1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月十八日(水曜日)
午前十時六分開会
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委員の異動
七月十四日
辞任 補欠選任
刈田 貞子君 高桑 栄松君
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出席者は左のとおり。
委員長 穐山 篤君
理 事
山東 昭子君
原 文兵衛君
丸谷 金保君
飯田 忠雄君
委 員
石本 茂君
梶木 又三君
河本嘉久蔵君
藤田 栄君
星 長治君
森下 泰君
矢野俊比古君
柳川 覺治君
吉川 博君
片山 甚市君
菅野 久光君
高桑 栄松君
近藤 忠孝君
中村 鋭一君
美濃部亮吉君
国務大臣
国 務 大 臣
(環境庁長官) 上田 稔君
政府委員
環境庁長官官房
長 加藤 陸美君
環境庁長官官房
審議官 大塩 敏樹君
環境庁水質保全
局長 佐竹 五六君
事務局側
常任委員会専門
員 桐澤 猛君
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本日の会議に付した案件
○湖沼水質保全特別措置法案(内閣提出、衆議院
送付)
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001・穐山篤
○委員長(穐山篤君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る十四日、刈田貞子君が委員を辞任され、その補欠として高桑栄松君が選任されました。
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002・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 湖沼水質保全特別措置法案を議題といたします。
私から大臣に御質問をいたしたいと思います。
理事会の御了解を得まして、委員長から質問をするということになりましたので、その点御了承いただきたいと思います。
この湖沼法案第三十条の括弧書きの中の「経過措置に関する罰則」は、どのような種類の義務の違反に対し設けられることになるのか、改めてこの際明確にしていただきたいというふうにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/2
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003・上田稔
○国務大臣(上田稔君) 御質問の点につきましては政府委員から答弁をさせますが、湖沼法案第三十条の規定の運用につきましては、本委員会の御審議において御指摘のあった点を十分踏まえまして、慎重に対処してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/3
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004・佐竹五六
○政府委員(佐竹五六君) 湖沼法案の各条項の規定に基づく命令の制定または改廃に伴い必要となる経過措置の具体的内容を現時点において完全に予見することは困難であります。
しかしながら、本法案第三十条の「経過措置に関する罰則」において可罰事項とし得る義務違反は、本則に定めのある義務のうち、その違反に対し罰則が付されているものと同様の、またはその範囲内の義務違反に限られます。
このような観点から、本則、すなわち、湖沼法案並びに同法案第十四条及び第二十三条第六項の規定により適用されることとなる水質汚濁防止法において、その違反に対し罰則が付されている義務を列挙いたしますと、計画変更命令、改善命令等に従うべき義務、規制対象施設に係る届け出義務、報告聴取に応じまたは立入検査を受忍する義務、排水基準の遵守義務、特定施設の設置等に係る一定期間内の実施禁止義務、排出水の汚濁負荷量の測定結果の記録義務があります。
したがって、本法案第三十条の「経過措置に関する罰則」において、以上に列挙した義務の範囲またはその限度を超える義務を設定してその違反を可罰事項とすることは、許されないものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/4
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005・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 以上をもちまして、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/5
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006・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 御異議ないと認めます。
ただいま飯田君、近藤君及び丸谷君からそれぞれ委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。
この際、修正案三案を便宜一括して議題といたします。
提出者から各修正案の趣旨説明を聴取いたします。飯田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/6
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007・飯田忠雄
○飯田忠雄君 湖沼水質保全特別措置法案に対しまする修正案の提案理由を説明を申し上げます。
この法案第三十条は、経過措置に関する罰則を命令に委任しておりますが、このような表現では、経過措置一般について罰則規定を定めることを一括して命令に委任すること、すなわち、罰則の包括的委任に当たると思料されます。このように法律が命令に罰則の制定を包括委任するときには、これにより定められた命令による罰則は、法律による罰則とは言い得ないものであります。このことは、最高裁判所の判例にもこの趣旨を明らかにしたものがあります。
したがいまして、法案第三十条中「及び経過措置に関する罰則」は、表現形式として適切ではありませんので、この部分を削除することを求めるものであります。
しかしながら、経過措置に対する罰則が必要な場合も予測されるところでありますので、法案第三十条に第二項を設け、罰則におげる犯罪構成要件及び刑罰の範囲を明確にして、その範囲内で命令において罰則を定め得るようにしたものであります。
以上が本修正案の提案理由及び骨子であります。
何とぞ、慎重審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/7
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008・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 次に、近藤君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/8
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009・近藤忠孝
○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、湖沼水質保全特別措置法案に対する修正案の提案理由とその概要の説明を行います。
天然湖沼や人工貯水池は、水道原水や農業用水、さらには水産用水、工業用水などの供給源であるとともに、その美しい景観と自然はかけがえのない国民の憩いの場となっており、その環境の保全は極めて重要な課題であります。
しかしながら、湖沼の環境は、戦後の自民党政府による高度経済成長政策などによって、大企業本位の水資源開発や、湖沼周辺の無計画な市街化、さらには埋め立て、干拓などの乱開発が行なわれた結果、悪化の一途をたどっており、これ以上放置しておくことはできない状況になっています。例えば、水質環境基準が設定されているCODで見ても達成率は約四割程度であり、今後基準達成のための要削減率は、琵琶湖の北湖で六〇%、南湖で七四%、霞ケ浦で七二%、諏訪湖で六三%、印播沼、手賀沼で八〇%など、相当大きな数字となっております。淡水赤潮やアオコ、水道の異臭味など、富栄養化の進行も重大問題になっており、窒素、燐等の環境基準の設定と総量規制を含む排水規制が極めて急務となってきております。
これらの深刻な湖沼の環境に対して、政府原案は、水質汚濁防止法による現行対策より一定の改善にはなるものの、中央公害対策審議会の答申からは大幅な後退であり、不十分なものとなっております。
その主な点は、第一に、湖沼特定施設の設置の許可制が届け出制に後退していること、第二に、富栄養化防止対策についても、水濁法による排水規制を予定しているとは言うものの湖沼法案の特別措置として明示されていないこと、第三に、湖水と一体のものとして保全されるべき湖沼周辺の自然環境の保全、土地利用の規制及び埋め立て、干拓、湖岸の人工化等の規制措置が欠如していること、さらには、下水道整備等、地方自治体が湖沼環境保全計画に基づいて講ずる諸対策に対して国の財政上の特別措置が全く担保されていないことなどであります。
日本共産党の修正案は、これらの不十分な点を是正し、湖沼及びそれと生態学的に一体をなす自然環境の全体を保全しようとするものであり、以下その概要について御説明いたします。
第一は、法案の名称を湖沼水質保全特別措置法案から湖沼環境保全特別措置法案に変えることとしております。
第二は、湖沼水質保全基本方針及び保全計画は、湖沼環境保全基本方針及び保全計画に変え、その策定に当たっては、環境の保全を最優先することとしております。
第三は、環境保全の具体策として、水質保全の面では、湖沼特定施設の設置は届け出制ではなく許可制とすること、総量規制に当たっての総量削減目標量も、現行水濁法の「人口及び産業の動向」等を勘案し、「実施可能な限度」とされているものを、「水質環境基準を確保する見地から許容される汚濁負荷量の総量」に改めること、総量規制を含む窒素、燐の排水規制など富栄養化対策の実施を明示することなどであります。
第四は、自然環境保全の面では、指定湖沼において湖沼水辺環境保全地区を設け、開発行為の規制を行うこと及び湖面の埋め立て、干拓等は原則として禁止することなどの実効ある対策を講ずることとしております。
第五は、下水道整備など、地方公共団体が湖沼環境保全計画に基づいて実施する事業に対して、国が補助の特例等特別の財政的措置をとることを明示しております。
なお、経過措置を定めた法第三十条の「経過措置に関する罰則」の政令委任については、対象行為の範囲が拡大された場合の可罰事項となる義務違反について、具体的に六項目の義務違反が特定され、その範囲または限度を超える義務を設定することは許されない旨の大臣発言があり、かつ、本法の罰則の限度を超える罰則を政令で規定することは憲法違反になるとの内閣法制局の見解が示されました。以上二つが明確になったことにより、いずれも憲法違反の疑いはなくなり、立法形式としても不当とは言えないので、「経過措置に関する罰則」の字句を削除しないことといたしました。
以上が日本共産党の修正案の概要でありますが、何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決されますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/9
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010・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 丸谷君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/10
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011・丸谷金保
○丸谷金保君 私は、日本社会党を代表して、湖沼水質保全特別措置法案に対する修正案の提案理由及びその内容について申し上げます。
湖沼は、水質源としてはもちろん、水産、交通、観光など極めて多角的に利用されている国民共有の財産であります。
しかし、この貴重な財産も、近代産業、国民の生活様式の変化等さまざまな要因から汚濁物質が蓄積し、魚や飲み水にも影響を与え、また周辺の自然環境の破壊がさらに水質汚濁に拍車をかけている状態であり、既存の対策にゆだねて放置すれば、近い将来死の海と化するのは火を見るよりも明らかであります。
しかるに、今回提案されている政府原案は、中公審の答申からは著しく後退し、湖沼浄化の基本的な部分はすべて水質汚濁防止法を初め、既存の法体系に依拠するところの多い極めて不十分なものであります。もともと、湖沼の水質保全は湖沼環境の保全を図り、周辺の自然環境と一体として対策を立てるべき必要がありますので、私どもは、水質保全のためには環境保全がその前提であるという立場から、同法案を湖沼環境保全特別措置法案として、まず題名の変更を求め、さらに、環境をよくすることによって水資源を保全するという立場から、次のような提案を行うものであります。
第一に、指定地域における特定施設及びみなし特定施設の新増設については、都道府県知事の許可を受けるべきものとしております。また、この申請があった場合には関係市町村長のほか住民の意見も聞くこととしております。
第二に、都道府県は、指定湖沼の水質に影響を及ぼす湖沼周辺の自然環境を保全するため、条例で湖沼周辺自然環境保全地区制度を設け、その地区内における工作物の新築等の行為につき知事の許可を受けるべきものとすることができることとしております。また、指定湖沼の埋め立て等の承認に当たっては、湖沼の重要な役割につき十分配慮すべきこととしております。
第三に、指定湖沼環境保全計画に定められた事業のうち、下水道整備事業その他一定の事業については、その経費に対する国の負担または補助の割合を引き上げることとしております。
以上、水質保全のためには環境保全が大前提であるという我が党修正案に対し、皆様の全面的な御賛同をお願いする次第であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/11
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012・穐山篤
○委員長(穐山篤君) ただいまの丸谷君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。上田環境庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/12
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013・上田稔
○国務大臣(上田稔君) 湖沼水質保全特別措置法案に対する修正案につきましては、政府としては反対でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/13
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014・穐山篤
○委員長(穐山篤君) それでは、ただいまの修正案三案に対し、質疑のある方は順次御発言をお願いします。——別に御発言もないようでありますので、直ちに討論に入ります。
討論は、原案及び修正案を一括して行います。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/14
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015・丸谷金保
○丸谷金保君 私は、日本社会党を代表して、本日議題となりました政府原案並びに各修正案に対し、政府原案に反対、社会党修正案に賛成、公明党並びに共産党修正案に反対の立場から討論を行うものでございます。
湖沼法の目的とするところは、水質をよりよくして、国民生活全般にわたってこれが有効に作動するようにしていくところにあるのは論を待たないところであります。しかしながら、政府原案を見る限りなかなかそうはいかない。意図するところはわかりますが、結果はどうかということになりますと、行政というのは、意図がどんなによくても結果がよくならなければそれはだめだということになっております。したがって、中公審の答申よりもおびただしく後退するような今の政府の湖沼に対する態度では、到底結果をよくするということにはなかなかならない。反対の一番大きな理由はこの点でございます。せめて中公審程度のことの提案をして、その姿勢を示していくということがなくてどうして本当に湖がきれいになることになりましょうか。
このままでは、例えば先日調査をいたしました霞ケ浦のヘドロ対策にしても、赤潮の原因になっていることが明らかでありながら、従来の法体系に任せて建設省が今のような形でしゅんせつを行っていくならば、これはなかなかそう簡単にその対策が完了するというふうなことにならないだろうし、それらのヘドロの廃棄その他についても環境庁がもっと前向きにいわゆる行政推進が進められるような態度にならない、かように思うわけでございます。
結果がよくなければだめだということで、この機会に一つの例を申し上げます。
私が池田町長時代に町で肥育牛を飼っておりました。百頭ずつの牛舎を二棟建てました。つまり二百頭です。そして、まだ現在問題になっているような湖沼のような汚染が進んでいない十勝川でも、サケが上がる川ですから、できるだけきれいにしていく必要があるという観点から、スロット方式ということで、このし尿は全部すのこのような床から下におろして、それをパイプで別な地下タンクで発酵させて、完全に一年熟成させてから畑に還元するという方式をとりました。これを下水道に入れるとどういうことになるか。牛一頭は窒素や燐の量が人間の四十倍と言われておりますから、八千人分です。そういう工夫をして、川に投げないで十分に完熟させるということは、いわゆる現在の活性汚泥法とやや同じような形で土に還元できます。八千人分のし尿を処理するのの何千分の一の経費でそれが可能なのです。
しかし、北海道と霞ケ浦とは同時に比較になりませんが、霞ケ浦についても畜産の関係の排水が非常に多うございます。琵琶湖に比べると十倍近いものがあるのではないか。そのようにそれぞれの地域の実態で対応の仕方が湖沼の場合でも変わってこなければなりません。それをいわゆる今のような状態で一律にやっていく。
私は、本来私が提案いたしております法案のように、できるだけ住民の意見を聞くというような道を開いてそれぞれの地域に合った対策を立てること、こういう道を開かなければならないのに、政府原案は知事、市町村長の意見を聞くというだけで、湖沼の地域社会の中で生活している住民の直接参加の道を閉ざしております。市町村長が住民を代表するといっても、それは理屈であって、やはり本当に結果として湖沼をきれいにしていくという場合にはそういう意図だけではやはりだめだ。こういう点も政府案に対して私が反対をする理由の大きなところでございます。
さらに、三番目には財政措置です。
相模湖の例を見てもわかるように、あの水を利用する神奈川県と、汚水を湖に流さざるを得ない山梨県との間で別々な流域下水道が進んでおります。しかし、これを今のような状態の中で、湖をきれいにするのは流域下水道を進めるというような繰り返しの御答弁の中からは、私は百年河清を待つようなことになるのではないか。利益を享受しない地方自治体に対して、利益を享受する他の地方自治体のために努力をしてくれというのであれば、これはやはり財源措置の上乗せを考えないでその地域の事業の促進を図れという方が無理です。私どもは、流域下水道に対して、さらにまたその他のそれぞれ法案上依拠する関係法令に対し、その事業の補助率の特例を設けなければ、百年河清を待つに等しいことになりかねない、こういう点から政府案にはくみすることができない、こういうことでございます。
それからまた、結果がよくなければ、行政としてはどんな建前上の法律をつくっても、法律をつくったということが免罪符にならない。このことをひとつ政府に対して強くこの機会に申し上げておきたい。湖沼法をつくったから、湖沼がきれいにならなくても仕方がないというふうな免罪符にこの湖沼法をしてもらっては困る。このように強く私は反対の立場から申し上げておく次第でございます。
第一、提案理由の中でも申し上げましたように、環境を考えないで水それ自体をきれいにするという発想が、明らかに中公審の考え方を大きく逸脱しておるばかりでなく、本当に湖沼をきれいにするという積極的な意図があるのだろうかとさえ疑わせます。例えば酸性雨の問題があります。これに対する参考人の答弁でも、これは広域で規制していかなければ湖に降る雨の問題の解決はできないと。このこと一つとってみても、関係する環境保全を考えない水質ということは私はやはり問題がある、かように存ずる次第でございます。
その他、流域下水道に重点を置いていいか、あるいはまたもっと地方分権を進めるような姿勢が必要だとか、いろいろございますが、以上申し上げましたようなこと。
さらにまた、公明党案に対しましては、大変貴重な御指摘を本委員会においてなされ、そしてそれに基づいた提案であることには敬意を表しますが、審議の過程並びにただいまの環境庁の最後の御答弁において、私が要求しておりました具体的な事項を出せということに対する答弁を得ておりますので、この段階で、立法手続上の問題としては今後政府においてかかる提案は十分注意をしなければならないことと存じますが、直ちに公明党案に賛成するということに至らない次第でございます。
また、共産党提案の修正案につきましても、御提案の趣旨及びその内容について私どもと同じような観点には立っておりますけれども、今の段階で、私どもはベストであるよりベターという立場から中公審答申を中心にいたしており、いささか観点が違うので、そういう面において賛成をいたしかねる次第でございます。
以上、社会党案に対して賛成、政府原案並びに公明、共産両修正案に対して反対の立場を申し上げ、討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/15
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016・山東昭子
○山東昭子君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、ただいま議題になっております湖沼水質保全特別措置法案について、丸谷、飯田、近藤各委員提出の修正案三案に反対し、原案に賛成の意を表するものであります。
湖沼においては、水質環境基準の達成率が低いなど、水質の汚濁が著しく、このような状況は一刻もゆるがせにできないものと考えます。水質環境基準の確保が緊要な湖沼につきましては、関係地方公共団体と国との緊密な協力のもとに、各般の水質保全施策を総合的かつ計画的に推進することが何よりも重要でございます。
このような観点から、湖沼水質保全特別措置法案に定める特別の措置を一日も早く講ずることこそが、湖沼の水質保全を図るために肝要であると確信するものであります。
なお、本法案第三十条の規定につきましては、先例等に照らしても特に問題を生ずるものではないと考えますが、政府におかれては、本委員会での審議も踏まえて慎重に対処されるよう要請いたしまして、原案に賛成の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/16
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017・飯田忠雄
○飯田忠雄君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、湖沼水質保全特別措置法案につき、法案第三十条の中の括弧内の後半の部分について修正、その部分を除く部分についての法案については賛成の討論をいたします。
まず、法案三十条は、括弧内後半の部分、すなわち「及び経過措置に関する罰則」を命令に委任しておりますが、ここに言う経過措置は、将来実施することを必要とする経過措置一般を指すことは明らかであります。罰則という表現では、罰則がいかなる内容を持つものであるかが明らかでありません。したがいまして、原案では命令に対する罰則の包括委任になるのであります。このような法律による命令への罰則の包括委任は、憲法に違反するおそれがあります。
この種の法律による命令への罰則委任につきましては、漁業法第六十五条の例が示しますように、命令に規定し得る事項を明文をもって掲げ、かつ罰則に規定し得る罰の範囲を明記してするのが罪刑法定主義に合致した方法であります。このほか、このような合憲的な立法形式は自治法においてもその他の法律においても過去において数多く存在するのであります。
政府原案は命令に罰則を包括委任するものと言わざるを得ませんが、このような包括委任が憲法に違反するものであることは、最高裁判所の判例にも指摘されているところでございます。
政府が修正案に反対の意思表示をただいまなされました。合憲的な方法をとらないで、違憲と思われる方法をとって立法されるその政府の胸中が私にはわからないのであります。罪刑法定主義を空洞化する意図があるのではないか、かように疑わざるを得ないのであります。
委員長の質問に対しまして、罪刑法定主義を守るとの御答弁がございました。しかし、その御答弁があるのに、政府のこの法案の意図を正しく書き改めようとしておる公明党・国民会議の修正案になぜ反対されるのか、その真意が了解しがたいのでございます。
公明党・国民会議が提出いたしました修正案は、決して政府原案を排除するものではございません。政府原案の中にありまする「経過措置に関する罰則」という表現形式では、ただいま政府で御答弁になりました、罪刑法定主義を守っていくのだという、そういう趣旨があらわれないのであります。むしろ、罪刑法定主義を否定することになるから憲法違反になるよという、そういう過去における裁判事例から見まして極めて疑わしいことであると言わざるを得ないのであります。
公明党・国民会議が提出しました、この「経過措置に関する罰則」を削って、第二項で、漁業法その他の合憲的な事例が示します方法に倣って修正案をつくりました。それは明らかに、政府原案が意図しておる、意図をしておりながら表現し切れなかった内容を正確に表現したものであります。それに何ゆえ政府は反対の御態度をとられるのか、まことに遺憾なことでありますが、私には了解できません。
また、ただいま自由民主党の方からも修正案には反対だ、こういう御意見がございました。いろいろ御検討願えれば、公明党・国民会議の修正案が決して政府が意図されておるところに反するものでない、むしろ正確に表現したものであるということがわかっていただけると思うものであります。
ところで、それはそうといたしまして、公明党・国民会議は、湖沼水質保全についての法律が一日も早く成立し、湖沼の水質の悪化を防止いたしまして、さらにはそれが浄化できるような方法が講ぜられることを衷心から念願してきたところであります。政府原案が、各方面の要求の妥協の線によって作成されたものであるために必ずしも万全の理想案とはなり得なかったということはあると思います。この点についての各方面の御批判はあると思います。
また、ただいま御提案になりました社会党案、共産党案ございます。政府原案に対する不十分な点の御批判でございます。
公明党・国民会議では、社会党案につきましては昨日あらかじめこれを見る機会を得ました。早速検討をいたしました。社会党が、この審議の過程において憲法問題を極めて重視されまして、その提出されておりました法律案をやめて修正案に切りかえられたその勇気ある御態度と、それから社会党の非常に高い護憲精神に対しては極めて高く敬意を表する次第でございます。しかしながら、私どもにこの案をお見せくださいまして今日までの時間が余りにも少ないので、これを検討し、党の機関に諮る余裕がございません。したがいまして、社会党案に対して賛成の意見を表明することができないのが残念でございます。
共産党案につきましても同様でございます。修正案について御努力なさいました点、それに対して報い得ない点は何とぞ御了承いただきたいと思うものであります。
ところで、今日私どもがこの各党の修正案に対して日にちをかけて検討をすることをいたさないで反対をせざるを得ないその理由は、現在の今日のこの段階で急務とされております湖沼の水質保全の問題であります。一日放置すればそれだけ大変困った状態になるということはわかり切ったことでございまして、公明党・国民会議が以前から強くこの点を主張して法案の成立を希望してきたところであります。そういう立場から、この法案を不成立に導くようなことは今日の客観状況からいいまして正しいこととは思われない、このように判断をするものであります。
法案の第三十条の立法形式が、この種の合憲的立法形式に違背したものでありますために政府案の意図が正しく表現されていないのはまことに遺憾なことでございますが、政府及び自民党が、正しい立法形式をもって基本的人権の保障をすべき立法理論に目を閉じられて、あしき違法な前例が存在することを金科玉条とされてこれに固執される上からは、もはや公明党・国民会議の力では何ともなしがたいところであります。よって、私どもは、憲法の条項自体によって、法理論により解決する以外に方法はないと思考いたしておるものでございます。政府原案三十条に含まれる憲法違反部分は、当然に当初から憲法九十八条第一項により効力を有しないものであります。したがいまして、その違憲部分は法律上存在し得ないものと断定せざるを得ないのであります。公明党・国民会議はかかる認識に立つものでございます。
以上のごとき法的認識に立ちまして、公明党・国民会議は、その修正案が可決されれば問題はありませんが、否決されたといたしましても、政府案第三十条括弧内後段の憲法違反の疑いのある部分は憲法により無効とされているもので、その内容は存在しないものだ、このように理解をいたしまして、大所高所に立って政府案に賛成する所存でございます。湖沼の水質保全の特別措置は目下の急務であると判断し、角を矯めんと欲して牛を殺すの愚を避けたいからでございます。
これをもって、公明党・国民会議を代表しての私の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/17
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018・近藤忠孝
○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、我が党提出の修正案及び社会党提出の修正案並びに修正部分を除いた政府原案に対し賛成、公明党提出の修正案に反対の討論を行います。
政府原案は、水質汚濁防止法等による現行対策より改善にはなっており、一定の評価はできるものであります。しかし、中央公害対策審議会の答申からは大幅な後退であり、不十分なものとなっております。
日本共産党の修正案は、これらの不十分な点を是正し、湖沼及びそれと生態学的に一体をなす自然環境の全体を保全しようとするものであり、湖沼環境保全基本方針及び保全計画策定に当たっては、環境の保全を最優先することを初め、湖沼特定施設の設置は許可制とすること、総量規制に当たっての総量削減目標量も、現行水濁法の「人口及び産業の動向」等を勘案し、「実施可能な限度」とされているものを、「水質環境基準を確保する見地から許容される汚濁負荷量の総量に」改めること、総量規制を含む窒素、燐の排水規制など富栄養化対策の実施を明示すること、湖面の埋め立て、干拓は原則として禁止することなどの実効ある対策を講ずることとしたものであります。
なお、公明党提出の経過措置を定めた法第三十条の「経過措置に関する罰則」削除についてでありますが、本委員会の審議を通じて、政令の変更によって対象行為の範囲が拡大された場合の可罰事項となる義務違反について、具体的に六項目の義務違反が特定され、かつ本法の罰則の限度を超える罰則を政令で規定することはできないことが明らかになりました。したがって、その削除の必要はないと思料いたします。
以上、我が党提出の修正案及び政府原案並びに原案よりも湖沼保全を徹底させた社会党案に賛成、公明党提出の修正案に反対の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/18
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019・中村鋭一
○中村鋭一君 民社党・国民連合を代表いたしまして、政府原案に賛成、社会党、公明党、共産党の修正案に反対の立場から討論をさせていただきます。
社会党案の「環境」という法律案の名称、また共産党が、今お伺いしましたところ「環境保全」という言葉をお入れになった点において敬意を表します。さらにまた、共産党案は、指摘されました主な点の第四項目に、原則として湖沼周辺の干拓、埋め立てを禁止する、こういった点につきましても敬意を表しますけれども、いずれにしても湖沼の水質を保全する、焦眉の急でございますので、政府原案に賛成の立場を我々としてはとらざるを得ないということを明らかにしておきたいと思います。
湖沼の水質の汚濁は大変ひどい。かつ、その原因として工場、事業場のみならず生活系排水あるいは畜水産業等々多岐にわたっておりますので、特定の発生源に対してのみ厳しい対策を求めるというのではなく、さまざまな発生源について均衡のとれた対策を総合的に講じていくことなど、湖沼の水質保全にとってこれが最も重要なことであると思料いたします。
また、法案第三十条の経過措置につきましては、この法案がさまざまな種類の施設を対象とし、きめ細かな規制措置を行うものであることからすれば、この法律に基づき命令を制定、改廃する際には、合理的に必要と判断される範囲内において所要の経過措置を定めることも認められてしかるべきものであると考えます。
最後に、湖沼の水質保全にとりましてとりわけ重要なものは、生活系排水対策であり、下水道整備を初めとする事業の推進であります。政府におかれましては、湖沼地域におけるこれら事業の促進につき、最善の援助努力を傾けていただくよう要請いたしまして、原案に賛成の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/19
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020・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 以上で、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/20
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021・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより湖沼水質保全特別措置法案について採決に入ります。
まず、飯田君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/21
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022・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 少数と認めます。よって、飯田君提出の修正案は否決されました。
次に、近藤君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/22
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023・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 少数と認めます。よって、近藤君提出の修正案は否決されました。
次に、丸谷君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/23
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024・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 少数と認めます。よって、丸谷君提出の修正案は否決されました。
それでは、湖沼水質保全特別措置法案について採決いたします。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/24
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025・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、山東君から発言を求められておりますので、これを許します。山東君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/25
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026・山東昭子
○山東昭子君 私は、ただいま可決されました湖沼水質保全特別措置法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
湖沼水質保全特別措置法案に対する附帯
決議(案)
近年、湖沼の環境基準は過半の水域で達成さ
れておらず、富栄養化の進行、利水機能の障害、
周辺の自然環境の喪失など危機的状況にたちい
たっている。
政府は、湖沼のかかる危機を深く認識し、本
法の施行に当たって左の事項につき適切な措置
を講ずべきである。
一、湖沼の水質及びその周辺の自然環境を一体
として保全するため、現行関係法令等の諸制
度を積極的に活用するとともに、所要の施策
の充実強化に努めること。
二、湖沼水質保全計画に基づく事業を円滑に実
施できるよう、指定地域に対する予算の重点
的配分等の財政的援助を行うとともに、汚濁
防止対策を行う中小企業等事業者に対する助
成措置を講ずること。
三、閉鎖性水域における水質汚濁原因の解明に
資するため、湖沼の生態系の把握、淡水赤潮
の発生機構の解明等の総合的な調査研究を進
めること。
四、本法第三十条により命令で経過措置に関す
る罰則を定めるに際しては、本委員会での罰
則に関する審議の経緯を十分尊重し、慎重に
対処すること。
五、湖沼周辺地域の都市計画及び埋立・干拓に
ついては、乱開発を防止し、自然環境及び景
観との調和に留意した計画を策定し、実施す
ること。
右決議する。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/26
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027・穐山篤
○委員長(穐山篤君) ただいま山東君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/27
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028・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 全会一致と認めます。よって、山東君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、上田環境庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。上田環境庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/28
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029・上田稔
○国務大臣(上田稔君) 本法案の御審議をお願いいたしましてから、本委員会におかれましては、熱心な御討議をいただきまして、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。
附帯決議につきましては、今後その趣旨を尊重いたしまして、善処してまいりたいと存じます。
ここに、本法案の審議を終わるに際しまして、委員長を初め委員各位に対し深く感謝の意を表する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/29
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030・穐山篤
○委員長(穐山篤君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114009X01219840718/30
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031・穐山篤
○委員長(穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時一分散会
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