1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年二月八日(水曜日)
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議事日程 第四号
昭和五十九年二月八日
午後一時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
永年在職の議員多賀谷真稔君に対し、院議をも
つて功労を表彰することとし、表彰文は議長
に一任するの件(議長発議)
国務大臣の演説に対する質疑
昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金につ
いての所得税及び法人税の臨時特例に関する
法律案(大蔵委員長提出)
午後一時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/0
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001・福永健司
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。
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永年在職議員の表彰の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/1
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002・福永健司
○議長(福永健司君) お諮りいたします。
本院議員として在職二十五年に達せられました多賀谷真稔君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/2
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003・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
表彰文を朗読いたします。
議員多賀谷真稔君は衆議院議員に当選すること
十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽
くし民意の伸張に努められた
よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院
議をもってこれを表彰する
〔拍手〕
この贈呈方は議長において取り計らいます。
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004・福永健司
○議長(福永健司君) この際、多賀谷真稔君から発言を求められております。これを許します。多賀谷真稔君。
〔多賀谷真稔君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/4
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005・多賀谷真稔
○多賀谷真稔君 ただいま院議をもちまして、永年在職議員として御丁重な表彰の決議をいただきました。まことに身に余る光栄であり、感激にたえません。(拍手)
この栄誉は、ひとえに先輩、同僚各位の御指導、特に郷土福岡県の皆さんの多年にわたる温かい御支援のたまものであり、また全国各地からの同志の声援のおかげでありまして、心から御礼申し上げる次第であります。(拍手)
私が本院に初めて議席を得ましたのは、一九五二年、昭和二十七年でありまして、占領が終わった直後の波乱と激動の時期でありました。
その後、日本経済はすぐれた国民の英知と努力により飛躍的な発展を遂げ、国際社会の中で大きな地位を占めるに至りました。しかし、私の住む筑豊炭田は、いわゆるエネルギー革命により壊滅的打撃を受け、現在坑内労働者は一人もおりません。地域経済の復興もいまだに軌道に乗っていない状態であります。
さきに、北炭夕張新炭鉱の災害、閉山があり、また最優良炭鉱と言われた三井有明鉱において多数のとうとい人命が失われました。長い間この問題に取り組んできました私は、その非力と責任を痛感する次第であります。
私は、かつて学生並びに兵隊として暗い時代の昭和前史を歩んでまいりました。断じて再び戦争だけはしてはならない、世界の平和のために唯一の被爆国としての日本の役割は何であろうか、思い続けております。
例えば今世界に数億の人々が飢えに苦しんでいます。その地域の豊富な太陽の光と熱をエネルギーとして活用することに成功すれば、砂漠は一転して沃野に変わるでありましょう。我が国の進んだ科学と技術、経済力をもってすれば決して夢ではないと思うのであります。この実現は世界の平和につながる道であると確信するものであります。(拍手)
また、私たちが胸を痛めている問題に子供の非行と教育の荒廃があります。私たちが高度経済成長を謳歌している間に、子供の世界に大きな被害を与えてしまいました。
私たちはまず政治倫理を確立し、父母や教師を初め全国民の衆知を集めて、その解決に努力し、個性豊かな、伸び伸びした、世界の人々から敬愛をされる国民をつくっていかなければならないと思うのであります。
以上、いささか所感を述べましたが、二十一世紀を担う世代に平和で心豊かな社会を引き継ぐため懸命な努力を誓い、今後とも各位の一層の御指導、御鞭撻をお願い申し上げまして、感謝の言葉といたします。
まことにありがとうございました。(拍手)
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国務大臣の演説に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/5
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006・福永健司
○議長(福永健司君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。石橋政嗣君。
〔石橋政嗣君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/6
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007・石橋政嗣
○石橋政嗣君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、中曽根首相に対し、施政方針演説に関連する若干の質問を行いたいと思います。
本論に入ります前に、まず最初にお尋ねしたいことは、年末の総選挙において、あなたの率いる自由民主党は、国民の厳しい審判によって大幅に議席を失ったわけですが、いわゆる敗因は何だとお考えになっているのかということであります。
過半数割れという選挙の結果が明らかになったとき、総理は「辞任に値する責任を痛感する」と言ったことをよもや忘れてはおられますまい。続いて総裁声明では、「敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えたことなどであった」と述べ、「田中氏の政治的影響を一切排除する。政治倫理の高揚を図る」と、その決意のほどを述べておられます。
このようにあなた自身も認めているわけですが、国民が厳しく批判したのは、野党はリンリ、リンリとスズムシのように鳴くばかりというふうに、政治浄化を求める国民をやゆするような態度をとったことにあったことは言うまでもありません。(拍手)しかし、私は、それだけではないと思うのであります。あなたが進めてきた経済政策や外交、防衛政策に対する不満、なかんずく、あなたが主張し続けてきた戦後政治の総決算といういわばあなたの基本姿勢に対して、多くの国民が不安を持ち、警戒心を強めたことがいま一つの大きな原因ではなかったかと思うのであります。(拍手)
戦後政治の総決算とは一体何なのか。日本列島不沈空母論や日米運命共同体といった断片的な言葉と、私は紛れもない憲法改正論者だという総理の答弁等を重ね合わせるとき、おぼろげながらその輪郭が浮かび上がってくるとはいうものの、いま一つ全体像がはっきりしないだけに不気味さを感ずるのであります。しかし、選挙後のあなたの政治姿勢、人事、来年度予算案、そして憲法改正を織り込んだ自民党の運動方針等を見る限り、あなたが内外政策や戦後政治の総決算という基本的な考えを批判されたと自覚して、これを改めたようには思われないのであります。
そこで、私は、本日の質問を通じて、あなたの言う戦後政治の総決算とはどういうことなのか、それを国民の前に明確に示してもらうということを一つの目標にしたいと考えておるのであります。もちろん、質疑の過程で私たちの主張もできるだけ具体的に示し、両者の考えの相違点を浮き彫りにして、国民の皆さんの判断の材料にしたいと思っておりますので、この点、総理の御協力をまずお願いするものであります。
第一に取り上げたいのは、民主主義の問題であります。
私は、何を総決算するのかを問う前に、日本の現状をどう見ているのかを伺いたいと思います。総理は、日本の民主主義は前進し定着しつつあると見ているのか、それとも、風化し形骸化しつつあると見ているのかということであります。定着しつつあるというのなら、総決算の必要はないはずです。風化しつつあるというのなら、私も同意見ですし、総決算にも賛成であります。
総理、戦後民主主義はまさに風化の過程にあるのではありませんか。一つ、法治主義の根幹としての憲法の形骸化、二つ、金権腐敗による議会制民主主義の形骸化、三つ、教育の荒廃と物質万能、エゴイズムの横行による風化、四つ、あらゆる差別の放任と人権無視による風化、挙げれば切りがありませんが、直ちに改めなければならないものばかりです。中でも緊急を要するものの一つこそ、今次総選挙の主要なテーマでもあった金権腐敗政治の総決算ではないのでありますか。(拍手)その総選挙において、投票率は戦後最低でした。このままでは政党不信、政治家不信は一層募り、議会制民主主義の土台は大きく揺らぐことになると思えてならないのであります。
昨年、我々野党が結束して田中角榮議員辞職勧告決議案を提出し、採決を迫ったのは、田中氏が議員をやめさえすれば政治の浄化が実現するなどと考えたためではございません。総理の犯罪が問われ、一審とはいえ実刑が科せられたにもかかわらず、依然として日本の政治に絶大な影響力を持ち続ける姿を目の前にしながら、選挙民は裁くことができない、党には自浄能力がない、それではと、ウォーターゲート事件のてんまつを頭に思い浮かべながら、日本でも、せめて議会でこれを処理し、いまだ民主主義は死滅せずと示したかったからにほかならないのであります。(拍手)
総理、あなたは田中氏の政治的影響を排除すると言い切りました。しかし、現実には何も行われていないし、事態は何も変わっていないのであります。一体、何をどうするというのであるか、国民の前にこれを明らかにしていただきたいのであります。
あわせてこの際、国会議員及び高級公務員の資産公開法の制定、企業献金の廃止を盛り込んだ政治資金規正法の改正、情報公開法の制定、国民行政監察官制度の創設等を実施する意思があるかどうかについてもお答え願いたいと思います。
もし総理に、これらの問題に誠意を持って取り組む意思が見られないと判断したときは、総選挙で示された国民の批判と要望にこたえるためにも、我々はもう一度辞職勧告決議案の再提出から始めなければならなくなるであろうということを、この際、念のために申し添えておきたいと思います。(拍手)
なお、政治浄化のほかに、国民の政治に対する信頼を取り戻すため我々が緊急に処理しなければならないものに、最高裁において違憲性を指摘された衆議院と参議院の議員定数不均衡の問題がございます。国民は法のもとに平等でなければならないのです。ましてや、最も基本的な権利である選挙権の価値に軽重があってよいはずはございません。総理は、各党各会派の合意に基づいて具体的な成果が上がるよう努力するとおっしゃったのでございますが、是正のための法案を今会期中に提出する意思があるのかどうかをお伺いいたしたいと思います。
次は、総理が戦後政治の総決算の重要な部分として考えている節がございます教育問題であります。
あなたは、首相の諮問機関として教育臨調ともいうべきものを設置するというのでございますが、私は、あなたの教育に対する戦前回帰的発言を思い合わせるとき、深い危倶の念を抱かずにはおれないのであります。
確かに、少年非行や校内暴力が年々記録を更新するなど、今や教育の荒廃は目に余るものがあり、これを克服することが国民的課題であることは言うまでもございません。このような現象を生み出す原因の中には、先進資本主義国共通の問題があると同時に、特に我が国では、学歴社会、これに結びついた受験地獄、偏差値教育の問題があり、その背景には、経済優先、生産第一の考え方あるいは拝金思想、政治腐敗といった社会的風潮等のあることを見逃すことはできないのであります。
したがって、学歴社会の問題や政治の腐敗を放置しておいて真の改革はあり得ないのであります。また、教育改革に当たっては、国民の合意は不可欠の条件であり、政党や政府のかかわりは慎重の上にも慎重でなければならないのであります。いわゆる教育臨調の構想は、余りにも政府権力による教育への介入の意図が露骨に過ぎるというべきでありましょう。(拍手)
我々は、このような戦後の民主教育の総決算に手をかすわけにはまいりません。党首会談をやるというのであれば、あなたの構想を押しつけるのではなく、教育はいかにあるべきかという最初からひとつ話し合いを始めようではありませんか。この点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
次は、人権問題でございます。
政府は、国連中心主義と言いながら、国連が採択した十九の人権に関する条約のうち、六つの条約しか批准しておりません。とりわけ、あらゆる形態の人種差別撤廃条約は、国連加盟国の三分の二に当たる百二十一カ国が批准なり加入をしているにもかかわらず、いまだに批准していないのです。世界の主要国で批准していないのは、日本とアメリカぐらいであります。人権問題でもアメリカに追随するのでございますか。批准をしない理由は何ですか。婦人差別撤廃条約は、昭和六十年をめどに批准の実現に努力するとおっしゃいましたが、この二条約とも、必ず今明年中には批准すると約束していただきたいと思うのであります。いかがでしょう。(拍手)
あわせて、男女雇用平等法についても、制定の意思があるかどうかをお伺いいたしておきたいと思います。
以上、民主主義の問題について、いろいろとお尋ねしたわけですが、要するに私が言いたいことは、今我々がなさねばならないのは、戦後政治の総決算ではなく、戦後民主主義の空洞化を食いとめ、逆に、戦後政治の原点ともいうべき日本国憲法の理念に沿った政治に立ち返るべきだということなのであります。(拍手)
戦後政治の総決算を一貫して口にしてきた総理の本当のねらいは憲法改正にあり、教育改革を叫ぶ真の意図も、それを容易にする人づくりを考えている節もあるように思えてならないのですが、率直な御意見をぜひお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
第二に取り上げたいのは、国民生活の問題でございます。
最初に申し上げておきたいことは、財政も経済も、決してそれ自体が目的ではなく、真の目的は、国民生活の安定と向上でなければならないということです。
なぜ最初にこのことを強調するかと申しますと、この視点を見失ってしまいますと、我が国の財政経済が極度の困難に逢着しているときだけに、維持し発展させるべきものは何か、総決算すべきものは何かの区別がつかなくなると思うからであります。
総理、あなたは、我が国が敗戦直後の破産状態から見事に立ち直り、GNPが世界で三番目の国と言われるようになり、国民も相当程度の生活を営むことができるようになった理由は何だとお考えですか。我が国の教育水準の高さ、勤勉な国民性、節目節目に恵まれた国際環境等々いろいろなことが言われてきましたが、やはり第一に挙げなければならないのは、最も非生産的な軍事費をゼロもしくは最小隈の支出で済ますことができたことだとは思いませんか。(拍手)
アメリカの民間軍縮団体が二十年にわたって続けてきた研究の末、軍事費と生産性は全く反比例するという明確な結論を導き出してきたことをここに改めて披露するまでもないと思います。膨大な軍事費支出の結果、アメリカを先頭に世界の国々が経済的に行き詰まり、いかにあえいでいるかは現実の示すとおりでございます。
総理、にもかかわらずと私は言いたいのです。このように、苦しいとはいっても欧米諸国に比べればまだましたとあなたが言う日本が、なぜ我が国より状況の悪い国々をまねて軍事力の増強、軍事費突出の道をひたすらに走り続けるのでございますか。これでは、それこそ国民生活の安定向上という目的が全く見失われていると言わざるを得ないではありませんか。(拍手)せめて軍事費を現状で凍結するということは、日本の政治家の最低の義務だと思いますが、いかがでございますか。(拍手)
総理、今、総決算されるべきものは、国内的には、あなたもよく口にするゆがめられたおしんの思想、すなわち国民に辛抱、総我慢を押しつけようとする考えであり、政策であります。そして対外的には、輸出第一主義から成るこれまでの経済路線こそ、総決算の対象としなければならないと思うのであります。(拍手)
我が国経済は、今、長期不況からの脱出、対外貿易摩擦の解消、それに巨額の赤字を抱えた財政の立て直しという極めて困難な課題に直面しております。このトリレンマの解消なしには、国民生活の安定も向上もあり得ないことは言うまでもございません。
ところが、幾ら政府予算を検討してみても、総理以下の演説に耳を傾けてみても、我々は行く手に明るい光を見る思いなどはさらに起きてこないのであります。口では、来年度の日本経済は、個人消費や民間設備投資が牽引力となって、内需中心の持続的成長を図ることになると言うのでございますが、実態は依然として外需主導型であり、財政再建優先ではありませんか。
これでは、結論を先に申すならば、まず第一に、内需主導の景気回復は全く期待できません。第二に、対外経済摩擦は一層激化するばかりです。第三に、目指す財政再建も不可能です。そして第四に、国民はますます我慢を強いられるばかりだということになると思うのであります。
国民待望の景気浮揚についてでございますが、予算規模は前年度比O・五%増し、国債費と地方交付税を除いた一般歳出では〇・一%減、景気刺激剤と言われ続けてきた公共事業費も、四年連続の据え置きからついに二%の減になってしまいました。これでどうして内需主導の景気上昇になるのでございますか。
党首会談の際にも、私は、内需拡大の成長を図り、財政再建にも展望の持てる予算とすべきだ、そのためには、超緊縮予算でなく、五十八年度当初予算比で五%増、一般歳出で三%増の予算を編成すべきだと要望したのでございますが、ここでもう一度、再考をお願いするものであります。お考えのほどをお聞かせください。
次は、個人消費を内需拡大の牽引車にするというのでございますが、賃金は抑制、相次ぐ公共料金は引き上げ、大衆課税は強化、福祉は切り捨てといったようなことをやっておいて、勤労国民の実質所得が切り下げられようとしているときに、どうして個人消費が牽引車の役割を果たすことができるのでございましょうか。矛盾も甚だしいと言わなければなりません。(拍手)
さらに、財政再建とはいっても、さきにも指摘したように、防衛費が特別の扱いを受けるのではまさにしり抜けであり、実質的には依然として国債発行額が増加の一途をたどっている状況を見るとき、とても再建が可能であるとは思えないのであります。結局は大型消費税導入に行き着くのだと思えるのですが、六十年度以降といえども、名称のいかんを問わず、大型間接税を絶対に導入することはないとここで断言できますかどうか、お伺いいたしたいと思います。(拍手)
いま一つ、酒税、物品税等の引き上げ、また消費者米価、運賃、授業料等公共料金の相次ぐ引き上げは、内需の拡大につながらないというだけでなく、明らかに選挙中の、増税はしないという再三の総理の公約に反する重大な国民への裏切りだと思います。(拍手)施政方針演説からも「増税なき財政再建」という言葉がなくなっておりますが、公約を破棄するというのであれば、国民に対するおわびの言葉とともに、ここで改めて表明していただきたいと思います。(拍手)
しかも政府案を見ますと、増税までが高額所得者に有利な不公平の拡大増税であり、勤労国民にとっては減税の効果がゼロになるというばかりでなく、一連の値上げは、健康保険法の改悪等と相まって一段と家計を苦しくすることになるのは目に見えているのであります。
要するに、結論を言えば、国民生活の安定と向上のために必要なのは、まさに自民党政治の総決算だということです。(拍手)今回の総選挙において、国民が与野党の伯仲を選択した意味もそこにあったのだと思います。それなのに、今回の予算案を見ても、自民党安定多数下の過去数年間の予算と本質において何の変わりもない不沈空母化予算であり、国民生活沈没予算というのでは、何のために選挙をしたのか、全く国民に対して申し開きができないと言わなければなりません。(拍手)この点、新自由クラブの責任もまた重大と言うべきであります。今からでも遅くはございません。軍事力拡大と国民生活圧迫の予算を、生活安定、平和保障の経済財政改革の予算に改めようではありませんか。
景気浮揚のためにも、大幅な所得税減税の実施と賃金上昇で個人消費の拡大を図るべきです。当面、所得税一兆四千億円、住民税五千億円の減税を行うこと、財源は、大企業の法人税率の引き上げ、利子配当所得の源泉徴収税率の引き上げ、有価証券取引税の引き上げ等不公平税制の是正を基本とした改正で確保することを提案いたします。(拍手)
さらに詳細については同僚議員の質問に譲ることにいたしますが、行財政改革を一枚看板とする中曽根首相に確約していただきたいことがございます。それは、むだの塊である原子力船「むつ」は廃船にする、各種補助金の整理は徹底的にやるということをここで約束していただきたいということであります。(拍手)
第三は、平和の問題、人類の生存の問題であります。
御承知のとおり、日本は明治以来、資本主義の道を歩み始めてから十年ごとに戦争をやってまいりました。そして最後が十五年にわたる侵略戦争であり、敗戦だったわけです。その結果、多くの国民は、もう戦争は懲り懲りだ、二度と戦争をしないようにするためには軍隊を持たないようにする以外にないと心に決め、世界に先駆けて非武装憲法を制定したのであります。おかげで、初めて三十八年という長い間、戦争当事国にならずに済み、世界でGNPが三番目という国になったわけです。これほどすばらしい実験、実績がありましょうか。我々は胸を張り、世界に向かって、日本に学べ、日本に続けと言うべきであります。(拍手)
世界の危機的な状況を見てください。米ソを中心としてとめどもなく続いている核軍拡競争の結果、核戦争三分前という危機的状況が出現し、世界全体の年間軍事費はおよそ八千億ドルにも達しているのであります。そうかと思えば、一方では発展途上国の累積債務も八千億ドルを超えており、五億ないし六億の人々が飢餓線上をさまよっていると言われております。アメリカ政府の発表した「西暦二〇〇〇年の地球」によりますと、これからも先進国と発展途上国との貧富の差は、現在の十一対一から十四対一と拡大し、栄養不良人口も今日の五億から十三億へ、地球の砂漠化も二割方拡大すると言っております。
このような世界の現状の中で、総決算をされなければならないのは、国際政治の面では、米ソの対決を軸とした冷戦体制そのものであります。(拍手)この体制のもとで、どれだけ世界の平和が脅かされ、経済的にも多くの開発途上国の犠牲が積み重ねられてきたかわかりません。今後ともこのような緊張激化が続くとすれば、人類の破滅につながりかねないのであります。いたずらにアメリカに追随して、軍事力の増強に専念し、緊張の激化に手をかすがごとき態度は、即刻改めるべきだと思います。(拍手)
そして、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存することを確認し、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地球上から永遠に除去しようと宣言した日本国憲法の理念を追求し、我々は、次のような原則に立って活動すべきだと思うのでございます。
第一は、全方位外交の展開でございます。特に留意すべきことは、西側同盟の一員となるのではなく、あくまでもアジアの一員であることを自覚し、この立場をこそ外交姿勢の基本に据えるべきだということです。
第二は、世界でただ一つと言ってよい戦争放棄の憲法を持ち、これまた世界最初の原爆被爆国としての立場から、核兵器の禁止、軍縮の実現のためにイニシアチブを発揮するということです。
第三は、今や国際経済に対して大きな影響力を持つに至った日本の経済力を活用して第三世界の諸国に対し積極的な援助を行い、経済不安を除去し、各国の経済発展、国民生活の向上に寄与するということであります。
私は、以上の原則を踏まえつつ具体的な質問をしたいと思っていますが、最初に、この三原則についての総理の御意見をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
さて、質問の第一は、アメリカにおいても大統領選挙を前にして対ソ姿勢に微妙な変化が見られるのですが、静観、そして追随といった従来の方式ではなく、この際、積極的に対ソ外交を展開する意思はないかということであります。政府演説でも、軍縮の重要性、特に当面の問題として米ソの核兵器削減交渉の再開の必要性等について触れておられたわけでございますが、一度ぐらい積極的に動いてみたらどうかと私は申し上げたいのです。(拍手)
一つの例として、アジアにも中距離核戦力削減交渉の場を設けてはどうかという我が党の提案に対し、ソ連側も重大な関心を示しました。いたずらにSS20の脅威を叫ぶだけでなく、また、迫りくるトマホークのアジア配備を傍観するだけでなく、この案を具体化するために政府として外交活動を開始する意思はないか、お尋ねいたしたいと思います。もしその意思があるとするならば、我が党としてもどのような協力も辞さないことをここで申し上げておきたいと思います。(拍手)
第二の質問は、朝鮮民主主義人民共和国が提案している朝鮮、韓国それにアメリカを加えた三者会談構想をどのように評価しているかということであります。これまた朝鮮半島をめぐる新たな動きでございます。日本としても重大な関心を示すというだけでなく、何らかの対応があってよいのではないのでしょうか。外務大臣の演説で示された経済、文化等の分野における交流の維持といったような消極的な態度には承服いたしかねます。さしあたり、高い水準の漁業交渉代表団の受け入れという形であれ、政治レベルの交流に一歩踏み出すべきだと思いますが、いかがでございましょう。(拍手)
第三の質問は、政府は今までに、平和憲法を念頭に置き軍事力の本質を考慮した結果と称して、みずから幾つかの歯どめを課してまいりました。しかし、現在そのすべてがことごとく形骸化しつつあるのではないかということであります。武器輸出禁止の三原則は、アメリカ向けの解除によってほごと化したことは既に周知の事実でございます。
その他の一つが、専守防衛の原則であります。シーレーン防衛のためなら自衛隊が一千海里先まで出動しても憲法違反ではないとか、最近しきりに口にされる西側陣営の一員としての役割を果たすというのは、まさにこの原則の逸脱を示す以外の何物でもありません。(拍手)
二つ目は、GNP一%の枠でございます。来年度予算案においては〇・九九一%といいますが、後年度負担が二兆円を超えていることを思えば、既に一%を突破したも同然であります。ベースアップ実施のためにやむを得ず突破したというようなこそくな手段を弄しようとするがごときは、安全保障政策に自信を持つ者の態度とは断じて思われません。それとも、絶対に一%の枠は守るとここで断言できるかどうか、お伺いいたします。
三つ目は、非核三原則であります。
非核三原則の堅持を言うならば、なぜ国連において核不使用決議案や核凍結決議案に棄権し、核先制不使用決議案に反対するのかということであります。その理由をまずお伺いしたいと思いますと同時に、今後は賛成する意思があるのかどうかということをぜひお聞かせ願っておきたいと思います。
さらに、アメリカ統合参謀本部議長は、核装備の巡航ミサイル、トマホークを今年じゅうに攻撃型潜水艦とニュージャージー等の選ばれた水上艦艇に配備する方針であると明らかにいたしました。ついては、以後この核装備のニュージャージー等の日本寄港は絶対にあり得ない、政府として認めることはないと約束できるかどうか、ここで明快な回答をお願いいたしたいと思います。(拍手)
なお、この件と関連いたしましてお伺いしておきたいのは、イギリスの空母インビンシブルの寄港問題が起きたときに、オーストラリア政府が核兵器が積まれていることを理由にドック入りを拒否するという態度を表明したにもかかわらず、日本が寄港を受け入れようとしたのはなぜかということです。日本政府は、インビンシブルには核兵器は装備されていないと判断したのですか。イギリスとの間には事前協議などというものはないのに、どのような方法で確認したのか、そこのところを知りたいのであります。
もし、イギリス政府に対して問い合わせたら、積んでいないということだったのでこれを信頼するというのであれば、同盟国たるアメリカとの間にはわざわざ事前協議を設けたのはなぜですか。同盟関係のない国々より同盟国に対して厳しい態度をとるということは、普通の常識では理解しにくいことでございますが、明確にお答えを願いたいと思います。(拍手)お答えによっては、事前協議などはもともとあってもなくても変わりはないのだというふうに受け取らざるを得ないことをはっきり申し上げておきたいと思います。
五番目の質問は、国連開発基金といったようなものを創設し、各国が軍事費の削減によって節約した資金をプールし、地球上から貧困、飢餓、病気、文盲等をなくすために使用するといった方策を提案し、実行に移す気はないかということであります。
同時に、政府は、一九八一年から八五年までのODA、すなわち発展途上国向けの政府開発援助の総額を七六年から八〇年までの二倍にするという国際的な公約をしているわけでございますが、これを必ず実行すると約束することができるかどうかということであります。財政が苦しいと言うのなら、それこそ防衛費を削ってでも約束を守ってこそ平和を志向する国際国家というあなたの言葉が空疎でなくなると思うのでございますが、いかがでございますか、お伺いいたします。(拍手)
最後に、総理が述べておられる野党との対話と相互理解ということについてお聞きしておきたいと思います。
私としても、話し合いは賛成であります。しかし、言いっ放し、聞きっ放しては、与野党伯仲を再現させた国民の期待をも裏切ることになるのではないかということです。大切なのは、ポーズではなく実績だと思います。対話するからには、まず政権党、多数党に一致点を見出そうとする努力と野党に譲歩する謙虚さが最小限の条件として必要であります。(拍手)
あなたの言う野党との話し合いとは、単なるポーズではなくそれだけの決意あってのことか、それをぜひお尋ねして質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/7
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008・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 石橋議員の御質問にお答えをいたします。
まず、選挙の結果や政治倫理に関するお話が最初にございましたが、これは御親切な御助言として承っておく次第であります。(発言する者あり)
次に、いわゆる戦後政治の総決算の問題について御質問がございました。
私は、戦後政治の総決算という意味は——政治倫理に関する問題につきましては、後でまたお答えをすることになっております。私が言う戦後政治の総決算という意味は、戦後の歴史を否定して申し上げておるのではございません。むしろ戦後三十八年間、平和あるいは民主主義あるいは平等、経済的繁栄、これらの各面で日本は世界史に残る輝かしい実績をつくり上げたと思っております。(拍手)この間におきまして、私は、最近の日本の影響力や役割の増大あるいは日本経済の成熟あるいは価値観の多様化、人口の老齢化、行財政の肥大等、ある意味におきましては、戦後の発展そのものが内外の環境条件の大きな変化をもたらしていると考えております。
そのような観点から、私はまず第一に、日本がいわゆるエコノミックアニマル、経済国家として非常に世界からある意味において批判される目で見られてまいりました。このいわゆるエコノミックアニマル的な経済国家という立場、世界から孤立化しようとしているこの日本の状況を速やかに直す必要がある、こういう考えに立ちまして、世界に対するある程度の貢献と役割を負担しながら、政治的、文化的発言権もさらに強化していこう、こういう考えに立って外交関係の新しい路線に踏み出してきたことがまず第一であります。(拍手)
第二番目におきまして、内政におきまして、戦後、特に高度経済成長以来非常な行政の肥大化が行われ、行政それ自体が社会や産業の発展を阻害するという危険性が出てきておりました。ここにおきまして臨時行政調査会をお願いをして、行政改革の断行に入ったのであります。これが第二であります。(拍手)
次に、財政改革についても手がけてまいったわけであります。特にあの石油危機の以後におきましては、ある意味において経済を維持し、雇用を確保していくために、公債を発行して景気の維持に努めてまいりました。これは大きな成功をもたらしたと思っております。
しかしながら、膨大な公債が累積いたしまして、財政的には非常に憂うべき事態に来ているわけであります。このような状態では、二十一世紀に向かってあらゆる変化に対応できる機動力を財政自体が失ってきつつあります。これを改革することが、第二の内政上の大きな課題でありまして、かかっているわけであります。
第三は、教育の改革でございまして、教育の改革につきましては、既に日本の各方面から鋭い批判や御論議が沸き起こっております。今や偏差値の問題であるとかあるいは共通一次テストの問題であるとか青少年の暴力や非行化の問題等については、放置を許さないという状態にもなっております。そういう意味におきまして、教育の改革をこの際国民の皆様方の御議論を踏まえ、各党各会派の御協力をいただきまして、これに取りかかろうというのが内政上の第三の大きな改革でございます。
いずれもこれらは、二十一世紀を見詰めまして、あと十六年に迫りました二十一世紀に向かいまして、日本がこれに十分たえ得る新しい平和と繁栄を見出す、その道を見つけるべく大きな改革に入っておるのが戦後政治の総決算という意味なのでございまして、ある意味におきましては、戦後三十八年の日本の行政のあらゆる成果に対しまして、いいものは伸ばす、悪いものは改める、ここでオーバーホールをやろう、そして二十一世紀に向けてたくましく走り続けるだけの強健な国家にしておこうというのが私たちの念願しているところなのでございます。(拍手)
憲法の問題につきましては、既に申し上げているとおり、憲法改正を政治日程にのせる考えはないと申し上げておるのでございまして、これは一貫した考えでございます。
また、教育につきましても、これはいわゆる権力をもって教育に介入しようという考えは毛頭ございません。これから国会におきまして明らかにしてまいりたいと思いますが、まず問題点がどこにあるかということをみんなで出し合って、そうしてでき得べくんば国民の御参加、御意見等もよく拝聴しつつ、この問題点をいかに処理するかという点で、みんなで相談して考えてみよう、そういう意味におきましては、今、一文部省だけの問題ではなくなっておる、内閣レベルの問題にまでこれはなってきておる、そういう考えに立ちまして、新しい組織を考え、国民的レベルで教育改革に入ろうというのが私たちの考えでございまして、これは現在の欠陥を克服するというと同時に、二十一世紀の次代の子供を見詰めた改革をやろうというのが私たちの考えにあるわけであります。(拍手)
次に、戦後政治の風化の問題を御指摘になりました。この戦後政治の風化の問題に関連して政治倫理の問題もお取り上げいただいたのでございます。
私は、選挙の結果につきましては、これを厳粛に受けとめておりまして、そして心をむなしくして、国民の皆様や野党の皆様方の声にも耳を傾けまして、改むべきことは改め、相談すべきものは相談し、改革すべきものは改革していきたい、このように考えておるところでございます。
したがいまして、先般、選挙が終わりまして党内におきまして諸種の会議がございましたが、私は私の心境を内外に申し上げた次第でございまして、あの心境に立ちまして、誠実に政治倫理の問題等も取り上げて、改革の実を上げていきたいと考えておる次第でございます。
戦後政治の風化の問題でございますけれども、確かに現在このように経済的に豊穣な時代が参りまして、また自由も、日本ぐらい十分ある国はないのではないかと言われるくらい世界から言われております。このような豊穣な自由を満喫しているという状態になりますと、この戦後皆様や我々が営々と築いてきた、あの占領下から苦しい中から築いてきた民主主義の恩恵というものは、水や空気と同じように常にあるものであるというなれが充満してきてしまいまして、民主主義というものをもう一回厳粛に考えるという風潮がなくなりつつあるのではないか、この点については、私は石橋さんと憂いをともにしておるものでございます。
しかし、この民主主義を育てていくためには、実は戦前からの我々の先輩の偉大な汗と涙の成果によりまして今日の民主主義の基礎はできておるのでございまして、我々議会人といたしましては、この先輩の志を継ぎ、そして営々としてこの民主主義の成果を子孫に引き継いでいかなければならないその責任を持っていると思うのであります。特に戦後におきましては、自由あるいは人権あるいは平等あるいは寛容あるいは批判あるいは平和あるいは責任、こういうような問題につきまして大きな発展がなされていることは事実でございます。そして市民社会の岩盤が厳然と築かれていることも事実でございます。そのような現実に我々は着目いたしまして、心をむなしゅうして、この民主政治の発展のために与野党協調してまいりたいというのが私の考えでございます。(拍手)
次に、政治倫理の問題につきましてもう少し申し上げてみたいと思うのでございますが、政治倫理の問題は、この議場で先日申し上げましたとおり、第一義的には我々政治家の良心とそれから責任感の問題であると思います。したがいまして、個人の行動あるいは政務の処理等につきまして公明正大なる行動をとらなければならないということが第一義であると思います。
しかし、次いで政党としてあるいは政治団体、組織といたしまして、皆で政治倫理をさらによく確立していく手だてを考えてみるということも重大な問題でございます。我々は、既に新自由クラブとはこの問題につきまして協定を結びまして、その項目につきましては、これを誠実に実行してまいりたいと思っておるところでございます。
今回、政治倫理協議会が両院に設置されまして、各党各会派とこれを御相談できる場をおつくりいただきましたことを大変ありがたく存じておる次第でございまして、我が党は、数日前に既に政治倫理特別調査会を党内につくりまして、私も出席いたしました。そしてこれから党全体として取り組むべき政治倫理改革への具体策を講じまして、そしてこの政治倫理協議会等を通じまして各党各会派の皆様と御協議を申し上げ、具体的成果を得るように営々として誠意を持って努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
次に、情報公開の問題がございました。
この問題につきましては、臨調答申におきましても触れておりまして、これを実行する内閣の決定につきましても、これは慎重に検討していくという課題になっております。私は、情報公開の問題は非常に重要視しているものなのでございます。既に神奈川県とかあるいはそのほかの町村、市等におきまして、情報公開を条例をもって実施し始めているところがございます。それらの推移を注目いたしまして、国として取り上ぐべき問題等を子細に検討いたしまして、この問題につきましては誠実に、これを前向きに対処していく考えでおるつもりでございます。
次に、国民行政監察官制度、いわゆるオンブズマンの制度について御指摘がございました。この点につきましても、五十八年五月二十四日の新行革大綱において示されておりまして、「我が国の実情に適合したオンブズマン等監視・救済制度の在り方について引き続き検討を進めるものとする。」このように規定されております。我々は、このような御指摘をいただきまして、これまた誠実に引き続き検討してまいりたいと思っております。
ただ、オンブズマン制度につきましては、与野党でもいろいろ意見が食い違っております。ある党は国会にそのような制度をつくれとおっしゃっております。またある党は、我が党がそうでございますけれども、国会につくるよりも行政各部の内部に自己規律をする場としてそういうものを設けたらどうか、そういうような意見もございます。これらにつきましては、各党各会派の御意見もよく検討いたしまして、最も適切な案を我々はこれからつくり上げてまいりたいと考えておる次第でございます。
次に、議員の定数不均衡の問題の御指摘がございました。
定数問題は選挙制度の基本に係る重大な問題でございます。そして既に最高裁の判決もございまして、いわば、これは俗的に申し上げれば、議会が執行猶予の形でこれを処理せよというような課題を最高裁から与えられていると私は考えております。したがいまして、これは急ぐと思います。したがいまして、各党各会派とも、これは議会政治、民主政治のグラウンドの整備に関する重大問題でございますから、各党各会派の話し合いを十分に行いまして、成案をできるだけ早く得るように努力してまいりたいと思っております。
次に、資産公開についてでございますが、先般、閣僚の資産公開を行いましたが、石橋さんの御指摘によりますと、国会議員等のあるいは高級公務員まで含めた資産公開を御示唆なすっていると思います。これらの問題につきましては、仕事の性質上、国会議員の身分や進退に関する問題でございますから、国会における審議検討の結果を踏まえて対処してまいりたいと思っております。
政治資金規正法の問題も、これは選挙制度のあり方に関する問題であると同時に、各党のよって立つ財政的基盤にも関係する問題でございます。したがいまして、これも十分各党間で議を詰めまして合意を形成してまいりたいと考えておる次第でございます。
次に、教育問題について種々御批判をいただきました。
近年における社会の急激な変化、それから教育の量的拡大あるいは激しい時代の激動のスピード、こういうような問題から教育自体がついていけない、そういうような事態に今やなっているのではないかと思っております。青少年の問題あるいは父兄の悩みあるいは学校の教師の側における悩み、そういう全般問題を考えてみますと、やはり教育改革に対する国民の期待は非常に今や高まってきていると思います。私は、このような国民全体の御期待におこたえをいたしまして、各党各派及び全国民の皆様方の御支援と御協力のもとに、政府全体の責任においてこれに取り組みたい、そういう考えに立ちまして、内閣総理大臣の諮問に応じて調査審議する機関を新たに設置すべく検討いたしますと申し上げました。これは、決して教育に対して国家権力が介入しようというような考えは持っておらないのであります。
よく教育臨調という言葉を聞きますが、私は、既に前にも申し上げたことでございますが、教育臨調という言葉は適切でない、そう考えております。なぜかといえば、行政改革と教育の改革とは全く性質を異にしておるものであります。行政改革は、政府や政府関係機関等々の簡素合理化に関する問題でありまして、政府が直接自分でずばりずばりやればやれる問題であります。しかし、教育の問題は、特に義務教育の問題は、これは市町村が管理責任者であり、市町村の教育委員会がやるべき問題であり、また、高等学校は府県が直接の仕事をおやりになる場所でありまして、文部大臣は指導助言するという立場にあるわけであります。したがいまして、行政改革と教育改革とはまるきり性格を異にする内容でございますので、その点については我々は極めて慎重なる態度を持しておるのであります。だから、これを行政改革と同一視するような印象を与える言葉はまずいと思いまして、教育臨調という言葉は適当でない、このように申し上げておるのであります。そのように注意をしておるのでございまして、国家権力による教育の介入などは毛頭考えていないということをここで申し上げるものでございます。
次に、人種並びに婦人の差別撤廃条約等について御質問がございました。
我が国といたしましても、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の趣旨については、十分理解もできるし、賛成の立場を基本的には持っておるものであります。ただ、本条約の締結、批准に当たりましては、事前に国内法の整備を行うことが必要であります。そういうような点におきまして、今、国内法の整備に懸命の努力をしておるというところでございます。
婦人差別撤廃条約につきましては、昭和五十五年六月、国際条約署名に先立ちまして、内閣総理大臣を長とする婦人問題企画推進本部におきまして、「国内行動計画後半期における重点課題として、批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めるものとする。」こういう申し合わせをすでにしております。現在、同条約批准に向けて鋭意国内法制の整備に努めておりまして、昭和六十年の世界婦人会議までにこれを批准したいという考えで努力してまいりたいと思っておるところでございます。それらの一環といたしましても、婦人雇用労働法、仮称でございますが、これらにつきましても努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
次に、防衛費の問題でございますが、防衛費を現状で凍結したらどうかというお考えでございます。私は、前に申し上げましたように、日本の防衛は我が国民の生命財産を守り、我が国の伝統的文化を守る、その基本的条件を整備するために必要最小限の防衛力を整備する、足らざるところはアメリカとの安保条約によってこれを確保して、本土防衛というものを中心にして我が国の防衛というものを考えておると申し上げました。したがって、防衛という問題になりますと、相手方や周囲の環境の変化というものに応じて、相対性を持っておる問題でございます。また、毎年給与も上がりますし、物価も上がってまいります。したがって、これらを全然無視して凍結するという考えは適当ではない、このように考えております。(拍手)やはり自衛のために必要な限度におきましては、既に決めた国策の範囲内におきまして着実な整備に努めるということが必要であると考えております。
五十九年度の防衛予算につきましても、これまでと同様に、他の諸国策との調和を図りまして、そして着実な防衛力の整備のために必要最小限の経費を支出したというところでございます。我々といたしましては防衛力整備の大綱というものをつくっております。この大綱の計画の水準に近づけようというのが、歴代内閣及び中曽根内閣の目標としておるところでございまして、それを目標としつつ、他の経費とのバランス及び国家財政の現状等にかんがみまして、適切な調和点を得るように努力してきておるというのがその現状でございます。
次に、政府予算について御質問をいただきました。
今回の予算につきましては、臨調答申を忠実に守るという筋を通しまして、行財政の守備範囲の見直し、経費の徹底的な節減合理化、歳入面での格段の努力、そして最大限の公債減額を図ろう、その中にいわゆる一兆円の減税を断行しよう、そういう諸般の項目を実行したのが今回の予算でございます。
財政改革は、単にその年の収支の均衡を確保するというだけでは足りないのでございまして、やはり次の時代までも考えた適切な対応力の回復を図る。そして民間活力を最大限に発揮させる基礎を築き上げて新しい成長路線を探求していく、そういう考えに立って今回行ったものでございます。もちろん、この中で大事なことは、物価を安定させる、インフレを引き起こさない、雇用の水準を確保していく、こういう点が重大であり、しかも国家財政の赤字をできるだけ早くこれを縮小していくという努力を営々として重ねていくということは我々の目標でございます。
その一つといたしましての景気の速やかな回復を図りまして、経済の安定基調を回復する。特に民間需要あるいは民間の活力の増大を図る。そういうような考えに立ちまして、ことしは特に力を入れておるところでございます。
と同時に、対外的な経済摩擦の解消を速やかに図るという面もいま努力しておるところでございます。これは自由貿易体制を推進するための不可欠の条件とも現在なっております。我が国のような貿易国家は、自由貿易体制でなければ生きていけない国家でございます。そういう意味におきましても、市場の開放、輸入促進、対外摩擦の解消というものは日本の運命にとって決定的な重要な影響を持ってくる問題である、そのように認識しておるわけでございます。
個人消費の見込みについて御質問がございましたが、公共料金の引き上げや酒税の増収等、一方においてそういうものがございますが、所得税、住民税の大きな減税が行われます。あるいはさらに、物価が極めて安定しております。あるいは生産の回復や企業の収益が最近とみに顕著に回復しております。これらのことと世界経済が順次回復しているという情勢とをかみ合わせまして、昭和五十九年度の消費支出は緩やかな増加を続けるものと考えております。今日におきましても、既に民間設備投資及び消費は増大の方向に転じてきておるのでございます。五十九年におきましては、名目七・一%、実質四・一%程度の伸びになるものと見込まれております。
次に、財政再建と防衛費のことでございますが、先ほど申し上げましたが、今回の財政再建、行政財政改革に当たりましては、制度の根本にまである程度メスを入れて、そして歳入構造、歳出構造の見直しを行ったところでございます。一方におきまして、そういうような結果、いわゆる一般行政費の歳出は三百三十八億円の減額にしておるわけでございます。
防衛費の関係につきましても、そういう財政下、他の諸経費との調和も図り、しかし最近におきまする練度の低下を防ぐという点も十分注意をいたしまして、一%の範囲内を守るべく懸命の努力をいたしました。「防衛計画の大綱」の水準に近づけるという要請が片一方でございます。また、国際関係を良好ならしめて、日本は日本にふさわしい責任もある程度果たさなければならぬという点もございます。しかし、他の経費とのバランスという問題もございますし、一%の枠内に厳に確実におさめていくという要請もございます。それらの調和点といたしまして六・五五%という数字を私たちはセットした次第なのでございまして、必要最小限の経費を計上したと考えておる次第でございます。
次に、大型間接税につきまして御質問をいただきましたが、課税ペースの広い間接税の導入につきましては、現在は考えておりません。
我々は「増税なき財政再建」の理念を守りつつ、この財政改革を進めていく考え方に立っております。さらに、先般の予算構想につきまして、歳出の徹底した抑制を通じて財政改革を進めるということを申し上げましたが、五十九年度予算におきましても、一般会計全体としては〇・五%増、その中で公債発行額を前年度よりも六千六百五十億円減額したところでございます。
今回の税制改正にいたしましては、国民の御期待にこたえまして大幅な所得税、住民税の減税を一面において実行いたしました。がしかし、また一面においては、法人税、酒税、物品税の増収を行わざるを得なかったことはまことに遺憾でございます。しかし、これらは所得税等の減税を行いながら財政事情をこれ以上悪化させないという配慮のもとに、これはやむを得ない事情として御了承願いたいと思うのでございます。
公共料金につきましても、経営の徹底した合理化、受益者負担の考慮あるいは国民生活に及ぼす影響、これらも考慮いたしまして、できるだけ公共料金の値上げを抑制するという方針に立って実行してまいりたいと思うのでございます。
特に今回の減税措置につきましては、扶養家族のある中堅所得層の給与所得者の負担の軽減に特別に配慮いたしまして、課税最低限の引き上げ、税率構造の改正、これらを行わんとしておるものなのでございまして、この点は御了承をいただきたいと思っておる次第でございます。
次に、健康保険制度についての御質問がございました。
本格的な高齢化社会に備えて医療保険制度の基盤を揺るぎないものにする必要がすでにできております。これは、長期的に安定した医療保険制度を維持していくということが今日非常に重要な要素になってきているわけでございます。特に乱診乱療を防いでできるだけこれの合理化に努めること、また退職者医療制度の創設を行うこと、医療保険制度の給付と負担の両面にわたる公平化を図るということ、こういう考えに立ちまして今回の改革を行ったものなのでございます。これらにつきましては、国民の皆様方に一部御負担を増加するという面もございますが、これは保険制度の長期的安定性、揺るぎなきものにこれを維持していくという面からやむを得ざる措置として御了承をお願いいたしたいと思う次第でございます。
国民生活と防衛費との関係の御質問がございましたが、これは、先ほど申し上げましたように、一面におきまして一般会計における一般歳出を三百三十八億円減額をいたしました。また、それに応じまして、福祉や文教予算等につきましても一部削減をやむを得ず行わなければならぬ点もあったのでございます。しかし、真に恵まれない方々に対する措置は、これは万全を期して配慮したつもりでございます。防衛費につきましては、それらの点も考えつつ、バランスをとるように必要最小限の処置をした考え方でございます。
さらに、石橋議員におかれましては、配当所得の源泉課税の引き上げとか有価証券取引税率の引き上げ等々の御提案をいただきました。
今回の所得税、住民税の減税は、初年度ベースで所得税八千七百億円、住民税三千百億円、合計一兆一千八百億円と、非常に大きな減税を行っておるわけでございます。しかし、昭和五十九年度におきましても歳出の二五%をなお公債に依存しなければならないという状態でございますれば、今回の減税規模は精いっぱいのものであるというふうに御了解願いたいと思うのです。
さらに、有価証券取引税、配当利子の源泉徴収等々につきましては、現在では適切な財源とはなり得ないものである、このように我々は考えております。
原子力船「むつ」につきまして御質問がございました。
原子力船「むつ」につきましては、各方面からさまざまな御議論が寄せられております。我々は関根浜港を港として建設していくという方針には変わりはございません。また、舶用炉を開発していく、船舶用の原子炉の研究を続けていくという点も変わってはおりません。しかしながら、原子力船「むつ」全体の処置につきましては、今後政府・自民党内におきまして十分検討し、また地元ともいろいろ御相談をいたしまして、将来決定してまいりたいと考えておる次第でございます。
補助金の整理について御質問がございました。
補助金はややもすれば既得権化しやすい性格を持っておりまして、常に整理合理化を図っていく必要があると考えております。昭和五十九年度におきましては思い切った削減を行いまして、対前年度比四千三百五億円の補助金の削減を行いました。これは昭和三十四年度以来最大の補助金の削減を行った次第でございます。なお、来年度につきましてもさらに努力を継続していきたいと思う次第でございます。
非武装に関する御発言がございました。
我々は、平和憲法及び自衛隊及び日米安全保障条約の組み合わせというものをもちまして、日本の必要最小限の防衛力を備えつつ、国民の生命財産及び文化を守っていこうと考えておる考えでおります。しかし、平和国家としていく建前は、日本としては死活的重要性を持っていると思います。特に、貿易国家として生きていく日本は平和なくしては生存できない国でありまして、平和の確保こそ日本にとりましては死活的重要性を持っておる政策である、そのように考えて、今後とも誠実に努力してまいるつもりでおります。(拍手)
日米関係につきましては、我々は世界の国々と友好協力関係を進めていくという一般方針ではございますけれども、世界の現状から考えますれば、自由世界の国々とまず我々は緊密な提携を行う、あるいは近隣におきましては韓国やあるいは中国と友好親善関係を深め、ASEAN諸国とも協力関係を密にしていく、そのような基本的立場をとり、特に日米関係を基軸といたしまして、これを最大限に重要視してまいりつつ、西欧その他の自由主義の国々とも手を結び、そういう基礎の上に立って、国交のない国々やあるいは共産圏の国々とも友好を促進していく、このような考えに立っておりまして、現実の世界の情勢から見れば、国交につきましては濃淡の度合いがあるのはやむを得ないと考えております。しかし、できるだけこれらの濃淡の度合いを薄めていくというのが我々の今後の努力でなければならないと考えておる次第であります。
これらの主体的立場を持ってやっておるのでございまして、いたずらに米国に追随しているものではないということを申し上げる次第であります。特に、アジアの一員としての立場につきましては、深甚の配慮を行いまして善隣友好の政策を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
軍縮につきまして、イニシアチブをとったらどうかという御質問がございました。
軍縮やあるいは核軍縮の問題について石橋委員長が日ごろ御熱心な発言をしておることにつきましては、深甚の敬意を表する次第であります。しかし、我々も、先ほど申し上げましたように、平和の維持こそ日本の生存と発展のために死活的重要性を持っておるという認識を持っておるのでございまして、軍縮や核軍縮につきましては、社会党に負けないだけの熱意を持っておるということを御認識願いたいと思うのであります。(拍手)
既に、米ソ間における核軍縮の推進につきましては、ウィリアムズバーグのサミットにおきましても私は積極的発言もし、先般ドイツのコール首相が参りましたときも東京声明におきましてこれを鮮明にしたところでもあり、核実験の全面禁止やあるいは核不拡散体制の維持強化等につきましても、これを極めて重視しているということを申し上げたいのでございます。
さらに、開発途上国に対する経済協力等につきましても、人一倍この点については配慮をしておるつもりでございまして、新中期目標のもとで一層の充実に努めてまいります。本年度は昨年度に比べまして九・七%、予算の増加の中で最大の増加率を示したのは、この海外経済協力であるということを申し上げます。
さらに、米ソ関係及びアジアの核軍縮の問題について御発言をいただきました。
これらにつきましては今まで既にお答えを申し上げたとおりでございますが、日ソ関係につきましては、この厳しい東西関係の中にあり、また北方領土問題が依然として未解決である、こういう状況にかんがみまして、我々は、不屈不撓の気持ちを持ちまして、この北方領土問題の解決に今後とも努力を続けてまいります。
が、一面において、他面、日ソ間におきましてはほかの問題もあるわけでございます。二国間問題のみならず、国際情勢の問題についても双方は関心を持っておる問題があるわけでございます。こういう考えから、まず、向こうの政治的責任者であるグロムイコ外相が訪日をされて、我々と虚心坦懐の話ができる機会を持たれることを強く熱望して待っておる次第でございます。国連での日ソの外相会談とか事務レベルの会議を引き続いてやるとか、そのような点につきましても、我々は、日ソ間の対話の機会をとらえ、糸口を広げ、そして両方の国が誠意を持って相対するように今後とも心がけていくべきである、このように考えておる次第でございます。
アジア版のINF交渉につきましては、まだその現実性がないと私は考えております。アジアにおける核兵器を持っている国は、中国やアメリカやあるいはソ連でございます。我が国は非核三原則を堅持しておる国でございます。我が国はアメリカの核の抑止力のもとにある安保条約を締結しておるという状況でございます。
こういう状況下におきまして、ヨーロッパにおけるような、あの中欧における戦力の引き離しであるとかあるいはヘルシンキやあるいはマドリードであるとかその他におきますようなお互いの信頼醸成措置というものは、アジアにおいてはヨーロッパほどまだ進んでおりません。それは、ヨーロッパの方がさらに緊迫している、力と力の対決が物理的にも数学的にも計算できるような形で歴史的に出てきているという面があると思います。
そういう面からいたしまして、アジアにはアジアの特殊性があります。現在必要なことは、アジアにおける緊張緩和を我々がやるということだと思います。大韓航空機事件やあるいはアフガニスタンやあるいはラングーンにおけるあのような悲劇等もありまして、昨年の後半は不幸な年でございました。これらの事件にもかかわらず、我々は平和を欲し、国際協調を欲しておる国民なのでありまして、とりあえずは緊張緩和措置をお互いが心がけていく、それと同時に、信頼醸成措置をお互いが具体的に考えていくことが現実的である。それを具体的にどうするかということにつきましては、外交当局及び政治家レベルにおきまして、今後ともよく検討してまいりたいと考えておる次第であります。
次に、北鮮提案の三者会談でございますが、その三者会談に関する情報は、我々は友好国から既に受けておりました。
この三者会談につきましては、我々は朝鮮半島の平和、安定については重大な関心を持っておるということをまず申し上げます。
次に、この朝鮮半島の平和や統一の問題は、北と南の当事国がまず話し合うのが適当なものであるということも第二に申し上げます。
次に、関係各国が同じように緊張緩和の一環としてこれらの朝鮮半島の問題につきまして関心を持つということはもとより当然でございまして、そのために緊張緩和が促進されれば私は結構な話であると思っております。
先般、この三者会談の提議に対して、アメリカ側からは中国も入れた四者会談が提議されているやに私は聞いておりますが、これに対する回答は否定的な回答であったやに私は未確認情報を持っております。
私は、これらの問題につきましては、友好国と緊密な連携を持ちまして、具体的に、着実に緊張緩和がなされるという方向に前進せしむべく、与国とも協力してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
次に、軍事力の歯どめの問題がございました。
我々は、平和憲法のもとに専守防衛に徹して、近隣諸国に脅威を与えず、非核三原則を堅持し、自衛のため必要最小限度の防衛力を整備していく、これが我が方針であることは前から申し上げたとおりで、これを堅持してまいります。したがいまして、このような方針堅持のもとにGNP一%の枠を守るということは、引き続き努力してまいるつもりでおります。
次に、国連決議の問題でございます。
我々は、このような前から申し上げております非核国家あるいは非核三原則国家、平和国家、そういうような立場から、国連軍縮会議等の場におきましては、平和外交の推進を柱といたしまして軍縮、核軍縮に努めてきたところでございます。
国連決議に対する投票態度につきましては、基本的にこのような立場を踏まえつつ、それらの決議の内容が実効性があるかどうか、安全保障上の意味合いがどういう影響力を持ち得るであろうか等々の立場から、我々は現実主義の立場に立ちまして、確実に、安心のいける、そしてそのための検証制度を伴ったような、そういう具体的措置を伴った決議というものを期待しているわけでございます。単に決議することも意味がございますが、よりよき決議というものは、やはり具体的検証措置等を伴った安心のいける方法を見出すことである、そういう立場に立ちまして、我々は国連において活動してきたつもりでございます。
なお、トマホークの問題について御質問がございましたが、我々は非核三原則を厳然として守っているつもりでありまして、それに違反する場合には事前協議において断ることは、前から申し上げているとおりでございます。
インビンシブルの問題につきましては、我々は、友好国の儀礼訪問、友好訪問は常に歓迎しておるところでございます。インビンシブルについても、基本的立場はそういう考えでございました。しかし、豪州における寄港等の現地における反応等も調べまして、これは多少注意を要するところがあるという判定のもとに、我々は、我が国に非核三原則があることを英国側に対して内面的に注意を喚起して申し入れたのであります。それについて英国側は自主的に運航方針を変更した、そういうことではないかと思っておる次第でございます。
米国との間に、米国のようなそういう緊密な安保条約を持っている国に事前協議を持っておるのはどういうわけだという御質問でございましたが、緊密であればあるだけ周到な注意深い態度をとっておくことが重要である、そのように考えておる次第なのであります。
国連開発基金につきましては、飢餓や貧困や病気等の撲滅のために、我々ができるだけの努力をし、特に軍縮により解放された資源をその方に転用するということは、基本的に大賛成でございます。今後、国際的検討のもとにこれらの政策が世界の国々と協調しつつ進められるように努力してまいりたいと思っております。
国際経済協力に関する新中期目標につきましては、引き続いて努力をしてまいるつもりでございまして、ことしは九・七%、最高の増額を行ったことは前に申し上げました。
野党との対話あるいは相互理解につきましては全く同感でございます。この選挙後の新しい政局展開の現実を踏まえまして、また国民の御期待をよく勘案いたしまして、野党の各会派あるいは新自由クラブの皆様方とも可能な限り協調の場を見出し、円満な国会運営を行えるように、今後とも努力してまいるつもりであります。
いろいろ御質問をいただきましたが、以上ですべて御答弁を申し上げた次第ございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/8
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009・福永健司
○議長(福永健司君) 藤尾正行君。
〔藤尾正行君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/9
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010・藤尾正行
○藤尾正行君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、中曽根総理の施政方針演説に対する質問を行います。
質問に先立ちまして、今日、北海道、北陸等々、豪雪地帯におきまして大きな被害を受けておられまする国民の皆様方に心からのお見舞いを申し上げます。(拍手)
中曽根総理は施政方針の冒頭で、さきの総選挙に示された国民の審判を厳粛に受けとめ今後の政治運営に当たるとの決意を表明されました。
自民党が選挙後、一層の結束を確認し、第二次中曽根内閣を発足させ得た政治の原点は、総理自身が昨年十二月二十四日に発表された総裁声明であると信じます。総理が、今後の政治運営に当たるに際して、深い反省のもとに政治倫理の確立に取り組み、日常の行動、政務の処理につき、慎重かつ公明正大に実践するとの決意を述べられました点を高く評価いたします。
問題は、声明の中に盛られた倫理の高揚、体質の刷新、清潔な党風の確立等を柱とする重要公約を、言葉の上だけでなく、いかにして国民のために実現していただけるかであります。
総理は、具体的な実効性のある政策手段として、閣僚の資産公開を行われました。私は、総理の善意に疑いを差し挟みませんが、この資産の公開が何を目的として行われたものかをお伺いいたしたいのであります。閣僚が大臣としての在任期間に得た所得の一切を公開し、政務の処理に不正がないことを国民に示すというのなら一つの考え方であると思いますが、一年や二年の在任期間に、移動が期待されない土地、家屋、現金、株式、公社債、美術品等の資産を公開して、どのような効果が得られるでしょうか。
なかんずく、大都市近郊の住宅、マンションの価格が勤労者向きで数千万円で売買されている今日、公開された閣僚資産が僅々一億円程度であるということになれば、国民の資産公開に対する信頼は一体どのようなものになっていくか、ひいては中曽根内閣に対する、さらには政治に対する信頼の問題として百考を煩わせたいと願うものであります。(拍手)
次に、新しい民主政治の運営と展開についてであります。
総理は、心を新たにして各党各派との協調による政治運営を宣言され、野党の皆様との相互理解と重要国策の推進、円滑な国会運営により、一層の政局の安定を期待しておられます。
このことは、特に行財政の抜本改革、「増税なき財政の再建」、外交、防衛政策、教育改革等の基本的政策について胸襟を開いて率直に対話を重ね、私ども自由民主党も進んで野党の皆様方の考え方の理解に努力することはもちろんでありますが、私ども自民党の政策、主張にも許す限りの野党の皆様方の御理解と御協力をいただき、ともに国民の皆様方の御期待にこたえる雅量が与野党双方になければなりません。総理の所信をお伺いいたします。
次に、外交政策についてお尋ねをいたします。
中曽根総理は、一昨年就任以来、我が国が真の国際国家として世界的役割を果たす必要があるとの認識に立ち、積極的に外交に取り組み、特に日本外交の基調をなす日米、日韓関係に大きな成果を上げてこられました。
このような中曽根内閣の積極外交姿勢は諸外国から高く評価をせられ、我が国に対する期待は、今日いよいよ高まっております。第二次中曽根内閣もあくまでこの姿勢を堅持し、世界の平和と安定のために一層の御努力あらんことを希望いたします。二十一世紀を展望した我が国外交を進めていくに当たり、総理の御決意のほどを伺うものであります。
米国を初め西側の自由諸国は、これまで一貫して核兵器を含む軍備管理、軍縮交渉を求め、ソ連に対する関係改善を訴えてまいりましたが、INF交渉もSTART交渉も、世界の期待に背を向けて、現在これが中断されておる状況に至っております。まことに遺憾であります。しかしながら、情勢がいかに悪化しておりましても、世界の平和のために望みを失ってはなりません。
私は、我が国が、今後あらゆるチャンネル、手段を通じ、軍縮、なかんずく現下の緊急の課題でありまする核軍縮に向け、一層積極的な役割をお果たしになるべきである、かように考えます。これら世界的規模の問題に対して、政府としてどのような対応策があるか、総理のお考えを伺います。
現下の国際経済情勢を概観しますと、米国の本格的な景気回復を中心に明るい展望が開けてきました。しかしながら、いまだに欧州の一部の諸国には回復の立ちおくれが見られるほか、各国の雇用情勢の厳しさを背景に保護主義的傾向が根強く残っており、昨年のウィリアムズバーグのサミット等において合意されました保護主義排除も前進が見られていない状況であります。
このような状況の中で、我が国は内需を中心とした経済運営に努力する一方、一連の市場開放措置を決定をし、実施に移してきましたが、今後ともその経済力にふさわしいリーダーシップを発揮し、国際経済の諸問題の解決に積極的に対処、貢献していかなければなりません。総理のお考えをお尋ねするものであります。
我が国と友好諸国間との経済摩擦を解消することも、また重要課題であります。
五十八年度の当初の経済見通しては、我が国の貿易収支の黒字は二百億ドル程度と推定されておりましたが、実績では五十八年三百十六億五千万ドルの黒字であり、五十九年も大幅な黒字が予想されております。特に対米貿易収支は、ドル高・円安の関係もあって、五十八年の実績で二百十六億ドルの黒字であります。このような対米輸出の大幅黒字傾向は、アメリカ側の貿易危機感を増幅をし、オレンジ、牛肉等の農産物の輸入割り当て、その他もろもろの非関税障壁、金融資本市場の開放といった広範で多面的な批判にまで拡大しておるのであります。
これは、必然的にアメリカの保護貿易志向の傾向を強め、日米友好協力関係に亀裂を生ぜしめるおそれすらあります。これは絶対に回避しなければなりません。政府は、具体的にどのようにこの問題に取り組まれるのか、御説明いただきたいのであります。
次に、経済協力についてであります。
世界第二位の経済力を有し、資源、貿易面で開発途上国に大きく依存する我が国としては、自由主義諸国との協調はもとより、その先頭を切って、南北問題の解決に積極的に取り組むことが必要であります。対外援助の中軸として、政府開発援助を積極的に推進する必要と責務があります。既に国際的公約となっている新中期目標のもとで、今後どのような決意を持って政府開発援助の拡充に努めるのか、総理のお考え方をお聞きしたいのであります。
数多い外交諸問題の中で、一言、中東問題について触れておきます。
イラン・イラク戦争は、既に三年以上経過したにもかかわらず、いまだ解決の兆しが見えておりません。中東問題の推移いかんは、我が国はもとより、世界経済全体に死活的影響を及ぼしかねない重大問題であります。私は、米ソ両国でさえ解決のできない複雑な中東問題について、昨年夏、外務大臣が西側諸国として初めてイラン、イラク両国を訪問される等、本紛争解決のため政府が行っている自主的かつ積極的外交努力は多とするものであります。本紛争解決について今後我が国はいかなる役割を果たしていく所存なのか、総理のお考えを伺いたいと思います。
次に、安全保障政策についてであります。
世界の軍事情勢は、ソ連のアフガニスタン軍事介入の長期化や、米ソ両国の果てしない核戦力の拡大競争、中東、中南米、アフリカにおける武力紛争の激化、ポーランド問題の帰結等緊張が高まりつつあります。特に我が国周辺地域における近年のソ連の著しい軍事力の増強は、我が国に対する脅威を増しつつあるのであります。
特に、世界第二の経済大国であり、東西両陣営の接点に位置する我が日本といたしましては、いかなる情勢の変化にも対応のできる防衛力の充実に国力、国情の許す限り努めることは当然の責務であります。と同時に、日米安全保障体制の一層の効率的運用を図り、我が国の安全保障に万全を期すべきであります。政府が五十九年度予算において特に防衛体制の着実な整備を図ったのは以上の趣旨によるものであり、国家民族の将来に責任を持つ政府として当然のことであります。
これに対し、一部の野党の皆さんは、軍国主義への指向であるとか防衛予算の突出であるというような批判をしておられますけれども、これは国際情勢の実情に目を覆い、政治の大本である国家国民の安全を考えない誤った意見であると考えます。(拍手)
今後も防衛関係予算の内容の効率化を一層徹底するとともに、五六中期業務見積もりの目標を速やかに達成すべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いをいたします。
次は、三つの改革の推進を内容とする二十一世紀への基礎づくりについてであります。
二十一世紀まであと十六年、総理は、その目標を、自主、連帯、創造による福祉国家づくり、国際国家日本への前進に置いておられます。近代国家への指向のスタートを切った明治から百年、戦後の荒廃から立ち上がってから三十九年、この間に我が国をめぐる国際的、国内的な環境、また、これに対応する体制には、戦争をも含めて、まさに劇的ともいうべき大転換が行われました。と同時に、この間の経済、財政、科学技術的な変化は驚くべきものがあります。これに基礎を置く人口構造、社会構造の変革にも、目を覆うわけにはまいらないのであります。この中で我々政治家は、我が国と国民の安全と不断の成長発展を、いかなる条件のもとでもこれを確保しなければならないのであります。思想、慣習をも含めて、既に我が国の国民生活の中に溶け込んでおります古きよきものについては、私たちはこれをさらに発展させて、民族活力の源泉としていかなければなりませんし、同時に、環境変化に適合できなくなってきた戦前、占領下の古い法律制度、思想、習慣に対しましては、勇断を持ってこれを改革し、未来に備えていかなければなりません。
総理が行い、かつ行っていこうとする行政改革、財政改革、文教改革の意義は、安易さの上にあぐらをかいていこうとする本能から抜け出して、苦しくとも新しい創造に向かわなければ生き残れない現代日本を象徴をする歴史観に基づくものであると信じます。(拍手)今日、日本国民が一日の懈怠のために十六年後の日本の国連がどう影響されるかを考えてみますときに、総理の責任は重大であり、これに対する所信をお伺いいたしたいと存じます。
本日国会に提出をされました昭和五十九年度一般会計予算は、一般歳出を五十八年度以下に抑えて、国債発行額を前年度より六千六百五十億円削減するという緊縮予算であります。しかし、その中におきましても、国の存亡にかかわる防衛関係予算、世界の平和と繁栄に寄与する経済技術協力予算、経済安全保障の核であるエネルギー安定供給対策予算、老人や障害者の生活安定のための福祉関係予算、その他特に重要な施策のための予算は優先的に増額をいたしております。また一方では、一兆一千八百億円の大幅所得税、住民税の減税を行って、一般庶民大衆の負担の軽減と生活の安定を図ることとしておるわけであります。
しかし、一部の野党は常に、福祉切り捨ての軍事大国志向予算として非難しておられます。これは、国を守るという国家の最高の使命、責任を否定する議論であり、また我が国の予算が常に正しい福祉を最優先しているという事実を認識しない一方的な偏見の議論であります。(拍手)
五十九年度一般会計予算は、防衛関係予算を六・五五%伸ばしましたとはいえ、総額は二兆九千三百四十六億円にすぎず、また予算規模の五・八%にすぎません。一方、恩給を含めた社会保障関係予算は総額十一兆二千六十九億円にも及んでおり、まさに福祉最優先の予算であります。(拍手)五十九年度予算の基本的性格とその意義について、総理の所見をお伺いをいたします。
次に、五十九年度の税制改正について伺います。
五十九年度予算の最大の特色は、一般歳出マイナスという厳しい財政再建予算の路線を着実に推進する一面において、一兆一千八百億円という財政史上第二の大幅所得税等の減税を行っておることであります。
このことは、我が党政府が、一つには国民の切なる要望にこたえて中堅所得階層以下の国民大衆の税負担を軽減して実質所得と生活の向上を図ることが当面何よりも急務であると認識したこと、いま一つは、長期不況で冷え切っている国民消費意欲を刺激することが景気回復を促進する最も実効のある対策と認めたからであります。我が党は、この大幅減税が必ずやその所期の効果を上げることと確信するものでありますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
五十九年度税制改正は、大幅所得税減税のほか、エネルギーの効率的利用の促進、特定の先端技術の開発振興及び中小企業の経営近代化促進等のため投資促進税制を拡充することといたしており、将来の経済構造をにらんだ意義は極めて大きいものがあります。
第二次中曽根内閣に課された重要責務の一つは財政の再建であります。
政府は、昭和六十五年度までに赤字公債から脱却することをしばしば述べてこられましたが、これは決して容易なわざではございません。五十九年度予算は一般歳出を五十八年度以下に抑えるという徹底した削減を行っておりますが、それでもなお赤字公債の発行額は六兆四千五百五十億円を予定しており、今後六年間で赤字公債の発行をゼロにする、こういう目標のためには歳出歳入の両面においてさらに思い切った措置が必要と思われます。すなわち、歳出面では旧来行財政が果たしてきた役割を抜本的に見直し、制度の大もとにまで立ち返った上で改革を行うことが必要であると思います。また歳入面では、経済安定成長を定着させて税の自然増収の恒常的増加を確保するとともに、直接税に偏り過ぎておる現在の直接税と間接税の比率を是正し、税の負担感を重くしております所得税の相対的軽減を図るべきであります。
第二次中曽根内閣は、具体的にどのような方策とスケジュールで六十五年度までに「増税なき財政再建」を達成するのか、その構想を明らかにされることを求め、あわせて今後の財政再建のための中期、長期の見通しを明らかにしていただきたいと存じます。
次に、教育改革についてお尋ねをいたします。
教育政策こそは、国家民族の将来の運命を決する基本的国策であります。中曽根総理は、さきの総選挙に際し、戦後の総決算の一翼として特に教育改革に取り組む決意を国民に公約し、今般、いわゆる教育臨調の設置を表明せられました。(「そいつは違うぞ」と呼ぶ者あり)臨調と違うと言っておられまするけれども、一応そのようにいたしておきます。
私は、党には政調に立派な部会、調査会があり、国会には立派な常任委員会があって、そのもとであらゆる意見を総合し、徴して、政策の錬磨をすることができると信じております。党内、国会内におきましてもこの種の意見があるということを申し上げておきます。
教育は国家百年の大計であります。その改革は拙速であってはなりません。何よりも肝要なことは、国民の理解と合意を得て、実効の伴う改革の大本を決することであります。総理は、教育改革を進めるに当たり、教育理念、幼児教育、教育制度、教育内容、教員の資質、入試制度の改革等を目指しておられます。しかし私は、いま一つ、すべての国民がひとしく教育の機会を享受できる機会均等の実現こそ、ただいま要求されておる民主教育への一礎石だと信ずるのであります。
官吏養成の必要から発した官学優先の明治時代の教育思想が百年にわたって実存をし、行政側の怠慢もあって、この弊風がまかり通り、国公私立に学ぶ学生諸君の間に、国の権力で大きな格差が生ぜしめられておるわけであります。このことは、まことに残念至極であります。
たとえば、東京大学の医学部に在学する学生の入学金、授業料は年三十三万円余、一方慶応大学医学部の学生は百八十一万円でありますが、巷間伝えられておるところによれば、私学の医学部に入学する際には一千万円程度の負担が必要であるとも言われておるわけであります。この負担の格差があるという厳然たる事実を総理はどのようにお考えになっておられるか、また、どのように改革するおつもりであるかということをお答え願いたいと存じます。
教育の改革は、単なる学校制度、教員の資質、教育内容、入試制度等の教育専門分野だけから考えられるべきではありません。総理の指摘せらるる家庭や社会教育等広範な分野にわたって考えられなければなりません。また、人口構造の変化により、幼児、児童、学生の数が今後激減をしていくという予測がありまする今日、二十一世紀に向かって、いかなる理想、理念を持って教育改革を進める御所存か、お伺いいたすわけであります。
次に、高齢化社会の到来と社会保障制度についてお伺いをいたします。
今後二十一世紀に向けて、我が国は世界に例を見ないスピードで超高齢化社会を迎えようとしておるのであります。これに伴い、現行の社会保障諸制度を継続する限り、社会保障給付費は必然的に大幅な増加が見込まれます。一方、経済は安定成長の時代に入り、これに見合った国民所得及び国の財政収入の伸びは期待できません。社会保障の原資の確保が危ぶまれる時代に既に足を踏み入れているわけであります。これからの高齢化社会においても、活力を維持していくためには思い切って踏み込んだ改革を行い、超高齢化社会の構造にたえ得るものに改めていく勇気が必要であると考えますが、どのような姿勢でお取り組みになるおつもりか、総理の基本的見解をお伺いするものであります。
社会保障の根幹をなす医療保障と年金制度についても同様であります。
二十一世紀の本格的な高齢化社会の到来に備え、あわせて国民だれもがひとしく医療の恩恵を受けるためになくてはならない医療保険制度について、現行の分立する制度の一元化を含め、揺るぎない基礎づくりを進めなければなりません。総理の御所見をお伺いをいたします。
公的年金制度についても同様であります。
我が国社会が高齢化のピークを迎える二十一世紀においても、国民だれもが安心できる安定をした制度を確立していくことが現下の最重要課題であります。こうした観点から考えるとき、我が国の公的年金制度には幾つかの問題点があります。
一つは、幾つもの制度が分立していることにより制度間格差が広がり、中には年金制度の崩壊にもつながりかねない財政基盤の不安定が生じていること、二つには、現行制度のままでは、将来において老齢世代の年金の給付水準と制度を支える現役世代の所得や負担とのバランスを損なうこととなるなどがそれであります。
政府におかれましては、既に国民年金と厚生年金保険を中心とした制度の改正法案を本国会に提出すべく準備を進められているとのことでありますが、その改革は、今後の公的年金制度の将来を方向づける極めて重要なものであります。年金制度改革とそのスケジュールについて、総理の決意をお尋ねいたします。
最後に、二十一世紀に向けて科学技術政策、防災対策、環境政策についてお伺いをいたします。
今や世界は大きな転換期にあります。従来の政策をただ単に延長をしていくというだけでは、今後我が国が直面をする幾多の制約を打開することはできません。私は、科学技術の振興こそこれを打開していく上でのかぎであり、政策の重点をこれに移行させていく必要があると信ずるものであります。我が国は、既にエレクトロニクス、産業ロボットなどの技術分野では世界の最先端にありますが、今後は遺伝子工学を初めとする生命科学や新素材など将来の中核的な科学技術として期待される分野、さらには未来の技術革新の芽を生み出す源泉である基礎的研究に多大の努力を傾けていく必要があります。私は、こうした認識のもとに、科学技術の振興を基本政策の重点とし、国、大学、民間企業相互の密接な協力により、我が国の総力を結集して新しい時代を創造する独創的な科学技術の開発に取り組み、もって二十一世紀に向けての我が国発展の基礎を確立していくことが必要だと考えます。(拍手)
また、我が国は従来防災のための施策が極めて立ちおくれていたと断言しても言い過ぎではございません。今後災害から国土と国民の生命財産を守るために、国と国民が一体となって、治山治水対策、地震防災対策、活動火山対策等の強化は言うに及ばず、都市の防災構造化、防災関係情報収集伝達システムの開発整備、災害時における食糧、医療の確保、治安、交通対策等を推進すべきであると考えます。防災は国策的大事であり、政府の一部局の設置で事足りるはずはありませんが、ともかくも国土庁に防災局が設置されることは、国の今後の姿勢を示すものとして意義あることと思います。(拍手)
さらに、二十一世紀への展望を考えるとき、豊かな自然環境を保全し、快適な環境を創造していくことは当然であります。我々の子孫のために、環境汚染の未然防止を初めとして、積極的な環境政策を展開すべきものと思います。
以上、二十一世紀に向けての科学技術、防災、環境の諸政策について総理の所信をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/10
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011・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 藤尾議員にお答えを申し上げます。
広範な問題の御質問がございましたので、順次お答え申し上げる次第です。
まず、選挙後の政局問題につきまして、政治倫理を中心に御質問をいただきました。
私は、十二月の二十四日に発出いたしました総裁声明を遵守いたしまして、内外の信用の確保と政局安定のために今後とも誠意を持って努力してまいるつもりでございます。与野党ともよろしくお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)
次に、閣僚の資産公開は何のためにやるかという御質問でございますが、これは政治家が自己の政策等についてはガラス張りでよく公表いたしますが、自己の経済的な側面につきましては今までそういうことは余りなされませんでした。しかし、この際は、政策あるいは経済的側面ともどもガラス張りの中で国民の皆様方の監視を十分にお願いをして、澄明な政治を推進していこう、こういうような考えに立ちまして、まず内閣の責任者からやろうというので、先般行ったところでございます。
ただ、最初のことでございますから、必ずしも十分御理解、御納得を得られないものであったかもしれませんが、これから逐次足らざるものは改良して、そしてまた、先ほどは石橋議員からも議員等々の資産公開についても御発言がございましたが、与野党でもいろいろ御研究を願いまして、我々もその御議論をよく踏まえまして、適時改良すべきものは改良してまいりたいと思っております。
特に閣僚につきましては、やはり一年ぽっきりというのは必ずしも適当ではないのでございまして、閣僚在任中の財産の増減というものを国民の皆様方にお示しして、権力によって財産が増減したというようなことを監視していただくということも大事であると思っております。そういう意味におきまして、一年ごとにこれを公表していくということを目下検討しておるところでございます。これらは閣僚の営利事業への兼職禁止等と相まって、政治の国民に対する信頼を確保していきたいという考えから行っておるものでございます。
次に、政局運営に関しまする与野党の協力につきましては、藤尾議員のお示しに全く同感でございまして、現在のこの重大な内外の状況等を考えますと、これは一自民党の政策のみに自信を持たないで、野党の皆様方の御意見もよく聞いて、我々が拝聴すべきものは十分拝聴し、国会全体として国民に対する責任を果たしていけるように今後とも誠意を持って努力してまいりたいと思う次第でございます。
次に、二十一世紀を展望した我が国外交の御質問でございます。
先ほど来申し上げましたように、日本は貿易で生きていく国でございますので、平和という問題が日本の生存に対して不可欠の重大な条件であるとよく認識しておるわけでございます。一たん戦火が起こるとか騒乱が起これば、一番甚大な被害を受けるのは日本でございます。そういうような面からも平和の維持、国際環境の良好な環境を醸成していくということは我が国外交の基本方針でございまして、そのような考えに立ちまして今後とも平和の確保につきましては十分努力してまいりたいと思います。
それと同時に、日本の経済力の増大に伴いまして国際的な責任もまた増大し、それに伴いまして国際的発言権もまた増大してくるのは当然でございます。また、国民の御期待もその辺にあるのではないかと思っております。
このような認識に立ちまして、二十一世紀への日本を目指しつつ、国際国家日本というテーゼを私は国民の皆様方の前にお示しした次第なのでございます。今後は、従来の経済重点というような印象をややもすれば与えた日本を、経済をてこにいたしまして政治や文化の面につきましても国際的貢献を行う、そういう日本のイメージをつくり上げ、かつ、平和とそれから発展途上国に対する十分な配慮等も持った先進国としてのイメージを国際的に強く植えつけ、訴えていくように努力してまいりたいと思う次第でございます。
軍縮につきまして御質問をいただきましたが、INFやSTARTが、ソ連側の一方的中断あるいは無期休会によりまして現在中断していますことは甚だ遺憾でございます。世界全体が命これを凝視し、待っておるという状態であると思います。最近、アメリカは積極的に平和の打開を行おう、対話を再開しようという努力を行っておりますが、ソ連側もこのアメリカの要請にこたえ、世界の人々を安心させるような措置に積極的に出ることを期待しておる次第でございます。
なお、アジアの問題につきましても、このSS20等の問題につきまして、アジア・太平洋がその犠牲においてこの問題が解決されないように、我々も十分配慮してまいらなければならぬと思っております。
なお、国連や国際会議等を通ずる軍縮あるいは発展途上国に対する支援等の問題につきましても、積極的に努力してまいりたいと思う次第でございます。
次に、国際経済上の問題でございますが、自由貿易は我が国の重大な国策でございます。しかし、ややもすれば、経済的苦境のもとにおきましては各国に保護主義が台頭して、保護主義の誘惑に駆られます。特に選挙のある国におきましてはそうでございます。やはりこの自由貿易を推進していくということは、ちょうど坂道で車を押し上げているようなものでありまして、ちょっと手を抜くと車は下がって、保護貿易の方へ流れ込んでまいります。一瞬といえども車を緩めてはならない、押し上げていかなければならない、そういう意識のもとにガットにおけるニューラウンドの提唱を私は行ったのであります。東京ラウンドがもう終わりになりまして、これでおしまいであるという観念が世界じゅうに広がりますと、必ずや保護主義がまた台頭してくるのは当然でございます。
したがいまして、次にさらに自由貿易へ向かっていくという目標をつくりまして、世界全体をその中に巻き込んで、世界全体でさらに次の自由化に向かって努力するという姿勢をつくり上げたい、そういう考えを持ちまして、このニューラウンドの提唱を行っておるものでございます。それには日本自体が自由化を促進し、市場の開放を積極的に行う必要がございます。これらにつきましては、さらに努力してまいりたいと思う次第でございます。
また、特に金融資本市場の自由化、それから円の国際化、それから為替相場の安定、これらは我が国としても絶えず関心を持って善処していかなければならぬ問題であると思います。
日米間の経済摩擦が起きておりますことは甚だ遺憾でございますが、往復六百億ドルに及ぶような膨大な物資の交流のある国において、摩擦がないと言えばそれが不思議であると私は考えるのであります。当然起こり得べき問題であります。問題は、これらの問題を解決するだけの相互の能力を外交折衝や国の政治家のレベルにおいて持っているということが大事なのであります。その努力を日米両国において懸命に今行っておるところでございまして、特に牛肉、オレンジの問題は非常に難しい困難な問題でございます。我々も日本の農業を守らなければなりません。農業は日本の安全保障上からも重大な産業でございます。だがしかし、一面において、アメリカ側に譲歩を要請すると同時に、我々におきましても、耐え得る範囲内においてはまだ耐えていかなければならない、これが国際日本の立場でもございます。したがいまして、日本の農業の重要性をよく認識しつつ、できることとできないことは明らかにしつつ、しかも国際協調のもとにこの問題を解決していく、こういう立場で進んでまいりたいと思う次第なのでございます。
この貿易摩擦の問題につきましては、河本長官を中心にいたしまして、今御調整を願っておるところでございますが、今後二、三カ月の間にこれらの問題を解決すべく努力してまいりたいと思います。
次に、発展途上国開発援助の問題を申されましたが、先ほど申し上げたとおり、新中期目標のもとで一層の充実に努めてまいるつもりでございまして、五十九年度予算におきましては、最高の増し率、九・七%増という特段の配慮をいたしたところでございます。
イラン・イラク戦争について御質問をしていただきましたが、これは重大な問題であるだろうと思っております。
一たんホルムズ海峡が封鎖されるようなことがあれば、世界経済に大混乱が起き、日本が最大の被害者になることは明らかでございます。そのような危険性が絶無とは言い得ない情勢であるだろうと思います。情報によれば、イラクの方にはフランス側からスーパーエタンダールとかエグゾセというような新しい飛行機や武器が供与される、それに対してイラン側が身構えをする、あるいはホルムズ海峡に機雷をばらまく、あるいは特攻隊を養成する等々の頻々たる未確認情報が我々の周囲にも来ているところでございます。
したがいまして、イラン、イラク両国と友好な関係を保持している国は日本だけてあります。これは、歴代の政府の御努力によりまして、あるいはイラクに、あるいはイランと友好を重ねてきた結果が、今両方の国と日本は交流を持っているという状態で、特に自由世界においてはイランに対して手が届かないという状態であります。したがいまして、日本に対する期待は非常に増大しつつあるのが現状でございます。
しかし、我々はイラン・イラク戦争について調停者の役目を引き受けるような地位にはございません。我々にはそのような力もありません。しかし、この両者の間と交流を盛んにしつつ、我々が得ている情報をお互いに通知してあげて緊張を緩和していく、そして戦争を次第次第に終結に向かわせるような環境づくりの努力はできると思うのであります。
そういう意味におきまして、今、自由世界で手がさわれないイランに対しては、通産大臣においで願うとかあるいはその次に外務大臣にもおいで願うとか、あるいはイラクからも閣僚においで願うとか、そのような努力を安倍外務大臣が今中心にやっておるのでございまして、そのような対話と交流の場所が日本を通じて行われておるということは世界注視の的にあるわけでございます。
そのような日本の位置と役割を我々は最大限に自覚いたしまして、今後とも、世界平和のために、かつ中東和平達成のために努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
防衛力の整備、防衛予算につきましては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準にできるだけ早く近づける、そういう目標のもとに、他の経費とのバランスをとりつつ必要最小限の経費を計上した、こういう状態でございます。
行政改革につきましては、戦後特に水膨れになりましたこの行政機構を簡素なものにして、そして二十一世紀のあらゆる変化に対応できるような機動力のある、対応力のある政府、政府関係機関をつくろう、あるいは政府と地方との関係あるいは政府と民間との関係をつくり出そうというのが行政改革の目標でございまして、一言で言えば、変化に対する対応力をつくるというのがその目的であると申して差し支えないと思います。
既に百回の臨時国会におきましては七つの法律を成立さしていただきました。今回の国会におきましては、二十三件の行革関係の法案を御提案申し上げる予定でおります。これらの中には、電電や専売公社の改革、年金の統合等々の重要法案がございます。長い間の問題であった地方事務官制度の改革の問題等もございます。二十三件の行革法案が提出されるという国会は今回が初めてでありまして、行政改革もいよいよ胸突き八丁に差しかかったと思う次第でございます。我々は、政府各省庁を引き締めまして、全力を振るってこれらの法案の成立を図り、行政改革を推進する決心でございます。
財政改革につきましては、既に申し上げましたように、歳入歳出構造の根本的見直しから始まりまして、対応力のある財政体質をつくり上げていくという考えに立って諸般の改革を今進めておるところでございます。
教育の改革につきましても御質問をしていただきました。
教育改革の議論が出ましてから随分久しくなります。国民の側におきましても、最近の受験地獄の問題や青少年の犯罪やあるいは偏差値やあるいは共通一次テスト等の問題について悩み抜いておるのが今の父母の姿であり、学生やあるいは生徒の姿ではないかと思っています。先般仙台へ参りまして、中学生、高校生と会いまして率直な話をお聞きいたしましたが、彼らが言っていることはやはり共通一次テストや偏差値の問題でもございました。そういうような点から、教育改革の機は既に熟してきておる、いかにこれを行うかという方法の問題でございます。
これにつきましては、全国民的なすそ野の広がりをもって、そしてあらゆる方面のお考えを、我々がこれをお聞きできるような立場で、そして与野党協調のもとに野党の皆さんのお考えや御協力もいただきまして、国民的レベルの改革を指向してまいりたい。
今まで既に、文部省では中教審を中心に貴重な幾つもの研究ができております。私も読んでみましたが、必要と思われるような案はほとんどあの中に盛られているのではないかと思われるくらいであります。しかし、七、八割はそうではありますが、二、三割はまだ新しい問題があるようであります。さらに、やり方につきましても、今や一文部省の問題を超える問題が多く出てきておるわけでございます。そういうような考えに立ちまして、前に申し上げましたような人間主義、人格主義の理念に基づいて、そして国際的日本、国際国家日本の国民にふさわしい、視野の広い国民をつくり上げていくという考えに立って、新しいすそ野を広げた、国民的支持を得た新しい機構をつくってこれから教育の改革に入ろうというのが私たちの考えてあります。
したがいまして、中教審の答申を子細に点検をしてみる、それから三月に提出されるであろう教育と文化の懇談会、私の私的諮問機関の所見、これら等も参考にいたしまして、その上に立って、新しい機構をどうつくるかということを検討を加え、与野党のお考えも十分その中に消化させまして、そのような御提議を申し上げたい、そういう考えでおります。
次に、五十九年度予算の基本的性格につきまして、いろいろ御質問をいただきましたが、何しろ財政が非常に厳しいときでございますから、制度の基本にまで食い込んだ改革を行ったのは恐らく今度が一番大きい最初ではないかと思います。地方財政との関係あるいは医療問題あるいは年金問題、これらの大問題に今回は初めて正面から取っ組んだ改革案を盛って予算を編成した次第でございます。
したがいまして、さまざまな御議論が行われると思いますが、国会内外における御議論もよく私は拝聴いたしまして、我々が考えた予算は現段階におきましてはこれ以外にない最善の予算である、こう確信しておりますが、しかし皆様方の御議論もよく拝聴いたしまして、そしてこの予算を成立させるように努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
投資促進の問題につきまして御質問をいただきましたが、今回も、御趣旨に沿いまして、中小企業を中心にして、エネルギー関係、新技術の関係、それからテクノポリスの建設等に関係した部面につきましては、投資減税を積極的に行うことといたした次第でございます。
次に、財政再建の中長期的見通しの問題でございます。
まず第一に申し上げたいのは、「増税なき財政再建」という臨時行政調査会の答申のこの趣旨をあくまで我々は尊重してまいるという考え方であります。これはしばしば申し上げているとおりでございます。そしてその上に立って、収入支出の構造的な見直しを行いながら、長期的展望のもとに五十九年度予算あるいは以後の予算編成について考えているところでございます。
そこで、予算委員会が始まる前までに、この中期的な展望を盛った財政構想というものを与野党の皆様方にお示しを申し上げたい、こういう考えで、今大蔵省でせっかく準備しておるところでございます。
次に、教育の格差の問題でございます。
東大と慶応大学の医学部の例をお引きになりました。教育の機会均等の理念を実現することはもとより当然でございますが、国公私立大学の授業料等につきましては、これはそれぞれの設置者が社会経済等諸般の情勢に応じて決めております。国立と私立との格差が余り開き過ぎているということは甚だ遺憾な現象であります。できるだけこれを縮めるように、我々は今後とも私学助成等を通じて努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
教育改革の理念につきましては、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年を育成すべく総合的な全人的な教育のあり方を探求する、次に、国際国家日本の国民にふさわしい教育の国際化を求める、第三に、道徳性や社会性、純真な理想と強健な体力、個性と創造力を持った人間を育成しよう、そして人間主義、人格主義の理念のもとに今後の教育改革を行おう、こういう考えに立っております。
社会保障制度の改革につきましては、高齢化社会におきましても、社会保障が国民生活の基盤として非常に重要な要素をなしており、これが長期的に安定し有効に機能していくということが最も大事であります。そういう意味におきまして、今回、長期安定、負担と給付等の公平等も目指しまして改革を行ったところでございまして、我々が一番念願しているのは、年金にしてもあるいは医療にしても、これが途中で崩れないように、今掛金を払っている皆さんが受けるときになってそれがだめになるような、そういう無責任なことが行われないように今から堅実な制度をつくり上げていく、そういう考えに立って揺るぎなき基盤をつくるということなのでございます。(拍手)
公的年金の改革につきましては既に閣議決定で決めておるところでございますが、昨年五月の閣議決定によりまして、基礎年金の導入などを主とした内容である年金改正法案を今国会に提出する、引き続き公的年金の一元化に向けて努力をしてまいる予定であります。
科学技術が重要なことは、資源の少ない我が国におきましては最も大事な御指摘であると考えております。現在、科学技術会議に対しまして、新しい科学技術政策の基本的方向について諮問をいたしておるところでございます。今後とも産学官の連携により創造性豊かな科学技術を振興すべく努力してまいりたいと思っております。
災害対策についてでございますが、我が国は、自然的条件から多くの生命財産を災害で失っております。国土を損壊し、あるいは国民の生命財産を守る、こういうようなことを予防するということは非常に基本的な国家の責務であると思います。政府といたしましても、これらの対策の強化を図るために、昭和五十九年度において国土庁に防災局を設置するなど防災行政体制の充実強化を図ってまいります。そのほか治山治水事業、国土保全事業の推進、地震予知を初めとする防災に関する科学技術の研究の推進、警戒避難体制の整備、災害時における迅速かつ的確な応急対策の実施、これら等を目途に災害対策に万全を尽くしてまいりたいと思います。
さらに、二十一世紀に向けての環境政策について御指摘を承りましたが、これまで各分野における環境基準の設定実現のために努力して、かなり環境の条件は、外国に比べてみても、改革されてきていると思います。
さらに、環境破壊を防止するにとどまらず、より快適な生活環境、自然環境を創造するという積極的な長期的な視点に立ちまして、技術の進歩を取り入れ、地域計画の策定等をこれから進めてまいる予定でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/11
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012・福永健司
○議長(福永健司君) 井上普方君。
〔井上普方君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/12
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013・井上普方
○井上普方君 日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、質問いたします。
今国会は、総選挙後の特別国会であります。それだけに、国民は選挙時におけるところの各政党の公約を鮮烈に脳裏に刻んでおるのであります。総理の施政方針演説は、本来選挙時の公約が盛り込まれると国民は期待いたしておるはずであります。その期待、公約を見事なまでに裏切ったのが、一昨日の中曽根演説であると私は思うのであります。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
以下、その疑問をただしつつ、意見を交えながら質問いたしたいと存じます。なお、私は、石橋委員長と重複を避けつつ、内政問題を主に質問いたしたいと存ずるのでありますが、総理の御答弁を承っておりますというと、御答弁ははぐらかしたり、すりかえたり、あるいはまた詭弁を弄するような御答弁が多々あったように思われるのであります。で、ここで改めてお伺いいたします。
総選挙の結果は、皆さんも御存じのとおり、自民党は過半数を割り大敗いたしたのであります。その原因につきまして、石橋委員長はるるお述べになりました。特に政治倫理に対して国民の皆さん方が重大なる関心を持っておることを自覚せられず、リンリ、リンリとスズムシのように鳴くばかりと、国民をやゆいたしたのであります。
のみならず、このたびの自民党の大敗の原因は、中曽根内閣の基本姿勢そのものに対する国民の反発であったと私は思うのであります。(拍手)
そこで、この自民党大敗の原因については、総理は、親切な御助言と承るとのみ聞き流し、何ら御答弁がなかったのでありますが、私は、改めてここに中曽根総理にお伺いいたしたいのであります。このような自民党の大敗の原因をどのように御反省になって政治に実現しようとするのか、お伺いいたしたいのが第一点であります。(拍手)
第二点は、田中問題につきまして十二月の二十四日にあなたがお出しになりました総裁声明、田中氏の政治的影響を排除する、こう申されました。しかしながら、これが何ら具体的にあらわれていないので、どのようなことをなさるのか、明確に、具体的にお答え願いたいと存ずるのであります。(拍手)
さて、中曽根経済政策は、考えてみますと、民間任せの経済運営であり、家庭や企業による自助努力という犠牲による福祉でありまして、大幅増税による財政のつじつま合わせと言っても差し支えございません。また、財政緊縮を最優先にいたしまして、経済政策を第二義的にとらえ、国民生活を考慮のほかに置く考え方であると私は断じてはばからないのであります。これでは、アメリカ・レーガン大統領の八四年予算教書にあらわれました弱肉強食、強い者が残ればよい、福祉を切り捨てて顧みない情け容赦のない政策と軌を一にするものであります。(拍手)
さて、私は、我が国経済が持つ潜在成長力を発揮し得る新しい質の成長を図るべく、財政経済の大胆な転換が必要であろうと存ずるものであります。
その基本原則は、第一に、人間中心の国民生活安定向上を図ることであります。第二に、社会的公正を実現することであります。第三は、世界経済の発展と世界平和に貢献することであります。
経済はやっと明るさを示しつつあるように見受けられますけれども、施政方針に言われるような楽観論は断じて考えられないのであります。現在は、外需依存による景気の上向きにすぎません。主としてアメリカの景気、原油値下げによるものでありまして、アメリカの経済の先行きは不安定要素をたくさん内在いたしておりますし、途上国の累積債務問題も暗い影を差しておるのであります。これらを考えますと、我が国の輸出が今後とも大幅増加を続けるとは限りませんし、また、世界経済の制約を無視して増加を続ければ、さらに深刻な貿易摩擦を招きます。
以上のような考えからいたしますならば、内需拡大による堅実な経済こそ基本に据えるべきであると私は主張いたすのであります。(拍手)にもかかわりませず、政府の来年度予算案と経済見通しを見ましても、財政支出増による経済の成長分はゼロではございませんか。
総理は、昨年の春、景気浮揚に役立つ規模の減税を五十八年中に実施するとお約束いたしました。しかしながら、減税帳消しの酒税、物品税の増税を図っておるではございませんか。総理はただいまも、酒税は増収である、こうおっしゃった。まことに詭弁であると私は思う。増収というのは、酒の売り上げが上がって、そして税収が多くなったのを、これを増収というのであります。税率を、ビールにおきましては一九・五%、アルコール全体にいたしまして二〇%以上の税率を上げておるのであります。これを増税と言わずして何でありましょうか。(拍手)
このような増税を行いながら、NHKの受信料を初めといたしまして、公共料金の引き上げや制度改革という名による負担増は一体何たるごまかしてございましょう。私は、景気回復に役立つ規模の所得税の減税を直ちに実施すべしと要求するものであります。そうでなければ、総理みずからが、今日、我が国経済が抱えておりますいわゆる内需拡大を放棄したものと言わざるを得ないのでありますし、国民に対し、うそをついたことになります。不届き千万であり、ふらち千万であると申さなければならないと思います。(拍手)
河本経済企画庁長官は、年内にも、五十九年度中です、四兆円程度の大幅な所得税減税を含む補正予算を組むことも考えるべきではないかと発表されております。政府によって予算案が決定された直後に、しかも、経済の元締めの経企庁長官が早くも補正を組むべきだと言っておられるのであります。事はまことに重大であります。経済企画庁長官に、政府予算案と景気見通し、内需拡大に対する御所見を承りたいのであります。
既に、私ども日本社会党は、個人消費拡大のため、さらに思い切った所得税減税、賃金の引き上げあるいは中小企業向けの投資減税、金融緩和策などを提案しております。いかにお考えになりますか、御答弁をお願いいたします。
また、特に生活関連公共投資の拡大と新しい投資のあり方を具体化すべきであると主張するものであります。
また、内需拡大のため土地価格を安定抑制しなければなりません。経済の停滞と不労所得、不公平の最大の原因となっておりますこの土地価格上昇に対処しなければならないと考えるものでありますが、いかがお考えになりますか、お伺いいたします。
さて、総理大臣の財政方針を一昨日承りまして、私は、風の向きは一向に変わっておらないのに、風見鶏は勝手にくるくると方向を変えたと感ずるのは私一人ではございますまい。(拍手)
総理、あなたは、財政改革の目的は、先ほども再三にわたってお述べになりましたが、「新たな経済社会情勢の進展に即応して財政のあり方を再検討し、その適正な対応力の回復を図る」、これが財政改革の目的であると述べられました。しかし、昨年の演説では、その手段として「増税なき財政再建」の理念のもとに、財政の健全性を回復させることにより財政の対応力を確保すると述べられたのであります。一年前にはこのように述べられておるのであります。ことしの演説には、財政の基本理念である「増税なき財政再建」という言葉もなければ、財政の健全性の回復という目標もありません。基本理念である「増税なき財政再建」を放棄されたのでありますか。財政再建に自信がないのではございませんか。
総理、一体財政再建をどうされるつもりでありますか。私は、総理がお考えになっておる財政再建の本音は、いずれ大増税を実施する以外ない、秋の自民党総裁選挙で再任されるまでは、そのタイミングにあらずということではありませんか。あるいはもう一つの本音は、インフレの起こるのを待っているのではありませんか。調整インフレ政策への転換のタイミングを図っているのではないかと私は危惧いたすのであります。そのような思いが私の頭の中を横切っているのであります。総理は、昭和四十八年当時、田中内閣の通産大臣といたしまして、ドルショックに対応して諸物価を原油価格に歩調を合わせるべきだという調整インフレ論を唱えた御経験もあるだけに、今回、各公共料金の値上げを一斉に認めるなど、どうもその危倶を私は持たざるを得ないのであります。総理の考え方をお示し願いたいと存ずるのであります。
総理、増税もインフレもやらないとおっしゃるなら、また、「増税なき財政再建」とか臨調答申を崩さないとかおっしゃるなら、実行可能な財政再建の具体案をお示しいただきたいのであります。ただいまの御答弁によりますと、ここ二、三日うちに出されるそうでありますが、どうか実行可能な具体案をお示し願いたいと存ずるのであります。
今回、政府は、昭和六十五年度に赤字国債の新規発行をゼロにする……(発言する者あり)赤字国債の新規発行をゼロにする目標を掲げておりますが、私は、これまでと同様ほぼ見果てぬ夢となることは確実であろうと思うのであります。つまり過去の自民党政府の財政再建計画を見ておりますと、どうも最初からできもしない試算の上に、実行する気もない目標を掲げてきたのではないかとさえ思えるのであります。
総理、民主政治とは話し合いを大切にする政治であり、また、総理の掲げた野党との対話をこの際ぜひとも具体化すべきであります。先ほども石橋委員長に対しまして十分対話をするとおっしゃったことは私は評価するものでありますが、さらに予算案あるいは法律案等々、よりよいものに修正できるかどうかということを野党と十分に話し合う必要があろうかと存ずるのであります。自民党の総裁として、修正に応じていただける用意がありや否や、お伺いいたします。(拍手)
次に、福祉の問題であります。
総理や臨調の言うところの日本型福祉社会の骨格となっております自助努力というのは、公的サービスを後退させながら営利的なサービスにしがみつく努力のことではないかと私は憂えるのであります。また、総理の言われる連帯というのは、国が保障すべき福祉でさえ個人の負担と家族主義の助長で家庭に押しつけるものではないかと私は考えるのであります。
今回提出されようといたしております医療保険改悪は、本人にまで負担をさせようというものでございまして、保険制度の根幹を揺り動かすものであります。ただいま石橋委員長に対する御答弁といたしまして、健保制度を守るために一部負担増をお願いした、こう申しました。しかしながら、健康保険制度が始まって以来、勤労者本人に対しまして、給付を一割を持たしたということあるいは二割を持たすということはないのであります。まさに健康保険制度の根幹にかかわるものでございます。私は、そういう意味合いにおきまして、この健康保険改悪に対しましては、断固反対することを表明いたしておきたいと存ずるのであります。
さらに、現在、国民医療費十四兆五千億円のうち製薬並びに検査、機器の業界に支払われるのが五兆円以上になっておるのであります。医療機関の背後にあるこれらの業界は、この長期不況の中でも高い収益率を上げておることは御承知のとおりであります。ここにメスを入れてはいかがでございますか。まず、医療品や医療機器など医療資材をめぐる制度及びその運用の適正化を図る必要があります。医療制度自体も、例えばホームドクター制の導入など根本的な改革を考えるべき時期が来ておると考えるのでありますが、御所見を承りたいのであります。
高齢化社会の到来の中では、老後の生活の直接の支えとなっておる年金がまず重要であります。国民年金、厚生年金に共通する基礎年金を導入しようという今回の政府案につきましては、一定の評価をするのにやぶさかではございません。しかし、高齢者人口の増大で、このままでは年金が破産するといって、将来の公的年金は、保険料は倍アップ、給付水準は二、三割ダウンという途方もないことを考えては、これはお話になりません。切り下げた部分はそれぞれ自分の責任で民間の保険を買え、こういう自助努力を今押しつけておるのではございませんか。
私ども日本社会党は、一、基本年金導入、二、雇用と年金の接続、三、男女平等の年金、年金のない人をなくすること、四、年金財源の確保を内容とする当面する年金改革案を提言しております。現状のまま年金が推移いたしますと、拠出する若い人たちと給付される老人との間に世代間の争いを起こすようなことになりかねないのであります。ですから、総合的な高齢者対策の一環といたしまして、長期展望に立ちながら、国の責任を明確にした——ここが大事なんです。国の責任を明確にした年金改革に急ぎ取り組んでいく必要があると私は思います。総理並びに厚生大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手)
次は、高度情報化社会についてでありますが、この問題は非常に重要なことだと思うのであります。
今まさに、先端技術を駆使したいわゆるINS、高度情報通信システムの具体化が進められておるのでありますが、企業にも家庭にも、そしてまた政治、経済、社会、文化など、すべてにわたって重大な影響を及ぼそうといたしております。しかし、今やってきつつあるこの高度情報化社会は、どうも技術的可能性が先行し、バラ色にとらえられ過ぎで、人間や社会にどんな影響があるかといった検討、対応に大きなおくれがあると思われます。
特に電気通信の持つ公共性、通信主権をどう確保するのか、あるいはプライバシー保護、通信の秘密保持、サービスの安定的な継続供給など、インフラストラクチャーとしての役割は大きいものであります。これらの問題を最優先して考えるかどうかが三十年、五十年先の日本の将来を左右するものであると考えます。当面する目先の利害で動くようなことがあってはなりません。
重要なことは、競争こそが善だとか、独占こそがふさわしいといったような短絡的な判断をすべきではないと思うのであります。利用者、国民の利便にいかに役立つことかということを第一義的に取り上げた改革を推し進めるべきであると思うのでございますが、どうでございましょう。拙速に結論を出すことなく、専門家や利用者等の意見を十分に聞くぐべき段階ではなかろうかと存ずるのであります。中でも、貿易摩擦の解決のためと称して、VANや通信衛星など我が国の通信主権が侵されるがごときアメリカの要求は断固退けるべきであると思います。(拍手)また、VANにつきましても、我が国の持つルールによって厳しく対処すべきことは当然でありませんか。
社会党の基本的考え方は、すでに御提案申し上げておるところでありますが、今後も積極的に提案していく決意であります。総理、いかがでございましょう。
総理が提唱しておりますがん撲滅十カ年総合戦略でありますが、これまで完全に立ちおくれていた若手研究者の育成や活用といった問題にやっと取り組み始めました。評価できる点もございます。しかし、効率的な成果を上げようとおっしゃる割には予算は少のうございます。新規予算はわずか十五億ではございませんか。その上、古い慣習や惰性に流れた予算配分など、抜本的に見直し、改善すべき問題が多いと思うのであります。国公立と民間企業による研究者の相互交流や協力のあり方、人材育成あるいは総理が強調せられております民間資金の活用など、今後早急に具体化しなければ、総合戦略は名ばかりで終わると私は思うのであります。御見解を承りたい。(拍手)
次に、農産物輸入問題についてお尋ねいたします。
我が党は、今日の国民食糧が著しく外国食糧に依存していることを最も強く恐れておるものであります。我々は、国の安全保障の立場からも、これ以上の食糧輸入はとるべきでないという態度をとっております。総理はどう考えるか、お尋ねいたしたいのであります。
難航の牛肉、オレンジ等の日米農産物交渉に当たっては、政府は、これまでしばしばこの国会で言明いたしました、自由化は行わない、輸入枠の拡大は不足分に限るとの態度を貫くかどうか。かつて、グレープフルーツの自由化が抜き打ち的に行われた苦い経験にかんがみまして、この二の舞は断じて行わないと言明してほしいのでございます。御答弁をお願いいたします。(拍手)
石橋委員長は人権差別撤廃条約の批准につきまして質問いたしましたが、国内法の整備を懸命に今行っている最中である、こういう御答弁がございました。しかし、我が国内における最大の人権問題である部落問題は、同和新法が制定せられて三年目に入ります。条約批准を目前にいたしておると私は判断いたすのでございますが、完全解放、差別撤廃のため部落解放行政を一層強化充実する必要があると考えます。悪質な差別事件が頻発いたしております昨今でございますので、その差別事件の実態を明らかにするため、全国的実態調査を行う必要があると考えますが、いかがお考えか、お伺いいたしたいと存じます。(拍手)
このたびの三井三池有明鉱災害は、八十三名の犠牲を出す大惨事となりました。この事故は、防火、消火、避難にわたる複合、ミスであり、これこそ保安を無視した人災と言わなければなりません。政府は、この事態に対し、いかなる対応をしようとしているのか。あわせて、被害者及び家族の救済措置について御答弁を承りたいのであります。
ここで田川自治大臣にお伺いいたします。
あなたは新自由クラブの党首でもございます。これから私たちは、先ほども石橋委員長が申されましたように、本会議、予算委員会等の質疑を通じまして、いわゆる政治倫理の確立を迫ってまいります。もし確立が図られないと判断した場合には、日本社会党は、他の野党と協力し、昨年新自由クラブも一緒になって提案いたしました田中角榮君辞職勧告決議案を再び提案いたします。そのときには、新自由クラブの党首としていかなる態度をおとりになろうとするのか、お伺いいたします。(拍手)
自民党は、さきの党大会で、企業献金の緩和をねらった政治資金規正法の改正に動き始めたように見受けられます。これに対して田川自治大臣は、企業献金の緩和は阻止すると言っておると承っておりますが、本当にそうでありますか、お伺いいたしたいのであります。
また、国会議員が一審で有罪判決を受けた場合、直ちに議員を辞職させるルールをつくるべきだと言われておるようでありますが、これはどうするのでございますか、お伺いいたしたいのであります。
田川自治大臣は、昨年この壇上で、中曽根総理を激しく攻撃いたしました。近来にない名演説とたたえられたのであります。(拍手)また、さきの総選挙の最中、あなたは中曽根総理を指さしまして、あの人の一番危険なところは、権力を維持したり自分の目的を達成するためには心にもないことを言ったり行動に出たりすることです、二つ目には、だれがどう言おうと軍備拡張論者ですと激しく批判いたしておるのであります。(拍手)ところが、この選挙が終わるや国民の保革伯仲国会への期待を裏切り、自民党との統一会派に走ったことは、全く理解することができないのであります。(拍手、発言する者あり)
総理、田川自治大臣とも、戦後二十五年ぶりの連立内閣と言われるようでありますが、政党がその生命とも言える理念をなくしてまで連立をすることが、果たして連立と言えるでありましょうか。理念を捨て去り、政党の利害で動くがごとき連立は、国民を愚弄し、国民に政治不信を助長させる以外の何物でもないと私は思うのであります。(拍手)
私たち日本社会党は、自民党にかわる連立政権を目指すものといたしまして、国民とともにこの問題に重大なる関心を持っておることを付言いたしておきます。
御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/13
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014・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 井上議員にお答えをいたします。
まず最初に、選挙の結果と倫理の問題について御質問がございました。
私は、先ほど来申し上げましたように、選挙の結果につきましてはこれを厳粛に受けとめまして、心をむなしゅうして国民の御期待にこたえるようにしたいと思っております。
確かに、政治倫理の問題につきましては、国民の皆様方の十分な御理解と御納得を得ることができなかったように自分でも考えております。しかし、一年間にわたりまする外交や行革や教育や今御質問がありましたがん政策等諸般の内政問題につきましては、国民の皆様は力強く御支持していただいていると確信しておる次第であります。(拍手)
次に、総裁声明に関しての御質問でございます。
この十二月二十四日に発出いたしました総裁声明につきましては、私の心境を申し上げたのでございまして、誠実に守ってまいりたいと思っております。その精神のもとに組閣を行いまして、また党の再編成も行いまして、その顔ぶれ等もごらんになれば、若干の変化があったことをお知り願えるのではないかと思います。(拍手)あるいはさらに財産の公開制度をともかく実行いたしましたし、あるいは我が党内部におきまして政治倫理の調査会を総裁直結のもとにつくって、既に活動も開始しております。与野党ともに、これらの問題につきましては、実効性ある改革を速やかに促進してまいりたいと念願しますので、御協力をお願い申し上げる次第であります。
次に、「増税なき財政再建」の御質問がございましたが、これは先ほど来申し上げますように、「増税なき財政再建」の理念は堅持して今後も努力してまいるつもりであります。大型間接税の問題につきましては、課税ペースの広い間接税の導入につきましては、現在は考えておりません。
調整インフレの問題につきましては、私は、調整インフレには反対であります。私が通産大臣時代にそういう発言をしたかにお受け取りになっておりますが、そういう発言をしたことはございません。あれは架空の神話であります。
次に、財政再建の具体策について御質問がございましたが、既に、経済の運営に関する「展望と指針」を昨年発表いたしましたが、あの線に沿いまして経済、財政の運営をしてまいりたいと思っております。今のような時代ですから、決まった、固定した数字で目標を決めることは甚だ危険であります。したがいまして、定性的な性格を持った「展望と指針」をつくりまして、そして、いわゆるローリングシステムあるいはリボルビングシステム、繰り返し繰り返しこれを見直していく、そういう弾力性のある制度にこれを改革した次第なのでございます。したがいまして、財政構想もそういう基準に沿って常に見直し見直ししていくという考えに立って財政構想も行うべきものであります。
予算修正に関しましては、現在提案申し上げました予算案が現在におきまして最善のものであると考えまして、これを修正する考えはございません。
次に、経済政策の問題につきましては、先般来申し上げましたが、着実に景気の回復を図る、国際経済摩擦をできるだけ速やかにこれを解消する、特に民需あるいは民間経済活力を重視して、日本のGNPを上げるように努力していく、為替相場の安定を図っていく等々の政策を中心にして、今後推進してまいりたいと思っております。
減税について御質問がございましたが、何しろ所得税で八千七百億円、地方税で三千百億円、一兆一千八百億円というこの減税は、戦後二度目か三度目ぐらいの、たしか私の記憶では二度目ぐらいの大減税であります。この厳しい財政の中でこれだけのことをやるのでございますから、非常な苦労をしておるわけでございます。我々は、これらの財政改革を一歩一歩着実に進めまして、財政の機動力、対応力を回復してまいるようにいたしたいと思っております。
次に、補正予算について御質問がありましたが、五十九年度予算について補正は全く考えておりません。
次に、経済運営につきましては、物価の安定、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大それから持続的な安定成長、雇用の安定、これらのことを中心にいたしまして、自由貿易体制の堅持と対外経済関係の摩擦の解消、世界経済活性化への積極的な貢献、こういうような基本認識に立ちまして積極的努力をしてまいります。こうした経済運営のもとにおきましては、昭和五十九年度の実質経済成長率は四・一%程度は確保でき、消費者物価の上昇率は二・八%、経常収支は五兆四千億円程度、すなわち二百三十億ドル程度の黒字になると見込まれてあると思います。
次に、土地政策でございました。地価は安定的傾向に推移しております。やはりこれは国民生活安定の基礎であると思います。今後とも国土利用計画法の的確な運用、円滑な住宅地の供給あるいは国公有地の提供、民間活力の培養、こういうような対策によりまして地価の安定、住宅建設の推進を図ってまいります。
日本型福祉社会とは何ぞやという御質問でございますが、これは、日本特有の社会連帯の精神それから家庭基盤の強化、民間活力の活用等を中心にした公平で思いやりに満ちた社会づくりを考えていこうというものでございます。社会保障の面におきましては、今後その施策の重点化、効率化を図りつつ、保健、医療、年金、社会福祉等各般の施策を総合的に推進してまいるつもりでございます。
健康保険制度の問題について御質問がございましたが、これは先ほど来申し上げますように、健康保険制度の長期的な持続的な安定を図っていくために、やむを得ざる処置として今回行ったものなのでございます。特に、今掛金を負担している若い層の皆様方が将来にも不安を抱かれないような基盤をしっかり確立しておくという意味において私たちは今回懸命の努力をしたつもりなのであります。それと同時に、退職者医療制度の創設をこれで行っております。この点も特記すべき問題であると思うのであります。
次に、年金のあり方につきましては、先ほど来申し上げたとおり、公的年金制度につきましては、昨年五月の閣議決定に基づきまして、基礎年金の導入などを主とした内容とする年金改正法案を本国会に提出する予定で、公的年金の一元化に向かって努力してまいります。
すなわち、五十八年度におきましては、国家公務員と公共企業体職員の共済組合の統合及び地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を実施いたしました。次に、五十九年から六十一年にかけまして、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の関係調整、統合を図ろうとしておるわけです。以上の措置を踏まえまして、年金現業業務の一元化の整備等を推進しつつ、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了しよう、こういう目的でいま進んでおるわけであります。
高度情報化社会に対する取り組みについて御質問をしていただきましたが、経済発展の重要な戦略的動因と考えまして、いま高度情報社会懇談会というものをつくりまして、私の諮問機関として鋭意検討を願っておるところでございます。
次に、電電公社の改革について御質問をしていただきました。
電電公社の改革は、高度情報社会を実現するためにも非常に重要なてこになるものと考えております。競争原理の導入、電気通信政策全体の改革、これらを考えまして、昭和五十九年一月二十五日閣議決定された行政改革に関する当面の実施方針に基づきまして、今回、改革法案を今国会に提出する予定であります。
次に、いわゆるVAN、付加価値通信について御質問をしていただきましたが、これは今、日米間でも微妙な問題になっておりますが、国際水準を踏まえつつ、できるだけこれを自由化の方向に持っていくという方面で調整してまいりたいと考えております。
農産物自由化の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、国内農産物の需給動向、食糧的安全保障、農家経営の安定等々を踏まえ、それと同時に、国際関係の調整等も考慮いたしまして、日米間において円満にこれを妥結するように、今後努力してまいりたいと思っております。
三池炭鉱、三井三池の問題につきましては、この災害につきましては甚だ遺憾でございまして、御遺族に対して心から哀悼の意を表する次第でございます。
政府としては、災害発生後に通産大臣を本部長とする対策本部を設置し、政府調査団の派遣、現地救護体制の整備あるいはこの原因究明あるいは調査結果を踏まえ、類似災害の再発防止対策等について万全を期し、また、罹災者の遺族等に対する労災保険給付の早期支払いのための体制も整備してまいる予定であります。
同和問題について御質問をいただきましたが、同和問題につきましては、その早期解決を図るべく地域改善対策特別措置法に基づきまして関係施策を推進してまいります。今後、残事業を期限内に達成すべく鋭意努力しているところであり、新たな調査は考えておりません。
次に、対がん政策でございますが、がん制圧につきましては、政府は異常な熱意を持って努力しておるところであり、科学技術会議及び学術審議会の意見も聴取しながら、昨年六月に対がん十カ年総合戦略をつくったところでございます。
それはがんの本態の解明に迫るとともに、その成果を予防、治療に反映させることにより、がん死亡を減少させることを目的にしておりまして、重点的研究課題の設定、集中的、多角的研究の推進、若手研究者の育成、活用、日米を中心とした国際協力の推進、実験材料の供給等支援体制の整備、これらを目的にしまして、五十九年度予算においては四十五億円をこの十カ年計画のために新たに追加した次第でございます。今までの予算等も大幅な増加をいたしまして、これらの予算全体を合算しますと前年度に比し二七%増、約三百六十億円をがん対策に今回は計上しております。
政治倫理につきましては、最初に申し上げましたとおり、厳粛な気持ちで各党各会派の御協力もいただきまして、具体的政策を進めるように努力してまいりたいと思います。
次に、政治資金規正法の問題でございますが、政治資金規正法というものは、各党のよって立つ財政的基盤の相違という問題もございます。また、選挙制度のあり方にも関係している点もございます。したがいまして、各党間で十分論議を尽くして合意を形成していただきたいと思います。
ただ、企業献金について、ややもすれば企業献金は悪であるという先入観がありますけれども、企業も一つの社会的存在として、その政治活動の自由は保障されておるのであります。したがって労働組合と同じように企業も社会的存在として活動しているということを我々は着目しなければならぬと思っております。最初から企業献金が悪であると決めてかかることはどうかと思う次第でございます。
以上で御答弁を終わり、あとは関係大臣に御答弁願います。(拍手)
〔国務大臣河本敏夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/14
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015・河本敏夫
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問の第一点は税に対する問題でありますが、税制は経済政策に大きな影響がございまして、いわば経済政策と表裏一体の関係にあると言っても過言ではないと思います。
この観点に立ちまして、若干の税制改革につきまして、大蔵大臣と自民党の政策の責任者に対しまして私から意見具申をいたしまして、今検討をお願いしておるところでありますが、内容を簡単に申し上げますと、臨調答申の中に、直接税と間接税の比率、直間比率を見直せ、こういう趣旨のことが書いてありますが、御案内のように、今直接税が七一%、間接税は二九%になっておりまして、非常に不均衡になっておりますので、これを見直す場合にはできるだけ大規模な方がよろしい。直接税を減して間接税のシェアをふやすということでありますが、直接税を減すということは所得税の減税ということであります。これはできるだけ大規模な方がよろしい、そうしてしかも早い方がよろしい、こういう趣旨の意見具申をいたしておるところであります。
御参考までに申し上げますと、昭和四十九年に政府は所得税の減税をしておりますが、そのときは一兆八千億であります。今の経済規模に直しますと約四兆、こういうことになりますが、それなども一つの参考材料になるのではないか、こういうことを考えまして、以上のようなことを今検討をお願いしておるというのが現段階でございます。
次に、補正予算の問題についてお話がございましたが、今我が国の当面する大きな課題は貿易摩擦を解消するということでありますが、この解消のためには、やはり内需の拡大が必要であります。国内の購買力の拡大をしないでこの問題は解決できませんので、政府といたしましては内需の拡大に全力を尽くさなければなりませんが、そのためには、今後財政政策と金融政策を機動的に運営をする必要がございます。この点につきましては、政府部内で合意を得ておるところでございますが、さて今の段階で、それじゃ補正予算を組むのか、こういう御質問でございますが、大きな変化でもあれば別でありますが、現時点では、現在のところ補正予算のことは考えておりません。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣渡部恒三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/15
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016・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 医薬品、医療機器等に関する井上先生の御指摘は、きわめて重要な問題であります。厚生省といたしましても、医療費適正化対策の一環として、薬価基準の適正化、診療報酬の合理化等を図るほか、医薬品流通の適正化等種々の対策を講じております。今後とも、これらの対策を強力かつ総合的に推進するため、医療機器の共同利用についても地域医療計画の具体化の過程等で検討してまいりたいと考えております。
医療制度の問題でありますが、御指摘のホームドクター制は、国民一人一人が日常の健康管理、相談にあずかる医師を持つということであり、医師と患者との信頼関係ということもあり、大変重要な望ましい方向であると考えております。ホームドクターに、たばこや酒を吸い過ぎたり飲み過ぎたりしないように相談して健康を守るというようなこと等もありまして、極めて重要でありますので、このことも含めて、医療法改正を第一歩として、二十一世紀に備えた医療制度全般の見直しを進めてまいりたいと思います。
最後の年金改革の問題について、社会党の御提案につきましては、基本的にはいずれも重要な課題であります。中でも、国民共通の給付を導入する問題や特に婦人の年金保障の問題等につきましては、年金改革の今後のかなめになる問題であります。また、現行制度のまま推移するとすれば、今後年金水準が増大し、御指摘のようにやがて世代間のバランスを損なうことになることは、先ほど総理が申し上げたとおりであります。年金改革の際の世代間の公平の確保につきましては、公的年金制度が国民の社会連帯の仕組みであることから、制度の長期安定を確保するためには、何よりも制度を支える現役世代と年金を受給する老齢世代とのバランスのとれた公平な制度であることが重要であります。
井上先生から、一日も早く年金制度の改革を急げという大変高邁な見識ある御意見、心を打たれました。年金改革は一日も早くこれを実現しなければなりませんので、全力を尽くして取り組んでまいりたいと思いますので、御協力をお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/16
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017・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 井上議員にお答えをいたします。
まず、田中辞任勧告決議案についてでございますが、新自由クラブの代表として答弁をいたしますが、政治倫理の問題は、政治家の良心と責任に帰着する問題であります。したがって、お尋ねの田中辞任勧告決議案に対する賛否は党議などで拘束をすべきものではございませんで、議員個人個人の良識に従って態度を決めるべき問題であると思います。しかしながら、新自由クラブといたしましては、この決議案がもし国会に出されたならば、議員全員はこぞってこれに賛成をすることになっております。
それから、政治資金規正法についてでありますけれども、私も、この政治資金規正法の問題については、大変重要なことであると認識をしております。しかし、企業献金が即悪だとは私も考えてはおりません。政治資金の制度は選挙制度のあり方と大変密接な関係を持っておりますし、また、政党法の制定の意見なども今出ておりますから、そういう時期に企業献金の枠を広げるということはいかがかと思っております。
いずれにいたしましても、この政治資金制度は、現実問題として各党の政治活動そのものに直接関連してくる問題でございますから、各党間において十分論議をしていただいて合意をしてくださるようにお願いをいたします。
それからもう一つ、一審有罪議員の扱いについて御質問がございましたが、この問題につきましては、既に昨年末に新自由クラブと自民党との間に政策合意ができておりまして、この政策合意の政治倫理の確立の中で、二項目に次のようなことが合意して成立をしております。それはどういうことかと申しますと、憲法第五十八条で言うところの「院内の秩序をみたした議員を懲罰することができる。」の解釈の範囲内で国会法の改正の措置を検討する、こういうことでございまして、これは自民党総裁と新自由クラブ代表とが党幹部立ち会いのもとに正式に文書で決めた問題でございまして、これは、こういうことを取り決めましたのは、贈収賄などの破廉恥罪で一審有罪の判決を受けた議員が責任をとらないで政治活動をやっているということはいかがなものか、こういうことを少し制約したらどうかというような考え方に基づいて、この話ができたのでございます。
ただ、この問題は憲法とのかかわり合いがございますけれども、既に自民党と新自由クラブとの間でもう話し合いを始めております。また、この国会で今度政治倫理に関する協議会が設置されましたので、この協議会でもこの問題を十分に論議をしていただきたいと存じております。
最後に、連立内閣についての御意見がございましたけれども、私どもは、政党が存立している以上他党を批判するのは当然でございまして、政党の存立意義を鮮明にするには、自民党ならずとも社会党も批判して今日までやってまいりました。
また、選挙が終わって過半数をとらない政党があれば、複数の政党で政権を担当するということはヨーロッパなどでは日常茶飯事に行われているのでございまして、ヨーロッパなどの例も見まして、お互いに選挙のときに意見を闘わしても、選挙が終わって重要な政策合意ができれば、複数で政権を担当するということは民主主義議会政治で当然行われている問題でございます。しかも今回は、新自由クラブが立党以来重要政策として、また基本政策として掲げてきました政治倫理の確立あるいは行政改革、教育改革、平和外交の推進、こういうような問題について自由民主党との間に政策合意が立派にできているのでございます。(拍手)ですから、ただ単に結び合っただけではなく、重要な政策で合意をしているのでございます。
また、ただいまこの席で総理大臣がおっしゃられたように、総選挙について反省もせられておりますし、政治倫理に対する取り組み方も大変従来よりは積極的になっていらっしゃるのでございまして、そういうことを考えますと、私どもは十分自由民主党と一緒に政権を担当できる確信を持ったのでございます。従来の政治がとかく批判や対立だけでやっている、そういうようなパターンを繰り返しただけでは政治の流れというものは変わらないのです。一〇〇%主張が通らなくても、五〇%、六〇%でも、少しでも我々の政策が実現できるように努力をするのが政治家の務めであると考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/17
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018・古賀誠
○古賀誠君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明九日午後二時より本会議を開きこれを継続されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/18
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019・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/19
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020・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/20
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021・古賀誠
○古賀誠君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、大蔵委員長提出、昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案は、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/21
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022・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/22
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023・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金に
ついての所得税及び法人税の臨時特例に関
する法律案(大蔵委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/23
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024・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。大蔵委員長瓦力君。
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昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金につ
いての所得税及び法人税の臨時特例に関する
法律案
〔本号末尾に掲載〕
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〔瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/24
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025・瓦力
○瓦力君 ただいま議題となりました昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。
この法律案は、本日大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものでありまして、昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金に係る所得税及び法人税について、その負担の軽減を図るため、同補助金のうち、個人が交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人が交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に事業の用に供する固定資産の取得または改良に充てた場合には、圧縮記帳の特例を認めようとするものであります。
なお、本案による国税の減収額は、昭和五十八年度において約十一億円と見積もられますので、内閣の意見を求めましたところ、稲作転換の必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。
以上がこの法律案の提案の趣旨とその概要であります。
何とぞ速やかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/25
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026・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/26
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027・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/27
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028・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X00419840208/28
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