1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月十日(木曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
四月七日
辞任 補欠選任
吉村 真事君 岩動 道行君
四月十一日
辞任 補欠選任
橋本 敦君 市川 正一君
四月十二日
辞任 補欠選任
市川 正一君 橋本 敦君
四月十七日
辞任 補欠選任
海江田鶴造君 福岡日出麿君
四月十八日
辞任 補欠選任
福岡日出麿君 海江田鶴造君
五月九日
辞任 補欠選任
園田 清充君 藤田 栄君
徳永 正利君 吉村 真事君
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出席者は左のとおり。
委員長 大川 清幸君
理 事
前田 勲男君
山田 譲君
飯田 忠雄君
委 員
海江田鶴造君
名尾 良孝君
藤田 栄君
吉村 真事君
寺田 熊雄君
橋本 敦君
柳澤 錬造君
中山 千夏君
発 議 者 飯田 忠雄君
国務大臣
法 務 大 臣 住 栄作君
政府委員
内閣法制局第二
部長 関 守君
法務大臣官房長 根岸 重治君
法務省民事局長 枇杷田泰助君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
説明員
外務大臣官房領
事移住部領事第
二課長 池田 勝也君
外務省条約局法
規課長 河村 武和君
外務省国際連合
局政治課長 佐藤 俊一君
自治省行政局選
挙部選挙課長 小笠原臣也君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○集団代表訴訟に関する法律案(飯田忠雄君外一
名発議)
○国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/0
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001・大川清幸
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る四月七日、吉村真事君が委員を辞任され、その補欠として岩動道行君が選任されました。
また、昨九日、園田清充君及び徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として藤田栄君及び吉村真事君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/1
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002・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案の審査のため、次回の委員会に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/2
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003・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。
なお、その日時及び人選等につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/3
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004・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/4
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005・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 次に、集団代表訴訟に関する法律案を議題といたします。
発議者飯田忠雄君から趣旨説明を聴取いたします。飯田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/5
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006・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ただいま議題となりました集団代表訴訟に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
現行の民事訴訟制度では、原則的には一対一の対等な当事者間の紛争を解決することを念頭に置く手続を定めておるのにすぎません。このため、現行制度のもとでは一対多数、すなわち企業対多数の被害を受けた消費者の民事訴訟は極めて困難な状況に置かれております。法制度が社会の進展に即応していないのが実情であります。
例えば、欠陥商品によりまして被害を受けた国民の利益保護を考えてみましても、被害者各人の損害額は少額であることが多いのでありますが、集団としての損害額は巨額に上ることが多いのが常でございます。それゆえ社会的経済的公正を確保するという観点からいたしまして、このような被害者集団の巨額な損害の賠償を企業に対して請求することができる訴訟制度、これを確立することが望まれるのであります。
また、企業と個々の被害者の間には訴訟費用の負担能力や訴訟遂行能力の不均衡という問題がございます。それにもかかわらず、現行の民事訴訟制度ではこれを対等な当事者として取り扱っておりますため、現実問題として訴訟による権利救済は極めて厳しいものになっております。こうした現実を考えてみますときに、個々では力のない被害者が強力な企業を相手に実質的に対等な当事者としてみずからの権利を行使できる訴訟制度の確立を要望する声が上がっておるのでございます。
さらに、企業の違法行為による多数の被害者の損害は共通の原因によって発生をし、またその損害額も一般的には定型化する傾向がございます。それゆえ、訴訟経済の観点からいたしますれば、被害者各人の訴えの当否を個別的に審理することは無用に近いことであります。また、企業の違法行為によって発生した損害賠償をめぐる紛争は、事実上は企業と多数の被害者との紛争と見るべきものでありますので、その紛争の解決は被害者団体との間で包括的に解決すべきものと思われます。
以上の点から、非訟事件の裁判による訴訟信託の設定方法を採用することにより、消費者の代表者が消費者集団全員のため企業に対して提起する損害賠償の一括的請求を目的とする訴訟、すなわち集団代表訴訟を可能にするためにこの法律案を
提出する次第でございます。
次に、この法律案の内容である集団代表訴訟制度の仕組みにつきまして、その概要を御説明申し上げます。
まず第一に、申し立てに係る共同の利益を有する著しく多数の者の少額債権につきまして集団代表訴訟による紛争の解決が適当であると認められます場合に、非訟事件管轄裁判所により除外申し出をしない限り債権を一括して訴訟の目的とするための信託の設定ができるようにいたしております。
すなわち、集団代表訴訟を遂行するため、除外申し出をしなかった少額債権者である委託者から少額債権者の代表者である受託者へ当該債権が信託的譲渡されたものとする信託でございます。なお、少額債権者の権利を保護するため、信託設定については公示するほか、非訟事件裁判所が代表者たる受託者を監督することにいたしております。
第二に、集団代表訴訟におきましては、職権証拠調べを採用するほか、重要な訴訟行為につきましては非訟事件裁判所の許可を要するものといたしております。なお、欠陥商品、やみカルテルによる価格引き上げ等に係る少額債権者全員の損害賠償の算定につきましては推定規定を設けております。
第三に、各少額債権省は、受益者として、代表者である受託者に対し勝訴判決の最初の公示の日の翌日から二年以内に通知することにより、その債権の満足を得ることができるものといたしております。なお、請求しない債権者の取り分は国庫に帰属することにいたしております。
第四に、集団代表訴訟の遂行等に関する必要な費用につきましては、国庫による裁判費用等の立てかえ、支払猶予の制度を置くほか、その他の事務費用を含め集団代表訴訟により得た財産をもって充てることにいたしております。なお、敗訴等の場合も、最終的に受託省の負担となることのないように交付金を交付することといたしております。
以上がこの法律案の提案理由及び主要な内容でございます。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/6
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007・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/7
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008・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。住法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/8
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009・住栄作
○国務大臣(住栄作君) 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説則いたします。
この法律案は、最近における渉外婚姻の増加等の実情にかんがみ、及び昭和五十五年七月十七日に我が国が署名した女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に加えるため、国籍法の一部を改正するとともに、これに関連して、戸籍法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は次のとおりであります。
まず、国籍法につきましては、第一に、現行法におきましては、子は原則として父が日本人であるときに出生により日本国籍を取得するものとされておりますが、これを改め、子は、父または母が日本国民であるときは、出生により日本国籍を取得するものとする父母両系血統主義を採用することとしております。
第二に、準正により日本国民の嫡出子たる身分を取得した外国人、日本の国籍を留保しなかったことにより日本の国籍を失った者等の国籍の取得を容易にするため、所定の要件を満たす者は、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができるものとする届け出による国籍の取得の制度を新設することとしております。
第三に、帰化の条件の整備を図るため、日本国民の配偶者である外国人の帰化条件については、その者が夫であるか妻であるかにかかわらず、同一の条件を定めるものとするとともに、生計条件、重国籍防止条件等についても、これを緩和することとしております。
第四に、父母両系主義の採用に伴い増加する重国籍の発生の防止及びその解消を図るため、外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失うものとし、現行法の国籍の留保制度を国外で出生した血統による重国籍者にも適用するものとするとともに、重国籍者は成年に達した後二年以内にいずれかの国籍を選択しなければならないものとする国籍の選択の制度を新設することといたしております。
第五に、経過措置として、改正法施行後三年間は、改正法施行前に日本国民である母から出生した子及びその者の子は、所定の要件を満たすときは、法務大臣に届け出ることにより日本の国籍を取得し得ることとしております。
次に、戸籍法につきましては、第一に、国籍法の改正により国籍の選択制度が新設されることに伴い、日本の国籍の選択の宣言の届け出及び外国の国籍を喪失した場合の届け出等に関し所要の規定を設けることとしております。
第二に、容易に日本の国籍の留保の届け出をすることができることとするため、その届け出の期間を伸長するとともに、父または母以外の法定代理人も留保届をすることができることとしております。
第三に、現行法上は、外国人と婚姻をした場合には、日本人間の婚姻の場合と異なり、新戸籍を編製しないものとされておりますが、これを日本人間の婚姻の場合と同様に、婚姻によって新戸籍を編製することといたしております。
第四に、現行法上、外国人と婚姻した者が外国人である配偶者の称している氏を称しようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、その旨の届け出をしなければならないこととされておりますが、これを改め、婚姻の日から一定期間内は家庭裁判所の許可を得ずにその氏の変更の届け出をすることができることとするとともに、氏の変更をした者が離婚をした場合には、離婚の日から一定期間内は、家庭裁判所の許可を得ずにその氏の変更の届け出をすることができることとしております。
また、戸籍の筆頭者及びその配偶者以外の者で、父または母を外国人とするものは、現行法上、その氏を変更することが認められておりませんが、これを改め、家庭裁判所の許可を得れば、その氏を変更する旨の届け出をすることができることとしております。
以上が国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/9
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010・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/10
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011・寺田熊雄
○寺田熊雄君 国籍法の改正案、それから戸籍法の改正案、この両法案につきましては、多年にわたりまして事務当局が大変な御努力をなさったことをよく承知しておりますので、その御努力に対して敬意を表するのにやぶさかではないのであります。ただ、御承知のように、国籍法は憲法に附属する重要な法律でありますし、いずれも世界人権宣言、各種の条約とも関連をいたします。それゆえ、その法案の審査は私どもとしましてはできるだけ心残りがないような、また後日この法案の審議の跡をたどる学者、実務家等があります場合に、同会の審議が充実したものであるという印象を与えることができますように、できるだけ十分な審議をいたすべきものであるというふうな考えを持っております。で、立案に当たりましては事務当局におかれて各国の法制を十分検討なさったことと思うのであります。これは私どもが従来こ
の委員会で民事局長にいろいろとお尋ねをいたしましたときに、立案に要する期間が相当必要である、それは各国の法制を十分検討する必要があるというような御答弁があったのであります。
そこで、第一にお伺いをいたしますけれども、今回の法改正に当たりまして、私ども、あるいはまた前の奥野法務大臣と大変事務当局にこの法案の提出を急がせた経緯があります。私どもが予想しましたよりはやや早くこの法案の提出があったように思うのでありますが、立案をなさった事務当局におかれては、この期間に諸外国の法制を十分に検討し尽くすことができたかどうか、まずその点についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/11
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012・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どももなるべく諸外国の法制を十分に検討いたしたいという観点から、まず国籍法につきましては世界のほとんどすべての国の条文は入手をいたしました。ただ、条文を入手いたしましても、実際の運用がどうなるかという問題が残りますので、我が国と関係の深い諸国につきましては、その運用の実際についてもこちらの疑問と思われる点を照会して確かめるということもいたしました。それからまた、その運用にも絡むわけでございますけれども、民事局の職員を外国に派遣をいたしまして、在留邦人などがその外国の国籍法との絡みなどでどういう問題点を持っておるかというようなことも調査をいたした次第でございます。
なお、改正法の立案に当たりまして、御承知のとおり昨年二月に中間試案というものをつくって発表いたしたわけでございますが、我が国がその中間試案のような法制をとった場合にそれを諸外国の方でどう受けとめるかという問題もございます。そういう点につきましても、関係の深い国々については外務省を通じて照会をするというふうな方法をとった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/12
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013・寺田熊雄
○寺田熊雄君 各国の法制はほとんど入手し、また特に我が国と関係の深い諸国の法制の運用の状況についてもこれを調査したという御答弁であったように思うのです。
次に、この法案の改正につきましては随分各方面からのいろいろな要望なり、あるいは要綱に対する批判なり、従来の制度の欠陥に対する指摘なり、あるいは従来の制度によって被害をこうむった人々の訴訟の提起なり、そういう問題が多々あったように思うのであります。やはり法改正に当たりましては十分各方面の関係者の意見を聞くべきであったと考えるのであります。法制審議会はこういう関係の権威者を集めておりますので、その法制審議会の審議が十分であればそれなりの要請を満たし得るとは考えるのでありますけれども、しかしまた、しばしば法制審議会の答申が日弁連の意見と食い違うというようなことも他の法案についてはあった場合もあるのであります。また国際結婚について、現実にぶつかっていろいろな従来の制度からする被害を受けておる人々というようなものもあったように思うのでありますが、この法案の審議に当たって、当局におかれてはどの程度日弁連を初め各方面の意見を聞いて立案をなさったのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/13
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014・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法制覇議会自体におきましても各界の意見が反映するようにということで、委員の人選につきましては広くそういう意見が聞けるような、そういう方をお願いいたしたわけでございますが、実際の審議が始まりまして後、先ほども申し上げましたけれども、昨年二月に中間試案というものを一応取りまとめまして、それをたたき台ということで各界の御意見をこちらから積極的にお伺いをしたわけでございます。
そのお伺いをした対象といたしますと、裁判所、弁護士会、それから法学部の置かれております大学等はもとよりのことでございますが、そのほかにもただいまお話がございましたようないろいろな市民団体等で国籍についての関心をお持ちのグループがございます。そういうところにも御意見を伺いました。それで各界から積極的ないろいろな御意見が得られたわけでございますが、なおそのほか法制審議会の国籍法部会の審議の途中で、東京と大飯で、参考人と申しますか、そういう問題に関心の深い方においでをいただきまして、それは合計二十八人の方でございますけれども、そういう方々の御意見を直接籍議会の委員の方々が話を聞かれる、また質問もするというふうなことをして、広く意見をお伺いするという方法をとった次第でございます。
特に日弁連につきましては、日弁連も非常にこの問題につきまして積極的に御研究されまして、先ほど申しました中間試案に対する意見はもとよりのことでございますが、その後の審議の経過、これは法制審議会に日弁連の代表の方も入っておられますので、そういう審議の進行に合わせまして、そのときどきの意見を何回も書面にまとめて御提出をいただいたわけでございます。私どもは、そういう意見はもう必ず審議会の方にも出しまして、そして十分に検討して、私どもとしますとなるべく多くの意見が反映できるようにということで審議会が進められたというふうに承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/14
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015・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まず、この法案の審議を始めるに当たりまして私どもとしてはっきりとしておきたいのは国籍の概念であります。国民は国籍によって国家との間の紐帯を生じます。そしてさまざまな権利義務を国家に対して持ちます。この国籍の概念について事務当局としてはどういうふうにこれを把握していらっしゃるか、まずこれをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/15
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016・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国籍という概念は、個人が特定国家の構成員である資格をいうというふうに一般に定義されております。そういう特定の国家に対する構成員としての法律上の地位をいう概念だろうと思います。また、別の側面から申しますと、国とそれから個人とを結びつける法律上の紐帯と申しますか、ひも、帯というような、そういう関係を示す言葉だというふうにも説明されておりますけれども、要するに、最初に申し上げましたように国籍というのは個人を特定の国家の構成員とする資格、そういうものをいうのだというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/16
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017・寺田熊雄
○寺田熊雄君 大体私どももそのように考えておるのでありますが、この国籍を持つ権利が国民にあるのかどうか。これは憲法第十条に直接関連を持つのでありますが、世界人権宣言、あるいはさまざまな国際条約、あるいは各国の立法等を参照して決定することが適当であると考えておるのでありますが、果たして事務当局はこの国籍を持つ権利が国民にあるとお考えかどうか、その点をまずお伺いしたいと思うのです。
それから、次いで外国の法制中にはしばしば女子も男子と同様に国籍についての権利を持つ、さまざまな権利を持つというような規定を散見するのでありますが、外国の法制はこれをどういうふうに考えておるのか、そういう点について御説明をいただけば大変結構だと思いますが、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/17
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018・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国籍を持つ権利といいますのは、現にその国の国民であるという者、すなわち先ほどの概念で申し上げますと、国家の構成員であるという地位に既に立っている者を、その構成員でなくなすということにつきましては、ほしいままに自分の持っている国籍を奪われないという意味では一つのはっきりした権利といえようかと思います。しかし、これからどこかの国の国籍を持つ、取得するという関係で申しますと、そこは権利という概念はそもそも国籍についてはないのではないかという気がいたします。国際法で認められておりますところは、御承知のとおり、どのような人について国籍を付与するかということは各国の主権の問題だというふうにされておるわけでございます。国籍を有する権利ということになりますと、ある人間がどこかの国の国籍を取得させるという、そういう権利という意味になるわけでございますが、そういう意味から申しますと、ただいまおっしゃいましたように、国籍を付与するというのは各国の主権の問題であるということになりますと、そういう意味での権利というものは、これは国籍の性質からいってない
のではないかという気がいたします。
諸外国でもいろいろ我が国と同じような父母両系血統主義に改めるとかというふうな改正が行われておりますが、その場合も権利だから与えるという観念ではなくて、むしろ自国の国民を決定する要素として、父系血統主義の場合には父親が自国民であるということを基準にするということではむしろ適当ではないではないか、むしろ母親が自国民であるという場合にも国籍を与えるということが適当であるという判断から考えられておるようでございます。それからまた生地主義の国におきましては、自国で生まれたという者は原則として自分の国の国籍を与えるのが適当だという、いわば政策判断の上に立ってそういう原則をとっているだけでございまして、ある特定の人間が、どこかで生まれた子供がどこかの国の国籍を取得するという、そういう権利というふうな観念ではどこの国でもとらえられていないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/18
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019・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは局長は言うまでもなく御存じのことと思うけれども、世界人権宣言、インターナショナル ビル オブ ヒューマン ライツ、この十五条に、すべての人は国籍を持つ権利がある、エブリワン ハズ ザ ライト ツー ア ナショナリティーという規定がありますね。これはあなたも御存じだと思うのです。これはどういうふうにあなた理解していらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/19
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020・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは各国の国籍法はまちまちでございますために、そのはざまに入りまして、どこの国の国籍も取得するということなしに終わってしまう人が出てくる可能性を持っているわけでございます。そういうような人は、これはどこの国の保護も受けられないという関係に立つわけでございますので、それは人間として見た場合にそういうようなことは気の毒ではないか、ですからそういう人たちについてどこかの国籍を与えるようにしようではないかという意味での宣言でございまして、本質的な意味から申しますと、宣言でございまして、これは別に直接に特定の国に対する拘束力を持つわけではございませんので、いわばそういう谷間が国籍法の抵触によって出てこないように各国が努力しなさいというような一種の勧告的な規定であろう、このことから直接にある人が国籍を取得する権利を持つという効果が出てくるものとは考えてはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/20
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021・寺田熊雄
○寺田熊雄君 あなたの最初の御説明の中に、国籍をほしいままに奪われないという点については権利と見られる節がないでもないというような御説明がありましたね。今おっしゃった点、その点はこの世界人権宣言の十五条の第二項、ノー ワン シャル ビー アービトラリリー ディプライブド オブ ヒズ ナショナリティー ノア ディナイド ザ ライト ツー チェインジ ヒズ ナショナリティー、何人も懇意的に国籍を奪われることはない、また恣意的に国籍を変更する権利を否定されることはない、この規定、これはあなたのおっしゃるように確かに恣意的に国籍を奪われることはない、それから国籍を変更する権利も否定せられない、これは日本の憲法の国籍離脱の規定とも関連をするわけでありますけれども、我が国の現行法上の解釈でも、国籍を恣意的に奪われることはないという点はやっぱり同様でしょうね、現行法の解釈でも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/21
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022・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 我が国の国籍法におきましては、日本の国籍を持っておる者について、本人の意思なしに日本の国籍を失わせるという規定は設けておりません。したがいまして、一たん日本国民である以上は、これはほしいままにといいますか、恣意的に奪うということはないのが原則だといいますか、そういうことが規定を置いていないところから出てくるのではないかという考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/22
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023・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、諸外国の法制については、こういうような何か世界人権宣言の十五条のような規定をその法律の中に挿入した、あるいはそれを生かしたような立法例がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/23
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024・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点につきましてはっきりしたことをうたっておるという法制は必ずしも私承知いたしておらないのでありますが、我が国でも今度の改正法の中に、日本で生まれていながら国籍を取得しない、どこの国籍も取得しないという人が時に出てくる可能性があるわけです。そういう方については、これは日本にずっと永住されるというふうなことがうかがわれるような場合には、簡易な方法で帰化をするとかということによってその穴を埋めるといいますか、そういうふうなことを図りたいということを措置いたしておるわけでございます。
それから国籍の変更の関係につきましては、各国の法制では、むしろ何といいますか、外国の国籍を取得することについての制限、逆に申しますと、自国の国籍の離脱を制限するというふうなことがありまして、この辺については各国よりも我が国の方が、かなり何といいますか、この宣言の趣旨に合ったような制度が現行法でもできておりますし、また改正法案の中でもそういうような方向が含まれておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/24
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025・寺田熊雄
○寺田熊雄君 国内法の問題は私も後でまたいろいろお伺いしようと思ったのですが、一九六一年八月三十日に国連総会で採択され、七五年十二月十三日に発効したという、これはこの翻訳では無国籍者の削減に関する条約とあるが、削減というのはちょっと適当ではない。リダクションという言葉を使っていますから、減少させることについての条約という意味でしょうが、この第九条に「締約国は、いかなる個人、又は集団からも、人種、種族、宗教、若しくは政治上の理由に基づき、その国籍をはく奪してはならない。」という規定がありますね。これは剥奪を禁止している。しかもそれは人種等の理由による剥奪をしてはいかぬという禁止を明らかにした規定のようであります。したがって、これは先ほど局長の言われた、また世界人権宣言の十五条二項の宣言を条約の中に具体化したという規定だろうと思うのですが、この条約は日本はこれは批准しておりますか、あるいは加入しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/25
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026・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの条約につきましては日本は批准をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/26
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027・寺田熊雄
○寺田熊雄君 加入はしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/27
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028・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 署名もたしかしてなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/28
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029・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは何らかこれを署名する、つまり加入してはいけない、差しさわりがあるというような規定がこの条約の中にあるのでしょうか。それとも何かほかの意味で今までこれに加入をしておられないのでしょうか。その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/29
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030・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この関係につきましては、その精神とするところはもちろん差し支えないと思うのでありますけれども、具体的な国籍取得の要件などにつきまして、むしろ何といいますか、日本の今までの考え方に少し合わない、むしろ日本の方が合理的だというふうな感触のものもございまして、したがいまして特にこの条約に加盟する必要はないだろうということで来ておると思います。また実際問題といたしますと、まだ加盟といいますか批准している国は十カ国でございまして、これに加盟をした効果というものも、先にして悪いわけではございませんけれども、若干問題であるというふうなことから我が国では見送っておるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/30
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031・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今国籍をほしいままに奪われないという点の権利というものはほぼ国際的に認められておるように思うのでありますが、局長もあえて否定まではなさらぬように思うのでありますが、この国籍を持つ権利があるかどうかという問題、先ほど局長は無国籍者の国籍取得の問題、国内法についてお考えをお述べになりましたね。これにやはり関連するのが国籍離脱の権利あるいは自由だと思うのです。
これは我が国の憲法の二十二条第二項に「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」という規定があります。私はこういった憲法の規定を中心に置いて考える必要があるように思うのでありますが、この規定を同じ二十二条の第一項と比較してみますと、第一項は居
住、移転、職業選択の自由を保障する場合に「公共の福祉に反しない限り」という条件をつけておるのであります。ところが、第二項にはこのような条件ないし制約は設けられておりません。この規定を受けて、現行の国籍法の第八条から十三条で国籍離脱の規定が設けられておるのでありますが、そのうちの第十条を見ますと、外国の国籍を有する国民についてのみ国籍離脱の権利を認めておりますね。憲法は先ほど申しましたように、第一項が「公共の福祉に反しない限り」という条件を設けておるにもかかわらず国籍離脱の権利についてはそういう条件を設けておらない。絶対の基本的人権のような外観を呈しておるのであります。ところが国籍法は外国の国籍を有する国民についてのみ国籍離脱の権利を認めている。一見これは憲法の規定を外れているように見えますね。これは局長としてはどういうふうに理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/31
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032・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) おっしゃるとおり、国籍法では他国の国籍を持っている、いわば二重国籍になっている日本国民についてのみ離脱できる旨の規定をしておるわけでございますが、憲法にはそのことが明記されてないにいたしましても、私どもの考えといたしますと、無国籍になるという、そういう状態をも容認するといいますか、日本の国として容認をするというふうな考え方に立つものではないのであって、ここで言っている離脱というのは、要するに他の国への変更といいますか、そういうふうな形のものを考えておるのではないかという解釈をいたしております。これは現在の国籍法の、そういう他国籍を持っているという者に限定をしておりますことが憲法違反であるかどうかということの議論では、どなたもそういうふうなことは憲法違反だというふうにおっしゃる方はないのでありまして、むしろ無国籍というものがあってはならないという、先ほども御指摘ありました人権宣言その他の国際的な一般の考え方がございます。そういう面から申しますと、無国籍になるために日本の国籍を離脱するということは、そこまで籍法が認めているわけではないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/32
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033・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、おれは世界の子である、一つの国の主権に属することは好むところではない、あえて無国籍を個人が宣言して無国籍者になろうとこの憲法の規定によって要求してきても、これは日本の国家としては認められないということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/33
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034・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/34
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035・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは局長がおっしゃったように、憲法二十二条第二項に国籍法のこの第十条の規定が反するかどうかということを直接争う人も今までなかったのでしょうし、それから学者の間でもそういう議論をする人がないというのでありますからして、結局無国籍者を出さない、少なくもどこかの国家に帰属させるという政策的な要求といいますか、それが支配をしておるというふうに考えられるわけでありますが、各国の法制についてもお伺いしたいのですが、この世界人権宣言の第十五条でも、先ほどもお話ししましたように、その国籍を変える権利、ザ ライト ツー チェインジ ヒズ ナショナリティー、彼の国籍を変更する権利ということをうたっておるわけで、国籍を離脱する権利というものはうたってないのですね。しかし、いずれの国をも去る権利といいますか、居住、移転の自由に関係してエブリワン ハズ ザ ライト ツー リーブ エニー カンツリー、いずれの国をも立ち去る権利を持っている。それはインクルージング ヒズ オウン、彼自身の国を含んでいずれの国をも、自国をも去る権利を持っておる、あるいはまた自国に帰る権利もあるのだ、これは世界人権宣言の十三条二項にあるようでありますが、立ち去る権利ということは認めても国籍を離脱する権利というものは認めていない。そういう点から局長のおっしゃったような解釈があるいは妥当なのかもしれませんが、これはほかの国の立法も大体国籍を変更する権利を認めておっても自国の国籍を捨てて無国籍になる権利というのはこれを認めた立法例はないのでしょうね。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/35
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036・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 規定の上では無国籍になるような状態での離脱を認める国も若干はあるようでございます。ただ、その場合でも多くは他国へ帰化が予定されているとかというような場合に実際には問題になるのではないかと思いますけれども、多数国の方は離脱につきましてむしろ許可制をとるとか、その後、条件もいろいろ未成年者の間はいいとか悪いとか、あるいは兵役の義務が終わるまではだめだとかというような条件がついているところがあるわけでございまして、むしろ傾向といたしますと離脱はある程度の制限を受けておる。全くその制限もなしに無国籍になるという状態で、ただ届け出さえすれば無国籍になるというような意味での離脱という国は、条文の上ではあるところが一、二あるようでございますけれども、実際にはそういうふうな形では運用されていないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/36
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037・寺田熊雄
○寺田熊雄君 後学のためにお伺いしますが、わずかではあるが二、三離脱をして無国籍になることも法制的に許容している国があるというのは、どことどこなのか、ちょっと御存じならばお伺いしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/37
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038・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 例えば西ドイツなどにそういうような規定がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/38
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039・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、先般我が国も批准をいたしました国際人権規約中の市民的及び政治的権利に関する国際規約ですね。その二十四条第三項に「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」という規定がありますね。これは先ほどの国籍取得の権利を有するや否やという問題について関連を持つ規定でありますが、このエブリ チャイルド ハズ ザ ライト ツー アクワイア ア ナショナリティー、こういう英文になっているようでありますが、これはどういうふうな規定というふうに局長は理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/39
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040・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは子供は出生のときにどこかの国の国籍を持つべきだ、そのように保護さるべきだということがうたわれた条約だというふうに解しております。ただ、この条約があるから、ある特定の子供が特定のどこかの国の国籍をどう取得するかというのは、ここからはすぐ出てこないわけでございますので、結局条約加盟国がこの趣旨に合ったような国籍法をつくっていくといいますか、そういう配慮をするということの義務が出てこようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/40
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041・寺田熊雄
○寺田熊雄君 国際人権規約が「すべての児童は、」と、こう規定して国籍を取得する権利があるということを規定しておるゆえんのものは、やはり児童の持つ社会的な地位の特殊性といいますか、そういうものにかんがみて特に規定したのでしょうね。一般の人間について言わず、特に児童についてこういう規定を置いている。
この二十四条第一項というのが「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する。」、二項は「すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。」、それから第三項で「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」という規定になっておりますが、これはやはり児童に対して国家が必要とされる保護を与える義務がある、そういう国家の義務づけをした規定、その一環としてすべての児童に国籍を与えよ、こういうふうに理解すべきなんでしょうね。この点どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/41
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042・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) おっしゃるとおりだと思います。人権はすべての人間が守られなければならないわけでございますが、特に児童につきましては、より保護さるべきであるということが必要なわけで、それがここでうたわれておるところで、その国籍の付与の点につきましては、特定のどこかの国が自分の国の構成員として、国がや
はりそういう面でもはっきりさした法律上の地位に立たせるということが必要だということをうたっている規定だろうと思います。しかし法律的には出生の時点でどこかの国の国籍を取得させることが望ましいという結論にはなろうかと思いますけれども、書き出しは児童の保護という面から書いておりますために「すべての児童」という表現になっているのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/42
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043・寺田熊雄
○寺田熊雄君 国籍を持つ権利があるやなしやの問題と同時に考えられるのは帰化の権利であります。法務省は従来一貫してこれは国民の権利ではないという見解をとっておられるようであります。現行国籍法の提案の際の審議経過、これを見ましても、当時の村上朝一民事局長もそういう説明をしておられる。つまり帰化は法務大臣の一〇〇%裁量行為であるというふうな考え方のようであります。しかし法定の帰化の条件を完全に満たしている場合に、なおかつ法務大臣はその帰化申請を不許可にする権限があるだろうかということを考えますと、これは私どもとして多分に疑問を持つのであります。もしそうであるとすると、それは完全な恩恵の付与ということになってしまうと思うのであります。それでは先ほどの人権宣言第十五条第一項の「すべて人は、国籍をもつ権利を有する。」という規定、あるいは国籍を変更する権利を否定されないという第二項の規定、これが完全にじゅうりんされてしまうのであります。アメリカの判例には、この点について著しい裁量権の逸脱行為、これを憲法違反とした判決があるというふうにも聞いておるのであります。したがって、この裁量権の行使は合理的なものでなくてはならないと考えるのでありますが、これは局長としてはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/43
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044・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは私どもとしては結論的には外国人に帰化のいわば請求権というようなものがあるというふうには考えておりません。我が国の構成員として迎え入れるかどうかということでございますので、外国の人が日本の国に対して構成員に入ってくるという、そういう権利を与えるということは国籍法の考え方からしても無理じゃないかという感じがするわけでございます。
帰化に関しまして国籍法ではいろいろな要件を定めております。この要件は、法務大臣にその構成員として日本の国民に迎え入れるかどうかということを許可するかどうかという権限を与えておりますけれども、その許可する場合に、少なくともこの要件を満たしてない者については許可してはならないということを定めた規定だというふうに考えておるわけでございまして、その要件に当たれば当然許可すべきだというふうに決めた規定ではないというふうに考えております。しかし、そのように考えますと、要件に当たった者についても、さらに許可するか許可しないかということが法務大臣の裁量にかかるということになるわけでございますが、その裁量権の行使につきましては、これはおっしゃるとおり、その乱用にわたるようなことはあってはならない、その点は一つの法務大臣の行政責任としては当然そうあるということが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/44
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045・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは今まで判例があったかどうかという点で、私はまだその点をつまびらかにしていないのでありますけれども、今局長のおっしゃった権限の乱用にわたってはいけないのだという、そのもしも乱用にわたった場合に、それが裁判所の審査の対象になり得るかどうかという問題を検討してみたいと考えわけであります。
つまり、あなた方のようなスタッフが、裁判官をしていらっしゃる方々が法務大臣のスタッフとしておられるわけですから、いやしくも権限の乱用にわたるもの、それから恣意的な決定というものがなされることは実際上はないのじゃないかというふうに私どもは考えている。しかし先ほどもお話ししたように、国籍を変更する権利というのが世界人権宣言にもうたわれておるわけですね。そしてまた、憲法にも国籍を離脱する権利、国民にはほかの国に行く権利があるのだ、それで、そういう権利がほぼ国際的な権利として定着しつつある現在に、外国籍を持つ人が日本の国籍を持ちたい、その持ちたいという願望にはそれなりの理由があるという場合に、その条件を満たしてもなおかつそれを却下し得るか、申請を不許可にし得るかという問題があるわけですね。それからまた、考えてみると、親子兄弟全部が帰化申請をしてきた、その特定の一人についてどうも政治的な点が気に入らない、その者だけオミットするというようなことがあっては好ましくないわけでありますが、実際問題としては、あなた方がそういう恣意的な決定をするということは考えられないとは思いますけれども、一つの重要な法律問題として取り上げてみたいと考えたわけでありますが、やはり権限の乱用にわたった場合には、それは裁判所の審査対象になるのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/45
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046・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私はどうも理論的には法務大臣の全くの自由裁量の分野であるという考え方をとっております。ただ、実際のその裁量権の行使につきましては乱用とか恣意とか、そういうものがあってはならないという責任はもちろん持っているだろうとは思いますが、ぎりぎりのところで、いわば何といいますか、不許可の措置が取り消し訴訟の対象にはならないのではないかという考え方を持っております。持っておりますが、争われた事件がございまして、東京高裁と広島高裁で判決が出ておりますが、この高裁の考え方は、自由裁量であることはこれはそのとおりだ、しかしながら極端な乱用があった場合には、これは取り消しの対象になることもあり得るという見解を一応前提にしまして、当該事案については法務大臣の不許可にしたことはその乱用には当たらないということで請求棄却の判決をしておるという例はございます。
したがいまして、そういう考え方もあることは私どもも否定いたすわけではございませんが、私どもといたしましては、理論的には取り消しの対象になるものではないという考え方を今でも持っておりますが、ただ、そういうことは問題にならないような公正な帰化行政をやるのが一番の前提であるというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/46
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047・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それでは、その地裁段階、高裁段階の判決のコピーをまた届けていただけませんか。
先ほど国籍離脱の権利、憲法の規定、国籍法の規定、これを御説明いただいたわけでありますけれども、一体国籍離脱の権利なるものがどのように実際に活用されておるのかということ、これをやっぱり御説明願いたいと思うのです。まず、そういう事例がどの程度あるのか。そして離脱の理由はその申請の中にうたわれておったのだろうか。また、その離脱の事由についてあなた方が何らかの審査を行うのだろうか。あるいは無制限に離脱したいと思えばアメリカに行かせる、あるいは中国に行かせるというふうにフリーパスにして扱ってきたのだろうか、そういう問題。それから、実際に今まであった事例はどこの国へ行ったのが多いのか。またこういう問題が裁判で争われたことがあるのかどうか。こういう点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/47
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048・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 離脱の実際の件数は年によって大分変動ございますが、過去三年ぐらいのところを見ておりますと、全体として二百件前後の数字でございます。その内訳を大ざっぱに見ますと、国内居住者で離脱をする者がその半分の百人ぐらい、それから国外の在住者の離脱が百人ぐらいということになります。
国内での百人の離脱は、これは日本人の女性が韓国籍の方と結婚をします。婚姻届を出します。そうしますと、韓国の国籍法によって韓国国民の妻は韓国国籍を取得するということになりまして、二重国籍が生ずるわけでございます。もちろん六カ月以内にもとの国籍を離脱しなければ韓国籍は失うということになっていますけれども、一応日本の女性が韓国の男性と婚姻をいたしますと韓国国籍を一たん取得するわけでございます。そうしましてその夫の国籍の方に直りたいという、まあ直りたいといいますか、その単一の国籍にし
たいという方が離脱の届けを出してこられる。それからもう一つ、日本人の女性が婚姻外で韓国の男性の子供を産みます。そうすると、これは当然日本国籍を取得するわけでございますが、その後、韓国の男性が認知をいたします。そうしますと、婚姻と同じように韓国の国籍が付与されるわけです。二重国籍になります。そういう場合に韓国の国籍のみにしたいということでの離脱でございます。したがいまして、国内での百件のうちのほとんどは韓国、そういう関係でございまして、妻である場合と認知された子供である場合が半々ぐらいになろうかと思います。
それから、国外の百件と申しますのは、集中的に多いのがアメリカとブラジルでございまして、生地主義の国で生まれた、そして日本国籍を留保するということで重国籍になっておるわけでございます。しかし、ずっともう生まれた外国で生活をして、日本の国籍を持っておるということが、それはどういう動機であるかわかりませんけれども、実際上要らない、むしろ場合によっては妨げになることもあるのかもしれませんが、そういうことで離脱をするということが多いわけで、こういう方はこれは年齢まちまちでございまして、現在でも大正年代、明治に生まれた方が離脱の届けを出されるということもあるわけでございます。その場合の背景になっております動機がどういう事情でそういう気持ちになったかというのは、実はちょっと私どもは知るすべもないわけでございます。
審査といたしますと、これは国籍法の要件が、先ほども話が出ましたように二重国籍であるということが要件になっておりますので、日本の国籍以外に国籍を持っているかどうかということの審査はいたします。これは当該国の証明書を出していただくわけです。そうしますと、こちらではそれがわかりますので、そうすれば当然にもう既に離脱が生じておるということでございますので、現行法ではそれで官報に告示をして明らかにするという手続をとっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/48
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049・寺田熊雄
○寺田熊雄君 最後に、このことで裁判上争われたことがありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/49
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050・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 答弁落としまして失礼しました。
離脱の関係について裁判上で争われたという事例は私聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/50
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051・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今回の法改正は、論議がありましたのは二重国籍の問題でありました。現行の国籍法の制定時に当たりましても、法務省は二重国籍を認めないという立場を重く見ておられたように思うのであります。これを、後で恐らく論議になりましょうが、男女平等の原則に優先させるほどの、それほど二重国籍を認めないという立場を強く打ち出されたのであります。この二重国籍を原則として認めないという立場は今回の法改正でもとっておられるように思うのであります。しかも、できるだけこれを減少させようとする方針を持っておられるように思うのであります。この際、特にこれは衆議院でも論議になっておるようでありますが、二重国籍を認めるべきでないとするのはどういう合理的な理由に基づくのか、まずこれをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/51
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052・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 二重国籍を認めるべきでないというのは国籍法の中で言っておりますが、国籍唯一の原則というのが今これは国際的にも承認された原則であるし、それをとるべきであるということでございますけれども、なぜ国籍唯一の原則というものがあるかということになりますと、これは主権在民の国家におきましては国民というのは主権者になるわけでございます。それが数カ国の主権者であるということは、それ自体世界の国全体から見ますとこれは不自然なことであります。そういう面もございますが、そのほかに、例えば兵役の義務などがある国が多いわけでございますけれども、そういうような関係で他国の兵役に服する、場合によってはそれがもう一方の国籍を持っている国との間の戦争にもなるというふうなことがありまして、大変本人も都合が悪いし、それから国としてもぐあいが悪いということになるわけでございます。そのほかにも外交保護権の行使だとか、あるいは犯罪人の引き渡したとか、そういう関係につきましても問題が生ずるわけでございまして、したがいまして、重国籍というのはこれはないことが望ましい、まあ原則であって、その他の理由によって重国籍になるということはやむを得ない場合に限られるだろう、それもなるべくは解消するという方策がとられるべきであるということは、これはどこの国でも考えているところではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/52
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053・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この点では、先ほど私が紹介した世界人権宣言の第十五条、これも英文で見る限りでは「すべて人は、国籍をもつ権利を有する。」、エブリワン ハズ ザ ライト ツー ア ナショナリティー、一つの国籍という英文になっておるようであります。それから、先ほどの国際人権規約の児童の権利も、エブリ チャイルド ハズ ザ ライト ツー アクワイア ア ナショナリティー、一つの国籍を持つ権利という規定になっておる。
私のところにしばしば市民団体なり、あるいは弁護士の方などで二重国籍を是とする人々が来られて、二重国籍を認めるべきであるという意見を強く述べられたことがあるのですが、そういう場合に、世界人権宣言や世界人権規約の中にもアナショナリティー、一つの国籍というのがあるよと、ダブった国籍を持つ権利というものを否定して、もしもそれがダブっていいというならば、この場合でも特にア ナショナリティーとするわけがないじゃないかというようなことも申したのであります。それから条約でも、国籍法のてい触についてのある種の問題に関する条約であるとか、それから先ほど局長の言われた重国籍の減少及び重国籍者の兵役義務に関する協定というような協定もある。さまざまな点から私も重国籍というのはどうだろうかという点の考えを持っておったのでありますが、これ今局長の御説明では大体世界的な傾向だというふうなお話がありましたね。ところが一方必ずしもそうでないのだと言って頑張る学者もおるわけですが、各国の法制その他に似てこれはもう普遍的な世界的な傾向だというふうに言えますか。つまり重国籍を認めない立場が普遍的だと、これ言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/53
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054・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 各国の国籍法それ自体を見ますと、いわば二重国籍を放置しているかのごとき法制の国もそれはないわけではございません。ただ、各国では重国籍というのはこれはぐあいが悪いものなんだ、望ましいものではないのだということの考え方は十分基礎に持っておるところであると考えられます。
御承知のとおり一九三〇年の条約におきましても重国籍はやめようという条約もできておりますし、それから一九七七年のヨーロッパ理事会の閣僚評議会の決議でも重国籍はやめにしよう、そのために選択制度というものも導入すべきだというふうな決議もしておるところでございます。それからまた、重国籍の者についていろいろな要するに自国に対する忠誠といいますか、そういうようなものを裏切るようなことがあれば、どんどん重国籍を外してしまうというような形で解消するという法制をとっておるところもございますが、いずれにしても各国の国籍法に表面に浮かび上がっておるところについては必ずしもはっきりしない面はございますけれども、どうももろもろの条項あるいは条約などを見てみますと、やはり重国籍というのはあってはならない、これは解消すべきものだという考え方は各国ともとっておるようでございます。
ただ、その望ましくない重国籍を解消する方策としてどのような方策がとり得るかという問題がもう一つあるわけでございます。ヨーロッパでも、先ほど申しましたように、ヨーロッパ理事会で重国籍は望ましくないので、選択制度というもので、ある一定の年齢に達したころにはどっちか一つにしてしまうということにしようという決議を閣僚評議会でいたしておるわけでございますけれども、ただ、いざそれをどうやって実効あらしめる制度にするかということに各国は頭を痛めたようでございます。
イタリアはその決議の線に従った国籍法に変えておるというふうに承知いたしておりますけれども、ほかの国ではなかなか難しい。これが陸続きの国であって、しかも非常に出入りが激しくてというふうなこともあるのでございましょうけれども、一つには国民を把握する制度が、日本の国においては戸籍制度というものがございまして、したがいまして、自国民の把握というものが非常に明確にできておるわけでございますけれども、そういう戸籍制度を持っておるという国が非常に少ないというようなことから、どういうふうにして重国籍者であることを政府で把握してやるかということが非常に困難だというふうなところから、いろいろ検討した結果、選択の制度はとり得ない、したがってむしろ個々の弊害、重国籍による弊害、例えば兵役なんかについて近隣諸国との間に協定を結ぶことによってその弊害をなくしていくということの個別的な問題の処理という方向で考えようというような傾向にあるように思います。また一方、社会主義の国におきましては、重国籍については非常に厳しい態度をとっておりまして、重国籍者はもちろんあってはならないということがこれは全面的に出ておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/54
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055・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今社会主義国家の場合を次に私もお尋ねしようと思ったのですが、例えばソビエト連邦、それから中国等の国籍法を見ますと、二重国籍者はもう認めないということに、もうきっぱりと二重国籍を否定する態度を貫いていますね。これはやはりどちらも祖国防衛の義務というような、そういう中誠義務を国民に課するというような点が強く作用しているのではないかというふうな私は感じを持ったのですが、これはどういうふうに理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/55
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056・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国の法制でございますので、私どもよくわかりませんけれども、今おっしゃったように、一つの社会主義国家を建設していく構成員としてほかの国の国籍を持っている者というのは、これはふさわしくないという、そういう考え方を持っているのではなかろうかと想像いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/56
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057・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この問題は我が党の中でもやはり議論のあるところでありまして、二重国籍を是認する人々もかなり有力であったのでありますが、例えば韓国籍と日本の国籍と両方持っておる男性があるとすると、そうすると、韓国でも韓国人の妻をめとってこれが普通の正常な家庭を営んでおる、日本の国でも日本人として戸籍を持っておる、日本人の妻を持って日本において健全な家庭を営んでおるというようなことが二重国籍の場合は考えられますか、二重国籍を是認するとすると。この点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/57
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058・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) もちろん韓国との関係で、重国籍であっても普通の場合には、何といいますか、平穏な普通の家庭での生活というものはあり得るだろうと思います。ただ、兵役義務の関係で場合によっては問題が生ずるということもあり得ようかと思いますが、そういうふうなことでなければ、何といいましょうか、普通の関係では問題はないと思います。ただ、重国籍であるということをいわば悪用するといいますか、重国籍である場合には要するに出入国の関係、それから居住の関係でどちらも保護されるということになるわけでございますので、そういう関係を悪用するといいますか、そういうようなこともそれはあり得ないことではないというふうには思いますが、各御本人がどちらかにずっと長い間居住をして生活しておられるという関係だけならば、これは別にそう問題は生ずるところはないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/58
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059・寺田熊雄
○寺田熊雄君 局長の御説明わかるけれども、今私がお尋ねしたのは、二重国籍で、韓国の国籍と日本の国籍を持つ男性が韓国でも韓国人の妻と結婚をして正常な家庭を持つ、これは法律上の家庭を持つ、日本でも日本人の妻を持って、そうして正常な夫婦関係を持つ、正常な家庭を持つということが重国籍を認めた場合にはあり得るかと言ってお尋ねしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/59
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060・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その関係は重国籍であるかどうかは直接関係がない、法律的にはそういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/60
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061・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それはどうしてですか。ちょっとよくわからないが、日本人であれば、韓国へ行って韓国で正常な家庭を営み得ないでしょう。戸籍、法律上の婚姻というのは、ああそうか、養子に入るか。しかし、そうすると日本の戸籍だって重婚になるね。これはやっぱり重国籍の場合だけしか考えられないではないだろうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/61
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062・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっと私御質問誤解をしておりまして恐縮でございますが、何といいますか、登録制度が違いますので、今おっしゃったのが重婚の問題であるとすれば、その重婚は結局把握できないということで、両方でいわば戸籍に載ったりしまして起こるということはこれは可能性としてはないわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/62
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063・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それは確かに重婚には違いないけれども、だけれども法律上そういう届け出婚ですから、届け出をして両方の国でそれぞれが正式の婚姻をして平然としておるということが重国籍の場合あり得るでしょう。もちろん重婚にはなるのでしょうね、それ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/63
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064・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それはそういうことはあり得るわけでございます。日本の方では届け出を受理いたしまして、日本の国籍を持っておりますから日本の戸籍の上での記載がされまして、そして婚姻が成立する。ところが、韓国籍もあるから韓国の方の戸籍にも載っておるということで、韓国の方で韓国の方式によって婚姻をいたしますと、それは重婚関係は成立をするということになります。しかし、それがわかった場合にその重婚の解消という問題は、これは日本法でも、また韓国法でも同じような問題は生ずることになろうかと思いますが、要するに、日本人であるだけの場合には戸籍のところで重婚がチェックをされるというチェックがされないという意味では重婚になる、その可能性がこれは出てくることは否定できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/64
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065・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私は、党内で議論になったときに、その一つの実例を言うて、やっぱり重婚を生ずる可能性を持つような重国籍はまずいじゃないか、一つの事例にそれを引いたわけであります。
それから、重婚を認めると、これはどこでストップさせるか。例えばドイツ国籍とフランス国籍の両方の国籍を持った妻、それからイギリスとアメリカの国籍を持った夫、この二人が結婚して子供ができると、もしも重国籍を自由に認めるというと四重国籍になるでしょう。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/65
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066・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは四重国籍になりますし、またその子供さんが四重国籍を持っている方と結婚して子供ができれば八重国籍にもなってまいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/66
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067・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そういうふうな、とめどがないじゃないかということを私は議論をしたのであります。結局この重国籍を認めるというのは、認めよという議論の人は、子供の場合には重国籍を認める方が利益があるのだというようなことを主張する人もありました。国際結婚をした方々の間に、ドイツ人の奥さん、それから日本人のだんなさん、この間に生まれた子供はそれぞれの血を引いておる、またそれぞれの文化というものを背負っておる、だから重国籍でもいいじゃないか、これは当然じゃないかという議論がありました。私は、そういうロマンチックな問題じゃないのだ、国籍というのは専ら法律的な国家との関係であるのだ、国家も義務を負うし国民も義務と権利を持つのだから、そういうロマンチックなことで国籍を左右することはできないよというようなことでいろいろ議論をしたのでありますが、一体突き詰めた考えをした場合に、重国籍を認めないというのは、国家にとってそれが有用なのか、それとも結局は個人にとってそれが利益になるのか、その点の突き詰めた考え方を言いますとどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/67
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068・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは国家にとっても不利益であるし、本人にとっても不利益である
ということが言えようかと思います。ただ、本人にとりましては、利益といいますか便利であるという場合があるということでございますので、これは利益の面を強調される方は、二重回籍はこっちにとっては利益なことなんだということを言われますけれども、私は、兵役の衝突とか、あるいはそれは法律的な問題を離れましてもいろいろなことで重国籍であるということは不利益を受けることも多々あろうかと思いますので、重国籍というのは国にとっても不利益であり、また当該本人にとっても不利益なことではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/68
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069・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、重国籍を認めよとする論者が法務省に重国籍を認めることによってどういう不都合が生ずるかという実例の提示を求めたのにもかかわらず、法務省はその実例を一向に提示しない。したがって、具体的な不都合の事例は起きてないのだと言う方もおられたのでありますが、これに対して法務省は具体的にこういう過去において不都合な事例もありましたというものがあったら、この際説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/69
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070・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもはそういう説明を公式に求められたことはないのでありますけれども、不都合な事例といたしますと、戦後は国際的な緊張関係というものが日本では直接ありませんし、それから兵役の関係も日本ではなくなりましたので出ておりませんけれども、過去にはこれはかなりあったと思われます。
テレビドラマなどでもそういうようなことが時時出てまいりますが、殊に戦争中に日本の捕虜収容所の通訳をしていた日米の重国籍者が、それがいわばアメリカに対する忠誠を裏切ったことになるということで処刑をされたような事例もあるわけでございまして、そういうようなのが理論的に直接重国籍者の弊害であるかどうかわかりませんが、本人にとっては、恐らく捕虜収容所の通訳をしているときには、自分は日本の国民として、そして日本側の捕虜収容所の運営のために参加をするというつもりでやったということであろうと思いますけれども、他面、アメリカ側から見れば、それはアメリカに対する裏切りだという評価を受けて、そして処刑されるということになるわけでございまして、そういうぎりぎりのところが出てきたときには本人にとっても非常に過酷な結果を生ずることもあり得るだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/70
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071・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そういう説明は過去において私も伺ったことがありますが、これは法務省にそういう何かアメリカの判決みたいなものが残っておるわけですか。もしあれば、そういうアメリカの判決をいただきたいと思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/71
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072・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは後日提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/72
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073・寺田熊雄
○寺田熊雄君 先ほど各国の法制も大体入手なさったという御説明がありましたが、条約は私も大体手に入れておりまして、それから主だった国の国籍法もイタリア以外は大体持っておるのでありますが、各国の法制もいずれも重国籍を認めないという立場を、日本と同様にそういう規定を持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/73
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074・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは社会主義国のようなはっきりした規定を設けているとは限らないわけでございまして、その条文の上からは重国籍者があるということを特段排除するというようなことは必ずしもうたわれてはおりませんけれども、先ほど申し上げましたように、ほかのいろいろなところの条文とか、それからその国が結んでいる条約、そういうようなものを総合してみますとやはり重国籍というのは望ましくないというふうな考え方に立っているなどいう、そういう想像ができると私どもは考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/74
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075・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これ衆議院でも論議がなされているようでありますが、重国籍者のトータルはやっぱりつかめないのでしょうね。それで、もしトータルつかめたら言っていただきたい、つかめなければ結構ですから。それから、日本の場合、重国籍はどういう原因で生じているのか、また今後どういう原因で生じるであろうか、どこの国と重なっている事例が多いのか、こういうような点で御説明をいただきたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/75
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076・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在日本国籍を持っている者で同時に外国籍を持っている者の数は把握いたしておりません。ただ、最近の統計を見ますと、出生地主義の国で生まれた日本人の子供さん、これが留保届を出すことによって二重国籍になるわけでございます。その留保届の件数が年間に約二千八百人ほどおります。これが重国籍の現行法における一番大きな理由であり、またその数字になろうかと思います。
このほかに、血統主簿をとっております国が次第に父母両系主義に改めつつあります。したがいまして、そういう国の女性と日本人の男性が結婚をしまして、そこに子供さんが生まれますと現行法のもとにおきましても重国籍になるわけでございます。これが何人ぐらいあるかというのは、実は私どもはっかめておりませんが、先ほどの留保と合わせますと、現在年間に重国籍者が生ずるのは三千人ぐらいではなかろうかというような大ざっぱな感触でおるわけでございます。
現在は主に生地主義で出生した日本人の子供というのが重国籍が発生する主たる原因でございますけれども、今後我が国が父母両系主義ということになりますと、血統主義との関係でかなりの重国籍者が出てくるだろうと思われます。殊に在日の韓国人あるいは台湾系の方、そういう方との婚姻によって生まれるというようなことが重国籍発生の大きな理由になってくるだろうと思います。ただ、韓国がまだ父系主業をとっておりますので、韓国との関係での国際結婚から生まれた子供さんが全部重国籍になるというわけではございませんけれども、韓国も婦人差別撤廃条約に署名はいたしておるようでございますので、もし韓国でもそのようなことになれば、これはかなりの数が日本国内において重国籍者として出生するという可能性が出てくるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/76
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077・寺田熊雄
○寺田熊雄君 何か衆議院では、国際結婚が大体年間八千組ぐらいあるので、もし両系主義のこの法案が成立すると、それによって生ずる重国籍の子供の数は大体年間一万人ぐらいになるのじゃなかろうかというようなことを言っておられますね。この数字はやっぱりそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/77
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078・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは全くの推測でございまして、国際結婚が八千組あるというのは、これは事実でございます。それから、その間に生まれる子供さんがどれくらいだろうかと言いますと、大体今一夫婦について一・七四の割合で子供さんが生まれるという統計もございますので、そういう数字を掛け合わせ、なお先ほど申し上げましたように韓国女性と日本男性とが結婚した場合には重国籍にはなりませんので、そういう要素を差し引きますと一万人ぐらいかなということでございまして、これはもう全くの腰だめ的な推測でございますが、大体しかし一万人ぐらいはふえようかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/78
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079・寺田熊雄
○寺田熊雄君 時間が参ったようですが、国籍法のてい触についてのある種の問題に回する条約というのが一九三〇年四月十二日にヘーグで署名されておりますね。それで、これは一九三七年七月一日に効力が生じております。日本は署名したが批准していないというのでありますが、これは内容を見ても重国籍と無国籍をできるだけ消滅さしていこうという、そういう立場に立っての規定のようであります。
最初の前文を見ましても「国際的共存団体の全員に各個人が一個の国籍を有すべきであり且つ一個のみを有すべきであることを認めさせることが右の団体の一般的利益であることを確信し、従って、右の事項について人類の努力が向けられるべき理想は、無国籍の場合及び二重国籍の場合をともに消滅させることにあることを認め、」云々という、こういう前文がありますね。こういうことにかんがみると、この条約、内容を見ましても我が国も批准しても差し支えないのじゃないかと思いますが、これは局長、どんなふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/79
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080・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この条約の基本的な考え方につきましては、おっしゃるとおり合理的なものであるというふうには思いますけれども、各条文の中に、ちょっと時代が古いものでございますので、親子の国籍の独立主義的なようなものをとっていないとかというようなことで、ちょっとこれを批准いたしますと、我が国の国籍法の考え方からすれば少し後退になるというような要素もあるわけでございます。そういうことでございますし、もうその後にもいろいろ各国の国籍法が変わりまして動いておりますので、ちょっと何といいますか、今さらという、古い条約という感触がぬぐえないのじゃないかと思います。したがいまして、精神としてはこれは大いに参考になるところがあるわけでございますけれども、批准するのにちょっと適していないのじゃないかという感触を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/80
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081・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まだ質問が残っておりますが、時間が来ましたので、これでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/81
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082・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時四十七分休憩
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午後一時二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/82
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083・大川清幸
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/83
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084・飯田忠雄
○飯田忠雄君 きょうは、法制局と自治省の方から先に御質問さしていただきます。
これは法制局のお方にお尋ねをすることになると思いますが、憲法第十四条は日本国民間の法のもとの平等を保障しておりますが、この保障は外国人と日本人との間の平等をも保障することになるのかという問題でございます。憲法は御承知のように「すべて国民は、」と書いてありまして、ほかの条文では国民とは書いてない条文もあるわけですから、したがいまして憲法十四条はやはり国民の間の平等を保障したものではないかという解釈が起こるわけでございます。
そこで、お尋ねをするわけですが、国籍を取得する権利というものは生まれた子供の基本的人権であるから保障するのかどうかという問題、こういう問題もあるわけですね。それから、法のもとの平等を保障されるのは国民に限られるという考え方に従いますと、国籍という問題を決めることがまず先決問題になってくるのではないか。子供が生まれますと、まず国籍が決まるということが先決で、国籍が決まってから憲法上の保障の問題が起こると考えざるを得ない。理論上そう考えないとおかしなことになってまいるわけでございます。ですから、生まれた子供にどこの国籍を与えるかということを決定するのが先決問題でありますが、そのことについて国籍法を見ましてもどうも明確でないということもございます。実はこの憲法十四条をめぐって、そのほかいろいろの問題が国籍法との関係であるわけです。
そこで、法制局にまずお尋ねをいたしますが、日本国民の間の法のもとの平等の保障であるのか、外国人と日本人との間の平等も保障しておるのでしょうか。この問題についてお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/84
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085・関守
○政府委員(関守君) 御指摘の憲法第十四条第一項におきましては、先ほども御指摘もございましたように、「すべて国民は、」と規定してございます。したがいまして、そういうことから直接には我が国の国民の間における法のもとの平等を保障しようというのがこの趣旨であるようにも思えますけれども、この憲法のよって立ちます思想と申しますか、それは近代における人権思想を背景にいたしておりますので、そういう点にかんがみますと、特段の事情がない限りは今の憲法第十四条第一項の規定が外国人に対しましても類推されるべきであるというのが最高裁判所の判例でございます。
ただ、その場合、これは判例でもたびたび認められておりますし、それから国会でもいろいろ御答弁申し上げていることでもございますけれども、この十四条第一項の規定は事柄の性質に即応して合理的と認められる範囲内の異なる取り扱いをすることまで禁止しているというものではないというふうに考えられますので、そういう点からして、外国人にも適用されるという考え方に立ちましても外国人に対する特別の取り扱いをするということは十分考えられるわけでございまして、立法例といたしましても、外国人に対する資格その他につきましていろいろと制限を加えているという例は幾つかあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/85
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086・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ただいまの御答弁、こういうことでしょうか。十四条は必ずしも外国人と国民との間の平等をどんな場合でも保障するというのじゃなくて、国に対して余り直接の影響のない分野においては保障する、例えば民事問題などについては保障するが、いわゆる選挙権だとかいったような問題、あるいは兵役の義務でも構いませんが、こういうような問題については日本人と外国人との間にはやはり差別を設けるのだ、設けても憲法違反にはならないのだというふうな受け取り方をしてもよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/86
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087・関守
○政府委員(関守君) ただいま申し上げましたとおり、外国人につきましても法のもとの平等という考え方は押し及ぼされて考えられてしかるべきであるということが最高裁判所の判例などからも言われているわけでございますけれども、その場合に、すべて同じでなくてはいけないということではなくて、合理的な理由があれば個々に合理的な範囲における異なった取り扱いをするということも憲法上許されるということでございまして、御指摘の選挙権等につきましては、これは事柄の性質上、国民が国家の政治に参画するということでございますので、それを外国人に認めないということが憲法上許されないということにならないことは当然だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/87
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088・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ちょっと私誤解をしたかもしれませんが、選挙権等については差別してもいい、こういうふうにおっしゃったのではありませんか。ちょっと確かめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/88
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089・関守
○政府委員(関守君) 選挙権については、当然のことながら外国人にまでこれを与えなければいけない、そうじゃないと憲法違反になるということはないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/89
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090・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今の問題はそれだけにしておきますが、もう一つ法制局にお尋ねをしたい点、同じく憲法十四条の保障の問題ですが、重国籍者にも無制限に保障が行われるかという問題です。今度の父母両系主義をとりますと重国籍者が出るのですが、この場合に、その重国籍者にも憲法十四条の保障は無制限に差別をしないという保障がなされるのか。重国籍者は日本籍を持っていますからね。お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/90
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091・関守
○政府委員(関守君) この点につきましても、先ほど申し上げましたことがそのまま当てはまろうかと思いますけれども、重国籍者というのは、何と申しましょうか、日本の国民であると同時に外国籍を有するという特別の立場に立つ人でございますが、先ほど申し上げましたように、要はそういう異なる取り扱いをするということが合理的であるかどうかということになるかと思います。それによって決せられるべき問題であろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/91
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092・飯田忠雄
○飯田忠雄君 日本人と外国人との間がはっきり差別が分かれておる場合には、これは合理的だというふうに考える場合も出てくるでしょうね。例えば外国籍の者が日本の総理大臣になるとか国会議員になるなんていうたら困りますからね。これはもうはっきりできると思いますが、日本国籍と外国国籍と両方持つように今後なりますので、その場合に重国籍者に対して憲法十四条は無制限に適用になるか、つまり参政権も制限しないで与えるのか、こういうことなんです。また高級公務員、例えば各省の次官だとかあるいは局長だとか、そういう職につくことを認めるのかどうか。これは行政、政治の問題に密接に関連いたしますので、法制局の御意見がそのまま将来通ることに
なるから、これ気をつけて御答弁願います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/92
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093・関守
○政府委員(関守君) 先ほど申し上げましたように、重国籍者につきましては日本国民であると同時に外国の国籍を有するという特別の立場の方々でございます。こうした重国籍者の参政権あるいは公務員になる能力の制限の可否の問題につきましても、結局はそれが合理的なものと言えるかどうかという点にかかるわけでございまして、これを判断いたしますには、やはりその制限を必要とする事情あるいはその制限の内容、程度などなどを慎重に考慮いたしまして判断すべき問題である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/93
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094・飯田忠雄
○飯田忠雄君 どうも抽象的なお言葉ではっきりしませんので、具体的にお尋ねいたしますが、二重国籍者、これは日本の国籍を与えますと外国の方で国籍の離脱を認めなければ二重国籍になりますからね。そういう人が憲法十四条を盾にとって自分も被選挙権があるのだと、こういうわけで衆議院議員の立候補を届け出たとしましょうね。この場合に、法制局の御意見として恐らくこれは選挙管理委員会の方からどうだと言って聞いてくると思いますが、そのときにどのような御返答になるのかお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/94
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095・関守
○政府委員(関守君) 今のような問題につきましても、憲法十四条というのは、先ほども申し上げますように物事の性質に応じて合理的な異なった取り扱いをすることまでを禁じているわけではないということでございますので、今ここでちょっとその点についてどうというふうに申し上げにくいのでございますけれども、そういう制限をすることの可否についても、今申しましたようないろいろなそれを判断するべき要素というものを勘案いたしまして検討を加えるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/95
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096・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今私のお尋ねしたのは、選挙権とか被選挙権を与えるかどうかということなんですよ。それで、これはもう明確にお答えできると思いますが、つまり重国籍者、これは外国の主権に奉仕する義務を有する者でしょう。国籍を持っておる以上はその国の国民ですから、その国の国民は国の主権者です。例えばアメリカの国民はアメリカの主権者でしょう。同時に日本の主権者である。そういう場合に被選挙権を与えるということになりますと、アメリカの国に忠誠義務を尽くすことを要求されておる人が日本の国会議員になる、場合によっては自由民主党に属すれば総理大臣にもなる、こういうことになりましょう。そういう場合に具体的な条件を考えてなんていったようなことで済むかどうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/96
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097・関守
○政府委員(関守君) 御指摘の点は確かに大変問題になるところであろうと思いますけれども、この点につきましては、事柄が重大でございますだけに、その判断になります要素というものは、やはり十分に考えて判断しなければいけない問題だというふうに思うわけでございます。私どもは先ほど申しましたように憲法十四条というのは合理的な差別を禁止するものではないと考えておりますので、一概にそういう制限ができないものではないというふうには考えておりますけれども、今すぐ選挙権なり被選挙権の制限についてどうかということはなかなか難しい問題だろうということで、さらに検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/97
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098・飯田忠雄
○飯田忠雄君 私は私の意見をちょっと述べますが、憲法には権利の乱用ということを禁止しておりましょう。これはお認めになりますか。権利の乱用はできない。これは最高裁の判例にもありますね。権利の乱用は認めていないのですよ。
そこで、主権国家の立場から考えますと、二重国籍で外国の国籍を持っておる人が日本の憲法を盾にとって主権国家に反するような権利を要求するということは権利の乱用ではないか。権利の乱用であれば、憲法上認める必要はないのではないかと私は考えますが、法制局はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/98
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099・関守
○政府委員(関守君) 重国籍者になるということは各国の国籍法の法制の違い等によりまして生じてくるわけでございまして、それによってそれぞれの国の法制のもとにおいて参政権が得られるということになります場合に、その権利があるということになったからといって主張できないということに必ずしもならないのじゃないか。それが権利の乱用になるというふうには私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/99
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100・飯田忠雄
○飯田忠雄君 もし法制局のそういう御意見が日本の政府の有権解釈であるとすると、父母両系主義は認めることはできません。国家の主権を危うくする。
最初お開きしたかったことをもう一度お尋ねしますが、あなたは主権国家の要件を御存じですか。国家の要件は昔から憲法の初めのところに書いてありますね。主権と国民と領土の三要素を排他的に保持することなんだと。主権を一つ二つの国で共有すればおかしなことになりましょう。これはもう例えば従属国が強い国に従属する形しかないのですよ。例えば日本の国がアメリカの属国になった場合に主権の共有ということが行われる。そうでない限り独立しているから主権の共有はあり得ないのですね。それから領土の共有もあり得ないでしょう。領土の共有ということは観念的なものなんですよ。
今日、二重国家がございますね。二重国家と言っては悪いが、朝鮮半島の状況、それからドイツの状況、こういうところにおいては、一つの国を二つの政府で事実上分けておりますけれども、観念上は一つの国なんですね。台湾と中国の関係もそうでしょう。実際は分けておっても観念上は一つの国でしょう。だから、こういうものを私は私流の考え方で二重国家と言っているんですよ、一つのところに二つの国が重なっているから。観念上ですよ。そういう場合以外には領土の共有はあり得ない。そうした二重国家というのは本来独立国家ではないのですよ。観念上の国家なんだ。事実上の独立国家ではない。今韓国と北朝鮮の場合、北朝鮮という言葉が悪ければこれは正式の名前で言ってください。この場合に、事実上は二つの国なんです。しかし観念上は一つの国、それは領土の共有をしているからです。領土の共有ということは概念にすぎないのですね。そういう問題があります。
次に、国民の共有というのはどういうことなんだと。国民の共有ということになりますと、これもまた国家の三要素のうちの一つを共有することになるから、独立国家としての要件を欠くことになるでしょう。例えば重国籍者が国民の過半数を占めた状態を考えてください。これで独立国家と言い得るかという問題があります。両方の国家に忠誠を尽くす者が半分以上おるのですよ。そういうようなことは観念的だとおっしゃれば観念的かもしれませんが、そういうことは許さないのが主権国家のこれまでの考え方でしょう。
政府では従来の考えられてきた主権、国民、領土の三要素を排他的に保持するのが国家なんだ、独立国家なんだという考え方を放棄されておるわけですか。その点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/100
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101・河村武和
○説明員(河村武和君) お答え申し上げます。
基本的な要素としてはほぼ先生の挙げられましたような要素を持つものが国家として成立するということでございますけれども、一般的に先生の言われましたことを国際法の書物等に則して申し直させていただきますと、一定の領域においてその領域にある住民を統治するための実効的な政治権力を確立している、言いかえれば一定の地域と人民を基礎に統治組織が確立しているということが国家としての要件であると、このように言われておると申せると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/101
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102・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それは今私が申し上げたことを言い直しただけでしょう。結局内容は同じでしょう。
だから、これ今は法案を審議しているのですからね。そして私どもが今皆さんに質問するのは、これは法案審議に当たってのいろいろの調査なんですよ。私の意見を皆さんに押しつけたり、皆さんの単独の意見を聞こうとしているわけじゃない。これは国政調査なんです。国政調査ですか
ら、議論やって負けた勝ったなんということは考えないでやっていただかないと困るわけ。私が質問して詰まっちゃったから負けたなんて考える必要ないのですよ。負けたということになるというと、それは従来の考え方が間違っておったのだから、またいい方法を考えましょうということでいいわけですからね。そういう態度でひとつ御審議を願いたいわけなんです。これはけんかじゃないのですから、お互いにいいものをつくろうとするための努力なんですからね。それで皆さんの方は割が悪いんですよ。調査してきて答えなければならぬから割が悪いけれども、それは月給をもらっている以上仕方がないということで我慢をしてもらわぬと困るのでね。じゃ、次に行きます。どうも私は皆さん方の答弁が余りにも形式主義に流れて本質を論じようというところに欠けているように思う。それはそれとして次に行きます。
先ほどの続きですが、重国籍者というのが法のもとの平等の主張をして、主権国家として許すことができないような権利まで要求するということになりますと、これを権利の乱用として排除できるというふうに私は考えるのですが、私のその考え方は誤りであるということを政府の御見解でひとつ論理的に論破していただきたいのです。どうかお願いいたします。これを論破していただかぬと困るわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/102
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103・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもは二重国籍というのは国家というものの考え方から望ましい存在ではないというふうに考えております。したがいまして、二重国籍者につきましては日本の国籍も持っておりますから、その面におきましては憲法十四条の法のもとの平等は原則的にかぶるということは、これは当然であろうと思います。しかしながら、二重国籍であるということは一つの特別な事情でございますので、この事実に着目をして、全体として不合理な面があれば、そのものについて特別な取り扱いをするということは十分にあり得ていい、むしろそうあらねばならないという考え方を持っております。したがいまして、今度の改正法案におきましても、二重国籍者につきましてはどちらかの国籍を選択しなければならないという、そういう特別な義務を課しますし、また重国籍者が日本国籍の選択の宣言をしていながら、なお他国において、もう一つの国籍の国において公務について、そしてその宣言の趣旨に反する場合には日本の国籍を喪失させるというような措置も、これは当然憲法の上からいっても許される、そういう範囲内のことであるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/103
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104・飯田忠雄
○飯田忠雄君 権利、つまり国籍を放棄させるといいましても相手の国のあることですから、相手の国が許さぬという法制、国内法を持っておる場合、できないでしょう。そうしますと必然的に二重国籍になるわけです。そういう二重国籍者になぜ日本の国の政治を任せなければならぬのかという点を私今問題にしているのですよ。だから、これは先ほど端的にお聞きしたのですが、被選挙権があるのかということでひとつお答えを願いたいのです。あるのかないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/104
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105・小笠原臣也
○説明員(小笠原臣也君) 御案内のように、公職選挙法は国会議員の選挙のみならず地方公共団体の長、議員の選挙にも適用されますし、また土地改良区の選挙等にも準用されておるような法律で一般法になっておるわけでございますが、その十条で被選挙権について一般的に定めておるわけでございます。一定年齢以上の日本国民は衆議院議員または参議院議員の被選挙権を有するというふうに定めておるだけでございまして、重国籍者であるということでそれを排除するというような規定の内容になっておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/105
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106・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それは従来重国籍の弊害が日本では起こらなかったからでしょう。今後は父母両系主義を認めますと二重国籍者が相当出てまいります。また頭のいい優秀な人も出てくるでしょう。頭がいいから日本の総理大臣にしていいということにはならないわけなんで、問題は外国とツーツーでないかどうかが問題なんです。二重国籍だったら外国とツーツーになったって文句言えないでしょう。だから今私はこれを問題にしているので、現在の選挙法に書いてないからといったようなことは理由にならない。選挙法を変えたらいいのです。当然選挙法を変えるということを私は要求したいというふうになりましょう。そういう点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/106
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107・小笠原臣也
○説明員(小笠原臣也君) ただいま現行の公職選挙法の規定の仕方について御説明を申し上げたわけでございますし、私どもそういうふうに解釈しておるわけでございますが、仮に今後の問題といたしまして立法論としてどうするかということになりますと、先ほど法制局の方からも御答弁がございましたように、二重国籍者の被選挙権から排除することが合理的であるかどうか、二重国籍者といってもいろいろな態様があろうかと思いますし、被選挙権といいましてもいろいろな内容があろうかと思いますので、そこの辺を合理的であるかどうかということを慎重に判断をして結論を出さなければいけない問題ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/107
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108・飯田忠雄
○飯田忠雄君 これは国家、国というものの成り立ちは何であるかということを頭に置いてひとつ御答弁願いたいのですが、今ここは行政の論議をしているのじゃないですから、立法の論議ですから、立法でどうあるべきかという問題ですよ。
それで、今重国籍省であってもこれに被選挙権を与えるかどうかは慎重に考慮しなければならぬとおっしゃったが、重国籍者がもし日本の被選挙権が欲しければ外国籍を逃れるということを宣言すると同時に、日本に忠誠義務を誓って、外国に対しておまえの国には属さぬぞということを通告する。そして強制的に離脱を図るとか、あるいは国連の方に調整を求めてそういう問題の解決を図るとか、あるいは事前に国際条約をつくっておいてそういうような問題については解決を図るとか、いろいろな問題の解決方法がございましょう。そういう解決方法を考えないで、今の国籍法で父母両系主義をただ漫然と決めて、その上、憲法十四条の適用があるのだなんていうふうなお考えを持たれたのでは、これは私どもは大変不安を感ずるわけです。
なぜかというと、現在我が国は自由主義国家だ。自由主義国家においては法をつくるときに厳格につくっておきませんと後から手直しは難しいのです。殊に我が国の場合は世界各国の協力を得て独立を得ている。憲法の前文にそうあります。世界各国の協力を得なければ独立は保てないところなんですよ。そういう国において、世界各国から干渉をいや応なしにやられるような国家体制をつくることは大変危険であると思うのですよ。二重国籍者に日本の政権につくことを許した場合に、その二重国籍者は必ず強い方の国籍の方につきます。弱い方にはつかない、弱い方につけばやられるのだから。弱い者は常に強い者からの圧迫の手ができるだけないように防ぐ国内体制が必要であると私は思いますが、この点についてはいかがですか。政府の御答弁、どなたでもいいですが、法制局から順繰りに言っていただいていいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/108
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109・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 今度国籍法が改正になりまして父母両系主義が採用されますと、重国籍者がふえてまいるわけでございますが、それがどのようなところで問題になるかということは十分に検討しなければなりませんけれども、この法案が成立しました後には、各法域の分野におきましてそれぞれ重国籍者に対してどういう対応をするかということが検討されるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/109
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110・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、問題を変えますが、現在、世界各国で重国籍を当然のこととして採用しておる国家がございますか。つまり国籍というものは重国籍で結構だという立場で国内法を持っておる国はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/110
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111・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもの調べた結果によりますと、どこの国も国籍唯一の原則というのを国籍法の原則として考えておられるように思います。ただ、その原則をどこまで強調するかということは各国によって差があるようでございま
して、午前中にも話が出ましたけれども、ソビエト等の社会主義国家におきましてはおおむね二重国籍というものは明確に排除するという規定を設けております。そのほかの国につきましては、重国籍が出るということはやむを得ないことだというふうには考えておりますけれども、しかしなるべくそれを排除するような方法を何らかの方途で考えております。出生の時点で生じないようにするとか、あるいは出生後何かの事由でそれを排除するような方法をとるというふうなことで、各国の法制がまちまちでございますが、なお多くの国の中には外国の公務につくとか、そういうような場合には自国の国籍を失ってしまうというような措置をとっておる国もあるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/111
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112・飯田忠雄
○飯田忠雄君 外国では国籍単一主義をとろうとしておるし、殊に共産圏では絶対的にそれをとっておるというお話でございましたね。そうしますと、今日世界は世界単一国家じゃないのですよ。たくさんの主権国家の対立状態にある。主権国家の対立状態にある中で、ほかの国は単一主義をとっておる、我が国だけが重国籍を自由に認めるということになりますと、政治的支配においてどういう関係が起こるかということをお考えになったことがあるでしょうか。これは国際政治の問題です。国際政治において重大な問題が生じます。どなたか、どうぞお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/112
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113・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに、重国籍者がふえてまいりますと、国際的にもいろいろな問題が出てまいることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、我が国も、今度の父母両系主義によって重国籍者がふえていくであろうというようなことになりますと、同時にそれをいかに発生を防止するか、あるいは出た場合にはそれを解消するような方法を考えていかなければならないというふうに考えておるところでございまして、各国もそれぞれ国籍法の分野において特別の規定を設けたり、あるいは条約等でそれらの問題が解消する方途を講ずるというふうなことに努力をしておるように承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/113
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114・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それじゃ、これ、次の問題に入りますが、自分の意思に反して外国の法律によって兵役その他の義務を強制せられた重国籍者、そういう重国籍者につきまして、日本国籍を持っておるのだということを主張して、我が国は外国からの引き渡し要求を拒否し得るか。つまり外国は自分の国の国籍の者だからこれを我々の国に引き渡せと、こういうことを理論的に、理論的な問題ですが要求せられたときに、日本として、いやこれは日本国籍も持っておるから、おたくの方には引き渡すわけにはいきませんといって拒否できるかどうか、こういう問題。この問題は抽象的の問題と同時に、力関係の問題とも加えて御答弁を願います。利益衝突の問題ですね。外務省おいでになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/114
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115・河村武和
○説明員(河村武和君) お答え申し上げます。
そもそも一般的に国際法上の観点から申しまして、国家は、自国民でありましょうと他国民でありましょうと、自国領域内にいる人を他の国からの引き渡しの請求に応じて引き渡さなければならないという国際法上の義務というものは存在していない、このように言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/115
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116・飯田忠雄
○飯田忠雄君 理論上はおっしゃったとおりですが、我が国が力関係で弱い場合、例えばいろいろ恩恵をこうむっておる国から要求された、具体的に言いますとアメリカ合衆国から日本が要求された、また武力的にとてもかなわない国、例えばソビエト連邦から要求された、言うことをきかなければ報復するぞということになりかねない場合に、外務省はどういう態度をおとりになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/116
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117・河村武和
○説明員(河村武和君) 私が御返事するのが適当かどうか疑問でございますけれども、今先生のおっしゃいましたようなケースにつきましては、まず日本の国内法の側面から考えなければならない点があろうかと存じます。すなわち日本の国内法上、その人の意思に反してその人を出国させるということは国内法上の要件を満たさない限り我が国政府としてとることができないことであろうかと、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/117
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118・飯田忠雄
○飯田忠雄君 じゃ、こういう問題につきまして国内法をつくることは、やはりいろいろ差し支えがあって困るのでつくらない、つくらないでその場になったら適当に処置しよう、その方がいいではないかという御意見なのか、あるいはこの際はっきりした国内法をつくっておこうという御意見なのか、いずれでございますか。これはどこの所管ですか。法務省ですか、それとも外務省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/118
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119・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私は所管ではございませんけれども、私どもの理解しておるところでは、日本国民が日本に居住するということはこれは一つの基本的な権利だろうと思います。したがいまして、特段なことがなければ引き渡すということはあり得ないと思います。ただ、その特段の事情としましては、犯罪人引き渡しの関係とかそういう条約が結ばれ、そして、それの国内法上の手続がきちんと整備されておるという場合には、それにのっとって引き渡すということがあろうかと思いますけれども、それ以外は現行法では何も規定はないわけでございますし、その犯罪人引き渡しと同じような特段な事由があって、国内的にもそれが承認されるような法的な整備がされなければ引き渡すということはあり得ないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/119
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120・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは次に行きますが、今の問題も実は金大中さんが拉致されたでしょう。ああいうことがありますので本当は問題があるのですよ。兵役の義務がある者を持っていかれるということは将来もあり得るのですよ。だけれども、今ここで論議しても皆さんを苦しめるだけだから、やめておきます。
次の問題に入りますが、世界人権宣言というのがございますが、その中に国籍変更の自由を認めておりますね。人権宣言は、これは国連の総会で採択されておりますが、日本は国連に加盟しておるのですが、国連加盟国は人権宣言に書いてあることについてこれを守る義務があるのかないのか、その点まずお尋ねします。これは外務省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/120
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121・佐藤俊一
○説明員(佐藤俊一君) お答えいたします。
世界人権宣言は、その前文において「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。」と述べております。したがいまして、右から明らかなとおり、努力目標の宣言としての性格を持っておりますので、国家に対して法的義務を課するものではないと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/121
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122・飯田忠雄
○飯田忠雄君 努力目標とおっしゃいましたね。努力目標というものは、努力を尽くすということを要求していない努力目標といったものもありますか。努力することを要求しておるから努力目標でしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/122
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123・佐藤俊一
○説明員(佐藤俊一君) お答え申し上げます。
人権宣言というものの意義というものも考えあわせますと、努力目標としてやはり世界の各国に対して提示されるという意味において採択されたものだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/123
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124・飯田忠雄
○飯田忠雄君 実はこれをお尋ねしましたのは、国籍の問題は日本の国だけの問題ではなくて外国が関連しますから、だから我が国の国籍を選択して外国の国籍を放棄したいという宣言をしたときには、これは当然国籍の放棄宣言なんだから、それを世界のどの国も認めるべき努力をしなければならぬのではないか。努力をしなければならぬということは、日本の国からその国に要求できるではないか、あなたのところ努力してこれをひとつ放棄を認めてやってくれという要求は我が国においてする権利があるのではないかということです。あれば外務省でそういう要求をしていただかなければならぬ。それによって今度の国籍法の難点を解消するという問題になるわけです。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/124
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125・河村武和
○説明員(河村武和君) お答え申し上げます。
今政治課長から申し上げましたとおり、世界人権宣言自体は各国に対して国際法上の法的な義務を課するというような性格の文書ではございませ
んので、先生が申されましたいわゆる要求する権利があるということは、この世界人権宣言の存在ということからは法的には出てこない、こういうことかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/125
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126・飯田忠雄
○飯田忠雄君 どうも私の質問の仕方が悪かったかもしれませんが、私の質問はこうなんですよ。人権宣言で世界各国は努力義務がありますね。人権宣言に書いてあることを認める、そういうことは先ほどおっしゃったわけで、それでいいのですが、努力義務があるならば我が国はその努力義務を行使してくれるように相手国に話をすることができるのではないか。それも努力義務の一種でしょう。相手に国籍放棄宣言をしたのだからおまえの国もひとつ認めてやってくれということを交渉するのもこの努力でしょう。日本にこういう努力義務があるのじゃないか。それは日本の外務省の仕事ではありませんか、ということをお尋ねしたのですよ。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/126
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127・河村武和
○説明員(河村武和君) 一般的に申し上げまして、政府がある政策をとるという決定を行いまして、その決定に従って外国の政府と交渉をするということは当然のことながら可能でございます。人権宣言との関係において政府がどのような考え方に基づいて、どのような国と交渉するかということは個々のいろいろな問題に即して検討される、こういうことになるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/127
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128・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、これは将来の宿題にしまして次に行きますが、大分時間がたちましたので具体的の問題をお尋ねしますが、外務省にお尋ねしますが、外国で子供が生まれますね。生まれました場合に出生届はどこへ出すことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/128
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129・池田勝也
○説明員(池田勝也君) 御説明申し上げます。
外国で生まれました子供の出生届は出生地の在外公館長、つまり大使館あるいは総領事館に届け出るか、あるいは届け出事件、つまり出生したということでございますけれども、その人の本人の本籍地の市町村長へ郵送等によって届け出ることができることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/129
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130・飯田忠雄
○飯田忠雄君 外国公館に届けますと、外国公館から本籍地に通知をしてくれますね。だから結局同じことですね。
そこでお尋ねしますが、子供が生まれたので日本領事館に届けた、今度の父母両系主義でいきますと、それだけでもう日本国籍になりますね。届けたらすぐ戸籍に載りますからね。日本国籍の留保をなぜしなければならぬのですか。留保ということは、これは届けることでしょう。留保の意思をしなければいけないというのは、どうも私わからない。どういう意味なんでしょう、留保の意思というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/130
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131・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 留保を必要としておりますのは、外国で生まれまして、そして二重国籍になるという関係に立つ方について留保の意思表示をしていただかなければ日本の国籍は失われる、そういう制度でございます。
この留保制度をとりました理由は、外国で生まれたということは我が国との関係の結びつきが一つその点では足りないということが言えます。それからもう一つ、二重国籍ということでございますので、また日本との結びつきがそこで一つ足りないというようなことになりますので、多くの場合には、一概には言えませんけれども、外国にそのまま定住をして、日本の国籍が法律的に仮に認められたにしても、それが形骸化してしまうという可能性もあるわけでございます。そういうところから現行法におきましても留保の意思表示をしていただくということにしてあるわけでございます。ちなみにブラジルあたりの在外公館のお話伺いますと、出生によって日本国籍をも取得するのだけれども、ブラジルで生まれたということによってブラジル国籍も取得するわけでございますが、そういう方々の三分の一程度が留保届を出されるのではないかというふうなことを言っておられるわけであります。そういうふうなことから考えまして、留保制度というものがあった方が形骸的な二重国籍というものを防止するためには必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
ただ、それを出生届を出しさえすればそれでいいではないかという御議論もあるわけでございますけれども、出生届と申しますのは、これは日本国民である限りは当然出生届を出さなければならないという義務が戸籍法上あるわけでございまして、これは事実のいわば報告でございます。留保制度と申しますのは、特に日本の国籍をとどめておきたいということの積極的な意思表示でございますので、その届けとしての性格が違うわけでございます。したがいまして、理論的には出生届とほかに留保届というものを出していただくというふうな、理論的にはそうせざるを得ないわけでございます。
ただ、現実問題といたしますと、出生届は出すけれども留保届は出さないという方は、これはまれな話でございますので、兼ねてもいいではないかというふうな議論が出てくる余地はありますけれども、私どもはそういう関係では出生届に留保の意思表示を簡単にあらわすような、そういう届け書を用意いたしまして、なお在外公館でも、もしその留保の記載がない場合には確認をしていただくというようなこともお願いをしたいと思っているのでありますけれども、そういうことによって、事実上は出生用イコール留保届という形で運営されることを期待いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/131
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132・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今御説明を承りまして、どうも理解しかねるのですが、父母両系主義をとりますと、父親の方も母親の方もこれは日本人である場合、どちらか一人が日本人である場合、それはどちらでもいいのですが、生まれた子供を在外公館に届けますね。在外公館に届けますれば、それで当然日本の国籍があるので、届けることによって戸籍にも載る、戸籍に載れば国籍の証明もある、そういう事態が完備されてしまうのですが、完備されてしまうのに、もし留保をしなければ国籍を失うというのはどういうことなんでしょう。その点がどうも私はわからないのです。留保しなくたって日本国民として戸籍に載っちゃった、それをなぜまた留保しなければならぬのか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/132
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133・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず手続的なことから申しますと、出生届をお出しいただきましても留保届が出されない海外出生の二重国籍児につきましては戸籍には載せないわけでございます。これは留保届がありませんから日本の国籍は出生にさかのぼって失うことになりますので、これは戸籍には載せないというのが戸籍の手続でございます。
なお、両親ともに日本人であるという場合に、生地主義の国で生まれた子供については何も留保届をしなくてもいいじゃないかというふうな感覚もあろうかと思いますが、実は国外で生まれる子供さんで、両親とも日本人だという場合でありましても、これは例えば会社の関係で駐在しているとかというふうな方もおられると同時に、非常に多くの方はいわば移民として向こうに永住するつもりで行っておられるという方もかなりおられるわけで、むしろ数としてはその方が圧倒的に多いかと思います。そういう場合に、生まれた子供さんについてはこれはずっとそこに永住するということになるわけだから、したがって日本の国籍を持っておってもそれは形骸化してしまうだろうというような場合には、その出生の時点でひとつ整理をするといいますか、はっきりさしていただくという意味で留保の届け出をしていただくことがいいのではないかということで、その留保制度をとっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/133
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134・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そうしますと、留保制度というものは、日本の国籍を留保するのではなくて日本国籍を離れることを留保するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/134
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135・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは日本国籍を留保するのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/135
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136・飯田忠雄
○飯田忠雄君 どうも話がわからないのですが、在外公館に届けましても、それが戸籍に載らぬということになりますと、これは重大問題だと思いますよ。在外公館に届ければ、在外公館は本籍地
にその旨を通知するのが当然のことなんですよ。通知すれば戸籍に役場は載せるのじゃありませんか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/136
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137・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは出生届が出ましても、重国籍者である場合には、これは理論的には届け書を受け取るだけでございまして、留保届が出ませんと、現行法で申しますと一週間後には日本国籍を喪失するということになるわけでございます。したがいまして、戸籍には結果的には載らないということになります。そういうことでございますが、出生届を現実にお出しになる在外邦人は、これは実際問題としますと、すべてこれ留保届をお出しになる方ばかりでございます。したがいまして、日本国籍を積極的に残しておきたくないという方が留保届はもちろんのこと出生届もお出しにならないという形になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/137
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138・飯田忠雄
○飯田忠雄君 留保届の規定は、国籍法以外に留保をしなければ国籍を失うということを決めた法律がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/138
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139・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国籍の関係は国籍法で定めるということでございますので、国籍法以外に定めている法律はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/139
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140・飯田忠雄
○飯田忠雄君 現在、今度国籍法を改めるための審議をしているのでしょう。だから、法律案に書いてあるから、それを既定のほかの法律にも憲法か何かに決めてしまったように考えまして主張なさるのは、私はどうも納得いかぬのですが、そういうむだな二重になるようなことはむしろこの際やめて、出生届だけで済ませるという方向に持っていった方が完全でいいじゃありませんか。今出生届という規定がいいか悪いか、この問題を論議しておるのですから、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/140
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141・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 立法論としてはいろいろあろうかと思いますけれども、私どもは出生届というものの性格と、それから留保の届け出というものの性格が違うものであるから、したがって、それぞれの届け出があることが必要だという考え方に立ってこの改正法案を作成しているわけでございます。
出生届といいますものは先ほど申し上げましたように事実の報告でございますので、事実の報告の中に日本の国籍を残しておきたいという意思表示が含まれているというふうに評価しても、それは規定によってはできなくはないのでありますけれども、しかし事柄の性質が違うから制度としては出生届と留保届を二つ出していただく。ただ現実問題とすれば、その出生届の中に別の紙を出していただくのじゃなくて、一つの紙の中に日本国籍を留保するという項目を書き込みまして、それにチェックしていただければそれで両方が全うされるというふうな仕組みにしたいということを考えて今度の改正法案を考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/141
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142・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今度の改正案の第二条を見ますと「子は、次の場合には、日本国民とする。」とありますね。一が「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」と、こうはっきり書いてあります。もう生まれたときに父または母が日本国民であれば当然日本国民とすると法律で決めているのですよ。だから、出生届というのはおっしゃったようにもちろん届けてありますが、それは戸籍役場が届けないとわからぬから、戸籍役場では戸籍に載せてもらわないと国籍があるかどうかの証明にもなりませんので届けるわけなんですが、届けによって日本国民になるわけじゃない。もともと父または母が日本国籍であれば日本国民なんです。あとの問題はこれは手続の問題なんですね。
それで、もう日本国民になってしまっておる者に対してなぜ日本国民の国籍を留保しなければならぬのか。これは非常に私は疑問に思うのですよ。これは父系主義をとっておるときには意味があったでしょう。父系主義をとっておりますると、その場合は母親が日本人の場合に、将来子供に日本籍を持たしたいと思うときには留保するということも意味がないではない。できるかどうかは別にしまして意味がないではない。しかし父母両系主義をとっておるのに、もう日本国民になってしまっておる者にわざわざ出生届に留保まで書けというのは、これは無用のことではないかというふうに私には思えてしようがないのですが、これはどうでしょうか。もう一度御検討願う余地はないかどうか。これは大臣も今聞いておられて変にお思いになりませんか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/142
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143・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 留保制度と申しますのは、先ほど来繰り返し申し上げておりますけれども、外国で生まれて、しかもその出生によって二重国籍になる方だけが対象でございます。それ以外の方は留保届は必要ないわけであります。この留保制度というのは、条文の規定でもおわかりのとおり、出生届の際に留保の意思表示をされないと日本国籍を出生のときにさかのぼって失うという制度でございます。したがいまして、御指摘のとおり二条の規定で日本国民を父または母とする子供が生れた場合にはその瞬間には日本国籍を取得するわけでございますけれども、留保しなければさかのぼって失うということになっておるわけでございます。そういう制度でございます。
そういう制度それ自体がいいか悪いかということになりますと、これは別問題でございますけれども、出生届を出すということで、いわば留保届の制度と同じことに評価をしたいということをもしお考えになるとすれば、それは届けの出し方の問題だろうと思います。それは先ほど来申し上げますとおり、出生届というのは事実の報告を届けるものであり、留保というのは、もししなければ日本の国籍をさかのぼって失うというふうな重要な意思を示すものでございますので、これは制度としては二つの内容だということで別々に考えざるを得ないのではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/143
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144・飯田忠雄
○飯田忠雄君 これはそういうわざわざややこしい制度をおつくりになることは、なるほど重国籍者を減らすためにやるということについては役立つかもしれませんが、皆さんのように法律に詳しい人ならともかく、普通の人は法律なんか知らないのですよ。だから届けさえ出せばいいと思って出した、これは役場に例えば生れたと言って郵送したとしましょう。役場に載せてもらったのだけれども知らぬ間に日本国民でなくなっちゃった、そういう事態をなぜつくり出さなければならぬのか。これは大変重大な問題だと思いますよ。
そこまでやらなくても後で選択制度があるのですから、離れたかったら選択して外国へ行けばいいことです。これは子供の時代に、生まれたときに既にそういうもういや応なしに日本国籍から外すような、親の過失によって外すような、そういう制度は設けるべきではないのじゃないでしょうか。むしろこの留保制度なんというものは要らないものであって、出生届だけあればそれでいいと私は考えるわけですが、これは留保届をしなければならぬということになると、大変窮屈な義務を国民に負わせます。二重国籍者になるといいましても、たまたま例えばアメリカに住んでおれば向こうの法律でなってしまうのであって、日本の法律でなるのじゃないのですよ。親が日本人だから日本籍だとみんな思い込んでいる。たまたま外国におったために日本国籍が知らぬ間に消えてなくなるという、そういう事態を生ずるような法律は我が国としてはつくるべきではないのではないですか。と思いますね。
こういう点は、これは非常に重要な点なので、特にお尋ねするのですよ。これはこういう法律、個々の点においては非常な疑問が多い法律なんですが、そういう点について、どうでしょうか。これ、実はこういう点を衆議院において論議されていないのです。こういう重要な点を論議しないで通してしまって、法律にしてしまってから国民を苦しめるということでは困ると思います。だから特にここで私は指摘をいたしますが、どうですか、この問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/144
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145・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 出生届だけで足りるのではないかという点につきましては、出生届をするかしないかということと法律的な日本国籍を持つか持たないかということは別の事柄でございます。したがいまして、出生届をすることから日
本国籍に直接結びつくということはできないかと思うのでありますが、ただいま御指摘のように、留保制度というものをやめてしまってそして将来の選択制度で賄えばいいではないかという御意見でございますけれども、その点も法制審議会においては十分に検討したところでございます。ただ、重国籍の場合に、どちらの国籍も同じようなウエートで結びついているかといいますと、これはいろいろなケースがございますから一概には言えないでしょうけれども、おおむねどちらかに偏っているといいますか、傾きがあるだろうと思われます。その傾きの薄い方、そういうものについてはなるべく形骸的な国籍というものをなしにして、そして国籍単一の原則を維持していきたいというのが私どもの考え方でございまして、その一つの方法として海外で生まれた二重国籍の方についての留保制度というものを残すことにしたわけでございますり
それはなぜかと申しますと、外国で生まれたという事実、したがって日本との居住関係での結びつきがひとつ少ないわけです。それから、二重国籍でありまして、これは生地主義の場合には両親とも日本人ということもありますけれども、血統主義で二重国籍ということになりますと、また血統的にも結びつきが弱いということになります。したがいまして、そういう海外で生まれた二重国籍の子供さんというのは、先ほど申しました傾きかげんから申しますと日本へ傾かないという可能性が多いグループであろうということが言えると思います。現に先ほども申し上げましたように、ブラジルあたりでは両親が日本国籍を持っておる方あるいは父親が日本人であるという場合の子供さんについても留保届を出される、したがって事実上は出生届を出されるという方は三分の一程度だというふうにも聞いております。そういうことでございますので、そういうようなグループに当たる方については、その際日本の国籍をなお残したいという積極的な意思を述べていただきたい、それによって日本の国籍を残し、もしそういう留保届を出さない方は日本国籍を失うということにして、そこでひとつ重国籍の発生を防止したい、またそれにも合理的な理由があるであろうというふうに考えておるところでございます。
ただ、そう申しましても留保届というものの性質がよく理解できないとか、あるいは何かのことでその留保届が期限までに間に合わなくなるというふうなケースもなくはないので、まず留保届の届け出期間を三カ月に延ばすことにいたしました。それからまた、留保届をしなかったことによって国籍を喪失した子供さんについては、これは一定の条件のもとに日本の国籍を再取得をする、帰化ではなくて再取得をするという道を設けることによって対処をするという考え方でございまして、私どもとしてはその留保届というのは二重国籍防止のためにはかなり有効かつ合理的な手段であろうというふうに考えておるところでございます。
なお、そういうことでありますけれども、御意見のように留保届をやめてしまって選択制度だけにしたらどうか、二十二歳まで待てばどうかということも一つの議論としてはあり得ようかと思いますが、ところが先ほど申し上げましたように、実態といたしますと留保届を出さないような方は出生届もお出しにならないことがほとんどであります。そういう場合には、法律的には日本国籍を持っているのだけれども、日本の国とすればその日本の国籍を持っておられる方を把握しないという状態が二十二年間続くわけでございます。
それ自体も一つの問題と同時に、今度の改正法案に盛られておりますような選択制度は、選択を二十二歳までにしなければ当然日本の国籍を失うということではなくて、法務大臣の催告によってそれでも応答がない場合に日本国籍を失わせるという制度を考えているわけです。そうしますと、把握していない日本国籍の方が殊に海外にたくさんおられるという方については法務大臣の催告が事実上不可能になる。そうしますと、催告による喪失もできないということになりまして、むしろ形骸的な日本国籍を有する重国籍者が数多く一層残ってしまうというような結果にも至るであろうということから、留保制度と選択制度というものは両方相矛盾するものではなく、むしろ両方の制度を併用することによって重国籍がかなり防止、解消できるのではないかという考え方に立っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/145
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146・飯田忠雄
○飯田忠雄君 国籍の問題ですから、特に重要ですから、もっと重ねて質問いたしますが、外国の移民ですね。移民の人は届けなければいいんですよ。自分はもう移民だからこの地に定住すると。定住すると考えておる人は、先ほどもおっしゃいましたように留保届も出さぬとおっしゃいましたね。届けないのですよ。届けなければ日本の国籍に載らないのだから、それでいいじゃないか。これは法律では父母両系主義をとって「日本国民とする。」と書いてあっても、それは抽象的な言葉であって、届けなければ日本の戸籍に載らないから、国籍の証明がないのですから、そうしたら国籍がないと同じなんですから、それで移民の人はいいではないか。一々わざわざ留保をせいとかせぬとかというようなことは無用なことであって、いやなら届けなければいい。日本国籍の欲しい人は届け出ろ、これだけで私は事が済むと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/146
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147・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ただ、移民の方々については子々孫々までその地でというふうなことを考える方も多かろうと思いますけれども、中にはやはり自分の子供には日本の国籍を残しておいて、そしていずれ父祖の地と申しますか、日本に行って、そこでまた生活をするという、そういう余地を残しておきたいと考えられる方も、これはもちろん皆無ではない、かなりの数がおられると思います。現に毎年二千八百人程度の方が現行法のもとにおきましても留保届を出しておられるわけでございます。この中にはそういう方もかなりの数がまざっておると思います。そういうことでございますので、出生届だけで決めてしまうというのはどうかなという感じがするわけでございます。
繰り返し申し上げますように、出生届と申しますのは事実の報告でございまして、しかも法律的には出生届を出さなくても日本国民であるという事実には変わりないわけでございます。国内でもいろいろな家庭の事情から出生届をお出しにならないで、学校に行くごろになって出生届を出されるという、そういう子供さんもこれは決してまれではないわけでございます。そういうことを考えますと、出生届だけで決めてしまうというのは制度的には問題があると思いますので、やはり留保制度というものを残し、また出生届と同時に留保の意思表示をしていただくということが制度としてはあるべき姿ではないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/147
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148・飯田忠雄
○飯田忠雄君 この点は私は納得しませんが、時間がありませんので次に参ります。この点はいろいろ問題点がありますので、ぜひ将来とも御研究を願いたいのです。
次の問題に参りますが、国籍選択の意思表示をしろということがございますが、具体的な手続ですね。日本の国内ではどういう方法で手続したらいいのか。例えば市町村役場に行って選択しますという宣言を口頭でやったらいいのか、あるいは書面で出すのか、何か特別の方式をお決めになる予定でございますか。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/148
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149・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国籍選択の届け出と申しますのは、今度の改正法の中の戸籍法の一部改正の中に規定を設けておりますけれども、これは市町村長に届け出るということになるわけでございます。国外の場合には出生届等と同じように領事館に届け出いただければ結構でございますが、これは原則的には届け書を出していただくということになりますが、まあ文字が書けない等のいろいろなことがあった場合には、これは口頭でも絶対できないというわけではございませんが、原則的には届け書を市町村に出していただくという手続を決めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/149
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150・飯田忠雄
○飯田忠雄君 先般衆議院の方でいろいろやりと
りが行われました際に、国家に対する忠誠義務という言葉がございましたが、この忠誠義務というのはこれは法律上の義務であるのか、あるいはそういうものでないのか。もしくはまた憲法には書いてないので、憲法精神の上から言っての義務なのかどうか。そういう点についてお伺いいたします。これは実は大変重要な問題を将来含んできますので正確な御見解を示していただきたいわけです。もう時間がないかもしれぬけれども、時間のある限りお願いいたします。これは法制局ですか、法務省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/150
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151・関守
○政府委員(関守君) 今お話しのございました忠誠義務ということでございますけれども、忠誠義務についてどういうふうに考えるかという、その忠誠義務というものの観念か必ずしも定かでございません。しかし外国の憲法などにはそういうことを書いているのもあるようでございますけれども、我が国の憲法には御承知のように忠誠義務をうたった規定はございません。ただ、一般に国民が国家の統治に服しまして、その国法に、憲法を頂点といたします法秩序に従うというような意味での義務がございますことはこれは当然だろうと思いますけれども、これを忠誠義務としてとらえるといたしますれば、そういうものは我が国の憲法に規定はございませんけれども、当然あるのだろうというふうに考えられます。ただ、いろいろな意味で忠誠義務という言葉を使われておりますし、それぞれまた具体的な場面場面と申しますか、事項等に応じていろいろ違ったとらえ方もできるかと思いますので、その点はなお慎重に検討すべき問題はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/151
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152・飯田忠雄
○飯田忠雄君 この問題、とても時間を要しますので、このぐらいにしておきまして将来の宿題にしますが、次の問題に入ります。
これは国籍の喪失の問題ですが、この規定を見まして、十一条と十三条の関係がどうもはっきりしないのです。国籍の離脱のところで、日本国民は「外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」とありますね。自由意思で外国の国籍を取ったら日本の国籍を失うのだと、こういうことが書いてありますが、その次に十三条を見ますと、法務大臣に届け出ることによって国籍を離脱できるのだ、外国の国籍を持っておる日本国民、つまり重国籍者は法務大臣に届け出れば日本の国籍を離脱できると、こう書いてあるのですよ。
十一条の方を見ますと、自分の希望によって外国の国籍を取ったときに日本の国籍を失うということは、自分の希望でなしに外国の国籍を取ったときには日本の国籍を失うということになりますと、親が勝手に届け出て外国の国籍を取ったということになると、自分の希望で取ったのじゃありませんね。そういう場合に日本の国籍を失うということになってしまう。十三条では法務大臣に届け出れば離脱できると。離脱と国籍を失うということが違うのかどうか。これは国籍を失うというのも国籍を離脱するというのも、言葉ではなくて実態は同じ意味じゃないでしょうか。いかがでございますか、こういう点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/152
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153・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 言葉といたしますと、国籍を失うというのはいわば効果、結果をあらわす言葉でございまして、離脱はむしろ行為の方に着目したような言葉でございますが、その結果としてはもちろん国籍を失うという効果が出てくるという関係になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/153
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154・飯田忠雄
○飯田忠雄君 私が質問をいたしておりますのは、十一条の方においては法務大臣に届けなくても日本の国籍を失うのですね。ところが十三条の方は法務大臣に届けると国籍を離脱する。つまり失う場合は、二重国籍者が外国の国籍を取ったときには日本の国籍を失う、また二重国籍者が離脱したいときには法務大臣に届けるのだと、こういうことでしょう。離脱とそれから国籍を失うということの実態は日本国籍から離れることですね。どういう言葉を使おうと同じことでしょう。にもかかわらず、片方は法務大臣に届けなければならぬ、片方は届けなくて失うと、こうなるのですが、この辺のところはどうもはっきりしないのですが、どういうわけでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/154
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155・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 先ほども申し上げましたように、離脱の方は本人の意思表示という一つの行為、そういうことをすることによって日本国籍を失うことを書いておるわけでございまして、したがいまして、その意思表示の仕方として法務大臣に届け出るということがここで決められているわけでございます。
十一条の方は、外国に帰化をするという場合が典型例だろうと思いますけれども、外国の政府の方に帰化の申請をしまして、そして帰化が許可になったという、いわばそういう法律的な事実が発生する、それに伴って日本の行為としては日本の国籍を失うという、そういう効果を付与するということでございますので、したがいまして片方の方では法務大臣に対する届け出という形式による意思表示によって日本の国籍を失うし、片方の方は外国の方で帰化なら帰化をしたときに失うということで、そういう感じで書き分けておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/155
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156・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そうしますと、具体的に言いますと、十一条の場合は、例えば親がアメリカ籍を取得した、その場合に子供は自分の意思によってなったのじゃありませんから、子供の国籍は親についていくのかいかないのかという問題がございますね。親についていかなくて、そのまま日本国籍に残っていると親だけがいくのか。つまり赤ん坊の場合ですよ。そういう場合はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/156
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157・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 親の方が外国に帰化をいたしましても子供が帰化しなければ当然これは適用はございませんので、子供については日本の国籍があるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/157
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158・飯田忠雄
○飯田忠雄君 この場合に問題になりますのは、子供は意思能力がないですね。殊に生まれたばかりの子供の場合に。生まれたときはなるほど日本で生まれたから日本に届けたのだが、そのまますぐ親が外国に行っちゃった、こういう場合に、その子供の扱いですが、それを親とは関係のない日本国籍にいつまでも置くということが一体いいのか悪いのかという問題がございましょう。これはこの子供にとっては重大な問題だと思いますね。そういう点についての手当てはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/158
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159・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 今おっしゃったような考え方は、法学上、親子国籍同一主義というような考え方にも近いお話ではないかと思いますけれども、ただ、当該外国の方で帰化を認める場合に、もし親子国籍同一主義をとっておれば一緒でなければ帰化を許可しないというふうなことになろうかと思いますけれども、そうでない親子国籍独立主義をとっておる場合には、これはばらばらに許可をするということもあり得るわけです。そうしますと、その場合に日本の側から見ますと親の方が外国籍で日本国籍がなくなる、子供だけ残るということがあるわけでございますが、しかしながら日本の国籍法では親子国籍独立主義というものを現行法からとっておりまして、親子が必ずしも同一でなければならないという立場はとっておりませんので、したがいましてこの十一条の効果といたしましても当該帰化をした外国籍を取得した者だけに限られるということで、やむを得ない結果かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/159
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160・飯田忠雄
○飯田忠雄君 これは立法論だから私は申し上げるのですが、親子同一戸籍主義を子供のころはとることが必要ではないか。そうして、そういうものをとるから留保制度が出てくるのじゃないかと私は思うのですよ。親子同一主義をとるから、外国籍になるから将来子供のために日本国籍を留保するというものなら留保制度は非常にこれは意味があるのです。そういうものとして理解できるような制度に、今すぐは法律ができてしまっているから難しいかもしれませんが、しかし将来においてそういう点を考慮した改正をもう一回する必要があるのではないかと思われますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/160
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161・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法律は常に現状に妥当するかどうかということはフォローしなければなりませんので、そういう意味では常に検討の対象にはなるのでございましょうが、この十一条の
関係で申し上げますと、今おっしゃったような事例の場合に、もし十一条の規定をやめてしまいますと、子供の方についても日本国籍を失わせてしまうというふうなやり方をとった場合には、その子供は無国籍になってしまうことになります。これはちょっと採用できないだろう、そうかといって、じゃ逆に、親の方が外国の方に帰化をしたからといっても親の方を日本国籍になお残すというふうな形にするというのは、これは二重国籍としては非常に問題が多いわけでございます。それもとれないということから、今のような場合にはばらばらになってもやむを得ないという結論にならざるを得ないというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/161
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162・飯田忠雄
○飯田忠雄君 せっかくできた法案を審議しておるのですから、これを今すぐ変えるといっても難しいから、そういうことは要求しませんよ。しかし、これは詳しく見ますと非常に問題点が多い法案です。そういう問題点はぜひ法務省で継続的に御研究願って、将来改正をするぐらいのことをやっぱりおっしゃっていただかないと、これは花も実もないですね。こういう点どうですか。法務大臣、今までずっと議論を聞いておられてどういうふうにお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/162
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163・住栄作
○国務大臣(住栄作君) いろいろ御議論があるわけでございます。今度の国籍法の改正をした一つの大きな動機というのはやっぱり国際化時代に対応して現行法を見直す、こういう観点からやっておるわけでございます。いろいろ国籍法、よその国の方針と衝突する、こういうことも非常に多いわけでございます。大体、先生に釈迦に説法でございますけれども、大きく言えば、今まで生地主義と父系血統主義というのは世界の大きな二つの流れであったのでございますが、ヨーロッパの各国においても父母両系主義に変えつつあるような過程の中にあるわけですね。変えた国もございますし、これから変えようとする国もある。そういうことで、ある程度世界の考え方も変わりつつある。こういう一つの段階にあると思うのですね。それに婦人差別撤廃条約の関係もあって国籍法を見直した、こういうことが動機になって改正案の審議をお願いしておるわけでございまして、そういうことから考えますと、これからも国際関係いろいろ変わっていきましょうし、そういう国際的な考え方、方針というものもどうなっていくか、こういうようなこともありますから、今お説のとおり、私ども国籍法についてもいろいろな問題点もやっていく過程において出てくれば、それはやっぱり直しておかないと、国民であるということは非常に大事な問題でございますので、そういうふうな対応は常にしていかなければならないものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/163
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164・飯田忠雄
○飯田忠雄君 大臣の御意向よくわかりましたので、それはそれでやめまして、次に、まだ少し時間がありますので、ほんの少し御質問いたしますが、憲法第十条は日本国民たる要件について法律に委任しておりますね。それで、法律で決めるということで、その法律が国籍法だというふうに理解できるような条文に国籍法なっているわけです。国籍法の今度の案を見ましても、前の案を見ましても、第一条にそう書いてあるものですから。そうすると、日本国民としての要件というものは一体国籍の取得と喪失だけのことなのかということが問題になるわけですね。もっとほかにもあるのじゃないか。例えば憲法上の義務ではないにしても、憲法精神から言うならば主権者である国民は日本の国を大事にして立派なものにするという義務は当然あるわけですね。こういうようなものは国民としての一つの要件じゃないか。つまり自分の国をよくし、自分の社会をよくするということは国民としての要件ですね。そういうような問題については国籍法では一つも触れられていないわけです。そうしますと、日本国民の要件というのはそういうことは一切要らぬのだ、もう取得と喪失のことさえあったらあとはもう何やってもいい、こういうふうにとられがちになるのですが、それで一体いいのかという問題があるわけです。
そこで、この国籍法の第一条はちょっと言い方が大げさじゃないか。「日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。」、日本国民の要件は国籍法で決めてしまっているのだ、ほかのことなしというのはおかしいので、むしろ日本国民たる要件はほかの法律にも決めてあるのです。だから、国籍法ははっきり端的に国籍の取得、喪失について定めることを目的とするという、内容をぴたりあらわすふうに目的のところはあるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/164
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165・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 「日本国民たる要件」ということの内容でございますけれども、要件という言葉は逆に申しますと要件がなくなれば日本国民でなくなるということを意味するわけでございます。そういう意味で、やはり日本国民たる要件を決めるといいますと、取得とそれから喪失のところに結局帰着することになるのじゃなかろうかと思います。先生のおっしゃるような、いわば先ほどのお話に出ましたような忠誠義務とか、そういうようなものは、本来日本国民としてあらねばならないという、そういう姿の面では確かにそうでございますけれども、厳密な法律的な意味におきましては、やはり取得と喪失というところが厳密な意味での要件になろうかと思いますので、そういう考え方に立脚して現在の国籍法はできておるというふうに了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/165
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166・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは時間が来ましたので、あとの質問たくさんありますけれども、この次の機会に譲ります。きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/166
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167・橋本敦
○橋本敦君 今回の改正につきましては、かねてから議論になっておりました父系優先血統主義を両性平等に改めるべきだという議論、さらには沖縄における無国籍児童の基本的な救済が必要だという、こういう日本独自の抱えている問題、こういったことを解決していく方向でこの改正案が出されたということで、私どもはそれなりに評価をしているわけであります。
そこで、まず最初に民事局長にお伺いしたいのですが、男女差別撤廃条約に直接に関連をして今回の父系優先血統主義が改められることになったわけですが、これ自体はかねてからの国際的趨勢だと、こう言っていいと思うわけですね。だからしたがって、フランス、ドイツあるいはスイス、スウェーデン、こういった諸国では我が国より早く両系主義に改められているという、そういう状況が進んでいるわけです。そこで、まさにこの問題は、一つは今日の国際的な方向に沿うものであるということを明確にしたいので、諸外国で父系優先主義から父母平等の両系主義に変わってきた主な国々の経過、どういうように変わってきたか。概要で結構ですから、まず明らかにしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/167
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168・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず父系血統主義から父母両系血統主義に変更いたしました国はフランス、それからドイツ連邦共和国、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ポルトガル、スペイン、オーストリア、イタリアでございます。そのほかアジアではフィリピンとか中国、イスラエル、トルコ、リビア、アラブでも父母両系血統主義に変更したというふうに承知いたしております。
この改正に伴いまして、その他派生するいろいろな問題につきましては各国それぞれの改正の内容が違っておりますけれども、やはり重国籍が発生するということにどう対処するかということがいずれの国においても一つの問題であったように承知いたしております。それにつきましては選択主義をとっておるところもございますし、それからまた国外出生児についての制限を設けるとかいうふうなことを各国の実情に応じて措置をしておるというふうに承知いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/168
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169・橋本敦
○橋本敦君 そこで、先ほども民事局長のお話にありましたが、昨年の二月に中間試案を発表されまして、それが国内的な検討の素材になっただけではなくて、諸外国の反応も今言った国際的な動向の中で見きわめるというような処置をおとりになったということですが、あの中間試案が出され
た段階で諸外国からのこの中間試案に対する反応、特段に何かあったかどうか、この点はいかがでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/169
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170・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 積極的に中間試案に対して各国からの反応はございませんが、むしろ私どもの方が、例えば選択の制度を我が国がとった場合に、我が国とその当該外国との間の重国籍者についてどういう扱いになるだろうかというような点についてはいろいろ照会をしておったりいたしました。それからまた、兵役義務の関係についてもどういうふうな扱いになるだろうかというのも、返答をいただけるところはいただくようにということはいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/170
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171・橋本敦
○橋本敦君 我が国のすぐ周りの国、つまり韓国とかあるいは東南アジアとか、それからアメリカとか、つまり重国籍の関係が生ずるとしてもその可能性の大きな国々の範囲、ここらあたりの状況と、中間試案に対するそこらの国々の重国籍問題を含む見解、意見、これはどういう反応でしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/171
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172・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点につきましては各国でもいずれも国籍法をどういうものに決めるかというのは各国の主権の問題だというふうな了解がございますので、意見らしいものは述べていただくことはありませんでした。ただ、かなり近隣の国々においては、日本の国籍法がどうなるかということは、実際の具体的な問題がどういう問題が生ずるかという側面と、もう一つは自国の立法政策の場合の参考になるかならないかという二つの側面から関心は持っておられるようには伺いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/172
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173・橋本敦
○橋本敦君 そうすると、国際的にはやっぱり趨勢と大勢に従ってこういう方向が進んでいくということで、特段の支障となるような問題はなくて順調に来た、こう考えてもいいわけですね。
そこで一つの問題は、憲法十四条との関係ということがやっぱり男女差別撤廃条約との絡みでも具体的に解決されていくことになるわけですが、それじゃ、この問題は今に始まったことかというと、私は決してそうではないだろうと、こう思うのですね。例えば今日の国籍法が昭和二十五年につくられた、そのときに既に憲法は施行されておるわけです。したがって、我が国の憲法理念からすれば、両性の平等はこれは憲法の基本理念として高く掲げられておるわけですから、当然国会でも、この二十五年法ができる段階、そのときに既に論議になっているわけですね。その段階での論議を踏まえて、その当時法務省としては両性平等と父系優先血統主義の現行法との関係について法制定当時国会でどういうように釈明をされたのか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/173
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174・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 当時の議事録などを読んでみますと、その問題が議論されたことがうかがわれるわけでございますけれども、当時の法務省の見解としては、憲法十四条の両性の平等と父系血統主義というものは、何といいますか、違反するものではない、要するに憲法違反になるものではないという見解でございました。それは一つは……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/174
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175・橋本敦
○橋本敦君 それはもう理由はいいです。結論だけ。その見解だと、それだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/175
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176・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そういう見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/176
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177・橋本敦
○橋本敦君 それだけではなくて、そういう見解ではあるけれども、法務省の答弁のニュアンスとしては、確かにそういう問題もあるので、とりあえず父系主義を本法はとるけれども、しかしながら将来は各国の立法、世界の動向とにらみ合わせて検討するという、そういう余地もあるという答弁をされている。これは間違いないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/177
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178・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 父系血統主義は憲法に違反するわけではないけれども、立法政策とすればそうでない政策もとり得る余地があるので、世界の立法の動向などを見ながら検討する余地はあるという含みは述べられているようにうかがえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/178
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179・橋本敦
○橋本敦君 私が指摘したいのは、やっぱりそのときからこの問題は既に含んでいたということですね。それで、その後具体的な国籍に関する違憲訴訟も提起をされて、一定の裁判所の判断も出ておるわけですね。そういう裁判の中で、法務省側は、国籍というのは権利ではないのだから、したがってその取得について当然の権利でないために、それが父系優先主義をとっていようとも憲法違反の問題は直接に起こらないのだという主張をずっとされてこられた。それに対して裁判所は結論的には憲法違反でないという結論にはなったけれども、法務省のそういう意味での憲法違反問題は起こらないという主張は、これは認められなかったように私は判決を見て理解しているのですが、どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/179
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180・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 結論的には裁判所も憲法違反ではないということでございますけれども、もちろん理由とするところは、私どもが、ただいまおっしゃいましたようなそういう法務省の見解そのままが承認されているということになってないことはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/180
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181・橋本敦
○橋本敦君 例えば昭和五十六年三月三十日の東京地裁判決、これによりますと、その判決の一部をこの本から引用して見てみますと「憲法一〇条の規定は国籍の得喪に関する事項が憲法事項であるとの前提に立ったうえで、その内容の具体化を法律に委任したもの」である、したがって、その立法の具体化、つまり国籍法の制定ということに当たっては「憲法の各条項及びそれらを支える基本原理に従いこれと調和するように定めるべきことを要求している」、つまり憲法的要請がある、これは当然だという判断をした上で、「したがって、国籍法の規定が右の趣旨に違反するときは、違憲の問題が生じることは当然というべきである」、こういう判示があるわけですね。
だから、したがってそういう意味では、ここの判示で二つの問題が私はあると思うのですが、つまり国籍を全然権利でないとする法務省がおっしゃっているような考え方がそのまま通るかどうかについて一つは問題があるということと、もう一つは、今私が指摘したように、憲法十条の規定の解釈と国籍法との関係で、これがまさに憲法原理に反するならば国籍法の規定自体が違憲と判断される場合があるということを明示している、こういうふうに私は思うわけですね。
そこで、午前中も寺田委員との質問の中でも議論されたのですが、一体国籍をどう見るかということですね。これについて民事局長はこれは権利というように見ないということをおっしゃったのですが、それぞれの委員がおっしゃったように、人権に関する世界宣言あるいは児童権利宣言、国際人権規約B規約、こういった規定を見ましても、それぞれ国籍を有する権利を持っているという書き方を最近のそういう国際的機関の動向は言っておるわけですね。だから、私はこれ自体はやっぱり無視できないのではないか。なぜならば、国籍というのは民主社会においてその国の主権者となるという欠くことのできない要件ですから、その主権者になるというそのことが権利でないというのはおかしいのではないか。同時に国籍がなければ社会的に政治的にあるいは教育、福祉その他行政的な側面において利益を受けるという当然の権利が発生しない、こういうことが往々にして起こるわけですから、したがって国籍を有することに敷衍した社会生活上の法律上の地位と権利というのはずっと付随していくわけですね。だから、そういうものとして国籍をとらえるならば、当該一国民にとっては極めて高度の憲法的な権利性を持っている重大な問題だという認識を私は基本的に持つべきではないか、こういうように思うのですが、民事局長のお考えいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/181
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182・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 先ほども申し上げましたけれども、一たん日本国民になった者については恣意的にその国籍を奪われないという意味では私は権利だと思います。ただ、取得する側という問題で考えますと、確かに人権宣言その他に一つの権利という言葉で表現されておりますけれども、それが実体的な一つの具体的な請求権的なような意味での権利ということにはすぐには結びつ
かないのではないかと思います。
これはともかく地球上の人類すべてに適用があってしかるべきだという内容になるわけでございますが、その人が、じゃ、どこの国の国籍を持つ権利があるかといいますと、これはすぐには出てこない問題でございます。したがいまして、各国で国籍法の制定をする場合においても、こういう宣言の趣旨というものは十分に踏まえた上でやるということは、それは態度としてはあるべきだと思いますけれども、何といいますか、実体的な権利ということを言うことは少し私としては無理ではないかという考え方を持っているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/182
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183・橋本敦
○橋本敦君 そこのところの議論はなかなか尽きない議論になっていくと思うのですが、例えば無国籍をなくすという要請は一体どこから出てくるか。今度の法改正も無国籍をなくすという非常にやっぱり大きなねらいがあるはずですね。それ自体は、無国籍をなくすということは当該無国籍者として扱われている人のまさに救済と権利保全という意味を持つ、つまり人権にかかわる問題を持つということが一つと、なるほど国籍は主権にかかわる問題だけれども、無国籍とされている人に当然主権を侵さない範囲で速やかに国籍を取得する状況をつくり出してあげよう、つまり国籍取得の権利を具体的に道を開いてあげよう、こういう私は要請があって、まさに法律的な考え方としては進んでいく、こう思うのですね。だから、そういう意味でも私は権利性というのは今の近代社会の趨勢から見て全部否定し切れるだろうかということは、いまだにあなたの御答弁にもかかわらず私は疑問を持つのですが、その権利性ということは、これは否定し切れないという私の見解をあなたは否定し切れるかどうか。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/183
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184・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 大分難しいことでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、だれかが国籍を持たなければならないということが一般的に言えましても、それがどこの国の国籍を取得するかということは、これは権利という以上はどこか特定しなければならぬわけでありますけれども、そういう面では特定性がないのではないかという気がいたします。それからまた、我が国がそういう無国籍をなくそうという宣言の精神に基づいて立法する場合であっても、例えば世界のどこにいる人であっても無国籍である者については日本国籍を付与するというようなことはもちろん言えないわけでございまして、そういう意味では、やはり権利という言葉の使い方でございますけれども、実体的な意味での権利というものが取得の段階であるというふうには私は言えないのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/184
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185・橋本敦
○橋本敦君 だからしたがって、例えば日本は批准しておりませんけれども、一九六一年の国連で採択された無国籍の削減に関する条約、寺田委員も取り上げられましたが、この条約の第一条によっても、どこでも無国籍者に権利を与えよと、こう言っているわけじゃなくて、その第一条によれば、その国内で出生したそこの無国籍者についてはその国で国籍を与えるように速やかにやりなさいと、こういう特定性を持っているわけですね。ここが私は権利性だと、こう言っているのですよ。だから、そういう意味で局長の答弁は少し私が言っていることを広く横に広げ過ぎられた感じがするので重ねて言ったわけですけれども。
次の論点は、私が言いたいのは、この二十五年制定のときから既に男女平等に反するのではないかという憲法問題が提起をされていた。途中でやっぱり違憲訴訟も提起をされた。なるほど裁判所は違憲とまでは踏み切らなかったけれども、その裁判所が違憲でないとした理由は、私はこれは極めて裁判所としては慎重な言い方をしているというように思うのですね。こう言っていますね。「補完的な簡易帰化制度を併せ伴う限りにおいて、これを著しく不合理な差別であるとする非難を辛うじて回避し得るものであると考える」と、こう言っておるわけですね。つまり法務省のおっしゃる簡易帰化手続があるから、だからそういう意味において救済措置がないわけじゃないので辛うじて不合理な差別であるという批判を免れると、こういうことですから、簡易帰化手続の実態が法務省が考えておられるより以上に困難であるという実情がはっきりした場合、あるいはこれによって簡易帰化手続でも救済されない事情が明確になったときも含めて、すれすれ憲法違反でない、こう言っているわけですから、この裁判所の考え方はやっぱり憲法十四条の関係から見て、現行父系優先主義は憲法上疑義がある、こう言っているというように真剣に私は受けとめるべきではないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/185
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186・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘の、下級審でございますけれども、その裁判所の判決内容で言っておることは今橋本委員の御指摘のような考え方であろうと思います。私どもも憲法違反ではないという考え方はとっておりますけれども、しかしそういうふうな考え方もあるということは、これは尊重しなければならないだろうという気持ちは持っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/186
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187・橋本敦
○橋本敦君 そこで、私がこの問題を取り上げて質問した結論的質問はこうなるのです。つまりこの法の経過措置として、言ってみれば二十年遡及するということで救済をやろうということですね。そこで、二十年さかのぼるということの合理性がどこにあるかということに関連するのです。私は強いて言うならば、まさにこの国籍法は憲法十四条に違反する疑いが濃厚であった、私どもの主張によれば違反していた、こう言いたいわけですから、そういう違憲状況が発生したそのときにさかのぼって改めるというのであれば、憲法の制定、公布、施行のときにさかのぼって権利救済がし得るように遡及する、これがもっともではないか。そういう違憲状態が具体的にいつ生じたかと言えば昭和二十五年の国籍法の制定だから、せめて二十五年にさかのぼって違憲状況を一切なくすという経過措置をとるのが相当ではないか。ということになりますと、二十年ではなくて、せめて昭和二十五年、大きく言うならば憲法制定時にさかのぼるという、こういう経過措置をやるべきではなかったかと、こういう考えがあるものですから、今のような質問をした上でその点の考えを開くわけですが、二十年ということに限定をなさった趣旨はどこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/187
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188・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず、今度の父母両系主義に変えるという考え方が、私どもといたしますと憲法に違反するから変えるという態度をとっておるものではないということが第一点としてあります。それからまた、憲法違反だということを言われる方もあるわけでございますけれども、法制審議会でもそのような議論が出ました。しかしながら、憲法違反だとおっしゃる方も、憲法制定当時あるいは昭和二十五年の現行法制定当時から憲法違反であったということを言われるわけではなくて、いろいろな事情の変更によって現時点では憲法に違反するようになった、あるいは憲法に違反する疑いが濃くなったというそういう御意見でございます。したがいまして、私どもといたしますと、当然に憲法論から言って二十二年にさかのぼるとか、あるいは現行法制定の二十五年にさかのぼるのだという、そういう法律的な理論は成り立たないというふうな考え方をとっておるわけであります。
そういうことを前提にいたしますと、どこまでさかのぼるのが立法政策として適当かという問題になるわけでございますが、そういう考え方から申しますと、経過措置の決め方としてもいろいろな決め方があるわけでございますが、この経過措置の場合には重国籍になる者であっても意思表示によって日本国籍の取得を認めるという立場をとっておるわけですね。また現にそういうものがほとんどだろうと。沖縄には無国籍の方もおりますけれども、経過措置で日本の国籍を取得される方は大部分は重国籍であるということが考えられます。そうしますと、かなり長い年月外国籍を持つ人として社会生活をしておられる方について、重国籍になることを容認するという前提のもとに意思表示だけで認める、日本国籍を取得させるということは、国籍法の考え方全体から言って少し行
き過ぎではないか、したがって、むしろ重国籍問題の余り生じない時点、これがほかのところにもいろいろ出ておりますけれども、成年、未成年が一つの境目になるという考え方をとっております。そしてまた各国の法制もそうでございますけれども、未成年の間はまだ国籍が、何といいますか、完全に固定してないというふうな、そういう受け取り方もできるような法制がかなりあるわけでございます。
そういうところからいたしますと、国籍法の立場から考えて、さかのぼるべき年数の限度は二十年ではないか、それによって今度の国籍法のほかのこととの整合も図られるというところから二十年に決めたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/188
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189・橋本敦
○橋本敦君 局長の答弁の趣旨はそれなりにわかりました。わかりましたが、私が提起をした問題は、あなたの御答弁とは少し違った角度からの問題意識を持っておりますから、たとえそうであっても、私はこの問題についてはなお検討の余地があるという考えは捨て切れないわけですね。
そこで、具体的に伺ってまいりますが、例えば沖縄の無国籍児問題、これについてこの適用でどうなるかという検討を深めてみたいと思いますが、沖縄では、かねてから無国籍児問題というのが問題提起をされまして、いわば沖縄問題が解決しなければ戦後は終わっていないと言われるように、やっぱり私はこれは一つは戦後の深刻な後遺症のあらわれであるし、戦争の傷だと思うのですが、この無国籍児童の問題の現状はどれくらい把握をされていて、この改正法の制定と今おっしゃった二十年という経過措置によって、抜本的に国籍付与によって救済されるというそういう見通しなのかどうか、この点はひとつ法務省のお考えを具体的に教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/189
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190・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 御指摘のとおり、経過措置につきましては、理論的な問題のほかに、実際問題として救済さるべきものは沖縄の無国籍児問題ではないかということが日弁連その他のところから強く指摘をされました。
そこで、実態を調べてみたわけでございますけれども、いわゆる沖縄の無国籍児と言われる方々は、ことしの二月現在で四十七名おられます。その中で日本人母である子でありながら無国籍であるという、この無国籍も米軍軍人との関係では理論的には米国籍を持っているという者もあるわけでございますが、実質上の意味も含めまして無国籍児だと言われている方が二十一名おられるという結果が出ました。その二十一名の中で二十名の方は十六歳未満である、したがって経過措置の対象に当然なるということになります。ただ一人だけどうも成年に達しておられる方がおられるらしいということがわかりました。
それから一方、私どもも一人一人いわばしらみつぶしのように調べたわけではございませんが、その沖縄の無国籍児問題を取り扱っておられますのに沖縄の国際福祉相談所というのがございまして、そのやっておられます瀧岡さんという方が衆議院の審議の段階で参考人としておいでいただきましたけれども、その方は自分の把握するところでは成年に達した無国籍児はいないのではないかというふうな御見解でございました。したがいまして、私どもとすれば、この経過措置が適用されない無国籍児は一人か二人おられるかもしれないということになるわけでございます。
この一人か二人の関係につきましては、これはどういう事情の方かもはっきりわかりませんけれども、もし御本人が日本国籍を取得したいという御希望であるならば、これは帰化申請をしていただいて、それで沖縄の特殊事情というものがございますから、従来からも超簡易帰化ということで、俗称でございますけれども、そういうことでやっておりますので、もし御希望があるならそういうことで解決を図りたい。一方では法律でございますので、一つの制度として一つの線を引かなければならぬというところからしますと二十年で引かざるを得ないのでございますけれども、結果としては一人二人としても大問題だという見解もありますけれども、そういうことによって処理もできることであるから、それで問題の解消は図られるということを考えまして、これでその問題についても大丈夫だという考え方をとっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/190
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191・橋本敦
○橋本敦君 抜本的にこれで解決できるという今お話ですが、数はともかく、未成年の関係にある限りにおいては解決できるわけですね。さらに調べればもう少し数がふえるかもしれませんが、成年に達すれば今おっしゃったように帰化という手続をとる以外にない。そこで、この改正法ができる以前、今日まで沖縄の無国籍児童問題で帰化手続によって問題が解決せざるを得なかったわけですが、その数はどれくらいになっているか、統計ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/191
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192・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 古いのはちょっとはっきりわかりませんけれども、ここ最近では十五名、五十六年、五十七年、五十八年、いずれも五人ずつ許可申請がありまして、いずれも許可になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/192
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193・橋本敦
○橋本敦君 ここで私はちょっと一つの、これはたまたまこうなったということでの問題ですが、もしもこれらの人たちが帰化という手続によらずに、この改正法を待っておれば帰化ということじゃなしに日本国籍を取得するという方法があったわけですね。ところがこの改正が今日までおくれた、あるいは具体的にいつ改正されるかわからぬものですから、早く日本国籍を取得したいということで帰化という手続をとられた。そうすると、私はたまたまこういう帰化手続をとらずにいたら、この法律によって、まあ原始的にとは言いませんけれども基本的に日本国籍が取得されるのに、帰化という手続をとらざるを得なかった。帰化ということになれば、これは原国籍はこれは無国籍者の場合は無国籍となるのですか、どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/193
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194・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 帰化の場合でも、経過措置によって日本国籍を取得した場合でも、日本国籍を取得する前の国籍があれば国籍を書く、国籍がない場合には無国籍と書くということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/194
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195・橋本敦
○橋本敦君 だから同じ無国籍ということであっても、片方は帰化であり、片方は国籍をこの法律によって手続をとって取得できる、こうなるのですね。そこで私は何とかならないかということを考える理由は、帰化ということが国民意識と感情に及ぼしている非常に大きな影響があるのですね。つまり帰化という言葉の持っている響きなんですね。
これはこの本も書いてあるので私もわざわざ字引は引きませんでしたけれども、広辞苑という字引を引きますと、帰化というのはどういう意味がということになりますと、局長も御存じと思いますけれども、こう書いてあるのですね。中国の後漢書には「遠い地方の人が君王の徳に感化されて帰服すること。」、これが出てくるわけですね。それからもう一つは「人間の媒介で渡来した生物が、その土地の気候・風土になじみ、」そこで「自生・繁殖するようになること。」、これは生物の関係です。いずれにしても、平身低頭、投降帰順というような感じの語感をニュアンスとして持っているのですね。
諸外国では、例えば中国では帰化という言葉を使わなくて、国籍への加入とか、あるいは新しい取得とかいう言葉を使っていますから、私はこの帰化という言葉を、将来やっぱりこういうような古い響きを持つということをやめて、まさに国際社会の中の日本ということになれば、国籍問題というのは非常に国際的にも明るい、そしてまた基本的な権利性を持ったものとして定着させていくためにも、法律が帰化という言葉を使うのはやめて、まさに国籍の新加入とか、そういった言葉に改めるということを思い切ってやるのがよかろうではないかという考えを持っておるのですが、これはひとつ法務大臣の御意見はいかがであろうかということでお伺いさせてほしいのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/195
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196・住栄作
○国務大臣(住栄作君) 大変卓抜な発想だと私は思います。私どもこれはずっと戦前の国籍法も、
二十五年の国籍法も、帰化という言葉を使ってきて、今度の改正案においても帰化という言葉を使っている、これが一番今までの私どもの案の考え方だろうと思うのです。と同時に、先生御指摘なさった帰化ということを、常に中国あたりの古い言葉も私自身も思い出すわけでございますが、わからぬでもないわけでございますが、ずっと使っている法律用語としてこの法案を考えておるということで私自身理解しておるわけでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/196
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197・橋本敦
○橋本敦君 これはまあ検討してほしい課題で、例えば憲法あるいは国際人権規約その他では国籍の変更だとかあるいは取得だとか、こういう言葉を使っていますね。だから国際的に帰化という言葉は私はそう通用性を持たないように思っておりますので、これはひとつぜひ検討してほしい、こう思っております。
そこで、さっきの問題に少し論点を戻さなければなりませんが、中間試案が出されてからいろいろな反応、意見があったということを聞きました。それで、また慎重に意見を検討して、この改正案にしたということも聞きました。そこで、その間の経緯について伺っておきたいと思うのですが、まず第一に、その前提として男女差別撤廃条約との関係で言えば現行法はやっぱりその条約に抵触するという問題があって、思い切って改正に踏み切る、こうなったわけですから、どの部分が抵触するというように法務省はとらえた上でやられたのか。まずこれが前提です。そして中間試案で議論をされて、この現行改正案になったその過程で、中間試案からいろいろな意見を聞いて変更もしくは修正された点があるならば、それはどの点がどう変わってこの改正案になったか、その経過をちょっと説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/197
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198・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 婦人差別撤廃条約との関係で現行国籍法で問題になりますのは、二条の一号の父系血統主義という点でございます。それからもう一つは帰化の要件としての、当該帰化を申請しようとする外国人が日本人の夫である場合と妻である場合とで帰化の要件が違っておるというところ、そこら辺が問題になる。したがって、それは片方の方では父母両系血統主義を採用することによって条約に抵触しないようにしよう、それから帰化の関係につきましてはこれを共通の要件にするということで対処をしようということでございます。
それから、中間試案はもちろんその線に従っているわけでございますけれども、中間試案と最終の案との違いで、これは挙げれば切りがないのでございますけれども、一つには準正による子供が日本国籍を取得する場合とか、あるいは経過措置で取得する場合でも当該日本人である親の親権に服しているというようなことの要件をやめるとかということがあります。
それから、一番大きな問題といたしますと選択制度、これ自体は採用したままでございますけれども、それを中間試案では一定期限までに日本の国籍を選択する旨の宣言をしなければ、国籍を当然取得すると宣言してもなおかつ他国の方の国籍を離脱するというふうな手続をとらなければ、法務大臣の催告によって日本国籍を喪失するというふうなことであったわけでございますけれども、それを当然喪失ではなくて、法務大臣の催告によって、なおそれによっても日本の国籍の選択の意思表示をしないものについて日本国籍を喪失するということになりました。それから、外国の国籍の整理の問題につきましては、これはもう努力をしていただくという、いわば訓示規定的なものに改めたというところが一つあります。そのほか大きな問題といたしますと、帰化の取り消しというふうなことはどうかというふうなことを挙げておりましたけれども、これは今度はとらないということにいたしました。
それから、なお中間試案で明記しておりませんけれども、留保制度を残すか残さないかということで、A案、B案という形で残しておりましたけれども、これは最終的には選択の制度を現在のような制度にすることと伴いまして留保制度を残し、かつその範囲を若干広げるというふうなことにしたというのが大体中間試案と最終案との相違点であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/198
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199・橋本敦
○橋本敦君 わかりました。
そこで、具体的にまず伺っていきますが、重国籍の防止と、それから無国籍をなくすということとの関係の調整の問題ですね。今まで父系優先血統主義をとってきた基本的な大きなねらいは重国籍を排除する、これにあったということですね。したがって、私は重国籍がいいというように言っているのではありませんが、しかし重国籍をなくすということに重点を置く余り、男女差別を助長してはならぬということよりも、もう一つ大きな問題としてはやっぱり無国籍児を放置してはならぬという問題も同時に付随してくると思うのですね。そこで、今度の改正法はここに視点を当てたことになるわけですが、基本的な考え方として、国際的には重国籍よりも、つまり重国籍をなくすということよりも、重国籍もなくさねばならぬが、しかしそれ以上に無国籍をなくすことの方が大事だという、これが実は国際的な趨勢ではないかと思って見ておるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/199
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200・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 無国籍をなくすということも一つのあるべき姿として各国の法制で考えているようでございますが、それと同等またはあるいはそれ以上に重国籍の問題を考えているのではなかろうか、これは想像でございますのではっきりしたことは申し上げませんけれども、力点は、どうも議論はそちらの方が多いように感じられておるところでございます。無国籍の解消問題ももちろん大事だけれども、それと同等あるいはそれ以上に重国籍の問題の方が重要視されている、これは想像でございますけれども、重要視されているのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/200
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201・橋本敦
○橋本敦君 局長が想像ではあるがとおっしゃったところが一つは問題なんですけれども、私が見るところはむしろ逆なのが趨勢ではないかというように私見ておるものですから質問しているのですが、例えば無国籍の削減に関する条約、この条約の批准国は今どれぐらいになっておりますか。先ほどお話があったと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/201
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202・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在十カ国だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/202
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203・橋本敦
○橋本敦君 その条約は十カ国だけれども、先ほど私が指摘した国際人権規約、あるいは児童の権利宣言憲章や、あるいは世界人権宣言等を見ますと、これはやっぱり国籍を権利性ということで、もう議論しませんが、非常に国際的に強調しておりますね。だから、そういう意味では無国籍をなくすということ、どこの国の国籍を取得するか、これは別ですよ。無国籍をなくすということが国際的に非常に重視をされているように私は見ていいのじゃないか、これが一つです。
それからもう一つは、先ほど指摘したあの判決の中の言葉を使いますと、「重国籍防止のために無国籍を生じさせること自体行きすぎというべきであるし、また、個人の人権尊重を第一義とする近代の傾向からすれば、無国籍の防止は重国籍の防止よりも重要であり、もし両者が抵触し二者択一を迫られるときは、前者を優先させるべきものであろう」という裁判所の判断もあるわけですね。これは局長も判決を見たと思います。だから、国際的趨勢プラス我が国の裁判所の考え方にも、無国籍をやっぱりなくすべきだということを優先的にとらえているという考え方もあるという状況を見ますと、想像ではなく具体的に無国籍をなくすという問題が重国籍をなくすという問題と同等もしくはそれ以上に今重視されている、こう私は見たのですが、局長のお考えは変わらないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/203
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204・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに人権的な観点からとらえる場合には、重国籍よりは無国籍の解消の方が強く取り上げられているということは、これは否定できないところでございます。ただ、各国の個別の法制ということになりますと、無国籍が生ずるというのは自分の国の国籍法の問題よりは他国の国籍法での抵触の問題だというふうなとらえ方がされる面がございます。したがって、
どこまでカバーすればいいかということがございます。それからもう一つは、重国籍の問題の方が非常にやっぱり議論としてはいろいろな議論が出てくるという意味で、議論が少し華やかになるという面があろうかと思いますので、そういうことで私の印象としては表面に出てきたところでは二重国籍の方が、何といいますか、重く取り扱われているのではないかという印象を持ちましたけれども、その背後にある理念としてどちらかということになりますと、それは見ようによっては無国籍の解消の方を大事にとっているというふうな言い方もそれはできなくはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/204
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205・橋本敦
○橋本敦君 大体そこらあたりで議論が一致していく基盤があるわけですね。
そこで、理念的には、局長もおっしゃったように非常に大事な問題だということでいくならば、今御指摘がありまして、私も指摘した無国籍を減らしていく削減の条約というのは、これはもう日本としても批准を検討していいのではないかという気もいたしますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/205
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206・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、この条約の中心になります趣旨それ自体は私どもも十分理解できるところでございますし、そういうふうな考え方にのっとって今度の改正法も考えたわけでございますが、ただ個々の条文の中には、いわば兵役の関係とか、そういうようなことが実際重国籍の場合とかそういうのに問題になるものですから、そういうような事柄もありまして、ちょっと我が国としては全面的にすぐ批准するというのは実情に合わない面があるのじゃなかろうかということで、慎重に検討してみなければならないのじゃないかという考え方ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/206
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207・橋本敦
○橋本敦君 ちょっと済みませんが、私も読んだのですが、兵役との抵触問題というのは、ちょっとこの条約では私はつかみ得なかったのですが、具体的にはどこでしょうか。基本的にはおっしゃるように今度の改正法の方向に沿っているのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/207
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208・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっと誤解をいたしまして、兵役の関係ではございませんでした。この無国籍の削減に関する条約の一条のうち主に二項でございますけれども、国籍付与の考え方がこのままで取り入れるということは少し我が国の国籍法の全体とうまくそぐわないのではなかろうか、(a)号、(b)号ですが、そういうようなところから、少し慎重に考えなければいけないのではないかというようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/208
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209・橋本敦
○橋本敦君 ちょっと局長よくわからないのですが、今おっしゃったのは第一条の第一項の(a)号、(b)号という御趣旨ですか。第二項の(a)号、(b)号もあるものですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/209
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210・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 第一条の二項の(a)、(b)でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/210
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211・橋本敦
○橋本敦君 なぜこれが抵触するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/211
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212・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは領域内で出生した無国籍人の問題でございますけれども、まず出生のときに与えるか、あるいは次の二項の関係で与えるかということでございますが、出生のときに与えるということになりますと、短期滞在者ということが出てまいりますので、これは適当でないだろう、こういう(a)のような考え方をとっている国はフランスあたりではあるようでございますけれども、ほかの国はとってないようでございます。したがって、(b)に乗るかということでございますけれども、(b)の場合に、二項の(a)とか(b)とかというのが、申請者が十八歳から二十一歳というような、そういうようなことよりは、こういう限定でやることが果たしていいことかどうか、何もそういう制限を加えなくてもあるいはいいのかもしれないというような考え方がございまして、したがって、この二項の(a)とか(b)とかというのをそのまま我が国の国籍法の中に取り入れるということについてはちゅうちょせざるを得ないという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/212
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213・橋本敦
○橋本敦君 それならば現在の改正法の方がより進んで要件を緩和しているからということで私も理解できるわけです。しかし、そうであっても批准しても矛盾するという関係には私は直接にはならないで解釈できると思いますね。御趣旨は了解しました。
そこで、あと私は国籍の選択宣言の問題あるいは留保制度の問題、それから若干の帰化条件の問題、これについて御質問をしたい要点が残っておりますが、ちょうど切りがよろしゅうございますので、次回にさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/213
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214・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時二十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00619840510/214
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