1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年四月二十日(金曜日)
午後一時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 谷川 寛三君
理 事
川原新次郎君
北 修二君
最上 進君
村沢 牧君
藤原 房雄君
委 員
大城 眞順君
岡部 三郎君
熊谷太三郎君
坂元 親男君
高木 正明君
竹山 裕君
初村滝一郎君
星 長治君
水谷 力君
森田 重郎君
稲村 稔夫君
上野 雄文君
菅野 久光君
刈田 貞子君
鶴岡 洋君
下田 京子君
田渕 哲也君
喜屋武眞榮君
政府委員
林野庁長官 秋山 智英君
林野庁次長 後藤 康夫君
事務局側
常任委員会専門
員 安達 正君
参考人
全国町村会副会
長 湯本 安正君
熊本県玉名製材
協業組合代表理 大石駿四郎君
事
東京大学教授 筒井 迪夫君
東京農工大学助
教授 岡 和夫君
全林野労働組合
中央執行委員長 川合 勇君
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本日の会議に付した案件
○保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○国有林野法の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
○国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/0
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001・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案、国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。
本日は、三案につきまして、お手元の名簿にございます参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
本日は、三案につきましてそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。
御意見をお述べ願う時間は議事の都合上お一人十分間程度とし、その順序は、湯本参考人、大石参考人、筒井参考人、岡参考人、川合参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質問にお答えをいただきたいと存じます。
それでは、湯本参考人からお願いいたします。湯本参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/1
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002・湯本安正
○参考人(湯本安正君) 私は、全国町村会副会長の長野県木島平村長の湯本でございます。
参議院の農林水産委員会の先生方には、日ごろ全国町村会の農政活動に対しまして深い御理解と御支援を賜っておりますことにつきまして、まずもって厚くお礼を申し上げる次第でございます。
なお、本日は、ただいま本委員会に付託されております林野関係三法案について、私の意見を申し上げる機会をお与えいただきましたことを大変ありがたく存じます。
私の村は、総面積九千八百四十ヘクタールで、森林面積は八千九十ヘクタールであります。そのうち国有林面積五千七百六十ヘクタール、民有林面積二千三百三十ヘクタールで、国有林の占有率が七〇%を超えるという高い村であります。
このため、自然林養林として千二百ヘクタール、国設スキー場として九十一ヘクタールを活用させていただいておりますし、また、私が森林組合長を兼務しております関係上、森林組合では作業我が国有林の施業を受託する等、国有林との関係が非常に深いのでありまして、国有林の消長は地域の産業経済に深いかかわりを持っているところであります。
したがって、今回提案されております国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案並びに国有林野法の一部を改正する法律案については、深い関心を寄せているところであります。
第一に、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案についてであります。
国有林の経営については、引き続く木材価格の低迷、外材の輸入の増大等により、その経営環境が至って厳しいものがあり、かつ、営林局、署の統合、経営の改善合理化等による努力にもかかわらず、ついに累積赤字が五千億円、長期借入金が一兆円という重大な危機に直面をいたしております。
このため、本年一月の林政審議会が行った答申においても明らかなように、国有林における年間伐採量は、最盛時のほぼ二分の一程度の水準にまで落ち込んできているという資源的制約に加えて、木材価格の大幅な上昇は期待薄であるという状況であることから、独立採算を建前とする事業体としては、当然のことながら事業量に見合った経営規模の縮小、合理化を図ることはやむを得ないと考えておる次第でございます。
既に、林政審議会の答申においても、現在五万五千人と言われる国有林野事業特別会計職員を、昭和六十三年度までに四万人に縮小していくということを目標とすべきとしていると聞いております。国有林の多い山村住民としては、国有林経営の大きな変化は直接間接に地元経済に及ぼす影響が大きいという現実的な立場から見て、これを積極的に歓迎するものではありませんが、現下の厳しい林業経営を打開する試みと受けとめ、国有林経営の改善に協力をしていきたいと存じております。
以上のような理由によって、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正し、その改善期間を延長
するとともに、職員の退職手当の財源に充当するため、資金運用部からの借り入れを行うこと、並びにその利子の支払いに必要な財源に充当するため、一般会計からの繰り入れを行うことにつきましてはやむを得ない措置と考えておる次第であります。
第二に、国有林野法の一部を改正す法律案についてでありますが、本法は、現在行われている分収造林制度を拡大して、民間において育成途上にある森林について、分収育林方式という新たな発想のもとにその普及が見込まれている制度を、国有林に導入しようとするものであります。
これにより、いわゆる開かれた国有林として、国民の参加による育林制度を創設し、国有林野の整備の促進を図り、緑を求める都市住民に対し、森林を理解し、健康的な財産づくりの場としようとするものであり、まさに画期的な施策として賛意を表する次第であります。
ただ、この際申し上げたいことは、国有林の育成管理を行う責任はあくまでも国にあるのでありまして、その管理費用について民間活力を吸収するだけにすぎないという根底の考え方を忘れずに、関係者が総力を挙げて国有林の適正な管理に御尽力を願うことが必要であると考えている次第であります。これらの措置により国有林の改善が進み、健全な林業の発展に寄与されることを切に望む次第であります。
第三に、保安林整備臨時措置法の改正に関する意見を申し上げます。
御承知のとおり、現在、保安林に指定されている面積は全国で七百七十万ヘクタールと言われております。先ほど申し上げましたとおり、国有林では、面積でおおむね五〇%が保安林に指定されている状況でありますが、民有林においても三百八十万ヘクタール、民有林面積の二二%が保安林に指定されております。
我が木島平村におきましても、国有林の八〇%に近い四千四百ヘクタールが、民有林の一五%に当たる三百三十五ヘクタールが保安林に指定されております。
また、林野庁の調査によりますと、現在、保安林に指定されていてもその機能を十分に果たしていないと見られる面積が九十万ヘクタールに及び、この中で民有林が六〇%を占めるということを指摘されております。
このため、このたび、保安林整備臨時措置法を改正し、現行の期限を十年間延長するとともに、機能の低下している保安林につきまして、特定保安林の指定等緊急な改善対策を講ずることとされたことは、まことに適切な措置と考えている次第であります。
私どもといたしましても、保安林の重要性については既に十分認識しているつもりでありますし、管理不十分な保安林が民有林に多いことについては、大変遺憾としているところでありますが、最近の山村における過疎化、林業活動の停滞、林業所得の伸び悩み等はまことに深刻で、保安林の整備に関し財政力の乏しい林業地域市町村、森林所有者のみに負担がかかることは問題であると考えられるのであります。したがって、まず国におかれては、山村振興対策を含め、森林、林業全般にわたる総合的な施策を強化するための予算措置を講じていただくことが必要と考えますが、一方においては下流受益者が保安林機能の維持強化に対し積極的に参加すべきものであると考えているところであります。
私どもの長野県におきましては、本年から県が「緑の基金」五億円を募金し、森林に対する県民の理解と緑化育林事業の進展のため、その果実を有効に活用する計画を推進しておりますが、このような費用分担方式は、今後全国的に推進していく必要があり、また普及していくものと考えております。
なお、保安林の整備につきましては、下流地域の受益者の協力、参加を推進するに当たっては、まず、保安林を初め森林、林業の重要性について広く国民の理解を得ることが先決であり、今後その啓蒙、指導につき国が積極的に取り組まれることを強く要望いたす次第であります。
最後に、総括いたしまして、国有林と関係の深い一村長といたしまして、上述の三法案が一日も早く国会で議了され、国有林が新しい歩みを通じて国民の期待にこたえられることを切望してやまない次第であります。
以上申し上げて、意見といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/2
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003・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ありがとうございました。
次に、大石参考人にお願いいたします。大石参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/3
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004・大石駿四郎
○参考人(大石駿四郎君) 私は、熊本県の玉名製材協業組合の代表理事大石駿四郎でございます。
このたび林野三法の参議院審議に当たり、製材業に携わる者の立場から意見陳述の機会を与えられたことにつきまして、まことに光栄に存じている次第でございます。
私は、林業、製材業を取り巻く環境が極めて厳しい中で、実際に生産現場にかかわっている者として、常日ごろ考えていることの一端を申し述べさせていただきたいと思います。
我が国の人工造林地の面積が一千万ヘクタールに達し、将来の木材需要の相当量を自給できる体制が確立されつつあることはまことに喜ばしいところであります。しかしながら、人工造林地の多くは間伐などの手入れを要する育成過程にあり、しばらくの間は投資を続ける必要があります。中でも間伐については、従前であればむしろ主伐期までの中間的な収入として期待できたわけでありますが、最近においては、足場丸太等の需要の減退、さらには労賃の高騰等に伴い、一方的な投資となってしまい、随所に間伐手遅れ林分が見られる事態となっております。林野庁が五十四年度から開始した間伐対策事業によって、ようやく林家にも間伐実行の意欲が出てきておりますが、私は、製材業を営む者の責務として、間伐によって生産される小径材を何とか有効に活用し、間伐の推進に役立ちたいと考えているわけです。
玉名製材協業組合も実はかかる観点から、間伐小径材を専門的に処理加工する目的で昭和五十二年度に設立したものであります。協業組合の施設については、国、県の助成をいただいておりますが、経営は何かと苦労が多い現状にあります。
私どもの製材業を取り巻く環境の中で、もう一つ大きな問題は木材需要であります。
日本は、木の文化と言われ、木を大切にし、木のよさを生活の中にこれほどまでに生かした民族はいないと言われるほど、木とのかかわり合いの深い国であります。しかしながら、今日の状況を見ますと、建築戸数の減少や非木造住宅の増加を初めとする代替材の進出する中で、木材需要はまさに低迷の中にあります。このことが日本の林業の将来に大きな影を落としているものであり、私は何としても木材需要の拡大に努力しなければならないと思っております。
実は、私の玉名製材協業組合の小径木利用につきましても、こうした木材需要の拡大への取り組みであると思っております。なぜならば、木材を国民に使っていただくためには、安くてよりよいものをつくり出していくことが必要であるからです。一般に見向かれもしない間伐材を原料として、よいものをつくっていこうとしているところであります。こうした中で、私どものねらいも何とか所期の目的を達成できるようになってきているものであります。
さて、このような中で、私ども製材に携わる者として、国有林に対する期待は大きなものがあります。ただいま申し上げましたように、木材需要の拡大のためには、安定的に良質な木製品を供給していくことでありますが、そのためには、間伐材だけでなく、安定的に製材原木を手当てしていくことが不可欠であります。国有林は、地域によってたくさんあるところ、少ないところといろいろ違っていますので、国有林に対する期待も地域によって異なると思いますが、国有林に良質な木材を安定的に供給してほしいとの願いは、どこの地域でも一致したものと思っております。
昨今の国有林野事業の経営は、先に申し上げま
したような木材不況の中で、大変厳しい環境にあると聞き及んでおりますが、やはり国有林には安定した経営をしていただくことが大切であります。このため、経営改善の努力によって、一日も早く立ち直られることを強く期待するものであります。今回の法改正は、そのためにも必要なことであると思っています。
次に、分収育林制度について申し上げたいと存じます。
私のいます熊本県の菊池市では、五十二年に市有林で分収育林契約がされたことがあります。市有林の約六十ヘクタールについて一般の人々に公募したところ、大変な人気を呼び、たちどころに四百数十名の方々が応募したということであります。
これらの分収育林契約をした方々が、今でも家族連れでときどき訪れては、自然とのそして森との触れ合いを楽しんでいる姿をよく見かけております。したがって、今回国有林にこうした場を広く設けられることは、大変いいことであると思うわけでございます。
最後に、保安林につきまして若干私の経験談を交えながら、考えを申し上げたいと思います。
今回、改正を御審議される保安林整備臨時措置法が制定される契機の一つとなったのは、熊本の白川の大はんらんがあったと聞き及んでおりますが、私はそのときの悲惨な被害の状況を見ても、森林の大切さを切実に感じたのを今でも忘れることはできません。
また、昭和五十年初めには、福岡市を中心とした福岡県に大きな水飢饉があり、各家庭の飲料水にも事欠くようになり、嫌というほど水の重要性を体験させられたのであります。そしてこれが契機となって、福岡県では昭和五十四年に「水源の森」の造成基金が設立されましたことは皆様方も御承知のことと存じます。私はこうした体験を通じて、保安林の整備はまさに国の最も重要でかつ緊急にすべき大計であろうと思うわけでございます。
今回の法改正の趣旨は、機能の低下している保安林について造林等の施業の実施を確保することにあると考えるものでありますが、保安林の果たすべき役割から見ても当を得たものであり、また、これらの措置を講ずることによって我が国の森林資源の充実が図られ、また、森林、林業に対する国民の理解と協力を得ることに役立つものと確信する次第であります。
以上、林野三法案の御審議に当たりまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/4
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005・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ありがとうございました。
次に、筒井参考人にお願いいたします。筒井参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/5
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006・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 東京大学で林業政策の歴史を研究している筒井でございます。
本日は、現在転換期にある国有林のあり方——これはあり方と申しますと方向と目的を含みます——は何かを考え、その上に立ってここにかけられている三つの法案について意見を述べさせていただきたいと思います。この機会を与えていただきましたことを厚くお礼を申し上げます。
初めに、国有林野法関係の二法案についてでございます。
最近、国民参加という言葉がしきりと使われていますが、この意味は、山を利用する人々がみんなで山を守っていく、山をつくっていく、そのつくった山をみんなで荒らさないように見守っていく、そういうかかわり方でないかと考えています。しかも、このような考え方は古くさかのぼりまして、千三百年ぐらいも前の大化の改新のころから脈々として貫かれてきております。お手許に差し上げました資料は、「山と木と日本人」からの抜粋でございますが、これで御覧いただけますように、これは、山、林、川、沢などの自然の利用は公私共利が原則であるとする考え方でございます。公私共利とは、森林などを領有する公権と利用する住民の私権が共存する関係を言います。つまり森林は公物であるから、その利益は公私どもにすべきであるとするものです。
この方針を徹底させるため、その後、奈良から平安時代にかけて何回となく法令が出されています。山や海や川や沢などは自分一人だけが利益を取ってはならない、これは菅原道真の言葉ですが、このことが政治の方針とされましたし、下って鎌倉幕府のときも、山ややぶや沢は公(領主)と私(農民)がともに利益を得ると、これは御成敗式目という法典の追加法は定められております。さらに江戸時代になりましても、草や薪をとるのは共同で行い、また、山を分けるときはくじで平等に行うといったやり方などが入会利用の原則として広く全国で行われていました。この平等利用の原則は現在も続いております。こうして古くから我が国の風土に定着していたのがこの公私共利の原則だったのです。
明治になって林政の方針を定めるときにも、公私共利をどう考えるかが論じられました。古くからの公私共利制を生かすべきであるとする意見と、収益を上げることを方針にして公私共利は限定して考えよとする意見の二つがあったのですが、結局は、後者の収益を上げよの方針が採用されまして、以後これが国有林、公有林、私有林を含めた我が国林政の基本の方向となったのでした。
こうして公私共利の考え方は一たんは林政の舞台の正面からは姿を消したのでございましたが、しかし、最近になりまして再び見直され始めてまいりました。先ほど、転換期にあると申し上げたのはこのことを指しております。
では、なぜ見直す必要が出てきたのか、私はここで最近における森林資源観の変化を申し上げたいと思います。
最近まで、森林資源と言えば木材としての形とかヒノキとか松などを考えていました。クヌギとかブナなどの広葉樹さえ雑木としてどんどん切られておりました。しかし、現在は全く違ってきております。現在では杉やヒノキばかりではなく、ケヤキもブナもクヌギも立派な資源として含められるようになりました。そればかりではありません。水、緑は無論のこと、石や土や空気、小鳥や谷川にすむヤマメさえ森林資源に含めていいのではないかという意見も見られるようになりました。美しい緑、きれいな豊かな水、さわやかな大気など、国民が森林に求めるニーズが変わるにつれまして森林資源観もまた転換してきたのです。そして国民もまた自分の求める森を、緑をつくり始めてきたのです。数年ほど前から進められていた「ふるさとの森」づくりには多くの人たちが積極的に参加していきました。緑の森へのレクリエーションにどんなに多くの人が参加しているか、老若男女を問わず全国の人が森林の緑の中へ入り始めたのです。いまだかつて見られなかった大きな国民の緑への渇望のエネルギーが奔流のように森林の中へ入り始めています。まさに転換期にふさわしい熱気のある現象と言わねばなりません。
森の中へ入り始めるとともに、生き生きした森をつくろう、緑豊かな国土をつくろうとする要望も沸き起こってまいりました。先ほど申し上げた公私共利とは、利用する人がみんなで山の地方を維持しながら、荒廃を防ぎながら資源を育てていくというものですから、みんなで緑の国をつくっていこうとする現在の大きな潮流は公私共利の現代的なあらわれと考えられます。
以上のような理解に立ちまして、二つの改正案についての意見を申し上げたいと思います。
国有林野法改正の目玉である分収育林制度は、立派な森林、豊かな緑を待ち望む国民のニーズを受けとめ、それをつくるためにすべての国民が平等に参加する機会を提供した一つの形態と考えられます。みんなが平等に利用し、山を守りつくっていくという千年以上の歴史に培われましたこの公私共利の考え方が現代に合った形で具体化すること、これは新しい国有林がここからスタートしていくということを期待されます。
次に、改善法についてでございますが、これには国民の理解と協力による経営の立て直しによっ
て国有林の使命を果たそうとする意欲がうかがわれます。私は緑こそこれからの文明を開くかぎであると常々主張しております。また、現在の私たちは五十年、百年、否千年先の子孫の森を預かっているのだと考えております。その緑をつくる国有林は、これからの文明をつくる使者としての役割を持っていると考えております。立派な森林をつくりたいという国民のニーズを背景として、実行主体である国有林が健全な経営体となり、この使命を果たされることを国民の一人として期待し、公私共利の具体的実践と文明の使者としての役割を果たすことを願っております。
次は、保安林整備臨時措置法の一部改正案について意見を申し上げます。
先ほど申し上げましたように、公私共利制は荒廃を防ぎながら生産するという技術的性質を持っております。この生産と保全を両立させることは林学の最も大切な技術で、森林法はこれを基礎理論として組み立てられています。私はこれを、お手元に差し上げました資料のように、楕円林政とか二焦点林政とか名づけております。この考え方の趣旨は、切るということと切らないということとは不可分に結合しているということでございます。つまり、生産と保全とは二つとも同じように重視され、かつ有機的に関連しているということです。今まではとかく生産に力が入れられて、保全は軽んじられておりました。生産さえうまくやっていけば保全はおのずと可能になるという予定調和的な考え方が支配していたのです。この考え方も現在は大きく転換し変わっています。
保全とは、切らないままにしておくことにウエートがかかった営みですが、だからといって決して放置しておくことではありません。常に生き生きした活力を持ち続けるよう、合理的に植えたり切ることも行わねばなりません。今回の保安林整備臨時措置法の一部改正案は、この切ることと切らないこととは不可分であるという技術論に立ち、保安林に合理的な管理、手入れの手を加え、整備していこうとするものと理解されます。我が国保安林面積の半分を占める国有林の保安林が、民有保安林と同じくこの技術理論のもとに取り扱われ、保安林としての役割を十分に発揮されることを期待します。
以上、全国林政の先導的役割を持つ国有林が、今まで申し上げた方向と目的を持って、山と木と人を一つにすることに努力されることを期待しつつ、三つの法案に賛意を表します。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/6
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007・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ありがとうございました。
次に、岡参考人にお願いいたします。岡参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/7
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008・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 東京農工大学で林業経営を専攻いたしております岡でございます。
三法案に対して意見陳述の機会をお与えいただきました当委員会に対して、厚くお礼を申し上げます。早速、中身に入らせていただきます。
まず、保安林整備臨時措置法の改正法案でございますが、従来の保安林制度は、不作為の義務が基本になっている制度である、このように理解されます。つまり、してはならないことを法制度で森林所有者に課するというものであったわけでございます。これは、そのような枠組みの中で適切な森林の施業、つまり森林の技術的取り扱いでございますが、森林施業が行われるものと期待されておりましたし、また現実にも、これまではそれで保安林の機能の効果が十分維持できたということでございます。
今回の改正法案は、そのような制度的枠組みから一歩踏み出しまして、作為の義務ではないのですが、その一歩か二歩の手前とでも言うべき所有権の移転あるいは使用収益権の設定について知事が協議の勧告を行うことができる、このような法案の内容になっているわけでございます。
で、保安林制度の理念を発展させてまいりますと、不作為の義務とともに、森林所有者がその保安林について行うことが望ましい、あるいは行うべき森林の取り扱い方法が当然あるわけでございまして、それの実行の担保が当然問題として出てこようかと思います。それにつきまして今回の改正法案では、特定保安林あるいは要整備森林、そして協議の勧告という一連の体系を設けて、望ましい施業あるいは行わなければならない施業の実施の担保が図られている、つまり、保安林の理念に照らしまして制度の充実が図られたというふうに理解できるわけでございます。最近の保安林における民有林施業の動向に照らしまして適切な改正内容であるというふうに考えております。
次は、国有林野法の改正法案についてでございます。
緑資源造成への国民の参加意欲、これは最近ほど高まっている時期はないのではないかというふうに考えております。大衆がそういう意欲を満たす方法として従来ありましたのは、せいぜい緑の羽根の募金に応ずるというくらいが参加意欲を満たす方法であったわけでございます。国民参加の緑資源造成というテーマ、あるいは立場から過般成立いたしました分収林特別措置法を見ますと、これは国民参加の緑資源造成に対して民有林について法律制度が整備された、国民大衆が安心して緑資源造成に参加できる、そういう法律制度が整備されたというふうに考えられるわけでございます。民有林についてそのような対応がなされたのでございますから、当然国有林でもそれと歩調をそろえて、そういう国民の参加意欲にこたえる方途を講ずる必要があるというふうに考えられます。そのような意味で、今回の国有林野法の改正法案に対しては、賛意を表するものでございます。
なお、この国有林野法の改正、つまり分収育林契約の導入ということと国有林の経営改善とのかかわりということが、当然この際考えてみなければならない問題ではないかと思います。なぜならば、国有林経営改善が目下の急務であるというふうに考えられるからでございます。
そこで、この当否ということでございますが、分収育林契約の対象になります林齢、そういう対象の林でございますが、これは言ってみれば団塊の世代と申すべき林でございます。つまり、著しく面積の大きな、膨れ上がった、そういう林が当面分収育林契約の対象になる林でございます。そこで、これが将来そのまま経過いたしますと、つまり伐採時期に達しますと、急激に伐採収入がその時点で膨れ上がるという、そういう構造の林が対象になるわけでございますが、今回の分収育林契約は、言ってみれば、その収入の一部を繰り上げて現在収入するということになるかと思います。そこで、繰り上げによって、将来国有林の収支に悪い影響が出ないかということでございますが、それは、これが団塊の世代でございます。言ってみれば、収入をならすという効果が今回の分収育林契約にはあるのではないかというふうに考えられます。つまり、それだけ財務の運営にプラスをし、例えばそれだけ借入金の額を減らすことができる、それによって利子負担の軽減も図られるという効果がある。つまり、分収育林の契約の導入によって将来の国有林収支に悪い影響は出ないというふうに判断ができるわけでございます。もっとも、こういう財務面の効果というものは、多分、分収育林の第一義的な目的ではないと思います。当然そのようにはされていないと思いますが、それにしても、そのような効果のあるのは事実であるというふうに考えております。
最後に、国有林野事業改善特別措置法の改正法案についての意見を申し述べさせていただきます。
まず、この問題を考えるにつきましては、一体国有林野事業の役割とは何であるかというところから当然出発しなければならないかと思いますが、これは私は非常に砕けた言葉で言いますと、よい山をつくることが国有林野事業の基本的な役割であろうというふうに考えております。従来から国有林野事業の役割としてはいろいろなことが挙げられておりますが、そういった役割も、基本は、よい出づくりがあって初めてその他のもろもろの国有林の役割も果たせるものであるというふうに考えております。
そこで、国有林野事業とは何かということでございますが、そのよい出づくりに必要な資金をみずからの経営の中で生み出して必要な投資を行っていくということ、これが国有林野事業の経営としての機能であろうというふうに考えております。特別会計制度が設置されているのも、そういう国有林の機能を発揮させるための会計制度が特別会計制度である、いわば経営の機能を達成させる手段として特別会計制度があるというふうに考えております。
では、完全な独立採算で経営が可能か、あるいは独立採算で経営をしなければならないかというと、必ずしもそうではないのでございまして、本来的に採算経営、収益経営と言ってもいいかと思いますが、この採算経営のできない森林も国有林には多くございます。そういう森林の管理、経営ももちろんこれは国有林の重要な使命でございます。そういう森林の適切な管理、経営も重要な使命でございます。林業を取り巻く経済的な条件等によっては独立採算の困難な場合ももちろん出てくるわけでございますし、とりわけ料金制度といったような制度がとられておりません。全く市場価格によって経営が支配されるような経営でございますから、独立採算の確保が絶対的なものではないというのは、これは言うまでもないことでございます。したがいまして、赤字が即国有林の経営責任を問うといったぐあいのものではないというふうに考えております。しかしながら、赤字が国有林の使命の達成を阻害する極めて大きな要素になっているということも、これは想像にかたくないと思います。その点につきましては、民間経営であろうと国有の経営であろうと変わるところはないというふうに思われます。そこで赤字からの脱却、これが国有林経営の使命の達成のためには極めて重要な急務であるというふうに考えられます。
そこで、赤字からの脱却でございますが、現在のような厳しい国家財政のもとで赤字の補てんをすべて国の一般財政に求めるということは、これはもちろん一般納税者の立場からして許されることではないと思います。納税者の立場からいたしますと、よい出づくりを能率的、効率的に行うことが当然望ましい、あるいは願うからでございます。そこで、経営体質の改善が必要なのでございます。経営体質が結局赤字の根源でございます。現在の経営体質が社会経済の状況に対応しないということが赤字の原因でございますから、経営体質の改善ということがさしあたって要求されるものであるというふうに考えられます。
そこで、経営体質の改善でございますが、現在の国有林経営の現状は、外からの財政支援なくしてはこれは困難であるということは、恐らく大方の御認識であろうと思います。一般会計からの繰り入れあるいは財政資金の借り入れは経営体質の改善を促進させるために不可欠な手段である、財政支援の持つ意味というのはそういうふうに理解されるわけでございます。つまり、経営体質改善のための不可欠の手段であるよい出づくり、これを効率的に能率的に行える経営体質にするために財務的支援が行われるのである、あるいは行うのである、こういう位置づけを私としてはいたしております。
ところで、一般会計繰り入れ、財投借り入れ、ともに極めて厳しい国家財政のもとで行われているわけでございます。率直に申しまして、よくぞこの厳しい状況のもとで現在の国有林予算に見られるような支援が得られたものだというふうに関係者、これは国有林の外部の方々も含めてでございますが、関係者の識見と御努力に対して敬意を表したい、こう思います。そこで、今回の法案ではそれをさらに拡充するというものでございますが、経営体質の改善の促進が現下の急務でございますから、つまりそれは、よい山づくりを一刻も早くできるような体制に持っていくというための必要な措置でございますので、今回の改正法案に対して賛意を表するものでございます。
最後に、今回の経営改善に関連いたしまして、国有林経営に対して三点ばかり要望を申し上げたいと思います。
第一点は、現下の急務は、先ほど申しました経営体質の改善にございます。したがって、仮に木材価格の条件が好転いたしまして、収支の上に深刻さがなくなったとしても、経営改善の達成は計画どおり緩めることなく進めていただきたいという点が第一点。もちろんそういう御決意でいらっしゃると思います。
第二点は、国有林経営の基本はよい出づくりにございます。長期を見通した計画、特に森林資源の保続という言葉をよく私ども使いますが、平俗でございますが、この保続についてはかたくななまでに堅持していただきたい、そのことが国有林経営の安定を確保する最大の要件である、すべては資源の保続を基本にして経営を展開していただきたい、ごく当たり前のことでございます。このことは林業経営にとっては当然のことでございますが、意外どこの当然のことが現実にはなかなか堅持することが難しい局面も出てまいるのでございます。現在の状況も決してこういう点についての過去のかかわりとの関係が無関係ではないというふうに考えられますので、とりわけこの点をお願いいたしたいのでございます。
第三点目、最後に、地域林業の振興に役立つ国有林経営であっていただきたいということでございます。結論だけ申し上げて非常に恐縮でございますが、地域林業の振興なくして国産材時代の到来も約束されないと思います。したがいまして、国産材時代の到来が約束されないということは将来の国有林経営の安定も望み得ないということでございます。どうか今後の国有林経営の展開に当たりましては、地域林業の振興を念頭に置いていただきまして、少しでもそれに役立つような経営の進め方というものをひとつ御研究いただきたいというのがお願いでございます。
以上、非常に取り急ぎましたが、意見といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/8
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009・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ありがとうございました。
次に、川合参考人にお願いいたします。川合参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/9
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010・川合勇
○参考人(川合勇君) 全林野労働組合の執行委員長の川合でございます。
真剣な御審議をいただいております委員会の諸先生方にまずもって敬意を表し、あわせて参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに対しまして、心からお礼を申し上げさしていただきます。
危機的状況にあります国有林野事業の改善策の検討に当たりまして、私はまずそのよって来る原因と申しますか、要因というものを解明することが極めて重要だろうというふうに考えます。この危機的現状というのは歴史的あるいは構造的、政策的要因に根差しておりますし、この要因の解明と今日から将来にわたって森林、林業に求められる課題、使命の達成のための方策が検討されなければならないと思っております。
構造的、政策的な要因といたしましては、幾つかございますが、とりわけ戦後運転資金ゼロの状況の中で特別会計、独立採算制が発足をし、荒廃地復旧なり造林と復興材の生産供給、そしてまた三十年代からの高度経済成長期の収穫保続無視の大増伐、それに伴う大面積の皆伐と一斉造林、こういったものが行われ、当時の収益の半分というものは一般会計へも繰り入れ、一般林政へ寄与してまいりましたし、また、国有林野事業の公益的な機能発揮のためにも支出をいたしてまいりまして、当時将来のための基金とかあるいは退職金引当資金など積み立てもいたさなかったわけであります。
三つ目には、自然保護あるいは環境保全の世論、とりわけ四十七年度に新しい森林施業ということで、森林の公益的な機能を重視する立場からの小面積伐採を初めとする施業が取り入れられたわけでありますが、これも森林の果たすべき役割というこの大目標を重視をして、施業そのものはむしろ非効率といわれるようなやり方で、直接の効率というよりは森林の持つ機能を重視をしたそ
の効率性を追求してきたのではないかと言ってもいいと思います。
それから四つ目には、外材主導の木材の需給政策なり住宅建設の落ち込み等からの国産材不振あるいは材価の低迷が長期化してまいりまして、同時に収入の大宗を占める伐採量の縮減、あわせて公益的な機能発揮のための支出の増大などがそれであります。
そういう状況の中で、御承知のように昭和五十三年に現行改善措置法が制定をされ、それに基づく改善計画が行われてきたわけでありますが、率直に申し上げまして、この致命的欠陥というのは、今申し上げました構造的、政策的な要因というものをある意味では不問にして、赤字の解消、収支の均衡を至上命令として、要員、機構というものを他に例を見ない縮減、縮小が行われてまいりました。反面、生産性は逐次上昇をしてまいりましたし、支出に占める人件費比率も低下するなど、いわゆる合理化は確実に進んでまいりました。しかし、収支は改善されず、逆に赤字がふえ借金はかさむという、財政収支改善どころか一層悪化をしてまいりました。そして国有林の内容も悪化をし、果たすべき役割、機能も減退すらするという状況の中で赤字を積み重ねるという事態に立ち至ってきたところであります。
私は、そういった外部的と申しますか、構造的な要因というものをしっかり受けとめながら、これからの国民が森林、林業に対し、あるいは国有林野事業に対して何を求めているか、そういったことにしっかりこたえていくための国有林の財政再建策などが講じられるべきだ、このように考えるわけであります。
今日の日本の林業の状態を今さら多くを賞して申し上げる必要はないと思いますが、いずれにいたしましても、人類社会の生存にとって森林はかけがえのない財産でございますし、ある意味で基本的な基盤だと言ってもいいと存じます。その森林が、一例を申し上げれば、線香のようなとか、モヤシのような森林と言われる脆弱な森林が増加をしておる。このことは将来の資源問題はもとより、公益的な機能発揮のため健全な森林の育成が強く叫ばれているところでありますし、緊急の課題となっていると思います。
私は、林業というのはもうけるときに木を切った、しかし、金がないというようなことで、金があるときとかあるいは気がついたときに金と人手をかければよいというものではないだろうというふうに考えるわけです。森林資源の造成というのは超長期の歳月を伴うだけに、森林施業の計画的かつ着実な推進が不可欠なものではないかというふうに考えます。
さて、三法にかかわる問題について具体的に意見を述べさせていただきます。
保安林整備臨時措置法の関係についてでありますが、森林の公益的な機能はすべての森林が大なり小なり有しておりますけれども、とりわけ公益的機能発揮に特に重要な森林は、御承知のように保安林に指定し、その保全、適切な施業の確保によって機能の維持増進が図られているわけであります。保安林が適切な施業がなされず、その機能が低下しつつある現状は憂慮にたえませんし、ぜひとも質的向上を図ることが緊急の課題となっていると認識をいたします。国有林はとりわけ保安林の占める割合が高いだけに、保安林造成にかかわる適正な施業あるいは諸施策の確実な実行は一層強く求められていると思います。
さて、こうした保安林を多く抱え、森林の持つ公益的な機能、木材資源の持続的供給体制の拡大、地域林業、山村振興寄与などの使命、役割を果たすべき国有林のあり方、改善策について、改善特別措置法、国有林野法の一部改正案に関連をして意見を申し述べたいと思います。
国有林野事業に課せられた使命、役割の大目標をまずしっかり据えて、その上で企業努力、自助努力の枠を越えた構造的、政策的要因に対する打開策が明確化され、その方策が具体的に実施されなければならないのではないかと思います。林政審においても、こうした外部的、構造的な事情については認め、これまでの枠組み等を抜本的に見直し、一般林政等の充実強化や財政措置をも含めた新たな政策展開なしにその再建は困難であるとの見解も示されています。国有林野事業の経営悪化や財政赤字問題が、ひとり国有林経営の内部的努力のみで到底打開できるものでないとする認識は私も同感であります。
企業努力、自助努力と構造的と言われる要因打開の林政、財政的諸施策が、施策と申しますか、新たな政策展開が相まって行われてこそ使命達成とそのための財政の改善、改革の実を上げ得るものと確信をいたします。
とりわけ財政問題、そしてもう一つは国産材振興策、国産材需要の拡大、木材価格安定と木材関連産業の活性化、林業経営及びその担い手問題など山村振興等一般林政の充実強化の諸対策の推進、この二つはとりわけ重要だろうと思います。
財政問題については、水土保全、公益的機能の確保発揮に必要な国有林野の保全管理、資源整備並びに保安林、治山、林道、保健休養など諸事業等についてぜひとも一般会計からの繰り入れを求めたいと思います。また、資源端境期、育成途上にあるところから、借入金の円滑化とこれに係る資金の償還期間等貸付条件の緩和措置及び借入金の利子財源に充てるための一般会計よりの繰り入れ、こうした財政措置が確実に保証されることにより国有林野事業の本来使命、目的達成とそのための計画的事業の推進を前提として七十二年度収支均衡が図られると思いますし、これなくして七十二年収支均衡は困難だというふうに思います。
また、緑資源確保等に対する国民的関心、要請の高まりの中で、森林資源整備への国民の参加促進と経営改善に資するとの立場での新たな方策が提起されておりますが、今日ある部分村、共用林野、保健休養、レクリエーションなど自然休養林等の積極的有効活用並びに都市近郊林の整備充実など、都市あるいは川下の人たちへの森林、林業への理解を深めることを強化する必要があります。したがって、経営の改善に資するとの民間資金の導入の前に、国の責任において資金を投じ、資源整備に十分を期すことが大切だろうと思います。提案されています改善特別措置法においてその基本が明確化されることこそ、私は重要だろうというふうに考えます。
そのほか、単年度収支均衡を原則とする会計制度、公益的機能を含む経営成果等が正しく反映をされ、長期的視点に立って腰を据えて計画的事業の推進が図られる会計諸制度と体制が確立されるべきだと思います。
最後に、国有林の危機を外部、構造的要因に求め、企業努力、自助努力を否定するものでないこと、国有林の能率的、効率的事業の推進には一層努力をし、私どもも国民的期待にこたえるための汗を流すべきであることについて申し上げて、意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/10
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011・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳を終わります。
それでは、これより参考人の方々に対し質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/11
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012・村沢牧
○村沢牧君 参考人の皆さん方には大変お忙しいところを御出席をいただきまして、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。私たちのこれからの審議の参考に十分させてもらいたいというように思います。
そこで私は、参考人の皆さん方に幾つかの質問を申し上げたいと思いますが、時間もありませんので簡潔に申し上げますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。
まず、湯本さんですが、森林組合長、それから村長、県の町村長会長、全国の町村会の副会長と、大変多くの役を持って林業問題に取り組んでおられることに敬意を表するところであります。
そこで、お伺いしたい第一点は、林業を振興するためにも、今提出されている法律を実行するためにも、森林組合と地方自治体の果たすべき役
割、果たしてもらわなければならない役割は大変大きいというように思うのであります。ところが、森林組合の実態を見ますると、なかなかこうした使命に十分こたえるというような形ではないというふうに私は思っているところでありますが、それぞれ森林組合も努力をしておりますけれども、国として森林組合育成に対してはこういうことをすべきではないかというような御意見があったらお聞かせを願いたいというふうに思います。同時に、林業の盛衰は山村経済、地域社会に大きな影響を及ぼしてまいりますので、地方自治体としても取り組んではいただいておるところでありますけれども、特に今回出されておる法律等を実行する場合においては、一層の地方自治体の取り組み、あるいは全国町村会の御指導等がなくてはならないというように思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
第二点目の問題でありますが、国有林の機構の縮小、例えば営林署を統廃合をする、事業所を減らす、人減らしをする、加えて本年度中には営林局も一つなくすというような方針を持っておるようでありますけれども、こうした機構縮小は山村の過疎化に拍車をかけて、林業活動の停滞を一層招いてくるわけなのです。湯本さんも御承知のように、木曽の南木曽町で一つの営林署をなくすのだって大問題。長野県の県会は、御承知のとおり営林局をなくしてはいけないという県会決議までしているということですが、こういう機構縮小が地域に及ぼす影響をどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
三点目でございますけれども、参考人からお話がありましたように、村長さんの村は国有林の占有率が七〇%、大変大きいわけです。かつては実験牧場もあった。そして、今自然休養林あるいは国設スキー場等として活躍されているわけでございますけれども、今回提案されている分収育林法も含めて、ひとつ国有林を国民のために活用していく、そうするためにはどういうことをしたらいいのか。
以上三点について、湯本さんの御見解を承りたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/12
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013・湯本安正
○参考人(湯本安正君) ただいま村沢先生から御質問のありました問題についてお答えを申し上げたいと思います。
今回の三法案が果たして地域の森林組合あるいは自治体にどんな影響を持つか、また、それに対して我々はどう考えているかというような御指摘だと思いますが、先ほどの先生方の御意見の中にもありましたが、国有林は林業の先導的役割を果たして大きな使命を果たしてき、また、今後もそれを持続していかなければならぬわけでありまして、国有林が健全であるということは我々地域の町村あるいは森林組合にとって大変重要なことであります。国有林がちょっとあやふやだというような格好は我々は非常に困る。そこで、一日も早く健全な姿を取り戻していただくために、今回のような法案をお出しになったというふうに我々は理解をしているわけでありまして、そういう意味からぜひこの法案を通していただいて、林業の活性化の先導的役割を果たすようにお願いをいたしたい。
我々森林組合といたしましても、林構等と取り組みまして、今まで間伐の促進であるとか、あるいは第一に、我々は一次林構では資本の充実あるいは林地の基盤整備等を進めました。今新林構とまた取り組んでおりますけれども、今度は作業道、山元土場というようなものを整備をいたしまして小径木の処理をするとか、あるいは間伐を促進するというようなことを進めましてもっと林業の活性化を図りたい。それでいわゆる国産林時代に対応するような森林組合をつくり上げたい。このごろ実は、増資も行わせまして村民の理解を得つつあるわけでありまして、まず何といいましても林業に対する意識を高めていこうといういい契機にしようというふうに考えております。
町村会といたしましても、実は町村会と別建ての団体で全国市町村林野振興対策協議会というのがございまして林野問題と絶えず取り組みをいたしております。これは先ほど来御指摘のありましたように、最近の林業は非常に厳しい環境の中に置かれておりまして、そこで現在我々林地をたくさん持っている各市町村がどういう取り組みをするのがいいかというようなことにつきまして真剣な討議をし、施策の要求等も国にいたしまして、積極的な林政の展開を図るような措置を実は講じているわけでありまして、一概にこれをやればすぐにこれだけの効果があるというようなものは林業にはすぐには期待できません。しかし、我々は根強く、根気強くそういうものを促進して林業の活性化を図ろうというような試みでやっております。
それから次の、国有林の機構の問題でありますが、これは先ほども申し上げましたように、我々は進んで賛意を表するというようなわけにはいかぬ環境にあります。また、営林署等が縮小されるということに対しましては非常に心配はあるわけであります。しかし、先ほど最初に申し上げましたように、国有林が健全な機能を持って進めるような形をとるためにはやむを得ないのじゃないかというような実は気もいたすわけでありますが、こういう今度の案を見ましても、定員外の職員を今度新規採用しない。あるいは他の省庁との配転をやってできるだけ合理的な方向へ持っていきたいというようなお考えのようでありまして、今まで営林署等で職員の組織が減ってきましたのを、我々森林組合等が、先ほども申し上げましたように今仕事をしておりますけれども、できるだけ活用さしていただきまして、国有林もしっかりやってもらう、我々もその機会を通じて森林組合等を伸ばしていくというような考え方をうまくかみ合わしていくことによって、この急場を乗り切るべきだというふうに実は考えております。
それから、分収育林制度の問題でありますが、これは緑の資源の育成に対する国民的な要請というものが非常に高まっておりますので、こういうことを通じて効果的に作用できるじゃないかというような期待を実は持っております。私は、今、実は調布市と組みまして若者定住環境整備モデル事業というものを進めております。調布の皆さんが、実はつい近くにも市長以下大勢また私の村へやって参りますけれども、都市との交流を通じて農村の活性化を図りつつ、農村でとれましたいろいろな物を都市で活用していただくというような道を実は今進めているところであります。林業の場にもこういうものを考えていったら林業の荒廃を防ぐことができ、都市の住民にも緑に対する理解を深めるというようなことを考えてみますると、非常に効果的な面じゃないかと思います。
先ほど申し上げましたように、今のところ私のところは、国有林を学校の部分林に各校活用さしていただくとか、それから緑の少年団をつくりまして、少年団がみずから林業の問題に取り組むというようなことを通じて、若いころから林業に対する知識を深めていこうというような措置も実は講じているわけでありまして、国有林の活用を通じていろいろな面で生かさしていただきたいというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/13
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014・村沢牧
○村沢牧君 ありがとうございました。
大石さんにお伺いをいたしますが、間伐材を利用して小径木の利用の活用を図っていると、大変に貴重な御意見を承りました。大いに参考にさしてもらいたいというふうに思います。
そこでお伺いしたい第一点は、外材の輸入が七〇%近くを占めて、このことが価格問題等を含めて国産材を圧迫しておる。現在は国産材で不足をするから輸入はやむを得ないといたしましても、日本農業の将来展望から見て、国産材と外材との関係はどういうふうにお考えになるでしょうか。大石さんがおっしゃったように、木材需要を拡大して有効に使えば十分外材に太刀打ちすることができていくというふうになっていくだろうか、その点をお伺いしたいと思いますし、もう一点、国産材の価格が非常に低迷しているわけですけれども、この低迷価格というものは今後もある時期ずっと続くということを覚悟しなきゃいけないの
かどうか。
それから、第二点目としてお伺いしたいのですが、国有林の経営形態を改めるために、今後民間に請負に出していく、こうしたことが重点的政策として林野庁は進めようとしているわけでございますが、民間の受け皿は十分であるでしょうか。林業労働者の実態を見れば、御承知のように高齢化、労働者の数も減っている、労働条件も悪い、こういう民間林業労働の中で、果たして林野庁が期待をするような民間労働力の確保、あるいはまた、そのことを通じて国産材の安定供給ができるのかどうか、その辺についてお伺いしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/14
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015・大石駿四郎
○参考人(大石駿四郎君) まず、外材の輸入が七〇%近くになっております。そのことが国産材の価格に非常に影響しておるのは既に御存じのとおりだと思いますけれども、私は、木材のかなり不足した現在までは、やはり外材の輸入によって我が国の経済も発展してきたのではないかと思っておるわけです。ただし、今日もう人工造林が一千万町歩に達しました現在、今までのような状態で入ってくるとすれば非常に問題だと私は非常に心配しておるわけです。既に間伐材工場をつくってやっております。と申しますのは、一九七八年ですから五十三年に、統計によりは米国で、これは西海岸を中心にですけれども、二十四工場の新設と九工場の設備改善、カナダで五十四年ですけれども、四工場の新設と十二工場の設備改善をやっている。これらはすべて日本向けのサイズの新増設がなされておるということが発表になっております。しかも、その工場の生産能力というのは、アメリカで三千二百工場で、四万立方、カナダで五百工場で、十五万立方、年間の生産量ですけれども。
片や我が国の製材工場の現状を申し上げますと、これは五十五年の統計ですけれども、二万二千二百四十一工場、年間千七百五十六立方と非常に零細性というか、こういったことが加工体制の整備のおくれ、したがって非常に苦労をしておる原因じゃないかと思うわけです。このような外国、アメリカ、カナダにおいて新設された製品が今後どのような形で輸入をされるか。私もこの外材というものをとめていただくということはとてもできぬだろうと思います、日本は足りませんので。私たちが一番望むことは、価格の安定で、今木材が、かなり木材離れを来しておりますのも、そういった乱高下があった、暴騰が二回ほどありましたが、その結果じゃないかと思っております。
木材の需要拡大ですか、これの第一点は価格の安定だと思いますけれども、輸入製品の価格の安定というのはやはり量だろうと思います。需給のバランスが崩れますとかなり価格が下がってまいります。私の玉名製材協業組合で五十八年度の決算の時点で製品価格が三万九千、五年前に比べてちょうど七〇%に下がっておる、丸太の価格も全く七〇%下がっております。今後価格がどうなるかということは、一つにそういった外材の輸入による需給のバランスによって価格は決まるものだと思います。これより以上悪くなりますと私たちもいよいよもういきませんので、これからは下がらないように、五年前に比べて三割下がっておりますので、私はこれからは少しずつ上げていただくような政策をとっていただかぬ限り、我々製材業は共倒れをするような瀬戸際に立っておると思っております。
それから、国有林の受け皿の問題でございますけれども、この問題は、私は全国のことはよくわかりませんけれども、熊本におきまして昨今非常に木材が不振でございますので、素材生産業の方々が仕事がないということです。昨年、県木連に二つの素材生産協同組合から、県有林あるいは国有林の仕事をさせてほしいというような陳情書が出ております。その陳情書の取り扱いについて私たち熊本県の県木連ではいろいろ議論があったわけですけれども、今農山村では何でもいいから仕事をさせてもらいたい、そういう願いがいっぱいでございます。それほど山は深刻でございます。間伐材を出せばいいじゃないかとおっしゃるけれども、間伐材は距離によっては労賃が出ないわけです、もう少し価格が上がれば出ると思いますけれども。したがって、現状では一般素材生産業の作業員は、九州熊本を中心としては仕事がないというのが現状でございます。もっと景気がよくなれば別ですけれども、現状では受け皿はあると思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/15
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016・村沢牧
○村沢牧君 大変ありがとうございました。いろいろと御意見を時間をかけて伺いたいわけですが、私の持ち時間も決まっておるものですから、大変失礼ですけれども簡潔にひとつお願いしたいと思います。
筒井先生にお聞きをしますが、先生の論説や論文も時々読ましていただいております。そこで、まず先生が言われたように、山を見直すときだ、転換期に立ってる、国有林は緑の使者である、私もそのとおりだと思います。そこで、林政審の答申について、国有林の使命についてはいろいろ言っておりますけれども、林政審の答申を見ても、あるいは臨調答申を見ても、その使命を達成するための手段としては経営改善だ、赤字をなくするという、こういう発想が貫かれておるわけです。先生が新聞にも書かれておりましたのですが、人減らし、経費節約、土地売却、こういうことでやって、これで本当にいい国有林ができるのかという御疑問も持ってるようなことを新聞で拝見したのです。この林政審答申を受けてこれから改善計画やその他をやっていこうとするのですが、これについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃるのか。
それから、先生の公私共利の原則、こうしたことから山、国有林も含めてですけれども、公益性が強いわけでありますから、特に国民的な負担、例えば水源涵養保安林にしてもその他の保安林にしても、下流の受益者の負担ですね、このことをやはり求めてもよいというふうに思うのですが、国としてはどういうふうにこれをやったらいいのか。
もう一点です。国有林はその面積の半分が保安林を初めとする水源林です。収入がこうした山からは見込めぬけれども、投資はしなければならない。このような国有林に対して自助努力でもって収支の均衡を図る、これは国有林の実態から、あるいは今置かれている林業構造の問題から無理ではないか。したがって、やはり一般会計から今以上の、強いて一般会計でとは言いませんが、今以上の資金の投入を図らなければならないのではないかというふうに私は思うのですが、先生のお考えをお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/16
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017・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 三つの御質問があったわけですけれども、林政審の答申に関しましては私、林政審の皆さん方の御努力に非常に敬意を表するわけでございますが、この際ちょうどいい機会でございますので、例えば若干誤解のあるようなところもございますので、それを少し私の考えを申し上げさしていただきたいと思うのです。
経営改善をしていくためにいろいろな自助努力、これは当然なことでございますが、このほかに例えば、今度の法律でもって分収育林制度といったようなものが出されておるわけでございますが、これはやはり国民の理解と申しますか、国民の協力が基礎にあってやっていかざるを得ないだろう。つまり、国有林というのは、かつて国有林の中だけで考えている、私はそれを国の私有財産というふうな表現を使いましたけれども、現在はそういうものではなくて、国民の共有財産である。これは実質がそうだと申し上げているわけなのですが、そういう国民の共有財産的な性質をたんたんと深めてまいりましたときには、当然それに応ずるような施策なりあるいはそういう方向なりをとっていかざるを得ないだろう、こういうふうに考えているわけです。したがいまして、自助努力もさることながら、もちろんそういう国民の協力を得ながら、そして国民の一人一人が国有林の経営に参加しているのだというこの実質を強めていくという、そのことが一番基本にあるだろ
う、このことを私は特に強調しておきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
その次に、二番目の公私共利で、国民の、受益者負担の問題でございますが、確かに国民が参加して山をつくっていくという、ある意味においてこれは受益負担とは申しませんでしょうけれども、自分のものをつくるという、そういう過程において参加していく。その公私共利というものの原則の一番の本質的なものは、本質というか、受益する方の側から申しますと、自分の山をつくっていくのだということになるわけでございますから、その自分の山をつくっていくということによって山づくりに参加していく、こういうところが、言ってみれば自分に与えられた負担をそれによって責任を果たしていくという、そういう形に理論的にはなるのであろう、こういうふうに私は考えております。
それから第三番目の、一般財源からの問題でございますが、これも先ほどの公私共利ということを申し上げましたし、あるいは生産と保全と二つ目玉があって、いわゆる二焦点でこれからの林政というのはやっていかなきゃならぬという、そういう理論的な形を持っているだろう、こういうことを申し上げたわけでございまして、当然ながらこれに対して国民が何らかの負担をしていくということは一つあり得るだろうということを考えております。
よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/17
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018・村沢牧
○村沢牧君 ありがとうございました。
岡先生にお伺いしますが、岡先生のいろいろと書物も見さしてもらっております。
そこで、国有林は経済林あるいは非経済林があるわけですけれども、私はこの機能区分というか、これを明確にして、つまり非採算林分の経費の費用分担のあり方、つまり先ほど申しましたように、保安林やその他で非経済林分がたくさんあるのですから、これを全部国有林財政で背負うということは無理だというように思うのですから、このことについてまず明らかにして国民の理解を得る、あるいはまた財政当局の理解を得る、このことが必要だというふうに思うのです。林野庁もこのことをやらなきゃいけないと思いますが、余り私の聞くところではまだやっておらないようなのです。先生の専門的な立場で、こういうことは難しいことなのですか、できないことなのでしょうかどうか、その辺についてのお考えをひとつお聞きをしたい。
それから、先生が先ほどおっしゃっておりましたが、ともかくいい山をつくるのだと、それで先生は、さらに立派な山を育てるためには国有林は模範林、かなめ石にならなきゃいけないということも著書で言われているわけですが、そうするためにはやはり必要な資金や労働力は投下をしなければならない。今当面金がかかるから人も減らす、あるいは基盤整備も余り行えない。当面の利害関係だけにとらわれてはいい山にならないというように思いますけれども、そのことについてはどのようにお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/18
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019・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 第一番目の、経済林、非経済林という区分の問題でございますが、理念的、つまり頭の中で考えれば確かに経済林そして非経済林があるということは紛れもない事実でございます。ただ、それを、現実の山でございますね、現地に一体そういうものをおろして、ここは経済林、ここは非経済林という区分が可能かといいますと、現在のところ私の知る範囲では技術的にそういう区分をすることが極めて困難であります。もともとこれは、価格条件が一つ変わっただけでもその線引きがたちまち変わってくるというふうな問題もございまして、理念的、頭の中ではそういうものは確かにあるのでございますが、現実に現地でそれの線引きということは非常に困難であるということでございます。
結局、先生のおっしゃいましたように、非経済林についてはもともと採算に合わないのだから一般会計でというような御趣旨であろうと思います。しかし、国有林の経営というものは結局そういう経済林、非経済林含めまして、全体の中で経営の運用をやっていく、そして非常に資金が足りないときには、例えば長期借入金の制度によって必要な補てんを行う、あるいは非常に木材価格の条件のいいときには現地に余剰が出るわけですから、そういうものを蓄積して持ち越し現金として、それを足りないときの支出に充てていくというような、そういうことが結局特別会計制度をとらせている。
あるいは非常に長期的な観点に立って経営させていくというのは、そういう経済林、非経済林、もともとそういう非経済林に相当するような森林もかなり含まれているということがあってのことであろうかというふうに理解をいたしております。
御趣旨は、全くお考えとしてはそのとおりだと思いますが、現実にはなかなかそれは現地の線引きが難しい。現地の線引きが難しいということは、実はどれが非経済林分であるか、経済林分であるかということで、仕様もなかなか区分ができないということでございます。
次の二番目の、必要な資金、労働力は投下していく、つまり、ある面では二兎を追わなきゃいかぬようなことがございますが、一体それについてどう考えるかということでございますが、先生の御指摘のとおり、まさしくこれはいい出づくりもしなきゃいかぬ。一方経営改善といいますか、収支の均衡ということも当面の重要な課題である。一体これは当面の利害の対立をどう調整するのかということですが、もともとこの経営というものは多分いろいろなこういうある面では利害が対立するような、つまり一見矛盾に見えるような事柄を達成しなきゃいかぬような、追求しなきゃいかぬようなことが現実の経営の中にはさまざまに出てくるのじゃないかというふうに考えております。もちろん理想的には必要な労働力、資金の投下もやる、そしてこれもやるというふうに区分できればこれは一番理想なのでございますが、現実の経営というのはそういうものがミックスされて一つの経営として出てくる。非常に経営を担当する方にとっては苦しい選択、あるいは非常にそこの兼ね合いが難しい。その辺が経営の主眼であり、経営たるゆえんではないかというふうに思っております。
私の申し上げましたことは、ともかく最終的にはいい出づくりということを最終的な価値判断の基準にして経営の事に当たっていただきたいということ、残念ながら現状ではそれしか申し上げられないのでございます。お答えになりますかどうか、私の現段階で申し上げられることはその程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/19
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020・村沢牧
○村沢牧君 ありがとうございました。
筒井先生にもう一点、今の御答弁の中で重ねてお伺いしたいのですが、つまり、国有林にしても民有林にしても、山があることによって、山を管理することによって国民が利益を受ける、特に下流の住民は利益を受ける、そういう中で、先ほど湯本参考人からもお話があったのですが、いろいろ基金をつくったり、あるいは、県によっては下流の電力会社なり地域からもそういう負担を求めているというところもあるのですが、国の指導方針としてそういうことをやはり打ち出すべきではないか、あるいは、行政としてはそこまでやってはいけないのか、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/20
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021・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 直接のお答えになるかどうかちょっとわかりませんけれども、私が先ほど申し上げましたように、国民の現在の公私共利の原則でもってひとつ考えていくということを特に申し上げたわけでございますが、そのときの一つの本質と申しますのは、先ほど、多くの人がくじでもって利用するとか、例えば入り会い利用でございますね、そういうふうなものの形、つまりみんなが均等にそれにかかわり合うというようなことを申し上げたわけでございます。したがって、例えばあるたくさん金を出す資力のある人が全部山を独占してしまうような、そういうことはちょっと考えられないわけで、これはやはり均等にそういう負担もし、また利益も得るということ
が必要ではないかと思います。
しかしながら、例えば電力、あるいはその他いろいろございますけれども、水というのは、これは所有があってないものでございまして、これはやはり受益者というものは不特定ですけれども、非常に多数あるわけで、そういう非常に不特定ながら多数の利益というものに還元していく。そして還元していくのは、またおのずとそういう大きないわゆる金持ちですね、つまり投機的に山を使うということは全く違うというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/21
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022・村沢牧
○村沢牧君 最後に、川合参考人にお聞きをいたします。
林野庁は、昭和五十三年以降、特措法に基づいて改善計画を行って、他に例を見ないような合理化も行ってきたわけですけれども、それにもかかわらず、累積債務が増大をしている、国有林の危機が一層深まっています。これは外からくる構造的な原因もあるけれども、あなたは、国有林に関係する労働者として、それはなぜこういうふうになったのかというふうにお考えになられますか、そのことが一つ。
それからもう一つ。国有林事業では素材生産をして販売をしている。これは、付加加値を高めて収入をふやすこと、地元中小企業が最近は立木より丸太の方を望む傾向が強まっていることなどから考えれば、今後もやはりこうしたことを積極的に継続していくべきではないか。同時に、木材の公正な販売、生産技術の開発、あるいは木材価格の市場把握などからしても、ある程度の直営直用は必要だというふうに思いますが、どのようにお考えになりますか。そうだとするならば、国有林事業の組織機構や要員は少なくとも現在規模程度は必要ではないか、現場におられてどういうふうに考えますが。
もう一点であります。民間労働者の問題につにきましては、地域におってはなるほど仕事がないから、国有林の請負が始まれば私たちがやりましょうというところもあるでしょう。しかし、全国的に見るならば老齢化が進んでおるし数も減っておる。果たして十年後に林業労働者というのはおるのかどうか、大変私は重要な問題だというふうに思いますけれども、民間労働者の現状についてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
以上、三点についてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/22
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023・川合勇
○参考人(川合勇君) まず第一点でございますが、実は五十三年から改善期間十年の前半が終わった段階で要員関係は一万名を超える実質削減になっているわけであります。それから、営林署なども既に十六営林署、あるいは事業所なども二百六十三から三百近いものが廃止をされておりますし、反面、生産性は一三〇、素材生産で生産性が向上をしてきている。そういった改善、合理化と申しますか、実態の中で、全く財政再建の兆しも見えなかった、こういうようなことを考えてみますと、一番大きいのは私は材価だと思います。昭和五十五年を一〇〇といたしまして、先ほど大石参考人からもありましたように、三割近い実は下落なのですね、横ばいどころではなくて。これは決定的な問題だろうというふうに考えます。
それから、だからといって、すべての仕事をすっぽかしてしまうということはできませんから、必要な借入金も行う。しかし、この借入金も現実には七・一%、多いときには八%を超える金利なわけです。そういった、ある意味では高金利の中で利子なり元本の返済が支給総額の大多数を占める、ある意味では借金を返すために借金をする。お金をせっかく借りても山に投資できないという状況がございましたので、こういった借入金の問題点が一つ大きく国有林の経営の中にかぶさっている。
それから同時に、収入の大宗を占める伐採量が最盛期の半分近くになっているということでどうしても収入が上がらないということで、こういった大きくは三つの構造的というか、外的なものがあります。もちろん幾つかの面で自助努力といいましょうか、企業の努力、また我々自身も努力しなければならない点があろうかと思いますけれども、基本的にはそういったものじゃないかというふうに考えています。別の資料ではじき出された数字でも、一番大きいのが材価、そして借入条件の変更、金利という順序になっていることを申し上げておきたいと思います。
それから、要員、組織機構の問題でありますが、要員問題につきましては、先ほど言いましたように、この五年間でも既に一万名を超える人が減っておりますし、最盛期で八万五千人を超える要員も、現在は三万入減の五万五千人程度に減っている。そして、現実に直営と請負の関係で申しますと、造林関係ではほぼ六五%が実際に請負ということで地域の皆さんを中心に、ある意味では民間の方に国有林の造林関係、保育関係の仕事をやっていただいておる。それから、素材生産でも三割は地域の皆さんにというような実は状況にあります。
三番目の問題とも関連をするわけでありますが、一つは、国の責任で、統一した技術体系のもとで、きめ細かい施業を、現場実態に精通をした一定の経験と技術を持つ、安定的、継続的な労働力の確保によって作業の実行をしていくこと、これがやはり積極的、計画的に森林の造成をしていくということにつながっていくだろうと私は思いますので、それを可能にする意味では直営直用というのが望ましいのではないか。私は民間の事業体の方にもお聞きをしたことがあるのですが、ある程度安全弁を見て一〇〇%ということはできないけれども、民間の林業の事業体の方でもあすをも知れぬ請負といいましょうか、臨時を当てにしてというのじゃなくて、一定の仕事は直接雇用によった労働者によってやっていくといったことが望ましいということも言われております。
私どもとしても、主要な事業はそういう立場で直営直用、せめて今申し上げましたように、造林関係では直営でやっているのは三割ですから、やはりこの程度は国が責任を持って実行して他の模範となるような仕事をしていく。日本林業の中核を担っていくということが必要だろうと思いますし、機構のところについては特に地域経済との結びつき、先ほど参考人の方から言われましたが、そういったことも重視をし、地域性を持った事業の展開を図るよう、そういった国有林の果たす使命、役割とも関連をして、やはり今日ある機構というのはそれなりに位置づけて充実していくべきじゃないか。しかし、今あるところの場所とか何かを一切動かしてはいかぬとかなんとかというかたくななものではなくて、国有林野事業の果たすべき役割あるいは地域経済との結びつき、地域性を持った事業の展開などを含めて充実強化していくことが国有林野事業使命達成のためにいいのじゃないか。
ちょっと長くなって恐縮ですが、最後に、民間林業労働者の問題だけ一言だけお答え申し上げたいと思いますが、林業白書でも林業労働力の危機的な問題について触れられております。実は最近、学者先生方七名によりまして林業労働者生活実態調査研究会というものがつくられまして、直接現地の調査が行われたということで、これは全国九カ所ということで新聞にも出ておりました。その結果が発表されていますが、年間所得というのはサラリーマン世帯の六三%だと。それから、林業労働の収入というのは生活保護基準と対比してみると、生活保護世帯というのは五六・五%もあったと。それから、世帯総収入と比較した場合でも二三・四と、林業の収入だけでは生活保護世帯並みというのが六五%もあったという報告です。
それから、林業労働者の高齢化の問題では、五十歳以上が六〇・七、二十九歳以下というのが〇・八%ぐらいだというようなことが実は言われておりましたし、また、雇用、労働条件の面でも社会保障を含めて大変悲惨な状況にあるということが言われ、結びのところでは、将来、日本の林業を担う後継者問題としては大きな問題を投げかけているのではないか、こういうことが指摘をされて
いることについてだけ申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/23
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024・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/24
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025・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/25
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026・最上進
○最上進君 自由民主党の最上でございますが、先ほど来、参考人の皆様方には大変貴重な御意見を御開陳いただきましてありがとうございました。林野三法の審議に当たりまして、皆様の御意見を聞かせていただきまして審議の糧にさせていただきたいと考えている次第でございます。したがいまして、きょうは忌憚のないさらに御意見を賜りますようにまずお願いを申し上げる次第であります。
まず、湯本参考人にお伺いをいたしますけれども、村沢理事からもお話がございましたとおり、地元の森林組合長、あるいはまた村長さんとしても御活躍をいただいているという中で、地元経済に及ぼす国有林の影響が大変大なることを吐露していただきまして、あわせて国有林の経営につきましては積極的に協力をしていくと、大変力強い御意見を賜りまして、敬意を表している次第でございます。
そこで、まずお伺いをしたいのでございますけれども、我が国の林野の七割を占めていると言われております民有林を含めまして国有林野とともに、大変我が国の林業がかつてない厳しい状況に今突入をしているという認識を私どもも持っております。そこで、現場の第一線でこうした状況に直面をしておられます湯本参考人から、先ほど来るるお話がございましたけれども、林政上今最も何が必要であるのかということにつきまして御意見を聞かせていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/26
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027・湯本安正
○参考人(湯本安正君) お答えを申し上げます。
森林行政を進めていく上で今何が一番必要かということになりますと、まだまだ林業の基盤整備というものが十分ではありません。林道にいたしましても、それから治山事業にいたしましてもそういう面はまだ立ちおくれがございます。こういう面をできるだけ早く整備をいたしまして、それから森林組合等は資本装備を充実をしていくというようなことが大事である、それから林業に対する国民の関心をもっと高めていくというようなことが必要だというふうに考えまして、先ほどもちょっと触れましたように、私は今各小学校には全部緑の少年団というものを設定をいたしまして、これにはちょっと金をかけましたけれども、子供のころから林業というものをもっと理解をするようにという施策を講じまして進めているというような格好でございます。これは、これをやればすぐこれだけ効くというようなものはなかなか見つかりませんけれども、そういう施策を通じて林業の活性化を図りたいというふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/27
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028・最上進
○最上進君 ただいま林業に関する国民の認識というものを高めるという意味で、PRに大変お力添えいただいているようでございますが、我が自由民主党におきましても、中曽根総理が陣頭に立ちまして、「花と緑で人の和を」という、こういう大変PRでございますけれども、花と緑の運動推進本部をただいま設けまして努力をいたしているわけでございます。これは政党のPRだけではございませんけれども、ぜひひとつ今後地域におきましてもそれらに対しまして大きな御努力をお願いをしたいと思います。そして、基盤整備、治山事業を含めまして昨日来質疑の中でもいろいろ論議をされてまいりましたいわゆる山村振興対策を含めて総合的な林業対策というものを講じる時期に来ているという意見が台頭いたしております。したがいまして、このことにつきまして先ほど来言葉がたびたび出てまいりますけれども、活力ある森林づくりとかあるいはまたよい出づくりとかということにつきまして、先ほどからいろいろ御意見をいただいております筒井参考人に、これらの活力ある森林づくり、あるいはまたよい山づくりというものに対する具体策というものがございましたら、ぜひこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/28
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029・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 先ほどから活力ある森林づくりということを申し上げておりますが、活力とは一体何だということが一番問題になるわけなので、活力あるというのは、同じような言葉でございますけれども、生き生きとした緑のあるということだと思います。じゃ、その生き生きした緑であるためにはどうしたらいいかということでございますが、それはいい苗木を植えて、十分に手入れをして、そしてそれを育てていく、そしてその管理も十分にやっていく、そういうところがこの活力あらしめるゆえんじゃないか、こういうふうに考えております。
したがいまして、その具体策と申しますと、いろいろな種苗政策からあるいは植林政策、あるいは保育政策、あらゆる面にわたってそれが行われねばなりませんけれども、現在一番おくれておりますのは保育の面だと思います。非常に手入れが行き届いていない。少なくとも現在約一千万ヘクタールの人工林がございますけれども、その中に二割とも三割とも言われております非常に手入れがおくれている森林がある。この森林をやはり何とか育てていかなければいけない、せっかく子供を生みましてもそれを育てなけれりゃ何にもなりませんので。そういう育てる時期が現在ではないか、こういうふうに考えておりますので、具体策と申しましたらまさにそこに一つの焦点を絞った具体策が、これはいろいろあると思いますが、そういうことと考えております。
それからもう一つは、生き生きした緑というものは一瞬のものではございませんで、かなり永続的、私は先ほど五十年、百年、千年先というふうなことを申しましたけれども、やはり今私たちが預かっておる森林というのは過去からの森林であると同時に、将来の我々の子孫の森林を預っているわけなので、そのためにも十分力の強い、足腰の丈夫なそういう森林を残していかなきゃならぬ。したがいまして、その具体策と申しましても、当面の具体策だけでなく非常に長期的な展望に立った具体策というものが必要でないかと思います。それは造林から保育、伐採その他いろいろな面に個々分かれております。それはちょっと省略さしていただきますけれども、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/29
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030・最上進
○最上進君 岡参考人にお伺いをしたいのでございますが、先ほどからも森林の有する公益的な機能等につきましてもいろいろ議論がございました。そこでお伺いしたいのでありますが、公益的機能のために繰り入れるという今回の措置と、企業的に運営される特別会計制度をとっている制度との関係についてどのようにお考えになっておられるか、まずお伺いをいたしたいと思います。
同時にまた、特定の林分なり職員については恒常的に一般会計で負担をしていくということになりますると、これは特別会計の繰り入れということでなくてむしろ一般会計に移すべきであるという大変根強い意見、論議もあるわけでございまして、この点につきましてもあわせてお伺いをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/30
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031・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 第一点でございますが、公益的な機能のもとに投入されるそれと特別会計との関係いかんということでございますが、実は特別会計というのは、格別公益的機能であるとか、あるいは言葉をかえて言いますと非経済林、経済林ということとは関係がないというふうに私は考えております。つまり、国営の役割というものは、森林の持っているさまざまの機能を最高度に発揮すること、つまり、木材生産機能も各種の公益的任務も含めてそういう森林の機能の高度発揮ができるような森林をつくる。森林の造成というのは非常に長期的な観点で運営しなきゃいかぬ。しかも経営でございますから一つの事業でございますので、企業会計方式、つまり企業的合理性のもとにそういう長期的な森林造成を行う。しかもそれは一つの事業でございますから、特別会計というものが設置されているということでございますので、これは公益的機能の森林であるということと特別会計制度とは矛盾はいたさないというふうに
考えております。
それから、二点目の特定の林分についてのあるいは特定の職員について一般会計に移すべきではないかという、そういう指摘があるがということでございますが、これはもともと国有林の中に、具体的には非経済林あるいは非経済林の林分に関係する職員はということであろうかと思います。これは頭の中では確かに経済林、非経済林というものが描けると思うのですが、現実にはそういうものは現地ではなかなか線引きが困難でございます。もともと国有林というのはそういうものも含めて一つの森林経営として展開していくところである。そこに国有林経営の本質があるのではないかということでございますので、その分だけ限って一般会計に移すというのは余り現実的ではないのではないか。むしろ、現在の会計制度あるいは経営体制、そういう制度的な仕組みの方がすぐれているのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/31
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032・最上進
○最上進君 一般会計からの繰り入れというのは、先ほどから御主張のとおり、経営体質改善のための手段であるという御意見のようでございますけれども、御承知のとおり、我が国の財政というものが大変厳しい状況にあるわけでございます。そういう中で今後も一般会計負担の増加が著しく続くということになりますると、これは先ほど私が全国林野の七割を民有林が占めているという話をいたしましたけれども、とにかく国有林事業以上に現在民有林の置かれております状況というものは厳しい状況にあるわけでございまして、一般会計負担の増加がこれからも続くというその前提には、やはり国有林の事業が能率的に推進をされているという前提があってしかるべきであるというふうに考えているわけでございます。民有林事業経営者の中には、こうしたことに対してとかく批判もされておられる方々もおられるわけでございますので、学識経験者のお一人といたしまして、国有林野事業の現状というものについて、もう一度とういう御認識をお持ちであるのか。
また、これは湯本氏にあわせてお聞きをいたしたいのでございますけれども、第一線地域にあって、この民有林の置かれている立場の実情というものは、とにかくひしひしとその厳しさを御認識であろうというふうに考えております。したがいまして、こうした国有林野事業に対する一つの国の大きな肩入れというものに対して、民間では、民有林の経営者たちはどういう目で見ておられるか、こういうことに対しましても、ひとつこの機会に率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/32
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033・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 現在の国有林の現状に対して民間の批判ということが一つ御指摘ございましたが、現在の国有林の経営の現状というのは、過去国有林の経営に与えられましたさまざまの役割を達成する過程ででき上がってきたその経営体質が、実は現在の社会経済、とりわけ経済条件に対応しなくなった、そのことが現状であろうかと思います。したがいまして、その経営体質を改善するということが当面の急務であるということでございまして、現状だけを取り上げまして、これをもって赤字であるから云々というのは必ずしも適当な批判ではない。これは過去いろいろ国有林に与えられました役割達成の過程ででき上がった体質でございまして、それが現状においては条件に合わなくなったから改善する、その改善の措置として一般会計繰り入れ、あるいは財投資金の借り入れということが不可欠になってきたわけでございます。したがいまして、現在やはり論ずべきは、現状の体質改善をいかに早く行わせるか、あるいは行うかということでございまして、そのこと自身を批判しても余り建設的ではないのではないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/33
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034・湯本安正
○参考人(湯本安正君) 民間としてどういうふうに受けとめておるかというような御質問のようでありますが、先ほども申し上げましたように、我々の期待するところは、やはり国有林は民間の先導的な役目を果たしていただけるような立場で断えずいてほしいという願いであります。最近は、民間においても山放れというような傾向が非常に強まっております。これは従業者の老齢化の問題あり価格の低迷の問題、いろいろ要件はございますけれども、そういう傾向の中にあって国有林はやはり立派な森林を育てて先導的な役目を果たしてほしいというようなふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/34
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035・最上進
○最上進君 では、大石参考人にお伺いいたしますが、先ほど来、経営改善の努力によって間伐材だけではなくて、安定的にまた良質なものの供給というものが大事であるというお話、御指摘がございましたけれども、国有林は今日まで多くのすぐれた木材を供給してきたということは事実だと私も認識をいたしております。したがいまして、今後国有林材の販売について発想を新たにして積極的に行うべきであるとの意見がございますけれども、林産業の立場から、これら国有林材の供給について今一番何を望んでおられるのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/35
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036・大石駿四郎
○参考人(大石駿四郎君) 積極的に国有林の販売をというような一般の意見に対しましては、私は、優良材を中心とした、九州熊本営林局管内で優良材を新たな発想で積極的にどんどん生産をされるということについてはどうかと思っておるわけでございます。やはり長期安定ですか、九州には優良材はおおよそ国有林しかないと言っても過言でございません。民有林は非常に不良であります。そういった観点から、国有林の優良材は、今後長期安定の方向に向かって販売をお願いいたしたいということ。
それからもう一つ、積極販売につきましては、立木の販売とかあるいは随契だとか、地元工場に対する配材とか、いろいろ販売方法もあると思います。昨年あたりからは、一般の大工さん、工務店にもひとつ販売をしますよというようなことがございましたけれども、このことにつきましてはいろいろ賛否両論がございます。立場がございます。地元工場は地元工場としての立場がございますし、零細工場は零細工場としての立場もあるし、工務店等もございますし、そのところにつきましては、私個人といたしましては、やはり広く一般に購買をされるということについては賛成をしておりますけれども、それぞれの立場がございます。一応そういうことで、今後積極的に販売をされる方法等につきましてはよく御検討の上実施をしていただきたい、地元の意見を十分組み入れた、需給のバランスのとれた生産販売をお願いいたします。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/36
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037・最上進
○最上進君 最後になって恐縮でございますが、川合参考人にお伺いいたしますが、今回の三法の法改正の審議の中で、これらの動きを踏まえまして、労働組合や国有林野の職員の方々がどういう感じをお持ちであるか、何か新しい動きがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/37
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038・川合勇
○参考人(川合勇君) 三法の中でも特に改善特別措置法について、これは新しくできます改善計画の土台にもなりますし、その中身がどういうものかによって、自助努力だけが先行するのか、そうではなくて、先ほど来言いましたような構造的なと申しますか、そういったものをしっかり位置づけて、長期的に必要な資金、こういったものもしっかり改善特別措置法の審議を通じて中身として盛られるのかどうかということが一番職場で関心を持っております。そのほか、もちろんほかの法律にもそれなりに携わっている方々からは関心もありますけれども、特にということになれば、改善特別措置法の審議内容に対してということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/38
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039・刈田貞子
○刈田貞子君 公明党の刈田でございます。先輩議員の間に割り込みまして、一言お伺いしたく立ち上がりました。
きょうは参考人の皆様大変御苦労さまでございます。貴重な御意見ありがとうございました。
私は先ほどから御意見を伺っておりまして、林業の厳しさというものをさらに感じておる者の一人でございますけれども、先ほど岡参考人のお話の中に、よい山づくりということが言葉として七
回ぐらい出てまいりました。大変大切なことだというふうに私も思って聞きとめていたわけですけれども、林業というものは、苗を植えて、そして保育、そしてあるいはまた枝打ちとか、間伐とか伐採とかいろいろな過程を経て、そして製材へ持っていくというふうな過程があると思うのです。私はそういう過程の中で、現状の林業というものはこれだけ厳しいのだから、今置かれた立場の中でさらに収益性を上げていくにはどういう物の考え方をしていけばいいのかという、その付加価値を乗せていく方法を考えていったらどうだろうかという問題を常々頭に持っている者の一人として質問をさせていただきたいと思います。
岡参考人にお伺いをいたしますが、よい出づくりのための技術、こういう問題をどのようにお考えになっておられますか。
まとめていたします。
それから、大石参考人にお伺いいたしますことは、製材技術の現状、こういうふうなものを今どういう御認識でおられるかということ。
それから最後に、大変すべての先生にわたれなくて申しわけないのでございますけれども、川合参考人にお伺いをいたしますが、私は、日本の林業の技術というものは部分的に偏っているものがあるのではないかというふうに思っておる者の一人として、技術というものは何せ人が持っておるものでございますから、技術の交流ということで、偉い署長さんあたりの交流ではなくて、うんと具体的に働く方たちの現場の交流、こういうふうなことが起こると困りますか。
その三点について伺わせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/39
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040・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 私はその方面の専門家ではございませんで、あるいは当たっているかどうか確信はございませんが、やはり林業の技術、とりわけ今先生の御指摘は、いわゆる造林技術と言われる分野の技術であろうかと思います、よい出づくりという意味での。これははっきり申しまして、百年一日のごとき技術では到底これからの林業には対応できない。やはり社会経済の変化に応じた、あるいは先を見通した技術ということが必要であろう。そういう点からいたしますと、一つは省力技術ということが、つまり、よい山づくりという目的に沿うような、かつまた省力的な技術ということがこれからの重要な課題であろう。その一環では、機械化ということも当然検討の俎上に上ってくるであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/40
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041・大石駿四郎
○参考人(大石駿四郎君) 製材技術の現状について申し上げますと、間伐材の製材と、それから外材、南洋材の製材等はそれぞれ違いますけれども、本日は国産材、間伐材を中心に申し上げますと、加工機械の開発がかなりなされております。技術も、それに合った技術を備えた若い労働力も十分ございます。何と申し上げましても、何回も申し上げますように、非常に材価が下がっておりますところに設備をしますというと、かなり五年前に比べて上がっておりますので、機械はあり、木はあり、人はいながら、なかなかできないというのが現状でございます。製材技術、加工機械はかなり開発されております。これが現状です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/41
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042・川合勇
○参考人(川合勇君) 技術交流では、今沼田というところで民間との交流が行われているやに聞いておりますし、国有林の中でもそういった技術の指導的立場にあるような人たちは、それぞれの地域へ出向いて技術指導なりあるいは講習会、研究会等を通じて交流をいたしておりますが、もし先生の御質問が具体的な働く人たちの直接の人事異動によってという交流ですね、そういうことになりますと、今まで時にはありましたけれども、大々的に一般の人たちの交流というのはございませんが、指導的役割を含めたそういったものは行われております。これからそれぞれの職場における事業量の問題とかを含めまして、実際の生産現場のそういった技能者、技術者の配置がえなどを含めた交流というのはあり得るかと思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/42
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043・藤原房雄
○藤原房雄君 本日は大変御苦労様でございます。
最初に、現場で御苦労なさっていらっしゃいます湯本参考人にお尋ねいたしたいわけでございますが、全国町村会の副会長さんということで、山村を抱えているところの地方自治体、そういうところの責任ある立場におありだということでお尋ねを申し上げるわけであります。
過日も林業白書が出まして、数字的なことは出ておりますけれども、法的には山村振興法とか、そのほかいろいろ法律はあるわけでございます。緑の重要性は重要性といたしましても、本当に緑も生き生きとしなきゃなりませんけれども、そこに住む方も生き生きとしなきゃなりません。そういう中で大変な御苦労をなさっていらっしゃるわけでありますが、農業白書なんかを見ますと、最近は産業が非常に、業種にもよるわけであります付れども、不況状況にある。また、山村に、農村に帰る方が全国的な統計で言うと三万ぐらいふえておるという数字も出ておるのですが、いわゆるUターン、しかも若い方、二十代、三十代の方も農村にどんどん帰るようなことが統計上はなっている、地域に参りますとそうでもないのでありますけれども。
全国的な町村、山村を抱えたところの責任ある立場にいらっしゃる湯本参考人といたしましては、こういう山村の活性化の何といっても働く人たちが、そしてまた、後継する方々が根づくかどうかということは非常に重要なことだろうと思います。そういう責任ある立場におりまして、現在のUターンというようなこともいろいろ言われておる中で、若い人たちがそういうことに意欲を持って定着をする、定着といいますか、数は少なくてもそういう意欲が見られるのかどうか。若い人というのは非常に時代に敏感ですから、どんないいことを言いましても、そこで生活の基盤が成り立たないということですとなかなか出ない。しかしながら何とか努力すればできるという、そういう意欲のある方が最近は出てきつつあるのか、こういう芽があるのかどうか、そんなこと等についてちょっとお伺いしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/43
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044・湯本安正
○参考人(湯本安正君) 大変難しい御質問でございますが、我々が絶えず主張しておりますのは、山村の振興なくして林業なしというつもりで取り組んでおります。ですから、山村のいろいろな基盤を整備をしまして、まず若者が住みよいような環境をつくってやる。あわせて林業なり、いわゆる山村に生かせる仕事というものを伸ばしていこう。
私は長野県の北の端でありまして、非常に豪雪の地帯でございます。山の管理は非常に難しい場所でありまして、時々雪にやられてしまうというような地域でございますけれども、今さっきもお話しを申し上げましたように、国有林の一部を国設スキー場として開放していただきまして、とにかく夏は山林労務をやる、冬はスキー場の従業員としてリフトの経営に参加をするというようなことをいたしまして、年間雇用の場を確保してやることによってそれらの人たちの定住化を図るというような仕事を実はいたしておりまして、ある程度の成果は上げておりますけれども、まだUターンの決め手となるようなところへはいっておりません。我々町村長が寄りますたびに、絶えずそういうことについて何かいい手はないものか、もっともっと研究を必要とするというような話は出ますけれども、これをやることによってこうだというようなことをここで申し上げるような段階にはありません。とにかく、先ほど申し上げましたように、山村地域の環境をできるだけ整えて、若者が魅力を持てるような地域づくりをするということに重点を置くべきだというような考えで今進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/44
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045・藤原房雄
○藤原房雄君 町長さん、村長さんということになりますと、林業のことだけではなくて、町全体ということになりますから、非常に重要な立場になるし、また、総合政策というものが必要になる。きょうは農林水産委員会なのですから、林業ということに絞られるわけでありますけれども、豪雪地帯については豪雪に対する特別交付税、山村には山村振興法、しかしこれはどちらかというと、
集落に公民館を建てるとかそういう建物とかなんかが中心になりまして、どうしても山村を抱えた地方自治体というものは財政力がない。独自で事業をする、何かをそこで小規模ながら一つの芽をつくりたいと思っても、長として先導的にいろいろなことを考えましても、なかなか財政的にできない。民間の活力といいましても、これは現在そこでの産業というものは制約されているということから見ますと、官も民も非常に難しい状況の中にあるのじゃないかと思うのです。
そういうことから、建物とか特別なそういうものじゃなくて、交付税のような形で独自に地方自治体で工夫して、自主財源で物事ができるような形のものがぜひ必要ではないか。最近は利益を受ける下流域との間にいろいろな協定が結ばれたり、また、それをどうするかというふうなことをいろいろ言われているわけですけれども、こういう豪雪は豪雪、また、交付税の算定の基準として面積の広さとか、村の広さとか何かいろいろなことはもちろん入るのですけれども、山村の振興という重要な役割を持っているそういうものが、交付税の一つの大きなファクターとして私どもが見たところ余り見られていない。これはやはり交付税のあり方についても考え直さなければならぬのじゃないかというふうに考えているのですけれども、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/45
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046・湯本安正
○参考人(湯本安正君) 山村地域は自主財源が非常に乏しいというようなことは、我々村づくりを進める上で大変重要な一つの課題でありまして、何とかそれを伸ばしたい。そこで我々主張しておりますのは、今先生がおっしゃられましたように、交付税の中に林野面積というようなものをもっと加えるような方法というようなことや、あるいは同じ道路をつくるにしましても、林道をつくる場合には、つぶれ地等に対しては何ら補助の対象にもなりませんが、一般の道路をつくるときにはつぶれ地もそれはいろいろな補償も全部出る。そういうようなものを何とか是正をしてもらうことによって我々は林道がつくりやすくなる。あるいは林道といえども、山へ行くには直接県道や村道から山へ行けません。ある程度耕地をつぶしていかなければならぬのですけれども、その間の用地は事業費に入らないというようないろいろな制約がございまして、これらを何とか打開をしてもらおうというような運動もいたしております。何といいましても自主財源が一番大事でありまして、先生から大変いい御指摘をいただいたわけでありますが、我々もそういうような考えを持っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/46
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047・藤原房雄
○藤原房雄君 これは私ども山村に参りましてお話しするといつも出てくるお話でございましたし、きょうは湯本参考人はそういう責任ある立場にいらっしゃいますので、今日までそういう働きかけをしてきたのだろうと思いますけれども、今後これは非常に重要な問題として私どもも提起をしていきたいと思います。
各参考人から分収育林のことについてはそれぞれ賛成というお話をいただきました。自然との触れ合いの重要性、私は筒井参考人にお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、人間は緑なくして生きられない、そしてまた緑の効用、国土保全とか、精神的なこととか気象からいろいろなことが言われていますが、やはり生物的な機能とかこういうことを考えますと、切る林政、切らない林政、円林政、楕円林政ということで先生の論文がありますが、経済的なベースでの林政だけじゃなくて、やはりこれから限られた面積の中に一億一千万、これからまた増大するでありましょう人口増を抱える日本列島、こういうことから考えますと、林業の持つ意味というものは、ただそこで木材を生産するということだけではなくて、さらにもっと大きい広い意味で林業というものを見ていかなきゃならない。これは先生がおっしゃっていることは私どもも同感でありますし、また、本当にこういう考え方が最近あらゆる面から言われるようになってまいりました。
しかし、今湯本参考人からお話しございましたように、そこで緑を守るということは実は大変なことでして、私も頭の中ではその重要性を大いに声を大にして叫んで指摘をするわけでありますが、それを支える手だてというものがなければならないだろう。先生はこの論文の中にもいろいろな角度から論じられておりますし、私どももそれは賛意を表するものであります。そしてまた、世界的にも今緑というものが見直されておるわけでありますが、この切る林政と切らない林政、これをどう調和させるかというのは非常に重要なことです。今現場での声、湯本参考人からございましたけれども、幾つかやはり先生もお考えになっていらっしゃるのだろうと思います。
先ほど交付税のことをちょっとお話し申し上げたのでありますが、今後の林政のあり方として切らない林政、それもまた重要なことであることは観念としてはわかりますが、そういうものを現在の日本のこういう形の中で、これから何もないものからつくっていくのだったらいいのですが、長い歴史の中で培われてきた現在の国有林を中心にしての林業というものを維持するということになりますと、その裏づけになる物の考え方というのが大事になってくるのだろうと思います。先生の忌憚のない御意見をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/47
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048・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) ただいまの御指摘は、私もいろいろと考えておる点でございまして、具体的なことはいろいろとございますけれども、やはり先ほども御指摘がありました、生活の場と申しますか、山村が本当に人が住める、つまり単に住むのじゃなくて豊かな生活ができるというその条件づくりが一番大事なことであろうと思っております。山村というのは、御承知のように人がどんどんいなくなる、それからなかなか見るべき産業も少ないといったようなところが一般的でございますので、それをつづめてまいりますと、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、若い人が住みつくという場にということをどうしてつくっていくかという、これが一番の問題であります。
それはいろいろな面から考えなければいけませんけれども、林業の政策として考えていきますと、どうしてもそこに一つの森林資源というものをつくっていく、そしてその森林資源を生産並びに環境、生産財としてまた環境財として両方の価値を十分に発揮させていく。生産財としますと、例えば昔から杉、ヒノキ等の建築材もございますし、あるいはシイタケ、ナメコのそういう原木もございますし、あるいは木工品、あるいはその他いろいろございますけれども、その土地に合った一つの産業をささやかながらでもつくり上げていく。
仮にそれが都市の需要、例えば最近は若い人で申しますと、草木染なんということがありますと人がどんどん集まってくる。都会の女性の方も来るようなそういったような産業、これはいろいろとたくさんございまして挙げ切れませんけれども、そういう資源を生かしながらできるだけ多くの産業を興こしていくという、これが一つ大きな課題になろうかと思います。
それから環境財としての役割でございますが、当然水の問題もあるわけで、そういう水の問題、あるいは緑といった環境財としての森林の役割というものを十分発揮させる。そして、そのことによってできるだけ山村に、例えば水源林をつくるための費用といったものに国民の皆さんの協力がある、そういったような条件づくりだとか、あるいはそれに対して積極的に投資をしていくといったような問題、あるいはそれを管理していく上においての管理の実行主体と申しますか、そういうものをつくっていくというような問題、いろいろあろうかと思いますけれども、そういう生産の面、環境財としての面、この両方の価値が十分に開かれていくというようなことがこれからの課題としてあるのだろうと思うのです。そのためにはどうしてもこれからの林政の方針で、先ほど技術の問題が出ましたけれども、ちょっとそれに触れさしていただきたいと思うのです。
と申しますのは、生産の技術というものは今までございましたけれども、 これからの大きな技術
体系が開いていかなきゃならぬのは、生産と保全とを結び合わせた生産保全管理体系と申しますか、そういう新しい管理技術というものがこれからの山村、日本の森林にとっては大事ではないか。その活力ある緑ということを今さっき質問が出まして、それに対していろいろなたくさんの政策的な課題があるというふうに申しましたけれども、それらを含めた、つまり生産と保全と結び合わせていくその技術体系、これが現在私どもの、これからやっていかなきゃなりませんけれども、一つ一つのこれからの大きな研究課題でもあろうかと思いますし、
〔委員長退席、理事北修二君着席〕
また、行政もそういったところに着目していただく。そのことが今御質問のありました森林づくり、あるいは地域づくりというものの一助になっていくのだろう、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/48
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049・藤原房雄
○藤原房雄君 いろいろお話しいただきましてありがとうございました。また、公私共利というお話がございましたが、昔は山で木を切って、それでお互いにみんなで利用し合おうという、今日は国有林、民有林、最近は山へ入るときにもある程度お金を納めてということまで言われておるわけですが、分収育林というのはそれはそれなりに自然に親しむということだけでなくて、みんな山に愛着を持つという上では非常に重要な意味を持つと思うのです。筒井参考人、先ほどもいろいろお話ございましたけれども、これは山に親しむとか、それから自分の投資したものに一つの愛着を持つということももちろんありますけれども、これはどの部分に、どういう地理的条件のところにある分収育林かということによって違うのでしょうけれども、ただ遠くから眺めている、またそこへ行ってかがんでいるというだけじゃなくて、やはり一緒に作業する、作業といいますか、何か手を下すとか、こういうことがもしできるような環境であるならば、そういうこともするということも大事なことではないか、こんなことも論ずる方がいらっしゃるのですけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/49
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050・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 私もいろいろなところでこういったところにかかわっておるわけでございますが、そのときに一つの大事なことと考えておるものがございます。それは何かというと、緑の問題というのは頭の問題ではない、頭というのはちょっと変な言葉でございますけれども、緑が大事だということの知識ということではなくて、どうしても体で覚えなきゃならぬというか、体得をしなけりゃならぬ。つまり私たちはそれを汗を流してというふうなことを言っておりますし、あるいは教科書というか、本の中から学べないものが自然の中に入ることによってあるというようなことを申しておりますけれども、やはり一番の問題、大事なことは、実際山の中にあるいは森の中に入って、そしてそれを体得する、このことが大事なことではないかと思うのです。したがいまして、今先生の御指摘のように、汗を流すというそういったようなことは大変大事なことではないかと思います。
また、これから子供の教育といったようなことがいろいろと言われておりますけれども、その中で大事なことは、そういう自然の中で汗を流して、そして自然というあるいは森というものの実質をその中から肌で感じ取る、こういったところがやはり一番大事なのじゃないか、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/50
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051・藤原房雄
○藤原房雄君 時間もあとわずかしかございませんで申しわけございませんが、川合参考人にですが、分収育林という制度ができますと、それは今までと同じ国有林ですから、同じように作業はするのかもしれませんけれども、これはどなたかのお話にございましたように、国民の歓心を買うということだけで、投資をするにはそれなりの期待感というものがあるわけでありますから、それなりにきちっと手入れをして立派なものにしなきゃならぬは当然でございます。そういうことになりますと、実際素人の人が何かするといってもそんなにできることはございませんから、やはり直用の方々を中心として国有林野事業に携わる方々が実際お仕事をするわけですね。こういうことでその分収育林というものが定まりますと、今まで以上に気を使って、そしてまた仕事の上でさらに過重になるといいますか、大変な今まで以上の労働力というか気の使いよう、いろいろな面で、分収育林という制度ができるということのために組合でも御検討なさっているのだろうと思いますけれども、これをどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。その辺のことについて、簡単で結構ですけれども。今までと同じなのか、何か違いがあるのか、どういうことについて検討していらっしゃるのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/51
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052・川合勇
○参考人(川合勇君) 分収育林が具体的に実施されていく段階で、直接雇用によってやるのかどうかということについて、実は労使で直接詰めてございませんのでわかりませんけれども、
〔理事北修二君退席、委員長着席〕
仮にこの法案が通って実施をされるという段階になるとすれば、私どもとしては、国有林野事業に長年働いてきた技術を持っている労働者によって、しっかりした間伐なり保育作業といったものをしていくべきだろうというふうに思いますし、ある意味では国民から預かった国有林、公務員として現実にやってきた気持ちの上に、私的な資金が投下された預かりの山という点では若干戸惑いがあるかもしれませんが、長い間働いてきた労働者としてはそういったものは乗り越えて、やはり国民から負託された山、あるいは私的な資本を出していただいた方にこたえるようにきちっとやっていけるのじゃないか、こんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/52
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053・下田京子
○下田京子君 参考人の皆さん御苦労様でございます。
山の性格というのは非常に多様なものがあり、また、出づくりのためには長期を要するということで、私も各地でお聞きします樹種によっては七十年、八十年と、北海道に行ったときに、実は子供の時代ではなくて孫の時代にいい山を残していきたいというお話を伺ったことがあります。皆さん同じように国有林野の持つ国民のための出づくりということはお話しになるわけなのですが、ただその手法においてはいろいろと御意見が分かれております。
二点についてお尋ねしたいのですが、全参考人にお聞きしたいのですけれども、時間がわずか十分と限られておりますので、大変恐縮でございますけれども、第一の点で、特に出づくりにかかわって臨調の最終答申で、「官業としての事業範囲の在り方を見直し、」と、こういう指摘の中でこれからの出づくりは、国の業務は計画と管理と監督に限定せよという提起をされております。しかも、具体的には素材販売ではなくて立木販売の推進と、それから直用事業をもっと減らして請負化にしろと、こういう方向が出ているわけなのですが、私どもといたしましては、国有林野の持つ国民のための山づくりということを考えますと、まず公益的な機能の維持増進、それから良質な林産物の安定的供給、そして地域の振興をどう保証していくかということが大事だと思うのです。臨調の言うような形での民営化の方向を進めていきますと、これは真の国有林の持つ国民のための山づくりにはならないのではないかと心配しております。この点について川合参考人と岡参考人にお尋ねします。
二点目につきましては、特に民営化の理由の中に効率性の問題が出てきております。その効率性ということによって、私どもが心配しているのは、国有林野労働者の山づくりの役割というものが本当に民有林労働者の今の条件に合わせるような格好で、民間活力と称して賃金においてもその他の労働条件においても悪化させていくような形で担っていこうというふうな心配をしているわけなのです。そういう点が推進されますと、本当に国民のための山づくりに逆行する、そしてそれは労働者の犠牲になり地域の振興には役立たない、こう思うのです。この点で川合参考人と湯本参考
人からお聞かせいただきたいと思うのです。特に川合参考人には、五十三年からの改善計画が進められたこの五年間の間に、合理化ということでもって労働強化等が特に顕著にあらわれているところがございましたらお尋ねしたいと思います。
大石、筒井両参考人には失礼させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/53
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054・川合勇
○参考人(川合勇君) まず、第一点でございますが、官業としての事業範囲の問題としては、私どもとしては国が責任を持って一貫的な国有林野事業を進めていくべきだという立場から、立木販売原則というものに対して反対をせざるを得ない立場を明確にいたしております。とりわけ地代で稼ぐような立木のまま売るというやり方については、付加価値を高めでできるだけ素材にして地元中小零細企業の人たちの振興にも役立たせる、そういったことの使命を果たす意味からも、私どもとして直営直用を基本に据えて国有林野事業としてはやるべきだろう、このように考えています。
それから、民間林業労働者の低い労働条件に合わせてというような問題が、確かに臨調あるいは林政審の審議の中でも私どもも指摘をしてまいりましたが、先ほど来村沢先生の質問にもお答えをしたわけですが、やはり林業に携わる労働者がだんだんいなくなるという点では、むしろ現在の林業に携わっている労働者の労働条件を川下並みといいましょうか、他産業並みに引き上げて、山村にしっかりと定住していただいて山村を守ってもらう、林業を守ってもらうということにしなければいけないだろう。今一番求められているのは、林業経営ができることと、その担い手の対策というのが一番重要になっているのじゃないか、こんなふうに思いますので、民間林業労働者の悲惨な労働条件を当て込んで安上がりの林政をやっていこうということだけでは、根本的に日本の林業の再建というものはできないのではないだろうか、こんなふうに思っております。
それから、この五年間とりたててということでございますけれども、一番大変だったのは振動病に象徴される機械化、合理化の問題がありましたけれども、これらも一定の安全対策などを含めてそれなりに落ちついてまいっております。ただ、仕事がなくなるのかなくなされているのかわかりませんけれども、そういう中で一つのセットの中の要員が減る、あるいは別の地域に移動しなければならないというようなことは出てまいっておりますし、また、事業所あるいは厚生施設等の廃止に伴っての転勤などはございますけれども、労働条件の問題として、労使団体交渉を通じてそれなりの解決を見ながら今対処はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/54
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055・岡和夫
○参考人(岡和夫君) これは直接立木販売是か非か、そういうお答えにはあるいはならないかと思いますが、官業としての国の事業の範囲に関連いたしまして私が考えておりますのは、国産材時代の致来に備えて地域林業の振興が現在の日本の林業にとって最も重要な課題ではないかというふうに考えております。地域林業の振興という立場から実は私は、国有林経営もそういうことを中心に置いて経営を展開していっていただきたいと言っているのは、そのことが極めてこれからの林業にとってある意味では日本の林業の死活に関する問題であるという非常に危機感を持っておるからでございます。そのために、地域林業に溶け込んだ国有林経営ということでございますが、じゃこれは言葉としてはどういうことを意味するのかということですが、これは今日本の林業、特に将来を展望した場合に一番危惧あるいは重点的に考えなきゃいかぬのは担い手の問題であろうと思います。
その場合に、林業労働力の組織化ということが将来の担い手の確保のために、民間労働力の組織化ということ、組織労働力として維持していくということが将来の労働力確保のためには極めて重要でございます。その観点からいたしますと、国有林の持てる資源でございますね、それをそういう民間労働力の組織化に活用するということが、これは場合によっては国有林が多少の犠牲を払ってでも日本林業の振興のためにはやっていただきたいことだと。そういう観点からいたしますと、果たして国有林だけで仕事を完結させるような仕事の進め方がいいのかどうかも、これはもう検討していただきたいのです。場合によっては請負事業体の育成ということで国有林の場を大いに活用していただきたい。そうすることによって請負事業体の育成、これはいわゆる賃金の切り下げではございません。労働環境として十分整備された近代的な雇用関係にあるような、そういう林業事業体の育成の場として国有林の仕事が、あるいは資源が活用されて民間の事業体が育成されていく、このことがやはり将来の日本林業にとって極めてある意味では最も重要な課題ではないかというふうに考えております。そういたしますと、おのずとそこから答えも出てくるのではないかというふうに考えておりますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/55
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056・湯本安正
○参考人(湯本安正君) 今地域振興の役割というようなことで御質疑があったわけでありますが、いろいろ先生方からお話がありましたように、林業を支える人たちをどうこれからつくっていくかという問題が一番の中心になろうかと思います。そこで、今も岡先生からもお話がありましたように、我々森林組合等で林業労務者で労務班をつくって進めておりますけれども、どうしても国営に負けないようないわゆる環境というものを整えてやって、せっかく労務班になったのがすぐ逃げ出すというようなことのないように、やはり十分な配慮を加えてやっていくということが大事な問題だというふうに受けとめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/56
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057・田渕哲也
○田渕哲也君 時間がありませんので、二点に絞ってお伺いをしたいと思います。
まず第一点は、筒井参考人にお伺いをしますけれども、この配られたリーフレットに「円林政からだ円林政へ」という一つの提議がございます。私もこれは非常にもっともなことだと思うのであります。しかしながら、これを具体的にそういう林政に変えていくにはそれなりの法的な手段あるいは行政的な手段で何か手を打っていかなくてはならないと思うのであります。このお考え方はよくわかりますし、また、いろいろ挙げられておる例ももっともだと思いますけれども、現実には森林保全の、いわゆる公益的機能の保全のための費用というのは、やはり木材を切り出して、それを売った収益から賄っておるというのが、民有林においてはもとより、国有林においてもそれが基本になっておる。それを改めない限りなかなかこの楕円形の林政というものにならないのではないか。したがって、具体的に法的、行政的にどういう手段を打てばいいのかということをお伺いをしたいと思います。
それから第二点は、川合参考人についてでありますけれども、先ほど国有林野事業の経営が危殆に瀕しておるのも外部的、構造的、あるいは政策的要因があって、その赤字の責任を内部的努力のみに押しつけては困ると。また同時に、外部的、構造的、政策的な面で手を打ってもらわなくてはならないけれども、だからといって、内部的自助努力というものの重要性は否定しない、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、私もそれは全く同感だと思います。しかし、現実においては民間の林業労働者の方からの意見を聞いても、国有林の労働者と民間の労働者と比べた場合に、効率や生産性の面で非常に格差があるのではないかという意見がいろいろ聞かれておりますし、また、臨調の答申や林政審の答申を見ても、直用からできるだけ民間の請負へと切りかえたらどうかという一つの理由として、やはりそういう生産性の問題ということが理由になっておるのではないかと思います。したがって、この点をどう考えられ、また、労働組合としてこれについてどういう方針で取り組まれるのか、お伺いしたいと思います。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/57
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058・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) 木材収益から環境的な費用を賄うという、これが従来の一つのパターンであったわけなのですが、先ほど私、生産保全管理体系というものが非常に大事であるということを申しましたけれども、生産保全管理体系とは一体
何かと申しますと、これは国有林、民有林に限らず全森林と考えてもよろしいかと思いますけれども、その森林が持っている価値を十分に発揮させていく、そのための技術体系というふうに考えられると思うのです。
従来は、確かに技術そのものはいろいろと展開しておりますけれども、ちょっと偏った展開の仕方をしているのではないかというのが私の判断でございます。
偏ったというのは何かと申しますと、生産技術の非常な発達はあるけれども、環境材としての森林の役割を発揮させていくという技術的な発達というものはなかなか見られていない。しかしながら、生産と保全ということは不可分の関係にあるという前提に立ちますと、どうしても生産技術の一方的な跛行的な展開ということだけでは済まなくなってきて、だからその面のこれからの研究なり、あるいはそれに応ずる一つの体制なりというものが非常に大事なことではないかと思うわけです。
しからば、それを木材の収益だけでもってやるのかどうかという最初の御質問ですけれども、二つの面をやはり考えておかなければならぬだろうと思います。
一つは、森林の生産物というのはやはりあくまでも木材が主でございますから、それを建築材、木工品、先ほど申しましたように非常に産業的な多面的な利用、あらゆる産業をできるだけ興して、そして収益を上げていくという、これが産業としての活力を林業そのものに与えていくゆえんではないかと思います。そういったことが一つ。
しかしながら、木材の産業としての伸び方、それとこれは価格問題にまた入ってまいりますけれども、当然それは限界があるわけでございまして、そこに例えば水の問題、緑の問題あるいはきれいな空気の問題といったようなことを先ほど申しましたけれども、そういった環境的な価値、その環境的な価値に対する一つの国民の負担というか、そういうことも当然考えていかざるを得ない。それがまた一つの国の責任というふうなことと置きかえてもよろしいかと思いますけれども、そういった意味で、一方においてはできるだけ木材の収益を上げていく。他方におきましては、環境材としての森林の価値をみんなで、全国民が支えていくという、そういう二本立てのような形、そのことが行政的にも、あるいはそれを裏づけていく研究所の問題においてもこれから非常に大事になってきているのじゃないか。まさにそれが現在要求されているのではないか、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/58
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059・川合勇
○参考人(川合勇君) まず第一点でございますが、一定の基準のもとで行ったものを比較対照する。私ども労働者の言葉で言えば、同じ土俵で相撲をとらしてほしい、そうすれば、むしろまさるとも劣らない働きはしている、実はこういう意見が現場労働者から返ってくるわけです。
それで、私どももそういう非難に的確に答えるということを含めて、私どもなりきに、民間の林業労働者の一日の労働時間、あるいは振動機械などは国有林の場合は労働協約ですし、民間の場合は労働省の通達として出ております二時間規制とか、こういったものが的確に守られた中で、林業労働あるいは生産活動が行われているかどうかということになりますと、私どもの調査では、残念ながら四時間から多い人たちは六時間ぐらい機械を一日回しっ放しというような状況も実は出てきておりますものですから、一概に国有林の労働生産性が低いというようなことをそのとおりですというふうに私は認めがたいのです。しかし、出されている一般の数字から見ますと、率直に申し上げて、造林関係については一割程度ですか、生産性が低い。それをまた賃金を含めた面でやりますと六割、四割減ぐらいというのでしょうか、それはある意味で民間の労働者の賃金がそれだけ低いということになるでしょうけれども、私どもなりきに労働組合をつくり、労働者の生命と健康を守る、そして労働力の破壊のないように、労働力の再生産が効くように、そういった立場で労働条件の確保をしながら、与えられた労働基準の中で全力を挙げさしているというふうに私は思っております。
また、労働組合の立場としては、国民の山で働いておるわけでありますし、当然そういった期待にこたえるために、より効率的、能率的な作業というんでしょうか、労働がなされていくべきだ、そういうふうに思っております。ましてや経済林だけではなくて、公益的な機能と言える森林の造成であっても、その過程は森林の役割を果たすということを大前提にしながら、より効率的あるいは能率的な作業を公益的機能発揮のための山づくりといえどもやっていくべきだというふうに私は思っておりますし、全林野としてもそのように指導しておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/59
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060・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 ありがとうございました。御礼と激励の気持ちを込めてお伺いいたします。
まず、湯本参考人に対して。
ことしの豪雪はまれに見る豪雪でございました。それだけに森林に及ぼす被害というのは、これまたまれに見る大変なものだったとお察しいたしております。その点からどういう状況であったか、湯本参考人の御郷里を中心にお願いいたします。
そして、さらにもう一つの問題は、特定保安林の緊急性について、ことしの豪雪の被害と結びつけてどのようにお考えであるか。
次に、大石参考人にお伺いいたします。
人工林と自然林の状況について、大石参考人の御郷里を中心に。
次に、筒井参考人にお伺いいたします。
先ほど、山を守る、山をつくる、そしてつくった山をみんなで守って、平等にみんなで利益を受けると。非常に共鳴いたしました。そこで、その山を守るというそのことと、今度自然を開発するという側面、このバランスを、調和をどう考えるかということに大事な問題があるかと思います。それに対する御見解をお伺いいたします。
次に、岡参考人にお伺いいたします。
豊かな緑を育てる、いい山をつくるという、これまた非常に大事なことであると思います。その一つの手段として、毎年のように緑の羽根の運動が展開されますね。その緑の羽根の運動と、あなたがおっしゃるこの目的とを結びつけて、現状はどのようにお考えであるのか。
次に、川合参考人に共鳴しながらお尋ねいたします。
もと立ちて末興ると私はいつも言うのですが、そのよって来る要因をまず知ることだ、理解することだという立場に立って、あなたの同志であられる労働組合が、言葉をかえて私に言わせてもらうならば、山男たちが非常にあらしの風圧を、とばっちりを食らって行政改革、財政再建の側圧を受けて苦しんでおられる、こう思うわけでありますが、その要因、よって来る原因はどこにあると受けとめておられるか。
時間もございませんので、それぞれのお立場から、簡単でよろしゅうございますからおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/60
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061・湯本安正
○参考人(湯本安正君) ただいまのお尋ねの問題でありますが、ことしは例年にない大変な豪雪でございまして、山林の被害等も相当予想されるわけでありますが、実はまだ山は三メートル以上の残雪がありまして、十分な調査は今のところできません。そこで、いかに対応するかというような問題につきまして、おいおい県等とも話し合いをいたしておりますけれども、現状の把握ができませんので、対応というものもまだ決めておりませんけれども、相当な被害が出るのじゃないかというふうに実は心配いたしております。
そこで、特定保安林の問題でありますが、長野県は御承知のように急峻な山地、それから脆弱な体質というようなものがございますので、十分保安林の改良事業等を取り入れてこれらに対応してまいらなければならぬと思いますけれども、今申し上げたような状況でありますので、しばらく時間を置かないと対応というものを申し上げるわけにはいきませんので、御了承いただきたいと思い
ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/61
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062・大石駿四郎
○参考人(大石駿四郎君) 人工林と自然林との関係について申し上げますと、人工林、民有林、国有林を含めて手入れ不足ですが、特に間伐のおくれというのがやはり二〇%以上あるようなことになっておりますので、これから人工林についてはどういった対策を講じてこの間伐を進めるか。林道をひとつこしらえていただいて、あるいは林業に関する融資等林業改善資金等もございますけれども、林業機械の購入等そういった資金の手当等もございます。そういったあらゆる手当をお願いいたしまして、この人工林の手入れが少なくとも今後十分なされるようなことにお願いをいたしたいと思います。また、自然林につきましては、自然破壊のないようなことで、ほとんどこれは広葉樹でございます。現在広葉樹はパルプ用として使ってございますけれども、その点につきましても過伐にならないように、長期安定供給といったことでお願いをいたしたいと思っております。
現状はそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/62
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063・筒井迪夫
○参考人(筒井迪夫君) ただいまの開発と保全というものはどうバランスをとるかというこの点でございますが、確かにバランスのとれた開発を行わなければならぬし、またバランスのとれた保護というものをやらなければならぬし、これは結び合っているわけなのです。
じゃそれを一体どうしたらいいかということですが、現在も、例えば林地の開発許可制度だとか、あるいは宅地を造成した場合の緑地を、住民がそれぞれ組合をつくって管理していく、そういう住民が参加したシステムとか、あるいは受益する人がそれを監視していくとか、そういったいろいろな体制を整える。あるいはきょうここで問題になっております保安林の問題も、やはりそれのバランスをとる一つの非常に大きな制度的な問題でございます。したがいまして、こういう開発と保全とこの間を結びつけるその中にはいろいろな制度が現在ありますけれども、やはり一番大事なことは何かというと、緑の意義、森林の意義ということをその中で定着させていくことだろう。つまり、むやみな開発というものは緑というものをなくしていくのだ、森林をなくす、あるいはむやみな保護というものは当然開発というか利用というそのものの点からいうと足らないところがある。そこに適正な面積の森林あるいは適正な緑というものを蓄えて、そしてそれを十分に管理していく。先ほどの言葉ではございませんけれども、その緑が生き生きとした緑でいつまでもあり続けるという、そういう体制を整えること、このことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/63
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064・岡和夫
○参考人(岡和夫君) 先生のお尋ねは、緑の羽根運動とよい出づくりの関係はどうかというお尋ねでございますが、緑の羽根運動の目的は、緑化思想の高揚が目的であるというふうに受け取っております。これは募金する人の立場からいたしますと、それによって緑への関心を深めるし、また何らかの参加意識がそれによって満たされる。それから、集められた資金は、これは緑化思想の高揚のために使われているというふうに伺っております。結局そのことは、緑化思想によって国民全体に、線あるいは出づくりというものに対する理解と協力が生まれてくるのではないか。これは国有林だけじゃなくて、国有林、民有林を含めて、そういういろいろな政策あるいは施策を進めていく場合の基礎になるのではないだろうか、国民の支持ということが。例えば、国有林についての経営改善のための財政支援というものも、やはり国民の支持、理解があって初めて可能になるものではないかと思っておりますし、民有林についても、例えばさまざまな助成がないとこれからの民有林林業という点から非常に難しいと思いますが、そういう助成もこれもつづめれば国民の理解と支援がなければ到底望み得ないことでありますし、よく出てきます受益者負担ということもやはりその一部であろうかと思います。そういう意味で緑の羽根運動というのは、よい出づくりには大いに役立っていくというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/64
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065・川合勇
○参考人(川合勇君) 一口で言えば、緑や森林の問題は大変大事だと言われるけれども、結局は国有林野事業の最大の問題は赤字じゃないかというふうにとらえられ、収入が上がらなければ支出を切り詰めろ、より安上がりにやれと、こういうことではないだろうかと思いますので、この際ぜひとも、林業あるいは林政そのものを日の当たる場所に政治的にもひとつ押し上げていただいて、日本の森林をしっかり守ってもらうというようなことが明らかにしてもらえる中で、日本の林業も先が開けてくるのじゃないか、こんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/65
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066・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑を終わります。
参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
本日は、皆様には御多忙中にもかかわりませず当委員会に御出席をいただきまして、大変貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X01219840420/66
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