1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月十七日(木曜日)
午前十時三分開会
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委員の異動
五月十六日
辞任 補欠選任
大浜 方栄君 岡田 清充君
佐藤栄佐久君 徳永 正利君
安井 謙君 中西 一郎君
五月十七日
辞任 補欠選任
岩動 道行君 内藤 健君
中西 一郎君 浦田 勝君
園田 清充君 林 ゆう君
徳永 正利君 沢田 一精君
宮本 顕治君 安武 洋子君
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出席者は左のとおり。
委員長 大川 清幸君
理 事
前田 勲男君
山田 譲君
飯田 忠雄君
委 員
浦田 勝君
海江田鶴造君
沢田 一精君
名尾 良孝君
内藤 健君
林 ゆう君
寺田 熊雄君
橋本 敦君
安武 洋子君
柳澤 錬造君
中山 千夏君
発 議 者 寺田 熊雄君
国務大臣
法 務 大 臣 住 栄作君
政府委員
法務大臣官房長 根岸 重治君
法務省民事局長 枇杷田泰助君
外務大臣官房長 枝村 純郎君
文部省初等中等
教育局長 高石 邦男君
自治省行政局選
挙部長 岩田 脩君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
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本日の会議に付した案件
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(寺田熊雄
君外二名発議)
○国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/0
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001・大川清幸
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨十六日、大浜方栄君、佐藤栄佐久君及び安井謙君が委員を辞任され、その補欠として園田清充君、徳永正利君及び中西一郎君が選任されました。
また、本日、岩動道行君、中西一郎君及び宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として内藤健君、浦田勝君及び安武洋子君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/1
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002・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
発議者寺田熊雄君から趣旨説明を聴取いたします。寺田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/2
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003・寺田熊雄
○寺田熊雄君 刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
免田事件、財田川事作など死刑確定者の再審裁判において無罪判決が相次いでおりますが、このことは、我が国の刑事裁判には不幸にして誤判が多数存在することを示しております。ところで、この事態に対応する現行刑事訴訟法第四編再審の規定には不備な点が少なくありません。
我が党は、既に一九七九年から再審法改正案を国会に提案してまいりましたが、このたび、従来の提案に死刑再審事件における刑の執行停止、身柄の釈放などに関する所要の修正を加え、装いを新たにして提案するものでありまして、その要点は次のとおりであります。
第一に、再審要件の緩和及びその理由を拡大することといたしたことであります。
最高裁の白鳥決定以後、再審の門はやや広がったかに見えますが、この決定の趣旨を条文上明確にすることは再審法上意味のあることでありますので、第四百三十五条六号を全面的に改正するものであります。
第二に、再審の請求がなされた場合には、裁判所は死刑の執行を停止することができることといたしております。
また、死刑の言い渡しを受けた者について再審開始の決定が確定したときは、死刑の執行は当然に停止されることとし、この場合、裁判所は刑法第十一条第二項の規定による拘置を停止することができることといたしました。
第三に、再審請求人の手続面における権利保障を明確化するため、再審請求段階の国選弁護人制度、弁護人の秘密交通権及び記録閲覧権、謄写権、記録及び証拠物の保存、審理の公開及び請求人、弁護人の再審請求理由を陳述する権利と事実取り調べ請求権の保障等を導入することといたしております。
また、前審に関与した裁判官は除斥される旨の規定を設け、審理の公正を期することとした次第であります。
第四に、再審請求段階における検察官の立証を一部制限して、検察官は新たな事実の取り調べ請求ができないこととし、ただ請求人、弁護人側から出された新証拠の取り調べに際し証拠の証明力を争うため必要とする適当な機会を与えられるものとすることといたしました。
さらに、再審開始の決定に対する検察官の即時抗告を禁止することといたしました。
これはこの文章には書いてございませんけれども、再審の裁判が始まりますと、それは三審でありますので、再審請求の段階でも三審とすることは屋上屋を架するきらいがありますので、さような規定を設けた次第であります。
第五に、再審請求より再審開始決定に至るまでの訴訟費用を補償することといたしております。
第六に、確定判決にかわる証拠について必要な改正をすることといたしております。
すなわち、有罪確定判決の証拠となった証言、証拠等が偽証もしくは偽造である等の理由で再審請求をする場合、現行法では偽証、証拠偽造等の事実が確定判決により証明されなければならないとし、確定判決が得られない場合はその事実を証明して再審の請求ができることとしております。ただ、この際に刑訴法第四百三十七条ただし書きの解釈として、検察官により偽証、証拠偽造の事実につき公訴提起がなされなかった場合は、再審請求の道を閉ざしておりますが、これは全く不合理でありますのでこれを改め、検察官により公訴提起がなされなかった場合にも再審の道を開くことといたしたものであります。
第七に、不服申し立て期間及び経過措置について所要の規定を設けることといたしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/3
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004・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/4
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005・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 次に、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次側発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/5
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006・寺田熊雄
○寺田熊雄君 このたび、外国に居住する日本人も一定の条件を満たした場合には国会議員の選挙権を持つ旨の法改正がなされようとしております。この在外選挙人名簿に登録される者は二重国籍者であっても差し支えないものかどうか、まずこれからお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/6
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007・岩田脩
○政府委員(岩田脩君) お答え申し上げます。
ただいまお話がございましたように、外国におります日本人に投票の手続を開くという改正案を提出しているところでございますが、その手続に参加していただくためには二重国籍の有無ということは問わないわけでございますが、ただこの制度を開くに当たりましては、現在外国にいらっしゃる方で将来日本の国内に帰っておいでになる方、将来日本の国内に住所を有することになると思われる方に限って道を開くということにしておりまして、そのために必要なことは政令で定めることができるということにする予定であります。
したがいまして、この法律が通りました暁には、政令におきまして将来日本に帰ってくる意思のない方をある程度ブロックし、限られるものにつきましては規定をするつもりでありますが、その中に今の国籍の面で申し上げますと、二重国籍を持っていらっしゃる方で、国籍を持っていらっしゃるその国にずっといらっしゃって、その二重国籍を取得以来今日までの間日本へ帰ってきたことがない、よその国にも行ったことがないという方につきましては一応帰国の意思がないものと推定するという規定を設けるつもりであります。したがって、そういう意味で、ただいま申し上げたような範囲の方につきましては、結局帰国の意思の点に絡みまして今度の制度には参加できなくなるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/7
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008・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今度御承知のように国籍法が改正せられつつありまして、父系主義が父母両系主義にかわる予定であります。在日朝鮮人の人々、父が朝鮮籍の場合、現行の国籍法ではたとえ母が日本人でありましても子は外国人となり朝鮮人学校に入学する子弟が多いようでありますが、今回の改正で母が日本人の場合は子供は二重国籍者となります。そして日本人たる地位を持つわけであります。この場合、憲法二十六条なり教育基本法第四条の適用の問題はどうなるだろうか、父母はそのまま子を朝鮮人学校に通わせてもよいのかなどいろいろな疑問を生ずるわけであります。これは国際人権規約A規約の一条、十三条あるいは一九七四年のユネスコの勧告等がいろいろ関連してくると思いますが、文部省の御方針をこの際お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/8
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009・高石邦男
○政府委員(高石邦男君) 二重国籍者であっても日本国籍を有する子女で学齢に達している者につきましては、その保護者は日本の小中学校に就学させなければならない義務を負うというのが我が国の法律制度でございます。したがいまして、外国の籍と日本の国籍両方を持てるということになって、その子供も二十二歳までの選択を二十二歳まで延ばす、六歳、十二歳の時点でその子も日本国籍を有するというような状況にあれば、その子供は日本の小中学校に就学させなければならない義務を負う、こういうことになるわけでございます。しかし現実の問題といたしまして、例えばアメリカンスクールであるとか、外国系の日本の小中学校以外にその子供を就学さしているという子供の実態が生ずることが予想されるわけでございます。
したがいまして、法律上の義務を負いますけれども、一定の条件のもとに就学義務の猶予免除という手続があるわけでございます。これは学校教育法の二十三条によりまして「保護者が就学させなければならない子女で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、監督庁の定める規程により、前条第一項に規定する義務を猶予又は免除することができる。」、こういう法律の規定があるわけでございます。したがいまして、その手続規定によってそういう事例について調整を図る必要があろうというふうに思っている次第でございます。したがいまして、この法律が施行される段階に至りますれば、それについての指導方針を明らかにして調整を図るようにしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/9
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010・寺田熊雄
○寺田熊雄君 大体文部省のお考えはそれでわかりました。私どもとしましては、本来朝鮮人の父親それから日本人の母親、その子供について、朝鮮人の父親が朝鮮人学校に通わせたい、民族教育の方向を志向していく。母親は日本人学校、学校教育法上の小中学校に通わせたい、またその義務もあるという場合に、国が余りこういう重国籍者に対して積極的にどうすべしという強制力なりあるいは強い指導というものをなすよりは、その家庭の父親、母親の自由な意思決定にゆだねるといいますか、そういうことの方が望ましいと私は考えておるのですが、この点局長いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/10
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011・高石邦男
○政府委員(高石邦男君) まず日本に居住して日本国籍を有するということになりますと、学齢に達すれば当然その保護者に対して就学通知を出すということになると思います。したがいまして、就学通知を出されれば、それについて朝鮮の学校に通わしたいということであれば、その事由を明記して市町村教育委員会に就学義務猶予、免除の手続をとってもらう。その手続を合法的に得た後に就学義務の猶予、免除ということが行われると思います。
ただ、若干心配なのは、両親の意思がばらばらになって紛糾の種になるということが生じた場合には非常に困るなということを思っております。母親は日本の学校に通わしたい、父親はそれ以外の学校に通わしたいということになりますと、せっかくそういう運用上の措置を講ずるわけでございますけれども、そこでごたごたするということが予想されると思うので、この点については十分配慮しながら対応していかなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/11
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012・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは政府委員室の方にこういうことについて質問をするということをお話をした範囲外になりますので、ちょっと事によっては御迷惑かもしれませんが、四十年十二月に民族教育に関して文部次官通達というのがたしかなされておりますね。学校教育法上の小中学校において、特別な民族的な教育的な配慮といいますか、いろいろな施設、そういうものを別段必要としないという趣旨だと思いますが、しかし関西のいわゆる衛星都市などでは、例えば副読本の採用など、あるいは教師の指導など、これはむしろ国際人権規約のA規約一条、十三条、先ほどお話をした七四年のユネスコ教育問題の勧告等の趣旨に沿うような配慮をしておるところもぼつぼつ実際上は出てきておるようでありますが、こういう点については文部省としてはどういうふうなお考えでおられるのか。これは私が政府委員にこういう点の質問をするということの通知をした範囲外でありますから、あるいは御迷惑かもしれませんが、ちょっともしできればお答えいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/12
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013・高石邦男
○政府委員(高石邦男君) 四十年にそういう通知を出しているわけでございますが、我が国に居住する朝鮮人の子弟が我が国の小中学校に就学したいという場合には積極的に受け入れるという措置をとりなさいということをまず原則として言っているわけでございます。
それから、公立の小中学校の分校として朝鮮人のみを対象とする学校を地方によってはつくられた、つくられて存在したわけでございます。問題は、そういう公立の分校における教育の仕組みについていろいろな問題がございまして、日本の小中学校の教育のほかにそうした民族教育的なことが行われるというような実態があったわけでございます。したがいまして、そういう実態は我が国の小中学校の教育としての教育を受けるという観点からは余り望ましいことではないという基本的な指導をしてきているわけでございます。ですから、純粋に朝鮮人の子供を対象にして民族教育をやりたいとすれば、各種学校としての朝鮮人の学校をつくって教育されるというような形になろうかと思うので、小中学校の形態をとりながら、その中で日本人以外の民族教育を行われるということは適当でない、こういう見解で今日まで来ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/13
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014・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今回の国籍法改正法案の第三条についてお尋ねをいたすのでありますが、準正によって嫡出子たる身分を取得した二十歳未満の者、これは認知をした父または母がこの出生のときに日本国民であるという要件が必要であることは何びともたやすく理解するのでありますが、届け出のときに日本国民であることはなぜ必要なのか。これは衆議院でもかなりこれが議論になったようでありますけれども、局長が随分この点についていろいろとその趣旨を説明していらっしゃる。生活の一体化であるとか、いろいろなことをおっしゃっておられる。父または母と子供、未成年の子供では同一の戸籍であることが望ましいというような趣旨もおっしゃっていらっしゃる。ここのところはちょっと親子同一戸籍主義を推進しておるかのようなふうにもとられるわけですね。これは局長としては、やはりどうしても届け出のときに日本国民であるということが必要であるという説得力のある説明は結局どういうことになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/14
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015・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この新三条の準正による国籍の取得の制度と申しますのは、これは認知の関係でございますので、主たるものは父親が日本人というケースがほとんどだろうと思いますが、それを前提にしてお話を申し上げたいと思いますが、まず血統的には日本人の父親の血を引く子供であるということと、それから準正ということは、その両親が婚姻をして法律的にも同一の生活の一つの単位を形成するということがこの準正による国籍取得の趣旨を生かすところでございます。
そういう考え方から申しますと、その日本人である父親が、子供がこの三条による意思表示をする際に、もう外国人になっておるという場合には、これはその時点においてはその親子の生活関係というものはむしろ日本との結合性が薄いということになるのではないか。これは母親が日本人であれば三条の規定を待つまでもなく日本の国籍を取得している事案でございますから、母親は外国人である、そして父親もこの届け出をする際には外国人であるということになるわけでございますので、そういう場合には、なるほど出生のときには父親が日本人であったかもしれないけれども、その三条の国籍の取得の時点においては両親とも外国人である、そういう生活の環境下にあるという場合においては、これは単なる意思表示で日本国民となるということは適当ではない、したがいまして、こういうような要件をかぶせるということにしたわけでございます。
なお、中間試案の段階におきましては、さらにそれに加えて、その父親の親権に服しているという要件をも加えておったわけでございます。これは余計にその日本人である父親の親権に服しておるということによって、日本との結びつきがより結合性が強くなるという観点で加えておったわけでございますが、まあそこまでの必要はないであろうということで、この法案ではその点は削っておりますけれども、そういうような考え方で、要するに日本の国籍を取得する時点において日本との結合性が強い、要するに意思表示だけで日本の国籍を取得するにふさわしいと言い得るためには現に父親が日本人である必要があるという考え方が基礎になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/15
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016・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この認知の効力は出生のときにさかのぼりますね。したがって、国籍法第三条で、その認知のときに父親が日本人であるという場合には子供も日本国民となる、何か理論的にはすぐそういう結論が出るのでありますが、この場合もその認知のときに父親が日本人であるというだけじゃなくして、認知を戸籍役場に届ける、そのときにやはり日本国民でなくてはならないということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/16
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017・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 出生届をする際には、認知でございますので、まだ認知がされていないケースでございます。この届け出をする時点においては、それは認知の届け出が出ておらなければならないわけでございますが、その父親の国籍といたしますと、まず出生のときに父親が日本国籍でなければならないということになります。それから認知の届け出をするときには必ずしも日本国民であるということはこの条文上の要件にはなっておりませんが、ただ、この三条による日本国籍取得の意思表示をする際には父親が日本国民である、そういうことは必要になってまいります。そういう中間段階で父親が日本国民でなかったということは普通ないと思いますけれども、この要件としてはそういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/17
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018・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは続けてこの点をお尋ねをするつもりでしたが、外務省の官房長がいらっしゃったようでありますので、官房長に先にお伺いをしたいと思うのですが、どうも御苦労さまでございました。
外務公務員が外国籍の妻を迎えますと外務公務員としての身分を失う、これは外務公務員法の七条でありますが、そして一年以内に当該の妻が日本国籍を取得すればよいし、しなければその身分を失うという規定になっておるようであります。私どもの知人の子供が外交官になりまして、そして外国に行き、その国の婦人と結婚をする、結局身分を失って外務省の方でいろいろ生活上の面倒を見ておられる、通訳などをしまして生活をしておる者があります。大学を出て外交官になったといってもまだまだ身分は低いのであります。そういう者まで外国人の妻をめとったから一年以内に妻が日本人にならなければ身分を失うというのはややひどきに失しないか。その外務公務員が国家機密に携わる、あるいは政策決定に関与する相当高い地位にあれば別として、そういう低い者まで十把一からげにこういう規定の適用者とするのはどうだろうかという感じを持つわけであります。また人道的見地からも、自由な恋愛で夫婦関係に入るというのは、これは人間として当然の道でありますが、そこで生活の基礎を失わしめるというのはどうだろうかというような感じがいたします。これは衆議院でもそういう論議が一部なされたように聞くのでありますが、これは政策的な問題でありますので、やはり官房長に来ていただいて御意見を述べていただくということが適当ではないかと考えておいでをいただいたんですが、この点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/18
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019・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) ただいま御指摘がございましたが、確かに私ども外務公務員法第七条、これによって一定の制約があるわけでございますけれども、同時に第二項においては例外規定も認められております。先生御指摘のとおり一年間の猶予ということもあるわけでございます。したがいまして現在まで約百件そういう事例がございますが、その法律の効果によって失職した、失職に至らしめたというケースは私ないように承知いたしております。
大体一年の現在の国籍法のもとでは、そのうちで日本国籍を配偶者が取得いたしまして、現在もうそれぞれ枢要な地位において、あるいは補助的な業務もございましょうが、差しさわりなく勤務しておるというのが例でございまして、ただいま御指摘の何か外国人と結婚したために外務省を離れたというケースがあるように承りましたが、これは恐らくその法律上の効果じゃなくて、いろいろ家庭の事情とかその他の理由によって離職した、そういうケースであろうかと思います。確かに外国人の女性を配偶者にした人でやめた人は二、三あるように承知しておりますけれども、これはほかにもそういう外国人の妻を配偶者にしない場合でも、一たん外務省に奉職しながらやめたというケースと似たようなことでございます。私の承知します限り、外務公務員法の効果として失職した例はないように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/19
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020・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私の知っておるのは、岡山県人の子弟でフランスに留学した者、まあ名前までお話しをする必要はないだろうと思いますが、あるいは官房長のおっしゃるように外務公務員法第七条の規定で失職したのじゃなくて、妻が日本国籍の取得をがえんじないことのために、みずから職を引いたのかもしれません。その詳しいことはそこまで私立ち入っておらないんだけれども、ただ衆議院の会議録を見ますと、外国人の妻で日本国籍を取得した数の質問がありましたときに、法務当局の方からいろいろ数が挙げられまして、五十六年が十一名、五十七年九名、五十八年十六名、その半数は外交官であるというような説明もあるわけであります。これはやはりこの七条の規定によって外国の女性をめとった場合に、その妻としての女性が日本国籍を取得した数が非常に多いというふうに理解していいのでしょうか。例えば官房長のお話では全員がほとんど日本国籍を取得しているのが実情であると、そういう御趣旨でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/20
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021・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) ただいまお話のとおりでございまして、約百件ございますが、その大部分と申しますか、現在たしか三人ほどが帰化申請中でございます。そのほかの者は全員日本国籍を取得いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/21
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022・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、この外務公務員法七条の改正というものは外務省としては今お考えになっていらっしゃらぬのでしょうか。と申しますのは、衆議院の会議録にたしかこれは法務省民事局長でしたか、何か外務省で七条の改正を考えておられるかのごとき答弁をしていらっしゃるようにも思うのですけれども、その点ちょっとお伺いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/22
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023・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 私どもといたしましては、外務公務員法第七条自体の改正は考えておりません。ただ、確かに国籍法の改正によりまして帰化要件が女性についても厳しくなるわけでございまして、現在の外務公務員法第七条第二項を受けての政令による一年間の猶予期間では、これは短さに失するという問題がございます。私ども人事政策上も、また外務公務員法第二条においても「政令で定める場合を除く外、」ということで、猶予期間を定める何らかの例外を定めるべきであるというのが立法の趣旨と理解いたしておりますので、そういうことによって、国籍法の改正によって事実上外国籍を持っておる婦人あるいは男性と結婚できなくなるということはこれは適当でなかろうと、こういう考えでございますので、何らかの手直しは必要であると、こう思っております。ただ、これは特例を定める政令を改正することによって処置できるのではなかろうかということで、関係方面とも御相談しながら現在検討を続けておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/23
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024・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この問題、私も続けてお尋ねしようと思っておったわけですが、従来は日本人の妻というものが結婚継続期間であるとか日本における滞在期間であるとかいうような条件がなくてすぐ無条件に帰化できたわけでありますが、今回はこれがたしか滞在期間が三年ですね。そういうふうな条件が生まれました。これは妻に関しては男女の平等という見地から帰化条件がかえって厳しくなったという、そういうジレンマがあるわけでありますが、もしこの法律が来年の一月一日に施行になりますと、外務公務員法施行令一条の改正がおくれますとちょっと不都合な結果が起きるかもしれませんね。ですから官房長のおっしゃる外務公務員法施行令の改正というのは、この国籍法の施行時期までには内部の意思決定をなさって、そして妻が帰化し得る期間に即応するような改正がどうしても必要になるんじゃないかというふうに考えますが、それはそういうふうに理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/24
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025・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) ただいま御指摘のとおり、現在の国籍法の改正案によりますと、男女とも三年居住または婚姻三年で居住一年という帰化条件がっくわけでございます。そうしますと、先ほど申し上げましたように、現在の施行令という、ものは実態に即さなくなる、事実上意味をなさなくなって猶予の意味をなさなくなるわけでございますので、私どもといたしましてはただいま御指摘のとおり、この国籍法が施行されますまでに何とか関係方面と御相談しながら実質的に現在程度の猶予は維持できるようにいたしたい、こういうことで検討を進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/25
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026・寺田熊雄
○寺田熊雄君 さっき私は妻の場合の帰化条件をちょっと間違えましたが、これは改正法七条で「婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するもの」、官房長のおっしゃるとおりでしたからこれはちょっと訂正しておきます。よくわかりました。
それから、引き続き民事局長にお尋ねをするのでありますが、第三条の準正に関する規定で、認知をする父は、まあ認知のときは当然日本人でなければなりませんね。このときはしかし二重国籍者であっても日本人であれば構わないんでしょうね。その点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/26
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027・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは二重国籍者でありましても日本国民であることには違いないわけでございますので、出生のときにその認知した父親が二重国籍であっても日本国籍を持っていれば、これはその要件を満たすことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/27
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028・寺田熊雄
○寺田熊雄君 嫡出子たる外国人ですね。子供が外国人、それが生まれたときに父または母が日本国民ではあったけれども、届け出前に帰化によって外国人になってしまった、その場合認知のときは、よし日本国籍を父親が持っていたとしても、先ほどの局長の御説明では子供は日本国籍を持ち得ないということになるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/28
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029・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この準正の場合の認知する父親が日本人であったかどうかということを判断するのには、先生のお話を含めて考えますと、三つあるわけでございます。出生のときと認知のときと、それから第三条の届け出をするときと三つの時点があるわけでございますが、その中で三条が要件といたしておりますのは、出生のときに父親が日本国民であるときと、それからこの届け出をするときに日本国民であるときということが要件でございます。その中間の認知のとき、認知の届け出をする際の日本国民であるということは三条の要件にはいたしておりませんので、したがいまして、ただいまの御指摘になりましたケースちょっと私よく理解できない面がございますけれども、要するにそういう三つの時点の中で出生のときと届け出のときだけ日本国民であれば三条の要件は満たすということで御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/29
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030・寺田熊雄
○寺田熊雄君 その点は私の方にも若干誤解があったかもしれぬな、これは。よくわかりました。
これは後で戸籍のところでお尋ねした方がいいのかもしれないが、外国に居住する日本人の子供、これは留保の関係でお尋ねしておきます。第十二条の関係に飛んでお尋ねをするわけだけれども、これは留保の意思表示がない場合、これ一般的に大使館なり領事館はその出生届というのを受け付けませんか。それとも留保の意思表示がなくとも受け付けますか。その点ちょっとまずお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/30
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031・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 領事館の実務といたしますと、出生届を出されまして留保のことが書いてないという場合には、それは意思を確かめまして、そして留保のことを記載するということが例のようでございます。出生届は出すけれども留保はしないのだというようなケースはない、そういうことは実際上はないんだというふうに聞いております。
と申しますのは、日本の方の考え方といたしますと、出生届を出すということは実際上としては戸籍に載せてもらうということの意思があるわけですね。したがいまして、当然出生届を出すということは日本の国籍を残すという方が出生届をお出しになるようでございまして、したがいまして、事実上その出生届だけで留保の意思表示がないというケースはないというふうに聞いております。理論的にはそういう場合にどうするかという問題はありますけれども、いまだそういうことは問題になったことはないように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/31
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032・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは現実に領事の事務をとった人に聞いたところ、いや、もうそういう場合は必ずその留保の意思表示をさせて、そして受け付けますということを言っている。だから、留保の意思表示がなければ受け付けないんだと、そういうふうにとれる。さっき私は官房長に外務省の指導方針を聞けばよかったんだけれども、それをうっかり落としたから。
そうしますと、留保の意思表示のない出生届というものが現実にはないとおっしゃるけれども、何か間違ってそれが領事館から仮に日本の戸籍役場に郵送されてきて届けられても、それはもう出生届としては受け付けないというふうに伺っていいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/32
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033・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 仮定の問題でございますけれども、その場合にはもう既に留保の届け出期間というのが徒過をしているということになりますので、したがって日本国籍がないという、喪失したという法律効果が生じていることでございますので、戸籍には登載をすることはできないということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/33
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034・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今度は第四条に戻りまして、法務大臣の帰化不許可処分、これはこの間法務省から届けていただいた幾多の判例を見ますと、広島高等裁判所の判決、それから東京高等裁判所の判決というものがあって、いずれも抗告訴訟の対象となる行政処分であるという判決がありますね。したがって、裁量権を逸脱してはいけない、また権限の乱用があってはいけない、その裁量権を著しく逸脱しておる、そこに権利の乱用があるということになりますと、それは取り消し得るという結論にならざるを得ないわけでありますが、これは今の法務省でもそういうふうな理解をしていらっしゃるのでしょうか。判例は判例だがおれは違うという、そういうお立場か。その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/34
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035・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもは理論的には帰化の不許可処分というのは抗告訴訟の対象にはならないという考え方を持っております。御指摘の訴訟の段階でもその点は強く主張したところでございますが、東京高裁、広島高裁では、いずれもその点についての私どもの主張はとられなかったわけでございますけれども、私どもは、理論的にはなお全くの法務大臣の自由裁量の分野であるから、したがって取り消し訴訟の対象にはならないのではないかという考え方を持っております。しかしながら、仮に自由裁量ではございましても、もちろんその逸脱とか乱用とかがあってはならないということはこれは当然のことでございまして、したがいまして、実際上の帰化の事件の処理に当たりましては、一つの行政責任としてはそういう逸脱、乱用にわたらないようにということは常に自戒しなければならないことだということは、この判決で指摘しているとおりだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/35
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036・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これはあなた方からいただいた英国の国籍法第四十四条ですか、これの第二項を見ると、国務長官であるとか総督であるとかいう者の帰化申請について下した決定は裁判所の審査を受けない、そういうような規定があるので、こういう明文の規定がある場合は別として、そうでない現行法の解釈としてはやはり今述べた高等裁判所の両判決の方が正しいと私は考えているのだけれども、これは法律上の意見だから、局長にそれを強制するわけにはいかない。
ですから、それはその程度でとどめて、次に帰化許可処分には条件を付し得るかどうか、こういう点はどういうふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/36
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037・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 許可の場合の条件でございますけれども、理論的には全くの自由裁量に基づく処分でございますので、したがいまして、行政法一般の理論からいたしましても条件をつけることは理論的には可能であろうというふうに考えます。ただ、その条件と申しますのが、いわばその条件に違反した場合には処分の効力がなくなるというような、そういう意味での条件ということになりますと、この国籍を付与するという、そういう効果を伴う処分については、これはその影響するところが極めて大でございますので、必ずしも条件をつけることが適当ではないというような感じはいたします。したがいまして、もしこういう条件をつけるというようなことが実務的にもかなり必要だということになります場合には、そのことを制度的にも取り上げて、そしてあるいは帰化の取り消しとかの要件にするとか、そういうふうな整備をするということがあるいは必要になろうかと思いますが、理論的には、先ほど申し上げましたように、条件をつけるということは可能である、しかし事柄の性質上、そういう条件をつけて、その条件に反した場合の効果が当然喪失に結びつくというような形のものは適当ではないだろうという考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/37
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038・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これはイタリアの国籍法を先般届けていただいたのだが、これの五条を見ると、帰化の許可をする場合には国家に対する忠誠の宣誓を必要とする、そういうあれがありますね。これも帰化のときにはやはり現実にはいろいろ指紋の問題その他が起きてくるけれども、この忠誠の宣誓というようなものは、現実には日本の場合には帰化申請者に求めておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/38
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039・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 忠誓という言葉は使っておりませんけれども、帰化が許可された後は日本の法令を遵守するということの宣誓はしていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/39
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040・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、帰化が無効であるというようなことはよしんば瑕疵があってもないんだというのが、これは三十一年七月十八日の大法廷判決にあります。しかし私はやっぱりその瑕疵が重大な場合は当然無効ということもあり得るのではないかと考えておりますが、ただその判旨の中に「かかる瑕疵を理由として取消の問題を生ずるか否かは格別」というような文言がある。これはあなた方もよく御存じだと思うけれども、こういう判決から見ると、重大な瑕疵がある場合にはその帰化処分が取り消しの対象となるという場合があるようなふうにもとれるわけですね。ところが取り消しの制度は採用しなかったという答弁が今までなされております。その点、参考人の池原教授でしたか、これはこの改正法に大変自分は不満なんだと、不満な一つとしてそれを指摘しておられるわけですが、取り消しの制度がない現行法でも最高裁判所はこういうことを言っておることにかんがみると、改正法の場合でもあり得るのかどうかという疑問を生じますね。この点どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/40
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041・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず帰化の許可処分につきましては、これは重大かつ明白な瑕疵があれば当然無効というものはあり得るという考え方を持っております。ただ、そういうことでなくても帰化の処分をしたということが内容的にかなり問題があるというような場合には、これは帰化の取り消しということが理論的には現行法でも私どもはできると思っておりますし、またしたがって今度の改正法もその点については何ら触れておりませんので、現行法と同じ解釈でできるという見解を持っております。ただ実際にはそのようなことが起こった事例はございません。そういうことが、取り消しでもしたらどうだというような事例が必ずしもなかったわけではございませんけれども、結果的には取り消しをしたという事例はございません。
ただ、理論的には帰化の取り消しはできるのだということでございますが、池原先生もそのような見解に立たれた上で、しかしながらそのことがやはり規定の上で明確化してあるべきではないか、日本の国籍を失うということは重大なことでございますので、しかも取り消す場合には遡及効がどうなるかというような点、それからその場合にどういうような要件の場合にだけできるようにするかというふうなことが決められるべきではないか、言いかえますと、国益といいますか、公益の上では取り消すべきだということがあっても、一方日本の国籍を付与されたということによって市民生活をしておるわけでございますから、それを奪ってしまうということの私益の侵害との両方の比較考量からやはり帰化を取り消す場合の要件を絞り、そしてその遡及効を決め、そして取り消しの場合の手続も明確にするというふうなことがいいのではないかというのが私どもの当初の考えでもございましたし、また池原参考人も言われたところはその点にあるのではないかというふうに考えております。
しかしながら、今度の改正法の場合にはもともと改正の主眼点が両性の平等の問題が主でございまして、両系血統主義にするとか、帰化の要件を配偶者で一律にまとめるとかというようなところが主眼点でございました。そして帰化の取り消しということになりますと非常に大きな問題でございますので、中間試案で発表いたしました後も非常に多くの議論が出まして、反対意見もかなり強かったわけであります。そういうことでございますので、今度の改正の際には帰化の取り消しの関係については触れないで、そしてともかく婦人差別撤廃条約の批准に間に合わせるように、男女平等の点を主眼としての改正にとどめようということで問題を先に送ったというのが私どもの考えたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/41
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042・寺田熊雄
○寺田熊雄君 確かに局長の言われるように、何分にも周囲の実情がこの改正法案の提出を急がせたという面がありますから、だから重大な最もかなめの点についてとりあえず改正した、あと問題点は先送りしたという点はこれはやむを得ないでしょう。これからの御検討を希望するわけでありますが、今の現行法でも取り消しをなし得る場合もあるのだということを言われた。その取り消しの事由が申請者の故意または過失に基づくものではなくして、専ら法務省当局の側にあるような場合は、これは取り消しの法律効果が申請者に及ぶ、帰化した人間に及ぶというふうなのはちょっと酷な場合があると思うけれども、中間試案にありましたように、帰化申請者が偽りその他不正の手段で帰化の許可処分を得たという場合には、これは私は現行法でも取り消しの対象になるのではないだろうかという考えを持っております。
日弁連はむしろ取り消し制度がないのがいいのだと。これは人権を重んずるという、そういう見地からそういう結論を出したようでありますけれども、これは外国の旧籍法を見ますと、フランスの国籍法の百十二条もやはり詐欺が発見せられた場合に二年以内の場合は取り消し得るというような規定があります。それから英国の国籍法の四十六条を見ると、虚偽の陳述を行った者には三カ月以下の禁錮または一千ポンド以下の罰金に処すというような規定もある。
詐欺または偽りの陳述等で国家の処分を引き出したというような者に対しては、私はこれは取り消しの法律効果をその人間に及ぼすということがあってもやむを得ないのじゃないかというような考えをするわけでありますが、これはさっき局長は現行法上も取り消しはなし得る場合があるということを言われたのですが、この詐欺、偽り等だよって許可処分を引き出した場合についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/42
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043・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 取り消す場合には、国側と申しますか法務省側の方で誤解があったとか、あるいは法律の解釈を見落としたとか、そういうような場合にはこれは取り消すということはできないだろうと思いますが、帰化申請者の方で、ただいま御指摘のあったように詐欺的なことをしまして、そして全く法務大臣の判断を誤まらせたという場合には取り消すということがあり得るだろうと思います。ただ、それだけではなくて、やはりその後のいろいろな状況も総合的に勘案して、本人のいわば社会生活に及ぼす影響等も総合的に判断をするということが実際の場合には考えられなければならないだろうと思いますが、ただいまおっしゃったような事例につきましては、これは取り消しが一つの問題になることだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/43
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044・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それからもう一つ、実際問題として不許可処分の場合は、私はやっぱり事由をつけてやった方がいいのじゃないかというような気もするわけです。これはフランスの国籍法の百十条にそういう規定がある。もっとも、なかなか言いがたい場合もあるだろうから、その辺のあんばいが難しいかもしれません。しかし、もしそれが修復し得るものであれぱ、それをもらった人問が黙って不許可にされるよりは将来それを修復してもう一遍許可申請をするということがしやすいわけでしょうし、親切ですね。そういうことを考えますと不許可処分には理由を付した方がいいのではないかという考えを持つのですが、これはどうだろうか、それからまた実際の扱いはどうなっておるのか、そういう点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/44
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045・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 不許可にいたします場合には、その理由を告げるということは法律上の義務としては規定されておりませんけれども、ただいま御指摘のように再申請の場合の便宜と申しますか、本人の努力、そういうふうなことを促すというふうな意味からも理由を告知するのが適当であると考えます。実務の上でも、不許可になりました理由の要旨を御本人に告げるということを行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/45
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046・寺田熊雄
○寺田熊雄君 次に、これは改正法の第五条以下の帰化条件ですが、この第一項第三号の「素行が善良であること。」、これは衆議院でも大分この点が議論の対象になっておるようであります。また参考人の意見陳述にも先般この問題を取り上げた方がおられた。素行の不良な人間に何も日本の国籍を与えなくてもいいじゃないかという、これは確かにそういう考え方ができることは私も否定しないけれども、これは要するに平均的な日本人の素行を求めておる、したがって普通の日本人並みの善良さがあればそれでいい、一口で言うとそういうふうに理解していいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/46
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047・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/47
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048・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それで私も満足ですが、ただ、私ども法律家としていろいろな相談を受けますと、その相談に来る人間が自分を美化しているからかもしれないけれども、いわゆる交通の反則処分というのがありますね。罰金ではない。レーンを違えたとか、駐車違反だとか、スピード違反も二十キロ程度のものであるとかいう、そういう反則処分。これは普通の善良な日本人でも非常にそういう事例が多いんだけれども、その反則処分をやられたということで受け付けてくれないのですと訴えてくるのがあるわけですね。
局長の今までの衆議院における御答弁を伺うと、いや、そういうようなものはそれを理由に不許可にするようなことはありませんということをおっしゃっておられるわけです。ところが現実にはその人間が私どものところへ来て、反則処分のゆえに受け付けてくれないという訴えをする。しかし反則もやらない方がいいぞ、なるべくやるなと言うのに、またやりましたということで、もうそれだったらわしも余り君を弁護するのは気が進まぬなというようなことで言っているうちに来なくなってしまった。どうなったかわからないけれども、局長の、前科者でも一定の期間でそのあれが消えてしまった場合にはいいんです、交通事犯なんかは構いませんと、こう言われるあなた方のお気持ちというのは必ずしもストレートに法務局の第一線の人には通じていないのじゃないかなという気もするんですが、その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/48
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049・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点につきましては、軽い交通反則があったからといって不許可にするという扱いにはいたしておりませんし、また例えば強盗のような前科がある者でも、ちゃんと刑を済ませて、その後再犯がないというような方については帰化を許可している事例はたくさんございます。現在私どものところに参ります帰化の許可の事案を見ましても、かなり交通反則とかがある方がむしろ多い。と言うと語弊があるかもしれませんけれども、未成年の場合には別でございますけれども、成人の男子の方については、むしろ何かそういうことがある方がかなり多い。それでも許可をしているというのが実情でございまして、しかも、そのような事案につきまして現地の法務局の方でも、それは帰化が相当だということで私どもの方に記録を送ってくるわけでございますので、第一線の法務局の方でもその点は十分理解をしていると思います。
ただ、御本人がそういうふうなことについては余りほかの方にはおっしゃらないということがございまして、ときどきいろいろな方からどうなんだというふうなことをお尋ねがありますけれども、その方に御本人が言っていることと実際の記録上やられていることとは合わないということも多々あるわけでございますので、したがいまして少し法務省は交通反則一回でもあればだめなんだというふうにむしろ思い込まれているのではないかというふうに私どもは思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/49
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050・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、これは私が現実に今面倒を見ていると言ったのでは非常に語弊があるが、私がベトナム友好協会の岡山支部長をしているので、ベトナムの婦人のお気の毒な状況というものを何とかして助けたいということで関心を持ったんだけれども、日本人が戦時中ベトナムで、かの地の婦人と一緒になる、そして日本に連れてきて子供を産む、ところが、だんなの方はもう死んでしまった、後非常に生活に困っておる、体もそう強くない、何とか日本の国籍を取得してやりたい。と申しますのは子供が日本人、日本でだんなの方が生きているときに生まれた子供でありますので日本人。そうすると子供と母親とが国籍が違う。これは私も何とか帰化させてやりたいと思ったところが、生計条件でもってそれができない。
この生計条件では外国の立法例もありますし、国に負担をかけるものであっては困るという趣旨はよくわかる。わかるけれども、今は外国人に対しても社会保障が行き届いておるでしょう。生活保護でさえも、これは生活保護法の規定にもかかわらず、二十九年五月八日ですか、厚生省社会局長が各知事あての通知を出しておる。それで生活保護の対象としておるというととを考えると、やっぱりこの生計条件、今度は多少緩和しましたね。家族の生活状態によって本人が貧乏でも、生活能力がなくても救い上げることができるようにはなさっておられるけれども、今私が例に挙げたように、子供がまだ小さいという場合には、これ、どうしようもないんですね。そういう日本人が外国で妻として連れてきたけれども死んでしまったというような気の毒な場合は、これを何とか救えるような配慮を立法政策に盛ってもらえないものだろうかと考えるのだけれども、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/50
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051・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行法におきましては、生計要件は当該申請をされる方個人に生計能力があるということを中心に規定されております。そのためにいろいろ実態的には不都合と思われるようなものが出ておりますので、今度の改正では生計を一にする世帯で判断をするということに変えることになっておるわけでございます。それも今御指摘のような事案そのものにはあるいは真正面から当たらないのかもしれませんけれども、要するに生計要件というのは、先ほどもお話しございましたように、自分の生活も維持できないような人を日本の国の構成員の中に入れることは適当でないという考え方でございますけれども、それもいろいろな身分関係とか親族関係とかその他で、場合によってはもう少し幅広いところで生計要件を実態的には考えるというふうなこともできなくはないと思います。
今度の改正法ではそういうふうな思想が少し出ておるということでございますので、ただいまの御指摘の事案そのものにすぐいくかどうかわかりませんけれども、法律の考え方が幅広く考えるのだという線が出ますと、本当に総合的に考えて帰化を許可してもいい事案については許可することが現行法よりはかなり弾力的にできるのではないかという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/51
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052・寺田熊雄
○寺田熊雄君 非常に含みのある御答弁だから、これ申請して許可になるかどうか、私も今の局長の御答弁聞いて、これは申請して許可してくれるかなという多少不安はあるんだけれども、まあやってみてもいいのだが、これは大臣、一番今回の改正法でそういう気の毒な婦人を救い上げることができればこれは上々でありますが、それは我々も非常に希望しますが、仮に一歩譲りまして、現行法では無理だという場合、将来の立法政策としてやはり特別な事情にある者、例えば本人が何も日本に来たくて来たのじゃないけれども、戦争のさなかに日本人と恋愛をして日本人が帰還するときに一緒についてきた、そしてその本人は死んでしまった、しかし子供もあるし今さらベトナムに帰れないというような者に対しては、将来の立法政策でこれを救い上げるような御配慮はしていただいてもいいようなふうにも考えるのですが、大臣はどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/52
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053・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そういう点につきましても、今度の改正法にももう少し生計要件については一歩進んで考えてもいいじゃないかという意見もそれはございまして、私どもも検討いたしたわけでございます。ただ、それを何といいますか、余り一般的な形で枠を広げるというのは帰化の制度としてはどうか、したがって法律の制約がございますから無限にというわけにはもちろんまいりませんけれども、弾力的に運用ができる限りにおいては運用することによって処理をできるということもあるのじゃないかということで、そういう積極的な法改正の御意見の方もそれを期待するというような感じでおさまっておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/53
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054・寺田熊雄
○寺田熊雄君 望みなきにあらずというような感じがするわけですね。余りそういう言いがたき事情もなきにしもあらずでありますから、これ以上余り突き詰めない方がいいかもしれないので、その程度にいたします。
第六号の破壊主義的団体というのが、これがいつでも難物なのでありますが、これは破防法上に言う破壊主義的な団体と大体同一義であるというふうに理解していいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/54
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055・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 破防法で規定をされておりますいろいろな団体の、何といいますか、要件ございますけれども、そういうものはこちらの方にも当たる可能性は強いだろうと思います。ただ破防法は破防法の目的に従って規定を設けておりますが、私どもの方の、何といいますか、国籍法の考え方は、要するに日本の国民になる以上は日本の憲法を暴力で覆すようなことは、そういうことはあっては困るという観点でできている条文でございます。したがいまして、何といいますか、共通するところもあろうかと思いますけれども、国籍法の方は抽象的にただ憲法を暴力で破壊する、あるいは憲法のもとにできた政府を暴力で破壊するというところだけに着目をしているものでございますので、結果的には同じものになるかもしれないけれども見る視点は少し違うだろうというふうに思います。
なお、現在までこの条項に当たるということで不許可になった事例はございませんので、そのことが特に具体的な、先例的なというようなものは私ども持っておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/55
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056・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この条文を余りつついていくと私どもが期待していないようなところに御迷惑がかかっても困るから、余りこれをつつかない方がいいのかもしれない。
局長の言われたこの条項の第六号ですね。この規定によって不許可にした例はありませんということでありますので、その方が望ましいことは言うまでもないけれども、ただ、これがあるとやっぱり法務局の職員はこれを盛んに該当するや否やということを探すのじゃないだろうかという感じがしますね。余りこれを振り回さない方がいいのじゃないか。私は破防法のときにも公安調査庁に聞くと、今破壊主義的団体というのはこういうものがありますこういうものがありますということを言われる。しかしどうも言われるのは必ずしも適当でない。適当でないのに職務の上からそういう方々はやはり頑張る。どうも余りいい結果が出ないという経験をしておるのであります。余り表面、おれは日本の憲法を守らないというようなことを言うたらそれは問題であるけれども、憲法を守ります、日本の法令は守ってまいりますということを、局長の言われる誓約を真摯にする者であれば、余り六号について神経質に調べ回すようなことはしないというふうな理解をしてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/56
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057・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) おっしゃるとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/57
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058・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、第七条の「日本国民の配偶者たる外国人」、これは先ほど外務省の官班長に特に質問をしたところでありますが、この「日本国民の配偶者たる外国人」については第五条一項の一号、二号が帰化条件になっておりませんね。これは非常に適切な立法であると考えるのでありますが、これは私どもは三号、四号、六号も除いてもいいんじゃないかというふうに考えるんです。これはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/58
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059・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 三号と申しますのは先ほど来話出ています素行要件でございますが、一般の日本人の素行というものを標準にする素行要件が欠けてもいいということは配偶者だからといって言えないのではないかという考え方を持っております。
それから生計要件の点につきましては、今度の改正で世帯全体で考えるというふうなことでございますので、これはそういうことであれば一般のほかの方の生計要件と異にすることは必要ないであろうということで、生計要件はやっぱりあるべきだと思います。
それから六号の点は、先ほども話出ましたけれども、日本の国民となって憲法を踏みにじるというようなおそれのある人ではやっぱり困るわけで、それは日本人の配偶者であっても困るわけでございますので、これは日本人であっても困るわけでございますので、したがいましてこの要件も必要であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/59
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060・寺田熊雄
○寺田熊雄君 理屈の上ではそうなるかもしれないね。また解釈で、先ほどの素行善良を平均的な日本人の生きざまというふうに理解すれば別段不都合はないかもしれない。それから六号も日本の憲法や法令を遵守するということを誓ってくれればいいのだということであれば、それもいいかもしれない。あえてそれに固執するものではないのでありますが。
第八条の場合についてもやはり同じことでありますので、これは質問をする必要はないと考えるのでありますが、ただ第八条二号の「日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの」という点の「かつ」以下は、やはりこれ要りますか。要るとすると、どういう理由によるものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/60
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061・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 養子にもいわゆる未成年養子と成年養子というのがございます。日本の民法では特段の差異を設けておりませんけれども、ただ実態からいたしますとかなり違うわけでございます。現在養子制度についての再検討を法制審議会でもしておりますけれども、未成年養子と成年養子とでは違うのではないか、そこら辺で少し制度を見直す必要があるのじゃないかということは議論になっているところでございます。
諸外国でもこの国籍法の分野におきましてもやはり未成年者かどうかということは一つの問題にいたしておるわけでございますが、私どもの考えますところによりますと、この八条二号の「かつ」の以下の要件は、これはやはり未成年の養子であれば、これはその親と申しますのはこれは日本国民でございますが、日本国民である親に養育をされまして、そしてその中で生活をして育っていくという、そういう関係が認められる、そういう生活環境にあるわけです。しかしながら、成年養子の場合には縁組のときに成年であるということでございますが、成年養子の場合にはそういう養育を受けるという関係には立っておらないわけであります。むしろどちらかと申しますとその養親の家業を継ぐといいますか、それから場合によっては親の方の財産を承継するとか、あるいはその他の事柄で養子縁組がされるということでございまして、養育をされて一緒に生活をしてという点が成年養子の場合には欠けるのではないかというふうに思います。
そういう点に着目をいたしまして、未成年の養子の場合には、これは日本での居住要件を一年というふうに短縮して、そして早く親子国籍が同一になって、そしてそういう生活環境のもとで育っていくということがむしろ望ましいというところから、簡易帰化として居住要件を一年に短縮したという考え方でこの条文ができておるというふうに理解をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/61
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062・寺田熊雄
○寺田熊雄君 考えてみると、縁組のとき未成年であった、日本の場合で言うと十九歳であった、そうすると、もうすぐ二十、二十一になる。それから縁組のとき二十歳六カ月であった、今は二十一、二歳である。これは現在の、つまり帰化の決定をあなた方がなさるときの状況というものはいささかも変わりはないわけですね。それなのに何で養子縁組のときに未成年であるというようなことをそれほど重く見る必要があるんだろうか。どうも少しこだわり過ぎているなという感じを持つわけですね。それでお尋ねしたんです。これはやっぱりそんなに重く見る必要はないように思いますが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/62
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063・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 繰り返しになりますけれども、養子というのはもともとは小さい子供さんを育てて子供さんの成育を見守っていくというところに一番の主眼点がある制度でございますが、そういうふうな実態にあった関係で日本国民の親のもとで養育されるという者については、これは日本との結合性が強いということが言えるだろうということで、未成年養子についてはこういう簡易帰化の制度がとられておるわけでございますが、成年ということになりますと、そういう関係が薄くなります。しかも成年に達するまでいわば外国人として長い間社会生活をしてこられた方でございますので、ただ日本国民とその後に養子縁組を結んだからといって、そう顕著にその結合性が強くなったとは言いがたいのではないかということが言えます。
それからもう一つは、この制度をもし成年養子にまで広げるということになりますと、実は帰化を申請するための便宜のための養子縁組ということも行われないわけではない、現にそういうような気配があるという事例もそれは実務的にはないわけではないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/63
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064・寺田熊雄
○寺田熊雄君 あなた方のそういうお気持ちはわかる。だけれども余りこれは必要のある規定とは思えない。やっぱり乱用によってどうも痛い目を見ることがあるので、少し警戒心を旺盛にし過ぎたような、そういう印象も受けないではない。しかしそれほど重要な問題ではないからこの程度にします。
一方、第九条では第五条第一項各号の規定を全部不適用としておりますね。まあこれは実例はないのだというたしか前に御答弁があった。こういうことによって帰化をさした例はないんですと。理論的には功労が過去においてあった、しかしその後に第四号に該当をしなくなった、あるいは六号に該当する場合を生じたということがあり得るわけですね。でも、まあそれはいいんだ、そういう要件に該当しても、これは功労者にはその功労のゆえに帰化を認めるんだということなんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/64
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065・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 帰化の要件と申しますのは、もともと法務大臣が自由裁量で帰化を許可すべき権限を与えられているところでございますけれども、ただ、そうは言っても最低これだけの要件を満たさない者については帰化を許可してはいけないというのがいわば法律の命ずるところでございます。したがいまして、それは立法府でそういうふうに決めたという一つの法務大臣に対する制約条件なわけでございます。
それが九条の大帰化の場合にはそういう功労のある外国人については法務大臣がいろいろなことを考えて帰化の許可をすべきものだというふうに判断をされた場合に、その後「国会の承認を得て」ということになっておりますので、立法府である国会がいろいろな事情を総合勘案して、そしてこれは帰化してもいいのだという承認を与えられるということは、何といいますか、法務大臣に対する帰化をする場合のいわば制限みたいなものを国会の方で一遍全部お考えになった上で具体的な妥当性を御判断なさる、そういう仕組みになっておるわけでございますので、恐らく憲法を踏みにじるというふうな、仮にそういう方については法務大臣も国会の承認を求めることはありませんでしょうが、国会の方でも御承認なさることはない。要するにそういう一つの制約条件というものをこういう制度の場合には特に課すことはないという意味でこういう規定になっておるのじゃなかろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/65
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066・寺田熊雄
○寺田熊雄君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/66
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067・飯田忠雄
○飯田忠雄君 本日は四つの問題でお尋ねをいたそうと思いますが、整理をいたしますのに苦労しました。
第一の問題は現行国籍法が父系主義をとってきておりますので、この問題が憲法違反ではないかという論議が起こっております。そこで、この父系主義が憲法違反であるかどうかという問題につきまして、従来は子供の男女を差別はしていないという点で憲法違反ではないという御見解を政府ではおとりになってきております。ところが、この問題は国籍を定めるに当たって、母方か父方か、どちらの方の者に従うかという問題でありますので、子供が男女であるということを基準として考えるよりも、両親が男であるか女であるかという問題で、親が男であるか女であるかということで考えるのが妥当ではないかということから、このたびの国籍法の改正で父母両系主義をとるということになってきたと思われます。父母両系主義は正しいということは御議論が尽くされておりますので、ここでは申し述べません。
そこで父母両系主義が正しいということになると、従来の父系主義は間違っておったということになります。憲法がつくられた当時の考え方がたまたま父系主義でも構わないではないかという考えであったためにこうなったということになりますと、これは国側においての法律に関する研究不足ということを根拠として父系主義がとられた、いわば過失であります。国の過失によって父系主義がとられた、憲法違反の状態が現出した、こういうことになるのではなかろうかと思われます。
そこで問題を幾つかに分けてみますが、まず第一に父系主義が憲法違反であるとすると現行法は憲法違反かという問題です。父系主義が憲法違反であるから現行法が憲法違反であるとは言い切れないわけであります。それで、現行法の第二条には「出生による国籍の取得」の規定がございますが、ここに書いてあることは別に憲法にこのこと自体は触れておるわけではないわけですね。父親が日本国民である子供を日本国民とすると言ってみたってそれは憲法違反ではない。ただ母親が日本人であるときにそれを否定するということにおいて憲法違反が生ずるわけでございます。母親の方を否定するということで起こる。そうなりますと、現行法は父系主義が憲法違反であるということを根拠に現行法を憲法違反だと言い切ることはできないのではないか、だから従来どおり有効ではないか、ただ母親の面において憲法違反が起こっておるということではないかと考えられるわけであります。それで、こういう問題について政府の御意見を後でお伺いいたしますが、こういう問題が第一にあるわけですね。
それから次の問題は、母親が日本人である場合に、それの子供を日本人としなかったという法律をつくったということが、これが過失であって、憲法違反であるということは過失なんですから、過失であるといたしますと、やはり過失に基づく慰謝料の問題が起こるのではないかという問題であります。これは実際には余り被害者が多くないという御判断でございますから大した金額ではないと思われますが、そういう問題が法律上は起こるということでございます。
そこで、こういう問題についてまずお尋ねをいたします。これ一々聞いていきましょう。またほかの問題がありますが、ごっちゃになるから、まずこの問題からお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/67
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068・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもは現行の国籍法が憲法違反であるというふうには考えておりませんので、憲法違反を前提とする御質問についてはお答えしにくいわけでございますが、憲法違反であるということを言われる方もいろいろな考え方があるわけでございまして、立法当初から憲法違反であるという考え方の方もおられるようでございますが、先日の池原参考人の御意見のように、そうではなくて、いろいろな情勢の変化によって現時点では少なくとも憲法違反ではないかという考え方、あるいは憲法違反の疑いが濃くなってきたという考え方をとられるわけでございます。
したがいまして、その間といいますか、憲法違反になったのは、じゃ、いつかというふうなことがどうもはっきりしない面がございます。したがいまして、その間の何といいますか、憲法違反の状態についてその穴をどう埋めて考えるべきかということは一つの問題があろうと思います。一つは母系の方も日本国籍を与えるというふうに埋めて考えるべきだという考え方の方もおられるかもしれません。そうなるとしますと、それは立法的には確認的な規定でも設けて処理をするということになるのかもしれませんけれども、私どもはそういう違憲だということになりましても、それでは男女平等の関係からどういうふうなことになるのかといいますと、それは空白状態であって、ただいわば立法の空白があるだけであって、母系が直ちにそこで補充的に埋められているというふうには考えられないのではないかという気がいたします。
極端なことを申しますと生地主義をとってもいいわけでございますので、そういうことでございますから、何と申しましょうか、違憲の立場をとる方も、今後それを合憲のように法改正をすべきであるし、そしてまた経過措置の中でその憲法違反の状態になるものを実質的に戻すような措置を講ずべきであるというふうな御見解になるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、衆議院でも、また当委員会におきましてもそういう面で経過措置が一つの議論の対象になっているというふうに理解をしているところでございます。
そういうことでございますと、国のいわば不法行為と申しますか、そういうふうな関係は出てこない。したがって損害賠償の問題は生じ得ないのではないかというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/68
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069・飯田忠雄
○飯田忠雄君 私いろいろ議論があると思いますので、どれが悪い、どれがいいということは出しませんが、例えば父親は自分の子供を自分の国籍に入れることができる、母親は自分の子供を自分の国籍に入れることができない、こういうことになりますと、やはりここに男女の間の差別があるということを言わざるを得ないわけであります。それで、今日国籍の問題につきましていろいろ論議も出てきて父母両系主義をとるに至ったのは、父親であろうと母親であろうと自分の子供をそれぞれ自分の国籍に入れる権利があるという意味からであろうと思われるわけであります。そこで、そういうことであるとすると、私は恐らくそうだと思いますが、現行法に書いてある内容はそのことと矛盾はしないと考えるかどうかという質問を私はしたのでございます。
つまりここに書いてあることは足らぬのだ、空白部分というのは母系のことが抜けているということなんですね。これに母系を加えたらいいわけだ。母系を加えたらいいという問題であるならば現在の条文が憲法違反だということにはならない。ただ穴があいているというだけだ。穴があいているところを埋めるというわけでしょう。そういう考え方をとれば今までの問題については損害賠償ということが起こるとしてもほんの一部ですね。母系主義を加えなかったことによって起こった沖縄のほんのわずかな人だけの問題だということになるわけなんですが、そういう考え方に対して政府の方ではどのようにお考えになるか、こういう質問をいたしたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/69
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070・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに現在の父系の部分が憲法違反だという考え方はないだろうと思います。母系をもあわせるべきであるのにそれが抜けているのが憲法違反だという考え方はあるだろうと思います。その点についてはおっしゃるとおりだと思いますけれども、ただそれが損害賠償に結びつくものであるかどうかについてはこれは少し研究してみないとわかりませんが、私どもはともかく憲法違反でないという考え方を持っておるので、そこら辺は詰めて考えたことはない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/70
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071・飯田忠雄
○飯田忠雄君 時間の関係で次に移ります。
法例という法律がございますが、この法例という法律を見ますと、これは「夫ノ本国法」または「父ノ本国法」、こういうことで本国法主義をとっておりますが、いずれも男の方の系統の本国法を適用する、こういうことになっております。そうしますと、いろいろの不都合なことが、今度の国籍法の改正で父母両系主義をとったために法例と矛盾することになるのではないかというふうに考えられます。
例えば離婚の条文を見ますと「離婚ハ其原因タル事実ノ発生シタル時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル」、こうなっておりまして、離婚をするに当たっての慰謝料請求ができるかできないか、こういうような問題になりますと、これは妻は非常に不利益になるわけで、妻の国の法律によらないで夫の方の法律によるということになりますからね。こういうような問題も、せっかく国籍法をお変えになったのだから同時に変えるべきではなかったかというふうに考えられるわけです。それからまた、離婚の場合の配偶者の財産分与の問題、こういうものにつきましても判例は離婚の準拠法によると言っておりますので、離婚の準拠法というと締局夫の本国法ということになってしまう。そのほか子供の問題、親子関係の問題、婚姻の問題、それから二重国籍者の問題、いろいろございますが、こういうような問題について国籍法と同じような方針で改正はできなかったであろうかということが一つの疑問点でございます。
その改正できない根拠がこれは国際私法なので何らか国際条約があるためにできないのか、あるいはそういう国際条約はない、たまたま日本が国籍法で父系主義をとっておるのでこういう法例をつくったのかということが問題になるわけでございます。私は、恐らく国際条約もそれは関連はするけれども、父系主義をとったことが一番大きな原因じゃないかと思いますが、従来は父系主義をとらないでも例えば生地主義をとっておるところはございますので、日本人とアメリカ人との婚姻関係ということになると日本の法律によるのかアメリカの法律によるのかということが起こりますが、この場合に日本人が女性の場合はいつも不利になるということになりますね。
例えば沖縄の問題は、無国籍者の問題があるというのは、結局こちらは女だから非常に不利益をこうむっておるわけです。ところが、従来からそういう問題があるのに、離婚をする場合に、法例で離婚の規定がございますが、離婚による場合に常にこれが夫の本国法によるものだから沖縄の人は離婚できないわけです。日本の国籍法によることができるなら離婚できますね、日本で裁判所に訴えればいいから。ところがそれができないということで恐らく沖縄の人は離婚もできなかったんであろうと思われますが、こういうような非常な不便な問題を含んでおる現在のこの法律でございますが、それをこの際改めることが必要ではないかと、こう思います。
法例はこれははどこの所管か知りませんが、国籍法にあわせて改正される政府の方の御意思はないかあるか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/71
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072・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法例にはただいま御指摘のように「夫ノ本国法」であるとか「父ノ本国法」であるとかというふうな規定があるわけでございますが、これも男性優先的な思想のあらわれではないかという指摘をされる向きもあります。しかしながら、実際にこれが御本人にとって有利であるか不利であるかという点について考えますと、これはただ夫の本国法とか父の本国法というものを適用するということを決めておるだけでありまして、その決められました本国法が当該事案について御本人に不利益に働くか働かないかはこれは別のことでございます。したがいまして、これが結局男女平等の関係から申しますと、その適用される本国法と言われるものが、これが男女差別につながっている場合には女性の場合には不利益ということになろうかと思いますけれども、必ずしもそうとは決まらないわけでございますので、この一つの連結点として示す夫とか父とかということが平等の問題に直ちにつながるものではないというふうに考えております。
それからまた、法例で決めております事柄は適用される法律の中身を示しておるものでございまして、国際的な意味での裁判管轄権を決めるわけのものではございません。したがいまして、ただいま御指摘のような沖縄の方の離婚問題については、これは日本の裁判所において処理をすることが当然できるわけです。その日本の裁判所が法律的な判断をする場合に夫の本国法とか妻の本国法とかということが問題になるということになるわけでございます。
そういうことでございますけれども、法例自体が、何といいますか、見直すべき時期にきておるという認識は国際私法学者の間でもかなり強うございますので、法務省の中にあります法制審議会におきましてもこの点が検討の対象になっておるところでございます。その場合にこの夫の本国法とか父の本国法とかということも適当であろうかどうかということが見直されることになります。ただその場合に、今度の国籍法の絡みで当然直るべきかということになりますと、これは必ずしもそうはならないのじゃなかろうかと思います。仮に国籍法の方で父母両系主義のような形をとりましても、適用されるべき法律を決める場合に、父または母の本国法というのでは適用される法律を決めたことにならないわけでございます。したがいまして、どっちかにしなければならないということがあります。あるいはそういう親というものに着目する法律の指定ではなくて、もっと別の要素、例えば住所とか、そういうようなことで考えるというふうな方向転換もあるいはできようかと思いますけれども、一体どういうふうなことをメルクマールにして適用されるべき法律を指定するかが適当かという観点から検討されるべき事柄だと思います。
なお、条約の関係につきましてこういう事柄が縛りがかかっておるということは必ずしもないようです。もちろん二、三の点につきましては条約がございますけれども、そういう場合には、それなりに国内法でも手当てをしているものもございます。ただ、各国でやはり準拠法を決める場合に、できるだけ共通したものであってほしいということは言えるわけでございますので、そういう面で、オランダのハーグで国際的な条約を決める機関がございます。そこに私どもも参加をいたしておりまして、そういう検討も進めておりますので、要するに国際的な動き、条約のでき方というものをにらみながらこれからの法例の改正作業に進んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/72
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073・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ただいまの問題に関連するわけですが、法例の十六条の離婚のところで、これは前に裁判が行われたことがございまして、昭和三十九年三月二十五日の民集に載っておるわけですが、この中に「離婚事件の国際的裁判管轄権」の問題として取り扱われておりまして、「離婚の国際的裁判管轄権の決定にあたっても、被告の住所が日本にあることを原則とすべきであるが、原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合、その他これに準ずる場合には、原告の住所が日本にあるならば、日本の裁判所の管轄権が認められる。」、こういう最高裁の判例があるわけです。
原告というのはこれは日本の女性です。それから被告というのは外国人ですね。例えばアメリカ人といたしますと、そのアメリカ人が日本に住んでおる場合、妻は離婚訴訟を日本に出すわけにいかぬ、アメリカの方に出さねばならぬということになるのではないかということになるわけなんですが、ただ夫が日本人の女を捨てた場合とか、あるいは行方不明になってどこへ行ったかわからぬという場合は日本の裁判所に管轄権があるから訴えることができる。その場合に日本の裁判所は日本の法律によることができるんだ、つまり日本の裁判所は夫の本国法によらねばならぬけれども、離婚の原因があるかどうかということについては日本の法律による、こういうことになっておるわけなんですが、そうなりますと、やはり問題は私は残ると思うわけです。
法例もできるだけ早い機会に改正をしていただいて、すっきりしていただく方がいいのではないかと思います。まだほかのところは問題点がたくさんありますが、ちょっとそれだけお伺いしておいて次に行きますので、今のところ簡単にひとつ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/73
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074・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 裁判管轄権の点につきましては、被告が日本の住所にあるということが原則であるけれども、ただいま御指摘のような関係で外国にあっても、なお日本の裁判所に裁判管轄権があるということは、最高裁の判例があることは御指摘のとおりでございます。法例をなるべく早く合理的なものに変えるべきであるということは、これは御指摘のとおりでございます。ただ、合理的なものが何であるかということを検討するのはかなり難しい問題がございますが、なるべく早く現在の時代に合ったものに変えるべく努力をしなければならないというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/74
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075・飯田忠雄
○飯田忠雄君 きょう実は被選挙権の問題についてお尋ねをしようと思っておりましたが、時間がございませんので、まことに済みませんが、きょうわざわざおいで願って悪いですが、引き上げてください。
次に参りますが、先般、衆議院の審議で二重国籍の場合の外交保護権の問題が取り上げられておりました。その際に、国際司法裁判所で二重国籍の場合の外交保護権の問題が取り上げられたという法務省の御答弁がございますが、その実際の内容が書いてありませんので、もしわかっておりましたら御説明を願います。どういうふうに取り上げられたのか。外交保護権ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/75
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076・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはノッテボーム事件ということで呼ばれている事件でございまして、国際司法裁判所が一九五五年四月六日に判決をした事件でございます。
この事案と申しますのは、戦争中のことでございますが、ドイツ国籍のある人がグアテマラにおりまして、そしてそこで財産を持っておった。その人がリヒテンシュタインに帰化をいたしましてリヒテンシュタインの国籍を取得した。ところが、グアテマラの方は、ドイツがグアテマラにとっては敵国でありましたために、敵国人として財産の接収をしたわけでございます。そういうことについてリヒテンシュタインの方が自国民の財産を接収したことであるからというので、外交保護権の行使をしたわけでございます。それについて争いが起きまして、国際司法裁判所でリヒテンシュタインに外交保護権があるかないかということが争われた事件でございます。
それにつきまして国際司法裁判所は、なるほど形の上ではリヒテンシュタインの国籍を持っておるけれども、しかしながら実質的にはリヒテンシュタインとの間には真実の結合関係がない、そういう場合にはリヒテンシュタインの国内法的にはあるいはリヒテンシュタインの国籍があるかもしれないけれども、国際的にはそういう真実の結合性がない者については外交保護権がないんだという判決をここでしておるわけでございます。そういう事案でございます。したがいまして、二重国籍の場合ではございませんが、要するに真実の結合性がある国籍について外交保護権があるんだという面においては大変参考になる判決じゃなかろうかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/76
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077・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは最後に一つだけ、前から実は私問題にしておりました留保の点について御質問を申し上げます。
戸籍法によりますと、出生届と同時に留保の意思表示をしろと、こう書いてございます。出生届をすれば当然これは在外公館は本籍地にそれを送付することになっておりますが、そして戸籍に載ります。載れば国籍が得られるわけですが、常に出生届につけて出すというのであれば、出生届そのものが留保の意思表示をしたことになるのではないか、わざわざ特別に意思表示を義務づけなくてもいいのではないかという疑念があるわけでございます。
それからもう一つ問題は、今度の十二条で留保の意思表示をしなければ国籍を失うという規定になっております。これは問題ではないか。理論上の問題ですが、出生届を出した、戸籍にも載せてもらった、にもかかわらず留保の意思表示をしなければ国籍を失うということは、どうもわけがわからぬわけです。殊に現在の実際上の取り扱いは、留保の意思表示をしなければ出生届さえも受け付けぬ、こういう扱いがなされておるということでございますが、これは問題であろうと思います。留保意思表示があろうとなかろうと、戸籍法で出生届は義務づけておるんですから、当然これは出さねばならぬ。しかもそれを留保する意思がない場合に留保しなければ受け付けないということはどうも納得しかねると思うわけであります。
そういう問題、この際すっきりする必要があるのではないかと思うわけです。出生届を出さなければ国籍を失う、こういうふうにはっきりした方が私は明瞭でいいではないかと思うわけですが、そうすれば留保をしなかった場合に国籍を失うようなことはないわけです。国籍を失うかどうかは本人が成年に達したときに選択によって行うべきものでございまして、生まれたときに日本国籍を留保するという意思表示を赤ん坊ができるはずもないのに親がかわってやるといったようなことは無用のことではないか、出生届があればそれで事足りるのではないかと思われます。この点につきまして御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/77
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078・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 前回も申し上げましたけれども、出生届と申しますのは出生したという事実を報告するいわば観念の通知でございます。それから、日本の国籍を留保したいということの届け出はまさに意思表示でございまして、性質が違いますので、法律の制度とすれば出生届と留保の届け出とがこれが二本立てになるというのは、留保制度をとればそれはそういうことになろうかと思うのであります。
ただ、現実問題といたしますと、それはあわせて一つであるべきだろうと思いますので、戸籍法の方におきましても留保届は出生届と同時にというふうに規定をいたしております。したがって、現実には出生届の用紙の中に留保届の事項も記載をして御提出いただくということになっておるわけでございますが、出生届だけ出せばそれでいいじゃないかということはある面では理解できなくはないのでございますけれども、出生届を出すがゆえに日本国籍を持つということはちょっと制度としては逆になるのではないか、出生届を出そうと出すまいと、ともかく実体的には日本国民である、要するに二条の規定によって出生と同時に日本国籍を持てばそれは日本国籍を持つわけでございまして、それがそういう方が出生届が出されて戸籍に載ることによってそれが公の帳簿で明確になるということでございますが、出生届を出さなければ日本国民でなくなるというのは少し制度としてはなじみがたいのではないかという感じがいたします。
したがいまして、結論的には出生届を出せば日本国民になるというふうな関係での実体関係が動くように出生届の際の記載なども工夫してまいりたいというふうには考えておりますけれども、制度としては現在のような考え方で済ませていくのか適当ではないかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/78
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079・飯田忠雄
○飯田忠雄君 時間来ましたけれども、一つだけ。
今の問題でわからないのは、国籍の取得は出生によって取得する、それで生まれて取得しますね。それを留保の意思表示をしないとなぜ法律によって生じたその国籍がなくなるといったような規定を置かねばならぬのかという点がわからないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/79
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080・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはこの留保の制度と申しますのは、まず国外で生まれているということです。それから二重国籍になるということでございます。そういう場合には先ほどのノッテボーム事件での際にも申し上げましたけれども、日本の国との結合性というものが比較的薄いという可能性が考えられるわけです。場合場合によっては随分違いますけれども、一般的には日本との結合性というものが薄い可能性が強いグループだということが言えるわけであります。そういう方方につきましては、法律上国籍法の二条の規定によって日本の国籍を取得いたしましても日本の国籍の方が形骸化している国籍であるという可能性が強い。そういうふうなグループの方々についてはむしろこの際特に日本の国籍を留保しておきたいという方をいわば残しておきまして、そうでない方についてはその形骸化された日本国籍を整理するという意味でこの際二重国籍を防止できる、そういう観点から留保制度というものを設けているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/80
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081・飯田忠雄
○飯田忠雄君 時間が来ましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/81
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082・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午後零時十五分休憩
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午後一時八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/82
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083・大川清幸
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/83
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084・橋本敦
○橋本敦君 前回に続きまして国籍法の関係で質問をいたしますが、留保制度の問題であります。この留保制度について一つは問題があると思われるのは、国籍の選択については本人の意見を尊重するというそのことと、それから出生に際して届け出と同時に留保の手続をしなければ国籍が留保されないということとの関係で、どういう処置が合理的かという問題であるわけであります。つまり生まれた子供は留保の意思を表明することができませんから、留保の届け出をして留保するかどうかは専ら親の意思にかかっていることになるわけであります。そして、そういうことで親の方が国籍を留保する意思がない場合に留保届をしなかった場合は、これはその子供は当然日本国籍が取得できないので、後で救済的な処置をとる以外になくなってくる。その関係で今私が指摘をした調和の関係をどういうように法務省としてはお考えなのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/84
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085・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 留保制度は、かねがね申し上げておりますとおり、形骸的な日本国籍を持つような形の二重国籍者をなくそうというのがねらいの制度でございます。そういう観点から、国外で生まれた二重国籍者については留保届を出していただくということによって日本国籍を確定させようという制度でございますけれども、ただいま御指摘のように、それは親が出生届の際に留保届を出すということになりますので、本人の意思は反映されておらないわけでございますけれども、これは一つの推定の問題になろうかと思いますが、国外で生まれてそして二重国籍を持って、しかも親が将来ともこの子供は日本との結びつきはほとんどなく生活をするであろうというふうな判断に立っておられるような場合には、形骸的な国籍ということになるのではないかということで考えられる、そこに合理性があるだろうと思います。それからまた、もう一つ選択制度との関連で、法務大臣の催告を待ってから喪失ということになりますと、日本の国側が把握できない日本国民というものが出てくるということは、その面からも問題であるというところがあるわけでございます。
そういうところから留保制度というものは合理性のある、また必要な制度であろうというふうに考えておるところでございますが、御本人がその後になってやはり血統的に日本国民の血を引いておる、したがって日本国民となりたいというふうに考えられる場合に、完全に一般の外国人と同じような扱いをするということも問題であろうというところから、特例を設けまして、そういう方について、未成年の間にまた日本の国籍を欲しいという方については国籍取得の道を残しておくということは必要であろうということで、そのような規定も置いておるところでございます。それからまた、成年に達した後でも帰化によって国籍を取得するという場合も簡易帰化で通常の外国人とは違う扱いをするということになっております。
そういうところを整合的に考えますと、留保届を出さなかったことによって日本国民でなくなった方についての将来の問題も一応解決できるのじゃないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/85
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086・橋本敦
○橋本敦君 本来的に血統主義の立場から言えば、出生と同時に、そしてまた国内であれば届出によって当然のこととして日本国籍を取得するわけですね。したがって、親の意思によって、今局長がおっしゃったように、将来日本に行くことがほとんどないだろうとかなんとかいう親の意思の展望だけにかかるのじゃなくて、基本的には出生届を出すことによって日本国籍を取得し、事実上重国籍ということも想定はするけれども本人の意思で成年に達したときに選択ができるということを基本とするという解決がなぜとれないのか、ここのところ、なぜとれないのか、そこのところちょっと法務省のお考えを説明してほしいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/86
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087・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは成年に達するまで待ってもいいではないかということも一つの御議論としては確かにあり得るところだろうと思います。しかしながら先ほど申し上げましたように、未成年の間でありましても重国籍であるということは必ずしも望ましい形ではございませんので、できるだけ早くそれが解消できるということになれば、それにこしたことはないのではないかという考え方を持っております。
現在は現行法のもとにおきまして選択の制度というものはございませんけれども、留保の制度は同じようにあるわけでございまして、在外公館などのお話を伺いますと、例えばブラジルなどでは国籍法の規定によって日本国籍を取得するであろうと思われる者の三分の一程度の方が留保届を出しておられるというような語も聞いております。そういうふうなことでございますと、やはり早いうちに留保によって形骸的な日本国籍の発生を防ぐということはかなり合理性があるのじゃないかということと、先ほども申し上げましたけれども、選択制度が中間試案のように選択の意思表示をしない場合には当然に日本国籍を喪失するというような制度の場合にはまだ一つの考えようがあろうかと思いますけれども、法務大臣の催告によって国籍を失わせるというふうに、いわば本人の立場を保護するというふうなことでの改正案の立場から申しますと、結局留保届を出さないという方は実際的には出生届もお出しにならない方でございますので、日本の国としてはどういう方が要するに催者の対象になる方であるかということもその存在すらもわからないということでございます。そういうことになりますと選択制度自体もうまく働かない。かえって日本と何のつながりもないような方が選択制度によって重国籍の解消が図られないという逆な結果を生じてしまうということにもなりますので、そういう点から考えましても選択制度にあわせて留保制度というものはやはりあるべきであるということに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/87
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088・橋本敦
○橋本敦君 この点は見解の相違があるわけですが、留保制度をとるということに一定の合理性があるとしても、子供の意思が回復されるべき状況があれば当然救済しなくちゃならぬというので、今もおっしゃった日本の国籍を失った者で二十歳未満の者、これについては日本に住所を有するときには法務大臣に届け出ることによって、特段の審査その他なしに国籍が取得できる、こうなるわけですね。そこで、この場合の届け出るというのは、どういう様式で、どこで、だれに届け出るということに具体的になるのか、必要書類は何なのか、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/88
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089・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはまず市町村役場の方に届け書を出していただく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/89
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090・橋本敦
○橋本敦君 外国でやらなくちゃならないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/90
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091・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 失礼しました。この場合には法務大臣に届け出でございますので、法務局の方に出していただく。それから、日本に住所があるということでございますので、外国であるということはちょっとこの要件との関係で問題でございますけれども、仮に外国で出すという場合には在外公館を通じて法務省の方に出していただくということになるわけでございます。
これは意思表示についてはこの規定に基づいて日本の国籍を取得したいということを申し出たことになるわけでございますが、添付書類といたしますと、要するに親御さんといいますか、そういう関係で、もし留保届をすれば日本国籍を取得しているはずであるという関係の親子関係のことが証明できるもの、恐らくそれは出生証明書等になろうかと思いますけれども、そういうものを出していただいて、その親子の関係、それから出生地の関係、そういうことがわかるような書面を出していただくということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/91
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092・橋本敦
○橋本敦君 この場合は二十未満ということになっておりますから、本人は戸籍法、国籍法の関係では十五歳以上になれば自主的に届け出の権能が付与されると思うんですが、十五歳以下の場合は親権を証する書面が要りますか。十五歳過ぎてれば本人だけでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/92
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093・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは法定代理人がかわってするということでございますので、法定代理人であるかどうかということを明らかにする書面が要るわけでございますが、それは先ほど申し上げました恐らく出生関係を明らかにする書面が出れば、あとは準拠法の関係で判断をして、代理権がある、法定代理人であるということがわかればそれで済むわけでございますので、恐らく特別な書面というものはなしに済むケースが多かろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/93
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094・橋本敦
○橋本敦君 そこで、おとといも参考人で意見を言われていた人もありますが、この「日本に住所を有するとき」という要件ですね。これはなぜこういう要件を決めたのか。恐らくこれは国籍の実効性確保という観点だろうと私思うんですが、具体的に十五歳を過ぎて二十未満の人が、両親の生活の本拠は外国にある、そこで出生した、しかし留保はしてなかった、しかし日本国籍を取得したいので法務大臣に届け出をしたいんだけれども、日本に住所を持たなくちゃならぬというので単身で日本に来て、二十未満で生活を確保し、かつ住所を持つということが可能であろうか。つまり国籍の実効性確保という点からこの要件は入れられたが、しかしこの規定によって日本国籍を取得したいというその本人を考えれば、この要件は厳し過ぎないだろうか。現実に住所というのはどういうようにお考えなのだろうか。例えばどこかに寄寓している、住民票があるという程度でも認められるのか。ここらの関係はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/94
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095・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 住所と申しますのは、生活の本拠としてあるところが定まっておるということを意味するわけでございまして、それは国籍法の関係でも特別の意味を持つものではないと思います。
日本に住所を有することを要件にいたしましたのは、留保制度と申しますのがもともと地縁的な要素が一つ欠けておるというところから日本との結びつきが薄いのではないかというところに一つの合理性があるわけでございます。そういう点から申しますと、当然の意思表示によって日本国籍を取得するためには、その地縁性というものを戻すといいますか、日本に地縁性を持つということが必要になるのではないだろうか。そういうことでありませんと、せっかく地縁性で留保制度というものを考えたのに、留保しなければ日本国籍を失ってしまうということがある意味では実効性がなくなってしまうという面もなくはないわけでございます。
そういうことから設けておるわけでございますが、ただ、両親が外国にいる場合に未成年者が日本に一人だけ来て住所を持つということは困難ではないかと言われますと、それは実際上はそういうことであろうかと思いますが、ただ多く、何といいますか、また再び日本の国籍を取得したいというような方は、親御さんは出生当時にはずっと外国に居住をするという予定である、そういう見込みであるということで留保届を出さなかった方であろう、それが何かの事情で本国である日本の方に戻ってこられたという場合に初めて日本の国籍を持つという実際上の必要性が生ずるといいますか、そういうことが動機になるということがほとんどであろうと思われますので、日本の住所を持つということがそういう面からいっても実際上それほど不都合は生じないのではないかと思います。むしろ理論的に地縁性というものを持つというところにいわば再取得の制度を持つ意味があるので、その日本の住所要件というものはこれは置くことにしたいというのがこの規定を設けた理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/95
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096・橋本敦
○橋本敦君 若干私も考え方に異論があるんですね。といいますのは、地縁性ということをおっしゃるわけですが、ところが生まれたときに留保届を出す場合は、その留保届で地縁性の審査なんてなしに留保届が出ることによって国籍が留保されるんですよ。だから、留保届を出すときは地縁性は関係ない。
そこで、今度は本人が本人の意思及び両親の意思も含めて日本国籍をあのときは留保しなかったけれども、日本国籍を得たいという、こうなったときには、今度はその段階で地縁性が出てきて要件が厳しくなるというのは私は一貫性がない。つまり本人の意思を尊重するということを留保届の出発点からさかのぼって一貫していくならば、地縁性の要件を厳しくするというのは私は問題が出てくる。そしてまた今おっしゃったように、両親が外国で長く生活していたけれども、日本に帰って今後日本で生計を立てるというようになったので、その機会にこの届け出をして日本国籍を取りたいということももちろんあるでしょう。あるでしょうが、両親は依然として外国で終生仕事をやることもあるでしょうし、子供だけが帰るということもあるでしょう。
ですから、いろいろなことがありますので、この要件を厳しく解するということは、本人の人権及び意思を尊重するという面から見て問題を起こさないようにしなくちゃならぬということで、この住所要件を厳しく解するということについては、相当事情をケース・バイ・ケースでよく審査をなさって弾力性のある運用をされることが望ましい、こう思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/96
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097・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点はおっしゃるとおりだろうと思いますので、住所要件について相当長期間とかということはなしに、本人がどういう考え方で日本に現在住所を有しているかというところも含めまして、制度の趣旨に合うような運用は当然すべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/97
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098・橋本敦
○橋本敦君 これと関連をして、先ほども局長の答弁にありました国籍の選択の問題について質問を移してまいりたいと思いますが、国籍の選択ですが、国籍の選択宣言というのはこれは要式行為
でしょうか。具体的にはどういう方法によって国籍の選択をやるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/98
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099・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 今の御質問は日本の国籍を選択する旨の宣言のお話だと思いますけれども、これは改正の戸籍法のところで書いておるところでございますけれども、市町村長に、市町村役場に届け書を出していただくということにいたしております。したがいまして、要式行為と言えば要式行為であろうと思いますが、できないときは口頭でやるということを戸籍法一般の制度として否定するものではございませんので、もし合理的な理由で届け書を書くことができない方の場合には口頭でもやることはできようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/99
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100・橋本敦
○橋本敦君 国籍の選択も本人の意思確認、それから本人の意思の尊重ということが私は極めて基本にならなければならない、こう思いますので、法務大臣の催告により国籍を失わしめることになるという、この手続について若干お尋ねをしたいと思うんですが、この場合は、法務大臣は日本の国籍の選択宣言をしない人に対して、まず一カ月以内に選択するようにということを催告ができる、こうなっているわけですが、この催告はこれは日本国内におれば一カ月以内に十分到達し慎重に考える余裕があると思いますが、郵便事情その他によって外国に長く居住しているという事情がある場合に、この一カ月で郵便は着いた、着いたけれども自分がよく選択をする、考える余裕と期間を与えるに果たして足るかどうかということも懸念の一つに私は持っているのですが、そこらあたりどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/100
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101・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この一カ月といいますのは、申すまでもありませんけれども、法務大臣からの催告の書面が届いてから一カ月ということになるわけでございます。そしてやむを得ない事由があればその期間がやんだときから一カ月ということになることは申すまでもないところでございますが、これを一カ月では短いのではないかということも、それはごもっともな面がございます。
ただ、私どもが考えましたのは、もともと二十二歳までに選択をしなければならないという義務があるわけでございます。したがって、そのときまでにおやりになるのがむしろ原則でございます。したがって、催告が来ればそのときには大体二十二歳を当然経過しているわけでございますので、そんなにその判断に困るというふうなことはないのではないかということが一点でございます。そして余り長い期間ということになりますと、やはりそのうちというふうなことになって、かえってまた懈怠になるというふうなこともなくはないであろうということから、いろいろなほかの制度と比較考量いたしまして、一カ月というところがちょうど意思決定をしていただくのにいい期間ではないかという結論に達したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/101
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102・橋本敦
○橋本敦君 裁判所の書面なんというのは到達しないと効力発生しませんから、上告の申立書にしても何にしても不変期間の遵守というのは大変なことですね。そこで、この一カ月という期間ですが、この場合に一カ月以内に届け出を郵送で発信した場合に届け出印があればいいのか、やっぱり裁判上の不変期間の扱いのように到達ということが要件なのか、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/102
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103・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは到達から起算するわけでございます。それを法務大臣の方ではいつ到達したかということは把握しなければならぬことになります。国内の場合には日本の郵便制度によりましていつ到達したかわかるような、そういう配達の手続に乗せてするということになります。国外の場合には必ずしも日本のような送達の制度があるかどうかということは疑問でございますけれども、いわば常識的に考えられる以上の期間を経過してお出しになるというときには、その国の事情などもこちらの方で推定をするといいますか、あるいは御当人の方で、少し発信からするとかなりの長期間になっているけれども配達されたのがこういうことなんだというふうな疎明資料でも出していただければ、それで処理をするというふうなことも、それはあり得えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/103
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104・橋本敦
○橋本敦君 そうですね。やっぱり具体的なケースによって判断をしてあげなくちゃならぬ事情もあり得るかと思いますね。
そこで問題は、催告を大臣が書面でできないときには官報に掲載して催告をする、こうなりますと、官報というのは国外で一般的に見れませんし、国内でもなかなか容易に見ることはできませんから、官報で催告をして日本国籍を失わせるということはもう最後的手段でやむを得ない本当の形式的な処置にしか過ぎないと思うんですが、こういうようなことが起こらないように、つまり催告が具体的名あて人の国民に対して必ず行くように、どんなふうにやっておけばその利益を保全してあげることができるかということで私もいろいろ考えておるんですが、これはどういうように法務省お考えでしょうか。つまり催告する名あて人の住所、相手方をどんなふうに把握に努められるかという問題ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/104
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105・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず、対象者につきましては市町村の方で二重国籍者というものが戸籍の関係でわかりますので、その通知をいただく、その通知をいただいた場合に戸籍の付票から住所がわかるという場合がかなりあります。国内の場合にはそれでほとんどわかります。国外に行かれる方も、最後の国外に出られるときにこういう外国の住所になるということを届けられて付票についている場合もあります。そういうことでまずたぐる。それから留保届を出しておられる方はその出生地あるいは届け出人の住所、そういうものが一つの調査をするきっかけになろうかと思います。そのほか戸籍の上で親族関係がわかりますので、そういう近親者の方に現在の住所地を照会してお尋ねをするというふうなこともとりたいと思っております。なお在外公館の方で在留邦人のいろいろな名簿などをつくっておられるところもあるかもしれません。ですからそういうものも一つの手がかりにするということも考えられようかと思います。あらゆる考えられる方法をとりまして、そしてどうしてもわからないという場合にだけ官報告示ということに載せたいというつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/105
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106・橋本敦
○橋本敦君 その点は実際の運用として大変な手数もかかるでしょうけれども、本当によく努めてもらいたい点であります。
そこで、法務省のそういう努力にもかかわらず、やむを得ず催告によって国籍を失ったとされた場合、その場合に国籍を催告によって喪失したということがその本人のどこに、どのように記載されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/106
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107・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 戸籍の方に要するに国籍法の第何条の規定によりいつ幾日日本国籍喪失というふうに書かれるわけでございます。したがいまして、そこでどういう関係での喪失かということは戸籍を見ればわかるということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/107
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108・橋本敦
○橋本敦君 そこで私が伺いたいのは、催告によって日本国籍を喪失せしめられたという人が国籍を回復する手続がありますね。その場合は本人が日本国籍を失ったことを知ったときから一年以内と、こうなっておるわけです。そこで、知ったときというのはいつかということについて、本人がいろいろ言っても戸籍にちゃんと書いたんだから、あなた、もっと早く戸籍見れたはずだ、だからあなたがそれを知ったのはもっと早いのだから、もう一年を過ぎているというようなことになると、これは不毛の争いになるわけですね。
だから、したがって本人が戸籍をしょっちゅう見ることも外国におればないでしょうし、日本におっても戸籍を見るというのはそうないかもしれませんが、本人が日本国籍を失ったことを知った日からというのは、戸籍によって確認した日からという意味なのか。これ一年過ぎたら回復できないわけですから、どういうことでこの一年以内という起算をやられようとするのか。この点何かはっきりしたけじめがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/108
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109・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この一年の起算点は現実に知ったときからということになるわけでございます。したがいまして、この再取得の届け出を出される際には御本人がいつ知ったんだということは一応言っていただくことにはなろうかと思いますが、それが非常に不合理であるということが国側の方でわかる場合には、一年を経過しているということになって受けないということもあろうかと思いますが、そう私どもの方では、例えば戸籍謄本の請求があったとか、あるいは日本の国籍があるということを前提として婚姻その他の届け出が出てきた、しかしもう既に国籍を喪失しているから戸籍が消除されているというふうなことでそれが受理されなかったとか、そういうふうな現実に知ったということが明らかなことがこちらの方で把握できませんと、御本人が言われるこのときに知ったんだというふうなことの御主張を合理的に覆すことができないことになりますので、したがって御本人のおっしゃることを信用して一年経過してなければそれで受けるということに、実際上はそういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/109
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110・橋本敦
○橋本敦君 本人が国籍を失ったことを知ったときには直ちにとか二週間以内にとかいうふうにしないで、一年という幅を持たしていらっしゃるのは、可能な範囲で合理的な場合は国籍の再取得も認めてあげる必要があるという配慮がやっぱりあるからだというように私は読んでおるんですけれどもね。だから、そういうことであれば、そういう建前に従って慎重に検討していただくということをお願いしておきたいんですが、この場合に、日本の国籍を失った人で再取得を申し出るもう一つの要件で、重国籍となる場合はこれはだめだということになっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/110
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111・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/111
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112・橋本敦
○橋本敦君 そういたしますと、重国籍となる場合は回復できないということは、現に外国籍があればこれは回復手続がしようがないので外国籍を放棄するか、あるいは無国籍のままでいるのか、そういうことでなくちゃならぬということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/112
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113・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはこの再取得の場合も自分の志望による日本国籍の取得ということに評価されると思いますので、恐らく当該国の方では、自己の志望により他の国の国籍を取得したるときにはその当該国の国籍を失うというような法制をとっておるところが多かろうと思います。したがいまして、そういうふうな国の場合には現在外国の国籍を持っていてもそちらの方がなくなって日本国籍を取得するということになりますので、それは妨げにならないことが多かろうと思います。ただそうでない場合、帰化の重国籍防止条件と同じような問題は残るわけでございますけれども、当然喪失しないという場合にはこの再取得の方法はとれないということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/113
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114・橋本敦
○橋本敦君 外国の法令がどうなっているかということにかなりかかわってくる問題もありますね。例えば重国籍はできるだけ避けるということで、国籍の選択宣言をした場合でも外国の国籍の離脱に努めなくちゃならぬという、こういうことになっているわけですが、その場合に、相手国の法律がどうなっているかということにも深くかかわりがありますので、これは必ずしも強制的に一方的にやれないと私は思うんですね。
この重国籍との関係でもう一つ問題は、十六条の関係によりますと、日本国籍を選択した場合に、外国で仕事をしていて外国の公務員の職に就任した場合に「その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」ときは、これは日本国籍の喪失宣言をすることができると、こうありますね。この場合に私は、「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」ときはというのは、ある意味で正しい法律の規定だと思うんです。なぜならば、反すれば直ちに日本国籍を失わせるのじゃなくて、著しく日本国籍を選択した趣旨に反する事情があるときに、その場合に限って日本国籍を失わせるというように続めば、それなりに本人の立場を尊重して合理性があると思うんですね。そこで法務省としては、この十六条の関係で言う「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」というのはどういう事実を想定していらっしゃるのか、もし具体的な事例、想定等があればお教えいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/114
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115・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この選択の宣言の趣旨と申しますのは、自分とすれば日本の国籍を単一の国籍とする、実質的にそうしたい、反面二重国籍となっている外国の国籍の方はこれはなくすのだということの宣言でございます。したがいまして、外国の国籍をいわば実質的な国籍として生活をするということはしないということが趣旨に含まれているわけでございますが、それに対して、外国の国籍を有しなければなれないような公務員の職につくということは、これはもちろんその趣旨に反することになりますが、ただそれだけで当然にということでは問題であろうということで、御指摘のとおり「著しく」ということをつけ加えておりまして、ただ単に公務員の職についたというだけでそういうことは少し行き過ぎかもしれない。よく例で申し上げるのでございますけれども、日本の公務員という場合にもいろいろなことがございまして、一概に、別に公権力の行使に関係がないようなものも公務員ということになっております。そこまで行くのは行き過ぎではないかということでございますので、抽象的に申しますと、公の意思の決定に参画するような職であるとか、あるいは公権力を直接自分が行使するようなそういう職にある者が「著しく」ということになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/115
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116・橋本敦
○橋本敦君 公務員の職種も極めてバラエティーがあるものですから、今おっしゃったような解釈は私は具体的に妥当性を持つと思うんですが、その場合に公権力の行使に携わるというようにおっしゃいましたが、それだけで言うならば公務員というのはほとんどが公権力の行使に携わるわけですね。だから私は「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」というのは、外国の公務員になった場合でも、その公務員の職種なり本来の職務がその国の国家意思の形成にやっぱり具体的に関与していく、そういうものだというように限定してもいいのではないか。局長がおっしゃるように公権力の行使というと、これは非常にまた一般化されてしまうという懸念も持つのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/116
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117・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 公権力の行使といいましても非常に広く解すれば解されることになりますので、そんなに広くということは著しく違反するという規定とは合わないことになろうと思います。したがいまして、今おっしゃったような、そういうようなことが中心になろうかと思いますが、公権力の行使でもかなり、何と言いますか、直接的な行使の分野としては高度なものもそれはなくはないだろうと思いますので、多分そういう場合にはその背後には国家意思の形成というものも含まれている場合が多かろうと思いますけれども、公権力の行使それ自体でも、かなり高度なものであれば、それは当たるということがあってもいいのではないかと思いますが、大体私どもの考えております該当の範囲というのは、今橋本委員が御指摘になったのとそう食い違いないその範囲を考えているように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/117
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118・橋本敦
○橋本敦君 そこでもう一つは、その国の国籍を有しないでもなれる公務員の職についたということでは、これ問題は起こらないわけですね。だから、その国の国籍を有するということでなることができる公務員の地位についた場合ですから、その国の国籍も持っていると、こういうことですね。だからしたがって、結局は国籍選択の本人の権利をどれだけ尊重して本人の意思をよく検討するかということも必要になってくる。いわゆる国籍選択の自由にかかわってくる問題にもなる。
そのために中間試案とは一歩進めて、この国籍の喪失の宣告をする場合には法務大臣は公開による聴聞を行わなくちゃならぬということにして、本人の意思を十分そんたくしようということになったと、こう私は見ておるんですが、そのことはそれで賛成なんですけれども、この場合この聴聞ですね。これは日本でやるんでしょうか、外国公館のところでやるんでしょうか。外国でやるとすれば、それこそ国際共助協定か何か、そういうものがなければできないという問題も起こってくるでしょうし、これは日本の公権力の行使とすれば、そう簡単に外国でできない。そうすると、日本に呼び戻すのだろうか。そこらの手続の細則はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/118
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119・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは国内でという考えております。外国でということになりますと、ただいま御指摘のような問題もありますので、国内で行いたいと思います。したがいまして、この聴聞というのは御本人にそういう意見を述べる機会を与えるという手続でございますので、そこに出てきていただくということが望ましいわけでございますが、必ず出てこなければいかぬということでもございません。そして、その自分の考え方なり主張なり、そういうものを書面で出していただく、あるいはまたそれを裏づける資料を郵送で送られるということによっても足りるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/119
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120・橋本敦
○橋本敦君 わかりました。
さて、ちょっと話は変わるんですが、無国籍の救済ということで日本国籍が今度の改正で取得できるようになったわけですが、その場合、日本国籍を届け出によって取得した場合でも、その届け出以前は無国籍ということが戸籍に記載されるように私聞いておるんですが、そうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/120
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121・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは日本の国籍を、その出生のときからの方は別でございますけれども、後になって取得された方、あるいは帰化によって取得された方については、そのもとの国籍を書くということに考えております。したがいまして、その外国の国籍がない方については無国籍という表示であらわすという考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/121
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122・橋本敦
○橋本敦君 もとの国籍というのは、これはそれなりに合理性があると思いますが、無国籍といったらもとの国籍がない場合ですね。だから、そこまで必要があるのだろうかということが一つと、それからもう一つは、戸籍というのは本人のプライバシーにとって大変大事なものですけれども、どこかの外国の国籍から日本の国籍に移ったんだといったら、これはそれなりにだれも奇異には思いません。しかし戸籍をとった場合に、この人は日本国籍だけれども、あら、前は無国籍だったのかということは、本人の名誉や本人のプライバシー感覚からいっても伏せておきたいことではないだろうか。だから特段の法律上の必要がないならば、私はこの法律の施行に当たって無国籍の記載はしないという処置がとれないものだろうか、こう思っておるんですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/122
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123・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 原国籍を戸籍の上で表示するというのは、その原国籍の間の身分関係についての準拠法をそこで理解ができて、そしてその有効、無効が判断できるという手がかりになるという意味でこれは書かなければならぬという考えております。無国籍の場合もそういう意味での表示としてはやはり書きませんとわからないということになろうかと思いますので、これは書くつもりでおるわけでございますが、プライバシーの問題としては、果たして一般の国民の方がかつて無国籍であったということで、何といいますか、差別意識がそこから生まれてくるものであるかどうかはこれはよくわかりません。外国の国籍が書いてあるのと違うのか違わないのかというのもよくわからないところでございますけれども、日本の社会は比較的単一民族的な考え方が強いものですから、御心配になるような面もなくはないと思いますが、そういうふうな事柄と、先ほど申し上げましたような要するに法律関係を明らかにしておくということの表示と、どちらをとるかという選択の問題になろうかと思います。
私どもは、戸籍というのは大なり小なり個人のプライバシーに立ち入るということを避けて通れないものがございます。認知というものとかあるいは離婚などについても嫌がる方はもちろん嫌がるわけでございますので、そういうふうなことで閲覧だとか謄抄本の交付などについても余りめったな者にはさせないというようなことも一面いたしておりますので、そういう中で考えてやはり無国籍の表示をするというのはやむを得ないのではないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/123
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124・橋本敦
○橋本敦君 局長、御配慮のほどはわかりますけれども、本法の改正によって日本国籍を取得できる無国籍の人というのは、本来父母両系主義をとっておれば出生届によって当然日本国籍を取得できた日本人でしょう。だから、そういう意味ではこの無国籍の人に前の法律関係の適用を明らかにするためにと言っても、もともと実体的にも日本人であったわけですよ。そしてまた法律関係といっても、どこかの国の法律を適用されておったということもどこかの外国籍があってこそ初めて特定はできますけれども、無国籍だからといってどこの法律を適用してきたかという特段の特定性ももともとないんですね。だから、そういう意味から言えば、私は一段の工夫をして、無国籍ということは本法の規定によって日本国籍をとる人については書かない方が妥当だし、書かなくてもいけるというようにこう思っておるんですが、この点は再度お尋ねしてもお答えは変わらないかもしれませんが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/124
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125・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 戸籍の上で日本の国籍を取得しだということが書かれますと、その取得する以前は日本の国籍を持っていなかったということはそこでわかるわけです。そうすると、その前の状態で準拠法はどうなんだというようなことが当然問題になるわけでございますが、無国籍の場合には日本法が適用になりますが、その日本法が適用になる無国籍者であるということがやはり書いてありませんと、あるいはどこかの外国の表示が漏れてしまっているのではないかというようなことと間違われる可能性がございますので、そこら辺はむしろはっきりさせておいた方がいいのじゃないかというのが考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/125
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126・橋本敦
○橋本敦君 この点は意見の相違があるままで仕方がないと思うんですけれども、私の考えは以上述べたようなことで変わらないんです。
さて、次の問題に移りますが、新聞で私も拝見したんですが、いわゆる中国の残留孤児の皆さんが東京家裁の方に就籍許可の申し立て、つまり審判を受ける申し立てをなさっておるということで大きく報道されておりました。これは父母不詳のまま日本人としての籍を新たにつくるという就籍のことであるわけですが、今この事件がどの程度どうなっておりますか、そしてまたこの事件の結果、家庭裁判所が中国の孤児証明その他で就籍審判をすれば直ちに日本国籍が今度は戸籍としてどこかの市町村にできると思いますが、家庭裁判所の審判が下れば当然法務省はそれを尊重して新戸籍をつくるというようにやっていただけると思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/126
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127・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現存どの程度の件数が家庭裁判所に係属しているかはつまびらかでございませんけれども、四、五件は出ているとか、あるいは近く出すとかというふうな話を聞いております。家庭裁判所の方で御審理なさいました結果、父母はわからないけれども日本人であることは間違いがないという認定をされて就籍の審判をなされましたならば、もちろんそこで司法機関がそういう判断をされたわけでございますので、私どもはそれを受けてその人のために戸籍をつくるということを直ちにする運びになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/127
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128・橋本敦
○橋本敦君 私はきのうの「天声人語」でひょっと見たんですけれども、全然話は変わりますが、高見山、渡辺大五郎ですね。彼が惜しまれながら今度引退かということで、たんさんのファンが惜しんでおるんですけれども、彼は帰化をして、帰化が認められて渡辺大五郎になったわけですが、彼が本当はやっぱりハワイのカナカ族の誇りを持って日本に来て苦しい苦しい相撲の道を頑張って耐え抜いて、ハワイのカナカ族の誇りをも持ったまま相撲したかったのだろうと、こういう気持ちの推測もこの「天声人語」はしているんですが、
それを押して帰化したときの気持ちもよく理解して上げることができるように思うんですね。
ここで、なぜ帰化したかということの一つに、外国籍の者がいわゆる相撲を引退しても親方になれない、ここのところで彼が帰化を踏み切っていく、そういうことが背景にあったのじゃないかというふうに書いておるんですね。私は、今度帰化の要件が緩和をされたということは歓迎をするんですが、今日の日本の国あるいは将来を考えてみても、国際的交流というのはどんどん広がっていく中で国籍の問題なり帰化を考えなくちゃならぬと思うんですが、外国人だからということで弟子に入れて日本の相撲をしっかりと鍛え上げて、さて長年勤め上げて多くの国民の支持も賛同も得た人が、いざ今度は親方株を持とうとすると、外国人だからだめだというのは、私はやっぱりいささか残酷な気もするんですね。
そこで、国籍要件による外国人と日本人とのいろいろな違った扱いということを考えて、これを見直す必要がこの機会にもあるのではないかということをこの国籍法の改正の機会に今思っておるんですが、例えばざっと見ただけでも、住宅公団に関係しますと賃貸住宅に外国人が入居するには一年以上の日本滞在が必要だという要件が課される。それから分譲住宅を買うためには今度は永住許可が必要だということが要件として課されている。それからまた公職の制限ということでは、もちろん外務公務員はだめですし、公務員にも制限があります。それから公証人、弁理士、水先案内人、これも外国人はだめだということ、これは法律で規定がされている。
公証人というのは法務省に関係するので聞きたいんですが、外国人に同じような就職なり地位を与えないということが合理的な理由があれば別ですが、なければできるだけなくす方が望ましいと私は思うんですが、例えば公証人の場合、法務省としては外国人に公証人を認めないというのはどういう理由から来ているんだろうか。特に今日いわゆる外国との取引なり、あるいは渉外事件が非常に多発をして、そして弁護士業務の国際化も言われている中で公証事務についても国際的協業ということはあり得ますね。そういう中で公証人は外国人はだめだというように法務省がなさっている特段の理由は何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/128
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129・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 公証人と申しますのは、御存じのとおり法務大臣の任命を受けてその職を行う公務員でございます。そしてその職務の内容も申し上げるまでございませんけれども、主たるものは法律行為についての公正証書をつくり、それを執行認諾の文言をつけて執行証書にする、そしてその執行証書について執行文を付与いたしまして、それが強制執行に移っていく、そういう関係の仕事でございます。したがいまして、準司法機関と申しましょうか、そういう仕事をしておるわけでございまして、先ほども申し上げましたようないわば債務名義に執行力を付与するというような国家意思をそこであらわす、公権力の行使ということにもなりましょうが、そういうふうな仕事をする者はこれは日本の国籍を持っている者であるべきだという考え方に立つものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/129
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130・橋本敦
○橋本敦君 司法試験を私ども弁護士ですから受けるわけですけれども、司法試験の受験資格は外国人には認められていますか、認められていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/130
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131・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 認められていると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/131
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132・橋本敦
○橋本敦君 だから、仮に司法試験に合格いたしますと、外国人でも合格することができるわけですから、その場合に今度は弁護士になるのは資格が付与されるが、検察官、裁判官への任用は今度はこれはいわゆる公務員の制限ということで許されない、こういう関係になってまいりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/132
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133・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/133
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134・橋本敦
○橋本敦君 ですから、公証人が公務員だという意味で、公権力のある意味での公証的に大事な性質を持つことは私も否定しませんけれども、検察官、裁判官が国家権力の行使を担っておられるのとは少し違う面がありますし、弁護士と全く同一とは言いませんけれども、これについて職務の内容、渉外事件にわたるようなことで合理的な範囲であれば公証事務も私は認めていい場合があり得るのではないかという気もしておるんですね。
そういうことをいろいろと細かく検討していきますとかなりありますが、例えば公団住宅に入居する場合に一年以上の滞在が必要だというのは、これはやっぱり居住の長期性、実効性を見るというだけのことでしょうから、それ以上の特段の理由はありませんね。その他、社会保障や福祉に関係する部分については難民条約の批准もあり、かなり改善をされてまいりました。
基本的に日本に在住する外国人、外国籍を持つ人は日本憲法の適用があるのかないのかと言えば当然適用がある、これは当然原則としてそうであるはずですが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/134
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135・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 憲法の関係につきましては私も所管ではございませんけれども、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、これはもう合理的な理由がない限りは少なくとも憲法の精神で外国人も遇しなければならないということは当然のことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/135
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136・橋本敦
○橋本敦君 そこで、こういった問題についてはこの間の参考人の意見でも、法律で制限をされている部分というのはなるほどあるけれども、法律で決められていないのに外国籍があるからということで不当な差別を受けている事例がかなりある、この問題をはっきりして、合理的なものは法律できっちり決める、そうでないものはそういう差別が起こらないようにしていくことが大事だという意見も出されておったんですけれども、私はそういう意見はある意味で非常に合理性がある、こう思っておるんですね。
先ほど申し上げました相撲界で外国籍があれば親方になれない、一方でハワイからいらっしゃいということで日本の国技も宣伝し、国際的に相撲が華やかになっていくという意味もあってどんどん呼んでいるのに、いざ親方は外国人はだめだというのは、これはやっぱり酷じゃないかということも考えるんですが、これは法律で決まっているように私は思わぬのですね。だから、こういう問題を考えますと、今後日本の国籍をめぐってのあり方についても、必要やむを得ない範囲での制限というのはこれはあり得るでしょうけれども、社会的に見て、そしてまた法律的にももはや無意味になっているような問題で合理的でない差別が存在するならばこれを見直すなど、日本に居住しておられる外国籍の人についても、私は福祉や教育を含め、あるいは社会的に仕事の権利や生存の権利も含め不合理な差別が起こらないように見直していくという一つの契機にしたい、こう思っておるんですが、大臣このあたりの御意見はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/136
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137・住栄作
○国務大臣(住栄作君) 日本における外国人の取り扱いはできるだけ日本人と同じように考えられるべきだ、私はこういう方向についてはもちろん異存がございません。それと同時に、そういうことを念頭に置いて常に検討していかなければならぬと思うのでございますが、同時に日本人が外国でどういうようなことになっておるか、こういうことも非常に大きなファクターだろうと思うんです。社会保障等についても、契機が、相互主義のようなことでやってみるかということが契機になって一般化してきたわけでございますけれども、そこらあたりは、特に日本が今まで単一民族だと、どちらかといえば閉鎖性の強いというような点があるということで、そういう面では前向きでやっていかないといかぬと思うのでございますが、それと同時に我々は外国における日本人ということも常に考えていかなければならない。そこらあたりの兼ね合い等の問題もございまして、それぞれの制度なり、あるいは今相撲協会のお話が出ましたけれども、これは財団法人という団体でございますが、どこまで指導できるか別問題といたしまして、そういう基本精神の上に立って私は考えていくのは当然だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/137
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138・橋本敦
○橋本敦君 時間が来ましたので終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/138
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139・柳澤錬造
○柳澤錬造君 今回のこの国籍法の改正については私は賛成の立場ですから、そういう立場から若干の点についてこれから御質問してまいりたいと思うんです。
今度父母両血統主義を採用するわけなんで、これは大変な改革というか進歩だと思うんです。それで、世界の主要な先進国の中でこういうふうな改革というのが日本は早い方なんですか遅い方なんですか。大体主要な国の実態等も取り上げてその辺の御説明をまず聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/139
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140・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 先進諸国と申しましてもどこまでその範囲に入れていいかわかりませんけれども、例えばOECDの加盟国ということで申し上げますと、加盟国が二十四カ国ございますが、このうち生地主義をとっている国が六カ国でございます。これは父母両系主義に関係がない国でございます。残り十八カ国のうち、各国の法制で必ずしも明確でないところがございますけれども、父母両系主義に改めていると思われるところが現時点で十二カ国ございます。したがいまして、我が国が近くこの法律が成立するということになりますと、生地主義をとっていない十八カ国のうちの十三番目ということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/140
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141・柳澤錬造
○柳澤錬造君 じゃ、次にお聞きしたいのは、国籍のあり方といいましょうか、国籍というのはどういうものなのか。国家が決めるものなんですか。それとも本人が自分の意思でもって選択をして決めていくものなのか。少しその基本的な性格というか考え方というか、その辺の点をまず御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/141
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142・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国際法的には国籍といいますか、要するに国民の範囲をどう決めるかというのは国家主権の作用であるというふうに言われております。したがいまして、どういう要件の者に自国の国籍を与えるかということは国が決めるということになるわけでございます。
ただ、その国が決める際にどういうファクターをもって国籍を決めていくかということになりますと、これはいろいろなものが出てくるわけでございますが、主たるものを申し上げますと、地縁といいますか、要するにその出生の場所ですね。それから血統の関係、血縁でございます。そのほかに本人の意思といいますか、個人の意思というもののその国籍を決定する一つの要素にするという考え方があるわけでございます。したがいまして、個人の意思だけで決まるものではありませんが、ある要件のもとに個人の意思を尊重して決めるというふうなことも各法制がとっておるところでございます。我が国でももちろん帰化なんかの場合にはこの意思主義というものが当然前提になるわけでございますし、今度の改正法案で国籍取得の届け出という制度が出ておりますけれども、これなども意思というものを尊重して日本の国籍を付与するという考え方があらわれていようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/142
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143・柳澤錬造
○柳澤錬造君 局長、最初は国が決めるんだと言われて、それからだんだんその出生とか、いろいろ条件が要って、その次は今度はその個人の意思も尊重するんだというようなことになっていったんですけれども、もう一回これ、これからずっと私が聞いていく上についての大事な一つのかぎになるところなんだから、それをもうちょっと明確にしてくれませんか。大きく分けて、どちらにしても細かい枝葉のことはいろいろあると思うが、本人の意思だからといっても、それは勝手気ままにおれはこの国の国籍を持ちたいと言ってもできるものじゃないんであって、そういうものはあると思うけれども、大筋というか、基本的というか、その点で国が決めてやるものなのか、本人が選択をすることなのかといったら、どちら側に重点があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/143
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144・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 基本的には国が決めることでございます。その国の決め方の中に本人の意思をも尊重するという要素を決めることの内容として取り上げている面があるということで申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/144
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145・柳澤錬造
○柳澤錬造君 そうすると、次にお聞きしたいのは、日本に長く住んでおって国籍のない人がたくさんいるはずです。本人のこの選択を認めておったらそういうことはないわけなんですから、そうしてくると、国籍というものは国が決めるということが基本的だというならば、国家としてそういう国籍のない人たちを放置しておいちゃいかぬことでおって、何らかの処置をとるべきであって、その辺についてはどういう御判断でそういうものを放置しておいたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/145
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146・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 難しい問題でございますけれども、国が国籍はどういう場合に与えるかということは決めるわけでございますが、そういう決めた範囲内に属しない方がおられるわけですね。しかも他の国の決めた事柄にも属しない方がおられるという意味で無国籍の方が出てくるわけでございます。
そういう方については無国籍ということは望ましくないということで、各国でもそういうことが生じないような努力をしようではないかというふうなことが国際間でも言われておるわけでございますけれども、ただ、それがある国だけの努力で決められるものでもないわけでございます。そしてまた御本人がその本国の国籍を自分の意思によって離脱することによって無国籍になるということもあり得るわけでございます。そういうことでございますのて、日本に長い間住んでおられる方で無国籍者だからといって、その人に日本の国籍を与えるという法制をとることが妥当かどうかということになるわけでございますし、また一方、その国籍を決める場合でも、それはその国が法律で決めればある一定の範囲内では決めたことになるわけでございますけれども、しかしそれも当該本人の意思を全く無視してやるような、そういう立法をすることも妥当かどうかという面もございます。
したがいまして、御指摘のように日本にも無国籍の方がかなりおられるようでございますけれども、そういう人たちに着目して何かの立法をするということがさしあたって必要であるか、またどういうふうな解決をするのが合理的かということがどうも定かでございませんので、私どももそういうものについての対策ということを今度の国籍法の改正の場合に取り上げるということは考えなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/146
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147・柳澤錬造
○柳澤錬造君 聞いておって納得いかないんですが、日本の国家としては国民にみんな戸籍を持たしていますね。持たしていると言っちゃおかしいけれども、どこかへちゃんと。日本人である者はみんな戸籍を持って、あなたの本籍はどこですよというふうなことをして、それ漏れないようにしているわけでしょう。世界の国全部も、百六十九カ国今ある全部がきちんといっているかどうかは私もつまびらかではないんだけれども、世界で今生存していればどこかの国に国籍があるというふうになっていなかったらおかしいのであり、それがこういう国際的に複雑になってくるから、逆に言うならば国籍を二つも持っちゃう、そういう重国籍者ができてきちゃう。それをどうするかというような問題も起きてくる。
今局長の言う答弁のあれは、本人の意思を酌まないからできちゃうわけでしょう。もう少し本人の意思を酌んで、そうしてそういう日本なら日本の国籍を持ちたいというのならば持たしてあげるということを国が考えてやったならば、こんなにたくさんの無国籍者が出てこないんですから、そこら辺どうなんですか。私は、聞いておっていささか矛盾をしている。だから、さっき大事な点ですからきちんとしてくださいと言ったのはその点ですから、もう一回言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/147
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148・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) おっしゃいますとおり、世界全体に共通の国籍法みたいなものができまして、そして無国籍者がなくなる、あるいは重国籍者がなくなるというふうなことができれば、これはまさに理想的だろうと思います。本来そうあるべきなのかもしれませんけれども、各国はそれぞれ歴史を持ち、またいろいろな事情を抱えておりますために、そういう共通法的なものができない状態であります。そうしますと、各国の法制に従って、はざまが生じて無国籍者ができたりするわけでございます。
我が国でもそういう無国籍者については何か国籍が与えられるような方途は考えらるべきであるということは当然言えるわけでございまして、したがって国内に長年居住しておられる方は、これはもし日本の国籍を取得されたいとおっしゃるならば、帰化の申請をされれば、先ほど来話が出ていますようないろいろな要件に当たらない限りはこれは日本の国籍が与えられることになるわけでございまして、現にかつては五千人とか六千人とか無国籍者がいると言われましたけれども、帰化がだんだん進みまして、現在では二千人を欠くというところまで来ておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/148
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149・柳澤錬造
○柳澤錬造君 世界の国々がそういう無国籍者、二重国籍の者がいないようにお互いにみんながやればではなくて、今ここでもって私が聞いている大事な点は、日本の国として、この日本の国に存在をしている人たちに対してやるべきことをきちんとやってきただろうかという、そこに問題があるんですよということをやっぱり理解していただかなければいけないと思うんです。
それで、そういう点で次に、ですから今度は具体的に、戦争に負けて、戦後いわゆる台湾と韓国というものは日本の国から離れていった。その国土とともにくっついて向こうへ行っている人たちは、それでもってちゃんと韓国なり北朝鮮なり、あるいは台湾なりといって、そこに、もう国についていっちゃったからいいんだけれども、そのまま日本のこちらに残っておった人たちというものはどういう扱いをなさったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/149
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150・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 平和条約発効のときにいわゆる朝鮮戸籍、台湾戸籍に入っておられた方は平和条約の発効と同時に日本の国籍が失われたということでございます。その結果、在日のそのような方々は外国人ということになったわけでございます。そういう方々の中でもずっと日本に永住して一生日本の国籍を取得したいとおっしゃる方は帰化の申請をしてこられておるわけでございまして、平和条約発効後五十八年末までにそういう朝鮮戸籍あるいは台湾戸籍に入っておられた方での帰化の合計数は十五万人ほどございます。そのうち朝鮮戸籍関係の方が十二万人、それから。中国関係の方が三万と、こういうことになっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/150
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151・柳澤錬造
○柳澤錬造君 十五万からの人たちについてはそういうことをしてあげたということが今わかったわけです。あの横浜の中華街やなんかへ行くとまだかなりたくさんおりますですね。あの方たちは自分の意思が通らないからいまだに無国籍のままでいるわけですよ。そうすると、今のお話しのそういう帰化したい人は帰化を認めてやったんですよ、その人たちがもうこんな十五万人もいましたよというだけれども、ああやって横浜とか、その他にもいるはずだけれども、たくさんおる。そういうのについてはそれなりの便宜をお図りにならなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/151
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152・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもといたしますと、そういう方々で日本の国籍を取得したいという御希望を持って帰化の申請をされた場合には、特段の事情がない限りは帰化を許可するということで処理をしてまいりましたし、これからもそのつもりでおりますが、ただ、御本人が日本の国籍を取得しないというお考えの場合には、私どもの方で積極的に帰化の申請をしなさいと言うわけにもまいりませんので、したがって御本人のお考えをまつしかないのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/152
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153・柳澤錬造
○柳澤錬造君 いや、日本に帰化したくないんだというそういう意思をどういう方法でお聞きになりましたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/153
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154・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは積極的に私どもがお伺いしてはおりませんけれども、要するに帰化の御希望があれば帰化の申請をされるわけでございます。帰化の申請をされないということは、要するに日本の日籍を積極的に取得したいというお考えがないというふうに逆に見ざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/154
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155・柳澤錬造
○柳澤錬造君 じゃ、今度は次に、この条文の内容に入っていってお聞きをしていきますけれども、二重国籍の場合、十四条でもって、外国の国籍を有する日本人はいわゆる二十二歳までにいずれかの国籍の選択をしなければならぬと、こう言っているわけだ。日本の国籍を選択するときは外国の国籍の放棄をせいと言っているんでしょう。外国の国籍の放棄をしたら、それで向こうの外国の国籍は消えるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/155
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156・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この宣言をしたことによって外国の国籍が当然になくなるということは言えないと思います。ただ、この日本の法律でも十一条の二項というのがございますけれども、これは外国にも我が国と同じような選択制度を設けている国があって、そこでその国の方の国籍を選択するということをすれば、こちらの日本の国籍が当然喪失するという規定になっています。これと同じような規定が設けられている外国の場合には、我が国で選択の宣言をいたしますと、その効果として当該国の国籍を喪失するということになるわけであります。そのような法制をとっておりますのが、現在調べたところではフィリピン、インドネシア、マレーシア、パキスタンというところがそういう法制をとっているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/156
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157・柳澤錬造
○柳澤錬造君 いや、それぞれの国の法律によって、こちらが抜きたいと言っても抜けられない国もある。こちらがもうそちらの方はもう抜けますといって通知をすればそれで切れるところもある。その辺のところがいろいろ国と国によって違うと思うんですよ。それをあえてこうやって「二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。」といって、年齢まで切って何かこういうことをなぜさせなくちゃいけないんでしょうか。本人の意思に任したらいいんじゃないですかということが言いたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/157
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158・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この選択の制度と申しますのは、二重国籍というものを解消する方策として考えられている制度でございます。したがいまして、本人の意思に任しておくということでは、本人が二重国籍を解消するという気持ちにならなければ解消しないということになるわけでございまして、それは二重国籍の解消策としては極めて不徹底であろう、ですからむしろ一定の効果があるような形での二重国籍の解消策を考えるべきであるということで、この選択制度というものが取り入れられておるわけでございます。
しかしながら、もちろんそういう選択の宣言をいたしましても相手の国のあることでございますから、したがって、本人の意思によって他国の国籍を離脱することができなかったり、あるいは先ほどのように選択の宣言を日本にいたしましても、そのいわば反射効的な意味で当該外国の国籍が失われることがないという場合もあります。しかしこれは日本の法制度としてはいたし方がないところでございますので、したがって十六条第一項の方で、その日本の国籍を選択した以上は、二重国籍になっている他国の方の国籍の離脱に努めてほしいと、そういう努力義務というものを設けて、そしてその趣旨が貫かれるように努力をいただいて二重国籍の解消策としたいということで設けられたものでございます。したがいまして、単に本人の意思だけにということでは二重国籍の解消としては不徹底を免れないので、それだけにとどめておくというわけにはいかないと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/158
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159・柳澤錬造
○柳澤錬造君 先ほど国籍のない人たちを何で放置をしておくんですかといって聞いたときは、局長は、それは帰化の申請をすれば認めてあげるんです、しないからほっておくんですということです。今、今度はこの二重国籍の問題になってくると、どちらかきちんとしなさい、いつまでも放置をしておいたら二重国籍じゃ困るから、そういう選択を二十歳なり二十二歳でそこでやらせるんですと。これから先も出てくるんだけれども、少し手前勝手過ぎませんか。政府の立場の自分の御都合ばかり言い過ぎませんか。
今の、また後で言いますけれども、今度は十六条のその前の十五条がそうでしょう。これもさっき出ておりましたけれども、この十五条でもって、期限内に選択しなければ書面でもって催告する。それで居どころがわからなければ官報に載っける。官報に載っけたら、その翌日から一カ月たったらもう縁を切っちゃうぞと。また縁を切る前には期日と場所を指定して公開による聴聞を行わなければいけない。いわゆる聴聞会を開いて意見を聞く。先ほどの橋本先生からもちょっと出ておったですけれども、居どころがわからぬ人に、官報に載っけて、そして一カ月と言ったって、一般国民で官報見る人といったらほとんどおらぬわけでしょう。一般の国民でも官報なんか見ない。ましてや、どこにいるかわからないんだといっている人の、その所在もわからぬといっているのに、官報に載っけて、それで一カ月たつと、ああ、これでばっさりだ、おるならば出てきて何月何日ここの場所へ来て、そうしておまえの言いたい意見を言えと。それはどういうことですか。少しやっぱり政府の自分の立場だけでこの法案の改正というものが考えられ、行われようとしているのと違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/159
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160・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 二重国籍を解消したいという面では、確かに国の立場というものも考えておることは間違いないわけでございますが、それにいたしましても、なるべく御本人の不利益にならないように配慮をしていかなければならぬことは当然でございますので、その両者をにらみながら妥当な解決策としてこの改正案をつくったつもりでございます。
先ほどの選択制度の場合にはどちらか選択しろということを言っておきながら、日本在住の無国籍者については放置しておるという御指摘でございますけれども、この選択の方は二重国籍を解消して単一の国籍にするようにというのが趣旨でございます。無国籍者の場合に、じゃ、帰化の申請があればそれは十分受けとめて考えますという以外に、何か国としてしようとしますと、要するに法律的に本人の意思にかかわらず日本の国籍を与えてしまうような法制をつくるとか、あるいは無国籍のままで日本に在住していることはいけないから国外に出なさいとか、そういう方向に行ってしまうわけでございます。そのことはどうも適当ではない。したがって無国籍であるということは、これは望ましいことではありませんけれども、御本人が日本の国籍を取得したいならば日本の国籍法の規定に従って許可をいたしましょう、それから、どこかほかの国の国籍を取得したいならばそれもどうぞされたらいかがですかというようなことで、いわば御本人の行動に待つという以外はないのではないかということでございます。
したがって、放置するということが日本の国として無責任であるということには必ずしもならないのではないか、むしろ何か、そういう無国籍の方々について国の方が積極的に何かをするというごとの方がむしろ当該御本人にとっては問題視されるのでなかろうかという気もいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/160
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161・柳澤錬造
○柳澤錬造君 そうすると、無国籍の人たちに申し出ればいつでももう帰化は認めてあげますという、そういうことをそれこそ官報に載っけて、官報に載っけたって見るか見ないかといったらわかりませんけれども、官報に載っけるなり、あるいは新聞に公告をするなり、そうでなければ市町村役場を通じてそういう掲示を出すなりといって、そういう人たちに、今局長が言われているような、私たち政府はこう考えているんですということの、そういうことを知らせるということをおやりになったことがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/161
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162・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 例えば官報の、何といいますか、PRをする版がありますけれども、そういうところには帰化の制度などを説明したものを載せたこともございます。それからまた、先ほどおっしゃいましたような横浜の中華街に住んでおられるような方々は帰化制度については非常によくむしろ御存じでございまして、むしろそういう制度があるということを御存じでありながら、いろいろな事情から日本の国籍を積極的に取得する御意思がないのではないかというふうに考えておるところで、もともとそういう帰化の制度があるからどんどん申請をなさいと言うべき性質のものでもございませんので、こういう制度が存在をしておるということのPRは私ども努めなければなりませんけれども、何か誘いかけるというようなことは少しそういう方々にとってもむしろ歓迎されないのじゃないかという気がいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/162
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163・柳澤錬造
○柳澤錬造君 私が聞いていることと、帰化という、こういう制度がありますということを官報に載っけましたということは違うんですから、そこは局長、間違えないようにしていただいて、それで私は、今までずっと大臣お聞きになっていたんですから、そういう点に立って、大臣として今まで私が質問したことについてどういうお考えをお持ちになるかということをお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/163
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164・住栄作
○国務大臣(住栄作君) 国籍の取得、本人の意思によるものとしては帰化制度があるわけでございます。で、日本にも先ほど説明いたしましたように、二千人くらいの無国籍者がいるんじゃないだろうか、そういう方に対してどうやるか、こういう問題でございますが、私はこれは帰化の制度があるということの趣旨の徹底、これは当然していかないといかぬと思います。ただ、さらに国あるいは行政官庁が出て、それじゃ皆さん、こう帰化の申請しなさいしなさいというようなことをやりますと、これはやっぱり国際関係というものも少し考えてもいかぬのじゃないだろうかというような気も私はするのです。まあ実情を必ずしもよく知らないでこんなことを言うのはちょっとどうかと思うのでございますが、ややそういう面でデリケートな面もあるんじゃなかろうか、こういうような気もいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/164
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165・柳澤錬造
○柳澤錬造君 私は、むしろ今大臣が言われた国際関係に絡んでいるんですから、そこまで立ち入っちゃうといろいろややこしくなるから言わないんですけれども、これはいろいろのところで、法務省がいろいろなものの御判断のときに、どこの国であろうがそれらについて平等に扱うかといえば、少なくとも私がいろいろの問題を扱ってきた範囲では平等ではない。だから、そういう点でもって、今いみじくも大臣が言われたとおり、私も逆にそういう国際関係を、ある国には大変温かくしたり、ある国には非常に気兼ねをしてというふうな、極端な言い方をすれば、そういうふうないろいろな差別の扱い方があるんじゃないんですか。むしろどこの国に対してということは今言いませんけれども、私は改めていただきたいと思う。
そして、先ほどからいろいろ言われているけれども、国籍の離脱というなら、この十一条でもって、何というんですか、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは日本の国籍を失うんだと言っているわけ。私はこれでいいと思うんですよ。何もそんな公開の聴聞会を開いてそこへ出てこいと。先ほども聞いていれば、橋本先生が外国へ出てもやるんですかと言ったら、いや、外国じゃない、日本ですと。外国におる人まで日本に呼んでそんなことをやるあれか、そうしたら局長は、いや、手紙か何かでもよろしいと答弁をなさったのを黙って私は聞いておった。公開で聴聞会を開いてその御本人の意見を聞きますということを法律に書いてある。そのことが一通の手紙でもって、文書でもって出されたら、いやそれでも結構ですという。それは私はこの法の精神からいったら、いささかもっておかしいと思うわけだ。
そして、この十二条へ来ると、今度はいわゆる外国で生まれた場合、ここも私よくわからないんだけれども、何で、生まれたときに日本の国籍を留保するという意思を表示しなければその出生のときにさかのぼって日本の国籍を失うっていう、何でこんな血も涙もないような冷たいことをなさらなければいけないんですか。先ほどから言うとおり、至るところへ行って政府が文句を言われないように、政府としてはこうこうですというふうな、そういうことしか感じられない。だから、日本の国籍は私たちは要りません、今住んでいるアメリカならアメリカのここの国籍で、このままで結構ですと言ったならば、その本人の意思でもってこの十一条を生かしてやらせたらいいし、生まれたときは外国におっても、またあるときになって日本に来て、そして日本の、本来は父親も母親もそうなんだし、日本の国籍を持ちたいんですと言ったら、そのときは持てるようにしてあげたらいいと思うんですけれども、何でそういう冷たいような扱い方というのをなさるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/165
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166・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) いろいろな御質問があったわけでございますが、国籍の喪失宣言の場合の聴聞の関係につきましては御当人の日本の国籍を失わせるという重大なことでございますので、御本人に弁明の機会を与えるということが必要であろうということでこういう制度を設けておるわけでございます。むしろ御本人の立場を尊重する規定でございますので、その機会を与えましても出てこないという場合にはそれはやむを得ない、またその場合にも出てこないかわりに文書を御提出になればそれは十分に検討いたします、そういう趣旨で申し上げたところでございます。
それから、留保の関係につきましては先ほど来繰り返し申し上げておりますけれども、形骸的な日本国籍を有することによる二重国籍というものをなるべく防止したいという観点からいたしておるわけでございまして、むしろ何にもそういう意思を表明されない方が、早くいえば日本の国籍は要らないということでの離脱だという実質があろうかと思います。そういうことでございまして、そう留保の意思表示というものが手間暇かかるものではございませんで、ただ日本の国籍を残しておきたいということを言っていただければそれで十分でございますので、そんなに酷な冷たい負担をかけておるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/166
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167・柳澤錬造
○柳澤錬造君 こんなところばかり引っかかっておっては先にちっとも進みませんが、酷な冷たいものとは考えておりませんと、そういうふうなお答えが出てくるところに私はやっぱり法務省の皆さん方というものは、あの法務省という冷たい法律のお城の中に立てこもって、いつかも言ったように、何と言うのでしょうか、私たちから言わせれば血も涙もないということ。
中曽根総理が施政方針演説でこの国会の冒頭に何て言ったか。世界国家という言葉まで使ったじゃないですか。それほど二重国籍を持つということが罪悪になるんですか。日本の政府として困るんですか。これだけ今世界じゅうでいろんなところへ行ってみんな住みついている。だから、途中だけれども、今世界の何カ国に日本人が出て行って、どれだけの人間が今外国に住んでいるんですか。これはおよその数でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/167
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168・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 出ていっております国の数ははっきりいたしませんが、恐らく世界の国のすべてのところにいると考えてもいいぐらいに在留邦人がいると思います。おられる方の数は、これは外務省のお調べでございますけれども、永住者と見られる方が二十四万七千人、それから三カ月以上の滞在をしておられる方が二十一万五千人ということでございますので、そのほかに短期の旅行者もおりますが、それを除きますと合計して四十五、六万人おられるということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/168
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169・柳澤錬造
○柳澤錬造君 大体私の調べでもそのぐらいです。百五十は超えているぐらいですからね。大体百五十カ国で約五十万というところで、これだけの人がいるわけでしょう。それは商社の人やいろいろの人がいるわけだけれども。どうしたって、それは子供さんの場合なんかというのは二重国籍になっちゃうのだから、それでそこに十年も二十年も三十年もおる人もおれば、それこそ今三カ月でまたすぐ帰ってきちゃう者もおるんです。帰ってきたら帰ってきたときに日本の国籍がすぐ持てるように道を開いておいてあげればいいし、何もすく留保の手続をとらなければ失いますよなんということを言わなくてもいいんじゃないか。
こういう場合はどうなるんですか。これ、名前はあれですけれども、現実の問題です。父親がビルマ人で母親が日本人なんです。その夫婦がドイツに住んでいて、子供が生まれて、それで親子三人ともドイツの国籍をとった。それが今度は日本に来て今日本に住んだ。これはどういうふうに、日本の国籍が持ちたいと言ったら今の政府は持たせてくれるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/169
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170・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 今の例でございますと、ビルマの男性と日本の女性が結婚してドイツで子供が生まれるという場合には、改正法によりますと母親が日本人でございますから日本国籍を一たん取得することになりますが、外国で生まれて、しかもビルマも血統主義でございますので、父親の方の関係でビルマの国籍も取得するということになりますと留保の対象になりますので、留保をされますと日本の国籍もなお維持することになりますが、その後ドイツの国籍を取得するというのは多分帰化ということになろうかと思いますが、帰化いたしますとそれは先ほどの十一条の規定によりまして日本の国籍を喪失するということになります。その後日本の国に来られまして日本の国籍を欲しいと言われれば、これは帰化ということになるわけでございますが、そのドイツに帰化した母親並びに留保届けして帰化によって日本の国籍を喪失した子供さんも、これは元日本人ということでございますので、これは簡易帰化で日本の国籍を取得することができる、そういう道筋になっていくのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/170
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171・柳澤錬造
○柳澤錬造君 今いろいろ出ている帰化という点で若干の点をお聞きしてまいりたいと思いますが、大臣がこの提案のときに帰化については緩和をしたんだという御説明があったのですが、どのようなところが、五条第二項は新しく新設されたのだからここのところは確かにそういうふうなことに私該当すると思うんです。しかし五条の第一項一号のところには依然として旧法とおりの「引き続き五年以上日本に住所を有すること。」とあるし、あるいは六条のところへ参りますと、三号のところには、これも旧法と同じ「引き続き十年以上日本に居所を有する者」というようなものもあって、五条の二項のところの点で、若干これは新しく新設されたんで帰化がしやすくなったかなと思いますけれども、日本に住んでいるところの年数のそういう制限なんかになると今までと何にも変わっていないんだけれども、具体的にこれで緩和をしたということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/171
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172・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 帰化要件の緩和につきましては、ただいま御指摘の新五条の二項は当然でございますが、そのほかに五条の四号で生計要件というものがございます。これを従来はその帰化の申請をされた御当人が独立してということになっておりましたのを、生計を一にする者全体で判断をするということになりまして、ここも一つの緩和になろうかと思います。
それから、もう一つは新八条でございまして、新八条の四号で、日本で生まれて、出生のときから国籍を有しない無国籍の方については、引き続き三年以上日本に住所を有すれば帰化の要件を満たすということにいたしておりまして、これは新しい規定でございます。従来こういう方々も一般の帰化の方法でしか日本の国籍が取得できなかったのでありますけれども、無国籍の関係を解消するという考え方からこういう規定を設けまして、これも帰化条件の緩和の規定だということが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/172
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173・柳澤錬造
○柳澤錬造君 それで、帰化を認めたときは本人に通知をなさると思うんです。それで、今の言うその次の十条へ行くと、ここにも「帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。」、こうなるんだけれども、官報に載せるということのその意味は那辺にあるんですか。本人に当然もう今度は日本国籍を持ったんですから、あなたはもう国籍与えられる、まあ与えるというか何というか、そういう通知は行くと思うのであって、何がゆえに官報でそういうことをやらなければいけないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/173
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174・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 帰化の許可をいたしますと、その許可をしたということは御本人にももちろんお知らせするわけでありますが、ただ何といいますか、帰化の効力というのが、もし官報に載せないということになりますと、その通知をしたときに効力を生ずる、そのときから日本国籍を取得するということになるわけでございます。ところが、そういうことで考えますと、いつ帰化の効力が生じたかということが客観的に明確でないという面が一つございます。それからいろいろな関係でおくれるという場合もあるわけでございます。そういうことからいたしますと、官報で告示をいたしますと、その時点で日本の国籍を取得したということが客観的に明確になるという利点が一つございます。
それから、その実務の関係で申し上げますと、帰化の許可をすると同時に、その御本人が今度は戸籍の届け出をしていただいて新しい戸籍をつくるということになるわけでございますが、その際のいろいろな戸籍の記載内容などについてもこちらの方が実際上整理をいたしまして、そしてわかるようにするということを実務的にはしておるわけであります。したがいまして、法務大臣の許可の決定がなされて、それからそういうふうなことで事務的な整理をして本人の手元に届いてということにするよりは、むしろ法務大臣のところで決定をした直後に官報に載せるという方が時間的にも早く済むという実務的な問題もございまして、そういうことを総合勘案して官報で告示をするということの方がむしろ制度としてはいいということでやっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/174
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175・柳澤錬造
○柳澤錬造君 その点わかりました。じゃ、その辺は何かにつけて便宜だし、本人のためにもなることだし、まあ証拠と言っちゃおかしいけれども、いつ幾日でやったというのがはっきりする。
そうしてくると、また一回さっきに戻って聞くわけだけれども、本人の居どころがわからない。手紙で、おまえさん届け出を早くしなさいよと言おうと思っても、どこへ手紙を送っていいかわからぬ。そういうのは官報に載っけて、それでその官報に載っけた翌日から一カ月たったらもう日本の国籍なくなしますよという、そのときのその官報に載っけるという意味は今おっしゃられた意味と全くこれ違うんだけれども、それはどう判断したらよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/175
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176・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 国籍選択につきましての催告を住所が調査の結果わからなくて官報に載せて処理をするということを改正法で考えておりますけれども、官報に載せるというのは実はやむを得ない措置として考えておるところでございます。住所がわからない、したがって、先ほども御説明申し上げましたように、日本の国の政府としてもあるいは市町村としても、あるいはその親類の方とかそういうふうな方に尋ねても把握できないような方は、これは推定の問題になりますけれども、日本の国との結合関係は一番薄い、いわば形骸的な、日本国籍をむしろ整理してしかるべきという方でございます。そういう方について催告状が送れないということのために重国籍が残ってしまうということはむしろ制度としては一番おかしいことになるわけであります。そういう場合の最後の手続として、一つの擬制でございますけれども、官報に載せてという手続をとらざるを得ないということでしておるわけでございます。
これは裁判の実務におきましても、訴えを起こしたいけれども相手がどこにいるのかわからないという場合に、その訴訟が起こせないでは、これは権利を持っている者はどうしようもないということがございます。そういう場合には公示送達という方法をとりまして、これも形式的と言えば形式的でございますけれども、そういうことで処理をしなければならないというものがこの実際界にはあるわけでございますので、まあやむを得ない措置として官報の手続をとるということにいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/176
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177・柳澤錬造
○柳澤錬造君 それやむを得ないって、ですから、そこが私が申し上げたいのは、いささかもって身勝手過ぎませんか。一般の民間の会社だって株主総会なり決算なりということになると、大きな会社だったら普通の商業新聞の一紙じゃなくて二社も三社にも載っけて、そうして一般の人たちにわかるようにやるわけでしょう。あれだけ何百万部の新聞が出ている、それも一社、二社、三社とやるようなことまでして周知徹底させようとしているわけなんです。それで直接株主にはちゃんとまた手紙も送っている。官報が何部出ているんですか。それで一般の国民の人たちでもって官報を見る人がいるんですか。その辺のところを皆さん方の頭の中を切りかえていただいて、それで一般の国民の人たちなんて官報なんか見やせぬです。これはもうこういう法律に関係をした特殊な人たちですよ。ですから、その辺のところをどうやってそういうわからない人にわかってもらおうか、どういう伝達をしたらいいかということを、そこのところがやっぱり私は血の通った政治のあり方としてお考えいただきたいと思うんです。さっきから何回開いても、それ以上の御答弁いただけないんだからやむを得ないと思いますので、そういう点もう少しやっぱり政治といいますか、そういうものに血の通ったものがとられるようにして、せっかくこれだけのいいことやるんですから、お考えいただきたいと思うんです。
次にお聞きしますのは、難民の扱いに関係をしていることなんです。難民条約の三十四条でもって、帰化の問題について、締約国はできる限り難民の同化と帰化を促進しなければならない、締約国は特に帰化手続を便宜化し、かつ、できる限りこの手続の課徴金及び費用を減額するためにあらゆる努力を払うものとする、この難民条約三十四条との関係ではどういうふうにお考えになっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/177
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178・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 難民の方につきましては、もし日本の国籍を取得したいということで帰化の申請をされます場合に、従来一番問題になりましたのが、新しい条文で申しますと第五条一項の五号の関係でございます。すなわち重国籍防止条件と言われているものでございますけれども、これに抵触して帰化ができないということが一つの隘路でございました。そういう点を考慮いたしまして、今度先ほど御指摘のあったように第五条の二項で重国籍防止条件というものは絶対の条件ではないというふうに緩和をいたした次第でございます。
難民の方々は、これは本国との関係ではいろいろ問題になって難民ということになったわけでございますけれども、法律的には本国の国籍を有しているということがあるわけでございますけれども、そういう関係をひとつここで緩和できるということによって、難民の方々の帰化が従来の隘路がなくなるということになろうかと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/178
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179・柳澤錬造
○柳澤錬造君 まだよくわからないのだけれども、どうなんですか。難民というのは、どちらかというと国籍があるようでないものだと思うんですね、はっきりしている人たちもいるけれども、むしろ今この日本の中におる人では。それで日本の男性なり婦人なり、今度は法が変わるんですから、どちらとも結婚したのは、そこでもってすぐ帰化できて子供もきちんとしちゃうからいいわけだけれども、難民同士で結婚をして、そうして子供ができている。もうこんなのがいるんですよ、みんなそれだから無国籍のままで。この人たちはどうなさるお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/179
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180・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そういう方々につきましても帰化の申請がありますならば、その国籍があるかないかということがあいまいのままでも、今度の改正法によりますと帰化をすることが妨げられませんので、帰化によって日本の国籍を取得することができることになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/180
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181・柳澤錬造
○柳澤錬造君 そうすると、その場合は一切条件なしで扱ってやるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/181
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182・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 一切要件なし、ほかの条件なしにということではございませんで、それは一般的な帰化の要件としての、先ほど来話に出ております素行要件とかそういうようなものはもちろん……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/182
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183・柳澤錬造
○柳澤錬造君 どこのところか言ってください、そこは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/183
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184・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まず五条、改正法で申しますと五条になりますけれども、五条の「五年以上日本に住所を有する」ときとか、あるいは「二十歳以上で本国法によって能力を有する」ときとか、あるいは「素行が善良である」ときとか、それから生計の関係の四号とか、それから六号の関係の要件とかというものは全部要ることになります。ただ、この「二十歳以上で」という関係につきましては、親御さんと御一緒に帰化の申請をされる場合には、これは親御さんが許可になると同時にそれは日本の国民になりますので、先ほどの子供さんの場合でも一緒に帰化をすることができるということになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/184
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185・柳澤錬造
○柳澤錬造君 これは局長、条文の関係はそれでよろしいでしょうが、むしろその難民の問題になってきたら、これは難民のためにつくった法律じゃないですからね。そういう点ではむしろ法務省の皆さん方の方でどういう運用をなさるか。もちろん日本の国家の秩序が乱れては困るんですから、それはもちろんそうですけれども、しかし現実に難民の人たちについてどういう格好で扱ってやったら一番いいかといって、これはもうきょうでなくていいですから、一度御検討いただけませんか。これは相当さっきも言ったような人たちがたくさんいるんですから。
それで、時間もありませんから、中国残留孤児の関係は、先ほど橋本先生がお聞きになっておりましたから、そういう点で私もここでじっと聞いておったんで、もうこれはやめまして、一点だけですが、昭和四十年一月一日以降施行日の前日まで生まれた者は、母が日本人ならばと今度はしてありまして、三年以内に届け出なさい、そうしたら国籍を与えますよと言っているんだけれども、四十年一月一日という線の引き方というものの根拠は何なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/185
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186・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それはこの法律の施行日を六十年の一月一日ということにいたしております。それからさかのぼって二十年ということでございます。したがいまして、この法律の施行のときに未成年である者という実質で考えましてその表現を四十年の一月一日ということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/186
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187・柳澤錬造
○柳澤錬造君 だから、そこのところも少し皆さん方の御都合じゃないんですか。さっきも出てきたように、講和条約が発効して独立が明確になった日にするとかなんとかじゃないと。だから私から言わせるならぱ、それは二十歳だろうがあるいは二十五歳になっていようが、そういうことに気がついたときには手続をとったならばそれはもう認めてあげるということであればいいのであって、その二十歳になったならば、二十歳過ぎたら何年以内とか何とかと、何でそんなことをなさらなければいけないんでしょうか。ですから、そういう点からいくならば、これもう一たんこういう法案をつくったのだから、これをまさか変えると言うわけにいかないんで、どうしようもありませんけれども、その辺についてはもうちょっとそういうお考えをしていただきたい。
それで、最後に大臣締めくくりでもって、いろいろあれやこれや飛び飛びの質問を私してきましたから、なんですけれども、せっかくこれだけのまあ画期的な法改正だと思うんです、これは。ですから、それだけのことをおやりになるんだし、そういう点から言って法としてはこういう形でもうでき上がって、なんだけれども、運用の面ではいろいろ私が申し上げたようなことをできるだけ配慮をして、そうして当事者たちに便宜を図ってやる、特に難民の問題についてはそういう点について配慮をして運用をしますよということをお願いしたいので、そういう点についての大臣の御見解を聞いて終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/187
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188・住栄作
○国務大臣(住栄作君) 私も今度の国籍法の改正、明治以来の父系血統主義、これを父母両系主義に改める、こういうことでございますから、これは非常に大きな改革案だと考えております。そういう関係でいろいろの問題も当然そういう改革に関連して出てまいります。そういう引き継ぎ関係につきましても、これはいろいろ御意見をちょうだいいたしておりますが、そういう点を十分勘案していかなければならない。それから、このまた新法の運用につきましても、これはそういう意味で考え方を変える制度でございますから、そういう趣旨の徹底、これはもう本当に法を運用する立場の者から十分徹底させていかないといかぬと同時に、特にこの父母両系ということになる方々にも十分わかるようにしていかないといかぬ。特に国際結婚ということからこれは生ずるわけでございますから、そういう点は十分配慮していきたいと思っております。
それから、難民の問題につきましても最後に御指摘ございましたけれども、そういうことを意識した条文もこれ入っておるわけでございますから、そういう法の趣旨を生かしていくという意味で十分な配慮を加えていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/188
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189・中山千夏
○中山千夏君 私はいろいろな国との関係が国籍法の場合あると思いますけれども、在日朝鮮人の方たちとそれからこの国籍法改正との関係に絞って、いろいろお伺いしたり確認をしたりしたいと思っております。
最初に、現在在日朝鮮人の方々の数というのはどのくらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/189
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190・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 約六十七万人おられるというふうに開いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/190
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191・中山千夏
○中山千夏君 その中で、国際結婚、朝日結婚というのをしていらっしゃる方はどのくらいの数に上るのか。できましたら奥さんがどちらの国籍かということで分けて教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/191
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192・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その六十七万人の中で日本人と国際結婚しておられる数という形では私どもは把握しておりませんが、最近の届け出によりますと、妻の方が日本人であるという場合が一年間に大体千六百ないし千八百人ぐらいおられます。それから夫の方が日本人という形の者が一年問に二千五百ないし二千九百人ぐらいおられるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/192
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193・中山千夏
○中山千夏君 そうすると、今度奥さんの方が日本人の場合には、改正になりますと当然そこで生まれた子供さんというものは一応二重国籍になるわけですね。そういう方たちが何人ぐらいになるかという予想を立てておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/193
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194・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そういう方々の間に一夫婦何人ぐらいの子供さんが生まれるかという推定になるわけでございますが、大体平均的には一・七人ぐらいであろうというところから、先ほどの数字に掛けますと、年間に三千人前後ということになるのではないかと思います。これが将来長い年数になりますとその数だけ年々ふえていきますので、二十年たてば六万人というふうな数になっていくように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/194
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195・中山千夏
○中山千夏君 朝鮮の場合、非常に政治状況が難しくて二つに割れているという現状があるわけですね。法律もその二つで違うのでしょうけれども、そのうち韓国の方の場合、その子供が日本で生まれた、日本籍も韓国籍も持っているという子供が日本の国籍を選択したというときには韓国の法律では自動的に韓国籍はなくなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/195
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196・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在のところ韓国にはそういう規定はございませんので、日本の国籍を選択いたしましても、韓国籍の方はなくなるということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/196
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197・中山千夏
○中山千夏君 おたくの方から出していただいた資料の「外国の立法例」というのがありますね。そこの大韓民国国籍法の第十二条ですか、そこに「国籍を喪失する」という場合の規定があるわけなんですけれども、十二条の四というところに「自己の志望によって外国の国籍を取得した者。」とありますけれども、選択の宣言をしたというときはこれには当たらないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/197
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198・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもはこの条文の文言からいたしましてもこれには当たらないというふうに解せられますし、また念のために韓国の方に聞いてみましたところ、これには当たらないというような回答を得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/198
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199・中山千夏
○中山千夏君 何か素人目に読むと当たりそうな気がするんですけれども、局長の法律的な専門的なお考えでこの文言から見ても当たらないとお考えになるところをちょっと説明していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/199
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200・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは外国の国籍を新たに取得したということでございますが、重国籍の場合には出生によって当然あるわけでございます。それをいわば確認といいますか、なお維持するために選択の宣言をするというだけでございまして、新たな国籍を取得するわけではございませんので、この条文には当たらないということでございます。ただ、選択宣言でなくて、ほかに日本の国籍を取得するという場合がありますね。例えば経過措置なんかでもそうでございますけれども、そういう場合には自己の志望によって他国の国籍を得るということになりますから、その場合にはこれに当たるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/200
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201・中山千夏
○中山千夏君 そうすると、韓国の場合には韓国の国籍法の第十二条の五の方でもって許可をもらわなくちゃいけないわけですね、韓国籍から離脱しようとした場合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/201
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202・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 日本と韓国との二重国籍を持っている方が韓国の国籍の方を離脱しようとされれば、向こうの法務部長官の許可を得るということが必要になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/202
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203・中山千夏
○中山千夏君 一方、朝鮮民主主義人民共和国の場合ですね。この場合はどうなるんですか。朝鮮民主主義人民共和国の夫だ、そして子供ができた、その子供はそのとき二重国籍になって選択をしたらどうなるのかというあたり、あちらの国の法律との兼ね合いで御説明いただきたいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/203
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204・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私ども北朝鮮側の方の法制がどうなっておるかということは実はよくわかりませんので、ちょっとお答えしがたいわけでございますが、日本といたしますと国家承認としては韓国ということでございますので、その朝鮮の方が韓国の国籍法でということを前提にして考えるわけでございますが、ただ実際問題といたしますと、北の方にも政府があって、そこでいろいろなことを考えておられるわけでございまして、そういう場合に重国籍について北朝鮮の政府がどのような取り扱いをするかということは実際問題としてあるわけでございます。しかし、その点については私どもも法制もよくわかりませんし外交関係もございませんので、いろいろな資料を入手したり、あるいは取り扱いを聞くという機会がないためにちょっと明確なお答えはできないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/204
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205・中山千夏
○中山千夏君 そうすると、今度その問題は外交の問題も絡んできて難しくなるとは思いますけれども、御当人も一応朝鮮民主主義人民共和国の国籍をお父さんは自分で認めて自分の意思で持っている、それから本国もそれを認めている、そういう人と日本の女の人が結婚をして子供ができてというような場合に、本国というか、外国のもう一つの国籍を持っている国がどういうふうに出てくるかということについての問題というのは今後起こってくる可能性というのはありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/205
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206・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それはどういうことになるかというのは想像つきませんけれども、それは国籍の問題につきましてはいろいろなところで問題になりがちであるということでございますので、おっしゃるようなこともそれはあり得ようかとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/206
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207・中山千夏
○中山千夏君 あっても、その場合には法務省だけではとても判断をしたり解決をしたりというのは難しい問題になってきますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/207
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208・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっとそれはお答えしにくいのでありますけれども、どういう形の問題かということによって違ってまいろうかと思います。ただ、はっきりはわかりませんけれども、北朝鮮の方でもやはり血統主義をとって父母両系というふうなことだというふうにも、正確にはわかりませんけれども聞いておりますので、そんなに決定的に、何といいますか、韓国と違った問題が生ずるということは、現在のところはそれは予想されません。何が起こるかわかりません。起こり方によってはそれは私どもの手に負えないということもあろうかと思いますが、そんなに具体的に予想される問題があるというわけではないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/208
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209・中山千夏
○中山千夏君 重国籍者で、あちらの国の国籍が抜けない、日本の国籍を選択はしたけれどもあちらの国の国籍もあるという状態になっているときに、向こうの外国の方から何か義務を課してくる、国籍があるんだからということで義務を課してきた、そのときに御当人がそれにこたえたくないという場合、これは韓国との関係で結構ですが、そういう場合にはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/209
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210・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 二重国籍の場合にはこれは日本国民でありますので、したがいまして、我が国としては日本国民としてその方を処遇するという立場に一般的にはなろうかと思います。韓回の場合で問題になりますのは兵役の関係ではないかと思うのですけれども、韓国の方では日本に居住している者については兵役の義務を免除するという法律を設けておりますので、その関係でのトラブルといいますか、引き渡せとかというふうな問題は起きることはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/210
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211・中山千夏
○中山千夏君 これもまた朝鮮民主主義人民共和国の方になりますと、何となくやっぱり兵役義務があるんだろうと思うんです。そしてそれを課してきたというようなことになったときに、やっぱり国交もないし、事情もよくわからないし、話し合いの糸口もついていないということになると大分これはやりにくいでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/211
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212・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 重国籍でありましても日本国民でありますので、先ほど申し上げましたように、日本とすれば日本国民であるわけですから、どこかよその国から自分のところの兵役義務を果たすために自分の国に送り返してくれといいましても、それは我が国が応ずる義務はないわけでございます。その関係は北朝鮮との関係でも同じだろうと思います。殊にお互いに外交関係にはもちろんないわけでございますので、そういうルートからの申し入れというようなことはまずないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/212
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213・中山千夏
○中山千夏君 そうすると、政府はそういう場合、日本国民として彼を守ると言ったら変ですけれども、自分は外国の兵隊には行きたくないというふうに言っているときには全面的に彼をバックアップして、ちゃんと外国とも話し合いをしてくれるということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/213
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214・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 少なくとも日本国内にいれば、そういう義務のために日本の国内に居住を続けるということを日本政府から否定されることはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/214
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215・中山千夏
○中山千夏君 最後にもう一つ、国籍法の改正の方ですが、第十四条の二項に選択の宣言というのが出ていますね。また戸籍法の第百四条の二の二項というところで、日本の国籍を選択しますという届け出をするその書面に「その者が有する外国の国籍を記載しなければならない。」とありますね。この場合に、日本が認めていないというか、国交がない朝鮮民主主義人民共和国というふうに御当人が書いて届けられた場合、これは受け付けられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/215
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216・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは取り扱いの実際の問題でございます。そういうふうな記載をしてこられた場合に、それだけの理由で受け取らないということは、これはしないという考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/216
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217・中山千夏
○中山千夏君 ぜひ今後もそうしていただきたいと思うんですね。届け出のときに、やっぱりその人が思っている、自分の国籍だったというふうに思っているところを書く、書いて出すというのは、国の関係が難しいところでもやっぱり当人の意思を尊重してやっていただきたい。
で、離脱のときですか、離脱のときもそういう届け出は受けていらっしゃるというふうに聞きましたけれども、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/217
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218・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは離脱の場合には重国籍であることが前提になりますけれども、要するに日本以外の国の国籍を持っているということの要件がはっきりしておれば、今おっしゃったような記載の仕方でも受理いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/218
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219・中山千夏
○中山千夏君 これを戸籍に記載をするときにはこういう書き方では記載はなされないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/219
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220・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは我が国が国家承認をしているという国名ではございませんので、したがいまして戸籍にはそのような記載はする考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/220
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221・中山千夏
○中山千夏君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/221
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222・寺田熊雄
○寺田熊雄君 五十九年二月三日、参議院決算委員会で久保田真苗議員が国籍留保の問題について質問をしております。その質問の中で、非常に技術的な問題になりまして、出生届の様式等についてできるだけ問題点をなくしていくという方向で処理していきたいという民事局長の御答弁がありましたね。要するに留保の意思表示がしやすいようにしむけていくということなんでしょう。今考えておられる点ではどのような処置をおとりになるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/222
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223・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 出生届につきましては国内でも市町村の窓口で印刷したものを置いて、それを御利用いただいております。在外公館の場合にも同じように印刷したものを置いて、それで御利用いただいておるわけでございますが、現在はその留保届の関係は、その印刷されているものの「その他」欄というところに今記載をしていただくようになっているわけでございます。そこに日本の国籍を留保するという言葉を書いていただくわけでございますけれども、今度は在外公館に置かれる分につきましては日本の国籍を留保するということを印刷しておいて、それにチェックをしていただくとか、丸をつけるとかいうような形でやるようなことを今考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/223
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224・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから第十二条で、従来の生地国主義、それによる二重国籍者について留保をするという制度を、外国で生まれた重国籍者すべてにこの留保制度を拡大しておられますね。旧法では父母ともに日本人で出生地主義によって子供が外国人となった場合、ところが今度は片親が外国人で外国で出生をした子供も含まれる。つまりそういう意味で拡大をせられたわけでしょうか。旧法プラス片親が外国人で子供が外国で生まれた場合と、こう理解したらよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/224
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225・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行法は生地主義をとっております国で生まれて、その結果重国籍になった者が対象でございます。今度はそうではなくて、国外で生まれて、そして出生によって重国籍を取得した者ということになりますと、従来の生地主義で生まれて重国籍になる者も含みますし、そうでなくて血統主義で重国籍になる者も加わるという意味で拡大になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/225
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226・寺田熊雄
○寺田熊雄君 おさらいになるけれども、従来は父母ともに日本人で、ただ出生地主義をとる外国で生まれたがゆえに外国国籍を取得するということだけでしたか。それとも父母が日本人であり同時に外国人であるという重国籍を持っておって、外国で生まれた子供が生地主義によって外国国籍を取得する、こういう場合も含んでおりましたか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/226
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227・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行法では生地主義によってその国で生まれたことによって重国籍になった者ということになっておりますが、したがいまして、ケースとすれば、両親がともに日本人の場合ももちろんありますが、父親が日本人で母親は外国人だという場合も父系血統主義でその子供は日本国籍を持ち、また生地主義の関係でその国の国籍も取得するという場合もあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/227
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228・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、従来も単に外国で生まれたというだけでなくて、実際上は血統主義によって取得する、両方の取得事由を含むということになりますか。どうも今の局長の御説明だとはっきりしないように思うけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/228
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229・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは血統主義というだけでは現行法では留保の対象にならないということでございまして、要するに少なくとも父親が日本人であるために日本国籍を取得する、同時にその国で生まれたという、その生地主義の関係で重国籍になる者ということ、現行法の要件としてはそういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/229
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230・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、今度それにプラスされたのは、父親が日本人だけではなくて、母親が日本人であって、そして外国で生まれた者という、母親が日本人であるという要素が加わったと、そういうことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/230
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231・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 親の一方がという要件ももちろんあるわけでございますけれども、要するに外国で生まれたということは変わりないわけですけれども、外国で生まれたことによる、すなわち生地主義による国籍の取得ということに限らないということに違いがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/231
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232・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そういう範囲を私大したそもそもの立法理由、拡大したゆえんのものはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/232
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233・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行の留保制度では大体重国籍が発生するというのは、血統主義から重国籍になるということはこの現行法制定の当時には余り予想していなかったわけでありまして、重国籍になるのは生地主義との関係での重国籍になるということを原則として考えていたと思います。その場合に我が国は血統主義をとっておりますけれども、全般的な国籍決定の要素とすれば地縁と血縁とがあるわけでございますが、そういうことで考えますと、外国で生まれてその地縁の関係でその国の国籍を取得するという場合には、我が国の方の国籍が形骸化される可能性が強い、したがって日本の国籍の方をなお残したいという考え方ならばそれは留保をしてくださいと、そういう制度だと思います。
今度は我が国も父母両系血統主義になりましたし、それから血統主義をとっている国も大体父母両系主義に切りかえつつあるわけでございます。そうしますと、二重国籍の発生理由とすれば、何も生地主義だけに限るわけではないことになります。そこで、外国で生まれた二重国籍者ということで生地主義でない場合を考えてみますと、その場合には外国で生まれたわけでございますから、地縁としては日本との結びつきが足りないという一つの要素が出てまいります。それから、両親がともに日本人でないといいますか、片親は外国人である、したがって血統主義で重国籍になったということになる。そうしますと、地縁の関係から申しましても、それから血縁の関係から言っても日本との結びつきが薄くなるといいますか、そういうことが一般的に言えるグループになる。そういう方々については、そのままにしておきますと日本の国籍が形骸化するという可能性もあるだろう、したがって留保をしていただくということが、現在の留保制度と同じような考え方を今度の父母両系主義が日本でもとるし外国でもとるという趨勢に合わせて考えればそういうことになるのではないか、しかし国内で生まれた重国籍者、これは地縁の関係が日本にあるわけですから、これは何も留保という必要はないだろうという考え方に立ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/233
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234・寺田熊雄
○寺田熊雄君 要するに日本の国との紐帯が薄い、今後もより薄くなるであろうという者について、日本の国籍を持ちたいという意欲なり願望を持っておるかどうかという点をはっきりと意思表示させる、そしてその点を明確にしていくということでしょうね。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/234
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235・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 実質的にはおっしゃるとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/235
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236・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、国内出生者で二重国籍を持つ者、これは国籍選択の時期である二十二歳までは二重国籍のままで置いておく、二十歳までは子供だから、まだ未成熟だから国籍関係もまだそう明確な形をとらなくてもいいという趣旨でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/236
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237・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございまして、未成年の間は自分の国籍を最終的に決定をするということの判断能力としては十分ではないだろう、したがって成人に達するときまでそれは待つ必要があるだろうということが一つと、もう一つは、重国籍の弊害というのが未成年の間は比較的少ない、したがって重国籍のままであっても許容できる、そういう両面から二十歳というものを基準にしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/237
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238・寺田熊雄
○寺田熊雄君 おととい参考人の意見陳述の際出た問題でありますが、留保制度と選択制度とを並立させる、どちらも重国籍解消策である点では間違いない、しかしダブらせる必要があるかどうかという点が議論になりました。民事局長の衆議院におけるいろいろな説明を聞きますと、国外の出生児についてこうしなければ把握し得ないではないでしょうかというような御説明もありましたね。それから出生の時点で外国で生まれたことによる日本国籍の形骸化といいますか、これを防止したい、これが留保でしょうね。これは親の意思で防止をしよう、それから一方成人は自分の意思で、本人の意思で選択によって重国籍を防止していく、こういうことなんでしょうね。だから、やはり片方は親の意思で出生の時点で重国籍を防止する、日本の国籍の形骸化を防止していく、一方は自分の意思で選択させて重国籍を防止する、だから二つとも置いた方がいいんだと、こういうふうにあなたの御説明を理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/238
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239・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 重国籍の解消ということに関しましてはなるべく早い時期から解消することが望ましいわけでございます。そういう意味で出生の時点をとらえまして、先ほど申しましたような地縁等の関係から日本への紐帯が弱いというふうなグループにつきましては、一つのそこで重国籍の整理といいますか解消が図られることが望ましいという面が一つございます。
しかし、それも一つの国籍の選択、本人がやるか親がやるかによって違いございますけれども、一つの選択であるわけでございまして、したがって選択制度と同じ趣旨ではないか、そんなことならば選択制度一本でやってもいいじゃないかという議論もあるわけでございまして、中間試案の階段ではそういう留保制度を残すべきかどうかについては、A案、B案で、残す説と残さない案とを両論併記して中間試案で御意見を伺った経緯がございます。ただ、その階段ではもちろん留保制度は中間試案の選択制度のもとでも必要だという考え方もあったわけでありますが、その中間試案の選択制度の場合には選択の宣言を二十二歳までにしなかったならば当然に日本の国籍は喪失するというそういう案だったわけです。
ところが、今度は、本案ではそうではなくて、催告によって、それでもなお何の応答もない方について日本の国籍を喪失する、そういうことにしたわけです。そうなりますと、何といいますか、留保制度を残しておきませんと、出生届も事実上ないわけですから、日本の国としては把握できない方がかなりおられて、そういう方に対して催告の手続をとらなければ日本の国籍の喪失ができないということになってしまう。これは要するに住所がわからないという話ではございませんで、要するに存在自体がわからないわけです。名前もわからないということになります。そういうことですと官報にも載せるというわけにもいかないわけですね。
そういうふうなことがございますので、その中間試案の段階ではA案、B案ございましたけれども、こういう改正案になった時点では、もともと選択制度と若干ダブる面はあっても、当初から形骸的な日本国籍を防止する意味で留保制度があってしかるべきだという意見にプラスして、選択制度が実際上うまく機能していくためにも留保制度というものがないと動かなくなるという面が出てまいりました。したがいまして、法制審議会でも選択制度をこの改正案のようにするという議論とともに、むしろ留保制度はあるべきだという議論があわせて固まっていったという経緯があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/239
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240・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今何か民事局長の御説明をお聞きすると、選択制度の場合、親が選択する場合があるかのように私はちょっと聞こえたのだけれども、親が選択するのは留保の場合だけでしょう。いわゆる選択制度は本人でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/240
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241・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私の申し上げ方がまずかったかと思いますけれども、留保の方はもちろん出生届と同時でございますから、これは親がやるほかはないわけでございます。選択制度はこれは制度とすれば御本人が十分判断をしてやっていただくというのが原則でございますが、しかし御両親がかわってやるということも否定してはおりません。したがって、十五歳未満の場合にはかわってするということも制度としては残してあるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/241
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242・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今具体的な例をお尋ねするんだけれども、韓国人の妻は現行の韓国の国籍法によりますと当然に韓国籍を取得するようになっておりますね。この場合、日本の国籍は当然にはなくならないで、これもやはり二重国籍者となると私は理解しておりますが、それはそうでしょうね。そうしてその場合、やはり国はいずれの国籍を選ぶか選択を迫りますか。これはどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/242
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243・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 韓国人の男性と日本人の女性が婚姻をいたしますと、韓国の国籍法ではその日本人の女性、妻に韓国籍が与えられます。その瞬間に二重国籍になります。したがって、日本の国籍の離脱をされる方もかなりおられるわけですが、ただ韓国の国籍法では婚姻後六カ月以内にその他国の方の国籍を離脱しなければ一たん与えた韓国籍の方が失われるという規定になっております。したがって、日本の国籍も離脱しないままで六カ月たてば韓国籍は与えられなかったということになってしまうような法制になっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/243
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244・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、その妻は再び日本籍に戻る、こういうことになりますね。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/244
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245・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 二重国籍の状態が日本の国籍の単一の国籍になる、そういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/245
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246・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは衆議院でも非常に争われた問題ですが、帰化処分のときの指紋の問題ですね。これは今までのあなた方の御説明ですと、十指について指紋をとらせるということのようでした。これは何か法的な根拠があってそういうことをさせますか、法的な根拠はなく実際上やらしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/246
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247・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法律上の根拠があるわけではございませんけれども、手続としてとっておるわけでございますが、本人の同意を求めてやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/247
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248・寺田熊雄
○寺田熊雄君 本人も帰化許可処分を得るためには指紋をとられることが余儀ないことであると観念して同意するのでしょう。だれだってしたくないからね。だから端的に表現すると、それは権力をかさに着て嫌がることをやらせるということになりますね。で、外登法の指紋の採取のときは、これは外登法に基づく指紋に関する政令がありますね。だから法的な根拠がある。今訴訟まで起きておるところを見ても、いかに指紋の採取というものが屈辱的な感じを与えるかということは、皆さんこれは私がお話をしなくても御理解いただけると思う。だから、権力をかさに着て同意を余儀なくさせるということはやはり適当でないので、これはやはり国会に諮ってそういう法律の規定を設けるとか、あるいは法律の規定に基づいて政令なり法務省令で皆さんにそういう権限を与えるとかなさる方がいいように思いますね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/248
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249・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在指紋をとっております理由は、本人の同一性の確認という面と、それから素行要件の調査のために、前科などをはっきりさせるというようなところで必要があるためにとっておるところでございますが、その同一性の確認の関係では、これは午前中に帰化の取り消しの話が出ましたけれども、他人の名前をかたってといいますか、そういうことで帰化の申請をして帰化許可になったという事例も実はあるわけです。そういう場合に、そのかたられた名前の人は自分は何も帰化申請をして日本人になった覚えはないということで問題になるわけです。そうしますと、一体だれが帰化の許可の対象になったのかということが実際に問題になります。そういう場合には結局指紋によらざるを得ないということがあるわけです。
そういうふうなことでとっておるわけでございますが、確かに指紋をとられるということは一般の人の感覚としては気持ちのいいことではございませんので、何かただいま申し上げましたような必要性というものが最小限度との程度で済むかということについては、これは研究しなければならないところだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/249
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250・寺田熊雄
○寺田熊雄君 どの程度必要があるかということも私はその次にお尋ねをしようと思ったのだが、私のお話しするのは、そういう同一性の判定にとってどうしても必要なんです、また帰化を許すかどうかというそのことにも必要なんですというその必要性は、私は局長、決して否定しないんですよ。だから、指紋は絶対いかぬ、人権の保護のために一切いかぬというところまでこの場で議論をしているわけではありません。ただ、その必要性を肯定したとしても、やはり法的な根拠がそこに必要なんではなかろうか。少なくもそれが望ましいのではなかろうか。というのは相手に義務を課しますからね。国民に指紋を押捺するという義務を課す。それは自由意思による同意を得たといっても片方と片方は非常にかけ離れた、権力と権力の前に小さくなっている国民との差があるから、だからやはりそれは完全に平等な当事者の合意とは言えないから法の裏づけが必要じゃないかと、こう言っているわけです。まずこの点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/250
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251・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点は実態をどうするかということとあわせまして、法令上の手当てを必要とするかどうかを考えてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/251
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252・寺田熊雄
○寺田熊雄君 次に、外登法上の指紋の採取というのは左の人さし指の指紋をとるということで済ましているようですね。それだけでも屈辱感を与えるということなんですから、まして十指の指紋ということになりますと、これは屈辱感以上のものじゃないでしょうか。局長の言われました同一性の判定にどこまでが必要か。もしも人さし指だけでそれが判定可能であるならば、十指は必要ありませんね。また前科の照会にもそれが必要かつ十分なものだというならば、十指は必要でない。だからその必要性の有無というのは容易に判断し得る問題だと思うんです。あなた方のように人権意識が非常に高くていらっしゃる方が、また必要性の判定なんというものについてはたやすく判定する能力をお持ちの方が、そう長い期間引っ張っておられるということはちょっと私にも理解できないので、これは早急にその必要性の有無を御判定になってしかるべきではないかと思いますが、これはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/252
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253・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) いろいろなケースがございまして、同一性の確認というところから、逆に何といいますか、虚偽の、もし取り消しをすべきならば取り消しをしなければならぬような事態の発生を防止しているという面もあろうかと思います。そういうことを総合勘案いたしまして、確かに十指というのは指紋をとられる方にとっては決して愉快なことではないということもわかりますので、そこら辺を総合的に考えて、指紋制度を残すか、あるいは指紋制度を残した場合でもどの程度のものにとどめるかとかは、これから検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/253
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254・寺田熊雄
○寺田熊雄君 大臣、今民事局長の御答弁で私も納得するわけです。ただ、これは本当に法的にはあなたの御処分になりますから、だからそれをさせるのはあなたがさせるということになりますから、事人権に関する問題ですし、不必要な屈辱感を与える必要はないし、それからまた法的根拠の問題も、現在国民に義務を課す場合はすべて法的な根拠を必要とするという現在の法至上主義の建前からも、これは大臣としても関心をお持ちになりまして遺憾のないように御処置を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/254
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255・住栄作
○国務大臣(住栄作君) この件に関しましては、今民事局長からお答え申し上げましたとおり、必要性との関連において、必要最小限度な方向で検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/255
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256・寺田熊雄
○寺田熊雄君 結構ですが、法的根拠のことも御検討ください。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/256
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257・住栄作
○国務大臣(住栄作君) それを含めまして検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/257
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258・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、第十一条の官報の告示制度、これは一応局長からなぜこれが必要なのか、そのく合理的な理由をまず御説明いただいて、それからまた質問を続けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/258
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259・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの御質問は新しい法案で申しますと十条の帰化の場合の官報告示の話だと思いますが、これは一つには日本の国籍をいつの時点で取得したかということが非常に重要になります。その時点を境にいたしましてその子供が日本国籍を当然に取得したりしなかったということで、これはすれすれのケースも実務の上でもかなりあります。そういうふうなことで、日本の国籍を取得した時点を明らかにするという意味で官報という客観的なものでやることがひとつ望ましいということがあります。
それからもう一点は、これは実務上のことでございますけれども、もちろん帰化の許可の処分でございますので本人にはお知らせするわけでございますけれども、それがなかなか到達がおくれたりすることもあります。それからまた、帰化の許可を受けた方がそれに基づきまして、今度は戸籍の方を届け出していただきまして、そして新しく戸籍をつくることになりますけれども、その場合の戸籍の記載内容というものを実際問題といたしますと法務局の方で整理をして、そしてそれを持っていけば市町村の方ですぐに戸籍がつくれるというようなことをしておるわけです。そういうことですと若干時間がかかるわけです。したがいまして、かえって一般の行政処分の手続による本人に告知をするときにしてしまいますと帰化の許可がおくれる、実際問題としてはおくれるという要素があります。それを法務大臣のところで決裁が済みますと直ちに官報の方に回して告示をするという方が帰化が実際は早くなるというふうなこともございまして、その二点から官報告示というのを現行どおり残したいということでこういう案になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/259
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260・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうですか。私はまた官報に告示するとかえって遅くなると思っておったのだが、官報の告示の方が早い場合もあるというのですね。
それから、これは効力発生要件であるというふうに考えるべきでしょうね。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/260
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261・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/261
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262・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今私が十一条と言ったのは、局長が言われたように第十条の誤りでありますから、この点ちょっと訂正をしておきます。
それから、私のさっきの指紋のときにお話しした方がよかったのかもしれないけれども、私が交通事故の被害者から依頼を受けて損害賠償請求訴訟を起こした事件で、加害者である韓国人が重傷を負いながらその衝突現場から姿を消してしまった。ちょうどそのとき、中川君と言って、私の後輩が外務省から出向して入国管理局長をしておったから、その中川君に頼んで調べてもらったら、同一の氏名を持った韓国人が十三人おると、こういうふうに言う。全く同一姓、氏名で。それからそれはまだはっきりしておるので、密入国している人で同一の氏名を持った人が何人おるかわからぬと、こう言う。
そういう経験から言いますとやはりこれは指紋も必要であるかなというふうに私はそのとき感じたのですが、もう一つは年齢が違うようですね。同じ姓名で年齢が千差万別。官報に告示する場合には、本人の氏名はこれは表示をするのでしょうが、氏名以外にどういうものをさらに官報に載せますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/262
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263・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 官報に告示いたしますのは、住所と、それから通称名ですね。それから生年月日、それで特定をして告示いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/263
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264・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この十三条の国籍の離脱、これは法務大臣に届け出るということでありまして、法務大臣の行政処分を必要とするものではありませんけれども、これもやはり国籍という重要なる身分を失わしめるものでありますから、国籍の取得について官報の告示を必要とするのであれば、国籍の離脱の場合もやはり官報に告示したらどうかなというような感じも受けるのですが、これはそれほどまでの必要はないとせられたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/264
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265・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行法のもとでは日本の国籍を離脱する場合も官報告示をしまして、その官報告示が効力要件だったわけでございます。今度はそれをなくしまして、すぐに受理をしたときに効力を生ずるということに改めたわけでございますが、それは効力発生をそのように改めましても役所側の方が離脱の届け出を受理いたしますので、それははっきりと日時が把握できるという点が一つございます。
それからもう一つは、これをさらに告示をいたしますと、それはやはり時間がかかるわけです。先ほどもちょっと例が出ましたけれども、韓国の国籍法との関係で、日本の女性が韓国の男性と婚姻しますと韓国籍が与えられて、六カ月以内に日本の国籍を離脱しなければ韓国籍を失うということになっております。ですから、韓国籍の方を維持したいという方は六カ月以内に日本の国籍を離脱しなければならないわけです。そのような関係は韓国の男性によって認知された子供も同じことになるわけです。そういう六カ月という期間が決まっておりますと、六カ月内に日本の国籍の離脱の届け出は出したのだけれども官報に載るまでに時間がかかってしまったという、そういう問題が生ずることがあります。そういうケースでは、まあ現在では大特急でやっておるわけでございますけれども、そういうふうな問題も現実に生ずるわけでございますので、したがって離脱の方は官報告示の制度はやめるということにいたしたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/265
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266・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まあそれで賄えばそれもまたよしというところでしょうかね。
それから、第十四条の国籍の選択、この制度の運用に当たって先ほど中山千夏さんから質問があったようですが、朝鮮民主主義人民共和国と台湾はどういう取り扱いを受けておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/266
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267・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) いずれも我が国といたしますと朝鮮の関係は韓国が国家承認をした国家である、それから台湾の関係は中国の領土の一部であって中国であるというふうなことで考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/267
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268・寺田熊雄
○寺田熊雄君 台湾の場合は一見明瞭で、台湾という国家が存在しないということはわかるけれども、朝鮮民主主義人民共和国の場合は、韓国を承認しておるから正式の国家として表示するわけにはいかないという、そういう考え方も理解できないではないけれども、ちょっと台湾の場合とは違うでしょうね。これは外国人登録の場合は国家に準じて考えておるようですね。それで、国籍選択の場合はもう何でもかんでもみんな韓国扱いにしちゃう、こういうことなんでしょうか。それともやっぱり違う何か手だてをとっておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/268
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269・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは国籍の関係では韓国の国籍法というものを基準にして私どもは物を考えるという立場をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/269
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270・寺田熊雄
○寺田熊雄君 在日朝鮮人の人から帰化申請がなされる、その場合、私は朝鮮民主主義人民共和国の人民であるということを記載した帰化申請が出るとしますね。それを受け付けますか。それともやっぱり韓国に書き直させて受け付けるんですか。どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/270
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271・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは書き直してもらうというようなことはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/271
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272・寺田熊雄
○寺田熊雄君 次に、第十四条第二項の規定、これは結局この規定は外国の国籍を離脱するか、または選択宣言をするか、いずれかによれと、こういうふうなことを書いているんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/272
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273・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 結論としてはおっしゃるとおりでございますが、要するに日本の国籍の方を単一の国籍として選ぶというのには、外国の国籍の方を離脱するか、あるいは日本の国籍の方をとるかという、二つの道があるのだということをここで言っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/273
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274・寺田熊雄
○寺田熊雄君 何かちょっとややこしい書き方なんで、もっとこれわかりやすく、日本の国籍の選択は外国の国籍を離脱するか、または戸籍法の定めるところにより云々と書いてくれれば一見明瞭だったんだけれども、余りこれは法制局的な考え方で、しゃくし定規に論理的に書くものだからちょっとわかりにくい文章になってしまう。もっとやっぱりこういうのは読んですらりとわかるように、平易に書いてくださった方がよろしいね。これはあなた方が書いたのか、法制局がこういうふうにしたのか、そこのところはちょっとクエスチョンマークだけれども。
次に、選択をした場合に選択の届け出にはその者の有する外国の国籍を記載することになっておりますね。これは戸籍法上の問題だけれども、そのまま戸籍に載りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/274
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275・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはその外国の国籍は戸籍に記載するというつもりでございます。——失礼しました。選択の宣言につきましてはこれは外国の国籍の関係は書きません。要するにそういう選択の宣言があったということだけを書くわけでございます。ちょっと誤解しましたので失礼しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/275
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276・寺田熊雄
○寺田熊雄君 結局日本の国籍の選択をしたわけですから、外国の名前が戸籍簿に記載されることはこの場合においてはない、こう理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/276
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277・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/277
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278・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この問題はいろいろな団体からやかましく私どもに注文がありまして、そこでお尋ねをしたわけです。
それから、外国国籍の離脱の問題でありますが、これは手続をして、それがその国の国籍法によりましては監督官庁、所管官庁の許可を必要とする場合がありますね。ですから許可を得て届け出るということになると思う。戸籍法の規定を見てみますと、第百六条では「国籍の喪失」という言葉を用いておりますが、この国籍の喪失という範疇に今の国籍の離脱を含ましめておるというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/278
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279・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/279
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280・寺田熊雄
○寺田熊雄君 戸籍法の改正部分を読みまして、この点、表現が非常に違ってくるものだからどうかなと思ってお尋ねをしたわけでありますが、それでわかりました。
それで、外国国籍の放棄宣言あるいは日本の国の国籍を放棄する宣言、これは何びとに向かってしますか。宇宙に向かってやる、真理を宇宙に向かって宣明するという場合もあるんですが、これはだれに向かってやりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/280
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281・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これはだれかといえば日本の国に対してということになろうかと思いますが、具体的にはこの選択の宣言は市町村に届け書を出してという形になるわけでございますが、あて先は要するに日本の国といいますか、そういうことになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/281
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282・寺田熊雄
○寺田熊雄君 概念的には日本の国に向かってやるということでしょうね。特にあて名を書くわけじゃないと思うんだが、届け出は市町村長にする、こういうふうに理解すべきだと私は理解しておる。
第十五条の国籍選択の催告制度、これは第三項の一月という期間は短さに失する。これは戸籍法を見ると「一箇月」という言葉を使っていますね。それから国籍法の場合は「一月」という表現を用いる。こういう点もどっちかに統一してくださった方が感じがよろしいが、それは小さな問題だから一応そのまま受けとっておいて、これはなぜ私が短さに失すると言ったかといいますと、自分の国籍をいずれかに、アメリカにしようか日本にしようかという、そういう大切な場合に、当然その人は親戚であるとかあるいは信頼する友人であるとか、ときには弁護士であるとか専門家に相談をするということになるんじゃないかと思いますよ。また、それによってどういう利害得失があるかという利益の効用も恐らくそこで働くであろうと考えられる。それを一月の間に決しろというのは、これはお上の発想で、そういうところへ追い込まれた人間の発想ではないと私は考えている。立法論としては少なくも半年ぐらいにして、もしも半年で長きに失するならば本人の申請によって猶予期間を与える、法務大臣は猶予期間を与えることができるというような制度を設ける、そういうふうにした方がよかったのではないかと私は考える。この点どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/282
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283・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その点も先ほど御質問受けた点でございます。一カ月にいたしました理由は、一つにはこういう催告を受ける方は二十二歳までに選択をしなければならないということを、いわば期間を徒過している方でございます。したがって、義務としては二十二歳までにそれを判断してやっていただくということがあって、それを徒過しておられる方だから、したがって何も新たな問題としてここで考えるということではないではないかという点が一つあります。
それからもう一つは、余り長く期間を置きますと、かえってそのうちそのうちということになって、結局また徒過をしてしまうというふうなこともないわけではないので、それは余り長くない方がいいだろうというような面がありまして、そういうことから一カ月がいいか二カ月がいいか三カ月がいいか、いろいろな意見がありましたけれども、この種のものは一カ月あればそれは判断するのにそう短いとは言えないのじゃないかということで一カ月におさまったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/283
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284・寺田熊雄
○寺田熊雄君 あなた方のおっしゃる理屈わからないではないけれども、我々でもそうですよ。大体質問をしなければならぬ、拘禁二法でもどうせ質問するから勉強するといったって、それはやっぱり拘禁二法が目の前にこなければなかなか勉強するものじゃない。学生だって試験があるから一年前から勉強するといったって、試験間際にならないと身が入らないので、やっぱり人間性を考えていただかなければいかぬ、あなた方のように頭脳が非常に人並み以上にすぐれているというような方は用心深くやって、それてあらかじめ熟考に熟考を重ねておくということはあるかもしれぬけれども、まあ平均人を標準にして考えていただかないと。
そうすると、やっぱり間際になってみんな考える。そこで、いろいろの人にも相談をしたり真剣に考えたりするのでありますから、一月というのはちょっと短いですね。これはやっぱりお上の発想です。それから賢人の発想です。凡人の発想じゃないですね。これはやっぱり直してもらわなければいかぬ。まあ検討していただきたいと思う。
それから、これは衆議院の小澤議員と局長との間に大分執拗な論戦が展開されておるのを発見したのでありますが、外国籍の離脱の手法をとった場合にその離脱に大変時間がかかった、したがって所定の期間内に届け出ができなかった、それで戸籍が抹消されてしまう、後からその離脱の証明書をつけて戸籍の届け出をする、局長はそういう場合にはこれは本人の責めに帰すべからざる事情によるのでありますからして戸籍は再製させます、したがって差し支えないじゃありませんかと、結論ではあなたはそういうふうな御答弁をしていらっしゃる。だが、小澤君の方は、しかし一たん戸籍が抹消されてしまう、後で再製されるというようなのは本人にとっては決して望ましいことじゃない、だからもうちょっと考えてほしいというような論戦を繰り返しておりますね。これはそういうもろもろの批判も受けて、期間の長短についての適切さがどこにあるかという点をやっぱり検討していただきたいと思うんですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/284
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285・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 今の御指摘の点につきましては一つの問題としては受けとめる必要があろうと思います。したがいまして、離脱の方が一生懸命御本人が努力されているのにおくれてという場合に、戸籍が消除されていてということはこれは望ましいことではございませんので、余り長くということはできませんけれども、一カ月たったらすぐに市町村の方の戸籍を消すということはしない、少しの余裕は見る必要があるだろう、これはやむを得ない事由によっておくれたという、一般の場合、天災遅延等そういう場合でも同じような問題が起きますので、その点については少し期間を見るような運用をしてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/285
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286・寺田熊雄
○寺田熊雄君 その方の手配というものも必要かもしれませんけれども、根本的にその一月とか、あるいは外国の場合に三カ月とかいう期間の長短の適切さ、これをやっぱり考えていただいた方がいいんじゃないでしょうか。それをきょうは要望にとどめておいて、次に移りたいと思います。
第十六条第三項の聴聞手続、これは当然代理人を選任し得るのでしょうね。例えば私どもがやはり代理人としてそういう聴聞の場に臨むということができるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/286
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287・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは御本人の弁明を聞く機会を与えて、そして判断をしたいという趣旨でございますので、御本人が出頭できないときに、そのかわりに代理人の方が来て言いたいことを述べるということは、これはもう許して差し支えないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/287
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288・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、この人物が外国に住所を持っておるときは日本に呼び寄せて聴聞するわけでしょう。外国にあなた方が御主張になるというのはちょっと煩瑣だからできないと思うが、この点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/288
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289・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは外国で聴聞の場を設けるということは考えておりません。これはまた国際的にも一つの問題になるところでございますので、国内で聴聞を行うという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/289
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290・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、第十六条一項の外国国籍離脱義務という点の規定ですね。これは衆議院では局長の御答弁は、これは訓示規定でありますということを言っておられる。それはそうならざるを得ない。別段強制し得る問題ではないと思いますが、その努力義務というのは、どういうところまであなた方はその人に期待しておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/290
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291・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは当該外国の国籍法の規定によって離脱の手続ができるならば遅滞なくやっていただきたいということが努力の内容としては期待しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/291
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292・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、外国の公務員の地位を得た人、これがどの程度の範囲を指すのかということで、質問者の方が例えば大使、公使はどうなんだと。まあ大使、公使に外国の方で任命しないと思うけれども、一応そういうのを想定して、それから外国の国会議員に就任したらどうだと、いろいろ言っておられますね。また局長は局長で、ある程度の範囲を限定していらっしゃるようにとられる面もある。もうちょっとこれやはり少なくも幾つかの例示ぐらいはあなた方が我々の前に示していただいた方がよろしいね。例えば国家権力を担うとか、あるいは国家の政策決定に参画するとかいうことはわかるけれども、例えぼこういう人というような例示を幾つか出していただくとあなた方のお考えが一属鮮明になるのでありますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/292
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293・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かにそういう例示があった方がわかりやすいという面がございまして、法案作成の場合にも何らかの例示ができないものかということは考えたのでございますが、なかなかそれがうまくいかないという、面があって、抽象的に著しく違背するということの表現にとどまってしまったわけでございますが、考えておりますところは、公務員と申しましてもいろいろな形のものがあるわけでございますので、公の意思決定とか、あるいはかなり高度な公権力の行使とかいうものに携わる方が著しく宣言の趣旨に反するということになろうかと思います。その例示といたしますと、もちろん国政の関係での議員であるとか、大使、公使であるとか、あるいは閣僚であるとか、それからそうでなくても普通の行政官でもかなりの地位にある方はその中に入ってこようかと思います。
ただ、各国の制度がいろいろまちまちでございまして、公務員制度も一概には言えない面があります。日本などはかなり広く公務員というものでかぶせておりまして、昔は事務官と雇傭人というふうな分け方もありました。判任官とかそうでないとかということで区別があったようでございますし、またそれと同じようなことがドイツでもあるわけでございますが、どうも世界共通的にこういうものだというふうな線がなかなか引きにくいということで、法文の上でも例示がちょっと出しにくかった面がございますし、また具体的に申し上げましても今申し上げた例示のみに限るということも言えないという面がありまして、なかなか難しいところだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/293
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294・寺田熊雄
○寺田熊雄君 第十七条で国籍喪失者は日本の国籍の再取得ができるということになっておりますね。これは日本に住所を持つという要件があって生活の本拠が日本にあるということなんでしょうが、今国際化時代でありますので、日本に生活の本拠を持つと同時に外国にも持っておる。私どもの友人で一年の半分は日本におる、それから一年の半分はアメリカに行っておるという者もおりますが、これは外国の住所をあわせ持ってもいいんですか。それとも日本にもっぱら住所を持っておらなければいかぬのですか。どちらでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/294
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295・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この点につきましては、日本に住所を有するという判断ができればこの要件は満たすと思います。ただ、普通は住所とというのは幾つもあるという観念ではございません。ですから外国にもあるし日本にもあるけれどもどうだというふうな御質問を受けますと、ちょっと答弁に苦しむわけでございますが、日本側から見まして日本に住んでいるそういう状況が住所だというふうに認定できれば、この要件には当たるのだというふうにお答えせざるを得ないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/295
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296・寺田熊雄
○寺田熊雄君 局長のおっしゃることもわかるけれども、今生活の本拠を一つに限らない、二つあり得るというのがむしろ裁判所の考え方じゃないだろうか、私の方はそういうふうに理解しておるものだから、それでそういうお尋ねをしたわけです。
それで、日本の国籍を再取得した者はその時点で当然に外国国籍を失うのでしょうか。この点はどうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/296
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297・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは当該外国の方の国籍法の問題になるわけでございますが、自己の志望によって日本の国籍を取得したということになりますので、多くの国におきましては自己の志望により他の国の国籍を取得した者については当該国の国籍を失うという法制をとっている国が多うございますので、そういう国では当然に日本の国籍だけになるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/297
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298・寺田熊雄
○寺田熊雄君 今局長の言われました自己の意思によって日本の国籍を取得した場合に当該の外国籍を失うという場合でない、そこまで厳しい制約を置いてない外国の場合は、その日本の国籍を再取得した日本人は当該の外国の国籍を離脱する業務というものをやっぱり負うわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/298
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299・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) その場合には当然負うわけではございませんけれども、要するに重国籍の状態になることは間違いない。今のお話は、十七条の一項の留保届をしなかった者の再取得といいますか、取得の関係でございますと、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/299
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300・寺田熊雄
○寺田熊雄君 第十八条の法定代理人の行為、これは両親が共同して行うということになりますが、これは場合によって両親の一方がなし得るという場合がもちろんあるんでしょうね。何らかの事由によって両親の一方が親権を行うことができないときというのでなくして、意見が分かれて子供が一方の親に迫るというような場合、これは婚姻のときなんかはそういう場合が大いにあるんだけれども、そういう場合に両親の一方が子供の意思を他の一方の親の意思に反して実現するというその道は残されておりますか。それはやっぱりいかぬということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/300
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301・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは共同親権である場合にはやはり両親の合致した意思でやっていただくより仕方がないと思いますが、ただ十五歳を超えますと、これは本人の意思だけでいいわけでございます。ですから、そういう場合には十五歳まで待って本人の意思で決定してもらうというのが筋道になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/301
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302・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この国籍法の改正と同時に戸籍法も大変いろいろと変化を見ておるわけでありますが、これは先ほどの選択の届け出の場合には外国の国籍は戸籍簿には記載しないという御答弁がありました。それで、帰化の場合には帰化する前の外国籍、これは書くことになっておるようですね。それからもう一つは、外国籍を離脱する場合に当該の外国名はこれは当然に載らざるを得ないように思いますが、これはそう理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/302
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303・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 帰化の場合とか国籍の取得の場合には、それまで持っていた国籍を表示いたします。それから外国籍の離脱の場合にも、どこの国の国籍を離脱したかということは書くという予定にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/303
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304・寺田熊雄
○寺田熊雄君 第百三条第二項に「国籍喪失を証すべき書面」というものがありますね。これはどんなものをあなた方は期待しておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/304
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305・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは日本の国籍の喪失のことでございますので、日本の国籍が失われることとしては外国に帰化をするというようなものが多いようでございます。この場合には外国で帰化をしたということ、そういう当該帰化をした先の国の証明書をお出しいただくということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/305
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306・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから第百四条の三、これは市町村長等戸籍事務に携わる者が、国籍の選択をすべきであるのに「選択をしていないと思料するとき」と、この「思料するとき」とは何だというようなことをいろいろ質問されておって、私なりに理解したところは、結局市町村長がそのことに気づいた、あるいはそのことを発見したというふうに理解すればいいと私は考えたのだが、それで間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/306
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307・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 大体そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/307
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308・寺田熊雄
○寺田熊雄君 日本の戸籍簿、これは英語でもザ・コセキというふうにそのまま使われておるようでありますが、これは日本独特のものと言っていいんじゃないでしょうか。
この戸籍には日本人だけが大威張りで名前を出すけれども、外国人はたとえ日本人と結婚した場合でも、例えば奥さんになった場合でも妻の欄には記載されませんね。夫の身分事項欄の上の方に記載される。ところが子供は堂々と子供の欄に記載される。つまり一方の配偶者と子供はあるけれども、外国籍の配偶者は上の方に小さくなっている。そういう現象がある。これはなるほど日本の戸籍というものは日本人の身分関係を証するものだということではあっても、やはりその一家を成しておる一人の構成員として地位を占めておる、発言権はその上の方におる者がはるかに大きいかもしれないが、現実の社会生活においては相当な地位を占めておる者がそう小さくなる必要があるんだろうか、これは何とかしてやっぱり夫婦の場合には一方の配偶者と同じように扱って、そういう便法を講じてやってもいいんじゃないかと私はいつも考えているんですが、これはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/308
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309・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは戸籍の考え方だろうと思いますけれども、申し上げるまでもなく日本の戸籍制度というのは、日本人を把握して、それの身分関係を明らかにするという制度でできているところでございまして、実態上の家族関係を明らかにするという趣旨のものではないわけでございます。したがいまして、逆に申しますと戸籍に載っている者が日本人であるという実際上の証明になるわけの制度でございますので、ここに外国の方を夫とか子供とかと同じように並べて書くということになりますと、これは戸籍の性格が少し変わってくるということにもなりますので、そのおっしゃるお気持ちはわからないでもございませんけれども、制度としてはどうもそういう方を同じように載せるというわけにはいかないのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/309
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310・寺田熊雄
○寺田熊雄君 なかなか頑固で、局長の考え方を変えるのにはまだまだこれは年月を要するというふうなことですが、私はやっぱりもう日本人と全く同一の生活関係を持っている、そして子供もできたというような者は載せてやってもいい、こう思うんだけれども、まあ今のところはちょっと無理だということですね。殊に夫が死亡して子供と二人だけになった外国人の妻なんという場合は、これは戸籍の本人欄に載るのは、その幼心の子供だけになりますか。それで母親である外国人の女性は上の方にちょこっと書かれるだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/310
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311・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 夫である日本人が死亡たし場合には、そこでは除籍になるわけでございますけれども、それは記載としては残るわけでございまして、したがって、その戸籍を見ればだれそれと婚姻という関係の字を全く消してしまうわけじゃございませんから、したがって、それでわからないことはないと思います。また、子供の方には母親としてその外国人の名前が書いてあります。そういうところから、全くその手がかりがなくなってしまうということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/311
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312・寺田熊雄
○寺田熊雄君 しかし、もうちょっと、大威張りでやるわけじゃないけれども、それ相当な地位を戸籍の記載の上にも与えてやった方がいいと私は考えるのだが、この問題はさらに検討課題として、次に移りたいと思います。
外国人の男と婚姻した日本人妻の戸籍は、その妻が筆頭者となる新戸籍を編製するということになりますね。この場合も外国人の夫は妻の身分事項欄に記載される、子供は一人前に子供の欄に記載される、こういうことになりますね。さっきと同じ問題が生じる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/312
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313・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国人と結婚した日本女性については原則的に、既に納婚していれば別ですけれども、そうでない場合にはおっしゃるとおりの戸籍の編製の仕方になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/313
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314・寺田熊雄
○寺田熊雄君 既に結婚している場合は別というのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/314
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315・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 既に前に結婚をしておられて、その際に新しい戸籍がつくられているというような関係の場合には、その戸籍に書かれるということもあり得るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/315
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316・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それはそうですね。要するにその場合でも前の夫が死亡して、そして外国人の男とさらに結婚するというような場合でしょうか。何にしてもそのときにはやはりその妻である日本人が戸籍の筆頭者になるわけでしょう。それから新しく結婚したときもその妻が戸籍の筆頭者になる、子供は一人前にやはり子供の欄に記載される、しかし夫でありまた一家の生計を切り盛りする亭主の方は戸籍の方では上の方に小さく書かれるだけである、こういうことになりますね。大変何かおかしいんだけれどもやむを得ない、そういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/316
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317・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) まあそういうことでございますが、小さくと申しましても隣の行とは同じ活字で記載するわけでございますから、結果的には別の欄を設けてそこに書くというのは、先ほど申しました理由で無理だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/317
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318・寺田熊雄
○寺田熊雄君 第二十条の二、氏を外国人夫の氏にする、これは当然片仮名名で表示するんでしょう。私どもも中学の後輩に与謝野晶子さんの御令息で与謝野アウギュストという人がおった。昔でもやはり尊敬する芸術家のお名前を借りて子供につけるというようなことはあった。これからは氏を外国人の夫の氏にすると、これは当然英語で書くわけにはいかぬのでしょうね。あるいはフランス語で書くわけにはいかぬ。やはり日本語に直して片仮名で書くということになるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/318
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319・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 戸籍の記載は日本の文字をもって記載するということになっておりますので、漢字を用いている国の外国の方はそのまま書かれることになりますけれども、いわゆる横文字の関係につきましては片仮名に直して書くということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/319
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320・寺田熊雄
○寺田熊雄君 その場合、新戸籍をたしか編製するということになっている。そうすると、もとの戸籍はどういうふうに扱われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/320
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321・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは例えば日本の女性が外国人の男性と婚姻をして新しい戸籍がつくられまして、そしてそれだけの状態のときに外国の夫の姓に直す場合には新しい戸籍にはいたしません。そのまま直すわけでございます。ただ、子供さんができまして、子供さんがいるという場合に、そういう場合に名前を変えるというときには母親の方をまた別の戸籍につくり変えるということになりますが、多くの場合には結婚されてからすぐ名前を変えられる。これは六カ月以内の届け出でございますので、そういう場合には新しい戸籍をつくるということはむしろ例外だというふうにお考えいただいてもいいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/321
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322・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それはわかりましたが、その例外の場合に旧戸籍はどうなっちゃうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/322
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323・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) それは除籍になるわけでございます。子供さんがいる場合になりますけれども、子供さんはそこに置いていって、そして出るということになります。これは少し形は違いますけれども、普通の日本人間の婚姻の場合に、親のところに入っていた息子なり娘さんなりがそこから出ていくというときに、もとの戸籍は除籍で消されるという表示と全く同じことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/323
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324・寺田熊雄
○寺田熊雄君 だけれども、子供が結婚して新戸籍を編製される場合は、その子供の欄はなるほど消除されるかもしれないけれども、全く単独の戸籍であったものが子供が生まれて夫の氏に直すというときに、新しい戸籍を編製するといったら、子供の姓についていくのだから、もとの戸籍はだれもいなくなっちゃうわけでしょう。だから、もとの戸籍はどうなるのかといってお尋ねしているんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/324
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325・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 子供は当然にはついていけないわけでございます。ですから、そこで子供だけの戸籍が残るということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/325
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326・寺田熊雄
○寺田熊雄君 子供は親についていかないわけですか。どうもちょっとおかしい。未成年の子の場合に子供だけは残って親についていかないというのは、何か常識的にちょっと理解しにくいけれども、どうしてそういうことになるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/326
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327・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっとずれるかもしれませんけれども、例えば妻の氏を称する婚姻をしまして、妻が筆頭者になった婚姻をして、そして子供さんが生まれるというところで御主人が亡くなってしまいますと、その関係は消しますね。そして、その後で残された奥さんが再婚をしますと、その前の子供さんは当然には新しく、何といいますか、ついていかないという、そういう関係と同じような問題題になるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/327
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328・寺田熊雄
○寺田熊雄君 よくまだ十分に理解できないんだけれども、何しろ戸籍というのはこれは技術的な問題だから、だから、もっとさらに私の方も勉強をして、またわからなければ来ていただいて説明していただくということにしてきょうはこの程度にとどめておきましょう。
それから、五十二条の第四項、「その省以外の法定代理人」という表現があるが、「その者以外の法定代理人」とは後見人のことを意味するのでしょうか。その辺よくわからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/328
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329・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは主として後見人でございますが、めったにないことでございま
しょうけれども、おやじさんが出生直後に亡くなってしまうというような場合に、後見人が選任されるとか、そういうふうなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/329
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330・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、経過規定の問題、附則の問題ですね。これは衆議院では大変よく論ぜられている。この附則第二条の問題ですが、日本人の妻たる外国人の帰化の場合、旧法の方が有利ですね。だけれども、それ以外の場合はほとんど新法の方が有利ではないかというふうな私は理解をしておるのだけれども、この本法施行以前に帰化申請をした者の帰化条件については旧法の規定によると、あえて新法の適用を排除したゆえんのもの、これをちょっと説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/330
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331・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは旧法当時に申請をされました方は現行法における帰化要件に当たっているということを前提にして申請をされておられるわけです。したがいまして、それから新法が不利になるというような関係については、実は要するに許可の処分がおくれたことによっての不利益になりますので、その点については経過措置で救済する必要があろうということでしておるわけでございますが、ただ現行法よりも緩やかにした面につきましては、今申し上げましたように現行の規定で要件があるだろうという判断で申請をされたという方には当たらないわけでございますので、しかも実際問題といたしますと、その有利になるという関係は、先ほど申しました日本人の妻の要件と比べますとそれほど大きな影響を与えるものでもございませんので、また一部には実際の解釈、運用の中で既に取り入れているものもございますので、影響はないだろうという考え方でこういうような、経過措置にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/331
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332・寺田熊雄
○寺田熊雄君 第六条第一項のただし書き、これがどうもよく私ども、理解できないわけではないのだけれども、この立法理由をひとつ説明していただきたいんです。なぜこういうものを置いたのかということ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/332
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333・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、いわば五条の関係で日本人を母とする子供について若干さかのぼらせて日本国籍を取得させようという制度について、そのまた子供さんについても同じように日本国籍を取得させようという趣旨でございますが、それを単に子供ということにいたしますと、必ずしも血統的なつながりがないという者が含まれてしまうことになります。したがいまして、まず養子関係における子供は除くということと、それから要するに出生のときに法律上の子供さんでなかった場合には、これは当然にはそうはならない。早く申しますと、この新法が仮に二十年前にさかのぼって施行されていたとしても、養親の関係だとか、養親というのは後になってできる関係でございますが、それから認知も出生の後になってできる関係ですから、当然には二条の規定で日本の国籍を取得しなかった関係に立つわけですね。そういう者はこの経過措置の考え方とは違うわけだから、そういう者も除きますと、そういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/333
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334・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まあわからないではないね。
それから第三条のみなし規定がありますね。ちょっと三条に戻るけれども、「この法律の施行の際現に外国の国籍を有する日本国民は、第一条の規定による改正後の国籍法第十四条第一項の規定の適用については、この法律の施行の時に外国及び日本の国籍を有することとなったものとみなす。」、このみなすじゃないですよ。「この場合において、その者は、同項に定める期限内に国籍の選択をしないときは、その期限が到来した時に同条第二項に規定する選択の宣言をしたものとみなす。」と、この後ろの方のみなし規定なんですが、これは意思表示によって国籍を選択したときと法律効果は全く同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/334
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335・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは法律効果といたしますと選択の宣言を具体的にされた方と同じ地位に立たせるという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/335
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336・寺田熊雄
○寺田熊雄君 その場合、当該の外国籍はどうなりますか。これは外国の国籍法によって決まるという趣旨か、意思表示によって国籍を選択したんじゃないから、外国の国籍は当然には失わないと考えるべきか。その辺をちょっと御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/336
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337・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) この規定は、国籍法の本法の方で選択の宣言をしなければ法務大臣の催告を受けてそして国籍を喪失することがあるという関係については、もう選択の宣言をしたものとみなすのだということを言っておるわけでございまして、別にそこで宣言という意思表示をしているわけではございません。したがいまして、日本の国の方の国籍を選択することによって他国の国籍が当然失われるような法制の国であっても、これは意思表示ではなくて法律的にそういう効果を与えるということでございますから、恐らくその他国の国籍法におきましても、自己の志望によって云々とかというような、あるいは自己の意思によって放棄の宣言をしたとかというふうな評価はしないであろうと思っております。しかし外国のことでございますから、どういうふうな取り扱いをするかということについては確信を持っては申し上げられませんけれども、法律の一つの常識として、意思表示によるものという評価は受けないであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/337
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338・寺田熊雄
○寺田熊雄君 申すまでもないことでありますが、このみなし規定の中には、その人物が他の国の国籍を放棄する意思表示を包含しておるというところまでは解釈は延びませんね。これはもうあなたが最初おっしゃった法務大臣が催告をする、その立場に置くだけだというのでありますから、他の国の国籍を放棄する意思表示というものがその中に含まれておるなんということは解釈する余地がない、こういうふうに理解していいんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/338
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339・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/339
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340・寺田熊雄
○寺田熊雄君 また第九条に戻るけれども、「この法律の施行前に国籍の喪失があった場合の国籍喪失の届出については、なお従前の例による。」、これが第一項、第二項が「この法律の施行前に国籍を喪失した者は、国籍喪失の届出をすることができる。」、これはちょっと素人にはわかりにくい。私は素人のつもりじゃない、玄人のつもりだが、それでもちょっとこれはぴたっとこないので、これをちょっと説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/340
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341・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) これは現行法では日本の国籍を喪失した本人には届け出義務がなかったわけでございます。それを今度は、そういう場合でも日本の国籍を失ったということで戸籍を早く消除したりしてきちんとしなければならないという観点から、本人にもその喪失の届け出をしていただくようにしたわけです。そうしますと、この法律の施行前に喪失した者については本人にはどうなるかということなので、これは義務はありませんけれども、しかしそういう本人の方がそういう新法の精神に従ってその国籍の喪失の届け出をされれば、それは授受をしてきちんとするということはむしろ望ましいことでございますので、そういう形で書いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/341
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342・寺田熊雄
○寺田熊雄君 なるほど、そういう説明を受ければわかるけれども、これはちょっとやっぱり余り技術的に過ぎてわかりにくい。
それから、もう時間がないので法例の問題だけにとどめようと思いますが、これは衆議院でもやはり法例についての論議がなされておるんですね。その衆議院の段階では、民事局長がこの法例が男女の不平等の規定であるという点をなかなか認めない。そういう点で論戦が行われておるわけであります。つまり準拠法を決定するという点が要素であるのであって、どっちかにしないとちょっと決めにくいじゃないか、父母両系主義のように両方適用主義というのはとりにくい、簡単に言うと、局長の論旨を私が解釈するとそういうことなんでしょうか。
ただ、この問題につきましては私も昭和五十五年五月八日に当時の貞家民事局長に質問をしておるわけですが、貞家さんもやはり局長と大体似たような答弁をしておられるわけです。我が国の法例も大陸法の影響を受けていわゆる本国法主義というものを採用しておる、その本国法でも大陸法
系の諸国の国際私法では一般に夫の本国法というものが中心になっておるのであって、そして男女平等の理想から言って形が悪いから直そうというのではないのであるというような趣旨を述べていらっしゃるのですね。これに対して私が詳しく反駁をしておるわけでありますが、先般池原教授も、いやもうこれは男女平等の趣旨に反するので、そういう答申が法制審から出ておるというようなことを言われたようにも考えておるのですが、どういうふうに局長はこれを理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/342
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343・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法例にあります「夫ノ本国法」とか「父ノ本国法」とかいうのが問題ではないかという点につきましては、けさほども実は飯田委員の方からも御質問があったところでございます。私どもとしては、男女差別とかというふうな観点については結局適用される法律の内容が一番問題なのではないかということと、それから、ともかくただいまもおっしゃいましたように、父母両系主義のように夫または妻の本国法とか父または母の本国法というのでは準拠法を決定することにはならないので、どちらかに決めなければならない。そういう場合にまた考えなければならぬ要素としては、外国の方でも他国の方でもどういうやり方をしているか、それによっては、要するに国際的に跛行的な効果を認め合うというようなことになっては、これはぐあいが悪いだろうというふうな面がございます。
そういうふうなところで、現在の情勢に合わせたそういう問題を解消するための立法というものが必要になってくるわけでございますが、法制審議会におきましては国際私法部会というものがございまして、その下に小委員会がございますが、その小委員会でかつて一つの試案を発表したことがございます。ただ、それは一つの試案でございまして、ちょっと年数もたっておりますから、今現在での法制審議会の国際私法部会の考え方を直ちにあらわしているとは言いがたい面がございますけれども、一つの大きな方向を示したものでございます。そういう問題を抱えておりますので、池原先生などもこの国籍法の関係が済めば法例についての見直し作業に入りたいという考えも持っておられますし、私どももそういう面での検討に入るべきだと思っております。
ただ、先ほど申し上げましたように、準拠法決定の要素として何をとるかというのは非常に難しい問題でございます。殊に外国との関係も考えなければいけませんので、かなり慎重な、かつちょっと時間のかかる作業になろうかと思いますが、問題意識は十分に持っておりますので、これから検討を進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/343
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344・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは五十五年の当時、私も折茂豊氏あるいは溜池良夫氏の論文などを引きまして、これらの学者がやはりこの法例の規定は両性平等の原則に背馳しているという論点から説明をしておられることを申しておいたわけでありますが、それに対して、大体今局長が言われたように、私がやはり男女の不平等を改めるという高い次元から十分検討してほしいという要望をしたことに対して、やはり現実論を加味しながらも高い次元の適用を考えなければならないというつもりである、高い次元から考えた場合には夫の本国法というようなものをすべての関係の基準にするということが望ましくないという意見は十分理解できる、したがって法例の全面改正というか、ヘーグの国際私法会議で採択される条約案というのも加味しながらやっておるわけである、そういった努力もずっと古くからやっておるし今後継続して精力的にそういった検討を進めたいと思います、その際には御指摘のとおりの高い次元からの考慮、反省ということも十分加味してやってまいりたいと思いますということを言われて、当時の倉石法務大臣も、民事局長がお答えいたしましたとおりに時間をかけて検討をいたすべきものと存じますという答弁をしておりますね。
もうあれから四年たっておるわけでありますから、この問題について、もう国籍法があなた方の事業として成就した次にはやはりこの法例の問題を真剣に考えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。これは局長のお答えの後に大臣の御所見もあわせてお伺いしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/344
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345・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法例につきましても問題意識は十分に持っておりますが、内輪話になりますけれども、この国籍法の改正の審議のために国際私法の先生方も、言葉は適切であるかどうかは知りませんけれども、総動員というふうなことでございまして、こちらの方に精力が注がれましたので若干お休みになっておりますけれども、ここで国籍法が解決いたしますと、次には法例のの方に移って、ただいまおっしゃったような問題点を十分に研究しながら改正案をまとめていくようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/345
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346・住栄作
○国務大臣(住栄作君) この法例の検討問題につきまして、昭和五十五年、既に先生からも問題の提起があって、いろいろ論議されたとお伺いしたわけでございます。大変これ法例の適用そして国際私法の関係、そういうものが非常に複雑に、これはまた基準を夫の本国法、母の本国法というようなことになりますと大変複雑な問題でございますし、それを解きほぐしていくには、本当に慎重な検討も必要であろうかと思っております。今も局長から答弁いたしましたように、とにかく国籍法にかかり切ってきたというようなこともございます。今度は法例の問題はそれこそ本格的に取り組んでいかなければならぬ、こういうように考えておりますので、高い立場で引き続き検討をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/346
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347・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まだまだ細かい問題はたくさん残っておるのですが、もう時間もあと数分というところでありますので、男女両系主義に改めた点が果たして差別撤廃条約の第九条第二項に基づくのか、それとも憲法第十四条の趣旨に合致しないというところからではないかという点は、もう衆参を通じてこれは最も論議の中心になったところでありますので、私からあえてこれについてお話しすることはないのじゃないか。私は、ただやっぱりこの条約が「子の国籍に関して男子と同等の権利を与える。」と規定しておる、その子の国籍の取得ということに関しては男女が平等でなければならぬということを言っておるわけでありますから、それは結局憲法第十四条の趣旨と全く異ならないわけで、だから、その点に着眼して考えていけば、当然従前の男系主義は憲法第十四条の趣旨に適合しないという結論は出ざるを得ない。
ただ、局長が心配しているのは、遡及するといろいろな複雑な問題が起きてくる。憲法施行当時にさかのぼった場合に、朝鮮人、台湾人の子弟の問題であるとか、いろいろあなたは困難な問題を論じておられるわけですね。そういうことはあるけれども、端的にその事柄の本質をつかまえてみれば、これは憲法第十四条の趣旨に適合しないということはおのずから明らかであると私は考えておるのですが、この問題について、一言で局長はどういうふうに論じられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/347
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348・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもは、頑固だと言われるかもしれませんが、現行法が憲法に違反するというふうな考え方はとっておりません。しかし、憲法に違反するどかあるいは憲法に違反する疑いが濃いとかという声があることも事実でありますし、また、そのおっしゃることの中にも耳を傾けるべきものがあると考えております。私どもは、現行法が憲法に違反しないから改正しなくてもいいのだというのではなくて、仮に違反しないにしても今度のような父母両系主義にすることが憲法の考え方に少なくとも沿うものであるという考え方は持っております。したがいまして、憲法違反とかそうでないとかというふうなそういう議論をむしろ解消するといいますか、そういう意味でもここで思い切って父母両系主義に改めるべきであるという考え方を持っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/348
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349・寺田熊雄
○寺田熊雄君 最後に、私は、党内でも大変論議のあった点であるので、あなた方にお願いをして、カワキタ・バーサス・ユナイテッドステーツというアメリカの連邦最高裁の五十二年六月二日の判決、これは英文だけれども、これを届けてもらって、読んで非常な感銘を受けたわけです。これは二重国籍者であって、それでアメリカの国籍もあわせ持っておったために反逆罪になって死刑の判決を受けた、それが日本人であった当時にアメリカの捕虜キャンプの通訳をしておった、そのときにアメリカの捕虜に対して大変虐待をした、それが日本の国籍だけの場合だったらアメリカの法令による反逆罪にはならないけれども、アメリカの国籍をあわせ持っておった二重国籍者であるがゆえに反逆罪になって死刑の判決を受けたという事案であります。
したがって、いかに国籍というものが大きな意義を持つか、重国籍の恐ろしさというようなものも、その具体的な事件を検討する面で非常に深い理解というものを得ることができたわけです。したがって、私は党内でも重国籍はいけないという理論を展開し、各国は重国籍を減少させようと努力しておるというその必要性や努力というものを高く評価したわけであります。だから、この改正法案がやはり重国籍解消という方面に向かって前進しておるという点はそれなりにやっぱり評価せざるを得ないと考えておるんです。
しかし、さっきもお話ししたようにいろいろな面で、指紋の点でもあなた方は検討するとおっしゃる。そのほかいろいろな問題で検討の必要性というものもお約束していらっしゃるので、そういう男女両系主義と、それから重国籍の解消という理想に向かって邁進して一通りの案ができましたから、これは大変結構ですが、先ほど法例の改正にこれから着手いたしますというお話がありましたけれども、同時にやはりこの問題、この法案について法律として成立した暁にも、いろいろな欠陥なり注文が指摘されておりますね。だから、それについて十分やはり検討する努力もひとつやっていただきたいと思うんですが、それをちょっとお約束願って質問を終わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/349
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350・枇杷田泰助
○政府委員(枇杷田泰助君) 法律というものはでき上がってしまえば後は知らぬというものでは私はないと思います。したがいまして、十分に考えた末の法案でございますけれども、その後施行されましてそれがどういうふうに動いていくかということは絶えず見守って、そこで問題があれば、これは法律の改正をすべきものがあれば改正をしなければならないだろうと思います。これは一般的な法律の作成並びにその運用をする者の責任であろうかと思いますので、国籍法につきましても影響するところが多いところでございますので、施行されました後の状況を十分把握して、そして不都合な点があればそれは常に検討して、改正すべきであるならばそれは法改正をまたお願いをするということもしなけれぱならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/350
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351・寺田熊雄
○寺田熊雄君 これは委員長や理事会にもお願いしたいんですが、こういう重要な法案については、一応の審議のめどがつけられても、私どもその間に勉強すれば勉強するほどいろいろな問題点が起きてまいりますので、余り最初立てられた原則にこだわらずに、できるだけ柔軟に審議の機会をお与えいただく、これは法務委員会の伝統なんですよ。貴重な伝統だったので、それをひとつここで皆さんにお願いして、余り急がされたので十分な質問ができず大変恥ずかしく思っておるものですから、それをお願いして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/351
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352・大川清幸
○委員長(大川清幸君) よく承っておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/352
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353・大川清幸
○委員長(大川清幸君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、園田清充君及び徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として林ゆう君及び沢田一精君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/353
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354・大川清幸
○委員長(大川清幸君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/354
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355・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/355
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356・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/356
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357・大川清幸
○委員長(大川清幸君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115206X00819840517/357
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