1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十九年四月二十日(金曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 大石 千八君
理事 臼井日出男君 理事 小澤 潔君
理事 谷 洋一君 理事 西田 司君
理事 小川 省吾君 理事 加藤 万吉君
理事 草野 威君 理事 岡田 正勝君
大西 正男君 工藤 巖君
小杉 隆君 左藤 恵君
平林 鴻三君 古屋 亨君
松田 九郎君 佐藤 敬治君
細谷 治嘉君 安田 修三君
山下八洲夫君 宮崎 角治君
吉井 光照君 藤原哲太郎君
経塚 幸夫君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
自 治 大 臣 田川 誠一君
出席政府委員
大蔵大臣官房総
務審議官 吉田 正輝君
大蔵大臣官房審
議官 水野 勝君
大蔵省主計局次
長 平澤 貞昭君
大蔵省理財局次
長 吉居 時哉君
自治大臣官房長 矢野浩一郎君
自治大臣官房審
議官 津田 正君
自治省財政局長 石原 信雄君
自治省税務局長 関根 則之君
委員外の出席者
地方行政委員会
調査室長 島村 幸雄君
—————————————
本日の会議に付した案件
地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣
提出第一九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/0
-
001・大石千八
○大石委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/1
-
002・細谷治嘉
○細谷(治)委員 大蔵大臣、恒例になりましたけれども、地方行政委員会の交付税の審議に今回また出席いただきまして、ありがとうございます。
最初にお伺いいたしたいことは、去る二月六日に大蔵大臣の財政演説がありました。その演説の中の一節でございますけれども、ちょっと読ませていただきます。「概算要求の段階におきましては、前年度よりさらに厳しいマイナス・シーリングを採用し、各省庁において所管予算の根本的見直しを行ったところであり、その後の予算編成に当たりましても、聖域を設けることなく見直しを進め、地方財政対策の改革、医療保険制度や年金制度の改革を初めとする種々の制度改正を行うなど徹底した歳出の削減を行いました。」こう言っております。
大蔵大臣の財政演説では、聖域と言われておる、また扱ってきた地方財政対策の見直しということに今度の予算編成ではかなり重点が置かれた——それはその前の方に、「制度の根本にまで踏み込んで徹底した節減合理化を行う」、これが基本姿勢だ、こう言っております。ですから、今度の予算編成では地方財政対策をやり玉に上げた、こういうふうに財政演説は読まれるのでありますけれども、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/2
-
003・竹下登
○竹下国務大臣 確かに、財政演説と申しましても、いわゆる通常国会は予算審議をお願いする国会でもございますので、五十九年度予算案の説明をも兼ねた内容になっております。その予算編成に臨む態度として、まさに聖域を設けることなく、その制度、施策の根源にまでさかのぼって、よく言われる厳しい予算を編成したわけでございます。
したがって、これが国民全体に御理解をいただける対象として考えますと、このたびの地方財政あるいは医療保険制度あるいは年金制度等々は、代表的とでも申しましょうか、国民に最も気がついていただけるもののような感じで、その他雇用保険の問題でございますとか、あるいは有利子制度の育英資金の問題でございますとか、あるいは児童扶養手当の問題でございますとか、そういうものも制度、施策の根源にさかのぼったということが言えると思うわけでございますけれども、やはり代表的なものとして挙げれば地方財政、医療保険制度、年金関係というものになるではなかろうかということで、特にこれをメンションをしたということでございます。
ただ、これも決して最初からマークしたとかいうことではなく、まさに厳しいシーリングの中で、いささかきざな言葉でございますけれども「内なる改革」という言葉を私は使っておりますが、いわばそれぞれの当局におかれて知恵を絞って、内なる改革として、その結果が、既に御議了をいただきましたが、内閣一体の責任としての今日の予算全体の姿になったではないか、こういう理解の仕方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/3
-
004・細谷治嘉
○細谷(治)委員 少し徹底してないのですけれども……。
そこで、もう一度お尋ねいたしますが、ここで言う地方財政対策の改革、これはどういうことなのかということが私の質問のポイントでございますけれども、実は一月十九日に、大蔵原案が公表される前日に大蔵、自治両大臣の交渉が行われまして、最終的に覚書に記されてあります。同時に、一月十九日には「昭和五十九年度地方財政対策」というものが大蔵省から記者会見の形で発表されております。それを拝見いたしますと、地方財政対策の改革というのは一月十九日の大臣の記者会見の言葉にはありませんで、「改正・合理化」という字句が冒頭使われておるわけですよ。「地方財政対策の改正・合理化」一、二というふうに書いてございます。ところが、今申し上げましたように二月六日の財政演説、それから二月十日の閣議決定、その閣議決定では「財政改革を進めるに当たっての基本的な方針」というものが決められておりますが、これではずっと「財政改革」という言葉が使われております。
ですから、私は「改正・合理化」という言葉と「改革」ということについて、大蔵大臣がことさら姿勢をエスカレーションしたというふうに読み取ってはおりませんけれども、予算ができるまでは「改正・合理化」、済んだ途端に「改革」、しかも制度の根幹にメスを入れた改革、こういうふうになってまいりますと、どうも大臣の頭の中に地方財政というのは嫌なやつだ、重荷なんだ、これをひとつ切ってやれというような意識があるのではないか、こう思うので、質問に当たってお伺いしておきたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/4
-
005・竹下登
○竹下国務大臣 「財政再建」という言葉がいわゆる「財政改革」ということになりまして、中曽根内閣になりましてからそういう言葉が使われておることも事実であります。それは一つには、財政再建という言葉が言ってみれば耳なれ過ぎてきましたので、制度、施策の根源にまでさかのぼるということになれば、やはり財政を改革するという構えてこの財政再建に向かっていかなければならぬ、こういうことで「財政改革」という言葉を使うようになりました。
ただ、基本的に大事にしなければなりませんのは、私もいわゆる「地方財政対策の改革」という言葉は使っても、「制度の改革」という言葉は、そこにはおのずから使ってはならない限界があるのではないかな、こういうことで、対策の改革ではありますが、制度そのものの改革という言葉は、そこのところは踏み込んではならない、みずからの分野を意識してそのような言葉遣いをいたしておるところでございます。いささか国語の先生みたいなことを言いましたけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/5
-
006・細谷治嘉
○細谷(治)委員 私も国語は話せますけれども、苦手でありますから余りなんですけれども、どうもその後の現実の数字の動きというものを追ってみますと変化があるように思われますから、少ししつこくお尋ねしているわけであります。
そこで、実は五十八年の一月、「財政問題についての基本的な考え方」、こういうものが閣議決定をされております。その閣議決定に際して、五十九年度の地方財政対策は既に五十八年の一月に決まった閣議決定の中に織り込まれておった、一年前から仕掛けられておった、計画されておった、こういうふうに読む以外にないのではないか、こう思いますけれども、今回の地方財政対策の改革というのは一年前から計画されておったのかおらなかったのか、その点お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/6
-
007・竹下登
○竹下国務大臣 第一義的には自治省におかれまして地方財政問題は御担当になっておるわけでございます。何度かの政治折衝等も重ねまして、どの予算よりも田川さんには御迷惑をかけまして、何回も何回も足を運んでいただいたということでございますが、最終的には、両省の協議が重ねられ、内閣一体の責任で予算は編成するわけでございますけれども、基本的には、もとより自治省の方で地方自治体の立場に立ちながらもろもろの考え方を政策として積み上げてこられるものでございますので、言ってみれば、大蔵省が一年前から仕掛けるというほど愚か者であってはならない、分を心得ていなければならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/7
-
008・細谷治嘉
○細谷(治)委員 このやりとりをやっておっても切りがありませんが、何回も何回もと大蔵大臣おっしゃいますけれども、この席で田川自治大臣は、この問題については一遍しか大臣と会ってないと言っているのですよ。(田川国務大臣「二回です」と呼ぶ)今初めて大蔵大臣の前で二回と言っているわけです。一度しか会ってないと言っていたのです。
そこで、ちょっと話を進めますが、財政演説の中でさらに、「昭和五十九年度の地方財政につきましては」、その財政改革の裏づけとして「約一兆五千億円の財源不足が見込まれますが、地方財政対策について、国と地方の財政運営の中期的な展望に立って、地方の自主責任の原則を踏まえ、抜本的な改革を行い、地方交付税について当分の間総額の特例措置を講ずることとし、その適正な運営に支障のないよう配慮しております。」中期的展望に立って、地方の自主責任の原則に立って、そして抜本的な改革を行った、こう言っておるのですが、大臣、今回の措置はそう理解しているのですか。いかがでしょう、今度の地方財政対策は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/8
-
009・竹下登
○竹下国務大臣 まさに極めて困難な国の財政状況下でございます。財政改革の推進を通じながら、新しい時代の要請にこたえ得る財政の対応力、これをば回復していかなければならぬ。今後の我が国経済の発展と国民生活の安定の基盤を確かなものにするための緊要な政策課題であるということを予算編成の方針として申し述べました。それを一層推進していくために、歳出構造の徹底した見直し等お述べをいたしまして、そこで制度の根本に踏み込ませていただいた。
地方財政については、確かに、交付税特会の借入金の残高は五十八年度末で約十一兆五千億、その利子負担も八千億、こういうことになっておる。したがって、交付税特会の借入金を柱とする五十年度以来の地方財政対策を続けるということは、国、地方の後年度負担が現在の財政力の限界を超えておるのじゃないか。それで、財政の健全性からすれば極めで問題の多いことであるから、また、地方行財政改革の推進にとっても好ましい状態ではもとよりないという判断が一つ基本的にはあるわけであります。そこで、地方財政対策の抜本的な改革ということをうたいまして、中期的な展望に立っての地方財政の健全化等に資するための措置として、いわゆる新規借入金措置を廃止するという問題をお願いをしたわけであります。そのかわりにと申しますか、いわゆる特例措置を講ずる。
何といって考えてみましても、国と地方の財政がいわば公経済の車の両輪であるということはまさに基本でございますので、その車の両輪というものが円滑に、また着実に回っていって、それが財政の着実な再建につながっていくということが心から期待されるところであるという基本的な考え方に立って、私と田川さんとの話し合いももとよりでありますが、予算編成の作業に当たって、絶えず、我が方で言えば主計局、場合によっては理財局の関係もございます。税制の方で言えば主税の関係もございますが、両省で話し合いをいたしまして、基本的には私は内なる改革というものであらねばならぬという態度でもって最終的な結論に達したというのが、このたびお願いしておる本筋でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/9
-
010・細谷治嘉
○細谷(治)委員 大臣のお言葉が抽象的で、私にはわからないのです。
具体的にお尋ねいたしますが、国と地方の財政運営の中期的展望というのは、二月十日に大蔵省が出された国家財政の中期的展望と、それからその後に、四月になりまして十二日ですか、自治省が出しました「地方財政参考試算」、これが中期的展望に立ったものですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/10
-
011・平澤貞昭
○平澤政府委員 今委員からお話がございました中期的な展望、国の方は、基本的な考え方、それと後年度負担推計によるいわゆる計数の中期的な試算、それから仮定計算例と、三つお出ししておるわけでございます。国の財政の場合は、その基本的な考え方は、いわゆる中期的展望に立って今後国の財政の改革を進めていく考え方を示しているわけでございます。それに応じまして自治省の方からも、いわゆる国の試算とほぼ同様の手法をとりまして中期的な試算を出しておられるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/11
-
012・細谷治嘉
○細谷(治)委員 将来の変動等はわかりませんけれども、大蔵省が出しました中期的展望がAとBの案、それから試算の形で〇%、三%、五%というケースが、特例債の借りかえをやるかどうかというケースに分けて、言ってみますと八つばかりの例が出ておるのです。それで、国の財政はそのいずれかのケースで再建が間違いなく軌道に乗ると確認しておるのですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/12
-
013・竹下登
○竹下国務大臣 財政改革を進めるに当たっての考え方、そこで中期展望というのは、現行の施策、制度をそのままに、一応大きな変化がないという前提を上に置いての仮定計算をしていくわけであります。
それからなお、仮定計算の方は、よく言います七、六、五抜きの四、三、二、一というのがございまして、要するに八〇年代経済運営の展望の中で七六、すなわち六ないし七%を名目成長率として、五という数はございません。四が実質成長、三が消費者物価、二が失業率、一が卸売物価、そういう七、六、五抜きの四、三、二、一というのが大体この経済運営の一つの目標になっておる。その六ないし七の中間値の六・五というのを名目成長率にとりまして、あくまでも仮定でございますが、それに十年間の弾性値を掛けて、一・一でございますか、それを税収の根拠に置いております。したがって、あくまでもそういう仮定に基づいたもろもろの展望試算等を御高覧に供して、そして最終的に、負担するも国民、また受益者も国民でございますから、一体どういうふうにすればいいか。例えば細谷さんの所属の社会党のある方は、竹下君、七で計算してみたらどうなるんだとか、そういう国民各界各層の代表たる国会の先生方がいっぱいいろいろな要求をされるのにこたえてそういう試算を出して、はて、その中で国民のコンセンサスいずれにありやということを考えながらやっていきましょう、政府が今こういうことで完全に行きますよ、だから国民の皆さん方ついてきてください。事ほどさように権力もなければ、国際経済社会の大変動の中において、事ほどさように変化も大き過ぎる、したがって、まず第一歩としては、こういう試算の中でお互いの議論を闘わしながら国民の選択はどこにあるかということを求めてまいりましょうということで、ああした試算やら仮定計算をお出ししておるというのが偽らざる実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/13
-
014・細谷治嘉
○細谷(治)委員 予算審議のあるごとに、予算委員会が開かれるごとに、毎年度の初めの際に中期試算というものは出されております。毎年毎年中期試算が出されて、そして当たらずといえども遠からずという例も、極端に言いますとなかったのじゃないか、余りにも中期展望というのは国の場合でも当たらなかった、こう言っていいのじゃないかと思うのです。しかも、この間私は自治大臣に申し上げたのでありますけれども、今度出された中期展望なるものは、去年は確かに試算だったでしょう、今度は展望になっています。その前まで展望ですよ。展望から試算になってまた展望になった。しかも、その前の展望のときには、もっと社会保障関係、移転支出、いろいろなものについての積算の基礎が証明されておりました。今度の試算はそういうものは一切合財ないでしょう。何が出てきたかというと、聖域と言われる国債費、それから地方交付税と一般歳出、それだけですよ。それだけで、何かぼうっとしてでもかすみがかかったように山が見えるかというと全然見えない。
そこで、それに基づいて歩調を合わせて地方財政の参考試算というものが出たわけでありますけれども、全く構造の違うとは言いませんけれども、かなりの構造の違う、それは経済の基調や何かは同じものに立っているにしても、かなりの構造の違うそういう国と地方財政というものを並べて見ていきますと、国の方でそういうふうにつくったもめについては、とてもじゃないが国庫の補助は幾ら来るのかあるいは単独はどうなってくるかわからぬわけですから、地方の中期試算というのはもっとあやふやになっている、これは間違いない事実だろうと思うのです。大臣、そう思いませんか。つくるというのは、ただ数字をつくったにすぎない、こういう感じを私はするのですが、誤りなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/14
-
015・竹下登
○竹下国務大臣 決して誤りじゃないと思います。大体がつての経済社会七カ年計画、昭和六十年までですか、あれを作成するときに私もそれに参画をいたしておりましたが、例えば、今おっしゃいましたように租税負担率は昭和六十年には大体二六カ二分の一を予測する、そして社会保障負担率が一一でございますか、そういうことが予測される。それから一方、公共投資では全体で二百四十兆、その中で道路が何ぼ何が何ぼ、こういうような一応の七カ年計画というものをお出ししたわけです。それに基づいていろいろな計画というものがなされておった。それは、例えて言えば、公共事業の河川の五カ年計画であろうと道路の計画であろうと公園の計画であろうと、そういうものもそこに一応基づいておった。
ところが、言ってみれば、五十五年まではそれでもまずまずということでございましょうが、五十六年、五十七年と、まさに世界同時不況とでも申しますか、予期せざる歳入欠陥をもたらすような状態になった。それで、例えば二百四十兆の公共投資を百九十兆に下方修正しまして、場合によってはそれに合わした各種五カ年計画というものもございました。そこのところで、今度経済企画庁が中心でおつくりになったわけでございますが、私どもとしての考え方もいろいろ段階においてお述べいたしましたが、やはり本来は、細谷さんおっしゃるように財政再建計画とか財政改革計画をつくってみる、これが絶えざる主張であります。なかなかそういうリジッドな計画をつくるような状態にはない。ことほどさように不透明であったという感じのところへ、五十六年、五十七年というあれだけの歳入欠陥をもたらした。そうすると、リジッドな計画というものはむしろなお政治不信を生み出すことにもなりはしないか。余りにも、例えば二百四十兆を百九十兆にいたしましても二〇%の下方修正でございますから、したがって、このたびはまず定量的なものよりも定性的な考え方を申し述べて、各種仮定計算等を出して、それでもって国会の場の議論等を通じながら国民の皆さん方が、受益も国民、負担するも国民でありますから、最終的にはどの選択肢を選ばれるかというコンセンサスを見定めていこう。言ってみればあやふやなものだ。
確かに前の計画からすれば、数字は先ほど言いましたような七、六、五抜きの四、三、二、一しかないわけでございますから、それで、地方交付税というとすぐそれにパーセントを掛けただけのもので試算しておるわけでございますから、そういう点は確かにございますが、ことほどさように不透明であったという事実認識でそういう形のものをお出しして、そして可能な限りの要求にこたえて資料を出しながら、言ってみれば国民全体、すなわちその代表たる国会全体の議論の中で将来の選択肢を見定めていこう、こういうことで今日に至っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/15
-
016・細谷治嘉
○細谷(治)委員 恐らく中期的展望と当分の間というのは、財政的には重なり合う言葉じゃないかと私は思うのですよ。
そこで、お尋ねいたしますが、五十九年度の財政措置として、今の大蔵の「昭和五十九年度地方財政対策」の文章、「各年度の地方財源措置として、当分の間、地方交付税交付金の特例措置を講ずる。」その説明、「各年度において、所要の地方交付税総額を確保するため、法律で定めるところにより必要な特例措置を講ずる。」各年度において法律でということはきっと今度の問題のポイントでありますから、後ほどお尋ねすることにして、その次に、「地方財政の状況によって、その中期的健全化を図る観点から、法律で定めるところにより減額措置もありうる。」ここまで書いてあるのですよ。ここまで言い切る根拠はありますか。それほど確信のある中期展望ですか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/16
-
017・平澤貞昭
○平澤政府委員 中期展望につきましては、先ほど大臣から御説明がございましたように、いわゆる基本的な考え方がまずございます。したがいまして、それはかなり定性的な説明になっておるわけでございます。要するに、今後の財政を考えていく場合に、定量的に極めてリジッドな姿を想定することは非常に難しいわけであります。経済が非常に流動的でございますし、いろいろな意味で変化の激しいときであるわけでございますので、そのようなものはなかなか出せない。したがって、今回国会にお出ししました試算も、幾つかの前提を置いてお出ししているわけでございまして、特にこのもの、この計数で確実に将来の財政の姿がいくということではないのでございまして、幾つかの試算の中から今後の財政のあり方をどう考えていくかという資料としてお出ししているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/17
-
018・細谷治嘉
○細谷(治)委員 お断りしておきますが、私は、大臣が言いました国と地方との財政運営に当たって地方の自主責任の原則を守るという、この原則には賛成であります。したがって、従来、制度と強弁してまいった交付税特会の借り入れをやめる、こういうことで地方は地方でという形に原則をとったことについては賛成であります。問題は中身なんですよ。そして、それが従来問題になっておった制度か制度でないのか、当分の間とは何なのか、ここが問題なんです。ですから少しくどく聞いておるわけであります。
平澤さん、ちょっとあなたの言葉で、大臣は定性的でございますと言ったのです。傾向なりあるいは基本的な方向というものを示したにすぎません。定性的にもいろいろありますけれども、定性的で方向を示したにしても少しずさん過ぎるのじゃないか、こう私は評価しております。そういう状態であるにかかわらず、あなたの方は千七百六十億をとらえて、法律によって減額することもありますよ、リジッドではありませんけれども、五十兆五千億円の予算の中で千七百六十億円が将来減るということもありますよなんということを言い切る以上は、これはかなりリジッドなものじゃないですか。定性の中から突如として定量的なものが出るはずはありませんよ、皆さん。常識ですよ。私はその言葉は理解できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/18
-
019・平澤貞昭
○平澤政府委員 今回御審議を願っております地方交付税法案の中で、この千七百六十億円の特例措置、いわゆる加減措置につきまして、将来すべて精算の対象にするというふうには言っておりませんで、少し細かいお話になりますが、三百億円について云々ということになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/19
-
020・細谷治嘉
○細谷(治)委員 千七百六十億円の中の三百億円を二カ年に分けて半分ずつ、六十五年と六十六年に返すということをおっしゃっておりますけれども、私が聞いているのは、中期的健全化の観点から減額措置もあり得る、リジッドではないけれども、定性の中から、五十兆円の中は全くぼうぼうとしているけれども、千七百六十億円については霧の中から影がかなりはっきりと見えてきている。それは減らすこともありますよ、これは日本語だからね、増減があると言うならいいのですよ。増減があるのじゃなくて、減額措置もあり得ると言っているのですよ。おかしいじゃないですか。数字のないところから突如として定量的な数字が出るなんというのはおかしいですよ。
あなたの方は、減額は幾らするかというのがわかっておらぬからこれは定性的だと言うけれども、全体は全く定性的であって、そしてかなり濃厚な霧がかかっているものに、突如としてここで減額措置もあり得る。法律用語として増減があり得る、こういうことならいいけれども、減額措置だと言い切っているのですよ。自治省の方にはないのですよ。これもこの委員会で随分問題になりました。自治省の地方財政対策という印刷物にはないのですよ。あなたの方にはちゃんとあるのですよ。ですから、間違いなく両省の間であったのでしょう。ですから私はしつこく尋ねている。もう一度簡単に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/20
-
021・平澤貞昭
○平澤政府委員 今後の地方財政対策につきましては、先ほど来申し上げていますように、経済の情勢その他によって非常に激変が予想されるわけでございます。したがいまして、くどく申し上げるようでございますけれども、現在において、その六十年度以降についてリジッドな姿で減額なり加算なりその他の措置について申し上げるのはいかがと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/21
-
022・細谷治嘉
○細谷(治)委員 リジッドな形で申し上げることはいかがかと思うと言うのだけれども、あなたの方に書いてあるから言っているわけですよ。ですから、これは消したらどうですか。「中期的健全化を図る観点から、法律で定めるところにより」、一応法律で歯どめをかけるというのですか、「減額措置もありうる。」増額措置もあると、両方書いてあるならいいですよ。この間のこの委員会では自治省当局は、特例措置でありますから増額することもあるだろう、減額することもあるだろう、こう言っております。これが常識じゃないですか。私はそう思います。そういうふうに確認できるかどうか。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/22
-
023・平澤貞昭
○平澤政府委員 今委員がお読みになりました4のところでございますけれども、その説明欄におきまして、今後「各年度において、所要の地方交付税総額を確保するため、法律で定めるところにより必要な特例措置を講ずる。」というのが最初にございます。その特例措置の内容につきまして、通例は加算ということを頭に置かれることもあるかと思いまして、この次のところで念のため、法律で定めるところにより加算に加えて減額措置もあり得るのだということを書いておるわけでございます。したがいまして、減額措置だけ書いているんだという趣旨ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/23
-
024・細谷治嘉
○細谷(治)委員 減額措置ばかりじゃないという点、ちょっと言葉を言いますと、あなたの方は五十八年までは臨時特例加算であったのですよ。加算という字がついておった。特例加算でありました。五十九年度になってから、大蔵省の方も自治省の方もいづれも特例措置と、加算という字がなくなっちゃっている。全部特例措置。特例措置ならプラスもマイナスもあるはずでありますけれども、そこへもってきて今度は減額、従来は加算という字句があった、消えた、そして措置になった。そしてその次に減額もあり得るということになりますと、減額の方向を示している、こう理解するのが常識じゃないでしょうか。大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/24
-
025・竹下登
○竹下国務大臣 この特例措置という言葉を使ったのは御指摘のとおりでございます。特例加算の場合も特例減額の場合もあり得るということになれば、まさに特例の措置である、こういうことになるわけでございますが、また、四十年代の前半は確かに、いわゆる加算と減、減の方に通念が働いておったということもございます。したがいまして、全く減を念頭に置いて対応したという考え方はなく、増もあれば減もある、だからこそまさに特例の措置であるという、総理の言葉じゃございませんが極めて平常心を持って理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/25
-
026・細谷治嘉
○細谷(治)委員 それではもう時間がありませんから……(「もうわかった」と呼ぶ者あり)いや、わかっちゃいない。
これは、交付税法六条の三の二項の交付税率の変更か制度の改正をしなければならぬといううちの、制度の改正としての特例措置、こういう前提に立って言っているのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/26
-
027・平澤貞昭
○平澤政府委員 おっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/27
-
028・細谷治嘉
○細谷(治)委員 そうしますと、一つ一つ確認していきますが、交付税率そのもの、六条に規定されておる三税の三二%ということについては、減率措置があり得るということは全くないですね。イエスかノーだけまず言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/28
-
029・平澤貞昭
○平澤政府委員 六条の三でございますが、二項の中の交付税率の問題につきましては、今回法案上出しておらないのは御高承のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/29
-
030・細谷治嘉
○細谷(治)委員 これについては当分の間触れる考えは全くない、こういうふうに確認してよろしいですね、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/30
-
031・平澤貞昭
○平澤政府委員 交付税法の中の交付税率の問題につきましては、地方が担う行政事務あるいは事業の見直し、それから地方税制度の問題あるいは国庫補助負担金制度等の地方行財政に関する全般の問題と密接に絡んでおりますので、今回の措置を考えるに当たってはその問題については特に議題にしなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/31
-
032・細谷治嘉
○細谷(治)委員 少し態度がぼけておって心配ですけれども、これ以上やってもなんですから……。
まあおたくが出した中期試算、確かに交付税率については触れていないのですよ。ですから六条の三の二項による交付税率は問題にしていない。
そうしますとその他の制度の改正ということでありますが、今まで議論しておったように、千七百六十億円を加える。それは法律で決めてある。しかしそれは毎年毎年変わるのですよ。今までこの特例の問題は、五十三年ですか、足らなくなって特会から借り入れて、おおむね半分を国が負担しよう、半分は地方で持ってくれ、しかし利子は全額国で持ちますよ。ところが去年になりまして、五十八年度の法律では、利子は全額持つということは約束してきたけれども、国の財政がちょっとだめになったから、ことし限りの措置として、五十八年度限りの措置としてひとつ利子を半分地方で持ってくれということになりました。今度は全部持ってくれということを新聞では言っておったようでありますけれども、そうならぬで、制度の根本的改革という名において地方と国との責任をはっきりした。かわって出てきたものは何もないのですよ。
千七百六十億円というのは、この間ここで議論があったように、本来ならば千七百六十億円はもう五百億ぐらいふえておるのが従来の慣例ではないのか。それもなくなった。そして千七百六十億円を法律で決めようとしている。これは毎年毎年決める。「当分の間」というのは字句にすぎない。毎年毎年のことです。こんなものが制度と言えますか。こんなものが制度というならもう法律要りませんよ。一年一年変わるということで、それが制度というなら余りにもむちゃくちゃな議論じゃないでしょうか。
平澤さん、あなたの同僚あるいはそこにいらっしゃる人も著者になっているのですが、この末尾の方を読みますとこう書いてあるのですよ。「計画的に国も地方も財政運営していかなければいかぬ、そして車の両輪としてやっていかなければいかぬ。」こういうことをこの本の結びにぴしゃっと書いてあるのですよ。五十八年度の予算を顧みてこの本ができておるのです。そして新年度を展望して書いた。言うこととなすことが随分違うじゃないですか。これを制度だと。
五十三年のときは随分議論があって、とうとう制度だと強引に押し切ったでしょう。押し切りましたけれども、その翌年になりますと、余りに強弁過ぎたのでもうちょっと制度にアプローチしようということで「当分の間」というのがついていった。そして五十八年になりましたら、今度は「当分の間」から利子を半分負担させるということになってきた。これは一年限りであった。そして今度は、また毎年毎年変わりますよ。今度は法律でやっている、第三条であります。こんなものが制度と言えますか。ここでも随分いろいろな委員の方から議論がありましたけれども、大臣、どう見てもこれは制度とは言えないのじゃないでしょうか。変わっておらぬですよ。今までのものから削っただけですよ、大蔵の財政の方から負担が少なくなるように。そして全部それは地方に転嫁した。
地方がもっと持てという、それが制度なんですか。しかもそれが毎年毎年変わる。言葉は「当分の間」でございます。中期的展望に立っているのだ、これでは通らぬですよ。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/32
-
033・竹下登
○竹下国務大臣 細谷さんは、言ってみれば地方制度の沿革とともに生き、今日存在しておられるわけでございます。私は、大蔵大臣を出たり入ったりいたしておりますので、継続性がいささか私には欠けております。だが、内閣法制局の一応の見解として、「「当分の間」の暫定的制度も地方交付税法六条の三第二項に言う地方行財政制度の改正に該当するものと解される。」こういう法制局の見解も一応ございますが、今度は常識的に申しますと、今回の特例措置ということそのものは、それらの制度改正のうち、それに基づいて所要の特例を講ずるわけでございますから、やはり制度改正であるというふうに常識的には理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/33
-
034・細谷治嘉
○細谷(治)委員 やはりということで飛躍して、制度改正だ。どう見ても大臣、制度改正になりません。しかしもう私の持ち時間が近づきましたから……。制度改正、こういうのを認めておったら何もかにもみんな制度でしょう、そんなことを六条の三第二項は言っているのじゃありません。
最後にちょっと聞いておきますが、六条の三の二項というのが法律本文にある、これは本則だ。そして地方財政の終着駅、地方財政の帳じりというのは、交付税の言ってみれば六条の三によっているんだ、こういうふうにきのうの参考人の学者も言っておりました。私もそう思いますけれども、六条の三の二項ということが存在することは知ってますか。確認できますか。今まで生きているんだ、こう思っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/34
-
035・平澤貞昭
○平澤政府委員 委員おっしゃるとおり、厳然と生きておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/35
-
036・細谷治嘉
○細谷(治)委員 厳然として生きておる、生きておるんだけれども、今度のこういう財政事情からいくと緊急避難やむを得ないということで、法律によって特例措置を決める。それなら制度らしく法律に基づいて処理すべきです。もう申し上げませんけれども、私は、先ほど不規則発言ありましたが、この一点だけでもこの法律には賛成することはできない、こう思います。
そこで、時間がたってきますから、大蔵大臣、もう一度話を戻しますが、あなたの二月六日の財政演説の中で、国税の歳入面についてはかなり議論がありますけれども、地方税収入については一言もないのですよ。私はもう虫眼鏡で探しましたけれども、残念ながら地方税という言葉はあなたの財政演説の中にありませんでした。どうしてでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/36
-
037・竹下登
○竹下国務大臣 地方税法はもとより自治大臣でございますが、国全体の歳入という意味で共管という形になっていることは事実でございますけれども、今度の財政演説というのは、言ってみれば五十九年度予算の中身について、歳入歳出両面から御説明申し上げておるその歳入ということでございますので、地方税の問題に触れなかったということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/37
-
038・細谷治嘉
○細谷(治)委員 そういう意味では、財政演説の中では、大蔵大臣としては国税については歳入歳出ともいろいろあるけれども、共管事項である。確かにそのとおりです。大蔵省設置法にも地方税を扱うとなっているのです。これは自治省設置法にもあるのです。それは共管事項です。共管事項にしては、税調等の動きから見ますと、大蔵の動きは余りにも地方に対する考え方が冷淡ではないか、こう理解しますが、そんなことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/38
-
039・竹下登
○竹下国務大臣 税調の先生にも地方財政制度の専門家が、その体験からしてもあるいは学識経験からしてもいらっしゃいます。ただ、国税の場合、言ってみれば物品税とかそういう物税が一つ一つございますと、議論の時間はどうしても長くなる問題でありますが、元来税制調査会というものは大蔵省の諮問機関でもございません。まさにこれは内閣総理大臣の諮問機関で、そして地方税の部分は自治省が、国税の部分は大蔵省がその事務当局のお手伝いをしておる、こういう形でございますので、メンバーからしても決して軽んじられておる任命体系ではないというふうに私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/39
-
040・細谷治嘉
○細谷(治)委員 法律に書いてある、それぞれ設置法に書いてあるのです。竹下大蔵大臣が義務を怠ったなんてことは思っておりませんけれども、おれも地方税については国税と同じように責任があるんだということでお考えいただきたいと思います。
そこで、時間がありませんから、今度は具体的に、これまた本を利用して大変恐縮でございますけれども、これは今の専売の総裁の長岡さんが監修したのです。ここにいらっしゃる人も何人か書いてあるわけです、名前は一々言いませんけれども。この委員会でも問題になりましたが、この本の二百四十九ページにこう書いてある。「欠損法人といえども現実に受益し活動している以上、全国知事会等において提言されているように、企業活動そのものを反映する資本金額、収入金額などの外形基準をも課税標準として用いることを検討すべきではないか。」法人事業税の問題。
これは大蔵省の公式のものじゃありませんけれども、大蔵省の皆さんが全部書いているわけですよ。大臣、これを推進する意思はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/40
-
041・水野勝
○水野(勝)政府委員 赤字法人の問題につきましてはいろいろ御議論のあるところでございまして、赤字法人といえどもいろいろ国や地方から受益を受けているということからすると、相応の税負担をお願いしてもいいじゃないかという御議論もあるわけでございますが、私ども国税の立場からいたしますと、法人の利益に課税をいたします法人税としてこれに対処するということにつきましてはいろいろ問題が多いわけでございますが、国、地方を通じての税と申しますのはこうした法人税だけではございません。もちろんいろいろな税があるわけでございますので、そういう観点の中で、もろもろの税の組み合わせの中でこの問題につきましては検討をすべきであるというのが私どもの考え方でございますが、その問題と事業税の問題とが直ちに直結する問題でもないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/41
-
042・細谷治嘉
○細谷(治)委員 これは大蔵省に勤めている人が書いたんですから、今おっしゃったようなことを前提として総合判断してちゃんと主張として書いているわけですから、今の言葉は答弁にならぬ、こう思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。
もう一つ、グリーンカード、これは本当は五十九年度から入ることになっておった。これが財政の五百億円、さっきの千七百六十億円、財対臨特に関係あるわけです。これは、利子配当所得に対していわゆる選択課税で住民税がかなり不公平になっているわけですね。大蔵省からいただいた資料によりましても、あるいは新聞報道によりましても、莫大な非課税部分があるのですよ、個人貯蓄については。言ってみますと二百二十六兆円が非課税だ、こう言われております。三百八十兆円のうちの六割に当たる。これは大蔵省の調査であります。これはやはり税の公平さということからいってやらなければならぬ。税調も一生懸命取り組んでおります。これは地方税は課税されておりません。そして大蔵の方が取っている。ですから、これは公平の原則ばかりじゃなくて、国と地方との自主、自律の原則からいって課税すべきだ、こう思います。
もう一つ、国と地方との負担の問題でいろいろあるわけですけれども、九次の道路計画というのが進められております。八次よりも九次の方が地方団体、とりわけ市町村の負担がふえてくるわけです。ところが、それに対する特定財源は、市町村に至っては大変おくれております。道路整備がしたがっておくれております。世の中というのは等しからざるを憂える、こういう言葉があるわけでありますから、ひとつ九次計画に即応するように道路の整備を地方ができるように、特定財源はオーバーフローしているほどのようでありますから、その分を地方にとは言いませんけれども、地方の道路財源を充実してやるべきじゃないか。
この二点をお尋ねして、時間がありませんから、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/42
-
043・竹下登
○竹下国務大臣 まず地方税、いわゆる法人事業税の問題がございましたが、確かに、原則的に所得を対象にして課税する法人税——法人所得であれ個人所得であれ、これは応能主義で能力に応ずる。で、地方税の場合、応益主義とでも申しますか、それぞれが利益を受けるわけでございますから、応益主義という立場において外形課税等が検討さるべきだ、こういうような御議論でありました。その議論は、細谷さんの時代の人はよく負担分任という言葉を使いますが、私は率直に言って、最初負担分任という言葉余りよくわかりませんでした。が、そういう議論は国会で出た議論でございますから、議論としては正確に税調の方にもお伝えすべきものだというふうに私は理解しております。
それからグリーンカード問題でございますが、これは私にとっては大変印象が深いと言えば印象が深い。私が大蔵大臣のときに提案して、そして各党側賛同いただいて成立いたした法律でありますが、今度また私が大蔵大臣のときにこれを凍結するという、政治家として大変悩み多き法律案であったわけであります。今の場合、また今度私が三度目のお務めをしておりますときに、税調で、とにかく大変影響するところが多いから慎重に検討を要する課題である、しかしやはりグリーンカードのタイムリミットも来るじゃないか、だから夏ごろまでに、こういうことで鋭意御審議をいただいておるさなかでございます。実際、御指摘になりましたように、いわば非課税貯蓄の中に「細谷登」があったりあるいは「竹下治嘉」があったらこれはいけないことでございますので、そういうことをいろいろな角度から議論をしていただいておるさなかでございますので、私の方からあらかじめ予見を与えるようなお答えをするわけにもいかないではなかろうかというふうに考えます。
それから、次が道路特定財源の問題でございますが、確かに法律に基づく特定財源についてはそれなりに正確に特会へそのままほうり込んでおるわけでございますけれども、いわゆる法律には基づかないが、福田大蔵大臣当時の答弁でございましたか、自動車重量税、これは地方は特定財源でありますが国はいわゆる一般財源、こういうことになって、その自動車重量税に限って見ますと、確かに今オーバーフローしております。下世話な言葉で言えば、貸し借りで今借りておる、こういうことになります。これを、道路関係者の方へ参りますと、人の飯びつへ手を突っ込むか、じゃおまえは逮捕するということを毎年言われながら、しかしかつては逆に一般財源から借り入れておったこともあるんじゃないか、貸しもあれば借りもあるというようなことで今日に至っておるわけでございますが、一応地方の場合は特定財源でございますので、今のオーバーフロー分を、道路全体の問題としては別として、地方へ特定するということはなかなか難しい問題であろうというふうに考えます。
ただ、応能主義だ、応益主義だのときに申し上げましたように、税制調査会には三年に一度、広く国税、地方税のあり方について、こういう御諮問を申し上げるわけでございますから、それに何が参考になるかといえば、国会の議論です。これだけは忠実に、本日の意見等もお伝えをするということは、私どもに課せられたまた役目であろう、こういう事実認識であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/43
-
044・細谷治嘉
○細谷(治)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/44
-
045・大石千八
○大石委員長 草野威君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/45
-
046・草野威
○草野委員 ただいままでいろいろと御議論がございまして、一部重複するような箇所もあると思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。
まず初めに、大型間接税の問題でございます。
中曽根総理大臣は、中曽根内閣のもとでは大型間接税の実施はしない、先日来しばしばこのように明言をされていらっしゃるわけでございますが、しかし大蔵大臣は必ずしもそうではないような御答弁をされていらっしゃるように受けとめております。そこで、大蔵省は近い将来に大型間接税、税調の課税ベースの広い間接税、これを導入することにつきましてどのようなお考えを持っておりますか、大臣の率直なるお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/46
-
047・竹下登
○竹下国務大臣 まず、五十五年度予算編成前、すなわち五十四年の暮れでございますが、その際の国会決議、言ってみれば当時議論されておったいわゆる一般消費税(仮称)はとるべきでないという国会決議というものが厳然と存在しておる、こういうふうに考えなければならぬと思うわけであります。そうして、総理が概念的におっしゃいますのは、流通の各段階で、投網をかけたようにして、消費の段階で課税するというようなものを大型と概念的に規定して、そういうのは中曽根内閣のときにやる考えはないということも明言しておられます。したがって、総理の方針でありますから我々もそのとおり拳々服膺すべきものである、こう考えるわけであります。
ただ、いろいろ議論を聞いておりますと、間接税というのは、特徴としては、簡単に言えば消費の段階に担税力を見出すのか所得の段階で担税力を求めるかということで間接税と直接税の基本的な差がございますし、直接税の場合は脱税等もございますが、間接税は脱税は大変少ない。そして間接税の場合は選択の自由がある、自分の好みによって選別することができるという自由がある。こういうような議論もございまして、各国とも直間の組み合わせ、これはいろいろあるわけでございますが、日本、アメリカは直接税重点主義の税制体系をとっておることは御案内のとおりであります。そこで、そういういろいろな議論がございますので、我々が三年に一度お願いしておる税制調査会におきましても、今後課税ベースの広い間接税について検討していく必要がある、こういうふうな御議論をいただいておるわけであります。
したがって、我々としては、この間接税、あるいは今物税として、物品税として存在しておるものの便益性とかそういうことからして、個別消費税とでも申しましょう、それが広がっていくというような勉強はしなさいよ、こういうことは指摘されておりますので、税のあり方として私どもは勉強は続けていかなければならぬ問題だ。そのことは五十四年のいわゆる国会決議のときにもお願いをしまして、消費一般にかかる税制そのものを否定してもらったら税の組み立てができなくなる、だからそういう意味における勉強は続けましょう。しかし、中曽根内閣の私は今大蔵大臣でございますが、いわゆる概念的に言われる大型間接税を導入するという考えはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/47
-
048・草野威
○草野委員 予算委員会の大臣の答弁を伺っておりましていろいろと私も感じたわけでございますが、ただいまも、大型間接税の問題については引き続きいろいろ勉強していきたい、検討していきたい、このようなお考えのようでございますが、ともかく私どもといたしましては、この大型間接税の検討をする前にもっと先にやらなければならないことがあるわけでございますね。先ほどから議論されておりますように、不公平税制中の最大の問題であります利子配当に対する不公平課税の是正という問題がございます。
そこで、大蔵省はことしの夏までにグリーンカード制にかわる何らかの方法を検討するということが伝えられているわけでございます。どのような方法で検討をされるのか、いろいろ今の段階で話すことはできないというようなお話でございますけれども、まず大臣はこのグリーンカード制についで、いろいろな経過がございましたが、現在の時点で一体どのようにお考えになっておられるか、この点をもう一遍承りたいと思います。
それから、現在住民税は、国税で源泉分離を選択した場合はこれは課税されないわけでございますが、これが課税できるように自治省と共同してひとつ何らかの方策を考えるつもりはございませんか。聞くところによりますと、大蔵省もいろいろと検討中であるということも伺っております。また自治省といたしましては、この際地方団体のレベルにおきまして実現可能なもので何とか課税できるようなものを見つけたい、これまた真剣に取り組んでいるわけでございますけれども、大蔵省と自治省で何とか共同してできるような方策を考えてみるつもりはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/48
-
049・竹下登
○竹下国務大臣 後段の方は、今までの経過等詳しく存じておりませんので水野審議官から経過等をお答えすることにいたします。
前段の方のいわゆる利子配当課税でございます。それに伴うグリーンカード問題に対する大臣の認識やいかん、こういうことでございますが、私自身あのグリーンカード制の提案をした大蔵大臣でございますから、いわゆる総合課税という観点からあのとき各党とも賛成していただいておりますがゆえに、一つのやはり方向であるという考え方は今でも持っております。
ただあの問題は、やはりいかなる政策といえども国民の理解と協力なくしてはそれを実現に移すことができない。すなわち、当時ゼロクーポンの問題でございますとかいろいろな問題がございましたが、国民の理解を得られなかった、あの段階においては少なくとも国民の理解を得ることができなかった法律であったというふうな理解の仕方でもって、暫時凍結、こういうことをお願いしたわけであります。
そこで、この利子配当課税の問題は、いみじくも今草野さんおっしゃいましたように、税調で審議していただいております。いろいろ新聞紙上等に出ましたり、草野さんもあるいは私も、それなりにこういう方法はどうだとかいう意見も皆無ではもちろんないわけでございます。ことほどさように国民の広い各層にまたがる問題でございますから、いろいろな議論があろうかと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、やはり三年に一度、国税、地方税のあり方についてという大局的御諮問を申し上げておる税制調査会において、せっかく取り上げて自発的に審議してやろうといって鋭意議論をいただいておるさなかでございますので、私どもの、仮に思いつきのような議論を申し上げて軽べつをされたり、あるいはいわば曲解されたりということもあってはなりませんので、今予見を持った見解を申し上げる段階には残念ながらないということを御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/49
-
050・水野勝
○水野(勝)政府委員 御指摘の後段の点につきましてお答え申し上げます。
御指摘の点につきましては、かねてから税制調査会でも検討の課題とされているところでございます。昨年十一月の答申におきましても、「所得税において源泉分離課税を選択した利子所得等については、現在、住民税が課税されていない。このことは、基本的には総合課税に移行する場合は解決される問題であるが、今後、これらの利子所得等について、所得税において現行の枠組みを基本的に維持する場合においては、住民税において現行の取扱いを続けることもやむを得ないとの意見もあったが、租税負担の公平等の観点から、地方税としても課税すべきであるとの意見もあるので、この点について更に検討を加え、制度の合理化を図ることが適当である。」こういうふうにされておるわけでございまして、こうした趣旨に沿いまして、私ども自治省と一緒に検討をし勉強をしてまいりたい、こんなふうに考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/50
-
051・草野威
○草野委員 では次に、地方交付税の税率の弾力化という問題につきましてお尋ねをしたいと思います。
今回の改正で、地方交付税の特例措置、この特例措置が導入されたために、地方交付税の実質的な税率は毎年国の予算が決まらないと確定しない、こういうことになったわけでございます。これは、地方交付税の法定化されている税率を事実上切り崩してしまって、その税率を弾力化するものではないかと思います。このようにして税率を不安定にしてしまって、そして、国、地方間の財政責任を明確化した、このように果たして言えるものかどうか、このように思います。また、恐らく今後二、三年の間、特例措置ということで実質的にはこの交付税率を三二%以下にしておいて、そういう実績をつくっておいて、その後で交付税法の法定税率を、三二%を引き下げる、こういう考え方は全くないと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/51
-
052・竹下登
○竹下国務大臣 このいわゆる法定税率を引き下げる考え方についてでございますが、これは率直に申し上げまして地方交付税率を変更する制度改正ではございません。国と地方の財政運営の中期的な展望に立って地方交付税総額の安定的確保に資するための必要な措置であって、したがって、将来地方交付税率を引き下げることを意図しておるというものでは全くございません。
やはり考えてみますと、いわゆる平衡交付金から地方交付税ということになり、三二プロというものが長い間こうして続いております。それはある意味において定着した一つの制度ではないか。交付税率を仮に変えるということを考えたといたしますと、まず、基本的に国と地方はどういう財源配分にあるべきものかとか、あるいはそうなれば中の事務分掌はどういうふうにあるべきものかとかいう費用負担のあり方の基本にさかのぼらなければなりませんし、そうなればほかの地方税や地方譲与税や、それに全体に響く問題でございますし、では国庫補助金のあり方をどうするか、中には第二交付税制度というふうなことをおっしゃる方もいらっしゃいますし、それは総合的に検討していくべきものでございます。今の場合、この法律によってそれを意図しておるという考えはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/52
-
053・草野威
○草野委員 この交付税の問題でございますが、交付税特会の利子の地方負担という問題でございますけれども、今回の改正によりまして、借入金五兆七千億円、これを地方負担ということで固定化されたわけですね。その利子の四千億円は毎年地方が負担することになったわけでございますが、しかし、この利子は、考えてみれば本来国の責任として行わなければならない地方交付税の税率の引き上げというものを国がしないために、かわりに交付税特会で借り入れをした、そのことによって発生したものでございます。したがって、これはもう国が持つのが当然でありまして、それを地方に持たせるというのは国の責任の放棄につながるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
それからもう一点は、国の負担の地方転嫁、このようになってくるわけでございまして、もし国が財政上告しいということでございましたならば、やはりこの問題については特例法などをつくって、そして、国の財政再建期間中に限る、このようにすべきじゃないかと、このように思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/53
-
054・平澤貞昭
○平澤政府委員 今回の改正におきまして、利子負担の問題について、国と地方とにおのおの負担を、約二分の一ずつ元本が分けられますので、それに応じて利子も負担していただくということをいたしましたのは、やはり国及び地方の財政双方をにらんで、その結果として考えたものでございます。したがいまして、この利子負担につきまして、国の方は国債費として今後とも負担していくということでございますので、地方の負担につきまして国の財政再建期間中に限るということを特例法をつくってやるということは考えておらないわけでございます。
しかし、いずれにいたしましても、利子を負担することによりまして地方財政もその分だけ支出がふえるわけでございます。それにつきましては、御存じのように、地方財政計画というものを毎年いろいろ組みまして、財源不足額を出しまして、その不足額については各般の措置で財政的に地方も困らないようにやっておりますので、全体として、総合的にはこの利子負担も含めてそこで措置されるというふうになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/54
-
055・草野威
○草野委員 この問題につきましては、大臣からもひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/55
-
056・竹下登
○竹下国務大臣 ここのところがまさに今度両省においていろいろ折衝をしてきましたところのポイントでございます。従来の経緯からすれば、五十七年までは毎年度予算措置によって全額国が負担してきました。地方交付税総額を確保するための実質的に地方共同の借入金であること、及び国の極めて厳しい財政状況にかんがみて、公経済の車の両輪としての国と地方の財政がともに円滑に運営されるように、五十八年度においては、元金償還の国、地方の負担割合に応じ国、地方それぞれが負担することにした。そうして今度は国の責任となりまして、交付税特会における新たな借入金措置は行わないという措置に伴って今度の措置が行われるわけであります。したがって、この既往の借入金の整理の結果、一般会計に振りかえ整理いたしました五兆八千二百七十八億円の利子負担は、恒久的に国が国債費として負担していくことになるわけであります。したがって、一般会計から国債費の中へ移ってまいりましたので、この一般歳出の減額は、そのものを見込めばインチキじゃないかと言われたぐらい、国債費の中で確定していこうという考え方に基づいたわけであります。
国の財政再建期間中に限るという特例法をつくってはどうかという御意見でございますが、いわゆる特会に残ります五兆六千九百四十一億円、これについてのみ国の財政再建期間中に限るという特例法をつくるという考え方は、残念ながら持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/56
-
057・草野威
○草野委員 いろいろお話がございましたけれども、国の負担の地方への転嫁という問題、これは非常に重大な問題ではなかろうかと思います。本年度は、地方交付税のただいまの利子の問題、また国保における補助金の補助率の引き下げという問題、また児童扶養手当などを初めとして、国が従来負担しておりましたものが、今年度はかなり大幅に、そして多額に地方の負担、このようになったわけでございまして、やはり国の財政が苦しい、国の財政窮迫ということだけで、従来安定していた国、地方間の地方財政の維持というものを混乱させることにつながってくるのではないか、このように思います。したがって、地方への負担転嫁を強行するということは大変問題ではないか、私はこのように思わざるを得ないわけでございます。中曽根総理も、たしか二月二十九日地方制度調査会でこのような発言をしていらっしゃいます。地方への負担転嫁は自粛をする、このようにはっきりとおっしゃっておられます。この国、地方の役割を見直しをするということは非常に結構なことでございますけれども、今回のように立法措置さえ講じれば地方転嫁ではなくなる、こういった余り理屈にもならない理屈で押し通すことは私は問題だと思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/57
-
058・竹下登
○竹下国務大臣 そこのところが、いわゆる公経済の車の両輪であるという認識の中に立って、地方自治体のすべての問題に通じていらっしゃる自治省と私ども財政当局者とのぎりぎりの話し合いの結果こういう措置にしたものでありまして、中曽根総理の地方制度調査会における御発言の趣旨は我々も体して対応していかなきゃならぬ。
個別的には、いわゆる児童扶養手当等の問題もございましたが、この問題につきましても、ことしから適用されるということでございますので、とりあえずの負担そのものは少額でございましょうが、これは制度そのものの問題で議論された結果でございますので厚生省からお答えすべきことでございましょうが、それなりの整合性というものは存在するという御理解をいただくべく努力すべき課題ではなかろうか、このように考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/58
-
059・草野威
○草野委員 今の大臣の御答弁でございますけれども、やはりこれからは地方財政についての新しい取り組み、こういうものも考えていかなければならないのではないかと思うのですね。大蔵省の地方財政の取り扱いというものは従来と違ってきているように思われます。今回の交付税の取り扱いでも、地方交付税が地方団体の固有の財源であるということを示している税率法定、この税率法定の趣旨を失わせてしまうものでないか、こういう問題、また、国の地方財源の保障責任に反するような借入金の利子の地方負担、こういうことが永続化された。そのほか多くの地方負担を導入しているわけでございますけれども、大蔵省は地方財政を国の各省庁に対する予算と同じように扱っているのじゃないか、こんな感じもするわけでございます。もしそうであるとするならば、これは絶対誤りでございまして、何といっても地方財政は憲法の地方自治の本旨に由来していることを十分に考える必要があるのではないかと思います。
したがって、このような観点から、財政の将来の見通しというものはなおいろいろと不透明ではございますけれども、この際、国の財政再建下における国、地方間の新しい安定した財政の仕組み、こういうものを真剣に考えるべきときに来ているのではないか、このように考えますが、大臣はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/59
-
060・竹下登
○竹下国務大臣 最後に御指摘なさいました、こういう状態下においてまさに公経済の車の両輪たる地方、国の財政を本当に双方が相互理解の上に立って検討する時期ではないかという御指摘は、私はそのとおりだというふうに理解をいたしております。
その前段にありました、地方財政関係の予算というものを、言ってみれば現業官庁等の一部局の予算としての対応の仕方をしているのじゃないか、これは全くそういう考え方に立ったこともございません。私自身も地方議会出身者でございます。ただ、私のところは大変担税力の少ないいわゆる開発途上県でございますので、いわば地方の自主財源に乏しく、国の予算調整機能の中に救われる点の多いところでございます。国税還付倍率にいたしましても、東京都が例えば一〇%弱といたしますと、我が方は恐らく四百四、五十%というようなところでございます。しかしながら、やはり地方自治の本旨というものは、今仰せられたとおり憲法の精神に基づくものであるという事実認識の上に立って対応すべきものであるという基本理念は、それなりに堅持しておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/60
-
061・草野威
○草野委員 次に、六十年度の国の予算編成方針、こういうものについてお尋ねしたいと思います。
国の予算は五十八年、五十九年、二年連続してマイナスシーリングが設定されたわけでございますけれども、六十年度の予算編成でもマイナスシーリング、この方針で行かれるのかどうか。マイナスシーリング方式によりますと、社会福祉のように当然増経費の多いところは制度改革で削減をしなければならない、こういうことになりますし、当然増のないところは必要性の乏しいものが改革されないという画一主義、このような弊害が出てくるんではないか、このように思われるわけですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/61
-
062・竹下登
○竹下国務大臣 財政改革を推進して、その財政の持つ対応力を回復する、こういうことは将来のためにどうしてもやり遂げなきゃならぬ国民的課題であろうと思っております。
したがって、第一の目標といたしましては、世界同時不況等から実現できなかった五十九年赤字公債脱却から、新たに六十五年を努力目標として、まずは第一に新発債の赤字国債をなくしていく努力をしよう。そして第二段階におきましては、全体の持つ公債残高の対GNP比、以下はっきりした基準をそれまでに設けて、それを漸次減らしていこうという基本的な考え方であります。したがって、そういう延長線上にある今日でございますので、六十年度予算編成に当たっても、引き続きこの制度の根本にさかのぼったぎりぎりの努力をしなければならぬという事実認識をまずいたしておるところでございます。
予算が通りました翌日、私から発言を求めまして、昭和五十九年度予算の成立に当たっての発言をいたしました。「この問題につきましては、地方財政につきましても国と同様厳しいものと思われますので、同一基調のもとで御指導をお願いをいたします。」というくだりも申し上げたところであります。そして、六十年度の概算要求限度額につきましても厳しいものとせざるを得ないと考えますが、したがって、ことし出てきました、いわゆるきざな言葉でございましょうが、内なる改革というものが、やはりシーリングというものが一つのてこになったのではなかろうかという考え方は、六十年度予算編成、間もなく参りますのはいわゆる概算要求の枠の問題になりますので、そういう方向で対処せざるを得ない。しかし、具体的には、何分予算が通ったばかりでございますから、いましばらく勉強させてください、こういうようなことを申し上げておるところでございます。
今おっしゃいましたように、当然増経費の伴うもの等々、私どももその理解を十分念頭に置きながらも、各省においてそれぞれ内なる改革への努力がなされ、大蔵省といたしましても予算全体の調整に対して基本認識を新たにして対応せざるを得ない、事ほどさように厳しい状態であるということを御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/62
-
063・草野威
○草野委員 この問題につきまして、もう一点だけお伺いしたいと思います。
本年度五十九年度の大きな制度改革としては、今、当委員会でも行われておりますけれども、地方財政、それから医療、年金、こういうものを挙げていらっしゃるわけでございますけれども、六十年度におきましてはどのような経費を重点的に取り上げるおつもりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/63
-
064・竹下登
○竹下国務大臣 ちょっとさかのぼってまいりますと、例えば五十五年度は、五十四年までが大体十数%伸びておりますので、五十五年の予算編成はプラス一〇%、こういうシーリングをしました。そして五十六年がプラス七・五、五十七年がゼロ、それからマイナス五、マイナス一〇、こう来ているわけですから、うたた隔世の感がございます。だからだんだん大蔵大臣も希望者がなくなってくるということで、私がやむを得ず務めておるというような認識を時たましなければならぬような気持ちでございます。
したがって、どこをやるか、こういうことでございますけれども、そこのところが、ある種の発想の転換をいたしまして、やはり指名手配方式というのが一番いけないことじゃないだろうか。おまえさんのところはまだ節約できるんじゃないか、そういう指名手配方式的な感覚を持つこと自身が誤りではないか。やはり、この中でひとつ内なる改革の知恵を絞っていただけませんかということからやるべきものであるから、どこが重点であるということをお答えするのは非常に困難な問題である。いわばあらゆる聖域を設けることなく対応していかなければならぬという立場に立たされておるのが今日の私どもの立場であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/64
-
065・草野威
○草野委員 時間もそろそろ近づいてまいりましたので、最後の問題をひとつ御質問いたします。
物価対策でございます。五十九年度の所得税それから住民税減税、これは近来にない規模だと言われておりますけれども、その減収分は酒税とか物品税、それから自動車税、このような大衆課税によって補てんされているために、租税の負担率を見ますと、五十八年度は二三・九%、これから五十九年度は二四・二%と上昇をしていると言われております。さらに消費者物価を見ますと、消費者米価、それからきょうから値上がりになりました国鉄の運賃、こういう公共料金の引き上げ、さらに私鉄運賃とか上下水道料金、こういうものの軒並みの値上がりによりまして、政府見通しの五十九年度消費者物価上昇率二・八%、これの三分の一はもうすでに消し飛んでしまった、このように言われているわけでございます。また、先週山を越えた春闘ですね、この春闘における民間賃金の上昇率は昨年並みの四%台にとどまる見込みで、五十九年度の国民生活は、減税にもかかわらずゆとりが生じるとは決して言えないと思います。今後の物価いかんによっては昨年以下に落ち込むことさえ予想されるわけでございます。
そこで、大蔵省は本年度の物価上昇につきましてどのように考えておられるか、またどのような抑制方策を考えておられるか、伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/65
-
066・竹下登
○竹下国務大臣 八〇年代後半における経済の運営の展望と指針にも、消費者物価はおおむね三%の上昇率ということを見込んでおるわけでございますが、今年度の場合、経済成長率の実質成長を四・一といたしまして、物価は今、委員御指摘のとおり非常に安定基調にありますので、今日、いわゆる物価という感じでもって早急に対応していくべき時期では必ずしもない。言ってみれば、客観的な指標を見れば今は物価そのものは安定基調にあるということが言えると私は思います。ただ、御案内のように大雪が降りまして、生鮮野菜等が高騰しましたりして、なかんずく都市住民の方等にそういう影響を与えたということは事実でございますが、これもいわば一過性のものでございますので、二月も全国平均が二・九%、三月が東京の速報で三・〇%というように移っておるところであります。
しかし、今時に草野さんの御指摘は、それ以上に今度の予算で見れば公共料金をうんと上げているじゃないか、そうした問題がいわば暮らし全体に対しての暮らし圧力になっているということに対する見解、御意見を交えての御指摘であります。
この問題につきましては、公共料金一つ一つとってみますと、これが生活費にどれだけのはね返りがあるかという指標はございます。それからもう一つは、個別物品税等で対応いたしました問題が消費性向にどう影響してくるか、この問題も一応の計算はいたしておりますが、所得税、住民税等の減税、さらには何分今世界一安定している消費者物価の基調でございますので、いわば可処分所得が減殺されるという状態にはない。したがって、もし急変がありました場合には、それに対しては適時適切な対応策を絶えず考慮していなければならぬ。もう一つ言い落としましたが、いわゆる為替レート等もおかげさまで比較的円高傾向に定着しつつあるということも、物価問題に対しては好影響を与える一つであろうというふうな事実認識をいたしておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/66
-
067・草野威
○草野委員 以上で終わります。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/67
-
068・大石千八
○大石委員長 藤原哲太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/68
-
069・藤原哲太郎
○藤原委員 きょうはどうも御苦労さまでございます。財政の責任者でございます竹下大蔵大臣に対しまして、財政の基本的な問題で二つだけ伺っておきたいと思います。
ただいまも御答弁をいただいたわけでありますが、この五十九年度の予算編成は、いわゆる「増税なき財政再建」ということで相当厳しい予算編成をすることがやむなきに至っておる事情につきましては、ある程度理解をしておるつもりでございます。そういう観点に立って考えてまいりますと、中曽根総理自体も来年度もこの「増税なき財政再建」を基調にするということを言われたかに承っておりまするけれども、財政の責任者であります大蔵大臣に、六十年度の予算編成についてのお考えをこの機会に伺っておきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/69
-
070・竹下登
○竹下国務大臣 まず、藤原委員御指摘になりました「増税なき財政再建」、この方針は私ども堅持していくべき課題である。一たびイージーに増税というようなことを考えますと、その途端から言ってみれば歳出に対する厳しさというものが失われていくわけでありますので、まさに「増税なき財政再建」という。ものは財政改革を進めるに当たってのてこであり、理念であるという認識は持っておるところであります。
したがって、そういう方向を維持しつつ六十年度予算編成に当たっていくということになりますと、例えば税収の問題を考えてみましても、仮にもし六ないし七の中間値程度の名目成長率が期待されて、そういうふうなところへ弾性値等々を掛けてまいりましても、俗に言われるところの要調整額を、いわば何もしないで自然増収の中で埋め込んでいくというのは非常に難しかろう。したがって、予算成立の翌日私から発言いたしましたように、六十年度予算編成に当たっても、従来以上に制度、施策の根本にさかのぼってこの御議論をしていただかなければならない現状であるということを各省の大臣さんに対してお願いをしておるという実態でございます。したがって、事あるごとに国民の皆さん方に対してもこうした考え方を訴えて、もって理解と協力を得なければならないという事実認識をいたしておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/70
-
071・藤原哲太郎
○藤原委員 先ほど来のお話を承っておりまして、こういう国あるいは地方を通じての大変厳しい状況を踏まえて、いわゆる内なる改革を進めていこうという決意のほどが示されました。私はそれはそれなりに了といたしますけれども、今国民の生活実感としては、どうも長い間の不況が続いて、政府はこれから景気がよくなると言っているけれども、国民一人一人の生活というのは、いろいろ指標や何かに出てくるところでは上昇するように見えるが余り暮らしがよくならない、こういうような感じがしておるのではないか。この間NHKのテレビを見ておりましても、そういう実感がしておるというデータが出ておりました。そういうような意味で、私はこれから景気をどう浮揚させていくかということが大きな課題の一つではなかろうかと思います。
この間テレビで政治座談会をやっておりました。これは春闘の賃上げの問題が中心で、総評の代表や同盟の代表や全民労協の代表、それから政府側からは官房副長官が出ておられましたけれども、その中で、この際公共事業等を少なくとも上半期に八〇%くらい前倒しをしてやっていきたい。もちろん上半期に八〇%も前倒ししますと、これからの公共事業をどうやっていくかという中で、初めに使い過ぎますから後段困ってくるということが考えられたのでしょう、何か補正予算のことも考えておりますということまで申しておりましたけれども、こういうことになりますと、財政の責任者であります大蔵大臣にこの辺のところもはっきりと伺っておかないと国民としては納得しないのじゃないかと思いまするので、この機会に、景気浮揚策についていかなる方途をお持ちになりながら進んでいかれるか。
例えば、この間も、一兆四千億円の減税というのを主張しておる中で、今回の予算の中で一兆一千八百億円という、不満足であるけれども一応まあまあという減税をしたわけであります。やはり勤労者自体の生活そのものが先行き明るいという感情が出てまいりませんと購買力を増進することもできませんし、それから生活の安定度、将来の明るい見通しというものが立ちませんと、住宅を求めようとする意欲のある人たちも住宅を求めるのに二の足を踏むという現状にもなっておるのではなかろうか、かようにも感じておるところでございまして、この辺のところを含めまして大蔵大臣の所信を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/71
-
072・竹下登
○竹下国務大臣 大変難しい問題でございますが、いわゆる景気というものに対する事実認識の問題が一つあろうかと思います。私どもを含め、高度経済成長の時代を経ておりますので、言ってみれば二けた台の成長などというものが当たり前であって、三%だ、四%だなんというのは大体景気のうちに入らぬ、こういう体質が確かに若干あると思います。
しかし、世界全体を見てみますと、アメリカが最近は景気がいいにしましても、マイナス成長のこともありました。日本はとにもかくにも、国民の勤勉さとかあるいは知識水準、教育水準も世界でずば抜けて高いわけでありますからして、三%台の成長は保ち続けてきた。恐らく五十八年度も、完全に締めても三・四%というのはより確実になったと私は思っております。
したがって、世界じゅうがそういうインフレなき持続的安定成長ということを言っておる限りにおいて、この四%程度、八〇年代後半における経済展望で申しておりますそれがむしろ普通の姿であるというある種の意識転換を、私どもを初めとして、高度経済成長になれ切ってきておるだけに、やらなきゃならぬじゃなかろうか。その意識転換の問題がまず一つあるんじゃないか。
それから二番目には、これは藤原さんと私と恐らくその辺は見方が違うかもしれません。要するに、潜在成長力が一体日本はどれくらいあるんだということです。潜在成長力というのは、労働力の質においても、あるいは金融情勢においても、すべてよそよりいいじゃないか、だから六ないし七なんて言っても、七の方へ張りついていくのではないかという見方と、やっぱり安全運転をいたしまして、名目成長六ないし七というところではないでございましょうかという見方、すなわち潜在成長力に対する見方の相違というのは、これはなかなか近づきません。だから、今これで鉱工業生産の指標が伸びだとか、そんなことを言ったって、あなた、今は景気がいいなんて思っている者は一人もいないよという気持ちは、自己改革、意識転換しなければなかなかできない問題だな、こう思います。
したがって、具体的なお話でなさいました公共事業の問題ということになりますと、この四・一%をより確実にならしめるために財政が出動するとしたら、今の場合、公共事業でございます。減税はこれ以上やると、また赤字公債を発行しなければならぬ。もう一つは金融。金融はおかげさんで——おかげさんじゃございませんが、比較的緩んでおる。そして金利も大体下降ぎみにある。そうすると、財政の出動ということになると、公共事業の執行の問題だ。
いささか話が長くなって申しわけありませんが、それで、いろいろ考えますと、一つは雪が降りました。それからもう一つは、選挙がありまして補正予算の上がり方が遅くなったために、三月発注が非常に多うございます。だから今、割に仕事は、持っておると言っても昔に比べれば別でございますが、持っておる。それが下支えになりますから、いわば平常のような形で意識しておって、四月、五月と上半期の発注をいたしましても、現実問題として七〇を超すだろうと私は思いをする。
そこで、より大事なことは、やっぱり地域バランスというものじゃないか。地域のばらつきがこれだけある。地域のばらつきに対して弾力的、機動的対応をするということをこの間決めまして、公共事業施行に関する会議の私が一応議長ということになっているのでございますが、さあその地域ばらつきをどういう指標で求めるか、勘だけでやってもいけませんし、それを今、どのような指標をやるかというのを鋭意作業を進めていただいておりますが、この地域ばらつきをどういうふうに埋めていくかというのは、この四・一%の実質成長をより確実にするための一つのポイントになるんじゃないかなと思っております。
さて、そうなると、今度は、足らなくなって、補正をどうするか。公共事業の執行に関しましては、御案内のように、五十四年、当時私も大蔵大臣でございましたが、このときは少し物価が上がり過ぎまして、したがって公定歩合を二回にわたって五十五年の二月と三月に上げさせていただき、そのときは公共事業は後倒しさせていただきました。むしろ後倒しすることによって景気の調整をした。だから、本当に景気がよくなれば、またなだらかないわゆる自然体に返ることもあるであろうし、だから、現在のところ、不足するであろうという前提で補正予算を組みますと、おまえ、この間本予算が上がったばかりじゃないか、今から補正予算を言うのなら、もう一遍出直して、予算をもう一遍出せ、こういう議論にもつながりますので、今の場合、補正予算を組むという考え方はございませんとお答えすべきでございましょう、原則的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/72
-
073・藤原哲太郎
○藤原委員 この問題は、今の大蔵大臣の御答弁を了として進めさせていただきたいと思います。
今回、法改正によりまして、交付税の総額の不足分を、先ほど来御意見がございましたけれども、法律により一般会計から補てんをするということになるわけでございますけれども、地方財政の現状からいっても、今後巨額の財源不足を生ずるあるいは見込まれるわけでございまして、いわゆる国税三税の三二%で不足する分は一般会計から補てんをする、こういうことになるわけでありますが、このことについて、これは必ず補てんをするという一つのお約束ができるのかどうか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/73
-
074・平澤貞昭
○平澤政府委員 今回の改正措置は、先ほど来御議論がございますように、新規借入金をやめよう、そのかわりに、地方財政の状況を今後毎年毎年見ながら、必要があれば交付税の特例措置をとっていく、こういうことでございます。したがいまして、今後、まさに申し上げますように、必要があらば特例加算もあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/74
-
075・藤原哲太郎
○藤原委員 これは、地方自治体にとりましても、こういう法改正になり制度改正になって、やはり政府が必ず責任を持つということでなければ安心できないのでありまするので、この点はひとつお約束どおりに実行していただくことを確約していただきたいと思います。
それから、五十九年度の特例措置の中で、純粋に一般会計から交付するいわゆる特例加算、ちょっと今もお話がございましたが、特例加算措置額として三百億円を六十六年度以降いわゆる国に減額精算をする、こういうことになっておるわけでございまするけれども、これはどういう理由に基づいて減額精算をしなければならぬか。返却をすることになるわけでございまするけれども、どういうわけで減額精算をしなければならぬか、こういうことについて考え方を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/75
-
076・平澤貞昭
○平澤政府委員 今回の措置によりまして、地方交付税に特例的に加算をすることになったわけでございます。額といたしまして千七百六十億円を五十九年度に特例措置として加算するということでございます。したがって、従来もこのような加減算というのはあったわけでございますし、その際も、加減算したものにつきまして後年度精算したという例もあるわけでございます。そういうことで、地方財政の状況等も十分勘案しながら、最終的には、三百億円につきまして六十六年度以降二年間で精算するということを今回の法律の附則に入れまして御審議願っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/76
-
077・藤原哲太郎
○藤原委員 今のこと、ちょっとはっきりしませんが、これからいろいろ伺っていくうちにまた尋ねたいと思います。
ところで、特例措置の中で、国に返却を要しない分、つまり利差臨時で九百二十五億円、それから地域特例臨特で三十五億円、財政対策の関係の臨特で五百億円、合わせて千四百六十億円になるわけでありますけれども、この分につきましては国に返却を要しないということになっておるわけでございますが、いわゆる特例措置分は今後も地方に交付されていくのかどうなのか、このことについて伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/77
-
078・平澤貞昭
○平澤政府委員 今委員が御指摘になりました千七百六十億円のうち三百億円を引きました残りの金額につきましては、将来精算ということにはなっておりません。
そこで、今後のお話でございますけれども、これにつきましては今後の毎年度、毎年度の地方財政の状況等々を勘案いたしまして、その年度ごとに自治省とも十分御相談して、かつまた、決まりましたものにつきましては法律によって措置していくということでやっていくことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/78
-
079・藤原哲太郎
○藤原委員 それでは、千四百六十億円につきましては返却をしないということは確約されたわけでございます。
次にお伺いをいたしたいと思いますのは、先ほど来からいろいろ論議のあったところでございますけれども、今の地方財政の現況からいって、これは前から問題になっておるところでございますけれども、地方交付税法の六条の三の二項——六条の一項というのは百分の三十二交付税を出すということが明らかになっておるわけでありますけれども、六条の三の二項では、経済的な変動やいろいろありますと、これは協議をして変えるということができるような規定が設けられておるわけでございますけれども、今のような地方財政の現況からいって、三二%をこのままにしておくことについて問題があるのではないか。少なくとも三二%というのを三五にするか、あるいは四〇にするか、我々は四〇ぐらいという主張をしたいところでありますけれども、この辺について先ほど来いろいろ大蔵大臣のお話も承りまして、話を聞くとわかるような気もするのですけれども、しかし地方財政の現状からいえば、これをこのままにしておいて問題の解決にはならないのではないかというような気がしてならないわけであります。このことについては大臣の方からお答えをいただきたいというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/79
-
080・竹下登
○竹下国務大臣 いずれにしても、地方財政の立場からいえば、多々ますます弁ずるということもさることながら、高度経済成長期に比べればそれなりに苦しい対応を今日までしておる。したがって、基本的には現行の交付税率までにさかのぼって議論をすべきではないか、こういう御主張であろうと思うのであります。
確かに五十年度以降、国と同様大幅な財源不足に陥っておられます。財源不足の状況が続いております。したがいまして、今までの経過でいろいろなことをしてきたわけであります。その経過の所産としてまた特例措置、こういうことにつながってくるわけでございますが、今、国の厳しい財政の中で三二%というものをいじる余裕は残念ながら今日ない。そもそも平衡交付金制度から交付税制度に来て、そして今日に至って、さあこれをいじるかと、先ほど来の言葉ではございませんが、仮に加減両方を考えたとしても、いじるかということになりますと、それこそどういうふうに分配するのか、あるいは事務分野をどういうふうに整理していくのか、そしてまた国からの補助金制度をどうするのかとか、これはいろいろな問題にかかわる大問題でございますので、現状の三二プロというものに対してこれをいじるという、いわば財政的な、今おっしゃいましたように、腰だめとはいえ四〇%というようなものに対する財政的な余裕は、残念ながら全くないとお答えせざるを得ない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/80
-
081・藤原哲太郎
○藤原委員 今大臣から、今の国と地方の財政状況からいって三二%をいじる気持ちはない、こういうことでございますが、私どもの強い希望のみ申し上げておきたいと思います。
それから、仮に交付税率を三二%に据え置いたといたしまして、地方交付税の対象として今までは国税三税、所得税、法人税、酒税ということでございますが、これに物品税であるとか相続税というようなものを加えることによって地方の自主財源を安定せしめる、こういうことについてのお考えをこの機会に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/81
-
082・竹下登
○竹下国務大臣 これも、基本認識からすれば先ほどの議論に立ち返ってくるわけでございますが、私自身考えてみて、地方交付税の対象税目というのは所得税、法人税そして酒税と、これは本当によく組み合わせられておるというふうに考えます。法人税は、これは申すまでもなく景気の動向によりまして敏感で伸長性があります。それから酒税は、景気変動には余り関係がない。そうして所得税はその真ん中ぐらいというものを組み合わせたこの三税というものは、まさに収入の伸長性と安定性を期することができる考え方からして組み合わされてできたものだ。
さあそこで、今度はそれに今おっしゃいました他の税目を新たに加えるということになりますと、それなら交付税の水準から議論しましょうとか、また、いわば地方譲与税制度あるいは地方税の問題全般にさかのぼりますし、国税全体の補助制度ということになりますので、これはなかなか慎重に検討を加えなければならぬ問題だというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/82
-
083・藤原哲太郎
○藤原委員 時間がありませんので掘り下げた議論はまた後日にさせていただきまして、もう一点だけ伺いたいと思います。
五十九年度の地財計画において、地方債調達のための政府資金の比率は近年だんだんと下がってまいりまして、四八%と、ここ数年五〇%を割っている状況でございます。いわゆる地方債発行の許可制をとっておきながら、資金の五割以上が民間に依存をしておる。こういうことは一面から見れば政府の責任ではなかろうか。少なくとも地方債発行の六〇%程度は政府の責任で、政府資金で賄うべきであるというように私は考えるし、また、そういう改善が必要だ、かように考えるわけでございますけれども、このことについての所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/83
-
084・竹下登
○竹下国務大臣 いわゆる起債、地方債の調達に対する政府資金比率という問題、これは一つは金融政策全体にかかわる問題でもございます。例えて申しますと、比較的今は金融が緩んでおります。したがって、そういう比較的得やすい環境にはあろうかと思います。しかし、本来、やはり今の御主張から延長して考えてみますと、いわゆる財投全体の伸びという問題、その財投資金のふえた分のほとんど全額に達する、対前年度に比べますと一二・九%増の三兆五千億円を充てておるわけであります。したがって、前年度の四一・一%から四八・五%。そのほかに政府保証債を主たる原資といたします公営企業金融公庫がある。しかし、ありがたいことに公営企業金融公庫も外債を求めていただきました。これは私はいいことだったと思っておりますが、それは別といたしまして、そういう政府保証債の公営企業金融公庫からの貸し付けが一兆一千九百二十億円、こういうことになりますと、引受割合は一応六五・一%ということになりますので、それなりの努力は重ねておるところでございます。
また、今後の問題といたしましても、金融政策の問題と、いま一つはいわゆる地方債の角度からと、おっしゃる方向に対して絶えず努力を傾けていかなければならないことであるという事実認識はひとしくいたしておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/84
-
085・藤原哲太郎
○藤原委員 大臣のせっかくの御健闘を期待いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/85
-
086・大石千八
○大石委員長 経塚幸夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/86
-
087・経塚幸夫
○経塚委員 まず最初に、大臣にお尋ねをしたいわけであります。
一月十八日に財政制度審議会から答申が出されております。五十九年度の地方財政対策に当たりましては、当然この答申の趣旨にのっとって財政対策を確立されたものと考えられますが、そのように解釈してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/87
-
088・竹下登
○竹下国務大臣 大筋それでいいと思うのでございますが、やはり地方財政でございますので本来は自治省からお答えになるべき課題かとも思いますが、内閣一体の責任で予算も編成し、法律も提出して御議論いただいておる中でございますから、それで結構だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/88
-
089・経塚幸夫
○経塚委員 以下、若干この答申の内容との関連でお尋ねをしたいと思うのです。
そういたしますと、この答申の中で、地方財政をどう見るかという問題につきまして、こういう文言がございます。「地方財政については当面厳しい状況にあることは否定できないとしても、中期的には比較的早い段階で収支が均衡することも予想される」、こういう答申の中身になっております。一体大蔵の方もこういう見解なのかどうなのか、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/89
-
090・平澤貞昭
○平澤政府委員 地方財政の状況が今後どうなるかにつきましては、自治省においていろいろな角度から御検討なさっておるわけでございます。先般、参考として試算をお出しになられたわけでありますけれども、国と同じような方法で仮に試算した場合には、将来の姿としては、少なくともその試算から見る限り地方の方が改善する度合いが高いのではないかというふうに我々としては拝見させていただいているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/90
-
091・経塚幸夫
○経塚委員 中期的に、つまり財政再建期間中比較的早い時期、こういう表現があるわけなんです。比較的早いということになれば、五年を期間とすれば少なくとも三年目とかあるいは二年半目、いろいろあると思うのですが、一体ここで言われております比較的早い時期というのは、大体何年度ぐらいを想定しておると判断していいのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/91
-
092・平澤貞昭
○平澤政府委員 特に具体的に何年度ということを念頭に置いておるのではないと考えられます。傾向としてそういう方向にあるのではないかと見ておると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/92
-
093・経塚幸夫
○経塚委員 そうしますと、何年度ということは想定できないけれども、傾向としてはいわば中期的に見てという、一定の限られた範囲内での予測でありますが、明らかに地方財政は比較的早い時期に収支均衡、相償って好転する、こういう御判断ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/93
-
094・平澤貞昭
○平澤政府委員 国の財政及び地方財政の今後をどう見ていくかというのは大変難しい問題でございます。日本経済の動向がどうなるか、その他いろいろの要素が、今変革期でございますので、極めて見通し難である点はございます。したがいまして、具体的にいつかということを申し上げるのは、我々としても非常にちゅうちょするわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、国と比較して地方財政の方が、構造的に財政体質が改善する要素は比較的多いのではないかというふうに我々としては見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/94
-
095・経塚幸夫
○経塚委員 国の財政状況と比較をして地方の方がよいのではないかという単なる判断を私は問題にしておるのじゃございません。ここで明確に言われておることは、中期的に見た期間内で早い時期に収支が均衡する、収支均衡ということを明確に出しておるわけであります。これは私は重要な一つの指標だと思うのです。今よりよくなるんじゃないかとか、あるいは今より悪くなるんじゃないかとかというような予測はいろいろあると思いますが、少なくとも、この財政再建期間中比較的早い時期に地方の財政状況は収支均衡するのだ、ここまで断定をされる以上はそれなりの根拠がなければなりませんし、収支均衡するかしないかということは、今後の地方財政の将来を判断する上で極めて重要な指標になる、私はこう考えておりますから、あえてこのことを重ねて聞いておるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/95
-
096・平澤貞昭
○平澤政府委員 委員が先ほどお述べになりました財政審の文章でございますけれども、これは、財政審の審議の過程でそういう意見もあって出ているということでございます。
しかし、先ほど来申し上げましたように、やはり構造的に見まして地方の方が財政が改善していく度合いが強いのではないかというふうに我々としては見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/96
-
097・経塚幸夫
○経塚委員 私が疑問と思っておる点についての御回答にはなっておらないと思います。
答申の中では、比較的早い期間に収支均衡、相償う。それは一つの意見であって、大蔵としてはそうは考えておらないのだ、こういうことなんですか。好転はするだろうけれども、収支均衡、相償うという状況まで好転はしない。財政審の論議の中で出てきた見解とはまた別な見解を持っておられるということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/97
-
098・平澤貞昭
○平澤政府委員 御質問に対してくどいようでございますが、財政制度審議会の「歳出の節減の合理化の方策に関する報告」が五十九年一月十八日に出ておりますが、これが審議した後に報告として出されたものでございまして、その中には、今委員御指摘のような文章は入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/98
-
099・経塚幸夫
○経塚委員 くどいようですがということですが、私もくどいようですが、これは非常に重要なことですからお尋ねをしておきたいと思うのです。
といいますのは、先ほど来この特例措置につきましていろいろ論議をされております。私は、田川大臣にもお尋ねをいたしたことでありますが、通常六条の三の二項の特例措置と言えば、当然交付税率引き上げにかわるべきものとして、結果的には加算だ、こういうふうに考えておったわけでありますが、大蔵の方の側からは減額もあり得る、こういう方向が打ち出されております。そうしますと、ここ数年間に地方の財政状況が収支相均衡するということになってまいりますと、一方では、いわゆる歳出が抑え込んでいかれれば、これは収支相均衡どころか余ってくるじゃないか、こういうことで特例措置が発動されるという懸念も生まれてくるのは、私だけが抱いておる危惧ではないと考えられます。
それから、先ほど来の御答弁で、特例措置については年度年度いろいろ勘案をしていく、こうおっしゃられましたけれども、今いみじくも引き合いに出されましたこの中期財政運営に関する中間報告の内容によりますと、「今後の地方財政対策としては、現在、既に巨額に累積している交付税特別会計の借入金にこれ以上依存して地方交付税を増やす措置をとることを避け、各地方公共団体が必要に応じ建設地方債の発行により対応することとする」、こういうふうに言われておりますね。だから、まず最初にあるのは特例措置ではなくして、いわゆる地方債ありき、この前提で大蔵が今後の財源不足に臨まれるんではないか。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/99
-
100・平澤貞昭
○平澤政府委員 毎年度の地方財政対策につきましては、地方財政計画を策定いたしまして、そこで出てまいります財源不足額について、今おっしゃいましたように交付税措置と地方債による措置でずっと措置をとってきているわけでございます。今回におきましてもその方式で措置をとってきているわけでございまして、地方債を大いに出して、その結果残りを交付税という考え方では一義的に考えているわけではございませんで、財源不足額については、その両方を、十分利害得失を考えながら、自治省当局と御相談しつつ両者をもって財源措置をとっていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/100
-
101・経塚幸夫
○経塚委員 今の御答弁を言葉どおり解釈いたしますと、いわゆる特例措置の加算、それから一方では地方債、両者を勘案しつつということになれば、これは五分と五分にならざるを得ないと思うのでありますが、五十九年度の措置をとりましても、まず地方債ありき、財源不足額の八割が地方債で措置される。そしていわゆる特例措置というものの中身も、先ほど来るる論議されておりますように、千七百六十億円の中身は、三百億円を除きますと、従来とってこられた措置でありまして、財源不足対策として特別にとってきた措置なのかどうかということについては、そうとは断定できない性格のいわば臨特であります。これを負担分の利子と相殺すれば、交付税率は三一・三%にしかならない、こういう状況が生まれてきておるわけでしょう。だから、フィフティー・フィフティーということじゃなしに、まず地方債ありきという前提で、この中間答申として出されておる趣旨で大蔵省は臨んでおるのじゃないか、こう判断せざるを得ないわけであります。しかもこの千四百六十億につきましても、先ほどの答弁によりますと、これだって年度年度で削られる、あるいはなくなる可能性もあるやに受け取れる答弁なんです。
一月二十一日の日経新聞によりますと、一月二十日の臨時閣議で五十九年度予算の大蔵原案が了承された後、大臣は記者会見をされまして、「地方財政対策の改革は大変革といってよい」と述べられたと報道されておりますが、一体どこが大改革なのか。千七百六十億のうち千四百六十億は従来措置されてきたものですよ。これとても、今度の特例でずっとそれは保障してもらえぬかという御質問に対しまして、六十年度は一体どうなるかわからない、年度年度で検討する、そういう御答弁でしょう。これで一体どこが大改革なのか、お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/101
-
102・竹下登
○竹下国務大臣 確かに、御指摘になりましたように、一般歳出については三角の〇・一%だが、地財の国債費に振りかえた分を足すと増になるじゃないかというような御質問がありました。そのときに、それはそのとおりだが、その組みかえと同時に行われた地財の制度改革は、コペルニクス的とまでは言わないが、ある種の大変革だ、こういう表現をしております。これは御指摘のとおりであります。コペルニクスとまでは言いませんが、何が大改革か、こういうことになりますと、これこそ内なる改革の中身でございますが、地方財政の借入金依存からの脱却、これがまさに大きな改革だ、こういう非常に強烈な印象を受けて、あえてそういう言葉を使ったのではないか。多少言葉が好き過ぎる、私、好きでございますから、いささか表現が適切であったかどうかは別といたしまして、そういう印象で申し上げたことは事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/102
-
103・経塚幸夫
○経塚委員 そういう言葉が好きだから使ったということで、軽々に制度改正にかかわる問題についてお考えを持っておられたら、私は、これは困ると思うのですよ。だれしも、制度改革といえば、六条の三の二項の制度改正を改革の内容として受けとめるのは、これはもう地方自治に携わる者の常識であります。そういう観点から見たら、一体何が大改革なんだ。大蔵の側から見れば、地方交付税で果たさなければならない国の責任を地方に転嫁したという限りにおいては大改革であるかもわかりませんが、地方の側から見ればこれは大改悪ですよ。
それから、地方財政の状況だってそんなに生易しいものじゃないということに一言触れておきたいと思います。地方単独事業は、五十一年度は前年度比二一%伸びていたんですね。これが五十九年度は実に三十年ぶりにマイナス三・三%でしょう。そのほか、保育所、公営住宅、小中学校、どれを例にとりましても、大幅に歳出を抑制された中で、地方は住民の期待にこたえられない状況の中で、いわば赤字団体が減っておるという状況なんですね。だから、もう少し地方団体に対する認識を改めていただきたい。
それから、最後に一点お尋ねしておきたいと思うのです。先ほど細谷先生からもお尋ねがありましたが、今の大企業優遇税制にやはりメスを入れることが必要な時期に来ているのじゃないかと思うのです。これは松下電器の例でありますけれども、租税特別措置法による減税額あるいは内部留保などを合わせますと、総額にいたしまして七百億三千四百万円に上っております。これを法人事業税と法人住民税を仮に取るといたしますと、百五十三億三千二百万円という税額が新たに生み出されてくるわけであります。
さらに、欠損法人の問題で私は本会議でも田川自治大臣にお尋ねをいたしましたが、大阪府内でありますが、資本金十億以上の会社千四百五十五社のうち、欠損法人が二百八十八社ですね。住友化学などは、二百七十億の内部留保がありながら、住民税は百六十万円で済まされておる、こういう状況なんですね。税の公平という原則からいきましても、これは国民の支持を得られる状況ではないと思います。しかも一方では、公害対策、港湾、道路の使用など巨額なサービスを受けておるわけであります。公正な課税について検討されるべきだと考えておりますが、その点、大臣、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/103
-
104・竹下登
○竹下国務大臣 一つは、大企業優遇税制とよく貴党において申せられますお言葉でございますが、これは恐らく特別措置等を指摘されたものが多かろうと思うのであります。したがいまして、いわゆる税の自然体から考えて特別な措置というのはない方がよろしいということで、いろいろ工夫をいたしまして、毎年これを絶えず見直しを行っておるところでございます。ただ、この特別措置そのものが政策税制でございますから、それなりの政策目的のもとにつくられたものでございますので、一概に、必ずしもそのものがすべて悪税であるという断定をすべき対象にはなかろう、なかんずく、それに伴うものはエネルギーと中小企業等が中心にあるわけであります。
二番目に、赤字法人等に対する例示的な御見解をも御披露いただきましたが、これは確かに、最近の法人の申告状況を見ると、全法人の約五〇%が赤字申告を行っている。これらの法人についても、公共サービスを享受していること等から何らかの応益的負担を求めてよいのではないかとの意見がある。これについては、所得課税である法人税の性格から見て、企業に対する他の租税との関係等幅広い観点から検討を要する必要がある、これが指摘をされておるところであります。検討の対象であるという事実認識は十分持っておるつもりであります。
なお、藤原さんに対するお答えの中で一つ欠かしましたが、地域バランスの問題は、いわば自治省においてその役割を果たしてもらうものが非常に多いので、そういう検討も続けておるということを、この際つけ加えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/104
-
105・経塚幸夫
○経塚委員 時間が参りましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/105
-
106・大石千八
○大石委員長 次回は、来る二十四日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X01119840420/106
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。