1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十七日(火曜日)
午後三時五十二分開会
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委員の異動
三月二十六日
辞任 補欠選任
河本嘉久蔵君 竹山 裕君
赤桐 操君 穐山 篤君
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出席者は左のとおり。
委員長 伊江 朝雄君
理 事
岩崎 純三君
大坪健一郎君
藤井 孝男君
竹田 四郎君
塩出 啓典君
委 員
梶木 又三君
倉田 寛之君
竹山 裕君
中村 太郎君
福岡日出麿君
藤井 裕久君
藤野 賢二君
宮島 滉君
矢野俊比古君
吉川 博君
鈴木 和美君
丸谷 金保君
鈴木 一弘君
多田 省吾君
近藤 忠孝君
栗林 卓司君
青木 茂君
野末 陳平君
国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
政府委員
大蔵政務次官 井上 裕君
大蔵大臣官房審
議官 水野 勝君
大蔵大臣官房審
議官 大山 綱明君
大蔵省主税局長 梅澤 節男君
国税庁間税部長 山本 昭市君
資源エネルギー
庁次長 川崎 弘君
資源エネルギー
庁石油部長 松尾 邦彦君
事務局側
常任委員会専門
員 河内 裕君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置
法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
○物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○石油税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案(内閣送付、
予備審査)
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
送付、予備審査)
○所得税法等の一部を改正する法律案(内閣送
付、予備審査)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/0
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001・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、河本嘉久蔵君及び赤桐操君が委員を辞任され、その補欠として竹山裕君及び穐山篤君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/1
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002・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
租税及び金融等に関する調査のうち、昭和五十九年度の税制改正に関する件について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/2
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003・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。
なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/3
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004・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/4
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005・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。
まず、政府から右三案について順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/5
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006・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
初めに、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
昭和五十九年度の税制改正におきましては、国民各層の強い期待にこたえ所得税の大幅減税を行うとともに、現下の厳しい財政状況をこれ以上悪化させることのないよう、社会経済情勢の変化に対応した税制の見直し等により最小限必要な増収措置を講ずることとしております。このような税制改正の一環として、酒税について、物価水準の上昇等に伴いその負担水準が低下してきていること等に顧み、従量税率の引き上げ等を行うことといたしたものであります。
また、清酒製造業の経営基盤の安定に資するため、日本酒造組合中央会の事業範囲の拡大等を図る必要があります。
以上のような観点から本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
まず、酒税法の一部改正につきまして御説明申し上げます。
第一に、酒税の従量税率の引き上げを行うことといたしております。すなわち、ビール及びウイスキー類特級について、その税率を一九・五%程度引き上げることを基本とし、その他の酒類については、最近における各酒類の消費及び生産の態様等を考慮して、引き上げ幅につき所要の調整を行い、清酒二級について一四・八%程度、清酒一級について一七・八%程度、清酒特級及び合成清酒について一九・五%程度、しょうちゅう乙類及びウイスキー類一級について二四・七%程度、甘味果実酒、ウイスキー類二級、スピリッツ類、リキュール類及び雑酒について二九・七%程度、しょうちゅう甲類及び果実酒について三四・五%程度それぞれ引き上げることといたしております。その際、清酒の基準アルコール分の見直しをあわせて行うことといたしております。
この引き上げ幅を通常の容器一本当たりの税額に換算いたしますと、例えば清酒特級は百七十九円程度、清酒二級は二十五円程度、しょうちゅう乙類は十八円程度、ビールは二十五円程度、ウイスキー特級は二百六十一円程度となります。
なお、税率の引き上げが行われる際、その対象となる酒類を一定数量以上所持する販売業者等に対しては、従来と同様、手持ち品課税を行うことといたしております。
第二に、清酒等についてアルコール度数による減算税率が適用されるアルコール度数の下限を引き下げるほか、免税酒類の表示制度を廃止する等制度の整備合理化を行うことといたしております。
次に、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正に、つきまして御説明申し上げます。
清酒製造業におきましては、昭和五十九年七月から昭和六十四年度を目標年度とする第四次近代化計画の実施を予定し、経営基盤の一幅の安定に努めることとしておりますが、今回、このような清酒製造業の自助努力を実効あらしめるため、日本酒造組合中央会の事業範囲の拡大等を図ることといたしております。
第一に、昭和五十九年七月一日から昭和六十四年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し給付金を給付するとともに、これに係る納付金を清酒製造業者から徴収することができるよう措置することといたしております。
第二に、近代化事業の運営に必要な経費の財源をその運用によって得るため、近代化事業基金を設けることができるよう措置するとともに、国は、同基金に充てる資金を無利子で貸し付けることができるよう措置することといたしております。
次に、物品税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
物品税につきましても、さきに申し上げた今次の税制改正の一環として、最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等に顧み、課税対象の追加及び税率の引き上げ等を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、録音用または録画用の磁気テープ、全自動以外の電気洗濯機、ビデオディスクプレーヤー、コンパクトディスクプレーヤー等の物品について、所要の経過措置を講じた上、新たに課税対象に加えることといたしております。
第二に、小型乗用車及びカークーラー等の税率を一%、軽乗用車及びライトバン等の税率を〇・五%、それぞれ引き上げることといたしております。
第三に、テレビの難視聴解消に資することとなる衛星放送受信用テレビジョンチューナーについて五年間の課税の特例措置を講ずるほか、物品税の納税手続を簡素化する等制度の整備合理化を行うことといたしております。
次に、石油税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
石油税収は、一般会計を通じ、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計に繰り入れられ、石油及び石油代替エネルギー対策の財源となっておりますが、昨年三月の原油価格の低下等に伴い大幅な減少を来しております。
しかしながら、現下の厳しい財政事情のもとで、石油及び石油代替エネルギー対策の着実な推進を図っていくためには、今後とも財源の安定的な確保が要請されるところであります。
このような状況に顧み、石油及び石油代替エネルギー対策の歳出内容を厳しく見直した上で、石油に係る税負担状況等に配意しつつ、石油税の税率を若干引き上げるとともに、課税対象の追加を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、原油等に対する税率を、現行の三・五%から一・二%引き上げ、四・七%とすることといたしております。
第二に、いわゆるLNG等の液化ガスを含むガス状炭化水素を課税対象に追加し、その税率を一・二%とすることといたしております。なお、課税対象の追加に当たりましては、自己または同居の親族の用に供するガス状炭化水索のみを採取する者については課税の対象外とするほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上が、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/6
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007・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 次に、ただいまの三案にあわせて、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案を議題とし、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/7
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008・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
まず、法人税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
政府は、現下の財政事情等に顧み、法人税の延納制度を廃止するほか、課税の公平を一層推進する等のため、所要の改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
まず、法人税の延納制度を廃止することといたしております。
次に、課税の公平を一層推進するため、帳簿書類の備え付け制度を設ける等の措置を講ずることといたしております。
その他、工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度の対象となる事業に卸電気事業を加え、公的医療機関に該当する病院等を設置する農業協同組合連合会で特定の要件を満たすものを別表第二の法人とする等所要の改正を行うことといたしております。
次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
政府は、現下の厳しい財政事情に顧み、臨時措置として法人税の税率の引き上げ及び欠損金の繰り戻しによる還付制度の適用停止を行うとともに、租税特別措置の整理合理化を進めるほか、エネルギー利用の効率化、中小企業の設備投資等を促進するための措置その他所要の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、法人税の税率の引き上げであります。
すなわち、二年間の臨時措置として、法人税の税率を一・三%引き上げることといたしております。ただし、中小法人、公益法人、協同組合等に対する軽減税率につきましては一%引き上げることといたしております。
第二は、法人税の欠損金の繰り戻しによる還付制度の適用停止であります。
すなわち、法人税の欠損金の繰り戻しによる還付制度につきまして、解散等の特別な場合を除き、二年間その適用を停止することといたしております。
第三は、設備投資促進のための措置であります。
まず、エネルギーの効率的利用等に資する一定の設備につきまして、二年間限りの措置として、一定の要件の下で、取得価額の百分の三十の特別償却と取得価額の百分の七の特別税額控除とのいずれかの選択を認める措置を講ずることといたしております。
次に、中小企業者等の取得する一定の電子機器利用設備について、二年間限りの措置として、一定の要件のもとで、取得価額の百分の三十の特別償却と取得価額の百分の七の特別税額控除とのいずれかの選択を認める措置を講ずるとともに、これをリースにより使用する中小企業者等に対しましても、一定の要件のもとで、リース料を基礎として計算した額の百分の七の特別税額控除を認めることといたしております。
さらに、高度技術工業集積地域において法人の取得する高度技術工業用設備について、一定の要件のもとで、機械等にあっては百分の三十、建物等にあっては百分の十五の特別償却を認める措置を講ずることといたしております。
第四は、土地・住宅税制の改正であります。
土地・住宅税制につきましては、一定の要件に該当する民間の再開発事業に係る買いかえの特例のほか、父母等から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税につき、二年間限りの措置として、住宅取得資金のうち五百万円までの部分について五分五乗方式により税額を計算する特例を設ける等の措置を講ずることといたしております。
第五は、既存の租税特別措置の整理合理化であります。
まず、企業関係の租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきており、その整理合理化をさらに進める余地はかなり限られている状況にありますが、昭和五十九年度におきましても適用期限の到来するものを中心に見直しを行い、特別償却制度及び準備金制度等の整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税の税率軽減措置につきましても所要の整理合理化を行うことといたしております。
第六は、普通乗用自動車等に対する物品税の軽減税率の引き上げであります。
普通乗用自動車等に対する物品税の軽減税率につきましては、課税物品相互間のバランス等を考慮し、〇・五%引き上げることといたしております。
その他、同居特別障害者及び同居老親扶養親族の特別控除額の引き上げを行うとともに、住宅取得控除、中小企業の貸倒引当金の特例等適用期限の到来する租税特別措置について実情に応じその適用期限を延長する等所要の措置を講ずることといたしております。
次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
政府は、昭和五十九年度の税制改正の一環として、最近における所得税負担の状況等にかんがみ、その負担の軽減を図るため、人的控除の引き上げ、給与所得控除の拡充及び税率の見直し等により、初年度八千七百億円に上る所得税減税を実施するとともに、課税の公平を一層推進するための措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、所得税負担の軽減を図るため、人的控除の引き上げ及び給与所得控除の拡充を行うことといたしております。
すなわち、基礎控除、配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ現行の二十九万円から三十三万円に引き上げることといたしております。
また、給与所得控除について、四〇%及び三〇%の控除率の適用対象となる給与収入の範囲をそれぞれ一割拡大するとともに、最低控除額を現行の五十万円から五十五万円に引き上げることといたしております。この結果、給与所得者の課税最低限は、夫婦と子供二人の四人世帯の場合で二百三十五万七千円となります。
第二は、以上の改正とあわせて、税率の見直しを行うことといたしております。
すなわち、税率につきまして、その累進構造を全体として若干なだらかなものとするとの観点から、現行の最低税率一〇%を一〇・五%に、最高税率七五%を七〇%に改めるとともに、税率の刻みの数の縮減を図ることといたしております。
第三は、障害者控除等の特別な人的控除についても、その控除額の引き上げを行うことといたしております。
すなわち、障害者控除、老年者控除、勤労学生控除及び寡婦ないし寡夫に係る控除をそれぞれ現行の二十三万円から二十五万円に、特別障害者控除を現行の三十一万円から三十三万円に引き上げることといたしております。
第四は、配偶者控除等の適用要件である給与所得等の所得限度額の引き上げを行うことといたしております。
すなわち、配偶者控除、扶養控除の適用要件である配偶者等の給与所得等の所得限度額を現行の二十九万円から三十三万円に引き上げることとし、いわゆるパート主婦については年間給与収入八十八万円以下の場合は控除対象配偶者となるよう措置することといたしております。
その他、白色申告者の専従者控除を現行の四十万円から四十五万円に引き上げるほか、個人年金保険料等について所得控除を設けるとともに、予定納税を要しない予定納税基準額の限度額を現行の十万円から十五万円に引き上げる等所要の措置を講ずることといたしております。
第五は、課税の公平を一層推進するための措置として、納税環境の整備を図ることといたしております。
すなわち、前々年分の事業所得、不動産所得及び山林所得の金額が三百万円を超える者等の記帳制度及び事業所得等に係る総収入金額が五千万円を超える者の総収入金額報告書の提出制度等を設けるほか、過少申告加算税、課税処分の取り消し訴訟における証拠の申し出等につき所要の整備を図ることといたしております。
第六は、災害被害者の負担を軽減するため、所得税の減免を受けることができる災害被害者の所得限度額及び所得税の軽減または免除の対象となる所得限度額を、それぞれ五割引き上げることといたしております。
以上が、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/8
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009・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 以上で六案の趣旨説明の聴取は終わりました。
これより六法案一括して質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/9
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010・大坪健一郎
○大坪健一郎君 大臣に、大変御苦労でございますけれども、国税に関する六つの法案についていろいろ御質問申し上げたいわけですが、本日は特に衆議院から間接税三法が送付されてまいりましたので、私はその間接税について御質問を申し上げたいと思います。
まず、その前に、昭和五十九年度の予算編成に当たりましては、昨年一年非常に国民各層から強い期待が寄せられておりました減税につきまして、政府は大変いろいろ苦慮された上で、初年度は八千七百億にも及ぶ所得税の大幅減税が思い切って行われることになったわけでございます。しかし、私ども考えまするに、今の日本の財政状況から考えますと、特に非常に累積しております国債が将来の世代の国民の非常に大きな負担になるんではないかということが恐れられておる昨今でございますから、この大幅減税を行うことはもちろん多とすべきでございますけれども、しかしながらこの大幅減税の財源をどこに求めるかということになりますと、財政が国債の累増によって危機的な状況になっておりますときに、なお国債の増発に求めるというわけにはいかないのではないか。したがって、政府が今回減税分を国債の増発によらないということを決めたということは、私どもとしては、これは当然のことであるし、また筋の通ったことであろうかと思います。
そしてまた、非常に評論家的な議論では、それだけの財源は歳出削減で可能だというような議論をされておる方もおられますけれども、歳出削減で財源を捻出するということは言うはやすくして行うは非常にかたい。口の端で歳出削減を言う方が、また一方ではなぜ国民のためにもっと財政支出をしないのかというようなことをよく言われておる例を知っておるわけでございますから、したがって巨額に上る国債を新しく発行することが無利だ、そしてしかも国債の発行高は年々これを圧縮していかにゃいかぬというような状況である現在の財政下におきましては、歳出削減ができず国債の増発が許されないということになれば何らかの形で減税をカバーする財源措置を講じなくてはならない。それの許された道は、もう今までの税制度の中で工夫をして税収を増加することよりないのではないかというような感じは、我々としても十分わかるわけであります。
私ども自由民主党は、責任のある政府与党でございますから、責任政党としてこういった状況をよく考えまして、減税を行う以上は、その減税に対応して現行税制の枠の中で税収を確保することはやむを得ないというふうに考えております。
ただ、今度の減税を見ておりますと、政府は法人税、酒税、物品税、こういった課目が特に選ばれて増税の対象になっておるようでございますが、なぜ政府は今回この法人税、酒税、物品税といった税目を選んで増税をされたのか、ここのところは国民も非常に注目をしてその説明を求めておるところでございます。そういう点について特にお伺いをいたしたいと思いますし、また、石油税の増税もどういった考えから行うようになられたのか、新しく従来の石油に加えてLNGのような天然ガスの課税も行われるようになったようでありますが、そのゆえんをひとつ大臣から御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/10
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011・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 御意見を交えての御質問でございますが、このたびの減税問題の議論につきましては、おっしゃるようないろいろな経過がございました。大筋の合意というものは、すなわち赤字公債を財源としないということでありました。しかし、その財源をどこに求めるかということになりますと、それぞれの考え方で、これは衆議院の小委員会の話でございますが、結論から申しますと、合意に達しないということで衆議院議長の方へ中間報告がなされたというようなことであります。その後また各党間でいろいろな協議がございまして、結局、我々はいろいろの意見を吐いたが、その財源については政府の責任においてこれを行うべきだという大筋の合意を受けまして、私どもといたしましては種々検討をいたしたわけであります。
そこで、この酒税についてまず申し上げますと、このような税制改正の一環として、物価水準の上昇に伴いましてその負担水準が低下しているわけでございます。したがって、負担の引き上げを求めることといたしたわけであります。だから、従来とも、これは三年に一度程度、いわば物価上昇に伴って税率そのものはダウンしてまいりますから、その手直しというようなことをいたしてまいりましたので、ある意味においてはその三年目ということにもなるわけでございますけれども、あるいはこの減税措置ということが大義名分としてなかりし場合は、あるいは一年見送るとかいうことも全くなかったとは言えないと思うのであります。しかし、この際この負担の引き上げを求めることにして、いわばこれは三年に一度程度行っております、ある意味においては慣例を踏襲したと言えるかとも思います。中身は、いろいろ提案理由で説明しましたように多少の変化は持たしております。
それから物品税につきましても、今度税制改正の一環としてこの税調答申等からもちょうだいいたしました。最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等、課税対象をこれから追加いたしまして、またその税率の引き上げを行う、こういうようなことをさしていただいたわけであります。
これもそもそもが消費の段階に担税力を求めるか、あるいは所得の段階で担税力を求めるかという議論は、大議論としてもとより存在する問題でございます。しかし、このたび私どもが着目いたしましたのは、税調等の答申に基づいて、消費を対象として担税力を求める物品税を今申しましたような形で増収措置をとらしていただくことといたした次第であります。
それから間接税、いわゆる石油税でございますが、これは率直に申しまして、今度の減税財源という性格とは異にいたしております。昨年三月の原油価格の低下等に伴いまして、これは従価税でございますから大幅な減少を来してまいりました。しかしながら、石油及び石油代替エネルギー対策の着実な推進は、むしろ石油事情が比較的緩んだときには、間々これは忘れがちになるような傾向もなしとも言えません。したがって、やはりこの対策は必要であるという観点に立って着実な推進を図って、そうして今後とも財源の安定的な確保が要請されるという観点から、これの引き上げを行わしていただくということにいたしたわけであります。しかし、一方で、エネルギー対策の歳出内容は厳しく見直していかなければならないというような考え方は、もとより持っておるところでございます。
さらにこのLNG等の問題でございますが、そもそもそれの課税物品が、言ってみれば、まさに石油及び代替エネルギー対策そのものに直結する一つの物品であるという考え方に立ってその範囲を広げさしていただいた、言うなれば、減税見合いというものではこれは性格を異にするというふうに考えておるところであります。
なお、減税見合いの問題につきましては、別途法人税の増収措置等を図らしていただいて、言ってみれば、抱き合わせとかあるいは差し引きチャラとかというような言葉で表現されるように、今日の財政下においてぎりぎりの選択をして御審議を賜っておると、こういう現状認識をいたしております。いささかお答えが長くなりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/11
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012・大坪健一郎
○大坪健一郎君 もう一問大臣にお答えいただきたいんです。
せっかく所得税減税を行いまして、国民の購買力を高めるというような政策がとられるというのでありますけれども、その財源がこういった間接税の増税ですべて賄われるということになりますと、今ちょうど景気が回復期に向かっておるようには見えますが、これの足を引っ張る結果をもたらすのではないだろうかという点がちょっと心配されるわけでございます。もちろん今度の減税の中には、投資促進税制として六百億ぐらい見込まれておるというような点もありますけれども、しかし法人税率が引き上げられまして、それが設備投資意欲に消極的な影響を及ぼすのではなかろうか、あるいは酒税とか物品税の税率が引き上げられるということは、庶民の懐に影響を及ぼして消費が減少するのではないかということが懸念されるわけでございます。この辺を大蔵大臣はどのようにお考えになってこの税制改正に手をつけられたか、そこをお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/12
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013・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 一つは、この所得税減税というものは、各党の申し合わせの中で景気浮揚に役立つという言葉ももとより使われておりましたが、それと同時に、いわば課税最低限の引き上げ等を伴う抜本的な制度改正であらねばならぬという御意見を踏まえまして、結局、今度の減税の姿をごらんいただきますと、言ってみれば、世界一局い累進構造とでも申しましょうか、今日個人個人によってその感覚は異なりますものの、最もいわば重税感を持っていらっしゃる中堅階層というようなところにできるだけその効果が上がるような形の累進構造というものを、最低税率の引き上げあるいは最高税率の引き下げ等々によって図ってきたところであります。
したがって、その階層の方というものを対象にしたわけでございます。主としてその階層の方々の状態が好ましい方向になるようにという考え方でございましたものの、もとより課税最低限はかなり大幅に引き上げられますし、そして最低税率は〇・五%上がりましたとはいえ、これが実質国民たれ一人としていわゆる増税になるという層がない形の税率構造にしたわけであります。したがって、これらが消費を刺激することによっていささかでも景気回復、言ってみれば、今年度で申せば、四・一%はより確実ならしめるための一つの方途として位置づけることもできるであろうと考えております。
しかし、その財源が御案内のように物品税、酒税等でございます。それは個々の人によって生活の実態は異なりますので、一人一人の人について申しますならば、お酒をよくたしなまれる方は、所得税減税の効果より以上にお召し上がりになる方もそれは中にはもとよりございますでしょう。だが個々の問題としてはそのような状態が存在するわけでございますが、総体的に申してみますならば、それが消費者物価の値上がり、それが生活に与える影響等々を全部一応数字にもはじいて、完全なものではありませんが、それらとの比較対象をしてみますと、私どもといたしまして、四・一%の実質成長をより確実ならしめる消費の拡大につながるという要因をそこに見出しておるわけであります。
したがって、もとよりかつての高度経済成長のような状態でございませんので、それは四・一%と申しましても、今年度は大体三・四%が見込まれるわけでございますが、三、四%台というのは決して肌でもって景気がよくなったという、いささか高度経済成長になれた私どもとしては、そういう認識を持つような状態ではなかろうと思いますけれども、世界全体の中で、よかれあしかれ四%台の安定成長、しかもインフレなき安定成長ということが望まれる今日において、国民の皆様方に我慢していただけるいわば増減税それぞれの措置ではなかろうかというふうに理解をお願いしたいものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/13
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014・大坪健一郎
○大坪健一郎君 後ほど同僚の矢野議員が御質問なさいますので、私は以下酒税について御質問申し上げたいと思います。
主税局長にお尋ねしたいんですけれども、前回の酒税法改正のときに、これは五十六年の三月だと思いましたけれども、三月二十四日、参議院の大蔵委員会の附帯決議がございまして、その附帯決議によりますと、「清酒が民族文化をうけつぐ伝統ある酒類であることにてらし、清酒製造業、特に中小製造業については、原料米価格の安定を含め、清酒製造業振興のための育成指導に十分配慮し、さらに所要の措置を講ずること」というふうになっております。
こういう附帯決議がありましたにもかかわらず、今回酒税の引き上げにおきましては、清酒が現行の特級で二千五百五十円、あるいは一級で一千八百円、二級で一千三百五十円というのが、特級で二千七百二十八円、一級で一千九百円ぐらい、二級で一千三百七十五円程度に上げられて、清酒をつくっておられる製造業の方々、特に中小の製造業の方々はコストが非常に高くなっておる点もございまして、非常に困っておられるような御意見も多々ございます。大蔵省はこの間の消息をどのように考え、どのように施策を講じていかれるつもりなのか、ひとつ御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/14
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015・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) ただいま委員から御指摘をいただいた点でございますが、今回の酒税法の改正に当たりまして、清酒の民族酒としての特殊性に配意して税負担の引き上げについてどういう調整をしたかという点につきまして私から御説明申し上げます。同時に、その背景にございます清酒業界の安定等の問題につきましては、後ほど国税庁の方から考え方を御説明申し上げたいと存じます。
まず、今回の酒税法の改正におきます各酒類の税負担の引き上げについての考え方についてでございます。御案内のとおり、現在の我が国の酒税の各酒類ごとの負担率、具体的には小売価格に占めます税負担の割合でございますが、それを見ますると、酒類間、それから同じ酒類でも級別間で非常に負担の格差が大きいわけでございます。現在の酒税の税負担の体系の枠組みができましたのが昭和三十七年の酒税法の改正でございまして、このときに当時酒税の大幅な減税が行われました。
そのときの考え方は、大幅な減税を行う中でもなかんずくしょうちゅうとか、あるいは下級酒といった酒類の減税幅を大きくするということでございました。その後、現在に至るまで累次にわたって酒税法の改正が行われてきたわけでございますが、その場合におきましても、下級酒等につきましてはなるべく税負担の引き上げを圧縮する、あるいは見送るということを行ってまいりましたものですから、昭和三十七年当時でも非常に税負担の酒類ごとの格差が拡大した。今回の考え方は、その間の酒類の消費の状況等を見ますると、今日そういう大衆酒とか高級酒といったような区分から税負担を調整するという考え方よりも、むしろ消費が均質化し多様化しておるという背景のもとで、各酒類間の負担の格差をむしろ縮小するという基本的な考え方に立ちました。
したがって、具体的には、現在一番酒類の負担割合の高いのは、小売価格に占めます酒類でまず四〇%台のものがございます。ビールとかあるいはウイスキー、特級等でございます。それから三〇%台のもの、二〇%台のもの、一〇%台以下のものと、大体この四つのグルーピングを行いまして、一番高いビールのところの引き上げ幅をベースといたしまして、グルーピングごとに税負担の低いものからむしろ引き上げ幅を大きくするという措置を講じたわけでございまして、したがいまして、例えばしょうちゅう甲類等につきましては、税負担の割合が現在一〇%台でございますが、今回これを三五%弱、引き上げ幅で引き上げていただくということにしたわけでございます。そういたしますと、清酒の特級等につきましては、現在この負担率が三〇%台でございますので、むしろ引き上げ幅を二五%程度お願いしなければならない。それから清酒の一級でございますと、これは二〇%台でございますので三〇%の引き上げをお願いしなければならない。二級酒につきましては、一〇%台でございますので、三五%台の引き上げをお願いしなければならないというふうなことでございます。
清酒につきましては、まさに委員が御指摘になりましたとおりでございまして、民族酒という性格づけをされておるわけでございますが、これを個別消費税の酒税という観点から見ますると、清酒については二つの特殊事情がある。一つは、食管制度のもとにおける割高の原料米で手当てしなければならないという生産側の特殊な条件、それからもう一つは、最近十年タームあるいは五年タームでとってみましても、清酒の消費が酒類の中で一番元気がない、むしろ清酒全体としては消費量が若干なりとも下回る傾向にあるわけでございます。こうした特殊な要因を配慮しなければならないということで、結果的には特級酒につきましては上げ幅二〇%弱、一級酒につきましては一八%弱、二級酒については一五%弱という税率の引き上げをお願いするということでございまして、酒類間の負担の格差を縮小するという観点からは、清酒につきましては、そういった清酒の特殊事情を配慮いたしまして、税負担の引き上げ幅についてそれなりの相当の調整を図っておるということはぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
清酒の産業面の問題につきましては、国税庁の方から御説明を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/15
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016・山本昭市
○政府委員(山本昭市君) ただいまの前回の当委員会の附帯決議を受けまして、国税庁としまして清酒製造業等に対しましてどのような産業行政を行ってきたかということにつきまして御説明を申し上げさしていただきたいと思います。
ただいまこの附帯決議の中での御指摘もございますように、清酒業界の抱えております最大の問題は三つあると思うわけでございますが、まず第一が原料事情の特殊性でございまして、主要原料でありますところの米を食管制度の枠内におきまして、競争業種でありますところのビールあるいはウイスキー、これらはその主要原料の大部分を国産の価格の半額で購入できるわけでございますけれども、相対的に高い価格で買わなきゃいけない、そういった原料事情の特殊性がございます。
それからもう一つの特殊性でございますが、二千六百者の多くを数えますところの清酒製造業の九九・六%が実は中小企業でございまして、そのうち三五%が赤字経営でございます。さらに税引き前利益五十万以下という低収益の企業を加えますと、この割合が五六%にも達する、こういうような状況に置かれておる、こういう問題がございます。
第三に、先ほど主税局長が申しましたが、需要が停滞いたしておりまして、絶対的に清酒の売れ行きが減ってきておるというようなことでございまして、こういった事情にかんがみまして、従来からいろいろと産業政策をとらしていただいてきたわけでございます。例えば昭和三十九年以来三次にわたりまして近代化事業を実施いたしておりますし、昭和四十五年の清酒業安定法を制定いたしまして信用保証毒薬を実施いたしますとか、あるいは何とかしてその食管の枠内におきまして良質で低廉な原料米の安定的な確保を図るというようなことを講じてきたわけでございます。
以下、その後におきまして、五十六年三月二十四日の当委員会の御決議以降、さらに私どもがとらしていただきました施策につきまして申し上げたいと存じます。
まず第一に、今回の税制改正、ただいま主税局長から御説明申し上げましたとおり、この税制改正の案におきましてそういった状況を勘案いたしまして、清酒につきましては、他の酒類よりもこの引き上げ率を圧縮するというような特段の配慮が行われているということであろうかと思います。
第二は、国税庁長官の諮問機関でございます中央酒類審議会というのがございますが、この中央酒類審議会に昭和五十六年十一月清酒部会を設置いたしまして、こういった環境にあります清酒業をいかにして振興するかということにつきまして、諸問題の調査、審議をお願いしたわけでございます。その結果、五十八年の五月でございますが、清酒産業の今後のあり方につきまして処方せんとも言うべき報告書を提出していただきました。
第三は、この報告書の提言に沿いまして、清酒業界はただいま、中小企業近代化促進法に基づきまして、四度目の近代化事業に取り組むこととしておるわけでございますけれども、国税庁といたしましては、その推進のために積極的に支援、指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
第四でございますが、清酒業界のこのような自助努力を側面的に支援いたしますために清酒業安定法を改正させていただきまして、五十九年度から転廃給付金毒薬を再開できますように処置いたしますとともに、当面の清酒業界の緊急の課題でございますところの経営者あるいは技能者、なかなか杜氏さんが集まらない。いずれ農業構造改善でその供給も減ってまいるというような事情もございますが、そういった技能者の育成事業等に積極的に取り組むために近代化事業というものを中央会が実施したい。それにつきまして、転廃給付金事業の動向いかんにかかわらず、安定的にこの事業ができますように、日本酒造組合中央会が新たに近代化事業基金というものを設けまして、その基金に充てる資金でございまして、十億予算案に計上されておりますが、この十億というものを国が無利子で貸し付けができるように処置するという案を作成いたしまして、この改正法案の御審議をお願い申し上げておるところでございます。
第五番目に、原料米につきましては、自主流通米、これは全く主食と同じ米でございますけれども、これにつきまして国庫補助を主食と同様に実施いたしておりますが、これに加えまして、昭和五十一年度から価格の安い政府米の払い下げが受けられるように処置いたしておりまして、逐年その政府米の払い下げの量も拡大いたしてまいっております。昭和五十八年度には十六万トンというふうな額に達する見込みであるわけでございます。
最後に、清酒産業の振興のためには、何と申しましても、需要の拡大を図ることが極めて重要でございます。そのために必要な調査研究、これはもちろん業界もいたしておりますが、国税庁におきましても側面的にこれを援助すべく実施をいたしておりまして、情報として業界に提供いたしているところでございます。いろいろな内容のものがございますが、当委員会の御決議後に行いましたものの主要なものといたしまして御紹介申し上げますと、五十六年度には清酒総需要開発マニュアルというようなものをつくっておりますし、五十六、七年度には清酒モデル地域振興計画というものも策定いたしております。同じく五十七年度には清酒の需要促進のための消費者調査といったものもいたしまして業界の方に提供しているところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/16
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017・大坪健一郎
○大坪健一郎君 特に清酒の場合は、中小企業の酒造業者が非常に御苦労になっておるという例が極めて私どもの耳によく入るわけでございますので、今いろいろおっしゃいましたけれども、もう少し実効の上がるように督励をしていただきたいと思うんですね、あなた方の施策の末端浸透に。
それで、今回の酒税増税案を拝見しますと、これも新聞なんかでも盛んに書いてありましたけれども、確かにしょうちゅうのような低価格のお酒、あるいは俗に大衆酒と言われておるようなお酒の引き上げ率がどうも大きいように思われます。清酒は特に抑えたということでございますけれども、しょうちゅうとか果実酒とかウイスキーなどは相当高くなっておるようですし、例えばウイスキーなんかでは二級が一番大きくなっておるように思います。これは一体どういう考え方でこういうふうにしたのかという、さっきちょっと御説明あったように思いますが、確認のためにもう一度お聞きをしておきたいと思います。
それからなお、これが小売価格にはね返った場合に一体どの程度の小売価格の上昇率になっておるのかということもちょっと念のためにお聞きをいたしておきたいと思います。
それから、もう時間がございませんから、ついでに、この前の国会審議の際に、現在の酒税制度がいろいろ指摘をされまして、その抜本的検討を行うために酒税問題懇談会というのができたということでございますが、その酒税問題懇談会の検討がいろいろなされた文書が出されておりますけれども、その検討の結果が今回の改正案の中にどのように反映しておるのか。これはひとつ局長からはっきりとお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/17
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018・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) まず前段の御質問の点でございますが、御指摘になりましたように、今回御提案申し上げております各酒類ごとの税負担の引き上げ幅の中で、しょうちゅう甲類は負担の引き上げ幅三五%弱、それからウイスキーにつきましても、先ほど委員が御指摘になりましたように、下級酒、つまり二級酒が三〇%弱、一級酒が二五%弱、特級が二〇%弱ということで従来の引き上げの考え方とはむしろ逆の方向で御提案を申し上げております。
これの基本的な考え方は、先ほどの御質問にお答えしましたように、各酒類間、それから同じ酒類でも紋別間の負担の格差を縮小する。これはこの後御説明申し上げます酒税問題懇談会におきましてもこの方向が示唆されておりまして、この方向に基づきまして昨年十一月の政府税制調査会の中期答申もまとめられておるわけでございますが、その中でも、今後の酒税のあり方として、その重要な一つの方向として、酒類間の負担格差縮小ということが言われておるわけでございます。私どもはその考え方に沿いました案で現在御提案を申し上げておるわけでございます。ただ、しょうちゅう乙類につきましては、本来でございますと、三五%台の上げ幅をお願いしなければならないわけでございますが、しょうちゅう乙類につきましては、清酒と同じように原料米の特殊事情がございますので、これにつきましては、二五%弱の引き上げ幅で調整をいたしております。
ただ、このようにいわゆる従来下級酒と言われてまいりましたものについて大きな引き上げ幅をお願いしておるわけでございますけれども、もともと現在の負担率、つまり小売価格に占める負担の割合が低い水準でございますので、例えばしょうちゅう甲類につきましては、三五%の従量税率の引き上げをお願いはしておりますけれども、それをお認め願いまして、それが価格転嫁されたとしましても、小売価格に影響いたしますのは三・八%でございます。同じくしょうちゅう乙類で一・七%、ウイスキーの二級酒で四八%といった程度でございまして、今回の税率の引き上げ幅のベースといたしましたビールなりウイスキー特級、それぞれ二〇%弱の引き上げ幅でございますけれども、これらの酒類になりますと現在の負担割合がかなり高いものでございますから、小売物価に影響いたしますのがこれらの酒類、ビールとかウイスキー特級の場合は九%前後になります。その意味で小売価格に対するはね返りという点から見れば、今回のいわゆる下級酒の税負担の引き上げについてはビール等に比べると低いということは御理解を賜りたいと思います。
それから後段の御指摘になりました酒税問題懇談会でございますが、これは五十六年の酒税法改正のときの国会の御審議とか附帯決議等に基づきまして、酒税制度を根本的に中長期的に考えるという観点から、これは学習院大学の田島教授に座長をお願いいたしまして、五十六年の六月から約一年間検討作業をしていただきました。これは業界の方のほかに学識経験者も入っていただきまして、学識経験者の中にはアルコールの健康医学の観点から精神医学者なんかも参加いたしていただいたわけでございますが、その座長の報告を要約いたしますと、三点に要約されると考えるわけでございます。
一つは、我が国の現在の酒税制度を見ますると、諸外国と比べまして、一つの特徴として、酒類の区別が非常に複雑であるという特徴がございます。現在、酒税法で、酒類については十種類十三品目という酒類の区別が行われておるわけでございますが、これをもう少し簡素合理化できないか、簡素合理化する方向で検討すべきであると。それから先ほど申し上げました酒類間の税負担の格差を今後は縮小すべきであるという点。これが第一点。
それから第二点は、その酒税の課税方式でございますが、我が国の酒税は従量税率を基本といたしまして、ただ価格帯の広い例えば清酒の特級とかウイスキー類等につきまして従価税を導入しておるわけでございますが、今後の方向としては、従量税と従価税を適宜組み合わせながら、むしろ価格帯の広いところには従価税の方式を広げていくといったような方向が示唆されておりますし、また税制調査会の答申でもこの考え方が受け継がれておるわけでございます。
もう一点は級別制度でございまして、なかんずく清酒の現在の級別制度につきまして、現在の級別が客観的基準を欠いておるといった問題が従来から提起をされております。この級別制度の客観的基準の見直しあるいは簡素化、存廃も含めたそのあり方の検討、それから、級別間の税負担の格差の縮小。
おおよそこの三つの点がこの懇談会の座長のまとめとして要約をいただきまして、それが中期答申にほぼ今後の酒税のあり方として御指摘をいただいていることになっておるわけでございます。
今回御提案申し上げております改正案では、率直に申し上げまして、酒類間の税負担の格差縮小の問題については、先ほど来申し上げているとおりでございまして、我々は、懇談会なり、この税調の答申の線に沿って御提案申し上げておるわけでございますが、残余の問題、特に級別制度のあり方の問題とか、あるいは従価税制度を今後どういうふうに現在の酒税制度の中で広げていくかといったような点につきましては、税調答申でも、価格帯の広いものについては従価税の範囲を広げるようにという御指摘はいただいておりますけれども、今回の五十九年度の酒税法の改正におきましては、種々検討いたしましたけれども、具体的な結論といいますか、成案を得るに至りませんでした。これらの問題につきましては、引き続き検討をさせていただきまして、次の機会に、できるものはまた新たな角度から結論を見出しまして御提案を申し上げたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/18
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019・大坪健一郎
○大坪健一郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/19
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020・矢野俊比古
○矢野俊比古君 私は、今、総論及び酒税に対しましては大坪委員からのお尋ねがありましたので、物品税、それから石油税を中心としてお尋ねをいたしたいと思います。質問通告が大変急だったわけですから、あるいは答弁の用意が不十分ということがあり得るんだろうと想像しております。したがって、どうしても今すぐお答えにくいということがあれば、後で資料でも提出というふうな形で補完していただきたいということをお願いします。
まず、物品税でございますが、昭和五十六年度に物品税の改正がありまして、七百七十億の増収を見込んだと思います。ところが、実際には、そういった増収を見込みながら、その予算枠では一兆三千七百九十億、ところが決算では一兆一千五百七十億ということで、二千二百二十億のむしろ見込み違いということになりました。今回は平年度ベースで五百六十億、初年度、五十九年度では三百五十億でございますけれども、果たして、本当にそういう見通しどおり過去の経緯からいって確実に取れるということなのか、私はその点を大変心配しておるわけでございます。そういった増収のいわゆる積算基礎といいますか、どういうような見込みで立てたのか、もしその点がお明かしいただければ幸いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/20
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021・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) ただいま矢野委員が御指摘になりましたように、五十六年度、それから五十七年度引き続きまして、当初予算に対しまして、五十六年度については三兆円強、五十七年度につきましては六兆円強の税収不足が生じました。これは主として法人税それから所得税が八割以上の減収要因になっておるわけでございますが、御指摘の物品税等につきましても、各税目について見込みに対して決算の狂いが生じました。
これはいろいろ議論があるところでございますけれども、私ども税収見積もりをいたしました歳入当局といたしましては、今の時点から見ますると、第二次石油危機の調整過程ということでございまして、世界同時不況の中での経済局面ということを今から考えてみますると、我々の予測以上に、実体経済に与えた第二次石油危機の影響なりその調整過程というのは、深刻なものであった、今結果としてそういうふうに考えられるわけでございます。
したがいまして、たまたま五十六年度に一兆四千億強の税制改正をお願いいたしました年がその年にぶつかっております。その意味で、矢野委員の危惧される点、私ども、当時の歳入見積もりが結果としてそういうことになったことについて、非常に遺憾に考えておるわけでございますが、五十六年度の場合には、そういう極めて異例な条件のもとで見積もりに対して決算が大幅に狂ったということでございます。
私ども、これはあくまで見積もりでございますので、このとおりの増収が確保できるということを断定的に申し上げるわけではございませんけれども、今回の場合は、各種の物品税の場合でございますと、今回課税範囲の拡大をお願いしておるもののほかに、税収の大きな増収要因でございます自動車でございますが、自動車については、この税率の引き上げ幅に自動車の出荷台数の見込みを一応業界等の感触も聞きながら積み上げて計算いたしておりますので、何とかこの増収枠は私ども確保できるのではないかということで見込み額を計上したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/21
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022・矢野俊比古
○矢野俊比古君 杞憂に終わることをぜひ望みたいと思います。
そこで、従来からの物品税の性格といいますか、考え方としては大体、奢侈品だとか、比較的高価な便益品と言うんでしょうか、あるいは趣味・娯楽品というようなものが課税対象と、そういうふうに絞っていたように思います。今回の改正では、パーソナル無線機だとか磁気テープといったように、考え方によって従来の課税対象の枠におさまるかというような感じの物品が取り上げられているわけでございます。こういった物品税のそういう取り上げ方においては、物品税のいわゆる課税対象としての性格というのを変えてきたと考えておられるのか、その点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/22
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023・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 現行の物品税法は昭和十五年に制定された税法でございまして、当時の物品税の立法趣旨は、ただいま委員がおっしゃいました奢侈的消費に対し担税力を求めるという観点と、もう一つ消費一般に対する担税力に着目するというふうな立法趣旨も挙げられております。その結果、現実の立法政策といたしましては、戦争末期の昭和十九年当時になりますと、事務用機器とかあるいは一部の食料品までも課税対象に拡大したという歴史がございます。
ただ、戦後、この物品税につきましては、特にシャウプ勧告あたりを境にいたしまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、奢侈品とか高価な便益品とか趣味・娯楽品に限定するという形で、現実の立法政策と申しますか、制度運用が行われてきたというのが今日までの歴史であります。これは御指摘のとおりでございます。
で、昨年十一月にまとめられました政府の税制調査会の答申では、いわゆる課税ベースの広い間接税という新間接税の考え方は、ひとまず考慮の外へ置かせて、よそへちょっと置かせていただきまして、既存の個別消費税である物品税につきましても、最近における所得の上昇とか所得の平準化、それに伴う消費の多様化、高度化、均質化、大量化といったような現象を指摘されまして、そういったものに対応するためには、個別消費税で対応するとすれば、現行の物品税について従来のような奢侈品とかあるいは高価な便益品とか趣味・娯楽品といったものに限定する考え方から一歩踏み出して、もう少し広い角度から課税物品の検討をすべきであるという方向が指摘されております。
ただ、ただいま御提案申し上げております五十九年度の物品税の改正によります課税範囲の拡大については、私どもといたしましては、これは従来からの高価な便益品等に物品税の担税力と申しますか、物品税の課税範囲として取り入れるという考え方と従来の枠組みからと実は同じ考え方でやっておるというふうに申し上げてもよいと思います。
五十九年度の税制改正の作業に当たりまして、現実に非常に汎用性のある事務用機器等について私ども具体的に検討したことは事実でございます。しかし、これについては成案を得るに至りませんで、現在五品目十八物品の課税範囲の拡大をお願いいたしておりますけれども、これは従来課税されております物品との権衡上、その中には新しく開発された新商品もございますけれども、考え方といたしましては、従来の高価な便益品というものに新しい商品市場を見た場合にどういうものが出てきておるかといったような観点から拾わせていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/23
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024・矢野俊比古
○矢野俊比古君 一応今までの枠組みの中でということですが、同時に一歩踏み出したというお言葉もあるわけでございます。私は、これからも、枠組み内で一歩踏み出したという話で一つの対象が決まりますと、そこまで入っているからまた一歩踏み出すということで、二、三年たってみたら何か性格が変わっちゃったというようなことにならないように、その定義と申しますか、その範囲というのは、できるだけ現在の物品税のいわゆる課税性格、対象の性格という中にとどめて議論をしていただきたい。そういうことが崩れますと、とかくいわゆる一般消費税(仮称)だとか大型間接税だとかいう話に発展しちゃうんじゃないかということを恐れますので、そこを十分気をつけていただきたいと思います。
それから今申し上げたようなやや事務用品のたぐい、パーソナル無線機とか、こういったものが税制改正要綱、あるいは今回御提案の物品税の一部改正法律附則第四条で非課税ということでお扱いになっておる。実際には、ですから昭和六十一年十月実施というようなものもあるわけでございますけれども、そういうような、まだ実施はこれから大分先だというものをあえて今から網をかぶせて非課税措置をしておくというのはどういう理由なのか、これは教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/24
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025・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 今回、課税範囲の拡大をお願いしております物品の中には、税率の引き上げをお願いいたします時期は、一番早いものでことしの十月一日からでございます。その中にも、十月一日からすぐに本則税率でお願いするもの、本則税率に参りますまでに二年ないし三年の経過措置を経て税率の引き上げをお願いしているもの、それからもう一つは、今委員がおっしゃいましたように、六十一年の十月一日、つまり二年先から税率の引き上げをお願いしておるというもの、大体この三つに分かれると思います。
で、最初の、十月一日からいきなり本則税率でお願いしておりますもの、これは一つの品目しかないわけでございますけれども、全自動以外の電気洗濯機はこのグループに入れさせていただいております。と申しますのは、この製品自身は市場で既に成熟化しておるわけでございますので、直ちに課税範囲の対象に入れましても、もちろん業界等の準備期間が要りますので六カ月の準備期間を見ておるわけでございますけれども、この種のものについてはいきなり本則税率でお願いする。
そのほかのグループといたしましては、これはサーフボードとかグラフィックイコライザー、マイクミキサー、それから電子楽器のキーボード等等いろんなものがございますが、こういうものについては、市場に与える影響と申しますか、そういうものも考えまして、一挙に本則税率にいく前に、経過措置を経て二年後あるいは三年後に本来の税率に到達するという構成をとっておるわけでございます。
最後のグループといたしまして、これは具体的には電磁調理器、現在、オーブンとか電子レンジ等は既に課税対象になっておりますので、それとのバランスからいきまして当然課税対象になる高価なものでございますが、ただこの電磁調理器のようなものは、市場に出ましてからまだ成熟し切ってない商品であるというふうに考えられるわけでございます。同じような観点から、例えばビデオディスクプレーヤーとかコンパクトディスクプレーヤー、それからパーソナル無線機、こういったものにつきましては、市場の成熟化を待つという意味で、いきなり課税の網を広げるというよりも、一定の期間、経過措置として非課税期間を設けた方が、産業経済上、税制が余り不当な干渉を与えないという観点から、必要ではないかという観点に立ったものでございます。
しかしこういったものも、二年後に課税されるということがきちんとしておることが実は大事なんでございまして、これを二年後に課税すればいいとするなら今から法的措置をとる必要はないというのは、今申し上げました考え方からいいますと、私どもはむしろ、そういうことを今、事前にはっきり確立しておくことが市場に対して攪乱要因とならないという意味で、意義があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/25
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026・矢野俊比古
○矢野俊比古君 今のお話を聞いていると、市場の成熟性ということでおっしゃっていますが、逆に言えば、税金がかかるから今から大いに売り込む、それには嫌気拡大という意味じゃプラスかもしれませんけれども、いろんな見方があるんだろうと私は思います。
時間もありませんので先へ進めます。
先ほど物品税の三千五百億、杞憂に終わればいいがということを申し上げた中で、梅澤さんから自動車というのが大いに期待できるというような趣旨にお話があったわけであります。ただ自動車については、自動車の取得税だとか自動車税、それから重量税とか、いろいろ多方面にわたって税がかぶっておるということで非常に負担が大きいと、そういうような声は非常に耳にするわけでございます。欧米先進国に比較して一体負担がどういうふうに違っているのか、御調査の結果があれば示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/26
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027・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 自動車に対する税負担でございますが、我が国の物品税に該当するいわゆる消費課税としてヨーロッパ等に付加価値税がございますが、そういった消費課税の車体課税比較で見ますると、我が国の自動車に対する物品税、これは小型乗用車で申し上げますと、今回の税率引き上げ後、小売価格に占めます税負担割合は一二%弱に相なりますが、この水準はイギリス、西ドイツ、特にフランス等に比較いたしますと、必ずしも高くない水準でございます。ただ、アメリカにつきましては州の小売売上税がございますが、これは例えばニューヨークでございますと、これは七・六%でございますので、アメリカに比べますと日本の自動車車体税、消費課税は高うございますけれども、ヨーロッパ諸国に比べましてそんなに高いという水準ではございません。
ただ、自動車につきましては、そういった消費課税だけではなくて、保有税、それから運用いたします場合の燃料課税全体の税負担を比較してみるということも必要になるわけでございますが、そういった観点を取り入れますと、我が国の場合特徴的なのは取得課税で、地方税の自動車取得税というのが非常に高うございます。各国これに類したものは余りございません、フランスに軽度の登録税がございますが。それからもう一つ保有税。保有税につきましては、我が国と大体似たような水準のものもあるわけでございます。
したがって、トータルとしての車体課税を見ますと、我が国の水準は、イギリス、フランスよりは低く、西ドイツ、アメリカよりもやや高い。燃料課税を入れますと、これも大体似たような傾向でございますが、やはりイギリス、フランスよりは我が国の場合は低いということでございますが、西ドイツよりももちろん若干高くなりますけれども、西ドイツの場合は我が国よりも燃料課税がやや高うございますので、その差はやや縮まるという傾向でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/27
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028・矢野俊比古
○矢野俊比古君 よくアメリカ、それから日本、西ドイツというのが世界経済を支える先進国であると言われるわけであります。そういう中で、いわゆるGNP拡大というときには消費拡大、消費支出のウエートが大変高いということを見ますと、私はアメリカまでとは言わぬけれども、西ドイツ程度あるいは西ドイツよりは負担は低いというくらいに置いてもらいたいなあという期待がするわけでございます。
私は、今後、自動車の税金が取りやすいというようなことをよく言われるんですが、そういうところからスタートして安易な課税という方に偏らないということをぜひお願いしたいので、いわば先のことは言えないということかもしれませんけれども、今後自動車税の引き上げということについては、できるだけそういうことのないような配慮をするというようなお気持ちをぜひ持っていただきたいんですが、その辺はひとつ、きょうは我我参議院の方から御出身の政務次官がおいででございますので、政務次官から御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/28
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029・井上裕
○政府委員(井上裕君) いろいろお話を伺いまして、先生専門的なことでございますので、我々よくひとつ事務当局と相談いたしましていろいろ御回答いたしたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/29
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030・矢野俊比古
○矢野俊比古君 あと十五分くらいのようでございますから、今度は石油税の方に移ります。
石油税の増税というのが今回の税制改正では大変議論になったわけでございます。たしかその税制改正議論のころには、五十八年度の石油税の収入が大体目標より一四、五%がずっと達成できないということがあって、こういったことから、来年に対するいわゆる増税と申しますか、税収見込みが大変またまずくなるんじゃないか、悪くなるんじゃないかというようなことから踏み切られたと思うんですが、その後景気の拡大などもあって、たしかこれは、私間違っていれば修正していただきたいんですが、五十七年度が二億四百万キロリッターくらいの原油輸入、そういうものに対して今年度五十八年度は二億一千七百ですか、そのくらいに見通しされるだろうというようなこともございまして、今の段階でいわゆる計画に対してどの程度石油税のいわゆる未収があるのか。当然今円高をどう見るかという議論がたくさんあることもわかりますが、現在の円べースを見てどの程度の未収ということになるのか想定があったら教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/30
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031・川崎弘
○政府委員(川崎弘君) 石油の値下がり、あるいいその量の減少に伴います石油税収の見込みでございますけれども、実は私ども五十八年度の当初予算におきましては、石油の輸入量を二億二千二百万キロリッターというのを前提に置きまして、四千二百九十億円というふうに見込んでおりました。しかしながら、その後の需要の停滞あるいは石油価格の引き下げ等の影響から、今回五十八年度予算の補正でお願いしておりますのが、税収で三千二百四十億、そのバックになります原油の輸入量、これは五十八年の石油供給計画でございますが、二億四百万キロリッターということでございます。
で、この数字がもう少しふえるんじゃないかという先生の御指摘でございますが、確かに最近の傾向から見ますと、輸入量そのものは若干増加するかもわからない。ただ、これは三月末を締めてみませんとまだ確たることは申し上げられませんが、そういった感触は我々も持っております。
ただ、一方におきまして、レートの方が実はこの補正予算では、五十九年度の政府経済見通しにおきまして決められました五十八年度の実績見込み、そのときに使われましたレートの二百三十七円というのを五十八年度の為替レートとして使っております。これが若干円高の方にいくんじゃないか。そういうことを考えますと、現在我々この補正予算でお願いしております税収見込み三千二百四十億というのがほぼ妥当な数字で、したがいまして、千五十億程度の税収不足というのが五十八年度には起こるんじゃないかという感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/31
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032・矢野俊比古
○矢野俊比古君 私がいま御質問申し上げた趣旨といいますか、背景を申し上げると、結局OPECで値段が下がったり上がったりという海外の変化というのが大変大きく税収に影響する。それからもう一つは、景気による輸入不振というのがありますが、これはある程度経済成長の運営その他で推定でわからぬわけではない。ところが、円高か円安かというのは、全く為替相場というのは変動してわからない。そうすると、石油税というものを今のようなままにして置いたらば、非常にふえるということになることもあり得るかもしれませんけれども、今のような当面の需給事情からいうと、決してそういう方向にはならない。そうすると、どういう制度がいいか知りませんが、関税ですか、一キロリッター当たり六百四十円か知りませんけれども、ああいう一つの固定的なことを整理して、量の変化だけはしようがないけれども、為替相場とかあるいはドルがどうだとかいうようなことにならないような、そういう税体系を考えなければいけないんじゃないか。要するに安定した財源ということにならないのじゃないかと思うんで、その辺に対してはどんなお考えかを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/32
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033・川崎弘
○政府委員(川崎弘君) 確かに先生御指摘のとおり、この石油税、今現行税率では三・五%という従価税になっておりまして、原油の価格でございますとか、為替レートでございますとか、あるいは原油の輸入量等の変動、これは景気等に影響されるわけでございますが、その結果、石油税収が変動するというのは御指摘のとおりでございます。
ただ、この石油税という税のそもそもの考え方が、石油という便益性の高い資源、これの利用に着目いたしまして、それを石油対策であるとかあるいは石油代替エネルギー対策、そういったものの財政需要に充てるということでその利用者に広く負担を求めるという考え方で成り立っているものでございます。この場合は、現行のような従価税方式というのが、その価格に応じた負担率を維持できるということですぐれた制度ではないかと考えております。
と申しますのは、現在日本が輸入しております原油でございますが、大体七十種類から八十種類ほどございまして、一番高い原油だとインドネシアのアタカ原油というのが三十ドルで入っておりますが、安い原油ですと、ベネズエラとかあるいはメキシコの原油というのは二十ドル台の下の方、二十ドルとか二十三ドルというところで入っております。こういうふうに価格差のある課税対象に対しまして適正な税負担を求めるということになりますと、現在のような従価税方式によることが適当ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/33
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034・矢野俊比古
○矢野俊比古君 いろいろ税の取り方としての問題で、私は、ある意味では基本的と申しますか、従来の慣例というか、考え方というのは、一つそれはそれなりにあるんですけれども、むしろその石油税収入の安定性という面からもう少しいろいろ考えていただきたい。また来年になって円高が進んだらもう一回また税金だというようなことにならないように。そのことは、ひいて言えば、産業界の影響というのが非常に大きくなるわけですから、ひとつ予算折衝などという前に勉強をしていただきたいということを要望するわけでございます。
それから今回の増税に伴う石油特会の歳出問題でございます。私は通産省に席を置いた人間でございますが、当時から、備蓄の三千万キロリッターというのは余りにもイージーでないか。少なくとも五千万キロリッターを備蓄すれば、民間を含めてでございますけれども、そういうことになれば百八十日分の確保ができる。そうすれば、世界の動乱の導火線と言われる中近東に火がついても、国民の生活なり経済の安定性が非常に増すんじゃないか。しかし、なかなかその議論は、エネルギー事情、当局では御理解をいただけないわけであります。また逆に、そういうような有事に対する対応ということができるということであれば、私は、まあある程度石油税の確保をする、そのために税率をという主張もできると思うんですが、何かまだそういう点で三千万キロリッターの備蓄は私は中途半端じゃないかと思いますが、これはかねての持論でございますので御披露するわけですけれども、エネ庁当局はどうお考えか。恐らく難しいという御事由があると思うんですけれども、ひとつ聞かしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/34
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035・川崎弘
○政府委員(川崎弘君) ただいま御指摘の三千万キロリッター、これは昭和六十三年度達成を目標としておりますけれども、この三千万キロリッターの国家備蓄が達成されましたときの備蓄水準と申しますと、昨年の総合エネルギー調査会の二億四千ないし五千万キロリッターの石油の消費水準ということを念頭に置いて計算をいたしますと、大体六十五年度で百四十三、四日というふうな数字になってまいります。
ところで、現在の国際的な備蓄の水準を申しますと、これはIEAの平均レベルでございますが、アメリカ等はもっと大きいんですが、平均レベルで申しまして百六十七日ということでございまして、我々としてもできる限り、このIEA主要諦国並みの備蓄水準に近づけたいというふうには考えておりますけれども、何分一方におきまして大変な財政負担を必要とする備蓄対策でございます。
したがいまして、今、我々として考えておりますのは、まずはこの三千万キロリッターという水準を着実かつ計画的に推進いたしまして、それが実現しましたところで、いろんな諸般の情勢というものを勘案いたしましてその後のあり方につきまして考えてみたい、そういう判断をしてみたい、そういうふうに考えておりますので、ぜひとも御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/35
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036・矢野俊比古
○矢野俊比古君 政府答弁としてはまことごもっともということでございますが、私はなるべく早くそういうものを考えた方がいいと思うんですね。というのは、最近、公共事業を前倒しにしろとか、いろいろ声があるくらい、早く言えば、財政が大変苦しいんで公共事業が伸びない。この備蓄というのは、いわゆる安全保障と申しますか、日本の国民生活を安定させるという大きな意味もありますし、当面早くやることがむしろ公共事業を補完することになる。早くいえば、土木の仕事がない、ないと騒がれている、そのような状況なので、私は、これはむしろそういった側面も含めて検討をしていただきたいと思うわけでございます。
もう一つの柱である海外開発計画でございますが、これはいろいろ御説明を聞いておりまして、こういうものがあると、万一いわゆる石油ショックがあるときにはたくさん輸入が入ります。ただ、調子がいいと余り入ってこない。コンスタントな安定性がないんですけれども、こういった開発も、ですから私は決して無視をするわけではありません。今回、予算ではむしろ備蓄に重点を置かれていると拝見して、大変結構だと思っていますが、その場合に、御承知のように、ホルムズ海峡というものが常に問題になる。したがって、ホルムズを通らなきゃならぬようなところの開発計画というのはスローダウンをして、そうでないインドネシアとか中国とか、こういうところに重点を置くというふうな方針をとっていただきたいと思うんですが、その辺についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/36
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037・松尾邦彦
○政府委員(松尾邦彦君) ただいま御指摘の石油の自主開発の推進につきましては、私どもといたしましても、原油供給源の確保でございますとか、供給源の多角化、分散化、あるいは産油国との関係緊密化、あるいは石油を大量に消費する国としての国際的責務の遂行などというような観点に立ちまして、今後ともその意義にかんがみた推進が必要だと考えているわけでございますが、五十九年度の探鉱投融資につきまして申しますと、中国の渤海湾のプロジェクトが本格化しますとか、中国の南海におきます新規のプロジェクトの開発が着手される等々、引き続き根強い資金需要がある中で、財政事情も勘案いたしまして、対象事業の進捗状況等を厳しく精査いたしまして、探鉱投融資の規模を必要最小限度の千五百億と、前年度予算に比べまして五十億円圧縮した形で予算に計上さしていただいているわけでございますが、御指摘ございましたように、今後とも、私どもといたしましては、対象事業を厳格に選択していかなければならないと思っておりますけれども、そのような際には、御指摘の供給源の多角化ということも十分考えて取り組んでまいることによりまして、御趣旨の線を生かしていくことにしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/37
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038・矢野俊比古
○矢野俊比古君 もうあと本当に二、三分でございますから、この辺でひとつ締めくくらしていただきたいと思います。
先ほど来、大坪委員からの総論のお話もございました。酒税、物品税、石油税、こういった改正が今度行われるわけですが、結果的には、所得減税というものをやった以上、なかなか他の知恵もないということで、私なんかは大変残念に思いますけれども、まあやむを得ないのかなという感じでおるわけでございますし、こういう提案も受け入れざるを得ないんだなと思っておりますけれども、しかし先ほど大坪委員がおっしゃいました、歳出の削減というのは言うべくして難しいとは言われますが、そういった努力を大いに重ねることが必要でありますし、さらには最気回復策ということによって、税率を法人税のように上げなくても、むしろいわゆる企業の利益がふえることによって税収をふやす、自然増収と言われるような、こういったことで景気拡大策ということをむしろ根本的に考えていくことが必要ではないか。またいわゆる税外収入といった面についてもいろいろ知恵を出して、こういったものを拡大するというような形で、いわば所得減税、減税があったからその埋め合わせは増税にならざるを得ないよというような、決して安易な考えを持っておられると
は思いませんけれども、外から見ると安易ではないか、安易に流れるんじゃないかというふうなことは私はやっぱり避けるべきだと思います。
そういう点で、今後いわゆる歳出の削減、あるいは税外収入の確保、あるいは景気拡大による自然増収というふうなことを意図していただいて、今回のような形にできるだけなることを避けていただくことを私は御要望いたしたいと思うんですけれども、最後に政務次官からその辺についての御見解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/38
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039・井上裕
○政府委員(井上裕君) 先ほど大臣が御回答したとおりでございまして、一兆一千億の減税をするのにつきまして、できるだけ国債を我々としてどうしても自分たちの力でやりたいということで今回の、増税案といっては大変失礼ですが、この間接税の問題を提起したわけでございますが、ぜひひとつ、財源難の折でございますので、よろしく御審議のほどお願いを申し上げたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X00519840327/39
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040・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後五時三十分散会
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