1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十八年十月六日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十月六日
辞任 補欠選任
鈴木 一弘君 三木 忠雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 伊江 朝雄君
理 事
戸塚 進也君
藤井 孝男君
増岡 康治君
竹田 四郎君
塩出 啓典君
委 員
岩動 道行君
河本嘉久蔵君
倉田 寛之君
中村 太郎君
福岡日出麿君
藤井 裕久君
藤野 賢二君
宮島 滉君
矢野俊比古君
吉川 博君
鈴木 和美君
丸谷 金保君
多田 省吾君
三木 忠雄君
近藤 忠孝君
栗林 卓司君
青木 茂君
野末 陳平君
国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
政府委員
大蔵政務次官 遠藤 政夫君
大蔵大臣官房長 吉野 良彦君
大蔵大臣官房総
務審議官 吉田 正輝君
大蔵大臣官房審
議官 大山 綱明君
大蔵省銀行局長 宮本 保孝君
大蔵省国際金融
局長 酒井 健三君
国税庁調査査察
部長 冨尾 一郎君
事務局側
常任委員会専門
員 河内 裕君
参考人
日本銀行副総裁 澄田 智君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/0
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001・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁澄田智君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/1
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002・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/2
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003・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/3
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004・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
現下の債務問題等に適切に対処し国際通貨金融体制の安定を図るため、国際通貨基金がその資金基盤を強化することが必要と考えられ、このため先般、その出資総額を現行の約六百十一億特別引出権から約九百億特別引出権へと約四七%増資することが合意されました。今回提案されております増資は、増資総額の六割を各国の経済実態に応じて配分し、四割を現行の出資割り当て額に応じて配分するものであります。この中でわが国の出資額は、現行の二十四億八千八百五十万特別引出権から四十二億二千三百三十万特別引出権に増額することが提案されており、その増加率は約七〇%と先進国中最大のものとなっております。また、これにより、出資総額に占めるわが国の出資割合は、わが国の経済力の伸びを反映して、四・〇八%から四・六九%に拡大することになります。わが国としては、国際金融面での協調を推進し、世界経済の健全な発展に貢献する見地から、この提案を受け入れることが適当と考えております。
本法律案は、この新たな出資に応じられるよう、国際通貨基金へ出資することができる金額を引き上げる等所要の改正を行うものであり、この法律の成立後、国際通貨基金に対し同意通告を行いたいと考えております。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/4
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005・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 以上で説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/5
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006・鈴木和美
○鈴木和美君 私は、ただいま大臣から提案理由の説明がありましたが、本論に入る前にわが党としての所見をちょっと述べて見解をいただきたいと思うんです。
参議院選挙が終わってこの参議院の大蔵委員会は実は初めてだと思うんです。大臣の見解について、いろんな角度から財政諸方針などについてもお伺いする点が多々あったわけでございます。ところが、そういうものが全部なくなっちゃって何か国際基金の問題だけが早く取り出されて議論をする。なかんずく衆議院の審議の状況はいろんな状況があるわけですから、それはそれとして理解できたとしても、わが院としては大臣にしっかり座っていただいて所見を聞くということが私は当然だと思うんです。にもかかわらず、今回こういうような法案だけを取り上げてやらなければならないというような理由というか、そこのところをもう一度大臣からお聞きしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/6
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007・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 御提案いたしましたこの法律案というのは、提案理由の説明でも申し上げたわけでございますけれども、一応通告時期というものが決まっております。
従来どうしたかと言えば、通告におくれた国もございますが、今日の国際金融社会とでも申しますか、わが国の地位は大変高まっておりますし、そうして債務累積国問題等非常に問題の多い時期
でございますので、わが国が先進国中で一番大きな増資額におけるシェアも持つわけでございますから、率先してこれに対応すべきではないか、こういうことが一つあります。
それから、これは絶対条件とは決して申すわけではございませんけれども、この間IMFの暫定委員会、総会等ございまして、その際、少なくとも私どもといたしましては、諸手続の一番重要なポイントである法改正を国会へ御提出申し上げたという姿勢が、総会なり暫定委員会なりの円滑な運営のためにも大きく利するところがあるであろうということから、この問題は急ぎ提案をしたわけであります。
実際問題、前回お許しを得て国際会議等に行かしていただいておりますから、通常国会でも出せぬことはなかったではないか、こういう議論は幾らか残るだろうと私も思いますが、その際は、確かに各国の状態の横にらみの問題もございますし、しいて申しますならば、参議院通常選挙後の国会とてあるいは間に合わないこともなかったかと思いますが、あの国会は、御案内のように、所信表明及びなかんずく本院の院の構成等が主体でございましたので、それに最も近い国会ということでこの臨時国会に御提案を申し上げておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/7
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008・鈴木和美
○鈴木和美君 私は、いま大臣から説明があったわけでありますが、海外援助という問題については、国内の財政事情その他海外援助に対する基本的な考え方などなど、各党においてもそれぞれの見解があると思うんです。そういう意味では、もう少し全般的な財政事情等にらんでそういうものが議論できるというようなことにすべきだといまでも思っています。そういう意味では、今後なるべく全般的な財政事情と絡んで議論できるような時間の割り振りなどもしっかりやるように、行政当局は当然でありますが、各政党の皆さんにもぜひお願いを申し上げておきたいと思うんです。
そこで、本題に入らせていただきますが、IMFの増資問題についての実績をずっと見てまいりますと、過去は五年に一度というサイクルで議論なり増資が行われていたように思うんでありますが、今回五十五年に引き続きまして三年間で増資しなければならないというようなことになっておりますが、その背景と理由について、簡単で結構ですから、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/8
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009・竹下登
○国務大臣(竹下登君) IMFは、国際収支の調整と国際収支赤字のファイナンスの促進を重要な目的とする国際機関でありまして、その目的を達成するために必要な資金を主として加盟国からの出資によりこれを賄う、こういうたてまえでございます。
IMFの一般的な増資に関しましては、IMF協定に従いまして、いま御指摘のございました総務会は五年を超えない間隔をおいて検討を行うこととされておるわけであります。前回の第七次増資、これは一九七八年十二月に成立しております。したがって、第八次増資に関する検討はそれから五年以内、すなわち本年の十二月までに行うことが予定されておったわけです。
ところが、先ほども申しましたが、昨年夏以来、一つは、メキシコ、それからブラジル等の中南米諸国を中心とします債務問題が深刻化したことに伴いまして、IMFからの融資を通じて借入国の経済調整を促進する等の面でIMFが果たすべき役割りは一層重要なものになった、こういう認識であります。IMFがこのような役割りを十分に果たすためにはIMFが十分な資金を動員できる体制をできるだけ早く整える必要がある。そこでことしの三月末の総務会決議によって第八次増資の提議が行われた、こういう手順になります。だから、厳密に言えば、ことしの十二月というのが、提議そのものから言いますと、約九カ月ばかり早かったということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/9
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010・鈴木和美
○鈴木和美君 後ほどまた私の見解を述べますが、事務的なことで恐縮ですが、それでは現在のIMFに対しまして融資を求めている主なる国、そしてその国の融資を求めている実情及び具体的なそれに対する対応などについて承知している範囲でお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/10
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011・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) 現在のIMFに対する融資申請というものにつきましては、借入国の大半が非産油開発途上国であるという状況になっておりますが、最近の融資の利用状況を見てみますと、一九八二年には七十四億SDR、それから本年の一月から七月までには七十二億SDRとなっておりまして、過日のIMFの暫定委員会におきましても、IMFが供与する資金に対する多くの加盟国のニーズはそれらの諸国の割り当て額との関係で大きく、また今後とも大きなものにとどまるというふうに言っておりますが、最近の動向から見まして引き続き相当な規模の資金需要がございます。
IMFといたしましては、自己の利用可能な資金の状況も勘案しつつ、借入申請国の経済状況、調整努力、資金の必要性、融資条件等につきまして、今後とも理事会において十分な検討を行って融資を行っていくことといたしておりますが、非産油の開発途上国のほとんどの国が借り入れを行っているというような状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/11
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012・鈴木和美
○鈴木和美君 そこのところ、具体的には時間がございませんから細かに詰めることができませんので、一口に言うて、累積債務を抱えている国の要望というものが逐年ふえているのか、またはそれが解消されるような傾向にあるのか、コントロールできるような状況にあるのか、そういう状況の展望だけちょっと聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/12
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013・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) 開発途上国、特に非産油の開発途上国の累積債務の問題は非常に大きく影響いたしておりまして、この問題、私どもとしても、今後ともかなり長期間にわたって対応していかなければならない問題であるというふうに認識いたしております。 そういう国々の資金需要につきましては、いろいろIMFからの指導等によりまして、彼ら自身も経済調整を進めて彼らの資金需要をできるだけセーブするような方向に行っておりますが、何と申しましても、累積債務額が六千億ドルとか七千億ドルというような規模になっております。そしてまた、かなりの高い金利を支払いつつあるというような状況から考えますと、ここしばらくは引き続きある程度の資金需要は出てくるんではなかろうかというふうに認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/13
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014・鈴木和美
○鈴木和美君 ここしばらくというのはどの程度、大ざっぱなことで結構ですが、どのくらいの期間と見ているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/14
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015・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) もちろん、開発途上国が自己の債務の支払いのために彼らとして輸出等によってどの程度の外貨を獲得することができるか、あるいは金利の支払いも相当のウエートでございますから、国際金利の動向がどういうふうになっていくのか非常に大きく作用するわけでございます。それにつきましては、開発途上国からの輸出につきましては、世界経済、特に先進主要国がどういうような景気動向をたどるかというような要素も大きな要因でございますので、明確な見通しを立てることはむずかしいわけでございますが、この累積債務の問題は、私ども一九八〇年代は少なくともわれわれに対して相当の影響を及ぼす問題であろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/15
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016・鈴木和美
○鈴木和美君 後ほどまたお話しますが、九月二十七日の日経の新聞をちょっと見せていただきまして、当時の暫定委員会で議論になりました中での「日本政府代表団筋によると」ということで解説が述べられておりまして、その中でこういうことが書いてあるんですが、この書いてある中身の発表と、いま局長のお答えと合致しているんでしょうか、それとも違っておりましょうか。
つまり「発展途上国では引き続き極めて厳しい経済状態が続いているとして憂慮を表明している。ただこの結果引き起こされている債務累積問題では今のところ深刻な事態に陥ることはほぼ回避されたという比較的楽観的な判断を下している。」というこの記事があるんですが、いまのあなたの展望とこの記事の中身とは大分食い違うように私は受け取ったんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/16
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017・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) 昨年のIMF・世銀総会の際には、メキシコの債務問題というのが非常
に大きな問題でございました。当時、世界経済いまだ低迷の段階でございまして、国際金融社会としてはメキシコの問題にどう対応するのか、非常にみんな苦労したわけでございます。
ことしのIMF・世銀総会の際には、まず環境として世界経済が、アメリカ、カナダはすでに回復の途上にある、それからその他の主要先進国におきましても景気回復の兆しが出ているというようなことで、環境的に昨年に比べると大分明るくなってきているということと、それからこの一年間にメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラ、そのほかの開発途上国におきまして幾つかの債務処理の問題が起こってきたわけですが、この問題につきましては、IMFの指導もございまして、開発途上国の自助努力あるいは先進国側のいろいろの面での努力、政府とか、それから民間金融機関とか、そういうものによって対応できてきたというようなことで、国際金融社会としては、この累積債務問題というものに対してわれわれは懸命に対応できるという自信をこの一年間に持ってきたんだろうと思います。そういう意味で累積債務問題については明るい見通しを持ってきている、克服可能なというような明るい見通しを持ってきているという意味で、やや楽観的になってきているという状況でございます。
しかし、全く手放しで楽観できるかといいますと、債務の規模が非常に大きゅうございますし、それからそれを早急に解決できるといういい案もなかなかないというようなことで、非常に注意深くわれわれは対応していかなければならないけれども、しかし克服可能であるというような自信を持っているという意味では、楽観的になってきているというのが大方の見方かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/17
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018・鈴木和美
○鈴木和美君 もう一つ事務的に聞いておきますが、今回増資をすることになったわけでありますが、IMFとしての需要、要望にこたえる態度と資金繰りというものは一体どういうことになっていますか、現状は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/18
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019・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) 今回の第八次の増資が発効いたしますと、出資総額は先ほど大臣が申し上げましたように、六百十一億SDRから九百億SDRへと約五割増加することになるわけでございます。今回の第八次の増資とあわせまして、IMFの一般借り入れ取り決めの規模を六十四億SDRから百七十億SDRに拡大するというような措置を講ずることにもいたしておりますので、かなりIMFとしては資金が充実するということになります。
もちろん、IMFの資金の過不足というものは、加盟国の借り入れ需要、どのくらいの資金需要があるかとか、あるいはIMF以外からの資金調達をどの程度できるかというような要因等にもよりますが、そういうような不確定な要因がございますので、現段階で確たることを申し上げることはむずかしいんでございますが、私どもといたしましては、今回のIMF資金基盤の強化によりまして、IMFに求められている触媒としての機能を果たすのに十分な内容なものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/19
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020・鈴木和美
○鈴木和美君 ちょっといまのところよくわからないんですが、数字でちょっと挙げていただきたいのですがね。私の調べたところによりますと、加盟国の出資割り当ての額というんですか、それが三百億SDRですね。そして借り入れ分が百七十億SDR。つまり四百七十億というふうに私は数字をはじいたんですよ。それからIMFの融資状況を八三年の六月末で見てみると、融資実行額が約二百五十二億ですか、それから約束分のうちまだ引き出しが行われていないというのが約百四十八億SDRですか、そういうことから差し引き勘定すると、何か七十億程度だけが使えるお金のようだというように私は見たんですが、この数字の見方は間違っていましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/20
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021・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) IMFの増資によりまして一体どれだけIMFとして利用可能な資金がふえるかという点でございますが、これは概算でございますが、このIMFに払い込まれます出資総額のうち、開発途上国の通貨によっても払い込みが行われますので、必ずしもその出資増加額全部がIMFとしてすぐ融資に利用可能ということにならないわけでございますので、今度の増資後、六百十一億SDRから九百億SDRに約二百九十億SDRふえますと、そのうちの半分、IMFの試算では約半分くらい、約百五十億SDRくらいが、今回の八次増資に伴いまして利用可能資金がふえるというふうに見ております。
それからまた、先ほどちょっと申し上げましたが、IMFの一般借り入れ取り決めの増額が行われます。六十四億SDRから百七十億SDR、それによりまして百六億SDR調達可能ということになりますし、そしてまた一般借り入れ取り決めの増加に並行いたしまして、IMFがサウジアラビアから十五億SDRの借り入れをすることができるという話がまとまっております。したがいまして、一般借り入れ取り決めの関係では、資金が約六十四億SDRから百八十五億SDRに増加いたすことになります。
そしてまた、いままでは一般借り入れ取り決めによりまして調達した資金は、この一般借り入れ取り決めに参加していた加盟国だけに融資するような取り決めになっておりましたが、今回改定いたしまして、加盟国、参加国以外の開発途上国に対するIMFの貸し付けに際しても利用できるというふうに資金利用の範囲を拡大いたしました。
そういうことによりまして、私どもといたしましては、現在のIMFの資金需要に対しましては十分対応できるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/21
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022・鈴木和美
○鈴木和美君 一時間しか時間が私ないものですから、この数字をお互い詰め合ってもしようがないんで、後からもう一回きちっと数字を突き合わさせてください。
ただ、私が言いたいことは、その要望や需要や、そういうものにこたえ切れない程度の今回の増資じゃないかということを言いたいんですよ、言いたいことは。数字は後から突き合わさせていただきます。
それで本題に入るわけなんですが、その前に私、日銀副総裁においでいただいております。時間をわざわざ差し繰っておいでいただいたもんですから、大変恐縮ですが、先に日銀の副総裁の見解を聞いておきたいと思うんです。きょう私がぜひおいでいただきたいというふうに思ったことは、今回のIMFのこの増資問題に絡みまして問題になってくるのは、貿易関係における経常収支の黒字問題というものと、円相場といいますか、為替相場というか、その見通しというものがどうしても相関関係を持って議論されなきゃならぬと思いまして、そういう意味でぜひ参考的に意見を聞きたいと思っておいでいただいた次第でございます。
私の聞きたいことは、IMFに対する増資という問題は、民間金融機関への側面的援助というのも当然あると思うんです。それから貿易収支黒字解消という問題もこの中にどうしても含まっている要素だと思うんです。同時に、そのことは為替相場の展望などから国際金融問題に重要な関連を持つわけであります。そこで、一番重要なアメリカのマネーサプライの伸び率が巷間四%ないし五%に低下しているというように伝えられているのですが、その実態と今後の見通し、及びそれに絡んでくるアメリカの国内の金利政策の展望というようなものについて、日銀としてはどういう見解に立たれているのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/22
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023・澄田智
○参考人(澄田智君) アメリカのマネーサプライのお尋ねでございますが、マネーサプライの数字は幾つかあるわけでありますが、その中で為替相場の面からマーケット、為替市場等が一番注視をいたしておりますのは、M1、当座預金と現金、そういうものから成り立っておりますいわゆる決済勘定の数字でございます。これは毎週ふえるとかあるいは減ったとかという数字が出るわけでありますが、この数字を三カ月前のと比較をして年率を出す。それがいわば瞬間風速を示す一番手近な数字である。こういうように見られるわけであります。
これによりますと、月を平均しまして、七月は瞬間風速が一五・三%ふえた、こういう状態でございます。これはかなりのマネーサプライの増加であったわけでございます。ところが、これが八月になりますと、非常に鈍化をしてまいりまして、七・三%という数字になってまいりました。八月の月間を三月前と比較をした数字でございます。さらに九月の第三週、九月の二十一日で終わる週でございますが、この九月の第三週には三・七%とさらに鈍化をいたしました。こういうふうにマネーサプライの増勢は次第にはっきり鈍化をしてきている、こういうふうに見られるわけであります。
その結果といたしまして、アメリカの連邦準備制度がマネーサプライをコントロールする目標の上下の幅を設けておりますが、その幅を七月までは大きく上回ってきておりました。八月においてもまだその幅の上限を少し出るか出ないかというぐらいなところでありました。ところが九月に入ってからは、目標値の範囲内、目標値の上下のバンドの中におさまっている、こういう状況でございます。
今後のこの見通しということになりますと、一つはアメリカの国内景気、四—六月は非常に景気の増勢が急速であったわけでありますが、その後やや落ちついてきている。むしろこれはマネーサプライの伸びを鈍化させる、そういう一つの要因になったんではないかと言われておりますが、そういったアメリカの景気、このところ景気は回復し上昇をしているわけでありますが、その上昇のスピード。それから資金需給、この中にはいわゆる財政赤字によって財政資金を調達する資金需給も含まれるわけでありますが、その資金需給の動向。それからアメリカにおいても日本同様の新しい金融資産がいろいろと出ております。また十月からは預金金利が完全に自由化をされた、こういうことでございます。こういった金融資産の間の金の動き、いわゆる金のシフト、こういったものもマネーサプライの数字に影響するわけでございます。
この流れをどう見るかということで、アメリカにおいてもいろんな見方が分かれておるわけでございますが、概して申しまして、従来非常に増勢が強かったものが大体九月を境にいたしまして増勢鈍化というそういった流れが出てきている。これがアメリカの金利やあるいは為替相場に影響を与えている、こういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/23
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024・鈴木和美
○鈴木和美君 そうすると副総裁、そういう現状の中では、日本の円安傾向が修正されるというか円高になるというか、そういう傾向にあって、当分それが続くというように見てよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/24
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025・澄田智
○参考人(澄田智君) 最近の状態は、本日も二百三十二円台でございまして、先ほど申しましたように、九月に入りましてからマネーサプライが鈍化をした。その影響によりまして、アメリカの金利のそれまで強かった先高感というのがある程度なくなりまして、そしてむしろ先安感というようなものも出てきた。こういうようなところが為替相場に影響いたしまして、現実に金利も若干ずつ下がってまいりました。ことに短期金利が下がってまいりました。そういうようなところから、それが為替相場に影響をして、そして二百四十円台でありましたものが、このところ二百三十円台になり、さらに二百三十円台も下の方へというふうに円高の方向、いわば円高と言うよりは円安是正と言った方が実態でございますが、円安是正の方向に来ているわけでございます。
ぜひこういう状態が今後続いていくことを衷心期待をしているわけでございますが、ただ、為替相場に影響する要因はきわめていろいろとございますし、それからアメリカの金利につきましても、一ころの金利先高感、金利が高くなるという見方一方でありましたのが、金利はやや安い方に、低い方に行くのではないかという見方もマーケットで出てきている。しかし、アメリカの長期金利の高どまりの原因になっておりますアメリカの財政赤字対策等が、アメリカの議会によってどういうふうなことに今後なっていくかというような見通しについても、もちろんまだはっきりいたしておりませんし、その他為替相場の不安定な地合いというものがまだ改まってきたとは——円については、日本の経済の実勢と申しますか、いわゆる基礎的な条件、ファンダメンタルズ、これは物価も国際収支も非常にいい状態でございますが、それが為替相場にそのままあらわれるというようなことが、まだ十分見きわめられるような状態ではございません。もう少し状況を見ていかなければならない。ただ、いままでのところの状況は、かなり円安修正的な動きが出てきている。ここのところの状態としてはそういう感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/25
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026・鈴木和美
○鈴木和美君 もう一つお尋ねしたいんですが、これも雑誌とか新聞とかで見せてもらうだけでございまして、直接お伺いしたわけじゃないんですから誤解があったらお許しいただきたいと思うんです。
現在、貿易収支九十億ドルぐらいのやつが二百億ドルまで超えちゃうというような状況にあるということは、これは世界の大変な関心事だと思うんです。その黒字解消の方向というものについて前川総裁は、何か言葉は円安修正と言った方がいいんですか、円高と言った方がいいのかわかりませんけれども、そういうことによって解消することが一番望ましいと、こういうような見解をおとりになっているように私は承っておるんですが、それは間違いございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/26
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027・澄田智
○参考人(澄田智君) 日本の経済の基本的な状態、物価あるいは国際収支等においても——国際収支は御指摘のように非常に黒字でございます。物価もきわめて安定をしている。こういう状態の中で経常収支の黒字が増大をして、そうしてしかも円の方は安い、一時はかなり円安の方に動いておりました。八月いっぱいそういう状況でございました。そういうような状態は、これは対外的には貿易摩擦、保護主義等に非常に結びつきやすい状況でございます。
現に、日本の黒字の大き過ぎるという批判には必ず、そういう円安の状態であるからそういう状態になっていると、こういう意味において円安に対する批判というものが必ずその場合には大きく取り上げられていると、こういう状況でございます。
したがいまして、黒字対策として、ことに対外的な見地におきましては、これは円高方向に安定させる。そして、円安によって日本の競争力が強過ぎるというようなそういう批判、あるいはそれによって日本の輸出が伸びて失業が増大しているというような批判にこたえるという意味において、円高方向に維持をする、安定をさせる、この努力を続けていくということが、日本の国内においても非常にいい影響を与えますが、対外的におきましては、最もわかりやすい方法でありますし、対外批判にこたえるという意味において最も必要なことである、こういうふうに考えられるわけであります。
そういう意味におきまして、前川総裁が事あるごとに、いまの御指摘のように、円安を是正する、円高基調を維持するということが、貿易摩擦あるいは日本の大幅な黒字という問題についての一番基本的な対策である、こういうふうに申しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/27
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028・鈴木和美
○鈴木和美君 最後ですが、いまのお話を承っておりまして、つまり円安を修正し、円高を定着させるということを前提に置いたとすれば、何といっても、一つの方向は、マネーサプライの低下を行わせながら米国の金利を安定させるという外的要素と、もう一つは、他方から内需の拡大というもので支えていかないとどうにもならぬと思うんです。
そこで、いまのお話を聞いている限りにおきましては、内需を拡大させるため、一つは公定歩合の引き下げの問題であるとか、大型の減税の問題であるとか、投資減税の問題とか、そういうものを入れ込んで、そして内需を拡大するという考え方を実行できるような状況が醸成されていると、いまの状況をそういうふうに私は思うんですが、日銀はどんなふうな御見解になっておられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/28
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029・澄田智
○参考人(澄田智君) 現在、確かに円安是正の方向があらわれております。そして、きょうの為替相場等でもそういう傾向は変わっておりません。しかし、円高の方向でこれが安定的に定着しているかどうかということについては、何分このような動きはごく最近短期間のことでございますし、まだ十分にそれが確かめられるというようなところには至っておりません。また円安方向に戻るようなことがあれば、これはとりもなおさず、せっかく円安是正というふうになってきたのが元の木阿彌であるというようなことになりまして、日本の黒字問題に対する批判、そういうようなものを一層高めることになるおそれがあると思います。そういう意味におきまして、いまお話のように、内需を高めるという意味において、そういう政策をとるということをその条件においてできる限り進めなければならないということは、私どもも全くそのとおりに考えております。
ただ、円安方向へまた動くというようなことに対して、われわれとしては十分慎重にそういうことのないように、その時期を選び、政策の内容も考えていかなければならない。幸いにして現在、金融は量的にはずっと緩和をしてきております。そして市中銀行の貸出金利等も少しずついまもなお下がっている、こういう状況でございます。したがいまして、こういった金融緩和基調というものを維持しつつ、為替相場の動向、そのもとにはアメリカの金利の動向、マネーサプライの動向、こういったものを注視しながら今後考えてまいりたい、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/29
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030・鈴木和美
○鈴木和美君 本当にお忙しいところどうもありがとうございました。
大臣に今度はちょっとお尋ね申し上げたいんですが、先ほどのIMFの資金状況及び融資の要望などの状況から見て、私としては、暫定委員会で、一方では多国間の援助というんでしょうか、そういう意味でIMFの資金の充実を図りたいということがある反面、他方では融資の限度額というんでしょうか、それを引き下げるというような面が先進国の中であらわれているわけでありますね。特にアメリカの議会などの状況を見てみますと、今回の増資に当たって、アメリカの国内的な赤字財政というような点と、アメリカ自身がかねて主張しておる、いい意味では、IMFというのは援助機関ではないんだから、つまりそこに戻せという主張と、別な裏から言えば、多国間の援助というよりは、二国間の援助によって政治的な影響力を強めたいなどというようなアメリカ的な発想というんでしょうか、そういうものなどがあったりして、今回の増資というものは、増資のそれなりの意味は持っているかもしれませんけれども、結果から見ると、つまり形だけを整えたというようにしか私は見ていないんでありますが、大臣の所見をお伺いしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/30
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031・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 確かにアメリカにおきましては、千九百八十何年でございましたか、レーガン大統領の演説もありまして、援助は多国間援助よりも二国間援助あるいは強いアメリカを印象づけるとか、そういうふうな意見があったことも事実であります。われわれが大蔵大臣同士であるいは友人同士で、向こうの当事者なり国会議員なりと話しますと、総体的に二国間援助的な傾向の意見が強いということは私も認識しております。
一方、日本の場合どうかということになりますと、仮に世界の人口四十七億幾らになりましたか、五七・六%がアジアにおる、恐らく六〇%ぐらいになっていると思います、いま。そうなって、そのアジアの中で日本のGNPが、一億一千八百のGNPが二十四億の日本を除くオールアジアのGNPよりもまだ高い。そういうことを歴史的地理的関係から言えば、日本も、なかんずくアジアを中心とすれば、確かに二国間援助というものの宿題といいますか、宿命といいますか、責務とでも申しましょうか、それも大いにやっていかなきゃならぬ。しかし全体的にはやはり多国間の協力というのは必要でございますし、なかんずくIMFというのは、これはおっしゃるように相互機関でございますから、そのときの通貨が不自由した場合に、これは先進国と開発途上国に区別があるわけじゃございません、現実は非産油開発途上国が困っておるから、そこへウエートが置かれておるというのは当然のことでありますけれども、だからIMFはそういう援助機関だと考えるべきでは本来ない。しかしそこに、それがいわば触媒的役割りを果たして民間銀行等からの融通もこれが誘発するわけでございますから、そういう機関としての意義というものはやっぱりきちんと定着さしておくべきだと私どもも思います。
したがって、この増資等になりますと、それは若干国によって考え方は違います。が、そこのところが、理事会で協議したり暫定委員会で協議して、最大公約数を求めて今日に来ておりますし、債務累積国等がどうやらいま、まあまあ心配ないというところまで来たのは、IMFなどがその触媒的役割りというのを大いに果たしたから来たんじゃないかなという意味においては、これからもIMFがそれなりの機能を充実して果たしていくような立場でわれわれは対応すべきである。今度から日本が議長でございまして、議長というのは持ち回りでございますが、なおさら私はそういう立場にあることを最近考えながら、それぞれの国際機関に対する日本の対応していく姿勢は変化さしてはならぬぞという気持ちを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/31
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032・鈴木和美
○鈴木和美君 もう一つ大臣にお尋ねしたいんですが、私も日本の外交方針というものが、いわゆる大ぜいの、二国間じゃなくて、多国間にまたがって援助をするという方針は賛成であります。
ただ、非常に累積債務が多くなってくれば多くなってくるほど、つまり邦銀の銀行筋も不安になりますね。不安になるということは、途上国に対しての融資について、その融資の規制といいますか、条件というか、そういう指導がIMFから強く行われなきゃならぬわけですね。またそのことをやらなけりゃ、単にお金を出すというだけではこれは問題があるわけですよ。しかし今度逆から見ると、余り条件を強くすれば強くするほど、今度は開発途上国における経済の発展がデフレに動いちゃって、逆に効果をもたらさないというような問題があると思うんです。
そういうような二つのプラス・マイナスの側面を持っているものに対して、日本の政府としては、いまお話しのように、議長国というようなお話なんですが、この次あたりにどういう見解を持って臨まれるのか、そこを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/32
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033・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 大体、通貨問題あるいは債務累積国問題というのが起こるのは、一つは大石油ショックだと思うんです。あれによって支払いの金がうんとよけい要るようになった。第一次石油ショックでも、一九六〇年代でございますが、二ドル三十五セントから一ドル七十五セントというような間であったものが、十二ドル、だから六、七倍にまで一遍にいったわけでございますから、それが大きな要因になりました。引き続き第二次石油ショックというものがあった。
そこで今度は、いわゆる一次産品と非産油開発途上国のお客さんであるわれわれ先進国の輸入が落ちたわけでございますね、それが一つの理由になった。それから三番目の理由というのは、少し背伸びした、開発途上国が。日本もそうであった時代もあるかもしれませんけれども、開発プロジェクトなんかが大型過ぎた。そこで資金が足りなくなった。この三つかなと思っております。
したがって、まずは第一に開発途上国の自助努力、債務累積国も含めてですが、自助努力を求めていかなきゃならぬ。
そうしますと、そこに国際機関でいろいろな人が集まって議論しますから、余り無理のないとでも申しましょうか、一番穏当なコンディショナリティーといいますか、条件のようなもので国際機関は非常にその機能を果たしておると思うんであります。私どもも見てみますと、それがなかなか酷だなということを思うこともないでもありませんけれども、現在のところは、それはリスケジュールもございます。条件変更みたいなことを言ってくるところもございますけれども、それなりの機能は果たしておるから、やはりIMF等は、そういう機能を果たす役割りを一面、ただ融通するというだけでなく、それは大きな役割りとして僕は存在しているんじゃないかというふうな認識でおりまして、まだまだ議論してみても、IMFの性格が変わったから根本的に考え直せという状態にはいっていないというふうな共通認識じゃないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/33
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034・竹田四郎
○竹田四郎君 今度、議長国になるということでありまして、今度の出資の方も比例配分方式から選択調整方式ということで、円も大分たくさん出すわけです。いまこの円というのが自由取引通貨として認定されているかどうか、私よくわかりませんけれども、国際的に見れば、円で取引をするよりもまだドルで取引をする、こういう状態であろうと私は思っております。
そこで、たとえば他の国が日本の出資分の円を引き出すということで円を引き出しても、必ずしも自由取引通貨ということにはなっていないということになりますと、これは当然その引き出した国がこれをドルにかえてくれというふうに日本に要求してくる場合が多々あろうと思うんです。その場合には、この協定によって日本は当然ドルにかえてやらなきゃならぬ、こういうことになってくるだろうと思うんです。
そういたしますと、いまのところは、なるほどドルがたくさんあって、準備ポジションが非常にいいわけでありますからできます。しかしこれは貿易が黒字だということでいいわけであって、今後、貿易摩擦で貿易黒字をなくしていかなくちゃならぬということになりますと、日本の総合収支というものは、これはきわめて私は問題になってくると思うんです。そのときに、もちろんIMFでありますから、これは円を引き出しちゃいかぬよ、ほかのものを引き出しなさいということが、理事会ですか、そういうところで決められてくるとは思うんです。そういうふうになっても、ドルの危機、日本の準備ポジションが非常に悪くなるということはないと思うんですけれども、せっかく日本が多く出資をしていながら、日本がそういうことができないということになると、日本に対する政治的影響、これは私は非常に大きいと思うんですよ。そういうものを一体、今度の出資等の関連でどう考えて大臣はおられるのか。
それともう一つは、これだけたくさんのものを出していくわけですから、当然円というものがもっと国際的に自由に取引できるところの通貨になるというそういう措置、これが今度のたくさんの出資と見合っていかなければ、たくさん出資したという意味、そういう意味がないんじゃないか。私はこう思うんですが、その二つの問題、特に円を自由通貨にできるように、フリーリー・ユーザブル・カレンシーですか、そういうものにどうしていくのか、そのことはどう考えていらっしゃるのか。その辺のことを明確にひとつしていただかないといけないんじゃないだろうか、こう思うんですが、どうですか。これは議長国としても、そういう意味では大変私は重要な責任を持つだろうと思うんですが、その辺を御答弁いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/34
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035・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) ちょっと技術的な点は私からまず御説明さしていただきますが、加盟国から借り入れの申し込みがございまして、IMFがその貸し付けに際しましてどういうような通貨で借入国に貸し付けを行うのかという場合には、IMFは国際収支及び外貨準備の状況等を勘案しまして、そういう状況の良好な国の通貨を使うというふうになっております。最近御承知のように、わが国の国際収支及び外貨準備の状況が非常に良好でございますので、最近のIMFから加盟国への貸し付けに際しては円がしばしば使われているところでございます。
もちろん、先生御指摘のように、IMFから借りた国が円をそのまま使うというようなことでなくて、それをドル等その他の通貨にかえたいという場合には、通貨当局あるいは市場において交換が行われます。私どもも、現在の国際収支及び外貨準備の状況から、そういうような要望があったときにはこれに十分応じているわけでございます。したがいまして、私どもとしては、IMFに出資をいたしました円が、国際的な借り入れ需要にIMFが対応するために十分使われるようにしていくためには、私どもとして、日本の国際収支及び外貨準備をそれに対応できるような状況に維持しておくことが今後とも必要であろうかと思っております。
それから、第二番目の、円が世界の市場において自由に使用される割合をもっと高めていくべきではなかろうかという御指摘。確かに円はドルとかあるいはドイツ・マルク等に比べますと、いろいろ歴史的あるいは経済圏的な理由もございまして、円としての国際通貨面での機能の分野というのはまだ低い状況にございます。私どもといたしましては、円が徐々に国際通貨として使用されるのを是認して、それに耐え得るような体力を絶えず維持していかなければならないと思っておりますが、私どもいろいろの制度面での制約というのは、御承知おきのように、自由化いたしておりますが、円が国際経済社会において使われるには、それなりの需要面、たとえば一般的な取引におきまして円が使用される、円の国際化、そういうようなものがあって円の国際取引としての使用の度合いが高まっていくわけでございますので、そういうような経常的な取引のみならず、資本取引におきましても円が最近次第にかなり使われるようになってきております。今後とも漸進的に円が国際通貨として使われていく度合いが高まってまいるのは、これは世界の自然の動きだと思いますので、それに対応できるような体力を絶えず維持していく必要があろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/35
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036・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 基本的にいま申し述べたとおりでございますが、さようしからば、円のいわゆる仕組みの上ではもちろん自由になっておりますが、それがより使われるようなことにはどうすればいいかということで、一つは輸出入の契約そのものの円建て契約ができるだけ多くなるような努力をしなければならぬと思っております。長らく国際的にドルというものの持つ歴史的経緯からして、円がまだ特に少ないという点は確かにございます。が、これも積極的に輸出入の取引において円建ての契約が多くなるような努力をしなきゃならぬ。
それからもう一つは、いま申しておりましたが円建て債。日本の市場で最近発行しておられます、いろんな国の方が。これの需要に応じていくということも、円がより一層国際通貨としての価値を高からしめることになりはしないかというふうに思っております。
したがって、きょう、いま日銀副総裁も言っておられましたが、きょうの寄りつき二百三十一円六十銭でございますが、いろんな意味において円というものの価値自体が全体的な角度からいわば最も健全な通貨だという国際的認識をより高めるような努力を各般にわたってやっていかなきゃならぬことではなかろうか。当面われわれが考えるのは、円建て契約とかあるいは円建て債の発行とかというようなことについてはかなり積極的にこれに応ずる環境も整ってきておりますし、そういう傾向にはあるというふうに私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/36
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037・塩出啓典
○塩出啓典君 九月二十七日からワシントンで開かれましたIMF・世銀の年次総会に大蔵省から大場財務官、日銀総裁等が出席をされたわけでございます。これは大蔵省と日銀にお尋ねいたしますが、きょうは出席された御当人はお見えになっていないわけですが、一年前のトロントの総会のときには、メキシコの経済危機が非常に問題になって、今回はブラジルの債務問題が一つの焦点ともなったようでありますが、一年前に比べれば、世界経済は先進国等ではようやく不況を脱したという、こういう明るさもあったわけですけれども、しかしこういう開発途上国の債務問題はより深刻になってきたような気もいたします。こういう一連の国際会議を通して、一年前と比べてどういう印象を持たれたのか、もしそういうお話を聞いておりましたならば御感想を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/37
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038・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) 御指摘のように、昨年のIMF・世銀総会の際にはブラジルの問題が非常に大きく、また世界景気も低迷の状況でございました。一年後の今年の世銀・IMF総会の際には、世界景気も回復の途上あるいは回復の兆しを見せておりまして、環境的に昨年と大分様子が変わってきておりますし、それからこの一年間にブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ等いろいろ債務救済の問題が現実の問題として起こって、それに対応してきて、一年間は国際金融社会に大きな混乱を起こすことなしに対応できたという経験からの自信というもので、確かにこの債務累積問題はこれからまだ相当長期間われわれの対応が迫られる問題であるとは思いますが、賢明な国際金融社会はこれに対して十分対応していくことができるという自信、この債務累積問題が国際金融不安につながることはないという見方が大方の見方であったというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/38
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039・澄田智
○参考人(澄田智君) 私どもも、今回の総会は、昨年におきましては、まだ世界経済が停滞のさなかでございましたが、本年においては、総体としては世界経済が回復の基調にある、いかにしてこの回復を安定的にさらに続けていく、あるいは発展させていく、こういうことに関心があったという、そういうようなこと。
それから、昨年は、初めての経験のメキシコの累積債務の問題が非常に大きな問題であったわけでありますが、本年におきましては、いまも国際金融局長の答弁にもありましたように、国際的な協力、それから民間金融機関の協力、こういうようなものによってIMFを中心として一応そういうメキシコ問題についての処理、対応ができ、その後の幾つかの国の問題に対してもこれに対処してきた。ブラジルの状態が悪くなってきて改めてまたブラジル問題に対して、この機会にもう一度その対策をとったわけでございますけれども、しかしそれも経験を積み重ねた上でのことでありますので、それだけことしの方が全体の協力という姿勢は十分はっきりしておったわけだと思います。
それだけに今後については、ただいま御審議いただいております増資等が早く実現するというようなこと、あるいはその他世銀、第二世銀の資金協力というようなことについて今後に備えての必要というものが強く言われたと、こういうふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/39
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040・塩出啓典
○塩出啓典君 こういう開発途上国の累積債務の問題にいたしましても、これはそういう国だけの問題ではなしに、先進国、またその中に重要な位置を占めるわが国のあり方も非常に問題になってくるんじゃないかと思うんであります。
いままでそういう意味で、わが国の場合は余りにも円安過ぎるということが言われてきたわけでありますが、先ほどの質問に対しまして、最近の円相場が円高の方向にきているという、そういう点についていろいろ御説明があったわけでありますが、これは内外の金利差というものが反映されたんじゃないか。わが国の物価が安定し、経済も着実に進んでおるという、そういうものが余り反映されていないんではないかという、こういうような御意見のようだったんでありますが、そういう点は、今回の相場修正の問題にいたしましても、西ドイツなどの欧州の通貨と円との間にはいろいろ差があるわけで、そういう点ではわが国の経済状態の反映があらわれておるんではないかと、こういうような御意見もあると聞いておるんですが、その点についてはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/40
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041・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私ども、若干古くなりますと、要するにドルに対する円の価値の推移というのは、ドイツ・マルクとそれからスイス・フランと同じように動いておればまだ安心だと、かつてこういう気分がございました。有事に強いドルと言いますので、どこかできな臭い話があるとドルが若干高くなるとか、こういう傾向は今日まで一般的によく言われる話であります。しかし、確かにいま塩出委員御指摘のように、円安だなと思っておっても、いわゆる対ドイツ・マルク、スイス・フラン等から見ると少し日本の方がいい条件で動くようになった、これが数年の傾向じゃないかなと、これはうれしいことだと思います。それは基本的には、いまおっしゃいましたいわば成長率から、また失業率から、インフレ率から、全部そのようなファンダメンタルズを総合したものがそういう成果となって出ておるには違いないと私も思っております。
ただ、対ドルという場合には、大きく影響しておるのは、経常収支等から言うと逆の方向へいかなきゃいかぬものが、影響しておるのは、アメリカの、端的に言って、財政赤字の拡大に伴う高金利ということに影響を受けておると言わざるを得ないと思うわけであります。したがってきょうの二百三十一円六十銭というのは、これはたまたま寄りつきの報告が入りましたから申し上げたわけでございますけれども、これの推移については一番最も慎重にわれわれも対応していかなきゃならぬし、本来だれしも思っておる、円安是正がもっと行われるべきだという気持ちが、塩出さんにもあれば私にもあるのですが、そこのところ、いまおっしゃったM1の問題あるいは金利問題がそういう情勢にありますから、いまのところはこれを静かに見守っておりますが、本来ファンダメンタルズ等からいえばもっと円安是正の方向にいくべきものだ。ただ、御指摘いただいた対ドイツ・マルクとかあるいはスイス・フランとか、そういうものに対してはファンダメンタルズがある意味において反映されておると、私もそういう理解は共通しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/41
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042・塩出啓典
○塩出啓典君 いま国際収支が大幅黒字で、この八月で経常収支の累計黒字額が約百三億ドル、年度間では二百億ドルを超えるんじゃないかという、こういう点については日銀としてはどういう見通しを持っておるのか。また、このままいけばかなり通商摩擦を起こす原因になっていくんではないか、こういう点についてはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/42
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043・澄田智
○参考人(澄田智君) 四月—八月でございますが、四月—八月の間の経常収支の黒字は、いま御指摘のように、百億を超えまして百五億ドルというところでございまして、このままこれを伸ばしますと非常に大きな数字になる。その点はおっしゃるとおりでございます。
ただ、幸いにいたしまして、アメリカの経済情勢等も、一時非常に景気の回復が早かったというのが若干スローテンポになってきておりますし、金利の先高というようなものもちょっとおさまってきております。そうして円も回復をしてきている。こういったようないろんな情勢というようなものが今後反映をいたしまして、輸出も非常に急速に伸びたというようなものが今後ややおさまるというようなことも、そのときの状況によって、本年度の前半あるいは八月までの数字がそのまま年度いっぱい続く、こういうふうに考えないでもいいんではないか、こういう点もあろうかと思います。
それからさらに、経常黒字の内容のうちの相当部分は石油価格の下落によるもの、これはいわば全くそういった条件が変わったということによるものもあるわけでございますので、黒字の内容の理解に努め、これを対外的にも理解してもらうことに努めますとともに、今後さらに内需を可能な限りふやす、そして円の相場を円高方向に持っていく。こういうような努力によって対処をしていくということではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/43
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044・塩出啓典
○塩出啓典君 ここで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、日本の国内においても、またアメリカにおいても円がちょっと安過ぎる、もっと円高の誘導策をとるべきである、こういう意見が言われてきておるわけであります。そこで、わが国も、アメリカのこういう財政赤字による高金利が原因であるとばかり言っておるわけにもいかぬわけで、やっぱりわが国としてもいろいろ対応はとっていかなければいけないんじゃないか。報道によりますと、レーガンが日本に来たときに、外務省あるいは財政当局含めて、円高を誘導する、そういうことを議題にしたいと、こういうようなことが言われておるわけでありますが、大蔵省としてはどのような認識を持っておるのか。
それと、たとえば資本導入の規制とか、あるいはドル建ての国債を発行しろとか、こういうようないろいろ意見が国内からもまたアメリカサイドからも出ておるようでありますが、今回のレーガン訪日に備えて、ある程度わが国としてもそういう対応策を考えておく必要があるんじゃないか。その点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/44
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045・竹下登
○国務大臣(竹下登君) いまお話がありましたが、確かに、この間外務大臣が国連総会へ参りました際にシュルツ国務長官と会ったら、円・ドル問題相談しようじゃないかと、こういう話があった。安倍君の方は、シュルツさん、あんたは財務長官もやっておるし、予算局長もやっておるし、専門家と非専門家じゃだめだから大蔵大臣と日銀総裁に伝えておこうと、こう言うてきたという報告を私も聞いております。これは新聞紙上にもある程度そういうことは出ておりました。
で、シュルツさんという人はああしてニクソン政権のときの労働長官であり、予算局長であり、財務長官でありましたので、私もお会いしました際にも、非常に興味はそういう方向に向いておる、あの人の経歴からしてもそうであると私は思います。が、それのみならず、首脳会議でさて円・ドル問題がどうなるかということは、首脳会議の議題というものは、これは双方がこれからいろいろやられることでございましょうし、中身についてわれわれが予断を持つわけにもまいりませんが、財務長官のリーガンさんは恐らくお越しになるでございましょう。そうしたら当然出る話です。
ただ、私どもとリーガンさん、あるいは主要国の大蔵大臣同士の話の中では、この通貨問題については、ブレトン・ウッズ体制みたいな感じではございませんが、どういう形かで協議を進めていこうという合意が行われて、結局十カ国の蔵相ないし蔵相代理レベル、実務者レベルでどういうところから議論をしていくかということを決めようという話し合いが決まったばかりでございますので、その勉強会が十一月ごろからスタートしますから、したがって総合的な議論の中ではたびたび話しておりますから、特別なものはそういう主要国の大蔵大臣会議で、サミットでもある程度合意された問題ですから、それ以上突っ込んだ話はないかもしらぬ。
しかし、二国間の問題としましては、たとえばアメリカのキャタピラさんで見れば、具体的に言えば、日本の小松製作所にあちこちで負ければ、あれは円安誘導しているからだと、こういうような発言もございましょう、個々のケースにおきましては。したがって、アメリカの立場から見ても、日本の円安というのは大いに気になる課題だろうと思います。だから、どういう形で正式な議題としてディスカスするのか、あるいは絶えずカウンターパート同士で会いますから、そこで話し合いをするのかは別として、われわれも対応していかなきゃならぬ問題であるということは事実であるわけでございます。
で、そのときに合意されたことで実行に移されたとすれば、いままでは協調介入がございました、八月でございましたか。協調介入というのは、僕は本当は、いつやるか、やるのかやらないかわからないところに、まあ戦争抑止力じゃない、いわゆる効果があるという感じを持っておりましたが、アメリカ通貨当局の方から協調介入をしたという事実が一度だけ発表になりました。これはほかの投資家に対する一つの警鐘を乱打したという意味では意義があったかなと思いますが、そういう協調介入の姿勢はいつでもこれは持っていなきゃならぬ問題だと思っております。
それから具体的にいま御指摘のございました資本の流出規制という問題も議論のあるところでございます。ただ、この問題、されば今度は資本の流出を規制される国だとなれば、また流入がとまってしまうという危険性があるわけです。オープンマーケットにしておるからこそ流入もあり得るとすれば、勢いこれはまさに消極的にならざるを得ないかなと。利子平衡税をも含めて、アメリカ自身でもやって失敗したというような報告も聞いておりますので、問題があるかなと思っております。
それからいま一つ御指摘になりましたドル建ての国債を発行したらどうだと、こういうことですが、この意見もございますが、これは当然法律改正をしなきゃできない問題でございますけれども、私もかつて西ドイツの大蔵大臣と話し合いをしたときの印象がいまでも非常に強烈にこびりついておりますのは、二つの問題点があるんじゃないかなと思います。
一つは、黒字国でございますから、黒字国がよそへ行ってまた金を借りるというと、開発途上国で見れば、高金利の際、金持ちがおれたちの分野を荒らすんじゃないかという一つの懸念が当然起きてきます。
それからもう一つの問題は、これは明治・大正生まれだからそんな感じがあるのかなと思って若干いま思想の是正をしておりますが、とうとう外国へまで金を借りに行くようになったかという、いわゆる国威みたいな感じのものが日本国民の中にはまんざらないでもないと思うんです。ただ、これは割り切りようによって割り切れるかなと思うのは、たとえばそれはこっちが売りに行ったんじゃなく、向こうが、相手が投資対象としてこれを選んだということになれば、問題は、その点の私の個人的に考えておる懸念はクリアされるのかなと、こう思います。ただ、いま直ちにあんな金利の高いものを借りるということは、それは現実問題としてはなかなかない問題かなと。
しかし、いま御指摘になりましたような問題も、真剣に部内でも検討しながら、いわゆる円・ドル問題というものについては、私どもも絶えず二国間であろうと話し合いに応じ、ある種の提案もしていかなきゃならぬ問題であるという問題意識は御指摘のとおり持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/45
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046・塩出啓典
○塩出啓典君 これは日銀副総裁にお尋ねしたいわけでありますが、いままで日銀総裁は、大体二百二十円台が定着をしてくれば当然公定歩合を下げると、私が半年前のときにはそういうようなお話だったと思うんでありますが、しかし最近は経常収支も非常にアンバランスであるし、また円高に誘導すべきだという意見も非常に強くなってきておるわけで、そういう点から私は、円高を誘導するために公定歩合の引き下げというものを、二百二十円台になれば、それが定着すれば考える意向であるのか、そのあたりの考えが変わってきてないかどうか。その点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/46
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047・澄田智
○参考人(澄田智君) 円の相場というものが、金融政策の場合に一つの考慮すべき点であることはそのとおりでございますが、金融政策につきましては、為替相場だけでなくて、あるいはその背景となる内外の情勢、それから日本の国内の経済情勢等の総合的判断で機動的に運営するたてまえ、そういうふうに常々申し上げているわけでございます。
たとえば具体的に二百二十円台ならどうかというようなことについては、従来から二百二十円台だからというようなことで公定歩合の変更を行うというようなことを申したことは実はないわけでございますし、今後ともそれは避けるべきことであると思っております。現在の状態は、御承知のとおり物価は安定をいたしております。 国際収支も黒字が拡大をしている。こういう状態のもとで金融政策運営上もできる限り内需拡大に配慮していくことが望ましい。私ども常々そういうふうに思っております。
しかし、先ほど来いろいろお話のありますように、円の相場というのが非常に重要なこういったときに、円相場に悪影響を及ぼすというようなことがないように十分配慮をする。円高方向への安定定着ということを十分に見きわめなければならない、こういうことで今後考えてまいる。そうして、その基本は、機動的に総合的判断で運営する、そういうたてまえでまさに臨むべきことであると、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/47
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048・塩出啓典
○塩出啓典君 この問題、最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、公定歩合が下がれば確かに景気対策にはプラスになるわけであります。しかし最近は優良企業はあんまり金を借りてないから、公定歩合を下げてもあんまり影響ないんじゃないか。むしろ、そういう点で円安になるとかすれば、いろいろ輸入物資も高騰をする。そういう意味で公定歩合の景気に及ぼす影響というのは以前より少なくなったんじゃないかという、そういう意見もあるわけでありますが、そういう点についてどのようにお考えであるのか。かなり円を高くするということについては、アメリカからの強い要望もありますし、そういう点を考えて、大蔵大臣の御意見を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/48
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049・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 非常にむずかしい問題でございまして、いま御指摘のように、マル公の操作が原則的に言えば直ちに短期金利に連動しますし、したがって設備投資にしても、すべて景気を支える要素に、下げた場合は、要素になるという原則はありつつも、従来ほどの、乗数効果とでも申しますか、そうしたものが減殺されているのじゃないかということは、これは私は公定歩合操作のみならずみんなに言えることじゃないかという気もいたします。
その一つ、たとえば減税をやりますと、これは当然消費を刺激する。しかし貯蓄性向というのは、一方、物価が安定しておりますから高くなっておる。だから乗数効果というものは、これも若干減殺されてるんじゃないか。それから公共事業、これも確かにすぐ景気に響く問題でございますが、これもまた土地代の高騰とかいうようなところへ吸収される率が多くなっているので、かつてほどの効果はないかもしらぬ。そうすると結局、総合対策の中でやっていかなきゃならぬなあと、こういう気がします。
先ほど御意見にお出しになった資本の流出規制、そして今度仮にドル建て債を発行すると、これはどっちも円高につながる要因でございますけれども、考えようによると、中にあるものを出るのを規制して外から持ってくるということは、まあ一つの同じ効果でも、暖房と冷房と両方使うような感じもしますし、それから一方、円高基調によって輸入をふやすということになると、輸入という行為そのものは円安につながるということになりますと、これも暖房と冷房と一緒にやらなきゃならぬ。したがって金融の弾力的運用、マル公はもう日銀の専権事項でございますが、そしていま一つの公共事業の投資も考えようとか、あるいは減税問題というようなものもすべて、一つ一つ見たときには暖房と冷房と両方であったとしても、総合的な中で考えて、いわゆる政策が景気刺激に役立つ方向に誘導していかなきゃならぬという、非常に複雑な政策選択になったんじゃないかなという感じは私も素直にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/49
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050・塩出啓典
○塩出啓典君 それから次に、先ほどの質問で、開発途上国の累積債務の問題については、一年前よりは、解決できるという非常に明るい見通しというか、確信を持ったというようなお話でございますが、その点いろいろ累積債務の状況、数字等を見ますと、だんだん悪化しておる。私はそういうような認識でございまして、解消に非常に自信があるというのは、いささか政治的発言か、あるいはちょっと見方が甘いんじゃないかなと、こういう感じがするんですが、大蔵大臣の率直な御意見はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/50
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051・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは債務累積問題というのは、先ほど三つの理由を申し上げました。すなわち一つは、石油価格が高騰したから払う銭が多くなった、開発途上国側から見れば。それから二番目には、先進国もいわゆる世界同時不況みたいな感じになったから買ってくれなくなったということ。それから三つ目には、開発計画そのものが、少し過剰と申しますか、大き過ぎ、実力以上でなかったかという反省。それからもう一つはやっぱり高金利だと思います。だから、金利が高いから借りたら利払いに追われるという四つの要件が債務累積問題をより深刻にしたというふうに思うんであります。
しかし、私ども一方、パリ・クラブがあり、日本でもいろいろな情報収集をいたしますが、今日時点で考えますと、先進国日本、成長率で見ますと、次がアメリカ、西ドイツ、イギリスぐらいまででしょうか、フランス、イタリアはまだとしても。その辺までの景気というものは若干回復しておる。というと、第二番目のいわゆる向こうから見れば輸出に若干の貢献もするであろう。それから三番目の各種プロジェクトの下方修正みたいなものですか、日本的な言葉でいえば、そういうこともそれなりにやっていただける状態になっておる。
それから国際機関が世話をやきますから、したがって日本の銀行ももとよりでございますが、他の先進国の民間金融機関も、その国際機関の持つ触媒的役割りがあるから貸し続けるとでも申しますか、あるいは手形のサイトを延ばすような感じの措置に対しても応ずるというのがおおむねの合意に達したから、いまのところブラジル、ブラジルと、こう言っておりますけれども、私は、その辺までは大体全体的な対応の中で金融不安、国際金融不安というものにまで至らなくて済んだな、やれやれという、表現は非常に悪いんですが、そういうような率直な印象を最近持っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/51
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052・塩出啓典
○塩出啓典君 こういう見通しがどうなるかというのは、先を見なきゃわからないわけでありますが、これは私としてはかなり厳しい印象を持っておるということをお話ししたいと思います。
それから米国はこれら開発途上国の経済危機の救済に対して非常に消極的な姿勢があるように思います。今回のIMF第八次増資についても米議会はいまだ批准をせず、かなり難航しているように聞いているわけであります。また先般の国際会議で、世銀の特別増資あるいは第二世銀の第七次増資の問題も、アメリカが賛成をしなかったためにまとまらなかった。一番シェアの高いアメリカがこういう国際機関を通しての開発途上国の経済危機の救済に対して熱意がないということは、私はいささか理解に苦しむわけでございますが、そういう原因がどこにあるとお考えであるのか、これをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/52
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053・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) アメリカの国際金融協力に対する態度でございますが、アメリカの経済的な実態が昔と大分変わってきているということは否めないかと思います。特に、最近におきましては、アメリカの財政赤字が非常に大きいということが、アメリカの財務省の対国会折衝で大きな制約になっているんでなかろかと思います。
私ども、国際金融機関の出資等におきまして各国がそれぞれの経済実態に応じて協力をすべきだということで、各国際金融機関の各国のシェアの推移をごらんいただきますと、アメリカも大分かつてに比べるとシェアは下がってきております。しかし、それぞれの時点におきます経済の実態に応じて協力をやっていくべきだということは、それぞれ認識しております。
御指摘のように、今回のIMF・世銀総会の際に、世銀の特別増資あるいは第二世銀の第七次増資の話が関係国で合意に至らなかったことは事実でございますが、それもアメリカの財務省当局が目下IMFの第八次増資法案成立に全力を挙げておりまして、これが本体につきましては成立しておるんですが、ただ修正条項、いろいろ条件がついておりますのが上下両院におきまして異なっておりますので、それを両院協議会を開いて調整しなければいかぬという問題が残っておりまして、レーガン大統領も言っておりますように、アメリカとしてはその法案の成立に全力を尽くすという力強い決意を表明いたしております。
そういう問題がまだ片づいていないということで、アメリカも世銀の特別増資、IDAの第七次増資の問題につきまして、なかなかかたい姿勢と申しますか、積極的になれなかった面があるんじゃなかろうかと思っております。しかし、このIMFの増資法案がアメリカにおきまして成立するようになりますと、アメリカもこれらの点につきましてもう少し態度を柔軟にしてくることが期待できるんではなかろうかというふうに私どもも希望いたしております。
いずれにいたしましても、こういうような国際金融機関にどの程度の資金を出し合うかということにつきましては、各国がそれぞれの経済実態に応じまして応分の協力をやっていくという姿勢で臨むことが肝要かと思います。そういう意味で、わが国は、近年の経済実態の向上を踏んまえまして、また当委員会の附帯決議を体しまして、わが国としては、それぞれの国際金融機関におきましての地位の向上、出資の向上に努めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/53
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054・塩出啓典
○塩出啓典君 わが国のいわゆる民間金融機関あるいは公的金融機関の途上国向けの債権の状況はどうなのか、また返済繰り延べ処置、いわゆるリスケジュールをとっている債権はどれほどあるのか、この点は明らかにできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/54
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055・酒井健三
○政府委員(酒井健三君) わが国の民間金融機関及び公的機関の途上国向けの債権の保有状況でございますが、これを各国別に個別に申し上げるのは、それぞれその債務国に対します外交的な配慮もございまして、これまでも差し控えさしていただいているわけでございますが、中南米及びアジアの主要債務国について若干まとめて、グループで申し上げさしていただくことをお許しいただけるならば、まず、時点といたしましては一九八二年末、昨年末でございますが、そしてまた債権としては中長期及び短期の貸し付け、すべての貸し付けを含んでおりますが、中南米のブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、この主要四カ国に対しましてわが国の銀行の貸付残高は二百三十九億ドル、それから輸銀、基金の公的な貸し付け、公的な債権は八億ドル、それからアジアの地域について見ますと、韓国、インドネシア、フィリピン、これらの国に対します民間の銀行の貸付残高は五十三億ドル、輸銀、基金の公的債権が四十一億ドルということになっております。
なお、債務繰り延べ、リスケジュールの実施状況についてでございますが、これらの国に対するリスケジュールの状況につきましては、まず民間銀行からそれらの国が借り入れをしておるものにつきましては、先ほど申し上げましたメキシコにつきましては本年の八月、ブラジルにつきましては本年の二月、アルゼンチンにつきましては一部本年の九月、それぞれ民間銀行との間でリスケジュールの調印が行われておりますし、またベネズエラにつきましても、リスケジュールをしてほしいという要請がございまして、現在ベネズエラと民間銀行との間で協議を進めているところでございます。
なお、これらの国の公的機関からの借り入れに対しましては、メキシコにつきましては本年六月に債務救済が合意されております。またブラジルにつきましては、ブラジルから債務救済の要請が正式に出されておりますので、今後協議をしていくことにいたしております。しかし、アジアの主要債務国でございます韓国、フィリピン、インドネシアにつきましては、対外債務の支払いが滞っておりますので、リスケジュールの要請というものは出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/55
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056・塩出啓典
○塩出啓典君 最後に大蔵大臣に、このたび議長国になられたわけで、私は、こういう開発途上国の債務問題は、ただ金融問題だけではなしに、もっと総合的な手が必要ではないか。たとえば中南米諸国の都市問題等に日本の都市政策を援助するとか、こういうような幅広い総合的な政策が必要である、こういう意見があり、私もそのとおりと思うんでありますが、特に今後、議長国としての大蔵大臣の御決意を承って質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/56
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057・竹下登
○国務大臣(竹下登君) IMFの議長国というのは持ち回りでございまして、しかし大変な債務累積国であったとしたら議長国にならなかったかもしれませんから、それはそれといたしますが、少なくともIMFの機能というものが十全に果たされるような努力はしなきゃならぬという一点にその点は尽きます。
いま御指摘ありましたように、いわゆる開発途上国問題については、これはアジアのみならず中南米、全世界的な立場で日本が果たしていかなきゃならぬ役割りというものにつきましては、それは実際国際会議で議論をいたしておりますと、日本ではそうではございませんけれども、どうしてこんな驚異的発展を遂げたんだ、ノーハウを教えてくれと、そう言われて、国会へ今度来ますとそうなりませんので、そこのところの頭の切りかえにいつでも五分くらい時間がかかるぐらいな感じが、率直にいって、いたします。どなたさんがおなりになりましてもそうでございますけれども。
したがって、一つは、予算の上で言えばODAでございますとか、あるいは民間のそういう考え方が相手国のプロジェクトと非常にマッチするような政策誘導でございますとか、そういうことは当然していかなきゃならぬし、と同時に、いつも言われておりますが、表現は人材養成への協力とかというようなことを言っておりますが、確かにそれは教育水準が高いとか低いとかという問題は別として、日本が開発途上国であった時代から今日まで進んできたことを思うにつけては、ノーハウをも含めて、広範な立場でそれぞれの国との協調に応じていく姿勢は持ち続けていかなきゃならぬ問題だということをつくづくと感じます。
私は世銀等へ出ますたびに思います。一九六〇年代が日本の繁栄の時代であったとすれば、目に見えるもの、黒四ダムにいたしましても、新幹線にいたしましても、東名高速にいたしましても、世銀の金が入っております。いまは逆に、いわば増資等も成れば、とにかく二番の地位になる。増資しようなんというようなことを主張したりしております。国会の決議にもこたえて、その国際的地位とまさにハーモナイズされた増資規模というようなことを主張しておりますが、往時のことを思い出せば、それを借りてきてくだすって今日の日本をつくっていただいた先輩各位に感謝するとともに、国際社会の中に果たしていかなきゃならぬ役割りというものはつくづくと私も感じます。御指摘の趣旨に沿った対応をすべきであると思っております。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/57
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058・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) この際、委員の異動につついて御報告いたします。
ただいま、鈴木一弘君が委員を辞任され、その補欠として三木忠雄君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/58
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059・近藤忠孝
○近藤忠孝君 最初に、アメリカの国会での審議の状況について質問いたしますが、この増資法案について上院では六月八日、下院では八月三日に通過しましたが、現在両院協議会で協議中であると聞いています。なかなか法案成立の見込みがつかないということですが、中身がなかなか大変のようです。両院とも数十の修正案が提出されまして大変な議論がされて、そして上院では賛成五十五対反対三十四、下院では賛成二百十七対反対二百十一、わずか六票差で可決という状況で、議論内容もIMFの運営方針から世界経済の問題に至るまで非常に多岐にわたっておるわけですね。それで、数十の修正案に対して採択された主な採択条項が、先ほど大蔵省の方から資料をもらいましたけれども、下院で十六、上院で七。ですから、わずか二時間で通してしまおうという日本の国会とは大変違うわけでありますね。
大臣、この採択された主な修正内容については御存じですか。そして日本の大蔵省としてはその問題について分析、検討などを行っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/59
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060・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 下院採択条項、上院採択条項というようなものは大体承知しております。ただそれに対して、外交的配慮からいって、内的分析は別として、余り公的批判をすべきかどうかということについては、内政干渉みたいな感じもございますし、いささか遠慮すべきであると思うんでございます。
しかし、本体は一応可決されて、今度は、九月が予算時期になりますから、年度が違いますから、だから八三年じゃなく、八四年の歳出権限を認めるかどうかということになるでございましょう、もう十月でございますから。そういうことからして、私は、両院協議会で詰めていかれれば、これは成立することを期待しております。
それから中の問題の一つとして、よく言われます、要するにアメリカの市中銀行の貸し過ぎに対するしりぬぐいをするんじゃないかと、こういう議論がよくございます。これは近藤さん、私は、日本の銀行とアメリカの銀行の本質的な差というものが間々そういう議論に結びつくんじゃないかなあと。と申しますのは、日本は相互銀行まで入れまして百五十七ですね。ちょうどこれは国連加盟の国の数と偶然に一致しております。そうすると、アメリカは万の銀行がある。したがって、アメリカの銀行というものは原則的に自己責任主義の方が非常に優先した形で今日まで発達してきたんじゃないか。日本の方は、金融機関すべてそうでありますが、投資家保護、預金者保護、被保険者保護、これが徹底して今日まで貫かれておる。そこにそういう議論の出る余地はあり得るなと思いますけれども、両院協議会で私は合意が得られることを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/60
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061・近藤忠孝
○近藤忠孝君 そのしりぬぐいの問題は、こちらから指摘をし批判をしようと思ったら、先回りして答弁されちゃったんですが、実はきょうはわずか十五分ですから、そこまでちょっと議論がいかないんだと思うんですね。
その前にお聞きしたいことは、IMFの運営というのは、事実上アメリカの主導のもとに行われておるんだと思うんです。まさに当事者のようなものだと思うんですが、だからこんな修正とか大変な激論になるんで、日本とはそういう面でかなり違うんじゃないかと思うんです。
しかし日本としましても、アメリカがIMF増資に当たってどういう条件をつけたのか、今後のIMFをどのように運営しようとしているのか。この修正の中身など、要するに注文の中身などを見るとわかりますし、これはわが国にとっても大変重大関心事だと思うんです。私はこの中身を当委員会としても十分にみんなが知って、その上で私は議論をすべき問題だろうと思うんです。
これは委員長に申し上げたいと思うんですけれども、当委員会として、この時期じゃまだ採決は早いと思うんですが、そういう措置はこれからおとり願いたいと思うんです。
そこで、大蔵省として、この修正条項について、十分御承知だというんですが、私この質問準備の中で、これはどうも余りまだまとまって検討もしてないんじゃないか。このもらった資料は、実はきのう私の通告に対してまとめてくれたものでして、大体私の持っている資料もこれと余り変わりないようなものです。まだ現に議事録も来てないでしょうし、ですからひとつ大臣にお願いしたいことは——やがて議事録が来ますよね。そうしたらそれをひとつ提供してほしいということと、この問題点を大蔵省としても十分検討をし、それを国会に報告すべきじゃなかろうかと思うんですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/61
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062・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは議事録とか公に入手できるもの、これらを本院に対して必要とあれば提出するとか、あるいは個人的に要求されたものに対してその便宜を図るとか、これはできることだと思います。
問題は、大いに勉強することはいいことでございますけれども、いわば他国の国会の議論を勉強するのは結構ですが、他国の国会においてなされた議論に対してとやかくの批判がましいことを言うということについてはおのずから限界があると思うんです。この条項自体にはあらわれていないにしても、共産国を利するのかというような議論があったとか、日本ではそれは近藤さんを利しちゃいかぬなんて言いませんから、だからそれはそれぞれの国々の合法政党であるとか、非合法政党であるとか、いろいろな議論がありますので、それぞれの内政問題にまでは介入すべきでない。アメリカも総じて、IMFに対する、あるいはIMFのみならず国際機関に対する自分たちの役割りは認識をしておられると私は信じてもおります。
ただ、先ほど国際金融局長も申し述べましたように、昔と違って、全体としての経済的な地位というものは、これはダウンしておると言わざるを得ません。これは日本が急激に上がっておるとも言えるんでございましょうけれども。それと同時に、今日何分預金の伸び率以上のいわば財政赤字でございますから、そういうことからすると、内政問題として考え、各党におかれてはそれぞれ絶えず選挙も意識されるでございましょうし、その際いろんな議論が出てくる、これはお互いの国でもいろんな議論も出ることでございますし、その一つ一つに対して反駁、批判するたぐいのものではないではないかという認識でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/62
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063・近藤忠孝
○近藤忠孝君 大臣が言うとおり、たとえば下院の方で採択された条項には、「大統領は、アメリカの理事に対し人種差別を行っている国、共産独裁主義国への融資に積極的に反対することを命ずるものとする。」、こんなことが書いてあります。これは私もちょっと目くじら立つが、これは別として、中にはこういうのもあるんですよ。たとえば下院のエド・ベシューン議員の提案によるものですが、「途上国に対する貸し出しがIMF融資で保証された銀行は、国内の超優良企業への貸出金利を上回って得た途上国からの金利分を国庫に支払うべきである。」という内容ですね。
私は、こんなものは、これから日本の銀行に対する対処の仕方とか、またIMFへ出ていっていろいろ行動される、そういう場合には十分参考になると思いますし、その他いろいろ議論を見ていますと、わが党も賛成できるものもあるんですよね。アメリカの議員さんと共産党議員が意見一致することはめったにないんだけれども、しかし現にあるんです。ということは、やはりアメリカでは真剣に議論されておると思うんです。
私は、それに対して批判をしたり、国会として正式の見解を述べよとか、そういうことではなくて、そういう十分参考になるものはわが国の政策立案や対処に十分参考になることだし、私はそういうものが十分わかって、理解した上でこの法案に対する賛否を決めるべきじゃなかろうか。何しろ世界の全般にわたる問題ですし、しかも世界の経済の基本に関する問題ですから、私はそういうことがあってしかるべきだと思うんですが、そういう点ではよろしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/63
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064・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 議論をどういうふうに詰めていくかというのは国会自身の問題であって、政府からとやかく申し上げるべき筋合いのものではなかろうと思いますが、いま例示としてお出しになった、いわゆるアメリカの銀行が他国に対して投資しておる、まあ融資でも結構ですが、その場合の金利で、言ってみれば、もうかった分は、その国内の長期プライムレートの差額は税金で取るか何にするかというような議論は、それは私は読んでみてあり得る議論だとは思うんですよ。しかし金融機関というものから見れば、これは国際機関に対する協調とか、そういう問題は別として考えた場合は、それはおのずから金利は自由化されておって、そうしてそのリスクに応じていろんな金利というものが生ずるわけでございますから、それが一概に一般論としてけしからぬと言うことは実際問題としてはなかなかむずかしい。
それで、ISバランスと言いますが、要するに投資と貯蓄というものがある程度バランスしなきゃ金融機関というものは成り立たないわけですから、したがって、国内に貸出先のない場合、借りるのはだれかといえば、個人か企業か国か地方団体か外国かでございますから、それの選択肢の中で時によって外国へ出ていくということもそれはあり得ることであって、それの金利差というものは、それは金融機関自体の経営方針の中で決められていくべきものであって、それの高さとIMFという国際機関との問題とは、私は本来は別の問題として議論すべき問題じゃないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/64
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065・近藤忠孝
○近藤忠孝君 時間が来たので飛ばして、まとめ的な問題についての見解をお願いしたいんですが、IMFの役割りについてこういう指摘があるんですね。「実際に、先進各国の中央銀行の中央銀行であるBISがまず短期のつなぎ融資で止血措置を施し、次いでIMFがその国に経済再建のガイドラインを示し、その条件づけを前提に救済融資のカンフルを打つと、IMF監視に保証された形で、民間商業銀行が新規融資や元本返済繰り延べなどの栄養補給に乗り出す仕組みはほぼ整ったと言っても過言ではない。この限りでは、世銀やIMFは、その資金不足問題よりも、急速かつ大幅に増大する民間の融資—債務への対応機能に重点が移ってしまったようである。」というところに新しい問題がありはしないかということで、これは先ほどのしりぬぐい論にもなるし、あるいはアメリカ系多国籍銀行に対するいわばその危機を救うものだと、だから、わが党は反対なんですけれども、そういう批判がされていますよね。これに対して大臣としてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/65
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066・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私はこの歴史的経過の中で、これはIMFと言わず一般論として、その中にでこぼこはあると思います、批判されたり、その批判の対象になるような事象が。が、いまのところ、債務累積国問題というものがここのところ起きてきただけに、よけい本来の機能にIMF自体が目覚めておるのじゃないかという見方もできるんじゃなかろうか。あくまでも触媒的役割りに徹して、そしてそれの立てるコンディショナリティーというようなものでもってある種の信用ができて、この民間金融機関が稼働していく。こういうことでございますから、そういう形の方向というものは今後ともサポートし続けていくべきものじゃないかなと思います。アメリカがどうだから反対だと言わないで、賛成していただければ大変喜びです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/66
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067・近藤忠孝
○近藤忠孝君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/67
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068・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/68
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069・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/69
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070・近藤忠孝
○近藤忠孝君 私は日本共産党を代表して本改正案に反対の討論を行います。
最初に、最大の出資国アメリカにおいても、ことしの初めから上院下院両院で長い時間をかけて審議しており、多くの修正案が付されたということであります。また両院協議会での成立はまだめどが立っていない状況にあります。このような重要法案がわが国においてはたった衆参両院数時間の審議で採決されることに強く反対いたします。
発展途上国の債務累積問題は、今日最も深刻な世界経済問題の一つであり、その解決を一歩誤れば、世界的な信用危機にもつながる重要問題であります。したがって、その解決のために、途上国自身が自主的民主的な経済再建計画を遂行していくことを基本にしつつ、先進国や国際機関が融資条件の緩和や緊急援助資金の供与などを通じて手を差し伸べることが必要となっています。またそうした援助を通じる途上国の経済再建こそが、途上国のみならず、世界経済の再建につながることは明らかであります。
しかしながら、今回のIMF増資とわが国出資シェアの拡大は途上国債務累積問題の真の解決につながる保証は何らないのであります。
第一に、今日の債務累積そのものが、七〇年代を通じて巨額のオイルダラーを取り入れたアメリカ系銀行を中心とする多国籍大銀行が莫大な利潤を求めて巨額の利子を約束する資源大国や新工業国家に資金を集中してきた結果でありますが、今回増資によるIMF融資はこれらの大銀行の利益を保証する結果に終わるものであること。第二に、IMFが途上国融資に際してとる厳しい条件が内政干渉にわたり、また賃上げ抑制などの形で途上国国民にその犠牲がしわ寄せされていること。第三に、IMFの運営はアメリカの思いのまま動かされている現状は変わりなく、そのような状況のもとでのわが国の出資シェアの拡大は右に述べたアメリカの援助政策の肩がわりの意味を持ってくることなどの点から賛成できないのであります。
わが党は、真に途上国の立場に立つ債務累積問題の解決と世界経済の発展のために、IMF改組を初め、真に諸国間の対等平等、親善友好の立場に立った新しい国際経済秩序をつくり上げていく方向でわが国がその役割りを発揮するべきであると考えており、その立場から本法案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/70
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071・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/71
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072・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/72
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073・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/73
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074・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110014629X00219831006/74
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