1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月十七日(火曜日)
午前十時二分開会
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委員の異動
六月二十七日
辞任 補欠選任
稲村 稔夫君 鈴木 和美君
七月十七日
辞任 補欠選任
鈴木 一弘君 藤原 房雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 伊江 朝雄君
理 事
岩崎 純三君
大坪健一郎君
藤井 孝男君
竹田 四郎君
塩出 啓典君
委 員
梶木 又三君
河本嘉久蔵君
倉田 寛之君
中村 太郎君
福岡日出麿君
藤井 裕久君
藤野 賢二君
宮島 滉君
矢野俊比古君
吉川 博君
赤桐 操君
鈴木 和美君
丸谷 金保君
多田 省吾君
藤原 房雄君
近藤 忠孝君
栗林 卓司君
青木 茂君
野末 陳平君
衆議院議員
大蔵委員長代理 中村正三郎君
大蔵委員長代理 伊藤 茂君
大蔵委員長代理 坂口 力君
大蔵委員長代理 米沢 隆君
国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
政府委員
大蔵政務次官 井上 裕君
大蔵大臣官房総
務審議官 北村 恭二君
大蔵省主計局次
長 平澤 貞昭君
大蔵省主税局長 梅澤 節男君
大蔵省理財局次
長 亀井 敬之君
大蔵省銀行局長 吉田 正輝君
大蔵省国際金融
局長 行天 豊雄君
国税庁直税部長 冨尾 一郎君
事務局側
常任委員会専門
員 河内 裕君
説明員
経済企画庁経済
研究所次長 吉冨 勝君
通商産業省産業
政策局調査課長 植松 敏君
郵政省貯金局経
営企画課長 山口 憲美君
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本日の会議に付した案件
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(衆議
院提出)
○租税及び金融等に関する調査
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/0
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001・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る六月二十七日、稲村稔夫君が委員を辞任され、その補欠として鈴木和美君が選任されました。
速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/1
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002・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 速記を起こして。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/2
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003・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、提出者衆議院大蔵委員長代理中村正三郎君から趣旨説明を聴取いたします。中村正三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/3
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004・中村正三郎
○衆議院議員(中村正三郎君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。
この法律案は、去る七月十一日、衆議院大蔵委員会において、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の四党派により起草し、全会一致をもって成案とし、これを委員会提出の法律案とするに決したものであります。
御案内のとおり、さきに政府提案による所得税法等の一部を改正する法律案の成立により、配偶者控除の適用対象となる配偶者の給与の収入限度額が八十八万円に引き上げられたところでありますが、その後いわゆるパート主婦の問題をめぐって関係各党派間において協議が行われ、その結果を踏まえて、その限度額をさらに二万円引き上げて九十万円とするものであります。
すなわち、昭和五十九年分以後の所得税について、所得税法本則で定める給与所得控除の最低控除額五十五万円を五十七万円とする特例を定めるとともに、これに伴う所要の調整措置を講ずるものであります。
なお、本案による国税の減収額は昭和五十九年度において約百五億円と見込まれるのでありまして、衆議院大蔵委員会におきましては、本案の提出を決定するに際しまして内閣の意見を求めましたところ諸般の事情に照らしてやむを得ないとの意見が開陳されました。
以上が、この法律案の提案の趣旨及びその概要であります。
何とぞ速やかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/4
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005・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/5
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006・竹田四郎
○竹田四郎君 私に与えられた時間は非常に短いわけですから、ひとつ答弁の方も簡明にしていただきたいと思います。
まず、今度の主婦のパートタイマーの減税、最低五十七万円プラス基礎控除で九十万円というものは、もちろん私どもこれでいいというわけではございませんでして、当然百万円以上を私ども要求してきたわけでありますけれども、今までの衆議院における折衝の経過ということでこの法案には私ども最終的に賛成をするわけであります。
しかし、この衆議院から送られてまいりました所得税減税は、私は、当然これは所得税法本法の中で決められるべきだと、こういうふうに思います。別にパートの主婦だけが対象になっているわけではありませんでして、その他の人たちも当然これの対象になっているわけでありますから、そういう意味では租税特別措置法に規定するのではなくて、所得税法に規定すべきである、こういうふうに思います。どうして租税特別措置法にしたのか、この辺をひとつ明らかにしてほしい、このように思います。もともとパートの人たちだけということならばあるいは特別措置ということにもなろうかと思いますけれども、そういうわけではございませんので、これは本法に入れるべきである。そうしないと租税自体が非常に複雑な体系になる、こういうふうに私は思います。やはりわかりやすい体系にすることが必要であろう。こういうふうに思いますが、その辺が非常に複雑にむしろなってしまうということでありますから、どうして租税特別措置にしたのか、この辺を一点として御質問をいたします。
その次は、当然付表が一緒に提出されるのが私は普通だろうと思いますけれども、細かく一つ一つの条文を読んでいけばわかりますが、これも明瞭簡単という意味では当然付表を付するべきであったと思いまするけれども、その辺が付されていない理由、その辺をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/6
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007・中村正三郎
○衆議院議員(中村正三郎君) これがどうして租税特別措置法で措置されたかということでございますが、その前にこの法律案をつくるに至った経緯を御説明させていただきたいと思います。
これは三月の八日に幹事長・書記長会談、与野党の自民党、社会党、公明党、民社党でございますが、会談が開かれまして、その席におきましてパート減税ということが話題になりました。これにどうやって対処すべきかという議論もあったわけでございますが、いろいろパートだとか内職だとか問題がございまして難しい問題を含んでいるけれども、とりあえずこの給与所得者の給与所得控除最低額の引き上げてこれに対処しようという話し合いがなされました。そのときに、これは一年こっきりの措置では困るぞという話が一つと、それから従来やったことがあるわけでございますが、戻し税方式でやっては困るぞという話がございました。また、さきに政府提出の所得税法改正が行われたばかりでございますから、その所得税法の改正のさらに上乗せをやるんであるから、そこでいろいろな問題が起こりやしないかというような議論もございました。
それを受けまして、三月の十三日に与野党の国会対策委員長会談、これも自社公民でございますが、そこでこの内容をきちっと整理をしたわけでございます。そこで、給与所得控除制度の基本的枠組みを害さない範囲内においてその引き上げ方について協議し、その結果を議員立法により措置する、引き上げ幅は二万円とする、議員立法は今国会中を含め年内成立を期するということで合意がなされました。それに基づいてこの立法措置をとってきたわけでございます。そして、税の体系から考えましても、すぐこの本則に入れるのはどうか、これはいろいろ検討して、将来改正があったときに入れた方がいいか、そういうようなこともございまして、租税特別措置法で対処する。またこれから、先生御存じのとおり、付表等の改正をやれば、コンピューターの打ちかえとか、そういうことで大変な手間がかかるという実際仕事上の問題もございまして、租税特別措置法でそうした付表の読みかえ等を行うことを規定して租税特別措置法によって対処したわけでございます。
一言、ここに社会党さん、公明党さん、民社党さんもいらっしゃいますので、付言させていただきますが、衆議院大蔵委員会としては、しかしいろいろな経緯はありましたが、でき得れば可及的速やかにそういうチャンスがあれば所得税本則に入れてもらった方がいいであろうという申し合わせは理事会で行っていることを申し添えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/7
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008・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 付表の問題についての答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/8
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009・中村正三郎
○衆議院議員(中村正三郎君) 付表の問題については、技術的な問題を含みますので、大蔵省から答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/9
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010・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 今回の議員立法は、先ほど委員御指摘のありましたように、租税特別措置法の一部改正という形で御提案になっているわけでございますが、その内容を拝見いたしますと、別表七の付表の改正は行われていないわけでございますけれども、必要な部分に関しては読みかえ規定が盛り込まれておるわけでございます。したがいまして、別表の改正がないという点で非常にわかりにくいという御指摘もございましたけれども、この議員立法の御処置を受けまして、執行の実態といたしましては、この読みかえ規定を織り込んだところのわかりやすい付表、年末徴収用の源泉徴収表を国税庁の方で作成いたしまして、源泉徴収義務者の方にそれを伝えるという措置を予定いたしておりますので、実際問題としてはそんなに混乱は起こらないということになろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/10
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011・竹田四郎
○竹田四郎君 お二人の御答弁、内容はわかるんですがね。所得税で、しかも今度のこの措置で対象になる人というのは、税金にはどちらかというと余り今まで携わってきたことのない人が圧倒的に多いと思うんですよ。そういう意味では、もっとわかりやすく税制度をするのが民主的な税制度の基本ではないだろうか、こういうふうに思います。きょうはそれ以上私は申しませんけれども、しかし、これを早く本法に繰り入れる、あるいは付表も、なるほど一々文章を読めばわかりますよ、文章を読めばわかるんですけれど、さてこの難しい文章を普通の人が読んですぐわかるかというと、徴収義務者はわかるかもしれませんが、それから先というのはなかなか私はわからぬと思うんですよね。そういう意味では、簡単明瞭にわかるように、法定主義の精神にものっとってひとつやっていただきたい、こういうふうに思います。
二番目は、これがこういうふうになってまいりますと、前々から議論されてきたわけでありますけれども、これは特に大蔵省にお願いをしたいわけでありますが、内職者と主婦のパートと一体どれだけ実際上違うかというと、これはほとんど違いはないと思うんですね。けれども、税法上は非常に大きな差異があるわけでありますけれども、これも当然直すべきである、こういうふうに思います。今のところは、私ども承っているところによりますと、パートと同じくらいの金額までは認めてやるようにという行政指導をなさるつもりのようでございますけれども、そういう形でいくべきではなくて、こちらの方も法律を変えることによって何らかの形に直すべきじゃないだろうか、こういうふうに私は思います。そういうことについて、今後の大蔵省の考え方、これはもう前々からいろいろ質問も出ておるし議論もされているところでありますけれども、そういう点は、公平という立場から何らかの形で公平感が出てくるような制度に直していく必要があろうと思うんですけれども、これは主税局長にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/11
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012・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) パートの問題、いわゆるパート主婦と内職とのバランスの問題は、ただいま委員の御指摘になりましたように、従来からしばしば当委員会においても御議論を賜っているところでございます。これもまた毎度私の方から申し上げているわけでございますけれども、いわゆるパート主婦というのは税法上は雇用契約に基づく労働の対価ということで、その対価は給与所得として扱われている。一方、家庭内で労働に従事される方は、もちろん態様によりましては、執行の実態といたしまして給与所得として扱わせていただいているようなケースもございますけれども、自己計算で労働といいますか事業をしておられる限りにおいては税法上は事業所得なり雑所得として扱われる。そういたしますと、給与所得の場合はいわゆる給与所得控除、概算的な控除が働きますけれども、事業所得なり雑所得でございますと、収入から経費を差っ引いて所得を算出するという通常の格好で課税所得が算出される。これはまあやむを得ないことでございますし、税制の立場から言いますと、それはそれなりにきちっとした理屈はあるというふうに考えておるわけでございます。
ただ、社会経済的な実態におきまして、労働に従事される婦人の税負担とのバランスという観点から言いますと、いろんな議論があるということは、これは私ども承知しておるわけでございますが、現在の所得税法の枠組みの中では、制度論として、このパートの問題と家内労働者の問題、いわゆる内職の問題というのは、これは区分して取り扱わざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
後ほどまた大臣から御答弁があるかもわかりませんけれども、今後の問題といたしましては、私ども税制当局としては、パートの問題、家内労働の問題も含めまして税法の世界だけで完結したような結論を出すのは、今回の御議論の過程を見ましても非常に難しいのではないか。つまりパートの問題なりあるいは内職も含めました婦人労働というものを労働法制上どう位置づけていくのか、そこをきちんとしていただきませんと、なかなかこれを税制の世界へ持ってくるというのは非常に困難な問題があるというふうに痛感をしておるわけでございますけれども、この基本的な問題については、もちろん種々御議論のあったところでございますから、今後とも引き続き税制調査会等でも御議論を賜りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/12
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013・竹田四郎
○竹田四郎君 なかなか税法だけではというお話はよくわかるんですけれども、しかし、これからニューメディアとかいろんなことになりますと、給与所得という形になるか、あるいは家庭で仕事をしてそれによって収入を得るという婦人というものが非常にふえてくると思いますね。でありますから、当然それは場所が違うだけという部面も出てまいりますから、物の考え方はいろいろあるにしても、やっぱりバランスがとれるようにしていかないといろいろ将来問題が起きてくるだろうというふうに思います。
そういう意味ではひとつ十分御検討をいただきたいと思いますけれども、大蔵大臣、最後に、先ほど私が申し上げました本法繰り入れの問題と今のこの問題、そうした問題をあわせてひとつ御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/13
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014・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 竹田さんは何もかにも御存じの上でのことでございますが、十一月の「今後の税制のあり方についての答申」に今いろいろ御議論いただいたようなことが書かれた後、「以上の諸点を勘案すれば、いわゆるパート問題については、当面は、給与所得控除と配偶者控除の適用限度額の組合せという理行制度の枠内で対処していくことが適当であると考える」と。あくまでも「当面は」というのは苦心して使われた言葉のようでございます、後から聞いてみますと。
したがいまして、私は、今も御指摘がありましたが、常日ごろ大蔵省部内でも言っておりますのは、本当に働く場所が違うだけという形態のものもありますし、あるいは材料とかそういうものは全部自分で用意して自分なりの完成品だけ持っていくというものもありますし、したがって労働行政の中でも位置づけというものを行っていただかなきゃならぬじゃないかな。それはどこの場で検討するかということになると議論のあるところでありますが、一つは政府部内で、これは税制調査会もございましょうしあるいは労働省等々もございますが、もう一つは専門的に議論をいただいておる両院の大蔵委員会なども、まあ私の方からそういう干渉がましいことを申し上げる考えはございませんが、その辺実態を割合みんな選挙で出てきた者はよく知っておりますから、議論を詰めてみるのも一つの方法がな、こういうふうな感じがしておりますので、御趣旨を体してこの内職問題、パート問題等についての検討はこれからも続けていかなきゃならぬ課題だと思っております。
それから本法に入れるという問題でございますが、先ほど申しました「当面は」ということが私なりに頭にひっかかる一つの点でございます。各種控除全体をにらんで控除額というものを決めておるということでもございますので、例えば先般議了していただきました税法改正のときのような、ある意味において本格改正といいますか、そういうものが行われるときに他との整合性をも考えて本法に入れるのが妥当なのかな、こういう感じもないわけではございません。したがって、両院でもいろいろ議論が行われておりますことを体して、これも検討課題として頭の中へしっかり入れさしていただいておくという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/14
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015・竹田四郎
○竹田四郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/15
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016・塩出啓典
○塩出啓典君 それでは、今竹田委員からいろいろ質問のありましたいわゆるパート収入者と内職収入者との不公平是正の問題でありますが、現実問題として、第一線の税務署等においては、いわゆる内職者に対しても、形の上から言うと余りパートと変わらない、そういうことで現実的な対応の面ではややパート収入者と同じように処理しているところもかなりあるんではないかと、このように思うわけでありますが、そういう点どのようにやっておられるのか、これを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/16
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017・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 具体的な税務署等での扱いの問題でございますので、事務当局から正確にお答えをいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/17
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018・冨尾一郎
○政府委員(冨尾一郎君) ただいまパートとの比較で内職者の税執行上の扱いについての御質問でございましたが、私どもとしては、基本的には先ほどから申し上げておりますようにパートは給与所得でございますし、内職につきましては、あるいは給与所得と見られる場合もございましょうが、大部分は先ほど主税局長から申し上げましたように雑所得もしくは事業所得でございます。そういう基本的な違いがございます。雑所得あるいは事業所得という形になりますと、これは当然収入から必要経費を引くという形になるわけでございます。ただし、その必要経費につきましては、その内職の実態、まあ内職には随分いろいろございますけれども、この実態等を勘案いたしまして無理のない扱いをするということにいたしております。また仮に内職的な形態でございましても、例えば源泉徴収票があるという形で雇用関係というものが推認できる場合には、給与所得として扱うということをいたしまして実態上は扱っている状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/18
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019・塩出啓典
○塩出啓典君 私は、税法というのは全国で取り扱いに差があってはいけないと思いますし、そういう意味で、内職収入者とパート収入者との非常な国民的感情から見ての不公平感というものはもうずっとこの当委員会でも問題になってきておるわけであります。そういう意味で、政府としても速やかに納得のいくような結論を出すようにひとつ急いでいただきたいと、このようにお願いをいたします。特に、内職収入者等についてもいろいろな条件を設けて、こういう場合はパート収入と同じように給与所得控除を認める、こういうようなことにすればそう問題もないんじゃないか、税収面においてもそう大きな金額にはならないんじゃないかなあ、そういう感じがするんですけれども、何か今までこれが前に進まなかった大きな問題点というのはどういうところにあるのか、この点もお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/19
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020・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) これは先ほど竹田委員の御質問にお答えした点でも触れさせていただいたわけでございますけれども、現行の所得税法の建前から申しますと、いわゆる内職という社会的実態にある方、これは雇用契約に基づく労働の対価というのとは異なりまして、自分の計算といいますか、自己責任で稼得される所得であるという以上はやはり事業所得なり雑所得として扱う。ただ、その場合に、内職という形で事業を行っておられるがゆえに、他の事業所得者と特別の税制上の配慮を加えるべきであるかどうかというそこの辺の論点が、なかなか税制の観点からだけでは割り切りにくい問題を含んでおる。冒頭に申し上げましたように、いわゆるパートと言われる形での婦人労働と申しますか、そういったものも含めまして、一体婦人労働の社会的、経済的実態に着目してこの辺のバランスをどう考えるかという、まずその辺の議論をきちんと整理するということが、税制上のこの問題を受けとめる場合の基本的前提になるのではないか。そこの点が非常に難しいものでございますから、従来この問題たびたび御論議をいただきながら、税制面でなかなか一つのはっきりした方向が打ち出しにくいということになっているのではないかと考えておるわけでご
ざいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/20
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021・塩出啓典
○塩出啓典君 それから大蔵大臣は衆議院の大蔵委員会で、企業が従業員等のために支給する食事代の補助金の非課税限度額を、現在月額二千五百円を三千五百円に、夜食代は二百円を三百円まで引き上げることを明らかにしているわけであります。これは五十年の七月に理行の非課税限度額になってから九年間も据え置かれてきたことになるようでありますが、今後は随時その限度額を見直す考えがあるのかどうか。大体九年間も据え置くというのは非常に実態的にはちょっと筋が通らないと思うんですが、今後のお考えを聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/21
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022・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 食事代及び夜食代の非課税限度額、これにつきましては今後ともその支給の実態等を踏まえて必要に応じて検討を行っていくというのが適当であろう、私も原則的にそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/22
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023・塩出啓典
○塩出啓典君 それから通勤手当の非課税限度額でございますが、これは人事院勧告に基づく通勤手当支給限度額とリンクして最高が二万四百円となっているわけでありますが、こういうものは、私たちの国民の感情からすれば、何も好きこのんで遠方から来ているわけじゃないわけですから、少なくとも支給される通勤手当は、実際にそれだけかかるわけですから全部非課税にすべきではないか、このように思うわけでありますが、これは検討するお考えがあるのかどうか、この点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/23
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024・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 通勤手当は、御案内のとおり、現行の所得税法では、「一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分」、これを非課税とするということになっておるわけでございますが、この背後にあります考え方は、いわゆる出張旅費なんかと違いまして、出張旅費の場合は実費弁償なり、あるいは本来事業主の負担すべきものを当該出張を命ぜられた従業員が立てかえるというような、そういう性格のものでございますけれども、通勤手当の場合は、そういう出張旅費と異なりまして、これは給与であるということでございます。
そういたしますと、給与ということになりますと、本来全部給与所得として課税ということになるわけでございますけれども、所得税法の考え方は、そうはいっても、その職場まで通勤するに必要な、いわば勤務に伴う必要な経費の部分があるだろうという考え方があるわけでございます。一方、従業員側といたしましては、住居をどこに設定するかはいわば自由ということでございますので、考え方の筋といたしましては、所得税法に書いてございますように、「一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分」、したがって、それを超える部分は、非常に理屈の議論になりますけれども、所得処分的な性格と割り切らざるを得ないであろうということでございます。したがいまして、通勤手当全体を非課税とするということは、所得税の考え方からいってなじまないということでございまして、この「通常必要であると認められる部分」としての非課税限度額につきましては、これは各事業所での通勤手当の支給の実態を見ながら適宜従来からも見直しをさせていただいておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/24
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025・塩出啓典
○塩出啓典君 その点はぜひ見直しをしていただきたい、このことを要望しておきます。
最後に、今回の税法改正で七年ぶりに減税が行われたわけでありますが、これは昨年十一月の税調の答申にもありますように、負担の急激な増加やひずみをもたらさないよう社会経済情勢の変化に対応して適宜見直しを行う必要があると、このように述べておりますが、ただ、いつやるかという、この見直し内容や時期については明らかにはなっていないわけであります。しかし今後物価調整程度の減税は定期的にも実施すべきである、これが私は当然ではないかと思うのでありますが、今後大蔵大臣としてこういう物価調整減税、そういうものについてはどのように考えておるのか。毎年は無理にしても、数年に一度はちゃんとやると、こういうお考えはあるかどうか、これを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/25
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026・竹下登
○国務大臣(竹下登君) このいわゆる物価調整減税、この問題でございますが、現下の財政事情というものを考慮いたしますときには、五十九年度税制改正において本格減税をお願いをしたばかりのときに、さらに減税を行う状況には残念ながらないというふうにお答えせざるを得ないと思っております。
で、物価調整減税につきましては、我が国の負担水準というのは、これは主要諸外国に比べますと低いということと、それから物価は超安定という状態でございます。それに一方、財政再建という問題を抱えておりますときに、いわゆる物価調整制度、インデクセーションと言っておりますが、これを導入することを今検討し得るような状態にはないではなかろうか。このインデクセーション制度というものにはいろいろな勉強の材料がございます。
確かに国民のある意味においてはインフレ心理を是認する制度ではないか、それから所得税のみでなく、減価償却からキャピタルゲイン、債務者利益等、インフレによって同様に影響を受けるものについてもインデクセーションを導入しないと逆の不公平が出るんではないか。そういうことでありますので、ある程度の上昇というものは、これは所得が一方またそれなりに上昇してまいりますという傾向等も勘案した場合に、いわゆる物価調整制度というようなものは、現行の所得税法の中では恒常的にそれを取り入れていくということは適当ではないではなかろうかというようないろいろな議論があるわけでございます。
したがって、私どもといたしましては、かなりの予期以上のインフレ率を生じたような場合に、かつて物価調整減税をやったことがございますけれども、一つの恒常化したものではなく、そのときの異常事態に対応するということとしては考え得ることでございますけれども、恒常的な制度としての物価調整制度というものは今日の日本の所得税制の中にはなじみにくいではないか。一方、客観情勢の中では超物価安定、こういうこともあるわけでございますので、このインデクセーションの問題につきましては、これからも本委員会等々でいろいろ議論を重ねていかなきゃならない問題だと思いますが、我が国の現在の取り巻く環境の中ではこれを導入するという環境は今整っておるとは私は思っておらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/26
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027・近藤忠孝
○近藤忠孝君 この法案の基礎にあるパートの問題について大蔵大臣に質問したいと思うんです。税金の問題だけではなくてパート全体ですので、これは国務大臣としての見解をお聞きしたいと思うんです。
バートが大変ふえているということは、 一つは、世帯主の所得だけだけではなかなか生活できない、また一方企業の側では賃金コストを下げるということからどんどんふえて、全体の女子の総雇用者数の二一%にも達しており、しかも大体時間給五百六十円という極めて低い状況ですね。ですから、全体としてこれに対処する必要があると思うんです。我が党ではこれについて「パート労働者の雇用安定と待遇改善のために」という政策を発表しましたが、一つは賃金、雇用条件の改善、二番目には課税最低限の引き上げと社会保険の適用、その一部が今回のこの法案ですが、三番目には雇用の安定、四番目には団結権保障、五番目にはこれらの行政指導と助成などが必要だと思うんです。
今回のようなこういうわずかなパート減税では極めて不十分だと思うんですが、今申し上げたような抜本的対策が政府として必要だろう、こう私は思うんですが、この点についての御見解を伺いたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/27
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028・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 確かに仮称でございますけれども、パート労働法ということでございますね、そうしたものは検討の課題とすべきであるという考え方は私どもにもございます。が、確かにやってみればみるほど多岐多様にわたって難しいなという考えを持っておるわけでございますけれども、そういう勉強はこれからもしていかなきゃならぬ課題だという認識は持っております。
そこで、考え方として、そういうパート労働をなさる方がなぜふえたかという一面の見方としては、多々ますます弁ずるでございますから、世帯主の給与が低いからだ、こういう見方もそれはあるんでございましょうが、ある意味においては、近代社会、なかんずく日本の場合がつてと違っていわゆる育児とかいろんな問題から婦人の方が早く解放されていくという問題と、それからもう一つは知識水準等が男女差のない状態にいろんな分野でなっておる、そういうことと、働きたいという日本人特有の超一流の勤労意欲ですか、そうしたものが複合して社会労働形態の中に入ってきておるなあ、そうしてその方々にとっては時にはまたある意味においては自分の都合によって休んだりする調整機能も働けるという事由もあるでございましょうから、そういう総合的な課題の中にパート労働というものを位置づけてどのようにしていくかというのは、勉強すれば勉強するほどいろんなケースが多くて困る問題もございますけれども、私は現状に即した検討は続けていかなきゃならぬ課題だというふうには思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/28
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029・近藤忠孝
○近藤忠孝君 その一環としてのこの課税最低限の問題ですが、ただ、趣旨説明の中で、内閣の意見としては「諸般の事情に照らしてやむを得ない」、こういうことなんです。大蔵省として今後の問題としてこういう問題に対する積極的な取り組み、課税最低限をもっと上げていくという、その辺についての基本的なお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/29
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030・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 各種控除額というのは、それなりにいろいろなバランスというものがあって今日形成されてきておる。それで、政府意見として閣議決定をして「やむを得ない措置」といいますのは、一つの定型がございまして、いわば予算の中に見積もられ、それを背景とした法律案も予算案も通った後、だから実質的に理論的に言えば歳入減を、今百五億という話がございましたが、もたらすものでございますから、既に稼働しておる予算、稼働しておる法律を後からある種の修正をするという場合は、一つの定型的な表現として、やむを得ないと思います、こういう表現を使うことになっております。一応これはきちんと閣議決定をして用意をするたぐいのものでございます。
で、その問題は別といたしまして、今の本論の場合におきましては、先ほども申しましたが、パート労働の位置づけ、今日の社会の中における雇用労働状況の変化、そういうものを総合的に本当は税制調査会だけでなく——税制調査会でやってもらいますと、「当面は」と、こういうふうになってしまうもんでございますから、勉強はしてみなきゃならぬ課題だと思っておることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/30
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031・近藤忠孝
○近藤忠孝君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/31
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032・青木茂
○青木茂君 この法案自体は私どもが言い続けてきたことなんですから、異議はないわけですけれども、今まで伺っていましてどうしても内職との整合性というものは残るわけですね。今までの御答弁では、内職も九十万程度までは悪い言葉で言えば目こぼしというようなあれがありましたけれども、税法上表向きに目こぼしというわけにもいかないだろうから、そこら辺のところどうなんでしょうね、思い切って内職収入を給与所得、事業所得という余り難しい議論をせずに、内職収入をみなし給与所得みたいなことで処理できないだろうか。どうせかつておかしなことをおやりになったんだから、見なし法人というのがありますよね、それと同じでもって見なし給与所得という了解事項にしてしまえば、表向きからこの整合性は貫かれるわけなんだから、ここら辺のところはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/32
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033・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) この内職の問題は、先ほども御議論もございますように、パートとのバランスで今議論が行われておる。一体じゃパートの問題はどうなのかというお尋ねでございますけれども、今回の議員立法の御措置によりまして、実質上そのパート主婦の九十万のところまでは税負担の軽減が図られるということになるわけでございますけれども、税制の議論としてはこれはパートだけの議論じゃございませんで、例えば給与収入の低い階層でございますと、独身者といえども今回の措置によって減税を受けられるということでございますので、今回の御措置によりましても、パート主婦そのものは税制の問題としてまだ割り切れていないという問題がございます。
したがいまして、そういう現状でございますから、今委員がおっしゃったように、今度は内職だけ何かでみなすという話になりますと、そこはまた議論がもとへ戻りますので、結局は雇用労働の形態であるのか、あるいは家内労働の形態であるのかわかりませんけれども、婦人労働というのを一体、労働政策とか雇用政策、あるいは社会政策という観点もあるのかもわかりませんが、どういうふうに政策的に国全体として位置づけるのか、その場合に税制としてどう対応するのかという議論にまた戻ってくるのではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/33
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034・青木茂
○青木茂君 じゃ、念だけ押しておきますけれども、パートの主婦と内職の主婦の格差は、方法はともあれ、何らかの表裏、別問題として考慮するということはきょうの委員会の議論で出てきたことだということの念押しはよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/34
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035・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) これもたびたび申し上げておるわけでございますけれども、内職の方も実際の事業形態というのはまちまちでございますから、個々の人によりまして非常に税負担のばらつきが実はあるんじゃないのか。したがいまして、内職の方がいわゆるパートという方に比べると税負担が重くなっているということは、一概に私どもは言えないと思うわけでございますけれども、いろんな対応があるわけでございますから、両者のバランスということは、これは常に念頭に置かなければならない課題であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/35
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036・青木茂
○青木茂君 時間がございませんからもう一つ申し上げたいんですけれども、八十八万円が九十万円になった。確かにこのやり方をとりますと、九十万円が九十五万円になろうと百万円になろうと逆転現象というのは依然として残るわけですね。九十万円を九十一万円稼げたがために、これは世帯主の所得にもよるけれども、三万や四万逆に税金がぼんと上がってしまう。一万円嫁ぐために税金が三万、四万ふえるという逆転現象は確かに残る。これにつきまして、どこかで何らかの措置を講じないと、九十万円以上になったらみんなやめちゃうし、また雇用主もせっかく鍛えた人がそれでは困る、また主婦の低賃金の原因にもなるということで、この逆転現象の歯どめということについては御議論がございましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/36
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037・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 現在の仕組みでございますと、御指摘のとおり、いわゆる免税点的な性格を帯びますので、どこで基準を設定いたしましても、必ずその前後で世帯全体の手取り額としては逆転現象が生ずるわけでございます。税制調査会でもその辺の問題は議論をいただいておりまして、昨年の秋の答申にも書いていただいておるわけでございますけれども、一つの方法としてはバニシング・エグゼンプジョンと申しますか、配偶者控除を漸次縮減していくという方法があるわけでございます、税法上の技術といたしましては。ただ、しかし、こうなりますと税法が非常に複雑になりますほかに、執行上大変な手間がかかりますから、いずれにしても簡明でしかもコストがかからないシステムということになりますと、今の給与所得控除と配偶者控除を受けられる所得限度の組み合わせという仕掛けにならざるを得ないわけでございます。
それとの関係でもう一つ御紹介申し上げますと、免税点的な問題を一体どう考えるのかということでございます。これはいろいろ御議論があるかと思いますけれども、最近時点でずっとパートの労働者の賃金分布のようなものを見てまいりますと、いわゆる八十八万とかあるいは九十万の免税点ラインを超えてどんどん労働の供給がふえているという実態になってきておるわけでございます。
それからもう一つ、今委員がおっしゃいましたように、この免税点の理論を余り細かく考えますと、逆にそれが婦人労働の労働条件といいますか、低賃金を勧奨しているような議論にもなりかねない。場合によっては、その免税点を超える部分はむしろ使用者側が賃金を上げることによって雇用を吸収しなければならない問題なのかもわからないわけですね、これからの日本の婦人労働の市場を考えた場合。したがいまして、免税点があるからという議論は一概に短期的な視野で議論していいのかどうかという問題があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/37
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038・青木茂
○青木茂君 じゃ、あと一つだけ、これは御見解だけ承っておきます。
長期の展望といたしまして主婦収入の問題ですね。ちょうど勤労学生控除というやつがあるんですけれども、勤労主婦控除といったようなものでこれを締めくくってしまうというような税制上の変革というものはこれからお考えになる余地があるかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/38
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039・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) この問題の税制上の対応といたしましては、先ほど来大臣の答弁にもございますように、労働法制上の問題のほかに、税制の議論としては、大きくいえば課税単位の問題にまで発展する問題も含んでおるわけでございますが、今委員がおっしゃいましたように、この問題の対応として特別のまた所得控除を考えるというふうな具体的な今もくろみを持っておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/39
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040・青木茂
○青木茂君 これで終わりますから。
特別なことを税法上もどんどんやっているわけですよ、例えば年金控除ですか、個人年金の。ですから、そう難しい問題ではないから、とにかく矛盾のあるものはどんどん労をいとわず正していただきたいというお願いだけして終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/40
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041・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、鈴木一弘君が委員を辞任され、その補欠として藤原房雄君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/41
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042・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
租税特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/42
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043・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/43
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044・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/44
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045・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 次に、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/45
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046・赤桐操
○赤桐操君 私は、一般会計を中心に我が国の財政が大変な苦境に立たされておりまするけれども、きょうは第二の予算と言われまする財政投融資の問題を中心といたしまして御質問をしてまいりたいと思います。
まず、最近数年間の財投計画の規模、対前年度伸び率について説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/46
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047・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ちょっと時間が早く終わりまして、それで理財局長が参っておりませんので、ちょっとお待ちを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/47
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048・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/48
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049・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/49
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050・赤桐操
○赤桐操君 もう一遍やりましょうか。
一般会計を中心とした我が国の財政の状況が大変苦しい状態に立たされておりますけれども、きょうは第二の予算と言われる財政投融資問題を中心といたしまして若干質問を申し上げてまいりたいと思います。
まず最初に、最近数年間の財投計画の規模、対前年度伸び率についての御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/50
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051・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 今、駆けつけてまいりまして大変申しわけありません。
ただいまのお尋ねでございますが、財政投融資全体で、最近の数年間でございますが、五十九年度、逆からまいりまして、本年度は前年度に対比しまして一・二%の増ということでございます。最近は抑制を図っておりまして小そうございます。五十八年度はその前年度に対しまして二・六、五十七年度はその前年度に対しまして三・五%、五十六年度はその前年度に対しまして一一・二、その前が、五十五年度でございますが、一二・八、こういうふうになっております。ただ、これは財政投融資全体といいますか、国債と財政投融資計画に合わせたお金、原資全体の伸び率でございます。
いわゆる財政投融資計画といたしまして私どもが整理いたしております国債を除いたもので申し上げますと、同じように五十九年度前年度比一・九、五十八年度前年度対比二・〇、五十七年度は四・一、五十六年度は七・二、五十五年度は八・〇、その前は二けたで、五十四年度は前年度に対しまして一三・一と、こういうふうに伸びておるわけでございます。御指摘の点はこの後の方の計画をごらんになっていただいておるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/51
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052・赤桐操
○赤桐操君 今御説明いただいた中で、五十五年度以降のお話を大体伺いましたが、私の手元にある資料で見ますると、五十年度から五十四年度いっぱいぐらいまでは、今お話がありましたとおり大体二けたの伸びだったんですね。五十年度当時においては一七・五の伸び、五十一年度では一四・一、五十二年度で一八に戻っている、こういう状況です。ところが、五十五年度以降になると一けたに落ちてしまった、こういう状況だと思うんですよ。
こういうぐあいで最近にかけて特に年々小さくなってきている。この財投計画が、特に本年度が三十年度以降一番伸び率が低いと言われておるわけでありまして、こういう形で小型に抑制をせざるを得ない理由ですね、これについてひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/52
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053・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) ただいま御指摘をいただきましたように、最近では財投計画自身が伸び傘として大変低くなってまいっております。この理由のお尋ねでございますが、基本的には、財投の原資の状況が大変苦しくなってきておるというのが一つあるわけでございます。御承知のように郵便貯金も最近特に伸びが憩うございますし、また厚生年金、国民年金等年金の資金も、支払いの面もございますので、伸び率としては必ずしもそう高くないと、こういう状況にございます。
また、理由の第二でございますけれども、基本的に、この財投の問題につきまして、事業をする機関あるいは融資をする機関といったような大きな二つの区分けをすることができようかと思いますが、こういうお金の資金の需要が全体としてそれほど伸びていかないような状況のもとで、政府金融機関に対する資金配分のあり方についても、いろいろなお抑制を図るといったような御指摘も各方面にあるわけでございます。そういった状況の中で、私どもも財投全体を必要なものはつけ、役割をある程度果たしてきたものについては抑制を図っていくと、こういうような考え方でその内容を見直してきておると、そういうことがまず言えようかと思います。
ただ、融資ではありません事業するような機関につきましては、全体の中で見直しを図っていく中におきましても、融資機関等よりも伸び率を高くして事業の円滑な推進を図っておると、こういうような配慮も加えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/53
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054・赤桐操
○赤桐操君 金がないということと、事業が伸びてないという二つの理由の御説明のようでありますが、一般会計予算の方は歳出を削減していくということによって、いろいろ建設国債、赤字国債等の国債関係についても発行額を減額するということができます。そういう意味で、財政再建の大きな一つの基本としてこれは努力をされているわけでありますが、しかしここ二、三年来、予算委員会などでも毎回言われていることでありますが、内需の拡大による景気回復が今日までかなり言われてきている。
私はこの財投というものが戦争時代は別でありますが、戦後における日本の経済発展の経過をずっと考えてみると、復興期における財投の役割、さらにその後におけるところの高度経済に発展する産業基盤整備の時代、あるいはその後における各種いろんな経済ショックもありましたが、そういうものを相当力強く乗り切れだというのは、こうした陰の第二の予算の役割が果たしたんだと思うんですね。そういう意味合いからするならば、今こそこの景気回復のために少なくともそういう意味の役割をもう一遍果たすべきではなかろうか。そう考えてみると、規模の縮小化を図るということではなくて、むしろ拡大をしながら一般会計と財投というものが相互補完関係を果たすことができるような形に運用されていくべきではないんだろうか。こう思うんですが、この点についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/54
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055・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私も赤桐さんと同じ認識を持っておりますのは、戦後の復興時代を含めまして、第二の予算とも言われる財政投融資計画というものが我が国の経済を今日に至らしめた大きな要因の一つであったという認識は等しくいたしております。
今いろいろ議論されておりますのは、財投の原資というものも、それは限られてはおりますものの、それを重点的配分を行うことによって、例えば今年度もう既に歩いております予算を見ましても、公共事業が一般会計べースで見ますと減っておるが、しかし財投べースで見ますと事業費全体はふえておるというようなところに、財投の果たしておる役割というのは今日時点であろうかと思うわけであります。
一方また、金融機関の高度な発展の中で、物によりましては、財投の出動をもう既に必要としない各種業態が存在しておると思うわけでございます。それらの回収を急いでより資金を厚くするとかいうような考え方を持ちながら、重点施行をして経済により効率的な影響を与えることを念頭に置いてこれからの財投計画を組んでいかなきゃならぬ。
いろいろ粗っぽい議論をする向きもございます。既にその財投が出動する対象となるものがなくなったとしたならば、今後はむしろそれを民間資金の中でそれなりの必要があれば利子補給という形でその役割を果たさしていくのも一つの手じゃないかとか、いろんな政府関係の金融機関に対しての批判もございますが、私は、政府関係の金融機関、そして政府関係の事業主体等を見ましたときに、これから特に重点施行をして、従来その意義がおおむね達成されたものの原資をそちらへ振り向けていくという形で対応していくべきではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/55
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056・赤桐操
○赤桐操君 私は、今大臣が御答弁になりましたけれども、景気対策と財政の関係という面から考えてみたときに、一般会計の方はなるべく縮小するということは、これはよくわかります。そのかわりに逆に財投の方を補完していくということになれば、内容的にも一般会計の方でかなり削減されておる面があるんですね、生活関連の施策なんかはもうばたばた切られておる、そういう面に財投の方の役割が逆にプラスをしていく形がとられるべきじゃないか。
ずっと前の戦後の動きを見てみるというと、産業基盤整備に相当の力を注いだ時代は、財投のいわゆる生活関連施策への投資の比率と産業基盤投資の比率とでは、むしろ産業の方に時には八割ぐらいいっておった。それが大体七割ぐらいに落ち着いてきて、しばらく七、三の割合が続いておったように思います。今ではそれが逆転しつつあるように思うんですが、そういう状況の中で、特に私は、政策的な手段として財投が動いてきたわけでありまするから、一般会計が今のような足取りをたどっている間は、特に一般会計とは逆な方向にこの財投の働きが動いていくべきだと、こういうようにもう一歩進めた考え方を持つべきだと思うんですよ。
特に、一般会計で国債の削減を強く図っていく。経済成長の潜在力というのが我が国ではかなりあるんだと言われていながらそれがなかなか出てこない。内需は拡大されない。こういう悪循環をたどっておるわけでありますから、そのかわりに財投がそこに一つの大きな役割を果たしていく必要があるのじゃないか。だから、一般会計のあり方とは逆な方向にむしろ財投が働きかけをしていくべきじゃないだろうかと思うんですが、もう一歩進めた積極的な財投の投資方法については大臣はどのようにお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/56
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057・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) ただいま財投の重要な役割につきまして御指摘をいただいたわけでございます。私ども基本的に、先生御指摘いただきましたように、財政投融資計画が時代の変遷とともにそれぞれそのときの状況に応じて重要な役割を果たしてきたというふうに考えておるわけでございます。
現在のように一般会計の財源がなく状況が厳しい中で、財投がその反対のような動きといいますか、より積極的な運営を図るべきではないか、こういう御指摘でございます。先ほどちょっとお答えを申し上げたつもりでおりましたが、御指摘のこの全体の伸び率自体は、経済金融の情勢の変遷とともに、資金需要の鎮静化とか、そういった状況に応じて全体としては減ってまいっておりますけれども、しかしまた個々の事業の中身を機関ごとにごらんいただきますと、例えば本四連絡橋公団といったような事業が最盛期に入っておりますような公団につきましては、十分な資金の手当てをいたしておりますし、そういう原資が苦しいという状況の中でできるだけの、今御指摘のような必要な事業についての資金配分等は十分いたしてまいっておるという状況にあるわけでございます。そこの点はひとつ御理解をいただければありがたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/57
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058・赤桐操
○赤桐操君 財投が今まで扱ってきたあり方については承知しておりますが、例えば内需拡大の中で、予算委員会の中で大蔵大臣とも話をしたことを思い起こすのですが、政府は今景気政策の中の大きな柱の一つとして住宅政策を持っていますね。しかし住宅政策を幾ら高く掲げてみても、住宅が建たない、売れないという状況では、住宅政策は推進されない。したがってこれが推進されるような対策をとるのにはどうしたらいいんだ、こういう問題について私は予算委員会の中でも申し上げたはずなんです、具体的に。私はこういう面についてもう一歩新しい分野の開拓が必要じゃないかと思うんですよ。
例えば、これは一般の民間の方々からもそういう声が大分前から出ておるんですが、一番住宅政策の手かせ足かせになっているのはいわゆる公共的な負担を大きくかぶせているということですよ、受益者負担と称して。これはやがて税金を納めるんですから、税金が納められる状態にその町なら町ができ上がるまでの間少なくともこういう公的資金によって置きかえられていく、こういう形も考えられるのではないか。こういう私の提起に対して竹下大蔵大臣は、地方債等によってかえてはいかがですかという答弁をされた。それは金利の問題その他があるし政策的にまずいと私は申し上げたはずなんです。こういう新しい分野も一つあるのじゃないかということを私は提起している。これについては討議されたかどうか私はわからないけれども、建設省では討議したと思うんですね、大蔵省では御討議なすっていないかもしれないけれども。
だから、これは一つの例にすぎないけれども、従来大蔵省がやってきたこと、あるいは今まで大蔵省の立場で財投を組み上げてきたそういう対象の範囲からもう一歩出た新しい意味における公共投資というものを切り開くことだってできるんじゃないか。それがむしろ今内需拡大の大きな要諦になっているんじゃないんだろうか。こういうことを私はもう大分前から申し上げてきているわけなんですがね。そういう新しい分野の開拓を今財投は迫られているんじゃないんでしょうか。しかも、それを置きかえていけばいいわけです。やがて税金が上がるんです。
民間の人たちからもかなり私のところへ来ていますよ、こういうことはどうでしょうかと。例えば公共負担については、十年間分くらい私どもの民間が立てかえても結構ですということまで言ってきているんですよ、だからいかがでしょうかと。それはだめだ、民間のあなた方がそういうものを立てかえる筋合いじゃないじゃないか、公共負担金というものは本来かけるべきものじゃないんだと。少なくとも別のものに置きかえてするというのなら資金運用部資金なり財投の金を使うべきじゃないかということで、私はそれは取り上げて申し上げなかったんですけれども、これに置きかえて申し上げたのが、先般の一年前の予算委員会で私がお話した内容ですよ。大蔵大臣はそういうように答弁されているんだ。大臣いかがですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/58
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059・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私も覚えておりまして、いわゆる住宅問題でございますが、そのときお話したので、一般論として今住宅政策の狭義な問題としてございますのは、公庫住宅それから公営住宅あるいは公団住宅、こういうようなことでございましょう。が、それ以上に、赤桐さんのおっしゃるのは、民間活力、その地域で開発計画をデベロッパーなどが立てたといたしましても、あるいはデベロッパーでなくして公社みたいなものが立てたとしても、どうしたところでその関連公共施設の問題が起こる。関連公共施設が一般会計で最初百億でございましたか、倍々ぐらいになって今千億ぐらいになっておりますですね。その上に、地方自治体が主としてお考えになる問題でございますから、それにさらにこの財政投融資というようなものが稼働するとすれば地方債じゃないでしょうかと、こういう話をいたしたことを私も記憶しております。だが、その地方債ともなった場合、には、財投は、御案内のように、預託金利と貸出金利一緒でございますから、金利の負担が過重ではないかというようなこと、そういう御議論をいたしたことがございます。
それから今おっしゃいました民間活力の点につきましても、今第三セクター方式というのでそれをやろうかということがあちこちで議論が出てきております。いずれにしても、この公共事業費というものをある程度確保したりしていくためには、どうしたところでその民間活力を導入していかなきゃならぬ。それも西戸山でございますとか、ああいう大きなところもさることながら、地方民活というようなものをこれからやるべきじゃないかということで折々私どもも今議論をしておるところでございますが、その場合に問題になりますのは、結局、財投金利の中で将来ペイする可能性のあるもの、例えば今本四架橋も一つの例でございましょう。道路公団も例でございましょう。それは多少の出資金とか利子補給とかが、多少の水を薄める意味において出資とかいう一般財源の稼働が必要といたしましても、かなりペイの可能性のないものもあるとすれば、やっぱり一般会計の今度は利子補給に頼らざるを得ないということになろうかと思うんでございます。
それで、いささか話が長くなって申しわけございませんが、従来の公共事業的なものも入れたといたしましても、言ってみれば、道路とかそういうものはただのものである。それが、いや金を出すものであるというんで、道路三法による高速道路なんかができたと思うんでございます。さらに、そのただのものと金を払うものである受益者負担の原則であるものの中和をとったところに、いわば一般会計からは利子補給だけで、本体は財投、時には民間資金の導入でそれをやり得るじゃないかという、まあ混合政策とでも申しますか、そんな言葉あるかどうか知りませんが、それは民活というものが特に大事になった今日、一番必要な政策課題じゃないか。
だから、中曽根内閣でも民活ということを標榜しておるわけでございますが、実態として戸山ケ原でございますとか、そういう比較的我々が見たとき大型のものは、まだ工事が始まってはいないにしても、計画そのものはスタートした。そうすると、この次は中ぐらいなプロジェクトと申しますか、いわば都市計画、都市再開発、具体的に言えば駅前広場、あるいはもっと小さいところで言えば、お互いが歩を出します区画整理事業、そういうのを含めて、民活の大はできたとして、中小民活をこれから組み合わしてみようじゃないかということは、私どもとしても話しておりますので、この私どもの意見も申し上げておりますが、今度民活は中西さんが担当されて、恐らくそういう僕が今言ったようなことで進んでいくではなかろうか。その前、私の側になると、そのことを大いに慫慂しながら、待てよ、利子補給はできるだけ少なく済まさなきゃいかぬなという考え方は、これは財政当局としてやむを得ないにいたしましても、方向はそんな方向で議論が重ねられていくんじゃないかな、こういう感じがしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/59
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060・赤桐操
○赤桐操君 私は、そういう新しい分野の開拓というものは時代の推移によって考えられなきゃならないと思うんですよ。だから、もう済んだところと言うと語弊がありますが、先ほどもう御答弁がありましたが、削減するところは削減する、整理するところは整理を大胆にやりながら新しい分野への投入を行っていかなければ活力出ませんよ。また我々はこれだけの資金を、百兆円以上の金を握っていながら、まことに非能率な効果しか上げることができないということになるんですね。諸外国へ行って一番うらやましがられるのはこの財投の金の源泉ですよ、原資ですよ。これはもう二言目には出ていますよ、話が。そういうものであって、私はこの財投の金なり資金運用部資金というものについては、真剣に考えて見直すべきじゃないだろうかと思うんですがね。
そこで、先ほど余り財投の計画が伸びないということについては、二つの理由ということでお話があって、その一つは金の面で言われておりますが、ちょっと伺いたいんですが、五十五年度から五十九年度までの間の、まあ五十年度からで結構なんですが、財投の原資の郵貯、厚年それから回収金、政府保証債、政府借入金の金額、構成比、伸び率、これについてあらかじめお願いしておきましたけれども、御説明願いたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/60
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061・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 財投の原資の状況のお尋ねでございます。便宜五十五年から五十九年で申し上げたいと存じます。
財投は、御承知のように四本の大きな原資で構成されております。一番大きいものが資金運用部資金でございまして、この中は、今先生御指摘のような郵便貯金、厚生年金、国民年金、回収金等でございますが、トータルで、五十五年度は十七兆三千八百九十四億という数字でございました。五十九年度、現在でございますが、十八兆九千五十二億ということになっておりまして、五十九年度の全体の中の構成比の資金運用部資金のウエートは七六・五%と、まあ四分の三というのが資金運用部資金でございます。
内訳は、今お尋ねがありました郵便貯金、厚生年金、国民年金、回収金等ということになっておりまして、郵便貯金は、御承知のように、五十九年度だけで申し上げますと六兆九千億ということでございます。戻りまして、五十五年度は七兆九千億でございましたので、ここのところ低下をいたしておるということでございます。厚生年金が三兆八千五百億ということでございまして、五十五年度は三兆二千七百億でございましたので若干の増でございますが、前年度に比べますとやや少し下がっておる、五十八年度は四兆一千億でございましたので、少し下がりぎみという状況でございます。国民年金は、最近支払いの方が立ちまして、原資としては見込みゼロでございます。その残り、十八兆九千億から郵便貯金、厚生年金を控除いたしましたものが既に貸しましたものの回収金というような姿でございます。これが第一の柱の運用部資金。
第二の柱は簡保資金でございますが、これは五十五年度以降着実にその保険料収入の増大とともに増加をいたしてまいりまして、五十五年度が一兆六千九百億でございましたが、五十九年度は二兆五千八百六十六億と、大変細かい数字ばかりで申しわけありません、増加をいたしております。
三番目の原資でございますが、政府保証債、政府保証借入金という民間資金の活用でございます。これは先ほど大臣のお話にもございましたように、最近財投の原資が不足といいますか、伸び悩んでいる状況の中で、民間資金を活用していくという方針のもとに相当の増額を図っておりまして、五十五年度は一兆五千八百億でございましたが、五十九年度は三兆二千百億ということで、この四年間で倍増をいたしておると、こういう状況でございます。
第四のその他で、割合金額は小そうございますが、産業投資特別会計からの資金で出資に充てるお金が若干ございまして、五十五年度は百六十九億円でございますが、五十九年度四十八億円、まあ減っているわけでございます。
以上が財投の原資の四本の柱についての御説明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/61
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062・赤桐操
○赤桐操君 そうしますと、この財投原資の推移全体を見るというと、結局、郵貯、厚年というのはずっと先細りで今日まで来ている。郵便貯金の方が七兆九千億ですか、一兆円減で六兆九千億。厚年の方が三兆二千七百億の五十五年度、三兆八千五百億の五十九年度となっていますが、対前年度比ではこれも減っていますね。これとは逆に、回収金が大分大きくふえてきている。それから政府関係の保証債なり借入金がふくらんできていると、こういうことなんですね。だから、減った分が逆に政府保証債と借入金と、それから回収金ですか、これによって賄われてきていると、こういうように理解してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/62
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063・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/63
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064・赤桐操
○赤桐操君 そうしますと、今の数字で明らかになっておりますが、全体として、今まで民間から集まってきた郵便貯金とか厚生年金のようなこういう積立金が大きな比重を占めておったのに、逆転してきているわけでありますから、これは財投の資金計画自体としては大変原資事情が悪化してきているということが言えると思います。
〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕
今後、将来のことを考えるわけでありますが、こういうぐあいに漸減をしてきているというこの事情、これは大変危惧の念を抱かざるを得ない事情じゃないかと思います。この点で蔵相はどんな考えをお持ちになっているか、大蔵大臣の御意見を伺っておきたいと思います。公共事業の拡大の要求もかなり六十年度予算などでは強く出ておるようでありますし、一般報道でも、財投の資金計画についてむしろそういう面の補てんをしたらどうだと、こういった構想なんかも出ているようでありますが、これは実際今の状況からするならばなかなか困難な状況ではないだろうかと思うんです。大蔵大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/64
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065・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 恐れ入ります。ただいまの原資の状況の御心配をちょうだいしたわけでございます。重ねて申し上げるようでございますが、確かに先生御指摘のように、郵便貯金、これが最近の金融経済情勢等を反映しここ三、四年状況が悪うございますし、厚生年金もこれからの伸び率はそれほどの大きなものを期待できないというような苦しい状況でございます。
翻りまして、この財政投融資の原資を基本に立ち返って考えていただきますと、財投というのは、今御指摘いただきましたような郵便貯金とか厚生年金とか、いわばそういう受け身で集まってくるお金というのが原資になりまして、それを必要な政策的に重要な部門に投入をしていくというのがこの財投の役割でございます。受け身でと申し上げましたが、その中で先生御指摘をいただきましたし、政府保証債とか、そういった民間資金の活用といったような面は積極的に活用していくという姿勢をとることがある意味では可能でございますが、これも市場の受け入れ能力、政府保証債の引き受けの銀行等の能力にもかかってまいりますので、そういった意味では、財投は原資が限定的といいますか、受け身で、入ってくるお金というその中で、できるだけ先ほど来御指摘をちょうだいしましたように重要なものに、また必要なものにお金を重点的に配分していくということが私どもにとっての重要な課題なのではないかと考えております。
先生、先ほど、この時代の要請によって必要に応じ見直していけという御指摘でございましたが、私どもは全く同じ考えに立っておりまして、具体的な機関の内容を見せていただきます際には、例えばスクラップ・アンド・ビルドで、新しいことを起こす場合は、古いもので役割を減じておるものをやめてまいりましょうとか、あるいはある一定期間政策的誘導を果たすために、サンセット方式といいますか、ある一定期間だけやりましょうとか、そういうような努力も重ね、必要な限られた原資の中でできるだけ有効な活用を図っていく、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/65
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066・竹下登
○国務大臣(竹下登君) この財投の基本的考え方、私と赤桐さんとそう相違がないと思っております。私も、もう一つありますのは、国債引き受けの重圧、表現は重圧と申しましょうか、それがちょうど政府保証債と金高が一緒ぐらいになったりしますと、若干本当はじくじたる感じを持つことがございます。本来、民間消化でいく場合、しかしそれが大きいからどうしても可能な限り資金運用部で引き受けなきゃならぬというところに、去年よりも一千億でございましたか減したとはいえ、そういう問題点が一つあることは事実でございます。
ただ、公共事業、今言いましたスクラップ・アンド・ビルドの問題でございますとか、例えばかなり昔になりますけれども、いわゆる自動車産業の国際競争力をつけるための体制金融をした。これは効果を果たしましたけれども、今そんなことをしたらしかられるでございましょう、堂々と国際競争力を持っているわけですから。そういうものがなくなって、回収を可能な限り急いだりという工夫はしておるところでございます。
それから、例えば公団あるいは公営企業金融公庫とかいうところにまで、これは個別的には政府保証しましてスイス・フランを借りたり、あるいはドイツ・マルクをそのときの市場の金利情勢によって借りたり、そういう工夫もいたしてトータルを確保する努力をいたしておりますが、思いのほか私が最近感じておりますのは、この公共事業に対して道路三公団なんかが一番いい例でございますけれども、やりました場合、例えば本四架橋もあるピークに今来ておって、来年度からは思いのほかお金のつけようがないなという感じのところもございます。そうすると、道路公団というようなことになりますと今度は横断道に入っていかなきゃならぬ。横断道は景気浮揚から言えば土地代も安いところでございますけれども、今度は採算性から言うと将来ある種の重圧を与えてくるようになるでございましょう。しかしプール制でやることでございますから、その不可能なところを予定しておるわけじゃございませんけれども、そういうようなことを考えながら今度は重点施行していかなきゃならぬ課題だな。で、意外と、いわゆる基幹道路の例えば拡幅みたいなのを考えてみた場合には、用地費率という壁にぶつかることがございます。すなわち工事費の改装替え用地費率であるというようなときに一体これは景気浮揚になるだろうかと、こういう感じを持つこともございますけれども、そういうところをいろいろ選別しながら景気浮揚の実も上げ、しかも国民経済全体にも寄与するという形で財投計画というものを考えていかなきゃならぬ。
いま一つは、先ほども申されておりました地方債でございますね、建設地方債みたいな感じのことが最近要望も強くなっておるので、十分念頭に置いてこれから取り組まなきゃならぬ課題だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/66
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067・赤桐操
○赤桐操君 いろいろ御説明はわかるんですが、その中でちょっと私もわからない点が一つあるんです。
〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
財投問題というのはなかなか議論しにくかったということは、いろいろ内容的にわからない点がたくさんあったということも一つの理由だと思うんですよ。それは郵便貯金とか厚生年金等それぞれダウンしてきていることは、これは明らかにされてきておりますが、それにかわって上がってきておるものの中で、回収金なんですけれども、これは五十五年度で六兆一千億、五十六年度で六兆六千億、五十七年度で七兆三千億を超えておりますね。五十八年度も同じ、五十九年度が八兆円を超えるという見込みになっておりますね。こういう状況で推移をしているわけなんですが、回収金の内容というのはどういうようになっているんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/67
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068・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) ただいまの回収金でございますが、財政投融資計画で例えば政府関係機関、開銀とか公庫等へお貸しをいたしますが、そういう機関から返りますお金あるいは公団、事業団等へ貸しますお金、それがある一定期間、最初ある期間という決まりでお貸しをいたしますが、それが満期が来て返ってくるお金、こういうものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/68
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069・赤桐操
○赤桐操君 私はちょっとその内容についての資料をいただきたいというふうにお願いをしておいたんですが、まだいただいていないんですけれども、どうでしょうか、この機関別の回収金額を明らかにした資料をいただきたいと思うんですが、いかがですかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/69
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070・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 御指摘の機関別の回収の資料につきまして、過去にどれだけ返ってまいりましたというのを提出さしていただくことができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/70
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071・赤桐操
○赤桐操君 この資料をいただいたんですよね、財政投融資原資の推移ということですね。これは大蔵省の方から正式にいただいた資料なんですよ。これについて今御説明をいただいたわけなんだね。この内容を今私が申し上げたわけなんです、五十五年度からのやつをね。その前も欲しいけれどもその前は別にして、五十五年度、六年度、七年度、八年度で結構だと思うんですが、ずっと上がってきているその回収の状態を見たいと思うんです。機関別にどんなところから上がってきているんだということを資料としていただきたい、こういう意味なんですね。これはきのうからお願いしてあるんですがね。まとめてこれだけのものですというのはこれでわかっていますけれども、どこからどういうように上がってきているんだということはわからないわけなんです、これでは。大蔵省の方からそういう資料も出てない。だから、どういうところからどういうように金が上がってきているんだということがわからぬですね。また残がどのくらい残っているんだということもわからない。そうすると、なるほどそれを見ると、ああこういうところへは再貸し付けはもうしないのかとか、もっと別なところに貸し付けの厚みをつけるとかいう計画なんかについても理解できると思うんですね。そういう意味でこの資料をいただきたいと、こういう意味なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/71
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072・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) ただいまの機関別の資料につきまして、検討いたしまして提出をさしていただくようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/72
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073・赤桐操
○赤桐操君 いずれそれをいただいた上でまた改めて御質問をするつもりでおりますが、この回収金の中で、これは私のところに出ている大ざっぱな資料なんですけれども、これはわかりませんが、疑問に思っているのは、ほかの例えば各種項目に基づいていろいろ原資の推移について出ております。事業年度で各年度別に当初計画と実績というのが必ず出るんですね。そうでしょう。例えば郵貯なら郵貯についても今年度はどれだけの一つの計画を立てて、目標を立てて募集をしていく、貯金を集める、簡易保険についても同じだろうと思うんです、そういうぐあいにみんなそれぞれ当初の年度計画というものを立てて行うわけですね。それでそれが達成されたか超えたかということは当然実績として出てくると思います。これがここに報告された数字だと思うんです、実績として。ところがこの回収金については、これをずっと見ていると、当初計画と実績というのは大変な差があるんですね、ところどころで。各項目別に見ると、ほとんど年次計画と実績というのは大体そう大差はないんですけれどもね。回収金に関する限りは、例えば五十三年度の例でいくというと、当初計画が二兆六千七百八十四億円、これに対して実績が九千億円ですね。それから五十五年度になるというと、当初の計画で六兆一千八百億、これが実績で四兆三千億に落ちちゃっているんですよ。五十六年度では六兆六千億が七兆八千億で今度は実績が上がってしまっておる。こういう当初計画と実績が違っているというのは余りほかにはないんですが、これはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/73
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074・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) お尋ねの点でございますが、回収金といいます場合は、それぞれ各機関にお金を貸して返ってくるわけでございますが、たくさんの機関に対しましてお金を貸しているわけでございます。ただいま事情をつまびらかにいたしませんで申しわけありませんが、全体の機関、例えて言えば当初の回収見込みがそれほど正確になっていましたかどうか、また年度途中の充当によりまして変動することがあろうかと思います。ただ、先生御指摘のようなこの数字、私どもちょっと今手元におっしゃっておられましたようなのがずばり当たっておりませんので、なおよく調べてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/74
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075・赤桐操
○赤桐操君 これは私が勝手につくった数字じゃなくて、財政金融統計月報、大蔵省から出しているその中に出ているんですよ。それを引用して今申し上げただけですから、おたくの方で発表されている数字を申し上げたと、こういうことですよ。
それで、どうも回収金の状態が、ほかの原資が減ってくるとこれがふえる、ほかの原資が上がってくるとこれが減ると、こういう相関関係がこの中に出ているんですね、見ているというと。これも不思議な現象の一つだと思っているんですが、回収金というのはどんなふうに操作され、どんなふうに動いているものかというように疑念を持つわけですがね。その辺もひとつ明からにしてもらいたいと思うんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/75
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076・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 回収金の中身の状況でございますが、ただいま直ちにつぶさにちょっと存じ上げませんで申しわけありませんが、全体として各機関、政府関係機関、公団、公庫等にお貸しをしましたお金が戻ってまいりますものを主として計上いたしておるということでございますが、そこら辺は調べましてまた御説明を申し上げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/76
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077・赤桐操
○赤桐操君 一般銀行の場合でもいろいろ回収するのは骨折れるようですけれども、少なくとも政府機関がやることですから、年次計画に従ってほとんど一〇〇%回収されるのが普通だと思うんですよ。必要があれば再貸し付けということは当然あり得ることでしょう。そうじゃなくて、こんなにまで上がったり下がったりが激しいということは、ちょっとこうした機関が扱っている内容としては不自然ではないだろうか。私には理解できない。こういう疑念を持った質問なんです、今の話は。いいですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/77
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078・亀井敬之
○政府委員(亀井敬之君) 回収金の状況でございますが、大変変動があるというような御指摘をちょうだいいたしております。私ども毎年の回収金の数字自体貸出残高がふえてまいっておりますので、それに基づきまして戻ってまいりますお金が年一兆円弱程度のペースでふえてきております。という状況にございますので、それほど大きな変動というふうには考えておりませんのでございますが、なおよく調べてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/78
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079・赤桐操
○赤桐操君 大臣が先ほど言われました中で、毎年発行される国債がかなり重圧になってきているということですね。これはこの間も国債発行の問題をめぐって大論争が行われたわけでありますが、確かに私は国債の五十年当時から十年間考えてみるというと、九倍ですか、十倍ぐらいに膨らんでいますね、国債を扱っている財投の関係の状態は。ですから、確かに財投計画全体の中で大きな足かせになってきているだろうと、こう思うわけであります。しかし、さらに六十年以降になるというと借りかえが出てくるわけですね。そうすると多量の借換債等も発行されることになるわけでありますし、ますます財投原資というものが、これは減ってもふえるということは、国債の関係で、これはないでしょうから、大変な圧力がかかってくるように思うんですね。そうすると、先ほども私から指摘申し上げましたが、財投原資の先細りというのがこれからますます増大する、そういう傾向が強くなってくると原資難に陥ってくると、こうなると思うんですね。したがって、一般会計の方は縮小していく、なるべく抑えていく。それに対して財投で補おうとしても、なかなか財投の運用がそれに伴っていかないという困難さが出てくると、こういうようになると思いますね。これからの見通し、見方というものはどんなふうに感じておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/79
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080・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 確かにおっしゃいますとおり、この財投というものが政策金融に使われ、そしてそれが国際競争力等を持たしてきたことに大いに役立ったという面が一つございます。最初赤桐さんがおっしゃいましたいわゆる産業基盤の点を重視しておったときはその面が多かったと思うんでございます。それが徐々に生活関連等に移行してまいりまして、それに財投原資が使われてきた。だから、そのときどきの状態によってそういう変化がずっと生じてきておることは事実でございますが、財投原資そのものも厳しい状態に置かれておることは事実でございます。したがって、財投というものについて見ましても、今まである意味においては不採算過ぎるところへ出しておった嫌いもないわけではない。すなわち、財投原資に対するいわゆる利子補給は全額一般会計で行ったりして、その財投が必ずしも受益と負担という中で合理性を生み出していなかった面もそれはあろうかと思っております。したがって、これからは財投もそうしたところに対する投資を可能な限り切っていって、まさに重点的なところへ指向していかなければならないというのが第一原則だと思います。
と同時に、幸いなことに、諸外国に比べて貯蓄率が三倍ぐらいあるわけでございますから、したがってその貯蓄の伸びというものが可能な限り効率性のあるところへこれが誘導されていって、いわばかつて財投だけでやっておったところの肩がわりとでも申しましょうか、そうした役割をも導入していかなきゃならぬじゃないかなあ、それが金利の点で絶えず若干の問題を残しますところのいわゆる地方債の縁故債でございますとか、あるいは我々の方で言いますならば、今比較的金融市場を見ていいところから借りては来ておりますものの、民間との金利差が時に重圧となることもあるであろう。そういうことを全体的に考えながら、傾向としては財政投融資というものが一つの政策目標の上に立っておって、それをさらに民間活力で補完していくという考え方で進まなきゃいかぬじゃないかなあと、こういう感じはいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/80
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081・赤桐操
○赤桐操君 十二時ですから、もう午前の質問を終わりたいと思いますが、今の大臣の御説明の中で、そうすると大臣は産業基盤向けの投資への比重を高めるということを考えの中に申されたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/81
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082・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ちょっと表現が不足をしておったかもしれませんが、最初は大体が復興金融公庫というのが昭和二十何年でございましたか、それで大体産業基盤を高めるという方向に重点がかかって出発し、それが国際競争力を持つに至ってそれが縮小され、むしろ生活関連とおっしゃいましたが、道路とかそういうところへ財投が指向していったというふうな移行をたどっておる。私も、そういう移行は今後とも続くんじゃないか、幾らかあろうかと思います。先端産業とかいろんな分野があろうかと思いますが、大部分はそういう方向へ移行していくであろう。しかし、そのときに財投原資だけで不足するものを民間活力を入れて資金を満たして、その社会資本の整備等に向けていくことが必要ではないか、こういう趣旨で申し上げたわけです。基本的には、赤桐さんがおっしゃっておりました、産業基盤から公共投資という方へずっと八対二が七対三になる、そういうふうに移行していった、そういう流れを私も是認した上でのお答えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/82
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083・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
正午休憩
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午後二時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/83
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084・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/84
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085・赤桐操
○赤桐操君 午前の質問に続きまして、財投関係でさらに続けたいと思いますが、原資が大変窮屈になってきているということでございました。この中で先ほど理財局次長の報告にもありましたけれども、一番問題になるのは、資金運用部の中の一番大きな部分を占めてきた、全体の八割を占めておると思いますが、郵貯の資金問題だろうと思います。郵便貯金の資金が不足してきている、あるいは郵貯の状態が大変不振な状態に陥っているということが非常に大きな問題だろうと思うんでありますが、大蔵大臣はこの点についてはどのような御認識でおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/85
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086・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私は今日まで郵貯の果たしてこられた役割というのは、これはある意味においては、最初の出だしは細民の貯蓄振興とかいうような言葉が使われてありますが、国民全体の貯蓄意欲を最も国家の信用において集め、国家の保証するものであるという意味において大変な信用をかち得て、それが日本国民の貯蓄性向が高い一つの要因になったんではないか。諸外国の金融担当者と話をしますと、郵便貯金というのはなかなか向こうではわからない。それほどさように独特な制度であったと思うんであります。なるほど考えてみますと、いわゆるある種の国家銀行という感じで預金を集めまして、明治の三十四年にはまだ銀行が日本も千八百ございました。したがって、若干郵便局よりも金利は高かった。しかしながら、それだけに一時不作が起こって取りつけがあったりすると倒産しましたり、だから何よりも国民にとって、細民という言葉は別といたしまして、最も信用度の高い貯蓄機欄が郵便局であったということで、それが日本国民が今日においても世界で一等貯蓄性向の強い国民である一つの要因ではないかというふうに思っております。
で、今日までもしたがって郵貯の伸びというのはそれなりの期待はいたしておりますが、伸びの率が若干下がってきたということについての理由ということになりますと、その後、一方、金融機関は銀行で申しましても千八百あったものが、今は相互銀行含めて百五十六でございますから、そういうふうに徐々に統合されて、ほかの金融機関もまた絶対倒産しないものだという国民の安心感もありましたが、そこへ徐々に金融の自由化の波の中でいわば金利指向性の商品等が出てきて、それらが幾らか鈍化の要因になっておるではなかろうかというような私なりの分析をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/86
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087・赤桐操
○赤桐操君 私はいろいろな要因があると思うんですが、資金運用部のとにかくこれは大変貴重な原資であることには間違いない。この郵便貯金が伸び悩んでいくということは大変な問題だと思うんでありますが、その原因は、ここ何年間か論争が続いてきておりますけれども、私は何といってもやっぱり政府、財界における低賃金政策が一つ大きな要因になっているんじゃないかと思うんですね、一つには。それから二つ目には、景気が悪くて所得が鈍化しているということ、全体に。
そういうことがもちろん言えると思いますが、特に低賃金政策というものがこの数年間ずっと続けられてきている。人事院勧告の問題を初めといたしまして、仲裁はもちろんのこと、そうしたものがベースとなって民間賃金というものが非常に低目に低目に抑えられてきている。これは予算委員会等でも大分論争になってきているところでありますが、そういうことがなるほど個別の企業や当面の場合におけるところの負担の軽減等から見れば確かにいいかもしれないけれども、その結果は、税収面で源泉所得税なんかも大幅に大きく落ち込んでくる、ここに直接響く。あるいは最近におけるいろいろスーパーなどの買い上げだとか売れぐあいだとか、そういうものを見ておりますというと、いずれも手控えの状態が出てきている。こういうところから税収全体に大きな影響を及ぼしてきているというふうに私は見るんですがね。
したがって、こういう状況の中から考えてみるというと、こうした今までとってきた政府の政策というものは実はこういう面で端的にあらわれてきている。結果的には大変大きなデメリットを背負うことになったんではないか、マイナスになってきているのではないだろうか、こういうように私は思っているんですが、大蔵大臣はこの点はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/87
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088・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 賃金論ということになりますと、私も余り専門的な知識を持ち合わしておりませんが、確かに貯蓄性向を支えるものといたしましては、可処分所得がふえてくれば少なくともそれの二〇%程度が日本の場合は貯蓄に回るという意味においては、物価との関係はございますものの、これはいわば所得の向上がそういう預金高と並行するということは僕もあり得るんじゃないかというふうに思っております。
ただ、賃金というものそのものにつきましては、企業の採算性、あるいは公務員でありますならば民間賃金との対比とかいろんな算定の方法がそれぞれの職種によってあるわけでございますので、その点私も考えてみますと、例えばアメリカにおいて例のレーガノミックスでございますか、要するに所得減税を大幅に行った、それは貯蓄に回るであろう、それがまた企業の設備投資資金に回るであろうという期待感で行われたにもかかわらず、結果としてそれが消費に回って、ある種の景気は支えたけれども、貯蓄そのものは、最近の傾向でもわかりますように、経常収支の我が国の黒字分がそのままアメリカの資本収支に流れていっておる、こういうような形になっておりますので、それは国民性の問題と、そのときどきのインフレ率なんかとの影響もあろうかと思うんでございます。預金金利がいわば物価の上昇率に追っかけていかない場合は目減りとかいう言葉がよく使われておったわけでございますけれども、したがって今日の郵貯の伸び率の鈍化というものは、我が国の高度経済成長がある種の安定成長になったということがそのまま比例して影響し、トタで今我が国が低賃金政策であるかどうかということになりますと、これは私はまた議論は別のところにあるんじゃなかろうかな。
例えば公務員給与で見ますと、日本、西ドイツ、オランダ、このあたりが、もちろん他のアメリカを含む先進国よりも初任給は商うございますし、そして職種によって多少の相違はございますけれども、例えば今の第七艦隊の水兵さんが、二等水兵さんで百六十五万、日本の二等水兵さんは百九十万でございますから、もちろん曹長のところからぐっと抜かれてしまいますけれども、必ずしもそういう国際比較の中で低賃金がどうかということに対してはまた議論のあるところだろうと思っております。しかし可処分所得がふえることが貯蓄性向をより高めるという原則は私も決して否定するものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/88
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089・赤桐操
○赤桐操君 それじゃひとつ、いろいろ考え方はあると思うんですけれども、郵政省はこの伸び悩みをどんなふうに受けとめているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/89
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090・山口憲美
○説明員(山口憲美君) 御説明を申し上げます。
御存じのように、我が国の家計の貯蓄率というのは四十九年以降年々下がってきているという現在傾向があるわけでございますが、これは一つには、高齢化というものがだんだん進展してまいりますと、預金をする層よりもそれを取り崩す層がふえていくという、そういう社会構造的な問題が一つあり、なおかつ、これが年々厳しくなっていくんではないかというふうに考えておりまして、そういった社会構造的な問題がある。それに加えて、先ほど来お話がございますように、可処分所得の伸びが非常に落ちてきて伸びが鈍ってきているというふうなこと、それからまたローンの部分というものが非常に伸びてきて、貯蓄をするという方からそちらの方にパターンが変わってきているというふうな、こういった一般的な要因というものは貯蓄全体について考えられるんではないかというふうに考えております。
私どもは、特に郵便貯金ということでとらえてみますと、そういった中におきまして、私どものところでは、国債等を背景にいたしました自由金利と申しましょうか、そういった形の商品というふうなものを持っておらない、あるいはそういったものの方に資金がシフトしているというふうなことがかなり郵便貯金の不振には影響しているんではないかというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/90
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091・赤桐操
○赤桐操君 この伸び悩みの原因はいろいろ考えられますが、いずれにしても、その中の一つの要因としてこれは思い起こすんですが、数年前のグリーンカード制の問題のときに、この論議の際でもそういうことを感じましたし、今回の金融自由化問題に絡む郵便貯金に対するいろいろの扱い方、こういう一つの大きな金融界における転換が行われようとするときには、郵貯に対するかなりの、ある意味において一時は悪者論まで発生したような状態があったと思いますし、そういう中で郵貯関係に対する信頼の問題、そういうものも出てきているんじゃないですかね。大蔵大臣は、百年の歴史の中でもって大変大きな信頼をつくってきたと、こう言っておりますが、そういう面に対する国民の別な考え方が発生してきているんじゃないかなということを私は危惧するんですが、この点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/91
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092・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私は、今もお話のありました、なるほどなと思って承っておりました高齢化による社会構造の変化と、それから可処分所得の問題と、あるいは自由金利商品等へのシフトの問題は私も指摘をしたところであります。あるいはローンというものへの国民の指向の変化というものもあろうかと思うのでありますが、郵貯そのものに対する国の信用というものがかつてと相違しておるというふうには思えません。
ただ、いわゆる金融自由化、国際化のときにいつも議論になるんでございますけれども、いつかもここで申しまして重ねてお答えするようになりますが、アメリカは、例えば銀行が一万四千五百ございます。一万四千五百ございますから、しょっちゅうじゃございませんけれども、統廃合とでも申しましょうか、あるいは適当な支店を設置して、日本の銀行がそれを買収するとか、そういうような金融業務そのものが一つの商品になっておると、こういう感じがいたします。したがって、その背景にあるのは、すべてが自己責任主義で、たとえ失敗しても、預けたおまえの選択が間違っておった、あるいはおまえの企業経営がなまぬるかったと、そういう背景にありますから、預金保険機構だけは日本よりちょっと充実しております、確かに。日本の場合は、かつては千八百ありましたような時代、そのときは頼母子講を除いてありますから、それを入れればもっと大層な数になると思いますけれども、郵便貯金というのが一番信用性があり、そしてたび重なる銀行の統廃合に至って今や百五十六行ということになって、郵便局はもちろん倒れないが、日本の金融機関は倒れないものであるという国民にある種の意識があるんじゃないか。それをしてよく言われます、護送船団方式だと、大蔵省が一生懸命で守っておるとか、あるいはときには天下りまで一生懸命でやって守っておるとか、いろんな批判を受けるわけでございますけれども、それだけに例えば預金保険機構なんというのはアメリカほどどでかい規模じゃございませんが、それでも日本の金融機関というのは倒れないものだというある種の安心感というものがあり、意識の変化と同時に、多様化した商品が並んでまいりますとそちらヘシフトしていくということは、私はあり得ようと思うんでございますけれども、郵便貯金そのものに対する国民の信頼が失われたとは私自身は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/92
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093・赤桐操
○赤桐操君 郵便貯金に対する信頼が失われたということよりは、官業は民業を圧迫する、むしろ最近の風潮で言えば、臨調などでも論議されているように、公共的なこうしたいろいろ各団体に対してはかなり厳しい批判が出ている。そういう形の中で、ある意味において、こうした金融機関の方に有利な論争といいますか、ムードといいますか、そうしたものがかなり高まっておることは私は事実だと思うんですね。したがって、こうした段階から、もうかなり郵貯に対する批判というか、そうしたものを強められてきている。そうすると社会全体では影響しますよ、この動きは。しかも現状では、先ほどお話がありましたが、金融自由化等々、さらにまたいろいろ金利の動き等も出てくる中で新しい商品が次々できてくる。ところが、郵政の方にはそういうものがなかなかできてこない。公正な競争さえもなかなかやる立場に置かれていない。こういう状況になってくるというと、これは郵便貯金そのものが追い込められてくることになりはしませんか。その結果は、今いろいろと分析されておりまするように、資金運用部資金の大きな基本的な問題に帰ってくるんじゃないだろうか。私はそう思うんですが、この金融政策というものについて、大蔵大臣は今までの形でよろしいと思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/93
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094・竹下登
○国務大臣(竹下登君) この問題になりますと、基本的に言えば、官業は民業を補完するものと、自由競争原理の上に立脚する自由主義経済国家として考えてみますときに、そういうことに必然性を持ってならざるを得ないんではないかな。したがいまして、いわば、国の信用という絶大なる一つのメリットを郵便貯金はお持ちになっておるわけでありますので、同じ土台でこれを論ずるべきものであるかどうかという問題が一つはあろうかと思うんであります。したがいまして、金利決定方式等も、これは三大臣合意でございましたか、機動的、弾力的に整合性を持って行う。私が党におるときにつくった文書でございますけれども、いろんな工夫がなされておりますものの、その後むしろ起きてきた国際化、自由化問題ということになりますと、私どもは金融の自由化という場合、ポイントは金利の自由化ということになりますので、その際の郵便貯金金利決定のあり方というものはいかにあるべきか。急激に来月からやろうとか再来月からやろうとかという考えはございません。漸進的にやっていかなきゃならぬわけでございますが、ただ郵政省だけでなく、ただ大蔵省だけでなく、国全体の問題としてそのあり方については考えていかなきゃならぬ課題だなという事実認識は私も十分持っております。
ただ、基本的には、あるべき姿としては、民業に対する補完的役割を果たすというのが官業の、これは郵便貯金のみならず、すべてのあり方の基本ではないだろうかなと、こういう感じは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/94
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095・赤桐操
○赤桐操君 今までの金利の決定方式等については、金利決定のプロセスを見ているというと、一つは大体銀行関係を中心とした考え方になっているし、一つは多くの庶民、大衆を中心とした考え方になってきていると思うんであって、この二元的な方式できていたのがむしろ日本の場合においてはよかったんではないだろうか。考え方はいろいろあると思いますが、私どもはそういうふうに考えておりますがね。
さらに、この段階になってきて、当然金利の自由化というものを中心としたいろいろ新しい段階に入ってくると思いますが、既に大蔵省の方の指導あるいは銀行関係の方の動きとしては大口関係が先行しているわけであって、小口は依然としてその後に抑えられていると、こういう状況であることは事実であります。そういう中で新しい商品がどんどん出てくる。当然これは、庶民の立場にしてみても、郵貯の動きに対してはだんだん非常に敏感になってくるだろうと思うんでありますが、そういう中で、例えば郵貯の中で考えられる、いろいろ今まで何回か出されておりますが、この中でも可能な商品というものは認められていくべきだろうと、こう考えるんですね。そういうような形をとらないというと、郵貯に対する魅力はもちろん失ってくるでありましょうし、社会構造の変化等もございます。したがって、その中の一つとして考えて私たちが実は注目しておったのは、シルバー預金というのがしばしば出されてきておりますね。こういう構想なんかが出ておっても、これは今日まで具体化されできていない。一方、民間におけるところの各金融機関からは新商品がどんどん出回ってくる。こうなってくれば、当然郵便貯金に金が集まりにくくなるのは当たり前じゃないかと私は思うんですが、この点はいかがでございましょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/95
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096・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 預金金利の決定方式から郵貯の問題はどうなるかということでございます。確かに大口預金と申しますか、市場金利は既にある程度自由化が進行しておるわけでございまして、例えば債券市場それからCDの分野等において市場金利は進行しておるわけでございます。そういうことになっておりますから、その点で自由化が進行しておるわけでございますが、小口預金についてどういうふうに考えていくかという問題につきましては、一方では大口預金につきましては、既にプロの世界でございますし、既に取引になじんでおるという面がございますから、自由化が信用秩序を害しないようにやっていくためには、そういうところから着手していくのがよろしいのではないかなというのが私どもの考え方でございます。
で、小口預金につきましてはいろいろの方法があるようでございます。
一つは、大口預金の金利の動向あるいは市場金利の動向等を見ながらその連動型にしていくのか。それから小口預金の方々は、これはプロではございません。あるいは零細な所得を安定的に貯蓄している方々でございますので、それが始終変動すると、あるいは毎日プロのようにその動向を見詰めているというようなこともなかなか困難で、むしろ安定的になっていく方がいいという点もございます。
それからもう一つは、小口預金というのは郵貯ばかりでなく、中小金融機関あるいは農林漁業金融機関、そういうところにも随分集中して預けられているわけでございます。そこら辺はスピードの関係でございますけれども、自由化がそういうところで急激に進展いたしますと、そういう中小金融機関の経営の破綻のような問題が出ますと、小口預金者はかえって不安になってくるというような複雑な問題も入っているというふうに存じております。そこら辺は、私どもといたしましても、いずれは小口預金の検討についてもやっていきたいと思います。
もう一つ、小口のセーバーという方向で見ますると、小口の資金の運用ということの方から見てまいりますと、小口につきましても、ある意味で小口の例えば中国ファンドとか、そういうような貯金の手段といいますか、手段も講ぜられて市場にも出てきておるわけでございます。そこら辺は郵貯を選ばれるか、あるいはそういうものを選ばれるか、選択の問題にも絡んでくるというふうに考えておるわけでございます。
以上、いろいろ複雑な問題がございますので、私どもといたしましては、その全体の動向を見ながら小口預金についてどう考えていくか、今後また検討してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/96
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097・赤桐操
○赤桐操君 もうちょっと明確な答えが出ると思ったけれども、それはちょっとわからないです
ね。大蔵省の発表で「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」の中でも述べておりますけれども、ここでは大変抽象的に出ているので、これではわからないんだが、今のお話を聞くというと、いつになって小口の方の自由化をやるかわからないということじゃないですか、あなたの御答弁では。大口の方はどんどん進んでいるけれども、小さい方は、これは安定している方がいいだろうと思うから、これはやらない方がいいだろうというような答弁に私は聞こえたんだがね。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/97
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098・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 今私が申し上げたのは、最初に大口預金から自由化していくということで、かつ既にそれは進行しておって、かつなじみも出てきており、そこから着手していくのが現実的であるということをまず第一点で申し上げたわけでございます。そこら辺は、いろいろの現象を申し上げましたから、かえって複雑で恐縮でございました。
そこで、こういう流れに沿って進めていくことが自然であるというふうに考えておりますけれども、小口預金につきましては、郵貯の問題について考えますと、これはまた八十兆円を超えるというシェアを市場で占めているわけでございますから、その郵貯の金利決定方式についてなお検討すべき問題がある。つまり自由化というのは、市場原理、市場のプライス・メカニズムということでございます。ところが、これは郵政の方々もおられるからそのお考えもあろうかと思いますけれども、今後とも御相談申し上げていかなければならないと思うんですけれども、その郵貯の場合には、市場メカニズムというのが働かないといいますか、官業でございますので市場メカニズムが働きません。そこで、そういう問題をどうするかという課題は確かにあるわけでございます。
それからもう一つ、私が申し上げたいろいろの決定方式があるというのは、小口預貯金金利を全面的に自由化することの可否の問題があるということで、これはどういうふうにするか。市場連動型で一定の約束を持ったようなものにして市場に連動した形で金利が動くのか、あるいは大口預金と同じように、日々動きますかどうかはあれとしまして、CDなどは日々動いておりますが、そういうようなものになるのか。そこら辺は国民経済あるいは金融制度全体にかかわる問題でございますので、私が申し上げた、あるいはわかりにくいことになりますが、整理して申し上げますと、そういう問題もございますという問題点を指摘させていただいたわけでございます。現に、米国、西独だとかイギリスとか、そういう諸外国におきましても、やはりそういうことから大口預金からまず様子を見ていきながら小口預貯金の自由化に着手していくということです。
それから、先生御指摘でございますけれども、郵便貯金というのは日本独特の制度でございます。そこら辺に私どもが今後とも郵政省とも御相談申し上げながら決めていかなければならない問題があるということを申し上げさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/98
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099・赤桐操
○赤桐操君 大口、小口の問題については郵貯だけの議論ではないんですよ。要するに小口全体があるわけだね。しかも大口と小口とどのくらいの差で考えるんですか。どこを境に考えるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/99
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100・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) これはある意味では、どこで線を引くかというのは非常に難しい問題でございますけれども、ただいま例えばCDの、これは臨金法とガイドラインから外れている金利でございますが、これは自由化されている金利でございますけれども、それは大口から自由化するという一つの象徴的商品というふうに言われておりますが、五億から三億にまずなりました。それから来年四月には、これはアメリカもそう言っておりますが、一億ぐらいまでに下げていこう、こういうことを言っておるわけでございます。それ以外に相銀界、地銀界などでもMMCなどという商品などを考えまして市場連動型商品というようなことを考えておりますが、それがあるいは一億以下になるかもしれない。
そういういわば無限にと申しますか、ある程度だんだん大口が小口化していくというようなことで、無限に近づいていくと言うと語弊があるかもしれませんが、どこら辺までかというのは進めながら考えていく方がやはり現実的な手法ではないかなあというふうに考えておりますが、現実にはだんだん小さくなってきていることだけは事実のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/100
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101・赤桐操
○赤桐操君 もちろん郵貯を含めての話になりますが、大口が先行していって小口がなかなか展望が明らかにされてない。そういう金融政策の中では恐らく大口を中心とした新商品というものがかなり魅力的に出てくるわけでありまして、小口関係の方は全部抑えられた格好になってそのまま推移していくことになれば、大体国民大衆の六〇%以上は小口でしょう。小口をどの辺の線に引くかは、それは認識の相違があるかもしれぬが、私はそう思いますよね、大体が。六〇から六五、六%ぐらいまでが、大半がそうだとするならば、そういう人たちは新商品の恩恵に浴せない立場にある。したがって別なものに動いていく可能性は当然出てくるでしょう。資金シフトの変化が出てくるんじゃないですか。それはもう当然でしょう、このままの状態で推移すれば。だから、そういうことに在れば、これはいろいろの面で小口関係の方に問題が出てくるわけなんで、大口の展望が出始まってきて、小口の方についてもこれに後から追う形をとっていくことは、それは指導上漸進的に進めることは当然でしょうけれども、こうなりますというぐらいの展望は明確にしていくことが必要じゃないか。我々がこういうところで質問を申し上げていてもわからないんです、結局は。そうすると、国民の皆さん方は方おわからないと思うんですね。そういう金融政策というのは私はないと思うんですよ、大体が。そのことを私は特に指摘をしておきたいと思うんです。その点についてはどう考えるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/101
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102・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 先生御指摘の展望でございますけれども、それにつきましては、大蔵省から五月の三十日に発表いたしました展望は一応持っておるわけでございます。それはまず「CDの発行単位の一層の小口化、発行枠の拡大、期間の短縮」というようなことがまず第一点。それから「市場金利に連動して金利が決まる大口預金の導入」等々、あるいは「大口預金についてワイダーバンド制の導入を含む金利規制の緩和」、そして、「大口預金の全面的な金利規制の撤廃」を行って、引き続いて「小口預金金利の自由化の検討」ということでございます。
こういうふうに大蔵省の「現状と展望」ではそれを示しているわけでございますけれども、米国とのいわゆる円・ドル委員会でのつくりました報告書におきましては、このようなプロセスは二、三年で完成させたいということになっておりますから、引き続き小口預金金利の検討ということに危ろうかと思います。これはアメリカでも十年もかかって完成したプロセスでございますから、私どもとしてはかなり早く小口に近づいてきているという感触は持っておりますし、早晩解決すべき課題でありますし、そういうものがあるんだという認識の中に小口預金もいずれはくるのだということで大口預金金利を進めていくのがよろしいかと思いますし、かつ現実的な政策であるし、信用秩序も維持する点であろうと、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/102
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103・赤桐操
○赤桐操君 原則的なことはここに出ているからわかっているんですけれども、それ以上の御答弁がないようでありますから、したがって小口関係の方はなおどんなふうになるのかなというのが恐らく大きな課題になってきていると思うんですよ、それ以上大蔵省は明らかにしていないわけだから。したがって、これは私は早急に明らかにすべきだと思うんです。
それから、なぜそういうことがいろいろ必要かと言えば、それはもう今申し上げてきたとおりでありますけれども、特にその中で郵貯の関係なんかを考えてみるというと、例えばシルバー預金などというものが出てきていても、こういう新商品が出ようとしても、これは抑えられちゃってできないんじゃないですか、現実には。この点は銀行局長はどうお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/103
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104・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) シルバー預金という御限定でございますけれども、例えば定期預金などにつきまして引き下げるというような過程では、郵政省とも御相談いたしまして福祉定期預金というようなものも現にやっているところでございます。それをまた一歩進めてシルバー、お気の毒な老人の方々、零細な老人の方々というような預金について何か考える方法は郵政についてないかということでございますと、あるいは郵政の方からお答えいただくのがよろしいかもしれませんけれども、その老人預金について郵政省といろいろ私どもも議論したことがございますけれども、老人の方々の中でも、これはあるいは先生から見まするとおかしいなということかもしれませんけれども、預金できる方と預金できない方というような問題もある。あるいはそういうことでむしろ全体として預金金利の金利政策として、個別のそういうことをとるのがいいのかどうかというような課題はあるのかなあというようなことで、今まではそういうものについては認めないというと変な言葉でございますが、導入されていないのが現実でございます。で、老齢の方あるいは障害者の方、その中で世間でいわば弱者の方々という方がいろいろおられるかと思います。それ全体につきまして預金金利をそれぞれについて導入するのが正しいのか、それからそれを郵貯を伸ばすためにだけやるのがよろしいのか、あるいはやるとすれば福祉定期なんかの場合には、民間についても、官業と民業はイコールフッティングだということで認めてまいりましたので、やはりそれは一緒にすべきことである。ただ、それを認めるかどうかについては、日本のかなり独特な制度だと思いますので、諸外国には多分ないかと思いますので、慎重に検討すべき課題ではないかなと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/104
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105・赤桐操
○赤桐操君 これは新しい時代に入ってくるわけですからね。特に私は官業としてやっているこういう段階の中でもって、高齢化社会に臨む新しい形のものを打ち出していくということはこれからの大事なことじゃないかと僕は思うんですね。そういう意味で、今いろいろこの問題についてもやがて注目されてくる時期になってきているんじゃないかと思いますので、重ねてそうした新しい面の開拓に大蔵省自体も積極的な姿勢をとるべきだということをひとつ申し上げておきたいと思います。
それから次に利子課税の問題なんですが、最近この利子課税の問題で大分いろいろ新聞紙上もにぎわってきておりますが、いわゆる貯蓄優遇制度の問題であります。大体グリーンカード制そのものが問題になってきたというのは、これは不公正な税制になってはならないということで、このグリーンカード制によりこれをひとつ不公正化することを避けようということでこの問題が大きく取り上げられてきたと思うんですね。ところが、最近における情勢はこれとは反対な方向に進んできているんじゃないか。むしろ小口のそういう預金者に対する課税というものの方が先行し始まってきているんじゃないか。このことは大変重大な問題じゃないのかなということを最近私は感じ始めているんですがね。この点はいかがなもんですかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/105
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106・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 恐らく感じとしておとりいただいておりますのは、グリーンカード制が導入されたときはまさに総合課税制度、そしていま一つは限度枠の管理、こういうことであったと思うんであります。その問題が残念なことに、これは私どもの判断でございますけれども、国民に完全に理解、評価されるに至らなかったというので、今とりあえず凍結、こういうことになっているわけであります。しかしながら、そのカードの交付手続ということになりますと、六十一年の一月ですから六十年度から始まるわけでございますから、そうなるとこの予算編成期までにはその結論を出さなきゃいかぬ。
最初私も気を使いましたのは、税制調査会で、あれはこうなりましたと報告しても、それは一事不再議だ、おれたち全会一致で、全会一致かどうかしりませんが、決めたものだ。それを国会も一遍オーソライズしてやったものを、いまさらその凍結期間中に今後どうするかという問題に対する審議は一事不再議だからおれはやらない、こう言われちゃほんと困るなと思いました。しかし幸いに、国会の論議等を御報告したら、それはやってみようというので、今また部会が、この間任期が来まして新しい部会がつくられてこれからやられるわけであります。
今赤桐委員おっしゃいましたように、よく世間では、本来、限度管理とか総合課税とかいうもので考えられたことではなしに、今度は別の角度から、あるいは財源として考えてみたらどうだとか、あるいはそれこそ、何と申しましょうか、脱税防止の角度から考えようかというような記事がよく出ておりますので、総合課税制度から必要性を生じたものが、凍結されておる間に、今後どうしたら一番いいかということは、国会方面の議論等を忠実に伝えて、今はあらゆる予見を持たないで税調で御審議いただくのが一番至当ではないかというふうに考えて、例えばきょうの議論も素直にそのまま報告していくという姿勢で、責任者自身であります大蔵大臣が少しでも予見めいたものを発言することを差し控えながら、公正な審議を見守って、可及的速やかにその結論を出していただけることを期待しておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/106
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107・赤桐操
○赤桐操君 要するに、もう時間がありませんから締めくくりたいと思うんですが、三百万という限度の中でそれぞれ一応利子課税についての特別優遇措置は設けられてきていながら、これがやがて、きのうかおとといあたりの新聞に出ておりましたが、大蔵省・自治省の話し合いがまとまったような形で出ていた記事がありましたけれども、この中なんかでいくというと、マル優を廃止して一四%の一律分離課税案が台頭してきているようでありますが、こういうような形がもう出てきているんですね、現実に。これはどう考えてみても庶民、大衆に対する大変な悪税ですよ。一生懸命働いて汗水垂らして零細な金を積み上げてくる、そういうものに対して全部今の優遇措置を撤廃して利子に対する課税をするという。一四%の課税を行って得するのはどの辺なんですか、そういう問題が出てくると思うんですね。そういうようなことを考えてみるというと、そんなにまでして赤字財政の穴埋めを考えなきゃならないのか。当初は、不公平な税制、これはそういう形になってはならないということで、限度はきちっと決めるけれども、これに対する管理はやかましくするけれども、三百万だけはひとつそれぞれ認めていこう、こういう一つの枠をつくって始まったグリーン制度でしょう。それがもう本来の考え方はどこかへ行ってしまって、一般大衆に対する、現在貯蓄されている多くの貯蓄額全体に対して課税するというと幾らの税が上がるか、こういう考え方の中で発想が出てきているかどうか、私はわからないけれども、いずれにしても、全体を対象とした一律の課税を行っていくという形に変わろうとしているんですね。これは大変私は逆行した考え方になっているんじゃないかと思うんですが、最後にひとつ大蔵大臣御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/107
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108・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは赤桐委員の今おっしゃっている論点から論ずれば、その論点私はそれなりに通用する論理であると思っております。それで、五十八年十一月の中期答申をごらんいただきましても、「非課税貯蓄残高の総額は、昭和五十八年三月末で二百二十六兆円に達し、個人貯蓄残高のほぼ六割を占めるに至っている。」と指摘した上で、「貯蓄奨励のための政策税制としては、理行の非課税貯蓄制度は往時に比べてその意義が薄れてきていると考えられる」。そして一方、「預金、貯金等の種類別を問わず、仮名、借名等による非課税制度の濫用が少なからず見受けられる」。赤桐登があったり竹下操があったりしちゃいかぬということでございましょう。そういう指摘がありまして、「現行制度の種々の問題を顧慮すると、非課税貯蓄制度について、その対象となる金融資産相互間における制度面、取扱い面の権衡にも配意しつつ、今後、その見直しを検討し、合理化を図っていくことが適当と考えられる」、こういうふうにされたわけでございます。
で、この間の七月六日に税制調査会新メンバーになりましたので、会長さんはかわっていらっしゃいませんが、特別部会の設置が決定されて利子配当課税のあり方についての検討が開始されるという段階でございますので、先ほど申しましたように、私どもとしては、税調の中間答申を一応お出しいただいて、そしてグリーンカードの問題が現在凍結されておる、そういう環境の中では予見を挟まないで、推移を今は慎重に見守っておるというのが現状でございますので、今の赤桐さんの三百万円、この問題にも議論ございますが、庶民の貯蓄意欲とかそういうことを支えるためにも今日までとってこられた税制そのもののあり方を是認するという立場の御議論も正確にお伝えすべき問題であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/108
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109・塩出啓典
○塩出啓典君 それでは、まず来年の予算編成の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、五十八年度は四千五百三十八億円の税収増で、赤字国債の減額が三千四十億円、その他等々で余剰金が二千四百九十億円に達するとのことでありますが、この余剰金はどうされるのか。大平さんが国会答弁したように全額国債整理基金に繰り入れるのかどうかですね、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/109
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110・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは要するに剰余金の生じた半分は入れるという法律上の定めがございますが、大平大蔵大臣時代からの答弁によって当面この全額を入れるということで、現在基本的な立場を申し述べろとおっしゃいますならば、そのとおりではなかろうかというふうに思っております。
で、過去数年間いろいろな経過がございました。例えば国会で御審議いただいて、五十五年の四百八十四億でございましたか、これは昭和五十五年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律で戻し税に使ったこともございますし、それから近いところでは、昭和五十八年分の所得税の臨時特例等に関する法律でいわゆる減税財源に充てたこともございますが、あくまでも私どもの趣旨といたしましては、この財政法第六条剰余金処理ということは、大平大蔵大臣答弁というものが政府としての本筋の姿であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/110
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111・塩出啓典
○塩出啓典君 五十八年度は景気が順調な回復を見せておるということの一つの裏づけが法人税等を中心とする税収増ではなかったかと思います。日銀総裁や経済企画庁等も景気の回復がかなり確かなものであると。こういう点から考えると五十九年度においては自然増収が期待されるわけでありますが、大蔵大臣としてはどのような御所見をお持ちになっておるのかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/111
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112・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは確かに今おっしゃいましたように、五十八年度当初三・四%の実質成長を見込んで国会等でもお答えを申し上げておりましたのが三・七で大体見込めたと、内需一・九、外需一・八でございますか。したがいまして、そういう情勢もございましたが、一つには、これは暑いときには暑くて寒いときに寒いと電力というのは大変利益が出るわけでございます。そういう三月期の電力等を主軸とする法人税に支えられまして増収が出たと、こういう実態でございます。
したがって、五十九年度は、一般論を言いますと、それがげたになるから、それだけげた履けばさらに伸びるじゃないかと、こういう議論が当然出てまいるわけであります。五十九年度は四・一%ということを私ども言っておりますが、世上では四・八だとかあるいは五%成長するんじゃないかとか、こういうような各種調査機関のもろもろの意見があることは事実でございます。が、今は何分四、五、六と三カ月歩いたばっかりでございまして、そして六月税収そのものがまだわからないものでございますから、一体税収が五十九年度とういうふうに見込めるかということは、にわかにどうもお答えする環境にはないではないか。
それともう一つ言えますのは、この法人税におきまして昨年の十二月、いろんなヒアリングをしましたりして実質で積み上げたものが一〇%、二けたの伸びを実は見込んでおるわけでございますので、国会であるいはこの法人税の見積もりは少し大き過ぎやしないかと言われる心配も、若干これは政治家として心の中でしながらも御審議賜ったわけでございますので、法人税等がかなり五十八年度の下期からの状態を見込んである程度高目に二けたの見込みが立っておるという状態でございますので、必ずしも自然増収がまた大いに見込めますと言う状態には、まだはっきり申し上げられる状態にはないではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/112
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113・塩出啓典
○塩出啓典君 そこで、先般の「財政の中期展望」によりますと、六十年度には一般歳出の増を五・二%とした場合要調整額が三兆八千二百億円と、こういうことでございますが、今新聞報道では、例えば国債整理基金への定率繰り入れを一兆八千億を五千億にするとか、あるいは退職給与引当金を下げるとか、そういう増税の話もいろいろ出ておるわけでありますが、大蔵大臣としては、これはいつも論議になったことでありますが、歳出カットあるいは税収増、こういう点についてはどういうお考えであるのか、あるいはまたどういうスケジュールでこれから決めていくのか、これをお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/113
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114・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず六十年度予算、いわゆる要調整額をお示ししております、この「展望」の中で三兆八千二百億円ということをお示ししておるわけでございます。そこで我が国の財政というものを考えてみますと、私もしみじみと思うんでございますが、二千四百九十億円の剰余合が仮に出たと。これは筋としてもちろん全額国借整理基金に入れるべきものだ。これはたとえ百二十二兆の中から言えば少額でございましょうとも、それが偉大なる姿勢だというふうに考えております。
事実、私ども仮に一兆円を本日発行いたしたといたしますと、先般来借りかえ禁止規定を取りました財確法でいろいろ御議論をいただきましたが、これを十年に六分の一ずつ元金を減していきながら金利をずっと掛けてみますと、結局最終的には三兆七千億お払いしなきゃならぬ理屈になってまいります。一兆の元金を含めてでございますけれども。そうすると、考えようによれば、百二十二兆後世の納税者にツケを回しておるんじゃなく、ある意味においては三百兆以上のものをツケ回しをしておると同じ結果になるんじゃないかということを考えますと、昭和四十年まで公債発行なしにおやりになった先輩は偉かったなあと思いますし、昭和五十年まで赤字公債を発行しないで運営されてこられた方々は偉かったなあ、私は本当に偉くないなあ、こういう気持ちがするわけでございます。それが時に緊縮財政などと言われるゆえんのものでございますけれども、心情的にだれしも子や孫に借金を残すことを好む者はおりませんので、そういう感じがいたします。したがって、この六十年度予算というものもそういう財政改革路線の上に立って厳しいものにならざるを得ない。
そこで、手順はどうなるか、こういうことでございますが、今おおよそ考えておりますのが、今月内にいわば概算要求の方針を決定しようと思っております。それから法律、政令に基づきまして八月末までに概算要求を各省において出されていくということになるわけであります。そして一応十二月まで、それから各原局と調整権能を持っております大蔵省とでいろいろな議論をいたしまして、十二月末までに編成をしよう。したがいまして、今とりあえずの概算要求の問題は、これは歳出の方でございますから、その財源という議論になりますと、これから税制調査会も開かれますが、勢い九月から十二月までの間がいわゆるこの財源問題、あるいは俗に言われる不公平税制の是正の問題とか、そんな議論が行われていくという
手順になるんではなかろうかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/114
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115・塩出啓典
○塩出啓典君 きょうの新聞では、臨時行政改革推進審議会の行財政改革小委員会が報告書を出しておるわけであります。先般来からいろいろ与野党を通じて公共事業等による景気拡大策が出されておるわけでありますが、それに対してこの行革審小委員会の意見は全く反対の方向の意見を示しているわけでありますが、大蔵大臣としてはこの報告書についてどのようなお考えであるのか、また特にその中でも、地方自治体への補助金とか、そういうようなものを削減する、こういうような方向が示されておるわけでありますが、大蔵大臣としてはこういう方向についてどのようにお考えであるのか、これをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/115
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116・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これは私もちょっときのうも記者クラブからコメントを求められたわけでございますけれども、いわばこれは小委員会報告でございまして、行革審の意見書という形になって出るのはたしか二十五日というふうに承っておりますので、その段階でコメントするのはいかがかというふうに考えましたものの、その段階なりの私なりのコメントはしても結構であろうというふうに考えまして、行財政改革小委員会報告の趣旨というものは随分苦心して御議論の末まとめられたものでございますので、これらを十分尊重して実行に移すように最大限の努力をしなければならない問題だというふうな理解をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/116
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117・塩出啓典
○塩出啓典君 それから、先ほど赤桐委員からも質問がございましたが、利子所得課税の問題でありますが、先ほどお話がありましたように、当初は不公平税制の是正、こういう観点であったわけでありますが、最近は財源対策という面も出てきているように思うわけであります。
そこで、今税制調査会で審議しているようでありますが、大蔵大臣としてのお考えはどうなのか。余り意見を言うと予見を与えるからといって、いつも大蔵省としての意見は当委員会等では述べられたことはないわけでありますが、私は大蔵省としてこうあるべきであるという、そういう意見をはっきり示して、それを税制調査会でいろいろ論議をしていただく、みずからの現下において一番いいという案を示すべきだと思うんですが、その点のお考えはどうなのか。
それと、今言いました財源対策が主なのか、不公平是正を主に考えておるのか、この点大蔵省のお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/117
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118・竹下登
○国務大臣(竹下登君) これはマル優制度の見直しと俗に言われます言葉は、このマル優、郵便貯金等の非課税制度の見直しということになるでございましょう。この非課税制度の見直しは利子配当課税の適正化の観点から行われるものである。すなわち言葉が適切かどうかは別といたしましても、今おっしゃいます配当課税の適正化とはすなわち公平化と、こういうこと、逆に言えば不公平是正ということが主体であるべきだというふうに思っております。財源対策という議論は、結果として仮にもし財源が出たときに考えるべきものであって、本来の姿は利子配当課税の適正化の観点からこれは行われるべきものであるということまでは、私は正当な主張としてお認めいただけるものではなかろうかというふうに考えております。
そこで大蔵省が、言ってみれば、確たる方針を示してという御議論でございますが、それも一つの、先ほど来も議論いたしましたが、見識であろうと思っておりますが、何分にもこの問題、私どもといたしましては、なかんずく、私事にわたって失礼でございますが、私から見れば、グリーンカードの法律を提案したときの大蔵大臣でありまして、それを凍結するときのまた大蔵大臣でもあったわけでございますので、諸般の偉大なる責任を痛感しながら考えますと、お偉い先生がせっかく一事不再議などと言わないで検討してやろうとおっしゃった限りにおいては、あらゆる予見を挟まないで、せっかく今始まったばかりでございますから、その推移を静かに見守るという姿勢が適当ではなかろうかというふうに思っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/118
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119・塩出啓典
○塩出啓典君 次に、これは通産省、それから経済企画庁にお尋ねをしたいわけでありますが、我が国の民間設備投資がここ数年来非常に不振であったこともあり、アメリカに比較して企業設備の老朽化がだんだん目立ってきておるのではないかと、このように言われておるわけであります。私がいただきました資料を見ましても、いわゆる設備の年齢というものが、国際比較で、日本は大体石油ショック以後だんだん設備の年齢が延びてきておる、ところがアメリカはだんだん減ってきておる。こういう点から非常に長い将来から見ると、日本の経済が国際競争力においてアメリカに劣っていくんではないかと、そういうような危惧をする意見もいろいろ拝見するわけでございますが、そういう点の心配はないのかどうかですね、まずこれは通産省からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/119
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120・植松敏
○説明員(植松敏君) 今御指摘の点でございますが、日本開発銀行の資料等を見ますと、アメリカの設備の平均年齢が最近低下傾向をたどっておりますのに対しまして、我が国の設備の平均年齢は逆に、最近、先生御指摘のとおり、設備投資の停滞等もございまして、上昇傾向にございます。平均値で見ますと、開銀の資料を見ましても、我が国の場合が八年強、それからアメリカが九年程度ということで我が国の方がまだ若干若いということでございますけれども、将来の我が国の産業の活力維持という観点から見ますと、こういう傾向というのは一つの不安材料ということは先生御指摘のとおりでございます。
ただ、いろいろ業種、業態によりましても設備投資の動向等いろいろでございますので、今後こういった設備投資の動向、設備の年齢等、どういうふうに推移するかということを慎重に見守っていく必要があろうか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/120
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121・塩出啓典
○塩出啓典君 最近はアメリカの民間設備投資意欲というものが非常に急激に回復しておる、このように言われておるわけでありますが、その現状はどうなのか。また、日本もことしの第一・四半期等はかなり民間の設備投資も回復しているように聞いておるわけでございますが、この日米の比較はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/121
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122・植松敏
○説明員(植松敏君) 民間の設備投資の動向でございますけれども、とりあえず一九八四年、本年の第一・四半期のところまでしか得ておりませんけれども、我が国の場合、国民所得統計の速報を見ますと、年率で一二・四%、対前期比で三%の伸び、アメリカの方が相当高い一二%程度の伸びを示しておりまして、商務省の見通しでも一四・八%程度の伸びがことしは期待されるのではないかというふうに見通しがなされております。そういう意味で我が国の設備投資もことしに入りましてからかなり回復をしてきたということでございますけれども、アメリカの方が一層テンポが早いというような状況かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/122
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123・塩出啓典
○塩出啓典君 これは米国は日本よりもかなり金利が高い、そういう状況であるにもかかわらず非常に投資がふえるという。これは投資減税とかそういうような税制においても非常に日米間の差があるんではないか。先般も、法人税の実際の税負担をアメリカと日本と比べると、非常な違いがあるというような記事を拝見したわけでありますが、こういうような税制の比較という点については、これは大蔵省になると思いますが、どういう違いがあるのか、それはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/123
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124・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず私からお答えをいたしまして、特に日米の法人税問題における負担割合というのは若干専門的なお答えが必要でございますので、主税局長の方からお答えさすことといたします。
確かに租税特別措置あるいは投資減税、これは租税特別措置であるという考え方に立ちますと、最近よく言われる言葉では租税支出、言ってみれば租税で、いわゆる一般予算の中からもらわなくて、税を出すことを少なめることによる租税支出というような言葉も使われておるわけでございますが、我が国においても租税の優遇措置というようなものに対しましては、その都度必要性に応じてやってきておりますが、相対的には特別措置というものは漸次整理すべきものであるという税制調査会の答申の流れで今日に至っております。
それにいたしましても、中小企業あるいはテクノポリス等々せっかく皆さん方の御協賛をいただいて投資減税というものを行ったわけでございますが、投資減税でいつも税当局から考えてみますときに、果たしてその制度があったから設備投資がされたものであろうか、あるいは企業の責任において今設備投資の時期だから設備投資がされたものであろうかという、言ってみれば、その効果の判定というのは非常に難しい問題でございます、いわゆる心理の問題は別といたしまして。そこで勢い消極的なお答えを述べがちになっているわけでございます。
私どもといたしましても、アメリカとの差ということになりますと、一つは金利はこんな違いがございます。当初のレーガノミックスというものは、いわば所得減税等においてふえた可処分所得の多くが預金に回ってそれが設備投資の原資になる、こういう考え方だったと思いますが、消費にこそ回れ、余り貯蓄に回らなかった、したがって一方財政赤字も削減できなかったから金利は高くなる、したがって資本の流入というものが自然に起きていった、高い資本ではございますが。ただ、伝統的に申しまして、いわゆる自己資本比率というのが日本とアメリカとの企業では大変な相違がございます。この点が金利がたとえ倍でも金額が半分なら同じという下世話な理屈でございますので、そういう点はあろうかと思うんでございますけれども、私どもとしては今自律反転という状態が出ておるときに、新たにそこにその効果の測定の難しい特別措置、すなわち投資減税等を行う環境にあるかどうかというようなことになりますと、まさに財政問題もございますので、慎重に配慮しなければならない問題ではなかろうかというふうに考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/124
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125・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 今大臣から御答弁のあったとおりでございますが、若干補足して申し上げることをお許し願いますと、ただいま委員が御指摘になりました点で、アメリカの設備投資、民間投資の動向と税制との関連について一体どのように考えたらいいかという問題でございます。
私ども内部で常々議論をしておるわけでございますけれども、基本的に私どもがこの問題について問題を持っておりますのは、この設備投資の水準といわゆる投資に関する税制というものとの関係、これはよほど慎重に見定められませんと、一つの税制があるから設備投資に非常に大きな影響を及ぼすというふうになかなか考えにくいのではないかということでございます。
例えば先ほど委員が御指摘になりましたアメリカの投資減税、設備投資の税額控除の制度がございます。これがアメリカの設備投資を大きく支えているんではないかという議論が、こういう議論が昨今とみに行われておるわけでございますけれども、実は現在のアメリカの投資税額控除の制度は一九六〇年代の初めに、ちょうどケネディのころにあの制度がつくられまして、途中一、二回途切れたことがございますけれども、六〇年代、七○年代、八〇年代を通じてあの制度をアメリカは税制として持っておったわけでございますが、その期間のアメリカの投資と日本の投資を比べてみますと、GNPに対する民間投資のウエートからいえば、我が国の場合は大体一七%前後で非常に高水準で推移しておるわけでございます。アメリカは大体一〇%前後の水準で推移しておるわけでございまして、構造的にあの税制があるからアメリカの投資を支えてきておるというふうに考えるのは、なかなか考えにくい問題ではなかろうかということがまずございます。
それからもう一つ最近議論になっておりますのはアメリカのACRSの制度でございます。加速度償却の制度でございますが、これは先ほど委員がお触れになりました我が国の設備投資のいわば経過年齢といいますか、ビンテージとアメリカとを比較した場合になかなか問題があるという、これも昨今起こってまいった議論でございますけれども、この問題につきましては、いずれ秋口に政府税調等で私ども御議論いただかなければならないと思っておりますけれども、私どもが現在ある種の予感として持っております問題意識といたしましては、こういうビンテージを比較する場合も、マクロで比較して果たして問題の実態がつかみ得るのかどうか。これは先ほど通産省の方からも若干コメントがあったわけでございますけれども、むしろ業種ごと、あるいは産業構造をもう少し子細に見て、どの部分の生産設備のビンテージがどういう傾向にあるのか、そういったもう少しきめの細かい議論をいたしませんと、今後の我が国の設備投資に対応する例えば我が国の税法上の耐用年数のあり方とかがあるいは償却のあり方ということも、もう少しきめの細かい議論をする必要があるのではないかということでございます。
それからもう一つは、そういった結果としてアメリカの法人税の実効税率が我が国に比べて非常に低いということ、これも最近やかましく言われておるわけでございますけれども、この実効税率に対する私ども大蔵省の考え方は、これは常々当委員会でも申し上げておるわけでございますけれども、基本的にはそれぞれの国の法人税制の基本税率でもってまず税率水準というのは比較さるべきであるということでございます。何となれば、もちろん我が国もそうでございますし、アメリカもそうでございますし、先進諸国それぞれ政策税制と申しますか、租税特別措置を持っておるわけでございますけれども、その租税特別措置の効果、これは課税ベースを短縮したり、あるいは税額を控除したり、いろいろな手法があるわけでございますが、それの税負担の効果というのは業種ごと、企業ごとに全部違うわけでございます。したがいまして、そういったものをマクロ的に比較するということはむしろ理論的には非常になじまないということもございます。
それから、例えば同じ業種の実効税率負担を比較するということも可能でございますけれども、その場合によほどきちんとした方法論をとってもらわないと議論がミスリードする。それからそういった意味での実質税負担を議論する場合にそれぞれの租税政策の効果というものも議論してみる必要があるだろう。例えば一般論でございますけれども、アメリカの場合、先ほど申しました投資税額控除のほかに我が国では早くにやめてしまいました輸出振興税制のようなものが特別の業種に非常にきいておる結果になっておることは、これは否定できないと思います。しかし、さればといって、アメリカの法人税の水準がそういう個々の例から見て低いから日本も法人税の負担水準を下げるべきであるという議論は、これは政策的にも成り立つ議論ではございませんし、理論的にも誤っておる。もちろんことしの法人税の一・三%の引き上げによりまして我が国の法人税の実効税率が戦後最高の水準になったということは、私ども否定いたしませんし、先進諸外国の中でも今や我が国の法人税の実効税率負担が必ずしも低くない水準にきたということ、これも否定しないわけでございますけれども、さればといって、それが我が国の企業のビヘービアに対して非常に重大な障害があるのかないのか、それはにわかに即断できない問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/125
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126・塩出啓典
○塩出啓典君 そういう税制というものがどの程度影響するかというのは、今言われたように非常に難しい問題だと思うんですね。ただ、アメリカのそういう動きにもよく我が国としても関心を持って、アメリカが、研究投資の問題にしても、非常に有利な税制をしき、そのために我が国の研究開発力というものに差がつくようなことがあってはいけないんじゃないか。そういう意味で、政府としてもそういう点に十分配慮してやっていただきたい、こういうことを要望したいと思います。
それと経済企画庁にお尋ねをしますが、今、来年度予算等をめぐって、一方では公共事業をもっとふやせという、こういうような意見もあるわけでありますが、しかし、先ほど申しましたような日本の経済の国際競争力を強くしていくという点では、投資減税等の方がはるかに効果がある、こういうような意見もあるわけでありますが、そういう点の経済企画庁としてのお考えはどうなのか。
また、先ほど申しましたような日本の企業の行動が何となく投資よりもマネーゲームというか、ある意味ではそうなっているんじゃないかという、そういうようなことを指摘している人もいるわけですが、こういう問題についてはどのようにお考えであるのか。この御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/126
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127・吉冨勝
○説明員(吉冨勝君) 経済企画庁の経済研究所で開発しております世界経済モデルそのものでは、投資減税が設備投資に及ぼすプラスの効果、それから法人税減税が設備投資に及ぼすプラスの効果というのは、比較することができないわけですけれども、別途に同じ経済研究所で行いました所得税減税と投資減税についての比較研究を昨今発表しました。
それによりますと、こういった議論は、まず第一に特定の経済理論に基づいて行っております。ここで私たちが採用しました設備投資を決定する理論といいますのは、トービンという学者が開発しましたトービンのQ理論というもので、これは将来の税引き後の法人収益と、それから企業が購入します投資財の価格というものを比較して、将来の税引き後の法人収益が高ければ高いほど設備投資はふえるという理論であります。
この理論に基づいて推計式をはじき、実際に計算してみますと、法人税減税と投資減税と比較した場合、それが設備投資増加に及ぼす影響というのは、投資減税の方が法人税減税の場合よりもかなり大きな効果を持つということが言えます。
その理由は、法人税減税の場合には、それだけがまず法人税そのものを引き上げますけれども、他方で法人税減税をいたしますと、企業にかかわる経費に関する所得税控除の部分というのも同時に減りますので、相互に相殺し合いまして税引き後の法人税が必ずしも十分にはふえない。それに対しまして、投資減税の場合には、投資を行った額に対して減税を行うという直接的に企業のコストを下げる効果がございますので、設備投資をより促進する効果を持つ、そういった結果が私どものところでは出ております。
ただし、こういった計算結果というのは、今申し上げましたように、特定の設備投資決定理論に基づいていると同時に、それを推計する上での推計上の誤差もありますから、一応の目安として法人税減税よりも投資減税の方が設備投資をふやす方向の大きさはかなり大きいということは申し上げることができるのではないかと思います。
利子率が高過ぎることによってマネーゲームを行う可能性があるのではないかということですけれども、私どもはこれについて特別、今日の状態で利子率が法人利潤率よりも高いためにそういうことが特に起こっているということを検証している研究結果を持っておりませんので、直接それにお答えすることは残念ながらできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/127
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128・塩出啓典
○塩出啓典君 これは大蔵省にお伺いいたしますが、通産省では特に先端技術関係部門進出企業に対する税金優遇策を要請するとの意向を固めているようであります。これは御存じのように、テクノポリス構想が全国にできまして、そういう地方に産業立地を分散させ、そして地域経済活性化にインパクトを与えるという、こういう目的を促進する意味においてそういう要望が出されておるわけでありますが、大蔵大臣としての御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/128
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129・竹下登
○国務大臣(竹下登君) このテクノポリスに関しますところのいわゆる投資減税、これは既に御審議をいただいた問題でございます。今通産省からどういう御要請があるかというようなことは、今日時点で私どもから軽々に議論すべき問題であるとは思っておりませんが、この五十九年度改正でテクノポリス地域に立地する場合の投資についての特別償却を認める措置を講じたというところでございますので、今厳しい財政事情下にあってさらに新たな税制上の優遇措置を考えるというのは、環境としては困難な環境にありはしないかというふうに思っております。
で、我が国経済が設備投資が伸びを高めるなど国内民間需要を中心に順調な推移を示しておりますので、言ってみれば、景気は自律的な回復局面にあるという認識の上に立つべきではなかろうかというふうに考えております。
それと、これはいささか言い過ぎになりますが、我が国産業の構造というのは、税制の優遇措置というのは、確かに逆に申しますならば、補助金を出すかわりに、出すべき税金を出さないで済むようにしたと、こういう議論も確かに今日行われておるわけでございますけれども、優秀な労働力、そして高度な技術開発、そういうこと、そしてまた先進国中まれに見る労使関係とでも申しますか、そういうものが私は何よりも我が国の産業にとって大変なそれを押し上げていく要因であって、今自律回復という基調の中でさらに新たな措置というものを期待する以上に、優秀な労使関係とか技術力とかということに期待するのがオーソドックスな考え方ではないかな、こういう感じも持っております。これは別に先端技術の特定した税制上の問題を議論して申し上げたものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/129
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130・塩出啓典
○塩出啓典君 次に、これは円の為替相場は先週一ドル二百四十二円台を突き抜け、瞬間ベースでは二百四十三円までつけ、このところまた円安を一層強めているわけでありますが、その背景についてどのように分析しておるのか。
また、円の国際化ということによって円が本来の力を示すんじゃないかと、こういうようなことも期待されて、その方向に進んでおるわけでありますが、なかなかその効果があらわれていない。このまま円安が進行すれば、輸入物価のはね返りで国内景気への影響が懸念されるほか、一方では輸出増による経済摩擦も非常に憂慮されるわけでありますが、政府としてはこの円安対策について今後どういうことを考えておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/130
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131・行天豊雄
○政府委員(行天豊雄君) 先生御指摘のとおり、円の対ドル相場は七月の初めに久方ぶりに二百四十円を割り込みまして、今日現在二百四十円台にとどまっておるわけでございます。その意味では円安の状況にあるわけでございますが、この際ぜひ申し上げておきたいことは、先生も御指摘になりましたとおり、現在の状況は決して円が安いということではなくて、ドルが高い状況というふうに理解すべきだろうと思う点でございます。
ちなみに、今からちょうど四カ月前でございますが、三月の中ごろ、当時はドルに対しまして円が最近では一番高かった時点でございますが、例えば三月の十六日、この日の円の対ドル相場は二百二十五円でございました。その後、現在の二百四十円台まで円安になっておるわけでございますが、円とそのほかの通貨の関係を見てみますと、同じ日に、例えば円とドイツ・マルクの相場を見ますと、一マルクが当時は八十五円九十九銭でございました。それがきのうの相場では八十五円五十三銭、ほとんど変わっていない。それからスイス・フラン、これは当時が一フランが百四円五十五銭、きのうが百一円三十三銭、これは円がそれだけ高くなっておるわけでございます。さらにイギリスのポンドと比べましても、四カ月前は一ポンドが三百二十五円三十八銭ということでございましたが、これもきのうは三百十九円九十銭ということで、こういう数字からもおわかりいただけますとおり、今日の状況というのは、ドルがほかの通貨に対していわば独歩高の状況を示しておるということではなかろうかと思うわけでございます。
こういうドル高の背景は何かという御質問でございますが、米国の金利が非常に高い。御承知のとおり、ことしの二月ごろから米国の金利はまたじりじりと反騰してまいりまして、現在高どまりという感じ、将来についてももう少し上がるんじゃないかというような予想をする人も多いようでございますが、短期金利でも一一%台、長期金利では一三%台というような高金利の状況でございまして、したがいまして、日本との金利差も五%とか六%とかいう状況になっておるわけでございます。
二番目には、米国の景気回復が大方の予想に反しまして非常に強いということではなかろうかと思います。ことしの第一・四半期はGNPの実質成長率九・七七%、年率。第二・四半期も多少スローダウンはいたしましたけれども、五・七%というような非常に力強い拡大を遂げておりまして、しかも物価の方は二%台というようなことで安定しておりますし、失業率も一年前と比べますと三%も下がって、現在は七%と、こういうことでございますので、米国経済のそういった国内要素については、何といいますか、非常に力強いものがあるというのが国際的な評価になっておるんじゃなかろうかと思うわけでございます。
さらに中近東情勢等も依然として不透明なこともございますので、そういうもろもろの事情によって、ドルに対する選好というものが現在国際的に非常に強い。私ども恐らくこういうところが現在のドルの全面高の背景にある事情ではなかろうかと思っておるわけでございます。
こういう状況が長続きいたしました場合に、国内経済あるいは貿易摩擦というような関係でぐあいが悪いことが起こるのではないかという点の御質問でございましたが、確かに理論的に申しますと、円安状況が続きますと物価への影響というのは考えられるわけでございますが、ただ、御承知のとおり、日本の場合GNPに占めます輸入の比率というのも一三%台というような割と低いところでございますし、現在までのところ、最近の円の相場のゆえに非常に大きな国内への物価の悪影響があるというふうにも考えられないのではないかというふうに思っております。
ただ、確かに最近の日本の国際収支は相当大幅な黒字が続いております。他方、米国の方はこれまた非常に大幅な経常収支の赤字が続いておりますので、将来もし米国で失業率がまたふえてくるとか、あるいは企業の業績が悪化してくるというようなことになりますと、日本の黒字に対する批判というようなことが起こってくるおそれがないというふうには言えないと思うわけでございます。
ただ、私ども、先ほど申しましたように、現在の日本の黒字の最大の原因は、米国の経済が非常に速いスピードで拡大しておる、当然のことながら国内での輸入に対する需要がふえておって、日本を含めた各国からの輸入がふえておる。それから一方、こういうドル高の状況のために米国産業全体としての国際競争力が多少損なわれておって輸出が伸びない。こういうところに最大の原因があるというふうに考えておりますので、日米の黒字赤字が非常に大きいからその責任は日本にあるんだという意味で、日本だけが国際的な批判を受けるような状態ではないのではないかというふうに考えております。
この状態を改善する何かいい手だではないかという御質問でございますが、そもそもこの事態が今御説明いたしましたようにドルの全面高ということでございますので、何かこれをやれば解決するという決め手が実はないことも事実でございます。私ども一番の肝要なことは、一つには、日本経済の良好なファンダメンタルズというものを維持していけば、必ず相場が中長期的にはそういったものを反映する水準に回復するであろうということ、それからもう一つは、米国の高金利という問題が大きな背景でございますので、米国に対しまして財政赤字の縮小、それによる高金利の是正というようなことを、日本を含めまして国際的に求めていくということが当面の課題ではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/131
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132・塩出啓典
○塩出啓典君 次に、これは前々から相互銀行業界から特に普通銀行へ転換する構想が出されておるわけでありますが、大蔵省は先般「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」を発表いたしましたが、その中では、「金融機関相互の業際・制度問題については、時代の流れに沿うように漸次これを改めていく。」、このように述べておるわけであります。
これは御存じのように、現在相互銀行というものと普通銀行との間の融資の実態、そういうものを見ても非常にそういう差はなくなってきておるわけでありまして、そういう意味からこの大蔵省の「現状と展望」もこの相互銀行法の廃止による全行一斉普銀転換構想に非常に理解を示す内容になっておるのではないかと思うわけでありますが、この問題については大蔵省としてはどのようにお考えであるのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/132
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133・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 先生の御指摘のとおり、相互銀行業界ではかねてより相互銀行制度の見直しが行われております。その内容として、御指摘のとおり一斉普銀転換構想も議論されておりまして、そういう趣旨で要望書も提出されているわけでございます。
かねてから相互銀行業界にはそういう議論もいろいろございまして模索しているわけでございますが、その点は理解できるわけでございますけれども、相互銀行業界の普銀転換構想というのは全行の普通銀行への転換を前提としております。相互銀行業界は中小企業金融の分野において長い伝統と実績も持っておるわけでございますけれども、そういう中小企業金融の制度論あるいは根幹にかかわる問題であります。
その点では実は、五十五年秋に金融制度調査会でこの議論が相当熱心に交わされまして、その時点におきましては、相互銀行を中小企業金融専門機関として位置づける旨の答申が出されております。まだ三年半ばかりでございます。その間、確かに御指摘のような業際間の相違あるいは相銀の普銀への同質化現象も進展しているようでございますが、何しろ三年半ばかりの前にそういう中小企業専門金融機関として位置づけられた答申が出されているばかりでございますので、本件の議論について結論を出すためには再度金融制度調査会の審議にゆだねる必要があるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/133
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134・塩出啓典
○塩出啓典君 前回の五十五年の金融制度調査会のときから見れば、かなり急速に金融の自由化という動きは急テンポに来ておると思うわけでありますが、そういう中で特にこの相互銀行業界からもそういう要望が出されておるわけでありますが、近く金融制度調査会にそのことをかけるお考えはあるのかどうか、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/134
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135・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 私だだいまその問題点の方ばかり指摘したわけではございませんで、確かに同質化現象も進んでいるというふうに申し上げたわけでございますが、相互銀行と普銀との法令上の主な相違点といたしますと、例えば一つの例などを出させていただきますと、資本金は片や相互銀行は四億円、普通銀行は最低資本金十億円というようなことなどの問題もございます。それからあるいは準備率の相違とか、普銀に転換するためにはかなりの制度変更もございます点、あるいはコストの問題等もございます。
それで、すぐに金融制度調査会にかけるかという点でございますけれども、三年半ぐらい前でございますし、全体の金融制度の制度論、今先生御指摘の制度の見直しについて一概に否定的なことではございませんで、時代に即応した制度のことを考えていかなければならぬという認識はございますけれども、その全体の中の位置づけ、あるいは中小企業金融専門機関から普銀に転換することへの問題等々がございますので、再度金融制度調査会にしかるべき時期に諮る必要があるかとは考えますけれども、いまなお見きわめる点、最後の着地をどういうふうにするか見きわめる点もあろうかと思います。そこで私どもといたしましては、そういういろいろの問題点もありますよということで、業界内で十分議論を尽くしていただきたいというお願いもしている最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/135
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136・塩出啓典
○塩出啓典君 先般西日本相互銀行が合併をしまして、そしてこれは地方銀行に転換をした。相互銀行にも非常に大きいところとそうでないところ、差があるわけでありまして、そういう意味では、これはあれでございますか、もし相互銀行が、合併じゃなくても、単独で我が相互銀行はぜひ普銀になって頑張っていきたいと、こういうことであれば、大蔵省としてはそういう場合に認可するのかどうかですね。大体地方は一県一地方銀行で、一つでは威張るからもう一つつくって少し競争させた方がいいんじゃないかとか、こういうような意見もあるわけで、そういう意味で、そういう点はどうなんですか、希望すれば十分大蔵省としては認可するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/136
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137・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 今の塩出委員の御質問は、一斉転換論ではなくて、相互銀行の中から一部あるいは数行等が普銀に転換を希望する場合はどうなのかという御質問というふうに解して、先ほどの御質問ではない単独転換、いわゆる単独転換の御質問だと解して答弁させていただきますると、いわゆる転換法というのがございます。その転換法では、金融の効率化という見地もございまして、幾つかの転換の基準を示しているわけでございます。例えば我が国の円滑な中小企業金融に支障を生じないか、あるいは普銀転換により金融機関相互間の適正な競争関係を阻害するなど金融秩序を乱すおそれがないか、それから第三番目としては、普銀転換後に行う業務を的確に遂行する見込みが確実であるかというような視点から転換法によって検討していくということになるのが理論的にあるわけでございます。これは制度論あるいは政策論は別として、理論的には、少なくとも法律上はそういう理論があるわけでございます。
それから、まさに先生御指摘のとおり、仮に地銀になります場合には、むしろ地銀の競争、あるいは地銀の効率化、競争相手ができて競争を促進して地域金融の効率化を図るような面もあるかどうか。それは先ほど申し上げましたような適正な競争関係を審査する視点などにも含まれると思うわけでございますけれども、そういう問題がございます。
ただ、相銀界におきましては、もう一つの議論といたしましては、転換を希望いたしますると、単独あるいは数行で希望いたしますと雪崩現象を生じるようなことにならないかというようなことで、ついていけるものもついていけないものも一斉に雪崩現象を生じるじゃないかというような危惧も業界の中にあるようでございます。その是非論は別といたしまして、そういう問題についてどういうふうに考えていくかということもございます。そういうような問題がございますので、私どもとしては、先ほど申し上げました理論的な問題点、法律的な問題点、あるいは政策面としてどういうふうに考えていくか、それから業界の希望として、全体としてどう考えるか等々を総合判断して慎重に考えていく必要があるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/137
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138・塩出啓典
○塩出啓典君 それでは、最後にサラ金の問題についてお尋ねいたします。
昨年十一月から法律が施行されまして、私もその後の経過については予算委員会等でもいろいろお尋ねをしたわけでありますが、最近ヤタガイクレジットの経営危機が表面化したわけでありますが、正直言って、この原因は何か。放漫経営とも言われておるわけであります。もう一つは、銀行が融資を引き揚げた、そして逆に、大蔵省の指導もあって、直接じゃなしに間接的に融資をしたために金利が高くなって、そのためではないかとか、あるいはサラ金規制法施行により取り立てが厳しくなったんではないかとか、そのために倒産したんではないかとか、こういうようなことが言われておるわけでありますが、大蔵省としてはこの事件の原因をどのように理解しておるか。また、このサラ金、ヤタガイクレジットの経営危機というものをどのように位置づけておるのかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/138
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139・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 最初に、ヤタガイクレジット株式会社の経営破綻の理由でございます。先生からもちょっと放漫経営ではないかというような御指摘がございましたが、私どもといたしましては、個別のサラ金の経営内容まで入るという権限を、あるいは使命を法律上与えられておりませんで、行為規制のところの分野に限られております。そのような関係もございまして、そのヤタガイクレジット株式会社の経営破綻の理由については、必ずしもつまびらかにしないわけでございますけれども、一般的には、一つは過剰貸し付け、二つは不良貸し付けなどに基づきます貸し倒れの累増、あるいは社会的批判を受けるような営業行為によりまして顧客が離反してくるというような各種の要因で経営が悪化したというようなことなどが原因ではないかというふうに考えられるわけでございます。
それで、大蔵省の銀行局長通達をお指しになっていると思いますけれども、一つは、金融機関に対してサラ金融資の自粛通達がそういう結果をもたらしたのではないかという御質問でございます。これにつきましては、五十八年九月末の金融機関からのサラ金業者に対する融資残高を私ども持っておりますが、直接のサラ金業者に対する融資残高は五千六億円でございます。それからサラ金業者の関係会社に対する融資残高は五千二十六億円ということでございまして、六カ月前の五十八年三月末に比較いたしますと、直接貸しの方が七十一億円、それから間接の方は八百九十二億円で、顕著ということではございませんけれども減少しているわけでございます。その結果が、結局その経営危機になったのかということでございますけれども、その残高は徐々に減少しておりますが、しかしこの程度のことでヤタガイの経営危機の要因になったかどうかについては直ちに判断することは難しいのではないか。個別のサラ金の問題、株式会社としての問題もあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
全体としての位置づけは、ヤタガイ株式会社の経営破綻についてどういうふうに大蔵省として位置づけるかという御質問でございました。私の今の答弁の中でも、そのような御質問についての考え方について申し上げたところがあると思いますけれども、全体としては、大蔵省に与えられました法律の使命あるいは権限というのは行為規制でございますので、経営内容の中にまで立ち入ってはおりませんけれども、このヤタガイ自体の問題ですぐにその全般的な問題になるような、社会的な問題になるようなことにはならないのではないかというふうに考えています。もちろん、ヤタガイクレジットというのは業界第十二位というふうに言われておりますから、行為規制だけをやっておる大蔵省ではございますけれども、一応関心を持って見守ってはおりますが、内容までには立ち入っていないのが現状でございますので、この程度の御答弁で御容赦いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/139
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140・塩出啓典
○塩出啓典君 最後に、私は今までの過当競争、過剰融資、高金利、それが結果的には強制取り立てと、こういうような状況のツケがだんだん広がってきておると、こういう見方もあるわけでありまして、そういう意味で、時間がございませんが、最後に、大蔵省としては金利を下げるように——金利が高いと過剰貸し付け、過剰貸し付けになるとまた強制取り立てになると思うんですね。そういう点で金利を下げるように行政指導するとのことでありますが、この実現の可能性はどうなのか。
それと、いわゆる消費者信用法を制定いたしまして、銀行とか生保に対して消費者信用市場への進出を促す方向で検討していると聞いておるわけですが、これの準備状況はどうなのか、これを伺って質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/140
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141・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 最初の金利指導の点でございます。これはまさにサラ金規制法、貸金業規制法の規制の中の重要な一点の柱であるかと思います。大体時間を置きまして、本則四〇・〇〇四%でございましたか、以下にすることを最後の目標といたしまして、七〇、五〇、四〇と、こういうふうになっておるわけでございます。その点につきましては、私どもも非常な関心を持って局長通達等を出しておるわけでございますけれども、最近サラ金大手四社は金利を近く四〇%以下に下げるようにするというような動きが強まってきており、近く実現するのではないかと思います。これは貸金業規制法の金利規制部分についての先取りをやっているわけでございますけれども、大手四社がそういうことをやってきますると、徐々にそういうことが全体的に波及してくるのではないかという期待感を持っているわけでございます。
それから第二点の消費者信用法のことの御質問でございます。この消費者信用法につきましては、実は大蔵省銀行局長の勉強会というような金融問題研究会というものがございます。そこで我が国における消費者信用のあり方などを勉強していただいたわけでございますけれども、その報告では、消費者信用市場の健全な発展と消費者保護の徹底を図るためには消費者信用に関する総合立法の制定を早急に検討する必要があるという御意見をこの勉強会でちょうだいしておるわけでございます。これにつきましては、実はこれは貸金業、それから割賦販売業、あるいはクレジットカード業界等々横断的な総合立法でございます。そういたしますると関係省庁が多うございます。私どもといたしましては、こういう関係省庁と協議しながら、勉強会の提言の趣旨はもっともだという点がございますので、そういう趣旨を念頭に置きながら、関係省庁も多うございますので、関係省庁とも協議しながら慎重に検討を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/141
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142・近藤忠孝
○近藤忠孝君 最初に、金融の自由化、国際化問題についての大臣の基本認識について質問いたします。
この自由化は我が国においては世界的な流れであって避けられないものと受けとめられております。大蔵省も「展望と指針」で、前向きあるいは主体的、漸進的にという積極的な姿勢を示しているんですが、私は、この基本的認識自身をもう一度よく考え直してみる必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/142
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143・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 日本はそもそもが島国でございました。したがって、いわば共通通貨的あるいは国際金融的感覚にはどちらかと言えば地形的にはなじまない国であったと思います。それが先進国の仲間入りをして、今日の状態になりますと、世界で七番目の人口を数え、二番目のGNPを持ち、貯蓄率から言えば最高、こういうことになりますと、金融自身が全世界的な役割を果たす状態に日本独自の立場から見てもなっているのじゃないか。だから、それは国際的な流れであると同時に、日本自身もかくあるべきではないかという基本認識を私自身は持っております。ただ、おっしゃいましたとおり、とはいえ、金融には長い歴史がございますから、したがいまして、それには前向きではあるが、あくまでも漸進的に、そして最初申しましたように、他から要請されたものではなく、みずからの主体性においてと、こういうことを申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/143
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144・近藤忠孝
○近藤忠孝君 「展望と指針」の中でも、我が国金融は構造的変化を遂げつつあると、こう言っております。これは言うまでもなく、高度成長のときには低金利政策で国民からたくさん預金を集めて産業資金へ、それで高度成長。しかし、今これが低成長ということで大変変わっておるわけですね。我々はこの金の流れを民主的にやれということを主張してきたんですが、こういう大転換が迫られている場合、ただ、いろんな諸規制を緩和する、これが自由化の一環ですが、緩和して資金を自由な流れに任せて市場原理だけで資金循環を図る、こういう金融自由化路線では私は決して望ましい政策効果が得られないのじゃないかと、こう思うんですが、その点についてのお考えを聞きたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/144
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145・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 恐らく、それぞれの国々に歴史的な淵源があって金融制度がある。それが国際化、自由化した場合に、自由競争原理の中でよっぼど自己責任主義というものを国民全体が意識していないと、時に国民一人一人にとっても不幸をもたらすということが今日まで世界の歴史の中でもあったと私は思うんであります。したがって、この自由化を進めるに当たりまして、私どもとしては、そういう今までどちらかと言えば、大変に投資家保護、被保険者保護、預金者保護という三本柱の上に我が国の金融があったのが、自由化の中において自己責任主義というものを当然のこととして要請されてくる。したがって、それに対する事実認識を国民全体が持つような、いわば金融教育と言うと表現が悪いんでございますが、普及徹底とでも申しましょうか、それには絶えず気をつけていかなけりゃならぬ課題だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/145
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146・近藤忠孝
○近藤忠孝君 こういう大きな日本経済の転換期ですから、こういうときこそ、単なる市場原理に資金の流れを任せるんではなくて、公的な介入を必要に応じて強めていく、こういうことによって資金の流れを望ましい方向に転換していく。これは前に国債の発行のときに、金利の動向はどうか、金利はどこへ行くのかという話をしましたが、それとも共通する問題だと思うんですね。
外国の例などを見てみますと、各国とも相当の時間をかけて自由化が行われているんですが、自由化の結果、金融機関の倒産などが出現し、逆に公的機関による監督規制を強めるという、一路自由化じゃなくて、むしろ規制の面も場合によっては強まっているんではないか。例えばイギリスでは金融自由化の後、逆に銀行法ができている。そしてイングランド銀行に金融機関に対する法的な監督権限を与えるとか、例えば預金保険制度を設ける。西ドイツでもこれは同様で、信用制度法の改正で大口融資規制の強化あるいは銀行監督局の権限の強化など、こういうのが強まっておりますし、アメリカでも従来から金融機関に対するFRBの監督規制が厳しく行われているというのに対して、むしろ我が国の場合には自由化の波にまさに押し流されていくという、逆にそういう規制が緩められていく、そういう方向を進んでいるのじゃないかと、こういう危惧があるんですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/146
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147・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 外国の制度についての御言及がございましたので、私の方からまずお答えさせていただきたいと思いますが、確かに近藤委員御指摘のとおり、英国、西ドイツ、米国等では、金利自由化の決定後、これは私ども日本よりも先でございますけれども、決定後信用秩序の動揺等の現象がございました。
〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕
英国では、中小銀行ではございますけれども、そういう動揺もございまして救済融資を行ったとか、西ドイツでは例えばヘルシュタット銀行等の破綻がございまして、自由化決定後に、英国ではバンキングアクトが成立いたしましたし、ドイツでも同じようなことで預金保険制度の改組とか信用制度法の改正、御指摘のとおりでございます。
で、この点でございますが、一つは、いわば自由化の受け皿整備といいますか、自由化への取り組み方として規制を強化する点では、英国ではただいままでそういう免許等の統一的な包括的な規定がございませんでしたので、預金受け入れ業務を公認銀行や免許機関にのみ認めるとか、英蘭銀行の考査権限をつくるとか、そういうようなことでございます。それからドイツでは大口融資の規制なども導入したところでございました。
これを私どもの制度と比べてみますると、既に免許制などは我が国では確固として確立されておるわけでございます。
それから、いわゆる新銀行法は昭和五十六年に成立いたしたわけでございます。これは今から三年前でございますので一九八一年ということでございますが、ドイツの信用制度法は一九七六年でございます。新銀行法におきましては、大口融資規制も、ドイツの例なども見習いながら、資金が自由に流れるのはまた一つの経営の自主性の尊重という観点から必要だという見地もございましたけれども、一定のところにだけ金が集まるということは、銀行の健全性あるいは資金の効率的配分あるいは資金の偏在ということがございますので、新銀行法などにそういう点を盛り込んだわけでございます。
そういう点、既に措置済みなところがございますけれども、なお自由化の進行に伴って信用秩序の混乱はぜひとも防がなければいけませんので、我々が出しました「現状と展望」に抽きましては、自由化の取り組み方という項目を特に設けまして、検査の充実とか、預金保険制度の充実とか、自己責任原則の徹底とか等々の取り組み方を今後の方向として認識を示させていただいた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/147
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148・近藤忠孝
○近藤忠孝君 この金融自由化の中で特に地方の銀行、弱い銀行ですね、その中に今言った一定の混乱がもう既に起きているのではないかということを私はこれから具体的な事実をもって指摘をしたいんです。そういう点で私は本当に規制を緩める方向ではむしろないんじゃないかということを指摘したいんです。
その前提としてお伺いしたいのは、昭和四十年五月十二日の銀行機関経営の刷新についてという通達があります。これが今生きているかどうか。そしてそれに基づいて全国銀行協会連合会が各地方銀行あてに、これは五十一年八月二十四日、例えば特別の預金増強運動などを全廃することなどを具体的に書き、それをさらに具体化したものとして五十二年四月十五日、こういう通達が出ておりますが、これは現在もなお生きており、そして銀行行政の基本になっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/148
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149・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 御指摘の通達は現在なおいわゆる生きているという状態でございまして、私どもの行政の基本通達の一つでございますし、各金融機関はこの通達の趣旨を踏まえて経営を行っていると考えますし、期待いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/149
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150・近藤忠孝
○近藤忠孝君 ところが、富士銀行の中に、まあ中身はちょっと省略しますが、これに反するような事態が前あった。そこで内部告発として、一銀行員が、全国銀行協会連合会へその中身を申告したんです。そうしましたら、そのときの回答は、金融自由化でそれどころじゃないんだ、この通達は今棚上げになっているんだ、各地でいろんな問題が起きておってもうお手上げの状況だと、こういう回答があったというんですが、これはこの通達の趣旨に反しますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/150
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151・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) ただいま御指摘の事例の具体的な内容がわかりませんので、それがこの通達に違反しているものであるかどうかを直ちにはお答えできないわけでございますが、その事例がこの中に掲げてある事例に抵触するようでございましたら、それは違反と申しまするか、それは是正してもらわなければならない事柄ではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/151
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152・近藤忠孝
○近藤忠孝君 そこで、もう時間ないのですが、質問通告の中で具体的にこの通達に反するような事態があるという情報がありましたので調査をお願いしておいたんですが、一つは秋田銀行、羽後銀行、これは対であるんですね。それから太陽神戸銀行、日本信託銀行、第四銀行、これはいずれも新潟です。それから青森のみちのく銀行、岩手銀行、駿河銀行、こういうところについてこれは調べていただきましたですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/152
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153・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) ただいま調査続行中でございまして、私も中間的に聞いておりますけれども、必ずしも完全に把握している状態ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/153
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154・近藤忠孝
○近藤忠孝君 それじゃこちらで内部資料に基づいてひとつ指摘をしたいんですが、これはまず秋田銀行なんです。
秋田銀行では一兆円預金運動というのがありまして、それで六月末に目標達成なんだけれども、達成する前の六月二十三日に既にありがとうございました、達成しましたと。恐らくあと残った期間で相当な無理をしてやるんでしょうね。そういうようなやり方が是か非かですね。
それからもう一つ、それを受ける羽後銀行の方は、これは恐らく「役付」でおやりになっていますから内部の資料で各支店などへも通達するものだと思うんですが、「秋銀一兆円運動の影響防止について」と。もう大変なんですわ。そこで、こういうことがあるというんです。秋田銀行ではこの羽後銀行の取引先に対し、「六月末だけでよいので、振込み銀行を秋銀に変えてほしい」と。だから二十三日から月末までこういったことで集めちゃうんですね。これはまさに通達で禁止している、実態がないのに計数操作を行うということになると思うんです。まだありまして、「月末に高額の小切手を秋銀に入金させ、翌営業日の七月二日に貸出貸金を決済銀行に送金し、決済する」と。これも今の計数操作ですね。「六月末に一億円貸出して、預金に止めおく」。今言ったからくりの中身です。同時に当行の、これは羽後銀行ですが、小切手で一億円預入させる。これにより、当日の残高は二億円の増加となる。こんなことでケース(二)と書いてあるんです。それに対して羽後銀行としては、「当行にとっては資金的に一日ロスをすることになる」、その取引先でどうしても応じざるを得ない場合は、これは秋銀に対してですね、六月末に当行へも秋銀の小切手を入金させ、七月二日に手形交換で請求し資金的に相殺すること。本当に大変なんですよ。
〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
まだありますので、全部紹介した上で見解を聞きたいんですが、この羽後銀行の方では七月六日付で通達が出ておりまして、「秋銀一兆円運動後の対策について」と。要するにその結果相当自分の方の預金が秋銀に行ってしまった。そこで早急に当行資金流出分の奪還を図ろうというんですね。そして「資金流出がはっきりしている先については、速やかな移し替えを依頼要請すること。大口取引先預金貸金管理表等を活用し、前年同期あるいは前月と比較点検する中で、秋銀ヘシフトしたと思われる先についても、当行への移し替えを依頼要請すること」、「一兆円運動を当行としては、一大預金源という観点でとらえ」、今度向こうに一兆円あるからこっちへふんだくれということで「その移行を強力に推進されたい」と。それで一番最後にこういうところがありまして、「他行満期をがっちりつかみ口数増加とシェアアップ」というようなことですね。こういう奪還をお互いに、向こうの小切手をこちらにやり、また奪還をするという、こんなこと恐らくどこでもあることだと思うんですよ、これ競合する銀行の場合に。
そこで、銀行局としては、さきの通達に照らしてどうされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/154
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155・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 自由化、国際化と関連しながらの御質問でございました。
それで、一つは、自由化、国際化との関連で申しますると、これは効率化ということが進むと同時に、金融機関の中の競争は激しくなるということは否めない事実であろうというふうに私どもは認識しております。
それから預金の獲得運動でございますけれども、銀行が一定の経営計画を持って資金源の調達並びに貸出計画を立てるということは、いわば中長期の計画として持つことはよろしいわけで、一つの経営体としてのプランでございますから、これは当然の行為と考えられるわけでございますけれども、その経営計画上の資金源の調達に際しましてこの通達で言っておりますことは、行き過ぎた競争を禁じておりまして、そして過当な競争、金融機関間の競争が結局もし激化するならば金融機関の信頼性あるいは公共性等を失うおそれがあるということで、厳にこれを戒めているわけでございます。
そこで、今の御指摘の事例につきましては、なかなか複雑でございますので、私ただいま承りましたけれども、完全には理解できない面もございました。そこいら辺のところは複雑でございますので、この事例といたしまして過当な感じがいたすのは、今ただいまの感じでございますけれども、また先生の方に伺いまして、その通達、ただいま申し上げた趣旨並びにその趣旨に基づいた具体的に自粛する行為をこの通達の中では書いてございますので、それに違反するかどうかを検討させていただき、趣旨に反し、また具体的事例に反するようでございましたら是正を指導いたしたい。ぜひ指導をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/155
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156・近藤忠孝
○近藤忠孝君 じゃその調査を待ちますが、この他行にある預金を奪取しようなんというのは、これはもうあちこちでやっているんです。例えば第四銀行、これは百十周年記念で「一一〇運動」ということで、その「一一〇運動」の中心に、「他行奪取をねらいに一一〇記念定期増強運動を展開いたします。」というんですね。こんなのは、要するにほかのやつを持ってくるんで、決してどろぼうじゃないけれども、ちゃんと預金者の意思でやっているんだけれども、これが預金獲得運動の中心に据えられておるんですね。そして、この他行奪取自体が計画の中心で、その策定を各支店に要求しているんです。その具体的指示としまして、「期問中に」、この運動期間中ですね、あるいは「三月までと他行満期に焦点をあてた予約活動として推進する」。もう大変具体的なんです。「このため予約カードを作成する」と、このように具体的に指摘しちゃって、大臣、これはもう大変なんですね。それをお互いにやっているんだから、まさにこれは戦国時代なんです。
それで、戦国時代ということは実際に銀行のこの言葉の中にもあるんですよ。これは青森県のみちのく銀行ですが、発信者頭取、あて名は部店長あてですね。「限界預金目標未達店の猛省と行動革新喚起について」、要するに目標未達成の支店長は呼びつけられてしかられるんです。その中にこう書いてあるんですね。「この不振の」——「不振」というのは預金獲得の不振でしょうね。「現状を放置し、各店自助努力による同役をまつことは、食うか食われるかの戦国時代において消滅を意味することになる」。要するに消えてしまうということですね。「今後の未達挽回の完全履行と行動革新の実践を強く求めるため」支店長に「本部への出頭を願うことにした」というんで、支店長が、こういう状況だから支店長は後は顔を真っ青にして、今度各行員にこれを督励すると、こういうことになるんですが、こんな戦国時代の状況にしておいてよいんだろうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/156
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157・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 先ほど私自由化との関連での競争が激化せざるを得ないというふうなことを申し上げたわけでございますけれども、金融機関としては本源的な預金獲得に努力することは当然でございますけれども、一つ私が感じますのは、その競争あるいは自由化ということはサービスの提供によって預金者がどの銀行を選ぶか。これは金利面でもございましょうし、サービスの面でもございましょうし、各種の面でその資質を争うこと、これが一つの自由化の側面ではないかと思います。そこで、預金者の意思に反して預金を他行から奪取するということ、あるいは銀行であるがゆえに、もう強者ではないと言われておりますが、レンダーあるいは貸し手という立場から、意向に反してそういうようなことをする点があればもちろん問題でございます。
それから、今先生が御指摘のような事例の中で感じられますのは、これは地道な努力じゃなくて、過度な感じがあるのではないかというような気もいたします。そこで、詳細に承って、その事例がこれに違反するかどうかということで考えさせていただき必要な指導はぜひさせていただきたいと、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/157
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158・近藤忠孝
○近藤忠孝君 これは預金者の関係だけじゃなくて、そこに働く従業員の問題でもあり、こんなことでしりたたかれたら大変な話なんです。どれほどしりをたたくかと申しますと、これも先ほどの青森のみちのく銀行ですが、「有効な革新的資金吸収方法の創出と行動変革」、「今は本当にギリギリの生きるか死ぬかの革命時」なんだ。革新とか革命がたくさん出てくるんですね。そして、「血の小便が出る程、夜も寝られない程、知恵を絞ったろうか?血の小便が出る程、連日連夜、遅くまで仕事と取り組み、努力をしているだろうか?」、こういうことなんです。血の小便が出るほどというと、もう病気になってもやれという。こんなことで実際に競争が行われ、しかも中心が他行にある預金を奪取と。こんなことをやっておったら、これはみんな軒並みそれこそ先ほどの信用不安その他にずっといくんですよね。まだたくさんいっぱいあるんですよ。具体的にこういうものまであって、たくさんあるんですが、きょうは時間がなくなっちゃったので、これは引き続きやりますけれども、もうサラ金まがい、サラ金と同じようなことをやっておるんです。
で、私がここで要求したいことは、これらの事実を具体的に調査し、これに対してどういう措置をとったか、これはぜひ次回に報告をお願いしたい。
それから、これは私がたまたま挙げたんで、まだいっぱいあるわけで、しかも大体東北、北の方に偏った情報ですからね。全国調べりゃもっとたくさんあると思うんですね。これは全金融機関の問題、先ほどたまたま富士銀行の名前を挙げましたけれども、そういう大銀行にもあります。これはこの資料の中にも出ておるんですけれども、金融自由化にどう対処するかということでの各銀行の取り組みなんです。これはもっと高度に知恵を絞り、もっと本当の金融機関らしいことをやりゃいいんだけれども、サラ金まがいのこういうことをやっておるわけです。
私は大臣に最後にお考えを聞きたいんですが、一つは調査のことの答弁を求めますが、金融自由化の現場でのこういう問題に対して、これを放置するのか、あるいはこれに対して規制し、指導するのか。規制もし指導もするとしたらどうしたらいいのか。これについての大臣の、今急の話ですから、今頭にあるお考えで結構ですので、局長と大臣の答弁をお伺いして、きょうは時間ないんで、本当はもっともっとたくさんおもしろい材料があるんですが、残念ですけれども、これで質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/158
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159・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) こういう問題について改めて通達を出す考えはないかということでございますけれども、金融機関の公共性あるいは過当競争の防止という思想は、銀行行政上連綿として流れている思想で、ただいまの通達でただいまのところは十分にカバーしておりますので、なお金融検査等を通じまして指導は続けてまいりますが、ただいまのところなお様子を見たいということでございます。
それから労使関係での御質問でございますけれども、競争が激化いたしまするとあるいは労使関係にも影響を及ぼすようなことが考えられるわけでございます。このような労使関係にっきましては、私ども第一義的には労使間の良識であるというふうに考えるわけで、経営上の問題として労使問で解決すべきルールづくりのような問題があるのではないかというふうに考えますけれども、何といっても公共性のある金融機関でありますから、労使関係の安定ということは、世間のイメージといいますか、世間の信頼を得るためにも必要であるということは考えられます。もちろん労働基準法などに違反するようなことは断じであってはならない。これは労働省の所管でございますけれども、そういうふうに考えます。そういうような公共性の高い金融機関として労使関係の安定が必要であるというようなことから適宜ケースに応じ助言してまいりたいというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/159
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160・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 個別案件、私もよく理解が行き届いているわけじゃございませんが、やっぱり大改革のときにはそれなりの摩擦を伴うものでございますので、それらの摩擦に対しては十分なる注意を払っていかなきゃいかぬ。しかし、公共性を持つ金融機閥の、日本人でございますから、その良識の中においておのずから解決されていく課題ではないか、こういうふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/160
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161・近藤忠孝
○近藤忠孝君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/161
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162・吉田正輝
○政府委員(吉田正輝君) 調査する点は、大臣にかわりまして、させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/162
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163・青木茂
○青木茂君 だんだん私どもの関心が六十年度の問題に向いてきておるわけなんですけれども、六十年度の税制改正、それから予算、これからそういう問題を審議いたしますときに、またぞろ不公平税制という問題が特にマル優あたりに絡んで出てくるんじゃないかと思っております。ただ、その不公平税制ということが、一般用語としては言われるんですけれども、定義がはっきりしないものだから、あっち向いたりこっち向いたりしてしまう。自分の都合のいい方へ不公平税制の解釈をしてしまうというような点がございます。だから、きょうはこの不公平とは何かという問題に絞って、来年私どもが物を審議する際の参考資料に伺いたいと思っておりますんです。
不公平であるというからには何かに比べて不公平でなきゃならぬわけだから、例えば一例を挙げれば、不公平是正としてこのマル優の問題を見直すという場合に、何に比べて不公平だから見直すんだと、このところからまず伺いたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/163
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164・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 不公平税制という言葉は立場によっていろいろな使われ方がするわけでございますけれども、従来、大蔵省ないし政府といたしまして、税制論議をする過程で不公平税制あるいは政策税制という言葉を使います場合には、かなり概念定義ははっきりさせていただいているわけでございまして、これは例えば昭和五十一年の政府税調の答申等でもきちんとした定義がございます。それは本来、政策的配慮がなければ所得税法なり法人税法なりそれぞれ税法本則によって課税されるべきものが、政策税制的配慮によって税負担が軽減されておる、いわばそういった政策税制を公平という観点と政策という観点で比較考量しながら議論するということでございますけれども、五十年度以降国の財政の状況が非常に逼迫してきたという状況もございますし、かたがたそういった環境のもとで広く税の公平を求める国民の要請も強いという背景のもとで、連年租税特別措置を中心にして見直しをしてまいったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/164
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165・青木茂
○青木茂君 じゃ不公平税制是正の見地からマル優を見直すといった場合に、何に対して不公平だから見直すわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/165
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166・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 租税特別措置による減収額を毎年度国会に提出申し上げているわけでございますけれども、五十九年度ベースで本来所得税本法によって課税されるのと比べれば約三千三百九十億円の減収額が生じるという資料を提出しておるわけでございます。したがいまして、今の青木委員の御質問に端的にお答えするとすれば、本来少額貯蓄を課税しないという政策的な措置がとられなければこれだけの増収があり得るわけでございますから、それは言葉の正しい意味においてやはり公平はそれだけ損なわれておるわけでございますけれども、反面、少額貯蓄を優遇するという政策的観点もあるわけでございまして、冒頭に申し上げましたようにそういった二つの観点を比較考量してどういう結論を出すかという問題になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/166
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167・青木茂
○青木茂君 こういう考え方は成り立つかどうか。本来総合課税だけれども、分離課税にしておるから、そこに総合と分離の間に不公平が成り立つということはあり得るでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/167
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168・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) これはまた論点が違うわけでございまして、非課税貯蓄については先ほど私が申し上げました。今はまた別の問題でございまして、利子所得についても本来所得税の総合累進課税であるべきである。したがって現在分離選択制度がございます。これも政策税制としてあるわけでございまして、この減収額も国会に提出申し上げておりますけれども、その限りにおいて、これも総合課税という観点からすれば、その部分だけ公平は損なわれておるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/168
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169・青木茂
○青木茂君 そういたしますと、例えばこの三月の二十三日ですか、参議院の本会議で公明党の中野議員の質問に対して総理がお答えになった議事録があるのですけれども、「このために不公平税制、いわゆる租税特別措置」ということは大体中曽根内閣の統一見解であり、大蔵省は、今度は中曽根内閣だけでなしに、大体大蔵省は不公平税制というのはいわゆる租税特別措置を言うのだというふうにお考えになっておるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/169
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170・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) おおむねそのとおりでございまして、ただ正確を期する意味で若干補足して申し上げますと、現在のマル優制度は実は法形式としては所得税本法でこの非課税規定がございます。ただ、これも先ほど引用させていただきました五十一年の税制調査会の御議論では、実質的な意味でこれは租税特別措置である、政策税制であるというふうに分類されておるわけでございまして、正確に申し上げますと、実質的な意味での租税特別措置が政策税制であり、公平の観点と政策との観点から議論されるべき対象になるというふうに御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/170
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171・青木茂
○青木茂君 特別措置というのは政策上の必要から不公平承知でつくったものですから、これは実は当然なことだと思うのですけれども、そうすると特別措置以外と申しますか、本則の中にあるいろんな面における不公平というものは、これから我々が不公平というものを論議する場合の問題意識ですね、問題意識、我々にはありますけれども、当局側の問題意識には一体あるのかないのかということはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/171
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172・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) これは昨年十一月の中期答申にも触れていただいておるわけでございます。いわゆる租税特別措置でなくても税制上絶えず見直していかなければならない部分が税制全般にあるわけでございまして、例えば例示で申し上げますと各種の引当金がございます。この引当金につきましては、評価性の引当金であるものもございますが、そういったものにつきましては、ときどきの経済情勢等を見ながらその限度額なり繰入率を絶えず見直していかなければならないという問題がございます。ただ、これは言葉の定義にもかかわることでございますけれども、今まで申し上げておりました租税特別措置の不公平問題と私どもがこれを区分けして議論をしていただいておりますのは、税制調査会でもこれを区分して議論していただいておるわけでございますけれども、引当金という制度そのものはいわゆる政策税制でも何でもないわけでございます。ただ、その税制の中で具体的に設定されておる基準なり繰入率そのものは適正であるかないか絶えず見直さなければならない。
したがいまして、昨今私どもがこの議論をしていただきます場合に、公平かつ適正という言葉を使わせていただいておるわけでございます。公平かつ適正な観点から税制を議論していただきたいということでございまして、先ほど申し上げましたいわゆる政策税制に論点を限定してしまいますと、今申しました引当金の繰入率の見直しのような問題がその枠の外になるわけでございますから、税制というものはいつの時代でも公正と適正の観点から絶えず見直すということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/172
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173・青木茂
○青木茂君 税理論の専門家から見た不公平という問題と、社会的な一つの皮膚感覚から見た不公平というものには、若干のずれがあるというふうに思うわけなんですよね。私どもがよく口に出してはしかられるクロヨンであるとかトーゴーサンであるとか、これは徴税技術の問題を越えて源泉徴収と自主申告間の制度上の不公平であるというようなふうに皮膚感覚としては我々はつかまえているし、それからまた国民一般そうだろうと思います。これが理論的に不公平であるかないかという議論は別問題として、これは一体どうやって格差を縮めていくのか、正していくのか。とにかく脱税は横行しているわけだから、実際問題としては。ここのところの当局の決意、これは一体どうなんでしょうね。毎回毎回出ているんだから、脱税というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/173
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174・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) この不公平の問題、特にただいま御指摘のありましたように、所得課税をめぐって議論になる。その場合に制度以前の問題といたしまして、執行上その所得捕捉がきちんと行われているかどうかという議論があるわけでございます。その場合に、それは本来は課税の実態の話ではあるけれども、制度面でそういうことが起こり得ないようにいろんな工夫をしなければならない、これはそのとおりでございます。
ただ、給与所得が源泉課税であり、事業所得が例えば申告納税であるから、したがって不公平税制であるというのは、これはやや短絡した議論でございまして、そういった観点も入れまして、つまり給与所得の担税力、それは勤労性所得であると同時に所得の捕捉がかなり行き届くという状況のもとにあるという観点で、例えば制度上も給与所得控除のような制度が設けられておるということでございますが、ただ、それだけでは不十分ということでございまして、これは五十年代に入ってずっと税制調査会でも御議論いただきました。特に本年の所得税法等の改正におきましては、申告納税制度を中心にいろいろ議論があったわけでございますけれども、新たに記帳義務を導入させていただくとか、あるいは総収入報告制を採用させていただくとか、あるいは国税通則法の一部を改正していただきまして、そういったいわゆる申告納税制度が本来の制度の機能をより発揮するように私どもも制度上いろいろな努力をしてまいっておるわけでございまして、今後ともそういう方向で努力していかなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/174
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175・青木茂
○青木茂君 この一、二年のこういう問題というのか、脱税の摘発というような問題に対する当局の努力は僕は非常に評価はできると思うのですけれども、しかし何となくのんびりしているという印象も否めないわけなんですよ。すぐ人が足らぬ、人が足らぬという問題に持っていかれてしまうのです。源泉徴収で必要なものをがっぽり取ってしまうから、その他の部分については少しぐらい問題があったってえらくのんきに構えちゃっているのじゃないかという勘ぐりも出てくるんですよ。それじゃ困るわけなんですね。
例えば、これは単に税収だけの問題じゃないんですが、今問題になっている健保法案だって全部の八割にそろえるということは大変格好はいいですよ。格好はいいんですけれども、その基本になるところの保険料の取り方に問題があるとしたら、八割にそろえたって何の意味もないんですよ。そうでしょう。国民健康保険の財政が苦しい。そうすると、国民健康保険に加入していらっしゃる方が払うべき保険料というものが隠れているのじゃないか。そこから苦しい財政というものの一因があるんではないか。これは御承知のとおり、国民健康保険の保険料を自営業の人は応益と応能がフィフティー・フィフティーですね、大体。しかし応益というのはなかなか取りにくいものだから、場合によっては応能負担が七割にもなっているところがあるわけですね。そうすると所得税がもし取り足らなかったら、それが住民税にはね返ってしまって、その住民税を基準に国民健康保険の保険料が決められてくるならば、保険料が少なくなって財政が苦しくなって国庫補助が大きくなると、こういう波及があるわけです。
いろんな面に、脱税と言えば語弊があるけれども、私は去年から漏税、漏れた税金と言っているんですけれども、だから非常に波及するんだから、そこら辺のところはもう少し徹底的に急いで、急テンポでやってもらわないと、今問題になっている健保法案自体においても僕は意味がなくなってくるという感じがするんです。厚生省の問題で大蔵の問題じゃないですけれども、徴税のアンバランスということになればこれは大蔵の問題です。どうなんですかね。そこを考えずに八割八割と、こういう議論が健保の問題でも出てきているということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/175
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176・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) これは繰り返しの御答弁になるわけでございますけれども、所得課税につきましては、その実質的な公平を確保するために所得の捕捉の格差が起こらないようにというのがやはり基本的な問題の一つとしてあるわけでございます。その場合に、制度の問題と執行の問題ということでございまして、制度の面の問題につきましては、若干先ほど私が御説明申し上げたわけでございますが、執行の問題につきまして、本日国税庁の担当の者が出席をしていないわけでございますけれども、限られた人員の中で国税職員五万人が懸命の努力をしておることはぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
特に、昨今、新聞紙上等で各種の報道がなされるわけでございますけれども、私ども第一線の職員といろいろ話をしてまいりますときに、そういった世論の風潮もございまして、納税者の方と税務当局との言葉の非常に好ましい意味での緊張関係というものは、必ずしも第一線ではむしろ望ましい方向にここしばらく動いてきているのではないかというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/176
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177・青木茂
○青木茂君 今申し上げましたように、国民健康保険の保険料にも響いてくるわけですから、私は国税五万人の方が非常に、さっきの話じゃないけれども、血尿が出るとか出ぬとかいうぐらい一生懸命やっていらっしゃるその努力は当然これは高く評価している。しかしながら、単に人が足らぬからやれないということだけではなしに、地方の税務課の職員ですね、これは大体八万人ぐらいいるんだから、そこらの人たちとの連携プレーがもう少し有機的にできないだろうかという感じも強いんですけれども、こういうことはお考えになったことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/177
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178・梅澤節男
○政府委員(梅澤節男君) 国税の税務の機構と、地方の税務の機構を制度的に一元化するというような議論は従来からあるわけでございますが、そういった議論はさておきまして、両課税当局間の事務連携というのは近年とみに強化をいたしておるわけでございます。これもあるいは国税庁の方から御答弁申し上げるべき問題でございますけれども、自治省と国税庁の方で各種の取り決めと申しますか、協議し、合意した事項を決めておりまして、それを末端におろしまして、税務署と管内市町村と、これはそれぞれの地域によっていろいろ濃淡の関係はございますけれども、最近は地方の方の御協力も得まして、末端においていろんな、例えば各種の資料の交換であるとか、情報の相互交換とか、各種の面で非常に協力を密にしておるというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/178
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179・青木茂
○青木茂君 最後に、大臣はにやにや笑っておいでですけれども、どうなんですかね、これだけはひとつ申し上げておきたいんですけども、クロヨンだとかトーゴーサンだとか、そういうことのあるなしということは別問題として、税の取り方、それの制度的な不公平というものが、単に税収だけの問題でなしに、先ほど申し上げました国民健康保険料の問題だって、学生に奨学金を出す問題だって、保育所に子供を入れる問題だって、全部響いてくるんだ、それを総合したらどえらい格差になってくるんだということだけはひとつお心にとめていただいて、長期的展望でお考えをいただきたいということだけをお願いを申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/179
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180・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 専門的な議論でありましたので、にやにやじゃございませんで、傾聴しておりました。
いわゆる福祉政策といえば所得制限、あるいは応能主義における各種負担金、これら基本ががっちりしておれば不公平の増幅がないという理論は私もよくわかります。それで、間々私どもも、先ほど来御議論なすったように、租税特別措置というものを不公平税制の一つとしての位置づけにしておりますが、俗に言う不公平税制と不公平感との差というものがあるということは私どもも認識して事に当たらなければならぬ、その考え方は等しくしておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/180
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181・青木茂
○青木茂君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/181
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182・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/182
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183・伊江朝雄
○委員長(伊江朝雄君) 速記を起こして。
本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後四時五十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110114629X02319840717/183
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