1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十九年三月二十一日(水曜日)
午前九時三十三分開議
出席委員
委員長 瓦 力君
理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君
理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君
理事 伊藤 茂君 理事 野口 幸一君
理事 坂口 力君 理事 米沢 隆君
熊谷 弘君 笹山 登生君
椎名 素夫君 塩島 大君
田中 秀征君 中川 昭一君
平泉 渉君 平沼 赳夫君
藤井 勝志君 宮下 創平君
村上 茂利君 森 美秀君
山岡 謙蔵君 与謝野 馨君
川崎 寛治君 沢田 広君
渋沢 利久君 戸田 菊雄君
藤田 高敏君 堀 昌雄君
柴田 弘君 宮地 正介君
矢追 秀彦君 安倍 基雄君
玉置 一弥君 正森 成二君
簑輪 幸代君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
出席政府委員
大蔵政務次官 堀之内久男君
大蔵大臣官房総
務審議官 吉田 正輝君
大蔵大臣官房審
議官 大山 綱明君
大蔵大臣官房審
議官 行天 豊雄君
大蔵省主計局次
長 平澤 貞昭君
大蔵省主税局長 梅澤 節男君
大蔵省証券局長 佐藤 徹君
大蔵省国際金融
局次長 佐藤 光夫君
国税庁長官 水野 繁君
国税庁直税部長 渡辺 幸則君
国税庁間税部長 山本 昭市君
資源エネルギー
庁次長 川崎 弘君
資源エネルギー
庁石油部長 松尾 邦彦君
委員外の出席者
警察庁交通局交
通企画課長 広谷 干城君
経済企画庁調整
局財政金融課長 服藤 収君
環境庁自然保護
局施設整備課長 諏訪薗辰雄君
法務省刑事局刑
事課長 北島 敬介君
外務省中近東ア
フリカ局中近東
第二課長 渡辺 伸君
厚生省公衆衛生
局精神衛生課長 野村 瞭君
厚生省医務局指
導助成課長 柳沢健一郎君
農林水産省経済
局保険業務課長 原 昭夫君
農林水産省農蚕
園芸局畑作振興
課長 吉田 茂政君
食料庁管理部企
画課長 馬場久萬男君
大蔵委員会調査
室長 矢島錦一郎君
―――――――――――――
三月十四日
一兆円以上の大幅減税等に関する請願(池田克
也君紹介)(第九四一号)
ビールにかかる酒税の増税反対に関する請願
(安井吉典君紹介)(第九四二号)
酒税増税反対に関する請願(正木良明君紹介)
(第九四三号)
同(宮地正介君紹介)(第九四四号)
同(経塚幸夫君紹介)(第九七六号)
同(東中光雄君紹介)(第九七七号)
同(藤田スミ君紹介)(第九七八号)
同(正森成二君紹介)(第九七九号)
所得税の大幅減税等に関する請願(藤木洋子君
紹介)(第九七五号)
同月十五日
間接税の増税反対等に関する請願(東中光雄君
紹介)(第一〇三六号)
所得税の大幅減税等に関する請願(柴田睦夫君
紹介)(第一〇三七号)
同(簑輪幸代君紹介)(第一〇三八号)
ビールにかかる酒税の増税反対に関する請願
(阿部未喜男君紹介)(第一〇三九号)
同月十九日
所得税の大幅減税等に関する請願外四件(福岡
康夫君紹介)(第一一八六号)
同(上野建一君紹介)(第一二四〇号)
同(沢田広君紹介)(第一二四一号)
同(戸田菊雄君紹介)(第一二四二号)
申告納税制度改悪反対等に関する請願外一件
(渡部行雄君紹介)(第一二三九号)
酒税増税反対に関する請願(川崎寛治君紹介)
(第一二四三号)
同(沢田広君紹介)(第一二四四号)
同(戸田菊雄君紹介)(第一二四五号)
同(野口幸一君紹介)(第一二四六号)
同(和田貞夫君紹介)(第一二四七号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置
法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
六号)
石油税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
七号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/0
-
001・瓦力
○瓦委員長 これより会議を開きます。
酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/1
-
002・沢田広
○沢田委員 貴重な時間でありますし、また大臣も参議院の方へ行かれるようでありますから、大体大臣だけにお伺いをしながら進めさせていただきます。
第一は、今中曽根内閣の各大臣の発言を我々報道その他を通じて聞いておりますが、一方では不況であると言い、一方では景気は立ち直ったと言い、あるいは公共事業の前倒しは必要であると言い、あるいは後半必要であると言い、今度の円高で大丈夫だと言い、あるいは難しいと言い、いろいろと大臣によってニュアンスも違うし、内容が違う。これは国民に極めて迷惑至極な発言なんであります。どの派閥がどう言っているからということではないのでありまして、派閥次元でこういう問題はとらえるものでもない、また嫌がらせて言うべき性格のものでもないというふうにまず原則的に思うのですが、内閣として、もう少しこの景気の見通しというようなものについて、明確な統一見解というものはいつの時点で――まあそのときそのときに変わっているからと言えばそうかもしれませんけれども、内閣ではどういうふうにとらえておられるのか、まずその原点をお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/2
-
003・竹下登
○竹下国務大臣 今沢田さんがおっしゃいますように、いろいろな発言があたかも閣内不統一のごとき印象を与えるようなことは当然避けなければならぬことでございます。ただし、人それぞれでよくニュアンスの相違みたいなものは出てきがちなものでございます。
今例示的におっしゃいましたので、仮に景気問題一つに絞ってみるとするならば、我が国経済は、輸出や生産が増加しているほか、国内需要も堅調に推移しておって、景気は緩やかながら着実に回復の方向を歩んでおる。そうして五十九年度は、物価の安定を背景に、国内民間需要を中心として持続的な安定成長を達成する方向だということが、大ざっぱに言って最大公約数ではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/3
-
004・沢田広
○沢田委員 だとすれば、この配付していただきました景気の動向、この一月末を見ましても、対前年同月で見ますと、景気に影響があると思われる――源泉分、法人とかその他は、ある意味においては決算の時期が変わりますから、これは当てにならないにいたしましても、酒税にしても、あるいは取引税にしても、この前うんと少なかった印紙にしても、その他を見ましても、いわゆる景気に関係のある税目というものについてはおおむね一〇〇を超えておる。だからまさか、日銀総裁、きょうは呼んでおりませんけれども、公定歩合を下げるんだなんて議論も自民党の中には出ているようでありますが、これだけはいつうそを言ってもいいとは言いながら、より慎重でなければならぬというのが私の見解なんであります。でありますから、ここで景気景気という立場に立って公定歩合を下げるようなことをやれば、それは大変なことになってしまうんじゃないかという、私は危惧を持っている一人であります。
そういう意味において、今言われている公共事業の前倒し、若干雇用が厳しいことは私も指摘しなければならぬことでありますが、そういういろいろな、住宅が悪いとか雇用が悪いとか、そういうことの部分的なものはあるのでありますけれども、総体的に見た目として、今言ったような公定歩合を下げたり前倒しをあえて進めなければならぬ状況がどうかという点については疑問だと思っておるのでありますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/4
-
005・竹下登
○竹下国務大臣 まず一つの公定歩合下げの問題というのは、今沢田さんのおっしゃったような認識の議論はかなりございます。全体に、実勢金利も下がっておるし、金融自身は緩んでおる。だから、さらに追い打ちをかけなくてもいいじゃないか、こういう議論もありますし、一方、やっぱりマル公を下げる、円高がある程度定着すれば下げてもいいじゃないか、より景気を刺激するんじゃないか、こういう議論もございますが、いずれにせよ、この問題は日銀の専権事項でございますけれども、もう一つ私どもが申しておりますのは、公定歩合操作が行われる場合に、日本が公定歩合を下げれば幾らかでもまた円安傾向に戻るということになれば、円安を作為的に誘導しているんじゃないか、こういう国際世論は、割合我々としては敏感に絶えず考えておるところであります。だから沢田さんのような意見が非常に多い意見として、別に数字をもって世論調査したわけじゃございませんけれども、ございますことは事実であります。
それから二番目の公共事業前倒しの問題でございますが、これは厳密に言えば、予算委員会等で申しますならば、もうぼちぼち予算現額が何ぼになるか、雪が降って、契約しましても恐らくまだ支払いベースに行っていないところもございますでしょうし、そういうのが上期の下支えになれば結構あるじゃないか、こういう意見もございますが、この予算現額をとらまえる作業がまだ完全に終結しておりません。したがって、それを見るというのが一応建前になるわけでございます。が、一方、特に北海道等の、言ってみれば地域のばらつきが多いことに対する配慮はできないか、こういう議論もございますので、今のような国会の議論等を踏まえながら、予算が通った段階で執行に関する閣僚会議を開いて決める、こういう手順になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/5
-
006・沢田広
○沢田委員 一つ――一つじゃなくて二つ、三つありますが、この収入見込み額からいけば、酒税は今現在進捗七一%で、前年比一〇四・二%。大体酒税においては今年度相当増額になるのじゃないか、細かい数字の説明は大臣が帰った後でお伺いしますから。酒税も含めて総体的に収入は予算見込みよりもふえる。緩やかな景気の回復と言われた意味は、この収入になってはね返ってくるというふうに見てとれるのでありますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/6
-
007・竹下登
○竹下国務大臣 酒税に限らず、一つ言えることは、この補正予算で税収の減収を立てさせていただいておりますね。これは石油税が、要するに値下がりすれば、従価税でございますから、落ちたというような背景も大いにございます。したがって、私は、補正後をベースに置いた場合に、三月期の法人決算等の未確定要素がございますが、大きく増収が期待できるという状態にはないじゃないか。また、かなり減収になるということも言えない。これは基準も何にもないことですが、大蔵委員会の常習用語で「一%は誤差のうち」というようなことを言っておりますが、その辺までがせいぜい言えることかなと、今日の時点ではそういう感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/7
-
008・沢田広
○沢田委員 これは後でそれぞれ同僚からも言われますが、酒は実施時期を若干延ばしたらどうか、こういう意見も出ているわけであります。ですから、今年度の増収がある程度見込まれればそれにこしたことはないにしても、そこは政治ですから、やはり弾力的にある程度、もし何ならば無理に五月でなければならぬということでもないだろうというふうな我々の声もあるわけでありますが、これは増収だからすぐそれに天引きでいけという短絡的なものじゃなくて、総合的な判断に立ってそういう用意はないかどうか、あるいは今後の審議の状況の中でそういうことも考慮の一つにならないかどうか、その可能性だけお答えをいただきたい。今確言は要らないです、可能性について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/8
-
009・竹下登
○竹下国務大臣 我々政府側といたしましては、今度の減税財源というもの、いわゆる増減税チャラというものが念頭にございますので、減税の財源という認識を持った場合は、これはまさに、いかに見積もりとはいえ、最大限に私どもがお願いしておる実施時期というものを守っていただくことを心から期待をしておるというのが、私どもの考え方の基本であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/9
-
010・沢田広
○沢田委員 提案している原案について、今から予測をすることができないのは当事者としてよくわかることですから、そういう発言があったということを念頭に置いていただきたい、こういうふうに思います。
そこで、大臣は酒屋さんだそうですから、この前の酒の値上げのときは幹事長代行でおられたのかどうか、大蔵大臣だったんじゃないかという気がしているのですけれども、ちょっとそこはわかりません。特級酒と一級の区分けはもう外していいんじゃないかという堀先生の質問だと思いましたが、当時の速記録も用意してありますが、大体そういう段階に来ているというのが答弁であったと思うのであります。それが依然として変わらないでいるわけなんであります。特級と一級と二級、この分け方を普通酒と上級酒とか、そういう名称に変えても支障ないんではないか、こういう提言も実はあったわけです。これはある意味においては完全な酒種の変更でありますから、事務当局に聞いてもこれは何の返事も返ってこないだろうと思いますので、大臣から、この前の約束の一つとして、上級酒、普通酒あるいは一級、二級となるかどうかわかりませんが、その程度に範囲を狭めていいんじゃないのかという点についてはどのようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/10
-
011・竹下登
○竹下国務大臣 この前の税制、酒税は五十六年でございますから、ちょうど私が大蔵大臣を休憩しておるときで――休憩という表現はあれですが、大蔵大臣でないときでございます。
それで、私も業界の出身でございますけれども、こういう仕事になりましたので、私は今はたしか一千万円の資本の百万円の株主だというにすぎません。私事にわたって失礼ですが、実家は弟が継いでおりますが、考え方の中で二色にしたらいいじゃないか、その議論はございますけれども、長らく特級、一級、二級というようなものに物の考え方が定着しておりますので、にわかに変えてまたどれほどのメリットがあるものか。もっと基本的に、従量税じゃなく従価税にしろとか、いろいろな議論になれば別でございますけれども、私も今の場合、急速な変化なしに、今のような区分で現実的ではなかろうかなと思っております。私どものつくる酒は、仮に味の点で特級と認定していただきましても、二級におろさなければ売れもしませんし、現実、そういうくらいなところが、努力目標もできて至当なのかなと、まことにこれは私見でございますが、そんな考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/11
-
012・沢田広
○沢田委員 例えば内容的に見たらば、これは区分けをする要素があるのかどうかという質的なものが一つあります。それから、国民大衆の清酒に対する認識といいますか理解度、あるいは関心というもの、そういうものから特級、一級、二級と分けた方がいいのかどうかという選択があると思うのです。それからもう一つは税金の上、あるいは価格の上に立って特級、一級、二級、あるいは奢侈品というような立場から、高いものを飲みたいといった精神的な満足感、そういうものを与えるためにあえて特級を置く必要性があるかどうか。大体考える場合には、そういうところが特級、一級、二級を置く場合の要素だと思うのです。
内容的に見ますと、今の酒は、質的には今日それだけのものは持ってないと思うのです。これは後で事務当局とやります。しかも、売れている量そのものも、これはその前の年だと思いますけれども、全体が六百六十六万のときで、特級はそれの六万キロリッターということですからね。一級にすれば八十四万、それの一割に到達しない。二級が大体六十万ですから、これも大体一割にしか到達してない。そういうものをあえて置いておかなければならないかどうか、いわゆる国民的な消費の水準からいっても一応検討する段階に来ているのではないのか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/12
-
013・竹下登
○竹下国務大臣 御意見は私も感覚的には理解できる話でございますけれども、一つはやはり競争社会でございますから、滝野川の醸造試験所の技術が非常に進歩して、それが全国的に平準化して、どこの酒も余り味が違わないようになったという議論をする人もございますけれども、やはり昔からの企業でございますので、清酒の場合、いわゆる杜氏さんとか蔵人の方が技術の粋を研磨し合うというような点もございますだけに、常識的には今の方が妥当なのかな、こういう感じがしております。これは余り明確な答弁になりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/13
-
014・沢田広
○沢田委員 これは予約のなかった質問だからそうなったのだろうと思うのでありますが、例えば都道府県別に特級を使っている都市はどこが多いのかというのを見ますと、大阪が大体一万程度。東京あたりでも六千、愛知で四千、兵庫が六千、それから京都が五千。あと千単位でいっているのは、北海道と広島、福岡。あとは皆、百単位の消費量なんであります。要すれば、特殊な人たち、いわゆる富裕な人たちがより多く居住すると思われる地域、一般的に言ってそう表現できるのじゃないかと思うのですが、その方に特級の利用率が高い。地方の方へ行きますと、特級を飲む人なんというのは、岩手は二百六十一キロリッター程度。寒いところだから飲むだろうと思うとそうではない。山梨なんというのは七十二、これはワインがあるせいかどうかわかりませんが、七十二なんというのは全国最低であります。そういう状況ですから、これは無理に必要なものなのかどうか。石川県あたりは大勢大臣がおられるところでありますけれども、正確に言うと八百五十二キロリッター程度、千以下なんですね。
ですから、これはきょう突然になったのかもわかりませんから、この前の速記録との整合性、それから特級酒の存在意義、質的なもの、それから税制上あるいは政策上、そういうものをあわせてひとつお考えをいただいて、何らかの方向は、できればこの会期中に欲しいのですけれども、難しいものがあれば難しい理由を明らかにしていただきたい。もし可能性があるならばその可能性を追求して、その方がかえって酒税は上がるのじゃないのかという気が私はするわけです。
要すれば、特級は目のかたきですからね。我々は特級なんというのは毒だと思っていますから飲みません。飲まないとすると、特級を飲んでいるやつが世の中にいるのかと思うと、普通、二級を飲んでも一級を飲んでもおもしろくなくなってくるという気持ちはどうしてもありますよ、その上を飲んでいるやつがいるのかなと思いますと。そういう意味において、特級がこの程度ならば、飾りなのだから、置いておく意味が余りないのじゃないのか。何なら特級はウイスキーみたいに従価税にして、特別に金粉を入れたりして飲むようなものは従価税にしまして、別な形をとって売る。考えられるとすればそういう方法ではないのかという気がいたします。
最後に五分間余裕がありますけれども、向こうへ行く時間を含めて、これで終わりますから、どうぞ行ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/14
-
015・竹下登
○竹下国務大臣 ありがとうございます。
今までも勉強しております。そういう経過、いろいろな議論の過程、これは恐らく事務当局も、整理すれば沢田さんにお示しすることはできるんじゃないか。
従価税と従量税の問題、これはいつも議論になるところでございます。私事にわたっておかしな話でございますけれども、私が官房長官のときに大蔵省から出ておりました秘書官が、今米国の公使をしております内海君、この人に従価税の勉強を随分させられました。それから今の税制二課長が、私が前回大蔵大臣のときの秘書官。これにはまた従量税の勉強をさせてもらいました。従価と従量はどう違うかというのは、非常に下世話な話になって申しわけありませんが、おまえ百円酒買ってこい、こう言う者はいない。やはり一升買ってこいとか、それから酒を二百円飲むと言う者はいない。やはり一杯飲む。そうすると量なのかな、こういう程度の知識と理解とあえて申し上げて、次の委員会に参ります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/15
-
016・沢田広
○沢田委員 酒はまた後で戻りますけれども、来ていただいている関係者の都合もあると思いますので……。
先般、イランの毒ガスに遭って日本へ来られましたが、これも、政府は関知せずなんという態度をとっておられるようであります。これは赤十字の精神からいって、敵であろうと味方であろうと、やはり我が国の憲法の立場から見れば、いずれの国の人であろうと温かく見ていくということが必要だと思うのです。そこで、それが一般的に毒ガスと言われている兵器に該当する症状を持っているのかどうか、その点について調査をして報告をする意思はあるかどうかということを、まず厚生省にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/16
-
017・柳沢健一郎
○柳沢説明員 御質問の件でございますけれども、厚生省としては承知してないところでございます。これにつきましては、医療機関と患者の問題であるというふうに承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/17
-
018・沢田広
○沢田委員 だから、そこの部分は僕は言っているでしょう、それは調べて報告をする意思があるかどうか。あえて言うならば、その程度のことは、これから、いつか、どこかで我々もそういうことを考慮しなければならぬ場合もあり得るわけですから、そういう意味において、どういう程度のものであって、どういう内容のものであって、どういう症状であったか、それが本当にそういうものであったのかどうかという真偽ぐらい国会に報告する義務はあるでしょう、我々がこう要請しているのだもの。それは個人とあれだから全然じゃべれない、調べもできない、そんなことはどこから出てくるのだ。そういうのはないでしょう。それはやはり、最善の努力をして報告をいたしますというのが答弁の中身じゃないの。それはふてくされた答弁じゃないの。それとも、ほかに別な理由があるなら、別な理由を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/18
-
019・柳沢健一郎
○柳沢説明員 個々の患者の症状等公表するかどうかということにつきましては、主治医の判断によるべきものであろうと思いまして、厚生省といたしましてはそれについて関与するべきものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/19
-
020・沢田広
○沢田委員 それは努力することもできないのか。理事もいないからしょうがないけれども、こんな答弁では国会をなめているよ。しかも、毒ガスに遭ったのかもしれない。イランが悪いとかイラクが悪いとか、そんな問題じゃない。それがどういう程度のものによって起こった症状かを、国会で言えるのか、言えないのか、それを調べる努力をせいと言っている。最後になって言わない場合もあり得るかもしれない。しかし、努力もしないなんという、そんなことで時間だけつぶされてはたまったものではない。努力はしなさいよ。そして医者が、どういう法律を盾にとるかわからぬけれども、どうしても言えないというなら言えないでまた一つありますよ。そして、わかったけれどもこういう事情があるから言えない、これまた一つあるかもしれません。しかし、こういうことで非常に世界にいろいろな世論を起こし、問題を生じておるんですから、日本に来ておって、厚生省は全然知らぬふりです、高みの見物です、そんなのありますか。答弁、不見識ですよ。努力をしなさい、こう言っている。そして、わかればわかった範囲内において、それは必要の度合い、それから世界各国の状況もあるから、それらは判断して、できる限りの状況の判断の程度で報告することは当然じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/20
-
021・柳沢健一郎
○柳沢説明員 厚生省としては、これについて直接関与すべきものではないとは考えておりますけれども、先生の御質問の御趣旨を十分に検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/21
-
022・沢田広
○沢田委員 極めて消極的ですね。
それで、今厚生省はそう言っているけれども、外務省としての職務権限というか、職務管掌すべき事務の範囲内において、今の厚生省のような答弁をさせているのは外務省なのかな。外務省どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/22
-
023・渡辺伸
○渡辺説明員 私どもも、本件は人道的な理由から日本で治療を受けさせたいということで来たわけでございまして、政府としては直接的には関与すべきではないと考えております。
そもそも毒ガス使用の問題につきましては、事実関係の確認が非常に難しゅうございまして、例えば過去もアフガニスタンとかベトナムで使われたというような報道もございますけれども、結局事実関係ははっきりしなかった。したがいまして、私どもといたしましては、国際連合とかそういった中立的な国際機関が調査を行って、その結果について判断するというのが最も妥当なやり方ではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/23
-
024・沢田広
○沢田委員 毒ガスだと我々は指定していない。そういううわさがいっぱい飛んでいるんだから、赤十字という我々の立場も含めていわゆる調査をして、どういう病状であって、その原因が何であると考えられるかという程度のことは調べて報告してくれ、こう言っているわけです。何もそんな深入りした質問を私はしてないじゃないですか。極めて常識的なことですよ。例えば川崎病にしてみたって同じですよ。その程度の病状と内容について報告してくれということと同じですよ。それがなぜできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/24
-
025・渡辺伸
○渡辺説明員 ただいまの点につきましては、厚生省の方とも協議して対処させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/25
-
026・沢田広
○沢田委員 私は、特別に意地悪を言っているわけじゃない。せっかく――せっかくと言っては恐縮でありますけれども、そういう方が来ておられるから、そういう中身について、我々は世界に平和を訴える国民の一人として、そういうことが全世界に、悪いことであれば悪いように、あるいは病状がこういうことであればこういうことのように、原爆症と同じように、やはりその内容をもし知らしむることができるならば知らしめるし、そのことが世界の平和にプラスにならないとすれば、それは抑えるものは抑えることが必要でしょう。だけれども、そういう材料をつかむことまでは当然の義務として存在するのじゃないのか、あるいは必要性があるのじゃないかということを私は言っておくわけで、委員長からも後でひとつその点よしなに取り計らっていただきたい。お願いいたします。
続いて行きますが、厚生省と外務省はこれで終わります。お帰りいただいて結構です。
あちこち行くようで申しわけありませんが、呼んでいる範囲がそういうことになっておりますから、御勘弁をいただきたい。
経済企画庁は、大臣が行ってしまったわけでありますけれども、河本経済企画庁長官は、公共事業の前倒し、あるいは公定歩合の引き下げ、そういうことを、これは大臣でなければ答えられないのかもしれぬけれども、勝手と言っては悪いけれども、よく閣内で相談しないでそれぞれの大臣が言っていくということは、私はよくないことだと思っているわけであります。これはあなた方に聞いてもしょうがないのかな。しょうがないんだろうと思うけれども、沢田がそういうことはよくないことだと言っていたけれども、これは経済企画庁としては正しいんですというんなら正しい、これは考え直してみた方がいいと思うなら考え直してみた方がいい、どっちか答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/26
-
027・服藤収
○服藤説明員 大変難しい御質問と承りましたけれども、事務方といたしまして御答弁申し上げます。
まず、御質問の第一点の公共事業の前倒し執行の問題でございますが、これにつきましては現在の景況をどういうふうに把握するかによりまして対応の仕方が違ってくるわけでございますけれども、経済企画庁といたしましては、先ほどもございましたが、景気の現状は緩やかながらも着実に回復過程にあるととらえております。しかしながら地域によりましては、北海道など必ずしも順調でないところもあるわけでございまして、そういったところに配慮しながら公共事業の執行に弾力的に対処しなければいけないのではないかと考えているわけでございます。ただし、これは予算現額の計数の作業等もございまして、予算が成立いたしました段階で、そのやり方について政府部内で調整をして答えを出すということになっております。
それから、公定歩合の問題でございますけれども、申し上げるまでもなく、これは日銀の専管事項でございます。ただ一般論として申し上げますれば、日本経済は数年ぶりで順調な回復過程をたどっているわけで、経済の活力を十分に発揮させる絶好のチャンスととらえておりまして、この意味で金融政策に課せられた課題と申しますか役割も非常に大きいものがあろうかと思います。いずれにいたしましても、金融政策につきましては、今後の景況の推移等あるいは内外の経済情勢と金融情勢の推移等を見きわめながら、適宜適切かつ弾力的にと申しますか、運営していく必要があろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/27
-
028・沢田広
○沢田委員 対外債務も六千億ドルか八千億ドルくらいになる。アメリカは、幾らか景気がよくなったと言いながら、やはり高金利の状況にある。EC諸国の失業者、アメリカを含めて両方一千万、一千万の現状は変わっていない。そういう中で日本が公定歩合を下げていく要因はあると思うのか、ないと思うのか、そのどちらか、お答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/28
-
029・服藤収
○服藤説明員 お答えいたします。
最近公定歩合の話がクローズアップされてきました背景といたしまして、為替相場の動向が一つ大きな要素としてあるわけでございます。ただ、この為替相場の動向につきましては、ひところ二百二十円台まで行きましたけれども、また最近少し円安になってきております。したがって、その動き等をさらに見きわめる必要があろうかと思います。そういったことを見きわめた上で、しかるべき情勢が生まれた段階で、日銀の方において判断すべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/29
-
030・沢田広
○沢田委員 それはまあいい。それはあなたに聞いてもしょうがない。
農林省、ビールの使用量は非常にふえてきているわけでありますが、世界から比べると相当まだ低い水準にあることは事実である。私は、この前の農業共済のときの、政令でホップを農業共済の災害対象として含めた理由を実は聞きたいわけですが、時間がないから、そこは省略しちゃいます。
それで、いままでに農業共済でホップについて支払った金額は、過去二年で総額幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/30
-
031・原昭夫
○原説明員 お答えいたします。
五十六年産で支払いましたのは八億一千四百万、五十七年度が五億八千万、五十八年度は六千七百万でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/31
-
032・沢田広
○沢田委員 それで、これは言うならば各ビール会社と契約栽培をしている。ビール会社は経常収益は極めて高い。たばこの方は専売局で損害補てんをしている。この契約栽培であるホップについては、なぜ政府が補償をするのか、簡単に理由を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/32
-
033・原昭夫
○原説明員 たばこにつきましては、従来からたばこ専売法によります補償制度がございまして、私どもも一応検討したことはございますけれども、そちらの方でやるということで、たばこ耕作組合等の方で話を決めましたので、私どもも手を出さないことにいたしておりますが、ホップにつきましては、かなり経営規模も大きいということで、特に農業団体等を通じて早期にやってくれということ、さらには衆参両院の農林水産委員会の農業災害補償法の法案審議を通じまして、附帯決議等で早期に実施してほしいということがございまして、我々準備を進めまして五十六年から実施したということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/33
-
034・沢田広
○沢田委員 これは縦割り行政の一つの欠陥なんであります。だから農業共済では、馬が特別下げてようやく五割になりましたが、馬刺し、馬肉もありますけれども、馬と豚が一緒になったり、前は競馬馬だけに補償率が高かったというような感じもあったのでありますが、果たしてそれが農林行政なのかななんて考えさせられたのですが、今の話もどうも縦割り行政のエゴが出ているような気がしますね。
だから、この八億、五億、六千七百万は、何も農民全体の負担と政府の負担で賄っていくべき性格ばかりでなく、業界も当然負担をしてしかるべき性格のものではないのか、こういうふうに思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/34
-
035・原昭夫
○原説明員 私どもの農業共済で対象にしております畑作物にも契約栽培的な作物が幾つかございますが、それらにつきましても、一応そういった業界からの補助ということではなくて、私どもの対応として共済で実施しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/35
-
036・沢田広
○沢田委員 だけれども、わざわざあそこの政令で特別の対象に入れているのはホップだけなんですね。その他の作物は入ってない。ホップだけ入れてあるということは、ビール会社に寄与するということもあるし、農民を助けるということもあるだろうと思う。だとすれば、農林がせっかくつくった法律だから、それはそれで一応考えてもいい、そのかわり、それだったら税金の方を上げる。どっちかしなければバランスがとれないと思う。そうでしょう、理屈の上で。国の税金と農民の負担で賄っていって、ビール会社は、契約しておるけれども、一銭も損をしないんだから、税金をその分だけ高くするか、納付金を特別に取るか、あるいは五億、八億の分を特別に納入してもらうか、さもなければ契約栽培だから、この契約内容は後で調べようと思っているのですが、その契約なんというのには必ず災害のときの補償が当然ついているはずですよ。それはほかの人に、国民全体に、農民に任じておいて、おれは知らないよ、災害が起きたら輸入で間に合わしちゃうよというこの姿勢を許しておくというのは、少しおかしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/36
-
037・吉田茂政
○吉田説明員 私は、ホップ生産農家の生産振興を担当している者でございますが、ホップ契約の内容について申し上げますと、ホップの生産面積、それから予定される生産量、さらに価格をどういうふうに決めていくかというようなことが契約の内容に書いてこざいまして、特に災害が起こった場合の補償については、今のところうたっておりません。
しかしながら、五十六年以前に、共済ができる前でございますけれども、災害が起きた場合には、私どもとしてどういう指導をビール会社にしてきたかということでございますけれども、災害が起こりました場合、御承知のようにホップは非常に高く伸びる作物でございますので、ホップ棚というものがございますが、それが災害によりまして壊れることがよくございます。その復旧についての復旧費に対する助成という形でビール会社の方から出させておるということでございまして、特に作物の被害に対する補償といったものは、契約の中には入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/37
-
038・沢田広
○沢田委員 ホップを農業共済で補てんをしていくことは、ビール会社の過保護に当たることにもなりかねない。だから、適正な措置というものが今求められるのではないのかというのが私の主張です。損害の方は全部国が――国がというか、補てんをします、契約当事者は何らの損害も受けません、そして、よくできたときにはうんともうける、こういう仕組みであったのでは少しおかしいのではないか。だから、せめて二分の一は会社で持つとか、専売にだんだん近づけるような改革が必要になってきているんだううと思うのです。
もう時間がないので、今の答弁では私は了解しがたいのだけれども、結論的には検討材料として、たばこなんかと並べて、契約栽培の内容、あるいはビール会社の義務、生産者の立場、こういうものを縦割りだけではなくて、大蔵なりその他酒税の方の関係も含めて総合的に検討していただくかどうか。これはビールの税金を取る大蔵と、つくる農林と両方から一言ずつ、検討してくれるかどうかお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/38
-
039・原昭夫
○原説明員 先生の今の御意見は私どもも十分理解いたしまして、さらに関係者とも話し合ってみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/39
-
040・山本昭市
○山本(昭)政府委員 ビール会社に対します産業行政の所管庁として申し上げます。
仕組みの問題は今まで農林省のお答えのとおりでございますが、そのバックグラウンドをちょっと申し上げさせていただきますと、ビール企業は日本のホップの全量買い付けをいたしておりまして、足らぬ部分を輸入いたしておるのでございます。その輸入をいたします価格が国内産の半額で間に合う、こういう価格でございまして、国産品の買い付けをすることによります年間の負担額というのが二十億円に達しております。そういった問題がいろいろございますものですから、その辺、税負担の問題もございますし、いろいろな要素をかみ合わせながら、農林省御当局ともいろいろ御相談してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/40
-
041・沢田広
○沢田委員 若干不満だけれども、しょうがない、次へ行きましょう。
参考に――参考にというのは、次から質問するものに参考になるわけですが、せっかくつくった第二の土曜日の休日に当たって、自動支払い機の進捗の程度が悪いために第二土曜日の自動支払い機の利用率が上がらない。こういうことで、銀行局としては大体いつごろまでに全体を整備をする考え方なのか、あるいは見切り発車をする意思はあるのかどうか、その点だけひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/41
-
042・行天豊雄
○行天政府委員 お答え申し上げます。
金融機関の週休二日制の問題は、御高承のとおり非常に長い時間をかけまして、関係者の御努力の結果、昨年八月から実施されておるわけでございますが、その際、御指摘のとおり、金融機関のいろいろな業態で、現金支払い機等、機械の装備率が大変違っておったものでございますから、当時何とかこの歴史的な事業とも申せます週休二日制の実現を図ろうということで、当初各金融機関すべて一斉に土曜休日の場合も機械は停止するということで発足をしたわけでございます。
ただ、先生御指摘のとおり、確かに利用者の側から見ますと、土曜日に機械が動いた方が便利ではないかという考え方もあろうかと思いますし、他面、何とか金融機関の週休二日制をできるだけ早く定着し、さらにこれを将来一層発展さしていくことが、勤労者の労働条件改善のために非常に大事であるという、多少相反する問題もあろうかと思うわけでございます。
実はこの問題につきまして、労働省が中心になり、関係各省が集まりまして、今後どういう条件整備を行いながら、土曜の休日における機械の稼働の問題に対処していこうかという相談をしようということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/42
-
043・沢田広
○沢田委員 時間の関係がありますから要望だけしておきますが、現在、信金の実施で七四%、情けないと思うのですが労金が一五%、信組が八・七%、農協が六・四%、このままでいくとこの自動支払い機の使える時期というのはなかなか来ない。言うならば一種のサボタージュだとまでは言わないけれども、一般の住民の方の立場から見れば、やはり人がいなくとも済むものは使いたいという気持ちがあると思うのであります。この前、特に連休の場合の土曜日があったから、余計そういう声があるのだろうと思うのであります。
私がなぜこういうことを言うのかというと、いわゆるUターンを起こしてはいかぬ、これで迷惑だから土曜日に店を開いてもらわなくちゃ困るというような形になっては困るので、信金、労金、信組、農協にそれぞれもう少し充実するように指導をして、ある一定の年限後においては自動発車をさせる、いわゆる見切り発車をさせる、こういうことをきちんと宣言をしないと、これはいつになっても眠ったままになってしまうおそれがある。特に銀行局の指導をその意味において私は要望しておくわけであります。それについてお答えをいただきたい。このままでいったら百年河清を待つがごとき状況以外の何物でもない。だから、向こう三年以内には少なくとも努力をしてみなさい、三年後にはCDは使えるように発車をいたします、そのくらいの決め方をしなければ、これは住民にもサービスにならないし、せっかくの第二土曜日の休みが生きたものにはなっていかない、こういうことにもなるので、その辺は関連してひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/43
-
044・行天豊雄
○行天政府委員 確かに、各金融機関の業態におきまして機械の装備率がかなり大きく違っておることは、御指摘のとおりでございます。ただ、私ども承知しております限りでも、それぞれの金融機関、これはコストの問題等いろいろあるわけでございますが……(沢田委員「結論だけ言ってください」と呼ぶ)
御質問の点につきましては、私ども、先ほど申しましたように、労働省を中心にいたしまして、御指摘のような話も含めまして今後協議してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/44
-
045・沢田広
○沢田委員 時間がありませんが、大沢商会とマミヤ光機の問題で、この間分科会でも若干やりましたが、時間がないので終わらなかった。メーンバンクを持たなければこうなるのかどうかということが一つ。
そして、この今日の大沢商会の持っていた総借り入れ四百四十七億、その資産状況は八百三十二億ぐらいの総資産、そういうものから関連して千百億ぐらいの赤字で、急にこの半年の間に大赤字になって倒産をするという事態になったことについては、私も幾らか企業に関係している者として、あり得べき状態ではない、言うならばつくられたものだというふうにしか考えられないのであります。
そういう意味において、銀行局はその点に対する調査をしてもらえるかどうか。管財人ができて会社更生法が適用されているわけでありますが、そういう状況の中で、銀行局そのものだけの限界でも結構でありますが、一応調査をした後で御報告いただけるかどうか、その点だけきょうはお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/45
-
046・行天豊雄
○行天政府委員 個々の金融機関の貸し出しの内容につきましては御勘弁いただきたいと思うわけでございます。
ただ、私ども、この大口倒産につきましては大変憂慮しておりまして、既に本件につきましては全銀協、相互銀行協会、信用金庫協会、それぞれの協会を通じまして、今後こういったことに触発されて健全な中小企業まで経営に破綻を来すようなことがないよう、十分配慮するよう指導しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/46
-
047・沢田広
○沢田委員 内容は控えさしてくれなんと言ったって、こういうふうにみんな出ているんですよ。どこの本でも出ている、大沢商会がどこから幾ら借りているかということも。四百四十七億、割引が百億あるんですが、その中のメーンバンクというのはないところに問題があるというふうに言われているわけです。一昨年、五十六年十二月の決算が四百五億なんです。次は四百四十七億で四十億しかふえてない。一割。それが急にふえた。それぞれ内容が全部すっと書いてある。そんな未発表にしなければならぬなんというものになっていない。ちゃんと市販している。そういうものを、どうして答弁でも、そういうものは未発表ですなんということを言うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/47
-
048・行天豊雄
○行天政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、金融機関側からどこの企業に幾ら貸しておるかというような数字につきましては、申しわけございませんが、これは個々の取引の話でございますので御勘弁願いたいというふうに申し上げたわけでございます。企業サイドの問題につきましては、必要な資料は有価証券報告書等、開示すべきものは開示されておるというふうに了解されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/48
-
049・沢田広
○沢田委員 時間がなくなってきたのだけれども、大体そういう答弁はけしからぬね。ごまかせればごまかして通ろうという、こっちが持っていたからあと言えなくなっただけの話で、時間があればこれは全部言ってやるんですよ。三井系で幾ら、三菱系で幾ら、芙蓉系で幾ら、三和系で幾ら、一勧系で幾ら、あと東海、大和、協和、埼玉、拓銀、東京さらに兵庫、日本生命、千葉、十八、皆書いてあるんですよ。だから、私は姿勢の問題で今言っている。そういう出ているものを隠していこうという銀行局の発想に問題がある。
今私が聞きたいことは、もう時間がなくなったからあれだけれども、メーンバンクを持たなければ、こういうような状況の会社でも倒産をするという日本の資本主義社会の仕組みなのか、それともこれは特殊な理由があったのか、そういう点を明確に大蔵に聞きたいというのが私の質問の視点なんだ。だから、その点については調査をして報告をしてほしいというのが最後の私の言い分なんです。イエスかノーかだけ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/49
-
050・行天豊雄
○行天政府委員 メーンバンクの問題は、従来私どもが申し上げたとおり、個々の金融機関の貸し付けについては残念ながら申し上げるわけにはまいりませんけれども、既に先生も御承知のとおり、会社の方はいろいろな形で資料を公開しておりますので、それでもって御了承いただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/50
-
051・沢田広
○沢田委員 日本のどういう大きな企業でも、いわゆるメーンバンクを持たなければこういう事態になるのか、偶然なのかそれとも必然なのか、その点の根拠だけ銀行行政の一環として調べてほしい、こう言っているわけです。これはもう答弁要らない。あんただってもう中学生じゃないのだから、言っている意味ぐらいはきちんと答えてくださいよ。私の言っている意味は、そういう点を銀行行政としてどうとらえているのかということ。その個々の問題を言っているわけじゃないので、その点は何回も同じことを答えられても困っちゃう。
それから次に、法務省においでいただいておりますが、酒税が上がりました。我が日本は大体泥棒天国であると同時に酔っぱらい天国である、こういうふうに言われているのが今日の現状であります。酒と犯罪の関係でお伺いをしたいわけであります。
税金が上がって、酒を飲む量がふえるのか少なくなるのか、これはわかりませんけれども、判決の例を見ると、いわゆる酒と犯罪との関係は、よりこれから検討しなければならないものなのではないかということが一つ。
それから、警察行政の酒気帯び運転、酔っぱらい運転と一般の酒を飲んだ場合における犯罪との相関関係。いろいろな材料は挙げませんけれども、こういうものについて今後検討する課題になってきているのではないかと思いますが、いかがですか。そのお答えを聞いて、時間でありますから、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/51
-
052・北島敬介
○北島説明員 御質問の、酒と犯罪という非常に広範囲なことでございまして、お答えは難しいのでございますが、例えば道路交通法違反ということで酒酔い、酒気帯び運転が禁止されておる、処罰される。これはもちろん御案内のとおり、道路交通の危険を防ぐということから、酒を飲んで運転するということの危険性に着目した規定であろうと思います。したがいまして、酒を飲むこと自体が犯罪につながるかどうかということは、また別の問題になろうかと思います。その他、例えば道路交通法自体におきましても、歩行者が酒を飲んで泥酔して交通に著しく危険を及ぼすというふうな場合には、歩行者自体も処罰されるという規定もございます。それから、その他の特別法で、酒に酔って公衆に著しく迷惑をかけるというふうな特定の行為が処罰される場合もございます。
そういうこととの関連で、酒税を課するということとどういう矛盾があるかというお尋ねのようでございますけれども、私どもとしては、それぞれ処罰する法律規定はそれなりの合理性があるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/52
-
053・沢田広
○沢田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/53
-
054・瓦力
○瓦委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/54
-
055・川崎寛治
○川崎委員 久しぶりに質問をやるのですが、残念ながら大蔵大臣がいないというのは大変調子が悪いですね。しかし、大蔵委員会の審議のあり方だということではしょうがない、こういうことですから、権威のある堀之内次官の臨検でもありますし、出席のもとに、いささか質問をしたいと思います。政策課題に関しまするいろいろな問題は、また後ほど竹下大蔵大臣が見えましたときに少し突っ込んでいたしたい、こういうふうに思います。
そこで、まず酒税の問題で少しお尋ねをいたしますが、今回の引き上げを見ますと、一番上がったのがしょうちゅうですね。甲が三四・四、それから乙が二四・四、ウイスキーの二級が二九・七、こういうぐあいにいわゆる大衆酒、我が鹿児島では民衆の酒と言うのでありますが、そこが上がっておる。そこで、この議論は、所得の平準化という議論で先般渋沢委員もいろいろと質問をいたしておりますが、その所得の平準化の問題は後ほど竹下さんがお見えのときに改めて詰めますから、今はこれはお答えは要りません。そこで、そういう大衆酒が上げられておるのでありますが、清酒、一級が一四%、二級が一四・八%、こういうぐあいで、大変不公平な措置がなされようとしておるわけです。このことを踏まえながら、私は問題を少し詰めていきたい、こういうふうに思います。
そこでお尋ねをいたしますが、しょうちゅうの甲と乙はどういう基準でお決めになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/55
-
056・梅澤節男
○梅澤政府委員 しょうちゅうの品目で甲類と乙類があるわけでございますが、これの区別の根拠でございますか、今の御質問は……(川崎委員「なぜ甲、なぜ乙にしたか」と呼ぶ)このしょうちゅうの甲類、乙類、これは沿革的に見ますると、昭和十五年の酒税法のときに、当時は造石税でございましたが、甲と乙という分類ができたわけでございます。その分類の根拠は今と同じでございまして、連続蒸留式による蒸留とその他のものという区別でございます。十九年に一たん税率が統一されましたときにこの区別はなくなったわけでございますけれども、戦後、二十四年にまた差等税率が復活いたしまして、現在その分類がそのまま踏襲されておる、沿革的にはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/56
-
057・川崎寛治
○川崎委員 要するに原料アルコールに砂糖や酒石酸やクエン酸、そういうものを入れて水で薄めたものが甲、本格しょうちゅうが乙ですね。普通、甲乙と言ったときには、甲がよくて乙が悪いわけです。そうすると、本物のしょうちゅうが乙で、水をまぜたにせもの、にせものと言ったら悪いけれども、薄めたものが甲、なぜこういう甲乙を決めたか、そこを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/57
-
058・梅澤節男
○梅澤政府委員 分類の沿革は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、なぜ甲と乙というふうになったかということでございますが、これは推測といいますよりも、恐らくこういう経緯だろうと思います。つまり、差等税率を設けたときにこの分類ができているわけでございまして、税率の高いものを甲、それ以外のものを乙というふうに区別したということでございまして、甲と乙でしょうちゅうの品質の差異を表示しておるということではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/58
-
059・川崎寛治
○川崎委員 それは当然のことでしょうが、本格しょうちゅうという、「本格」という名前をつけることについても大変いろいろと抵抗があったと聞いておるわけです。そうしますと、特に最近は甲乙の甲は、といういろいろな問題が出ておりますから、それだけにこの議論は、ただ単に税率の問題という以上に、税金をうんと取れるから甲、よろしい、少ない、低いから乙、こういう分け方は大変よくない、こういうふうに思います。
次には、今ようやくしょうちゅう、特に乙に日が当たってきたわけです。そういたしますと、地域的に見て、しょうちゅうというのは非常な地域性があるわけです。この国税庁からもらいました資料を見ますと、全国で甲が百十九、乙が八百二十六、それだけ乙の方が非常に零細だということが出るわけでありますね。そうして特に、その乙のうち鹿児島が百三十九、宮崎が七十四、次官のところですね、それから沖縄が五十一、こういうぐあいに南九州に非常に偏っておるわけです。
そういたしますと、このようやく日が当たってきたしょうちゅうというものに対して、今回大変高い税率を掛けてきておる、一級酒、二級酒などからいたしますと大変高い税率を掛けてきておるということは不当だ、こういうふうに思うわけです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/59
-
060・梅澤節男
○梅澤政府委員 五十九年度の税制改正におきまして酒税の税率の引き上げをお願いしておるわけでございますが、それの一つのポイントといたしまして、酒類間の負担の格差を縮小するという観点から、従来低負担酒とされましたものの負担を相対的に高くさせていただく。その一環といたしまして、御指摘のようにしょうちゅうの乙類につきまして、過去の累次にわたります酒税の引き上げの場合とはいささか異なりまして、相当程度の引き上げをお願いしておることは事実でございます。これは、所得の平準化の議論は後でということでございますので、その議論は申し上げませんけれども、基本的にはやはり従来の高級酒、大衆酒という区別、今日の時点でそういう観点から酒税の負担の問題を取り上げるというのは大変問題であるという観点もございます。
いずれにいたしましても、今回の税率の引き上げをお願いをいたしておるわけでございますけれども、ただ、小売価格に還元いたしますと、税負担といたしましては二五%弱でございますから相当程度の引き上げでございますけれども、小売価格の上昇率は一・七%ということで、各酒類間でも、小売価格に反映される度合いは今回も一番小さいということでもございますし、過去十年間の課税数量の伸びといいますか、消費量の伸びを見ますると、これは委員の観点とは若干異にするかもわかりませんが、全酒類の伸び率に比べますと、しょうちゅう乙類の伸びは格段にふえておるわけでございますし、家計調査なんかで私どもが分析いたしましても、しょうちゅう乙類は過去十数年の間にやはり各分位の所得の間での消費のされ方が非常に平準化してきておるというような傾向もございます。
そういったことも考慮に入れまして、今回の引き上げをお願いしておるわけでございます。いろいろ御指摘の点もあろうかと思いますが、そういった点含めまして、何とぞ御理解を賜りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/60
-
061・川崎寛治
○川崎委員 乙が非常に伸びていると言いながらも、実際には決して乙の工場全体が安定した方向に来ておるということは言えないわけです。例えば鹿児島を見ますと、百三十九者ございます。国税庁の資料では百三十九になっておりますが、このうち稼働しておるのは七、八〇%で、やはり非常に零細でありますために、また原料の関係その他で経営が必ずしもよくないわけです。
そういたしますと、最近のように甲と乙の混和が非常にふえておる、そういう中で乙類が打撃を受ける面も非常に出てきておるわけでありますが、この甲、乙の混和を避けてほしい、あるいは甲、乙混和はやめてほしい、こういう意向も大変強いわけです。これは酒税法第三条の問題とも絡むわけでありますが、この点については甲、乙混和を厳しくするという方向で指導をすべきだと思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/61
-
062・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
甲、乙混和は法律で認められておりまして、かつ甲のメーカーが比較的大規模な業者が多いということで、そういう点からの先生の御心配かと思うわけでございます。しかしながら、甲、乙混和の歴史を顧みますと、明治から、非常に古くから混和が行われておりまして、また片や、甲業者のみが乙の混和を行うということではございませんで、やはり一部乙の業者も甲の混和をしておるというふうな実態もあるわけでございます。そういう見地からいたしまして、大変ごもっともな御指摘でございますが、やはり今後いろいろ考えるべき問題があろうかと思いますので、そういった点をとりあえずこの際御報告を申し上げておきたいと思います。そういう非常に難しい問題があるということにつきまして、この際御報告を申し上げておきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/62
-
063・川崎寛治
○川崎委員 そこで、難しいということでありますが、次にはこれは法案として出されてまいっておりますが、中小の清酒の転廃業を支えようということで、第四次の計画がなされるわけであります。しかし、今言いましたように、しょうちゅうの方も、零細な企業があって大変苦しいわけですね。そういたしますと、清酒と同じようにしょうちゅうの転廃業という場合にも、当然面倒を見るべきだ。つまり税率を非常に上げて、先ほど主税局長の答弁によりますと、非常に伸びてきておると言いながら、一方では非常に苦しい経営の問題もあるわけでありますから、そういたしますと、税の面における負担をかけるというのであれば、厳しい経営の問題に対しては転廃業の面倒を見ていくということが当然だ、こういうふうに思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/63
-
064・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
確かにしょうちゅう乙の業者が苦しいという実態はございまして、百キロ以下の製成の蔵が四七・三%、この数字は清酒が三三・三でございまして、それよりも多い。そしてまた上位の十者で五三・六%という製成量を占めてしまう。残りを多くの業者が負担している、分け合っているということでございまして、先生おっしゃいますとおり、なかなか苦しい環境にあることは事実でございます。
ただ、もう一つの面をとってみますと、需要が非常に伸びてきておりまして、五十二年度から比べまして五十七年度は五一%増の十三万六千キロリッターまで伸びてきておるというような実情もございます。そしてまた、赤字企業の割合でございますが、しょうちゅう専業の方の赤字割合が一九・九でございまして、この数字は同じ清酒で比べますと三五・二でございます。そういうことに支えられまして、やはり何とかかんとか清酒よりは頑張っていられるのではないかという感じがいたしておるわけでございます。
お尋ねの近代化事業につきましては、昭和四十年度から四十四年度にかけまして一度行ったことがございます。その後業界からは、こういうものをやりたいという御希望が実はないわけでございます。この近代化事業は、業界の盛り上がるそういう動きに対しまして私ども行政で受けとめていく、こういうスタンスでございまして、仮にそういうことでございますれば、私どもはいつにても受けとめるような状況にあるわけでございますが、現時点では今申し上げましたような事情もございまして、業界の中ではそういう近代化をやりたいという御要望はないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/64
-
065・川崎寛治
○川崎委員 業界からないといいますか、これは前のときは協業化のときだけ見るということだったと思うのです。しかし、それはやはり業界のいろいろの実情がございまして、なかなか協業化だけということでは要求も出てこないという問題があるわけです。しかし、実際には転廃業の問題、つまり転業する、廃業する、そういう問題については要求は強いわけでありますから、要求が出てまいりましたらひとつ十分に検討してほしい、こういうことを要請をいたしておきたいと思います。
そこで次に、清酒の方が大変厳しいという実情も今お答えがあったわけでありますが、そのしょうちゅうの免許の問題についてお尋ねをいたしますが、これは税務署長の権限だと思いますね。そこで、しょうちゅうがブームだ、大変伸びておる、こういう指摘をされておるわけでありますけれども、それなら清酒の諸君が転廃業というか、やるときにしょうちゅうに入ってくる、つまり、しょうちゅうというよりも乙類に参入するという問題も出てくるんじゃないかと思うのです。それを税務署長の権限ということでやりますならば、私はこれは大変大きな混乱が出てくる、こう思います。せっかく日の目を見て、例えば今まではホワイトリカーなどという無色のものがいいとか、無味がいいとかということであったけれども、最折では乙類が伸びてきておる。そういう中で混和が出てきておるわけですね。そういう中で乙類への参入というのを認めますと、非常に脆弱な基盤であるということはあなたが今お認めのとおりで、脆弱な基盤の乙類しょうちゅうに清酒業界が入ってくるということは、私はやはり許しちゃいかぬと思うのです。ですからその点は、乙類への参入を認めないということについては、当然税務署長に対する行政指導を行うべきである、こういうふうに思いますが、いかがですか。これは本当は大臣もおってきちっとしておきたい問題なんです。後ほどまた竹下さんにも一応きちっとしてもらいますけれども、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/65
-
066・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
先生おっしゃいますとおり、しょうちゅう免許は、制度上は税務署長でございますが、非常に重要な話でございますので、国税庁の基本通達というのがございまして、各酒類ごとに、いかなる場合に免許を付与するかということにつきまして明記いたしております。
ただいまお尋ねのしょうちゅう乙類の中で、実は二通りございまして、南九州地区で非常に多くつくられております芋、米あるいは麦といったものを原料といたしますいわゆる本格しょうちゅうといわれるグループと、それからもう一つは、清酒製造業者の製造過程でできます酒かすを原料にいたしまして、これで原料の効率的な利用という見地から認めておりますカストリしょうちゅうというのがございまして、先生の御心配の点は前者だろうかと思うわけでございますが、前者の製造免許につきましては、当分の間、これを原則として認めないということになっておりまして、現実にそういうものを認めている例もございません。
ただ、もう一つ申し上げましたカストリしょうちゅうにつきましては、やはりそういう酒造業者の経営の健全性という見地からも、あるいは資源の効率的運用という面からいたしましても、これは若干例はございますけれども、そういったものをやはり主産地であります南九州地区への波及を避けるというようなことにつきまして十二分に注意をしながら、免許の運用は行わせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/66
-
067・川崎寛治
○川崎委員 今のその点は厳密な指導を継続してほしい、こういうふうに思います。
そこで、次にこうじ用の原料米の問題について食糧庁にお尋ねをしたいと思います。
しょうちゅう甲と乙を見ました場合に、原料面で、しょうちゅう甲というのは外国から輸入した自由に手に入る原料、乙の場合には、こうじ用の米にしましても食管の中にあるわけですね。そういたしますと大変ハンディを背負っているわけです。そこで、当分の間、しょうちゅう乙類の原料米の価格について試験価格、こういうことで古々米の五十一年産米が支給されていたわけですね。これは五十九年、ことしで終わるというふうに聞いておりますが、五十九年度に終わると六十年度、来年度以降の問題が深刻になってきます。しかも、主税局長も言っておりますように、非常に売れ行きがよくなったから税金はうんとかぶってもらいましょう、こういって民衆の酒に税金をうんとかけてくるわけですね。ところが一方では、今言うように原料米はことしで切れる、こういうことになりますと大変深刻な問題になるわけです。そこで六十年度以降の原料米について、特別価格で支給を継続してもらうということについて新たな検討、新たな措置が必要だ、こういうふうに私は思います。その点についての食糧庁の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/67
-
068・馬場久萬男
○馬場説明員 お答え申し上げます。
先生おっしゃいますように、しょうちゅう乙への私どもの原料米の供給でございますが、五十九年までは過去の過剰米の処理の一環としまして、本来主食用で政府が買いましたお米を安い価格で供給するということでやってきております。特に今のお話の試験用売却と申しますのは、過剰米の中でも五十一年産以前のお米を、政府としても処分をしなければならない、また、業界の方からも安いお米が欲しい、こういう両方の要請がいまして五十七年から、それまでの過剰米で消費しております数量を超える部分について特に安く処分をするということで、業界の方にお渡ししておったものでございます。ところが、この過剰米の処理計画というのは五十四年から五年間ということで計画的に進めておりまして、これが会計年度で言いますと五十八年度で終わるわけでございます。物としましても、本年中に大体なくなってしまうということになるわけでございます。そうしますと、政府としては過剰米処理として処理してきたお米がなくなってしまいますから、今後直接政府から安いお米を出すというものはないわけでございます。
私どもとしましては、それにかわるもの、これはしょうちゅうの業界だけでございませんで、みそとかせんべいとか、幾つかそういう過剰米の処理の対象にしてきている業界がございますが、そういうところから、今後とも安い原料をぜひ継続してくれという御要請も強うございますし、また一方、生産者の方では、今回水田利用再編第三期対策というのがございますが、そこの中におきまして、お米の過剰ということで転作をお願いしているのですけれども、地域によっては転作が非常に難しい地域もある、水田を遊ばしておくというのはやはりもったいないということで、加工原材料用のお米を、安くてもいいからつくってみたいという声も上がってきておるわけでございます。そういうことで、今回水田利用再編対策の中で加工原材料用のお米を特別転作面積の中で転作作物と同じような扱いでつくるということ、これは安いお米ですから政府が強制するわけにいきませんので、生産者と実需者との話し合いで、自主的な契約でつくっていこうという動きになってきております。政府といたしましても、全く自主的に任せるというわけにいきませんので、これに対して助成をするということで促進するわけでございますが、その中で、今まで過剰米の処理の対象として、原料用として供給してきた数量については何とか確保していきたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/68
-
069・川崎寛治
○川崎委員 試験価格はトン当たり八万三千五百円でしたね。そうしますと、今の検討したいというやつは何ぼになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/69
-
070・馬場久萬男
○馬場説明員 おっしゃるように、試験価格は、五十一年産米以前のものということで非常に古い、品質的にも劣化しているということで、安い価格で提供しておりますが、今後この他用途利用米という形でできますのは新しいお米でございます。価格につきましては、基本的には生産者団体と実需者団体とで話し合いをして決めるということになっておりますが、従来の加工原料用一般の価格水準からいいますと、原料米で大体トン当たり十二万、精米の価格でいいますと十四万三千五、六百円になろうかと思いますが、そのくらいの水準になるのではなかろうか。これはしかし当事者のお話し合いでございますので、まだ価格が決まっているわけではございません。大体そんな水準かなというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/70
-
071・川崎寛治
○川崎委員 その十四万と八万三千というのは大分開きがあるわけですね。だから、この点については、一方では税金をうんとかけようというのですから、大蔵大臣がおらなきゃそこの議論にならぬわけで、食糧庁と大蔵省とがそれぞれ守備範囲が違うというのでかみ合わぬわけですから、ぐあいが悪いのですよ。国務大臣がおらなければやはり困るわけです。その点は、今価格をお答えになられましたように、大変開きがあるわけですから、どうしてそこの価格差を埋めていくか。そして、経営の苦しさということについては国税庁もお認めになっておるわけでありますから、そこの点の支えをぜひひとつ検討してほしいということで、今のお答えでは非常に開きがあるということを認めた上でどうそれを埋めていくか、その方向についてもう少し具体的にお答えください。両方だな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/71
-
072・馬場久萬男
○馬場説明員 私どもの立場といたしますと、先ほど言いましたように、しょうちゅう用の試験用売却乙というのが特別な扱いでやっておるものでございます。実は一般的に、しょうちゅうの需要に対してはほかの加工原料と同じ値段で売っておって、五十四年、五十三年ごろの実績を超えるものについて安く売っていたということでございますので、今回、物がなくなればやはりあきらめざるを得ないのじゃないか、あとは一般の加工原材料と同じような値段でお願いすることになるのじゃないかというふうに思っております。何分、先ほども申しましたように、生産者団体と実需者団体とのお話し合いの問題でございますから、一般的にはそういうことじゃなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/72
-
073・山本昭市
○山本(昭)政府委員 産業行政の立場からお答えを申し上げますが、従来この試験価格ということで、食糧庁には実は大変御配慮をいただいておるというふうに考えておるわけでございます。今後、制度が変りますということで非常に難しい局面ではございますが、やはり需要者といたしましてできるだけのことはさせていただきたいということが私どもの基本的なスタンスでございますので、引き続きそういった要請を重ねてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/73
-
074・川崎寛治
○川崎委員 時あたかも大衆酒に課税を強化する、高級酒の方は税率の引き上げを低く抑えておる、そういう時期に、一方では、古々米という米の方の制度でございますが、非常に厄介な場面にぶつかっているわけです。
そうしますと、税金をうんと取ろうという立場からしましても、これについては当然きちっとした支えがなければならぬ、あってしかるべきだ、こう思うのです。次官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/74
-
075・堀之内久男
○堀之内政府委員 今まで私も立場が違いまして、今までは破砕米の価格について、特に過剰米の処理ということで強く政府の方にお願いいたしまして、こういう試験価格という形で、特にしょうちゅう業者の原料米として努力はしてまいったつもりでありましたが、先ほどから食糧庁から答弁いたしておりますように、過剰米処理という問題も一応片がつくことでございますが、先ほどから先生の御指摘のような件は大変重要なことで、特にしょうちゅう業者にとっては大事な問題でございますので、今後十分農水省、さらにまた大蔵省側と協議をいたしまして最善の努力をしていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/75
-
076・川崎寛治
○川崎委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/76
-
077・瓦力
○瓦委員長 次に、堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/77
-
078・堀昌雄
○堀委員 最初に、厚生省にお伺いをいたします。
今度酒の税金が上がるわけでありますけれども、酒というのは世界のすべての人々にとって欠くことのできない重要な嗜好品であります。私も出身が医者でありますから、たばこはもう百害あって一益なし、だから、たばこはともかくできるだけ国民が吸わない方がいい、こう思っているのでありますが、酒は飲み方によってはなかなか効能のあるものでありまして、ともかくも、飲み過ぎはもちろんいけませんが、適量に飲んでおる限りでは健康のためにも役立つものであります。そういう国民の生活にとって不可欠なものでありますけれども、ただしかし、飲み過ぎればこれはまた大変大きなマイナスを人々に与えるというのが、酒というものの持っておる特性であります。
そこで、きょうちょっと厚生省にお伺いをしたいのは、この酒のマイナスの面、要するに酒をたくさん飲んだ結果、いわゆるアルコール精神病あるいはアルコール中毒と言われるような、正常な形でない精神状態ということになるのが現在世界でいるわけでありますが、まず、最近の日本における酒類の飲用によって生じているところのアルコール精神病及びアルコール症を、少し昔から時系列的に、大体これがどういうふうなふえ方をしてきておるのか、減っておるとは思われませんので、それらをちょっと計数的にお答えをいただきたいと思います。そのお答えをいただくのについては、アルコール中毒患者数として十万人当たりでひとつお答えをいただいて、その中においてアルコール精神病とアルコール症がどういう形で推移をしておるかというふうな形でひとつお答えをいただきたい。まず最初に日本の問題をお答えをいただいて、時期は適当で結構でありますが、欧米諸国の実態についてもお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/78
-
079・野村瞭
○野村説明員 お答えを申し上げます。
私ども厚生省におきましては、患者調査という形で、アルコール中毒患者につきましても推計をいたしておるところでございますが、最新のデータといたしましては、昭和五十六年でございますけれども、全国のアルコール中毒患者の推計は約二万二百人ということになっております。これを経年的にさかのぼって見てみますと、昭和四十三年におきましては一万四千七百二十人ということでございます。それから、昭和四十九年におきましては一万六千三百人でございます。昭和五十五年におきましては二万百人というデータが出ております。これを、一番古い四十三年を一〇〇といたしまして指数的に申し上げますと、四十九年が一一〇・七、五十五年が一二六・五、五十六年が一二七・二という形で、徐々にではございますけれども、アルコール中毒患者がふえているというデータが出ておるところでございます。
それから、先生御指摘になられましたけれども、アルコール精神病とアルコール症の内訳でございますが、今申し上げました時系列的な指数はほぼ同様でございまして、割合からいいますと、ほとんどがアルコール症という形で、アルコール精神病の方は約一割ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/79
-
080・堀昌雄
○堀委員 人口十万対比ではどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/80
-
081・野村瞭
○野村説明員 人口十万対で見てみますと、昭和五十六年におきましては十七・一人ということでございます。昭和四十三年におきましては十四・六という数字が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/81
-
082・堀昌雄
○堀委員 あわせて、時期は同一でなくとも結構ですが、欧米先進国の、これは比較が簡単でありますから、十万対比のアルコール中毒の患者数をひとつ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/82
-
083・野村瞭
○野村説明員 お答えを申し上げます。
一九七二年のアメリカにおきまして、人口十万対のアルコール中毒入院患者数でございますが、六・九でございます。それから、一九七三年におきます西ドイツにおきましては人口十万対十五・八、一九七六年のフランスにおきましては人口十万対十九・七、一九七七年のイギリスにおきましては二十七、一九七九年のスウェーデンにおきましては二十三・六という数字が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/83
-
084・堀昌雄
○堀委員 主税局にちょっと伺いますけれども、今のフランス、西ドイツ、アメリカ、イギリス、日本、これの人口一人当たりの酒の消費量は、一〇〇%アルコール換算でないと比較ができませんから、一〇〇%アルコール換算ではどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/84
-
085・梅澤節男
○梅澤政府委員 今御指摘の一〇〇%アルコール換算で主要国を申し上げますと、フランスが十三・三リッター、西ドイツ十・九、アメリカ八・二、イギリス六・六、日本は五・六となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/85
-
086・堀昌雄
○堀委員 今主税局長の答弁にありましたように、純粋にアルコール換算ということで見ますと、フランス、西ドイツというのは少なくとも日本の倍ぐらいのアルコールを飲用しておる。アメリカ、イギリス、日本というのはそれに比べて少しずつ一人当たりは下がっているわけであります。しかし、アルコールの飲量が、日本というのは世界の国に比べて相対的に少ないにもかかわらず、実はさっき私が伺った十万対比のアルコール中毒の患者数というのはかなり高いのでありまして、これは一体どういうことに原因があるのだろうか、こう考えてみたいのであります。
精神衛生課長は技官でもありますから、あなたの感じで結構ですけれども、このように日本の平均的アルコールの消費量というのは、少なくとも西ドイツ、フランスの約半分ぐらいなのに、逆に西ドイツよりは日本の方が、十万当たりで見ると少し中毒患者が多いような感じがするのでありますが、どこに原因があると思われますか、ひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/86
-
087・野村瞭
○野村説明員 私ども、このデータの分析に関しましては十分やっておりませんので、その点的確にお答えすることができません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/87
-
088・堀昌雄
○堀委員 データはいいのですよ。要するにこういうデータがあるという前提に立って、日本の場合に、これは日本国民のアルコールに対する体質が弱いというか、一般的に見て、私どもも日本では、町で夜になると酔っぱらいを大変よく見るわけですが、外国へ行って酔っぱらいが町をうろうろしているというようなことを見かける場合は非常に少ない。長く住んでいたわけではありませんからわかりませんけれども、日本人というのはアルコールに対しては対応力が、欧米人に比べてどうも少し低いのではないか、こんなふうな感じがしておるのですが、あなたも精神衛生の方をやっておられることでもありますから、これは医者でない者に伺ってもあれだけれども、あなたは技官でもありますので、あなたの常識の範囲でちょっと一遍答えてみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/88
-
089・野村瞭
○野村説明員 今申し上げましたように、私ども国際比較というような形で、今先生おっしゃったように、日本人が特にアルコールに対して対応力が弱いというようには聞いておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/89
-
090・堀昌雄
○堀委員 次に警察庁、入ってもらっておりますね。
酒酔い運転というものによって事故が起きる。私も自分でずっと運転していますから、酒を飲んで運転をすることはないのでありますけれども、恐らく眠くなる。普通だれでも、ちょっと酒を飲むと眠くなる。それが注意を散漫にして、自動車というのは瞬時のミスで事故が起こるわけでありますから、そういう意味で、ともかく酒を飲んで運転することは大変よくない。これは一番危ないことだと思うわけでありますが、ひとつこれのデータを少し報告してもらいたいと思います。
どういう格好で報告してほしいかというと、死亡事故の全部の件数に対して、その中における酒酔いあるいは酒気帯び運転によるところの事故件数というものはどうなっているのか。特に最近の十年ぐらいの経過を見て、それはどういう形で推移をしておるのかということと、あわせて、人身事故を起こしておる者の同じ酒酔い及び酒気帯び運転によるところの計数を、時系列的にちょっと報告をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/90
-
091・広谷干城
○広谷説明員 過去十年ぐらいにわたりましての酒酔い、この中に酒気帯び運転も入っておりますが、統計的な数字を若干御説明申し上げます。
まず、酒酔いあるいは酒気帯び等によります人身事故の状況でございますが、十年前の昭和四十九年に一万九千二百六十五件という数字がございます。それが幸いなことに順次減ってまいっておりまして、昨年、五十八年には八千七百二十件というのが人身事故の件数でございます。なお、昭和四十九年の一万九千二百六十五件というものが人身事故の中でどういう比率を占めておるかということでございますけれども、これは全体の数字の中で三・九%の構成率を占めております。また、五十八年の八千七百二十件という数字は全人身事故の中の一・七%を占めておる、こういうふうになっております。
これは、要するに人身事故全体でございますが、死亡事故について見てみますと、昭和四十九年の死亡事故件数は千五十六件でございまして、全死亡事故の構成率九・七%ということになっております。それに対しまして昭和五十八年の数字でございますけれども、死亡事故件数が七百九十五件ということになってございまして、全死亡事故の中に占めますこの割合は八・八%、こういうふうな状況になってございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/91
-
092・堀昌雄
○堀委員 さっきのアルコールの中毒患者の方はこの十年間近くの間にかなりふえているわけですけれども、幸いにして自動車による事故の方は、自動車の件数は運転者を含めて大変量がふえていると思うのでありますが、相対的には、特に死亡事故は千五十六人が七百九十五人に減っているというのは大変いい方向だと思います。もちろん、まだ相当出ておりますから、注意は肝要でありますけれども、人身事故の方も一万九千件余りあったのが半分以下になってきたということは、私はこの面は大変結構だと思うのであります。しかし、それにしても酒がもたらすマイナス面というものがこういう形で象徴的にあらわれておるというふうに、客観的な事実をひとつここで明らかにしておきたい、こう思うわけであります。
厚生省、警察庁、結構です。ありがとうございました。
そこで、これは後の質問の下敷きなのでありまして、もう一つの問題は、国税庁に入ってもらっておりますから、これは二つの問題がありますが、時間が余りありませんから、最初の方の一つだけを伺って、残りは夜の質問時間にいたしますが、まず最初に間接税の最近における脱税の状態というのをひとつ報告をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/92
-
093・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
間接税の中で物品税、揮発油税、印紙税等のグループにつきましてまず申し上げますと、調査場数五万九千六十一件を調査いたしまして、そのうち三万三千八百九十二場の更正をいたしております。更正税額は百五億五千二百万円でございます。そのうち国税犯則取締法によりますところの犯則部分が二十億二千八百万円でございます。
次に酒税でございますが、酒税につきましては総延べで九万四百七十三場の調査をいたしまして、更正場数四百四十、更正税額三千百万円でございます。
合計いたしますと、十四万九千五百三十四場を調査いたしまして、更正場数は三万四千三百三十二、更正税額百五億八千三百万円でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/93
-
094・堀昌雄
○堀委員 ちょっと質問が中途半端に切れますから、ここまでにして、あとは自後の質問時間のところでやりますので、とりあえずここで一応終わりにしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/94
-
095・瓦力
○瓦委員長 柴田弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/95
-
096・柴田弘
○柴田(弘)委員 私は、最初に石油税につきましていろいろとお尋ねをしていきたいわけでありますが、本題に入る前に国際金融局長にお尋ねをしておきます。
金融局長は、新聞の報ずるところによりますと、総理にお会いになりまして、最近の為替相場についていろいろと御報告なさっているわけであります。円高が、アメリカの金利というものにはとらわれないであろう、それで金利離れの色彩が強い、こういうことをおっしゃって――まだ来ていない。そうか、それじゃ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/96
-
097・瓦力
○瓦委員長 それじゃ恐縮ですが、質問の順序を変えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/97
-
098・柴田弘
○柴田(弘)委員 わかりました。
それじゃ主税局長にまずお尋ねしますが、今私どもはこの酒税と物品税、撤回もしくは実施の延期ということを言っておるわけであります。仮に酒税の実施時期が一カ月ずれた場合、三カ月ずれた場合、六カ月ずれた場合、物品税の場合も同様に一カ月ずれた場合、三カ月ずれた場合、六カ月ずれた場合、まずどういう数字になるかお伺いをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/98
-
099・梅澤節男
○梅澤政府委員 今委員がおっしゃいましたのは、税率の引き上げ等の施行時期がずれた場合に税収額にどう影響があるかという御質問だろうと思うわけでございますが、私ども率直に言いましてそういう計算をしていないわけでございますけれども、まず酒税について申し上げますと、五十九年度の税収見積もりは、端的に言いまして十一カ月分計上しているわけでございます。したがいまして、機械的に計算いたしますと一カ月分三百億円弱になりますが、これは酒類によりまして季節的な変動がございます。したがいまして正確なことをなかなか申し上げにくいわけでございますが、三カ月ぐらいのずれになりますと、今私が申し上げました三百億弱を機械的に三倍するよりももう少しふえるだろう、およそ一千億ぐらいの感じでございます。六カ月の場合でございますとおよそその倍程度。物品税につきましても同じような前提に立ちますと、一カ月で大体五十億ぐらいでございますが、この場合は酒税ほど季節的な顕著なあれというのはなかなかないわけでございますので、大体その機械倍数と申しますか、三カ月で百五十億とか六カ月で三百億程度とか、そういった感じでございますが、これはあくまで感じでございまして、こういう計算はしていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/99
-
100・柴田弘
○柴田(弘)委員 国金局長は来ましたか。――半だよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/100
-
101・瓦力
○瓦委員長 大変おくれて申しわけないです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/101
-
102・柴田弘
○柴田(弘)委員 委員長、私の質問は十一時半なんですよ。堀先生に御配慮いただいて五分早まりました。本来ならば大臣が来まして、質問をいろいろとし、答弁をしていただくわけなんです。やはり、きちっと数分前くらいには来ていただくようにこれからお願いしたいと思います。僕も三十分は大臣が入っていただけるということで、わざわざそのように質問をまとめてきたわけです。その辺のところをひとつお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/102
-
103・瓦力
○瓦委員長 政府委員にお願いいたしますが、本日の質疑は大変込み合っておりますので、定刻の時間前に待機いただきますようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/103
-
104・柴田弘
○柴田(弘)委員 国際金融局長、どこにおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/104
-
105・瓦力
○瓦委員長 国金局次長ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/105
-
106・柴田弘
○柴田(弘)委員 国際金融局長をお願いしていたのですが、これはどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/106
-
107・佐藤光夫
○佐藤(光)政府委員 ただいま局長は参議院の予算委員会の方に出席をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/107
-
108・柴田弘
○柴田(弘)委員 そういうことは聞いていませんでしたよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/108
-
109・瓦力
○瓦委員長 柴田委員にお願いしますが、参議院の予算委員会と本委員会がどうしても時間の関係で並行いたしますので、政府委員につきましてはお許しをちょうだいして、事前に事務局を通じましてまた綿密に御連絡させていただきますが、質問をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/109
-
110・柴田弘
○柴田(弘)委員 委員長のお言葉ですから、それならば質問を続けますが、一つ次長に申し上げておきますが、これは後の石油税の質問に極めて関連が深いわけでありまして、国際金融局長が中曽根総理にお会いになって、円相場の問題につきまして、最近の円高はアメリカの高金利に余り影響がないんだ、また公定歩合を引き下げてもやはり円安にはならない、逆戻りをしない、こういうようなことをおっしゃっているわけであります。だから、私はこの円相場の中期的な展望と、そしてまた公定歩合を下げても円安には逆戻りしないのかどうか、その辺のところをまず確認をして石油税の質問に入りたい、こう思っておったわけなんですよ。その辺のところを、せっかくお見えになったんですから、簡単でいいですから答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/110
-
111・佐藤光夫
○佐藤(光)政府委員 大変遅くなりまして恐縮でございました。お答え申し上げます。
御案内のとおり、三月二日に円相場がニューヨーク市場で急騰いたしまして、その後二日間ばかりで約十円上昇いたしております。三・四%程度の上昇でございまして、従来の二百三十三円、三十五円というような水準から二百二十二円ないし三円というような上昇になったわけでございます。その後は大体二百二十三円から二百二十七円くらいの水準で推移をいたしております。
この背景でございますけれども、一つには、今までドルとドイツマルクとの関係で、ドイツマルクがかなり安くなっておったというのが二月あたりから修正をされまして、それに伴いまして円とドイツマルクとの関係から水準是正が行われてきたというのがきっかけであろうかと思いますが、その背景には、我が国の良好なファンダメンタルズに対する評価があったもの、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
これからの見通してございますけれども、アメリカ経済に対する信認が崩れてドルが全般的に安くなるというようなことはちょっと考えにくいのじゃないか。現にここ数日の動きを見ておりますと、アメリカの金利の上昇傾向あるいはアメリカの景気回復の強さというようなものを反映いたしまして、かなりドルは底がたい動きをしておるわけでございます。私どもといたしましては、引き続き相場の動向を見守ってまいりたい、かように考えておるわけでございますけれども、我が国の良好なファンダメンタルズを反映いたしまして、徐々に円高傾向に向かうのが望ましい姿ではないかな、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/111
-
112・柴田弘
○柴田(弘)委員 公定歩合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/112
-
113・佐藤光夫
○佐藤(光)政府委員 公定歩合につきましては銀行局の方からお答えを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/113
-
114・行天豊雄
○行天政府委員 公定歩合を引き下げることが円相場にどういう影響があるであろうかという御質問でございますが、仮定の御質問でございますので大変お答えしづらいのでございますが、ごく一般論として御返事申し上げたいと思います。
確かに、国内の金利が下がりますと、他の条件が変わりません場合には、内外金利差が拡大する方向に動くと思いますので、その場合には低金利通貨から高金利通貨に需要がシフトするという格好で、一般的には低金利通貨の為替相場が弱まる傾向になるだろうということは言えると思うのでございます。
ただ、現実の問題といたしまして、為替相場は、ただいま国金局の方からも答弁がございましたように、必ずしも金利差だけで決まっておるわけではございませんで、国際収支の状況であるとか物価の状況であるとか、その他もろもろの状況がございますものですから、公定歩合が下がったらどうであろうかという御質問に対しまして、現段階で確定的に見通しを申し上げることはちょっと遠慮させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/114
-
115・柴田弘
○柴田(弘)委員 円相場ですが、金融局長は二百十円台もあり得るのではないか、こういうことをおっしゃっているわけであります。現実に私の友人であります、ある都市銀行の調査部長をしております者も、先日会いましたら、アメリカ経済との関連で二百十円もあるのではないか、こういうことを言っているわけであります。
そこでお聞きをしたいわけでありますが、これは通産省で結構でありますが、五十九年度もし十円の円高があった場合にどれだけの税収不足になるのか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/115
-
116・川崎弘
○川崎政府委員 お答え申し上げます。
石油税は確かに従価税でございますので、レートが変わりますとそれによって石油税の減収の要因になるということはそのとおりでございます。ただ、石油税の収入を決めますものに、その他の要素といたしまして石油の輸入量であるとか、それから石油のCIF価格というのが影響してまいります。したがいまして、現時点で具体的にどういう影響が出るかというのを申し上げるのはなかなか困難でございますけれども、大変大胆な仮説、つまり他の条件を所与といたしまして一応の計算をいたしますと、十円下がりますと約百六十億石油税の減収に相なるという計算が試算として出てまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/116
-
117・柴田弘
○柴田(弘)委員 続いてお尋ねをしていきます。
国際金融局の次長さん、お帰りになって結構です。
原油価格の引き下げの問題。第一次オイルショック、第二次オイルショック等がありました。価格も高騰したわけであります。昨年三月にOPECが五ドル引き下げました。それから国際的にも、いわゆる需給が緩和をしてまいった。当然ここで第一次、第二次オイルショックの経験に照らして、我が国の石油に対するいわゆる政策、これが私は変更がなされたのではないか、こんなふうに考えているわけでありますが、簡単で結構ですから、そこら辺のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/117
-
118・川崎弘
○川崎政府委員 先生御指摘のとおり、石油の需給と申しますのは現在緩和基調にある。これは国際的にもそういう見方になっておりまして、大体今世界的な見方の大勢は、八五年ぐらいまではこの緩和基調は続くであろう、しかし、その後につきましては、やはり発展途上国を中心に石油需要も伸びていくということで、原油価格も名目では値上がっていくんじゃないか。特に九〇年以降になりますと、供給力の関係で、今のままだと非常にまた値上がりの状況が厳しくなるんじゃないか、そういうふうな見通しになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/118
-
119・柴田弘
○柴田(弘)委員 要するに私がお聞きしたかったのは、昨年の我が国のいわゆるエネルギー需給の基本的な方向ですよ。――いいです、私が言いますから。一つは石油のいわゆる安全保障の問題、安定供給の問題、これは当然だと思います。もう一つは、第一次オイルショック、第二次オイルショックの経験に照らして、これは当然コストの低減化ということがうたわれているわけであります。今この両方なんです、私が申し上げたいのは。こういったコストの低減化が叫ばれている、これが政府のエネルギー政策の一つの基本方針である。こういうときに今回のこの増税というのは、そういったエネルギー産業のコストの低減化に努力をしている人たちに対して冷水を浴びせることになるのではないか。もちろんこれは、どのような理由を申しましても、「増税なき」という政府の公約にも違反をしている、私はこんなふうに今回のこの石油税の増税を考えております。
もう一つは、基礎産業に対してもまた一つの打撃を与える要因になるのではないか、こういうふうに私は思います。現実に、これはあなたの方がよく知っていらっしゃるわけでありますが、とにかくエネルギー産業の合理化のいわゆるシェアというのは非常に狭い。原油の価格、これはOPECがもう八五%なんです。その上、石油税を初めとする六つの税金がこの石油にはかけられている。だから、これはいろいろ計算をしてまいりますと、例えば二十九ドルで輸入しても税金が十ドルかかるわけです。こういう試算もあるわけですよ。三十九ドルの石油を使っている。そして、あと合理化のシェアというのは一五%である。そういったことで、私は今回のこの増税というものは、はっきり申しまして反対であります。その辺どうですか。今のエネルギー産業の彼らのコスト低減化の努力に対しての今回の増税というものは、資源エネルギー庁としてどうお考えになっておりますか。ひとつ端的にお答えをいただきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/119
-
120・川崎弘
○川崎政府委員 二つに分けて御説明させていただきたいと思います。
第一の点は、先生御指摘のとおりでございます。エネルギーコストの低減というのが、昨年エネルギー政策の総点検を総合エネルギー調査会でやっていただきましたときにも大きな柱になりましたけれども、その前提といたしましては、やはりエネルギーの安全保障、セキュリティーの確保、これを基本的な眼目に置いて、それに合わせて国民的な要請でございますエネルギーのコストの低減を図る。大変難しい話でございますが、両方のベストミックスを図るというのがエネルギー政策の大きな基本的な方向として打ち出されたわけでございます。そういう意味におきまして、私どもはやはりセキュリティーの確保という努力は今後とも続けてまいりたいと考えております。
もう一つの、エネルギーのコスト低減の問題でございますが、実は私どもは現在やっておりますエネルギー政策を中長期的に展開していくことによってエネルギーコストの低減を図りたい、そういうふうに考えております。例えば一例で申し上げますと、四十九年のオイルショックの前でございますが、当時の電源の構成、つまりこれは石油が中心でございましたが、この電源の構成のままで今まで続いておりますと、実は電気のコストというのは当時に比べて六千億ないし七千億というふうな部分、増加しておったという試算も出ております。そういうことで、今後とも私は現在のエネルギー政策をより充実、重点的に展開することによって、中長期的にはエネルギーコストの低減を図りたいというふうに考えております。
先生御指摘の基礎素材産業の関係におきましても、基礎素材産業の代替エネルギーの導入の促進であるとかあるいは省エネルギーの推進に、この石特会計を財源といたします政策の展開を図ってまいりたい、それによって中長期的にコストの低減の方向を実現いたしたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/120
-
121・柴田弘
○柴田(弘)委員 そこまでの答弁しかできないから私もこれ以上申しませんが、あなたの方は指導する立場であるわけなんですけれども、エネルギー産業がもうこれ以上の合理化はできない、こう言っているわけなんです。今言いましたように六つの税金がかけられている、三十九ドルの原油を使っているということになるわけです。これは原油を輸入をし精製をし販売するまでの諸経費、設備の償却費、変動費、薬品代、人件費、これよりもはるかに税金が多い。あなたは努力するとおっしゃっています。それはそれで、私も資源エネルギー庁のそれだけの努力に対して一定の評価はいたしますけれども、肝心のエネルギー産業がそう言っているわけであります。私はそういうことを御指摘申し上げたい、こういうふうに思います。結局、今回のこの増税も、取りやすいところから取るということです。しょせんは大衆負担になってくるわけであります。この点も御指摘をしておきたい。
そこで次に、特別会計の問題についてお尋ねをしていきたいわけであります。
その前に、歳出構造、特にでき得る限りの歳出の削減ということを図っていかなければならない。先ほど来申しておりますように、また今資源エネルギー庁の方から御答弁がありましたように、セキュリティーの確保というのはもちろん大事であります。エネルギー政策も私は大事だと思います。しかし、今回のこの増税を契機に、本当に真剣な歳出削減というものが行われているのかどうかということを、やはり私は問題にしなければならないと思います。
それで、これは質問の都合上簡単にお尋ねしておきますが、一つは石炭液化プロジェクトの問題。これはもう随分な投資金額になるわけであります。これの実用化ということを考えますと、お聞きしますと二十一世紀ですね。経済性の問題を考えますと、果たしてこの問題は本当に継続をしていく問題であるのかどうか、私は一つは疑問に思っているわけであります。この辺についてあなたの方の言い分もあると思いますから、簡単で結構ですからお尋ねをしたい。
それからもう一つは、これもいろいろと予算委員会等で問題になっておりますし、また商工委員会で問題になっておりますが、石油備蓄の問題です。くどくど申し上げません。しかし、例えば五十三年の目標であった三千万キロリットル――石油の情勢も変わってまいりました。そういった中で、例えば五十三年の輸入量が二億七千万キロリットル、五十八年度の供給計画が二億四百万キロリットル、四分の三に減っているわけであります。こういった状況の中で、今回六十三年から六十五年まで二年延ばした、こういうことをおっしゃいますが、もう少し延ばしてもいいんじゃないかという意見もあるわけであります。この二つについて、簡潔で結構ですから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/121
-
122・川崎弘
○川崎政府委員 お答え申し上げます。
第一の石炭液化のプロジェクトでございますが、石炭は、先生御高承のとおり、世界的に見まして、埋蔵量は今の段階では二百年とか、場合によっては三百年というふうな埋蔵量を持っております。ただ、この石炭というのは、その処理なりハンドリングが非常に難しいという問題がございまして、なかなかその利用を拡大する――つまり、石油に比べまして便益性が低いという問題があるわけでありますが、もしこれを液化できまして、石油と同じような取り扱いができるようになりますと、これは日本のみならず、世界的に見ても、エネルギー需給の大変なプラスになるわけでございます。
実はこのプロジェクト、世界的に各国で一生懸命努力をしているところでございまして、私どもの方といたしましても、これまでNEDOを中心に一種の小さなベンチプラント、PDUと言っておりますけれども、これで運転研究をやっておりまして、これを実は今回パイロットプラントの方向へ持っていきたい、そういうふうな考えでございます。
その経済性がどうであるか、これは専門家の間でいろいろ検討をいたしておりますけれども、私どもの考え方では、現在の石油価格の動向等を踏まえて考えますと、およそ二〇〇〇年までにはこの石炭の液化油というのが、経済的に既存のエネルギーに代替し得る、そういう時期が到来する可能性は十分あるということで、この石炭液化のRアンドDを推進してまいりたいと考えております。
それから第二の点でございますけれども、石油の備蓄でございます。確かに先生御指摘のとおり、五十三年度の三千万キロリッターの国家備蓄の目標を定めましたときの日本の石油の輸入量、二億七千万を超えておったことは事実でございます。その当時の考えといたしましては、この三千万キロリッターで大体三十日分の国家備蓄をためたい、それで民間の義務備蓄でございます九十日と合わせまして、百二十日の備蓄を持ちたいという考えで推進してまいりましたわけでございます。
それで、この点につきまして、昨年の総合エネルギー政策研究の会、総合エネルギー調査会のエネルギー政策の総点検の中でどう進むべきかという真剣な議論がなされまして、その結果、結論だけ申しますと、この三千万キロリッターという国家備蓄は、堅持して推進すべきである。その理由は、第一に、日本のエネルギーの供給構造がいまだに石油を中心に非常に脆弱である。それから第二に、国際的に見ましても、日本の備蓄水準というのは、IEAの平均の百六十七日に比べましても、この三千万キロリッターが実現した暁でやっと百四十三日ないし四日という数字になります。そういうことで、国際的に見ましても、せめてこの百四十日程度の水準を達成したいということが、この現在の備蓄政策の方向でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/122
-
123・柴田弘
○柴田(弘)委員 いろいろ説明をいただきましたのですが、決して了解したわけじゃありません。
時間の関係もありますので先へ進みますが、そういったきちっとした歳出削減をやって、そして五十九年度から六十五年度まで、これは六十五年度というのは一つの中期的な、石油を中心としたエネルギー需給の見通しの区切りの年度だと私は思いますね、それにどれだけの歳出カットをやっていけるのかというのが一つ。
それから、今回のこの増税は私は反対でありますが、増税をやる、初年度六百七十億、平年度千三百四十億、それから特別会計法四条の二による、あなたたちの方が「北方領土」と言っている、いわゆる一般会計の留保分四千三百二十億円、これを全部返済をしてもらったとして、くどいようですが、しっかりとした歳出カットをやって、不足は出ませんか。ある試算によりますと二千億ぐらい出るということでありますが、これは確かな筋からの試算でありますから、この辺をひとつしっかりと答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/123
-
124・川崎弘
○川崎政府委員 石特会計の歳出入の見通してございますけれども、これは石油だけではなくLNG、LPGも含めまして量の需給の問題あるいはその価格の動向、それから先ほど先生が御指摘になりました為替レートの問題、こういったいろいろな要素が歳出入両面にわたりましてございまして、これがまた複雑かつ非常に流動的な状況にございます。したがって、正確に推計するというのはなかなか困難な面がございますけれども、私どもといたしましては現行の施策体系、長期のエネルギーの需給見通し等を前提といたしまして、一定の仮定を置きまして歳出入の見通しを計算した経緯がございます。
それに基づきまして、確かに先生御指摘のような数字を試算として部内的に持ったこともございますけれども、私どもといたしましてはできる限りの歳出の重点化、効率化というのを進めまして、できる限り長期に、この今お願いしております増税の範囲内で石油及び代替エネルギー対策を計画的、着実に進めてまいりたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/124
-
125・柴田弘
○柴田(弘)委員 次長さんは苦しい御答弁をなさっていますからこれ以上は言いませんが、要するに、今あなたがおっしゃったように一生懸命歳出カットをやるといったって二千億だ。その歳出カットをやっても、そしてこれは大蔵省が返済をするかどうか知りませんが、一般会計の留保分を四千三百二十億返済をし、しかも増税がまかり通っても、二千億不足するということは事実だ。この問題をどうするかという問題が一つ。
そこで、これは大蔵省にお聞きしたいわけでありますが、今回のこの増税の理由は、原油の価格が下がってきた、輸入数量も減ってきた、そしていま一つは、この千五十億、例えば五十八年度の歳入不足、これは一つの円高という問題があったと私は思います。二百五十五円で設定をいたしました。それが現実には二百三十七円であった。しかも、先ほど来答弁があったように、五十九年度あるいは六十年度、中長期の見通しに立ては、この円高傾向というのは続いていくと私は思います。二百二十円台、そして今回の政府経済見通しによって、たしか二百三十四円で設定をいたしました。もちろん輸入数量あるいは輸入価格によって左右されるということは私もよく了解をしているわけでありますが、五十九年度あるいは六十年度輸入数量がそんなに飛び抜けて多くなることもないと思いますし、あるいはまた価格が、これは先ほど次長から御答弁なさったように、八五年まではそんなに上がらないだろう。そんなふうに考えますと、この五十八年度のいわゆる歳入欠陥千五十億、これはいい教訓でありますが、五十九年度もやはり歳入欠陥になるのではないか。また、中期的展望に立った場合の六十五年度まで、既に二千億の不足が出ている。しかもその上に円高である。こういった点を考えた場合に、また一体それにどう対処していくか。増税に次ぐ増税ということを私は一番心配をいたしているわけであります。
先のことはわからぬ、こうおっしゃるかもしれませんが、五十九年度は恐らくまたそのような歳入不足ということが考えられるであろう、こういうふうに私は思うわけなんですよ。この辺は、まだ大臣が来ていませんからなんですが、どう対処するかということなんです。こういった問題を一つ、問題点として私は指摘をしておきたいわけであります。何か御意見があれば、政務次官からでもひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/125
-
126・梅澤節男
○梅澤政府委員 五十八年度補正予算によりまして減収額が生じたことは事実でございます。
その要因といたしましては、基本的にはやはり原油価格の下落ということが大きな要素を占めておりますが、そのほかに五十八年度税収見積もりをいたしました時点での輸入量が見通しよりも下がった。それから、委員がしばしば御指摘になっております円高の要素、これも否定できないと思いますが、基本的には原油価格の下落の要素が大きいと思います。
五十九年度の石油特会の石油税収につきましても、その円高という点につきましては予断を許さないということは、私どもも十分留意していかなければならないと思いますけれども、原油価格とか輸入数量につきましては、ほぼ見通しのとおり推移するとすれば、先ほど来議論の往来がございましたように、例えば十円円高になりますとフル年度で百六十億ぐらい減収が生ずるというふうな問題ではございますけれども、今後の石油特会の税収の状況を見ながら、石油特会の経理を一体どうするのかというのは、主計局なり歳出当局とも十分相談をしながら対処してまいるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/126
-
127・柴田弘
○柴田(弘)委員 主税局長さんせっかく御答弁いただいたのですが、極めて事務的な答弁ですね。
大臣、どうもえらい御苦労さまです。今問題になっているのは資源エネルギー庁の方の石油税の問題で、昭和六十五年度というのはエネルギー政策の一つの中期的な年度になるのです。今回増税をやっても大体二千億不足するだろう。それから一般会計からの留保分がありますね。これは特別会計法の四条の二によって四千一二百二十億返済するということになっておる。それから石油備蓄の問題にしても石炭液化の問題にしても、いろいろな歳出カットを極力やって、それでも二千億ぐらい不足であろう。それから、先ほど来議論されておりますが、やはり円高の問題がありますね。そうすると、十円円高になりますと五十九年度で百六十億円の歳入不足になります。もちろんこれは石油輸入量あるいは石油の輸入価格、こういった問題も影響しできます。これは私もよくわかります。これが二十円円高になりますと、石油税三千七百三十億の一割近くの三百二十億減収になる。現実にもう既に五十八年度も千五十億円。この歳入欠陥は、やはり五ドル下がったこともありますよ。それからまた石油の輸入数量が初めは二億二千万キロリットル、それが二億七百万キロリットルになった。レートも五十八年度は二百五十五円、これが二百三十七円。これも僕はちょっと聞いて知っていますけれども、六十五年度まで言わなくても、五十九年度もまたそんなに端的に原油の価格がばんと暴騰することもないと思います。これは今エネルギー庁の次長からも御答弁いただいた。数量も、景気回復ということで、量的には多少はふえできますが、むしろ円高の方が問題じゃないか、私はこういうふうに思います。しかも六十五年度までは二千億不足、この穴埋めをどうするか、また増税に次ぐ増税じゃないか。こういう点が、私どもといたしましても、エネルギー産業といたしましても、今政府の基本政策にのっとったいわゆるコストの低減化を図っていく彼らにとっても非常に心配である。しかも、今回新しくLPGあるいはLNGの一・二%の新税が創設をされる。そういったことを考えますと非常に心配であるわけです。今主税局長から事務的な御答弁をいただいたわけですが、やはり政治姿勢として、これは大臣から御答弁をいただきたい。それは後で続いて聞きます。
それで大臣、要するに中期的に見た場合に、我が国のエネルギー政策が原油の上げ下げに左右されてしまうような現在の財政構造というものは問題があるのじゃないか。あるいはまた円高円安というふうに、為替に左右されるような税収構造。それでは円安になったとき、原油が上がったときに税率を引き下げれば、これはもう問題ないです。ところが、五十二年の創設以来一回も引き下げが行われてない。ただ取るばかりなんです。取りやすいところから取る。だからこういった税制度のあり方。しかもこのドル建ての原油価格を、課税の段階では円建てに直す。だから先ほど来申しておりますように、税体制では円高になるほど石油税収は減ることになる。円高というのは、これまた急激な円高は無理にいたしましても、円高誘導というのは政府の一つの方針でもあったはずなんです。これは矛盾しているわけです。エネルギー政策という我が国の極めて重要な政策が、為替と原油の上げ下げ、こういったものに影響される今回の税制度というものは、私は早急に見直せということは申しませんが、安定財源というものを確保するという意味から、この際一遍検討してみてはどうだろうか。こんなふうに一つの提案を私はさせていただきたい、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
この二点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/127
-
128・竹下登
○竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございまして、まず一つ一般論として、為替レートの変動によりまして――これは昭和四十七年度予算をつくりますときに、三百六十円の固定レートがフロートした。在外公館の給与その他ございますし、一体どういうことでそれらを組むか、こういう議論があったことがございます。それで、結局その場合はスミソニアンレートがたしか十二月初旬に決まりましたので、三百八円という一応の基準のレートができた。しかし、その後変動したわけです。したがって、一定期間の数値をとって、それでもって予算編成の基礎とするという問題が今日まで継続しておる。だから、言ってみれば、予算審議していただいておる間に変化がございますと、ある意味においては石油税収そのもの、これは見積もりではございますけれども、特に歳出面等については、フロートになれば補正要因がいつまでも絶えずつきまとっているのじゃないか、こういう議論が四十七年度予算審議のときに一番華やかであったと思うのであります。しかし、その問題は一応けりがついた。
それと同じような議論で、公定歩合の操作をした場合における金利問題が国会中に行われたとしたら、それもまさに今度修正要因になるのじゃないか、こういう議論がございまして、これも国会という場の良識の中で上がることもあれば下がることもあるから、一定の基準の数値を得たらそれで認めよう、こういうことになりました。したがって、今の為替レートなり、なかんずく石油価格の変動を前提にされた議論の場合は、そういう議論は私はあり得ると思います。
さればとて、では従量税にした方が確実じゃないか、こういう議論もあるでございましょう。かれこれいろいろ議論を詰めた結果、従価税として今日来ておるわけですから、予測される状態はあり得る情勢でございますが、予算そのものということになりますと、その単年度単年度厳しい予算調整作業を行う中に、また見合いの財源も考えていくわけでございますから、安易にここから財源を求めていくという考え方に必ずしも立たなくとも、予算編成の単年度主義の中で問答を重ねていけば、それなりに御理解のいただける問題ではなかろうか。だが、今おっしゃいました議論は、物が従価税であり、そして価格の変動がかなりあり、需要の変化があって、しかも為替レートに影響されるというものは、そういう議論はあり得る議論として絶えず踏まえていなければならない議論だが、だから安易に増税の税目の対象にいつも考えておるというものではないというふうに御理解をいただかなければ、ほかに御理解のいただきようもないじゃないかな、私はこういう感じがしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/128
-
129・柴田弘
○柴田(弘)委員 いや、御理解をしろと言われても、やはりそれはどうも御理解できませんが……。
それからもう一つ大臣、御承知のように石油というのは輸入の段階、原油の段階から関税がかけられ、石油税がかけられる。それから製品、消費の段階で、ガソリン税、軽油引取税、石油ガス税、航空機燃料税、この六つの税金がかけられる。例えば昭和五十八年度の当初予算は三兆七百五十七億円、これだけの石油関係の税収。そのうちで道路整備に二兆四千五百億円、約八〇%近くが使われている。それから石炭対策に四%。二%というのが石油代替エネルギー対策に占められている。肝心の石油開発だとか備蓄とか技術開発、こういった石油産業関連に充てられているのは一四%程度なんですね。それで、こういった税制をこのまま放置していいかどうかという議論もあると僕は思います。これに賛成とか反対とかいう前に、こういった議論も実はあるわけであります。それから、御承知のように、石油以外のエネルギーについて見ますと、電源開発促進税収、これは電源の多様化あるいは立地対策、こういったものに使われている。こんなようなことを考えてまいりますと、やはりこの辺はこういった議論というものもあるということをひとつ大事にしていただきたいと思います。
それからもう一つは、大臣も御承知だと思いますが、いわゆる長期エネルギーの需給の見通し、こういったものを見てまいりましても、エネルギー供給における石油依存度というのはだんだん低下をしてきておるわけです。五十七年度六一・九%であったものが六十五年度は五二・五%、七十年度は四八%、七十五年度が四二%、数量的には大体二億四千万キロリットル。それがずっと続きまして、七十五年度で二億五千万キロリットルから二億六千万キロリットル、こういうことなんです。つまり依存度がだんだん低下をしてきている。そういった低下をしている石油に、それにかわれるエネルギー開発の財源ということを求める。こういうことが果たしていいのかどうかということが、一つまた問題であると私は思います。
大臣がお見えになる前に申し上げましたが、エネルギー産業は、OPECの値段で原油価格が八五%、あと一五%にわずかに合理化の余地が残されている。しかもこの六つの税金にはバレル当たり十ドルの税金がかかっている、こういうことなんですよ。ここら辺のところで、こういった議論があったということを踏まえて、これでよろしいということではなくて、エネルギー税制そのもののあり方というのは本当にどこに置くべきかということも、今後の一つの課題として取り上げていただきたい、こういうことを申し上げておるわけであります。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/129
-
130・竹下登
○竹下国務大臣 今の柴田さんの御議論は、実際問題としてもう一歩展開するとすれば、いわゆる特定財源論という問題になると思います。
本来、税は色のつかない税があって、それをその必要な需要に対して供給するというのが一番好ましいわけでございます。しかし、時代の変遷の中で、特に今日その整備を必要とするということで、特定財源として財源の中に組み込まれ、それがかなり定着しておるものが、なかんずく石油を対象としたものに多い。これは私は事実だと思います。もっと根源にさかのぼれば、ランプの時代から、あるいはじいさん山へしば刈りにというような時代のところへ石油という、日本にない外国からの資源が入ってきた。当時は奢侈品であり、ぜいたく品であったかもしれない。今やそれが普遍化しておりますものの、事の経過からすれば、やはりそれに基づくものとしての特定財源として、これに注目される要素が、確かにその都度都度考えてみると、どの税目を取り上げてもある、あったからこういうことになっておると思うのでございます。
したがって、特定財源が是か非かという議論ももとよりありますが、たまたま石油税の審議の際に特定財源論という議論が浮かび上がってくるというのは、政府部内はもとよりですが、税制調査会等にも正確に報告して、これは中長期にわたっての問題かもしれませんけれども、やはり議論の糧としていただく問題ではないかという意識は私も持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/130
-
131・柴田弘
○柴田(弘)委員 問題意識を持つだけではいけませんから、ひとつ一歩踏み出していただきたい。御要望しておきます。
あと十分しかありませんので、私は五十九年度の経済運営のあり方ということにつきまして、これはいろいろと今言われておるわけでありますが、最後にお聞きをしておきたいわけであります。
大臣も御承知のように、昨年は中小企業の倒産が多かった。一万九千百五十五件。これは負債一千万以上でありますが、このうちの七三・一%が資本金五百万未満の倒産である。ことしに入りまして一月も千四百九十四件。これは十三カ月連続して前年同月を上回っておる。それから二月も千六百三十八件。これは前年同月をやはり上回り、二月としては史上最高である。このうち資本金一千万未満の中小企業が千四百二十一二件。九〇%近くが中小企業だ。景気が回復過程に入った、回復基調にあるといっても、やはりまだまだ中小企業に対するところまでは届いてない。特にことしはそういう傾向があるのではないか、こんなふうに、この倒産状況を見てまいりまして思うわけであります。
そこで、やはりそういった中小企業に景気がきちっと行き渡るような経済運営というものを推進していかなければならぬ。ところが、残念ながら五十九年度の財政には、こういった景気回復機能というものはゼロである。くしくも中曽根内閣のある閣僚からは、極めて残念、そういったお言葉があったやに承っているわけです。あととり得るのは何かといえば、やはりこれは金融政策の弾力的な運用であると思います。
それから、特に今回の中小企業に対する不況は、やはり業種別、地域別、こういった不況というものが今あるわけであります。大臣も先ほど沢田委員の御答弁に、いわゆる跛行現象があるような意味のことをおっしゃっておりましたが、やはり地域的にあると思いますね。そういったことで、一つは五十九年度の公共事業、こういった不況地域に対する傾斜発注というものが必要ではないか。この三年間なら一〇%以上の前倒しをやっておりますから、当然それ以上お願いをすべきだ、こう思っておるわけですが、それらは当然に後半息切れをしてくる。景気動向を見て、やはり追加投資ということも考えていくべきではないか。その辺の弾力的な運営についてはどうか。
それからまた、ある閣僚は、中小企業を中心とした企業の投資減税、これもアメリカとの国際競争力に勝っていくためにはその拡充の方向で考えていかなければならない、こんなことをおっしゃっているわけであります。そういった公共事業のいわゆる前倒し、傾斜発注と追加。そして長期金利は幸い下がる傾向がありますが、公定歩合、これも財政に余り機能がない今日、一つの経済運営、景気対策としてはとり得る最大の政策選択ではないかというふうに僕は思うわけであります。この辺の、大臣としての政治姿勢の問題、これをひとつお尋ねをしていきたい。
それから、くどいようですが投資減税。これも公共投資等含めまして、自民党から与野党国対委員長会談で回答があった問題でもあります。この弾力的な運用、その辺含めてひとつ御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/131
-
132・竹下登
○竹下国務大臣 まず、景気に対する見方というのは、緩やかながら回復基調にある。そこで御指摘のように財政寄与度、いわゆるGNPの上昇率に対する寄与度はゼロである。が、ゼロというのは下支えにはなっておる、こういうことであります。したがって、残るのは財政運営と金融の二つの機動的運営ではないか、これはそのとおりでございます。
まずその財政運営の問題の具体的な、例示なさった問題は、いわゆる公共事業の執行に対する考え方について、御意見を交えての御質疑でございます。これにつきましては、ぼちぼち予算現額が幾らになるかというのがわかってまいります。それを基礎に置いて今、予算を参議院で審議していただいておるさなかでございますから、予算が終わったら、公共事業執行に関する閣僚会議でも開いて決めなければいかぬ。
私も非常に念頭にありますのは、先ほど来御指摘の地域のばらつきの問題でございます。だが、傾斜配分ということになりますと、先般の補正予算等においてはまさにある種の傾斜配分がなされておる。その配分によってどれだけばらつき是正に役立ち得るかということと、今度は傾斜執行というお言葉でございます。これは感覚としてはわかりますが、どういうふうな執行の具体的な方法があるのか。地方あるいは国の出先等に対する指導によって行うわけでございましょうが、それは工夫してみなければならぬ課題だと私も思っております。が、そこで仮に前倒しになったときに、下期に息切れがするんではないか、こういうことになりますと、されば補正だという議論は、本予算を審議していただいておるときに、大蔵大臣がその場合補正を考えますと言うたら、今から補正もう一遍出し直してこい、こういうことになりますので、それこそそれはその際の財政の出動の余力があるかないかというようなことを考えて対応すべき問題でございましょう。しかし、五十四年のように前倒しをやめてどんどん後ろ倒しをした時期もございます。したがって、まさに機動的、弾力的運用はしなければならぬというのは、本日の御議論などを踏まえて対応すべき問題だと思います。
それから金融の問題ということになりますと、これも御指摘のように金融全体は緩んでおって、金利も徐々に下降傾向にあって、だから、悪いことじゃないと思います。が、ここでさらに公定歩合ということになりますと、これはまさに日銀の専権事項でございますが、私ども諸般の情勢を見て判断される問題であると思っております。私どもが諸外国の方々とお会いするときには、いわば円安誘導などを日本政府がまさかやらぬだろうな、こういう御意見、御指摘もよくございますので、まさに慎重に配慮しておられるところではなかろうかというふうに思います。
それから中小企業、それに投資減税を結びつけて、御意見を交えての御質問でありますが、確かに倒産件数、かつては千五百件が大体アッパーリミットだ。最近いろいろなことで千七百ぐらいじゃないかという議論もございます。多少よくなったとは思いますが、確かに、なかんずく建設業界とか、これにも問題ございます。たくさん数がございますから、竹下建設が倒産したら、翌日は下竹建設になってまた出てくるというようなのもございまして、なかなか難しい問題ございますけれども、そういうこともありつつも、中小企業対策はないがしろにしてはならぬ。
そこで、金融の体制は大体整っておりますので、減税効果がどう出るか。一番難しい問題は、投資減税ということでいつも疑問に思いますのは、これはあの減税があったからやられた設備投資なのか、あるいは企業自体が先を見込んで当然のこととしてやった設備投資であるか、その判定がつかないので、実際問題効果がどれだけあるかということの正確な判断には苦しむことが多いわけでございます。しかし、この問題は、経済担当の河本大臣からも私どもに対して、短中期的とでも申しましょうか、余り中長期だといけませんが、短中期的にも諸課題として勉強してもらいたいという御意見が寄せられておりますので、これは税制全般の中において引き続き勉強していかなければならぬ課題だというふうには理解をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/132
-
133・柴田弘
○柴田(弘)委員 時間が参りましたので、これでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/133
-
134・瓦力
○瓦委員長 米沢隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/134
-
135・米沢隆
○米沢委員 五十九年度税制改正は、言うならば所得税減税の財源探しに明けて財源探しに暮れたと言っても過言ではございません。そして「社会経済情勢の変化に対応した税制の見直し等により最小限必要な増収措置を講ずる」という名目で、いわゆる初年度八千七百億円、平年度七千六百五十億円の所得税減税の見返り増税としてねらわれましたのが物品税、酒税、法人税等であったわけでございます。政府が昨年の与野党会談において約束した減税は、「景気浮揚に役立つ相当規模」のものというもので、これは政府みずからが位置づけました、確かに政策意図があるものだったと記憶いたしておるわけであります。しかし、減税の規模におきましても、また財源調達に見返り増税方式をとったということで、政府はみずからその政策意図を棚上げし、与野党間の約束をほごにされたという結果に終わっております。そして結果として残ったものは、中途半端な減税幅、四十九年以来の改正と言いながら中途半端な税率変更、わずかな政策減税ということでありました。
この点については、また所得税法等の審議のときに譲りますが、財政厳しき折から、財政当局の御苦労は多といたしますが、今回の税改正には、将来の税体系についての展望がない。当面のつじつま合わせ、取りやすいところから取ることに終始した印象が強いものでございまして、この五十九年度税制改正の意図したものは一体何であったのか、また、今度の増税措置は将来のあるべき税体系にどうつながっていくのか、まず初めに大臣の所見を求めたいと思います。
〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/135
-
136・竹下登
○竹下国務大臣 結果としてつじつま合わせではないか、この御批判は私は御批判としてちょうだいしていいと思います。ただ一つだけ、多とするがと、こういう言葉がございましたので、これまたありがたいことだな、こう思っております。
五十九年度税制におきましては、昨年の十一月に、御案内の税調の中期答申をもらいました。およそ三つのことかな。一つは何か。これはまさに税体系の根幹をなしますところの所得税の全般的な見直しがあった。これは中期答申に沿ったものだな。二番目には、税負担の公平確保を推進するための納税環境の整備というものが指摘されて、今度記帳義務とかいうものを御審議いただくようになった。それから三番目は、財政事情をこれ以上悪化させないように、こういうことについては、すなわちその財源を赤字公債に依存してはならないという戒めに対して対応してきたということではないかな、こういうふうに思っております。
それから、御意見を交えての御質疑の中の「景気浮揚に役立つ相当規模の減税」と言えるかどうかということでございますが、特におたくの党からは五十八年内という主張が、ある意味において終始一貫しておりました。それが私どもの議論と最終的に詰まらなかったのは、いささか生煮えであったと言えるとするならば、私どもは三・四%の実質成長をより確実ならしめることが景気浮揚、こう考えておりましたので、それはおおむね確実になったかな。ささやかな千五百億円の所得税減税もその中の一つの役割を果たしたではないかというふうにとれるのかな。そこで、五十九年以降の今度の問題でございますが、現状においてはこれがぎりぎりのものではなかろうかというふうに考えております。
なお、政策税制の問題、なかんずく貴党からは中小企業投資減税等の議論がたびたびなされました。先ほども答えましたが、乏しい財源の中で、中小企業向けの投資減税というものも、今日お願いをしておるという段階になるわけでございます。だから、つじつま合わせではないか、しかし多とする。だから、多としていただく方向を一生懸命模索してお願いをしておる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/136
-
137・米沢隆
○米沢委員 今回の増収措置につきましては、政府はでこぼこ調整の範囲内の増収策だ、こう強弁されておるわけでありますが、増税の規模は、初年度はともかく、平年度ベースになりますと差し引き約二百三十億円の取り過ぎ、これが年を経るごとに恒常的に上積みされていくことが明瞭でございます。これは所得税減税に名をかりた増税工作であると言っても言い過ぎではないのでございまして、この点についてどう考えておられるのか。減税を見送ったとしても、かかる増税はねらいのうちにあったのかどうか、その点どうなのか。
その上、今回の改正は、最高税率の引き下げや利子配当課税、またはマル優制度の見直し等の積み残しなど、税に対する不公平是正の後退姿勢や高額所得者優先の原理が目につき過ぎます。かつて政府税調は、最高税率の引き下げは所得の総合課税化との関連で検討するよう答申したはずでございますが、大臣の御見解はいかがなものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/137
-
138・竹下登
○竹下国務大臣 まず最初の、所得減税なかりせば増収措置を考えなかったかどうか、こういう問題でございます。相対的な問題でございますが、例えば酒税等につきましては、言ってみればおおむね三年ごとにこの見直しを行っておる。その後末端価格の上昇に伴って税率そのものは相対的に落ちておりますから、見直しの対象には、減税なかりし場合もなったであろうというふうに私は思います。
それから、次の所得税の最高税率等の問題でございますが、この問題につきましては、現行の最高税率が主要諸国と比べて極めて高い、そして昭和四十五年以降適用対象範囲の見直しも一切行われずに指摘されておる。これは税調の今度の中期答申では、長期にわたって適用税率が据え置かれてきておるし、また諸外国に比べて大変高い、だから「民間活力の維持・充実等の観点にも配慮し、ある程度の引下げを行うことが適当である。」とされておるわけであります。
この問題につきましては、私はいつも考えるわけでございますけれども、事ほどさように最高税率のカーブが高い我が国の税体系を見てみますと、いわば努力あるいは勤勉と創意というようなものの対価として報酬が得られるという自由主義経済理念の基本に立った場合、それは一つの方向としていつも考えていなければならない課題ではないかというふうに、私自身は絶えず考えておるところであります。
そして、この利子配当課税等々の場合、総合課税の場合に一緒に考えるべきであったというかつての考え方も、当時としては私自身もなるほどそのとおりだという認識を持っておりましたが、さらに税調の方においても、諸般の比較検討をされた結果そのような指摘がなされましたので、それに伴って行ったことでございまして、特定の金持ちを対象にしてそのような措置をとったという考え方は持っておりません。また、所得の多い方は、あるいはこれから社会福祉事業に御寄附をいただくも結構でございますし、赤い羽根もうんと買っていただいたり、いろいろそういう社会人として、みずから得た報酬をそれなりに還元される道もあるであろう、そういうことはある意味においてはまだ望ましい姿ではないかというふうにも考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/138
-
139・米沢隆
○米沢委員 次に、今回の所得税減税の財源がなぜ物品税、酒税、法人税に求められたのか、この問題でございます。
二年間の時限つきながら、法人税の基本税率を一・三%上げるというものが突如として浮上してまいりました。法人住民税均等割を二・五倍に上げる等々、酒税とともに法人税関連のものを増税の柱に据えたわけであります。予想される景気回復は前提にあるにいたしましても、安易な増税という印象はぬぐえない。また、昨年十月政府の決めた民間活力の利用による景気回復と今回の法人税増税は本当に矛盾しないのかどうか。直間比率の是正を言いながら、増税の半分以上を直接税で賄う姿勢に矛盾はないのか。また、酒税にしても物品税にしましても、先ほどから言っておりますように、取りやすいものから果てしなく取るといった安易感が鼻につくことも一つでございます。
そこで、大臣、なぜ今酒税、物品税、法人税の増税なのか。それらに着目した理由、根拠等につき明確に御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/139
-
140・竹下登
○竹下国務大臣 今回の改正は、まずは所得減税を行う。そこで、その財源として、財政事情をこれ以上悪化させない、そういうことから考えてみますと、税収の四割を占める所得税について大幅な減税を行いますので、税調等でも、諸外国と比較してまだいささかの負担能力があり得るという指摘を受けております、三割を占める法人税について、若干の負担増加を求めてきたわけであります。
そこで、残り三割のウエートを持つ間接税につきましては、特定財源となっているもの、また近年税率の大幅引き上げを行ったもの等を除きまして、過去に比べて、先ほどの酒税のごとく負担の低下をもたらしておるものを引き上げるということにいたしまして、最近における消費の実態等を踏まえてさらに物品税の課税範囲あるいは税負担水準を見直すということにいたしたわけであります。
だから、四割を占める所得税に対して三割、三割を占めるもの、なかんずく酒税等々についてはある種の、概念的に言う見直しの時期が来ておる、そしてあとの残りを、これは民間活力等の点から矛盾するという批判は私も理解できますが、その三割のところに求めた。したがって、租税特別措置で二年の時限でこれはやらしていただいておる、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/140
-
141・米沢隆
○米沢委員 今度の国会で、政府の方の直間比率の是正というのは極めて大きな声で主張されておる部分でございますが、先ほど申しましたように、増税の半分以上を直接税で賄うという姿勢はまさに矛盾そのものでございまして、我々も直間比率の是正というものは、一面においては検討すべき重要な課題であると思います。しかし、口でそう言いながら、実際行われることはこういう始末しかできない。そこらに非常に我々は税務当局のいいかげんさを感じるのでございますが、その点とういうふうにお考えなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/141
-
142・竹下登
○竹下国務大臣 なるほどそのことも、先ほど御指摘がございました。直間比率の見直しというのは、これは臨調の答申、その前に税調の答申でもございます。最近その言葉が若干使われなくなったというのは、直間比率というものは結果として出てくるもので、正確に言えば税体系の見直しと言うべきじゃないか。こういうことで、その言葉が、専門家の議論を書いた文章では若干変化してきた感がございますが、概念的にはよくわかり得る問題であります。したがって、今回は結果としては見通し、見積もりでございますけれども、直の方がむしろふえているじゃないか。そのとおりでございます。これは自然増収にかかわる部分が大部分でございます。
それと、やはりこれからの税議論の中で考えてお互い議論しなければならぬなと思っておりますのは、仮にある種の直間比率が単年度で変化されても、間の部分は経済成長に比べて、弾性値で見た場合比較的低い、片方は経済成長に比べて弾性値が比較的高い、こうなると、単年度はそうであっても、数年度で見ると、また今の税制からいうと、直間が直の方に比重がかかってくる、こういう結果になるわけでございますので、そういう議論も踏まえながら、これはまさに中長期的な課題として議論のし直しは絶えずやっていかなければならぬ問題だな、こういうふうに考えているところでございます。
それともう一つは、安易感という言葉についてのお答えを失しておりました。確かに、私もいつも思いますのは、ヨーロッパ病とがよく言われますが、どっちかと言えば、これは私の感じでございますけれども、直接税は税の痛みすなわち痛税感を感ずるから、歳出に対する監視の眼が鈍ることが少ない。間接税の場合は消費の段階にかけられますから、選択の自由があるだけにそういう痛税感を比較的伴わない。だから、余り痛税感の伴わない税の方への依存度が高まれば高まるほど、監視の眼を怠っていく傾向もありはしないかということも自分の心に言い聞かせながら、これから本格的な税のあり方等についてたゆまざる検討を進めていかなければならぬ問題だというふうに私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/142
-
143・米沢隆
○米沢委員 大臣、もう結構です。
そこで、総論はさておきまして、今提案されております個別の問題に入ってみたいと思います。
今回の提案の内容は、物品税につきましては、最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等を考慮して、新しく物品税の課税対象の追加及び税率の引き上げを行うということで、トータル、初年度三百五十億、平年度五百六十億の増税提案となっております。
まず第一に、課税対象の追加の問題でありますが、今回はサーフボード等のスポーツ用品、磁気テープ、全自動以外の電気洗濯機、電磁調理器、ビデオディスクプレーヤー等が新たに課税品目に加わって、当初大蔵省が新規課税を検討されましたワードプロセッサー、電子式復写機等々については、ことし夏ごろまでをめどに成案を得るべく今後の検討課題にする、こういうことでございます。この課税対象に組み入れるに当たりまして、その基準、物差しあるいは考え方は一体どのようなことでやっておられるのか、どのようなことを根拠にしながら課税対象に取り込んでいるのか、この点をあらかじめ御説明をいただきたい。そして、いろいろ動きを見ておりますと、従来までの物品税の考え方と今回の考え方とは、ちょっとベースが違ってきつつあるように思いますが、その点についてもどのようなことなのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/143
-
144・梅澤節男
○梅澤政府委員 現在御審議をいただいております五十九年度の物品税法の改正におきましては、ただいま御指摘のとおり、品目にいたしまして五品目、十八物品を新たに課税対象とさせていただくという提案を申し上げているわけでございます。
物品税の課税範囲の問題につきましては、税制調査会の十一月の答申にも明記をされておるわけでございますが、考え方を整理させていただきますと、二通りの考え方があるわけでございます。
一つは、物品税はそもそも昭和十五年にできた法律でございまして、当時の提案理由なんかを読みますと、奢侈品のほか消費に担税力を求めるという観点からできた個別消費税でございますが、戦後、特にシャウプ勧告あたりを境目にいたしまして、かたがた経済成長のもとで財源がかなり潤沢であったというような背景もございまして、物品税の課税範囲については今日まで奢侈品とかあるいは高級な便益品というものに限定する考え方でずっと参ったわけでございます。税制調査会の答申におきましては、今後はその消費に広く担税力を求めるという、物品税本来の考え方に立ち戻って課税範囲の拡大を検討すべきであるという一般的な御指摘をいただいておるわけでございますが、ただいま御提案申し上げております五品目十八物品につきましては、従来の考え方、枠組みの中での課税範囲の拡大というふうに私どもは考えておるわけでございます。
先ほど委員が例示として挙げられました、例えばサーフボード等でございますが、これは現在既に小型ヨットとかゴムボートのたぐい、それから水上スキー等が課税の対象になっております。それからまた、例示として挙げられました電磁調理器でございますが、これは現在既に電子レンジあるいはオーブン等は課税になっておりまして、実は、こういった製品は最近新しく開発されてきた商品である、同時に現在課税対象になっておりますものとのバランスから見ても、ぼつぼつ御負担願ってもいい物品である、そういうたぐいのものでございます。
それから、もう一つの考え方は、これも先ほど委員が御指摘になりましたように、事務用機器等についての課税範囲の拡大。実は五十九年度の税制改正作業の中で、私どもは具体的に検討いたしました。この考え方は、従来のように奢侈品とか高価な便益品等に限定せずに、広く消費に担税力を求めるという観点から、つまり新しい枠組みの中で課税範囲を考えるという行き方でございます。ただ、この問題につきましては、五十九年度の税制改正に当たりましては具体的な成案は得られませんような状況でございましたので、引き続き検討課題とさせていただいておるわけでございまして、私ども税制当局といたしましては、率直に申し上げまして、この種の新規物品については、今後課税範囲の拡大の方向で積極的に検討すべき問題であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/144
-
145・米沢隆
○米沢委員 今おっしゃいましたように、今回まではいわゆる従来の考え方の延長線で取り込みを図った、ワープロ等についてはちょっと新しい枠組みだから今後の検討を待って議論する、こういうふうに理解をしていいと思うのであります。
と同時に、そのことは、例えば奢侈性とか担税力等々いろいろな条件はありますが、一般的にまさに生活必需品的に使用されるようになったら逆に抜かれるという一面もあっておかしくないのではないか。取り込んだものが長い期間を経てかなり生活必需品的になっていく、その場合には物品税の対象から外すとか、逆に下げるとか、そういうことも本当は検討の対象にならぬとおかしいのではないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/145
-
146・梅澤節男
○梅澤政府委員 個別消費税でございます物品税の課税範囲を検討する場合に、いわゆる生活必需品は課税の対象からできるだけ外すべきであるという考え方が底流にあることは御指摘のとおりでございます。ただ問題は、昨今のように所得水準が上昇し、あるいは、先般の委員会でも御議論の対象になったわけでございますが、所得の平準化が進行している中で、消費の態様が非常に変わってまいっております。こういう消費社会の中で生活必需品というのを従来と同じ言葉で、あるいは定義と申しますか、議論をするというところはやはり問題ではないか。
つまり、生活必需品と申しますのは、原点に返りました場合に、観念的に整理いたしますと、やはり基礎的な生存を維持するための商品と申しますか物品ということでございましょうし、それからなるたけ距離が離れておりますような物品が奢侈品であり高級便益品でございますが、その中間的な分野につきまして一所得の上昇等を背景にいろいろな便利な品物が出てまいっておるという状況でございます。例えば三十年代でございますと、電気洗濯機なり掃除機の普及率が四割を割っておるような状況でございましたけれども、現在は九九%まで普及しておる。九九%まで普及している物品を、生活必需品であるから課税の対象から外すという議論は、先ほど申しましたように、生活必需品というのを一体どう考えるのかということでございまして、税制調査会なんかの議論の背景にあります考え方は、生活必需品というのはもう少し厳密に、基礎的な生存を維持するといいますか、例えば食料品とかそういったものに限定すべきであって、普及率が高いからそれは生活必需品であるというふうに言ってしまうということになりますと、現在の消費の実態に対応した税制ということを組み立てる場合に問題はないのかというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/146
-
147・米沢隆
○米沢委員 その議論は後で、課税対象の範囲という問題で議論したいと思うのであります。
事務用品にまで手を広げようとするためには、先ほど当局がおっしゃいましたように、物品税の考え方をちょっと変えねばならない。そこで、その部分について、ことしの夏ぐらいまでに検討しようということをさっき御答弁いただきましたが、このことは、物品税に取り込む商品の概念をすっかり変えてしまう、この作業そのものを検討するのか、それとも当面の事務用品等を取り込むだけの概念を変えればいいのか、どっちの方の御検討なんですか。総体的にすべてを変えてしまうのか、物品税に取り込む概念を変えてしまうのか、それとも事務用品だけ取り込めばいいというような概念の変え方なんですか。どういう御検討なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/147
-
148・梅澤節男
○梅澤政府委員 先ほども申し上げましたように、物品税そのものは、従来法律ができました後の経緯を振り返ってみますと、例えば今おっしゃいました事務用機器等につきましても、かつては課税の対象にしておったわけでございます。それが戦後、シャウプ勧告あたりを境にいたしまして、奢侈品あるいは高価な便益品等に限定する方向で実際の立法政策が進んでまいったということでございまして、物品税の課税根拠そのものは、広く消費に担税力を求める個別消費税であるということは私どもは変わらないわけでございまして、こういうふうに整理させていただけばいかがかと思うわけでございますが、今後、従来の枠組みよりも広く課税物品の範囲を拡大するという考え方は、物品税法に対する考え方を変えるということではございませんで、戦後のこれまでの立法政策とは変わるわけでございますけれども、実は本来の個別消費税としての物品税の基本的な考え方に立ち戻るというふうに考えていいのではないかということでございます。
それから、当面の検討課題は、もちろん具体的には事務用機器を検討の項目として挙げておりますけれども、そのほかに具体的な物品について、いまだ検討する段階ではございませんので、今日具体的に申し上げる段階ではないわけでございますけれども、単に事務用機器に広げて、それで課税範囲の拡大の問題は済んでしまう、足りるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/148
-
149・米沢隆
○米沢委員 今御答弁いただいたことも後でちょっと質問いたしますが、その前に、ことしの物品税増税の一連の流れを見てわかりますことは、先ほども申し上げましたように、当初大蔵省がリストアップしたもので課税が見送りになったものもありますね、事務用品みたいに。最終的に課税が決まったものの税率にもばらつきがありますね。このことは、物品税は対象品目と税率という両面で税務当局の恣意性が働くことを示しているわけでありまして、業界の力関係等もこれあり、課税の公平が本当に確保されているのかどうかという疑問も残る向きがあると思うのであります。だから、大蔵省も税調の前には、あれもこれもとバナナのたたき売りみたいに羅列をして、考えつくものは全部挙げて、関係者に整理をさせるどたばた劇みたいなものが演じられるわけでありまして、そのようなことを考えておりますと、何となく業界の力、圧力団体、何かそんなもので課税品目が決まったり税率が決まったりするような感じが我々としては否めない。
そういう意味で、このような物品税の選択等について、わだかまりを一掃していく必要がある。そのために課税対象の選定基準とか課税基準みたいなものを明確にするか、個別の掲名主義をやめるか、それとも現行のやり方で、大蔵省なりの適当な独断で選定していくというやり方を続けるのか、三つのうちの一つの選択の問題になってくると私は思うのでございます。したがって、今申し上げましたように、今局長がおっしゃったような物の考え方に変えたとしても、どうしても新規の物品税の対象にする場合あるいは税率をどうするかということを決める場合に、何となくもやもやしたものが残る。そこらを払拭するために一体何を考えていらっしゃるのか、どうしたらいいというふうに思っていらっしゃるのか、当局の御意見を聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/149
-
150・梅澤節男
○梅澤政府委員 現在の物品税の課税範囲なり税率構造の問題でございます。かなり税制当局の恣意性によって物品税制が定められておるのではないかという御批判でございますけれども、御案内のとおり、現在の物品税の税率構造は、二種物品でございますが、一五%の税率のところを軸にいたしまして六段階の税率構造になっておるわけでございます。
現在の課税範囲なり税率構造の基本的な考え方でございますが、昭和三十六年に税制調査会の答申がございまして、現行の物品税法の課税範囲を大まかに整理されておるわけでございますが、少し長くなりますけれども、奢侈品それから趣味娯楽品、便益品、嗜好飲料、社交的身固り品という五つの区分がございまして、それぞれの物品についてどういう税率の当てはめをするかということで、一応の頭の整理と申しますか、考え方の整理は行われておるわけでございます。例えば奢侈品でございますと、最高税率三〇%以外のものはないわけでございまして、一種物品になりますとこれが一五%の税率構造になっております。ところが、趣味娯楽品になりますと、最高三〇%から最低五%まで、各物品が各税率区分に張りつけられておりますけれども、それは、趣味性あるいは娯楽性の非常に高いもの、これが最高の税率でございまして、例えば例示で申し上げますと、大型モーターボートとかヨット、それからゴルフクラブ、このたぐいが三〇%でございますが、同じ趣味娯楽品で、例えば小型のモーターボートとかあるいはゴムボートになりますと一〇%とか、一応そういうところで趣味娯楽性あるいは便益性といったものの度合いによりまして、もちろんそれはそれぞれの商品の価格等も考慮してのことでございますが、一応のそういう分類構造の中で課税物品なり課税物品ごとの税率構造は定められておるわけでございます。
今回の改正に当たりましても、先ほども申し上げましたように、今回の場合は今までの物品税の基本的な枠組みと同じ考え方に立っておるものでございますから、新規に開発された物品で新たに課税範囲の対象とすべきものにつきましては、既に課税されておる物品との対比におきまして、それぞれの税率構造の箱の中に入れていくという作業をしたわけでございます。したがいまして、委員の御指摘がございました、税制当局がかなり恣意的に課税物品を拾い上げ、恣意的に税率を決めておるというふうな作業をしておるというふうに私どもは考えておらないわけでございまして、その点はぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
それから、大きな問題として提起されましたのは、個別消費税の体系を維持します限りは、ただいま申し上げましたような個々の商品、物品ごとに課税範囲の対象に取り入れるかどうか、取り入れた場合にどういう税率構造に当てはめるかという従前の作業になるわけでございまして、これは、課税ベースの広い間接税という新しい税制の観点に立ちますと、この作業の性格が全然変わってまいるわけでございます。これは非常に大きな問題でございまして、本日の段階では私が答弁する範囲を超えておる問題でございますので、御了解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/150
-
151・米沢隆
○米沢委員 今回のこの自民党の税制大綱でも、「現行の物品税制が個別物品掲名課税の方式をとっているため課税対象の適格な選定には大きな困難を伴う」云々と指摘しておりますように、いわゆる物品税制における個別掲名主義は限界に来ておるという議論が多くなりつつあります。しかしこの問題は、先ほど局長がお答えになったように、これはまた物品税を概念的に広くしていくということ以上に別の意味を持っておりますから、そのことはまた別にいたします。個別掲名方式が確かに限界に来ておることは、当局の立場からしたらよくわかるのでございますが、我々の立場からしたら、逆に、従来の物品税の課税対象が、主として今おっしゃったような奢侈品ないし比較的高価な便益品や趣味娯楽品に限定するという狭い範囲に限定されて個別掲名主義をとっていたからこそ、それが対象品目が野方図にふえていかない一つの歯どめみたいなものだというふうに私たちは考えるわけでございます。
そこで、まず最初にお聞きしたいのは、中期答申に言いますように、狭い範囲に限定せずに、消費の持つ担税力に着目してその課税対象の範囲を拡大せよということになりますと、物品税品目は、生活必需品的なものは除いて、無限とは言わないまでも果てしなく広がる。行き着くところは、結果的に気がついてみれば、一般的な消費税的なものが物品税の広がりの中で実現していたというふうになってしまうのではないかという危惧の念を我々は持つのでございます。そこで、この中期答申に言う、狭い範囲に限定せずに、消費の持つ担税力に着目してその課税範囲の対象を拡大せよということに関し、当局は前向きに検討していこうという発言がよく見られるのでありますが、その意図はどこらにあるのか、なし崩し的に消費税なるものが、物品税の対象が広がるということで一般化していくことをねらっているのか、それとも現行の物品税体系という範囲内での検討だというふうに理解をしていいのか、まずお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/151
-
152・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは先ほども申し上げましたように、個別消費税としての物品税課税範囲を拡大するという方向で検討するということを税制調査会の答申でも示されておりますし、具体的にそういう方向で作業をいたしたい、検討いたしたいということを先ほど申し上げたわけでございます。しかし、個別消費税はあくまで掲名主義の消費税でございますから、観念上はこれを幾ら広げてまいりましても、広く消費一般に負担を求める課税ベースの広い間接税と申しますか、学問的な意味でのいわゆる一般的消費税とは、本質的に税の性格は異なるということでございます。
現在の私どもの具体的な作業は、現行の物品税の枠内で、現在の消費の実態に対応して税負担を求めても適当であると考えられる物品は何かということを個々に検討してまいるという作業でございまして、さらに具体的には、現在そういうものとして念頭にありますものは、当面は汎用性の広い事務用の機器がその対象としてリストに挙がっておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/152
-
153・米沢隆
○米沢委員 このごろ中曽根総理は、自分が内閣総理大臣である任期中はいわゆる大型間接税は導入しない、こういうようなお答えをなさっております。しかし、大蔵省が出された財政収支等の試算を見る限り、来年の予算編成だって、これはなまなかのものじゃありませんね。約三兆八千億か九千億くらい足らないのでしょう。それを全部歳出カットで切れるわけでもなし、となると、どうしても増収策を講じなければならない。長期的に見ても、それは何らかの増収対策がなければどうしてもやっていけませんよというのが、あの財政収支の言わんとする大蔵省のねらいどころなのであって、あれを見る限り、だれも、ああこれは税金なんて上がらなくてもいいのですななんてことを考える人はいないと私は思うのです。にもかかわらず、中曽根さんが今度は大型間接税をやらないというのだったら、大型間接税以外の何か増税か増収策を考えておられるはずですわな。その部分に私は物品税の拡大が入っていっておるのじゃないか、そんな感じがするのですがね。
まあ、ことしの夏の検討を終えて物品税の対象を広げていく。確かに個別掲名主義だから現在の物品税体系から外れないとおっしゃいますけれども、単に消費の持つ担税力だけに着目するとなりますと、ほとんどのものが広がっていって歯どめなんかかからない。だから、広げれば広げるほど大型間接税と同じような増収効果みたいなものが出てくる。あとはその歯どめを一体どう考えてくれるのかという問題。僕は、やはり中曽根さんの大型間接税を棚上げするということは、どうしても今おっしゃった物品税を拡大するところに救いを求めてなだれ込んでくるのじゃないか、こういう気がするのですが、堀之内さんに聞いてみましょうかね。どうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/153
-
154・堀之内久男
○堀之内政府委員 私は政務次官で、大して決定権もなければ何もございませんで、私見として一応お聞きいただきたいと思いますが、私は今米沢議員のおっしゃったとおりだと思うのです。(「そんな答弁やめろよ」「いいかげんなことはいかぬよ」と呼ぶ者あり)まあ、私見も申し上げるので……(「だめだよ」「やる必要はない」「まあまあ、答えさせよう」と呼び、その他発言する者あり)今お話しになりました財政力、今日の財政を考えますと、大変厳しいことは御承知のとおりなのです。総理が大型間接税をかけないと言われる真意は私どももちょっと理解に苦しむのですが、大型間接税と言われておりますから、中か小かはあるのかなと思いますけれども、六十年度の予算編成に当たってどのような考え方で進めばいいのか、この辺は私どもも事務当局にいろいろ聞きましても、余りいい目は出ておりません。したがって、ことしの自民党の税制調査会でいろいろな議論があります。
〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
その中で、担税力のある者にある程度の税負担をしていただく方が、将来の国の財政の上からは極めて大事じゃないかということも申し上げましたが、四囲の事情で、今年の八月か九月ごろまでにいろいろ検討を勉強しよう、こういうような結論でございます。
私どもも、今言われますこの物品税、これは内容を見直しもしなければ、最初に課税されたものは今日までもずっとそのまま据え置かれておるというのが実態であるし、今御指摘のように、新たに課税範囲を広げるとすればどの辺までこれを広げていくべきかということ、これもやはり与党だけでできる問題ではないし、いろいろと広くそれぞれの御意見を承らなければならない、こういうように私自身考えておりますが、この辺はこれから省内でも、あるいはまた与党自体でも詳しく御検討をいただかなければならぬ重要な課題だ、かように感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/154
-
155・米沢隆
○米沢委員 後ろからいろいろと話がありますように、堀之内先生は謙虚な方でございまして、謙虚な話の中で出た話ですから、僕はそうあれしませんが、答弁そのものは、堀之内次官の個人的な見解を聞く話じゃなくて、政府側の答弁者として座っておられるのでありますから、そこらは今後そういうつもりで御答弁いただきたい。
そこで、主税局長に聞きたいのでありますが、先ほど申し上げましたような、どうも大型間接税による増収策が物品税の課税対象を広げるということで措置されていくのではないかという危惧の念を私たちは持っておるのですが、主税当局として、そのあたりは何かささやきはおりてきていないのかどうか。
それから、自民党税制大綱に言います「直間比率その他の税体系の問題を含め幅広く検討するものとする。」というこの言葉の理解の仕方は、限りなく消費税に近いような物品税体系に流れを変えていくということを含んでいるのではないかと私は思うのだけれども、その点とういうふうに御理解いただいておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/155
-
156・梅澤節男
○梅澤政府委員 まず大型間接税の問題でございますけれども、これは本国会におきましても、大蔵大臣、総理がたびたび答弁されておりますように、一体大型間接税とは何かという基本的な問題があるわけでございます。例えば政府税調の累次にわたる答申を見ましても、大型間接税という言葉は一度も出てまいらないわけでございまして、それぞれ使われる人、その場所によりましていろいろな響きを持っている。したがいまして、大型間接税の議論が国会に出ました場合でも、総理なり大蔵大臣はその状況のもとで、そういうことをお断りされた上でいろいろ議論をなさっておるということでございます。
それから、税制調査会の答申で示されました物品税の課税範囲の拡大の問題でございますけれども、これは税制プロパーの問題といたしまして、最近における消費の実態、こういう消費社会に適合した消費税制という観点から見ました場合に、課税範囲を広げるという方向で検討する方が税制のあり方としては適当であるということでございまして、トータルとしてそれが増税になるか減税になるかというのは、租税政策全体あるいは財政政策全体の話でございます。
この種の話は、例えば六十年度予算は一体どういう姿になるのかということになりますれば、これは六十年度の予算編成の段階で、歳出なり歳入構造の見直しの中で具体的な方途が見つかるという話でございまして、物品税の範囲の拡大を考えておるから、この方向で政府は当面増税を考えておるのだというふうな理論的な結びつきではない。あくまで税制プロパーの話といたしまして、所得税、法人税、間接諸税全体で税体系をつくっておるわけでございますから、その体系が適正な負担を求める体系というふうに考えました場合には、現在の個別消費税たる物品税については、むしろ課税範囲の拡大という方向で検討するのが租税政策としての行き方であろう。しかし、繰り返しますけれども、それがトータルとして増税になるか減税になるかというのは、また別個の問題だと御理解賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/156
-
157・米沢隆
○米沢委員 次に、課税率の引き上げの件でありますが、これまた自動車がねらい撃ちに遭っております。これは結果的には大衆にかかってくるものでございまして、課税物品相互間のバランスから見て、負担の増加を求める余地があると認めての税率の引き上げである、こうおっしゃっておるのですが、負担の増加を求める余地があるというのは国民なのか業界なのか、どこからそのような論拠が出てきておるのか、御説明いただきたい。これは業界もなかなかの過当競争でございまして、ディーラー等のマージンリストを見ておりますと大変な状況ですね。こういう意味では、このような増徴というものが自動車業界、特に流通段階に大きな消費混乱を起こす要因にもなりかね狂いと思うのでありますが、その点いかが御説明いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/157
-
158・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回、自動車につきまして税率の引き上げをお願いしておる考え方は、こういうことでございます。
ただいま御指摘になりましたように、現在の物品税の税率構造の中で自動車について若干引き上げの余地があると認められるということでございますが、これは先ほど御説明申し上げました現在の物品税の税率構造の中で、自動車は小型乗用車一七・五%の税率でございます。これは五十六年度の税制改正で一七・五になったわけでございまして、それ以前は一五%でございました。私どもの考え方の背景にありますものは、自動車という物品に着目した場合、一五%という税率は、現在の物品税の税率構造の中では相対的にやや負担が低いのではないか。と申しますのは、現在の税率構造の直近上位にあります二〇%の税率構造の中の物品を見てまいりますと、例えば大型の冷蔵庫、それからルームクーラー、こういった物品は実は二〇%でございますが、こういった物品の便益性あるいは一個当たりの商品価格から見ますと、小型乗用車、現行一七・五%という税率はもう少し二〇%の方に近づけていただいてもバランスは崩れない、こういう考え方が基本にあるわけでございます。
実は五十六年度の税制改正のときにも、この一五%を一挙に二〇%に引き上げるという方向で税制当局は検討したわけでございますけれども、関係方面の議論とか、ただいま委員がおっしゃいました業界あるいは市場に対する影響等を考えまして一七・五%にとどめさせていただいた。今回もそういうことで、一七・五%を二〇%に近づける方向で検討させていただいたわけでございますけれども、これまた一挙に二・五%の引き上げをお願いすることについては、自動車の消費あるいは業界に対する影響等についてよほど慎重でなければならないということで、小型乗用車につきましては一%ポイント、軒あるいはライトバン等につきましては〇・五%ポイントの引き上げ幅にとどめるということにさせていただいたわけでございます。
例えば一%の税率の引き上げ幅でございますと、現在売りに出されております代表的な銘柄商品で見ますと、小売価格に対する影響が約〇・六%でございます。五十六年度、二・五%引き上げましたときにも、やはり小売価格に対する影響は二%弱ぐらいの影響でございましたけれども、その後の自動車の市況を見ますと、引き上げ分は全部小売価格の引き上げによって吸収されておりますし、それによりまして自動車の需要が非常に落ちたという傾向にもないわけでございます。もちろん税率を引き上げました時点では、短期的に仮需あるいはその反動という状況はございますけれども、しばらく期間をならしてみますと、小売価格に対する影響度がさほどでない限りは、自動車の業界なり自動車の市況に税率の引き上げが非常に大きな影響を及ぼすということはない。今回、一%幅の引き上げでございますので、何とかこの点は御理解を賜りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/158
-
159・米沢隆
○米沢委員 もう時間が残っておりませんので、最後に、酒税の部分を一括して質問したいと思います。
政府は、今度の税制改正におきまして、酒税につきましては従量税率の引き上げ等によって三千二百億円の増税を計画しておられます。その結果、酒税収入は二兆二千三百七十億円に達し、税収入総額三十四兆五千九百六十億円の六・四%を占めて、従前にも増して間接税中最も高い割合を示しておるわけであります。すなわち、酒税負担は他の間接税に比べて余りにも高過ぎる。酒税では全体として従量税率適用が多いわけでありますから、従量税率では消費価格は上昇しても税収額は上昇しないために、適正な負担水準を確保するということで、数年置きに改正が行われてきておりますので、今回もその趣旨にのっとった改正という面もあると思います。しかし、既に小売価格に占める税金分は極めて高いことも忘れてはならないと私は思うのであります。酒税は嗜好品課税とはいうものの、大衆課税になるものでありますから、現在以上に増税すべきではないというこの二点について、どういうふうにお答えいただくのか。
第二の問題は、清酒の現行税負担率は、ビールやウイスキー等に比べればまだ低いと言えるわけでありますが、酒類消費数量の伸びが全体的に鈍化している中で、特に清酒の伸び率がマイナスを記録していることは御案内のとおりであります。同時に、清酒業界というのは、ビールやウイスキー等が大企業性の業種であるのに対しまして、中小企業性業種に属するものが大変多うございます。企業者数二千六百一者中中小企業者数は二千五百九十者、九九・六%が中小企業に属する企業でございます。しかも、国税庁資料によりますと、清酒製造業者の三分の一が赤字で、赤字業者を含めて二分の一以上が税引き前利益五十万円以下の過小利益ということであります。
つまり、清酒業界は需要が減退し、経営に苦しんでいる業態であると言っても、これはそのまま言い過ぎではありません。だから、清酒業界は需要振興のため相当の努力を行っておられますし、また、中小企業近代化促進法に基づき、第四次構造改善事業の計画策定に目下懸命の努力を行っているということで、今回の法案にも提案されているとおりであります。このような際に追い打ち的な増税を断行することは、業界の近代化に冷や水をかけ、清酒業界を逆に衰退に陥れることになるのではないかというこの疑問に関して、どのようにお答えになりますか。それとも適当につぶれた方がいいという趣旨ならば、これはまた話は別であります。
それから第三に、そういうことで、今回の増税によりまして清酒業界が受ける打撃は甚大であるわけでありまして、ほかの酒類も同じような影響があるという意味では同列に議論をしなければなりませんが、特に清酒については増税時期等についても考慮するのが、大蔵省としては財源物資を長生きさせる逆の方法につながるのではないか、そのように思うのでありますが、まとめて御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/159
-
160・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回、五十六年度に引き続きまして、酒税につきましてまた税率の引き上げをお願いしておるわけでございます。
酒税につきましては、これは特殊な嗜好飲料であるということで、各国ともいわゆる財政物資といたしまして、かなり高い税負担を求めているわけでございます。ただ、我が国の場合、昭和三十七年に酒税法の大改正がございまして、同時に大減税が行われました。それから四十年代を通じまして、これは従量税でございますし、かたがたその過程におきまして、いわゆる大衆酒等につきましてはなるたけ負担を上げない、あるいは一般的に税負担を引き上げる場合でもこれを縮小するというふうな経緯も経まして、小売価格に占めます税負担の割合はずっと下がる傾向がございました。五十年代に入りまして今回四回目の税率の改正をお願いすることになりますけれども、例えばビール等を代表にして申しますと、今回の引き上げ幅は水準的に見ますと大体昭和四十五年くらいの水準になるということでございます。もちろん税負担の割合が高ければ高いほどいいということを申し上げるわけではございませんけれども、傾向的に税負担が下がる中にございまして、現在の財政事情、それから現行の税制の枠内で何とか対応するという場合には、やはり相当部分の酒税の引き上げをお願いせざるを得ないという状況にあるわけでございます。
それから、そういった税負担の引き上げをお願いいたします中で、もう一つ、今回の酒税法改正の特徴的な点は、これもたびたび申し上げておりますように、原料米が食管制度のもとで非常に市場が制約されて、高い原料で手当てしなければならない。それから生産側の事情が、非常に零細な数多くの業界によって供給されておるという問題。それから、消費の態様から見まして、傾向的に数量が伸び悩んでおるという状況を見まして、清酒につきましては特段に税負担の引き上げ幅を調整し縮小することといたしておるわけでございます。例えば清酒の場合、二級酒で今回一五%弱の負担の引き上げをお願いしてございますけれども、小売価格に影響いたしますのは一・九%、二%弱ということで、いろいろな酒類の中でも比較的引き上げの影響が少ないというふうな配慮もいたしておることを、ぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
それから、税率の引き上げを各酒類一斉に五月一日からということでお願いしておるわけでございますが、清酒についてはいろいろな状況を考えて、少し配慮してはどうかという御示唆であったかと思うわけでございますけれども、従前、酒税の税率の引き上げをお願いいたします場合には、各酒類一斉に同じ時期、五月一日からお願いするということで、それなりに、市場はそういう前提で動いておるわけでございますので、酒類ごとに引き上げ時期を変えることは、かえって市場を混乱させる要素に相なります。つまり、税制によって市場に不当な影響を与えるということはやはり極力避けなければならないという問題がございます。また、引き上げ時期をまちまちにいたしますと、手持ち品課税で執行当局の手間も非常に複雑になるという問題もあるわけでございますが、そういった技術的な問題のほかに、やはり引き上げをお認めいただく場合にはぜひ五月一日から一斉に引き上げるということでお認め願いたいというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/160
-
161・米沢隆
○米沢委員 その最後の部分等は大臣ともっと議論をしたかったのでありますが、大臣不在でありますから、きょうの例の私どもの申し入れ書に沿った回答書を読みながら、今後の審議に参加させていただきたいと思っております。
最後になりましたが、先ほどの堀之内先生の御発言、大臣不在中責任を持って座っておられると思ったら、どうもそうじゃないような発言がございましたので、それは訂正していただいて、今後質疑がうまく回るように、やはり責任の一端を担ってもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/161
-
162・堀之内久男
○堀之内政府委員 私の先ほどの発言で大変御迷惑をかけましたことを、まずおわび申し上げます。
大臣不在中、こうして政務次官のもとで御審議いただいておりますことに大変感謝を申し上げておりますが、今後とも責任を持ってこの委員会で答弁をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/162
-
163・米沢隆
○米沢委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/163
-
164・瓦力
○瓦委員長 午後二時三十分から再開することとし、休憩いたします。
午後一時三十四分休憩
――――◇―――――
午後二時三十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/164
-
165・瓦力
○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。箕輪幸代君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/165
-
166・簑輪幸代
○簑輪委員 最初に物品税について御質問をいたします。
この前、昭和五十六年の税制改正で物品税の増税が行われまして、その際、物品税の課税対象基準として奢侈品、比較的高価な便益品、趣味娯楽品に課税するという従来の考え方は変わらないと言われましたけれども、今回の増税に当たっても基本的にその違いはないと伺ってよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/166
-
167・梅澤節男
○梅澤政府委員 五十九年度の物品税の課税範囲の拡大でただいま御提案申し上げておりますものは、ただいま委員が御指摘になりました奢侈品、それから高価な便益品、趣味娯楽品という従来の枠組みの範囲内のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/167
-
168・簑輪幸代
○簑輪委員 昭和五十六年の改正で全自動洗濯機が新規課税されましたけれども、全自動でない洗濯機は非課税のままでした。いわゆる洗濯機が課税対象として考えられ始めてからの経過というのをずっと述べていただきたいと思います。
それからさらに、昭和五十六年改正で全自動でない洗濯機が非課税とされた理由及び今回新たに課税対象にする新たな理由、それは一体何なのかをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/168
-
169・梅澤節男
○梅澤政府委員 電気洗濯機の課税の経緯でございますけれども、昭和十四年、戦前でございますが、創設されました当時は、小売段階で家庭用、クリーニング用を問わず課税とされたのが最初でございます。
十九年に法改正がございまして、蔵出し課税に移行いたしましたけれども、課税範囲については同じでございました。
戦後、昭和二十六年になりまして、業務用の例えばクリーニング店等で使われます大型の洗濯機が非課税となっております。
それから昭和二十八年でございますが、この時点で当時の使用電力百ワット以下のもの、したがいまして考え方といたしましては、家庭用の洗濯機のうち小型のものを非課税にするということでございます。この百ワットという非課税の基準は、その後昭和四十一年に百五十ワットに引き上げられております。小型の洗濯機の非課税の当時の考え方は、やはりなるべく小型の洗濯機の普及を図るという考え方が背景にあったと言われております。
五十六年になりまして、御指摘になりましたように全自動洗濯機を新たに課税対象として取り入れさせていただいたわけでございます。これは、先ほど来物品税の御質疑が当委員会でございまして、私どもお答え申し上げておりますように、洗濯機なんかもその好例でございますけれども、昭和三十年代に普及率が大体全世帯の四割見当でございましたが、現在ではもう大体九九%、ほとんど一〇〇%に近い普及率になっております。それから非常に性能のいいものも出てまいっております。したがいまして、その背景にはもちろん所得水準の向上に伴う生活水準の上昇あるいは所得の平準化といったようなものがあるわけでございますが、そういった消費の実態に着目いたしまして、なるべく便益の高いものにつきましては物品税の課税範囲に取り入れさせていただく。これは便益品を課税対象にするという物品税のこれまでの枠組みを超える考え方ではないわけでございますけれども、そういうことで漸次広げてまいって、昭和五十六年に全自動洗濯機を新たに課税対象に取り入れたわけでございます。
その時点でも二槽式のものをどうするか、今回課税対象に取り入れることをお願いしておりますものをどうするかという議論はあったわけでございますけれども、戦後になりまして久方ぶりに新しく洗濯機を課税対象に取り入れるというふうなものもございまして、電気洗濯機の中では便益性が高い全自動洗濯機をまず課税対象に取り入れる、その場合に税率も一五%でお願いするということでございましたが、今回、そういう全自動洗濯機以外の二槽式の洗濯機につきましても、例えば似たような価格帯にございます電気掃除機とか扇風機等が既に課税対象になっているということにかんがみれば、この際、全自動以外の洗濯機についても何がしかの物品税の負担をお願いするということも、あるいはお認め願えるのではないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、全自動洗濯機の場合と比べまして、二槽式のものは、その便益性とかあるいは一個の商品価格も全自動洗濯機よりはいわば安価な商品でもございますので、その点を勘案いたしまして、税率につきましては一ランク下の一〇%の税率で負担をお願いするという考え方に立っているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/169
-
170・簑輪幸代
○簑輪委員 いろいろ御説明いただきましたけれども、余り納得のできる説明じゃないですね。結局、そういう順序で課税したので、何とか理屈をつけなければならないというような感じで受けとめました。といいますのは、そもそも洗濯機が出てきたときに課税をされて、それから全自動が出てきたのでその全自動も課税してというのならわかるのですが、全自動が先に課税されて、それで普通の洗濯機が後から課税されていくというのは、まあこの際、財政事情から何でも取り込まなければいけないから洗濯機全部に課税しようじゃないかというような、非常に恣意的な感じがするわけです。
それから、洗濯機の普及率はほぼ一〇〇%に近い。ほとんどの家庭の生活必需品と言ってもよいものだというふうに思います。生活必需品とは何かという問題について先ほどの議論もありましたけれども、私どもは、生活必需品というのが基礎的な、例えば食糧だけというようなことではないというふうに思うのですね。それぞれの文化の程度、生活水準、そういうものに合わせて必需品というものは変化してきて当たり前のことであって、原始時代とは違うわけですから、必要なものが変わってくるのは当然だと思うのです。
比較的高価な便益品というような考え方で考えていった場合でも、それは奢侈品とか趣味娯楽品に匹敵するようなものでなければならないわけで、一〇〇%普及の物品ということになってきますと、それは比較的高価な便益品というたぐいではなくて、生活必需品ということになると思うのですね。前にもこの問題で質疑をしたときに、生活水準が上がって余裕があるというふうな認識もあるようにも答弁されましたけれども、洗濯機を買うのは余裕があるからではないんですね。生活に欠かせないという状況になっておりまして、もし必需品でない、ぜいたく品であるというのならば、ではどうして生活したらいいのか。たらいと洗濯板でごしごし洗えばよいのかというようなことになるわけですが、そんなことは考えられないわけで、現在の文化水準、そして私たちの生活水準というのから考えての必需品という考え方でなければならないというふうに思うのですね。その辺では、主税局の方としては一体どういうふうにお考えになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/170
-
171・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは委員御指摘のとおり、洗濯機が現代生活の中でぜいたく品であるというふうには言えないと思います。ただ、ぜいたく品と言えないということは、結局物品税の課税範囲、私どもは今のところ、従来と考え方を変えていないということを繰り返し申し上げておるわけでございますが、それにいたしましても、ぜいたく品であるかないか、奢侈品であるかないかという区分で物品税の課税範囲を取り仕切るというのは、かえって難しくなっているということを逆に物語っているのではないか。つまり、普及率が高いからそれは生活必需品であって、したがって生活必需品だから課税範囲の対象から除くべきであるという論法が実は通らないわけでございますね。それは、従前の時期と、今のように所得水準が上がり所得が平準化している段階では、生活必需品という言葉そのものを吟味して使わなければならないと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/171
-
172・簑輪幸代
○簑輪委員 それはおかしいと思うのですね。逆に、文化水準が上がってきたからこそ生活必需品というものも変わってくるという認識ですから、いわゆる大蔵省が言うところの生活必需品だけで生活しようと思いますと、それこそたらいと洗濯板になりますし、はたきとほうきということになりますし、おかまをまきで炊くというようなことになってこざるを得ないわけですね。そういうものではなくて、現在の人間生活、文化生活ということで必需品を考えていくことこそが当然の考え方ではないかと私は思うわけです。だけれども、まあ基本的に今おっしゃるのは、税金をかけてしまおうと思うわけですから、それを何とかして必需品でないと言わざるを得ないためにおっしゃるのだと思いますので、余りそれを議論していてもしようがありません。
中期答申では、「消費の持つ担税力に着目して課税するという物品税の基本的性格に立ち返り、」という言い方をしておりまして、範囲を果てしなく拡大していくことが示唆されておりますけれども、消費の持つ担税力に着目して課税するということになりますと、どんな物品でも課税できるということになってしまうと思うのです。いかなる物に税金がかかっていても、それを買う以上は担税力があるし、買えない人は担税力がないんだという理屈になれば、すべての物品に課税できるということになって、これはもう物品税というものの考え方が通らなくなってくるのではないかというふうに思います。実際は、財政事情によって都合よく広げることのできる基準があってないようなもので、これでは物品税というもののあり方について問題があると思います。
私は、物品税についての課税対象基準というものが法律で明らかになっていないために、いろいろこういうふうな議論もされていると思いますけれども、この際、物品税というものについての課税基準について、論議の余地なく明確になるような基準をきちんと法定するというようなことは考えてもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/172
-
173・梅澤節男
○梅澤政府委員 現行の物品税法ができましたのは昭和十五年でございます。そのときには、奢侈的な消費及び消費に担税力を求めるというのがこの物品税法制定の基本的な考え方でございました。
その後の立法政策の推移を見ますると、ちょうど敗戦直前の昭和十九年当時、ほとんどの物品と申しますか、非常に課税範囲が拡大されました。税率も非常に高くなりました。戦後になりまして、特にシャウプ勧告あたりを境目といたしまして、むしろ立法政策上は課税範囲の縮小という方向で進んでまいったわけでございます。そのときの考え方は、奢侈晶それから高価な便益品、趣味娯楽品等に限定する考え方で今日まで来たことは事実でございます。
ただ、これはしばしば私どもの考え方を申し上げておりますように、また税制調査会の答申でも述べられておりますように、昭和三十年代半ばから今日に至るまでの我が国の所得水準なり生活水準の上昇、所得平準化といったようなものを背景といたしまして、消費の態様が非常にさま変わりしてまいっておるわけでございます。そういった消費のさま変わりと申しますか、社会経済の変化に対応して今日の時点で個別消費税としての物品税を考えた場合に、従来のような狭い範囲の課税範囲の拾い上げ方、あるいは従来のような、奢侈品とそうでないもの、あるいは高級品と大衆商品といったような尺度で裁断できないような消費の実態があらわれてきておるわけでございます。したがって、従来のような尺度ではなくて、現在の消費の実態を見ながらそこに担税力を求めていいのかどうかということが、現下の一番重要な眼目になるのであろう。
ただ、その場合におきましても、これはあくまで個別消費税でございますので、物品ごとにこれが課税範囲として適正かどうかということは個別に考えていくということにならざるを得ないわけでございます。背景といたしましては、やはり厳密な意味での生活必需品を課税対象にするということは、物品税の基本的な考え方にはなじまないということははっきり申し上げられるわけでございますけれども、具体的にどういう物品を課税範囲の対象に取り上げていくかということは、消費の実態がどういうふうに推移するかというふうな面、それから年々の税制改正におきまして各方面の意見を聞きながらコンセンサスが得られるところで対処していくということが、やはり現実の立法政策になるのではないか。一律に機械的な基準を定めて、そこで物品税の課税対象にするかどうかを法律で基準を定めるということは、事実問題としても非常に困難な問題ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/173
-
174・簑輪幸代
○簑輪委員 物品税の範囲を果てしなく拡大していくことをいかに防ぐかということが重大な問題であるというふうに私は考えて申し上げているわけでございます。
それからまた、政府税制調査会の中期答申では、「消費のサービス化が進展している最近の状況を考慮すると、運輸、通信等を含め各種のサービスに対する課税のあり方について幅広く検討すべきであるとの意見があった。」こう言っておりますけれども、大蔵省が今後税制の問題で、物品税の課税範囲の拡大だけでなく、新たなサービス課税で対応していくということが考えられているのではないかというふうに思いますけれども、このサービス課税の問題ではどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/174
-
175・梅澤節男
○梅澤政府委員 税制調査会の答申に今委員が御指摘になりましたようなことが示されておるということは、御指摘のとおりでございます。
現在、国税の中でサービス課税というものを強いて挙げますれば通行税、入場税がございます。それから地方税では遊興飲食税あるいは娯楽施設利用税、こういったものが現行税制の中では個別サービス税の例になると思うわけでございます。
今後の消費社会の進展を考えました場合に、単なる物の消費だけではなくて、サービスの消費に着目すべきであるという着眼点につきましては、私どももこれを十分念頭に置いて、今後の税制の検討なり研究をいたさなければならないと考えておりますけれども、今の時点で、具体的に現行の税制――国税で申しますれば通行税なり入場税以外の個別のサービス課税を、導入を前提に具体的に研究しておるという段階にはまだございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/175
-
176・簑輪幸代
○簑輪委員 個別の新たなサービス課税を研究しているということはないというお答えですけれども、物品税の課税範囲の拡大とあわせて考えてみますと、今後大型間接税導入ということで一挙に解決されていくのかなというような危惧の念も持つわけです。そういうことのないように、私どもは大型間接税、一般消費税、どんな名前であろうとも、これ以上の増税については絶対反対であるということを強く申し上げておきたいと思います。
間接税というのは、特に担税者と納税者が異なるために、税痛を感じさせないこと、それから、選択性があるというふうに言われておりますけれども、間接税を負担しないで生活することは実際上困難であること、また、税は本来累進課税こそ公平というふうに言われておりますのに、間接税は所得の低い者ほど税負担率の高い逆進性があること、こういうことなどで、租税民主主義から見て重大な問題があるというふうに考えます。
今回、減税の見返り財源として間接税増税を行うというやり方は全く納得できなくて、より一層不公平を拡大するものであるというふうに言わざるを得ません。殊に、減税の恩恵に全く浴さない非課税世帯にも間接税負担が強化されるわけですから、これは許せないことだというふうに思うのです。今回の間接税増税に当たって、所得税の納税世帯と非納税世帯の間接税負担率あるいは所得階層別間接税負担率がどうなっているかを調査の上で、このような提案がなされているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/176
-
177・梅澤節男
○梅澤政府委員 階層別の税負担の問題でございますけれども、毎年国会に、私ども、総理府の家計調査によりますところの十分位の単位で税負担の状況を資料として提出させていただいております。
今国会には、五十五年分の家計調査の分まで提出申し上げておるわけでございますが、そこで看取されます傾向は、御承知のとおり、間接税につきましては総体として逆進的な負担の傾向があることは事実でございます。なかんずく嗜好品課税、一番逆進的な形で強く家計調査であらわれてまいりますのはたばこでございます。その次に、たばこほどではございませんけれども、酒税がやや逆進的な傾向を持っております。物品税は比例的かむしろ累進的な傾向を示しておりますが、トータルとして逆進的な傾向になっていることは事実でございます。
ただ、税負担の議論をいたしますときにいつも申し上げておりますことは、税体系全体としての負担をどう考えるのか、そこで議論がされなければならない。我が国の場合、所得税、住民税を含めまして個人所得税が顕著な累進構造を持っておりますので、この二つをつなげ合わせますと、低収入の世帯と高収入の世帯の間のトータルの負担率は、およそ負担率で三倍ぐらいの差がございますから、その限りでは税負担全体としては累進的な構造を持っておるということでございます。
今回お願いしております五十九年の税制改正の結果、増減税含めて家計に一体どういう影響があるかということでございますが、これはまだ試算の域を出ないわけでございますけれども、家計調査で一定の仮定に立ちまして五分位で分析をいたしますと、酒税につきましては、やはり微弱ではございますけれども負担の逆進的な傾向が出てまいります。一方、物品税につきましては、今回の負担の引き上げで、これはなかなか推計が難しいわけでございますけれども、ほとんど全世帯比例的であろうということでございます。それから、これに所得税並びに住民税の減税を重ね合わせますと、少なくとも課税されている所得税なり住民税を納めている世帯につきましては、トータルとしてほとんどの世帯類型につきまして、結果として減税、それから酒税、物品税による増税分を相殺いたしましても税負担の軽減効果はあらわれておる。ただ特徴的なことは、今回第三分位、第四分位、年収額でいいますと四百万から五百万ぐらいの世帯の負担の軽減の効果がかなり顕著に出ているということでございまして、今回の所得税なり住民税の減税のねらいが主として中堅所得階層に重点を置くというふうな点が、あるいは反映されておるのではないかと考えておるわけでございます。
それから、減税をされない、あるいは所得税なり住民税を納めてない世帯にとってはネットの負担増になるのではないかという御指摘でございますが、これは理論的にそのとおりだろうと思います。ただ、この酒税の今回の負担の引き上げは、トータルで見ますと消費者物価で、マクロでございますけれども〇・一二ないし〇・一六か一七ぐらいの影響を持っておりますので、その限りで負担増をお願いすることは事実でございますけれども、この点につきましても、そういう低世帯に対する負担の問題というのは、酒税という一間接税目だけをとって負担の議論をするというよりは、財政支出全体の中で所得再配分が行われておるわけでございますから、その中での酒税の負担のウエートというのはそんなに大きなものではないということで、総合的な御判断の上御理解を賜りたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/177
-
178・簑輪幸代
○簑輪委員 あれこれおっしゃいましたけれども、結局のところ、何としても財政事情からこうせざるを得ないので、多少所得の低いところ、弱いところに負担がかかっても我慢せいというような感じで、私は、こういった増税のあり方は根本的に間違っているということを申し上げざるを得ない。こうしたやり方は一層不公平を拡大するばかりですから、ぜひやめていただきたいということを強く申し上げたいというふうに思います。
次に、酒税に関連して、お酒にかかわる幾つかの問題点を指摘しながらお尋ねしたいと思います。
最近は、特に婦人や老人、未成年者に大量飲酒者が増大しているというふうにも言われます。それから、アルコールに関連して健康障害や妊婦の異常児出産とか、または交通事故や家庭破壊等の社会問題も多発しております。早急な対策が関係者から強く求められておりますけれども、厚生省は飲酒人口、アルコール関連問題などの実態をどのように把握しておられるのか、傾向的で結構ですので、簡単にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/178
-
179・野村瞭
○野村説明員 お答え申し上げます。
国民生活が豊かになるにつれまして、また核家族化の進展に伴いまして、我が国の飲酒人口はふえつつございます。現在約五千五百万人おると考えられております。このうち大量飲酒者と称せられる人たちは約百八十九万人いると推定されます。また、アルコール中毒等の関連疾病も増加する傾向にございまして、飲酒習慣と健康問題に対する国民の関心が高まっているところでございます。
私ども、このようなアルコール問題の重要性にかんがみまして、従来からアルコール中毒対策にいろいろな形で取り組んできているところでございます。一つは、保健所等におきまして、地域住民に対する適正飲酒の普及活動をいたしております。また、全国に精神衛生センターが四十一カ所ほどございますけれども、ここにおきまして大量飲酒者に対する酒害相談事業を行っておりますし、また医師、保健婦等アルコール問題についての専門従事者に対しまして研修を行っておるところでございます。今後もこれらの対策の一層の充実を図ることといたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/179
-
180・簑輪幸代
○簑輪委員 この問題については先進諸国でも大変深刻な問題になっておりまして、特に未成年者とか婦人にアルコール中毒が多発するという傾向が指摘されております。社団法人アルコール健康医学協会のお話によりますと、日本も同様の傾向にありまして、特に妊娠初期のいわゆる胎芽期である妊娠三カ月末までの母体の大量飲酒と奇形児出産の関係は否定しがたい、早急な対策が必要であるということが言われております。今も御指摘のように、核家族の問題、孤独な老人がふえて大量飲酒に陥るという傾向もあらわれておりますし、正確に実態を把握することと、このような問題が起きないような予防対策が十分に行われる必要があると思います。
厚生省がまとめております「国民衛生の動向昭和五十八年特集号」というのによりますと、婦人の飲酒人口は四五%というふうになっておりますけれども、アルコール健康医学協会や関係者の御指摘によれば、五〇%を超えていることは確実だというふうにも言われています。厚生省の数値は十年以上も前のもので、実態を反映していないのではないかとも思われるわけです。特に妊婦の飲酒と奇形児出産、それから未成年者の健康破壊や急性アルコール中毒死、ついこの間十七日にも、高校生が送別コンパですか、急性アルコール中毒で死亡しておりますけれども、大変な問題になっているわけです。こういう問題に対して予防の措置とか、アルコール中毒になってしまった人が社会復帰するための施設整備を含めた対策とか、そういうものが必要になると思います。厚生省として、この問題について特に対策を講じる動きがあるやに伺っておりますけれども、どんなふうになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/180
-
181・野村瞭
○野村説明員 先ほどお答え申し上げましたように、従来からいろいろな対策をとっているところでございますが、今先生御指摘のような問題もございますので、昨年十月に公衆衛生審議会に新たにアルコール専門委員会を設置いたしまして、アルコール保健問題の実態の把握をするとともに、今後の施策のあり方を検討することといたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/181
-
182・簑輪幸代
○簑輪委員 問題が徐々に深刻になっておりますので、ぜひこの問題についての的確な対策をお願いしたいと思います。大蔵省としても、税金の引き上げのことばかりを考えないで、当然こういう問題についてもしっかり目を向けていただきたいというふうにも思っております。
特に、昨年春の、東京都が行った都立教護院に保護された非行児童生徒の実態調査では、七十八人のうち父母がアル中、酒乱で家庭崩壊になっているものが三〇%にも及んでいることが指摘されております。非行化と父母の飲酒は深い関連があり、さらに未成年者の飲酒へとつながっております。すべての児童生徒の健全な育成という問題で、私どもが子供たちを守る立場で取り組まなければならないと思います。
大正十一年に制定されました未成年者飲酒禁止法というものがございますが、この立法趣旨は一体どういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/182
-
183・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
未成年者が肉体的にも精神的にも未完成であるということで、その健全育成を図るという見地から未成年者飲酒禁止法というものが制定されたと伺っておりまして、この条文の中に、「酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ」未成年者の「飲用二供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス」、こういう規定がございます。私ども大蔵省といたしましては、この「酒類ヲ販売」するという業者を監督いたしております関係上、この立法趣旨につきまして、行政面で十二分に反映してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/183
-
184・簑輪幸代
○簑輪委員 お酒は適量楽しく飲めば、ストレスの解消とか人間関係の潤滑油としてもその効用が大きいもので、有益なものだとも思います。ところが、酒類の消費量、それから飲酒人口が年々増大して、その中で特に大量飲酒者、一日平均百五十ミリリットルの純アルコール飲料消費者、ビールで六本、ウイスキーのダブルで六杯、清酒五合、こういう大量飲酒者が増大しているというのが問題だと思います。昭和五十年に百五十四万人だったものが五十六年には百八十九万人と、先ほどのお話でもございました。こうした中でアルコール依存症、それからいわゆるアルコール中毒、精神病患者がふえて、社会問題になっているわけです。
それで、アルコール健康医学協会で「適正飲酒の手引」とかあるいはまた「適正飲酒ガイドブック」というようなものを出しておりますけれども、その中で「強度の欲求不満やストレスが人々を襲う現代の飲酒のあり方は孤独酒、不安酒、欲求不満酒、抑圧からの解放酒といったような飲酒も多くなっています。そうした現実逃避的な飲酒は、アルコール依存への道をたどる問題飲酒者となる可能性も大きいと考えられます」というようなことが指摘されているわけですね。
未成年者の健全な育成ということから見て問題があるということだと思います。未成年者の飲酒が喫煙とともに禁止されているにもかかわらず、実は自動販売機がどこにでも設置されておりまして、いつでも購入できるという状態になっているわけですが、こうした実態は販売面から見て、さっきの法律から考えても非常に問題があると思います。
国税庁は、警察庁からの未成年者の飲酒防止対策強化要請を受けて、昭和四十六年十月に酒類販売業免許等取扱要領の一部改正を行って、自動販売機には販売責任者を定めること、それから未成年者の飲酒禁止ステッカーを貼付することなどを定めました。また、自動販売機による新規酒販免許は原則として行わないというような通達も出しているようです。また、全国小売酒販組合中央会から小売酒販組合連合会あてに連絡が出されて、昭和四十九年に、夜十一時から翌朝五時までの夜間販売の自粛申し合わせというのをやっているわけです。
しかし、実情は、この取り決めの実効性がなかなか担保されていないわけです。昭和五十二年十月の行管庁の調査を見ましても、未成年者飲酒禁止のステッカーさえ貼付していないものが一三・四%、夜間販売の自粛をやっていないものが六七・六%もあります。管理責任者を決めるだけ、張り紙するだけというだけでは、未成年者の飲酒や喫煙を防止することはできない実情です。未成年者の目の前に、至るところに飲んでみたいもの、吸ってみたいものを置いておいて、そしてこれは法律で禁止しておりますということでは、大人のとる態度としていかにも無責任だと思います。真に未成年者の健全育成を願う立場での、実効性ある対策を即刻とらなければならないと思うのです。
昭和五十一年十二月の国税庁間税部酒税課の調査によれば、アメリカではアルコールの自動販売機は一切認められておりません。広告宣伝については、テレビ、ラジオでは蒸留酒については一切認められず、新聞、雑誌では、専売制の州では事前承認制その他の制限がありますし、飲酒中の人物描写、未成年者を刺激するもの、不道徳なもの等は禁止されており、免許制の州でも、過度の飲酒をあおるもの、飲酒中の人物描写、未成年者を刺激するなどについては制限される場合が多いというふうになっております。それに引きかえ、我が国は一体どうでしょう。全く野放し、どんどん飲め飲めと言わんばかりの宣伝がまかり通っているではありませんか。私たちは子供をアルコールの問題から守るために、こうしたアメリカを初め世界でとられているいろいろな厳しい規制に学んで、全面的に検討すべき時期に来ているのではないかというふうにも思います。大蔵省の見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/184
-
185・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
現在自動販売機が全国に十四万三千台ございまして、七万八千場ということでございます。夜になりますとやはりその責任者がいないということもございまして、対面販売ではございませんので、先生御指摘のような危惧、まことにごもっともであるというふうに考えておるわけでございますが、一方、酒販業者の経営の面を考えてみますと、非常に零細な企業が多い。その中におきまして現在大変労働力不足でございます。したがって、やはり自動販売機と申しますのは、全くこれを廃止するということにつきましては、その辺の関係からいかがかという感じもいたすわけでございます。いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、青少年の健全育成ということは、私ども大蔵省といたしましても十二分に考えなきゃいけないところでございまして、先ほど先生御指摘のように、その都度その都度対処をしてまいったところでございます。
最近におきましても、昨年三月の臨調の答申がございまして、免許制度に関する答申の中におきまして、夜間販売につきましてその趣旨を徹底するように、こういうような御注意もあったわけでございます。早速昨年の七月に対処いたしておりまして、まあまだ一部不徹底であるという計数の御指摘もございましたが、そういうところにつきましては一つ一つつぶしながらやっておりまして、その辺は、実際問題としましては、酒販業者も免許業者という立場からその社会的な使命をかなり理解いたしまして、良識あるそういう措置をとっていただいておるのでございます。必ずしも一〇〇%自信を持って問題ないと申し上げるわけにはいきませんが、そういった零細な酒販店の経営という問題もある。その辺の総合的な中におきまして、私どもできるだけの措置を今後ともさせていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/185
-
186・簑輪幸代
○簑輪委員 自販機についても大問題ですけれども、やはり広告宣伝についても、とにかくどんどん売れればそれだけ税収が上がるというような立場ではなくて、広告宣伝面での規制という点についても御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/186
-
187・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
先ほど先生から諸外国の広告規制の例も引かれてお話があったわけでございますが、確かに最近、私もテレビ等を見ておりまして、酒の広告が多いなという感じはいたしております。それは、考えてみますと、酒類全体の売れ行きが非常に落ちておりまして、その中で各社がいろいろ新製品を出してくる。そういう中におきまして、各社が新製品を紹介をするという感じの広告が、最近若干目立つような感じでございます。
しかしながら、致酔飲料ということでもございますので、その広告のあり方につきましては、私ども業界を所管する官庁といたしましては、その内容が適正なものでなければいけない、過度の飲酒を唆すようなものであってはいけないというようなことは考えておるところでございます。かつて、非常に体重の大きいお相撲さんがお酒を飲み干すとか、女性の歌手がボトルを一本あけるというのがございました。そういうものは現在姿を消しておりますが、それは国税庁が実は指導させていただいた結果でございます。そういう広告につきましても、十二分に今後注意を払ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/187
-
188・簑輪幸代
○簑輪委員 しかし、まだまだ非常におくれた点が多いと思うのです。私は、それは経営面もあると思いますけれども、国民の健康という大変な課題、未来の世代を担う未成年者の健康という課題を達成していくために、国税庁としてももっと厳しく対処するべきだというふうに考えます。
アルコールは、未成年者だけでなく、婦人に広がっているという問題も非常に重要です。今、キッチンドリンカーと言われる主婦の飲酒なども注目され始めておりますけれども、婦人のアルコール依存症というのは原因がさまざまでございます。しかし、婦人の場合は男性に比べて短期間で、比較的少量の飲酒で肝硬変のような重篤な状態に陥っているという報告もありますし、この問題は大変注目されなければならないと思っています。お医者さんの報告によりますと、血清中のアルコール脱水素酵素活性は月経周期によって変化し、女性ホルモンが高くなる排卵期から黄体期にかけて活性低下が見られることが確認されており、この時期はアルコールの代謝能率が下がることになり、大量飲酒が肝障害の悪化を招きやすいというふうに言われているのです。
さらに問題なのは、妊産婦の問題です。妊娠三カ月までの母親が大量飲酒すると、胎児性アルコール症候群を有する先天異常児の出生率が高くなるということが指摘され、妊婦の少量の飲酒でも、胎児に対する影響が大きいというふうにも言われております。アメリカでは既に、妊娠中の飲酒は胎児に対して危険であるという広報活動が行われる一方、ニューヨークでは、八三年十一月十五日、ニューヨークの市議会で酒屋、バー、レストランは、「妊娠中にアルコール飲料を飲むと奇形児を産む可能性があります」という表示をしなければならないことを義務づけ、これに従わない場合には百ドルの罰金を科すというような条例も制定しているほどです。日本においてもこうした注意、勧告等、何らかの予防対策を早く講ずる必要があるのではないかというふうに思います。アルコール中毒による入院患者もふえておりますし、女性の大量飲酒者もふえている中で、製造元あるいは酒販小売店に何らかの表示を義務づける等、積極的対策が考えられなければならないと思います。
厚生省の方も対策をとっておられますけれども、大蔵省としても、税金を取るという観点だけではなくて、酒害の予防、研究、対策に対して十分な予算措置を行う責任があると思います。ぜひその点での積極的な予算措置をお願いしたいと思いますが、政務次官、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/188
-
189・梅澤節男
○梅澤政府委員 厚生省の所管予算で、アルコール中毒に関する行政指導等の経費のほか、国立病院等の医療施設等についての必要な予算の計上はいたしておるところでございますけれども、突然の御質問で、私、所管でございませんので、計数的に申し上げることはちょっと難しいのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/189
-
190・簑輪幸代
○簑輪委員 はい、結構です。主税局長に答弁してもらおうとは思わないので、政務次官にお聞きしたわけですけれども、もう一度議事録を読んでいただきまして、ぜひ予算措置の面で御尽力をお願いしたいと思います。
時間がありませんので、次に行きます。エネルギー関係です。
政府は現在、石油代替エネルギー対策を推進されておりますけれども、地熱についても、第一次石油危機以降、石油代替エネルギー資源の一つとして開発が行われております用地熱などの代替エネルギーの開発についての必要性はいろいろ論議もされておりますけれども、地熱開発について見れば、自然環境の破壊、既存温泉の枯渇など、さまざまな問題を抱えているわけです。
まず環境庁にお伺いしたいと思いますが、環境庁の「エネルギーと環境」という海外事情調査報告書によりますと、外国において地熱開発が温泉地の崩壊を招いたという事例が報告されております。また、五十四年十二月に、自然環境保全審議会は「国立・国定公園内における地熱開発に関する意見」を出して、その中で「地熱開発に当たっては自然環境及び生活環境に及ぼす影響の予測、代替案の検討を含めた事前調査を実施するとともに、温泉地域等との調整が図られた上で、その実施の是非が判断される必要がある」という意見が出されております。温泉法、自然公園法を所管する環境庁として、地熱開発に関連して、既存温泉の保護との関係でどのような基本的なお考えかをまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/190
-
191・諏訪薗辰雄
○諏訪薗説明員 お答え申し上げます。
地熱開発の問題につきましては、環境庁といたしまして、自然環境の保全それから温泉の保護という観点から慎重に対処していかなければならないと考えております。
まず、自然環境の保全の観点でございますが、地熱発電の開発が大規模な工作物等の建設を伴うということから、国立公園等におきます風致景観との調和が極めて困難であるという問題がございまして、このため、地熱発電所の立地点の選定に当たりましては、国立・国定公園の特別地域を初めとする自然環境保全上重要な地域を避けるべきであるというふうに考えております。
次に、温泉の保護でございますけれども、地熱開発の立地によりましては既存温泉に多大な影響を与えることも懸念されますので、温泉法を所管する当庁といたしましては、掘削の許可権限を持っております都道府県知事に対しまして、温泉審議会で十分審議を行うなど、地元での十分な調整を行って慎重に対処するように指導いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/191
-
192・簑輪幸代
○簑輪委員 現在、通産省は、試掘などを含む地熱開発促進調査を行っておりますけれども、五十九年度においても、三月二十八日に開かれる地熱開発促進調査委員会で四カ所を選定し、調査を実施しようというふうな段階のように伺っています。
その候補地の一つに、御岳山ろくの長野県の王滝村が入っております。王滝村については、中部電力株式会社が、御岳山系の火山地熱を利用する地熱発電計画を検討するため、御岳全域にわたって五十七年度までに地質概査、重力探査、地化学探査を実施し、五十八年度にはさらに電磁探査を岐阜県の小坂、長野県の王滝、この両地点について実施しております。その結果、王滝地点が優位ということで、五十九年度に国が実施する地熱開発促進調査は王滝地点を先行させるというふうに関係者に説明しております。
ところが、長野県の王滝地点については、同じ御岳山系の岐阜県側に下呂温泉というのがございます。下呂温泉は約千年の歴史を持っておりまして、天下の三大名泉というふうにうたわれております。これは、一羽の傷ついたシラサギによって発見されたというふうにも言われておりまして、西の有馬、東の草津と並ぶ日本の三名泉の一つであります。この下呂温泉はまた飛騨木曽川国定公園の中にあります。この温泉は、湯上がりは非常に気分がよくて、特にこのお湯に入りますと肌が非常に滑らかに、つややかになって、若返ったような気分がするようなすばらしい温泉でございます。私も非常に好きな温泉でございますけれども、この温泉が今、地熱開発が行われると悪影響を受けるということで、下呂の町長、町議会、それから温泉事業協同組合、下呂商工会などが、御岳山麓地熱発電開発に反対する決議というのを行っております。実は、これは町にとりまして死活問題でございまして、町を挙げて反対運動を行っております。
下呂町は、古くからそうですが、現在でも観光に関する産業が主でございまして、第三次産業、サービス業に従事している者が五九・二%に達しております。農林業に従事している者でも旅館へパートに働きに出るという人もございまして、下呂町民は何らかの形で温泉にかかわりを持っているということで、私どものところにもこの反対の陳情書が来ているわけです。
この陳情書を見てみますと、とにかく地熱発電が影響がないことが確証できない限り反対する。「温泉は国民の保養・休養・療養のため欠くことのできない天恵的資源であり、公共の福祉の増進に寄与している」「近年、高齢化社会が急速に進行する中で、国民の健康管理が社会問題となることは必至であり、温泉が健康維持に果す役割は大きく、社会的公共性の高い事を認識し、一層の温泉保護と適正利用が強く要請されております。」というふうに述べております。ここには県立の下呂温泉病院というのがございまして、リハビリテーション設備を備えた立派な、温泉を利用した治療施設もあるわけで、この温泉がゆゆしい事態になるということで大変心配をしておるわけです。
調査地点については決定されているわけではありません。これからですけれども、調査地点が決定されるに当たりましては、ぜひこういう関係者の意向というものを十分尊重して、慎重に行っていただかなければならないと思います。一度温泉が破壊されてしまった場合には、到底もとに戻すことはできません。下呂温泉でも、一時大変温泉の危機的状況がありまして、それに対しては集中管理方式というのを工夫しまして、それで安定的供給を図ることができるように、全面的な努力を重ねて下呂温泉を守り、発展させてきたという歴史がございます。こんな中で、外国の例では、探査をしたというだけで温泉が枯渇したという事例も出ておりますし、地中の因果関係については現在の科学的水準のもとで必ずしも明らかになっていない段階で、まず試掘だけだからいいんだというふうにも必ずしも言えない状況だというふうに思います。
温泉の保護と適正利用を目的とする温泉法を所管しておられる環境庁としては、これを進めていこうとする通産省に対して、温泉保護の立場から慎重な対応を要請すべきではないかと考えますが、環境庁のお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/192
-
193・諏訪薗辰雄
○諏訪薗説明員 温泉の保護につきましては、先生の今おっしゃったとおりでございますので、先ほどの基本的な考えに沿いまして、機会のあるたびに通産省に対しましては申し入れをしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/193
-
194・簑輪幸代
○簑輪委員 試掘をする場合に、土地の掘削については温泉法で都道府県知事の許可が必要だというふうにされております。新エネルギー総合開発機構が地熱開発促進調査を行うわけですけれども、その際に都道府県知事に対して、温泉保護の立場から慎重な対応をするよう特に指導すべきだというふうにも考えます。
長野県の王滝村ということになりますと、その試掘については長野県知事が許可を行うということになります。温泉法の十条には、「隣接都府県における温泉のゆう出量、温度又は成分に影響を及ぼす虞があるときは、あらかじめ環境庁長官の承認を得なければならない。」ということにされております。しかし、事実上、王滝村ということになりますと、長野県だけで審議をされてしまうという心配も持っておりますので、ぜひ環境庁としては、あらかじめ関係都府県の利害関係者の意見を聞いて長野県知事が判断するようにというふうな指導をしていただかなければならないというふうに思います。下呂温泉の関係者の主張というものを再三関係筋には陳情を申し上げておりますので、御承知のことと思いますけれども、やはり環境庁からも長野県側に御指導いただくように、慎重な対応をするようにとお願いしたいと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/194
-
195・諏訪薗辰雄
○諏訪薗説明員 温泉法十条の事前調整につきましては、いろいろ問題がございますけれども、事実上の問題といたしましては、長野県の担当課を通じまして、事前に十分調整をするように指導してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/195
-
196・簑輪幸代
○簑輪委員 そこで、通産省にお伺いいたします。
通産省はこの地熱開発を進めていかれる立場ですけれども、三月二十八日に開かれる予定であります地熱開発促進調査委員会で、全国の候補地の中から四カ所を選定するというふうに聞いておるわけですけれども、今申し上げましたような事情で下呂温泉への影響が非常に懸念されておりますし、温泉関係者は挙げて強力な反対運動を展開しておりますが、そうした中でこの王滝村が有力であるというふうに言われる問題について、ぜひ温泉関係者の意見、意向を十分考慮して判断されるべきであるというふうに思いますが、通産省のお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/196
-
197・川崎弘
○川崎政府委員 お答え申し上げます。
確かに、私どもエネルギーを担当している立場の者といたしましては、日本はエネルギー資源が非常に乏しい、その中で水力、石炭、そしてこの地熱が、我が国に豊富に存在する重要な国産エネルギー資源だということでございます。したがって、私どもはやはり着実にこの国産エネルギー資源の開発を図っていくことは必要であろうかと考えておりますけれども、ただ、先生が先ほどから御指摘のとおり、この地熱資源開発の問題に当たりましては、環境保全の問題であるとかあるいは温泉権との調整の問題ということがございまして、これらにつきましては十分その相手との調整と申しますか、関係を配慮していく必要があろうかと思っております。
先ほどから問題になっております地熱開発促進調査でございますが、これは先生も御承知のとおり、地熱資源があるのではないか、有望ではないかというふうなところで、なお調査データ等が不足しておる、そこを国が先導的に調査を行うということでございまして、決してこの地熱開発促進調査が行われたらすぐに地熱開発が行われるということじゃなくて、実は調査の結果で、例えば地熱の賦存量等が調べられるわけでございます。また、必要に応じては、環境にどういう影響を及ぼすかという環境影響調査も行うことになっております。
そういう性格のものと御理解していただいた上でのことでございますが、確かに五十九年度の調査地点については、全国から十一カ所ほど申請が出ております。これを現在国からの委託を受けました新エネルギー総合開発機構、NEDOが、調査地点の選定の作業に当たっておりまして、諮問機関でございます調査委員会というところで学問的あるいは専門的な検討を行っておりますけれども、それを踏まえて調査地点をNEDOとして決定をして、補助金の申請を出してまいりますときには、先ほど申しました地熱資源の賦存の可能性が大きいかどうか、それから第二点といたしましては、温泉とか自然公園問題とか、そういった地熱開発に伴いますいろいろな調整あるいは障害がないかどうか、第三番目には地元の理解と協力が得られやすいかどうか、こういった点を総合的に検討することにいたしております。まだ具体的にNEDOからは、選定に当たっての作業の報告を聞いておりませんし、申請も出ておりませんが、当然のこととして、こういった点を踏まえて十分慎重な検討が行われるものと理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/197
-
198・簑輪幸代
○簑輪委員 今まで申し上げました問題は、結局地熱開発と環境保護という問題を両立させ得るかどうかということだと思います。
昭和五十六年三月二十日に、エネルギーと環境問題懇談会というところで提言が出されておりますけれども、ここでも「当面の措置についての考え方」というところで、「不可逆的な自然改変の問題があるため国立・国定公園内の特別地域等での開発等を避け、それ以外の地域から開発を考えるべきである。アメリカにおいても、制度が異なり、単純な比較は問題であろうが、国立公園内での地熱開発は一切認めず、公園外の開発であっても公園内に影響を与えそうなものはチェックするという方向にあることも参考となろう。」というふうにも指摘しております。
一たん破壊された自然、そして温泉も、もとに戻すことはできないということを考えてみますと、強力な反対が地元にあるのに見切り発車しても、結局うまくいくはずはありません。そして、過去にそういう形で進めようとしたところ、地元の強力な反対の結果、途中で地点を変更しなければならないという経験もございましたし、現状から見まして今、下呂温泉では熱烈な反対運動を展開している状況から見まして、こういう問題があり反対があるのに、強引に見切り発車することはないというふうに私どもは伺いたいと思うのですけれども、重ねてその点だけお答えをいただきまして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/198
-
199・川崎弘
○川崎政府委員 先ほども申し上げましたように、NEDO、つまり新エネルギー総合開発機構でございますが、そこで現在検討が進められております。この検討におきましては、先ほどのような学問的、専門的な見地からの検討を踏まえますとともに、実は長野県あるいは岐阜県それぞれの地元関係者からの意見というのも聴取して、慎重に検討した上で地点を選定するということになるものと承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/199
-
200・簑輪幸代
○簑輪委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/200
-
201・瓦力
○瓦委員長 藤田高敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/201
-
202・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は、酒税、石油税、物品税それぞれ個別質問に入ります前に、その前提として、総合的な立場から政府の方針をただしておきたいと思うことがございます。
それはもう予算委員会でも議論になったところでしょうし、これは当然過ぎるほど当然のことですけれども、現在の我が国の経済を活性化さすいわば総合経済対策として、政府は経済対策閣僚会議におきまして、昨年来、経済運営の基本方向を打ち出しました。その項目は、これまた今さら強調するまでもありませんが、一口で言えば、今日の国際経済等と国内経済との関連等を考えますと、何としても内需を拡大していくということを中心にするんだ、そのためには公共投資の推進を初め減税によって国民の所得を増大する、その国民の購買力で、いわゆる個人消費を拡大する形の中で経済を活性化さしていくということ等を柱に、六項目を決定いたしておりますが、その中で、この国会でも非常に問題になりましたことは、いわゆる減税にかかわる問題であります。
まだこの大蔵委員会においても、その減税にかかわる問題等々について、必ずしも全面的な結論を見出してない面もございますが、そのことはともかくとして、所得税で言えば約一兆一千億程唐の減税に対して、この酒、物品、そして石油税、今回の増税にかかわる三税を含めますと、かれこれ所得税減税、住民税減税の約半分が増税によって帳消しにされる。残る半分は、これは公共料全その他いろいろなものがありますが、我々が今審議しておるこの分野だけでも約半分程度が減税の帳消しになる。こういうことになりますと、政府は、国民に対して公約をし、国民に対して経済運営の基本にかかわる方針として打ち出しておることと、実際にやっておる経済政策なり財政政策というものは、全く逆のことをやっておるんじゃないかという印象を受けるわけでありますが、この点に対する政府の見解を聞かせてもらいたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/202
-
203・梅澤節男
○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたように、五十九年度の予算及び税制改正におきまして所得税の減税を行いますとともに、構造的な赤字財政のもとでは、所得税の減税の財源を特例公債に依存するということは、後代にそのまま負担をつけ回しをする結果になる。これは税制調査会にもそういう考え方がにじみ出ているわけでございますが、そういう観点に立ちまして減税を行いつつ、やはり税制の改正でもってその財源を補てんせざるを得ないという政策選択を余儀なくされたわけでございます。
ただ、その場合に当たりましても、なるべく所得税の減税の効果が丸々家計の税負担の増加によって帳消しにならないようにするという努力は必要なわけでございます。したがいまして、ただいま御提案申し上げております税制改正に当たりましても、ただいま委員が御指摘になりましたように、相当部分ではございますが、間接税による税負担をお願いはしておりますけれども、所得の減税の効果を全く相殺するような税制改正は極力避けるという観点から、酒税それから物品税につきまして、負担の調整をお願いできる範囲を極力限定して、税負担の適正化をお願いする一方、当面の経済運営に当たりまして、非常に大きな税率の引き上げになりますと、法人税といえども経済に悪効果を及ぼすわけでございますが、極力この負担幅も一・三%ポイントにとどめますとともに、実質的な税負担を伴わない、例えば欠損の繰り戻し還付制度の一部停止とかあるいは延納制度の廃止といったような増収措置を活用するというふうな工夫もいたしながら、所得税の減税の効果がなるべく経済によい影響を与えるとともに、また財政の状況をこれ以上悪化させないというぎりぎりの選択で現在の税制改正をお願いしているわけでございます。
いろいろ御批判はあろうかと思いますが、そういった作業過程を通じまして、ただいま税制改正を御提案申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/203
-
204・藤田高敏
○藤田(高)委員 いずれこの問題は、まだ所得税法の改正の問題がありますから、そこで継続してお尋ねすることにいたしますが、主税局長の答弁もさることながら、私の質問はむしろ主計局もしくは政務次官が答弁なさることが非常にふさわしいことではなかろうかと思うわけであります。
もちろん、私が申し上げておるように、この三税の増税によって所得税の効果が全部帳消しになるなんというオーバーなことは申し上げていない。少なくともこの方針として打ち出しておるものの中身は、数字的に拾っていきましても、これはアバウトかもわかりませんが、大半、約半分程度のものが相殺されるようなことになり得るのじゃないか。これはやはり、せっかく所得減税、住民税減税をやるのですから、その効果が満席に出るような措置を講ずることが、国民に対する公約としても最も忠実な対応ではないかということをお尋ねしておるわけであります。その点、政務次官、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/204
-
205・堀之内久男
○堀之内政府委員 先ほど主税局長から答弁をいたしましたけれども、今回の減税については、かねて各党間の、また国民の強い要望に従って行うことにいたしたわけでございます。しかし、しょせん極めて厳しい財政事情でございますので、ほかに財源を求めなければならない。こういう苦しい立場にあって今回の増税をお願いをいたしておりますが、先ほど先生から御指摘がありますように、せっかくの減税が景気の浮揚に支障を来すのではないかというような御指摘でございます。私どもも全然ないとは申し上げませんが、最善を尽くし、また一部は法人税等にこうしたものを求めて、一応の国民全体に負担のかからない形をと、こういう措置はとらさせていただいておりますので、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/205
-
206・藤田高敏
○藤田(高)委員 この三税の増税の趣旨を見ますと、いずれもまくら言葉に、財政事情が厳しい、いわゆる財政再建にも寄与するという意味のことが、この税制改正の提案趣旨になっておるわけであります。これまた私のきょうの議論の中心にはなりがたいと思うのですが、いわゆる今日の財政事情をよくしていくということになりますと、私もここ何年来予算委員会でやってまいりましたが、五千億、六千億の財源も大事だけれども、もう少しなすべき順序、方法というものがあると思うのですね。
例えば、一括して言えば、不公平税制の是正を抜本的にやるんだと。例えばグリーンカード制というものがああいう問題で今延期になっておりますけれども、大蔵省自身、政府自身がもう具体的に事務的な準備をやったようなことまで政治的な圧力によって棚上げをして、その執行を見合わせて、そうして、こういう酒税で言えば、もうこれ以上上げることができぬというところまでぎりぎりいっぱい上げてくる。石油税で言えば、もっと別に石油税に関連する備蓄の問題についても、あるいは石油基地の問題についても、その歳出を削減するような方法があるにもかかわらず、そちらの方はネグって石油税を上げてくる。物品税については、これまた後ほど申し上げますが、先ほど同僚議員からも質問がありましたように、今日までの物品税とは何かという定義、物品税とは何かというその枠を超えたような、そういう増税策をとってまでやらなくとも、根本的には不公平税制の是正といったようなところへ大なたを振るわない限りは、財政の再建――私は、結論から言いますと、今のままいきますと、中曽根内閣であると、次の内閣はどういう内閣になるか知りませんが、実は六十五年が来ても六十七年が来ても、財政再建はできないと思っておるのです。
これは、ですから、いわゆる括弧つきの財政再建ということを言わしてもらいますが、私は、そういう意味でもう少し根本的な大きなところへ財政再建というものの焦点を置いて、このように大衆課税になるような増税策はとるべきじゃない、こう基本的に思うわけでありますが、基本問題としてひとつ、これまた政務次官の見解をただしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/206
-
207・堀之内久男
○堀之内政府委員 先ほどからも繰り返し答弁申し上げておりますが、今回の間接税等で、特に酒税、物品税等で合わせて約三千数百億、四千億をお願いするわけであります。しかし、そうした面の、大衆と申しますか、確かに御指摘のような形になりますが、また課税と同時に所得の再配分という面での大きなメリットもあろうかと、かように存じております。さらにまた、減税の一部は、先ほど申しますように法人税の上積みという形で、これも財界の方にお願いをいたしておりますので、そうした全体の再配分から見ればやむを得ない措置だと思いますし、この点は、前に大臣からも答弁申し上げましたように、酒税等におきましては、特に三年ごとに担税力と申しますか、負担力という形で今まで検討し直しておった状況もございますので、今回もそうした方向でお願いをいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/207
-
208・藤田高敏
○藤田(高)委員 私の質問にそのものずばりの答えはないわけでありますが、この問題についてこれ以上申し上げようと思いません。後刻、約十分か十五分程度、大臣に対する質問を留保いたしておりますから、そこでやるなり、自後の所得税法あるいは財確法の審議の過程の中で質問をすることを留保いたしまして、先に進みたいと思います。
そこで、順序不同でありますが、酒税について少しく質問をいたしたいと思います。
私は、今国会、限られた審議とはいえ、この増税三法についての審議を聞いておって、どのように考えても酒税の税率は高い。これは高いという感覚よりも、異常じゃないかという感じであります。梅澤主税局長のようにこの道一本でやってきたベテランが答弁をしてもなかなか、聞く耳が悪いのかどうか知りませんけれども、納得がいかないというのが私の率直な感じであります。
そこで、私一つ教えてもらいたいのですけれども、五公五民という江戸時代の、何か税収の基準があったと思うのですが、五公五民というのはどういうことでしょうか、ちょっと政務次官、教えてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/208
-
209・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは歴史の御質問でございますので、私も余り自信がないわけでございますが、昔教科書で習った記憶によりますれば、五公五民と申しますのは封建時代の小作料と申しますか、農民の収穫高のうち五公、半分は公の方で徴収をし、半分は農民の方に残すというその比率で、五公五民とか六分四民とか四公六民とか、いろいろあったように教わったことを記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/209
-
210・藤田高敏
○藤田(高)委員 五公五民というのは、私も「広辞苑」を引いてみたり、国会図書館あたりでそういった歴史を少しひもといてみましたが、趣旨は今局長がおっしゃったことと変わりはないと思うのですが、いわゆる苛斂誅求政策なんですね。もう搾れるだけ搾り上げる。戦前の地主制度ではないけれども、農民のつくったものの半分は地主に持っていくんだ。
〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
今の封建時代のなにで言えば、これまた半分は殿様が取り上げるんだ、こういうことだろうと思うのですね。このごろはまさに、酒税で言えば五公五民、これは大蔵省がその半分を取り上げるような感じさえするわけでございまして、今回の税率を見ましても、高いのになると五〇%を超えることになったのですね。私はこの点については、税制調査会あたりで議論をされておる問題あるいは衆議院、参議院のそれぞれ大蔵委員会等の附帯決議ではありませんけれども、この税率の変更の問題について、上げるだけではなくて下げることも検討すべきではないかと思うわけであります。
そういう点で、これは感覚の問題でありますが、政務次官、どうでしょうか。この五割という、ビールにしても大瓶一本のうち半分は税金を飲んでおる格好になるわけですわね。実際、消費者の立場からいけば、中身は半分しかないわけですよ。こういう税制というのは、ひとり酒のみならず、ちょっと異常じゃないでしょうか。これは私は、国の財政再建にこういう手段、方法を用いて寄与するんだとは言いながら、国民の立場、消費者の立場からいうと納得がいかないと思うのですが、そのあたりはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/210
-
211・梅澤節男
○梅澤政府委員 政務次官の御答弁の前に、事実関係だけまず御説明を申し上げることをお許し願いたいと思うわけでございますが、酒税につきましては、昭和三十七年酒税法の大改正で、当時酒税の大減税を行ったわけでございます。酒類別に申し上げますと、昭和三十七年度の酒税の大減税当時の小売価格に占めます負担率、今委員がおっしゃった文脈で少し拾っておったわけでございますが、例えば清酒の特級が当時で五〇・七%でございます。ビールが五二・三%、この辺が非常に高い税率でございます。その後四十年代を通じまして、各酒類すべてにつきまして負担率が低下の傾向にございました。
五十年代に入りまして、財政事情等もこれあり、今回で実は四回目の負担の引き上げをお願いしておるわけでございますが、今回の改正案で、例えば今申し上げました清酒の特級で申しますと、三十七年当時五〇・七でございましたものが四〇・一でございます。ビールにつきましては五二・三のものが四八・九。ただしウイスキー特級は、三十七年当時三九・五でございましたけれども、今回の改正によりますと、これはただいま御指摘になりましたように五〇%を超しまして、五〇・五というふうな税負担の推移になっておるわけでございます。
酒税の税負担の水準をいかがなところに求めるべきかということは、これは計量的に一概に私ども結論は出しがたい問題ではないかと考えております。結局は、その国の財政事情なり、税体系の中での酒税の位置づけとか、あるいは酒類ごとの消費の状況、生産供給の条件等々を具体的に総合的に判断いたしまして、その国々の酒税の税負担の体系が結果としてでき上がっておるわけでございますが、ちなみに各国との比較で申しますと、やはり致酔性の飲料、特殊な嗜好品という点に着目いたしまして、各国とも酒類につきましては、財政物資としてかなり高い負担を求めておるわけでございます。
酒類ごとで申し上げますと、国産の蒸留酒でございますが、例えばこれは付加価値税も入れますと、イギリス、西ドイツとも負担率は、蒸留酒につきましてはいずれも五割を大きく上回っております。アメリカ、フランスは五割を下回っております。一方、ビールにつきましては、五日の委員会でも御指摘をいただきましたように、先進国の中では我が国の負担率が五割に近い、比較的高い水準にございます。一方、ワインにつきましては、各国ともかなり低い水準にございます。その中でも我が国は一番低いというようなわけでございまして、一概に画一的な税負担の基準というものはなかなか求めがたいわけでございます。税負担の水準、なるべく低いにこしたことはございませんが、やはり財政物資という特殊な性格上、酒の種類によっては、外国におきましてもかなり高い負担を求めている例はあるということでございます。
ただし、これは財政政策なり租税政策の中で酒税をどういうふうに位置づけるかという大きな問題をはらんでいる問題でございまして、一義的に、こういうことでございますので今回の改正案が一番よい案でございますという趣旨で私申し上げたのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/211
-
212・藤田高敏
○藤田(高)委員 主税局長にしては珍しく、なかなか強気の局長ですけれども、これが最善なものだとは思わないというような、極めて謙虚な御答弁もいただいたわけです。各国の酒税に対する歴史的な経過もありますから、そのこと自身は私も十分心得ておるつもりであります。しかしどう考えても、たとえ酒であっても、五割を超すというような税率は高過ぎる。これは異常だということは、国民の感情としても無視できない。ですから、ここだけに焦点を合わせて、あっちからこっちからいじってみてもなかなか難しい。これは税制全体の中で、そうして国の今日置かれておる財政事情を好転さしていくためにはどうするのだという観点から考えるなれば、私は別に処方せんがあると思うのですよ。しかし、そのことはきょうは議論はいたしません。
しかし私は、マクロの面からいけば、大体どんな税金でも、一つの物品に対して三割が限度じゃないか、三〇%が限度じゃないか。そういう意味合いから、例えばビールに絞って言いますと、せんだって同僚議員の質問の中にもあったかと思うのですが、今局長は諸外国の蒸留酒の関係の話がありましたが、事ビールに関する限りは、小売価格の中に占める税負担率、これは、御案内のように日本が約四八%に対してアメリカが一・八、イギリスが二八・三、西ドイツが一八・七、フランスが一六・一。これを日本一〇〇とすると、アメリカが一八、イギリスが六七、西ドイツが一八・七、フランスが二〇・五なんですね。これはもうビールは世界各国どこへ行ってもないところはないわけですからね。せめてビールぐらい、ひとつ国際水準の税率で税制を改正してみてはどうだろうか。私が前段申し上げたように、三〇%というのは、そういう意味合いでは合理性があるのですね。今引例しました四カ国、これはサミットにもそれぞれ出てくるところでありますが、そういう国の平均をとりますと、大体三〇%以下になるのですね。せめてビールぐらいは、そういった三〇%程度に税率を改正するという努力を払うべきではないだろうか。
これまたビールで言えば、一リットル当たりの酒税の関係で言えば、日本一〇〇に対してアメリカが八、イギリスが二四、西ドイツが六ないし八、フランスが二ないし三、こういう非常に低率なんですね。そういうことを考えると、それぞれの国によって酒税の歴史的な経過があるけれども、五割以上になる、四割以上になるというような税制のあり方は、賢明な税務当局のやることではない。目的意識的に、今後の酒税の改正の中ではむしろ下方修正の努力をすべきではないかと私は思うわけでありますが、見解をお聞きいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/212
-
213・梅澤節男
○梅澤政府委員 我が国のビールの負担水準が、国際的に見まして先進諸国の中でも高いということは事実でございますし、ただいま委員が御指摘になりました数字、これは付加価値税の負担部分は恐らく入ってないと思いますけれども、傾向としてそういう負担の状況にあることは事実でございます。
これは先ほど私が申し上げましたように、酒税の負担を個々の酒類ごとに具体的にどの水準で設定するかということは、結局はこれは個別消費税でございますので、その当該個別商品の対象であるビールならビール、ウイスキーならウイスキー、あるいは物品税でございますと、個々の物品ごとに消費の状況、それから生産の状況、あらゆるものを総合判断いたしまして妥当な負担水準を決めるということになるわけでございますが、ビールについて申し上げますと、いつかも御説明申し上げたかと存じますけれども、我が国の場合、特にヨーロッパ諸国と比べましてビールの飲まれ方がやや違うということでございまして、ヨーロッパの場合は致酔飲料であると同時に止渇飲料と申しますか、飲料水がわりに飲まれるというふうな飲まれ方をしておりまして、その酒類消費の中でのビールの位置が、我が国の場合とにわかに同列には論じがたい面もあるのではないかというふうに考えられます。
一方、生産あるいは供給の条件から見ますと、我が国の場合は御存じのとおりの寡占の状態でございまして、生産性も非常に高いということで、それは逆の面で言いますと、小売価格に占める負担の割合がかなりの水準であっても、商品としてたえ得る体質にある、そういったものも作用しているのではないかというふうに考えるわけでございます。ただ、ビールの負担水準が今日かなりの水準に達しているということは、私どもも否定する考えはございません。
戦後ビールの価格をずっと追ってまいりますと、先ほど申しました昭和三十七年当時のビールの……(藤田(高)委員「そういった関係はこちらも知っているから」と呼ぶ)というふうな価格の推移等も中長期的に見ますると、今後ビールの税負担をもっと引き上げてもよいというふうなことを申し上げるつもりは毛頭ございませんけれども、今回の税負担の引き上げは、現時点における限度ではあるとしても、何らかの意味で負担としてお願いできるのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/213
-
214・藤田高敏
○藤田(高)委員 今後の努力方向として今言ったような、これは総合的な税制全体の改正の問題とも関連しますが、こういうふうに五〇%近くに達しておるようなものについては、下方修正の方向で検討するということについてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/214
-
215・梅澤節男
○梅澤政府委員 下方修正とおっしゃる意味が、今私どもが提案申し上げております税率の引き上げについて、この水準を少し考え直せという御指摘でありますとすれば、私どもは、今回はこういう財政事情のもとで総合勘案した結果、ぎりぎり御負担願える限度としてお願いしておるわけでございます。その意味で、何とぞ御理解を賜りたいわけでございますが、御案内のとおり、これは従量税でございますので、今後小売価格が物価等の影響あるいはコストの影響等で上がってまいりますと、自然に下がっていくという傾向は従来も繰り返しておるわけでございまして、そういう現象が出てまいりました場合にどう対応するのかという場合の一つの論点といいますか、検討すべき方向として、ただいま委員から御指摘いただいたということで承らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/215
-
216・藤田高敏
○藤田(高)委員 言い回しがなかなか上手ですから、わかったようでわからなくて、ぐるぐる回って、結果的には余り検討する意思がないという回答のように聞こえるわけであります。なかなか官僚というのは頭がいいですから、そういう点では答弁もうまいですが、私はそのことを強く要求しておきます。
これから政府税調、そういったところで、我々議員の立場からそういう強い要請があるということは、これは反映してもらいたいと思うのです。それはどうですか、政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/216
-
217・堀之内久男
○堀之内政府委員 先生の先ほどからの御意見は、十分私どもも承知をいたしておりますし、今後、税制調査会等におきましても、こういう御意見があったということを御報告申し上げながら、また今後の問題の御検討をお願いしてまいりたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/217
-
218・藤田高敏
○藤田(高)委員 特に今回の場合は、私ども社会党はビールのみならず酒税の値上げに対しては反対でありますし、この撤回を求めておるわけですから、この立場は明確にいたしておきたいと思います。
そしてまた、そういう立場からいけば、お互いにこの審議を通じて、酒税の税率の引き上げについてはこれを引き下げる修正ができれば、それが一番望ましいし、もしできないとすれば、例えばこれは相談でありますが、消費者の立場からいけばこんなに高い増税はかなわぬ、何とかならないのかという消費者国民の素朴な気持ちに対応する措置としては、その実施時期を半年なり、これは仮定ですけれども、ずらして、負担をかける消費者国民に対して何らかこたえていく。こういうことも、私は現実政治の中では非常に大事なことじゃないかと思うのですね。そういうことについてのお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/218
-
219・梅澤節男
○梅澤政府委員 今回の酒税の税負担の引き上げにつきましては、先ほども申し上げましたように、所得減税を初めとする財源を補てんする観点から、しかも現行の財政状況をこれ以上悪化させないという観点からお願いしておるものでございまして、私どもの御提案申し上げている点を御理解いただきましてお認めをいただきますように、ひたすらお願いを申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/219
-
220・藤田高敏
○藤田(高)委員 やはりこういった質疑は、政治家同士がやるものですよ。それは局長がああいう答弁をしたら、政務次官であろうと、仮に大臣であろうと、なかなかそれは答弁できないものじゃないですか。これはいずれ現実的にどう対応するかという一つの対応策として問題になることじゃないかと私は思いますので、大臣質問の中にこれも留保をさせてもらいましょう。局長がああいう答弁をしたら、これは私が政務次官だったって、それと違ったことはなかなか言えませんよ。政務次官には大変失礼かもわかりませんが、そう思います。そういう意味において、これ以上政務次官を苦しめる質問はする意思はございません。
ところで、これは復習になるかもわかりませんが、今日の酒の税制は、分類差等課税制度あるいは紋別の課税制度というものが根幹になっておると思うのです。これは私も今度酒の税金を少しなにしましたけれども、名前自身も非常に難しいですね。分類差等課税制度なんて、これは字で読んだらわかりますけれども、もう少しわかりやすい表現がないのか、こう思います。このあたりも、極めて事務的なことですけれども、私は、やはり政治というものはもう少し、漢字を見てもわかりやすい呼び名にしてもらいたいものだと思うわけであります。
そのことはともかくとして、もう既に議論のあったところですが、こういう制度が根本的に形骸化してきたのではないか。そういう意味においては、五十六年の衆議院の大蔵委員会の附帯決議あるいは参議院の同じ年の附帯決議についても、この種の検討、見直しをやってはどうかという意味のことが出ておるわけですね。附帯決議なんというものは、これは院の決議ですから、次三年目だったら三年目に見直しをやるというときには、政府税調においても、あるいは大蔵主税局を中心とする財政当局においても、この附帯決議をどう生かしていくかということを最優先的に論議の対象にしなければならぬと私は思うんですよ。ところが、同じ議論をまたこの国会で、私自身もこういうふうに復習を兼ねてやらせてもらわなければならぬというぐらい、余り検討した結果が出てこないんですね。出てきてない。こういうことでは、もうその場逃れてこの大蔵委員会が終わればいい、この国会の予算委員会が終われば、後は、極端に言えば野となれ山となれだ。こういう態度では、本来の財政再建もできないし、本来の酒税の、望ましい酒の制度も、今日の情勢に見合った制度の確立もできない、こう私は思うわけであります。
その点からいいますと、これは私が今さら時間を割いて申し上げるまでもないと思うのですけれども、清酒の特級とは何か、一級酒、二級酒とは何かというようなものについても、最近のあれこれを見てみますと、私はまだ直接試飲もしたことないのですが、二級酒で一万円もするような非常にうまい酒が、かれこれ七十銘柄ぐらい全国に出ておる。これは、今の制度からいいますと、それぞれのメーカーが中央の酒類審議会に審査請求をしなければ、そういう形で売らざるを得ないということですけれども、そういうものが、極端な言い方をすると無政府主義的な形で、政府が今取り扱っておるようなそういう審議会をノックアウトしたような形で、わしらはとにかくうまい酒さえ出せば、二級であったって国民はそれを買うんだ、こういうことになりますと、せっかく政府が厳重な監視のもとにこういう審査制度をつくっておっても、そのこと自身もこれは形骸化してきておる。したがって、優良だとか佳良だと言ってみても、それ以上の酒が二級酒で、いわば下級酒という形で出回っておる。これまた社会現象としては非常に異常な姿じゃないかと私は思うんですね。
そういう実態からいって、紋別課税制度が形骸化しておるのじゃなかろうか。あるいは今回の税制のなにを見ましても、今までは大衆酒というか下級酒ほど、負担能力の問題等を考えて税率を低くしていくんだ、こういう税制の立場でやってきたものが、今度は逆に、極端に言えば下級酒ほど高い税率を取っておるわけですね。これは私から言うまでもないところですけれども、酒でいえば二級は一級よりも高い税率を取っておる。しょうちゅうでいえば、酒の特級よりもしょうちゅうの方が高いのですね。甲も乙も比較して、酒の特級が一九・五に対してしょうちゅうの甲が三四・四、乙が二四・四ですから、酒の特級よりもしょうちゅうの方が高い。先ほどから言っておりますビールについても、これだけ女性を含めて大衆化したビールが、俗に言う下級酒とすれば、これまた酒の一級よりもビールの税率の方が高くなっておる。ウイスキーでいえば、これまた特級、一級、二級でいえばその税率は逆になっておるのですね。従来のように高い酒ほど税率を高くするというのが、全部逆になっておる。こういうことになってきますと、現在の酒の税法で決めておる趣旨と実態というものは全くそぐわない状態になってきておる。
これは、先ほど私が申し上げましたが、この大蔵委員会の附帯決議においても、こういうことは次の改正には考えるということを指摘しておるにもかかわらず、何ら結果としては出てこないばかりか逆の現象が出てきておるというのは、これはもう国会無視も甚だしいじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/220
-
221・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは経緯からいいますと、ただいま委員も御指摘になったわけでありますけれども、前回の五十六年の酒税法改正のときに、当委員会でも、今御指摘のような問題につきまして非常に御議論が交わされまして、また附帯決議もちょうだいいたしたわけでございます。それを受けまして同年の六月に酒税問題懇談会というのを、当時の主税局長の私的諮問機関といたしまして設けさせていただいたわけでございます。これは座長に学習院大学の田島教授をお願いいたしまして、学識経験者のほかに業界関係者にも参加していただきまして、都合十二回議論をしていただきまして、翌年の十一月に一応の報告をちょうだいいたしました。この報告が実は一昨年十一月の税制調査会の中期答申にも盛り込まれておりまして、それを背景に私ども五十九年度の税制改正をお願いしておるわけでございますが、結論から申しますと、この国会の附帯決議で御指摘になった点あるいはこの懇談会で取り扱われました問題というのは非常に広範多岐にわたっておりまして、二、三年の間ですべてについて具体的な結論を出し得るという状況にはないような、非常に大きな問題がたくさんあるわけでございます。
この懇談会で指摘されております点は、これは先ほど委員もお触れになったわけですけれども、我が国の現在の酒の分類というのが十分類ございますけれども、この分類が非常に煩瑣に過ぎて複雑である。したがって、簡素化を図る。それから同時に、今分類差等課税とおっしゃったわけですけれども、酒類間の負担の格差の縮小を図るというふうな問題点。それから課税方式につきましては、これは酒税は個別消費税の側面と一般的な消費税の側面と両方持っておりまして、従価税でいくか従量税でいくかというやかましい議論のあるところでございますが、この点について一体どう考えるのかといった問題。それから級別の問題につきましては、ただいまも御指摘がありましたように、なかんずく清酒の級別制度が、現在はウイスキー類とは異なりまして、客観的な基準がございません。任意出品で、しかも官能審査ということで級別が分けられるというふうな制度になっておりますし、この紋別については、少なくともこの懇談会では、その見直しが必要である、級別区分の明確化と紋別間の税率格差の縮小を図る必要があるという御指摘をいただいたわけでございます。
私どもは、この報告が出ました後、国税庁、それから関係業界も含めまして、実は清酒級別問題についてはいろいろ議論をさせていただいたわけでございます。
この清酒の級別は、沿革的に見ますと、昭和十九年当時から既に四十年を経過しておりまして、その間、昭和三十七年の税制改正で級別の性格はかなり異なっておりますけれども、消費者の選択基準なり業界の分野調整という意味では、この四十年間の級別制度の定着というのは無視できない歴史的な事実でございます。したがいまして、私どもの内部の議論の過程では、級別を全廃すべきかどうか、あるいは現在の三段階制よりも二段階制の方がいいのではないかといったような問題、それから級別間の税負担格差の縮小につきましては、例えば二級酒について従価税を導入する等の問題もいろいろ議論したわけでございますが、結果的にははかばかしい結論がまだ得られない状況にございます。
ただ、これはそういつまでも漫然と放置すべき問題でもございません。私どもは、当面の酒税法の検討の課題としては一番大きな問題の一つであるという認識は持っておるわけでございます。いましばらく時間をいただきまして、この級別制度、なかんずく清酒の紋別制度、それからその税負担の課税方式のあり方等については、今後とも検討し、なるべく早く結論を出さなければならない問題であるという認識は持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/221
-
222・藤田高敏
○藤田(高)委員 できるだけ早く結論を出さなければならぬという認識を中心に、今後の努力を強く要請しておきたいと思います。
私は、特にこの級別の問題については、今言ったような答弁があったわけですけれども、これは酒税法を改正せなければいかぬのではないか。特級というのは「品質が優良であるもの」、一級は「品質が佳良であるもの」、二級は「清酒のうち、特級及び一級に該当しないもの」、こうなっておるのだけれども、一番最初に私が例を取り上げたような事態が起こっておる。そして、このごろはもう大きなメーカーが地方の酒を買い占める形で、もう完全にブレンドをやって、そしてレッテルだけはそれぞれの大メーカーの表示で売っておる。こういうことですから、これは酒税法の改正自身をやらないと、表に出しておる表示と中身が違うようなことになってきておるのではないか。そういう立場からも、これはぜひ急ぐ必要があると思うわけですが、そのことに対する見解はどうかということ。
時間の関係がありますので、国税関係にお尋ねをしたいと思うのです。前後しますが、今度のこの酒税の税率の引き上げは、昨年ビールや酒が、春、秋と上がった。これはまあ、新聞記事ではありませんけれども、業界と行政が一脈通ずる形で、ことし、いわゆる五十九年度の春になれば税率が上がりますよ、だからそういったことも見通して酒やビールの値上げについてというような、そういう実質的な、カルテルではないですけれども、行政と業界との癒着によってこういう今日の税制改正がなされておるのではないかということが一般に流布されておるわけですね。私は、こういう疑惑はやはり明確に解かなければならぬのじゃないかと思うのですが、そのあたりの監督官庁としての見解を聞かせてもらいたい。
いま一つは、時間の関係で質問を集約しますが、酒の級別の決定は官能審査によってやるというのですが、これはビールのみならず、最近は女性は酒関係でも随分飲み出したですね。この審議会委員の中には女性が入っておるのでしょうか。やはりこの官能審査というものを仮に当面持続するというのであれば、女性あたりも加えるべきじゃないか。
この官能審査というのは、これまた非常に非科学的な審査のあり方じゃないか。私自身が委員であっても、その日の体のコンディションにもよりましょうし、私は甘い酒が好きだ、政務次官は辛い酒の方がいいという、審査の委員の好みもあると思うのですよ。そういう点で、こういう官能審査という、勘に頼る、舌に頼る審査方法というものは、やはり今日の酒の醸造方法からいけば別の鑑定方法があってもいいんじゃないかと思うのですが、そのあたり一括して、ひとつ見解を聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/222
-
223・梅澤節男
○梅澤政府委員 最初の御質問につきましては、私からお答え申し上げます。
御指摘のとおりでございまして、酒税法で清酒の級別の区分が定められておりまして、具体的には施行令で特級、一級、二級についてそれぞれ定義がございます。その規格なるものが、結局ただいまの御質問にも関連するわけでございますけれども、任意出品制による官能審査ということでございまして、一等最初のときは、アルコール度数とかあるいはエキス分等で客観的には基準があったわけでございますけれども、現在そういった基準が少なくとも清酒の級別にはないということが、現時点でやはり問題なんであろうと考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、そういう客観的な基準をどういうふうに決めるのか、あるいは級別の現在の三段階制がいいのかどうかといったような点も含めまして、やはり制度改革の問題として真剣に検討していくべき問題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/223
-
224・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
まず、お尋ねの第二点でございますが、昨年行われました各酒類のコストアップ値上げと増税との関係のお尋ねでございます。
御承知のように、昨年春から秋口にかけまして、清酒、ビール、ウイスキー等、一連の値上げが行われたわけでございますが、そもそも酒類の価格は昭和三十九年以来自由価格でございまして、各企業が生産、流通のそれぞれの段階におきまして、コスト事情、販売事情等勘案いたしまして決定をしてまいるわけでございまして、それにつきまして行政が関与をしておる事実はございません。昨年、一連の値上げが行われましたのは、五十五年三月以来酒類の値上げが行われておりませんで、その間原料費の値上げあるいは人件費のアップといったもろもろのコストアップの事情がございました。
もう一点は、最近、先生お気づきのように、商品が非常に多様化しておりまして、例えばビールの缶入りなども、ひところ五十種類が、今や百種類以上ございます。そういった消費者ニーズに合いますところの消費の多様化によりまして、流通段階で非常にコストがふえてまいったわけでございます。例えば蔵の保存の問題あるいは運搬の問題、そういった流通段階のコストアップがございまして、その辺の事情も勘案しなければいかぬということで、それぞれ値上げが行われたようでございます。それぞれの値上げ率は、この三年間の消費者物価の上昇率を下回っておりまして、監督官庁といたしましてもやむを得ないかなというふうに考えておったわけでございまして、全く値上げ自体には関与をいたしておらなかったわけでございます。
第三点でございますが、官能審査につきまして、清酒の特級、一級の審査をいたします際の方法が非科学的ではないか、こういうお尋ねでございます。この点につきましては、清酒の品質は、他の工業製品のように化学分析あるいは物理的なそういった分析によりましてその格差を見出していくというのはなかなか難しい。清酒の味自体が非常に複雑な味わいでございます。そういうものを的確に区分けいたします場合には、どうしても、その権威者の実際の試飲によりますところの結果によるということが、現時点ではやはり意味のあることであるというふうになっておりまして、例えば同じような醸造品でございますみそ、しょうゆのJAS規格の審査も官能審査でございますし、外国の例をとりましても、フランス等におきましてもワインの審査はやはり国の職員の官能審査でやっているというような事情もございます。そういった中で、私ども、大変非科学的だという御指摘ではございますが、現時点で許されるベストの方法ではないかというふうに考えさせていただいております。
なお、この委員の中に女性が含まれているかどうかというお尋ねでございますが、女性もこの中に一名含まれております。(藤田(高)委員「何人のうち」と呼ぶ)全国で十一の地方酒類審議会がございまして、その十一のうち、委員がそれぞれ九名おりまして、約百名でございます。そのうち一名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/224
-
225・藤田高敏
○藤田(高)委員 おると言えばおるが、顕微鏡で見なければいかぬような存在だ。これは、同じ入れるのだったら一割ぐらい入れるとか、そういったことを検討してみてはどうでしょうか。これは時間がありませんから、そういうことについて強く要望しておきたいと思います。
なお、こういう酒税の引き上げなんかをするときに、我々の側も参考人として業界の代表をお招きして意見を聞かしてもらう。ところが、ついうっかり一番大事な消費者団体なり消費者の意見というものをストレートで聞く機会が比較的疎んじられておるのじゃないか。そういう点では、政府も、行政当局も、この種の引き上げをやるときには、肝心な、負担を願う消費者の団体なり消費者の意見をもっと的確に把握するような手だてをやるべきじゃないか。この点についても、後ほどひとつ見解を聞かしてもらいたいと思います。
そこで、酒のこともたくさんあるのですが、私、石油関係の問題について、これはまた集約してお尋ねをしたいと思います。
一つは、今度の石油税の引き上げは、原油の値下がりに基づいて税収が減るから、三・五の上に上積みをして一・二の増税をやるんだ、また、その他の新税ともいうべきものについても一・二の増税をやるんだ、こういうことであります。私、これまた非常にわからないのですけれども、石油の値段なんというのは、政府の政策がよくてこういうように下がったり上がったりしたのではなくて、いわゆるOPECだったらOPEC関係から入ってくる、産油国から入ってくる原油がこういう値下がりをするのですから、その値下がりするメリットは本来国民に還元されるべきじゃないかと思うのですね。それを中間で横ぐわえする形で、還元するどころか、逆に国民に税負担の増大という形で対応するということは、政治の基本姿勢として誤りがあるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/225
-
226・梅澤節男
○梅澤政府委員 政務次官の基本的なお考えをお示しになる前に、私から若干御説明を申し上げることをお許し願いたいわけでございます。
石油税は、石油エネルギーの効用というものに着目いたしまして、いわば受益者負担的な形で、特定財源の税ということで構成されているわけでございます。原油価格が引き下がった場合に、当然、その下がった分は、石油の利用者あるいは消費者に還元されるべきであるというのも、一つの考え方であろうかとは存じますけれども、問題は、現在の石油税財源は石石特会を通じまして石油エネルギーの確保あるいは代替エネルギー対策ということで、究極的には石油の利用者に還元されるという方面に、税財源が向けられておるということに着目いたしますと、問題の選択は、そういう代替エネルギー対策等として、石油利用者に還元されるべき問題なのか、端的に価格問題で還元されるべきであるかという選択の問題になると思うわけでございます。
現在の石油特会によります石油代替エネルギー対策が、やはり政策上、究極的には石油利用者のために還元されるという観点から必要であるということになりますと、今回お願いしておりますように、税負担の引き上げという形で石油利用者に還元するという方途をとられるわけでございまして、これはOECDの諸国を見ましても、一部、やはり原油価格の引き下げに伴いまして、今回私どもがお願いしておりますような手法をとっている国もございます。いずれにいたしましても、石油財源がどういう格好で利用者に還元されるかというのは、それぞれその国の石油エネルギー対策なり、代替エネルギー対策との関連で方向を決定すべき問題ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/226
-
227・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は、局長の考え方自身、これまた全面的に否定するような気持ちはないのです。我が国にとっては、エネルギー政策というものをどう進めていくか。これは石油だけではなくて、代替エネルギーを含めて極めて大事なことですから、その財源はそれなりにやはり何らかの形で充足をさせていかなければならぬ、これはわかるんですよ。しかし、今度の石油税に関する限りは、いきなり、原油の値下がりになった分を、値下がりになって減収になるから、それを穴埋めするためにこういう増税をやらなくとも、石油関係の問題について歳出を削減する方法はあるのじゃなかろうか。また、財源の問題についても、既にこれは昨年の商工委員会あたりでも問題になったと聞いておりますが、この石油関係は今までは上がってきた、上がってくれば、自然増じゃないですけれども、その分だけは税収がふえておるわけですから、そのふえた分は一般会計の方に積み残しの形で、これは形式上は留保されておるわけでしょう。それが大体五千億程度。これはアバウトですけれども、五千億程度あるというのですね。その五千億程度というものは、今日、迎えておる石特会計のように穴があいた、当初の計画よりも財政上に穴があくというような場合には、その積み残し分をそこへ還元するといったてまえになって、ふえた分については一般会計の方に積んでおる。これを称して「北方領土」なんて名をつけたりする人もおるようでありますが、これは決して北方領土ではない。私は、物のたてまえとしては、自分の物は自分の物、他人の物は他人の物、北方領土なんかでも、これは日本の固有の領土ですよ。これはいかなる国の形態を問わず、当然返すべきですよ。そういうもののけじめをつけないような政治をやる。国際政治の中でもそういうようなけじめのつかない政治をやるから、往々にして問題がこじれてくる。それと同じように、一般会計と石特会計の問題でも、そういったてまえでやった以上は、そういう事態が今日起こっておるのだから、まずその手だてをやるべきじゃないかというのが、第一の私の考え方であります。その点についての見解をひとつ求めたい。
それと、続いて私は質問をいたしますが、そういうことがなかった場合にも、現在の石油の情勢からいきますと、備蓄ですね。備蓄は、五十三年当時に決めたときには、一日どれぐらい備蓄をしていかなければいかぬか。日量百万キロリットル、これで民間の備蓄が九十日分、国家備蓄三十日、三千万キロリットル、こういうことで国の備蓄計画というものはできたわけですね。ところが、最近の需要量や何かからいきますと、日量約百万キロリットルが五十四万か五十万キロリットル、半分になったわけですから、極めて算術的にいけば、三十日分というのが基準であれば、千五百万キロリットル積めばいいわけですね。そうでしょう。そうすれば、百二十日というものが、エネルギーの安全保障という立場からもその目標は達成できますし、現在我々が知り得ておる範囲でも、これから五年先、七年先あるいは十年先のエネルギーの需給見通しからいっても、事石油に関する限りは二億四千万キロリットルもしくは二億五千万キロリットルぐらいが大体上限であって、減ることはあってもふえることはない。大体そういう見通しを政府が立てておるのですから、無理に三千万キロリットルというものに焦点を合わして備蓄の基地をつくったり、備蓄量を確保するための財源措置をやらなくとも、千五百万キロリットルに焦点を合わし、百二十日の備蓄というところに焦点を合わしてやれば、ちょうど千三百四十億ぐらい、ことしで言えば六百七十億に匹敵する石油税の財源ぐらいは、そこから右から左に充当することができるのです。
そういう努力をやらないでいきなり石油税の引き上げたということは、先ほどの局長の意見もわからぬことはないけれども、私がいま言っておるようなことをやっておいて、そういう手だてをしてもなおかつ石油エネルギー財源をつくるためには、五百億だったら五百億足らないという場合には、その次の手段順序としてやるべきではないか、こういうふうに思うわけであります。一括して質問しましたが、見解を聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/227
-
228・川崎弘
○川崎政府委員 それでは、まず増税の前に石油税収の石特会計の繰り入れ未済額つまり一般会計留保額でございますが、これを取り崩してやるのが本来じゃないかという点でございます。実は私どもが実施しております石油対策あるいは代替エネルギー対策と申しますのは、相当長期にわたって実行に移さなければいけない、つまりリードタイムが非常に長いものが多々ございます。そういう意味におきましては、中、長期的な、安定的な財源の確保というものが不可欠になってまいります。
ところで一方、先般の石油価格の引き下げ、これは石油需給の緩和がもたらしたものでございますが、私どもとしては大幅な減収というのが相当構造的なものじゃないかというふうに考えております。したがって、そういった石油税の減収というのを踏まえて、かつ先生御指摘のように、中、長期的に見ましても最大限の歳出カットの努力を行う。そういうことをやり、その上に、いまございます繰り入れ未済額、一般会計留保額というものを全額取り崩してみましても、なお相当の財源不足というものが見込まれるという状況でございます。したがいまして私どもといたしましては、一般会計大変厳しい財政状況でございましたけれども、この石特会計の繰り入れ未済額の最大限の取り崩し、これは五十八、五十九年度それぞれ六百数十億ずつお願いしているわけでございますが、こういうことを前提といたしまして、必要最小限度の財源措置として今回の石油税の拡充をお願いした次第でございます。
先ほど先生がおっしゃいました、石油価格の引き下げというのはよそから来た理由だ、それは本来民間に還元すべき問題であるというのはまさしくそのとおりでございます。事実、私どもの計算によりますと、大体一兆五千億ぐらいがあの五ドル引き下げでプラスになったということでございまして、それは現実の石油の需給価格あるいは市場メカニズムを通じて大部分は一般に、国民経済の中に還元されていったと思っております。今回の石油税の増税、その中の一部を将来の石油及び代替エネルギー対策の財源として使わしていただきたいということでございます。
具体的にその石特会計、どんなところに歳出カットを行ったのかという点でございますけれども、それを全部申し上げておりますと大変時間がかかりますのですが、例えば五十九年度の特会予算、昨年並みの四千百九十億というふうに圧縮いたしました。また長期的に見ましても、例えば国家備蓄基地を六十三年度完成という当初の予定を六十五年度へ二年ほど繰り延べておりますし、本来ならば三千万キロリッター備蓄達成だということにいたしますと、五十九年度から二百五十万じゃなくて、三百万キロリットルずつ備蓄を積み増していかなければいけないわけでございますが、これも二百五十万というふうに圧縮しております。また、割合コストの高いタンカー備蓄の陸揚げの促進ということもやっております。
これ以外にも、石油の開発の関係では開発規模の圧縮、代エネの関係では大体五%の削減を五十八年度の予算でやっておりますけれども、石炭液化プロジェクトの一本化であるとか、水素製造プラントの開発事業の打ち切りであるとか、そういった我々としては大変痛いところもございましたのですけれども、最大限の歳出努力を実施したということでございます。ぜひ御理解いただきたいと思います。
それから、国家備蓄のお話でございました。確かに五十三年当時、国家備蓄を決めましたときに、その考え方と申しますのは、民間に義務づけられました九十日の備蓄、これでは備蓄量としては足らないだろう。しかし、それを超える部分については民間企業の負担の限界を超えているから、その部分は国家が国家備蓄という形で持つべきである。その量は、当時の一日の消費量でございます約百万キロリッターの三十日分で、三千万キロリッターというふうな数字が決められた経緯がございます。その後、確かに御指摘のように、最近の一日当たりの消費量五十四万キロリッターでございますから、一つの考え方として先生のおっしゃいましたように、同じ三十日ならば千五百万ないし千六百万という数字でもいいじゃないかという議論も、実は昨年のエネルギー政策の総点検の段階では、総合エネ調の中でも議論はございました。しかしながら、非常に真剣な議論が行われた結果として、次のような理由から、日本としては三千万キロリッターをぜひ達成、そして維持すべきである。
第一は、日本の現在置かれておりますエネルギーの供給構造が大変もろいということでございます。一次エネルギーの八割以上が海外からの輸入に頼っております。その中で石油の依存度はまだ六割以上ある。しかも中東への依存度がその三分の二、つまり六五%は中東へ依存しておる、こういうふうな状況でございまして、しかもその中東の情勢は依然不安定である。したがって、まず供給構造の面で、我々としてはしっかりした備蓄を持っていなければいけないというのが第一点でございます。
それから第二点は、現在IEA、つまり国際エネルギー機構に参加いたしております国の平均の備蓄水準というのは百六十七日という数字でございます。日本の場合は、このIEAの水準でまいりますとまだ百日ちょっとしかないわけでございますが、やはり我々としても、百六十七日というのは大変ではございますが、せめて現在のこの三千万キロリットルを達成いたしますと、大体百四十三、四日ぐらいの水準になろうかと思いますが、その程度の水準を持つことが世界第二位の石油の消費国である……(「簡単に」と呼ぶ者あり)そういうことでございまして、せめて百四十日程度の水準を持ちたいということでございます。
もう一つは、エネルギーの備蓄というのはどんな形でやるのが一番いいかということも議論なされましたときに、石炭とかLNGといった形での備蓄というのは大変むずかしい。やはりそれは便益性の高い、汎用性のある石油の形で備蓄することも必要だ、そういうふうな議論もございました。こういった理由を総合的に判断いたしまして、現在のような三千万キロリッターの国家備蓄目標というのが総合エネ調で定められたわけでございます。
ただ、先生の御指摘のとおりのことでございまして、私どももこの国家備蓄をできる限り安く仕上げるということで、先ほど申しましたようなタンカー備蓄の陸揚げの問題であるとか、あるいは民間タンクの活用であるとか、そういったことを進めて、なるべく安上がりに国家備蓄を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/228
-
229・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は、表向きの理由としてはそういうことだろうと思うのです。しかし、五十三年に策定した基本というものはそう狂っていないと思うのですね。中東情勢の問題だって、その当時から、中束を中心に石油を六五ないし七〇%輸入しておるというのはやはり問題がある、石油の輸入国を多元化してアメリカからも輸入する。あるいは最近で言えば、日中の関係で、長期経済プロジェクトの関係で勝利油田をつくるとか、やれ大慶油田ができるとか、渤海湾の開発をやるとかいろいろ問題があって、中国自身の経済建設とのかかわり合いにおいて、そういうところへも日本が対応していくというようなことで、いろいろエネルギーの構造から見て日本の場合は非常に脆弱性があるなんというのも、その当時も今も何も変わっていないのですよ。
そんなことを今度の場合に余り強調することはおかしな話なんで、私は、これは邪推かもわからぬけれども、やはり三千万キロリットルというものに余りにもエネ庁を中心に通産省あたりはこだわり過ぎておるのではないか。それをもっと裏から見れば、三千万キロリットルを備蓄するということになれば、それに見合う備蓄基地を計画どおりやっていくのだ。基地をつくることについては現在、計画がもう既にできておるところもありますし、準備中のものもありますけれども、六カ所か七カ所やるようになっておりますね。これなんかは、ちょっと年度は忘れましたが、去年がおととしあたり予算委員会でも問題になりましたね。どこかの政治家の公設の秘書が、そういった何の関係の役員になっておったとか、今の自民党の大物代議士が二千万か三千万もらったとかもらわぬとかいうようなことが予算委員会でも議論になった記憶があるのですよ。そういうものとの兼ね合いというものがどうも強過ぎるのではないか。
やはり情勢がこういうふうに変わってきたら、素直に情勢に即応するように変えていってはどうか。今の基地の建設も、二年間延ばすような対応をやるように、場合によったら――これがどんどん石油の需要がふえるというのだったら別ですよ。石油の需要が五年先も七年先も横ばいもしくは減る、またそういうふうに目的意識的に減らして代替エネルギーでやっていくのだ、そういう政策目標があるわけですから、そういう線に沿って、この備蓄については、百二十日だったら百二十日というものに焦点を合わせて備蓄をやっていけばいいのじゃないか。それ以上になりますと金がかかるのですから。
それは今次長がおっしゃったように、IEAの関係で言えば、アメリカが百六十七日ですか、どこかが百四十日、イギリスが何だと言いますが、アメリカだって、石油を戦略物資にしておるわけですから、三百日ぐらいな備蓄を持っておるわけですよ。そんなものと日本が基準を合わすということ自身が、これはどだい無理な話ですよ。イギリスだって北海油田を持っているのですから、これは産油国ですよ。そういうものと合わすようなやり方は余りにも形式論であって、やはり我が国のエネルギー政策の独自性というものはきちっと持ってやっていかなければいかぬのじゃないか。そうしないと変な、私はそう思わぬけれども、利権絡みの政治家の圧力に屈して、三千万キロリットルは日にちの三十日でいくのじゃなくて、三千万キロリットルというものを中心に基地をどこまでもつくっていかなければいかぬ、こういうことになってくると、一方では金がない、財源がないと言いながら、そういったところへは、繰り延べとはいいながら金を出していく、財源を振り向けていく。これは、私どもの立場から見ますと非常に理解できがたいことです。ですから、私はやはり石油だったら石油の備蓄、エネルギーの安全保障という立場から備蓄は大事だ、それは民間九十日、国家備蓄三十日で当面はいいじゃないか。そういうところへもう少し明確な焦点を置いて、自信のある行政をやるべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。
それと最後に、石油税の諸税の使い方、これも既に何回も議論になっていると思うのですが、道路財源にもうかれこれ八割近くの金が五年間続いていますね。これなんかも、そこまで石油エネルギーというものを大事に、今強調されるような観点から言うのであれば、こういったものに対する見直し、石油関係、石油諸税の使い道について――何だか道路族とか、大蔵族とか、農林族とか、いろいろこのごろ国会の中にも、派閥じゃないけれども、族なんというものがあるらしいけれども、これはおかしいと思う。道路族か何か知らぬけれども、そういうものの圧力に屈してどうこうやるのではなくて、もっと社会福祉や教育やみんな含めてマクロの立場で、そういう財源は国民の生活なり権利を守るためにどうするかという観点で、財源の使途についても検討をすべきではないか。私はこう思うわけでありますが、その見解を承りまして、実は大変申しわけないことでありますが、時間がありませんので物品税に入ることができませんでしたが、以上をもって私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/229
-
230・川崎弘
○川崎政府委員 ただいま先生の御指摘になりました点、私どもも拳々服膺してまいりたいと思っておりますけれども、ただ一つ申し上げたいことは、実は先般、五十八年の五月でございますが、IEAの閣僚理事会がございましたときに、日本の石油備蓄につきましてもっと備蓄を進めるべきだということで、これは日本だけではなくて国際的な合意が行われております。それから、特に五十七年の対日審査というのがございましたけれども、このときにおいても、日本の場合には非常に輸入石油に対する依存度が高い、したがって、日本経済の安全保障という見地からも、あるいは国際的な意味合いにおきましても、もっと石油備蓄を積むべきだという審査報告なり指摘がなされているところでございます。
確かに百二十日と申しましても、実は、本当に混乱を起こさないで備蓄が使える量と申しますと、単純な計算になりますけれども、四十五日というのはランニングストックとして、つまり、精製や流通段階での混乱を起こさないで使う分としてはランニングストックとして除いておかなければいけない。そういう計算でいたしますと、先ほど私が申しました百四十三、四日という数字も非常に多いという問題では決してなかろうというふうに考えております。むしろなるべく国際的な水準に近づける努力というのが、自由世界では第二位の消費国であり輸入国である日本の国際的な責務でもなかろうかと考えております。
ただ、国家備蓄を進めるに当たって、できる限りコストを削減し、歳出を節約するという努力は、今後とも続けてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/230
-
231・藤田高敏
○藤田(高)委員 今の答弁について少しく見解の違いもありますが、それは後日に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/231
-
232・熊川次男
○熊川委員長代理 坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/232
-
233・坂口力
○坂口委員 初めに少しお願いをしておきますが、十分程度で結構でございますので、大臣がお見えになりましてからひとつお時間をちょうだいしたい。その分だけ少し早目に終わらせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
今回、酒税、物品税、石油税等の法案がここに審議されるわけでございますが、とりわけ酒税並びに物品税というのは我々国民に非常に関連の深い法案でございますだけに、その行方というものを国民全体が注目をしていると思うわけでございます。先般参考人の皆さん方をお招きいたしましていろいろの御意見を伺いましたが、参考人によりまして御意見の違いはございましたけれども、多くの皆さん方は、これから夏場にかけてビールその他需要の非常に多いときでもあるので、これに時期を合わせた値上げというものは何とかひとつ考えてほしいという御意見も多かったわけでございます。
この酒税の問題につきましては、社公民三党の要求の中にも盛り込まれておりまして、ぜひひとつ一考を要してもらいたい、こういうお願いをしたところでございますが、この問題はまた大臣がお見えになりましてから詳しくはお聞きをしたいと思いますけれども、事務当局からで結構でございますが、一言だけお聞きをして具体的な問題に入らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/233
-
234・梅澤節男
○梅澤政府委員 酒税の税率の引き上げ、これまで累次にわたってお願いしておるわけでございますが、その場合、最近いずれの場合におきましても五月一日から一斉に引き上げをお願いしておるわけでございます。これは一つには間接税でございますので、税率の引き上げ分は十分に価格として転嫁しなければなりません。したがいまして、そのための準備期間の問題がございます。同時に手持ち品課税を行いますので、そのための準備期間ということも考慮いたしまして、従前、本来ならば四月一日からお願いすべきものを五月一日からという格好にさせていただいておるわけでございます。この引き上げ時期につきましては、これを延期すべきではないか、さらに繰り延べるべきではないかという御指摘は、先ほどの委員からの御指摘にもございましたけれども、私どもの考え方といたしましては、従前どおり、この五月一日からの引き上げでぜひお願いをしたいということでございます。何とぞ御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/234
-
235・坂口力
○坂口委員 酒税につきまして主にお聞きをしたいと思いますが、その酒税に入ります前に、先日私の方の矢追委員が物品税のあり方につきましてお聞きをいたしました。
矢追委員の質問のあらましは、その一つの論点は、課税品目のアンバランスを見直すべき時期に来ているのではないか。それから、複合製品と申しますか、今まで万年筆は万年筆であり、時計は時計であったけれども、最近は万年筆、ペンと時計とが一つになったものが出たりしている。そうした製品の変化というものも踏まえて、時代とともに生活と各製品との関係というのは変化をしている。また、各製品の価値と申しますか、その製品に対する国民の考え方というのも変化をしているので、物品税の品目が増加されようとしております今日、ただ単にこれを拡大するだけではなくて、もう一度整理をし直す必要があるのではないか、こういうことを提言し、そして皆さん方の考えをただしてほしいということを主張したと思います。この問題、少々時間がございませんで、こちらの方が皆さんの方にいささか言いっ放しの感じになりまして終わりましたので、もう一度だけこの問題を取り上げまして、詰めだけ行っておきたいと思うわけでございます。
今申しましたように、お茶とコーヒーの問題を挙げまして矢追委員は申しましたけれども、嗜好品と言われておりましたものでも、現在ではもう嗜好品といいますよりも日常品という形になっているものもございますし、またあるいは逆のものもあるかもしれない。こうしたことで、もう少しこの辺のところを整理をする時期に来ているのではないか、こういう意見でございますけれども、これに対してまずひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/235
-
236・梅澤節男
○梅澤政府委員 先般の当委員会におきます矢追委員の御指摘、いろいろございました。それは、一つ例示で御指摘になられましたのは、ただいま坂口委員のおっしゃいました嗜好飲料の課税の問題につきまして、コーヒー、ココア等は課税対象になっておるけれども、緑茶、紅茶は課税の対象外になっているという問題についての御指摘と、もう一つは社交的身回り品と申しますか、化粧品類の課税で香水とかマニキュアの税率等の問題を御指摘になったと記憶をいたしております。
現在の物品税の課税範囲なり税率の体系は、昭和三十六年の税制調査会の答申で一応対象の区分整理が行われておるわけでございますが、それは奢侈品、趣味娯楽品、便益品、嗜好飲料、社交的身回り品と五つの区分に一応分類をされまして、それぞれの区分の物品につきまして、二種物品で申し上げますと、最高三〇%から最低五%まで六段階の税率構造になっておる。考え方の整理は、例えば奢侈品でございますと、二種物品については全部最高税率の三〇%、一種物品の場合には、それに該当するものとしての一種物品の最高税率であります一五%に全部張りつけられておるわけでございます。ところが、趣味娯楽品、便益品となりますと、それぞれ趣味性、娯楽性あるいは便益の度合い等によりまして三〇%から五%までの五段階、自動車も入れますと六段階に税率が展開されておるということでございます。
それから嗜好飲料につきましては、漸次普及してまいりますと嗜好の度合いというものが、酒なんかの致酔飲料と違いまして、若干その辺の性格も異なるであろうということで、現行では全部五%という一番低い税率に格付されておるわけでございます。それから社交的身回り品につきましても、例えばハンドバッグのようなものは二〇%でございますけれども、化粧品の、普通御婦人がお使いになりますクリームのようなものは最低税率の五%ということで、それぞれの便益性、奢侈性あるいは装飾性と申しますか、そういったものの度合いに応じまして税負担、税率構造、それぞれ一応の考え方に基づいて整理されておりますし、今後課税対象の範囲等を見直す場合におきましても、私どもはやはり現在の課税物品の範囲なり税率構造を座標軸といたしまして考えていくべきものであろうと考えております。
ただ、これは今後消費の態様がいろいろ変わってまいりますし、いろいろな商品も出てまいるわけでございますので、現在の物品税の課税範囲なり税率構造をいつまでもそういうふうに固定的、硬直的に必ずしも考える必要はなくて、絶えず実態に即した見直しなり再検討は必要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/236
-
237・坂口力
○坂口委員 三十六年に見直しがされたというお話を伺ったわけでありますが、念のために申し上げておきますけれども、私はこういうふうな発言をしたからといって、どの製品にものべつ幕なく物品税をかけよという意味ではさらさらないわけでありまして、同じ嗜好品と申しましても、コーヒーと紅茶、日本茶とココア、こうした程度にそれぞれの差はあろうかと思います。しかし、人によります違いもございますし、そしてどちらが嗜好性が一体高いのかというのは、なかなか判断の難しい問題でございますだけに、国民の側からいたしますと、これにはかかっているけれどもこれにはかかっていない、同じようなものじゃないかというような感じも免れ得ないわけであります。
今も最後に指摘されましたように、これは年々歳々変わっていくものであり、絶えず見直しの必要なことも理解しているような御答弁でございましたので、一応それをもってよしといたしますが、ひとつそうした意味で整合性のある内容にしてもらいたい。整合性のある内容であれば、国民も納得をして物品税というものを認めてくれると思います。しかし、そこに整合性を欠くということでありますと、消費者の方もなかなか納得をしてくれないのではないだろうか。そういう意味で、鋭意これから御努力をいただきたいと思います。
お酒の問題に移らせていただきますが、酒税の課税標準は、原則といたしまして製造場から移出し、または保税地域から引き取る酒類の量に対して行われている、これは原書に書かれているとおりでございます。量に応じまして変化いたしますから、いわゆる従量税方式がその主体をなしておる、これも今さら申し上げるまでもありません。
しかし、一部におきましては、販売価格に応じた税額が課せられまして、いわゆる従価税もまたそれに加えているわけでございます。例えば、ウイスキーの特級の場合、従量税率の適用を受けておりますが、その税負担率が四八・二%だったと思いますが、になっている。また一方、従価税の適用を受けているものの税負担率が四二%ぐらいにとどまっているものもある。従価税は、負担能力に応じた課税の実現を図るために採用されているというふうに私は理解をいたしておりますが、従量税率の適用を受けているものの方が高くて、従価税の適用を受けているものの方がかえって課税率としては低いという逆現象も、中には見られるわけでございます。この辺もちょっと税体系としてはどうかなという感じもするわけでございますが、この辺、ひとつお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/237
-
238・梅澤節男
○梅澤政府委員 酒税の税率構造は、我が国の場合、御案内のとおり従量税率を基本にしておるわけでございます。従量税率の考え方と申しますのは、その酒類の標準的な商品が負担していただくべき税率ということを想定して設定をされておるわけでございます。
従量税率になりますと、税額は定額でございますので、小売価格の対比におきましては、小売価格が下がってくるほど逆に税負担率が高まるという、結果的にそういう格好になるわけでございます。そういう従量税率を基本にしておるわけでございますけれども、価格の高い酒類につきましては、従量税率ではなくて従価税率を併用するということで、特に非常に価格帯の広いウイスキー類につきましては、二段階の従価税制度をとっておるわけでございます。
そういう構造になっておるわけでございますが、小売価格に対する負担割合という観点から、従価税率と従量税率適用酒を比較しました場合に、ただいま委員が御指摘になりました四二%の負担率の従価税がある。これは一五〇%の適用酒でございますが、それに反して従量税率の適用されている銘柄で、四五%とかあるいは五〇%の負担率になっているものがあるというふうな御指摘でございます。
これは基本的には従量税率の適用されている税の負担率の方が、従価税が適用されている高価格の酒類よりも負担率を低くするという格好で設定はされておるわけでございますけれども、現行の税率構造で見ますと、ただいま例にお挙げになりましたウイスキー特級等につきましては、逆に従量税率の水準が非常に高いものでございますから、具体的な商品につきまして、間々逆転現象が生じておる。これは否定できないところであると存じます。
これは従量税と従価税を併用しております限りは、部分的に避けられない現象であるとも考えられるわけでございますけれども、この点につきましては、今後とも酒税の従量課税と従価税の組み合わせをどういうふうに適合性のとれたものにしていくかという課題の一つでございます。そういった点も含めまして、今後の研究、検討課題として取り上げていかなければならないというふうには考えておりますけれども、いかんせん、現行の従量税と従価税の仕組みの中では、そういう逆転現象が部分的に生じることは避けられないということは、御理解を賜りたいと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/238
-
239・坂口力
○坂口委員 今後の研究課題の一つであるというお話でございますので、ひとつぜひ研究課題にしていただきたいというふうに思います。
もう一つは、例えば輸入ウイスキーの場合に、CIF価格に関税がかかりまして、そしてそれに対して従価税がかかっているわけでございますね。CIF価格に対して従価税がかかるというのは、これは話がわかるわけですけれども、CIF価格に関税がプラスされてそれに従価税がかかるわけです。したがって、関税にも従価税がかかってくるという形になりますね、形といたしましては。同じ酒税の中同士の従量税と従価税というものと、別な税制との絡みでの関税と従価税というのとは、ちょっと酒税というのと私は意味合いは違うと思うのですね。こういうこともあり得るのかもしれませんけれども、しかし、専門家でない者が見ますと、CIF価格にかかるのではなくて、それにプラスされた関税という税金にもまた従価税がかかるというのは少し納得しがたい気持ちもするわけでございます。これは他の国々との問題もございましょうし、日本の国だけでもいかない問題も含まれているとは思いますが、税率は別にいたしまして、CIF価格なら価格だけにこの従価税をかける、そして、どうしてもそれを低くはできないというのならば、そのパーセントは上がるということの方が、形としては非常にすっきりしておるのじゃないだろうか、そんなふうに思うわけですが、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/239
-
240・梅澤節男
○梅澤政府委員 輸入酒類の酒税を適用いたします場合の課税標準の問題でございますが、これは坂口委員十分御案内のとおりでございまして、国内でございますと製造者の税抜き価格、つまり流通段階に入る直前の価格でございます。卸売価格と言ってもいいと思いますが、輸入酒の場合でございますと、流通段階に入るときの価格というのは保税地域から引き取りをされるときの価格でございますので、今御指摘のようにCIFの価格に関税をプラスするということが課税標準になっておりまして、税の理屈としてはそこで整合性がとれておりますし、これは輸入品に対する内国消費税を適用する場合の課税標準の一般的な通則であろうと思います。
ただ現実問題として、ここが非常に難しい問題でございますが、CIFに関税を上乗せして内国消費税を適用することについて、現状は、外国の業者はむしろ非常にクレームをつける。一方、国産のメーカーにとりましては、CIFプラス関税では少し課税標準が低過ぎるという議論もあるわけでございます。つまり、国内でございますと、メーカーの蔵出し価格の中には、例えば広告宣伝費のようなものも皆入った、それが原価になった価格である。ところが、輸入品の場合は、むしろその点が裸のままの価格でございますから、相対的に課税標準が有利ではないかという議論があるわけでございます。ここの議論は、国産メーカーと海外のメーカーとの利害が永遠に調整されない点でございますけれども、税の議論といたしましては、やはりCIF価格プラス関税、これに内外差別なく一定の税率を適用するのが内国消費税の行き方でございますので、私どもは、問題が出てまいりますたびに、そういう点を両者によく納得していただいて対応しているというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/240
-
241・坂口力
○坂口委員 実は私もその議論は聞いているわけなんです。それで、今おっしゃったCIF価格に従価税をかけるというのでは国内産のものとのバランスが崩れるというそのお話はよくわかるわけなんです。だから、外国から輸入いたしますものの従価税は何か別枠にするとかいうようなことで、この税率を上げることによってバランスをとるということができないんだろうか。関税をプラスしたものに同じ従価税をかけることによってバランスをとるというのではなくて、関税を除いてそれに従価税をかけて、その高さによってバランスをとるという方がすっきりしているんじゃないだろうか。ほかの税金をプラスして、それに対してまた新しい税金をかけるというのは、何となく二重ねという感じを免れない。そういうふうなことが研究できないんだろうかという素朴な疑問でございますけれども、感じたものですからちょっと御質問をしたわけでございます。もう一度ちょっと御説明をいただいて次に進みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/241
-
242・梅澤節男
○梅澤政府委員 関税というのは文字どおり国境税でございますので、税の一般的な理屈といたしましては、引き取り価格に関税が加わったものが国内の流通市場に入るときの価格でございますので、これを内国消費税の課税標準にするというのは、一般的な通則として認められるべきであろうというふうに私どもは考えるわけでございます。ただ、昨今のように、酒類なんかも非常に典型的なものでございますけれども、貿易摩擦等の関係、内外いろいろ問題が生じておるときでございますので、関係者には十分納得してもらわなければならない点ではございますが、一般的な考え方は、CIF価格に国境税を乗せたものが課税標準であろう。したがって、トータルとしての税負担がどうかということになりますれば、それはむしろ関税の税率が適当であるのかどうかという、関税の税率と総合して議論すべき問題ではないのかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/242
-
243・坂口力
○坂口委員 微妙な問題でございますので一応これぐらいにしておきますが、また新しい考え方が出ましたら教えていただきたいと思います。
それから、従量税方式を主体にして今までの税制はまいりましたが、インフレ等によりまして販売価格が上昇いたしましても、従量税方式でありますとふえないので、大蔵省は将来従価税方式を主体に変えていくのではないだろうかという、これも疑問でございますし、そうだという何物もないわけでございますけれども、そういう心配も中にはあるわけでございます。そういうふうなお気持ちがないかどうかということをもう一つ聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/243
-
244・梅澤節男
○梅澤政府委員 酒税の課税方式についてはいろいろな議論がございます。五十六年の酒税懇の報告にもこの問題が取り上げられておりますし、先般の税制調査会の中期答申におきましてもこの問題が論じられておるわけでございます。ただ、酒税につきましては特殊な嗜好品と申しますか、致酔性の飲料という点に着目した個別消費税的な側面と、もう一つは消費一般に対する担税力を求めるという側面と二つあるわけでございます。極めて形式的に、論理的に割り切ってしまいますと、後者の方はむしろ従価税的な方式で課税方式を探求すべき分野であるし、前者の方はどちらかといえばアルコール度数とか原料、製法等によりまして、酒類ごとのいわば従量税率的なアプローチが伝統的に行われてきた分野でございます。したがいまして、これをどちらかの方式に一本化するということではございませんで、税調の答申等に出ております考え方は、この両方式の合理的、適正な組み合わせを考えていくという方向になるのであろうと思います。
ただ、今回の税調答申なんかにも触れられておりますように、そういう組み合わせの中で、さて、現在の酒税の体系をずっと見ますならば、価格帯の広い酒類につきましてはもう少し従価税の範囲に取り込んでいくという方向が示唆されておるわけでございます。
〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
そういうことで、将来従価税に一本化するというふうな考え方ではございませんで、これを適切に組み合わせていくということでございます。
ヨーロッパのEC型の付加価値税という一般的な消費税の体系を持っております国も、やはりそういう一般的な消費税の側面を持つ付加価値税と、いわゆるアルコール課税と申しますか、日本で言いますればプロパーの酒税と考えていいわけでございますが、これはおおむね従量税率で構成されておる。この二つの負担が組み合わさって、現実の酒類に対する税負担が求められているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/244
-
245・坂口力
○坂口委員 今の答弁はわかりますけれども、私が聞いておりますのは、現在はそういうふうな状態ではありますけれども、将来その割合と申しますか、従量税と従価税のバランスはどちらかといいますと従価税の方にシフトしていくのではないか、こういうことを聞いているわけです。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/245
-
246・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは酒類によるわけでございまして、先ほども申し上げましたように価格帯の広い酒類につきましては、やはり現状よりも従価税の範囲を広げるという方向で対処すべきであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/246
-
247・坂口力
○坂口委員 次の問題は、酒税の議論をされますときにはいつも出る問題でありまして、私も前々回あるいはその前の酒税の議論のときにもそうした質問をしたことがございますが、清酒なるものの定義あるいはウイスキーなるものの定義につきましては非常に理解しにくい点が多いわけでございます。先般もどなたかから関連の質問が出ておりましたけれども、酒税につきましては「米、米こうじ及び水を原料として発酵させ」たものがいわゆるもともとのお酒であったわけでありますけれども、さらに「米、水及び清酒かす、米こうじ」「アルコール、しょうちゅう、ぶどう糖、水あめ、有機酸、アミノ酸塩」こうしたものが加えられまして、いわゆる三倍醸の新しい形の酒がつくられていることも御承知のとおりであります。本来のお酒とそうした添加物の非常に多い新しいスタイルのお酒が混在いたしておりまして、素人目にはなかなかそれがわかりにくくなっているというところに議論の出発点があるわけでございます。
今さら言うまでもなく、税制は特級、一級、二級というその級によりましてかなりな差がある。特級とは何かといえば「品質が優良であること」、一級は「品質が佳良であること」、二級はそのいずれでもないもの、こうなっているわけで、その決定は官能的な検査によって行われている、こういうことでございますが、そうした現在のあり方の中で、中身と税負担率との間にはいわゆる科学的な因果関係というものが非常に乏しい。実質的には中身の優秀なものでありましても、二級酒として非常に税率が安いものもあれば、中身が悪いとまでは申しませんけれども、もっといいものがあるのに比べるとかなり劣っているものでありましても、特級という名のもとに非常に税率が高いという、こういう中身と実質の税率との問題が今までも議論をされてまいりました。
私もあえてまたこの問題をもう一度お聞きをしたいわけでございますけれども、こうした清酒につきましても何とかけじめをつけるべきときが迫っているのではないだろうか。今までのような形で、いつまでもいつまでも同じような形で今後進んでいくことはもうできないんじゃないだろうか。今日のようにだんだんと酒税がアップをされてまいりまして、物によりますともう五〇%を超えるものも出てきたわけでございますから、国民の関心も今までよりも非常に高くなってきたわけでございますので、私は、この際にもう少し内容を整理をすべきではないかという意見を持つ一人でございます。
ウイスキーにつきましても同じようなことがございまして、これは原酒が二七%以上混和されているか、あるいは原酒が少しでも混和されており、アルコール分が四十三度以上あれば特級となる、こういうふうになっております。もう少し違った見方をいたしますと、原酒が三〇%入っておれば、単にアルコール等で色素をまぜましてウイスキー原酒に似させれば特級となる、こういうことになっているわけでありますから、ここにもまた同じような問題がある。ただ、ウイスキーの方は、曲がりなりにも原酒の混和割合によりまして一応の格差をつけておりますが、清酒の方はそれもない。いずれにも問題はありますけれども、清酒にも問題があるんじゃないだろうか。この点を今後一体どうしていくのか、このままにしておくのか、これは非常に大事なところだと思いますので、あえて今回ももう一度聞いてみたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/247
-
248・山本昭市
○山本(昭)政府委員 後ほど主税局長から制度面のお話があるかと思いますが、私から、実際にこの制度によりましてどのような酒が出回っているのかということにつきまして、実務面の御説明をさしていただきたいと思います。
まず清酒でございますが、先生おっしゃいますとおり、酒税法上の定義は、まず純水酒「米、米こうじ及び水を原料として発酵させ」たものというもののほかに、その他政令で定めるものを五〇%、米の量と同量を超えない限度においてまぜ合わせることができるというようなことになっておるわけでございます。
その実体を申し上げますと、まず純粋に米でつくりましたお酒、これを純米酒と申しております。そのほかに糖類、アルコール類等を添加したお酒があるわけでございまして、まず、麦、アワ等いろいろの穀物の列記がございますが、現時点では、米以外のそういった政令で定めますところの穀物の使用を認めておりません。それからアルコールにつきましては、連続式蒸留機によりまして製成したアルコールのみを認めるということになっております。そういったことで、アルコールにつきましては全体といたしまして一企業当たり、白米一トン当たり二百八十リットルという制限を全体で付してございます。
その中におきまして、先生お尋ねの増醸酒というのがございまして、アルコールのほかに醸造用糖類を使用するお酒がございます。三倍増醸酒でございますけれども、これにつきましては当該企業の白米使用量の二三%を超えてはならないというようなことになっておりまして、その全体の制限の中でお酒をつくっているわけでございます。したがいまして、通常の純水酒、それからアルコール添加酒、そのほかに増醸酒というのがつくられておりますが、実際、市場に出します場合には、この三増酒というものはすべて生で出しているわけではございませんで、必ず他の酒類とブレンドいたしております。純水酒につきましてはブレンドいたしておりませんが。そんなことで、かなり増醸酒というのは甘いようでございますので、甘辛調整ということでブレンドいたしております。したがいまして、そういった糖類をふんだんに使った品質の悪いお酒がそのまま出回っているということはさほどございませんで、その辺は各蔵におきまして非常に苦労してブレンドいたしておるわけでございます。
そこで、そういうことによりますところの清酒につきまして、税率に関係ございますのが級別審査でございますが、御承知のように官能審査ということでいたしておりますけれども、これは清酒の味が非常にデリケートな風味と申しますか、いわく言いがたい、官能でなければわからないような風味がございます。したがいまして、現時点では、科学的な手法といいますよりはむしろそういう権威者の官能による審査というのが実情に合っておりまして、また、効率的でもあるというふうに考えておるわけでございまして、そういった例は、例えばフランス、西ドイツ、イタリア等におきましても、ブドウ酒につきましてやはり同じように官能で審査をしている例はございます。日本だけじゃないということを御理解賜ればありがたいわけでございます。
それから、先ほど私、地方酒類審議会の委員につきまして女性が何人いるかという藤田先生の御質問がございまして、その際、若干答弁が間違っておりましたので、数でございますが、申しわけありませんが、お許しいただければ訂正させていただきたいと思います。先ほど全国で九十九名の委員がいると申し上げましたが、百三十三でございまして、そのうち一名が女性でございます。その他臨時委員というのがございまして、臨時委員が七名おりますのでつけ加えさせていただきます。なお、これは行政管理庁の御指導によりまして、審議会の委員を一割以内は女性ということでございまして、そういう方向でやっていただいております。坂口先生、大変申しわけございませんでした。
それから、ウイスキーでございます。ウイスキーのお尋ねがございました……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/248
-
249・坂口力
○坂口委員 ちょっと時間がありませんので、それだけにしていただけませんか。――もう一つお聞きしますから、そこにおってください。
先ほど言われましたように、いい悪いの判断基準がなかなか難しいのですね。純米酒とそれからいろいろの添加物が含まれた方の三倍増醸酒ですか、それと例えば比較いたしましたときに、味覚でいきますと、いろいろな添加物を含めますと味覚的には非常にすぐれたものもできるわけですね。だから、その味覚でよしあしを決めるべきものなのか、それともつくっている材料でもってよしあしを決定するのか、非常に難しいところですね。悪いものは出回っていないとおっしゃいましたけれども、私もそんなに悪質なものが出回っているとは思いませんけれども、そのいい悪いを決めるのを一体味覚でいくのか、原料に何を使っているかということによるのかというのは、非常に難しい問題なんですよ。
時間もありませんので、私が言いたいのは、例えばこのお酒はいわゆる三倍にした三倍増醸酒がまじっているということは何でわかるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/249
-
250・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
ただいまの点につきましては、日本酒造組合中央会が表示に関する自主基準というのをつくっておりまして、清酒のうち主要な原材料を掲げるということになっております。その中で、米、醸造用アルコール、醸造用糖類と書いてございますが、糖類と書いてございますのは、そういう三倍増醸によってつくられましたお酒というものがブレンドされているということでございます。純米酒でございますれば、これは米だけでございまして、その他の表示はないはずでございます。そういったことで品質の表示をやっておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/250
-
251・坂口力
○坂口委員 自主規制やっておみえになるということで結構かと思うのですが、ただ、今御指摘のように醸造用糖類と書いてあるわけですね。そうしたアルコールが添加されているものについては、アルコールという言葉を使わずに醸造用糖類、こう書いてあるわけですね。一般国民が見ましたときに、醸造用糖類という言葉が書いてあったら、これが純水酒ではなくて、ほかのアルコールその他の添加物が含まれているものだということがわかりますかね。ちょっとこの表示の仕方は、悪く言えばわからないように――大変自主的におやりになっているのに、私、けちをつけるつもりはさらさらありませんけれども、ちょっとわかりにくいようにこの表示をなすっている、こうもとれないこともないわけでありまして、もう少し一般国民にわかりやすい形でこの表示ができないものなんだろうか。
あわせて、私申し上げたいのは、もう少しほかのもの、例えばアミノ酸が加えられておりますとかブドウ糖が加えられておりますとか、あるいはそのほかの有機酸が加えられているということはあるわけでありますから、その加えられているものをもう少し克明に表示できないだろうか。このごろ、ジュースにいたしましても何にいたしましても、純粋の例えば果物が何%含まれておる、あるいはそれに対して糖分がどれだけ含まれているとか、これは皆表示されているわけですね。だから、お酒もぼつぼつはっきりとそうしたことを書くべき時代が来ているんじゃないだろうか。もしはっきりと書いてあるならば、これは特級ではあるけれども、純水醸造酒ではなくてほかのものも入っているんだなということが、お飲みになる方もわかるわけでありまして、あるいは二級酒でありましても、これは純米だということもわかるわけであります。だから、もう少し国民から見てわかる形にぜひならぬだろうか、そういうふうに改むべきときに来ているんではないだろうか。先ほど言いましたように、醸造用糖類という言葉を見て、ここにアルコールが添加されておるということがわかる人は少ないんではないかというふうに私は思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/251
-
252・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
表示が一般消費者にわかりにくいという御指摘でございます。これにつきましては、確かにこの自主基準自体に、よく読んでみますと、どういうものはいかなる表示をするということが書いてございますが、その辺の事情といいますものが、必ずしも消費者の皆様に十分の認識をいただいてないのではないかという感じもいたします。一例を読ませていただきますと、例えば「米、米麹及び水を原料として製造した清酒でなければ純米醸造、純米、」等の文字を使ってはならないとか、「醸造用アルコールの使用量を一定量(白米一屯当り百二〇リットル)以下」でなければ「本仕込、本造り、本醸造等「本」の文字を」用いてはいけないとか、実はそういう文章がございまして、それは公刊されておりますので、そういった点はもう少し私ども消費者保護の見地からPRする必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
それから次に添加物の御指摘でございます。確かにこの表示されております原材料以外に、先生おっしゃいました添加物が含まれているわけでございますが、これらは食品添加物といたしまして、厚生省所管の法律の中で許され得るものが使用されているという関係でございます。そこで、その表示をすべきかどうかでございますが、これは清酒に限らず、食品、いろいろ他にも例がございますものですから、その辺との兼ね合いの問題もございますので、直ちにこれを表示するように中央会の自主基準を改めさせるのはいかがかと思いますが、ただいまの問題を踏まえまして、いろいろほかの食料品との関係がございますけれども、検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/252
-
253・坂口力
○坂口委員 時間が参りましたけれども、ほかの果汁等につきましては、かなり詳しく最近書かれていますね。これはもうほかのに比べていただけばはっきりすることなんです。先ほど言いましたように、醸造用の例えばアルコールと書いてありましたら、これはまだわかると思うのですが、醸造用糖類と書いてあってアルコールを想像せよといいましても、これはなかなかできにくい問題でございます。ひとつこの際、その表示を明確にする方針で検討をしていただきたい。先ほどの御答弁は少しなまぬるうございますので、もう一遍ひとつ言い直しをしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/253
-
254・山本昭市
○山本(昭)政府委員 ただいまの点でございますが、醸造用アルコールを使用いたしました場合にも、アルコールにつきましては表示をすべきようになっておりますので、私、ちょっと先ほどの御説明が不足であったかと思いますけれども、「米・米麹、醸造用アルコール、醸造用糖類」ということで表示が行われておりまして、「糖類」という表示がございますものは、これは三倍増醸でつくりましたものが混和されているということでございます。(坂口委員「それがわかりにくい」と呼ぶ)その点につきましては、さらに十分にわかるように、せっかくの自主基準があるわけでございますから、その辺を指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/254
-
255・坂口力
○坂口委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/255
-
256・瓦力
○瓦委員長 伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/256
-
257・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 まず、酒について質問いたします。
その一つは、今回の酒税引き上げの今までの御説明あるいは大臣の提案理由を初め、いろいろと述べられてきたことに対して、どうしてもいまだに理解ができない。そこを明確にしてもらいたいということであります。
四つ申し上げたいと思います。
一つは、大臣の提案理由説明を読んでみますと、厳しい財政事情の中でということが書いてございます。これは前回のときもそうでございました。その後に、「物価水準の上昇等に伴いその負担水準が低下してきていること等に顧み、」引き上げることとしたという文章になっております。言うならば物価水準が上がる、言うならばお酒の値段が上がる。去年の夏か秋も上がりましたね。上がると、確かに税率は下がります。そういうことになると、税率が下がるので上げていくということになるわけであります。こういう提案理由説明でありますが、この理論でいきますと、酒の値段が上がる、追っかけて税率が下がりますから、直ちに上げていく。要するに酒の値段の上昇とともに、酒税というのは果てしなく上げていく改正をするんだという意味合いにこれはなるわけであります。何も極端な言い方はしませんけれども、何かの都合で大幅に上がった場合、税率がそれを追っかける。値段は上がる、税も上がる。文字どおりアップアップということになるというわけでありまして、それが当然だというような言葉遣いにこれはとれるわけであります。そこには、税金が上がる、負担が増す、酒を飲めば、ビールの栓をあげれば税金を思い出すというようなことにこれはなりかねないわけでありまして、やはり増税という場合には、国民の税負担への疑問や不安やさまざまな抗議、そういうものに対してまじめにこたえるという姿勢が私はなければならないと思います。要するに、物価が上がりまして、酒の値段が上がりまして、税金の負担水準が下がりましたので引き上げることといたしました、こういう論理というのは消費者無視じゃないだろうかというふうに思わざるを得ないわけであります。
先般来話題になっております酒税懇、酒税問題懇談会の座長報告を読んでみましても、酒税は負担が高率になって、消費にも勘案すべきであるという文章がございます。「酒税は間接税として構成され、とりわけその負担が高率なものとなっている事情からみて、その転嫁可能性に配慮する必要があり、」「消費の態様等を勘案すべき面があろう。」主税局長がお願いをしてつくられたその懇談会でも、負担が高率になっているということを指摘をされているというわけでありまして、そういう中で、こういう提案理由説明で言うというのはいかがなものかというのが納得できない第一であります。
並べて全部言いますから……。
二つ目の理由は、政府税調の答申。これは昨年十一月の中期答申も五十九年度答申もそうでございますが、これは前に指摘がございましたけれども、今後とも随時見直しという表現が両方とも使われております。今日の増税感、不公平感あるいは大衆増税、そういう声が極めて高まっている中で、今後とも随時見直ししますという文章は一体あっていいのだろうか。大体、こういうことを書いている、こういうことを決める政府税調というのは、一体国民に向かって税金の御負担を御理解願ってお願いする姿勢があるのだろうかと私は思わざるを得ない。先ほども同僚委員から、封建時代ほどのというお話がございましたけれども、今は封建領主が税金を取る時代じゃないのですから、今後とも随時見直していくなんという物の言い方というのは一体どうなんだろうか。これは、税調の事務局を担当されている大蔵省主税局の方も、こういう姿勢ではいかがなものかというふうに思うわけであります。
また、今までの御答弁の中でも、致酔飲料である、特殊な嗜好品としての性格に着目してということを性格づけして挙げておられます。ビールが致酔飲料であるのかどうか。この間の参考人のお話では、健康飲料であるというお話がございましたけれども、消費の態様も変わっていると思います。昔、料亭でビールを飲んだ時代と、戦前か終戦直後ぐらいの話と、今とは違うと思いますし、また、先ほどの酒税懇の座長報告の中には、「酒類の消費は一般的な消費という側面と特殊なし好品の消費という側面をもっており、」言うならば二面性を持っているということを指摘しております。この点も御承知のことですから、やはり正確に判断をしていくべきではないだろうか。何か、酔うために飲むのですから特殊な嗜好品で、高率は当然であるという理論は、座長報告でもそのとおりにはなっていない。また、この座長報告でも、今や税負担は限界に近いという業界などからの声も記録をされています。消費者から見ればなおさらのことだと私は思います。清酒の業界は別にいたしまして、そのほかの方は黒字だと思いますが、消費者の方は必ずしも黒字になっているわけではありません。そういう視点を考えますと、今までの御答弁では私は国民が納得しないということではないかと思います。
三つ目の問題。酒税の考え方といいますか、政府税調の答申、今までの御説明に関連いたしますが、前にも同僚委員から指摘がございました。所得の上昇、平準化を背景に多様化、均質化するに伴い高級酒、大衆酒の意味は弱まり、低価格酒の伸びが大きくなっている、この論理学というのは一体どういうことなんだろうかというふうに私は思わざるを得ません。所得の上昇、平準化。この前大臣は、五十年前と比較をしましてと言われましたが、今回の税調の答申のこういう文章あるいは酒税懇の文章なども、五十年前と比較をしてなんという文章は書いてございませんし、少なくとも三年前、そのまた三年前などと比較をしながら今日の酒税のあり方をお考えになっているということだと思います。この数年間にそういう説明ができるのかどうか。渋沢委員がトップで質問したときに、後で資料で説明ということで締めくくられたようですが、渋沢さんにそれを伺いましても、とても納得のいくような資料が届いていないというお話を伺っております。あるいはまた、所得が上昇した、平準化したということが前に書いてあって、そして後の方には安いお酒の伸びが大きくなっている。確かにこれは一面では嗜好の問題がございますから、お金持ちでも安いものを飲むということは当然あるでありましょう。しかし、総体的に見た場合には、常識でいえば、所得が上昇すれば、今まで飲めなかったいいお酒も飲みたい、高いお酒も飲みたいということになるんだろうと思います。総体的にかあるいは若干のタイムラグといいますか、短期ではなく中期ぐらいの距離で見れば、一所得が上昇、平準化をして豊かな社会になれば、高級酒の方が伸びるというのが当然なのであって、こういう論理学は一体どうなんだろうかというふうに思うわけであります。ですから、前提として説明されていることが私も理解できませんし、また、こういう理屈を皆さん方が言われるとおりに説明しても、酒を消費する国民の方は納得をしないだろうと私は思います。
四つ目には、減税財源に酒税という問題を挙げたということであります。私は、先ほど来御議論ございましたから、これがけしからぬということを改めて声を大にして申し上げるつもりはありません。しかし、私は率直に言うべきだと思います。大臣おられませんで政務次官いらっしゃいますけれども、やはり景気浮揚に役立つということを言いました。大臣はいろいろと、煮詰まっていなかった議論の経過とか言われますけれども、私は、こういうことは普通の市民にわかるように率直に言うべきだと思います。そういうことはできませんでしたと言えば、それでフェアな一つの回答でありましょう。いい悪いはみんなが判断することであります。何かこじつけたことを言ってわからぬことを言うというのは、やはり国民に対する政治としてのフェアな態度ではないのじゃないだろうかというふうに思わざるを得ません。
そしてまた、これしかなかったということを理由にして、減税財源の一つに酒税も挙げておられます。しかし、昨年の秋から暮れの五十九年税制の議論の中では、主税局の方は幾つものテーマを挙げられたわけでありまして、単なるアドバルーンじゃなくて幾つものテーマを挙げて検討され、あるいは関係業界とも御議論をなさったということは自明のことであろうと思います。なぜ、例えば企業税制にかかわるところの退職給与引当金の引当率の問題とか、これができなくて酒へ行ったのかというようなことも、ほかに方法がないので酒ですという言い方じゃなくて、やはり率直に説明をされるべきではないだろうか。
以上四つ挙げましたけれども、今までの議論を伺っておりますと、いろいろな意味で今回の酒税引き上げのまず前提条件が理解できないというふうに思うわけでありますが、どうぞ明快にお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/257
-
258・梅澤節男
○梅澤政府委員 大変たくさんの御指摘、御批判を賜ったわけでございますが、順次お答えを申し上げます。
まず、酒税の負担の見直しの基本的な考え方、特に委員が御批判になりましたのは、大蔵大臣の提案理由の説明に、なるほど、物価上昇等により税負担が下がってきておるので、この際それを適正な負担に引き上げるといったような考え方とか、あるいは税制調査会の答申、適正な負担を確保するために随時見直すべきである、これは今回の答申だけには限りませんで、税制調査会が酒税の負担について考えを述べておられます最近の中期答申等は皆こういう考え方で貫かれておるわけでございます。
ただ、御指摘のように、若干その文脈が短絡しておりますので、かなり乱暴な、あるいは非論理的ではないかという御批判あるいは御疑問、当然生ずるかと思いますので、若干その点をコメント申し上げますと、要するに小売価格に占める酒税の税負担が、これは従量税率でございますので、価格が上昇いたしますと結果的に負担が引き下がっていくわけでございます。じゃ、小売価格が上がれば自明の理として税負担が引き下がるわけだから、そういうようなのは税負担の引き上げの理論的根拠としてはいかがかということ。恐らく、突き詰められた場合、伊藤委員の問題にしておられる点はそこにあるのだろうと思うわけでございます。
酒類の価格というのは、これは通常の価格と同じでございまして、需要と供給によって価格は決定されるわけでございます。したがって、価格上昇の背後にはそれだけの経済的要因というものが介在しておるわけでございまして、それは一方は需要者側の所得の上昇等でもございましょうし、一方、供給側のコスト要因による価格の上昇という要因もあろうと思われます。ということは、結局はそれは経済全体の循環の中で価格が引き上がるという現象が生じるわけでございますので、結果的に税負担の引き下げが生じておるとすれば、やはり財政事情が許す場合はともかく財源上何らかの処置を講じなければならないとするなれば、そういう点に着目して、特に従量税率の構造の酒税の場合には税負担の水準を随時見直すというのは、やはり基本的なスタンスであろうと私どもは考えておるわけでございます。
ただ、非常に異常な、突発的な、特殊な要因で例えば価格が上がりまして、負担が下がったから税負担を引き上げるという論法は、これは極めて非論理的でございます。これは委員の御指摘のとおりでございますが、ここに書いております物価の上昇等に伴う税負担の率が下がっていく、そのために随時適正な負担を確保するために見直さなければならないという経済理論的な意味は、私は、ただいま申し上げたようなことを背景に御理解をお願いしたいというふうに考えるわけでございます。
それから、致酔飲料としての酒税負担をどう考えるのか、特にビールを例にお引きになりましていろいろ御批判を賜ったわけでございます。これは、その後に御指摘になりました所得の上昇、平準化に伴う消費の多様化、均質化の問題と関連して御理解を願いたいと私どもは思うわけでございます。これは、先般の当委員会におきます渋沢委員の御指摘がございました。あのときに私ども、後ほど資料を提出申し上げるということで、資料の格好で委員には御説明に参上しておるわけでございますが、なかなか十分御満足がいただけておらないということのようでございます。
そこで、私どもがお持ちいたしましたのは、昭和三十年代から高度成長期に入りまして所得の平準化が行われたというのは、これは今日定説になっておるわけでございますが、それをひとつジニ係数の格好でお示ししたものと、それからもう一つ、これは総理府の勤労者の家計調査の結果で見ますると、昭和三十年代、第一分位と第五分位の格差、第一分位というのは低収入世帯でございますが、格差がおよそ四・五倍ぐらいの水準にあるわけでございますが、四十年代後半から今日にかけて、これは二・五倍ぐらいの格差に縮小しておる。そういった背景のもとで、酒類につきまして消費の均質化の傾向というものを、私どもなりに家計調査を分析してお示ししたわけでございますが、酒類ごとに申し上げますと、清酒の特級、それからウイスキーの特級、一級、これをただいま申し上げました第一分位の世帯と第五分位の世帯で時系列的に、これは最小自乗法で一応消費の動向を分析したものでございますが、顕著な傾向といたしまして、低世帯の清酒特級なりウイスキー特級の消費の傾向が上昇の傾向にある。逆に、高額の収入世帯のこの種の、従来いわゆる高級酒と言われたものの消費がむしろ下降ぎみにありまして、両者が接近する傾向にある。つまり収入単位ごとの、低収入と高収入世帯のこういった、従来高級酒と言われるものの消費パターンが非常に接近しつつあるという点が一つでございます。
逆に、清酒の二級、しょうちゅう等の下級酒につきましては、これが全く逆の方向があらわれておりまして、第一分位の消費がむしろ下降ぎみでございまして、第五分位の消費が上向いておる。これもその意味では接近してきておる。清酒の二級になりますと、むしろ高収入の世帯の消費の方が、低収入の世帯を上回るような傾向が、傾向として出てまいっておるというふうな点も御指摘を申し上げまして、酒類間につきまして、従来のような高級酒とかあるいは大衆酒といったような、それだけの区分でもって税負担をいろいろ議論するというのは、現在の酒類の消費の態様から見ていささか問題がある。これは、先ほど委員が御指摘になりました酒税問題懇談会でも、酒類間の税負担の格差の縮小、それを受けまして税制調査会の答申でもそういう方向づけをいただきました。
その結果、私どもといたしましては、現在御提案申し上げ御審議をいただいております五十九年度の酒税法の改正に当たりましては、むしろ従来とは引き上げのパターンが逆でございまして、従来でございますとむしろビールの税率を主軸に置きまして、そこでいわゆる高級酒と下級酒の間に一定のバランスをとるという手法をとったわけでございますが、今回はむしろビールの税率の引き上げ幅二〇%をベースにいたしまして、その上に税負担の比較的低い酒類ごとに税負担の引き上げ幅を上げていくという手法をとらせていただいたわけでございます。したがいまして、例えばしょうちゅう甲類等につきましては三五%という大幅の税負担の引き上げをお願いしておるということでございます。
したがいまして、今回の酒税の引き上げにつきましては、そういった酒類の消費の態様――これは御指摘のとおり、ここ二、三年に急激に始まった現象ではございません。十数年来ずっと持続しておった現象なのでございますけれども、今日までの酒税の引き上げに当たりましては、従来どおりの考え方を踏襲いたしまして、むしろ税負担の低い酒類ほど引き上げ幅を低い方に調整するという手法を続けてまいったものでございますから、その差が非常に拡大した、それを縮小する方向をあわせてやらせていただくというのが今回の基本的な考え方でございます。
最後に、減税財源について、なぜ酒税という大衆課税を財源として選択したのか、もっとほかの手法はなかったのかという、端的に言えばこういう御指摘かと思います。
御承知のとおり、現在の我が国の国税の収入構造を見ますと、約四割が所得税でございます。約三割が法人税でございます。残りの三割が間接税でございます。ただ、この間接税のうち約一割は、先ほど来御議論願っております特定財源でございます。したがいまして、そのあとの二割ほどの間接税の割合があるわけでございますけれども、これにつきましては、印紙収入、これは五十六年度に大幅の引き上げを行わせていただきました。それから専売納付金、たばこの税負担も入ってございます。これを除きますと、残りの主なシェアを占めますものは、現在御審議を願っております酒税、物品税、これが約一割弱でございます。既存税制の枠内で何らかの減税財源を求めるとするならば、この一割の部分、それから残り三割の部分の法人税について何らかの税負担を求めざるを得ない。つまり特例公債に依存する減税財源という手法をとらないとすれば、何らかの格好で税制によって財源を生み出さなければならないわけでございます。しかも既存税制の枠内でという制約が加わってまいりますと、選択の幅は非常に限定されてくるわけでございます。
そこで、酒税と物品税につきましては、先ほど来申し上げておりますように、負担の調整の範囲内で最小限度の負担の引き上げをお願いする、残余の部分につきまして法人税率の引き上げそのほか、実質的な税負担を伴わない増収措置等によって対処せざるを得なかったというのが、五十九年度におきます税制改正の減税財源の選択という観点からの問題でございます。
もう一つ、答弁を落としましたが、退職給与引当金の問題等について、もっとやる余地があったのではないかという御指摘でございます。私ども、実際にこの退職給与引当金の問題について具体的に検討をいたしました。退職給与引当金は、五十五年度にそれまでの累積限度額五割を四割に引き下げたわけでございますが、そのときの考え方は、現在の退職給与引当金と申しますのは、企業に在職する従業員の平均在職年数から退職金債務を算定いたしまして、現在の価値に割り引きするという観点で、いわば年金数理方式で現在の累積限度額というものは設定されておるわけでございます。これが高度成長時期から安定成長の時期を通じまして、企業の平均在職年数というものが非常に長期化するということが顕著に認められましたので、五十五年度の時点で見直しまして、四割という結論を出したわけでございます。
今回、同じ手法でもう一度見直したわけでございますが、全般的にここで累積限度額を全企業についてさらに引き下げるという適当な根拠は、五十九年度税制改正の時点ではまだ見出しがたいというのが究極的な私どもの結論でございましたけれども、これにつきましては、来年度以降の問題として、引き続き引当金の繰入限度額の適正化という問題については検討をしてまいるべき課題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/258
-
259・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 私どもも大蔵委員会に長年在籍しておりますから、わかり切ったことは言わなくともわかりますから、簡単にお答えください。
今言われたようなことでは到底市民は納得しないと私は思います。お役人の答弁じゃなくて、大衆に触れておられる感覚で政務次官、お答えいただきたいのですが、どうですか。普通、お酒を飲む方は、税調答申の文章を全部見ておるわけじゃない。だけれども、これをみんなに配ったらどう思われますか。例えば、値段が上がったら随時上げます、値段が上がったら税率をすぐ上げます、値段が上がったらこれは上げますと書いてあります。当然だと言わんばかりであります。国民の消費なり国民の気持ちにどうこたえるかという気持ちを持たなければ、国民の汗の結晶を預かるお役所ではないと私は思います。ですから、国民の立場に立って、それをどうとらえていくのかという立場がなければいかぬだろうというふうに思います。
あるいはまた、所得が上がって平準化だと言われております。納得のいくデータの説明もないようです。しかし、五十年前、百年前と比較をした話をしているのではないのですよね。今どうですか、これからどうですかと。皆さん御承知のとおりに、春闘だってゼロ回答春闘と言われておるわけでしょう。そういう状態の中で生活は苦しい、可処分所得はふえない、しかし上がっていく。これに対して抵抗感を感じない人はいないと思いますね。私は、そういう面では、大蔵省もそうですが、政府税調もけしからぬと思っておるのです。
政府税調というのは、国民の汗の結晶を預かって、どう社会のために使うのかという立場を議論する、あるいはまたより公平にどういただくのかということを相談する場所ですから、国民に向かって開かれた姿勢でもって意見を聞き、また、説得力ある結論を出すということが必要だと思います。ところが、何かまとめては総理大臣にレポートを持っていく、それでおしまいですね。非常に問題だと私は思っております。いずれ税調会長をお呼びしますから、私どもそれなりの御意見を申し上げたいと思いますが、そういう感覚で、こんな表現やこんな立場でいいんだろうかと、政治家としてはお感じになるでしょう。一言どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/259
-
260・梅澤節男
○梅澤政府委員 大臣なり政務次官のお答えがございます前に、若干補足して御説明申し上げることをお許し願いたいわけでございますが、税負担の引き上げの考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
ただ、もう一つ御理解願いたいのは、今回もちろん負担の増をお願いするわけでございますが、ビール等につきましても、小売価格に対する影響の割合から見ますと、五十六年度の引き上げのときよりも、これをなるべく縮減するという努力等もいたしておりますので、この点についてはぜひ御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/260
-
261・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 政治家がいらっしゃったら答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/261
-
262・堀之内久男
○堀之内政府委員 ただいま大臣がお見えになりましたので、大臣から御答弁いただいた方がいいかと思いますが、先ほどからも政治家の一人として言えということでございますので、もう本当に私見になりますが、やはり税が上がるということは、どの国民も喜ぶ人はないわけでありますが、厳しい財政事情の中でありまして、今回は減税の財源をどこに求めるかということで最大の苦慮をいたしたわけでございまして、党の税調でもいろいろ議論がございましたが、最終的にはもうやむを得ないということで、一応御了承いただいたわけであります。
また、物価が上がれば負担率が下がるからまた上げるのじゃないか、こういう提案理由だという御指摘でございますが、この辺は、そのときの所得水準というか、あるいはその辺の事情を酌みながら、御指摘の点、我々も今後十分反省しながらの中で検討をしていかなければいかぬと思います。どうしても酒というのが、昔の、戦前のような特殊な社会の飲み物ではなくて、このように大衆化しておる今日でございますから、この辺の事情はこれから十分配慮して、今後税調なり、また、いろいろ御検討をしていただきたい。そのためには、やはり一般的な間接税全体において御検討を賜らなければいかぬだろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/262
-
263・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 繰り返しはこれ以上しません。ただ、大臣もお見えになりましたから、気持ちだけ一言申し上げておきたいのですが、「男子の本懐」を読みましたら、井上準之助大蔵大臣は、負担を国民にお願いをする、そういうことを訴えるときに、その当時はテレビはありませんでしたから、ラジオで放送なすったそうでありますが、斎戒沐浴して、モーニングに威儀を正してその原稿を書かれたそうであります。こういう厳しい条件のもとで、しかも厳しい国家財政の状態、これから先さまざまなことを国民にお願いしなくちゃならぬ、合意をお願いしなくちゃならぬというときだと私は思います。そういうときに、やはり国民の前に厳粛に、国民の前に誠実に、懸命に努力をするということが、特に国民の汗の結晶をお預かりする財政としては大事なことじゃないだろうか。ですから、私はこういう文章を見ると頭にきます。とにかく物価が上がりました、負担率が下がりました、上げます、随時見直しをさせてもらいます、こんな乱暴な言い方ではなくて、庶民の気持ちにどうわかってもらうのかという姿勢を少なくともとるべきではないだろうか。そういうことがないこの文章の提案については、もちろん私ども反対であります。
先ほどから一生懸命答えられております主税局長にお伺いしますが、酒の税率の基本的なルールは分類差等課税制度ですね。「やさしい酒税」というのをもらいまして、大変易しく書いてありますからわかりやすかったのですが、「現行酒税法は、極めて徹底した分類差等課税制度を採用しています。」というふうに書かれています。そうして、なぜそういう制度かということは、例えば清酒特級やウイスキー類特級のように、高所得者によって比較的多く消費される酒類については、適用する税率を高くし、さらに、一定金額を超える高級なものに対しては従価税率を適用し、また、低所得者の消費が比較的多い酒類については税率も低くしています。「このように、酒税の負担は、」「できるだけ消費者の担税力に応じたものにしようとしています。」ということで、「極めて徹底した分類差等課税制度を採用しています。」という説明です。ずっとそういう説明をされていると思います。私は、その考え方は結構だと思います。じゃ、現実はどうでしょう。そうはなっておりません。現行の酒税の負担が、大衆酒により低いものになっているのか。級別の差は確かにございます、理解できる部分もありますが、理解できない部面もあります。
例えばこれ、どう説明されますか。ビールの税率とウイスキー特級の税率はほぼ同じであります。今回の改正によりますと、その後ではビールは清酒の特級よりも高い税率になります。皆さん方が出している基本的な酒税の立場の方には、清酒特級とかウイスキー特級とか、そういう高級なものには高い税率で、一般の人が飲むものには安い税率で、これが酒税の立場であります、そういうことで「極めて徹底した分類差等課税制度を採用しています。」というふうに書かれています。毎年これ出していますね。じゃ、現実、ビールはウイスキー特級よりも、清酒の特級よりも高級酒ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/263
-
264・梅澤節男
○梅澤政府委員 税負担の割合でございますけれども、これは三十七年の酒税法の改正から今日まで約二十年間、幾多の変遷がございます。これは先ほども引用させていただいたわけでございますが、清酒特級は昭和三十七年当時の負担率が五〇・七、それが今回の改正案では四〇・一でございます。一方、ビールは、三十七年当時が五二・三、それが今回の改正案で四八・九。同じく御指摘をいただきましたウイスキー特級が、三十七年当時が三九・五、これが今回の改正案で五〇・五となっておるわけでございます。
分類差等課税の考え方、従来我が国の酒税の税率構造がそういう考え方に立っておることは御指摘のとおりでございます。ただ、将来の課題といたしまして、この分類差等課税を現在のように複雑精緻なものとするのか、もう少し簡素化するのか、あるいは今の税率構造は従量税率を基本としておりまして、ただいま申し上げましたのも従量税率による負担割合でございますが、これと従価税との組み合わせでどういうふうに考えるかという、まあ幾多の問題があるわけでございます。
そういう問題をこの際やや捨象させていただきまして、ただいまの御質問の趣旨に即して御説明申し上げますと、清酒の特級につきましては、四十年代と申しまするよりは五十年代に入りまして、清酒全体の消費が非常に伸び悩んでまいりました。同時に、これはたびたび申し上げておりますように、清酒につきましては食管制度のもとにおける原料米の特殊事情がございます。したがいまして、今回の税率の手直しに当たりましても、清酒につきましてはそういう消費の動向あるいは生産供給側の特殊な条件等を考慮いたしまして調整をいたしました。したがって、清酒のアルコール飲料としての品質と申しますか、そういった観点から、清酒特級がビールよりも低級酒であるか高級酒であるかという観点からの税負担の議論では、一概にここの点は説明しがたいということでございます。それは、当然そういうことを配慮いたしまして税率構造を設定したわけでございます。
それから、ウイスキー特級につきましては、四十年代、五十年代を通じて非常に消費が伸びております。これは、個別消費税の税負担の議論をいたします場合に、個々の対象物品ごとの消費の動向とか生産側の条件というものを総合勘案して考えて税負担を設定するわけでございますので、やはり十年、二十年というパターンでとりますと、その間にいろいろな変遷があるということはただいまお示ししたとおりでございます。そういった観点で、現在の酒税の税率の改正案を御提案申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/264
-
265・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 大変苦しい答弁をいただきましたが、揚げ足をとるわけではありませんで、私が申し上げたいのは、酒の税率の基準があいまいである、あるいは建前があって実際にはそうなっていない。酒税懇の座長報告、まあ一挙に実現するのは難しい意味があると思いますが、その方向性のにおけも余り出ていない。また、今までの同僚委員の質問に答えられましたが、今日の酒税の原型が固まったのは昭和三十七年の改正である。昭和三十七年から何回かの改正を繰り返しまして今日に至っておりますが、その三十七年から今日までの経過を見ますと、非常に税率の幅が広がっているという状況があります。
三十七年のときのグラフを私つくって見てみましたが、ちょっとワインの価格がございませんのでそれを別にしますと、一番高いウイスキー特級の税率と、私のとった中で一番安いしょうちゅう甲類の税率との幅が二二・五%であります。五十七年九月の段階で見て、それが四〇%以上に広がっています。何かこう恣意的に広がっている。根拠のある、また説得性のあるルールではない形でさまざまに広がってきている。三十七年のいわゆる原型なるものから非常に変わった形になってきている。これを一体どうするのかという問題があると思います。
先般、雑誌「世界」の三月号を読んでおりましたら、大臣の答弁とちょっと兼ね合ってまいりますが、こういうことが載っておりました。「奏功した?大蔵省の増税戦略」という文章でありますけれども、その中に「力の論理の横行」というパラグラフがございまして、酒税のことが書いてあります。「力の論理についていえば、その見本は清酒とウイスキーの酒税引き上げ状況に典型的に示されている。大蔵省が示した酒税引き上げ案は、大衆酒の引き上げ率を大きく、高級酒の引き上げ率を小さくというものだった。」ところが、説明がございますが、そのようになっていない。「清酒業界は竹下蔵相をはじめ、自民党内に有力者を何人も送り込んでおり、政治力は強大。「民族酒を守れ」のひと声で、楽々と増税幅圧縮に成功した。これにくらべ、ウイスキーは最近でこそ地場ウイスキー・メーカーも出てきたが、基本的にはサントリー、ニッカの寡占体制であり、担税力が強いこと、選挙地盤として力の弱いことから結果的に冷遇されることになった。」という文章がございました。私は、ビールの方も清酒の方もウイスキーの方もほとんどたしなみませんので、どちらをひいきにするということはありませんけれども、さっきビールのことを申し上げましたが、理屈が通らないですね。とにかく高級酒には高く、大衆酒には安くというのが酒税のプリンシプルである。しかし、現実には、ビールは高級酒かと言われたら一体何と説明するのかというふうな話になる。
三十七年以降、税率の幅が非常にいろいろな意味で広がってくる。そのときどきに、自民党、税調を含め、さまざまな力があってこういうことになってきているのではないだろうか。少なくとも酒税懇座長報告でもさまざまな方向性がございました。私もどうかなという点もございますが、そういう方がルールに合うだろうと思う点もございます。その辺のところを、今問題意識として、また今後の問題としてどうお考えになっているのか、簡単に聞いて、次に移りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/265
-
266・梅澤節男
○梅澤政府委員 三十七年当時の税負担の割合から、この二十年余りの間に、今回の改正案と比較いたしまして酒類ごとの税負担のばらつきが実は拡大しておるというのは、御指摘のとおりでございます。
それの一番大きな原因と申しますか、もたらしたものは、これまで累次にわたります税率の改定に当たりまして、例えばしようちゅうとかあるいは清酒二級等、税負担の割合の比較的低い酒類につきまして、一般的な税率の引き上げが行われますときにも、この引き上げ幅を縮小したりあるいは引き上げを見送ったという結果、今日のような税負担の格差が生じておる。これは酒税懇の指摘にもありますし、税制調査会の答申にもあるわけでございます。かたがた、先ほど御批判はございましたけれども、やはり所得水準の上昇あるいは平準化を背景といたしまして、今日酒類につきましても消費の多様化、均質化というものは否定できないという状況でございますので、やはり酒類間の税負担の格差は今回縮小するという方向で御提案申し上げておるということでございます。
いろいろな御批判はあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、酒類間の税負担の格差を今よりも少しでも縮小するという方向で、酒税の税負担の体系全体をやはり今後とも見直していくべきであるというのが、将来ともとるべき方向ではなかろうかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/266
-
267・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 次に、酒の中身といいますか、品質管理ということに移りたいと思いますが、今までも幾つか御議論がございまして、オールドかヤングかという御議論もございましたし、いろいろな本を読みますと、オールドかヤングかではなくて、オールドかベビーかではないかというふうな議論もあるわけでありますが、私はいろいろな意味で今考えなければならない問題があると思います。
御承知のとおり、日本には酒造り法という法律はありません。全部税法でくくっているという大変特異な存在になっているわけであります。主税局長が諮問機関におつくりになった酒税懇というものも、これは税金の議論ということがほとんどテーマになっておるわけであります。実際には醸造試験所もございますし、また国税庁の方でもいろいろな意味での品質管理、品質指導をおやりになっているということも私は存じております。しかし今日、まだこれからの酒の安定した発展ということを考えますと、今の状態にひとつ区切りをつけた努力をしなければならないのではないだろうかというふうに思うわけであります。
たまたま審議がおくれました暇に「酒の風俗三十二年史」というのを読んでみました。大変おもしろく読みました。その御紹介はやめますけれども、考えてみますと、戦前戦後から幾つかの段階を経て、酒と国民といいますか、が今日に至っている。戦時中は言うまでもありませんが、戦後一時期バクダン、カストリ時代、懐かしく思い出す人もいるかもしれませんけれども、アルコールを何かしたやつを飲んでバクダンあるいはカストリ、要するにうまい酒よりも酔える酒というのか、飲み物で満足せざるを得ないというふうな時代であったと思います。やみ市でカストリを飲んでカストリ文化を語る人をカストリゲンチアというなんてことが書いてありました。そして昭和三十年代から「トリスを飲んでハワイに行こう」という時代。ややハイカラといいますか、ということになってまいりますし、四十年代からは高度成長の中で、トリスからオールドですか、いろいろな変化が起きてくる。それから後五十年代、現在はさまざまな意味で酒の爛熟期というか、非常に豊かな時代に入ってくる。商品は極めて多様に豊富にある。また一面では消費者パワーも強くなりまして、消費者も賢くなってくる。先ほど来議論がございましたように、品質の正しい表示、あるいは品質のいい、自分で確かめたものを飲もうとかいうことになってくる。清酒の面でも、地酒の再発見とか純米酒とか吟醸とかいろいろなものを、自分で本物のうまいものを決めて飲もうという状態になってくる。それから国際化も非常に進んでいるというふうなことになっている。
ところが、酒造り法の方はない。税法でくくっている。その税法でくくっている酒の管理あるいは品質規定などの方は、カストリ、バクダン時代のまま残っているというふうなことではないだろうか、私はそう思うわけであります。ですから、正しい表示をしようということも、もちろんちゃんとやってもらわなければなりません。しかし、表示をきちんとする以上に、やはり今後の酒というものが大衆から親しまれ、しかも消費者から愛される、国際的にもプライドを持った立派な商品である、そういう方向に発展しないと業界の発展もないということではないだろうかと私は思うわけであります。それは現実がありますから、革命的にやるのか若干時間を置いてやるのか、現実にはいろいろな方法があるだろうと私は思うのです。しかし、そういう方向への努力をすべきではないだろうか。
例えば酒についての酒税法のさまざまな規定、繰り返しません。ウイスキーについてのさまざまな規定がございます。例えばウイスキーについても、スコッチの場合にモルト二年以上でなければスコッチのラベルを張ってはならぬとか、厳しい規制と検査と監督があるとなっておりますし、スコッチだけかと思ってそのほかも調べてみましたら、アメリカンウイスキーの場合も、アイリッシュウィスキーの場合でも、カナディアンウイスキーの場合でも、ほぼ同じようなレベルのものが行われているということを読んだわけであります。そういうことを考えますと、今大きな変化の時期に来ている。もうカストリ、バクダン時代とも、「トリスを飲んでハワイに行こう」時代とも違っている。
そういう中で、さまざまの酒類について、やはり将来を展望したそういう努力が必要なのではないだろうか。そういうものがないとかえって、酒瓶を見ても、これは本物であるかないかという疑惑の目で見られるような状態になる。ウイスキーを見ても、これは一体本当にモルトが入っているのか、グレーンモルトなのか本物のモルトなのか、一体どうなのかという疑問が起こる。やはり国民の目が厳しくなっている時代ですから、それに対応した方向が必要ではないだろうか。私はそういう意味では、きちんとした酒づくり法をつくるという努力をされるのが筋だと思います。少なくともそういう方向に向けた見直しが行われるべきだろうと思います。
さらに、百歩譲っても、税金の面では主税局長の方で酒税懇をつくられて座長報告も出ていますが、そういうような、あるいはそれ以上の努力をされるということがないと、酒を見たら税金のことばかりというふうな時代がいつまでも続いたのでは、本当に立派なお酒としてみんなから評価をされ、消費者から愛され、国際的にもレベルの高い日本の酒ということが言えない危険性があるのではないだろうか。
〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
そういう御研究あるいは取り組みをなさるべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/267
-
268・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
確かに酒は財政物資ではございますが、同時にまた国民の嗜好飲料でもございまして、よい品質のものを国民の皆様にお届けをするということは先生御指摘のとおりでございます。
現在、御指摘になっておられますような品質管理につきましての統一した法律はございませんが、現時点で私どもがどのような努力をさせていただいているかということにつきまして、体系的にこの際、御説明申し上げさせていただきます。
まず最初に製造段階の品質の規制、次に製造後の販売段階におきますところの品質の管理、三番目に消費者に対する表示を通ずる情報の提供、この三つの段階があろうかと思うわけでございます。
そこでまず製造段階でございますが、酒税法におきましてその酒の種類ごとに原料、製造方法を規定しておりまして……(伊藤(茂)委員「新しい努力をするかしないかということを聞いているのですよ」と呼ぶ)ですから、先ほど申し上げておりませんが、醸造試験所におきましてはそれぞれの酒造期間中に酒造指導、出荷管理指導等をいたしております。それから、販売段階におきましてもできる限りの品質の指導をさせていただいております。
それから、先ほど表示の問題につきまして御議論がございましたけれども、表示につきましても、中身の適正な表示ということにつきましてはそれぞれ公正取引規約あるいは業界の自主基準というようなものによりまして、その内容にマッチした表示が行われますように、逐年その努力の成果が実ってきているというのが現状であろうかと思うわけでございます。
そういったところでございまして、酒造法的なものはございませんが、その中におきまして先生の問題意識というのは私ども十分にわきまえておりまして、いろいろ努力させていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/268
-
269・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 あと三十分ちょっとですから、大臣に幾つかお伺いしますが、その一つは今の問題であります。
さまざまの酒の監督あるいは検査などをなさっていることは、私は承知しております。私は時と歴史の流れのことを言っているのですね。カストリ、バクダン時代でもない、「トリスを飲んでハワイに行こう」という時代でもない。酒は豊かになり、消費者の目も厳しくなっている。そういう中で、本物の酒を飲もうとかいう運動も盛んになっている。消費者の目はますます厳しくなるだろうと思います。あるいは自分の舌で確かめて、確かなものを飲もうという気持ちもますます高くなるだろうと思います。ウイスキーでもそうですよ。諸外国の例はみんな三年以上のモルトを入れると書いてあります。厳しく法律で規制をして、そうでなければレッテルを張ってはならぬ。厳しい規制のようであります。日本にはそれはありません。
私はこれからの酒の業界、これからの酒と市民――酒と市民の関係は生涯切れることのない友情だといいますから、そういうものが皆さんから愛され、何かするためには、今の惰性で行って、いつまでたっても国際的な基準よりもはるかに緩い、酒については三倍増醸――満州事変のときから――そこまでは言いませんよ、知っていることですから。ごたごた歴史があります。ウイスキーにしたって、国際的な水準の検査を見てごらんなさい、明確に違うでしょう。私は百歩譲歩して、こんなものを革命的にやろうといっても、業界の現実もあるし、長年飲んだ者の趣味もあるだろうし、いろいろある。しかし、そういう方面の検討をやって、日本の酒が立派な酒であり、そして人生の楽しい伴侶であり、国際的にも日本のウイスキーでも酒でも高いレベルだと言われるような法的、行政的対応をする段階になっているのじゃないか。余りにもそれがおくれているのじゃないか。そのために、いきなり法律をつくるのか、あるいはそういう研究機関をつくるのか、それから酒税懇みたいなものでやるのか、方法があるでしょう。そういうことに着目した努力をなさるべきであろうというふうに申し上げているので、それに対して前向きであるか後ろ向きであるか、あるいは違うというのかそうだというのか、それを答えてもらえばいいのですよ。大臣、ちょっと一言……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/269
-
270・竹下登
○竹下国務大臣 バクダン、カストリ、もう一つ、農村では「片目に両目」というのがありまして、どぶろくで酸っぱいのは片目、猛烈に酸っぱいのは両目をつぶって飲む。「どぶろく談義」に書いてありますが、「バクダン、カストリ、片目に両目」、これはごろが非常にいいわけでございます。それからだんだん歴史的な経過をたどってきたわけでございます。三倍増醸の時代にはやはり三倍増醸をしなければ、その需要に応じられなかったという実情もございましょう。それから味の素も入れました。ブドウ糖も入れました。いろいろな状態が続いて今日に至って、今おっしゃるように、みんなの舌は肥えてまいります。
ただ、もともとこれは財政物資として出発をいたしておりますので、私は前々から業法をつくる対象としてはいかがなものかなと思っておりました。したがって、今伊藤さんの御指摘なすった問題は、現行の税法の中で逐次消化されつつあるのじゃないか。御指摘の問題は貴重な御意見でございますし、恐らくノーと言う人はいない意見だと思いますので、どういう形でやるかは別として、勉強はさせていただかなければならぬ問題だと思っております。
それからもう一つ、清酒、いわゆる日本酒の場合の決定的な欠陥は、接吻をしたときに、酔っぱらい過ぎると熟柿臭さが残る。これは醸造試験所等でも種々研究しましたが、なかなかやれなかったというような話を、私も酒屋のせがれとして若いころ聞かされたことがございます。しかし、それにしても日本酒というものは、かつて私どもが初めて国会へ出たころには相当な、酒税そのものが国税全体の二割ぐらいを担当して、そして清酒がそのまた多くの部分を担当しておった時代と、大変な変化をしてきておることは事実でございます。
その間、いろんな問題の根底にもう一つあったのは、私は芋とかソバまでは言いませんけれども、あるいは米とかブドウとか、それに伴う農家、すなわち農業政策というものが根底にあったという歴史も、我が国の酒類業の変遷の中にはやはり否定できない問題だ。それをかれこれ調和しながら今日に至っておりますだけに、近代化というよりも、ある意味においては高度化したかもしらぬという意味においては、御説のようなものを勉強していかなければならぬ課題だという認識は等しくいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/270
-
271・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 次に、物品税に移りたいと思いますが、大臣お見えになっているので、ちょっとインターバルで二つ別のことを聞きます。
けさ、竹下大蔵大臣は、参議院予算委員会の冒頭に、暫定予算の準備に入るということを言われたと伺っております。また、自民党の方から各党に対しても、それなりに御説明があったというふうに伺っております。暫定予算ということになりますと、これは予算委員会だけではなくて、私どもその予算の裏づけとなる税法、財政法をどう議論したらいいのだろうかということに重大な関心を持たざるを得ないわけでありますが、大蔵大臣としては、私ども大蔵委員会の審議の今後にもかかわることでありますが、どういう御認識ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/271
-
272・竹下登
○竹下国務大臣 きょう私が発言をいたしました。御審議をお願いしているところであります。政府といたしましては、予算の一日も早い成立を期待し、御審議が円滑に進みますよう最大限の協力をしてまいりたいと考えておりますが、ただいままでの本委員会におけるいろいろな議論の経緯等を十分念頭に置きまして、とりあえず暫定予算の準備作業に入ることといたしたいと思いますので御報告いたします、こういうふうに申し上げたわけであります。
私も非常に困りましたのは、御案内のように旧憲法時代には、予算が通らない場合は「前年度ノ予算ヲ施行スヘシ」と書いてありました。予算にはやはり空白期が置かれてはならぬということから、新憲法では暫定予算制度になっておる。したがって、暫定予算が通らなかったらどうするかという議論をしてみますと、どの学説を見ても、そういうことはあり得ない、考えられないことだ、すなわち国会という日本最高のいわゆる良識というものがそんなことはさせないものだから、そんな規定はないんだ、こういう解説になっておるわけであります。
したがって、今日まで昭和四十年以来、実際二十五年ともう一つ、空白が二日できましたのが二回ございます。しかし、四十年代は、とにかく主として空白をつくらないで来ました。五十年に一遍つくりましたが。それまで、私は内閣官房副長官を当時しておりまして、本当に悩んだのは、自然成立要件を具備して送った場合は、ある意味においては異なる議決がなされるとかいうことのない限りにおいては、言ってみれば参議院無用論につながるという議論が確かにあったわけであります。したがって、本来は二日か二日、自主努力の期間を残してお送り申し上げた方が、御尊敬申し上げる姿勢を出すのにいいのではないか、こういうことも政府部内で真剣に議論をしたことがございます。かれこれいたしまして、今日までいろんな経過をたどっておりますが、今までも、五十七年は五日間空白です。そして四日間の空白の時期はその後もあるわけであります。したがって、その間をどう考えるか。空白というのはあり得べからざる状態だ。しかし理論的に言うと、仮に国会が三月三十一日解散になった場合は、いわば参議院の緊急集会を召集するいとまから考えると、物理的に空白期間が皆無であるということは成り立たないというような議論をいろいろしまして、それできょう準備に入らせていただくということ。
これも十分気をつけました。提案権は政府の固有の権限であるということになると、いわば国会の指図を得てやったという形はとれません。しかしそれは、国会と政府との円滑な関係上、与党の方を通じてそういう意思を披露して回っていただいた。こういうことで、きょうから準備にかかったわけであります。少し話が長くなりまして申しわけありませんが、暫定予算に対する政治家竹下登としての多年の疑問というものを絶えず感じながら、あえて申し上げたわけであります。
したがって、この暫定予算は何ぼ組むか、こういうことになりますと、それはやはりぎりぎりの、参議院の推移を見なければ、何日にするかは決められないが、常識的に言えば、十二日が自然成立であるとすれば十一日間、一日から十一日を組めばいい、こういう一応の理屈になるでございましょう。そうしますと、その中へ盛り込むのを何にするかというので、今いろいろ精査してみておりますが、必要最小限のものを組み込んでいかなければならぬ。そうすると、歳入もまたそうしたものを組み込んでいかなければならない。規模は、交付税を四分の一、普通四月十日ぐらいに交付しておりますから、それを入れるか入れぬかで一兆数千億ぽんと違ってくるというようなことかなと思いながら、今から鋭意勉強に取りかかったということでございます。
少し長くなりましたのは、衆議院の先生みんなお感じになっていることだと思うのですが、暫定予算というものは本当はどんなものだろうか。余り早く踏み切った場合には、本当にある意味においては他院に対して非礼じゃないかという感じもしますし、そこのところ扱いにくいものだと思いながら、毎年同じ悩みを繰り返しながら私も二十五年の歳月を経た、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/272
-
273・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 大変気配りの御返答がございましたが、暫定にするのかしないのか、なるのかならないのか、弥次郎兵衛じゃありませんけれども、今ございませんでしたが、現内閣の重要な閣僚の一員としては、五分五分の両面作戦ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/273
-
274・竹下登
○竹下国務大臣 両面作戦というよりは、考えようによれば、自然成立要件を具備せずして、渡したらその途端から暫定の用意をするというのが本筋かもしれません。しかし、それがまた外へ出ますと、どうせ暫定を組んでいれば、自然成立要件を待っていればいいんだというふうに理解されたら、これは参議院軽視と申しますか、そういうことにもつながる。そこの、かれこれ法律、規則できちんと割れないところでどうするかということになると、期待権は我々にあるわけですから、たとえ一日でも通していただける期待権を持ちながら、慎重な御審議をいただくのに対して最大限の御協力を申し上げるという姿勢を持ちながら、やはり現実面としては本当は準備というものだけは進めていくというのが、あるいはあるべき姿かもしらぬ。それを今度は、暫定の準備に入りましたということを、質問があれば言わなければいかぬ。常識的に、これでぽこっと仮に二十六、七日にいきなり提案しますと、それまでは準備していなかったか、印刷にも時間がかかります。だから正直にそこまでは言うべきだと思って、きょうは私もかなり、文章も考えて、非礼に当たらぬように申し上げた、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/274
-
275・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 もう一つ伺いたいのは、当大蔵委員会にも重要な関連を持つことでございますが、衆議院予算通過に当たっての与野党書記長・幹事長会談でさまざまな話がございました。その中の一項目に、これも当大蔵委員会に関係する問題でありますが、給与所得控除の最低控除額二万円引き上げによる所得税減税の問題がございます。いわゆるパートの問題。私ども大蔵委員会で関係するものでございますから、与野党理事間でも真剣な議論をいたしまして、この問題については、たしか書記長・幹事長会談のお答えでは、今国会中を含め今年中とかあったように思いますが、当大蔵委員会理事会としての御相談では、今国会中に当大蔵委員会において提案することにしたい、そういう詰めの相談を今いたしておるわけであります。これは議員立法でありますから政府に求めることではありません。しかし、これについてさまざまの事務的な御協力あるいは政府の対応というものも当然つながってまいります。政府の側からは、それらについて必要に応じた協力なり前向きの姿勢を得るということではないかというふうにも伺っているわけでありますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/275
-
276・竹下登
○竹下国務大臣 これは端的に申しますとそのとおりであると思います。国会で議員立法でお決めいただくことですが、実際、本歳入委員会所属の先生方というのは、表現を粗っぽくすればプロですから、皆わかります。わかりますけれども、そうは言っても税額を一人一人伊藤さんつくりなさいと言ったって、それはまあできません。だから、そういうのに対しては、これは政府側が最大限の協力、一応協力という言葉になるでしょう、議員立法でございますから。そういう立場はとらなければならぬ。なおその間に、プロの先生方ですから、いろんな話が出るでございましょう。そういうことに対する情報とか資料とか、そういうものも絶えず用意して、要求に応じて最大限の協力をしなければならぬ。これは我々に課せられたまさに役目であるというふうに深く認識しておるつもりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/276
-
277・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 ぜひ前向きの御協力をお願いいたします。
時間がありませんから、物品税について一つだけ伺います。
先ほど来物品税についてさまざまな御議論がございましたが、ずっとその答弁を伺っておりまして、こういう答弁の姿勢でいいんだろうかという気がしてならないわけであります。これは立法府の責任として、あるいは当大蔵委員会の物の考え方としてという意味で私は感ずるわけであります。
物品税の沿革その他は、同僚委員がたくさん申されましたから、私は繰り返し申し上げません。物品税の歴史を言いますと、昭和十二年北支事件特別税、昭和十三年支那事変特別税、昭和十五年に単独立法として制定、その後何回かの改正が加わりまして、ずっと税率を下げる、低減の時代があったわけでありますが、最近高くするという話に変わりまして、その品目を広げるということになってきているというわけであります。私は、その経過を調査室にお願いしまして急に調べていただきまして、その当時の概念規定、あるいは国会での主な質疑の状況などを昭和十二年以降すっと調べてみたわけであります。
当初、昭和十二年スタートのときには、比較的ぜいたく品、奢侈品と認められる物品、それを第一種、第二種に分けて、言うならば戦争の費用のためにということで、当時は賀屋大蔵大臣のようでございましたが、御議論がございました。また、その当時は、我が党の先輩である加藤勘十議員が、こういうものは一年間の臨時増税案であるが、やがて恒常化するのではないかという疑惑を持たざるを得ないという質問をして、それに対して賀屋大蔵大臣が、これは一時限りのつもりであります。しかし、戦争との関連で云々というようなことを言われておりますが、そんなところからスタートをいたしまして、翌年には、北支事変に続いていわゆる支那事変が起き、昔の名称でございますが、さらに拡大をされるということになり、ずっと来ております。
もちろん、戦後になりまして、またこの十年ぐらいの間の法改正のときには、いつも審議のたびに、これは奢侈品課税である、しかし、だんだん広げていくわけですから説明がなかなかつかないので、苦しい説明をしているというふうな時代がずっと続いてきなわけであります。そうして、先ほど同僚委員の指摘にもございましたが、そういう時代から一段段階が違った方向に今まさに進もうとしているということを感ぜざるを得ないのであります。
税調の答申にも「物品税の課税対象に関するこれまでの考え方は、このような実態に対応できなくなっていると考えられる。したがって、物品税の課税対象については、現行の考え方のように狭い範囲に限定することなく、消費の持つ担税力に着目して課税するという物品税の基本的性格に立ち返り、」――おかしいですね。奢侈品からスタートをして、戦後もずっと、戦後しばらく前までの大臣は、質問されるとそういう説明を全部やっておりますよ。それを最近、「消費の持つ担税力に着目して課税するという物品税の基本的性格に立ち返りこと、立ち返ったら奢侈品にちゃんと厳重に戻るべきなのに、これは一体どういうことなんですか。税調もけしからぬし、こんなことを書いてお手伝いをしている主税局は何と思われているのか。そうして「その範囲を拡大していくことを検討する必要がある。」その後「新規に開発された物品等を積極的に課税対象に取り入れていくほかこそうして「税負担を求めることができると認められる物品を、産業経済に及ぼす影響等に十分配意しつつ課税対象に取り入れることが適当である。」そうして「各種のサービスに対する課税のあり方について幅広く検討すべきであるとの意見が」出されたというのが文章化されております。
私は思うのですが、同じ物品税という名前であって、中身は全く変わっている。こういうことが平然と行われていいんだろうか。税調が何と言おうが、少なくとも国会は国権の最高機関ですから、国権の最高機関である国会でこういうルール違反のことが行われていいんだろうかという気がしてなりません。
今日の税財政の状況その他、いろいろな事情は知っています。また、こういうことを考えたくなる今日の政府の立場もわかります。そういうものについても、「増税なき財政再建」とか、何がどうとか、総理を初め言われておりますが、今大事なのは、本音の議論をするときだろうと私は思っています。本音の議論をしなければならぬ。国民に本音のことを出して、そうして、それをどうするのかを本気で考えてもらう。我々も積極的にそれに対する提案を出す。それをしなければ、これは国家の不幸であり、あるいはまた、責任を果たさない時代というのがもうそこに来ているんじゃないだろうかという気がするわけですが、それはそれとして、踏み越えてはならない一線を今踏み出そうとしているというのが今日の状態ではないかと思います。
私は、税調や何かがどう言おうと、それは批判をしたり、いろいろとそれなりに議論をいたします。しかし、名称は同じだが、税の中身の本質が全く変わるというようなことをいいかげんな議論で国会が通すとしたら、税に対する、あるいは税の構造に対する信頼というものは飛んじまうだろうと思います。当然でありますけれども、財政については、憲法の立場から大きな責任を私どもは担って審議しなければならないと思います。憲法の第八十四条には「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と書かれております。皆さん御承知でしょう。この憲法の条件を何にも踏まえないで中身を勝手に変えていく。私は、単なる心配か何かからではなくて、我々があるべき基本的な問題がここに存在しているというふうな気がしてなりません。こういう点を私はきちんと踏まえるべきであろうと思います。したがいまして、現実の対処としては、国権の最高機関である我々がきちんとした判断をする責任を持っている、義務を持っている。そういう立場から、憲法の立場にも反するようなことをやる税調の内容は全文取り消してもらわなければなりません。どうしても必要だから変えようというならば別の法律を提案してください。こんないいかげんなあり方というものは、私は国会の権威においてもいいかげんにしてはならぬと思いますけれども、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/277
-
278・竹下登
○竹下国務大臣 多岐にわたる御意見を交えた私に対するお尋ねでございますが、租税法定主義は当然守らなければならぬことであると思います。
それからもう一つは、税調税調とおっしゃいますが、それは、まあそれをあえて言うつもりはございませんが、労働界の権威ある代表の方も必ずお入りいただいておりまして、既に国会議員におなりになった方が四人ございますか、まあ確かに大変貴重な意見をいただいておりますので、そう捨てた――捨てたものじゃないという表現はおかしいのですが、それはそれなりに権威ある機関だというふうに思っております。
今おっしゃいました物品税というのは、その生い立ちからすれば奢侈品から入ってきて、それともう一つは、歴史的な経過で見ると、大体戦費調達のようなにおいがしながら入ってきた税じゃないか、こういう御意見も、私もわからないわけじゃございません。しかし、最近はむしろ物品税とか、いわゆる消費一般に係る税制などというものを、戦費調達どころか福祉の財源にしたらどうだ、こういう意見も出るような時代になりましたので、その間の世の変遷の幅の大きさというものを私はそもそも感じております。
それで、要は直接税中心の、かなり貧富の差と申しますか、そういうものの激しかった時代から、多くの人が中産階級を意識するような、世界に冠たる所得構造になってまいりますと、そこにおのずから応能主義による所得税のほかに、所得に担税力を求めるかというより、選択の幅の広い消費に担税力を求めていくという議論は、それはそれなりに必然性を持って起こってくるだろうと思うのであります。したがって、それはやはり環境の変化に応じて物品税の持つ性格が変わってきたものである。だから、税調でおっしゃっておりますところの、消費の実態を踏まえ、課税対象を拡大していくことを検討する必要があるというふうに御指摘なすったのも、それなりの理由があると思います。奢侈品ないし比較的高価な便益品や趣味娯楽品等に限定することなく、その使用、消費の実態やそれからもたらされる便益等から見て税負担を求めることができると認められる物品を、産業経済に及ぼす影響等に十分配意しながら広く取り込む方向で対処する、こういうことになるわけでございます。
しかし、これはいかに拡大してみましても、基本は個別消費税でございますので、まだ限界がありますのは、サービス等に対する課税の外に置かれておるという点は、まだまだこれからその本質をも踏まえながら勉強していかなければならぬ課題ではないかな、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/278
-
279・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 大臣、それは全然おかしいと思いますよ。憲法の条項を申し上げたでしょう。「現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」とにかくこの数年前まで、物品税の本質はぜいたく品課税ですという説明を歴代大臣はしてきたんですよ。議事録全部ありますよ。今までしてきたんですよ。そうして今回こんな文章なんかぬけぬけと出して、法律の文章にはそんな変わったことは何も書いてないですよ。説明には、品目を広げます、税率を上げますと書いてありますよ。皆さん方が憲法に忠実ならば――憲法に忠実でなくちゃならぬけれども、憲法に忠実ならば、今までどおりの性格でありますということでやるのか。このたび物品税の性格がかく変わります、かく変えたいと思います、したがってそういう方向で議論してください、そういうふうにきちんと出すのが憲法に忠実な政治じゃないですか。今のままでごまかしごまかしでやるというのは憲法違反だし、こんな調子で議論したら、これは国会の権威といいますか、なくなると思いますよ、私は。税金の名前が同じで中身がまるで変わったものになっていく、こんな議論をいいかげんにやったら、これは我々は後世に責任を問われると思いますよ、少なくとも専門委員会のあり方として。今のような議論で、それなりに権威ある税調の皆さんなんていって、そんな権威など一つもないですよ、こんな議論やっているならば。憲法と税制と、さっきも亡くなった井上蔵相のことを申し上げましたが、税というものに対する厳粛な気持ちを持ってやってないということですよ、これは。今のような答弁では、私は全然筋が通らぬと思います。
とにかく今までどおりの、各歴代大臣の説明のとおりの物品税でいくならば、その本来の姿に戻してください。そうでないなら、物品税という名前でありますが、中身は変わりましたということを、法律を出してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/279
-
280・梅澤節男
○梅澤政府委員 ちょっと税法の理論的な問題の御提起でございますので、私からまず御説明を申し上げたいと存じます。
先ほど委員がおっしゃいましたように、物品税の沿革、昭和十二年の臨時立法から十五年の恒久法としての物品税法が制定されたということでございます。そのときに、物品税の考え方といたしましては、物品税は主として奢侈的性質を有すと認められる物品またはその消費が担税力を示すと認められる物品に課税する趣旨であるということが述べられておるわけでございます。
現実の制度の変遷を見ますると、十九年当時になりますと、計算機のような事務用品とかバター、チーズ、ハム、ソーセージというような加工商品にまで課税範囲の拡大が行われておる。戦後、これがむしろ縮小の傾向に入りまして、先ほども御答弁申し上げましたように、二十五年のシャウプ勧告あたりを境といたしまして奢侈的物品、それから高価な便益品、趣味娯楽品等に限定するという考え方で、現実の立法は運用されてきておるわけでございます。
ただ、そういうことでございますので、今回の税制調査会の答申に書いておりますことは、物品税の基本的性格として、法律、制度本来の趣旨として広く消費に担税力を求めるということは、この限りにおいて歴史的にもこの法律の性格として必ずしも不適当な答申の指摘ではないと私は考えておるわけでございます。
ただ、委員御指摘のとおり、従来、物品税についてはそういう考え方で戦後運用されてまいったことは事実でございまして、その辺の観点につきましては、なお国民に広く御理解を求めながら対応すべき問題であると考えるわけでございますが、ただ一点、私ども、これは今回の法律提案のときに繰り返し申し上げておりますように、現在御審議いただいております、私どもが提案申し上げております物品税の課税範囲の拡大は、従来の奢侈的消費あるいは高価な便益品、趣味娯楽品に物品税の課税範囲を限定するという基本的枠組みの線上で御提案申し上げているわけでございます。
先ほど来議論の対象になっておりますのは、そういうことではなくて、奢侈品とか高価な便益品等に課税範囲を広げるべきではないかという税制調査会の御答申があり、具体的には例えば汎用性のある事務用機器等がその検討の対象にはなるであろうということは申し上げておりますけれども、今御審議いただいております物品税法の改正法案は、従来の枠組みを出るものではないということは御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/280
-
281・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 私は簡単なことを言っているのですよ。憲法八十四条にこう書いてありますよ、税金の性格、その他。これは基本的なことだと思いますね。名前は同じで中身が変わっていくなんということが許されたら、今後の税に対する国民の信頼は一体どうなるのですか。今までは、スタートはとにかくぜいたく品課税で戦費だ、これは。しかし、戦後、ぜいたく晶課税の基本性格からいいますと、苦しい説明をしながらじわじわふやしてきましたよ。今回も許せない一線を越しているのですよ。
〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
だから、私は言うのですよ、物品税というのはこういう法律でありますと。昭和十二年以降の長い歴史があるのですから、その法律どおりであるならばその法律どおりしてください。皆さん方がその法律の性格を変えるというならば、名前は同じですが、変えるかもしれぬけれども、中身が変わりましたということをきちんとここに出してください。そうでなかったら、立法府の権威がどこにありますか。そんないいかげんなことを私は議論できないと思います。
一応時間が来ていますけれども、こういうものに結論がつかなかったら――こういう問題について我が大蔵委員会として、多くの先輩の皆さんがまじめな議論をここでしてきた。ここでとにかく結論が出ないようでは、国権の最高機関のこの大蔵委員会の場所でどうしてまじめな審議ができますか。こんなのはだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/281
-
282・梅澤節男
○梅澤政府委員 大臣の御答弁があります前に繰り返し御説明を申し上げますと、今回御提案申し上げております物品税の課税範囲の拡大は、従来の物品税法の考え方、基本的枠組みを変更するというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/282
-
283・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 とにかく憲法問題を含めた、これについてのきちんとしたけじめを出してください。そうでなかったら、こんな法案を審議して、こんな法案を通しては絶対にいけません。私は一委員としても、一議員としてもはっきり言っておきます。こんなばかげたことはないですよ。憲法違反ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/283
-
284・瓦力
○瓦委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/284
-
285・川崎寛治
○川崎委員 今伊藤委員から憲法に関して質問がございましたが、私もそれに少し関連をして進めてまいりたい、こういうふうに思います。
今主税局長は、五十九年度の物品税法の改正は今までの範囲を超えるものでない、こういう言い方で今の問題を通り抜けようとしておる。なるほど第二種の物品税としては五品目、今度はふやすことになりますわね。ところが、税調が五十九年度の税制並びに中期答申で言っておりますことは、基本的な変化を求めておるわけです。そうしますと、五十九年度の税法として出されてきている範囲の問題。しかし、それがつながる先は違うのです。それは今伊藤君の指摘をした問題にかかってくるわけです。
そうしますと、今伊藤委員からも指摘をしましたように、国会が国権の最高機関である、このことについては大蔵大臣、異議ありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/285
-
286・竹下登
○竹下国務大臣 国権の最高機関であることには異議もございませんし、また、租税法定主義というものは、私どもも基本的な問題として熟知しておるところであります。ただし、法律の定めるところにより政令にゆだねるとか、そういう問題も含めて租税法定主義というのは存在しておるということも承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/286
-
287・川崎寛治
○川崎委員 先ほども議論しましたように、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」だから、承認を求めて国会で論議をしたら終わりということではないわけなんです、法定主義ということは。そうしますと、この法定主義という議論は、つまりあなたが参議院で答えておりますように、「「増税なき財政再建は予算編成のテコとし、念頭に置くべきもの」としながらも①各種公共サービスと負担のギャップをどうするかは国民の合意と選択による②公正、適正な税負担については不断の検討をしていかなければならない」それは主税局、税調が不断の検討をするという問題もそうでありましょうが、より国権の最高機関である国会が議論をしなければならない、検討をしなければならない。そうでしょう。
そうしましたならば、当然、所得の平準化の問題から、あるいは課税範囲の広い対象という問題から、税調で議論されておるものはこの国会に全部出される、あるいは主税局で議論されておるものは全部出される。それが、あなたが参議院で答えておる国民の参加にもなるわけです。国民の合意を求めるということにもなってくるわけです。でありますから、税調のその議論というもの、それからあなた方が議論をしておる課税対象というものをすべてここに出して議論をしてもらうということをやらなければ、租税法定主義という、八十四条にこたえる国会の機能にはならない、こう私は思います。でありますから、その点の、つまり税調で議論されておるものすべてをここに出して、そしてこの議論をする。それでなければ、先ほど伊藤委員がしきりに指摘をしておるような、そういう抽象論に終わるわけでありますから、それを許してはいかぬわけです。どうですか、それを出しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/287
-
288・竹下登
○竹下国務大臣 私いつも申し上げておりますのは、国民の合意と選択がどこにあるかというのを判断するのはどこかというと、やはり国会の論議だと思うのであります。したがって、そういう御論議をしていただくための手ぐさとなるものは、国会の審議権に最大限協力をする意味において提出をしなければならぬ。そこで、私どもが権威ある方にお集まりいただいて政府税調というものがある限りにおいては、国会の議論はそれこそ整理して逐一報告して議論の対象にしてもらう。中には、今議論はする時期じゃないとかいうような結論の出るのもありますけれども、正確に伝えて、議論をされて出たものが、いわゆる中期答申とか年度ごとの税制のあり方についての答申というものですから、その答申の背景となる一々のやりとりをお出しするのは、これは難しいと思います。だから、答申というものをお出しして、その背景等については、私がたまたま今大蔵大臣ですが、主税局なり私どもが精いっぱいそれに対して、御審議に協力する意味において御説明申し上げたり、指摘された資料を提出して御供覧していただく、こういう姿勢が最大のことではなかろうか。税調の部会等の議論を、例えば速記録をとって出したといたしましても、それは、答えは答申に集約されるわけでありますから、答申を読んでいただいて、その中でこうした資料は出せと言われたものを正確に提出することに協力するというのが一番現実的であり、また国会の御審議に対して最高の御協力をするということはそこにあるのじゃないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/288
-
289・川崎寛治
○川崎委員 国会の議論を細かに税調に報告をし、そして検討してもらったものを結論として出してくる、こういうことでございますが、伊藤君が指摘をしたように、今性格が変わろうとしておる。なるほど五十九年度をとれば、主税局長が言うように性格が変わっておりません。五品目の追加、新しい五品目でありますから、その範囲においては性格が変わっていないということで言おうとしておる。ところが、中期答申にいたしましても五十九年度の答申にいたしましても、根本的に性格が変わるということ。現行の考え方では「対応できなくなっている」。そうすると、「対応できなくなっている」という方向に今持っていこうとしている。
そこで、私は大蔵大臣にお尋ねしますが、参議院で中曽根総理が「大型間接税については中曽根内閣の続く限り導入しないと言っているが、増税なしについてはそこまで言っていない」、こういうことで、大型間接税以外の物品税などはあるという増税の方向をほのめかしておる、こういうふうに言われておるわけです。米沢委員の質問に対しても、米沢君が大変いらいらとしながら主税局長にいろいろと追及いたしました。そうすると、今検討しておる。主税局で検討しておる品目は何品目ですか。そして、中曽根総理が、つまり大型間接税以外の、そういう物品税についての増税をという形でのほのめかしがあるとする。とするならば、現在五十九年度で出てきた五品目以外の何品目を検討して、その中から五品目出ておるのか。その何品目を検討したかということもこの国会で議論ができないとするならば、五十九年度は性格が変わっていないという形で逃げていく逃げ方は許せないと私は思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/289
-
290・竹下登
○竹下国務大臣 まず一つ申し上げなければならぬのは、中曽根総理が問答を重ねておるうちに大体整理をされまして、自分の言う大型間接税とは、いわゆる消費の各段階に大きく投網をかけたような形の大型導入というものは、中曽根内閣の続く限り考えておりません、こういうことにおおむね整理されたなと思っております。
私自身の体験からしても、五十四年の暮れにいわゆる一般消費税(仮称)が国会の決議によって否定される際に、くどいように「一般消費税(仮称)」という言葉を使いましたのは、学説の中にあるところの消費そのものに担税力を求めた、消費一般に係る税制そのものが否定されたら、これは後の世の人に申しわけない、学問的には存在するわけでございますから。したがって、大変固執してあのような適切な御決議を賜ったわけであります。だから、ぎりぎり詰めてみますと、これはなかなか難しい議論でございますが、中曽根総理は政治家としておよその判断をそこに置いておるということは、私も一緒に答弁をしながら感じます。
ただ、私には一方、いわゆる政府税調というものがございますだけに、その政府税調から指摘された問題についての勉強は続けていかなければならぬという姿勢をこれまた崩しますと、政府税調そのものを言ってみれば否定する結果になるというところに私どもの答弁の拙劣さがあるのかなという、ある種の反省をも加えながら、そのような感じを持っておるわけであります。
そこで、後から主税局長がお答えいたしますけれども、できるだけ国会へ勉強したことをお話しするのもよろしゅうございますが、やはり私を含め、私はたまたま国会議員でございますけれども、事務当局から見れば国権の最高機関に対して物を申し上げるときには、本当に戦々恐々として恐れ多く、謹んで物を申し上げます。間違いを指摘されても大変だという気持ちもございますし、むしろ、このようなものを検討したことがあるかとかいうような中でリードしていただいた方がいい。あるいは、このような議論がどこかの専門的な機関で議論されたことがあるかとか、その方が実際は協力がしやすい立場にございます。確かにみんな戦々恐々、本当に謙虚、まじめ、「気をつけ」の姿勢で対応しておるという感じを私、来てみて思います。本当にそんな感じがあってこそ、執行権者と立法府の関係はそれでいいのかなという感じが、率直に言っていたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/290
-
291・川崎寛治
○川崎委員 そのとおりでいいんです。
そうしますと、あなたは衆参両方の予算委員会でそれぞれ、税調からも言われておりますから一生懸命勉強しております、こう言うのでしょう。だから、勉強しておりますなら、その勉強の内容をここにお示ししなさい。それを示してください。
そこで、先ほど主税局長は、五十九年度の性格は変わりません、こう言った。それは、第二種の物品税五品目ですから変わらないという意味でのお答えだろうと思います。しかし、答申の方向はそうではない。基本的に変わっていく、こう言う。そうすると、五品目以外にどれだけを御検討になっているのですか。そしてその中からこの五品目が選ばれたのか。だから、何ぼ御検討になっているのですかということは、今大蔵大臣が言われるように、あなたが一生懸命研究しておると言われておる内容を、私はここで具体的にその品目といいますか、中身について主税局長にお答えを願っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/291
-
292・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは、私どもの五十九年度の税制改正作業の一番ベーシックな面で検討作業をいたしたものを御紹介申し上げるわけでございまして、この品目を、具体的に政府の税制調査会で一々議論をしたという性格のものではございません。そういう前提で御紹介申し上げますと、まず、現行の課税物品とのバランスから見てこの際課税対象として取り上げるという観点でございます。これは、現在御提案申し上げております五品目の系列のものでございますが、この五品目のほかに、スキー、テニスのラケット、釣りざお、それから五十cc以下の二輪自動車等をバランス上課税対象とすることについて検討いたしましたけれども、各般の事情から五十九年度はこれを見送るということで、今回の御提案の中には入ってないわけでございます。
もう一つの系列は、先ほど来御議論のあるところでございまして、かつて課税対象ではございましたけれども、シャウプ税制以降むしろ物品税の課税範囲から除外するという方向で考えられてきた、便益性の高い事務機器等のたぐいでございます。昨今いろいろな商品が開発されておりますが、その中からワードプロセッサー、電子式複写機、電子式タイプライター、電子式卓上計算機、ファクシミリ、そのほか、電子的な装置ではございませんけれども、物品の自動販売装置、ボックス型のショーケース等々につきまして検討をいたしましたけれども、五十九年度の税制改正の中に盛り込むまでに熟した結論を得られませんでしたので、これは今回御提案申し上げてないわけでございます。その意味で、従来からの物品税に関する基本的枠組みを今回ははみ出していないということを、先ほどから申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/292
-
293・川崎寛治
○川崎委員 今、検討された品目について言われましたが、それは五十九年度に関しては、こういうことでしたね。ところが、大蔵大臣が答弁をいたしておりますのは、中期税制、中期答申の、広い課税対象を検討しなさいということに対して一生懸命勉強しております、こういう答弁です。ですから、五十九年度に関しては今の御答弁でよろしいです。しかし、その中期税制にかかわるそこのところをどういうふうに検討しておるか、その検討の中身をお答え願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/293
-
294・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは年々の税制改正の問題でございますので、六十年度以降どういう税制を考えるかというのは、六十年度以降の予算編成の一環として作業が行われるわけでございます。当然税制調査会の御議論もいただくわけでございますが、物品税の課税範囲の拡大に関しましては、昨年十一月の税調の中期答申並びに今回の年度改正答申にあります基本的な方向に沿って検討すべきものであろうと私どもは考えております。ただし、これは具体的に立法化する段階で、当然立法府がいろいろな立場から御審議をいただくということでございまして、行政府としてはそういう方向で検討すべきであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/294
-
295・川崎寛治
○川崎委員 大蔵大臣の答弁はそうじゃないのですね。大蔵大臣の答弁は、総理大臣が何ぼ大型間接税を否定しても、消費税の問題については一生懸命勉強しております、つまり税調の中期答申なりを受けた――五十九年度の答申でありませんよ、中期答申を受けた範囲での検討をしておるんですと。ところが今の答弁は、五十九年度でとまっているわけです。そうしましたら、六十年度以降は、あなたが言う一生懸命勉強しているという中身は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/295
-
296・竹下登
○竹下国務大臣 これは、単年度税制について答申を、普通ならば年末にちょうだいするわけでございますが、それまでにいろいろな勉強をしなければならぬと思うのです。その勉強は、国会で高度な議論がある、それらを踏まえてやるわけでございます。したがって、いろいろな御議論を聞きながら今度は品目別の検討を加えるようになりますので、今の場合、主税局長も大蔵大臣も終日国会におりますと、そのときに聞いたものを整理するのが精いっぱいで、いわばディスカッションを部内でしていくというような時間的余裕は、率直に言って国会中はなかなかございません。しかし、いわゆる政治的背景といいますか、国民世論といいますか、直間比率の問題を議論なさる人もございます。さて直間比率とは、いや消費に担税力を求めるべきか、いわゆる応能主義による所得に担税力を求めるかというような議論が絶え間なく行われる中において初めて、国民の合意がどこにあるかということでコンセンサスを生み出すことができる。だから、川崎さんに、例えばこれは勉強しているかと言えば、それはこれからしようと思いますという答えもできるのでございましょうが、勉強の範囲というものは、一つ一つの品目にわたって今直らにやっておる。この五十九年度に勉強したものは今洗いざらい主税局長から申しましたが、これから便益性というものになると、主観によって違います。それは大変に便益品だと思う人もおるし、そうじゃないと思う人もおる。そういうものを整理して勉強するのはこれからの課題ではないか。そうして勉強した一品ごとをちゃんと法律に書いて、まさに法定主義で御審議いただく、こういうことになるわけでございますので、議論をしていただくという中でまた勉強の重点も、時には移行していく場合もあり得るということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/296
-
297・川崎寛治
○川崎委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、政府税調の事務局はどこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/297
-
298・竹下登
○竹下国務大臣 本来は、これは内閣総理大臣の諮問機関でございますので総理府ということになるわけでございますが、実際の事務を行いますのは、国税にあっては大蔵省、特に主税局あるいは官房の政策企画等がもちろん資料を整えたりそういう手伝いはいたしますし、地方税は自治省の恐らく税務局でございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/298
-
299・川崎寛治
○川崎委員 その答弁は正しいと思いますね。
そこで、時間がありませんから、これから高齢化社会を迎える、そしてまた一方では財政再建ということで大変増税を進めなければいかぬ。そうなりますと、これから税金で負担をするのか社会保障で負担をするのか、この議論は大変深刻な問題になってまいりますね。そうしますと、社会保障で負担をするという問題は、これはすべて社会保障制度審議会を通っているんです。その社会保障制度審議会には事務局があるんです。総理府に電話をすればちゃんと社会保障制度審議会の事務局長もおるわけです。そうすると、税調の事務局長はだれですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/299
-
300・梅澤節男
○梅澤政府委員 税調の事務局というものはございませんが、先ほど大臣の答弁にもございましたように、総理大臣の諮問機関でございますので、行政組織工事務を主宰しておりますのは内閣審議室長でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/300
-
301・川崎寛治
○川崎委員 私は、総理府に電話をして、政府税調の事務局長につないでくれ、こう言ったら、総理府の交換手さんは何と言ったかというと、いやそれは大蔵省の主税局に聞いてくれ、こういうわけです。主税局に電話をしました。総務課が出てきた。どこにありますかと言ったら、内閣審議室にあると言う。総理府の内閣審議室にあると言うから総理府の内閣審議室に電話をしたら、審議室が出てきて、ここには内閣審議室なんかありませんといって怒っているわけです。それは総理大臣の官邸です、こういうわけです。ここは総理府審議室といって怒っているわけです。大蔵省主税局の総務課が教えたその税調の事務局というところにかけたら、それは違うといって怒られたわけです。ではだれが責任者かと言ったら、今のあなたの答弁とは違うんですね。この審議室はラインで担当しております。ラインで担当しているというのはどういうことですか。それは、総理府には四十からの審議会がありますよ。その四十からひっかかっておる審議会全部を総理府審議室が庶務として見ておるわけです。事務局じゃないんです。そうでしょう。事務局はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/301
-
302・梅澤節男
○梅澤政府委員 税制調査会令によりますと、委員御指摘のとおり事務局ではございませんで、「調査会の庶務は、内閣総理大臣官房審議室において大蔵省主税局及び自治省税務局の協力を得て処理する。」となっております。したがいまして事務局というものはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/302
-
303・川崎寛治
○川崎委員 ところが、ここの議論を聞いておりますと、税調の事務局の主税局はという議論が当たり前のようにされている。では、この五十九年度答申、中期答申はだれが書くのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/303
-
304・梅澤節男
○梅澤政府委員 これは、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、庶務は内閣官房で処理いたしておりますけれども、実際の国税あるいは地方税にかかわります税制の調査に関する具体的な事項については大蔵省主税局、自治省税務局がそれぞれ国税、地方税につきまして、資料の準備等万端の事務の仕事をやらせていただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/304
-
305・川崎寛治
○川崎委員 主税局というのは官制上は大変おかしなセクションなんですね。今、調査だと言われた。いや、調査をすると言ったでしょう。主税局で調査をし資料を提供する。ところがしかし実際には、国民の権利や義務や生活に重大な影響を持つ税制全般について決定的な作業をしておるわけです。しかも政府税調という隠れみののもとにその作業がなされておる。八十四名の主税局が政府税調の事務局だ、こういう形をしながらも、実際には主税局自体が作業をしている。
そうしますと、大蔵大臣、先ほどちょっと質問いたしました社会保障での負担か税金、租税での負担かという議論はどこでまとめますか、トータルな議論は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/305
-
306・竹下登
○竹下国務大臣 あるいは私の答弁がちょっと違っておったかもしれないと思いますのは、これはよく間違えることでございますので、委員あるいは御存じの話だと思いますが、「調査会の庶務は、内閣総理大臣官房審議室において大蔵省主税局及び自治省税務局の協力を得て処理する。」そこで厳密に言いますと、内閣官房と総理大臣官房とは違いまして、そして総理大臣官房ですから、その限りにおいては総理府ということになるわけです。また中身は、内閣審議室と総理府審議室とはメンバーは一緒でございます。内閣の仕事をしますときには政府全体の――これは内閣官房は閣議にかかる重要案件等の調整、それで総理府の審議室は総理大臣の官房で、内閣全体の官房でない、ただしメンバーは一緒だ、こういうことになっておりますのを、これは私たまたま内閣官房長官を二回もしておりまして、それでそういうことをやむを得ず覚えたから申し上げたわけでございます。本当は私も余りわかりません。
そこで今度は、今議論なさっておりますのは、国民負担率の話に結論はなると思います。社会保険負担と租税負担と足したものが国民負担であるということを総合的にどこが政策判断をするかということになると、これは内閣一体の責任で最終的には決めるべきものであろうというふうに思われます。一部局だけで国民負担率のあり方ということになると、やはり内閣全体として決めるべきことだ。今までそれを議論したところはどこであったかと言えば、もろもろございますけれども、例の「経済社会七カ年計画」を出しましたときに、租税負担率と社会保険負担率、国民負担率の議論をいたしました。そのときは経済企画庁が中心になってやりましたが、まさにこれは内閣一体の責任で出したわけですから、やはり最終的には内閣一体の責任で政策判断をするということに結論はなるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/306
-
307・川崎寛治
○川崎委員 そこで、社会保障の負担分はすべて制度審議会を通りますね、医療にしましても保険にしましても。そこは働く者やら国民の代表やらいろいろあって、三者の構成でありますが出てきて、制度審議会の場合には国会議員も参加をして、そこでこの負担率の議論もするわけです。法案もそこを一遍通るわけです。立法の過程では通っていくわけです。ところがこの税制に関しては、先ほど来米沢委員や伊藤委員やそれぞれが疑問を投げかけているように、そういう国民の参加というのは機構上はないわけです。政府税調のお話がございましたが、これはいわゆみ学識経験者ということでやられているわけなんです。
そうしますと、先ほど来、基本的な性格も変わる、憲法の議論じゃないかというところまで言われるその議論が、ただ単なる学識経験者だけで議論をされて立法の過程を通る。これは私は大変問題だと思うのです。これから社会保険負担と租税負担という問題が非常に深刻になり、そのものを議論をしていく過程、つまり審議会というものの戦後民主主義の中における役割、そういう問題等からいたしますと、今日の政府税調というものが果たしておる役割というのは、先ほど来言っているように事務局もわからぬ、事務局長もわからぬ、そういう責任の所在不明確なまま資料を提供して御論議を願っておる、こういうことでございますけれども、その議論のまとめ方なり立法の過程なりというものは、制度審議会とは明らかに違うわけです。明らかに違うということはお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/307
-
308・竹下登
○竹下国務大臣 これはおっしゃるようにその立て方は違います。政府税調の場合は三年に一度、お偉いさんというか、権威ある方々を任命しまして、国税、地方税のあり方についてという大諮問をするわけですね。個別の問題を諮問はしない。ただし、国会の議論を忠実に伝えますから、それに裏打ちするような答申はその都度いただいております。したがって、無答申でやったのは何があるかと言えば、議員立法、戻し税のときなんか追認してもらったというようなこともございます。その限りにおいては、社保審と制度審と、あそこには二つ関門をくぐらなければならぬ問題がございますので、その辺はやはり立て方が違うと思います。だが、最終的には内閣一体の責任で、国民負担率をたまたまおっしゃいましたが、これはこれからまさに大きな議論になると思うのです。その場合、立て方が違うなという指摘をいただいて、私もそのとおりですが、どちらがよりいいかというのは、今までの立て方で余り大きな間違いはないような気もします。
審議会というものが今日まで果たした役割はいろいろあります。ある時期に国会議員を抜きまして――だが制度審には残っております。というのは、国会議員の先生ばかり議論して、まあこちらは物を言うことが仕事でございますので、ほかの先生が遠慮なすって議論ができなかったという弊害もあったようでございますが、やはり制度審なんかはきちんとお残りになっておりますし、税は法定主義で、ここでこのように議論をしていただくのですから、その限りにおいては最高の仕組みにあるいはなっているのかなと、きょう言われたばかりで、私も正確に哲学者のようなお答えはできませんけれども、そんな感じもいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/308
-
309・川崎寛治
○川崎委員 伊藤君も指摘をしましたように、つまり単年度単年度、変わっておりません変わっておりませんと言いながら変えていくわけです。
そうしますと、これは私、政府税調の議論はまた改めて議論いたします。これから繰り返しやりますので、以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/309
-
310・瓦力
○瓦委員長 藤田高敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/310
-
311・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は、先ほどわずかな時間を留保させていただきまして、大臣に二つばかりお尋ねをすることにさしていただいております。
その一つは、今日まで審議してきました酒税、石油税、物品税、いわゆる増税三法は、政府が昨年経済の活性化、景気浮揚のいわば基本政策と申しますか、「総合経済対策」として閣議決定をいたしておりますいわゆる「経済運営の基本方向」、その柱は言うまでもなく内需拡大による景気浮揚だ。その景気浮揚を通じて、いわば財政再建の問題についても、税収を増大する、そういう基本的な方向をとっていこうという立場から、公共投資の推進を初め特に所得税、住民税の減税というものを柱にして、六項目の政策を国民に、いわば公約し打ち出しているわけであります。
ところが、そのうちの重要な柱である所得税、住民税の減税約一兆円、これに対してこの増税三法は約五千四百億程度。こういうものが一方では減税措置をとり、一方では増税するということになれば、これは今までも議論されてきておりますが、これにプラスさまざまな公共料金の値上げと相まって、この大きな柱が崩れることになるんじゃないですか。せっかく所得減税をこういうふうにおやりになったのだから、この増税三法のようなものは今回は提出を見合わして、今出されておるものをできれば撤回をして、景気浮揚に役立つようなことをおやりになることが当然ではないでしょうか、こういうことを質問をいたしております。それに対する大臣の御見解を承りたいというのが一つでございます。
私はここで、先ほどもちょっと触れたのですが、たまたま昨年まで予算委員会におりまして、大臣とも、つたないながらも、今日の財政再建問題についてお互いに真摯な議論をやってきたつもりでございますが、この三法とも、税制改正のまくら言葉には、厳しい財政に対応するための一つの措置としてと、こういうことになっておるわけですが、私は、もう何もかも事があれば財政再建の口実にするというようなことをやめて、本来の財政再建の問題をもっとオーソドックスな立場で、しばしば問題になってきております、一括して言えば不公平税制の根本的な是正というようなものを柱に、そして一方では経済成長率についても、今までは三%台であったものを少なくとも四%台以上の成長率を求めていくというような、そういう経済政策によって財源についてもふやしていく、税収についてもふやしていく、そういうことで財政の立て直しを図るべきではないかということを先ほども指摘をしたわけであります。ですから、あえてこそくと言うことは適切でないかもわかりませんが、今回のような増税三法の手段によって今日の赤字財政を立て直すような手段に使うことは、いささかどうだろうかということを申し上げております。そのことにも関連してお答えをいただければありがたいと思います。
それともう一つは、細かくは申しませんが、先ほどの物品税の問題ではありませんが、酒税の場合にもこの物品税に類するような問題が起こっておるわけですね。それはこの物品税ほど露骨には出てないにしても、いわゆる分類差等課税に見られるように、高級酒には高い税金を、大衆酒には低い税率を、こういう基本的な立場で今日の酒税法ができておる。ところが、今回措置をいたしております税制改正の方向というものは、逆に下級酒の方が全部税率が高くなっておるじゃないか。これは物品税にも共通することかもわかりませんが、現在の酒税法は、例えば鯨差しに基づく法律の体系になっておる。ところが、今度やっておる措置はメートル差しでやるようなことをやっておるじゃありませんか。これは明らかに、やっぱり酒税法についてもそういう意味では定義を変えていく必要が起こっておるのじゃないか。
級別課税制度の形骸化の問題についても、特級酒は優良な酒だ、二級酒は特級酒でもなければ一級酒でもないものだ、こう言うのだけれども、このごろは特級酒以上の二級酒が七十銘柄も市場に出回っておる。こういうことになりますと、これまた級別課税制度そのものが実質的には崩れておるではありませんか。こういう矛盾に満ちた税法の改正、増税案を出してきております。
なかんずくビールの問題については、もう細かく言いませんが、いわゆる小売価格と税負担の関係を見ましても、ヨーロッパ諸国等と比較しても余りにも異常なほどその税率は高いじゃありませんか。したがって、消費者の立場、国民の立場からいけば、私どもはできれば酒税法の改正による酒の、あるいは酒類の値上げそのものを撤回をしてもらいたいという強い要求を持っております。例えば、国民、消費者の要求にこたえるためには、せめてビールだけでも半年なりそれ以上に実施時期をずらすようなことはできないかどうか。これは事務当局としては極めて答弁できがたいことでありますので、大臣の御見解を承りたい、これが私の二つの質問でございました。せっかくですから、もう質問だけかためてやっておきます。
そして物品税の問題については、これはもう釈迦に説法ですけれども、五十八年、五十九年の税制調査会の答申を見ましても、従来奢侈品もしくはいわゆるぜいたく品といいますか、そういうものに非常に限定しておったのだけれども、そういうものではもう対応できなくなってきた。むしろそういうことではなくて、消費者の消費の持つ担税力に着目してその範囲を拡大するということがこの答申の趣旨になっております。この趣旨を受けて今度の税制改正がなされた。したがって、重ねて言えば、現行の物品税というのは奢侈品、ぜいたく品、こういう尺度で物差しを当てますと、その物品の範囲というものは非常に狭い範囲に限定されておりますね。
ところが、今度の改正は消費の持つ担税力に着目する、言葉をかえて言えはよく売れる商品に課税するという、現行の物品税の性格よりはうんと枠を広げた性格の法律になってきておるわけであります。たまたまその範囲が、十品目に充てようとしたものが、結果として五品目になったかしらぬけれども、今後段私が申し上げたように、例えばビデオディスクとか磁気テープなんというのは、もう明らかにこれは奢侈品でもなければぜいたく品でもないのですね。いわゆる担税力、よく売れる商品を目当てに物品税の対象にしておるわけですから、これは伊藤議員が指摘いたしましたように、まさに税の性質が変わってきておる、物品税の定義そのものを改正しなければできないところまで来ておるのじゃないかということを指摘しておるわけでありまして、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。鯨差してはかろうとしてもはかり切れない、メートル差してはからなければならないような性格にまで足を踏み込んでおる問題に対して、無理をしてまで例えば鯨差しで答弁をするというような態度は率直に改められて、法律の提案のし直し、定義をきちっと整えてお出しになることが最も国会の権威を保つことであるし、政府自身の権威を保持することになるのじゃないか、こういうことを私の立場からも率直に申し上げて、御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/311
-
312・竹下登
○竹下国務大臣 まず、予算委員会でつたないながら、こういう表現をなさいましたが、そうじゃございません。まさに傾聴に値するまじめな議論をいただいたと私は評価をいたしております。
差し引きチャラの増減税をやった、だからこれはやらぬ方がよかったじゃないか。確かに今度の財政、予算等から見て、いわゆるGNP、実質成長率に対する寄与度はこれはゼロでございます。だが、いわばマイナスにならない下支えにはなったという評価かなと自分でも思っております。
ただ、本委員会の小委員会でもいろいろ議論されましたように、いわゆる減税をやっても、それの財源については赤字国債に依存をしない、こういう御決定をいただいておりますし、私どもとしても財政再建に逆行しない形においてやるということになると、おおむね三年周期と必ずしも決まっておるわけではございませんが、酒税、そしてさらに法人税というものによって、俗に言われる増減税なしという形の対応をしたという御指摘は、それは事実でございます。財政再建に逆行しないということから、ぎりぎりの決断をせざるを得なかったということでございます。それをやらないで不公平税制の是正からやれ、これはいつもいただく議論です。
ただ、いつも思いますのは、さて不公平税制の是正とは何ぞやということになると、不公平というのは、税の場合はどうしても自己中心的不公平になりがちであります。したがって、主観によって大層中身が違うという点がございます。しかしながら、俗に呼ばれる不公平税制というものについては、これも指摘されておるように、絶えず見直し、検討を続けていくべき課題であると思っております。
それから、成長率の問題に対しても御言及になりました。五十九年度四・一%、今年度が三・四%。大体三・四%は年度でほぼ確実になったのではないかと見られておるわけであります、締めくくるのはもう少し後でございますけれども。ただ、この問題を考えてみますと、アメリカの方は今成長率は高い。しかし、これはかつてマイナス成長期があった。我が国はよかれあしかれ三%台の成長だけは維持し続けてきた。先進国の中で日本ただひとり。したがって、八〇年代後半この成長率、「経済社会の展望と指針」にも言われております四%程度の実質成長率を維持していくということに政策努力もしなければならぬし、またお互いもかつての高度経済成長になれておりますから、これが当たり前だ、これが普通だというある種の意識転換もお願いしなければならない課題ではなかろうかと考えておるわけであります。
それから、酒税の性格が変化したではないかというような御意見を交えての御質問でございます。確かに私は性格がだんだん変化しておることは事実であると思います。厳密に言えば、物品税とは、あるいは酒税とはということになると、定義は本当は変わっていないであろう。むしろ性格は変化してきておると思うわけでございます。これにつきましては、言ってみれば、所得水準が結局上昇して平準化いたしますと、酒類消費の多様化、均質化というものがそういう傾向をもたらしたという、これもいわゆる性格の変化の一つと御理解をいただかなければならないではなかろうかと思うわけであります。よく古く議論された議論としては、いわゆる電気税、ガス税というようなものも、あれは最初はぜいたく品として入ってきておりますが、今電気やガスがぜいたくだと思う者は一人もおりません。そういう変化というものはあり得るものではなかろうかと思っておるわけであります。
それから、物品税は担税力をどこに求めるかというと、所得の平準化がもたらされた国々の歴史は、能力に応じた所得の段階に担税力を見出す方向から消費の段階へ担税力を見出す方向に必ず変化していくわけでございます。したがって、ことし御議論いただいております物品税そのものが性格が変わったとは私は思えません。先ほど主税局長からお答えしたとおりでございますけれども、将来にわたって、物品税の生い立ちから見れば性格が変わってくるが、物品税という言葉からくる定義は変わらないと思います。したがって、それは、所得の均衡とか平準化とかいう問題が我が国にももたらしたところの一つの流れではなかろうかなと考えます。したがって、私どもといたしましては、国会で御議論をいただく問題等を中心に政府税調に正確に御報告申し上げ、御議論もいただくと同時に、部内においても、それらの線に沿った勉強は不断にしていかなければならぬ課題ではなかろうかと考えております。
実施時期の繰り延べのお話がございましたが、これは私どもの側から申さしていただきますならば、まさに所得減税に見合う財源という意味が、ことしに限り存在するわけでございますので、その限りにおいて、原案どおり通過、成立せしめていただくことに対して殊のほか期待をお持ちしておる。恐らく藤田さんは、酒はよく花見酒避けるじゃないか、だからビールは暑い間避けたらどうだというような大衆の声等のお考えもあったかもしれませんが、私どもとしては、いわば見合う減税財源としての貴重な財源でございますので、原案どおり御協力賜ることを伏してお願いを申し上げる、こういう心境であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/312
-
313・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は持ち時間がわずか十分ですから、もうこれで終わります。ただ、人の心まで読んだ形で御答弁されましたが、私の気持ちは全く大臣が読まれたとおりでございますので、ぜひ実施期日の繰り延べなりとも実現できるように、これは強く要請をいたしておきたいと思います。
なお、物品税の定義の問題で伊藤議員が質問した問題につきましては、私の関連質問の中できちっと詰めるわけにはいきませんが、私自身は、その性格変更がなされるようなことになった以上は、素直に、今大臣がすべての問題に素直に本音でお答えになったような形で法律案の出しかえをおやりになることが、無用な議論を避けることになるんじゃないか、このことだけを率直に申し上げて、私の持ち時間の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/313
-
314・瓦力
○瓦委員長 坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/314
-
315・坂口力
○坂口委員 十分間で質問をしなければならぬわけでありますので、質問をする方も難しいですけれども、答えていただく方も難しいわけでありますが、酒税につきましてはきょういろいろと細かく質問をいたしました。いろいろと御答弁をいただいたこともありますので、それは後でまた大臣も聞いておいていただきたいと思うわけでございます。
きょうは審議のあり方にかかわります問題を簡潔に一、二申しますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。共通一次試験みたいなものでございますが、次の問いに簡潔に答えよということでひとつお願いを申し上げます。
一つは、大蔵委員会というのは予算委員会にまさるとも劣らない重要な委員会であると思いますが、御意見はいかがか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/315
-
316・竹下登
○竹下国務大臣 これは、国会法等から見ますと、各種委員会にまさるとか劣るとかはございません。ただ、中身の問題について、一方が歳出を中心として議論し、一方が歳入を中心として議論するという意味においてはまさに車の両輪である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/316
-
317・坂口力
○坂口委員 少々簡潔を欠きましたが、まずよろしい。
では、二問目といたしまして、大蔵委員会は重要な法案をたくさん抱えていながら、審議日程が冷遇されていると思いますが、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/317
-
318・竹下登
○竹下国務大臣 恐らく予算委員会等の慣例により、総括中は云々というようなことがございますだけに、せっかく土、日も返上してでも審議してやろうとおっしゃっておりますのに、それにこたえ得ないという限りにおいては申しわけないことだなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/318
-
319・坂口力
○坂口委員 歳出の問題に時間をとられ過ぎて歳入の問題をおろそかにしているところに現代日本の行き詰まりがある、こう私は考える一人であります。大蔵委員会の審議方法を以後改善する必要があると私は考える一人でありますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/319
-
320・竹下登
○竹下国務大臣 私もかつて大蔵委員会に四年ぐらいおったことがございますが、その都度それなりの疑問も持ちながらおりましたが、きょうただいまは政府でございますので、したがってこれはまさに院の自主性においてお決めになることで、政府が軽々にコメントすべきではない、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/320
-
321・坂口力
○坂口委員 そうおっしゃるだろうと思いましたが、あえてお聞きをしたわけでございます。
今までいろいろと審議を重ねてまいりましたけれども、どういたしましても、日中の議論ということになりますと、大臣の出席を願うことが難しい。したがいまして、どうしても夜間にならざるを得ない。夜間になりますと、肉体的にも精神的にもよろしくない。こういうことを繰り返しているわけでございまして、以後、この重要な問題をこれから年々歳々審議をしていきますのに、やはり審議方法を改善していくことが重要ではないか。それはこの委員会の問題ではございますけれども、大蔵大臣とのかかわりが非常に大きいわけでございまして、これは委員会だけでなかなか決着のつきにくい問題である。したがって私は、大臣にもこのことをお聞きをしたわけでございます。
そうした中で、物品税の問題、酒税の問題、そして石油税の問題の議論をやらさしていただきましたが、とりわけ酒税の問題、物品税も先ほどから議論をされておりますように非常に重要な問題でございますが、物品税、酒税というのは国民の生活と非常に密接な、かかわりの大きい税であることは今さら言うまでもないわけであります。
社公民三党の申し入れをいたしましたが、それに対しましてきょうは丁重に御回答をいただきました。その中にも書かれておりますけれども、今後の税制の法案につきましては、その審議の過程において何らかの措置を考えていきたいという文言もございました。これから先、いろいろの議論がまだ重ねられるわけでございますけれども、ここで大臣としても柔軟な姿勢でひとつ臨んでいただきたい。既に固まった考え方で、もうこれ以上は何も譲ることはできないという態度ではなくて、ひとつ柔軟に対処をしていただくことができるかどうか。これは大変重要な点でございますので、それだけを聞きまして終わりにしたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/321
-
322・竹下登
○竹下国務大臣 三党共同の申し入れに対する回答、これは十分私も聞かしていただいたものでございます。そして、与党の理事の責任においてお示し申し上げた。その場合には党の政調とか党に対するチェックも既にいただいた問題であるというふうに私は理解をいたしております。
したがって、一の問題につきましては、これはたびたびお話ししておりますような形で、私どもの方で最大限のいわば御協力を申し上げる。二の問題につきましては、税法の修正には応じがたいがと、こうちゃんとありまして、そこで税に関する残余の問題について国会等でいろいろ御議論をいただいております、なかんずく本委員会において。これに対しては誠意を持って対処して、そして具体的に対応できるものがあるかないか、私の心の中にもそれはなるほどと思うこともございますけれども、そういうものを検討するということに対してはやぶさかでないといつ考え方でございます。まだきょうもあすも議論されます。そういう中で、十分柔軟に対応するという言葉をおっしゃいましたが、窮屈に対応する考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/322
-
323・坂口力
○坂口委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/323
-
324・瓦力
○瓦委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/324
-
325・堀昌雄
○堀委員 昭和五十九年度の税の問題の質問をするに当たりまして、当然のことでありますけれども、まず大蔵大臣に、租税の問題で最も重要なことは一体何かということをちょっと最初にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/325
-
326・竹下登
○竹下国務大臣 納税の義務というのは一つの義務であろうと思います。国民がその義務感をひとしく持つということは、一般論として不公平感を感ぜしめないということではなかろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/326
-
327・堀昌雄
○堀委員 私も全くそのとおりだと思います。税は少なくとも国民が強制されるものでありますから、強制されるものである限りは、公平であれば、その強制についてお互いが分かち合うという意味で納得ができるのでありますけれども、公平でないということは、額の多い、少ないの問題以上に、実は税の問題では非常に重要な問題だ、こう思っているわけであります。
そこで、きょうはひとつその税の公平の問題と、もう一つは、例えば物品税とか酒税とかというものはいずれも産業政策とのかかわりがあるわけであります。しかし、今の日本というのはあらゆる面で、実は対外的にも国内的にも競争が求められておる。要するに、私は当委員会で、金融関係でもよく申しておることでありますけれども、競争原理が働かなければ、競争原理が働かないことによるマイナスというのは、実は国民にしわが寄る。産業政策上は最も足の遅い者が有利になるかもしれませんが、その最も足の遅い者にすべてを合わしていく限り、国民にそれだけのマイナスが寄るというのが、産業政策というものの一つの大きな問題点であろうかと私は思います。
それで、税というものは、そういう意味ではもちろん産業政策を無視することはできないけれども、少しでも国民にとって納得がいく方向にということはマイナスが少なくなるということで、そのことは、産業間における競争を促進しながら、あるいは非常におくれた者については合併その他の方法によって、少しでもそういう構造が改善されるような努力が不断に続けられないで、そうして安易にそういう古い構造に頼った産業政策が行われておるということでは、税の公平は守られない、私はこういうふうに考えるのでありますが、大蔵大臣はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/327
-
328・竹下登
○竹下国務大臣 税制の持つ意義の中に、俗に政策税制というものがございます。だが、政策税制というものは、そのときどきのニーズに応じて、存在を否定するものではございませんが、元来、原則的に初めから存在するものではないということでございます。そして、競争原理の働かないところに世の中の進歩はないという考えは、まさに同じ考え方でございます。ただ、余りにも競争原理のまにまに、いわば寡占、独占の体系を持ったときに、また別途、人の知恵、政治の世界等から独禁法とかいうような問題が生じてきて、今日の近代社会がつくられておるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/328
-
329・堀昌雄
○堀委員 そこでひとつ国税庁に、先ほどちょっと伺いかけたのでありますけれども、最近の直接税の脱税の状況について御報告をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/329
-
330・水野繁
○水野(繁)政府委員 お答え申し上げます。
最近の事務年度におきます脱税の額でございますけれども、加算税を含めまして、申告所得税で五十七年度一千七百六十一億円、法人税が三千四百九十六億円でございます。これを主要なものといたしまして、直接税全体では六千五百七十五億円となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/330
-
331・堀昌雄
○堀委員 今の六千五百七十五億円というのは、この脱税に対する更正その他の処理によって、税収として国に入った額、こう理解してよろしいわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/331
-
332・水野繁
○水野(繁)政府委員 おっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/332
-
333・堀昌雄
○堀委員 もう一つ、最近におけるマル優を利用した脱税の状況はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/333
-
334・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 マル優の件でございますが、私ども、金融機関の店舗数のおおむね一一%程度につきまして調査を行っておりまして、その結果、最近の事務年度におきまして百七十億円の増収を得ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/334
-
335・堀昌雄
○堀委員 この追徴額を含めた加算税百七十億というものを元本にはね返して、そして計算をしてみると、どのくらいの額になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/335
-
336・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 これは元本への割り返し方にもよりますが、私ども追徴税額を遡及をいたしておりますので、この遡及期間をおおむね二年、それから預金の利率を六%、税率を二五%と仮に仮定をいたしますと、約五千六百億円の元本ということに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/336
-
337・堀昌雄
○堀委員 要するに、この今の五千六百億円というのは、まず脱税をされて出てきた金がもう一遍マル優を利用して、悪用して脱税をしておる、二重の脱税が行われておる、こう理解していいんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/337
-
338・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 これは、堀先生お尋ねのようなものもあり得るかと存じまずし、また直接金融機関にマル優の格好で一次的にと申しますか、預金をいたしまして、そこに不正があったというものもあろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/338
-
339・堀昌雄
○堀委員 そこで、これは大体の推計で答えていただきたいのですけれども、実は昭和五十九年一月一日から、政令による処理がなければ、グリーンカードが実施をされておったはずである、こう私は考えておるわけです。グリーンカードが実施をされているということになると、マル優の乱用の問題というのは五十九年度中にはかなり整理がついたのではなかろうか、実はこう思うのですね。そうすると、もし仮にグリーンカードが五十九年一月一日から実施をされていたとするならば、五十九年度中にそういうはね返りで税収の上に立ったものは、これは皆さんも計算したことはないでありましょうけれども、まあ大体感じとしてはどのぐらいあったと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/339
-
340・渡辺幸則
○渡辺(幸)政府委員 感じといたしまして幾らぐらいかということを申し上げるのは大変難しいかと存じます。私、先ほど五千六百億円の元本ということを申し上げましたが、これは私どもが調査をいたしますときに、やはり全く当てずっぽうにと申しますか、ランダムにやっているわけではございませんので、ある程度目安をつけた上で調査をいたしておるわけでございます。したがいまして、仮にマル優の全部につきまして私どもの調査を及ぼした場合に、その場合の不正額がどのぐらいになるか、また、その不正額の中から追徴税額がどのぐらいになるか、ちょっと申しわけございませんが、私ども推測することが大変難しいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/340
-
341・堀昌雄
○堀委員 機械的に計算をさせてもらうと、要するに全金融機関の店舗の一一%、今こう言われましたから、一一%で百七十億ということは、まあまあ約十倍程度のものが全部をやれば出る。これは機械的ですから、事実出るかどうかは別ですが、推測の手段としてはそれ以外にありませんから。そうやると、ここで千七百億ぐらいは、この調査から見て追徴税額が出た。恐らくこれは皆さんの方もマル優の特に多いものを調査をしたのでありましょうから、密度はこの部分が一番高いのかもしれません。しかし、今の推計とすればそれ以外に方法がない、こう考えるわけで、そうするとこの約五千六百億円というものは、預金額として実は五兆六千億の問題がその後ろにあるんだ。そして、それによって失われておる税収というのは千七百億円ぐらいに達しておるのではないか。今私は、この直接税の脱税で、今の御答弁で六千六百億円実は税収としてなった、こちらで千七百億円ぐらい仮にグリーンカードが実施されておればなった、合計これを足しますと大体八千四、五百億円というものが税収として立つ可能性がある。可能性があるだけで、立つかどうかはわかりません、というのが私の一つの実は推計なんですね。
大蔵大臣、これからグリーンカードに関する問題は税制調査会で引き続き審議をされることでありますから、今その問題についてどうこう議論する気はないのでありますが、実は今度の酒税と物品税の増税問題というのは、既に大蔵大臣もお答えになったように、減税財源見合いの増税です、こうおっしゃっているわけですね。ほかに財源があれば実は酒税、物品税の増税をしなくても済んだのかもしれない、こう私は考えるわけです。石油税はちょっと性格が違いますから、これは要するに今度の減税の穴埋めではないと私は認識をしております。これは要するに予算上、歳出見合いの処理でありますから、その限りでは今度の酒と物品の増税というのはまさしく減税の穴埋めである。財源がないからこれを使った、こうなるのでありましょう。そうすると、今のグリーンカードの問題を含め、今のような新たに税の執行をさらに厳しくすることによって、少なくとも一後の法人の関係の方は私は触れていないわけでありますから。この合計で初年度三千七百億ですか、主税局長、この酒と物品、合計で……。(梅澤政府委員「三千五百五十」と呼ぶ)三千五百ぐらいのものは優に賄える財源はあったのではないか、こういうふうに思うのです。大蔵大臣の御所感を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/341
-
342・竹下登
○竹下国務大臣 いわゆる酒税、物品税、なかんずく酒税は、末端消費者物価の値上がりによって税率が異なってまいりますから、検討の対象ではあったかもしらぬが見送られておる可能性は、他に財源があったらあっただろうと私も思います。物品税はなおのこと、そう思います。今御指摘になりました仮定の立て方は別といたしまして、そういうものがあったとしたらなかったであろうという議論も、それなりに筋の通った議論だと私は認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/342
-
343・堀昌雄
○堀委員 そこで、これはちょっと新聞で見たのですからよくわからないのですが、この問題はこれから政府の税調で審議をされる問題であると思っていたら、中曽根総理大臣が既にもうグリーンカードはなくなったというのかな、やらないことにしたというようなことを言ったというのを報道でちょっと見たのです。参議院予算委員会のことですから私はわかりませんが、大蔵大臣は御同席になっていたのでしょうから、総理はこれについてはどういうことをおっしゃったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/343
-
344・竹下登
○竹下国務大臣 ちょっと定かに記憶しておりませんが、もう百も御承知のような答申を踏まえて、余りにも影響するところが大であるから慎重に検討しなきゃならぬが、グリーンカードとの問題もこれあり、夏ごろまでに結論を出さなきゃならぬということをおっしゃって、グリーンカードの問題もこれありということが、もうグリーンカードはいわば見直しの外にあるというふうな印象を与えたかもしらぬ。厳密に言えば、税調で審議していただくことですから、予見は申せないにしても、その可能性の多寡は別として、インクルードされた一つのものとしてあると言った方が正確だろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/344
-
345・堀昌雄
○堀委員 私は、あの政令の趣旨というのは再検討ということなのであって、もう頭からグリーンカードの制度はだめですというなら、あそこでけじめをつけたっていいわけですから、制度として、既に法律として発足をしておるものがそういう取り扱いになると思っていなかったしするから、これは暫時凍結をして再検討だ、こう思っているわけですね。
そこで、今この前段の話を申し上げたのは、どっちにしても脱税をした原資というのはやはり一番たくさん銀行の預金になっているのだろうと私は思うのです。マル優を利用しているものもたくさんあるし、場合によっては郵便貯金になっているものも恐らくあるでしょう。ですから、さっきちょっと申し上げたような二重の脱税ということは、税制上これほど不公平なことはない、こう考えるわけですね。そうすると、実はこれらの問題について、私どもは少し完全な税制を求め過ぎた嫌いがあったなという反省をしておるわけです。
それは何かというと、実はこの問題の一番の基本は、所得税というものは少なくとも総合課税が行われて初めて所得税としての体系が完結をする、こういうふうに考えておりますし、そのことはここにおられる皆さんすべて異議はないと思うのであります。ただしかし、現実の問題として、預金の部分における総合課税というものに比重をかけ過ぎた余り、要するにマル優制度の限度管理の方が、それをも含めてやろうというところに少し我々として反省をする必要があったな。そうすると、順序としては確かに論理的に累進総合課税にして初めて所得税の体系が成り立つのでありますけれども、やはりまず今の二重の脱税を防止する意味ではマル優の限度管理を厳しくやることが先であって、総合課税の問題は二段構えで考えるべきであったのを、やや二兎を追って一兎を得られなかったという感じを今持っておるわけであります。
そういう意味では、これから税制調査会の審議があるのでありましょうが、既に当委員会でこの前も郵政省を入れてやったことでありまして、今マル優制度の廃止論もあるように聞いておりますけれども、私は、少なくとも大量国債発行の状態が続いておる限り、マル優は廃止すべきでないと考えておる。税制その他の問題でこの大量発行の峠を越えて、だんだんと国債の発行量が減らせるという見通しが明らかになれば、今の貯蓄の水準から見て、今の貯蓄奨励を残しておかなければならない理由はないのでありますけれども、今や日本の異常に高い国債発行は、国民の貯蓄性向の高さに支えられて何とか機能しているというのが現状でありますから、その限りにおいては、そういう段階になるまではマル優の制度を残して、そうして少なくとも貯蓄性向を高く維持しながら、国債の発行が民間貯蓄の限度内で処理をされていく、そして景気が上昇してきてもクラウディングアウトが起こらないだけの、現状の余裕のある国民の貯蓄を維持していかなければならない、こう私は考えておるわけです。
そうしますと、その間は少なくともこの制度を残す以上は、限度管理が厳しく行われなければ、最初に伺った公平の問題としては、我々税を論議いたします大蔵委員会としては、国民に対してそれなりの責任を負って対処することにならないのではないか、こう私は考えるわけでありまして、これらについてひとつ竹下大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/345
-
346・竹下登
○竹下国務大臣 私は、日本国民が貯蓄性向が高いからばっかりに、いわばドルショックあるいは第一次石油危機、第二次石油危機を切り抜けることが少なくともできた、唯一最大の要因はそこにあったと思います。したがって、今日アメリカ経済といろいろな比較があるときにもしみじみと思いますのは、やはり今日の可処分所得の中から貯蓄へ回るものがアメリカの三倍以上、こういうことでございますから、それはありがたいことであった。それはなぜできたかというと、私は二つの見方をしております。
一つは、やはり一番最初御議論のあった競争力の問題等々でありますが、日本の金融機関はとにかく一九〇一年にちょうど千八百あったそうでございますが、それが合併に次ぐ合併で百五十七になっておる。それは、銀行は倒れないものだということを国民に印象づけた。それからもう一つはいわば貯蓄奨励策というものがあった。かつては、郵便貯金のできたのは一つの奨励策であったかもしれませんが、元来、国民にはもちろん勤倹貯蓄の思想というものがありますけれども、今や一つの貯蓄奨励政策としては、マル優というものが果たしてきた機能が存在しておるというふうに思います。したがって、そういう貯蓄性向が鈍るような形のことはしてはならぬと原則的に思います。ただマル優問題は、万々そういうことがないにしても、今からマル優は残しますとかいうことは、税調に審議をゆだねておる限りにおいては予見めいたことになるから言えないのかな、こういう感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/346
-
347・堀昌雄
○堀委員 どちらにしても、少なくとも今いろいろ議論がある大型増税ですね。表現はいろいろな表現があるから、中型とか大型とか何とか言葉でごまかしてもこれはしょうがないのでして、ともかくもやはり何らかの増税の手段をとらなければ、日本財政がこれから健全になろうとは私も思っていないわけでありますから、その方法のいかんは別でありますけれども、何らかの対処はしなければなるまい。恐らくこの委員会にいる人は、腹の中ではそう思っておるでありましょう。立場上は、いろいろ立場がありますから、口に出すか出さないかは別でありますけれども。
その際には、私はやはりただ増収をするための手段として増税を図るようなことは断じて認められない。それは要するに、現在給与所得者の最も大きな不満でありますトーゴーザンとかクロヨンとかと言われておる納税者間における不公平を一つのシステムとして、公平な税制のシステムに乗せるための手段としての税を考えるという、そういう税の公平の原則の上に立って問題の処理が進められて、結果としては税が増収になることによって今の財政の状態が改善されていく。少なくとも私はそういう道筋と順序でなければこの問題を考えるべきではない、こう考えておりますけれども、大蔵大臣はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/347
-
348・竹下登
○竹下国務大臣 その議論は、私は全く同感で、何ら私が反論を持ち合わせるものでないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/348
-
349・堀昌雄
○堀委員 まあ中曽根さんかどう言ったとかいろんなことがありますけれども、私は鈴木さんが昭和五十九年度にだったかな、赤字国債をゼロにするという話ですね。私は、それを言われたときに、ああこの方は五十九年度までは総理はやらないんだなというふうに最初に直観したのです。この間中曽根さんが、私の在任中にはやりませんとおっしゃいましたね。私は、これもまた、ははあ、そうすると、要するに中曽根さんはまあ十一月まではおやりになるのだろうが、そこから先はどういうのか、必ずしも一自分で執念を持っておられたら、そんなことは大変無責任なことになるので、言われるはずがないだろうなという感じがしたわけでありまして、どちらにしても私は、今最初に伺った税の公平のためにひとつみんなで考えるべきことを勇気を持って考えなければ、いつまでも給与所得者だけがともかくも一番厳しい条件に置かれて、その他の人がぬくぬくと税が回避をせられ、それがまたマル優の利用、悪用によってさらに不正な処理が拡大をするようなことが温存をされておっていいとは考えないわけでありますので、その点をひとつ物の考え方としてちょっと申し上げておきたいと思うのであります。
そこで、今度の議題の酒税の問題でありますけれども、この酒税の問題を考えてみますときに、これは幾つかのサイドからの問題があるというふうに私は思います。一番大事なのは、この酒税の問題を、消費者のサイドはどう考えるだろうかという問題でありますね。その次は、今度は生産者のサイドはこの問題についてどう考えるか。それからもう一つは、これまではやや等閑視されてきましたけれども、今や国際的な条件でありますから、国際的な立場で見たら、この酒税の増税というのはどういうふうに考えられるか。最後が皆さんの徴税をする側の立場からの考えだろう。こんなふうに少し整理をしてみたわけであります。
そこで、今私がこの四つの問題を提起をいたしましたが、大蔵大臣、これに優先順位をつけるとすると、これはどういう優先順位になるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/349
-
350・竹下登
○竹下国務大臣 これは難しい問題でございますけれども、最終的には一億国民おのがじしいかなる立場にあろうとも消費者であるという意味においては、消費者サイドというのが一番かな、こういう感じがいたします。それからやはり今日までの歴史的経過から見れば生産者なのかな。そこでその次の徴税の立場というのは、これはやはり最終的には徴税の立場を考えなければいけませんが、国際的立場というのは、確かに近時これだけ近代化して、また国際化したら、みんなに影響のある問題でございますので、もちろん念頭に置かなければならぬ問題です。私どもは国際的な立場から見たときには、いわゆるアルコール類の関税の方の議論が、アメリカなりヨーロッパなり等との会合の場合非常に出てくる、そのこともやはり念頭に置くべきだな。が、ずばり国際的な立場を四分類の中で挙げて指摘していただいたというのは初めてでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/350
-
351・堀昌雄
○堀委員 大体私もちょっとそういう順位で並べてみたんですが、大臣と私も余り見解の相違がないようであります。
そこで、実はさっきからずっと主税局長の答弁を聞いておりまして、いろいろと酒税の懇談会とか税制調査会とかの答申で私どもも感じておる問題が提起をされておりました。そこでさっき、今度はビールを中心にして、二〇%程度を中心にしてひとつ処理をしたいと思ったという方向は確かに具体的に出ているのでありますが、これが通っていないのが清酒だけですね。清酒だけは、どうも当初は主税局はそういう考え方のプランをつくったんでしょうが、自民党税調の中で手直しをされて、ここだけが違う。あとは大体今の主税局の考え方の線に沿って、少なくとも酒税懇談会でありますか、あるいは税制調査会の物の考え方の方向に沿って処理をされてきたと思うのであります。
そこで、これは竹下さんもその関係者の一人でありますが、今私はこの清酒の問題というのは、さっきちょっとお話をした、要するに競争原理の問題が通用しない業界のような感じがどうもして仕方がないわけであります。なぜ私がそういうふうに申し上げるかというと、私も大蔵委員会に昭和三十五年に来ましてから随分長い間、特に清酒の問題は初期に随分議論をしてまいりました。そこで感じたことは、ともかくも歴史的に清酒の関係者の皆さんというのは昔の地主であって、そうして米をたくさん手に入れた人たちが、そのたくさんの米を醸造するということで地方の酒屋さんというものがどうやらできておる。ですから、大体この地方の酒屋さんというのは皆山を持ち、広大な土地を持って、資産の非常にある方が多い。その資産の非常に多い方が極めて零細な酒造業を実はやっておられるということが、この業界が企業性のある部分と、そうして、何といいますか、名誉的家業といいますか、そういう性格のものとの混在をした業界のような感じがずっとしておるわけであります。ですから、少々赤字が出ても、そのくらいの赤字はちっとも構わぬ、先祖から引き継いできた酒づくりは続ける、こういう考え方でやっておられる方。
実は私の親戚も広島県で酒屋をやっておるのでありますが、広島市がどんどん膨張をしてきて土地が開発をされますと、昔は二束三文であったような山林が実は大変な価格で動くようになってくる。もう実際は、酒屋をやってはいますけれども、それはやはり過去の状態で続けているだけであって、もう所得の関係では酒屋をやる必要はない状態に来ておる。こういうのがありますから、恐らく全国的にはそういうところがかなりたくさんあるんじゃないかと思うのです。
そこで、ちょっと国税庁に伺いますけれども、要するに今この資料で拝見すると、年間醸造が百キロリットル以下というのが、ともかくも依然として全体の半分ぐらいあるんですね。あなたの方から、昭和五十六年における清酒酒造業者の数、百キロリットル以下と今度は千キロリットル以下とそれ以上、これがどういう数で分布をしておって、パーセンテージとしての構成比はどうなっておるかをちょっとお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/351
-
352・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
百キロ以下につきましては、千二百六十者でございます。申しおくれましたが、全体が二千六百六十という中の内訳でございますが、百ないし二百が五百二十七でございます。二百から三百までが三百者ということでございまして、ここまで合わせますと七八・五%になるわけでございます。
先ほどお尋ねの千キロリットル以下でございますが、ただいまの計数に三百八十者を足した数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/352
-
353・堀昌雄
○堀委員 さっきのどなたかの質問で、要するに酒屋は政治力がある、それは特に自民党の中に酒屋の出身者がたくさんおられる、そのとおりだと思います。私もこういう仕事をやっていますから、酒屋出身の自民党の政治家をたくさん知っておりますが、私は自民党の政治家がどうこうというよりも、この二千六百というものが地方における素封家というか非常に影響力を持っておられる。ですから、そういう意味で、どうやら清酒業界というものが政治力があるということとあわせて、今のこの百キロリットル以下というようなごくわずかな醸造が依然として千二百六十あるということは、私はさっき一つ産業政策、競争の問題で申し上げたのですが、このような構造である限り、清酒の問題というのは、上の方と下の方に完全に二極分解をした形の処理になってしまう。それは産業政策としても余り望ましいことではないのではないか。
今度第三次の構造改善でありますか、それの問題が法案の中で取り上げられておりますが、「昭和五十九年七月一日から昭和六十四年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し、給付金を給付するとともに、これに係る納付金を清酒製造業者から徴収できるよう措置する。」前回も二回にわたって行われておりますけれども、余りまた実は十分と言えないようでありまして、これは大臣、ともかく清酒というものが生き残っていくためには避けて通れない一つの大きな問題ではないのか。さっき大臣から、たくさんあった銀行が数少なくなったという話がありましたけれども、これでは清酒の問題というのは非常に難しい問題を引っ張ってくるのではないか。だから、ここの部分の構造改善をどういうふうにやるかによって、私は清酒業界の問題というものがかなりいい方向に対処できるようになるのではないか、こう思いますけれども、大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/353
-
354・竹下登
○竹下国務大臣 私どもが聞かされておるところでは、かつて一万軒あった。当時はちょうど一万カ市町村でございます。要するに、てんびん棒で重いものを担いで販売いたしますから、てんびん棒で担げる範囲というとやはり一万必要だそうでございます。それが交通網が発達して徐々に減って、今二千六百でございます。ちょうど明治三十四年に銀行が千八百でございますから、だんだん近づいておるな、こういう感じがしておりますが、基本的には今おっしゃいましたように、そういう分極化する傾向にあることは事実でございます。分極化したところが、一つは先祖伝来の仕事というある種の封建意識です。たまたま祖先等の遺産があって、他の所得でもって零細な赤字に余り拘泥しないという点が確かにあると思います。そのある種の封建意識というのがいいか悪いか、私も議論してみなければならぬ問題だと思いますが、そうして比較的健全で残っておるというのは、例えば醸造試験所へ学校を卒業してから数年間行って、そういう熱心な人が帰って後を継ぐというところはやはり残っておる。
いずれにしても、企業合同という言葉を余り顕著に出しますと、まだ戦争中の企業合併の認識の方々もお年寄りなどにいらっしゃいます。しかし傾向として、いわば競争原理の中においては、かつての銀行がそうであったような方向に行くのじゃないか。いろいろな議論をする人がございます。要するに、いわば大手というのは五十あればいいじゃないか、あとは各都道府県に人口五十万当たり一つあればいいじゃないかとか、それは地酒としてまた残り得るいわゆるエリア、一つの範囲じゃないか。
これはいろいろな議論をする人がございますが、傾向としてのこの問題は私もわかります。それがある意味において保護されてきたのは、やはりこの税というものを蔵出しの段階等において調達する財政物資であるという意味においての保護と、もう一つは食糧管理法に基づく保護と、二つの問題が、近代化をある意味においては妨げておったとも言えるのじゃないか、こういう感じがしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/354
-
355・堀昌雄
○堀委員 ですから私はさっきの問題で、やはりこの問題も消費者サイドの立場に立ちながら一定の競争条件が導入をされ、その結果として構造が改善をされて、それがまた消費者に還元をされていく、こういう形がとられることがどうも必要ではないか、こう思っておるわけです。
もうこの前一回紋別関係の問題をやりましたから、きょうはそれはやりませんが、一つだけ。高価格低税負担の醸造者がありますね。ちょっとこれを具体的に、私どもいろいろな名前は聞いていますが、この二級酒で少なくとも一級酒程度、超えているか超えてないかは別としても、要するにそういう高価格低税負担の醸造業者というのはどのぐらいあって、それは大体どのくらいの生産規模なのかをちょっとお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/355
-
356・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
まず清酒一級という格付でございますが、この一級の値段を超えておりますものは、五十五年度の販売数量でございますが、一・八リットル瓶で千九百七十五キロリッター、その他すべて含めまして四千七百二十七キロリッターでございまして、この一級酒全体に占める割合は〇・五七%でございます。それから二級でございますが、二級酒の格付でありながらその価格が一級の標準的な価格を超えておりますものを仮に高価格と定義いたしますと、その計数は二千二十四キロリッターでございまして、これが二級酒全体に占める割合は〇・三四%でございます。両方加えまして〇・四八%、こういうことでございまして、量的にはまだそう多いものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/356
-
357・堀昌雄
○堀委員 製造業者の数としてはどのぐらいありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/357
-
358・山本昭市
○山本(昭)政府委員 製造業者の数でございますが、高価格一級酒を出しておりますのは、これが多うございまして二千六百六十八者でございます。それから高価格二級酒を出しておりますのが――大変失礼いたしました。合計を申し上げました。高価格二級の方を申し上げますが、製造者数は合計いたしまして延べ六百四十一者でございます。ちょっと一級の方につきましては数字がございませんので、今確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/358
-
359・堀昌雄
○堀委員 量は必ずしもそう多くないようでありますけれども、二千六百の中で六百四十一も、二級酒の税負担で一級程度あるいはそれ以上の酒を売っているというのは、これはもう、私はこの前ちょっと指摘をしたのでありますけれども、既に現実に級別制度は崩壊していると見ていいんじゃないですかね。ですから、きょうはもう時間もありませんからこれに多く触れませんが、この問題はもう次の税制改正までには何とか大蔵省としてはそれなりの解決をしてもらわなければ、これまでどおりの特級、一級、二級で税制改正をするということは、私どもは了解できないと思うのですね。その点ひとついかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/359
-
360・梅澤節男
○梅澤政府委員 五十九年度の酒税法の改正に当たりまして、今御指摘がございました清酒の一級、二級、非常に高価格酒のものがあるという現実を踏まえまして、かたがた昨年十一月の税制調査会の答申等にも方向が示されておりまして、私どもといたしましては、清酒の一、二級についても従価税の課税方式を実は検討いたしたわけでございます。
ただ、この点につきましては、率直に申しまして、主として生産者側、関係業界等から非常に強い反対論がございました。その幾つかの反対論の論拠というのは、一つは今国税庁から紹介いたしましたように、高価格酒につきましてまだそのウエートは非常に小さい。かたがた自粛通達等を出しまして、なるべくそういうことを自粛するという雰囲気でもございますので、直ちにこの従価税を導入するということについて非常に業界側の反論がございました。
それから、そのほかに、清酒の場合は原料米の特殊事情がございますので、どうしてもコストプッシュによる値上げ要因、その影響を非常にこうむっておる業界でございますので、従価税ということになりますと、コストの面から値上げせざるを得ないときの負担を考えますと、生産者側といたしましては、現時点の原料米の事情から見ますと、この点について先行き不安感と申しますか、そういうものが非常に強いということがございます。
それからもう一つは、先ほど来委員がいろいろ御指摘になっておりますけれども、そういう零細業者の中からも、新しい品種を開発して付加価値の高い商品をこれから心がけようというときに、直ちに従価税という壁が立ちはだかりますと、企業といたしまして企業努力をそがれるといったような問題も提起されました。
そういうことで、結果的には五十九年度はまだこの問題を検討するのは時期尚早であるというふうに、最終的に結論を下したわけでございますけれども、ただいま委員が御指摘になりましたように、この問題はとにかくそう放置して現状のままでよいという問題ではございませんので、私ども、業界等ともよく連絡をとりながら、何らかの妥当な結論を見出す方向で検討すべき問題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/360
-
361・堀昌雄
○堀委員 ドイツでは、御承知のように、醸造の量によって税率が配慮をされておるという制度もあるわけでありますから、単にすぐ従価税ということではなくて、今の製造のロットの小さいところにはそれなりの困難がある、できるだけ競争によってそれを大きくしていきたいと思いますけれども、現実の生身の経済でありますから、そう我々の希望するようにはいかないでしょうから、いろいろな新しい手法を使って、少なくとも今の特級、一級、二級という税制を逆手にとって、要するにその他の業者よりは有利な収入を得るという方法は、私はどうもフェアでないと思うのです。そうすると、税制の方で何かのチェックがかかるのか。しかし、その人たちの立場も配慮しながら、そういう生産量において、従量税においても何らかの配慮をするとか、手はいろいろあろうと思うので、総合的に考えて、少なくとも今の級別税制の裏をかかれるようなことは、税の公平の原則からいってこれは望ましくないことでありますので、大臣もひとつその点、前向きな処理をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/361
-
362・竹下登
○竹下国務大臣 二級酒で一級酒並み、それ以上のもので売れていくというのは、確かに私も若干問題に思います。というのは、税の面からでなくして、創意工夫からいうと、それらはそれなりの努力をしておるという評価もまたできるんじゃないか。やはりある種の競争原理じゃないかという感じもいたします。したがって、一概に私もそれに対して否定的見解を率直に述べたことは余りございませんが、実態として考えますと、今おっしゃいましたような意見を踏まえながら、これは五十六年税制改正のときにも渡辺前大臣との間で議論があり、難しいながら検討しようとのお答えもあっておるわけでございますから、これは必ず検討していかなきゃならぬ課題だという理解だけは私も持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/362
-
363・堀昌雄
○堀委員 実はこの酒の税収がどういうふうな形で動いているかということをちょっと検討してみました。主税局の方でちょっとお答えをいただきたいのですが、昭和三十九年の清酒、しょうちゅう、ビール、ウイスキー、その他ということで、その金額と構成比を述べていただいて、今度は五十七年について清酒、しょうちゅう、ビール、ウイスキー、その他で、今の税の増加額、要するに何倍になっているかというのをひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/363
-
364・梅澤節男
○梅澤政府委員 まず三十九年度でございますけれども、総額で三千六百二十四億円でございます。この酒税の税収を酒類別の構成比で割り振りますと、清酒が三八%、しょうちゅうが二・八%、ビールが五二・二%、ウイスキー類が四・二%、その他二・八%ということでございます。
最近時点の実績が出ております五十七年度の酒税の税収総額が一兆七千七百三十五億円。これを同じく酒類別に構成比で案分いたしますと、清酒が一六・四、三十九年当時より構成比が二分の一以上減っております。しょうちゅうが二・八が一・〇、それからビールが五二・二が五四・三、若干ふえております。ウイスキー類が顕著にふえておりまして、四・二%が二七%、その他が二・八%が一・四%、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/364
-
365・堀昌雄
○堀委員 これでわかることは、要するに清酒が実は漸減傾向にある。これはいろいろな要素がありますから、大変難しい問題だと思うのであります。
なぜかというと、大体が清酒というのが一番フィットする食事は日本食なんですね。日本食には清酒がいい。これは民族のスタイルですから当然それでいいのでありますが、日本人がだんだん日本食を食わなくなってきたということでありますね。日常生活の中で日本人ぐらい他国の料理を食う民族というのは、世界じゅうにいないだろうと思うのですね。日本人は今家庭でも中華料理もつくって食べる、洋食も食べる、カレーライスというインド式のものも食べる、朝鮮料理の焼き肉も食べる、あらゆるもの、どこの国の料理でも自分たちの国の料理にしてしまう。そうすると、結果的には、何にでも一番合うというのはどうも私はビールのような気がするのですね。これはどうやら、食事のときには何の料理でもビールは大体合いそうだ。ですから、ビールが非常に安定している。最近はウイスキーが非常に伸びてきましたが、このウイスキーが伸びてきたのは、水割りという方法。これは日本的ウイスキーの飲み方ですね。これでともかくも日本酒と同じぐらいの濃さにして飲んでいるということのようでありますね。そういうことで、今の状態は日本の国民の食生活の変化に見合った変化でありますから、なかなかこれから清酒を広げようというのは難しいだろうと思うのであります。
しかし、坂口さんという方が書いていらっしゃる本を読んでみると、どうも日本酒には工夫がない、要するにもっと酸の問題が考えられていいのではないか、日本酒には個性がない、こういうことを書いておられる。かつての日本酒というのは、現在の日本酒に比べて四倍以上酸度が高かった。そういう酸度の高い酒は密封して貯蔵ができた。ともかくもそういう点ではラオチューは貯蔵ができる。ブドウ酒も貯蔵ができる。ところが、ビールは全然だめですが、日本酒も実は貯蔵ができないという問題に触れておられて、ともかくも日本酒はもう少しそういう酒の持つ特性を生かした製品にすべきではないかという問題を提起されているのを読みまして、一つの新しい角度からの問題提起だなあというふうな感じがいたしました。まさにそれは、ブドウ酒に匹敵する方向で日本酒が競争力が持てる一つのサゼスチョンをしておられると思いました。
それからもう一つは、乙類しょうちゅうについてももっと工夫があってしかるべきではないか。少なくとも乙類しょうちゅうを長期に保存をした。最近大分出てきておりますけれども、そういう日本古来の酒造の形で、新しい発想に立った問題を考えたらどうかと言っておられます。私ども、やはり日本酒というのは日本の酒でありまして、それがどんどん衰退をしていくということは大変残念なことでありますから、そういう面もひとつ、これは別に国税庁が指導したりすることではないでありましょうが、皆さんのところにはたしか試験所があるのですね。ですから、そういうところで率先して、ひとつそういう酒のモデル、酸度の高い酒とか、甘辛というのは単に糖だけではなくて、酸に非常に関係があると坂口先生おっしゃっているわけですけれども、そういう意味で国税庁も日本の酒で、米を原料としておることでありますから、これらについて少し新しい道を開くための努力をしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/365
-
366・山本昭市
○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。
坂口先生の著書を引用されまして、大変すばらしいお話を感銘深く伺ったわけでございますが、確かに現在の清酒業の抱えている最大の問題は、先生おっしゃいましたように需要の低下でございます。それからもう一つはコスト高、それから企業規模が小さい、こういう三点に集約されていると思うわけでございます。そういったことで、いかにして今後日本清酒の振興を図るかということについて、中央酒類審議会が五十七年の春からいろいろ御検討いただきまして、その中でいろいろのメニューを出していただいておりますが、まず第一に大事なことは需要の開発である。現在このように清酒の需要が沈滞した状況に対しまして、やはり消費者ニーズというものを的確にとらえて、いいものをつくっていくことが必要だろうと思うのでございます。そういった観点から、私どもの醸造試験所の機能も大変御評価いただきまして、私も大変うれしく思うわけでございますが、これからの近代化計画の中にもまた需要開発が入りますので、そういったことも十分に考えてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/366
-
367・堀昌雄
○堀委員 もう一つ、私は、現在の酒の税制の中で、どうも合理性がないな、それもさっきからお話をする産業政策に偏り過ぎているのではないかと思うのが、実は甲類しょうちゅうとスピリットの税率の問題であります。
そこで、私は余り甲類しょうちゅうの製造業者というのをよく知らないのですが、これは一体醸造所が幾らぐらいあって、どういう分布であって、その平均的な醸造量というのは何キロリットルぐらいなのかを、ちょっと最初にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/367
-
368・山本昭市
○山本(昭)政府委員 甲類しょうちゅうの製造者数は八十三ございまして、五十七年度十七万二千キロリッターの移出数量でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/368
-
369・堀昌雄
○堀委員 実は甲類しょうちゅうというのは、連続蒸留機によってつくられたアルコールを薄めてつくったもののようですね。ですから、これはアルコールだ。スピリットというのも、ずっといろいろな種類があるけれども、やっぱりアルコールに基づくもの。ウオツカというのはシラカバの炭でこすのですか、まあにおいをつけるとかいうような意味のものは多少あるのでしょうが、基本的にはこれはアルコールなんですね。両方ともアルコールであって、そうして実は税制上の処理としては、スピリットの方は、三十七度以下のところはアルコールの逓減税率というものは全然遮断をされておる。しかし甲類しょうちゅうの方は、アルコールの度が低くなれば順次安くなるというシステムになっている。同じ商品とみなしていいアルコールが、恐らくこれは甲類しょうちゅう業者八十三業者を保護するということでこういう処置がとられているのだろうと思うのですね。
ただ、この甲類しょうちゅうというのは、今の十七万二千キロリットルということから見ても、さっきの乙類しょうちゅうの皆さんに比べるとかなりロットも大きいし、かつてはともかくも、今日はそれなりの競争力があるのではないか、こういうふうに思うのですが、この問題も、私がさっき提起をした消費者の立場というものを考えれば、そういつまでも産業政策にこだわって、三七%のところで打ち切りということではなくて、それなりの段階税率が導入されてしかるべきではないか、こう思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/369
-
370・梅澤節男
○梅澤政府委員 この問題は多分に沿革的な問題があることは事実でございまして、ただいまおっしゃいましたように、酒税法上の定義によりますと、スピリッツ、しょうちゅう甲類ともに連続式蒸留機で蒸留するアルコール飲料でございますけれども、三十七度のところで甲類とスピリッツに分かれるという実態になるわけでございます。それで、三十七度を超えますと、しょうちゅう甲類といわゆるウオツカ等に代表されますスピリッツとはほとんど製法が類似してまいりますし、ほとんど似たような品質のアルコール飲料になる。片やしょうちゅう甲類につきましては、伝統的にしょうちゅうにつきましてはいわば密造対策等も勘案いたしまして税負担割合を調整してきた歴史がございます。したがいまして、そういったことから考えますと、この三十七度のところで線を引いてまいりませんと、似たような酒類であって税負担が非常に異なってくるという問題があるわけでございます。そのことから、結果的に業界の分野調整にも制度が影響しておるということがあることは事実でございます。
ただ、この問題につきましては、今早急にこの酒類の分類を変える、あるいは税負担率をにわかに見直すということは極めて難しい問題であるということは申し上げなければならないと思いますけれども、そういう沿革的なことも影響いたしまして、若干この辺が問題になる点であることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/370
-
371・堀昌雄
○堀委員 私も一遍に甲類しょうちゅうと同じにしろというようなことを言っておるのじゃないのです。私は、問題提起をするときには常に一定の時間をかけて、徐々に改善をするというのが最も望ましい姿だと思うのです。突如として同じ条件になれば甲類しょうちゅうは大変ですから、それは私もよくわかるのでありますが、少なくともいつまでも三十七度でとめておくというようなことはおかしいのじゃないか、三十七度を次の改正のときは三十度のところまでで逓減税率を置くとか、またそれから何年かたったら二十五度のところまでで逓減税率を置くとか、要するに競争が起きるような条件を徐々につくろうという意思がなければ、さっき大臣は一番目が消費者と言われたけれども、二番目の生産者の立場の方にばかり目がいっておるというような、そういう行政は、私はやはり国民の立場からして徐々に改められるべきだ、こう考えるわけであります。
主税局長、もう一遍今の私の新しい提案についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/371
-
372・梅澤節男
○梅澤政府委員 現在酒税法では十種類の分類が行われております。品目も十三の品目に分かれておりまして、この辺が非常に複雑である、あるいは現在の市場の実態に即さないという点がいろいろ指摘はされておるわけでございます。ただいま委員が御指摘になりました点も含めまして、やはり市場の実態を見ながら適切に対応していかなければならないということは御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/372
-
373・堀昌雄
○堀委員 大臣、最後に。
ともかく私どもがここで議論をすることは、それは確かにいろいろな了解もあります。あるいは過去からの経過因縁、いろいろなことがあります。しかし、我々は当委員会では後ろを向いて物を議論しておったのでは物は始まらないのであります。常に前を向いて歩こう。要するに、前に我々の将来像を考えながら、国民のニーズに合った、そして公平な税制をつくっていこうということが、当委員会に課せられておる我々の任務だ、こう考えておるのでありまして、そのことはまたこの次に所得税、法人税、租税特別措置法その他でも議論をさせていただきますが、私どものこの税に対する基本的な態度は、今申し上げた私の考えに尽きておると思うのであります。大蔵大臣のこれに対するお考えを承って、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/373
-
374・竹下登
○竹下国務大臣 これは私が国会対策等におって長い間感じたことでございますけれども、大蔵委員会においては、ここで議論されたことが政府税調に反映されていくということに対しても、割にこれはうまくいっておると思います。したがって、議論された問題が必ず次の税制改正あるいは翌年度何かの形において現実化して出ていくという習性は、大蔵委員会に定着した一つの姿じゃないか。そういう意味においては、たゆまざる議論がそういうふうに実を結ぶ習性を定着させているのじゃないか。あながちこれは無修正で通してくださいという私の願望から申し上げたわけではございません。それが大蔵委員会というものの今日までの結果として、それは直ちに生じなくとも、必ず後、実を結んでくる習性というものはやはり大事にしていかなければならぬことであるということを、私は常日ごろ感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/374
-
375・堀昌雄
○堀委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/375
-
376・瓦力
○瓦委員長 これにて三法律案の質疑は終了いたしました。
伊藤委員の質問の取り扱いについては、追って理事会において協議いたします。
次回は、来る二十三日金曜日午前九時二十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後九時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104629X00619840321/376
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。