1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年八月三日(金曜日)
午後十時開会
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委員の異動
八月三日
辞任 補欠選任
大森 昭君 和田 静夫君
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出席者は左のとおり。
委員長 石本 茂君
理 事
遠藤 政夫君
佐々木 満君
浜本 万三君
中野 鉄造君
委 員
大浜 方栄君
金丸 三郎君
斎藤 十朗君
関口 恵造君
曽根田郁夫君
田代由紀男君
田中 正巳君
村上 正邦君
森下 泰君
糸久八重子君
本岡 昭次君
和田 静夫君
中西 珠子君
山中 郁子君
柄谷 道一君
下村 泰君
国務大臣
内閣総理大臣 中曽根康弘君
厚 生 大 臣 渡部 恒三君
政府委員
総務庁長官官房
審議官 佐々木晴夫君
防衛庁経理局長
大蔵省主計局次 宍倉 宗夫君
長
兼内閣審議官 保田 博君
厚生大臣官房長 幸田 正孝君
厚生大臣官房総
務審議官 小林 功典君
厚生大臣官房審
議官
兼内閣審議官 古賀 章介君
厚生大臣官房審
議官 新田 進治君
厚生大臣官房会
計課長 黒木 武弘君
厚生省健康政策
局長 吉崎 正義君
厚生省保健医療
局長 大池 眞澄君
厚生省保健医療
局老人保健部長 水田 努君
厚生省生活衛生
局長 竹中 浩治君
厚生省薬務局長 正木 馨君
厚生省社会局長 持永 和見君
厚生省児童家庭
局長 小島 弘仲君
厚生省保険局長 吉村 仁君
厚生省年金局長 吉原 健二君
厚生省援護局長 入江 慧君
社会保険庁長官
官房審議官 長門 保明君
社会保険庁医療
保険部長 坂本 龍彦君
社会保険庁年金
保険部長
兼内閣審議官 朝本 信明君
事務局側
常任委員会専門
員 今藤 省三君
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本日の会議に付した案件
○健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/0
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001・石本茂
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/1
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002・和田静夫
○和田静夫君 私はまず総理に、財政再建と社会保障の関係について尋ねます。
財政再建を進めるということも大変大事なことではありますが、社会保障の犠牲によって財政再建を進めるという路線をとることはこれは納得するわけにはまいりません。政府の立場から言えば、やむを得ずという、そういう修飾語がつくのでありましょうが、五十九年度の予算編成は、福祉、社会保障を後退させた予算であった。これは予算委員会などでもいろいろと意見を伺ったところでありますが、この点の総理の御認識をまず承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/2
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003・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、政府提案の法案に対しまして、夜遅くまで御審議していただきますこと、感謝を申し上げる次第でございます。
次に、ただいまの和田さんの御質問でございますが、社会保障のみを犠牲にしてやるということは全然考えておりません。しかし、百二十二兆に及ぶ公債を来年三月には抱えるという状況のもとに、臨時行政調査会の答申を守り、かつ増税なき財政再建、あるいは六十五年度に赤字公債依存体質から脱却する、こういう政府の既定方針の道を推進してまいりますためにはやはり各方面にわたって相当の合理化を行わざるを得ない、そういう面におきまして聖域を設けないでそういう考えを推進するということを申し上げてきた次第でございます。そういう中の一環として厚生省関係等の予算におきましてもかなりの御迷惑をおかけしたわけでございます。
しかし、社会保障を犠牲にしてそれを行おうというそういう考えに立ってそれをやったのではなくして、予算全般を見まして全般のバランス等々も考えつつそういう措置を行ったと、このように御理解をお願いいたしたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/3
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004・和田静夫
○和田静夫君 いかように言われましょうとも、例えば今この審議している健保の給付率の低下、本人一割負担の導入、これはもうやっぱり明確に社会保障の後退であると言わなければなりません。それとも中曽根総理としては、行き過ぎた社会保障給付を是正をされたとでも考えていらっしゃるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/4
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005・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 行き過ぎた社会保障を是正しようという考えは毛頭ございません。
今回の原則二割、当面一割ということをお願いいたしましたのは、やはり医療保険制度全体の長期的安定あるいは合理化、特に世代間の公平を維持する、そういう観点に立ち、かつまた、給付と負担の公平あるいは将来における一元化ということを目途にいたしまして、いずれ将来は国民健康保険もあるいは健康保険も八割給付というようなことに統合しようと、そういうような考えに立ちまして、その一つの段階としてこのような措置を行いつつあるのでございまして、社会保障関係が突出しているからそれを削減しようと、そういう考えでやったのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/5
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006・和田静夫
○和田静夫君 かなりの時間をかけて厚生大臣その他と論議をしてきた中で、乱診乱療を防ぐ、患者に医療費の実態を知ってもらう、その意味では過剰な診療を防ぐということになるだろうという、その行き過ぎの是正というような論理展開は衆参両院を通してあった論理の展開なんですがね。総理は、そういう点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/6
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007・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) それは、医療保険制度の合理化という面においては、そういう面に目がつけられた点もあると思います。あるいは薬価基準の引き下げという点も、合理化という面においてはあったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/7
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008・和田静夫
○和田静夫君 例えば患者が医療費を知った、そういうことによって過剰診療がなくなるというふうに言い切ることができると総理はお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/8
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009・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) それは一つの理由にはなり得ると思いますが、それのみで医療費が減るというようなことは考えることはできないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/9
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010・和田静夫
○和田静夫君 私は総理が、乱診乱療を防ぐというときに、患者がこの医療費の大きさを知るということを一面で認めるとされるならば、例えば明細書を義務づける、そういうことをやるという一つの手法があると思うんですがね。そういう点については、総理は御見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/10
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011・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の措置で定率制ということを考えておりますのは、やはり自分がかかった病気についてどの程度医療費がかかっているかという点を患者さんに認識してもらう一つの場合を提供するということもあると思います。そういう面が、医療に対する国民の関心と認識を呼び起こすという点もあると思っております。
しかし、レシートをその都度その都度要求する、そういうお考えも一面にはなきにしもあらずでございますけれども、それがお医者さんの側にすれば非常に煩雑な手数を呼んだりしたりすると、そういうような便不便という面もまた他面考えて、能率性という面も考えなければいかぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/11
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012・和田静夫
○和田静夫君 来年度の予算編成でありますが、社会保障はどういう形で位置づけられましょうか。さらに大幅に削り込んでいくというようなことが起こらない、そういう保障があるというふうに踏んでおいてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/12
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013・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 来年度の予算編成につきましては、先般閣議で来年度の概算要求の基準というものをつくりまして、それによって各省は作業を始めているというところでございます。
これにつきましては、やはり各経費の性格によりまして寛厳おのずからなる基準をつくり、ある場合にはマイナス一〇%、ある場合にはマイナス五%、ある場合には手をつけない、ある場合には重点政策については特別に考慮をする等々の政策的な考慮もいたしまして、その上である程度一律的にやりませんと、実際は各省庁ともみんな大事な仕事を抱えておるわけでございますから、細かいところまで選別して概算要求のときに重点化するということは非常に難しい。むしろそういう問題は予算編成の過程において各省庁の見識に任せる、そういう方が実地にも合い能率的でもある、そういう考えに立って予算編成基準を作成し、今後も運営していく次第でございます。
厚生省予算は、医療費、年金等で非常に膨大な額にわたっておりますが、年金等々につきましては、これは給与との関係もありまして、いろいろ特別にも考えてきておるところでございます。
そういうような弾力的な配慮もしつつ、合理的と思われる基準で今回も編成しつつあるということを、御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/13
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014・和田静夫
○和田静夫君 社会保障全体をとらえて、現行の給付水準というのは、中曽根総理のもとにおいては、中曽根内閣としては維持をされていく、そういうふうに踏んでおいてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/14
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015・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) いずれ医療につきましては将来これを一元化したい、その一元化の基準というものは大体八割見当と、そういうことで国保も健康保険等も一元化したいという将来展望を持ってこれからも努力していきたい、そう思っております。そういう一つの過程として今回の措置等もお考えいただければありがたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/15
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016・和田静夫
○和田静夫君 お隣の厚生大臣は私どもとのいろいろのやりとりの中で、当然増の六千億から七千億円は譲れないと答えられたわけです。六千五百億円なければ厚生省の予算編成は困難であるという強い姿勢をお持ちになって大蔵大臣との折衝に臨まれたわけですけれども、そのことは私にも答弁をされているわけであります。
ところが、実際の概算要求基準は、これはもう総理は御存じだと思いますが、約三千五百億円というふうに発表になったわけです。そうすると、当然増経費の半分弱を削り込まなきゃならないということになってきているわけですね。どこかを削って三千億円を浮かさなければならなくなってきている。
そこで何を削るか、こういうことになろうと思うのでありますが、現行の給付水準を維持していきつつ何を削るかということになりますと、総理には何か御構想がおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/16
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017・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、厚生省は膨大な予算量を持っておりますので、ほかの省から比べますと、そういう犠牲をしょわれるボリュームはかなり大きいので、大変我々も恐縮もし、今までの厚生省当局の御協力については非常に感謝をしておるところでございます。
今回の概算要求につきましても和田さんおっしゃるような情勢であることは事実でございますので、三千億円に及ぶこれらの問題は、厚生省の枠内におきまして、厚生省が独自の見解でいろいろ重点化を考えていただいて処理をしていただく、十二月までにいろいろ作業を願う、そういう考えに立っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/17
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018・和田静夫
○和田静夫君 先ほどの御答弁の中にもありましたが、現行の給付水準を大枠では維持をされるという発想であるとするならば、それに応じたこの国庫負担というものは保障される必要がありますね。ここの点は明確にしておく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/18
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019・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 大体、今の健康保険関係の皆さんの負担の水準というものは余り変えたくない、そういう希望を持っておるわけであります。
ただ、先ほど来申し上げておりますように、将来いろんな各般の保険関係の一元化ということを考えて、八割見当という目標を持っており、そこへ近づけていこうという努力をしていきたいと思いますが、保険料その他における国民負担という面についてはさほど激変を起こさないように、我々は当然考慮すべきことである、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/19
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020・和田静夫
○和田静夫君 八割給付統合論が理論的には破綻を示しているということはこの論議の中で明らかにしましたし、後ど私は指摘をいたしますから、そこのところはまずおいておいて次の問題に入ります。
行革審は、児童手当の抜本的見直しを求めています。これについては、私は関係審議会で十分に審議を尽くして、また、国会でも十分論議を深める必要があると考えています。
五十九年度の予算では、財政の論理が先行して、社会保障を進めるという観点からの議論は、私はある意味では甚だ不十分であったと思っているわけです。社会保障制度審議会の答申は、そのような意見を述べているわけです。私は、この社制審の意見を中曽根総理は六十年度予算編成に生かす、そういう立場をお持ちになる必要があると思うんです。したがって、制度改革に関する部分については慎重であるべきだと考えるのでありますが、総理の見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/20
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021・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 児童手当につきましては、中央児童福祉審議会で検討中でございまして、その審議会の意見を踏まえて対処いたしたいと思っております。
制度改革にわたります問題は、非常に技術的な問題もありますので、厚生大臣から御答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/21
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022・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 和田先生御案内のように、六十年度の予算の基準、一番心配しておった年金と医療費、これは、高齢化に伴う必然的な増額についてのある程度の特殊性というものを大蔵省にお認めいただいて、これで四千百億あるわけでございます。何とか今後工夫して、来年度大きな制度改革を行って、福祉の水準を引き下げるというようなことはやらないで、来年度工夫をして予算をつくってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/22
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023・和田静夫
○和田静夫君 総理、今御答弁になった厚生大臣は、来年度に児童手当の見直しは行わないと本委員会で私に約束をされました。そこで、厚生大臣がやらないと言われたものを、総理が見直しに手をつけるというようなことに私はならないと思うのでありますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/23
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024・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) これは先に私からで申しわけありませんが、和田先生からの御質問に、私は、今のところ省としての方向が決まっているわけではありませんが、私個人としての私見を申し上げさせていただければ、この児童手当というものは非常に重要だと思っているという意味のことを申し上げ、同時に、これは児童福祉審議会で今審議をいただいておるわけですから、正式にはこの審議の経過を踏まえて決めるということを申し上げておるのでございまして、私は残したいと思っておりますが、必ず総理は私どもの意向を考慮してくださるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/24
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025・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように中央児童福祉審議会で検討中でございますから、その答申を見ましてこれに対処いたしたい。答申の出る前に政府としての公式な見解を出すことは、審議委員の皆さんに失礼に当たるだろうと私は思いますので、答申を尊重するという立場に立ってお待ちしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/25
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026・和田静夫
○和田静夫君 生活保護についてでありますが、不正受給などをやめさせるということは当然だといたしましても、私は、これはもう制度には手をつけるべきではないと考えます。生活保障というのは、社会保障制度の根幹をなしているからだと思うからであります。したがって、生活保護の給付水準の切り下げ、これはだれがどう見ても福祉の後退となるわけでありますから、中曽根内閣はこの福祉後退内閣という名を永遠に残すのではないかと思うがゆえに、私は老婆心から危惧するわけでありまして、生活保護には手をつけない、国の責務として財源保障を含めて守り抜くという決意があってしかるべきだと思っていますが、総理いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/26
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027・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 生活保護は非常に大事な項目であると思っております。したがいまして、いずれにせよ生活保護を受けられている方々の受給の程度というものに支障を来たすことはないようにはすべきであると思いますが、その仕組みをどういうふうにするかということは今後予算編成の過程において検討さしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/27
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028・和田静夫
○和田静夫君 来年度の予算編成に関連いたしまして、どうもちょっと、予算委員会で中曽根総理といろいろやりとりしたことで少し危惧が持たれますので確認をするのでありますが、大蔵省があれこれと財源探しをしているようであります。EC型付加価値税を初めとする大型間接税の導入などというようなものがこの財源探しの中でまた何か浮上をしているような、まさにうわさでありますが、そういう形が出てくる。これは予算委員会の論議、総理が私に約束をされたことを踏まえてそういうことはあり得ないと考えていますが、これは再確認でありますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/28
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029・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) いわゆる大型間接税なるものは中曽根内閣が続いている間はやりませんと先生にお答えいたしましたが、それは今後も守っていくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/29
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030・和田静夫
○和田静夫君 総理、マル優の見直しについては何かお考えお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/30
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031・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、恐らくグリーンカード制の廃止に対する措置を早晩やらなければならぬ状況になってきておりまして、それに伴いまして源泉分離課税というものがいろいろ論議される。現に政府税調におきましてこれらについてもいずれ論議がされるやに承っております。私はその審議の結果をお待ちしたいと思っておりますが、マル優という制度は、これがつくられました趣旨というものは、低所得者層に対する特別配慮として行われておるので、これが正しく運用されている、制度の趣旨そのものを生かして正しく運用されているという限りにおいては遺漏はなかったと思いますが、ややもすれば、その運用がずさんであったり、必ずしもそういう低所得者層が恩恵を受けるのみでないような、事実上不正が行われているような批判も厳しく行われてきておる、そういう面からいろいろ御議論が出てきていると思うんです。
私個人の考えでは、まだ政府として正式に決めたわけではございませんが、本当に低所得者層としてマル優の適用を受ける方々についてはそういうような恩典と申しますか、特別の配慮というものは維持された方がいいのではないか、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/31
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032・和田静夫
○和田静夫君 この法律案の被用者本人に一割を負担させるということは、これは労働者の世帯にはかなり大きな負担増を強いることになります。高額療養費の自己負担限度額が五万一千円といたしましても、窓口では一割をそのまま支払わなくてはならない。その上差額ベッド代、付添婦代などなどを支払う、これは大変な負担増になるわけであります。
総理は、その辺はどういうふうな見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/32
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033・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 高額療養費制度につきましては、今のようなお考えから与野党におきましていろいろ御議論もあり、お考えもあり、いろいろな話し合いの結果、ある一定の一応の結論に到達したやに承り、それを法律あるいは政令において改正する、そういうような議がまとめられつつあるやに聞いておりますが、与野党のその御決定につきましては、政府としてはこれを尊重してまいりたいと、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/33
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034・和田静夫
○和田静夫君 先ほど総理が本則の部分に触れて言われたことでありますが、実は、一割負担でも家計に大変なしわ寄せがある、その上二割がいずれ導入されるというようなことになりますと、これは大変な負担増になるわけでありまして、その点についての総理の御認識を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/34
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035・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 確かに、今まで恩恵を受けられた方々が負担増を強いられるということはまことに遺憾でございますが、我が国における医療制度全般の体系と、それから二十一世紀を踏まえた将来にわたっての長期的持続安定、あるいは制度を維持していくための世代間の公平性の保持、そういう面を考えてみますと、例えば、国民健康保険においては七割しか給付が受けられない、片方は十割給付を受けられている。それには理由があって、高い掛金を出している、そういう正当な理由もあるわけでございますが、しかし、長期的に見た場合に、やはり同じ国民としてできるだけ公平性を維持してあげたいというような点から一元化ということを考えておるわけでございまして、その点は、甚だ遺憾ではございますけれども、将来の八割給付、そういう面でいろいろ御配慮をいただきたいと思っております。
そのかわりと言っては変でございますが、退職者保険という新しい制度を設けましてそれらに対する若干の制度的配慮というものも行っておる次第なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/35
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036・和田静夫
○和田静夫君 この患者負担の問題につきましては、実は総理、私はここで独自の試算を幾つか示しまして、この論議を私は三日間にわたってやったわけであります。厚生省側からの答弁を受けながら、なるべくそれに従う立場で試算をやり直しまして、そして幾つかの試算を示しまして論争を交わしてきたのでありますが、実は、総理はそういうふうに言われますが、私が示しました試算によれば、本人十割給付を維持をしてその他の給付を九割に近づけることが保険財政上可能であるということを私は立証いたしました。また、保険料収入を少な目に見積もったとしましても、政府の言う八割給付での統合を導く数字というのは実は出てこないことも立証しました。つまり、八割統合論の根拠が薄弱であるということを私は証明をいたしました。
したがって、将来給付を統合をするにしましても、九割以上の線で統合可能であるということを実は私は具体的な数字を挙げて証明をしたわけであります。
私は、薬剤費の伸び率を物価上昇率程度の三%に抑え、総国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率以下に抑えることができると主張いたしました。保険局長は、薬剤費を三%程度の伸びに抑えることは不可能ではないと答弁をされました。薬剤比率を二二%程度に落とすことの可能性もこれは是認をされました。そのように医療費総額を抑制することができるのであるならば、保険料収入の伸びによって一九八〇年代のいつかには平均給付率を九割の水準に持っていくことが可能であること、それが実は私と厚生大臣以下との論議の中で証明されたと思っているんですよ。
そういうような私の試算に対しまして厚生省試算というのは、給付率をあらかじめ六十一年度から八五%に抑えることを前提にしたために保険料収入を過小に見積もってしまうという破綻を招いているのであります。結局私を納得させる具体的な数字というのは、政府側からは残念ながら提示をされませんでした。したがって私は、論理の展開においては私の試算と私の主張が正しかったと今でも思っています。厚生大臣も腹の中ではそのようにお思いになっているはずであります。
したがって、総理、私は依然として本人十割給付を維持すべきであり、八割統合論には依然として反対であります。保険財政上からも八割統合の根拠は出てこないのであります。ここのところは総理としても再認識をしていただきたいと思うのでありますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/36
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037・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は政府は遺憾ながら見解を異にしております。
やはり基本的な趨勢としては、高齢化の進展、あるいは疾病構造の変化、あるいは医療の高度化、こういうようなものはかなり今後も進んでいくと思われます。そういうようないろんな面をも考えてみ、特にまた国民健康保険という大きな重い荷物をしょっておりますという情勢等も考えてみますと、やはり政府が考えている線でいくのが妥当であり安全である、そのように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/37
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038・和田静夫
○和田静夫君 将来給付率を統合する際には、今の私の指摘を踏まえて十分慎重に対処するという趣旨の厚生大臣の答弁がさきにございましたが、給付率九割以上の線での統合が十分実施可能であるという点については、これはやっぱり総理と深く認識を異にしております。
しかも、総理の答弁ではありますけれども、数字的にも論理的にも明確に納得をさせることができず、論議の中では政府原案の背景になっている論理構造は破綻をしている。ここはやっぱり鋭敏な総理としては、間違いは間違いとしてそこの基本の部分について改めさせる指導ぐらいは私はおやりになってしかるべきだと思うのでありますが、そういう決意をお持ちになろうとはいたしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/38
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039・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は、政府も慎重でありまして、衆議院段階におきましても私は答弁を申し上げたのでございますが、いつ移行するかという時期については国会の御承認を求める考えで、そのときの議会の皆様方のお考えや国民世論の趨勢というものも考慮すべき点であると同時に、やはり今後の医療費の動向とかあるいは財政事情とか、あるいは国民負担の情勢とか、そういうものをすべて勘案しながら検討していくべき題材である、そのように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/39
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040・和田静夫
○和田静夫君 したがって、総理としては統合の際にはやみくもに八割というものに固執をするつもりはないんだ、そういうことはちゃんと頭の中に描きながらそのときどきに対処をされるというふうにお考えになっているというふうに今の御答弁とっておいてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/40
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041・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 結構でございます。現行法を与野党で合意をしていただきました線で事実上の変更あるいは法的修正等々を行う必要があれば、与野党合意のとおりそれを実行して、それによって推移を見つつ、今申し上げたような諸条件を勘案しつつ我々は考えていく、そういうことでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/41
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042・和田静夫
○和田静夫君 少し具体的な問題に入りますが、どうしてもやっぱり政治的決断が私は必要だと思うがゆえにあえて総理に問うのでありますが、一つは高額療養費についてなのであります。
現行の個人単位の算定方式から、家計単位あるいは疾病単位の算定方式に移す必要があると私は主張してまいりました。局長以下技術的な問題で若干の論議があったのでありますが、私は、家計という点からするならば、その一家の月々の可処分所得に対して一定率を超えないという基準が必要であると考えているわけであります。総理、そういうような考え方に基づいて高額療養費の額を決めていくということが私は医療保険制度の所得再配分機能を維持するために必要なことであると考えますがゆえに、そういうような考え方をとることの是非についてお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/42
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043・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) おっしゃいますように、個人的な負担という関係から家計全体への負担という発想を御指摘していただきましたことは、我々も重大な点の御指摘ではないかと考えます。特に、長期療養者とか世帯で複数の病人が出た場合等に負担の軽減が図られるように措置をするというようなお考え、与野党の折衝等も踏まえまして、この国会の御審議を十分に踏まえまして、現行の事務処理面の制約のもとでなし得る限りの可能な改善の措置を講じたいと、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/43
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044・和田静夫
○和田静夫君 その場合に、長期療養者に対する高額療養費の軽減についてですが、これは、私は一定期間を過ぎますと自己負担をゼロにしていくという措置が必要であると考えているのでありますが、総理はいかがお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/44
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045・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) この長期療養者についてもやっぱり考えるところがなければならぬ。この点についても野党側の御指摘もありましていろいろ与野党で協議がなされたようでございますが、その合意点につきましては、政府はこれを尊重して実行してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/45
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046・和田静夫
○和田静夫君 総理、例えば腎臓病の人工透析にかかっている人は、これは一生五万一千円を支払い続けなければならない。この人工透析の必要な患者については負担が軽減されなければやっていけないと考えて至当だと思うんです。そういうふうにお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/46
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047・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 人工透析なんかは、おっしゃるような一つの考うべき例であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/47
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048・和田静夫
○和田静夫君 高額療養費の立てかえ払い分についての融資制度が必要だと考えるのですが、仮にこの融資制度が創設されるとする、私は、当然無利子の融資でなければならぬと思うのです。そうでなければ意味がないと私は考えている。この点、総理のお考えをお聞きしたいのでありますが、この制度というのは、本来その場で保険者が支払わなければならない金額を被保険者が立てかえるわけですね。したがって私は無利子でなければならないというふうに考えているわけですが、そういうふうに認識しておいてよろしいですかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/48
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049・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) この点についても、与野党でいろいろ御協議がなされたようであります。その合意点につきましては我々も共鳴する点でございまして、その合意のように実行いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/49
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050・和田静夫
○和田静夫君 退職者医療制度に国庫負担をほとんど導入しないというのでは、高齢化社会に向けての政府の責任はどうなるのかと考えるわけです。政府の果たすべき役割を果たしていないということになるのではなかろうかと。この点は、高齢化社会の社会保障を政府が責任を持って担うという見地から、一定の段階で見直されるべきであるというふうに考えるのでありますが、御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/50
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051・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) この点につきましては、被用者保険全体として見れば拠出能力はあると、そのように政府は考えておりまして、個々の保険者も、その負担能力に応じて費用を負担することとされておる、これでいいのではないか、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/51
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052・和田静夫
○和田静夫君 特定療養費制度の導入に絡んでの話でありますが、入院時の給食代が差額扱いされるのではないだろうか。入院患者の食事に自己負担が導入されるのではないだろうかという危惧がありますが、ここのところは局長ですか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/52
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053・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 食事代につきましては、現行どおりでいくという方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/53
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054・和田静夫
○和田静夫君 これは、今の答弁は、長い将来にわたって現行どおりにいくというふうに認識しておいてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/54
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055・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の状態のもとにおいては、それを続けていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/55
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056・和田静夫
○和田静夫君 五人未満事業所の政管適用拡大についてでありますが、段階的に適用の拡大を図りたいとの意向のようでありますけれども、総理、これは私の質問のときにも申したんですが、実行計画を策定をするべきだと考えているんですが、政府としてはそういうお考えをお持ちになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/56
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057・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 五人未満の事業所の社会保険の適用については、法人の事業所については六十一年の四月から三年の間に段階的に適用を行うこととしております。その具体的な実施計画については今後検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/57
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058・和田静夫
○和田静夫君 厚生省のいわゆる長期ビジョンについてであります。このビジョンには具体的な目標数値がほとんど示されていないのであります。やはり具体的な目標数値を政府として示される、そういう義務が私はあると思っているんです。ここのところは総理としてもぜひ検討していただいて、そういう指示をしていただきたいと考えますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/58
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059・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) それはごもっともな御議論であると思います。
政府としては、医療体系全般について六十五年以降できるだけ早い機会に一元化をやりたい、そういう展望を持って努力していきたいと思っておりますが、それらの過程につきましても、医療政策の中長期ビジョンをつくって具体的な計画が立てられるものについては今後その具体化に努めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/59
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060・和田静夫
○和田静夫君 私は、今国会で総理と議論を交わす機会も、もうどうもなさそうでありまして、本来、これは予算委員会が開かれてもっと突っ込んだ論議をするべき国対間の約束になっておったのでありますが、どうもそれが行われそうもありませんので、ちょっと外れたことでありますが、一問だけ最後に伺います。
定数是正であります。今国会において総理が提出を見送られる、これは非常に遺憾な措置だと言わざるを得ないのでありますし、担当の田川自治大臣も強い遺憾の意を先日表明をされていました。そこで、その遺憾の意というのは私は当然なことだと思うのでありますが、総理はここの点はどういうふうにお考えになってあの決断をされたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/60
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061・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 定数是正を見送ったりあきらめたわけじゃありません。私は、党の幹部の皆さんに対しても最後の最後まで努力してくれと、そういうことで引き続いて努力をお願いしておるわけでございます。会期が切れるまで、ともかく最後の瞬間まで一生懸命努力してくれるようにお願いをしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/61
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062・和田静夫
○和田静夫君 これは予算委員会で、担当の自治大臣やあるいは法制局長官とも私は論議をいたしましたが、あれだけの最高裁判決があってもし定数是正が出ないということになれば、総理の解散権そのものについても大変考えざるを得ない。ほぼそういう答弁であり、ただ、総理だけは最後にお立ちになりまして、いや、不信任を食ったときなどおれの手の中には解散権があるというような答弁がございましたことは記憶していますが、今のお話ではありますが、どうも八日までの間に出そうな空気もない。
そこで、もし出なかったことを前提として考えてみますと、この定数是正について今後の見通しというのはどういうふうな形になりましょうか。どういうようないわゆる取り運びを総理としてはお考えになるか。少し長期的に、もし提出できなかった場合の責任問題も考えながら、こうするのだという御構想はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/62
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063・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 定数是正につきましては、最高裁判所の判決もございまして、やはり行政府、あるいは自民党総裁、立法府の一員といたしましては、やはりできるだけ速やかに是正の措置を講ずることが望ましい、そう考えて努力をしてきたところでございますが、今度の議会におきましても、最後の最後まで全力を尽くして、定数是正についてあきらめないで努力してまいりたいと、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/63
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064・中野鉄造
○中野鉄造君 まず、総理にお尋ねいたしますが、去る七月の三十一日、六十年度予算の概算要求基準が閣議で了解となりました。これを見ておりますと、総理は自民党に対しては、総理と政調会長との覚書によって十二月の予算編成で党主導のもとに重点的な調整及び編成を行うと、このように言っておられますが、片や、臨行審意見書については最大限の尊重をする、こうして当面は昨年並みのシーリングでいくと行革路線をうたっておられます。どうもこれを見てみますとわかりにくい。何だか整合性がなく、とりようによってはその場その場の糊塗的な表明ではないかというような気がしてならないわけですけれども、来年度に向けて概算要求基準の意味を、国民にわかりやすく御説明していただきたいと、こう思います。
総理は、財政再建のためならば、もうそれこそ内閣の一つや二つつぶれてもいいという、こういうかたい決意で取り組んでおられると思うが、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/64
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065・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 政府は、従来、臨時行政調査会の答申を尊重して最大限にこれが実現に努めるという、累次に閣議決定をして公約をし、努力してきたところでございます。
先般、臨時行政改革審議会の土光会長から同じように意見書の提出がございましたが、これにつきましても、政府と与党一体となって、従来どおり最大限に尊重してこれが実現に努力すると、そういう共同意思決定をしたところでございます。その線に従って今回のいわゆる概算要求基準の設定も行った次第であり、予算編成もそういう趣旨に沿って今後行う予定でございます。
ただ、今回の概算要求基準設定に当たりましては、いわゆるシーリングという言葉を使いません。もっとも閣議決定とか公式文書でシーリングという言葉を使ったことはないのであります。これは我々が日常の用語として使ってきたのでございます。しかし今回は、今までにない概算要求基準という言葉を使いました。これは概算要求をするについて、こういう基本的な構えに立ってやってもらいたいというスタンダードを示したとお考え願いたいと思うんです。それは昨年並みにやるということを決めておきまして、すなわち先ほど申し上げましたような配慮のもとに、マイナス一〇%及びマイナス五%の枠をつくった。もちろんさわらないものもありますし、あるいは重点的に考慮されたものもございます。これは昨年並みにすべてやってきておるわけでございますが、そういう趣旨に沿ってマイナス五%、マイナス一〇%の基準をつくった、こういうことでございます。
これによって各省がこの八月中自分の省の仕事について編成をいたしまして、これを要求として大蔵省に持ってくるわけでございます。大蔵省はそれを九月以降集計してこれを調整してまいるわけで、その間に今回は与党である自由民主党に対していろいろ報告もするし、また意見も聞く。最終的には十二月の予算編成において、これは議院内閣制でございますから、与党の意見も十分聞き、与党主導のもとに重点的に調整を行う、そういうことを決めたわけで、これは例年やっていることであります。十二月には与党との間で協議をいたしまして、最終的には三役一任であるとか、あるいはマル政事項であるとか、そういうふうに与党が選別を行って選択してきておるわけでございます。そういうようなやり方でことしもやっていく、こういうことであると御認識願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/65
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066・中野鉄造
○中野鉄造君 それに関連してはまたお尋ねいたしますが、総理が従来から言っておられる、六十五年度までに特例公債の依存体質から抜け出す、脱却する、こういうことは今日の時点でも変わりございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/66
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067・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 変わりございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/67
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068・中野鉄造
○中野鉄造君 社会保障予算というのは、今日の著しい高齢化の進行で、もう年々相当額の当然増がこれは見込まれていくわけですけれども、財政再建下の社会保障予算は基本的にどのように編成されるべきであるとお考えでしょうか。この辺のところを厚生大臣と総理にお尋ねいたしますが、総理は、過日の衆議院の社労委員会においても、「やはり福祉というものは、国民の皆さんが生活をしていく上に、安心あるいは安定の源泉になると私は思っておるのであります。」と、このように御答弁なさっております。社会保障は年々の景気あるいは経済変動に左右されるべきものではない、私はこのように思いますが、そこいらのところ、まず厚生大臣からお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/68
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069・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) 先生御指摘のように、社会保障の中で、特に年金とか、高齢化に伴うところの医療とか、身体障害者の皆さん方あるいは低所得者の皆さん方の生活の手当とか、これは国民の生活を守る糧でございますから、財政がどのように厳しい状態にあってもこれはある程度の当然増と申しますか、必然増は避けられないものがございます。
幸いに、今総理からお話しのありました六十年度の基準設定においても、これらのぎりぎりの面は、大変厳しい財政状態ではありますけれども、お認めをちょうだいしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/69
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070・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 社会保障関係費は国民生活の安定に欠かせない基礎的条件の整備を意味しますから、私はこれを確保していくということを基本的に考えていきますことは前に申し上げたとおりで、変わっておりません。
しかし、今の財政状況から見ますと、社会保障関係費についてもやはり重点化、効率化といろいろ努力していくべきものであると思います。やはりこれだけは絶対守ってあげなければならないという厳守のライン、それからこの程度は何とか努力して維持していこうという現状ライン、あるいはより好ましきライン、そういうニュアンスはいろいろあると思うんです。しかし、それらのニュアンスの中におきましても、予算編成の過程においてその絶対ラインはもちろん守る。それからほかの国家との見合いにおいて、ほかの国がやっているようなことはできるだけ我が国もやれるようにしてあげたい。そういうようなさまざまな配慮をしつつ、予算の許す範囲内においてできるだけ努力していくというのが政治家の正しい道ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/70
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071・中野鉄造
○中野鉄造君 そうしますと、六十年度の概算要求の中でもちょっと出ておりますけれども、六十年度六千五百億の当然増というものが見込まれております。しかし三千四百億の枠しか認められていないわけですけれども、そうなると残りの三千百億円というのはどのようにしていくお考えであるのか。総理にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/71
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072・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) かなりの額を厚生省に負担願わなきゃならぬのはまことに遺憾でありますが、厚生省がそれにつきましても努力してくださることについては非常に感謝しておるところでございます。
これらの予算編成はいよいよこれから作業をするので、まず、八月中に概算要求を出す、それから九月以降には今度はその内容についていろいろ仕分けして大蔵とも相談をしてやっていく、そういうことになって各省内の作業が始まるということでございますから、今中身について、いろいろ仕分けして申し上げることはできないと思います。しかし、今後予算編成の過程におきまして重点化、効率化をさらに進めて、省内全体を見渡して適切な努力をしていただきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/72
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073・中野鉄造
○中野鉄造君 今総理の御答弁の中にもありましたように、厚生省でかなりの努力をしていただくと、ちょっとそこが私は非常に気がかりなところでありまして、厚生省のなされるその努力というのが、本当に抜本的な見直しをしなくてはいけない薬価の見直したとかもろもろの、そうした医療行政の上でやることがたくさんあると思うんです。ところが、そういったようなことが先送りにされて、ややもすればとかく弱い立場の庶民にその負担がかかってくる、この法案に象徴されるような。そこが私は一番危惧するところでございます。
そこでお尋ねいたしますが、防衛費については七%増の二千五十五億円と、こうなっておりますけれども、これがこのまま予算の伸び率となるわけではないでしょうし、そうあってはならないと考えますが、国民総生産の一%以内という政府の基本的考えがどうも崩れていくんじゃないか、そういう心配がされてならないんですが、この一%厳守ということをこの場でひとつお約束いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/73
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074・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 一%という数字との関連におきましては、やはり今後の経済成長、景気の状況、そのほか諸般の変動要因がございまして、今後それらの数字が確定しませんと一%というものは判定しにくいという状況であると思っております。
しかし、いずれにせよ政府といたしましては、昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針についてはこれを守ってまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/74
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075・中野鉄造
○中野鉄造君 ただいま議題となっております健康保険法の一部改正案が秋の総理の改選と絡んでよく論じられているということについて、総理はどのようにお考えになっているのか。私どもから言わせるならば、こうした問題がややもすればそうした政争の具にされるということはこれはまことに遺憾なことでありまして、国民にとっては甚だこれは不幸なことだと、こう思うわけですが、総理、いかにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/75
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076・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 政争の具になっているということは全然ないと私は思っております。
自由民主党は、先般も党の代表を加えまして政府・与党の最高会議をやりまして、臨時行政改革審議会の意見書を最大限に尊重してこれを実行する、そういうことを党と一体になって決めて、そして今回の諸般の概算要求その他も行いつつあるわけであり、その中心はやはり臨時行政調査会の答申を尊重して行革を推進していく、また、財政改革も推進していくと、そういう点では完全に一致しておるところであり、その一環としてこの社会保障体系の見直しという点もそういう中に含まれてきておるのであります。
そういう点におきましては全く一体になって行われておるのでございまして、どこに政争の要素があるんだろうかと、私お言葉を聞いて不思議にたえない次第なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/76
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077・中野鉄造
○中野鉄造君 こうした論議を余りやっていますと、時間もありませんので、もうここいらでやめにしておきますが、総理は今国会の冒頭の施政方針演説の中でもおっしゃっておりますが、「老人や障害者等社会的、経済的に弱い立場にある人々に対してきめ細かい配慮を行ってまいります。」と、こう言っておられますけれども、今回のこの医療保険の改革、これはまさに病人やそれを抱える家族に負担が大きくのしかかってくると、こういうように私は思いますがどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/77
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078・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) この点につきましては、高額療養費に対して政府もある特別の配慮をしてこの法案もできていると思っておるのでございます。また、今般与野党の協議によりまして、特に野党の御意見も踏まえまして、この点に対する合意もでき、また政府も賛成したいと思っておるところでございます。そういう面からいたしましても、それらの点に対する配慮は私たちもやってきたつもりであると確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/78
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079・中野鉄造
○中野鉄造君 そこで、厚生省は今回のこの改革による負担増をサラリーマン一世帯七千五百円、月にすれば六百二十五円でコーヒー二杯分だと、このように説明しておられますが、総理は、この医療費の負担をこのように平均化した数字で国民に誤った説明をすることを、これは妥当だとお考えになっておるのかどうか。この医療費の自己負担、これは病気をした患者、それを抱える家族だけが負担をしていくわけですけれども、総理もこの厚生省の説明と同じように、平均すればコーヒー二杯分じゃないかと、大した金じゃないじゃないかと、このようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/79
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080・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) この点は、厚生省当局が国民の皆様方によく御理解願うためにPRとしてわかりやすく説明したそういう資料として御理解をいただきたいと思うのであります。
政治家といたしましては、できるだけ国民の負担を軽くしてあげるように、特に病気にかかった方々に対してはそういう気持ちでいっぱいでおる、そういうことを御認識願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/80
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081・中野鉄造
○中野鉄造君 私は、先ほども申し上げましたように、政府は、そうした国民にしわ寄せをする前にもっともっとやるべきことがたくさんあると思うんです。そういったようなものを先送りにして、こうした取りやすいところからというか、やりやすいところから手をつける、こういうことには私ども非常にこれは反対でございます。そのことを最後に申し上げて質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/81
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082・山中郁子
○山中郁子君 私も初めに総理に、三十一日の閣議で六十年度予算の概算要求基準が了解された件につきまして御質問いたします。
御承知のように、当日の新聞各紙とも、防衛費突出七%の伸び、ということで見出しを大きくつけた報道をしておりますけれども、厚生省予算要求に関して言えば、既にもう議論になっておりますように、三千四百二十億円が一応特別枠として認められたけれども、当然増経費は六千五百億円、なお三千百億円が不足しているということで、新聞報道などでは、生活保護費の地方負担増などで乗り切ろうとしているなどという報道もされています。
私は端的にお伺いしますけれども、今度は、こういう必要な負担増で基準の中にお認めにならないでいるその分については、一体どこを切り込むおつもりでいるのか。既にいろいろ問題になっている生活保護、児童手当、公費負担医療等々、こういうところに手をつけるということなのかどうか。これはもう余り持って回った表現でなくて、端的にお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/82
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083・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 端的に申し上げれば、社会保障の質は落とさない、弱い方々については十分面倒を見さしていただく、そういう点においては変わりはないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/83
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084・山中郁子
○山中郁子君 こうした制度に手をつけるのかということをお伺いしています。端的に答えていただきたいというのはそういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/84
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085・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回のこの医療制度の改革というのは非常に大きな改革でございまして、厚生省において来年このような大きな改革を行うという考えはないのではないかと思います。厚生省が事務レベルの範囲内において、省内において今回の概算要求をいろいろ処理していく、その過程におきましては内部でいろいろな操作、あるいは調整というようなことがあり得ると思います。思いますが、今回のようなこういう大きな医療制度の改革というのは画期的なことで、そう何回もあるものじゃないと、そう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/85
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086・山中郁子
○山中郁子君 こんな大改悪を年じゅうやられたらたまったものじゃないですよ。問題は、私は、行政努力の範囲をはるかに超えるそういう不足額でしょうということを言っているんです。さまざまな社会保障の制度について、国民生活を痛めそして苦しめるそういう方向をあなたが依然として捨てていないということを、今図らずもお示しになったと言わざるを得ないと思います。
健康保険法等の今回の改悪案がそもそも臨調路線に基づくもので、財政対策から出ているということは私も、現在までわずか二回しかこの委員会での質疑時間は持てませんでしたけれども、その中でも追及もし、明らかになってきております。臨調行革という名でこれまでもいろんなやりくりをしてきたんですね。短い時間しかありませんので簡単にしか申し上げられないけれども、総理もよく御承知のところです。五十七年度、厚生年金保険等国庫負担の一部繰り延べ、四分の一凍結ですね。それから国民健康保険の会計年度区分変更と称して十一カ月予算。五十八年度、国民年金国庫負担の平準化、つまり借金しているわけです。五十九年度、今回の大改悪、医療保険制度の改革とそれから医療費適正化、その他さまざまな問題が出されています。
私は、これは手法が三つあると思うんです。一つは、老齢福祉年金、原爆被爆者の諸手当、児童手当等国民の福祉水準を抑制するということ。二つ目は、借金でつじつまを合わせるということ。三つ目は、制度の徹底した切り込み、改悪ですね、雇用保険法や健康保険法、年金法、。児童扶養手当法。この委員会の質疑の中でも、厚生大臣は口を開けば二十一世紀を展望したと、こうおっしゃるけれども、そういうことを口ではおっしゃるけれども、結局国民の負担増だけが鮮明に浮かび上がってきているというところはもうだれも認めるところで、あなた方だって、いろんなこと言うけれども実際はそうであるということは百も承知の上でおやりになっている。片一方ではまだまだ防衛費の連続する突出ということから見れば、国民がこれについて本当に心からの怒りを持っているということは当然のことだと思うし、あなたもそのようにお認めにならざるを得ないと思いますけれども、その点についてのあなたのお考えを伺うということと、もう一つは、こういう政治姿勢はやっぱり根本的に改められなければならないということが今国民みんなの声なんですよね。こんな夜中の乱暴な審議をして、大勢の方たちがこの法案の行方を見守っているというこの現状を見たって、それは国民の大きな怒りだということをあなた自身はお受けとめになっているはずです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/86
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087・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 二度にわたる石油ショックを受けまして、景気を維持して失業を起こさせない、倒産を起こさせない、そういうために公債を発行せざるを得ぬ、そういう過程で相当膨大な公債が出まして、それが来年三月に百二十二兆にも及ぶということで、これが利子の負担だけでも十兆ぐらいになりそうであります。そういうようなことも、実は外国が不況に悩みあるいは物価高やあるいは膨大な失業を抱えて非常に社会的混乱を起こしたのを、日本は公債政策によってそれを回避してきた。そういうふうな形で、この財政のやり方というものは、いろいろ御批判あるかもしれませんが、日本を安定的に維持してきた大きな功績もまた一面あったと思います。
しかし、現段階になりますと、これだけの大きな財政負担というものが日本の将来の財政力の機動性を失わせてきている、硬直性を呼んできている。そういう意味において、子孫のためにもここでこの大きな借金をそのまま子孫に渡すには忍びない。子孫の幸せを抵当にして我々が今日安閑として楽しんでいるわけにはいかぬ。そういう考えに立ちまして、苦しい、きついことではありますけれども、財政再建に入り、国民の皆様方にいろいろ御苦労をお願いしておる、これが行政改革であり、財政改革でございます。
その一環として、厚生省当局にもまたそれに当たるような部分については御協力をお願いしておる、そういうことなのでございまして、現在の国情を見ますとこのような御負担を願うことを必ずしも私は喜ぶものではございません。できる限りこういうことは避けたいと思っておるのでございますけれども、この点はやむを得ざる措置として御認識願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/87
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088・山中郁子
○山中郁子君 それは通らない。なぜかと言えば、それじゃどうして防衛費だけ連続して突出させるのですか、今度もまた、そうじゃないのよ、全然通らないのよ、あなたの言うことは。
私、伺いますけれども、これは「日本型福祉社会」という自民党の研修叢書です。この中で、「今後、医療費の無駄な膨張を避けるためにはどうすればよいだろうか。答は一つしかない。それは「長瀬関数A式」のXを大きくすること、特にゼロでなくすることである。いいかえれば、患者の自己負担分をふやすことである。」「「人は自分の財布と相談して真に必要なものだけを買う」という原則を、多少なりとも医療保険制度の中に導入しなければならない。」、こういうことを書いているのですね。人は自分の財布と相談して洋服や靴や家具を買わなきゃいけないというなら話はわかりますよ。「「人は自分の財布と相談して真に必要なものだけを買う」という原則を、多少なりとも医療保険制度の中に導入しなければならない。」、そういうことを言っているんです。
総理にお尋ねいたしますけれども、公的医療保険制度についてこういう原則を導入できるのですか。することを肯定なさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/88
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089・石本茂
○委員長(石本茂君) ちょっとお待ちいただきます。
速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/89
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090・石本茂
○委員長(石本茂君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/90
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091・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) やはり新憲法の命ずるところは、自由主義、民主主義ということでありまして、自由主義、民主主義の基本は自由であり、あるいは民主主義である。あるいはそれは基本的人権という形になりますが、そういうものは、本当の自由というものは、やはり基本的には自己責任とかあるいは自立精神とかそういうものを伴うものではないかと思うのです。それはやはり社会を維持していく基本的なものであると思うのです。
しかし、病気になったりあるいは著しく悩むような方々には、連帯の精神に基づいて相互扶助を行う、あるいは国家が国の仕事としてそれらの方々の面倒を見さしていただく、これはやはり近代国家の理想であって、そういう精神に基づいて行われておりますが、やはり一番の基本的なものは自由であり、自由の基本というものは自立てある、そういう原則を忘れてはならないと、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/91
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092・山中郁子
○山中郁子君 私は今自由自立論を言っているんじゃないんです。医療の問題を言っています。憲法二十五条にも社会保障、福祉における国の責任をうたっているでしょう。今私は自民党の「日本型福祉社会」というものの一部を紹介いたしましたけれども、「人は自分の財布と相談して真に必要なものだけを買う」、そして「医療費の無駄な膨張を避けるためには」「患者の自己負担分をふやすことである。」、これは結局近代的な社会保障の理念を根本的に覆す徹底した富める者の論理ですよね。かつて貧乏人は麦を食えという発言をしたことで問題になった総理大臣がおりましたけれども、まさに貧乏人は麦を食えという、そういう医療版じゃないですか。自由自立論を私は今言っているんじゃないんです。こういう考え方、「人は自分の財布と相談して真に必要なものだけを買う」という原則を医療保険制度の中に導入する、これは間違いでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/92
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093・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 医療保険制度もやはり基本的には憲法の上に立脚しているので、憲法の根底にあるのは、やはり自由あるいは自立というものがあると思うのであります。
しかし、福祉国家の理想という理念がございますから、そういう意味において社会保障制度を充実させる。あるいは憲法二十五条ですか、最低の文化的生活云々ということがある、そういう面から国家は国家としての仕事をやっていくという、そういう形で行われておるのでありまして、そういう面から見ると、やはり国の財政にも限度があり、また自立精神というものも国を支えていく上で非常に大事でありますから、いわゆる美濃部さんがやったようなばらまき福祉というものは、東京都の財政を非常に破綻に瀕するくらいまでやって、それで今の知事さんが非常に苦労している。あるいは北欧の国の名前で呼ばれているような何とか病というのがよく言われる、これはいわゆる乱診乱療とか、あるいは過剰なそういうことから国民の中で非常に悪平等的な過重負担が一部に出てきた、そういうものが指摘されてそういう声が出てきたのではないかと思うんです。それらは外国の例として我々はまたよく勉強していかなければならぬと思っております。
それはしかし、社会保障制度というものが歪曲されて利用された結果であって、社会保障制度自体が悪いのではないのです。立派に運用していけば立派にいけるのであって、そういう純正な立派な社会保障制度というものを我々は堅持して育成していかなければならないと、そう思っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/93
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094・山中郁子
○山中郁子君 東京都政におけるばらまき福祉だとか、外国の何とか病だとか、全く関係のない、何だかさっぱりわからないことをいろいろおっしゃっておりますけれども、私は、限られた時間ですからそのことについての議論には入りません。
それで、今私が申し上げたいのは、今度のこの法案で、委員会の中でも議論されていたんですが、高度先端医療の問題、あるいは差額ベッド、歯科材料、こういう問題をめぐって、結局財布の大きい人にしか高度先端医療の恩恵が及ばないということが大きな問題になりました。私は総理にここのところではっきりさせていただきたいのは、公的医療保険、つまり、皆保険下では、医療内容に差別が持ち込まれるようなことがあってはならないはずだ。少なくとも高度な医療もなるべく早く保険適用されるという姿勢で運用されるべきだというふうに思いますけれども、この点については、ごく基本的な姿勢で結構ですけれども、総理としてのお考えを確認をしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/94
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095・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 基本的には高度の先端技術を利用した医療制度も全国民に均等に及ぶようにしたらいいと、私もそう念じます。
ただ、それがまた普遍化していない、そういう段階において、全国民にすべてそのまま適用し得る段階にあるか、それだけの財政力を国家が持っているか、また利用の度合いにおいてそれほど頻度のあることが行われておるかどうか、いろんなそういう技術的な面も一面において検討しなければならぬと思っておるんです。
そういう意味から、ある過渡期的におきましては、そういうような選別、あるいは選択、あるいは自由選択、そういう制度は自由主義社会においては考えられるのでありまして、それらをどのように時代とともに普遍化させ調整さしていくかという点に政治の仕事があるように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/95
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096・山中郁子
○山中郁子君 基本的な姿勢ということでお伺いいたしまして、基本的にはそうであるとおっしゃって、あなたはいつもその後の方がいけないんです。まさに医療に差別が持ち込まれてはならないということで、あなたが正しいと言われた、その以降におっしゃったところに、この今回の改悪案の中にあるそういうことがずっと出るから、だから結局医療に差別が持ち込まれるんじゃないかという、そういう国民の大きな不安とそれから批判が解消できないということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。
それで、これは最後になりますけれども、私はこの委員会で、今まで二回しか質疑に立つ機会がなかったんですけれども、渡部厚生大臣にもいろいろこの点については申し上げました。それで、張本人である藤波官房長官の出席を何回も求めたんですけれどもお見えいただけなかったものですから、俗に官房長官というのは内閣の大番頭であるということで、まさに中曽根総理大臣の片腕だということだと思いますので、ここで総理にきちんとしていただきたいのです。
これは政府の「フォト」という広報誌です。御承知だと思います。ここで藤波官房長官がこの健保の本法案に関して、「〝乱診乱療〟〝薬づけ〟など目にあまるものがありますね。また患者の側も、容易にお医者さんにかかる。一部の病院では待合室が娯楽室化しているのも事実でしょう。ですから少しご本人にも負担していただければ、医療費がどんなにかかっているか…。」と、こういうふうに発言されて、ちゃんとこれ活字になっているんです。
私は、藤波官房長官がお出にならないから、しようがないから渡部厚生大臣に、閣僚の一人として、あなたの趣旨説明と違うじゃないかと、この法案を提案した、二十一世紀を展望してだとか、給付の公平化を図るとか、制度の安定だとか、いろいろ言っていることと全然違うことを藤波官房長官は言っているじゃないかということで、藤波官房長官にその話を聞いてきてくれということで申し上げました。それで、ただただ恐縮しておりますということだけをおっしゃっているんですけれども、ですから渡部厚生大臣は、ここで藤波さんがおっしゃっていることは、自分が責任者として、提案者として提案した理由と確かに違いますということは繰り返しおっしゃっているんです。
ですから、私は総理大臣の責任において、この藤波官房長官の発言を国民に対して謝罪し、そして撤回するということを――政府の機関誌ですからね、政府の広報誌ですからね。もし渡部厚生大臣がおっしゃっていることが事実ならば、その事実というのは本当の提案の趣旨はそうではないということならば、それは総理大臣の責任において、内閣の責任において、この藤波官房長官の発言を撤回し、謝罪するということをこの「フォト」の誌上で責任を持ってきちんとけじめをつけていただきたい。これは総理大臣の責任においてお約束をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/96
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097・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 私も今資料いただきまして読んでみましたが、このくだりは、要するに乱診乱療というものの弊害を強く強調したというところであって、やっぱり乱診乱療ということは前から言われておるところであり、あるいは審議会においても指摘されたりしているところでもあり、また臨時行政調査会の議論の中においてもこれは強く言われたところでありまして、そういう点がないとは言えないと思うんです。そういう面を重点化し、効率化して本当に困った人たちにさらに手厚い医療制度を持っていくというのがやはり政治の責任なのであります。
それから老人医療等につきまして、ここにあります病院の待合室云々というのも、この言葉も実はよく言われておる言葉で、そういう現象は多少なきにしもあらずではなかったのではないかと思うんです。我々が、私は高崎に住んでおりましたが、高崎の病院なんかへ行きましても、そういうことがよく言われておりました。
そういう意味において、弊害の面を少し強く表現したということで、別に他意はないというふうに御理解願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/97
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098・山中郁子
○山中郁子君 本人にも負担していただかなければ医療費がどんなにかかっているかわからないと、こうおっしゃっているんですよ。本人に負担してもらうというのが今度の法改悪じゃないですか。あなたが幾らごまかそうとしたってだめで、厚生大臣が既にこれは考え方が違うと、藤波さんも大変恐縮しておりますと、こうおっしゃっておりましたけれども、まさにそういうのが真意だと、これが本音だと、あなたが率直にこれを訂正するという政府としての方針をお示しにならなければ、いろいろ言うけれども結局はこれが本音だということに国民は受け取らざるを得ないんです。
最後に私は、まさにこういう改悪案が、今までの審議の中でさえ明らかになってきているということを国民が納得するはずがない。あなた方がこういうことを強行しても必ず国民の痛烈な審判を受けるであろうと私は思います。
いずれにしても、今からでも遅くはありませんから、国民のこの声を率直に聞いて、この健保改悪の意図を捨てるべきである、このことを強く主張いたしまして、時間になりましたので質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/98
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099・柄谷道一
○柄谷道一君 総理の公的諮問機関であります社会保障制度審議会が、昭和四十六年九月、公費負担医療の分野拡大と医療保険の位置づけの明確化、健康管理施策の充実拡大、医療供給面の整備と改革など六項目にわたる抜本改正の意見を総理に提示したこと、及び、四十五年十月の意見書提出に引き続き、厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会が、健康管理体制に対する行政機能の一貫した体系化、医療供給体制の体系的整備など同じく六項目について具体的な提言を行いました。これらを国民の合意を得て計画的、年次的に実践することこそ政治が緊急に対処しなければならぬ要請である、これを怠れば保険財政は破局に達し、我が国の社会保障にとって重大な影響を与えるであろうと警告しておることは、総理も御承知のところであろうと思います。
本会議で私が総理に質問をいたしました際に、総理は、答申を受けて以来の政府としての努力を例示しながら、政府が怠慢でなかった旨の答弁をされました。しかし私は、それらの審議会答申が満たされているとするならば、本法案を審議いたしました両審議会が、今回の改正案は財政対策にとらわれる余り、保険財政における収支のバランスのみにこだわった感があり、医療制度の根幹について慎重かつ広範な検討が必ずしも十分に行われたものとは思われないという鋭い指摘を投げかけるはずはなかったと思うのであります。
また、厚生省が「二十一世紀をめざして」という副題をつけましたいわゆるビジョンにつきましても、給付と負担の見直しについては具体的年次を明確にいたしておりますが、その他につきましては、甚だ失礼ではございますが、論文の域を出ておりません。何ら具体的実践の方途、計画というものが明示されていないわけでございます。
私は、医療問題の前提諸条件に関する議論をここで行えば何時間あってもその議論は尽きないと思います。ただ一点、総理にお伺いしたいことは、政府は、両公的審議会の答申を尊重して、前提諸問題の改革に関する長期構想と年次計画を示すよう、総理から厚生大臣に指示することが、この審議会答申に沿うものであると思いますが、総理にその御用意はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/99
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100・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 柄谷さんが年来、長期展望あるいは計画を示せとおっしゃって質問をいただいておることを私もよく認識しております。政府といたしましても、できるだけその長期展望に立った、そして諸問題に取り組む必要があるということは御指摘のとおりであると考えております。
厚生省といたしましても、そういう方向で努力はしていると思うのでございます。社保審の答申等々を踏まえまして、健康管理体制あるいは医療供給体制あるいは医薬の問題あるいは公費負担の問題、それから保険制度あるいは保険給付の問題、診療報酬の体系、技術の問題等々につきましても、一つ一ついろいろ努力をしてきておるのでございますが、全般にわたるそういう体系的な計画というようなところまでまだ至っていないのは甚だ遺憾でございます。しかし、その年次計画等につきまして、その性質になじむもの、かつ、適切である、やれると思うものにつきましては、今後も考えてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/100
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101・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、八月二日に厚生大臣に対しまして、我々はもちろん定率負担の導入に対して反対の態度をとるものではございますが、仮に政府が被保険者本人に定率負担を課そうとする場合、高額療養費制度の抜本改正と保険外負担の改善が不可欠であることを強調し、厚生大臣の答弁を求めました。
厚生省が昭和四十九年に保険外負担の改善についての通達を行っております。自来既に十年を経過いたしております。しかし、この通達の線はいまだ達成されておりません。私は本人に定率負担を課そうとする場合、保険外負担の存在というものは従来以上に大きな意味を持つものになろうと思うのでございます。したがって、差額ベッド、付添介護など保険外負担の解消、改善については、私は病院経営の実態把握、看護基準の見直し等を含む総合的観点からメスを入れまして、その改善のための総合施策を確立し、強力にこれを推進していく必要があろうと認識いたしております。
総理はこうした問題について、より強力な施策を進めるよう厚生大臣に対して指示を与えるお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/101
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102・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 差額ベッドの問題や付添看護の改善につきましては、厚生省におきましても鋭意努力して、相当の効果を上げていると聞いております。
しかし、今回この法律案に盛り込んだ特定療養費制度の運用基準の設定や、診療報酬の合理化問題につきまして、中医協で幅広く審議が行われることとなりますので、これらの審議を踏まえ、不適当な保険外負担の改善を図るため、適切に対処するよう指示いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/102
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103・柄谷道一
○柄谷道一君 衆議院段階で修正が行われましたが、この法律はあくまでも八割給付を建前とするものでございまして、九割給付は激変緩和、時限的なものとしての位置づけがされております。
私は、本来あるべき給付率というものは、一割負担後の受診率の動向と、国民の健康確保に与える影響、医療保険制度の前提諸条件の整備、保険外負担の改善、さらに、これらが医療費及び保険財政に及ぼす影響、また、両公的審議会が、給付率は画一的なものではなくて、入院等重症の疾患を持つ者に対してはより重くという配慮をすべきだと答申いたしております答申との整合性、さらに、各種保険制度の一元化に当たりましては、被用者保険と国保との給付と負担の公平など、審議を深めまして検討されるべき性格のものではないかと思うのでございます。
私のこの意見は、与党自民党が推薦をいたしました千葉大学の地主教授も、全くこの考え方に同感である旨の意見を述べられました。また、帝京大学の江見教授は公述人としてこの委員会に立たれましたが、前提諸条件の整備と給付率は一体的にとらえられるべきである、したがって、八割給付は一応のめどであるけれども、より慎重な検討とその選択が必要である旨の陳述をされたわけでございます。私は、こういう立場に立ちますならば、少なくとも八割給付は本案から削除すべきであるという立場に立つものでございますが、それを言いましても総理はオーケーとは言われますまい。
そこで一点絞って御質問いたしますが、私の挙げました諸条件は、今後の国会が八割給付を議決するに当たりまして慎重かつ広範な検討が行われ、この検討を踏まえて決せられるべきもの、こう認識いたしますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/103
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104・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は御指摘のとおり、九割給付実施後の医療費の動向あるいは国民世論、あるいは国民負担、諸般の状況等を十分に勘案して、与野党のいろいろな御協議も経て国会の御承認を求めることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/104
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105・柄谷道一
○柄谷道一君 ただいまの御答弁を再確認いたしたいわけでございますが、衆議院修正による国会の議決とは、ただ自動的に時期だけを決定するものではなく、本法案施行後も私の挙げました諸条件が国会で議論され、これらを踏まえて議決されるべきもの、いわば八割給付とは一応のめどであると理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/105
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106・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 将来の一元化を考え、大統合と申しますか、大一元化を考え、特に重圧に悩む国民健康保険、七割給付という低水準にあるこの国民健康保険を引き上げていく、八割にまで持っていく、そういうような大きな事業を抱えております展望を見ますと、原則八割というのはやはり政府の決定したとおり適当であると思っておるんです。しかし、急にそういうふうに移行するということは余りにも衝撃が大きいし、非常に困難や混乱も伴う、そういう意味においてこの点は慎重を要する。したがって、国会の承認を得るという形でその時期は決める。しかしそれを提議するにつきましては、この九割実施の状況をよく踏まえて、諸般の情勢をすべて勘案して政府・自民党は国会に提議すべきものであり、また国会におきましては、独自の立場に立ってそれらの諸般の状況を勘案しながら御判断をいただくべきものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/106
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107・柄谷道一
○柄谷道一君 中曽根内閣にとりまして最大の課題は、財政再建と行政改革の断行であろうと思います。しかし私は、厳しい財政経済、国際環境の中で、国民の本当に求めるニーズと期待にこたえていくためには、すぐれて高い識見に基づいてこれを遂行していく必要があろうと思うわけでございます。そのためにはめり張りのきいた予算編成、国民の期待する重点的政治要求、これを当然とらえた上での予算編成が行われなければならない、こう思考するものでございます。
そういう立場から、去る七月三十一日に昭和六十年度の概算要求基準が閣議決定されました。この基準は、ただいま私の申し上げました趣旨にかなうものであるという御認識をお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/107
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108・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 趣旨にかなう一つの過程であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/108
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109・柄谷道一
○柄谷道一君 一つの過程という表現を今総理は使われました。そして、先ほどの委員の質問に対し、九月以降与党主導のもとに予算編成を行うという第二のステップを踏みたい、こういう御答弁があったと思うのでございます。
私は、政策審議会の副会長として自民党政調会長との会談にも参加いたしました。その政調会長の御発言は、与党主導ということではございません。もちろん与党もその中心ではございますが、九月以降野党とも協議を重ね、入れるべき意見はこれを取り入れ、そして与党主導というよりもむしろ政党主導で予算の編成を行いたいという強い意欲を政調会長は示されたわけでございます。ただいま、さきの委員の御質問に対する与党主導というお言葉と政調会長の御発言とはややそのニュアンスを異にすると思いますが、再度明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/109
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110・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 私が政調会長と話して、協議して、今回の予算編成をやるについて決めた原則は、この七月末に行われまする概算基準の設定というものは昨年並みに厳しく行うということ。それから臨時行政改革審議会の意見を最大限に尊重して実行する。それから九月以降については、これは大蔵省が党に対して情勢報告を行う。そして十二月において自民党主導のもとに、党主導のもとに重点的調整をもって予算編成を行う。こういうことを党の方針として決めたのでありますが、党はまた、議会政治を運営するという立場になりますと、党が決めるにつきましても野党の皆さんのお考えをよくお聞きする、いろいろお考えもいただき、いいものは採用させていただき、また話し合いをさせていただく、これをやるのはやはり我が党の国会運営の方針でもございますから、今度はそういう立場で各党に対しては臨みたい。それを政調会長がお示ししたので、妥当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/110
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111・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、今後政府が予算を編成するに当たりまして、行政改革の進展状況というものを把握する必要があると思うのでございます。
例えば今審議されております医療、さらに今衆議院で審議されております年金、これは制度の本質に切り込んだいわば改革案でございます。そのように現在の時点を考えますと、制度の本質に切り込んだ課題、問題、形はつくったけれどもこれから切り込もうとする問題、まだ臨調答申の入り口を模索している問題、これらが今混在しているというのが行革の現状であろうと思うのでございます。したがって、これらの進展状況を無視して画一的シーリングをかける、ないしは基準を設定するということになりますと、先に行革を行えばさらにそれからどんどんどんどん切り詰められていく。こういうことでは真の行革の実を上げることはできないし、私はそれは国民の間に一つの大きな問題を醸し出すと思うのでございます。
少なくとも、今回この医療保険制度が議了すれば、この基盤の上にこれから数年は乗っていくわけでございます。年金も同じでございます。とすれば、これを底辺としてこの上に自然増というものが乗っかっていく、これは制度の本質に切り込むべき課題から外れている、これが正しい認識であろうと思うのですが、私の認識を生かして今後の予算編成を行われるのかどうか、これをお伺いして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/111
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112・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 改革されたものにつきましては、その改革されたものの基礎の上に立ってすべて進行していくということであると思います。
しかし、その進行の過程におきましても、改革の内容によりまして、ここにありますように国会の御承認をいただいて八割に移行する、そういう手続の場合もありますし、そういう手続が全然書かれてなくして、政府がまた随時見直しつつさらに改良していくという場合もございますし、全然手のつけていないものについて、また新しい切り口をつくっていくという場合もございます。これらは、臨調答申を尊重して、いろいろな項目につきまして一つ一つ検討した上で慎重に行ってまいりたいと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/112
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113・下村泰
○下村泰君 こんなお時間まで総理がこういう委員会に御出席ということは、総理大臣というのはよほどの体力の持ち主なんだなと感服つかまつっております。
私は、素朴な質問をさせていただきます。
まだ今国会は終わったわけじゃございません。明日の土曜日やろうと思えばやれます。そして来週、月曜、火曜日もございます。何でこんな時間までかけて急がねばならない法案なのか、これを総理にお伺いしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/113
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114・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 政府側といたしましては、この法案は今国会政府提案で出しました法案で御審議願っているものの最も重要な法案の一つでありまして、できるだけ早目に確実に成立さしていただきたい。十分御審議を願った上でそのようにお願いしたい、そういうところから与野党でお話しして、十分御審議を願っているということではないかと拝察いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/114
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115・下村泰
○下村泰君 野党側の諸先生に伺いますと、まだ審議する時間は足りないというようなことをおっしゃっているようでございます。
先ほど総理のお話をちょっとお伺いしておりました。和田先生が御質問なさっていらっしゃるときに、本予算はバランスを考えてとおっしゃいましたけれども、防衛費というのが非常に余計に予算が出されているのに比べると、この健保の予算というのは何かバランスが崩れているような感じがするんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/115
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116・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の予算概算シーリング、概算の基準設定につきましては、聖域は設けないで昨年並みに行うと、そういう方針でやったのでございます。
昨年も大体似たような線でやっておりますが、防衛費については昨年は六・八八でありました。ことしは七ということであります。ODA、海外経済協力費についてはことしは一一・四というので、これも重点化しておるわけでございます。そういう意味におきましては、なるほど率は大きくなっておりますが、これは日本の置かれておりまする国際的な地位や環境、国際国家として進んでおる日本の今の立場、それから防衛計画大綱の水準をできるだけ早く達成するという政府の政策、そういうような面からそういうような線を今までたどってきておるわけでございまして、ことしもそういうライン上において努力をしているものである。
しかし、これはまだ一つの過程でありまして、最終的決定は十二月の最終的な予算編成のときに決まるものである、そのようにお考え願いたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/116
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117・下村泰
○下村泰君 総理、私は非常に単細胞かもわかりませんけれども、総理の施政方針演説の中に、「我が国自身の防衛については、必要最小限の質の高い防衛力の整備を図り、」と、こうなっております。そして、「平和憲法のもとで専守防衛に徹し、非核三原則を堅持しつつ、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にならないことは当然であります。」と、こうおっしゃっているわけです。
どの道これから日本がどう再軍備をしたにしましても、今のアメリカとソビエトの持っているような軍事力に到達することは到底及びもつかないと思います。また、そういうような軍事力を持ったとすれば、現在の経済というもの、それから今現在この平和に甘んじている日本の国内の状態は一挙にして崩れ去るものだと私は思います。いかに軍事費が高くついてむだなものかというのは、私自身も戦時中を経験しております、よくわかっております。
もちろん総理にはそんなお考えはないと思います。現在の日本は何もない国で、あらゆる国からいろいろなものをちょうだいしてこれを加工し、それぞれ貿易の物品として世界に輸出して生計を立てているような状態、としますと、総理がいつもおっしゃっているように、総理は外交政策がお得意のようでございます。むしろ外務大臣の上をいくんじゃないかというような感じがするんです。しかも教育の中には、国際的感覚を持った国民をこれから育成していかなければいけない、そういう国際的感覚を持った人たちがこの外交問題に専心し、諸外国との交わりに専心するような方たちが出てくるならば、その外交一つだけでも軍事力は要らないというような方向に行けるんじゃないか、いわゆるスイスのような状態に日本がなれるんじゃないかと、そんなような感じを持つんですけれども、総理、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/117
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118・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう世の中が出ることを私も熱望しておりますが、しかし防衛という問題は、これは総合的安全保障というもとに防衛が行われるべきことで、外交も、あるいは石油の備蓄も、あるいは海外経済協力も、あるいは国連における活動も、世論喚起の問題も全部、総合的にその一環とも考えられるのであります。
しかし、防衛というものを抜きにして現在国が守れるかといえば、遺憾ながらそういう状態ではない。日本の周囲の情勢等を見ますと、ここ五年以前と今回とを見ますと、格段に周囲の軍事力は強化されておりまして、大きな変化が起こりつつあるわけであります。我々の方としては、侵略を行わせない、もし万一それが起こった場合は、限定小規模のものに対応するに必要なものをつくろう、そういうことで限定小規模、そういう範囲内の枠内における専守防衛という形で、非常に節度のあるやり方でやっておるのであります。
それにしても、防衛費が多いじゃないかと言われますが、これはすべて相対的なものでありまして、日本の周囲における諸般の情勢というものを考えますと、限定小規模でもこの程度のものはやはり持っていなければ危ない、そういう考えに立ってやっておるので、御理解をいただきたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/118
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119・下村泰
○下村泰君 まだ私がこういう場所に来ませんときには、総理には、幾多のテレビの番組、ラジオの番組に御足労願って、そのときそのときの折々の政治問題を御質問いたしまして、いろいろと御高説を承ったこともあります。そして、総理がかつて青年将校とうたわれたときに首相公選論を唱えられたこともございます。ちょうど私が東京タワーで「タワープレゼント」という番組を持っておるときでございました。そのときにその番組の中で、これが正論だ、同じ政府を預かる政党の中にこういうことを堂々と述べる方がいらっしゃる、実に立派なものだということを電波を通じて全国へ宣伝したことがあります。そのときたしか、総理の秘書の方がジョニ黒を一本くれたのを今でも覚えています。
そのときの熱気あふれる中曽根総理と今の総理を比べると、ああやはり本当に総理大臣のいすにつくと、少し変わってきたんだなというような感じがいたします。
総理、実は私はいろんな作文をつくるのが好きなんですけれども、この総理の施政方針演説の中に、「国民の皆様」という言葉が出てくるんですね。どのくらい出てくるかというと、八回出てくるんです。そして、その「国民の皆様」という前後の文章というのは、必ず国民の皆様に協力ばかり求めていらっしゃって、政府の方はこれこれこういうことを国民の皆様にしますよというのは余り見受けられないんです。
結びの文句にこういうのがあります。「すべての家庭が、一日の平安を感謝して夕げの明かりに家族団らんのひとときを過ごし、あすへの希望を語り合える世の中をつくり、家庭を守り続けることが、いつの世にも変わらぬ政治の責任であります。私は、国民の皆様が安心して日々の生活が送れるように心骨を砕き、安定と信頼の政治実現に全精力を傾けていく決意であります。」、これは、今NHKでお昼の時間に「ロマンス」というのをやっておりますが、あれがちょうど日本の映画界の胎動期というようなものを背景にしてつくられておりますが、あの中に弁士という商売がございますが、もし弁士がこれうたいとげたら大変な名文だと思うんです。別に私はうたいとげる気持ちはございません、ノーギャラでございますから。この文章を、私ちょっと変えてみたんです。
すべての家庭が、一日の平安を感謝して夕げの明かりに家族団らんのひとときを過ごし、あすへの希望を語り合える世の中をつくり、家庭を守り続けるはずでしたが、重病人を抱え、あまつさえ、一家の大黒柱が不治のがんに侵され、時あたかも死者にむちうつがごとく健保の値上げ、ああこの世に神も私もなきものや。私は、国民の皆様が安心して日々の生活が送れるように心骨を砕き、安定と信頼の政治実現に全精力を傾けていく決意であります、私たち貧しき国民の味方中曽根総理は今いずこ。こうなるわけです。
こういう感情をもって見つめる国民の、いわゆる恵まれない国民がたくさんいるわけです。そういう方々に向かって総理はこの御自分でお書きになった名文句をどういうふうに御説明なさいますか。それを伺いまして、終わりにさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/119
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120・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 御趣旨はよくわかっております。できるだけその御趣旨に沿って今後誠心誠意努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/120
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121・石本茂
○委員長(石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
明四日、午前零時五分から、健康保険法等の一部を改正する法律案の審査のため開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後十一時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114410X01919840803/121
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