1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年四月二十七日(金曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 愛野興一郎君
理事 大塚 雄司君 理事 白川 勝彦君
理事 船田 元君 理事 馬場 昇君
理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君
青木 正久君 石橋 一弥君
稻葉 修君 臼井日出男君
榎本 和平君 北川 正恭君
河野 洋平君 坂田 道太君
二階 俊博君 葉梨 信行君
町村 信孝君 渡辺 栄一君
小川 仁一君 木島喜兵衛君
佐藤 徳雄君 田中 克彦君
中西 績介君 細谷 昭雄君
山中 末治君 湯山 勇君
池田 克也君 伏屋 修治君
滝沢 幸助君 藤木 洋子君
山原健二郎君 江田 五月君
出席国務大臣
文 部 大 臣 森 喜朗君
出席政府委員
文部政務次官 中村 靖君
文部大臣官房長 西崎 清久君
文化庁長官 鈴木 勲君
文化庁次長 加戸 守行君
委員外の出席者
参 考 人
(日本音楽著作権
協会理事長) 芥川也寸志君
参 考 人
(日本芸能実演家
団体協議会常任
理事) 小泉 博君
参 考 人
(日本レコード協
会会長) 高宮 昇君
参 考 人
(日本レコードレ
ンタル商業組合
理事長) 牛久保洋次君
参 考 人
(日本書籍出版協
会理事長) 服部 敏幸君
文教委員会調査
室長 中嶋 米夫君
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委員の異動
四月二十七日
辞任 補欠選任
佐藤 徳雄君 小川 仁一君
田中 克彦君 湯山 勇君
中西 績介君 細谷 昭雄君
同日
辞任 補欠選任
小川 仁一君 佐藤 徳雄君
細谷 昭雄君 中西 績介君
湯山 勇君 山中 末治君
同日
辞任 補欠選任
山中 末治君 田中 克彦君
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本日の会議に付した案件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第
六二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/0
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001・愛野興一郎
○愛野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、参考人として、日本音楽著作権協会理事長芥川也寸志君、日本芸能実演家団体協議会常任理事小泉博君、日本レコード協会会長高宮昇君、日本レコードレンタル商業組合理事長牛久保洋次君及び日本書籍出版協会理事長服部敏幸君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、ただいま議題となっております著作権法の一部を改正する法律案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。
それでは、まず芥川参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/1
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002・芥川也寸志
○芥川参考人 おはようございます。
私は芥川でございます。作曲家でございまして、同時に、作曲家、作詞家のつくりました音楽の著作権を管理しております日本音楽著作権協会の理事長も務めております。本日は、私どもの意見や希望をこの場で申し述べる機会をつくっていただきまして、本当に喜んでおります。まず、厚くお礼を申し上げたいと思います。
よく御存じのことと思いますけれども、日本音楽著作権協会、略称JASRACと申しますが、私たちの団体は、作曲家、作詞家、音楽出版社合わせまして七千二百五十名の会員を持っております我が国でただ一つの音楽著作権を管理する団体でございます。
昨年、いわゆる貸しレコード暫定措置法を成立させていただきまして、音楽をつくる立場にあります私たちは非常に喜んでおります。この場をかりまして厚くお礼を申し上げたいと思います。ただ、率直に申し上げさせていただきますと、貸しレコードの出現によりましてかなり大幅にその分配金額の減った作家の方々がいらっしゃいまして、こういう方々は一種の怨念のような気持ちを抱いておられまして、この暫定法でもなおかつ不十分であるという強い不満を持っていらっしゃる方がいることも事実でございます。しかし、オール・オア・ナッシングというような考え方ではなくて、今の状態から少してもいい方へ、半歩でも一歩でも前の方へ歩いていく、そういう考え方に立ちますと、この暫定法というものは私たちにとりまして大変大きな励みになるわけでございまして、やはりこの場をかりて厚くお礼を申し上げるべきだと考えております。したがいまして、衆議院文教委員会小委員会におけます委員長報告、それから参議院文教委員会におけます附帯決議の精神あるいは趣旨というものを十分尊重をいたしまして、これは頭にたたき込んで著作権の管理をしていかなければいけないというふうに考えております。
そもそも、暫定法を通していただきたいということをお願いしましたのは私たち自身でございますから、私たちがその趣旨を尊重して、その精神を尊重してやっていくということは、これは当たり前過ぎるくらい当たり前なことだというふうに考えております。
この原則に立ちまして、明らかに違法な高速ダビング業者は別にいたしまして、許諾を求められたときには許諾するということを基本といたしまして、私たちは日本レコードレンタル商業組合の方々と誠意を持って交渉を重ねてまいりました。その結果、使用料の額等の大きな部分につきましては、幸いなことに完全な合意を得るに至っております。あと、運用の部分でも、小さな部分が残されておりますけれども、これは六月二日の施行期日までには十分合意が得られるというふうに確信を持っております。
そして、この暫定措置法は、あくまで緊急避難的な措置としてつくっていただいたものでありまして、必ず本法自体の改正を期待し、また願っていたわけでございますけれども、今回改正法案が提出されることになりまして、私たちは大変喜んでおります。結論的に申し上げますと、私たちはこの法案に賛成でございます。部分的には不満がございますが、結論的に申し上げますと賛成でございます。どうか十分御審議の上、一刻も早くこの改正法案を通していただきたいとお願い申し上げる次等でございます。
レンタルレコードは、確かに一つの新しい音楽利用の形態であると思います。貸しレコードが出現以来繁栄に向かいましたのは、一言で言いますと大変便利であるということではないかと思います。しかし、幾ら便利でありましても、レンタルレコードが繁栄するためには、その母屋といいますか、もとになっておりますレコード産業の繁栄というのがあっての上でありまして、そしてまた、そのレコード産業の繁栄というものは、大衆から愛好される演奏者、実演者、あるいはいい曲が生まれる、ヒット曲が生まれるということが前提で初めてレコード産業は繁栄するのでありまして、つまり、便利だからというところだけがもてはやされますと、一つの創造がまた新たな創造を生む、またその新たな創造が別の価値を持った創造をしていくという、そういう文化の最も基本的な条件というものが壊れる結果になると思います。つまり、文化の基本的な条件が壊れるということは、少し大げさに言いますと、一国の文化というものが衰退に向かうことになるというふうに私は考えております。先生方を前にして大変釈迦に説法のたぐいでございますけれども、著作権法というものが文化の基本法と言われる、あるいは著作権法の、著作権思想の普及の度合いというものがその国の文化の水準のバロメーターになると言われるゆえんではないかと思っております。
この意味におきましても、改正法案というのは非常に大きな意味を持っているわけでございますが、早急に成立させていただきたいと思っているもう一つの理由は、もし仮にもこの成立がおくれるようなことになりまして、暫定措置法との間に時間的な間隙といいますか、空間ができるようなことになりますと、これは管理の業務上大混乱になることになるわけでありまして、この意味からもぜひとも早期の成立をお願いしたいと思うわけでございます。また、本年の十一月に、世界じゅうの著作権協会でつくっておりますCISACという団体の総会を私どもJASRACの主催で東京で開催いたします。東京に世界各国の著作権団体の方々がお見えになるわけでありますけれども、世界に向けての日本の立場という点からも、この改正法案の早期の成立をぜひともお願いしたいと思うわけでございます。
先ほど、この改正法案に部分的に不満ありという表明をさしていただいたわけでありますが、それはただ一点でございます。最後の附則の第五条の二についてでございますけれども、「新法第三十条及び第百十九条第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。」とありまして、この図画の中に楽譜が含まれているということでございます。
非常に卑近な例で恐縮でございますが、私がある曲をつくったといたしまして、パーティーの席などで演奏しますと大変楽しく気分が盛り上がるような曲ができたといたします。そして、私の友人が参りまして、ちょうどパーティーをするからこれを持っていくよと言って持っていきます。そこへ集まる友人の友人たちのために自動複写機器でもって複写をいたします。みんながそれを持ちまして歌ったり演奏したりします。曲がうまくできていますと、それで気分が結構盛り上がって、ああいいなという気持ちにみんなをさせたとしますと、そこへ集まった人たちが、またパーティーするときにはこの曲を使おう、ぜひとも使いたいとみんなが持ち帰りまして、そしてパーティーするときにまた自動複写機で複写いたします。こういうふうになってきますと、幾何級数的にどんどん複写が行われます。著作権というのは英語でコピーライトと申しますくらいですから、こうなってまいりますと、著作権の一番基本のところが危うくなるのではないかというふうに危惧いたします。
また、一つ前の附則の第四条の二では、貸与に関しまして、書籍または雑誌の中から主として楽譜で構成されているものは除くといっただし書きがついておりますので、この複製の方の第五条の二でも楽譜は除くとしないと首尾が一貫しないのではないかな、大変法律には不案内の私でもそういう気がいたします。この点につきまして御配慮が願えれば大変幸せでございます。
最後に、世界的な問題になっております私的録音、録画の法的対処の問題、つまり三十条問題でありますけれども、これは大変急速な技術開発に伴いまして非常に深刻な問題であると思いますので、早急な法的対応を講じていただく必要があるというふうに考えております。
以上、暫定措置法の施行についてあるいは改正法案についての私たちの意見あるいは希望を申し述べさせていただいたわけですが、改めまして申し上げますけれども、今回の改正法案に賛成であること、そして早期に成立させていただきたいということをお願い申し上げます。
本日は、私たちのためにこういう意見あるいは希望を申し述べる機会をつくっていただきましたことを本当に心から喜んでおります。厚くお礼を申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/2
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003・愛野興一郎
○愛野委員長 ありがとうございました。
次に、小泉参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/3
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004・小泉博
○小泉参考人 私は、社団法人日本芸能実演家団体協議会の役員をしております小泉博でございます。
私どもの団体、大変長い名前でございますので、芸団協というふうに略して言わせていただきますが、もちろん芸能人の団体でございまして、一口に芸能人と申しましてもいろいろなジャンルがございます。音楽、俳優、舞踊、それから演芸、大別いたしますと大体四つのジャンルに分かれるわけでございます。私たちの団体は、この四つのジャンルをつくっております全国の五十九の団体で構成されておりまして、その傘下の会員の数は五万六千名という団体で、現在、著作隣接権に関する業務の取り扱いとともに、そのほか芸能人の福祉問題にも取り組んでおります。芸能推進の活動ということを一番主な眼目として活動している団体でございます。そのように御承知おきをいただきたいと思います。
さて、私たち芸能人は、芸能実演家と言うぐらいでございまして、まずみずからがみずからの体で演じてみせなければならない、そのためにはその演ずる場を確保することが非常に大事なことでございまして、その場をいかに確保し、それを広げていくかということには深い関心を寄せているわけなんですが、そういう意味で申し上げますと、録音、録画機器の発達は、一般の国民の皆さんが喜んでいるほどには私たちにとってはありがたくないのであります。と申しますのは、一たん私たちの実演がある固定物に固定されます、例えばレコードとかテープにそれが録音、録画されますと、たちまちあるときにはそれが自分の敵に変身してしまう、そして勝手にひとり歩きをして仕事場荒らしを始めるというような、まことに不都合なことになるわけでございまして、平たく申しますと、自分の影で自分が食われてしまうというような深刻な事態が生ずる可能性があるわけでございます。そのために録音、録画機器の発達ということには非常に神経過敏になっているのでございますが、何とか録音、録画物がひとり歩きをしないような、あるいはひとり歩きがしにくいような法律をつくっていただきたいというふうに念願しているわけでございます。
しかし、御承知のように技術革新のテンポの速さは常に著作権法の対応を上回っているような状況でございまして、おくれがちでございます。非常に残念なんですが、今回の貸しレコードの問題というのも、そういう法の盲点をついて新しく登場した商売と言うことができると思いますけれども、この貸しレコードに関しましては昨年議員立法で成立いたしました暫定措置法、これは非常に素早い対応をしていただいたということになりまして、私ども、立法府の先生方の皆さんに大変感謝しているところでございます。そして、今回のこの改正法案もそれを受けた形で提出されたということでございますので、もちろん十分な御審議を尽くしていただくことは必要と思いますけれども、できるだけスムーズに成立をさせていただきたい、組織を挙げて熱望しているところでございます。
さて、今回の改正案につきまして私どもは昨年、数回にわたりまして文化庁の方に私どもの意見とか要望を申し述べてまいりました。今回の改正案の最終案を拝見いたしますと、その私どもの要望はほぼ全面的に貸しレコードに関しましては取り入れられているわけでございます。すなわち、実演家に新たに貸与権を設けて、政令で定めたある期間が過ぎた後は報酬請求権を認めているところとか、この報酬請求権による権利の行使、使用料の決定、徴収が文化庁長官が指定した団体で行うことができると定めているところとか、また三十条の個人的複製を認めた条文に加えまして、公衆の使用に供する目的で設置されている自動複製機器を用いる場合には複製を認めないということを定めている、こういうところは非常に現実に即した対応として私どもは大変ありがたく評価しているところでございます。特に百十九条の二号におきまして、営利を目的として自動複製機器を設置して権利の侵害となる複製に使用させた者に罰則を定めている点でございますけれども、これは間接的にせよ、権利の侵害行為に寄与した者には責任があるということを定めたわけでございまして、これはこの後のいろいろな法改正の判断をする上に大変に注目すべき点ではないかというふうに私どもは考えております。
この法改正が成立いたしますと、私どもにとって大変頭の痛かった貸しレコード問題、高速ダビング問題というのは一応決着するわけでございますけれども、成立の後は、私どもは一日も早くこの貸しレコード業というものも含めたレコード産業の流通の秩序を取り戻して、誠実に話し合いを進めていきたいというふうに考えております。
ところで、この改正法案が成立いたしました後でも、私ども実演家にとりましてはまだ著作権絡みの問題というのは幾つか残っておりまして、特に次の三点に関しましては先生方にぜひ御理解をいただきたいと思います。
それはまず、貸しレコード問題の論議の中から鮮明に浮かび上がってまいりました、先ほど芥川さんもおっしゃった三十条の問題、個人の録音、録画に関する問題でございます。この点に関しましては、著作権審議会の第一小委員会でも昨年の秋に、「家庭内における録音・録画問題についての抜本的な解決を図るため、制度面での対応が早急に必要であるという点については異論がない。」というふうに言っているくらいでございますので、私どもとしては、この後の改正の目標を三十条に置いていただきまして、一日も早く世界的趨勢である補償金制度、いわゆる西ドイツ方式と言われているあの方式を導入していただきたいとお願いしたいと思います。
次に、商業用レコードの貸与に関して実演家の権利が認められたならば、当然、市販のビデオカセット、いわゆる貸しビデオに関しても実演家の権利が認められてしかるべきであるということを、私たちは実演家の立場で強く要望したいと思います。もともと映画的著作物に関しましての実演家の権利は余りにも無視されているという感が強いのでございまして、映像に関係のある芸能人にとりましては、この問題は非常に頭の痛い問題、著作権法に対する非常に深い不信感を持っているというのが実情でございます。貸しビデオにおける実演家の権利とともに、ぜひ映画の著作物における実演家の権利というものも根本的に見直しを図っていただきたいということをお願いする次第でございます。
最後にもう一つ、実演家の権利に関連して言わせていただくならば、我が国がいまだに加盟しておりませんローマ隣接権条約、これは国際社会の一員であるという認識が余りにも欠けているのではないかというふうに私ども、考えております。自国の利益のみにきゅうきゅうとしている日本という世界の認識を覆すためにも、ぜひ隣接権条約への加入を積極的に推進していただきたいと思います。
以上三点を今回の法改正の後に控える著作権の問題として提案させていただきまして、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/4
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005・愛野興一郎
○愛野委員長 ありがとうございました。
次に、高宮参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/5
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006・高宮昇
○高宮参考人 日本レコード協会会長の高宮でございます。
本日、このような機会をお与えいただきましたことをまずもって厚く御礼を申し上げます。
日本レコード協会は昭和十七年に設立されました社団法人でございまして、その目的といたしますところは、レコード界全般の融和、協調を図り、優良なレコードの普及並びにレコードの適正利用の円滑化に努め、もって国民文化の進展向上に寄与するということを定款にも記載してございまして、その目的に向かって日夜努力している団体でございまして、加盟のレコード会社は現在二十七社に及んでおります。まず、そういうことを冒頭に御紹介を申し上げまして、意見を述べさせていただきたいと思うのでございます。
貸しレコード業というものが世の中に出てまいりまして以来、著作権者あるいは隣接権者あるいは流通方面を担当しておりますレコードの販売店というようなところで摩擦が大変いろいろと出てまいりましたけれども、そういう事態に対応して、諸先生方が暫定措置法というものを昨年に、各党派一致しての御決定というふうに承っておりますけれども、そういう速やかな対応を示していただきまして、この混乱、摩擦の中に一つの秩序をお与えくださいましたことに対して、心から御礼を申し上げたいと思います。
その次に、現在著作権法の一部改正ということで政府が提案されました法案を御審議いただいておりますが、これもその相当な部分が、貸しレコードの出現に対して今後どういう秩序をつくっていくべきかという、いわば我々の業界に非常に関係の深い問題でございまして、これを大変精力的に御審議いただきまして、我々にもこういう機会をお与えいただいたということに対しては、レコード業界としても深く感謝を申し上げますと同時に、法案の一日も早い原案どおりの御採決を期待申し上げております。
そういうことで、御審議の過程でもいろいろ御疑問が出たりあるいは新聞、世論その他を考えましても、今後新しい秩序をつくっていかなければならぬということになりますと、この暫定措置法のもと、あるいは今後の著作権法改正法案の成立しました後の事態として、そういう秩序づくりには権利者三団体、JASRAC、芸団協、我々日本レコード協会というようなところが、新しく生まれました貸しレコードの商業組合との間に、具体的に実現可能な合意を取りつけなければならぬということでございますので、これからは貸しレの商業組合の方々とその実際的な合意ということに向かいまして大いに努力をしてまいりたいと考えております。
この三点を諸先生方に申し述べまして、私の申し上げたいことの骨子とさせていただきたいと思うのであります。
せっかくの機会でございますので、残りました時間で、今後貸しレの商業組合とも折衝を進めていくに当たりまして、我々がどういうふうな考え方でこの新しく生まれました貸しレコード事業というものを眺めているかということにつきまして、ちょっと申し述べさせていただきたいと思います。
率直なところ、今日の段階では、貸しレの事業を営んでおられる方々と我々レコードメーカー、さらにはレコードの販売店というようなところには、まだ相当認識のギャップがあるんじゃないかと思います。これを何とか詰めていかなければならぬというふうに考えておりますが、先生方も十分に御承知いただいていると思いますけれども、レコード業界と申しますか、この世界は、きょうもお見えになっております著作者、実演家、それに我々レコードメーカー、それからつくられたものを国民一般にディストリビュートされるレコードの販売店、それにレコードを買って楽しもうという購入される国民の皆さん、そういうところで長年にわたって一つの秩序あるいは調和あるいは繁栄というものが形成されてきたと私は思うのでございます。
事実、実際問題として貸しレコードの出現によりまして、この権利あるいは秩序、調和というものの中に若干のアンバランスが出てまいりました。バランスに変調を来した。そのことからいろいろと問題が出てきておりまして、レコードメーカーあるいはレコードメーカーのつくりましたものを販売しております販売店というものには、実は相当な経済的な打撃を与えている。被害はいろいろな方面に及んでいるということが申されるかと思うのであります。これは我々にとりましては死活の問題にもつながるということもございまして、これを救済していただくために司法判断を仰ぐということと同時に、立法措置によって何らかの秩序をつくっていただきたいということを立法府にもお願いを申し上げたというようなことでまいっております。
司法判断の方も、いろいろ時間はかかりましたけれども、先生方御存じのように、若干の判断が幾つか、五つ、六つの訴訟問題が起きておりますけれども、その中でいろいろと司法判断を下していただきまして、私どもも納得できるような御判断をちょうだいして、やはりそういう考え方のもとに今後対応していかなければいかぬということを考えております。
一方、立法府におかれましては、今申し上げましたような法律の制定、あるいは法案の新しい制定に努力をいただいているというようなことから、ここに新しい法秩序ができてまいりまして、貸しレコードというものも一つの市民権、貸しレコード業者というものにも市民権が与えられたということになったわけでございまして、私どもは、この市民権を得られた貸しレコード業者と十分にお話し合いをしなければいかぬと思いますが、やはり市民権を与えられたからには、そこに一つの社会的な責任を貸しレコード業者というものもここに持ってこられたということがございます。また、市民権を得られたからには、仕事の面でいろいろな競争をして、一種の販売面における販売競争というようなものもこれは公正な競争をしていただくべきであろう。また、レコード会社もそのことによって、作詞、作曲家、あるいは実演家というものの創作的な活動を結集していくことに使命を持っておりますレコード会社というものがこれでつぶれてしまってはいかぬ、今後存立を可能にして、できればさらに繁栄を続けて社会にも寄与できるというような状態を、そういう条件を我々は必要としている。
レコード店の方から考えますと、レコード店がいろいろな問題、いろいろな費用その他経費、そういうものを負担しておられるわけでありますが、商品を販売するということによってそういうことを負担しておられるのでありますけれども、そういう販売店が背負っておられるような責任に相応するようなものを、形態が違いますので全く同じたとは考えておりませんけれども、やはりそれとバランスのとれた、それに相応するような責任を貸しレコード店でも今後は持っていただく。それからまた、法のもとで我々は生活をエンジョイするわけでありますので、これを購入される国民の方々も応分の負担を、貸しレコードといえども応分の負担を煩わしたい、そういう考え方でこの問題を今後精力的に貸しレコードの商業組合の方々とお話し合いを進めまして、せっかく施行日も迫っておりますし、両方で熱心にひとつ合意に到達するように努力をしていきたいというふうに思っております。
なお、この機会でございますので、先ほどもお話がございましたが、録音機器の普及発達というものが録音、録画機器というものを非常に多く世の中に出しておりまして、これが著作権、著作隣接権に深いかかわりを持ってきておりますので、このことにつきましては、著作権法三十条のさらに改正、内容の現状に即した改定、それから隣接権条約、ローマ条約への日本の加盟というようなことにつきまして、諸先生方にさらに一層の御支援、御尽力をちょうだいできればということを考えております。
大変駆け足でございますけれども、考え方を申し上げまして御参考に供したいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/6
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007・愛野興一郎
○愛野委員長 ありがとうございました。
次に、牛久保参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/7
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008・牛久保洋次
○牛久保参考人 私は、日本レコードレンタル商業組合の理事長を務めます牛久保洋次でございます。
まず初めに、私を代表といたします日本レコードレンタル商業組合について御説明申し上げます。
当商業組合は、去る三月二十四日、通産大臣によって認可いただいた団体でございまして、中小企業団体の組織に関する法律に規定されました、恐らくは音楽産業として初めての全国規模の団体でございます。
当組合の組合員数は現在七百九十二名、組合員の経営いたします店舗数は一千百三十三でございます。ちなみに、全国に貸しレコード店がどれだけあるかと申しますと、昨年七月に通産省におきまして、日本レコード協会と当時私どもの団体でございました日本レコードレンタル協会、双方の名簿を照合いたしました結果、ダビング店を含めまして千九百十店舗という数がございます。
私たちは、一年間という時間をかけてようやく商業組合設立にこぎつけたわけでございますが、わずか四年足らずの業界が商業組合という認可条件の一番厳しい組織を設立いたしました背景には、レコードレンタル業を正しく評価していただきたいという数多くのレコードレンタル業者の切なる願いがありましたことを申し述べさせていただきたいと思います。
当商業組合は、業界を代表する団体としての責務に沿って、当面三つの課題に取り組んでまいりたいと存じます。一つは、関連法律のもとに権利者団体との友好かつ円満な関係を築き上げていくことでございます。二つには、未加盟店に対する加盟の働きかけを促進することによりまして、いわゆるアウトサイダーを極力なくしまして健全な業界発展に資することでございます。三つ目といたしましては、違法性の高いと言われます店頭ダビングの一掃でございます。当商業組合はダビング行為をやらない店舗のみが加盟しておりますが、今後業界秩序の確立のためにも、ダビング行為の一掃に努めてまいりたいと考えております。
さて、本日、当委員会におきまして、私はレコードレンタル業界を代表いたしまして、著作権法の一部を改正する法律案につき意見を陳述させていただくわけでございますが、現時点におきます私どもの関心事は、ただ一点、利用禁止を伴わない許諾権行使ということでございます。当法案が成立いたしますれば、昭和六十年、明年一月一日からの施行が予定されるわけでございまして、そういたしますと、いわゆる暫定措置法は廃止になる、しかし、その運用内容はそのまま準拠されるであろう、このように考え、したがいまして私は、本日暫定措置法の運用をめぐる問題点に触れ、諸先生方の御理解をぜひ賜りたいと思っている次第でございます。
昨年国会にて成立を見ました、商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法は、来る六月二日から施行が予定されており、日本レコードレンタル商業組合といたしましては、その運用につき関係団体との間で交渉を継続しているところでございます。暫定措置法が成立いたしました際、衆議院では小委員長報告の形で、参議院では附帯決議の形で、それぞれ「許諾権の行使に当たっては、公正な使用料によって許諾すること」と立法府の意思が明記されました。つまり、レコードの貸与をレコードの有力な利用形態の一つと位置づけた上で、商業用レコードの公衆への有償貸与による経済的利益についての社会的不公平感を公正な報酬支払いにより排除する点に、その立法趣旨があったと思料されます。
著作者団体であります日本音楽著作権協会と私ども日本レコードレンタル商業組合とは、この立法趣旨に基づきまして、ことし一月以来、公正な使用料の設定のため、誠意を持って、また精力的に交渉を継続してまいりまして、去る四月十三日、十回に及ぶ交渉を経まして双方基本的合意に達した次第でございます。日本音楽著作権協会と私ども日本レコードレンタル商業組合とは、この基本的合意に基づきまして、今後運用細目に関する交渉を、先ほど芥川理事長様の御意見にもございましたとおり、誠意を持って継続することになっております。
月間の売り上げが百万円に満たない店舗が私どもの業界全体の六割を占めるわけでございまして、音楽著作権協会との合意内容は決して容易なことではありませんが、レコードレンタル業が果たすべき役割として、また、この間、日本音楽著作権協会との間で醸成されました信頼関係を将来への布石にしたいと考え、合意を見たものでございます。
しかし一方、隣接権者でございますレコード製作者の間には、許諾権の行使に当たりまして、ある種のレコードを一定期間貸し出しを禁止したい旨の意向があるように伺っておりますが、私どもといたしましては、立法趣旨に沿って公正な使用料により許諾を賜りたいと切に切に願っている次第でございます。仮に隣接権者により、ある一定期間貸し出しが禁止されるようですと、これは著作物の伝達の媒体が伝達の主体の権利を抹殺するといった本末転倒の事態を招じせしめる結果になり、また暫定措置法の立法趣旨にも反することになるのではなかろうかと思料いたすわけでございます。
私どもレコードレンタル業界は、この暫定措置法及び改正法案を、音楽産業の中にレコードレンタルを位置づけた上で秩序形成を図るためのものと前向きにとらえ、これを機に音楽産業の一翼を担うものとしての役割と責任を果たすべく、商業組合もその意味において設立してまいったわけでございます。したがいまして、レコードの一部貸し出し禁止といったものは、法律のもとでの秩序形成を阻害するだけではなく、著作者団体との間で形成しつつある信頼関係をも破壊しかねないものと考える次第でございます。
最近のことでございますが、九州のあるダビングのチェーン本部が、長年の私どもの組合の説得が功を奏し、店頭から一切のダビング機器を撤廃し、組合に加盟申請してきているという事実がございます。この例からも御理解賜りたいのでございますが、当商業組合は、レコードレンタル業界内部の秩序形成に資するため、今後も相応の役割を担ってまいる所存でございます。
したがいまして、許諾権の行使に当たりましては公正な使用料によって許諾されますよう、国会並びに文化庁当局におかれましては、レコードレンタル業の正当な位置づけに関し、御理解と御指導を賜りますよう懇願申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/8
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009・愛野興一郎
○愛野委員長 ありがとうございました。
次に、服部参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/9
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010・服部敏幸
○服部参考人 私は、日本書籍出版協会を代表し、また日本雑誌協会をあわせまして、出版界を代表して、皆様に私たちの考え方を御披露申し上げたい、かように思うわけでございます。
本日、このような機会を設けてくださいましたことに対しまして、まずもって厚く御礼を申し上げたいと思います。
最初にお話し申し上げておきたいのは、日本書籍出版協会の規模はどうかということになりますと、日本の出版界は出版社が四千から五千と一概に言われておりますけれども、実際に常時活躍しておりますのは五百社前後であろうと思われるわけです。私どもの日本書籍出版協会の会員は現在四百十九社ございまして、日本の書籍出版物の点数、部数ともに八〇%から八五%のシェアを持っていると我々は考えておるわけでございます。また、日本雑誌協会の方の会員は六十七社でございますけれども、これもやはり八〇%から八五%くらいのシェアを持っている協会である。したがって、この両者でほとんど日本の出版界を代表しているというふうにお考えいただいてよろしいのではないか、かように思うわけでございます。
それでは、私どもが平素考えておりますことを簡潔に申し上げて御理解をいただきたい、かように思うわけでございます。
著作権法が施行されてから十三年間に起こった著作権をめぐる状況の著しい展開に即応して、今次の改正法律案が公表されまして国会に上程される運びになりましたことに対しまして、私どもは深い敬意を表する次第でございます。
私ども日本書籍出版協会は、出版界を代表して、法改正案作成までに三回にわたりまして、文化庁長官にあてまして、いろいろ出版に関連する条項の改正につきまして意見を具申申し上げてまいったわけでございます。しかし、今回の改正案を拝見いたしますと、出版権設定の義務化、頒布権の新設等主要な項目が法律案の中に取り入れられていないということを私どもはまことに遺憾に存じている次第でございます。
去る四月三日付の要望書の中で述べましたように、法律案の成立を間近に控えまして、法律案の附則第四条の二及び第五条の二を私どもはせひ削除をしていただきたいということを、この機会に改めて要望する次第でございます。
その一つは、著作権の一種として新たに法定される貸与権から「書籍又は雑誌の貸与」を当分の間除外しているということでございます。書籍または雑誌の公衆への貸与が、レコードなどと違いまして複雑な状況にあることは私どももよく理解をしているのでございますが、しかし、外国の事例から考えましても、解決され得ないものではありません。貸与権が著作権に属するものである以上、その制限はできるだけ最小限にすべきものであると私どもは考えておるわけでございます。
それから、その二といたしまして、「(自動複製機器についての経過措置)」として、もっぱら文書または図画の複製に供するものを当分の間除外いたしまして、私的使用の自由に任せ、またコピー業者の責任も問わないとしている点がございます。このことは、第三十条の私的使用における複写行為を把握することがまことに至難であるとの実情認識に立ってのことであるということが察せられますが、他面において、法が著作権侵害の事実を放置することにもなります。利用者側に著作権に対する安易な誤解を許す結果を招来するのではないかと我々は大変危惧しているところでございます。
ここで、私どもは、この附則の二つを削除することを特に要望するのでございますけれども、諸般の事情で、皆様が御審議をなさっていて、その削除に関する要望が今回もし認められないという場合を想定いたしますと、附則の二つの例外規定における「当分の間」ができるだけ短期間であるように明確にしていただきたい、これがまた必要であると我々は考えるわけでございますので、その点も十分御考慮いただきたい、こういうように思います。
また、附則第四条の二の貸与権については、出版物の貸与に関する実情調査と適切かつ公正な立法が速やかに行われることを期待する次第でございます。
一例を挙げますと、貸し本業といいますけれども、従来の貸し本業ならばまだまだ考える余地もあろうかと思いますけれども、最近はコンビニエンスレンタル業が盛んになりつつある芽が生じていることでございます。したがって、この人たちは同志を集め、夜間遅くまでもこの貸し本業を行うという風潮が芽生えてきているということも御承知おきをいただきたいと思いますし、この人たちは貸すことによって営業を営んでいるのだというふうに十分お考えをいただきたい、かように思うわけでございます。
附則第五条の二の「専ら文書又は図画の複製」の第三十条及び第百十九条第二号からの除外についてでございますが、目下私どもで企画され、実現の緒につこうとしております著作権の集中的権利処理機構の成立と同時に、これらの附則が削除されることを明確に定められるべきである、このようにも考えておるわけでございます。
先日も某週刊誌に出ておりましたが、その前に私どもの傘下におります自然科学系の出版社の調査によりますと、四年前にいろいろ各方面のデータを集めて試算いたしますと、自然科学系の出版社の書籍が約十五億ページぐらいコピーされ使用されていると見積もられている事実、したがって現在は確かに二十億ページぐらいのものが使われているのじゃないかというような試算も成り立っている状況でございます。
なお、私どもは、著作権の集中的権利処理機構が十分な機能を果たし得るためには、出版物の複写に対して出版社が独自に主張し得る出版社固有の権利、例えば版面権とも称すべきものが著作隣接権の一種として認知されることが必要と考えておるのでございますが、これらについていずれ考えてまいりたいし、またいろいろとお話し合いをしたいというふうに考えておりますことを申し添えまして、私の発言を終わらせていただきたい、かように思います。
本日は、どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/10
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011・愛野興一郎
○愛野委員長 ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/11
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012・愛野興一郎
○愛野委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/12
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013・湯山勇
○湯山委員 参考人の皆さんには大変御苦労でございました。いろいろのお立場から今までにも御要請を承っておりまして、それらを総括して、きょう、参考人の皆さんのお話を聞きまして、我々の意図もよく御理解いただいて、しかも御努力をなさっておられることに対しましては安心もいたしまするとともに、感謝申し上げたいと思います。
いろいろ御指摘のあった点につきましては、今日までの審議の中でほとんど触れてまいりました。したがいまして、一々の問題についてお聞きする時間もございませんからそれは省かせていただきまして、今後の法律の運用あるいは暫定措置法の運用等について文化庁のやらなければならないことは非常に多いと思います。それから、ただいまの改正案が施行されみに至りましても、文化庁長官の場合によっては裁定といったようなこともありまして、これらを含めまして、この段階で文部省といいますか、文化庁に特に御要望がおありになる方、ひとつお述べいただきたいと思います。
と申しますのは、暫定措置法の対応については、速やかに対応してもらったという御評価もありましたけれども、あるいは御意見の中には、非常におくれておる、事が起こってから後を追っている事態という御指摘もございましたので、それらについて特に御要望があればお述べをいただきたいというのが一つでございます。
それから第二の問題は、国際的な問題とも関連いたしまして、ローマの隣接権条約に早く入ってほしい、早期加入の御要望、これは前に芸能実演家団体協議会、芸団協の方からも文書でいただいておりますし、また、本日の御意見の中にも何人かの方々からそれがございました。このことは私たち、もう二十年もたっておることですからしばしば要望もいたしますし、今回も非常に強く要望して、文部省もなるべく早くというようなことでございましたけれども、ただ、費用がかなり余計かかるとかいろいろなことがありましたが、それらについて特にどういうメリットがあるのか、具体的なものがあればお述べをいただくのと、それから、日本人が持っている著作権に対して外国から許諾を求めるというような件数はどれくらいあるのでしょうか。これもどなたか、多くの方が御関係ですから、芥川参考人なりあるいは芸団協の小泉参考人なりから、おわかりであればお述べいただきたいと思います。
それから第三番目。録音機器の問題、これも随分取り上げてまいりました。その中で、今西独方式を採用してほしいというようなお話もございましたけれども、これについては何通りか外国でも違った方式があるようでございます。特に西独方式というのを御要望になった理由、これも簡単にお述べをいただきたい。
それからその次は、今回の法律では、著作権者は別として隣接権者については許諾を要する期間が一カ月から十二カ月というかなり幅がございます。暫定措置法では一カ年ということになっておりますけれども、一体どのくらいなところが今日の事態で、皆さんお考えになって——これは牛久保参考人の側も御要望があると思いますし、隣接権者の方々もあると思いますので、一カ月から十二カ月の間で決められるという政令、これはどのくらいの期間が適切だとお思いになっていらっしゃるか。
それから服部参考人には、質問ではありませんけれども、同じような問題を取り上げまして、文部省もできるだけ早く対応するというようなことでございましたが、特に貸し本業というのは、私も政府の説明を聞いて、直ちにこの法律の適用対象には無理じゃないかという感じを持ちますけれども、もし御意見があればお聞かせ願いたい。
それから牛久保参考人には、さっきの質問がありましたが、基本的に三つの条件をお述べになって、権利者団体と友好的にやっていきたいとか、みずからアウトサイダーの規制をするとか、あるいは店頭のダビングを一掃するとか、これらはいずれも非常に適切な活動だと思っております。しかし、かなり多いことも多いので、せっかくできた組合で全体をきちっとまとめていくというのは大変だろうと私は思うのですが、その辺についてのお考えがあればなおお聞かせ願いたいと思います。
時間が非常に短うございますので、多分御答弁いただいたらあと重ねての質問はできないと思いますので、ひとつよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/13
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014・芥川也寸志
○芥川参考人 私のお答えできるところだけ、まずお答えしたいと思います。
まず、文化庁に対する要望があったらというお話でございますけれども、私たちは、文化庁が今度の改正法案に積極的に取り組まれて、その大変な努力に本当に敬意を持っております。アメリカの上院議員のマサイアス氏という方が講演なさいました言葉の中に、著作権法というものは今までほこりをかぶって隅っこの方にいた法案で、それが科学技術の開発のおかげで途端に舞台の中央に躍り出てきて時代の脚光を浴びている、これはシンデレラみたいなもので、シンデレラ法案と言ってもいいんじゃないかというような講演の内容がございましたのですけれども、まさに日本でも同じような状態でございまして、したがってシンデレラでいる間に、できるだけその時代に即応した改正を次々と精力的にやっていただきたいというのが最大の希望でございます。最後に靴を脱ぐことになるのかどうか、これはわかりませんけれども、時代にできるだけ即応した形でどんどんやりませんと、時代の方がどんどん先に行ってしまう。大変当たり前なことでございますけれども、そういうふうに思っております。
それから、外国と日本との使用許諾の問題でございますけれども、これは金額で申し上げますと、日本の曲が外国で使われるというのは約一億ぐらいだと思います。これは、JASRACの全使用料の中のパーセントからいきますと大変低いパーセントになります。それから、外国へ送っております送金は四十億以上になると思います。つまり、牛肉、オレンジではなくて、大変反対になっておる。これは大変残念なことで、著作権を管理する団体としてそういうことを申し上げるのは適当ではないかもしれませんですけれども、私たちの努力によって、もっと海外の市場に日本の音楽が進出するという状態をつくり上げることが必要ではないかと思っております。
それから、なぜ西独方式と言うのかという御質問がございましたのですけれども、西独はもう十年以上の経験を持っておりまして、世界で一番最初からそういう問題に着目して勇敢に挑戦していったという事実がございまして、私たちはその西独のやり方に一種の羨望を持つといいますか、自分たちもああいうふうになれたらいいなという気持ちがいつもありまして、その願望のあらわれという意味に受け取っていただいてもいいかと思います。あるいはもう少し冷静に考えれば、西独と日本とでは国情も違いますから、本来ならば日本方式というものが一番大事なのではないか。その日本方式も、オーディオ機器の製造という点では日本は世界に対して非常に責任があるわけでございますから、そういう意味からいいましても、世界に誇れるような新たな日本方式というようなものが考え出されれば一番すばらしいことだというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/14
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015・小泉博
○小泉参考人 私は、御質問の中にありましたローマ隣接権条約加盟ということに関連して、私のできる範囲での御説明をさせていただきたいと思います。
私たち芸能実演家の団体は、国際的ないろいろな実演家の団体との交流もございまして、国際会議などに参ったときに、日本はなぜ隣接権条約に早く加盟してくれないのだという質問を受けたときに、何とも返答に困るということがございます。理由といたしましては、NHK、民放それぞれ外国盤を使っているものに対してお金を払わなければならない、これが膨大な量になるのでなかなか踏み切れないというような反対があるようでございますけれども、経済大国の日本の理由といたしましてはまことに何とも恥ずかしいような理由でございまして、理由にならないということを言われるケースが多いのでございます。
それからもう一つ大事なことは、国内の邦盤を使った場合には私たちに商業用レコードの二次使用料というものが支払われているのでございますけれども、洋盤を使う場合にはそれが全くただで使われるということで、放送時間の大部分を洋盤を使用するというようなケースが出ておりまして、例えばNHKの実態を調査した結果によりますと、レコードを使った音楽番組が音楽番組の八三・三%を占めているのですが、洋盤を使ったものが五六・六%という数字がございます。それから民放の場合には、レコードの使用が九五・六%、そのうち洋盤の使用が三三%というような数字がございまして、非常に多くの部分が洋盤で埋められているということなんでございますが、これがもしお金を払うということになりますと、邦盤を使う量もふえるのではないか。あるいは私どもが一番望んでおります実演で放送番組を埋めるということがふえるのではないかということが期待されることが一点でございます。
それからもう一つ、どういうメリットがあるかということでございますけれども、隣接権条約に加盟いたしました結果、そのお金が外国へ流れてしまって、日本としては経済的に非常に打撃を受けるというか損するのではないかという考え方が当然生まれてくるのですが、これは私どもの国際機関の話し合いによりまして、ロンドン原則と言っているのでございますけれども、相互に支払われたお金をそれぞれの国の団体でキープしておりまして、それをその国の相互の実演家のために使用する、あるいは外国芸能人が訪ねてきたときに、その活動を助けるために使うというような使用方法ができる、そういう取り決めを私どもの団体の方ではやろうということを進めているということもつけ加えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/15
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016・高宮昇
○高宮参考人 ただいまの湯山先生の御質問に対して、芥川さんと芸団協の方の小泉さんから御説明がございましたので重複は避けまして、私どもも全く同じような考え方でございます。
なお、御質問の中に、許諾を要する期間をどのぐらい希望するかという点がございました。この辺は、レコード製作者としても非常に関心の深いところでございます。これは今後商業組合の方々とも十分にお話し合いをしながら、この制度の定着を考えていきたいと思いますけれども、今度の暫定措置法あるいはその前の法案を最初におつくりになられたときのことなどを思い起こしてみますと、この「一年」というのはこの状況下においては最も適切な期間ではないか。先々のことは十分に読み切れませんけれども、十二カ月をちょうだいしたいというふうにレコード製作者、レコード協会としては希望いたしますので、そういう意見を申し述べさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/16
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017・牛久保洋次
○牛久保参考人 先生の方から御指摘がありました、業界の指導あるいは組合の強化といった点についてお答えいたします。
まず、私ども、使用料支払いに対処するためには著作権協会の支部組織に対応いたしまして九つの地方支部を組織していき、それを活動基盤にして頑張っていこうと思っております。
また、未加盟店への加盟呼びかけ、ダビング行為の廃止といったことに対しては、既に組合といたしまして活発に行っておりまして、またさらに努力していきたいと思います。
なお、著作権協会のお力もおかりしてさらに進めていきたいと考えております。
また、許諾期間、いわゆる政令の期間ということですけれども、私どもにとってもこれは最大の関心事でございまして、隣接権者の権利として、基本的には報酬請求権が妥当であると考えております。したがって、本来隣接権者への許諾権付与に関しては疑問を持っております。暫定措置法におきまして、附帯決議の趣旨であります公正な使用料により許諾がなされる、こういったことが実質的な意味合いとすれば、いわゆる利用禁止の伴わない許諾権ということであるならば、私ども、期間にはこだわりません。
それから、私どもの実態調査いたしましたところによりますと、発売時期別の貸出状況ですけれども、新譜発売後一カ月以内が四二・三%、三カ月以内が三六・二%ということでございまして、全体の七八・五%を占めているわけでございますので、この点も御理解いただきたいと思います。
また、文化庁への要望でございますが、まだまだレコード協会、製作者側との認識におきまして大変なギャップがありまして、六月二日までに合意ができるかどうか不安でございます。商業組合といたしましては、あらゆる機会を利用して話し合いを進めていきたいと考えておりますし、ぜひ文化庁には積極的な調整を図っていただきたい、このように考えております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/17
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018・服部敏幸
○服部参考人 湯山先生にお答え申し上げたいと思います。
貸し本業のことでございますけれども、先ほども申し上げましたように、最近は今までの常識とは違って規模の大きいものが出てきている、これが広がる傾向にあるんじゃないか、このように我々は考えておりますので、こういう点について御理解をいただきたいということでございますし、公貸権と申しますか、図書館の問題も、当然、図書館が多くなってまいりますと、この問題が外国と同じように、イギリスの公貸権が設定されているということ、ドイツの貸与に対する請求権の問題、こういう問題がみんな決められておりまして、ヨーロッパにおいてはそういう状態に来ているということ、将来日本もそういう状況を迎えるんじゃないかと考えますので、お考えいただきたいと思います。
それから、希望はないかというお話でございましたが、文化庁に対する要望は先ほど私から申し上げたわけですが、もう一つ申し上げますと、現行の著作権法では、著作権者は出版社に出版権を設定することができることになっているわけですが、そうなりますと、著作者の意思によってはそれを許さないということもできるんじゃないかということで、出版社がそういう法的権利を持たないということにもなるわけでございます。したがって、レコード製作者や放送業者と同じように、出版権というものは隣接権として認めていただくというふうにするのが当然であり、出版社独自の権利を持たしていただきたいと考えているわけでございますので、お含みをいただきたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/18
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019・湯山勇
○湯山委員 どうもありがとうございました。
時間がオーバーしましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/19
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020・愛野興一郎
○愛野委員長 池田克也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/20
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021・池田克也
○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。
きょうは、大変御苦労さまでございました。今、湯山先生からもお話がございましたので、ダブらないように気をつけながらお伺いしたいと思います。
最初に、きょう五人の参考人の方々においでいただいたわけでありますが、私、拝見しておりまして、四人の方々はそれぞれ、この法案については不十分であるけれどもむしろ望むところであるというふうに受けとめましたが、日本書籍出版協会におかれましては、今回の経過措置が二項目ついておりまして、つまり雑誌、書籍については今まで貸し本業等があったことにより除外するというふうな規定でございまして、これをこのままずっと広げてまいりますと、特に建築関係の図版であるとか、あるいはファッションの型紙であるとか、こういうものの複製は現実に文化の所産として出版されるのでありますが、形を変えてくるのではないか、文化の趨勢から見て、私は非常に重大な影響を持ってくるのじゃないかと思っているわけなんです。今大変柔軟な対応で、「当分の間」というのをなるべく詰めてほしいというような御要望でございましたが、私は本音を言うならば、今回の法案について、活字を媒体として思想をお訴えになっていらっしゃる書籍あるいは雑誌の皆さん方から見ると、音の方にはそれなりの配慮があったけれども自分たちの方には大変厳しいというふうなお考えではないかと拝聴していたわけなんです。これはこの委員会を構成するメンバーも一番心配をしているところでございまして、この雑誌、書籍の皆さん方の声を再度承りたい、これが第一点でございます。
第二点に触れますと、ちょっと具体的になりますが、さっきコンビニエンスの話をされましたが、貸し本屋さんの形態が変わってきているということも指摘をされておりましたので、その点についてのデータがもしおありでしたらば、後で書簡でも結構ですが、お述べをいただければと思います。
いつもですと一回ごとにやりとりするのですが、きょうはこういうことですので幾つか項目を並べますから、順次お答えいただければと思います。
三番目は、今日までいろいろと裁判が行われておりました。私、細かいことはここで申し上げませんが、貨しレコードにまつわる裁判があったように承知をしております。これは、レコード業界あるいは作曲家の方からそれぞれ提起された裁判が、今日係属中であるように伺っております。暫定法が六月に、また新法が六十年から施行されるわけでありますが、ある程度の経過期間はあるにせよ、新しい一つの考え方が導入されてくるわけでございまして、この裁判は今後どうなるかという問題でございます。
四点目は、牛久保参考人にお伺いしたいのでありますが、業界として非常に伸びていらっしゃる。若い人たちのニーズに合ったというふうに私は受けとめるのでありますけれども、今後この御商売も、競争がふえてくるにつれてなかなか厳しかろうと思うのであります。今平均的にどのくらいのレコードを各お店が用意しているのか。こういうことになりますと、ある意味では認知された業態になってくるわけでございまして、これからはこの業種に対する一般大衆の要望にさらにこたえてかなりのものを取りそろえていかなくてはならない。今まではある意味では経過的な状態だったと思うのですが、そうしたことについてかなりの投資も出てくるでありましょうし、また大資本の参入ということも出てくるのじゃなかろうか。目まぐるしい時代の変化でございますので、今皆さん方が持っていらっしゃる将来にわたっての心配点、問題点がありましたらお聞かせいただきたい。
それから、大ざっぱなことをお伺いするようでございますけれども、これは芥川参考人にもお伺いしたいのでありますが、作曲家の方々の心情として、著作権というものを貸与するということは、ある意味ではなかなか合意が得られなかったのじゃないか。確かに、自分の持っている財産の新しい使い方ができたわけでございますので、喜ぶ方もいると思います。しかし、創作活動というものをどう評価するかと見るときに、軽々に貸したり借りられたりするようなものではなかろうという論議もあると思うのです。小説とか詩とか、大変短い形態で表現される活字を媒体とする創作物などにおいては、特にそういうことが言えるのじゃないかと私は思うのです。生涯かけて生み出した短い創作物がコピーされて、それなりの利用は結構なんですが、何とも言えないものが今のところあるのじゃないか。時代の変化とともに新しい利用形態が出てきて、それが法案として国会にかかってくる。私自身も、この問題に関心を持ってきた者の一人としてわからないわけではないのですが、これでいいのだろうか。つまり、日本人の中に著作権というものの普及、大事なものなんだという認識が十分に定着しないまま新しい利用形態が出てきているのではなかろうか。これはここで簡単に答えは出ないと思いますが、せっかくの機会でございますので、むしろ作曲家のお立場、それから作品を活字で発表されているお立場、芥川参考人と服部参考人お二人にお伺いをしたいと思うわけでございます。
並べましたので大変恐縮でございますが、お答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/21
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022・愛野興一郎
○愛野委員長 参考人各位にお願い申し上げます。
各党の持ち時間の関係上、御答弁は、まことに申しわけありませんが、簡潔にお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/22
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023・服部敏幸
○服部参考人 池田先生に申し上げたいと思います。
先生がおっしゃるとおり、書籍、雑誌のみがコピー、複写を含めて留保されているということは我々はまことに残念に思っておりますので、これを除外扱いしないようにしていただきたいのが我々の本旨であるわけでございますので、ぜひそのようにお願いしたい、かように思っております。
それから貸し本業のお話でございますが、一例を申しますと、阿佐谷に最初起きた業者が現在チェーンとして二十八店持っておりまして、大きいのが大久保とか北新宿というようなことで、また新規に九店がこのグループに入ってくるというようなことも聞いて、もうできたんじゃないか、このように思っております。主として新刊を売る、そしてレンタルもやる。それで、彼らが言っているのは、新刊を売るのとレンタルは一対一ならいいんだけれども、現在は一対三だ、貸している方が三だ、こういうことを言って、金のない人には金を貸して、給料を払って、それで独立させていく、こういう形態をとってきておりますので、やはり世の中の進歩というものは非常に早いということが言えます。もっと詳しいデータは、また調べましてお手元にお届けしたいと思います。どうぞよろしく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/23
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024・芥川也寸志
○芥川参考人 池田先生の御質問は、貸しレに関して訴訟は将来どうなるかということでございますが、貸しレに関しては現在和解が進行中でございます。ただ、高速ダビング業者に対しまして損害賠償の訴訟が係属中でございます。
それから、貸与ということについて作曲家の心情を述べろとおっしゃいましたけれども、大変励まされているような気もいたしますし、大変ありがたい御質問だと思います、ただ非常に微妙な問題だと思いますが。
私どもを守ってくれる法律というものはとにかく著作権法しかございません。したがって、生きるか死ぬか、その著作権法をつえにして生きていくわけでございますから、その権利が拡大されれば拡大されるほど心情的には励みになり、よい創作を生み出す原動力になるかと思います。しかし、作曲家といえども、現代社会のいろいろな制約の中で妥協しながら生きざるを得ないわけでございますから、著作権法も社会の動き、ことに最近の科学技術の進歩、それが人間社会にもたらす幸福というものとのバランスも、この現代社会に生きる以上はやはり避けられないところだと思います。ですから、そのバランスといいますか兼ね合いというものを私どももよくわきまえて、そういう自覚を持って仕事をしていくということ以外にないのではないかというふうに考えます。
お答えになっているかどうかわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/24
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025・高宮昇
○高宮参考人 レコード協会といたしましては、訴訟問題で池田先生にお答え申し上げなければいけないかと思います。
御案内じゃないかとも思いますけれども、実は現在六件、貸しレコード問題が起きまして以来裁判上の争いになっておりまして、一つは貸しレコードに関連した相手さんから訴えられた、あとの五件はこちらの方から訴えたわけでございます。
一番基本になっておりますのは、私ども東京地裁二十九部にお願いしました、貸しレコードというものは現行著作権法上の我々がちょうだいしている複製権を侵害しているのではないかということについての御判断をちょうだいするということで出していたわけでございますが、これはその後暫定措置法が成立いたしましたり、また改正案が審議されているというようなことから、裁判所の方から、和解に応じてはどうだというお話がございまして、これは商業組合さんの方でもこれに応じるという御意向を表明されたようでございます。私どももそういう意向を表明いたしまして、今二十九部の方で裁判長、鋭意和解に向けてのお考えをまとめておられる、そういうふうな状況でございます。
あとの仮処分その他につきましては、既に二件が私どもの主張を認めていただいたと考えております。そういう形で判決あるいは決定をちょうだいいたしてございますが、これも相手さんの方からまたさらに控訴されているというようなことがございますので、この辺は、専門的にはよくわかりませんけれども、新しい法律もできてまいりましたし、その中で代理人の弁護士さんともよく相談しながら、なるべく円滑に収拾していけるような方向で終結に向かいたいと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/25
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026・牛久保洋次
○牛久保参考人 先生の御質問にお答えします。
まず、裁判関係でございますが、私どもも裁判所の方から和解勧告を受けまして、基本的には、いかなる時と場でも誠意を持って積極的にお話し合いをしたい、こういう考えておりますので、暫定措置法の運用をめぐる話し合いも既に二回行われているわけでございます。また、JASRAC、日本音楽著作権協会から訴訟を受けた件でございますが、今取り下げる方向と聞いております。
それから、レコードレンタルの今後についてどうか、こういう御質問でございますが、その前にレコードレンタルが発生した背景はどうだったのか。先ほどお話がありましたようにニーズに合致したからだろう、こういうことでございますが、それにはやはり録音機器の革新あるいは普及、こういったことがあると思いますし、また音楽が、室内からアウトドアに音楽を聞くスタイルが変わってきているということがあると思います。そして、そういった中で新たな音楽の底辺を私どもが拡大してきた、このように考えている次第でございます。
また、私どもの調査によりますと、貸しレコードの利用者の千人アンケートをいたしましたところ、レンタルを利用する理由は何かという質問に対しまして、レコードが高い、こういったお答えをなさった方が五二%ございます。そして試聴してみたい、こういった方が二一%と、非常に高い数字になっております。また、レンタル店を利用後レコード購入枚数がどう変化したか、減ったか、こういう単刀直入の質問ですけれども、変わらないと答えた方が四〇%ございます。また、購入しだLPの中で気に入った曲は何曲ございましたか——私どもの扱っている商品はほとんどLPでございまして、十曲あるいはそれ以上の曲が含まれているわけでございまして、そういった中で、大体三曲から四曲気に入ったという方が四九%、一、二曲が一九%であり、こういったところにレコードレンタルの有用性、必要性があると思っております。
また、一カ月の貸出枚数ですけれども、一店舗当たり平均三千四百二十枚でございます。そして、一枚当たりの貸出回数が十五・三回でございます。また、一店舗当たりの会員数が現在、平均六千三百三十三名でございます。
こういった中で今営業しているわけでございますが、最後に大資本の参入についてはどう考えているかということでございます。当然私どもも予想されることと考えておりますが、これに対しては商業組合として今後対処していきたい、このように考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/26
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027・池田克也
○池田(克)委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/27
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028・愛野興一郎
○愛野委員長 滝沢幸助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/28
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029・滝沢幸助
○滝沢委員 参考人の皆さん、まことに御苦労さまです。お聞きしましたところ、皆さん、本法の改正案に対しまして大筋において御賛成をちょうだいしているようで、まことに安心をいたしたところでございます。
承りまして一々ごもっともと存じますが、せっかくの機会でありますから、簡単で結構ですが、一つには芥川参考人さん、抽象的で大変恐縮に存じますけれども、よき音楽を今後とも普及発展せしめるために私たち政治の部門が果たすべき役割といいますか心がけるべきことが、今度の改正案はそれといたしまして、今後の課題として何かございましょうか、ほんの一言で結構ですからお願いしたいと存じます。
高宮参考人さんにお伺いしたいのでありますが、先日私も質問の中でも触れたことでございますが、貸しレコード業が出現したことによりまして業界が大変御苦労されている、何か私が素人で承ったところによりますと、全国で八千店ぐらいの中で一割近くがこの一年間に閉店というか、転業なさったとも聞いているわけであります。税制面でも大変な御協力をちょうだいしているわけでございましたが、よき音楽が再生産されるためにはレコード製作会社また販売業者の皆さんが繁栄していただかなければならぬことでありますから、その面でどのような実際的な御苦労をされているのか、少し具体的に承ることができればと思います。
最後に服部参考人さん、実は附則五条の二につきましては、私も先般、この「当分の間」というのはいつ取れるのかと聞きましたら、集中管理の処理機構が発足をすればいいのだという言質を執行部からちょうだいしたことでございます。しかし、そうなれば逆に、業界といたしましてこの集中管理の機構はいつどのようにしてできるかということになってくるわけでございまして、この間の見通しはどのようなことでございましょうか。
そして、これまた抽象的で大変恐縮に存じますが、せっかくの機会でありますから教えていただきたいのでありますが、今議会で各党とも苦労しておりますのはいわゆる悪書、悪書が良書を駆逐いたしましたような状況でございますが、困っているわけであります。しかし、これには行政や政治の果たすべき役割もあろうと思いまして、議員立法か議会の決議がというようなことで苦労しているわけであります。しかしまた、業界の皆さんも、金がもうかればいいということじゃないと思いますので、どのようなことで日本によき出版文化財を提供されようということに御努力願うのか、この点触れていただければありがたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/29
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030・芥川也寸志
○芥川参考人 よき音楽文化の普及発展のために政治は何をすべきかという御質問だと思いましたが、これにお答えするのは大変失礼きわまりないことにならざるを得ないと思うので、気が進みませんでございます。
しかし、あえて申し上げますと、どの政党を問わず、文化政策の確立ということこそ一番重要ではないかと思います。文化というのは、人間一人一人がいかに生きがいを持ってすばらしく生きていくかということに尽きるのではないかというふうに思いますので、文化政策というものはあらゆる政策の基本、最も根本でありまして、政治、経済を突き抜けた人間の生き方を問う問題であると思います。その文化的な領域において、一番もとになる物を生産していくという部分についての法律が著作権法でございまして、釈迦に説法で本当に申しわけないと思いますが、そこの部分のよりよき改正法案が、時代に即応して絶えず新しいものがつくられていく、そういうことが一番大事ではないかというふうに思っております。
私ども文化に携わる人間の自覚とか努力ということがもちろん必要でありますし、この著作権法に即して言いますと、今私ども権利者、著作権者と隣接権の権利者の方々、それから商業組合の使用者の方々がいらっしゃるわけでございますけれども、一見対立するような形になりますけれども、これは最後まで対立しておりますと、先生のおっしゃるような音楽文化のよき普及発展は望めないのではないかというふうに思っております。
長くなって恐縮ですが、フランスの小説家にサン・テグジュペリという人がおりまして、フランス人だものですから非常に愛についてのエッセイが多いのでございますけれども、愛というものは二人が見詰め合うことではない、二人が同じ方向を見詰め合うことだというエッセイがございます。まさしく著作権の使用者と権利者との関係はそういうことではないか。同じ方向を見詰め合ってお互いに協力することこそ、音楽文化の普及発展に一番大事な要件ではないかというふうに考えております。
失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/30
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031・高宮昇
○高宮参考人 滝沢先生の御質問にお答えさせていただきます。
この窮境を切り抜けるために具体的にどういうふうなことを考えているかというような御質問の趣旨に受けとめましたけれども、その前に貸しレ、貸しレコード業の出現によりまして、先生も御指摘のように、御説明も申し上げましたが、非常に打撃を受けておりますのが販売業界でございまして、これは一年ばかり前の約一年間の実態でございますけれども、出現以来約七百軒に近い、正確には六百五十六軒のレコード店が、五十七年七月から五十八年、昨年の六月までの間に転廃業したというようなことが事実としてございます。それからまた、一部の調査によりますと、こういう状況ではレコード販売店というものの将来に対して、要するに子供やら何やらにはもう業は継がせないという返事が三分の一のお店から来たというようなことで、販売業界の方には大変危機感がございます。
私どもは、こういう新しい法体系のもとで貸しレ業というものを全面的に否定するということはこれからもう許されないわけでございますし、また今の芥川さんのお話ではございませんが、レコード業界の繁栄のために何か共通の接点を求めていくということを努力することも市民としての務めだと思います。
そういうことで、これから十分に貸しレコードの方とは忌憚のないお話し合いをし合って相互の合意に到達したいと思いますけれども、基本的には、どうしても私どもはこの許諾権の行使に関連いたしまして、何と申しましても作品が大きく生命力と申しますか、活力を持つようなところまでは育てていきたい。貸しレコードでどんどん貸されていく、それもまた非常に安い値段で貸されていくということになりますと、レコードを買っていただくことによっていろいろな出費をいわばコンペンセートしておりますので、どうしてもそういう構造が崩れますので、そういうことについては貸しレの方にもぜひ御協力をちょうだいして、一定期間の貸し出し使用を差し控えていただくようなことをケース、ケースで御相談をしていきたい。また一方、使用料につきましても、JASRACの方とも大体の合意もできましたので、その辺を一つの根拠にしながら御相談をさせていっていただきたい。
いずれにいたしましても、レコード産業があってレコード店もあれば貸しレコード店も成り立つというようなことでございますから、立派なアーチスト、活力のあるアーチスト、みんなに認知されるようなアーチストを育てるための努力というのをそういう場でぜひひとつ——大変具体的なことにもなりますし、恐らく相当エネルギーを両方で使い合って話をしないと合意にいかないことだと思いますので、ここで長々とは申し上げませんけれども、そういうところを努力してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/31
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032・服部敏幸
○服部参考人 滝沢先生にお答え申し上げます。
ただいま附則第五条の二のことについて御質問をいただいて、それが集中権利処理機構ができるまでだというお答えを文化庁長官かもいただいたということでは、我々も大変感謝申し上げる次第でございます。
ブレーキをかけるのじゃないかというお話でございますが、これは確かにそのとおりで、現在の一般大衆の考え方、また企業の人たちの考え方でも、コピーしてそれをいろいろな企画に参考にしているということは事実であるわけで、これを放置すればするほど、これは当たり前のことだという思想が一層激しくなるのだろうと思いますので、その点からいいますと、ぜひ排除していただいた方が我々として非常にありがたい、こういうふうに思うわけでございます。
したがって、集中権利処理機構の問題ですけれども、これは現在、我々のモデルを一つ規約として案をつくりまして、文化庁の方の御意見も承りながら、これを今度、雑誌協会あるいは自然科学書協会、工学書協会、これはみんな、雑誌協会以外は我々の配下でございますけれども、こういう人たちのおのおのの意見を全部聞きまして、それでまとめ上げて、そして今度は本当の権利者を含めてのあれをしていこう、こういうように思いますので、早くとも一年以上はかかるのではないか、このように思っております。
それから、有害図書の問題でございます。大変皆様に御心配をいただいておるわけでございますが、我々といたしましても、雑誌協会も書籍協会も、理事会及び倫理委員会が中心になってこれの対策を非常に憂慮してやっておりまして、そういう発行者の人たちも呼んでいろいろ話し合いをして、やめるべきものはやめ、改良すべきものは改良するようにいたしているわけでございます。
それで、この間の雑誌協会の理事会でも、これを自粛する意味において対策委員会を設けて常に会員の動向を調べていこうじゃないか、そしてお互いに話し合って常に自粛を強化していくという対策をこれから積極的に進めようという話も進んでおるわけでございますので、ぜひ我々も成果が上がるようにしてまいったい、こういうように思っておりますので、御了解いただきたいと思います。
よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/32
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033・滝沢幸助
○滝沢委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/33
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034・愛野興一郎
○愛野委員長 山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/34
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035・山原健二郎
○山原委員 五名の参考人の皆さん、本当に御苦労でございます。私は日本共産党の山原健二郎です。
随分御質問がありまして御意見を開陳していただきましたが、私は、芥川さんが、著作権法はその国の文化のバロメーターであるというお話がございまして、まさにそのとおりだと思います。そして、著作権者の権利を守るということが第一義的な任務だという考え方を持っておりまして、その立場で御質問を申し上げるわけです。
一つは、レンタル商業組合の牛久保さんのお話の中で、問題が残っているなという感じを受けました。それは使用料の問題ですが、昔楽著作権協会との間には四月十二日に合意が成立したというお話がございました。しかし、隣接権者との間における話し合いというのはかなり困難な状態にあるように伺いまして、信頼関係まで失われかねないというお話がありましたが、ここがきょう一番聞きたいところでございまして、この問題についてどう共存をしていくかということが今一番大事なところだと思います。その意味におきまして隣接権者の代表である芸団協、そしてレコード協会の方とそれから牛久保さんの見解を、どういうふうに調整していったらいいのかということについて一言ずつ触れていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/35
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036・小泉博
○小泉参考人 隣接権者としての芸能人の立場からお答えいたしますけれども、私たち芸能人といたしましては、基本的には、報酬を受け取るということよりか実演の場をいかに確保するかということの方に重点を置いております関係上、直接的な被害というものは貸しレコードから直ちに受けるというわけではございません。その意味で、著作権者である音楽著作権協会の定めた使用料というものと同調しようということで、私たちの機関では合意しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/36
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037・高宮昇
○高宮参考人 山原先生の御質問にお答え申し上げます。
確かに御指摘のように、隣接権者はまだJASRACと商業組合のように合意に到達いたしておりません。しかしながら、既に牛久保さんの方とも前後三回にわたってお互いの考え方を述べ合っておりますので、これからそういう方を鋭意詰めていきたいというふうに思います。今までのところでは、基本的な考え方をお互いに開陳したということでありまして、何とかこれを解決していかなければいかぬという基本的な立場は両方で確認をいたしております。
ただ、私どもも確かに、貸レコードで非常に安く一般大衆に利用されるということの意味合いは、これが便利なものである、安いことは負担を与えないからその限りにおいては大変結構だということは非常に思うのでありますけれども、どうしてもこれには元がかかっておりまして、元のかかっているところの費用の分担というものを貸しレコードといえども一緒に負担をしていただかないと産業として成り立たないし、それからまた私ども、JASRACさんの方に、これも先生方既に御承知だと思いますけれども、著作権者というものを大事にしていかなければいかぬ、著作権を大事にしていかなければいかぬということも、結局は経済的な利益というものがどのくらい返ってくるかということに大いにつながりがあると思うのでございますが、レコードを通じての著作権使用料というものがJASRACさんの収入の中の七割近いものを占めている、そういうところが脅かされてくるというようなところもございます。
そのほか、レコード会社の経営自体も、数年前までの高度成長時代に比べますと全くさま変わりになっておりまして、レコードの需要はやや頭打ちから減退ぎみだ、新しい技術投資は先行的にどんどんやっていかなければいけないというようなこと、それから録音の費用というようなものも、LP一枚つくりますのに二千万はおろか、三千万というような経費がかかるようになってまいりまして、数年前に比べますと本当にさま変わりにいろいろなものが金がかかるようになってきている。そういうものを回収して再生産ができないとレコード産業が滅びていく。それが衰滅していくようなことになりますとレコード販売店もだめになるし、貸しレコードももとがなくなってしまうというようなことを考えますと、ぜひひとつその辺をよく御認識をちょうだいして、先ほども申し上げましたようにみんなでその費用を分担し合う、その中に貸しレコード商業組合も入っていただいて相応な負担をしていただくようなことを、これからお話し合いをしたいというふうな基本的な考え方でいるわけでございます。
具体的にということは、これからまだ牛久保さんの方とのやりとりがいろいろあるだろうと思いますので、ここで一々を細かく具体的に申し上げるというようなところまで出ておりませんけれども、そういう考え方でこちらも誠意を持って、いろいろ御心配をいただきましたような方々の精神も十分に酌み取りまして努力をしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/37
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038・牛久保洋次
○牛久保参考人 先生の御質問にお答えします。
私は、まずもってこの問題は、商業問題と法律問題とが混同されているのではないかと思います。また、損害のすべてがレコードレンタル業に原因しているというような発想、そして、それに伴ってレコードの利用禁止、一定期間とめれば利益が回復するであろう、それに伴って小売店の廃業がなくなる、こういった損害賠償的発想には私どもは到底承服しかねるわけでございまして、また、これまでこういったことに関して一切実証がなされてないということでございます。むしろ私どもは、レコードの高い価格による消費者のファン離れを食いとめている、こういうふうに考えている次第でございます。消費者のレコードの新しい利用形態として社会にこたえている、このように考えている次第でございます。
次に、じゃ、こういった状況の中で隣接権者とどう取り組んでいくのだということでございますが、まずもって私どもは音楽産業の一翼を担う者として、その責任のもとで誠意を持って交渉に臨み、信頼関係の形成を図っていきたいと考えております。先ほどお話ししましたように、日本音楽著作権協会との間でも十回の交渉を重ねまして、お互いに信頼関係を形成することができたことは大変うれしく思っている次第でございます。そこにおのずとまた使用料の件で合意ができたわけでございますし、こういった形で今後も臨んでいきたいと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/38
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039・山原健二郎
○山原委員 大変努力をされていること、双方随分御苦労されていることはわかります。同時に、かなり見解の違いもあるような気もするわけです。これは後で文化庁に対してお聞きをしたいと思っています。
それで芥川さんの方に。合意に達して使用料が確定をしました場合には必ず許諾をするのかどうかということが第一点です。
それから二つ目は、一つの著作権者あるいは隣接権者との間で合意に達しても、三つの団体との合意がまだ残るという問題がありまして、それについては例えば窓口を一つにするセンターをつくるとか、これは全く素人考えでございますけれども、この問題に関する窓口をつくる必要はないのかどうかということが第二点です。
それから三点目は、録音、録画の機械に対する賦課金制度について。これは先ほどから少し話がありました、西ドイツの話も出たわけでございますが、これは今までも著作権審議会第五小委員会でもやられて合意に達しない。そして現在は三つの団体のお入りになった民間の懇談会がございますが、そこで話し合いが進められておりますし、また皆さんの方から五十二年度に要望書も出ているわけですが、この賦課金制度の導入についてどういうふうにお考えになっておりますか。これは著作権、隣接権者のお三人の方にお伺いしたいと思います。
以上で私の質問を終わりますが、時間がもう五分程度でございますので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/39
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040・芥川也寸志
○芥川参考人 まず第一点の、必ず許諾をするのかどうかという問題でございますけれども、私たちは仲介業務法という法律の支配下にありまして、これは正当な理由がない限り許諾をしないということはできなくなっております。
それから第二点の、権利者団体が三つあって、使用する方がそれぞれ許諾を求めるのは大変ではないかという御質問でございますけれども、それはできれば一本化されればその方がいいと思っております。それは音楽を使用なさる方が便利な方がいいに決まっているわけでございまして、私どもは、その使用なさる方の立場に立って考えるのが常識というものだろうと思いますので、これはほかの隣接権団体の方々の御意見もあるかと思いますけれども、理想的にはやはり一本化される努力をするべきじゃないかというふうに考えております。
それからもう一つの賦課金のことでございますけれども、これは現在懇談会が続けられていますけれども、私たちは、日本電子機械工業会とそれから私たちとの間で具体的にそういうことについてお話し合いを進めていく、そういう雰囲気といいますか、そういう状況がもう煮詰まってきたというふうに判断しております。それで、具体的な問題にもう入ってもいい段階に来ているのではないか、私どもはそういう準備をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/40
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041・小泉博
○小泉参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。
芸団協といたしましては、その窓口ということに関しまして、これはJASRACに委任してもよろしいというふうに考えて、今考慮中でございます。
それから賦課金の問題でございますけれども、これは個人の録音、録画問題を解決する上で現実的に一体どういう方法があるのだろうかといろいろ考えて、これは国際的にもそういう方法しか恐らく考えられなかったというのが、実際にユーザーとそれから権利者といいますか、そういう者との関係でその接点を探してまいりますと、商品を渡すというか、どうしてもその部分でしか接点が見つからないというところで、その部分でこれは解決しなければならないということなので、賦課金制度というのはそういう意味では一番現実的な方法ではなかろうかというふうに考える次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/41
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042・高宮昇
○高宮参考人 レコード協会といたしましては、窓口一本化につきましては、これもできれば結構なことだと思っております。ただ、具体的に実務的な面で、非常に種類も多うございますし期間の問題あるいは料金の問題、いろいろございますので、もう少し具体的に詰めました上で、一本化でできれば一本化をさしていただきたい、その程度に考えております。
それから、補償制度の問題につきましては、これも今お二人から御説明がございましたようなことで、懇談会の場で関係団体と一緒にいろいろ相談もしてまいっておりますので、その時期はだんだんと近づいてきているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/42
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043・山原健二郎
○山原委員 もう時間が来ましたので終わりますが、日本書籍出版協会の服部さんには御質問しなかったのですけれども、後で、これから文教委員会がありますので、その際に政府に対して質問をしたいと思っております。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/43
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044・愛野興一郎
○愛野委員長 江田五月君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/44
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045・江田五月
○江田委員 参考人の皆さん、どうも本当にごくろうさまでございます。我々の審議のために長い時間拘束しまして申しわけありません。社会民主連合という小さな政党ですが、江田五月と申します。
若干の点を質問してみたいと思いますが、実は私は国会に出てくる前に裁判官という法律関係の仕事をしておりまして、裁判官時代だったかあるいは国会に出てきてすぐだか、貸しレコードというのを聞きまして、何か法の抜け穴のようなところに、うまいというか、ずる賢いというか、けしからぬというか、おかしな商売が出てきたものだなあ、これでレコードというものがつぶれてしまわなければいいがなあというふうにも思いながら、しかし、法律的にはこれはどうもなかなか難しいぞ、規制するといっても規制の方法、今の法律では困難じゃないかな、そんなふうに思いながら、次第にいろいろなことを勉強していくにつれて、しかし、これはどうも法律が単に抜け穴があるというだけじゃなくて、やはりそういうものが出てくる基礎があった、社会的実態がやはりあるのだとだんだん思うようになりまして、そういう実態があるいは理由がある以上、これは法律の抜け穴を埋めて禁止するというだけでは済まない、何とか貸しレコードというような形も定着をさしていかなければならぬし、あるいはそれがレコード全体を脅かしていくなら賦課金とかいろいろなことを考えていかなければならぬと思っておったのですが、そういう中で、貸しレコードの方で自分たちも使用料を払う用意ありという態度を明らかにされて一つの組織ができていって、いい方向に向かっている、本当に新しい秩序をつくっていく方向に今向かっていると思っているのです。
先ほど牛久保さんの方から、こういう貸しレコードというのができてくるについて、一つは機器の普及、それからニーズの方の変化、アウトドアで聞く要請が高くなってきたとか、いろいろニーズが変化してきている、もう一つは、やはり何といってもレコードが高い、あるいは試聴してみたいというような要求がある、それから、一枚のレコードの中に十曲も入っているけれども、実際はそれぞれの人がそんなにたくさんは要求してないのだというようなことがあってということをおっしゃったわけです。
そこで、高宮さんに伺いたいのですが、そういう牛久保さんの方の、こういう根拠があって貸しレコードというのが出てきたのだ、単にする賢くやってきたというだけじゃないのだという御主張だと思うのですが、これについてどういう感想をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/45
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046・高宮昇
○高宮参考人 江田先生の御質問にお答え申し上げます。
私も、率直に申しまして、世の中随分変わってもまいりましたし、機器も普及いたしましたし、第一、レコード文化というのは非常に若者文化でございまして、アウトドア、いずれも御指摘になったようなことについては、それぞれ適切な指摘をしておられるというふうに思います。
ただ、使用料を払う用意ありというその辺のところが、どの程度のことを考えていらっしゃるのか。私どもは、やはりこれは二百円とか二百五十円でそれだけのものを完全にコピーしてそれでもう十分だ、牛久保さんの方は今後また使用料を払うとおっしゃっておられますから、二百円とか二百五十円をここで取り上げることは必ずしも適当ではないと思いますけれども、やはりそういうところに——ただ安いからいいんだ、ニーズがあったんだ、だからそれに我々がこたえたことは正しかったんだということには、いささか私どもは納得しかねるものがございます。
皆様方のお骨折りで、こういうふうな貸しレの方々ともテーブルに着いてお話をするという形ができましたので、これもおできになったばかりで、機関の当事者になっておられる方々にはこれから随分御苦労があると思いますし、本当にそういうふうな指導力、統制力と申しますか、まとまってお話に乗れるかどうかなんていうのもこれからの問題だろうと思いますけれども、そういうところを十分に新しい法秩序のもとでこちらも対応していくようなことによって、我々の考えておりますことをよくわかっていただいた上で貸しレコードというものを健康に育てていくことについて御協力をしたいし、またそれが我々の務めでもあろうと思っております。
しかし、その間の距離というものは、実は率直に申し上げまして相当ございますので、江田先生のお話で、最初はずる賢く法の抜け穴のようなところでやっておるわいというようなお感じから、今日いろいろなニーズも考えてわかるようになったというようなお考えのプロセスは、私どもにも非常に参考にもなろうと思いますので、また今後何かと御教示もちょうだいしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/46
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047・江田五月
○江田委員 そこで、レコードというものの将来なんです。これは別に揚げ足をとるようなつもりで申し上げるわけじゃないんですが、どうも先ほどの高宮さんのお話ですと、いろいろ費用がかかる、それをレコードを買ってもらうという形でコンペンセートしていかなければいけないんだ、こういうお話だったのですが、私は、これはやはり時代の変化というのはもっと進むだろうという気がするのですね。オーディオ機器、録音機器の発達ということにとどまらず、もっともっといろんなものがどんどん——エレクトロニクスといいますかニューメディアといいますか、現にレコード自体の製作でも、今は各パーツがばらばらにつくられて、それをどうやってミックスしていくか、歌手なんていうのが若い女の子でも、そんなに歌もうまくもないのに、やれピッチを上げてみたりエコーをかけてみたり、いろいろなことをやってつくってしまうわけですね。そして何回も何回も、どのくらいですか、百回くらいも歌を歌わせて、それをちょんちょん切ってつなげてつくっていくという、そういうことになってきますと、そういう一つの編集作業に聞く方も入りたい、参加していきたいという要求が起こるのも当然です。あるいはまた、やれINSだとかCATVだとかいうような時代になってきますと、レコードというのは愛蔵家の貯蔵の趣味にはたえても、実際に音楽を聞くときにはレコードじゃなくて、ボタン一つでどこかのデータベースからどっと、しかも最近のすばらしい録音の方法など、PCMと言うんですか、そういうものがずっと入ってくるというようなことになってきますと、貸しレコードも含めてですけれども、レコードという形というものがもうだんだん置いてきぼりになってくるんじゃないか。そうしますと、レコード店というのもあるいは貸しレコード店というのも、そういう営業形態を守ろうということから発想を転換しなければいけない時代が来る。そうじゃなくて、むしろそういう音楽著作物というのは、ずっとフローで流れていって最後にユーザーのところで固定されるという、そういうフローの中継点としての役割。ですから、使用禁止を若干の部分でというようなお話、さっきありましたけれども、むしろそうじゃなくて、音楽著作物がいろいろな形でユーザーのところへ流れていって——レコードもありましょう、テープもありましょう、放送ということもありましょう、あるいは有線もありましょう、いろんな形で流れていく、そのすべてのものをずっとにらみながら、全体的にそこから使用料を上げていって、そしてその音楽著作権者の方にこれを還元していく、そういう発想が必要な時代が来ているのじゃないかという気がするのですが、いかがでしょう、高宮さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/47
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048・高宮昇
○高宮参考人 今後のことでございますけれども、音楽産業というものは、江田先生の御観察になっておられるようなふうに非常に変わっていくのだと私も思います。
今私は、貸しレコードからコンペンセートするものを、現状でそっくりそのまま、かかっているものを原価計算的に全部ちょうだいしたいというようなことを考えているわけじゃございませんで、今ずっとフロートして変わっていきます中で、今日の段階において貸しレコードもそれに相応したようなコンペンセーションを考えていただきたいということを私どもは考えております。
確かに、音楽もいろんなふうに分化をしていくだろうと思います。ニューメディアあたりで使われることもそんなに遠くない時代に来ると思います。そういうものに対して、個々に著作権者あるいは著作隣接権者がどういうふうに権利を主張する領域があるかというようなことを我々今後勉強していきまして、移り変わっていく音楽業界というものに対応していかなければいけない。基本的には先生のお考えに私も非常に近いものを持っております。貸しレコードの使用料というようなものとそれとは、今日の段階ではまた別の角度からいろいろお話し合いもしてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/48
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049・江田五月
○江田委員 使用料自体は、これはもうこれからのお話し合いですから、十分にひとつ時間をかけて、腹を割ってお互いに話し合いをしていただきたいと思うのですが、私は心配するのです。一部分でも利用禁止というのがあると、必ずそこにやみの行為が出てきたり、あるいは商業組合の中でもおかしなのが出てきて、禁止になっている部分が変なことで裏の方へ行って、例の裏本だとか裏ビデオだとかまでどんどん出てくるような世の中ですからね、そういうものが出てくる。あるいは商業組合にむしろ入らない方が得だというようなグループが出てくる。それによって、新しくでき上がろうとする秩序がまた壊れてしまう。
ですから、私は、基本的には、一部分についてでも利用禁止じゃなくて、やはりこれは使用料による許諾だ。その使用料については、今度本法になりますと、裁定という制度があって、文化庁が全体をにらみながら一つの裁定をしていくわけで、この種のレコードはこのくらい、だけれどもこういうレコードは、レコード自体が活性化——さっきの言葉ですと、どういう言葉でしたか、作品が活力を持つに至るまではやはり使用料はこの程度まで上げておかなければならぬとか、そういう判断を文化庁の方にゆだねて、そして使用料で許諾、少なくとも集中的権利処理機構の中では使用料による許諾という方向でないと、新しくでき上がる秩序にまた妙なあだ花が次々咲いていくという心配をするのですが、御理解いただけるでしょうか。高宮さん、ひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/49
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050・高宮昇
○高宮参考人 お考えとしては非常によくわかりますが、一方今度は、そういう作品をつくる、あるいはその作品に参加しますアーチストを育て上げていく、そういうところの人たちの気持ちというのは——従来そういう方々の努力は、レコードが売れる、そのレコード代の中にそういうものの費用が含まれているという考え方で成り立っておりましたものですから、先生のようなお考えに対しては、今日現在、非常に抵抗が強いわけでございます。殊に非常に寡作で、一年に一本、一ダブルと申しますが、一タイトル出すか出さないかというようなアーチストなどは、これにすべてをかけているというような感じがございます。それから、レコード会社もいろいろございまして、そういうアーチストを抱えていて、それ以外にアーチストがいないというところはそれ一つが命綱だ、そういうのが評判が出てくる前にどんどんつまみ取られていくようなことになっては我々の本当の死活問題になるので、このことについては一定期間はこれが大きくなっていくまで、先ほど申し上げましたように、貸しレコードを通じて相対的に安い値段で皆さんが利用されてももうこたえない、大丈夫だというようなところになるまでは温存するようなことをぜひ考えてほしいというような空気も大変強うございます。
一方また、先生方のそういうお考えも十分に関係者には披露もいたしまして、後は具体的な折衝の問題になると思いますので、そういうことで進めさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/50
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051・江田五月
○江田委員 その認識のギャップが業界の中にも随分おありで、本当に苦労されるところだろうと思うのでお察しいたしますが、利用禁止になるとこれはもう待ったなしといいますか、それでおしまいなんですね。使用料ということになると、その額によって、使用料が高ければ貸しレコードよりも買うという方向にカスタマーが移る、安ければ貸しレコードの方へ移るという調節がきくわけです。使用料がべらぼうに高ければ、これはもちろん買った方が安いやということまで行ってしまうこともあり得るわけです。使用料ということになると市場の調節がいろいろできてくるわけで、したがって、そういう知恵というのは随分貴重だと思うのです。
もう時間が終わりましたので最後に。皆さんにいろいろ質問できなくて申しわけないのですけれども、暫定措置法のときに、衆議院でも小委員長報告で、参議院でも附帯決議で「著作者等の許諾権の行使に当たっては、公正な使用料によって許諾することとし、関係者の間の円満な秩序の形成を図ること。」ということが付されておるのですが、これについて芥川さんと牛久保さんの方からは言及がありましたけれども、服部さんはこの際違うので、あとの小泉さんと高宮さんからはその言及がありませんでしたので、この国会の意思というものをどうお受けとめになっていらっしゃるか、簡単で結構ですのでお二人から伺って、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/51
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052・小泉博
○小泉参考人 暫定措置法のときの附帯決議でございますけれども、これは私たちの組織としましては、十分に尊重しようという意思で機関決定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/52
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053・高宮昇
○高宮参考人 非常に難しい問題でございますけれども、とにかく国会で附帯決議がついているということについては、私どもは厳粛に受けとめなければいけないと思います。しかし、先ほども申し上げましたようにいろいろなことがございますので、実際の運用に当たりましては、また監督官庁であります文化庁さんあたりの御指導あるいは御相談などもちょうだいしながら進めてまいりたいと考えております。
この程度でお許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/53
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054・江田五月
○江田委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/54
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055・愛野興一郎
○愛野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただき、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/55
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056・愛野興一郎
○愛野委員長 引き続き、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤徳雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/56
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057・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 多くの皆さんから、大変難しい著作権法の中身についてのやりとりがあったわけでありますが、できるだけ重複しないようにして幾つかの点についてお尋ねをしたいと思います。
まず最初でありますけれども、参考人の皆さんの御意見、私、商工委員会に差しかえで出ておりましたので、余り聞くことができませんでした。申しわけないと思っております。
そこで、お聞きする第一の点は、貸しレコードについてであります。著作者、実演家、それからレコード製作者、それぞれの方の権利を御承知のとおり許諾権として設定したのに対しまして、本案においては貸与権となっておりますが、その理由をひとつ御説明いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/57
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058・加戸守行
○加戸政府委員 御承知のように、今回の著作権法一部改正案におきましては、著作者、実演家、レコード製作者それぞれにつきまして、複製物の貸与に関する権利といたしまして、物権的な権利として貸与権というものを創設することによりまして、著作者あるいは実演家、レコード製作者、後者の著作隣接権者につきましては政令で定める期間の限定はございますが、いずれもその権利の有効期間中は本人のみが貸与することができ、かつ本人の許諾を得た者のみが利用できる、そういう関係を貸与権という形で規定させていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/58
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059・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 先ほどの参考人に対する最後の方の御質問の中で江田さんが触れられておったようでありますが、著作権者等と貸しレコード業者間の関係、円満な秩序の形成を図ることを強調しているわけであります。御承知のとおり、暫定措置法の施行は本年の六月二日でありますけれども、著作者等の許諾権の行使について関係者間でどのような協議が行われておるのか、お教えいただきたいと思います。
〔委員長退席、船田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/59
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060・加戸守行
○加戸政府委員 私どもの了解しております限りにおきましては、日本音楽著作権協会、いわゆる作詞、作曲家の権利を所管する団体でございますが、ここと日本レコードレンタル商業組合、いわゆる利用者側との間におきましては、精力的な使用料金についての詰めが行われまして、四月十三日に基本的な合意に達しまして、四月十六日付で音楽著作権の著作物使用料規程が文化庁長官に対して認可申請が出されてきているという状況でございます。
一方、著作隣接権者側といたしましては、芸能実演家団体協議会並びにレコード協会と、利用者側でございます日本レコードレンタル商業組合との間におきましては数回にわたります接触が持たれております。具体的な料金の話、詰めの段階にはまだ至っておりませんが、精力的に六月二日の施行に向けて今後話し合いが詰めていかれる状況にございますし、文化庁としても、施行期日までの間の合意の形成に向けての側面的ないろいろな御相談にあずかったり、指導助言を行いたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/60
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061・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 暫定措置法では、御承知のとおり許諾を要する期間は一年間となっていますね。ところが、この期間については今回の場合特定をしない、そして「政令で定める期間」と改めているわけでありますけれども、今回、五十九年四月十七日に公布されました、商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の許諾の権利の期間を定める政令があるわけであります。その政令によりますと、原案と同様の一年間とされているわけでありますが、この期間設定は著作者等に一方的に有利になるんじゃないかというようにも思われますけれども、その辺はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/61
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062・加戸守行
○加戸政府委員 ただいま先生御指摘のように、貧しレコード暫定措置法に基づきます許諾を得なければならない期間、つまり許諾権が行使できる期間を四月十七日の政令によりまして一年間と定めさせていただいたわけでございます。
この点につきましては、どの程度の期間がよろしいかということについてはいろいろ御議論があったわけでございますが、暫定措置法成立の際の当委員会に置かれました小委員会の小委員長報告並びに参議院文教委員会におきます附帯決議の趣旨からいたしますれば、関係者からよく意見を聴取して、その意見を踏まえて政令を定めるようにというような御趣旨であったと理解いたしておるわけでございます。
その後、暫定措置法が成立しました後にいろいろ関係団体の御意見を伺ってまいったわけでございますが、作詞、作曲家側でございます日本音楽著作権協会、それから著作隣接権者側でございます日本芸能実演家団体協議会、さらに日本レコード協会、この三団体におきましては、いずれも一年以上の期間としてほしいという御要望があったわけでございます。一方、利用者側でございます日本レコードレンタル協会、現在は商業組合でございますが、当時の日本レコードレンタル協会におきましては、許諾を原則として与えるということであるならば期間にはこだわらない、許諾を利用させてほしいということで、レンタル禁止があるかないかということについての強い関心であって、全面的に許諾を与えるという方向であるならば期間にはこだわらない、つまり一年でもよろしい、こういうような御意見であったわけでございます。
その後十分に、全面的なレコードのレンタルの禁止のケースがあるのかないのかという点についての最終的な詰めはございませんが、基本的な方向として、貸しレコードに対します許諾を与える方向での考え方のもとに一応一年間という期間についての了解をいただきましたので、政令の制定に踏み切らせていただいた、こういうような事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/62
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063・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 前の質問で申し上げましたが、貸しレコードの暫定措置法は六月二日から発効されますね。それで、貸しレコードについての著作者等の許諾のための使用料につきまして、どのような協議が行われたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/63
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064・加戸守行
○加戸政府委員 許諾を与えました場合の使用料金につきましては、先ほども申し上げましたように、作詞、作曲家側でございます日本音楽著作権協会と利用者側でございます日本レコードレンタル商業組合との間におきまして精力的な詰めがなされまして、一応LP一枚を二日間貸すというようなケースについての基本料金を五十円という形で合意に達しました。その間、団体によります契約の場合の割引措置、あるいは暫定法施行期間中におきます割引措置等の細かい詰めの余地は残されておりますけれども、基本的な料金の合意が得られましたので、音楽著作権協会の方からは四月十六日付をもちまして音楽著作物使用料規程、つまり料金を定める規程でございますが、文化庁長官に対しましてそれの認可の申請が出てまいっておりますので、これを六月二日の施行までの間に文化庁長官としては認可をする予定でございます。
それから、著作隣接権者側につきましては、先ほど申し上げましたように、これから具体的な金額の提示、話し合いが行われるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/64
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065・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 お答えを大分いただいておるわけでありますが、貸しレコード暫定措置法によって許諾を受けた条件の範囲内において本案が制定された後も引続いて貸しレコード業を行うことができる、こうされておりますね。このことが著作権者等に、本案が制定までの間に許諾を拒むこともあり得るんじゃないか、こう思うのですけれども、その辺はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/65
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066・加戸守行
○加戸政府委員 今回の著作権法一部改正案の附則二項に関するお尋ねであろうかと思いますが、この規定の趣旨は、暫定措置法の施行期間中に許諾を与えた場合には、例えば一年間の許諾を与えます、あるいは二年間の許諾を与えますというような包括的な契約がありました場合には、例えば六月二日に一年間の許諾を与えたと仮定いたしますと、来年の一月一日になりまして、本法案が仮に成立いたしますれば一部故正案が施行になるわけでございますので法制度が変わるわけでございますが、残りました半年分についても旧暫定措置法下におきます許諾の効果が及びますから、つまり、ことしの六月二日から来年の六月一日までの間は使えますよ、そういうような趣旨で設けた規定でございます。
したがいまして、このことを理由といたしまして、著作権法に移行する前段階において暫定措置法下で拒否をしておいて、それを新法下で拒否の効果をつなげる、そういう反対の意味を持つものではございませんから、これは仮定の話でございますが、暫定措置法下で仮に許諾を拒否した者があったといたしましても、それは単に暫定措置法施行期間中の問題でございまして、本法下では、本法の規定に基づく許諾が得られるか得られないか、そういう理論的な考え方になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/66
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067・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それでは、貸しレコードの暫定措置法の許諾権による許諾条件と、それから本案が成立した場合の貸与権及び報酬請求権による許諾条件とは、どちらが貸しレコード業者にとって厳しいものになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/67
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068・加戸守行
○加戸政府委員 まず、理論的に申し上げますと、一つは、作詩、作曲家側におきます著作権といたしましての問題でございます。この場合は、暫定措置法下におきましては「政令で定める期間」、具体的には一年間、許諾を得なければならないものとされております。今回の著作権法一部改正案におきましては、いわゆる公衆への貸与に関する権利を専有するということで、保護期間は著作者の生存期間並びに死後五十年間という考え方でございますので、一応商業レコードが発売されてからその著作権が切れるまでの間は、つまり死後五十年にわたります間は許諾を得なければならないということで、理論的には著作者の方にはるかに有利な規定になっております。
ただ、実務的に申し上げますと、商業レコードが発売されましてからレコードが使用されて、それによります売り上げが、文化庁あるいはレコードレンタル商業組合等の調査によりますと、発売後一年間のものが約九割を占めておりますので、実際には暫定措置法下で及ぶ著作者の権利は、発売されたレコードの九割に及ぶ、著作権法一部改正案におきましては、それが十割に及ぶということで、約一割程度権利が実態的には膨らむということでございます。
それから、実演家並びにレコード製作者につきましては、許諾権の期間は暫定措置法下では一年でございますが、著作権法一部改正案におきましては、一カ月以上または十二カ月の範囲内において政令で定める期間となりますので、許諾に関しましては暫定措置法の考え方を踏襲して十二カ月と定めることといたしますれば、許諾権の実稼働期間は同様でございます。
しかし、このほかに、政令で定める期間が終了いたしました後におきます報酬請求権の規定を著作隣接権者側に認めておりますので、いわゆる一年間あるいは政令で定める期間、例えば十二カ月でございますれば十二カ月を経過した後におきましても二十年間の報酬請求権が機能するわけでございます。しかし、この場合も、商業レコードのレンタルの実績が発売後一年間のものが九割を超えておりますので、実際問題といたしましては、九割の使用料収入が今度は十割になるという程度の差は生じようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/68
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069・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それに引き続きまして、これらの貸与権と報酬請求権の問題についてお尋ねをしたいわけであります。今のお話はわかりました。
そこで、著作者、実演家、レコード製作者の貸与権と、いわば三者の承認を必要とすることになると思いますけれども、この三者の承諾を得るについてはどのような手続が想定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/69
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070・加戸守行
○加戸政府委員 まず、作詞、作曲側につきましては、音楽の作品のほとんどが先ほど申し上げました日本音楽著作権協会に信託をされているという状況でございますので、作詞、作曲部分につきましては音楽著作権協会の許諾をとればほぼ足りるということでございます。それから、芸能実演家あるいはレコード製作者側について申し上げますと、権利の性質上は個々の権利でございますけれども、現在の団体側の動き方といたしましては、芸能実演家団体協議会並びにレコード協会におきまして、団体としての権利行使という考え方でそれぞれ進めておるわけでございますので、この三つの団体との間におきましてそれぞれ契約を締結して使用の許諾を受けるという形になろうかと思います。
なお、付言させていただきますれば、先ほどの参考人の意見表明に関します質疑の際におきましても、三者を一本化するというようなことについての御質問がございまして、特に三団体それぞれの御意見の中でも、なるべく一本化したいという方向でございますので、もし話し合いがうまく進みますれば、三者をまとめた一つの団体が窓口として、三団体の意向を代表した形での権利処理も可能になろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/70
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071・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 本法案の第百十九条第一号の関係について今触れているわけでありますけれども、実演家等の貸与権について罰則規定を設けたその理由は何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/71
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072・加戸守行
○加戸政府委員 暫定措置法下におきましても、実演家あるいはレコード製作者の許諾を得ないでレコードを公衆に貸与した者につきましては、著作隣接権侵害とみなしまして罰則の適用をすることになっております。
それから、現在の著作権法下におきましても、いわゆる著作隣接権を侵害した者については罰則を適用いたしておりまして、今回の法改正の提案によりまして、その著作隣接権の一内容といたしまして商業用レコードに関する貸与権を規定させていただきましたものですから、自動的にと申し上げれば語弊がございますけれども、著作隣接権侵害に対しては罰則を適用するという従来の原則の中に権利の範囲が拡大されたわけでございますので、拡大された範囲でございます貸与権についても当然に罰則を適用することといたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/72
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073・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それでは、法案の第九十五条の二及び第九十七条の二の関係についてお尋ねをいたします。
実演家等の報酬請求権は、著作権法によって録音後二十年間働く権利となりますけれども、貸しレコードについてこのような長期間の報酬請求権を認めるということにしたその理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/73
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074・加戸守行
○加戸政府委員 通常の現在行われております貸しレコードの実態からいたしますれば、発売後一年以内のものが九割を占めるということで、古いレコードはそれほど貸与されるわけではないわけでございます。しかしながら、権利の性質といたしますれば、著作権法上で著作隣接権の保護期間につきまして二十年と定めております考え方の基礎は、一九六一年にローマで制定されました隣接権条約におきまして二十年間の保護期間を義務づけておるわけでございますので、日本はまだこの隣接権条約に加入いたしてはおりませんけれども、将来の加入を想定して、国際的に調和のとれた制度という考え方で二十年間の制度を、現在著作権法上著作隣接権の保護期間として定めているわけでございます。
この関係におきまして、例えば報酬請求権にいたしましても、著作隣接権存続期間内の実演あるいはレコードについては報酬請求権を認めるという考え方を取り入れたわけでございまして、この考え方は、現在、商業用レコードの放送あるいは有線放送に関します二次使用料について、二次使用料を受ける権利も二十年間認めていることとのバランスにおきまして、法体系として著作隣接権は二十年間動くのだということについて、それの例外を特に設けるべき特段の理由もないということで、基本的な二十年間の原則によることとしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/74
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075・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 前にも説明があったのでありますが、著作者の貸与権について、同じような形態であります貸し本業がありますね、これは当分の間適用除外とあるわけであります。それでは、一体なぜ貸しレコード業を主として対象としたのでしょうか、その理由について御説明いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/75
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076・加戸守行
○加戸政府委員 御承知のように、暫定措置法は貸しレコードだけに限定した緊急避難的な対応であったわけでございますけれども、今回の著作権法一部改正案の考え方といたしますれば、貸しレコードのみならず、著作物の貸与全般について法体系の整合性と申し上げますか、あるいは著作物についての権利を及ぼす、そういった理論的な考え方も含めまして、現在問題となっていなくても将来起こり得るであろう、あるいは現在の貸しレコード問題のように問題が生じてから後追いをするということでは遅いということで、著作物の複製物の貸与について全般的に権利を規定することといたしたわけでございます。
ただし、全般的に権利を規定することとしながらも、その中で実社会的に混乱を生じやすいものあるいは問題の多いもの、そういったものについての分析をいたしたわけでございますが、書籍、雑誌について適用除外することといたしました理由は、貸し本業というのが、既に百年以上の歴史を持って実態的に今日まで続いてきているという営業の既得権的な問題が一つ。突如貸し本業について権利が及ぶというのはいかがなものであろうかというのが一つ。それから、貸し本という行為によりまして現実に著作者が重大な経済的な利益の損失を受けているわけでは必ずしもない。もちろん、貸し本業が今後いろいろな形態が考えられますので、相当な経済的利益を得るようになるというようなケースもあり得るわけでございますが、そういった実態がまだそれほど顕著ではないということ。さらに、この貸し本業によりまして著作者の権利に重大な損害を生じているともまだ言えない状況というような点も踏まえまして、また一面におきましては、貸し本業について権利を及ぼした場合の権利者サイドで権利の処理をする場合に、音楽の世界のような集中的に権利を処理するような機関あるいは団体というものがまだ完備されていないという状況も踏まえまして、当分の間、この附則におきまして適用除外することとしたわけでございます。
もちろん、この「当分の間」という考え方の中には、当然権利を及ぼすべきであるという社会的な認識、実態ができ上がるか、あるいは集中的権利処理機構ができるといったような状況が出てまいりますれば、当然に附則は削除さるべきものという前提におきまして提案をさせていただいているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/76
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077・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 百年の歴史があって既得権もあるという冒頭の説明でありましたが、時代の進歩によりまして貸し本業もいろいろ変化が生じてくるとは思います。そういう意味の当分の間の目安はわからないと思いますけれども、いずれそういう問題は提起されてくるのではないかというように私も実は想定をしているところであります。
さて、著作権法の性格からいいまして、例えばベルヌ条約とかパリ条約とか、たくさんの条約がございます。いわば我が国の著作権法もこういう条約に大きな関連を持たしているわけでありますが、諸外国の著作権法で、今回出されました法律に規定いたしますところの貸与権及び報酬請求権といった権利を規定している国はあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/77
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078・加戸守行
○加戸政府委員 外国の立法例についてのお尋ねでございまして、典型的な立法例といたしますれば、スウェーデンにおきまして、これは頒布権という名前でございますが、著作物の複製物を頒布する権利、その中には当然貸与する権利も含まれておるわけでございます。ただし、原則としてはファースト・セール・ドクトリンと申しまして、市販に供された後については権利が及ばないのを建前としながらも、楽譜から音楽の複製物一般につきましては、このレンタルについては、今申し上げたファースト・セール・ドクトリンが動かない、つまり発売された後においても頒布権が動く、つまり貸与権が動くということで著作権が認められておりまして、スウェーデンにおきましては、したがって貸しレコードのようなケースにつきましても著作権が機能しているわけでございます。
〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
それから西ドイツの場合でございますと、これもいわゆる頒布権というのがございますけれども、先ほど申し上げました発売後におきましての頒布権が動かない形になっております。しかし、そのかわりに報酬請求権としての公貸権が著作者に認められているということでございます。
なお、今申し上げました頒布権につきましても、西ドイツにおきましては、発売された後において原則として動かないということを申し上げましたが、判例がございまして、いわゆるレンタル禁止の表示をしたレコードにつきましては、売られた後においてもそのレンタルが禁止されている、つまり頒布権の行使の一内容としてレンタルが禁止されているという考え方のもとにレンタル禁止を認めた判決も出ているわけでございまして、そういう意味では、今回の我が国の措置に近いようなものでもございます。
それから、あとの国といたしましては、アメリカにおきましては、貸しレコードあるいは貸しビデオにつきまして、発売後におきましても権利が動かせる方向での法案が現在議会において審議中ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/78
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079・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それでは、次に移ります。
仮定の質問をして恐縮でありますが、著作者それから実演家、レコード製作者のうち、いずれかが貸与を許諾しないという場合も想定されると思いますけれども、その場合は一体どういう措置をとられるのか、あるいは文化庁があっせんに入るということになるのかどうか、その辺はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/79
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080・加戸守行
○加戸政府委員 現在までのところ、日本音楽著作権協会及び日本芸能実演家団体協議会の両者におきましては、例えば高速ダビングを行っている等の違法な業者あるいは正当な理由がある場合を除きましては、基本的に許諾を与える方向でございます。
一方、日本レコード協会におきましては、先ほどの参考人質疑にもございましたように、レコード会社としての死命を制せられる死活問題となるようなレコードについては、限られた期間であっても、ある程度のレンタルの禁止と申しますか、レンタルは差し控えてほしいというような考え方を現在お持ちのようでございまして、今後レコードレンタル商業組合との間の話し合いの中での具体的な動きになっていこうかと思いますけれども、そういうような限られたケースでの許諾をしないというケースは想定されるわけでございます。その場合におきましての他の二団体はそれじゃどうするのかという意味のお尋ねでございますれば、もちろん権利者団体が三団体ございますから、その一団体が禁止したものを他の二団体が幾ら許諾を与えたとしても、これはレンタルをすることはできないわけでございますので、実務的には、三団体につきまして、そのレコードのレンタルは認められないというような結果は招来しようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/80
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081・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それでは、本案の第三十八毒第四項の関係についてお尋ねいたします。
説明がありましたけれども、ビデオソフトを含むところの映画の複製物について、非営利の公共の視聴覚ライブラリー等において政令で定めるものは、著作者等の許諾を受けなくともよい、こうあるわけですね。それで映画等の貸し出しができるとありますけれども、そういうふうにした理由と、さらに貸与権を有する著作者等について相当の額の補償金、湯山議員が、相当額とはというやりとりを大分なされたようでありますが、相当額の補償金を支払わなければならないとしたその理由と、補償金の額について一体どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/81
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082・加戸守行
○加戸政府委員 この三十八条四項の規定で、映画につきまして、非営利視聴覚教育施設等におきます貸与を認めることといたしましたのは、実はその前に三十八条の第三項の規定の追加案を御提案申し上げているわけでございますが、三項におきまして、映画以外の著作物の複製物の貸与につきまして、非営利で料金を受けない場合には貸与することができるといたしまして、例えば図書館等におきますレコードの貸与を認めることとしたわけでございます。そのこととの相関関係におきまして、従来、映画についてはこのような特例は設けていなかったわけでございますが、貸しレコードその他の著作物の複製物についての貸与に権利を認めつつも、図書館等におきますレコード等の貸与については一応自由とするという法制をとった、そちらのバランス上、映画につきましても視聴覚教育施設で非営利のものについては貸与を認めようという考え方が四項の本文の考え方でございます。
その場合におきます報酬請求権を規定いたしましたのは、映画と申しますのは非常に経済的価値の高いものでございますし、一応基本的な方向としての法整合性は三項と四項でそろえながらも、映画についての利用の場合には相当な額の補償金を支払うこととして、経済的な利益だけは一応保全しようという考え方に出たものでございます。
その場合の「相当な額の補償金」という考え方につきましては、一昨日の湯山先生の御質問でもお答えしたわけでございますが、通常の使用料よりは安い金額であるが、そんなに安いものではなくて相当な程度だという意味で、いわゆる通常の使用料にある程度近い額という趣旨でございます。
実は、この運用の問題といたしましては、現在、視聴覚ライブラリー等の団体と、あるいは映画を制作いたしております映像文化製作者連盟その他の権利者団体との間におきます話し合いが進められておりまして、原則として映画フィルム、つまり十六ミリとか八ミリといった映画フィルムの場合におきましては、その販売価格の中に貸与に関します補償金額も含めた形で売ったという形での権利処理をいたしまして、特別な支払いは要しないという考え方をとる。
それからもう一方、ビデオにつきましては、基本的に貸与については、いたします場合には、レンタルについてのレンタル料金をちょうだいするという考え方で今話し合いが進められている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/82
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083・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 相当の額の問題については、私はこれ以上やるつもりはありませんけれども、しかし、通常の額に近いとか、わかったようなわからないようなお話なんでありますが、これは結構です。
次いで、著作権法第三十条の私的使用のための録音、録画の問題でありますが、私的使用のための録音、録画について今後規制を強める考えがあるのですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/83
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084・加戸守行
○加戸政府委員 今回の法改正を提案申し上げます前に、著作権審議会の第一小委員会においてこの問題を御議論いただいたわけでございますが、その中におきまして、この三十条の規定についてのいろいろな議論があったわけでございます。
特に権利者団体サイドからは、著作権審議会あるいは文化庁に対しまして、三十条の改正をしてほしい、つまり権利者サイドに有利に、使用者サイドには厳しくという、法の厳格な適用を求めるという点で三十条の規定の趣旨を明確にしてほしい、三十条の規定をもとに著作物のコピー等が安易に行われることを阻止したい、そういう気持ちがあったわけでございます。いろいろ議論もございましたけれども、解釈上そうであるかないかということをわざわざそのために直すというのはいかがなものであろうかということと、その改正の仕方も難しいという議論もございました。
それから、他方におきまして、御承知のようにこの私的録音、録画の問題というのは、当委員会でもいろいろ御議論が出ておりますように録音、録画機器あるいは生テープの普及によりまして生ずる問題でもあるし、そちらの基本的な録音、録画機器に対する措置との関係においても、この三十条はどうあればいいのかという問題でなかなか議論がまとまらなかったという経緯がございまして、三十条につきましては今申し上げたように録音、録画機器に対する措置とあわせて、三十条の規定自体もまた今後ともいろいろな議論が積み重ねられていくものだろうと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/84
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085・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 過去の会議録等を見ますと、いろいろな議論があるようであります。
そこで、録音、録画機器について西ドイツのような賦課金制度を導入した方がよいのじゃないかという意見もあるわけでありますが、文化庁といたしましては、こういう制度の導入をどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/85
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086・加戸守行
○加戸政府委員 著作権審議会の第五小委員会という機関から昭和五十六年六月に報告をちょうだいしたわけでございますが、そこにおきまして、家庭内録音、録画問題の御審議をいただいたわけでございます。当面は、この問題についての著作権思想の普及とかあるいは国民の理解を深めるための措置とかいうのとあわせまして、将来、録音、録画機器につきましても、例えば西ドイツ方式のような賦課金を導入するといったような制度面での対応も含めまして、そういった基本的な解決に向かっての関係者の基本的な合意の形成ということへ向けて文化庁は努力するようにというような御報告をちょうだいしたわけでございます。
したがいまして、これを受けまして私どもとしては各種の措置をとるほかに、著作権資料協会に著作権問題に関する懇談会というのを設置していただきまして、そこで権利者団体あるいは機器メーカー、テープメーカーという関係団体の代表者の方々にお集まりいただきまして、文化庁もその中に加わりまして、現在十五回程度の回数を重ねて御協議をいただいておるわけでございます。
文化庁の姿勢といたしましては、メーカーサイドのある程度の御理解が得られるのであるならば、こういった制度の抜本的な制度的対応へ向けての方向性ということは、審議会報告もございますし、文化庁としてもその方向へ向けての努力を今積み重ねていっているという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/86
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087・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 次に、音楽テープなど高速ダビングの問題について若干お尋ねをいたします。
高速ダビング機器につきましては、御承知のとおり著作者等から訴訟が実は提起をされて進行しているわけでありますけれども、例えば音楽テープのチェーン店であります原宿クリスタル、これはダビング機器を裁判所から四台ほど実は撤去をされているはずなんであります。あるいはさらに九州の福岡県、店名はパル、会社名はサンパルという会社なんだそうでありますが、これは自主的に自粛をするというような事態まで発生している模様であります。このような事態と本案で規制をしようとする関係について、一体関係があるのかないのか、その辺についてお考えを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/87
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088・加戸守行
○加戸政府委員 先生ただいまいろいろ御指摘ございました、訴訟になっております事柄すべて、貸しレコード店におきまして高速ダビング機器を設置いたしまして、その店で録音テープをレンタルして、かつ高速ダビング機器を使わせて、生テープを販売し録音させ、それをお持ち帰りいただくというような、一種の海賊版複製工場的なケースについての訴訟が提起されているわけでございます。
当初、裁判所におきましても、なかなかこの仮処分の申し出等につきましては速やかな対応が行われなかったわけでございますが、今回の著作権法の提案と機を合わせたような感じもいたしますが、第一号の仮処分決定が出たというような状況もあるわけでございます。しかしながら、これ以外におきましても、例えば貸しレコード店以外で全く高速ダビング機器のみを設置して、そこでお客さんが持ち込んだ録音済みテープを生テープに録音させるというような業種もあるわけでございまして、いわゆる現行法、つまり改正されておりません現行著作権法のもとにおいては、そのような問題はいわゆる貸しレコードとリンクしているダビングではなくて、貸しレコードと一応形式的に切断されているダビングについて押さえられるのかどうかということになると甚だ難しい問題も出てこようかと思います。そういう意味におきまして、貸しレコードとリンクしているダビングであろうとリンクしていないダビングであろうと、お客に対しまして録音、録画機器を使用させて音楽テープ等の複製を行わせている業者につきましては、それを独立した形での規制をかけることが適当だという判断のもとに提案をさせていただいたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/88
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089・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 提案理由によりますと、私的使用のために店頭にある複製機器を用いて録音、録画をした者につきましては罰則適用はしない、ただし民事上の責任は問われるかもしれない、こういうことだと思いますけれども、どのようにして民事上の責任が問われるのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/89
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090・加戸守行
○加戸政府委員 建前といたしますれば、今回の三十条の法改正によりまして、私的使用の目的であれ、業者の設置する録音、録画機器を用いて複製した場合には著作権が制限されない、つまり複製権が動く、著作権が動くという考え方でございますので、そのような行為につきましては当然著作権侵害になるわけでございます。ただ、今回の改正によりましてそれを明確に一応違法と位置づけたわけでございますが、その個人個人の行為そのものを取り上げてみますと、罰則を適用するほどの可罰的違法性が強いとまでは言えないだろうという考え方のもとに罰則を外したわけでございまして、著作権侵害である点におきましては、すべての著作権侵害と同様な考え方になるわけでございます。
そこで、恐らく先生のお尋ねの趣旨は、個人が民事上の責任を問われるといっても追及のしょうがないのではないかというような御趣旨に承ったわけでございますが、これは確かにおっしゃられるとおりでございます。お店へ来ている一人一人のお客さんがテープをとるたびに、あなたは著作権侵害だからと言って、テープをとられている権利者が行って、その方に、だから損害賠償をしろ、録音使用料に相当するお金をよこせというようなことは実務的には考えられないわけでございますので、民事上の責任があるといたしましても、それの実効性を期すことは極めて難しいだろうと思います。
要は、著作権侵害であるということで、罰則は適用になっていなくても著作権法に違反しているということの個々の利用者が法認識をお持ちいただきまして、もちろん業者の録音機器を使った録音をしないことがそれは望ましいといいますか、すべきでないわけでございますけれども、仮にやられるとしても、私は著作権侵害をしているのだなという認識のもとにおやりになるのであれば、著作権法も少しはそれだけの意味を持つということも考えられるわけでございまして、要は国民の法意識の問題ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/90
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091・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 かなりいろいろな受けとめ方もありますから、おっしゃっていることはよくわかるわけであります。
さて、次に、自動複製機器のうち、当分の間、文献複製機器はこれを除くとありますね。その理由といたしまして集中的な権利処理体制が整っていない、こうしているわけでありますけれども、書籍関係につきましては、つまり出版関係につきましては著作権関係者団体として日本文芸著作権保護同盟あるいは日本書籍出版協会等があるわけであります。そして著作権保護のため活動をしているわけでありますけれども、この理由でありますところの集中的な権利処理体制とは一体どういうものなんでしょうか、お答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/91
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092・加戸守行
○加戸政府委員 先生御承知のように、文献複写機器によってコピーされるケースは何が多いかと申しますと、いわゆる学術雑誌に掲載されました論文とか、そういった学術文献が圧倒的に比率が高いわけでございまして、こういった文献複写機器業者に対します規制をするあるいは権利の処理をしてもらうというような団体といたしましての集中的権利処理機構というものにつきましては、やはり学術関係の権利者が入ったものでなければ意味をなさないわけでございまして、そういう意味で当面この集中的権利処理機構に関しまして、実は本日、文化庁に置かれます調査研究協力者会議におきまして集中的権利処理機構に関します報告をちょうだいすることになっておりますが、その中におきましては、学術関係の権利者並びに出版者を中心といたしました集中的権利処理機構を設立していただきまして、もちろんこの中には文芸関係も入るわけでございますが、そういった機構によって権利を処理していただくということを考えているわけでございます。
ちなみに、西ドイツにおきましてはWORT、アメリカにおきましてはCCCというような、既に文献複写問題に対応します集中的権利処理機構がございますわけでありますので、私どもとしましても、そういった西ドイツあるいはアメリカ、その他ヨーロッパ諸国におきます既存の例等を参考にさしていただいて、日本でも理想的な集中的権利処理機構の設立の方向に向かって指導してまいりたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/92
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093・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 時間もあとわずかになってまいりましたから端的にお尋ねをいたしますけれども、御承知のとおり、レコード等につきましては消費者のことも考えなくてはいけないのじゃないかという一面があると私は思います。したがいまして、再販価格制度の見直し、ヨーロッパ、アメリカの例に倣いまして見直しをするべきじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/93
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094・加戸守行
○加戸政府委員 レコード価格の問題につきましては、本来でございますと通産省がお答えすべき事柄ではあろうと思いますけれども、現在私どもの感じといたしましても、例えば日本のLPが一枚二千八百円、高いというような御意見もあるわけでございますが、ヨーロッパの先進諸国でございます西ドイツ、フランス、イギリス等におきましても、LP一枚の価格は日本円に換算してほぼ二千八百円前後でございますので、ヨーロッパとの価格がそんなに離れているという感じはいたしません。ただ、アメリカにおきましてはLP一枚が今二千円程度でございますので、価格の差はございますが、これはアメリカと日本、西欧諸国との違いは、物品税あるいは付加価値税というのがかかっていないということと、それから、アメリカにおきましては非常に市場が広うございますので、製作効率と申しますか、レコード一品目につきまして売れる枚数が極めて数量が大きいという点もございまして、製作効率が、そういう数字の比較だけで言いますとアメリカは日本の六倍というような状況でございますから、二千円でも経済的にペイするのかなというような意味合いもあろうかと思います。
ただ、再販価格の問題につきましての妥当性は、文化庁として申し上げる二とは通産省の領域を侵すことになりますので、差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/94
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095・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 通産を相手にしていますから、なかなか答えにくい点があろうかと思います。
これまた通産に関係すると思いますが、私は、いろいろ理解の仕方があると思いますけれども、やはり再販価格制度の見直しというのは検討に値するというふうに実は考えているわけであります。同時に、レコード製作者そのものも、やはり大衆消費者のことを考えれば考えるほど、もっと価格というものを適正にするために努力すべきじゃないか、音楽文化のことも考えまして私はそう思うのでありますが、御見解いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/95
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096・加戸守行
○加戸政府委員 現在、レコードの価格というのが統一された形であるわけでございますけれども、私ども聞きますところによりますと、レコードによりまして非常に売れ行きの悪いものがございますし、あるいは売れ行きの非常に、例えば何十万枚と売れるようなレコードもございますけれども、レコード会社それぞれに価格は同一でありながら、その同一の価格の中で多種類のレコードを発売し、その中でヒット作品が出ることによって余り売れ行きのよくないレコードの分の収益も相償わせているというような関係もあるのじゃないかと思うわけでございまして、ある意味で一つのレコード会社ごとに、それぞれ自分の出しますレコードの範囲内におきまして、統一価格の中で各品目ごとのでこぼこを実際上経済収支相償うようにしているというのが実態だろうかと思います。
確かに、これまた通産省の領域に口出しするようになりますが、先生おっしゃいますように、よく売れるものは安くし、余り売れないで貴重なものは高くするとかというような形で、自由競争で消費者の選択に任せるというのも一つの方法であろうかと思いますが、従来のレコード会社のとってきました道というのが、どうもそれになじみにくいものがあるのではないかというような感じを私ども持っております。
いずれにいたしましても、通産省所管のことにこれ以上余り口出しをするのは適当でないと思うので、差し控えさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/96
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097・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 通産省に来てもらってお答えをしていただけばよかったのでありますが……。
さて、もとの権利者であります著作権者と隣接権者である実演家、レコード製作者の権利の強弱についてどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/97
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098・加戸守行
○加戸政府委員 著作者に認められました貸与権並びに著作隣接権者に認められております貸与権、この場合、報酬請求権を除いて貸与権のみの比較という意味でございますれば、同じ排他的な性質を持ちました物権的な権利といたしましては全く同等の、同様な権利であると理解しております。
ただ、権利の稼働する期間が、著作者につきましては著作者の生存間及び死後五十年間という長いレンジにわたります期間が保証されている。一方、著作隣接権者側につきましては、商業用レコードが発売されてから政令で定める期間のみ貸与権が動きますので、その期間の面におきまして、一カ月から十二カ月までの範囲という分野と死後五十年までという長いレンジとの期間の長さの違いはございますが、権利そのものをとらえて申し上げれば強弱は全くないと考えてよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/98
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099・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 それでは、使用料の金額を決める場合に、権利者間の配分比率をどのくらいにすることが適当だと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/99
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100・加戸守行
○加戸政府委員 事柄といたしましては、この権利者としては作詩、作曲側でございます音楽の著作権者、それから歌手、演奏家でございます実演家、並びにレコード音盤製作者でありますレコード製作者、この三つの態様に分かれるわけでございますけれども、もともとレンタル料金は三者一本にして、つかみで幾ら、その中で配分をどうするといった性格のものではございませんで、それぞれの作詩、作曲家の著作権につきましては日本音楽著作権協会が定めます著作物使用料規程というのがございまして、これは文化庁長官の認可が必要でございますが、そこにおきまして、一応著作物としての使用料の妥当な、適正な価格というものが定められるわけでございます。
一方におきまして、著作隣接権者側であります実演家あるいはレコード製作者につきましても、それぞれがレコードレンタル商業組合あるいは貸しレコード側と御相談をしながら料金を定めていくというシステムになっているわけでございまして、その意味においてはある程度、幾ら払えば経済的に貸しレコードという行為が成り立つのか、あるいは幾らの料金であるならば権利者側として自分たちの経済的利益にそれほどダメージを受けないで済むのか、そういった相関関係、あるいは営業として成り立つかどうかという経済法則とか、いろいろな点を勘案して、実務的には両当事者間でお話しの上、お決めになる事柄であろうかと思います。
ただ、実際問題として、そうはいいましても、それぞれ横並びとか横にらみというのがございますから、日本音楽著作権協会が一応基本的な合意に達したということを前提といたしまして、今申請が出ております著作物使用料規程における使用料の料金というものが一つの有力な、ある意味めプライスリーダーとしての役割を果たしているわけでございますので、そこを横目でにらみながら、実演家、レコード製作者についても、それぞれ諸般のファクターを考慮しながら決まっていくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/100
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101・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 時間も迫ってまいりました。最後の段階に二、三の点についてお尋ねをいたします。
御承知のとおり、レンタルが出店をいたしましたのが五十五年六月ですね。以来、通産省が五十八年八月現在で調べた状況によりますと、千九百十店にまで増加をしているわけであります。大臣の提案理由の中では千九百軒とありますけれども、恐らく今日の段階では二千軒に達しているのではないかと推定されるかと思うのであります。
そこでお尋ねいたしたいと思いますのは、提案理由の中には、こういうレンタル業者が増加をしたために云々とこうあるわけですけれども、そういう関係でお尋ねをしたいと思っています。レコード会社の売り上げの状況をその意味で知りたいのでありますが、文化庁は実際の売り上げの状況をどのように把握されておりますか、お示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/101
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102・加戸守行
○加戸政府委員 貸しレコード業が出現したことと直接の結びつきがあるかどうかというのは、これは大変難しい問題でございますけれども、少なくとも貸しレコード業が出現いたしましてから五十六年、五十七年にかけまして二年間連続、レコードの売り上げが減少したということは状況としてあるわけでございまして、そういう意味で、どの程度の影響が貸しレコードに起因するものか、あるいはレコードに対する消費離れなのか、その辺は分析することは極めて至難のわざであろうかと思います。
しかし、特に貸しレコード業種というのが、丸いディスクを使いましてレンタルするケースが極めて高いわけで、それをテープにとるわけでございますけれども、ディスクそのものの売れ行きあるいは売上額というのが年々減少しているという点から見ますと、ディスクのレンタルが貸しレコードの中心であるという点を考えると、ある意味の相関関係があるのではないかという推測はつくわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/102
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103・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 提案理由の中には、断定はしておりませんけれども、いささかそのように受け取れるような文言がありますので、そういう意味でお尋ねをしたわけであります。
売り上げが減少してきている、特に五十六年、五十七年が減少しているというお答えでありますけれども、それでは、権利者に一体どれだけの被害になっているのか、数字がわかればひとつお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/103
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104・加戸守行
○加戸政府委員 これも極めて難しいわけでございまして、レコードの売り上げが減少した分イコール、言うなれば著作者側にとってみれば録音使用料の収入が減ったと理解するのか、あるいはもっと伸びるべかりしものが減っているのか、横ばいのはずのが減っているのか、その辺の分析も不可能でございますが、要するに、潜在的にどれだけの経済的利益を得べかりしものが減少したのかということ、これも証明が極めて困難でございます。ただ、申し上げられますことは、五十六年度、五十七年度におきまして、今申し上げたレコードの売り上げの減少に伴いまして、音楽著作権協会に入る録音使用料も連動して減少しているということだけは申し上げられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/104
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105・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 数字を集約するのはなかなか難しい状況だなというのは私も理解できますが、いずれ文化庁はそれを手がけてみたらどうかと思うのであります。
最後に、レコードディスク、音楽テープ、ビデオその他、これの売り上げの変化はどうなっておりますか、おわかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/105
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106・加戸守行
○加戸政府委員 先生のおっしゃいましたディスクとテープに分類いたしますと、ディスクの売上額でございますが、年産金額にいたしまして昭和五十五年度、つまり貸しレコードが出現した時点でございますが、千八百十二億三千八百万円でございます。それが五十六年度は千七百二十四億七百万円、五十七年度が千五百五十二億九千百万円、五十八年度が千五百二十六億八千二百万円、こういう数字でございます。テープにつきましては、五十五年度が千百十六億六百万円、五十六年度が千百六十二億四千七百万円、五十七年度は千二百五十七億四千六百万円、五十八年度が千二百八十九億八千百万円。
今申し上げましたように、ディスクは毎年減少しておりますが、テープの方は上昇しているという状況でございます。
それから、ビデオの方の売り上げについては、当方ちょっと実態をつかみかねております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/106
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107・佐藤徳雄
○佐藤(徳)委員 もっとお尋ねしたい点があるわけでありますが、時間がオーバーいたしましたので終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/107
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108・愛野興一郎
○愛野委員長 この際、休憩いたします。
午後一時二十九分休憩
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午後三時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/108
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109・愛野興一郎
○愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/109
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110・山原健二郎
○山原委員 最初に、第二国立劇場のことについてちょっと確かめておきたいのです。
これは、昨日の第二国立劇場設立準備協議会の結論といいますか、それが出まして、きょうの各紙の新聞報道を見ますと、さまざまな形でとらえているようですね。例えば、反対論を反映させるという記事もございますし、一方では、計画どおりゴーサインが出たということでございまして、この問題が随分前に取り上げられ年月もたっておるわけですが、今日に至ってどうしてこういう事態が起こったのかということで、文化庁らしくない気配りの少ないやり方ではなかったのかという気がするわけでございます。
今回、準備協議会の方では、一つは外国人参加の問題で道を開いた、それから客席数を千六百から幾らかふやすということでしょうか。その二つの問題についてはそういう見解が出ておると思いますが、しかし、もともと問題として提起されておりました、狭隘であるとかあるいは立地条件の問題などについては、当然これは改善すべくもないものなのでございますが、これで問題は解消したのかという点についてどういうふうに文部省は把握されておるでしょうか。その点を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/110
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111・森喜朗
○森国務大臣 お尋ねの第二国立劇場の件につきましては、先生も十分従来の経緯は御承知でございますが、これまでは各界の専門家から構成いたしております第二国立劇場設立準備協議会におきまして、慎重な議論を積み重ねながら、昭和五十六年に「東京工業試験所跡地における第二国立劇場設置構想概要及び建築規模」がまとめられたわけでございます。このまとめをもとにいたしまして、五十九年度予算案におきまして設計競技の経費が計上されておるわけでございますが、いろいろと先般の委員会でも御議論になりましたように、いろいろな意見の出ておりますことも承知をいたしておりますが、昨日、設立準備協議会におきまして、態様、建築規模を再度了承を得て確認をいただいたわけでございます。
設立準備協議会におきましては、建築規模、面積ですが、五万五千七百二十七平米についての専門委員会の報告は了承する。なお、いろいろと御意見のございましたコンペのあり方につきましては、柔軟に取り組みまして、世界のいろいろな人たちの参加ができるような配慮をいろいろと考えていく。それから、客席数につきましては、千六百が一応今日までで決められたことでございますが、いささかスペースもございますので、これにつきましては活用をもう少し柔軟に考えてみてということで、専門委員会でさらに検討するということ。用地の利用のあり方につきましては、各方面の意見に耳を傾けながら、文化庁そして建設省、いわゆる行政レベルで適切に対処していきたい、こういう結論をきのう得たところでございます。
詳細につきまして、もし必要でございましたら政府委員から答弁させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/111
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112・山原健二郎
○山原委員 今の大臣の御答弁によりまして、大体今までの経過、また昨日の協議会の中身についてはわかりましたが、文化庁次長の加戸さんにお聞きしたいのですけれども、どうしてこういうことになったのかという点、もう一回聞きたいのです。
例えば、一昨日の答弁の中では、今になって突然こういう問題が起こってきたと言うわけですけれども、私がいただいておる資料を読んでみますと、昭和五十三年あるいはその前、ずっと指摘がなされておるわけでございまして、そういった点について、どうしてこのような最終段階でこういう混迷が起こるのか、ちょっとわかりかねまして、この辺は当然文化庁としても見事に切り抜けるべき大事業だと思うのです。そこらで蹉跌をするということはちょっと考えられないことですし、また、これは見切り発車なのかどうかということも、これからまたいろいろ問題が出てきかねない状態にあると思いますが、この昨日の協議会の結論については、もう自信を持って進めることができるというのか、あるいはなお慎重な態度をとられるのか、その点伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/112
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113・加戸守行
○加戸政府委員 突然という感じを持ったことは事実でございまして、今回、ただいま大臣から申し上げましたような大きな三つの問題、そのうちコンペのあり方につきましては、これは設立準備協議会の御了承が得られて、建設省に置かれます建設審査会で行いますコンペの方式についてのこれからの御意見でございますので、突然という感じではございません。そういう意味におきまして、残りました土地の問題と大劇場の客席数の問題に関しましては、いささか、今の時期にという感じを持ったことは事実でございます。
土地の問題について申し上げますと、二十数カ所の候補地の中から十数年の間にいろいろな動きがございまして、現在の東京工業試験所跡地の土地利用を文化庁から正式に大蔵省にお願い申し上げたのが昭和五十二年でございまして、五十四年の設立準備協議会でこの跡地を御承認いただき、五十五年には国有財産中央審議会から第二国立劇場用地としての答申もちょうだいしている。そういう意味では、もう既に七年前からの天下周知の事実でもございます。ただ、その間、あの土地が適切かどうかにつきましては、それぞれ皆さん、いろいろ御意見がありましたけれども、私ども、いろいろな制約された条件の中で、環境、土地のスペースあるいはその利用条件といったようなものを総合勘案しながら、現実的にベストを目指して努力をしたという気持ちでおったわけでございまして、万人が納得する土地ではなかったと思いますけれども、しかしながら、既に五十五年以来もう確定した国の国有財産中央審議会の答申もございましたし、協議会としてもその線で進んできたという気持ちがあったわけでございます。
ただ、一部御指摘ございましたように、当初考えました土地の利用という点に関しましては、例えば株式会社上原、用地の現在テニスコートになっております部分とかあるいは環六へ抜けるバスの、現在会社の所有地がございますけれども、その抜ける通路の問題であるとか、なお努力すべき余地もあるということが、今回の設立準備協議会でもいろいろ御議論が出た段階でございます。
それからもう一つは、大劇場の客席数でございますけれども、このことにつきましても、それぞれ各方面からいろいろな御意見があったことも事実でございます。ただ、行政レベルで申し上げますれば、設立準備協議会は昭和五十一年に千六百席ということを一応お決めいただきまして、八年間推移してきたわけでございまして、その間いろいろなサイドからの意見も若干ございましたけれども、今回は多分に、先ほど大臣も申し上げましたように、五十六年の段階で建築規模等も確定いたしまして、その後予算要求をいたしまして、財政状況その他の関係もございまして、正式にコンペの賞金が七千万円計上されるというような具体化の、いわゆる今までの若干の足踏み状態から一歩踏み出して設立の本格的な方向へ向かったという現実感が出た段階で、いろいろな御意見が出たのじゃないかと想像いたします。そういう意味におきまして、具体的な、行政レベルが若干空白があったということで、その間に文化庁としての周知あるいはPRあるいは説明の不足ということについては私ども反省をいたしておるわけでございますけれども、流れの中では千六百席というのは相当長期間、まあ若干御不満の方もございましたけれども、今日まで来たという状況はございます。
ただ、確かにいろいろな方面からの御意見もございますので、そういった点も踏まえて、既定方針だから突っ走るということではなくて、各方面の意見に十分耳を傾けるというのが昨日の協議会の結論であったというぐあいに理解いたしまして、行政レベルでの今後の対応を考えていきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/113
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114・山原健二郎
○山原委員 大事業ですね。昨日も私の党も、慎重に対処してほしいという申し入れを政府の方へしたわけでございますが、とにかく新聞には「無定見は後世に悔い」を残すとまで書かれるわけですから、文化庁としてやる仕事として、その辺は本当に慎重に万全の態勢で取り組んでいってもらいたいということを申し上げて、この問題はおきます。
次に、今回の著作権法の一部改正の問題ですが、これについて私どもの基本的な考え方は、著作権者等の権利と生活を守るということが第一義であるという点は、これはもうどなたも一致するところだと思います。そして、今回、貸しレコード問題などを契機にしまして大きく問題化して、今回の改正がいわば一つの中間段階でのまとめとして出てきたものだと思います。そういう意味で、著作権者側の権利を守るということを第一義的に問題として、新しく貸与許諾権を創設したという点では画期的であり、そして評価すべきものというふうに考えます。また同時に、レンタル業などが果たしている役割も、否定的な面ばかりでなくて、音楽文化の普及の一つの新しい形態として評価すべきものとした点についても、私どもは一定の賛意を表したいと思っておるわけでございます。
ところで、この両者の合意に基づきまして、適正な使用料を払うという形で共存していけるということがまさに望ましい一点でございますけれども、行政側もそういう方向について、共存という言葉が的確な言葉がどうか私にもわかりませんけれども、その点について努力をしていくという行政側の基本的な姿勢が非常に大事になってきたと思うわけですが、この点について森文部大臣の今後の考え方を述べていただきたいのです。というのは、先ほども参考人の方のお話を聞きましたが、聞いておりますうちに、かなり深刻な基本的な点での対立もあるような感じを私は受け取ったわけです。そういう意味で、これはなかなか大変なことだということを感じたわけですが、この両者を、本当にうまく両方を生かしていくあるいは共存させていくという点で行政庁としての決意を持っておられるかどうか、こういう点です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/114
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115・森喜朗
○森国務大臣 今、山原さんから御指摘をいただきましたところが一番大事なところでございまして、ちょっと長くなって恐縮ですが、私も党でこの問題を担当いたしまして一番頭を痛めましたのは、今先生がお話しのとおり、レンタルレコード業者は悪なりという考え方で、レコード関係者には当初そういうお考えがあったということです。
レンタルレコードという商いがよくないということであるとするならば、これは文教委員会や文化庁で議論することではないのであって、やはり通産省なり中小企業庁が考えてくれなければならぬことだ。ところが、憲法におきましては商行為は自由でございますから、それがどこでいけないのかということになる。レコードが売れなくなるから困るのだという議論も出てくるわけですが、それならば、靴がだんだん発達してきたからげた屋さんが困るという議論になるわけでありまして、それをどうやってカバーするかというのは文化庁の仕事とは言えないのじゃないか。結果的に、レンタルレコードがなぜいけないのかということは、一生懸命に芸術家たちがつくった作詞や作曲、そしてそれを演奏する隣接権者、そういう皆さんの努力というものを黙って使って、それでお金をもうけるというところだとするなら著作権だ、こういう議論になるわけですわ。ところが、著作権を直接持っておる権利者たちは、端的に言えば、これはもうここまで来た時点ですから申し上げていいと思いますが、それに対してちゃんとした適正な報酬をいただけるならいいんだという気持ちがやはりおありなんですね。ところが一方では、レンタルレコードが悪なんだという人たちにとっては、これはどちらかというと、これまで営業をやってこられたレコードを販売する業者の皆さんには、正直申し上げて著作権云々と言う資格がない、と言うとちょっとおかしいのでありますけれども、直接のかかわり合いかない、こういうことになります。そういう構図になります。その中で、いろいろ私も悩みましたし、いろいろな皆さんの御意見も伺いましたし、それから各党の皆さん、それぞれどの政党も賛否両論ございました。
したがいまして、結果的には、これはやはり文教委員会、そしてまた、文化庁が所管をいたします著作権で議論するということになるならば、秩序正しい業界がまず土俵に上がってお話し合いをいただいて、そして適正な、きちっとしたいわゆる利用さしていただく補償をしていく、そのことをこの法律で誘導していくということがおさまりの一番いいところではないか、こういうように考えまして、先生方に御議論いただきました暫定法と、こういうふうになってきたわけでございます。
したがいまして、これからも、レコードレンタルだけではなくてビデオを含め、我々が予測でき得ないような科学技術の発達によりましてこうした業界がいろいろ出てくるだろうと思いますし、その都度また、文化庁固有のこうした芸術家たちの悩みも出てくるでありましょう。こういうように考えますと、すべてこれは悪なりという考え方ではなくて、話し合って、正常にきちっとしたいわゆる著作権料を払って、そして商いをやっていただく、こういうことにしていくことが政府としてももちろん望ましいことである、こういう考え方に立脚いたしておるところでございます。
したがいまして、関係者団体間で鋭意お話しいただき、文化庁としてはそのおとりなしといいましょうか、御調整役をいたしておりますけれども、今度の新しい法律の改正によりまして、文化庁がやはりもう少し権限を行使でき得るようにしておくことが、将来にとっても、正常にいろいろその当事者同士がお話し合いができるということにある意味での権限というものも持ってくることになって、それを何も行使するということではなくて、できるだけ関係者たちが自主的に話し合って、そして適正ないわゆる使用料等を払っていく、そうした考え方に今後とも努力をしながら誘導していく、こういう考え方にあるわけでございます。
したがいまして、なかなか難しい問題がこれからもまだ出てくると思いますけれども、これでやはり一つのスタートラインに立ってきた、そしてこれからさらに、著作権審議会にも御承知のように第七小委員会もでき、発足をいたしましたが、なおかつ、これから年々歳々いろいろな問題が出てくるだろうと思いますので、こうしたことにできるだけ敏感に取り組んでいかなければならぬ。ただ、招来し得るようなことを予想しながら、こうだこうだと余り前に出ていくことは、逆にまた文化を伸ばしていくということにならない。
先ほど午前中といいますか、本会議の前の議論にも出ておりましたけれども、商売のことで売り上げがどうだとか、レコードの売り上げが悪くなったとか、レコード会社の経営がおかしくなったということで文化庁が云々するというのは、これは全く筋違いのことでありまして、やはり文化、芸術にかかわり合いを持つ皆さんが本当に意欲的にこれからも創作ができ、あるいは演奏ができ、そうした芸術を発表し得るということに意欲を持ってもらえるということが文化庁の一番大事なスタンスでなければならぬ、こう考えておるところでございまして、そうした皆さんの意欲が引き続き持続ができるように、またなお一層文化国家としての高まりが見せられるように、文化庁として側面でお手伝いをしていくという立場で行かなければならぬ、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/115
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116・山原健二郎
○山原委員 少し技術的に、使用料が合意に達するというのはどういうことでしょうか、これは次長に伺いたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/116
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117・加戸守行
○加戸政府委員 現在話し合いが行われておりますのは、暫定措置法に基づきます許諾の使用料でございますが、二通りございまして、作詞、作曲家側の著作権使用料につきましては、音楽著作権協会が定めます著作物使用料規程によって使用料金をいただくわけでございまして、この使用料規程は文化庁長官の認可を必要といたしております。ただ、認可をいたします場合にも、両当事者間の言い値の違いがないのかどうか。あった場合の、その中の裁きというのがあるわけでございますが、通常のケースとしては、両当事者間で合意に達したもので申請していただき、申請どおり認可をするというのが一番妥当な方策でございまして、今回、貸しレコード問題についてもそのような基本的合意に達した線での申請が出ているわけでございます。
次に、著作隣接権者側につきましては、この使用料の話し合いが両方行われておりますけれども、要すれば、権利者側としてどの程度の利益の分配あるいは享受にあずかるのか、使用者側としてどの程度なら支払い可能であるのか、そういった経済法則とか、使われるレコードの種類、態様あるいはその効果、あるいはレコード販売等の実績に及ぼす影響とか、諸般の事情を考えながら、双方で、これはある意味の商取引でございますので、いろいろな金額が、高い方と低い方との話し合いがスタートしましてだんだんと煮詰まっていく、それは実務的な関係で処理されていくというぐあいに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/117
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118・山原健二郎
○山原委員 合意に達した場合に必ず許諾するというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/118
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119・加戸守行
○加戸政府委員 もちろん、使用料と申しますのは許諾を与えられた場合に支払う料金でございますので、許諾をしてもらうことを前提として、幾らならば許諾をしてもらえるのか、幾らならば許諾しましょうということを議論の前提としての話し合いでございます。したがって、使用料が合意に達するということは許諾を得て使うという形になるわけでございます。
ただ、参考人質疑等の中でも若干の意見の食い違いがございましたのは、レコード協会側としては、限られた種類のレコード会社側にとって死活問題となるような一定のレコードについての、ある限られた期間のレンタルについては差し控えてほしいという気持ちがございます。一方、貸しレコード側におきましては、そのようなレコードであっても使用料金を高くすることによって使わせてもらいたいという点で、若干意向の食い違いがあるわけでございますけれども、全般的に見れば、基本的にはレコードのレンタルを許諾する、そのかわりに幾らの使用料を払ってもらいたいという線での話し合いが詰められていくものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/119
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120・山原健二郎
○山原委員 先ほど参考人の方にお聞きしておりまして、若干の食い違いというようなものではないような感じがしました。それは一番よく御存じだろうと思いますけれども、一部一定期間の禁止という問題が出ていることに対して、レンタル側の方は強く反発されておりました。
それからもう一つは、著作権者側との話し合いが十数回やられて信頼関係も生じて一定の合意に達したということですが、一方は、信頼関係さえ失われる可能性まである、しかも基本的な考え方の違いまで述べておられたように思いますが、これは解決できるものとして文化庁は自信を持っておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/120
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121・加戸守行
○加戸政府委員 幾つかの事情がございました。
一つは、著作権使用料につきましては、著作権仲介業務法の規定によりまして、原則として著作物使用料規程の認可申請はその使用料金の適用の二カ月前に申請すべきこととなっておりまして、二カ月の期間は文化庁長官の許可を得れば若干短縮可能でございます。いずれにいたしましても、二カ月程度を目安として事前に申請する必要がございました関係上、六月二日の施行を控えまして私どもは四月二日までということを想定しておったわけでございますが、若干話が長引きました関係上、四月十六日の申請となりましたけれども、いずれにいたしましてもそういった二カ月以前の申請ということが既定条件としてございましたために、まず最初に精力的に著作権の分野から解決していこうという形になった事情が一つございます。
それから第二点といたしましては、著作隣接権者側でございますが、実演家の場合はともかくといたしまして、レコード会社側にとりましては、そもそもこの問題の発端といいますのは、先ほど大臣も申し上げましたように、貸しレコードは悪なり、貸しレコードは禁止すべきであるという発想からスタートしたというような事情もございますし、また、既に今日までの間におきまして、レコード会社側と貸しレコード業者側との間で各種の訴訟で争われておるという状況がございました。ある意味では敵、味方というような対立関係にあったわけでございまして、そういった感情的なしこりも十分あったというようなこともございます。また、暫定措置法が成立いたしました後におきます基本的な法の解釈なり感覚をめぐっての差も相当ございました。そういう意味で、その間のしこりを解きほぐし、かつ両者を話し合いの舞台に乗せるために、文化庁としてもかなり間に入りましてといいますか、レコード協会側に対しあるいはレコードレンタル商業組合側に対して、各種の指導助言を行いながら舞台に乗せるという形で今日までまいったわけでございます。
幸いにして、先ほど参考人として意見陳述されましたレコード協会の高宮会長あるいはレコードレンタル商業組合の牛久保理事長、いずれも人格すぐれた方でございますし、良識を持った対応で、お二人の人格ならば話は相当程度進んでいくと私どもは思いますが、ただ背後には、レコード協会の会員の中にも強硬論者がいらっしゃいますし、あるいはレコードレンタル商業組合の会員の中にも強硬論者がいらっしゃる。そういうバックを控えながら、お二人の人格と識見と良識によって話し合いは相当程度進んでいくと私は思います。そういう意味では、お二人ともつらい立場にはいらっしゃると思いますけれども、相互の人格で話し合いは詰まっていくと期待しておりますし、若干の格差があるといたしましても、その間において文化庁の指導助言の及び得る範囲もまたあるのじゃないか、そういう意味で六月二日までの間の合意の形成ということを期待し、かつ信じている次第でもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/121
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122・山原健二郎
○山原委員 参考人のお話をお聞きしておりまして、今回許諾権あるいは貸与権を得る著作権側あるいは著作隣接権側の立場というのは横から見るならば強い立場、レンタル側の方はその面で言うならば弱い立場といいますか、そういう状態に置かれている。それから、レンタル側の方は組織としては若い組織です。きょうもお話を聞きますと、いろいろな努力をされてはおりますけれども、組織の中へ入っていない人もおるわけですし、そういう意味で、例えば一定の使用料で決定したとしても、それでレンタル側全体としての足並みがどの程度にそろうのかという問題もあるのじゃないかと思うのです。
その衝に当たっている人は随分苦労されると思いますけれども、そこの間の協議、調整が本当に——調停といいますか、裁定を文化庁長官に求めることができるとなっておりますし、また著作権審議会に諮問するという方法もあるわけですけれども、ここのところの、冒頭に森文部大臣がその決意を述べられましたので私はそこのところを信頼していきたいと思いますけれども、ここの肝心なところに対して文化庁がこれはもう本当に大変なことだと思います。先ほどの第二国立劇場のようなことになってはいけませんので、そういう意味で次長のそれに臨む姿勢、態度、対応というものについて、もう一回あなたの方から伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/122
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123・加戸守行
○加戸政府委員 先生御承知のように、暫定措置法下におきましては、文化庁長官は、この著作隣接権に関します使用料の問題についての何らの権限、規定もないわけでございます。ただ、ただいま御提案申し上げさせていただいております著作権法一部改正案の中におきましては、使用料あるいは報酬請求権の額についての協議が調わない場合におきます文化庁長官の裁定制度がございます。
そういう意味で、来年の一月以降、この法律案が成立しました場合のことでございますが、文化庁が間に入って裁定の道ということがあって、それが本格的なルールとしてしかれていく、その前段階としてのこの半年間の問題について長期的に見通せば、わずか半年間の短期間のことについてここでがたがたトラブルが起きるというぐあいに考えにくいわけでございまして、いずれは文化庁長官が正式に法律上の権限として裁定を行うことを想定した場合の前提として、今の両団体の話し合いといいますのも当然そこを見通して、とりあえず当事者間の話し合いでございますけれども、両当事者ともに、なかなか意見の一致を見ない場合には文化庁が間に入ってほしいというような事実上のお申し出もございますので、そういった点では、お互いに良識を持って話をまとめたいという気持ちがあるようでございますし、そういうことを私どもも期待しておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/123
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124・山原健二郎
○山原委員 この問題の最後にもう一つ、今の音楽著作権協会、芸団協、レコード協会、この三つでそういう意味での窓口を一つにすることがこういう問題の処理にいいのか悪いのか、素人でわかりませんけれども、参考人の方にもちょっとお聞きしたのですが、その点は何かお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/124
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125・加戸守行
○加戸政府委員 公式には、三団体が共同として一つの団体を窓口として処理するというような形にはなっていないわけでございますが、三団体ともに、できれば窓口は一つにまとめた方が都合がいいという気持ちはあるようでございます。ただ、先ほどの参考人意見聴取のところでもお述べになったと思いますが、芸団協としてはJASRACの方へ委託をお願いしたいという気持ちがあるわけでございますが、レコード協会についてはその方向性がまだ固まっているとは言えない段階でございます。そういう意味で、今後三団体間の話し合いのプロセスで決まっていくことだと思いますが、事柄は、実務的な処理の問題、あるいはばらばらでいくと要する人員、経費との問題もございますし、あるいは契約内容を一々また三通ずつつくる、それを三回に分けてやらなければならぬとか、そういうようなことを考えた場合には、一本化の方向で進むかどうかわかりませんが、当然進んでいくものではないかというぐあいに想定をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/125
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126・山原健二郎
○山原委員 次に、録音、録画の機器についての賦課金制度の導入の問題について伺いたいのですが、もともとここが著作権者にとって一番大事な基本の問題であったわけで、それが貸しレコード問題が起こってまいりまして、著作権確立の問題が、本来の基本にメスを入れないでカープしてしまって、レンタル側の人にとっても、これはお門違いの迷惑な話だ。それから、著作権者側にとりましても、基本のところへメスが入っていないという問題があるわけですね。そういう意味で、この賦課金制度の導入について基本的に文化庁としては必要だとお考えですか。技術的な問題はさておきまして、この点についての必要性というのはお認めになっているのかどうか、これを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/126
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127・加戸守行
○加戸政府委員 今回の著作権法一部改正案を出しますために、その前段階におきまして著作権審議会の第一小委員会で御審議をお願いして、昨年九月に報告をちょうだいしたわけでございますが、その内容を受けたのが今回の法律改正案でございますけれども、その報告の中におきまして、家庭内録音、録画問題に関する抜本的な解決を図る必要があることについては異論がないという御報告をちょうだいしておりまして、今回の改正ではもちろん対応できないけれども、将来的課題として録音、録画問題は抜本的な制度的対応ということが基本であるという認識があったわけでございまして、その報告を受けた文化庁といたしましても、そういった気持ちは当然に持っているわけでございます。
ちなみに、昭和五十六年に出されました著作権審議会第五小委員会の私的録音、録画問題に関します報告をベースといたしまして、現在、著作権懇談会という私的な懇談会におきまして、この私的録音、録画問題に関します基本的な討議が既に十五回も重ねられているわけでございますけれども、文化庁といたしましても、この機器の問題を解決せずして著作権の基本問題は解決にならないだろうという気持ちがございますし、今回の一部改正案も抜本的な解決ではあり得ない。そういう意味におきまして、先生御指摘のとおり、著作権制度の上で取り組むべき極めて大きな課題であると同時に、問題の即時解決はなかなか難しいという現状も認識しながら、なお最善の努力を積み重ねていきたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/127
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128・山原健二郎
○山原委員 今、文化庁としての基本的な考え方、その点でわかったわけですが、もうちょっとお話を伺いたいのですけれども、著作権審議会の第五小委員会、そこでは、放置できない問題であるが機が熟していない、合意ができない。この原因は一体どこにあるかという問題ですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/128
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129・加戸守行
○加戸政府委員 録音、録画機器の問題というのは、帰するところ、録音、録画機器あるいはテープメーカーに対しましてある一定の賦課金等を課すかどうかというような西ドイツ方式あるいはオーストリア方式といったものがございますけれども、そういった諸制度についての検討でございまして、基本的には権利者側の足並みは一致しておるわけでありますけれども、では問題は、そういった賦課金なり課徴金なりを支払うべき立場にある録音、録画機器メーカーあるいは録音、録画機材メーカーといったものの協力が得られるのかどうか。一方的にこの問題を推し進めることは不可能である。そういう意味におきまして、関係者間の合意の形成ということを第五小委員会の報告で指摘されているわけでございますけれども、要すれば、録音、録画機器メーカー、録音、録画機材メーカーの方の協力、著作権問題に対する認識を深めていただいて、業界としてそういった対応の姿勢をとっていただけるかどうか、事柄の解決の基本はそこにかかっているというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/129
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130・山原健二郎
○山原委員 西ドイツ、オーストリアですかね、きのうお聞きしますと、ハンガリーあるいはスウェーデン等も出ているようですが、我が国にとってそういう意味で参考になるところはやはり西ドイツの方式ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/130
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131・加戸守行
○加戸政府委員 西ドイツにおきましては、世界に先駆けて一九六五年に録音、録画機器に関します課徴金制度を導入いたしまして、録音、録画機器の価格の五%以内の範囲内におきまして権利者側へ支払うべき賦課金制度を設けておるわけでございます。また、現在、西ドイツにおきましては、生テープにつきましても同様に賦課金を課すべき法案が議会で審議中という状況でございまして、権利者サイドの救済への対応という点におきましては、時代の先端を切ったと申しますか、こういった状態を見越したと申しますか、極めて早い時期に制度に踏み切ったわけでございまして、その後、オーストリアあるいはスウェーデン、ハンガリー等でも生テープに関します賦課金制度が導入されました。これはつい最近のこと、一九八〇年代に入ってのことでございますので、そういう意味では、既に二十四年の歴史を持った西ドイツというのが先進国として、あるいはこの録音、録画問題に関します日本が参考として検討する大きな有力な基礎材料というぐあいに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/131
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132・山原健二郎
○山原委員 この場合に、著作権三団体あるいはメーカー、それに学識経験者、そこに文化庁の文化部長さんも入っておられるという機関をつくって、いわゆる合意形成のための基盤づくりをやっておられるわけですが、今お話しのように、メーカーのオーケーというのはなかなか出ない。そこの合意ができない。これは想像しても、それは想像できます。できますが、それはこのままでは、全くメーカー側のオーケーが得られるような状態にはならぬじゃないか、そういう感じがするんですよ。だから、そうなればじんぜん日が過ぎていくわけであって、著作権の基本問題についてのメスは入らないままで、いわばきょう参考人に来られたような人たちがみんな犠牲になっているといいますか、困難を抱えてしまった、こういう格好ですから、これは本当にそういう日本の文化を守る、まさに著作権問題はその国の文化のシンボルでもあるという観点からするならば、これはそういう関係三団体が集まって幾ら話し合ったって私は解決の道が出てこないような感じがするんですよ、今日のメーカーの物の考え方からすれば。一方は文化振興あるいは自分たちの著作権を守ろうとする姿勢と、一方はメーカーという立場、これは全く相入れないものが集まって合意形成をやろうとしても、それはほぼ永久に、と言ってはいけませんけれども、かなり国民的な世論が背景になければこの問題の解決はなかなか難しいと思うのですね。その点をどういうふうにお考えになっておるか。その意味でも御苦労はされていると思いますけれども、やはり一番肝心なところへ大胆にメスを入れていくためには、国民世論の形成も必要でしょうし、国会のこういう声も必要だろうと思いますね。その点についてどういう御見解を持っておりますか、伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/132
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133・加戸守行
○加戸政府委員 著作権の歴史と申しますのは、常に著作権の範囲が拡張され、あるいは期間が延び、そういった権利の内容の充実を図ろうとするたびに立ちふさがる障害は何かと言いますと、ユーザー側あるいは支払い者側に立つ方々の抵抗であったわけでございまして、そういう意味で、いろいろな制度改正を考えるときに苦難の道を歩まねばならない。特に著作権者側と申しますのは、今、例えば一つの社会の中におきましてもそれほど有力な組織でもないし、また大きな力を持っているわけでもない。ただ、純粋に文化が大切であるということの認識が国民各層の間に広がり、かつ、それが一つの国民世論としてあるいはマスコミでも取り上げられ、先生御指摘のように国会の場でもいろいろな御議論をちょうだいし、そういうような空気が醸成され、機運が醸成する中で、やはり文化というものは大切にしていかなければいかぬという観点で、ユーザー側あるいは支払い者側の認識が深められ、それに対する理解が得られてこそ初めて制度改正が可能になるわけでございます。
そういう意味で、事柄を叫び始めたからすぐ実現するような制度ではないと思いますけれども、各般の努力というのは必要でございますし、一つには著作権思想の普及あるいは著作権に対する理解、ひいては文化に対する理解の問題だとも思うわけでございます。こういう場で言葉を引いて適当かどうかわかりませんけれども、我々著作権の業務を担当する者としての金科玉条の言葉がございまして、その国の文化の水準を推しはかるには著作権保護の水準で推しはかればいい、つまり、著作権がどの程度保護されるかによってその国の文化水準が決まるんだ、そういうような考え方を著作権の世界では言っております。この考え方が国じゅうに浸透し、一般国民あるいはユーザー側、支払い者側にもそういった認識が芽生えたときには制度改正というのも可能になるのだろうと思います。
ただ、理想論だけを申し上げても、そういった実務的な方向で解決できるかどうかという疑問もございます。そういった意味では、いろいろなインパクト、いろいろなファクターあるいはいろいろな形での動きというものがあって、そういう機運の盛り上がりによって、なるほど支払わねばならない、あるいは支払うことが適当だという意識をユーザー側あるいはメーカー側に持っていただけるようになるのじゃないかと思いますし、今後とも、なかなか十分とは申せませんが、文化庁としても精いっぱいの努力は積み重ねていきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/133
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134・山原健二郎
○山原委員 きょうは参考人として来ておられた日本書籍出版協会の服部さんに質問をしなかったのですが、こちらの要望は、ここもいろいろ問題になっておりますけれども、附則第五条の二と附則第四条の二を削除されたいという二つの要望が出ております。
それで、この五条の二については、これは「当分の間、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。」これは適用除外、「当分の間」の問題ですが、これについては今どういうふうな検討がなされていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/134
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135・加戸守行
○加戸政府委員 当文教委員会の休憩時間中でございましたが、本日、著作権の集中的処理に関する調査研究協力者会議が開かれまして、この集中的権利処理機構の設立に関します各般の御報告をちょうだいしたばかりでございまして、既に昨年この中間報告が公表されておりますのであらまし御承知と思いますが、大体その線を踏襲し、関係団体の意見を受けて細部の手直しはございますが、基本的な流れは昨年発表いたしました中間報告と同様でございまして、本日報告をちょうだいしたわけでございます。この報告がまとまりましたことによりまして、これから具体的な集中的権利処理機構の設立へ向けて、出版界を中心といたしました動きが活発化するものと期待しておるわけでございまして、早期設立の暁には附則第五条の二は当然に削除すべきものと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/135
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136・山原健二郎
○山原委員 このままでは放置できない、しかし現実の問題として、網をかぶせても、だれがどこでコピーしているかわからない、実態がつかめない、実際の処理体制を整えないと法律が規制をしても実効が上がらないというようなものだろうと思うのですね。だから「当分の間」除外をしたということではないかと思いますが、技術的にはそういうことがあり得ても、基本的な考え方としては、今おっしゃるとおり、やはり著作権法を適用すべきだという考え方、そういうふうにきょうの答申といいますか、報告は受け取ってよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/136
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137・加戸守行
○加戸政府委員 今回の附則五条の二は、本則では当然権利を及ぼすべきものであるが、「当分の間」ということで外したわけでございます。
ただ、御承知のように文化庁試案を昨年公表させていただいた段階では、これは適用除外をしてなかったわけでございますが、その後、十分慎重検討の結果外させていただいたのは、実際上権利の処理のしょうがないのに違法状態のままで置いておいてそれでいいのかという問題が一番頭の痛いことでございまして、基本的な考え方は、当然、著作権をクリアして処理していただくものだという前提に立っているわけでございます。そういう意味で、附則で外しましたのはもっぱら技術的理由と申しますか、具体的に権利の処理ができるような機構があってこそ初めて権利の実効性が発揮されるのだ、そういうような観点からのものでございまして、先生の御質問の答えになりましたかどうかわかりませんが、さように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/137
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138・山原健二郎
○山原委員 私の方は、この五条の二については、「当分の間」ということで延び延びにならないように、速やかにその実施に向かって努力をすべきであるという考え方に立っています。
時間が余りありませんが、それからもう一つは、今度は全国貸本組合連合会の方からの要請もいただいているのです。これはまた附則の四条の一との関係が出てくるわけでして、貸し本屋の問題について先ほども服部さんはいろいろおっしゃって、これがずっと広がっていくことを心配しているのだという非常に厳しい御意見もありました。
しかし、一面、この要望書を見せていただきますと、貸本業は、江戸時代以降民衆向きの出版物の成立と、その読者への普及に少からぬ役割を果してまいりました。そして、その変遷、消長は、その時代の出版界をめぐる社会的、経済的条件によって、自ら律せられてきたものであります。
戦後にあっても、一時期全国で二万軒以上あったといわれますが、ここ二十数年来は減少の一途をたどり、現在は、全国で一千軒前後と推定され、しかもそれぞれ零細な生業であり、出版流通の秩序を脅かす存在ではありません。
ましてや、貸本業は今後とも、自動複製機器の使用をともなうものでは決してありません。こういうことでございまして、これについて、先ほど言いました四条の二についての全く違った見解が出ているわけです。
また、事実、私どもが子供のときから親しんでまいりました貸し本業というのはそれなりに町の風物でもありますし、そういう意味で長い伝統も持ちながら一定の文化を支えてきたという点から考えますと、確かに服部さんがおっしゃるように、大きなチェーンをつくってやっておるというお話を聞きますと、じゃあそういうことならば四条の二を何とかしなければならぬと、こうなります。しかし、実態として考えた場合は、これは五条の二の場合とは違った側面を持っているのじゃないかと思いますが、その点は、実態を一番よく知っておられる文化庁としてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/138
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139・加戸守行
○加戸政府委員 全国貸本組合連合会の方からそのような要望が出ておることは承知いたしております。ただ、一千軒と申しますのは組合に加盟しておる店の数でございまして、全国的には二千五百ないし三千の貸し本業が存在するように承知をいたしております。
それはともかくといたしまして、今の問題につきましては、著作物の複製物の公衆への貸与について著作権を認めるという形での今回の法体系の全体の整合性から申し上げますれば、いずれはこの附則四条の二も削除いたしまして本則へ戻ることが理想であるわけでございす。その場合、貸し本はおよそ著作者の恩恵には浴せずして事業しているんだということの論理は成り立たないだろうと思います。要は、では貸し本業が十分に経営できるようなものであるかどうか、著作物使用料を支払うに値するような基盤を持っているものかどうか、あるいは著作物使用料をいただくにしても、それは手数料の方がかさんでしまうほどの性格のものであって、わざわざ取りに行かなくてもいいのかどうか、そういったような状況は確かに起こり得ると思います。
ただ、私どもの気持ちといたしますれば、この附則四条の二もいずれは削除させていただいて、その場合、割安な単価で貸し本業に全く影響をしないような程度の金額で、月決め幾らという形で、正常な形で、金額はともかくとして著作物使用料、貸与に関します使用料を支払いながら営業しているんだという形態であった方が、また貸し本屋さんの立場としても、文化に自分たちは貢献しているんだ、あるいは文化に対するそういった支払いもしているんだという気持ちも持てるのではないかという感じもいたします。
ただ、歴史的に長かったからというのは、今すぐに、百何十年も続いたものを一遍に権利が動くんだとするのはいかがなものかという感じでございまして、将来の考え方としては、私ども、若干見解を異にいたしまして、本則へ戻るべきものではなかろうか。ただ、その権利行使の仕方あるいは使用料の問題というのは、適正妥当な、無理のないものにすべきだろうという点は、行政指導の分野として残り得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/139
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140・山原健二郎
○山原委員 この問題、もう結論を出すまでにはこの場所では至らないと思いますが、最後に、前から問題になっているローマ条約についてどれだけのお考えを持っておるか、この問題について伺っておきたいのです。
もう既に二十六カ国批准をしているという状態で、前からこの問題は随分、著作権問題が出るたびに論議をされているわけですが、どうなんでしょうか、それは政府としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/140
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141・加戸守行
○加戸政府委員 一九六一年にローマで成立いたしました隣接権条約、現在、イギリスとかドイツといった先進諸国を含めまして二十六カ国が批准または加入をしている状況でございます。
ただ、我が国を含めまして、著作物利用の、あるいは著作隣接権分野での主要な国でございますアメリカとかフランスがまだ入っていない状態でございまして、その意味では、隣接権条約というものについての世界各国のコンセンサス的なものにまだ至っていないという感じはしないわけでもございません。ただ、国内的には、実演家団体あるいはレコード協会その他からの隣接権条約への加入の要請、陳情、要望等も重ねられてきているわけでございまして、この問題は、文化庁としても、早期加入という方向での検討をすべき時期にあるということは重々承知いたしておるわけでございます。いかんせん、関係当事者の一部には強い反対がございまして、その意味におきまして、現在、著作権審議会の第一小委員会での検討課題とされておりますけれども、先ほど先生御指摘の、録音、録画機器の問題と同様に、やはり要するに、支払い者側、ユーザー側に立つサイドの反対をどう克服していくかが大きな課題であろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/141
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142・山原健二郎
○山原委員 最後に、文化庁の予算についてちょっと触れて、あと五、六分で終わりますので。
文化庁の予算が、ずっと調べてみますと、こういう時期でもありますけれども、一般会計に占める割合がだんだん減ってまいりまして、〇・一%、五十年代ずっと続いておりますが、ついにことしは〇・〇七%までに低落をしているという問題です。これは非常に重大だと思いますし、それからこれと関連しまして、児童演劇に対する補助金ですが、これは日本児童演劇協会を通じて四千三百五十万円が毎年出ておりまして、そのうち三千七百万円が地方巡回に当たる費用として出ております。
ところが、調べてみますと、この児童演劇に関する劇団の活動というのはもう年間大変な、二万三千回という回数にわたりまして、これは一昨年の一九八二年の数字ですが、一月から十二月までの間に二万三千回、一年間に各地で演劇活動、いわば子供たちに生の演劇を見せているわけですね。生の演劇というものが子供にとってどれほど強烈な印象を与えるものであるかということは説明する必要はないと思いますが、その一年間の観客数が千百六十六万人、そしてそのうちの七〇%の八百十六万人が幼稚園、小学校、中学校、高等学校の生徒さんのようでございます。
それで、私はこの協会に出されている四千三百五十万は随分少ないものだなと思いますし、また協会が委嘱してやっているこの地方巡回というのは、日数にしまして年間三百日前後だそうでございますけれども、やはり人間をつくるということを随分強調されている今日の状態、特に中曽根政権が、人間をつくることは大事だ、こう言っておりますから、そういう意味で、これに対する補助をもっとしていいのではないかというふうに思います。特に僻地巡回の助成の性格を含めまして、この予算を増額すべきだ。特にこれらの劇団の実態を見てみますと、学校へ行きましたら要保護の児童あるいは準要保護の児童が大体一〇%ぐらいおるわけでございまして、その子供たちからはお金を取っていないのですね。そうすると、劇団自体がそれを自己負担している。その金額を合わせてみますと、大体年間にして一億五千万ぐらいの負担をみずからせざるを得ないところに置かれておる、こういうわけでございまして、これではどうにもならないと思うわけでございます。
したがって、要保護、準要保護の子供たちに対しては、例えば海水浴に行く場合にいたしましても、それに対するそれなりの手当てがあるわけでございまして、そういう意味で、こういう生の演劇を子供たちが見られるためにも、こういうものについての細かい手当てをする必要があるのではないかということを強く私ども、要請をされるわけでございますが、このことについてお考えがあれば伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/142
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143・加戸守行
○加戸政府委員 青少年あるいは子供に対します生の実演、公演を行うということは極めて大切な事業だとも考えておりますし、また文化庁といたしましても、従来からその助成には努力をしているわけでございます。
例えば、文化庁が主催いたします青少年芸術劇場あるいは子供芸術劇場、あるいは文化庁が補助金を出して行っていただきます児童、青少年向けの公演につきましては、入場料は取らないという方針で来ているわけでございます。一般的に民間団体で行われます。そういった諸般の活動につきましての助成の問題、ただ特定の要保護、準要保護の児童から取らないからその分だけの補助とか、あるいはその者に対する助成とかいうのはいささか困難でございますが、全般的な意味におきます子供あるいは青少年に対します公演の充実が図られるよう、今後とも、乏しい文化庁予算ではございますが、充実に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/143
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144・山原健二郎
○山原委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/144
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145・愛野興一郎
○愛野委員長 馬場昇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/145
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146・馬場昇
○馬場委員 非常に多くの委員から、あらゆる角度から熱心に議論が行われたわけでございまして、いよいよ最終段階でございますので、ダブる面も大分あるのではないかと思いますけれども、さらにはっきりさせる意味におきまして質問をいたしたいと思います。
私は、まず森文部大臣にお尋ねしたいわけですけれども、その第一は、さきに五十八年に成立いたしました貸しレコードに関する暫定措置法についてでございますけれども、この問題につきまして、私ども本委員会で小委員会をつくりまして、一生懸命に議論をいたしまして、その結果、満場一致でもって小委員長報告をまとめ上げたわけでございます。
その小委員長報告の一部にこの立法の趣旨について述べておるわけですけれども、「最近のいわゆる貸しレコード業の急速な増加が、著作者、実演家及びレコード製作者の収入等に影響を与えており、このような事態を放置すれば、音楽文化創造のリサイクルを乱し、ひいては、わが国の昔楽文化活動の妨げになる懸念が生じております。」こういう状況の中で著作者、実演家及びレコード製作者に許諾権を与える、そしてその許諾権は「公正な使用料によって許諾する」、こういう内容の小委員長報告をいたしまして、満場一致で議決したわけでございまして、この法律ができ上がったわけですが、森文部大臣は、自民党内におきましてもこの問題の担当責任者でございましたし、言うならばこの法律の生みの親の一人であるわけでございまして、生みの親の一人として、生まれたこの法律をどう評価しておるか、期間は短いわけですけれども今施行の途中ですから、どういうお気持ちで施行していきたいのか、これについて最初、原則的なことをお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/146
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147・森喜朗
○森国務大臣 まず、この文教委員会で御論議をいただきまして、各党で合意をいただきまして暫定法が成立をいたしました。その暫定法の最初の段階で自民党の立場で取りまとめをさせていただきました一人といたしまして、大変感謝をいたしておるわけでございます。特に、先ほどもちょっと触れましたように、社会党さんを初めとして、私は各党のそれぞれの皆さんに御意見を伺いましたら、各党の中みんなばらばらでございまして、どなたが賛成でどなたが反対なんというのは、お名前を申し上げるのは失礼でございますから申し上げませんが、我が党の中もとにかく大変でございまして、私も本当にえらいものを引き受けたなというのがそのときの率直な気持ちでございます。私は、この暫定法が各党の皆さんの合意で成立をして法案が通りましたら、そういう意味で少し時間がかかりまして、ただいま御論議をいただいております改正案とほとんどくっついてしまいましたので、その点についていささか残念だったと思いますが、しかし、当時としてはやむを得なかった経緯もあると思います。
そういう意味で、今度の改正法案を文化庁として決断をして出し得るような一つの誘導的な措置になった。しかも、各党会派の皆さんの御論議をいただいてみんなで賛成をしていただいて出したそのことが、文化庁を、適切な言葉じゃないかもしれませんが、むしろ大変勇気づけていただいた。そういう意味で、この暫定法をお通しいただいたことが、今馬場さんおっしゃったように、まさに文化創造のサイクルというのは大事であります。芸術家の皆さんにはお金をもうけよう、報酬を得ようと思ってやっている人はおられませんけれども、しかし、自分たちのつくったもの、努力したものが国民から愛されて長く歴史の中で生き続けていくこと、そしてその喜びの中でまた新しいものを生み出していこうという、芸術家にとって一番大事なことを評価する。それは、金の評価ではなくてそういう文化活動というもの、文化事業というものを創造させ得るバックグラウンドをみんなで、国民合意でつくり上げていくということになったという意味で大変よかった、私はこう思っているわけです。
ただ、先ほども議論の中に出ましたように、レンタルレコードの皆さんも、ちょうどコロンブスの卵みたいなもので、最初に考えつかれた方は実に偉いと私は思うのです。そのことを結果的にまねをして、千九百になんなんとする人たちが出てきた。しかし、その中にいろんな考え方の人があったわけだと思います。ですから、私も正直に申し上げてそういう方々と随分お目にかかりましたし、大阪まで出かけていきまして、そういう皆さんと懇談をいたしました。我々は別にテープをダビングしてくれなんて言っていないんだ、そんなものを何で法で練るんだ、こういうことで、随分私も詰め寄られましたが、私はいつも言ったんです。コロンブスの卵のアイデアでできた業界が、本当に正しくこれから国民みんなに認知してもらえる、そういう業界にしなくてはだめじゃないか、ただおれたちのアイデアで憲法に保障された職業の自由だ、何をやったっていいのだというものではないはずで、皆さんがいいアイデアでそういうことを商いとしてなさるなら、これが本当に国民から認知され、そしてまた所管の役所からも指導を受けられるようなことになって初めてあなた方のアイデアが生かされていくのじゃないか、私もこういうことを随分申し上げた。
それこそ本当に汗を絞りまして、これも各党会派の皆さんも、それぞれ党で反対、賛成ならいいんですが、党の中で賛成論あり反対論ありということで、本当に苦労いたしました。そういう意味で、そのとき議論したことが今度の法改正につながったということで、繰り返すようでありますが、日本の文化、芸術の振興にとって本当によかったし、そういう委員会におきます御議論が文化庁をこうして勇気づけて、特に加戸次長のように、まさに専門家でありますが、勇躍胸を張って堂々とお答えを申し上げられるような立場を文化庁がとり得たということは、皆さんに御論議いただきました暫定法の成立が一つの大きな誘導になった、こういう意味で私は大変感謝をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/147
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148・馬場昇
○馬場委員 この議員立法が今度の法律に発展をして、先ほどから言われておりますように著作権は文化のバロメーターだ、そういう中で日本の国の文化の発展に非常に寄与するということは、私も非常に意義があったのじゃないかと思います。
とともに、もう一つ、この法律ができた意義というのは、関係者がお互いに対立しないで、その関係者の間で話し合いをして業界の円満な秩序をつくり上げる、こういう点では非常にプラスになったのじゃないか、こういうぐあいに思っておるわけでございまして、どちらかというと混乱して摩擦があったのが、きれいな秩序をつくる方向に行った、こういう点、この業界に対して非常にいい影響を与えたのじゃないかと考えておるわけでございまして、もちろん大臣もそう考えておられるわけでございます。そういう意味で、この法律ができて業界の秩序を確立しようという意味も果たしたのですから、今後業界の秩序の維持というのには特に大臣、力を入れていただきたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/148
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149・森喜朗
○森国務大臣 まさにそのとおりでございまして、さっき山原さんのときにもちょっと申し上げたのですが、レコード業界がこれによって苦しむとかレコード屋さんがもうからないというのは、政治家の立場としては御同情しなければなりませんが、少なくとも文化庁や文部省やあるいは文教委員会が、そのことによって商売が成り立たないから助けるんだ、この発想は絶対とるべきではない。そういう意味では、我が党の中で当初、この問題を法律で縛れといって出てきた当時の勢いは、端的に言えば、レコードの商いをなさっている御商売の皆さんにどちらかというと陳情を受け、要請を受けてスタートをしたのです。ですが、私はお引き受けした以上は、それはいかんよと。
それから、さっき申し上げたように、新しいまさにアイデアでつくられた、若者が中心でありますから、その皆さんにも、日本国の国民として経済を運営していこうということであるならば、やはり正しい倫理観といいますか商い観というものも持ってもらいたい、こういうことでスタートしたわけでございますので、本来言えば、文教委員会でこういうことをするよりも通産省が主導するということが正しいんだろうと私は思いましたが、当時としては、通産省の文化用品課に属する業種らしいがというだけのことで、こんなことを言うと通産省に気の毒ですが、通産省自身も及び腰でようまとめていけないというのが事実でございまして、そういう意味で、文化庁が著作権で動いてくれるということを通産省自身も期待をしておりました。
そういう意味で、まさに文化庁とこの文教委員会がこの議論をすることによって、レンタルレコードの皆さんを正しい商いとして国民のみんなで認めてあげるという、そのことが一番大事なんですから、だからこそ法律が必要なんですよ。そんなものがあればおれたちは損すると言うけれども、そうじゃなくて、法律をつくってその中に入ることによって、逆に言えば、正しく法を守る人が損をして法を守らないで勝手にやる人が得をするというようなことがあってはならぬのですよと言って、若い皆さんでありましたから、何か自分が大学の先生になったようなつもりで皆さんにもいろいろ御説得を申し上げて、そしてこの問題の土俵に入っていただいたということです。
法律で引っ張り出すということは本当はいいことじゃありませんけれども、そういう形で皆さんがお話しし合っていただく土俵を設定するということが最大のねらいでございましただけに、私も、今文化庁がおとりなしをしながら、それぞれの団体の皆さんとお話し合いを進めておるということで大変喜ばしいことでありますが、今後とも、今馬場さんが御指摘のとおりそのことが一番大事でありまして、業界の皆さんにそれぞれのお立場があっても、みんなでこの法律のもとにぜひひとつお互いに、変な話ですが、レコードを売ることもそうでしょうが、レコードを貸すことによって文化が逆に言えばまた大きく燃え上がっていくということにもなるわけでありますから、お互い文化産業を伸ばす、その傍ら適当に、適量にもうけさせていただく、こういうことが一番いいんじゃないか。もうけるところは我々がさわることではないわけでございますが、とにかく業界が話し合っていただくということに主眼を置いておりますので、先生の御指摘どおりである、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/149
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150・馬場昇
○馬場委員 森文部大臣も、自分が生んだ子供はかわいいというような意味で、非常に愛情を持って接していただいておるわけで、非常にいいことだと思います。
そこで、私も今、大臣とほとんど同じような考えでございまして、言うならば、言葉は悪いのですけれども、レンタル業者、ちょっといじめられっ子といいますか、そういうことで、いろいろのけものにされあるいは嫌われておったのが、この法律で市民権を一つ得たわけでございますし、そういうことで、はっきり言えば業界における地位を確立したわけですし、今後、この市民権を得、業界の秩序を確立したレンタル業界というものが本当に新しく音楽文化を創造していく、日本の文化を発展させていく、そういう一つのセクションの担い手になるんだ、そういうような方向でぜひ、今大臣もそうおっしゃったわけですから、お互い力を合わせて、業界も努力しなければならぬと思いますけれども、行政の方でもそういうぐあいに指導をひとつお願いしておきたいと思います。
そこで、少し具体的な問題に入りますけれども、小委員長報告とそれから参議院でこの法律が通りますときに附帯決議がついているわけですけれども、これは同じ文言になっておるわけでございます。これは次長でも結構でございますし、具体的なことは、基本的なことは大臣も詳しいですから何ですけれども、どちらからでも答弁願いたいのです。
この小委員長報告も満場一致だったし、参議院の附帯決議も満場一致でございましたが、「公正な使用料によって許諾することとしこういうぐあいに実はなっているわけでございます。これの一つの解釈が、きょう午前中の参考人の意見を聞いていましても、先ほどからの質問にも皆さん触れておられるのですけれども、ここのところの認識といいますか、国会の意思はどうであったんだ、文化庁はどういうふうにこの附帯決議、小委員長報告を認識して業界を指導していかれるかということが非常に大切じゃないかと思うので、これについて聞いておきたいと思うのです。これは、いろいろ私もその議論に入った一人でございますので国会の空気はよく知っているのですけれども、小委員長報告、附帯決議というのは、この許諾の禁止というのはやはりあるべきではないという趣旨、それが大体国会の趣旨であったと実は私は解釈をしておるわけでございます。そして、これは私の解釈だけではなしに、けさほど参考人に来られました著作権協会の芥川参考人なんかも、この小委員長報告、附帯決議の趣旨を尊重して許諾を求められたなら許諾をするのが原則だ、こういうところで私たちは対応いたしておりますと、こういうような参考人の意見もあったわけでございます。これについて、国会の意思としては、許諾禁止はあるべきでないという趣旨でこの附帯決議、小委員長報告が行われたのだと私は思うのですが、これは文化庁の方はどう理解されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/150
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151・加戸守行
○加戸政府委員 暫定措置法下におきまして、許諾を得なければならないという規定が許諾権の根拠になっておるわけでございまして、許諾を得なければならないという法律的字句どおりに解しますれば、イエスかノーかということについて、イエスを求めてイエスの許諾をもらいたい、でもイエスが出るかどうかというのは権利者側の自由意思にかかっている事柄でございます。これは、字句どおりに読めばでございます。しかしながら、イエスかノーか、つまり禁止をするということがありますれば実態的には貸しレコード業が存続できなくなる、そういった事態を踏まえまして、許諾を求められれば公正な使用料の支払いを条件として許諾すべきものであるという基本的考え方がそこにあらわれていると十分理解いたしております。
ただ、それでは禁止は全くあり得ないかということになりますと、それは許諾権を与えながら許諾権を奪うということにつながるわけでございまして、一種の報酬請求権と変わりない状態を出現するのではないかということが一つ、それからもう一つは、許諾を与える相手方がどんな違法行為をやっていても許諾を与えなければならないと解するには若干無理があるのではないか。つまり、具体的に申し上げますれば、高速ダビング等を一緒に行っているレンタル業者に対しても、公正な使用料だけ払うならば許諾を与えなければならないという趣旨には理解しがたいわけでございまして、そういう意味で、基本的な大原則といいますか、この法律の精神はこういうことであるということでその運用を図るべき旨の御指示があったと私ども、受けとめているわけでございます。
ただ、先生ただいま御指摘になりましたように、参考人の御意見の聴取の中でもニュアンスの違いがございました。具体的には、レコード協会側では、例えば一人のタレントを育てるために必死の努力をし、多額の経費をつぎ込んで年に一枚しか出さないようなレコード、それが売られてすぐレンタルに回されてしまうと投下資本も回収できない、そういうことになると、そういった音楽創造の意欲を失うということになりかねないという死活問題に関して、私ども、十分意見としては子とできる分野もあるわけでございまして、そういったものにつきまして、一方レンタル商業組合側の方におきましては、そのような多額の投資をし、努力をしているものについては、使用料の料金を高くすることによって使わせてもらえないかということで、そこのスタンスの差が両者間にあるわけでございまして、この問題を約一カ月強の間に話を詰めていかなければいかぬという問題が基本的にあるわけでございます。
ただ、私どもの理解に関します限りは、正当な理由のない限りは許諾を与えて、使用料によって許諾すべきものだという基本方針の御意向がこの小委員長報告あるいは参議院の附帯決議であらわれているものと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/151
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152・馬場昇
○馬場委員 これは、大臣に今の点についてもお尋ねしたいのですけれども、法的文言といいますか、その厳密な解釈あるいは、悪いことをしている高速ダビングとかなんとか、そんなものは論外の話でございますけれども、やはり国会の意思、こういうようなもの、今次長が最後の方で言われたその辺にあると思うのですが、実は具体的に今やっていることを見ますと、著作権協会の方はもう話がついているわけですね。だから、先ほどどなたかの御質問に、著作権協会それから演奏者の実演家の方々、レコード業界、これはどっちが上とか下とか、順序があるのだとかということは、それも本当は私、よくわからないのですけれども、聞いてみたいのですが、いずれにしても、やはりつくられた作詞、作曲家で著作権者が、実は今度これだけのレンタル料だと、その方を上と私は見るのですけれども、その隣接権者、いわゆる著作権者がやるのを隣接権者が嫌だと言うのは、常識的に見ればちょっと考えられないのじゃないか。そのところはやはり著作権者が特に認めておるわけですから、今言われた公正な使用料なんかのところで指導して、これは当然認めるべきである、こういうぐあいに思うのです。そういう点について法的なこと、厳密なことじゃなしに、この審議の経過、そして業界の秩序を守る、そういう意味においては、やはり許諾を求めたら公正な使用料で許諾すべきものだ、これは国会の意思だと思うんですが、大臣はどう解釈しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/152
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153・森喜朗
○森国務大臣 すべての当事者間同士で全部話がついてない段階でございますから、実際的には私どもが立ち入るべきではありませんし、文化庁の事務当局にお任せをいたしておりますが、やはり私は、大前提としては、先ほど馬場先生から強く御指摘をいただいたように、レンタルの皆さんが業界の話し合いの中に入ってくるということが一番大事な誘導の法案であったわけでございます。
ちょっと言葉は過ぎるかもしれませんが、私がずっとお世話をしてきている間に、レンタルは悪なり、つぶしてしまえという一番強いお立場をとられたのはやはりレコード販売業の皆さんでございました。我が党の皆さんもそうでございましたし、それぞれのお立場で、あれはいかぬ、あれはいかぬのだと言って強い声を上げておられたのはやはり政治家ですから、どちらかといえば実演家や演奏家やそういう著作権の直接の権利保持者よりも、やはり自分たちの選挙区にいらっしゃるレコード屋さんの組合の皆さん、皆やはり商店街の有力な方ですから、こういう皆さんから強く要請を受ければこれは本当に動かざるを得ないのです。
この間、湯山さんでしたか、私に、あなた入ったことありますかと言うので、私の事務所がたまたま一階を借りていたのですが、ビルの二階にレンタル屋さんが入ってしまったものですから、私の事務所全部、レンタルレコードみたいな看板になりまして、それで随分レコードの販売業者の皆さんから、森喜朗はいつからレンタルの親分になったんだと言われて、ちょっと困ったぐらいでございました。
ですが、大変失礼な、御無礼な言い方でしたけれども、販売店の皆さんにはこの問題に偉そうに口を挟む権利がないんだ、著作権についてレコードを売る人たちははっきり言って権利は持ってないんだ、そこを一緒になって言ってもらったら困る。文化庁の皆さんにも、そこはきちっとしておきなさい、悪いけれども、そこまでのことを考えたらこれは話にならぬことなんだ、ですからまずそれは除外してもらう。
ただ問題は、レコード製作者、レコード業界は、自分たちのつくったレコード、あるいは演奏家もあるいは作詞、作曲した人たちも、本当に自分たちのつくったものがあらゆる国民の中に浸透でき得る、普及でき得るということはやはりレコード屋さんたちのおかげなんですから、そこはレコード会社と、あるいはレコードをつくる人たちとレコード販売業の方たちとの間の商行為であり信頼関係であって、そこはもう私たちはさわるところではない、私はこういう姿勢をずっととり続けてまいりました。そうしなかったらこれはまとまるものじゃなかったと思います。
したがいまして、今お話し合いをしていただくことも、大前提はやはり許諾をする、許諾をするんだよということのお互いの信頼感がそこになかったら、この法案というのは私はもう全くおかしなものになってしまうという気持ちは今でも持っておりますので、そういう意味でそれをどの程度にするか、そして今度レコード製作者側とは「一年」という話にされたのも、ある程度お話が詰まってきたのも、やはり許諾をするという前提がなかったらレンタルの皆さんもうんとはおっしゃらないだろう、私はこう思いますので、そのことをまずひとつ、お互いに信頼感の中できちっとおなかの中に入れて、そして話し合っていただくことが妥当だ、その上において適切なる使用料というものを定めていくべきだ、こう思うんです。
私どもは政治家の立場ですし、大臣でありましても政治家でありますから、そういう中に入ったくもございませんし、もう加戸次長以下事務当局を信頼して、そして円満にお話し合いを進めていただけるようになお一層努力していきたいし、私の基本的な考え方はすべてそこに立脚してやっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/153
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154・馬場昇
○馬場委員 その基本的立場で私も同感でございますので、ひとつ一生懸命頑張っていただきたいと思うのです。
特に私の心配しますのは、レンタル業界がいわば自助努力といいますか、一つの市民権を得て音楽文化産業の発展に努力する、貢献する団体としてひとつ成長していこう、そういう中で例えば高速ダビングなんか悪いことはしちゃいかぬ、そういうものは入れないというようなことにして、悪いものは切りながら庄助努力してやっていって、そしてこういう皆さんと同じ場所に来て話し合いをするという中で、例えば、許諾しませんよというようなことになってやはり許諾しないようなことが起こってきたら、その中からでも変なことを、悪いことをするということが出ましたらまた混乱が戻ってくる、こういうことになっちゃいかないと思いますので、ぜひそういう点で頑張っていただきたい、こういうぐあいに思います。
そこでもう一つ、業界の混乱の中に訴訟問題が実はあったわけですが、この訴訟問題も先ほどから出ておりますので詳しくは聞きませんが、この法律ができたからこの訴訟問題というのが和解解決の方向に行っているんじゃないか、私はそういうぐあいに感ずるのですけれども、これは次長、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/154
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155・加戸守行
○加戸政府委員 この貸しレコード問題に関します訴訟は二通りございまして、一つは商業用レコードのレンタルそのものに関します訴訟と、もう一つは高速ダビングの禁止を求める訴訟とがございまして、後者につきましては仮処分決定が先般一つ出ました。あと残り二つございますが、この問題についての和解という具体的な動きはまだございません。一方の貸しレコードそのものに関しましては、私どもに入っております情報によりますれば、裁判長が和解の勧告をなされたということで、そのベースに乗ってレコード協会あるいは音楽著作権協会側が貸しレコード側との間におきます自主的な和解の方向に向かって具体的な話し合いに、あるいはその他いろいろな準備に入っていると理解しております。
実は、この問題は若干基本的な問題との絡みがございまして、現在、六月二日からどうするのかという方向へ向けての話し合いとの相関関係にあるわけでございまして、今までにこうしてきたものはどうするかということは、これからどうするかということに相互つながりがあるわけでございますので、私どもの予想といたしましては、この和解の内容は、多分六月二日以降に決まるであろう話し合いの内容とほぼ、そう全く同一とは申しませんが、相互リンクするような形での解決が図られることになろうと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/155
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156・馬場昇
○馬場委員 十分理解できましたが、くどいようですけれども、著作権者だとかあるいは実演家の方々あるいはレコード製作者の方々、そしてレンタル業界の方々、これが共存共栄しなければならぬわけですから、そういう意味でやはり同じ方向を見ていかにゃいかぬわけで、おれはこっちだとどこかが一つ向けば共存共栄もできないわけで、秩序も崩れるわけでございますから、今文化庁はそういう公正な使用料等についていろいろ相談に乗っておられると思いますので、公正な使用料できちっとまとまるようにひとつぜひお願いしておきたいと思います。
それから、次に暫定法についての質問ですけれども、実は暫定法が出ましたときに、著作者等から許諾を得なければならない期間は「一年」というのが原案に出ておったわけですが、国会で議論をいたしまして、そこの部分を「政令で定める期間」、こういうぐあいに修正したわけでございます。この修正は森大臣は委員でよく知っておられるのですが、この修正の意図を文化庁はどのように理解しておられるのですか。この「一年」と出たのを「政令で定める期間」と国会で修正したわけですから、この修正は何のために、どういう意図で修正したんだと理解をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/156
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157・加戸守行
○加戸政府委員 私どもの理解といたしますれば、当初議員提案されました期間の「一年」が「政令で定める期間」に変わりました理由といたしましては、当時この「一年」という期間につきまして、権利者サイドは一年を上回る期間、しかし、不満ながら一年でも最低が一年という考え方だったように理解しております。一方、貸しレコード側にとりましては、許諾権の期間があっては困る、これはゼロであるべきだ、あるいは限りなくゼロに近い期間という考え方であったろうと思いますし、その間の思惑といたしましても、貸しレコード側としては全部を使わしてもらいたい。一方、権利者側としては、当初は全面禁止を主張する向きもあったわけでございまして、そういった意向の食い違いもあるという状況の中でどういう形で進んでいくのか、まだその段階では小委員長報告もないわけでございますから、そういった方向性も見出せないという状況もあり、関係者間の意見を十分調整した上で、具体的に一年にするのか何カ月にするのかという問題は政令にゆだねる。具体的には政令を定めるのは政府でございますので、立法の府が、行政レベルでここをうまくやって期間を定めてほしい、そういう趣旨であったと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/157
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158・馬場昇
○馬場委員 「一年」と出たのを国会でいろいろ修正したというのは、これは二年にするとかなんとかという意味で修正したのではなしに、もう少し縮まらないかという意味の修正という気持ちで僕らは修正したわけですけれども、問題は、また政令が「一年」と出たというものだから、その辺の気持ちがちょっと合わなかったのです。
先ほどから聞いておりますと、これについては関係者はみんな了承しているんだというお話でございます。関係者がみんな仲よく「一年」で了承した、そういう中で政令を文化庁がつくられたということで先ほど聞いておったのですが、皆さん了解されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/158
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159・加戸守行
○加戸政府委員 この期間につきましては、権利者側でございます音楽著作権協会、芸能実演家団体協議会並びにレコード協会の三団体につきまして、一年以上というお申し入れでございました。一方、貸しレコード側、当時のレコードレンタル協会側は、すべて許諾をしてもらえるならば期間にはこだわらない、しかし、もし禁止されるのであるならば許諾権をそもそも認めるべきではない、こういう御主張であったわけでございます。両当事者の意向を文化庁として調整したわけでございますが、そのときの許諾権の期間というものにつきましては、私どもとしては二通りの意味がある。
一つは、許諾をするかしないかを決めることができる。つまり、場合によってはレンタル禁止ができる可能性のある期間であると同時に、その許諾を与えれば使用料が取れる期間。つまり、発売後何カ月を経過したレコードを使えば権利が動くのか、使用料を支払わなければならないのか、その期間を経過すれば使用料を支払わなくても済むという実態が生ずるわけでございまして、仮定の話でございますが、許諾権の期間を六カ月として切りました場合には、六カ月を経過した商業用レコードはもうフリーにレンタルできる、使用料も払わなくてもいい、そういう状態が出現するわけでございます。
そういう意味におきまして、文化庁あるいはレコードレンタル協会の両方の自主的な調査の結果によりましても、商業用レコードが発売されましてから一年以内のレコードのレンタルによる売り上げの比率が九割でございますので、「一年」ということをもし押さえるとするならば、今貸しレコードで実際に貸されている商業用レコードの九割をカバーすることができる。ということは、業界の実態といたしましても、著作者あるいは隣接権者に還元すべきお金としては一年をベースとして算定するのが比較的合理的な期間であろうという点で、たまたま議員提案で、当初は腰だめで「一年」が決まったのじゃないかと思いますが、提案のとき「一年」であったのが、その後の調査によって見ますと、発売後九割のものが大体カバーできるという実態と偶然にも符合したという実態が一つあるわけでございます。
重ねて、レコードレンタル協会側との話し合いの中におきましても、当方といたしましては、初めはレコード協会側から全面禁止だ、六カ月禁止だというような声が上がっていたわけでございますが、それは小委員長報告あるいは参議院附帯決議の趣旨に反するということで、原則としての許諾をしてほしい、細部の詰めはまだ残っておりますけれども、そういう状況でレコードレンタル商業組合側の御了解もちょうだいしたということで、「一年」に定めた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/159
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160・馬場昇
○馬場委員 皆、関係者が了解しておるということでございますので、次に移ります。
次は、現在話し合いしておられますところの公正な使用料の問題についてでございます。話し合いの現状は先ほどから他の委員の質問で聞いておるのですけれども、ごく簡潔に、公正な使用料は、どの団体とどの団体とどうなっているという現状を報告してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/160
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161・加戸守行
○加戸政府委員 まず、作詞、作曲家側でございます日本音楽著作権協会と日本レコードレンタル商業組合との間におきましては、当委員会でもたびたび答弁申し上げましたように、四月十二日に基本的な合意に達しまして、四月十六日付で日本音楽著作権協会から著作物使用料規程改定の申請が出されております。内容といたしましては、LP盤、これは一回といいますが、通常二日間貸すことが原則でございますが、五十円、それからシングル盤については十五円、それからコンパクトディスクと呼んでおりますけれども、最近のレーザー光線による一種の音源ディスクでございますが、これが七十円、それから録音テープが五十円、これを基本料金といたしまして、団体が年間契約によって契約する場合にはその積算のベースなりあるいは料金についての一定の軽減が図られるという規定と、そのほかに暫定措置法期間中はそれで計算した額の百分の六十の範囲内で特別料金を定めるという形で、現在申請が出ているわけでございます。
一方、日本芸能実演家団体協議会とレンタル商業組合との間におきましては、あるいはレコード協会とレンタル商業組合との間におきましても、まだ感触、意見交換程度でございまして、具体的な金額の提示とかいうような段階にはまだ至っておりません。
ただ、ある意味で日本音楽著作権協会がプライスリーダーとして一応価格の設定ができたわけでございますから、それを横目で見て一つの見当がつくであろうということ、あるいは貸しレコード側におきまして、これは営業でございますから、使用料に相当する額をどの程度レンタル料金にオンできるのかという経済法則というのが当然ございましょうから、余りにも高いレンタル料金では利用者が来なくなって経営が成り立たなくなる。そうすると、どの程度のアローアンスの中で権利者側に払うべき余裕ができるのか、作詞、作曲家の使用料との間においてどの程度のバランスをとればいいのか、これは一種の商取引的なものでございますから、両当事者間の話し合いで相当程度詰まっていく問題だと思いますが、現在のところ、最終的に詰まらない事態が出る可能性もないわけじゃございません。そういう意味におきまして、私ども、非公式な感じでございますが、著作隣接権者側並びにレコードレンタル商業組合側の方からも、その際には文化庁として、この辺が妥当ではないかというような示唆もちょうだいしたいという空気も感じておるわけでございまして、なるべく円満に話を進めていきたいと思うわけでございます。
特に難航すると予想されますレコード協会とレコードレンタル商業組合との間におきましても、先ほど別の答弁で申し上げましたが、お互いの代表者であります高宮会長あるいは牛久保理事長、いずれも人格、識見、良識のすばらしい方でございまして、立場は非常にお苦しいと思いますけれども、大乗的見地に立ってお互いの接点を見出し得るのじゃないかという心からの期待を持っているわけでもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/161
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162・馬場昇
○馬場委員 著作権協会とLP五十円という話がついているということですが、私よくわからないのですけれども、五十円というのはどういう積算基礎で出るのか。例えば、文化庁としてはこういうものの使用料の積算基礎というのはいかにあるべきか一それを質問した方がいいんじゃないかと思うのですが、そういうことを含めながら、五十円というのは、これはお互い商取引だから、決まったんだから知らないよと言われるのか知りませんけれども、いわゆる公正な使用料の積算基礎はいかにあるべきか、こういう問題についてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/162
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163・加戸守行
○加戸政府委員 世の中にいろいろな著作物の使用料というのがございます。これは長年のいろいろな慣行によって積み上げられたものがあるわけでございまして、歴史の長い業界におきましては、例えば出版物の印税でございますれば平均して一〇%、特に偉い作家に頼んで書いてもらったら一五%になるとかあるいはアドバンスを支払うとか、これはでき合いの作品だから八%にするとか、いろいろな形がございます。あるいは録音使用料にいたしましても、今、日本音楽著作権協会の使用料が、レコード一枚について五・五%とかいうような料金の定め方もございます。
しかし、その場合に、いわゆる総体の価格に対する比率という観点から見ますと、これは原価計算がまた必要になってくるわけでございまして、どの程度の必要経費をかけ、利益がどの程度で印税がどの程度になるのかというような相関関係もある。つまり営業をするときに、著作物なりあるいは著作隣接権である実演レコードがどの程度の寄与をしているのかというのが総体の価格の中ではかられるべきである。そういう意味では、この分野ではこれ、この分野ではこれというのは、長い商業慣行のできた分野についての料金というのはおよその見当がついていくわけでございますが、新しい業種というのはまことに初めてのケースでございまして、まさに両当事者間が腰だめで、うちは幾ら欲しい、いや、うちはこれしか出せないというようなところから話がスタートして、たまたまがちっと話が詰まったというところではないか。そういう意味で、理論的に説明しろとおっしゃられますと文化庁としても一番当惑するわけでございますが、これは貸しレコード側としてもこの程度なら営業が成り立つという判断のもとに、著作権者側もこれだけもらえれば満足できるという、たまたまお互いの気持ちがぴったり一致したというすばらしい数字ではないかというぐあいに理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/163
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164・馬場昇
○馬場委員 私もよくわからないので、すばらしいのかすばらしくないのかよくわかりませんけれども、当事者が納得したと言えばこれはもう何も言うことはないわけです。
私も余り詳しくないのですけれども、著作権協会には著作権使用料規程があって、文化庁長官が関与できるんです。ところが、隣接権者にはそれは今ないわけですね。そういうことも含めて、例えば文化庁長官が規程によって関与できる著作権協会、長い歴史を持っていろいろまとまったと思うのですが、そういう文化庁の関与する規程がない隣接権者、それが今から話し合いに入るわけですが、言いたいのは、著作権協会に五十円、そうすると次に実演家の団体の方が、おれのところは横並びじゃ、さっき横目で見ると言われたけれども、どういう横目で見るのかわかりませんが、おれのところも五十円だ、そうしたらレコード協会は、おれのところはもう少しもらわなければいかぬ、おれのところは百円だなんて言ったら二百円になってしまいますね。そういうことでは、今度はレンタル料がぐうっと上がってしまうということにもなるわけでございまして、何か文化庁が、長い指導の経験の中で、著作権協会にはこういう規程があってこうなっている、それを横目で見る場合にはこういう横目で見なければいけないんだよとか、それはお互いの当事者の話し合いがつかないときは多分文化庁の方に、何とかいい知恵をかしてくれと言ってくるんじゃないかとさっき御答弁もあったのですが、そういうこともお考えになっておられるのではないかと思うのです。そういうあと二つのものと著作権協会との使用料の関係なんかは、申請もまだ来てないところに裁定の腹のうちを見せたってこれはしょうがないと思いますけれども、その辺の関係はどういうぐあいに考えておられるのですか、関与の仕方も含めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/164
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165・加戸守行
○加戸政府委員 先生御指摘のように、暫定措置法下におきましては、著作隣接権者側に関しまして文化庁サイドとしては何らの権限がないわけでございます。ただ、ただいま御提案申し上げております著作権法一部改正案の中におきまして文化庁長官の裁定制度が取り入れられてございますので、来年の一月からはそういう形に移行するということを予測して、事実上、本法移行への体制の前段階としてスムーズな話し合いが持たれるだろうという期待をしているわけでございます。
ところで、金目の問題でございますが、先ほど私、すばらしい数字だと申し上げましたのは、決してそれが適正だという意味で申し上げたわけではなくて、お互いに意見がぱっちり合ったということはお互いにとってハッピーなはずだから、すばらしい数字だという意味のことを申し上げたわけでございます。
現実的な感覚といたしますれば、先生が御心配なさっていますように、権利者に払うという考え方を、恐らく貸しレコード側も一つのパイを想定していると思います。そのうちの相当部分を切り取って、「はい、これは著作権」と渡したわけでございますから、貸しレコード側の懐の中は権利者側には見えませんけれども、残ったパイが権利者にとっては満足すべきものか不満足なものかということがあり得るだろうと思う。そういう意味で、こういう本当の新しい業種の場合には、三つをセットで、えい、やあ、さっという形でそれぞれが一遍に決まるのが本当は望ましい姿じゃないかと思いますが、文化庁が申します前に両者間で話が先についたわけでございますから、これも春闘相場と同じでございまして、ある団体が決まったからほかの団体が横目で見ながらという関係で、一つはプライスリーダー的な役割を音楽が果たしたということは言えると思います。
ただ、その場合に、確かに今度は貸しレコード側が今のレンタル料金を一体どの程度までなら上げられるのか、あるいはその上げた範囲の中でどの程度使用料として支払う余地があるのかという、ある意味ではみずからの一つの制約を負ったという感じになるわけでございますから、そういった立場を芸団協なりあるいはレコード協会なりが十分了とした上で残ったパイだけの要求をするのか、あるいは足りないからもっとパイをふやせと言うのか、その辺が今後の話し合いの過程でいろいろな若干難しい問題が出てこようかと思います。しかし、いずれにしても基本的には両当事者間の話し合いでございますから、高い値段と低い値段とからスタートしてだんだん近づいていく中で、文化庁としてもじっと見まして、そこのところはなるべくいい数字に落ちつくように側面的な御協力を申し上げたい。
ただ、仮定の話でございますが、もし話がつかないといたしましても、それはわずか半年の話でございますから、半年間のことだけをめぐって大きなトラブルになるということは私どもは考えていないわけでございまして、それは暫定期間であるということを踏まえた上での暫定的な手打ちの方法もあり得るであろうし、そういう意味で、先ほど申し上げたレコード協会会長あるいはレンタル商業組合の理事長のお互いの話し合いの上での妥当な解決を期待しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/165
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166・馬場昇
○馬場委員 今度は大臣に質問したいんですけれども、今お聞きしておって、貸しレコードの利用者は俗に一千万人ぐらいおるというぐあいに聞いておるわけでございますが、問題は、そういう公正な使用料というのはお互い関係者で話をされ、それで合意をするんでしょうけれども、そのとき忘れてはならないのは私は消費者の立場ではないか、こういうぐあいに思いますし、そしてやはり消費者というものこそ日本の音楽文化創造の土壌であり、源泉だと思うんです。これが買わなければ音楽文化創造なんてできっこないわけでございますから、そういう意味でぜひ、決める場合に、その底辺におる音楽文化を創造する原点である消費者の立場を重視しながら御相談に乗っていただきたいし、指導していただきたいと思うのですが、これについての大臣の御見解をお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/166
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167・森喜朗
○森国務大臣 私も先ほどから大変長々と、当時の経緯を思い出しながらお話ししておるのですが、この問題が起きましたときに、ちょっと私的なことで恐縮ですが、当時、私の娘がたしかまだ中学一年生で息子が高校三年だったと思います。たまたま日比谷公会堂で、レンタル業界をつぶせなんというような何か大会があって、そのテレビが出ておりまして、私が党でこの仕事をするというのをテレビか新聞で息子が見たんでしょうね。それで私は、どう思うかねと子供たちに聞いてみたんです。というのは、二人とも愛用者でございまして、借りに行っているわけですよ。そうしたら、下の中学の娘がこう言うんです。親孝行しているんです、お父さん、LPを一枚買うのに二千八百円もするんです。——ちょっと森家のことを言っては恐縮ですが、小遣い五千円もやってないものですから、その中でレコードに三千円取られるのは大変なピンチです、と。しかも、ここは僕はなるほど、レコード業界の人も考えてもらいたいと思ったのは、LP、高いのを買うのだけれども実は聞きたいのは一曲なんだ、なのに全部をセットしたものを買わなきゃいけないから、結局みんなで出し合って買うということになってしまうので、レンタルを利用するということは親孝行ですよ、お父さん。そう娘に言われて、なるほどうまいことを言うものだな、こう思ったわけです。
兄貴の方に、じゃあおまえはどう思うのだと言ったら、おかしいよ、この話は、と言うのです。どうしてだと言ったら、コロムビアが困るのは日立がそういうテープや機械をつくるからじゃないか、CBSソニーが困るといったって、ソニーがつくっているからじゃないか、東芝EMIが困るといったって、それは東芝がつくっているのじゃないか。親会社が機械をつくってどんどんダビングするようなことを促進しておいて、自分の子会社が困るからって、そのしわ寄せを僕たちのところへ持ってくるというのはおかしいよ、お父さん、そんなことをやると政治家不信になるよ、こう高校生の息子らしいことを言うのです。
たまたま家の中の会話ですけれども、これは今馬場さんがおっしゃったとおり、消費者あってのこうしたレコードであることは間違いがない。そういう意味で、先ほど加戸さんが、えい、やあ、さっと——えい、やあ、さっと一、二、三というのがどう違うのかわかりませんが、いずれにしても五十円という価格ができた。そしてこの法律ができたのは、一つには業界が同じテーブルに着くということがありますが、もう一つは、どんなに音楽を聞きたくても、どんなレコードを買うにも、やはりつくる人たちの努力、その人たちの創造によって音楽ができたのであるということを使用料を払うことによって、それが場合によればレンタルに上乗せさせてくるのかもしれませんけれども、いずれにしても著作権というとても大事な法律があるんだということを、利用者が子供たちであればあるほど、若年層であればあるほど、そのことによって著作権というものを大事にしなければならぬのだということを利用者にもわからしめるという意味で極めて教育的効果がある、そういうふうに私は考えておるのです。
ですから、確かに消費の立場の皆さんも考えていかなければなりませんが、やはりただで音楽はできないのですよ、つくる人たちの大変な努力によってこれがあるのですよということもぜひ理解してもらうために、いささか消費者に対して御迷惑をかける面も出てくるのかもしれませんし、特に子供たちという低年齢者層に大変申しわけないなという気持ちもございますが、適切な、公正な価格によって著作権という大事なものを子供たちが理解してくれるということの一助にはなるのではないかなという自負心も私は持っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/167
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168・馬場昇
○馬場委員 たくさん質問はあるのですけれども、時間が余りありません。
著作権は文化のバロメーターだということですし、著作権というものを消費者に本当に意識してもらうということは非常に大切なことだと思いますが、余り消費者にしわ寄せということで来ますと大変なことになるわけですし、その点は大臣よくわかってのお話ですので終わりますが、やはり音楽産業の中の実情というものの把握が文化庁は足らないのじゃないか。具体的に言いませんけれども、何か質問すると、これはどこどこレコード協会の調査によれば、これはどこどこの調査によれば、通産省のお話を聞けば、こういうことでの答弁が多いですよ。だからレコードの価格というものは高いのか低いのか、そして今録音、録画機器がこうなって、それがどう影響しているのか、あるいはレコード産業業界の体制というのは今のままでいいのかとか、どこにいい点があり、どこにはまずい点があるのかとか、例えばレンタルとかがどれだけ収入なんかに影響を及ぼしているのかとか、そういう科学的な調査というものは、やはり著作権というものは文化のバロメーターだと言うのだから、それでいろいろ振興していこうと言うのだから、そんな調査というのは文化庁が主になってやるべきだと思うのですよ。だからそういう点について——あと一つあるもので、余り時間がありませんけれども、何か文部省がそういうものを人の調査を借りて言うのじゃなしに、主体的に、著作権を通じ日本の音楽文化を盛んにしていくという、そのことが文化全体にかかわっていくわけですから、その著作権にかかわるいろいろな調査というものをぜひ文部省の力でやるべきだと思うのですが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/168
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169・森喜朗
○森国務大臣 先ほどからも少し申し上げたのですが、文部省や文化庁は商いには余り関係がない、文化の薫り高い役所でございますから、ついつい文化振興、レコードが繁栄することは大変ありがたいことであります。しかし、それはお金をもうける意味での繁栄ではなくて、音楽が伸びていってくれる、そういう意味で繁栄というように考えているわけでございますから、ついついレコードが何枚売れて、レコード業界がどういう収支になっていくだろうというところまでは、文化庁としては今日までタッチしなかったということは率直に認めざるを得ない、私はこう思います。
しかし、今度の法律を御議論いただき、成立をさせていただきましたことを一つの契機として、やはり文化庁長官がその中に調整をする機能を果たし得る、そういう立場にもなるわけでございますから、事務当局にも、十分そうしたことに留意をしながら、業界の問題点もやはり適時適宜に調査をして、そして文化庁としてしっかり把握しておくということも大事だと思いますので、そういう指導をしてまいりたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/169
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170・馬場昇
○馬場委員 時間が来ましたので、最後にまとめて二、三申し上げておきたいと思うのです。
この著作権法の今度の一部改正の法律でございますが、やはり貸与権というのがはっきりするわけです。この前の暫定法よりもさらに非常に貸与権というものが独立していくわけでございますし、そういう中で、こういう貸与権が今度できたのだ、だから暫定法よりもおれの力が強くなったんだ、そういうことで、お互いに手を取り合って仲よくやっていく、協調し、共存共栄というものにこれによってひびが入らないようにということをぜひ注意していただきたいと思いますし、そして、これは念を入れて言っておきますけれども、例の一部禁止という動きがやはり頭にあるというのなら、今度は裁定権があるわけですから、そういう動きのある前に、話の中で裁定権でもって混乱するようなことが起こる前に裁定をするということなんかも、よく当事者と話し合いをして、心して運営していただきたいと思います。まだ幾つかございますけれども、そういう点を新法の運用に当たって留意していただきたいと思います。
それからもう一つは、先ほどから出ております録音、録画機器の著作物の私的使用についてですけれども、これについては西ドイツ云々ということも出ておるわけでございますが、やはり賦課金というようなもの、この問題は避けて通れない問題ですから、この録音、録画機器の問題につきましてもぜひ前向きに取り組んでいただきたい。どうも聞いておりますと、先ほど文部大臣が言われたのですけれども、やはりこういうものをつくる機器メーカーは賦課金をかけるなんかは反対でしょうから、そうすると、その反対は物すごく力が強いところだものですから、それに押し切られて文化庁はじっとしているというようなことでは日本の文化は守られないと思いますので、ぜひこの問題についても前向きに取り組んでいただきたいし、これは録音、録画機器だけでなしに、今から日進月歩で技術が発展していくわけですから、次から次に新しい機器が生まれてくると思うし、その機器を利用して日本の音楽文化を国民全体にどう広げていくか、こういうようなことで積極的にこういうものに取り組んでいくべきだと私は思います。
そういう点について最後に大臣の御答弁をいただいて、時間が来ましたので終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/170
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171・森喜朗
○森国務大臣 御指摘いただきましたことは、大変大事な問題をたくさん含んでいると思います。
十分御指摘の点を留意しつつ、そして、先ほどもちょっと申し上げましたように、著作権審議会の方にもまた次々と、新しい時代に対応して第七小委員会も発足をいたしておるわけでございまして、今後とも十分議論をしながら、こうしたことを十分に留意して、文化振興のために文化庁が大いに気を吐いていけるように事務当局を指導していきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/171
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172・馬場昇
○馬場委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/172
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173・愛野興一郎
○愛野委員長 江田五月君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/173
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174・江田五月
○江田委員 長丁場でお疲れと思います。そして、もういろいろな質問がそれぞれ出まして、その質問に対して大臣と加戸次長の方から、いろいろな方面によく配慮の行き届いた、理解の行き渡ったお答えがございましたので、何をこれにさらに重ねてという感じもするのでありますが、もう少しだけ聞いておきたいことがありますので、お許しください。
最初に、レコードレンタルというものを一体どう見るかということなのです。これも大臣の方からもお話がありましたが、私は、これは一つの新しい文化の形なのかなという気がするのですね。おとといですか、この委員会で木島委員が、「チョウチョウ」を「テフテフ」と書かないとどうもぴんとこないと言うので、私が笑いましたら怒られましたが、どうも私どもはやはり「テフテフ」じゃぴんとこない。これはある程度違いがあるわけですね。しかし、違っているからというので、古いなとか、おまえらなんか昔を知らぬなと言われたのではどうしようもないわけで、お互いにそれぞれの違いを認識しながら同時に理解をし合うということが必要ですが、どうも今の音楽文化の中に二つのものが混在している。あるいは二つ以上のものが混在しているのかもしれませんが、一般に伝統的な音楽文化ということになると、やはり送り手がプロフェッショナルで磨き抜かれて、すばらしい音楽をつくるためにそのことに生涯をかけてがんばっていく。受け手はそれを本当に良好な環境で静かに、私は受け手でございますと、それこそ赤ちゃんがきゃっと言ってもいけない、げたの音がコロッといってもいけない、そういう環境のもとで聞きたい。そういうものからだんだん変わって、受け手の方もある種の参加をしていきたい。今度送り手の方も、ある種の科学技術の発達などに伴って、単に送り手としてのプロフェッショナルという性格がだんだん薄れてきていますね。そして、そういう中で、例えばカラオケの中から歌手が出てくる。まあカラオケなんかは一つの新しい文化の芽のあらわれかもしらぬが、そういうものとしてレコードレンタルも、コピー文化という言い方だと何となく軽薄な文化というような語感が伴いますけれども、そういう新しい科学技術の中で新しい文化の形ができつつあるのかなという感じがするのですが、文部大臣のその辺の感触をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/174
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175・森喜朗
○森国務大臣 先ほど馬場さんの御質問の中でも申し上げたのですが、一枚のLPレコードを静かな環境で、それこそ自分の吸うお茶の音も遠慮しながらじっと聞いていく、こういうファンもいる。しかし、若干は音質が悪くても、ヘッドホンか何かで喧騒のソウルなどを聞いて体を一緒になって動かしていく。これはもうそれぞれ、音楽を愛する一つの所作だろうと思うのですね。どれがよくてどれがいけないということはない。質が若干悪くでもできるだけ安く手に入れて、自分の好きな曲をテープにとって、いつでも好きなときに、場合によっては歩きながらでも聞く、そういうことを若い人たちは好む。しかし、それは非難はできないと私は思うのです。いずれその子たちも、また年齢とともに、音質の全く狂ってない、いいレコードを静かに聞こうという気持ちにだんだんなっていく。そういう意味で、若い世代の皆さんがレンタルのレコードを利用してお互いにテープを回し、聞きながらやっている、それは私はある意味では生活の知恵だと思いますが、もう一つは、将来音楽を支えてくれるファンの拡大、ちょっと言葉は悪いのですが、その予備軍を形成していくことになるのではないか。僕はそういうつもりでこの問題に対応したのです。
ですから、初めて私が自民党でこの仕事のまとめをさせられましたときに、さっき言った自分の子供にまず感想を聞いてみて、そこからスタートをした。党本部でその作業を始める委員会を開きましたときに、順番に団体の皆さんにおいでをいただいて、朝ですから朝食会をやりながらお話を聞くのですが、当時、レンタルの皆さんはおっかなびっくりでお見えになって、弁護士さんを連れて来られるんですね。それで、何か我々からしかられるのじゃないかという構えで、代表の大浦さんがちょっとあいさつだけしまして、党の国会議員がいろいろな質問をしますと、みんな弁護士さんがお答えになる。朝早いですから我々も御飯を食べながら、大した御飯じゃありません、ノリと卵とサンマか何かだったですが、食べながらやっていますと、そのレンタルの皆さんは、おいでをいただいたお客さんですが、御飯も食べられないんですね。何が食べたらいかぬのじゃないかというくらい、ある意味では非常に純情で、党に呼ばれることが何かおしかりをいただくのじゃないかという構えで来られました。僕は、大変純粋な皆さんだと思いました。
ですから、私は、そうではなくて、あなた方がそういうお気持ちであるなら、さっきも申し上げたようにまさにアイデアで、考えて後からわかってみれば何でもない話だけれども、コロンブスの卵なんですね。しかし、そのことを本当に国民全体が認知してくれる御商売にするというお気持ちでぜひ一緒に、僕たちはあなた方を排除するということじゃないのだ——ある意味では、業界の皆さんを排除しろという意見も物すごい高まりでございました。白川さんなんかは、守ってあげるべきだという大変強い御発言でもございました。いろいろな意見がございました。そういう中で、まず入っていただいて、そして業界として認めてもらえるようにやろうじゃないですか、こういう姿勢で臨んだ。
一方において、レコード製作者やあるいは著作権を持っておられる方々には、将来長い目で見たら大変音楽を愛好する人たちを形成していくことになるのではないか、こういうお話を申し上げたことを私は今思い出すわけであります。
ちょっと長くなって恐縮でございましたが、レンタルレコードを利用していこうという若い人たちもやはり音楽文化を大変に愛してくれる人たちであるから、大事に大事にしていかなければならぬ、こういうふうに受けとめて私は今日まで来ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/175
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176・江田五月
○江田委員 何も質問しなくてもいいと言いましたけれども、やはり質問することはあるわけですから、どうぞ、朝食会のおかずの件までは質問にありませんので……。
年とともに嗜好が変わるということもあると思いますが、新しいものが生まれているということがあると思うのです。例えばビートルズが最初出てきたときに、僕はビートルズが出てくるときには、もうある年代を超えていましたので、何となくうるさいな、あんな音楽、という感じてした。しかし、ビートルズ世代というのは、年をとってもビートルズは懐かしくて仕方がない、涙が出るほど懐かしいと言うんですね。今の若い人たちは、それこそテープをいろいろ編集しながら、マイテープといって、自分が車に乗って走るときはこの音楽で二十分間、自分の音響空間をつくるのだということに物すごく喜びを覚えているという文化、これは今のエレクトロニクスがあって初めて成立する文化ですね。これはやはりユーザーがある種の参加をしているわけですね。これが恐らくこれからもっともっと進むだろうと僕は思うのです。
例えば、どこまで進むかわからぬし、今のニューメディア時代と言うとちょっと浮かれ過ぎかなという感じもするけれども、しかし、ある種の未来予測を含んでいるのだろう。そういうこれから先の方向を考えますと、例えばサックスはサックスで、ピアノはピアノで、ギターはギターでいろいろなパーツがあって、それを今ではミックスして一つのレコードにつくって売っているわけです。その歌手も、若い女の子が下手くそな歌でね。しかし、エコーをかけたりピッチを上げたり、いろいろなことを機械で操作して一つのレコードをつくっている。これをユーザーの方が、自分たちがやってみたいというふうになるかもしれない。それを可能にするエレクトロニクスの技術が今進みつつあるのではないだろうか。そうなってくる、そういう音楽文化のある種のはしりのような、ある種の芽のようなものが、このレンタルの今の流行の中にあるんじゃないかなという気がするのですが、その辺になりますとどうですか。文部大臣お若いですから、おわかりになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/176
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177・森喜朗
○森国務大臣 私は、どちらかというとビートルズとか、そういうことに余り心が弾んでこないのです。私の生まれたころ、昭和十二年から十六年というのは割と、この間御質問いただきました大久保直彦先生の御尊父さんあたりがおつくりになった歌が非常に流行いたしまして、母の胎内のときから覚えたのかどうか知りませんが、案外そのころの歌をよく今でも歌います。ですから、音楽に対してはかなり理解もあります。それから、音楽関係者とも非常に私は、芸術家というよりも芸能家ともおつき合いが多いのですが、今あなたがおっしゃったとおり、今いろんなパーツから来る音楽を集めていい音楽にしてレコードにして出す、今度はそれを聞くときに逆にまた分離して聞くというやり方、そういうことも恐らくこれからでき得るでありましょうし、かなりそういうことに関心を持っている人たちは、自分で非常におもしろおかしくつくられてやっておられる人も随分ありまして、よく私もそういう家庭へ行って、そういう音楽を聞かせてもらうこともございます。自分が歌った歌をちょっとカラオケでとってもらって、それをまた完全に分離してほかの伴奏とくっつけてやると、意外におれの歌はうまいんだななんて思うことがありましたけれども……。
いずれにしても、そういうことに参加しながら、要は、先ほど申し上げたように音楽に対する非常に大きな関心が出てくるということは、ある意味での文化の振興にもなるというふうに思います。そういう意味で、この問題はまさにけんかすることじゃないので、お互いにルールを守って、そして音楽を大事にして、音楽をつくる人たちに感謝をして、そしてそのことでみんなが大きく繁栄をしていくということが、やはり一番のこうした問題に対する哲学としてなければならぬ、私はこういう考え方を持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/177
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178・江田五月
○江田委員 さらに言えば、恐らく今の科学技術の進歩の速度からすると、レコードというもの自体が、これはレコード協会も貸しレコードも一切含めて、レコードというのが何か古い時代の遺物になっていくんじゃないだろうか。百科事典なんというのも遺物になるかもしれないわけですね。これからINSだとかいうことになっていきますと、ボタン一つで百科事典のどこの項目というのがすぐ出てくる。各自の家にぽんと備えるような必要がなくなってくる。本なんというのは、初版本を愛蔵するというようなことで意味があるだけ。そこまでいくとちょっと行き過ぎでしょうけれども、レコードも、どうもジャケットを集めておくということに意味があるというような感じになって、実際の音楽はレコードで聞くよりもはるかにPCMで録音したものが、ボタン一つでINSのシステムの中で自分の家に入ってくる。アダプターか何か、スピーカーはそれぞれちゃんとした物が要るでしょうけれども、そういうようにして聞くようになってくると、一体今レコードということでやたら頭を悩ましているけれども、もっと何かその辺まで見越していくと、レコードを売る、買ってもらう、そしてお客さんに費用を負担してもらう、それをリサイクルして著作権者の方に音楽著作家の方に還流をして権利を反映させていく、そういうレコードというものを売ることによってユーザーに費用を負担をしてもらうというやり方自体がオールドファッションになってしまうんじゃないか、もっと何か違った方法をいろいろ工夫していかなければならぬ、そういう時代が来るのではないかという気がするのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/178
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179・森喜朗
○森国務大臣 先ほどから加戸次長もいろいろ苦労した話などもしておりましたけれども、私もこの問題を暫定法をまとめますまでに各業界の皆さんにお話を申し上げたとき、やはり業界全体がもう少し前向きに考えてみなければならぬ問題が多いのではないだろうか、レコード製作者側の皆さんは、やはりそういうことも考えておられるようです。ちょうど加戸さんが、百年も続いた貸し本——百年と言ったかな、何かそういうことを言いましたが、やはりレコードを売ってくださる販売業者とレコードを製作する会社との間の長い信頼関係、そのことを考えますと、トラスチックな考え方はなかなか製作者側としてはできないだろう、こう思いますが、まさにアイデアで考えたレンタルですから、これはやはり販売業者も考えなければならぬことだ。端的に言えば、私は、販売業者の皆さんもレンタルをおやりになるということに踏み切らざるを得ないのじゃありませんかということも、当時やりとりの中でもあったし、ちょっと申し上げた。それからレコード業の皆さんも、さっき言ったように、うちの娘がたまたま言ったように、一曲だけ聞きたかったのに、ほかの十曲か何かついてくるために二千八百円も払わなければいけないのはおかしいわと言う。子供たちも、シューマン全体の、あるいはシューベルト全体のものを持っていたいというよりも、何の曲だけ欲しいというのもあるわけです。やはり、そういうところにレコード製作者側もこたえてあげていない、私はそんな感じがしました。
江田さんも知っておられるように、最近もうレコードに針がないのだそうですね。針のないレコードというのでびっくりしましたけれども、そういうふうにどんどん改善していかれる業界ですから、あなたのおっしゃるような考え方で業界全体もこの問題を機にいろんな意味で反省をし、そのことをステップとして新しい段階へと対応していってほしいな、こういうふうに私も望んでいるところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/179
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180・江田五月
○江田委員 レコード協会の皆さんが、一部禁止ということを考えているやに伺っておりまして、レコード協会の皆さんとすれば、どちらかといえばレコード販売店を何とか守っていきたい、レコード協会の皆さんからすれば当然であろうし、余り急激なダメージをこれで生活をしている皆さんにお与えをするのは政治のあり方ではないと思います。しかし一方では、例えばこれほどクォーツの時計が出回って、眼鏡をかけて小ちゃなねじ回しで時計を一生懸命分解掃除をする、その時計屋さんが幾らデモをしてみたところでこれはもう始まらないですね。恐らくレコードもそういう趨勢にある。ですから、もうこれからレコード店も単にレコードを売るということではなくて、音楽文明についてのその地域のセンターのような役割を果たしていくんだ、いろんな媒体を自分のところで集中的に管理し、コントロールし、センターをつくっていくんだという、そんなくらいな意気込みを持たなければならぬ。そして、音楽著作権者あるいは著作隣接権者の皆さんも、あらゆる媒体を通じて音楽というものを公衆に享受していただいて、その使用料ということでリサイクルを実際に図っていくんだという発想の転換が恐らく必要なんだろうと思うのです。そうなりますと、今の著作権法上の立て方からすると、許諾権という構成で仕方がないのかと思いますが、やはりこの許諾というのは、公正な使用料の徴収によって満足させられるべき権利なんだというふうに割り切るべきじゃないのか、こう思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/180
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181・加戸守行
○加戸政府委員 この貸しレコード問題のそもそもの発端は、先生も御指摘なさいましたように、レコード小売店側からの問題提起がかねて強かったわけでございますし、また私どもが数字として聞いております限りでも、既に七百軒のレコード小売店が倒産をしたということ、これは貸しレコードが直接の原因であるかどうかはともかくとして、そういった実態を踏んまえた議論があったことも事実でございます。
ただ、文化庁の立場といたしますれば、先ほど森大臣から繰り返しお話がございますように、文化を守るんだ、そういう意味で著作権者あるいは著作隣接権者の権利というのも大切にしたい。その観点に立って見ましたときに、レコード製作者の立場というのは、やはり音楽文化というのをこの世の中に送り出している昔源の提供者である。しかも、その中にありましては、例えばレコード協会側の主張にもうなずけるものがあるわけでございまして、でき合いの作詞、作曲を使って、でき合いのタレントに頼んで録音するというケースではなくて、ある企画を立て、そのために作詞をしてもらい、その作詞に曲をつけてもらい、かつそれに適合した歌を歌う歌手を選び、バンドを選び、かつ良好な条件の中でヒットすることをねらってい多額の投資をかけたタレントを使うとか、そういうような諸般の多額の投資の中でつくり上げていったものが貸しレコードで使われて、投下資本が回収できないということになることは、ある意味では、レコード製作者を保護しようとした著作隣接権の制度の趣旨からいたしますれば、レコード製作者側の立場に立てはつらい思いがするだろうと思うし、音盤製作への意欲も失わせるという面もあるのではないか、そういう感じはするわけでございます。
その意味におきまして、そういった人たちに、許諾が前提である、だから使用料でと言った場合に、じゃあ使用料が幾らのものが担保できるのか、果たして取った使用料によってその投下資本が回収できるのかということもある程度は考えてあげる必要がある。それでも、それは見合いの問題でございますから、そういったのはケース・バイ・ケースで決まり得るだろうし、私ども率直に申し上げて、このような問題の解決というのは、これが絶対というのはあり得ないと思います。
もちろんこの問題は、レコード協会とレコードレンタル商業組合との間の十分な話し合いの中で一つのあるべき姿を見出していっていただきたいという気持ちはございますけれども、ただ文化庁の立場で申し上げますと、本来文化庁というのは、著作権あるいは著作隣接権といったサイド、つまり例えばのケースでございますが、それではレンタル側の御主張なさいますように、使用料を取ることによってオール許諾をしてみた。ところが、やっぱりこれでは全然採算が立たない、もたないという分野も出てくるでしょう。逆に、それでは、ある限定されたものについての限定した禁止をしたといった場合に、禁止はしてみたが、そのわずかの期間に消費者の方はぐっと我慢をした、禁止期間が切れれば、それでまた借り出して録音をする、その間におきましては投下資本の回収をするほど売れなかったなんということがあると、そういうのはやはり試行錯誤でやってみないと、どの姿がいいのかということは確定的に申し上げられないだろうと私は思います。その意味では、話し合いもあるし、あるいは試行錯誤をしばらくは繰り返してみるということはあり得るのかな。ただ基本は、あくまでも、音楽文化を生み出す権利者側もあるいはこれを伝えるレンタル側も、まさに共存共栄、何が一番音楽文化のためにいいのかということ、理想的な秩序を目指していく、そのためのある意味の試行錯誤はまだ途中プロセスとしてあり得るんじゃないか、そういう感じは私は気持ちとしてするわけでございます。権利を保護する立場であるわけでございます。ただ、この貸しレコード問題に関しましては、先ほどからもいろいろな話が出ておりますけれども、我が文化庁著作権課の諸氏も、レコードレンタルに従事される若い人の意欲、純粋な気持ちというのに打たれまして、どちらかと申すと、著作権者あるいは著作隣接権者側よりも貸しレコードの皆さんの方に心情的には傾いてきている、そういうような状況もあるわけでございまして、ある意味では私ども、レコード協会あるいはレコード関係者の方からは、文化庁は一体どっちの味方だ、権利を守るべきではないかというおしかりも受けるような状況でございます。ただ、あるべき姿、本来の理想の姿を見出す途中のプロセスというのはいろいろあるんだな、そういう意味でのある程度の御理解も賜れば幸いだと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/181
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182・江田五月
○江田委員 よくわかります。権利を守る守り方の問題があるんだろうと思いますがね。
採算割れというようなお話があったのですけれども、しかし、考えてみると、このレコードについては禁止してもらわないと採算割れを起こしてしまうんだというようなことを果たして本当に判断できるのかどうかですね。あるいは、レコード会社側から言うと、第三者をしてそういう判断に導くような資料を出すことが本当にあり得るかどうか。そうなるとやっぱり、例えば一つの会社につき年に何点とかいうことになってしまうのじゃないだろうか。禁止ということになりますと、もう微調整なしですからね、それでもう万事休す、一切終わりですから。そうじゃなくて、許諾は許諾だ、あとは使用料の問題で、どれほどが実際に購入される枚数、どれほどがレンタルに回る枚数ということになるかを使用料の額で調整するということは十分可能なわけですね。使用料というのはその意味では変数で、結果をいろいろ変えることができる、いわば世の中を動かす材料になるわけですね。許諾禁止になりましたら今度はどうしようもないのです。したがって、基本は、使用料ということでいろいろ調整をとっていく。これ、許諾するかどうかになりますと裁定が働かない。使用料というところに入ると、文化庁の方の裁定が働くわけですから、それこそ五十円もあるし、一枚千円なんというのが、それがいいか悪いか知りませんよ。よければそうだっていいだろうし、そういうことがいろいろ可能なわけですから。よほどのことがあればそれは別ですけれども、つまり使用料ということにすると余りにも妥当を欠く。権利の乱用の気味があるというような場合ですと別ですが、やはり使用料による許諾ということでなければならぬと思うのですね。
著作権法の中にも強制許諾という制度がありますね。これは、貸しレコード、レコードレンタルの場合には、本来、性質上なじまないものなんですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/182
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183・加戸守行
○加戸政府委員 著作権法の中にも強制許諾制度として三つの制度を取り入れておりまして、一つが著作権者不明の場合、だれにライセンスをもらっていいのかわからないときには文化庁長官の裁定を受けて利用する。それから二つ目のケースが放送に関する裁定でございまして、正当な理由がなくて放送に対して許諾を拒否した場合に文化庁長官が裁定をする。それから三番目のケースとしましては、レコードの専属性というものを打破するためのものでございますが、一たんレコードを録音させて三年間たった場合、ある特定の会社と専属契約を結んで、ある会社から三年間出した場合には、三年経過後はよその会社でも出せるように、それを拒否した場合には文化庁長官が裁定をする。この三つの制度がございます。それぞれ歴史的な沿革あるいは公益上の理由その他合理的な理由のつくものでございますが、貸しレコードの場合に、同じような制度が導入できるかどうかという御質問だと思います。
問題は、著作権につきましては、音楽著作権協会は、先ほどからも御議論ございますように、仲介業務団体として原則的に許諾をしますので、このことについてレンタルを禁止ということが起こり得ないから強制許諾ということはあり得ないわけでございます。となりますと、残りは著作隣接権の分野の問題で、ただ、著作隣接権での強制許諾という制度は現在ございませんし、また、政令で定める短い期間の権利でございますので、裁定の手続をそこまで手間暇かけるということよりも、むしろそういった乱用のケースが起こり得るとするならば、実は、御提案申し上げております法律案の中にも、許諾権の期間は一カ月以上十二カ月以内の範囲内において政令で定めるとしております趣旨も、もし乱用のケースがあり得るとするならば、許諾権の期間を政令によって短縮し得るのだよという抑止力の効果を含めているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/183
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184・江田五月
○江田委員 もう一つは、私はその一部禁止で心配をするのは、一部禁止になりますと、こういう生き馬の目を抜く世の中ですから、どこでまたこの法をくぐる者が出てこないとも限らないのですね。一部禁止にはなった、しかし、やみの貸しレコードがあれこれ出てきた。商業組合だっていろいろな人がおるわけで、それは商業組合の皆さんが自分の組合員を一生懸命統制するように努力をするでしょうが、その中でどういう秩序を乱す者が出てくるかもわからない。あるいはその外がどんどん膨れていくかもしれない。一部禁止ということがほんの一部ならまだいいのですが、それがかなり大きくなってくると、せっかくでき上がりつつある新しい制度、新しい秩序が、そういった妙な不心得者によって壊れてしまうおそれがやはりあるような気がするのですね。ですから、一部禁止というものが著作権、著作隣接権を保護するというように動かずに、逆に、せっかくできつつある新しい秩序が壊れて、貸しレコードの出現してきたような当初のああいう状態に戻ってしまうというおそれ。しかも、警察力で取り締まってと言ったって、これはなかなか簡単じゃないですからね。ですから、新しい秩序の中にみんなを包摂していくというために最大限の努力をしていただきたいと思うのですが、そういうおそれの点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/184
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185・加戸守行
○加戸政府委員 確かに先生御指摘のような事態は、起こり得ないということは保証できないわけでございます。しかし、基本的には、ルールを守る、お互いの合意したルールを守るという信頼の上にそれぞれ成り立つものだという感じがするわけでございます。
一面におきまして、今のレンタルを、仮に、限られた種類の数、短い期間での禁止ということが、これは多分レコード協会側の提案は出るだろうと思います。その場合の話し合いの前提になるわけでございますが、そういったケースにつきまして、先ほど申し上げたように、一つは試行錯誤のステップもあり得るのかな、あるいは使えるようになるまでユーザーの方が待つという事態もあり得るだろうし、やってみたけれども投資が回収できないから、それじゃもう初めからレンタルでいいやということもあり得るでしょうし、私ども一番恐れておりますのは、今レコード協会が必死になって、いろいろな突き上げの中で高宮会長を中心として、レンタル側へレンタル側へという形の移行を物すごく努力されています。御承知のように、この暫定措置法がスタートした時点では、一年間オール禁止からスタートした議論でございますから、ここまで持ってくるにはレコード協会自体としても、幹部にも並み並みならぬ努力があったと思いますし、高宮会長も自分の首を覚悟の上で今お取り組みだと私は理解しております。しかし、レコード製作者全員を抑え得るかというとそこの問題はあり得まずし、義務じゃございませんから、うちはそんなことだったら嫌だ、自分がこれだけ投資をしてつくったレコードなら未来永劫にレンタル禁止だ、そういうような主張をされる者が出てくる危険性なしともしない。
そういったような諸般の情勢を考えたときに、私は繰り返して申し上げますが、これが最終的な、ファイナルな理想的な姿を見つけるには時間もかかるだろうし、そのステップとしていろいろな道もあるだろうし、それは両当事者の間でよく話し合いをしていただいて、十分煮詰めていただきたいなと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/185
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186・江田五月
○江田委員 確かに、これからいろいろな試行錯誤を繰り返していきながら、いい秩序をつくるためにいろいろな努力をしていかなければならぬと思うのです。
そういう努力の中で、例えば先ほどの強制許諾ですが、文化庁が指定する団体相互の間では、この六十八条ですかあるいは六十九条、そういうようなものを工夫として取り込んでいくというようなこともあり得るんじゃないだろうか。文化庁が指定する団体の間には、許諾について話し合いがまとまらないときには、許諾について裁定をし、さらに進んで使用料について裁定をするというふうにしておけば、今度は逆に文化庁、ひょっとしたら通産省なのかもしれませんけれども、そういう団体に対する一つのコントロールの力にもなっていくわけです。そういうものは、これから先の動きの中でですが、頭の中に置いておかれる考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/186
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187・加戸守行
○加戸政府委員 先生御承知のように、作詞、作曲家関係の著作権につきましては、音楽著作権は仲介業務法によりまして仲介業務団体が権利を行使する建前になっておるわけでございます。同じようなシステムを実演家、レコード製作者の権利についても措置することは立法論としては可能でございますけれども、御承知のように、行政改革で許認可はなるべく減らしていくように、行政の関与を減らすというのが今の方向でございまして、本来的には当事者間の話し合いによって円満な解決を図ることが理想でございまして、行政が余り関与すべきではない分野だという感じはいたします。
ただ、従来、ありがたいことに、事著作権の問題に関しましては文化庁を信頼いただきまして、いろいろな御相談もちょうだいいたします。そして、文化庁が申し上げた考え方をなるべく尊重した方向でやっていただいているという従来の実績もあるわけでございまして、私どもは、法律による規制という形ではなくて、なるべくならば両当事者間の話し合いで文化庁のヒントなりサゼスチョンでうまくいくことを期待しておるわけでもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/187
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188・江田五月
○江田委員 政令ですが、これは政令ですから、「法何条の政令で定める期間は何月とする」というような規定の仕方ですね、恐らく。しかし、この期間というのは、先ほどもお答えの中にありましたとおり、文化庁としての切り札、カードですね。ですから、このカードをうまく使うためには、手を縛ってしまうわけに恐らくいかない。一遍ある期間を政令で定めて、事態の推移を見ながらまたこれを変えていくとか、あるいは政令で画一的に期間を定めるのでなくて、これはちょっとどうだかわかりませんけれども、ケース、ケースでこの場合のケースには幾ら、こちらでは幾ら、こういろんな政令の期間を決めるとか、政令については例えば三月と六月と九月と十二月、イ、ロ、ハ、ニとする。あとはレコード会社ごとに、あるいは団体ごとにイのケース、ロのケース、どれであるかは省令で指定するとか、そんなようなこととか、何か期間というカードを本当にフルにうまく使えるような方法はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/188
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189・加戸守行
○加戸政府委員 私どもの御提案申し上げた気持ちといたしますれば、暫定措置法に基づきます政令の期間が一年でございますので、その接続性という観点から申し上げますれば、同様に著作権法一部改正案に基づきます政令も十二カ月と定めさせていただいて、円滑な利用関係の継続を図りたいというのが今の考え方でございます。
ただ、先ほど申し上げましたように、一月以上十二カ月以内というのは、権利乱用があれば抑止力として一カ月というようなこともあり得るという意味の考え方でございまして、なぜ抑止力かと申し上げますと、実は仮に政令で定める期間を一カ月といたしますれば、ライセンスを得られないから一カ月は待つけれども、一カ月たったら全部のレコードは無断で使用できる、言うなれば、言葉は悪うございますけれども悪徳業者、金を払う意思のない人がそこから使って、報酬請求権というのは単なる債権だから、著作権じゃないから幾らやってもそれは抑えられない。ただ金よこせ、金よこせだけであるというような、そういう逆にみずからの首を絞める結果を招来することになるわけでございますから、そういうようなことは権利者側としてもなさらないであろう、そういう期待のもとに一月以上十二カ月以内とさせていただいているわけでございます。
なお、この場合の定め方は、ある種類のものについてはとか、これは一カ月、これは三カ月、これは六カ月というような定め方ではなくて、画一的に十二カ月というような感じで一律に定めさせていただくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/189
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190・江田五月
○江田委員 画一的にであろうと思いますけれども、しかし画一的ですと、そこらの微調整がなかなか難しいですよね。
例えば、同じレコード製作者の中に、比較的文化庁の御指導よろしきを得てきちんとした秩序の中に入ってくる皆さんもおられる。だけれども、どうもなかなか難しいなという人もいる。そういうときに抑止力は、大部分の秩序をちゃんとつくっていく皆さんが存在するために、一部の不心得者のところに働かないというようなことになる。もっとも、その場合にも短くしてしまえば、あとの皆さんはどっちみち使用料が報酬請求権にかわるだけで、金額の問題ですからいいと言えばいいわけですが、いずれにしても、そういう政令というものを文化庁のカードとして有効に使っていただきたい。
それから、裁定で使用料、報酬請求権の額を定めていくわけですけれども、裁定の際の基準、どういう基準でこの金額についての裁定をされるか、これは何かもうお考えはありますか。あるいは、これからこういうような手続で基準を決めていこうとしているとか、そういうようなお考えでも結構ですが、ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/190
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191・加戸守行
○加戸政府委員 裁定と申しますのは、報酬あるいは使用料、それらに基づきまして額の相談をしたときに、権利者サイドは高値を言い、使用者サイドは安値を言って折り合いがつかないといったときに、文化庁長官に申請があるわけでございまして、機械的にはその上限と下限の間をとるという形になりますので、ある意味では双方の主張の食い違い、両者のいずれかのところで接点を見出すというのが裁定でございます。
その場合の裁定の基準というのは、使用料は先ほど申し上げましたように、いろいろの分野でいろいろな考え方があるわけでございますから、この分野で妥当な金額というのは実は決められない。そういう意味でいろいろな各般の——もちろん、裁定いたします場合には著作権審議会に諮問いたしますので、著作権審議会の委員のいろいろな御判断を仰ぎながら、その答申を受けて文化庁長官が裁定するわけでございますので、ある意味では人間の英知によって、これこそ、えい、やっというようなニュアンスはあり得るわけでございます。
ただ、現実の問題としまして、既に九十五条あるいは九十七条に基づきまして、現在、商業用レコードの放送に伴います二次使用料等についても裁定は行いますが、これも裁定があるという制度のおかげで、裁定前の段階で両当事者の話し合いがつかないときに文化庁の言い値でおよそ折り合っていただく。そういう意味では、裁定は多分伝家の宝刀で、裁定があるのだよということで文化庁が事実上物申すことで、中間点を通常はとっていただいているというのが実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/191
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192・江田五月
○江田委員 先ほどもいろいろ話が出ておりましたけれども、権利者間の権利の強弱の問題です。著作権者が仮に一とするならば、著作隣接権、実演家の場合とレコード製作者の場合、それはどういうことになりますか。どうも大もとは著作権者なんだから、著作権者より強いはずがなかろうという気もしてみたり、しかし当事者の主張はどうもそうでもないように伺ったりするのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/192
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193・加戸守行
○加戸政府委員 権利の強弱と使用料の価格との相関関係は必ずしもないと私どもが思いますのは、何となれば、通常の使用料の価格というのは、その文化にどの程度の創造性があり、値打ちがあり、利用度があるのかということで、個々の取引でございますと、それぞれ個別に許諾をとれば、あるいは作家は、私はこれでいいと言うけれども、これはビッグタレントだから私はその十倍ぐらいの金が要るということで、個々の契約でいく限りにおいては物すごい違いがそれぞれ、力によっても、作品のでき等によってもあり得ると思います。ただ、今のシステム自体が、著作権については仲介業務法に基づいて文化庁長官の認可した使用料規程でいきますから、同じ一律の料金が著作権なら著作権で決まってしまっております。
では、著作権と隣接権の相関関係はとなりますと、実は今までにもいろいろな分野があり得るのですが、その間におきます著作権者側と著作隣接権者側の金額の比率というのは、それぞれみんなばらつきがございまして、その問題、あるいはその業種によって、利用されるときの著作権者と著作隣接権者におきますウエートの問題、あるいは別の分野ではまた別の力が、インパクトが働くというような諸般の状況の中で一律には言えない。そういう点ではおもしろいものですが、著作物の使用料というのは何となく決まっていって、定着するとそんなものかなというのが過去の歴史で積み重ねられてきておると理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/193
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194・江田五月
○江田委員 どうも禅問答のような話で、何かよくわかったようなわからぬような、しかし今の段階ではしょうがないのかもしれません。
ただ、先ほどもお答えの中に出てまいりましたが、放送の場合と有線放送の場合に一定の実例があるわけですね。これは恐らく一つの基準といいますか参考といいますか、こういうものになるのでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/194
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195・加戸守行
○加戸政府委員 それも一つの考え方になり得るでございましょうし、あるいは外国の例におきましても、著作権者と著作隣接権者がどの程度のウエートの配分になっているかという問題もございましょう。ただ、今回の問題につきましては、私ども、問題の発端が、つまり音源の製作者の被害が一番大きいということからスタートした点から、レコード協会側はかなりの額を主張されるだろうなという感じはいたしておりますけれども、それはやはりケース・バイ・ケースでございまして、今回の貸しレコードに伴ってだれが経済的利益を相当失っているのか、あるいは経済的利益を受けるべきなのか、そういった点もファクターとなり得るでございましょうし、あるいは団体の力の問題もございましょう。あるいは交渉上手な場合もございましょうし、いろいろな要素が絡み合って、言うなれば一律にはいかない問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/195
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196・江田五月
○江田委員 もう時間が参りましたが、いろいろな問題があると思うのです。大臣は、文化庁というのは商いには関係ないんだ、文化の薫り高いところを相手にしておるんだ、こうおっしゃった。著作権を保護するということでは、確かにレコードレンタルはどういうふうに規制をするかという、そういう対象になってくるかと思います。
しかし、文化といいますと、冒頭にも言いましたとおり商いだけじゃないのですね。文化というのはいろいろな文化があるわけで、正直言って、僕らも若者文化がわかっているわけじゃないです。それはディスコなんかに行って体を動かしたらくたびれるだけで、よくこんなうるさいところにというような感じもするけれども、しかし、やはり今の若者文化を理解しようと思うと、ディスコの耳の鼓膜が破れそうな中に行って、体も動きもしないのに一生懸命ゴーゴーなんかやったりするのですがね。そういう違う文化が若者の中にあるかもしらぬぞという一種の——「テフテフ」を笑って怒られて僕も反省したのですが、若者のある種の文化というのが何かあるんじゃないかというような気持ちで、商いの世界というふうに突き放さずに、こういう新しい文化がもし育っているんだとすればこれを大切に大きく育てあげるという、そういう目を持っていただきたい、そういう気持ちで接していただきたいと最後に要望して、お答えをいただいて質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/196
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197・森喜朗
○森国務大臣 商いに関係ないということを申し上げたわけですが、それは、この暫定法を最初にお取りまとめをさせていただいた当時の気持ちから言いまして、レンタルレコードをけしからぬのだ、業界の秩序を乱しているんだ、だから追放すべきなんだ、あるいはレコード製作者やレコード業者の皆さんの今日まで得た収入というものを守ってあげなければならぬのだ、こういう考え方でこの法律をまとめたのでは、これは全く議論にはならないわけです。
ですから私は、今度の法律は、たびたび先ほどから申し上げてまいりましたし、前に皆さんで御議論をいただいておつくりをいただいた暫定法もあわせて、これに関連する皆さんの秩序づくりをしたということと、そして、いろいろな考え方があるかもしれませんが、先ほど江田さんがおっしゃったように、科学技術の進歩と文化の進展によって文化に対する価値観も変わってくるわけですから、レコード製作者側もレコード業界も、すべて時代に対応していく考え方を今度のこの一つの縁をもって前向きに考えていっていただきたいなと、こう思うわけです。
もう一つは、レンタルレコードの場合の、特に需要者といいますか、必要とする人たちは極めて若い層であるということから考えても、例えばソフトのプログラムの問題が出ておりますように、これからの日本の産業の進展に伴って著作権という問題がいかに大切なものかということを、若い人たちにも産業界の皆さんにも、このことを通じて十分理解してもらえる一助にもなったのではないか。そういう意味で、今度の問題は、国民の中に大きく著作権という問題を考えてくださる、そしてこういう業界を通じながら、音楽文化を創造する人たちの偉大さというものも知ってもらいたいし、そして、こうしたいろいろな形で音楽を受ける立場の皆さんが将来ともに音楽を大切にしていく、文化を大切にしていく、芸術に親しむ、そういう人たちの層がどんどんふえていって、その人たちがまた大きくなって、引き続き日本の文化や芸術というものを大事にする、そういうことになってくだされば大変ありがたい。
こういう意味で文化庁は、御議論いただきました暫定法を一つの引き金として今度の法改正をお願いいたしたわけでございまして、これからまだまだ我々が予想もしないようなことがどんどん起きてくると思いますので、商いということで全く寄せつけないというのではなくて、先ほども申し上げたように、事務当局も十分そのことを踏まえつつ、今後ともいろいろな新しい事態に備えて縦横に、また柔軟に、濶達に、著作権を大事にして、日本の文化や音楽、芸術を大事に守っていく文化庁でありたい、こういうふうに私は思っている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/197
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198・江田五月
○江田委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/198
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199・愛野興一郎
○愛野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/199
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200・愛野興一郎
○愛野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/200
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201・愛野興一郎
○愛野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/201
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202・愛野興一郎
○愛野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、船田元君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。馬場昇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/202
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203・馬場昇
○馬場委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
一 著作者等の貸与権の行使に当っては、公正な使用料によって許諾し関係者の間の円満な利用秩序の形成を図るよう指導すること。
なお、実演家等の貸与権の期間の政令を定めるに当っては、関係者の意見を十分聴取し、適正な期間とすること。
二 著作隣接権保護の徹底を図るため、「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」への加入を早急に検討すること。
三 コンピュータープログラムをはじめとするコンピューターソフトウエアの保護については、ソフトウェアの特性に見合い、条約を前提とした国際的整合性に留意し、また関係省庁の意見の調整を行い、適切な法的整備を行うこと。
四 録音、録画機器の急激な発達普及の実態と今後の動向にかんがみ、これらの機器に対して、諸外国の制度も参考にし、著作物の私的使用等のための複製について賦課金制度の導入など、抜本的解決を図るための対応をすすめること。
五 ニューメディア、データベース等新たな著作物利用手段の開発普及から生ずる課題並びに文献複写に関する問題の処理について、時宜を失することなく、制度改正を含め必要な措置を講ずること。
右決議する。
以上でございます。
その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。
何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/203
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204・愛野興一郎
○愛野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
お諮りいたします。
本動議のごとく本案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/204
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205・愛野興一郎
○愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。森文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/205
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206・森喜朗
○森国務大臣 ただいまの御決議につきましては、御趣旨を体しまして、今後努力をいたしたいと考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/206
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207・愛野興一郎
○愛野委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/207
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208・愛野興一郎
○愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/208
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209・愛野興一郎
○愛野委員長 次回は、来る五月九日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105077X01119840427/209
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