1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月五日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
七月三日
辞任 補欠選任
藤井 恒男君 柄谷 道一君
七月五日
辞任 補欠選任
斎藤 十朗君 出口 廣光君
和田 静夫君 梶原 敬義君
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
中野 鉄造君
委 員
大浜 方栄君
金丸 三郎君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
出口 廣光君
村上 正邦君
森下 泰君
糸久八重子君
梶原 敬義君
本岡 昭次君
和田 静夫君
中西 珠子君
山中 郁子君
柄谷 道一君
下村 泰君
国務大臣
労 働 大 臣 坂本三十次君
政府委員
社会保険庁長官
官房審議官 長門 保明君
労働大臣官房長 小粥 義朗君
労働省職業安定
局長 加藤 孝君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
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本日の会議に付した案件
○雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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001・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る三日、藤井恒男君が、また本日、斎藤十朗君が委員を辞任され、その補欠として柄谷道一君及び出口廣光君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/1
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002・石本茂
○委員長(石本茂君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/2
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003・浜本万三
○浜本万三君 雇用保険法等改正法案に対しまして若干の質問をさしていただきたいと思います。
この問題につきましては非常にたくさんの問題がただされてきたわけでございますが、なお若干不明確な点がございますので、そういう点につきまして質問をさしていただきたいと思います。
まず第一にお尋ねいたしたいと思いますのは、雇用保険財政の実情にかんがみまして、来年度以降の予算編成におきましては、失業給付費について実勢に見合った国庫負担を確保いたしますとともに、例の問題の事務費につきましてもその増額を図るべきだと思うわけでございますが、労働大臣の御決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/3
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004・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 雇用保険の国庫負担金の必要額を確保していくことは当然のことでありますが、事務費については、臨調答申もあり、また、国家財政も厳しい事情にあるなど非常に困難な状況にありますが、せっかくの御指摘でもございますので、必要な国庫負担を確保するよう努力していく所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/4
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005・浜本万三
○浜本万三君 今回の改正に当たりましては、保険料の引き上げ等労使の負担の増加を避けるという前提に立っているとの答弁でございましたのですが、今後、安易に保険料率の引き上げを行うことは避けるべきであると思いますが、これにつきましても労働大臣の決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/5
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006・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 今後の保険財政の見通しにつきましては、再就職手当制度の創設や景気の動向もあり、その改正効果については正確な見通しを立てにくい面もあります。しかし、これまでのような受給者の急増傾向や滞留傾向は改善できるものと期待しております。
いずれにせよ、中央職業安定審議会の答申においても、全体的な支出の効率化を図ることにより、安易な保険料の引き上げにつながらないよう努力すべきであるとの御指摘をいただいているところでもあります。政府としては、保険料率を引き上げるような事態に至らないよう雇用対策に万全を期するとともに、制度の効率的な運営に最大限の努力をしてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/6
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007・浜本万三
○浜本万三君 今回の改正によりまして、離職理由に基づく給付制限期間を三カ月間とすることとしておりますが、正当な理由のない自己都合退職に該当するか否かの判断基準の見直しについての考え方につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
また、一律三カ月ということではなく、事情によりましては弾力的な運用をすべきだと思うのでございますが、この点につきましても御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/7
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008・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 正当な理由のない自己都合退職に該当するか否かの判断基準につきましては、国会における御議論も参考としながら、中央職業安定審議会にお諮りした上、これを定めることといたしたいと思います。
なお、諮問案の作成に当たっては、最近における経済社会の変化を踏まえ、いわゆる単身赴任に際して離職を余儀なくされた場合、技術革新に対応することができずに離職を余儀なくされた場合等については、給付制限の対象としない方向で検討することといたしたいと思います。
また、基本手当の受給中に就職し、再離職した場合について給付制限期間を一カ月程度とすることなど、御質問の趣旨をも踏まえて改正法の施行に当たってまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/8
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009・浜本万三
○浜本万三君 給付制限期間の延長に関連をいたしまして、今回新設されることとなります再就職手当の受給要件について伺うわけでございますが、この場合、公共職業安定所の紹介による場合だけでなく、受給者みずからが自己開拓で就職する場合も対象とすべきであると思うのでありますが、この点についての御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/9
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010・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 再就職手当の受給要件につきましては、中央職業安定審議会にお諮りした上これを定めることとなりますが、受給者の早期再就職の促進の見地からこの制度を創設するものであり、乱用の防止にも配慮しながら、受給者が自己開拓で就職する場合についても、一定の場合には支給対象とする方向で検討することといたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/10
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011・浜本万三
○浜本万三君 次は、政省令や運用基準の問題について伺うわけでございますが、過去において問題となりました給付の適正化通達を復活するような状況も憂慮されるわけでございますが、現行法に基づく政省令あるいは運用基準についてより厳しくするという発想ではなしに、失業者に有利になるようこれを見直す必要があると思うのでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/11
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012・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 給付制限制度及び納付命令制度の運用基準の見直しにつきましては、国会における御議論を踏まえながら、中央職業安定審議会にお諮りした上、制度の趣旨、目的に沿った形でこれを行うことといたしたい。また、各種の延長給付の日数基準等についても現行の水準を維持してまいりたい。
なお、いわゆる給付の適正化通達の復活になるような取り扱いをすることは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/12
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013・浜本万三
○浜本万三君 衆議院における本法律案の修正事項については、細目にわたる部分につきましては政省令等にゆだねることとされておりますが、これらの内容についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/13
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014・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 衆議院における修正事項のうち省令等で定める事項については、修正に至るいきさつ、その後の国会における御議論を踏まえながら、中央職業安定審議会にお諮りした上、これを定めることといたします。
なお、新設される個別延長給付の対象者のうち、労働省令で定める者については、倒産に至らないで事実工事業所が閉鎖されたこと、あるいは事業所が移転したことにより離職を余儀なくされた者を、六十五歳定年に達したことに準ずる場合として労働省令で定める理由については、雇用延長または再雇用が六十五歳で終了した場合をそれぞれ定める方向で検討することといたしたいと思います。
また、六十五歳以上の任意加入制度については、通常の被保険者たり得る人たちを対象とし、著しく短い期間に離職することが予定されている者等を除外するとともに、そのための事務手続についても事業主が代行することができるなど、高年齢者の実情に合わせたものとする方向で検討することといたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/14
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015・浜本万三
○浜本万三君 修正事項のうち、高年齢者に係る任意加入制度の実施期間につきましては、三年間ということにこだわらず、事情によりましてはこれを延長する必要があると思うのでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/15
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016・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 高年齢者に係る任意加入制度の実施期間については、衆議院での修正の経緯等を踏まえ、当面、改正法施行後三年間といたしたい。また、その期間経過後どのようにするかは、その時点における高年齢者の就業等の状況あるいはその時点の雇用失業情勢を踏まえながら、中央職業安定審議会の御意見を伺った上、適切に対処してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/16
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017・浜本万三
○浜本万三君 改正案の施行期日の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
改正案の施行期日につきましては、一部を除き本年七月一日とされておりますが、既に七月一日を経過しておるわけでございます。また、制度改正の内容が国民に与える影響は非常に大きいものがあると思うわけでございます。したがって、制度の周知、第一線機関への伝達等必要な施行準備をした上で改正法を施行することとした場合、どの程度の期間が必要だとお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/17
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018・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 改正法が成立した場合には、予算関連法律案でもあり、できる限り早期に施行すべきものと考えておりますが、政省令等について中央職業安定審議会にお諮りした上でこれを定め、第一線機関に通達するとともに、改正法について事業主、受給者等に十分周知徹底を図る必要があります。そのため、改正法成立後施行までには二週間程度の期間が必要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/18
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019・浜本万三
○浜本万三君 雇用保険受給者の再就職につきましては、その再就職率の低下傾向にかんがみまして、改正後の制度運用、第一線の公共職業安定所の窓口体制の整備、あるいは担当職員の増員等を行うことによりその促進を図るべきであると思うわけでございますが、この点についてはどのようなお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/19
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020・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 雇用保険受給者の再就職については、職業安定行政の最重点課題としてこれを推進してまいる所存であります。
再就職の促進に当たっては、今般創設することとなる再就職手当制度を初めとする雇用保険の諸制度を活用するとともに、受給者一人一人に対するきめ細かい職業指導及び職業紹介を進めていくことが必要であり、総合的雇用情報システムの開発、窓口体制の見直しなどを鋭意実施し、国民の期待にこたえてまいりたいと思います。
また、公共職業安定所の職員に係る増員についても、厳しい事情のもとではありますが、最大限の努力をしてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/20
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021・浜本万三
○浜本万三君 雇用構造が変化している中で、雇用失業情勢に対応いたしまして雇用就業対策を充実強化することが、今後の雇用保険の健全な運営を確保する上で大変必要であると考えます。そのような意味で、先般中西議員とか和田議員が特に質問がございました、四事業を含めて現行諸制度を見直す中で具体的な施策を推進していかなければならないと思うわけでございますが、労働大臣の御決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/21
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022・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 雇用構造の変化に対処しながら、失業の未然防止と離職者の早期再就職を図り、完全雇用を達成することは雇用対策の基本的な目標であります。第五次雇用対策基本計画は、この基本的目標の達成に向けて、構造変化に対応して労働力需給のミスマッチの解消を図るための雇用対策の基本的方向を示したものでありまして、この方向に沿って雇用対策を積極的に進めてまいる所存であります。
このため、雇用安定事業等四事業を含め、現行諸制度の見直しを随時行い、今後の雇用失業情勢に的確に対応してまいりたい。特に、人口の高齢化の中で、高年齢者の雇用就業対策は緊急な課題であると考えていますが、中央職業安定審議会雇用対策基本問題小委員会において今後の雇用対策の具体的なあり方について検討を進めていただいているところであり、労働省としては、その検討結果を踏まえながら逐次対策の具体化に努めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/22
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023・浜本万三
○浜本万三君 船員保険のことにつきまして厚生省に伺います。
今回の改正案を見ますと、船員保険の場合には、特に陸と違いまして、一年未満の者に対して相当厳しい改正案になっておるようでございます。そこで特にお尋ねをしておきたいと思うのでございますが、被保険者期間が一年未満の者であっても、倒産等により失業を余儀なくされた者については、所定給付日数は従前並みにすべきであるというふうに思うのでございますが、先般、厚生日のときに御回答をいただいておるようでございますが、改めて私の質問に対しまして厚生省の見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/23
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024・長門保明
○政府委員(長門保明君) ただいまのお尋ねの、被保険者期間が一年未満の者につきましては、先生御案内のとおり、従来の九十日間という所定給付日数を五十日にするという改正案をお願いしているわけでございますが、これは全員一律に五十日にするというわけでございませんで、被保険者期間が一年未満でございましても、倒産等船舶所有者側の都合によりまして失業を余儀なくされた者であって必要と認められる者、こういう人につきましては個別に給付日数を延長する、こういう制度を設けることを予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/24
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025・浜本万三
○浜本万三君 以上、御質問をいたしまして、非常に不明確でありました点を一応確認をさしていただいたわけでございますので、私の質問は終わりたいというふうに思いますが、重ねて労働大臣に希望を申し上げたいと思います。
最近、非常に雇用状態が悪くなり、失業者が増大をしておりまして、労働行政としてはこの面で大変苦慮されておるというふうに思うわけでございますが、何といいましても、先ほどお答えのように、第一に失業者を出さない対策を十分やっていただくということが必要であろうと思います。それから第二は、不幸にして失業者が出た場合には、そういう失業者の方々に対しまして手厚い対策を講じるということが必要になってくるというふうに思います。
そういう面で一層労働大臣の御健闘を希望いたしまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/25
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026・石本茂
○委員長(石本茂君) 以上で質疑は終局をいたしました。
本案に対し、佐々木君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
この際、本修正案を議題とし、佐々木君から趣旨説明を聴取いたします。佐々木満君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/26
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027・佐々木満
○佐々木満君 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
修正の要旨は、本法律の施行期日を一カ月繰り下げ八月一日に改めようとするものであります。
なお、これに伴い所要の修正を行うこととしております。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/27
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028・石本茂
○委員長(石本茂君) 佐々木君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。坂本労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/28
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029・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) ただいまの修正案につきましては、政府としてはやむを得ないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/29
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030・石本茂
○委員長(石本茂君) 本修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。——別に御発言もないようですから、質疑はないものと認めます。
これより原案並びに修正案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/30
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031・本岡昭次
○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表し、ただいま討論に付されました雇用保険法等の一部を改正する法律案及びその修正案について、いずれも反対する立場から、その理由を簡潔に申し述べたいと思います。
まず第一に、今回の改正案は、今後の産業経済、雇用失業情勢の具体的長期見通しに立ったものではなく、財政事情に合わせた保険給付総額の削減を目的とした制度改正であるという点であります。委員会の質疑においても、何ら政府より明確な将来展望が示されず、全く不満であります。現在、離職者、失業者を減らすための雇用政策の確立こそが検討されなければならない緊急の課題であるはずであります。
第二に、今回の改正が、保険料負担の算定の基礎としてはボーナスを含めながら、給付額の算定基礎からはボーナスを除外して、給付水準を切り下げるなど、他の社会保険制度との整合性を無視していることこそ、給付と負担の不均衡であります。これは、政府の経済政策、雇用政策の失敗による保険財政の赤字を失業者に転嫁するものであります。
第三に、改正案が、現在の雇用失業情勢のしわ寄せを厳しく受けている高年齢労働者の取り扱いに大変冷淡であることであります。すなわち、六十五歳以上の離職者には失業給付にかえて一時金を支給することとし、また、所定給付日数についても被保険者期間を加味して、実質的には中高年労働者の所定給付日数を大幅に削減しようとしていることであります。
これらは、我が国の高齢化社会への進展に背を向け、働く意欲と能力のある高年労働者を無理やり引退に退い込もうとするものであり、勤労権を保障する憲法第二十七条の精神にも反するものであります。
なお、衆議院修正は我々の主張にほど遠く、既に指摘した諸問題について解決を見たとは言いがたいのであります。
また、ただいま提示された修正案は、単なる法律の施行期日の変更を内容とするもので、これまた我が党の基本的要求にこたえるものではありません。
以上、反対の理由を申し述べ、反対討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/31
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032・佐々木満
○佐々木満君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案及びただいま提出されました修正案につきまして、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意を表するものであります。
我が国の経済社会は、二度にわたるオイルショックを克服し、安定経済成長のもとで活力ある福祉社会の建設に向かって着実な前進を続けております。しかしながら、我が国の経済社会においては、現在、高齢化の進展を初め大きな変化が進行しており、しかも、この変化は単に量的にのみならず、いわば構造的にも我が国の経済社会のあり方を変えていく性格のものであると思います。
雇用問題を取り巻く環境を見ましても、経済の国際化の中で、労働力人口の高齢化が急速に進んでいること、婦人の職場進出が一層の進展を示していること、雇用の場が第二次産業よりもサービス業において拡大するなどのいわゆるサービス経済化が進んでいること、さらにはマイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の波が広範な分野へと広がりを見せていることなど、これまでの我が国の雇用のあり方を見直さなければならない大きな変化が進行しつつあるのであります。
私は、この大きな構造的変化への対応の中で、失業の未然防止と離職者の再就職の促進のために果たす雇用保険制度の役割に大きな期待を寄せるものであります。
雇用保険制度は、失業給付を通じて失業者の生活の安定を図るとともに、あわせて失業者の能力、適性に合った職業にできるだけ早く就労することができるよう必要な援助を行うことを目的とするものであります。失業は人生の不幸であり、失業者個人にとって大きな損失となるだけでなく、社会の安定を阻害するものでもあります。その意味において雇用保険制度は、雇用対策の大きな柱をなすというだけでなく、広く国民経済的な観点から見ても極めて重要な役割を果たしているものであります。
現行の雇用保険制度は、雇用調整が吹き荒れる昭和五十年に創設され、自来約十年、諸外国がオイルショックにより高失業化社会となっていく中にあって、我が国を先進諸国の中で最も低い失業率の国として維持するなど、よくその役割を果たしてきたものでありますが、さきに述べたようなさまざまな構造変化の一層の進展が予想される中で、その機能が有効に発揮されるよう今後とも制度を健全に運営していくことがぜひとも必要であると考えます。
このたびの政府案は、このような産業構造や雇用構造の変化に的確に対応しながら、失業者の生活の安定を図り、再就職を促進するとともに、現行制度の不合理な面を改め、労使の負担をできる限りふやさずに将来にわたる制度の健全な運営を図ろうとするものであり、時宜を得た適切なものと考えます。
また、修正につきましても、政省令等の制定、新しい制度の国民への周知徹底などの施行準備にある程度の期間が必要となるものの、本法案が予算関連法案でもあり、できる限り早期に施行する必要があるという観点から妥当なものと考えます。
以上の理由により、私は、修正案及び修正部分を除く原案に賛成するものであります。
なお、この際、一言要望を申し上げます。
すなわち、福祉国家日本の建設を目指す我々にとって最も大切なことは、何よりもまず失業者そのものを出さない政策をいかに進めていくかということであります。政府はさきに第五次雇用対策基本計画を策定し、この計画に沿って各般の施策を展開しつつありますが、激しい変化の時代の中で完全雇用の達成を目指して今後とも最大限の努力を払われることを強く要望して、私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/32
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033・山中郁子
○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、雇用保険法等の一部改正案並びに修正案に反対する討論を行います。
反対の第一の理由は、これが雇用対策の拡充や失業者の生活安定とは全く無縁の改悪となっているからであります。
本法案提出の発端が、国庫負担を削減せよという政府方針にあったことは、本委員会の質疑を通じてもさらに明らかになったところであります。初めに国庫負担削減ありきで、後は失業者を痛めつけてつじつまを合わせる、これが本法案の意図するものであり本質でもあります。また、本法案の審議を通じ私が繰り返し指摘してきたところでありますが、この考え方や改正の手法は、今国民の大きな抵抗を受けている健康保険法等一部改正案と軌を一にするもので、到底許すことはできません。
反対理由の第二は、本法案が徹底した失業者泣かせの改悪になっている点にあります。
賃金日額の算定基礎からボーナス分を除外することや、所定給付日数を全体として縮減するなどは、失業給付の圧縮となり、失業者の生活維持に直接大きな打撃を与えるものとなります。また改正案は、自己都合退職者を敵視し、給付制限期間を三カ月に延長するとしております。これでは九十日分の失業給付を受けるのに九十日間も待たされることになり、まさに、保険あって給付なし、ということになりかねません。
高齢者への失業給付適用除外は、衆議院で若干修正されたとはいえ、現行制度を大幅に後退させるものであることは何ら変わるものでなく、反対であります。
反対理由の第三は、本法案が財界主導による国民生活切り捨ての臨調路線に沿ったものであるからであります。
日経連は、本改正案検討作業に対して、徹底した制度、運用の改正を行うべきであるとし、注文をつけておりました。未法案は、結局日経連の要望どおり、徹底した制度、運用の改悪で、失業者の生活に脅威を与えるものとなっております。
我が党はかねてより、労働時間の短縮、週休二日制の促進等で雇用の確保を図るとともに、不当な解雇の規制、賃金の引き上げ等、労働条件の全般的改善を要求してまいりました。しかるに、政府は、人事院勧告を凍結したり、何ら有効な労働時間短縮対策をとらないばかりでなく、その反面で専ら失業者に犠牲を強いる本法案のごときを提出する政治姿勢は断じて容認できません。
我が党は、今後とも大幅賃上げ、労働時間短縮等、労働条件と労働者の生活向上、並びに経済の民主的発展による雇用の安定、失業の防止、失業者の生活保障の実現を目指し努力することを表明して、本法案の原案並びに修正案に対する反対の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/33
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034・中野鉄造
○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、修正案並びに修正部分を除く原案に対し賛成の立場で討論を行います。
雇用保険法制定以来既に十年が経過し、その間、雇用失業情勢は大きく変化し、経済成長率の低下の中で完全失業者数の増加傾向が著しくなってきています。それに伴い雇用保険財政は厳しくなり、五十七年には赤字を計上し、労働省の試算によると、このまま推移していけば雇用保険受給者増加とともに大幅な赤字が見込まれます。今回の改正案を見ますと、必ずしも雇用保険制度の全体の見直しとはほど遠く、小手先の赤字減らし対策の感はぬぐえませんが、失業給付の基本手当の範囲の拡大等を盛り込んでおり、一歩前進であります。
また、六十五歳以上の高齢者対策については、将来の高齢化社会の到来から見て、高齢者の労働対策が重要な施策として国家を挙げて取り組んでいくべき最大課題であります。しかしながら、今回の改正案では高齢化社会の展望としては前向きの施策とは言いがたく、今後に大きな課題を残したと言えます。しかし、衆議院での社公民の修正項目で六十五歳定年等で離職した受給資格者について特別措置を設けたり、また、六十五歳以後の雇用者でも高年齢継続被保険者となることができるとの部分を残したところは評価できるところであります。
さらに、賃金の算定基礎からボーナス等を除外することは、現在雇用保険料をボーナスからも取っており、出口と入り口で整合性に欠けるものとの論議があります。しかし、各種保険制度が出口と入り口で必ずしも整合していない現状から見て、やむを得ないと考えられます。
そして、将来不況業種及び特定地域の離職者についての所定給付日数の延長給付については、経済成長の伸び悩み、不況から脱し切れない現状から見て、適切な措置であると考えられます。
終わりに、今回の修正案については十分その意をくみ取り、雇用保険制度が円滑に機能するよう、その改善に努力するよう強く要望いたします。
さらに、マイクロエレクトロニクス等先端技術の発展に伴い生じてくるであろう雇用失業情勢の構造的変化はさらに厳しくなると予想され、失業予防の観点からの改善等が問われる時代になりつつあります。このような現状を踏まえ、将来の展望を考慮した雇用保険法の制度改正を望みまして討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/34
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035・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、雇用保険法等の一部を改正する法律案について、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、賛成の討論を行います。
雇用保険制度は、発足以来、失業の予防及び雇用機会の増大、雇用構造の改善、労働者の能力の開発及び向上等に重要な役割を果たしてきたところでありますが、その間、雇用保険制度を取り巻く諸情勢は、産業構造の転換や労働力需給の変化、完全失業者数の増加などに見られるように、大きく変化してまいりました。これらの状況を勘案し、今後の雇用失業構造の変化に対応しつつ、雇用保険制度を効果的に機能させていくためには、本改正案は必要やむを得ないものと理解するものであります。
特に、政府原案の内容には、賞与を給付の基礎から除外したことによる基本手当の落ち込みが大き過ぎること、不況や倒産のあおりで離職を余儀なくされた労働者も一律に給付日数が削減されてしまうこと、現に六十五歳を超えて再就職しようとしている人たちへの動揺が大きいことなど、重要な問題点が幾つか見られたのでありますが、これらについて、激変緩和措置として行う基本手当日額の引き上げにさらに上積みする。失業給付日数は、特定不況地域・特定不況業種、企業倒産等の離職者についてはこれまでどおりとする。六十五歳を過ぎても、その年末あるいは年度末を定年と定めている企業等の退職者には基本手当を支給する。暫定措置として六十五歳を過ぎて雇用される者についても選択制で被保険者となることを認めるなどの諸点について衆議院段階で修正が行われたことは、我が党の主張が相当程度取り入れられ、その内容が前進を見たものと評価するものであります。
しかしながら、本法案によって問題がすべて解決されたわけではありません。雇用保険制度は経済情勢、雇用情勢と密接不可分の関係にあり、今後とも適正な経済成長を確保するとともに、雇用機会を増大し、失業を防止するための積極的な対策がとられなければならず、特に高齢者社会の到来に備え、その雇用対策に万全を期す必要があることは言うまでもありません。
また、今回の法改正に伴い政令事項となる個別延長給付の受給資格、六十五歳の定年等により退職した者に関する特例、任意加入に係る高年齢継続被保険者に関する暫定措置等の規定に関し、法の趣旨に照らした適切なる運営が行われるよう希望し、あわせて政府において、追って提案される附帯決議を政府が誠実に履行することを強く求めるとともに、本院における修正事項の、本年八月一日の施行に向けてこれが円滑に行われるよう特段の配慮をされんことを要望して、賛成の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/35
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036・石本茂
○委員長(石本茂君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/36
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037・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/37
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038・石本茂
○委員長(石本茂君) 委員の異動について御報告いたします。
本日、和田静夫君が委員を辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/38
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039・石本茂
○委員長(石本茂君) これより雇用保険法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
まず、佐々木君提出の修正案を問題に供します。
佐々木君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/39
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040・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案全部を問題に供します。
修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/40
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041・石本茂
○委員長(石本茂君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
この際、浜本君から発言を求められておりますので、これを許します。浜本君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/41
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042・浜本万三
○浜本万三君 私は、ただいま可決されました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
一、高年齢者を中心とした失業の防止、早期再就職の促進、雇用就業機会の増大等のための雇用就業対策の充実、強化に努めるとともに、最近の経済社会の変化に応じた職業能力の再開発について検討を行い、失業者の再就職の促進のために、職業訓練等その整備充実を図り、このために雇用保険法に基づく四事業の一層効果的な運営に努めること。
二、給付制限制度については、労働者の生活の実態、経済社会の変化及び職業選択の自由に十分配慮しつつ、雇用保険法の趣旨を踏まえ、運用基準の見直しを行うこと。
三、不正受給の防止対策の強化拡充を図るとともに、納付命令制度について、その趣旨、目的に沿った運用が図られるよう運用基準の見直しを行うこと。
四、雇用保険制度の適切な運営に努めることにより財政の確立を図り、今後、安易な保険料率の引上げを避けるとともに、必要な国庫負担額を確保するよう努めること。
五、五人未満事業所等の未適用労働者及び一般労働者と同様の状態にあるパートタイム労働者の加入促進に努めること。
六、婦人労働者の就労機会を確保し、併せてその失業を防止するため、パートタイム労働者対策の充実、育児休業制度の充実等に努めること。
七、マイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の進展に対応して、雇用の安定、職業能力の開発向上、労働安全衛生の確保、労働時間の短縮等が図られるよう対策の充実強化に努めること。
八、公共職業安定所における職業紹介機能及び体制の充実強化を図るとともに、就職情報誌紙等の増加に伴う諸問題に対応するため必要な指導を強めること。
九、船員をとりまく深刻な雇用情勢にかんがみ、失業予防等雇用安定対策の一層の充実強化を図るとともに、船員保険失業部門についても、制度の適切かつ安定した運営を図るよう努めること。
また、船員保険における失業保険非適用の漁船船員について、その実態を考慮し、適用拡大の検討を含め特段の配慮を払うこと。
右決議する。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/42
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043・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいま浜本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/43
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044・石本茂
○委員長(石本茂君) 全会一致と認めます。よって、浜本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、坂本労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂本労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/44
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045・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/45
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046・石本茂
○委員長(石本茂君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/46
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047・石本茂
○委員長(石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01319840705/47
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