1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月十六日(水曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十五日
辞任 補欠選任
木本平八郎君 青木 茂君
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出席者は左のとおり。
委員長 伊江 朝雄君
理 事
岩崎 純三君
大坪健一郎君
藤井 孝男君
竹田 四郎君
塩出 啓典君
委 員
梶木 又三君
河本嘉久蔵君
倉田 寛之君
中村 太郎君
福岡日出麿君
藤井 裕久君
藤野 賢二君
宮島 滉君
矢野俊比古君
吉川 博君
赤桐 操君
鈴木 和美君
丸谷 金保君
鈴木 一弘君
多田 省吾君
近藤 忠孝君
栗林 卓司君
青木 茂君
野末 陳平君
政府委員
大蔵政務次官 井上 裕君
大蔵省主計局次
長 平澤 貞昭君
事務局側
常任委員会専門
員 河内 裕君
参考人
全国銀行協会連
合会会長 山田 春君
公社債引受協会
理事 横田 良男君
一橋大学教授 石 弘光君
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本日の会議に付した案件
○昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保
を図るための特別措置等に関する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/0
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001・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、大本平八郎君が委員を辞任され、その補欠として青木茂君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/1
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002・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、全国銀行協会連合会会長山田春君、公社債引受協会理事横田良男君、一橋大学教授石弘光君、以上三名の方々の御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、本案審査の参考にいたしたいと存じます。
これより参考人の方々から御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、最初に参考人の方々からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力をお願いいたします。
それでは、まず山田参考人から御意見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/2
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003・山田春
○参考人(山田春君) ただいま委員長さんから御指名をいただきました全国銀行協会連合会の山田でございます。
本日は、昭和五十九年度財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案に関しまして、私どもの意見を述べるようにとのことでございますが、特例公債を含む国債問題一般につきましても、私の意見ないし希望を申し述べたいと存じます。
まず、五十九年度予算についてでありますが、一般歳出が三十二兆五千八百五十七億円と五十八年度当初予算比〇・一%の減少となっており、二年連続で減額をされました。財政当局の御努力の跡がうかがえるかと存じます。しかしながら、歳入面についてみますと、依然十二兆六千八百億円という大幅な歳入不足が生じます結果、これに見合う国債を発行せざるを得ないということになっておりますが、引受消化を担います私どもといたしましては困難な事態が続くと申さざるを得ません。また、五十九年度におきましては、八千七百億円の所得税減税を中心に、地方税を含め、一兆二千億円の減税が実施されますが、これと見合う増税が、法人税、酒税の引き上げや、物品税等の拡大によって実施されることになっております。減税幅と増税幅とがほぼ見合っております点では、増税なき財政再建の精神が一応は守られているとも申せましょうが、やはり臨調答申の趣旨にのっとり、行政機構の簡素化を図ることによって歳出を削減し、もって減税財源とすべくより一層の努力が払われるべきであったと存じます。
今後を展望いたしましても、財政収支の均衡を早急に改善することには大きな困難が伴うものと思われます。とは申しましても、行財政改革に関する一層明確な展望を持たれた上で、さらに格段の歳出削減に努め、財政再建を強力に推進していただきたいと存じます。
次に、特例公債について申し述べますと、五十九年度予算における発行額は六兆四千五百五十億円で、五十八年度比五千二百五十億円減額されております。政府の御苦労は大変なものであったものと推察されますが、新たな財政再建目標となりました毎年一兆円程度の赤字国債減額、これは六十五年までに赤字国債依存体質からの脱却を達成するためのめどでございますが、この一兆円の減額が図られていないということには遺憾の念を禁じ得ません。
また、赤字国債の借りかえ禁止規定が削除されますことにつきましては、当面の財政事情にかんがみますと、まことに残念ながらやむを得ざる措置ではないかと存じますが、国債への安易な依存を防ぐという趣旨から考えますと、財政事情が改善しました暁には、可及的速やかに赤字国債の償還に努力していただきたいと考えます。
さらに、国債整理基金への定率繰り入れ等が三年連続で停止されます点について申しますと、これまた当面の財政難からやむを得ぬとの事情もわからぬわけではないのでありますが、減債制度の趣旨は、一般財源から一定額を先取りすることによって償還資金を確保し、財政負担を平準化するとともに、他の支出に充て得る財源を制約することによって財政の膨張、ひいては国債残高の累増に対する間接的な歯どめとする点にあると言われております。したがいまして、今後はこうした減債制度の趣旨を尊重し、制度の着実な実施を図り、財政再建に努力されることが望まれるのであります。
以上、法律案につきまして私の意見を述べさしていただきましたが、この機会に、国債引き受けを担う者の立場から、国債管理政策に関しまして若干の要望を申し上げさせていただきたいと存じます。
第一は、今まで申しましたとおりの発行総額の圧縮であります。まず何よりも財政を効率化し、国債発行額をぎりぎりまで圧縮していただくことが最大にして緊急の国債管理政策であると存じます。
第二は、資金運用部引き受けの最大限の増額であります。国債の円滑消化を図る上で最も重要なことは、市中消化額を圧縮することでありますが、そのためには、臨調答申に沿った財政投融資計画の洗い直し、とりわけ政府系金融機関の役割見直し等を通じまして、資金運用部による国債引受額が増額されることが望まれるのであります。
第三は、市場実勢に即した発行条件の改定であります。国債発行条件は、従来に比べますれば、比較的弾力的に改定されるようになっておりますが、それでもなお利上げ局面での対応がおくれるなど、いまだに十分市場実勢を反映しているとは言いがたい面がございまして、今後なお一層発行条件を市場実勢に即して弾力的に改定する必要があると存じます。
第四は、売却制限の撤廃であります。現在、私ども金融機関は、当局の御指導に従い、新発長期国債の取得後約百日間買却を自粛することになっております。これは国債の有価証券たる特質を制限するものであり、公正な市場価格の形成をも阻害するものでありますし、また私ども引き受ける側にとりましては、価格変動リスクが大きくなり、経営上の問題になる懸念がございますので、その制限の速やかな撤廃が望まれるのであります。
以上の諸点に加えまして、特に私ども金融機関の立場から申しますと、バンクディーリングの認可の問題がございます。市場における公正な価格形成のためにも、原則として希望する銀行に対して幅広く認可願いたいと存ずるのであります。
最後に、国債の最大の引受手であります私ども民間金融機関の資金吸収力の強化に格段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。特に、民間金融機関の資金吸収力が郵便貯金によって阻害され、国債引受能力が弱められているということは、憂慮すべき事態でございますので、郵貯懇報告や臨調答申における郵貯の見直し提言が十分に尊重され、早急に官業の民業圧迫が是正されますよう御配慮いただきたいと存じます。
以上幾つか申し述べてまいりましたが、ここで今後の最大の課題であります借換債の問題を念頭に置いて、今まで申し述べました点を若干敷衍さしていただきたいと存じます。
借換債は、マクロ的と申しますか、金融市場全体から見ますれば、新たな資金を必要といたしませんので、資金需給に対しては中立的であり、発行消化は容易であると思われがちでございますが、現実には満期到来債の償還金を受け取る人と借換債を引き受ける人とが必ずしも一致しない点に問題があるわけでございます。
ちなみに、五十九年度と六十年度の二年間に償還を要する国債は全体で十六兆四千億円に達しますが、このうち市中金融機関の保有分は四兆三千億円と全体の二六%にすぎません。市中金融機関は恐らく借換債の引受消化にもその中心的役割を果たさざるを得ないと思われますが、その資金吸収力が弱く、一般の法人、個人に支払われました償還資金が順調に預金として集まらない場合には、金融機関の資金ポジションが大幅に悪化し、引き受けは極めて苦しい事態に立ち至るのであります。こうした事態を避け、借換債の円滑な消化を促進するためにも金融機関の資金吸収力を強化することには格段の御配慮を賜りたいのであります。
また、同様の観点から、償還期限の短いいわゆる短期国債につきましては、預金とまともに競合する自由金利商品と予想されますだけに、預金金利が自由化されないままに発行されることになりますれば、民間金融機関にとりまして資金吸収面への影響が極めて多大と懸念されます。したがいましで、短期国債の導入につきましては、今後の金利自由化の進展状況に配慮しつつ、慎重に検討される必要があるかと考えております。
なお、申すまでもないことでございますが、借換債の円滑な発行消化のためには、満期償還されました資金が金利機能を通じまして円滑に借換債購入に向かうよう誘導することがポイントでありまして、そのためには国債の発行条件が市場実勢に即して決定されることが問題解決の大前提であると存じます。
以上、今後の国債管理政策に私どもの要望が十分反映されますようお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/3
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004・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) どうもありがとうございました。
次に横田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/4
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005・横田良男
○参考人(横田良男君) ただいま御紹介をちょうだいしました公社債引受協会の横田でございます。
本日は、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして意見を述べるようにとのことでございます。証券市場に携わっております者の立場から意見を申し上げ、御審議の参考に供することにいたしたいと存じます。
そこで、まず、本法案の前提となっております昭和五十九年度の予算についてでございますが、結論として申し上げれば、現下の厳しい財政事情のもとにあって、財政再建を推進する見地から、一般歳出予算が三十二兆五千八百五十七億円で、五十八年度当初予算における一般歳出に比べ減額されている点は、適切な措置であり、財政当局の御英断を高く評価するものでございます。
一方、歳入面について見ますと、十二兆六千八百億円に上る財源不足が生じます結果、この部分を国債の発行に依存せざるを得ないこととなります。しかし、これも五十八年度当初予算額に比べれば六千六百五十億円に及ぶ減額でございましで、関係御当局の御苦心のあるところとお察し申し上げるところでございます。証券界といたしましても、引き続き業界を挙げて国債の個人消化を推進し、財政運営に御協力申し上げてまいる所存でございます。
ただいま御審議が行われております財源確保法案によりますところの特例公債の発行額も、前年度に比べて五千二百五十億円減額され、六兆四千五百五十億円とされております。この特例公債の発行につきましては、現下の諸情勢を考えました場合やむを得ないものと存じます。
また、この法案におきましては、前年度に引き続きまして、国債整理基金への定率繰り入れを停止する措置を講ずることとされております。将来の国債の償還負担の平準化を図るためにその償還資金を計画的に準備しておくことは、意義のあることと存じますけれども、財政に不均衡が生じている現状から見ましてやむを得ない措置であると存じております。
なお、国債整理基金は、その積立金を活用しまして流通市場での国債相場の一時的な乱高下の緩和を図る、そういうメリットも期待されるところであることを付言さしていただきます。
さらに、特例公債の借りかえ禁止規定が削除されることにつきましても、当面の財政事情にかんがみましてやむを得ない措置であるかと存じます。私どもといたしましては、国民経済そのものの容量が格段に大きくなっていることを考えれば、借りかえの本格化ということを考慮に入れましても、現在の財政規律が堅持される限り、国債の発行量が過大となることは予想しておりません。
なお、今後、景気の回復を確実にするためには、経済の動向に即して円滑な財政運営を図っていく必要がございます。この見地から、昭和五十九年度予算と表裏の関係にありますところの昭和五十九年度の財源確保法案の早期成立が期待されるところでございます。
近年、個人消化を中心とする国債の消化が順調に推移していることは御高承のとおりでございます。昭和五十八年度におきましても、証券会社の取り扱いしましたところの国債の総額は、長期国債、中期国債、割引国債を合わせまして四兆九千八十三億となっております。これは市中公募の総額に対して四七%に達するものでございます。特に中期国債の証券会社の取扱額は三兆四千百六十三億円と、公募額に占める割合は七九%にもなっております。私ども証券業界におきましては、昭和四十年度の国債発行再開以来長年にわたって培ってまいりました経験を生かしまして、また最近この分野に参入してこられました銀行とも手を携えて、国債の個人消化に一段の努力を傾けてまいる所存でございます。
つきましては、私どもの努力を御支援願うという意味から、また国債の円滑な消化、流通の拡大を図る観点から、幾つかの点につきまして私どもの要望を申し上げ、先生方の御理解を賜りたいと存じます。
まず第一点は、引き続き国債の発行条件を流通市場の実勢を反映して機動的に決定し、投資家にとりまして常に投資魅力のあるものとしていただきたいことでございます。
御承知のとおり、昨今では公社債の年商売買総額が四百兆円を超えるという状況でございまして、そこで形成されます価格が国債の消化環境に決定的な影響を及ぼしております。そのため、流通実勢に即した発行条件の設定が何より肝要かと存じます。
発行条件の実勢化につきましては、当局の御配慮によりまして格段の改善が見られておるようになっております。私どもといたしましてもこれを高く評価いたしております。昭和五十八年度の状況を顧みましても、条件改定の回数が五回に及びまして、おおむね機動的に処理されまして、引き続きこの前進が見られたものと考えております。しかし、最近では国際的な資金の交流が本格化してまいりまして、それに伴って我が国の流通市場が海外金利の変動の影響をまともに受けるという厳しい状況が生じてきております。今後とも発行条件の決定に当たりましては、市場実勢に即して機動的に処理されることを重ねてお願い申し上げたいわけでございます。
次に、短期債市場の整備につきまして御配慮をお願い申し上げたいと存じます。
この点につきまして、まず借換国債の円滑な消化という問題がございます。御高承のとおり、既発国債の借りかえは昭和六十年度から本格化することになりますが、例えば昭和六十年の五月に一兆六千億円の借りかえ、これを手始めにしまして、六十一年十一月には三兆四千億円という大量の既発債の満期到来を迎えることになります。これだけ大量のファイナンスを瞬時に行うことは現行の国債発行システムでは相当困難でございます。また金利も上に振れるという可能性がございます。当然そういう予想が立てられるところでございますので、この借りかえの機動的な受け皿と発行コストの軽減のために期間の短い国債の導入が検討される必要があると存じます。また、中期国債につきましては、既に投資家の間に貯蓄商品として広く定着を見ておりまして、今後ともその発行量を十分に確保されることをお願い申し上げます。
さらに、広く申し上げまして、我が国の公社債市場の構造が長期債偏重となっておりまして、短期債市場が必ずしも十分とは言えないという状況になっておりまして、これはアメリカの市場との対比におきましても痛感されるところでございます。そもそも本来的には、投資家のニーズに応じて長短市場がよいバランスを保っていることが市場成長の要件ではないかと考えます。この点アメリカでは、政府の短期証券、いわゆるTB、それから短期債市場のBAとか、そういうような短期商品が大変多うございまして、こういうものが短期債市場を大きくしている、そういう事実がございます。これは大変示唆に富むところであると思います。
第三に、有価証券取引税について申し上げたいと存じます。
そもそも、有価証券取引税は流通税の範疇に属しておりまして、有価証券の売却の都度その損益にかかわらず課税されるということを考慮いたしますと、円滑な流通を阻害することがないよう、その税率は本来低率であってしかるべきであると存じます。しかしながら、現行の有価証券取引税は、この十年間に三回にわたって大幅な税率の引き上げが行われました結果、主要先進国にその例を見ない高率なものとなっております。このような高率の有価証券取引税が今後も継続されますと、公社債、株式の円滑な流通、消化を阻害することが憂慮されます。したがいまして、公社債、株式に対する税率を大幅に引き下げるとともに、国債につきましては課税を撤廃してしかるべきかと存じます。
特に、債券の短期売買であります現先市場につきましては、有価証券取引税の課税が大きな負担となっており、CD、手形、コール等の短期金融取引の税負担に比べ著しい不均衡が生じております。この結果、現先取引の残高は逐年低下いたしまして、昭和五十七年七月にはCD残高を下回り、昨年度末にはCD残高の三分の二の規模にまで落ち込むに至っております。今後もこのような現先市場の縮小傾向が続くことになりますと、国債の発行消化にも重大な支障を来すおそれがございます。つきましては、特に国債等の現先取引に対する有価証券取引税の課税を早急に撤廃されますよう強くお願い申し上げる次第でございます。
以上をもちまして私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/5
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006・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) どうもありがとうございました。
次に石参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/6
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007・石弘光
○参考人(石弘光君) 石でございます。
今、二方から意見の陳述がございましたが、五十九年度予算に関しまして、あるいは借換債に関しまして、定率繰り入れの停止に関しましては、ほぼというか、ほとんど意見は同じでございます。以下本日の議題に関連いたしまして、特に三点に絞りまして私の意見を述べさしていただきたいと思います。
第一点は、現在の財政赤字累積をどう考えるかというややマクロ的な視点と申しますか、そういう学界の状況も踏まえまして御説明いたしたいと思います。第二点は、特例債の借りかえの是非を論じたいと思います。それから第三点は、今後の財政赤字減らし、あるいは財政改革の方向をどう考えるべきか、そういう三点に絞りまして、限られた時間でございますが、私見を述べさしていただきます。
第一点でありますが、現在財政赤字がどこの国でも非常にたまっておりまして、学界でもこれは非常な関心事となっております。我が国におきましても、従来から財政赤字の堆積、蓄積と申しますか、たまっていくのに関しまして、非常に楽観するグループから非常に心配するグループまでさまざまございます。ただ、大ざっぱに申しまして、アメリカの最近の傾向もございますが、財政赤字について超楽観論は影を潜めまして、言うなれば、ケインズ的政策の発想に対しましてもかなり歯どめがかかっているようであります。大なり小なり財政赤字に関しましては心配する向きがふえてきたと言っても言い過ぎではないと思います。従来から私はかなり心配する方の立場をとっておりますので、それは一層心配する方に向かわねばならないかと感じております。
問題は、二つに分けませんと混乱が起こると思います。一つは財政赤字のマクロ経済に与えるインパクトと、第二は財政内部の問題としてどうとらえるか。この二つを混同いたしますと、いろいろ議論が錯綜してこようかと思います。
マクロ的問題とは何かといいますと、さらに二つに分けまして、財政インフレがあるかどうか、それからクラウディングアウトというのが一体我が国経済で起こるのかどうか、こういう二点に尽きるかと思います。過去の日本経済の経験がら見ますと、この点に関しましてはさほど大きな問題はなかった、いや、ほとんどなかったと言っていいかもしれません。中央銀行であります日銀のマネーサプライのコントロール、あるいは民間資金の需要が少し落ちているということもありまして、クラウディングアウトなり財政インフレーションに対しましては大きな弊害はなかったかと思います。同時に、アメリカその他先進国に比べまして我が国では貯蓄率が非常に高い。これが財政赤字の国債発行に関しましてはかなり有利な条件を提供してくれております。ただ、このラッキーな条件が今後続き、財政赤字の累積が全然心配ないかといえば、やはり潜在的にはこの弊害というのはあるわけでありまして、財政インフレあるいはクラウディングアウトの危機というのは絶えず念頭に置いて政策運営を図るべきである。そういう意味では、過去がよかったからといって今後の話まですべてその類推では議論できないというふうに感じでおります。ただ、マクロ経済的には比較的問題は少ないというふうに私は判断しております。
ただ問題は、第二のミクロ的な財政内部の問題にあろうかと思います。財政赤字がふえると安易に経費が膨張して政府の規模が拡大する、こういう思想が伝統的に唱えられておりまして、アメリカの財政学者のブキャナンあたりの説でございまして、実は我が国におきましてはこの懸念が非常にいい方に出ておりまして、財政赤字によって財政歳出が膨張するというよりは、財政赤字によって経費の膨張を食いとめるという、いうなれば財政赤字危機感から緊張関係を生み、わが国においては政府の規模の縮小に向かっているというのは皆様御承知のことだろうと思います。
そういう意味ではこの点についてはそう心配しなくていいと思いますが、一番の心配は何と申しましても公債費あるいは利払い費の急増でございます。この点がありますので恐らく今後の財政赤字の問題は一層深刻になってこようかと思います。国債費がふえ、利払い費がふえたらなぜいけないかということでありますが、かいつまんで申しますと、次の二つぐらいの大きな弊害があろうかと思います。
早晩、国債の利払い費は社会保障費を超えようかと思います。国民の関心の一番高い社会保障費より過去の借金の利払いがふえるというようなのは、予算の運営に当たり財政硬直化が進み、ゆゆしき問題であろうかと思います。今後高齢化社会の到来が必至と言われておりまして、この辺財政面からの対応の仕方が難しいというときに、このような硬直化要因が財政の中にビルトインされているというのは大きな問題である。過去に問題がなかったといっても、この先々を見通したらこの辺の問題が一番頭にくるわけでありまして、その辺を今から吟味する必要があるという意味で、国債費、利払い費の急増に関連しての問題を今から考えるべきだと思います。
それから第二点は、利払い費というのは恐らく所得の逆再分配効果を生んだのではないかと推察いたしております。公債の保有者は高額所得者に偏っていると思いますので、利払い費がそちらに流れるというのは所得分配上好ましくない、このように考えております。
したがいまして、総論的に第一点について申し述べますと、財政赤字の削減というのは今後緊急の課題である、最大限の努力をすべきであるというふうに考えております。そういう視点から五十九年度予算編成というのが行われたと思いますが、この評価をめぐりましては今お二方の見解と同じでございます。
それから恐らく本日のメーンテーマだと思いますが、借換債をどう考えるべきかという点でございます。実は経済学的に見ますと、数年前から今回のようなケースは起こり得るというのは十分予想できたことでございます。つまり借りかえで償還しなければならない。現金償還などは恐らくできないであろうということは重々ずっと前からわかっていたと思います。そういう意味では公約の違反とか等々あろうかと思います。政治的に法律的にはあろうかと思いますが、経済的に見ますと、借換債を批判するよりはその元凶である財政赤字減らしに失敗したという方が罪は重いのでありまして、そっちの方が問題だと私は考えております。毎年恐らく数兆円単位で今後借りかえの規模が出てくると思いますから、それを歳出カットとか、あるいは増税とか、そういう手段を用いて調達いたしまして現金で償還するというのは、これはかなり日本経済に影響を及ぼすと思います。かなりというか、非常な混乱を呼び起こすと思います。また金融資産として国債はビルトインされているわけでございますから、これが一挙に現金償還ということになりますと、恐らく金融面でも大きな混乱が生じるだろう。そういう意味で、特例債に関しましては私は、先ほどお二方が申しましたように、一言で申しますとやむを得ないのだろうという感じでございます。とりあえず、一たん出しました財政赤字というものをどうやって返すかというのは恐らく重要な問題であろうかと思いますが、これほどの規模でこれほど長期間に出してしまったものはそう急速に、いろんな制度をいじくろうが、法律をいじくろうが、なくならないと考えるのが筋ではないかと思います。そういった意味で、地道ではございますが、財政赤字の問題の解決というのは、毎年毎年の新発債を極力縮めて長期間対処するほかはないのではないか、国債の管理に関してはこういう見解を持っております。ただ、財政規律の問題であるとか、あるいは財政再建がおくれるのではないかという問題が当然この点に関してはございます、
それから今回の特例債に関しましての一番の恐らく大方の心配は、借換債、借換債でどんどん続くのではないかという心配も恐らくあろうかと思います。現在は四条債と同じルールでこの借換債の償還をまた考えようということでございますが、四条債と特例債は公債の性格として大分違うわけでございまして、別のルールというのを恐らく考え得れば考えるべきではないかと考えております。物的資産というものが残らない借金というのは、それだけ厳しい対応の仕方というのが恐らく迫られるのでありまして、六十年間で返せばいいというルールがそのまま適用できるかどうか、努力規定といたしまして極力しないということが法案に盛り込まれておるようでありますが、当面はそれでいくほかはないと思いますが、何らかの四条国債とは違ったルールというのが制度面に反映される方がいいのではないかという感触を持っております。そういう意味で借換債に関しましてはお二方と同意見でございます。
それから第三点でございますが、これはやや話が広くなり過ぎますので細かい点にまでは触れるわけにはいかないと思いますが、財政赤字を大きく抱えた今日、将来どういう格好でその赤字を減らしつつ財政改革というものを遂行すべきかというのは今一番大きな問題ではないかと考えております。恐らく現状のままでは六十五年に特例債脱却というのは非常に難しいと、率直に言って僕はそう感じております。恐らく過去の経験から見ますと、また先送りなどということが出てくるのではないかなという気がいたしておりますが、もしか六十五年にターゲットを決めてやるなら、かなりの覚悟を決めてやらないとまたその実現が不可能になるのではないか、これは過去の学習効果からいってそういう感じがいたしております。
そこで、ある枠を決めてぎりぎりやっていく。例えば五十九年度に赤字財政脱却というような過去にプリンシプルがありましたが、ああいう格好でやっていくか、それとも何か大枠を決めておいてフレキシブルにやっていくか、いろいろやり方はあろうかと思います。ただ、重要な点は、日本経済がマクロ的に上向いてきたときに最大限の努力で新発債を抑制する、財政赤字を減らすという姿勢をあくまで堅持することが重要だろうと思います。恐らく昭和六十年代に十年間続けてマクロ的に日本経済が浮揚し続けるということはないと思います。今、今年度はいいということでありますが、このいいという状況は十年間の間に何回来るか。恐らくまた財政によっての景気刺激のてこ入れも必要な時期が来るかもしれない。そういう時期を考えますと、今の好況と言われるムードのとき、極力財政赤字を減らすという基本的なスタンスというのは守るべきであろうと思います。
そこで、どうやってその財政赤字というのを減らしていくのかということでありますが、妙手奇策はない。結局のところ、いろんな直接間接のやり方はあろうかと思いますが、歳出を削って負担を増す、あるいは税をふやすという以外にないということになりますと、国民各層に甘い幻想を持たせるというのでは僕は財政改革はできない。極論いたしますと、国民生活に影響を及ぼさない形での財政改革というのはあり得ないということを政府は打ち出すべきではないか。ただ問題は、その中でいかに公平を堅持するか。つまり犠牲を強いるわけでありますから、犠牲を平等に、常識的に言って犠牲の払い方というものに公平感がなくてはいけない。それから効率の達成という意味でむだとか非効率な面をまず切る、まず削除する。こういう公平と効率の視点から見た負担を国民にお願いするという格好のものしか長い目で見たらあり得ないのではないかというふうに考えております。そして、結局のところ、国民一人一人に問題を投げかけて自覚を促してということが恐らく政府の最大の仕事ではないか。国民に安易に幻想といいますか、夢を抱かせるというのがかえってよろしくないのではないか、長期的に見ますとかえってそっちの方がまずいのではないかという考えを持っております。例えば増税なき財政再建というのが今スローガンとしてまだ生きておりますが、じゃ果たして歳出カットだけで具体的にできるのかというプログラムをまだ国民は頭の中にしっかりと入れていないはずであります。
先般大蔵省が試算を出しました。六十五年まで一般歳出をゼロにしますと恐らく再建ができるだろうという試算をして公表してもらいました。六十五年までに一般歳出がゼロというのが一体どういう実態になるのかというのが数字の上だけでは実感としてわかないのでありまして、数量的に見まして、これが具体的に福祉であるとか教育であるとか、そういった言うなれば官と民の間にまたがるような公共サービスにどのくらい及ぶか、そういう検討が必要なはずであります。
同時に、歳出カットで絶えず問題になるのは国防費、防衛費の問題でございまして、これは国民のコンセンサスを得るといっても難しいかと思いますが、この点の議論というのがもう少し真剣に沸き上がってこないと議論としては弱い。私自身この問題について、まだ明確なる自分の意見というものを開陳する機会もございませんし、まだできてないというのがいいかもしれませんが、そう聖域化して突出するという考え方には、若干というか大いに抵抗がございます。ただ、三兆円程度の防衛費を仮に全廃——全廃できないとはだれしも思っていると思いますが、全廃しても今の財政赤字の問題というのは解決しない。したがって、防衛費があるからいけないという理由でほかの歳出カットに抵抗するというようなことは極力避けるべきであり、この辺はオープンにして議論をしなければいけない。
結局のところ、純粋でない公共財という領域がどんどん広がっているわけであります。ちょっと教室の講義めいて恐縮でございますが、純粋な公共財であります国防であるとか司法であるとかというのは、二、三割しか歳出構造の中にないのでありまして、残りの六、七割というのは今申しました官と民の真ん中にまたがっております純粋でない公共財であります。公共サービスであります。したがって、財政改革をするならば、ここの領域にかなり手を加えざるを得ないということは早晩出てくることでございます。結局のところ、制度改革を含めた予算編成の改革が、やっとと言っては怒られるかもしれませんが、今年度予算から着手したわけでありますから、この方向をもう少し頑張ってやっていただく、恐らく国民の方でもあり得べき負担と望ましい公共サービスの関係というのが次第にできてくるのだろうと思います。したがいまして、長期的には租税負担というのをどのぐらいして、あるいはどのぐらい自分でやってという歯どめがだんだん形成されてきますと、おのずから歳出カットの幅あるいは歳出カットに対する要望というのも出てこようかと思います。
結論的に申しますと、大蔵省の試算でやっております要調整額というのが出ておりますが、それは数字だけで出されているのでありまして、その中身をどうするかという視点からの検討をまだこれからすべきであり、今までやってなかったと言っても過言でないかと思いますが、その点今後の課題であると同時に、国民各層の理解を求めつつ何らかの負担増が将来起こり得るという理解を政府はこれからつけるというのが最大の急務ではないかと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/7
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008・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
参考人の皆様方に申し上げますが、各委員の御質疑に対しましてはお座りになったままお答えいただきたいと思います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/8
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009・竹田四郎
○竹田四郎君 お三人の参考人の皆さん、きょうはありがとうございました。
時間がございませんので直截に御質問を申し上げていきたいと、こういうふうに思います。
まず、山田参考人の御意見の中で、財政のこれからの再建について明確な展望を持つべきだという御主張があったわけでありますけれども、今まで私ども政府から示されました財政の展望というようなものは、具体的には中期展望だとか中期試算だとかというようなものが出されまして、これは一定の仮定的な計算であるというもので、場合によってはABCとかというような形で出されてきたということなんですが、それも率直に言って、先ほどの石先生の話ではないけれども、過去の学習効果から見ますと、いずれも守られていない。こういうのが何回か私どもが経験したことでありまして、私もそういう点では、もっとみずからを締めていくような、みずからを拘束するようなそういうような計画を出すべきではないのか、どちらでもいいような、このときにはこれを適用する、このときにはこれを適用するということでは、結局その場の言い逃れになってしまうんじゃないかということを今までかなり言ってきたつもりでありますけれども、これについて恐らくもう少し具体的な何か展望を金融界としてお持ちじゃないだろうかという気がしまして、もしその点でお教えいただけるならば教えていただきたい、こういうふうに思います。
それから、確かに借換債の問題というのは初めて非常に大きい——今までの借りかえという問題は、大体資金を持っているところがそのまますぐ乗りかえるということでできたわけでありますけれども、今度は、先ほどの横田参考人のお話かとも思いますけれども、かなり国債が散らばっているわけでありますから、なかなか今までと同じように国債を持っているのが今度は借換債にすぐ移れるというような形にはなっていないと思うのです。そういう意味で、短期国債の導入には反対されるという意見、これは恐らく現段階で反対だということで、金融の自由化が絶対的に進んできて、ある程度そういうものが平常的になってくれば、そのときはまた別に反対ではないだろうと思うのですけれども、とにかく来年あたりそういう状況になるかどうかわかりません。
結局、こういう短期国債を導入するということになりますと、一番心配なのは金融機関の商品と競合状態になるだろう。今でさえ率直に言って、銀行というのは昔に比べれば資金の吸収能力というのはかなり弱まっているだろうと、こういうふうに実は私思っているわけでありますけれども、なお一層そうなってくると、恐らく今の金融機関の、都銀はいいかもしれませんけれども、全体の体質から見ていきますと、資金を吸収するために今度は、金利選好が非常に強くなっている今日、さらにいい金利商品を出さなければいかぬということになってまいりますと、資金コストもかなり高くなってくるだろう。そうなってきますと勢い全体の、地方銀行もありますし、相銀もありますし、あるいは信用金庫等もありますけれども、こうした業界の再編成の問題というのを引きずり出してくるんじゃないだろうか。こういうようなことも考えられますが、その辺のことについてひとつお話をいただきたい。
それから、ついでと申し上げましては大変恐縮でありますが、こうした借換債の発行ということになってまいりますと、自然的に外国の金融市場あるいは為替相場、国際的な金利、こうしたものの影響というものをかなりかぶってくるんじゃないだろうか。そうなりますと、必然的に金利というのは高まる圧力が出てくるんではないだろうか。こんなふうに思うのですが、それらの点について御説明をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/9
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010・山田春
○参考人(山田春君) 第一点につきましてお答えいたします。
昨年の八月の閣議で決定されました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」という中に、政府は、その対象期間中である昭和六十五年度までに財政の赤字体質から脱却するという目標をお決めになっておられます。そして五十九年度の予算審議に際しましても、政府は、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」でこの目標の実現に努める旨を明記しておられます。ただ、先ほども申しましたように、五十九年度の赤字国債発行額の減額幅が当初の額を下回っておる点で多少不安がございますけれども、いずれにいたしましても、政府が目標としております毎年度の歳出歳入構造を合理化をし、あるいは適正化をして、これに最大限の努力を重ねてその実現を図っていただきたいということでございまして、この問題につきましては、我々金融界におきまして、こういう案を考えたらいいんだという、なかなかに奇手妙案は今のところございません。政府並びに国民全体でこの問題に対して取っ組んで、できるだけ財政の赤字体質を縮小していくということ以外にないんではないかというふうに考えております。
それから第二点の短期国債と銀行預金の競合の問題でございますけれども、先ほども触れましたが、短期国債というのは恐らく公募で発行されるということになるだろうと思っております。そうなりますと、どういたしましても、同じ期間の民間の預金金利、調達金利よりは高い金利が設定される可能性が強いということであろうかと思います。現在、将来は別といたしまして、預金金利は一応臨時金利調整法なり、あるいは日銀のガイドラインなりによりまして規制をされておりますので、このままの状態において短期国債が出てまいりますと、民間から大量の資金シフトが起こり得る可能性があるということを心配しておるのでございます。一方で民間は、新しく出る国債の引き受け、それから借換債の引き受け、そういうことに応じていかなくてはいけない情勢にあるわけでございます。そういう際に、民間の資金吸収力を低下させるようなやり方を財政の事情ありといえども、ただそれを強行されるということになりますと、金融市場にいろんな弊害を及ぼすんではないだろうかということを心配いたしておるわけでございます。したがいまして、短期国債の導入は、預金金利がさらに自由化が進むということとのバランスにおいて考えていく必要があろうかということで、この発行につきましての決定には、相当タイミング、それから量等、いろんな慎重な配慮が必要であろうかと思う次第でございます。
それから先ほどのお話の中で、こういう短期国債なりあるいは借換債なりが出てまいりまして、同時に金融の自由化が進むということになりますと、どうしても民間の金融機関の資金調達コストも上がっていくんではないかということでございますが、確かにその面につきましては、現状より上がる可能性は否定しがたいものがございます。しかし、これを運用する場合の我々の金利につきましては、極力低い金利でそれを供給するということを我々の責務といたしまして考えていかなくてはいけないというふうに思っております。したがいまして、金融機関は従来もいろいろと合理化、効率化をやってまいっておりますけれども、さらにこれから一層の合理化を推し進め、あるいは機械化を進展させましてコストの削減に努めるということによって対応していかなくてはいけないということだと思います。
しかし、それによりまして、これに耐えられないところが出てくるんではないだろうかという御心配ごもっともでございますけれども、この問題につきましては、現状において確かにそうなるかどうかということは、今後の金融界の努力いかんと、それから経済情勢がどういうふうにこれから動いていくかというようなこととも関連いたしますので、今ここでこうなるだろうという予想を申し上げることはできない情勢だというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/10
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011・竹田四郎
○竹田四郎君 総括的にお三人さんからちょっと聞いておきたいと思うんですけれども、きのうも実は歯どめ、こういうような新しい財確法で進めていって、今までは特例債は毎年度の審議で必ず借りかえ禁止規定というものを入れてやってきた、これがある意味では大きな歯どめであった、こういうふうに思うわけでありますが、今度の法律では、この十年間私どもが毎年毎年オウム返しのように言ってきたこの問題が一挙にここで全部外されていく。そして、その返済については、四条債と同じような全部の償還ということになりますと、この六十年という規定も必ずしも私は正確だとは思いませんけれども、その六十年というような形で行ってしまいますと、先ほど石先生のお話で、当然今後好況あり不況あり同じように行くかどうか、これは私非常に疑問だと思いますけれども、そういう事態の中でも歯どめはないし、四条債と同じ償還条件だということになりますと、今までのルーズな体制というものが温存されていってしまう、そして財政再建へのみずからを縛るというものがなくなってしまう、こういうふうになる危険性が非常に強いんじゃないか。これが今度の一番財確法のポイントでありますし、大蔵大臣自身も、今度の法案というのは政策の大転換だとみずから称している。それについては歯どめというものが全然感じられない。ここが、ここ両日の審議の中で焦点となってきた問題点だと思いますけれども、この歯どめについてお三人さんの御意見をひとつ聞かしていただきたいと思います。どちらからでも結構でございますから、お三人さんの御意見いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/11
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012・山田春
○参考人(山田春君) 従来は、赤字国債は借りかえ禁止の規定が法律で定められておったわけでございます。しかし、財政の現状から申しまして、それを厳守していくということが難しくなってきたということでこの歯どめを外そうということになってまいったわけでございますが、今の財政の現状からすればその点はある程度やむを得ないことではなかろうかとは思いますけれども、しかし、借りかえ禁止ということが従来の法律に規定してあったその立法の趣旨というものは、現在もやっぱり十分踏まえていなくてはいけないんじゃないかと思うわけでございます。したがいまして、ここで一応借りかえをするという場合に、例えば償還年限につきまして建設国債と同じ取り扱いでいいのかどうか、あるいは将来財政に余裕が生じました場合には優先的に償還するというようなことをうたいまして、とにかく歯どめというものを全部外してしまうということは不適切ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/12
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013・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
なるほど、この特例公債の借りかえ禁止規定が外れましたということは、法律的な意味あるいは制度的な歯どめ、そういうものが外されたということでございますけれども、国民の総意としては、無制限に国債の発行枠が増大していく、そういうことはあってはならないと、そういうことが確立されていると思います。また、我々証券界に携わる者の立場としましては、マーケットに見合った国債の発行量というものがおのずから決まっていくものでございまして、マーケットの実態を無視した発行量になれば、その償還のために大変な高い金利を、あるいは安い発行価格といいますか、そういう発行条件を大きくゆがめざるを得ない、そうすれば国債費がさらに増大していくということで、そういうことからもおのずから歯どめはかかる、マーケットの実態からして歯どめはかかるというふうに考えております。また、国際的なマーケットという意味でも、例えば今東京市場では外国から円建て債起債の希望が殺到してきているわけですが、そういう国際比較の発行条件ということからもプレッシャーがかかってくる。そういうことであると思いますので、私ども証券界としましては、制度的な歯どめ以外に今申しましたマーケットからの歯どめはおのずからかかるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/13
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014・石弘光
○参考人(石弘光君) 私は先ほどの意見でも述べましたが、法律的、制度的歯どめというのはどうも余り役に立たないというのが元来からの感じでございます。この借換債に関しましても、一応借りかえ禁止という法律が確かに生きて、毎年毎年議論の対象になっていたようでありますが、果たしてそれが本当の歯どめになっていたかというのは、今にして思えば非常に疑問であるし、幻の歯どめではなかったかと、こう思っております。
と申しますのは、経済は生き物でありますから、幾ら法律的な、制度的な枠をつくっても、動いていくものがあれば何の役にも立たないというのが、恐らく過去十年なりその前以降からのいろいろな経験ではなかったかと、このように考えております。したがいまして、仮に制度的、法律的につくるにしても、ごくインディカティブといいますか、ガイドラインといいますか、ごくごく大まかなものでありまして、私は経済学の立場から申しますと、それをとって法律論的にいろいろ言っても余り生産的な話にならないだろうと経済学者としては発想いたしております。
したがいまして、今横田さんのおっしゃいました経済の実態面からの歯どめ、具体的に言いますと恐らく市場のテストだろうと思いますが、市場のテストというのは恐らく一番有効な歯どめになってくるんだろう。ただ問題は、市場の出しましたシグナルを読み取る力が、政府の中にも国民の中にも、あるいは我々学者の中にもなければいけない。その能力がないから、せっかく市場で送ってくれたシグナルを読み取り損なって本当の歯どめを生かし切れてないんだと、こういうことになるのではないかと思います。したがいまして、私は、率直に申しまして、制度的歯どめより、今言った経済の実態面からの市場の歯どめというのを有効に生かすということしかないというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/14
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015・竹田四郎
○竹田四郎君 そういう面からの歯どめというお話なんですが、今までは新財源債の発行ということで外債をすることによって一年先へ延ばす、その間は短期資金で何か回していくということが割合できたんですが、今度の場合は借換債の問題なわけでありますから、先ほどもお話がありましたように、相当大量な三兆にも上ぼるような借換債というものがある特定の日に出てくる。少ないときでも一兆幾らという形でありますから、大変大量な借換債が出てくる。それは当然処理をしなくちゃならないということになってまいります。必ずその日に処理する、新しい十年債なら十年債で借りかえなくちゃならないということになってくるわけでありますから、そうなってくるときにかなり大きな問題が起きてくるんじゃないだろうか。そのときにうまくそれを乗り切るということが果たしてできるのかどうなのか。マネーサプライを厳しくやるということがうまくいくかどうか。本当に今そういうノーハウというのがこの借換債時代に入ってもあるのかどうなのかということになって考えてみますと、これも大変難しいことであろうと思います。
横田参考人にお伺いしたいと思うのですけれども、特に最近の事情でアメリカの金利が上がってくる、為替相場が大きく変動する、こういうような事態で、今の起債市場というのは大分混乱をここ二、三日してきているように思うんですが、こういうときに例えばことしの借換債というものがここで出てきたという場合、また非常な混乱を起こすんじゃないだろうか。新発債ですら、こういう五月の時期というのは恐らく今までも国債が発行される月であったと思うのですけれども、今月あたり果たしてできるのかどうなのか。恐らく国債の発行はできないんじゃないだろうかという意見もあるくらいでありますし、現実に今まで国債を外債した力もあるわけでありますから、全然ないわけではないわけですから、そういう意味では今まではそういう市場の問題だけでよかったと思うんですけれども、これからはそれを借りかえるということになりますと休んでいるわけにいきませんから、そのときにはかなりの混乱が出るんじゃないだろうか、こう思いますが、横田さんいかがでしょうか、その辺は。ただ市場のメカニズムだけでそれがうまくいってしまうだろうか、何かその辺に私は非常に危惧を感ずるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/15
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016・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
先ほどの冒頭陳述の中でも述べましたように、昭和六十年五月には一兆六千億、それから六十一年十一月には三兆四千億というような大量な償還が集中する、これは事実でございまして、恐らく六十年あるいは六十一年の財政事情からいきましてもこれは借りかえでいかざるを得なくなる、そういうことだろうと思います。これは事実は事実でございますから、関係者いろいろ考えまして、この借りかえがスムーズに行われるようにしなければならない。
そのスムーズに行うためのまず第一の要件は、そのときどきの市場の実勢に応じた借りかえ条件といいますか、借りかえといいましても、そのときは新発債になるわけですけれども、そういう発行条件を設定するということが一つ、それから大量な償還をすぐそのまま借りかえるということは、先ほども申しましたように、ただいまの国債発行のシステムでは難しいと言わざるを得ません。したがいまして、そこで期間の短い国債を出すということも行われまして、それによって借りかえの時期を散らせる。その期間の短い国債といいましても、その期間そのものもいろいろバラエティーをつけまして、そういうことによって借りかえの実質的な時期をずらせる、そういうことを考えざるを得ないのではないかと思います。
それから外債という問題でございますが、外債ということも対応のチョイスとしては考えられるということでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/16
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017・竹田四郎
○竹田四郎君 その辺に大変難しい面があるだろうと思いますね。先ほど山田参考人からは、短期国債はすぐにはできるような条件にはない、金利の自由化が相当程度進展しなければ、今シ団の中心というのは銀行だろうと思いますから、そこの資金が少なくなるということになると、そうした借換債のみならず新しい新財源債も同じような事態になる。これを短期国債という名前でしなくてほかのものにしても、私は大同小異だろうというふうに思うわけであります。あるいは実態面でそういう問題の解決というのが速やかにつかない限りは、なかなかその借換債の混乱というのはなくならないんじゃないだろうかと、こういうふうに思いますけれども、またこれは将来いろいろ教えていただきたい、こういうふうに思います。
それから横田さんにちょっとお願いをしたいんですが、先ほども御意見の中にお述べになっておりましたけれども、CDと有価証券の現先の問題ですね。例えばCDの場合には取引税がかからない、それから国債その他の社債のような有価証券の場合には当然取引税がかかる。こうなると、これに今度は外国のものが加わってくるということになりますと、この辺の問題点というのをイコールフッティングの形に早く整備しなくちゃいかぬ。一方には国の財政収入という要請がある。こうした問題を早く何とか解決をしないと、恐らく銀行側はCDについて取引税をかけるのはけしからぬと、こういうお話はもちろんでありましょうが、もともとかけるべきものじゃないということでありましょうし、証券側はこの点は外すべきだと、こういう御意見だろうと思います。この額も、国の財政収入から見ますと、恐らく二千数百億の財源になっているわけでありますから、そう簡単に外すことはできない、しかしイコールフッティングをしなくちゃならぬ。こういう問題があると思うんですが、この点についてさらにお答えをいただきたいと思います。
それから石先生にお伺いしたい点は、先ほどからいろいろお話は伺っていたんですが、先生のおっしゃることもよくわかるんですが、もっと積極的な具体的な財政再建というものを我々これから議論していかなくちゃならぬと思うんですが、例えばこれには私どもは不公平税制を直せ、まずそこを直していけということでありますし、政府が大型間接税をやるかやらぬか、これについても私ども必ずしも閣内で本当に意見が一致しているとは思えませんし、中曽根さんはやらないと言っているし、財政当局の方は勉強をしているんだと言っておりますし、その辺でもある程度決着をつけなくちゃいけないでありましょうし、また同時に利子配当課税のグリーンカードの問題もあるわけでありますけれども、その辺のこれからのそうした税収、財政再建の穴埋めの税収という立場で、先生の御意見があったらお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/17
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018・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
先生御指摘のとおり、私どもは債券、国債、特に現先取引についての有価証券取引税を撤廃していただきたいと、そういう希望を出しているわけでございます。これは、おっしゃるとおり、イコールフッティングの観点で同じ短期の金融商品でありながら、現先の方が有価証券取引税で、CDあるいはコールとか手形とか、そういうものが税金がかかっていない、そういうことからいきまして、イコールフッティングではない、それを直していただきたいということでございます。また一方、先ほどからお話で出ていますとおり、これから国債の大量借りかえをどうしても行わざるを得ない。そういうことを展望いたしますと、短期金融市場というものをここで非常に大きなものにしておかないと、将来混乱が生ずるおそれがありますので、そういう意味では、CD、コールあるいは手形が有価証券取引税がないのは結構でございますけれども、現先取引の方も同じように取引税がかからないようにしていただきたいというのが私どもの立場でございます。
それからついでに申し上げますと、居住者によるユーロ円債というものがこれから実現する方向にあるわけでございますけれども、その場合の源泉徴収税ですね、利子にかかわる源泉徴収税、これも撤廃していただきたいというようなことを要望いだしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/18
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019・石弘光
○参考人(石弘光君) 端的に申せば、要するに一般消費税を入れるべきかどうか、おまえはどう考えるかということと、マル優をどう考えるかというようなそういう御質問だろうと思います。
長期的に見ますと、私は国民の負担増というのは避けられないと思っておりますから、その具体的手段を考える上でこの一般消費税の是非論あるいはマル優の存廃をどうするかということをじっくり研究し、その具体的なプログラムを練る必要があろうと思います。増税の前提条件といたしまして、歳出の整理合理化をするとか、不公平税制是正をやるとか、こういう話が数年前から行われておりまして、歳出カットに関しましては大分条件が満ちてきたように思います。ただ、不公平税制の是正に関して当初予定したほどやっているかといいますと、これは大きな疑問と言わざるを得ない、このように感じております。
そこで、一般消費税に関しましても我々学会の中でもいろいろ意見が分かれておるんでありますが、先ほどの財政赤字の考え方と同じように、だんだん私の身近で見る限り一般消費税やむなしのムードは上がってきているような感じもいたします。ただ、その前提条件をどれだけ厳しく見るかによりますが、最終的に見ますと、一般消費税というのは検討に値する、特に現行の個別消費税体系よりはいろんな意味でいいということは、租税の理論からいって立証できると思います。そういう点から実施面においていろいろ問題はあると思いますが、いずれにしてもこれは導入を考えるべきではないかというのが私の持論でございます。
それからグリーンカードの問題が絡んでマル優なり郵貯の問題というのはだんだん今人々の関心を呼んでおります。きょう御関係の山田さん、横田さんがいらっしゃる前で私から言うのもおかしいんでありますが、恐らく考え方としては次の二つなり三つの点を前提にして議論を進めなきゃいけないと考えております。一つは郵貯を特別扱いにするな。これは恐らく大前提ではないかと思います。それから二番目は、いろんなねらいはあるかと思いますが、基本は税制の問題である。金融秩序の維持もあろうし、あるいは社会政策的に見て貯蓄増強の手段ということもあるかもしれませんが、利子課税というのはあくまで主たるねらいは税制の問題である。第三番目には、とはいっても、もう既に長い歴史のある制度でありますから、白い布に絵をかくわけにはいかない。アメリカのフェルドスタインの言葉を申しますと、タックスデザインではだめなんだ、タックスリフォームという既存の制度を前提とした改革ということがあり得るだろう。そういうことになりますと、日本でもセカンドベストでもいいから、次善の策でもいいから、そちらの方でマル優なり何かを見直さなければいけないだろうというのがそっちの考えでありまして、恐らく金融秩序にも十分配慮した上であるいは社会政策的な面を配慮した上で副作用を極力なくすという点で今の制度を変えるべきである。具体的には僕はマル優カードみたいな導入というのは非課税預金の管理のためには十分あり得ると考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/19
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020・山田春
○参考人(山田春君) ちょっと発言させていただきます。
ただいま横田参考人さんからCDと現先の問題につきましての御意見ございましたですが、私はこれに関しまして、形の上ではよく似ておるけれども、法律的性格が全然違うわけでございまして、この譲渡性預金というのは法的には指名債権でございまして預金と同じものなんでございますね。そして準備預金制度の適用を受けまして日銀に準備預金を積み立てておるものでございます。したがいまして、そういう法的性格の違うものを片方に、これは税金が、有価証券取引税がかかってないからということで、こっちもかけないでくれという御議論はやや一方的じゃないだろうか。それじゃ現先の方も同じように準備預金制度の対象になるのかということになりますと、これは恐らくならないだろうと思います。ですから、そういう点につきまして、形の上でちょっと似ているから同じにしろというのは納得ができないという考え方でございますから、念のために申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/20
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021・鈴木一弘
○鈴木一弘君 山田参考人に最初お伺いしたいんです。
全銀協の会長御就任に当たりまして、今年度は金融自由化の実行、実践の年ということをおっしゃられた。そういうことから金融自由化について大変前向きな姿勢をとっておられるということは存じ上げておりますが、四月十三日に大蔵省から「金融自由化の展望と指針」というのが明らかにされていて、その中の一つに金利の自由化がございます。先ほどの山田参考人の御意見を伺っておりまして、短期国債が大量に出るようになると、
金利の自由化をしていただかなければならないと。これは資金のシフト等起きてきますからそういうことにならざるを得ないと思うんですが、そこで預金金利について大口短期のものから規制の緩和をしていくことが現在示されて、実際にそういうふうになっておりますが、この面での自由化についてどういうようなプロセスをとっていけば最終的に小口の方まで持っていくのにいいというふうにお考えなのか、ちょっとそれを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/21
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022・山田春
○参考人(山田春君) お答えいたします。
自由化の問題は、国内におきましても従来からいろいろ議論をされておりまして、さらにそれに海外からの要望も加わってまいりまして、日米円・ドル委員会だとかというようなところで推進がされておるわけでございます。我々の業界におきましても、もう二、三年前よりいろいろな議論をし、ある問題につきましてそれぞれこの点についてはどうするかという議論を今までしてきたことは事実でございます。しかしながら、長い間の金融慣行、それを一挙に変えていくというふうなことになりますと、いろいろな混乱、摩擦が起きる心配がございますので、これをできるだけ摩擦、混乱を少なくしながらやっていくためには、どうしても漸進的、段階的に進める配慮が不可欠であろうかと思います。
そして、その順序といたしまして、これはほかの諸外国の例を見ましても、自由化に最もなじみやすいものは大口のもの、短期のものから進めていくということが自然でございまして、我が国におきましてもこの大口短期の典型でございます先ほど話が出ましたCD、譲渡性預金からこれは既に自由化が進められているのでございます。
それでは小口の方はどうなのかということになりますが、小口につきましてもこの条件が整っているかどうかというふうなことをよく見きわめました上で自由化していくということになろうかと思うのでございます。
それじゃ条件というのはどういうことかと申しますと、特に、我が国におきましては、中小金融機関の体力がそれに耐え得るかどうかというようなこと、あるいは郵貯の肥大化がある程度モデレイトになってきているかどうかというようなこともよく見きわめながらやっていかなくてはいけないというふうに考えております。少なくとも、個人貯蓄の三割を占めております郵便貯金の金利決定方式につきまして妥当な合意ができているというようなことも、この自由化への一つの条件であろうかと思っております。
そして、最近のこの「自由化の展望と指針」につきましての正式な文書がまだ公表されておらない状態でございますからはっきりしたことは申し上げられませんけれども、新聞紙上等にちらちらと出ておりますような線でございますれば、大筋において我々は前向きにこの問題に対応していくという必要があり、またその用意もあるという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/22
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023・鈴木一弘
○鈴木一弘君 今のお話の中でよくわかりました。
特に中小金融機関の体力の問題というのがございましたが、この体力をどういうふうにして大きくするかということもあるだろう。これが私たちの最大な関心になるのは、自由化されれば恐らく、信用組合とかあるいは金庫とか、こういうところが吸収合併という格好を、また系列化をとらざるを得ないんじゃないかというような議論が我々の中にあるわけでありますが、この辺のところをお考えであるというふうにとってよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/23
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024・山田春
○参考人(山田春君) その点につきましては、まだこの自由化の問題に対する対応というのは、これから各金融機関が必死になってやっていくということでございまして、従来の経営のあり方、考え方を場合によるとある程度転換しながら、同時に機械化あるいは効率化等を加えながらやっていく必要があろうかと思います。
したがいまして、その結果がどういうふうに出てくるか、あるいは大蔵省の、行政当局の金融行政に対するスタンスをどういうふうにとっていかれるかというようなこととも大いに関係がございますので、合併、統合というところへすぐ進んでいくかどうかということについては、現段階ではまだはっきりとした見通しが立たない状態だと言わざるを得ないと思います。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/24
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025・鈴木一弘
○鈴木一弘君 ありがとうございました。
次は山田参考人と横田参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどからずっと話が出ておりますが、特例公債の借換債発行ということになりますと、八十年で一兆八千七百億、六十一年で二兆九千七百億、六十二年が三兆八千億、特例債の借換債と建設公債の借換債、これを合わせるととにかく八兆円とか十兆円とか十三兆円というふうに金額が高騰してくるわけです。こうなりますと、これだけの巨額の借換債の発行というのは、先ほどの御質問にもありましたように、償還日と同じ日に、償還をしなければならぬ日に、それに合わせて発行しなければなりません。そうなるといろんな商品が、先ほどの御意見にもありましたように、超長期のものや短期のものや中期のものやということになるんだろうと思いますが、いずれもとりあえずは短期債でもって中継ぎ的な手法がとられるというふうになるかもしれません。そうなると、うまくはめ込まないと、はめ込み方いかんによっては、これは間違いなく金利が急上昇するだろう。それはそのまんま金融市場に対しての大変なインパクトということになるわけでありますから、その国債の引受販売について、先ほどもお話がありました、金利機能によって借換債のように金がシフトしてくれればいいというような御意見もあったんでありますけれども、この引き受けの問題等について、あるいは販売について携わっていらっしゃる御両名からこういう金融市場への大変なインパクトが起きるということについての御所見を伺いたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/25
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026・山田春
○参考人(山田春君) 先ほども申し上げましたように、マクロ的に見ますれば、満期の償還金が借りかえ日に円滑に借換債によって吸収されますれば、市場の流動性はプラス・マイナス・ゼロでございまして、特に理論的には混乱はないということでございますけれども、満期償還金を受け取る人間と借換債を引き受ける者とが別になっている、同じのもあるんですけれども、相当の分は別になっちゃっているというところが問題でございまして、その結果、金融機関によって資金の偏在が生ずるというおそれはあるわけでございます。したがいまして、この資金の偏在を是正して金融をうまく円滑にやっていくということのためには、金融調節をつかさどっておられます日本銀行におかれましてきめの細かいいろんな対応、対策、配慮が必要であろうかというふうに考えております。
先ほども申し上げましたところでございますが、とにかく発行条件を市場実勢に従って発行していただく、それから場合によったら、借換債の前倒し発行ということをやりまして平準化をするというふうなことも検討する価値があるんではないだろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/26
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027・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
ただいま山田参考人がおっしゃいました、マクロ的に見まして、償還があるので、新規発行と見合えばマネーフローとしては混乱しない、中立である、それから金融当局がそれなりの対応をしていただく、それからもう一つは発行条件の実勢化を一層慎重にお考えいただきたい、これは全く同じ意見でございます。
それにつけ加えさせていただきますと、先ほどもちょっと触れましたように、五十八年度の公社債市場の売買高というのは、一年間ですけれども、四百十六兆円という相当大きな市場に育っております。短期市場がまだそれに見合って育っていないのは残念でございますけれども、その辺を配慮していきますと、相当な金額の借りかえも混乱なくやれるということが言えるのじゃないかと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/27
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028・鈴木一弘
○鈴木一弘君 これは三人の参考人からお伺いしたいのですが、公債の残高がだんだん累増する、それに従って利子の支払いの費用がふえてくる、これは避けられないことです。先ほどからの御意見で、財政赤字を解消するのは、一番は抜本的な対策でありますけれども、中期的、短期的に見ると、この国債の利子率が名目成長率を上回っていくということになる、そういうような状態を断ち切ることが必要じゃないか。しかし、そういうふうに金利を下げていくということと成長率を上げること、この両方が果たせればこれは一番いいんですけれども、しかし金利の方は自由化の方向で、しかも大量の国債が出てくるということになりますと、どうしたって短期債がふえる、金利低下につながるかどうかは疑問で、逆の方向に行くおそれがあるだろう、そういう心配もされます。成長率を高めるといっても、インフレなしにこれをやるということができるかどうかも非常に疑問でございますので、何といっても、やっぱり金利を引き下げてしかも成長率を上げていくという、そういうすばらしい方法があれば一番いいわけですけれども、どういうような政策を考えられるか、もし御意見があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/28
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029・山田春
○参考人(山田春君) 今の御説につきまして私の考え方を申し上げますが、国債残高ないしは利払いの対名目GNP比率、これに着目をされまして、国債の利子率が名目GNP成長率を上回れば、この問題に対する対策を考えなくちゃいけないんじゃないかということでございましょうけれども、しかしこの比率が多少上昇したからと申しましても、直ちにそれが問題になるとは一概には言えないではないだろうかと考えております。
この比率を下げますのには、国債の利子率を名目GNP以下に抑えることが唯一の方法ではございませんで、結局、利払い前の財政収支、これを黒字にするという方が効果的ではなかろうかと思っております。
それから他方、金利負担を軽減するのには、市場実勢を無視した低利発行によってではなく、歳出削減等によりまして国債発行額そのものの減額に努力すべきである。したがいまして、行革、財政改革を着実に実行することがこの問題の解決の基本ではないだろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/29
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030・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
ただいま山田参考人がおっしゃった御意見、全くそのとおり、同じ意見でございます。
さらに申し上げますと、先ほど石先生がおっしゃられました政府、国民一体となってこの問題に取り組んでいく、直していく、そういう問題でありまして、今すぐ奇手妙手があるということは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/30
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031・石弘光
○参考人(石弘光君) 今御指摘の点は、有名なドーマーの成長理論によります、いわゆる国債利子率が名目成長を上回るとサラ金状態になるよという御指摘だろうと思います。現に数年間そういう状態になっておりまして、これがある意味で今の財政赤字累積の一番の大きな問題、つまり財政はサラ金的になるというときにしばしば使われ、私自身も心配しております。
そこで、考え方でございますが、二つしかないんでありまして、国債の利子率を上げなければいけないというのは、これは国債が不人気な証拠であります。要するに蛇口のところをとめないで出しっ放しにしておいて、それは不人気がゆえに少し値段を高くしなければ売れないという事態の方が悪いんでありまして、これはさっき申しました横田さんのおっしゃいました市場のテストに合致していないケースでありますので、とりあえずこれはもとを締めるというのが恐らくこの解決としては重要であります。
と同時に、第二点は、何やかにや言っても、民間セクターでは貯蓄がまだ超過しているわけですね。いわゆる投資より貯蓄が超過しているということは、資金の供給の方が多いんでありますから、そういう状態においてパイプが詰まっていない限り金利というのはそうやたらと恐らく上がらないはずであります。したがいまして、そのパイプの詰まり方がどこかといいますと、これは金利の自由化がうまくいっていないということと、それから何か御用金調達的発想で、国債の金利というものが一番下になければいけないとかなんとかという従来の慣行、四畳半金利というんですか、よくわかりませんが、不人気なやつは条件をよくしなければ売れないというのは、これは経済の法則でありますから、その辺の横並び的意識を徐々に取って自由に少し金利を動かすということしか僕は解決策がないと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/31
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032・鈴木一弘
○鈴木一弘君 石参考人に伺いますが、利払い費の増加が大変指摘されておりますけれども、この一、二年で、先ほど御指摘のように、これは社会保障費を上回ろうということになると思います。財政の機能というのは所得の再配分ということだろうと思いますけれども、逆に高所得層とか高資産階層、こういうところが保有している方のパイプが、国債の利払いのパイプが急テンポで太くなるということになると、考えてなかった財政構造の変化が起こってきているというふうに言わなきゃなりません。そういう所得の再分配という財政の機能が役割を果たせなくなってきているということになりますと、どうしてもそれは歳入面と歳出面両面から確保しなきゃならぬわけでありますが、特に歳入の面では、所得税の改正でも今度は最高税率の引き下げ、最低税率の引き上げ、それから酒税、物品税の増税、先ほどお話がありましたような一般消費税の問題等も導入されてきております。そうなると、ちょっと先生の御意見と違うかもわかりませんが、こういう歳出歳入両面から所得の再分配の機能というものが喪失されてきているんじゃないかというふうに思われるので、政策転換をどこかでやらなければいけないのではないかと思うんですけれども、その辺の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/32
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033・石弘光
○参考人(石弘光君) 財政は所得再分配的に重要な機能を果たすというのは、昔から言われていることでありまして、我が国の財政においても重要な指針になろうと思います。特に武器といたしましては、高度の累進税率体系と、それから社会保障のルートとして歳出から低所得層を所得保障するというルートがあるわけであります。今御指摘のとおり、いろんなルートでやっておりました財政所得再分配に陰りが出てきたという点があろうかと思います。今言った利払い費の逆ざや分配効果なんというものも一つの例でございましょうし、累進税が落ちてきたというのも一つの効果かもしれません。が、結局どういう所得階層が中心になっているかというのが恐らく再分配の程度をどこまでやるかという決め手になろうかと思います。
諸外国の比較から申しますと、日本は中産階級が中央に群がっている、中産階級意識というのを国民の九割ぐらいが持っているという説もございますが、かなりの程度真ん中に群がっている。極端な貧乏な人も極端なお金持ちも諸外国に比べれば余りないということになりますと、財政の視点をどこに置くかといいますと、ミドルクラスというかその辺に置いて、いろいろ再分配なんかのことを考えるというのが重要な視点になろう。これはほかの国とは違った日本の特殊性ではないかと思います。
したがいまして、最近諸外国の研究成果などを見ますと、高度の累進税率というのはかなりいろんな意味で社会的に悪い影響を与える。特に労働意欲の喪失であるとか、貯蓄意欲の喪失であるとか等々ある。それから社会保障を過度にやったときのいわゆる北欧病的なものもあるということで、今転換期に差しかかっているというのは御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、日本の所得分配というものを前提とした日本型の再分配というものをこれから構築していく点で多々いろんな問題を議論しなければいけない。そういう点から見まして、今行われてきました累進税率の引き下げなり再分配なり等々を総合的に判断しなきゃいけないということで難しい局面に差しかかっているということだけ、お答えとして申
し上げたいんでありますが、しかしその分配という問題をないがしろにできないとも思っております。ただ、ほかの国に比べてどうかというときに、このウェートは最高に高いかどうかとなると、ちょっと疑問であるという感じを持っております。ちょっとお答えになったかどうかわかりませんが、補足してまた御説明します。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/33
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034・近藤忠孝
○近藤忠孝君 石参考人に、先ほど六十五年特例国債脱却は難しいとおっしゃったんですが、そう言われることはどういうことからそう言われるのか、判断を示されたのか、その理由をお述べいただきたいと思うんです。
それから山田参考人に三点ばかりですが、一つは、都銀の五十九年三月期の決算は史上最高と新聞記事に出ていますが、その要因は何か、利ざやの改善などのほかに国債市況安定による売却益、評価益などが大きかったんじゃないかと思いますがどうか。これが第一点。
それから第二点といたしまして、五十八年度の中間期で有価証券関係利益が五百六十四億円、前中間期の約七倍の伸びを示しています。これは同期の経常利益の約一割を占めておるんですが、今後国債のディーリングなどを通じて銀行の収益に占める国債関係収益の割合は大きくなると思うんですが、いかがか。
それから第三点といたしまして、金融機関の収益に占める手数料収入のシェアとその内訳の推移ですが、三菱銀行において、五十七年度手数料収入が約三百八十六億円と聞いています。これは同期の経常利益の約四〇%で、手数料収入の中には国内の為替手数料、国債など公社債にかかる手数料、その他海外への融資業務に伴う手数料などいろいろあると思うんですが、今後、銀行収益に占める手数料収入の割合が高まる傾向にあると思うんです。そこで金融機関の収益に占める手数料収入の現状と今後の見通しはどうかという点であります。
それから最後に横田参考人に二点、これは国債関係業務を通じての証券会社の収益の動向ですが、総合証券十五社、これは四月二十三日に五十九年三月期の中間決算を発表しておりますが、これも史上最高の好決算であります。好決算を支えたのは株式委託手数料収入の増大が最大の要因だと思いますが、公社債関係、特に国債関係でも引き受け、ディーリング等々委託手数料の増大の形で収益に貢献していると思うんです。その状況についてお願いしたいと思います。
もう一点は、先ほど個人消化に努力するというお話があったんですが、そのためにも国債保有の所得階層別分布とその推移、これは御調査が恐らくいっているんじゃないかと思いますが、その辺の調査が進んでおればその状況。
以上、簡単にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/34
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035・石弘光
○参考人(石弘光君) 六十五年までに特例公債の脱却は難しいという私の考えの理由は何かという御質問だと思いますが、理由は簡単でございまして、あえて申せば二点あると思います。
一つは、日本経済が昔みたいに実質成長率で一〇%も伸びるようなそういう状況は来ない。したがって自然増収的な意味での神風は吹いてこないだろう。そういうことになりますと、財政面の自力によってのみ財政赤字を直すほかはない。
そうなりますと、第二点でありますが、歳出カットというのは総論賛成でありますが、各論反対である、これは目に見えております。それから負担増というのも、これまたなかなか難しい、この二つのスローガンで選挙を戦えないのがデモクラシーの常でございまして、なかなかスムーズにこれはいかないだろう。大蔵省の試算なんでございますが、要調整額あたりでも、歳出を伸ばして借換債をやりつつ三%の一般歳出を伸ばしていっても五兆円ほどの要調整額が六十五年にはあるし、五%に伸ばすと九・九兆円ほど出てくる。私はまあ一、二年はゼロシーリング、マイナスシーリングで恐らく予算編成はいくと思いますが、それをいつまでも続けることは、恐らく公共事業、公共サービスの必要度から見ても無理であろうという項目がいっぱい出てくると思います。そういった意味で歳出カットというのもそううまくいくか。
そういった意味で科学的根拠を示せと言われますと非常に難しいんでありますが、過去のいろいろ財政運営を見てますと、あるいは日本の議会制民主主義等々見ておりますと、そう簡単にはいかないよという、言うなれば腰ため的発想と思ってくださっても結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/35
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036・山田春
○参考人(山田春君) 御質問の第一点でございますけれども、五十九年三月期の決算の状況でございますが、まだ計数を取りまとめて現在監査役なり公認会計士のところで精査している段階でございまして、まだはっきりしたことは申し上げられませんが、新聞等が先走りまして、ことしは今度はいいんだとかなんとか言っておりますけれども、若干その前に比べてよくなったということがありとすれば、調達コストの方が下がってきているということ。運用利回りも下がっておりますけれども、運用利回りが先に下がりましてそれで利ざやが縮小してきたのが、調達コスト、預金の金利の方が今下がりつつございまして、それで利ざやが回復してきているということが一番の大きな原因ではないかと推測いたしております。
それから第二点でございますが、国債関係業務によりまして金融機関がどういう収益を上げているかということでございますが、国債の引き受け、売却等によりまして収益を確保しているという面も確かにございますが、この国債業務の方は私どもの有価証券業務の一部でございまして、国債だけを区分して把握しておりませんので正確な数字が申し上げられませんですが、個別的にちょっと申し上げますと、国債関係の銀行の収益といたしましては、引き受け手数料、それから国債の利息、それに売買の損益、大体この三つから成り立っておるわけでございます。そして国債の引き受け手数料と申しますのは百円について五十二銭いただいております。そして、金融機関合計でこれが五十八年度は約二百億円ということに相なっております。それから国債の利息並びに国債の売却益については計数が公表されておりませんので、私もしっかりと把握しておりません。
それから一方で、国債の関係の収益と申しますと、調達コストの方も考えなければなりませんので、一般的に申しまして、金利の低下期には利ざやが拡大いたしまして、それから金利が上昇するときには利ざやが縮小するというのが一般的傾向でございます。それからそのほかに昭和五十四年度のように国債価格が大幅に暴落をいたしますと、多額の売却損あるいは償却を必要としてまいりまして、この場合には国債を扱ったことあるいは持っているということが金融機関の収益を大きく足を引っ張るという事態もあったわけでございます。今後もそういう事態も起こり得ることだと思います。
今後の見通しといたしましては、基本的には金利の動向次第ということだろうと思いますが、私どもといましましては、金利の極端な上昇によりまして金融機関の経営の安定性が損なわれないということを切に希望しておる次第であります。
それからその次のいろんな手数料の問題でございますが、銀行の手数料収入といたしましては、為替の手数料、それから有価証券の引き受け手数料、それから貸し金庫の手数料あるいは保証料、それから外国為替関係の手数料というようなものがございます。そして、この手数料収入の収益に占めるウエートでございますが、経常収益から見ましたウエートは三%程度でございまして、まだ大変低いところでございます。いわゆる経常利益という数字がございます。これは一切合財の収入と費用の差でございますが、それから申しますと四〇%ぐらいございますが、経常収益の中のウエートは三%程度でございます。
それから手数料の採算につきましては、詳しい試算がございませんけれども、例えば手数料の中の為替手数料をとりましても、コンピューターの費用だとか、あるいは人件費、それから物件費等コストを勘案いたしますと、現在赤字状態でございます。銀行といたしましては、合理化、効率化に一層努力するつもりではございますけれども、今後はサービスの対価といたしまして採算割れがずっと続くということではなく、受益者の方々には適正な負担をお願いするという方向が我々の希望でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/36
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037・横田良男
○参考人(横田良男君) まず、国債の収入でございます。国債いろいろありますけれども、長期債だけに限って申し上げますと、証券界全体の長期債の引き受け手数料収入というのは昨年度百六億五千万円でございました。このうち私どもの会社の受け取った手数料でみますと、経常収益の三%前後になるかと思います。
それから二番目の収入源としては既発国債の売買でございますが、これの値ざや——手数料という形じゃなくて、上場国債の売買は手数料でございますけど、大部分は場外の取引によりまして値ざやで利益になったとか損失になったとか言うんですが、これはそのときそのときの債券市場の状況、あるいは手持ちのコストによりまして利益になることもあり、損失になることもある。特に国債だけに限って昨年幾らであったかということは、これも計算しておりません。ただ、割と債券関係で利益が上がったのはむしろ外債、外国の債券を取り扱って上げた利益の方が効率がよかったと覚えております。そんな程度でよろしゅうございますか。
それから後の所得階層別消化分布でございますが、今手元にはその統計がございませんので、後ほど貯蓄増強委員会でつくった資料があるはずでございますから、お届けしようと思いますが、意外に低所得の投資層もあったように覚えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/37
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038・栗林卓司
○栗林卓司君 特例債の借りかえ禁止問題についてまず石参考人にお尋ねをしたいと思います。
借りかえ禁止というのは、マクロ的に見ると、ナンセンスだとはおっしゃいませんでしたけど、むしろばかばかしいことであって、かえって弊害が大きい。全く同感であります。だけれども、これまで政府がたびたび借りかえ禁止と言い張ってきたものですから、じゃ、やってごらんという格好で来たわけです。
ただ、借りかえ禁止ということで政府が言い張ってきたおかげで大切な議論が実は落ちてしまった。というのは、借りかえをしますと残高が膨らんでくる、この残高をどう管理するのかという問題が議論されずに来てまいりました。今回借りかえ禁止が削除されるということになって、ではそれをどうするかということが歯どめ論として今ここの重要課題の一つになっておるんですが、先生は、四条債と同じような扱いはまずかろう、何がしか短縮する方向で制度を考えるべきではあるまいかとおっしゃっておったんですが、具体的に言うと、四条債は六十年ですが、一体どんな格好で特例債の残高というのを縮小していくべきだとお考えになっているかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/38
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039・石弘光
○参考人(石弘光君) 具体的な私自身のルールがあれば一番簡単なお答えになろうかと思いますが、どうも四条債とは違うよというだけしか先ほど申しておりませんで、これから財政当局その他関係当局が協議して決めるべきルールではないかと思っております。ただ、国債の負担が世代間に及ぶか及ばないかといったときには、やはり特例公債か四条公債かというのは非常な決め手になる。これは物的資産があるかないかということが一つの問題でございますが、そういう点から考えますと、六十年という物的資産の償還期間を持っておりまする四条債に比べれば、特例債というのは違うんだという点をまず認識して、恐らくそのうちの二分の一とかというような、そういったような、これまた腰だめ的でありますが、ルールをつくるほかはないのではないかという感じがいたしております。しかし、そうは言っても、これが実現できるかどうかというのは、ひとえにそのときの財政状況でございますから、したがって今回の法律に書いております、できる限りやらないという努力規定をとりあえずにしきの御旗にするほかはないんじゃないか。はなはだはっきりしたお答えができないのが残念でありますが、そんな印象でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/39
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040・栗林卓司
○栗林卓司君 横田参考人は、特例債の借りかえ禁止を削除することは当面やむを得ないと、当面と言葉を足して先ほどお述べになりましたけれども、ただ特例債の不健全性に照らして当面やむを得ないというお気持ちが当面であって、業界として眺めてみますと、借りかえ禁止が外れるというのはむしろ歓迎すべきことではないんでしょうか。市中消化能力以内であれば借換債の発行はできる、これによって公社債市場は育つわけでありますし、しかも十年の既発債が今市中流通しているわけですけれども、来年に満期が到来する十年物というのは、実情は一年物の短期国債と同じ格好で市中流通しているわけですね、利率は市場金利だと。それが償還されて借換債発行ということになりますと、借換債は、これは言われなくたって短期にならざるを得ない、条件は市中に近寄らざるを得ない。
そこで従来、かねての御主張でありました発行の実勢に従うとか、あるいは多様化とかという問題が借換債問題をてこにして促進されるという意味ではむしろいいことではないんだろうか、そう考えた方がむしろ間違いがないんではないか、私はこう思うんですが、お立場からして、率直に申し上げてどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/40
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041・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
借換債も、投資家から見れば同じ国債でございまして、投資物件として優良な物件であるということは言えますね。そういう意味では我々の公社債の営業の対象になるわけでございます。それは確かでございますが、しかし国債が、借換債を含めまして、どんどんふえていくというような状況は、国全体として見ましていいことではない。外国から見られましても、日本全体の経済あるいは財政、金融の健全性を疑われるということで、ひいては証券市場にも、外の評価が、国全体の評価が変わってくるということで余りいいことではない。そういうふうに受け取られ、我々の営業にもロングランでは余りよくはないというふうに判断いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/41
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042・栗林卓司
○栗林卓司君 証券に対する信頼性という点で考えますと、定率繰り入れを三年引き続いて停止しているんですが、これはもう何としても避けなければいかぬ、今のお話を延長してまいりますと、そういった御議論になるんでしょうか。
というのは、実はこれまで財政当局と議論しておりまして、定率繰り入れをするためにまた赤字公債を出すんじゃかなわぬという気持ちが強いんですが、むしろ、そのプライオリティーから言うと、定率繰り入れというのは非常に優先度が高い、したがって、何としてもそれは繰り入れすることが前提であって、まずその債券としての信用度を確保してもらいたい。それが結果として特例債の増発につながったとしてもやむを得ないではないかというお立場にまでつながるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/42
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043・横田良男
○参考人(横田良男君) なかなか難しい御質問ですが、定率繰り入れは継続していただいた方が形としてはよろしいんですけれども、実態からいきますと、おっしゃいましたとおり、そのために赤字国債がふえるということもこれは好ましいことではないわけでございますが、できれば定率繰り入れが継続される方がいいのであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/43
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044・栗林卓司
○栗林卓司君 最後に山田参考人にお尋ねしますけれども、銀行を金融機関として眺めますと、確かにマクロ的に見ると借換債の発行というのは中立的なんですけれども、たびたびお話しになりましたように、満期償還を受け取る人と借換債を買う人というのは同じではないではないか。この問題を一身に銀行が抱える格好になるわけですね。長くは申し上げませんけれども、だんだんと考えてまいりますと、結局、今のシ団引き受けという仕組みそのものがもう成り立たなくなってきたんではないか。シ団引き受けというのは、ずばり言うと、市中金利よりも安い金利で、長年深いつき合いなんだから出せやという御用金思想が根底にあるんだけれども、そういったことではやっていけなくなってきた。それを守ろうとすると、おっしゃるように金融機関の資金吸収力を強化してもらいたいということになるんですが、資金吸収力強化と言ったって、片一方では、債券の方は市場実勢にどんどん近づいていく、しかも発行は多様化する、そうなりますとなかなか難しくなる。
そこで、近い将来の話として、国債発行というのは市場に発行しろという形に近づいていかざるを得ないんではないか、むしろそれがこれからの銀行としての立場ではないか、そんな気がするんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/44
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045・山田春
○参考人(山田春君) シ団というものが国債の新規発行のときから存在いたしまして、これが我が国の国債発行の一つの重要なテクニック、手段として今まで定着してきているわけです。そして比較的うまく、時には外債というようなこともございましたけれども、これは一種の金利機能が働いているということだったと思います。このシ団の問題は、確かに現在中期債あたりは原則として公募でやっておりますから、公募でやる国債発行もあるし、それからシ団を通じての国債発行も出て、両方のあれでやっているわけでございますけれども、この問題につきましては、現状において、それでは全部公募に持っていってうまくいくかといいますと、必ずしもそうではないだろう。シ団を使ってやる金融のやり方は間接金融でございまして、公募による直接金融だけで全部がうまくいくということは、私は現状においてはまだ困難であろう。したがいまして、今この二本立てでやっているというやり方はしばらく続いていくんではなかろうか。
それから借換債につきまして、別のシ団をつくったらどうだろうというような考え方もあるようでございますけれども、我々の関係者の中ではそういう意見はまだ出てきていないということでございます。したがいまして、とにかく、先ほども申しましたように、満期償還で政府から払われる資金が、金利機能を通じまして円滑に借換債の再投資に向かうようにいかに誘導していくかということが当面のポイントでございまして、そのためには発行条件を市場の実勢に即して決定をしていくということが円滑な償還のための大前提であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/45
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046・青木茂
○青木茂君 時間がございませんから、一方的にしゃべって、お一人お一人、一つずつ御答弁を願いたいと思います。
私ども、国債というのは、四十年以降の国債の歴史というのは、もう全く附則の本則化というのか、ただし書きの本則化というのか、どんどんどんどん例外が本物になってきて、これはある意味においては財政節度放棄の歴史であり、僕は、政策的に国民の国債不信感を誘導しているような政策の連続だと思っています。大体、四条債自体が経済の中の例外であったはずだし、特例債は国債の中の例外であったはずだし、五十九年度ゼロもだめになっちゃった、六十五年度ゼロもだめらしい。予算繰り入れ、剰余金繰り入れ、さらに定率繰り入れも皆だめだ。どうなっちゃうんだろうか。つまり国民が国債に対する信頼感をどこで持つのか。今や特例債借りかえがまさに一般論化しようとしているわけですね。
こういう例外がどんどんどんどん本則になってくると、今までは私ども絶対大丈夫だ、こんなことは絶対あり得ないと思っていた日銀の国債全面引き受けのカルテが見えてきた。これは日本経済にとって大変なことになるんじゃないかという心配が非常に強いわけなんですよ。こうなっちゃったのも、私は、当局が財政再建のスケジュールとプログラムをきちっと示してステップ・バイ・ステップでみずから実行してないということと、それから歳出カットがかけ声だけで実質はゼロ方針だということ、あるいは脱税の吸い上げが全く不十分だということ、いろいろ原因はあると思います。
その立場で御質問申し上げますけれども、山田先生に、極めてこれは常識的な質問なんですけれども、今はいいかもしれないけれども、民間の資金需要がこれから高まってきた場合、国債によって民間金融が圧迫されまして、それが景気の足を引っ張るということに金融界は何か心配していないのかということが一つ。これをお伺い申し上げたいんです。
それから横田先生に、仮に日銀の全面引き受けというようなことが出てきた場合には国債は紙くずになってしまいますね。そういうものに対して一体証券界は全く安心し切っているのかどうかという極めて常識的な御覧間を申し上げます。
それから第三に石先生に、これは私も旧学者で、先生は現役の学者だからその立場で申し上げますと、私のドイツ人の友人が、日本が自由諸国の有力な一員であって尊敬すべき友人であるということはみんな疑っていないけれども、日本が自由経済の国だということを信用しているドイツ人は一人もないというようなことを言いましたけれども、まさにいわゆる官僚統制というのか、いろいろな規制の日本ほどあり過ぎる国はない、補助金にしろしかり、特殊法人にしろしかりですね。それが僕は財政赤字の実は原因になっているんじゃないか。そうすると、私は歳出カットが大変及び腰であって、その及び腰をそのまま残しながら大型間接税へ持っていくことは賛成とは言えません。賛成とは言えませんけれども、あえて言えばこういうことは暴論でございましょうか。EC型付加価値税を前提といたしまして、税率は〇・一%から一%の間、それから三年ないし五年の時限立法というEC型付加価値税がもし出た場合、これは付加価値税からの税収は期待できません。期待できませんけれども、少なくとも脱税の吸い上げにはかなりの効果を及ぼすのではないか、クロヨン解消にかなりの効果を及ぼすんではないかというような考え方が私自身の腹の底にあるわけですけれども、めちゃくちゃな暴論がどうかというようなことをお伺い申し上げたい。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/46
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047・山田春
○参考人(山田春君) 今お尋ねの件でございますけれども、我々金融界におきましては、これまで百兆円を超える残高の国債が出ていて、なおかつ余り物価が上がっていない、何とかこれを消化しているということで、今までは何とかやってきているわけです。その原因は、私どもは手前みそかもわかりませんけれども、日本の国民が非常に高い貯蓄率を持っているということ。それから国際競争力のある経済を構築いたしまして、国際収支が大幅な黒字を出している。いろんな条件が相まちまして、現状の大きな百兆円を超える国債を今までは何とか順調に消化し、それが経済に大きな影響を及ぼさないように上手に運営してきているということであろうかと思います。
それじゃ将来も大丈夫かと申しますと、必ずしも今までよかったから将来いいという保証はないと思っております。特に、今先生がお話しのございましたように、いわゆるクラウディングアウトが起こる可能性はどうかという面につきまして、これは情勢によっては起こる可能性もあり得るというふうに考えておかなくてはいけないんではないか。そしてもしそういう場合にこれを回避するために金融緩和政策をとるということになりますと、恐らくそれはインフレにつながっていくという心配がございますので、そのときにクラウディングアウトが起こりますと民間への資金供給が細るということになりまして、同時にその場合は貸出金利が上がってくるというふうなことで、国民経済あるいは民間の経済界の活動を阻害するということは当然論理上起きてくる心配があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/47
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048・青木茂
○青木茂君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/48
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049・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
国債の日銀全面引き受けという事態になったらどうなるかという御質問であったわけですけれども、私どもは日銀の国債全面引き受けはあり得ないと思っておりますし、また仮にそういう動きが出たとしても、証券界はもちろん金融界全体としまして、また広くは国民全体としてこれを阻止する、そういう覚悟でもっていかねばならぬ。戦前の苦い経験もございますし、それから戦後四十年
に国債発行が再開されてから既にもう二十年近くたっておりまして、その間に日銀の引き受けというようなことは一度も声となってあらわれておりませんので、今後も財政金融当局の財政再建への節度ある政策というものが期待されると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/49
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050・青木茂
○青木茂君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/50
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051・石弘光
○参考人(石弘光君) 三、四年の時限つきでEC型VAT、付加価値税を入れてはどうかという大変ユニークな御提案、興味深く思っておりますが、今とっさにどういう判断をするかというので、深く実は考えてお答えしなきゃいけないところがどうも議論が雑になるかと思いますが、次のような印象を持ちました。
ねらいは、クロヨン防止である、あるいは脱税防止であるということでありますが、それならば僕は他のもっと有効な手段がいろいろある。例えば税務査察を強化するなんとかという方が恐らく脱税防止の方には直接的な効果があるだろうと思う。それから恐らく数年間でこの税制をやめてインボイスなど入れるということになりますと、納税者には合理的期待というのか、ナショナルエクスペクテーションというのが働きます。そうなりますと、二、三年じっと何とかしてもすぐ後はもとに戻るよということになりますと、この制度の導入がどれだけ効果があるか、僕は極めて疑問があると思います。三、四年の時限立法というのは、ねらいは臨時的な財源確保というなら、僕はそれなりに意味があると思いますが、どうもクロヨンの方になりますと今言ったような疑問が出てくる。したがって僕は、これを入れるに当たっては大変な労力を税務当局、財政当局あるいは国民の方、納税者の方が持つと思いますので、やるなら恒久的なことにしないと労多くして効果が少ないという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/51
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052・青木茂
○青木茂君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/52
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053・野末陳平
○野末陳平君 まず第一問は、三人の参考人の方にお願いしたいと思うのですが、財政再建とかあるいは財源の確保などを議論する場合に、必ずいつも決まって不公平税制という言葉が出てくるわけですね。石先生はそれは今までうまくいっていなかったようなことをちらっと先ほどおっしゃいましたけれども、ひとつ皆さんのそれぞれのお立場で、個人的な意見で結構なんですけれども、どうしても是正してほしい不公平税制というのは何と何が今残っているのか、その辺のことをまずひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/53
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054・山田春
○参考人(山田春君) 突然のあれでございますから私の個人的な感想でございます。
不公平税制の中に、いわゆるクロヨン、トーゴーサンというものがある、確かにそれもそうだと思います。それから従来は預金利子課税も不公平税制だというふうにその仲間に入れられておったわけでございます。あるいは医師優遇税。
その中で、所得税の把握が不十分のためにクロヨンとかトーゴーサンとかいうことが出てきまして、あるいはいろいろ要因もあるかと思いますが、この点につきましてはこれからもしっかりやっていただいて不公平を是正していただかなくちゃいけないという考え方を持っております。
それから預金利子課税につきましては、これは確かに収入はあるわけですから、それに対して税金をかけなくてはいけないという考え方もございますけれども、預金利子に対して同じように税金をかけるということについては私は疑問があるという説を従来からとっておりまして、そうかといって全部あれは無税にしていいのだとまでは申しませんけれども、預金の利子につきましては相当の配慮を加えながらやっていっていただかなくてはいけないという考え方を持っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/54
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055・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
不公平税制ということですと範囲が大変広うございますので、私どもの証券業界にかかわるところだけで限って申し上げますと、今山田参考人からもありましたように、ややもすると利子配当関係の税制が全体の不公平税制を招いているというようなことの論議があるわけでございますけれども、有価証券というものが投資家にとってみましては投資対象であり、資金の運用の手段であり、それから資金の需要者からは調達手段である。そういう意味から国民経済にとって大変重要な役割を果たしているという面を同時にお考えいただいて、利子配当、有価証券関係の税金の大きい意味での公平であるか不公平であるかということをお考えいただきたいとかねがね思っている次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/55
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056・石弘光
○参考人(石弘光君) 二つあると思います。前提条件は、所得税はあくまで根本的な税として日本の財政に置くという建前で議論いたしますと、第一点は税務執行上の問題にあるのでありまして、俗に言われる所得捕捉の業種別格差、クロヨンという現象はやはりある。全滅させることは恐らく非常に難しいと思いますし、ほかの国に比べてクロヨンという現象の九を説明したら、おまえの国は大変な国だということを言われたのを覚えておりまして、大体どこの国でも五か六になればいいやなんという話も聞いたこともございます。が、差があるのは余りよくないと思っておりまして、といって九を六に下げるという意味ではございませんで、その努力をして、特に農業課税等々ではもう少し制度的に大いに完備する必要があろうと思います。
それから第二点は、所得税を取る以上、資産所得というのを特に優遇するロジックは見当たらないのでありまして、この面にあらわれております利子配当あるいは土地等々のキャピタルゲイン、この辺をもう少しちゃんと捕捉するべく制度的な担保がない。私は前からグリーンカードが必要であるという主張を述べておりまして、これがなくなったことについてかなり挫折感を持ったのでありますが、そういうかわるべき何か公平に執行するという制度面の保証なり担保をつくられてないというのが僕は不公平の元凶であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/56
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057・野末陳平
○野末陳平君 そこで山田参考人と横田参考人にお聞きしますが、今の業界の立場からおっしゃれば、当然そのようなことはわかりますが、しかし先ほど石先生のお話にも出ましたマル優の問題になりますが、お二人は恐らく現行のままでやってほしいとお考えでしょうが、しかしこれがどうしても現行のままでは無理だということになった場合、そういう前提で次善の手直し、次善の策としてはどんな手直しならば許容できるとお考えになっているのか。いろんな案が新聞紙上などに出ているので、その辺をひとつ頭に置いて御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/57
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058・山田春
○参考人(山田春君) じゃマル優、預金利子課税の問題についてお答えをいたします。
先ほどから私、時々触れておりましたけれども、これから金融の自由化が起こり、それから国債の借りかえの問題が起こり、いろんな面で金融界におきましては、資金吸収力ということが非常に大事になってまいる時期でございます。そのときに、従来行われておりました貯蓄奨励政策を大幅に変えるということになりますと、資金吸収力の面にさらにインパクトを与える心配があるという、この三つの原因が一緒に出てこられたのではとても大変だという感じを持っておるわけでございます。
したがいまして、従来の制度の中で貯蓄の奨励策というものは、依然として我が国の経済におきましては、これをぜひひとつ維持しておいていただきたいということが第一点でございます。
それから第二点といたしまして、制度をいじることによりまして資金のシフトが不必要に起こるということがあってもらっては困るということでございます。この前のグリーンカードのときに、これはちょっとした面で国民が民間よりは郵貯の方が有利だというふうに考えまして、何兆という金額が郵貯の方ヘシフトした、それも半年ぐらいの間にシフトしだというような実例もございますし、ですから金融資産がシフトするようなやり方はぜひ避けてもらいたい。
それから第三番目に、国民にいろんな点で手数をかけ、それから金融機関も税務署もやたらに手続がうるさくなり、あるいは事務的に負担が多くなるというようなやり方に変えていただくことはぜひ避けていただきたい。
それから第四番目に、郵便貯金との間には絶対にイコールフッティングにしておいていただかないと、また二の舞になる心配があるということから、何とか、現在の制度の中で確かに乱用がないとは申しませんから、郵貯につきましても、民間につきましても、乱用を防止する手段を講ずる必要があろうかと思いますけれども、貯蓄優遇制度自体をやめてしまうとか、あるいは削減するとか少なくするとかいうような方策はとらないでいただきたいというのが希望でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/58
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059・横田良男
○参考人(横田良男君) お答えします。
マル優制度というものは非常に長い間、国民になじんできて定着しております。それから、今もおっしゃられましたとおり、投資資金といいますか、貯蓄資金というのは大変一面では憶病なものでございまして、制度が急激に変わると動揺いたしまして、大きなシフトになって混乱を招くということがございます。ただいま政府税調で八月までの審議で何らかの解決策を御検討になっていると聞いておりますけれども、そういったような多面的な角度から慎重な御配慮をお願いしたいと思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/59
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060・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X01819840516/60
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