1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十七日(火曜日)
午前九時五十分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
委 員
大浜 方栄君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
森下 泰君
糸久八重子君
本岡 昭次君
中西 珠子君
山中 郁子君
藤井 恒男君
下村 泰君
国務大臣
厚 生 大 臣 渡部 恒三君
労 働 大 臣 坂本三十次君
政府委員
厚生大臣官房長 幸田 正孝君
厚生大臣官房総
務審議官 小林 功典君
厚生大臣官房審
議官兼内閣審議
官 古賀 章介君
厚生大臣官房審
議官 新田 進治君
厚生大臣官房会
計課長 黒木 武弘君
厚生省公衆衛生
局長 大池 眞澄君
厚生省公衆衛生
局老人保険部長 水田 努君
厚生省環境衛生
局長 竹中 浩治君
厚生省医務局長 吉崎 正義君
厚生省薬務局長 正木 馨君
厚生省社会局長 持永 和見君
厚生省児童家庭
局長 吉原 健二君
厚生省保険局長 吉村 仁君
厚生省年金局長 山口新一郎君
厚生省援護局長 入江 慧君
社会保険庁長官
官房審議官 小島 弘仲君
社会保険庁医療
保険部長 坂本 龍彦君
社会保検庁年金
保険部長兼内閣
審議官 朝本 信明君
労働大臣官房会
計課長 若林 之矩君
労働大臣官房審
議官 平賀 俊行君
労働大臣官房審
議官 白井晋太郎君
労働大臣官房審
議官 野見山眞之君
労働省労働基準
局長 望月 三郎君
労働省婦人少年
局長 赤松 良子君
労働省職業安定
局高齢者対策部
長 守屋 孝一君
労働省職業訓練
局長 宮川 知雄君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
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本日の会議に付した案件
○社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関
する調査
(労働行政の基本施策に関する件)
(昭和五十九年度労働省関係予算に関する件)
(厚生行政の基本施策に関する件)
(昭和五十九年度厚生省関係予算に関する件)
(派遣委員の報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/0
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001・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査を議題といたします。
これより厚生、労働両大臣から所信表明に引き続き五十九年度予算の説明を聴取いたします。
予算説明につきましては、その概略を聴取することとし、詳細な予算説明は本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/1
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002・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/2
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003・石本茂
○委員長(石本茂君) まず、労働大臣から、労働行政の基本施策についての所信及び労働省関係予算の説明を聴取いたします。坂本労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/3
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004・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 所信表明並びに一般会計、特別会計の所管分について概要を御説明申し上げます。
社会労働委員会の御審議に先立ち、今後の労働行政について所信を申し述べ、委員各位を初め、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
労働行政が対象とする人と勤労は、資源の乏しい我が国において、経済と社会の発展と繁栄を支える礎であります。したがって、労働行政は、我が国の将来に深くかかわる重要な行政であり、我が国の経済と社会が来るべき二十一世紀においていかなる姿のものとなっているかは、今後労働行政が進める政策のあり方にかかっていると言っても過言ではありません。
私は、この重責を担うに当たり、勤労者の雇用の安定と福祉の向上を願う国民の皆様の労働行政に対する期待と信頼にこたえ、国民の心をみずからの心としつつ、全力を挙げてまいる決意であります。
今や、労働行政を取り巻く内外の環境は著しく変貌しつつあります。すなわち、経済成長速度が鈍化する中で、本格的な高齢化社会が急速に到来するとともに、マイクロエレクトロニクス等の新たな技術革新が広範に進展し、また、サービス経済化の進展、第三次産業の増大、婦人労働者の増大等産業構造、就業構造の変化が進んでおります。他方、国際関係の面でも、我が国の国際的地位が向上するに伴い、労働の分野においても、我が国の果たすべき役割は著しく増大しております。私は、このような変化の機を的確にとらえ、将来にわたり勤労者の雇用の安定と福祉の向上を実現することが労働行政に課せられた現下の重要な課題であると確信しており、この課題に対して大局を忘れることなく、積極的かつ機敏に取り組んでまいりたいと考えております。
私は、このような見地に立ち、次の事項に重点を置いて、行政を進めてまいる所存であります。
第一は、雇用対策の積極的推進であります。
雇用の安定を確保し、労働者が安んじて働けるようにすることは、国政の最重要課題でありま
す。最近の雇用失業情勢を見ますと、なお厳しさを残しているものの、景気の回復を背景として改善の動きが出てきております。政府は、今後適切かつ機動的な経済運営により、景気の着実な拡大を図ることとしており、労働省としても、こうした改善の動きを確実なものとするため、雇用対策を積極的に推進してまいります。
まず、高年齢者の方々につきましては、高齢化社会を迎え、その高い就業意欲を生かし、安定した雇用・就業機会を確保することが重要となってきております。このため、六十歳定年の一般化の早期実現に向けて指導、援助に取り組んでいるところでありますが、目標年次である昭和六十年度は目前に迫っており、その達成に一層努力してまいります。また、高齢化の波は、今後六十歳台前半層に移行し、これらの高年齢者が大幅に増加するものと見込まれておりますので、その多様な就業希望に応じた雇用・就業機会を確保するための援助、助成措置の充実を図ってまいります。
また、近年産業界においては、マイクロエレクトロニクス等の新たな技術革新が急速かつ広範に進展しておりますが、これらの技術革新と雇用の問題につきましては、これまでの調査研究の成果を踏まえつつ、労使その他の関係者の意思疎通を促進するとともに、技術革新の進展に応じた能力開発対策を進めてまいります。
さらに、構造的な不況に陥り、雇用失業情勢がより厳しいものとなっている業種・地域につきましては、昨年成立した特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法に基づき、失業の予防、再就職の促進等の対策を進めてまいります。。雇用保険制度につきましては、雇用失業構造の変化に対応して、失業者の再就職の促進を図るとともに、制度の不合理な面を是正し、将来にわたる制度の健全かつ機能的な運営を確保することとしており、今国会にそのための法律案を提出いたしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
なお、就業構造の変化、就業形態の多様化に対応した労働力需給システムの整備の一環として、労働者派遣事業の問題につきましても、法制化の検討を進めているところであります。
第二は、婦人の職場進出の増大、職業意識の変化に対応する婦人労働対策であります。
近年、女子雇用者は雇用者全体の三分の一を超えており、職業生活においてその能力を有効に発揮できるようにすることが重要となってきているとともに、婦人差別撤廃条約の批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めることが「国連婦人の十年」後半期の重点課題とされております。このため、雇用における男女の機会の均等と待遇の平等を確保するための法制の整備が必要であると考えております。法制の整備の内容につきましては、婦人少年問題審議会の建議を踏まえて、関係法案を今国会に提出する所存でありますので、よろしく御審議をお願いいたします。
また、最近家庭の主婦層を中心に著しく増加しているパートタイム労働については、雇用の安定、労働条件の確保等を目的とする総合対策を盛り込んだパートタイム労働対策要綱を作成することとし、この要綱に基づき、労使に対する啓発指導に努めるとともに、パートバンクの増設により職業紹介体制の充実に努めてまいります。
第三は、安全で衛生的な労働環境の実現と労働福祉の増進を図るための施策であります。
労働災害は、本来あってはならないものであり、労働者の安全と健康を確保することは、あらゆる労働福祉の基本であります。昭和五十九年度は、労働災害の着実な減少を図ることを主眼として策定した第六次労働災害防止計画の第二年度に当たり、引き続き目標の達成に向けて労働災害防止対策を積極的に推進するほか、中高年齢労働者の総合的な健康の保持増進対策、新たな技術革新に対する労働安全衛生面での対応等を進めてまいります。
また、豊かで安定した生活を実現するため、財形持家個人融資制度の普及促進、週休二日制の普及等を進めてまいります。
第四は、障害者等特別の配慮を必要とする人々に対する施策であります。
障害者の方々が社会的に自立するためには、その能力を十分に生かし、職業につくことが肝要であります。このため、身体障害者雇用率の達成指導、職業能力の開発向上等により、雇用機会を確保するための対策を積極的に推進するとともに、いまだに困難な状況にある重度障害者等に重点を置いて、第三セクター方式による重度障害者雇用企業等を育成するなどの雇用対策を進めることといたしております。
また、臨時行政調査会の答申に基づき、現在雇用促進事業団が行っている身体障害者雇用納付金関係業務については、身体障害者雇用促進協会に全面的に移管することとしており、今国会にそのための法律案を提出することといたしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
第五は、労使の相互理解と信頼を強化し、労使関係の安定を図るための環境づくりの推進であります。
我が国の労使関係は、相互理解を基調として、我が国の社会の安定と経済の発展に大きな貢献をしてきたところであり、国際的にも高く評価されております。
さらに、今日のように、労働問題を取り巻く環境が著しく変化している時期にあっては、これまでに形成されてきた良好な労使関係を維持し、発展させていくことが、重要な課題であります。このためには、今後とも労使の率直な対話を一層促進し、その信頼関係を維持していくことが重要でありますので、産業労働懇話会を初め各種レベルにおける労使の話し合いの促進に努めてまいります。
第六は、国際社会における我が国の地位にふさわしい労働外交の推進であります。近年、アジア諸国等の開発途上国では、産業社会の発展を担う人材の育成が重視され、労働の分野においても我が国への協力の要請が高まってきております。労働省としても開発途上国の期待にこたえ、海外技術協力における官民協力体制を確立すること等によって、開発途上国に対する技術協力を積極的に進めてまいります。
また、先進工業国、開発途上国を問わず、我が国の安定した労使関係に対する関心が高まっております。他方、貿易摩擦が激化する背景として、我が国の労働事情について各国の誤解があることが指摘されております。このため、米国等の若手中堅の労働組合指導者を我が国に招聘する制度を創設すること等により、労働関係者の国際交流を積極的に進めるとともに、開発途上国の労働問題に対する我が国労便による協力を推進し、相互理解の促進に努めてまいります。
最後に、行政改革の積極的推進であります。
現下の最大の課題である行政改革については、先般「行政改革に関する当面の実施方針について」が閣議決定されたところでありますが、労働省としてもこの方針に沿って、社会経済情勢の変化に対応した総合的な行政を展開するため、中央及び地方の機構改革を進めてまいります。すなわち、本省内部部局につきましては、政策の企画立案機能の強化等を目的として再編整備を行うこととしております。また、地方組織につきましては、臨時行政調査会の答申の趣旨に沿って、職業安定関係地方事務官制度を廃止するとともに、都道府県労働局の設置等を行うこととし、そのための法律案を今国会に提出することといたしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
以上、労働行政の推進について私の所信の一端を申し述べました。私は、額に汗して働く勤労者がそれにふさわしく報われるようにすることが労働行政に与えられた大きな使命であると考え、この信条にのっとり、労働行政を進めてまいる所存であります。重ねて皆様方の御理解、御協力をお願い申し上げます。
次に、昭和五十九年度一般会計及び特別会計予算のうち労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。
労働省の一般会計の歳出予算額は、四千九百三億二千二百万円で、これを前年度当初予算額四千九百五十億九千四百万円と比較いたしますと、四十七億七千二百万円の減額となっております。
次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。
この会計は、労災勘定、雇用勘定、徴収勘定に区分されておりますので、勘定ごとに歳入歳出予算額を申し上げます。
労災勘定は、歳入歳出予算額とも一兆六千二百七十九億六千百万円で、これを前年度予算額一兆五千七百六十一億九千九百万円と比較いたしますと、五百十七億六千二百万円の増加となっております。
雇用勘定は、歳入歳出予算額とも一兆九千五百六十億六百万円で、これを前年度予算額一兆八千三百六十四億五千九百万円と比較いたしますと、千百九十五億四千七百万円の増加となっております。
徴収勘定は、歳入歳出予算額とも二兆四千二百十六億五千九百万円で、これを前年度予算額二兆三千四百六十三億四千八百万円と比較いたしますと、七百五十三億千百万円の増加となっております。
最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定のうち当省所管分としては、炭鉱離職者の援護対策等に必要な経費として百八十一億六千九百万円を計上しておりますが、この額は、前年度予算額百八十四億四千九百万円と比較いたしますと、二億八千万円の減額となっております。
昭和五十九年度の予算につきましては、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、財源の重点配分を行うことにより、最近の雇用失業情勢にも十分配慮しつつ、きめ細かく、かつ、効率的な労働施策の実現を図ることといたしております。
以下、主要な事項につきまして、その概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。
何とぞ、格別の御協力を賜りまするようお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/4
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005・石本茂
○委員長(石本茂君) 次に、厚生大臣から厚生行政の基本施策についての所信及び厚生省関係予算の説明を聴取いたします。渡部厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/5
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006・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 社会労働委員会の御審議に先立ち、厚生行政について所信の一端を申し述べたいと思います。
今日、我が国の経済は、多くの西欧先進国がインフレと失業のはざまで苦しんでいる中で、二度にわたる石油ショックを乗り越え、物価の安定を基礎としつつ、持続的な安定成長の軌道を歩み続けております。
しかし一方で人口の高齢化は刻々と進んでおり、二十一世紀の初頭である昭和七十五年には現在の西欧諸国の水準に達し、戦後生まれの団塊の世代も昭和九十年代には確実に老人の仲間入りをします。
政治の原点は、人間が人間らしく健康で長生きのできる社会基盤をつくり上げることですが、かつてない高齢化社会を迎える我が国においては、国民だれもが、障害のある人も、病に悩む人も、生きがいのある生活を送ることのできる社会の実現へ向けて総力を傾けなければなりません。
このような観点から厚生行政を見直すとき、まず第一に、社会保障の各制度について、将来にわたって国民生活の基盤として揺るぎのないものとするようその再編整備を進めていくことが必要であります。
第二に、障害者、寝たきり老人など恵まれない立場にある人々に対しては、温かい配慮を忘れてはなりません。福祉社会は、制度や予算の拡充だけによって支えられるものではなく、児童、老人や障害者などを取り囲む家庭や地域社会の思いやりや連帯があって初めて実現されるものであります。心と物との調和こそが目指されなければなりません。
昭和五十九年度予算編成に当たっても、このような基本的認識に立って、高齢化社会にふさわしい効率的で公平な制度の確立を図るとともに、障害者、寝たきり老人など恵まれない立場にある方方に対する予算の確保に最大限の努力を払いました。
以下、昭和五十九年度における主要な施策について申し述べます。
保健医療の問題については、人口の高齢化による成人病の増加など疾病構造の変化と科学技術の進歩による医学医術の高度化等に伴い、逐年、国民医療費が急激に増加しており、今日、健康づくり、地域医療の確保などを含む総合的な施策の展開が強く求められております。
医療保険制度については、このような現状を踏まえ、将来にわたってすべての国民がよい医療を安心して受けられるように、医療費の規模を適正な水準にとどめるとともに、給付と負担の両面にわたる公平化を図るため所要の改革案を御提案申し上げております。この改革案では、右の観点に立って医療費適正化対策を推進するほか、被用者保険本人の給付割合を改めるとともに、退職者医療制度の創設を図ることとしております。
さらに、医療制度改革の第一歩として地域医療計画の策定等を内容とする医療法改正案を今国会に再提出するとともに、適正な規模の医師数の設定について、将来の医療需要の動向を踏まえた検討に着手することとしております。
予防や健康づくり対策については、特に四十歳からの健康づくりを目指す老人保健事業に重点を置き、対前年度比三七%増の予算を確保するとともに、保健所運営費については、保健所の自主的な運営を促進するため、補助方式の改正を行うこととしております。昭和五十九年度を初年度とする対がん十カ年総合戦略のための経費についても、特に配慮をいたしたところであります。
国民の老後を支える年金制度については、人口高齢化のピークを迎える二十一世紀においても、制度の健全かつ安定的な運営を図っていくための基盤を確立することが現下の最重要課題であります。このため、制度間格差を是正するとともに、年金世代と現役世代とのバランスを確保するとの基本理念に立って、年金制度の改革を行う考えてあります。具体的には、基礎年金の導入による制度体系の再編成、給付と負担の適正化、婦人の年金権の確立などを主な内容とする制度改革案を取りまとめ、今国会に国民年金、厚生年金保険及び船員保険の三制度の改正法案を提出しております。
社会福祉につきましては、私は、恵まれない立場にある方々に対してはいささかも福祉の後退とならないようにする決意であります。
とりわけ、本年は障害者福祉対策に力を入れることとしております。年金制度の改革に加え、特別障害者手当の創設などにより障害者の所得保障については大幅な改善を図るとともに、厚生年金の事後重症制度の改善を行うこととしております。さらに、身体障害者の範囲拡大、施設の再編をはじめとする福祉施策を展開することとしております。
児童福祉につきましては、母子保健対策、保育対策の充実、児童館の増設など児童をはぐくむ健全な環境の整備に努めてまいりたいと考えております。
また、児童扶養手当制度については、臨調答申等を踏まえ、近年の離婚の急増等母子家庭を取り巻く状況の変化を考慮し、母子家庭の生活の安定と自立の促進を通じて児童の健全な育成を図るための福祉の制度として見直すこととしております。
援護施策につきましては、戦傷病者戦没者遺族等に対する年金の額の引き上げなどを行うほか、中国残留孤児対策を推進するなどその一層の充実強化に努める所存であります。
また、社会保険関係地方事務官制度につきましては、臨調答申の趣旨に沿い、これを廃止し、社会保険関係事務は、原則として国において処理することとするための所要の法律案を提出することとしております。
このほか、厚生行政は、原子爆弾被爆者対策、水道・廃棄物に関する施設整備、環境衛生関係営業の振興、医薬品、食品、家庭用品の安全確保対策などひとときもゆるがせにできない施策ばかりでございます。
今私たちは、二十世紀の最後の四半世紀におります。私は、皆様の御指導、御鞭撻を得ながら医療保険制度の改革を初めとする懸案の諸問題の解決に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
何とぞ、よろしくお願いいたします。
次に、昭和五十九年度厚生省所管一般会計、特別会計及び政府関係機関予算の概要について御説明を申し上げます。
昭和五十九年度厚生省所管一般会計予算の総額は九兆二千四百九十一億円余でありまして、これを昭和五十八年度当初予算額九兆六百十四億円余と比較いたしますと、一千八百七十六億円余の増額、二・一%の増加率となっており、国の一般会計予算総額に対し一八・三%の割合を占めております。
御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には異例に厳しいものがあり、昭和五十九年度国の予算におきましては、制度の根本にまで踏み込んだ改革を行うなど、経費の徹底した節減合理化に努め、特に一般歳出については、全体として前年度同額以下に圧縮することを基本方針として編成されたものであります。
厚生省予算につきましても、徹底した歳出内容の見直し、合理化を行う一方、高齢化社会にふさわしい効率的で公平な社会保障制度の確立を図るとともに、障害者、寝たきり老人等恵まれない立場にある人々に対する福祉施策につきましては重点的に配慮していくことを編成の基本方針としたものであります。
このような方針のもとに、各方面の御理解と御協力を得ながら、幸い、医療、年金等につきまして制度の改革案を提出することができ、また、厳しい財政事情のもとであっても、障害者等の福祉対策を初め、保健医療対策等につきましても施策の推進に必要な予算措置を講ずることができました。
この機会に、各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに、責任の重大さに、思いを新たにして国民の健康と福祉を守る厚生行政の進展に一層の努力を傾注する決意を表明する次第であります。
以下、昭和五十九年度予算に関連します主要な施策につきまして申し上げたいと存じます。
第一に、本格的な高齢化社会の進展のもとで、社会保障制度が国民生活の基盤として将来にわたって有効に機能するよう、制度の改革を行うことといたしております。この観点から、医療保険につきましては、医療費適正化対策の推進、保険給付の見直し、医療保険の再編合理化による負担の公平化を内容とする改正を行うことといたし、年金制度にっきましては、基礎年金の導入による制度の再編成、給付と負担の公平化、婦人の年金権の確立などを内容とする制度の改正を行うことといたしております。
なお、拠出年金の年金額を特例的に実施時期を繰り上げて引き上げるとともに、福祉年金及び戦没者等遺族年金等につきましても、同趣旨の改善を図ることといたしております。
第二に、障害者、寝たきり老人等恵まれない立場にある人々を支えるための福祉対策につきましてきめ細かく配慮を加え、その拡充、強化を図ることといたしております。具体的には、特別障害者手当の創設、身体障害者の範囲拡大、家庭奉仕員の増員、痴呆性老人対策の推進等各種の福祉対策の拡充強化を図るほか、生活扶助基準の引き上げ、社会福祉施設の運営の改善等を行うことといたしました。なお、児童扶養手当制度を福祉施策と位置づけ、これに伴い児童扶養資金の創設を行うことといたしております。
第三に、国民の保健医療を確保するための施策について、重点的に充実強化を図ることといたしております。特に、四十歳からの健康づくりを目指す老人保健事業及び対がん十カ年総合戦略に基づくがん対策を強力に推進するほか、保健所の自主的運営を促進するための補助制度の改正、母子保健対策、難病対策、救急医療対策等の充実を図ることといたしております。
以上のほか、生活環境施設の整備、原爆被爆者、戦争犠牲者のための対策、医薬品、食品等の安全対策、血液・麻薬・覚せい剤対策、環境衛生関係営業の振興、国際医療・福祉協力等につきましても、引き続きその推進を図ることといたしております。
以下、厚生省所管一般会計予算、特別会計予算及び政府関係機関予算の概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。
何とぞ、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/6
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007・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で所信及び予算の説明聴取は終わりました。
本件に対する質疑は後日に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/7
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008・石本茂
○委員長(石本茂君) 先般、当委員会が行いました社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査のための委員派遣について、派遣委員の報告を聴取いたします。佐々木満君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/8
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009・佐々木満
○佐々木満君 去る一月三十一日、二月一日の両日、石本委員長、金丸委員、糸久委員、中西委員、山中委員、藤井委員と私佐々木の七名は、障害者、老人、児童等の福祉に関する実情調査のため、静岡県へ行ってまいりました。
以下、調査の概要について御報告申し上げます。
まず、福祉に対する県の基本的考え方について触れたいと思います。
急速に到来する高齢化社会に適切に対応するため、県政のあるべき目標として、高齢化社会への考え方と基本的方向を明らかにし、当面昭和六十五年までの十年間を、二十一世紀の本格的な高齢化社会を迎えるまでの準備期間として位置づけ、生活、健康、福祉、生きがいの各分野における条件整備に努めているとのことであります。また、地域の実情に応じた高齢化社会対策推進の必要性から、本年度は、富士市、島田市、浜松市の三市をモデルに選定し、地域の現状分析を踏まえて、基本方向、施策の大綱、整備計画、地域行動計画を内容とするモデル計画を策定しているところであり、今後は、このモデル計画の成果を踏まえ、他市町村に対し積極的に高齢化社会対策を推進するよう指導していく考えとのことであります。
特に、社会福祉部門にっきましては、独立した基本計画として、昭和五十四年に社会福祉行政推進計画を策定し、その中で福祉意識の高揚と民間福祉活動の育成強化、在宅福祉対策の強化、社会福祉施設の整備、社会福祉推進体制の充実強化、国民健康保険制度の充実強化が打ち出されております。
社会福祉の中で大きな部分を占めております障害者対策については、昭和五十六年の国際障害者年の際、今後十年の長期展望に立った静岡県行動計画を策定し、障害者のライフサイクルに対応した総合的対策、総合的リハビリテーション体制の確立、福祉サービスの体系的整備が打ち出されております。
以下、現在実施されております個別の対策について、特徴のある諸点について簡単に触れたいと思います。
まず、医療の実態であります。
医療機関、医師等、医療関係者に見る指標は必ずしも全国に比し高くはありませんが、平均寿命は男女とも全国平均を超え、公衆衛生の水準を示す乳児死亡率も千人当たり六・一と全国平均の六・六より低く、さらに病床利用率なども低位にとどまっており、一人当たり老人医療費総額は低額であります。
老人保健事業は、まだスタートしたばかりで、活発に事業が推進されているところとそうでないところに差が見られ、保健婦未設置市町村もあ
り、今後の事業の一層の充実促進が期待されるところであります。
老人の処遇は、家庭や地域の中でできるだけ社会関係を維持しながら老人福祉を高めていくことが望まれるところであり、本県におきましてもきめ細かな諸施策が推進されております。特に、在宅対策では、家庭奉仕員の派遣事業を中核とした福祉サービスの充実に配慮するとともに、県単独事業として、在宅老人リフレッシュ事業の名で、日常生活を営むのに支障のある老人を対象に、老人福祉施設に適所させ、機能訓練などの健康管理、相談、生活指導、入浴、食事サービスなどを行っており、寝たきりにさせない努力がなされております。
一方、施設対策としては、本年度、特別養護老人ホーム三カ所の整備を図り、一カ所については痴呆老人のみを対象とした老人ホームを予定しているとのことであります。
そのほか、県単独事業として、家庭奉仕員の資質の向上のため、県家庭奉仕員連絡協議会への団体助成、虚弱老人の一時入所、老人ホームに対する痴呆老人介護加算などの施策が行われております。
児童に対する福祉対策の現状は、最近の児童数の減少から保育所の充足率が下がってまいっており、本県でも公立八三・五%、私立九三・九%を示しており、現在、乳児保育、障害児保育の充実促進に努めているとのことでありますが、既婚婦人の職場進出に伴い、ニーズの多い乳児保育、延長保育促進対策について、国に対し一層の充実を図られたいとの要望がされております。
本県の単独事業として特記すべきものとして、子ども農園設置事業があります。児童に土と親しむ機会を与え、農作業を通じて生産する喜び、働くことのとうとさを体験させようとするもので、休耕田を利用し、老人クラブのお手伝いも願い、現在五十単位の子ども会で行われており、大変好評に事業の運営がなされているとのことでありました。
心身障害者対策では、五十二年度から県下の「手をつなぐ親の会」等が行う小規模授産事業に対し、運営費及び建設費を助成し、企業の就業になじまない者に対しきめ細かな対策が行われている点であります。この事業は、現在四十一カ所で実施されておりますが、将来は少なくとも県下七十五の全市町村で一カ所程度実施することを目標にしているとのことでありました。
次に、視察いたしました諸施設について述べます。
まず、県総合社会福祉会館の概要に触れます。
この会館は、今日の社会福祉が公的施策だけでなく、県民の潜在的活力と社会連帯のきずなによる地域ぐるみの福祉活動の推進が重要な課題となっているとの認識に立って、社会福祉及び婦人活動の充実を図るために、国際障害者年の記念事業の一環として五十六年に着工、五十八年三月完成を見たものであります。
会館の主な機能といたしましては、地域の福祉活動の中核的役割を担っております民間社会福祉関係団体の活動拠点となるほか、身体障害者福祉センターや心身障害者相談センターが設けられており、さらに各種の研修や県下の婦人団体の活動の場としての機能などを多目的に備えておりまして、全国的にも余り類のない総合福祉会館であります。館内には、従来各地に点在しておりました各民間社会福祉関係団体の事務局がそろって入居しており、お互いの連絡も容易で、従来にも増して協力の実を上げ得る体制になっているとの県当局の説明であります。また、ボランティアビューローや地元静岡市の福祉団体が入居しておりますので、地域に密着した民間福祉活動が一層活発になってきておるとも説明がございました。さらに、本館には体育館、点字図書館などが設けられておりますので、身体障害者の機能回復訓練やスポーツ、レクリエーション、教養、文化を高め、また、目の不自由な人々が書物に接する機会をふやすために、点訳や録音テープづくりなどのボランティア活動が一層促進されやすい体制に向け努力しているとのことであります。なお、会館の受付、案内には、地域の婦人のボランティアが輪番で当たっておられました。
このように、この会館は、本県社会福祉の新しいシンボルとして、多くの県民に社会福祉への理解と協力を深める一つの大きな拠点としての役割を果たしているものであると県当局及び施設運営者からは報告がされております。
次に、社会福祉法人天竜厚生会について申し上げます。
天竜厚生会は、昭和二十五年、結核患者のアフターケア施設として発足いたしましたが、早期に当初の役割を終えましてからは、今日まで三十余年、地域社会のニーズに応じて、特に重度の障害者のための施設へと大きく歩みを変えてまいりました。現在では、各種の法体系に基づき保育所を別にして十二の施設を複合的に配置することによって障害の種類と程度に応じた入所後の治療や訓練による機能回復あるいは状況の変化に応じた措置がえ等を行い、同時に障害者みずからの向上精神、生活意欲の増大を導き出すよう努めているとのことであり、また、保護者にとって、障害が進行して程度が重くなっても別の施設へ移行できるという安心感を持つことができるような総合的な施設となっているとの説明がありました。
運営面につきましても、系統立ったシステム化に努め、いかにして合理化、省力化を図って経費を節減し、その節約分をどのように処遇面へ還元していくかに腐心されているとのことであります。今後の施設整備におきましても、障害者の重度化傾向の実態とニーズに即応して整備充実を図り、総合施設としての長所を十分発揮していきたいとの意向が施設運営者から示されております。また、総合的施設であることから、職員の定員等について弾力的運用を認められたいとの要望もありました。
さらに、天竜厚生会が単に施設の運営ばかりでなく、研修センターを設け、福祉事業や施設に対する理解、認識を深めるためにも意欲的に取り組んでいることにも触れておきたいと思います。
研修センターでは、社会福祉事業従事者に対する基礎研修、職務遂行上必要な専門的知識や技術を習得する専門研修は、ボランティア、実習、見学など各種の機会を通して福祉施設参加を働きかけ、福祉事業や施設に対する理解、認識を高めるために役立てられているとのことであります。
次に、視察いたしました五施設について若干触れたいと思います。
特別養護老人ホーム翠松苑では、施設運営者から循環器系統の内部障害により寝たきりの状態にある老人と老人性精神病に近い症状の人たちとを分けて、障害に応じた適切な処遇、援助が実施できるようにしたいとの要望がありました。
身体障害者療護施設浜名寮では、現行制度上この施設は年齢の幅が十八歳から六十歳と広く、本施設でも十七歳から六十五歳となっており、介護、指導の上でも問題があることから、少しでも指導の効果が上がった者は他の施設への移行を図る等、より細分化した体系を要望されております。
重度身体障害者更生援護施設浜北学苑は、療護施設、授産施設の中間的性格を持ち合わせています。施設は訓練の場と生活の場という両機能を有するために、生活の場として安心して暮らすことができるように配慮するとともに、生活する障害者が個々の機能を最大限に活用して、日常生活動作を確立されるように図り、さらに機能回復訓練、教科学習、社会適応訓練等の実施により障害を克服し、社会的人間として必要な知識及び技術を身につけさせていきたいとの担当者の意欲が示されておりました。
身体障害者授産施設天竜ワークキャンバスは、脳性小児麻痺、脳血管障害等の原因により、障害等級一級から三級の障害を負い、重度、中度の身体障害者であるため、作業能力を有しながらも生産活動等における社会参加ができない人たちに対し、設備、作業器具などの改善により作業能力を開発し、将来の社会参加を目指して訓練が行われ
ております。
最後に、身体障害者天竜福祉工場は、ガス機器の部品組み立てを主な作業として稼働しておりますが、提携企業側からは、従業員の定着率が高く、ある程度高度な仕事もマスターし、不良率も少ないと高く評価されております。これは、従業員一人一人が同じ障害者の職場を確保し、今後の福祉工場を全国的にも成功させていきたいという努力のあらわれであるとの説明がなされたところであります。
以上で報告を終わりますが、県当局から提出されました要望事項の会議録末尾掲載方を委員長においてお取り計らいくださいますようお願い申し上げまして、御報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/9
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010・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
なお、佐々木君の報告中にありました要望事項につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00319840327/10
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011・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時三十四分散会
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