1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月三十日(金曜日)
午後三時十分開議
出席委員
委員長 愛野興一郎君
理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君
理事 白川 勝彦君 理事 船田 元君
理事 佐藤 誼君 理事 馬場 昇君
理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君
青木 正久君 稻葉 修君
臼井日出男君 榎本 和平君
北川 正恭君 河野 洋平君
坂田 道太君 二階 俊博君
葉梨 信行君 町村 信孝君
渡辺 栄一君 木島喜兵衛君
佐藤 徳雄君 田中 克彦君
中西 績介君 池田 克也君
伏屋 修治君 滝沢 幸助君
藤木 洋子君 山原健二郎君
江田 五月君
出席国務大臣
文 部 大 臣 森 喜朗君
出席政府委員
外務省欧亜局長 西山 健彦君
文部政務次官 中村 靖君
文部大臣官房長 西崎 清久君
文部大臣官房審
議官 齊藤 尚夫君
文部省初等中等
教育局長 高石 邦男君
文部省大学局長 宮地 貫一君
文部省管理局長 阿部 充夫君
委員外の出席者
労働省婦人少年
局婦人課長 川橋 幸子君
自治省財政局財
政課長 小林 実君
文教委員会調査
室長 中嶋 米夫君
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三月二十九日
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一二号)
は議院の承諾を得て修正された。
三月二十九日
昭和四十四年度以後における私立学校教職員共
済組合からの年金の額の改定に関する法律等の
一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)
同月二十六日
四十人学級の早期実現、マンモス校の解消等に
関する請願(不破哲三君紹介)(第一四八九号
)
私学助成等に関する請願(岡崎万寿秀君紹介)
(第一四九〇号)
同(小沢和秋君紹介)(第一五七一号)
育英奨学金制度の拡充強化等に関する請願(小
川仁一君紹介)(第一四九一号)
同(柴田睦夫君紹介)(第一四九二号)
私学助成増額等に関する請願外三件(伏屋修治
君紹介)(第一五七二号)
私学助成の大幅増額に関する請願(森井忠良君
紹介)(第一五七三号)
私学助成の増額等に関する請願(小沢和秋君紹
介)(第一五七四号)
同月二十九日
学校図書館法の一部改正に関する請願(土井た
か子君紹介)(第一七〇〇号)
私学助成増額等に関する請願外五件(伏屋修治
君紹介)(第一七〇一号)
私学助成の大幅増額に関する請願(馬場昇君紹
介)(第一七四四号)
私学助成等に関する請願(藤田スミ君紹介)(
第一八〇五号)
私学授業料助成等に関する請願外二件(中林佳
子君紹介)(第一八〇六号)
は本委員会に付託された。
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三月二十七日
私学助成の充実強化に関する陳情書外一件
(第九七号)
公立文教施設等の整備促進に関する陳情書外二
件
(第九八号)
教科書無償制度の存続に関する陳情書外一件
(第九九
号)
鳴門教育大学に中学校教員養成課程設置に関す
る陳情書(第一〇
〇号)
四十人学級の早期実現に関する陳情書
(第一〇一号)
義務教育諸学校施設整備の国庫補助制度に関す
る陳情書
(第一〇二号)
過大規模学校の解消対策促進に関する陳情書
(第一〇三号)
文教施策に関する陳情書
(第一〇四号)
文化財保存事業に関する陳情書
(第一〇五号)
埋蔵文化財の発掘調査に関する陳情書
(第一〇六号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一二号)
文教行政の基本施策に関する件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/0
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001・愛野興一郎
○愛野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきまして、昨日、本院の承諾を得て内閣において修正いたしましたので、この際、政府からその修正の趣旨の説明を聴取いたします。森文部大臣。
—————————————
国立学校設置法の一部を改正する法律案中修
正
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/1
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002・森喜朗
○森国務大臣 国立学校設置法の一部を改正する法律案中修正点の趣旨を御説明申し上げます。
昭和五十九年度における国立大学の大学院の設置、短期大学部の併設及び附置研究所の廃止並びに国立大学共同利用機関の設置等について定めるため、国立学校設置法の一部を改正する法律案を既に今国会に提出し、三月二十三日の当委員会におきまして提案理由を御説明申し上げたところでありますが、今回、昭和五十九年度において暫定予算を編成することに伴い、この法律案に所要の修正を加えることとし、三月二十九日本会議の御承諾をいただきました。
その修正点の内容は、この法律により国立大学共同利用機関として設置される国立遺伝学研究所に改組転換される文部省所轄機関である国立遺伝学研究所に係る昭和五十九年度の暫定予算を一般会計に計上することに伴い、この暫定予算に基づく債務の負担または支出は、国立学校特別会計の同年度の予算に基づいてしたものとみなし、また、これに係る一般会計において収納した収入は国立学校特別会計の同年度の歳入とみなす措置を講ずることであります。
また、この法律の施行期日を公布の日とするほか、昭和五十九年度に新設される大学院または短期大学部に入学した者の在学年数の計算に関し、それぞれ四月一日から在学していたものとみなす経過措置を講ずることとしております。
以上が、今回の修正点の趣旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/2
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003・愛野興一郎
○愛野委員長 これにて説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/3
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004・愛野興一郎
○愛野委員長 次に、文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。滝沢幸助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/4
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005・滝沢幸助
○滝沢委員 文部大臣、御苦労さまです。
およそ教育の中で教科書が果たす役割は最も重要である、それは論をまたないことでありますが、これを検定しました文部省の責任において、これらの教科書は記載にいやしくも誤りはない、このように理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/5
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006・森喜朗
○森国務大臣 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/6
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007・滝沢幸助
○滝沢委員 もし誤りがありましたら、これは直ちに大臣の責任で訂正ができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/7
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008・高石邦男
○高石政府委員 誤っている場合、誤記、誤植、脱字または誤った事実の記載がある場合には、発行者は文部大臣の承認を受けて必要な訂正を行うことができる、こういう手続になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/8
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009・滝沢幸助
○滝沢委員 自分が誤っておきながら文部大臣の承認もないものだ。検定した方もおかしいわけです。
外務省から西山欧亜局長さんが見えていらっしゃるはずです。そこで、政府が北方領土返還運動に努力されてきましたことを私は率直に評価をしてよろしい、こう思うのです。これは国民的な、また民族的な叫びであります。
ところで、いわゆる北方四島というものは、昭和二十年八月二十八日から九月三日にかけましてソ連軍が不当に占領したものである、こういうふうに日本側は主張しておるわけでありますが、これは昭和三十一年十月の日ソ共同宣言の締結によってもこの事実、この法的根拠は動きませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/9
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010・西山健彦
○西山政府委員 お答え申し上げます。
我が国固有の領土でございます歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島は、我が国が第二次大戦後のサンフランシスコ平和条約で放棄いたしましたところの千島列島には含まれておりません。我が国が現在に至るまでその領有権を有していると主張しておりますのは、以下のような点からでございます。
まず第一に、サンフランシスコ平和条約第二条C項は、日本国は千島列島に対する「すべての権利、権原及び請求権を放棄する。」と規定しておりますけれども、まず前世紀の話でございますが、一八五五年二月七日調印されました日露通好条約というものがございまして、日露開国時の両国間の国境を択捉島と得撫島の間としておりまして、得撫島から北に連なる千島列島はロシア領とするというふうに定めていることが第一でございます。
それから第二には、一八七五年に樺太千島交換条約というものが結ばれておりますが、その第二条におきまして千島列島を定義いたしまして、得撫島以北の十八島の名を列挙しているという事実がございます。サンフランシスコ平和条約で我が国が放棄した千島列島というものには、以上のような理由から北方四島は含まれていないことは明らかでございます。このような見解は、サンフランシスコ平和条約の主たる起草国でもある米国によって明確に支持されていることでございます。
以上のような立場は、先ほど先生御指摘の日ソ共同声明によって何ら変更されるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/10
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011・滝沢幸助
○滝沢委員 ところで局長、昭和二十年八月九日に日ソ中立条約、これを破棄したということでソビエトは宣戦を布告してくるわけです。そして北方領土を占拠したのでありますが、そのソ連の大義名分はただ一つ、一九四五年二月十一日のいわゆるヤルタ協定に基づくということが言われているわけであります。しかし、これは条約法に関するウィーン条約の三十四条によりまして、その規定から見るならば、これは第三国に対しては何らの義務、責任を負わせないということになっておるわけでありますから、これによってこのソビエトの主張は正当化されないというふうに私は理解しますが、そのとおりでいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/11
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012・西山健彦
○西山政府委員 一九四五年のヤルタ協定は、ソ連が対日戦争に参加するその条件といたしまして、千島列島がソビエト連邦に引き渡されることを規定しているわけでございます。ソ連は、先生御指摘のとおり、従来から北方領土問題についてしばしばこのヤルタ協定を引用している次第でございます。しかしながら、そもそもこのヤルタ協定というものは、我が国がその当事国ではございませんし、いかなる意味でもこのヤルタ協定なるものには拘束されないわけでございます。したがいまして、ソ連は少なくとも我が国との関係に関する限り、ヤルタ協定を引き合いに出すことはできないというふうに考えております。
それから、さらにヤルタ協定は、当時の連合国の首脳者の間で戦後処理の方針を述べたというものにすぎないわけでございます。領土問題の最終的処理について決定したものであるというふうに考えることはできません。
なお、この点は米国も一九五六年九月七日の政府公式見解の中で、ヤルタ協定はそれを署名した首脳が共通の目標を述べたものにすぎないというふうに認めておりまして、その当事国によるいかなる最終的決定をなすものでもなく、また領土を移転するいかなる法律的効果を持つものでもないというふうに認めている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/12
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013・滝沢幸助
○滝沢委員 以上のようなことでありますが、文部大臣、そこで、文部省が検定しましたところの小中学校、高校等における各種教科書につきまして、日本の降伏につきましての記事、特に北方領土ないしはサンフランシスコの講和条約というようなことにつきましての記事を比較しまして、大臣のいわば所感、所見を承りたい、こう思うわけであります。
五十九年に使用される予定の東京書籍株式会社が発行しております「新しい社会」、その歴史の二百八十九ページ、これには「ソ連も八日、ヤルタ協定にもとづき、日ソ中立条約を無視して日本に宣戦し、満州に攻めこんで来た……」と書いてあります。そして、これには北方領土等については書いてございません。しかも、シベリア抑留というような歴史的事実も書いてございません。
さらに、五十八年の三月三十一日に検定済みであります学校図書株式会社が発行しましたところの「中学校社会科 歴史」二百七十三ページ、これには「八日にはソ連が日ソ中立条約を破棄し、ヤルタ協定にもとづいて日本に宣戦し……」と書いてあります。これにも実は、千島列島等のソ連によりまする不当な占拠の記事は全然書いてございません。また、シベリア抑留のことも書いてございません。ちなみに、サンフランシスコ平和条約につきましては、この条約で北方領土はこれを放棄したというような旨が書いてございます。
また、同じく五十八年三月三十一日に検定済みでありますところの日本書籍株式会社が発行しまする「中学社会」二百六十六ページから七ページ、これには「八日にはソ連は日ソ中立条約は有効であったが、ソ連は日本に宣戦し満州に進撃してきた」、こう書いてあるわけであります。ところが、これにも北方四島の記事はないわけであります。そして付録の地図にも、北方四島が日本の領土であるというような記載はないわけであります。ちなみに、サンフランシスコの講和条約については、これは五十二カ国がこれに参加をしたと書いてある。
ところが、一方、五十九年に使う予定の清水書院が発行しまする「日本の歴史と世界」、この本の二百六十四ページから五ページ、ここには「八日にはソ連が日本に宣戦を布告し満州、朝鮮に侵入した」、侵略ではない、「侵入した」と書いてある。ところが、これにも北方四島がいわゆる不法占拠されたという記事はございません。ヤルタ協定のことは欄外に書いてあるけれども、これが不法なるものであるとは書いてない。そして、サンフランシスコ講和会議は、いいですか、五十一カ国だと書いてある。ここで一国、計算が合わぬ。
そして、五十八年三月三十一日にこれも検定済みの、改訂されたところの教育出版株式会社が発行しております「改定中学社会」二百七十八ページ、これには「ソ連はヤルタ協定に基づき……」と書いてございます。ところが、これにも北方四島についての正確なる記述がなされていないわけであります。ちなみに、これはサンフランシスコ条約につきましては五十二カ国、そして中国は招かれなかった、こう書いてございます。
そして、同じく五十八年三月に検定済みの大阪書院が出しておりますところの「中学社会」二百六十一ページ、これにはちょっと長く書いてありますけれども、「また八日には、ソ連が日本に宣戦し、満州や樺太、千島を攻撃してきました。ついに日本政府は、八月一四日にポツダム宣言をうけ入れて降伏し、満州事変以来、十五年にわたる侵略戦争は終りをつげました。この戦争は、中国だけでも一〇〇〇万人もの犠牲……」と書いてあります。ところが、日本の犠牲者については全然書いていない。
また、最後にもう一つ出してみますると、これも五十九年度にお使いになる予定の中教出版社が出しておりますところの「日本の歩みと世界」という本の二百七十三ページ、これには「八月八日にはソビエト連邦もヤルタ協定の密約」ということを書いてありまして、「密約によって参戦し……」と書いてございます。ところが、これにも北方四島のソ連の侵略の事実は書いてございません。シベリア抑留のことも、もちろん書いてございません。
ところで、大臣、私はこのように今七社のものを比較したわけでありますが、終戦及びソ連の参戦ないし北方領土のこと、そしてサンフランシスコ講和会議の記事等につきまして、その表現が余りにも差がありますることと同時に、この取り上げ方が何か日本の政府をいかにも悪く書くようなことに満ちている、こう思うのでありますが、大臣の所見はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/13
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014・森喜朗
○森国務大臣 滝沢さんから、大変多岐にわたります御調査の結果をちょうだいいたしまして恐縮をいたしておりますが、その御指摘をいただきました一カ所一カ所ずつ申し上げておりますのも、時間の関係もございますから御迷惑だと思います。
文部省といたしましては、今御指摘をいただきました北方領土につきましては、これは我が国固有の領土であるという立場に基づいて教科書の検定をいたしておるところでございまして、確かにその一ページ、どこどこの項をと抜きますと、今のような御指摘も出てくるわけでありますが、教科書全体を通じまして、例えば地理的分野、歴史的分野、公民的分野というそれぞれの中で、一貫して、今お話をいただきましたようなことが、子供たちのいわゆる心身の発達状況に応じて理解を深めるようにいろいろと記述をしてあるわけでございまして、特に中学校社会科の地理的分野におきましては、我が国が正当にこの領土を保有いたしておる、そういう立場に基づきまして、北方領土の位置、北方領土を構成する島々の名称、北方領土は日本国有の領土であり、日本はソビエト連邦に対してその返還を求めている、この三点を理解ができ得るようにこの中で記述をしているわけでございます。したがいまして、教科書の北方領土に関する記述は、この問題が我が国の国民的課題になっておるということを、生徒や児童に十分理解ができ得るものになっていると考えております。
確かに、この個々のところを拾い上げられますと、ヤルタが書いてあって北方領土が書いてないじゃないかとか、いみいろの御議論は出てくることでありますが、教科書全体を通じてそのことを記述してあるというふうにぜひ御理解をいただきたいと思いますし、ヤルタ協定の記述でもそうでございますが、教科書検定におきましては、従来から歴史教科書にヤルタ協定について記述する場合は、これは密約である旨を記述するように指導いたしておるところでございまして、すべての中学校歴史的分野の教科書では、ヤルタ協定が密約である旨を記述されております。この協定は我が国を拘束しないことが子供たちに理解できるように、そのように記述をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/14
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015・滝沢幸助
○滝沢委員 大臣がそうおっしゃるなら、全部の教科書を一ページから最後のページまで調べなければわからぬことでありますけれども、おっしゃるようなことであるならば、どこに出てくるのですか。私は確かに抜粋しか持ってきませんよ。だけれども、変なところに出てくるはずはないわけです。少なくともこの数ページの間にしたって、その間の事情は書いてないんじゃないか、こう思うのですが、しかしきょうは時間もないですから、では後ほどに、もっと教科書そのものをたくさん持ってきて議論しなければわからぬことになります。
ところで、今のお話のあったことで、解釈が違うと言えばそれまででありますけれども、これらの記事では、ヤルタ協定に基づいて参戦したというソ連のあり方というのは合法化され、したがって北方領土を占拠したことも合法化されて受け取られやすい。もちろん大臣おっしゃるように、これは密約であって日本を拘束するものではないということがすべての教科書に本当に書いてあるなら、それはいいです。もしそうでないとするならば、私は、これらについては今私が申し上げたような心配がある、こう思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/15
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016・高石邦男
○高石政府委員 基本的には先ほど大臣が申し上げたとおりでございまして、例えばこれは東京書籍の歴史的分野の社会科では、「ソ連も八日、ヤルタ協定にもとづき、日ソ中立条約を無視して日本に宣戦し、満州に攻めこんで来た」というようなことで、地理的分野、歴史的分野、公民的分野、それぞれの分野で適当な記述をするという観点で書いてあるわけでございます。したがいまして、地理の教科書にも歴史の教科書にも公民的教科書にも、先ほど先生がおっしゃったものを全部書き込めというようには指導していないわけです。その三つの分野はそれぞれ中学校の段階で教育を受けるわけですから、その教科書を通じて基本的に御指摘のありましたことが正しく理解できるようになっておくということが必要であるという観点で検定をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/16
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017・滝沢幸助
○滝沢委員 その話は承っておきます。
ところで、北方領土をソ連が不法に占拠したという記事をいわば書いてない教科書というのは望ましいものだろうか。今の局長のお話ですと、それはどれかに書いてあるんだという言い方でありますけれども、それは全部の教科書を持ってきて議論をしなければわからぬことでありますから、この時間では無理なことであります。しかし、少なくとも歴史的分野の教科書と銘打っている限りは日本の歴史を書かなくてはならない。その中において、日本の歴史の中で最も重要と思われるあの戦争から終戦に至る記事について、いわば北方領土が不法に占拠されたという事実を書かない教科書というものは望ましいのかどうか、いかがですか。
ちなみに比較さしていただきますけれども、沖縄につきましては、例えば東京書籍が発行しておりますところの小学校社会科六年生の用いるものに、「沖縄は、独立した日本の国土でありながら、アメリカ軍の基地とされ、人々は占領下の苦しい生活を続け、一九七二年にようやく日本へ復帰することができました。しかし、いまもなお、アメリカの重要な軍事基地として、広大な軍事施設が置かれています。」こう書いてあります。
ところがこの北方領土につきましては、例えば沖縄にアメリカの基地は今も残っている、こういうふうに書いてあるんでありますが、北方領土のことが仮に書いてありましたものにつきましても、ここにソビエトの軍事施設が日に日に増大されているというような記事はちっとも書いてないとすれば、これはいかがなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/17
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018・高石邦男
○高石政府委員 具体的に歴史的分野、地理的分野、公民的分野、それを並べて議論しないと、今の議論はなかなかすれ違いになろうかと思うのです。基本的には、歴史教科書における記述についていろいろな意見が存在することは事実でございます。しかし、少なくとも北方領土問題については、先ほど大臣が答弁したような、要するに日本の固有の土地であり、不法に占拠されておるし、それを現に返還の要求を求めている、その島の位置はここにあって、名前はこうであるということがわかるように書いてあるわけでございます。ただ、歴史の分野の説明ではそれが抜けているとか、公民的分野についての教科書ではそれが不十分である、そういう議論が行われるとすれば、その部分についてはそういう点があることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/18
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019・滝沢幸助
○滝沢委員 大臣、義務教育ないし高等学校教育の中で歴史教育ですね。この教育の使命、目的は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/19
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020・森喜朗
○森国務大臣 日本の先人たちがたどってまいりました日本の歴史を正しく、客観的に事実を子供たちが心身の発達に応じて理解を深めていくことだろう、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/20
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021・滝沢幸助
○滝沢委員 子供たちが正しく心身の発達に応じて学ぶというのでありますが、結構なことであります。しかし、大臣、私は、日本の国の運命をかけてこのことを申し上げておるわけであります。歴史を客観的に正しく学べといっても、二千数百年にわたる日本の歴史のすべてを学び知るには、一生涯かかってもようできぬことであります。なれば、その要点を学ぶべきだろうと思いますが、その中で私の一つの信念であり、また主張でありますから、大臣が同感されないのは結構でありますけれども、少なくとも歴史教育としての歴史と純粋学問としての歴史は立場が違うべきだ、こう思うのですよ。何も歴史だけではなくて、国語教育だってそうだ。文字がわかれば、今問題になっておる悪書みたいなものでも——文字を教えることができ、文章を教えることができればそれでもよろしいということにはならぬと思います。教材となるものは選択さるべきだ、そういうふうに思うのでありますが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/21
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022・森喜朗
○森国務大臣 おっしゃるとおりに、日本の歴史そのものすべてということになれば、それこそ二千年を超える歴史であります。小学校であれ中学校であれ、短い義務教育の過程の中ですべてを教えるということは大変なことだろうと思いますから、日本の歴史の中で一番必要、大事なところを教えていくだろうと思いますが、若干私の私的な立場をちょっと言わしていただくならば、教科書を教えていくということではなくて、基本的なところは子供に理解をされて、後、先生がその教科書を中心にどのように先生の考えておられる歴史観などを教えてくださるのか、そこは先生の教え方によるのではないか。そのガイドラインといいましょうか、基本的なものとして教科書というのはあるのだろう、私はそのように感じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/22
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023・滝沢幸助
○滝沢委員 まことに賢明な御意見だと承りました。
ところで、御存じのように、この教科書等の記載につきまして、これは過ちでありますからこれの抹消を求めるという裁判がされ、また仮処分の申請等もなされておりますが、万一文部省が敗訴をするような場合がありましたならば、国はこれに対してどのような措置をとり、また、特に教育の現場についてどのような指示をされるお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/23
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024・高石邦男
○高石政府委員 教科書の検定に当たりましては、特に歴史教科書等についてはいろいろな見方、考え方が存在するわけでございます。
そこで、まず基本的には我が国の歴史を正しく理解させて、国民としての自覚を育てていく。そして我が国における国際関係、そういうものを正しく理解してもらう、こういう基本的な立場に立って歴史教科書がつくられているわけでございます。したがいまして、そういう観点から教科書の著者は教科書をつくってほしいとまず願うわけであります。そして検定に当たりましては、先ほど申し上げたような観点で検定をしていかなければならないと思っているわけでございます。
したがいまして、裁判で現在いろいろな形の訴訟がなされておりますけれども、いずれにいたしましても、基本的には文部省の持っている検定の制度、これは法律上、憲法で認められた制度の中での存在であるということが既に裁判所の見解としては明らかになっている。そして要は、後は、その検定における運用の問題、仕方の問題ということになりましょうから、その運用につきましては公正に、中正に、そして、日本国民を育てるという観点で教科書の検定をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/24
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025・滝沢幸助
○滝沢委員 わかりました。
そこで、今教育のことにつきましてのいわゆる臨時審議会をつくろうということでありますが、この新しくできまするこれらの諮問機関に、教科書の検定のあり方について、これを検討していただくという用意がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/25
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026・森喜朗
○森国務大臣 先般のこの委員会でも、木島先生初め皆様方からいろいろな各般にわたる御質問をいただきまして、その際にも申し上げましたように、新しい審議機関におきます審議の課題は、新しい審議機関の皆様方でお考えをいただくことでございます。したがいまして、私の方から、こうした問題を検討していただきたいなどと言うことは、今の立場では越権になる、私はこう考えております。
ただ、あえて文部大臣という立場で申し上げさせていただくならば、教科書の問題はやはり検定制度、先ほど高石局長から申し上げたように、日本の憲法の範囲の中で、教科書検定法の中でこの制度が運用されておるわけでございますので、文部省固有の事務である、このように私自身は考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/26
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027・滝沢幸助
○滝沢委員 そうすると、今の検定制度は非常に完璧なものだというふうに御理解なのであるかどうか。
そして、時間がありませんから一緒にさせていただきますが、西山局長、あなたの所管でないのかもしれない、これは総理府の分かもしれませんけれども、お聞きのような状態なんです。この教科書のあり方、この教育のあり方が北方領土返還運動の阻害要因にならぬどうか、この点、あなたの私見にわたっても結構、どうか一言だけ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/27
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028・西山健彦
○西山政府委員 北方領土を返してもらうということは、国民全体の強い熱望でございます。したがいまして、その熱望の根拠が那辺にあり、我々の立場がいかに正当なものであるかということは、正しく広く国民の間に周知させるように御措置いただきたい、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/28
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029・森喜朗
○森国務大臣 教科書の検定制度は最高のものであるとはなかなか言い切れるものではございませんが、しかし、その制度の法律の中でできる限りの努力を皆さんでしていただくことだと思うのです。
ただ、今日、日本の教科書の検定制度は、著者、編集人あるいは発行所、それぞれが自主的におつくりをいただいて文部省が法律によって検定をするという制度でございますから、できるだけ客観的な表現をするように、事実の間違いがあれば、一足す一が三になっておればこれは間違いだということが言えますが、主観においては、いわゆる歴史だとか考え方というものは確かに、これは違うと言えば違うし、正しいと言えば正しいという見方ができると思うのです。先ほど先生御指摘になりました、沖縄のことですとかなり辛らつに書いてあるではないか。しかし、確かに。まだ米軍がいるということは事実でありますから、これは間違いだとは言い切れない。そのときにやはり北方領土のことと並べて書くという配慮があれば、ある程度子供たちにも理解ができることなのかもしれませんが、そこはやはり著者、編集の考え方があるわけでございまして、教科書全体を通じて理解をしてもらえるようにしかできないのが私は現状だろうと思うのです。
現に、ここにいる白川さん、船田さん、さっき河野さんもいらっしゃった、二階さん、私などは、大体戦後、小学校二年、三年ぐらいから来たのですが、私の小学校、中学校のころなどは、北方領土のことなんかは全然書いてありませんでした。しかし、今日的課題になると、やはり国民が北方領土の問題についてはこれだけの意識を高めておる、そして、どの教科書にもこのことを書かなければならぬような事態になっている、そういう社会の変化や日本全体の国民の考え方というものを常に調整をするといいましょうか、調和をしながら教科書は編集されるべきであろう。文部省といたしましても、やはり編集する編集人、著者あるいはまた検定するそれぞれの人たちが最大限に、事実を正しく、そして、例えば歴史であるならば、本当に子供たちの心身の発達に応じて正しく理解ができ得るように、そのことを常に、教育であるということを頭に置きながら工夫をしていただきたいな、こう文部大臣としては望むところが切であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/29
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030・滝沢幸助
○滝沢委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/30
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031・愛野興一郎
○愛野委員長 これにて滝沢君の質問は終わりました。
山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/31
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032・山原健二郎
○山原委員 臨時教育審議会の問題で文部大臣に、先日の文教委員会並びに予算委員会の論議を聞いておりまして、文部大臣と中曽根総理の答弁に多少のずれがあるように思うので、この点について正確にしておきたいものですからお伺いするのですが、先日のこの文教委員会で有島議員の質問に対して、この審議会は教育基本法を前提にしないで全く自由に論議をしていただくんだ、こういう答弁があったのですが、これは正確でしょうか、まず伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/32
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033・森喜朗
○森国務大臣 ただいま国会に提出をさせていただいております臨時教育審議会の設置法案は、「教育基本法の精神にのっとりこと明記をいたしておることは御承知のとおりでございます。したがいまして、私といたしましては、新しい審議機関の皆様方によって、先ほども申し上げたように、これからの教育全体に対して御議論をいただくということになるわけでございますが、私は、教育基本法のその精神の中でぜひ御論議をいただきたい、こういう立場で期待をいたしておるところでございます。
ただ、御審議をいただく委員の皆様方には、できる限り御自由な御論議をいただくというのは、私はやはり当然なことであろうと思います。文部大臣といたしましても、また、この法律を提出させていただきました立場では、教育基本法の精神の中でやっていただきたいということは当然期待をいたしているところでございますが、委員の皆様方の議論はできるだけ自由濶達にやっていただきたい、私はこのように申し上げたと記憶をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/33
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034・山原健二郎
○山原委員 法律の中身に入るつもりはまだありませんけれども、既に閣議で決定した法律の中には、「教育基本法にのっとりこという法律の文言として明確に書かれておりますし、また、先日の予算委員会におきまして中曽根首相は、これは三塚さんに対する答弁ですが、憲法を守り、基本法のもとにこれを実行していくということで、憲法や教育基本法に触れるという考えは全くありませんと、これは総理そのものは非常に明確に言っているわけですね。
そうしますと、さらに森文部大臣は、今度のいわゆる総理の私的諮問機関である文教懇が、「基本法や教育に関する特定の見解にとらわれず、」以下の見解を「整理した。」というふうに出ている、これを尊重されるという立場にあられるわけですが、もう一度お伺いしますけれども、今度の臨時教育審議会は、憲法、教育基本法にとらわれず審議すると。希望しますけれども、「しかし」という言葉が必ずあなたの御答弁につくわけですからね。この点は明確にしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/34
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035・森喜朗
○森国務大臣 憲法、教育基本法のもとで御議論をいただくということは私の期待でもありますし、そのことは法律にも明記してあるということもしばしば申し上げております。そしてまた、御審議をいただいた結果政府に対して諮問をいただく、それをまた政策として具現化していく場合も、当然教育基本法のもとに私どもは推進をしていきたい、こう考えております。ただ、御議論をいただく方々には、できるだけ自由に御濶達な御意見を交わしていただくことの方がよりいろいろな角度のお考え方が出てくるのではないか、そのように私は申し上げておるわけでございまして、法律の中には当然、教育基本法の精神のもと、こう申し上げているわけですから、私としてはそのことは期待をいたしております。ただ、審議する皆様方に余りそのことを拘束するのはいかがなものかな、私はこのように思っている、こう申し上げてきたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/35
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036・山原健二郎
○山原委員 ここで話される討議、論議、議論、これがまとめられて恐らく答申とか報告になると思うのですね。基本法を離れて論議ができる、自由でございますという立場になりますと、そこで論議されたことが答申されました場合に、教育基本法に逸脱しあるいは教育基本法の精神に反するものが答申として出てきた場合どうなるかという問題が出てきますね。しかも、法律によって、政府はこの答申を尊重しなければならないという大変厳しい法律になっているわけですから、そうしますと一体どうなるのかということですね。その辺は明確にしておかないと、総理大臣と文部大臣の見解が前提のところで違うということになると、これはとても審議ができない状態になるわけですから、その点はもう一回伺っておきますが、そういうことでよろしいですか。明らかに文相と首相の見解は違います。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/36
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037・森喜朗
○森国務大臣 私は、総理との見解は違っていないと思っております。またおしかりをいただくかもしれませんが、私ども政府といたしましては、議論は憲法や教育基本法のもとでやっていただきたい、こういう期待は持っております。そしてまた、答申をいただいたものにつきましては、当然法律として国会で御議論をいただくことも出てくるわけでございますし、そのことも当然教育基本法のもとの中で御議論をいただくということになるかと思います。ただ、議論を進めていただく先生方には、できるだけ率直にいろいろなお話をしていただいた方がいいのではないかと私は思うから申し上げておるわけであります。
ちょっと山原先生の時間をとってしまって恐縮ですが、例えばこの間、先生と私とNHKの討論会に出させていただきました。先生が高等学校の全入というお話をなさいました。私はそのときに、全入ということになれば義務化するのですか、そうなると教育基本法の改正になるかもしれませんねとちょっと申し上げた。先生は大変赤い顔して怒られました。そんなこと言っていないんだ、希望する者が行けばいいんだ、こういうことでございますから、先生のお考えからいえば義務化ではないのかもしれませんが、御議論の中で、高等学校へもう九四%を超えるようになったら義務化にしたらどうかという御議論が出てくるかもしれませんでしょう、審議委員の皆さん方から見れば。そういう御議論が出てくることは悪いとは言えないのじゃないでしょうか。しかし、そうなれば義務教育ということになって年限が延びるわけですから、当然教育基本法に触れてくることになると私は思います。しかし、そのことは、そういう議論はやはり濶達に、義務教育の年限やあるいは就学年齢や、これは例えばの話ですよ、そういうようなことを自由に御論議をいただく、そのこと自体は私は決して誤りだとは思わないのです。そういうことを私は申し上げておるわけでございまして、教育基本法の枠を外れてやれとかそのことを期待しておるとか、そういうことを申し上げておるのでは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/37
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038・山原健二郎
○山原委員 時間が藤木洋子議員の主質問の中での関連質問でやっておりますので、理事会並びに委員長の御了承を得て冒頭に問題の性質上やらせていただいているわけですが、今NHKの討論の場面のことを言いましたけれども、私は高等学校における準義務化の問題を出しておりまして、法律的な義務制ということは言っていないのです。そういうことをおっしゃるならば、自民党と新自由クラブが合同する場合に協定を結ばれておりますが、あのときには六・五の協定があるのですね。六・五ならこれも十一年、そういうことになりますから、そういうことをあのNHKの討論の場所でやるつもりは私はなかったわけでございますけれども、しかし問題は、教育基本法の立場に立ってやるのだということを総理が少なくとも予算委員会の席からずっと言い続けてきているわけですね。ところが森文相の場合は、それを望んでおるのだけれどもということで自由に論議をしていただきたいという立場、そして一方では、文部大臣といたしましては中教審の答申を尊重します、ただ白紙でやるのではなくて路線はありますよということを、この間も三塚議員に対して答弁をされています。教育基本法の枠は外れて中教審の枠ははめられる、私はそのことを心配しているのです。それから、臨時行政調査会の答申もこれを尊重します、こういうふうになってきますと、教育基本法の枠は外れて、臨時行政調査会の答申やあるいは中教審の答申、さらにはこの間の首相の私的諮問機関である文教懇の答申も尊重されるということを同じ場所で文部大臣は言われておるわけですから、この点を考えますと、やはり一方的な見解の押しつけになるのではないか。教育基本法は外れて論議をしてもいいのだが、しかし三つの枠はありますよ、こうなってくると、この審議会の中身というのは一定の枠のもとに行われるのではないかという心配をするのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/38
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039・森喜朗
○森国務大臣 私は、今山原先生の御指摘をいただくような、そういう心配はないと思っておるのです。たまたま教育基本法といいましても、大変幅広くいろいろな事柄が織り込まれた法律でございますし、戦後の日本の民主主義が定着をして、その成果によって今日の子供たちの教育も大変諸外国から見ても注目になっておるとこれは評価を受けている点もあるわけでございますし、自由と民主主義と平和という大きな柱の中で今日の教育が完成をしてきておる、私はこう思うのです。したがって、先生が御心配をなされておられるのを私が勝手に想像して申し上げて大変恐縮でありますが、教育基本法そのものを崩して戦前回帰のようにするとか、全く形骸化してしまうというようなことのおそれをおっしゃっておられるのかもしれませんが、私は制度上のことを申し上げているわけでありまして、例えば学制みたいな問題はもう少し自由に御論議をいただいたらどうだろうか。その中で最終的に結論をおまとめになるところで、教育基本法という枠があるわけでございますから、そういう枠の中で当然総理に対して答申がなされるだろう、私はこう思っておるのです。ただ、議論をなさることについてはそうしたところまで全部抑えてしまうことはいかがなものかな、私はこういうふうに申し上げておるわけでございまして、先生が御心配をなさるような、そういうことはないと私はこの際はっきり申し上げておくことができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/39
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040・山原健二郎
○山原委員 時間の関係で、あなたのおっしゃったことを指摘だけしておきます。
有島議員に対しては、教育基本法を前提としません、自由に討議してもらいます、これは一つはっきりしているわけですね。ところが、中教審の尊重、それから文教懇を一つのベースにする、こういうことを言っておられまして、三塚さんに対しては、「決してこの新しい機関は」、この審議会のことですが、「決してこの新しい機関はゼロから出発するものではなくて、いろいろな角度で検討をしたすばらしい中教審の答申がございます、これらを一つの集大成として、この基盤の上に成り立って議論を進めていく。」と明確に言っておられます。「あるいは総理のもとにございます、井深さんが中心になっていらっしゃいます文化懇、」「これを一つのベースとして、二十一世紀の日本民族としてふさわしい教育のあり方を、それぞれの権威の幅広い方々に御検討いただきたいここうなってきますと、もうこれ以上言いませんが、明らかに教育基本法の枠は外されて、そうして文教懇あるいは中教審を基礎にしてやるのだということになりますと、これは明らかに一定の見解の押しつけになるのではないか、私はその心配をしておりますので、これはこれ以上きょうやりませんけれども、その点が一つです。
もう一つは公開の問題です。ここにいらっしゃる木島議員の方からも先日ありましたけれども、なぜ非公開にするのですか。なぜ教育の問題を論じるときに、いろいろの権威を持っている幅広い人たちが国民の目の前で公然とやらぬのですか。これは何としても納得いきませんね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/40
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041・森喜朗
○森国務大臣 会議をそのまま公開にいたしますと、やはりそこの御発言の中にいろいろ制約が出てくると思います。これも考え方でございましょうから、こうして国会のようにいろいろな方々がお聞きをいただく、これもやはり公開の意義はあるだろう、私はこう思っております。しかし、新しい審議機関において御自由な御論議をいただくという意味では、むしろその集約された意見を一定の期間を置いて、あるいは物が一つまとまってくる過程の中で、その概要を国民の前に明らかにしていく。だれがみんなの目の前でああ言った、こう言ったということは、いろいろな意味でかえって発言に制約ができてくるのではないか、こういうふうに私は申し上げておるわけでありまして、むしろ、先ほど申し上げたような概要を国民の前に明らかにしていくことの方が、私はより自由濶達な意見の討論ができる、このように考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/41
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042・山原健二郎
○山原委員 かつて教育委員が公選の時代は、教育委員会を開く一週間前には住民に対して告示をいたしまして、そしてオープンの席上で教育を論じたのです。もちろん、人事問題等につきましてのプライベートなことに属する問題については秘密会をやりましたけれども、戦後教育の出発点は全部公開なんです、教育問題は。そこで堂々と所信を発表してそして一致点を見出すというのが、これが少なくとも、もし考えられるとするならば審議会の教育に関する、しかも二十一世紀に向かって教育の改革をやるというならば、私は当然公開にすべきである。そういう密室でやるからこそ問題が起こってきているわけでしょう。これは何としてもこの問題については公開原則。第一、中曽根首相その人が、国民に開かれた論議、開かれた広場と言っているでしょう。なぜ公開にしないのか、これは当然問題になるところだと思いますが、この場合、例えば意見が食い違った場合にどうします。多数決でやりますか、あるいは多数決でやるとすれば、人選のときに政権党が多数派を制するならば、この審議会は公正を期することは全くできません。それから、仮に意見が食い違って両論併記あるいは三論併記ということをしました場合に、それが答申として出てきた場合に、これを取捨選択する力は政権党です。そうなりますと、結局、審議会といっても採決の仕方によっては明らかに政治介入になりかねない中身を持つわけですから、この点について私は大変心配するわけですが、この点はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/42
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043・森喜朗
○森国務大臣 先生の御心配はそういうことでございますが、例えば、教育の機関はすべて公開だと先生おっしゃいましたけれども、中教審は公開制をとっておりません。しかし、中教審はいろいろな角度でいろいろな議論を今日までして、大きな成果を私は得ておると思います。それを受けて文部省も具体化をするように今日まで努力をしてきた、私はこう信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/43
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044・山原健二郎
○山原委員 だから高石さん、文部大臣のそばへ行かれて中教審が非公開だとおっしゃったと思うのです、近づいていったからわかったのですけれども。実際中教審が密室でやったから問題があるのですよ。中教審の今までの答申の中身、国民の意見を分断する中身があるからこそ、中教審答申というのはスムーズにいかないわけでしょう。
そういった問題も含めまして、教育の問題で二十一世紀に展望を開く大改革をやる、国民的合意を得るというならば、これは明らかに公開にすべきである、そして少なくとも一致した問題を実行していく、満場一致制をとるべきだと私は思っています。これはまだ法案の審議に入っておりませんから、その性格についての議論として私は申し上げておきたい。
最後にもう一つ、顧問制をとられるのですか、何で顧問が必要なんですか、それを一言伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/44
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045・森喜朗
○森国務大臣 顧問制をとるかとらないかも、新しい審議機関の皆様方にお考えをいただくことでございます。したがいまして、今後新しい審議機関の先生方あるいは会長がお考えになることだろうと思います。ただ、運営を適正化していくために、いろいろな意味で経験の深い方々から会長が御助言を受けられるということは誤ってはいない、私はこう思っております。
それから、先ほど答弁漏れをいたしましたけれども、それを多数決制にするのかあるいは少数意見をどうするのかというような御指摘がございましたが、これも審議機関ができて会長や審議機関の先生方がお考えになることでございまして、少なくとも私どもが国民の皆さんの中から幅広くお選びを申し上げるわけでございますから、私は適切な取りまとめをなさると思いますし、反対の中で多数決をとって、そしてその中での少数意見を取りまとめたり多数意見を強引に持っていくというような、そういうことは私はなさらないであろうということは期待もいたしておるところでございます。
高石さんがにじり寄ったのではなくて、私がちょっとこっちへ来てくれと言って聞いたのです。確認する意味でお呼びをしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/45
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046・山原健二郎
○山原委員 時間の関係でこれで終わりますが、なお、この問題については今後とも審議を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/46
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047・愛野興一郎
○愛野委員長 藤木洋子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/47
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048・藤木洋子
○藤木委員 中曽根首相は、教育改革を唱えられまして、臨時教育審議会を設置しようとしておられますけれども、教育条件の整備に責任を負わなければならない政府がそのことさえ怠って教育改革はない、このように私は思います。そこで私は、教育条件の整備に関して幾つかの質問をさせていただきたいと存じます。
まず第一に、大規模改修問題ですけれども、非木造の大規模改修に対する国庫補助制度の創設は、学校教育の安全、子供たちの安全を確保する上で極めて重要であり、新規に昭和五十八年からスタートをしたことは、多くの関係者からも歓迎されております。私は、この大規模改修対策をより実りあるものとして定着させていくことが重要であるとの立場から、幾つかお伺いをしたいと思うわけです。
私もこの二月に、実は淡路島の洲本市にございます中川原小学校と由良小学校へ行ってまいりました。中川原小学校は改修されたばかりで、由良小学校はこれから改修を予定しているところですが、由良小学校へ行って驚きましたことには、廊下を傘を差さなければ歩けないような大きな雨の漏るしみがついておりまして、至るところ水があふれて廊下が洪水のような状態になる。屋上にも上がらせていただいたのですが、屋上の割れ目のところにはもう土がいっぱい埋まっておりまして、そこにススキのような草が生えていまして、私を案内してくださった洲本の教育委員会の方がそれを引き抜こうとしますと、校長先生が、それはやめといてくれ、それが生えているだけでも少しは雨を防いでいるのだというようなことをおっしゃるような、大変な状態になっているわけです。まさに大規模改修というのは緊急な課題だというふうに思います。
そこで、改修が必要とされている対象校、その施設はどのくらいあると見込んでいらっしゃるのか、その実態を伺いたいと思います。国庫補助対象の有無は問いませんので、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/48
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049・森喜朗
○森国務大臣 今、数字の方は管理局長、ちょっと調べておりますから……。
藤木さん御指摘どおり、五十八年度からこの大規模改修事業補助というのを始めておりまして、学校教育の円滑な実施を確保する、あるいは建物の質、屋根の防水、外壁等の回復、いろいろな意味で大変喜ばれているところでございますが、現在の対象地域は、離島と豪雪地帯と台風常襲地帯、地震防災対策強化地域の四地域に一応限定をいたしておるところでございます。
厳しい財政状況の中でもございますので、できるだけ拡大をしていきたいというのは当然私どもも希望いたしておるところでございますが、他の地域に比べまして立地条件あるいは気象条件等が厳しく、学校建物が傷みが激しいところ、こうした地域に当面限定をさせていただいたわけでございます。今先生が御指摘をいただいた淡路島の場合は、この四地域の中に入ると私は思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/49
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050・阿部充夫
○阿部政府委員 対象校についてのお話でございましたが、現在、今回のいわゆる四地域でございますけれども、全国の中の都道府県の数で申しますと、九一%を覆っておるわけでございますが、学校数では五五%の学校がこの地域に含まれているというような状況でございます。面積で申しますと、大体十五年を経過したものがこの対象になるというふうにざっと計算をいたしますと、この対象地域の中での対象面積は、千六百万平方メートルぐらいの面積のものが対象になるというふうに推定をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/50
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051・藤木洋子
○藤木委員 では、そのうちの国庫補助の対象とされるのはどのぐらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/51
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052・阿部充夫
○阿部政府委員 ちょっと言葉が足りなくて失礼を申し上げたかもしれませんが、全体で十五年経過をしたものが三千八百万平方メートルでございますが、そのうち対象の地域になっておりますのが千六百万平方メートルぐらい、こういうふうに推定をしております。したがって、その千六百万平方メートルが制度的には大規模改修の対象になり得るというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/52
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053・藤木洋子
○藤木委員 昭和五十八年度、五十九年度で、そのうちどれぐらいが改修されるという計画をお持ちか、お知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/53
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054・阿部充夫
○阿部政府委員 予算の額から申し上げますと、昭和五十八年度予算では一応十一億円余りのものを計上いたしたものでございます。初年度でございますので小さく芽を出したというものでございますが、昭和五十九年度はこれを五倍にまでふやしまして五十七億ほどの予算を計上いたしております。昨年五十八年度に実際にやりました実績といたしましては、学校数にいたしまして百六十八校、金額にいたしまして、予算のやりくりをいたしまして十一億をさらに上回って十八億ほどの金額で百六十八校の大規模改修を実施いたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/54
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055・藤木洋子
○藤木委員 今実施していらっしゃるその大規模改修事業は対象地域が限定されておりまして、森文部大臣もこれはできるだけ枠を拡大もしていきたいんだということをおっしゃったのですが、子供の安全という点からいいまして、また学校施設を社会に開放する、こういった意味からいきましても、必要な改修も補修対象になるという点からいきましても、地域指定にこだわるのは根拠がないんじゃないか、このように思うわけです。地域指定の撤廃は関係自治体からも非常に強い要望が上がっておりまして、六十年度からはぜひ全国に拡大できるように取り組んでいただきたい、六十年度にはこれを撤廃しまして地域拡大を実現してはいただけないだろうか、こんなふうに思うわけですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/55
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056・森喜朗
○森国務大臣 藤木さんの御要望されることも、また私も同じように、できるだけ地域の拡大をしたいというのは当然のことだと思いますが、先ほども申し上げましたように、やはり財政がこういう時期でもございます、それから先生も淡路島をお歩きになったのであり、いろいろな意味で自然のハンディが違うと思うのですね。ですから、先ほど申し上げたように、離島でありますとか気象条件、そうしたことの悪いところからまずできるだけ優先的にやってあげることは、こういう財政状況の中での優先度とは矛盾していないと私は思っております。
今後はできる限り拡大をする方向を私どもも当然期待いたしていくわけでございますが、当面のところはこの四地域の枠の中で進めていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/56
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057・藤木洋子
○藤木委員 ぜひ期待どおりに腕も振るっていただきたい、こんなふうに思うわけです。
あわせまして、義務教育の諸学校だけではなく、幼稚園であるとか高等学校、こういったところにも対象を広げていくべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/57
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058・森喜朗
○森国務大臣 ただいま申し上げましたように、むしろ対象地域の拡大をやることが先だと思いますので、幼稚園、高等学校につきましても当然私どもとしては希望としてやっていきたいな、こう思いますけれども、当面はむしろ対象地域の拡大を最初に進めていくことの方がより現実的であろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/58
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059・藤木洋子
○藤木委員 しかし、文部省の概算要求を拝見させていただきますと、文部省御自身は私が今申し上げたような立場で予算要求をしてきていらっしゃるわけですから、財政当局の厳しい姿書はわかるのですが、実現できるようにぜひとも積極的な御努力をしていただきたい、そんなふうに思います。再度、重ねてこの願いについての態度を表明していただきたいと思うのですが、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/59
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060・森喜朗
○森国務大臣 できる限り努力をしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/60
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061・藤木洋子
○藤木委員 補助率は三分の一でございますけれども、いま一つは起債の措置が認められていないという問題です。
自治体財政も逼迫していますだけに改修費が負担となりまして、なかなか計画が進まないという例も出ております。この起債を認めていただく措置をぜひとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/61
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062・小林実
○小林説明員 ただいまの御質問に対しましてお答えを申し上げます。
御承知のとおり、地方債は建設事業の財源に充てられるものでございまして、維持修繕の範囲にとどまるものにつきましては起債対象とならないものでございます。特に義務教育施設につきましては、地方交付税におきまして修繕費を見ております。ですから、一般的には各地方団体の一般財源で対応すべきものでございまして、起債対象とすることは適当でないというふうに考えております。しかし、地方団体の財政状況等によりましては、経費が大変多額になりまして困難と思われる場合もあります。
そこで、個々の地方団体の財政事情、これを十分検討しながら、いわゆる建設事業と見られるもの、起債対象になじむ事業に限って起債措置を講じたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/62
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063・藤木洋子
○藤木委員 今の御答弁、私は本当に不満足でございます。本当にお役所だなというようなことを感じさせていただきましたけれども、でも、これは教育の場なんです。そして、実際、由良小学校の大規模改修は六千万円の規模の事業なんです。けれども、洲本市当局は、この六千万円が出せないということで、当面一千万円しか計上できない、こういう事情にあるわけです。
私は、これは教育の場であるだけにただごとではないというふうに思いますので、そういった決まりにこだわって教育をないがしろにするということがないように文部省と自治省がしっかり協議を進めていただきまして、ぜひその起債の措置もとっていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/63
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064・森喜朗
○森国務大臣 先ほど藤木さんも御指摘ございましたが、五十八年度から始めたものでございまして、これは学校を新規に建てるということではなくて改修ということがねらいでございます。しかも、新しく始めましたこの補助事業につきましては大変喜ばれているところでございます。しかし、離島、豪雪地帯あるいは台風の常襲地帯、こういうふうになっておりますから、自治省にも私どもはでき得る限り起債の要望をこれからもしていきたい、こう思っておりますけれども、今申し上げたようなそういう非常にハンディを背負った、気象条件の悪いということもありますから、またそういう意味では交付税全体を自治省がいろいろな角度で見てくれていることでもあるわけでございます。もちろん、この事業に対して起債を見るということはありませんけれども、全体的にそうしたいわゆる状況の悪い、立地条件の悪いところについては交付税等でいろいろと見ているわけでございますから、やはり設置主体の地方公共団体ができ得る限り判断をしていく、何を優先にやるかというプライオリティーの問題だろう、こう私は思うわけであります。文部省といたしましては、今藤木さんから御指摘がありましたようなことにつきましては、今後とも財政当局や自治省にできるだけ要望は続けていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/64
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065・藤木洋子
○藤木委員 文部大臣も自治省の方に御要望いただくというふうに私、理解いたします。今の御発言の中で、自治大臣かと思われるような御発言がありましたのは非常に残念なんですが、やはり文部大臣は教育の立場から自治省に対しては要望をしていただきたいということを重ねてお願いさせていただきます。
次に、私学助成の問題で御質問をさせていただきたいというふうに思います。
日本の公教育の発展にとりましても私学の果たす役制が極めて大きいことは御存じのところでございます。改めて申し上げるまでもないわけですが、私学の充実を願う声がまさに国民的世論となっていることは、母川国会に寄せられております私学助成の請願書名の数、これによっても明らかだと思うわけです。ところが、臨調行革に基づきまして私学助成が大幅に削減をされ、教育研究条件の悪化と父母負担の増大にはね返りつつあるということは非常に残念だと思うわけです。
そこで、私は特に高校以下の私学助成の問題について質問をさせていただきます。
私自身、私学の出身でもございますし、今日の私学が置かれている状況はまことに厳しいもので、人ごとではないというふうに感じております。例えば、東京都には百一クラス、五千二百六十人の超大規模私学高校がございますけれども、一クラスの生徒数が最高六十七人にもなっているわけですね。教育費で見ましても、昭和五十八年度で兵庫の場合、私学高校の入学時納入金は最低で十一万円です。最高六十五万円、平均で二十五万五千円です。初年度納入金は平均が四十九万六千円と、教育条件の公私間格差、さらに私学間格差が拡大しております。
そこで、国会決議に沿って二分の一国庫補助の達成に向けて努力するという考え方に変わりはないかどうか、まずお尋ねをさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/65
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066・森喜朗
○森国務大臣 今御指摘ありましたように、私立学校は我が国の学校教育におきまして大変大きな役割を果たしてきております。そういう意味で、私学助成も私どもは日本の教育にとって最も大事なことだ、こう思って、法律の制定もいたしたところでございます。しかし、財政がこういう事態になりましたし、また臨調等の答申もございましたので、当面は抑制せざるを得ない、こういう判断をいたしたところでありますが、長期的な観点からいたしましては、やはり私学法の精神を今後とも貫いてまいりたい、こんなふうに考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/66
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067・藤木洋子
○藤木委員 ただいま大臣は、当面縮減をしなければならない状態なのだというふうに言われましたけれども、それでは、私学助成の抑制削減の方針は今後ともずっととり続けるということではないと理解してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/67
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068・森喜朗
○森国務大臣 臨調の答申がありまして、当面ということでございます、財政再建期間中縮減をしていかざるを得ない、こういう判断をいたしたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/68
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069・藤木洋子
○藤木委員 それでは、どのような事態になれば是正をされるのか、その点も伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/69
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070・森喜朗
○森国務大臣 財政の好転ということも、これは政府にとりましても、また国民も期待をいたしているところでございますし、目下財政改革もあわせながら、日本の財政が少しでもゆとりができるようにみんなで努力をいたしておるところでございます。
同時にまた、臨調等の私学に対しての指摘もございますし、その辺についての話し合いもいたしておかなげればならぬことでございますが、法律の精神は——私どもが自分たちでつくった法律でございます。私学振興財団法は昭和四十五年に制定をされまして、そのときには、あそこにいらっしゃいます坂田先生が文部大臣として大変な御努力をされたことでもございます。私立学校振興助成法はまさに議員立法としてそれぞれの立場でみんなが努力したことでございまして、私学が本当に日本の学校教育の中で大切なものなんだという立場を私どもは何としても貫いていきたい、こう思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/70
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071・藤木洋子
○藤木委員 今のお話では、六十五年の赤字国債脱却というふうに言っているわけですから、最低それまでは抑制削減が続くということになるわけですか。こんなふうに認識してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/71
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072・森喜朗
○森国務大臣 臨調の指摘、そして政府全体の抑制の方針が貫かれている限りは、これはやむを得ない措置であるというように考えます。しかしながら、助成のあり方については、今文部省あるいはまたそれぞれの機関が、もっと適切なる助成の方法はないだろうか、そうしたことを検討いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/72
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073・藤木洋子
○藤木委員 高校以下の助成は、来年度予算案では一〇%削減をされているわけです。しかし、幾つかの自治体では独自にこれを上乗せいたしまして対処しようということが試みられておりますが、文部省はその動向を掌握されていらっしゃるでしょうか。知っておられたら説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/73
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074・阿部充夫
○阿部政府委員 高校以下の私学に対する助成につきましては、先生御案内のところでございますけれども、所轄庁である都道府県がこの補助を行っておるわけでございまして、国といたしましては、都道府県の助成水準にそれぞれ格差があるあるいは全体としてまだレベルが低いというようなことから、それを引き上げようということで国庫の補助の仕組みを行っておるものでございまして、そういう性格のものでございます。
昭和五十九年度については、極めて厳しい国の財政事情ということもございまして、先ほど大臣のお話にもございましたように、その他臨調答申等を総合的に勘案いたしまして一〇%減ということに相なったわけでございますが、国が行っておる財源措置全体としては、地方交付税関係の交付税措置の方で六十八億円ほどの増になっておりますので、補助金と交付税と全体を合わせた総額としては、前年にほぼ近いというような数字の財源措置が行われておるわけでございます。
ただいま御指摘の各都道府県における実態はこれから調査をするという時期でもございますので、私ども十分は承知をいたしておりませんけれども、幾つかの県について当面問い合わせをしたところによりますと、非常に規模の大きい、例えば東京都でございますとか大阪府あたりのところでは、一〇%あるいはそれを超えるような総額の伸びを示しているところもございます。他の県等におきましては、一%、二%といった程度の伸びにとどまっているというようなケースもあるようでございます。
まだ全体を把握いたしておりませんので、ごく概況、主なことだけ申し上げさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/74
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075・藤木洋子
○藤木委員 私が調べましたところでも、少なくとも東北の三県など六つの県では減額していますが、それでも国の一〇%には及びません。多いところでも五%未満ですね。関東、東海、近畿など六つの都府県では増額、また幾つかの県では昨年どおり据え置くという措置がとられております。このような自治体の努力というのは、積極的な意義を持って私学関係者や父母から大変歓迎をされているところです。
ところが、実際に国の動きを見ておりますと、人件費、給与などにいたしましても補助金についても、国の水準に倣わなければだめだというようなことで、さまざまな介入が今やられているわけですね。私学助成もこのようなことと同様であってはならないと思うわけです。自治体の自主的な判断、独自の施策といったものを尊重して、クレームをつけないようにやっていただきたいと思います。今の御答弁ではそれが期待されるのではないかと思うのですが、その点いかがですか。もう一度お答えをはっきりいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/75
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076・森喜朗
○森国務大臣 お言葉を返すようですが、介入しているというのはどの点を指していらっしゃるのかちょっとわからないのですが、今管理局長からも申し上げましたように、地方の自治体にも、高等学校以下等について大変御努力いただいていることは承知をいたしております。しかし、管理局長が説明をいたしましたとおり、確かに私学助成全体としては、高等学校以下等は一〇%滅でありますが、交付税においてはプラスの措置をしておるわけでございまして、全体的にはそうしたように前年度とそう大きな変わりがないように措置をいたしたところであります。そういう一つのバックグラウンドがあって、自治体もまた努力をしてくれたものである、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/76
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077・藤木洋子
○藤木委員 また、各都道府県が独自に授業料などに対する軽減措置をとっているわけですけれども、これは現在何県で実施しているか、お知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/77
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078・阿部充夫
○阿部政府委員 各都道府県において、授業料等の生徒の納付金に関する軽減事業ということで特別の補助の仕組みをとっておりますところは、私ども承知しておるところで三十九都府県でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/78
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079・藤木洋子
○藤木委員 三十九都府県というと、ほとんど大半でございます。このような独自の施策というのは父母からも非常に歓迎されているところでありますし、これはぜひ尊重していただけるとありがたいと思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/79
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080・阿部充夫
○阿部政府委員 各都道府県がそれぞれ自主的な判断においていろいろな補助、援助等の事業を行っておるわけでございますので、そのこと自体はそれぞれの県で判断をし、実施すべきことであろうと思っておるわけでございまして、文部省として具体に干渉するとかそういったぐいのこと、先ほど先生がおっしゃいましたが、経常費補助金の配分方法等につきましても効率的な配分というようなことについて考えてほしいというような注文はつけておりますけれども、あと具体にどうするかというようなことは、まさに各都道府県で十分地域の実態に合わせて御判断いただくことだ、そういう構えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/80
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081・藤木洋子
○藤木委員 では次に、マンモス校の問題について質問をさせていただきます。
大規模分離校問題で予算案の内容と今後の対策に絞って質問をさせていただきたいと思いますが、来年度予算で初めて大規模校分離の方策がとられることになったわけです。それで当面、昭和五十九年、六十年、この二年間の補助ですけれども、対象校はどのぐらいあるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/81
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082・阿部充夫
○阿部政府委員 私ども過大規模校、こういう言い方をしておりますけれども、過大規模校の解消につきましては、従来から児童生徒の急増対策の一環といたしまして用地費補助制度を設け、その中で措置をしてまいったわけでございまして、それによって毎年三百校程度分離新設が行われておるわけでございます。
今回問題となりましたのは、そういう急増指定期間中にその措置ができなかったというようなもので、そのためいわば落ちこぼれと申しましょうか、そういう関係で、そのうち急増の指定が切れてしまったというようなケースでございます。これらにつきまして従来の急増用地取得費補助制度の年限を延長するという形で、当面五十九、六十年の二年間についてはその該当校について対応しようということに考えておるものでございまして、現在のところ、これに該当するものといたしましては約五十校という計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/82
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083・藤木洋子
○藤木委員 そういたしますと、当初二百九十七校、これは文部省の実態調査によるものですけれども、これに照らしましてもその六分の一にしかすぎないということになるのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/83
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084・阿部充夫
○阿部政府委員 二百九十七校中の五十校でございますので、計算上おっしゃるとおり六分の一ということかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/84
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085・藤木洋子
○藤木委員 残りの学校についてはいつまでにどのように解消されるおつもりか、その御計画を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/85
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086・阿部充夫
○阿部政府委員 先ほども申し上げましたけれども、これまで、こういったいわゆるマンモス校解消は急増対策の一環として講じてまいったものでございます。この急増用地費補助制度本体の方の、これまで毎年三百校程度やってきたといったぐいのものが昭和六十年限りで期限切れとなるわけでございまして、六十一年以降をどうするかという基本的な問題があるわけでございます。そういった関係から、いろいろ現在の財政事情その他総合判断いたしました結果、五十九、六十というこの二年間につきまして当面対象校五十校についての処理を考えよう、残りの部分につきましては、全体の基本的な制度をどうするかという問題が六十一年以降にございますので、その段階で全体についての対策というのを検討したい、こういうふうに考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/86
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087・藤木洋子
○藤木委員 そうしますと、二百九十七校以外の残り、千八百四十七校に当たると思うのですが、これについても同じようなお考えですか。いわば無策ということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/87
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088・阿部充夫
○阿部政府委員 昨年の四月現在で調査をいたしました数字が、先生おっしゃいました二千百四十四校という数字でございますが、その中で千五百三十四校、約七〇%でございますけれども、これにつきましては、先ほど来申し上げております本体の方の補助制度によって対応ができるもの、あるいは近隣通学区と学区の調整が計画されておって、それによって解消できる等々のことから解消が既に見込まれているものがその七〇%を占めておるわけでございます。それから、ただいま申し上げました二百九十七校というものを新たに対象として解消計画を考えておるわけでございまして、したがいまして、さらに残りました約三百校が現在解消の計画が立たないというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/88
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089・藤木洋子
○藤木委員 とにかく、大規模枝分離の予算措置がなされたということの意義は大変大きいというふうに私どもは評価しております。しかし、これが先生方や父母や子供たち、これらの願いにこたえるものでなければこれは何にもならないわけですね。その点では極めて不十分だと言わざるを得ないというふうに思います。
それで、私は地元のマンモス校を調べてみまして、改めてその実態のひどさを痛感しております。宝塚の宝梅中学校の場合ですけれども、これは生徒がふえるたびに、ちょうど昭和四十六年、四十八年、五十三年、五十五年、この四回にわたりまして条件の悪い土地に建て増しをしてまいりました。校舎間格差、これは段差があるわけですね。これをつなぐ廊下はすべてもう階段でつながれるようになっておりまして、非常に複雑な構造です。給食室から最も遠い教室へ食事を運ぶのに十五分かかるんですね。運動場も一人当たり六・九平米と大変狭うございます。ですから、球技による窓ガラスの破損、これを防ぎますために、ガラス窓のそばにずっと金網がめぐらされているのですけれども、それがもう校舎の窓ガラスから手を伸ばせば届くような距離に張りめぐらされているわけです。私、鳥がごに飼われている鶏の気持ちがわかるような悲しい思いがして帰ってきたわけですけれども、こんな状態です。またロッカーの設置まで割愛をした教室の設計になっておりますから、生徒の持ち物は全部机の横に袋をぶら下げまして、その中に入れてあるというような状態ですから、とても先生が机間巡視などできるような状態ではございません。これが過密校の教育現場の実態でした。
尼崎の立花中学校は四十二学級です。塚口中学校は四十一学級のこれはマンモス校ですけれども、市は分離新設ではなくて、他の三つの中学校との校区再編で乗り切る、こういう構えを示しております。しかし、受け入れの三中学は、その結果三年後にはいずれも三十学級以上になります。当の立花、塚口中学は、二年後にはもう三十九学級と三十八学級になることが決定的なわけです。こうした実態にありながら、自治体当局も財政難、用地取得難もありまして、なかなか分離に踏み切れないのが今日の状態なんです。ですから、尼崎市の教育委員会では何と言っているか御存じですか。四十学級を超えなければ分離しない、こんなふうに言っておられるのですが、なぜでしょうか。どうしても私は国の積極的な対応、財政援助が不可欠になっている、このように思います。
そこで伺いますが、二年間は用地費補助に限定されていますね。この二年間でも、後期の、例えば六十年度については見直しをするというようなことは考えておられないでしょうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/89
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090・阿部充夫
○阿部政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、昭和六十一年度以降において、そもそも今解消の予定になっていると先ほど申し上げました千数百校のうちの相当数の学校に関する補助の制度も、原則として今の仕組みではなくなることになっておるわけでございますので、その時点の問題というのを私ども大事に考えておるわけでございまして、その六十一年度以降にそういうケースのものと、それから現在申し上げておりますような二百九十七校のうち残ったものと全体を合わせて、これについての抜本的な対策を文部省としてもぜひ考えたい、そしてまた財政当局等とも相談をして固めていきたい、こういう構えでおるわけでございます。したがいまして、それまでの暫定的ないわばつなぎの期間として五十九、六十年度について五十校の措置をしたいということでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/90
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091・藤木洋子
○藤木委員 そういたしますと、どうしても昭和六十一年度からの対策では少なくとも文部省が概算要求をされた線ですね、児童生徒急増地域並みの補助、これを確保するという必要があるんじゃないですか。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/91
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092・阿部充夫
○阿部政府委員 用地費につきましては、この地域につきまして、現在、先ほど申し上げました対象校につきましては急増地域並みの補助が新しい制度としてできることになったわけでございますので、先生おっしゃることは建物の補助の話かと思いますけれども、建物の補助の話でございましょうか。——この校舎の補助につきましては、既に義務教育諸学校については二分の一の国庫補助という仕組みがあるわけでございますので、一応それによって対応していただく、こういう構えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/92
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093・藤木洋子
○藤木委員 分離対策というのは精神主義でやるわけにはまいりません。文部省がイニシアを発揮してせっかくレールを敷いてきたわけですから、それが本当に実効あるようにするためにぜひ対処していただきたい、そういう方向で御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/93
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094・森喜朗
○森国務大臣 先ほどから管理局長が申し上げておりますように、いわゆる急増用地の取得費に対する補助のあり方、ちょうどこれが期限切れになりますので、それを一つの機会に用地の問題についてはできる限り善処をしていきたい。
もうちょっと申し上げれば、この過大分離校に対して適切なる指導ができ得ないか、こういうことについては事務当局に十分詰めさせたい、こう思っております。それまでにつきましては、今過渡的措置と申し上げたように、いろいろな制度を駆使しながら進めていただきたいと、文部省はむしろそれを望んでおるわけでございますが、単に用地だけではなくて通学区域の問題、地域住民の感情、この学校を単に物理的に割るということはなかなかいろいろ難しい事情もあるようでございまして、文部省としてはでき得る限り求めに応じて積極的な対応をしていきたい、こう考えておるところでございますが、義務教育諸学校の設置主体は地方の教育委員会でございますので、そうしたいろいろ困難な事情の中で御苦労いただいていることは十二分に承知をいたしております。現下の補助の対象の中でできる限りの措置をしていきたい。今後につきましては、もう一度繰り返しますが、急増用地の見直しをいたします際に過大校に対します適切な方向を見出せるようになお一層の努力をしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/94
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095・藤木洋子
○藤木委員 そういう方向で一層の検討をしていただきたいと思います。
さらに、この際、財政力指数による制限、これをやめまして、該当する市町村すべてを対象となるようにすべきではないかと思うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/95
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096・阿部充夫
○阿部政府委員 昭和五十九、六十の二年間につきましては、暫定的に財政力指数〇・七以下の財政力の弱い市町村に優先的に対応したいという仕組みにしたわけでございます。このような仕組みになりましたのは、既に急増指定期間が切れました後二年間は〇・七以下のものについてその急増指定期間と同じように補助の対象とするという制度がございますので、今回はそれをさらに二年延ばしたという方式でございます。そういう点も考えまして、〇・七ということをそのまま措置をしたわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、六十一年度以降の全体の計画を考える際にはもちろん全体について考えていきたいということでございまして、財政力指数によって差をつけるということを現在考えているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/96
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097・藤木洋子
○藤木委員 いま一つの問題は、三十一クラス以上が対象とされておりまして、法令上から言う過大規模校、つまり二十五クラス以上の学校をどうするかという点が全く無視されているということです。二十五クラス以上三十クラス以下の学校が現在小学校、中学校別でどのくらいあるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/97
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098・阿部充夫
○阿部政府委員 五十八年五月一日現在の学校基本調査でございますが、二十五クラス以上三十クラス以下の公立の小学校が二千六百八十七校、中学校が千二十二校、合計いたしまして三千七百九校となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/98
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099・藤木洋子
○藤木委員 学校規模の適正化に努めると言われるのであれば、二十五クラス以上も当然分離の対象にすべきではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/99
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100・阿部充夫
○阿部政府委員 先生からただいまお話がございましたように、小中学校の法令上の規定がございまして、これは標準でございますが、十二学級から十八ないし二十四学級くらいまでというようなことになっておるわけでございます。したがいまして、二十五学級ということになれば標準を上回るということは確かでございまして、文部省といたしましても、これまでこの標準を上回っているものを標準以内におさめるように分離新設等をしたいという予算要求に対しましては、優先的に補助の採択を行ってきたわけでございます。
ただ、今回の全体計画を考えるに当たりましては、諸般のこういう問題を検討していきます際に、先ほど大臣から申し上げましたように全体としての経費の問題もあれば、あるいは具体的に用地がそもそもあるのかないのか、あるいは学区のあり方をどうしていくのか、いろいろな問題が絡んでまいるわけでございますので、各市町村の具体の計画というものと離れて全体計画を立てることは難しいということもございますので、各市町村が実際に、この規模が過大なために特に支障が大きいと見られております三十一学級というものを具体の対象として考えているということも勘案をいたしまして、当面の実際の計画そのものとしては三十一学級のものを対象に積極的な計画を立てることにいたしたわけでございます。
したがいまして、一般的な補助の制度におきまして二十五学級を超えているものを分離するというものにつきましては、そういう申し出があれば優先的に採択をしているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/100
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101・藤木洋子
○藤木委員 しかし、実際には二十五学級以上の学級、これが学級数にいたしまして実に四〇%に及んでいるわけです。ここまでいきますと、これがむしろ主流になっていると言っても言い過ぎじゃないと思うのです。私は、過大校がこのような主流になるのではなくて、やはり教育行政の責任でこれを正しい、適正規模を主流にするということが今すぐやられなければならないことじゃないかと思うわけです。いかがですか。もう一度前向きの御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/101
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102・阿部充夫
○阿部政府委員 先ほどから申し上げていることの繰り返しになるかと思いますけれども、二十五学級を超えるものにつきまして、従来の急増補助制度の中で用地費の補助もし、建物の三分の二の補助もいたしまして対応してきたものでございまして、各都道府県から出ているものにつきましてはそれによって対応してきたわけでございます。今回の措置につきましては、当面どうにも片づかなくて困っているというケースのものをまずは対象として措置していくというのが現実的な行政施策であろうということで、そういう対応をいたしておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/102
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103・藤木洋子
○藤木委員 不満足ですが、次の質問に移ります。
次は高校問題ですが、一つは転入学問題で質問をさせていただきたいと思います。
高校教育は、後期中等教育といたしましても国民的教養の基礎を完成させるという重要な役割を持っているわけで、高校への進学率も今年度で九四%に達しておりますし、準義務教育の様相を呈している。日本の公教育上非常に大きな位置になっております。しかしながら、受験競争の激化とも相まって、今日高校教育はさまざまな問題を抱えていることも周知のところですが、私は、当面緊急に打開すべき幾つかの問題について質問をさせていただきます。
転勤者の子供の転入学問題についてお聞きしたいと思いますが、急増対策に最も関連が出てくると思われることですけれども、文部省は行政管理庁の勧告を受けて行政指導に乗り出されておられますが、それでもこの転入学問題がなかなか解決をしない、その原因がどこにあるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/103
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104・高石邦男
○高石政府委員 御指摘のように、五十九年三月一日に初中局長通達で各都道府県に対する指導をやったわけでございます。したがいまして、効果を上げるのはこれからだと思います。今までは各県定数の枠外にしないとか、それから転入学の試験を各学期に一回というような取り扱いではなくて年に一回であるとか、それから一年、二年はするけれども三年はしないとか、いろいろな意味でチャンスが非常に少なかったわけであります。こういうこともできるだけふやしてほしいという指導を、つい三月一日にしたばかりでございますので、効果が出るのはこれからだと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/104
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105・藤木洋子
○藤木委員 私は、一つは、受験態勢のもとで学校間格差が広がり、転入学を困難にしていることがあると思います。二つ目には、受け入れる態勢、学校が決定的に不足しているということです。三つ目には、その上に転勤者が増大をしている、矛盾をさらに激しくしているということが挙げられると思います。これらが基本的なもので、加えて今お話のありました受け入れ側の消極的対応、これも指摘されなければならないとは思っておりますが、文部省の指導内容は、こうした私今申し上げた三つの根本的な問題、ここにメスを入れるのではなくて、現状をそのままにしておきながら受け入れ側の対応だけを問題にしてこられたんじゃないでしょうか。これでは解決へのレールを敷くことは非常に困難だというふうに思うわけです。
そこで、ちょっと労働省にお伺いしますけれども、転勤の実態、単身赴任が大変ふえているという状態について調査をしておられるかどうか、把握していらっしゃったらお示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/105
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106・川橋幸子
○川橋説明員 労働省で把握しております単身赴任の実態でございますが、私どもの雇用動向調査の中にあらわれております単身赴任の割合、転勤者の中で家族と同行せずに夫だけが単身赴任する割合でございますが、年齢全体では二割ほどでございますけれども、四十代、五十代の中高年齢の方々になりますと三割前後に上るというふうに把握しております。
こうした単身赴任の理由につきましては、私どもの把握しておりますところでは、第一に子供の教育の問題、それから持ち家の問題、それと親の同居の問題、これらが理由として多いというふうに把握しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/106
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107・藤木洋子
○藤木委員 ただいまの御答弁にもございましたとおり、確かにそのとおりなんです。生産性労使会議の調べによりましても、単身赴任の理由のトップは子供の教育で、これは実に九九・一%にもなっているわけですね。財団法人労務行政研究会、ここの調べによりましても、九五・三%が子供の教育、そして進学というふうになっているわけです。
そこで、まず第一に、希望者が全員入学できるような高校の新増設、これを思い切って進めること、そして受験競争の緩和を図ることが大切だというふうに私は思います。同時に、二つ目には、転勤を当然視する風潮、これを是正することが大事じゃないかというふうに思うわけです。特にこの転入学は、教育的な観点から対処すべきだというふうに考えるわけです。
高校二年生と小学校四年生の二人の男の子を持っている私の友人が国外への転勤を命じられました。現在の住居を引き払われましてワンルームマンションを借りて、そこに御長男お一人住まわせましてドイツへ転勤していかれたわけです。このような状態が子供にとってもその親にとっても、よかろうはずがありません。
三月二十二日の朝日新聞の投書欄にも「熟慮を要する高校の転入学」ということで、大変悲惨な経験をされた方の投書が載っているわけですけれども、高校二年生の長男を転勤に伴って転校させた、ところがその間に大変な問題を起こしまして、登校拒否になったりあらゆる非行を重ねて大変なことになった。ところがまた、今度は下の長女が高二になったときにもう一度転勤命令が出た。今度はその長女を連れて転校させる気にはなれないで、結局主人に単身赴任をさせることにしたということが投書されております。このような状態というのは、子供自身に対する非常に大きな影響を与えるものですから、企業側に対しても、中高生などの子供を抱えている者、こういう者への転勤は避けるように行政指導ができないものだろうか、こういうことを私は考えておりますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/107
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108・川橋幸子
○川橋説明員 単身赴任の問題につきましては、単身赴任をなさる夫の側の問題とそれから残された側の妻のといいますか、家族の問題とあろうかと思います。単身赴任の家庭ではいろいろお困りな点が多いということは、私どもも承知しております。それからまた、単身赴任のこうした状態につきまして、企業が人事管理上あるいは企業の従業員の福祉施策上のいろいろな配慮が労使間で話し合われたり工夫されたりしている、そういう例もあることを承知しておりますので、私どもとしましては、まずその実態把握を進めた上で、その結果を踏まえまして検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/108
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109・藤木洋子
○藤木委員 文部省といたしましてはどうですか。労働省に対して、教育的見地からぜひそういう企業に対する指導を行えという要望をされるお気持ちはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/109
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110・森喜朗
○森国務大臣 日本人の企業に対するあるいは会社に対する忠誠心みたいなものがありまして、とても難しいところだと思うのです。ここにいらっしゃる先生方の中でも、恐らく土曜、日曜日に選挙区に帰って子供さんにお会いするというようなケースも非常に多いわけで、いい悪いは別といたしまして、仕事のためにはまず家庭を犠牲にするというのは日本人の感覚なんです。今日の企業の中にもやはりそれを当然視しているような考え方があると思うのです。
今、高石局長が申しましたように三月一日に通達を再度いたしまして、この効果は恐らくいい方向にあらわれてくるだろうと期待をいたしております。転勤者に対して学校にある程度枠を残しておいてください、そういうようなこと、あるいは教育委員会に行ったら、すぐこういう学校に入れますよ、こういう情報がうまくできるようにしておいたらどうだろうか。こういうようなことも文部省から都道府県教育委員会には、折を見ていろんな形で指導しているわけでありますが、さっき藤木さん御指摘ありましたように、どうしても偏るわけです。どうしても行きたい学校に入る。そこへ集中してしまう。逆に言えば、そこの子供たちがなかなか外へ出ない。お父さんが転勤しても、その学校がいいところだから出たくないということになる。そこに需要と供給のバランスがうまく保たれていかないこともあるのです。これは強制できるものじゃございませんので、とても難しいところでございますが、大事な問題でございますから何かいい工夫がないかということで次官通達もいたしましたし、都道府県教育委員会を中心にできるだけいい仕組みができるように、これから文部省としても積極的な対応をしていきたい、あるいは指導もしていきたい、こう思っているところでございます。
なお、今労働省に対しても御要望がございましたが、端的に申し上げて、学校は企業側の事情に合わしてやるというわけにはいかないわけなんです。そこが大変難しいところでございます。そうはいいながら、企業が勝手にやっていることだから知らぬとは言い切れるものでもございませんので、家庭がしっかり確立をしておって、そして御主人なり、あるいは奥様の場合もありますが、勤労意欲がわいてくる、これが一番大事なところだと思います。やはり企業側も、子供を持つ親の立場をもう少し重視していただきたいな。急場しのぎで、はい、大阪へ行け、札幌へ行けと言うのじゃなくて、もうちょっと前広に事前に内示ができないものだろうか。あるいは、会社にとってはこの人間は有能だというふうな判断をしますが、家庭状況はどうなっておるのか、それによって会社側も十分に配慮をしてあげていただけるような、今日の日本の企業はそれくらいのゆとりを持っていい、そういう時代に入っているのではないかなというようなことを私個人としても考えますので、今後労働省あるいは関係省庁あるいはそうした経済関係の諸団体に対しましても、そういうことを十分配慮し得るように私どもからも要望していきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/110
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111・藤木洋子
○藤木委員 ぜひそれは実現を図っていただきたいというふうに思います。
労働省に重ねてお願いをさせていただきますが、ただいま大臣からの答弁にもありましたように、文部省からも要望がございましたら、労働省としましても、子供の問題ですからぜひとも協議をしていただきまして、しかるべき対策を進めていただきますようにお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/111
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112・川橋幸子
○川橋説明員 私、課長でございますけれども、今文部大臣から大変お力強い御答弁もあったようでございます。関係省への協議それから関係の団体へのお話、文部省さんとしてもお進めになるということでございます。私も帰りまして、きょうの先生の御質問あるいは文部大臣の答弁、よく私どもの上司に報告いたしますし、労働省としても考えてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/112
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113・藤木洋子
○藤木委員 よろしくお願いをいたします。
では次に、高校の急増期対策についてお伺いをいたします。
全国的には、昭和六十四年をピークに高校進学者が急増するわけでございますけれども、どのぐらいふえるというふうに見ていらっしゃるでしょうか。数をお知らせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/113
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114・高石邦男
○高石政府委員 五十八年度で高等学校の生徒数が約四百七十万、これが六十四年度に参りますと五百六十八万、百万近い生徒数の増ということが現在の進学率の推移で計算した場合に見られるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/114
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115・藤木洋子
○藤木委員 この数は、十八クラスの標準学校規模にいたしますと九百四十四校分ぐらいに相当する大変な数ですね。この急増対策をどうするか、高校生に十分な教育保障を確保する立場から進める必要があると思いますが、文部省としてはどのような計画をお持ちでしょうか、お聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/115
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116・阿部充夫
○阿部政府委員 ただいま初中局長からお答えいたしましたような高校生徒の急増が六十四年までの間、ずっと高まっていくわけでございます。
これらの対策につきましては、各都道府県の教育委員会におきまして、私立の高校もございますので、私学との調整を図りながら、さらにまたこの急増のピークを過ぎますと、また子供の数が減っていくという時期を迎えるということもございますので、その後の急減期の状況というものも踏まえなければならないというようなことで、そういうものを踏まえた上での新設、あるいは既設校の学級増、あるいは場合によっては一部では一学級当たりの生徒数を若干ふやすというようなことでの対応を図っておられるものでございます。
文部省といたしましては、公立高校の施設の整備という観点から申し上げますと、各都道府県の教育委員会が具体に立てられました整備計画を毎年聴取をいたしまして、それに対応する補助金の確保をいたしておるわけでございまして、そういう形で必要事業量につきましては、毎年各県の要請に即したものを確保しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/116
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117・藤木洋子
○藤木委員 それでは伺いますが、各都道府県の計画、問題になるのは特に大都市圏でございますけれども、その計画をつかんでおられると思うのですが、それはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/117
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118・阿部充夫
○阿部政府委員 各都道府県からいろいろ状況を聞いておるわけでございますが、こういう性格のことでございますので、いろいろその年その年によって逐次数字が変わっていくというようなこともございまして、かなり流動的な面がございます。したがいまして、概数で申し上げさせていただきますが、私どもが耳にしておるところでは、新設校が五十九年度以降急増のピークが来ます前年の六十三年までの間の五年間で約百七十校程度、全国で新設の計画があるというふうに聞いております。なお、そのほかに学級増等によって対応するケースもございますので、必要な校舎建設の事業量といたしましては、五年間で二百七十五万平米ということが大体の計画としてなされておるというふうに承知をしておるわけでございます。それらに対応する補助金の予算措置を文部省としては年々講じていくことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/118
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119・藤木洋子
○藤木委員 その百七十校見込まれているうちの幾つか、例えば東京だとか大阪、神奈川、こういったところにつきまして、その都府県の計画はどんなふうになっているか、ちょっと簡潔に御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/119
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120・阿部充夫
○阿部政府委員 各県の計画そのものが、先ほど来申し上げましたように、いろいろな要素から流動的でもございますので、私どもの方も非常に厳密な、詰めたものは承知しておらないわけでございますが、若干の例を申し上げさせていただきますと、東京都の場合には、高等学校の新設を行うという計画のほかに、既設校について臨時的な学級増、さらには一学級当たりの既設校の生徒定員を四十五人から四十八人に三人ほど臨時的にふやすというようなことでの対応を考えているというふうに聞いております。また、大阪府の場合には、これは若干変わったケースでございますけれども、高等学校の新設ではなくて既設校の分校を幾つかつくるというような形での、いわば新設に類することを行う、同時に、学級増や学級当たりの定員増というようなことをあわせて考えているというようなことは、東京の場合とほぼ同じようなことであろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/120
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121・藤木洋子
○藤木委員 ですから、各県で若干の相違はありますけれども、共通しているのは、新設校を極力抑制して学級増や学級定員の増、また私学依存、こういったことで乗り切ろうとしております。その背景には、ピークが過ぎますと減少に向かうからその間の一時しのぎだという、これは私、非常に安易な考え方じゃないかと思うのです。財政難も手伝いまして経済効率優先ということだけが貫かれている、およそ教育的な考え方はない、それからは非常にかけ離れたものだというふうに思います。
同時に、文部省も昭和六十年度までは高校建設費の補助、これを続行する意向ですけれども、その後の急増期に対する対応、これは決まっておりませんね。端的に言えば、成り行き任せではないでしょうか。急増期の子供たちは我慢せよ、教育条件が悪化しても構わない、こういう考え方で臨むのだ、こういうふうに理解してよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/121
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122・阿部充夫
○阿部政府委員 先生のお話にも出てまいりましたけれども、急増期を過ぎますと子供が減っていくということは、これは事実としてあるわけでございますので、それに対応する校舎を全部新しく建ててしまって、あとがらんどうになってしまっては困るというような配慮がある程度働くことは、これは私は事の性格上やむを得ないことだろうと思っております。しかしながら、子供の教育上できるだけ問題がないようにという配慮をしつつ、各県がそれぞれ計画を立ててこられるわけでございますので、文部省としては、それに最大限対応するという構えで対応しておるわけでございます。
なお、六十一年度以降の問題についてのお話がございましたが、確かに六十年度までで一応この制度は切れることになっておりますが、大体六十四年がピークでございますけれども、いろいろなこういう計画というのは数年前、一年、二年前ぐらいまでに全体をつくってしまうというのが普通でもございますので、進行の状況を見ないと何とも言えないわけでございますけれども、その六十年までの進行の状況を見た上で、六十一年度以降予算措置がさらに必要かどうかという問題については検討したい、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/122
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123・藤木洋子
○藤木委員 その時期にならなければということですと、非常に不安なわけですね。今からでも見通しは立たないわけではありません。
きょうは時間がございませんので、私、急減対策については述べるつもりはありませんが、急増期につくったそういった施設というのは、急減期こそ教育の内容を充実させるために使えるわけですから、これは大いにやるべきだと思います。
今いろいろおっしゃいましたけれども、結局はやむを得ないということではないのでしょうか。そのような態度では子供たちの教育に責任を負っているとは言えないというふうに私は思います。このような姿勢をとる背景の一つには、今日、高校生が置かれている深刻な実態を余り御承知にはなっていないのじゃないかというふうに思いますが、この間の調査に基づきまして具体的に質問をさせていただきます。
公立高校の新増設が抑制されてくるために必然的にマンモス校化をしておりますが、学級定員増にならざるを得ないまさにすし詰めで詰め込み、こういった状態になっています。特に深刻なのは学級定員増です。幾つかの自治体の計画では、一クラス四十七人から四十八人となっていますが、埼玉県は四十五人から、これも今までやっと維持してきたものを、四十六人にするという案を出していますが、このことがいかに非教育的か。また、既に四十七人クラスを実施している尼崎の高校の場合です。四十五人学級のときは六列に机を並べまして、両端の最前列及び二列目は、黒板がちょうど光って見えない場所でもありますし教師からも視界に入らない、こういう席ですので、これは席をつくらないということをやってきたわけですね。けれども、四十七人になりますと、死角まで使わなければ生徒が入り切れない、こういう状態です。テストのときは五列に並べまして机と机の間を広くとって、みずからの力を試すのだということで非常に引き締まった雰囲気だったものが、今はそれができなくなった。教卓から先生が学級を見回しましても、四十七人全員がぱっと目には入ってこない。こうした事態が大都市圏を中心に全国に拡大をされております。大臣、このような状態を好ましいというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/123
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124・森喜朗
○森国務大臣 先ほどからいろいろ御指摘をいただきましたが、文部省といたしましては、学校教育の環境を整えるあるいは教育の諸設備を充実し整えていくということは、もちろん意を用いているところでございます。
しかし、先ほどから申し上げておりますように、人口が急増していくあるいはまたその後に急減していく、子供たちのことも考えますと教育の現場を整えることは大事でありますが、やはりそのことにだけ焦点を置いてただ高校を建てればいいというものでもない、国民の血税を預かる財政全体のことも考えていかなければならぬ、そういうふうに思っております。
ただ今御指摘をいただきました高等学校が四十五人を超えているということについては、高校標準法におきましては、やむを得ない事情を除き四十五人を標準とするとしておりまして、やむを得ない場合は例外としてこれは認められていることでございまして、一部の都道府県では、土地の問題あるいはまた校地面積の制約等がございまして四十五人を超えることが現実に起きているところがございます。これはやむを得ない場合があるというふうに考えておるところでございますが、当然これからも高等学校を初めとしまして義務教育諸学校、先ほどからいろいろと御指摘をいただきましたことなどにつきましては、文部省としてはできる限りの指導をしていきたい、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/124
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125・藤木洋子
○藤木委員 公立高校の教職員定数の標準法がございますが、これはこの標準法の趣旨にも反するものではないかと思うわけです。今大臣は、やむを得ない場合はというふうにおっしゃいましたけれども、やむを得ないものが主流になるというようなことになっては困るということを私は申し上げているわけでございます。その点いかがですか。標準法に反してはいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/125
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126・高石邦男
○高石政府委員 本態は四十五人をもって編制をするのが標準でございます。原則でございます。先ほど大臣が申し上げているのは、そういう原則の例外として措置せざるを得ないやむを得ない事情があるときにはそれを超えることもやむを得ない、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/126
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127・藤木洋子
○藤木委員 マンモス校化も重大でございます。マンモス校の問題点については小中学校の実態からも明白ですけれども、しかし高校の場合には、またそれとは違った普通科、職業科など非常に多様な形態がありますだけに、当然違った問題も存在すると思われます。
尼崎の稲園高校は、昭和五十八年度は三十クラス、五十九年度は三十二クラス、六十年度には三十六クラスが見込まれておりますが、体育館に全校生徒が入り切らないため全校集会は開けません。運動場も手狭になり、体育大会また学年スポーツ大会などにも影響して行事が困難になっています。理科の実験室など特別教室も一つしかなく、使用できないクラスも出てきております。生徒面談室や小会議室や生徒会室や文化部室、すべてなしです。ですから、部の備品などは職員室に積み上げられているというのが実態なんです。職員室には職員の机さえも入り切らなくて、机の当たらない先生まで出てきている。こんな状態です。一教師の担当クラスは四クラスから八クラスですから、学年当たりにしますと学年の半分ないしは四分の一の生徒しか教えないということになるわけです。担当学年であっても先生が生徒の顔を知らないということは当たり前のようになっております。生徒の側からしましても、先生から注意を受けたときに、あんただれ、こういう状態になっています。全く非教育的だとは思われませんか。小中学校と同様に、少なくとも三十クラス以上はつくらないようにすべきではありませんか。
恐らくマンモス校の実態調査ができてないのじゃないかと思うのですが、この際、高校についてもこの調査に取りかかるというお気持ちはお持ちじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/127
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128・阿部充夫
○阿部政府委員 小中学校の場合と異なりまして、高等学校につきましては、全国的な学校の規模についての標準というようなものは定められてないわけでございます。これは恐らく、小中学校の場合のように義務教育であるとか、したがって全国均質なものであるということが原則として必要になっているという理由であるとか、あるいは年齢的にも、例えば大学等では相当大きな規模のものが出てまいりますが、小中学校の場合と高等学校の場合では年齢も相当違っております。いろいろな事情があるのだろうと思いますけれども、要すればそういうことで高等学校につきましては、それぞれの地域の実態に応じてそれぞれの設置者が適正な規模を考えていくという仕組みで考えられるべきものであろうというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/128
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129・藤木洋子
○藤木委員 時間ですから、最後に一言だけ申し上げたいと思います。
今や九四%の子供たちが進学を希望して高校へ行っているわけですから、義務教育ではないとはいえ、まず準義務教育化と私たち呼んでおりますが、そう言っても決して言い過ぎではないと思うわけです。ですから、設置者任せということではなくて国がぜひこの調査には乗り出す、少なくとも地方自治体に対して、設置者に対してそのような調査を行って国に提出させることを求めるというぐらいのことはなさってはいかがでしょうか。実態を文部省が把握していないということは大問題だというふうに思います。その点だけはっきりお答えをいただきとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/129
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130・阿部充夫
○阿部政府委員 高等学校につきましては、学校基本調査等によりまして規模別の学校数というのは一応わかるわけでございますので、例えば三十一学級以上のものがどれぐらいあるかというような程度のことは、文部省としては概要は把握をしておるわけでございます。ただ、個別にそれぞれの学校について具体にどこの学校でどう問題があるのか、あるいは大きなところといっても、義務教育でもございませんし、公立もございます、私立もございます、実態はいろいろなものがあるわけでございますので、必ずしも一様ではないと思いますが、いろいろな機会に、非常に大きな学校についての実態がどうなっているかというようなことについては、私ども聞いて勉強はしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/130
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131・藤木洋子
○藤木委員 質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/131
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132・愛野興一郎
○愛野委員長 次回は、来る四月四日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十八分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X00419840330/132
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