1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年六月二十一日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月二十四日
辞任 補欠選任
前島英三郎君 下村 泰君
四月二十五日
辞任 補欠選任
久保田真苗君 和田 静夫君
五月十日
辞任 補欠選任
村上 正邦君 井上 裕君
五月十一日
辞任 補欠選任
井上 裕君 村上 正邦君
五月十四日
辞任 補欠選任
大浜 方栄君 園田 清充君
五月十六日
辞任 補欠選任
園田 清充君 大浜 方栄君
関口 恵造君 山内 一郎君
村上 正邦君 長田 裕二君
五月十八日
辞任 補欠選任
長田 裕二君 村上 正邦君
五月十九日
辞任 補欠選任
山内 一郎君 関口 恵造君
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
中野 鉄造君
委 員
大浜 方栄君
金丸 三郎君
斎藤 十朗君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
村上 正邦君
森下 泰君
糸久八重子君
和田 静夫君
中西 珠子君
山中 郁子君
藤井 恒男君
下村 泰君
委員以外の議員
発 議 者 目黒今朝次郎君
衆議院議員
修正案提出者 愛知 和男君
国務大臣
労 働 大 臣 坂本三十次君
政府委員
社会保険庁医療
保険部長 坂本 龍彦君
労働大臣官房会
計課長 若林 之矩君
労働大臣官房審
議官 野見山眞之君
労働省労働基準
局長 望月 三郎君
労働省職業安定
局長 加藤 孝君
労働省職業安定
局高齢者対策部
長 守屋 孝一君
労働省職業訓練
局長 宮川 知雄君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
説明員
警察庁刑事局捜
査第二課長 上野 浩靖君
国税庁直税部法
人税課長 谷川 英夫君
文部省管理局企
画調整課長 福田 昭昌君
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本日の会議に付した案件
○林業労働法案(目黒今朝次郎君外一名発議)
○雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出・衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/0
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001・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る四月二十五日、前島英三郎君及び久保田真苗君が委員を辞任され、その補欠として下村泰君及び和田静夫君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/1
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002・石本茂
○委員長(石本茂君) 林業労働法案を議題といたします。
まず、発議者目黒今朝次郎君から趣旨説明を聴取いたします。目黒今朝次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/2
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003・目黒今朝次郎
○委員以外の議員(目黒今朝次郎君) ただいま議題となりました林業労働法案につきまして、日本社会党を代表して、その提案理由及び内容の概要をご説明申し上げます。
我が国の森林は、国土面積の七〇%に当たる約二千五百万ヘクタールを占めておりますが、このうち人工林の面積は約一千万ヘクタールに及び、その蓄積は十億立方メートルと全森林蓄積の四割を超えるまでに達しております。
この豊かな森林は、木材などを生産し、建設資材、家具、紙などの形で国民の生活必需物資の供給を担う等の経済的機能を果たしているほか、国土保全、水資源の涵養、大気の浄化、自然環境保全、保健休養等の多面的な公益的機能など、はかり知れない重要な役割を果たしております。ことに国土開発に伴う山地災害の多発化、水需要の増大さらには都市への人口集中などによる生活環境の悪化等から、森林の公益的機能の充実が一層重要となっております。
しかしながら、森林、林業を取り巻く状況は近年非常に厳しく、危機的状態を強めております。すなわち、木材需要の七〇%に及ぶ外材輸入と住宅建設の大幅な落ち込み等による国産材需要の不振、山村の過疎化の進行による林業労働者の減少等により、森林資源の保全、管理機能は著しく低下しております。このため、造林の育成に不可欠の除伐、間伐の立ちおくれ、脆弱な森林の増加さらには山地崩壊、水害などの国土災害の危険性の増大、水資源の不足といった状況を現出させておるのであります。
二十一世紀へ向けて人類が避けて通れない課題は、資源と環境だと言われます。我が国においては、まさに林業こそが森林の育成を通してこの二つの課題にこたえ得るのであります。そして、この森林の育成に不可欠なのは、その生産の担い手である林業労働者の安定的維持と確保であります。
ところで、林業労働者とりわけ民間林業労働者の置かれている労働の実態は、極めて憂慮すべきものとなっております。すなわち、民間林業労働者は季節的、短期的雇用が多いため不安定であり、健康保険、厚生年金等被用者保険の適用はごく少数であり、賃金は他産業に比べて低い上に、出来高払い制のため労働強化を強いられ、振動病の罹病者は毎年増加するという状況にあります。また、労働基準法さえ適用されないなど、まさに劣悪過酷な労働条件のもとで重筋労働に従事しております。
このような民間林業労働者の労働環境のもとでは、新規学卒者や若年労働者の就労は皆無に等しく、労働力の高齢化、女子化が進んでおり、このまま推移するならば我が国の森林、林業の危機的状況は一層深刻なものとなることは明白であります。
世界的な森林の減少による環境変化が懸念されている中で、今後我が国が森林の管理を適正に実行し、国産材の供給能力を飛躍的に向上させ、国産材時代への展望を切り開いていくためには、何といってもその生産労働力の確保対策が重要であります。
しかるに、現行労働関係の諸法律やその運用のみでは、林業労働の特質からくる諸問題は解決し得ないところであります。したがって、民間林業労働者の雇用安定、労働条件の改善、安全衛生、福祉面での施策の整備充実等のためには、林業労働の特質を踏まえた新たな立法が必要であります。
これが、日本社会党が林業労働法案を提案する理由であります。
次に、法律案の主なる内容について御説明申し上げます。
第一に、この法律は、林業労働者の雇用の安定、労働条件の改善、安全衛生の確保、福祉の増進等に関する施策を講ずることにより、林業労働者の地位の向上を図るとともに、山村地域の振興に寄与することを目的としております。
第二は、林業労働計画の策定であります。すなわち、労働大臣は、本法の目的を達成するための基本となるべき事項について、五年ごとに全国林業労働計画を策定し、都道府県知事は、全国林業労働計画に即して、毎年、市町村長が策定した市町村林業労働計画に基づいて、都道府県林業労働計画を策定することとしております。市町村長が策定する市町村林業労働計画では、林業の事業の量、林業労働者の雇用の安定及び福祉の増進に関し必要な事項について規定し、山村経済の発展のための林業の振興及び林業労働者の雇用の開発について配慮することとしております。
第三に、専業労働者とは常用労働者以外の林業労働者で、一年間に通常九十日以上雇用されるものをいい、兼業労働者とは、常用労働者及び専業労働者以外の林業労働者で、時季を定めて一年間に通常三十日以上雇用されるものをいうこととしておりますが、公共職業安定所長は、林業労働者について、専業労働者及び兼業労働者別に林業労働者登録簿に登録するとともに、林業事業体の届け出に基づき、林業事業体登録簿を作成することとしております。また、林業事業体は、公共職業安定所の紹介を受けて雇い入れた者でなければ、林業労働者として林業の業務に使用してはならないものとしております。
第四に、林業労働者に対して、一年間のうち最低限の雇用が確保されなかった場合及び本年度雇用実績が前年度雇用実績を下回った場合においては、雇用の安定を図るため、雇用保障手当を支給することとしております。雇用保障手当の費用については、一定規模以上の森林所有者、林業事業体及び登録林業労働者から納付金を徴収するとともに、国が費用の三分の一を補助することとしております。
第五に、振動機械を使用する登録林業労働者等について、定期及び特殊の健康診断を義務づけるとともに、振動障害を予防するため、出来高払い制の禁止、振動機械の操作時間の規制等を行うこととしております。また、振動障害者の福祉増進のため、国は療養施設等の設置、軽快者の雇用安定のための助成、援助、職業転換希望者に対する職業訓練等について、それぞれ適切な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。
その他、政府は、労働保険及び社会保険制度について検討を加え、その結果に基づき速やかに必要な措置を講ずるものとし、また、労働基準法の労働時間、休憩及び休日に関する規定を、林業労働者にも適用するために、労働基準法の一部改正を行うことのほか、監督、罰則等について所要の規定を設けることとしております。
以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/3
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004・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で趣旨説明は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/4
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005・石本茂
○委員長(石本茂君) 次に、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。坂本労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/5
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006・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
ここ数年、雇用問題をめぐる環境は大きく変わりつつあります。すなわち、高齢化社会の進展に伴い、労働人口の高齢化が急速に進んでおり、また、婦人の職場進出も着実に増加しております。また、雇用の場が第二次産業よりもサービス業において拡大するなどのいわゆるサービス経済化が進んできております。さらに、マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新、素材産業などに見られるような産業構造の転換等が進みつつあります。しかもこのような構造的な変化は今後とも一層進展することが見込まれる情勢となってきております。
政府といたしましては、このような変化に的確に対応し、雇用の安定が図られるよう各般の施策を積極的に推進していくことを基本方針としており、特に雇用保険制度において、その効率的な運営を確保して、失業の未然防止と離職者の再就職の促進を図ることが極めて重要であると考えております。
ところで、このような情勢の変化を背景として、最近における雇用保険の受給者数は年ごとに大幅な増加傾向を示すとともに、高年齢者を中心として再就職をする受給者の割合も著しく減少しており、これに伴い、雇用保険財政も急速に悪化しつつあります。このような情勢にかんがみ、雇用保険制度が創設されて十年を経た今日において、これらの構造的な変化に的確に対応し得るものとするようその見直しが必要となってまいりました。
このため、中央職業安定審議会の雇用保険部会に検討をお願いしておりましたところ、昨年末に、今後における産業構造や雇用構造の変化に対応しながら失業者の生活の安定を図り、再就職を促進すると同時に労使の負担をできる限りふやさないことにも配慮した現行制度の改善の方向が示されたところであります。
政府といたしましては、この報告書において示された方向及び中央職業安定審議会における論議を踏まえつつ、この法律案を作成し、関係審議会にお諮りした上、提出した次第であります。
次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
第一は、雇用保険法の一部改正であります。
その一は、失業給付の額の算定の基礎を変更することであります。現行の失業給付の額は、受給者が失業する前の毎月の賃金に加えて、いわゆる賞与等をも含んだ総賃金を基礎として算定されております。そのため給付の額が毎月の手取り賃金や再就職時の賃金に比べて割高になっていること、さらに、賞与等の額は、業種、規模による格差が大きく、また、企業の業績によっても変動があることなどの問題があります。これらの点を総合的に考慮して、賞与等を除いて毎月の賃金を基礎として失業給付の額を算定するよう改めることといたしております。
ただし、賃金の低い受給者層を中心に給付額の最低保障額と給付率の引き上げを図ることにより、この改正による影響を少なくするよう配慮しているところであります。
その二は、給付日数を変更することであります。現行の失業給付の給付日数は、主として受給者の年齢に応じて定められており、比較的短期間で離職する高年齢者を中心として、給付と負担の不均衡が拡大しております。この点を考慮して、給付日数を年齢に応じて定めるという現行の原則は維持しつつも、離職前の勤続期間にも応じて定めることといたしております。
その三は、給付制限期間を変更することであります。現在、雇用保険の受給者のうち自分の都合によって離職した人たちがかなりの割合に上っております。これらの人たちに離職を決意する際の慎重な判断を期待し、また、離職後の再就職意欲を高めることにも配慮して、給付制限期間を延長することといたしております。
その四は、高年齢の被保険者の取り扱いを変更することであります。六十五歳以上の高年齢者は一般に労働市場からの引退過程にあり、その就業希望も多様化しているほか、これらの人たちが通常雇用につく機会も極端に少なくなっております。このような事情にかんがみ、六十五歳以上で離職した人たちに対しては、基本手当を支給するかわりに一時金を支給する制度を創設するとともに、六十五歳以降に新たに就職した人たちは、被保険者としないことといたしております。
その五は、受給者ができる限り早く就職することを積極的に奨励しようとすることであります。このため、早期に再就職した受給者には、一定の手当を支給する制度を創設することといたしております。
その六は、日雇い労働者に対する給付の改善を図ることであります。一般被保険者についての失業給付の額を引き上げることに伴い、日雇い労働者の給付金を、現行の三段階の上にさらに一段階を設け、四段階制とすることといたしております。
第二は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。
日雇い労働者の給付金を四段階制にすることに伴い、印紙保険料の額を現行の三段階制から四段階制とすることといたしております。
第三は、船員保険法の一部改正であります。
その一は、船員保険についても、雇用保険と同様の趣旨から、給付日数を離職前の勤続期間にも応じて定めること、六十歳以上で離職した人たちに対して一時金を支給する制度を創設すること、早期に再就職した受給者に一定の手当を支給する制度を創設することなどであります。
その二は、最近における船員保険財政の状況等にかんがみ、失業部門の保険料率を千分の五引き上げるとともに、千分の二を増減した率の範囲内において、厚生大臣がこれを変更することができることとすることなどであります。
以上、雇用保険法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げました。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/6
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007・石本茂
○委員長(石本茂君) 次に、本案につきましては衆議院において修正議決されておりますので、その修正部分について、修正案提出者衆議院議員愛知和男君から説明を聴取いたします。愛知和男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/7
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008・愛知和男
○衆議院議員(愛知和男君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容をご説明申し上げます。
修正の要旨は、
第一に、基本手当日額表の百分の八十以内で百分の六十を超える率を乗ずる賃金日額の範囲をさらに拡大し、三千二百十円以上七千七百五十円以下とするものとすること。
第二に、特定不況業種または特定不況地域離職者等で就職が困難な受給資格者であって、改正に伴い所定給付日数が減少するものについては、改正前の所定給付日数に達するまでその者の給付日数を延長することができるものとすること。
第三に、六十五歳定年等により離職した高年齢受給資格者については、特例として基本手当等を支給するものとすること。
第四に、六十五歳に達した日以後に雇用される者は、政令で定める日までに、公共職業安定所長の認可を受けたときは、高年齢継続被保険者となることができるものとし、所要の規定を整備するものとすること。
第五に、船員保険の失業部門についても、第二から第四までに準じた修正を行うものとすること。
以上であります。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/8
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009・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/9
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010・浜本万三
○浜本万三君 ただいま趣旨説明のありました雇用保険法の改正につきまして質問をいたします。
まず、私どもの立場を明らかにしておきたいと思います。
今回の雇用保険法の改正につきましては、日本の雇用失業情勢の非常に厳しい中で、労働省は、総額一千三百億円もの給付等の削減を行う案を発表されました。これについて勤労者の皆さんは非常に強い関心を持っておるところでございます。さきに衆議院の審議が終了いたしまして、先ほど修正案が提案されましたように若干の修正が行われたことは、私といたしましては、関係者の努力に対しまして若干の敬意を表したいと思う次第でございます。しかし、その修正も、五十九年度におきまして総額わずか五十三億円程度というものでありまして、極めて不満なものであることは間違いないと思うわけであります。私はそのような立場で以下御質問をさしていただきたいと思います。なお、総括的な御質問をさしていただきまして、詳細にわたりましては、社会党の同僚議員からさらに詳しくお尋ねをさしていただきたいと存じます。
まず第一は、最近の雇用失業情勢と今後の見通し及びその対策についてお尋ねをいたしたいと思います。
まず最初に、基本的な問題について伺いたいと思います。
先ごろ中曽根総理大臣がサミットに出席をされて帰国をされました。このサミットにおきまして、世界的な景気回復が心配されておる中で、先進主要諸国が集まりましていろいろ御相談をなさったようでございますが、殊に欧州におきましては、深刻な失業情勢を背景に雇用創出を図るためのいろんな話が出ておるようでございます。経済政策についてその立場から議論をされて、経済宣言にもその内容が若干うたわれておると思うわけでございます。私は、このサミットそのものは余り評価をしておりませんが、中曽根さんは非常に大きな成果があったという報告をなさっていらっしゃっておられまするし、当然閣議でもその問題についての報告があったものと推察できるわけであります。したがいまして、この際労働大臣から、その論議の内容とか、あるいは経済宣言に基づいて雇用創出のためにどのような具体策をしようとされておるのか明らかにしていただきたいと思うわけであります。特に私がこの質問をいたしますのは、西独の経済相が日本の産業貿易政策に対しまして非常に厳しい批判をしておったという新聞記事を拝見いたしましたので、あえてこの質問をしておるわけでございます。大臣から御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/10
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011・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 今回のサミットでは、景気回復にもかかわらず欧米諸国を中心として失業率が依然高いことにかんがみまして、持続的成長と新たなる雇用の創出という必要性が強調をされました。新たな雇用創出に対する障害を削減するための政策方向について話し合われたということであります。
具体的な政策方向としては、進取の精神に富んだ中小企業を含め需要及び技術変化に対応した産業とサービスの発展を促進をすること、労働市場の効率的な作用を促進すること、職業訓練の改善及び普及を促進すること、就業時間のパターンの柔軟化を促進をすること、老朽化している生産設備及び技術を温存する措置を手控えること等が指摘されたと聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/11
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012・浜本万三
○浜本万三君 我が国の雇用失業の実態というものが欧米先進諸国ほど深刻なものではないということが言われておるわけでございますが、しかし、日本の場合には欧米諸国と多少状況が違いまして、むしろ私は厳しい状況にあるのではないかというふうに思っておる次第でございます。例えば完全失業者の数が漸次ふえておる。中高年齢者を初め女子、若年層など全般にわたる失業率が上昇をしておる、景気回復にもかかわらず求人が低迷しておる、あるいは臨時やパート、家内労働、日雇い、出稼ぎといった不安定な雇用労働者が多数存在をしておる、また、急速な労働力人口の高齢化、あるいはまた産業構造の転換、女子労働者の職場進出、MEを中心とする技術革新に対する労働行政の立ちおくれ、さらには労働省予算及び定員の大幅な削減、また経営者の労働行政に対する拒否的な反応などなど、諸外国とはまた一面違った厳しい状況にあるというふうに思うわけでございます。そういう中で急速に高失業社会が到来するのではないかという心配があるわけでございます。
今後、雇用失業情勢を見通してどのような具体的な対策を労働省は立てられようとしておるのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/12
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013・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 最近の雇用失業情勢という点に限って見てまいりますと、依然として厳しさは残しておりますが、景気の回復を背景に改善の動きが見られつつあるわけでございまして、このところ求人は製造業を中心にいたしまして増加傾向をたどっております。また一方、求職の方は一応ふえてはおりますが、落ちついた動きというようなことになっておりまして、有効求人倍率ということで見ますと、昨年の七月の〇・五八というのを底にいたしまして徐々に改善傾向をたどってまいりまして、ことしの四月には〇・六四倍というところまで回復をいたしております。また、完全失業率は昨年の八月に二・八〇%を記録いたしました。これはこの完全失業統計の始まって以来の高いものでございましたが、ことしの四月には一応二・六一%と、こういうようなところまで下がってきておる、こういう状況でございまして、今後につきましては景気の持続的な拡大を通じまして、この雇用失業情勢も着実に改善をしていくということが一応期待されるという状況にあると考えております。
しかしながら、ただいま先生からも御指摘ございますように、今後、中長期的に見ました場合には、労働市場におきましては本格的な高齢化の進展というものが見込まれるわけでございます。さらにまた女性の職場進出の問題、あるいは三次産業化の、サービス経済化の問題、あるいはまた素材産業等を中心といたしましての産業構造の転換、こういうような各般の労働力の需要供給面での構造変化というものが生じておるわけでございまして、こうした構造変化の中で労働力の需要と供給というもののミスマッチというものが拡大をしていく可能性があるわけでございます。そういう意味におきまして、今後はこうしたミスマッチの解消というものを課題といたしまして取り組みを進めていかなければ、御指摘のございましたような、やがて欧米に見られるようなそういう高齢化、高失業社会というものも人ごとではないというおそれもあるわけでございます。
そういう意味におきまして、私ども第五次雇用対策基本計画という、昨年の十月に政府で閣議決定いたしました昭和六十五年までの基本計画というものを具体的に展開を図っていく、こういうようなことを通じましてこの需給のミスマッチの解消、そうして昭和六十五年度におきまして何とか失業率二%程度、こういうふうな方向を目指しての努力というものを積極的に展開をしていかなければならぬ、こういうことで今いろいろ鋭意努力をしておるところでございます。
この雇用保険法の改正も、失業者の就職促進という面からも一つ大きな意味を持つものであるわけでございます。今後のこういう失業構造の大きな変化というものをしっかりにらんだ積極的な政策をぜひ進めていかなきゃならぬ、こんな基本姿勢でおるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/13
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014・浜本万三
○浜本万三君 お話によりますと、第五次雇用対策基本計画を定めて失業率二%程度におさめるように努力をしたいんだ、こういう話であります。なおその中には、世帯主の失業率を低くする、こういう目標が設定されておるようでありますが、とにかくうまくやりたいんだと、こう申されましても、労働行政は非常に後追いが多いので、具体的な対策は一体どういうことを考えておられるかということがさっぱりわからないわけであります。その点について、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/14
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015・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この第五次雇用対策基本計画でも示されておりますように、やはり一つは高齢化社会の進展に向けての対策の強化ということでございまして、例えば六十歳定年制というものの一般化という問題、あるいはまたさらに、六十歳から六十五歳層の雇用就業の場の拡大ということに対応しまして雇用延長等を進めていくというふうな関係、あるいはまた、高齢者についての再就職あるいは任意就業の場の拡大、こういうようなことなどを高齢者対策としてもひとつ進めていきたい。
あるいはまた、女性の職場進出の問題等につきましても、やはり一定の技能を身につけていないということが、これがまた離転職を増加させる要因にもなりかねない。あるいはまた、労働条件の確保という面でこれがはっきりされていないとそういう離転職を誘う。こういうふうな問題もあるわけでございまして、そういう意味で、こういう女性の職場進出に対応した対策を進めていかなければならぬ。
あるいはまた、技術革新の進展、これがまた雇用の面でいろいろな影響を及ぼしてくるわけでございますので、こういう特にME化を中心とする技術革新の進展に対応いたしました具体的な方策についての対応、例えば職業訓練の問題であるとか、あるいはまたME化をするに当たってのいろんな原則、例えばME化と雇用に関する五原則というものを先般雇用問題政策会議の方から御提言をいただいたわけでございますが、こういったものについての具体化を進めていくというようなことなどでございます。
また、需要と供給の関係の結合を促進していくという関係から、安定機関におけるこういう需給調整機能というものを高める、こういうことで、昭和六十一年度を目途に現在この求人、求職情報というものを、全国的にコンピューターを使って結合を図るような総合的な雇用情報システムというものの開発を今進めておる。
こういうような具体策を現在の段階では進めつつございますが、しかし昭和六十五年度二%というものを達成いたしますためには、さらに各種の対策を拡大していかなきゃならぬだろう、こういうことで考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、今後の雇用対策をさらに積極的に進めるために、現在中央職業安定審議会に雇用対策基本問題小委員会、こういうものを設けまして、労使公益の委員を中心にいたしましてのまた今後の具体策の展開についての御論議を進めていただいておる、こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/15
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016・浜本万三
○浜本万三君 いろいろお話を承ったんですが、結局六十五年失業率二%という目標の達成が非常に困難ではないか、今までの実績からいいますと。そういう気がしてならないんです。
例えば日本の完全失業率を振り返ってふますと、四十年代の一%台から五十年代に入って二%台へ、五十八年には二・六%、そしてことしの三月には三%台へと上昇をしておるわけでございます。また、これまでの政府の経済計画における見通しと実績を見ましても、いずれもその目標が達成されない。むしろ失業率は高まっておるわけです。新経済社会七カ年計画、これは五十四年から六十年度までの計画でございますが、このときには成長率五・七%に対して一・七%程度だと言われておったのも狂いました。さらに、「八〇年代経済社会の展望と指針」という六十五年を目標にいたしました計画におきましても、四%の経済成長率に対しまして二%というふうに言われておりますが、既に五十八年は完全な失業者が百五十五万人、百三十五万人に対しまして百五十五万人、それから五十九年度は百五十万ということが言われて二・五%だというふうに言われておったのでございますが、三%を超えておる。こういう実情から見ますと、今の政府の政策ではなかなかその目標が達成できないのではないかというふうに思います。目標を達成するためにはよほど機敏に、そして積極的に思い切った政策を実現する必要があるのではないか、こういうふうに思うのでございますが、その決意のほどを大臣に伺いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/16
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017・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) おっしゃるとおりに、四十年代の高度成長期には失業率は一%台とまことにいい結果が出ておったのでありまするが、その後の二回にわたる石油危機によりまして世界的な経済の停滞を招いた。我が国においてもおっしゃるとおりの状況の推移であります。
しかし、世界経済は着実に上向いたというのが定説であります。それにつれまして我が国の経済も、いまだ全国的に跛行性が見られるとはいうものの、しかし着実に回復をしていくものだろうと思っております。政府の経済見通しも若干これからは強気に転じ得る背景を私は持ってきておるものと思っております。そういうような内外の経済環境からすれば、このバックグラウンドは、やがて二%の失業率というところの目標を達成できるだけの背景はできておるものだと思っております。
ただし、それに対するきめの細かい、今局長が申しましたような諸条件の変化に対応いたしました、あなたのおっしゃるように後追いにならないような雇用失業情勢に対応する施策がついていかなければならぬということはもちろんでございまして、その点につきましては、私ども、ただいま局長がいろいろ申し上げましたけれども、変化に対応しておくれないように雇用失業政策を進めていくということに最大の努力をいたしたい。努力をすれば成功をする、そういう環境になりつつあるということでありまするから、なおさら格段の努力をいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/17
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018・浜本万三
○浜本万三君 今日の失業情勢の中で非常に問題なのは高齢者の問題だというふうに思いますので、高齢者の雇用対策、確保の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
高齢者の失業者が年々ふえておることは皆御承知のとおりでございます。したがいまして、この対策を誤りますと大変大きな社会問題が発生するというふうに思われます。
そこで第一は、中高年齢者の失業状態及び再就職の実態は一体どうなっておるかという点について伺いたいと思います。
また、高年齢労働力の今後の増加傾向、殊に六十年から六十歳以上の者が大幅に増加するというふうな情勢でございますので、その状況をどのように把握しておられるか。
第三は、低成長時代でございますが、その中で産業構造の転換、女子労働者の職場進出、ME等による技術革新などによりまして、中高年齢者の働く場所が確保できないという状態が出ておるわけでございます。そういう状態をどのように把握されており、かつまた、この問題を解決するためにどういう対策を立てられようとしておるのかお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/18
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019・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) まず、最近における中高年齢者の失業状況、また、再就職の状況について最初に御答弁申し上げます。
昭和五十八年の状況で見ますと、完全失業率は全体では二・六%でございますが、四十五歳から五十四歳層では一・九%、五十五歳以上で三・一%というようになっております。
次に、同じような雇用失業情勢の指標といたしまして、有効求人倍率について見てまいりますと、全体で有効求人倍率は〇・六一倍でございますが、四十五歳から五十四歳までの層で見ますと〇・四二倍、五十五歳以上で〇・一倍というようになっておりまして、中高年、特に高年齢層についてのいわゆる雇用失業状況は非常に厳しいものがあるというのが現実でございます。
再就職の状況について見てまいりますと、これは五十八年十月で年齢別に調査しておりますが、その時点におきましては、新規求職者数は全体で三十二万四千人おりまして、そのうち四十五歳から五十四歳が四万三千人でございます。五十五歳以上が五万一千人という状況でございます。この間に就職されました方の数字は、年齢計では九万二千人が就職しております。そのうち四十五歳から五十四歳が一万三千人、五十五歳以上が一万一千人という状況でございまして、いわゆる求職者に対する就職件数の割合、これは年齢計では二八・四%の方が就職しておりますが、四十五歳から五十四歳では若干下がりまして二五・九%、五十五歳以上で二二・三%というようになっております。
次に、今後の労働力の年齢別の増加傾向でございます。特に、いわゆる六十歳以上の高齢者の傾向について申し上げますと、昭和五十八年におきましては、まず五十五歳以上の労働力人口は千二十一万人でございましたが、これが六十五年には千二百五十五万人、七十五年には千四百八十五万人に増加するというように考えられております。その結果、労働力人口に占める五十五歳以上の高年齢者の割合も昭和五十八年の六人に一人、率にいたしまして一七・三%というのが六十五年には五人に一人、いわゆる二〇%、さらに七十五年には四人に一人、二三%というように高まっていくというように考えております。特に今後は、年齢階層別で見ますと、六十歳台前半層の増加傾向が最も著しいというように見込まれております。
そこで、今後どのような対策を講じていくかということであります。基本的には私どもは、御承知のように、昭和六十年、六十歳定年制の一般化ということで、定年延長に向けて現在全力投球をしております。また、あわせて六十歳台前半層対策といたしまして、あるいはシルバー人材センターの育成であるとか、あるいは六十歳台の前半層についての雇用延長を推進するための各種助成制度というものを講じておるのが一般的な対策でございます。
特に、先生のお話しのように、今後マイクロエレクトロニクスの問題等の技術革新の進展ということの中から高齢者にどのような影響があるかということでございます。私どもは、ある意味においてはこういう新しい新技術の導入によりまして、今まで高齢者の方が、体力的な問題から職場になかなかっきづらいというようなことが、こういう技術革新によってあるいはつきやすくなるという面も出てくることも十分考慮しております。そういう面でこれからはできるだけ高齢者の方が働きやすいように、ハードの面でも開発を進めていきますが、また、ソフトの面でもいろいろと、配置転換であるとかあるいは新しい職種の開発であるとか、そういうことにつきまして十分検討し、研究し、そうしてそれを各労使に徹底していくという形でもって高齢者の職域の拡大により一層の努力を傾注してまいりたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/19
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020・浜本万三
○浜本万三君 先ほど局長の答弁で、高齢者の雇用失業状態が非常に厳しい、再就職の状態も厳しいというお話でございました。私、やっぱり今一番大切なことは、労働者がその体力に応じていつまでも働けるという体制をつくることが一番ベターだというふうに思っておるわけでございますが、とりあえず定年を延長いたしまして働く場所を確保すること、これが一つ重要なことになるのではないかというふうに思います。
そのために政府は、先ほど答弁をされておりましたように、六十歳の定年制を早く実現しようということで努力をされておるようでございますが、私は、政府のそういう努力にもかかわらず六十歳の定年制というのは現実問題としてなかなか実現しにくい状態にあるのではないかというふうに思っております。例えば、政府が四十八年の閣議決定をいたしまして以来約十年になるわけでございますが、六十歳定年制を実施した企業は全体の半数程度ではないかというふうに思っておるわけです。例えば五十六歳から五十九歳の定年制を実施しておるところは一九・〇、六十歳は四五・八、六十一歳から六十四歳までは一・〇、六十五歳が二・五というふうにございますが、これはもうわずかでございます。つまり、六十歳定年制を実現しておるところは、政府の十年間の努力にもかかわらず半数に満たないということになっておるわけでございます。これで一体昭和六十年までに六十歳定年制というのが一般化できるかという私は心配をしておるわけなんでありますが、その点についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/20
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021・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 私どもは、先ほども申し上げましたように、昭和六十年六十歳定年制の一般化ということにつきまして、各種の助成金制度も含め、今全力を挙げてこの問題に取り組んでおるわけでございます。先生も今数字を挙げてお話しになりましたが、御承知のように、もう既に、今六十歳以上の定年制を現にしいているといいますか、実施に移しておるところが四九・四%でございまして、近い将来において導入することを予定している企業も含めますと、これは六二・三%になっております。こういう状況の中から、私どもは、この六十歳定年制は現在すでに主流を占めてきておるというように考えております。何となれば、かつて昭和五十一年には四七・三%が五十五歳の定年制をしいておりましたが、現時点におきましては、既にこれは三一・三%というように落ちてきております。
私どもはこれから六十年に向けて全力を挙げて取り組んでまいるつもりでございますが、この定年制の問題につきましては雇用審議会におきましてもかつて答申をいただいております。その中で、六十歳の定年制の延長の法制化については、政府のこういう努力によってその一般化に向けての成り行きを見守っていきたい、そうして昭和六十年のしかるべき時点においてこの法制化問題についてはそのときの実施状況を見た上でどうするか、また改めて検討するということになっております。現時点においては、何回も繰り返すようでございますが、とにかくこの問題については労使が十分に話し合っていただいて、延長していただかなければならないいろいろな問題があるわけでございまして、そういうものを解決していただくためにも私どもは労使に積極的に働きかけていって、自主的に定年延長を促進するというのが今の情勢の中では一番ベターなやり方ではないかというように考えて今進めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/21
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022・浜本万三
○浜本万三君 第五次雇用対策基本計画では、六十歳の定年制の法制化については六十年ごろの適当な時期に改めて検討を行うという意味のことを先ほど答弁をいただいたわけでございますが、先ほど話が出ましたように、急速に来る高齢化社会に向かって、早く六十歳定年を一般化いたしまして、そして六十五歳へとその目標を伸ばしていかなきゃならぬというふうに思うわけです。そのためにはここらあたりで法制化をする必要があるのではないかというふうに考えます。
野党四党におきましても、そういう意味で当面六十歳、将来六十五歳定年の法制化に積極的に取り組むべきだという見解を持ちましてその推進に当たっておるわけなのでございますが、法制化の問題につきまして積極的な姿勢を打ち出すことはできないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/22
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023・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 先ほども申し上げましたように、雇用審議会の昭和五十七年八月の十七号答申で、「定年延長の推進については、当面は、引き続き労使の自主的な努力と政府の行政指導の強化により推進を図ることとし、定年延長の立法化問題については、定年延長の今後の進展の動向をみながら、昭和六十年頃の適当な時期に改めて当審議会において検討が行われることが適当であると考える。」という答申をいただいております。
私どもは、この答申の趣旨を尊重いたしまして、今全力を挙げて六十歳定年制の一般化に向けて取り組んでおるわけでございまして、私どもも、年齢による差別禁止法等の御提案が社会党を初めとして各党からあったということは十分承知しておりますが、行政といたしまして今はこの答申を受けてとにかく行政努力をした上で、先ほど先生の御指摘がありましたように、雇用基本計画にもありますように、六十年の適当なころにおきましてこの審議会の場で十分御検討いただいて結論を得たいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/23
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024・浜本万三
○浜本万三君 積極的に定年延長するような努力を重ねて要求をいたしまして、次の質問に入ります。
それから、もう一つ高齢者の職場を確保する方法といたしましては、五十一年に定められました高年齢者雇用率、これは六%でございますが、これをさらに積極的に活用するばかりでなしに、この率をさらに引き上げたらどうかという考え方を私は持っておるわけでございます。と申しますのは、身障者雇用法が五年ごとに再計算をされまして、そしてこの雇用率を上げていく、こういう状態があるわけでございます。五十一年にこの法律ができましたときには、五十五歳以上の方が一五・二%でありましたが、五十九年、今日では一七・三%、六十五年には二割になろうとしておるわけでございますので、身障者雇用法と同じように雇用率を情勢によって高めていくという必要があるのではないか、かように思うのでございますが、これに対する考えを伺いたいと思います。
また、技術革新への対応策について先ほどお話がございましたが、特に高齢者の職場確保のためには能力の再開発のための訓練、教育など充実する必要があるというふうに思うわけでございます。その点につきましても重ねてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/24
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025・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 高齢者の雇用率につきましては、これは今先生お話しのように、その当時の雇用者の中における高齢者の占める割合とその後の見通し等を考慮いたしましてこの雇用率を定めたわけでございます。
これの五年ごとの見直しということでございますが、現在この雇用率は六%ということで、その時点で決めまして、今これにつきましては積極的に企業に高齢者雇用の勧奨を進めておるところでございますが、何分まだこの六%の雇用率の未達成企業の割合が相当数ございます。数字を申し上げますと、四八・五%の企業がまだ六%の雇用率に達していないという状況でございます。私どもは、このハードルを毎年あるいは五年ごとに次々に上げていくかどうかということにつきましては、今まだ達成率がこのような状況でございますので、何はともあれまずこの六%の雇用率の達成について全力を挙げて企業の指導をやりたいというように考えております。
ハードルを上に上に上げることで果たして雇用率を達成するという企業の意欲がさらに高まるのか、あるいは阻害されるのか、いろいろ問題もあろうかと思います。要は高齢者の方々に職場が確保されということが重要なことでございますので、まずこの未達成企業をできるだけ少なくしていくというように努力をしていきたいというように考えております。現在の法定雇用率でございましても、もし仮に未達成企業がほとんどこの雇用率を達成いたしますと、九%に近い実雇用率にはなってまいります。そういう関係もありますので、私どもは今これを引き上げるというよりも、とにかくまだこのハードルに達しない企業について全力を挙げて指導をやってまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/25
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026・浜本万三
○浜本万三君 まあ身障者雇用法と違いまして、これは努力規定でございますので、経営者の皆さんが努力をされないのではないかというふうに、これはひがみかもわかりませんが、私は実は思っております。
それから、私は特にそのことを申し上げますのは、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法施行令の第一条におきましても、私が申し上げましたようなことがきちっと書いてあるわけでございます。たとえば、「高年齢者雇用率は、高年齢者の雇用の現況を基礎とし、雇用の動向及び高年齢労働力の推移を考慮して、高年齢者の雇用の安定に資するように設定するものとする。」というふうになっておりますので、急速に高齢者がふえる、就職が困難であるというようなことになれば、なお職場にとどめておくような、あるいはまた高齢者を雇用するような、そういう情勢をつくっていかなきゃならぬというふうに思っておるわけなんですね。そういうことで、私は重ねてその目標達成のために決意を促したいと、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/26
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027・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 私どもも、これはただ単に努力目標であるということで企業に勧奨しておるというわけではございません。雇用率の低い企業につきましては、あるいは達成計画の作成命令を出し、あるいは自主的にこの計画の提出を求めまして、そういう企業に対しては五年間の年次計画でもってこの六%達成に向けて強力な指導をしておるわけでございます。
ただ、いかにせん高齢者の雇用率が低いということで、では今すぐ高齢者を雇えということになりますと、企業といたしましては、今いる若年層を排除して高齢者を雇うのかというような問題も出てまいりますし、要はこの高齢者の雇用率というのは定年延長の推進を図るという意味での何といいますか、一つの手段としてこの高齢者雇用率という制度が創設されたという経緯もございますので、私どもは、要は企業の中に、高齢者になっても五十五歳で定年ということではなくて、六十歳になっても何とか雇用していただけるような、さらには雇用延長という措置によって、定年延長ではなくても、何らかの形で企業の中に雇用の場を確保できるようにということで、いろんな助成措置も含めて、現在この高齢者の雇用の確保推進に当たっているわけでございますので、何とぞその辺のいきさつを御理解賜りたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/27
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028・浜本万三
○浜本万三君 とにかく日本人の寿命が長くなりまして、かつては人生五十年と言われておったのが人生八十年というようになったわけでございますので、やっぱり労働行政の対象年齢も六十五歳以上に引き上げていく、そして労働力の有効活用を図るべきだ、こういう私は見解を持っておりますので、労働省の方で高齢者の雇用対策について一層積極的な努力を要望いたしたいと思います。
次は、MEを中心とする技術革新への対応策についてお尋ねをいたしたいと思います。
労働省の資料を見ますと、この問題について五原則の提言を受けておるようでございますが、この提言を受けまして今後どのような積極的な取り組みをされるのか見解を伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/28
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029・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) このME化の進展に対応いたしまして、雇用の問題はいろいろ論議が起こってきておるわけでございます。そういう中におきまして、かねてから学識経験者と労使の代表という方々から成ります雇用問題政策会議でいろいろ御検討をいただいておりました結果、先般、この四月に雇用問題とMEとの関係につきまして五つの原則というものの御提言をいただいたところ、でございます。やはり問題は、こういうME化が雇用というものに大変な深刻な影響を及ぼすのではないかと、広い意味の雇用問題に影響があるではないかと、こういうところが重大でございます。
そういう意味で、原則の第一といたしまして、「失業者を発生させることのないよう、雇用の安定、拡大に努めること」。あるいはまた、原則の二といたしまして、「労働者の不適応をもたらすことのないよう、労働能力の向上に努めること」。それから、原則の王といたしまして、「労働災害の発生、労働条件の低下をもたらすことのないよう、労働者福祉の向上に努めること」。それから、原則の四といたしまして、「労使間の意思疎通が十分図られるよう、産業、企業、職場レベルでの具体的な問題に関する協議システムの確立に努めること。また、ナショナルレベルでも政労使間の意思疎通の促進に努めること」。そして、第五番目の原則といたしまして、「国際経済社会の発展に寄与するよう、国際的視野に立った対応に努めること」と、こういう五つの原則の御提言をいただいておるわけでございます。
私どもといたしましては、やはりこのME問題というのは、この導入関連問題というのは今後あらゆる企業で避けて通れない問題であろう。その場合において、この五原則というものを基本にして労使でしっかり具体的な話し合いをしていただいての対応を進めていただくということがどうしても必要であろう、こういう意味におきまして、この五原則というものをぜひ国民的コンセンサス、国民的合意のレベルにまで高めていきたい。そのためには、いろんな機会を通じての啓蒙を図っていく、啓発を図っていくというだけではなくて、今後各産業別のME関係、ME問題の労使会議、こういうようなものも産業別に開催いたしまして、これの産業ごとの具体化、具体的展開というものを図っていきたい。あるいはまた、国際的な今後の対応を考えます場合に、このME問題につきましての国際的なシンポジウムというようなものも来年度日本で開催をしたいと、こんなようなことを現在考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、この問題は、今後の大きな雇用政策上の関連いたします問題という認識に立って積極的にこの対応を進めていきたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/29
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030・浜本万三
○浜本万三君 いろいろ事情を伺いたいと思いましたが、時間がございませんので、それは省略をいたしまして、特に私の方から一つだけ労働省に注文的なものを申し上げまして、それに対するお答えをいただきたいというように思います。
先ほども言いましたように、いつも産業政策の後追いを労働政策でやるというようなことになりまして、国民の中に非常に不満がたくさん出ておるわけなのでございます。そこで、このME問題については国際的にも重要な課題になっております。当然日本でも重要な課題になっておりますので、むしろ積極的に労働政策の面から基本的な法律をつくるような努力ができないかということです。
その内容は、社会的に制御できるようなシステムを確立できぬだろうか。あるいは社会的な評価制度や労使の事前協議制の確立などができないだろうか。成果が上がったものについては適正な配分をするような制度ができないだろうか。また、雇用の安定、労働者の安全という問題について不都合がないようにできないだろうかなどなどの問題について、局長が言われましたように、早く国民的なコンセンサスを得まして、MEあるいは科学技術導入の基本法というものをつくったらどうかという希望を持っておるわけです。各党ともそういう問題に取り組んでおられるようでございますので、労働省の方としては労働政策の面からも科学技術導入に関する基本法的なものをつくって国民の要望にこたえるような態度を示してもらいたい、かように思いますがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/30
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031・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) きのうアフリカのセネガルから教育、職業、能力開発を担当する女性の大臣が来られました。そして、なぜ日本を選んで職業訓練、職業教育の交流を行いたいかと、日本という国を一口でとらえるとどういう印象ですかと聞いたら、日本はエレクトロニクスの世界で一番進んだ国だからですと、こういう返事でございました。やっぱり国際的にも日本のME化に対する柔軟な対応、そして長足の進歩というものについて非常に注目をしておるということを、私はなるほどなと思ったわけでございますが、そういう内外の情勢でございます。
そうかといって、先ほども局長からも御答弁をいたしましたように、やはり今このME問題について一生懸命に国民的コンセンサスをつくろうと対応に入ったばかりでもございます。諸外国から見て対応は決して遅い方ではない、そういう情勢だと思っておりますが、まあとりあえず国民的コンセンサス、労使を中心にして、ME五原則というものを打ち立てまして、そして雇用の確保とか能力の開発とか福祉の向上とかという具体策について今せっかく検討に入っておるという段階でございます。
でございますから、技術革新について社会的な基本法、コントロールシステムを法制化するという御提案はなるほどと思う面もございますが、今盛んにその前提となる国民的コンセンサスづくりに努力をいたしておるわけでございまして、今後ともやはり各界、各方面の御意見をもう少し承って、そして実情に応じてそういう問題については今後考えてもいいのではないか。まず大前提として、今この時期には一生懸命にコンセンサスづくりを行っていくということが第一であって、法制化づくりはもう少し後の問題に考えてもいいのではないかと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/31
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032・浜本万三
○浜本万三君 今度は法案の中身の問題についてひとつお尋ねをいたしたいと思います。
法案の作成過程につきましては、私も大変異論があるところでございまして、審議会におきましても、拙速にすぎるのじゃないか、こういう御批判があるようでございますが、その点につきましては時間がないのでこれは質問を取りやめまして、次の問題について御質問をいたしたいと思います。
まず最初に、今回の法改正は、財政再建の雇用保険版ではないかというような批判があるわけでございます。とにかくお金がないというので、一方的に弱者である失業労働者に雇用保険の赤字の負担を押しつける結果に終わっておるわけでございます。私は、給付を切り下げる前にまずやるべきことがあったのではないかというふうに思うわけです。その第一は、法律にも明らかになっておりますように、今国庫の負担が四分の一になっておりますが、赤字になれば三分の一にふやすことができることになっておるわけであります。したがって、国庫負担を増額して失業者に迷惑をかけないようにすることができなかったのか、こういう疑問が一つあります。
それから第二は、衆議院でも問題になっておったようでございますが、雇用保険法だけらしいのでございますが、運用利子によって職員給与の負担をされておるということであります。いろいろ調べてみますと、年間四百七、八十億円ですか、四百八十四億円程度その運用利子を職員給与に振り向けておるということが言われておるわけでございます。本来これは一般会計で国が負担をすべきものではないか、そういう気持ちを私は持っております。したがって、保険財政が赤字だというならば、こういう間違ったやり方を適正に直して、そして失業者に負担をかけないようにするこができなかったのか、そういう疑問が第二にございます。
それから第三は、保険財政が赤字であるならば、法律には弾力条項の運用という規定もあるわけでございますので、弾力条項の運用を図りまして、千分の一上げれば約九百億円の財源が確保できるわけでございますので、非常に困っておる失業者に負担をかけないようにすることができなかったのか。
私はこの三つの疑問を持っておるわけでございますが、なぜそういう方法をとられなかったのか、この辺についてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/32
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033・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今回の雇用保険法の改正につきましては、確かに保険財政の急速な悪化ということは検討の一つのきっかけではございました。もちろん背景に、先ほどから申し上げておりますような、高齢化社会の進展の問題等々、いろいろな構造変化の中での雇用対策の問題も背景にあっての話でございますが、そういうことで検討いたしました中で、やはりこういう保険料を引き上げる、労使の負担を上げるということで、この財政的な面を切り抜けるということも一つの議論としてはあり得るわけでございますが、この雇用保険部会等の、あるいは職安審議会等の場面では、そういう保険料を引き上げる前に、まずこの制度の中でいろいろ合理化を図るという面での問題もあるではないか、こういうようなことで、いろいろ制度改正についての意見が議論され、そして当面こういう制度改正によって労使の保険料負担というものを上がらないような、そういうことでまずやってみろ、まずやれ、こういうようなことになっておるわけでございます。
それで、必要に応じまして国庫負担が四分の一から三分の一へという高率補助の制度がございますが、これはそういう赤字になった場合に、その不足分について国庫負担分でそれを持っていく、こういう特例措置としての三分の一という制度がございまして、既にその三分の一の高率補助も五十七年度においては発動されるという事態もあっておるわけでございますが、しかし、こういう保険財政が恒常的にこれから赤字になっていくというような形の中で、常にそういう制度を発動していくというわけのものでもないわけでございます。そういう意味でこういう御提案を申し上げておるということであります。
それからまた、事務費の国庫負担の問題でございますが、これにつきましては御指摘ございましたように、いろいろ御議論のあるところではございますが、この雇用保険の積立金の運用収入の使い道につきまして、これは特別法律上の制限はないというようなこともございまして、従来からこの運用収入、雑収入などを事務費に充当しながら国庫も一定額を負担する、こういうような慣行に、この雇用保険制度においてはなってきておるという事情もあるわけでございまして、また、臨調の答申等にもありますように、本来、こういう特別会計の運用についての事務費については、できるだけその特別会計の中でやっていくというような方向も示されておる、こういうような状況にあるわけでございます。そういうようなことで、この事務費を全部国庫に振り向けていくということは、国の現在の財政事情等からもなかなか難しい事情にあるわけでございますが、なお、この増額については、私どもも今後最大限の努力をしていかなきゃならぬ問題である、こう思っておるわけでございます。
弾力条項を発動する問題につきましても、先ほど申し上げましたように、そういう保険料を弾力条項を使って引き上げるというようなことをする前に、まず、制度のいろいろ問題があればそこを是正していくというようなことが先決であって、「安易な保険料率の引上げは行うべきではない」、こういう雇用保険部会の報告というようなものもあり、また、職安審でもそういう御議論の中で今回の改正の考え方が出されておる、こういうわけのものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/33
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034・浜本万三
○浜本万三君 答弁、非常に歯切れが悪いですな。これは理屈に合わぬようなお話なんで、私は、さらにまた同僚議員からその問題の矛盾を追及していただきたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、雇用保険法の主な任務は、失業者の方を救済するということにあるわけなんでございます。お金がないからといって、失業者に一方的に犠牲を与えて、そしてのんのんとするということでは甚だまずいというふうに思います。したがいまして、今後やっぱりこれは早急に改めるべきだというふうに思いますので、その点特に希望をしておきたいというふうに思います。
次の問題は、今度、賃金日額の算定基礎から臨時賃金とかボーナスを外されたわけなのでございますが、これでは賃金日額が下がりまして、失業者の給付が減って大変困るというふうに思うのでございますが、なぜそういう措置をとられたのか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/34
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035・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この失業給付は、失業者の生活の安定を図りながらその再就職活動を促進していく、こういうことを目的とするものでございます。しかし、現在の失業給付の額は、受給者が失業をする前の毎月の賃金に加えまして、いわゆるボーナスを含んだ総賃金というものを基礎として算定をされております。かつ、それが非課税、こういうような取り扱いを受けておるわけでございます。その結果、失業給付の額が、毎月の手取り賃金というもの、毎月の賃金から税金であるとか社会保険料であるとか、あるいはまた交通費であるとか、そういったようなものを差っ引きました毎月の手取り賃金というものに比べまして失業給付の額が九割程度、こういう余り変わらない額である。あるいはまた、今度再就職するという場合の、労働市場の現状での一般の再就職賃金、こういったものに比べまして相当割高というような現状にもあるということが、この保険受給者の再就職意欲を阻害しているというような問題もあるということが一つでございます。
それからまた、ボーナスの額が、業種とか企業規模で、大企業、中小企業によりまして、毎月の賃金に対しまして非常にボーナスの額というものが格差が大きい。賃金ももちろん格差がございますが、賃金の格差というのは、例えば小零細企業を一〇〇といたしました場合に大企業ではその三割増しぐらい、こういうようなことでございますが、ボーナスとなりますと小零細企業の約倍ぐらいというような格差になっておるというような事情もあるわけでございます。このために、中小企業であるとか、あるいはまた業績が悪化したようなところから離職されたような方は、このボーナスが低いというようなことのために給付額も低いというようなことであり、また逆に、業績のいい企業とか大企業等を離職された方はこれはボーナスも高いということもございまして給付額も高いものになるというような問題もございます。それからまた、離職時期前六カ月というようなことで、ボーナスの支払い時期を含むかどうかによって給付の額が変わる。例えばボーナスが七月とか八月というような時期に出るということになりますと、前六カ月の中にボーナスが含まれないようなケースも出てくるというような問題もあるわけでございます。
こういったような点などを総合的に考慮いたしまして、今後は、毎月の賃金のレベルを基準とした生活保障を行いながら再就職の促進を図っていく、こういう考え方に立ってこの雇用保険制度というものを有効に機能させていきたい、そういうようなことから、ボーナスを除いて毎月の賃金を基礎として失業給付の額を算定する、こういうふうにいたしたものでございます。
しかし同時に、今回の改正におきましては、賃金の低い受給者層を中心にいたしまして、こういう改正の影響というものを少なくするような配慮をするということで、こういう低い受給者層を中心にいたしまして、給付の率あるいは最低保障額というものの引き上げを行うことにいたしまして、これによりまして受給者の生活保障機能についての配慮をいたしておるわけでございます。そういうような激変緩和措置等も講じながらこういう措置をとったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/35
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036・浜本万三
○浜本万三君 局長の話は矛盾しておるんですよ。ボーナスが各企業によって非常にまちまちであるからという理屈を言われておるんですが、保険料の方はやっぱりボーナスを算定基礎の方に入れられるわけなんですから、保険料ではボーナスを考えて徴収しておいて、今度支払う方ではボーナスは考え方に入れないというのでは、物差しが一つにならぬじゃないですか。これは非常に矛盾しておると思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/36
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037・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 保険の給付の関係と保険の徴収の基礎の関係の問題につきましては、実は必ずしもぴたり一致しなきゃならぬというものではないと思っておるわけでございます。保険料を何から徴収していくかということは、この給付に必要な財源をどういう方法で調達していくのか、それをどういう方法で調達するのが合理的か、あるいはまた無理のない徴収の仕方であるか、こういう観点から行うことがやはり妥当ではないか。したがいまして、給付に当たっての算定基礎の問題とそれから徴収の範囲の問題というのは、必ずしも直接に連動させなきゃならぬというものではないと考えておるわけでございます。
例えば、具体的に申し上げますと、労災保険の徴収につきましてもボーナスを含んで徴収をいたしておりますが、休業補償についてはボーナスを含まない、こういう形で行っておるわけでございます。また、健康保険におきましても、財源調達の必要からボーナスについてこの千分の十という特別保険料というものは徴収をされておるという例もございます。
仮にボーナスを保険料を徴収する基礎から外すというような措置をとりますと、今までボーナスから徴収しておりました保険料の部分を今度は毎月の賃金にまた上乗せして徴収していかなきゃならぬ、こういうような問題が出てまいりまして、相当の保険料率の引き上げというものが毎月の賃金に対してかかってくるというような問題等も出てくるわけでございます。そういうことになりますと、例えばボーナスの割合の低い中小企業等の低所得者等については実質的に保険料負担が大きくなるというような問題も派生して出てくるわけでございます。
そういう意味におきまして、こういう臨時に出るボーナスのような生活への関連が賃金ほど直接的ではない、そういうようなものから徴収していくことが無理のない徴収の仕方ではないだろうか、こういうようなことで徴収の基礎からはボーナスはやはりいただくというようなことにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/37
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038・浜本万三
○浜本万三君 今までの答弁で一番歯切れの悪い答弁というふうに思います。
それからもう一つ、私非常に問題だと思いますのが、法律の十八条によりますと、「基本手当の日額の自動変更」というのが規定をされておるわけでございます。つまり、毎勤の統計で賃金に二〇%の変動があれば自動的に日額表を改正することになっておるわけです。現在の日額表は昭和五十五年に改正をされておるわけであります。昭和五十五年から五十九年までの毎勤の統計を見ますと、これはっきりしたものをまだつかんでおりませんが、大体五十四年十二月を一〇〇といたしますと、五十九年一月は一一七・七%賃金が上昇しております。したがって、五十九年度のベースアップを考慮いたしますと、当然二〇%以上賃金が上がっておることになるのではないか。そうすれば今回は自動的に二〇%の賃上げがあったというので自動変更をされるべき年ではなかったのかと、こういうふうに思うわけですね。にもかかわらず、今度の法律改正ではボーナスをまず二〇%程度、つまりボーナスを除外することによりまして、賃金を二〇%程度カットいたしまして、そして衆議院の修正で下限を二〇、上限を一〇%修正されておるわけでございます。もともと支給すべき賃金目額を二〇%カットして、そして衆議院で修正する。その上に、本来二〇%の自動変更をするべき時期に来ておるのにかかわらず、これをやらなかったということになりますと、二重、三重の背信行為ではないかというふうに思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/38
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039・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この自動スライドの規定によりまして日額を引き上げる場合には、毎月勤労統計における労働者の平均定期給与額が基本手当日額表の制定または改正の基礎となった平均定期給与額の一二〇%を超え、かつその状態が継続すると認められるときに、その平均定期給与額の上昇した比率において改正する、こういうことになっておるわけでございます。
今回の引き上げは、これは現時点におきましてまだ自動スライド規定の要件に該当するには至っていない。御指摘ございましたように、もうそろそろ要件が一二〇%を超えるような数字になるのではないかというお話でございますが、まだ現状においては該当するに至っておりませんし、それからもう一つ、自動スライドの実施時期につきましては職安審議会の了解事項がございまして、一二〇%を超えるに至った最初の月から起算して三カ月目の月における平均定期給与額が一定の基準を満たしている場合というようなことを一応基礎にいたしましてやると、改正作業に若干日数もかかるというようなことから、実際には基礎となった月から四カ月ぐらい後というようなことになるわけでございまして、現状におきましてそういう自動スライド規定というものを運用いたしましても、引き上げになるということにつきましてはやはり五十九年度を過ぎてというようなタイムスケジュールになってくるだろう、こんな見通しを持っておるわけでございます。
そういう意味におきまして、今回の日額の改定というものは、これはあくまでこういう賃金の範囲から賞与等を除外するということにしておりますための激変緩和措置として引き上げを行ったと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/39
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040・浜本万三
○浜本万三君 大臣、今の質疑と答弁の中でおわがりのように、やっぱり保険料を徴収する賃金日額とそれから給付する日額が、物差しが違っていてはいけないんじゃないかということを私は思うわけですね。今回、財政上の問題でこういうことをなさったというふうに私は理解をしておるわけなんでございますが、これは早急に改善をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/40
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041・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 給付はやはり失業しておられる方々に対して生活を保障したり再就職を促進したりする意味で有効であり、また、その人々に公正でなければならぬというような観点がございます。しかし、保険料徴収の方は、やっぱりその原資を確保するという観点が優先をいたしますので、ただいま局長の答弁をいたしたようなことも、これまた時代の変化によってもやむを得ないのではないかなと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/41
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042・浜本万三
○浜本万三君 やむを得ないかなということでは、一番困っておる失業者の皆さんに申しわけないので、できるだけ合理的にもとに戻すように努力をしていただくように私の方から希望をしておきたいと思います。
次は、今度の改正案で六十五歳以上の者については雇用保険から除外するということになっておるわけなんでございますが、これはどういう理由でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/42
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043・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今回六十五歳以上の新たに雇用された人たちにつきましては被保険者にしないということにいたしましたのは、六十五歳以上の方たちは、一般的には引退過程にある人たちでございます。したがいまして、フルタイムの常用雇用につくことを希望する方の割合はごく少ない状況になっておる。そして、就労を希望される方も、短時間勤務であるとか、あるいは任意に行う仕事につくことを希望されるということが多い、あるいはそのまま引退されることを希望する人が多いという実態も踏まえての措置でございます。そういう六十五歳以上の高齢者の方々の就労の実態あるいは引退の実態等に着目して、こういう改正をお願いをしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/43
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044・浜本万三
○浜本万三君 日本の状態は、年金制度がまだ非常に未成熟だというふうに思います。例えば厚生年金の場合には成熟度が九・四%、もらう年金が十一万三千円程度であります。国年の場合には二二・七%の成熟度で、もらう年金が二万五千円程度でございます。その上に、先ほどからお話しがございますように、何らかの形で働いていかなければ生活ができない。特に普通の勤務につきたいという人も約一七%近くあるわけなのでございます。
そういう中でこのような制度を導入されるということは、労働者の働く権利を奪うことになるのではないか。むしろ今日の状態では高齢者の労働力を活用して社会経済の活性化に役立っていただく、そういう方針で、今回のような労働省の考え方を改めるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/44
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045・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 確かに六十五歳を過ぎた方でも常用雇用を希望される方も、ごく少数でございますが、ございます。私どもの推計では約七%程度というような数字もあるわけでございますが、とにかく高齢者の方々でもフルタイムの雇用というものを希望される方がある、こういうようなことの御議論の中で衆議院における修正もあったわけでございます。
私どもといたしましては、この六十五歳以上の方たちに対しましても、やはりそういう任意就業的なもの、短期就業的なもの、あるいは常用雇用という希望に応じまして、安定所におきます紹介活動はこれはやらしていただく。あるいはまた全国の二百七十の主要都市におきまして高年齢者の職業相談室というようなものを設置いたしておりまして、こういったところでの紹介、相談などもやっていく。あるいはまたシルバー人材センターの育成強化もやっていくというようなことで、そういう六十五歳を超えられた方につきましても、雇用就業の面でのできるだけの御援助はしていく。
しかし、そういう六十五歳以上の方が多くは引退過程にあるというようなこともまた一つあるわけでございまして、そういったような実情等を踏まえての対応ということで、現制度としては今回のような措置にいたしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/45
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046・浜本万三
○浜本万三君 時間が来ましたので、もう一つだけ質問さしていただきますが、今回の衆議院の修正部分の一つになるわけでございますが、六十五歳以上の者で職安所長の認可を得た者は高年齢継続被保険者への道が開かれておるわけでございます。その許可の条件とは一体どういうものかということ。
さらにまた、継続被保険者制度は、政令で定める日までとなっておりますが、これはどの程度を考えておられるのか。この二つの点について御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/46
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047・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 具体的には、中央職業安定審議会の御意見を伺って決めることでございますが、この任意加入の条件につきましては、例えば任意加入制度が設けられました経過等にかんがみまして、ごく短期間に離職するようなことがあらかじめ明らかである、こういうような場合については、認可の条件に該当しないということになるのではないだろうか、こんな点での検討をいたしております。また、この雇用の期間というものにつきましても、少なくとも受給資格を満たすことのできる程度のものでなければならないのではないだろうか。こういうようなことを考えておるわけでございます。
それからまた、政令で定める期間ということでございまして、これはあくまで暫定措置である、こういうふうに理解をいたしておりまして、私どもとしては、これもまた中央職業安定審議会でお諮りをして決めることではございますが、三年程度というものを一応考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/47
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048・浜本万三
○浜本万三君 時間が超過をいたしましたので、私の質問をこれで終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/48
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049・佐々木満
○佐々木満君 大臣も先ほどの提案理由の御説明の中で述べておられますけれども、最近の社会経済情勢、あるいは雇用問題をめぐります環境というものは、大変大きく変わってきております。高齢化の進展だとか、あるいは女性の職場への進出、あるいはサービスの経済化、産業構造の変化等々が挙げられるわけでありますが、今回の雇用保険法の改正もこうしたことが背景にあると思うわけでございます。
しかし、こうした問題に的確に対応いたしますためには、雇用保険制度の見直しだけでは私は不十分ではないだろうか。やはり雇用対策全体につきまして社会経済情勢の変化、こういうものに応じた見直しが必要ではないか、そういうふうに考えるわけでございますけれども、まず最初に、労働大臣の御所見をお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/49
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050・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) ただいま佐々木委員御指摘のごとくでございまして、雇用保険制度、これは非常に大切なものでございますけれども、これはいわゆる失業の状態になったときの援護措置であり、あるいはまた、早く就職をしていただこうという措置でございまして、もちろんこういう措置は大切なことは当然でありますが、それ以前に雇用政策全般について努力をするということは、これはおっしゃるとおり一番大切なことだろうと思っております。
御指摘のような労働力の需給両面にわたって構造変化が急速に進展をしておりますので、政府としては、昨年十月「第五次雇用対策基本計画」を策定し、今後の雇用動向についていろいろその展望を考慮しながら中長期的な雇用対策の方向を明らかにしたわけでございまして、この計画におきましては、まず一番目に技術革新の進展、産業構造の転換等に対して総合的かつ積極的な対応を進めること。二番目には、高齢化の急速な進展に対して高年齢者の活力を高めながら雇用の安定を図ること。三番目には、中長期にわたる労働市場の構造変化に対応して労働力需給の円滑な調整を図ること。これらを対策の基本といたしておりまして、これに沿って中長期的な展望に立った雇用対策の充実とその積極的な推進に努めてまいらなければならぬと、そう思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/50
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051・佐々木満
○佐々木満君 次に、先ほども浜本理事から御質問のあった高年齢者の雇用問題でございますけれども、これは依然として情勢は大変厳しいと、政府側からいろいろ御答弁がございました。それなりに理解をするわけでございます。
定年制の延長もその他の対策も大変これは結構で、ぜひやってもらいたいと、こういうふうに思いますが、私は、これ個人的な見解にわたりますけれども、これからの本格的な高齢化社会というものを考えてみますと、人間の能力、労働者でも勤労者でも結構ですけれども、人間の能力というものを開発をしていくこと。例えば工場、事業場における作業工程とか作業機械、こういうものに人間の能力を合わせるために訓練なり能力開発をやる、これは大変必要なことであるし結構だと思いますけれども、しかし同時に、今後は現に持っております人間の能力の方へ作業工程とか作業の機器を合わせる、こういう工夫も私は必要ではないだろうか。例えば身体障害者の雇用問題なんかを考えてみますと、私はいつもそういうふうに思うわけなんです。身体障害者の能力というものを訓練をして作業工程なり作業機械に合わせる、これは大変結構でありますけれども、同時に、身体障害者の持っておる能力の方へ作業工程とか作業環境とか作業機械、そういうものを合わせていく。これは高齢化社会になってきますと、あるいは社会の仕組み、制度全般についてそういうことが言えるかと思いますが、人間の能力というものに合わせる、人間の能力に世の中を合わせる、こういうことが必要ではないかなと、個人的にそう思っているわけでございます。
これは質問の通告もしておりませんが、私のこういう考え方に対して、どなたでも結構ですから御感触でもひとつお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/51
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052・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 先生が個人的の見解ということでおっしゃいましたけれども、実は私どもも、特に高齢者の就業の問題、身体障害者の就業の問題を考えていきます場合に、まさにそういう考え方で対応をこれから進めていかなければならぬのではないか、こういう感を強く持っておるわけでございます。現に、これまでの技術の歴史を見ましても、重い物を持つということが若い人はできるけれども高齢者はできない。そうすると、高齢者はそういう仕事はできないというのが、ボタンを押せばそういう荷物が上がるというふうになってくれば、これは何もそういう体力がなくとも職場を失わないで済む、仕事が務まる、こういうことはもう日常どこにも見られるようなことでございます。
そういう意味で、今度の雇用問題政策会議の提言等におきましても、こういうMEなどを使いまして、高齢者とか身障者などもそういう機器を使えば立派に目的の仕事もやることができる、そういうような機器の開発というものが一つ大きくこの雇用の場を拡大する対策として提言をされておりますし、それからまた、仕事の進め方につきましても、同じくこの提言におきまして、仕事の再設計というようなことで、いろんな工程管理、仕事のやり方、進め方等を改善してこういう高齢者や身障者でも立派に仕事が完成できる、こういう方向での職域拡大というものを進めていけという、提言についての具体的なそういうコメントをいただいておるわけでございます。
そういう意味で、まさに先生がおっしゃられるようなそんな方向でのこれから研究というものが進むことが、これがまたこういう方々の就業の場を拡大していくことに大きくつながっていくのであると、こういうことで、そういう面での取り組みが一つ大事な問題だと、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/52
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053・佐々木満
○佐々木満君 次に、いわゆる不況業種・不況地域、この不況業種なりあるいは不況地域における雇用対策でありますが、これにつきましては昨年この特別措置法が制定されたわけでありますけれども、その後の運用状況はどうなっておるか、かいつまんで御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/53
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054・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 昨年の七月に不況業種・地域雇用安定法というものが施行をされたわけでございまして、現在特定不況業種といたしまして三十九業種、それから特定不況地域といたしまして四十地域をそれぞれ指定をいたしておりまして、この関係労働者の失業の予防あるいは再就職の促進等に役立ってきておるところでございます。
まず、特定不況業種対策という観点で申し上げますと、昨年の七月からことしの三月までの数字で申し上げますと、この雇用調整助成金を利用いたしました事業所が約千五百、教育訓練であるとか休業とかということで約三十九万人という数字になっております。あるいはまた、特定求職者雇用開発助成金というものの支給対象が約千人、また、再就職援助等計画に基づく手帳の発給件数、これが約五千七百ということでございまして、このうち訓練の事項を指示されたものが約四百、こんなような状況になっておりまして、こういう制度等によりまして就職いたしました方が、これは新法施行直前の手帳所持者、それから新法施行後の手帳発給者を合わせた一万二千六百人のうち約四千八百人が就職をしておる、こんな状況でございます。
また、不況地域対策という面での活用状況でございますが、雇用調整助成金を利用しました事業所が約千、休業、教育訓練の実施が約三十二万、延べでございます。また、特定求職者雇用開発助成金の支給対象労働者が約八百人、それから地域雇用促進給付金の支給対象者が約九百人と、こんなような数字になっておるわけでございます。
そういう意味におきまして、この制度によりましていろいろ再就職の促進面で活用を図られつつある、こんなふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/54
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055・佐々木満
○佐々木満君 最近の日本経済は緩やかながらも着実に回復をしつつあるというふうに言われておりますし、私もそう思うわけでありますが、しかし、地域的に非常なばらつきが目立つ。したがいまして、やはりマクロの政策というものも必要でありますが、同時に地域の実情に即した対策というものもあわせて実行する必要があるのではないか。これは経済政策全般の問題でございますけれども、こういうことを踏まえて地方における雇用機会の拡大、こういうためにどのような対策を講じていかれるのか。私ども地方におりますと、それぞれの地方でいろいろ工夫をしていろんなことをやっておるところもあるようでありますが、またそうなければならぬと思いますけれども、こういうことに対して国はどのような助成、援助をなさるのか、その辺のところをお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/55
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056・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 先生おっしゃいますように、マクロ的な景気の上昇という中でも、地域等によりましてはそういう景気の回復が取り残されておるというような地域もいろいろあるわけでございまして、そういう地域における雇用機会の拡大というものを図っていくことも大変大事なことだと考えております。これについては雇用政策と産業政策あるいはまた地域政策と、こういうものの連携がどうしても必要でございまして、そういう中で地域住民あるいは地方自治体の主体的な取り組みを促進しながら雇用開発を推進する、こういう立場での対応が必要と考えておるわけでございます。
こうした観点から労働省でも、五十七年度から特定のモデル地域につきまして、市町村などの関係機関と協力しながら、この地域の実情に応じた雇用機会開発を推進する、こういうことを目的といたしまして、地域雇用開発推進事業、こういうものを実施をいたしておるところでございまして、現在全国三十の地域におきまして関係行政機関や関係労使で構成されます地域雇用開発推進会議、こういうものを設置いたしまして、こういう地域の特性あるいは民間の活力を生かした雇用開発の具体的方策のための方針の策定というようなことをやっていただいておる。そしてまた、この方針に基づきまして雇用開発機運の醸成、あるいはまた地域雇用促進給付金、こういうものを活用いたしまして具体的な雇用開発の推進というものを図っておるところでございます。また、この二月に、雇用開発委員会というところから、「地域における雇用開発の方向について」の報告書も出されたわけでございまして、特に、地方におきまして、地方における通勤圏域というものの中での雇用開発というものを少し中心に置いて進めたらどうか、こういうようなことなどを中心とした報告でございますが、こういう報告を踏まえまして、今後の地域雇用対策のあり方につきましてもさらに検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/56
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057・佐々木満
○佐々木満君 次に、私は、戦後の混乱の時期から今日まで、国民生活の安定と申しますか、雇用の安定と申しますか、そういうことのために労働省の果たしてこられた役割というのは大変大きい、こういうふうに思っております。もちろんその間にはいろいろ批判さるべき点もそれはないことはないわけでありますけれども、大きな目で見ると、やはり国民生活の安定のために立省の精神に徹して大変頑張ってくれたな、こういうふうに評価しているわけであります。
そうした中で、特に第一線の公共職業安定所、私もかつて田舎で関係したことがございますけれども、安定所というものの大変な御苦労を本省の皆さんも十分御理解いただいていると思うわけでありますが、この第一線の安定所の果たしてきた役割、雇用安定あるいは日本経済の繁栄、国民生活の向上のために果たしてきた役割というのは私は大変大きいな、こういうふうに思っております。これからの社会経済情勢の変化の中で、安定所というものはますます頑張ってもらわなきゃならない、こういうふうに思うわけでありますが、どうでしょう、これからの情報化時代の安定所のあり方と申しますか、そういうものについてお考えをひとつこの機会にお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/57
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058・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 現在、安定所の果たしております機能といたしまして、例えば就職者全体の中で安定所経由の方々がどのくらいの割合を占めているかという点で、約二〇%程度というようなことでございまして、幾らか上昇傾向にはございますが、いろいろそういった点での今後の機能向上というものが期待をされるわけでございます。
一つの例といたしまして、例えば中小企業団体中央会が調査をされたところによりますと、正社員の採用に当たっては安定所を利用する、こういう企業が五七%、こういうような調査等もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、一方においてはこういう就職情報誌というようなものも随分出回ってきておる、こういう状況にございます。今後私ども、この求人と求職との結合というものをどうしても高めていかなきゃならぬ。先ほどからも申し上げておりますように、求人はあり求職者もおる、ところがそのミスマッチということで、それがうまく結合しないために結果として失業者が増大していく、こういうようなことにならないようにするためには、どうしても安定所の紹介機能といいますか、需給の結合をする力というものを高めていかなきゃならぬ、こう思っておるわけでございます。そういう意味で、この求人求職情報というものを、これを自分の安定所の中というだけではなくて、この周辺の通勤圏内、広域圏内においてもそういう情報が的確に迅速にはっと取り出せるというような形での情報機能の強化というものをぜひ図っていきたい、こう考えておりまして、現在、昭和六十一年度完成ということを目指しまして、総合的な雇用情報サービスのためのシステムを今開発を進めつつある、こんなような取り組みをいたしておるわけでございまして、こういったようなものを駆使しながら、一層情報化時代における安定所の機能というものを高めていきたい、こう考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/58
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059・佐々木満
○佐々木満君 最後に、ひとつ大臣に御決意をお聞きをして終わりたいと思いますが、一つは特例一時金制度、これは季節労働者の生活の安定のために大変な大きなウエートを占めて十年を経過しておるわけでありますが、私は、この制度は今後とも継続、維持すべきだな、こういうふうに思いますけれども、大臣の御決意はどうでしょうか。
それからもう一つは、さっき申し上げた職業訓練との関連で、世の中の仕組みというのを中高年齢者あるいは身体障害者、そういう人に合わせる、さっき局長からるる御説明をいただいてわかるわけでありますが、やはり、人間の能力を開発をしていく、それと同時に、人間の能力に世の中の仕組みを合わせる、こういう両面の努力が私は必要だというふうに思っておりますが、こうした問題について大臣の御所見をお伺いをいたしまして私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/59
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060・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 季節労働者につきましては、私の石川県の能登半島などにはそういう方々が相当おられます。私も実情はよく知っておるつもりであります。一般労働者とは違いまして、季節的に入離職を繰り返しておる、年間の一時期に失業をする、こういう形態にかんがみまして、昭和五十年における雇用保険法の施行に際し、特例一時金制度をとることとしたわけでございます。
この制度につきましては、中央職業安定審議会の答申において、関係被保険者の生活の実態を考慮しながら今後の検討を行うべきものだ、こう言われておりまして、今後も季節労働者の実態等の把握に努めてはいきますが、基本的には通年雇用化の促進や地元における就労機会の確保ということが、雇用の安定を図っていくことはこれは一番大切であり、望ましいことであると思っております。しかし、この特例一時金制度の成立のいきさつとか季節労働者の現在の就労実態等を考えてみますと、現段階では現行制度にかわるべき新たな制度を生み出すことは極めて困難である、結果としては、現行制度を継続をしていく方がよかろう、こういうことでございます。
それから、先ほど佐々木委員の言われましたように、いわゆる技術の進歩、機械の能力の向上、あるいはまた人間の能力の関連等につきましては、確かに科学技術が我々の能力を、産業の能力もあるいはまた人間の能力もこれを刺激し発展をさせるものでありましょうが、主体となるべきものは、本体はこれは人間であります。そういう意味において、人間が中心になっていくべきであるということは、主人公になっていくということはこれはもう当然のことであろうと思いますので、佐々木委員の科学技術の進歩あるいは人間らしい生活を守っていくための人間中心の考え方、その相関関係における人間の大切さ、人間の能力を中心としてやっていこうというへそういう哲学に対しては、私もまことに同感だと思っておりまして、そういう考え方を常にわきまえながら、労働行政の面でも、新しいMEに対応する私どもの政策にも、よく考えて取り入れるべきフィロソフィーだと、そう思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/60
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061・石本茂
○委員長(石本茂君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にどとめ午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時十一分休憩
―――――・―――――
午後一時三十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/61
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062・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
午前に引き続き、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/62
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063・和田静夫
○和田静夫君 雇用保険について、私、三月の二十六日の予算委員会で若干の議論をいたしました。そこできょうは、あのときの答弁などを踏まえまして突っ込んだ議論をいたしたいと思います。
まず大臣に、私は完全雇用の追求という政策目標は、福祉国家の根本をなす第一の政策目標であると考えています。それはベバリッジ以来の福祉国家観の根底にあって、戦後の日本国憲法に基づく労働法体系の根幹をこれはなしていると思うんですね。この前提の認識について、まず大臣に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/63
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064・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 完全雇用ということは、福祉国家の大きな柱として、私どもは戦後ずっとこれを追求し続けてきたところであろうと思っております。いろいろの紆余曲折はありましたでありましょうが、完全雇用ということは、私はずっと変わらぬ福祉国家としての大きな、最大のバックボーンであろう、そういう信念は変わりません。今後、この実現のために努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/64
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065・和田静夫
○和田静夫君 完全雇用の追求ということは、何にも増してすべての労働者が食っていけるだけの賃金を保障されるということである。完全雇用の状態といっても、私は失業率ゼロの状態を言っているわけじゃありません。ケインズなどの言う摩擦的失業というやつもあるわけでありますから、失業率ゼロではないでしょう。そうすると、完全雇用の追求という政策目標は、これはもう失業者の生活保障を国家が責任をもって面倒を見るということになるはずであります。そういうことが含められるということが、私は論理的必然であろうと考えているわけです。
大臣、この点を我が国の政府の基本方針として確認をしておいてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/65
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066・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 完全雇用の実現を目指していく過程において、そのときどきのいろいろな経済情勢の大きな変化というものはあるでありましょう。そういうときに、幾ら努力をしても失業者が出た場合については、これはやはりできるだけの努力を払うことは国として当然のことだろうと思っております。それが出ないような大きな、日本などは世界の中の日本でありまするから、大きな世界経済の動向もありましょうが、またそれを受けて大きな国内の状況、構造変化も起こってくるでありましょうが、それらに対する雇用政策はもちろん大切でありますが、しかし、波をかぶって苦労しておる失業者が出た場合には、これに対するできるだけの努力をするということは私は大切なことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/66
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067・和田静夫
○和田静夫君 そこで、前提的な問題の最後にしますが、失業者に対する国家ないしは政府としての生活保障責任の範囲をどのように考えるかということについてであります。
これは私は法制上の範囲をお尋ねしようとは思わないのであります。ここでお尋ねをしようとしているのは、失業という状態にもさまざまなカテゴリーがあるわけでありますが、どのようなカテゴリーの失業を国家が保障すべき失業と考えるのかということについてであります。これは当然全カテゴリーの失業、こういうふうになる。それは循環的なものであれ、構造的なものであれ、あるいは自発的なものであれ、非自発的なものであれ、あるいは先ほど言った摩擦的なものであれ、それらのすべてを含むと考えておいてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/67
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068・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 失業者の生活の安定を図るということはやはり重要なことであり、失業給付あるいは失業に対する対策という面で考えなければならぬ問題ではございます。しかし、失業の現状の中では、例えば前職賃金、こういうものとの兼ね合い等もいろいろ考えながらの対応をしておるわけでございまして、そういう実情の面から申し上げれば、例えば現在こういう雇用保険というものを受給しておられる方の中にも、それにプラスしてさらにある程度家からの仕送りというものが必要だというような人もおられることは事実でございます。
そういう意味におきまして、現状においてそういうような問題があることは承知いたしておりますが、理念として考えた場合に、あらゆる失業について国としてできる限りのそれに対して生活の保障をしていくということは一つの基本的な理念としては大切なことであろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/68
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069・和田静夫
○和田静夫君 それだけの前提を置いて、具体的論点に移ります。
まず、改正案以前の問題として、雇用保険は労働者皆保険が原則である。それであるにもかかわらず、雇用保険に加入していない事業所はかなりの数に上りますね。労働省、これは法第七条の違反になる可能性が非常に強いと考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/69
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070・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 御指摘のように、現在、雇用保険の適用については農業関係の任意適用以外についてはこれが強制適用と、こういうことになっておるわけでございまして、それらについて、まだ未適用な事業所があることも事実でございます。こういったところについては、一応法律の面では問題のある状態が続いておると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/70
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071・和田静夫
○和田静夫君 きょう一つの例をまず冒頭挙げておきますが、東京都文京区大塚四の四十六の九に学校法人三室戸学園という法人があります。この法人は、東邦音楽大学外五つの学校を経営している法人であります。この学園は、全学合わせて二百名余の教職員を雇用しているわけです。ところが、一部の事務職員を除いて雇用保険に未加入であります。労働省はこの事実を御承知のはずでありますから、簡単に御報告願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/71
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072・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 三室戸学園につきましては、従来から東京都を通じまして加入勧奨を行っておりまして、その結果、ことしの六月十日現在で二十四名が雇用保険の適用を受けている、こういう報告を受けておりますが、なお未適用労働者が見られますので、引き続き強力に加入勧奨をするとともに、実情調査をした上で、場合によっては職権によって被保険者資格の確認を行う等により適用促進に努めていかなければならぬと、こう考えておるところでございます。
具体的に経緯を申し上げますと、昨年の十一月に飯田橋の安定所がこの学園を訪問いたしまして加入勧奨をいたしたわけでございます。十一月以前には文書による加入勧奨をいたしたわけでございますが一向に加入が進まない、こういうことで、直接学園を訪問して加入勧奨をしたということでございます。ところが、それに対しては学園側は年内に加入を進めたい、こういうことでございましたけれども、理事会でこれが否決をされるというようなことがあったようでございます。しかしながら、飯田橋の安定所から学園の理事長に対しまして、さらに加入促進を呼びかけましたところ、一応電話で、加入することを了解の電話でございました。そして、ことしの一月になりましてこの事務職員二十四名について適用と、こういう形になったわけでございます。
しかし、これは事務職員だけのことでございまして、教員及び教員を兼ねる事務職員についてはそういう適用がないということでございまして、ことしの二月にこの学園の事務担当者を東京都の雇用保険部へ呼び出しをいたしまして再度加入勧奨をいたしたということでございますが、何かこの四月にまた学園の理事会で加入についての否決があったというようなことだそうでございます。
それで、実際にことしの六月になりましてこの字国の図書館員三名が離職をいたしまして、一名については適用済みでございましたので離職票を交付、他の二名につきましては、うち一名については遡及確認の上離職票を交付した、それから一名は再就職をされたのでそういう離職票交付に至らなかった、こういうような経緯がこの間にあったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/72
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073・和田静夫
○和田静夫君 あとの多数について、労働省としては、労働者側がこの法八条に基づいて確認請求をする、そういうのを待っているということでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/73
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074・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これは、先ほども申し上げましたように、場合によっては職権によって被保険者資格の確認を行ってやると、こういうことでありまして、それを待っているというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/74
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075・和田静夫
○和田静夫君 そこのところしっかり、職権でやられるんなら職権でやられるように、長い歴史がありますからね、これは。
それから、この学校は就業規則もまだ作成をされていません。ここは昨年二月に組合ができたわけでありますが、これも非常に遅いことでしょうが、秋には当局側が就業規則の原案を組合に提示をいたしました。この就業規則は何点かの労基法違反を含むものであったがために組合側は説明を要求をした。ところが、当局側が説明をサボタージュしまして、一向に就業規則作成の作業が進んでいないというのが、これが現状であります。よろしいですか、認識は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/75
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076・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 三室戸学園の就業規則の届け出の問題でございますが、先生おっしゃるように昨年の八月に就業規則が作成されまして、労働組合の意見の聴取ということで、経営側が労働側に意見を出してくれということでやっているんですが、やはり内容について話し合いがうまくいかずに今日に至っておるわけでございます。
そこで私どもは、先生からのお話もございましたので、早速飯田橋の署に言いまして、よく事情を聞いて就業規則の早期届け出ということについて指導をしてもらいたいということを伝えましたところ、六月の十四日に飯田橋の監督署は、学校側に対し、労組と誠意を尽くして話し合いをして、早期に決着をつけて就業規則を届け出るようにという指示をしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/76
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077・和田静夫
○和田静夫君 基準局長、ここで今また新しい問題として、いわゆる非組の印鑑などを集めまして勝手に押して、そして出す、不当労働行為がそこにでき上がる。そういうような形で就業規則案が提示をされてくる可能性といいますか、危険性もありまして、したがって、その辺のことは、多くの人たちに不利にならないように厳正、迅速に対処をしていただきたい、指導をしてもらいたい。そういうふうに考えますが、よろしいでしょうか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/77
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078・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 私どもは、就業規則を受理するに当たりまして、今先生おっしゃるようなことのないように、労働者代表の意見というものは、その全体の過半数を代表している代表者であるかどうかということを慎重にチェックして受理をするという態度で臨んでおりますので、そういう御心配はなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/78
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079・和田静夫
○和田静夫君 文部省、先ほどから私の方から幾つかの問題点を指摘して学園側への指導を要請しており、その点は御苦労願っておるわけでありますが、どうも文部省側の指導が功を奏していないという気がして仕方がありません。
昨年八月に文部省は、理事体制の刷新など七項目の行政指導を出されました。ところが、学園の実態は一向に改善されていない。いないばかりか、逆に悪化、悪循環の道をたどり始めているというのが学園内の良識ある声である。そうすると、設置基準違反が依然として正されていません。例えば大学、短大教授の専任制の問題を考えてみますと、基本給は依然としてパート並みの時間給となっています。助教授クラスでもって、芸大を出てもう二十年近くたって十万そこそこというような賃金、あるいは講師クラスで十万円を切るという賃金、こういうのをずっと見ることができますね。こういうような低賃金は、大学設置審議会の内規、すなわち大学教員にふさわしい云々という、そこに抵触すると私は考えますが、文部省いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/79
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080・福田昭昌
○説明員(福田昭昌君) 御承知のように、私立学校は私立学校法に基づいて自主的に運営をされるということでございまして、大学を設置する場合には、その教員数、施設、設備、それからカリキュラム、それから学校を運営するに必要な経費といったものについて審査をいたしますけれども、個々の教員の給与がどの程度にあるべきであるかというところまでは審査をいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/80
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081・和田静夫
○和田静夫君 大学教員が時間給、そして教授の持ち時間単位の給与算定というこの現況は、研究という面の評価を全くスポイルする、そういうような状態になるんだろうと私は思うんですね。ここの理事者は研究の重要性を完全にスポイルしているわけですよ。例えば、一般の大学教員には研究室はおろか机一つない状態である。これで果たして大学と呼べるのだろうか。これは文部省見解を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/81
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082・福田昭昌
○説明員(福田昭昌君) この学校は、実は昨年でしたか、問題が起きまして、私どもの方でいろいろ調査をいたしました。そのときにいろいろ問題が出てきまして、いわば法令に基づいた運営が行われていないとか、もろもろの問題が出てきたわけですが、これを一口に言えば、いわば前近代的な運営がなされておるというふうなことが言えたわけでございます。
そこで、先ほどお話が出ましたように、就業規則の問題だとか、あるいは教授会の規定だとか、あるいは給与規定だとか、もろもろの運営の基本になるべきものが定められていないということで、いろいろそういう面の指導をいたしまして、規則の方はできてきつつありますけれども、なおまた幾つかの、先ほどお話しがありました就業規則その他きちんとなされていないわけでございます。そういうことでなお問題があるということで、引き続き指導をいたしておるところでございます。
なお、今お話しがございました設置基準に比較してのお話でございますが、設備全般につきましては、必ずしも全体として不足するということでございませんけれども、個々の事例を見ればいろいろ問題があるようでございます。
それから教員の問題につきましても、これも私どもが指導いたしました時点で見ましたときに、大変高齢の先生方がおられるということで、果たしてこういうことで教育ができるのかというような問題も指摘をいたしました。そういうことも関係があったかどうかわかりませんが、おっしゃるように現在若干の教員の不足も来しておる、こういうことで、私ども引き続いて指導をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/82
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083・和田静夫
○和田静夫君 きょうはこの問題が本題ではありませんからさらにそこのところは突っ込みませんが、例えばカリキュラムについて調べてみましたら、学則にある履修すべき単位を掲げられている授業が行われていないわけですね。また、一たん落とした単位というのは二度と再履修できない時間割になっている。ここで過去においては学校側と卒業の単位をめぐるいろいろのうわさが流れる、黒いうわさが流れる、そういう状態があったわけですが、こういう点について文部省側はどういう見解をお持ちか、ちょっと簡単に答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/83
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084・福田昭昌
○説明員(福田昭昌君) 現在、専門教育科目の副科管弦という講座があるんですが、その授業が行われていないということで、そういう授業を開始するようにというようなことも申し上げておるところでございます。
カリキュラムをどういうふうにつくるかというのは、これは大学が自主的に考えることではございますが、いろいろの個々の問題につきまして私ども必ずしも全部を承知しているわけじゃございません。いろいろこの前から御指摘がありました点、近く大学の方も呼びまして、引き続きましてさらに指導を加えたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/84
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085・和田静夫
○和田静夫君 一事が万事という言葉がこの学園ほどよく当てはまるところは私はほかにないという、そういうひどい教育環境になっているわけだと思うんです。
文部省は、昨年八月十六日に七項目出されましたね、行政指導。約一年たってなぜ功を奏しないのだろうか。その点はどう認識になっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/85
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086・福田昭昌
○説明員(福田昭昌君) 実は事件当時、そういう問題が起きたということについて、いわば長い間運営について不適正な状態が続いてきたというところからそういう問題が起きてきたわけでございまして、そういうことで、まず理事者の責任を明らかにしてほしいということを申し上げたわけでございます。私どもが理事者の大事に介入する権限はございませんけれども、そういう長い不適正な運営が続いてきたということから事柄が起きたということについての責任を明らかにしてほしいということを申し上げたわけであります。
その結果、理事長さん、学長さんがいわばそういう意味での責任をとられて御辞任になった。その後の体制が、私どもは理事の方の充実もあわせてやるようにということも言っておるわけでございますが、そういう理事体制というものがまだなお十分機能していないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/86
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087・和田静夫
○和田静夫君 親から子に理事長がかわった、ますます悪くなってきているというのが実情であります。
例えば教員に対して、生徒学生と話をするな――ここは大学ばかりじゃありませんからね、高校、中学を持っているわけですから。特に私は義務教育を一方で持ちながら大変ひどいことを言っていると思うんですが、そういう指導がある。学生生徒と話をしなくてどういう教育ができるんだろう。私には全く理解ができません。また、学内において一切の教職員の集会が禁止をされている。こんな学校は恐らくどこにもないと思いますね。
理事長のワンマンに対して、理事会、教授会がイエスマンになっておって無責任体制が学内に蔓延をしている。したがって、内部監査もできない。行政指導七項目も実現できない。文部省、教学上の問題点が、つまり法令違反がたくさんあるわけですが、これを個別的に正していくということはもう不可能なんじゃないだろうか。こんな長い間同じことをやっているわけですから。やはりそういうような問題点を生み出してくる根っこのところを直さなきゃどうにもならぬ。つまり、理事長のワンマン体制を刷新する以外に解決の道はない。少なくとも私の認識ではそういうふうに判断をされます。今営々としてあなたの方は御努力を願っているのでありますから、ここのところをひとつしっかり踏まえてもらいたい。
もう一つこれは新しい問題ですが、今まであなたのところに申し上げる機会がなかったが、喫緊の問題ですが、ことしの入試に際しましても情実入試があったと思われる疑惑があります。その高等学校から、最もできた人間が短大にしか行けなくて、最も悪くてどうにもならないのが大学に行くというような状態で、いろいろの問題がまた新しく起きています。これは調査を要請をいたしますが、前二段についていかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/87
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088・福田昭昌
○説明員(福田昭昌君) この法人につきまして、私どもが七項目の指導をいたしましたのは、先ほど申し上げましたように、法令に基づかないで大変前近代的な経営をやっておった。例えば評議員会も開いていなかった、あるいは教員の発令の、いわば形式的ですが紙による発令もしていなかった、あるいは教授会もほとんど開かれていなかったとか、いわば法令に基づく運営がほとんどなされていなかったということから、七項目の指導をいたしたわけでございます。
現在、いろんな規定を整備しつつありますが、これはいわば形を整えつつあるというところでございますが、実質がそれに伴ってこなければ意味がないわけでございます。しかし、形を整えることもこれは学校として一番の基本でございますから、これはこれとしてしっかりやっていかないといけないということで、これからの努力を学校の方へさらに促したいと思っております。
それから入学試験の話は私どもちょっと初耳でございますので、これは近く私ども事情を聞きますときに、先生から御指摘があったことにつきましてあわせて聞いてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/88
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089・和田静夫
○和田静夫君 警察庁、文京区大塚の土地買収をめぐる疑惑、あるいは後援会費の使途不明金問題についてちょっと伺っておきます。
昭和五十四年十月の理事会で、学園近隣の土地買収を決定した。そして、手付金として、仲介に入った雅慶という業者に二億七千五百万円支払った。ところが、買収予定地は学園のものにはならなかった。これは単純に考えますと学園が被害者となる詐欺事件となるはずでありますが、学園側はこれをひた隠しに隠した。さらに、この取引の際に連帯保証人となった山品建設という会社がある。この会社は学園の施設一切を請負ってきた会社のようでありますが、この関係も不明朗であります。また、後援会費という名目の金を学生生徒から徴収していますが、後援会なるものの実体はありません。過去五年間の累計で七千万円になるわけでありますが、この使途は不明であります。
これらの疑惑について調査をされているはずでありますが、報告できることがあれば中間報告をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/89
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090・上野浩靖
○説明員(上野浩靖君) お答えいたします。
お尋ねの件につきましては、現在幅広く情報収集を行っているところでございまして、ただいまのところ私どもといたしましてはそのような状況でございますので、この席でお答えするような内容ちょっと持ち合わせておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/90
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091・和田静夫
○和田静夫君 国税庁、同じ問題ですが、調査結果、何かここで中間報告できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/91
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092・谷川英夫
○説明員(谷川英夫君) 個別にわたります問題につきましては答弁を差し控えさしていただきますけれども、一般的に申しまして、学校法人の場合、収益事業を行っています場合に、そこから出てきます所得につきまして法人税が課されるわけでございます。私ども、常日ごろからいろいろと資料とかあるいは情報収集をいたしておりまして、税務上問題のありますような場合には調査をいたしまして適正に処理をしていくというふうに努めているわけでございます。
なお、法人税の調査の際には、同時にあわせて職員とか役員に対する給与の支払い、これについて源泉徴収をちゃんとやっているかどうか、この辺のところもあわせて調査することにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/92
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093・和田静夫
○和田静夫君 これは警察、国税ともに既に関心をお持ちになって、今御答弁があったようにいろいろ調査されているわけでありますが、さらに強力な調査を続行されると認識をしておいてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/93
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094・上野浩靖
○説明員(上野浩靖君) 先ほど申し上げましたように、現在情報収集に当たっているところでございまして、その過程で、犯罪を構成するような事実があれば当然適切な処理をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/94
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095・谷川英夫
○説明員(谷川英夫君) 個別の問題につきましてはお答えを控えさせていただきますけれども、先ほど申しましたように、税務上問題のあります場合には調査をするということで、ひとつ御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/95
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096・和田静夫
○和田静夫君 そこで雇用保険に返りますが、労働省、この七条違反で告発したケースは過去にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/96
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097・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 従来、告発したケースというものは、私どもは把握をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/97
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098・和田静夫
○和田静夫君 本件の場合でも、法律の適用対象労働者のうち約二〇%が雇用保険に加入していないわけですね。労働省としては、この程度の加入率で満足ということにはならぬと思うんですが、これは満足されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/98
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099・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これは、農林水産業の小規模のものを除きまして強制適用になっておる、こういうことからいたしまして、現在の適用状態でまだ未加入が相当残っておるのではないかという意味で、私どもは適用拡大に努めていかなきゃならぬ、こう思っておるわけでございまして、そのための鋭意努力をしたいと考えております。
しかし、二〇%という数字をおっしゃいましたけれども、これは実はどのくらいが未加入になっているかというのはなかなかつかまえにくい面がございまして、例えば事業所統計調査で比べる事業所数と雇用保険の方から見ます事業所数というのは概念がちょっと違いまして、例はちょっとあれでございますが、いろんなチェーンを持っておるような企業がございますと、雇用保険は、これはそのチェーンの本店で数を一と、こうなるのでございますが、事業所統計調査になりますと、そのチェーンで出ております小さな支店、事務所、そういったものもやっぱり事業所数、こういう形で出てくるというような問題等もございまして、未適用のあれが一体幾つなのかという数字はなかなか難しゅうございますが、しかしこれはもう全面適用という建前でございますので、私どももさらにそういう面での努力を鋭意続けていかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/99
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100・和田静夫
○和田静夫君 私は、おたくからもらったところの数字を単純計算をしてはじき出したわけでありまして、その注意書きにはもちろん今言われるような臨時、内職的に雇用されている者等の条件も含まれている云々などというような注意書きもありますから、それらのことを今述べられたのだと思うのですが、だとするならば、正確な統計を出さずに一体どう対処するかということにもなりますよ。我が方の理事が今ちょっといないものだから、ここで本当ならとめるところですがね。今のようなあやふやな答弁で、いわゆる雇用保険の加入率という問題ね、加入率の論争だって、これかなり僕は本法改正案との兼ね合いにおいて――私は改悪案と思うが、改悪案との兼ね合いにおいてはこれは非常に問題を包蔵していると思う。
そこで、私はここのところはきょうは一応、後でなお詰めるにしても、七条にはちゃんと罰則規定がありますね。これを考えると、七条の罰則規定に基づいて告発できる仕組みになっているのですから、今問題として例示をいたしました三室戸学園のケースは告発対象になります。労働省としてここらでひとつこの学園を例に挙げて一遍告発をするぐらいの決意を示されたらどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/100
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101・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 確かにこのケースについて見ますと、これは被保険者の正式の確認請求ではございませんが、既にそういう問題提起がされておる、こういうような事情にございまして、この点については一応職権によって確認をするというような形での現在対応を考えておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/101
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102・和田静夫
○和田静夫君 職権によってやられるという約束を何回かされましたから、その推移をひとつ見守ります。そして、この法案の論議中、この委員会論議中に、私は三室戸学園の理事長を参考人として本委員会に喚問する、その要求を改めて提示をいたしたいと思いますから、スピードを上げて、就業規則の問題にしろこれらの問題にしろ、やってもらいたい、そういうように要求をしておきます。
そこで、この例示の問題はここで区切りにいたします。国税庁、警察、ありがとうございました。
現行の雇用保険が失業者を十分に救済していないという現状がある。それにもかかわらず制度が一歩後退する、こういうことは許せないことだろうと私は思う。加入率もそうですが、給付水準も同様であります。労働省、局長の午前中にも御答弁があったのを聞いていましたが、給付額が標準世帯の手取り賃金の九割ぐらいになっているという。一方、八〇年三月の労働力調査特別調査は、現在の雇用保険制度がなおかつ不十分であるという調査結果を示しているでしょう。予算委員会でも私は八〇年の労調結果はそういうデータとして読むべきであるということを述べました。私は労働省は失業者が何を糧として暮らしているのか責任を持って調査をされるべきだと思う。予算委員会では時間の関係もあって、うやむやのまま局長答弁、あそこは見逃しておるのですが、労働省としてのデータがなければいかぬと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/102
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103・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この雇用保険制度は、労働者が失業した場合に求職活動中の生活の安定を図ることを目的としておるわけでございます。具体的には、失業前の賃金の六割ないし八割の給付を行う、こういう形で実施をしておるわけでございます。したがいまして、個々の失業者について見ますと、こういう雇用保険受給者についても御指摘のように他の収入、例えば年金であるとかあるいはまた本人あるいは奥さんの内職収入とかいうようなもので補いながら生活をしておる方もあると思うわけでございます。
そこで今回の改正案におきましては、賞与等を給付の基礎から除く、こういうことに伴いましてこういう低所得者層の事情にも配慮いたしまして、これらの方についての給付率あるいは最低保障額の引き上げを行うことといたしまして、この受給者の生活の安定にも配慮をいたしておるわけでございます。
今回の改正に当たりまして、改めてこういう雇用保険の受給者の生活実態に関しての特別調査というものは行っていないわけでございますが、この現行制度についていろいろ調査、検討をいただきました職安審議会の雇用保険部会の報告におきまして、この失業給付の額が賞与等も含めて算定されていることから、就労中の手取り賃金と余り変わらない額となっておる、あるいはまた通常の求人賃金と比べても割高になっておる、この点が一つ受給者の再就職意欲を阻害しておる、こういうような御指摘もございましてこういう措置をとっているわけでございます。
そういう意味におきまして、今回の改正について特にそういう調査、特別調査というものは行っているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/103
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104・和田静夫
○和田静夫君 私は、データがないところで立案が行われるという筋道は全然わからぬのですよ。これ、データが整えられるまでは本法律案はここで一遍停止する、もう論議もやめる、それが当たり前だと私は思うんですよ。論議の基礎を欠いていますよね。そのことを私は三月二十六日予算委員会の席上であなた方に申し上げてある。それから約三カ月たったって何も出てこない。そして法律案だけが衆議院からここに回ってくる。こんなふざけたことは許せません。どうしてくれる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/104
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105・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これは、データがないという形でのあれでございますが、現在の雇用保険受給者が何によって生活しているかということについて、そういう特別調査というものをしていないということでございまして、それに関連いたしましてのいろいろ調査というものはあるわけでございまして、そういう特別調査がぎりぎりないとどうと、こういうことは一律に言えないのではないか、こう思うわけでございます。
労働力の特別調査によりまして、こういう失業者のうち、収入のある者の主たる収入源を見ますと、雇用保険が主という者の割合が四五・九%、あるいはまた恩給、年金が主とする者が二四・六%とか、あるいは仕送り金が主という方が一一・五%と、こういうような数字があるわけでございますが、やはり生活をしていく上の収入源というものが、これが全額雇用保険の金でなきゃならぬというところまで言えるか。やはり本人によりまして、いろんなまた支出構造というものも違うわけでございまして、現状はこういうようなデータもあるということでございますが、これによって保険金が幾らでなきゃならぬというところまで、こう一義的に判断できる、決めるということができるものでは必ずしもないと、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/105
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106・和田静夫
○和田静夫君 ここの答弁、非常に不満であります。したがって、ここのところ私は保留をしておきます。後ほど資料については突き合わせをやりましょう。
そこで、今盛んに言われている、給付に際して一時金をカットするということですが、午前中の論議も踏まえながら、私は難しい、あるいは理屈をつけた答弁はこの問題については要りません。問題は、一時金が生活給的性格を持っているかいないか、どっちに考えているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/106
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107・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この一時金の性格につきましては、いろいろ論議のあるところだと思います。また、人によってそれが生活のまさに補いという形の方もあるかと思いますが、人によってはまた、いわゆるレジャー資金的な例もあるかと思います。そういう意味で、この一時金というものがどういう性格かという点について、一義的になかなか言い得ない面があろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/107
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108・和田静夫
○和田静夫君 今日的な情勢の中で労働省の主要幹部が、一時金が賃金、いわゆる生活給的な意味合いを持たない部分があるなどという認識を本当にお持ちですか。それからもう一つはね、業種や企業規模によって大きな幅があるということを午前中も盛んに答弁をされました。しかし、一時金というのは明確に今日の事情の中では生活給的な色彩を非常に濃く持っているわけですよ。これはもう否定をすることができない事実であります。したがって、百歩譲ってというようなことで言ってみれば、全額を算定の基礎からカットするということにはどんなことがあってもならないんじゃないですか。もっと工夫があってしかるべきじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/108
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109・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 私もこの一時金がそういう生活給的な、生活を支えるための性格を持っている部分があることは、これはもうもちろん否定するわけではございません。ただ、それがもうほとんどがそういうものに回る方と、それから、一部そういうものに回り、一部そういうレジャー的なものに回るというようなものもあると、こういうような意味合いで申し上げたわけでございます。
そういう観点から先生のそういう御指摘だろうと思うわけでございますが、そういうようなことも配慮いたしまして私どもは、今度これによりまして下がるという関係について、特に低所得者層についてそういう二〇%から一〇%の給付のアップをする、あるいは最低額を上げる、こういうような配慮、いわば先生のおっしゃる知恵を出すべきじゃないかという意味で私どももそういう知恵を出したと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/109
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110・和田静夫
○和田静夫君 私の言っているのは、もっと工夫があってしかるべきではないかということを言っているんですよ。どうですか、参議院でこの法律案論議をしている過程で、この辺のところをもう一遍突き詰めた工夫をお互いしようじゃないですか。そんな余裕は全然ないということにならぬでしょう。上げるばっかりが能じゃありませんからね。後ほども言いますけれども、この法律案できたって、あなた方はこれから十年間自信を持ってこれ運用できるのかというようなことになると、なかなか自信をお持ちにならぬと思いますからね。少し長期的にこう、ずうっと眺めてね、法律案いじくってみようじゃありませんか。――大臣ですね、ここのところは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/110
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111・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) それは私どもは、今の段階では、まあ皆さんから見れば対応がおくれたとおっしゃるかもしれぬけれども、とにかく十年間たったわけですからね、その間に大変な変化が起こっておるので、それにうまく追随できなかった点もあるでしょう、これは。だけども、そんな帳じりだけ合わして今この法改正をやろうというつもりではなしに、意欲だけでもここ相当な期間見通していきたいというつもりでおるわけでして、特にその点を、過去の構造変化に対応するだけではなしに、ひとつできるだけ将来の変化も予測してということで、まあ私どもの力だけではそれは限界があるからね、審議会などで特にその点などにつきましてもいろいろと御指導を願い、ディスカッションを願ったということであります。
それから、今後のこの運用につきましても、労働省には政労使三者のしっかりした審議会がありますから、そことも諮って、変化に対応するに余り大きな落ち度のないように、相当中長期にわたってやっていきたいなと、こういうつもりで一生懸命にやっておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/111
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112・和田静夫
○和田静夫君 審議会に十分お諮りになったと言われるんですが、まあ大臣はこの法律案ができ上がってから就任ですから、その意味で大臣を責めようとは思っていませんがね。そう言えば局長も、おれも途中でかわったんだと言われると困るけども。これね、やっぱり審議会に十分にかかっていないんですな、内容的には。かかっていない。そこがやっぱりこの法律案の最大の欠陥ですよ。
それで、もうちょっと突っ込んでからにしますがね、けさ浜本質問でも指摘をされたように、保険料の方では一時金から徴収する、そして給付の方は一時金分をカットする。これは保険原理の上からいっても首をかしげるんですが、局長答弁があった。一歩下がって、局長答弁を是とする立場でこれ考えてみると、一体どういうことになるんだろう。それは支給額を保障するためのみに徴収が行われているという形になっていませんよね。何となれば、あなたは健保の問題を挙げてみたり労災保険の問題を挙げてみたりして、徴収と支給の問題についてけさほど答弁した。それじゃ、事務費の取り扱いはどうなんですか。事務費の取り扱い、そういうものについてはこの中からがっぽり出しています。ここも対等にいけばよかったじゃないですか。そこのところは、失業保険法ができたその当初において、財源的なゆとりというようなものを読み違えた。今日こういう状態になることを予想できなかった。読めなかった。きょう皆さん方が十年後を読まずにこの法律案を我々に論議させているのと同じような形で、以前読めなかった、読めなかった失政がここにあらわれてきたわけです。これが本当のところですよ。そこのところを全く抜きにして、ほかのところも、言ってみれば取るのと払うのとは違っているところがあるんですというような論理展開というのはできぬ、私はそういうふうに考えるのであります、一方ではね。
そこのところを取らなかったらぱ毎月の保険料をまた上げることになりますよというような脅迫的な答弁をあなたはしたけれども、うちの理事はおとなしいから、そこのところは黙っていらっしゃいましたがね、ああいう答弁の仕方はありませんよ。ああいう答弁の仕方をやられるのならば、他の今までやられているところのいわゆる国庫補助負担の問題と同じような形のことをまずやりなさいよ。やってからにしなさいよ。その基本のところをあなた方はやらずにおいて、被保険者側だけに負担がいくというようなやり方、そんなことは許せませんよ。そのことは矛盾じゃないですか。浜本理事が指摘したとおり、持っておる矛盾ですよ。直そうじゃありませんか。参議院の論議を通じてここのところを直して衆議院に送り返そう。そうした方がいいですよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/112
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113・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これは決してそういう何といいますか、脅迫というような意味で申し上げたのではなくて、計算上その財源をそれではボーナスから徴収しないということにした場合にどこに求めるかということになれば、結局これは毎月の賃金というものにかかっていく、かかっていかざるを得ないというその計算上の問題を申し上げたわけでございます。
確かに事務費の国庫負担の問題は、これは私どもも身にしみてよくわかります。しかし、この問題については、これは事務費を国庫負担ばかりではなくてやはり保険料で賄うと、こういうような形でやってきました今までの経緯からいいまして、これを全額近く国庫負担でというような形はなかなかもう難しい情勢になってきておる。国の方の財政も御存じのような状況になってきておる、そしてまた臨調答申等におきましても、各種のこういう特別会計でやっております制度については、むしろ今後事務費というものをそれぞれの特別会計の中で賄っていく方向でやるべきだと、こういうような意見も出ておるというような中で、なかなか難しい問題がある、こういうことでこざいまして、それについては率直に申しまして衆議院段階でも大変御議論をいただきました。また、国庫負担の増額についても附帯決議等もついておる、こういう実情を踏まえて、私どもも努力をしていかなきゃならぬ問題であると、こう思っておりますが、その点について、これがボーナスの問題とパラレルになるという形にもなかなかならない場面でございまして、その点はひとつ御理解を賜りたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/113
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114・和田静夫
○和田静夫君 ここのところも理解はできませんから、さらに突っ込んだ質問は保留をいたしておきます。かなり時間がかかってきていまして、私の持ち時間の五十分までにいいかげんに答弁しておけばそれで終わっていくんだと思われては非常に困るので、幾つかの問題は残しておきますがね。
この給付水準に関連して言いますと、職安局長、三月二十六日の予算委員会での論議の際に、保険金を満額もらい終わってから就職を考えるというような方も相当おられるという御発言があったわけです。この発言はどういうようなデータに基づいてなされたのか、ちょっと明らかにしてください。これは余り長く答弁しなくてもいい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/114
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115・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これにつきましては、五十六年の九月から五十七年の八月までの間にこの受給資格の決定を受けた者につきまして、安定局で調査した結果に基づくものでございまして、これによりますと、全体では過半数の者が所定給付日数をすべて受け終わっておる、こういうことであり、女子は七〇%を超え、あるいはまた六十歳以上の高齢者は八〇%を超える値を示しておる、こういうようなデータがございます。また、五十六年十一月の受給資格決定者についての抽出調査というもので見てみますと、おおむね所定の給付日数を受給し終えた次に急激に就職者数が増加しているというような傾向も出ておるわけでございまして、また五十五歳以上の方になりますと、受給資格の決定を受けてから十カ月後までに就職した者は一八%にすぎない、こういうような結果もあると、こういうようなことを受けての私のそのときの発言でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/115
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116・和田静夫
○和田静夫君 私は、揚げ足を取るつもり全然ありません。そういう意味で言っているのじゃない。労働省の雇用情勢に対する認識を私は今問題にしたいと思っているのですよ。すなわち、給付を満額受け取った者の割合が高くなっているとするならば、それは雇用情勢が悪化していると見るのがこれは労働行政から出てくる発想でなけりゃならぬはずですよ。つまり、労働力がそれに見合った対価であらわれなくなってきている。そういうことを理論的にとらえなかったならばいけないんじゃないだろうか。雇用情勢の悪化に対していかに制度を充実させるか、それが労働行政の基本姿勢でなけりゃならぬはずであります。私は、これは大臣にここで答弁いただきたいところですが、時間もありませんのであれですが、否定されないと思うんですね。
雇用情勢について、労働省がどういうふうに今お考えになっているんだろうか。今後改善される見通しを立てておいでなのだろうか。私は、現在のこの技術革新の動向から見て、仮に景気が回復しようとも、雇用情勢はさほど好転しませんよ。慢性的な構造的失業が累積していると見るのが当たり前ですよ。実際に経済企画庁などが計測している完全失業率を調べてみましたら、傾向的にはこれはずうっと上昇していますね。これは上昇していることはお認めになると思うんです。
昨年十月に策定された第五次雇用対策基本計画では、八〇年代後半の失業率を何%程度と見ていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/116
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117・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 昭和六十五年度において二%程度というものを目標にしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/117
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118・和田静夫
○和田静夫君 きはうOECDのエコノミック・アウトルックが、六月二十一日付の発表ということで発表になりましたね。これを見てみると、八四年の年間を通じて二・五%、八五年年間について二・五%、八四年上期が二・七五%、八四年三月二・六八、そこに至るまで一月が二・七三、二・七三、二・六八、約二・七%の水準がずうっと続いていますね。そうすると私は果たして今言われるような二%台で済むのだろうかということを危惧しますよ。
労働省は今回の改革で向こう十年間は十分にやっていけると太鼓判を押すことできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/118
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119・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これはまた、先ほど浜本先生にもお答えしたところでございますが、やはりこの二%程度という数字は、今先生も御指摘のような、いまだ二・六だとか二・七%という失業率であり、かつ、今後ますますそういう高齢化社会が進んでいくとか、女子の職場進出が進むとか、あるいはまた産業構造の変化が進んでいくというような中では、率直に申しましてこれは相当の努力を要する目標でございます。しかし私どもは、大臣も申しましたように、やはり完全雇用というものを私たち労働行政の最大の課題として取り組んでいく、こういう懸命な努力をしていく中で何とかこれを達成したいと、こういうことで鋭意これからも進めていかなけりゃならぬと思っておるわけでございます。
現在雇用の関係が、景気の回復というようなことで、率直に言いまして、これが求人の増と、こういう形には相当出てきておるわけでございます。しかし問題は、求人がふえても、要するにその求人増に対してどんどん失業者がはまっていくという形で失業者が減っていくということが、若干遅々としておるという面がございます。これが言うならば、いわゆるミスマッチという形でそういうことが起こってきておる。そういう基味で、こういうミスマッチというものを解消することを具体的にどう進めていくかということを基本に進めていく中で、私どもは何とか二%というものを達成すべく頑張っていきたい。そういう中で、また雇用保険制度というものを失業者の就職の促進という面でより機能を高めていきたいということも強く考えておるわけでございます。
そういう努力等とも相まって、この雇用保険制度というものが何とか中長期的に現行のこの改正案でもつような、そういう改正をお願いしたいと、こういう基本的な姿勢で御提案を申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/119
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120・和田静夫
○和田静夫君 言ってみれば、私が言ったように保険料率を上げる心配は向こう十年間は要らない、これは十分この制度でいいんだ、制度に手をつける必要もないんだ、そういう自信はないわけですね、これは。一言でいいですよ。ありますか、ないですか。ないでしょう、今の答弁いろいろ聞いていると。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/120
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121・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この制度の健全な運営、適正な運営ということを通じて、何とかそういう値上げをしないで、そして現行制度のままでそういうこともやっていきたいと、こういう決意でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/121
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122・和田静夫
○和田静夫君 そう言われるのだったら、体系立った長期的展望を出してください。雇用情勢と雇用保険をめぐる長期的展望を出してください。それ出さなかったらこの法律案の論議なんかなりませんよ。出してください。抽象的な答弁要りませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/122
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123・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) やはりこの六十五年までの数字について、具体的にそういう年次的な形でどういう経路でこうなっていくかということは、私どもも率直に申しましてそういうものは、また、そこまで具体的に将来を見通していくということは残念ながらできませんが、そういう展望の中で、こういう制度というものの適正運営という形で目標を達成するように頑張っていくと、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/123
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124・和田静夫
○和田静夫君 願いを込めてというのは、あなたは法律案を出している側だから願いを込めて出しているに決まっているわな。こっちは願いを込めているその願いが本当にやっていけるのだろうかということを科学的に分析してみようと思ってやってみると、体系的な長期的展望、そういうものが全然立たぬわけだ。あなたの方も立たぬわけですよ。立たぬのじゃ困りますよ。立つようにしようじゃないですか。立つようにするために、時間的余裕あるんですから、これは委員長、ぜひ私の提案は、これはちょっと理事会でも開いてもらって、受けとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/124
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125・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 局長が一生懸命に長期展望に向かって努力をするということはこれは正直なところでございますが、雇用政策だけでは私はとてもそれは解決できる問題ではない。しかも日本の国内だけの見通してはとても解決できる問題ではありません。しかし、過去の四十年代は失業率は一%だったじゃないかと言う人もあります。しかし、これからは高度成長は済んだからなかなかそうはいかぬぞと、二%なんというのは難しいぞよという、それは意見もあります。そういうような問題で、雇用政策上の問題で私どもは全力を尽くす、変化に対応するということはこれは当然のことでございますけれども、しかしここ数年はオイルショックの向かい風でありましたし、これからはどうやらこの向かい風がやみそうでありまして、もちろん国内の景気は跛行性もあったり問題ありますよ。だけど、どうも世界経済追い風になってくるし、日本もやっぱりそれくらいの力が徐々にこれから回復していきそうだと、こう思っております。そういうような展望も背景も、大きなやっぱり背景というものがなくてはとてもとても、雇用率一つ取り上げても、雇用保険の制度の問題を取り上げても、これなかなか解決できない問題だと思いますが、しかしどうも追い風になってきた、頑張ればやれるんじゃないかという意欲を大分持ってきたということを背景に局長が申し上げたんだと思いまして、意のあるところをひとつどうぞ指導鞭撻をしてもらいたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/125
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126・石本茂
○委員長(石本茂君) ちょっと速記をとめていただきます。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/126
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127・石本茂
○委員長(石本茂君) 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/127
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128・和田静夫
○和田静夫君 理事会に預けます、これは。私、今すぐでなくても、預けておきます。
大臣の述べられることはわからないわけではありませんし、まあ十一月になればあるいは河本内閣ができて、坂本官房長官ということになるのかもしれませんから。今の答弁非常に自信がおありでありまして、そういうものを前提にしながら労働省これから雇用をやっていくんだというようなことになるかもしれませんが、とにかく私は、雇用情勢というのは傾向的に悪化していることは間違いないでしょう。一九六〇年代と七〇年代後半を比べてみますと、これはGNP成長率が同じであっても失業率は悪化するという、そういう計測結果を私自身がはじいて予算委員会で提示をしたこともありますが、高失業化というのは時代の趨勢としてこれは出てきていますよ。そうすると、ここできちんとした展望を持たないと、今後の雇用保険というのは必ず私は破綻すると思う。そこで私は長期的展望を出して、少なくとも十年後ぐらいの政治に対して私は責任を持ちたいですよ。きょう、あしただけのみみちい話をしているんじゃない。それぐらいのことをやろうじゃないですか、大改革をやろうというんですから。ここのところを踏まえて、長期的展望について、委員長、理事会で受けとめてもらいたい。
月別の受給実人員を見ますと、昭和五十六年度から予算ベースを実績ベースが上回ってきていますね。五十六年度が約七万人、五十七年度が約十二万人、五十八年度が約十四万人、これはおたくからもらった資料ですからね、そういうぐあいに乖離が拡大をしています。労働省、これは予測を過小に見積もったということでしょうかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/128
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129・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この予算見積もり段階と実績との乖離につきましては、私どもこういう雇用保険受給者の就職促進ということで鋭意努力をいたしました、その辺の努力が残念ながら予期したように上がらなかったという、そういうようなことも一つあるわけでございますし、それからまた、比較約何といいますか、こういう雇用失業情勢の推移とやや無関係に、自己都合退職という形で退職をしてこられるというものが相当にある、ふえてきたと、こういうような関係で、そういう実績と予算見積もりとの乖離というものが出てきておるというふうな見方をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/129
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130・和田静夫
○和田静夫君 したがって私は前段の三項目目で全カテゴリーを対象にしますねという念を押したのはそこのところでありまして、そういう答弁が出てくると思ったものだから。理由についてそういうふうに言われる。そこで、五十八年度で約十四万人の開きが生じているのに、なぜ今年度は当初予算で一万人しか上乗せしてないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/130
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131・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 五十九年度の予算におきましては、先生御指摘のとおり七十四万二千人でございまして、五十八年度に比べて約一万人増という見込みをいたしておりますが、この根拠につきましては、これまでの初回受給者の傾向を基礎にいたしまして、五十九年度、今御提案申し上げております制度の改正に伴う受給者の減少の見込み、例えば六十五歳以上の方々が現在の基本手当の支給の仕組みから一時金制度に移ること、あるいは勤続期間に応じた所定給付日数の改正を行うこと、あるいは給付制限期間の延長等というような今回御提案申し上げている内容に沿って制度の改正が行われるとしますと、受給者実人員が現行の制度であれば伸びていくと予想されるものに比べて減少するであろうという見込みで七十四万二千人という予算人員を見込んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/131
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132・和田静夫
○和田静夫君 これ局長、乖離は出ないと見ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/132
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133・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この数字でいけるということで私ども見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/133
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134・和田静夫
○和田静夫君 私は、そう言われたって、五十九年度は景気の好転が見られるとは言いながら、月平均にして一挙に十三万人も減るというふうには考えられません、とても考えられない。少なくとも予算は予想される実績値に最大限近づけて組むべきだと、きのうもレクチャーのときに申し上げましたね。それが財政法の指示するところですよ。私は、五十九年度予算の支出の項というのはどうも虚構の数字であると言って過言ではないんじゃないかと思うんです。改めて計算をし直しておかなくてもいいですか。この法律案が通って、万が一乖離ができて、決算のときになってきょうの答弁を変えるということはならぬですよ、そのときは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/134
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135・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 今回の改正の効果につきまして、どの程度出てくるかという点につきましてはまだ正確には見きわめかねる点もございますけれども、再就職手当の新設等によりまして、従来、所定給付日数ぎりぎりまでおられた方の中で早期に再就職してこられる方々の出てくること等を含めまして、私どもとしては改正効果を見込んだ上での七十四万人程度というふうに見込んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/135
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136・和田静夫
○和田静夫君 きのうも言いましたように、月平均八十万人で計算したら大体どのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/136
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137・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 受給者実人員を八十万人で試算いたしますと、一般求職者給付におきまして約七百三十億円程度の増額となると試算されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/137
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138・和田静夫
○和田静夫君 私はこのやつはちょっと――労働大臣、別にあなたが大臣になってからの話じゃないものだからあれですが、過去、現行法ですよ、予算と実績をずっと比べてみますと、さっき言ったとおりなんですよ。私は虚構の予算だというふうに思っているんですが、しょせんはこれはシーリングの関係でこうなってきているんですが、要するにマイナスシーリングで国庫負担を削る必要があったためにこういうような虚構の数字を組まなければならなかったという過程がある。今後もそのことが予想される。虚構の数字で予算を組むことは私は明確な脱法行為だと思う。労働省は大蔵省に屈辱的な思いをしただろうけれども、しょせんは屈して脱法行為をずっとやってきた。少なくとも財政法及び雇用保険法の立法の趣旨違反であることは間違いがない、この過去のおたくが出してきたデータは。マイナスシーリングという政策によって法律がないがしろにされている典型的なケースですよ、これは。そして、今後もその可能性を十分に含んでいる。こうした脱法行為がまかり通っているのもマイナスシーリングという無理を通しているからだろうと私は思う。
大臣、五十七年度、五十八年の三月中に支給すべき給付金を翌年度の四月に繰り延べるという行為、これも実は財政法違反ですよ。いわゆる年度独立の原則を逸脱していますよ。私はことし暫定予算のときにいろいろの論議をいたしていますけれども、労働省、同じようなこと、これやってきましたね、今まで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/138
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139・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 雇用保険の認定につきましては四週一回ということでいたしておりますけれども、特に年度末、年度初め等につきましては、資格の得喪関係の業務が錯綜する時期でございます。したがいまして、そのような観点から、認定日の一部変更等によりまして、受給者につきましては事前に周知の上そのような措置をとらしていただいたという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/139
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140・和田静夫
○和田静夫君 これ、見過ごすわけにいかない財政法違反でありますから、財政法違反は違反として明らかにしておきましょう。
本題をもう少し進めますが、大臣、この元凶は今も言ったようにマイナスシーリングなんですが、公共事業関連については最近声が高くなってきていますね。社会保障についても、最低限法律で明確に規定されているものについてはマイナスシーリングの対象から外すことが必要ですよ。そういう努力を六十年度予算編成に当たって貫いていただきたいと考えますが、いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/140
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141・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) マイナスシーリングというのはここ二、三年続いてきまして、それに対して、単に社会保障だけとか、いや防衛費突出はどうだとか、いやそのほかはマイナスシーリングだとかというようないろんな制約がございましたけれども、六十年度予算のことでありますから私もまだ詳しくそこまで詰めた腹構えは持っておりませんけれども、いろいろな面でもっと取得してしかるべきではないか。今あなたのおっしゃったように、公共事業などもよく話題にはなっておりますけれども、社会保障の面あるいは文教の面とかいういろな論が出ておりまして、これからそういう問題なども各党とか政府内部におきましても議論の対象にはなっていくだろうと思いますが、今ここでちょっとまだ明確に申し上げるわけにもまいりませんが、しかし労働省の方も全般として行政改革には協力は、もちろんそれは人間のやったことでありますから、むだがあることはあるでしょう。それは排除せにゃいけませんけれども、ここ数年の結果から見て、考えるべきところは考えなくてはいかぬのではないかという論があることだけは私も認識をいたしております。
和田委員はいろいろ詳しく内部分析も予算のことも御承知でありますが、労働省の方はちょっとほかの省と中身の点も違うようでございまして、行革に協力すべきところはしなければならぬけれども、やっぱり労働省の本来の仕事について特別の支障がないようにひとつ弾力的にやっていきたいな、私はこう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/141
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142・和田静夫
○和田静夫君 その意味で大臣に協力することはやぶさかではないし、一緒に組んで少し予算を取ってくるぐらいのことはやったっていいと思っていますから言っているんですが、覚悟のぼどはわかりました。
法第六十六条は、事務費について国庫負担すべきとしているわけですね。これはけさの論議にもありました。ところが、そのとおりにはなっていない。職員の人件費はおろか、庁舎の改修費まで労使の拠出金で賄う、こういう運営は考えられませんよ。これはもう立法から、制度ができ上がったときの労働省のまさに失政だったと思うんですね。国が責任を負うべき社会保障制度だとはもう言えない、こういう状態は。
それで労働省、財政法十条に何と書いてありますか。事務費を国以外の者に負担させるためには法律に明示的な規定が必要、でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/142
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143・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 先生御指摘のとおり、六十六条におきまして国庫負担が規定されておりますが、「予算の範囲内において、」「事務の執行に要する経費を負担する。」ということでございまして、先ほど局長から御説明しておりますように、国庫負担の確保の問題について、御指摘はそのとおりでございます。
それから、事務費の支出につきまして、運用収入から支出いたしております。これは国庫からの支出ということでさしていただいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/143
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144・和田静夫
○和田静夫君 局長ね、今のところもう少し穴をあける努力しようじゃないですか。政管健保でも事務費は全額国庫負担でしょう。職員の人件費や庁舎の改修費は一般会計で見るのが当然でしょう。財政事情やその他のことをあなた言われましたけれども、やはり当初犯したあなた方の誤りは、どんな苦しい状態の中でも、でき得るものならちゃんと改善をしていく努力というのは常にやらなきゃいかぬですよ。早急に是正されるべきだ、そういう筋合いのものですよ、これは。
行革審の省庁別歳出削減対象項目の労働省の部分を読んでみたら、明確にまた「雇用保険特別会計の繰り入れ見直し」外二件でしょう。ここの部分についてはますますこれは覆いかぶさっできますよ。私は、大臣もちょっと触れられましたが、行革の誤りの部分は誤りの部分として、あなた方も一緒になって穴あけていく。私たちもやはり正当なものは正当なものとして救っていく。どんな周囲の事情の中にあったってそういうことが私は必要だと思うんですが、これは大臣、簡単に決意は伺えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/144
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145・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 国会にも、附帯決議でもそういう御指摘もあるようです。あなたのおっしゃるような御意見も、それは大変私どもにとっては力強いことでもございます。努力をしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/145
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146・和田静夫
○和田静夫君 局長、あなた官房長の経験者でもあるからね、どうだろう、六十年度の予算要求における労働省の最重点課題の一つにこれを組み入れる、このくらいの答弁はいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/146
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147・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) これはもう国会の附帯決議にもあることでございますので、私どもも重要な問題ということで臨みたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/147
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148・和田静夫
○和田静夫君 私は、今回の改正過程を見ていまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、大変疑問に思うのは、いわゆる拠出者の意見がほとんど反映されないままに改正作業が進められたという点であります。
大臣、保険財政のみならず雇用情勢が厳しい状況にある中で、労使の意見を十分に反映させて、そして制度を運営していくということが、これは肝要だと思うんですよ。先ほど大臣もそういう旨の答弁がありました。中職審の雇用保険部会だけではなくて――先ほど、労働行政にはいい例がありまして政労使のいわゆる協議というものが常に続けられる、審議会もある、こういう大臣の答弁がありましたが、私はその雇用保険部会だけではなくて、独立した労使の運営機関の設置が一つ必要だろうと思うんです。衆議院段階で、中職審の雇用保険部会を充実、強化をしていくという答弁があることを議事録で読んでいますけれども、ひとつ大臣、先ほど御答弁にもありましたように、労使の運営機関の設置、それも独立したものとして、そして本問題をさらに充実をさせていく、そういう見解ぐらいはこの委員会で表明になってしかるべきだと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/148
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149・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 中職審の中の部会がございますし、そこであなたのおっしゃるように労使のお話し合いが進むことは結構なことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/149
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150・和田静夫
○和田静夫君 それは大臣、よくわかっているし、衆議院でもそういう答弁になっているんですが、もう一歩突っ込んで、やはり私は独立した労使の運営機関を設置をして、そして長期展望の問題やら長期計画の問題やらいろんなことを申し上げてきましたし、財源上の問題のことも申し上げてきましたけれども、それらのことについてもう少し煮詰めた論議ができる、そういう保証というものをつくっていかれる方が、これからの労働省の行政にとっても私はマイナスになることではない、そういうふうに思いますがゆえに、もう一歩突っ込んだ構想というものをこの機会にお持ちになったらいかがだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/150
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151・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今後の雇用失業情勢の展望等を踏まえました場合に、やはり雇用保険制度だけでこういった問題の解決に対応していくというわけにもまいりません。そういう意味では、和田先生も御指摘のように、こういう広い立場から雇用対策というものを総合的に見直しながら具体的な対応を進めていくような検討が必要だ、こういうことで、実は中職審の中に労使公益の三者でこの春から雇用対策基本問題小委員会、こういうものを設けまして今鋭意検討も進めていただいておりまして、そういういわば場を設けて検討を進めております。
また、雇用保険の問題につきましても、今回の雇用保険制度についての答申におきまして、雇用保険の制度の運用についてこういう執行状況等を含めまして、随時十分説明なり協議、報告を求めるというような形で、雇用保険部会においても、まさに先生がおっしゃるような観点からの取り組みというものが今後なされるという流れになっておるわけでございますので、そういうような場を通じて今御指摘のような問題への対応を進めていくというような考え方でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/151
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152・和田静夫
○和田静夫君 時間も来ましたから、一歩譲って、今いわゆる雇用保険部会で煮詰めた、あるいはそれに付属するところの政労使のいわゆる機関でやっていかれる。しかし、それが全体の運営の流れを見ていて、さらに強力な独立した政労使の機関という、労使の機関というものを必要と認めた場合にはそこにやはり踏み切っていく、それぐらいのことを継続的に考えながら当面やっていくというふうに理解しておいてよろしいですか、今の答弁は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/152
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153・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) まあ新しいという意味がどういうあれかわかりませんが、とにかくこの雇用対策という問題、今中職審でも大きな問題として保険の運用制度の問題に取り組んでいただいたわけでございますが、もう一つ雇用審議会、こういう場が、今まで総理府にございましたのが今度労働省へ移りまして、事務当局としてやっていく、こういうような運びもあるわけでございます。そういう意味で、雇用審議会という場での御議論というようなものも今後またいろいろお願いをしていくという場面も、特に高齢者対策等を含めまして出てくるかと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/153
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154・和田静夫
○和田静夫君 もうあれですが、一番最初の三室戸学園の問題のいわゆる雇用保険法上の問題、労働基準法上の問題、これらの推移を見て、次回の委員会にさらに質問を保留したことと、長期的展望等の問題について理事会にお預けした問題について質問を保留する。そして、通告してありましたが、船員関係の問題について時間がなくなりましたので、これは後ほどまた同僚議員に触れていただく、そういうことにして、一応私のきょうの質問は終えておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/154
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155・中西珠子
○中西珠子君 ただいま議題となっております雇用保険法等の一部を改正する法律案に関連して質問をいたします。
今回の雇用保険の改正法案は、どう見ましても雇用保険の、殊に失業給付部門の赤字、五十七年度が二百十七億円また五十八年度は二百四十五億円ぐらいの赤字は出るだろうという見込み、そういった保険の赤字財政の立て直しだけを目標にして、そして失業給付総額の抑制を図ること、これを目的にしたものとしか私には思えないのでございます。例えば、政府の原案では、けさほどから何度も議論になっております、賞与等を失業給付の算定基礎から除外する、そういったことによって給付水準の実質的な切り下げが図られている。また、現在年齢別一律である所定給付日数を、年齢だけでなく、被保険者期間に応じて三段階に分ける。その結果、中高年層を中心に給付日数の削減が図られている。また、給付制限期間の延長とか、六十五歳以上の高年齢者の適用除外。また、基本手当にかわる一時金制度の創設などというこういった措置。また、保険料免除年齢の引き上げを行っている。こういったことを考えますと、どうしてもどうも弱い者、失業者にしわ寄せがいっている。失業給付総額の抑制による赤字財政の立て直しを図っておられるのではないかという気がしてならないわけでございます。
衆議院におきまして、自民、社会、公明、民社、社民連の五党共同修正案が可決されまして、一応赤字財政立て直しの負担が、弱い立場にある失業者、殊に中高年齢層に重くのしかかっているのが少し緩和されたということは一歩前進でありますけれども、ほんの少しということで、まだまだ十分ではないと思います。また、この共同修正によりまして、基本手当の給付率が六〇%から八〇%以内とするという賃金日額の範囲も拡大されましたし、特定不況業種離職者等に対する所定給付日数の現行基準適用による給付日数の延長、また、六十五歳定年等によって離職した者に対する基本手当の支給とか、また、六十五歳以上の雇用者が任意加入できる道が開かれたなどということは評価できるとは思いますけれども、まだまだこれでは不十分であると思います。
それで、いろいろのことにまいります前に、具体的な衆議院の修正案で認められました箇所につきまして、「労働省令で定める者」などという表現になっているところにつきまして、どのようなお考えであるかということをまずお聞きしたいと思うのでございますが、今回の衆議院の修正案で認められました個別延長給付の中で、その対象として特定不況業種離職者、特定不況地域離職者、倒産により離職を余儀なくされた者、また、船員であった後に陸上勤務となって、事業主の都合により離職した者、その他、これらの者に準ずるものとして労働省令で定める者、となっておりますが、この内容につきましてはどのようなことを目下お考えでいらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/155
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156・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 衆議院の修正によります個別延長給付の対象としては、特定不況業種離職者、特定不況地域離職者、それから倒産により離職を余儀なくされた者、それから船員であった後陸上勤務となり事業主の都合によって離職した者と、こういうような方たちでございますが、そのほか労働省令においてこれらの者に準ずるものということで現在考えておりますのは、例えば正式の倒産手続を経ないで事業所が閉鎖をされた、あるいはまた、事業活動が停止をされて再開の見込みがないために離職を余儀なくされた、こういうような方なども対象として、準ずるものとして検討をしていかなきゃならぬのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/156
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157・中西珠子
○中西珠子君 それでは次に、やはり労働省令のことでございますが、高年齢求職者給付金制度の創設によりまして六十五歳以上の人たちは結局適用除外ということになりますけれども、衆議院の修正によりまして、一応六十五歳定年などにより離職した者については、特例として基本手当を支給するという、こういう道が開かれたわけでございますが、この基本手当支給対象として、やはり労働省令で定める理由により離職した者というのが入っておりますが、この内容は、目下のところどういうことをお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/157
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158・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 六十五歳定年に達したことに準ずる離職理由としてただいま考えておりますのは、五十五歳以上の点に達した後に、引き続いて定年ではなくて再雇用、一応定年には達したが再雇用などによりまして、その制度によって雇用されている方が六十五歳の再雇用制度ということで、そこで離職をされる、こういうような場合などを検討いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/158
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159・中西珠子
○中西珠子君 今のはわかりましたが、けさほど、結局高年齢継続被保険者に六十五歳以上の人がなることができるという場合を言及されまして、そしてけさ局長が答弁されました中に、政令で定める日までという意味は大体三年間ということを考えていらして、暫定措置と考えていますとおっしゃったのでございますが、なぜ暫定措置とお考えになっているのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/159
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160・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) いろいろな御議論の中でこの修正は行われたわけでございますが、これは、結局は今回の改正によりまして六十五歳以上の方が雇用保険の適用除外となるということについて、激変緩和の措置ということでこの任意加入制度が導入をされた、こういう認識をしておるわけでございます。そういう意味で暫定措置と、こういうようなふうに考えておるわけでございまして、そういうようなことから私どもとしては三年というものを今考えておるということでございます。
いずれにいたしましても、こういう政令、省令関係は、具体的にはいずれも職安審議会におきましてまた御議論を賜りまして定める、こういう運びになるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/160
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161・中西珠子
○中西珠子君 暫定措置とおっしゃらずにずっとそれを続けていただきたいと思います。と申しますのは、けさの新聞にも出ておりましたけれども、人口白書が出まして、とにかく三十年後には六十五歳以上の人は五人に一人となる、また、六十五歳以上の雇用対策というものを考える必要があるということを人口白書が言っているわけでございますけれども、六十五歳以上の人でどうしても働かなければならない人というのが、今年金などの完備していない状況下から物すごく出ているわけでございますので、やはり六十五歳以上の人も雇用対策の対象としてお考え願いたい、そして強力な対策を展開していただきたいと考えるわけでございます。
けさほども、ちょっと中高年の雇用対策の質問が出ましてお答えも相当なすったわけでございますけれども、私はもう少し補足的にお伺いしたいことがございます。例えば、高齢者雇用率の未達成事業は四八・五%という数字をけさお答えになりましたけれども、この未達成事業につきまして、まあ命令で雇用率達成計画の作成を命じていらっしゃるところもあるし、また、自主的に雇用率達成計画をつくるように行政指導をしていらっしゃるところもあるわけでございますが、この作成率というものはどの程度になっておりますでしょうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/161
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162・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 雇用率達成計画の作成につきましては、これは二つグループがございまして、一つは千人以上の企業で雇用率が非常に悪い、二%以下のところ、こういうところにつきましては、命令でもって計画を策定させております。この命令による計画の策定件数は七百十二件でございまして――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/162
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163・中西珠子
○中西珠子君 何年度の数字ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/163
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164・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) これは今までの累計でございます。というのは、これは五十三年度にこの制度が動き出しまして、そのときに、一斉に未達成企業にばさっとかけたわけでございます。その後、新たに千人以上の規模に該当してそのように雇用率の低いところを順次捕捉していっておりますので、初年度にほとんど大半がかかってきております。累計といたしまして七百十二件――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/164
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165・中西珠子
○中西珠子君 それはきょう現在と見てよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/165
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166・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) これは五十八年度はまだ集計が終わっておりませんので、五十七年度現在というようにお考えいただければと思います。
累計として七百十二件、それから自工作成のグループが千五百四件、合わせて二千二百十六件となっておりまして、この分母になっております対象事業所数は約四千四百社でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/166
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167・中西珠子
○中西珠子君 その計画の実施状況はいかがですか。追跡調査をなすっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/167
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168・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) この雇用率の達成計画というのは五年計画でございます。したがいまして、企業によりまして、五十二年度のものはほぼもう五年を経過してまいりますが、その後のものはまだ一年、二年というものもございます。これを平均いたしますと、五年間に毎年度それぞれ目標を定めておりますので、そこを念頭に置きまして平均いたしますと、残念ながらこの実施率といいますか、達成率は約六割という状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/168
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169・中西珠子
○中西珠子君 それでは、六十歳定年制の一般化のための行政指導について伺いたいと思います。
けさほどの御答弁では、大体六十歳定年制を実施したのが四九%の達成率である、延長を予定しているものを入れますと六割以上ということでございますが、昭和六十年の終わりまでに一応一般化するということでございますが、その一般化という内容ですね、何%ぐらいなら一般化と思っていらっしゃるか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/169
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170・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) この一般化ということにつきましては、数字でもって何をもって一般化と言うかというのは非常にこれは難しい問題でございます。といいますのは、定年延長いたします場合、先ほども申し上げましたように、労使で自主的に話し合っていただく分野が非常に多いということでありまして、労使で話し合います場合でも、賃金コストの面あるいは労務管理、昇進管理というようなそういう労務管理面の問題が、年齢を延ばしますと出てまいります。特に定年延長につきましては、不況業種の企業が定年延長するということは、その企業の業態によって非常に難しゅうございます。私どもは、こういう不況業種に属するような企業、あるいはそうでなくてもその企業が非常に経営が悪化して苦しくなっておる、むしろ離職者も出かねないような状況の企業というのはすぐ定年延長というわけにもまいらぬと思いますので、そのような企業を除きましてほとんどのものが六十歳以上の定年制をしくならば大体一般化と言える状況ではなかろうかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/170
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171・中西珠子
○中西珠子君 六十歳定年を一般化するということのために一応いろいろ行政指導をなすっていると考えますが、賃金の面とか退職金の面とか人事管理の面で、労使の話し合いだけでは解決しない、やはりいろいろ労働省の方から指導を受けたいという面もあると思うんですけれども、そういった面、それからまた職務再編成とか職務の再設計などということも非常に必要になってくるのではないかと思うんですが、そのような面での行政指導はどこでやっていらっしゃいますか。
それからまた、その六十歳定年制を行政指導していくための手段として、定年延長奨励金というふうなものをお出しになっているんですが、これの効果というものについてはどのように考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/171
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172・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 指導といいますか、労使で自主的にお話しになるべきものに私ども行政が直接介入するということは私どもいかがかというように考えております。恐らく先生のおっしゃった意味は、指導というよりも定年制が延ばしやすいようにどのように側面から援助しているかという御趣旨だろうと思いますので、それにつきましてはまさに私どもがやっておるわけでございます。
具体的に例を挙げますと、例えば五十八年度から定年延長アドバイザーという制度を導入しております。この制度につきましては、高年齢者雇用開発協会というところにこのアドバイザーの制度を置きまして、私どもはこのアドバイザーを活用して、個々の企業に定年延長をしようとするときにどういうように個々の問題を解決したらいいかということをアドバイスしてもらうというようなこともやっておりますし、また、定年延長をします場合に一番問題になるのは賃金総コストの問題なのであります。その場合に、どのような設計にしたら一番いいかということで、賃金であるとか、あるいは退職金であるとか、あるいはまたそのための年金化の問題等につきましても一つのシミュレーションをつくりまして、このような場合にはこのようになるという計算サービスを現在その高年齢者協会でやはり同じようにやっております。そのようないろんな形での援助といいますか、側面からの御協力を申し上げるということで、これをより進みやすい形に持っていっておるつもりでございます。
それから次に、定年延長奨励金の効果ということでございますが、この定年延長奨励金は、御承知と思いますが、年を追って金額は膨らんできております。ちなみに昭和五十五年度の際は、この奨励金の支給を受けた対象事業所数は三千六百八十所でございましたが、五十八年度では一万を超えるような状況になってきております。この場合に、定年延長奨励金を主たる動機にして定年を延長したかということになりますと、定年延長そのものが奨励金もらえば延長するというような性格のものでございませんので、必ずしも奨励金があったがゆえに、それをもらいたいために延長したとはちょっと言いかねると思います。私どもが若干調べた状況では、やはり社会的要請を事業主の方々が十分自覚されて定年延長されたとか、あるいは労働組合の要請によって定年延長に踏み切ったという例が非常に多いわけでございます。ただ、この奨励金があったということがそういう社会的要請なり労働組合の要請をのむといいますか、定年延長に踏み切る契機になったということは私は十分言えるのじゃないかと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/172
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173・中西珠子
○中西珠子君 確かに定年延長奨励金の予算も実績もふえておりますから、非常に契機になったという意味では効果があったのではないかと思いますが、そのほかに労働省では高年齢者雇用確保助成金というのを今実施していらっしゃいますね。それの支給状況というのはどういう状況でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/173
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174・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 高年齢者雇用確保助成金は五十七年度から始めた制度でございまして、六十歳以上の定年を定めている企業がさらに六十歳を超えて定年延長、再雇用等の雇用延長を図るための助成金でございます。五十七年度はこれの支給対象人員は二千三百人で、支給額は約九億円でございます。五十八年度はこの対象人員が五千六百人で、支給額は約二十一億円ということになっております。また本年度は、これは年一回、毎年一月に申請して決定いたしますので、本年度の実績はまだ出ておりません。
私どもは、ちょっとこの伸びが、必ずしも定年延長奨励金ほどには伸びていないという面はございますが、これはこれからの対策であろうと思いまして、今後本格的な高齢化社会を迎える中でこの助成金が十分活用されるように、諸般の何といいますか、指導なり勧奨を進めていきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/174
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175・中西珠子
○中西珠子君 今回、新規の助成金として、今年度から高年齢短時間労働者雇用助成金というものをおつくりになりまして、大体六十歳以上の人が短時間就労したときに助成金を出す、すなわち奨励するということで設けられたというふうに理解しておりますが、この短時間労働者に対しても高年齢者雇用確保助成金の支給対象とするというふうに説明書にお書きになっていまして、そして今度は短時間労働者雇用助成金というものの創設ということもやはりあわせて書いてあるわけでございますが、これは給付対象の人員はどのくらい見込んでいらっしゃるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/175
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176・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 高年齢者のいわゆる短時間勤務の場合の労働者の助成金の見込みでございますが、これは御承知のように五十九年度、本年度が初年度で出発するわけでございまして、助成金の受給者は約三百人、所要額は五千二百万円というふうに見込んでおります。もっともこの助成金につきましては、雇い入れてからすぐにお払いするというわけにはまいりません、実績を見る必要がございますので。六カ月を経過した後の九月または三月に、これは暦月の九月または三月に支給するということにしております。したがいまして、五十九年度は施行の関係から最初の支給は六十年の三月に支給される分だけが予算計上になっておりますので、ちょっと一見しますと非常に見込みが低いように見えると思います。しかし、これは平年度ベースに置きかえて計算いたしますと、実はこの三百人というのは約二千人弱、千九百人くらいになるのじゃなかろうかというように思います。所要額としては約三億一千万ぐらいの額でございます。これは、ことしの初年度を平年度に引き直して考えるとそういうことになるということでございます。これはことし始まったばかりでございますので、今後さらにこれが伸びるように努力していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/176
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177・中西珠子
○中西珠子君 今のお答えをお聞きしまして少し安心したんです。予算を見ますと五千五百万くらいしかないのに何人おやりになるんだろうと実は考えていたわけでございます。
これはうまくいくと非常に雇用の機会もふえることでございますから結構なことだとは思いますが、それは高年齢者雇用確保助成金の支給対象ともして、また今度は短時間労働者雇用助成金というものもやるという、両方という意味でございますか。それとも片一方だけで、例えば大企業に対しては年間十五万、それから中小企業に対しては年間二十万ということでなさるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/177
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178・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 先ほどもあるいはお話ししたかどうか、もともと高年齢者雇用確保助成金というのがございます。これがもともとあった制度でございまして、これは六十歳台前半層を対象にしているわけでございます。これは五十七年にこの制度つくりましたときは、フルタイム雇用を念頭に置いておりました。フルタイム雇用を念頭に置いておりましたので、この場合は一人当たり中小企業四十万、大企業三十万ということになっております。今回の場合は短時間の就労ということで、隔日勤務であるとか、パートのようなフルタイムでない場合をこれは念頭に置いておりますので、フルタイムの場合は四十万、三十万でございますが、こういう短時間勤務の人の場合はそれの半分の二十万、十五万になるということでございまして、その両方、四十万と二十万がダブって出るとか、そういうことじゃございません。片方がフルタイム、片方が短時間就労ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/178
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179・中西珠子
○中西珠子君 その御説明は大変すっきりしているんですけれども、労働省からいただいた資料によりますと大変はっきりとしない説明でございまして、私の頭が悪くてわからなかったのかもしれませんが、もう一つ、定年退職者等雇用促進助成金(仮称)、これの創設というのが出ておりますね。これはどういう意味合いのものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/179
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180・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) これは六十歳以上の定年制をしいておる企業で、定年になって退職されるという場合、こういう方がいま一度できるだけ早期に再就職されることが可能な方が非常に望ましいわけでございまして、そういう場合に、その定年を迎える企業の事業主の方のごあっせんによって、どこか別の企業に雇用の場が得られるというような場合、それを推奨する、推奨といいますか、奨励するためにそういうケースについて奨励金を出しましょうということでございます。したがって、これも額としては中小企業四十万、大企業三十万というもので対応してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/180
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181・中西珠子
○中西珠子君 自分のところで雇用を延長してやっていく場合の助成金と、よそへもあっせんして、そしてよそで雇用をしてもらう場合の助成金と両方お出しになって、中高年の殊に六十歳以上の人の雇用を大いに推進しようとしていらっしゃる御努力は買いますから、うまく行政指導をなすって、フルにその助成金をお使いになって中高年者の雇用の促進を図っていただきたいと思います。
それから雇用保険の問題に戻りますけれども、もちろん雇用保険の財政の中から今の助成金をお出しになるわけですけれども、けさほどからいろいろ問題になっております事務費の問題ですね、事務費は国庫で負担するのが本来の筋ではないかという、そういったことの見直しをも含めまして、また雇用保険法の失業給付部門だけではなくて、雇用保険法のもとで同じに行われております失業予防のいろいろな政策、そして事業、例えば雇用安定、雇用改善、能力開発、雇用福祉の四事業、こういった四事業もやっぱり厳密に見直しをする必要が私はあるのではないかと思うのでございまして、本会議におきましてもちょっとそのようなお話をいたしましたところ、労働大臣は見直しが必要であると御賛成くださったように受けとめておるのでございますけれども、四事業の過去五カ年の予算と実績というふうなものの資料がおありになりますでしょうか。もし簡単に御説明ができましたら、お教えいただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/181
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182・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 雇用保険四事業全体の予算と実績につきまして、それぞれ五十三年度から申し上げます。
五十三年度の予算が約二千二百六十六億円、実績は約千五百十二億円。五十四年度、予算は二千四百九十一億円、実績千七百六十三億円でございます。五十五年度の予算は二千六百億円、実績が二千五百四十七億円。五十六年度の予算は二千九百四十九億円、実績は二千八百五十億円。五十七年度、予算は二千八百十五億円、実績が二千四百八十一億円となっておりまして、この制度の実績は、徐々にではございますけれども、予算、実績とも増加傾向にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/182
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183・中西珠子
○中西珠子君 予算、実績とも非常に上昇過程にありまして、また赤字ではないということで大変結構とは思いますけれども、この四つの事業がやはり現在本当に失業予防の役に立っているかどうかということにつきましては、どうしてもやはり厳密な評価と見直しというものをやっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/183
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184・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) この雇用保険四事業の中で、雇用安定事業につきましては、特に失業予防、雇用の安定のために雇用調整助成金制度が実施されているわけでございます。この雇用調整助成金制度につきましての実績を見ますと、昭和五十六年度が九十三億円、五十七年度には九十九億円、五十八年度におきましては百六十二億円という実績を示しておりまして、これは、先生御承知のとおり、企業における休業あるいは教育訓練等の雇用調整措置に対して助成を行うわけでございまして、この助成金の利用につきましては、関係業界や関係事業主に対してこの制度の目的に沿った効果的な活用が行われるように指導を申し上げるとともに、毎月事前に休業や教育訓練等の雇用調整措置を実施する場合の実施計画を事業主から提出していただきまして、その内容をチェックするなど、助成金の目的に沿った活用が行われますように事業主に対して指導を申し上げるというようなことで、この調整助成金の制度を活用している状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/184
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185・中西珠子
○中西珠子君 雇用安定事業におきます雇用調整助成金というものは、私も関係しておりましたILOにおきましても、世界雇用計画のもとでグローバルな雇用対策をやっているわけでございますが、日本に失業が少ない、比較的ですよ。現在統計史上初めての失業率で非常に厳しい情勢なんですけれども、日本が高度経済成長を続けていて失業率が比較的少ないという実績、そしてそういった失業を予防してきたという面では、雇用調整助成金が非常に大きな役割を果たしたのではないか。殊に産業構造の変化、内外の経済情勢の変化から出てきた産業構造の変化というふうなものに対応してうまく雇用調整をして助成金を出して、そして失業を出さないようにしてきたということは高く評価されているということでございますけれども、その点労働省は非常に立派にやっていらしたと思うのでございますけれども、やはり経済状況の実態に、また変化に即応したようなやり方をしていただきたいと思うし、指定業種というのは現在幾つあるのかという点と、それから昭和五十六年の六月八日に指定基準が決まったということでございますが、この指定基準の見直し、手直しというのは、ずっとやっていらして現在どういう指定基準でやっていらっしゃるかというふうなことにつきまして、もし御説明がいただければと思います。余り長い御説明ではほかの方々の御迷惑になりますので、簡単におっしゃっていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/185
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186・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 雇用調整助成金の対象になります指定業種数は、五十九年六月一日現在で百三十二業種でございます。
それから、業種の指定基準につきましては、制度発足後、それぞれの状況、産業の実態等に応じまして必要の都度順次見直しを行ってまいりまして、五十七年度につきましては、再指定制度の新設を行うなど、五十八年につきましても同様、指定期間が長期にわたりました業種に対して一年間の再指定制度を新設するなどの見直し等を行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/186
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187・中西珠子
○中西珠子君 支給対象事業主への雇用調整助成金を支給なすったその後、もしくは今お話しのあった再指定の場合の支給期間の終了後に、雇用調整助成金を使って本当にうまくいったかどうか。また、その後希望退職をやっちゃって首切ったなんてということがないか。そういった失業者を出さなかったかどうかというふうな追跡調査をなすったことはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/187
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188・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 御指摘のような追跡調査を特に実施しているということではございません。この雇用調整助成金を利用した事業所につきましても、遺憾ながら、その後企業の業況が回復しないために倒産に至って離職者が出たというような事例もございますけれども、全体としては、この制度を利用することによって離職者の防止、雇用の安定に寄与してきたのじゃないだろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/188
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189・中西珠子
○中西珠子君 確かに離職者の防止それから失業の予防というものに寄与してきたことは私も認めるのでございますけれども、ある一部の学者の中には、やはり解雇制限規定も何もなしに雇用調整助成金だけ出していて、支給期間が終わったらどんどん首切っているところもあるんだというふうな批判もあるわけでございますので、追跡調査というものもたまにはやってみていただきたいという要望を披瀝いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/189
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190・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 先生御指摘のような点を含めまして、調査その他につきまして、雇用調整助成金の利用実態等についてもできるだけ把握に努めるようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/190
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191・中西珠子
○中西珠子君 よろしくお願いいたします。せっかく世界のいろんな国々から褒められているやり方でございますし、いい政策手段だと思いますので、ぜひ追跡調査をやっていただいて、実態調査もやっていただきたい。また、基準の見直しということもときどきやっていただきたいという要望を重ねて申し上げておきます。
それから、今回の雇用保険の失業給付部門の改正案でございますが、これはけさほども出ましたけれども、中央職業安定審議会の答申に基づいてやっているのだというお話でございましたけれども、中央職業安定審議会の方では、余りにも短い審議の時間であって、これでは困る、この次からもっとゆっくりとした時間を見てほしいという御要望も出ていると伺っておりますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/191
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192・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 審議会におきましては、特に労働側の方からそういう御意見等も出ておりましたけれども、私どもとしては、審議を精力的に進めまして、何回も御審議をいただいておるというようなことでございます。
いずれにしましても、この制度の今後の運用というものを含めまして、例えば、この雇用保険制度につきましても、審議会なり雇用保険部会なりというところに随時運営の状況なり問題点といったようなものについて御説明し、御報告をしていく、こういうようなことをしていくということで考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/192
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193・中西珠子
○中西珠子君 どうも赤字財政の立て直しのためにあわてて改正案をお出しになったような印象を受けるものですから、もう少し審議の時間を与えてあげていただきたいし、また、慎重にお考えをいただきたいということも考えているわけでございます。
その同じ中央職業安定審議会の答申の中で、失業給付受給者の再就職率の低下は大きな問題であるということを言っておりますね。再就職率の低下というものは、やはり失業給付が高過ぎるから、そして所定給付日数も長いから、それを十分におしまいまで受け取って、そして悠々と暮らしていけるから、むしろ失業給付を受けている方がいいのだというふうな気持ちの人が多くて再就職意欲をそいでいるという意見の人もあって、それを援用なすって何度も御答弁をなすっているようでございますけれども、再就職率の低下というものは、この中央職業安定審議会の答申の中でも言っておりますように、公共職業安定所における職業紹介というものについてもやはりもう一度見直しをやっていただきたい。私も職業安定所の大変すばらしいところを見せていただいて、ここではもう本当に気持ちがよくて、だれでも喜んで紹介をしていただくようにたくさん人がやってくるだろうという印象を受けたんですけれども、日本じゅうを考えてみますと、やはり場所によっては余り職業紹介を親切にやってくださらないところもあるのではないかという批判を聞くわけでございますが、一応全国的に公共職業安定所の職業紹介を見直ししていただいて機能を効率的に、そしてまた効果的に強化していただくということをお願いしたいと思うのですけれども、そのような御意思はおありになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/193
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194・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今後の雇用失業情勢、非常に厳しい状況にあるわけでございまして、そういう中におきまして、やはり最大の問題は需要と供給のミスマッチの解消ということを最重点の課題といたしておるわけでございます。そのためには今先生御指摘の安定所の職業紹介機能というものをどうしても高めていく必要がある、こういうことでございまして、この機能強化につきましては昭和五十五年度から我が方も抜本的に体制を刷新していくということで進めておるわけでございまして、具体的には一つは求人求職者に対するサービスの向上を図るために求人の自主的な選択ができる、あるいはそれが適当な方、それから専門的な相談援助というものが必要な方、あるいは心身障害者等就職に当たってのハンディキャップを有する方、こういうそれぞれ求職者の態様に応じました窓口体制、こういうようなものに再編をひとついたしまして、きめ細かな相談紹介体制がとれるような体制づくりをしたわけでございます。
それからまた、事業主に対する雇用管理改善という面での援助あるいは雇用職業関係の情報提供、こういう求人者サービスを強化いたしますために、こういうことを専門に担当いたします専門官を配置をする、あるいはまたそういうサービスを実施するための窓口での体制づくり、あるいはまた電話ファックスを利用いたしました求人受理、あるいは求人連絡、こういうような仕組みもつくったわけでございます。
さらにまた、今後のこういう情勢変化、特に情報化社会というような中で、安定所が需給調整機能の中核として紹介サービス、あるいはまた雇用職業に関する情報提供サービスというものを一層向上さしていく、こういうことが必要だということを考えておりまして、このために昭和六十一年度の実施を目指しまして総合的雇用情報システムというものの開発を今進めておるわけでございまして、これによりまして的確な求人情報、あるいは求職情報というものを窓口に置きまして、即時に利用者に提供できる、あるいはまた必要な求人求職情報をより広い地域から即時に探索できるというようなことなどをこれによってやろう、こういうことを目指しておるわけでございます。
いずれにいたしましても、今先生おっしゃいますように、今後安定所の機能強化というものが全国的に必要である、こういう基本的な認識に立ちまして、それぞれの安定所がそれぞれの地域における総合的な雇用サービス機関、こういうものになっていきますようぜひ努力をしていきたい、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/194
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195・中西珠子
○中西珠子君 ただいまの局長のお話にございましたように、やはり職業紹介のサービスをよくしていただくということと、それから目下考えていらっしゃいます情報システムの整備強化ということによりまして、職業紹介の非常に効率的な運営ができるというふうに期待いたしておりますけれども、けさほどから何度も問題として出てはおりますが、技術革新の進展とともに、そして産業構造の変化などの結果、やはり労働力の需要と供給の不適合というのですか、そういうものがだんだん大きくあらわれてくると思いまして、そういったときにやはり労働者の能力の開発、生涯訓練という面から、今の当座の間に合わせばかりでなく能力の開発ということが非常に重要になってまいりますし、能力開発事業を今雇用保険制度のもとで行っていらっしゃるわけですけれども、これとやはり職業紹介との関連ということで、大いに職業訓練の面でのもっと近代化というものと、それから職業指導という面を大いに充実していただきたいと思うのですけれども、MEの導入というふうなものがどんどん進展している中で、現在の公共職業訓練所におきましてME機器というものを既に導入設置して訓練をなさっているところがどの程度ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/195
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196・野見山眞之
○政府委員(野見山眞之君) 資料を今持ち合わせておりませんので後ほどお届けいたしますけれども、ME化に対応いたします公共訓練の実施につきましては、例えば科目につきましては、電子計算機科あるいは情報処理科等のME関連の科目の増設等に努めているほか、既存の学科、例えば機械科、事務科におきましても、機械を処理する上でMEの知識を持っていなければならないというようなこと等でございますので、NC旋盤ですとかあるいはコンピューター等をリースでもって訓練校に導入をするというような仕組み等も現在進めているところでございますので、そういった意味でME化に対応した公共訓練の充実、推進についてもさらに努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/196
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197・中西珠子
○中西珠子君 それは大いに進めていただきたいと思いますし、また、足りない分は既に各種学校とか専修学校に委託訓練ということもやっていらっしゃると思いますが、そういった委託訓練の面でもやはりうまく協力していただいて大いに訓練の実を上げていただきたいと思って、御要望いたす次第でございます。
次に、今度の雇用保険の改正案の中に、給付制限期間の延長というのがございますね。それで職業訓練、職業指導を拒否した場合の給付制限というものもございますけれども、そのときの運用基準ですね、どういった職業指導、職業訓練のあっせんをしたときには給付制限をもって強制するかというそこのところなんですけれども、やはり本人の希望とか本人の適性というふうなものをよく考慮なさって、試験などもなさったり面接のテストなどもなさったりして、こういった職業訓練についた方がいいんじゃないかという指導を公共職業安定所で果たしてなさっているのかどうか、その点をちょっとお伺いしたいと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/197
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198・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) この給付制限の関係の問題につきまして、制限期間の延長あるいはまた、現在再就職する場合の紹介を拒否した場合の給付制限、こういったような問題等があるわけでございますが、いずれにしましても、一つには自己都合退職の方、これが安易な離職をされないようなという意味での給付制限期間の延長でございますが、率直に申しまして、現在の労働市場の状況といったものについて的確な見通しのないままに自己都合退職という形でおいでになる方も相当あるわけでございます。
また、再就職するにつきましては、今御指摘ございますように、今までと同じような仕事がしたいとか、今までと同じような、事務系の方であれば事務系とかというふうになりましても、なかなか、先ほどから申し上げておりますように、事務系の求職者は多いが求人の方は事務系はほとんどなくてサービス業関係が多いとか、そういうような大きな構造変化が起きてきておるわけでございます。そういう中で今後再就職を進めていきます場合には、御指摘のように訓練というものによりましてこういうある程度時代の要請に沿った方向への本人の職種転換、こういったものもまた進めていきませんと、なかなか再就職が進まないというような事情もあるわけでございます。そういう意味では、こういう訓練とのタイアップをしながらの再就職の促進ということがこれからのミスマッチ解消の上での大きな一つの大事なことであるというふうに考えておるわけでございます。
また、そういう訓練という機会を通しまして本人の再就職を図っていく、あるいはまた新しく考えておりますのは、そういう離職者につきまして新しく職場につかれる前に再就職の促進のための短期講習制度、こういうようなものも新しく設けていきたい、こんなようなことも現在検討を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/198
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199・中西珠子
○中西珠子君 私は、給付制限期間の延長に関しまして、自己都合退職の場合のことはまだ言わなかったわけなのですけれども、先に、自己都合退職を防止するためにと、自分の都合による退職の人たちについては給付制限期間を延長するというお話をなさいましたが、これがまた運用次第によりましては職業選択の自由というものを侵す危険もあるし、また、就職を拒否したときは給付制限制度が一カ月、訓練受講拒否が一カ月、職業指導拒否が二週間というふうに今なっておりますけれども、これを延長してどういうようになさるか、その運用基準というものを見直しを行っていただきまして、そしてやはり慎重に運用していただきたい。それでないと憲法で保障されております職業選択の自由とか適職選択権というものが脅かされるという事態も起こらないとは限らないという心配をするわけでございますので、いろんな職業指導をなさるに当たって、また、職業訓練を進めるに当たっては、いろんな適性検査その他のこともやってあげてというふうな幅広い配慮を、また細かい配慮をしていただきたいと思うわけでございます。
例えば若い人の受給資格の決定を受けて、そして離職理由を調査なすった職業安定局のお調べなんですが、これによりますと二十九歳までの年齢層は八二・二%が自己都合による退職、三十歳から三十九歳までの年齢層では自己都合による退職が六八・三%とあるわけですね。これは、そういった安易な離職というものを防ぐために自己都合による退職の給付制限というものを延長したとおっしゃっておりますけれども、やはりその年齢層では果たして自分がどういう仕事をするのが一番いいかということもわからないという面もあるでしょうし、また、この仕事はどうしても嫌だからもっといい仕事を探したいという気持ちもあるでしょうし、とにかく雇用保険の失業給付というものは自分が保険料を払ってきたんだから、これは権利だから、それをもらっていて、そしてもう少しいい仕事につくために離職しようと思う気持ちの人もあると思うわけですね。ですから、安易な離職を予防するためにという御説明では何だか納得のいかない気がするわけでございますけれども、その点はいかがなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/199
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200・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 雇用保険におきます失業給付というものは、本来的には、解雇というようなことで全く非任意的な失業ということに対して給付を行うということを基本としておるわけでございますが、今御指摘のような、いわゆる正当な理由のない自己都合退職というように予定された自発的失業、こういうようなものにつきましても、労働の意思及び能力というものがある限り給付を行うということにしておるわけでございます。しかしながら、こういうみずからの意思で保険事故である離職、こういうことを選択をされたという人に対しまして、それ以外の解雇、全く非任意的な形で保険事故である離職となった方と全く同様な取り扱いを行うということについては、制度の乱用につながるという問題もあるわけでございまして、実際上また解雇によって収入の途絶えた人たちとは求職活動中の生活保障の必要性という面でも異なるものもあるということが考えられるわけでございます。
現在、六割を超える方が正当な理由のない自己都合退職、こういうことでございまして、年齢を平均いたしますと、今御指摘ありましたように、この傾向は特に若い方に目立っておるわけでございます。これは現行の給付制限というものが一カ月以上二カ月以内、こういうことでございます。こういった点について、職安審議会の雇用保険部会におきましても、今自己都合退職者一カ月という適用をいたしておりますが、この期間が短いことが一面ではまた安易な離職というものを誘う結果になっているのではないか、こういうような趣旨の御指摘をも受けておるわけでございます。そういう意味におきまして、今後こういう給付制限期間というものを延長いたしまして、離職を決意する際の慎重な判断を期待する、そしてさらに給付制限期間中でありましても再就職というものをされた場合には再就職手当というような制度をこれを併用することによりまして、自己都合退職者でございましても、給付制限期間中でありましてもできるだけ再就職を促進していく、あるいはまた再就職意欲を喚起していく、こういうような仕組みにもいたしておるわけでございます。
しかし、御指摘のように運用によりましてはこういう職業選択の幅を狭めるというような結果になるおそれもあるわけでございまして、今後衆議院でのいろんな御議論、附帯決議の趣旨にも沿いまして、職業選択の自由に十分配慮しながら労働者の生活の実態あるいはいろいろ経済社会の変化、こういったものに対応いたしまして、こういったものを考慮してこの給付制限制度の具体的な運用基準については今後職安審に諮った上で見直しを行っていきたい、こう考えておるわけでございまして、例えば単身赴任の関係の問題だとかあるいは技術革新の関係の問題であるとか等々、いろいろ新しい事態も出てきておるわけでございます。そういうような社会経済の変化の中でいろいろ新しい事情が出てきておる、そういうようなものを加味をいたしまして、これはできる限りそういう時代の変化に合ったような運用基準というものになるような再検討を加えて運用をしていきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/200
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201・中西珠子
○中西珠子君 時代にマッチした、そして若い人たちの意識構造というものもお考えになった運用基準というものを策定していただきまして、審議会にかけていただきたいと要望いたしておきます。
それから、けさほどからいろいろの方が問題にされていたことでございますけれども、今回の改正案におきましては、失業給付の算定の基礎から賞与等を除くということになっておりまして、しかし保険料の徴収の方は賞与等も対象にしたものを徴収するということでございますが、もし保険料の徴収のときに賞与等も対象にしないというふうに、一応給付とそれから保険料の徴収との整合性を図る場合には、毎月の賃金からもっと多くを取らなくちゃいけないということ、保険料の料率を上げて毎月の賃金から取らなくちゃいけないということになりますというお返事でございましたけれども、それでは、もし賞与等を対象にしないということでございましたら、当分の間は保険料を上げませんということをお約束になれますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/201
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202・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今後の雇用保険財政の見通しにつきましては、先ほど審議官からも申し上げましたように、いろいろ再就職手当制度というものをつくりまして、受給者ができるだけ早く就職をしようという積極的な意欲を持っての求職活動を続けられる、その結果、どの程度就職率が上がっていくのかと、こういう問題、あるいはまた今後の景気の動向というような要素などもございまして、その結果この改正で必ず何人どうなるというような形で、ぴしっとその辺の見通しを立ててということを若干しにくい面もございますが、少なくとも今までのような受給者の急増傾向とか滞留傾向とか、そういったものは改善をできるだろうと、こう期待をいたしておるわけでございます。こういう雇用構造の変化に対応しながら、けさほどからいろいろ申し上げておりますように、私どもも失業の未然防止あるいは離職者の再就職の促進、こういうような努力を一層強めていかなきゃならぬ、そういう中で、私どももこれが保険料の再び値上げになるということにならないよう努力をしなきゃならぬし、また、そういうような形にやって努力をすればいけるであろう、こういうようなもとにやっておるような次第でございます。
いずれにいたしましても、この職安審議会の答申におきましても、こういう全体的な支出の効率化を図ることによって、安易な保険料率の引き上げにつながらないよう努力すべきであるという御指摘を受けておるわけでもございますし、保険料率の引き上げ、こういうような事態に至りませぬよう、この新しい制度の効率的な運用、あるいはまた雇用対策というものの一層の積極的な展開というものの中で、そういう保険料率の引き上げということが軽々に起こらないような形に何とかしていかなきゃならぬし、また、そういう努力の中で、引き上げという事態にならないよう、私どもも期待をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/202
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203・中西珠子
○中西珠子君 今、局長からもなるたけ保険料を上げないように努力したいし、また、雇用対策も積極的に展開したいというお話もありましたし、また、本会議におきましても、労働大臣からもそのようなお答えをいただいておりますので、大いにここで効率的な運営をなすって、保険料の値上げなどにはつながりませんようにお願いをいたすわけでございますが、その積極的な雇用対策の展開といった場合に、やはり中高年対策とか、産業構造の変化に対する対策とか、いろいろの給付金を出して、そして雇用調整をするというふうなことも大事なのでございますけれども、そのほかに、やはり労働時間の短縮とか、週休二日制の実施というふうなことも、やはり失業者をなくしていく、そして雇用対策を展開していくという上には必要なのではないかと思うわけでございます。
昭和五十六年の四月に、雇用に係る給付金等の整備充実を図るための関係法律の整備に関する法律という長ったらしい名前の法律ができまして、雇用にかかわる給付金がもう本当にたくさんあって、まあ複雑怪奇と言っちゃ悪いですが、本当に複雑をきわめていたのを統合整理なさいまして、そして効率的な運営をなさっているということでございますが、その余りにも複雑な給付金というものをおふやしにならないで、うまく既存のものを運営したりなさるようにお願いいたしますけれども、この法律ができたときの附帯決議にも労働時間の短縮とか週休二日制の実施ということが言われておりますが、最近の労働時間短縮、週休二日制の実施についての行政指導の成果というものはどのように考えておいでになりますか、また、御報告も多少短くいただきたいと思うのでございますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/203
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204・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 労働時間の短縮対策につきましては、私ども、週休二日制が我が国においてまだまだおくれておるということで、週休二日制の促進、それから年次有給休暇の消化率が現在約六〇%ということでございますので、これを職場の中で計画的に、まあ職場の中のメンバーが相談しながら完全消化という形で計画的なとり方をするというような形で年休の消化、それから恒常的な長時間労働というものを三六協定の指導等を通じながらできるだけ圧縮していく、この三つの柱で現在行政指導を強化しているという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/204
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205・中西珠子
○中西珠子君 労働時間の特例の解消、これはいかがですか、どのように進んでおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/205
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206・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 八時間労働制の適用の例外ということで、九時間ないし十時間の特例が特定の業種について認められておるわけでございますが、これを段階的に解消をしてまいりまして、来年の三月の時点で、一番最後に残った九人未満の規模の一番零細な事業についての特例を来年の三月末に審議会にどうするかということを検計していただくということで、現在実態調査等もやりながら、最後の規模の特例の解消に向かって今検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/206
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207・中西珠子
○中西珠子君 どうぞ、その特例も早くに解消できますように、一層の御努力をお願いしたいと思います。
労働時間の短縮は失業の予防、また、失業を少なくするためにも役に立つということで、最近御承知のとおり西独でストをやっていまして、労働時間の短縮を叫んでいるわけでございますけれども、日本の労働時間は御承知のとおり世界に冠たる長時間でございますから、やはり労働時間の短縮という面でも御努力をやっていただきたい、それによって失業の予防にも、また失業者の救済にも役に立つのではないか、このように考える次第でございます。西独のストのプラカードを見ましたらば、日本が喜ぶと書いてあったんですよ。御存じですか。――日本の長時間労働が一層進む中で、自分たちが失業者の救済のためにワークシェアリングの意味で労働時間を短縮する要求をすると日本が喜ぶというプラカードが出ているぐらい、日本の長時間労働は有名でございますので、その点は大いに時間短縮の方向に向かって行政指導をしていただきたい、それがまた失業の予防にもつながるものであるということを強調いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/207
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208・山中郁子
○山中郁子君 本委員会における雇用保険法の一部改正についての初めての審議でございますので、きょうは私は総論的に、本法案が目指している本質について政府の考え方をただし、明らかにしたいと存じます。
私は端的に申し上げまして、この法案はいわゆる行財政改革の一環として提出されたものと判断をし、またそういう内容のものであると認識しておりますけれども、まず、労働大臣のこの点についての御見解はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/208
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209・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 今回の改正は、今後の雇用失業情勢の構造的な変化に的確に対応して、再就職手当を新設するなどによりまして失業者の再就職の促進を図りますとともに、制度の不合理な面を改めて労使の負担をできるだけふやさないように、将来にわたって制度の健全な運営を図ろうとするものでございまして、単に財政負担の軽減ばかりを目的としたものではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/209
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210・山中郁子
○山中郁子君 幾つかのことをおっしゃったんですけれども、それらの問題を解明していけば、結局のところ帰着するところは財政節減ということであるということは、既に財政制度審議会が「歳出の節減合理化の方策に関する報告」で、雇用保険の国庫負担制度という問題でこれを抑制する方策を検討する必要があるというものが出されて、それに基づいて審議がされてきた、そして本法案が提出されてきたということを見ても明らかなことだというふうに思います。
いわゆる財政再建と称してマイナスシーリングの方針に沿ったもので出てきているわけですけれども、一口にマイナスシーリングと言いましても、今いろいろ議論にもなっておりますが、事実に照らしてこのことを正確に言うならば、私ども多くの機会に指摘もし、また主張もしてきておりますけれども、国民生活の関連部分はマイナスであって、防衛費の突出を初めとする大企業補助金など、そういうところはプラスシーリングになっているというのが実際の姿だと思います。
そこで私は、大変根本的な大事なところですので、ぜひ労働大臣の忌憚のない御意見をお伺いしたいと思うことがあります。それは、これは六月十八日付の朝日新聞だったと思います。朝刊で報道されました世論調査の結果によりますと、防衛予算の増額に反対する声が七〇%を超えているという報道になっております。これを正確に見ますと、設問は、防衛費をふやした方がよいと思わない、こういう設問でございまして、七四%の方たちがそのように考えているという結果が出ております。このように考える方たちは、この世論調査によりましても年々ふえてきているということも同時に明らかにされております。このように国民の防衛費の突出に対する批判はまさに年々高まってきておりますが、私はそれは当然のことだと思います。
本法案もそうでございますけれども、一般に国民生活関連の支出抑制、そうしたことは進めていく一方で防衛費は引き続き毎年度突出していく、そして負担が増額していく、こういうことについては結構であるというお立場をとってはいらっしゃらないと思いますけれども、その点の御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/210
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211・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 今のところ、確かに防衛費とか海外協力費とかそれからエネルギー対策とか科学技術とか、これはやっぱりシーリングの枠外ということで対処をいたしておるのは政府の方針でございます。
しかし、ただいまあなたの言われましたように、防衛費を余り突出し過ぎてはいけないというのが国民の大半の大方の判断である、現状程度のレベルにしておけという人が多いということは私も承知をしておりますし、それはそれなりに健全な判断であると私は思っております。
だから政府といたしましても、GNPの一%以内というこの枠は守っていかなければならぬ、これはやっぱり国民の期待するところである、現在そういうシーリングの枠からは突出しておるというふうに見られておりますけれども、しかし国民の常識的な一つの枠、それはGNPの一%以内である、ほかの欧米などのように一〇%だとか、いや四、五%だとかいうようなそんなことはしてはいけないというのが国民の判断だと思っておりまして、その判断は私は健全であり、政府としても守っていかなければならぬと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/211
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212・山中郁子
○山中郁子君 GNP一%にすりかえないでいただきたいのでありますけれども、私が申しましたのは、現状もちろん突出しているし、ここ数年ずっと突出してきている。マイナスシーリングだと言いながらこの分野だけは突出してきている。これに対して国民の批判がある。それでなお国民生活の関連のところを抑えに抑えて、そして片方防衛費の突出は結構であるというお考えかということでお尋ねをいたしました。そういうお考えでないということでございましょうか。端的にお答えいただきたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/212
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213・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 先ほども申し上げましたように、防衛費などがマイナスシーリングの枠外に置かれておるということはもちろん事実でありますが、国民全体の常識からすれば、GNPの一%以内程度がこれが好ましいということもこれまた一つの国民的シーリングの中にはまっておるものだと、私はそういうふうに判断をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/213
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214・山中郁子
○山中郁子君 GNP一%を超えるなどとはもちろんとんでもない話でありますけれども、マイナスシーリングの攻撃の中で国民生活が困難を増す中で、防衛費などが突出するということについての批判ということをきっちりと受けとめるべきだと思います。
それで私は、最初に本改正案がいわゆる行財政改革の一環として提出されているものであるという指摘をいたしましたけれども、これは本国会での最大の焦点の一つとなっております健康保険法の改悪と全く類似した考え方、そして手法としても同じ手法で出されていると思います。健保、年金、児童扶養手当など、今国会にはいわゆる臨調路線に基づくさまざまな国民生活への抑圧の法改悪が提出されておりまして、国民の大きな抵抗を受けております。
例えば健保については、中長期展望に立ってしんの強い制度をつくる、こういうような表現をしたり、本法案では、こちらの趣旨説明の中でも、雇用保険の受給者数が年ごとに大幅な増加傾向を示す、そして雇用保険財政の悪化がある、これらの構造的な変化に的確に対応するように見直しが必要になってきているというふうな言葉にも表明されていますように、いわゆる制度そのものを安定的に維持をしていくという名目でこうした法改悪を進めるというのが共通した考え方だというふうに一つは思います。
また、そのための手法として、給付の対象となる人数がふえていくということが避けられない、健康保険の場合もそれからまたこの法案の場合も避けられないということで、総枠を抑えて、いわば木が大きくならないように無理して根っこや枝葉を切るとか、あるいは鳥が飛べないように羽をもぎ取るとか、そういったぐいの手法で共通したやり方をしているというふうに思いますけれども、つまりその根底にいわゆる行財政改革ということで国民生活を犠牲にしていくというものがあると言わざるを得ないと思います。
大体健保の改悪と、考え方、手法がこの雇用保険法の改悪は類似しているのではないですか。大臣、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/214
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215・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) まあ健康保険とは、細かい点につきましては私もつまびらかではございませんけれども、私は、日本の経済社会、それから国民の意識の点におきましても、ここ十数年の変化というものは大変な大きなものだろうと思っております。そういう意味で、目指す精神というものは変わるわけではありませんけれども、制度は、これはやっぱり何年か前に人間のつくったものであります。この雇用保険制度におきましても、十年前につくったこれは一つのシステムであります。そういう意味で私は、現行がこれは満点だとは思いません、現行にも非常に不合理な点も出てきておるのではないか。そういう点はやっぱり変化に対応して改正をしなければならぬ。もう全く十年一昔というような大きな変化があるわけでありまするから、それに対応して不合理な点は是正して改正すべきが至当であるという考え方でこの法案も提出をしたというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/215
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216・山中郁子
○山中郁子君 私ども、本法成立当初からさまざまな意見を申し上げておりまして、この法律が万全であるなどとはもちろん思っておりません。しかし、今大臣が言われましたことは、衆議院における審議の中でも、あるいはけさほどからの議論の中でも明らかになっておりますように、結局、給付金がふえるから、だから何らかの形でさまざまなところでこれを削減する、そういう方向でもって対応していくということで、どこにその改正があるのかということが根本的な問題だと思います。
それで、これはまた引き続きこの審議の中で明らかにしていきたいと思っておりますが、ここで私は、今健保の改悪と雇用保険法の改悪に共通する問題があるということで申し上げましたけれども、さらに、その土台のところで共通する問題にかかわる点として、最近問題になっていることでぜひ大臣の見解をお伺いをしたいことがございます。
それは、労働省の所管であります勤労者財産形成促進法についてでありますけれども、御承知のとおり、これは現在五百万までが非課税になっていますが、最近、自民党の金丸総務会長が、これは毎日新聞のインタビューに答える中で、財形貯蓄も含め、現在非課税の預貯金の利子についてもすべて課税するという、マル優改革案なるものの見解を述べておられます。これはまさに健保の場合でもそうだし、雇用保険法の場合でもそうですけれども、とにかく取れるところから取っていく、出さないで済むところは出さないでいく。出さないようにとにかく削っていくし、取れるところからしゃにむに取り立てる、こういうような根本の流れとして一致するところがあるということで、私はここであえて問題にしたいのです。
これについて大蔵省もいろいろ検討しているということも伝えられています。少なくとも労働大臣の所管であります財形貯蓄のマル優は労働大臣として守っていくというお立場に立っておられると確信はしておりますけれども、ぜひその点についてのお約束をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/216
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217・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 財形制度は、立ちおくれの見られる勤労者の資産形成を促進するという目的で設けられた制度でございまして、このような趣旨から、いわゆるマル優とは別枠で元本五百万円までは利子非課税だということで制度ができ上がっておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、これは勤労者の財産形成の一環ということで、従来、この制度を非常にいい制度だということで支え、なおかつ発展させてきたという経緯があるわけでございますので、その点は今後ともしっかりやっていきたいと思います。
今先生おっしゃるように、マル優制度等のあり方について、利子配当課税制度全般の見直しの一環としていろんな人がいろんな議論をしておりますが、私どもとしては、勤労者の資産の形成の促進という観点から、財形貯蓄制度についての非課税措置は今後とも堅持したいというように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/217
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218・山中郁子
○山中郁子君 既に郵便貯金については郵政省がそうした見解を表明しているということがきょうあたりの新聞などで報道されておりますけれども、今御答弁がありましたように、勤労者の持ち家促進などの目的で鳴り物入りで成立したものですよね。もちろんその目玉の一つですね。それが非課税ということですので、当然金丸総務会長の発言は財形貯蓄まで含めた非課税の問題について課税の問題を提起しているわけでございますから、ここのところは、そういう切り込みが入ったらこの財形貯蓄の制度そのものの根幹が揺らぐという問題でございますので、これを堅持していくというかたい決意を持っていらっしゃるということを、ぜひ大臣のお口から明らかにしていただきたいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/218
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219・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) ただいま局長から答弁をいたしましたように、財形貯蓄制度をつくり上げましたときの精神というものはもう御案内のとおりでありまして、今後ともひとつ私どもとしては堅持をしていきたいと思っております。
それはもちろんいろいろな意見がございましょう。特に来年度の予算に関連いたしましては今からいろいろな意見が浮き沈みをすることだろうと思っております。しかし、また一方には、いや、財政の再建ということは大切なことではあるけれども、行政改革の進め方にしてもいろいろなまた緩急の意見もございますし、しかし、社会資本の投資も、住宅の形成も、あるいはまた個人の貯蓄も、これをもっとふやすような積極政策も大切であるというような意見もまた片一方にはございます。
私どもといたしましては、これ労働省にとりましては非常に大切な制度だという認識をしておりますので、今後ともこの非課税措置は堅持をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/219
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220・山中郁子
○山中郁子君 ひとつしっかりとお願いをしたいと思います。
この金丸さんの発言にシンボライズされていると思うんですけれども、取れるところからは根こそぎ取る、こういう考え方がある意味では本雇用保険法の改悪案にも貫かれていて、その本質は臨調路線そのものであるというように重ねて痛感するわけであります。
一般的に、雇用失業対策の基本は、改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、一つはなるべく失業者を出さないこと、そして雇用の確保に努めるという点でありますし、二つ目は失業者の生活を次の仕事を確保するまでの間守る、これが大きな二つの柱だ、そして、これについて政府、特に労働省が大きな任務を持っていると言うべきであると思いますが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/220
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221・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今回の改正は、今後の雇用失業情勢の構造的な変化に対応して、再就職手当を新設するなどによりまして、失業者の再就職の促進を従来にも増して図っていく、そして制度の不合理な面についてはこれを是正していく、そして将来にわたる制度の健全な運営を図ろう、こういうものでございまして、失業者の滞留ということと保険の給付の水準というようなものとの関係も一つの問題として出ておる、そういう中でこういう制度改正をやりまして、再就職の促進なり、あるいは失業者の滞留というようなものの解決に向けて前進を図っていこう、こういうことでの対応を図っていきたい、こういうものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/221
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222・山中郁子
○山中郁子君 私は、今申し上げたのは、一般的に言って雇用失業対策の基本は失業者を出さないこと、雇用の確保に努めること、そしてもう一つの柱は失業者の生活を守る、つまり次のお仕事を確保するまでの間守るという、その二つでしょうということを申し上げた。それはそうでしょう。それに異論があることはないと思うんです。それが労働省の任務だとすれば、この立場から見て今度の法改正、実質的には法改悪でありますけれども、これの措置によって充実される点が一体どこにあるのか、失業者の暮らしを守る、そういう点で充実される点ほどこにあるのかということを私は伺いたいんです。
これはもういろいろのところから議論されていましたけれども、賃金の範囲の変更、所定給付日数の変更、高年齢者の求職給付金の創設、再就職手当の創設、給付制度期間の延長、これ、どれ一つとってみても、結局労働者が、失業者が今までの受給されていたものがみんな削られるということでしょう。みんな目減りしていくわけですよね、かなり大幅に。労働省の任務が、政府の任務が、雇用失業問題について言うならば、失業者の生活を守るということが一つの大きな柱であるとするならば、この法改正によってどういうところが一体充実されるのか、端的に、この点が充実されるということがあるならばちょっとお聞かせいただきたい。私は、ないからこれが問題になっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/222
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223・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今先生が雇用保険の目的としておっしゃいましたことに加えまして、そういう失業者を出さない、これは特に四事業の関係でやっておる。それで、失業者の生活を守ることということに加えまして、失業者をそれによって守りつつ再就職の促進を図っていくということが一つ大きな目的であるわけでございます。
そういう観点から申し上げますと、例えば保険部会の報告にもありましたように、とかく保険をもらい終わるまでは積極的に就職をしようという気にならない人もおられるという制度自身の一つの問題点ということでもございますように、そういう保険をもらい終わる前に、この保険の半分以上を残して早期に再就職をされるということであれば、一時金として再就職手当が出る、こういうような形によりまして再就職の促進を図る。これは単に追い出すというような意味ではなくて、そういう早く就職をしていくという積極的な意欲というものをやはり喚起していくというような機能を果たしていくという、その点はやはりこういう再就職を促進するという保険の機能という面で大きな意味を持つものではないだろうかと、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/223
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224・山中郁子
○山中郁子君 細かく議論する時間がございませんが、労働省が整理をしてくだすった、いわゆる財政効果とも言うべき数字を見ましても、初年度ベースで事項別に出ています。賃金の範囲の変更マイナス五百五十億円、所定給付日数の変更マイナス百五十億円、高年齢者給付金の創設マイナス七十億円、給付制限期間の延長マイナス八百億円。つまり、こういう財政効果があるということで、これを導入して改悪をするということは、結局このマイナスになる分だけ今まで雇用保険制度の中で受給していた人たちが、受給者の取り分がこれだけ減るんですよ、単純に言って。結局私は、そういう意味で失業者に不利益になる改悪。すべての項目がそうですわ。この財政効果としてあなた方が出している点から見ても、結局そういうものとしか言いようがないではないかということを申し上げているわけです。
それは最初に申し上げましたように、ちゃんと雇用保険制度を一つの課題にして財政の抑制を図る、支出の抑制を図るということが方針として出ているわけですから、それに基づいて行財政改革の一環として行われているというのが、これが本質である。これはおたくの方が計算していらっしゃる財政効果を見ても明らかだということを私は強調をしたいわけでございます。これは私だけが言っているわけでなくて、もちろん委員会の中で
いろいろそうしたことも議論されておりますが、いろいろなところで、マスコミでもそれらの論調が出ております。
例えば一つ例を挙げますと、これは毎日新聞の社説だと思いますが、
不正受給の根絶はいまさらいうまでもない。
としながら、
それ以上に、猛スピードで進んでいる高齢社会化や第三次産業の拡大に即応した政策が十分でなかったことを、この際はっきりと認識すべきであろう。政策の失敗や不十分さを、平然と国民につけ回すかのようにみえる最近の風潮に注意を促したい。
これは「雇用保険制度改正の前に」という表題で出されている主張でございます。ここでこう言っているんです。
かつて高度成長期の初期に、福田赳夫氏は「行政あって、政治なし」と批判したことがあるが、いまは「勘定あって、行政さえなく、まして政治はない」ようにみえはしないか。とくに反省を促しておきたい。
こういうふうに述べています。私は、さらにこれをつけ加えますならば、今度の雇用保険法の改悪はまさに保険あって給付なしということになりかねない、そういう中身ですよ。それでは、例えば関係労働団体などがこういうふうに変えてほしいという要求などがどこにあったのか。逆に、財界は、経営者はどういう要求をしてたかといえば、労働大臣あてに日経連が申し入れていましたね。「雇用保険財政の逼迫に対処するため、」云々となっていて、「改正に当っては、失業給付を現行の保険財政の枠内で賄えるよう、徹底した制度・運用の改正を行うべきである。」と、こういう要望をしているわけでしょう。まさに日経連の、財界の要望どおりの改正をして、肝心な失業者、労働者、そうした人たちの要望については何らこたえていない。まさに保険あって給付なしというふうになりかねない、私はそういう内容を持っている改悪であるというふうに言わざるを得ないと思います。
大臣、どうですか、大臣のところにいった日経連の要望の趣旨ですね、これにこたえたのがこの今回の雇用保険法の一部改正ではないですか。事実に照らしてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/224
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225・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 大臣の御答弁いたします前に、私の方から若干補足いたしたいと思います。
いろいろ先生お述べになりました前提として、例えば保険財政が詰まってきた、そうしたら労使の負担をどんどん上げ、そしてまた国庫負担もどんどんふやしてそうしてそれで対応していけばいい、こういうものでは必ずしもないと思うわけでございます。したがって、保険財政がピンチになってきた。そうすると、それはなぜか、それに対して今後どう対応していったらいいか、こういうことで御議論を賜る中で、労使の負担、あるいは国庫負担というものを上げるという前に、それじゃ現行制度で合理化すべき問題はないのか、こういう観点からのいろいろ御検討もいただいておるわけでございます。
そういう意味で、確かに審議会の答申でも言われておりますように、給付の切り下げ、こういうような問題が、これは一部ございます。しかし、例えば保険の給付というものは高けりゃ高いほどいいとか、そういうものでもまたないと思うわけでございます。また、現在実際に働いている人の賃金と失業した人の保険金というものとのいわばバランスの問題とか、そういったようなものもいろいろ議論があっていいところだと思うわけでございます。そういう意味で、そういう財政的な支出が減る、あるいは給付が減るというものが全部悪だ、全部悪いことだということで一概に言えるものではやはりないだろうと、こう思うわけでございます。
私どもは、この審議に当たりましては、こういう保険料の負担を上げる前に、労使国で合理化すべきものがあるのではないか、こういう観点からのいろいろ御議論、御検討を賜った上でのこういう改正案が出ておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/225
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226・山中郁子
○山中郁子君 大臣の御答弁いただく前に、何か先に局長が今補足をなすったようですので、補足の御意見に対してちょっとあれいたします。
一から議論をするような時間はございませんから、要は、失業者が出ないということが重要な問題であります。だけれども、もう少し幅を小さくして申し上げたとしても、先ほどの和田委員の議論の中にもございましたし、衆議院においても私どもの小沢議員がそこら辺をあなたとも直接やりとりをしたからよく知っていらっしゃると思いますけれども、例えば事務費だとか、人件費だとか、今の特別会計から一般会計で負担すべきこと、そのほかいろんな問題ありますよ。そういうことはたくさん方策はあるんです。だけれども、そういうことを、日経連が要求しているようにいろんなことを考えて、実際には全部削るということでしょう。みんな削るということ。だからこそ財政効果が出てくるんですよ、何百億というふうに。そういうことを私は申し上げている。結局は労働者の要求、失業者の要求にこたえるのではなくて、この中身は、結局日経連がそれこそ要求していたものにまさに一致しているなということを思わざるを得ません。
大臣から所感を一言お伺いをして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/226
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227・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 日経連から労働大臣あてに申し入れが来ておることは事実であります。一言で言えば、不合理な点は改正をしろ。そして肝心の点は、保険料を上げるな、こういうことなんです。これはしかし審議会におきましても――審議会は御承知のとおり公労使で構成されておりまして、労働側の推薦を得た委員も出ておられるわけでありまして、そして大変熱心な御審議が行われた。その結果、労働側からはいろいろ反対意見も表明をせられたけれども、現在の雇用失業情勢を見れば、今回の改正案はやむを得ないとするものが多数意見であるという答申もいただいております。
私どもは別に日経連がおっしゃったことにこだわる必要はない。しかし、皆さんの御意見は、経済界であろうと、労働界であろうと、そして世論の皆さんの御意見は、これはいいことは謙虚に聞いていくつもりでございまして、日経連の、保険料を上げるなど、端的に言えばそういう意見は正しいと、こう思っております。これは、労働側も、あるいはまた中立側もすべてそういう多数意見だと私どもは思っておりまして、この方向は妥当なのではないか。
先ほど局長もいろいろ申しましたけれども、やっぱり保険制度が健全でなければ適当な給付もできないわけでありますから、そういう面もひとつ考慮をしていかなければならぬな、こういう感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/227
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228・山中郁子
○山中郁子君 一言だけお願いいたします。
私が申し上げましたのは、日経連の、「失業給付を現行の保険財政の枠内で賄えるよう、徹底した制度・運用の改正を行うべきである。」、ここを主眼としたものに対応しているということを指摘いたしました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/228
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229・藤井恒男
○藤井恒男君 最初に、最近、来年度予算の概算要求に関するシーリングがいろいろ取りざたされております。そういった中で、労働省関係の過去のシーリング枠及びそれに伴う予算額がどういう傾向になっていたのか、最初にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/229
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230・若林之矩
○政府委員(若林之矩君) お答え申し上げます。
昭和五十五年度のシーリングは五千二百四十八億でございます。対前年度予算に対して八・一%増でございますが、予算額の方は四千九百二十一億ということになっております。
五十六年度は五千二百十九億でございまして、対前年度比六・一%の増でございますが、五十六年度の予算額は四千九百九十一億でございます。
五十七年度は、シーリングは五千五億、対前年度比〇・三%増でございますが、五十七年度の予算額は五千十七億でございます。
五十八年度は四千九百九十八億、これがシーリングでございまして、対前年度比〇・四%の減、予算額は四千九百五十一億でございます。
昭和五十九年度は、シーリングは四千九百三十一億、対前年度比やはり〇・四%減でございまして、予算額の方は四千九百三億となっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/230
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231・藤井恒男
○藤井恒男君 景気が長い間停滞して失業者が増加しているという状況の中で、今言われたように、要求枠自体、シーリングの関係でございましょうが、ずっと逓減しているという状況です。とりわけ、失業者が増加しているという中でこのような傾向が続いている状況から、一番大切な雇用対策関係の経費がどのように推移してきたか、この点あわせてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/231
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232・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 労働省の五十九年度の雇用対策関係経費は、これは一般会計、労働保険特別会計、こういう両方で賄うという形で対応いたしておるわけでございますが、これを合計いたしまして二兆一千八十四億、こういう形になっております。これは五十八年度、前年度におきましては一兆九千九百五十七億ということでございましたので、対前年度比五・六%の増、こういう形で対応しておるわけでございます。しかし、このうち一般会計につきましては四千二百五十一億円ということでございまして、前年度に比べまして約五十一億円の減額、こういうことでございます。
労働省といたしましては、特に一般会計負担の雇用対策関係につきましては、マイナスシーリング、こういう厳しい状況下にございまして、従来からの施策についての全面的な見直しというものを行っていきます中で、特に高齢化社会の進展に対応するための雇用対策とか、あるいは雇用失業情勢に即応した雇用対策、あるいは障害者等特別の配慮を必要とする方々に対する対策、こういった面については特に重点を置いて充実を図る、こういうことで努力をしてまいったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/232
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233・藤井恒男
○藤井恒男君 これは、非常に今日的な話題でございますので、大臣にも所見をお聞きしておきたいんだけど、これからの問題ですが、今年度のシーリングの問題について、今局長もおっしゃったように、全体としてはマイナスという形をとってきているのであるが、高齢化社会を迎えるという状況の中で、一層の雇用の安定あるいは障害者等の福祉などについて、随分これは努力して増枠を図っていかなければいけないという趣旨のお話だったと私は承っておるんです。
大臣としても、通算関係が言うところの、公共事業の別枠による景気の浮揚、回復というようなこととはまた別な次元で、例えば雇用の増大を図るという意味における公共事業の増枠、あるいは今局長がおっしゃったような福祉ですね、労働者の雇用と福祉というような面から、労働省の総予算がずっと逓減しているという状況にかんがみて、今年度シーリング問題が話題になっているときに、ここらあたりで一遍労働省予算というものを別枠にして見直すというようなお気持ちがあるのかないのか、その辺ちょっとお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/233
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234・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) なかなかシーリングの問題がございまして、私どもも、ただいまおっしゃったように雇用政策の面で非常に大きな変化に対応し、どうしてもひとつ労働省としては頑張らなきゃいかぬという気持ちはいっぱいございますが、
〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕労働行政、予算枠の確保という立場では今年度も結構努力したつもりではございますが、来年はますますやはりそういうシーリングの問題等もございまして、内容の充実を図って、肝心なところだけはひとつ予算をどうしても確保いたしたいと思っておりますが、このシーリングの問題は、これからいろいろ政府の中におきましても、ここ一月ほどの間が肝心なところだと思っておりますので、私どももやはり非常に注意をしてその動向を見守っておるわけでございます。
しかし、労働省予算の性格から見まして、今直ちに労働省予算は別枠だと、雇用政策の経費は別枠だという要求をするという形までは今考えてはおりませんので、これは肝心だというようなところにつきましては折衝次第で弾力的に私どもの取り扱いをひとつ認めてもらって、そして実効が上げられるようにいたしたいなという気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/234
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235・藤井恒男
○藤井恒男君 長い間の景気の停滞の中からアメリカの景気も上向いてきたと言われて、何とはなく景気回復の兆しがあるというような状況から、着実に景気が回復してきたという方向に変わって明るさが出てきたと言ってから、これ、現在まで相当日にちがたっているわけなんです。ところが、有効求人倍率という状態を見るとそう変化がない。この辺について、現在の職業紹介の状況はどうなっているのか。
そして、通産省あるいは経企庁が景気は着実に回復基調にあるというふうに言っている状況にかんがみて、労働省サイドから見てこの雇用という状況の中から、景気回復と雇用とのバランスがこれからは同じ傾向をたどらないと見るべきなのか。この求人倍率が伸びない状況をどのように見ておられるのか、お尋ねいたしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/235
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236・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 最近の一般の職業紹介状況について見てみますと、特に生産の増加というものを背景にいたしまして、製造業で高い伸びが続いております。特に最近では、機械関連業種に加えまして素材関連業種でも増加をしてきておる。あるいはまた、卸・小売とかサービス業とか、こういうようなところも回復傾向にあるわけでございます。
一方、求職の方は、雇用調整というものが次第に鎮静化してきておるということで、落ち着いた動きをしておる。有効求人そのものが前年比一〇・五%の増で、有効求職は前年比二・〇%増、こういうような結果が出ておるわけでございまして、そういう中で昨年の七月の〇・五八倍という有効求人倍率を底にいたしまして、ことし四月には〇・六四、こういう形になってきておるわけでございます。
しかし、それにしてもこの有効求人倍率の回復というものが遅々としたものではないか、こういう感は免れないわけでございまして、景気動向になおこういう業種別、地域別のばらつきがある。こういうような問題に加えまして、やはり高齢化が進んできておる、あるいはまた産業構造の転換等が進んできておる、こういうようなことで、先ほどから問題出ております求人と求職の円滑な結合というものがなかなか進みにくくなってきておるミスマッチ、こういうようなことで、なかなか求職者が就職をどんどんしていかれるという形に必ずしもそれが、求人増が結びついていないというようなことでございまして、就職件数も前年比で見ますと五%程度の上昇、こういうような状況にあるわけでございます。
さらにまた、こういう景気回復時期におきます一つの特徴といたしまして、どこかの会社でいよいよ人を求めるということがありますと、それじゃ私も働くかというような形で、新たにこういう労働市場へ参入するという方もありますし、あるいはまた、それではそういうところへ転職しようというような形での転職者の増加、こういうような問題も実は絡んでおりまして、有効求人倍率というものがなかなか改善しない、求職者というものがなかなか減らない、こういうような状況があるわけでございます。
しかし、いずれにいたしましても、過去の例から見ましても、こういう景気回復と雇用の改善というものと若干タイムラグがややおれて出てくる、こういうような問題も一つはございますので、いましばらくその辺の動きを注目する必要があるかと思いますが、やはり今後は基本的には内需を中心とした景気の持続的な拡大というものが図られていかなければならぬ。そして、そういう中におきまして私どもこういうミスマッチの解消ということでの求職者の再就職、新規就職というようなものをどんどん進めていく、こういう職業紹介活動の推進がぜひ必要である、こういうことで対応していかなきゃならぬと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/236
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237・藤井恒男
○藤井恒男君 今の局長の前半のお話を聞いていますと、雇用問題は非常にうまくいっているのだと、雇用調整は非常に進んでいるというふうに私は聞き取ったんだが、後半で多少タイムラグがあるというようなことを言われたのだけど、有効求人倍率の面から見て、景気回復が言われ出してからかなり日がたっているにかかわらず有効求人倍率が全く横ばいですわね。例えば一月が〇・六四でしょう。二月が〇・六五、三月が〇・六四、四月が〇・六四でしょう。有効求人倍率から見る限り、半年を経過した今日ほとんど動いていないということなんです。そうすると、その点何か関係があるのか、採用という面から。
例えば四月に、マイクロエレクトロニクス化に伴う雇用の問題というようなことについて労働大臣に報告がなされている。参議院の国民生活調査特別委員会というところで、九州その他のいわゆるME産業などを随分視察してきたんです。十カ所ぐらい、それは本当に参議院では超党派の形で視察している。ああいったものを現実に見て、そこで働いておる人たち、あるいは経営者の方たちから話を聞いてみても、例えば九州なんかの場合に、ICアイランドと言われるように、テクノポリス構想でかなりな工場が誘致されてやっているのだけど、雇用というのは伸びていない。産業の実態を見てみても、ほとんど装置産業というほどのものでもない。プログラムをかいて、後コンピューターで動かして、吸塵装置が整っておればひとりで物ができておるというような状態ですから、あれがどんどんできていっても、それは雇用の吸引力を持つということにはならない。だから景気回復というものが、そういった面における先端技術でずっと伸びている。しかも、装置産業その他の素材産業、組み立て産業が、MEの導入によってどちらかといえば減量経営で人員を減らしている。そうなってくると、それがめぐりめぐって実効的な有効求人倍率を伸ばしていないということにつながらないのか。そうであるとすれば、この報告書は、中間段階ではあるが、大臣も見解を出しておられるんだけど、MEに伴う産業の変化、それに伴う雇用問題ということについて、私はよっぽど腰を据えて調査もし対策も講じなければ、これは大変なことになるぞという気が実はしているわけなんです。
そういった面からこれをお聞きしたわけなんで、きょう直ちにMEの影響による雇用問題についての対応の仕方などについてここでお聞きしても、これなかなか時間もないことでございましょうから、意のあるところはひとつお酌み取りいただきたい。これは、この参議院の特性として、先端技術の発展に伴う国民生活あるいは雇用にどのような影響が出てくるのかというための特別委員会をつくっておるわけだから、いずれ労働省にもお出ましをいただいて十分論議をしたいと思っているところです。これは私個人の考えじゃなくて、その特別委員会の理事会で常々論議している問題の意識ですから、お聞き取りいただきたいと思います。
そこで、時間がないから次に進ましていただきますが、最近、グリコの問題が非常に問題になっている。これは憂慮すべき問題で、あの種の行為によって一つの伝統ある企業が、失礼な言い方かもわからぬけれど、倒産の危機にさらされるという状況にあるわけなんです。
現実に、私の手元にある資料の中でも、グリコの関連事業、大体製品の六割を全国の生産子会社十一工場でつくっているというわけですから、本体工場より関連する下請企業の方が多いわけですね。生産量も多い。結局そういうところに、今度の青酸カリ混入問題で流通からグリコ製品が姿を消してしまうということがもろに及んでいる。福島、岐阜あるいは三重、福井の武生、鳥取、こういったところで、パートの人たちが自宅待機、あるいは工場の生産が、操業率がもう七〇%もカットされているというような状況になっているわけなんだけど、あのような状況の中で不幸な事件が起きているわけですが、こういった人たちの救済というようなことが考えられるのかどうか。その辺のところをお知らせいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/237
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238・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) このいわゆるグリコ事件の影響によりまして、江崎グリコ本社でも大幅な減産、また、それに伴いましてグリコヘの依存度の大きい関連下請におきまして大幅な操業短縮、あるいは停止というような場面が出てきておるわけでございます。そうして、これらの企業におきまして、従業員に対して自宅待機あるいは一時帰休という形が行われておりまして、雇用面にもかなりの影響が生じてきておる、こういう状況について、私ども憂慮いたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、今後これが、雇用不安が一層深刻化するということが懸念される現状におきまして、今私どもとしては関連下請企業の実情把握に鋭意努めておるところでございます。
これについて、これを全面的に私どもの立場で救済する、こういう形のものはなかなか難しゅうございますが、何とか休業等に追い込まれております従業員の雇用というものを、例えば雇用調整給付金というようなものを適用してこれをつなぐ、雇用をつないでいくというようなことができないのか、今鋭意その辺についての詰めを行っておるようなわけでございます。現行の制度でございますと、これに対してぴたっと雇用調整給付金を適用するという形にないのでございますが、何とかそういう面で制度的な改善というものをひとつ至急できないか。実は中央職業安定審議会におきましてもつい先日この問題が出まして、審議会としてもこの問題についてその辺の結論が出たならば、それが直ちに実施に移せるよう、例えば持ち回りというようなことも場合によってはやってもいいぞというような構えで今いただいていると、こんな現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/238
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239・藤井恒男
○藤井恒男君 これは、企業あるいは組合あるいは地域の地方自治体から具体的に救済の申請というのは出ておりますか、労働省に。
〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/239
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240・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 現在、自治体からは直接そういう申請は出ておりませんが、関係の労働組合というようなところから、ぜひ至急何とかならないかと、こういう形での要請を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/240
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241・藤井恒男
○藤井恒男君 これはひとつ、今おっしゃったような方法で緊急措置がとれるなら発動してでもぜひ救済の道をつくっていただきたいと思います。
それから、法案の問題に入るわけですが、衆議院でこれは修正されて、修正法案でございますが、この修正の中に、きょう提案理由の説明がありましたが、第二に、「改正に伴い所定給付日数が減少するものについては、改正前の所定給付日数に達するまでその者の給付日数を延長することができるものとする」、つまり、このことは法改正によって、前の法律と今度の法律との間で不公平な、不利益な取り扱いをしないということに解するわけでございますし、さらに、「第五に、船員保険の失業部門についても、第二から第四までに準じた修正を行うものとすること。」というふうに記載している。さらに、「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正要綱」にもそれが細かく記載されているわけです。これらは、仮に船員にこれを限って言うならば、船員の場合に現行法と改正法との間に不利益が生じないように措置しますよ、措置しなさいよということに解していいかどうか、まずお聞きしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/241
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242・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 基本的には、こういう方方について不利にならないように、こういうことで対応していきたいと考えておりますが、これがまあ船員保険と雇用保険の制度の違いというものが一つございまして、いろいろ事務処理上困難な問題というものも一つはあるわけでございます。
しかし、こういう衆議院における修正で、一定期間船員であった後に陸上勤務となって、その方が事業主の都合によって短期間で離職をせざるを得なくなった、こういうような人たちで、改正に伴いまして所定給付日数が減少する人たちにつきまして、改正前の所定給付日数まで延長することができる、こういうふうにされたわけでございます。船員保険の被保険者として長期間勤務をしていた人が、その後陸上勤務にかわりまして離職した、この場合には、陸上勤務によって取得した雇用保険の勤続期間に応じて雇用保険の失業給付を受ける、こういうことで不利益を受ける、こういうことに伴う問題を考慮された修正であったと、こういうふうに承知をしておるわけでございまして、我々としては安定審議会に諮りました上でそういう趣旨を体して細目を定め、適切な運用を図っていく、こういうことで進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/242
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243・藤井恒男
○藤井恒男君 最近の船員の就労実態というのは、海運それから水産業ともに極めて不況である。したがって、今おっしゃったように、長年船に乗っていてそしておかに上がったというだけじゃなく、そういうケースももちろんあるけれども、場合によってはもう二、三年のサイクルで海上勤務と陸上勤務を繰り返すという状況もあるんです、これは。とりわけ大手の場合などは船の数が少ないわけだし、あるいは水産の場合にもあのような形で漁期が限られてしまうということだから、一つのサイクルを持って回転している、海と陸と、海と陸と。こういった場合には、この法の趣旨は――法の趣旨をこれ勝手に変えたらいけませんからね、修正されたものを。これはあなたおっしゃったように、損をさせぬということだ、言ってみれば。損はさせませんよ、安心してくださいということなんだから。そうなんですと言っていただいたのでもうあえて言うことはないけど、これ、繰り返しておるわけですからね。繰り返しておる間に雇用保険と船員保険に身を移しているわけだから、最後ほどっちで失業というような状況になるかわからない。たまたまおかで失業したときには雇用保険、海でいったときには船員保険、過去をずっと見てみたらあっちへ行ったりこっちへ行ったりしておるという状況だけど、その場合にはきちっと海と陸の通算の措置をとる、それがサイクルを持って動いたときでも損はさせない、保障する、こういうことと解すべきと私は思うんだけど、間違いないですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/243
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244・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 先ほどお答えをいたしましたが、通算という形ではなかなか両保険制度が違うということなどで、いろいろ問題がございますが、要は、今度の改正によって損にならないという基本的観点でその辺をどうしていくのか。
今度の修正で出てきました問題は、こういう船員から陸上に移った人というものが、これが今度の改正によって損を受けないように、こういう形のものであるわけでございますが、これがまた海へ戻る、こういう形の繰り返しというものについてまで特に修正で触れておるわけではありませんが、その趣旨を体しまして、要するに、その方たちが改正によって損を受けるということはないというような措置をひとつ私どもも検討していきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/244
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245・藤井恒男
○藤井恒男君 それはちょっと違いますよ。損をさせぬというところはそうだけれども、この要綱を見てごらんなさい。あなた今片道ということを言われたんだけれども、要綱の「雇用保険関係」のところにぴしっと船員のことを書いておるんだ。「船員であった後陸上勤務となり」、そして今度は「船員保険関係」の方に「陸上勤務であった後船員になり」と、つまりこれは往復ですよ。だから、二つあるんだからあえてこのように二つに同じことを書いている。あなたのは片道だけだから、それは大変な間違いですよ。往復。
だから、通算という表現にするなら、事務処理上いろいろ今の時点でぴしっと通算するという形をとれるかどうか、これは難しいでしょう。だから問題はこれから事務的に詰めるとして、この往復したものについても損をさせぬということだ、要は。それさえはっきりしたら、事務的には、便宜的にいろんな道は、私は当事者があるいは厚生省とも話をしてとれると思う。そのことだけは約束しておいてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/245
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246・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 片道みたいな言い方をいたしましたのは間違いでございまして、こう相互で、どちらもあれでございまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/246
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247・藤井恒男
○藤井恒男君 行ったり来たり。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/247
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248・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) はい、そのように訂正さしていただきますが、おっしゃいますように、通算という形はなかなか難しゅうございますので、そういう制度を今度設けられた趣旨というものを体して、少なくとも改正が行われたことによって何か不利益になるということのないように、いろいろ検討をさせていただきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/248
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249・藤井恒男
○藤井恒男君 要するに、これは命令か何かで決まっていくでしょうからね。だから、不利益にならない、不公平にならない、これさえきちっと守っていただければ、後は当事者も含めた形で、いい案をつくっていけばいいんじゃないかと思います。こうしなさい、ああしなさいということは私もわかりません。その点だけひとつよろしくお願いします。よろしいですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/249
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250・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) そういう趣旨で検討をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/250
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251・藤井恒男
○藤井恒男君 話はまたちょっと変わりますが、OAですね。オフィスオートメーションというのが盛んに進んでまいりまして、そのことによってディスプレー端末機、VDTと俗に言っておりますが、これが事務の機械化ということで随分普及してきているわけです。そういった中で、OAに伴う端末機の関係から目に障害が出る。だから、昔コンピューターが出たときに、キーパンチャーが腱鞘炎を起こして、職業病であるか否かということで特段の行政指導がなされて、労働者保護の立場がとられたんだけど、この今のディスプレーの問題については、我が国は欧米に比べて非常に立ちおくれている。だから、アメリカ、西ドイツ、スウェーデン、こういったところでは、労働行政の中でかなり手厚く保護がされているわけだ。我が国は随分おくれておるように思うわけだげと、どのように現在考えておるか。
先ほどちょっと申し上げた四月二十五日の労働大臣に対する、雇用問題におけるエレクトロニクス化への対応というところの中にも、この「ディスプレイ装置の使用に伴う目の疲労等の労働衛生問題については、暫定的なガイドラインが定められているが、今後さらに調査研究を進め、本格的な対策を確立することが重要である。」、こういうことになっている。十五分置きに一遍休むとか、いろんなこともやっておるようですけれども、現在の暫定的な行政指導といいますか、ガイドライン、そしてこの研究を進めなければいかぬと提言されていることにのっとってどのようにこのVDTの問題を扱おうとしておるのか、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/251
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252・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 先生おっしゃるように、OA化が我が国の中でも非常に進展をしておるわけでございます。外国でも西ドイツだけが今政府で基準をつくってやっておりますが、ほかの国もガイドラインを設けるとかいう形で徐々に手をつけていくという状況でございまして、私どもも、今先生がおっしゃるように、VDTの普及ということで、これが労働者の健康に及ぼす影響について、外国のみならず我が国においても、研究者等によるアンケートの調査結果等の報告があることは十分に承知しておるわけでございまして、それらの調査結果は、相当数の作業者が何らかの形で健康に対して影響を受けていると訴えているということでございますので、これは私どもとしても非常に重大な関心を持っているわけでございます。
そこで、これは相当抜本的な研究をしなければなりませんので、基本的には昭和五十八年度から三カ年計画で、私どもの附属機関である産業医学総合研究所と、それから産業医科大学にこの基本的な研究を三カ年計画でお願いをしておるわけでございます。これは五十八年からでございますので、六十年度にある程度基本的な結果が出るというように期待をしておるわけでございます。
しかし、その結果が出るまでにどんどんOA化が進展しておりますので、とりあえずの措置といたしまして、私どもの外郭団体でございます中央労働災害防止協会というのがございますが、そこにOA化等に伴う労働衛生対策研究委員会というものを設置してもらいまして、そこに専門家を集めまして、そこで現段階で利用できる内外の情報や経験等を検討した結果をまとめまして、本年二月に当面の措置ということで、「VDT作業における労働衛生管理のあり方」というガイドラインをつくりまして、これを天下に公表をいたしまして第一線の労働基準監督機関にこれによって関係業界を指導してもらいたいということで通達を出して、現在指導をしている最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/252
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253・藤井恒男
○藤井恒男君 時間が来ましたので、最後にお願いしておきたいんです。
今おっしゃったように、現在進めているこの抜本的な研究というのは非常に私はすばらしいことだと思うんだけど、残念ながら、これ本当に結論出るのは六十年ですわね。六十年までの間に随分OA化が進む。OA化が進むということは、すなわちどうしても中小の、そして完全に照明あるいは機材、事務機器等が整っていないところにもVDTが入っていくということです。だから、私はこれは六十年までの間にはかなりなスピードで端末機は普及していくだろう。そして、おっしゃるように、どのアンケートをとってみても影響は完全にあるわけですから、その辺のところ、現在のガイドラインというのが甚だ不徹底ですよ。だから、明かりをどうしなさいとか、あるいは一時間働いたら十五分休みなさいとか、机への腰かけ方はこうしなさいと、それだけでは私はだめだ。だから、欧米などは随分進んでいるわけなんだから、この辺の状況を取り入れて、私は六十年に基本的結果が出るまでの間、もう一段御努力をいただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/253
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254・望月三郎
○政府委員(望月三郎君) 私ども、当面の措置ということでガイドラインを定めて、今行政指導をしているわけでございますが、項目的に見ますと、私どものガイドラインは、ヨーロッパの各国の項目から比べると、まんべんなく相当の部分についてガイドラインを定めておるということで、私は水準としては高いというように自分で思っております。
それから、六十年度に共同研究が出ますが、それは最後にならなきゃ出ないというわけじゃございませんで、その過程でいろんな事項についての具体的な結論が出れば、今のガイドラインにそれをどんどん補足していくという格好で対処をしたい、こう思っておりますので、御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/254
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255・藤井恒男
○藤井恒男君 これで終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/255
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256・下村泰
○下村泰君 午前、午後の本法案に対する各先生方の審議をお伺いしていて、大変私は幼稚なことを考えましてね。幼稚というか素朴というか。労働省というのは一体何をするとこかいなという疑問にぶつかりました。労働省というのは、労働省設置法というものによってつくられ、
労働省の長は、労働大臣とする。と、そして、
第三条 労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。
一 労働組合に関する事務、労働関係の調整及び労働に関する啓もう宣伝
二 労働条件の向上及び労働者の保護
二の二 労働者の安全及び衛生の確保
三 婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整
四 職業の紹介、指導その他労務需給の調整
五 失業対策
五の二 職業訓練に関する事務及び技能検定
六 労働統計調査
七 前各号に掲げるものを除く外、労働者の福祉の増進及び職業の確保
八 労働者災害補償保険事業
九雇用保険事業
こういったことをやるというふうに書かれております。
そうしますと、大臣に伺いますけれども、これはほとんど働く者の立場に立って物を考え、企業側の方には全然立っていないと、こんなふうに考えられるんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/256
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257・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 私どもは、戦後福祉国家の建設ということで非常に情熱を燃やして今日までやってきたと思っております。その中心的な柱は、特に我が国は資源もありませんし、国民の勤勉な労働力、これでやっていかなければならぬ、これがやはり柱でありまして、労働者があって経営者もあるわけでありますから、労働者の福祉の向上を図るということが第一義的であります。
しかし、労働者だけ孤立しているというわけにはいきませんから、労働者の福祉の向上を図ったり、いろいろやらにゃなりません。安心して、安全で安定した生活をできるだけ助けるということがやっぱりこれは社会とか国の一番の基盤になるところでありまして、ここを安定させなくして個人の繁栄も、それから国の発展もないわけでありますから、そういう意味で、関係した諸般の問題についてもひとつ幅広くやらなければならぬ部面もありましょうが、肝心かなめのところは、あなたのおっしゃったように、やっぱり働く人が安心して働けるようにするということがかなめだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/257
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258・下村泰
○下村泰君 そうすると、働く者の側に立ってほとんどの行政政策をやるというのがやっぱり建前になるわけでございますね。
「労働問題のしおり」という昭和五十八年十二月に労働省から出されているこういう一冊の本がございます。これを拝見いたしましても、この「2 雇用計画等」の「(1) 雇用計画」という項目の中に、「イ 雇用対策基本計画」という項目がありまして、その中の④に、「本格的な高齢化への対応」というのがあります。そして、次のページヘまいりますと、「就職困難層の雇用の安定対策の強化」として、「高年齢者、心身障害者の雇用安定を図るため、定年延長のための指導・援助、身体障害者雇用率の達成指導に積極的に取り組むとともに、特定求職者雇用開発助成金の積極的活用により再就職の促進を図る。」、こういうようにあります。そして「高年齢者の雇用対策」という項目には、「急速に進展する高齢化の問題に対処し、活力ある社会を実現するために、高年齢者の雇用の安定を図ることが、労働行政上の最重要課題の一つとなっている。」、こういうふうに書かれております。
そうしますと、大臣もやはりこれはこういうふうにお考えなんでしょうね。――ただいま一番最後に申し上げました、「急速に進展する高齢化の問題に対処し、」「労働行政上の最重要課題の一つとなっている。」と、こういうふうにやはり大臣もお考えですかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/258
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259・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) おっしゃるとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/259
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260・下村泰
○下村泰君 そういうふうに考えてまいりますと、大変高齢者が冷たく扱われているということになってくるわけなんでございます。
そしてなおかつ、この手元の資料によりますると、例えば労働省がそういったことに対して行政指導をすることに対して、
定年延長、労働時間短縮、男女雇用平等の施策に対する経営側の拒否反応は強く、商工団体から出された「昭和五十八年度労働政策に関する意見」では、以下のような厳しいものとなっている。
「労働条件の決定については、その最低基準を法によって定めるほかは、本来すべて企業労使の自主決定にゆだねるべきものである。たとえば、賃金についても、最低賃金額を法定するほかは、行政が介入することなく、すべて労使の自主交渉で決定されており、この結果、今日世界のトップレベルにまで達している。
しかるに、労働省は、最近、労働時間の短縮、週休二日制の推進、企業定年の一律延長など、労働条件の各分野にわたって、行政指導に名を借りた介入を一段と強めている。しかも、これらの行政指導は、それぞれの業界や個別企業の実態を無視して画一的に行われており、その結果企業の存立を危うくする恐れなしとしない。
したがって、今後の労働行政については、――行き過ぎた行政指導は直ちに中止すべきである。」
こういうふうに言われておるんですけれども、下手をすると労働省側は、これに沿ってやっておりますか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/260
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261・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 今後のこういう高齢化社会に対応していく対策というもの、そしてともすれば高失業社会というものへ移行しかねない、こういう中で、私ども、法律に根拠を置くものだけではなくて、やはり今後のあるべき方向というものを求めていろいろ行政指導の面で強めていかなきゃならぬ、特にそういう高齢者の就業の場の拡大というような面で私どもも、例えば六十歳定年制というものの一般化というものを目指して懸命に努力をいたしておるわけでございます。
そういう中で、実は労働大臣名によります親書をこういう主要企業に出しまして、そして、今後の高齢化に向けての大事な施策なので、定年延長についてぜひひとつ格段の御努力を願いたいということで、相当具体的な内容も盛りました親書等も出してお願いしたというようなことを含めまして、都道府県を通じましてのまたこういう行政指導もやっておるわけでございます。そういう中で、余りにもこれがきつ過ぎるではないかというようなことで、一部経営者から反発を買ったということも経過の中にはあるわけでございます。
そういうような経過等を踏まえましてそういうような意見書というものが出ておるわけでございますが、私どもとしては、そういう行き過ぎた行政指導というものはこれはやはり慎まなきゃなりませんが、やはり今後の大きな方向というものを見据えて、また労働者のためにやるべきことはやっていかなきゃならぬ。ただ、それをいろんなあつれき、トラブルを起こしながらしゃにむにやったってそれはすぐ効果が上がるものではないので、そこは十分納得をいただきながら進めていかなきゃならぬという面はございますが、基本的には、私どもが現在進めております施策というものは、今後のこういう時代の変化の中でどうしても必要なことをお願いしておる、要は、そういった点について関係者の御理解というものをさらに得ながらやることが必要だという点は感じておりますが、やっておることがこれが間違っておるとか、そういう意見が出たからやめるとか、あるいは控えるとか、そういうようなことは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/261
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262・下村泰
○下村泰君 雇用対策法にもちゃんと、「この法律は、国が、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資することを目的とする。」と、こうすばらしい、これをぽかんと決めてあるんですね。みんなこういうふうにいかないから文句が出るんでしょうけどもね。そして、この第三条の四の二に、「高年齢者の職業の安定を図るため、定年の引上げの円滑な実施」と、こういうことにもなってます。
今の局長の話を伺っておりますと、やはり企業側の方からある程度強い意見が出てくれば、それもやっぱり考慮しなきゃならないということになるわけですね。全然こちらが押しつけるんじゃなくて、向こうからやはりある程度の強い意見が出てくればそれも考慮しなきゃならないということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/262
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263・守屋孝一
○政府委員(守屋孝一君) 私どもは、この高齢者対策は、先ほど局長からも申し上げましたように、まさに国民的課題といいますか、今我が国が直面しております最大の社会経済的な課題の一つであるというように考えております。
そういう認識のもとに、私どもが定年制の延長を進めるに当たりましても、また、六十歳台前半層を何とかして六十五歳までは企業の中でいろんな雇用延長の形で抱えていただくということについていろんな指導もいたしますし、また、助成策も講じておるわけでありまして、私どもは、だれからか何か言われて手控えるとか、あるいは言われてどうこうするというよりも、今後の我が国の進むべき方向として何があるべき姿かということを前提に置いて行政を進めておりますので、決して一部の方からあれこれ言われて手控えるとかなんとか、そういうことは毛頭考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/263
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264・下村泰
○下村泰君 大変自信のあるお言葉で結構でございます。
それで、例えば失業給付事業の収支状況をちょっと拝見しますと、五十年が差し引き三十五億円のマイナスで、五十一年が八十九億円のマイナス、五十二年にまいりますると九十四億円のマイナス、そして五十三年にくると三百二十五億円のマイナス。これではとてもたまらぬというんで保険の率を上げます。千分の十一に上げますと、五十四年は六百五十八億の黒字になり、五十五年は五百七億、続いて五十六年は五十六億、そして五十七年にまいりますると二百十七億の今度はマイナスと、こういうことになるわけですね。赤字になるわけです。そうすると、ここで考えられることは、千分の十二にすればまた黒字になるわけですね。ところが、そういうことをなさるのかと思ったらなさらないで、ほかの方法で出てきたわけなんですね。
それはそれとしてもろもろの考え方はおありでしょうけれども、先ほどから申し上げておりますとおり、高齢者というのは弱い立場にいらっしゃる方々ですよね。そういう方の足を切るのはどういう感覚なのかなという気がするんです。まあ別に職業安定局長の悪口を言う気持ちはありませんよ。だけど、先ほどからお話を伺っておりますると、大体六十五歳過ぎた人は引退をしていただくか、まさかぼけ老人になってくれとは言っていないでしょうけれども、そういうふうに心の中で、願わくばそういう人たちの数ができるだけ減ってくれた方がいいというような感覚にとれるんですよ、僕らが聞いていると。恐らくそんな感覚はないでしょうけれどもね。そんなふうにとれるんです。そして人間なんていうのはおもしろいもので、一番最初に決められたものが、それがへずられるとこれを改悪と称するわけですね。
今この席にもいらっしゃる遠藤理事が随分これは苦労なさったんだそうですけれども、随分あの方も悪い方で、こういうふうなものをつくったということが間違いのもとだと私は思うんですけれども、どうしてあれだけ頭のいい方がこんな間違いをしたのか。この雇用保険法の第四条の四項に、「この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。」と、こう書いてあるんですね。それで、この「賞与その他の名称のいかん」、この中からいきなり「いかん」が全部飛んじまうわけでしょう。こういうところに私は給付される方の怒りがあると思うんですよ。これがもし逆であったらどうでしょうか。この法律ができたときに、「この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当」、その後何にも書いてなくて、これを「いう。」というふうに書かれていたものが、今度の改正で、「賞与その他名称のいかんを問わず、」これも含まれて、これを賃金というといったら随分喜ぶんじゃないですか、これ。こういうところにも、何か非常に改悪だと言われるゆえんがあるような、気がするんです。
それで、このことに関してどうのこうのと今申し上げません。こういったことがいわゆる施行される側の、いわゆる改悪であると言う私は感覚だと思うんです、人間的に。だれがどう考えても同じですよ。これは労働大臣だっておわかりだと思う。労働大臣だっていきなり半額に減らされてごらんなさい、やっぱり頭にくるんだ、これ。だれしもそうなんです。それで、もう間もなくいろいろなすべての年金にしましても四人で一人の老人を養わなきゃならない時期はもう目の前に来ているわけでしょう。こういうふうな、もう若い人たちの負担を大きくしなければこれから老人対策というのは年々難しくなっていく状況にもう入ってきているわけです。ですから、こういった方々のことを考えると、果たして今こうして私どもがしゃべくっているようなことで対策ができるんだろうかと本当に心配になってくるんですよ。
ですから、先ほど局長がおっしゃっていましたけれども、中期的展望といいますこの中期というのは、一体何年間ぐらいのことを中期というんですか。今の保険制度ですね、これが中期的展望ということをおっしゃいますけれども、現在の制度で中期というのは何年ぐらいのことを指すんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/264
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265・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) まあ、いろいろ使い方というのはあるんでしょうが、一応私ども昭和六十五年度というものをにらみまして中長期的なと、こういうようなことで申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/265
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266・下村泰
○下村泰君 そうしますと、今まで十年ですね、十年の間にもこうして保険料をちょこちょこ上げて手直しをしてきたわけです、十年間。ところが、これからこの高年齢者層というのは加速度的にふえるわけでしょう。果たして五年間でもちますか。またこれ手直ししなきゃならない時期が来ると思いますけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/266
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267・加藤孝
○政府委員(加藤孝君) 特にこれからの五年間というものにつきましてのそういう労働力の推計をいたしますと、六十歳から六十五歳層で約百万ふえていくと、こんなようなことを見込んでおりまして、そういった高齢化の進展というものも一応踏まえながらの、今度の改正についてはそういったことも一応踏まえて検討もいたしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/267
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268・下村泰
○下村泰君 結局こういったことが、高年齢者層の離職がこういうふうなことのもとになるのであるというような考え方から、こういった方々に対する圧迫と、いわゆる一番弱いやつのところにしわ寄せしていくというやり方が、何か非常に私は無情に感じるんです。
ですから、こういうことをもう少し考えて、先ほどからもういろいろな先生方がおっしゃっていますできるだけ手厚い保護ですね、手厚い方法、方策を講じていただくことによって、なおかつその上で、これではもうどうにもできないんだというようなときに方法をとってほしい、これが私らの希望なんです。
大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/268
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269・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 昔はうば捨て山というのがありましたがね。あれはいかぬということなんです。福祉国家ではそういうことは許されぬということで、そこでいろいろ考えて、いろいろ社会保障制度をつくったわけです。
それで、この雇用保険制度、これなども、やっぱり人間の一番の生きがいというのは元気で働いていかれるということなんでしょうから、やっぱり福祉国家のバックボーンはケインズ以来完全雇用だということで私どもはやってきたわけです。まあ結構努力してきたんで、決して悪くなっていくばかりではないと思いますよ。だけれども、今あなたがおっしゃいましたように、労働省の役人は非常にやっぱり気のいい、思いやりのあるところもあるんですよ、それで、その六十五歳の点になると、非常につらい思いをしておるだろうと思いますよ。だけれども、やっぱり給付をするのを減らしたんじゃ人間の感情を逆なでしますわね。それはそのとおりでございますよ。だけれども、給付というものはだれかが出してそれを給付するわけでありまして、どんな偉い人でも自分のポケットマネーでとてもやれるわけではありません。そうすれば、その六十五歳以上の方々に対して何らかの対策をしなければならぬというときに、だんだん高齢者はふえていく、そしてそれを負担をする若い人の数はそれに応じてはふえないわけでありますから、その辺のバランスというものを考えて、そしてあとは技術的にいろいろと考えたつまりがこの案であろうと私はそう思っておりますので、大体バランスも考えていただかなきゃならぬ。
特に、今の六十歳台前半層というのはちょうど私ごろからあなた方の年齢でありまして、戦争中のこともありましたよ、日本の再建を築いてきた人たちでもありますよ、これは。それはそれなりに処遇をしたいという気持ちはございましょう。だけど、やっぱりそれを支える若い人の負担においてやっていくという面もあるわけでございまして、その辺の両々バランスをとった上で、まあそんなところがやっぱり一番基本で、そしてその上でできるだけのことをしてあげたいという、法技術的な細かい点はいろいろ意見がございましょうけれども、今のところ知恵を出してそういうことにしたということで御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/269
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270・下村泰
○下村泰君 大臣のお気持ちもよくわかりますし、私も東南アジアの方で航空隊の一員として戦ってまいりましたし、そういう苦労もわかりますし、我々の年代が一番現在の日本を築いたように自負しております。それだけに同じ年代の連中が苦しい思いをしているのを、労働省のお役人さんたちはもうそれは英才教育を受けて、教育ママか教育おやじかしりませんけれども、そういう後の心配のない、後顧の憂いのない労働省というところへ入って、後になれば共済組合年金ももらえるし、老後は楽でしょうけれども、一般のそうでない方たちというのはもう先がないんですから、それだけに苦しい思いをしている、そういう人たちに少しでも、ちらっと明るい光明が見られる、そういった施策をとる、これが一番大事なことじゃないかと思います。
まだ時間はありますが、お願いを申し上げまして終わりにします。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/270
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271・石本茂
○委員長(石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十九分散会
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01019840621/271
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