両原案を順次採決の結果、穐山委員及び近藤委員提出の四修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、増岡委員提出の両修正案及び修正部分を除く両原案はいずれも賛成多数をもって可決され、両法律案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
なお、金利等取締り改正法における刑事罰対象上限金利の本則移行について可及的速やかに実現するよう努めること等の附帯決議が付されております。
以上御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/46
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047・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 両案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。寺田熊雄君。
〔寺田熊雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/47
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048・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程せられました貸金業法案、すなわち貸金業の規制等に関する法律案、並びに出資法、すなわち出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をいたします。
この二法案は、一体となって、いわゆるサラ金なる貸金業の貸付上限利率を引き下げるとともに、業者の登録制を実施し、事業に関する規制を行い、もって資金需要者の利益を図る目的を持つと説明せられ、中曽根総理をして言わしむれば、一歩前進というのでありますが、事実はこれに反し、むしろ業者の利益を図り、資金需要者に多大の犠牲を強いる内容であって、百歩後退とも言うべきものであります。
以下、その理由を説明いたします。
第一に、私は、この両法案の底流には、他の文明国には例を見ない非近代的な高利是認の思想がひそんでいることを指摘したいと思います。
かく申しても、私は決して、古代ギリシャの哲学者や初期キリスト教の教父たちのように、あまねく利息を取る行為そのものを禁止すべきであると主張するものではありません。しかし、私たちは、現在、少なくも議会制民主主義をとる先進諸国において、本二法案のごとく年率七三%とか五四%というごとき高利を是認する法律を発見することは困難でありまして、これらはサラ金業者の主張に迎合するシャイロック的暴利容認の思想による非近代的内容の法案であると断じて差し支えありません。
さらに、この両法案は、そのもっともらしい体裁の陰に、国民を欺く冷酷な内容を隠している点において許しがたいものであります。すなわち、出資法改正案は本則において、第五条に規定する上限利率年一〇九・五%を貸金業については四〇・〇〇四%に引き下げることを標榜するのでありますが、その実、附則において、法施行後三年間は七三%、その後は「別に法律で定める日」まで五四・七五%とするばかりか、そのいわゆる「別に法律で定める日」を「法律施行後五年を経過した時点で経済状況や貸金業者の業務の実態等を勘案して速やかに定める」と規定するのであって、これを灰色のベールに包んでしまっておるのであります。
しかも、昭和五十七年五月七日の衆議院大蔵委員会の会議録によりますと、本法案の提案者の代表やその有力なる賛同者たちは、四〇%の金利を猛烈に論難する業者の代表らに対して、こもごも、この法案は「四〇%にするとは書いてないのだから心配するな」という趣旨の発言を繰り返して、彼らをなだめているのであります。まさに羊頭をかかげて狗肉を売るのたぐいであり、とうてい許されざるものであります。まして上田昭三博士のごとき本問題の権威は、サラ金の適正金利を、業者の一昨年末現在の一口当たり当初平均融資額二十万円という低額融資についてすら三〇・九%とするのでありますから、本法案の定める金利がいかに業者寄りのものであるかが判明するのであります。
第二に、本二法案は、近代法が民事責任と刑事責任とを峻別し、すべての社会事象にそれに適合する責任を配分しつつ規律していることを知らず、両者を混淆して立法し、そのため、さまざま
な面において著しく不当な結果を生ぜしめているのであります。
すなわち、出資法第五条の定める一〇九・五%の上限利率は、その範囲内であるならば刑事責任を問わないという性質のものであるにすぎず、民事責任については、別個に金融関係の憲法とも言うべき利息制限法が存在し、元本十万円未満は二〇%、百万円未満は一八%、百万円以上は一五%を制限利息とし、期限後の遅延損害金はその倍額までを許すという段階的金利制度を採用しているのであります。
また、最高裁判所は、経済的弱者たる債務者を保護せんとする同法の趣旨からして、この制限利息を超えて支払われる利息は、当然に元本の弁済に充当せられ、なおかつ余りあるときはその返還を求め得るとするのでありまして、この法律と判例とにより、高利の債務の支払いに窮し、一家離散や心中のほかなき債務者や、倒産の危険に瀕した中小企業者などが救済せられる事例が少なくないのであります。
しかるに、本二法案は、かかる従来の金融秩序を根本的に覆し、貸金業法第四十三条として、「利息制限法所定の利率を超える利息であっても任意に支払われたときは有効な利息の弁済とみなす」とする一条を設けているのでありまして、この両法案が可決せられんか、今後高利の債務支払いに追われ、一家の破滅や企業の倒産に瀕した国民は、唯一とも言うべき法的救済の道を奪われるという冷酷無残な結果を生ずるのであります。本二法案に賛成する人々は、果たしてかかる残忍なる結果を招来する法改正に気づいておられるのでありましょうか。
本二法案の提案者の代表は、右に述べた利息制限法と最高裁判例とが貸金業者の最も忌み嫌うものであることを知りつつ、彼らが本二法案に反対しないための代償ないし懐柔策として、右の第四十三条の規定を設けたこと、及びこの第四十三条こそが本二法案最大の争点であることを当院大蔵委員会ではっきりと認めているのでありますから、本二法案が資金需要者の利益を犠牲として貸金業者の利益を図る著しく階級的のものであることは、一点の疑いさえないのであります。私はまた、これにより借地法、借家法などとともに経済的弱者たる庶民を守らんとする法務省関係の社会政策的立法の一角が崩れ去ったことを悲しむものであります。
第三に、民事責任と刑事責任との混淆により、この二法案の提案者やこの法案を事実上立案した大蔵省は、出資法上の上限利率を超えない以上、貸金業者の徴収するすべての利息は民事的にも有効と考え、貸金元本や融資残高の多寡により利率を上下する段階的金利制度を採用する態度を全く示そうとしないのであります。
その結果、貸金業者は多く貸せば貸すほどもうかることになり、おのずから過剰融資に走る弊害を生ぜざるを得ません。また、そのため、大手サラ金業者は、リース会社や相互銀行のみならず、消費者金融に消極的な都銀や生保からも融資を受け、豊富な資金力に物を言わせて全国に支店網を広げ、サラ金禍の社会悪は増加の一途をたどりつつあるのであります。
第四に、本二法案の立法作業を担当した人々は、必ずしも貸金業者の業務の実態、特にそのあくどい取り立て方法等について十分な知識を有せず、かつ融資自体の性格、対象、社会的機能等の異なる企業向け大口融資と個人向け小口融資とを一緒くたにして規制せんとしたため、各般の業務規制方法がきわめて大ざっぱ、かつ不十分なものとならざるを得なかったのであります。
たとえば、業者の暴力的取り立て方法の規制も抽象的に過ぎて実効性を有せず、貸し付けに当たり恩給証書や運転免許証、健康保険証等を取り上げる行為などの規制も考えず、白紙委任状の乱用が公正証書作成のみならず不動産担保についても行われることに思いをいたさず、保証人が全く事実を知らないうちに保証人とされる事例が多いため、業者に対して保証の意思を確かめる義務を課すべきであるのにそれを怠り、過剰融資を罰則のみならず行政的制裁の対象とさえしていないことなど、本二法案は欠陥だらけの法案と称しても決して過言ではありません。
最後に、私は、今日ほどサラ金をめぐる社会悪が増大している根底には、政府が従来、正規の金融機関を指導して消費者金融業務に取り組ませるための行政的努力を怠ったことが原因であることを指摘せざるを得ません。しかも、いまなお大蔵省は、かかる努力をなすことを確言せず、かえって都銀等の融資に好意を示すかのような言動さえもうかがわれるのでありますから、本二法案が成立し、貸金業者が法的認知を得た場合には、都銀等の業者に対する融資はますます増加し、サラ金禍は一層増大することが憂慮せられるのであります。
以上、本二法案が業者保護に偏り、資金需要者たる国民の利益を害する内容を持ち、業務規制も不十分であり、今後一層過剰融資を生じ、社会悪を増大する危険性を有する欠陥法案であることを指摘して、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/48
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049・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/49
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050・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これより両案を一括して採決いたします。
両案の委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。
両案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/50
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051・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
よって、両案は委員長報告のとおり修正議決されました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/51
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052・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 日程第一四 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長目黒今朝次郎君。
〔目黒今朝次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/52
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053・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、戦傷病者戦没者遺族等援護法のほか、関連する二法律を改正しようとするものであり、その主な内容は、勤務に関連する傷病等による障害年金の受給権者の平病死に係る遺族年金等の額を恩給法に準じて引き上げるほか、戦没者の妻及び父母等に改めて特別給付金を支給することであります。
委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び無党派クラブを代表して対馬理事より、障害年金等の額を引き上げ、それを本年四月一日より適用する旨の各派共同修正案が提出され、次いで自由民主党・自由国民会議を代表して村上理事より、戦没者の妻及び父母等に対する特別給付金の施行期日について本年四月一日とあるのを公布の日と改め、四月一日にさかのぼって適用する旨の修正案が提出されました。
採決の結果、対馬理事提出の修正案は賛成少数で否決され、村上理事提出の修正案並びに修正部分を除く原案は全会一致でそれぞれ可決され、本法律案は修正議決すべきものと決しました。
なお、本法律案に対し附帯決議が全会一致をもって付されております。
以上御報告いたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/53
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054・秋山長造
○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。
本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/54
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055・秋山長造
○副議長(秋山長造君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって委員長報告のとおり修正議決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/109815254X01119830420/55
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