1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十九日(木曜日)
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議事日程 第十二号
昭和五十九年三月二十九日
午後一時開議
第一 輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一
部を改正する法律案(内閣提出)
第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第四 所得税法等の一部を改正する法律案(内
閣提出)
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○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
人事官任命につき同意を求めるの件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出)中修正の件
昭和五十九年度一般会計暫定予算
昭和五十九年度特別会計暫定予算
昭和五十九年度政府関係機関暫定予算
日程第一 輸出保険法及び輸出保険特別会計法
の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 法人税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第四 所得税法等の一部を改正する法律案
(内閣提出)
在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
する外務公務員の給与に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出)
消防施設強化促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
午後二時四十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/0
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001・福永健司
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。
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議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/1
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002・福永健司
○議長(福永健司君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
宇野宗佑君から、四月三日より十二日まで十日間、平泉渉君から、四月四日より十一日まで八日間、石橋政嗣君、土井たか子君及び八木昇君から、四月八日より十七日まで十日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/2
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003・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
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人事官任命につき同意を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/3
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004・福永健司
○議長(福永健司君) お諮りいたします。
内閣から、人事官に内海倫君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/4
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005・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
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国立学校設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出)中修正の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/5
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006・福永健司
○議長(福永健司君) お諮りいたします。
内閣から、国立学校設置法の一部を改正する法律案中修正したいので、国会法第五十九条によって承諾を得たいとの申し出があります。
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国立学校設置法の一部を改正する法律案中修正
の件
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/6
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007・福永健司
○議長(福永健司君) 本件を承諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/7
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008・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、承諾するに決しました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/8
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009・古賀誠
○古賀誠君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、昭和五十九年度一般会計暫定予算、昭和五十九年度特別会計暫定予算、昭和五十九年度政府関係機関暫定予算、右三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/9
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010・福永健司
○議長(福永健司君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/10
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011・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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昭和五十九年度一般会計暫定予算
昭和五十九年度特別会計暫定予算
昭和五十九年度政府関係機関暫定予算発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/11
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012・福永健司
○議長(福永健司君) 昭和五十九年度一般会計暫定予算、昭和五十九年度特別会計暫定予算、昭和五十九年度政府関係機関暫定予算、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。予算委員長倉成正君。
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昭和五十九年度一般会計暫定予算及び同報告書
昭和五十九年度特別会計暫定予算及び同報告書
昭和五十九年度政府関係機関暫定予算及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔倉成正君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/12
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013・倉成正
○倉成正君 ただいま議題となりました昭和五十九年度一般会計暫定予算外二案につきまして、予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、暫定予算の概要について申し上げます。
この暫定予算三案は、昭和五十九年度総予算の年度内成立が困難となりましたので、四月一日から十一日までの期間について編成されたものであります。
一般会計暫定予算の歳出総額は三兆三百九十七億円でありまして、暫定予算期間中における人件費、事務費等行政運営上必要最小限度の金額を計上し、新規の施策に係る経費は原則として計上いたしておりません。
ただし、生活扶助基準の引き上げなど教育及び社会政策等の配慮から特に措置することが適当と認められるものについては、所要の経費を計上いたしております。
また、公共事業関係費については、直轄災害復旧事業費のほか、直轄の維持修繕費等については暫定予算期間中の所要額を計上いたしております。
また、歳入総額は二百八十六億円でありまして、暫定予算期間中の税収及び税外収入の見込み額を計上いたしております。したがって、三兆百十一億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りについては、必要に応じ大蔵省証券を発行できることにいたしております。
特別会計及び政府関係機関につきましても、一般会計の例に準じて暫定予算が編成されております。
この暫定予算三案は、昨二十八日予算委員会に付託され、本二十九日竹下大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行いました。
質疑は国政の各般にわたって行われ、特に、農産物の自由化、金融の自由化等をめぐる日米経済摩擦の解消策、付加価値通信網、いわゆるVANの自由化と電電公社の対応、敵基地攻撃と自衛権の範囲、暫定予算の性格等について熱心な質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて、本日三案に対する質疑を終了し、引き続き採決いたしましたところ、暫定予算三案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/13
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014・福永健司
○議長(福永健司君) 三案を一括してを採決いたします。
三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/14
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015・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
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日程第一 輸出保険法及び輸出保険特別会計
法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/15
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016・福永健司
○議長(福永健司君) 日程第一、輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。商工委員長梶山静六君。
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輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改
正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔梶山静六君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/16
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017・梶山静六
○梶山静六君 ただいま議題となりました輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、発展途上国等における累積債務の増大等に見られる最近の国際経済環境の悪化に伴い、輸出貨物の代金等の回収に係る危険が増大し、また、発展途上国等の債務の繰り延べの実施による輸出保険の保険金の支払いが急増している状況等にかんがみ、輸出保険制度の機能の充実を図ろうとするものであります。
その主な内容は、
輸出保険法につきましては、
第一に、輸出代金保険の付保率及びてん補率の上限を百分の九十五から百分の九十七・五に引き上げること。
第二に、輸出手形保険の付保率及びてん補率を自分の八十から百分の八十二・五以内とすること。
第三に、委託販売輸出保険及び海外広告保険を廃止すること。
輸出保険特別会計法につきましては、当分の間、現行規定による借入金のほか、借入金債務を弁済するため、一定の限度内で借りかえをすることができること等であります。
本案は、去る二月二十四日当委員会に付託され、三月二日小此木通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、三月二十七日質疑を行い、同日質疑を終了し、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/17
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018・福永健司
○議長(福永健司君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/18
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019・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 法人税法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第三 租税特別措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
日程第四 所得税法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/19
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020・福永健司
○議長(福永健司君) 日程第二、法人税法の一部を改正する法律案、日程第三、租税特別措置法の一部を改正する法律案、日程第四、所得税法等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。大蔵委員長瓦力君。
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法人税法の一部を改正する法律案及び同報告書
租税特別措置法の一部を改正する法律案及び同
報告書
所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告
書
〔本号末尾に掲載〕
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〔瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/20
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021・瓦力
○瓦力君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
初めに、三法律案の主な内容を申し上げます。
まず、法人税法の一部を改正する法律案につきましては、現下の財政事情等にかんがみ、法人税の延納制度を廃止するほか、課税の公平を一層推進する等のため、所要の改正を図ることとしております。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、第一に、法人税の税率を二年間臨時的な措置として一・三%引き上げることとしております。ただし、中小法人等に対する軽減税率は一%の引き上げにとどめることとしております。
第二に、法人税の欠損金の繰り戻しによる還付制度につきまして、二年間、原則としてその適用を停止することとしております。
第三に、エネルギー利用効率化設備等につきまして、所要の投資促進措置を講ずることとしております。
第四に、土地住宅税制につきまして、特定の民間再開発事業に係る買いかえの特例、父母等から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の特例を設ける等の措置を講ずることとしております。
第五に、企業関係の租税特別措置の整理合理化、普通乗用自動車の物品税の軽減税率の引き上げを行うこととしております。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきましては、最近における所得税の負担状況等にかんがみ、その負担の軽減を図るため、初年度八千七百億円に上る所得税減税を実施するとともに、課税の公平を一層推進するための措置を講ずることとしております。
まず第一に、所得税負担の軽減を図るため、基礎控除等の人的控除をそれぞれ四月円引き上げ三十三万円とするほか、給与所得控除の拡充を行うこととしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、夫婦と子供二人の四人世帯の場合で二百三十五万七千円となります。
第二に、所得税の税率につきまして、その累進構造を若干なだらかなものとすることとしております。
第三に、配偶者控除等の適用要件である給与所得等の所得限度額を四万円引き上げて三十三万円とするほか、所要の措置を講ずることとしております。
第四に、課税の公平を一層推進するため、事業所得等を有する者の帳簿書類の備えつけ制度を設ける等の措置を講ずることとしております。
第五に、所得税の減免等を受けることができる災害被害者の所得限度額等を五割引き上げることとしております。
以上の三法律案につきましては、去る三月二十三日竹下大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、参考人から意見を聴取する等慎重に審査を行いましたが、それらの詳細は会議録に譲ることとします。
かくて、昨二十八日質疑を終了し、次いで討論を行い、順次名案について採決しました結果、三法律案はいずれも多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、三法律案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/21
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022・福永健司
○議長(福永健司君) 三案につき討論の通告があります。順次これを許します。奥野一雄君。
〔奥野一雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/22
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023・奥野一雄
○奥野一雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、所得税法等の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論を行うものであります。
今日、国民は、景気の回復と生活の安定向上を心から求めております。にもかかわらず、政府は相変わらず五十九年度も超緊縮予算を組み、いわゆる減量経営を国家財政にそのまま持ち込んで、国民生活犠牲の反動政治を強行しようとしております。
言うまでもなく、大幅減税の実現は長い間の国民の願望であり、昨年十二月の総選挙において政府並びに各党はこぞってこのことを国民に対して公約したのであります。しかしながら、五十八年度一千五百億円、五十九年度一兆円という今回の減税規模は、景気浮揚に役立つ相当規模の減税という昨年の与野党合意に反するばかりでなく、過去七年聞の課税最低限据え置きによって生じた実質大増税の埋め合わせにもなっておりません。しかも、財源を法人税や酒税、物品税などの増税で賄うことによって減税の効果は減殺され、こうした間接税と公共料金の引き上げによって一世帯平均三万四千円もの負担増となると言われておるのであります。まさに今回の減税案は、国民の切望する景気回復と生活向上に何一つ役立つものではないと言わざるを得ません。
先般の与野党合意によっていわゆるパート減税の二万円上積みの約束がなされたとは言うものの、その額はいまだ極めて不十分であります。また、内職はパートと事実上同じ労働内容であるにもかかわらず、その非課税額が著しく低い状態に置かれているという制度上の問題もいまだ解決されておりません。我が党は、少なくとも過去の物価上昇によってもたらされた実質増税を解消する水準にまで課税最低限度額を早急に引き上げるよう、重ねて強く要求するものであります。
さらに、所得税の量低税率の一〇%から一〇・五%への引き上げ、最高税率の七五%から七〇%への引き下げは、まさしく高額所得者優遇のにせ減税であって承服できません。利子配当所得の分離課税の恩恵によって、高額所得者、大資産家の実効税率が実際には四〇%程度の低い水準にあることは周知の事実であり、今回の最高税率引き下げはこの不公平をますます拡大するものであります。所得税の税率の刻みは贈与税、相続税の税率と連動しており、今回の措置はこの点からも高額所得者への二重三重の優遇措置であります。我が党は、このような減税に名をかりた大企業、大資産家優遇の不公平拡大に断固反対するものであります。
投資減税の規模も今回一千億円にも満たず、しかも中小企業向け投資減税はわずか二百億円で、とても中小企業の振興、景気回復に役立つとは思えないのであります。
政府は、従来、減税のために臨時的財源は使わないと主張してきたにもかかわらず、今回財界の圧力に屈して法人税の引き上げを二年の時限立法としたことは、まさに場当たり的な御都合主義だと言わねばなりません。
同時に、法人税を大企業、中小企業の二段階区別だけで基本的には一律に課税する現行制度は、中小零細企業には不利で、ごくわずかな巨大企業を極めて優遇するものとなっております。大企業に対する法人税の累進課税の導入を改めて要求するものであります。
さて、今回の所得税法等の改正案で最大の問題は、申告納税者、とりわけ事業所得者に対する記帳義務化の問題であります。
納税者の自主申告権、すなわち、納税者が自分の所得を自分で計算し、その上で税額を決め、これを自主的に申告する権利を基礎とする今日の申告納税制度は、憲法の国民主権の原理を税法上に適用したものとして、戦後の租税民主主義の根幹をなす制度の一つであります。記帳義務化、帳簿書類の保存義務、処分取り消し訴訟における挙証責任の納税者への転嫁など今回の一連の法改正は、特に零細な事業者に過大な負担を負わせ、安易な推計課税の横行と税務当局の権力肥大化をもたらし、事実上戦前の賦課課税制度に回帰すると言っても過言ではない大改悪であります。これは納税者の基本的な権利としての自主申告権を否定する重大な憲法違反であります。
政府は、記帳義務化の理由をいわゆるクロヨン、トーゴーサンといった税負担の不公平感の軽減措置の一環であると説明しております。しかし、この問題を不公平税制の典型であるかのように宣伝し、公務員と民間労働者の分裂を図り、中小零細企業、農漁民、医師、サラリーマンなどの間の反目と反発をあおり立てることは根本的に間違っております。申告納税制度との関係で言えば、国民の不公平感の原因は、納税者の大多数を構成するサラリーマンの自主申告権が源泉徴収制度によって奪われていることこそが問題であるのであります。したがって、その解決の方策は事業所得者などに対する記帳義務と徴税強化にあるのではなく、サラリーマンに対する自主申告権の付与にあるのであります。
今日、不公平税制の是正は国民の広範な世論となっております。言うまでもなく、不公平税制とは、所得税法、法人税法、租税特別措置法などの中に組み込まれた制度上、税制上の大企業、大資産家優遇措置であります。例えば国税庁の調査でも明らかなように、マル優、非課税貯蓄申請数は五十八年度の数字で五億九千万口座にも達し、高額所得者、資産家の脱税の温床となっていることは周知のとおりであります。にもかかわらず、総合課税を目指して創設されたグリーンカード制は実施延期のまま放置され、遠からず消え去る運命にあります。大企業の貸倒引当金、退職金引当金等の繰り入れ率と使用実績との甚だしい乖離の実態にも何ら根本的なメスが入れられておりません。
減税を値切り、不公平税制を温存し、勤労者、中小零細企業者に対する徴税攻勢を強める今回の改正案は、まさに弱肉強食、弱い者いじめの税制改正なのであります。今日、我が国財政の現状を見るとき、財政再建のために税制の抜本的な見直しと改革が必要なことは言うまでもありません。問題は改革の理念であり内容であります。
税制において最も重要なことは公平の確保であります。国民は等しからざるを憂えるのであります。大蔵省が執拗に準備を進めている大型間接税の導入は、もしそれが実施されたならば、いわゆる大衆課税として低所得者により重い税負担を課し、中小零細企業の営業と暮らしを破壊し、社会的不公平を決定的に拡大するものとなるに違いありません。我が党は、このような大型間接税の導入には断固反対であります。
今政府がなすべきことは、安易な大衆増税の道に走ることではなく、あらゆる不公平税制を徹底的に洗い出して、勇気を持ってその改革に真正面から取り組むことであるということを申し上げまして、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/23
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024・福永健司
○議長(福永健司君) 熊谷弘君。
〔熊谷弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/24
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025・熊谷弘
○熊谷弘君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました三法律案に対しまして、賛成の意見を表明するものであります。
御案内のとおり、我が国経済は、二度にわたるオイルショックにもかかわらず順調な経済発展を遂げてまいりましたが、その間に我が国の財政は、税収が伸び悩む一方、国債に依存するという極めて厳しい状況に至り、昭和五十三年以来減税が見送られてきたところでありますが、国民各層の強い期待にこたえ、今回の税制改正におきまして、苦しい財政事情の続く中で七年ぶりに大幅な所得税減税を実行し、もって国民の期待に最大限にこたえようとされた政府の努力に対しまして、私はこれを極めて高く評価するものであります。(拍手)
第一に、法人税法の一部を改正する法律案につきましては、法人税の延納制度を廃止する等の措置は、現下の厳しい財政事情の中においてやむを得ないものと考えます。
第二に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、臨時の措置として法人税率の引き上げ等が図られておりますが、今回大幅な所得税減税を行う一方、最大限の歳出削減等の努力とあわせ考えるとき、やむを得ない措置と認められるところであります。
また、中小法人等に対する軽減税率について所要の配慮を行っております点も評価できるものであります。
また、準備金及び特別償却等の租税特別措置について厳しい見直しにより整理合理化が実行されていることは、税負担の公平確保の見地から高く評価されるところであります。
さらに、民間活力の促進を図るためエネルギー利用の効率化等の設備投資減税を行う等、厳しい財政事情の中においても可能な限りの配慮が行われており、時宜を得た措置と認められるものであります。
第三に、所得税法等の一部を改正する法律案につきましては、国民の期待に最大限にこたえて、初年度八千七百億円に上る大幅な所得税減税を行うこととした政府の努力に対しましては、深く敬意を表するものであります。(拍手)
その内容を見ますと、基礎控除等の人的控除をそれぞれ四万円引き上げて三十三万円とし、給与所得控除も所要の引き上げが行われており、これにより夫婦と子供二人の給与所得者の課税最低限は二百三十五万七千円となります。これは先進諸国の課税最低限を上回る極めて高い水準であります。
また、以上の改正とあわせて、所得税の税率の累進構造を全体としてなだらかなものとし、中堅所得者層を中心として負担感が緩和されるような見直しが行われているほか、あらゆる所得階層にとって負担増とならないよう工夫されており、きめ細かな配慮が見られるのであります。
このほか、障害者控除等特別の人的控除額の引き上げなど、各般の控除について制度の趣旨、目的に応じた拡充が行われていることも、まことに適切な措置と認められるのであります。
さらに、課税の公平を一層推進するための措置として、納税環境の整備のため、一定の事業所得者等について、納税者の実態にも十分配慮しつつ記帳制度を設ける等の措置が講じられておりますことは、申告納税制度の定着と適正かつ公平な課税の実現を図る見地から極めて意義のあるものであり、大幅な所得税の減税と相まって、所得税制度に対する国民の信頼を高める時宜を得た措置と考えるのであります。
以上申し上げました理由により、三法律案に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/25
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026・福永健司
○議長(福永健司君) 日笠勝之君。
〔日笠勝之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/26
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027・日笠勝之
○日笠勝之君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法等、租税特別措置法、法人税法のそれぞれ一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。(拍手)
私は、まず国民の大多数が希望しておることは、長かった不況のトンネルから脱出して一日も早く経済的に安定を取り戻したいということであり、その国民の意思がさきの総選挙において政府・自民党に対する厳しい審判となってあらわれたと断ぜざるを得ません。(拍手)我々公明党は、海外要因に刺激され、ようやく景気回復の兆しを感じられるようになった今こそ一兆七千百億円の減税を実施し、物価の上昇と可処分所得の低下に悩む国民に対して一縷の望みを与えるべきであると主張してまいりました。
ところが中曽根総理は、景気浮揚に役立つ相当額の減税という与野党合意に対して、総選挙では断固実行すると公約していながら、現実には所得税、住民税合わせて一兆一千八百億円にとどめ、さらにその上増税は行わないとの公約を破り、酒税、物品税、法人税など減税額を上回る大幅増税を断行したのであります。このような中曽根内閣の姿勢は、国民に対する背信行為である上、議会制民主主義を後退させるものと言わざるを得ません。(拍手)
また予算修正問題では、公明党は社会党、民社党、社会民主連合の他野党と協力し、減税の上積み、大衆増税の撤回など極めて現実的な共同修正要求を政府・自民党に提示し、その実現を迫ったのであります。しかし、政府・自民党の回答が給与所得控除の最低控除額を二万円引き上げ、パート収入者の減税上積みにとどまったことはまことに遺憾であります。この際私は、減税上積みの立法措置を政府・自民党が今国会において誠実に実行されることを強く要求するものであります。(拍手)
以下、直接税三法の改正案に反対する上な理由を申し述べます。
反対する第一の理由は、さきにも述べましたように、所得税の減税額を圧縮する上に、その見返りに大幅増税を強行し、減税の景気浮揚効果などを低下させていることでございます。
我が国経済は内需においてなお低迷し、特に個人消費は伸び悩んでおります。内需の停滞が中小企業に厳しい景気をもたらし、地域間、業種間格差を拡大し、依然として失業、倒産を高水準で推移させているのであります。家計面では、所得税減税による負担軽減は大衆増税、公共料金の値上げなどによって帳消しになり、生活防衛には役立っておりません。このような事実は、国民が所得税減税に期待した景気浮揚、生活防衛、税負担の公平化などの効果を抹殺してしまうものであります。
また、所得税の最低税率を引き上げ、その適用課税所得を縮小させることは、大衆課税の強化を進めるものであり見逃しにはできません。申告納税制度の見直しも、不公平是正の効果が疑わしいばかりか、逆に訴訟面で納税者に著しい不利益をもたらすことが予測されるなら、国民の合意を得るにはほど遠いものであります。
反対理由の第二は、中小零細企業に対して極めて厳しい法人税の税率引き上げが強行されていることであります。
申すまでもなく、我が国経済財政の主要課題は、世界経済の景気回復、物価安定などの好材料を生かしつつ内需拡大によって景気浮揚を図り、経済を安定成長軌道に乗せ、その基盤に立ち財政再建を推進することであります。法人税の税率引き上げは、中小企業の設備投資意欲を減退させるばかりか、その措置が二年間の時限立法とされていることから、二年後の増税延長、他の大衆増税との入れかえなどさまざまな憶測を呼び、経営の不安定要因を増加させるものであります。中小企業に対する設備投資減税も我々の要求を大きく下回っていることから、その景気浮揚効果に疑問を抱かざるを得ません。
また、政府が所得税減税の見返りとして大幅増税を強行しながら、利子配当所得に対する課税の適正化など不公平税制の是正に極めて消極的であることも反対する理由の一つであります。
最後に、もう一つ申し上げたいことは、政府が、将来の高齢化社会の到来に対しどのような税制で臨むのか、明確な指針を持たないことであります。十年後に政府が期待している年金や医療が実現したとしても、五十九年度予算の社会保障費の四倍を超えることは必至であります。委員会の議論の中で、この重要な将来の姿が明確に示されなかったことはまことに遺憾であります。
政府が、現在及び将来に対して、国民に安心と希望を与える税体系を一日も早く確立することを強く要望し、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/27
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028・福永健司
○議長(福永健司君) これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/28
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029・福永健司
○議長(福永健司君) 三案を一括して採決いたします。
三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/29
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030・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/30
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031・古賀誠
○古賀誠君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/31
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032・福永健司
○議長(福永健司君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/32
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033・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤
移する外務公務員の給与に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/33
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034・福永健司
○議長(福永健司君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長片岡清一君。
―――――――――――――
在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
する外務公務員の給与に関する法律の一部を
改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔片岡清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/34
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035・片岡清一
○片岡清一君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の内容は、
第一に、ブルネイ及びセントクリストファー・ネイビスに日本国大使館を新設すること。
第二に、軍縮委員会の名称変更に伴い、軍縮委員会日本政府代表部の名称を軍縮会議日本政府代表部に改めることであります。
本案は、二月二十二日委員会に付託され、三月一日安倍外務大臣より提案理由の説明を聴取した後質疑に入り、三月二十七日これを終了し、本二十九日採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し全会一致をもって附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/35
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036・福永健司
○議長(福永健司君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/36
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037・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/37
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038・古賀誠
○古賀誠君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、消防施設強化促進法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/38
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039・福永健司
○議長(福永健司君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/39
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040・福永健司
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
―――――――――――――
消防施設強化促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/40
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041・福永健司
○議長(福永健司君) 消防施設強化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。地方行政委員長大石千八君。
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消防施設強化促進法の一部を改正する法律案及
び同報
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔大石千八君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/41
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042・大石千八
○大石千八君 ただいま議題となりました消防施設強化促進法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
現行の法律では、人口急増市町村における消防施設の整備に係る国庫補助率について、通常の三分の一以内から二分の一以内に引き上げる特例措置を昭和四十九年度から同五十八年度まで講ずることとなっております。しかしながら、昭和五十九年度以降においてもなお相当数の人口急増市町村の存在が予想され、これら市町村における市街地の拡大等に伴う消防施設の整備を緊急に行う必要があります。
本案は、このような状況にかんがみ、人口急増市町村における消防施設の整備に係る国庫補助率を二分の一以内とする措置を引き続き昭和六十三年度まで講ずるとともに、政令で定める市町村について、この補助率を七分の三以内とする特例を定めようとするものであります。
本案は、二月二十八日当委員会に付託され、三月一日田川自治大臣から提案理由の説明を聴取し、三月二十七日質疑に入り、同日質疑を終了しました。
本二十九日、日本共産党・革新共同提出の修正案について趣旨説明を聴取し、次いで、討論の申し出もなく採決を行いましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の五党共同提案により、消防力の強化等七項目にわたる附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/42
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043・福永健司
○議長(福永健司君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/43
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044・福永健司
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/44
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045・福永健司
○議長(福永健司君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十九分散会
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110105254X01219840329/45
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