1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月五日(木曜日)
午前十一時十二分開議
出席委員
委員長 大石 千八君
理事 臼井日出男君 理事 小澤 潔君
理事 谷 洋一君 理事 西田 司君
理事 小川 省吾君 理事 加藤 万吉君
理事 草野 威君 理事 岡田 正勝君
大西 正男君 大村 襄治君
工藤 巖君 小杉 隆君
左藤 恵君 中川 昭一君
中西 啓介君 平林 鴻三君
古屋 亨君 松田 九郎君
山岡 謙蔵君 佐藤 敬治君
田並 胤明君 細谷 治嘉君
安田 修三君 山下八洲夫君
岡本 富夫君 宮崎 角治君
吉井 光照君 藤原哲太郎君
経塚 幸夫君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(国家公安委員
会委員長) 田川 誠一君
出席政府委員
警察庁長官 三井 脩君
警察庁長官官房
長 太田 壽郎君
警察庁刑事局保
安部長 鈴木 良一君
委員外の出席者
地方行政委員会
調査室長 島村 幸雄君
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委員の異動
七月五日
辞任 補欠選任
江崎 真澄君 中西 啓介君
五十嵐広三君 田並 胤明君
同日
辞任 補欠選任
中西 啓介君 江崎 真澄君
田並 胤明君 五十嵐広三君
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七月三日
地方財政対策の確立に関する陳情書外四件
(第三二〇号)
地方事務官制度の廃止に関する陳情書
(第三二一号)
料理飲食等消費税制度の改正に関する陳情書
(第三二二号)
風俗営業等取締法の改正に関する陳情書外四件
(第三二三
号)
モーテル類似施設の規制強化に関する陳情書
(第三二四号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案(内
閣提出第八一号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/0
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001・大石千八
○大石委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、去る三日質疑を終了いたしております。
この際、本案に対し、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して小澤潔君外二名より修正案が、日本社会党・護憲共同を代表して加藤万吉君より修正案が、日本共産党・革新共同を代表して経塚幸夫君より修正案が、それぞれ提出されております。
各修正案の提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。草野威君。
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対
する修正案
〔本号末尾に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/1
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002・草野威
○草野委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その内容と修正理由について御説明申し上げます。
その一は、ゲームセンター等への十八歳未満の者の立入禁止の時間についてであります。
政府原案におきましては、風俗営業の許可対象となりますゲームセンター等に十八歳未満の者は午後十時以降は立ち入らせてはならないこととしておりますが、少年の健全な育成を図る見地から、本修正案では、十八歳以下の条例で定める年齢に満たない者について、条例で午後十時前の時を定めたときは、その者については、その定めた時以降は立ち入らせてはならないこととしております。
その二は、風俗営業者等に対する管理者の助言及び指導の遵守義務及び管理者の解任についてであります。
政府原案におきましては、風俗営業者等は管理者の助言を尊重し、または指導に従わなければならないこととしておりますが、管理者の助言または指導の遵守義務者を明確にするため、本修正案では、風俗営業者またはその代理人は、管理者の助言を尊重し、その使用人その他の従業者は、管理者の指導に従わなければならないこととしております。
また、政府原案におきましては、公安委員会は、風俗営業者に対し、管理者の解任を命ずることができることとしておりますが、営業の自主性を尊重して、本修正案では、公安委員会の命令を勧告とすることといたしております。
その三は、警察職員の立入検査等についてであります。
政府原案におきましては、公安委員会は、警察職員に風俗営業者等の営業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、もしくは関係者に質問させることができることとしておりますが、現行法の立ち入り権に比べてその範囲が拡大するのではないかという疑念があるため、本修正案では、この部分を削除し、これにかえて現行法の規定に即して整備することといたしております。
このほか、これらの措置に伴い、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上が本修正案の概要であります。
何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/2
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003・大石千八
○大石委員長 次に、加藤万吉君。
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風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対
する修正案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/3
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004・加藤万吉
○加藤(万)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨と概要を御説明いたします。
政府改正案は警職法以来のたぐいまれなる悪法であります。
本法案は第一には、少年の教育と健全な育成を警察の管轄下に置くものであり、第二には、風俗的営業と目されるあらゆる営業を警察の支配下に置くものであります。そして第三には、その下請機関と人員を全国津々浦々に配置しようとするものであります。
このように、本改正案は、警察法第二条に定める警察の任務を逸脱し、国民生活全般を警察の管理下に置こうとする、まさに警察国家を目指したものであると考えます。
また、本改正案には、営業の自由・プライバシーの侵害、令状主義、不利益供述強要禁止など憲法に定めた国民の権利を侵害し、罪刑法定主義に反する条文が満ち満ちております。加えて五十一カ条の中で七十七カ所の国家公安委員会規則、政令への委任事項が盛り込まれており、法文を読んでも内容が不明であるなど、立法府で審議するのにふさわしくない欠陥法案であります。
本改正案には、売春問題ととりくむ会に参加する十八団体など、多くの婦人団体が反対の声明を行っております。改正案においては、いわゆるトルコぶろを届け出制としておりますが、これは、パチンコ屋等の許可制と比較して検討した場合、売春もしくはその類似行為を公認しかねないものであります。戦前の警察は、社会情勢に応じ、公然と売春を奨励し、また黙認することによって国家目的に利用してまいりました。社会党は、売春防止法の運用強化、また、参議院におきまして野党全会派一致で公衆浴場法の改正案、すなわち売春を前提とした現状の個室付トルコぶろの禁止を提案しております。
以上が、修正案を提案する趣旨でありますが、次に、その概要を御説明いたします。
第一に、改正案中、「清浄な風俗環境」「少年の健全な育成に障害を及ぼす」など意味不明確にして警察の任務を逸脱する文言はすべて削除することといたしました。
第二に、全国的基準が妥当と思われる数カ所を除きまして、設備の認定、営業時間等を含めまして国家公安委員会規則等への委任は、その大部分を現行法どおり都道府県条例へ委任することといたしました。
第三には、第二十四条の営業所の管理者、第二十五条の公安委員会の指示、第三十八条の少年指導委員、第三十九条及び四十条の都道府県並びに全国風俗環境浄化協会につきましては、不要かつ有害なものでありますので、該当条文及び関連条項はすべて削除することといたしました。
第四に、第二十七条の風俗関連営業の届け出につきましては、前述のとおりの理由からこれを削除することとし、現行法における個室付浴場業、モーテル営業の規制を改正案に盛り込むこととし、また、新たにいわゆるストリップ劇場その他条例で定める営業についての規制を設けることといたし、あわせて営業停止等の所要の規定を整備することといたしました。
第五に、第三十七条の「立入検査」につきましては「立入り」に改めるとともに、その第一項の「風俗営業者等に対し、その業務に関し報告若しくは資料の提出を求め、又は」の文言及び「帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させる」の文言を削除し、警察職員の立ち入りの条件を明確化させることといたしました。
第六に、以下の条項につきまして修正することといたしました。一つには、第二条の用語の意義、第一項第八号について、スロットマシン等とスポーツゲーム等のテレビゲームを分離し、後者は対象から除外すること。二つには、第四条の許可の基準、第一項第二号の欠格事由を緩和するとともに、三号、四号についてはその事由の客観性の明確化を図ること。三つには、以上の修正に基づき、聴聞、罰則その他所要の規定の整理を行うとともに、法の内容から、その名称を風俗営業等規制法とすること。
以上であります。
修正案の詳細につきましては、お手元に御配付いたしました要綱を御参照ください。
以上をもちまして修正案の趣旨及びその概要の御説明を終わりますが、本修正案の重要性にかんがみ、各委員の御理解を得まして、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/4
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005・大石千八
○大石委員長 次に、経塚幸夫君。
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風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対
する修正案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/5
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006・経塚幸夫
○経塚委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
今回提出されました政府案は、従来、風俗営業等取締法の規制対象外であった各種セックス産業を対象に取り入れるなど一定の改善が行われようとしておりますが、この改正案では、性の商品化に対する国民の厳しい批判に十分こたえるものとはいえないのであります。
しかも他方では、立入検査条項など警察権限の拡大強化によって一般営業者に対する営業と人権侵害につながる内容を含むなど、容認できない点も少なくありません。
我が党の修正案は、規制の効果が十分上がるように政府案の不十分な点を改善するとともに、人権侵害につながる警察権限拡大の部分は削除することとしております。
以下、概要を御説明いたします。
第一は、目的条項の新設は、清浄な風俗環境、青少年の健全育成、業務の適正化の名のもとに行政警察権を不当に拡大強化することとなるため、目的条項は削除し、法の目的を防犯に限定することといたしております。
第二は、善良な風俗環境を守るための地域規制につきましては、住民に最も身近で町づくりに責任を負う市町村条例にゆだねることによって、住民の正しい意見を反映できる措置を講じることといたしております。
また、風俗関連営業の時間規制の上乗せ措置を、風俗営業と同様に都道府県条例にゆだねることにしております。
第三は、既にはんらんしておりますセックス産業などの既存店につきましても、現状を改善するために、都道府県条例で業種と地域を限定して適用できることにいたしております。
第四は、深夜における飲食店営業に対する規制は現行どおり都道府県の条例にゆだね、一律に行わないこととし、「接待」の定義も厳格にするなど、一般営業者の正当な権利を守る措置を講ずることといたしております。
第五は、警察官職務執行法を越える立入検査の規定、従業員名簿の規定、公安委員会の指示権の規定などを削除いたすこととしております。
また、風俗関連営業の業種の指定に関する政令委任事項を削除し、ノーパン喫茶、個室マッサージを法規制するための措置をとっております。
第六は、風俗環境浄化協会、少年指導委員の規定は、警察の責任で行うべき行政を民間に下請させるとともに、民間が自主的に行うことさえ警察行政の権限下に置こうとするものであり、必要ないものと考え、削除することといたしております。
以上が修正案の概要でありますが、何とぞ慎重審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げて説明といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/6
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007・大石千八
○大石委員長 以上で各修正案についての趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/7
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008・大石千八
○大石委員長 これより原案及びこれに対する各修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。岡田正勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/8
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009・岡田正勝
○岡田(正)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議、民社党・国民連合、以上三党を代表いたしまして、ただいま上程中の風営法に対する三党共同修正案並びに修正部分を除く原案に対し賛成、他の修正案に対しては反対の討論を行うものであります。
少年非行は連続四年にわたり記録を更新し、また、大人が少年少女を食い物にする福祉犯も戦後最悪の記録を樹立した今日、あからさまに性を売り物とする野放し同然のはんらんする性産業は目に余るものがあります。これに法の網をかぶせて少年の非行化を少しでも食いとめようとするのが、三十六年ぶりの大改正と言われるこの風営法であります。
この種の問題は、本来なら健全な社会常識が働いて自律自浄で粛正すべきものでありますが、情けないかなそれができないのが今日の社会であります。ということになれば、風営法の改正によって対処することはむしろ当然のことと言うべきでありまして、この法案のすべてを反対すべきものではありません。しかし、警察権力の肥大化は最小限のものでなければならないことはもちろんのことであります。
以上の観点に立ちまして、三党は慎重審議を重ね、共同の修正案と附帯決議案を提出したものであります。
以下、数点にわたり賛成の理由を申し上げます。
その第一点は、無秩序にはんらんしている性産業から年少者の保護を図ることを目的とした法の改正はまことに時宜を得たものであり、適切であります。これは野方図な性産業に歯どめをかけ、これによって増加する少年非行の防止に実効が上がるものと確信をいたしております。
第二点は、今までは都道府県ごとに規制がまちまちでありまして、性産業のはんらんから年少者を保護することに徹底さを欠いた現状を改め、法律で全国統一的に年少者の保護を図るとしたことは評価できるのであります。
第三点は、今回の法改正の基本的考え方として、性産業について地域囲い込みの考え方をさらに前進させたことは妥当であります。この考え方をさらに徹底するため、既存の営業所でありましても、設備投資が比較的軽易なものについては規制をさらに強めるべきであります。
第四点は、今回の改正によって、法の後ろ盾がないため、常に身の危険を感じながら青少年保護育成のために活動している民間の人々あるいは団体に対し、その活動をバックアップできることになったことを評価いたします。
第五点は、特に青少年の健全育成という見地から深刻な問題となっていました業種、すなわち具体的には風俗営業にゲームセンターを加えるほか、現行のトルコふろやモーテルと同様にストリップ劇場、のぞき劇場、ラブホテル、類似モーテル、アダルトショップ等々を風俗関連営業に指定して届け出制とし、十八歳未満の少年少女を働かせたり出入りさせることを禁止し、学校や住宅街の周辺から締め出すことにいたしましたことは高く評価できるのであります。
以上のとおり、主なる賛成の理由を申し上げましたが、今社会全体が考えねばならぬことは、自分さえよければ、もうかりさえすれば何をしてもいいではないかという風潮は何としても抑制をしなければならないということであります。だからこそ法の整備というけじめが必要なのであります。
しかし、けじめが大切なのは政治倫理だけではないはずであります。社会倫理の粛正を取り締まりという法律にゆだねてこれでよしとするのでは、十分な効果は期待することはできません。下手をすると、民主主義そのものの健全性を放棄することになるとさえ私は心配をしておるのであります。法を強化しても、要は運用が問題でありまして、少年非行防止を主目的とする規制ができたからといって、家庭や社会や教育の責任が免除されたのではないことをこの際強く訴えるとともに、当局は社会から権力の乱用などというような指弾を受けることのないよう特段の配慮を払いつつ、厳正公平な職務に精励されるよう強く要望いたしまして、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/9
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010・大石千八
○大石委員長 次に、安田修三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/10
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011・安田修三
○安田委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました風俗営業等取締法の一部を改正する法律案並びに原案に対する自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議、民社党・国民連合の修正案及び日本共産党・革新共同の修正案について反対の討論を行うものであります。
戦前の旅館等に見られました官憲の臨検や性風俗抑圧から解放された戦後、風俗犯罪の実質的なものが売春や賭博と見られ、その温床となりやすい営業に限定して風俗犯罪予防のために警察の立場から規制を行ったのが現行の風営法であります。
今回は、少年非行が昭和五十五年以来四年連続戦後最悪の記録を更新している大きな要因の一つは、性産業の多様化と野放しの状況から生じているものとの認識に立ちまして、形は現行法の一部改正の形式をとってはおりますが、その実態は、立法の発想、目的はもちろんのこと、名称も風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律とし、現行法の八カ条の条文が五十一カ条に構成されまして、全く新法制定と同様となったのであります。
風営法本来の目的は、善良な風俗の保持、社会公共の秩序の維持という見地から、必要最小限度の規制はやむを得ないものといたしまして、法の存在があったと思うのであります。
最近の性産業はんらんの社会情勢の中にありまして、こうした最小限の規制の範囲や限界について国民的コンセンサスを得るために、法の規制はなるべく小さく、議論は大きくして、社会の自浄作用の高揚を図るべきであります。しかるに、改正法案は、行政警察のもとに風俗関係営業のほとんどを規制対象に拡大し、大人の社会生活を初め、少年の生活や行動にまで指導という名によって介入することといたしておるのであります。既に何らかの法の規制のもとに関係行政庁の行政指導の行われている分野へ行政警察が全面的に入り込むこととなり、警察権力の肥大化を招くおそれがあるのであります。
グリコ事件等の未解決や、秋田、兵庫、岐阜県警等における警察内部の一連の不祥事が続いているとき、本来の司法警察の任務に国民の信頼感が薄れつつあるのでありますが、このような折に、娯楽を主とした社会生活の中に警察権力の増大を図ることは一層国民の不信を招くものと言わねばなりません。
さて、本案について、我が党は、削除もしくは修正を要するものとし、修正案をもって各党間の協議を進めましたが、成立するに至らなかったのであります。
以下、その問題となる要点について申し上げたいと存じます。
第一は、青少年の非行の増大が今日の性風俗の不健全化にあることを前提にすることは、当局の資料から判断しても困難であります。したがって、風営法本来の目的と青少年対策を分離して、それぞれの観点で立法すべきであります。
第二には、規制対象業種が拡大されましたが、その区分と規制の方法において見直しが必要であります。すなわち、スポーツ物などのテレビゲームセンターなどは許可営業から外し、管理売春の温床となっているトルコぶろなどは別途公衆浴場法の改正をもって完全禁止とし、ラブホテル、モーテル、アダルトショップというようなものは、文教施設区域などでの条例による場所規制によるのが妥当と考えられるのであります。
第三には、許可営業者の欠格事由について、事由の明確化と、業務上過失致傷等を犯した者などの場合の職業選択の自由を閉ざさないために一部緩和する必要があるのであります。
第四には、営業所ごとの管理者の選任義務について、その性格があいまいであり、その必要を認めないのであります。
第五には、警察官の立入調査権が広範に認められるようになることは、行政調査の域をはるかに超え、憲法第三十五条、三十八条を潜脱することも出てまいるかと思うのであります。
第六には、法令あるいは条例違反に対しては、必要なことを公安委員会が指示できることとして、直罰でないから一見規制が緩和されているようでありますが、この指示権は極めて不明確であり、警察の裁量によって管理者、国民に対する支配や管理を強めることとなるのであります。
第七には、少年指導委員の制度は、少年の学校教育、家庭教育、社会教育の中に警察権力が入ることとなるのであります。
第八には、都道府県に一つ設けられる風俗環境浄化協会は、警察の下請機関の性格を帯び、まさに戦時の統制組合の観があるのであります。
第九には、政令等下位法令への委任事項は七十七に及び、国民の知らない場において規制されるおそれが出てまいり、中には罪刑法定主義に反するものも出てまいると思うのであります。
我が党は、過去から性産業の行き過ぎについて戒め、風営法の合理的な改正を取り上げてまいりました。それは憲法で保障する国民の基本的人権、思想、信条の自由、営業の自由の上に立ってであります。しかるに、今回の全面改正は、少年の非行原因を風俗のみに求め、それをもって少年の教育や保護の基本を行政警察の中に組み入れようとしております。これは明らかに少年法改正を先取りするものであります。
今日、刑法上わいせつという概念が非常にあいまいであり、また性思想、性風俗は不明確なまま取り締まりのみをいたずらに厳しくすれば、かえって不明朗、不健全になっていくなどの多くの重大な問題を持っているのであります。それだけに、風俗関係営業の規制を立法府の論議の外に置くような措置は適当ではないと言わねばなりません。
自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議、民社党・国民連合の修正案及び日本共産党・革新共同の修正案は、それぞれ我が党修正案の考え方と部分的に相入れるところがありますが、原案の流れを修正するに至っておりませんので、それぞれの修正案並びに原案に反対し、日本社会党・護憲共同提出の修正案に賛成するものであります。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/11
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012・大石千八
○大石委員長 次に、経塚幸夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/12
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013・経塚幸夫
○経塚委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提案の風俗営業等取締法の一部を改正する法律案と我が党以外の修正案に反対、我が党提出の修正案に賛成の討論を行います。
近年増大する青少年非行問題の解決は、日本の将来を託す後継者を健全に育成できるかどうかにかかわる重大な問題であります。とりわけ性を商品化するセックス産業のはんらんは、人格、人権の否定とともに、環境破壊と非行の温床となっており、国民から厳しい批判が高まっています。法改正に当たりましては、当然この国民の批判が正しく反映されなければならないことは言うまでもありません。
ところが、今回の改正案では実効ある規制が期待できないのであります。セックス産業などの規制に対して強く望まれておりますのは地域規制でありますが、それは、住民に最も身近で住民の声が反映しやすい市町村が主体になってこそ初めてきめ細かい規制が講じられるのでありますが、改正案では何らその措置が講じられていません。
さらに、現に営業しているものについても変更の措置が講じられなければ環境改善には役立たないこととなりますが、その措置も講じられておらないのであります。これでは、事実上セックス産業を野放しにする結果となることは明らかであります。
第二の反対の理由は、立入検査条項など、清浄な風俗環境、業務の適正化の名のもとに警察の行政権限が拡大され、営業と人権侵害のおそれが生ずる内容となっているからであります。改正案は、新たに法の目的条項を規定し、取り締まりだけでなく、風俗営業の健全育成をもこの法の目的に取り込んでおります。これは法律違反の取り締まりに限っていた警察の活動を拡大して、合法的な風俗営業に対しても警察が積極的に行政指導に乗り出す道を開くものであります。
特に、警察官の立ち入り規定について、「営業所に立ち入ることができる。」と簡単な規定で済まされていたものが、改正案では、「帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」と細かく規定され、従来の立ち入り権だけでなく検査、質問まで明確に規定していますが、これは明らかに警察官職務執行法で規定された警察官の権限の範囲を拡大するものであり、断じて容認することはできません。
また、少年指導委員制度についても、取り締まりを中心とする警察委嘱の少年補導員だけが法的に認知され、地方自治体が行っている六万七千人に上る少年補導員との関係が全く配慮されておりません。これでは健全な青少年の育成に効果が期待できないばかりか、取り締まりだけが先行する危険さえ生ずるのであります。
以上が反対の主な理由であります。
我が党提出の修正案は、政府案に見られる風俗営業、風俗関連営業の規制に名をかりた少年補導、飲食店営業に対する規制を削除して、警察権限の不当な拡大を防ぐ一方、地域規制については、住民に最も身近で町づくりに責任を負う市町村条例にゆだねることとして、既存の営業についても適用が及ぶとするなど、セックス産業に対する規制の効果が十分上がる措置を内容としています。この内容こそが、はんらんするセックス産業の規制を求める国民の要求にこたえるものと確信するものであります。
なお、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議、民社党・国民連合の修正案については、政府案の不十分な点を十分圧すものとはなっておらず、また日本社会党・護憲共同の修正案については、我が党提出の修正案と幾つかの点で共通するものがありますが、セックス産業の有効な規制について異なる点があり、いずれも反対であります。
以上で討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/13
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014・大石千八
○大石委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/14
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015・大石千八
○大石委員長 これより採決に入ります。
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案について採決いたします。
まず、加藤万吉着提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/15
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016・大石千八
○大石委員長 起立少数。よって、加藤万吉君提出の修正案は否決されました。
次に、経塚幸夫君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/16
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017・大石千八
○大石委員長 起立少数。よって、経塚幸夫君提出の修正案は否決されました。
次に、小澤潔君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/17
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018・大石千八
○大石委員長 起立多数。よって、小澤潔君外二名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/18
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019・大石千八
○大石委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/19
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020・大石千八
○大石委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して小澤潔君外二名より、日本社会党・護憲共同を代表して小川省吾君より、及び日本共産党・革新共同を代表して経塚幸夫君から、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
各動議を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。小澤潔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/20
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021・小澤潔
○小澤(潔)委員 私は、この際、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の三党を代表して、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。
案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について善処すべきである。
一 現下の世相にかんがみ、少年の健全な保護育成及び善良の風俗の保持等を図るため、総合的、科学的調査の上少年非行の防止、性病の予防及び売春の防止等を更に徹底する総合的な施策を速やかに講ずるべきであること。
二 本法の運用に当たっては、表現の自由、営業の自由等憲法で保障されている基本的人権を侵害することのないよう慎重に配慮すること。
三 風俗営業者への指導に当たっては、営業の自由を最大限尊重するとともに、管理者制度が営業の自主性を損うことのないよう特に慎重に運用すること。
四 「接待」の意義については、風俗営業の重要な要件に当たるので、その具体的な内容について明確な基準を定め、都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。
五 ゲーム機の規制の在り方について引き続き検討すること。
六 遊技機の技術革新が著しい現状にかんがみ、技術上の規格の検討に際しては、学識経験者及び業界代表等第三者の意見を聴取して尊重し、機械の両一化を招いたり、時代のニーズにマッチした技術開発を遅滞させることのないよう運用に特段の配慮をすること。
七 広告及び宣伝の規制に当たっては、適正かつ効果的に行われるようその基準の明確化を図り、都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。
八 風俗関連営業については、今後とも有効適切な取締りに努めることはもちろん、法の網を逃れる脱法的な形態でこれらの営業が営まれることのないよう人的欠格事的、構造設備規制等本法による規制の対象、規制の内容についても、逐次強化を図っていくべきであること。
九 本法に基づく政令等の制定及び本法の運用に当たっては、研究会等を設置し、地方公共団体の関係者を含め各界の意見を聞くこと等により、法の運用に誤りなきを期すこと。
十 警察職員の立入りに当たっては、次の点に留意して、いやしくも職権の乱用や正当に営業している者に無用の負担をかけることのないよう適正に運用すべきであり、その旨都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底すること。
1 報告又は資料の提出によってできる限り済ませるものとするとともに、報告又は提出書類等については、法の趣旨に照らし必要最小隈のものに限定すること。
2 本法の指導に当たる旨を明示する特別の証明書を提示するものであること。
3 本法の運用に関係のない経理帳簿等を提出させ又はみることのないようにすること。
4 立入りの行使は個人の恣意的判断によることがあってはならず、その結果は必ず上司に報告してその判断を仰ぐものであること。
十一 少年指導委員の活動はあくまで任意の活動に限られるものであり、その内容も少年の犯罪を摘発するのではなく、有害環境から少年を守り、その健全育成を図るものであることを周知徹底すること。
十二 風俗環境浄化協会は、民間における環境浄化の機運を一層盛り上げるためにあくまで啓発活動等任意的な活動を行うものであり、その運営に当たっては、業界との協力を促進しその自主性を最大限尊重するとともに、寄附の強制は行わないこと。また、行政書士等の権限を侵すことのないよう配慮すべきであり、更に、行政改革の趣旨に反することのないようその指定に当たっては、既存の防犯協会連合会等を活用すること。
右決議する。
以上であります。
何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/21
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022・大石千八
○大石委員長 次に、小川省吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/22
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023・小川省吾
○小川(省)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、附帯決議の趣旨と内容の説明をいたします。
案文の朗読によって提案を申し上げます。
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について所要の措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一、警察は、警察法第二条に定める任務からの逸脱をいましめるとともに、職員の法令の厳守寺内部規律の徹底に努めること。
二、政府は、営業の自由、プライバシーの尊重、差別の禁止など国民に保障された権利を侵害することのないよう特段の配慮をはらうこと。
三、少年の健全な育成は、家庭、学校、社会教育をもってその基本とし、警察介入を慎むとともに、児童福祉法、青少年保護育成に関する条例等の遵守に努めること。
四、婦人の人権確立のため、売春防止法の厳正な運用を推進するとともに、公衆浴場法改正の検討を速やかにはかること。
五、少年指導委員制度については、少年法改正の検討の結論を待って、その運用をはかること。
六、本法に基づく公益法人については、屋上屋を重ねるおそれがあり、国民のための民主的な行政改革の趣意に反することのないよう慎重に検討すること。
七、規則・政令の策定にあたっては、地方公共団体及び関係者の意見を十分に参酌するとともに、告示の前に当委員会に報償すること。
右決議する。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/23
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024・大石千八
○大石委員長 次に、経塚幸夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/24
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025・経塚幸夫
○経塚委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。
案文の朗読によりまして趣旨説明にかえさせていただきます。
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
一、警察官並びに警察職員は、憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。
二、風俗関連営業の地域規制について、都道府県が条例を制定する際には、市町村の意見を尊重すること。
三、風俗営業、深夜における酒類提供飲食店営業の地域規制の政令基準を定めるに際しては、都道府県の意見を尊重すること。
四、「接待」の解釈、運用にあたっては、営業者が積極的にその場の空気をひきたてた場合に限定するなど、厳格を期すとともに、警察宵のし意的な判断での業態変更はおこなわないこと。
五、「立入」は必要かつ合理的な場合に限るものとし「立入」に際しては、客にみだりに質問するなどの営業妨害にあたる行為は厳につつしむこと。
六、公安委員会による「指示」は、法令又は法令にもとづく条例の規定に違反した場合に限定すること。
七、既存営業に対する地域規制の適用についても、立法の趣旨に則して、適切な措置をとること。
八、少年補導にあたっては、少年の自主性を尊重し、教育的視点から行うこととし、いやしくも少年の人権侵害にあたることのないよう配慮すること。
九、風俗環境浄化協会に警察業務の代行をさせることは、厳につつしむこと。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/25
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026・大石千八
○大石委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
まず、小澤潔君外二名提出の動議のとおり附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/26
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027・大石千八
○大石委員長 起立多数。よって、小澤潔君外二名提出の動議のとおり附帯決議を付するに決しました。
ただいまの議決の結果、小川省吾君提出の動議及び経塚幸夫君提出の動議は議決を要しないものとなりました。
この際、田川国家公安委員会委員長から発言を求められておりますので、これを許します。田川国家公安委員会委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/27
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028・田川誠一
○田川国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、法律の運営に努力してまいる所存であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/28
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029・大石千八
○大石委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/29
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030・大石千八
○大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/30
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031・大石千八
○大石委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110104720X02219840705/31
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