1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年四月二十四日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月十九日
辞任 補欠選任
曽根田郁夫君 林 ゆう君
四月二十日
辞任 補欠選任
林 ゆう君 曽根田郁夫君
下村 泰君 前島英三郎君
四月二十四日
辞任 補欠選任
和田 静夫君 久保田真苗君
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
中野 鉄造君
委 員
大浜 方栄君
斎藤 十朗君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
村上 正邦君
糸久八重子君
久保田真苗君
本岡 昭次君
中西 珠子君
山中 郁子君
藤井 恒男君
前島英三郎君
国務大臣
厚 生 大 臣 渡部 恒三君
政府委員
厚生大臣官房審
議官
兼内閣審議官 古賀 章介君
厚生省公衆衛生
局長 大池 眞澄君
厚生省医務局長 吉崎 正義君
厚生省社会局長 持永 和見君
厚生省児童家庭
局長 吉原 健二君
厚生省保険局長 吉村 仁君
労働大臣官房審
議官 野見山眞之君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
説明員
警察庁交通局交
通企画課長 広谷 干城君
文部省初等中等
教育局特殊教育
課長 山田 勝兵君
日本国有鉄道旅
客局総務課長 本田勇一郎君
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本日の会議に付した案件
○身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/0
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001・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二十日、下村泰君が委員を辞任され、その補欠として前島英三郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/1
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002・石本茂
○委員長(石本茂君) 身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/2
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003・本岡昭次
○本岡昭次君 まず初めに、「障害者に関する世界行動計画」の問題についてお尋ねをいたします。
ことしは国際障害者年から三年を経過をいたしております。国際障害者年という祭りの域を脱して本格的な障害者福祉を展開させる、我が国の真価が問われている、このように考えています。そこで、政府として障害者の十年にどのように取り組む決意であるか、まず大臣にその決意を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/3
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004・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 障害のために恵まれない立場にある方々が、地域社会の一員として、地域社会の思いやりと連帯の中で生きがいのある生活を送れるための障害者対策の推進が厚生行政の原点であると考えております。私は、障害者対策推進本部の副本部長でもありますので、昭和五十六年の国際障害者年に引き続く昭和六十六年までの十年間にわたる障害者対策の基本的方向と目標を示した「障害者対策に関する長期計画」に沿って、障害者の方々が人間として生きがいのある生活を送ることができる社会の実現に向かって、関係省庁とも連携をとりながら努めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/4
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005・本岡昭次
○本岡昭次君 一九八二年十二月の国連第三十七回総会では、国連のポスト障害者年、今後の十年の問題、今も大臣がお触れになりましたこの十年の運動のガイドラインともいうべき「障害者に関する世界行動計画」というのを採択をいたしております。私も一通り目を通しました。
そこで、政府の立場から見た、この行動計画は何を目指したものであるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/5
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006・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘の世界行動計画が昭和五十七年に国連総会で採択されておりますが、この行動計画、先生も御案内のとおりでございますが、この中では、目標といたしましては、採択されている中に「目的」というのがございまして、一つは障害の予防、二つ目がリハビリテーション、三つ目が社会生活と開発への障害者の完全参加と平等というこの三つの目標がありまして、それが効果的に対策が推進されるべきだというふうにうたわれているわけであるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/6
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007・本岡昭次
○本岡昭次君 今も答弁がありましたように、予防、リハビリ、参加と平等、そうした大きな項目の内容を持ち、そしてこれからの世界挙げて障害者福祉に対する総意をも反映したものであると私も思っております。
それで、今言いました予防、リハビリあるいは参加と平等、そうしたそれぞれの事柄について、その計画の具体化が必要であろうと思います。ここでその全貌を明らかにする時間はございませんが、重点的に政府はこの行動計画具体化のために何を行おうとしているのかということを幾つか示していただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/7
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008・持永和見
○政府委員(持永和見君) 政府といたしましては、先ほど大臣も申し上げましたように、障害者対策の推進本部を設けました。国際障害者年を契機といたしまして、障害者対策の推進本部を設けておりまして、それによって五十七年の三月に六十六年までの十年間の「障害者対策に関する長期計画」を策定いたしております。
この中で、主な柱といたしまして、まず、「啓発広報活動」。それから「保健医療」、これは心身障害の発生予防、早期発見・早期療育、医療及び研究、専門従事者の養成確保、あるいは補装具・福祉機器の開発等、あるいは国際医療協力といった保健医療の問題。それから「教育・育成」の問題。心身障害児に係る教育施策、あるいは心身障害児に係る育成施策といった教育・育成の充実の問題。それから四番目といたしましては、「雇用・就業」の問題でございますが、雇用・就業対策の基本的な方針、あるいは障害種類別の対策、精神薄弱者等の対策、あるいは、現状では直ちに一般雇用に就くことが困難な者に対する対策、職業リハビリテーションの推進、専門職員等の養成。それから五番目といたしまして、「福祉・生活環境について」ということで、福祉サービス、生活環境改善。
こういった大きな項目を掲げまして、これに沿って各種の施策を各省が協力してやっていくというようなことにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/8
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009・本岡昭次
○本岡昭次君 「障害者に関する世界行動計画」の九十三項のところを見ますと——この九十一項から九十四項までは「決定過程への障害者の参加」ということでございます。これは「完全参加と平等」という事柄の中の、ある意味で重要な中身であろうと思いますが、この九十三項を読んでみます。九十二項では、加盟各国は、障害者の組織との直接の接触を確立し、それらの組織がかかわり合いのあるすべての分野での政府の政策及び決定に影響力を行使できる道筋を開いていかなければならない。加盟各国は、この目的達成のために障害者団体に対して必要な財政的援助を行わなければならないという内容でございます。
そこでお尋ねをするんですが、政府はこの項目について、後段の部分、つまり加盟各国は、その目的達成のため障害者団体に対して必要な財政的援助を行わなければならないという、この後段について、政府は削除することを提案したということを聞いています。そして、それは受け入れられなかったということですが、もし、この削除を提案したのならば、どういう理由でこの削除を提案したのかという経緯を説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/9
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010・持永和見
○政府委員(持永和見君) お話しのように、この行動計画の九十三項につきまして、採択の際に障害者団体に対する財政援助に関する状況については、「財政的な」という文言を削除するよう、我が国としてコメントしたのは事実でございますが、各省からの意見を外務省が取りまとめまして、それを出したものだというふうに聞いております。
それで、厚生省の場合でございますが、実は、厚生省といたしましては、直接の財政援助ということではございませんが、いろいろ障害者団体に対する事業について委託事業を行って、それに必要な国の委託費を出しているというようなことでございます。例えば日本盲人会連合、あるいは全日本聾唖連盟あるいは点字図書館、そういったところに対しまして、それぞれ必要な点字誌の発行でございますとか手話通訳指導者養成、そういった事業を委託いたしまして、その委託事業については国の委託費を交付しているといったようなことをやっておるわけでございまして、今後ともこういった委託事業の充実なり推進には努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/10
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011・本岡昭次
○本岡昭次君 厚生省として、委託費ということで財政援助をやっているということですが、国際的なこの種の会議の中で、財政援助という部分になってくるとそれを削除するように提案していくというふうなことはどうかと私は思うんですね。わざわざそこのところに特別にコメントをするほどのことはない、こう思います。どうもお金の面になりますと一々細かく問題にするというふうな対応は、国際的な部面で改めるべきではないかというふうに思います。しかし、コメントしてもやるだけのことはやっているということなので、それはそれでいいんですけれども、これからの問題として、財政的援助の問題、しっかりとひとつやっていただきたいというふうに要望しておきます。
それから、第百二十項、これは「教育と訓練」という項目のところですが、ここで、「加盟各国は、障害者が他の人々と均等な教育の機会をもつ権利を認める施策をとるべきである。障害者の教育はできる限り一般の学校制度の中で行われるべきである。」、以下ずっと書いてありまして、結局ここで言わんとしているところは、障害者にも可能な限り一般の学校システムの中で教育を行うのが政府の任務であるというふうに述べていると思います。そして、国連のこの理念が、養護学校別建ての障害児教育でなく、最終的には一般学校のシステムの中で障害者の教育を組み入れていくべきだという理念を示している、私はそのように読み取りました。我が国もその方向に進んでいくべきである、このように思いますが、この点について厚生省、文部省の考えを聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/11
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012・持永和見
○政府委員(持永和見君) 障害者の方々につきましては、障害者の方々が社会の一員として生きがいのある生活を送ることができるような、そういう社会が実現されることが望ましいことはもちろんでございます。
最近、障害者対策の理念として言われておりますノーマライゼーションという言葉がございますが、いわゆる障害者の方々が、そういった社会的な不利を負っておられる方々が社会の中にいるというのは当然だ、そういうのが通常の社会だというような考え方、そういった対象者の方々を隔離的に処遇するのではなくて、地域や家庭の中で日常的な生活を可能にするような政策を行うべきだというような、そういう考え方でございますが、厚生省として、当然こういった考え方のもとに今後の障害者対策というのは推進しなければならないと思っております。
そういう意味合いで、障害者の方々が家庭や地域で安心して生活ができるような在宅福祉対策、あるいは各般の障害者対策が推進されるべきだというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/12
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013・山田勝兵
○説明員(山田勝兵君) お答えいたします。
世界行動計画におきましては、少なくとも一〇%の子供が障害を持っていると、こういう現状に立ちまして、今先生の御指摘ございましたように、「障害者の教育はできる限り一般の学校制度の中で行われるべきである。」と、こうしているわけであります。さらに、「義務教育に関する法律は、最も障害の重い者も含め、あらゆる範囲の障害をもつ子供を対象とするべきである。」と、こうしておるわけでございますし、さらには、「何らかの理由により、一般の学校制度の施設が障害児にとって不適当である場合には、これらの子供に対する教育は、適当な期間、特別な施設で行われるべきである。」と、このような提言がなされているわけでございます。
教育につきましては、御承知のように昭和五十四年度に長年の懸案でありました養護学校教育の義務制を実施したところでございますし、我が国では障害を持つ子供一人一人の障害の状況等に応じて教育することとしておるところでございまして、障害の程度が重く、小中学校では十分な教育効果が期待できないような子供につきましては、盲学校、聾学校、さらには養護学校等で手厚いきめ細かい教育を行っているところでございます。
ちなみに、盲・聾・養護学校に就学しております子供たち、これは全就学児童生徒の〇・四%ぐらいの比率を占めております。また、障害の程度が重くない他の子供は、小中学校で可能な限りその実態に即して適切な教育に努めているところでございます。また、盲・聾・養護学校に就学している子供についても、小中学校の子供とともに活動する機会を積極的に設けるよう、そのような交流を図るよう指導しているところでございます。
以上のような現状でございまして、我が国では障害を持つ子供の可能性を最大限に伸ばす、そしてその社会的自立を図るため、今後とも一層心身障害児に対する教育の振興に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/13
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014・本岡昭次
○本岡昭次君 今非常にきれいな答弁をされましたが、実態はなかなかそう簡単にはいかないんですね。きょうは教育に関する問題を論議する場ではございませんので、また別の機会にさしていただきますけれども、やはり障害児を一般学校の中で健常児とともに学ばせるという事柄について、文部省としてもっともっと具体的にその施策なり予算なりというものについて拡充をすべきである、ここでは具体的に申し上げませんが、そのことを要望をしておきます。
いま一点、学校の中で障害児が学べる状況というものが一般の学校にどれほどあるかという問題です。これも非常に重要なんです。最近は公共的な施設というふうなところには障害者用のトイレがあり、また、エレベーターには盲人の方の点字の押しボタンがあり、いろんな形で障害者の皆さんが社会生活を健常者とともに営めるような施設がしてあります。それが一番おくれておるのは私は学校じゃないかと思うんですね。学校が一番おくれています、正直言って。だから、そうした細かい配慮というものを文部省は各学校に、教育委員会に、もっと徹底した指導をすべきであると思います。
また、それは子供だけじゃなくて、保護者が、父母が障害者の立場の場合があるわけです。学校へ参観に行こう、学校の教員と話し合いに行こうと思っても、車いすでは行けない学校が現にたくさんあります。だから、学校というところは障害児だけでなく、父や母に障害のある人を持つ、そういう子供の親たちも自由に入れるように、それこそ公共的な施設であるわけですから、そうした配慮が十分なされなければならぬと思うんですが、残念でありますけれども、今の一般の学校はやはり健常者のための学校という形態が非常に強い。だから勢い、障害児の皆さんが健常児の皆さんと一緒に学びたいという希望を持っていても、それが実現できないという物理的な条件があるわけで、それをカバーしていくために、もっともっとひとつ努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
厚生大臣の方も、今おっしゃいましたように、こうした問題について総合的な組織の副本部長をされておりますので、そうした教育の面についても十分な取り組みというものをこれからも推進していただきたいと思うんですが、その点についてひとつ若干御意見をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/14
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015・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 先ほども御答弁申し上げましたように、障害者対策、これは各方面にわたって行われなければならない問題であります。特に、教育というものは、障害者対策の非常に大きなポイントでもございます。文部省当局はもとより関係省庁と十分連絡の上、障害者対策に万遺憾なきを期してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/15
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016・本岡昭次
○本岡昭次君 それでは、きょうの審議の直接の議題になっております身体障害者福祉法の問題に入ってまいります。
まず初めに、その目的、理念に関連してお尋ねをいたします。
私ども、この法案がつくられる段階、また提出。される段階で、厚生省といろいろ接触を保ってきました。その中で私たちは感じ取ったことは、今回のこの改正は、当面する問題に対する部分的な改正であって、先ほど述べました障害者の十年という問題にかかわる根本的な抜本的な法改正ではないというふうに理解をしておりますが、それで間違いはありませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/16
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017・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今回御提案を申し上げております身体障害者福祉法の改正は、五十七年、ちょうど国連の障害者年の翌年でございますが、この年の三月に身体障害者福祉審議会からの答申が出されておりまして、それを原則的には踏まえたものでございます。
この身体障害者福祉審議会の答申は、今後の障害者対策のあり方ということで幅広い御提言をいただいております。その具体化の中には非常に幅広い、広範多岐にわたっておりますし、また、したがいましてその具体化には長期的な視野に立った検討が必要であるものも幾つかあるわけでございます。このために、今回の改正につきましては、この答申を受けまして身体障害者福祉基本問題検討委員会というものを設けまして、答申に盛られた事項の具体化について御検討をいただきました。その結果を昨年の八月に報告をいただいております。その中で、現時点で実施を検討してほしい、現時点で法律改正をしてほしいと言われました事項について、今回、具体的に法律改正の中身として御提案申し上げたものでございます。
したがいまして、今申し上げましたように、身体障害者福祉審議会の御提言の中には、長期的な視野での検討を要するものが幾つかございまして、そういったものについては残された問題として今後とも引き続き我々としては鋭意検討し、所要の措置を講じていかなければならないというふうに考えておるわけでございまして、今回の御提案はそういう趣旨で御理解をいただければと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/17
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018・本岡昭次
○本岡昭次君 くどいようですが、今の答弁の中で私なりに解釈いたしますと、現行法の中でいろいろ改善をしていかなければならないことがあるが、長期的なものも短期的なものもあるし、また、抜本的な改正を検討していかなければならぬものもあるし、また、今手直しということで早急にやる必要のあるものもたくさんある。しかし、その中で今回の改正は障害者の十年のいわゆる目的であります「完全参加と平等」という理念の実現を目指して法体系そのものを整備していく、その一つの一環としてやったんだというふうに考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/18
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019・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御提案を申し上げているように、今回の法律改正におきましては、身体障害者福祉対策の理念につきましてもいろいろと検討をいたしまして、国際障害者年を踏まえたポスト障害者年の年でもございますので、そういった意味で、障害者年にうたわれましたテーマをこの身体障害者福祉法の中で具体的に実現していこうという趣旨も御提案を申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/19
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020・本岡昭次
○本岡昭次君 今理念の問題が出ましたので、理念の問題として出されていることについて若干触れていきますが、まず、障害者の皆さんがこの福祉法の中で一番問題にされておりますこと、また私も問題だと思う点、それはやはり福祉法の第一条で、本法の目的を明示的にあらわしているこの条文であります。この現行法の目的が、「更生を援助し、その更生のために必要な保護を行い、」と、こう規定してありまして、「更生」ということが法全体の目的を達成していく基準であるというふうな形になっていると、普通この法を読み取ればそうなります。身障者の皆さんの言葉をかりれは、これは身障者を差別しているのではないかというふうに受け取られております。更生という意味が真に身体障害者の福祉を実現するということと結びつかないという強い意見がありますが、この点についてはどのように厚生省はお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/20
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021・持永和見
○政府委員(持永和見君) 第一条の目的にございます「更生」という概念でございますが、この更生という概念は、身体障害者福祉法ができましたときには身体障害者福祉法の中身が専ら職業復帰というようなことが中心であったわけでございまして、そういう意味で更生という言葉が解釈されておったかと思われますけれども、その後いろいろな法律改正をやりまして、福祉面でもかなり内容を幅広く身体障害者福祉法が取り入れているわけでございますが、今日では職業復帰ということではなくて、日常生活が安定をするという、そういった福祉面の措置万般が更生という言葉の解釈の中に含まれるというふうに考えております。これにつきましては、身体障害者福祉審議会答申におきましても、人間的な権利の回復、こういったものについても更生に含まれるんだという考え方が一般化しつつあるかと思っております。ひとつ法律そのものを全体としてごらんをいただければ、身体障害者の方々が言っておられる「更生」という言葉に伴う、何といいますか、暗いイメージというようなことは、法律全体の中からは私どもも理解しておりませんし、また、一般もそういう理解をしてもらっては困るわけでございまして、そういう意味合いでひとつ全体としてごらんをいただくようなことをお願いをいたしたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/21
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022・本岡昭次
○本岡昭次君 今おっしゃいますように、職業復帰ということからスタートして、現在では日常生活を安定させていくという、障害者が障害者として社会の中で自立して生きていける、そうした福祉という観点に立っている、こういうふうに考え方自身が変わってきたということは、それはそれなりに理解できますが、しかし、暗いイメージを持つなとこう言われても、更生という言葉が使われているいろんな状況を見ると、売春防止法に言う更生保護とか、犯罪者予防更生法に言う犯罪者の更生とかいうふうな形でのイメージの方がやはり強いわけでして、今政府の言うように、法律の内容は変わってきたんだというのならば、それにふさわしい用語でもってこの規定をすべきだというふうに私は思います。
念のために広辞苑で「更生」という項目を引いてもみましたけれども、どうも今厚生省がおっしゃるような意味合いには、この文字、言葉からはとれない。どうしても今言いましたような暗いイメージの方でとらえていかざるを得ないということになると私は思います。だから、今のような政府の説明では、やはり障害者の皆さんも納得できないでしょうし、私もそれでは納得できないのでありますが、どうですか、この際大胆に、この更生という言葉を、本来の福祉というものに見合う表現に抜本的に変える、そのことによって法の目的とするところ、性格そのものも、今おっしゃったように中身が変わっているというのなら、それでぴったりするのではないかと思うんですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/22
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023・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど申し上げましたように、私どもの身体障害者福祉法の中の言っております「更生」という概念につきましては、時代の変遷とともに生活の安定、あるいは福祉万般についてを含むんだというふうに理解をいたしております。こういった理解について、一つは、私どもとして積極的な啓蒙活動、あるいは周知徹底というものが必要かというふうに考えております。
今回の法律改正に当たっても、またいろいろな啓蒙活動なり周知徹底をやらなければなりませんので、そういった際に当たりましては、先生御指摘のような趣旨も踏まえまして、十分な周知、啓蒙の徹底を図ってまいりたいと思います。
一方、その更生という言葉につきましては、実は身体障害者福祉法だけではなくて、精神薄弱者福祉法とか、そういった関連の、ほかの関連する法律にも更生という言葉が実は使われておるわけでございます。この言葉をどうするかということになりますと、やはりそれ相応の学識経験のある方、あるいは関係者の方々の意見のコンセンスのもとに言葉を探し出さなければならないという問題もございますので、私どもといたしましては、確かに身体障害者の方々からそういう御提言をいただいておることは十分承知をいたしておりますので、今後そういったほかの法律との関連も見ながら、ひとつ身体障害者福祉審議会、そういった専門的な機関で十分御検討をいただいていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/23
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024・本岡昭次
○本岡昭次君 それでは、啓蒙活動と今言われましたけれども、具体的にどういう啓蒙活動を今考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/24
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025・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほどもちょっと触れましたが、今回の法律改正が国会の方で御審議いただいて、日の目を見るということになりますれば、それについていろいろ法律改正の内容についてのPR、周知徹底、あるいは関係者との打ち合わせそういったものもございます。
また、身体障害者の方々につきましては、身体障害者福祉週間というのがございまして、身体障害者の日を中心とする福祉週間というのがございますから、こういった福祉週間を通じまして、広く国民の一般の方々にも更生という意味の正しい理解を、できるだけ私どもやっていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/25
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026・本岡昭次
○本岡昭次君 大臣にお答えをいただいて、次の問題に進みたいと思います。
更生という言葉の持っている意味はこういう意味なんですよということを、この法律の変遷の過程でいろいろ厚生省自身として内容を充実してきたことを、通達とかいろいろな形で啓蒙活動をやっていくということは、それは国民が更生という言葉の持つ悪いイメージ、暗いイメージを変えていくのだということは、それはそれなりにいいんですが、問題はそういうことじゃなくて、それほど更生という言葉についていろいろ通達で弁解を、弁解と言うたら怒られるかしらぬけれども、言いわけをしてみたり、更生というのは本来こういう言葉ですよといって、くどくどくどくどそんなことをやるよりも、それにふさわしい言葉に変えてやるというのが本来じゃないかと思うんですよ。行革といってもいろいろあると思いますが、そんなしち面倒くさいことをする前に、ずばりそのことで行政をどうしていくという方がよほど厚生省の福祉行政として私は意味があると思うんです。
大臣、あなた副本部長をされておるんですから、更生という言葉がそのほかにもあるということを今おっしゃっているので、一遍抜本的に更生という言葉を洗い直して、現在にふさわしい福祉法としての見合った言葉というものを、「完全参加と平等」という理念の裏づけになるようなものにこの際変えることを検討するということをあなたの立場からひとつ言っていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/26
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027・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 今私も、先生の話をお聞きして、いろいろ考えておったんですがこれは文字だけでとりますと、これは「更に生きる」ということでありますから、身体障害者の皆さんが身体上の非常にいろいろ不自由、不便な条件に立たせられておられる方が完全参加と平等を目指して、職業の面で、あるいは社会生活の面で、教育の面で、普通の状態になられるということでありますから、文字だけを見ると間違った文字ということにもならないのでありますが、今先生御指摘のように、確かに更生という言葉が持つイメージは、何か社会で転落された方がまた正しい状態に戻っていくというようなことにも使われる面があるので、それが非常に暗いイメージと、こういうことになるだろうと思います。
そこで、先生おっしゃるように、言葉に無理に固執する必要は私どもの方も何もないわけでありますから、これは心身障害者のこれからの生きていく新しい方向、そういうものを国あるいは世界全体が完全参加と平等を求めて進んでいく、それにふさわしい、だれが考えてもなるほどいい言葉を見つけてきたなという言葉があれば、これは、いろいろ関連する精神薄弱者福祉法とか社会福祉事業法とか、法律上いろんな関連がありますが、しかし、これは手続が複雑になっても面倒であろうと、いいことはやった方がいいのでありますから、私はぜひ勉強をして、それぞれの関係の人たちと検討をしてまいりたいと思います。
どうか先生も、ぴたりとこれだというような言葉がありましたら、ぜひ私に御教示を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/27
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028・本岡昭次
○本岡昭次君 次の抜本的な法改正のときは、ぜひこれはさわるべきだと思います。そして、今大臣が、更生は「さらにいきる」と、そのとおり読まれたけれども、念のために字引を見ると、広辞苑でいうと、その言葉は、「いきかえること」「よみがえること」ということになっておるんですよ。だから、「いきかえる」とか「よみがえる」というのは、現在の状態が悪いという状態、よくないという状態をさらによくするという、こういうことになるんでしょう。だけれども、障害者の皆さんの問題というのは、障害であるそのこと自身でもってどう生きるかという、そのこと自身を認めてスタートしていかなきゃいかぬのでしょう。障害を治すとか、障害をどうするということじゃないんですよ。障害を持った個性としてそれをどうやるかということで、だから、もう全然言葉じゃない。それが次にはまた、「信仰・反省などによって心持が根本的に変化すること。過去を清算し、生活態度を改めること。」、ここになったらこれはどうしようもないでしょう、これは。それから、「不用品に手を加えて、再び利用できるようにすること。」と、こうなっています。だから、どう考えてみても、更生というこの言葉は身障者福祉法の目的のところに出す言葉として絶対にふさわしくない。そうでしょう、大臣。
だから、今回ここに修正案を出してどうこうということには、今では間に合いませんから、初めに言いましたように、今回は、答申の中で、現在の段階で早急にやるべきことということでやっておられるんですから、次の抜本的なときにはぜひここのところをしっかりとやはり法律の中で目的、内容に沿ったものに変えるということをひとつお約束いただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/28
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029・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 先生のお話一々ごもっともな点がございますので、抜本改正に向かって引き続いて検討をしてまいりたいと思います。
ただ、先ほども申し上げましたように、私も今聞いておりまして、先生のお話、一々ごもっともだなと思いながら、また一方で、それならこれにぴたりとかわる身障者の施策として明るいイメージを持った言葉というのが今まだ出てまいりませんので、これらは各方面の知恵をよくおかりして、だれもが納得のできるような、かわるべき言葉を見出すように、これから努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/29
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030・本岡昭次
○本岡昭次君 次に、今回の改正案では、第二条で「自立への努力」ということが規定をされております。障害者自身の自立への努力が前提で、それをサポートしていくんだという形でできているように思えて仕方がないんですね。だから、この表現、あるいは法律の建前自身が、他の福祉立法に対しても何か遅れた印象を受けて仕方がありません。
例えば、児童福祉法でそうした理念的なところをいきますと、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」、こうなりますし、老人福祉法では、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」。もちろん児童福祉法、老人福祉法と身障者福祉法が横並びでそのとおりだというわけにはいかないと思いますが、やはりここの面でも、「自立への努力」という形がいきなり出てくるところが福祉立法としていかがなものかということを私も第一に思うんですが、そのあたりいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/30
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031・持永和見
○政府委員(持永和見君) 第二条の「自立への努力」の規定でございますが、まず、自立への努力ということにつきましては、従来は、「すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、すみやかに社会経済活動に参与することができるように」というような規定でございましたものを、今回の改正によりまして、「すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、その有する能力を活用することによりこという、いわゆる身体障害者の方々が自分の持てる力の範囲内でというような規定を入れたのが一点でございます。
それから、先生御指摘の、老人福祉法、児童福祉法でございますが、児童福祉法は、児童という関係もありまして、確かに児童に対する育成あるいは健やかに生まれて育成されるよう努めなければならないという規定がございますが、老人福祉法では基本理念が第二条にございまして、第三条に、「老人は、老齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して、常に心身の健康を保持し、その知識と経験を社会に役立たせるように努めるものとする。」という、いわゆる老人の人たちの、みずからの健康はみずから守れ、あるいは経験、知識を社会に役立たせるというような規定がございます。
一方、身体障害者の場合に、は、心身障害者対策基本法というのがございまして、この中で、「個人の尊厳」という第三条がございますが、「すべて心身障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」という心身障害者対策基本法というものの中に個人の尊厳はうたわれているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/31
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032・本岡昭次
○本岡昭次君 そこのところはよくわかるんですけれども、そしてまた、自立への努力が不必要だと私は言ってないんですね。いきなりそれが出てくるところに、やはり身障者の福祉法というものが他の福祉立法に対して遅れているんではないかという感しがすると言っているんですね。
具体的に見てみますと、今もおっしゃったように、基本法の中に個人としての尊厳がうたわれてあると、こうおっしゃった。また、国連における障害者の権利宣言においても、「障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。」と。人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している、どれが福祉立法の本来の理念でなければならぬし、ある意味では、これは権利宣言的なそうしたものが明確になっていなければならぬと思うんです。これが、やはり障害者福祉法は弱いから、その改正案の文言の中で完全参加と平等を盛り込んだんだという気持ちはわかりますが、しかし、その言葉の中には弱さがあります。
例えば、「すべて身体障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」と、こういう表現になっている。機会を与えるものとすると、なぜできないのか。「与えられるものとする。」となっている。また、第三条では、国及び地方公共団体の責務を明らかにしたことは一歩前進だと思いますが、しかし、その表現の中に、また同じく「前条第二項に規定する理念が具現されるように、配慮して」云々というふうにあるんですね。ここで「配慮」という言葉をなぜ入れなければならないのか。「具現されるように」という言葉だけで言い切ればいいものを、ここでもやはり「配慮して」ということで、何か人間の尊厳、個人としての尊厳、それに基づく一つの権利宣言的な、福祉立法だという完全参加と平等というものをとりながら、しかし、表現になってくると何か一歩腰を引いたような中身が、そこに「配慮して」とか、「機会を与えられるものとする。」というふうな非常に回りくどい表現になっているところが、私は先ほど言ったように、どうもまだこの法律そのものに弱さがあると思えて仕方がないんですね。
どうですか、配慮をするとか、与えられるものというようなところをもう少し明確に、「配慮し」て」なんていうことを取り、そして「与えられるもの」じゃなくて、与えるというふうにそこで言い切って、そして、その責任を国なり地方公共団体が持つというふうにできないものなんですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/32
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033・持永和見
○政府委員(持永和見君) 順序で申し上げますが、まず第一点の、先生御指摘の、「与えられるものとする。」という表現でございますけれども、この「与えられるものとする。」という表現は、言葉の問題でございますが、大変恐縮でございますけれども、実は、法律に書くときには、だれだれがなになにしなければならないというようなこういう規定はあるわけでございますが、この場合に、だれだれがというよりも、むしろ社会全体あるいは社会の仕組みとしてその身体障害者が活動に参加する機会が与えられていなければならないというような、与えられていなければならないという趣旨を意味したものでございまして、そういうふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。社会全体あるいは社会の仕組みとして参加の機会が与えられていなければならない、こういう趣旨を規定したものであるわけでございます。
それから、第三条の「配慮して」ということでございますが、先生御承知のとおり、実は身体障害者対策はいろんな面でやっておりまして、まことに多岐多様にわたっております。すべての身体障害者対策が、究極的には理念でございます完全参加あるいは平等という理念に向かっていなければならないことは事実でございますが、直接のその目的が、完全参加あるいは平等ということに直接つながらないんじゃないかと思われるものもございます。
例えば更生医療などというのは、まず第一次的な目的は障害の軽減、除去、そういったものにございます。また、在宅の人たちにホームヘルパー、家庭奉仕員の派遣をいたしておりますが、この家庭奉仕員の派遣は居宅における介護といったようなものが第一次目的でございます。しかし、それも最終究極的には完全参加と平等につながるようなそういう施策面での配慮が必要だというようなことから、この「配慮して」という言葉を入れたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/33
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034・本岡昭次
○本岡昭次君 今の答弁だけでは納得できませんが、これだけにかかわっているわけにいきませんから、これはまた大いに議論をさしていただきたいと思います。
私が心配しているのは、先ほど言いましたように、行政としての責任の問題が何かこうあいまいにならないかということなんですよ。だから、そうではないという非常に厳しい形でのこの福祉法の中身の実施の問題について、果たしてこれからやっていってくれるのかどうかという点がどうしても身障者の皆さんにとっても、特に。「配慮して」とか、先ほど言った「与えられるものとする。」とかいう言葉が、何か他人任せのような形で受け取られていく。それはある意味では身障者福祉に対する厚生省の行政そのものに対する不信ではないかと私は見てとるんですけれども、不信感があるから、一つ一つの言葉の中で、この言葉で逃げられるんではないかというふうなことが出てきている、こう思います。だから、その点について、言葉ではないんだ、中身なんだとおっしゃるなら、その点をこれから具体的に一つ一つ厳しく私たちも要求していきますし、またその実現方を求めてまいりたいとも思います。先ほど言いましたけれども、この言葉について私は納得できませんが、ここでこの言葉をかえろと申しても、法律に出ている言葉を修正するわけにもいきませんから、今の言葉の中身をこれからの対応の中で具体的に実現させてもらいたいということで、次の問題に入っていきます。
そこで、次々といろんなことを言いますけれども、身体障害者福祉審議会に障害者の参加を拡大をする必要があるのではないかという点であります。
五十七年三月の答申を読んでおりますと、身体障害というものの分類があります。視覚障害、聴覚障害、音声・言語機能障害、肢体不自由、内臓機能障害、全身性障害というふうに六つに分類がされております。そして一方、身体障害者福祉審議会のメンバーを見てみますと、内臓機能障害あるいは全身性障害の該当者が委員になっていないのではないかというふうに名簿を見た段階では思えるんですが、やはりすべての障害に関係される方の代表が参加をするという事柄が最も必要であるということで、これについて、どうですか、加えるという点についての御回答をいただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/34
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035・持永和見
○政府委員(持永和見君) 審議会の委員の方でございますが、先生御指摘のように、現在、身体障害者福祉審議会の中に身体障害者の代表の方々もおられますが、内臓機能障害、全身性障害の方々がおられないというのは事実でございます。ただしかし、現在審議会も行政改革の対象ということになっておりまして、委員の数をふやすとかなんとかということになりますと、なかなか非常に難しい問題があるわけでございます。しかし、身体障害者福祉審議会は、法律上におきましても身体障害者の方々を加える、身体障害者の方々の中から厚生大臣が任命する、もちろん身体障害者の方方だけじゃなくて、ほかに学識経験者とか、いろんな方がおられますが、身体障害者の方も厚生大臣の任命対象ということになっておるわけでございまして、そういう意味合いで、先生の御提案につきましては、非常に難しい現況もございますけれども、可能な限りひとつ検討していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/35
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036・本岡昭次
○本岡昭次君 ぜひひとつ実現してください。それも完全参加という事柄になってこようと思います。
それから次に、今回の改正案で、別表のほか「政令で定める障害」というものを設けて、これにオストメートの人を新たに入れるということになっています。そこで、このオストメートの人は、現状何人ぐらいおられるというふうに厚生省は推計をしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/36
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037・持永和見
○政府委員(持永和見君) オストメートの方、いわゆる人工肛門、人工膀胱を造設されている方につきましては、これは学界などにおいても、その数量的な調査データは現在のところないというふうに聞いておるわけでございまして、人工膀胱、人工肛門の造設者の方が全体として何人おられるかというのは、私どもとしても把握しておりませんが、実は、今度の法改正によりまして補装具の給付という問題が身体障害者福祉法の中から出てまいります。補装具の給付対象として、今私どもが年金の前例などによって推計をいたしております人たちの数が約六千三百人、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/37
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038・本岡昭次
○本岡昭次君 私は、オストメートの皆さんが組織しておられる互療会というところの「療養のしおり」をずっと目を通さしていただきましたけれども、その中には、ある学者の方が、推計十万人ぐらいおられるんではないかということも推計として出ております。このたび「政令で定める障害」の中にオストメートの方が加わったということですから、これは実態としてなかなか掌握しにくい面も出てこようと思いますが、やはりある程度の実態というものは、こういう障害者団体の皆さんの協力を得てつかむべきではないかという点を思います。
それで問題は、今も答弁がありましたけれども、補装具交付について予算上の措置が六千三百人、一億八千万円という事柄が今何かひとり歩きをしてしまって、結局「日常生活が著しい制限を受ける」者ということで認定していく人は六千三百人なんだというふうな関係になってきているところに、私はこの矛盾があるように思うんです。
そこで、まずお尋ねしたいのは、オストメートの方が、いわゆる「政令で定める障害」であるというふうに認定した人の数が仮に八千人なり一万人なりとこういうふうになった場合、この六千三百人という予算上の措置に制約を受けて、「日常生活が著しい制限を受ける」という人をその中で六千三百人までさらに削り込んでいくんだというふうなことは、これはやらないと私は思うんですね、そんなことをしたら大変ですから。だから、まず予算が先行するんじゃなくて、「日常生活が著しい制限を受ける」者、この言葉の解釈はいろいろありますが、しかしそれは別にして、要するに「政令で定める障害」ということの中で認定された人の数そのものがすなわち補装具交付の措置を受けるんだというふうに理解していいかどうか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/38
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039・持永和見
○政府委員(持永和見君) そのとおりでございます。予算は、あくまで予算を決める場合のある程度の具体的な数字がなきゃなりませんので、そういう積算をいたしておりますが、実際にオストメートの方々でこの身体障害者福祉法の対象ということで認定された方々について、補装具の支給を何人で打ち切るというようなことはいたすつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/39
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040・本岡昭次
○本岡昭次君 それで問題は、この「日常生活が著しい制限を受ける」という事柄になってこようとこう思いますね。
前回も中野委員が随分詳しくこの問題について質疑をされて、大臣も、今後について、身障者福祉法の適用の問題が絡んでこういう立場にある皆さん方の対応について十分万全の対応を考えてみたいというふうな趣旨のお話もありましたから、私はそれを受けて質問さしていただきたいんですが、結局のところ、オストメートの方一人一人について、あなたは日常生活に著しい制限がある、あなたはないというふうなことができるのかどうかという疑問を持つんですね。オストメートの状態になった、そのことが一つの障害であるというふうに認定すれば、それ以上のことは必要がないんではないか。そういう立場に立ってオストメートの方全員をこの身障者福祉法の対象とするという前提に立つべきが妥当ではないかと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/40
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041・持永和見
○政府委員(持永和見君) オストメートの方々のうちで、身障法の対象になる、いわゆる日常生活に著しい制限を受ける場合がどういう程度、あるいはどういう障害の方々かということについては、現在、身体障害者福祉審議会の審査部会において、専門家の先生にお集まりいただきましていろいろと御検討をいただいております。既に五十八年の十二月から行っておりまして、この法律の実施が十月一日を予定いたしておりますので、およそ七月ないし八月までの間に一応成案を得ていただきたいということで、現在、審査部会の方々に御検討をお願いしておるわけでございまして、その結果を待って私どもとしては対処をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/41
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042・本岡昭次
○本岡昭次君 その際に、先ほどオストメートの皆さん方の実態というものを厚生省としてよくつかんでおられない、その数も年金等のところから推計をしてきて一定の数をつかんだと、こういうことですね。
だから、最初のところから私は申し上げているように、完全参加というのは、障害者の皆さんがそうしたさまざまな、政府が行政の責任上いろんな決定をしていくところに参画をしていくということを通して、また、自立ということも当然そこから導き出されるんですよね。だから、このオストメートの皆さんの身障者法による認定の状態とか、そういうふうなものを決めていく段階で、今現に互療会という一つの組織もあります。だから、そうした組織の代表の方を常時その審議の中で意見を出してもらうとか、あるいはまた、この互療会の何人かの方々を選んで、そしてオストメートの皆さんの本当の生活というものが一体どうなんだということを、全体をひとつ明らかにしてもらうという場を持たなければ、現在、そういう人たちの団体を抜きにしてそういう認定の問題を決めていくということは間違いじゃないかと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/42
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043・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど私が申し上げました審査部会は、極めて医学的、専門的な審査をお願いしておるわけでございますが、この中に、このオストメートの審査をしていただくために、新たに、専門委員として、膀胱、直腸の専門の先生もお願いしたところでございます。
しかし、今先生の御提案もございますので、こういった審査部会の先生方の御意見もお聞きしなければならないと思いますけれども、そういった団体の方々の御意見も十分反映できる、あるいはお聞きするような形を、この先生方にひとつ相談してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/43
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044・本岡昭次
○本岡昭次君 医学的なことは専門家のお医者さんにやっていただいたらいいけれども、しかし、日常生活に著しい制限なんというのは医学的な問題だけでは判定できないと思うんですよ。実際に生活をされた方がどういう制限が、制約があるのかという問題をたくさん出さなければ、これはできないと思うんですよ。例えばこれを読むと、十年も十五年もオストメートの生活をされている方もありますから、だから多様な経験を一度その審議会のところで集約をして、そしてひとつ間違いのない判断をしていただく、そして予算に縛られない、こういう観点を貫いていただきたいと思うんですが、私のその要望はお聞き入れいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/44
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045・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今申し上げましたように、この障害の等級あるいは障害の認定そのものは極めて医学的、専門的な立場というものが強いわけでございますから、今専門の先生方に審査をお願いしておりますけれども、団体の方々、実際にそのオストメートの経験を持っておられる方々の御意見というのも十分反映していくことも必要でございますので、こういった審査の過程の中でそういったことをお願いできるように、ひとつ先生方にお話しをしてみたいと思います。
また、予算については、先ほど申し上げましたように、これは必要なものについては給付するということで、予算で人数を縛ったりするようなことはいたさないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/45
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046・本岡昭次
○本岡昭次君 ひとつよろしくお願いしたいと思いますがね。やはり局長の答弁でもはっきりしないのは、「も」という言葉を使われるんですね。オストメートの方々「も」じゃなくて、「を」というふうに、「も」というのはやっぱりそこに逃げがあるんですよね。万一の場合私は「も」と言いましたよというようなことにならないように、もうあなたの責任で、審査の中でいろんな意見を反映してもらう場をつくりますということを、責任を持ってもらいたいと思います。
それから次に、脳性麻痺等、幼少時から全身性障害の人も、このオストメートの人と同じく「政令で定める障害」というところに加えるべきではないかという意見であります。これは先ほどから出ているように、五十七年三月二十九日の身障者福祉審議会の答申の中に、「障害程度等級表の合理化」の項を見ましても、やはり検討をすべきとか見直せとかいうふうな答申の言葉が現にあるわけですね、この脳性麻痺等全身性障害の方々について。だから、やはり今回もこの「政令で定める障害」の中に加えてもよかったんじゃないかと思うんですが、この方々は何ですか、さらに検討、見直しという答申の要請に従って検討をし見直して、そして次の機会にというお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/46
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047・持永和見
○政府委員(持永和見君) 脳性麻痺の方々などの全身性障害の方々につきましては、その方々がいろんな障害を持っておられますので、現行の中で、障害の程度、状態に応じまして、肢体不自由の方、あるいは言語機能障害というような形での障害の認定が行われておりまして、身体障害者福祉法としては、既に身体障害者福祉法の対象にされておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
ただ、こういった方々につきましての障害程度等級の評価の合理化については、さらに検討する、障害等級表についてはさらに検討する必要があるんだということで身体障害者福祉審議会から答申をいただいておりますので、そういった面での障害程度等級表の合理化についていろいろと現在検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございまして、脳性麻痺の方々は既にそれぞれの障害の状態によって身体障害者福祉法の対象として取り扱っておるということで、改めてこれを別枠の政令ということにするということは私どもとしては考えておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/47
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048・本岡昭次
○本岡昭次君 それじゃ端的に聞きますけれども、この脳性麻痺など幼少のときから全身性障害のある人、その中には現在身障法の認定を受けている人もいる、それはそうでしょうね。だけれども、全体としてこの部分が欠落しているというふうにこの身障者の皆さんの団体の中から御意見が出てくるんですが、これは私たちの認識の誤りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/48
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049・持永和見
○政府委員(持永和見君) こういうことじゃないかと思いますが、全身性障害の方々は、肢体不自由もあれば言語機能障害もあるというような方々がおられるわけです。こういったダブルの障害を持っておられる方々の場合に、私どもとしては現在その両方の障害を総合的に評価するということをいたしておるわけでございます。その脳性小児麻痺というものを直接ずばり身障福祉法の、何といいますか、障害の状態としてとらえていない、法律上明記していない、こういうことはございます。あるいは法律上に、例えば視覚障害者とか聴覚障害者とか腎臓のどうのこうのとかいうようなことで、脳性麻痺という形での表現を法律上いたしておりませんが、実際問題としては、こういう方々はいろんな障害の状態を持っておられますので、肢体不自由でございますとか言語機能障害でございますとか、そういった障害を持っておられますので、そういう障害に着目してそれぞれ評価をしているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/49
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050・本岡昭次
○本岡昭次君 それは、そういう言語障害とか肢体不自由とか聴覚障害とかいうふうな、いわゆるダブル障害というんですか、そういう状態もあるでしょうが、そういうことから起こっていない全身性障害の人々というのは今の身障法の中では認定される条件というものはないんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/50
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051・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今申し上げたように総合評価としてやっておるわけでございまして、全身性障害や重複障害があるわけでございますから、そういった意味で、審議会でも言っておりますけれども、日常生活状態に着目した評価というのが問題があるんじゃないか、そういう点での欠落があるんじゃないかということを身体障害者福祉審議会で言われております。現在の等級表ですと、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由ということで身体機能の損傷の程度を評価する方法が主体となっておりまして、日常生活能力に着目した評価という観点に欠ける面がある。特に、緊張性アテトーゼ型脳性麻痺のような全身性障害者についてはそういった問題があるので、こういった人たちの障害程度の評価の合理化を図るために障害程度等級表についてさらに検討をしなさいということが言われておりまして、そういった観点から検討をしていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/51
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052・本岡昭次
○本岡昭次君 今答弁のあった点から検討していけば、私の要望した点は含まれていくと理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/52
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053・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先生の御要望の点も含めた上での検討ということで御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/53
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054・本岡昭次
○本岡昭次君 それでは次に、さらに具体的になって恐縮ですが、聴覚障害の、評価の改善というのがありますね。これ、今は両耳の聴力損失が六十デシベル以上というふうになっているんですが、それを四十デシベル以上に改善できないかということです。私、勉強不足で、六十デシベルと四十デシベルという問題が日常生活上どの程度の障害が伴うものかということを余り承知していないんです。しかし、聴覚障害の皆さん方等の話を聞くと、四十デシベル以上に改善をすべきであるという、障害者自体の御要望が非常に強いので、この点について、厚生省としてその点を検討していくお考えはないかという点。
それから、現行法三十条の二に「ろうあ者更生施設」という条文があって、この「ろうあ者」という言葉を聴覚障害者と改めて、中等度失聴者、難聴者も対象とするというふうに考える方が妥当ではないかと、こういう御意見もあるんですが、この二点についていかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/54
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055・持永和見
○政府委員(持永和見君) まず、聴覚障害の方々の聴力損失の程度の問題でございますが、実は今回の改正で、従来六十デシベルであったものが、何か日本工業規格の改正によりまして、オージォメーターが改正になりましたので、それによって七十デシベルというふうに改正をお願いしているわけでございますが、これを四十デシベルに改善すべきじゃないかという御意見が身体障害者の方方からおありになることは私どもも承知をいたしておりますが、実は、身体障害者の等級と申しますか、身体障害者の範囲につきましては、いろんな損傷の方々がおられるわけでございまして、聴力の障害の方々もおられれば視力の障害の方々もおられる。そういった意味での、全体としてのやはりバランスが必要であろうかと思います。
実は、聴覚障害の方々のデシベルというのは補聴器をかけた状態でデシベルをはかるということになっておりまして、視覚障害の方々は眼鏡をかけない状態ではかるというようなことで、そういった意味で、逆な面でのあれが出ておりますので、そういった点も考慮しながら全体としてのバランスを考えていかなければならないというようなことがございますので、その辺を御理解をいただきたいと思います。
それからもう一点、ろうあ者更生施設でございますが、ろうあ者更生施設につきましては、今回のお願いしております改正で、更生施設を全体として集約いたしまして、従来は「失明者更生施設」、「ろうあ者更生施設」というような形で分かれておりましたのを、身体障害者更生施設として法律上は統合いたしました。それで、個別の名称につきましても、それぞれ具体的な施設の名称につきましても、法律がそういうふうに変わりますし、また、先生の御提案もございましたので、そういった点を踏まえて前向きに検討し、指導をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/55
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056・本岡昭次
○本岡昭次君 横並びの話が出ましたが、先ほども言いました身体障害者福祉審議会ですね、その中で、障害者等級表全体について見直してはどうかと、「合理化」という言葉で表現をされていますね。だから、今一つの例として私は聴覚障害の評価の改善ということを申し上げましたが、聴覚障害、視覚障害、音声・言語機能障害、肢体不自由、内臓機能障害、全身性障害、こうした全体的な分野について、これから見直し、再検討、改善へ向けてそうした作業が行われていくというふうに理解をしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/56
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057・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘の、障害程度等級表の合理化については、身体障害者福祉審議会からも言われておりますし、その中で、視覚障害、聴覚障害、音声機能障害、肢体不自由、それぞれについていろいろ等級の合理化についての問題も指摘されておりますので、そういう意味合いで、そういった点について今後引き続き検討をしてまいりたいと思っております。
それから、大変恐縮でございますが、先ほど私、聴覚障害の場合に補聴器をかけたままで、視覚障害の場合に眼鏡をかけないでと申し上げましたが、逆でございまして、聴覚障害の場合には、補聴器をかけない状態で障害を認定し、視覚障害の場合には眼鏡をかけた状態で視覚障害を認定すると、こういうことでございますので御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/57
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058・本岡昭次
○本岡昭次君 ぜひ各等級の内容の検討を早急にしていただいて、これは政令等でやれる部面もありますので、障害者の皆さんの要望にこたえていただきたいと思います。
次に、費用徴収の問題に触れてみたいと思います。
今回、身体障害者更生援護施設からの費用徴収規定というものの整備が行われております。それで、新たに身体障害者について費用徴収を設ける理由ですね、それがどういうところにあるのか、あるいはまた、その費用徴収に関する基本的な考え方はどういうふうなのか、説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/58
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059・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今回の改正で、施設利用についての身体障害者の方々の費用徴収をお願いしておりますが、身体障害者福祉法にも、御理解いただけるとおり、現在補装具の支給でございますとか更生医療でございますとか、そういったものについては費用徴収をいたすということになっておるわけでございます。
また一方、現在国会で身体障害者の方々の所得保障として年金の充実、いわゆる障害基礎年金をつくるということで所得保障を充実させるという法律の提案をいたしております。また、実際に施設にお入りになった方々と、それから施設に入っておられない在宅の方々とのサービスの面でのいろんな公平を確保するというような問題がございまして、今回また身体障害者福祉審議会あるいは検討委員会、そういったところからの御提言もございまして、今回の費用徴収の規定をお願いするということにいたしたものでございます。
ただ、この費用徴収の規定は、先ほど申し上げましたように、身体障害者の方々の所得保障の充実、これとリンクをするということで、所得保障の充実が実施される六十一年からこの費用徴収をするということで、法律の施行をそのときに延ばしておるものでございます。また、それまでの間に私どもといたしましては、身体障害者の方々の実情、あるいはそれぞれの施設によっていろんな性格の施設がございますので、そういった施設の性格等を勘案しながら合理的な費用徴収基準を決めていかなけりゃならないと思います。
そういった問題につきましては、さらに身体障害者福祉審議会の方にも御検討をお願いして、その結果を踏まえて徴収基準を決めていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/59
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060・本岡昭次
○本岡昭次君 費用徴収の問題は、今明らかになりましたように、所得保障の充実とリンクする。別な表現をすれば所得保障が前提になる、こう考えてもいいと思います。
それで、六十一年からというのは、これは年金の改正の時期と一致させているというふうに思いますが、そうすると、基礎年金導入という年金の抜本改正ですね、その問題が軌道に乗らなければ、例えば六十一年といっても、前提がそうであればその点が、厚生大臣おられてそんな言い方したら失礼かもしれないけれども、それが後ろに延びていくということになれば、こっちの所得保障の充実という点も当然障害が起こってきますから、費用徴収の面もおくれていく、こういうふうに理解していいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/60
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061・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御提案している国民年金法の改正は通るということの前提でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/61
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062・本岡昭次
○本岡昭次君 いや、それはそうでしょう。通る、通してもらわにゃいかぬということですから。
私の言っているのは、所得保障というものが前提になっているというんだからね、だから、その六十一年という事柄について、あなたが今言われた六十一年の四月ですか、その時点で所得保障が年金等によって費用徴収に耐え得る十分な状況になったという、その前提というものを踏まえるんですねと言っているんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/62
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063・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど御説明いたしましたように、今回の導入の考え方の前提として、所得保障の充実というものがあるのは事実でございます。したがいまして、そういった点からこの制度を導入したのも事実でございますので、年金制度の所得保障の充実を前提とした形での導入でございます。ただ、理論的には、理屈の上では、これは身体障害者福祉法の改正と国民年金法の改正というのは必ずしもリンクするものではございませんが、考え方としてはリンクをしているというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/63
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064・本岡昭次
○本岡昭次君 考え方という域しか出ておりませんが、考え方じゃなしに、実質所得保障がされたということを前提にしてもらわなければならぬということを強く要求をしておきたいと思います。
それで、更生施設の費用のうち、何に要した費用を徴収しようとするのか、これからの論議であろうと思います。そこで私は、所得保障、そして自立、そして応能負担ということの中で費用というものが出されていく、こういう道筋であろうと思うんですね。だから、自立するという事柄についてまで費用徴収をやるということは、その道筋からするとちょっと無理があるのではないかと思います。
だから、更生施設で行う各種の訓練ですね、これは身体障害者が自立する上で極めて重要なもので、自立して健常者とともに社会生活を送れるようになった場合、結局その経済効果は大変大きいわけですから、いわゆる各種の自立のための訓練ということですね、そのための更生施設で行ういろんな場で費用徴収をやっていくということは、費用徴収があるということによって訓練を受けるということについてちゅうちょするとかいうことになれば、これは自立の道を阻む。ということは、先ほど言った所得保障、自立そして応能負担という原則に立って社会参加をしていくという事柄の一つの障害になると思うんで、この部分については費用を徴収すべきではないと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/64
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065・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど申し上げましたように、身体障害者の施設の場合には、老人の施設などと違いまして、施設によってそれぞれ性格がかなり異にいたしております。今先生御指摘のように、確かに更生施設というのは、短期間に更生に必要な知識訓練や知識技能を与える施設でございます。そういったことで積極的に身体障害者の更生を図ることを目的とする施設でございまして、こういう意味合いで検討委員会の方からも費用負担については、更生施設はこういう趣旨だから、それから療護施設はこれは生活施設の機能を有している施設であるということを考慮しなさいとか、あるいは授産施設についてはやはり更生施設と同様一定期間に更生施設に準じた訓練を行う施設だからというようなことでコメントがしてあるわけでございまして、そういう趣旨を踏まえて私どもとしては費用徴収基準をこれから決めていかなければならないと思います。
したがいまして、療護施設における費用徴収基準とそれから更生施設における費用徴収基準というのは、これもこれから御審議をいただくわけでございますが、結果的には相当異なったものになるんじゃないかというようなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/65
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066・本岡昭次
○本岡昭次君 他の施設を利用した場合の費用徴収に言及する時間がありませんが、自立のための訓練というふうな事柄については、厚生省として費用徴収しないという立場でこれは臨んでいただきたいということを強く要望いたしておきます。
それから次に、ちょっと時間がありませんからはしょっておりますが、身体障害者福祉ホームの問題も今回の法律の中で新しく提起をされております。身体障害者の自立のための居住の場の確保の一環として、身体障害者福祉ホームを新たに施設体系の中に組み入れたということは大変結構なことであると私は思います。ただ、それが将来とも身体障害者の皆さんの選択にこたえられる生活の場になるかどうかという問題は、非常にこれは難しい問題だと私は思うんですね。
そこで、現在政府として考えておられるこのホームの施設基準のようなもの、施設全体のイメージが私たちの頭に浮かんでくるようにしていただきたいと思うんです。それで、そうした概要ですね、ここで簡単に説明いただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/66
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067・持永和見
○政府委員(持永和見君) この福祉ホームというのは、身体障害者の方々のうち自立能力のある方々もおられるわけでございますが、そういった自立能力がありながら身体の障害があるために常に介護が必要だというようなことで、家庭において日常生活を営むのに支障がある、あるいは住居環境がそういった意味でふさわしくないというような人々のためにつくるわけでございまして、そういった人たちの自立を促進するというような生活施設でございます。したがいまして、その場合には自立した生活を、自分で生活を営んでもらうということが前提でございますが、身体障害者の方々のお集まりの場でございますので、あるいは日常生活の相談に応じるとか、あるいは建設省でおやりいただいております身体障害者住宅よりも多少質の高い設備、身体障害者用の設備をいろいろ配置するとかいうようなことを考えております。
それで、この中にお入りになりますと、一応利用者の自立生活ということでございますので、契約によって利用していただくということを考えておりまして、定員は二十名以上ということでございます。したがいまして、利用料は利用者が負担をするというふうなことで考えておるわけでございまして、整備費につきまして国が二分の一の補助をしていこうじゃないかというような施設でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/67
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068・本岡昭次
○本岡昭次君 経営主体は地方公共団体か、あるいは社会福祉法人ということでいいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/68
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069・持永和見
○政府委員(持永和見君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/69
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070・本岡昭次
○本岡昭次君 そこで、二十名以上ということですがね、どうですか、二十名以上という基準そのものですが、例えば十五名であれば基準に達していないからそういうものは認めないんだというふうなことで、これ、いけるのかどうか。地方公共団体にしても、大きな何百万から小は何千というところもあるわけでね、この二十名という基準そのものに対して、自治体の規模等にかんがみて、厚生省の方の判断として若干の伸縮性がなければいかぬのじゃないかと思うんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/70
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071・持永和見
○政府委員(持永和見君) 一応私ども二十名という基準を設けましたのは、先ほど申し上げましたように、やはり福祉施設として日常生活についての相談などをいたしますし、また、所要の設備をいたすわけでございますから、そういう福祉施設としての規模の面、あるいは施設運営の面から見てある程度の規模が必要だということで、二十名ということを考えておるわけでございますが、二十名というのを一名たりとも割ったんじゃいかぬというような、そういったところまでは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/71
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072・本岡昭次
○本岡昭次君 五十九年度予算では、何カ所程度の設置を予定して予算を組まれていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/72
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073・持永和見
○政府委員(持永和見君) この身体障害者の福祉ホームは、社会福祉施設等整備費の全体の枠の中で実施をするということになっておりまして、この法律の御審議をいただいて成立を見ましたならば、それに基づいて各県からの希望をとります。その希望によって協議をしていく、こういうことになるかと思います。今のところ何件だというようなところまでの予算の中身はございません。予算案全体として、先生御承知のとおり、特別養護老人ホームだとか、あるいは保育所とか、そういった社会局関係、児童局関係の全体の施設整備費の枠の中で運用をする、こういうことになっておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/73
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074・本岡昭次
○本岡昭次君 それでも、年度当初として何カ所ぐらいを想定するということでなければ、せっかくこの法案の中に盛り込んだ意味がないんじゃないですか。法律が通ってみなければ後はどうなるかわからぬというふうなことじゃないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/74
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075・持永和見
○政府委員(持永和見君) まあ法律の改正の段階で一応法律案の概要を各県にも示してあるわけでございますが、そういった中で各県からの話を詰めている段階で、主として大きな府県が最初になるかと思いますけれども、四、五カ所程度は出てくるんじゃないかというような観測でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/75
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076・本岡昭次
○本岡昭次君 それで、今、大きなところから四、五カ所というふうなことがありましたけれども、どうですか、見通しとして、全国的にどの程度こうした福祉施設というものが実施されるか。あるいはまた、厚生省の指導の問題として、どの程度こうしたものを充実さしていこうとお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/76
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077・持永和見
○政府委員(持永和見君) せっかく法律でお認めいただいた施設でございますから、私どもの気持ちとしては、各県に少なくとも一カ所以上はつくっていただきたい、こういう気持ちでございますし、そういう気持ちで今後指導をしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/77
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078・本岡昭次
○本岡昭次君 それで、そうした施設の運営方法なんですが、これも障害者の皆さんからの強い要望が出ておると思います。要するに、居住者のプライバシーの保護ですね、それと居住者の自治権といったようなもの、あるいは経営主体と入居者との関係といったもので、いろいろ困難な点があると思うんですが、基本は、居住者の自治権というんですか、そういうようなものを前提にしながら行政がそれに対していろいろ助けていく、こういう関係でこれは運営されていくんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/78
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079・持永和見
○政府委員(持永和見君) この福祉ホームは、先ほど申し上げましたように、利用者とそれから設置主体の契約によってお入りいただくわけですから、あくまで自立した生活というのが前提になっております。そういう意味で、生活自体も、個々の身障者の方々の責任において行われる、言うなれば、逆に言えば、お互いのプライバシーは守っていく、こういうような施設であると思いますし、そういうふうに運営をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/79
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080・本岡昭次
○本岡昭次君 関連してお伺いをしておきたいんですが、精神薄弱者通所援護事業というのがございますが、この事業の意義、あるいはまたこの事業の現状、それから今後こうした援護事業について各県で精神薄弱者の皆さんについての援護が十分行われるように予算的にもいろいろ検討をしていただきたいということを思うんですが、この点についてひとつ簡単に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/80
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081・吉原健二
○政府委員(吉原健二君) 御質問のございました精神薄弱者の通所援護事業でございますが、これは各県に精神薄弱者を持つ親の会というのがございまして、親の会の方々が、地域のボランティアの方々の御協力を得まして、自分たちの子供、それから地域の精神薄弱者の方々を十五人ないし二十人程度以上集めまして、そこでいろいろな作業、袋張りでありますとか手芸でありますとか、あるいは部品の組み立て、そういった作業を通じて、あるいはレクリェーションとか、いろいろな行事を通じて自立更生を図っていく、そういう事業でございまして、それに対しましてその運営費の一部を国が援助さしていただいているわけでございます。
この事業は、昭和五十二年から始まりまして、精神薄弱者を持つ親の会の方々の大変強い要望のもとに始められたわけでございまして、現在に至ってなおかつ要望も大変強いし、需要も多いという現状でございまして、予算的にも、五十二年度は十五カ所から補助を始めたわけでございますけれども、現在、五十九年度では百二十一カ所を補助対象にしているわけでございます。こういった厳しい予算の中ではございますけれども、五十八年に比べまして十カ所ほど対象箇所数の増加が認められておりますし、これからも、ささやかな援助ではございますけれども、できるだけこの助成対象を広げていくということで考えてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/81
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082・本岡昭次
○本岡昭次君 親の会とかボランティアという方たちの事業ですので、やはり政府としても積極的にこれに対する援助活動をこれからも強めていただきたいということを要望しておきます。
最後に厚生大臣にお伺いして私の質問を終わります。
ずっと一時間半にわたって私は法案全体を質問してきましたが、これとても、身体障害者の皆さんのさまざまな持っておられる要求の本当の上っ面をすっとなでただけではないかと思います。しかし、私のこの質問を通して、厚生大臣も、身体障害者福祉という問題についてまだまだやらなければならないことがたくさんある、あるいはまた、再検討をしていかなければならぬものがある、また、見直しをしていかなければならないものがあるというふうなことについてお感じいただいた、こう思います。
それで、国際障害者年の理念である「完全参加と平等」という問題を目指して、これから抜本的なひとつ法改正を目指して厚生省が力を入れてもらわなければならぬ、私はこう思うんですが、そのことに対する決意と、あわせて、そうした検討を、いつごろをめどにそうした抜本的な法改正をお考えになっておられるのか、その点もあわせて御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/82
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083・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 私は、厚生大臣に就任しました最初の記者会見で、本人の責めによらずして、客観条件の中で非常に不自由な、あるいは不便な生活を強いられておる身体障害者の皆さん方が、「完全参加と平等」という理念のもとに、この国におられる皆さん方が幸せに生きていけるようにお手伝いをする、これこそが国の、厚生省のやらなければならない大事な仕事ではないかと申し上げたのでありますけれども、その私の信念と、きょうの先生の御質問の中にあらわれておるところの考え方は全く共通するものであります。
今政府委員から幾たびも答弁しましたように、今できる当面の問題を取り上げて今回この改正案をお願いしたわけでありますが、この法律を通していただきました後、政令等の問題もありますから、これも先生のお考えをできるだけ反映するように努力し、また、我々身障者対策をやっておって、これで不十分な問題が出てまいりますれば、ここで改正は終わったというような考えでは全くなく、今後引き続き心身障害者対策をより充実させるために必要なことがあればどんどん改正をしていくための検討を重ねていくというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/83
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084・糸久八重子
○糸久八重子君 私が障害者問題を勉強し始めてから、まだ大変日が浅うございます。非常に短時間の間ではありましたけれども、その間に何冊かの本を読み、そして資料とか文献とかを見ました。また、いろいろな団体の方からのお話も聞かせていただきました。そして気がついたことなのですけれども、施策に関する諸制度が非常にばらばらに分断されているということに気がついたわけでございます。そのために、障害児対策と、それから障害者対策との一貫性が欠けているということ、そして生活保護法と障害者対策との関連性が弱いために、保護世帯の障害者は放置されてきているのではないかということ、さらに、所得保障にかかわる事柄は年金諸法に組み込まれていること等々、非常に問題のあることがわかったわけでございます。そして、さらに精神障害者に対する福祉の法律がないということも片手落ちではないかというふうに気がつきました。
国連の国際障害者年の提起を受けまして作成されました政府の「障害者対策に関する長期計画」には、法体系整備についての項目が見当たっておりません。そして、今回の障害者福祉法改正の中身も、抜本的な改正とはなっていないと思います。障害者関連法制の未整備によって、福祉の対象から外されたり、また落ちこぼれたりしてしまう障害者がいるということは何よりも重視をしなければならないことだと思います。「障害者は、その障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する。」という障害者の権利宣言にある理念を現実のものとするためには、関連諸法の改革と調整が望まれると思いますけれども、この点、大臣のお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/84
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085・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) これは、先生の御意見もごもっともでございますけれども、障害者に対する施策は、これは、精神は同じでありますけれども、障害の特性あるいは年齢等に対応して、それぞれいろいろ違った施策を必要としますので、このために身体障害者福祉法、児童福祉法、精神薄弱者福祉法、こういういろんなことになっておるので、また、考え方によっては、それだけ身障者の問題を、先生が御心配になるように、取りこぼしがないようにということの努力がこういう結果になっておるという面もこれはあるのでございます。ただ、そのことのために身障者対策が非常にうまくいかない、円滑にいかないというような面が具体的に私どもの行政の中で出てくれば検討すべき課題だろうと思いますが、今のところ、私がいろいろ各それぞれの局から報告を聞いておる時点では、こういうふうなために心身障害者対策が非常に円滑にいかないというような報告は聞いておりませんので、現在のこういう形でより充実させていくことがよろしいのではないかと思います。
また、精神障害者の問題、これも非常に難しい大事な問題でありますが、若干福祉の問題とは違う、より医学的な問題、医療を充実する問題、あるいは場合によっては保護を必要とする問題とか、これは身体障害者の皆さんとはまた違う面がございます。
そういうそれぞれの事情によってこのようになっておることを御理解賜りたいと思いますが、もとよりそのために、だれが見ても身体障害者対策がああいうふうになっているためにこういう者が救われていないではないか、あれは非常に不合理ではないかというようなことが起こってまいれば、それは私どもも謙虚にこれらの問題を検討してまいりたいと思います。
また、まだまだ対象にならないいろんな問題があるのではないかという御指摘でございまして、私もそういうことを心配いたしましたので、今度の五十九年度予算、大変に厳しい条件での予算でありましたが、懸案であった事後重症の問題等は大臣折衝でこれをかち取ることができました。できるだけこの身体障害者の対策をより充実したものにしようと今努力しておる私どもの仕事も御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/85
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086・糸久八重子
○糸久八重子君 ただいまの大臣の御答弁にもございましたけれども、確かに法と法との間の、そのはざまに入ってしまった障害者が落ちこぼれないような施策をぜひともお願いしたいと思っておるわけでございます。
さて、今回の身体障害者福祉法の改正ですけれども、これは法律が制定されて以来の大改正というふうに考えるわけですけれども、基本的には、内容的には評価できる部分もあるのですが、国際障害者年を経て初めてこうした改革が行われるということ自体、やはり我が国の身体障害者対策のおくれを示すものであると思うわけであります。大臣はこの施策の現状についてどう認識されていらっしゃいますか。また、今後どのような姿勢で、障害者の基本的理念のもとにこの問題を取り組んでおいでになられるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/86
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087・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 先生御案内のように、今回の改正案の中では、「完全参加と平等」という、これは身障対策にとっての一つの基本の憲法ともいうべき方向をこれはうたっておるのであります。そのために今日まで私どももいろいろの施策を講じてまいりまして、まだまだ問題点はいっぱいありますけれども、世界の各国に比較してそう恥ずかしくない施策を今日まで進めてきておると私ども多少は自負をしておるのであります。
しかし、この委員会等でも先生方からいろいろ御指摘されておるように、まだまだやらなければならない問題がいっぱいございます。これらのものを、今回の改正をさらに新しいきっかけにして今後より充実していかなければならないし、また、今回の法の改正で不備な問題が次に出てまいりますれば、これはためらわずまた法の改正もさらにしなければならないという、積極前向きの姿勢でこの身障者問題に取り組んでまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/87
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088・糸久八重子
○糸久八重子君 五十五年二月の厚生省の実態調査によりますと、全国の十八歳以上の身体障害者の数は百九十七万、およそ二百万、人口のおよそ二%でございます。先進諸国では人口の一〇%から一五%というのが常識とされておるわけであります。つまり、先進諸国では、障害者の概念を、社会生活を送る上で障害となる人といったような広い概念でとらえているからではないかと思います。我が国の法律は、障害者の範囲を非常に狭くとらえ過ぎていはしないか、そう思うのですけれども大臣、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/88
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089・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先生御指摘のように、外国の場合に、今お話しのような、「障害者とは」というような、規定の中で包括的に規定している制度があるのは事実でございます。そういう意味から申し上げますと、今御提案申し上げている身体障害者福祉法というのは、身体障害者の方々を対象にしているということで、そういった範囲内に限っての福祉措置を定義づけておりますけれども、我が国の場合には、このほかに、先生先ほど法律が、制度がばらばらだと御指摘がございましたが、いわゆる福祉措置の対象として、精神薄弱者福祉法あるいは精神衛生法、そういった法律の対象になります障害者の方々につきましてもそれぞれの施策を講じているところでございます。
なお、今回の法律改正では、従来は全部法律で身体障害者の範囲を決めておりましたものを、内臓機能障害につきましては政令で定めるということを新しく設けたわけでございますが、これによって、これからの医学医術の進歩、そういったものに応じて障害者の範囲につきまして弾力的な対応というものが可能になるのじゃないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/89
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090・糸久八重子
○糸久八重子君 この身体障害者福祉法に基づく福祉サービスの受給者というのは、四条に定められておるわけですね。そして、別表に掲げられている範囲というのは、機能障害が永続するものであることを要求しているわけですけれども、その趣旨は、その障害が将来とも回復する可能性が極めて少ないものであればとあり、症状または障害の固定を必要としないと解されているわけでございます。障害の永続と固定の区別はほとんど異なるところはないと思うのですけれども、心身障害者対策基本法二条の、「長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」についてはサービス給付を行うべきであると思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/90
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091・持永和見
○政府委員(持永和見君) おっしゃったように、永続という意味は、必ずしも症状が永久に固定しているという者だけを指すものではございません。現に身体障害者福祉法の中でも、あるいは身体障害者でなくなった場合のことを想定した法律上の条文もございまして、そういう意味合いで御理解をいただけると思いますが、おっしゃるように、心身障害者対策基本法の中に言っております、長期にわたり日常生活に著しい制限を受ける者というふうなことと内容的には同じ趣旨だというふうに御理解をいただいて結構だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/91
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092・糸久八重子
○糸久八重子君 身体障害者福祉基本問題検討委員会報告を見ますと、「遷延性意識障害について」、「専ら意識障害に起因する肢体不自由等を法の対象とすることは適当でない」としていますけれども、これなどはリハビリの可能性がないから法の対象としないとする旧来の目的理念から脱却できないものと言わざるを得ませんけれども、この意識障害者は今五、六千人いると言われているわけですけれども、今後その方たちや重症心身障害者に対してどのような施策の適用を考えていくおつもりなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/92
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093・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今先生おっしゃいましたように、検討委員会の報告の中で、「遷延性意識障害者について」は、「専ら意識障害に起因する肢体不自由等を法の対象とすることは適当でない」としうことがござしますが、「これらの者に対する援護措置は、例えば常時医学的管理を要しない者について、必要に応じて療護施設に収容すること等が考えられる。」というような提言もいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、そういう意味での療護施設への入所等が必要な者については、身体障害者福祉対策の観点から弾力的に対応してまいりたいと思っております。
また、重症の心身障害者の方は重度の肢体不自由を伴っておりまして、身体障害者福祉法の対象となるわけでございますけれども、これらの人たちにつきましては、児童福祉法あるいは精神薄弱者福祉法により行われておりますので、そちらの方で施設への入所措置あるいは福祉サービス、そういったものを行われるかと思います。
ただ、これらの法律におきましては補装具の支給がございませんので、そういった補装具の支給などについては、身体障害者福祉対策の面で、身体障害者福祉法の福祉サービスとしての措置を行ってまいりたいと思っておりますし、そういう意味ではそういった人たちについても弾力的な対応をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/93
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094・糸久八重子
○糸久八重子君 先ほど本岡委員の質問にもありましたけれども、現行法では障害等級というのが視覚、聴覚、肢体等の身体機能の損傷の程度で物理的、機械的に評価されているために、例えば重症の脳性麻痺など全身性障害者は体の損傷が少ないために軽度の評価を受けているというような不合理があるように思います。この点につきましては、身障者福祉審議会の答申も、日常生活の活動能力全体で見るように改めるべきだと指摘しておるわけでございますけれども、その点についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/94
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095・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘のように、身体障害者福祉審議会の答申で、「現行の障害認定の方式が身体の生理的、解剖学的障害を中心に行われており」、それのために「日常生活活動の能力に着目した評価が合理的に行われていない」という点が指摘されておるわけでございます。先ほど申し上げましたとおり、こういった方々につきましていろいろとそういった評価の面で合理的でない面がございますので、この身体障害者福祉審議会の答申でも、緊張性アテトーゼ型脳性マヒ等の全身障害に関して日常生活能力を加味した方法を適用するのがいいんじゃないかというような提言がございますので、そういった面で、全身性障害者の評価については日常生活能力に着目する観点で、認定基準の合理化について検討をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/95
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096・糸久八重子
○糸久八重子君 二つ以上の障害を持つ重複障害者の扱いについてなんですが、身障者福祉基本問題検討委員会報告は、「その評価方法を法施行規則別表の障害程度等級表のうえで明確にすべきである。」と指摘をしております。重複障害者については現在十五万人、全障害者の七・六%と言われておりますけれども、今後どのように対応されていくおつもりなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/96
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097・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先生お話しのように、身障者福祉基本問題検討委員会から御指摘のような御提言をいただいているのは事実でございます。この面につきましては、実は身体障害者の福祉審議会の審査部会において、現在障害程度の等級表なり認定方法、そういったものを全体として御検討いただいているところでございまして、その結果を待って行政上の対処をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/97
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098・糸久八重子
○糸久八重子君 内部障害者の問題についてお伺いしたいわけですが、内部障害は、他の肢体不自由等と異なりまして、外見的には他人から異常と認めてもらえないという特性を持っております。そのために、従来の伝統的な障害者観では理解してもらえず、大変残念なんですけれども、一般の認識が低いのが現状であります。五十五年の身体障害者の実態調査によりますと、全障害者の一割に当たる十九万七千人がこの内部障害者だと言われておるわけでございますけれども、五十五年以前の調査と比較しますと、その増加率が非常に高くなっているわけであります。
こういった内部障害者の現状をどう理解し、また、どのように対応していらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/98
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099・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御案内のとおり、身体障害者福祉法におきましても、内部障害者について、その方々がその障害の程度が日常生活に著しい制限を受けるというような程度でありますれば身体障害者福祉法による身体障害者として認定をすることにいたしておりまして、実は昭和四十二年に心臓及び呼吸器の機能障害を、それから四十七年に腎臓の機能障害を身体障害者の範囲に加えたところでございます。
そのほかの内部の機能障害の方々につきましていろいろと御意見もあったところでございますが、五十七年三月、今回の法律改正のもととなりました五十七年三月の身体障害者福祉審議会の答申におきましては、医学の進歩等を考慮しつつ人工臓器の使用者は法の対象とする方向で検討をすべきじゃないかということで、一般的に内部障害すべてをこの法の対象にすることは障害と疾病との概念が明確化しなければこれは難しいんじゃないか。一般的に疾病を身体障害者福祉法の対象にすることは、一般疾病が全部身体障害者福祉法の対象になってしまうので、そういうことをするのは適当でないというような御意見でございましたけれども、「人工臓器の使用者は法の対象とする方向で検討」するということで指摘をされまして、昨年八月の身体障害者福祉基本問題検討委員会の報告でも、まず内臓機能障害につきましては、「障害と疾病との概念の明確化を図る方向で検討」しなさいということと、それから人工肛門、人工膀胱、そういった造設術を受けた人という、いわゆる排せつ機能障害、こういった方々につきましては法の範囲内で身体障害者福祉法の対象にするように、そういう方向で検討しなさいということの提言を受けております。
こういった提言の趣旨を踏まえまして、今回お願いしております改正におきましては政令で決めるということにはいたしておりますが、オストメートの方々で日常生活に著しい制限を受ける方方、そういった方々を新たに身体障害者福祉法の対象にしたいということで御提案を申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/99
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100・糸久八重子
○糸久八重子君 これはある団体から陳情を受けたわけですけれども、ある種の病気によりまして小腸を多量に切除したために、消化吸収機能を失って経口栄養摂取ができないで、機械によって常時高カロリーの栄養補給を鎖骨の下の静脈から入れていく。そのことは一生涯続けなければならないという患者が全国で推定三百人から五百人いると言われているわけですけれども、現実には十分な管理をすることによって在宅通院治療も可能になっている人もいるのだそうです。それで退院を勧められているケースもあるそうでありますけれども、これは、今回の法改正で認められた人工膀胱、人工肛門患者と同じ扱いをしてもよいと思われるのですけれども、この辺の御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/100
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101・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今の御質問、恐らく、いわゆる人工腸管と言われる、これをつけておられる方々の問題じゃないかと思いますが、腸管を大量切除したりということで、栄養吸収のために静脈に輸液をしながら操作をするというような、そういった携帯用輸液システムを持っておられる方々じゃないかと思います。最近こういったものが開発されたわけでございますが、実は、現在のところ、やっぱり非常に医学的な管理のもとでの使用ということをどうしてもしなければならないという、いわゆる点滴に似たような療法だということでございますし、また、現状では、大学などスタッフあるいは設備の非常に整った医療機関で実験的に行われているというようなことでございまして、まだ普及度も低いんじゃないかということが言われております。
しかし、こういった問題につきましては、人工臓器と今回オストメートの方々を入れたわけでございますが、そういったことで今後の一つの検討課題だというふうに私ども考えておりまして、身体障害者福祉基本問題検討委員会の報告の趣旨も踏まえまして、今後の検討課題ということで、ひとつ専門家の方々に引き続き御検討いただこうというような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/101
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102・糸久八重子
○糸久八重子君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
内部障害の問題は、法律上の認知のおくれから、肢体不自由等その他の障害者に比べて大変不利な扱いが多いと思います。他の障害者の場合には六級、七級まで認められている身体障害者手帳の交付も、内部障害者の場合には四級どまりになっておるわけですけれども、これはどういう理由でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/102
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103・持永和見
○政府委員(持永和見君) 内部障害者の方々の身体障害者福祉法における等級は、今お話しのように、一級、三級、四級ということで、いわゆる重度の方々を一級、中程度の方々を三級、軽度の方々を四級というような三段階というふうにいたしております。
実は、身体障害者福祉法の中でいろいろな障害があるわけでございますが、障害の程度、等級につきましては、それぞれの障害の程度なり態様、そういったものに留意して、日常生活における制限の度合いを勘案いたしまして、身体障害者福祉審議会においての専門家の方々で検討していただいて、それぞれ等級づけをしておるわけでございます。
したがって、例えば外部的な障害でございましても、音声言語機能障害については三級と四級しかないとか、あるいは体幹機能については一、二、三、五級というようなことで、それぞれの障害ごとに、ほかとの均衡も図りながら等級を決めていくものでございまして、内部障害についてもこういった一、三、四級にするということで、専門家の先生方の御意見で、身体障害者福祉審議会において検討された結果、こういうふうになったものだというふうに御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/103
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104・糸久八重子
○糸久八重子君 法の対象は、改正案では多少拡大され、さらに障害の多様化に対応して政令でそれができるようになったことは歓迎すべきことであると思います。しかし、障害者の範囲をどう定めるべきかという問題については、消極的な物の考え方をしていることは大変残念に思うわけであります。障害の原因や欠損の部位ではなく、さらには職業的な社会復帰が可能か否かでもなく、障害を理由とした生活上の困難があるのかどうかをもって障害者の規定とする方向が支持されてきているのが国際的な動向でございます。そういう意味で、日常生活上の困難を持つ人々が法から切り落とされることにならないように、よろしくお願いをしたいと思うわけでございます。
続きまして、国鉄の運賃割引の問題にちょっと触れたいと思います。
他の障害者が国鉄運賃割引の対象になっているのに対しまして、内部障害者は排除されているというのが現状であります。身体障害者福祉法の十五条四項に規定される障害者の中で、内部障害者のみがどうして身体障害者旅客運賃割引規則の割引措置の対象とならないのか、運輸省から納得のいく答弁をお願いしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/104
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105・本田勇一郎
○説明員(本田勇一郎君) お答え申し上げます。
国鉄において実施しております身体障害者割引等の運賃に係ります公共負担につきましては、国鉄財政の危機的な状況から、国鉄の負担においてこれを維持することが困難となってきておりまして、かねてから経営の構造的問題対策の一つとして、政策実施省庁において負担していただくよう要望してきたところでございます。
これに関しまして、昭和五十五年、衆参両議院運輸委員会におきまして、政策実施部門の負担においてこの公共負担を解決するよう附帯決議がなされております。
また、昭和五十七年の九月、閣議決定におきまして、「日本国有鉄道の事業の再建を図るために当面緊急に講ずべき対策」の中において、「運賃上の公共負担については、所要の措置を講ずる。」とされております。
また、昨年、昭和五十八年五月、いわゆる国鉄再建監理委員会法の成立に際しまして、参議院運輸委員会の附帯決議におきましても、「運賃上の公共負担等に関する問題を解決すること、」というふうにされておりまして、現時点では、国鉄の負担におきまして内部障害者の方に対する割引等を拡大することは大変困難であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/105
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106・糸久八重子
○糸久八重子君 国鉄の財政問題もわかるのですけれども、だからといって、内部障害者を差別してよいという理由にはならないと思います。
厚生大臣、こうした障害者問題の取り扱いの不均衡な措置は、法のもとの平等や、行政の施策としての公平性を著しく欠いているものと思われますけれども、この内部障害者の運賃割引について、特段の御努力を約束してもらえないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/106
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107・持永和見
○政府委員(持永和見君) 国鉄の運賃割引の問題につきましては、国鉄の財政再建という大きな問題がございますために、大変難しい問題であろうかと思います。
まだ国鉄財政再建との関連で国鉄運賃割引全体の問題を政府としてもいろいろ各省寄り集まって検討をしている段階でございまして、そういった中で身体障害者全体の問題としての運賃割引のあり方というものが検討されるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/107
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108・糸久八重子
○糸久八重子君 大変難しい問題があるということは理解できないわけじゃないんですけれども、やはり身障者の運賃割引について、これからの特段の御配慮を特に要望をしておきたいと思うわけでございます。
続きまして、視覚障害者問題について若干のお尋ねをさせていただきたいと思います。
厚生省での実態調査を見ますと、障害者全体の就業率が三二・三%に比べまして、視覚障害者は二六・六%と低くなっております。しかも、平均収入は他の障害者に比べまして最低となっております。そして、生活保護率も最高の八・五九%という非常に苦しい現状があります。
このような状況を厚生省としてどう認識なさっていらっしゃいますか。これからの改善策等をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/108
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109・持永和見
○政府委員(持永和見君) お話しのように、私どもの方の実態調査によって見ましても就業状況が、身体障害者の方々の中でも就業者の数が一番低いのは内部障害者でございますが、その次に低いのが視覚障害者の二六・六%でございます。また、生活保護率につきましても、身体障害者総数が四・九四%、全体の全国の一般世帯も含めますと一・二三%でございますから、この一・二三%に比べますと身体障害者世帯自体が非常に高い保護率でございますが、特に視覚障害者の方々の保護率は高くて、八・三七%というふうに極めて高い状況を示しているところでございます。
こういった問題から、できるだけ視覚障害者の方々についての雇用と申しますか就労と申しますか、そういったことが必要なことだと思うわけでございますが、そういう意味合いで、私どもといたしましては授産施設、福祉工場などを整備しておりますし、また、失明者の方々につきましては、あんま、マッサージ師、指圧師、はり師、きゅう師などの養成を行っているところでございますので、こういった施策を引き続き推進してまいりたいと思います。
特に、実は私ども国の立場で、国立の身体障害者の方々の施設が七つございますが、この七つのうちでは国立光明寮と申しますか、視力障害センター、いわゆる視覚障害の方々を収容して更生に必要な指導、訓練を行って、速やかに社会経済活動に参加させることを目的とするということで、国立全体の施設の七カ所の中の四カ所が国立光明察、視力障害センター、こういうことでございまして、そういう意味合いで国の施設としてはこういった失明者の方々の施設について力点を置いてやっておるということが御理解いただけるかと思います。
なお、視覚障害の方々の事情は、先ほど先生の御指摘のような、就労の問題あるいは生活保護の問題についても、ほかの障害者の方々以上に、生活にいろんな面で大変障害を持っておられるということは事実でございますので、そういうことを十分踏まえて、そういった就労の対策というものにつきましても積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/109
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110・糸久八重子
○糸久八重子君 視覚障害者の方々の置かれている立場を非常に厳しくしているのは、他の障害者よりも自立率が高いということ、そして家族を養うにはそれなりの収入水準が低いというためだと思うわけであります。障害者別に見た職業別従事者の割合を見ますと、視覚障害の四一・三%があんま、はり、きゅう、マッサージを職業としております。近年ではかなりの職場の開拓はされているとはいいますものの、やはり昔から伝統的に三療業が視覚障害者の職種とされているわけでございます。
文部省にお尋ねをしたいのですが、現在、盲学校で職業訓練、職業教育の内容はどんなものがございますでしょうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/110
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111・山田勝兵
○説明員(山田勝兵君) お答えを申し上げます。
盲学校の高等部における職業教育につきましては、本科の保健理療科におきまして、あん摩マッサージ指圧師の養成、それから専攻科の理療科において、あん摩マッサージ指圧師、それからはり師及びきゅう師の養成、それから、理学療法科におきまして理学療法士の養成を行っております。それから、数は少のうございますが、本科及び専攻科の音楽科、それから調律科等におきまして職業教育を行っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/111
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112・糸久八重子
○糸久八重子君 続きまして、労働省にお伺いしたいんですが、職業訓練校での視覚障害者への教育内容はどうなっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/112
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113・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 視覚障害者の職業訓練につきましては、特に弱視あるいは色盲など、健常者と一緒に訓練を受けることができる方々については一般の職業訓練校でございますが、その他の一緒に訓練を受けることが困難な人たちにつきましては、身体障害者職業訓練校におきまして、訓練科目あるいは訓練の方法について特別な配慮をしながら訓練を行っているところでございます。
現在、身体障害者職業訓練校におきます視覚障害者の訓練につきましては、他の障害者と一緒の科目等、例えば事務科ですとか、あるいは構内電話交換科、あるいは電子機器科がございますが、特に視覚障害者を対象と考えまして、国立職業リハビリテーションセンターにおきましては電子計算機科が設けられて訓練をやっているところでございますが、これらの視覚障害者の訓練につきましては、訓練技法ですとか、あるいは、どういう分野の訓練をしていけば適当なのかというような、なお未開拓の分野が多うございますので、これらの問題の解決を図りながら、積極的に視覚障害者の訓練の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/113
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114・糸久八重子
○糸久八重子君 私が調査したところによりますと、盲学校での職業教育というのは、あんま、はり、きゅう、マッサージがほとんどであるわけですね、今の答弁でもそうでしたけれども。そして、試験的に、養鶏とか養豚とか、それから細工物とかピアノ調律等、実験学校で試みてはみたけれども、結果的にはピアノ調律が全国で二校のみで、ほとんどがやはり旧来のあんま、はり、きゅう、マッサージということをされているということなんですね。そして、盲学校の卒業生で重複障害者以外の人たちは、大体九五%がこのあんま、はり、きゅう、マッサージについているというのが現状だそうでございます。訓練校でもいろいろと職域の開拓をなさっていらっしゃるようでございますけれども、やはり本当に限られた部分的な方たちがそういう職業につけるのであって、ほとんどがこの三療業という形になっているわけなんですが、こういう視覚障害者にとって本当に唯一無二といってよいようなこの職域が現在では晴眼者に侵食されて、そうでなくても苦しい生活が圧迫をされているという状況があるわけですね。この状況をどう思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/114
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115・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) あんま、マッサージ師、指圧師、はり師、きゅう師につきましては、御指摘のございましたように、視覚障害者が数多く行っている職業分野でございますから、これらの養成施設の新増設につきましては、視覚障害者の職域を圧迫しないように慎重に対処をしておるところでございます。
養成施設の新増設に当たりましては、都道府県知事を初めといたしまして、関係団体の意見を聞きますほかに、視覚障害者団体の代表も構成員として御参加をいただいておりますところのあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会で慎重に御審議をいただきまして、その意見を尊重して決定しているところでございます。
なお、晴眼者のみを対象とする養成施設の新設は、昭和五十一年以降は認めておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/115
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116・糸久八重子
○糸久八重子君 この春開校を予定しているという名古屋の晴眼者向けの学校があるという話も聞いたわけですけれども、その辺のところはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/116
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117・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘の点は、カイロプラクティックの分だと思うのでございます。これは医業類似行為の一つでございまして、現在免許制度が設けられている、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅうとは異なるものでございますが、個々に見まして、人の健康に害を及ぼすおそれのあるものについて取り締まりの対象としておるものでございますが、具体的にお話しのございました愛知県の学校につきましては、そのような話がありましたことは承知をいたしておりますけれども、これはたしか都道府県知事の認可に係るものでございますが、認可されておらない、従前のような塾のような格好でやっておると承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/117
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118・糸久八重子
○糸久八重子君 最近、こういう傾向の学校、学校といわなくても塾のような形式で各地域にたくさんできていて、ほとんど四、五人程度の人たちを集めて短期間のうちに養成をして、そしてそれがはり、きゅう、マッサージと似たようないわゆる療術行為というのですか、そういう行為をしているということを方々で聞いているわけです。
先ほどもお尋ねした中での答弁でございましたけれども、盲学校での職業教育というのは、本当にあんま、はり、きゅう、マッサージがその主力を占めているわけでありまして、晴眼者の三療業やいわゆる療術が野放しになっているということは、盲学校の教師にとりまして、送り出す子供たちの将来を思うと本当に暗たんたる気持ちだと、そう申しているわけでございます。
そういう意味におきまして、療術につきましては現行法上では違法行為とされて、経過措置として既得権者についてのみ営業が許可されているにもかかわらず、昭和三十五年の最高裁判決以来事実上野放し状態になっているわけですけれども、こういう現状をどう認識されていらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/118
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119・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) 最高裁の判決にもございますように、職業の自由ということもございますわけで、現に免許制度のない医業類似行為につきまして、人の健康に害を及ぼすおそれのないものについて禁止をする、あるいは視覚障害者の保護という観点から規制を行うということは現行法のもとでは困難であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/119
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120・糸久八重子
○糸久八重子君 昭和五十四年にあんま、マッサージ、指圧師は視覚障害者が四九%、そして晴眼者が五一%と、晴眼者が視覚障害者を圧倒しふえ続けているわけですけれども、このような現象と視覚障害者の職域、さらには生活実態等の関係が大変問題になっておるわけでございます。
先ほどの療術の問題についても、三療業逆転現象についても、晴眼者が視覚障害者の職域を侵害して視覚障害者の自立を阻害するものであってはならないと思う、わけでございます。
なお、この問題については昭和五十年の二月に研究班が発足いたしまして、調査研究が行われていると聞いていますけれども、その結論は一体いつごろになるのか見通しはありますか。また、現在何か結論のようなものが出ておりますでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/120
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121・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘のように、昭和五十年の二月七日に医業類似行為調査研究班、現在、神奈川県総合リハビリテーション事業団顧問をなさっておられる伊丹先生に班長をお願いいたしておるわけでございますが、医業類似行為というものを考えます場合に、やはり各施術の医学上の評価というのが必要である。その各施術の理論、有効性、危険性、そういうものについて御検討をいただいておるわけでありますけれども、調査方法、実態——医業類似行為というのは実は非常に範囲が広いのでございます。その類型化、適用と禁忌、二次的被害、そういうことで多角的に検討をいただいておるわけでありますが、一般的に大まかに言いますと五つに分かれております。手技療法、電気療法、光線療法、温熱療法、刺激療法でありますが、さらにそれぞれに細かく分かれておりまして、三百二十種類ぐらいあるわけでございます。これらにつきまして、それぞれ理論その他を調査をいたしますことは極めて複雑、難しい困難な問題を含んでおるわけでございます。なお一定期間の検討が必要であると考えておるところでありますが、その対象の難しさを御理解いただきまして、御了承賜りたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/121
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122・糸久八重子
○糸久八重子君 やはり視覚障害者の生活権の問題でもございますし、早くこの研究班の結論を得た上で、さらに厚生省としての正しい態度をお願いしたいと思うわけでございます。
予定されました時間が参りました。さっき本岡委員の質問に対しまして厚生大臣の決意を伺ったわけでございますけれども、障害者の問題というのは大変広範囲、多岐にわたっている非常に重大な問題でございます。厚生大臣は、より法的内容の充実を目指して不備な面があったらためらわずに進めていくとおっしゃっておりましたけれども、そのお言葉を信じまして、とにかく前進的な態度で行政を進められることを希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/122
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123・石本茂
○委員長(石本茂君) 本案に対する午前の質疑はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
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午後一時四十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/123
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124・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
午前に引き続き、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/124
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125・中野鉄造
○中野鉄造君 私は、まず最初に、きょう午前中も出されましたオストメートの件について、また二、三お尋ねをしたいと思います。
このオストメートの方々は、内部障害でしょうか、外部障害でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/125
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126・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今回の法律改正によりまして、私ども政令で決めさせていただこうと思っておりますオストメートの方々は、内部障害でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/126
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127・中野鉄造
○中野鉄造君 外部にも障害があるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/127
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128・持永和見
○政府委員(持永和見君) 身障福祉法では内臓機能の上での障害ということで取り扱ってまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/128
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129・中野鉄造
○中野鉄造君 法的にはそうではありましょうけれども、確かに衣服を着ておればこれはわかりませんけれども、一たび衣服を脱いたときには、明らかにこれは外部障害だと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/129
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130・持永和見
○政府委員(持永和見君) 形態的には先生のおっしゃるとおりだと思いますが、私ども、身障福祉法の上での扱いといたしましては、今お出ししておる法律の中で、「心臓、じん臓又は呼吸器の機能障害その他政令で定める障害」ということで、一応この「政令で定める障害」には、じん臓、呼吸器、心臓と並びまして、内科的といいますか、内臓の障害を政令で定めることを予定しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/130
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131・中野鉄造
○中野鉄造君 午前中もいろいろ論議されたわけですが、このオストメートの方々の推計の数もまだ明確なものは出ていないというようなお話がありました。しかし、推計はとにかくとして、いろいろな申請が出た場合に、まずその等級を定める場合は、専門医の方々にお願いをして等級を査定していただくというようなお話であったかのように聞いておりますけれども、その専門医というのが、この前も私申しましたように、専門医という方はいらっしゃらないはずなんですが、どういう方を指して専門医とおっしゃるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/131
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132・持永和見
○政府委員(持永和見君) 現在、身体障害者福祉審議会の中の審査部会というところで、このオストメートの障害等級の位置づけあるいは認定の方法などについて御審査をいただいておりますが、この中では、膀胱の先生、それから直腸の先生、そういった方々が専門医として入っておられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/132
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133・中野鉄造
○中野鉄造君 私が申し上げたいのは、それは、いわゆる大腸障害の人だとか膀胱障害の人だとか、そういったような方々を指して専門医とおっしゃっているのであって、いわゆるオストメートの専門医、つまり、ストーマ療法士と言われるような人は日本にわずか一人か二人しかいない、そういったような意味からいえば、本当にオストメートの専門医というのにはこれは当たらないんじゃないか。内臓疾患の専門医ではあるかもしれないけれども、いわゆるオストメートとなった、いわゆるストーマ造設者となった方々に対する専門医ではないと、このように私は思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/133
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134・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど申し上げましたように、膀胱の専門の先生として順天堂大学の北川先生、それから直腸の専門の先生として横浜市立大学の土屋先生がおられまして、こういった方方を含めて今審査都会でいろいろ御検討をいただいておるわけでございますが、こういった先生御指摘のようなオストメートの障害等級なりあるいは認定のあり方についての専門的な御審議をお願いしておるわけでございますから、そういった面の配慮もこの先生方によって当然御論議なりあるいは御検討の対象になるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/134
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135・中野鉄造
○中野鉄造君 この前も私申し上げましたように、オストメートの方々の中にもいわゆる医師の方もいらっしゃるわけです。そういったような医学的知識も身につけた方々で、なおオストメート御本人である、そういうような方々もこれからの審査の部会に入れて、参加さしてやっていただきたいと、こういうように私はこの前も要望したわけですが、その点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/135
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136・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先生のお話、この審査部会の先生方にいろいろと私ども御意見を伝えまして、何らかの形で、先ほどもお話し申し上げましたが、オストメートを現に装着しておられる方方の意見もお聞きするような機会もつくりたいと思っておりますので、そういったものとの関連でこの先生方に相談をしてみたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/136
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137・中野鉄造
○中野鉄造君 そこで、まず基本的な考え方の問題ですが、厚生年金の障害年金と国民年金の障害年金の考え方が基本的にちょっと違ったところがありますね。つまり、厚生年金の方では労働能力を基本的に考えておる。そこへもってきて、国民年金の場合は日常生活能力を基本的に考えておるようですが、この考え方の違いがどういう理由に基づいているか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/137
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138・古賀章介
○政府委員(古賀章介君) 厚生年金は被用者を対象としておりますために、労働能力の制限度合い、すなわち、その者の稼得活動が障害により制限されているかどうかということが基本的な尺度となるわけであります。他方、国民年金は一般国民を対象としておりますために、日常生活能力の制限の度合い、すなわち、社会人として平均的な環境のもとで日々の生活を他人の力に頼ることなしに送れる能力が減退したかどうかということが基本的な判断の尺度になるということでございます。したがいまして、両制度の間におきましては障害の程度には相違があるわけであります。
すなわち、厚生年金は、今先生言われましたように、労働能力というものを判断の基準にしておりますために、その制限度合いによりまして障害等級表は一級、二級、三級という三段階に分かれておるのに対しまして、国民年金は、日常生活能力の制限度合いによりまして一級と二級というふうに分かれておりまして、それぞれ法律によってその内容が定められておるわけであります。その一級と二級につきましては、両者の関係でありますけれども、一般的には国民年金の方が厚生年金よりやや広い範囲の障害の程度になっております。なお、三級は厚生年金のみの等級でございます。
先生の御質問でございますけれども、どうしてそう両者に差があるのかということは、今申し上げました理由を要約いたしますと、厚生年金は被用者を対象としているのに対しまして、国民年金は一般国民を対象としている。そこから来る差異であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/138
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139・中野鉄造
○中野鉄造君 同じ人間でありながら、その環境によって多少の差異があるというのも、ちょっとこれも私納得できないような気がするわけなんです。
例えば、具体的な例を挙げますと、片足を切断した人で、厚生年金ではこれは三級である。そして、今度は例えばそれと同じ箇所から切断をされておっても、国民年金ではそれが二級であると、こういうことがありますね。今審議官の答弁では、こういうことはあって当然だというようにも受け取れるんですが、将来ともにこういうことでいかれるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/139
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140・古賀章介
○政府委員(古賀章介君) 今度の年金改正法案におきましては、障害等級表は政令に委任されるということになるわけであります。それとともに、従来の国民年金は基礎年金として各制度に共通の給付となりまして、その上に従来の厚生年金が報酬比例の年金として上乗せされるという形になるわけであります。
そこで、その障害基礎年金につきましては一級、二級がありまして、その上に新しい厚生年金である障害厚生年金がこれまたそれに対応しまして一級、二級というのが上乗せされることになります。この一級、二級という障害の範囲というものはこれは統合されるということになります。三級につきましては、厚生年金の独自給付として残るわけでございますけれども、こういった基礎年金の導入ということを契機にいたしまして、障害等級表につきましてもこれは整合性のある観点からの検討が必要であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/140
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141・中野鉄造
○中野鉄造君 そうしますと、このオストメートの人たちが、身障法でも三級、四級ぐらいであってもいいと、こう思いますが、いかがですか。先ほど片足を切断されているというような例をいろいろ引いてお尋ねしましたけれども、それから見た場合にいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/141
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142・持永和見
○政府委員(持永和見君) 身体障害者福祉法におきましては、身体障害者の等級につきまして、身体機能の損傷の程度というもの、あるいは日常生活動作における著しい制限の度合い、そういったものを総合判断して等級を決めるということになっておりますが、これはいずれも非常に専門的、医学的な問題でございますので、身体障害者福祉審議会のそれぞれの専門の部会においてお決めいただくということになっておるわけでございます。
私ども、現在先ほど来申し上げておりますように、オストメートの方々をどういう範囲で身障福祉法の対象にするか、またそういった人たちの身体障害者福祉法における身体障害者等級をどうするかといったような問題、現在審査部会で御検討をいただいている段階でございまして、その結果を待って対処をさせていただきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/142
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143・中野鉄造
○中野鉄造君 このオストメートの方々が手帳の申請をされる、こうした場合に、その申請をされたオストメートの方々にはやっぱり差別されることなく全部手帳は交付されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/143
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144・持永和見
○政府委員(持永和見君) 身体障害者手帳は、先生も御承知のとおり、身体障害者福祉法による身体障害者の方々に交付をいたすことになっておるわけでございまして、身体障害者福祉法による身体障害者の範囲の方でありますれば、いわゆる法律の対象となるような方でありますれば、申請があれば手帳の交付をすることになります。
ただ、その場合に、先ほど申し上げておりますように、どういう範囲までが身体障害者福祉法の対象になるかどうか、現在検討していただいている段階でございますので、その検討の結果によって身体障害者福祉法の身障の範囲に入られる方が申請されればそれは手帳を交付すると、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/144
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145・中野鉄造
○中野鉄造君 午前中の質疑にもありましたように、予算に縛られることなく、オストメートの方方は、これは外観がたとえどうであれストーマ造設者であるということには変わりはない、そういう見地から、やっぱりこれは身障者としての取り扱いをしていただきたいと、こう思うわけです。聞くところによりますと、オストメートの方がゴルフをやっていた、ゴルフをやれるぐらいだったら身障者ではないといったような、そういうようなことがあったように聞いておりますが、そういったようなこともあり得るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/145
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146・持永和見
○政府委員(持永和見君) オストメートの方々、いわゆる人工臓器を造設された方々が、個々にどれだけの日常生活上の著しい制限を受けられるかというようなことになるかと思いますが、どういう場合に著しい制限というふうに呼ぶんだ、したがって、そういう人たちについては身障法の対象にするんだということを現在検討をしていただいているところでございます。
先生おっしゃいましたように、また、私午前中にお答えいたしましたように、予算が何人だから何人で打ち切りますよと、そういうことは決していたしません。ただ、申し上げましたように専門的、医学的に検討していただいた結果の範囲内でありますれば、それは手帳を交付し、必要な補装具の支給を行うと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/146
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147・中野鉄造
○中野鉄造君 ちょっとくどいようですけれども、オストメートの方が、仮にゴルフをしておった、ゲートボールをしておった。そういうようなことをしておったからといって、等級に差がつくというようなことはあったとしても、身障者として適用しないなんていうようなことはありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/147
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148・持永和見
○政府委員(持永和見君) ゴルフをしたとか、スポーツをしたとか、そういう面で判断することはございません。ただ、障害認定を行う基準がございますから、その障害認定を行う基準として、あくまで医学的な観点から、客観的、合理的な基準というものを今検討をしていただいているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/148
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149・中野鉄造
○中野鉄造君 次に、労働省見えていますか。——労働省から出された身障者雇用促進法の趣旨というのは、もちろん身障者といえども働ける者、そしてその意思のある者は進んで勤労者として社会に参加できるようにという、積極的な保護政策として提案されたものであるわけなんですが、オストメートの方々の中で、先ほどから申されておりますように、一見非常に元気そうに見えている人は、そういう一見元気そうに見えるがゆえにこの身障者法から外され、しかも身障者としての保護も受けられない。しかしながら、現実にはなかなかオストメートの人たちは重たい物を持ったり、急激な活動というようなことはできないという、そういう制約もある。そういうことで、身障者としての保護も受けられない、片一方で自分自身の体が今度は言うことを聞かないというようなことになりまして、非常に困っていらっしゃる方もあるようですけれども、窓口で身障者手帳がないために断られているというような事態も起こっているわけなんです。この前、十九日にこの参議院の社労委員会を通過いたしました促進法の趣旨からいっても、この点はいかがかと思うんですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/149
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150・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 先生御指摘のように、身体障害者雇用促進法における障害者は、福祉法の対象と同じようにしているということに伴いまして、これらの障害がある方で、手帳の支給対象にならない方々でありましても、御指摘のように力仕事に不向きであるとか、あるいは交換とかその他によって時間的ロスがかかるとか、それから仕事をする場合に、集団的に仕事をするということを遠慮される方々もおられるというようなことで、手帳を所持はしていないけれどもハンディキャップを持っておられるというような方々がおられることも事実でございますので、私どもとしましては、それらの諸条件等をよく伺いまして、職業安定機関といたしましては、職業相談あるいは就職先の選定等をする場合には、十分事情を伺いながら就職促進に努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/150
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151・中野鉄造
○中野鉄造君 そう言われますけれども、現実に地方のいろいろな職安の窓口では、そういうようなことは往々にして起こりがちなんです。厚生省の方にもこの点をひとつよく御理解いただきたいんですけれども、片方ではこういうことも起こってくるわけなんですから、今後ひとつよくよくその点御留意いただきたいと思います。
次に、警察庁。御承知のように、最近一億皆免許と言われるような、ほとんどの人たちが自動車あるいはバイクの免許を持っているわけなんですが、しかも日増しに交通戦争は激化しておる、こういう事態でありまして、最近はそうした中で身障者の人たちは、車というものは本当に自分の足がわりである、そういうところからも身障者の人たちの車利用というものもまたこれはふえておりますが、こういうときに、身障者の人たちをこの交通戦争の中に今のままでほうり出すというのはいかがなものか。やっぱり初心者マークだとかああいうものがあるように、この交通戦争の中で、周囲のドライバーの人たちの注意を喚起するというような意味でも、身障者であるという、身障者マークを取りつけるとかなんとか、そういうような措置が必要ではないかと思うんですが、その点が一つ。
それともう一つは、自動車教習所において、身障者の免許取得に対してどういう配慮がなされているか。
この二点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/151
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152・広谷干城
○説明員(広谷干城君) 身体障害者の方々が、初心運転者と同じようにマークをつけたらいかがかというお話であろうかと思います。
初心運転者に対しまして初心者マークの標示を義務づけておりますというのは、これは初心運転者が必ずしも現実の道路交通になれておらず、交通の安全と円滑に支障を及ぼす蓋然性が高いというところからつけていただいておるわけでございます。逆に、身体障害者の運転免許を取得していただきますに際しましては、身体障害者の方であっても、道路交通の場において運転をする技能という意味からは、実は一般のドライバーの方々と全く変わらない技能を十分有していただいておるということで運転をしていただいておるということでございます。したがって、身体障害者でございますがゆえに現実に運転をすることが危険なんだというふうには運転免許行政上は考えておりません。
ただしかし、身体障害者の方々の中にはこのようなマークの制度化を望む意見もあることは承知をいたしております。ただ、一方では、そういうような制度をつくりますことによりまして、このような制度というのが一般の方々と身体障害者を道路交通の場において、標識というものをつけさせることによって区別をすることになるんだというふうな御意見が一方にもありますように聞いておるわけでございまして、そういう意味で、身体障害者マークを法律でもってつけていただくというふうなことにする制度をとるかどうかということにつきましては、なお検討を必要とするのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
それから、現在身体障害者の方で免許を持っておられる方が我々の統計によりますと十四万人以上の方が持っておられる、こういうふうな数字になっておりますけれども、身体障害者の方がこの交通社会の中に進んで参加をしていただくという意味から、自動車教習所につきましても、身体障害者用の教習車両を配置をいたしますとか、あるいは身体障害者用の補助ブレーキを備えつけるとか、あるいは身体障害者の方が持ち込み車両によりまして教習ができるとか、そういうふうな措置をとっておるところでございますし、また、教習所に行かれて本当に免許が取れるだろうかどうだろうかというふうな御心配もあるわけでございまして、それぞれの運転免許試験場等におきまして身体障害者の方の相談に応ずるための相談コーナーというふうなものも設けまして、できるだけ運転免許が身体障害者の方にも取りやすくなるような施策を講じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/152
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153・中野鉄造
○中野鉄造君 今の御答弁で大体よくわかりました。
それで厚生大臣、私、以前からこういうことも考えておったんです。身障者に限らず、今日本はどんどんすごい勢いで高齢化しておりますけれども、自動車の運転免許というのは定年がないわけなんですから、私の家内のおやじあたりでももう八十近くになっていまだに乗っています。これが老化を防ぐ一つのいい方法だなんて言って乗っているんですけれども、まあ当人は気持ちは若いつもりでも体はやっぱり年をとっていますから、とっさの場合に若い人のようには言うこと聞かないと思うんです。特に、地方ではバイクを運転しているお年寄りの事故が非常にふえておりますけれども、道を横切るにしても、大きく斜めに、もう自分中心に、わきを見ないでやるような、どうしてもそういう傾向もあるわけなんです。そういったような意味からも、まあそれこそ身体障害者の人よりもお年寄りにシルバーマークつけろなんと言ったらまた抵抗があるんじゃないかとも思いますけれども、しかし、これからの高齢化に対して、交通行政の上での老人対策、老人を守るというような意味から、また身障者の人たちをこの交通戦争からどういうふうに守っていこうか、そこいら辺の御配慮もひとつ検討をお願いしたいと思うんですが、大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/153
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154・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 先生の御質問、これは簡単なようで大変難しい問題でありまして、完全参加と平等というのが私たちの願いでありますから、これはできるだけ心身障害者の皆さん方を区別しないで、また、ごく自然に溶け込んでいくということが一番大事で、場合によっては階段で手をかしてあげるのも親切だけれども、それよりも自分の力で自然に上がっていかれるということが大事だという場合もありますので、それを何か特別に区別することがどうかなということもありますし、しかしまた、今先生御指摘のように、これは身障者の方が特別に交通事故を起こすようなことでは困りますし、また老人の問題は私も前からよく運転免許に年齢制限がないのはどういうものかなと思ったこともありますが、きょう質問を突然承りましたので、今どういうことが望しいかということを具体的にここでお答えすることはまだ無理のようでありますが、いずれにしても交通事故というのは、本人が命を失うのみならず、これは周囲にも大変な事故をもたらす、迷惑をかけるもので、交通事故というようなものはできるだけ防がなければならないのは言うまでもありませんから、これは警察の方の仕事でございますが、身障者とか老人とかは私どもの所管でありますので、身障者や老人の皆さん方の運転ができるだけ安全を確保されるということをこれから検討して、勉強して、何かこういうものという考えが浮かんできたら警察当局とも相談したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/154
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155・中野鉄造
○中野鉄造君 じゃ、結構です。
次に、リハビリテーションについて関連してお尋ねいたしますが、いろいろなリハビリテーション医学の専門医あるいは専門講座というものが、非常にまだ我が国では十分とは言えない面があるように思います。現在、内科なら内科、小児科なら小児科、整形外科は整形外科というそれぞれの専門のお医者さんが、専門医ではないけれども、それぞれの今言ったような分野でリハビリテーションの認定医として承認を受けておられるというのが実態じゃないかと思います。こういうわけで、リハビリテーションの医学専門講座、専門医というのは本当に我が国ではまだ百人以下であるということを聞いておりますけれども、例えば先ほどから申しておりますオストメートだとか、また、その他いろいろな非常にリハビリテーションが必要であるというそういう疾患がありますけれども、こうした理学療法士あるいは作業療法士、こういうような方々についてのこれからの需要と供給、ここらのところを厚生省としては今から二十年ばかり前に養成目標というようなものを立てておられるわけですが、今後のその見通しはいかがなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/155
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156・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘にもございましたように、リハビリテーションの分野は、我が国の医学で非常におくれた分野でございました。実は、私、お話にございました理学療法士、作業療法士を養成するための最初の学校をつくりますときに関与をしておりまして、これがこれから将来どういうふうに発展をしていくか非常に心配だったわけでございます。ただいまそれの需給状況はどうかというお話でございますが、当時の心配が幸いなことに杞憂でございまして、順調に経過をしております。ちょっと今手元に資料がございませんが、昭和六十年代半ばごろにはおよそこの需要と供給が均衡するのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/156
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157・中野鉄造
○中野鉄造君 理学療法士だとか作業療法士だとかこういうような人の身分の法制定というものは今いかがなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/157
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158・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) これはそれぞれ身分法がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/158
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159・中野鉄造
○中野鉄造君 そこで、また先ほどのオストメートのいわゆるストーマ療法士ということについてお尋ねいたしますが、先日のこの委員会でも私お尋ねしましたように、このストーマ療法士という資格を持った方々というのは今日本にもごくわずかなんですね。ところが、こういったような人たちは、オストメートに限らず、義肢だとか、その相手の患者さんの形態に合わせた装具なりあるいは義肢をこしらえなければいけない。そこにはそれぞれの何といいましょうか、いわゆるスプリントと申しましょうか、その装具の一部分に当たるものをその形態に合わせたものでなければいけないというようなところから、これはやっぱりそれこそ専門的な知識が必要になってくるわけなんです。
今もお話しがありましたように、現在でもそうした理学療法士だとか作業療法士だとかいうのがあって、身分も法制定がされているように聞きますけれども、この間から聞いておりますこのオストメートにかかわるストーマ療法士、こういうような方々の養成というものを考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/159
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160・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) お話にございましたストーマ療法士は、消化器系、泌尿器科系などのストーマを持っておられる方々のケアをするために専門的な知識を持っておる看護婦でございます。
ヨーロッパの事情をまだちょっと承知いたしませんけれども、アメリカ、カナダにおきましては、看護婦で二年以上の経験を有する者を対象にいたしまして八週間、約三百二十時間、講義と実習を半分ずつ行う、そういう学校がアメリカとカナダで十五校あるわけでございます。両国でおよそ千五百人のそういう看護婦がおられるというふうに承知をしておりますが、我が国におきましては、現在は外科系の看護婦がその任に当たっておるのが大方でございますけれども、一九八〇年から関係学会——日本大腸肛門病学会と日本泌尿器科学会とそれから日本看護協会とが共催のもとに、ストーマ・リハビリテーション講習会を実施をいたしております。これまでに五百余人の方がその講習会を終えておられるわけでありますが、非常に看護婦の希望の多い分野でございます。
今後でございますけれども、アメリカは看護婦のいろいろな細かい区分をしておるのでございますが、我が国におきましても、医学医術の進歩に伴いまして、看護婦の専門分化のあり方、そういうものも含めて検討してまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/160
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161・中野鉄造
○中野鉄造君 非常に答弁が長かったようですが、このストーマ療法士も、これから新しくそういう部門をつくっていく、こういうことなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/161
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162・吉崎正義
○政府委員(吉崎正義君) どうも、長くて済みません。
現に講習会をやっておりますけれども、アメリカ、カナダと比べますと期間も短うございますし、そういう護婦の専門分化ということも含めまして検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/162
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163・中野鉄造
○中野鉄造君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/163
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164・山中郁子
○山中郁子君 初めに、理念問題について若干お伺いをし、政府の姿勢を確認したいと思います。
御承知のように、一九八一年の国際障害者年を経まして、八三年から九二年までが国連障害者の十年ということになっております。今回の改正案はこのような状況の中での初めての改正でありますし、障害者の皆さんの改正内容に対する期待は大変大きなものがありました。私どももさまざまな御意見やあるいは要請などを承ってまいりました。率直に言いまして、私は日本の障害者対策、これをめぐる行政のあり方として、長い目で見て現在までの経過を考えますと、経済成長重視の中で政府の姿勢に基づいたため、障害者対策、具体的にはリハビリを含む医療、所得保障、住宅、雇用あるいは環境整備など総体的におくれてきたと言わざるを得ないと思います。この問題につきましては大臣も恐らく厚生大臣という、今現在厚生大臣をやられていらっしゃるという、そういう立場だけではなくて、政治家の一人として、長期に見て日本の政治の中での問題としては同感されるところが多いと私は思いますけれども、今後の問題として、障害者対策の拡充、推進、これはけさほど来からの質疑の中でも何回か表明されたところではございますけれども、まず初めにその拡充、推進に努めていただきたい。このことをお約束をいただきたいと存じますけれどもいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/164
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165・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 身体障害者の福祉施策については、私は厚生大臣に就任しました最初の記者会見でも、これこそが厚生大臣として、また厚生省がやらなければならない重要課題であるということを申し上げます。これは決して申し上げただけでありません、すぐに昭和五十九年度の予算編成に入ったのでありますけれども、正確な数字は私ちょっと忘れましたけれども、たしか五十九年度の予算編成の際、大蔵大臣との最後の政治折衝、九項目ぐらいのうち半分以上が身障者の問題だったと思います。きょうここで御審議を賜っておるオストメートなども大臣折衝で最後まで粘って大蔵省からから取ったわけでございます。
予算も大変厳しい状態で、ゼロシーリング、マイナスシーリングという状態でありましたけれども、身障者については七・五%、たしか防衛費が六・何%で突出、突出と言っておるわけでありますから、はるかに突出した予算を確保することができました。これで十分だというのじゃありませんよ、十分だというのではありませんけれども、厳しい条件の中では大蔵省にいろんな面をかなり頑張って認めさせていくことができましたし、また、その意に沿って今回先生方に身障法の改正をお願いし、まさに我々の身障対策のいわば原点である「完全参加と平等」、これを目標にして、日本こそ身障対策が世界で一番よく行われているという評価を受けるような状態をつくるために私ども今後も力いっぱい努力をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/165
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166・山中郁子
○山中郁子君 防衛費突出の議論が出てまいりますと、これまた大議論をしなければなりませんですけれども、きょうは法案の性格上それはおきます。
それで、障害者の皆さんが今回の改正内容に不満を示されている、御意見を持っていらっしゃることの一つに、理念の問題での不十分さがあります。改正案の第二条、「すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、その有する能力を活用することにより、社会経済活動に参加することができるように努めなければならない。」、この改正案は、この条文にまつまでもなく、まず障害者の自立努力を求めていて、そして社会参加はその二項に「機会を与えられる」としているだけと言ってもあえて言い過ぎではないと思うんです、この理念がどれだけおくれて不十分なものであるかということは、国連決議の障害者の権利宣言に照らせば一目瞭然だと私は思います。第三項、「障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。」、四項は「障害者は、他の人々と同等の市民権及び政治的権利を有する。」、私は、これを申し上げるまでもなく問題ははっきりするだろうと思いますけれども、社会参加は障害者の権利である、この問題の原点を理念の中で、法改正に当たってはっきりさせるべきであったと考えます。
政府は、国連中心の外交ということをしばしば表明されます。それではなぜ、国連が決議をした障害者の権利宣言、これを基本に理念に規定をしなかったのか、これがやはり大きな、障害者の皆さんだけではない不満でもあり意見でもあるということの御認識はおありでしょうか。お考えを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/166
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167・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘のように、今回の法律改正ではいろいろと理念的な規定も見直しをいたしました。国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」という理念を盛り込んだところでございます。
今御指摘の、障害者の権利宣言の関係でございますが、こういった権利宣言で、今先生お読み上げになりました理念も当然のことながらこの中にうたわれておると思いますが、実は、我が国の場合には心身障害者対策基本法というのがございまして、その三条に、心身障害者の個人の尊厳という格好で、「すべて心身障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するもの」という権利規定がございます。そういった心身障害者対策基本法も横にらみしながら、今回の理念規定の整備をしたわけでございまして、こういった国連の権利宣言を我が国としても尊重して、それにふさわしい施策あるいは社会の活動をやっていかなきゃならないことは、御指摘のとおり当然のことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/167
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168・山中郁子
○山中郁子君 基本法に言葉としてあるからという問題とは別な問題として、けさほど来から議論をされているところでありますので、私も重ねて申し上げたわけでありまして、その点は十分御承知のところだと思います。
身体障害者福祉法第一条、「法の目的」のところにも、更生に必要な保護を行うということになっておりまして、これも既に質疑が交わされておりましたけれども、この点も障害者の方々の不満は大変大きなものがあります。理念なり法の目的は、その法律、政策すべてを律する障害者権利宣言の理念の言うように、障害ある人すべてに援護の手を差し伸べられるべきであって、障害者にはその権利があるというそこのところだと思います。これから見ても、更生という思想は今後再検討されてしかるべきであると思いますが、重ねて御見解を伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/168
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169・持永和見
○政府委員(持永和見君) 更生という言葉につきましては、けさほどもお話し申し上げましたとおり、法律が制定されました当時の「更生」で解釈されていた概念と、現在私どもが解釈している概念とはかなり違ったものになってきておりまして、生活の安定あるいは福祉、そういった全般を更生という概念の中に含めて広く解釈しております。また、私どもの関係審議会の方でもそういう理解であるというのが一般的な理解でございます。
ただ、しかし更生という問題について、先ほど来御指摘もございました、また、障害者の団体の方々からのいろいろな御意見もあることも私ども十分承知しております。したがいまして、この問題については、けさほど大臣からもお答え申し上げましたけれども、ほかの福祉施策諸法との関連もございますので、そういった関連をにらみながら今後検討を続けていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/169
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170・山中郁子
○山中郁子君 障害者の方々の切実な願いというのは、具体的なさまざまな施策だけでなくて、こうした問題にかかわる人間の誇りという問題の基盤をなすものであるということは厳粛に受けとめていただきたいと思っております。
それで、日本の障害者対策で先進欧米諸国と非常に違うところ、つまり範囲の問題になるわけですけれども、これも先ほどお話がありましたので重複は避けますが、端的に申し上げまして、ここで国際障害者年日本推進協議会がつくりました国際障害者年の長期行動計画がございます。皆さんよく御承知のところです。日本の関係団体の方たちがすべて糾合された組織でございますけれども、この文書の中にも、アメリカは日本の約六倍、身体障害者だけに限っているイギリスでも、これは千人対比で七十八人、日本の場合には千人対比で二十三・八人になります。同様に、オランダも身体障害者だけに限っていますけれども千人対比で八十六・六人ということで三ないし四倍ある。スウェーデンの場合には実に十五倍弱という、そういう数字になっているということが示されています。これは厚生省も御承知のところであるということを、事前にお話も伺ってまいりました。
実際に我が国の障害者の数が少なければそれはそれで結構なのでありますけれども、そうではないということは、既に対象の範囲の問題として明らかになっています。この違いは、欧米諸国の場合には精神薄弱者あるいは精神障害者、慢性病疾患などをその対象に入れているということからくる違いであるというように理解をしておりますけれども、そのような御認識であるかどうか。個別に言えば細かい違いはあるかもしれませんけれども、それは結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/170
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171・持永和見
○政府委員(持永和見君) 大要としては先生のお話のようなことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/171
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172・山中郁子
○山中郁子君 私は、国立国会図書館の立法考査局でお調べをいただいたのでありますけれども、具体的に三つの国の例を申し上げますと、イギリスの場合、国民扶助法、御承知だと思いますが、ここでの障害者の定義は、盲人、聾唖者、精神障害者または疾病、障害、先天異常、または大臣の指定するその他障害により相当にかつ永続的不利を受ける者と、このようにその範囲を定めております。それからまた、フランスの場合ですと、運動機能障害者、視覚機能障害者、聴覚機能障害者、その他の身体障害、知能障害、社会的障害というものが含まれておりまして、その他の身体障害の中には心臓病、呼吸器系疾患、代謝性疾患、てんかん、老衰、こうしたものまでがその範疇に含まれるというようにされております。それから、西ドイツの場合で言いますと、上肢障害、下肢障害、体幹障害、その他の肢体不自由、内部障害、視覚障害、聴覚障害、精神障害、てんかん、言語学習障害、これらのものがその範疇に含まれるということになっております。
ここのところが日本と全然違うところだと思います。数字の上にもそれが結果としてあらわれてくる。フランスの場合には、処遇に至っても傷療軍人に準じて行われるということで、我が国とのレベルの違いというのはかなり大きなものがあると思います。
それで、私たちが障害者団体の方たちといろいろお話しをし、また、要望をお受けするということの中ではっきりしておりますのは、難病などの慢性的疾患を持つ方々、知恵おくれの方、精神障害者などからぜひその範囲に加えてほしい、諸対策を講じてほしい、こういうことです。この要望は大変強いものがありますし、この問題について本日の委員会でも、また今までにも多く議論がされてきました。
こうした方たちは現に身体的、社会的不利が長期に継続している、そういう状態で、私は要望はもっともだというふうに思います。きのうも車いすに乗られた方を初めとして、関係者の方がお見えになりました。きょうも朝から熱心に傍聴をされていらっしゃいます。しかし、援護の対象から外れる場合が多い。このケースも、もう既に大臣を初め当局の方も否定し切れない事態があります。
それで、私は、何回も繰り返されて、厚生省のお答えになることも大体見当がつくんですけれども、しかしなおかつやはりそういう実態に照らして切実な要望でありますので、ぜひとも誠意を持ってこれらの方々の期待にこたえるという立場で、この範囲を抜本的に再検討をするという姿勢をお示しいただきたいということを心から願っているわけでございますけれども、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/172
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173・持永和見
○政府委員(持永和見君) 今、先生御指摘の、精神障害者の方々あるいは知恵おくれの方々、難病の方々ということでございますが、我が国におきましては、実は諸外国と違いまして、障害者の方方の福祉を包括的な法律でやるという形をとっておらずに、知恵おくれの方々は例えば精神薄弱者福祉法、それから精神障害者の方々は精神衛生法というようなことで、それぞれ法律をつくりまして、そういった分野でそれぞれの施策をやっておるところでございます。身体障害者の方々につきましては身体障害者福祉法でやっておるところでございます。
それで、問題は、できるだけこういった施策間のはざまがないように私どもも努めなければならないところでございまして、そういう点での努力は積み重ねなければならないと思いますが、もう一つ、難病の方々につきましては、この問題はなかなか難しい問題でございますけれども、身体障害者福祉法からのアプローチの仕方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、疾病と障害の概念の明確化を図るべきだというのが身体障害者福祉審議会の基本的な御意見でございまして、そういった疾病と障害の概念の明確化を図っていく中で、身体障害者福祉法の対象として取り入れるのがふさわしいということであるならばそれは取り入れていこう、こういうようなことでございまして、先ほども御説明しましたように、現在は心臓、腎臓、呼吸器病という、そういった内部的障害につきましては身体障害者福祉法の対象にし、また、今回御提案申し上げている法律改正によりまして、オストメートの方々を身体障害者福祉法の対象にしよう、こういうことでございますが、今後とも、医学医術の進歩もございますし、そういった意味合いで、こういった慢性疾患の方々、そういった方々につきましては疾病と障害の概念の明確化を図るということで、そういった方向で引き続き検討を続けていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/173
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174・山中郁子
○山中郁子君 細かいことで対象をどうこうするさまざまな法律があってということで、深入りする時間は、残念ながら私はきょうないんです。しかし、大きく言いまして、なぜこういう要求が繰り返し、そして切実に各方面、特に障害者の方たちからあるかといえば、身体障害者福祉法の対象から外れることが実際上の福祉を享受する上で大変大きな差が出てくるという問題ですね。細かい点はいろいろありますよ、だけれども、大きく言って身体障害者福祉法がそれでは十分なものかといえま、決してそうではなくて、いろんな問題があることは皆さん百も承知で、多く指摘されてきているところなんですけれども、そこのところに問題があるわけです。
ですから、今局長も御答弁なさいましたように、個別にその障害の程度に応じて対応する、ないしは今後もそれでアプローチしていくというとになれば、逆に言えば、私は共通の土俵があるいうことが言えると思うんですね。それで、その点についてはかたくなに各個別の法律、各障害のあれに応じて別々に対応するということではない、皆さんが統一基盤でもって対応してほしいということの理由というのはおわかりになっていらっしゃると思うので、ぜひとも積極的な対応をしていただきたいと思うのですが、それが一つです。
それで、今局長の御答弁にもありましたけれども、障害と疾病の概念の明確化を図るという問題ですが、基本問題検討委員会の報告書の中にもそのことが一つ指摘をされているわけです。これは「身体障害者の範囲」のところでそのことが指摘をされていますね。同時に、「障害程度等級」の問題では、先ほどの議論にもありましたけれども、「日常生活能力を加味した方法を適用する」という点でまた指摘がされているわけですね。これは一つは障害の範囲の問題、一つは障害程度の等級の問題という別な項目の中でのそれぞれの指摘ではありますけれども、障害者対策の問題としては、私は、共通する土台に立った問題としては、この二つの方向というのはやっぱり矛盾するのではないかというふうに理解せざるを得ないのですけれども、片方では分けて、そして逆に言えば外していくということですね、対象にしないということですね。分けてというのは、疾病と障害とを分けるということでしょう。対象として、明確にしていくということ。そして、片方では、日常生活にさまざまな支障があるということでもって等級の程度の問題についてはそこを重視していきなさいと、こういうことになってくる。これはやはりその部分から言うと若干の矛盾を感ぜざるを得ないのですけれども、この点はどういうふうに理解をなすっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/174
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175・持永和見
○政府委員(持永和見君) 実は、身体障害者福祉法の対象としての障害の範囲をどうするかという問題が、私が先ほど申し上げました疾病と障害の範囲を明確化する、こういうことになることにつながると思いますが、それで、身体障害者として認定された方々につきましていろいろ等級づけをするわけでございますけれども、その等級づけをする場合に、例えば先ほど来御議論のございました全身性障害者の方、こういった方々につきましては、肢体の関係の障害とそれから言語機能の障害といったような、障害が重複するような場合があるわけでございます。したがって、そういった重複するような障害の方々につきましては、先生篤とお読みいただいておるわけでございますが、身体障害者福祉審議会の答申の中でも、今のような、部位あるいは損傷の程度だけに着目して身体障害者の等級の評価をするのは問題はあるけれども、しかし、一律に何かいきなり生活といいます
か、日常生活の制限の度合いだけで一律にやるのもまたいろいろ問題がある。ただ、今申し上げたような全身性障害についてはそういった面も加味しながら障害等級の評価認定をすべきだと、こういうような御意見でございまして、あくまで身体障害者福祉法の対象とされた方々が、等級の上でお互いの均衡をとるために、やっぱり一律に生活への制限という面でのお互い均衡を図るという意味から、多面的なそういった検討が必要だというような御意見でございまして、要するに疾病と障害の概念の区別を明確化しながら、身体障害者の範囲を決めていくということとは、私は、必ずしも矛盾はしていないのじゃないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/175
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176・山中郁子
○山中郁子君 日常生活に支障がどの程度あるかということは、やはり障害という問題を考えた場合には、共通する考え方の基本なんですよね。そういう趣旨で私は申し上げておりまして、この報告書の中身が今局長が御答弁なすったようなそういう区分けをしていることは、それは私も百も承知しておりますけれども、考え方の問題としては、やはりそういうふうになってこざるを得ない。だからこそこの等級のところでもそうした問題が強調されているのであって、それはやはり障害の対象という問題に広げていきますと、矛盾してこざるを得ないということを指摘をしております。まあちょっと御見解を伺いました。
それで、日本の場合には、障害者の範囲が制限列挙方式というふうに言われておりますけれども、そういうことで積み上げられてきていますから、どうしても日常生活上、社会生活上著しい制限があっても援護の対象にならないというケースが出てきます。例えば、知恵おくれの方たちが雇用促進法の対象になっていないとか、そういう問題がいっぱい出てくるわけですね。たくさんケースがあります、一々申し上げる時間はありませんけれども。こういうことが結果として生まれてくるということだと思いますので、この点への着目というのは少し抜本的にお考えを進めていただきたいところです。
それで、先ほど糸久委員がお触れになりましたので、私は重ねてお答えはいただきませんけれども、「あせび会」の方たちですね、希少難病者全国連合会というところでのいわゆる小腸切除の方たちの対象にしてほしいという御要望です。これは私もこの方々から陳情をいただきましたので、先ほどの御答弁は承っておりますので、私からも、その陳情の趣旨を体しまして、強く要望を申し上げておきたいと思います。御検討いただけるというお話だったと思いますので、そのように重ねて要望申し上げておきます。
それで、今のお話でも明らかになっているんですが、障害と疾病を分けるという、こういう姿勢、これでは日常生活上大きな身体的社会的不利を持った難病や慢性疾患、精神薄弱者、精神障害者等に対する対応がやっぱりますますおくれてこざるを得ないというふうに思いますので、先ほどから何回か私申し上げて、局長の御答弁もあって、それはそれとして厚生省のお考えとして承ったところでありますけれども、やはり初めからるる申し上げましたように、国連の権利宣言、あるいは先進欧米諸国の実態に照らしてみれば、そういう明確化の方向を一層強めていくということは、やはり世界の趨勢に逆行することにならざるを得ないというふうに思います。
この点については、これは国連の権利宣言の一項ですけれども、「「障害者」という言葉は、先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不全のために、通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、自分自身では完全に又は部分的にできない人のことを意味する。」と、このように明記をされていますので、こうしたことに照らしても、我が国のとっている区別ですね、これは相入れないものだというふうにどうしても言わざるを得ません。やはりこの問題については具体的に再考していくという積極的な姿勢をお示しいただきたいわけですので、この問題の最後でございますけれども、大臣からあえてお考えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/176
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177・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) これは、我が国の障害者対策が幾つかの法律に分かれて行われているというのは、悪い面だけでなくて、やはりきめ細かくそれぞれの対象でそれぞれの特性があるわけでありますから、それを充実させるためにそういうことが行われた面もあると私は思っています。
例えば、身体障害者と精神障害者の場合で言いますと、やはりこれは一つにすることはできないのではないか。身体障害者の皆さんの場合は、手がなくなっておるとか、足がなくなっておられるとか、視覚が御不自由であるとか、もう医学的に完全回復ということがない状態の中で、やはり社会の中で立派に、そういう身体上の不自由さをお持ちになっておる方にそれぞれ立派に社会で生きていただくために、国がお手伝いするということでありますし、それから精神障害者の場合は、これは医学的な保護のもとに置く必要性があり、また、その医学的な保護の中から回復した場合は普通になって社会復帰ができるわけでありますから、それからまた、子供たちには子供たちの特性がありますから、そういう面で、今まで我が国はそういう方向で対策が行われてきておったわけであります。
ただ、そのために役所の縦割りだとかなんとかいうことで身体障害者対策がうまくいかないという具体的な個々の面があったら、これはやはり有機的に、機能的に行政の面で改善していく工夫も必要でありましょうし、また、それで法律を改正する必要が出てくれば法改正という問題も起こってくるでありましょうし、現在のところ私の受けておる報告では、それぞれの特性でできてきた今の法律、これを最大限有効に生かし、またこれを有機的に生かし、その間のはざまというようなものはないように、どっちにも入れないために国の施策を受けられないという人はないように、これから努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/177
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178・山中郁子
○山中郁子君 その範囲の問題は、今まさに大臣がおっしゃったようなことを実現していく上で一つの重要な必要なケースなんですね。私は、今細かいことを、形式的なことを申し上げる場所ではないと思っておりますから、再三申し上げているんですけれども、実際のところは、障害者の方々が享受する福祉、施策、こうしたものがやはりさらに充実されなければならないし、例えば身体障害者福祉法の対象になれば享受できる部分でも、なっていないために享受できない、こういう問題が、今のこうした障害者の方たちを初めとする国民の、少なくない方たちの要求になっているわけですから、そこのところを申し上げています。
それで、非常に残念で遺憾なことなんですけれども、今大臣がおっしゃったようなこととは裏腹にというか、この身体障害者福祉法ができた経過から照らしてみても、やはり今までのいろんな議論になっている問題点の背景に、日本の財政上の問題が先行しているということは、これはもう言わざるを得ないんですね。それで、申し上げるまでもないんですけれども、最初この法律のできたときの解説として、通牒というふうに出て、各都道府県あてに通達されたものの中に、「この法の根本的な主旨から云えば、」「単に感覚器障害や運動器障害の盲、ろう唖、肢体不自由ばかりでなく、精神病、精神薄弱、精神々経症、癩、結核、心臓病、腎臓病、中風、脚気等その疾病が何であれ、その障害を現に存する者をこの法の対象とすべきことが極力主張されたのである。」、厚生省はこれはもう廃止したとおっしゃっているんですけれども、現実に事実としてこういう歴史的経過があるわけですね。そうして、続きまして、「然し我国の現在直面している各種の事情、特にその経済的制約からみて、結局この法の対象者は、相当程度縮少されたものから出発されなければならないであろうという結論に落つき、」と、こうなっているわけです。私はやっぱり政府の障害者対策が、専ら財政的理由、財政上の視点から対応されてきて——今時点の狭いことを言っているんじゃないんですよ。今私が読み上げましたこの障害者福祉法の経過に照らしてみても、そうしたものがずっと来ている、そういうことがどうしてもあると思うんですね。
ですから最初大臣も、財政的な問題が優先してこれらの問題についての対応をするものではないということを重ねて何回もおっしゃいました。もしそうだとするならば、財政的理由を先行させないで、そして真に障害者の皆さんが期待をしていらっしゃる範囲の問題を含めた対応に対して、より積極的な対応がされてしかるべきだと思います。結局政府だけがこの点については否定的な態度をとっていらっしゃるんですよね。つまり、障害者の団体のみんな一緒になった方たちが共通しでそのことを要望されている。国会でもそういうことが論議されている。政府だけがいやそうじゃないとこうおっしゃる。そして世界各国の、先進国の状況を見れば、そうした方向がもう既に定着もし、さらに発展をしている。国連の決議、障害者年の行動計画もそのような形で明確化されている。だとすれば、政府だけが突っ張っているとまでは申し上げませんけれども、そういう状態はやっぱり打開していく姿勢に、積極的に大臣が先頭に立っていただきたいものだと思います。重ねて御意見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/178
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179・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) これは、我が国の今置かれておる環境が、財政的には非常に厳しい状態にあり、先生御承知のように、予算編成なども毎年最近はゼロシーリングとかマイナスシーリングとか、そういう非常に厳しい状態に置かれておることも間違いない事実であります。しかし、どんなに予算が厳しいからといって、そのためにこれをやらないというようなことのできない問題も幾つかあります。私は、身体障害者対策というものはその一つである。財政が厳しいからそういう施策はできないというようなことは通用しない問題である。したがって、今度の五十九年度予算でも、政府全体がマイナスシーリング、また、厚生省全体の予算でも二%ちょっとしか伸びない中で、身体障害者対策の予算はこれは七%以上アップさせたわけでありますから、私は身体障害者対策については、財政が縛られておるからそのためにその対策にしわ寄せさせるというようなことの決してないようにこれからも努力をしてまいりたいと思います。
ただ、その方法上の問題について今先生と意見がいろいろ食い違っているようでありますが、これらの問題についても、今専門家等の意見を十分聞いて、今後に対処してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/179
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180・山中郁子
○山中郁子君 次に、オストメートの問題について、これも財政上の問題との絡みでもまたお伺いをしたいところです。
これはもう既に多くの方が触れられましたので、端的にお伺いをいたしますが、まず、私どもも、このオストメートの皆さんの団体であります互療会の方々を初めとして、さまざまな陳情、要請をお受けしております。その中にこういう文面があるんですね。「日常生活上の支障」ということでたくさんお書きになっていらっしゃる。全部御紹介する時間はありません。厚生省もお目を通していらっしゃると思いますので、一つだけ御紹介いたします。「常に装具の交換・清拭を必要とするため、出張・旅行は勿論、会議・集会等に参加も困難となり、又不測に発生するガス・排便の悪臭の防止が不能なため大衆の中を嫌い閉鎖的生活に余儀なく甘んじなければならない。」と、こういうところがあります。私は、直接的な機能障害、あるいは労働や日常生活上の障害とともに、ここにも端的にあらわれている精神的な苦悩というものは大変大きいと思います。そして、それが結果的に日常生活で閉鎖的な生活を余儀なくされるという、そういうものにつながっていくというところも、やはり私は大きく障害者に対する福祉施策の上で着目しなければならない、本当にこうした障害者の方々の気持ちになって、その立場に立って、中身のある政治をしていく場合の大事なところだというふうに思っております。
今回の法改正は、オストメートの方々にとって長い間の切実な要望であったわけですけれども、ふたをあけてみたらすべての人が対象にならないというけさほどからの議論があるわけで、そこのところはやはり残念なところだと言わなければなりません。今私が陳情書から引用したことを理由にするだけでなくて、同じ障害、同じ悩み、同じ不安を持っておられる方々に、やっとこれが対象になったという、皆さん方の御苦労な社会生活の中でもう本当に積極的に一生懸命運動された結果、一歩それが開かれたわけですね。開かれたらやっぱりその中で差別というか、対象になる方とならない方と出てくるというのは、これはまた新しい困難なことであるし、当事者の方々にとっては大変つらいことだというふうに思いますので、ここのところはぜひともすべての方々が対象とされるようにぜひとも運用をしていただきたいと思うのですが、その合理的な基準というのがやっぱりできないんじゃないかと私はどうしても思うんです。けさほど来の御議論を伺っても、なおかつやはりどうしてもそういうふうに思います。
そういう何を基準に決めるのかということも含めて、財政事情が先行するということではないということはおっしゃっておられましたので、このことは御確認をいただくとともに、本当に長い間の要望が実現をすることになったわけですから、基準でもって分けて、そして対象者になる方とならない方ができるみたいなそういうことにはならないような運用、つまり広く適用するという、そういう方向をぜひともお約束をいただきたいところなのですが、まとめてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/180
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181・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先ほど来も申し上げておりますとおり、身体障害者福祉法の対象となる身体障害者の方々というのは、身体障害者福祉審議会の答申でもうたわれておりますように、日常生活に相当程度あるいは著しい制限を受ける者という、こういう限定があるわけでございます。
〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕
したがいまして、オストメートの方々につきましても、そういったことでの限定という形と申しますか、日常生活に著しい制限を受ける者に該当すれば法の対象になる、こういうことかと思います。
今具体的に、法の対象をどの範囲にするか、これはあくまで私ども素人でございますので、ここで具体的な認定基準の、あるいは線引きをどうするかということを具体的に今お答えできる立場ではございませんが、これは専門的な立場からの、医学的な立場からの検討が必要であろうということで、現在、身体障害者福祉審議会の審査部会においてそれぞれ専門的見地から御検討をいただいているところでございまして、その検討の結果を待って対処をいたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/181
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182・山中郁子
○山中郁子君 それはそれでよろしいんですけれども、私はやはり人工肛門、人工膀胱の造設ということは、医学的、専門的なすごいすごい深い知識がなくても、これは日常生活に大変な支障があるということはもうはっきりしていますよね。ですから大臣、今局長がおっしゃった御答弁の範囲でなくて、ぜひとも、こういうところに対象になるということになったのは、大臣も何回もおっしゃったように、御自分も一生懸命努力して大蔵省とやり合った、その情熱というか、その姿勢をさらに延長、延長というか、強められて、今皆さんが切実に望んでいらっしゃるのは、だれは対象になるけれども、だれは対象にならないみたいなことじゃなくて、広く対象にしていくという方向で、その政治の温かさということを、長いこと苦労の中で運動された方々にも約束をしていただきたい。大臣の姿勢として、重ねてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/182
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183・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) これは先生、世の中に最初から完全というようなものはなかなかないと思います。やっぱり一歩前進させて、そこでまたいろんな欠点が出てきたりなんかすれば、それを直して、二歩前進させて、さらに三歩前進させてといって立派なものができていくのが、政策でもその他の問題でもそうだと思うんですけれども、とにかく今回ゼロシーリングという非常に厳しい条件の中で人工肛門、人工膀胱を新しく加えるようにしたんですから、それはやっぱり評価していただかないと、何か私、せっかくいいことをしたと思っていたのが何か悪いことでもしているみたいにやられたんでは、一生懸命やるのが張り合いなくなるので——。
しかし、先生おっしゃるようにこれで十分なものだなどと決して私は思っておりませんし、この法律を通していただいて、施策が行われて、そこでまたこういう人が対象に入らないとかいろんな問題が出てくれば、またその問題を取り上げて来年直そう、再来年直そうといって努力して立派なものにしていくので、ひとつ今日まで私どもがやった、また、今やろうとしておる意欲も少しは評価をしていただいて、また私も、先生の今の御指摘等を十分に頭の中に入れて、せっかく発足したんですから、皆さんに喜んでいただけるような立派な施策に努めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/183
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184・山中郁子
○山中郁子君 私、評価しないなんて一つも言っていないんですよ。そういうふうに御努力をなすったということはよく承知をしている、ぜひそれをさらに一層前進をさせてほしい、こういうふうに申し上げておりますので、誤解のないようになすってくださいませ。だけれども、評価することばっかりいっぱいあるわけじゃなくて、厚生行政の上で足りない問題や問題点がたくさんあるということも、これは申し上げないわけにはいかないということです。
それで、最後の問題になりますけれども、費用負担の問題です。これは、この法案の中で、私、やはり一番大きな問題とするところなんですが、やはり身体障害者の実態に照らしてこの問題について考えなくてはいけないと思っておりますが、身体障害者の方たちが今どういう状況にあるのかということは一つ一つ申し上げるまでもないと思いますけれども、例えば就業の状況について言えば、十年前の一九七〇年の調査と比較をして、一九八〇年二月の最も新しい調査ですね、これが就業率が四四・一%から三二・三%に下がっていて、一一・八%も低下をしているということが数字からわかると思うんですけれども、これは一般の健常者の場合の就業率と大変大きな開きがあります。これは「完全参加と平等」という理念に照らせば、まだまだ大きな乖離があると言わなければならないと思いますけれども、この辺の御認識がいかがかということと、もう一つ、二、三の状況、実態を私の方から数字を申し上げて、あわせて政府の認識を確認をしたいと思います。
次は、収入の問題ですけれども、平均の金額が十万六千七百円、そして五万円以下の方が二五・三%もあるという実態だというふうに私は把握をいたします。それから、課税面から見ますと、所得税の非課税は身障者世帯の四二・一%、一般の場合ですと二一・一%ですから、これも倍近くあると思います。つまり、うんと低所得だということですね。それから、生活保護の受給者の面から見ますと、二十二万人、それで四・九四%になると思います。これは一般の場合の一・二三%の約四倍にも当たるというように思います。
今私は幾つかの指標を実態上申し上げましたけれども、こうした認識は厚生省としても間違いのないところであるかどうか、御確認をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/184
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185・持永和見
○政府委員(持永和見君) いずれも先生のおっしゃったとおりでございまして、身体障害者の就業状況につきましては、四十五年の十月四四・一%が五十五年の二月は三二・三%となっております。この場合、一般の場合も多少四十五年から五十五年には下がっております。それから、平均収入でございますが、五万円以下の人たちの割合が身体障害者の方々の場合には二五・三%でございます。それから、所得税非課税の割合も、先生のおっしゃいましたとおり、非課税世帯、所得税の非課税世帯が、一般世帯が二一・一%なのに対しまして四二・一%でございます。生活保護の保護率も、一般の保護率が一・二三%に対しまして、身体障害者の方々の保護率は四・九四%ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/185
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186・山中郁子
○山中郁子君 今私は、幾つかの面から、身障者の方たちが置かれている生活実態の困難さということを厚生省の方たちにも御確認をいただいたわけであります。
それで、この費用負担の問題でありますけれども、制度審の答申で、この点について指摘をされているところがございますので、ここをちょっと厚生省から御紹介をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/186
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187・持永和見
○政府委員(持永和見君) ことしの三月の二十二日に制度審議会から厚生大臣あてに、今回御提案申し上げている身障者福祉法の一部改正について答申がございました。なお書きでございますが、「費用徴収の基準の設定に当たっては、身体障害者の実情に即するよう十分配慮されたい。」ということが書かれてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/187
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188・山中郁子
○山中郁子君 私どもは、幾つかの点でもってこの費用徴収についてはもちろん反対をしております。しかし、少なくともこの制度審の、今厚生省が御紹介なさいました「身体障害者の実情に即するよう十分配慮されたい。」というところは本当に——数字で幾つか申し上げました、でも、これはもう数字であらわされるような問題じゃない、さまざまな生活上の困難がその背景にあるわけですよね。そういう実態に照らして、冒頭大臣から障害者問題に対する施策に対する基本的な姿勢をお伺いをしたわけですけれども、この「身体障害者の実情に即するよう十分配慮されたい。」というこの制度審の指摘をしっかりと踏まえていただいて、障害者の実情に即した施策、運用ですね、この点をお約束をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/188
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189・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 今回のこの法律にも完全参加と平等の我々は理念をうたっておりますが、それにはやっぱり所得保障というのが大事なことになってまいるので、私ども今回年金法、これぜひ先生にも賛成していただきたいと思いますが、これを通過させることによって障害者の所得を大幅に伸ばすことができます。そういうことから、また一方、これは負担できる場合はやはり費用を負担していただこうということでありますから、負担能力のない方から無理に費用を取るとかあるいは費用を取ることによっていろんな活動を阻害するとかという考えはないので、これらについては今後、本当にこのために当然受けられるべき施策が受けられない、施設を利用できないというようなことがないように、弾力的に取り計らっていくべきものと承知をしております。
〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/189
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190・山中郁子
○山中郁子君 最後に私は、この改正案、特に費用徴収の実施についても私ども日本共産党の立場を申し述べておきたいと思います。
改正案は、人工肛門、人工膀胱への範囲の拡大、福祉ホームの創設、相談業務の機能充実などについては改善でありまして、一層の拡大充実は求められているものの、これは賛成であります。今大臣は賛成してほしいとおっしゃいましたけれども。しかし反面、その費用徴収については、今も指摘しましたように、他の各法との兼ね合いがあるにしても、第一に、現時点では徴収基準が不明確であるということ。それから第二には、徴収の根拠とされている障害の基礎年金創設もまだ未知数の問題である。これは先ほどの議論もありました。第三には、当事者である障害者団体の十分な理解が得られていない。これは大変切実な要望が私どもにも寄せられています。こういう重要な問題点が残されておりますので、この点については私どもは反対であることは明らかにしておきたいと思います。
しかし、法改正全般のバランスを見て本法案に賛成の態度をとるわけなので、障害者の皆さんの要望である過大な費用負担にならないということを重ねて強く要求をいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/190
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191・前島英三郎
○前島英三郎君 きょうは朝から身体障害者福祉法につきまして、同僚委員からいろいろな質疑応答を伺っておりまして、また、厚生省のお考えとするところもいろいろと伺ってきたところでございます。
いずれにいたしましても、この社会は健康な人たちを標準としてつくられているだけに、だれ一人としてみずから障害を持つ身を望んだ者はいないはずなのに、なかなか社会の障壁というものは多岐にわたっている。そういう中でこうした法律が、そうしたものを除去し、そしてまたすべての人が「完全参加と平等」という国連のテーマにのっとって人間として社会参加、自立をしていく、そういうことが大切であると思いますけれども、「者」になる前身、「児」という問題の中には、これはもうさらにもっと障害者に対する差別、門戸の閉ざされた部分というものがございます。
そういう中から、実は障害児を学校から締め出すというような教育が割合まかり通っている部分がありまして、これは埼玉県新座市で起きたケースなんですが、せっかく親や本人の希望と教育委員会及び学校の間で話し合いがまとまりまして、本来ならばよいケースとしてたたえられるべきものだったはずなんですけれども、それが校長先生の独断で、逆にひどいケースに一変してしまったというような、こういうケースがございます。しかし私は、校長一人を責めて済む問題だとは思わないのでございまして、基本的には、障害児を分離して教育することをかたくなに押しつけている文部省の姿勢が、結果として教育現場に混乱を引き起こしているとも言わなければならないというふうに思います。
今回の件はその一例なんですけれども、全般的な論議は後日ふさわしい機会に文部省とやらせていただくことにいたしまして、本日は、まず文部省が把握しているこの件の事実関係を冒頭お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/191
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192・山田勝兵
○説明員(山田勝兵君) 埼玉県新座市の中学校で、校長が障害を有する生徒の転校手続を行おうとした事件については、つい最近でございますが、埼玉県教委から事情を聞いております。不明確な点もございますが、聞いている範囲内でその概要を述べてみたいと思います。
埼玉県教委の報告によりますと、仮にA君といたしますが、十二歳の生徒でございますが、障害を有しておりましたが、本年三月公立小学校を卒業した。そうして、市の教育委員会は公立中学校への就学通知を発出している。そして、市教育委員会が就学通知を出したわけですから、中学校に在学していると、こういう関係になっていたわけであります。
またA君は、昨年でございますが、十一月以来国立心身障害児総合医療センター整肢療護園に入院して、手術、治療を受けていたと、こういう事実がございましたが、この間、小学校の卒業式、それから中学校の一日入学というのがございましたが、それには出席したと、こういう事実関係がございます。
ところが四月九日、これは入学式の前日に当たりますが、校長は、筑波大学の附属桐が丘養護学校にA君の受け入れを依頼するとともに、在学証明書とかそれから健康診断票等を送ってしまったということでございます。
それで、次の日になりまして、四月十日でございますが、入学式の当日でございますが、A君は欠席いたしましたが、来校いたしました保護者に対しまして、校長が養護学校への転校を勧めるという事実がございまして、中学校用の教科書も渡したというようなことでございます。保護者は、その後市役所に立ち寄りまして、抗議文などを配布したというふうに伺っております。
また、四月十一日でございますが、聞くところによれば、保護者は筑波大学附属桐が丘養護学校へのA君の入学願書を提出した。
それで、四月二十日ということでございますが、A君の入学許可は桐が丘養護学校の方で行ったというようなことも聞いてございます。
なお、これは昭和五十三年の四月になりますが、A君の小学校への入学に際しまして、A君の学校生活を送る上で特別の配慮が必要であると考えられたことから、A君の保護者と小学校側との間で話し合いが行われ、その結果として、保護者から校長あてに誓約書が出されていた。この当時の小学校の校長先生というのは、たまたま今回の中学校長であった、こういうような事実があったということは聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/192
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193・前島英三郎
○前島英三郎君 かいつまんで言いますと、小学校六年間、障害を持ちながら無事終わった、いざ中学校入学となったら、あんたはこの中学校にはもう籍はありませんよと、校長が勝手に、両親に相談せずに転校手続をしてしまって、あなたのクラスはないということで、後日学校へ行ってみたら、子供の籍が抜かれておったというあらましだろうと思うのです、そのプロセスは。いろいろの表現の違いはあるにいたしましても。
しかし、今特殊教育課長も言いましたけれども、誓約書の問題というのがございます。これは六年前のことでありますから、今日に比較して当時はまだ障害児教育に関する理解が各方面において不足していたという背景もあるかもしれませんが、特に、養護学校義務化を目前にした時期でもありまして、機械的な振り分けの指導が強かったころであったかもしれません。しかし、それにしましても義務教育を何と心得ているのかと言わざるを得ないような誓約書なんですね。入れてやるんだ、だから面倒はかけさせるな、何があっても学校は責任をとらないという文脈が、この誓約書の中には脈々と流れているんです。つまり、校内、校外及び登下校において仮に事故、けががあった場合は一切責任は学校側に問いませんと。それで、この妹さん、弟さん、出産を三月に控えていたんですが、出産予定にかんがみ、育児のため等にこの誓約書をほごにすることはありませんという文面まで要求をしているわけですね。そういう意味では、難病を背負った、二分脊椎症という一つの障害なんですけれども、普通小学校で六年間学んだ、そして、晴れて中学校へ進学していった。同じ校長先生だからいいと思って行ったら、いや、あんたはもう中学校はだめなんだよと、突然に転校手続をとられたと、こういうケースなんですけれどもね。
こういうことを見てみますと、一体、障害を持つ者、あるいは障害児に対して教育の現場というのはどういう感覚でいるんだろうか。厚生大臣がきょう朝から、障害を持つ人たちが完全参加と平等を目指してと、こういうことを盛んに繰り返ししているんですけれども、その障害者になる前の障害児の立場の教育の現場はこういう状況であるということを見たときに、私は非常に悲しい気がしてならないわけです。ここで誓約書を書かせた校長先生を責めようとは思いませんけれども、やっぱり今日の問題としてどういう問題をはらんでいるかということが重要だと思うんです。
一つは、県教育長のコメントなんですが、新聞報道によりますと、障害児のために普通校の教員をふやし施設を大改造することは難しい、事情によっては一筆もらうこともやむを得ないかもしれないと言っているということであります。教員配置の問題については後日私も見解を述べたいと思うんですけれども、大改造ではなく、在学している障害児の状況に応じて配慮すべきことは、文部省の指導の中でもはっきりとこれはうたっているはずであります。にもかかわらず、教育長がこういうコメントをするということが、たとえ六年前、養護学校義務化以前の問題としても、非常に時代に逆行しているという部分を指摘しておきたいと思います。
そして、さらに問題なのは、一筆もらうことに対して教育長が非常に肯定的に述べている点ですね。まあよく子供は人質といったことが言われますけれども、親が学校に対して批判したりあるいは意見を述べようと思いましても、子供が学校の中で不利益な扱いを受けると困るので言いたいことも言えない、これは普通学校の中にもよくあることです。当時、その親の立場をこういう表現でプレッシャーをかけているということですね。誓約書だの一筆もらうだのということは、まさに子供を人質にとっているという発想が根底にあるからではないかという気さえするんですけれども、これは六年前ではなく教育長の最近のコメントなものですから、文部省のひとつ見解を、文部省もこういう誓約書をやむを得ないという認識に立っているのかどうか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/193
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194・山田勝兵
○説明員(山田勝兵君) まず、誓約書の問題でございますが、その当時の事実関係が少しはっきりしない点もございますが、新聞等にも掲載された内容は我々も把握しております。
それで、それについてまず内容を言いますと、やはり今御指摘がございましたように、校内、校外及び登下校において仮に事故、けが等があった場合でも一切の責任を学校側には問いませんとか、それから、育児のためにとか、こういうようなことも記載されておりまして、こういうのはやはり、仮にこういう誓約書を強制するようなことがあったとすれば、全く不適切なことだと思っております。
それから、これも新聞報道されておったところでございますが、この誓約書につきまして県の教育長の談話が載っておりました。我々もどういう意味でこういう発言をしたのかということを聞いてみました。まあ教育長直接ではございませんが、関係の方に聞いてみましたところ、県教委ではのような趣旨であるということで、入学に当たって、学校生活を送る上で特別の配慮が必要と思われるような場合、これにはやはり保護者と学校側が話し合って、お互いがどんな点に留意したらよいか、どのように協力し合ったらよいかなど話し合うことはよいことだし、事実行われていると思う、そのときの事情によってはその内容を覚書などにすることはあり得るのではないか、こういう趣旨で見解を述べたものであるというふうに伺っておるわけでございます。
いろいろ話し合うことは必要だと思いますが、ちょうど先ほど御指摘がございましたように、本件のような誓約書を仮に強制するようなことがあるとしたらそれは極めて不適切なことであると、かように思っております。
それから、本件につきましてはもう一つ問題点がございまして、やはり校長が転学手続を行ったということでありますが、本件はこれ学校が——たまたま入院しておったわけでございますが、学校は桐が丘養護学校でございます。国立てございます。言ってみれば、このケースは区域外就学の場合に当たるものでありまして、このようなことを行う場合には、具体的には校長が市の教育委員会に申し出て、しかも市の教育委員会は県の教育委員会に一連の手続を行うことになっている。しかも、保護者の関係で言えば、これは保護者が入学しようとする養護学校の入学許可を受けまして、その書面を添えてその旨を市の教育委員会に申し出る、経由して県の教育委員会に届け出なければならないと、こういうふうになっておるわけでございます。本件の場合は、この所定の手続はとらなかったわけでございますし、また、保護者との間の意思の疎通も欠いていたということもございまして、まことに遺憾だと思っております。
まあA君につきましては、現在所定の手続に従って、治療が、その辺がちょっと長引いているようでございますが、その手続に従いまして、養護学校への転校手続が進められていると聞いておりますが、今後の成長を見守るとともに、このような問題が再び起こることのないように十分留意するよう埼玉県の教育委員会に対して指導してまいりたいと、かように思っております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/194
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195・石本茂
○委員長(石本茂君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、和田静夫君が委員を辞任され、その補欠として久保田真苗君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/195
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196・前島英三郎
○前島英三郎君 つまり、口頭による話し合いならともかく、こういう誓約書をとるということは問題がある。しかし、私はこれに類似したケースが全国いろいろなところにあるということを指摘しておきたいと思いますので、文部省でもそういう誓約書のチェック、調査をお願いをしたいと思うんですが、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/196
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197・山田勝兵
○説明員(山田勝兵君) まあ障害児が学校へ入りそして教育を受けていくのに、やはり学校側と保護者といろいろ協議して子供のためにどうしたらいいかということで検討していく話し合い、そういうことは大切なことだと思っております。しかし、そのような場合に、今の事例のように内容が極めて不適切であったりするようなことは厳に戒めていかなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/197
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198・前島英三郎
○前島英三郎君 後ほどまた伺うかもしれませんが、今回の福祉法の方に入らせていただきます。
まず、歴史的な位置づけについてお尋ねしたいと思うんですが、身体障害者福祉法の改正史から見ますと、昭和四十七年以来十二年ぶりの、久々の改正ということになります。十年以上改正を見なかったことは初めてでありまして、したがって、今回の改正に対する期待は大変大なるものがございます。そして、今回改正案提出に至る数年の経過を振り返りますと、やはり国際障害者年の存在が大きく寄与していたことは明らかでございますし、その成果を法に反映させる記念的法改正の意味があるというふうにも私も思います。その意味でも今回の改正に対する国民の関心は相当大きかったし、我々当事者といたしましても、大変期待も大きかったわけであります。
一方、目を未来に転じますと、おおむね十年間を目途とした「障害者対策に関する長期計画」が策定されておりまして、これは五十七年三月です。さらに、国連は「障害者に関する世界行動計画」を決議しておりまして、障害者の十年を設定をしております。これは昭和五十七年十二月です。これらは広範多岐にわたって課題を明らかにしておりますが、当然身体障害者福祉法を含む法体系の改善を必要とする事項も多々盛り込まれております。
そういう見地からしますと、国際障害者年を初の法的前進の第一歩と評価するところもあるわけでありますけれども、しかし、これは言ってみれば次への一つのステップにすぎない。第二歩、第三歩と前進していくプロセスがあるという前提を先ほど来の大臣の答弁から私はそういうことを感じ取ったわけであります。そういう点で、歴史的な見地から厚生大臣のこの法に対する今後の見通しも含めまして伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/198
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199・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 全く先生の御指摘のとおりだと思います。
今回の法改正は、国際障害者年を初めとする障害者福祉に関する内外の動向を踏まえ、長期的な観点から、今後における身体障害者福祉のとるべき方策について提言した身体障害者福祉審議会答申、これを受けて検討委員会報告、これを踏まえて、具体的に施策に反映するために今回御審議をお願いしておるのであります。
また、今回の法改正を契機に、国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」が真に確保される社会の実現に向かって努力をしてまいらなければなりませんから、まさに今回がその第一歩であり、さらに理想の実現に向かって今後私どもは継続した努力を続けていかなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/199
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200・前島英三郎
○前島英三郎君 今回改正案に直接的な方向づけを与えました、基本問題検討委員会の昨年八月の報告は、「同答申の内容は極めて広範多岐にわたり、長期的視野に立った検討を必要とする事項も少なくないことから、今後の検討に委ねたものも多く、これらの事項については引き続き検討されるようあわせて要望する。」、このように述べておりますですね。これは歴史的見地と一致するものだと思うんですけれども、答申の残った部分のいろいろな点について、今後ほどのように実現をしていくおつもりなのか、その姿勢をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/200
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201・持永和見
○政府委員(持永和見君) おっしゃいましたように、今回御提案申し上げている法律改正事項以外の問題について、身体障害者福祉審議会の方からいろいろ御提言をいただいているのは事実でございまして、それについては長期的な視野に立った検討を急がなければならないと思っております。
具体的に、引き続き検討を要する事項として私ども認識しておりますものとしては、身体障害者の範囲の問題、先ほど来いろいろ御議論が出ておりました内臓の機能障害に係る障害と疾病の概念整理の問題でございますとか、あるいは施設対策といたしまして、今回の法律改正では更生施設の統合と申しますか、更正施設の見直しを行っておりますが、その他の施設についても身体障害者福祉審議会では触れられております。これについては今後の課題として残しておりますので、こういった問題でございますとか、あるいは言語療法士、義肢装具適合士といったような最近の補装具の、あるいはそういった技術の開発によりまして専門的な分野がふえております。そういった人たちの養成の問題、資格制度の問題、あるいは「更生」という用語の再検討の問題といったような問題がいろいろと残っております。こういう問題につきましては、引き続き身体障害者福祉審議会を必要の都度開いていただいてそこでも検討をしていただくし、また、事務的に私どもの方としてやらなければならないことにつきましては、内部といたしまして積極的に検討を積み重ね、推進に努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/201
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202・前島英三郎
○前島英三郎君 きょうは特に「更生」という言葉、文言につきましては、大臣は今ぴたりとする言葉があればと、こういう表現もお答えの中にありましたけれども、特に「更生」という言葉については、私も代表質問でも検討するようにお願いをしたところでもございました。論議の重複は避けたいと思うんですが、しかし世界行動計画との関連で理念、概念についてただしておきたいと思うんです。
まず、時間経過を振り返ってみますと、身障害の論議が進んでおりましたころは世界行動計画はまだ第一次草案の段階であったと思うんです。ここで示された新しい定義、概念というのは、身障害の答申には反映されていなかったと思うんですね。あるいは時間経過的に反映され得なかったはずだと思うんです。身障害の答申のレベルが世界行動計画より劣るというわけじゃありませんが、世界行動計画は、いわばこの分野における最高レベルの国際的合意でありますから、答申及びその答申に基づく制度改善について、改めて世界行動計画に照らしてどうなのか、詳しく吟味する必要がこれからあると私は思うんです。定義や概念を整理する必要性、さらにまた施策として実行すべき課題、そしてさらに法制度を見直す必要性ですね、世界行動計画を検討することによって、こうした点が浮き彫りになってくると思うんです。そうすれば第一条の表現につきまして、この「更生」という表現につきましても、おのずからより適切なものが導き出されてくるに違いない、こう私は思います。
特に、世界行動計画を特徴づけている点は、従来リハビリテーションの概念をどんどん広げて、何でもこの中に盛り込もうとしてきたのに対しまして、リハビリテーションと機会の平等化というのを二つに並び立つ概念に変わってきているという方向であります。定義も、現状分析も、各レベルでの行動計画でも、それぞれリハビリテーションと機会の平等化との節目節目を設けまして記述しておりまして、何が問題でだれが何をなすべきか、極めてはっきりと理解できるようになってきております。この二つの概念について、簡単に言いますと、障害者本人の体に直接属する部分がリハビリテーションでありまして、本人に直接属さない、周りの方を改善していくのが機会の平等化だと、こういうことだと思うんです。
この委員会におきましても、故園田元厚生大臣は、障害者を社会に合わせるのではなく、社会を障害者が参加できるように変えなければならないとしばしば言っておられましたけれども、いわばそのことを概念として明確にしたと私は評価しているところであります。厳密な議論は今後機会のあるごとにやらせてもらうつもりですけれども、大筋としては、この世界行動計画の哲学につきまして、やはり今後も検討の中にあるいは福祉を次のステップヘ送り込むためにも、厚生省としてどういうお気持ちを抱いておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/202
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203・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘のとおり、世界行動計画が策定されましたのは五十七年の十二月でございます。身体障害者福祉審議会からの答申を私どもが受けましたのは五十七年の三月でございますから、時間的には、先生の御指摘のとおり世界行動計画が策定される前にこの身体障害者の審議会の答申がございました。ただ、我が国政府といたしましては、その前に五十七年の三月に障害者対策に関する長期計画というのを策定しておりまして、国際障害者年以降の十年間の長期計画の基本的な要綱をつくっておるところでございまして、今その長期計画によりまして、いろいろ諸施策を進めているというところでございます。
この国際障害者自体の中で、再度中間年で点検評価する、施策の点検評価もございます。また、ポスト国際障害者年をどうするかといったような問題もございますが、こういった点につきましては、御指摘のような世界行動計画というものを十分踏まえまして、この問題について再点検、あるいは評価、施策の見直し、そういったものをやっていかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/203
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204・前島英三郎
○前島英三郎君 ちょっと中身につきまして司っていきますけれども、身体障害者の範囲について、国際的には我が国のような制限列挙方式をとっている例というのは非常に少ないんですね。審議会の答申でもその辺再検討を促していると思うんですけれども、制限列挙方式をしている理由というのは厚生省としてはどういう理由からでしょうか。
また、この方式を改めるお考えがあるかどうか、その辺伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/204
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205・持永和見
○政府委員(持永和見君) 身障法の制限列挙方式でございますが、先ほどもちょっと御議論がございましたけれども、法律の制定当初のいろんな事情がございまして、その当時の医療技術の事情、あるいは財政の事情、そういったものもございまして、率直に申し上げて制限列挙方式というのを我が国の身障法はとったものというふうに理解しております。確かに身体障害者福祉審議会の答申でも、適当な方法を検討する必要があるだろうということが指摘されておりますので、障害の多様化、複雑化、そういったものに対応して、この方法については検討の必要があるかと思いますが、今回の法律改正におきましては、御案内のとおり、新たな政令によって身体障害者の範囲を定めるという規定を設けておりますので、そういった規定の運用につきまして幅広く運用を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/205
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206・前島英三郎
○前島英三郎君 やはりこれも、弾力的方向を模索すべきだと思いますね。制限列挙方式のために法対象とならない人々の多くは、縦割り行政の境界上にありまして、施策の谷間であったり、施策が一貫性を欠いたりして、自立の道を歩めずにいるというケースも結構あるんです。福祉施策は両一的であってはならず、個々のニーズにそれぞれに対応していくべきものであるというのは言うまでもないことなんですけれども、法の対象か対象外かという形で一線を引いてしまいますと、やっぱり谷間に落ちてしまうという人たちが大変多くなると思うんです。この点について、やっぱり基本認識をしっかりと厚生省で持っていただきたいと思います。
答申は、「長期にわたる身体障害を有し、かつ、日常生活活動に相当程度の制限を受ける者」を身体障害者の基本的要件としております。ところが、法別表になりますと、「長期にわたる」ではなくて、「永続するもの」となっておりまして、この違いは、先ほど来の答弁では、長期的なものも永続的なものも中身は同じなんだというようなお答えだったと思うんですけれども、本来、やっぱり長期にわたるということであるべきではないかというふうに思うんですね。ですから、更生という意味がこういう意味だからいいじゃありませんか、「永続」というのは「長期」ということと同じなんですと言葉でやってしまいますと、それならばいっそわかりやすく、画一的に長期にわたると、こういうぐあいに文言を改めても差しさわりはないというふうに思うんですけれども、その辺はいががでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/206
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207・持永和見
○政府委員(持永和見君) 「永続する」という法律の表現でございますが、これは先ほどもお答え申し上げましたとおり、先生御案内のとおり、身障法自体の中に、十六条の第二項第一号というのがございまして、障害の変化を予定したような規定が設けられておりますから、永続というのは永久にという意味ではないというふうに理解をされるわけでございまして、私どもといたしましては、「長期にわたる」という趣旨と同じ趣旨だというふうに理解をしておりますが、なお、そういった御意見もございます。今後とも身障法の見直しというのも私どもとして検討していかなきゃならぬというふうなスタンスを持っておりますので、そういった言葉の適切な使い方についても、さらに十分検討をさしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/207
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208・前島英三郎
○前島英三郎君 難病患者の方々から、身障福祉法の対象に含めてほしいという要望を何度もいただいております。きょうもその辺も議論されました。難病といいましてもいろいろ種類がありまして、今日本では四十ぐらい難病があるということですが、難病というくくり方で一括してどうするということはなかなか困難だと思うんですけれども、また、難病団体の皆さんも、現在の法体系のもとで一括して対象にせよと言ってはおられないわけですね。今回、特に。重点項目として、消化器脱落症候群の患者を対象に含めてほしいという要望をいただいておりますが、この方々は、人工臓器の造設者の方々と類似している面が大変ございます。私からもぜひこの辺は前向きに検討をしていただくよう、政令で定めるということでありますから、要望しておきたいと思います。
さて、この難病の皆さんは、いわば縦割り行政の境界上におられる方々でございます、これからだんだん高齢化社会を迎える、健康な人の高齢化社会だけでなくて、障害を持つ人々も高齢化社会を迎えるという問題も含めておりますので、もう一つ私はちょっと新たな提案をしたいと思います。
答申は、「身体障害者福祉対策を進めるための基本的方向」の結びのところで、「身体に障害のある老人については、基本的には老人保健福祉の観点から対応することが妥当と考えるが、身体障害者福祉施策の立場からも緊密な連携をとりつつ対処する必要がある」と、こういうぐあいに述べております。この指摘に対して厚生省はどのように対応しておられるのか、まず伺いたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/208
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209・持永和見
○政府委員(持永和見君) 体に障害を持つお年寄りの方々、いわゆる身体障害者福祉法の身体障害者としての対象でもありますと同時に、また、老人福祉法などの対象の方でもあるわけでございます。こういった方々につきましては、老人福祉対策、それから身障福祉対策、あるいは老人保健対策、そういった面からのアプローチが必要だというふうに考えております。
まず、老人福祉対策としては、特別養護老人ホーム、あるいは目の見えない年寄りの方につきましては盲老人ホーム等の施設福祉対策がございます。また、家庭奉仕員の派遣、デイ・サービス事業の実施等の在宅福祉対策をやっております。この老人福祉対策の中には、実は補装具あるいは更生医療、そういったものがございますので、そういったことが必要であるとすれば、身体障害者福祉対策として補装具の支給とか更生医療の給付を行っております。また、老人保健対策といたしましては、六十五歳以上の方々に医療の給付あるいは機能回復訓練、こういった訪問指導を行っておりまして、それぞれの施策で必要な部分について老人福祉対策を中心にして行っておりますが、老人福祉対策で足りない、むしろ身障福祉対策にあって老人福祉対策にないような場合には、身障福祉対策としてそれを実施しているというようなことで、その辺は全体として漏れがないように注意いたしておるつもりでございますが、今後ともそういうことで努力をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/209
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210・前島英三郎
○前島英三郎君 若い障害者と体に障害を持った老人とでは、そのニーズにさまざまな面で相違がございますし、もちろん年齢によってすっぱり割り切れるわけじゃありませんが、例えば車いす一つをとりましても、私たちの場合は、自分で自由に動き回れることが大切でありますけれども、お年寄りの場合は、押してもらうことを主眼にして車いすを必要とするという方も多くおられると思います。しかし、お年寄りが身障手帳をもらって車いすの給付を受けようとしますと、身障福祉法ではそうした面は考慮に入っておりませんので、手帳がもらえるかどうか、あるいは車いすの給付が受けられるかどうか現状ではわからないわけですね。あるいは給付の対象となりましても、若者と同じ基準で扱われてしまうと思うんです。私のところに持ち込まれるケースでは、例えば電動車いすか手動式の車いすかという場合、手が動くんだから手動でいいんだと言われて困る、こういうのが何件かありました。七十歳過ぎてリハビリテーションをして体力をつけるよりも、正直言って、残った人生を電動車いすで社会参加をしていきたいという気持ちを根底には持っているわけですね。このあたりはやっぱり老人の特殊性を考えていくことが大切だというふうにも思うんです。
先ほどいろいろお答えいただいたわけですが、老人福祉で対象にしている要援護老人対策と身障福祉で対象にしている障害を持つ老人対策と、この両者の間に何となく大きなすき間ができているのではないかというふうにも思うんです。こうしたすき間をなくす意味で、そしてこれから我々自身もそうですけれども、身障老人のニーズに的確に対処するために、従来の施策に加えて障害老人対策というものを体系化する必要があるというふうに私は思うんですが、ある程度時間をかけた検討が必要だと思うんですけれども、厚生省の中では、同じ社会局の所管でありますから、縦割り行政の壁もこれはないと思うんですね。頑張り屋大臣ですから、ひとつ前向きにこの辺の検討をしていただけるかどうか、お伺いしたいと思うんですが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/210
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211・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 大変貴重な御提案でございますので、障害者老人対策についてどういうことをこれから進めていかなければならないか、これらの問題を検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/211
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212・前島英三郎
○前島英三郎君 時間も残り少ないものですから、はしょって質問をしていきたいと思うんですけれども、実は、身体障害者福祉法は、法別表で「身体障害の範囲」を示しておりますけれども、その範囲に含まれる者について、障害の程度について特に問題としておりません。このことは、自立した生活を営む上で、障害のために生ずるもろもろの困難に対して、その障害の程度によってではなく、個々の必要に対応して手だてを講ずるという法の目的を反映していると思います。ところが、法の施行規則によって障害程度等級が決められているために、個々の必要性に対応するという法本来のあり方がゆがめられまして、個別のニードが等級という一般的なランクの中に埋没させられてしまいまして、施策がニードに対応しないという結果を生んでいると思うんです。この法律の制度下において、一定の等級を要件とするものはどんなものがございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/212
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213・持永和見
○政府委員(持永和見君) 身体障害者福祉法で障害の程度についての等級を設けておりますが、法律の施行規則による障害等級は、身体障害者の更生援護、あるいは障害の程度を判断した場合の後の措置の公平、そういった面からの参考資料という形で設けられたものでございまして、例えば授産施設、授産施設は先生御承知のとおり、重度の授産施設と一般の授産施設とございます。そういった授産施設の入所措置に当たりましては、一、二級の方は重度の授産施設へ入所しているというような振り分けをしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/213
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214・前島英三郎
○前島英三郎君 今いろいろ別表など照らし合わせていきますと、四十以上の等級表もしくは障害者の範囲の規定が存在しておりますけれども、これらが適正なものかどうか疑わしい部分もあるようにも思うんですね。これらについて、やっぱり点検、見直しということを、先ほどの論議ではこれから検討してというんですが、しかし、かなり数年前から当委員会でも検討検討という答弁がただ繰り返されているにすぎないような気がするんですけれども、答申の中でも、例えば、特に緊張性アテトーゼ型脳性マヒ等の全身性障害に関して日常生活能力を加味した方法を適用をすることについて、もう今すぐこれは実行に移しなさいと、こういうぐあいに言っているんですから、検討をまつというだけの答弁では私は許されないような気がするんです。やはりもうそろそろ形の中で、厚生省としてこの辺はこうするんだという、そういう時期だというふうにも思うんですが、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/214
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215・持永和見
○政府委員(持永和見君) 先生おっしゃったとおりでございます。身体障害者福祉基本問題検討委員会の御指摘も先生御指摘になったようなことでございますので、この等級表については現在審査部会で具体的にその検討をいただいておりますので、私ども、さらに検討を急がしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/215
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216・前島英三郎
○前島英三郎君 もう長い間私も検討という言葉を聞いておりまして、やはり私は実践こそ大切だと思いますし、また、もうそういう時期で、新しい法改正の中ではその辺も一緒にプログラミングしていくことが重要だと思いますから、さらに検討をまつのでなく、いよいよ実践していくというぐらいの強い意見をこの席でお述べいただきたいと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/216
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217・持永和見
○政府委員(持永和見君) 次の法律改正の課題として、十分対処していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/217
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218・前島英三郎
○前島英三郎君 さて、また中身の問題ですが、各都道府県における更生相談所の強化というようなことがうたわれておりますが、答申並びに報告書は、いずれも今後のあるべき方向として、総合リハビリテーションセンターへの統合といった方向を打ち出しております。同一施設内に統合するしないは別にしましても、関連サービスが有機的に連携して、適正かつ効果的な運営が図られることが必要であると思います。現在そうした形になっているところはどのくらいございますか。余りないんじゃないかと思いますし、この点を中心に、更生相談所の現況というものをかいつまんでお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/218
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219・持永和見
○政府委員(持永和見君) 御指摘の、全国の更生相談所で病院とかあるいは更生施設、そういったものを併設することによって総合的なリハビリテーションの機能を果たしている、そして総合リハビリテーションの一環として運営されている更生相談所は、現在全国十三カ所ございます。
この更生相談所につきましては、先生も御承知のとおり、身体障害者福祉審議会からも、その機能の強化あるいは活性化を図るべきだという御提言をいただいておりますし、また、基本問題検討委員会からも、更生相談所がリハビリテーションの中枢機関になるべきだと、こういうような意見をいただいておるところでございまして、そういった総合リハビリテーションセンターとしての機能が果たされるように、今回もこの法律改正で更生相談所の機能の強化、活性化を図るということを目的として法律改正をお願いしているところでございますが、今後とも、私どもそういう立場で各都道府県に指導をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/219
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220・前島英三郎
○前島英三郎君 そういう意味では、更生相談所の充実を図るには、やっぱり規定を明確にしたり施設を立派にしても、そこに人材がなければ機能は発揮されないと思うんです。また、マンパワーの確保というのは一朝一夕にできないものでございますし、例えば理学療法士、作業療法士が満ち足りたというふうなことをおっしゃいましたが、そこにはまたやっぱり十数年の長い歴史ということを感じできますと、生き急ぎをしている障害を持った人々の問題は、きょうからあすへというような気概がやっぱり厚生省になければならないというふうに思います。
ここ数年、アメリカではCILにつきまして多くの情報がもたらされまして、日米の人的交流も盛んでございます。そして日本版のCIL運動も各地に育ちつつございまして、これは大変注目していいと思います。また、行政は、そこから多くのことを学ぶとともに、適切な援助をすべきだというふうに思います。そのCILの特色は、地域での自立生活、独立生活を障害者みずからの手で実現していくために、包括的に援助するという点にあるんですけれども、その中にピァカウンセリングというのがありまして、これはつまり同志カウンセリングとでも言いましょうか、障害者が障害者の相談に乗るという仕組みなんですね。日本でも身体障害者相談員を障害者自身にやっていただいている例があるんですけれども、今後は更生相談所においてもやはり障害者自身の人材を登用していく必要が、実は手っ取り早いマンパワーの育成だというふうに私思うんですけれども、この辺も厚生省としてぜひこの法改正を機に積極的に取り組むことが必要だと思うんですが、そのお気持ちについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/220
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221・持永和見
○政府委員(持永和見君) 更生相談所に勤めていただく方につきましては、それなりの資格要件が必要であることが前提でございますけれども、先生御指摘のように、身体障害者の更生相談所において、身体障害者の方々が相談員をしていただくということは、お互いのために大変必要かつ大事なことであると思いますので、そういった意味で、積極的に各都道府県の更生相談所において、そういった要件に該当する方がおられれば積極的に活用あるいは登用するように、私どもとして指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/221
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222・前島英三郎
○前島英三郎君 いろいろきょうお尋ねしたいことは同僚委員から個別にこの法の中身について触れていただきましたが、やっぱり広い意味での個個の障害別の対策、あるいは広い意味での精神障害者福祉対策との関係、そのほかいろいろ論議したいことがあったんですけれども、いかんせんあと数分しか時間がありません。ただ一点、最後に申し上げておきたい点がございます。
それは、行政は法律に基づいて行われますが、しかしより正しくは、現実のニーズに合わせて法律は運用されなければならないという点でございます。例えば、全国各地に障害者が自主的につくっている共同作業所がたくさんございます。公的な助成、援助を求めているんですが、一つは規模が小さい、対象にならない、あるいは地域の障害者が集まりますから、身体障害者ばかりじゃなくて知恵おくれの人も一緒にやっている。そういうところは児童家庭局と社会局との一つの壁があってどうにもならないとか、いろいろな形が出ておりますが、まあ行政の方は別々ですから一緒ではだめだといったのが大体結論のようでございます。しかし、よく考えますと、二十人、三十人という規模の制約やあるいは障害の種別による垣根というものは、制度にとっては必要であっても、地域社会にとっては余りこれは必要じゃないことなんですね。それぞれの違いがあってこれは当然だと思うんです。制度はその地域の実情に合わせて活用されるべきでありまして、制度に合わせて地域の実情を無視しますというのは発想としても逆であると言わなければならないと思います。具体的に、いろいろ議論はございますけれども、やっぱり今後はそうした町の中の小さな作業所、こうしたものに思い切って厚生省が踏み込んでいただく。
労働省にこの見解をただしますと、やっぱり雇用関係が結ばれていないとか、あるいはまた厚生省の中でも、今は五十人以下はなかなか法対象と認めない、法律が先行していますからというようなことになりますので、我々も一つの法改正には、更生という文字をめぐっていろいろと議論が出てくるのは、やはり都合のいいときにはその法律が盾になってしまう場合があって、なかなか実情の中で障害者対策というのが推進されていかないということだと思うんです。私はそういう意味では、十年一区切りとして、この福祉法がまた近い将来に第二歩、第三歩という新しい前進をしていただくように、前向きに大臣の御努力をお願いするとともに、午前中、もし更生という文言にかわってぴたりという言葉があったら、そのぴたりを早く知りたいというようなお言葉がありましたが、ぴたりという言葉が必要であるとするならば、私は更生という文言を消すことか、あるいは自立という言葉に置きかえることかという二点であろうというふうにさえも思っております。そういう意味では、今後これを一つのステップとして、さらなる厚生大臣の御決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/222
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223・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 私は、記憶するんですけれども、前に、前島さんが国会においでになって、衛視の方が背中に背負って差し上げようというのをお断りになって、はってでも本会議場まで行くということで、今国会に身障者の車いすがどこにでも動けるような設備ができ、また、今駅に行きましても、いろんな公的な施設、病院に行きましても、身障者の車が行けるように、どんどんどんどん改善されてきておりますが、これこそまさに完全参加と平等というものの基本的な精神だろうと思います。
今具体的にお話しのありました、小さな施設で心身障害者の皆さんが授産施設等をやっていらっしゃる、これも非常に大事なことで、私も知っているのがありまして、ところが厚生省に聞きましたところ、現在の法律制度の中では、何かお手伝いできることが困難なようなものですから、そういうものも今後検討課題にしていかなければなりませんが、その前にでも、そんなら一般会計から以外のもので何かお手伝いできるものはないかというような研究もしておるのでありますが、身障者対策というものは、まさに身障者の皆さん方がみずから完全参加と平等を目指して絶えざる努力をされるし、また、我々政治は、まさに園田元厚生大臣がさきにもおっしゃったというように、そういう自助努力、自立努力、そういうものの客観条件をつくるためにできる限りのお手伝いをしていくべきであると、先生の方からまさに自立という言葉が出てきたことを私は非常に貴重なものとして受け取り、今後身障対策はそういう精神で努力を続けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/223
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224・石本茂
○委員長(石本茂君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/224
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225・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、討論はないものと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/225
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226・石本茂
○委員長(石本茂君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、浜本君から発言を求められておりますので、これを許します。浜本君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/226
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227・浜本万三
○浜本万三君 私は、ただいま可決されました身体障害者福祉法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
身体障害者福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、格段の努力を払うべきである。
一、身体障害者福祉対策の実施に当たっては、各分野の施策の有機的連携を密にし、関係各省庁における連絡調整に特に留意の上、総合的かつ計画的な施策を講じるとともに、国、地方公共団体を通じ身体障害者の「完全参加と平等」が実現するよう努めること。
二、ノーマライゼーションの理念に基づき「更生」の規定についての見直しを検討するとともに、身体障害者の家庭や地域での自立を可能とするため、在宅福祉対策の充実などの条件整備に努めること。
三、身体障害者更生援護施設に関する費用徴収の実施に当たっては、施設の性格、身体障害者の実情等を勘案しつつ、過大な負担とならないよう十分配慮すること。
四、身体障害者のリハビリテーションを推進するため、医療から社会復帰まで一貫した体制の整備に努めること。
右決議する。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/227
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228・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいま浜本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/228
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229・石本茂
○委員長(石本茂君) 全会一致と認めます。よって、浜本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、渡部厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/229
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230・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/230
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231・石本茂
○委員長(石本茂君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X00919840424/231
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232・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。
午後四時八分散会
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