1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月九日(水曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 有馬 元治君
理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君
理事 今井 勇君 理事 丹羽 雄哉君
理事 池端 清一君 理事 村山 富市君
理事 平石磨作太郎君 理事 塩田 晋君
稲村 利幸君 古賀 誠君
斉藤滋与史君 自見庄三郎君
谷垣 禎一君 友納 武人君
中野 四郎君 長野 祐也君
西山敬次郎君 野呂 昭彦君
浜田卓二郎君 箕輪 登君
渡辺 秀央君 網岡 雄君
河野 正君 多賀谷眞稔君
竹村 泰子君 永井 孝信君
森井 忠良君 大橋 敏雄君
沼川 洋一君 橋本 文彦君
森本 晃司君 塚田 延充君
浦井 洋君 田中美智子君
菅 直人君
委員外の出席者
参 考 人
(日本経営者団
体連盟常任理
事) 今宮 信雄君
参 考 人
(日本労働組合
総評議会国民生
活局長) 岡村 文雄君
参 考 人
(全日本労働総
同盟生活福祉局
長) 中根 康二君
参 考 人
(全国市長会国
民健康保険対策
特別委員長) 永田 正義君
参 考 人
(亜細亜大学経
済学部教授) 藤田 至孝君
参 考 人
(日本医師会常
任理事) 吉田 清彦君
社会労働委員会
調査室長 石黒 善一君
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本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第二二号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/0
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001・有馬元治
○有馬委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人各位から御意見を聴取いたします。
御出席願います参考人は、午前、日本経営者団体連盟常任理事今宮信雄君、日本労働組合総評議会国民生活局長岡村文雄君、全日本労働総同盟生活福祉局長中根康二君。午後、全国市長会国民健康保険対策特別委員長永田正義君、亜細亜大学経済学部教授藤田至孝君、日本医師会常任理事吉田清彦君であります。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序でございますが、まず今宮参考人、次に岡村参考人、続いて中根参考人の順序で御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、まず今宮参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/1
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002・今宮信雄
○今宮参考人 今宮でございます。
それでは、私の医療問題につきましての意見を述べさせていただきます。
昭和三十六年に国民皆保険を実施いたしました後に、いろいろな数字が非常にふえてきております。特に昭和四十年以降でございますが、有病率-有病率と申しますのは人口千人当たりの患者数でございます。これが約三倍に増加いたしております。それから、これに関連いたします医療費は実に二十四倍に伸びてきておる。その間の国民所得の伸びは十三倍でございます。ですから、こういう簡単な数字から考えましても、いかに患者一人当たりの医療費の伸びが大きいかがわかるわけでございます。
なぜこれほど患者一人当たりの医療費が伸びたかということを考えてみますと、医療の中心は健康保険制度です。これはもちろん言うまでもないことですが、この健康保険の核心でございます診療報酬の支払い制度といいますか、これが出来高払い制度となっております。保険制度は、だれでも、どういう病気でも、どこででも一律に適用するということが原則になっております。そこで、医療行為を手術だとかあるいは検査とか注射とか投薬とか、そういういろいろな要素に分解いたしまして、それ一つ一つに原価を算定して料金を支払うということになっておるわけでございます。これはもう御高承のとおりだと思いますけれども、これは、保険というものはどうしても、先ほど申し上げましたように一律に、ほとんどだれにでも適用されるということからくる一つの制約かもわかりません。
ところが、社会情勢というのは非常に変化してきております。巷間に言われるように高齢化社会ということになっております。それに伴いまして疾病構造というものが非常に変わってきている。成人病が主流を占めておる。成人病というのは、循環器とか消化器、あるいは新生物、精神的な障害、こういう病気が、もちろんほかの病気もございますけれども、こういう成人病が主流になってきておる。かつての結核のような細菌によります伝染性の病気、こういうのは次第に減少いたしてきておるわけでございます。
この成人病というのは、細菌によって引き起こされる疾患とは違いまして、それぞれの患者固有の生活状況だとか、あるいはその患者が持つ習慣とか、それから代々伝わってきているいわゆる遺伝的な素質だとか、こういうものが原因になって成人病が引き起こされてきておるわけでございますから、その状況も非常に千差万別でございます。したがって、その病気の原因を求め、それぞれの症状に見合った適切な医療を個別に行うということが非常に必要になってきておるわけでございます。
しかし、実際には、こういうふうな手間暇をかけた綿密な医療ではなくて、先ほど申し上げましたような一律適用の検査づけあるいは薬づけ、巷間に言われております乱診乱療というのが行われてきておる。これが非常に医療費を、しかもむだな医療費を大きくする原因になってきておると私は判断しております。
それから、こういう出来高払い制度による医療というものは、患者と医師との意思の交流も何の説明も行われてきていない、またそれが医療の内容にはなっていないわけでございます。そういうことが次第に患者と医者との間の不信感を生ずる原因にもなっている。この医師と患者の信頼感の喪失こそが本当の医療の荒廃だと私は思います。このことが、今後どうしても重大に取り扱っていかなければいけないし、医療の内容を大きく変えていくのではないだろうかと私は思っております。
要するに出来高払い制度というものが医療費に大きなむだを生ぜしめ、同時に、医療への不信感増大の原因になっていると言っても過言ではないと思っております。
それでは、出来高払いというものを変更すればいいではないかという議論が今までよく出てきておりますけれども、この出来高払いというものは、一律適用という保険制度からくる一つの切り離せないような関係にあると思われるわけでございますが、そういうことで、医療の質に見合った制度を導入しようとしましても、非常に難しい点が出てくるわけでございます。
出来高払いの健康保険制度は、従来は相当に国民の福祉に貢献してまいりました。これは紛れもない事実でございます。しかし、先ほど申し上げましたように時世が非常に変わってまいりました。従来役に立っておった出来高払い制度の保険制度も、いろいろな不都合な面が出てきている。どうしてもこれを改正しないと実情に合わないというふうになってきておるわけでございます。
そこで今度、健康保険制度改正の問題が出ておりますので、それに対する御意見を申し上げますが、先ほども申し上げましたように、移り変わってまいりました社会情勢に合っていない制度が非常に大きなむだを生じている、医療費を非常に大きくして、しかもその中にむだがあるということですから、まず医療費を抑制する、そういう問題を中心にした政府の案は、大体大筋において私は妥当だと思います。特に、二割の本人負担、六十年度までは一割ということになっておりますけれども、最終的には二割の本人負担ということ、これは既に国民健康保険では三割負担になっておりますので、公平のことからいいましても当然でございますでしょうし、またむだな診療を抑制するという効果が非常に大きく出てくる。しかし、今まで十割給付であったものが八割になるわけですから、恐らく相当大きな反対が出てくることは予想されます。しかし、それを思い切って実施しようという改革案は私は子とするところでございます。
やはり医療というものは、今申し上げましたように実情に合っていないのだから、それを何とか変えていかなければいけない。しかしそのためには、国民の医療に対する知識というものを高める、あるいは医療に対する批判精神を高めるとか、こういうことがどうしても必要でございますが、そのためにもやはり、ある程度の受益者負担といいますか自己負担といいますか、そういうものは必要でございますので、そういう案を入れてまいったということは、その方法においても目的においても妥当だと私は考えます。ですから、定額ではなく定率による負担、これはぜひ大切なことではなかろうかと思っております。
医療というものは、安かろう悪かろうではだめなのです。やはり国民や患者を主体とした、とことんまでも病気の原因を追及する、そうすることによって医者と患者の心が通い合うような医療でなければならない。そういう、患者といいますか国民からの要望はいろいろなところにあらわれてきております。
ただ、私が残念に思いますのは、今回の政府案には、医療費の抑制あるいは肩がわりといいますか、これが表面に出ております。これはもちろん、現在の医療体制といいますか医療制度といいますか、それを維持する上において必要でしょうけれども、しかしこれは、どちらかというと問題の先延ばしというふうな感が否めません。将来あるべき患者と医者との姿といいますか、それを改正することによってそういう医療のあり方を求めるという姿勢があらわれておりません。中に出ておりません。今後医療の負担を求める以上は、その見返りとして、負担の公平ということもあるでしょうけれども、それも大切ですが、それと同じように、それ以上に、今言った医療の質を正していくにはやはり現在の制度を相当変えていく必要がある。そういう見取り図といいますか姿勢といいますか、それが出ていないのが残念だと私は思うのです。
それからもう一つ、退職者医療制度が新しく創設されますけれども、財政負担の肩がわりを求める以上は、将来の負担増というものが一体どうなるのか。そのために、ある程度の歯どめをかけて負担が出てきた場合に検討を加えていく、こういうふうなことも必要であろうかと思いますし、どちらかといえばむしろ負担を減少させるということが大切なのでありますけれども、そういうことのために、民間め活力を用いる意味で、企業がみずから退職者に給付し得る道を残す、あるいは国民健保に企業の保険、組合保険のすぐれた点を導入して、そしてもっと医療費が節減できるような効率的なことを考えるということも大切かと思います。
以上、大体時間も参りましたので、簡単に私の医療問題についての考えを申し述べまして、御質問がありましたら後からお答えすることにいたします。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/2
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003・有馬元治
○有馬委員長 次に、岡村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/3
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004・岡村文雄
○岡村参考人 総評の岡村でございます。
きょうお呼び出しを受けましたので、私たちの立場を申し上げたいと存じます。私は、今回の健康保険法の一部を改正する法律案については反対の立場であることを初めに明らかにしておきたい、このように思います。そのことは、既に御承知のことだとは存じますけれども、社会保険審議会並びに社会保障制度審議会それぞれの答申に述べておりますように、慎重に取り扱われるべきものでありまして、この段階では、政府は法案を撤回をいたしまして、改めて時間をかけてそれぞれの関係審議会の論議の結論を待つべきではないか、このように存じます。
その理由の一つは、本年一月二十七日に、これはお手元へ参っております資料が一月二十五日となっているかと思いますけれども、私、この審議会に参加しておりまして何度も手帳をひっくり返し、厚生省側にも問い合わせをしました。なるほど文書の作成は二十五日かもしれないけれども、実態は二十七日に間違いない、このように聞いております。本年一月二十七日に、厚生大臣から社会保険審議会に諮問がありました。しかし、ここで時間的にお考えをいただきたいのでありますが、政府の五十九年度予算案が閣議で正式に決定をいたしましたのは一月二十五日であります。既に予算の中で変更できないような状態の中で諮問をされた、こういうわけであります。それに加えまして、二月二十二日の審議会答申まで、一月二十七日以降わずかに四回しかなかったのであります。なるほど医療制度としては、一昨年の五十七年十月二十五日に、日雇労働者健康保険法の存廃と退職者医療制度の創設について白紙諮問を受けたという事実はございます。それ以降審議に入ったのは日雇健保問題だけでありまして、退職者医療問題はほとんど審議されなかったと言っても過言ではございません。その上、被用者保険本人負担の導入を初め、かつてないような内容を含んだ抜本的とも言える医療制度の改革案がこのような審議会のあり方でよいとお考えになるのか、私は逆に先生方にお尋ねを申し上げたいような気持ちでいっぱいであります。また、その資料の中で、両論または三論併記になっておることにお気づきであろう、このように存じます。しかし、今申し上げました経過の中でこのことは当然の帰結でありまして、このような事情を十分御参酌いただきたい、このように存じます。
次に、この法案は、社会保険審議会が先ほど申し上げましたように二月二十二日、社会保障制度審議会は二月二十三日に答申を出しました。しかし、これは形式だけでございまして、これらの意見は全く取り入れられておりません。むしろ、あらかじめ準備をされていた法案内容で二月二十四日閣議決定、翌二十五日に国会に提出されているという経過がございます。つまり、私が申し上げたいのは、国民の健康やよりよい医療の制度よりも、財政対策にとらわれる余り、保険財政における収支のバランスにこだわり過ぎた、このように言えるかと存じます。この点も社会保障制度審議会の答申にあるとおりであります。
また、私自身も、社会保険審議会の論議の中で、今の日本の医療は治療にのみ重点が置かれていて、それが国民総医療費の増大につながっているというのなら、予防と早期診療を最重点として、地域医療供給体制の早急な整備とプライマリーケアや薬価基準、それに診療報酬体系の見直し策など、もっと国民医療を重視しつつ改革を行う手段があることを主張いたしました。これらにつきましては、後ろに何人かいらっしゃる参考人の方々もこの審議会に参加しておられましたので、よく御存じのとおりだと思います。
薬づけとか検査づけとか世上批判はありますけれども、疾病予防のための検査のあり方も検討されておりませんし、ひどいときには、これは先生方もお気づきだと思いますけれども、診療所間や病院間ですら、同じ検査が目を連ねるようにして繰り返されている現実がございます。その上、疾病予防や健康保持のために、今ふえております成人病に対してのいわゆる医学教育というものが今まで大学でどう扱われているのか、正確には存じませんけれども、保健婦以外の医療担当者、特に医師の方々がどこまで自信を持って指導されてきたのか。先生方も、これらの健診で医師の生活指導をお受けになって、すべてそのとおりやられた場合に恐らく健康を害するのじゃないか、こうお思いになったことがおありだと存じますので、あえて申し上げます。
しかし一方では、健康づくり運動というものが非常に大きく取り上げられるようになりましたことは事実でございますが、また、一次診療から二次、三次と高次な医療機関との連絡とか、初めの段階での患者を次の設備の整ったところの医療機関に紹介をするような医師の患者離れ、こういった状況など、厚生省のまず手をつけなければならない問題は山ほどあると存じます。ある著名な医事評論家の方は、予防医学を先行させれば今の国民総医療費の三分の一は減少するであろう、このように言っております。
さて、次いで制度の中身に入って申し上げます。
まず、被用者保険本人一部負担であります。今でも初診料や入院時負担があります。定額であります。これが定額でなく定率負担となりますならば、重症患者になればなるほど負担が高くなりまして、被保険者本人ともなれば一家の生計の維持者である場合が多く、収入と支出の両面から家計が直撃されるわけであります。入院ともなれば保険外負担分として莫大な出費を要することも、先生方のよく御存じのとおりでございます。その上、一部負担は、心もとない財布のとき、私たち、私を含めまして日常労働運動に参加をしております人たちの賃金闘争の中でよく数字が出されますけれども、次の給料日まで待てない、こういった人たちの声を聞く中で、この心もとない財布のときに受診の抑制になり、同様にして初期診断の時期をおくらせまして症状の悪化を生じ、なおこれによって医療費は高くなると存じます。そのため、御存じのように昭和二年にこの制度ができて以来、一貫して十割給付というのが重視をされてきたことは、先生方のお力にもよりますが、本当にありがたかったと思います。この際改めてお礼を申し上げますが、このような制度の根幹にかかわる問題につきまして十分お考えをいただきたい、このように思います。
なお、私はこの段階で申し上げますが、家族給付であるとか国民健康保険の給付率との関係で公平を欠くではないか、こういう御意見があることも承知をいたしております。私も、家族や国民健康保険加入者の方々の給付率を引き上げるということにつきましては大賛成であります。また、理論的に本人と家族の同一給付率というのも賛成であります。ただ、本人の給付率を引き下げるのか保険料をこれ以上に負担をさせるのか、このような選択肢だけしか考えられない結果から生まれたこの結論には賛成いたしかねる、このように申し上げておきます。さきに述べましたようにもっと幅広い観点から検討すべきだ、このように考えるわけでございます。
次の制度内容の問題点は、高額療養費の自己負担限度額の引き上げであります。このことでは、さきに四年前、先生方も御存じのように三万九千円から現行五万一千円に引き上げられました際に、暦月方式や一人一レセプトの方式がいかに家計に及ぼすところの影響度から実情に合わないものか、このように御論議をなさったことがあると思います。これは同様に、当時の社会保険審議会でも論議をいたしたことであります。こういったことが全く改善されておりません。そうして、前回改定からまだ日が浅い、今までの歴史から考えまして適当でない、そのような事情を申し上げておきたい、このように存じます。
それから、療養費支給制度の問題につきましては、保険外負担として室料差額や診療費差額など、範囲の拡大を恐れるというふうに申し上げておきたいと思います。かつて老人保健法の国会審議のときに、差額料金としての保険外負担は極力なくしていく、このような方針を先生方が確立していただきまして、それに従って逐次行政指導がなされてきた、このような最近の歴史がございます。これに全く反対のこのような制度には大きな疑問を生じます。
また二つ目に、特定承認医療機関の指定とか特別のサービスの選定基準が示されておりますけれども、これらの選定基準が非常にあいまいである、そうしてなお、さきの地域医療供給体制の中での医療機関や、高額医療器械の利用とともに、検討される余地の残っている問題でございます。このことは、貧富の差であるとか社会的地位などによりまして受診差別や機関指定差別のようなものを持ち込むのではないか、このように心配をするわけであります。
次いで、問題点は退職者医療制度の導入であります。私もこの制度の導入には原則的には賛成でございます。前からその主張をしてまいりました。高齢の退職者のゆえをもちまして、従来保障されてきたところの健保制度から外され、地域の国民健康保険の適用となって、しかも罹患率の高い時期を迎えるだけに問題は大きい、このように常々思っておりました。しかしながら、この改革案によりますと、その財源について、当然国庫負担に該当するところの国民健康保険からの移行をお考えになりながら、本人負担及び被用者と国民健康保険からの拠出金によってこの財源を賄う、そうして国庫負担はゼロなのであります。その上、拠出金には、先ほどの参考人の御意見にもございましたように、限度額が将来にわたって示されていないのであります。このことは、老人保健審議会で、拠出金をめぐりまして最後まで混乱をしたという事実がこれを示唆しております。私は、この制度を、現行の健康保険任意継続制度と老人保健法の適用期間の運用などで問題解決を図る道はあると思います。
日雇健康保険の廃止、そして健保制度への吸収につきましては、このことによって日雇い労務が若年層も含めまして拡大されている中で、いまだに適用拡大がなされておりません。逆に就業日数など、特殊な条件のもとに縮小されております。また、日雇い労務の特殊性を強調いたしまして被用者健保から切り離されているという現状から、このやり方そのものには私は賛成したいと思います。ただ、健保法案の中で取り扱われる今度の意見とすれば、賛成とは言いがたい。その理由を申し上げます。
つまり、日雇い労務が、寒冷地であるとか天候などの自然現象、そして年齢など、全く本人の責めに帰さない条件のもとに適用されてまいりましたところの資格要件の問題、並びに生活維持のための傷病手当金、分娩費などが従来の水準を下回るといったようなことのないように配慮をしていただきたい。同様にいたしまして、保険料負担が急激に増加することのないように、不安定で劣悪な労働条件にあるだけに、経過措置を十分配慮していただけるならば、私はこの制度のみのところは賛成をいたしたいと思います。しかし、全体の法案そのものについては反対と言う以外はございません。
同様にして、著しく劣悪と考えられております国民健康保険の運用につきましては、地方自治体とともに国の責任を明らかにいたしまして、被用者本人の一部負担の問題と、退職者医療制度の導入の問題と、国保への国庫負担削減という、この一連の財政対策としての考え方を私は改めて問題といたします。
最後に、厚生省の調べによりますと、これは実は総評でも調べたのでありますが、それ以降に厚生省でお調べになったという数字が手に入りましたので、それを使わしていただきます。厚生省でお調べになりましたところの結果によりますと、本年四月二十六日現在で、地方自治体のこの法案についての反応は、改めるべきでないという議会の決議や意見書の採択が行われたところが相次ぎまして、都道府県で三十六、区並びに市町村で千四十六、このように大きな数に上っております。また、私たちのところへ地域から寄せられた反対署名は、逐次先生方のところへお届けをいたしておりますけれども、四月の半ばの段階で一千万人を優に超えております。国民各層がいかにこの問題への関心が高いかといったことを改めて示すものだ、このように存じます。
最も近いところの厚生省発表の数字で、現在の国民の有病率は七・九人に一人、このようになっております。このようなことから、二十一世紀を目指して高齢化社会を迎えての国民医療のあり方を求めなければならないと思います。私もそのことは痛切に感じます。しかしながら、そのことは、今度の改革案のように性急な、また選択肢の少ない中からの法案でなくして、国民皆保険体制の中にあって、社会保険審議会の答申、この中に触れております文言を改めてここで先生方の前で読み上げさせていただきまして、結びの言葉とさせていただきたいと思います。
つまり「健康づくり運動を積極的に推進するとともに、薬価・医療費の適正化、疾病予防・早期診断から、治療、リハビリテーションに至る施策の充実強化、地域医療供給体制の効率的整備、福祉施策や年金・雇用・住宅等の関連諸制度の改善など、総合的な観点から、政府一体となった対策が進められるべきであり、これらの点について、中長期的な展望が示される必要があるにもかかわらず、今回の改正案をみると、なお、その展望は明確にされていない。」、このようにあります。
以上で終わります。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/4
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005・有馬元治
○有馬委員長 次に、中根参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/5
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006・中根康二
○中根参考人 同盟の中根でございます。私は同盟の立場で意見を申し上げたいと思います。
私ども同盟は、昭和五十七年に一九八〇年代の福祉ビジョンを発表いたしております。その中で、既に、医療保険制度のあるべき姿について提言をいたしております。実は、このビジョンは既に昭和四十七年に策定いたしまして、一度提言したわけでありますが、その後の社会経済情勢の変化を踏まえて改めて修正し、提言をいたしております。したがいまして、私は、このビジョンを基調に、医療保険制度のあり方について意見を述べさせていただきたいと思います。
我が国は、これから急速に高齢化が進みまして、三十年後には欧米先進諸国の現在の高齢化比率を抜いて、人口高齢化の最たる国になるということが言われているわけであります。人口の高齢化による高齢者の増大は、扶養負担の点においていろいろな面で社会経済に影響を与えますが、特に社会保障の分野に与える影響は大きいというふうに考えております。一定の財源の中で負担する者と受給者が特定され、しかもそれぞれの制度の持つ特有の問題と相まって、早くから年金制度や医療制度については具体的な対応が迫られていたところであります。
現行の医療保険制度の問題でありますが、公正と効率の両面に問題があるというふうに考えております。
まず、公正の観点からの問題点でございますが、最も目につきますのは、制度が分立していることによって給付と負担にかなりな格差があるということでございます。
第一は、医療保険の基本給付ともいうべき医療給付でありますが、本人の場合でも、被用者保険の十割に対し国民健康保険の場合には七割と大きく相違いたしておりますし、家族の場合にも、健保組合や共済組合では附加給付があって七割を若干上回っているかもしれませんが、政管健保や国民健康保険では七割であるという相違があるわけでございます。本人と家族で給付率が異なるという制度は、恐らく我が国だけではないかというふうに思うわけであります。
第二は、現金給付の面でありますが、被用者保険と国民健康保険では法定と任意の差があり、五人未満の事業場で働いている労働者の中には、傷病手当や出産手当など所得保障的な給付すら受けられない場合があるわけでございます。
第三番目は負担の問題でありますが、制度間の負担の差は、今さら言うまでもなく、かなり差があるということは御承知のとおりだと思います。これには構造上の問題もあると思います。一つは、各制度が対象として抱えております中に、高齢者の比率の多少があるということでございます。老人保健法が施行され、七十歳以上の高齢者の医療費については全制度でプールして負担することになりましたが、六十歳から七十歳層は依然として各制度でそれぞれ抱えている現状でございます。構造上の第二の点は、制度を構成する被保険者の所得水準の高低があると思います。それがその制度の財政収入に格差をもたらしているわけでございます。
次に、効率の問題について二、三申し上げてみたいと思うわけでありますが、医療保険の効率化とは次のように考えております。つまり医療資源には限度がおるわけでございますので、その有限な資源が効果的に使われるか否かを見直すことが必要ではないかということでございます。もし医療保険において医療資源の効果的な配分を誤っているならば、それは医療費のむだな増大をもたらすだけでなく、医療保険の機能をも損なうことになるのではないかと思うわけでございます。
医療保険は、健康を損ねたとき、その不確実費用の保障を適切に行うところに本来の目的があるはずでございますので、医療についての必要性が強く、医療に要する費用が大きく、本人の負担能力が弱い場合ほど医療保険の効果は高められていくべきであり、そうすることが資源配分を効果的に行うことであるというふうに考えるわけでございます。ところが、現実の医療保険制度における給付と患者負担の関係は、そのように適切に組み合わされているとは言えないと思うわけでございます。現在の給付制度では、初診、入院の一部負担のほか、保険給付等の対象とならない差額ベッドや付添看護料など多額に課せられるわけでございます。したがいまして、入院が長くなれば本人の負担能力をはるかに超えることになることは間々あるわけでございます。この場合保険の効果は著しく弱められることになるわけでありますので、改善の必要があるということでございます。この傾向は、家族や国民健保の対象者の場合には一層顕著にあらわれるのではないかと思います。高額療養費制度の導入にかってかなり緩和されたとはいえ、労働者、特に低所得者層にとってはかなりな負担になるということは否めないと思います。
さらに、効率面では、診療報酬の支払い方式に起因する諸現象があると思います。最近では検査の乱用ですとか施設、医療機器の重複投資などが問題となっているところでございますが、これらのものが原因となって医療費にいわゆる自然増と呼ばれる部分があるというふうに判断をいたしております。
公費負担医療の面でも、負担基準などに問題があるのですが、ここでは省略したいと思います。
現行の医療保険制度に対する問題点の主なものは以上のとおりでありますが、現在提出されております健康保険法の一部改正案との関連で、いま少し意見を述べさせていただきたいと思います。
現在提出されております健康保険法等の一部改正案は、財政対策と言わざるを得ないというふうに思います。一部には従来から議論されてきたことであるという意見もありますが、専門家の間では通用するかもしれませんが、国民には決してそのようには理解しがたいところがあるということでございます。
二番目は、医療保険制度で最も重視される給付率でありますが、今回の改正案を見てみますと、本人の給付率を八割とするというものがベースになっているわけでございますので、先ほどから申し上げておりますような理由から、これには賛成しがたいということでございます。給付については少なくとも本人、家族を問わず一律にすべきでありますが、今回改正では本人の給付率だけを改正するという考え方が示されているということ、保険料の引き上げが不可能であるという前提で八割が決められているように思うわけでありますが、負担と給付につきましては幾つかのケースを示し、国民に選択させることが必要ではないかということでございます。
それから、高額療養費制度でありますが、現行制度では個人単位であり、レセプト単位になっているわけでありますが、現在のように負担がふえているような現状下では、私はこれを家族単位に改める必要があるのではないかということを感じるわけでございます。
それから、退職者医療制度が今度創設されるわけでありますが、現在のように給付率が異なるような現状下では、退職者医療制度も必要だとは思いますけれども、国庫補助をつけるということを要望したいというふうに考えるわけでございます。給付率については少なくとも政管健保と同じような扱いにすべきだというふうに考えます。
我が国が今後急速に高齢化が進むことを考慮した場合に、医療制度の全体の見直しが必要であるということはわかるわけでありますが、予防の徹底には十分力を入れていただきたいと思います。老人保健法の施行後各地方自治体で予防面を充実していくんだということになっておりますが、現状を見てみますと必ずしも望ましい方向にあるとは思われませんので、今後より一層この面の充実に努めていただきたい。
それから第二でありますが、いわゆる診療所と病院の役割を明確にするとともに、診療所、病院の適正配置についても十分配慮していただきたいと思います。今なお過疎地では、診療所等の不足によっていろいろな問題が起きていることは既に御承知のとおりであります。
三つ目は診療報酬の問題でありますが、かなり改善されている面はあるとはいえ、まだまだ、マスコミなんかによりますと不正請求等が明るみに出ているというのが現状でございますので、この点に対してはより一層厳しい取り締まりを要望する次第であります。
それから、さきに厚生省が医療保険制度の将来構想を示されたわけでありますが、あの内容は今回改正の裏づけという範囲を出ていないというふうに断ぜざるを得ないわけであります。さきに述べましたように、給付率のあり方等につきましては選択の余地を残すようなものとしながら、六十年前半を少なくともめどに構想が示されるのではないかというような期待をしたわけでありますが、六十年の後半という非常に先送りしたもので、がっかりしたというのが実情でございます。
今回の改正が、医療保険制度の抜本改正の第一歩となるようなものとなるように、給付率等について大幅に修正され、私どもが討議に参加できるようなものとしていただけるよう希望いたしまして、私の意見を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/6
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007・有馬元治
○有馬委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/7
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008・有馬元治
○有馬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/8
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009・今井勇
○今井委員 お三人の参考人の先生方、御苦労さまでございました。
私は三十分という時間でございますので、三つの問題点を申し上げますので、参考人の皆さん方、それぞれのお立場で簡潔にお答えをいただきたいと思います。いろいろ今御拝聴いたしました個々の問題につきましてのものではございませんので、それを含めて基本的な問題についてのお考え方を承っておきたいと思います。
その一つは、医療費というのは、いずれにいたしましても、保険料で持つか、あるいは自己負担で持つのか、あるいは国費で持つのか、この三つであろうと思います。したがってそれらのものが、例えば国費の入れ方が少ないではないかとかあるいは自己負担をもっと減らせとかいうような意見もいろいろございますが、結局、国費といい保険料といい、これは国民の税金であり、あるいは国民の負担であることは間違いないわけであります。したがって、全体の医療費をまず減らすことが極めて私は大事なことだというふうに思うわけであります。
したがって第一点は、医療費の適正な規模への導入・抑制といいましょうか、そういうことには何をやればいいのか、端的にお答えをございますればいただきたいと思います。
それから二番目は、先ほどからいろいろお話しがありましたように、確かに現在の医療保険制度は八つありますが、その中で給付と負担は必ずしも公平でないことは御調のとおり、私もそのとおりと思います。したがいまして、これをどう変えていけばいいのかということについてそれぞれのお立場から御発言をいただきたい。そのときに、要すれば、政府が今回言っております将来の八割給付あるいはまた今度提案しております退職者医療制度、こういうもの、あるいはまた今度の健保本人の一割負担、こういうものを絡めまして御意見を承われればありがたい。
それから三番目は、地域医療の供給体制の問題であります。これも多岐多様にわたりますが、お三人の方々のお考えをお聞かせ願いたい。
そういうことでございますので、おおむね私に与えられました時間は三十分でございますが、私が今しゃべりましたので、お一人七、八分の間でおまとめ願ってお答えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/9
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010・今宮信雄
○今宮参考人 それではお答えいたします。
最初は、全体の医療費をどういうふうに減少さしていくかという御質問でございます。これはもちろん今から申し上げることはすべて私の個人の意見になりますが、これが一番大切な問題でございます。ただ負担を多くするとか、あるいは強力に医療費そのものを減らしてしまうとか、そういうふうなことよりも、私が先ほど申し上げました意味は、もう少し医療というものが実際に国民の要望しているような医療のあり方に適合すれば医療費は全体として下がってくる、これが国民の要望にこたえる道でもあるし、それから、国全体としてもむだな医療費をなくしていく道でもあるというふうに感じておるわけでございます。
非常に抽象的な言い方で御不満と思いますけれども、私は、今の保険制度の中心になっております出来高払い制度、支払い制度を変えてみる、まず支払い制度というのは保険制度の一部ではないか、それを変えたところでどうなるものでもないじゃないかというお考えがあるのかもわかりませんけれども、私は、これは制度の経済の基本をなしておりますので、これを中心にしてやはり医者のビヘービアとか患者と医者とのあり方とか、そういうものが決まっていくのではなかろうかと思っておるわけです。ですから、やはりまずそれに着手をするということが大切かと思います。
それから、これはやはり医療の問題ですけれども、医療以前の、健康を保持するためにいろいろな施策があるわけです。これは私は先ほど申し上げておりませんけれども、今、やはり患者側といいますか、我々国民が求めておりますのは、病院へ入って実際の治療をするということよりも、お医者さんでもいい、医学の知識のある人でもいい、そういう人にコンサルタントになってもらいたい、健康相談あるいはさらに進んで生活相談といいますか、そういうものを実際は求めているのだ。それはただ治療とか投薬とか、そういうこととはちょっと離れておりますけれども、これはやはり一つの病気の治療、病気の予防ということになるのでしょうか、あるいはもっと広く言って健康管理ということになるかと思いますが、やはりそういう制度を早く導入しなければいけない。そのためには、健康管理の制度がいろいろ言われておりますけれども、いわゆるホームドクター的なもの、これは第三番目の地域医療の問題になってくるわけですけれども、これと両方が関連して、そういうことをやれば全体としてやはり医療費というものが下がってくると思います。
三番目の地域医療の問題に入りますけれども、地域医療の供給体制というのは、今政府から出ております一次医療、二次医療、三次医療とかいうような形よりも、私が今申し上げましたような、まず医者自身がもっと広い意味の、リハビリももちろん入りますし、生活指導も入るし、それからいろいろな健康管理の相談にも乗る、こういうふうな体制の一次医療というか、これは一次医療よりももっと広いわけですが、そういう体制をとにかくつくり上げていく、まずそれを考える。そのためにまずいわゆるホームドクター制、これはイギリスとかイタリアとかそういうところで行われておりますああいう医療だけのホームドクターではないわけです、私の申し上げているのはもっと広い意味のものですが、そういうふうなことをやる。これは一番目と三番目と両方絡んでお答え申し上げたわけでございます。
それから給付と負担の公平、これはもちろん公平でなければいけないわけですね。ですから八割医療、今案として出ておりますけれども、国民健康保険の方は七割、もちろん高額医療の問題がありますから、逆に計算すると何割になるか、もっと負担が減るわけですけれども、しかし、公平の原則からいってやはりどうしても給付、負担は公平でなければいけない、これはもうだれしもが持つ感情だろうと思うのですね。本人が長い間十割給付であったということが基本的なベースになっているのだから、それを変えるのはゆっくりやればいいのだというふうなことよりも、やはりそれをまずやっていく。将来は保険の統合になるのかどうか、私はそういうことはわかりません。いろいろな問題点を考慮して改正されていくのでしょうが、とにかく給付、負担をなるべく公平にやるということ、これがまず一番大切なことだろうと思います。
こういうお答えでよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/10
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011・今井勇
○今井委員 結構です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/11
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012・岡村文雄
○岡村参考人 お答えいたします。
今私の前におっしゃったところと大体同じような答えになってくるか、このように思いますけれども、まず、一番最後の三番目にお尋ねになりました地域医療供給体制の問題は、私は、やはりホームドクター制度のようなものをつくって、それに値する大学教育、大学の医学教育その他のものを真剣に考えていくべきじゃないか、このように存じます。つまり、今大学教育が次第に専門化され、そうして、専門化される中で博士課程その他のものを追求していったお医者さんがいい医者だ、そう言われる傾向にあることは事実であります。しかし、そういうことでなくして、私は、こんなところでこういう表現はどうかと存じますけれども、西部劇などで、よく聴診器一つ持って子供さんとか急患の場合に対処しておられるようなシーンに出会うわけであります。そういうふうに専門的な立場で、全体の病気をどこでどう処理をしていき、どう対処していってもらえばいいのか、こういう体制がとれないかな、このように存じます。つまり、診療所にも高額医療器械を入れて非常に高度な診療をおやりになっている。これも結構だとは存じますけれども、結局、一番初めに御質問になりました非常に高い医療費にならざるを得ないような結果を生んでいるのではないか、このように憂えるわけであります。同様にいたしまして、薬の問題がそれに追加してまいろうかと存じます。
三番の問題から申して、一番の問題はほぼそういうふうな関連でお受け取りいただきたい。と同様に、一番の問題でつけ加えますのは、先ほどから参考人もおっしゃり、私自身もさっき参考意見として申し述べましたように、ともかく地域での予防というものを最重点にしていっていただきたい。本人の生活からすべてにわたって、地域に根差したところのお医者さんが、地域の方々と一緒になって、予防というものをもっと重点的に理解するような方策を考えていっていただきたい、このように存じます。私はかつて、全国に小学校と同じくらい保健所ができたらといった夢を持ったごとがございます。全国の小学校の数は、統廃合の結果もございまして現在のところ約五万足らずだというふうに今記憶しておりますけれども、その程度のことであれば何らかの手が打てるのではないか。そうして、できたならばそこで保健婦の方々も今後養成していただく。お医者さんは相当余ってくるそうでございますが、保健婦の方々もOT、PTといった方々も重点的にその中で幾つか配置していただくという地域の形、これをやっていただく中で、一番と三番をあわせてお答えするような結果になろうか、このように存じます。
私が今申し上げましたようなことが徹底されますと、二番の問題はおのずから解決がついていくのじゃないか。その中で公平というものは、理論的に申し上げまして、今の被用者保険であろうと国民健康保険であろうと、また別の観点から、本人の場合であろうと家族であろうと、療養費は同じようにしていきたいというふうには考えておりますが、一番初めの方から御指摘ありましたような十四兆ないし十五兆と言われております現在の国民総医療費が、一番、三番の問題を推進する中でもしも将来にわたって余裕ができてくるならば、二番の問題はおのずと解決していくのじゃないか、このように考えておりますことを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/12
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013・中根康二
○中根参考人 中根でございます。
まず医療費の抑制の問題でございますが、意見の中でも若干申し上げましたように、やはり予防に力を入れていくのが一番大きな額を抑えることのできる問題ではないかなと考えております。一時、政管健保などで、十割給付ということから安易に医者にかかり過ぎるのではないかという批判があった時期もあったわけでございますが、最近では政管健保が黒字になっておりますし、千分の一を引き下げるというところまで来ておることから推測すれば、かかる側の方の考え方はかなり変わってきたと見ていただいていいのではないかなというふうに考えております。
それから二番目の負担と給付の問題でございますが、私どもは現在では高齢化社会を考えまして、医療は医療だけという考え方ではなくて、年金も含めて将来どれくらいの負担までが許容限度であろうかというところを私どもなりに一生懸命勉強をいたしておりますので、意見の中で申し上げましたように、幾つかの給付と負担の関係の割合を示したものを示していただきまして、その中から選択をするという方法をとらせていただきたいというふうに考えております。
それから供給体制の問題でございますが、意見の中で申し上げておきましたように、確かに一部の地域では充足されておりますが、まだ充足されていないところもありますので、そこへは重点的に配置をお願いしたいわけであります。それとは別に、さきの参考人の方も言っておられますように、私はやはり中間施設が余りにも足らないという感じがいたします。例えば健康相談の問題で何か相談したいという場合に、今であれば勢い診療所なり病院へ行かざるを得ないという状況があるわけでございますから、そういうものをきちっとする中で、いわゆる病院の役割、それから診療所の役割をきちっと整理をしていっていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/13
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014・今井勇
○今井委員 岡村参考人にもう一つお伺いしておきたいのですが、あなたは本人の十割給付というものをどう考えられますか。それに関連をして、サラリーマンの本人は他の例えば国民健康保険加入者と比べて医療費が二、三割高くなっているという統計があるように私も聞いております。そういった問題も絡めて、この十割給付というものについての御意見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/14
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015・岡村文雄
○岡村参考人 本人の十割給付についての重ねての御質問でございますが、私は本人の場合には、本人が病気になる、けがをしたといった場合には、その病気またはけがの出費だけでなくして収入の面にも響いてくるであろう、このように憂えます。ですから、私が先ほど意見として申し上げましたように、本人十割給付は、本人の場合にはほとんど生計維持の中心人物でございますから、収入と支出の両面から家計に直撃を受けるといった陳述を先ほどさせていただきました。ですから、そのような立場から、私は本人はもっと重視すべきでないか、このように考えます。まだいろいろ理由はございますが、中心的な考え方は私はそのように考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/15
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016・今井勇
○今井委員 そうしますと、こういう疑問にお答えいただけますか。例えば国民健康保険、私もその一人なのですが、家族もおりますね。働いている人もいる。その人たちは十割給付じゃございませんね。そうすると、今のお話しは、それとの比較でどう考えられますか。確かに収入減になることはサラリーマンだけじゃございませんね。それについての矛盾はお感じになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/16
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017・岡村文雄
○岡村参考人 私が申し上げましたのは表面的に申し上げましたので、今先生がおっしゃるような形のものは事実常識的にあらわれてまいります。しかし、それらの方々の掛金の負担率のもとになっているところは、恐らく先生も御承知だと思うのですが、年金のときにも税金のときにもよく問題になりますように、所得の把握が非常に困難な状況にある場合が多いわけであります、つまり国民健康保険とかいわゆる地域保険の場合に。そういった場合に比較をいたしますと、私はそこのところはほぼカバーできるのではないかという一面を申し上げます。
いま一点あります。いま一点は、自営業者と言われる方々はいわゆるストックをお持ちであります。それからまた、現に健保本人で働いている人たちの就業状態と変わりまして、商店の場合とかそういった場合を御想像いただければおわかりだと思います、また農業の場合を御想像いただけばおわかりだと思いますが、効率は十分でないにしろ代理がきくといったような問題もございます。それらのすべてをストックとは申しませんが、一応ストックがあるという非常に広い意味で私は申し上げます。そのように考えた場合に、今健康保険に実際に加入している場合の本人負担につきまして十分御配慮を今後ともいただきたい、このように申し上げるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/17
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018・今井勇
○今井委員 今宮参考人にお伺いしますが、あなたの陳述の中で、退職者医療のことで、企業がみずから退職者に対して給付し得る道を残すことと、国民健保に企業健保のすぐれた点を注入する手段を設けることというようなことがあったと思います。どういう意味でおっしゃっているのか、ちょっと補足していただければありがたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/18
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019・今宮信雄
○今宮参考人 今健保連から要望が出ております、例えば退職した人の健康保険、退職者医療制度はそういう人を全部入れていくわけですけれども、しかし、企業に相当貢献をして企業に残りたい、残りたいというのはおかしいですが、従来の貢献に対して医療の問題についても面倒を見ようという企業があれば、そういうのに十分こたえてやるような施策が必要ではなかろうか。最初の問題はそういうことですけれども、そういう要望がある以上、しかも本人がそれを希望しておれば、制度の難易は別にして、考えてやっていいのではないかと思うわけです。
それから、組合制度のいい点をというふうなことを申し上げました。実は、皆保険実施によって国民健康保険というのは全部実施されるようになったわけです。ただ内容的には、全体的に人間の病気というものをとらえて、そして医療費を少なくしていく、病気をなくしていく、そういう努力を我々はまだまだやる余地があるのではないか。いろいろ努力されておられる地方はございます。ありますけれども、全体から見るとほんの一部であって、なかなか全体に及ばない。やはりいろいろな問題点があるわけですが、特に大都会、東京とか大阪とかそれ以外の大都会、地域といいましてもそういう非常に広いところはほとんどそういうことが行われていない。そういう点をもう少し、医療費を全体的に引き下げていくということを頭に置いて健康管理というものをやらなければならない。そのためには、今行われております健康保険組合というのは小集団といいますか、非常に小回りがききますし、それから、こう言ってはなんですけれども、政治的ないろいろな配慮から内容がゆがめられることはない。言うなれば、もちろん法律の枠はあるわけですけれども、自主性があるのですから、そういうものをうんと利用するような体制を国民健康保険の運用にも取り入れていくべきではないかということを私は申し上げたいと思ったのです。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/19
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020・今井勇
○今井委員 もう一問、中根参考人にちょっとお伺いしたいのですが、私は、医療保険制度をいずれ統合するにしても全部一緒にするというのはなかなか難しいと思いますので、財源調整というものをやっていくことが大事であろうという考え方を持っておるのですが、あなたは、この医療保険制度の将来の統合に向かっての財源調整ということの役割をどうお考えでしょうか、お考えをお聞かせいただければありがたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/20
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021・中根康二
○中根参考人 今具体的なものは持っているわけではございませんが、財源の調整というのは必要になってくると思います。ただ、全体の制度を統合するに当たって特に申し上げておきたいのは、先ほど岡村参考人も言いましたように、国民健康保険の保険料負担の状況を見ておりますと、私どもから見れば、もう少し負担していただけるのではないかという方の負担が低いという気がいたします。突き詰めていくと税制問題にぶつかるものですから、なかなか医療保険制度の中で議論がしにくいわけでありますが、そういうようなものがきちっとされれば、財政調整というのはやがては必要ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/21
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022・今井勇
○今井委員 ありがとうございました。私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/22
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023・有馬元治
○有馬委員長 村山富市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/23
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024・村山富市
○村山(富)委員 きょうは、参考人の皆さんには御多忙の中に御出席いただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。時間の関係もありますから、それぞれの参考人の皆さんに質問だけを申し上げてみたいと思うのです。
まず、今宮参考人に三点ほどお尋ねいたします。
一つは、先ほど御意見の中にもございましたが、疾病構造が変化して、成人病等が主流になっておる、そういう疾病構造の変化に対応していけるような医療制度のあり方に変えていく必要があるのではないか。そういう意味から申し上げますと、例えば地域における医療というものは、健康診断や健康指導や健康管理、そういうものが大きなウエートを占めてくることになる。そういう役割を果たしてもらうためには市町村の保健センターや、あるいは保健所あるいはその地域で開業されておる医師等々、医療関係者等の協力のもとに平素からやっていけるような医療制度のあり方に変えていく必要があるのではないかと思うのですけれども、生産あるいは日常の経済活動等に御責任を持ってやられております立場からするならば、もう少し市町村あるいは保健所等の活動というものに期待する部面が太さいのではないかと思うのですが、そういうことについての御意見があればお尋ねをしたいと思います。
それから、そういうことと兼ね合って、御意見の中にもございましたけれども、例えば今の医療費の中で薬代あるいは検査、注射等が大部分を占めておる、こういう医療費のあり方は決してよくはない、したがって適正化を図る必要があるというお話しがございましたが、私は、医療費の適正化を図る一番大きなポイントは、今申しましたように予防にもっと重点を置くことが大事ではないかと思いますが、それとの関連においても御意見があればお尋ねしたい。
もう一つは、そういう医療費全体の支払い方式というものを是正する必要があるのではないか。医療を供給するあり方を変えていくためには、その医療を供給する姿を正しい方向に誘導できるような支払い方式というものが検討されてしかるべきではないかと思いますが、そういうことについての御意見があればお尋ね申し上げたいと思います。
それからいま一つは、先ほど退職者医療制度に関して歯どめについての御意見がございました。当然これからどんどんOBというものはふえていくわけでありますから、医療費が際限なくふくらんでいく、拠出金がふえていく、こういうことも考えられるわけでありますので、そういう意味における歯どめはある程度必要ではないかと私も思うのですけれども、どのような歯どめの方法が考えられるかということについて、もし御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
それから、岡村参考人と中根参考人にお尋ねしたいと思うのですけれども、先ほど、十割給付についてどのように思うかという御質問がございました。今回の改正案で六十一年から八割給付にするという本筋があるわけでありますけれども、考えてみますと、昭和二年に健康保険制度が創設されて以来、健康保険の赤字問題等もあっていろいろな議論がされてまいりました。しかし、いろいろな議論があったけれども、この十割給付については今日まで手がつけられなくて、守られてきたわけです。私はそれにはそれなりの意味があったと思うのです。
そこでお尋ねしたいと思うのですが、先ほどお話しもございましたように、仮に本人自体が病気をした、けがをしたという場合に、入院でもいたしますと診療の関係で休業補償が六〇%ある、言うならば所得が下がるわけであります。同時に、今日の医療を考えてまいりますと、単に保険医療だけではなくて、差額ベッドとか付添看護とか、言うならば保険外の負担というものがやはり相当大きなウエートを占めているわけです。そういう状況から考えてまいりますと、今回の定率の給付の引き下げというのは、所得の低い人、同時に重い病気にかかった層、こういうものに大きな負担としわ寄せがいくのではないか。同時に、医療費の問題については税制上でも医療費控除の恩典があるわけです。優遇措置があるわけです。ところが、税金を納めていない人たちは幾ら医療費がかかったってそれはマイナスだけで終わるわけですね。そういうことから考えてまいりますと、私は、今回の健康保険改正案がそういう層の労働者大衆なり一般の国民に相当大きな影響をもたらすのではないかというふうに思われますけれども、そういう点についてお二人はどのように現状をお受けとめになられますか、御意見があれば承りたいと思うのです。
それからいま一つは、確かに医療保険制度間に格差がありまして、国民健康保険の場合には本人、家族、七割給付ですね。これはお二人からも御意見があったわけですけれども、当然国保の医療給付というものは公平の原則からしても是正をされるべきだ、こういう御意見がございました。これは保険料負担との兼ね合いもあると思います。しかし、やはり確かに現実に格差があることは事実ですから、そういう格差は当然高い方向に是正をされるべきである。これは憲法で保障されている精神からいっても当然そうあるべきではないかというふうに私は思うのですけれども、そういうことについての御見解があれば承りたいと思います。
三つ目は、常にお二人は働く人々の命や健康や暮らしを守るということを大事な仕事にされて御活躍をされている立場でありますが、そういう立場から、今回の健康保険制度の改正について最終的にどのような決意で対処されるおつもりでありますか、そういう御方針があれば承りたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/24
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025・今宮信雄
○今宮参考人 ちょっと質問がわからない点もございましたけれども、その点はまた後からお聞きしたいと思いますが、地域医療について市町村の協力を求める、企業としてもそれができるような体制を考えるべきではないかというふうな御質問でございましたですか。
地域医療というのは、私はこういうふうに解釈しているのです。地方における医療という意味じゃなしに、もっと生活ぐるみの医療、現場における医療、むしろ、今までのような病気を治すためには病院へ行くんだ、診療所へ行くんだということじゃなしに、お医者さんが現場に出かけていって住民の間へ入って医療を行う、これが地域医療だと私は思うのです。住民の間に入っていくわけですから当然住民が主体にならなければいけない。市町村はもちろん協力はするでしょうけれども、やはり住民の組織、組織というのもおこがましいかもわかりませんけれども、やはり住民のグループなりそういうものがないと動いてまいりませんね。そういうものを求めるために、先ほど申し上げましたようなホームドクター制といいますか、そういうものをもっと、主として老人が持つように全体が誘導していくべきであろうというふうに私は思うのです。それが地域医療の充実であって、健康管理にもなるし、病気にかかった場合にはまずそういうお医者さんが手当てをする、もし手に合わないときには、もっといろいろな情報も得て、もっと高度な医療をする、あるいは病院へ入れるというようなことになると思うのですが、日常の活動は主としてコンサルタント的な生活協力的なものになろうかと思うのです。
それじゃ企業はどういうふうなことかということですけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、健康保険組合というのは既にそういう体制をとっているわけですね。それはなぜできるかといいますと、今言いましたようにまとまりが非常によろしい、小回りがきくと言いましたが、小集団といいますか小さな一つのコミュニティーをなしているわけですから、そういうことをもう少し取り入れていく、あるいはそれと交流をして、むしろその中に吸収する場合もあるかもわかりませんですね、これは先のことですから私は具体的には申し上げられませんけれども。そういうことが、地方における企業あるいは地域医療あるいは健康管理というものにつながっていくというふうに考えております。
それから、支払い方式を是正するように誘導していくべきではないか。この支払い方式はもう既にある程度踏み込んでいるんだというふうに申し上げていいと私は思います。昨年二月から発足いたしました老人保健法の支払い制度は相当マルメ方式、相当ではありませんね、ある程度、若干ですね。あるいは生活指導だとかそういう点を取り入れておりますね。これはやはり、老人の身体的な特性からそういうものを入れないといけないんだというふうになっております。それでああいうふうな改正が行われておるわけですけれども、ベースはやはり従来どおりの出来高払いの支払い方式になっておる。大筋はそう変わっていないわけです。ですから私は、今後はああいう方面をもう少し充実させていく、まず老人保健法の支払い方式をやる。昨年は非常に忙しい間でつくったわずかな改正にすぎなかったのですが、これを今後強力に、老人保健法ですからもちろん成人病が大部分対象になっているわけですが、それに適応したような方式に変えていく。これは相当反対もあるでしょうね。特に医師会の方からは反対するかもわかりませんが、しかし持っていき方はいろいろあると思います。医師の方でもやはり、もっと患者と心の通い合うような十分な医療をやりたい医者がたくさんおるわけですね。しかし支払い方式がああいうふうになっておりますから、なかなかそういうふうにゆっくりした診療はやれない。原因まで探求して、それにまで及んでいろいろ時間をかけてやるということは、結局自分の懐、収入に関係をします。だから、もっと技術料を評価してそれによって生活ができるように、薬とかそういうものに頼らないで診療ができるように、制度を変えてほしいというのが医師側の要求です。しかし、従来支払いは出来高払いになっておりますから、そう簡単に、いや、それは変えていいんですよということはもちろん言えませんし、そこら辺で何かもやもやしておるわけですが、やはり大きく制度を改正する方向をはっきり決めて、そしてそれに報いるには相当程度の診療報酬というものを考えていけば、私は支払い制度というものは改善できると思うのです。しかし、なかなか踏み切りというものはむずかしいかもわかりません。しかし、もう既に老人保健法の中で踏み込んでおるのだから、それをさらに拡充させるということがいいかと思います。
それから、退職者制度の新しい負担の歯どめということがございましたけれども、なかなかその方法というのは難しいのですが、むしろ新しい負担をかけられてまいるので、組合健保の方では非常に不安を感じておる。拠出が将来どんどんふえていくのではないか、我々はいろんな施策をやってそして病気を減らしている、もちろん老人が少ないというメリットもあるのですが、しかしそれとはほかに、いろいろ努力をして医療費がふえないようにやっている、そういうのがどんどん吸い上げられては困るではないか、こういう不安があると思うのです。そういうものを抑えていくには、そうやってもこういうふうな、あなた方が組合健保の中で行われておったと同じくらいの努力はするんですよというところを見せることが必要だと思うのです。そういうふうな実績を上げていく。そのために、今まで組合健保のやっておりましたやり方を十分見習っていくべきではなかろうかというふうに私は思います。金額的にがちっと歯どめというのはなかなか難しいのではなかろうか、そういうふうな努力が行われればおのずと新しい負担もスムーズにいくのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/25
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026・岡村文雄
○岡村参考人 お尋ねの第一点は、低所得者層並びに重症の患者の保険外負担または十割給付、これが一部負担が増加した場合どうなるんだといったお尋ねなんですが、それにつきましては、実は私たちの団体の中に調査をしたのがございます。それに従って具体的な数字を挙げて申し上げてみたい、このように思います。
三つございまして、三つといいましても、設問の二つをまた一つについて中身を細かく分けたものでありますが、一つは「健康保険法で十割負担がなくなってくるといった場合にあなたはどう考えますか」で、冒頭申し上げましたように、これは患者団体でございますから非常に切実な形で受け取られておりまして、「病気が治らないがすぐ退院する」といった答えが一六・八%、非常に高い数字で出ております。そして「病気が治らないがなるべく早く退院をしたい」というふうに答えましたのがそれよりまだ多くて二六・一%、両方合わせますとざっと四三%近くになってまいります。そして、それ以外の答えの中では「どうしたらいいかわからない」と言われる方が二〇・八%あります。それから、中には非常にお困りになったあげくの、確かに私ども、入院している患者並びに通院している患者も含めまして患者の立場が弱いなと思いましたのは、この「どうしたらいいかわからない」を含めまして「借金をしてでも入院を続ける」と答えられたのが一六・六%出ております。それからいま一つは、「病院に、働けるようになったら支払いますと言って滞納する」こういう答えが一〇・一%、このようになっております。比率から申し上げまして、残りの九・五はノーアンサーであります。
第二の私たちの調査の問題として、「健康保険が改悪された場合」、ここでは改悪という言葉は使ってはいけないのでしょうけれども、「今度一部負担が強制された場合どういう影響を受けるか」といった答えてあります。まず「病気を治すのによくない」、これがどういう形で出たのかは存じません、答えとして出てまいりましたこれが、六四%と非常に大きく心理的に働いております。それから、それに関連するだろうと思いますが、違った選択肢として「よく眠れなくなる」というのが六・八%、「食欲がなくなる」というのが五・七%であります。ちょっと変わった答えが出てまいりまして「家庭内がうまくいかなくなる」という答えが出ております。これが一六・八%であります。したがいましてノーアンサーが六・八%になるわけであります。
三つ目に、「家庭がうまくいかなくなる」というものの中身はどうなのかといった調査の結果を申し上げますと、「子供の高校、大学進学をあきらめる」といった悲痛な答えが一五%と出ております。それから、非常にお困りになっているのだろうと思うのですけれども、「生活保護を受ける」といった形の答えが三八%。このことは一面で考えますと、医療費がこのように削減されてもまた社会福祉の方に流れ込むといった、先ほど中根参考人が発言された、私も意見陳述で申し上げました政府全体としての施策、そういったものに関連してくるのじゃなかろうか、このように思います。いま一つは、これは先生方が非常に御心配になっていらっしゃいます「サラ金から借金をする」というのは一五%という数字が出ております。その他が二六%でございます。残りがノーアンサー、こういう状況になっていることをこの場で数字の面で明らかにさせていただきたい、このように思います。
二つ目に、国保との格差、これを高い方向で是正していくべきじゃないか、これは私も先ほど賛成と申し上げたように御意見のとおりでございます。ぜひそのように御配慮をお願いいたしたい、改めてお願い申し上げるわけでございます。
三番目に、労働団体としての決意と私は受け取ったわけでございますが、どういう気持ちでこの問題と今後とも取り組むかといったことでは、幸い手元に、ことしの四月十七日に総評、同盟、中立労連、新産別、いわゆる労働四団体、これに全民労協が加わりまして、これらの労働団体の事務局長と書記長会議の確認事項がございますので、読み上げて答弁にかえさせていただきます。
「健保改訂問題について 今国会に政府が提出している健康保険法改訂法案は、医療制度・医療費体系について将来の展望を何等示すことなくしたがって、それについての何等の国民的合意のないままに、一方的に被保険者の犠牲によって当面の財政負担を軽減することのみをねらいとしたものと断ぜざるをえない。また、退職者継続医療制度については、この制度の安定的確立にとって不可欠な財政負担が全く考慮されていない。したがって、われわれは、政府改訂案には反対であり、断固として、その廃案をめざして闘う。」、こういう文書がございますので、この文書でもって答えにかえさせていただきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/26
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027・中根康二
○中根参考人 まず、本人の十割給付の維持の問題でございますが、先生の御質問の中に、家族についてのお考えがなかったわけでございますので大変お答えがしにくいわけでございますが、冒頭申し上げましたように、やはりいつかの時点では給付を統一すべきだという考え方は変わっておりません。したがいまして、二番目の国保の七割をどうするかという問題と絡むのではないかと思いますが、十割が維持されれば一番ベターでありますが、家族を引き上げ国保を引き上げるにはどういうふうになるのかということを見る中で十分な検討をしていきたい。いつまでも本人だけが十割で家族を置きっ放しにするということについては、抜本改正に取り組むに当たっては若干問題意識を持っているということでございます。
それから、最終的な態度ということでございますが、今回村参考人が四団体と全民労協の申し合わせ事項を読み上げられたわけでありますが、私どもといたしましては、意見の最後に申し上げましたように、もし議論の中につくとすれば、かなりな修正をしていただかない限り議論に参加しづらいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/27
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028・村山富市
○村山(富)委員 時間の関係で大分はしょったものですから若干誤解があったのではないかと思うのですけれども、医療費全体の適正化を図っていくためには、社会構造や疾病構造の変化に対応して供給制度のあり方も考え直していく必要がある。その限りにおいては、予防とかいう分野というものが大変大きなウエートを占めていくのではないか。特に平素からの健康診断やらあるいは健康指導や健康管理といったものが必要になる。そういう役割を担っていくのは市町村の保健センターやら保健所が担うわけですから、そういう部面の行政というものがもっと充実してくるならば、相当病人が減って医療費の適正化につながっていくのではないか。それはどうお思いになりますかという御質問を申し上げたわけです。もし御意見があればまた重ねてお願いしたいと思うのです。
いま一つは、退職者医療制度は御案内のように、職場を退職されたOBの方々をその制度に入れて、そして医療の給付をしていこう、こういう仕組みですけれども、御指摘もございましたように、これは現職の働く労働者や使用者、さらに国民健康保険税を納めます退職者の財源でもって賄っていく。国は一銭、一円も金を負担しないわけですね。私はむしろ、所得が低下してしかも罹病率が高くなる、こういう層にこそ、所得再配分機能としての役割を果たすという意味から申し上げますと、やはり国が応分の負担を当然すべきではないかというふうに考えておるのですけれども、そういうことについてもし御三人の参考人にお考えがあればそれぞれお尋ねを申し上げたいというふうに思います。どうぞお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/28
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029・今宮信雄
○今宮参考人 医療費全体を引き下げるために疾病構造の変化に応じた医療体制を考えるべきではないか、そのためには地域医療というものを充実させろというふうなお話しは、そのとおりでございます。その応じていく体制には二つあると思うのです。まず、病人として医療機関に来た者に対してどういうふうに対応するか。これは、私が先ほど申し上げましたように支払い制度を変えろ、もっと適応したものにしろということ。それからもう一つは、医療機関へ来る前の段階の、来てからでもいろいろあるのですけれども、来る前の健康管理、あるいは体の相談とかあるいは生活とかストレスの問題だとか、そういうような現在の新しい疾病はやはり重視しなければいけない、そういう必要性があるのだから、やはり地域医療体制というものをそれに応じたように充実すべきだ。充実の方法は先ほど申し上げました。ですから、診療の場合とそれから診療にまで至らない場合と、両方から問題を取り上げる必要があるだろう。それに応じた体制を考えるべきだろうということを申し上げているわけです。
退職者医療に対して国の負担をというふうなお話しがございましたが、これは私どもわかりません。今こういうふうに、政府が大きく六千八百億円という節減を出してまいりましたのは、やはり財政的に非常に苦しくなってきている、まずそれの肩がわりということだろうと思うのですが、その上でさらに負担をすべきだということは、結局この削減を減らすということになるわけですから、それは政府として一体どういうふうに考えるのかということで、これは私にはちょっとわかりかねるところでございます。
〔委員長退席、今井委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/29
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030・岡村文雄
○岡村参考人 第一点はお説のとおりだと思います。今お答えいただきましたし、村山先生のおっしゃるとおりだ、私はそのように存じます。
第二点につきましての退職者医療問題についての国庫負担ですが、私の記憶が若干あいまいなので、年代をやや幅を持って申し上げますが、一九五〇年ですから昭和二十五年前後、当時の社会保障制度審議会がこの問題について非常に大きな提言をいたしております。その中の文言で今私が記憶しておりますのは、少なくとも国の責任において医療にこれくらいの国庫負担をするのが当然ではないか。医療と、年金が当時はつけ加わっていたかと、かすかな記憶があるのですが、そういう非常に大部の答申が社会保障制度審議会から出されていた。この場合に、戦後非常に盛り上がりました社会保障の考え方を、当時の社会保障制度審議会が、国民の考え方の指針として非常に重要な点を指摘なさったんじゃないか。私はこのような記憶があることを申し上げて答弁にかえさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/30
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031・中根康二
○中根参考人 第一点の予防の問題につきましては、先生のおっしゃるとおりでございます。
それから、退職者医療に国庫負担の問題でございますが、冒頭に意見で申し上げましたように、我々現役としても何がしかの負担はやむを得ないと思いますが、国庫もぜひともつけるべきだという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/31
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032・岡村文雄
○岡村参考人 一言申し落としましたので、申しわけございません。
今は非常に古い話を申し上げましたが、現状で申し上げますと、退職者医療の方々はそのまま地域保険にお入りになっている、いわゆる国民健保にお入りになっているとすると、国庫負担は御存じのとおり四五%出てまいります。それが今度、退職者医療制度という新しい制度の創設によってゼロになる。私の陳述でも申し上げましたとおり、私たちはこの辺に非常に大きな疑問を抱かざるを得ません。なおかつ、これに対しての歯どめがない。こういう問題がありますので、先ほど申し上げました昭和二十五年前後のその意見と同様に、何らかの配慮がなされるべきではないか、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/32
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033・村山富市
○村山(富)委員 最後に、岡村参考人にお尋ねしたいと思うのですが、あなたの陳述の中に、今回の健康保険改正に絡まる経過の問題、特に社保審の答申なんかの問題にお触れになってお話しがございました。中根参考人からはビジョンに対する見解も述べられたわけですけれども、先般、御案内のように四月二十七日に、厚生省が「今後の医療政策の基本的方向-二十一世紀をめざして-」、こういうテーマで一つの計画案を出されました。これは委員会の質疑の中で、そういう将来計画がなければ審議はしにくいではないかという委員からの要請もあってつくられたと思うのですが、岡村参考人の意見の中にビジョン問題と絡めて疑問点が投げかけられたような御発言がございましたけれども、今回厚生省が出されました二十一世紀を目指しての医療改革の基本方針といったものについて、もし見解があればお尋ねしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/33
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034・岡村文雄
○岡村参考人 御指摘の「今後の医療政策の基本的方向-二十一世紀をめざして-」、これだと存じますが、拝見いたしました。ずっと見せていただきますと、これは当然のことでしょうが、社会保険審議会でいろいろ論議された審議委員のそれぞれの意見の中で、これと思うよい方向のものを羅列した、このように私は受け取っております、したがいまして、これらの方向は実現されるのであれば大歓迎だ、このように存じます。
ただ、私が申し上げたいのは、この中で時期的なものを書いたのは、3の「医療保険制度の改革」の中の「(1)給付と負担の見直し」、これのところの被用者保険本人の九割給付五十九年度、本人の八割給付六十一年度、いわゆる高額療養とかこういったところだけが時期が示されておりまして、あとは時期が示されてないわけであります。したがいまして、こういうふうな文章をお書きになっても実際に負担をさせる、強制と私は感じておりますが、強制する面だけが時期が明記されていて、残りが書かれてない、このようになりますと、いわゆる日暮れて道遠しという感がしないでもありません。また道の遠い中で、ちょうちんは出されてなるほど明るくなるかのように感じますけれども、ろうそくがついてない、マッチがないという状況じゃないかと私は考えますが、私の意見を求められましたので率直に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/34
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035・村山富市
○村山(富)委員 ちょっと時間がありましたから最後にお尋ねしたいと思いますが、御意見の中にも、高額療養費について、今のように暦月であるとかあるいは一レセプトでなければならないとか、こういう給付のあり方については、例えば一家の主人が財布を握っておる、家族に病人が出ればそれぞれ支払いをする財布というのは一つですから、そういう高額療養費の給付のあり方についてはやはり問題があるんではないか、むしろそういう点こそ早急に是正さるべきではないか、こういう意見もあったように記憶するのですけれども、この高額療養費のあり方について、三人の参考人に御意見があればそれぞれお聞かせいただきたいというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/35
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036・今宮信雄
○今宮参考人 お答えいたします。
高額療養費の問題は、その金額がどうして出されたか私は余り詳しくは知りませんけれども、私も、医療費の中に生活上の問題が入ってきていろいろ取り扱われるということに、非常に危なさを感ずるわけです。やはり生活の問題というのは別の社会福祉的な面から考えていくべきであって、医療費そのものをゆがめてはいけないというふうに思うのです。これはお答えになっているかどうかわかりませんが、そういうふうな感じを抱いております。ただ、その金額が五万四千円になるのがいいのか悪いのか、これはちょっと私には判断いたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/36
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037・岡村文雄
○岡村参考人 高額療養費の件でございますが、今五万一千円という中で、ある月の後半に五万円支払って、その次の月の前段に五万円支払って退院をした、こういう例がございます。この場合には高額療養費は一銭も出てまいりません。これは一つのレセプトでありますから、そして私が今申し上げましたのは暦月方式でありますから。
いま一つは、レセプトが違いますと、例えば片一方が盲腸で片一方が耳鼻咽喉といった場合には、それが全く合算されません。それから家族ばらばらになった場合には、当然それもまた同じ問題が出てまいります。となりますと、私が申し上げたように、家計への影響というものを中心にお考えをいただきたい。そのことを今から四年も前から問題にしながらいまだに解決がついてない、このように申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/37
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038・中根康二
○中根参考人 家族の中で複数の人が長期間医者にかかるというのは余り多いケースではないと思います。それだけにそれらの人を救うことは必要ではないかと思います。したがいまして、岡村参考人が言われましたように暦月ではなくて三十日単位、それから家族を含めての単位ということでの修正が必要ではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/38
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039・村山富市
○村山(富)委員 時間も参りましたのでこれで終わりますけれども、大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。これから、健康保険法改正の法案についての審議に大いに生かしていきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/39
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040・今井勇
○今井委員長代理 次に、森本晃司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/40
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041・森本晃司
○森本委員 本日は、大変お忙しい中、三名の参考人の方にいろいろ貴重な御意見を聞かせていただいておりますこと、大変ありがたく思う次第でございます。
二、三点について私の方から質疑をさせていただきたいと思います。
まず最初に、今宮参考人にお尋ね申し上げます。
先ほど出来高払い制度についての御意見の中で、改正しないとなかなか実情に合わないというふうなお話しがございました。私も、現在の医療保険制度の中における出来高払いが薬づけ、検査づけ、さらにまた乱診乱療の元凶になっていると指摘せざるを得ませんが、しかし反面、もし改正するとするならば、それにかわるようなものがあるものかどうかということをお尋ね申し上げたいわけでございます。
ヨーロッパ等では、人頭割とかあるいは請負制度などを採用しているところがあるように伺いますが、それもかなりの問題点もございますし、また我が国の実情に合うのかどうかということが大変な問題になっております。その辺の御意見、また出来高払い制度について具体的な案がございましたら、御意見をお聞かせいただければと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/41
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042・今宮信雄
○今宮参考人 これは非常に難しい問題でございます。先ほどもちょっと触れましたが、老人保健法の支払い報酬の問題である程度踏み込んでおるということを申し上げたわけですが、それをさらに徹底させるということが今後の改正の方向である。ただ徹底させると申し上げましても、まだまだわかりませんので、内容を一体どういうふうに持っていくのかという問題が残るわけです。それを私が詳細に申し上げるだけの知識は持っておりませんが、例えば今アメリカで定額方式ですかを実施しようとして試験的に大分進んでおるという話を聞いておりますけれども、外国の話を申し上げましても、いろいろな実情がございまして、それがすぐ我が国に適用できるかどうか非常に疑問でございますが、そういう動きがございます。
これは老人保険、いわゆるメディケアというのがございますが、そういう中で、今までのやり方では物すごく医療費が上がってくるので、何とかという病気に対してはこれだけの金額しか払わない、こういうような制度なんですね。いわゆる包括定額払いというふうな名前がついておる場合もあります。しかし、それをやりますと、確かにそれ以上払わないのですから、しかも一定の金額が医者の収入になるわけですから、なるべく薬を使わない、検査も節約するという逆の面があるわけですね。そうしますと診療が非常にお粗末になるのではないか、こういう不安があるわけです。それから実際にいろいろな病気、同じ糖尿病といいましても、病院によって非常に高くつく場合もあるし、ある病院は非常に安くつく場合もある。それから病気自体も、同じ糖尿病といいましても診療のやり方がいろいろあるわけですから、それによって正確な金額をはじき出すということは非常に難しいけれども、そういう非常な努力をやはりやる必要があるのだろうと私は思います。
最良はこれだというふうなことは私は申し上げられませんけれども、そういう例もありますし、今既に踏み込んでおります老人保健制度の診療報酬、そういうことについて時間をかけて努力をして、やはり踏み込んでいくということが必要ではなかろうかと私は思っております。最良の方法を今ここで示せと言われても、そういうものは私にはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/42
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043・森本晃司
○森本委員 ありがとうございました。
次に、今、各保険団体が行っておられます通知運動についてお伺いしたいと思います。
これは岡村参考人、中根参考人にお伺いしたいわけでございますが、政府は、一割負担の導入の大きな理由の一つはコスト意識の向上、すなわち自分がかかった医療費がすぐわかるように、このことが大事なんだということで、一割負担にすればすぐわかるために、医療費に対する認識が深まってくるんだというふうに主張しております。コスト意識の向上は、一割負担をしなくても、今冬保険団体で一生懸命行っていただいております通知運動、このものが大変大きな役割を果たしているんではないかと思われますが、この問題に関して厚生大臣が、一つは、全員に通知することができないという理由と、もう一つは、医療費の通知がおくれるというこの二点を挙げまして、一割負担ならばその場でわかるんだというふうな意見を持っておられるようでございます。
そこでお二方にお尋ね申し上げたいのは、医療費通知運動の現状と今後の運動の展開について御意見を伺いたいと思います。
また、それと同時に、医療費の領収証の発行を義務づけるということはどうなのか、この辺の御意見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/43
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044・岡村文雄
○岡村参考人 せっかくの御質問でございますけれども、私、手元に資料を持ち合わせておりませんで正確には申し上げかねますけれども、傾向として御返事申し上げたいと思います。
今、健保組合の一部それから国保の一部の地域では、お説のように医療費を通知をするといった運動が次第に広がってまいりました。私は非常にいい傾向であると感じております。むしろ奨励をしていきたい、このことをもっと要求として取り上げていきたいと考えております。ただ、医療団体のごく一部のところでは、人件費がこれ以上かかるととてもできないんだといったような声もございます。
二つ目の御質問の領収証に関連をいたしまして、最近はレジスターにいたしましてもほとんどが領収金額が出てまいります。それで、今のところはまだそこまで徹底しておりませんが、厚生省なり社会保険庁なりそういったところが御指導いただいて、一定の番号をつけていただきますと、どういうときの領収証であるのか、例えば初診料であるのか、そういったことが可能であろうと考えます。そうしますとさしたる手間もかからないと思いますので、金を払ったときに領収証を出すのは当然だという考えから、おっしゃっている形でぜひ推進をしていっていただきたいと思っております。そのことは、一割払うからこれの十倍をすれば医療費がわかるのではなしに、むしろ自分たちの払った金と、いま一つは、御承知のように三月のいわゆる確定申告時に例の五万円の基礎控除額がございますが、それらの手続のときにも、国税庁の方では家計簿を出せばといったようなことを言っておりますけれども、明らかな領収証があればもっと助かるんじゃないか。あわせて、そういったことを考えておりますことを申し上げます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/44
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045・中根康二
○中根参考人 医療費の通知制度でございますが、いろいろな意味で大変プラスになっていると私は思います。特に新しく職場へ来た人が初めて医者にかかったときなど大変びっくりしているような面もありますので、我々自身にとってもコスト意識ができる。それからお医者さんがどれだけのことをしているかということもある程度推測できるわけでございますから、いろいろな意味からいって、差し支えない範囲でもう少し細かく通知があってもいいんではないかというような気がいたします。
それから領収証でございますが、これもやはり病名がわかるということについては問題があるとしても、現在では薬の容器代なんかも払っておるようでございますから、いわゆる医療費と初診料その他、そういうものがある程度わかるような内容の領収証をぜひ発行していただきたい、そのように考えております。
それから通知運動と一割負担の問題でございますが、私はそれは余り短絡的につなぐべきではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/45
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046・森本晃司
○森本委員 次に、先ほど意見陳述の中に出てまいりました国民健康保険における保険料の問題でございますが、ストックがあるというふうなお話しがたしか先ほどあったように思われますが、国民健康保険料賦課の根拠というのは、一つは資産割、二つは所得割、三つ目は平等割、いわゆる世帯割という形での応能負担になっておるわけでございます。サラリーマンの給与所得というのは、標準報酬月額のみによって保険料が算定されておりまして、また、病気になった場合には当然所得が減って保険料も同時に減ってくるというふうに思われるわけです。国民健康保険の方は、サラリーマンの方々の基準算定と別に、資産割というのが最初から入っておるわけでございます。したがって、ストックというのは資産割の中に加算されてくるんじゃないかと思われるわけですが、その辺の御意見を岡村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/46
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047・岡村文雄
○岡村参考人 おっしゃるとおりでございますけれども、所得そのものに、非常に大きな把握の率の違いがあるといったことを私は特に中心的に申し上げました。したがって誤解をいただいたかもしれません。しかし、私は、先ほどから申し上げておりますように、国民健康保険の方がいつまでも七割給付でいいといったような形には毛頭考えておりませんので、その点誤解のないようにお願いをしておきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/47
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048・森本晃司
○森本委員 最後に、三人の方に退職者医療制度についてお尋ね申し上げたいと思います。
退職者医療制度の創設については我が党もかねがね主張してきたところでございますし、異論はございませんが、ただ、今回の政府提案には内容的に非常に問題が多いように思われるわけでございます。
その一つは、先ほども村山さんの発言の中にもございましたけれども、新しい制度をつくるのに国庫補助がないというところに、私は大変大きな問題点があるように思われるわけです。新制度発足に当たって、その誘導措置としてやはり国庫補助を行って、国もその責任の一端を担っていくべきであると思いますし、また憲法第二十五条の精神から考えてみましても、社会保障というのは国が負担してこそ社会保障制度でございまして、今回のこの退職者医療制度については全くそれがないということ、私も政府の内容に大変疑問を感じるわけでございます。この一点。 。
それから、唐突にこの問題が出てまいりましたということ、審議会でも意見がまとまらず、当分は時間をかけて検討するとなっていたのが出てまいったわけでございますが、この背景は、本当の退職者医療制度そのものをつくっていくというねらいよりも、むしろ国民健康保険の国庫補助の四五%の削減そのものにねらいがあるのではないだろうか。一口に申し上げますと、退職者医療制度に名をかりた財源調整であると我々は思わざるを得ないわけでございますが、その辺についての御意見をお伺いしたい。
もう一つは、同時にそれぞれの企業で今日まで保険料を払い、またその企業の中におった人たちであるがゆえに、今度はそれぞれの企業で、またそれぞれの保険組合でそういった人たちを救済していくんだという意見、別のものをつくるんだ、何もよその人の分まで我々が拠出金を出してやらなければならぬことはないというふうな御意見もあるように伺っておりますが、時間がもうあと七分でございますので、それぞれ三人の皆さん方にお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/48
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049・今宮信雄
○今宮参考人 退職者医療制度につきまして国庫補助が必要ではないかというふうなお話してございました。今政府が出そうとしているものについて、これは政府の腹を探るようなことになるわけですが、私もそう考えているわけですが医療費の中には非常に大きなたくさんのむだがある、したがって、政府が今まで四兆何千億か支出しておりました医療への補助というものは相当なむだがある、したがってそこからなるべく引き揚げていきたい、少なくしていきたいというのが今度の一つの動機だろうと私は思うのです。私も確かにそういうふうな動機も必要だと思うのですね。私も、医療費は非常にむだがあって、現在の医療に適応していない医療が行われているものだから非常にたくさんのむだがあると思うのです。それを抑えていく、政府が、財政窮迫の今日、そこからなるべく負担を少なくしようという考えはわかるわけです。ですから、負担のできるところへなるべく肩がわりしようというのが退職者医療制度だろうと思うのですね。この退職者医療制度というのは、もともと前からその発想はあったわけです。老人保健と企業の退職との間をどうつなぐか、この問題はあったのです。労働団体の方は一〇〇%従来どおりの給付を維持しろ、それも国庫補助というものも考えながらそれはあったのですが、今度の発想は、今までのその発想に若干乗って、財政的な負担を免れようとしていることだと私は判断しているわけです。
ですから、先ほども申し上げましたが、国庫負担というものは全体が負担しているんだから、それをやるべきだというふうなことだけではなかなか判断がつかない。いろいろな政治的な、そういうむだな医療費はなるべく手を引いていこうというふうなところが見えますから、それは政府自体がどこへ問題を持っていくかにすぎないので、退職者医療の方へもし国庫負担があれば、恐らく別の方で負担を減らされるのではないかと思うのですね。そこら辺は政治的ないろいろな判断から来るんだろう、そういう判断をしておりますので、それはやるべきだとかやるべきでないとか、私には判断はちょっとつきかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/49
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050・岡村文雄
○岡村参考人 退職者医療制度につきましては、私は申し上げたとおり賛成でございます。
その経過を簡単に申し上げますと、一年半前、一昨年の十月に社保審で、白紙諮問ではございましたけれども、今までのペーパーだけは配られまして、その中の一行にこういうところがございました。「現職の人たちと同率とする」、私はそれで非常に喜んだわけであります。ところが実態は、ふたをあけますと「現職」の方が落ちておりまして「同率」の方が生きてきたといったような関係で、がっかりしたという社保審の中の経過がございます。
そういったような状況の中で、お説のように、本人負担を削減して財源を浮かせ、そうして四五%の国庫負担分を二分の七十七、三八・五%にして、またそこで財源を浮かせたものを今度の制度新設に持ってこようとする。私はそういう考え方に反対だと先ほど陳述いたしましたけれども、その考え方はおっしゃるとおりだと思います。したがって、そういう財政調整にのみ今度の制度が非常に大きく働いているといったことに相当大きな疑問を抱き、むしろ怒りを覚えるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/50
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051・中根康二
○中根参考人 退職者医療制度に国庫負担を導入するということにつきましては、ぜひとも先生方のお力で導入をしていただきたいと考えております。
もう一つは、先生がおっしゃいました中に、例えば組合管掌健康保険のような場合、自分のところで退職者の面倒を見ることがというふうなことで御質問があったわけでございますが、私は、できれば余りいろいろな複雑な制度をつくらないで、できれば一本化していくべきではないかという考え方を持っております。
それから、財政対策的ではないかという御質問があったと思いますが、意見の中で申し上げましたように、私はまさしくそのような感じを受けております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/51
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052・森本晃司
○森本委員 大変ありがとうございました。時間が参りましたので、終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/52
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053・今井勇
○今井委員長代理 次に、塩田晋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/53
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054・塩田晋
○塩田委員 本日は、それぞれの立場から、参考人の方々から貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
二、三御質問を申し上げたいと思います。一つの問題につきまして、それぞれの参考人の方からお答えいただきたいと思います。
今回の政府の健康保険法の一部改正法案、中身はいろいろございますけれども、その最も大きい柱になっておりますのは、言うまでもなく被用者本人の自己負担の導入でございます。五十九年度、六十年度が一割、六十一年度からは二割という自己負担の導入、これは昭和二年以来一貫して、健康保険が創設以来維持されてきた制度でございますが、これをこめ際一挙に根本的に変えようという一番大きい柱でございます。これにつきましては既にお三人の方から御意見を賜りまして、日経連の今宮さんからは賛成、岡村、中根両組合代表からは反対という立場がはっきりと出たわけでございます。私たちはこれに反対をしているものでございます。
そこで、今までお話しがありました中で、この問題に関しまして何か共通点はないかということを考えたわけでございますが、少なくとも現在の医療費、十五兆円になんなんとしておる国民医療費、これについて現在適正に支払いが行われているものと見ておられない、したがって医療費の適正化を進めるべきであるという点については、お三人の御意見は共通であったと思うわけでございます。そこで、医療費が現状適正でないから適正化を進めなければならない、こういうことだと思いますが、どの程度適正でない部分があると見ておられるか。これは感じでよろしゅうございます。いずれもむだがあり適正化しなければならないという定性的なお話しはあったと思うのですが、定量的な面で、感触としてどれくらいのものが適正でないと見ておられるか、感触をお伺いしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/54
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055・今宮信雄
○今宮参考人 どれくらいが適正であるかということは私は申し上げられないと思います。私が申し上げているのは、医療費が不適正と言っているのじゃなくて医療が不適正であると言っているのです。正しい医療を行えば、出来高払い制度を改正することによって医療費は下がるに違いない。出来高払い制度の改正と地域医療、両方二本立てを申し上げているのですが、必ず下がるだろう、むだな医療費がなくなるだろう。むだでなければ医療費は上がってもちっとも構わないわけですね。国民の納得を得るような適正な医療が行われて、なおかつ医療費がうんと上がってくるなら、これは防衛費が上がっても差し支えないようにこれは差し支えないと思うのですね。ただ、今非常にむだがあるからそれをとにかく制限しようというのが私の考えなのです。ですから、どれだけあれば結構だ、国民所得の何%なら医療費を出してもいいのだとか、そういうことを私は申し上げているわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/55
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056・岡村文雄
○岡村参考人 非常に難しいことを聞かれましたので困っておりますが、私は、俗に新聞紙上で言われておりますような乱診乱療、その中身をもっと、たとえ一部の方であっても、例えば私が非常に注目しておりますのは、高額の医療器械をお入れになって、これの償却分を患者が背負わされているのじゃないか、これが非常に大きいのじゃないかというような感覚で、先ほども陳述を一都いたしました。
それから薬価の約四兆円、こういった問題も――失礼しました、これは薬の総費用です。この中には、病院の中に全く使われないままいわゆるストックになっている部面なんかもあるわけなので、そういった部面なんかも本当にむだの中に入るのではないか。
それから、私の陳述の中にありましたように、ある診療所で、これは先生も御経験がおありだと思いますが、レントゲンなり血液なりの検査をされて、次のところの診療所なり病院に行きますとまた同じ検査が同じような時期に繰り返される、そういったものを全部ひっくるめますと、私は非常に大ざっぱなことをあの陳述の中で申し上げましたけれども、今の十五兆円の四分の一ないし三分の一ぐらいのところは予防で防いでいけるのじゃないか。そういったところの非常に大まかな感覚を持っています。これが予想外に大きいのではないかといった感覚を持っています。ただ、この数字は、厚生省の予算の中に組み込まれておりまして大体一千億台になっておりますけれども、私はそういう程度でとどまらないのじゃないかといった感覚を持っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/56
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057・中根康二
○中根参考人 宇都宮の精神病院の問題でございますか、あれらの問題をマスコミを通じてしか私どもは知るよしはないのでございますが、これだけ医療に対する関心が高まっておる中でも、まだああいうものが存在するということを見てみますと大変残念なことではありますが、もう少しチェック機能をきちっとすればかなりな金額が出るのではないか、余りパーセントとかそういうことで申し上げることは不可能でございますが、あれらの記事からはそういった感触を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/57
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058・塩田晋
○塩田委員 ありがとうございました。
医療にむだがあるか医療費にむだがあるか、これはいずれも同じことでございまして、いずれの参考人の御意見も、量的には言えないとしてもかなりの大きいむだがあるという御認識、これは共通していることだと思います。
そこで、問題は適正化する方法でございます。それには、それぞれの参考人の皆さん方から御意見がございましたから繰り返すことはないと思うのでございますが、私が次にお伺いしたいと思いますのは、一割ないし二割の自己負担を導入した場合に、医療費、日経連の方は医療と言われましたが、医療がどのように適正化されると見ておられるか。自己負担導入ということによってどのような効果が医療ないし医療費の方に出てくるか、このことをお伺いしたいわけでございます。出来高払い制その他の問題あるいはこの予防問題、コスト意識、いろいろありましたけれども、この一、二割の負担というものの目的、そしてその効果、そのことによってどのようなメカニズムを通じて医療費あるいは医療適正化に影響を及ぼすか、このことについて御意見を伺いたいわけでございます。
政府は、もちろん財政政策、国家財政が非常に窮迫している中で六千二百億円を節約したいということ、あるいは一割ないし二割の負担によりまして退職者医療制度を新たに設ける、そのための費用を各関係の機関から拠出する、その拠出の穴埋めに一、二割は使うのだという説明もございました。現にそうなっておるわけでございます。それとともに、コスト意識を持つことによって医療薮が全体的に縮まるのだという説明、この計算根拠も委員会等で明らかにされたわけでございます。一、二割を持つことによって医療費なり医療が縮まるいきさつ、これについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/58
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059・今宮信雄
○今宮参考人 これも同じように非常に難しい、金額的には測定はできないと思います。ただ、厚生省は、例えばいろいろな条件が同じならば幾ら減るだろうというふうな数字ははじき出しておるようでございますが、それだけじゃないので、波及的にさらに抑制されてくるだろう、それが相当のねらいになってくるだろう、それが幾らになるのかということは非常に難しいけれども、ある程度制限されてくるのではないかと思います。
しかし、その金の問題よりも、負担がふえるという問題よりも、医療が適正になるということが大事だと私は思うのです。これでないと本当は医療費は下がってこないだろう。よくタクシーの運賃が上がると当座は利用が下がりますね。しかし長い期間を経ますと利用率はもとと同じようになってしまう。これは人間の慣性といいますかそれがありまして、一時的には下がるけれども長い目で見ればそんなには下がらないものだ。しかし不合理なことはずっと長続きしませんよ。しかし合理的なものであれば、医療そのものの受診率というものはそう下がるものではないだろう。しかしそれだからといって、それじゃ意味ないじゃないかということじゃなしに、それによって医療の内容が変わってくるから医療費が下がってくるのだ。国民が非常な関心を持って、医療の適正化ですよ、それについていろいろな注文を出してくるから適正になっていくだろう、それによって下がってくる効果というのは非常に大きいものだと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/59
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060・岡村文雄
○岡村参考人 一点に絞って申し上げますが、今度一割自己負担になった場合に、波及効果ということをおっしゃいましたが、私の手元に、これは出所を明らかにいたしませんが、ある団体の予算編成のための政府側の資料であります。波及効果という欄があります。もう既に先生は入手なさっていらっしゃると思います。ここには五・六八%と入っております。ですから、一割とりまして、なおかつ、それの約半分をやや上回るぐらいの波及効果というものは政府自身も認めているのじゃないか、このように考えておりますから非常に大きな問題である、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/60
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061・中根康二
○中根参考人 負担の問題でありますが、仮に一割になろうが二割になろうが、病気になれば生活を切り詰めても行くということになりますので、どれだけ波及効果があるかということは明確にはわかりませんが、負担というものにつきましては、病人の場合に受益者負担という言葉は使いたくないわけでありますが、むしろいわゆる制度から受ける恩恵、それに対する負担という面で議論をしていきたいなというふうに考えております。最初の間は多少のブレーキはかかるのではないかと思いますけれども、ずっと先へいけば、それがブレーキのままでいくかどうかということは必ずしもわからないのではないかなというような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/61
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062・塩田晋
○塩田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/62
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063・今井勇
○今井委員長代理 次に、浦井洋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/63
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064・浦井洋
○浦井委員 お三人の方、どうも御苦労さんです。
私の持ち時間が十分しかございませんので、もう全部初めに聞いてしまいますから、ひとつお答えを願いたいと思うのです。
まず、岡村さんと中根さんにお聞きをしたいのでありますが、お二人とも社保審の委員をやっておられるわけで、今度の改正案が正式に社保審に諮問される直前に、療養費制度の改正、特定療養費の項が入ってきたといういきさつがある、これはよく御承知だと思うのですが、そのいきさつは一体どうなのかということをもし御存じであればお教えをいただきたい。
それから、療養費制度の改正、特定療養費の項について、岡村さんは冒頭陳述のところで多少言われたわけですが、社保審の中でどれほど議論をこの項についてされたのかということについて、お二人にお伺いしたいと思います。
それから、今度もし仮にこの改正案が成立をすると、この辺の問題については大臣の諮問に応じて中医協で議論をされるが、今宮さんは中医協の委員をされておられるようでありますから、特定療養費、先ほどからの答えの中に、例えば医療が適正でなければならぬ、その一つのやり方としては、老人保健法の特掲診療料のことを指されているのだろうと思うのでありますが、ああいうものが今回もやられるのが望ましいと思っておられるようであります。あるいはまた、先ほどちょっと出ましたけれども、アメリカでは定額の医療といいますか、これは私はDRGを指しているのだろうと思いますが、こういう考え方を持っておられるのか。私の考え方は、DRGのような考え方というのは前厚生大臣の林さんが出された「視点と方向」の中に、医療標準の概念を導入するとかニューフロンティアを育成するとかいうような話が出ておりますから、こういうことに通ずるように思うのだけれども、今宮参考人にこの点をお尋ねしておきたい。
それから、最後にお三人の方に、お三人の方とも中長期ビジョンに欠けておるという点では共通しておったと思うわけでありますけれども、政府としては昨年の八月、九月、あるいはもっと前のいわゆる吉村保険局長発言、あちこちでやられておりますけれども、そういう中で、自由診療をかなり大幅に拡大をしたいという意図を持っておると私は思っておるわけであります。この四月二十七日ですかに出された中長期ビジョンの中にはそれは出ておりませんけれども、そういう自由診療の拡大というようなことについてお三人の方はどう考えておられるのか。
聞くところによりますと、生命保険資本などは、この健康保険の改正案が成立をすればかなり私的保険の契約件数がふえるだろうということで、手ぐすねを引いておるというふうにも私は聞いておりますけれども、必ずそうなると思う。こういうような方向についてどのように考えておられるのか、お三人の方に簡単にお伺いをしたい。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/64
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065・今宮信雄
○今宮参考人 中医協においていろいろ審議が出るだろう、どういう考えかということでございますが、中医協では、今診療報酬のあり方についていろいろ案が出ておりまして、それについての審議をすることになっており、まだ進んでおりませんけれども、やるようにはなっておるのですが、それがどういうように進みますかわかりませんけれども、恐らく私としては、先ほども申し上げましたような包括的な医療制度、支払い制度のつもりでおりますので、あるいはどういうふうに発言しますかわかりませんけれども、例えば老人保健法におけるあれは一つの試みでございまして、あれがさらに拡充強化されていく方向、方向としてまだ具体的に、それではいろいろなまずい点もあるのじゃないかという点もあるでしょうけれども、これは私は専門家じゃありませんからそこら辺までは論ずることはできませんけれども、方向としてはやはりああいう方向へ進めていくべきだろうというふうに思っております。
それから自由診療、差額診療という問題、これは今までもう既に大分話が出てきておりますね。例えば室料の問題だとか……(浦井委員「歯科材料」と呼ぶ)ええ、そういうふうなものはもう既に若干差額診療の中に入りつつあるようです。室料はそうではありませんけれども、これはどういうふうにするか、今後必ず出てくる問題だと思います。
昔の健康保険制度が発足した当時の病院の状況、病室の状況というものとは現在は非常に違っておりますから、それじゃ一律に同じ健康保険の室料を適用できるか、これは非常に難しい問題ですね。やはり、今東京あたりで見られる非常に高度な病院に対しては、個人的に負担を求めて入室をさせていくというふうなのがあるいは妥当かもわかりませんですね。そういう問題がもう既に論議の対象になっておりますから、例えば診療、これはもう入室させるということは診療へ一歩踏み込んでいるわけですから、入室はただ泊まるというだけじゃないんで、あの中へ入れて治療するんですよ、ですから、もう診療自体が差額の方に踏み込んでいるような気がするのです。もちろん、それじゃいろいろなものが全部差額になっていいんだということは言っておりませんけれども、そういうふうな方向へ今後は進むのではないかというふうなことは予想されますね。ですから、保険制度というものがある以上はそんなものを全然頭に置いちゃいかぬのだというふうに私どもは考えておりません。やはりそういうことは今後大いに出てくる問題であろうし、真正面から取り組んでいく問題であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/65
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066・岡村文雄
○岡村参考人 二つありまして、一つは社保審の討論がどうであったかというお話しなんですが、おっしゃるように突如出てまいりまして、そうしてこのときに、特別なサービスの問題につきましては、入院生活を快適に過ごすための特別なものはだめなんだといったお話で、これは今までも、今ほど御答弁があったような形で、病院の名前は申し上げませんが都内に有名なところがありますけれども、そういったようなところ、これは差額を取られてもしょうがないんじゃないか、こう私は思います。しかし、全体としてこれを持ってきた場合に、どこで線を引くのかという問題があるわけであります。ですから、私は、冒頭の陳述で、全体としてこれをいわゆる選定をするところの線引きをどうするのか、こういったところの疑問がいまだに解けないというふうに申し上げました。
それから、いま一つの特定医療機関の問題でありますが、これは診療の問題も含めまして、あのときに出ましたのが心臓移植、それから目のレーザー光線によるところの治療ですか、何かそういった先端医療に類するものについてはできるだけ保険で見ていくという、今までであれば全額が自費であったものを、二部保険で見て、残りも見れるようにしようではないかというような、非常に甘いお菓子をしゃぶらされたような形なんですけれども、私は、こういう口実によりまして、今先生が最後におっしゃった自由診療の拡大というところへ持っていかれるんじゃないかという心配を非常に持っております。となりますと、また後から付言なさいましたけれども、これは年金と同じように、公的な社会保障が私的なものにどんどん流れていくんじゃないかという非常に強い危惧を持っております。
以上、簡単に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/66
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067・中根康二
○中根参考人 社会保険審議会へどういう形でということは、今回村参考人が申されましたので省略したいと思いますが、同じでございます。
高度の医療を導入するに当たって、今度の場合は一都は保険で見よう。それだけ見れば確かにかなりな前進でございますが、岡村参考人が言われましたように、これが自由診療へずるずると行くということにつきましては、私もやはり危惧を感じておりますので、自由診療というものを仮に認めるとしても、かなり範囲を明確にした中で行うべきだという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/67
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068・浦井洋
○浦井委員 ありがとうございました。終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/68
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069・今井勇
○今井委員長代理 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。
午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時四十二分休憩
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午後二時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/69
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070・有馬元治
○有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
参考人から御意見を聴取することにいたします。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたく存じます。
なお、議事の順序でございますが、永田参考人、次に藤田参考人、続いて吉田参考人の順序で御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、まず永田参考人にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/70
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071・永田正義
○永田参考人 ただいま御紹介をいただきました全国市長会国民健康保険対策特別委員会の委員長をいたしております人吉市長、永田でございます。
委員の先生方には、社会福祉の充実のために日ごろの御精進をいただいておりまして、この席をおかりいたしまして衷心より厚くお礼を申し上げます。ありがとうございます。
きょうは市町村国民健康保険者の立場で、今御審議をいただいております健康保険法の一部改正案につきまして、現場における保険者の立場から率直な意見を申し述べさせていただきたいと存じます。先生方の本法案御審議の御参考になるといたしますならば望外の喜びでございます。
まず、私は、我が国の現在の医療保険制度が構造的に大きな矛盾を内包していることを当初に指摘をいたしたいと存じます。
その一つは、組合保険と国民健康保険の年齢構成が大きく偏っているということでございます。六十歳から、老人保健法の適用を受ける七十歳までに至る両保険に占める高齢者の割合は、組合保険が五・六%、国保が二三・四%となっておりまして、高齢者の両保険の被保険者数に占める割合を比較いたしますと、国民健康保険はその率から申しただけでも組合保険の高齢者の四倍の数を抱えておる、こういうことでございます。しかも、高齢者の医療費が健康な青壮年齢層の医療費に比べまして非常に高い。現在出てきております統計によりますと、大体四倍強の高さになっておるわけでございます。このような高齢者の激増と老人医療費の急増、この相乗効果が両保険制度の間の医療費の格差を構造的に拡大をしておるのが現状でございます。
その二は、各医療保険制度間の保険料あるいは税負担と保険給付の不整合でございます。端的に申し上げますと、本人の保険給付は被用者保険、組合保険では十割なのに対しまして、御承知のように国民健康保険は七割でございますし、また保険料あるいは税におきましても不統一な状態にあるのが実情でございます。
私たちは、このような現状を踏まえつつも、各医療保険制度がこれまで果たしてまいりました役割、功績に対しましては大きな評価をいたしておるところでございますが、現時点におきましては、先ほど申し上げましたような構造的な矛盾をたくさんはらんでおるわけでございます。この矛盾を克服いたしまして、将来は、理想的な姿としては医療保険制度の一元化、さらにそれに伴いますところの地域医療制度の確立、その中における医療負担と給付の均衡化、これを実現していかなければならない、そのように存じておるところでございます。
そのような立場からいたしまして、今回御審議をいただいております国民健康保険法の一部改正案は、その動機につきましてもまたその内容にりきましても、若干の議論があることは十分承知をいたしておりますけれども、我が扇の医療保険制度の抜本的な改革への大きな前進である、こういうふうに評価をいたしておるところでございまして、本法案の成立をお願いを申し上げるものでございます。
そういうような基本的な立場から、若干本法案に対する考え方を申し述べさせていただきたいと存じます。
現在の国保の状況につきましては若干先ほど触れておりますが、実際、国保には、扶養者を含めまして四千五百万の被保険者が参加をしておるところでございます。私たちは、国民皆保険の核としての役割を国民健康保険が担っておる、こういう立場から、全力を挙げて国保の運営に努力をいたしておるところでございます。
しかも、国民健康保険の構造的な一つの弱点と申しますのは、低所得者層が大部分を占めておる、それに加えまして先ほど申し上げました高齢者の比重が非常に大きい、こういう点でございます。こういうような矛盾を抱えておりますために、現在、国民健康保険の運営というものは非常な苦しい状態になっております。
大体の基本的な運営の方法といたしましては、医療費が高くなれば保険税または保険料の増額、増税によって健全財政を維持していく、こういうようなことで、それが不可能な場合は、地方公共団体からの一般会計から繰り出しを行いましてその赤字財政を補てんしている、これが現状でございます。しかも、このような状態が今後進んでまいりますと、特に高齢化社会の進展の速度が速まってまいりますと、国保財政はもう破綻をしてしまう、これはもう必然でございます。
そういうような国保が持っておる、一方においては国民皆保険の中核としての役割、一方においては低所得者層を含めました大多数の国民の健康保持と医療の責任をとっていく、そういうような使命を担っておるところでございますが、先ほど申し上げますように、このままの情勢でまいりますと、国保全体が非常に重大な危機に瀕するであろうということは火を見るよりも明らかでございます。
私たちは、こういうような状態の中で、これまでも老人保健制度の創設、これを十数年来主張してまいりましたし、先生方のおかげをもちまして去年の二月から実施をしておるところでございます。またもう一つは、退職者医療保険制度の創設につきましても、機関決定をいたしまして、数年来、国及び国会の先生方にお願いをしてまいったところでございます。そして、今度の改正案の中で、退職者医療保険制度創設の問題が取り上げられていることに私たちは大変な期待を抱いておるところでございます。国保の現状からいたしまして、この退職者医療保険制度はぜひひとつ御実現をいただきたい。
それからもう一つは、医療費の適正化の問題でございますが、国民所得に一つの限界がございます以上、医療費もまた適正化によって健全な医療行政が行われていくべきだ、このように信じておるところでございます。
それから、ただ給付の問題につきまして、今度の改正案では組合健保が九割を負担する、そして六十一年度からは八割負担、こういうふうになっておりますが、私は、これまでの組合健保の皆さん方は新しい体制に変わってまいるわけでございまして、そこにいろんな論議があることは十分理解できるところでございますが、給付はやはり保険制度全体の中で公平であってほしい。御承知のように国民健康保険は財政的に非常に苦しい、弱い基盤にありながらも、七割給付というのをこれまでやってきておるわけでございまして、私たちは、医療保険制度の中で給付もまた将来は一元化されるべきである、そしてそこに給付の高低があってはいけない、そういうふうに考えておるものでございます。
それから、問題は、今度の改正案で国民健康保険に対する国の補助率の低下ということがうたわれております。厚生省の説明では、全体的な改正の中で国民健康保険の被保険者の負担増には絶対しない、こういうふうに説明を受けておるところでございますが、御承知のような非常に財政的基盤の弱い国民健康保険、そしてまたいろんな矛盾を抱えております国民健康保険でございますので、しかも保険税、保険料はもう既に現在においても限界を大きく突破をしておるというのが実情でございますので、この点につきましては、国民健康保険の被保険者の負担増にならないように、ひとつ特段の御配慮をいただきますようにお願いを申し上げたいと存じます。
まだ申し上げたいことがございますけれども、ちょうど時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思いますが、とにかくいろいろと今度の改正案には御議論もあることと存じます。そしてまた、各医療保険制度の中におきましてはいろいろと利害関係の不一致もあるわけでございますが、とにかく医療保険制度の一元化、そして負担と給付の公平化、それへ向かっての大きな前進でございますので、特段の御指導と御成立のためのお力をかしていただきますようお願いを申し上げまして、参考人の意見陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/71
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072・有馬元治
○有馬委員長 次に、藤田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/72
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073・藤田至孝
○藤田参考人 藤田でございます。
今回の参考人には、支払い側、診療側それぞれの利益代表者が多いようにお見受けをしたのでございますが、私は第三者の立場から、あるいは一人の被保険者としての立場から、今回の健康保険法改正案につきまして意見を申し上げさせていただきたいと思います。特に、抽象的な点につきましてはまだ法案としては固まっておらないようでございますし、またいろいろ書いたものなどもございますので、私はできるだけ具体的な問題に限りまして意見を述べさせていただきたいと存じます。
最初に、結論的な全体的な意見でございますけれども、長年にわたりまして国民の要望でありました老人保健法に続きまして、今回退職者医療制度が設立されるわけでございまして、そういう点では今回の法改正が、私どもの期待に沿う、あるいは長年の要望の線に沿っているという点で評価される点が多いのでございますけれども、ただ率直に申しまして、この具体的な対策になりますると、これは保険制度の改定というよりはむしろ財政対策であるという率直な感をぬぐえないのでございまして、そこで今後、この保険制度そのものの長期的な展望に立った一層の御検討をお願いしたいのでございます。
特に、今回の改正の中心でありまする受益者負担の改定の件でございます。被用者の医療負担を一割自己負担を設けるということでございますけれども、この自己負担につきましても、供給サイドあるいは需要サイドの両面から医療費用の節約が何としても必要である、保険料を引き上げるということを避けるためには何らかの対策が必要である、そしてそのためには需要側の医療の抑制にも努めなければならない、その際に一割の自己負担というのはその目的にかなうのではないか、そういう発想であろうと考えるのでございます。そのような議論も、もう長い間、関係者あるいは学界の間で、ある程度の負担はやむを得ないのではないかということは大体コンセンサスができているように思うのでございますけれども、ただその際に細かい配慮が必要でございまして、あくまでも保険の目的は真に必要とするものには十分にということが基本であるのでございまして、その点を損ねるような、そういうおそれはないだろうかということを私は心配をいたすのでございます。したがいまして、この一割の自己負担を導入するにいたしましても、その程度でございまするとか、あるいは条件でございまするとか、あるいは事前対策でございまするとか、まずそういうものをきちっとした上でそこにいくべきではないのか。この医療費の自己負担といいますのは、いわば最後のとりででございまして、国民皆保険・国民皆医療ということを維持するためには、医療費負担という点で今までの線をできるだけ守る。そして一部負担を導入いたしましても、それができない人につきましてはあるいはそれが高額になる人につきましては、高額医療費控除制度もございますけれども、とにかくもっときめの細かい対策をとった後でここにいくべきではないのか。一足飛びにこの一割負担というところにいってしまうということは、保険財政がどうであれ、それが保険の本質に関係するような問題であればもっと慎重な検討をお願いしたいというのが私の結論でございます。
それでは、具体的な各項目につきましてこれから取り上げてまいりたいと思うのでございますが、まず最初に、被用者保険本人の医療費の一割自己負担についてでございます。
社会保障の中で一番重要でありますのは、所得保障の生涯にわたる保障ということでございまして、その際に、特にこの医療費の自己負担をできるだけ少なく抑えていくということと、それから年金の物価スライド制、これはどういう財政危機になりましても守っていかなければならないとりでだと考えておるのでございます。そこで、国際的な動きあるいは実態なども考えまして、この一割負担の問題について考えるのでございますけれども、日本の労働者は、今日におきましてはかなり賃金が改善されましたことは確実でございます。しかしながら、生活水準の国際比較をいたしてみますというと、日本の労働者は実質生活面で依然として恵まれておらないのでございます。その理由は大きく分けて三つございまして、一つは、食料品が高いということでございます。それから二番目には、住宅を持つのに外国の労働者は大体二年半から三年で持つのでありますが、日本の労働者は十年分を要するということでございます。それから三番目には、子供の教育費に金がかかるということ、この三つの点でございます。
そういう点で生活は必ずしも豊かではないのでございますが、ただし、そのような生活の厳しい中で一つだけ日本の労働者にとってそれをある程度緩和するような、相殺するようなことがあるのであります。それで日本の労働者は、高い食料品でありますとか高い家の値段であるにもかかわらず、我慢をして勤勉に働いているということなんでございます。その相殺するものは何であるかといいますと、これが実は医療の十割負担ということなんでございます。
最近は、アメリカの人なども日本の企業で働く人が多いのでございますが、あるいは日本から向こうへ行って働く日本人が多いのでありますが、そのような人に聞いてみますというと、アメリカは食料品は非常に安い、生活は一般にしやすい、だけれども、いざ医者にかかるとこれは目の飛び抜けるような金を取られて、あれでは幾ら月給をもらっても、医者代を払わなければならないという不安のために生活が不安になっているということを言うのであります。いわゆるサラリーマン労働者は、現在トーゴーサンでありますとかクロヨンでありますとかいろいろ不公平な扱いをされている、そういう不安を持っていることは否定できないのであります。そのようなサラリーマンの不安あるいは不満を和らげているものがあったとすれば、これはまさに医療の十割負担であったのであります。それを今回一割負担を導入するということになりますというと、労働者は、自分たちだけ何かねらい撃ちをされているというそういう社会的な不公平感を持っていることは否定できませんので、これを一つの突破口として、労働者の不満の爆発が起こらないという保証はないということを私はあえて申し上げたいのでございます。医療の保険財政がこの程度にとどまっておりますのも、一つには日本の経済が欧米に比べて順調にきているということにあるわけであります。あるいは労働者が一生懸命に働いているからで、それがそういうことになりますと、非常に大きい問題になるということなんでございます。財政解決のためにこのような一割負担を導入をしたのでありましょうが、それがかえって長期的に見て経済成長にマイナスとなり、またそのような不満は、WHOの言う身体的、精神的、社会的健康の均衡が必要であるというのに反しまして、その不公平感が高まるということになりまして、やはり社会的な健康を害するおそれがある、そしてそれがひいては病気になる労働者をもふやすというようなことで、これは慎重に考えていただきたい。たとえそういうことがありましても、ギブ・アンド・テークという言葉もありますが、そういう不満を和らげるものとして、例えば家族の七割給付を何とか八割に引き上げるという、変な言葉ですがそういう見返りというものがどうしても必要であるということでございます。
なおたくさん言いたいのですが、時間が参りましたので、もう一つだけ言わせていただきたいのですが、今回の改定で標準報酬月額が四十七万から七十一万に上がるという。このことなんでございます。これはいつも、健康保険と年金の標準報酬月額は大体横並びで、全く同じか、違っても少しだけの遠いで参ったのでございまして、それが今回、年金の標準報酬月額は据え置きである、健康保険だけ七十一万になるという、いまだかつて例をみない大幅な引き上げが行われるのでございます。これは非常に見え透いております。要するに年金を上げれば標準報酬比例部分が上がりますから給付がふえるわけであります。ところが健康保険の方は上げれば保険料が入るだけということになりまして、これはまことに政治家としてはこのようなことをやってはいけないんではないだろうか、そのように私は考えるのでございます。
いろいろ申し上げたいことがございますが、時間が来てしまいましたのでこれで終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/73
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074・有馬元治
○有馬委員長 次に、吉田参考人にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/74
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075・吉田清彦
○吉田参考人 日本医師会の常任理事をしております吉田でございます。
今回の健康保険法の改正につきまして・意見を述べさせていただきます。
その前に一つ申し上げておきたいことは、私ども最近の一、二年間の厚生省の医療行政を見ておりますと、どうも保険経済の中でしか医療を見ていないのではないかというように思えてなりません。医療保険の制度というものは医療を支えるものであって、医療があって初めてこの医療保険制度があるという基本的なことを、ひとつ厚生省あるいは先生方にもお忘れにならないでいただきたい、こういうことをまず最初に申し上げておきます。
次は、現行の医療保険制度につきまして若干触れさせていただきますが、御承知のとおり現在の医療保険制度というのは矛盾と不合理が非常に多過ぎる、こういうふうに感じております。八種類の制度に分立して、皆保険とはいいましてもこのように分立しておりまして、その内容も決して公平、平等な保険制度にはなっておりません。組合健保と言われるものは大体大企業の人々を対象とし、政管健保と言われるものは中小企業の人々であります。それから、共済組合はお役人あるいは官営の企業の人々を対象としております。それから、国民健康保険の方は自営業、農業従事者あるいは自由業、こういうふうに言われる人々を対象として出発はしましたけれども、その後の産業構造や人口構成の変化した今日では農業従事者と言われるような方は減少し、現在は少なくとも、政管健保に加入できない零細な企業あるいは定年退職をした無職の人々がふえて、発足の当初とはその構成が著しく違ってきております。保険の給付も健康保険組合等に比べますと極めて低く、これは平等ではありません。保険料の負担の方も決して公平ではないわけでございます。昭和五十年の一世帯当たりの保険料の負担を見ますと、最も給付率の低い、また平均所得も低いと言われている国民健康保険は九万一千九百四十三円だそうでございまして、政管健保の方は八万九千四百六十七円、最も給付がよく、また附加給付なども行われている組合健保は八万六千九十七円、こういうふうに言われております。これは明らかに矛盾ではないかというふうに私どもは思っております。
また、比較的裕福と言われている組合健保の方方は、採用試験というものを経て大企業に採用された人々でございまして、採用時には当然身体検査もあるでしょうし、またそういった面から選抜された人しか加入できない保険の集団でございます。初めから慢性の病気を持ったような人はなかなか加入できないという、一つの取り決めと言ってはなんでしょうけれども、そのシステムがあると思います。これに対しまして国民健康保険というのは、いつでも、どこでも、だれでも、年齢にかかわらず、疾病の有無にもかかわらず加入できる制度なんでございまして、私どもは国保こそ社会保険という名にふさわしいものではないか、こういうふうに思っております。
それぞれの制度が対象とする人々の所得は当然差がございますから、制度間の財政力に格差があるのもまた当然と言えると思います。この格差を埋めているものが国庫からの補助金ではないか、私はこういうふうに思うのでございます。組合健保では療養給付費の補助は受けておりません。ゼロでございます。御承知のように政管健保では一六・四%でございます。それから日雇健保は三五%でございます。それでも旦展健保はもう既に毎年赤字で、いずれかの保険に統合せざるを得ない状態になっているはずでございます。国保はこの補助金の率が四五%でございまして、制度間の格差をそのまま数字にあらわしたようなものだ、こういうふうに考えております。どうも補助金という名称が適切ではないのではないか。言うなれば、これはむしろ保険原資に近いものでございまして、そのように言うべきではないか、こういうふうに思います。この補助金と言われるものを一律にマイナス・シーリングの名のもとに削減しようというのは極めて乱暴なことだというふうに私は思っております。
社会保険には元来所得再配分の機能があるはずでございますが、今回の改正原案等を見ますと再配分機能は全く見出せないと言っていいのではないか、こういうふうに感じております。
また、厚生省では、今回の改正案を作成するのに先立ちまして、恐らく毎年の医療費というものを推計して、約一兆円ずつ増高しておる、こういうふうに言っておりますし、そのために財源がない、こういうことも言っております。しかし、最近の社会保険支払基金の統計によりますと、これは支払基金分だけでございますから全国民の国民医療費とはちょっと違いますが、支払基金分の医療費を見ますと、昭和五十七年三月から五十八年二月までの、いわゆる前年対比の伸びは七・二%となっております。五十八年三月から本年一月、これはまだ一月分までしか集計ができていないようでございますが、一月分までの伸びは三・二%という数字を示しております。前年に比べますとこの伸びは半分以下でございます。
本年三月には、御承知のように薬価基準というのも非常に大幅に下がりました。厚生省では一六・六%と言っておりますが、現場の感触ではそれよりもはるかに大きいという感じを持っております。ただ、私どもが不審にたえないのは、どのような計算方式で一六・六%というようなものが出てきたのか、明らかにされたことがどうもいまだかってございません。この点については実に理解に苦しむわけでございます。過去に薬価基準は何回も下げられておりますが、そのたびにそういう計算方式は公表されておりません。またその後の調査もされておりません。事実、厚生省が示したパーセントであったのかどうかということも示されておらないわけで、私どもはその点は大変理解に苦しむのでございます。社会におきましていろいろ労使関係の賃金交渉などをいたしましても、会社側の言うパーセンテージは労働側は検算しないのでしょうか。相手が言うだけのものを丸のみするというのも、私はどうも厚生省のやり方は若干おかしいのではないか、こういうふうに考えております。
昭和五十二年に厚生省は医療費の推計をしております。今でもそれの推計に当たった方がまだ現職としていらっしゃると思いますけれども、それによりますと、昭和五十八年の国民医療費は二十兆になると言われております。ところが実績はこれよりも五兆円以上も低いわけでございまして、厚生省の推計というのはどうも信じがたいようなものが多いように思えてなりません。毎年一兆円増高するという根拠は現在のところは全くないのではないか、私はこういうふうに思っております。
先進諸国を初めといたしました世界の中で、日本の医療費問題は比較的うまくいっている、こういうふうに言われておりますが、厚生省ではなおかつ抑えねばならない、こういうふうに考えているようでございます。
しかし、組合健保の収支は、昭和五十六年には約二千五百億以上の黒字でございます。それから、昭和五十七年の収支決算でも大体二千二百億円近くの黒字になっているようでございます。政管健保にいたしましても、昭和五十七年は当初予算に比べて六百十一億の余剰金を出しております。三K赤字などと昔はよく言われましたけれども、昭和四十九年以来の累積赤字もほとんど解消されて、保険料率を引き下げるということが実現できるような状態に現在はなっているのでございまして、保険財政は決して赤字ではありません。それでもなお、今回のように、国民にとってはかなり過酷な改正と言われるようなことがされなければならないとお考えになるのは、恐らく現制度が矛盾と不合理に満ちたものになってしまったためではないか、私はこういうふうに思っております。分立している保険制度を統合する以外に医療保険を確固とした基盤のあるものにする方法はないのではないか、こういうふうに思います。
次に、今度の改正に従いました健康保険本人の二割負担について若干申し上げたいと思います。
組合健保には、今でも私どもは極めて不公平な制度だとは思いますが、附加給付というのがございます。医療機関の窓口で支払った金銭が後で戻る、こういう制度でございます。今回の案のように、健康保険の本人が一割、二年後には二割というような負担をしても、比較的恵まれていると言われている組合健保の本人の人たちには、恐らく後になって組合から戻るということが行われると思います、それだけの財政力が既にあるわけでございますから。ところが、政管健保にはこのような附加給付は行われておりません。結局のところは、政管健保の本人の人々だけが一割ないし二割の負担をするということになります。
社会保障の一つとして医療保険は位置づけられておりますが、比較的所得の高い人が幾らかの負担がふえるというのであればまだわかるところがありますけれども、比較的所得の低い人たちだけが負担がふえるというのは、私どもとしてはどうにも理解ができないわけでございまして、これらの所得の低い階層に対しましては、受診を抑制し、早期の治療を阻害する、こういうふうに考えております。また、今の医療機関の窓口業務はもうとても複雑でございまして、請求書を一枚書くということだけでも職業として成り立つくらいでございます。こういった窓口の事務の簡素化ということが求められてもう久しいのでございますが、その上にこういったようなものの導入は、簡素化ということを非常に求められております医療機関の窓口事務を非常に煩雑にするという要素が大きくあります。日常、私ども、患者さんと接している医療担当者としては、このような改正には反対せざるを得ないのでございます。
それから、この一部負担のところでもう一つ申し上げたいことは、よく医療費論議のときに言われることですが、医療というのは一般産業分野とは違うと私は思うのでございます。いわゆる生産者と消費者のような、あるいは供給者と需要者といったような関係でもって市場のいろいろな議論を持ち込まれることがあるのでございますけれども、医療というのは決して産業分野とは同じではございません。ですから、技術開発が進めば一般の産業分野では恐らくこれは大量生産につながりコストダウンになるわけですが、医療はそういうことは全くございません。技術開発が進めばそれだけ費用は増高するわけでございます。また、よく受益者負担という言葉を聞くのでございますが、病気になって医療機関に行ってお金を払う人はこれは受益者なんでしょうか。その辺のところでは大変不審に思っております。
時間の関係もございますので、次の退職者医療について若干触れさせていただきます。
年金保険は、国民のだれもが長期の保険として理解しております。転職した場合でもあるいは定年退職したときでも、支払って積み立ててきた保険料を掛け捨てにして次の職場に移るというようなことはございません。蓄積された保険料というものは個人個人について回ります。この年金保険に比べますと、医療というものは、いつどこで病気になるかわかりませんし、また、その病気といいましても軽いものあり重いものあり、いろいろさまざまでございまして、不確定要素が極めて多くわかりにくいということはあります。しかし、医療保険は、そのときそのときの掛け捨て保険であるということがやはり一つの矛盾を来している原因になっている、私はこういうふうに思っております。有病率の低い青年時代に多額な保険料を徴収されて、有病率の高い年齢になり、いわゆる定年退職するという時期でございましょうか、そうなりますと制度の違う保険、言うなれば国保でございましょうか、あるいは組合健保から政管健保、こういったように制度の違う保険に移りまして、自己負担分も支払わなければならなくなるというのがどうもやはり不合理と言わざるを得ません。また国保には、今申し上げましたように高齢者とか、無職の人々とか、病気を持って退職をした人とか、そういう方々が集まってしまうという矛盾が、この掛け捨て保険である医療保険にはつきまとっているわけでございます。国民の寿命が四十年あるいは五十年といった時代ならば、このような矛盾はそれほど露呈されないで今日まで来たわけでしょうけれども、今後八十歳というような年齢になんなんとする現在ではこの矛盾はますます拡大されていく、私はこういうふうに思っております。
今回の退職者医療は、これらの矛盾を少しでも埋め合わせようとする考えに出発したのかもしれませんけれども、現役で企業に残っている人々が、退職した人々の医療費の約八二%でございましたでしょうか、これを負担するという制度のようでございます。日本は欧米に比べますと決してまだ高齢社会ではありません。まだまだ高齢者のパーセンテージはヨーロッパの先進諸国に比べますと低いのでございます。ただ、今後高齢者が急速に増加するということは確かでございます。こういったような急速に増加するに従って、果たして現役の勤労者がいつまでこういったような退職し、高齢になったような人の医療費を負担することにたえられるのでしょうか。この点につきましても若干の疑問を持っております。
また、今後の制度を見ますと、同じ国民健康保険の中に、今度は七割と八割というような給付率の違う方々を被保険者として混入するのでございます。これは非常に日常の診療にも混乱を来しましょうし、いろいろな点で一層この制度を複雑にする、こういうふうに私は思っております。したがいまして、これは強く反対せざるを得ないのでございます。
最後に、特定承認保険医療機関というのにちょっと触れさせていただきますが、これはまだ今までの審議の経過の中では余り討議されていないようでございますが、法文のみではもちろん内容が理解できません。しかし、今まで保険医療機関というのは一本の制度でございましたけれども、今後こういう特定承認保険医療機関ですか、こういうものがまた別の一つの医療機関としてこれに持ち込まれてくるわけでございますので、私は、この法案審議の過程でもっとこれを明らかにしていただきたいと思うし、またそれを希望するわけです。
いずれにせよ、これらの医療保険は、生涯を分断することなく、一貫した長期の保険としてそういったような体系を整えるために、制度の統合をすべきではないかということを重ねて申し上げたいと思うのでございます。今回の改正案にはこの統合への兆しすら見えないということが、私どもが全面的に反対する第一の理由でございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/75
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076・有馬元治
○有馬委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/76
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077・有馬元治
○有馬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/77
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078・今井勇
○今井委員 お三方にそれぞれお伺いいたしますが、今回はお一人ずつまとめてお伺いいたします。したがいまして、同じ質問がそれぞれに出るかもしれませんが、それはひとつ御容赦を願いたいと思います。
まず最初に、永田さんにお尋ねをいたします。四点ほどお尋ねいたしますので、お書きとめいただきたいと思います。
国民健康保険をあなたはやっておられるわけでありますが、国民健康保険の方のお考えとして、全保険制度を地域保険への統合というふうなことをお考えになっているという話もありますが、そういう考え方であるとするならば、今回の改正案をどう評価されているのかというようなことがまず第一点でございます。
第二点は、健保本人の定率一部負担の問題でございます。国保は七割給付を実施されているわけでありますが、そういうお立場から、定率一都負担をすると受診が抑制されるのではないかという議論もございますが、あなたはどうお考えになるのか。また、医療費の適正化という観点から定率の一部負担というものをどう評価されるのかでございます。
それから三番目でございますが、退職者医療の問題でございます。退職者医療制度を実施する前提といたしまして、どうも国保さんというのは信頼が必ずしも十分でない。国保さんに任じたのではどうも心配だという声も聞きます。これは間違っているかもしれません。あなたはその道のエキスパートとしてどうこれに対してお答えをなさるのか、お聞かせ願いたい。
それから四番目は、先ほどちょっと吉田参考人も言われましたが、退職者医療制度を実施することによって、退職者と一般被保険者の給付率に差ができますね。保険者の立場からこれをどうお考えになるのか。
以上、大きく分けて四つございますが、お答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/78
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079・永田正義
○永田参考人 お答えをさせていただきます。
先ほど冒頭に申し上げましたように、理想的あり方としては、多元的な現行の医療保険制度の一元化と、そしてそれを地域保険によって実施をしていく、こういうふうなことがこれからの医療保険制度の一つの方向ではないかということでお話しを申し上げたところでございますが、今の状態でございますと、特に退職者医療制度が創設をされますと、退職をした後の追跡掌握がなかなかできないというのが実情ではないかと存じます。したがいまして、退職者医療制度をスタートさせる場合でも、現在国民健康保険でそれぞれ掌握をいたしておりますので、市町村が保険者となってその掌握の中に新しい制度が実施されていくことが最も好ましい、こういうふうに考えております。
それから、医療費の九割給付ないし八割給付によって受診が抑制されはしないかというお話してございましたが、現に国民健康保険は七割給付、そして三割を窓口負担をしてやっておるところでございまして、むしろそのために、受診にいたしましても乱診がおのずから自粛をされていく、そういう効果が期待をされると存じます。これは老人の無料化時代から老人保健法が創設をされまして、その実施の中におきましても、むしろ、そういうようなことにおいて一部負担をすることで、もう大手を振って受診ができるんだという声もあるくらいでございまして、私は、むしろ、受益者が一部負担をすることが正しい医療体制の確立にも貢献するのではなかろうか、そのように存じます。
それから、医療費の適正化の問題でございますが、私は、今の医療費の問題には非常に複雑な問題を含んでおると存じます。一部の先生方には、いわゆる診療報酬の点数が技術の評価などは現実に全くマッチしてない、そういうような御意見もございますし、また一方におきましては、いろいろな新聞等で報道をされておりますようなことも、これは極めて特定されたごく少数の先生方がそういうような問題を引き起こすのではないかと存じますが、そういうようなこともあるのが現状でございまして、そういうことへの一つの襟を正す、あるいは受益者が負担をすることによって医療の内容がわかるわけでございますからして、それを通じて医療費の適正化ということへもプラスになるであろう、私はこういうふうに理解をいたしております。
それから、退職者の医療保険制度が発足をいたします場合に、国民健康保険と退職者医療保険制度の間の医療費の支給率等も、またそこへ差額が出てまいるわけでございますけれども、これは運営の中で十分消化できることと存じております。
また、先ほども申し上げましたけれども、やはり受診をした者が一部を負担する、これは一つの地方自治の基本的立場からいたしましても、生活そのもの、そしてそこから生ずるいろいろな経費というものは、地域住民が可能な限度の中において払っていくというような立場で、私は、むしろ、このような制度が発足をされることが全体の医療保険制度の向上につながっていくものだ、こういうふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/79
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080・今井勇
○今井委員 ちょっと私の質問が悪かったのですが、実は退職者医療制度を今度国保でなさるわけですね。そうすると、お金を出す方が非常に心配をされている向きもあると聞くものですからちょっと申し上げただけでございまして、一生懸命やっていただければ結構でございます。そういう御心配のないようにひとつ頑張っていただくように希望をいたします。
次に、藤田先生にお伺いいたします。
先生は、一割負担のことについて随分お述べになりました。私も先生のお考えがわからぬでもありませんが、我が国の労働者の食料費、住宅費。教育費籍が外国と比べて高い、これを相殺するのが本人の十割給付だというふうな意味をおっしゃったと思います。それで、最後に先生がちょっとつけ加えられたのは、こういうことならば家族を七割から八割にするような見返りが必要だというふうにおっしゃったと思いますが、先生は、そういう条件があれば一割を自分が持つことについてイエスとおっしゃるのですか、それともだめだとおっしゃるのか、そこが一点です。
それから、全制度を通じて同じ給付割合にしようということは、やはりある程度の国民の皆さんがわかってくださる方向だと私は思うのです。もちろんそれには負担の公平がなければならぬことは当然でありますが、先生はそれについてどうお考えになるのか。
それからもう一つ、退職者医療についての御言及がなかったのでありますが、これについて先生がどうお考えなのか、簡単なコメントをしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/80
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081・藤田至孝
○藤田参考人 お答え申し上げます。
家族の給付を七割から八割に引き上げれば本人の一割負担に賛成するかという御意見でございますが、私は、やはり、保険の場合を考えますにも一つの家計全体として考える必要があると思うのでございます。ですから、そういう意味におきましては、本人の負担が一割ふえるかわりに家族の負担が一割減るということであれば、労働者もある程度納得するのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
それから、その一割負担ということなんでございますけれども、この目的が、医療費の適正化を図りまして財政に寄与するということでございます。そういたしますと、今どの点で一番の問題があるかといいますと、やはりこれは全体ではなくて、例えば薬が大きい要因になっておりますので、すべてについて一割というのではなくて、例えばドイツとかイギリスなどで行っておりますような、特に対策の目玉として、そしてそれがまた医療の大型化をもたらしているという分野に限って自己負担という制度を導入することが、むしろ今回の目的に沿うのではないかというふうに私は考えるわけでございます。
それから、五万四千円までというそのことにつきましても、例えば家族が三人おりましてそれぞれが五万三千円ずつであったという場合に、これを合わせますと十五万を超えるわけでございます。あるいは、一月は五万円であったけれどもまた翌月も五万円であったということになりますと、これはまた非常に大きな問題になりまして、本当に必要な人に十分な医療をという健保制度の趣旨から外れるおそれがありますので、私は、家族の累計額あるいは継月の累計額というふうなものを導入しなければ、負担ということにつきましても一概に、一割ならいいんだ、家族を引き上げればいいんだ、そういう考えではございません。
それからもう一つ、二番目の御質問でございますが、全制度に、同じ公平な負担あるいは保険料、こういうものを導入するのが保険制度の趣旨ではないかということでございますが、これもフランスを除きましてヨーロッパ、北欧は制度がほぼ一本でございますし、それから家族も本人も給付が一本でございます。そういう点で私は、今回、二十一世紀の医療を考えるでありますか、長期の厚生省の案が出ましたけれども、全部八割に持っていく、そして制度間の公平を期すということは、将来の方向といたしましてはやはり正しい方向ではないのかと考えるわけでございます。
ただ、医療保険が、今は政管も黒字に転換をいたしましたし、それから四十八年から五十四年の累積も消したわけでありまして、労働者の協力があったからそういうふうになったと私は思うのでございます。また組合健保が、赤字のところもありますけれども、平均すれば黒字を維持しておるわけでございます。これは、例えば保険料の決め方も、現在千分の三十五から九十五と、財政状態に応じまして自分たちで決めるようにしていいのだ、そして平均が千分の八十ぐらいになっておるわけでございまして、責任体制といいますか自己努力といいますか、そういうことをしてそして医療の合理化、効率化を図っているところにつきましては、みんなで努力して節約すれば医療費の負担も少しで済むしというふうな、市場メカニズムといいますか、臨調などもそういう方針を出しておるわけでありますけれども、やはりそういうことが必要ではないかということでございます。
それから、退職者医療につきましては、これは結局標準報酬を引き上げましたり、それから一割の負担を導入しましてそれでつくったわけでございますけれども、労働者の連帯感ということから労働者も納得をしておりますし、長い間労働者はこれを望んでおったのでありまして、そういう点ではよろしいのでありますが、ただ本人としますと、今までどおりの保険料が取られる、しかも市町村によって違う、またその費用は被用者と事業主から来るということで、結局退職者にとってのメリットは七割が八割になるということなのでございまして、社会保障の一環としてやるのであれば、その責任者としての国もそういう任せっ切りではなくて、何らかの形のそのような責任者としての財政の負担をやはり示すのが筋ではだいかというふうに私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/81
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082・今井勇
○今井委員 最後に、吉田参考人にお伺いいたします。
先生には四つほどお願いをいたしたいと思いますが、まず第一点、確かに現在の保険制度が矛盾と不合理があることは私も認めますが、端的に申しますが、先生は保険医療制度についてどうすればいいとお考えになるのか、答えだけ聞かせていただきたい。かつて医師会がおっしゃった案がございますが、そういうものでいいのかどうかということを端的にお聞かせいただきたいと思います。
第二点は、医療費の伸びの話を先生がなさいました。確かに鈍化をしております。薬価の改定もした、確かにそのとおりでありますが、それでは一体何もしなくてもいいのかということにはなるまいと思うわけであります。そういうときこそ長期の見通しをして、この際国民が負担できる程度の、いわゆる適正規模へ近づけるような努力を制度の改革も含めてしておく必要があると私は思っておりますが、それについての意見をお聞かせいただきたい。
三番目は二割負担、一割負担の話でございますが、政管健保には附加給付はない、確かにそのとおりでございます。そうすると、私がちょっと疑問に思いますのは、政管健保に入れないといいましょうか、例えば国民健康保険というのがございますね。先ほど永田さんからお話しがありましたが、そういう方も全部所得が高いとは限らないわけでございますから、そういう方々に対しての比較はどうなんだろう。それは負担が違うじゃないかとおっしゃるのかもしれませんが、そこらあたりについてのコメントをしていただければありがたい。
最後は退職者医療ですが、私は、先生おっしゃいますように掛け捨てというのはおかしいので、若い人も将来必ず年をとるわけですから、それを先輩方のためにあるいは自分たちが年とったときに使えるようにするという、こういう長期的な見通しがあると思うわけです。それが今度の、サラリーマンのOBは現役のサラリーマンみんなで見ようじゃないかという発想であるように私は思うのですが、先生の長期的なビジョンということはどういうことを言っておられるのか。今井の考えが間違いであるとおっしゃるならそれで結構でございます。端的にお答えいただきたい。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/82
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083・吉田清彦
○吉田参考人 まず最初の保険制度をどうすればよいか、こういうことでございますが、簡潔に言いなさいということですから、日本医師会としては、昭和四十三年に、そういうような三本の柱ということで、地域国保とそれから産業保険と老齢保険、こういう考え方を出しております。基本的にはその考えでございます。現在の医療保険も統合をすれば、その統合への道のりというのは簡単ではない、私どもはこういうふうに思っておりますが、しかし、その最終的な目標としてのそういう統合への方向ということができれば、そういった矛盾というようなものは解決するだろう。ただ、そういう統合論というのは今と非常に飛び離れた一つの感覚を持ちますので、これをいきなり右から左にやってできるかといったときには、その実現には私はある程度の疑念を持つわけです。しかし、その方向で一歩でも二歩でも出していかないことには医療保険の改革はない、私はこういうふうに思っております。
それから、伸びが鈍化したから何もしなくてもいいか、こういうお話してございますが、私どもから見ますと、薬価基準の切り下げも大変物すごいことをやったと思っているのでございます。前前から技術料の適正な評価ということを言われております。しかし、いまだに技術料は適正に評価されているとは私どもは思いません。先ほども参考人の中からもお話しがありましたように、外国の医療費なんていうのは物すごいものでございます。こういうようなものと必ずしも単純比較しろと私は言っているのではございませんが、少なくとも今の人間を扱っている健康保険は、こんなことを言うと怒られるかもしれませんけれども、ペットの診察料より大分安い現状でございまして、そういったことがありながら、なお一方では薬価基準の一六・六%切り下げというのは、私は物すごい乱暴なやり方ではないか、こういうふうに思っております。ですから、国民の所得あるいはGNP、こういったようなものの伸びと少なくとも並行したいという考え方は、いろいろ今までにも国会なり厚生省にもあったようでございますが、それはそれとして私はある程度うなずけるのでございます。ですから、今日の、一兆円が毎年増高するという基礎理屈の中で打ち立てられているような改革では適切な改革ではない、私はこういうふうに思っている次第でございます。
それから、その次の三番目は何でございましたでしょうか。(今井委員「一割負担」と呼ぶ)この一割負担がいわゆる国保の方にもという意味ですか。ちょっと申しわけございませんが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/83
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084・今井勇
○今井委員 先生は、組合健保は附加給付があるから戻ってくる、政管健保はそれがないから、要するに低所得者に全部しわ寄せするんじゃないかとおっしゃったと私は理解しております。だとするならば、国民健康保険の中にも、例えば一人二人雇用している場合には国民健康保険に入らざるを得ない人もいるわけですね。そういう人たちは三割持っているわけですね。そうすると、それとの関係で、先生は今の一割負担とか二割負担というのをどう考えられるかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/84
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085・吉田清彦
○吉田参考人 私は、国保の方の負担をせざるを得ないような状態になっている人は大変お気の毒だと思うのです。ですから、国民が等しく公平な負担をするような方向に持っていくべきであって、国保が負担しているから政管の貧しい人も負担してよろしいという理屈にはならないと私は思っているのです。ただ、こういったような社会保険でございますから、先ほども申し上げましたように、若干所得の高い層の方が税金と同じようにその負担率が高いというのはやむを得ないと私は思うのです、いわゆる国保にしろ保険税という名前をつけるぐらいのところもあるわけですから。しかし、この附加給付があるために今回一割なり二割なりという負担は、これは全く逆でございまして、政管健保の本人だけにはかかっちゃうわけでございます。これは政管健保の人は国保を見なさい、それでよろしい、そういうふうにはならない、私はこういうふうに思っております。
それから掛け捨てでございますが、こういったものは、私も先生と同じように不合理だ、こういうふうに感じているわけでございまして、この長期的なビジョンについては、いろいろな議論がもう既に健康保険については二十数年もされているわけでして、なおできないというのが現状ではございますけれども、一歩でも二歩でもこれを統合化していく方向に持っていくことによって、何分の一かずつの不合理は是正されていくんじゃないか、こういうふうに思っているわけです。ただ、今回の案にはそういったものと逆行するような矛盾点がある、むしろ不合理さは拡大してしまうというような部分もあるんだ、こういうように申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/85
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086・今井勇
○今井委員 吉田先生、もう一問だけ。
最後の負担の話でございますけれども、先生は端的に、負担というのはやはり税制度を通じて同じようなものにしたらどうだ、あるいは給付も同じようにしたらどうだということについては肯定されますか、否定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/86
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087・吉田清彦
○吉田参考人 肯定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/87
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088・今井勇
○今井委員 ありがとうございました。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/88
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089・有馬元治
○有馬委員長 村山富市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/89
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090・村山富市
○村山(富)委員 きょうはお忙しい中を御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
限られた時間ですから、それぞれ端的にお尋ねを申し上げたいと思うのですが、まず最初に永田参考人にお尋ねいたします。
退職者医療制度というものは、それぞれの関係団体から長年要望もあってつくられた制度だと思います。ですから、制度そのものについては余り反対はないのじゃないかと思うのです。ただ、この退職者医療制度がつくられることによって、国保に対する国庫負担が二千三百五十五億円削減をされる。同時に、補助率が、従来の医療費ベースに対して四五%というのが給付費ベースに対して五〇%、それを医療費ベースで直しますと三八・五%になって、額で申し上げますと千五百四十四億円ばかり減になるわけですね。これだけ退職者医療制度をつくることによって負担が軽くなる、その軽くなった分に見合って国庫負担を減らすということになるわけですけれども、これからの医療費の動向などを見ましても、これは今度の医療保険の改正があったにしても五十九年度は二・五%ですが、これは厚生省が出した資料ですけれども、六十年度には五・九%、それから六十一年には五・三%、さらに六十二年には六・三%というように上昇していく、したがって医療費は膨らんでいく傾向にあるというふうに見られているわけでありますが、今回の国庫負担の削減、補助率の改正が、これからの国民健康保険財政にどのような影響をもたらすとお考えになりますかというのが第一点です。国民健康保険財政が苦しくなれば、先ほど来鉛話しがございましたように、一般会計からの繰り出しをふやすか、あるいは保険税を上げるか、国庫負担をふやしてもらうかしかないわけですね。そういうことも含めて御意見があればお尋ねしたいと思うのです。それが一つです。
もう一つは、これは先ほども御意見があったのじゃないかと思うのですけれども、退職者医療制度をつくることによって、国民健康保険加入者の中に、従来の国民健康保険のままの適用を受ける人と退職者医療制度の適用を受ける方とが生まれるわけです。そうしますと、同じ年齢世代で、同じ保険税を負担をしながら、国民健康保険だけの方は七割給付、退職者医療制度に入っている方は八割給付、同じ保険税を負担をしながら給付に格差が生まれてくる、そういうことについてどのようにお考えになっていますか。
それから三つ目は、現在でも国民健康保険税には最高で年額五万七千百五十三円、最低で五千八百四十八円という大変な、十倍近い格差があるわけです。これは同じ国民として、給付を受ける条件は同じですから、したがって保険税の負担にこれほど大きな差があるということはやはり問題ではないかというふうに思うのですが、それはむしろ国の負担をふやしていただいて、財政調整をもっとやっていただくとかなんとかいう方法を講ずるなりして、負担の公平を国民健康保険制度自体の中でもやはり図っていく必要があるのではないかというふうに思いますけれども、こういう点についてどのようにお考えになっていますか。
その三点をまずお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/90
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091・永田正義
○永田参考人 ただいまの御質問にお答えいたしたいと存じます。
これは御指摘になりましたように、今度の改正案の中では、国保に対する国庫補助率を四五%から三八・五%に減額をする、そして厚生省の説明によりますと、今度の改正案の全体を通じて、国保の財政負担がそれだけ減少をするのであるが、これは被保険者の保険料あるいは保険税の増加には絶対ならない、こういうような説明を受けておるところでございます。私たちは厚生省、国のそのような説明を信頼いたしまして、必ず被保険者の負担増にはならない、こういうようなことを前提にいたしまして、もちろん国に対しましては、そういうようなことが絶対に負担増にならないように強力に要望をいたしておるところでございます。
それから、退職者医療保険制度が発足した場合に、同じ国保の中にありながら、国保の同年齢者とそれから退職者医療保険制度の者と給付率が違う、これはどう考えるか、こういう御質問であったように存じますが、私たちは、一つの大きな目標への前進というふうに受けとめておりますし、それからまた、今の国民健康保険制度の持つ構造的な大きな矛盾の中におきましては、退職者医療保険制度の創設はもう焦眉の急の問題である、このように受けとめておるところでございまして、実際の運用の面におきましては、その間の格差は十二分に説明をしながら適正に対応できる、このように考えております。
それから、国民健康保険税あるいは保険料間の格差が大きいのについてもどう考えるか、こういう御質問でございますが、今のところそういう格差はございますけれども、要は所得能力あるいは資産能力、こういうようなものに応じまして一つのランクを設けて課税をしておる段階でございまして、もちろん被保険者の間には若干の不満もあろうかと存じますけれども、今の制度そのものは各市町村におきましては大体議会の議決を通じて了承をされておる、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/91
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092・村山富市
○村山(富)委員 五十九年度の計算をすればその程度で済むかもしれませんけれども、年度を追うごとに退職者はふえていくわけですから、したがって医療費全体も膨らんでいく、そういう見合いの中で、果たして厚生省の言うことが信頼できるかどうかという心配があるのじゃないかと思うのですね。そういう意見を私は申し上げておきます。
それから藤田先生にお尋ねしたいと思うのですが、藤田先生は冒頭に、今回の医療保険の改正は、六千二百億円の国庫負担を削減するために、むしろ財政対策としてなされておるというところに問題があるというふうに御指摘になったわけです。私もそのとおりだと思うのですが、その財政対策の一つの手段として、本人の一割負担なりあるいは二割負担という定率負担が導入されてきたというふうに思わなければならぬと思うのですが、特に定率負担になったということは、先ほどお話しもございましたように所得の低い層に大きな負担になる。同時に、長い思いをするような重病人に負担が多くなっていく。こういう点から考えてまいりますと、所得の再配分をするという憲法で言われる社会保障の理念からすれば、今回のこの定率負担の導入というのは問題があるのではないかというふうに思いますが、その問題に対する先生の見解をお尋ね申し上げたいと思います。
それからもう一つは、先ほど御意見もありましたけれども、退職者医療制度について、むしろ退職することによって所得が下がる、しかも罹病率が高い、それだけ負担もふえていくというだけに、所得再配分機能としての国庫負担を導入するのが当然であり建前ではないかというふうに私は思っておりますけれども、そこらに対する解釈についてもお尋ねを申し上げておきたいと思うのであります。この点につきましては、医師会の吉田先生にも同時にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/92
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093・藤田至孝
○藤田参考人 お答えいたします。
今回の一割負担あるいは標準報酬月額の引き上げ、考えてみますと、これは国保に対する負担減の二千三百億を軽減するというものに見合う分ではないのだろうかというふうに考えられるわけでございまして、そういうことで、例えば非常に大幅な標準報酬月額の引き上げがあるというふうにも考えられるわけでございまして、やはり最初にも申し上げましたように、保険の本来の趣旨からさかのぼって考えるように今後再検討する必要があるということでございます。
それから、確かに退職いたしますと所得も下がりますし、それから、今までの労使折半より本人の国保の負担率も高くなるわけでございまして、そういう点でやはり、長年社会のために貢献をしてきました退職者を遇する道としては、国庫補助が全然ないということは問題ではないかというふうに私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/93
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094・吉田清彦
○吉田参考人 第一点の、要するに厚生省の今回の案は六千二百億の一つの国庫支出金の補助金の削減のためにやったのではないか、こういうことですが、私もそう思っておりまして、実際に数字的な合わせだけなのではないか、こういうふうに思っております。
それは従来とも、こういうような政策を出す場合には当然お役所としてもいろいろな推計をしていると思うのでございますが、今までの日本の例からいいますと、給付率を改めて引き上げていったというような歴史は何回かあるわけでございます。このときのいわゆる推計をする一つの方程式は、たしか昭和十年ごろにできました長瀬指数の変式でございますか、これを使っていると思うのでございますが、これは給付率を改善するときの指数でございますから、引き下げるときに当てはめるというのも随分おかしなことだと思います。ですから、数字的根拠は極めて薄弱なのではないかと私どもは思っております。
それから、次の定率にした場合でございますけれども、これは先生が言われたとおり私も全く同感でございまして、低所得者の方に大体負担がいく、それから長期の疾病にかかる人にはどうしても負担がいく。いわゆる社会保障としての所得再配分機能というようなものからは全く逆行するではないかということは、同感でございます。私もそう思っております。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/94
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095・村山富市
○村山(富)委員 時間もございませんから、最後にもう一点、吉田先生にお尋ねをしたいと思うのです。
今回の医療費の改正に当たりまして、国民医療をどう正しくつくり上げていくかという観点からいろいろ御心配をいただき、御努力をされていることにつきましては心から敬意を表します。
そこで、お尋ねをしたいと思うのですけれども、先ほど先生から強く要請をされた薬価基準の引き下げとの関係です。医療費を適正にしようという考え方については、それぞれ皆さん中身は違っても期待するところだろうと思うのです。最近のように薬剤が三〇%、あるいは検査、注射料を含めますと半分以上になるようなあり方についてはやはり問題があるのではないかと思いますし、同時に、午前中の審議の中でも検査づけとか薬づけとかいうような意見もあったわけです。そこで、薬価基準を下げる見合いとして、例えば診察料等はもっと正当に評価すべきではないか、言うならば技術料をもっと正当に評価すべきではないか、こういう御意見があるわけですね。技術料というものを一体どのように評価すればいいのか、その技術料というのは一体どういうものなのかということについて、もし御意見がございますればお聞かせいただきたい。
それからもう一つは、医療費を適正化するにしても、保険制度の本来の目的というのは、やはり公平にいい医療を提供するというのが目的だと思います。そういう場合に、最近のようにあちこちで不祥事が起こったりなんかしますと、医療に対する国民の不信と不安というものが募ってきて、まじめに一生懸命やっている医療機関には大変御迷惑をかけているのではないかと思うのです。そういう傾向があることは否めないと思うのです。そこでどうしても、患者の皆さんは、いい医療機器を備えた病院、あるいはスタッフのそろった病院等々を選択する。ですから最近の傾向を見ますと、大学病院やら大きな病院に患者さんが集中するという傾向がだんだん強まってきています。そういう状況は、逆に言いますと検査づけ等の要因になっておるのではないかというふうに思われる前もなきにしもあらずだと思うのです。むしろ最近の傾向としては、もっと診察なんかを大事にする、そして患者と医師との信頼関係、日常のつながりといったようなものが期待されて、そして平素から健康管理や健康指導をしてもらえる、健康相談に応じてもらえる、そういうお医者さんというものが要請されておるような状況にあるのではないかと思うのですけれども、そういうことも含めて、今の医療機関のあり方やあるいは医科大学における教育のあり方等々について、もし御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/95
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096・吉田清彦
○吉田参考人 まず第一点の技術料の評価でございますが、これは、これが一番よろしいという方法はちょっとないのじゃないか、こういうふうに私は思っております。これはどこの国でも大変苦慮しており困っているところでございまして、必ずしも年限でやるのがいいということもないし、あるいはまた学歴でやるのがいいということもないようでございまして、この点が、技術料の評価というような簡単な表現をいたしましても、我々自身も大変苦慮しているところでございます。
ただ、いろいろな卒業後の医師の研修の制度と申しましょうか、勉強する機会と申しましょうか、これは現在でも医師会はこれに一生懸命取り組んでいるという状態でございまして、もちろんこれですべてのことが一〇〇%よくいっているとは思いません。でもそれだけに、技術料の評価というのは、先ほども申し上げましたように正確無比にできるというような第一義的な評価法はないだろう、こういうふうに思っております。どうしてもベターという方法でもって評価していく以外にはないのではないか。あとは、日本の場合には患者さんがある程度選択をする。医療機関を選択をするのは患者さんでございますから、イギリスやソ連とはちょっと違います。そういう制度が残っていることによって、若干のそういう評価的な要素も含まれるように今後の医療制度を進めていくべきではないか、こういうふうに思っております。
第二点の、医療に対する国民の不安感と申しましょうか、そういったような問題に対しましての考えでございますが、昔は医療というのは、私たちが学校で、私は卒業は戦後でございますけれども、その当時でも医療の形というのは、医者が患者さんと相対していたわけでございます。それで診察していたわけでございます。現在は、いろいろな技術の開発とか器械の進歩によりまして、医者と患者の間にもう一つ器械が加わってきたというのが現状の姿でございます。ですから、どうしても患者さんは、間に器械があって、医者にはもちろん見えませんし、器械にしか見えないけれども、今までより以上の正確ないろいろなデータをそれがはじき出すわけでございます。そういった一つの、医療のあり方そのものの形態が非常に変わっているということが、患者さんの方の立場から見ると診察というのが意識にちょっと薄いのではないか、こういうふうに思います。医者の方から見ますと、年じゅうそういったような器械を見ておりますし、それから医療関係従事者というのもおりまして、そういうような方々も一つのチームとして私どもは見ておりますし、ところが患者さんから見ますと、やはりいろいろ話をするのは医師でございますから、そういったような点の形態の変化というものに対しましてどうしても不安感がつきまとうのではないか、こういうふうに思っております。ですから現在は病院志向ということが言われます。確かにそういった面もあるのではないかと思うのですが、そのかわり、病院志向ということでだんだん統計的にそういったような方へ医療費が注がれてくるのと並行して、医師あるいは医療に対する不信感も同じぐらいの速度でふえているというのが現状でございます。そういったことに関しましては、当然医療機関としてもあるいは私ども医師会としても、こういったことの信頼感というようなものに対する回復は十分に心がけていかなければいけない、こういうふうに感じております。
ただ、ここで、今後の医療というものを考えますと、どうしても最も必要なのはやはり健康教育だろうと思うのです。こういった健康教育というものに対しましては、従来とも、自治体にしろ健康保険にしろ、そういった費用を負担するというようなことは我が国にはございませんでした。やれば、医師は大体無報酬でやらざるを得ないというような状態になってきたわけでございますが、今日、老人保健法あるいはその他のいろいろな健診事業というようなもの、あるいは健康管理システムというようなものが開発され、また進歩してきております。そういった中で、やはりこういった健康教育が非常に重要な部分を占めるのではないか、こういうふうに感じております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/96
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097・村山富市
○村山(富)委員 これはどなたにお尋ねしていいかちょっと見当がつかないのですけれども、先ほど吉田先生からも、特定療養費の問題について御意見がありました。私ども素人でよくわからないのだけれども、特定の医療、これは知事が承認した医療機関、あるいは厚生大臣が認めた特別のサービス、特別の材料については一定の額の保険給付を行うということになったので、一面いいように見えますけれども、歯どめのつけ方、あるいは扱い方によっては逆に、保険診療と自由診療の扱いというものが、大きく自由診療が広がってくるというようなことがあり得るのではないかという心配をされている向きもあるわけですけれども、時間がございませんので、端的にお答えをいただきたいと思うのです。吉田先生と藤田先生、御意見があればお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/97
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098・吉田清彦
○吉田参考人 特定医療機関に関しましては、特定療養費という名前になっておりますけれども、これは実は法文だけしか私ども見ておりませんし、保険局長が社労の第一回のときにたしかお答えになっていたと思うのでございますけれども、こういったものの基準なりあるいは内容等について中医協に語る、こういうふうに言われておりましたが、大体、今の中医協は医師ばかりじゃございませんで、医者は中医協の中で何分の一かでございますから、中医協でお諮りになっても本当にそういうことができるのかどうか。私自身も中医協の委員なのでこんなことを言っては申しわけないのでございますけれども、ほかの方々とそういった作業をそういう場でやることが果たして適当なのかどうか、ちょっと危ぶんでいるわけでございます。
それと、いわゆる先進医療と申しましょうか、そういったものと、現在もう既に普及度が高まっている医療と申しましょうか、そういったところに一つの線を引くというのは、医療の場合にはとても難しいということでございます。同じ病気でも千差万別でございますから、そういったことが果たして可能なのかどうか、むしろ私どもが皆さんに御意見を伺いたいと思っているくらいでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/98
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099・村山富市
○村山(富)委員 済みません。もう時間が来たものですから、結構でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/99
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100・有馬元治
○有馬委員長 河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/100
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101・河野正
○河野(正)委員 残り時間ですからあれもこれもというわけにもまいりませんので、基本的な点をお尋ねして御見解を承りたいと思います。
そこで、藤田先生が御出席でございますし、たまたまお答えの中で社会保障という問題等が出てまいりましたから、ここで一言、先生に基本的な点についてお尋ねをしておきたい、こういうふうに思います。
それは、何といっても今度の健康保険法の改正というものは抜本改正だと私は思うわけですね。とにかく新しく定率の負担を導入するわけですから、いやしくも今度の改正というのは抜本改正だと思うわけです。そこで、こういう抜本改正を実施しようとする政府が、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会に実は諮問をした。ところが、諮問はいたしましたけれども、とにかくしゃにむにこの国会でこの健康保険の改正をやっていこうという政府の野望があるものですから、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会においても十分な議論をする余裕も与えないでこの答申を受けた。これはそれぞれ二つの審議会から答申がございますが、その中でも明確にそういった問題に対しまする批判が行われているわけですね。
そこで、先生はお答えの中でさっとお触れでございましたけれども、今の日本の社会保障、社会福祉、私はこういうものは基本的に日本国憲法の二十五条にのっとるべきだ。御案内のように、二十五条の第一段階には、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されている。後段は、国は、日本国の社会福祉、社会保障の充実向上のために努力しなければならぬ、こういうふうに書いてあるわけですね。ですから、二十五条の前段を見ましても後段を見ましても、日本の医療保障、社会保障の方向というものは、そのときそのときの財政事情によって多少紆余曲折はあると思うのです、あると思うけれども、そういった憲法二十五条の精神というものがやはり中軸にならなければならぬというふうに私ども思うわけですね。ところが残念ながら、両審議会が答申いたしましたように、十分の討議もしないまま諮問に対する答申を受けて、そしてこの国会でしゃにむに、国会を延長してでもやり遂げていこう、こういう社会保障に対します考え方、この理念というものが少少間違っているのではないかと私は常日ごろ思うわけです。
かつて国会の中でも、皆保険制度ができます過程の中で、今後日本の医療というものは、医療保障制度でいくのか医療保険制度でいくのかという議論が、非常に華やかに展開された時期もございました。やはり、国民の一番大切な健康を守る健康保険法というものが九割給付、八割給付とどさくさ紛れで改正されようということについて、私はいささか、中身についてはいろいろあるけれども時間がございませんから申し上げませんが、そういう点において異論を持っている一人でございます。そういう意味で、ひとつ学者としての藤田先生の御見解をこの際承っておきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/101
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102・藤田至孝
○藤田参考人 お答え申し上げます。
私も、社会保険審議会と社会保障制度審議会の今回の改定についての答申を読ませていただきました。両方とも、非常に短期間で、十分な審議をする時間が与えられなかったということにつきまして大変な不満を表明しておりまして、今後再びこのようなことを繰り返さないようにという歯どめをいたしております。
まさにこれは、まず医療保険制度そのもののあり方を長期的な観点から検討いたしまして、その上で財政措置がどうであるかという検討になるのが当然のことでございまして、六千数百億円の財政を浮かせる、そして厚生省のマイナスシーリングのほとんど全部を医療で見るようなそういう無理というものは、今回のいろいろな制度にも、負担を初めといたしましてあらわれていると私は思うのでございます。ただ、基本的には、老人医療保健法の成立に続きまして退職者医療保険制度というものが成立したということは、長期的な日本の保険制度の進むべき方向を示しているという点で私は評価をいたしておるわけでございます。そうなりますと、もう長期的な検討もされておるわけでございますけれども、抽象的でございまして、それをどういうふうにするのかということになりますとまだ私どもは十分に承知していないのでございますが、やはり健康保険はいつでも、だれでも、どこでもということが基本であり、そして所得に関係なく平等な給付を受ける、そして負担も原則として日本の国民として平等であるという基本、そしてそれは、ただいま憲法二十五条を引用されましたように、文化的で健康な最低生活を維持するに足るという、それがやはり何といいましても、いかような財政危機に陥りましても、その線だけは破ってはいけない守るべき線であるというふうに私は考えるわけでございます。
そこで、理論的なことについては別といたしまして、 一つだけ言いますと、いつでも、だれでも、どこでも、そして平等に同じような給付を受けるということから言いまして、国民の中で、健康保険の給付でほかの制度の人が受けておりますのに、まだ受けてない人と一つの給付があるわけでございます。実は先日床屋さんに参りまして、その床屋さんが胃潰瘍だというのでありますけれども、家族を養わなければならないし、店を休むわけにいかない、だから医者に行きたいのだけれども行けない、こういうことを言われたのであります。それで考えてみますと、確かにほかの制度には傷病手当が支給されておりますのに、国民健保では傷病手当というのは任意給付でございまして、この床屋さんのように金の問題のために、要するに生活のために床屋を休めないということがあるのでございます。私はそういう意味で、きょうは、まだ給付が欠落しているこの傷病手当金制度を国民健保にもぜひ何とか導入していただきたいということをお願いしたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/102
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103・河野正
○河野(正)委員 時間がございませんので、今度は日本医師会の吉田先生にお尋ねをいたします。
今度の改正案を見て、また私どもいろいろ質疑等を重ねながらそこでだんだん明らかになってまいりましたのは、今藤田先生にもちょっと所見をお伺いいたしましたが、そういうような理念ではなくて、とかく今の医者は乱診乱療だということですね。それに時を合わせたように宇都宮の事件とかいろいろな事件が出てまいりました。そういうことで、この際何とかして健保の改正をしなければ、浜の真砂ではないけれども、こういう問題は後を絶たないと思うのです。信賞必罰ですから、悪い連中はそれぞれ厳重に処分していただくのは結構だ。しかし、大部分の医師はまじめな医療行為をやっているわけです。
そこで、医療というものは、私は一つには健全な医業経営、そして一方では被保険者、この二つが両々相まって日本の医療というものが進歩していくと思うのです。医業がひっくり返って、あすは倒産するかもわからぬという状態になっておって、まともな医療が行われるはずがないですね。健全な医業経営と健全な国民医療がちょうど車の両輪のごとくになって、これが等しく同じように回転しなければ日本の医療というものは前進することはできない、こういうふうに思うわけです。
そこで、今私どものところにも、今の健康保険法を廃案にしてほしいという陳情がたくさん来ております。これは主として被保険者の方から来ておるわけですね。ということは、このことは結果的には今の医業経営に対しても言えることだと思うのです。日本の医療の将来に対して国民が非常に不安を持っておるということは、結果的には今の医業経営にもそういう不安がつきまとっておる、こういうふうに思うわけです。残念ながら、今まで医者は仁術ではなくて算術だとよく言われてまいりました。ところが、私はむしろ今の厚生省の方が算術じゃなかろうかと思うのですよ。日本の社会福祉というのが常に揺れ動いておるわけですね。財政がちょっとよくなると少し前進する、財政が悪くなるとずっと後退する。今はもう全部後退する時期が来ておるわけですね。そういうことが日本の医療の基本であってはならぬ。先ほど藤田先生からもおっしゃったように、財政事情がよかろうが悪かろうが、いろいろあろうけれども、そのことを参考にしながら、やはり日本の医療はかくあるべきだという筋は一本通していかなければいかぬと思うのですよ。
そういう点では、正直言って例えば薬価基準の問題、いろいろありますね。私どもに言わせると、薬価基準を実勢価格に連動させるのは一つの筋でしょう、ですけれども、それと対応して医師の技術料をどう評価するか、この点がほとんど論議をされないですね。先般歯科医師会でアマルガム合金を不正に買い込んで問題になった。やはり歯科医も同じことですね。材料費は保険で認めて上がっていくのですよ。ところが技術料は上がらない。だから、やっていいことではないけれども、ついそういう方向を求めていく。医師の場合も、不当請求とか不正請求とかはあってはならぬと思う。それはそのとおりだと思いますよ。そのとおりでございますけれども、その際考えなければならぬのは、医師の技術料を適正に評価するということですね。不正をしてはいかぬことはそのとおりですが、適正に評価する、そして不正もなくしていく、こういう議論がなされなければならぬ。しかし、残念ながら、日本医師会はあっておるか知らぬけれども、国会の中の議論はほとんどありません。ですから日本医師会としても、国民の健康を守るのは開業医ですから、国立病院はありますけれども、そういう意味で、医療というものがどう正しく推進されるか、それをするためにはやはり技術を適正に評価させて、そして安心をして正しい医療、国民の健康を守るために邁進する、そういう主張というものが積極的に展開されなければいかぬ時期が来ておるのじゃなかろうか、私はこういうふうに思います。私は、余った時間なものですから持ち時間がございませんので多くを申し上げませんが、その点についてひとつ吉田先生から率直な御見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/103
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104・吉田清彦
○吉田参考人 今御意見がございましたように、技術の評価というのは大変難しい面もございますけれども、私どももかねがね主張しているところでございます。ただ、非常に技術差というのがございますから、その技術差を評価をするというのが非常に難しい、こういうことでございます。平均的な技術料だけで評価するのであれば、それは比較的作業としては易しいのではないかと私は思っております。やはりできるだけそういった医術に対する技術差というようなものにまで及びたい、こういうふうに日本医師会としては考えておりましたので、そういった点については、主張することがそれほど歯切れがよくないという印象は受けるかもしれませんけれども、私どもはやはり技術評価というものを曲がりなりにもやっていただきたいということで今日まで来たつもりでございます。ところが、今の点数をごらんになりましてもすべて物に絡んでいる点数です。診察して患者さんにいろいろ細々と一時間指導しようと二時間指導しようとそれは一点にもならないのでございまして、その点にやはり一つの問題があると私は思うのでございます。
それと、薬の問題もこれと非常に絡み合っているわけでございますが、現在、薬価基準は実勢価格と引き離すのは当然じゃないかという議論が巷間あるわけでございます。私たちが薬を飲むのは、一日に二錠とか幾ら多くたって三種類ぐらい二錠ずつ六錠とか、そういう数でございますが、薬屋さんが販売している実際の実勢価格に反映しています包装というのは、現在は百錠なんというのはないのです。大体一万錠とかもっとひどいのは十万錠とか、こういった数でございまして、これの金額を算術で割りました一錠当たりの金額、これが薬価基準の金額でございます。そうしますと、では医療機関は一錠当たりの金額でこれを購入できるかというとできっこないのです。みんな一万単位とかで、少なくとも千単位以下の錠剤なんてございませんから。そういったところに実勢価格と剥離しているという簡単な表現がありますけれども、実際には医療機関は、そういう小包装を確保してもらいたいということは常々厚生省にも申し入れておりますし、厚生省もそれなりの努力はしてくれている、こういうふうに思っておりますが、残念ながら、業界がなかなか協力されないのかどうか、そういう実情になってこない、こういうふうに思っております。
今後の問題といたしまして、私どもは、限りある資源でございます、財政にも限りがあるわけでございますから、その中で効率よくやっていくためにはいろいろな工夫も必要だろうと思いますし、またそれだけに、今後できるだけ薬から切り離された診療報酬の体系というものを、これは重要な一つの柱ではないかと思っておりますので、正当なる技術評価というようなものをぜひ推し進めていただきたいと思うのでございます。
ところが現状は、薬価基準を切り下げたけれども、技術評価とはこれは別ものですと言う。これは確かに別ものです。ですけれども、上げませんという理屈はおかしいと私は思っております。この何年間かずっと人事院の勧告等もございまして、人件費の方は年々増高しておりますけれども、医療機関の方の実質的な収入増は昭和五十六年から全然ございません。三回これを改定をしておりますけれども、実質的には全部下がっておりますから、そういった点もぜひ考慮していただきたいと、我々は常々厚生大臣等にもお願いしておるところでございます。今後は技術の評価という点に向かいまして私どもも謙虚に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/104
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105・河野正
○河野(正)委員 これで最後です。今お答えをいただきましたが、そういういろいろな悪弊というものがあり、医者は薬でもうかるとかもうからぬとかいうようなことからいろいろな議論がございます。先般も委員会で論及いたしましたけれども、そのために、結果的には薬剤の第二市場といいますかブラックマーケットといいますか、そういうものが今ずっと横行してきて、とにかく安ければよろしいというようなことで、これはいろいろと議論のあるところでもございます。ひとつ日本医師会も、悪いところは改める、いいところは大いに主張してもらう、この両面で頑張っていただきたいと思います。
時間もございませんから、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/105
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106・有馬元治
○有馬委員長 平石磨作太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/106
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107・平石磨作太郎
○平石委員 本日は、三人の参考人には大変お忙しい中を時間を割いていただきまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。私の持ち時間は二十二分ということで非常に短時間でございますので、できれば簡潔にお答えをいただきたい、こう思うわけでございます。
まず、永田先生にお聞きをいたしたいのですが、参考人は先ほどの陳述の中で、国保の保険料負担はもう限界を突破しておる、こういうお話しがございました。こういう状況の中で国保の運営をなされておられるわけですが、今回の退職者医療が創設されて、含まれております退職者が疎開をする、そしてその医療費負担の軽減が行われるということで、これは一応制度の建前から言いますと、なるほど厚生省のおっしゃるとおり、それだけの軽減が図られるわけであってそのために国庫負担の切り下げが行われる、こういうことでございますが、前回は老人保健法が別建てになりまして疎開がなされたわけです。そういった実績等をも含めて、今回の退職者医療が行われることによってそのものが保険料にはね返らないのか、おっしゃるとおりにはね返らないと見ておられるかどうか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うわけです。
それからもう一つ申し上げたいことは、退職者がいない過疎地域、田舎の方では小さな保険でやっておりますが、そういった弱小市町村における退職者のいない国保、これも同じく四五%から三八・五%に減額をされるわけなんです。そういうところはもろに結局財政負担がふえてくるということに相なろうかと思うわけでして、当然そこでは保険料がアップせざるを得ないというようなことに追い込められるというおそれがございます。そういったことをもひとつお考えをいただきたい。
それからもう一つ。三十六府県が今回の改正については反対決議がなされておるということを聞き及んでおりますが、今参考人の方は、この保険法をぜひ成立をさせてほしいというお話しがございました。この反対決議についてのお考えはどういうお考えか、ひとつお聞かせを賜りたいと思うわけです。
それからもう一つは、今回の改正によりまして、国保の中には七割、八割という給付の同じ被保険者でありながら同居することになってくるわけですが、七割のいわば自営業者といった方はこれを八割に引き上げるということについて保険者としてどんなお考えがありますか、ひとつ簡単にお聞かせをいただきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/107
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108・永田正義
○永田参考人 退職者医療保険制度の発足による国庫補助の減額、それから退職者医療保険制度そのもの、これが被保険者の負担増につながる心配はないかという御質問でございますが、私たちは今のところ、厚生省のそういうことは絶対しない、これを信頼するよりほかはないわけでございます。また、こういうような大きな抜本改正への前進をしていただく場合には、国は当然こういう問題に対しまして被保険者の保険負担がふえないような措置を講じてくれることを確信いたし、また要望をいたしたい、このように考えておるところでございます。
それから、都道府県議会で今度の健保法の改正案に対するいろいろな決議が行われておるようでございまして、私たちも新聞等を通じて拝見いたしておるところでございますが、御承知のように、市町村が直接国民健康保険の保険者となってこの保険の運営をやっておるところでございますが、市町村の現場における一つの健康保険の改正案に対する考え方といたしましては、国保に対する国の補助率の低下、こういうようなものを通じて保険負担の増加にならないように、こういうことであるならば、この改正案は抜本改正への大きな突破口であるからしてぜひ実現をしてほしい、このように考えておるところでございます。府県の議会のそういう決議等に対しまして、第一線の市町村としましては、しかも国民健康保険の保険者といたしましては、むしろ今回の改正案に大きな期待をかけている、これが現状でございます。
それから、退職者医療保険制度が実施されて、そして退職者医療保険制度の加入者だけが八割給付、そして国民健康保険本来の給付は七割給付、この差額が今度出てまいりますことは大きな問題だと存じております。大体、国民健康保険の保険団体といたしましても、これまでに国に対しましては保険給付の引き上げを要望してまいったところでございまして、むしろこういうような大きな抜本改正への前進を機会に、私たちはそういう給付面の不公平の是正をもぜひ実現をするように努力をしなければならぬ、このように決意をいたしておるところでございます。また、国会の先生方に対しましても、ひとつ公平なる給付、公平なる負担へのお力をかしていただくようにお願いを申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/108
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109・平石磨作太郎
○平石委員 田舎の過疎地域における退職者のいない国保は当然保険料にはね返りが出てくるのではないかという心配なんですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/109
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110・永田正義
○永田参考人 御指摘になりますように、退職者のいない小さな都市、それから町村、そういう地域におきましては一方的に国の国保に対する補助率の低下だけが大きく影響してまいるわけでございます。しかし私たちは、この点につきましても、そういう退職者医療保険制度の適用を受ける人数が少ない地域、そして一方においては国庫補助率の低下で大きな負担の増加をもたらす地域に対しましては、財政調整交付金の中で当然それを十二分に埋めるだけの措置をとるべきである、このように国に対しては強く要望をいたしておるところでございます。また、それがそのように実現をいたしませんと、退職者の医療保険制度の発足によりまして、新しい制度の適用を受ける人員が少ない市町村は大きな税負担となってはね返ってまいるわけでございまして、当然私は、今度の改正の中にその問題は税負担にならないように国が配慮すべき責任がある、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/110
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111・平石磨作太郎
○平石委員 ありがとうございました。
次に、藤田先生にお伺いをいたします。
今回の改正につきまして中長期のビジョンがないというようなことから、過日厚生省から、中長期のビジョンの発表がございました。これで見まして、今回の改正案というものがこの中長期のビジョンとつながりがあるものであるのかどうなのか、さらに保険制度の整合性といったようなことがこの中長期ビジョンにおいて十分に反映ができておるかどうか。
それからもう一つは、社会保険としての社会保障、先ほどもちょっと論議がございましたが、確かに十割給付という長い歴史のものがここでまさに崩されようという案でございますが、この社会保障としてのいわゆるミニマムといいますかこういったものは、家族については七割である等、そういった段階があるわけですが、これはどの線が憲法の上からいったときに妥当なものなのか。当然金の上からも判断せねばなりませんですけれども、一応制度として、社会の安定のために云々という先生の先ほどの陳述がございましたが、そういうものから考えたときにどの辺が妥当なのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思う、わけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/111
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112・藤田至孝
○藤田参考人 お答え申し上げます。
大変に難しい問題でございまして、社会保障の一環としての社会保険の公平のあり方でございまして、今の日本では七割、八割、九割と給付が違ってまいるようになったわけでございます。そこで、それを今度の中長期ビジョンが言っておりますように、六十年代後半で八割に統合していくという方向でございます。確かに数字の上からいいますとそれは理念でございますし、社会保障の理念からいえばまさにそうでなきゃならないのでございます。制度の統合も行っていかなければならないのでございます。
ただ、ここで大きい相矛盾する問題が一つございまして、それは平等と効率といいますか、その両立をどう図るかということではないかと私は思うのでございます。例えばどのような乱診乱療を受けてもそれが可能なんだ、そして負担も大体同じなんだということになりますと、これは平等を超えましていわば悪平等を導いて、それが財政の悪化を大きくするという問題なんでございますね。組合健保が大体黒字を維持してきている。それは若い人が多いとか標準報酬水準が高いとかいろいろあると思いますけれども、とにかくこれはコントロール可能な規模で、一人一人の被保険者も事業主も責任を持ってみんなで節約に努力しているということが。やはりほかの要因以上に大きいのではなかろうかということなんでございます。
ですから、保険財政が改善されはしましたけれども、ずっと悪化をたどったのは、一つには組織の単位が大きくなり過ぎまして、そして無責任体制で、かからなきゃ損だというような雰囲気になりまして、それが供給側との問題もありまして、今日このような自己負担制も導入しなければならないような事態になったのでございまして、私はやはり責任体制ということから、そして節約をして効率を上げるという目標をみんなが分け合うところに、これを経済学ではX効率と言うのでありますが、そういう精神的な、協力的な目に見えた見返りがあるというものが必要なんじゃないだろうか。例えば、今日の大学も大半は大衆教育でございまして、いかに学生に勉強させ秩序を保っていくかということで苦労しているわけでありますけれども、結局それを可能にしておりますのは十人単位くらいのゼミということなんでございますね。だから、巨大な組織の中にも必ずそういう責任体制の単位があるということなんでございます。
そこで私は、例えば現在の退職者医療制度も、むしろ国民健保に持っていくよりは組合健保の方がそういう目的の上からいうと目的を達したのではないかと思うのでございまして、とにかくそういう責任体制を維持できるような、コントロール可能なそういう網の目の組織というものを、厚生省も進めておられますけれども、これからが課題ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/112
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113・平石磨作太郎
○平石委員 はや時間が来ておるのでびっくりしましたが、ひとつ吉田先生にお願いしたいと思います。
先ほどの論議の中でもちょっと再配分機能の問題がございました。確かに今の保険制度八つを見てみますと、いろいろ矛盾を内包しながら格差を持っているわけですが、そういう中で受益者に負担をさす、これはあくまでも患者さんに負担をさすということは逆行である、重症者にさらにさらに大きく負担がかかってくる、こういったようなお話しもございました。私もそのように思うのです。
そこで、さらにもう一つ、八つのものがある中では、非常に有力な組合もありますし、また中小企業の方々の政管健保があり、国保がある、こうなってまいりますと、国全体としてこの保険制度を維持発展させていく、そして給付・負担は少なくとも公平を旨としてこれからの一元化といったようなことを目指すとするならば、これは当然そこにおいては、先生のお話しにもありましたように一挙に統合一元化ということは不可能である、これはなかなか時間のかかることである。そうなりますと、少なくともそれへ向かって進むように財政調整をし、単なる負担だけでなしに、やはり保険料の原資としてのもの、原資としての保険会計のいわゆる強いものと弱いものとの財政調整というのをするのが社会保障制度だと私は思うのですが、その点一言お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/113
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114・吉田清彦
○吉田参考人 仰せのとおり、私も一挙になかなか解決はつかないと思います。ただ、財政調整もいろいろなやり方があると思いますし、また先生がおっしゃられるのも一つの方法だろうと思いますし、そのほかにも、いろいろそういった方向に向かう一歩一歩の施策というものはあると私は思っております。その第一段階は、やはり何といっても負担とか給付といったようなものは並べるべきだと私は思うのです。片っ方でもって附加給付を認めているような状態というのは決して好ましい状況だとは私は思いません。
先ほど、健康保険組合はみずからの努力によって非常に財政的に黒字なんだという御意見もあったようでございますけれども、これは、高年齢者が今退職して出て国保の方に入っておりますが、こういった方々をもう一回戻したようにしてやれば組合健保というものは決して黒字ではなくなってしまうような数字が出ているわけです。現に任意継続という制度が今ございます。これは退職してたった二年間でございます。しかし、この二年間のいわゆる保険給付費と申しましょうか療養給付費は、在職しておる人の倍以上でございます。一年当たり一人頭にしますと倍になるはずです。そのように決して、経営努力によってという面も多少はあるかもしれませんけれども、大多数は年齢構成と所得のいろいろな構成の違いである。それから、大企業であるだけにいろいろ社会環境のいいところに住んでいるということもあるだろうと私は思うのです。そういうことが非常に格差を生んでいる原因でございまして、国保は決して非常に大きないわゆる規模じゃないのでございまして、国保ぐらい一番小さい保険集団はないわけでございます。そういったものについてやはり一番先に取っかかりとしてやることは、給付と負担というようなものを少なくとも一線にそろえるべきじゃないか。これをやらないで、片っ方で附加給付を認めていれば、財政状態のいいところはみんなそっちに行きまして、その方々たちは負担しないという、先ほど来申し上げました社会保障と申しましょうか社会保険のいろいろな所得再配分機能から言いましたらば、逆行してしまうという結果が出てくるわけでございます。私は、まず第一段階はそういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/114
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115・平石磨作太郎
○平石委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/115
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116・有馬元治
○有馬委員長 塩田晋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/116
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117・塩田晋
○塩田委員 私は、まず藤田参考人にお伺いいたします。
藤田先生が意見を述べられました中に、私といたしまして非常に気になる御発言があったように思うのでございます。それは、国民皆保険・皆医療の線から、一部負担の導入にしてもきめ細かい対策をとってからやるべきである、したがって慎重な態度が欲しいという御発言がございましたが、この意味は、例えば条件というものはどういうものでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/117
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118・藤田至孝
○藤田参考人 お答え申し上げます。
先ほどもちょっと触れたのでございますが、例えば五万四千円までというその五万四千円の取り方につきまして、家族の累計あるいは継月の累計でありますとか、あるいはその負担の対象を薬だけに限定をするとか、そういう内容でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/118
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119・塩田晋
○塩田委員 先生はさらに、自己負担はできるだけ軽い方がいいということを言われたと思います。その一環としてだと思いますが、今の高額療養費の制度、今度の改正では五万四千円にしようということでございますが、これをぐっと下げていけば、重病患者あるいは大けがをした人たちの医療については負担が少なくて済む、今継月の問題とかあるいは一世帯の問題を言われましたけれども、そういったものも含めましてそういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/119
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120・藤田至孝
○藤田参考人 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/120
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121・塩田晋
○塩田委員 藤田先生にお伺いいたしますが、今度の厚生省の改正案の大きい柱は、言うまでもなく五十九年度、六十年度一割の自己負担、六十一年度以降二割の自己負担ということでございますが、自己負担をするということによって医療費が減るという見方をして、計算もして 厚生省は説明をしておるわけでございます。五十九年につきましては七月からやって二千八百十二億円減る、こういう試算も示されておるわけでございますが、これについていかがお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/121
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122・藤田至孝
○藤田参考人 八つの保険制度を調べてみますというと、自己負担があるから特に医者にかかる回数が少ない、そういう関係は見られないのでございまして、そういう点で、自己負担を導入すれば医療費が減るのではないかというのは少し甘い見方ではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/122
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123・塩田晋
○塩田委員 次に、日本医師会の吉田先生にお伺いいたします。
国民医療費が増大をしてきて、現在十五兆円になんなんとしておるわけである。この医療費の増大、特に高齢化社会に向かっての医療費の増大、これを避けるために今回の改正案を出したんだという厚生省の説明でございますが、この保険法の改正案が提出されましてから新聞報道等で特に目立って目につきますことは、医療供給機関、医師側の乱診乱療、また医療費のむだがかなりあるということ、また医師の所得が非常に大きい、あるいは脱税なんかもある、そういう報道が殊さらのように私には受け取れるのですが、新聞の一面記事を飾ったり、最近では報徳会宇都宮病院の問題が出たり、あるいは大阪の中野診療所の問題が出たり、いろいろ目につくわけでございますが、これをどういうふうに見ておられますか。私は一部の不心得な方が大きく報道されて、大部分の方々はまじめに、医は仁術なりと心得てやっておられると信じておるわけでございますが、医師会としてはこの問題についてどのようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/123
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124・吉田清彦
○吉田参考人 当然これは甚だ遺憾なことでございまして、ただ、いろいろな法案あるいは医療法などが出るときには大体いつも出てくるというのがどうも日程のような気もいたしておりますけれども、やはり医師会としても、そういう人が少数だからいいというような理由にはならぬと私は思っております。やはり我々自身でもって十分これに対して対処をして絶滅を期さなければいけない、こういうふうには思っております。
ただ、ちょっと申し上げたいのは、日本の場合におきましては、今医療費の問題やなんかで、常に健康保険とかなんとかと言ってお金を支払う方のことはいろいろやります。しかし医療の場合においては、もう一つ日本には医療システムとして、これは医療法の改正ということで載せているというふうに厚生省はお考えかもしれませんけれども、こういった診療体制の立て方というようなことも大変重要なんだろうと私は思っているのです。各都道府県の医師会としてはもう既にいろいろな医療計画というのに着手しているところが大多数でございますけれども、厚生省の方も医療法の改正でもってこういったものに触れているようでございます。しかし、そういったものが両々相まっていろいろ医療薮問題というのは効率よく進むのじゃないか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/124
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125・塩田晋
○塩田委員 ぜひとも医師に対する不信をなくするために、そういった不心得の向きについては遺憾であり対処したいということをおっしゃったわけでございますが、医師会としてどのような方法でこの不信をなくするような努力をされるか、みずからを浄化するといいますか、そういう努力をどのような手段でされようとしているか、具体的にお伺いしたいと思います。国の場合にはレセプトの審査あるいは専門医の派遣その他いろいろ考えておるようでございますが、医師会としてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/125
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126・吉田清彦
○吉田参考人 まず中野診療所の件について申し上げますと、これはもうたびたび、医師会が非常に協力いたしましてやっております。日ごろ都道府県の段階の医師会でやっております共同指導とか個別指導あるいは面接といったような、それぞれ医師会あるいは支払基金等においでを願って具体的な問題として触れて指導しているというのが実情でございまして、もちろん医師会の指導は権力があってやるわけではございませんので、数の中には、ただいま新聞紙上をにぎわしたような、どうしても我々の指導に従っていただけなかったというような方も出てくるわけでございます。そのように、日本医師会としては、具体的には各都道府県医師会の段階で指導していただくことをお願いし、また報告を受けているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/126
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127・塩田晋
○塩田委員 厚生省当局といたしましては、医療費の抑制また乱診乱療を防ぐという意味、それは本人に自己負担をさせるということによってコスト意識を高める、そのことによってそういった問題を解決していく一つの方法としてこれを持ち出したんだ、こういうことが説明として出てくるわけでございます。果たして自己負担一割、二割というものはそういったことに役立つと見ておられるかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/127
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128・吉田清彦
○吉田参考人 もちろん医療費というのは保険料の形で、患者自身が、健康保険の本人であろうと家族であろうと、要するに保険料というかっこうで負担し、また窓口で負担し、あるいは国庫補助のあるような制度もありますけれども、とにかく患者さんが何らかの形で負担しておるということにおいては間違いないことだと思うのです。決して医療機関が負担して治療しているわけではございません。それが、今までの十割を本人に限って一割負担させるんだということは、全体が一つの社会保険機構の中で平等に負担する、あるいは公平であるというならまだ話はわかる、これは私が冒頭に申し上げたとおりでございます。ところが今回のは、いろいろ制度の矛盾を残したままでこういう負担を課するということですから、大変不公平な、不平等な負担の仕方になってしまうのであって、やはり日常接しているのは医者でございますから、私どもとしてはこういったものは反対せざるを得ない、こういうふうに申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/128
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129・塩田晋
○塩田委員 本人が負担することによって乱診乱療が防げるんだという説明の中で、患者と医師との信頼関係で治療行為が進んでこれが治る、確かに医師と患者の心の通いといいますか信頼関係だと私も思うのです。それが逆に壊されてしまうのではないか。この一割負担をすることによって、その十倍すれば金額がわかるんだから、この薬は要らない、この注射はもう打ってもらわなくていいとか、そういうことを患者がお医者さんに言えるはずがないと思うのですね。それではどういうことでこの医療費の増大を抑制することになるのだと言ったら、お医者さんの方で自制作用が働くんだという説明があるのですが、これについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/129
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130・吉田清彦
○吉田参考人 日本の医師も十万ぐらいいるわけでございますから、そういう考えの方も中にはいるかもしれませんけれども、私は必ずしもそうは思いません。今まで医療費通知運動などというのを恐らく厚生省、各保健所もやってきたわけでございまして、これは毎年毎年数十億のお金を使っておるのでして、今さら一割を負担させてコスト意識を持たせるというのであれば、今までやってきたことは全くむだだったのですかということを私はむしろ聞きたいぐらいでございます。
それから患者さんが医療内容を選択するなどということは、他の産業分野あるいは経済分野と違いますから私は不可能だろうと思うのです。そこに医療の独得な一つの行き方、存在の仕方があると思っておるわけでございます。そして、医者の方でそういったようなものに対しまして一つの抑制効果があるんじゃないか、こういうお話してございますが、私はそれほどそれは期待できないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/130
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131・塩田晋
○塩田委員 先ほど最初の意見を述べられましたときに、自己負担というものは早期診療を妨げるという御発言がございましたが、これは確かに、例えばがんの場合でも、早期発見をして手を加えれば治るものをほうっておけば死に至る病いになるということ、しかも医療費は余計かかるということで問題は確かにわかります。歯の場合でも、ちょっとした虫歯を早期に治療すれば大事にならないで防げる、これをほうっておけば医療費がうんとかかる、こういう問題になると思います。そういった早期診療を妨げる現象は確かにわかるのですが、自己負担をしていない現行の被用者本人の場合と、自己負担を三割なりしている家族なり国保の患者とを比べますと受診率は大体変わらない。しかし医療費は本人の方が二割あるいは三割高い、負担をしていない無料の方が高いという説明がございますが、これはどのように見ておられますか。保発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/131
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132・吉田清彦
○吉田参考人 これは二つに分けてお答えした方がいいと思います。
まず健康保険の方でございますが、健康保険の家族というのは、現在子供がほとんどどこの家庭でも二人いる方が多いくらいでございますから、いわゆる今度の退職者医療に入らないような方々はみんな子供が非常に小さいわけでございます。ですから、子供さんの小さい方は薬にしても体重比例でございますから当然これは低いわけでございます。ですから、実際に内科、外科あるいは小児科等の診療の一件単価の比較をしてみれば、小児科が一番低いです。これは、そんなに薬を飲ませるわけにもいきませんし、また飲みません。成長力の非常に盛んな年代でございますから早く治ります。そういったことで、家族と本人の差というのがそこに多少あるのはやむを得ないことだと思うのです。受診率が変わらないのは、大体大人になりますとはしかとか風疹とかいった伝染病にはまずかかりません。ところが子供はみんなかかるわけでございます。今どき医者にかけないで置いておくような、はしかを家で寝かして治そうなんという方はほとんどいないのじゃないかと思いますし、風邪や何かの感染症にしても私はそうだろう、こういうふうに思っております。ですから受診率は変わらないわけです。しかし内容等につきましては、病気の性質、いわゆる成人病となっておるような一つの老化現象を加味したような治りにくい病気と、それから非常に急性の感染症の多い、しかも体重の少ない子供さんたちとの医療費が単価として違うというのは、当たり前の話のように私どもは思うわけです。
それから、国民健康保険の方は、これは今申し上げました子供ともう一つ老人を抱えております。もし何でしたら、老人と本人を比べたら老人の方がはるかに点数が高いです。一人頭の医療費は高くなっているということでございまして、あながちそういった統計だけで、数字だけで割り出せないというか、内容の問題がある、私はこういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/132
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133・塩田晋
○塩田委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/133
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134・有馬元治
○有馬委員長 浦井洋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/134
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135・浦井洋
○浦井委員 日医の吉田先生にお尋ねをいたしますが、のっけから生々しい話で恐縮でありますけれども、ずばりお聞きしたいのですが、この四月一日から日医の会長がかわられました。前会長の花岡先生の時代と今の羽田先生の時代と今回の健康保険の改正案に対する、反対は反対でしょうけれども、継続性のある反対なのか、それとも何か前執行部と現執行部の間で違いがおありになるんだろうか。この辺のことをひとつ簡潔にお教えいただきたいと思います。それが一つ。
それからもう一つの問題は、四月の二十四日に、与党の自民党の中で、議員秘書も含めまして、新聞で一番大きな数字では百六十六名も集まられまして、二十一世紀の国民医療を考える会でしたか、こういうのを旗上げをされた、そして今度は、五月十一日にはまた第二回の会合を開かれる、こういうことが新聞報道で言われておるわけでありますが、これを日医の執行部のお一人である吉田先生としてはどう見ておられるのか、また何か御関係がおありなのか、その二点を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/135
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136・吉田清彦
○吉田参考人 お答えいたします。
前執行部から今度の現執行部に四月一日には先生の仰せのとおり変わったわけでございますが、いろいろな事務引き継ぎの中で、こういうことがありましたというようなあれは申し受けておりません。ただ、前執行部の会長が立候補されまして現在の羽田会長と争ったわけでございますから、当然今後もやるお気持ちはあったんだろうと思います。しかし、今日羽田会長が選ばれたというのは、やはり今までの健康保険というものに対する取り組み方、こういったものがその批判の最たるものであったのではないか、私どもはこういうふうに思っております。ですから今後、私どもは、今の執行部といたしましては、永続的にこの健康保険改正案については反対していくつもりでございます。
それから次の、二十一世紀の国民医療を考える会は、これは自民党の方の問題でございまして、私どもがとやかく示唆をした問題ではございません。ただ、私どもは、いろいろな党に限らず、また自民党の先生方には今までにもいろいろ医療問題につきましては具体的な御協力を得、またお願いしたこともございます。今後もできるだけ先生方に、そういったような医療費問題あるいは医療問題について御協力方はしていただきたい、こういうふうに思っているのです。
私が思いますのに、今いろいろ医療問題というのが世間の方々の中にも論議されておりますが、一番私どもがおそれるのは、必ずしも正しい情報じゃないもとに、正しくない知識でもって論議されるということが、非常にその結果が恐ろしいと思うわけで、そういうことにつきましては、私どもは、議員先生ばかりじゃなく、いろいろな一般の方々にも我々として持っている正しい情報はできるだけ提供していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/136
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137・浦井洋
○浦井委員 どうもありがとうございました。
そこでもう一つ、今度は、この健保の今度の改正案の内容に触れるわけでありますけれども、先生も御承知のように、昨年の春以来、厚生省の吉村保険局長は、医療費亡国論であるとか医療費効率逓減論であるとか医療費需給過剰論というような三つの項目を、仮に名づければこうだということで、いわば健康保険制度そのものに切り込んできておるわけであります。私の考えでは、それは、臨調の第三次答申で、軽費医療は受益者負担だというようなところとやはり共通しておるのだろうというふうに思うわけであります。それに対して具体的なやり方としては、一つは、不正やむだを省くという一つの段階、医療費の適正化ですね。それから今度は医療供給体制の合理化、医療の供給の仕方をもっと効率よくしようという動き。それから第三に、それでもなおかつ、高齢化社会であるとか疾病構造の変化であるとか技術革新であるとかいうようなことで医療費はふえていくだろう。そうすると、今先生も言われたように医療資源が有限である、あるいは前会長の花岡さんも就任のときに言われたように、保険というファンドは限られておるんだということになってまいりますと、これは公的医療保険で見る分野というのが有限のところでとどまってしまって、そしてあとは自由診療にならざるを得ないのではないかという感じを、今度の一連の政府の態度を見ておって私は強く感ずるわけであります。もちろん、今出てきておるいわゆる改正案そのものあるいは四月二十七日に出ました中長期ビジョンなるものでは、巧みにそれが後退しておるというか隠ぺいされておるというような感じがするわけでありますけれども、やはり臨調答申も含めまして先ほど申し上げましたような思想が脈々と流れておる。その中には、前厚生大臣の視点と方向、医療標準の概念の導入、ニューフロンティアの育成というようなことも含まれておるというふうに私は思わざるを得ぬわけであります。
そこで、日医の現執行部、あるいは吉田先生個人でも結構でありますが、こういう自由診療の拡大ということについて果たしてどう考えておられるのか。あるいは自由診療をやらなければ、今の政府の考え方からいえば、今度の一割、二割自己負担のように、患者に負担をかぶせるというような方向しか選択肢がないようでありますから、どうしても自由診療の拡大ということが出てくる。その一番の芽は、先生が先ほどもお答えになりました特定療養費の項だろうと思うのです。だからそういう点について、特定療養費の項も含めて自由診療の拡大というのは一体どうなのかということをちょっとお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/137
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138・吉田清彦
○吉田参考人 執行部が発足いたしましてからまだ一カ月少々でございますので、そういう極めて難しい問題について深く掘り下げた議論をしているわけではございませんということを前置きいたしますけれども、日本では、先生も御存じのとおり、医療機関というのは病院か診療所か助産所しかないわけでございまして、諸外国のものと単純に比較するということは非常に難しい点があるのじゃないか、こういうふうに私は思っております。
それから、先生が御指摘されましたとおり、この一年間の、保険局長を初めといたしました厚生大臣等の談話あるいは事実おやりになってきました施策等につきましては、そういったように保険診療のミニマム化と申しましょうか、標準医療といった考えの導入というものは、私どもは、先生の御指摘されたと大体同じでございますけれども、これは自由診療の導入につながり、また保険診療というようなものが一番ミニマムなものであるということになりかねないという要素はそのとおりだろう、こういうふうに思います。ですから、これにつきましては、現在の日医執行部は現段階では反対でございます。やはり社会保険の制度として、医療保険はまだそういったような財政的破綻に至るまでの事態にはなっていない、こういうふうに考えております。医療費問題は世界の中でもいろいろ問題になっておりますけれども、日本はまだいい方に位置している、私はこういう理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/138
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139・浦井洋
○浦井委員 最後に要望だけ。
先生も、今回新しく中医協の委員になられるわけでありまして、先ほどもお答えがありましたように、特定療養費の大臣の諮問にこたえて奮闘されるわけであります。調べれば調べるほど、この特定療養費というのはちょうど老人保健法の老人特掲診療料のような、きょうも午前の参考人である財界の代表ははっきりとそう申しておりましたけれども、そういうやり方をとる可能性が非常に強いという感じがするわけで、特定療養費の項というのは非常に重要だ、かえって一割、二割の自己負担の問題よりもこれからの日本の医療にとって大事ではないかというふうに思いますので、十分にひとつ御検討をしていただきますことを要望させていただきまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/139
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140・有馬元治
○有馬委員長 菅直人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/140
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141・菅直人
○菅委員 私は、短い時間の質問ですので、永田参考人の方に、個々の問題を中心に二、三御意見を伺いたいと思います。
今回のこの改正案によって、昨年の老健法に続いて退職者医療制度というものが打ち出されてきているわけですが、先ほど来永田参考人の御意見では、大変な前進だから大いにやってほしいというような立場で意見を述べられておりましたけれども、この退職者医療制度が例えばできたと仮定をいたしまして、昨年の老健法とあわせて国保それ自体は、七十歳以上は老健法、退職者は退職者医療制度ということでかなり財政負担が移るわけですが、そうなったときに、それじゃ残ったところでは、一つの国民健康保険といっても保険者はたくさんあるわけでしょうが、トータルとしては将来展望として自立をしてやっていけるというふうに考えられておるのか、今程度の国庫補助があれば将来展望として自立してやっていけると考えられておるのか、あるいはまた二年、三年したらこれでも足らないということになりそうなのか、その点についての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/141
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142・永田正義
○永田参考人 ただいまの、老人保健法に次いで退職者医療保険制度が発足した場合に国保は自立してやっていけるかという御質問でございますが、私たちは、今までの実績、資料等からいたしまして十分その責めを果たし得る、このように確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/142
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143・菅直人
○菅委員 それじゃもう一つ。私も地元でいろいろな市の市長さんとか地方議会の方と話をするときに、永田さんも市長をやっておられると思うのですが、国保の保険者という立場と、全住民に対して自治体の責任者としてその健康を見るという立場の二つが部分的に重なっているわけです。そうすると、ヘルス事業などは本来全住民を対象にしてやられることが多いと思うのですけれども、何か国保のいわゆる保険の方の保険者として、住民の中の一部の人に対して責任を持つという立場が果たして自治体の責任として適切なんだろうか。あくまで全住民に対してのヘルス事業をやるという立場は当然に担っていただかなければいけないのですが、国保の保険者を自治体が担うというのは保険事業として適切なんだろうかということを時折考えるのですけれども、それについてはいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/143
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144・永田正義
○永田参考人 現行法の中では、老人保健法の中でヘルスの問題が義務づけられておるわけでございますけれども、ヘルスの問題はただ老人保健法の関連ばかりではなくして、もっと高い次元から住民全体を対象としたヘルス事業を進めていくべきだ、私はこのように主張をいたしておるところでございます。
現時点におきましては、例えば私の自治体のお話を申し上げますと、私の方では、保健医療制度を十分活用しながら、全市民を対象といたしました保健補導員制度をつくりまして、医師会、保健所、行政、さらに住民が一体となって市民の保健保持推進をやっている、こういうように進めておるところでございまして、厚生省に対しましても、このヘルスの問題は、老人保健法、国民健康保険法にかかわりなく、国全体の国民健康保持という大きな立場から政策をもっと拡大強化すべきである、私はこういうふうに主張をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/144
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145・菅直人
○菅委員 そこで、今言われたことはよくわかるのですが、先ほども申し上げましたように、そうすると国保の保険者という立場は、例えば政府管掌のように政府が保険者になるというようなことで自治体から外した場合に、何か自治体としてお困りになることが出るのか、逆にそれだと大変助かるということなのか、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/145
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146・永田正義
○永田参考人 私の場合は、健保であろうと政管健保であろうとほかの医療保険制度のものであろうと、全部をひっくるめた市民総ぐるみの保健保持ということで進めておるところでございまして、そこに差等をつけるべきではないと存じておりますし、私は、国全体としてもそういう方向に、ヘルスに対するもっと大きな力を注いでいくべきであると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/146
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147・菅直人
○菅委員 ヘルスのことについては御意見はよくわかったのですけれども、国保の方の保険者としてという立場がもう一つあるわけです。先ほども言われたように、赤字が出ていれば保険料を上げるか一般会計から繰り入れるか、何らかの形でやらなければいけないという保険者としての立場を自治体は持っておられるわけです。その立場はもうなくてもいい、ヘルス事業はどうせ全住民について一緒にやるのであればそれはどっちにしてもやる、そうすれば国保の保険者としての立場は、国保の責任者としての立場は必ずしも自治体が持つ必要はないのじゃないかという議論もあるのですが、それについての御意見を最後に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/147
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148・永田正義
○永田参考人 私は、そこは財政的な問題も非常に絡んでまいりますし、今ある国の制度そのものは国保の保険者として最大限度に活用してまいりますし、それ以外の市民に対しましては、一般会計の中で現在大きなヘルス事業を推進しておるところでございます。そして、そこには矛盾はございませんし、それを調整しながら全体を進めていっているところでございまして、私は全国の地方公共団体もそういう方向に進むべきであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/148
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149・菅直人
○菅委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/149
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150・有馬元治
○有馬委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
次回は、明十日木曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104410X01219840509/150
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