1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月二十四日(火曜日)
午前十時四分開会
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委員の異動
七月二十日
辞任 補欠選任
吉村 真事君 柳川 覺治君
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出席者は左のとおり。
委員長 長谷川 信君
理 事
杉山 令肇君
田沢 智治君
久保 亘君
吉川 春子君
委 員
大島 友治君
藏内 修治君
山東 昭子君
世耕 政隆君
林 健太郎君
柳川 覺治君
粕谷 照美君
本岡 昭次君
安永 英雄君
中西 珠子君
小西 博行君
美濃部亮吉君
国務大臣
文 部 大 臣 森 喜朗君
政府委員
文部大臣官房長 西崎 清久君
文部省高等教育
局長 宮地 貫一君
文部省学術国際
局長 大崎 仁君
事務局側
常任委員会専門
員 佐々木定典君
説明員
文部大臣官房文
教施設部長 佐藤 讓君
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本日の会議に付した案件
○日本育英会法案(内閣提出、衆議院送付)
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001・長谷川信
○委員長(長谷川信君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
前回に引き続き、日本育英会法案を議題とし、質疑を行います。
まず初めに、去る十九日の本岡君の質疑に対する文部省の答弁の一部に、趣旨の徹底を欠く点がございましたので、宮地局長から発言を求めます。宮地局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/1
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002・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 前回の答弁に趣旨の徹底を欠くところがございましたので、まずその点について御説明申し上げさせていただきます。
学習成績の評定の文章記述の問題でございますけれども、昭和五十七年三月に、日本育英会は理事会におきまして、大学予約の学習成績の評定につきまして、文章記述を廃止することを決定したのでございますが、このことを文書による通知によらずに、理事長が支部事務長会議で口頭で指導を行ったところでございます。
これは、昭和五十年三月二十八日に理事長名で各支部長に文書による通知を発しまして、学習成績の評定については、文章記述が可能な場合は、それに従ってよいといたしておりましたことを、大学予約について廃止するための処置といたしましては、文書により通知を出すべき事柄ではなかったかと考えておるわけでございまして、そのことを欠きましたことは、事務処理として適切ではなかったと考えております。
文部省といたしましても、日本育英会の事務処理が今後適切に行われますよう十分指導いたしたい、かように考えております。
次に、第二点といたしまして、この理事会決定がありましたにもかかわりませず、奨学生推薦調書の学習成績の評定についての文章記述を速やかに削除をしなかったことは、事務処理の適切を欠いたものでございまして、極めて遺憾でございまして、その事務処理については速やかに適切に処理するよう指導いたしたい、かように考えております。
なお、文部省といたしましても、指導の至らなかった点は十分反省をいたしまして、このため一部の学校で混乱が生じました点については、教育的な配慮から誠意をもって対応いたしたい、かように考えております。
なお、第三点といたしまして、高校奨学生の推薦調書については、学習成績の評定について文軍記述を昭和五十年三月の通知により適用されているわけでございまして、五十七年三月の理事会では何らの変更も行われなかったわけでございますが、事実上、口頭で学習成績の評定の文章記述をやめさせているとの御指導につきましては、事実関係の調査を行いまして、そのようなことが行われておるとすれば、今後そのようなことがないように日本育英会に対して指導をいたしたい、かように考えております。
なお、現在、大学予約については文筆記述は認めていないわけでございまして、推薦調書の記載においてもそれを明確にいたしたいと考えております。
次に、日本育英会の奨学生の採用は、国の育英奨学事業としての事務を執行する日本育英会が適切に実施をする必要があるわけでございまして、制度改正の機会に適切でない事務処理が行われることのないよう今後十分指導してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/2
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003・本岡昭次
○本岡昭次君 今の宮地局長の説明によって、一応十九日の質問を中断せざるを得なかった日本育英会奨学生の学習成績の評定の文章記述についての経緯は明らかになりましたので、今の経緯に従って三点ほど確認の意味も含めて質問をいたします。
まず、その第一は、学習成績の評定の文章記述問題について、理事会決定に基づく事務処理が適切を欠き極めて遺憾であったというふうに述べられている点であります。適切を欠き極めて遺憾と言わざるを得ない事務処理がされたことについて、これは内部の問題でありますが、文部大臣としてこの点について今後どのように処理されようとしているのか、大臣の所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/3
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004・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) ただいま局長から、このたびの経緯につきまして先生に御説明をさせていただいたわけでございます。推薦調書が二月に印刷されておりましたことや、大学予約について文章記述を実施しておりましたのが一県二校のみであった等という事情もございまして、推薦調書の表記を残しながら当該県の支部に口頭で説明をして廃止を勧めることとした、こういうことで趣旨が徹底をしないで混乱を招いた、私は、そういう意味で極めて事務処理に適切さを欠いておる、私もそのような判断をいたしておりまして、その点については極めて遺憾でございまして、実質的には、この具体的な事務処理ということは、これは日本育英会にゆだねてあるわけでございまして、今後、育英会と文部省との間の事務的な指導体制といいましょうか、それがいささか遺漏が多かったと、こういうように、このたびの先生の御指摘から、いろいろ調査をいたしますと、そのように私も感じました。
ただいま、局長から申し上げましたように、今後とも十分適切な指導をしていかなきゃならぬ、とりわけ奨学金を期待をする生徒さん、あるいは学生、あるいは、また、そのお世話をする学校、そういう立場と、そして、お世話をする育英会、それをまた指導する文部省、ここがお互いに信頼をきちっと持っていなければ、事は教育上でございますから、しかも、教育基本法、憲法の精神を具体的にあらわしていく大事な教育の根幹をなすべき政策であるというふうに私も判断をいたしておりますので、その点については極めて不適切であったということを私からもおわびを申し上げ、むしろ、この点について先生から御指摘をいただいたことは大変ありがたかったと、こういうふうに考えておりまして、十分、今後とも注意をいたしてまいりたい、このように私としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/4
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005・本岡昭次
○本岡昭次君 第二点として、今、文部大臣の答弁にもありましたように、これは内部の問題でありますから、今後の問題は文部省と日本育英会に預けるとしまして、この不適切な事務処理によって生じた教育現場での無用な混乱に対する責任をどうするかという問題でありますが、これについては営地局長の方から、教育的配慮を誠意を持って行っていきたいという意味合いのことがございまして、その問題は、私の方から実名を挙げますと、兵庫県の私立園田学園の学生が、この問題に端を発して日本育英会の奨学生不採用となって、今、日本育英会を相手取って裁判を起こしているという事柄が一番典型的な問題であると思っております。
今の宮地局長の初めの説明は、今後、この問題について誠意を持って対処をしたいという答弁であるというふうに理解していいのかどうか、その点をはっきりとさしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/5
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006・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) そのように御理解を賜りまして結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/6
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007・本岡昭次
○本岡昭次君 第三点として、今の経緯の中で明らかになりましたように、大学の奨学生採用については、学習評定を文章記述することについて五十七年の三月一日の理事会でこれをやめるということを決定されています。そのことは、私は、その決定そのものはやるべきでないと、こう思いますが、しかし、決定した事実は事実として、それを認めた上での論議をします。
その際、高校生についての学習評定の文章記述という事柄については触れていないわけで、したがって、現行法では五十年三月二十八日の理事会決定が生きています。そうしますと、現行法下の現在では、高校生の奨学生採用に当たって学習評定を文章記述するということについて方針の変更がないわけです。しかるに、学校現場では高校生の奨学生採用について三・五とか四・〇とかいう評点を点数であらわさなければ採用しないという形の強硬な現場指導が行われて、それまで文章記述をしていた学校が次々と点数に書きかえられていく、書きかえなければ奨学生として採用しない、こういう恫喝というか、そういうようなものを含めて指導しています。奨学生に採用されてお金をもらいたいという方と、お金を渡す方が、そういう形でやりとりされたということについて大変不愉快に思いますし、当然、お金をもらう側の方が弱くなって、それでは仕方がないということで、点数に次々とかえられていったという、この事実は、私は許しがたいと、こう思っております。
しかし、今、そのことを私は蒸し返して論議したくありません。問題は、今、審議しているこの新法においても、当然、五十年三月二十八日の理事会決定が生きていて、学習評定の文章記述が可能な場合にはそれに従ってもよいということで、高校生の奨学生採用についての願書、調書が弾力的な運用をされる、そのことを文部省が認めることによって、私は、過去の問題も、そのことによって生じた問題についても解決ができるのではないか、こう思います。したがって、ここのこの場で、文部省として、高等学校の生徒についての奨学生採用に当たって学習評定を文章記述にすることが可能な場合はそれに従ってもよいということを、ここで正式に確認をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/7
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008・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) その点は、新しい法律が成立をいたしました場合の考え方といたしましては、当然にそのことを引き継いでいくものというぐあいに、私どもそういうような対応を育英会にも指導いたしたいと、かように考えます。
なお、御議論のございましたように、生徒の有する多様な能力をより適切に評価する方法については、さらに今後とも積極的に検討してまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/8
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009・本岡昭次
○本岡昭次君 高校生は、そのように、点数の評定によらずとも、文章で書ける場合は文章で書いてもよいということを公武の文教委員会で言っていただいたことは、私は奨学制度そのものについての一つの大きな前進であり、文部省の一つの英断であるというふうに思って評価をします。
そこで、この際、大学生の学習評定のあり方についてもただしておきたいと思うんです。
高校生はいいが、大学生はだめだという、その論理の問題について、きょうは論議する余裕はございません。ただ、十九日の私のこの種の問題の質問に対して文部大臣が、三・二とか三・五とかいう数字というものは、どうもはっきり言って余りいい方法だと思っていません、文部大臣もこう言われた。さらに、奨学資金というものは、それぞれの学校で推薦をして、その奨学生を採用していくんだから、学校が自主的によく考えて、それぞれのケース・バイ・ケースで採用するということがあってもよい、このようにも述べられ、最後に、私は先生の御趣旨はむしろ正しい方向だというふうに考えています、このように速記を起こしますと明確に書いてあります。
私は大変結構なことだと、こう思うんですが、この文部大臣のこの委員会における答弁の趣旨に沿っていけば、高校生はいいけれども大学生はよくないという理屈は成り立たないわけでありまして、大学生についても点数だけで区切っていくというようなことはよくない、まして、今、教育改革問題が論議されている中で、偏差値教育をなくしていかなきゃいかぬ、点数で人間の値打ちを決めるようなことをやってはいけない、人柄をもっと大切にせにゃいかぬ、もっと教育は多様化し、弾力化しなければならぬ、いろんなことが言われるわけで、そういう観点に立てば、この奨学生採用の問題についても、点数による基準によって採用の決定をしていくというふうなことは現在の教育論議の方向にも合わない、文部大臣の私に対する答弁は、そういう意味で私は立派だと思うし、そのようにしてもらいたいと思いますが、しかし、事務局の方は、大学生はそういうことはしたくないと、こう言っているわけで、大臣と事務局との間にそこに考え方なり具体的な事務の進め方に差異があるわけですね。
それで、私はここで提案したいんですが、大学生も当然そうやれということを今ここで言って論議してもなかなからちが明かないと思う。せめて大学生の奨学生採用についても、この三・五とか三・二とかいう点数による学力基準決定という硬直した型じゃなくって、もっと多様な方法もあり、そしてその基準の問題についても、今後、さらに検討して改善をしていきたいという趣旨の答弁が当然なければ、大臣答弁と、このことを具体的に進めていこうとする文部省内における一致が見られないわけですが、この点についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/9
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010・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) もし、必要でございましたら事務的には局長から申し上げた方がいいかと思いますが、私も、基本的には、人間を数字で評価するという、こういうやり方というのは、これは教育上好ましいことではないというふうに私自身は、そういう持論を持っております。したがって、先般の先生からの御質問に対しても私は同じような考え方を持っておるというふうに申し上げたわけでございます。しかし、大学生の現実に奨学生を採用するという基準を選ぶその判断の基準というのは非常に難しいと思います。九〇%を超えている高等学校とは違っておりまして、大学進学率というものは三五%をちょっと超えるぐらいでございますし、そしてまた非常に、それだけ需要といいましょうか、要望する方々も多い、その判断を、恐らく一つも、仮に高等学校で予約制などをやる場合についても、日本人というのはきちょうめんな性格ですから、理屈だけで文筆表現をしていけば、同じ人が同じ時間に判断をしたものとは違ってくる面もある。そこに個人的な感情が入っているというふうな面も批判されてくるだろう。今度、それが大学間のバランス、高校間のバランス全部違ってくるわけで、結果的に非常に複雑である。しかも、対象の数が大学生の場合非常に多い。それから、事は事務的に、育英会の職員の皆さんがいろんな処理をやっていかなければならぬ、できるだけ早く出してあげなきゃならぬという時間的な課題もある。そういうふうに考えますと、点数である程度判断をせざるを得ないということも、これも現段階では御理解をいただきたいと、こう思うわけでございます。しかし、基本的には、個人個人によって、事情、家庭状況がいろいろあるだろうと思いますし、それぞれ学生の個人的な立場もあるでしょうし、そういうようなことも、できる限り話としては聞いてあげるための面接等も、これは十分やってもらいたいなというふうな気持ちも私は持っております、しかし、現段階では、今ほど申し上げたような事柄から、数字である程度判断することが、日本人として割と割り切れるという、どうも話し合ってやるというのはなかなかうまくいかない、点数でぴしっと出てくると、野球でも普通のスポーツでもそうですが、数字で出てくりゃ、これはやむを得ない、じゃんけんで決めると、案外、これも割り切れる。日本人の感情というものも入るんだろうと思います。しかし、だからといって、あくまでも、この点数だけで、今後とも絶対これでやっていくべきなんだと、こういうことも私はいかがなものかと考えておりますので、先生の御質問の中にも含まれておりましたけれども、やはり、さまざまな工夫を今後とも考えていくべきだろうと思いますし、そういう意味では検討を加えることが必要であろうというふうに私は現段階で申し上げておきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/10
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011・本岡昭次
○本岡昭次君 検討が必要であると、こういうふうに今答弁がありまして、それを私は受けとめておきたいと思います。そして、この検討をぜひとも行っていただきたいということで、この問題、もっともっと質問したいんですが、ほかにもありますので、一応、私が質問したことについて中断しました事柄についての事後処理の問題は終わっておきます。
それで大臣、また今から私が言うと、またあなたは不愉快だとおっしゃるかもしれませんけれども、十九日の私の質問に対して、大臣が、私も、できるだけ正確に今度は言わなきゃいかぬと思いまして議事録を起こしました。大臣が、このくらい明確に申し上げておりますことをおしかりいただくことを私も大変不愉快な思いがいたしますと、こうおっしゃっているんですが、私も、大臣に不愉快な思いをさせたとなれば、大変これは申しわけないと、こう思うんですが、私は政治家として経験も非常に浅うございます。大臣から不愉快な思いがあるというふうなことを言ってもらえるのは、またある意味では名誉かもしれませんけれども、これから、私のために、一体、何があなたを不愉快な思いにさせたのかということについてひとつここでお教えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/11
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012・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 私が申し上げたことで先生が大変不愉快な思いを……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/12
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013・本岡昭次
○本岡昭次君 いや、私じゃない、あなたが不愉快なんだと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/13
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014・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) いや、ただいまのお話でそういう感じがいたしました。これについてはまことに申しわけないとおわびを申し上げます。先生が、その後、そのことについて大変お気にさわっておられるということを文部省の職員からも伺いましたので、私も速記録を一生懸命に起こして、どうも私は当時申し上げた気持ちを、ちょっと先生も個々のいろんな問題も前段にございましたから、いささか御理解をいただけなかったんだろうと、こう思うんですが、私は私学の助成法、余計なことを申し上げるかもしれませんが、この法律を私どもがつくったんです。当時、端的に言って、財政当局、文部省当局も、これについては余り積極的ではなかったという当時の経緯がありまして、私自身もこの法律をつくりました提案者の一人でもございまして、とても、私学助成については、大事な政治の、私にとっても大事なステータスだというふうに自分は考えておりまして、そういう中で、私学助成が非常に思うように進んでいないということについては、私自身も大変残念にも今日思ってきておるところでございます。そういう立場で、行革審の委員会報告は、これは審議会に報告したプロセスでありますから、文部大臣という立場では、国務大臣という立場では、今、この立場でとやかく論ずるということは差し控えたいというふうに私は申し上げたつもりです。しかし、文部大臣としては私学助成を大事にしていかなきゃならぬという気持ちは、常々、もう、この国会でも、いろんな委員会でも、私は予算委員会当時からも申し上げてきておるわけでございまして、そういう意味で、私もプロセスとして、今、とやかく申し上げるということは差し控えたいけれども、しかし、私学助成を大事にしなきゃならぬ、しかも、今度の予算では大変厳しいだろうという先生の御指摘から見て、そういうことと考えは、先生とまさに同じですと、私はこう申し上げているはずです。そういう同じ立場の中で、行革審が私学を引き続き抑えるということについては文部大臣として私もと、ここに「も」という並列でございまして、私も大変不愉快な思いがしておると、こういうふうに申し上げたんですが、先生の御意見に対して、愉快とか不愉快という意味ではなかったわけでありまして、その点についてはちょっと当時は、やはり少しお互いに疲れてもおりましたので感情が高ぶった——疲れだというのは、局長とのやりとり、いろいろございました前段がございましたから、そういう意味で御理解を得なかったんだろうと、こう思いまして、先生のお言葉に対して不愉快というふうに申し上げたというふうにお受けとめになられたということでございましたら、適切な言葉ではなかったと思いますのでおわびを申し上げますが、そういう意味で、私学全体がいい方向の委員会の報告ではないと、こういう意味であなたと同じように私も不愉快に感じておりますと、こういうふうに申し上げたわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/14
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015・本岡昭次
○本岡昭次君 私も、善意に解釈をさしていただいて、ともに、この私学の助成金を削れ、四十人学級はおくらせろ、教職員はふやすなというふうな、文教予算をふった切るような、こういう行革審の小委員会の答申についてお互いに不愉快だと、こう感じたんだと、思ったんだというふうに理解をいたしておきます。それは後で次の機会にまたやらしてもらいます。それでいいんです。
そこで、次の問題に入りますが、この現行法の特例推薦について伺っておきます。
従来、大学一般貸与において実施されていたこの特別推薦について、新制度になれば、今論議している、この新しい法律下における大学奨学金の場合は、特例推薦はどうなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/15
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016・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 新しい制度になった場合に、この特例推薦についてどう考えるかというお尋ねかと思いますが、考え方としては、その特例推薦というものを新しい制度においても引き続きその考え方を踏襲をしていくということを基本的に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/16
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017・本岡昭次
○本岡昭次君 踏襲する場合に、第一種、いわゆる無利子の場合に設定するのか、第二種の有利子の方に設定するのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/17
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018・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 基本的には無利子貸与制度について踏襲をするという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/18
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019・本岡昭次
○本岡昭次君 結構でございます。
それでは次に、家計基準の問題なんですが、この家計基準ですね、収入の総額は引き上げられておりますが、問題は主たる家計維持者、例えば父親なら父親の収入のみに私は限定をすべきではないかと思います。しかし現在では、同居の兄弟姉妹の収入についても合算をされた家計基準になっていると、こういうことなので、それでは長男の場合は受けられても、長男が働いて、兄の収入と父親の収入と合算をして、基準を超えて、弟は受けられないというふうな問題も起こってくるし、その家計基準というふうな問題は扶養者、被扶養者というふうな関係の中で生じるべきものではないかというふうに思います。だから、どう考えてみても、同居の兄弟姉妹、そうした収入まで合算して、基準を上回っているからだめだというのは理屈に合わぬと思うんですが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/19
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020・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、現在は、家計の基準に合致しているかどうかの判断に当たりまして、同一世帯ということで対応をしているわけでございます。その点についての取り方についていろいろ問題があるのではないかという御指摘かと思うわけでございますけれども、現在育英会で対応しております考え方としては、世帯ということで、生計を一にする家族の世帯というとらえ方で考えているわけでございますので、基本的には、そこの的については、今後制度が改正をされましても、そこの考え方については現行の考え方に立たざるを得ないかと思っております。
その世帯の所得水準の把握の仕方そのものにつきましても、これはその基準が適切であるかどうかということについては、なお、今後、それぞれそのときの全体の所得水準については適時検討は加えられていかなければならないものというぐあいに考えておりますが、さらに、今、先生御指摘の点について、それは同一世帯ということではなしに考えるべきではないかという御指摘でございますが、その点についても将来の検討課題としてはあり得るかと思いますけれども、ただいまの時点では、所得制限の金額を高めるということについて、それぞれ、例えば本年度はその基準を引き上げてきておりますが、その基準の引き上げということがまず当面の目標であるというぐあいに私どもも理解をしておりますので、その点が改善をされた後において検討をされるべき課題になるんではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/20
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021・本岡昭次
○本岡昭次君 いや、それはおかしいと思うんですよ。その基準を五百七十万とかあるいは六百万、七百万と上げていくということと、同一世帯の所得水準という問題について、奨学資金を受けたいという学生からとれば、兄貴の所得とか姉の所得とかいうふうなものまで合算されて、そして、君のところの家庭全体がこれだけ所得があるから受けられないというのは、これはもう基本的な考え方じゃないですか。やはり、扶養する者と扶養される者の関係において、その所得水準がどうであるかということを考えなければ、こんなおかしな話は通用しないと思うんですよ。文部大臣、どうですか。直ちにこれは再検討すべき事柄だと思うんですがね。文部大臣、どうですか。うなずいてばかりいないで文部大臣の所見を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/21
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022・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 考え方としては、同一世帯ということで把握をしているわけでございます。
もちろん、この奨学金の出し方については、考え方はいろいろあろうかと思うわけでございまして、前回の御質疑でも指摘がございましたように、例えば、学生の標準生活費というものをまず設定をして、それに対してそれぞれ扶養し得る者が家計でどれだけ負担し得るかという事柄に応じて奨学金というものを出すというような考え方も一つあるわけでございます。いろんな点で、家計の基準あるいは奨学金の出し方というものについて、いろいろ考え方はございますけれども、現時点では私ども育英会の現在とっております考え方からすれば、例えば、特別の事情というようなところでも、父母以外の者で所得を得ている者がいる世帯であるという場合については特別控除額をそれぞれ対応するということで、相当きめ細かく、世帯の構成をしております構成員に応じて控除額というものもいろいろ配慮はしておるわけでございますけれども、考え方としては、ただいまの時点では、生計を一にする家族の世帯というとらえ方をしているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/22
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023・本岡昭次
○本岡昭次君 そうすると、この家計基準のとり方について、この同一世帯というのは、兄弟とか、あるいは同居している人たち全体の収入を合算していくという方法については、将来は検討しても、直ちにこれを考え直す意思はないという、こういうことなんですか。簡単に、もう説明はよろしいからそれだけ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/23
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024・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 現時点の考え方は先ほど御説明したとおりでございまして、例えば、そういう所得を得ている者がいる世帯の場合には、特別控除額ということを、父母以外の者の所得一人につき二十九万円という今の定め方でございますが、そういう特別控除額というところで、ただいまのところは対応しているという形でございまして、現時点ではその考え方で、新しい制度に移りました場合にもそういう考え方でまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/24
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025・本岡昭次
○本岡昭次君 時間がないので、それ以上追及できませんけれども、将来の検討と言っているけれども、将来の問題じゃなくて、これは絶対おかしいと思いますよ。社会的な常識から見ても、このような形で家計基準をとるというのが、何か日本育英会の仕事の非常にこそくな感じがして仕方がないんですね。この点は早急にひとつ改めてもらいたいという要望をして次に入っていきます。
それで、利子補給金の問題について質問します。
利子補給金が今後十年間で累計幾らになるのか、また二十年間でその累計は幾らになるか、それを数字だけおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/25
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026・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 五十九年度が一億九千九百万でございます。六十年度が九億八千八百万、六十一年度が二十三億二千四百万、六十二年度が四十一億九千八百万、六十三年度が五十六億五千二百万、六十四年度は六十八億六千三百万、六十五年度が七十九億二千四百万、六十六年度が八十八億八千二百万、六十七年度は九十七億五千七百万、六十八年度は百五億四千八百万。さらに二十年後の昭和七十八年度で見ますと、百三十八億二百万円という数字になる見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/26
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027・本岡昭次
○本岡昭次君 今、累計をおっしゃいませんでしたけれども、十年目で百五億四千八百万、十年間の累計が五百七十三億三千五百万円になるという予定。それから、さらに二十年間に引き延ばすと、総計が約千八百七十億二千二百万円になります。
そこで問題は、十年後には利子補給が単年度で百五億ということで百億を超して、以後ずっと百億台の利子補給を続けていかなければならぬと。こういうことになってきた場合は、この利子補給そのものが一つの問題になってきて、利子補給を減らせという圧力が当然かかってくると思います。これは三%の利率でこれだけの利子補給をしていかなければならないわけですから、この利子補給の金額を減額していこうと思えば、この三%の利率を四%、五%と引き上げていくことによって、財政投融資から借り入れてくる七・一%ですか、それとの差を縮めていかなければ財政負担の軽減はできないということが当然これは考えられるわけです。
そこで大臣にひとつ答弁をいただきたいんですが、今、私が言いましたような心配の中で、三%の利率という問題について、私は必要がないという立場をとっているものですから、三%の利率を下げていく努力というものは、これから大いに考えていってもらわなければなりませんが、この利子補給という立場から見ればですよ、今、言ったような利子補給金が一つの圧力になってきたときに、予算に対して、この利率を引き上げるというようなことは今後一切考えない、将来のことは約束できないというふうなことじゃなくて、現在、この新しいこうした法律を今審議させている大臣の立場から、この利率の問題について、三%以上さらにこれを引き上げていくというようなことについて考えない、考えるべきでない、こうしたことについてのひとつ明確な確約をいただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/27
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028・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 今お尋ねをいただきまして、局長からも御答弁申し上げましたように、利子補給金が、極めて年次を追って多額に累計をしていくということについては、私も大変このことについては十分関心を払っておかなきゃならぬ大事なところだと考えております。しかし、この法案を御審議をいただく際、当時からいろいろと申し上げてまいりましたように、量的な拡大をぜひ図りたい、また事業の質的な内容も少しでもよくしたい、こういう観点に立って、この有利子貸与制というものを併用してお願いをいたしておるわけでありますが、あくまでも無利子貸与事業というのが、これは根幹でございますので、数字的にも十分この点については配慮していかなきゃならぬということでございます。
ただいまの段階では、今、本岡さんからもお話がございましたように、この利率について上げる、下げる等々についてのことは、今の時点では、私としては申し上げることはできませんが、国会のこの御論議というものも十分踏まえながら、私としては、今後とも、この貸与利率は低利にあるということが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、当面、こういう財政的な状況の中で、この制度に踏み切ってきたわけでございますが、十分、この、いわゆる利率については、教育上好ましいという、そういう考え方というものを一つの前提に置きながら配慮をしていくということが大事であろうというふうに考えております。したがいまして、もう一度申し上げますが、貸与利率については低利にしていくということが必要であるというふうにこの際申し上げておきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/28
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029・本岡昭次
○本岡昭次君 いや、それは、低利にするという問題はわかるにしても、今、三%という利率は現に出ているわけでね、具体的な数字が。だから、その低利というのは、この三%であるということを今の時点でとにかく押さえてもらいたいんですよ、三%である。低利に抑えたい、それは三%ということであるということを明確にひとつしておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/29
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030・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) いろんな角度から配慮をいたした結果、今の時点で、この三%が、学生が卒業してから返還をしていく際、その利息としてはまずまずこのあたりが妥当であるというふうに私どもは考えたわけでございまして、したがいまして、この数字が今後もちろん、これからの経済情勢あるいは財政状況、またこうしたお金に対する利息の感覚というものはこれから十年、十五年とのようにまたなって、推移していくかもわからないという点も考えなきゃなりませんが、おおむね、今のこの数字が、教育的な配慮から見て妥当なものであろうというふうにお願いをいたしたわけでございますので、この三%という数字、この数字が教育的なそういう配慮からはみ出ないように、あるいはまた今後なお一層こうした利率については工夫を凝らしていかなきゃならぬ、ただいまの段階ではこうした御答弁を申し上げることでお許しをちょうだいをしたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/30
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031・本岡昭次
○本岡昭次君 どうもはっきりしないので納得できませんが、もう時間がありませんので、もう一問だけ今の問題にかかわって申し上げてみておきたいと思います。
その三%問題は、もう私は百歩も千歩も譲った話をしております。その問題は別の角度から論議すると、これはどうなりますか。二十年後に利子補給百三十八億円要るということに計算上なっていますが、この金で無利子貸与の奨学生を採用するとすれば、何人この無利子の学生を採用することができるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/31
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032・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘は、この七十八年度の百三十五億についてどうかというお尋ねでございますが、試算としまして実は、六十八年度の百五億が利子補給金になるわけでございますが、その数字で試算をいたしたものをただいま手元に持っておるわけでございますけれども、仮にこの金額で無利子貸与の奨学生を採用して、五十九年度の貸与月額を貸与するとした場合に、採用可能な貸与人員は、六十八年度の数字で申し上げますと、国公立の奨学生とすれば約四万一千人、私立大学の奨学生を採用するとすれば、これは私学の方が単価が高いわけでございますが、約二万九千人というような数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/32
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033・本岡昭次
○本岡昭次君 今、四万一千人、二万九千人の奨学生に無利子貸与をできる人数だと、こう言われましたけれども、そうすると利子補給金の百五億というのは、新しい制度の中にある二万人を利子補給としてずっと積み上げていったときに必要となる利子補給ですね。そうすると、二万人と、今言われた百五億あれば、四万一千人の学生に無利子貸与できる、あるいは二万九千人の学生に無利子貸与できるということの関係は、これはどういうふうに理解したらいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/33
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034・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 試算としましては、先ほど申しました六十八年度で百五億の利子補給金を要するわけでございまして、仮にその金額で無利子貸与の奨学生を、それを財源として採用すればという試算をいたしたものでございます。したがって、国公立でございましたら約四万一千人、私立の奨学生であれば約二万九千人、それはその金額を財源として無利子貸与の奨学生を採用する場合という考え方で試算をしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/34
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035・本岡昭次
○本岡昭次君 僕が頭が悪いから、これちょっとようわからぬのか。そうすると、毎年百億からの利子補給をずっとしていかなきゃいかぬと、それを無利子でやれば毎年四万一千人とか二万九千人を無利子の奨学生として給付していけるということをおっしゃっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/35
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036・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 有利子貸与制度については二万人で学年進行で、これは六十四年度が学年進行の完成年度になるわけでございますが、有利子貸与制度の方は、これはもちろん国立、私立合わせてでございますけれども、全体では七万六千八百人が貸与人員として考えられるわけでございます。六十四年度の完成年度ではその所要額としては三百十五億という数字になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/36
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037・本岡昭次
○本岡昭次君 よくわからぬですね。僕だけわからない、頭悪いのかな。
そうすると、有利子によって拡大をした、対象大貫を。しかしその利子がだんだんとふえていって、利子そのものによって、今言ったような四万人とか二万九千人とかいう人たちに有利子にしなければ、それだけの財源があればやれるということになれば、逆に言えば、有利子制度なんかしかずに、一般会計の枠でこうした金を出して無利子の学生を積み上げていけばいいという理屈にはならぬのですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/37
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038・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 当面、五十九年度で実施をする事業として人員をふやし、かつ単価を上げるためにこういう有利子貸与制度を導入して、財投をこの育英奨学資金の資金として用いるということを御提案申し上げておるわけでございます。
先ほど来お尋ねの点は、六十八年度に利子補給金として出てまいります百五億を、仮にその金額で奨学生を採用すればということで計算をいたしたものを、お尋ねがありましたからお答えをしたわけでございまして、有利子貸与制度の方は、先ほど来御説明をしておりますように、間口といいますか、新規採用の人員としては、二万人を五十九年度から広げるわけでございまして、六十四年度の完成年度で申せば、それは全体で七万六千八百人を対象とし、事業量としては三百十五億の事業量を実施しておることになるわけでございます。直接比較といいますか、仮定の計算として、利子補給を要する百五億で貸与するとすればという仮定の計算は、先ほど来申し上げているような数字になるわけでございますが、全体の、私ども、この育英奨学事業全体で申し上げますと、これは既に前にもお尋ねがあってお答えをしたわけでございますが、無利子貸与制度と有利子貸与制度全体で対応をしておるわけでございましで、無利子貸与事業については、もちろん、今後、財源としましては、政府貸付金と返還金を充当することになるわけでございます。
返還金が、順次年度を追って返還金がふえてくるという形がございますので、利子補給金がふえることになりましても、全体として一般会計の負担額としては返還金充当額がふえることによって、その点は対応し得るということで御説明をいたしてきておるわけでございまして、もちろん、この返還金も広い意味で言えば、従来の政府貸付金の累積といいますか、そういう形のものでございますので、広い意味では、そういう政府の貸付金の全体の枠の中で使われるものでございますが、財源的に申せば返還金充当額は今後順次ふえていくことによりまして、利子補給金の負担額をその点で十分トータルで議論をいたしますれば、この無利子貸与、有利子貸与全体からすれば、人員をふやし、かつ財源的には、私ども、例えば学年進行完成年度までについては、少なくとも、ただいま御提案申し上げておりますような三%の金利ということなどについて動かす考えは持っていないということを基本的に踏まえて、この制度を御提案を申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/38
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039・本岡昭次
○本岡昭次君 もう時間が来ましたので、今の説明ではよくわからないので、それを係数的にきちっと整理をして、そして私が今疑念を持っているように、最後はこの利子補給が非常に重圧になってくる。そして、ある段階では、それでは利子補給をそれだけ出すのなら、それは無利子貸与でやっていっても同じことではないかということの疑問に対して、そうではないのだということを五十九年から七十八年まで二十年間にわたって利子補給の見込みを出していただいておるんですから、同じように、一体、奨学生の人数が、あるいは返還金がどういうふうに推移をしていくのかという問題を明確に示していただいて、私の疑念が晴れるような資料を提出をしていただきたいと思います。そのことはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/39
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040・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 十分、お尋ねの点について御説明ができますような資料について御説明をさせていただきたいと、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/40
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041・本岡昭次
○本岡昭次君 それではもう時間が参りましたので私はこれで終わらせていただいて、今、いただいた資料に基づいて検討させていただきたいと思います。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/41
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042・久保亘
○久保亘君 私は、最初に、先般、慶應大学の委託研究費の問題についてお尋ねをいたしました際に、国立大学の場合には大学会計に入ることになっているから、このような問題は起こりようがないという意味の御答弁をいただいたのでありますが、その後、東京工大の工業振興会について慶應大学の場合と同じような取り扱いが行われていることが報道をされております。この東京工大の財団法人工業振興会について、文部省は、これまで、このことについては全く関知されておらなかったのか、そしてこの問題が公にされてから、どのような御調査になっておりますか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/42
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043・大崎仁
○政府委員(大崎仁君) 財団法人工業振興会は文部省の所管の法人でございます。それで、事業の内容といたしましては、大学の研究の援助あるいは受託研究、委託研究のあっせん、あるいはみずからの調査研究の実施というようなことが内容になっておるわけでございますが、実は工業振興会の事業報告等を担当の課で見ておりました時点で、委託研究を、相当の会社から受け入れているということがございまして、その実情等について関係者のお話も伺ってきたという経緯があったようでございます。
それで、その内容を申しますと、企業等から研究の委託を工業振興会自体が引き受けておやりになると、ただ企業は特定の先生の特定の研究課題というものにお金を出すと、それで先生方はその工業振興会の調査員になることを承諾をして、いわば振興会の事業という形で研究をおやりになるというような姿をとっているわけでございます。ただ、先生が現実に大学で仕事をされる、実験等をおやりになる金につきましては工業振興会からさらにその分についてだけは正式に委任経理金として、約一割程度の額でございますが、払い込むというような姿でやっておりますということがわかりまして、いろいろ御工夫になっておられる点もあるわけでございますけれども、やはり一つは工業振興会自体が調査、研究をおやりになっているというふうに構成をされることに若干の無理があるのではないかということが一つと、それからもう一つは、その委託契約の内容を、正式な契約書の取り交わしというものはございませんで、研究結果の報告というものを必ずしも義務づけられていないというような状況がわかりましたので、この点は、むしろ実態は研究援助の色彩、研究奨励金的な色彩が強いのであるから、むしろ直接は大学に奨学寄附金として受け入れた方がよろしいのではないかというような議論を担当課でしておったようでございます。
それで、私、先生に御答弁申し上げました時点で、そういうやりとりがあったことを把握しておりませんので、その点についての言及をいたさなかったのは不行き届きであったわけでございますが、そういう過程で奨学寄附金として大学に正式に受け入れるということで大学側も法人側もそういう措置をとることに先般決めたと、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/43
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044・久保亘
○久保亘君 端的に答えていただきたいんですが。
財団法人工業振興会のやり方は、文部省の指導方針である四十五年文部省通達に反するのかあるいはその範囲内なのか、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/44
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045・大崎仁
○政府委員(大崎仁君) 趣旨には反するのではないかということで改善の措置を講じていただいた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/45
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046・久保亘
○久保亘君 工業会の方ではいろいろ言われるんで五年以内には改めようと、こういう方針を理事会で決定されたと言われておりますけれども、その文部省の通達に反するものを五年以内には改めようというようなことで、えらい文部省としては手ぬるいんじゃないですか。それと私、あなたが合いろいろと一つの便法として東京工大が戦後ずっとやってきたこの工業振興会による企業からの研究費の受け入れとその使い方について何か半分認めたような、そのやり方にやむを得なかったものがあるような言い方をされてきたけれども、こういうことを言われたのでは文部省もそう簡単にこれを認めるわけにはいかないんじゃないですか。
「十数年前まで、事務所は大学構内にあり、」——そのころまでは学長がこの振興会の会長です、戦後ずっと。「毎年、会計検査院の検査を受けていた。そのたびに正規の大学会計ではない資金として、冷たい扱いを受けてきた。国会で本格的に問題にされそうになったこともある。私らは」−この工業振興会の人たちです。「私らは結局、赤穂浪士の天野屋利兵衛のような立場で、先生らは四十七士の立場。無事、研究の成果を上げて本懐を遂げられるのを陰ながら手助けするのが私らの役目だ。吉良上野介の間者が、検査院や国会にあたるが、私らはそれから先生たちを守ってきた」これがこの工業振興会の幹部の発言ですよ。国会や会計検査院というのは吉良の間者だ、先生たちの研究を守ってやるために私たちが天野屋利兵衛になって防いできたんだ、こういうことなんですが、こういうことを発言をされておって、なおこの工業振興会のやり方というのは文部省としてきちっと指導できないようなものなんですか。何かあいまいなことをずっと言っておられるようですが、私は大変不思議なんです。
それと、文部省に私聞いておきたいんですが、こういう便法をとらなければ学者が研究の本懐を遂げることができない、自由な研究ができない、こういうことを言われておるんですが、大学の先生たちが自由に研究をしてその成果を得られるようなそういう立場を文部省は抑圧しておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/46
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047・大崎仁
○政府委員(大崎仁君) 五年以内云々という点につきましては私ども了承していることではございませんで、その点につきまして再度指導をいたしておったわけでございます。
なお、御指摘のような発言を私も新聞で拝見をしたわけでございますが、私どもといたしましては、委任経理金制度というものがございまして、これを円滑に運用すれば十分寄附金の趣旨を生かした使用、活用ができるというふうには考えておるわけでございますけれども、なお、寄附金の払い込みかち実際に使えるまでの期間のずれその他いろいろこの機会に伺ってみますと、大学側としても不便を感じている面があるという点もあるようでございますので、そういう点につきましても私ども検討いたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/47
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048・久保亘
○久保亘君 このような文部省が認めた財団法人によって運用される委託研究費というものが学者の研究上必要なものであるならば、あなた今言われるように、やっぱりそういう面が必要だというような意味のことを言われたが、必要なものであるならば、そのような制度を何もこそこそやらぬでもいいように、きちっと確立すべきじゃないですか。こういうものが公正に認められるようにすべきだと私は思うんですよ。どうも国会と会計検査院というのがスパイで立ち回ってきて、いろいろと我々を監視しておるからぐあい悪い、だから、この振興会が中に入って学者を守ってやるんだ、こんなことを言われたんじゃ、これは私は大変問題だと思う。機会があれば、私はこの工業振興会の幹部をこの委員会に来てもらいたいと思う。こんなばかな発言はない。こういうものに対して文部省、何に直言えないで、そして理事会があなた方の指摘を受けた上で、それじゃ五年間のうちに改めましょうと決めたことについてもきちっと言えないで、もう一遍検討してくださいと、そんな態度しかとれないというのは、文部省が地方の教育委員会や学校の現場に対して今までおやりになったことと比べると、私は同じ文部省だろうかと思うね。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/48
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049・大崎仁
○政府委員(大崎仁君) 先ほど申し上げましたように、制度といたしましては委任経理金、奨学寄附金委任経理制度というのが確立をいたしておりまして、その運用よろしきを得れば先生方に御不自由をかけないで寄附金の趣旨が生かせるようになっておるわけでございます。そういうことで、その方向で指導をしております過程で、いわば今回のような状況になったわけでございますが、私どもとしては、五年以内云々とか、あるいはそういう振興会側の態度に対して、我々がそれを納得しだというような態度をとっているわけでは全くございませんで、現時点では、すべて、大学としては教官のいわば調査員は辞退をする、それから今後、財団からの直接の金を教官が受け取るということは即時中止をする、こういう措置をとられているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/49
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050・久保亘
○久保亘君 文部大臣、いろいろ学者の研究を保障してやるという点において今のやり方のままでは問題があるということを局長も言われるんで、私もそういうことがあるんかなと思います。だから、こういう振興会方式をとらなければ、委託研究費を大学の会計に入れたのではすぐれた研究ができない、自由な研究ができない、こう言われている、その学者や振興会の立場に対して文部省は、はっきりした見解を私持つべきだと思うんです。今までのやり方に問題があるんなら、それをどう改善するかということを文部省はやらにゃいかぬ。文部省の指導方針や法律に反するような形でこの運用がやられるということを、文部省がやむを得ないことだと言って黙って見ておられるというのはいかぬと思う。また、そういう事態が明らかになったとき、それを適切に、厳正な指導ができないということは、私は問題だ、こう思うんです。そして、特に、何を言うか、こういうことでやらなかったらいい研究が得られないんだ、国会や会計検査院あたりが何をぬかすかというようなこんな態度で振興会の方が出ておられるということについては、私は、これはもう非常に遺憾なことだと思うんですが、文部大臣は、今、私と局長と話をしておりますことをお聞きになって、どういうふうにお感じでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/50
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051・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 率直に申し上げて、文部省がこうした工業振興会等のような法人に対してどういう指導をしてきたかということについては、正直に申し上げて私は、まだ勉強不足でございます。ただ、これは文部省のそうした指導方針、あるいはまた法律というものの建前、あるいはまたその法律の中身、これは文部省の考え方と少なくとも高等教育機関の学者というそういうお立場、お互いにそういう中の信頼感というものに成り立って、私はこうしたものが慣行上行われている面もあるだろう、こう思うんです。しかし今、先生から御指摘ありましたように、振興会の幹部が吉良の間者であるかどうか、その表現の仕方はどういうポイントから出てきておるのか知りませんが、これはやはり学者の、少なくとも高等教育機関の、世の中の指導的なお立場といいましょうか、模範になるようなお立場の方の御発言としては、いささか穏当を欠くというふうに、私も、今の時点ではそういう判断をいたします。
ただ、こうしないと自由な研究ができないんだということはどういうことをいうのか。あるいは文部省がそれだけ自由を制約しておるようなことをやっているというふうに私は今までの経験上から考えられません。ただ、事はお金のことでございますから、大学の正式な機関の中に入れて、そこから自由に使うということになりますと、会計検査院等のいろんな、ある程度の決め方というのはあるわけでございますから、そのことが自由に使えない、あるいはそれがいろんな制約をしていく、その自由の面もどうもはっきりしないんですけれども、今の段階では何とも言えませんが、やはり法律に反することをやるというのは、これはもう少なくとも公務員、しかも教育公務員として、これはあるべき姿ではないということは、この際私も明確に申し上げられると思うんです。
ただ、局長が御答弁申し上げておった趣旨というものは、できるだけ広く自由に御研究をいただきたい、それはもちろん法律の枠の中でやることは言うまでもないというそういう前提、そういう紳士的なお互いの信頼感の上に立って指導しておったということは、これはやむを得ないと思いますが、そういう大学の自治、学問の自由ということをお互いの信頼の中でやっておるにもかかわらず、むしろ、大学としては、そうしたことにもとるようなことをやっておったとしたら、これは私は極めて遺憾なことだと言わざるを得ないと思いますが、非常に難しい問題だと思います。非常にこの判断が難しいところだと思うんです。
研究して実際の研究の費用に使うもの、道具、材料、資材、いろいろあるだろうと思います。厳格に言えばそこのことなのか。終わってからちょっとみんなで慰労して、よかったなということで、きょうは一緒に一杯飲もうかという費用は一体研究上の必要なのかどうか。いやビール一本までいいけれども、二本目からはおまえ払えよというのでは、これまたちょっと身もふたもないような感じもする。この判断というのは非常に難しいところだと思うんです。料理屋はいかぬがレストランで食うのはいいよということも言えるのかどうか。そういうようなことを幅広くお互いに信頼感の中で自主的に判断をしていくということが大事だろうということも、文部省はそういう前提で指導をしておったのではないかと思います。
しかし、こうしたことが国民の中に非常に不快感を持たれる、あるいは信頼にもとるようなことになってくるということであるとするならば、大学の自治や学問の自由ということも尊重しつつ、やはりこの中に、何らかのこういう考え方の一つの基準みたいなものは、もう一遍これは文部省と大学との間で十分詰めておく必要があるのではないか。こんなことが新聞に出て、そうして国民が非常に大学の先生方に対して不信感を持つということは、日本の教育上、極めて私はこれは好ましいことではないというふうに、今の時点で先生と局長のお話を聞きながら、そんな感じをいたしましたので、少し文部省としても、そういうことを、余り学問上制約をしないということは大事でありますけれども、何らかの新しいやり方というものは少し検討をしていく必要があるというふうに私は現時点では申し上げたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/51
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052・久保亘
○久保亘君 この問題についてはまだ少し時間をかけて、いろいろ私もお尋ねをしたいと思うんですが、とにかく国立の大学が国会や会計検査院を間者と見立てて、そしてこれを警戒しつつ、その委託研究費を企業から受けてそれを研究に使う、そうしなければ学者のすぐれた研究成果が得られないということだと言われておるんですから、それならば私はやっぱり全体にわたって研究してみないといけない問題があるんじゃないかとこう思うんですね。
〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕だから、この点について文部省は、東京工大の問題、私立における慶應大学の問題を契機にして、ひとつどうやったら、学者の自由な研究を保障し、すぐれた研究が得られるようにしながら、しかも企業からの委託研究費というのが公明正大に使われていくようにできるのか、その点について、この際十分なひとつ検討を加えて、よい方針を出してもらいたい、こう思っておりますが、文部省もこれに真剣にお取り組みいただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/52
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053・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 大学は本来の使命を踏まえまして、その主体性のもとに産業界の要請にこたえていくという、これは大学研究活動をむしろ促進をするという意味では、基本的に私はこの方向を維持していくべきだとこう考えている、また積極的にも推進していくべきだと、こう考えます。しかし、今、先生から御指摘どおり大変大事な問題を生じてくるというおそれもあるわけでございますので、こうした点について国立、私立大学も含めながら、新しい委託研究費あるいは産業界との協力の体制ということについて文部省としても十分検討をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。事務当局にもそのように指導していきたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/53
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054・久保亘
○久保亘君 それでは本題に返りまして、余りきょうは時間がありませんので、私が質問しますことにひとつ適切に短く答えてください。
まず一つは、今度のこの改定をずっとならして見てまいりますと、どうも数字の上で気になることが幾つかございますが、一つはなぜ、今まで全部高等学校の奨学生というのは四月から適用になっていたのに、今度の改定では予約外のものについて七月からになるのですか。これまでは一般奨学生でも全部四月から適用になっていたわけです。それを今度は七月からにされておりますね。これはどういうわけでしょう。
それからもう一つは、国公立と私立との金額の改善の比率が極端に国公立が優遇されている。私立の上げ幅が非常に国公立よりも少ないのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/54
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055・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) お尋ねの第一点の高校の在学採用について、四月でありましたものが七月になったのはなぜかというお尋ねでございますが、従来、大学については、そういう在学の新規採用については七月分から予算計上をいたしておったわけでございます。実際上の採用事務の手続からすれば、ほぼそういう対応で適当ではないかということ、並びに予算全体の財源の対応で現実に即した姿ということで、在学の新規採用については七月分からの計上ということにさせていただいたわけでございます。
それからお尋ねの第二点は、それぞれ単価の引き上げにつきましては、国公立については特別貸与の単価、例えば自宅は二万円に対して二千円を増額しまして二万二千円とし、自宅外が二万六千円に二千円を乗せて二万八千円といたしております。私立大学の場合には、同じく自宅二万九千円の単価を二千円乗せまして三万一千円ということにしたわけでございまして、それぞれ増額金額はいずれも二千円の増額ということにいたしておりまして、あるいはその乗せ方が少ないのではないかという御指摘かと思うんでございますけれども、従来の単価の上に今回単価改定として増額を図るということで、それぞれ国公立、私立あわせて、いずれも二千円を乗せたということでございまして、国公立をそのことで優遇しているというぐあいには私ども考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/55
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056・久保亘
○久保亘君 最初のお答えですよ。私言っているのは、高等学校は今までずっと四月からやってたんですよ、全部。高校に入った子供たちは一般貸与であれ特別貸与であれ全部四月から奨学資金を出していたんです、さかのぼって。ところが今度の改定で、予約の方は四月から出すが在学採用の方は七月から出すようになっているんでしょう。違いますか。私が間違っているかしら。私が間違いなら間違いだと言ってもらえればいいですよ。今までは三十六カ用貸与だったのが今度は三十三カ月になったでしょう。これはどういうわけかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/56
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057・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 予算積算で申し上げますと、高校の場合も、従来から七月の予算積算でございますけれども、採用といたしましては従来から高校の一般貸与の奨学生については貸与時期は四月から貸与をするということで、実施は四月からで実施をしております。今回もその点については変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/57
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058・久保亘
○久保亘君 四月でやるんですか、これからも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/58
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059・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/59
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060・久保亘
○久保亘君 高校は四月でやるのね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/60
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061・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/61
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062・久保亘
○久保亘君 それならいいですよ。
それから国公立と私学の格差というのは、これは金額の問題ではそうかもしれませんが、アップ率ということで見ると相当な開きですよ。私学の方のアップ率は低いんです。これはやはり問題があると思いますよ。金額でというなら公務員の給与だってそれならみんな金額で定額で一緒に上げればいいじゃないですか。そうじゃないでしょう。これはやっぱりアップ率でかかっていくでしょう。必要があるからそういう今まで総体の金額に開きがあったはずです。それが全体としてアップしなければならぬというならば、やっぱりそれに準じて私学の改善が行われてよかったんじゃないですか。そのことを聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/62
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063・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 先生御指摘のように、私立大学の単価が確かに高いわけでございまして、アップ率から申せば、その点で、私学の方がアップ率から見れば薄くなっていることは御指摘のとおりかと思います。
今回の改善に当たりまして、単価と人員の双方について拡充を図るという観点から、先ほど御答弁しましたように、単価については大学について国公立、私立あわせて二千円ということにしたわけでございますが、御指摘のように私立大学に対するアップ率の配慮からすれば、これは必ずしも十分でないということは、御指摘の点はそのとおりかと思います。
単価の改善については今後の課題としてなお取り組まなければならない将来の課題というぐあいに私ども考えておりまして、将来、単価改善において考える際にそういう点も十分配慮すべき事柄というぐあいに御指摘を受けとめてまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/63
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064・久保亘
○久保亘君 それではその次に、これまで一体奨学制度というのは無利子を原則とすべきかどうかということで随分議論がございました。私はやはり文部省としてこの際明確にしておいた方がいいと思うんですが、有利子制度の枠は、仮に今回の制度改正が認められたとしても有利子部分については現在の入り口の比率を崩して有利子を拡大するようなことはない、これが文部省の考え方だということについては御同意いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/64
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065・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 新規採用の人員の枠につきましては、有利子について二万人ということで五十九年度予算を御提案を申し上げているわけでございます。私どもといたしましては、少なくとも、今回取り入れました事業が、学年進行が完成するまでの間、この人数について動かすというようなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/65
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066・久保亘
○久保亘君 その場合に、結局無利子貸与の人員が現在よりもふえることがあっても減らされることはない。これは今あなたのお答えからすると当然のことかもしれませんが、それもあわせて確認をしておいてもいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/66
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067・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 無利子貸与についての新規採用人員も御指摘のとおりでございます。もちろん、無利子貸与事業を制度の根幹として考えておるわけでございまして、将来の育英奨学事業の改善充実という観点からすれば、その点に重点を置いていくということは国会の御論議等でも明らかにされておる点でございまして、そういう対応で考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/67
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068・久保亘
○久保亘君 それから、将来、国家財政が好転をして有利子制度が廃止されるというようなことになりました場合を仮定すると、この有利子制度があった時期に奨学資金を受けた者だけが奨来にわたって利息を払うということになってまいりますね。したがって、もし育英会の奨学資金制度の中から有利子貸与というのが廃止される事態になったときには、有利子制度の奨学資金を受けた者も当然に支払うべき利息は免除される。それでないと非常に不公平を生ずるわけですから、もしも有利子制度が廃止されるというような場合には、有利子制度の奨学資金を受けた者についても利息の支払いは当然免除されなければ公正を欠く、そのように考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/68
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069・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 今回、御提案申し上げております有利子貸与制度については、もちろん、従来から御説明しておりますように、育英奨学事業全体から見れば無利子貸与制度を制度の根幹とするわけでございますけれども、この有利子貸与制度そのものも、私どもとしては、今回、制度としてこういうものを創設するということで御提案を申し上げておるわけでございます。
将来の問題ということでのお尋ねでございますが、当面は私どもこの制度として興しております有利子貸与制度がどのように実際奨学制度として機能するかというこの点を見守ることがまず第一ではないかと思っておりまして、将来、時代の変化によって、そういう時期が来た場合には、もちろん、そういう検討も出てくるかと思いますが、そこで問題は有利子貸与制度の利子負担分についてどうかということでございますが、これはそれぞれ契約が奨学事業としては育英会と奨学生個々人との契約になるわけでございまして、その契約がそういう形で契約をされております以上は、後々その利息について免除するという問題は基本的には入ってこない課題というぐあいに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/69
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070・久保亘
○久保亘君 それは契約をしたことは事実ですね。だから、そういうようなことになって奨学制度の全体の中から有利子制度というものがなくなった場合には、そのなくなった制度を受けてきた者に対しては、その段階で措置を講じなければいかぬ、契約は生きているでしょう。しかし、その契約の中にある利子負担の部分については抹消するということをやらなければ不公平になるのではないかと私は言っているわけです。これは有利子制度が将来どうなるかというのはわかりません。わかりませんが、そういうことをきちんとしておかないとやっぱり有利子制度が将来広がってくる可能性もあるので私はお尋ねしている。しかし、それ以上お答えがしにくいならば時間もありませんから、次のことをお聞きします。
有利子制度の利率については、この利率は変動するんだということも答えられておりますが、変動する場合は現在考えられている利率を上限として考えられることであって、この天井を破ることはない、これは文部省のお考えとして承っておいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/70
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071・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 先ほどもその点のお尋ねについて大臣からも御答弁をいただいておるわけでございまして、利率については奨学生の返還能力ということも勘案し、将来とも低利ということで確保するということを私ども基本的に考えておるところでございます。端的に申し上げますれば、先ほども具体的な事業として申せば、私どもこの制度を検討いたしますに際しまして、財政当局ともいろいろ議論をいたして、この制度の創設に踏み切ったわけでございますが、二万人の有利子貸与人員ということについて、これで学年進行完成ということになれば六年間を要するわけでございます。私どもとしては、少なくともそういう間に関しては、これを変更することはないというぐあいに対応してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/71
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072・久保亘
○久保亘君 それから奨学生の採用について、在学生採用というのは高校の場合は四月から在学生採用でもやるんだというお話でございましたが、大学の場合は七月になりますね。そうすると、そういう入学時に非常にお金がかかるわけですから、七月採用ということが余り出てこないようにするために予約制度というものを原則にしながら、予約制度が辞退された分を在学生採用で補充していく、こういうことで、そして、その予約のあり方についても非常に緩和されたやり方でやっておく、この方が学生の立場に立っては非常によいのではないかと思うんですが、これもやっぱり予約と在学生採用というものを区分しておかなければならない何か大きな理由がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/72
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073・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 現行制度では特別貸与と一般貸与という二本立てになっておるわけでございまして、特別貸与制度で予約採用ということを行っておるわけでございます。今回の改正では無利子貸与制度ということで、そこのところは一本化をされることになるわけでございます。
先生の御指摘は、むしろ予約採用ということで四月から支給される部分についてよりそちらの方にウエートを置いた運用で考えていくべきではないかという御指摘のように承ったわけでございまして、それらの点については、これはもちろん予算積算上の問題もございますので、その点を勘案しなければなりませんけれども、御指摘の点は生かすような形で運用というものは考えていくのが基本ではないかと、ただし予算積算上の問題もございますので、その予約と在学採用の割合をどうするかということは、その点での問題点はございますけれども、考え方としては、先生の御指摘のような考え方にウエートを置いた運用をすべきものということについては、そういう方向で考えていくように私どもも育英会とも相談をしてまいりたいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/73
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074・久保亘
○久保亘君 その場合に、やっぱり予約奨学生の予約の申し込みの仕方、その採用の仕方に余り厳重ないろいろな基準をはめていくと、今度はかえって学生が奨学生の適用を受けることを難しくする面も出てくるわけでありますから、緩和をしておかなければならぬと私は思うんですが、できればそういうふうにして入学したらできるだけ早く学生が奨学生として決定をされて奨学資金を受けられる、こういうことが望ましいのではないかと考えておりますので、今そういうような意見を申し上げたわけですが、局長のお考えはよくわかりました。
最後に文部大臣にお尋ねしたいのは、もうやっぱり奨学制度というものを考えていく場合に、戦時中に生まれた日本育英会という名称はふさわしくなくなってきているんじゃないかなという——育英会という名称があるためにやれ三・二とか三・五とかいうような問題も生まれてきやすいのでありまして、この際やっぱり本来の奨学制度にふさわしい名称に育英会の名前を変えることを検討したらどうかという感じもするんでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/74
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075・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 育英会の言葉につきまして、あるいはまた英才を何か育てるというような、そういう受けとめ方もあると思いますが、現実の問題としてはまだまだ足らざる点は御指摘をいただき、御注意をいただいておりますものの、育英奨学制度というのはかなり幅広く、そしてまた、大変国民の中にも定着をしてきておりますし、その趣旨は、当初できましたこととは大分変わった形になっておると、こう思います。
そして一方においては、やはり当時の高等教育機関に進むというのは、ああいう戦時体制の中で学問をする意欲もないし、あるいは、またそういう財政的な力も個々にはなかったと、そういう中からお手伝いを国としてして、そして勉強を進めてほしいと、そういう目的はやはり今とは大分違っておると思うんです。今はむしろ高等教育機関というのは量的に大変大きく拡大もいたしておりますし、これは文部大臣として適切空言葉がどうかわかりませんが、現実に大学を見ておりましても、もちろん学問、研究をすることも大事だし、幅広く人生の教養を身につけることも大事でありますが、一面レジャー産業ではないかと言われている面も、これは私ではないですよ、そういう世の中の風評もある。そういう意味では、大学に学ぶということについては、従来のような感覚とは大分異なってきておるというふうな感じもいたしますので、そういう面から見ますと、私以上の年齢、先生もそうだと思いますが、育英という言葉になると、すぐ背の育英と感じますが、今の子供たち、国民から見て、育英と言うと、果たして、うむというような感じになるかどうかというのは、これは私は少し与える印象というのは違うんじゃないかというような感じもいたします。しかし、そういう感じが、これから歴史的に経過をたどっていけば、そういうことも薄れるというから、だからほうっておけばいいということじゃありませんが、逆に言えば、また何かもっとすばらしい名前が出てくるかもしれません。そういうこともやはり世論の動向というものを考えながら、そして、むしろ奨学資金の内容の面については充実をさせていくということに文部省は意を用いていかなきゃならぬということは言うまでもないことでございますが、先生からそういう御指摘がありましたということを文部省としても十分に受けとめさしていただいて、何か本当にいいという名前が、国民のみんながなるほどなという名前があるということであるならば、私はそういう名前をとることについては、これは消極的であってはならぬとは思いますので、今の段階でこの制度の名称を変えるとか変えないとかということをこの場で申し上げることはひとつお許しをいただきまして、何かいいそういう言葉が世間からも出てくることも期待したいし、こうして傍聴席には育英会の関係者が随分いらっしゃるというふうに伺っておりますから、あるいは職員の皆さんから、こういういい名前が出てくるんではないかというようなことさえも、場合によったら私は大変ありがたいことではないかというふうに感じて、その程度の答弁でお許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/75
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076・粕谷照美
○粕谷照美君 先週当委員会で参考人の意見聴取がありました。そのときに立命館大学からおいでになりました参考人の方が資料を私どもに配付してくださったわけですが、その資料の中に、奨学金がどのような点で役立ったか、この質問に対して、一つは経済的な面で、もう一つは精神的な面での回答があるわけです。その精神的な側面を見ますと、奨学金を受けたことを非常に感謝をしていると、成績や自覚など、この奨学金を受けていることが自分自身に対する励みとなったということが大きく取り上げられておりまして、奨学金制度の果たしてきた役割は非常に大きいということを痛感したわけであります。だから、ますます拡充していかなければならないし、私どももそのために努力をしなければならないというふうに考えているんですが、原則的な質問は今まで随分やってまいりましたので、きょうはもっと具体的な中身についての質問をしたいと思っております。
先ほどの本岡質問に関連をいたしまして、学習成績の評定について文章記述が可能な場合はそれに従ってもよいということをここで確認をいたしました。あとは、育英会がこのことを学校にどのように徹底をさせていくのか、学校がそれを受けてどういうふうに判断をし、生徒に指導していくのかということとかかわってくると思いますが、まさか学校が正直にこのことを受けて、文章記述が可能な場合といいますけれども、文章記述はもう可能なんですから、その文章記述をやったことによって不利益な取り扱いを受けるというようなことがないようにしていただきたいと思いますが、その辺は文部省どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/76
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077・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 基本的には先ほどお答えをいたしましたとおりでございまして、文章記述が可能な場合はそれに従ってよいという考え方で、これは高校の奨学生の場合の問題でございますけれども、そういうことで指導をしていくわけでございますので、御指摘のような、そのことによって不利益な取り扱いになるというようなことなどはないように十分対応してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/77
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078・粕谷照美
○粕谷照美君 そういたしますと、私は本会議でもこういう質問をしているんですね。「既に九五%の進学率、準義務教育とも普通教育とも言える高等学校の生徒に対する奨学金は、学力基準を廃し、義務教育学校の就学援助制度に準じて、」いわゆる「育英抜き、経済的必要度に応じての奨学金制度とすべきであります。」、こういうふうに言っているんです。無理やり学力基準を書かなくてもよろしいと、逆言うと、今の局長答弁はなるのではないかと思いますが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/78
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079・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 先ほど来お答えをしております点は、学力の基準をやめるということではないわけでございまして、学習成績の評定について文章記述が可能な場合はそれに従ってよいということを示しておるわけでございます。現在の日本育英会の育英奨学事業そのものが、これがやはり限られた国の予算の中で執行されるものでございますので、学力基準並びに家計基準によりまして、それぞれより必要とする人たちに対してこの育英奨学金が支給されますような形で対応すること自体は、今後ともその点はなおそういうことで対応してまいるというのが基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/79
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080・粕谷照美
○粕谷照美君 今のところ、私の言っているようなところまで文部省が判断を大きく前進をさせていくということは困難だというふうに思いますが、非常に含みのある御答弁と承りまして、今後の世論の動向というものと予算のあり方というものについて注目をしていきたいというふうに考えております。
さて、有利子制について伺いますが、有利子制の導入で新たに増員する人数は二万人であります。そして、その内訳が、国公立大が五千人、私立が一万三千人、私立短大が二千人ということになっていますね。そして貸与月額は、無利子貸与と同額の、国公立大自宅が二万二千円、自宅外が二万八千円、私立大が三万一千円の四万一千円、私立短大が三万円の三万七千円で、これに対しては三%の利息をつけると、こういうものでありますが、経済的に極めて困難という学生には無利子貸与プラス有利子貸与が創設をされたというのが今回の法案の一つの目玉というふうに私は理解をしているわけであります。この無利子に上乗せして有利子を足す人数というのは、二万二千のうちどの程度を考えていらっしゃいますか。
〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/80
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081・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) お尋ねの無利子貸与と有利子貸与の併用を考えます人員としては、有利子貸与制度の貸与人員の一割程度といたしたいと。したがって、五十九年度においては約二千人を予定をいたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/81
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082・粕谷照美
○粕谷照美君 その二千人は、例えば国公立大、私立大、私立短大、この割り振りをどのように考えているかということと、はっきり言いますと、自宅から通学している人は、国公立大だったら二万二千円の二倍、自宅外だったら二万八千円の二倍を支給されると、こういう計算になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/82
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083・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 併用のされる人員、約一割程度ということで申し上げたわけでございますが、それの国公立、私立のバランスは、有利子貸与の二万人についてとっておりますバランスにほぼ準じて考えたい。国公立、私立、私立短大それぞれについて一割程度というようなことでまずは考えているところでございます。それから、お尋ねの第二点は、二倍、無利子貸与と有利子貸与で、単価的には、それぞれ自宅の場合には国公立で二万二千円であればそれが倍額になるのかというお尋ねでございました、それはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/83
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084・粕谷照美
○粕谷照美君 そうしますと、育英会の資料に、「調査時報」によります、奨学生は一体どのような家計の中から出てきているのかというこの統計にありますように、家庭の年間収入階層欄を見ますと百万円未満という層もあるんですね。一年間に百万円未満の人たちが国立で例えば自宅で七・三%、自宅外で六・三%、平均して六・六%もある、大変なことでありますね。こういう層に対する非常に大きな私は援助になる、人数は全国で二千人という極めて数少ないものでありますけれども、非常に大きな影響を与えるというふうに思いますが、二倍まで借りなくていい、もう一万円欲しい、二万二千円の無利子プラス一万円の有利子欲しい、こう考える人だっているわけですよね。後の二万二千円が三%の利息がつくんだから、その利息の部分はなるべく抑えたい、こういう人に対するメニューの多様化というようなものは全然その間お考えにならないで、プラスアルファしたら四万四千円になるからいいだろう、私立の自宅外から通っている生徒は四万一千円プラス四万一千円で八万二千円入るから、親の送金を受けなくてもやっていけるだろうというようにお考えになったんですか。ちょっとこの額は大き過ぎるのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/84
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085・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘いただきましたように、併用されますものの基準、人数、人数は先ほどお答えしたとおりでございますが、特に家計基準につきましては、私ども総理府の家計調査によります五分位階層区分の最も低所得階層でございます第一・五分位の収入額約三百万ということで考えておるわけでございます。先生の御指摘は、そういうぐあいに併用ということで奨学金の金額をふやす道を考えておるけれども、しかし、その際、もう少しさらにきめ細かく奨学金の単価ということをいろいろ考えるような方向ということが実際の運用上必要ではないかということでの御指摘の御質問というぐあいに承ったわけでございまして、今回の制度では併用の問題、あるいは有利子貸与で医歯薬学系の増額貸与月額の問題、若干のところについて取り組んできておるわけでございますけれども、先生の御指摘のように、さらにメニュー化といいますか、単価について、より多様化をした形で奨学生個々人の要求に見合うような形ということをきめ細かく考えるべきではないかという御指摘でございまして、私ども、そういう点は、確かに今後の課題としてはそういうことも考えなきゃならぬ課題かと思っております。ただ、今回はこういう非常に大きな有利子制度を新たに導入するという、大きい制度改正をお願いをしておるわけでございまして、まずはこの有利子貸与制度というものがお認めをいただいて、それが奨学事業全体の中でどのように定着をしていくかというような事柄をまずは私どもとしては見ていくということがまず第一着手ではないかと考えたわけでございます。御指摘のように、奨学金の単価について、よりきめ細かい配慮なり対応をすべきだという御指摘はもっともなことでございまして、将来の検討課題としては、そういうことなども私どもも取り組まなければならない課題だと考えておりますが、当面のところは、ただいま御答弁したような形でまずはやらしていただきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/85
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086・粕谷照美
○粕谷照美君 今、局長が触れられました医歯薬学系の問題でありますが、医科歯科については三万円のルートと六万円のルートがあるわけですね。七・一%の利息をつける。これは無利子の貸与にプラスしてということになろうかと思いますけれども、もし高等学校からずっと奨学金を受けてきて、医学部へ入って無利子とあわせて有利子も受けた、そうして卒業して大学病院なりあるいは公立病院なりに勤めた初任給と計算をいたしまして、そしてその返済額などと考えてみますと、どういうものですか、非常に厳しい、あるいは初任給を上回る返済額になるのではないかというように考えますけど、計算できておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/86
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087・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) ただいま御指摘の私立の医歯系について、これは単価を上乗せをするわけでございまして、無利子貸与、有利子貸与の併用の場合の一番大きい金額のところについて見ますと、医歯系の自宅外の予約で申し上げますと、返還総額が千四百四十七万余りになるわけでございます。二十年の返還でございますので、返還年賦額が七十二万余になるわけでございまして、月額六万円を超える金額になるわけでございます。これは医歯系の場合の有利子、無利子併用という一番大きい金額で貸与される場合の返還のケースで申し上げればそういう金額になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/87
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088・粕谷照美
○粕谷照美君 月々六万円の返還でありますから、医科大学を出た人にとっては大したことがないというようにお考えだとしたら、これは私は大変な問題でありまして、医師といえども勤務医というのはそう楽な生活をしているわけではありませんから、大変面倒な難しい返還の状況ではないか、こういうふうに考えております。
さて、メニューの多様化を今後考えるということでありますから、私もぜひその多様化は一刻も早くみんなで討議をしていただきたいということを願いつつ、次は利子補給金について伺います。
先ほど本岡質問によりまして若干わからないところも少し明確になってきたのですが、有利子の人数はことしは二万人、来年は二万人足して四万人ですね。六十一、六十二、六十三——六十四年は完結年度で七万六千八百人だというのがわかりましたけれども、この三年間はどういうふうに計算をしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/88
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089・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) お尋ねの点は有利子貸与の貸与人員のお尋ねかと思いますが、五十九年度二万人、六十年度四万人、六十一年度五万八千人、六十二年度七万六千人、六十三年度七万六千四百人、六十四年度七万六千八百人ということで学年進行が完成するというぐあいに、ただいまのところは、そういう私ども事業規模を見込んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/89
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090・粕谷照美
○粕谷照美君 普通の考え方でいえば、有利子制度は毎年二万人ずつふえていくものだと、こう考えていたわけですけれども、三年目にしてもう短大卒の分をこれ引きます。四年目も引いていきます。六十三年からは大卒ももう四年間終わるから、これも引いていきますということで、二万人ずつふえていくわけじゃないんですね。
それとあわせまして、利子補給の問題でありますが、私の本会議における質問に対して中曽根総理は、「今回の利子の付加ということは、これは社会人になった後、自分の事業収入あるいは給与収入等で得られたその一部を利子として返還していただくということでございます。それによって利子分だけ原資が拡大されるわけでございますから、それによって後進がさらに恩沢を受ける機会が多くなる、」、こうおっしゃっております。この返還をしていくお金は財源の中の返還金の部分に入っていきますね。それから、政府貸付金があって、それから財投の資金があります。この返還金が大きくなるから大勢奨学生がとられるのだろうと普通であれば考えるわけですけれども、そういうときに財投資金を減らされたり、あるいは政府貸付金を減らされたりするのではないかという心配があります。それ今回見ましても返還金が物すごくふえている。貸付金が四十五億円も減っている、財投は六十五億円ふえたけれども。こういうことがありますので、今後のことについて、文部省は大蔵省とどういうところまで諦めてこの確信を得たのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/90
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091・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) しばしばお尋ねがありまして、私ども財政当局と、例えば有利子貸与の三%の利率の問題についてどういう形でその点を確保するのかというようなお尋ねの際に、少なくとも学年進行完成時まではそのことについて動かすようなことは考えておりませんということで申し上げておるわけでございます。先生のお尋ねは、今後奨学生の返還金充当がそれぞれふえてくれば、それに見合って仮に単価の改善なり、あるいは人員の増なり、そういうようなことがないとすればという前提に立つわけでございますけれども、政府貸付金の方の財源は、返還金充当が伸びてくることに伴いまして、先ほどもお尋ねのございましたように、利子補給金を一般会計でそれらの点を見ましても、一般会計の負担額としては今後膨らんでいくことはないということで申し上げておるわけでございます。
政府貸付金を減らすことのないようにどこまで確約をしておるかという点についてお尋ねだとすれば、これはそれぞれやはり予算としては単年度でそれぞれの事業内容というものを決めていくことになるわけでございまして、五十九年度の点で御説明を申し上げれば、確かに約四十五億の貸付金の城となりましたが、これは基本的にはいわゆるマイナスシーリングで、こういう貸付金のようないわゆるケースにつきましては五%の削減というような基本的な一般的な事柄もあったわけでございます。私どもその点については、財投の資金を六十五億入れることによりまして、全体の事業規模としては有利子、無利子貸与双方合わせまして事業費ベースで申せば前年度よりも予算を仲はしてきておるということを御説明をいたしておるわけでございます。したがって、返還金が今後ふえれば貸付金がそれに見合って削減されるといいますか、そういうものでもないわけでございますが、これは育英奨学事業全体の事業規模をどれだけどう確保していくかという今後の課題でございます。私ども従来から御説明をしておりますように、無利子貸与事業の今後の改善充実ということはもちろん制度の根幹として考えております以上は、現在、御提案申し上げておりますもの以上にその点の改善についても努力をすべきものと考えておりますけれども、貸付金の減が今後ないように、貸付金の減ということがおおよそないようにという点で財政当局と見通しが立ってるかという点でお尋ねだとすれば、その点はそれぞれこれからの予算折衝の具体的な課題ということになるわけでございます。私ども育英奨学事業の充実にはもちろん努力をしてまいらなければならないと考えておりますが、財源的には以上申し上げましたようなことを全体総合勘案いたしまして、五十九年度の事業の内容を御提案を申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/91
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092・粕谷照美
○粕谷照美君 そういたしますと、総理の答弁を私はこう素面に承りますとね、どんどん返還充当金がふえていきますと、そのことによって大勢奨学生が伸びていきますということだろうというふうに思うんですね。そうしたら、政府貸付金が減るなんということはないということが前提でなければなりません。私は総理はそういうふうにお考えになって、大変切れ者の総理ですから、御答弁いただいたんだというふうに思いますけれども、文部省はどうやって受けとめていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/92
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093・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 基本的に貸与制度ということで考えておりますものは、奨学金を後々の奨学生のために返還をされます資金を循環運用するということで、育英奨学事業の充実を図るということで考えておるわけでございまして、もちろん、私どもそういう意味で貸与を受けました者が、将来、返還金という形で、後世代の奨学生のために役に立つような形で、基本的には無利子貸与、有利子貸与制度、いずれもそういう形で日本育英会の育英奨学事業というものを考えておるわけでございます。先生の御指摘は、返還金充当が将来ふえてきて、そうすれば政府の貸付金と合わせて人数をふやすという方に、無利子貸与の方の人員の拡充というようなことに充実をさしていくように考えるべきではないかという御指摘でございまして、私どもも基本的にはそういう姿勢を踏まえて今後とも奨学事業の充実に努力をしてまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/93
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094・粕谷照美
○粕谷照美君 そういたしますと、先ほどの本岡質問にもあるように、この利子補給ですね、一年間に百五億円も補給をするとかね、そういう利子補給はきちんとやってもらわなければ今の局長答弁が実現できないと、こういうふうに思うんですね。本岡質問は、そんな利子補給するぐらいだったら、これはもう向こうの方へ返っていく金ですから、奨学生の拡大になっていかないと、だから、この補給部分を奨学生の数に回しなさいと、こういうことでありますけれども、私の言う意味おわかりですか。利子補給はきちんと奨学生の数をふやすということとは関係なしに行うということを確約をとってきた、文部省は大蔵省に折衝してきたと、そしてこの二十年後の試算も出しましたよ、十年後の試算も出しましたよと、こう私どもに説明しているというふうに受け取ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/94
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095・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 育英奨学事業の全体の事業費、これは無利子貸与、有利子貸与合わせてでございますけれども、私ども先ほど来御説明をしております現在の貸与人員、単価という前提があるわけでございますけれども、それで計算をいたしましても、全体の事業費の規模は、例えば現在の五十八年度が千百十七億でございますものが、先ほどの試算で申し上げました数字で申せば、有利子、無利子貸与全体の事業費としては千四百五十八億というような形で、これは全体の事業費そのものは、現在の人員、単価で積算をいたしましても、こういうことで伸びていくということは言えるわけでございます。もちろん、この金額の中には、利子補給額となります、先ほど御指摘の六十八年度の百五億というものはその事業費とは別の枠で計算をいたしたものでございますので、私どもとしては育英奨学事業の事業費の伸びということについても、もちろん意を用いてまいっておるつもりでございますし、さらに先ほど来御指摘のありましたような単価について、さらにきめ細かい配慮を加えることでございますとか、いろいろなことを今後の課題としてはやらなきゃならぬ課題がさらにいろいろあるわけでございます。そういうようなことについては、今後の課題として私どもも取り組んでまいりたいと思っておりますけれども、利子補給金があることによりまして、この事業費全体がそれだけ削減されるというような考え方でこの事業規模全体を見ているものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/95
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096・粕谷照美
○粕谷照美君 それで、最後に文部大臣にお伺いをいたします。
発足当時の貸付学資金の額というのを「育英会三十年史」を見てみました。当時の授業料平均年額、中等学校で五十五円、それに対して中等学校の奨学金が二百四十円なんですね。大学では百二十円の授業料に対して年額で八百円の奨学金が支給をされたということが書いてあります。そして、この大学の場合の貸与月額というのが一種類じゃなくて五十円、六十円、七十円、八十円、九十円とこの五種類に分かれているんですね。メニューが五種類あるわけです。私は、先ほどの局長がこのメニュー枠化という問題も将来は考えなければならないと、このようにおっしゃいましたけれども、世界の流れは、もはや多様な奨学金を奨学生が自分自身で選んで受けるという状況、条件を、州なり国家なり学校なりがつくってやっている時代だというふうに思うんです。早急にこの問題について検討をしていく必要があるかと思いますが、大臣の見解をお伺いして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/96
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097・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 先ほど久保さんの御質問の際にも申し上げましたが、当時の財政、国家の置かれております状況、大分違っておりますし、例えば大学に進学するというその目的、あるいはまた大学教育の中身、それも当時とは大分違っております。そういう意味で、奨学資金制度そのものについては、なお一層工夫を凝らしていくことは大変大事なことだというふうに、そのように久保さんにもお答え申し上げました。
先ほどから先生と宮地局長の御論議を承っておりまして、さすがやはり——これは決してお世辞を言うわけじゃありませんが、さすが女性だなあという感じがしまして、私自身もなるほどこんな細かなところまで実は気がつかない面で随分御指摘があったんで、なるほどなあというように考えました。そういう意味で、先生がここで御質問にまじえて御意見をいただきましたということは、またこれから奨学生制度をいろんな意味で充実させていく上において大変参考にさせていただく面が多かったというふうに政府側も受けとめております。したがいまして、今具体的にどのようにしていくかということについてはお答え申し上げられませんが、常に教育というのは多様であるべきだということが今の国民の一番求めているところでございますから、メニュー方式みたいなことも十分考えながら、奨学資金を受け取る学生生徒から見て、いろんな柔軟な方策というのはこれからつくって用意しておくべきということは、とても大事だというふうに思います。
ただ、ぜひ御理解をいただきたいのは、有利子制度というものを取り入れる初めてのことでございますので、これが今後どのような形で国民の中に定着をしていくか、それから、かなり前にも私は申し上げましたけれども、奨学金を求める学生生徒がどのようにこれを受けとめてくれるだろうか、こうしたことの推移ももう少し見ていく必要があると、こういうふうに考えますが、いずれにしましても、きめの細かい配慮を加えるということは極めて大事なことだというふうに私自身は、今、先生からの御質問を承りながら、そんな感想を持ちましたし、そのように事務当局あるいはまた育英会も十分いろんな議論をしていただきたいなと、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/97
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098・吉川春子
○吉川春子君 十二時を回りまして、昼食の時間になりまして皆さんお疲れと思いますが、きょうは文教委係員会昼食抜きということですので質問を続けきせていただきます。
最初に、育英会法、に入る前に一点だけ、奈良県が進めようとしている屠畜場の建設問題について伺いたいと思います。屠畜場を含む食肉流通センターを建設しようとしている土地に隣接して盲学校と聾学校があるわけです。文部省の「学校施設設計指針」には、「校地の環境は、教育上ふさわしいものとする。」という立場から「次のような施設の周辺には校地を選定しないことが望ましい。」といたしまして、「火葬場、と畜場、刑務所等の施設。」こういうものを挙げているわけなんです。今回の奈良県の場合にはまさにこの文部省が示しております指針で言うところの教育上ふさわしくない環境と言えるのではないかと思いますが、端的にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/98
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099・佐藤讓
○説明員(佐藤讓君) 学校施設が良好な教育環境の中に確保するということが望ましい。文部省といたしましては、この点につきましては従来から学校設置者を指導しているところでございます。ただいま先生がおっしゃられました設計指針は、新しく学校をつくる場合にその環境を守るために留意すべき事項、そういうことを述べたものでございます。今回の奈良県の場合につきましては、奈良県から事情聴取いたしましたところ、用地の選定につきまして、現在の予定地以外には適地がなかったということ、それから教育環境の維持につきましては県の責任においてとり得る最善の方策を講ずると、こういう回答を得られました。こういう事情がございましたので、文部省といたしましては、県教育委員会に対しまして食肉流通センターが設置されることによりまして教育環境が損なわれない具体的な方策、これを講ずること、それから、同時に学校関係者も含めまして地域住民の合意が十分得られるようにすること、それからさらに、児童生徒が日常の学校生活に影響を与えるようなことのないような配慮を行うこと、これらにつきまして指導を行ってきているところでございます。今後、教育委員会を通しまして教育環境を守るための努力を奈良県に求めていくと、こういうつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/99
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100・吉川春子
○吉川春子君 文部省が奈良県の教育庁の問い合わせについて、それに対して回答を出されて、その問い合わせが九月六日、回答が出されたのは九月十二耳ということですから、非常に短い期間に回答を出されました。問題なのは、この回答がお墨つきのようになって、そして屠畜場を隣に建ててもいいというふうに文部省が考えているかのようなそういう方向に持っていかれようとしていることにあると思います。今の回答を聞きますと、住民の合意ということも十分に配慮せよということを文部省は指導しているんだということでございますので、その点がはっきりいたしましたので、これを盾にとって、この計画がしゃにむに進められないように十分配慮していただきたいというふうに思うわけです。
こういう点について、これは大臣に一言お伺いしたいのですけれども、盲学校、聾学校に通っている子供さんたちというのは非常に他の感覚がすぐれていて、牛や豚やこういうものが何百頭と毎日運び込まれて、そしてその鳴き声がいやでも耳に入ってくる。あるいは、隣にはどういう施設が建つのと子供が聞けばここは屠畜場だ、一日に何百頭もの動物が殺されるということも説明しなければならない。こういうようなところに、あえて学校の敷地の横にこういうものを持ってくるということは、非常に教育的な配慮を欠くものではないかというふうに思うわけです。これはこの屠畜場を使うはずの業者もこぞって反対しているということも同時に私申し上げておきたいんですけれども、そういう点で、ぜひその地域住民の合意、そしてその教育的な配慮、そういうことを重点的に考えて、この計画に対する文部省の対処をしていただきたいと思います。文部大臣に一言その決意を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/100
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101・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 学校の立地条件が教育上ふさわしいものでなければならぬということは、これはもう文部省としても従来そういう考え方で学校設置者に対しましては指導をいたしておるところでございます。ただいまの御指摘をいただきました件につきましては、文部省としてもそのような方向で指導をいたしてきておるわけでありますが、今、部長からもお答え申し上げたように、その場所しかなかったということ、あるいはまた、恐らく県としても議会等の意見も十分踏まえての判断をいたしたものであろうというふうに考えますが、しかし、でき得ればもう少し教育環境のいいところを選んでいただけたらなという気持ちは、私もそんなふうには思っておりますので、そういう指導をぜひ、なお一層さしていきたいなというふうに考えておりますが、学校の設置者自身がそういう判断を、恐らく、県議会等を初め地域住民の意見もある程度聞いてやっておることだけは、私どももそういう報告を得ておるわけでございまして、なお一層、再度こうした意見が国会で論議されているということも、当然設置者にも承知をしてもらいたいというふうにも希望しておるわけであります。
なお、今、盲学校、聾学校と、そうした例も含めながら先生の御指摘、御意見の開陳もございましたが、学校の立地条件の確保のためには、日ごろから地域社会全体が、これらの問題に対しましては、十分認識が必要である、これはもう先生の御指摘どおりであろうというふうに考えます。私どもといたしましては、学校の立地環境の確保については、そうしたことも十分配慮して努力をしていかなければならぬ、また指導もしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/101
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102・吉川春子
○吉川春子君 もう一点だけ確認させていただきますが、学校施設設計指針の見解についての回答の中で述べられております中に、住民との合意という言葉はありませんが、先ほどのお答えによりますと、そういうことも含めて文部省としては十分配慮をするようにという意味でこの見解をお出しになったかどうか、一言で結構でございますが、その点だけ確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/102
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103・佐藤讓
○説明員(佐藤讓君) 教育委員会の担当者を呼びまして、いろいろ打ち合わせた際に、私どもから指導した内容でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/103
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104・吉川春子
○吉川春子君 住民との合意をですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/104
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105・佐藤讓
○説明員(佐藤讓君) はい、さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/105
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106・吉川春子
○吉川春子君 はい、結構です。その点についてはこれで終わります。どうもありがとうございました。
育英奨学金の問題について、特に高校生を例にとってきょうは質問をしたいと思います。
今回の法改正は、育英奨学事業の量的拡充のための法改正というふうに説明されておりますけれども、どういう点が拡充になっているか、高校生についてですね、伺いたいと思います。
具体的に申しますと、高校の進学率は九四%を超えています。奨学金を受けている高校生はこの中の何%、何人いるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/106
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107・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 育英奨学事業の今回の改正がどういう点を拡充したかという点でございますけれども、基本的には大学、短期大学のところについて有利子貸与制度をつくりまして最的拡充を図ったということでございまして、高校生のところについては、人員については従来と増減がないわけでございます。ただ、単価につきましては、従来の一般貸与、特別貸与に分かれておりました単価を一本にいたしまして、無利子貸与ということで、従来の特別貸与の単価相当額にさらに千円を、単価を上乗せをするということで、単価の面では相当内容的な改善が図られておりますけれども、人員の点での増はございません。
それからもう一つお尋ねは、貸与率ということでのお尋ねでございますか。ちょっと聞き損じましたので、恐縮でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/107
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108・吉川春子
○吉川春子君 高校生の中で奨学資金を受けているパーセントですね、それと絶対数です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/108
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109・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 高校生は、これは五十九年度の場合でございますが、全体が約四百七十万余りでございまして、貸与人員が十二万二千五十一人、これは予算積算でございますが、貸与率は二・六%ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/109
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110・吉川春子
○吉川春子君 大学生も、まだまだ奨学生の率は欧米諸国に比べて非常に少ないわけですが、それでも一一%というふうになっていますが、高校生の奨学生が非常に少ないという理由はどういうところにあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/110
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111・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 高等学校の生徒に対する奨学金の貸与実績でございますが、最近十年間の推移を見ますと、昭和四十八年度においては生徒数四百十七万五千人に対しまして奨学生数八万八千人ということで、貸与率は二・一%でございました。五十七年度では生徒数四百五十九万五千人に対し奨学生数が十一万六千人で、貸与率が二・五%ということでございまして、貸与率は若干でございますが上がってきておるわけでございます。
そこで、大学の場合に比べて非常に低いではないかという御指摘でございますけれども、これは日本育英会の育英奨学事業ということだけで考えないで、全体的に考えてみますと、高校生を対象としております育英奨学事業は、都道府県でも相当大きな規模で実施をしておると、都道府県が実施をしております数字が約六万八千人ということでございます。これは資料はやや古うございますが、五十四年度の数字でございますけれども、五十四年度の数字で申しますと、日本育英会が対象としております高等学校の生徒が約十万一千余り、それに対しまして民間団体等で、地方公共団体で約六万八千五百、公益法人が約三万九千五百弱、学校その他で実施をしておりますものを合わせますと、民間団体で十二万四千という数が高校生で対象になっておるというのが実態でございまして、むしろ、民間全体を加えますと、日本育英会が実施をしております人員よりも多いというような状況になっております。したがって、全体的に育英奨学事業全体の改善充実をどういう全体のバランスをとってやっていくかというようなことになるわけでございますが、当面、大学生の人員の増というようなことに重点が置かれてきておりまして、育英会の奨学事業としては、高校生の貸与率は、先ほど申しましたように若干は伸びておるけれども、それは大学に比べて大変まだ傘としては低い状況になっているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/111
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112・吉川春子
○吉川春子君 今御答弁を伺いますと、高校生の教育費の問題について、非常に都道府県あるいは民間などで補っていると、政府が、育英会の率が非常に低いということを、不十分ながら都道府県その他で補っているという数字を、今、局長はおっしゃったと思うんです。ですから、少なくていいんだということじゃなくて、むしろ、そういう需要はあるのにもかかわらず、文部省としてはそちらの方に手をつけていない、ここに非常に問題があると思うわけです。それで、高校生を抱えている家庭で教育費がどれぐらいかかっているかということを文部省は調査をなさっているわけですけれども、公立と私立、おのおのその一年間にかかる教育費、学校教育費と家庭教育費、この合計した金額は幾らになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/112
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113・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 文部省が実施をしております保護者が支出した教育調査の五十七年度の調査結果によりますと、保護者が一年間に支出をしました学校教育費でございますが、公立高等学校−全日制でございますが、では二十万七千八百十円、私立高等学校−全日制でございますが、では四十八万千三百七十六円というような数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/113
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114・吉川春子
○吉川春子君 非常に高い教育費の負担に国民があえいでいるということを文部省の資料が指摘しているというふうに思うわけです。大学の進学率が三五%ちょっとですから、経済的にもやや余裕のある家庭の子弟が大学には行くのかなあというふうに仮に言えても、高校の場合は、もう九割以上の子供が進学するわけですから、逆にかなり貧しい家庭の子弟も高校に入っているということは明らかです。日本育英会の調査月報によりますと、年収四百万以下の家庭で三七%の子供たちが高校に行っている、また逆に、年収二百万未満の家庭の子供も六・七%いる、こういうような低所得者層にも多額の今おっしゃったような教育費の負担が容赦なくかかっているという現実があるわけですね。
こういう中で、育英会、政府のやっております高校生に対する奨学資金が非常に少ない。枠がわずか二・七%という現実をごらんになって、大臣いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/114
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115・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 高等学校に進学をしておられる方の数、それに対しての奨学資金を受けている高校生の数、確かに御指摘のように、大学等に比べますと大変少ないということはよくわかります。しかし、先ほどから局長も答弁申し上げておりますし、先生の御意見も踏まえて、私はここで承っておりまして、高等学校の生徒さんそのものに対して奨学資金という制度そのものが、まだそう私は定着をしていないという面もあるのではないか、そんなことも少し感じとしては受けとめられるわけでございます。確かに、高校生の教育を受けていきたいという希望、そしてそれが家庭の経済的な理由によって受けられないということであるとするならば、これはたびたび議論に出てまいりますように、教育基本法、憲法のその精神から考えましても、教育の機会均等ということから考えますと、もう少し配慮を加えていかなきゃならぬということは、私どももその点についてはもう少しその辺の反省もしなきゃならぬなということはよくわかります。従来の経緯から、数字的な面では、確かにやや御指摘をいただいているというような面もあることは私自身も今承りながらそんな感じを持っております。今後とも高等学校の奨学生に対する条件、あるいは数字の拡大等々については、先生から御指摘をいただきましたように、なお一層この点については配慮を加えていくということは大事なことだというふうに私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/115
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116・吉川春子
○吉川春子君 それで、この点についてもうちょっと具体的な数字を伺いますが、高校生に対する貸与基準が通知表の五段階相対評価で三・五以上、給与所得が国公立の場合は四百四十三万以下で、私立が四百六十万以下と、こういう厳しいものになっているんですけれども、こういう基準に当てはまる人は実際高校生の何%いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/116
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117・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 高校生に対する貸与基準が当てはまる人がどのくらいいるかというお尋ねでございますが、育英会の調査によりますと、両方の基準に、学力基準、所得基準それぞれに双方の基準を満たしている者の数字というのは一九%程度というぐあいに見込まれる数字が挙がっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/117
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118・吉川春子
○吉川春子君 そうしますと、こういう基準で一九%、約二〇%に近い高校生が奨学資金を受けられる資格はあると。しかし、それで実際に受けている人はその中で二・七%ですか、さっき、ですから、九分の一ぐらいの数字になるわけで、この点からいっても非常に現実に合わないというふうに思うわけです。さらに年収が基準に合致していても、つまり非常に経済的に困難だという基準には合致していても、成績が通知表の三・五に満たないという人がどれくらいいるかおわかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/118
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119・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘の、年収が基準に達しておりましても成績が基準に達していない人は、先ほどの育英会の調査によりますと四八%余りというような数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/119
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120・吉川春子
○吉川春子君 ちょっと多いんじゃないですか、読み間違いじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/120
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121・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 失礼しました。二点以下のものが四八%余りでございまして、先ほどの一九%の差で約二九%が家計基準を満たしながら学力基準を満たしていない者の数の比率という数字になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/121
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122・吉川春子
○吉川春子君 そうしますと、実際に育英会の基準に当てはまっても借りていない人が十何%いて、さらに家計基準が当てはまるけれども成績が達しないから受けられない人が、今のお話ですと、三〇%ぐらいいるということを考えますと、非常に高校生の奨学資金を受けている数が少ない、あるいはその基準にいろいろ問題があるというふうに私は指摘せざるを得ないわけです。
今回の法改正で第一条の目的の中に「教育の機会均等に寄与する」ということを 法文上入れられたわけですね、新たに。そういうことと照らしてみても、高校生の実態を今文部省のお示しになった数字で見て、経済的な理由によって機会均等がかなり損なわれるおそれがあるのではないかと。特に経済的な理由によって高校を中途退学する生徒も多いということが調査で明らかになっています。こういうことを考えますと、こういう条文を、せっかくこの文言をお入れになったわけですから、教育の機会均等を高校生も保障するように、将来的に高校生に奨学生の枠をふやしていく必要があると思いますけれども、そういうことは御検討いただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/122
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123・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、新しい条文では「教育の機会均等」ということを一条の目的のところで特にうたったわけでございまして、それは従来からもそういう対応をしてきておりましたものを特に明確にしたという趣旨のものでございます。
御指摘の高校生の場合の学力基準の問題でございますけれども、私どもとしては、この新しい法律が成立をいたしました後の対応でございますけれども、従来の基準との継続性ということも考えまして、従来は一般貸与と同じ基準でございました中学校成績平均三・五以上というもので考えたいと思っておるわけでございます。高校生全体でこの基準に該当する者、これは年収を除くわけでございますが、学力の点だけで申しますと、この基準に該当する者が、ほぼ育英会の調査では四七%余りということで、半数近くの者が該当するというような数字になっておるわけでございます。
したがいまして、私ども、これは特別に学力の基準として高いものを求めているというぐあいには考えないわけでございますけれども、先ほど来先生の御指摘のございましたような観点から、育英奨学事業の今後の充実、改善ということはもちろん私どもとしても取り組まなければならない課題というぐあいに考えるわけでございまして、当面は御提案申し上げております事業の実施をまずやらしていただきまして、全体の育英奨学事業の今後の改善、充実という観点からは御指摘のような点も十分考えなければならない課題というぐあいに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/123
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124・吉川春子
○吉川春子君 私は、ここで強く高校生の奨学生の枠をふやしていく、そういうことを要望しておきたいと思います。そういう御答弁も今いただいたというふうに理解しております。
次に、第二十二条の第三項で、「第二種学資金」、つまり有利子返還分ですね、これは「大学その他政令で定める学校」云々としておりますけれども、この大学の中に大学院が含まれるのか、そして学校の中に高校は含まれるのかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/124
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125・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) いずれもその点は含まれていないわけでございまして、それぞれ「政令で定める学校」ということで規定をしておるわけでございます。私ども高等学校の生徒については、この有利子貸与制度を実施するということは当面は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/125
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126・吉川春子
○吉川春子君 政策的にどういうふうに考えているかというふうにお伺いしたのではなくて、この条文の解釈の問題について、もう一度重ねて伺いますが、例えば「政令で定める学校」という文言の中に——今すぐ有利子化するかどうかの問題じゃなくて、この中に高等学校が入るのかあるいはその上の大学の中に大学院が入るのかということを聞いています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/126
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127・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) その点で申せばいずれも「その他政令で定める学校」という文言の中に入るものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/127
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128・吉川春子
○吉川春子君 そうしますと、この条文によって大学院や高校生に対しても将来奨学資金を有利子化できる、そのレールが敷かれているんだというふうに理解してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/128
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129・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 規定としてはそういう規定になっております。考え方としては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/129
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130・吉川春子
○吉川春子君 当面、政策的に高校は含めないとかなんとかということはもうさんざん伺いましたけれども、今度の法改正の中で、とにかく高校も大学院も含めて有利子化の道がしかれている。しかも、これは政令事項ですから、政令で定める学校ですから、別に国会の審議を経なくても、来年度から、例えば高校生も有利子奨学生にしようという判断をすればもうできるわけですね。だから、非常にこれは重大な規定だと思うんですけれども、文部大臣に伺いますが、先ほど来局長は、もう高校の有利子化ということは考えていないんだ、法文はとにかくとして考えていないんだというふうに言っておられるわけですが、ぜひ、文部大臣の口から、大学院あるいは高校生について有利子化はあり得ない、こういう約束をひとつしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/130
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131・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 有利子貸与制度は量的な拡大ということを一つのねらい、そしてまた無利子貸与制度というものに対してのこれは補完的な役割という意味で、量が非常に拡大をするということにむしろ私どもとしてはプラス面を考えているわけでございます。したがいまして、卒業後、これを返還をしていくということの立場を考えた場合には、これは高等学校の生徒の有利子ということについてはやはりなじまないものだというふうに私自身も判断をいたしております。
もちろん、法律の、この政令上の中にすべては含まれておりますが、こうしたことが国会での御論議というものも当然受けて、行政というものはこれから進めていかなければならぬことでもあることも言うまでもないことでございますので、先ほど局長からも申し上げたとおり、私自身も高等学校の生徒については、このことについては対象とする考え方は今は持っておりません。
ただ、大学院につきましては、この中に有利子貸与制ということは、これは考えていっても差し支えないのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/131
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132・吉川春子
○吉川春子君 時間がないので、本当はここ非常に重要な問題だから、もう少し突っ込みたいのですけれども、しかし、文部大臣が変わればまた違うお考えがあるでしょうし、国会の論議の中で、秋ごろまでなんて御自身でおっしゃっておられましたからね。高校生に利子をつけないという方針が秋ごろまた変わったりすると大変なことだというふうに思うんですけれども、しかし、今度の法改正というのは、いろいろ問題はありますけれども、こうやって本当に、大学院であろうと高校であろうと、もう有利子の奨学金を政令で導入できるということをレールを敷いたという、ちょっと許しがたい、納得とてもできない、こういう規定であるということを私は指摘して、次に進みます。
次に、先ほどの御答弁のように、高校の奨学資金の枠もふやしていかなければならないというこういうこともおっしゃられたわけですけれども、この育英奨学制度の拡充を図っていくとすれば資金はどうするかということが非常に問題になるわけですね。高校だけでなくて、育英奨学資金の制度の拡充ということを考えたときに、その資金をどこから持ってくるかということが今の文部省のお立場に立つ限り非常に問題になってくる。無利子貸与分を拡充するということについては、文部省は非常に消極的であると私は国会の論議を通じて感じました。有利子として奨学生の数をふやしていく方法もとらざるを得ないとすれば、財投に加えて民間資金の導入ということも必要になってくるわけですね。民間資金の導入については、衆議院の文教委員会で文部省の答弁は、将来の検討課題という重大な答弁をしています。銀行関係者はこの点について大きな期待を抱いているのではないか、このように私は想像をいたします。
なぜかと申しますと、まず第二臨調では育英奨学金の有利子化を打ち出してきましたけれども、そのメンバーの中には市中銀行の重役などが何人か含まれています。例えば阿部喜夫第一勧業銀行の副頭取あるいは小山五郎三井銀行相談役など、こういった方々が名前を連ねています。また、有利子制の導入と、その際の資金として一般会計以外からの資金の調達ということまで報告しております文部省の育英奨学事業に関する調査研究会、このメンバーの中には岩佐元富士銀行頭取の名前も見られます。
そしてこれもまた、文部省発行の「厚生補導」百五十五号には、これからの銀行の最も有望な投資市場は教育市場であり、そこに市場を確立するために教育ローンを研究し、大々的に発売していくと銀行協会の岡田孝氏が述べておられます。
二十二条の有利子化の規定、そして三十二条の日本育英会の債券発行という規定が新たに今度設けられましたけれども、こういうものと相まって奨学金制度の根幹を大きく突き崩していくんじゃないか、民間資金の導入ということによって。
一方では口数をふやすという名の拡充ということによって奨学資金制度の根幹が本当に崩されていくんではないかという懸念を持つわけですけれども、この点についてどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/132
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133・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 政府貸付金以外の財源を、今回、有利子貸与制度を設けることによりまして、財源として考えることになったわけでございますが、私ども外部資金を導入します際に、この事業そのものが、国が実施する事業であること、そしてまた長期安定的な資金の確保が確実であること、比較的低利であることというような、いろんな条件を勘案する必要がございまして、その点では財政投融資資金を導入をする、これは調査会の報告にもそのことが述べられているわけでございますが、そういうことにいたしたわけでございますし、民間資金の導入については当面は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/133
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134・吉川春子
○吉川春子君 文部省の言われる財政投融資が、大蔵省との関係でいえば、大蔵省が非常に渋いと。いつまで三%の利率を、もし法律の改正がなっても、維持できるかどうかということもそこにかかっているわけですね。財投に頼ってやっていくということ自身が、一方の大蔵省が渋い考えを示しているわけですから、これはある意味では非常に当てにならない。そして国からのお金も出していかない。とすれば、私は民間資金の導入ということにならざるを得ないのではないかということを今指摘したわけです。
確認するためにもう一度お伺いしますが、文部省としては、銀行などの民間資金を大幅に導入して、将来的に育英奨学資金制度の拡充などというような構想はないんだと、そういう御答弁と承ってよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/134
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135・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) そのような構想は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/135
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136・吉川春子
○吉川春子君 それで、ちょっと時間の関係もありますので、もう一つ、もう一点伺っておきたいことがあります。
それは四十三条の大蔵大臣との協議事項についてです。文部大臣と大蔵大臣がいろいろと協議をして進めなければならないという規定が今度の改正案の中にすごくたくさん入っているわけですね。文部省、育英会などの行うほとんどの業務がこれに当たると言っても差し支えないほど協議事項が多いわけですけれども、なぜこういう規定を置かなければならなかったのか、その点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/136
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137・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) この点は、最近の立法例に倣いまして業務方法書の作成の認可、事業計画、予算及び資金計画の認可等の日本育英会の財務、会計に関します重要事項を対象としたものでございます。これは現行の日本育英会法が立法された時期が古かったというようなことなどもございまして、現在は規定はございませんでしたが、今回の全部改正に際しまして、最近の立法例に倣って規定の整備を行ったものでございます。もちろん、このことによって育英奨学事業を遂行します文部省の主体性が損なわれるものではないというぐあいに私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/137
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138・吉川春子
○吉川春子君 文部大臣と大蔵大臣の協議事項はすべての点にわたるわけではないんで、一定の基準でもって設けていると思うんですけれども、どういう判断でもって協議事項に当たるというものを選び出したのか、その基準をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/138
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139・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 先ほど御答弁申しましたように、基本的には、財務、会計に関する事柄が基本的なものでございます。文部省所管の、ほかの特殊法人の場合にも、通例、そういう規定があるわけでございまして、例えば、人事に関すること、例えば、理事の任命その他に関しましては、もちろん、これは協議をするというような事柄ではないわけでございます。したがって、基本的には、財務、会計に関する事柄でございまして、予算の執行に重要なかかわりがあることについては、財政当局とその点について協議を整えて対応をしていくという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/139
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140・吉川春子
○吉川春子君 そういたしますと、例えば、二十一条の二項の「育英会は、文部大臣の認可を受けて、前項に規定する業務のほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行うことができる。」、これが大蔵大臣との協議事項になっていますけれども、「第一条の目的を達成するため必要な業務」というのは、この二項で言うところの「業務」というのは具体的にはどういうものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/140
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141・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) ただいまのところは具体的な内容は考えておりませんが、そういうことを行う場合に予算を要するものがあれば、その点については、やはり協議ということが考えられるわけでございます。
具体的な事柄としてどんなことが考えられるかといえば、例えば必ずしも的確なものではございませんが、奨学生の表彰でございますとか、奨学生をいわば勇気づけるようないろんな事業というような事柄も考えられるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/141
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142・吉川春子
○吉川春子君 予算を要するものがあれば、それについて協議事項とするというふうに今おっしゃいましたけれども、法文の中にはそういうふうには書いてありませんで、とにかく一条の目的を達成するために一項の方に一、二、三、四と四つほどありますけれども、それを除いたすべての問題について大蔵大臣との協議事項になるというのが二項の規定ではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/142
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143・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) 規定としてはそういうことでございますが、内容的になぜそのことが協議事項になっているかということについて先ほど御説明をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/143
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144・吉川春子
○吉川春子君 今具体的に何にも思い浮かばないものまで、しかも、会計とか財務とか、そういうことに関係のないことまで包括して、この目的を達成するためのすべての業務ということで、大蔵大臣と協議しなければならないというふうにやることは、物すごい育英奨学事業の自主性を損なう、発想が、考え方が、そういうものではないかと思うんですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/144
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145・宮地貫一
○政府委員(宮地貫一君) その点については、先ほど来、御答弁申し上げている点に尽きるわけでございまして、私ども、こういう事柄の協議をするということ自身が文部省自体の行政の遂行について主体性が損なわれるというようなことになるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/145
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146・吉川春子
○吉川春子君 そういうふうに今、局長がおっしゃっても、法文上、「一条の目的を達成するため必要な業務」、これから、どういうことが出てくるかわからないとおっしゃるけれども、そういうものも含めて、特別に財務とか会計とかの留保つきもなしに大蔵大臣との協議事項、文部大臣との協議事項ということになるわけですから、このことは非常にやっぱり客観的に、奨学事業に対する文部省の自主性が損なわれ、大蔵省がどんどん口を出していくという形になると思うんですよね。局長がいかに今の時点で、私はこう思うというふうに御答弁なさっても、法律の条文というものはひとり歩きするものですから、私はそこを指摘しておきたいというふうに思うわけです。
それで、最後に文部大臣のお考えを伺いたいんですが、今のことで、今回の法改正によって育英奨学事業というのはかなり大蔵省の干渉を受けることは必至だというふうに思うわけです。
有利子制の導入にいたしましても、もっぱら経済効率の観点から見ようとする第二臨調路線のもちろん方針そのものだと。文部省は独自に自分たちで検討して、独自に奨学金に利子をつけるということを導入したという答弁を繰り返しておっしゃっておられますけれども、しかし、もうこれは明らかに第二臨調のその路線の中に含まれているわけですね。私は、この育英奨学金に利子をつけるという今度の象徴的なこと、そして、これだけ大蔵大臣との協議事項もたくさん法文の中に書き込まれているということで、文部省として本当に独自性を持ってこの事業が行えなくなるのではないかという懸念を持っているわけです。そして文部大臣としては、大蔵省に振り回されずに、育英奨学事業について独自性を持って、教育的な観点から、教育の機会均等を保障するという観点から今後ともやっていただきたいと思うんですけれども、その点について決意を聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/146
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147・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 今、先生から御指摘をいただきましたが、そうした御指摘も、もちろん私どもとして大事に受けとめていかなきゃなりませんが、たびたび申し上げておりますように、教育の機会均等、そしてまた量的な拡大、できる限りこの恩恵を多くの方々に広げてあげたい、こういう気持ちから、この法律の改正をお願いしておるわけでございまして、教育基本法や憲法の精神を生かして、教育的見地に立ってこの制度を運用していく、展開をしていくということはもちろんのことでございます。
局長からも答弁申し上げましたけれども、大蔵大臣に振り回されるのではないかということでございますが、やはり一般会計を資金として運用しております以上は、何も私どもこの育英会だけではございません、最近の立法例はすべてそういう方向をとっておるわけでございます。
そういう意味で、これからも主体性をしっかり、文部省としては教育の施策であるということだけは明確に私どももこのことは銘記しながら、本来の趣旨に沿って実行でき得るように、また運営でき得るように十分に配慮していきたい、このように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/147
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148・吉川春子
○吉川春子君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/148
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149・美濃部亮吉
○美濃部亮吉君 いつものとおり最後になりまして、あと三十分でございますが、もうしばらく御辛抱をお願い申し上げます。
前回の委員会を通じまして、憲法及び教育基本法に基づきまして、民主主義国家である日本における教育というものについて、すべての国民は能力がある限り教育を受ける権利を持っており、国は修学困難な者に対して修学の方法を講じなければならないということ、このことは、教育というものは憲法の二十五条にあるように健康にして文化的な生活の最低限度の条件であるということ、そういう点についてはほぼ御同意を得たというふうに思いますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/149
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150・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/150
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151・美濃部亮吉
○美濃部亮吉君 それではその前提を踏まえまして先に論議を進めたいと思いますけれども、今申しましたことは、もう一回簡単に申しますと、教育というものは国がなすべき義務を負い、国民が要求をする権利を持っている、そういうことであるというふうに思います。これに対して、今の奨学資金に有利子制度を導入するということ、これは非常に重大な問題を含んでおるというふうに思います。この有利子制度を導入するということは、教育資金、つまり奨学資金の給与について受益者負担の考え方を導入するということであると思います。それでございますから、国がなすべき義務を負い、国民が要求する権利を持っているそういう仕事について受益者負担という考え方を私は導入すべきではないのではないだろうかと思うのです。
そういう点においては、例えば道路であるとか公園であるとか、橋梁であるとか港湾であるとか、自然を保護する仕事であるとか、そういうふうに国民の健康にして文化的な最低限度の条件を国が保障してやる、今言ったような仕事について、受益者負担という考え方は導入すべきではないと同じように、教育資金である奨学資金について受益者負担という考え方を導入する、言いかえれば有利子制度を導入するということは、私は憲法違反とまではいかないにしても、日本の憲法及び教育基本法等が規定をした民主主義的教育のあり方、そういうものには違反する考え方ではないだろうか、そう思うのですが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/151
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152・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 私どもといたしましては、教育は国政の基本であるというそういう立場から、できる限り学生に対しての教育の機会を与えて差し上げる、こういうスタンスが必要だと思っております。したがいまして、高等教育の機会均等を確保するためには、いろいろと国会でも御論議をいただいておりますが、私学助成、あるいはまたただいまお願いをしております育英奨学事業、こうしたことの充実を図っているわけでございます。
今回の改善におきましても、もうたびたび局長からも私からも申し上げておりましてお耳ざわりかもしれませんけれども、あくまでも貸与月額の改定など質的な改善に重点も置く、同時にまた、財投資金を、こうした財政状況でありますので、量の拡大をして、できる限りその機会をたくさんつくって差し上げたい、こういうことから低利の制度を設けたということでございまして、先生がお話をなさいました、いわゆる受益者負担という、そういう立場で、この制度をお願いをいたしておるものではございません。あくまでも教育基本法そしてまた憲法の趣旨を大事にしながら、教育の機会均等、そして量的な拡大を奨学資金としてぜひ求めたい、こういうことから、この制度をお願いをしたわけでございまして、決して先生から御注意をいただきますように受益者負担という、そういう立場で、この考え方を取り入れたものではないということを明確に申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/152
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153・美濃部亮吉
○美濃部亮吉君 そうはおっしゃいますけれども、奨学資金に利子を支払うということは、私は、教育を受けることが国の義務であって国民の権利であるとするならば、国が貸与ではなくして給付、つまり返さないでもいい、つまり、これだけお金を上げるから教育を受けてくれと、そういう貸与でなくて給付である、それを中心にしている。それは民主主義的な教育というものを考えて当然のことだと思うんですね。それでありますから、私は民主主義的な教育から考えるならば、給付であるべきであると、貸与は貸与と、返すことなんか考えないで、とにかく教育の資金を与えるんだというだけのことで資金を給付すべきである。しかも、それを今度は利子を付すると、利子というのを付するとするならば、ほかの稼ぎから、ほかで、卒業してから自分で仕事をして、その自分の仕事から利子を支払うんですから、これは当然受益者負担になると、それですから、給付であるべきであるのに奨学資金がほとんど貸与を中心としている、給付は一つもない、貸与であるということが第一に民主主義的な教育という見地からは外れているし、ましてや利子を支払えということはなお一層、つまり民主主義的な教育という観点からの奨学資金とは外れているんじゃないだろうかと考えますけれども、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/153
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154・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 義務教育については国がその経費を負担をしていくこと、これは義務教育の公がかかわる精神としては大事なところでございますから、これは国としての責務というものは伴ってくると思います。しかし、高等学校以上の学生及び生徒に対しては、私はこれはまた義務教育とは観点が違うというふうに思うんです。これは論議は、いろいろな角度からとらえてみますと、必ずしも明確に分けるべきではないと思いますけれども、法律的な義務、責任というように先生が御指摘になりますので、そういう立場からいいますと、大別して義務教育とそうでないものとの分け方というのはあってもいいと思うんです。育英奨学事業というのは、これは国の責務として実施しておるわけでございまして、したがいまして、給与制をとることが当然の義務だと、絶対的な義務だというふうには私どもは考えてはおりません。しかし、こうした育英奨学事業の形態というのは有利子より無利子、無利子貸与よりも給付制がいいということは、これはもう当然私どももそういうふうに理解をいたしておりますが、我が国におきますこの日本育英会は、この制度を取り入れましたその当時も、ある程度の意見はございましたけれども、その当時としてはこの貸与制度というやり方を採用をしてきたという、そういう歴史的経過というものがあるわけでございます。しかし、これについては、確かに先生のような見方もいろいろございますけれども、やはり奨学生が返還の義務を果たして、そして後進育成の資金としての返還金を準用させる、運用させるという意味では事業規模の拡大になるというメリットもあるわけでございますから、一概に、そういう形の中で、これは民主主義的教育に反するのではないかというお考えは、お考えとしてよくわかるんですが、必ずしも、私どもは、これは民主主義的教育に反するというふうに、私はそういう解釈はとり得ないじゃないかというふうにも考えております。ただ、当然、今後日本の文明度の成熟というものも考えてまいりますと、まだ育英奨学制度というものを採用して、端的に言えばまだ六十余年ということになるのかもしれませんが、そういうふうに考えますと、今後とも、いろんな制度としては、先ほどから多くの皆さんからも御意見がありますように、まだまだ充実をさしていくという方策はいろいろきめ細かに考えていかなきゃならぬというふうに考えております。ただ、給付制はとっております、給与制はとっておりませんけれども、一定限教育や研究職に従事した場合という場合には返還を免除するというふうなこともございまして、いささか、若干ということにもなりますけれども、給与制にかわる役割を果たしている面もあるわけでございますので、どうぞその辺でも御理解をいただきたいというふうに思います。先生のお考えは一つのまた御意見であるということは私どもも十分受けとめていかなければならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/154
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155・美濃部亮吉
○美濃部亮吉君 私のは意見ではないんで、憲法及び教育基本法に基づく限り当然そういう帰結になるのではないだろうかという、私の意見はちっともまじっていない、客観的な理論的な結論としてそう言っているわけなんでございます。それで、今、義務教育のことをお話しになりましたけれども、義務教育は若干違うんであって、人間として備えていなければならない教育、その程度、その程度までは国民全般が必ず備えていなければならないという教育が義務教育であって、それ以上の、つまり義務教育以外の教育程度で十分であると考える人、そうしてまた経済的に能力、憲法でも言っているように能力等を考えて、それ以上の教育を受けることを希望する人、そうして能力のある人、これは国民全体だれもがそうでなくって結構なんですから、そういう人に対しては奨学の機会を国は与えよ。それで、奨学資金を具体的には与えて、そうして就学させるべきである、そう僕は憲法及び教育基本法は言っているのではないだろうか、そう思うんですけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/155
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156・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 先ほども申し上げましたように、まず先生のは意見だというふうに私は申し上げておるのではなくて、そうした御意見であるということも私は踏まえますが、私どもといたしましてはこの制度改正につきましては、先生がおっしゃるように民主主義教育というものに対して反しているというふうに私どもは考えておりませんということを申し上げたわけですし、しかし、先生の御意見をそのまま私は否定するものではございません。判断として、私どもはそういう判断をいたしておる、こういうふうに申し上げたわけで、御意見としては十分私どもは拝聴をさしていただくというふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/156
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157・美濃部亮吉
○美濃部亮吉君 これ以上幾ら議論をしても結論には到達しないからもうやめますけれども、今も申しましたように、これは私の意見じゃないんですね。憲法と教育基本法に基づいて、その論理的な当然の結論としてこういうことになると言っているんで、もし、それに反論をなさりますならば、憲法と教育基本法に言うところからは、そういうふうになるのではないということを論証していただかなければ、私の説は間違いであると、意見は間違いであると、意見じゃないんですけれども、言っていることは間違いであるということを論証することにはならないと思うんです。
私は、少し話は別ですけれども、知事のときに水道料金について非常に悩んだんです。水道料金の値上げをしなければならないという時期になりまして、私は、健康にして文化的な生活の最低限度というものは、やはり水が、一定の水の使用というものがあると、それでありますから、この憲法の状況に従う限り、水道料金は最低限度の生活を営むのに必要である限りにおいては無料にすべきである。それは公園であるとか、道路であるとか、そういうものを無料で使うというのと同じことではないだろうかということを考えて、そうすべきであると思ったんですけれども、いろいろな事情があって、事情といいますか財政上の事情があってできなかったわけでございます。私は今の教育も同じようなことであって、大臣が私の言う論理が間違っていない、確かにそうだと、そうであるけれども今はできないんだ、財政の事情その他があってできないんだというのであるならば私は納得をいたしますけれども、それ、これ以上私は申しません。それでございますから、私はこの教育を受けるということは国民の能力がある限りにおいて権利であるし、そういう機会を与えるのは国の義務であるということを前提といたしまして、就学を希望する人たちその全部に対して奨学資金を与えるということにすべきであるし、それで奨学資金でもって十分に生活できる、生活の最低限度までも保障する、そうして、もちろん給与であって、貸与ではなく、ましてや利子を付するなんというのはとんでもないことだ。そういうふうに奨学資金をなすべきであるのが本当の民主主義的な教育であるというふうに考えまして、そう申しますんですけれども、それが私の意見であって、大臣はそうは考えないとおっしゃれば、これ以上議論をしてもしようがございませんから、きょうは終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/157
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158・長谷川信
○委員長(長谷川信君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
午後一時二十三分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115077X01619840724/158
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